ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> がん対策推進協議会(がん対策推進協議会)> 第59回がん対策推進協議会(議事録)(2016年8月26日)




2016年8月26日 第59回がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年8月26日(金)14:00~17:00


○場所

全国都市会館 3階 第1会議室


○議題

(1)がん対策推進基本計画の見直しについて
   ・将来を見据えたがん対策の実現に向けた議論
   ・がんに関する研究開発について
   ・がん登録について
(2)その他

○議事

 

○門田会長 それでは定刻となりましたので、ただいまより、第59回「がん対策推進協議会」を開催します。皆様、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、委員の出席状況について事務局から報告をお願いします。

○事務局 事務局です。本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は中川委員、若尾委員より欠席の御連絡をいただいております。なお、委員総数18名の皆様に御出席いただいておりますので、定足数に達していることを御報告申し上げます。

 また本日は、国立がん研究センターがん対策情報センター全国がん登録分析室室長の柴田亜希子参考人、全国がん登録室室長の松田智大参考人に御出席いただいております。

 以上をもちまして、傍聴される方におかれましては、撮影を終了し、カメラを収めていただきますよう御協力をお願いいたします。また、携帯電話等、音の出る機器につきましては電源を切るかマナーモードに設定いただくなど、会議の妨げとならないよう静粛にしていただけますようお願いいたします。事務局からは以上です。

○門田会長 引き続いて、事務局から資料の確認をお願いします。

○事務局 お手元の資料の確認をさせていただきます。資料1「がん対策推進協議会委員名簿」、資料2-1「第17回がん検診のあり方に関する検討会における主な議論」、資料2-2「第5回、第6回がん診療提供体制のあり方に関する検討会議論の概要」、資料2-3「第1回、第2回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会議論の概要」、資料3「第58回がん対策推進協議会での主な御意見」、資料4-1「将来を見据えたがん対策の実現に向けた議論~議論の背景~」、資料4-2「第3期がん対策推進基本計画に向けた課題について」(中釜委員提出資料)、資料5「がんに関する研究・開発について」、資料6「がん登録等の推進に関する法律について」、資料7「全国がん登録情報の特徴と活用」(柴田参考人提出資料)、資料8「今後の予定について()」です。

 また、委員提出資料を確認させていただきます。勢井委員、難波委員、馬上委員、若尾委員、桜井委員提出資料として3つの資料があります。「将来を見据えたがん対策に向けての提言」、「がんに関する研究開発についての提言」、「がん登録等についての提言」です。大江委員提出資料として「がんに関する研究開発について」、檜山委員提出資料は「がん対策の実現への取組」、「がん登録について」です。

 また、お手元には机上資料ファイルと参考資料をそれぞれ御用意しております。資料に不足・落丁等がございましたら、事務局までお申し出ください。事務局からは以上です。

○門田会長 それでは、まず報告です。各検討会の検討状況について、事務局から報告をお願いします。

○がん対策推進官 がん対策推進官です。資料2-12-22-3を御覧ください。こちらは、この協議会と併行して議論が進められている各検討会の主な議論を御紹介するものです。

 資料2-1は第17回がん検診のあり方に関する検討会における主な議論です。資料にありますとおり、職域におけるがん検診受診率および精密検査受診率について、市区町村検診と職域検診との関係について、精度管理と目標値についてなどの御議論をいただいております。現在、本検討会の下にワーキンググループを立ち上げまして、受診率の算定方法等について詳細な検討を行っているところです。ワーキンググループの議論がまとまり次第、検討会に御報告をいただくとともに、検討会でも議論を取りまとめて本協議会に御報告いただく予定となっております。

 次に、資料2-2は、がん診療提供体制のあり方に関する検討会での議論の概要です。がん診療提供体制のあり方に関する検討会において、がんのゲノム医療、がん医療に関する情報提供、がんの放射線治療といったことに加えて、医療安全や相談支援等についても議論が行われており、議論の整理を現在行っているところです。こちらも終わり次第、本協議会へ御報告いただく予定となっております。

 資料2-3を御覧ください。がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会の議論の概要です。こちらの検討会では、緩和ケアの提供体制、緩和ケアの研修について、循環器疾患に対する緩和ケア等について御議論いただいているところです。

 なお、本日御欠席の中川委員におかれましては、現在ナイロビでのアフリカ開発会議に御出席と伺っておりますが、中川委員より資料を御提出いただいております。参考資料としてお付けしておりますが、こちらは727日のがん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会で提出された意見書です。がん対策推進協議会の門田会長宛てにも御提出いただいておりますので、こちらでも御紹介させていただくものです。説明は以上です。

○門田会長 ありがとうございました。今、検討会で進んでいる内容についての御報告を簡単にしていただきましたが、ただいまの件について何か御質問、あるいは御意見はございますでしょうか。

○桜井委員 資料2-1の検診の議論の中で、家族歴が濃いいわゆるハイリスクグループの患者さんに関する記述というようなものが、見受けられません。乳がん学会のほうで出している2015年のガイドラインでは、この家族歴が高い人に関するスクリーニングプログラムの話等々も出ております。それから昨今新聞等でもデンスブレストの話も出ていますので、その辺の新しい、これからの検診のあり方についても是非御議論をいただきたいなと思います。

 それから、資料2-2のあり方に関する検討会の部分ですが、こちらの議事録のほうを拝見させていただきますと、2ページ目の遺伝の部分で、遺伝カウンセラーのことと合わせて、家族性腫瘍の変異陽性者の社会的擁護についても検討するべきということは、このあり方検討会の患者委員のほうからも確か意見が出ていると思いますので、その部分も書き込みをお願いします。以上です。 

○門田会長 ありがとうございました。それは、事務局のほうから。

○がん対策推進官 はい、承りました。

○門田会長 よろしくお願いします。そのほか、何かございますか。よろしゅうございますか。特にないようでしたら、本日の議題に入ります。まず最初に議題1として「がん対策推進基本計画の見直しについて」です。事務局より、今まで出された意見について説明をお願いします。

○がん対策推進官 資料3を御覧ください。こちらは前回第58回のがん対策推進協議会での主な御意見を取りまとめたものです。前回のテーマが小児がん、それから、がん患者の就労を含めた社会的な問題でしたので、そういった御意見が中心です。小児がんにつきましては、医療提供体制に関する御意見、小児がん患者の療養環境に関しての御意見、長期フォローアップに関する御意見、研究、治療開発に関する御意見というように項目立てをして整理してまとめたものです。また、就労支援に関しても就労支援に関する御意見、その他就労を含めた社会的な問題について整理をさせていただいております。以上です。

○門田会長 この件は今まで出していただいたものについて、このような形にまとめさせていただいているということですが、この御意見と、これから最終的に基本計画としてどのような形に書き込んでいくのか、これは直接この文言がこうなるとかというものではなくて、これは改めてディスカッションしていただく。このようなことがディスカッションされたということを挙げていただいていると御理解いただきたいと思います。よろしいでしょうか。

○細川委員 前回の会議に欠席しましたので、小児がんの緩和ケアについての意見を述べることができなかったので、少し話させていただきます。現在、小児がんの診療拠点病院を中心として、小児のがん緩和ケアにつきまして、個々にいろいろ進展はしているのですが、まだ今後もふくめ、全体をまとめた組織的な動きは出来上がっておりません。小児の緩和ケアの研修会の今後のあり方も含めて様々なガイドライン作りなどが現在行われはじめています。次の基本計画につきましては、小児がんの緩和ケアを盛り込んでいただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○門田会長 ありがとうございました。これは最終的にどういう形でという辺りでまた返ってきますので、よろしくお願いします。そのほかはいかがでしょうか。

○馬上委員 先ほどもちょっと事務局に申し上げたのですが、1ページの下から3行目の「自立支援障害者の認定」という所は、「自立支援のための障害者の認定」ということでお願いしたいと思います。

○門田会長 よろしいですか。

○がん対策推進官 はい、頂いたとおり修正させていただきます。

○門田会長 そのほかいかがでしょうか。

○中釜委員 資料3の最初の「がん研究」の所で、私も意見を出させていただいたのですが、特にここには希少がん、難治性がんをネットワークを使いながら研究を推進すると書いてあります。基本的に、個々の個性に適応した治療の開発において、よく治療に反応する症例とそうでない症例についても、その本体が十分に分かっていないなど、まだまだ未解決な問題は多いという意味から、広くがん研究の重要性ということを書き込んでいただけるといいかなと思います。

○門田会長 そのほか何かありますか。よろしいですか。

 それでは、事務局から今報告していただいた件につきましては、それぐらいにさせていただいて、その次を見ていただきますと、「将来を見据えたがん対策の実現に向けた議論」ということを挙げさせていただいております。この件につきましては具体的なディスカッションをすることも非常に重要ではありますが、ちょうど5年、5年で、10年の計画が過ぎたといったタイミングに、今度の第3期の基本計画を現在検討しているといった意味で、この10年ということになりますと、法律ができてから10年、相当変わったところもありますし、状況もいろいろなことがある、進歩したところもありますが、10年目ということで、一度ここで立ち止まってというわけではありませんが、5年、5年が続くという感覚よりも、10年という単位を過ごしてこれからどうするという形を考えたときに、やはりこのテーマとして「将来を見据えたがん対策の実現に向けた議論」ということで、本日は国立がん研究センターの理事長の中釜先生の御意見を聞かせていただいて、議論を進めることにしたいと思いましたので、このようにさせていただきました。中釜委先生、よろしいでしょうか。お願いいたします。

○中釜委員 それでは、資料4-2を用いながら説明させていただきます。今、門田会長からお話がありましたように、これまでの2期、5年ずつのがん対策推進基本計画の取組として、がんそのものを治す、あるいは治療をした患者さんが、社会の中でどのように安定した生活ができるか、共生できるかという論点から、治療及びそれに付随した関連のものという形で、社会の仕組み、あるいはその医療提供の仕組みが整備され、一定の成果が上がったと理解します。同時に10年経って振り返って見たときに、がんの死亡率・罹患率の低減においては、当初予定されたものが達成されてないという問題点があります。その点に関して、やはり罹患・死亡を減らすには一層の努力、そこには検診であるとか早期診断といったものが入ってくるわけです。10年経ち、その辺りも今後更に5年、10年を見据えながら新たなリスタートということで考える必要があるのではないか。そういう視点から資料をまとめさせていただきました。この中の多くの論点は、既にこの場で議論されているものだと思うのですが、少し大きなくくりとして整理させていただいたところです。

 最初のページです。第3期における主な論点として、3つの視点から大きく整理して書かせていただいています。

1つが、「一人一人の状況に即した個別医療の実現」です。これは、昨今の分子標的薬等の実績から、やはり個々人に適した治療が適切であるという事実が蓄積されてきているわけですが、現状を言いますと、昨今の医療の進歩により、個々の患者の特性に応じた治療の可能性が広がってきており、がんと生きるということも当たり前になっている。それから、高齢化の進展により、がん罹患のウエイトがますます増大し、患者が増える状況にある。さらに、一人一人の心身等の状況には大きな個人差が存在する。最近は、ゲノム医療という視点が新たに加わり、ゲノム情報に基づいた個別化された医療の重要性が認識されてきている。加えて、がん診療連携拠点病院間では医療の均てん化が図られているわけですが、依然として格差も存在するのも事実である。

 こういう現状を踏まえて、今後の方向性として、一人一人の心身の状況に応じて、最適な医療を提供する。これは従来型の手術、放射線、化学療法に加えて、最近では免疫療法の重要性、その個別性、その治療効果の大きさということも認識されてきたので、新しく免疫療法という視点も加えていく必要があるだろうと思います。それから、一律に与えられる医療から、患者自身の選択に基づく医療、そして尊厳ある生のあり方へ。高齢者の心身の状況に応じた標準的医療を明確化。必ずしも高齢者に限らず、年齢等による一律の限定を行うわけではありませんが、個別的にその心身の状況に応じた医療のあり方を考える。

 次の論点としては、希少がん・難治がん(小児・AYA世代がんを含む)に対する個別性を踏まえた問題については依然として残っており、正面から取り組む必要があるのではないか。

