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2016年8月24日 第6回 周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事禄)

○日時

平成28年8月24日(水) 10:00~12:00


○場所

三田共用会議所 大会議室(3階)


○議事

○坂上救急・周産期医療等対策室長 まだお見えになられていない構成員がいらっしゃいますが、定刻となりましたので、始めさせていただきたいと思います。

 それでは、第6回「周産期医療体制のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中を御参加いただきまして、まことにありがとうございます。

 まず初めに、新たに構成員になられた方の御紹介をさせていただきたいと思います。

 公益社団法人日本医師会常任理事の温泉川構成員でございます。

○温泉川構成員 温泉川です。よろしくお願いいたします。

 6月25日から広島県医師会から常任理事になってまいりました。よろしくお願いいたします。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 次に、本日の構成員の御欠席についてですが、飯田構成員が御欠席のため、代理人として共同通信社会部次長、山脇参考人に御出席いただいております。

 また、今回参考人として、三重大学保健管理センター教授、岡野先生にお越しいただいております。

 峯構成員と田村構成員は御出席の予定と伺っておりますが、おくれられている模様でございます。

 また、前回の検討会以降、事務局の人事異動がございまして、救急・周産期医療等対策室長が伯野から私、坂上に変更しておりますので、よろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 お手元の資料ですけれども、まず議事次第、構成員名簿、座席表がございます。

 続きまして、資料1「周産期医療体制整備計画と医療計画の一体化について」。

 資料2「合併症を有する妊娠と周産期医療体制」。

 資料3につきましては、岡井構成員からの資料としまして、「うつ病等の精神疾患合併妊婦の診療と支援について」、本体資料と参考資料がついております。

 資料4としまして、岡野参考人の「周産期のこころの医療の課題」の本体資料と添付資料がついております。

 その後に、参考資料1から4ということで、資料を配付しております。過不足がございましたら、事務局までお願いいたします。

 また、前回までの検討会の資料などをファイルとして御用意しておりますので、適宜、御参考としていただければと思います。

 もし報道の方で冒頭カメラ撮りをされている方がおられましたら、ここまででお願いいたします。

 それでは、以降の進行は座長にお願いいたします。

 五十嵐座長、よろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 皆さん、おはようございます。お暑いところをお集まりいただきまして、ありがとうございます。

 今日はたくさん資料がございまして、御説明をいただくことが多いと思いますので、どうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、資料1の「周産期医療体制整備計画と医療計画の一体化について」、厚生労働省から説明をお願いいたします。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 それでは、資料1をご覧いただければと思います。

 現在、都道府県につくっていただいております周産期医療体制整備計画と医療計画、これは今、別立てになっておりますので、この一体化について御議論いただければと思います。

 周産期医療体制整備の流れということで、今までの経緯を御説明した資料になりますが、我々厚労省の部局のことなのですけれども、母子保健、周産期医療体制というものが雇児局というところで所管しておりましたが、平成19年、20年にかけましての救急の妊婦搬送死亡事例等がございまして、それを契機に平成20年に周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会を開催させていただきました。その中で、周産期医療体制整備に力を入れていかなければならないだろうということになりまして、医政局のほうで周産期に係る整備指針というものを発出させていただきまして、都道府県で医療計画とは別に周産期医療体制整備計画というものを策定していただいているという状況になっております。

 周産期医療体制の整備指針の主な内容ということでございますが、名前のとおり体制の整備指針でございますので、主にはNICUですとか周産期母子医療センターの要件など、その体制の整備に関するような内容になっております。

 主な中身をまとめておりますが、総論的な事項としまして、NICUの出生1万当たりに25床から30床を整備することですとか、各論的な事項としまして、総合周産期母子医療センターですとか、地域周産期母子医療センターの要件などを記載しているという内容になってございます。

 この整備指針の策定と時を同じくしまして、子ども・子育てビジョンというものが閣議決定されておりまして、その中でも、一番下になりますが、NICUの病床の目標数ということで、平成26年度までに出生1万人当たり25床から30床整備するということもあわせて閣議決定されておりますので、参考にしていただければと思います。

 次に、現状がどうなっているのかということなのですけれども、まずは周産期母子医療センターの現状でございますが、折れ線グラフは都道府県がどれぐらい設置しているのかというグラフになりまして、棒グラフは実際の施設数になっております。総合のほうは赤い折れ線グラフですけれども、全47都道府県で整備いただいております。青のほうが地域のセンターですけれども、46都道府県で整備をしていただいているような状況になります。実際の施設数は総合が全国で105施設、地域が300施設という状況で、年々整備が進んでいるという状況でございます。

 次に、NICUMFICUの数の推移ということでございますけれども、近年NICUMFICU、ともに増加しておりまして、NICUにつきましては、出生1万人当たりが平成26年で30.4床ということになりまして、先ほど申し上げました整備指針ですとか閣議決定の目標は達成しているという状況になっております。

 次に、第7次医療計画における医療計画と周産期医療体制整備計画の整理をさせていただいております。

 まず、経緯の内容でございますが、冒頭説明しましたとおり、平成20年度、第5次医療計画の開始後に東京都で発生しました脳出血の妊婦死亡事例(いわゆる墨東病院事件)等の妊産婦の救急受け入れ困難による死亡事例が発生いたしました。このようなことを契機に、周産期医療と救急医療の確保と連携に関する懇談会が開催されまして、周産期医療体制整備指針が定められたという内容でございます。

 現在の周産期医療体制整備指針と医療計画の関係ですけれども、ここにまとめておりますが、両方とも法令的な位置づけとして別々のものになっておりまして、都道府県においても今、別々に定めることになっている状況でございます。

 論点を提示させていただいております。

 まず、両計画への対応の現状ということでございますが、周産期医療体制整備計画の方は、見直しの時期については医療計画に合わせることが望ましいと考えられますので、計画期間を延長して、両計画の見直し時期を合わせるよう都道府県に要請をしているようなところでございます。

 ただし、現在別立てになっておりますが、周産期医療体制の整備は、この検討会でも御議論いただいていますとおり、救急・災害医療などの他の取り組みと連動していることから、なかなか単独で立てることが困難となっている現状がございます。

 また、周産期医療体制整備計画の主な内容でございます、周産期母子医療センターですとかNICUの数の整備は、引き続き取り組みが必要なものの、その目標はおおむね達成していると考えられる状況になっております。

