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2016年9月26日 第3回児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会

雇用均等・児童家庭局

○日時

平成28年9月26日(月)17:00~19:00


○場所

TKP新橋内幸町ビジネスセンター ホール614(6階)


○出席者

吉田(恒)座長 岩崎構成員 上鹿渡構成員 久保構成員 久保野構成員
杉山構成員 床谷構成員 林構成員 藤林構成員 森口構成員
山田構成員 横田構成員 吉田(彩)構成員

○議題

(1)意見交換
(2)その他

○議事

 

 

 

○木村補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第3回「児童虐待対応における司法関与及び特別養子縁組制度の利用促進の在り方に関する検討会」を開催いたします。

 構成員の皆様におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。

 本日は、金子構成員、峯本構成員、山本構成員から御欠席の御連絡をいただいております。

 まず、資料の確認をさせていただきます。配付資料は、右上に番号をつけておりますけれども、資料1、資料2-1、資料2-2、資料3、資料4、参考資料につきましては参考資料1、参考資料2-1、参考資料2-2となっておりますので、御確認いただければと思います。

 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。

 なお、本検討会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。

 それでは、これより先の議事は吉田座長にお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 皆様、こんにちは。今日もどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、早速議事に入りたいと思います。恐れ入りますけれども、カメラの撮影はここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。

(カメラ退室)

○吉田(恒)座長 まず、本日の議事についてですけれども、配付した議事次第にありますように、本日は論点ごとに各構成員の皆様による意見交換を行いたいと思っております。目安といたしましては、前半の1時間20分程度を司法関与に、残りの時間を特別養子縁組の時間としたいと思います。

 それでは、まず、司法関与のあり方について意見交換を行いたいと思います。まず、事務局から司法関与のあり方に関する資料等について御説明いただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

木村補佐 虐待防止対策推進室の木村でございます。

 司法関与の関係の資料といたしまして、お手元の資料1、参考資料1をもとに御説明させていただきます。

 まず、資料1につきましては、各論点ごとに専門委員会の報告の関係部分の抜粋と、その次に、これまで2回の検討会における主な御意見を事務局でまとめさせていただいています。その上で「目指す方向性(案)」として、今後議論をいただく上での議論の方向性でございますとか、論点案をお示ししている資料になります。まだあまり御意見をいただいていない論点もございますけれども、今後御議論いただく上で、一定の方向性を示すことで議論も促進されるものと考えておりまして、事務局で(案)という形でお示しさせていただいております。

 続いて、参考資料1でございますが、こちらは各論点ごとに関係する法律の規定や児童相談所運営指針の記載等を抜粋したものになります。

 資料1と参考資料1をお手元に置いていただければと思いますけれども、時間の制約もありますので、簡単となりますが、それぞれ論点ごとに御説明させていただきます。

 まず、資料1をご覧いただければと思います。1ページ目に「一時保護について」、専門委員会の報告の抜粋をつけさせていただいております。

 おめくりいただきまして、2ページ目以降にあるとおり、これまでの御意見を事務局のほうで項目ごとにまとめさせていただいております。

 4ページ目「目指す方向性(案)」ということで、まず、1つ目のですが、これまでの検討会での御意見も踏まえまして、親権者の同意がなく2カ月を超える一時保護について、28条措置との均衡も考慮し、裁判所の関与を導入することが考えられるのではないかと記載させていただいております。これは注にもございますとおり、現行では一時保護は原則2カ月を超えてはならないとされている点も踏まえて、このように記載させていただいております。

 その上で、下のポツのところでございますが、幾つか論点、課題を挙げさせていただいております。裁判所が判断する際の要件はどの程度明確化する必要があるのか。裁判所の審査手続はどのようなものとすべきか。児童相談所等における体制をどの程度充実させる必要があるのかといった論点、課題を挙げさせていただいております。

 また、2つ目のですが、上記に加えて、親権者の同意がない2カ月以下の一時保護についても、裁判所の関与を導入することが考えられるかと記載させていただいております。その場合、専門委員会の報告でも言及されておりますとおり、緊急時の対応に支障が出ないようにすること、また、必要な一時保護をためらう等子供の適切な保護が妨げられることがないようにすることが必要と考えられると記載させていただいております。

 続きまして、参考資料1をご覧いただければと思います。1ページ目には児童福祉法第33条の一時保護に関する規定、また、下のところで「参考」と記載させていただいておりますけれども、現行で裁判所の承認を規定している28条の規定もつけさせていただいております。

 2ページ目と、3ページ目は、家事事件手続法の児童福祉法28条関係の規定をつけているものでございます。

 駆け足で恐縮ですけれども、続いて4ページ目、5ページ目でございます。児童相談所運営指針における一時保護に関する記述の一部を記載しているものでございます。

 続きまして6ページ目、7ページ目につきましては、児童相談所の体制に関する資料ということで、今回の児童福祉法の改正による児童相談所の体制整備ということで、6ページ目に児童相談所強化プランの概要、7ページ目に弁護士の配置に関する規定等の資料をつけさせていただいております。

 また資料1にお戻りいただきまして、5ページ目「面会通信制限、接近禁止命令について」は、未だ御意見をいただいていないところではございますけれども、専門委員会の報告を踏まえまして「目指す方向性(案)」として面会通信制限、接近禁止命令それぞれについて、裁判所を命令の主体とする仕組みを導入することが考えられるのではないかと記載しております。その上で、裁判所が判断する際の要件はどの程度明確化する必要があるのか、裁判所の審査手続はどのようなものとすべきか、命令の実効性を高めるための方策としてどのようなことが考えられるかといった論点をお示ししております。

 6ページ目、接近禁止命令について、現行では28条の措置に限定されておりますけれども、一時保護や同意入所の場合にも対象範囲を拡大することが考えられるのではないかと記載しております。その上で、具体的にどのような場合が考えられるかですとか、裁判所が判断する際の要件をどの程度明確化する必要があるか、裁判所の審査手続としてどのような手続を設けるべきかといった論点を記載させていただいております。

 また参考資料1にお戻りいただきまして、8ページ目につきましては、面会通信制限、接近禁止命令に関する現行の規定を載せております。

 9ページ目、10ページ目には「参考」としまして、裁判所からの命令の形式として、配偶者からの暴力の防止及び被害者の保護等に関する法律、いわゆるDV法における保護命令の条文を参考として記載させていただいております。

 また資料1にお戻りいただきまして、7ページ目「親権停止制度の活用について」ということで、こちらも未だ御意見をいただいていない論点でございますけれども、事務局としましては、この論点につきましては、28条措置や親権停止等について、必要に応じてより適切に法的権限を使い分けられるよう、児童相談所運営指針等において明確にすることが必要ではないかと考えております。その上で、現行の指針の記載に加えて、いかなる場合に親権停止を活用すべきかという論点を記載させていただいております。

 8ページ目「28条措置に係る裁判所の承認について」は、前回の検討会でデータをお示しさせていただきましたが、その調査結果によりますと、措置先を変更した場合でもあらかじめ複数の措置先について裁判所の承認を得ている場合が多数であるという結果となっておりましたので、裁判所の承認については措置先を複数併記して承認を受けることが可能であるという点につきまして、全国の児童相談所や家庭裁判所に改めて周知するということとしてはどうかと記載させていただいております。

 参考資料1にお戻りいただきまして、11ページ目、親権停止制度の関係でございますけれども、ここでは28条措置と親権停止に関する条文の規定を記載しております。

12ページ目、13ページ目では、現行の児童相談所運営指針の関係する記述の抜粋をつけております。

13ページ目にあるとおり、親権喪失または親権停止を検討する事例として幾つか例示が記載されているところでございます。

 続きまして14ページ目、28条措置に係る裁判所の承認ということで、28条の規定とともに、児童相談所運営指針の記述をつけております。下の枠の下線のとおり、現在でも複数の類型について承認を求めることが可能であると記載されているところでございます。

 資料1にお戻りいただきまして、9ページ目からが「裁判所命令について」でございます。

10ページ目に「目指す方向性(案)」ということで記載させていただいております。具体的には、裁判所が直接保護者に対して行政機関の指導に従うことを義務づける裁判所命令の仕組みを設けることが考えられるのではないかと記載しております。その上で、具体的な要件や仕組みをどう考えるか。現行の裁判所による勧告や都道府県知事による勧告との関係をどう整理するか。命令の実効性を高めるための方策として、例えば命令違反に対して過料を設けるということは考えられるか。その場合に、構成要件をどう考えるか。最後に、行政と司法の役割分担との関係をどのように整理するかといった論点を挙げさせていただいております。

 参考資料1にお戻りいただきまして、15ページから17ページにかけて現行の児童福祉法等の関係する規定を記載させていただいており、16ページ以降では児童相談所運営指針の関係部分の抜粋をつけさせていただいております。

 以上、駆け足で恐縮でございますが、司法関与の関係の資料について御説明させていただきました。最後に、参考資料2-1と2-2についても簡単に御説明させていただきます。

 参考資料2-1をご覧いただければと思います。前回の検討会の際、また、検討会後も構成員の皆様から御意見をいただきまして、その上で修正した調査の項目でございます。構成員の皆様には既にメールでお送りさせていただいておりますけれども、再度参考ということで配付させていただいております。

 また、参考資料2-2につきましては、2-1をもとに実際に各自治体に調査を依頼した際の調査票になります。こちらも参考として配付させていただいております。

 この調査につきましては、現在調査を依頼中でございまして、次回の検討会には可能な限り調査結果をお示しして御議論いただければと考えております。

 駆け足で恐縮ですが、私からの説明は以上になります。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 ただいま事務局から御説明がありましたけれども、論点ごとに意見交換をしていきたいと思います。

 まずは、一時保護について、ただいまの事務局からの説明、また、資料に「目指す方向性(案)」という記載がありますけれども、これらの事項について御意見などをいただければと思います。

 なお、資料3にありますように、それぞれの構成員の先生方から資料の提出をいただいております。資料提出されている先生方におかれましては、関係する論点について御発言の際に適宜資料についても言及していただければと思いますので、よろしくお願いします。

 特に久保野構成員におかれましては、本日資料提供をいただいておりますけれども、関連する論点の際に諸外国における制度について、ここで構成員全員で共有しておいたほうがよろしいだろうと思われる事項もありますので、それらについても御紹介いただければと思います。

 また、お手元の資料4にありますように、日本弁護士連合会から資料提出がございますので、こちらのほうもお目通しいただければと思います。

 それでは、まず、一時保護について意見交換をしたいと思います。これから15分から20分程度のお時間をとりたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

山田構成員 山田です。

 論点ごとにということなのですけれども、まだ枠組みについてもあまりちゃんと議論がなされていないような気がして、私の資料を御説明するに当たって、一時保護がどうのという形よりも、親権の扱いをどうするのかとか、そういう観点で資料をまとめてきているので、パーツパーツで意見を求められても、それについてどこまで話したらいいのかというのにとても戸惑うのです。前回休んで偉そうなことを言えないのですけれども、1回目のときにも資料を出させていただいて、それについてほとんどお話をすることができなかったという不全感があるので、申しわけないのですが、論点を絞る前に構成員の意見を、フリートークまでいかなくてもいいですけれども、少し資料について説明させていただく時間をいただけないものでしょうか。