 それから、先ほど言いましたが、ゲノム、今後は恐らくもう少し広くオミックスというところにかかってくると思うのですが、そのような個別のゲノム情報に基づいた個別医療を実現する、それが実際に走り出そうとしているところです。効果が期待されるところに、資源を集中投入する必要があるのではないか。情報を公正・的確に取り扱うための法的規制を含めた体制整備と人材の育成が求められる。例としては、遺伝カウンセラー、分子病理学者に相当するような臨床医体制。それから、医療提供に当たっては、均てん化と集約化のバランス、これは均てん化が非常に重要であり、今の診療連携拠点病院で7割の患者さんが診療を受けているわけですが、ただ均てん化を押し進めるだけではなく、各拠点、各病院の特性を生かした集約化もバランスよく考慮しながら、持続可能ながん対策を実現する必要があります。がん診療連携拠点病院を中心とした医療提供体制、これを先ほどの均てん化、集約化という視点を踏まえながら、再整備をもう一度考えてみる必要があるのではないかとまとめてみました。

 それから2番目、これは非常に重要だと考えるのですが、やはりこの10年間の医療提供の結果として、その予防、がんの罹患、死亡を十分に抑制し切れていない。その大きな問題は、やはり予防・早期診断であり、「健康寿命延伸に向けた予防の確立」を挙げました。現状としては、生活習慣や感染症など、がん発症リスクに関する知見は着実に進展している。しかし、行動変容を要する予防・早期診断、これはたばこ対策、検診を含みますが、この進捗は不十分であり国際的に立ち後れている。一方で、ゲノム情報により、家族性腫瘍の発症リスク、高リスクというものが明らかになりつつある。

 こういう現状を踏まえた今後の方向性として、国民全体の健康寿命を延伸するため、今できることに社会を挙げて取り組む。例としては、たばこの公共スペースでの全面禁煙、タバコ価格、喫煙の健康影響警告など、禁煙への積極的で大胆なインセンティブを含めたアプローチが必要であろう。それから、検診についても、やはり保険者、いわゆる職域の保険者と市町村が行う健診・検診を一体化して、より広く効率的に、この検診を国民全体に普及する必要がある。それから、新しい切り口としての早期診断技術、あるいはバイオマーカーを開発し、より効率よく治療に適正なハイリスクな患者さんを拾い上げる、そういう技術開発も必要だろう。加えて、医療経済的な視点からの有用性を検証。これは単に早期診断、検診だけではなく、広く医療全体に関わる問題ですが、医療経済的な視点で全体を俯瞰しながら、全体として臨床的な有用性を検証する必要があるだろうと考えます。受診率を含めた検診の質の向上、その維持のための精度の管理、これは言うまでもありません。

 さらに、今年から始まっている全国がん登録情報の制度を使って、大規模なデータベースの構築により、分かりやすく説得力のある根拠を提示し、具体的な対策につなげていくことが求められると思います。それから、実際の行動変容につなげるための具体的な介入手法の意義・効果を実証する。ゲノム情報を適切に活用したハイリスク群に対する予防のあり方、こういう新しい切り口での予防という考え方も求められるのではないか。さらに、それに向けての社会的な合意の構築が必要である。基本的に、これまでの枠組みを超えて、問題の根源に切り込む視点が求められるのではないかと思います。

 最後に、「がんとともに生きるサバイバーシップ」の問題。これはこの会議及びそのワーキンググループ等でも議論されていると思いますが、現状としては、がんになっても日常生活が続くわけであり、治療成績の向上とともに、診断後も充実した暮らしを実現することが課題になっています。しかしながら、一般市民のがんのイメージはまだまだ死に直結する病気というのが依然としてある。この問題に、広報、啓発を含めて充実させる必要があるだろう。

 これらの点を踏まえて、今後の方向性としては、やはり安心してがんとともに暮らせるような、社会全体での支援。患者・家族の「診断後」に寄り添う一貫した相談・支援、体制を医療機関あるいは地域社会で展開する。さらに、一人一人の状況にふさわしい生き方、働き方を実現する。これは就労継続支援と新規就労の双方における、医療・福祉の統合。それから、政府全体での働き方の改革。今話題となっている一億総活躍社会の実現に向けても、非常に重要な課題と考えます。関連分野を網羅する連携を進め、社会環境を整備する、この中には健康づくり等の充実、身体活動・食生活等の充実。それから、ライフステージごとの課題を的確に抽出し、効率的な政策につなげていくことが求められると思います。

 最後に、繰り返しますが、死亡率の更なる低減が最終的なアウトカムだと思うのですが、それに加えて、安心・納得してがんとともに生きる社会の構築を目指すべきではないか。がんにならない、がんに負けない、がんと生きる社会、これは今度のがん研究10か年戦略、あるいは新しい健康・医療戦略の中のモットーですので、これを実現するために、これまで少し欠けていた、がんにならないというところ、予防、そのための生活環境の整備に注力する必要があるのではないか。

 最後に、我々国立がん研究センターの意気込みとしては、全国がん登録データ等に基づく具体的な問題点の抽出、それを踏まえた解決に向けた対策の推進に向けて、最大限貢献していきたいと考えています。

 高齢化によるインパクト、これは2025年には団塊世代が75歳に達する時期ですが、そこに向けてがん患者が増えていく、それに対する予防をどうするか、発症を遅らせる対策をどうするかが極めて重要だろうと考えています。私からは以上です。

○門田会長 ありがとうございました。新しい国立がん研究センターの理事長に就任された中釜先生から、今のような大所高所に立っての御意見を頂きました。御質問を頂きたいと思いますが、それより先に、では現状はどうなのだろうかというようなことについて、事務局から資料4-1に遡って説明していただきたいと思います。

○がん対策推進官 資料4-1です。今回、将来を見据えたがん対策の実現に向けた議論を行っていただくに当たって、議論の背景として幾つか資料を用意したので説明します。1つ目のスライドですが、1ページで我が国における粗死亡率の推移、主な死因別のものです。1981年にがんが死因の第1位になって以降、ずっとがんの死亡率が伸び続けており、現在、約3人に1人ががんで死亡しているという状況です。2014年には年間の死亡者数が約37万人となっております。

 次のページを御覧ください。2つ目のグラフはがん罹患数(推計値)の推移です。こちらも1975年以降、男女ともに増え続け、2012年には男性が503,000人余、女性が36万人余となっているところです。一方、がんの5年相対生存率(全がん)ですが、こちらについては1993年以降、順調に高まっており、2006年~2008年のデータでは62.1%となっております。

 また、次の4つ目のグラフですが、こちらは年齢調整死亡率の年次推移となっております。1958年以降、男性は微増、女性は微減となっておりますが、1990年代半ばをピークにして、男性、女性とも下がってきており、現在は人口10万人に対して130人といったところです。一方で年齢調整罹患率の推移ですが、こちらは徐々に微増している状況です。

 次のスライドを御覧ください。こちらは米国の年齢調整罹患率・死亡率の年次推移です。こちらも日本と同様に1990年代半ば以降から罹患率、死亡率ともに減少傾向です。次のグラフは視点を変えて、我が国の人口ピラミッドの変化です。団塊の世代が全て75歳となる2025年、左から3つ目のグラフですが、75歳以上の方が漸次18%となります。2060年には人口が8,600万人強まで減少する一方、65歳以上の人口は約40%となる状況です。

 最後のグラフは社会保障給付費の推移ですが、こちらも戦後一貫して増大を続けております。また、国民所得額における割合も1970年の5.7%から、現在は予算ベースで30.65%にまで上昇しているといった状況です。以上です。

○門田会長 今の状況は、がんのみならず高齢社会あるいは日本の財政も含めて、なかなか難しいところに差し掛かりつつあるという今の段階と、それから、がんに罹患する人が増えてきていて、その多くのところは高齢社会になって高齢者が掛かりやすいということですが、年齢調整しても我が国では罹患率が更に増えつつあるということ。それに対して、中釜先生からは3つの大きな提案として挙げていただきました。

 そこで会長としての意見を最初に言うのも何ですが、私はこのがん対策基本法ができてから10年にわたってずっと、このがん対策協議会の委員としてやっており、今から3期目の基本計画案についてやっていますが、これを振り返ってみると、第1期のときは本当に手探りといいますか、がん対策基本法に基づいて、当初は均てん化ということが非常に重視された時代だったと思います。非常に格差がいろいろな所にあり、情報も格差があり、また医療そのものも行く所によってはという、患者さんあるいは患者会の皆さんはここを非常に強く意識されたこともあったと思います。そういった意味で、第1期のときにがん対策基本法もそういう所を主に掲げてきた。したがって医療そのものの均てん化を図るという意味で、全国に診療連携拠点病院を二次医療圏に1つ程度を作って、そして放射線治療を幅広くできるようにする、あるいは化学療法をできるようにするという形で、均てん化を含めてがん医療ということを非常に強調された。そして目指すところは、10年で死亡率20%減少を立てたと思います。その後、そういういろいろな施設の問題や放射線機器の問題などの数値目標は、非常に簡単にというか、早期に目的を達した。しかし、それが結果としてどう表れたかは、そのときは余りはっきり出ていなかったのが第1期だったと思います。

 そして5年たって第2期の頃になり、先ほども報告がありましたが、がんの治療成績も徐々によくなってきつつある。そうするとがんから立ち直った人たちの就労ということが大きな問題として出てきました。それとともにいろいろな社会的な状況の中で、がん患者さんあるいはその家族の皆さんが、必ずしも安心して暮らせるような状況にはなっていないのではないか、そういう対策が必要ではないかということで、「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」を、全体目標の3番目に入れてやってきました。そういった意味で、がんという病気、それからがん患者さんと家族というものを社会全体で、医療施設で、まず社会でということを中心に行われた対策であったと思います。

 昨年、1020%の死亡率を減少というのが、どうもこのままいくとおぼつかないということになった、そこで政府とすれば、加速化プランを出してはどうだということで、また新たな方向性といいますか、新たな追加項目を出して、何とか対策をとしております。

 しかし、死亡率の減少が思うようにいっていなかった中には、あのときにあったのは、いわゆる医療の進歩と、先ほども出ておりましたが、予防、禁煙を進めるということ、あるいは検診率を高めることによって早期発見、第一次予防、第二次予防を踏まえて20%減と言っていたのですが、皆さん御存じのとおり禁煙はなかなか進んでいない、喫煙率はほとんど下がっていなかったということ、あるいは検診受診率もなかなか上がっていないことから、結果的に死亡率の減少は順調に進んでいない。

 考え方によれば、初期の目的は、そういうことをやって後に20%と言っていたのですから、十分にできていないから、それがうまく20%減に向かっていかないのは当たり前といえば当たり前かも分からない。そういう意味では、計画は正しかったけれども、それを守れなかったということかもしれません。そのようなことを考えていって、ちょうどもう10年たってしまったということで、先ほどもちょっとお話させていただきましたが、やはり10年目ということで、1回目の5年間、次の5年間ということで第3期目の基本計画を立てるというような考え方よりも、10年を1つの単位と見て、やはり新たに見直すことの必要性が、今、この時点であるのではないかと思います。多分皆さんも同じような御意見ではないかと思いますが。

 そこで会長として、今までいろいろな形で、ここをどうやっていくかを考えてきたときに、皆さんの御意見を聞かせていただきたいと思うのですが、今までの10年間は、病気がある、あるいは病気の患者さんがいらっしゃることに対しての対策を、病院で行いあるいは地域で行い、あるいは社会全体で行うという発想できていました。一部その中に予防や検診という単語が入っておりましたが、メインは医療のほうにあったということだったかと思います。そして、その結果として、やはりそこの検診や予防などのところがなかなか進まない。ということになれば、今までの方法を、その辺りを大きく切り返すことなしに進むということは、やはり限界があるのではないかと思います。今まではずっとがんというものとがん患者さんということをターゲットにやってきましたが、もう少し視点を前に置いて、やはりがん患者さんを出さない社会づくりということが、この10年目に1つのポイントとなるのではないかという感じがしています。