 このような状況を踏まえまして、医師の確保などの引き続き取り組みが必要な問題には配慮しなければならないと思いますが、両計画の指針を一本化した上で、周産期医療体制整備計画と医療計画を一体化してはどうかということで御議論いただければと思っております。

 なお、事前に構成員からも、一体化すると周産期医療のほうが脆弱になるのではないかという御懸念をいただいておりますが、引き続き体制の整備を過不足なく医療計画に反映することで、一体化してはどうかということで論点を提示させていただければと考えておりますので、御意見をいただければと思います。

 事務局からは以上になります。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 これにつきましては、何か御意見はございますでしょうか。

 田村先生。

○田村構成員 埼玉医科大学総合医療センターの田村でございます。

 基本的に医療計画のほうに組み込んでいただくということに関しては、法的には根拠ができるということですので、それ自体は我々、前向きに受けとめて、非常にありがたいお話ではないかと思います。それから、今の周産期医療の抱える問題も、全国の都道府県に一応周産期医療ネットワークができて、それから、NICUのベッド数も当初の目標の1,000の出生当たり3床確保できたということは評価出来ます。だけれども、問題はむしろ、ここの「今後の対応について」に書いていただいているように、ベッド数は1.5倍にふえたにもかかわらず、そこで働く新生児科医の数は変わらないということで、むしろ仕事量が1.5倍にふえて、更に新生児医志望者が減るという悪循環が生じている事です。そういう状況で医師確保をいかにするのかが重要課題だと思います。

 産科の問題にしても、アクセスが問題ということで、ハードからソフトにいろいろな問題点が変わってきているということについて、新しい整備指針を医療計画に組み込んで、それでしっかりしたものにこれからまた再検討しようということは、非常にありがたいことだと思います。

 ただ、今までは周産期医療整備指針で、厚労省の特に救急・周産期医療等対策室がリーダーシップをとってこの周産期医療の充実を図っていっていただいたのですけれども、これがある程度都道府県のほうにそういうことを決める権限が移るということになると、東京都のように財政的に裕福なところは非常に理想的な周産期医療が展開できるのかもしれないけれども、県によってはそういうことができなくて、むしろ地域格差が拡大するのではないかということを危惧しておりますので、それに対して、厚労省としてはどう対応されるおつもりなのかということについて御説明をいただければありがたいと思います。

○五十嵐座長 お願いします。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 御意見ありがとうございます。先生のおっしゃるように、現在も周産期の計画は指針をつくって都道府県に策定をお願いしているところなのですけれども、医療計画も医療計画の策定指針というものがございまして、これもしっかり国で示すことで都道府県に策定をお願いしているところでございます。仮に一体化させていただけるということであれば、今の周産期の指針に書かれている内容を過不足なく医療計画の指針にもしっかりと織り込むことによって、都道府県には医療計画同様、周産期のほうもしっかり確保していただけるように要請はしていこうと考えております。

 以上です。

○五十嵐座長 よろしいですか。

○田村構成員 その点をしっかりお願いしたいと思います。

○五十嵐座長 それでは、海野先生、どうぞ。

○海野構成員 幾つかあるのですけれども、今、お示しいただいた資料の8ページの「両計画への対応の現状」というところの3つ目のところの記載が、この検討会で今まで検討されてきた内容と食い違うのではないかと私は感じておりまして、その辺について御検討いただきたいのですが、「周産期母子医療センターやNICU等の整備は、引き続き取組は必要なものの、その目標を概ね達成している」と書いてありますね。ですけれども、これは日本全体の平均としては、その数字が達成されたかのような数字になっているというのが現状であるというのが、これまでの検討会の内容だったと思います。要するに、この周産期医療体制の整備をする都道府県の立場で言いますと、都道府県間で大きな差があるということがこれまで示されており、少ないところ、まだ全然というところもあるわけですね。そこを「概ね」という形で、でも「達成している」とここで書いてしまうと、そうすると、これ以上それに関する国の整備の取り組みはもうこれからしないのかということになりかねないと思うのです。それは非常に危険な記載で、この検討会でこういう記載が残るのは非常に困ると思います。ですから、そこはもう少し検討していただきたい。要するに、書いてあることは、この検討会で今まで厚労省のほうから出てきた数字と違いますよということを申し上げたいのです。それを前提として今まで私どもは議論してきたはずで、そのためにこれから都道府県での周産期医療体制の整備計画をどのようにつくっていただくのかということに関して話し合ってきているわけですね。ですから、ここで「概ね達成」であったら、これはやらなくていいではないかということになりかねませんから、それはやめてくださいということを申し上げたいと思います。

 それから、一体化に関して、特にこれは国の制度の問題なので、一体化の方向というのは十分理解できることだと思うのですけれども、今のお話とも関係するのですが、私が少し懸念しておりますのは、実際に地域の医療体制、この場合は周産期医療体制に関して、その整備状況がどうなっているのか。計画を立ててその整備を進めていくわけですけれども、それをどのようにモニターし、データを集めてそれを評価し、それをまた施策の推進に反映させていくかという作業です。その作業をどういう形で担っていくのかということが大きな課題だと思うのです。

 今までこの周産期医療体制の中では、この周産期医療体制整備指針の中で規定されている周産期医療協議会というものがそれを担うということで進められてきていると思います。ただ、これは周産期の中でつくられてきている協議会、県の仕組みなわけですけれども、これが地域医療計画の全体の中で、例えば5疾病5事業それぞれどういう形で整備していくのかということについてそれぞれ指針ができていると思いますけれども、その中で、やはり同じではないのです。ですから、それぞれ違うやり方での検討が都道府県でやられている。例えば救急ですとMC協議会とか、ちょっと違うのです。その違いというのが、実際に全体を横並びにするのかしないのかということもあると思いますし、その中で具体的に今まで周産期医療協議会が担ってきた役割、機能というものが、この地域医療計画の中に取り込んでしっかり一体化する中で、どういう形で進められていくのかということをクリアにしていただいておく必要があるのではないか。

 そこの2点、ぜひ御検討をお願いしたいと思っております。

○五十嵐座長 どうぞ。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 御意見ありがとうございます。まず1点目なのですけれども、私の説明不足ですが、本当に先生のおっしゃるとおり、NICUですとか母子医療センター、整備はまだまだ課題があるところでございます。先生のおっしゃるように偏在対策ですとかマンパワーの確保とか、しっかりやらなければいけないと思っております。ただ、ここに書いておりますが、数の整備だけ見るとおおむね達成しつつあるということで、全体の数だけは達成しつつあるという。