吉田(恒)座長 各構成員の先生方から出された資料に基づいてのお話ということですか。

山田構成員 はい。

○吉田(恒)座長 それでいきますと、予定されている回数で足りるかどうか。前回お話がありましたように、ヒアリングは今回見送るということで、個々の論点についてやっていこうかということが入ったわけですけれども、もう一度そこに戻るとなると、時間的に大丈夫でしょうか。

山田構成員 そう言われると、私はそこの部分の責任を負えないので何とも言えないのですけれども、ばらばらにお話ししても、多分まとまらないのではないかと思うのですが、私が仕切っても仕方がないですが、久保野先生はいかがですか。

吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

久保野構成員 先ほど座長からも御言及いただいて、できれば外国法の概要について簡単にお話しさせていただければとは思っていたところでして、それをするに当たって、個別の論点の中でということですと、どこでどうお話しすればよいだろうかと思っていたことは確かです。

吉田(恒)座長 それでは、先ほどお願いした久保野先生の資料ですけれども、私もざっと拝見したところ、全体にわたる内容になっていますね。そうした意味では枠組みというところとも共通するかと思うのです。ですので、それに関連して山田先生のほうからまた追加のお話なり資料を用いてのお話をいただいて、まず、入り口のところでそこのところを押さえておきたいと思いますので、資料を見ながらということでお願いします。

○久保野構成員 ありがとうございます。

 資料3の「構成員提出資料」の中の7ページ、8ページをごらんいただけますでしょうか。

 実はあわせて、今、山田先生からお話があった62ページのところで建付けのお話がありまして、そこをご覧いただけるとありがたいと思います。

 今回、お話をさせていただきますきっかけも山田構成員から、今回資料は、冒頭に挙げました報告書に基づいて、その限りでお話しさせていただきますけれども、そちらを引用していただいていたということがありまして、そこで扱われている3カ国のうち、フランス、イギリスについて私が書きましたものという事情もあり、少し補充させていただければという趣旨でございます。

 そして、表に基づいてごく簡単に4つの点のみ申し上げたいと思います。まず、この表に3カ国が並んでおりますが、イギリスとドイツの間に二重線を引いておりまして、右と左で建付けが異なるということでございます。

 いろいろ書き込んでありますけれども、ざっと見たときに、フランスは育成扶助と親権の委譲、太字のものが2つ書いてあって2段階になっておりまして、それぞれのますの中の一番下に括弧で、日本だとどういうものに当たるかというのをざっくりとですが書いてございまして、フランスは日本の親権停止の枠組みに組み込んだようなもの、日本の親権喪失に対応するようなものの2段階。ドイツも一番下を見ていただきますと、日本の親権喪失に対応する制度が発展して細かくなっている。ここは1段階でございます。この二重線の左の2つの国は、裁判所が子供の保護のために親権の行使態様に入っていくという建付けになっているということです。

 それに対して、右側のイギリスの方は、イギリスは2段階で書いてありますけれども、一番下を見ていただきますと、日本の28条審判に対応するようなものと、対応するものはないけれども、スーパービジョン命令というものがあるということです。イギリスの方は行政が行う措置を裁判所が承認するような建付けになっているということで、先ほどの山田先生の62ページで言いますと、左が従来の建付け、右が新しい建付けとなっていて、左が児相が間に入って家庭裁判所が関わる、右は直接保護者に関わっていくということになっているのですが、私の今の説明でいいますと、日本は28条審判が左で、親権喪失、親権停止はどちらかというと右の建付けになっているということです。、この観点から言いますと、日本は2つのやや性質が異なるものが分立しているのではないかということで、それをどう考えるのか、何かつけ加えなくてはならないとしたらどちらが足りなくて何を足すのかということではないのかと思います。これが第1点です。

 第2点目は、今とちょっと似た話なのですが、親権についてどう対応するかということがどの国でもはっきりしているということが、日本との違いだということでして、左の2カ国はそもそも建付けがそうですし、イギリスは親権そのものには裁判所は立ち入っていないのですけれども、ただ、行政が何かをしたときに親権との関係がどうなるのかということは条文で書いてあるということです。

 次に、一時保護に対応する部分につきましては、表の下のほうの「児童の家庭からの緊急の引き離し」という欄に書きましたけれども、ここでもおそらく着目すべきは、フランスの場合に、ここはちょっと書き損ねていまして、5日間行政だけでまず介入ができるのですが、5日間行政だけの介入があった後に、使われる予定になっているのは育成扶助措置と、上の欄で言ったのと同じことにつながる建付けになっていまして、ドイツのほうでも行政が差し当たり入れるのですが、親権者が異議を述べたときにはやはり上の欄に書いてある親権喪失が発展した仕組みにつながっていくということになっているということで、親権行使の態様への裁判所の介入という根本的な仕組みを前提に、それにつながる形で一時保護的なものに対する司法関与が性質づけられているという特徴があるということです。

 最後ですけれども、親に対して直接命令をするような指導について、裁判所が命令するということが話題になっていまして、イギリスのスーパービジョン命令が時に引かれているのですけれども、ここの欄のイギリスのスーパービジョン命令というところをご覧いただきますと、少なくとも条文など仕組みを見た限りでは、親に対して何かを命ずるという仕組みにはなっておりませんで、表のなかで、日本に対応する制度はないと思われるというところの1つ上に、親の同意が得られないときはケア命令が選択肢になると書きましたとおり、少なくともこのスーパービジョン命令というのはちょっと違うもののようであります。

 親への直接の命令という観点から、この3国だけを見たときには、ドイツにおきましては保護措置の中にマル1で「少年局、行政による育成援助等の公的援助を受けるよう親に求める」という選択肢が入っておりまして、ドイツはそのようなものがあると。ただ、これも親権喪失という、親権の態様に関する介入という仕組みの中に性質づけられて、入っているというところには注意が必要なのではないかと思います。

 差し当たり以上でございまして、必要な範囲でまた必要なときに何かありましたら、御説明等させていただきたいと思います。ありがとうございました。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 、3カ国について、親権、行政等と裁判所の関係についての御説明をいただきました。

 それでは山田先生、お願いします。

山田構成員 久保野先生、ありがとうございます。

 、私はドイツ語もフランス語も読めないので、先生方がお作りくださった日本語の文献を読んで、私の理解で作ったものが61ページ以降ということになります。

 こればあくまで私の大ざっぱな意見ですけれども、一時保護の物の考え方で、行政と司法がどこまですみ分けをするかということでは、ドイツの考え方が日本では参考になるのではないかと思っていて、特に一時保護の考え方はドイツを参考にしてはいかがかというのが1点です。

 今、フランスの親権の制限の話をいただきましたけれども、英米はほとんど里親さん、フォスター・ケア(Foster Care)ですが、ドイツ、フランスは日本ほどではないものの、施設養護というのがかなり残っているわけで、、、施設の場合、プロフェッショナルが子どもを見ているということもあって、施設に入れると入れっぱなしという問題が、特にフランスでは課題になり、そういう視点では、日本の場合は、英米のようなフォスター・ケア・ドリフト(Foster Care Drift)といって、どんどん里親さんが変わってしまうという問題は少ない一方、施設入所の措置をすると、それが親権者の同意があれば18歳まで、場合によっては20歳まで続いてしまうといった、無関心という問題が日本にもあります。、児童相談所に向かってこないような親御さんの場合に、社会も親も子どもの養育環境についてネグレクト的になってしまうという問題を、日本もフランスと共通に持っているという背景もあり、親権制限の枠組みについてフランスが参考になるのではないかということです。

 そんな中で、70ページ、久保野先生もおっしゃったとおり、親権制限という視点から日本の法律は条文が書き上げられていないということがあって、その前に、68ページをご覧いただけますでしょうか。例えば第1回のときに、藤林先生が御紹介くださったリーガル・ソーシャルワーク(Legal Social Work)の考え方を私なりに理解をして、書き上げた図なのですけれども、現在の日本では、例えば子どもに緊急の危険性があるというときに、緊急一時保護をして、それが解除されると家に帰してということとか、帰せない状況であれば施設入所、里親委託ということで、原則、親権者、保護者の同意をとることになります。親権者の同意をとれなければ28条を申し立てて、施設入所、里親委託をするということで、日本の場合、28条は親権制限であるという考えから入っているというよりは、子どもに安全な生活の場を与えましょうという発想での取り扱いになっているのだと思うのです。

 、、私はついこの間までポートランドに視察に行っていたのですけれども、事務局に文句を言うわけではないのですが、70ページの表は、さらに新しいバージョンをつくっていて、そちらに差しかえてほしいとお願いしていたのですが、古いのが載っていて、オレゴン州のデータが入っていないのですけれども、いずれにしても、一時保護の段階から親権制限という形で、例えば一時保護をするという決定をすれば、監護権、オレゴン州ではペアレンタル・ライツ(Parental Rights)という概念があって、ペアレンタル・ライツが、一時保護の段階でもコストディー(Custody:監護権)はチャイルド・プロテクティブ・サービス(Child Protective Services: CPS)、児童保護局に移るとか、そのように親権制限という扱いで一時保護も考えているし、フォスター・ケアも親権制限という枠組みで捉えているし、パーマネンシー(Permanency)というのが非常に重要視されるようになってきていて、できるだけ実親子の関係を維持するけれども、それが不可能であれば、不可能だという判断は家庭裁判所や、ジュバナイル・コート(Juvenile Court:少年裁判所)がするわけですけれども、特別養子縁組、アダプション(Adoption)に持ち込むということで、その段階のときにアダプションでパーマネンシーを維持する、特別養子縁組をすることで、新たな親子関係を構築して、その子にパーマネントの環境を与えるということと並行して、親権制限のランクアップをしていくという枠組みなのです。

 話がばらばらとなって申し訳ないのですけれども、ちょっと特別養子縁組の話になってしまいますが、日本の場合、特別養子縁組だと、養親さんが申し立てなければいけないということがとても大きなハードルになっていて、実親さんが子どもを要らないと言えばすんなりいくのだけれども、そうではないときにとてもハードルが大きいということがあるのですが、例えばオレゴン州ではターミネーション・オブ・ペアレンタル・ライツ(Termination of Parental Rights)といって、親権の取り上げ、喪失、終了の宣言をジュバナイル・コート(少年裁判所)が出して、それと並行して、どの親御さん、養親さんが適切かという養親選びもしていき、並行して親権終了をした後に、アダプション(日本でいうところの特別養子縁組)を行うという枠組みが非常に系統的にできているのです。そういう形で、日本の場合は例えば、先ほど言いかけましたけれども、日本の場合、ソーシャルワークとして順を追って親権制限を強めていくという考え方ではなくて、「親が同意しなかったら28条」とか、「医療ネグレクトだったら親権停止」とか、「もう無理となったら親権喪失」とか、ばらばらに、、こういうケースはこれと、言葉は悪いですが、ある意味場当たり的に親権制限を使っているという現状があって、もうちょっと包括的に、総合的にストラテジー、戦略を持って子どもにとって最善の養育環境は何なのかということを考えていくという枠組みに、せっかくこの検討会があるのであれば、そこから考え直したほうがいいのではないかということが、私が前回申し上げたかった点です。

○吉田(恒)座長 どうもありがとうございました。

 最初に全体の枠組みについてのお考えをお示しいただきました。

 予定として、一時保護の議論をしたいので、ちょっと押していますけれども、ただ今、皆様方にお伝えしたように、まず、全体の枠組みを押さえた上で、各論点という形で進めたいと思いますので、それでは、一時保護の方の論点に入っていきたいと思います。