 先ほども見ていただいたように日本での罹患率はまだまだ上っていっている。欧米は余り深くは知りませんが、アメリカなどでは全体で見ると低下傾向が出てきている辺りを考えると、やはりそこに大きな方向性として力を入れる必要があるのではないかという感じで、今日のテーマとして今も御発表していただきましたし、私自身の意見も述べさせてもらいました。是非、委員の皆さんのこの点についての意見、先ほどの中釜先生に対する御質問でも結構ですし、是非皆さんの意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○桜井委員 中釜先生の御提出されている資料は本当にそのとおりだと思いながら拝見させていただきました。私たちが目指すべき方向性というのは、今、門田先生からもお話があったように、やはり少し先のことも見ながらやっていく必要があるのかなと非常に思っております。

 特に資料4-1です。6ページにあるアメリカの罹患者数も減っているという、この事実です。死亡者数だけではなくて罹患者数も減っているという、ここは非常に背景も含めて考えていかなくてはいけないところなのかと思っています。アメリカ自体がPersonalized Mebicineという考え方から、今はPrecision Mebicineという考え方に切り替えました。アメリカはサバイバーシップという言葉、考え方を含めて、社会でがんを考えていくことを始めて、もう35年たっているのです。

 その中で日本もがん登録をスタートし、ゲノムの解析のほうもスタートしたということを考えると、やはりこの辺りのビッグデータを活用しながら、先手医療というか、いわゆるがんにならないという部分、発症予防の部分をきちんとやっていくということ。

2つ目は、私たち患者としては、やはり個別化医療です。副作用の大き過ぎる治療はやはり望みません。最適な治療を最適な患者にというようなことは求めていきたいと思います。

 私たちがもう1つ目指すのは、死亡率の低減ということです。そう考えたときに、今、難治性がんやあるいは希少がんの辺りの研究、この克服ということも、先手医療のメカニズムを解明する上でもすごく重要なことかなと私自身は思っております。

 今日は私からも資料を提出させていただいたのですが、そのときの考え方として、例えば桜井提出資料の3ページの部分で、難治性がんという言葉で考えたときに、30年たっても生存率が全く改善していないがんの種類があります。それは膵臓がんですが、やはりこういったものがなぜ起きるのだろう、なぜ早期発見できないのだろうというところをきちんと考えていく、検証していくことや、あるいはその下にある大衆がんであっても、病態や病理組織型、あるいはこれはゲノム変異かもしれないのですが、こういう情報によっては、これは乳がんの例ですが、大衆がんであっても50%切るような、何の薬をやっても効かない、何をやっても効かないというものがあるのです。こういうものをどうしてなのだろうと考えていくこと。そうなると部位別だけではなくて、ひょっとしてゲノムタイプ別などの視点も含めて、今、取組をスタートしないと間に合わないのではないかと思っています。

 私は、死亡率や予防などの結果はすぐに出ないと思っています。出ないのですが、私たちは先を目指してやらなくてはならないことがあると思っていますので、是非そこは次期のがん対策の中で入れていくべきだと思っています。

○門田会長 ありがとうございました。委員の皆様で意見を前もって出していらっしゃる方もいますが、今のように内容についてこの場でおっしゃることがあればおっしゃってください。いかがですか。

○檜山委員 おっしゃるとおりで、今までのがん対策というのは、均てん化から、がんの患者さんをいかに社会の中で受け止めるというところで第2次まで来たのではないかと思っています。今、門田会長からもあったように、社会としてがんをどのように捉えていって、がんを一次予防から考えるかということで、私から漫画のような資料を出させていただいたのですが、上のほうに挙げましたが、中釜先生の言われたとおりで、やはり今はゲノムの時代がきているので、その人が本当にがんになりやすい体質を持っているかどうかということを、まず、我々小児がんをやっている立場から言うと、やはり遺伝性腫瘍はかなりのパーセントを占めていることになると、どういう子供、あるいはどういう人に早期発見の検診をすべきなのかをきちんと明確にして、それで発症前診断をするとか早期診断をする仕組みをやっていったほうが、やはり医療のコストも含めて非常にいい効果が出るし、コストベネフィットは非常に高いのではないかと思っています。

 もう1つは、どういう人に薬が使えて、どういう人に薬が使えないのかということも、今、一生懸命我々は研究していて、前回も申し上げましたが、シスプラチンで内耳毒性がくる子はどの子なのかということが体質で分かるような時代が来ているので、その人の体質診断というのもゲノム診断の中で非常に大きなポイントの一つなので、これも一生に1回調べてしまえば、その人はこのイリノテカンが使えるのか使えないのかが分かるような時代になってきています。先ほど中釜先生が言われたように、それは個々の医療としては、私は非常に重要な点だと思うのです。その人の体質をゲノム解析して、その人の情報として持っておくことは、その人ががんになりやすい体質かということとともに、どういう薬が使えて、どういう薬が使えないのか分かることになると、やはり晩期障害や副作用予防というところに、医療費の削減も含めて非常に有用な情報になるのではないかと思って、次のライフステージのテーマになるのかもしれないですが、そのような形で上のスキームを書かせていただきました。確かにがんが見付かった時点で、がん組織のゲノムから、いろいろな分子標的あるいはドライバー遺伝子を見付けて、そういう医療をやることも非常に重要なポイントですが、もう1つその意味でゲノム医療をうまく取り入れて、社会としてどういう人たちを早くハイリスクであるかを明らかにして、あるいはどのような形で早期診断していって予防していくか。もし見付かれば、どういう形で早く治療にもっていくかということを、社会全体として考える意味で、ここに出させていただいたと考えていただければと思います。以上です。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。そのほかいかがですか。

○勢井委員 アメリカの罹患率の例ですが、先ほど門田会長がおっしゃられたように、検診、予防というところが非常に大きいのかなと思っています。今までのがん対策は治療方法であったり、治療薬であったりということをどんどん進めてきたと思うのですが、もちろんこれからも進めなくてはいけないと思います。ただ、提言書にも書きましたが検診については、苦痛もなく正確な検査が簡単にできるような検査薬の開発や検査方法、それらをもっと強力に進める必要があるのではないかと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

○馬上委員 中釜委員の発表は、本当に11つ納得いたしました。ありがとうございました。希少がん、小児がんの立場から申し上げると、これまで遅れてきた部分を、こういった個別化医療で強化していただける点はすごく感謝申し上げます。ただ、先ほど桜井委員がおっしゃったように、難治性がんの問題、いろいろの疾病別、また、その人別の問題が11つ出てくるのですが、3ページに書かれているように、効果が期待される所に資源を集中投入していくというお考えだと思うのですが、ではここから始めるということと、今、問題がある患者さんに対する公平性という点で、そのバランスはどのように考えていらっしゃるのかということをお伺いしたいです。

○中釜委員 今の御質問ですが、効果の期待に関してはもう少し広く捉えていて、難治がんの対策は、そこが解決できれば非常に大きな効果を生むと認識しています。そういう所を広く論ずるべきかなという意味ですので、現状の方法で効果が高い低いということではなく、その難問を解決することによる効果も含めているつもりです。

○門田会長 そのほかいかがでしょうか。

○田中委員 がん死亡率の低下というのは、がん対策の眼目の柱の1つだと思いますが、実際にどういう方法が効果的なのか、やはり裏付けをもってやっていく必要があると感じています。喫煙対策をはじめとする予防であるとか、検診であるとか、治療技術の向上など、いろいろなことがあるわけですが、資料4-14コマ目にも、年齢調整死亡率の推移があります。これを見ると1990年代以降、男女とも低下しています。これは何がこれに貢献しているのかをどのように分析されているのか、お尋ねしたいわけです。

 多分、喫煙率が下がったことが大きいのかなと思うのですが、では喫煙率が下がったことは、死亡率の低下に一体どのぐらい貢献しているのか、数字が出せればいいと思います。あるいはがん検診はどのぐらい貢献しているのか、医療技術の進歩はどれぐらい寄与しているのか、その辺りはどのような分析があるのでしょうか。

○北川委員 これは基本的には、総合的な効果だと思います。先ほど喫煙率に関しては門田先生が御指摘になったように、劇的に今は低下しておりませんし、全体の傾向として、皆様も御存じのように、社会の高齢化の影響もあって依然罹患率が上がっている一方で年齢調整死亡率が低下しているということは、やはり治療法の進歩と相対的な早期発見が着実にできていると思っています。

 ただし、この10年の計画の20%というところを達成するまでの劇的なものは得られていない。2007年にがん対策の目標が策定されてからの方向としては、進んでいるのではないかと考えます。

○中釜委員 これの詳しいデータは松田参考人のほうがあるかもしれませんが、日本の場合、正確な評価をするデータがない。例えばがん登録データがこれから蓄積されれば、その分析結果として一定の答えが出てくるのだと思います。例えば米国の場合、乳がんの低減率の解析等のデータを見ると、検診が10数%、それから早期のアジュバントの治療効果が何%といった具体的な数字が出てきます。そのためにもがん登録データは非常に重要だと言えます。

 現状で日本にある小規模な登録データでどのぐらい解析できるかに関しては、私も日本の事例の答えを持っていないのですが、恐らく今後は、登録情報を使ってある程度の解析ができる、その体制に進んでいると理解します。もし松田委員が追加で御意見があれば。

○松田参考人 罹患率の微増と死亡率の激減については、一応この統計的な見解で言うと、罹患率のほうはもちろん増えているがんが幾つかありますが、がん登録の精度の向上という部分は、否めないと思っております。ですので真の増加である部分と、見掛けの増加というのは、なかなか切り離せないところがあると考えております。

 それから死亡率の減少については、もちろん皆様がおっしゃったような、例えば早期発見や治療法の開発といったことも影響があるかと思うのですが、大部分は日本のがんのトップの5つに入っている胃がん、肝臓がんの罹患率が減少しておりますので、それに伴って胃がん、肝がんで亡くなる方が減っているという部分が大きな影響を与えていると思っております。

○門田会長 田中委員、よろしいですか。そのほか何か。

○湯澤委員 先ほどから予防に関して、罹患率を下げるということがあったと思うのですが、現在、各保険者のほうで、厚生労働省主体で進めているデータヘルス計画を策定して、病気の方を出さないためにはどのような事業が必要かということを考えてやられてきていると思うのです。

 今後、予防の観点からすると、そういった各保険者の組織とも連帯して、社会全体で予防の取組というか動きをしていくのも、1つの方法かなと思っています。

○門田会長 ありがとうございました。そのほかどなたかありませんか。

○事務局 併せて我が国で今行われている一次予防に関しての取組を御紹介します。一次予防につきましては、健康日本21の中で、喫煙をはじめ運動や食事などを進めることで、がんに限らずあらゆる様々な疾病の一次予防が図れると考えています。また、先ほども肝がんのお話も出ましたが、肝炎のスクリーニングと定期検査、治療費用の助成も行っており、こちらも一次予防の観点からの取組ということで御紹介したいと思います。

○門田会長 それでは北川委員、次に山口委員お願いします。

○北川委員 幾つかコメントをさせていただきます。まず中釜先生からお示し頂いた全体の方向性には私も賛同いたします。特に3ページ目ですが、今までがん治療の手段として手術療法、放射線療法、化学療法が3大治療と位置付けられていたわけですが、ここに免疫療法という第4の治療が明確に位置づけられました。これまでも第4の治療として位置づけられていたわけですが、その他の3つとは少し離れた位置にあった印象でした。しかし、ここ最近は国際的な癌関連学会において免疫チェックポイント阻害薬を中心とした検疫療法が脚光を浴びております。 一方で、免疫療法には、近年注目されているエビデンスのある治療とは別に、しっかりとした科学的根拠が示されていないものもあり、患者さんの側で誤解や混乱が生じているのが現状です。こうした混乱を避けるための情報の整理、正しい情報の発信が必要です。特に、確立された標準治療があるにもかかわらず、科学的根拠のない治療に頼ってしまい適正な治療が遅れるようなことがないよう、正しい情報をわかりやすく提供することが必要です。

 厚生労働省としてのがん対策は、当然のことながら日本国民を対象として行われていますが、日本人を含むアジア人に共通するがん研究を国際的に支援していく必要があります。国際的ながんに関する研究開発は、製薬企業が主導して、国際治験等に日本が参加する形で行われているのですが、欧米における市場原理