○海野構成員 この目標を達成するのは、国が達成することではないですね。この25とか30などという数字は、都道府県ごとに達成してくださいということで今までの指針は出ていると思うのです。ですから、都道府県ごとに達成されていないところがあるとすると、それはどうなのですかということになりますね。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 先生の御指摘のとおりですので、ここのあたりはしっかり引き続き取り組みは求めていきたいと思います。

 後半の周産期医療協議会の件ですとか、計画の進捗管理をどのようにするのかということなのですけれども、仮に医療計画の中に入った場合ですと、医療計画の方に進捗管理をする評価指標というものがございまして、それで都道府県にPDCAサイクルを回していただくことによってしっかりと進捗管理をしていただくことになっております。一体化した場合には、そういうPDCAサイクルの中に入ってしっかりと進捗管理をしていただくことができるのかなと考えております。また、それを評価していただくのが、今、都道府県につくっていただいている周産期医療協議会のようなものになるのかなと考えておりますので、都道府県でやっていただく周産期医療協議会を完全になくしてしまうということではなくて、一体化した場合でも何らかの形で医療計画の中で位置づけることによって、今、協議会にかかわっていただいている先生方にしっかりと進捗管理をしていただくような形をとっていきたいと考えております。

 以上です。

○五十嵐座長 よろしいですか。

 そのほか、いかがでしょうか。よろしいですか。

 それでは、厚労省の今後の方針をきょうお示しいただきましたけれども、幾つか危惧が出ましたが、それも御理解いただけたようです。

 8ページの文言については、場合によっては誤解がないような修正をしていただくことも御検討いただきたいと思いますので、よろしくお願いしたいと思います。

 田村構成員、どうぞ。

○田村構成員 ほかのところから出るかと思ったのですが、出なかったので追加質問させて下さい。周産期医療協議会についてですが、先ほど坂上室長もお話しされましたけれども、基本的には県単位の周産期医療協議会は継続するということでよろしいでしょうか。

○五十嵐座長 どうぞ。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 都道府県に実情を伺ってみますと、しっかりと都道府県で周産期医療協議会という形でやっていただいているところと、医療計画の分科会のような形でやっていただいているところなど、さまざまな実情があるようです。ただ、会議が乱立するのもよろしくないと思いますので、そのあたりは一体化する上で何かしらの整理はさせていただこうと思うのですけれども、ただ、今、各都道府県で周産期医療協議会として担っているような機能はなくなってはよろしくないと思いますので、そのあたりは機能としてしっかり残していただいた上で位置づけていただけるような整理をした上で、指針を作成していきたいと考えております。ただ、協議会が完全になくなって、機能がなくなるということにはならないように配慮したいと思います。

○田村構成員 今回の熊本のような震災対策ということを考えると、都道府県単位の周産期医療協議会をさらにある程度広げた広域の周産期医療協議会ということを検討しておかないと、いざというときの周産期医療の危機的な状況が、そういう災害が発生したときの対策などがしっかりとれないのではないかと危惧します。前回の「周産期医療体制のあり方に関する検討会」のときに、こちらで熊本市民病院の川瀬新生児科部長がお話しされたみたいに、災害のときにはDMATを中心とした緊急救助体制では周産期医療には十分対応できないということも明らかになって、これから周産期リエゾンを厚労省としてはどんどん普及させていただけるのだと思いますが、周産期リエゾンが各都道府県に全て複数ででき上がるということになるには随分時間がかかるのではないかと思うので、少なくともそれまでの間はそういう広域の周産期医療協議会で緊急時の対策も検討するということは、ぜひ厚労省として都道府県のほうに御指導いただきたいと思うのですが、いかがでしょうか。

○五十嵐座長 どうぞ。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 御意見ありがとうございます。先生のおっしゃるように広域の考え方、これから非常に重要になってくると思います。この検討会でも今まで御議論いただきましたように、広域搬送の視点ですとか災害医療の視点で、単一の都道府県だけではなくて近隣の都道府県と連携して平時から対策を立てていただくことが重要と考えております。そういった点で、今、医療計画の中の5事業の1つで災害医療もあります。災害医療ですと、かなり広域で搬送訓練などをやるように位置づけられておりますので、周産期のほうのこの5事業、医療計画と一体化することによって、そういう他の災害医療とか救急と連携することによって広域的な視点も出てくると思います。またそこに周産期のリエゾンがかかわっていただくことでより充実したものになるのではないかと考えておるところですので、そういった中身になるように考えていきたいと思っております。

○田村構成員 どうもありがとうございました。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 これは非常に重要な問題ですので、ぜひ進捗状況をまた後でお知らせいただきたいと思います。

 そのほか、よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。

 それでは、次の議題に移りたいと思います。

 資料2の「合併症を有する妊娠と周産期医療体制」につきまして、厚労省から説明をお願いしたいと思います。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 それでは、資料2「合併症を有する妊娠と周産期医療体制」をごらんいただければと思います。

 前回から、構成員の先生方から合併症を有する妊婦の対応について議論するべきではないかという御意見をいただきましたので、今回議題として提示させていただきました。

 まず、重篤な合併症を有する妊婦の割合ということで、合併症を有する妊婦は、どういった合併症を合併しているのかということをグラフで示したものでございます。まず、身体合併症として、中枢神経疾患、心疾患、呼吸器疾患など記載しておりますが、その中でも精神疾患も2%から3%ということで、身体合併症と変わらないような一定程度の合併症保有率があるというような状況でございます。

 総合周産期母子医療センターの合併症への対応ということで、これは現在、整備指針で定めている要件から抜粋したものになりますが、総合周産期母子医療センターの要件としまして、下線を引いておりますが、産科合併症以外の合併症ということで、身体合併症を有する母体についての対応は要件で示しているところでございますが、なかなか精神疾患に対する合併症への対応というものが要件づけられていないような現状がございます。

 そのような状況もございまして、周産期母子医療センターの整備が進む中で、合併症への対応というものが進んできているところでございます。その状況をグラフで示したものでございますが、周産期母子医療センターの合併症の対応状況ということでまとめておりますが、青いグラフが対応可能なところで、赤いグラフはなかなか対応が難しいというグラフになります。左側の身体的な合併症については、対応の体制というものが整備されている状況でございますが、一番右の精神疾患につきましては、むしろ対応ができないような施設が多いという状況で身体合併症と精神合併症で違いがあらわれているような状況となっております。