 先ほどの事務局からの説明、また、今のお二方の先生方の御説明を受けて、構成員の皆さん方から御意見等をお願いしたいと思います。

 では、横田先生、お願いします。

○横田構成員 今の、山田構成員からのお話と、ちょうどつながるかなと思ったので、続けてお話しさせていただきます。

 私も資料3の中に私見を意見書として提出しましたけれども、山田構成員が言われたことと関係します。

 先ほど山田構成員が、一時保護に関してはドイツのものを参考にすればよいのではないかということをおっしゃっていましたけれども、実は私の提案も、結論的に言うとドイツの考え方を参考にすればよいのではないかということです。これは意見書の中にははっきりとは書いていないのですが、結論としてはそういうことです。

 その場合に、問題となるのは、日本の一時保護の話をするときに、いろんな国がある中でなぜドイツのこの制度を参考にしないといけないかという理由です。、要するに、日本の議論をしているときに、外国法を参照する意味から確認する必要がある。そのことが意見書にはっきり書いてなかったので、今、ちょっと敷衍したいと思います。

 、ドイツの制度を参考にするということと、なぜ一時保護の司法関与を求めるかという話を絡めて説明しますけれども、、まず私の意見書では、司法関与がなぜ必要なのかという話を2つに分けています。、子どもの身体の自由、移動の自由といったものを、例えば逮捕とか勾留のときに司法関与が必要とされるのと同じように、子どもの自由の制限なのだから司法関与が必要だという考え方と、そうではなくて、子どもと親が引き離されるから、それが28条審判のときに、家庭裁判所が承認審判をするというのと同じ、それに準じて司法関与が必要だという考え方、2つあると思うのです。

 ドイツの場合はどちらの考え方かというと、後者の立場で、私も後者の立場で基本的に議論を進めるべきではないかということを書きました。、詳しい話は意見書に書いてあるので、一々繰り返しませんが、ドイツとの比較について付言すると、久保野構成員のドイツの話で、気をつけないといけないと言われた、裁判所主体という話と、行政活動に裁判所が関わっているという話を2つ分けたほうがいいという話ですが、日本の場合には民法が裁判所主体で、児童福祉法はむしろ28条の審判のように行政主体で裁判所がかかわっているという、そこが分裂しているという話があります。ですから、、ドイツの場合に基本的に裁判所主体で、、日本で言うと民法の話が発展しているということになるわけですけれども、その違いに目をつぶって大ざっぱに対比すると、参考にすべきドイツと日本の違いは、ドイツの場合には日本の28条審判に相当するもの、親権喪失と28条審判に相当するものを合わせたものがドイツ民法1,666条ですが、これを、、、ドイツだと2週間でやらないといけないのに、日本の28条審判はそうなっていない。そこが大きな違いで、その日本とドイツの大きな違いを埋めるために、ドイツと同じにするかは別として、、ある程度現在の28条審判の状況を憂慮するならば、ドイツに近づけて、28条審判が時間がかかっている部分を補うものとして、一時保護の司法関与を位置づける。今、議論しようとしている一時保護の司法関与というのは、28条審判できっちり審査する前のものと、それに準じたものとして理解する。それを軸にして考えるべきではないかということを提案しました。

 それに対して、子どもの身体の自由のほうの制限という話でいくのはちょっと厳しいのではないかということは意見書に書きましたけれども、これは省略します。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 では、藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 時間がどんどん去っていくので、早く言わないと終わってしまうのではないかと思って、一時保護のあり方について私が調べてきたことと、福岡市の児童相談所の実態調査について報告したいと思います。

 今日の場には峯本構成員がいないので、また、山本構成員もいないので、アメリカとイギリスの一時保護の仕組みについては多分実務のところで峯本さんと山本さんが詳しいので、国際的な比較については次回でもできればと思っております。、私の理解では、イギリスの一時保護は久保野先生が書かれた緊急保護の8日間とポリース・プロテクションだけではなくて、ケアオーダーを事前に裁判所に提出して行うという親子分離が最初から保護になる場合もありますし、インテリムケアオーダーという8週間の仮命令もあって、それも含めて当初の親子分離というのは両方あるのかなと。そう考えますと、保護する事前の段階からケアオーダーなり仮命令を出すという方法と、今すぐにでも保護が必要な緊急保護命令の3通りがあるのかなと思っています。

 いずれにしても、自治体、行政機関が自分たちの判断だけで保護ができないというのがイギリスの建付けであり、警察だけが3日間が限界で保護ができますけれども、3日間以内に自治体は裁判所に対して緊急保護命令ないしは仮命令を出さないといけないというのが実務上ではないかと思っています。

 それを前提に、日本で、当初親子分離するときに、どれぐらい児童相談所の負担量が増えるのか。現在、全国調査の集計がこれから始まってくると思うのですけれども、福岡市での実態を調べてきましたので、説明させていただきたいと思います。資料3の9ページをお開きいただきたいと思います。

 福岡市が全国を代表しているのかどうなのかはわからないのですけれども、調査してみて、たったこれぐらいなのだなというのが率直な印象です。4カ月間に解除した事例136例について調べました。虐待ケースは39例です。この中で不同意事例は136例中の24例です。そのうち虐待事例は21例、虐待以外の養護事例が3例で、この3例はちょっと特殊なケースですから今回の議論からは省きたいと思います。

10ページ、39例の虐待事例についての保護後の経過ですけれども、開始時に同意だったケースが18例で、結局不同意事例は4カ月間で21例です。ところが、3日目までに多くの場合には同意が得られましたので、4カ月で4例、1週間に3例がありました。その後、3例の方は2カ月たっても不同意のままで、そのうちの2件は28条まで移行してしまいました。同意した方の中の1件は、いざ措置、という段階で反対の意を表明しましたので、28条になったという経過です。

11ページ、虐待39例のうち、どの段階で一時保護の判断をしたのかということですけれども、保護当日以前に通告があって、我々が保護が必要だと事前に判断していたのは2事例です。保護当日に通告があった、要するに、よくある、朝、学校に登校してきたらあざがあったので夕方の保護になりました、というケースが圧倒的に多く、20例。警察からの身柄つき通告が17例、いわゆるポリース・プロテクションみたいなものです。

 それを下に書いております。保護当日以前に一時保護判断を行った2例のうち、1例は開始時同意、1例が不同意ということでした。

 時間がないのでまとめまで行ってしまいますけれども、12ページ、4カ月間136例のうち、、不同意事例が24事例ありました。、、一時保護の司法関与を想定した場合に、事前審査が2件です。事後審査が3日を期限とした場合に3件です。7日を期限としても、2カ月を期限としても、結局同じ2件です。3日なのか、7日なのかということによって、結局合計4件か5件かということで、福岡市の人口は150万人で、1カ月に1件程度、だいたいこんなところかなという感じがします。しかも4~5件のうち、3件は28条申し立てを行っているわけですから、児童相談所の負担量という観点からすると、同じケースを2度出すわけですから、書く内容は大きく変わりませんので、そんなにめちゃくちゃ増えるものではないかなと。峯本構成員の資料の中には、ものすごく児童相談所の負担が大きくなると書かれていましたけれども、実務上、うちは常勤の弁護士を入れているというのもありますが、事務量の負担はそんなに多くないというのがこの調査の結果です。参考にしていただければと思います。

 1点言い忘れました。実は事前審査の2件というのは非常に大きな意味がありまして、例えば保護に当たってなかなか判断に迷うケースとか、非常に難しいケースがあるのですけれども、そこを我々が一時保護、親子分離が必要と判断し、それが裁判所からオーダーとして出されることによって、安全、しかも速やかな保護が可能になるというメリットは、実務にとって非常に重要なことなのかなと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 実務上の観点からの資料、とても貴重なものかと思います。

 それでは、久保先生、お願いします。

久保構成員 全体的な話になっているようですけれども、前回からの意見のまとめの中でも、特に一時保護に司法関与することについて必要性がないという御意見はおそらくなさそうでしたので、必要である、あとは山田先生も言われたように建付の問題だろうと思いますので、具体的に、では、このようにするのはどうだろうかという案を私のほうで試案として作っています。一時保護の場合は資料3の1ページから3ページまでのところで具体的な条文に落としたところです。

 5ページ、6ページに大枠、概要を書いております。原則は、司法審査を、対象は全部一時保護については入れるということにしています。それについて、裁判については異議申立てができる。これは条文の中では保護者の方だけということになっておりますけれども、それ以外に例外として3つ、6ページに書いております。緊急保護、こちらが児相長の判断でということです。それから、今、身柄つき通告として警察からよくやってきているのがありますが、これも司法審査が必要であるということを前提にすれば、仮の保護として整理できないかと考えております。もう一つは、保護者等の申し入れとか同意があれば、司法審査は不要としております。あとは、2カ月間、司法審査を経た場合には一時保護が可能としております。それ以外、やむを得ない事情がある場合に限っては更新ができるという建付けにしております。

 以上でございます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 それでは、吉田先生、お願いします。

吉田(彩)構成員 今、久保先生のほうから、司法関与については異論のないところだと思いますというお話があったのですけれども、初回のときに申し上げたように、そこは慎重に考えるべきではないかと思っております。、今回いただいた資料ですと、今までの議論からいきなり矢印で司法関与の方向性が導き出されておりますが、、こうした記載にはちょっと違和感がございます。、今までの検討会では、十分な議論がされていないからこそ、今日の機会が設けられたということだったと思うので、初めに結論ありきのような議論の進め方については異論を申し上げたいと思っています。特に、前回のヒアリングではいろいろな児相の負担というお話もありましたので、児相の体制が十分かという観点からは、新たな司法関与の導入に異論のある方もおいでになるかと思います。

また、実際の具体的な負担の問題以前に、このまま結論ありきで議論が進められますと、初回にも申し上げたとおり、裁判所の中立性に十分な配慮がされないのではないかという懸念もございます。、実際に児福法28条の事件などを担当しておりますと、実感としまして、、、保護者の方の中には、、、、児相と裁判所の区別がきちんとついていない方も少なくないということがございます。そういった保護者の方との関係では、裁判所は中立的な機関であること、そのため、裁判所では、児相の言葉がうのみにされるわけではなく、飽くまで証拠に基づいた中立的な判断がされることなどを丁寧に説明して、裁判所の中立性に対する信頼を得た上で、手続を進めていくる必要があります。

 、、、、、、、、、こうしたことからしますと、前回、どなたかから裁判所のお墨つきがあればというお話があったのですが、例えば、一時保護のところで、裁判所が司法と行政の関係を曖昧にするような中途半端な関わり方をしてしまうと、一時保護の後に控えている児福法28条の事件とか、親権停止の事件も含めた手続全体において、保護者の方から裁判所の、中立性に疑念を持たれることになりかねず、非常にマイナスな結果になるおそれがあると思います。、

検討会においては、このような点も踏まえて、慎重に議論していただきたいと思っております。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 必ずしも一時保護の司法関与というのは、まだここでは合意というところまでは至っていないのではないかという御意見でした。

 ほかにございますか。

 杉山先生、お願いします。

○杉山構成員 杉山です。

 司法関与に関して、先ほど吉田構成員から意見がありましたように、それを認めるという方向で全員が一致しているという認識を私は持っていないですし、また、これまでの委員会の中の議論でも、司法関与のあり方について認めるべきだという意見の中でも、どんな制度にしたらいいのかという点については意見が分かれているのではないかという認識を持っております。