の影響を受け易い側面があります。学術的に中立的な見地から我々日本人を含むアジアの人を対象としたがん研究を支援する枠組みを公的な支援の中でも創設して頂きたいと考えます。

○門田会長 ありがとうございました。それでは山口委員、どうぞ。

○山口委員 現在の日本国民12,000万人を大きくがんという視点で分けると、500万人ががんと診断された人々、いわゆるがんサバイバーになり、残りの11,500万人が現時点ではがんにはかかっていない方々と、まず大きく分けることができると思います。500万人に関しては、診断の時点では3割が65歳以下、3割が6574歳、4割が75歳以上で、ライフステージという観点からいくと、このように分かれると思います。

 今までの議論も含めて、門田先生がおっしゃったように、これまで500万人のがんサバイバーの方々についてしっかり議論されてきたし、1次、2次の計画でもしっかり書かれてきたと思うのですが、拝見していてやはり11,500万人に対する観点、すなわち予防と検診になりますが、今回の3次でより積極的に記載していくことが望ましいと思います。なぜかというと、その11,500万人の約半数はいずれがんと診断されるわけですのでこの対策は極めて大切だと思います。

 具体的に言うと、予防の所で煙草は必ず出てきますし、今回も強く強く主張せねばならないと思いますが、一方で、加速化プランのときの議論で私はかなり主張させていただいたのですが、ピロリの問題と胃がん、肝炎ウイルスと肝がん、HPVと子宮頸がんのHPVなどは政策型がん検診ではまだエビデンスがないのですが、リスク評価という点では、この3つのがんに関してはかなり確実にやれるようになったし、薬剤もできたという状況があると思います。

 ですので、煙草に加えて予防的観点から言うと、感染症対策は多分この第3次の重要な課題になると思います。一部は加速化プランの所で主張させていただき、プランの中に取り入れられています。

 がん検診はなかなか難しい問題をはらんでおりますが、これもやはり早期に発見できれば9割以上は完治するわけですから、絶対に落としてはならない視点です。ですから、今、健康と思われている11,500万人に対するリスク評価、それから予防、検診、これを今回は充実させる必要があると思いますし、一方、がん教育の問題が議論に出ていないので、その教育ということを学生だけではなくて、11,500万人全てを見渡したがん対策の視点からの啓発活動の強化が一番大切な課題だと思います。

 したがって、今議論されている方向性には全く賛成です。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。一億人以上を対象としてというような話ですが、言われてみるとなかなか大きな話だという感じがしますね。どなたかほかにありますか。

 それでは、今回の将来を見据えたうんぬんというようなことから、ある意味、発がん過程のいろいろな攻め方はあるにしても、そこに1つの大きなポイントを置いて、次の基本計画をまとめていくという方向については、委員の皆さん大体よろしいのでしょうか。ありがとうございました。

 それでは、この件についてはこのぐらいにして、その次にいきたいのですが、今日は3時間という予定で、このままいけば2時間ぐらいで終わるかも分かりませんが、予定どおり10分の休憩を取りましょうか。続けていきましょうか。では、3時間という予定ではありましたが、それを目途に進めたいと思います。

 それでは引き続き、がんに関する研究開発について、それからがん登録についてという議題で、まずがんに関する研究開発について、資料5に基づいて事務局から説明をお願いします。

○がん対策推進官 資料5、がんに関する研究・開発についてです。まず、がん研究について説明申し上げます。2つ目のスライド、がん研究戦略のこれまでの経緯です。昭和59年から対がん10か年総合戦略が始まり、その後、がん克服新10か年戦略、第3次対がん10か年戦略と続き、現在は平成263月から、がん研究10か年戦略が展開されております。また、併せて平成26年からは健康・医療戦略推進法が成立したことを受けて、医療分野研究開発推進計画も飲み込みつつ、現在ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトを進めているところです。

3枚目のスライド、第2期のがん対策推進基本計画におけるがん研究に関する記載ですが、現状として、複数の関係省庁による評価や予算の重点化が行われていること、また日本発の創薬や機器開発が遅れていることといった指摘、あるいはこうしたことから省庁間連携、また更なる戦略的・一体的な推進が求められているところです。こうしたことから取り組むべき施策として、基盤の整備、基礎研究の更なる支援・充実、橋渡し研究などへの支援の拡充といったことが求められております。

 次のスライドです。先ほど経緯の所で説明申し上げました平成263月から進められております、がん研究10か年戦略の概要です。こちらは根治・予防・共生を目指して、患者・社会と協働するがん研究といったテーマで進められており、今後あるべき方向性として、研究開発において重視する観点として、がんの根治を目指した治療、がん患者とその家族のニーズに応じた苦痛の軽減、がんの予防と早期発見、がんとの共生、こうしたことを中心に様々な研究が進められているところです。

 また、その下のスライド、ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトは、平成28年度予算額で167億円を計上し、進められている研究です。こちらは文部科学省の次世代がん医療創生研究事業、厚生労働省の革新的がん医療実用化研究事業、経済産業省の未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業、こうしたものを有機的に連携した上で、様々な医療を実用化するといったプロジェクトです。

 次ページです。こうした研究開発に加えて、がん政策研究事業として、平成28年度予算額33,600万円余で行っております、がん対策推進基本計画の目標達成のため、充実したサバイバーシップを実現する社会の構築であるとか、がん対策の効果的な推進・普及のための研究を推進するものです。平成28年度の研究では、がん検診の質の向上に資する研究とか、がんと診断された時からの緩和ケアの推進に資する研究といったものを実施し、がんによる死亡者の減少、全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上、がんになっても安心して暮らせる社会の構築、こうしたがん対策推進基本計画の目標を達成するための研究を進めているところです。

 こうした取組の結果ですが、基本計画の中間評価におけるがん研究における記載については、7枚目のスライドにあるとおり、若手の人材を積極的に育成することとか、正確な情報を積極的に公開すること、環境を整備する必要があること、国際共同研究等、国際連携を視野に入れた研究開発を推進する、こうしたことが更に推進すべきこととして挙げられているところです。

 また、8枚目のスライドですが、がん対策加速化プランにおける記載です。実施すべき具体策として、基礎から実用化までの切れ目のない一体的な研究を推進すること、難治性がん、小児・AYA世代のがん、高齢者のがん、希少がん等の研究開発に対する支援を充実させること。また、がん研究に関する情報を国民やがん患者に対して積極的に発信することなどが示されているところです。また、このがん対策加速化プランへの提言で、次期計画策定時に検討すべきこととして、がん研究のところでは、がん研究の立案・評価体制・啓発への患者参画、また標準的治療の開発・普及という項目の中でも、後期高齢者などにおける治療の差し控えに関する検討やビッグデータ解析による治療法と治療成績の解析研究の促進といったものが挙げられているところです。研究については以上です。

 次ページです。医療品・医療機器の早期開発・承認等に向けた取組です。こうした取組については、第2期のがん対策推進基本計画においては、当時の現状として、国際水準の質の高い臨床研究を行うための基盤整備が十分でない、がんの集学的治療開発を推進するための研究者主導臨床試験を実施する基盤も不十分であるといったことから、取り組むべき施策として臨床研究中核病院の整備、人材育成、更にはPMDAの体制強化、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」の定期的な開催といったことが求められておりました。

 次ページです。12枚目のスライドが医療法に基づく臨床研究中核病院の概要です。日本発の革新的医薬品・医療機器等の開発を推進するため、国際水準の臨床研究等の中心的な役割を担う病院を臨床研究中核病院として医療法上に位置付けられたもので、平成274月に施行されたものです。平成288月現在で、国立がん研究センター中央病院や国立がん研究センター東病院をはじめ、8つの病院が承認されております。こうした病院では、被験者が集まり症例が集積されること、優れた研究者等の人材が集まること、他の施設からの相談や研究の依頼が集まるといった効果が期待されているところです。こうした病院での革新的な医薬品等の実用化の促進が望まれているところです。

 また、13枚目のスライドですが、「医療上の必要性の高い未承認薬・適応外薬検討会議」です。こちらは医療上必要な医薬品や適応(未承認薬等)の解消のため、医療上の必要性の評価、承認のために必要な試験の有無や種類の検討を行う会議です。現在、第IV回として随時募集の形で要望を募集中ですが、重篤性が高い、あるいは医薬品が医療上の有用性が高いといったことを、学会や患者団体から御要望を頂き、医療上の必要性を評価して、企業に対して開発を要請するといった会議です。

 次ページは14枚目のスライド、人道的見地から実施される治験実施の流れです。日本版コンパッショネートユースとも言われるものですが、今ホームページ等に治験情報が載せられているわけですが、これを御覧になった患者や主治医の先生が、治験を実施する企業に対して参加を打診する。これで拡大治験が実施されればいいのですが、実施されない場合であっても、厚生労働省の未承認薬検討会議などで、制度に該当するかどうか、要は生命に重大な影響がある重篤な疾患か、治療法に有効なものがないものかどうかを検討した上で、企業に対して拡大治験の実施の検討を要請できるようなスキームです。

15ページですが、患者申出療養の創設は、国内未承認の医薬品等を迅速に保険外併用療養として使用したいという患者の思いに応えるため、患者からの申出を起点とする新たな保険外併用療法の仕組みとして創設されたものです。患者からの申出に係る相談を受けた場合、患者から国に対して申出を行い、患者申出の実施まで、原則6週間で審議を行って、そういったものを認める仕組みです。

16ページは、先ほど申し上げたような様々なスキームを利用するために、どのような形で確認をしていくのかというイメージです。

 最後に、17ページのスライドは、基本計画の中間評価の取組「医薬品・医療機器の早期開発・承認等に向けた取組」に関する記載事項です。2013年の段階で、がんの第I相試験(早期開発)及び第III相試験(標準治療の検証試験)の実施数は、それぞれ第I相は85件、第III相は79件であったというものです。また、ドラッグラグについては、申請ラグ、審査ラグともに2012年から2013年にかけては減少傾向にあります。さらに、アンメットメディカルニーズにおいても、こちらでは第1回、第2回の要望の概数がお示ししてありますが、こういったことで現在、承認が進められているということです。

 がん対策推進協議会として、更に推進が必要と考えられる事項として、アンメットメディカルニーズに応える新規薬剤開発に関する研究や、患者に優しい新規医療技術開発に関する研究等を推進すること。また、早期承認に向けた効率的な研究開発を推進していくことが重要といった事項が示されているところです。説明は以上です。

○門田会長 ありがとうございました。この研究開発のこれまでの取組をまとめて御報告していただきましたが、どなたか御質問なり御意見はありますか。

○宮園委員 がん学会との関連もありまして、少し発言させていただきます。まず、最近のがんの教科書を見ると、ゲノムの研究が進んだお陰で、教科書そのものが大きく変わってきたという印象があります。肺腺がんなどを例に取りましても分かるとおり、これまで形態で見ていたものがゲノム情報が分かることによって、病気そのものが大きく分類が変わってくるような時代になっており、そういう意味ではAMEDをはじめ様々な所から、ゲノム医療に関して御支援を頂いていること、大変有り難く思っております。

 一方で、やはりゲノム医療と言いますと、単に研究者、あるいは医師だけではありませんで、遺伝カウンセラーの方々の御協力、あるいは倫理面、それから看護系の大学、あるいは保健系の大学も含めて、幅広い方々の御協力の下に、人材育成を含めて、これから対応していかなければいけないということで、私どもも非常に深い興味を持っておりますが、是非、今後も御支援いただきたいと思います。

 もう1点は、がん学会などでも非常に大きな話題になっておりますが、先ほどちょっと話題になりましたが、がんの治療はこれまでの手術、抗がん剤、放射線療法に加えて、第4の柱として免疫療法が加わってきて、特に免疫チェックポイント療法が加わったお陰で、本当に何割かの患者さんですが、劇的に効く場合がある。その場合に、劇的に効く方はどういう方が効くのか、あるいは今2割から3割の方に効いているのが、どうやったらもっと多くの方に免疫療法が効くようになるかということが大きな話題になっております。日本も含めてですが、海外の学会に行きますと、免疫療法に関して非常に活発な議論がなされており、私どももがん学会をはじめ、いろいろな所で免疫療法の研究を日本でも活発化していこうということで議論しておりますが、更にこういった努力を続けていきたいと思いますし、関連の皆様にも御支援いただければと思います。