 精神疾患が合併した妊婦にどれぐらいのリスクが伴うかということでございますが、まずは帝王切開の状況をグラフで示しております。緑色のグラフが全国妊婦の帝王切開率でございますが、全妊婦では19.47%という状況でございますが、精神疾患を合併する妊婦におきましては、赤いグラフになりますが、33.5%ということで、約3分の1程度は帝王切開率があるということで、割合としては高いような状況になっております。右側の精神疾患の内訳としましては、統合失調症、気分障害、パニック障害という内訳になってございます。

 精神疾患が妊娠に与える影響についてまとめたものになりますが、左側に各精神疾患がございまして、それが産科的、母体に対する影響、あとは新生児合併ということで、新生児に対するリスクということで記載しておりますが、双方とも合併症ということで、母体においては早産、流産ですとか、新生児におきましては、低出生などのリスクがあるという状況でございます。

 これもリスクの状況でございますが、精神疾患を合併する妊婦におきましては、早産ですとか、低出生体重児が出生するリスクというものがオッズ比を見ても高いという状況でございます。

 これは診療報酬の対応状況でございますけれども、このような状況を踏まえまして、平成28年度診療報酬改定でハイリスク妊娠管理加算の対象患者に、身体合併症だけではなくて、右側の赤囲みでございますが、精神疾患の患者につきましても対象となるような改定が行われているような状況でございます。

 それでは、周産期母子医療センターにおける精神疾患への妊婦の対応状況がどうなっているのかということでございますが、総合周産期母子医療センターと地域周産期母子医療センターに分けて記載しておりますが、地域周産期母子医療センターですとなかなか対応ができていないということになるのですけれども、総合のほうでも半数強は対応できているのですけれども、半数弱については対応ができていないという状況でございまして、このあたりも対応の必要があるのではないかという状況がわかってきております。

 以上、論点の整理をさせていただいたものになりますが、まず課題としまして、重篤な合併症を有する妊産婦は一定程度存在し、身体合併症については対応が比較的進んでいる。一方で、精神疾患を有する妊婦については、診療体制が十分には検討されていないという状況でございます。

 また、周産期母子医療センターにおきましても、精神疾患を有する妊産婦への管理、緊急入院について対応できない施設が一定程度存在すると。

 その一方で、精神疾患を有する妊婦につきましては、帝王切開率が高いなど、さまざまなリスクがございまして、専門的な管理が必要となっている状況でございます。

 このようなことから、論点としまして、精神疾患を合併する妊婦の管理におきまして、周産期医療と精神科医療の連携等の必要性やあり方についてどのように考えるか。

 また、総合周産期母子医療センターの要件として、自施設で精神疾患に対応可能であること、もしくは他の精神科病院と連携しまして、対応可能であることを追加することについてどのように考えるのかということを論点として提示させていただきました。

 以上、御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 この後に岡井先生と岡野先生から鬱に関する御説明がありますので、3つ続けて資料の説明をいただいた後に合わせて討議をしたいと思いますけれども、それでよろしいでしょうか。

 それでは、続きまして、岡井先生、御説明をお願いいたします。

○岡井構成員 資料3をごらんください。

 これは、ただいまお話しいただいた資料2の中の最後の論点のことが出てくるバックグラウンドを少し詳しく説明させていただくものであります。

 最初のページは、先ほど資料2の2ページ目で似たようなグラフがあったと思いますが、それは日本の学会での分娩登録という資料からとった精神疾患の頻度ですが、この資料3の2ページはイギリスのデータです。日本と比べて、イギリスは精神疾患に対するケアが最初から違っていますので、実際に起こっている病状から見て精神疾患だと診断される率が日本と比べて圧倒的に現実的に高いということがあって、イギリスでは例えば高血圧だとか産褥の出血だとか、早産とか、そういうものよりも多いというデータです。

 次の3ページ目、これは順天堂大学の竹田先生からいただいたデータですけれども、東京都23区の監察医務院での統計を分析したものです。上の段のグラフは、2005年から2014年までの10年間の異常死を分類したグラフです。紺のものが自殺で、肌色のものが病死ですが、この病死というのは異常死として届けられたもので、この異常死の定義が例えば法医学会と外科学会、産婦人科学会で考えが違いますので、いわゆる産科合併症で亡くなった患者さんなどが全部入っているわけではなく、その一部しか異常死としては届けられていないということがありますが、いずれにしても自殺の数は相当に及んでいて、妊娠中と産褥を合わせると10年間で63例ということになりました。そのうちに精神疾患というものがどれくらい絡んでくるのかということが下のグラフでありまして、妊娠中の約40%、産褥では約半分が精神疾患を有するあるいはその精神状態の異常な患者さんが、自殺と関連しているというデータです。

 次のページは、病死のほうは先ほど言いましたように一部だけなので無視していただいていいのですが、自殺のほうの年齢を見てみますと、30代ぐらいからふえているのですけれども、折れ線グラフになっているのが出産数ですから、出産に対して自殺する数というのは年齢が進んでいるほうが多いということが言えるだろうと思います。

 次の5ページ目は、自殺に至った時期ですけれども、妊娠して2カ月のところで多いのは、妊娠したということに気がついて、あるいはそう診断されて大変大きな精神的な負担を背負ってしまったとか、そういうところで行動を起こしたということがあるのではないかと思います。産褥では3カ月、4カ月ぐらいが多い。これは育児というものが関係してくるのではないかと。不安がどんどん募ってきてとか、そこを詳しく分析するともう少しいろいろわかると思いますが、そのようなことが推測されます。

 その次が外国との比較なのですが、イギリスとスウェーデンと東京の先ほどのデータを見てみますと、妊産婦死亡率には自殺は入っていないのですけれども、3.74.73.96と、余りどこも変わらないと。ところが、自殺率は妊娠中と出産後1年間の間を含めて統計をとっているのですが、イギリスが一番少なくて日本は何倍もあるという、このような状況であります。先ほどの疾患の発生率のところで言ったように、日本では精神障害のある人に対するケアが行き届いていないということがあるのではないかということが言えると思います。