 今日お配りいただいた資料1の4ページ目の「目指す方向性(案)」を見ましても、これは初回のときに出てきた意見で、2カ月を超える期間、この2カ月は変わるかもしれないけれども、一定期間を超える一時保護について裁判所の承認を求めるべきだという考え方と、そうではなくて、事前とか直近の事後の承認を求めるべきだという考え方と、いろいろ並列に議論されていまして、ここだと「加えて」ということで並列で議論するという形になっているのですが、どちらをとるかによって、裁判所の審判の対象とか、用意すべき手続などが全然違ってくるのではないかと思います。

 前者の一定期間を超える一時保護については裁判所の承認が必要だという考え方をとるのであれば、裁判所はそれまでになされた一時保護については審査せず、恐らく行政訴訟も訴えの利益などなくなってくるかもしれませんが、、これから保護を継続すべきかどうかを審理判断すれば足りるということになりますし、事前とか事後の一時保護を考えるのであれば、これまでにとか、まさにこれから児童相談所がしようとしている一時保護について裁判所がお墨つきを与えるべきかどうかという話になります。、後者の場合には、今の一時保護の要件である「必要であると認める場合」について、要件を精緻化していく必要性もありますし、先ほど児童相談所の調査の、事務負担は増えないというお話はありましたが、裁判所に提出すべき資料が必要ですので、相談所の調査権限を充実させていく必要性も出てきます。前者の場合には要件の精緻化についてはそこまで慎重になる必要性はないような気もいたしますし、事前承認、事後承認の場合にも、誰が承認を求めるか、児童相談所なのか、あるいは親権者のほうで不服申立てという手続をとるのかということについても十分に詰められていないような気がいたします。、全体の方向性がどちらに向かっているかという問題があることと、どの制度をとるかによって、全然手続が違ってくるという点の認識が共有できればいいと思っております。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 予定の時間を大分過ぎて、ほかにも論点がたくさんあるので、一時保護をここで続けていきますとほかを議論する時間はなくなりますので、いろいろおありかと思います。、また機会があるかと思いますので、一時保護に関しては一応ここまでという形にさせていただきたいと思います。申しわけありません。

 続きまして、面会通信制限、接近禁止命令ですね。先ほどお話がありましたが、この点に関しての御意見をいただければと思いますが、いかがでしょうか。

 お願いします。

○山田構成員 大事ではない論点だとは言わないのですけれども、一時保護の枠が決まらないのに面会通信制限、接近禁止命令という議論が成立するのでしょうか。

吉田(恒)座長 この点も含めてまた面会通信そのものについてもいかがでしょうか。

 久保野先生、お願いします。

久保野構成員 面会通信という事柄は、前提として、先ほど外国法の紹介をさせていただきましたけれども、外国のあり方がそのまま参考になるということはないと思うのですが、ただ、先ほど見た3カ国などを見たときにわかるのは、面会通信というものは極端に言えば親権を喪失させるようなときでさえ、もしかしたら残さなくてはいけないのではないかという問題として捉えられている大事な核となる事柄だと思います。その観点からいきますと、現在、司法関与なしにできているということは、確かにどうかという問題でもあると思われることなのですが、他面で、この問題は、まさに親権の停止ですとか喪失、親権の態様についてどう司法が関わるかという問題とセットでないと考えようがない問題だと思いまして、今のような論点別の枠組みの中で、面会通信制限について、現在行っているけれども、司法関与があり得ないかという形で取り上げることはしないほうがいいと考えます。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 面会通信については、民法の改正で面会交流が入りましたけれども、家庭裁判所の実務のほうも大分変わっていると聞いております。それから、面会交流の権利の本質論から見ても、この点に関しては児童福祉、民法両方の観点からの議論も必要かと思いますので、大変貴重な御意見かと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。

 では、横田先生、お願いします。

横田構成員 面会通信に裁判所がという話ですけれども、ここでもやはり行政訴訟との関係を考える必要があって、というのは、現状は裁判所がかかわらないということは、逆に言うと権利救済としては現状の面会通信制限に対しては行政訴訟の可能性があるかもしれない。だけれども、逆に、司法関与を入れることによって、行政訴訟はどうなるのだろうということを考えないといけないわけですね。

 先ほど参考資料1でDV法の保護命令の説明がありましたけれども、これは私の個人的な見解ですが、うかつに参考にしてはいけないと思っています。というのは、DV法の保護命令は若干ほかの国とは違う、特殊な日本的な仕組みになっていて、非常に憲法上問題があると私は考えています。それはなぜかというと、むしろ司法関与がないほうが事後的に行政訴訟によって憲法32条の裁判を受ける権利の観点から望ましいという話があるので、うかつな司法関与を入れると逆によくないということがあり、ここは慎重に考える必要があるということを述べておきます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 この点は前の改正のときも議論があったはずなのですね。やはりDV法と虐待の場合、同列でいいかどうかという議論がありましたので、そちらもまた振り返る必要があろうかと思います。

 今、横田先生がお話になったように、常に行政訴訟との関係、一時保護もそうですね。そういうところの整理というのも必要かと思います。

 久保先生、お願いします。

久保構成員 面会通信制限が行政処分としてなされる場合には、不服申し立ての対象になって、行政訴訟とか審査請求の対象になってくると思うのですけれども、実務のほうでは、一時保護されて、面会通信を制限する場合にはほとんど指導としてなされる、事実上の制限としてなされています。それについては、保護者のほうが強力に会わせろと言えば、本来は会わせなければいけないところもあるのですけれども、児相のほうがそこら辺を半強制的に押さえているところがあるのではなかろうかと思います。

 そうすると、今のままですと、何ら不服審査の対象にもならず、裁判所の対象にもならずいっているところがあると思いますので、ここはぜひ司法審査を入れてきっちりと整理していくことが必要かなと思います。

吉田(恒)座長 わかりました。

 ほかによろしいですか。

 この点も深めていけばいろいろあるところかと思います。

 吉田先生、お願いします。

吉田(彩)構成員 この点についても、実情として今、面会通信制限とか、接近禁止をどの場合について広げていくのか。それについてはどのような場面が想定されているのかということをもう少し具体的に詰めたほうがいいのではないかと思います。

 実際に、現行制度では、年間数十件ということなので、現場として必要性があるという場面がどの程度あるのだろうかというところについて、もう少し議論をしていただいたらと思います。

吉田(恒)座長 ただいまの御意見に関しまして、事務局のほうで、これは児童相談所への調査対象に入っていますね。そこで実態を把握しようということだったので、それが出たところで今の御質問に対しては対応できるかと思います。

 よろしいでしょうか。

 ありがとうございます。

 それでは、次に親権停止制度の活用ということで、28条審判とのすみ分けというのが、親権停止ができるときもずっとその議論は続いております。今回、またその点に関しまして、これをどう使っていくかというところかと思います。先ほどの事務局の説明でも、運営指針の見直しという意見も出されているところです。

 この件に関しまして、御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

 山田先生、お願いします。

山田構成員 山田の資料の70ページ、先ほども言ったことの繰り返しですが、実は専門委員会でもこのあたりが議論になったことがあって、要件としては28条も親権停止もあまり変わらないので、中途半端な28条をやめて、親権停止に取って代わらせたらどうかという意見もあったのです。、実態を見てきたことがあるのはアメリカだけですけれども、海外の文献とかで見ていくと、コストディー(Custody:監護権)と居所指定権に当たるようなところだけとりあえず制限をして、その後、いろんな親権の全面的な一時停止を使って、それでも改善しない場合に親権を取り上げるというステップアップをとっている国が、特に実体法を使っている大陸のほうは多いのではないかと思うのです。そういうことを考えると、28条を取りやめて親権停止に取って代えるというよりは、部分制限的、つまり、22年、23年の議論のときに部分制限というのは非常に定義が難しいから、結局、部分制限はやめて一時停止という制度を新設するというところで決まったのだと私は理解しているのですけれども、実質的に見ると、28条というのは親権の考え方からいえば部分制限に当たるわけで、位置づけを変えて、先ほど言ったとおり、親がどう対応してくるかということ、親にチャンスを与えながら親子の再統合ができるかどうかを探りつつ、それが難しければ親権制限を強化していくという、また繰り返しになりますが、リーガル・ソーシャルワークの考え方に転換するということが今、求められているのではないかと思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 久保野先生、お願いします。

久保野構成員 親権停止がもしかすると23年改正のときに期待されたほど使われていないのではないかということがあるのだと思うので、調査項目に既に入っているとは思いますけれども、後の論点ともかかわりますが、親に対する直接の命令というものが必要な場合があるのだと言われている場面において、親権停止が使われないとしたらなぜなのか、何が足りないのかというあたりのことが大事なように思います。

28条は事実上一部停止であって、その後に親権停止が控えているという捉え方はあり得ると思うのですけれども、先ほど山田構成員の左と右の図で言うと、日本も右があるのだとお話ししましたとおり、ちょっと親権停止のほうの工夫によってもしかしたら対応できるものもあり得るという、そういう筋があり得るというところは一旦意見させていただきます。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 この点に関して、28条と親権停止で、要はソーシャルワークをしていく上で親権停止が先行してという場合に、ソーシャルワーク上支障があるかどうかというところが一つ大きな論点かと思うのです。そうした事例や何かが上がってくれば、やはりそこは親権停止でしょうと。ただ、もう一方でいえば、28条でまず子どもの身柄を確保して安全、親との調整をしていけば親権停止の必要もないだろうということがありますから、ソーシャルワークとの兼ね合いはとても大きいと思うのです。そういう点で、山田先生の御意見というのがとても参考になろうかと思います。

 ただ、法律論から見て、実際に28条が本当に部分制限としての意味を持つのかと、これはずっと議論しているところで、まだ私自身は明確に理解できていないところです。

 久保野先生、お願いいたします。

久保野構成員 重ねてになって申しわけありませんが、親権停止制度の活用については、長期的に見た立法論としましては、親権停止の効果が従来の形での未成年後見というものにとどまることがよいのかという問題が、23年改正で恐らくそこまでいかなかったのだと思いますので、28条との組み合わせの中で、親権停止についても例えば停止した後に児福法上の措置と何か絡めていくといったこともあり得ると思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 23年の議論を私は全部よく把握しているわけではないのですけれども、当時の親権停止の必要性というのは、例えば手術であるとか医療を行っていくとか、あるいは教育であるとか、そういった保障が念頭にあったと思うのですが、今の28条で議論しているのは、いかに子どもに安定した家庭を保障していくのか。パーマネントな実親家庭、親族家庭、または養子縁組家庭を保障していくのかというプロセスの中でどのように裁判所が関与しながら親権の停止または喪失、また、もう一つその先のこの後の議論にあるような特別養子縁組が可能な状況に持っていくのかという文脈で議論することが必要ではないかなと思います。

山田構成員 1点だけ。先ほどの面会制限と接近禁止命令のことを私は否定的に言ったのですけれども、ただ、例えば今言った28条と親権停止をリーガル・ソーシャルワーク的にステップアップで使っていくとなると、どうしても面会制限を要求してきたら親権停止に持ち込めば、親権停止は親権の全面的な一時停止になるわけですから、面会通信制限はかけられるということになるのではないかと思うのですが、その理解はいかがでしょうか。そうではないのですか。