 最後に、AMEDができまして、橋渡し研究、あるいは応用に関する研究が非常に盛んになってまいりましたが、一方で基礎研究がどうしても手薄になりつつあるというのは、がんの研究者の間で大きな懸念事項となっております。例えば先ほどの免疫チェックポイント療法のPD-1は、1992年に京大の本庶先生のグループが見付けられまして、薬になるまで20数年掛かって実用化されたということで、現在、基礎研究の中でも非常に有望なシーズがあったり、これから見つかってくるようなシーズもあるかと思いますので、基礎研究もがん学会を含め、いろいろな関連の研究者の間で支援していきたいと思っておりますので、今後も御協力をお願いいたしたいと思います。以上です。

○中釜委員 今の話題と少し離れるのですが、先ほどの説明の資料5の中の最後の17ページの計画の中で、これほどまで見事に問題点が解決されたというのは、政策として具体的に非常に大きな成果だと思います。あえて私が追加発言する必要はないかもしれませんが、例えば6ページのがん政策研究事業は総額3億円という限られた財源の中で、様々な重要な政策的な課題を研究事業として提案されていると思うのですが、一方でこういう政策的な課題解決型の事業提案の最終的な目標は、アウトカムをきちっと上げることであろうかと思うのです。そうしたときに、ここに複数の7つぐらいの重要な事業があるのですが、各々の研究の中での課題の解決策だけではなく、出てきた解決策の実際の有用性を検証するであるとか、最終的なアウトカムをきちっと出していく必要があると思います。先ほどのドラッグラグはそうなのですが、そのためには、ちょっとした事業間の連携などによって、より相乗的な効果が出るのだろうと思うのです。事業単体として委託する、そういうものだけではなく、事業間の連携を図ることによって、限られた資源の中で、より大きな効果が出るのかなと思います。例えばがん登録のデータベースの活用、これと検診は恐らく密に連携するでしょうし、そこに医療の現場にいる臨床医が入ると、具体的な提案につながる可能性もあると思います。そういうところは今後、是非、検討していただければと思います。

○大江委員 お手元に参考資料等もあると思いますかもしれませんが、がんの研究の開発で、特に新薬の開発について述べたいと思います。現在、新薬はグローバル企業が開発してくるものが非常に多くて、国内の企業が開発するものもあることはありますが、多くはグローバル企業が開発してきます。その理由は、圧倒的な資金力だと思うのです。グローバル企業が年間にがん領域の研究開発に使っているのは、1企業で大体2,000億円とか、そのぐらいの規模の研究費です。これは人件費込みなので、国内のAMEDなどの研究費とは同じ比較にはなりませんが、人件費を込みにすると、年間2,000億円規模の資金をグローバル企業が開発に使用している。そうすると、そういう圧倒的な物量から、グローバル企業が新薬を開発してくることのほうが多くなっていますので、ドラッグラグを回避するには、グローバル企業の開発に我々が付いていかなければいけないということです。その為には一番は、開発のときの最初の段階のフェーズ1試験、いわゆるファースト・イン・ヒューマンと言われる、初めて人に投与する段階から、我々が研究に関わっていく必要があるわけです。

 現在、先ほどの臨床試験中核病院で、がんセンター等がそういうことをできるようにはなってきていますが、まだまだそれが十分ではないと思います。特にグローバル企業と一緒に開発する場合には、フェーズ1の早い段階ですので、月に何回か電話会議をして、各国のいろいろな研究者とやり取りをしながら開発をするということで、医師のみではなくて、CRCなどに関しても、国際的に通じる人材育成が必要になってきます。国際的な人材確保には、それに見合っただけの手当てが必要になるという問題があるので、そこはまだまだ弱い点と思います。

 国内からの創薬は非常に大事で、国内から画期的な薬が出るということは経済的にも良いことですし、日本が研究面でも優位に立てます。国内からの創薬は絶対、後押しをしなければいけないと思います。産・官・学、国内企業等、いろいろな連携、必要によっては規制緩和等で、国内からの創薬の推進をしていく手立てが非常に重要と思います。

 新しい薬ができたら、それで全て臨床での問題が解決しているかというと、そうではなくて、新しい薬ができても、それをどのように使っていくかというのは、その後、我々医師がJCOGなどの臨床試験で調べていかないといけない。例えば薬だけの効果ではなくて、それをいろいろな集学的治療にどのように組み込むべきかとか、高齢者にどう使っていくとか、合併症のある人にどう使っていくかというのを、医師が自主研究で調べて、それで一般臨床で広く使われるようになるわけです。そういう臨床試験グループは国内にいろいろありますが、特に公的資金でサポートされている臨床試験グループをもっと活性化する必要があります。製薬会社のサポートで臨床研究をやると、どうしても製薬会社の意向に沿った試験にしかなりませんので、公的研究グループのサポートが非常に大事ではないかと思います。

 この先、恐らく多くの薬はドライバー遺伝子を標的とした薬か、若しくは先ほど来お話にあるようなデータに基づく免疫療法、しっかりした免疫療法の開発、恐らくこの2本柱になってくるのだろうと思います。ドライバー遺伝子を標的とした薬に関しては、1つはやはりコンパニオン診断薬で、11の診断をしていくというのはもう時代遅れです。幾つもの遺伝子診断を一遍にできるような形で承認をするという方策が必要になると思います。

 ゲノム医療を考えるときに、遺伝情報は非常に大事ですが、多くのドライバー遺伝子の情報は決して遺伝情報ではなく、がん細胞の遺伝子異常の情報だけです。これは実は遺伝はしないものが多く、中には例外がありますが、基本的には遺伝はしない。そこをしっかり切り分けて情報管理等をしていただかないと、研究に対する大きな足かせになりかねないことは非常に危惧するところです。

 免疫療法に関しては、先ほど来、話がありますように、トランスレーショナルリサーチ、いろいろな研究をしながら開発していくことは非常に大事になると思います。一般国民に対して、もう少し情報の整理と啓発、いまだに免疫療法は余り副作用がないと思われている方も多かったりということもありますので、そういうことが非常に大事になってくるのではないかと思います。

○桜井委員 私のほうから、やはり患者としては副作用が小さく、若しくは副作用を抑えるようなものを望んでいきたいということは思っております。そう考えたときに、6番のジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトの中にあるゲノム情報、それから先ほども先生方のほうからお話がありましたように、それを使った場合に、どういう結果が出てきたのかという臨床の結果とを照らし合わせるようなことがない、つまりパイプラインをつなげないと、それぞれのデータが生きてこないと思っています。ですので、この両者を橋渡ししていくというのが、いわゆるTRだけではなくて、臨床の現場までつながるような、メディカルゲノムセンターみたいな拠点が必要なのではないかと思います。

 もう1つは、副作用を抑えるという部分では、今これは革新的な新薬と、新薬、新薬と来ていますが、もう1つ支持療法の部分です。就労の調査をしても、患者さんたちは副作用で非常に苦しんでいます。後遺症でも苦しんでいます。ここを押さえるような支持療法の開発という部分も、私は取り組んでいただきたいと思います。

 最後に、スライド6の部分ですが、がん政策研究事業があります。これは中釜先生もおっしゃいましたが、事業間の連携はものすごく大切だと思っております。と同時に、これは患者さんの目線がものすごく重要になってくると思いますので、このそれぞれの研究の中にどれだけ患者さんたちが参加しているのか、若しくはこの結果、あるいは内容に対して、患者さんがどのような意見を持っているのかという、いわゆるpatient reported outcomeのようなものも、これからの視点としては大切なのではないかと思います。中釜先生には先ほどの臨床応用との橋渡しは大切だと思うのですが、国がんのほうでどのようにお考えなのかを。

○中釜委員 その点において、資料のスライド5のこの図ですよね。ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトの右下に書いてある臨床ゲノム情報統合データベース整備事業は、ゲノム情報と診療情報をつなげて、実際に診療の現場で使える情報をストレージするというものです。そういう知識ベースのものを作り込もうという話ですので、これは正に今、桜井委員が指摘されたようなところで動いていると思います。それが非常に重要であると思います。

○馬上委員 今、大江委員がおっしゃっていたことについて、一般国民へのがん研究の情報公開という点で、随分前のがん対策協議会でも、すごくそのことが話し合われていたと思うのですが、一般国民はがん研究でどのようなことが行われていて、どのような方向に向かっているかということがほとんど分かっていなくて、臨床試験が公開されているので、そこに行って臨床試験していただきたいとか、そういうところにとどまっていると思うのです。今後、個別化医療とかゲノム医療が進むに連れて、研究自体がどんどん複雑化していくと思うのです。そういったことに関しての啓発はすごく大事だと思うので、がん研究の全体像とか、日本の研究がどこに向かっているかということを是非、わかりやすく公開していただきたいと思います。

 あと、患者意識調査です。政策研究の所で、患者の実態について全体像が把握されていないのではないかと思っています。そこのところを強化していただきたいと思っています。意識調査だけでなく、QOL研究もお願いしたいと思います。

○中釜委員 先ほど桜井委員の質問に一部お答えしていなかったのですが、メディカルゲノムセンターのような拠点的なものに関しては、ゲノム情報に基づいた医療提供体制をどのように持っていくかという議論の中で、今後、構築されていくのだろうと思います。その際には、ある程度の集約化、拠点化をいかに均てんの方向で持っていくかというところが重要になってくると思います。

○檜山委員 大江先生のお話はごもっともなのです。私も国際共同治験を少しやらせていただいていると実感するのは、アンメットニーズの話もあるのですが、いざ治験に入った段階が遅くなると、アジア人がどれぐらい治験に入っているのかということが1つ問題になってくるのと、我々が小児をやると、小児は何人いるのということがPMDAで必ず問われてくるので、もう一回、フェーズ1に返るということをしないと、日本では恐らく承認していただけないということになるのです。ここは1つのドラッグラグの原因になっているのかと思うので、大江先生が言われるように、早めに、とにかくフェーズ1が始まる辺りから我々が関与していないと、欧米と一緒に薬剤を開発してくるということをしない限りは、恐らくドラッグラグは解消できないのかなと。特に今グローバル企業がやっていて、日本の企業がやってくれればいいのですが、そんなことはほとんどないので、今そういう状況なので、そこをどうやってアジア人をとにかくコミットさせて、早くから治験に入り込ませるかというシステムを研究開発段階で考えないと、そういう意味でいけないのかなと思って、臨床研究中核病院を是非、国際研究に対応できるような形にしていただきたい。

 もう1つは、小児を早めにその中に入れておいていただくということを我々としてはお願いしたいので、どうしても小児は取り残されていて、欧米では小児を治験の中に取り込むことによって、開発企業にメリットが得られる仕組みが治験の中に組み込まれています。それだけ企業に対してアドバンテージを入れるというシステムが入っているわけです。日本も、小児をアジア人と同じように早くその中にコミットさせることによって、小児だけを別に治験扱いする必要はなくて、小児に対してもその薬が早めに使えるというシステムが出てくるので、そういうことを考えていかないと、ある意味でドラッグラグが解消できないのかと。そういう意味の研究開発という方法を考えていただきたいと思っています。

○門田会長 そういう話になりますので、この協議会がその辺りのことを、これはどこに持っていくのですか。我々がここで決める大きな方針と、そういう本当に細かな対策、具体的なやり方うんぬんというのは、これはどこの役割分担になるのですか。

○がん対策推進官 事務局です。そういったところはこちらでも、我々の中でまた検討した上で共有していきますし、このところは先生方には今後がん研究がいかにあるべきかということを御議論いただければ、あとは我々のほうでそういった当局と相談しつつ進めていけるのではないかと思います。まずは今回、計画をいかにするかと、ちょっと大きな話でもありまして、それを今後、実行に移していく際にどのようにしていくかということをまた御相談しつつ、我々のほうでも役割分担しながら進めていきたいと思っています。