 次のページは、自殺を警察庁でとっている統計ですが、その数を見てみると、女性は男性よりも多い。総自殺率の中で女性が半分以上を占めているのですが、その女性の中で周産期、妊娠中か産褥かというのが、10万人対で8.7という先ほどの東京の数字を持っていきますと、女性の自殺の中の3分の2ぐらいに達すると。周産期というのは、女性は妊婦健診などで医療機関にかかっているにもかかわらず、そこに対してケアが行き届いていないのではないだろうかということが推察されるようなデータであります。

 次は、まとめてみると、申し上げたとおりですが、大阪からもデータが出ていまして、大阪のデータでは、大阪市270万で3年間9例、これを換算すると、10万出生対にしては10.幾つになると思います。10以上になります。東京より少し多いという数字になります。

 そういうことで、精神合併症例とか、精神疾患を発症するリスクの高い症例を妊娠中にいかに抽出していくのかということと、周産期医療と精神科の連携はとても大事であるということを、改めて私たちは認識する必要があろうかということであります。

 次のページは、兵庫医大の清野先生のデータをお借りしてきたのですけれども、産科のほうで精神障害のありそうな妊婦さんを抽出するということを精力的に意識的にやって、そういう異常のある人を精神科にコンサルテーションするというプログラムを組んで研究すると、そこのグラフにありますようにちょっとずつふえてきていますが、10%ぐらいは精神科にコンサルテーションを必要とする症例があるという結果になりました。

 その精神科との連携なのですが、精神科の先生もお忙しいので、そんなにちょっとこの人心配だからと全て回すわけにはいかないという問題もあって、そういうことをこれから本格的にきちんと討論していく必要があると思うのですが、清野先生のところでは、そこにありますグラフのように、リスクを中、高に分けて、一つの連携のシステムを運用したらどうかということが考えられています。

11ページ、精神的に問題を抱えた人の場合には、医療的な面だけでサポートするのではなくて、他職種ですね。助産師さんは当然ですけれども、薬剤師さん、看護師さん、作業療法士、ソーシャルワーカーの方、いろいろな人がかかわって見ていって、家庭として見ていかないとうまくいかないというか、サポートが不十分になるということが言われております。

12ページは、これは厚労省の松本さんが考えてくれた、こういう体制を一つの例としてやっていったらどうかと。地域によって、都道府県によってどういう形で連携していくのかというのはそれぞれ違いが出てくるだろうと思いますし、これは一つの例ですけれども、他職種で見ていくということとか、医療機関の中でも精神科という診療科を持っている施設とない施設でどう連携するのか、それから、産婦人科と精神科のほうでどう連携するのか、そういう重要な3つのポイントがあって、そこを何とかきちんとやっていかなければならないということであると思います。

 最後の13ページには、課題として、まず今のところやっと産科の現場の医師が、妊婦さんの精神状態等に関してもっと今まで以上に注意深く観察し、ケアしていかなくてはいけないのだろうということを認識し始めている。これまで全く不足していたと言わざるを得ないのですけれども、そこに対してこれまで以上の教育、啓発、研修等をやって、ある程度の知識を深めたり、対応できるようなそういう人を養成する、これは厚労省とか役所、国が資格を認定するとか付与するものではなくても、学会とか医会レベルで何らかの対応をしていかなくてはいけないだろうと考えています。

 2番目は、実際にどうやってスクリーニングするのかということですが、後で参考資料でお話ししますけれども、妊娠中にスクリーニングしていけば、産後の鬱の半分ぐらいは見つけることができると言われているのです。もっと見つけられると言っている人もいるぐらいで、妊娠中にどうやって見つけていくのか、ハイリスクであると抽出された症例をどう管理するのかということについてもまだ学会レベルでも確立したやり方がないので、そこもこれから研究していかなくてはいけないだろうと。

 最後は、先ほどから言っている連携ですね。この人には十分なケアが必要だというときに、精神科の先生にいかに診てもらえるのかということになるかと思います。

 引き続いて参考資料に移りますが、産後鬱病がどうしても自殺という面では重要な疾患になってきますが、数的には、そこにありますように周産期10から30%という報告があるし、重症なものだけでも1、2割ぐらいが重症であると。危険因子や精神科の疾患の既往があることもありますし、望ましくない出来事、妊娠そのものが望ましい妊娠ではなかったというものも含めて、それから、夫からの支援不足と親とか家族関係など、こういうものも大事で、半分ぐらいが出産前から始まっているということだそうです。

 この辺のデータは私は九州大学の吉田先生からいただいてきたものですが、次の17ページも、書いてありますように、背景として家族的な問題、対人関係、養育の自身の体験とか、妊娠に伴うホルモンの変化とか、そういう生物学的な脆弱性というものにいよいよ妊娠・出産という負荷がかかって発病する。そこに医療だけではなくて、先ほどの他業種からの適切な介入がないと、自殺には至らなくても母子相互作用に対して大変悪い影響が出て、子供の発達の障害、特に精神面の発達の障害ということにつながっていくということで、本当にここを食いとめることは大変重要であるということであります。

 その次の17ページの下の段は、今、日産婦学会で精神障害の患者さんをどう妊娠中抽出するのかということのガイドラインを作成しつつあって、案ができていまして、確定ではないのですが、大体これで通ると思います。実際に出ているものには質問があって、回答があって、その後解説というものが書いてあるのですが、この解説まで、私が全部まとめて簡単にしたものですけれども、まず、鬱病に関しては、NICEというイギリスの医療技術評価機構が推奨する鬱病に関する質問がありまして、たった2項目なので、これだったら全産科施設でやれるだろうということで、ガイドラインに載せていこうという話なのです。

 1つ目は、過去1カ月間に、気分が落ち込んだり、元気がなくなる、あるいは絶望的になって、しばしば悩まされたことがありますかと。

 2つ目が、過去1カ月間に、物事をすることに興味あるいは楽しみをほとんどなくして、しばしば悩まされたことがありますかと。

 この1つでも「はい」という回答があった場合の対応ですが、ここがなかなか精神科に受診を勧めるとはならない。今、日産婦学会のガイドラインでは勧めることを検討する、勧めることを考慮するという段階に止めています。先ほども申しましたように、これを全て精神科にということになると、精神科の先生の対応が間に合わないという状況に現在はあります。ですから、そういう人の中でさらに本当に精神科受診が必要な人をセレクトすることができるような周産期医療関係者を養成するということが、産婦人科医会のこれから立ち上げるプロジェクトになっています。