○久保構成員 父母との面会交流なので、親権者との面会交流ではないと思うので、必ずしも親権停止したから、それで制限できるとは私は考えていないです。

吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 もう一つは、先ほど言ったように、親権を奪われてさえ残るものが面会交流なのではないかという見方もありまして、直ちにとはならないというのが一つです。ただ、そこは先ほど親権停止の中身について精査あるいは見直しの可能性があると申し上げたとおり、親権停止というものをもし28条と絡めながら、今後組み直していくのであれば、その中で面会交流という重要なものをどういう効果としてこの制度に組み込んでいくかという意味で、おっしゃるような方向もあり得るし、もしかすると別立てで、親権停止と絡めつつ別のものを設けるなどがあり得るのではないかと思います。

 もう一点、先ほどの23年改正の停止導入の趣旨については、確かにいろいろな見方があるとは思いますけれども、少なくとも議論の過程の中では、これは本来2年間停止しているうちにどうやって親にアプローチしていって、どうやって再統合を図っていくかということを考慮しながら本来やっていくべきものであるといった議論も相当程度されておりまして、必ずしも医療ネグレクト等の問題について単発的にかかわるためという捉え方はされていなかったというところは指摘させてください。

○山田構成員 1点だけ。実態調査の結果が出てこないと断定的には申し上げられないのですけれども、実務者の方から聞くお話では、親権停止だと、戸籍に親権停止が記載されるということが非常に使いづらい。なので、28条というのが残っていないと困るという意見もあるので、親権停止のときに戸籍に残るという部分を解消できれば、確かに28条はなくても親権停止で取って代えられるのではないかというのも一理あると思います。

吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 床谷先生、お願いします。

床谷構成員 先ほど久保野先生もおっしゃったのですけれども、親権の場合はあくまで子どもと親権者との間の関係をどう整理するかという問題で、児福法の28条は子どもを先にどこへ持っていくかというときのチェックということなので、役割が違うのだろうと思うのです。その点は意識しておきたいところだと思うのです。

 もう一つ、これは実情を聞きたいのですけれども、28条の場合は保護者が未成年後見人の場合も含むことになっていて、親権停止の場合はその後未成年後見人というステップのところだと思うのですが、実際に保護者が未成年後見人に行き、ここからさらに28条のような要件を満たして措置がとられるという事実があるのかどうか、これは実際のほうをお聞きしたいところです。

○吉田(恒)座長 事務局、いかがでしょうか。まだそういう事例までの把握は。

竹内虐待防止対策推進室長 今、にわかにお答えできるだけの材料を持ち合わせておりませんので、よく確認させていただいて、お答えさせていただければと思います。

吉田(恒)座長 ほかにございますでしょうか。この点は本当に民法と児童福祉法が微妙に絡むところであり、先ほども申し上げましたような面会交流権の本質論にもかかわってきますので、それを児童福祉法という法律でどこまでコントロールできるのかという話にもなろうかと思います。

 まだまだあろうかと思いますけれども、それでは、続きまして、裁判所命令、要は児童相談所からの指導についての裁判所の命令で親に対応しようという趣旨かと思います。この点について、外国法の例なども先ほどお話しいただきましたが、その点も含めて御意見等いただければと思います。よろしくお願いします。

 この点も一応児童相談所の調査の対象として入っているというところでしたかね。

竹内虐待防止対策推進室長 当然、保護者に対して直接指導できるような仕組みは今、ございませんので、あくまでも都道府県知事による勧告であるとか、裁判所からの児相に対しての勧告といったものについての調査は、現行の規定に基づく運用がどうなっているかというのは把握させていただくようなことになっておりますが、特に新しくつくろうという仕組みについて直接的に意見を伺うという調査にはなってございません。

吉田(恒)座長 裁判所の命令で、現在の運用で、裁判所から都道府県知事、児相に対する勧告という制度という建付けになっておりますけれども、事実上その場で親に対して裁判所から何らかの意見を述べられることがあるということも聞いておりますが、このあたり、吉田先生、いかがでしょうか。裁判所での運用というのでしょうか。勧告制度の。

吉田(彩)構成員 そもそも児福法28条の事件の件数は多くなく、その中で必要に応じて勧告の制度が使われているということですので、それが実際にどういう運用、になっているかという点については、私の経験ではちょっとお答えできないですね。

○吉田(恒)座長 お願いします。

石井最高裁判所事務総局家庭局第二課長 若干補足させていただきますと、現状では、御説明があったとおり、都道府県に対して勧告することができるという制度でございますけれども、実際にそういう勧告をする場面においては、保護者に対しても、都道府県に対して勧告をした内容について書面を送付するという形で、事実上その内容を伝えているという運用をされている例があると承知しております。

○吉田(恒)座長 実際に親のほうがどうかというところがここでまた論点になろうかと思います。どうもありがとうございました。

 裁判所命令に関しまして、ほかに意見はございますか。

○山田構成員 久保野構成員に教えていただきたいのですが、先ほどのお話だとイギリスでは裁判所が保護者に対して直接、治療命令みたいなものを出すことはないというお話だったのです。私がポートランドに行ってきて、裁判官から直接聞いたわけではなくて、チャイルド・ウエルフェア・アトーニー(Child Welfare Attorney)といって、ジュバナイル・コートの中の検察官事務所にいるディペンデンシー・ケース(Dependency Case:保護・扶養事件)ですね。子どもの養育環境の審査をするジュバナイル・コートの分野の検察官から聞いた話なので、英語で聞いているから誤解があるかもしれないのですけれども、例えばドラッグ・アビューザー(Drug Abuser)であれば「ドラッグの離脱プログラムを受けなさい」、衝動性のコントロールの悪い親であれば「アンガー・マネジメント(Anger Managemant)のケアを受けなさい」とか、それぞれの家庭が持っている課題に対してプログラムを受講して、その結果を判断しながら再統合するのか、諦めてターミネーション・オブ・ペアレンタル・ライツ(Termination of Parental Rights)に持ち込んでアダプション(Adoption)の方向に行くのかというのを検討していると検察官は言っていたのです。その話を聞いた限りでは、そこにこういうプログラムを受けなさいというやりとりをするのは裁判官なのではないかと私は理解をしたのですけれども、そうではないということでしょうか。

○吉田(恒)座長 久保野先生、お願いします。

○久保野構成員 今のはアメリカの例ということですね。

 イギリスも平成22年の報告書ベースではありますけれども、少なくともその段階では。イギリスは具体的に親に対してどうアプローチするかというところはケースワークの専門家、行政の児童福祉がやるべきであって、細かいところに裁判所が立ち入るべきではないという原則がとられているというのがありまして、恐らくその関係なのではないかとは思うのですが、親に対して裁判所が直接具体的な何かをというのは少なくともここに挙げた枠組みの中ではないようでありました。

 別途、私人間関係で紛争になったときに、こういうことをしなさいという仕組みがあるので、もしかするとそちらを使って事実上似たようなことはもしかしたらできなくはないかもしれませんが、児童保護の文脈では、ここに挙げた限りでは、少なくともスーパービジョン命令はそういうものではないようだというのが、条文や仕組みからは見られまして、もう少しイギリスを詳しく、むしろソーシャルワークのほうから研究されている側面があるかと思いますので、補充をお願いします。

○吉田(恒)座長 藤林先生、お願いします。

○藤林構成員 ここはとても重要な議論で、どのような裁判所命令をイメージしていくのかというのは、峯本構成員と山本構成員がいないと具体的な議論ができないのですが、言われるように、イギリスの場合には、オーダーの中身は自治体のほうがつくって、それに対して裁判所が判断していく、またはその後の経過を見ていくという建付けになっていると思いますけれども、それはまた次回、峯本先生から。

吉田(恒)座長 そうですね。

 まだ不確実な部分もありますので。

 では、横田先生、お願いします。

横田構成員 いろいろ論点が出て、これまでの論点もそうですけれども、なかなかいろいろな意見が出てきてまとまらないということがあるのですが、一つ一つまとまるものというか整理できるものは整理していったほうがいいと思います。、今の指導の話ですが、これは具体的に裁判所がどういう指導をという話であるにせよ、私の理解では何が、論点になるかというと、よく言われている行政と司法の役割分担ということに関わる点ではないかと思います。、これは一番最初に山田構成員が言われた、久保野構成員も言われたところですけれども、民法と児童福祉法との基本的な建付けの違いの整理をどう考えるかということす。、具体的に言うと、児童福祉法というのは行政活動に対して裁判所がチェックをやる。民法の場合には親権喪失なり一時停止で、裁判所が、もちろん申し立てを契機として何らか具体的なことを述べるということで、そこの違いがあります。、したがって、裁判所の指導という話を児童福祉法の頭の中で考えてしまうと、28条との建付けの違いが際立ってしまうのですが、むしろ民法の頭で考えるならば、そんなに変なことではない。ただし、今、これを議論しているのは児童福祉法なので、そこをどう考えるかです。

 最初に山田構成員が言われました、全体の構成を考えなければいけないということに関わってきますが、将来的に、私の個人的な見解としては、これも山田構成員が言われましたけれども、一つの物差しで、段階づけてということにしていけばいいと思っています。、今のところなかなかそこまで即座にたどり着けませんけれども、将来のことを考えると、今のところは児童福祉法にはちょっと変なのだけれども、民法的なものとして指導の話を入れてしまうか、それはやはり今の制度の素地には合わないからやめましょうという、そこが多分この問題のポイントではないかと思っているということで、一応議論の個人的な整理の話をしました。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 事務局のほうはございますか。

竹内虐待防止対策推進室長 時間の関係があるのですけれども、8ページの「28条措置に係る裁判所の承認について」という論点のところが1点飛んだように思いましたので。

吉田(恒)座長 失礼しました。28条措置の裁判所の承認のあり方で、要はその中身を具体的に指示するかどうかというお話ですね。

○山田構成員 この部分はこれでいいのではないですか。別にここにこだわっている人は、多分、単独で指示されてしまうとやりようがないので、複数で併記してもらえれば児童相談所としてもいろいろな可能性、そんなに箱がいっぱいあるわけではないので、そうしてもらわないと実務が動かないということだと思いますから。

○吉田(恒)座長 28条措置に係る裁判所の承認、要は、これで特定する必要はないということでよろしいのではないかというのが山田先生の御意見ですね。

山田構成員 もしくは、特定するのであれば複数併記にしていただくということです。

吉田(恒)座長 では、横田先生、お願いします。

横田構成員 論点を消していきたいので、この論点はこれで私もいいと思っているのです。というのは、これは現状やっている実務で、措置の内容の特定という話をこの審査から外してしまうとどうなるかというと、行政訴訟で必ず審査対象になってしまって、行政訴訟というのは取消訴訟ならまだしも、差止訴訟まで考えると、理論的に収拾がつかなくなってしまうので、余計なことはやめたほうがいいと思います。

吉田(恒)座長 余計なことはやめたほうがいいというのは、どちらをやめたほうが。

○横田構成員 余計なことというのは、つまり現状のままでよいと。結論としては山田構成員と同じです。家裁の実務は種別の話をチェックしているということですけれども、その状況でフレキシブルにやるのであるならば、申し立ての段階で言えるものは言っておくということで、そういう現状の対応で十分ではないかということにして、この話はおしまいにしたほうがいいのではないかと思います。