○門田会長 そうすると、思うところがあれば、どんどん発言しておいていただくということでいいですか。

○がん対策推進官 はい。

○門田会長 1つだけ、前にも発言したことがあるような気がするのですが、AMEDが立ち上がって、AMEDの研究と、がん政策研究事業という厚生労働省の政策上の研究と、前のときもAMEDのディスカッションが始まる前後に、社会医学系の学会の人たちが、これでは社会医学系のところの研究費がどこにどうなるか分からないということで、結構、反対するような意見書か何かが出たような記憶があるのです。その社会医学系の研究というのは、今の体制で言うと、政策研究とも違うでしょうし、AMEDの具体的な成果というか、あれを出していくというところとちょっと違うようなものは、今の体制ではどう考えられているのですか。ちょっと気になる。

○事務局 事務局です。資料のスライド4がん研究10か年戦略の概要を御覧ください。まず、具体的研究事項が8項目、下の段に(1)から(8)で掲げられておりますが、大まかな役割分担としては、(1)から(6)を主にAMEDのほうの革新がんで進める、(7)(8)を政策研究で進めることとしております。完全に区切れるものではないのですが、大まかにこういった役割分担です。社会医学的な研究についても、課題はあるとは思いますが、現時点では政策側で拾うといった方針になるかと存じます。

○門田会長 聞き取りにくかったのですが、体制上、今、大きく2つに分けられるけれども、それを政策研究のほうに入れるとおっしゃったのですか。

○事務局 そうです。課題をどちらで採択するかと言えば、政策側で採択することとなります。

○門田会長 そうしたら、いわゆる政策上の研究と、そうではなくて政策とは直接関係ない社会医学系の研究、社会医学としての研究ということも、政策研究として研究費が出る可能性はあるという表現になるわけですか。

○事務局 政策上の優先順位はつきますし、予算も限られてはおりますが、整理としては政策研究で拾うこととなります。

○門田会長 だから、全く自由な社会医学的な研究が進む道というのが大丈夫かなというところが、今の仕組みだとちょっと気になるのですけれども。私自身もよく理解できていないから、問題提起になるのですが、それは一度。

○中釜委員 確認なのですが、今の門田会長の御質問は、例えばサバイバーシップの問題、そういう社会的な問題も、実は研究的な側面は多分にあるというご指摘と理解いたしました。医療経済もそうだと思うのですが、社会の中で、がん患者、あるいはがん医療、がん全てを考えたときに、社会医学的な視点での課題設定と、それの問題解決のための事業は非常に重要であり、恐らく欧米ではかなり進んでいる領域かと思うのですが、日本では余り立ち上がっていない。その辺りをどのように考えておられるか。今のこの政策研究事業の中を見渡しても、課題としては非常に重要なのですが、今言ったような広い視野での社会医学的な考察は、なかなか手を挙げにくいのかと理解したのですが、そういう理解ですよね。そういう質問だと思います。

○がん対策推進官 今このような形で御指摘を頂きましたので、また政策研究の課題、テーマの示し方についても、こちらのほうで検討させていただいて、そういったより視野の広い研究を受けられるような形にして進めたいと思っております。

○門田会長 よろしくお願いします。そのほか、研究開発について、何か御意見はありますか。

○田中委員 資料について質問なのですが、資料5のスライド9、「がん対策加速化プランへの提言」についての事項で、参考(2)標準的治療の開発・普及とある中の最初に、「後期高齢者などにおける治療の差し控えに関する検討」というのがありますね。これはどういういきさつで、こういうことが課題になって、具体的に差し控えというのは、どういうことを想定しているのかを教えていただきたいのですけれども。

○事務局 事務局です。がん対策加速化プランへの提言が参考資料ファイルの5に当たりますが、昨年年末に、がん対策加速化プランの提言を頂いた際に、本協議会の委員から頂いた御意見の1つです。参考資料5の一番最後の項目になるのですが、本資料の23ページ、標準的治療の開発・普及に関する事項で、委員から頂いた意見ということで、こちらに書かせていただいております。

○田中委員 それだけではよく分からない。何か背景があるわけですか。要するに余り高齢の人に対するがん治療というのはいかがなものかと、そのような指摘なのでしょうか。

○がん対策推進官 申し訳ございません。こちらはこの項目だけをお示ししている形で残っておりますので、議事録を当たってみないと、その前後の状況については今、確認できませんので、またそこはこちらのほうで確認をして、御報告したいと思います。

○桜井委員 確認になります。先ほど門田先生のほうからもお話がありましたが、いわゆるサバイバーシップ研究ですとか、支持療法という部分に関しては、次回お返事がいただけると。どちらの領域に入るのかというのは、お答えいただけるということですか。

○門田会長 次回までに答えが出るか、検討を更に進めるか。

○がん対策推進官 御指摘の点、もう一度よろしいでしょうか。つまり支持療法という研究が、政策研究か革新がんか、どちらかということですか。

○桜井委員 どこがやるのかということです。サバイバーシップ研究は、先ほど中釜先生のほうからも御指摘があったと思うのですが、例えば運動して副作用を軽減するとか。

○がん対策推進官 支持療法に関する研究についての一部は、既に革新がんのほうでテーマとして挙げさせていただいていますので、そちらのほうで採択というか、申請を含めて行われているところと理解しております。AMEDのほうです。こちらではなくて、スライド5の赤い部分、革新がん医療実用化研究事業の中で受けているものと理解しております。

○山口委員 おっしゃるとおりで、支持療法は昨年度ですか、AMED関係で募集され、10テーマの研究を想定したところ、確か5テーマが採択されて、現在それが進行中だと思います。例えばがん患者の栄養の問題とか、今そういうことの研究が開始されています。関連して、門田先生や中釜先生がおっしゃったとおりですが、これまで私たちが実施してきた調査研究を受け入れていただく研究分野が狭まっています。皆さんに見ていただいたがん体験者の悩み負担という研究も、最後は研究費が取れず県費を使って完成させたという状況があります。やはり門田先生がおっしゃったとおり、社会医学的な問題は非常に幅広いので、テーマを決められてしまうとなかなか応募できないという状況が生まれます。その辺を少し配慮していただくと、患者にはメリットが大きく、同時にいろいろな分野の方がこのがん対策に参加する良いきっかけになりますので、お二人と同じように是非お願いしておきたいと思います。

○難波委員 様々な研究治療の場面で患者の意見が必要とされてくる中で、今後、患者の現状、意見を集約するための患者を中心とした検討会を設置されたらどうかと、今回、提言書の中に書き加えさせていただきました。がん登録の中で、数値的な現状はおよそ今後、明らかになってくるとは思うのですが、数字に現れてこない患者の現状を把握するためにも、何らか集約するような検討会があるといいなと考えております。

○門田会長 そろそろ研究開発を終わりにして、その次のがん登録のほうに移りたいと思います。この件について、今年1月からがん登録の法律が施行されて、動き出しているということですので、本日は冒頭に御紹介がありましたが、柴田参考人から現状を報告していただきたいと思います。お願いいたします。これは事務局から前もって説明がありますか。

○がん対策推進官 もし御休憩を取るようでしたら、今のタイミングがよろしいかなというのが1つありますが、いかがでしょうか。

○門田会長 このまま続けます。この柴田参考人の前に、事務局のほうから何かありますか。

○がん対策推進官 柴田参考人のお話の前に、事務局から、がん登録に係るがん登録法をはじめとした背景について御説明させていただきます。資料6を御覧ください。

 平成2512月に成立した「がん登録等の推進に関する法律」というものがあります。こちらは、がん医療の質の向上等、国民に対するがん・がん医療等・がんの予防についての情報提供の充実その他のがん対策を科学的知見に基づき実施するものです。

 スライド2です。全国がん登録の仕組みとして、全ての病院とお手挙げいただいた診療所から、がんに関する罹患の情報を都道府県に対して届け出ていただき、市町村から来る死亡情報と突合した上で国(国立がん研究センター)の全国がん登録データベースで整理するというものです。

 その利用等の限度については、国・地方公共団体等のがん対策に必要な調査研究のための利用・提供、さらに、がん医療の質の向上等に資する調査研究を行う者への提供といったものに限られ、こうしたことは有識者の会議の意見聴取などで確認されるというものです。

 スライド3です。全国がん登録の経緯ということで、平成2512月にがん登録法が成立し、平成266月には厚生科学審議会がん登録部会が設置されました。平成279月には法施行令及び法施行規則の公布がなされ、平成281月から法が施行され、国立がん研究センターにがん登録センターが開設されました。

 がん登録等の情報の活用につきましては、国・都道府県等においては、がん対策の充実、医療機関への情報提供、統計等の公表、患者等への相談・支援、また医療機関においては、患者等に対する適切な情報提供、がん医療の分析・評価等、がん医療の質の向上に資するものです。

 こうした情報が国民への情報提供を充実させ、がん医療の質の向上等を図り、がん対策を科学的知見に基づき実施する基となるものとなるということです。

○門田会長 お待たせしました。柴田参考人、よろしくお願いいたします。

○柴田参考人 国立がん研究センターがん対策情報センターのがん登録センターの全国がん登録の分析室を担当しております柴田と申します。よろしくお願いします。本日は、全国がん登録情報がどのような特徴を持つものなのか、その特徴を生かしてどのように活用できるのか、地域個別の課題の発見と政策立案を例にお話したいと思います。残念ながら2016年から開始した全国がん登録情報は、早くても2018年末に最初の統計が出る予定です。したがいまして、今日のお話は、今まで率先して地域がん登録事業を行ってこられた地域での活用のあり方を事例にお話をさせていただくことになります。今後全国がん登録で、全ての都道府県でこれまで積み重ねられてきた地域がん登録の知見を活用されるようであれば、全ての県でこのような対策を立てていかれるというような視点でお話を聞いていただければと思います。

 全国がん登録情報の特徴は大きく4つございます。まず、日本のがん患者が全員登録されること、同じ定義で、がんの発生部位の分類で約800、病理組織の分類で約2,000の組合せで登録されること、病院間、県間を越えて、診断から初回治療までの一連の情報を持つ、これまでになかった唯一のデータソースになること、公的な生存確認情報を持つこれまでになかった唯一のデータベースになることです。

 これらの特徴は、地域個別の課題の発見や対策に活用することができます。例えば左上の図ですが、がんの死亡のリスクには地域差があることが分かっております。先日も二次医療圏別に標準化死亡比を見ても、死亡率に差があることが公表されたばかりです。その原因が、がんのかかりやすさにあるのか、がんにかかりやすい理由は何であるのかということが、今後全国がん登録情報を分析することで分かってくることです。

 また、これまで実態がよく分かっていなかった希少がんについても、これまでは日本全国レベルでも正しく数を把握できているかが難しい状況でしたが、これを地域のレベルで正確に分かるようになります。地域個別のがんの課題が発見されて、対策が行われるようになりますと、ひいては医療の質の向上につながることが期待されます。

 地域固有の課題はがんの統計の分析によって発見することができます。先ほど、大きな日本全体の年齢調整罹患率と死亡率の年次推移の評価について御検討していただいたところですが、これはその見方です。

 まず、縦軸が死亡率です。死亡率というのは、二次予防と三次予防の指標です。罹患率というのは、大きくは一次予防の指標になっています。

 例えば、ある県で死亡率がほかの県と比べて高かったり、時系列で見て増えてきていたりということが分かった場合、まずはそのがんの罹患率を確認することになります。その罹患率も、ほかの地域と比べて高かったり増えている場合、この9つの窓で言いますと、一番左上になります。その場合は、残念ながらがんのリスクが高い状態に、その地域はあるのではないかと考えられます。また、罹患率はほかの地域と比べて大差なかったり、増加をしていないような場合は、この表でいくと死亡率は増加、罹患率は変化なしの真ん中の所です。その場合は、過剰診断の可能性があります。あるいは、がんの診断技術が突然よく見つけられるような診断技術が出てきて、一過性に罹患が増加しているように見えるという可能性もあります。本当に、あるがんの死亡率が高くて、罹患率は減少しているような場合は、その県において有効ながん検診が行われて、早期発見が進んだことで生存率が向上したのかもしれませんし、又はそのがんの治療成績そのものが向上して、その結果に反映しているということも考えられます。