 その次が、鬱病だけではなくて、不安障害です。不安障害も同じようにNICEの推奨する項目がありまして、ちょっと中身は違うのですが、過去1カ月間に、ほとんど毎日緊張感、不安感または神経過敏を感じることがありましたかという質問と、似たようなものですけれども、ほとんど毎日心配することをとめられない、または心配をコントロールできないようなことがありましたかと。

 これは同じで、1項目でも「はい」の回答がある場合は、精神科に受診させるべきかそうではないか、その人をさらに詳しく調べて検討しましょうと、これが日産婦学会と医会と合同でガイドラインを出しますけれども、そのガイドラインの案です。

 それから、産褥期の鬱のスクリーニングとしては、これはEdinburgh Postnatal Depression Scale(エディンバラ・ポストネータル・デプレッション・スケール)を用いようと。これは有名なスケールですけれども、これも何点以上を陽性とするかなのですが、一応日産婦のガイドライン的には、9点以上の場合「疑いと判断し、必要に応じて精神疾患に豊富な知識・経験のある医師に相談すると共に、医療・行政面を含めた継続的な精神面支援体制を検討する」と、こういう書きぶりに、現在はなっています。これはまだ確定ではないので、修正になるかもしれませんが、要するに9点以上は要注意であるということでピックアップしていこうというものが日産婦のガイドラインです。

 あとは、鬱病と自殺ということだけではなくて、この周産期医療体制を充実させようということは母子の健康ということを守るということが最大の目的ですから、生まれた後の子供が順調に生育していくということを考えた場合には、お母さんの精神状態ということから考えて、育児の支援はちゃんとできているか、育児の環境がどうかということとか、今言った、EPDSの質問票を使った鬱病のチェック、それから、赤ちゃんの気持ち質問票という、母子関係のボンディングの障害があるか、ないのではないかということをチェックするということを医療保健チームとして周産期にはやっていく必要があるだろうということが提言されています。

 女性というものは、そういうようにして周りから声をかけてサポートしないと、自分ではなかなかみずから訴えることが少ないというのが次の下の段の話なのですけれども、イギリスの人の統計で、1,000人から聞いてみると、おかしいという自覚があったうちの3分の2の人は誰にも何も打ち明けないと。身内や友達だけというのが3分の1で、ましてや紹介状を持って近医を受診したというのは本当にわずかであるという事実があるので、外側から積極的に抽出していこうという意思を持って対応していかないとだめだと。

 また似たようなスライドが出ていますが、お母さんの自殺だけではなくて、先ほど言った精神障害というものは子供の虐待などにもつながるということで、そこにも適切な医療・保健の面からの介入、サポートが必要なのだろうということです。

 最後の図は、小児科の先生にもぜひ注意してもらいたいと。お母さんが子供を連れて健診に行ったり、予防接種に行きますので、そのときに母親の状態というものを観察して、いろいろな形でみんなで見守ってあげようということであります。

 以上です。ありがとうございました。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 それでは、続きまして、岡野参考人から御説明をいただきたいと思います。

 岡野先生は、きょうは三重からおいでいただきまして、本当にありがとうございます。「周産期のこころの医療の課題」につきまして、御説明をお願いいたします。

○岡野参考人 三重大学の岡野です。

 私は精神科医なのですけれども、精神科医の中でも周産期の精神医学を専攻しておる者です。お手元の資料4に沿って、現在の周産期精神医学における、日本における課題のようなことをお話ししたいと思います。

 資料が多いので少しはしょっていきますけれども、まず、資料の中で2ページ目で、これはイギリスの精神医学テキストに書いてある精神疾患です。精神疾患は産後鬱という名前が先行して、ほかの疾患もなかなか十分に認識されないようなところがあるのですけれども、妊娠前から、あるいは妊娠中の不安、抑鬱などもございますし、産褥期にはPTSDのような、分娩に伴うような喪失体験からくるようなものもあるし、かなり幅の広いものを含んでいるということを御理解いただきたいと思います。

 3ページを過ぎて、ここでは周産期と自殺に関して、岡井先生が日本のデータを出しましたけれども、イギリスなどのデータは、2003年あたりぐらいから体の病気よりも心の病気で死ぬ人が多いということが指摘されました。これは後発妊産婦死亡と言って、産後6週間以降1年未満の間に亡くなった方、その産褥婦に関してカウントした結果、こういうデータが出たわけです。これは王立精神医学会、王立産婦人科学会もびっくりしたわけです。精神医学的な要因で亡くなる方がトップだし、その中でも自殺がトップであると。ということで、かなりメンタルヘルスのキャンペーンを進めました。

 ところが、5ページで、去年出た母体死亡とメンタルヘルス(2015)、同じく去年のイギリスのしっかりしたデータなのですけれども、やはり後発妊産婦死亡のうち4分の1がメンタルヘルス関連で死亡している。全体にいくと、7名のうち1名は自殺であるという、またショッキングなデータが出ております。

 6ページ、では、実際にこういう方がちゃんとケアを受けていたのかどうかということを検証しています。これはダブルチェックなど疫学的な方法も用いたしっかりしたデータなので、かなり信頼性の高いデータなのですけれども、実際に周産期にメンタルヘルスのケアを受けた人というのが25%ぐらいです。40%は全くケアを受けていないということが判明しております。だから、英国も大体20年ぐらいこういうキャンペーンをやっているのですけれども、自殺を減らすということがなかなか困難であるということが、現在の実態ではないかと思います。

 7ページは先ほどの岡井先生のデータですけれども、全く同じで、8ページ目にデータがあるのです。これは英国とスウェーデンの比較ですけれども、やはり人口10万人当たりの自殺率というのは、日本というのは平均して20人ぐらいなのです。それに比べれば低いかもしれませんけれども、10万人当たりの妊産婦の自殺率というのは、イギリスとかスウェーデンに比べれば、日本というのは高いということがおわかりになると思います。