吉田(恒)座長 わかりました。

 要は、包括的な承認という方法はとらないで、複数の措置のという今の実務でよろしいのではないかというのが横田先生の御意見ですね。

横田構成員 そうです。

吉田(恒)座長 この点いかがでしょうか。

 久保先生、お願いします。

久保構成員 福岡市でもほとんど併記して認めていただいているのですけれども、複数挙げたときに、これはどうなのだという、あまりせめられると、児相のほうではだんだん絞ってきて、結局1個ずつしか挙げられないとか、そのようになってくるので、裁判所のほうでそこら辺はある程度幅を持った判断をしていただけるといいのかなと思います。特定しないのではなくて、特定はするけれども、そこをあまりぎりぎり詰めていって、これは必要ないのではないかというところまで行かれると、ちょっと児相としては難しくなるのかなと思います。

吉田(恒)座長 今の考えられる対応としては、運営指針等の記述の方法として複数併記して申し立てをするという形を明確にしてはどうかというのが1つの(案)ですね。

○竹内虐待防止対策推進室長 現行、そのような取り扱いがなされておりますので、改めてそうした取り扱いをきちんと周知するという対応を考えております。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 一応ここでは皆さんそういう御理解ということで、よろしいですね。

 1つ飛ばしてしまいまして、申しわけありませんでした。

 そのほか、ここで一応司法関与の話はよろしいでしょうか。

 全体として、司法関与について。

山田構成員 1点だけ。

 一時保護2カ月というのが先走っているのがとても気になって、例えば「今回の児童福祉法改正で、目指すところはここだけれども、とりあえず法文にできるのはここだから、ここまで改正しました」という、先が見えた形ならいいのですけれども、2カ月と決めてしまうと延々2カ月が一人歩きして変えられなくなってしまうのではないでしょうか。例えば「将来的には緊急保護は後づけでいいけれども、1週間以内に司法審査とか、ドイツのような、反論があったら司法審査とか、何か枠組みを将来的に持っていくけれども、今、実務上大変だから2カ月」というのならわかるのですが、最初に2カ月というラインを引かれることに対しては極めて違和感というか、強い懸念というか、はっきり言って反対です。

吉田(恒)座長 わかりました。

 これは一つの目安として2カ月とありますので、それが出てきたのだろうと思いますけれども、必ずしもそれにこだわる必要はないだろうというのが。

山田構成員 こだわる必要がないではなくて、2カ月という児童福祉審議会での審査のこれをいきなりここに持ち込んでくるのは、今までそういう議論があったならまだしも、唐突だと思います。

吉田(恒)座長 わかりました。

 久保先生、お願いします。

久保構成員 先ほど私が一時保護には司法審査が必要だと皆さん思っているという誤解をちょっと受けているのですけれども、理念として必要だということは皆さん合意しているのではないかという趣旨で言っただけで、事実上は慎重にすべきだという意見はわかりますということです。

吉田(恒)座長 そういう御趣旨はだということですね。

 それでは、大分司法関与のほうに時間を割いてしまいましたけれども、以上で、今日のところの司法関与の意見交換は閉じて、次に特別養子縁組の利用促進に移りたいと思います。

 まずは、事務局から利用促進に関する資料についての説明をお願いします。

林補佐 家庭福祉課の林でございます。

 特別養子縁組の利用促進に関係する資料といたしまして、お手元の資料2-1、2-2について御説明させていただきます。

 資料2-1につきましては、6つの論点ごとに今年の3月に取りまとめられた専門委員会の報告の関係部分の抜粋と、これまで2回の検討会における主な御意見を事務局でまとめるとともに「今後の対応方針(案)」として、今後御議論いただく上での考え方(案)をお示しさせていただいている資料でございます。十分に御議論いただいていない論点もございますが、今後御議論いただく上で必要と考える対応方針を事務局のほうで(案)という形でお示しさせていただいております。

 論点ごとに説明いたします。

 資料2-1の1ページ目「子どもの年齢について」は、専門委員会の報告において、原則6歳未満とされている現行の年齢制限について、子どもに永続的な家庭を保障するという視点に立てば、児童福祉法が対象とする全ての年齢の子どもが特別養子縁組の対象となるよう、年齢制限を見直すべきであるとの個別意見を踏まえつつ、関連する制度の見直しに関し、関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始するべきであるとされております。

 2ページ目、この報告とこれまでの御意見を踏まえまして「今後の対応方針(案)」として、特別養子縁組の年齢制限(6歳未満)について、年齢引き上げの必要性に関する実態調査を実施し、社会的養育の必要性との関係で、児童福祉の観点からどのような見直しが適当か検討すると記載させていただいております。

 3ページ目の「審判の申立権について」は、専門委員会の報告において、現行の手続では、特別養子縁組を成立させる審判の申し立ては養親のみしかできず、父母の同意がない場合、後日、父母からの不当な攻撃や要求のおそれを否定できないため、養親が申し立てる際の心理的負担は極めて大きい。このため、実親において養育することが難しい子どもについて、特別養子縁組の手続に移行できず、社会的養護に留まる事例が少なくない。そこで、現行の手続を、特別養子縁組候補児の適格性を判断する手続と、特定の養親候補者との間の養子縁組の適否を判断する手続に分け、前者について児童相談所長に申立権を付与するべきであるとの個別意見を踏まえ、関連する制度の見直しに関し、関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始するべきであるとされています。

 4ページ、この報告とこれまでの御意見を踏まえまして「今後の対応方針(案)」として、実親の同意をとるのに苦労した実例や、実親の同意をとれなかった実例等の収集・分析を行い、児童福祉の観点から、実親から同意を得る手続や特別養子縁組に係る審判手続、これらに関する運用のあり方等を検討すると記載させていただいております。

 5ページ目の「成立要件について」は、専門委員会の報告において、民法第817条の7は、特別養子縁組の成立要件を「父母による養子となる者の監護が著しく困難又は不適当であることその他特別の事情がある場合において、子の利益のため特に必要があると認めるとき」としています。しかし、要件が厳しすぎるなどの理由から現実的に機能しておらず、子どもの永続的な家庭の保障という観点からはほど遠いとの指摘がある。そこで、特別養子縁組が子どもの永続的な家庭を保障するという観点から、現実に機能するように、前記要件を緩和するなど子どもの永続的家庭保障を重視した内容に見直すべきであるとの個別意見を踏まえつつ、関連する制度の見直しに関して関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始するべきであるとされています。

 6ページ目、この報告とこれまでの御意見を踏まえまして、「今後の対応方針(案)」として特別養子縁組の成立に関して問題が生じた実例等を収集・分析し、児童福祉の観点から、実父母の同意、子の利益のための特別の必要性の要件やこれらに関する運用のあり方等を検討すると記載させていただいております。

 7ページ目「子どもの出自を知る権利について」は、専門委員会報告において、自らの出自を知ることは、人が成長していく上で重要な過程であり、権利性も認められる。特別養子縁組が成立した後も、できる限り自らの出自を知る権利を保障することは、子どもの福祉を図る上で極めて重要である。そこで、特別養子となった子どもが、将来、同養子縁組に至った事情等を知ることができるようにするために、行政機関が保有する記録の保管のあり方、保存期間、子どもが当該記録にアクセスする仕組みを明確にするべきであるとの個別意見を踏まえつつ、関連する制度の見直しに関し、関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始するべきであるとされています。

 8ページ目、この報告とこれまでの御意見を踏まえまして、「今後の対応方針(案)」として、特別養子となった子どもが自らの出自を知るための仕組みづくりに向けて、実務的な課題を明らかにした上で、児童福祉の観点から対応等を検討する。仕組みづくりを検討するに当たっては、1実施機関、2情報の種類、3記録の保管のあり方、4記録の保存期間、5情報の提供方法等についてどうするか考慮する必要があると考えております。このように記載させていただいております。

 9ページ目「養子縁組成立後の養親や子どもに対する支援について」は、専門委員会報告において、現在、特別養子縁組が成立した後は、当該養親子家庭に対する特別の支援は準備されておらず、実親子家庭と同様の支援しか想定されていない。養子縁組成立後の養親や子どもに対する支援は非常に重要であり、支援を行うための仕組みについて、検討すべきであるとの個別意見を踏まえつつ、関連する制度の見直しに関し、関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始すべきであるとされています。

 この報告とこれまでの御意見を踏まえまして「今後の対応方針(案)」として養子縁組成立後の養親や子どもに対する支援の仕組みについて、児童福祉の観点から、どのような内容にすることが適当か検討すると記載させていただいております。

10ページ目「養子縁組の民間あっせん団体に対する規制等について」は、専門委員会の報告において、養子縁組に関する民間のあっせん団体に対する規制のあり方(許認可のあり方や監督機関のあり方を含む)、当該団体の事業内容について具体的な検討をできるだけ速やかに行うべきであるとの個別意見を踏まえつつ、関連する制度の見直しに関し、関係機関と調整の上、可及的速やかに検討を開始するべきであるとされています。

 民間あっせん団体に対する規制については、民間事業者に対する許可制等の導入や業務の適正な運営を確保するための規制等を内容とする議員立法が2本、先の通常国会に提出されまして、現在、継続審議中となっております。これを「国会の動き」として記載させていただいております。

11ページ目以降「その他全般的なご意見」を記載させていただいております。

 続きまして、資料2-2をご覧いただければと思います。前回の検討会で特別養子に関係する資料をお示しさせていただきましたが、こうした既存の資料だけでは議論を行うのに必要な情報が不足していること、先ほど御説明した資料2-1の今後の対応方針(案)にありますように、実態把握を実施することを書かせていただいていることから、各児童相談所、民間のあっせん団体に調査を行うこととしたいと考えております。具体的な事務局(案)としてたたき台を課題ごとに把握する項目を書かせていただいております。

 「子どもの年齢」についてでございますが、特別養子縁組の養子となる者等の年齢要件を引き上げる必要があると考えられる実例及び6歳以上の普通養子縁組の実例の収集・分析を行うとしています。

 「審判の申立権」については、特別養子縁組の審判申し立てに係る実親の同意をとる際に困難だった実例等の収集・分析を行うとしています。

 「成立要件」については、特別養子縁組の成立に関し、成立要件に関係して問題が生じた実例等の収集・分析を行うとしています。

 「出自を知る権利」については、養子が出自を知るために現在行われていること、仕組みづくりに向けた課題の収集・分析を行うとしています。

 「養親、養子への支援」については、特別養子縁組成立後の養親、養子に対する現在行われている支援や、求められる支援に関する現場の実例及び意見について収集・分析を行うとしています。

 調査期間につきましては、実態把握に要する時間が本検討会では非常に限られているということもありまして、原則3年間とさせていただいております。

 特別養子縁組の利用促進に関する資料の説明は以上のとおりとなります。よろしくお願いいたします。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 ただいま事務局から説明がありましたけれども、特別養子縁組に関する各論点について、大変時間が短くなりましたが、御意見等いただければと思います。

 お手元の資料3ですけれども、各構成員の先生方から資料の提出をいただいております。御発言されるときにはその資料についても言及していただければと思います。

 今、説明にありました資料2-2でありますけれども、時間の関係もありますので、把握すべき事項等について御意見がございましたら、本検討会の終了後、事務局へ御意見をお出しいただければと思います。事務局のほうでいただいた御意見を踏まえて詳細な調査票案を作成して、次回お示ししたいと思います。

 それでは、特別養子に関しましては、個々の論点ごとにということではなく、全体に関して御意見をいただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、藤林先生、お願いいたします。