 このように、この表は大雑把に罹患率と死亡率について組み合わせて見る場合の評価の参考にしていただくためのもので、実際に評価・分析していくときには、その下に記載しているような見掛けの要因等も考慮して行っています。先ほど松田委員から、日本におけるがんの罹患率・死亡率の動向の分析結果をお話したところですが、いろいろな要素を踏まえた上での結果です。

5ページ目のスライドです。次に、従前の地域がん登録情報を活用し、このように地域個別の課題を発見して、がん対策につなげた事例が最近ありましたので、御紹介いたします。佐賀県では2015年に、2014年の子宮がんによる死亡率が全国最下位であることが分かり、問題になりました。佐賀県のがん対策担当が、子宮がん検診受診率は自分の県はほかの都道府県よりも高いはずなのになぜだろうと、まず考えたそうです。また、それで、がんの診療拠点病院の医師にもどう思うかをお尋ねしたところ、子宮がん死亡が多いという認識は、佐賀県の医療者は特に持っていないというようなお答えだったそうです。ということで、きちんと統計を見直していこうということになりました。

 まず、子宮がんは体がんと頸がんの総称ですので、どちらの部位のがんの死亡率が高いのかを確認しました。すると、体がんはほぼ全国と同じ死亡率なのに対して、子宮頸がんの死亡率が近年高くなってきているということが分かりました。先ほどのマトリッスでいきますと、死亡率が増えているというときには、今度は罹患はどうなのだろうと見るのがセオリーです。佐賀県は歴史の長い地域がん登録事業を行っておりまして、このような統計を見られる状態でしたので、子宮頸がんの罹患が近年多くなっているということもすぐに分かりました。

 その次に罹患率がこのように急に高くなってきた場合、それが検診受診者が増えて、検診発見がんが増えた結果である場合ということもありますので、最近の検診の受診率等の推移を評価しております。左側の2つが検診受診率に関する統計です。このように、検診受診率については大きく2つの統計がありますが、どちらの統計を見ても、近年特に佐賀県の検診受診率が高くなってきているというわけではありませんでした。また、検診受診率そのものも、国民生活基礎調査の結果では50%を切る40%ぐらいのもので、罹患率の大小に大きさを与えるほどの検診受診率でもないということが分かりました。

 次に、死亡に影響を与える要因として、発見時の病期というものがあります。こちらについては、地域がん登録情報の中にありますので、それを見てみたところ、佐賀県は全国と比べて子宮頸がんについての病期分類の早期から23段階目に当たる「領域」で見付かっているケースが多いということが分かりました。

 続きまして、一番右下のグラフで、生存率です。データソースとして、全国値は全国がん罹患モニタリング集計を使っていますが、佐賀県でまだ生存率を地域がん登録で出せておりませんでしたので、こちらはがん診療連携拠点病院の院内がん登録全体の統計を出しております。こちらでの比較をしますと、生存率については、全国レベルと大差はないということが分かりました。

 以上で、佐賀県で子宮がんの死亡率が2014年全国最下位であった原因を究明するための材料はそろいました。直接的な原因は、子宮頸がんの罹患者が多いということでした。ここで罹患の多い原因を究明できればよかったのですが、こちらのスライドに挙げているように、子宮頸がんの罹患リスクにはヒトパピローマウイルスの感染ですとか、そこに挙げているようなものがあるのですが、こちらのようなリスクの統計と罹患の統計の複数の統計があれば、相関分析のようなことをして、佐賀県ではどの要因が利いて、子宮頸がんリスクが高くなっているのかということの分析が可能なのですが、今のところ、日本全体の罹患統計がありませんでしたので、そこの分析をするまでには至っておりません。

 その結果、佐賀県では、現状で出来得ることとして、死亡が多い要因として、検診受診率がまだまだ高くないということ、進行状態で発見されてしまう例が多いということを重視し、対策としては、すぐに取り組める施策として若年者の検診受診を促進する、検診未受診者を減らすという、今までの「とにかく検診受診率を高くしよう」というだけの大きな掛け声だけではなくて、よりリスクのあるところに対してターゲットを絞った取組をするというところに結び付いております。

 このように、全国がん登録情報を利用して、地域個別の課題を発見して対策を立てる事例として、ほかに次のようなことが考えられます。具体的にはならないのですが、御容赦ください。

 例えば事例1です。もし、A医療圏の患者の生存率がB医療圏の患者より低いような場合、それは全国がん登録情報を利用して発見することができます。その場合、その分析をしていく方法として、A医療圏では標準治療が行われているのだろうか、あるいはA医療圏の患者の生活環境、道路の交通事情、経済状況等で、早期発見や早期治療が難しい要因はないのだろうか、そういうところまで分析を進めることで、その分析結果に従っての対策としては、医師や医療資源の適正配置や福祉の充実といった検討対策につなげることができていきます。

 事例2も同じようなことですが、県間で全国がん登録情報を比較できるようになりますので、C医療圏の乳がん患者が放射線治療を受けるときには隣の県の病院に行って受けているということも、全国がん登録情報を用いて分かるようになります。そのような場合に、では、なぜC医療圏の患者は隣の県の病院に行っているのかということを分析することにつながります。それが、C医療圏に放射線治療機器がないからなのか、単に交通アクセスが問題なのかというようなことも考えられます。

 最後の事例3は、今も起こっている問題ですが、自県の希少がんDの患者のほとんどが都市部の大病院で治療をしています。見て分かることですので、それで問題になってはおりますが、これを統計資料として全国がん登録情報が出てきます。これはなぜかというときに、希少がんDの患者が実際に都市部の病院に行くために困っていることはないかというような分析をして、その患者のために自県でできる支援はないかというような対策につなげていくことができます。

 以上、全国がん登録情報ががん対策充実のためにどのように使われるのか、地域個別の課題の発見と対策への道筋を例に御紹介いたしました。今後、都道府県別がん罹患統計が出そろっていけば、罹患率や生存率の都道府県比較や個別の地域でのがん罹患リスクと罹患の相関分析も可能になるため、これまで以上に効果的、効率的ながん対策を進められることが期待できます。

 最後になりましたが、佐賀県の健康増進課に資料提供の御協力を頂きましたことを、この場を借りてお礼申し上げます。ありがとうございました。

○門田会長 今、始まったところですが、実際にこれが動き出すと、今までできていなかったいろいろなことができるというようなお話を頂きました。何か御質問はございますか。

○勢井委員 地域別というか、地域によった全体的ながんの種類であるとか、罹患率であるとか、そういうのは分かるのですが、私たち患者側から見ますと、全国がん登録の法律の概要では、医療の質向上、患者・国民への適切な情報提供ということがうたわれているわけです。

 患者がほしい情報提供なのですが、例えば私が大腸がんになって、A病院へ行ったらいいのか、B病院のほうがいいのか、簡単な話ですが、誰しも思うと思うのです。そういったことが、がん登録から見ることができるのか。

 スライドの8番目、例えば事例1で発見、A医療圏の患者の生存率がB医療圏の患者より低い、標準治療は行われているか、A医療圏の患者が困っていることはないかなどと書いてあるのですが、遠い先の話です。例えば2016年にがん登録が始まって、それがまず1回出るのが2018年、それを繰り返していくわけですが、何かタイムラグがあって、今、患者にとって実際にほしい情報が得られるようなものではない気がするのです。

 何でもそうなのですが、データを分析するときに、これは患者の情報ですので、患者の意見というか、治療評価というか、そういったものは、がん登録でなくてもいいのですが、そういったものを別に設けるようなシステムが必要ではないかと思うのです。そうすれば、医療側にとっても患者側にとっても、プラスになるのではないかと思っています。

 今、こうした治療がいい結果が出ている、やっているけれども出ていない。例えば昨年から医療事故というか、群馬、千葉、東京、兵庫と出ていますが、また更に今年に入って群馬で出ました。これは多分ほかの医療施設でも、表には出ていないけれども、あるのだろうと思います。そういったことをチェックできるというか、それは患者、その病院にかかっている患者だろうと思うのです。そういった患者の治療評価を、何らかの方法でデータを集めることができれば、更にこのがん登録が生きる、活用できると思うのですが、いかがでしょうか。

○柴田参考人 がん登録推進法の中でのがん登録は、この全国がん登録と院内がん登録がございます。勢井委員に御指摘いただいたようなことは、院内がん登録のほうが得意とする統計指標でして、院内がん登録のほうの収集項目も70項目ぐらいで予定されておりますが、患者の御意見から、それでもまだ少ないという御意見を頂いておりますが、そちらをベースにして更にタイムリーに、そのときに問題になっているような問題については、その時点で特別調査、特別収集ということも検討しておりますので、そちらで院内がん登録のほうのデータ収集、生存率解析のほうで、より患者に近い情報、統計を提供していくことを検討しております。

○門田会長 施設があって、そこで治療成績は分かりますよね。施設ごとのそれを公にする方向で検討はされているのですか。

○柴田参考人 はい。まだ調整中ですが、今年の10月過ぎには初めて施設別の生存率を公表予定です。

○川本委員 第7回がん診療提供体制のあり方に関する検討会というのがありまして、私はこちらの委員をしております。資料2-22ページにある「がん医療に関する情報提供」というのが話題で出てきておりまして、おっしゃっているような情報をいかに提供するかという議論がありましたので、こちらが充実されていくことによって、患者の皆様のお役に立てる状況になるのではないかと思います。資料2-22ページの下のほうを見ていただいたら、今おっしゃっているようなことの議論が始まっています。

○馬上委員 私は川本委員が出席されていたがん診療提供体制のあり方に関する検討会を傍聴させていただきまして、希少がんについて全国がん登録、また院内がん登録で、これからどんどん明らかになるということで、小児がんを含めて、大変有り難く思っております。

 ただ、検討会では「1件以上10件以下の数値も公開すべきである」という御意見があった中、個人情報ということで、「個人情報委員会に問い合わせたほうがいいのではないか」という話があったのですが、患者側としては、非常に情報が少ない中、どのような病院で専門的な医療が行われているかという情報が大変ほしいものですから、そういったものは個人情報に配慮しながら、是非できるだけ公開していただきたいと思っております。

○桜井委員 今、お話にも出ていたように、がん登録の項目について今後患者や家族が情報公開として見ていくというところがすごく大切だと思っています。疫学的に政策に生かしていくということは、すばらしいことだと思うのですが、もう一方として情報公開というものがあると思います。

 その場合に、登録の項目について継続的に見直しをかけていくといったところは検討されているのでしょうか。

○柴田参考人 罹患統計、全国がん登録のほうにつきましては、長く同じ項目で収集して統計を取ることが重視されることですので、大きな変更というのは難しい点です。ですが、タイムリーな項目収集、あるいは変更については、院内がん登録のほうで対応できていければと考えています。

○桜井委員 先ほど馬上委員もおっしゃったように、小児とか希少がんになってくると、110というだけでもものすごく重要な情報になってきますので、その辺りの項目の見直しは継続してやっていくべきかなと思います。公表する範囲と収集する範囲は別かもしれないのですが、検討していただきたいというのは一患者として思うところです。

 あと、数字の出し方として、メディアに出ると、その根底にある議論がなく、数字だけがバッと出てしまうケースがありますので、患者がそこですごく混乱するケースもあるかなと思っていますので、その辺りも、きちんとしたいい数字の出し方が必要だと思います。

 それから、資料7のスライド8の発見から分析、対策という事例を見せていただいて、非常に分かりやすいと思いますが、分析という場面で、私は提言にも挙げさせていただいているのですが、アメリカもSEERのプログラムと合わせて、2年前からMEPSというシステムを導入しています。これは患者の社会的な情報を組み合わせることで、例えば独身の方が再発リスクが高いのかとか、経済的に低所得者が遅く見つかっているのかとか、そういうところのデータが、ようやく2年たって、たくさん論文で出てきているのです。将来的には、がん登録というのをそういう形でやっていくことで、より疫学研究が充実してくるかなと思っていますし、それこそ私はサバイバーシップ研究のあり方の1つだと思っていますので、その辺りも今後の検討の中で組み入れていっていただけると、より充実したものになるかなと思っております。