 もう一つの課題としては、周産期のメンタルヘルスが子供に与える影響というものがかなり問題になってきております。

 資料の10ページ目で、ALSPACというイギリスの大規模コホートの調査があるのですけれども、1万4,000人の妊産婦さんをずっとフォローして、ブリストル大学のホームページにこの結果がいっぱい書いてありますけれども、その一部です。この結果、要するに、子供に対する発達障害などの影響が、産前の鬱や産後の鬱と関連しているというデータが出たり、あるいは注意欠陥と産前、妊娠期の不安との関連があるということ、いわゆる妊娠期からの不安、抑鬱、ストレスが、子供に対する発達障害などと関連があるというデータがぼちぼちと出ております。大規模コホートなのでかなり信頼できる値だと思います。

 では、どうするかということで、具体的にエビデンスからの介入というものを、現在の周産期精神医学の医者たちは考えております。

 資料の12ページ目をごらんください。先ほど岡井先生がおっしゃった、いわゆるリスクファクターの同定をしましょうということです。特に鬱病とか産褥精神病、双極性障害に関しては、いわゆる過去の鬱病歴やあるいは過去の精神疾患の既往歴、これが結構エビデンスとして、そういうリスクのある人が再発するということがかなりわかってきております。この円で書いたように、例えば産後鬱病にかかった人が次回妊娠後に鬱病にかかるリスクというのは、2人に1人である。双極性感情障害に関しては、やはり2人に1人が再発する。産褥精神病という、これは珍しい疾患で、頻度は少ないのですけれども、重篤な入院しないといけないような疾患です。それもやはり2人に1人が産後に再発するということがわかっているわけです。鬱病にかかった方が初めて出産した場合には、今度は4人に1人が再発すると。ですから、これはもう確実なエビデンスなので、産科の先生が妊娠登録時から過去の精神科の既往歴をきちんと把握して精神科医と連携していくという形をとると、かなり未然に予防的なかかわりというものができてくるのではないかということで、今日のガイドラインではこういうことが進められております。

14ページ、いわゆる院内リエゾンと地域リエゾンの課題と現状ということなのですけれども、いろいろなマンパワーがあって、他職種の方が精神科あるいは周産期の領域の中にたくさんいるわけですけれども、医療から福祉につなぐ、ソーシャルワーカーとか、そういった方も入って、いろいろ妊娠、分娩、産褥ごとにコミットはしているのですけれども、なかなか難しいわけです。

15ページ目です。院内外の他機関他職種のネットワークをどうするか、ここが非常に大きな課題なのです。なかなか一元的にいかないということが現状になっているわけです。

 次の16ページの表をごらんください。いろいろな介入モデルがあるのですけれども、個別対応、あるいは生産性の効率というものでいろいろバランスを考えると、周産期というのはいわゆるこのインターモデルに入るわけです。いろいろな他職種の人が個別にかかわっているという形になってきているわけです。

17ページに書いてあるように、利点はあるわけです。情報の共有がしやすいとか、各機関の意向や役割の範囲が明確であるということ、職種によって通常業務の中での作業にできるということがあるのですけれども、全般的に欠点としまして、柔軟性、いわゆる即断ができにくいとか、情報の共有ができにくい、地域資源の偏在とか格差に左右されるということもございます。だから、母子保健と精神保健という大きな壁があるということです。

18ページをごらんください。周産期メンタルヘルスの連携は困難かという、今、申し上げているように、時系列で見ていくと例えば妊娠からかかりつけのA精神科で診ているのですけれども、出産になるとBの総合病院の精神科に転院していく。産後は、例えば里帰りした場合にはCの精神科に行ってしまうとか、産科のほうも近医の産科から、これは精神疾患合併妊娠ということで、Bの総合病院の産婦人科に送られていくといったこともありまして、妊娠から出産あるいは産後、地域保健に至るまで、なかなか時間軸や空間軸が要支援者の移動によって円滑にいかないというところがあるわけです。

19ページも、そういう複雑な動線をたどっているということがシェーマにしておわかりになるかなと思います。

 ここをどのように考えていくのは非常に難しいわけですけれども、20ページで、私は精神科医の立場なので両方俯瞰できるようなことから、1人の患者さんに対してどういう連携をとるか、母子保健と精神保健、大きくこの2つをインター型のチームモデルとして考えて、この中からどういった形で、あるAさんという患者さんに関して、例えば保育士を使って、精神科医を使って産科医と連絡する、臨床心理士を使うとか、精神保健だとソーシャルケースワーカーつなぐとか、精神保健の保健師もコミットするとか、こういった形で個別対応がうまく2つの大きな精神保健、母子保健、あるいは社会福祉も含んだ中で選択していく。きめ細かい形になりますけれども、こういった形が今のところ最大限の関与の仕方ができるのではないかと思っております。

SIGNというスコットランドのガイドラインがあるのですけれども、これは21ページに書いてあるように、医療保健関係者の情報の共有というものが大事だということ。これはやはりスコットランドでも言われているわけですけれども、基本的に患者にそういうプランニングを立てたときに、連携プランの内容を常に患者に持たせるということです。そういったことで、いわゆる妊娠後期から産褥における、例えば薬物の管理とか、問題が起きたときの連絡先とか、そういったこともきちんと書いてあれば周りが対応できるということも容易ですので、こういったいわゆる情報の共有化ということもこれからの課題になるかと思います。

 実際にリエゾンの課題として総合病院精神科、あるいは東京都の精神科病院・診療所、あと東京都の産科の診療所、病院に関連したアンケート調査があります。これはリエゾン活動がどうしてうまくいかないのかというところを聞いてみたわけです。総合病院の精神科の場合はいわゆる精神疾患、合併の妊婦の診察というのは依頼が多いので、急増してなかなか対応が間に合わないとか、依頼中の精神科の診療の継続をなかなか必要としないような軽いケースもあるとか、あるいは産科から精神疾患があるから丸投げされるということもあるとか、あるいは産後の育児の支援体制の構築のために他職種のミーティングを必要とするが、労力の割には報酬には結びつかないということ、こういったことが総合病院の精神科のアンケート調査の結果、出ております。

 精神科病院あるいはクリニックからは、いろいろ合併症がある人は、総合病院での管理が望ましいと考えている。しかし、実際には全例が総合病院で対応できるということは難しいわけです。だから、地域で精神科と産科、両方ができる連携というのはなかなか現実的にはできないことがあるのが大きい。

 あと、お薬の問題です。後で出ますけれども、いわゆる薬剤調整、妊娠期の薬剤、産後の母乳保育に対する薬剤です。その辺の知識をなかなか十分に持った専門家が少ないために、どうしてもほかの総合病院の精神科のほうに投げてしまう傾向があるということです。