○藤林構成員 たくさんの資料を準備してきましたので、短い時間ではありますけれども、ポイントだけ説明させていただきたいと思います。

 そもそもなぜ特別養子縁組の利用促進が重要なのかということについて、現状、どうなっているのかということを中心にお話をしていこうと思っております。

13ページをお開きいただきまして、親子分離後の養護児童の現状ということで、冒頭にも言いましたように、長期の措置児童がたくさんいて、全然家庭で養育された経験がないまま18歳以上になっている子どもが多数いるというのが非常に大きな事実であり、しかも、措置解除時点で永続的な家庭環境を失っている子どもがたくさんいるということです。リーガルパーマネンシーがある場合とない場合とで非常に大きな、子どもの精神的な安定にしても、その後の自立においても大きな差があるということは感じているところです。、リーガルパーマネンシーの有無によるエビデンスが日本の場合はないのが残念ではありますけれども、こういう現状があります。

 パーマネンシーの考え方については省きます。

 具体的なデータですが、15ページ、16ページに、厚生労働省のデータに基づいて書いておりますが、15ページには5年以上施設措置が1万人以上であるとか、16ページ、交流がないままとどまっている児童が1万人以上であるとか、16ページの下の段には「自立まで現在のまま」、要するに、18歳になるまでとどまる児童、分母が3万数千人のうちの2万人ということで、非常に多くの子どもがそのまま施設または里親委託で過ごしている。

リーガルなパーマネンシーを失ったまま大人になっている子どもが日本の場合には非常に多いというのが特徴ではないかと思います。

17ページ、上のグラフは我々が、リーガルパーマネンシーが安定していない子どもが非常にその後不安定な状況の中で社会的な自立を強いられている現状の中で、児童相談所の意識が大分変わりまして、平成23年ぐらいから特別養子縁組成立に積極的に取り組んできて、やっと年間2~3件が6件、8件になりましたというところです。ですから、まだこのようなパーマネンシーを意識した児童相談所はそんなに多くないのではないか。これは林先生の調査結果にもあるわけなのですが、パーマネンシーを意識していない児童相談所に調査してもあまり答えが出てこないのではないかという危惧がありますけれども、それは後で話します。

17ページの下には限界事例ということで、前回、お話をいたしました。

18ページに限界事例の中で課題として、特にお話ししたいのは1番目と2番目なのですけれども、養親候補者の方が申し立てるという心理的な負担というのは、我々のところの里親担当者からしますと、家裁で認められるかどうかわからないケースを委託して、養親が申し立てるという、こんな不安定な形で縁組里親さんに委託はできないというのが里親担当者の意見です。ドラマではありませんけれども、実際に実親さんが奪い返しに来るという事態が生じた場合に、子どものダメージ、また、養親さんのダメージははかりしれないものなので、我々はこのような同意が不確定なケース、また、虐待ケースに対して養子縁組への移行は到底できないというのが現状です。

 そのような養親が申し立てることに対する負担とか、引き裂かれるような事態を避けるために、イギリスではプレースメントオーダーという制度があって、その中で行政が申し立てる制度があるということをここに書いておりますので、訳しておりますので参考にしていただければと思います。

 ただ、何が何でも養子縁組ということでは決してない。当然、イギリスでもアメリカでもそうなのですけれども、実親家庭の復帰に向けて最大限の努力をしていく。そのために裁判所の関与が必要ということでもあるのですけれども、最大限の努力をして、または親族への引き取りも含めて、最大限の努力をしてもなおかつそれがかなわない場合に、プレースメントオーダーを請求していくということが、この中にも書いております。、それが現状の児童相談所はどこまでやっているのかという課題もあるかもしれませんけれども、このような制度を保障していくことで、リーガルパーマネンシーがもっと多くの子どもに保障できるのではないかと思っています。

21ページ、事務局(案)で示されたような、実際に年齢制限にかかわるような子どもは何人いるのか、といったことを我々は昨年11月段階で調査を行いまして、やっと最近まとまりましたので、ここに書いております。

22ページのグラフを見ていただきますと、児童養護施設に入所した274人のうちの76名が乳児院から継続して入所しているという実態は非常に心が痛みます。

23ページ、やはり実務の経験で思っていたところなのですけれども、グラフにしてみますと確かにそうだなということが明らかになったのですが、3年を超えますと、実親家庭への家庭引き取りががくんと減りまして、3年を超えた子どもの64%はそのまま18歳まで長く施設または里親委託ということで、長い施設入所になってしまうということがここで明らかになったのかなと思います。

24ページのグラフですけれども、実際に3年以上入所している児童の29人は年間の交流は0回、または18人は1回しかない等、ほとんど保護者との面会交流がない。これは面会交流制限がかかっていない子どもがほとんどなのですけれども、実際面会交流がないまま多くの子どもが18歳まで施設で過ごしているというのが実態です。

26ページ、このような調査を行う中で、一人一人の児童福祉司に家庭復帰が見込めないと判断した児童が何人いて、そのうち何人ぐらいが本来特別養子縁組が相当なのかということで、26ページの上から15行目ぐらいのところに書いておりますけれども、家庭復帰が見込めないと判断した子どもが136名。そのうちの3分の1ぐらい、46名ぐらいがパーマネンシーとして特別養子縁組が適当であると回答しておりますが、実際の委託予定はゼロ名です。年齢の問題があったり、または不同意の問題があったりいたします。

 乳児院の場合には、33名のうち将来にわたり家庭復帰が見込めない12名、うち10名が、特別養子縁組未提案が3名、不同意が5名、その他2名という数字になっておりまして、なかなか移行できないという実態があるのかなと思います。

 こういった実情を踏まえて、今後、議論いただきたいと思うのですけれども、先ほどちょっと言いました、全国の児童相談所に調査されてどのぐらい出てくるかわからないのですけれども、そもそもそういう発想を持たない児童相談所もあります。ただ、そういうケースが少ないからしないでいいのかとか、そういう問題ではないのではないかと思っていまして、、、国連ガイドラインにありますように、永続的な家庭環境を保障していくということは非常に大事な考え方だと思っています。

 以上です。

○吉田(恒)座長 細かい資料をいただきまして、ありがとうございます。

 それでは、御意見をいただきます。

 山田先生。

○山田構成員 山田の資料の71ページ、72ページをごらんください。意見というよりは、ポートランドを視察してきた報告なのですけれども、先ほども言いましたとおり、ジュバナイル・コートに詰めている検察官からいろいろお話を聞いて、最近のアダプションを考え上での方針というのは歴史的にどう変わったのかということを質問したら、親が安全であれば実親がベストである。だから、分離しないでいいなら親だし、分離したとしても再統合ができるなら最善の努力をして再統合をする。だけれども、それがかなわないときには可及的速やかに新たな親子を構築して、アダプションを進めていくのだということで、そこにはパーマネンシーという考え方が非常に重要だし、パーマネンシーも何年も何年も実親に猶予を与えるのではなくて、例えばほかの州では18カ月とか15カ月というところが多いですが、オレゴン州では12カ月の猶予しか与えないということでした。12カ月のうちに実親がきちっとした対応をしないのであれば、その後、ターミネーション・オブ・ペアレンタル・ライツ(Termination of Parental Rights)ということで、親権の喪失の審判と、パーマネンシー・プランニングとを同時並行で進めるのを、コンカレント・プランニング(Concurrent Planning)というのですけれども、両方向同時進行的に進めていっているという話です。特に72ページ、私は法律のほうはよくわかりませんが、刑事訴訟というのは合理的な疑いを超えた証明(Proof beyond Reasonable Doubt)が必要ということのようですが、民事訴訟というのはプレポンダランス・オブ・エビデンス(Preponderance of Evidence)といって、どちらが正しいか、51パーセント以上のほうをとりましょうというランクの判決と、もう一つ、クリア・アンド・コンビンシングプルーフ(Clear and Convincing Proof)というのがあるそうなのですが、これはもっと明確で説得力のある証明が必要ということで、ターミネーション・オブ・ペアレンタル・ライツにはクリア・アンド・コンビンシング・プルーフが必要であるということなのですが、(3)の4つの要件を全て見たさなければ親権を喪失させることはしないという話でした。

 親権喪失させてしまえば、実親の承諾という話はなくなってしまうので、アダプションができるということです。ただ、71ページ、パーマネンシー・プランニングには今、言った日本でいう特別養子縁組に相当するところのアダプションのほかに、リーガル・ガーディアンとパーマネント・フォスター・ケアというのがあって、リーガル・パーマネンシーとパーマネント・フォスター・ケアについては、右のターミネーション・オブ・ペアレンタル・ライツは行わないそうです。親権は実親に残したまま、リーガル・ガーディアン、日本で言うと多分一番近いのが未成年後見人ですけれども、これは親族に子育てはしていただくけれども、実親に親権を残しておくという制度です。そういうケースで割と多いのは、例えばティーンエージャーで、実親と生活は一緒にしたくないけれども、実親との関係は残したいという子どもの場合は、親権は残してリーガル・ガーディアンを選定するということもあるし、あとは障害があるお子さんの場合、特別養子縁組をしてしまうという言い方は語弊がありますが、特別養親さんになった方たちの負担が重いということもあって、そういう場合はペアレンタル・ライツは実親に残したままパーマネント・フォスター・ケアという判断が下ることもあるということでした。

 いずれにしても、特別養子縁組を含めて、パーマネンシー・プランニングのマル1、マル2、マル3は全て、州が財政的な支援をしているということで、ここがまた日本と大きく違うかなと思ったところです。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 久保野先生、お願いします。

久保野構成員 先ほどの藤林構成員からお話がありました資料のうち、24ページの家族が会いに来ておらず長く経過しているものがあるというところについて教えていただきたいのですけれども、交流しに来ないということを評価するときの前提として、交流を妨げる家庭事情や意欲低下への働きかけなど、入所後の持続的な交流支援が求められるという御指摘がありまして、表の上に接触ゼロ回であったケースがどういう事情で入所しているかという御紹介もあるのですけれども、具体的にはどのぐらいの頻度でどのぐらいの働きかけなどがなされるのか。これは、本当は児童福祉ではない働きかけが必要なものも含まれるのだと思うのですが、質問させていただく理由は、山田構成員もお書きになっていたと思うのですが、無関心が続いているというのをどう評価するかということがポイントになっていると思うのですが、切断に値する無関心の前提として何をどう評価するかというところがきっとポイントになるのだろうと思うので、その質問でございます。よろしくお願いいたします。

○藤林構成員 この面会交流1年間ゼロという方々の中には、切断に値する、我々が特別養子縁組の同意を得るために手紙を書いても家庭訪問しても一切全然連絡もいただけない、会ってもくれないという方も一定数含まれています。

 でも、一方で、そこまで児童相談所がベストエフォート、最大限の努力を行っていない、そもそも年齢が超過してしまって行っていないケースもあったりいたしますから、もっと努力すれば面会交流は可能になるという方も含まれています。その割合までは今回出していないのですけれども、どんなに努力を行っても面会交流があり得ない方も一定数いるのは事実かなと思います。

 お答えになっていますか。

久保野構成員 恐らく、例えばここに精神疾患が入っていたり、経済的困窮の問題などもあったりして、児童相談所を超えた支援の必要がある家庭とかもあると思うのですけれども、そういうものについての体制といいますか、その辺は何かあり得るのかどうかというところを。