○難波委員 佐賀県の子宮頸がんの事例をお示しいただきましたので、少し細かいことになりますが、こういう情報収集であるとか調査分析というのは、非常に有効だと思いますが、少し気になったのは、子宮頸がんの罹患リスクのところで、現在子宮頸がんの原因としてはヒトパピローマウイルスの感染がそのものであると言われている中で、「性的パートナーが多い」「多産である」とか、非常に曖昧な定義の下で情報収集をされると社会の混乱をきたすのではないかと思われます。

 それと、これは明確なエビデンスはないと理解しています。リスクを比較検証するに当たって、罹患者だけを調べても、それが罹患リスクそのものという定義にはならないと思うので、有効なことをなさるのであれば、情報収集の項目について、もっと配慮していただけるといいのではないかと感じました。

○檜山委員 私の個別資料を見ていただいたら分かるのですが、今回、がん登録が法制化されて、我々のような小児がん、あるいは希少がんの悉皆登録ができるというのは非常に画期的なことだと思っています。既に1970年ぐらいから、学会やいろいろなところで小児がん、この「全国小児がん登録」というのは、正確には「小児全国がん登録」なのですが、患者の守る会を中心として、最初に立ち上がって既に6万例ぐらいの登録がされています。これの主な目的は発症要因の解明なのです。家系図から、非常に細かなデータが入っています。ですから、今言われたように、項目をいちいち変えていくというようなことはナンセンスな話であって、実は何を目的に登録していくのかというのは非常に重要なことなのです。

 その下に書かれている小児外科学会が行われている登録で、これは手術をする5大腫瘍の治療成績を見るというものです。これも、既に18,000例のデータが入っています。御存じのように、2004年までに神経芽腫のスクリーニングがされた時代の頃には、既に5,000例ぐらいの神経芽腫の登録が、学会あるいはいろいろな所でされているのですが、こういうデータをうまく結合させるということが非常に患者にとっては有用です。

 実は、私は2000年から1990年辺りの死亡個票を全部拾って、本当はどのぐらいが登録データに上がってきているのかを見たら、全部を見ても実は今までの仕組みでは67%しか登録できていなかったということがあったので、今回は悉皆登録ができるというのは、非常に画期的なことなのです。

 このデータをベースに、今まであったデータと、これからこういう形で何を目的に登録しているのか、臓器がん登録もそうなのですが、そういうところとうまく連携していただくことによって、非常にいいアウトプットが患者に返せるのではないかと思っているので、個人情報保護法の話もあるのですが、その辺は是非よく検討していただいて、日本がん治療学会にも御協力いければいいのかなと思っているのですが、そういう形で、いいアウトプットを還元させていただくのが患者にとってもいいし、ひいては治療成績など、いろいろなところに意味があるかなと思ったので、こういうデータを出させていただきました。

○馬上委員 今、檜山委員がおっしゃったことに関連します。先日、13万人の小児がん経験者がいるということを松本先生が話されたと思うのですが、その半数は晩期合併症を発症しますので、全国がん登録とともに、小児がん、小児がん登録というのを今は学会でやっていただいていますが、それをもっと推進させて、長期フォローアップの実態と、あとは対策を進めていただきたいと思います。そういった意味での連結もお願いしたいと思っています。

○山口委員 佐賀県の協議会の顧問をやっていますので、確認を含めてコメントさせていただきます。こういうデータというのは順位がしっかりと付いてしまい2014年の子宮がん死亡率は全国ワースト1という点は変えようがないと思います。一方で、このデータは年度によって大きく変動していますが、2012年のデータでもワースト1ですか。

○柴田参考人 申し訳ございませんが、そこは確認しておりません。

○山口委員 かなり低い数値なので、ばらつきの範囲内である可能性は否定できないと思うのです。佐賀県においての一番の問題は、肝臓がんが多いということで、これはずっと継続して、県もしっかりと取り組んでおられます。

 申し上げたいのは、始まったばかりの全国がん登録のデータで、余り軽々にワースト1とかワースト2とか、ある1年だけを見て言うのは、少し慎んだほうがいいという気がいたします。

2番目です。個人情報保護法の話が出ていて、がん登録は余り問題ないのではないかと思うのですが、今月末でしょうか、ゲノムの関係と臨床研究のガイドラインに関して、説明会が開かれる予定になっています。ガイドラインにおける個人情報保護との整理はきっちりと付いて、新たなガイドラインになったのかという点について、もし事務局が御存じであれば教えていただきたいのです。この協議会でもかなり問題になってきた部分でありますので。

○大臣官房審議官(がん対策担当) 個人情報保護法が定義も含めていろいろと改正された関係で、指針を文科省、経産省と、3省合同で法改正に合わせて見直していこうということで、ずっと進めてきておりまして、ある程度考え方の整理ができたので、検討会での中間まとめということで先生方に説明させていただいたり、パブリックコメントに掛けさせていただいて、御意見を頂く予定です。その後、御意見を頂いた上で、また3省合同の会議、それぞれの省庁での審議会、厚生労働省であれば厚生科学審議会科学技術部会でもんで、最終案を作っていくというのが大まかな流れですので、そういう流れで申しますと、今、3省合同で法改正に合わせて指針を見直す作業の整理が付いたので、どのような感じかを研究者の先生方とか、あるいは広く国民にパブリックコメントを求めることをやる直前の段階と捉えていただければと思います。

○勢井委員 先ほど聞いた中で、患者への情報提供をどのように考えているのか、どのようなアウトプットを考えているのか。院内がん登録だけがあれば、こういったことができる。でも、情報提供を考えている中に、今日は欠席されている若尾委員からも、がん登録情報の利用、活用について、協議の場があれば、その中に患者、家族等を入れていただいて、是非当事者目線での必要な情報提供を考えてほしいということを付け加えておきます。

 質問ですが、今考えられている患者への情報提供ということで、院内がん登録からこういったことを考えているとか、具体的なことがあれば教えていただきたいと思います。

○柴田参考人 現時点で院内がん登録で今後していきたい方向性としては、施設としての利用としては、ベンチマーキングと言っていますが、今のがん診療拠点病院はそれぞれの施設がどの位置にいるのか、標準治療をやっている中の標準治療とのずれはどのようなものなのかというものを示すベンチマーキング指標というのがあるのですが、そのような表を提示したり、それを提示することによって、各施設には精度管理をしていただきたいという意味も含めての精度管理になります。また、症例登録の協力としての院内がん登録の利用も進めております。つまり、院内がん登録にはその施設で診られたがん患者の全てのデータが入っておりますので、先ほどの小児がん登録とか、希少がんの詳しい研究をされたいというときに、症例の全員を探し出すための土台として、その症例を使っていくということが考えられています。

 その院内がん登録と、詳しい調査研究を協同研究のような形にして、その結果を公表していくことにより、患者により近い情報を出していけるのではないかと考えています。そこは1つ、2つ、そのような利用に向けて具体的に研究が進んでおります。

○勢井委員 大きすぎて分からなかったのですが、その前に少しお話した、患者がこの病気になった、県内にも拠点病院があるのですが、どちらに行こうかと考えたときに、どちらに行っても変わらないのかもしれませんが、違うかもしれませんよね。そういったことが分かるようにはならないのですか。そこまでは、院内がん登録、全国がん登録だけでは分からないのですか。

○柴田参考人 患者が病院を選ぶときの基準というのはたくさんあると思うのです。また、がんの種類によっても、どういう情報が必要かというのは変わってくると思います。その点において、先ほどから御指摘いただいているように、必要とする情報が何なのかというのは、患者の意見を踏まえて提供してほしいという御意見は、本当にそのとおりだと思いますので、うちの若尾情報提供のセンター長とも共有して進めさせていただきたいと思います。

 それらの患者が必要とする全てが院内がん登録、全国がん登録から出てくるかというと、私はそうではないと思っています。

 したがいまして、ほかの登録情報、がんに関する統計情報、登録情報とも、必要に応じて連携する形で、患者が必要とする情報を整えていくことを検討しています。

○門田会長 登録も今始まったところで、どういう形で進めていくのかということが中心になって現場ではやっているのではないか。今日は、たまたま活用方法という話で、次のステップが見えるような話をしていただいたわけですが、申し訳ないですが、まだまだそういう結果が出るのは、全国がん登録から結果が出るというのは、しばらく時間が掛かるわけですよね。

 ですから、もともと院内登録あるいは学会がやっている疾患単位の登録など、いろいろなものがあったのですが、それではなくて全国、全体が1つのプラットホームでできて、本当に全国登録から比較できるとか、あるいは2重、3重になっているのがあるとかないとか、そういうことをまずクリアする、全国レベルでやりましょうということで、今いろいろやってもらって、スタートしているところなので、皆さんからいろいろと御意見を頂いても、今そういうところを中心に進んでいっているということで、意見は聞いていただいて将来的には考えていただくことにしても、ひとまず今しなければならない、全国登録として絶対にしなければならないミッションに合わせた形をやっていただくというのが、我々にとってもまずはお願いすべきことだろうと思うのです。ですから、是非お願いしたいと。皆さんから、こういう意見もあったということを記憶にとどめていただくということにしていただきたいと思いますが、よろしいですか。

○馬上委員 10年前に目標値を定めた経緯がありますが、全がん登録をすることによって、目標値が定めやすくなるということはあるのでしょうか。前回は、目標を定めたときの状況が、いろいろな問題があったというようなお話を伺っていたようにも思ったのですが。

○柴田参考人 10年前に目標値を定めたときには、実は罹患の目標値を定めることができない状態だったと記憶しております。それで、75歳以下の死亡率を20%減少させるというのが大目標として設定されておりますが、その際にいろいろな目標値の設定の中で、罹患や、あるいは地域がん登録情報による、例えば診断時に早期で発見される割合を多くするというような目標値を入れたいと思っても、その当時は全都道府県で地域がん登録がなされておりませんでしたので、そういう目標値を入れることができない状態でしたが、今後は全ての県でがん登録が行われますので、罹患を含めた目標値設定ができるようになると考えられます。

○門田会長 今日も罹患率のグラフを出してもらいましたが、あれは4府県。

○柴田参考人 年次推移のものは、そうでございます。

○門田会長 というような状態なのです。そういった意味では、非常にこういう統計学的なことは遅れてきている。それを、第2期の後から法律ができて、立ち上がって進もうという段階で、相当遅れているというのは否めない事実なので、頑張っていただくということにして、是非よろしくお願いしたいと思います。

 ということで、本日予定した議題は以上ですが、その他に何かありますか。

○中釜委員 私自身、まだ十分整理できていないのですが、全国がん登録が提供できる情報、院内がん登録が提供できる情報、あるいはがんの均てん化という観点から、診療提供体制の中での均てん化指標の中で提供できる情報が混在していて、十分に整理されていないという印象があります。そこはもう少し分かりやすい形で提供すると、今後の議論あるいは問題点が抽出しやすいのかと思いますので、是非検討していただければと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは事務局からお願いいたします。

○事務局 資料8がありますので、今後の予定について御議論いただきたいと思います。

 第60回以降の協議会について、門田会長と御相談させていただきました日程案並びに議題案を提示させていただいております。協議会に御了承いただけましたら、こちらで進めさせていただきます。

○桜井委員 今後の予定についての部分で、次回の第60回がライフステージということで、恐らくAYAの話等が出てくると思うのです。そのときに、就学の話などが出てくると思いますので、文部科学省の方にどなたかに席に着いていただけると、ありがたいと思います。

○事務局 承知いたしました。

○門田会長 そのほかに日程について、よろしゅうございますか。

 それでは、本日予定されたものは以上です。いつも申し上げていますが、今日ディスカッションした内容について、発言し忘れた、漏れた、是非伝えておきたいということがあれば、来週の金曜日までに、事務局にメールで届くようにしていただきたいと思います。

 特に御発言はないようでしたら、これで本日は終わります。ありがとうございました。

 


(了)

健康局がん・疾病対策課

代表 03-5253-1111(内線3826)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> がん対策推進協議会(がん対策推進協議会)> 第59回がん対策推進協議会(議事録)(2016年8月26日)

ページの先頭へ戻る