藤林構成員 このまとめの第2章、第3章に書いてあるのですけれども、中には精神疾患とか知的障害があって、到底引き取りができないとか、または我々の連絡に十分答えられないという方もあったり、そういった部分は、我々がもっと最大限努力を行って家庭引き取りを目指していくとか、または、親子関係を切らずにパーマネント・フォスターケア、長期養育里親さんでいいのではないかと思っています。でも、そういった具体的な精神障害とか、何らかの経済困窮がないにもかかわらず一切連絡を取らないという一定の方々もいらっしゃるのは事実であり、ほかのところにも書いてありますけれども、二重の親子関係の中でどっちつかずになっている子どもが一定数いらっしゃる。そういった子どもに対して、何とか特別養子縁組に持っていきたいのですけれども基本同意が必須ですから、養親さんに申し立てる責任を負わせるというのは酷ではないか。ここは公的な自治体の責任ではないかと思っています。

吉田(恒)座長 よろしいでしょうか。

 林先生、お願いします。

林構成員 論点のところです。資料2-1です。

 個人的には他省との調整が必要な、民法の改正を要するようなところは非常に長期的なスパンで考えていたもので、私自身はそれ以外の家庭福祉課対応で実現可能なところということで、幾つか御提案させていただいていました。

 1つは、特に養親候補者さんの情報の一元化というところは切に願うところです。それも含めて考えていただけたらということと、その情報の共有と同時に、業務の連携というところが今後、民間機関が増えていく中で必要なところで、連携と一元化ということに触れたつもりだったのですが、ここになかったもので、お願いしたいということと、先ほど藤林先生が言われたように、この調査を新たに事例的にやるということの限界というか、あるいは1年間の平均が1.4、ゼロの児童相談所が4割近くある中で、本当に有益な情報を時間と労力を費やして得られるのかということです。特に1つ目の調査、6歳以降になる縁組ということですけれども、これはわかるように、現実には相談開始時が1歳未満である子どもが95%で、その子どもたちが6歳以降になっているわけです。これは言うまでもなく、藤林先生が言われたように、施設入所の長期化によるものです。1歳未満で相談しているのに、結局里親委託されたのが6歳以降になるとか、3歳とか4歳になっていく中で長期化しているということが、一つデータから言えることかと。

 もう一つは、里親委託時に1歳未満で委託されている子どもで、6歳以降になっているケースがあるのです。その理由というのは聞いたところで出てこないところでもある。お金の問題が絡んでいるかもしれない。でも、それを児童相談所がどう捉えているかということはわからないわけです。では、養親さんに聞くかというと、そんなことを本音で言うわけはないし、今、民法の改正を含めて上限年齢を引き上げることについては、確かにこの法律ができた1987年とか1988年当時は6歳以降であるニーズは高かったかもしれないですけれども、今の段階で特別養子で、現実、ほとんど相談開始が1歳未満というところですので、要は、施設の長期化いかに予防するかということと、今、この年齢の上限を引き上げることによって、逆に申し立てする時期を長期化する、遅滞化させるという可能性もあるということをお考えになったほうが。

 でも、私はあらゆる年齢の子どもにリーガルパーマネンシーをと言っているわけですが、現実は全然そこにたどり着いていない中で、1歳未満の子どもに限定されている中で、年齢だけを引き上げてしまうとますます遅滞化をもたらすことも危惧しております。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 予定された時間になりましたので、あとお一方だけ。

 岩崎先生、お願いします。

○岩崎構成員 言いたいことはいっぱいあるのですけれども、今、林先生のお考えの中で、最近、特別養子が1歳未満のみが対象になるということは決してなくて、基本的には親の引き取り意思を確認する時期があります。、1つは乳児院からの措置変更が2歳と通常考えます。2歳以上もこの頃置けるようになりましたので、長くなっている場合もあるのですけれども、2歳のときに一度措置変更に伴うために実親を呼び出す、あるいは意思を確認するというところで、引き取るめどがない子どもについては養子縁組の可能性を示唆して、検討させて、結果として引き取れるめどがないという親の意見から、同意をとっておいて、養子縁組対象児として出てくるのが一つ、割合今まで多かった事例です。2つには、年1回行われている保護状況調査の時です。やはり引き取りの見通しを考える中で縁組は出てきます。

 今、申込者が非常に高齢化しましたので、1歳未満の子どもを何歳の夫婦に委託することが大事かということを考えますと、やはりできれば私たちは親子の最大年齢差を40歳と従来決めて頑張ってきましたけれども、40歳が今、守り切れず、実際上45歳になっておりますし、もっと民間の団体であれば50歳でゼロ歳をいっている事例もあるのです。

 これを考えていただきたいのは、特別養子ですから、実子と同じ法的権限を得る子どもが20代から、場合によっては30代の前半ぐらいに親の介護の問題を考えざるを得ない状況をつくっているということになるのです。だから、親子の最大年齢差を幾つにするかということを法的に決めることはあまり意味がないと私も思いますけれども、子どもの幸せのために我々が親を選ぶ場合、申込者自体が高齢化している現状の中で、それがなかなか難しいと、5歳、あるいは6歳、場合によっては7歳や8歳で偶然その子どもを引き取ってくれる申込者と出会ったときに、特別養子にしてやりたいということは当然起こるわけで、数が多いとか少ないとかということではなく、子どもにとって特別養子縁組をしてもらえる機会均等性を保障するために、私は年齢制限を突破していただけることは子どもにとって道が開けると思います。

 前回、言いましたように、それが10歳、15歳の子どもがどんどん増えるということではなく、たまたまいい出会いがあった子どもに特別養子を認めさせるために、この年齢制限があるがために普通養子にせざるを得ない。我々は随分普通養子をしています。特に同意がとれない場合に、親権者である母の同意がとれたけれども、親権者でない、まして実父でもない戸籍上の父の同意がとれないためにどんどん申し立てが遅れて、6歳を過ぎた子どももいますし、場合によっては親権者の母が戸籍上の父との交流を改めてこの子の問題について裁判所であれ、児相であれ、どこであれ持たれることが自分にとって不利益をこうむるために、それを拒否したケースがあって、やむなく親権者の同意だけで成立する普通養子にしたことがあります。でも、それだけ非常に親の背景が複雑なわけですから、これがいつ子どもにとって、ある意味では負荷の相続あるいは負荷の扶養義務を要求されることになるかもしれないことを考えると、私はとても残念に思います。

 こういうときに、それこそ児童相談所から親権喪失がどうというよりは、この子にとって特別養子が必要であるという意味での申し立てを児童相談所からしてもらえるのであれば、こういうケースが少し救われるのではないかという意味で、藤林先生の御提案は一考に値すると思っています。全てのケースがということではありませんけれども、そういう機会を持ってでも1人でも多くの子どもにリーガルパーマネンシーを保障すること、それは我々のすべき努力ではないかと思います。

 以上です。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、予定の時間になりました。

 局長、お願いします。

吉田雇用均等・児童家庭局長 事務局の雇用均等・児童家庭局長でございます。

 ここで私が口を挟むのがいいのかどうかがあるのですが、、大変恐縮なのですけれども、今日御提案させていただいた資料2-2で、特別養子縁組に関する実態把握について、今日は議論の時間もございませんでしたので、たたき台というか、事務局の骨子案をまずお示しして、次回までにいろいろと御意見をいただいた上で、調査票案のような形で次回お示しするという進め方を考えておりました。

 ただ、先ほど藤林構成員や林構成員から、そもそもこういう形で調査をすることに意味があるのかという趣旨の御発言もありましたので、聞き違いなら申し訳ないのですが、、事務方としてはちょっと悩ましく思っております。

 一方で、今、岩崎構成員からお話がございましたように、この分野の御経験、御実績がおありの方からは、こんなケース、あんなケースがあると、問題を前に進めるに当たって必要な実例をお示しいただけるかと思います。、、今日、藤林構成員から実務の状況についてのデータをお示しいただきましたように、これだけのメンバーにこの検討会にお集まりいただいているという部分と、一方で、、全体数はどうなっているのか、実態はどうなっているのかというのをいろんなところで問われる我々の立場から申し上げますと、まず、調べてみて何が出てくるかを明らかにしたいところです。解釈をどうするかというのはまたこの検討会の場で御議論いただくとして、調査をした結果として、これはこういう意味のものとして評価しようという結論になることもあり得るとは思いますが、一旦何らかの形で実態把握というプロセスを踏ませていただきたいと考えております。具体的な部分についてどういう聞き方がいいのか、どんな項目がいいのかというところは次回までの間に十分御意見をいただくということを前提に、提案させていただいております。、この点について、構成員の皆様方の意識に差がありますと、内容の調整はさせていただけるにしても、そもそも論については、今日のうちにある程度お考えをお示しいただけると、事務方としては助かりますので、よろしくお願いいたします。

吉田(恒)座長 そもそもという形で今、お話が出ましたけれども、調査の進め方、内容について、何かございますでしょうか。

藤林構成員 私は調査そのものを否定しているわけではなくて、されてもいいかと思いますし、事例が集まってくるのは大変結構だと思うのですけれども、今、局長が言われまたように、解釈のところで少ないからやめておこうということではないというところさえ留意いただければと思っています。

吉田(恒)座長 ほかによろしいですか。

○岩崎構成員 やっていただければ私も非常にありがたい気がするのですけれども、うちのケースは割と多いですから、たくさんやらないといけない。それはほじくり返すという作業も実に大変な作業なのです。それを考えると、その結果どうだと思うところもないこともないので、例えば協会のここ5年間なら5年間、10年間なら10年間で特別養子の申し立てにまつわる非常に苦労したケースというのは多少は私が書いた本にも載せておりますので、そういう意味で出すことに意味があるのであれば、職員を励まして答えろということもできます。

吉田(恒)座長 ありがとうございます。

 上鹿渡先生、どうぞ。

○上鹿渡構成員 21ページにあるのですが、家庭移行支援係という係を新設されたというところまでやっていらっしゃる福岡市でないと見えない取り組み、そういう取り組みをしたからこそ見えてくる課題というのがたくさんあると思うので、全国の状況をもちろん把握しつつ、それに加えて藤林構成員が今回提出してくださったようなデータをさらに提供していただき、、それについて具体的に議論するということが大事だと思います。1人の問題、個別のケースをどうやって解決できる法律にしていくのかということを第一に考え、それが他のケースの場合にも問題が生じないよう、いかに整合性をもたせるかということが次に来るのだと思います。、まずは一つ一つの問題を解決できるものをつくるという意味では、今後目指すべき方向で取り組まれる中ですでに課題として見えてきた具体例をもとに議論を重ねることが必要だと思います。

吉田(恒)座長 貴重な御意見ありがとうございます。

 そのほかにもこの調査に当たって留意すべき点はあろうかと思いますので、ぜひ事務局のほうにお伝えください。

 それでは、私の不手際で予定の時間を過ぎてしまいました。調査に関しましては以上のとおりでございます。

 それでは、最後に事務局から次回の日程等御案内をお願いいたします。

木村補佐 本日はありがとうございました。

 次回日程につきましては、1014日金曜日、本日と同じ夕方5時から7時を予定しております。

 次回の検討会では、司法関与につきましては、前回御意見をいただきました児童相談所への調査の結果を可能な限り集計して、お示ししたいと考えております。その上で、その結果も踏まえつつ、また御議論を深めていただければと考えております。

 また、特別養子縁組につきましては、先ほどお話がございましたけれども、実態把握を行うための調査票案について、お示ししたいと考えております。

 最後に、今後の予定でございますが、10月は次回を含めて2回、さらに11月に2回と現時点では予定しているところでございます。

 以上でございます。

○吉田(恒)座長 ありがとうございました。

 それでは、本日の検討会はこれにて閉会といたします。御出席の先生方、御多用のところどうもありがとうございました。

 


(了)

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