 今、言った24ページ、薬剤の問題なのです。妊娠期にも抗鬱薬などを服用している人というのは結構いるわけです。これは古いデータですけれども、大体10%ぐらいが最近服用しているというアメリカのデータなどがあるわけです。妊娠初期というのは、どちらかというと催奇形性の問題で一旦減るのですけれども、下の図に書いてあるように、中長期的な子供に対する影響とか早産、低体重児、新生児毒性の問題とか、妊娠初期から後期まで薬物との絡みというのは問題になってくるわけで、なかなかこの辺は難しいのが精神科医でも難渋するところでございます。

 次に、スクリーニングについて申し上げます。危険、リスクが高い人を見つけるというのがスクリーニングで、先ほど申しましたけれども、もう一つ検出という、EPDSという産後鬱病自己評価票というものを配付して鬱の人をひっかけるということです。こういうことを日本で、ちょうど健やか親子21が始まった2001年ぐらいから随分母子保健の中で動いてきました。下に書いてあるような10項目の簡単な質問で、5分ぐらいでできるわけですけれども、実際には現場できちんと適正にスクリーニングテストが使われたのかどうかというのは怪しいです。なかなか2次評価というものができない、高得点のものに対する専門的な例えば精神科医の評価というものはなかなかできていないです。ここが非常に問題になっております。

28ページをごらんください。市町村における新生児訪問時のEPDSによるスクリーニング、それから、病院であれば産後1カ月健診におけるEPDSのスクリーニングをやるわけです。だけれども、なかなかいわゆる高得点者の同定ができないというところが現在も続いております。母子保健で精神科領域の問題を扱うのは、限界があるかなというところはあるのです。市町村でなくて、都道府県あるいは政令指定都市の保健所の精神保健がもう少し動くとこの辺のバックアップがとれるようになってくると思うので、これは大きなこれからの課題になってくると思います。

 次に、いわゆる周産期連携の取り組みをしている地域や病院についてお話しします。

 私は精神科医で、以前、精神科で専門外来をやっていたのですけれども、1999年から産婦人科の外来で母子精神保健外来というものをやっております。患者さんが来やすいということもいろいろあると思いますけれども、そういう一つの専門外来の断片で見た結果、どのような患者さんが来ているのかというのをここにお示ししました。産褥期が7割ぐらい、妊娠期が26%ぐらいということですけれども、31ページのように、妊娠期は神経症性障害、パニックとか強迫性障害とか、全般性不安障害といった、いわゆる神経症性障害の方が多いのです。気分障害は35%です。産後になると右側で、逆に今度は気分障害が56%ぐらいということです。特に大学病院という性質もあって、結構死別反応の方が多いです。13%です。これはいわゆる精神疾患ではないのですけれども、しかし、死別反応を放っておくと鬱病になったり、PTSDになったりということが多いわけです。最近の米国のDSM-5という精神科診断基準でもこの死別反応、いわゆる喪失体験をした人は鬱として考えようということが2005年度から訴えられているわけです。だから、そういう準臨床的な部分も、これからメンタルヘルスとしてカバーしていかないといけないということが、この外来のレベルを見てもおわかりになるかなと思います。

32ページ、これは大阪府がことしの2月からやった、ワンポイントでメンタルヘルスケアの体制の強化をしましょうということです。大阪府立母子保健総合医療センターのところに電話番号があるのですけれども、この土曜日に私はこのセンターの人たちに会いまして、少し実態を聞いてみました。平日10時から夜6時まで、保健師、精神保健福祉士、臨床心理士が電話対応しているようです。週に1回、精神科医がかかわっていて、現在まで2月から120件ぐらいの電話がかかってきている。本人からが約6割、夫、しゅうとめから10%、意外なことに支援者から16%、いろいろ母子保健などのスタッフからの問い合わせが16%あるということがございます。なかなか1日に1本や2本ぐらいの割合なので、まだまだこれから伸びてくるかもしれませんけれども、そういう受け皿の医療機関への連携システムを強化していくという形でこれから機能していくのではないかと思っております。

 次の大分の例ですけれども、これは精神科を主軸にしていろいろな母子保健、精神保健と社会福祉をつないでいこうというやり方なのですけれども、これはたしかメンタルクリニックの先生がこういう構想で少し動き出しているという一つの例です。

34ページ、これは石川県の鬱病、EPDSのスクリーニングですけれども、これは立ち上げたときに、母子保健ではなくて精神保健と一緒に石川県が主軸になって動いたのです。だから、現在も結構つながっています。いいところは、ハイリスクのグループに対して、母子保健のみならず精神保健の保健師の訪問も行ったりする。それから、月に1回、心の健康センターの精神科医も関与してハイリスクに対する同定を行っているということで、もう15年ぐらい続いていますけれども、母子保健と精神保健がドッキングしてあると結構いい結果が出る。もちろん100%のスクリーニング率が維持できているということです。

35ページでは、今、地域でのいろいろな地域連携をどうやるのかということで、松戸市が少し動いて、市の医師会やクリニックなど、行政が定期的に研修会を設けたりとか事例検討をやったりという形で連携の取り組みが始まっております。

36ページ、これは周産期の専門外来というものはまだまだないのです。日本で非常に少ないもので、これからこういうものが総合病院、あるいは大学病院などでできてくるといいと思います。私も大学、それから総合病院でこういう専門外来をやってきました。現在は、単科の精神科病院でもやっております。単科の精神科病院でこんなメンタルヘルス外来をやってお母さんは来るかなと思ったけれども、結構毎週のようにお見えになっています。こういうところは、いわゆる精神科のマンパワーが非常に充実しているので、臨床心理士とか、社会福祉士とか、いろいろな形でソーシャルワークをやる、そういう人材が多いので、単なる精神科だけではなくても社会福祉士との関連という形で、こういう単科の精神科病院というのは強いところがあるので、利点があろうかと思います。いろいろな形のところで専門外来というものは、結構やれば反応があるということです。

 英国の母子ユニットについて少し触れます。

38ページ、英国の母子ユニットは赤ちゃんとお母さんが一緒に入院するという施設です。これはデイケアや地域の往診のサービスとか、リエゾンとか、自助組織とか、こういうものと相まって、その中での中核的な役割をしております。

39ページに書いたように、いわゆる心の病気であっても親としての自覚を可能な限り強化しようと。そして、責任感と子供に対する養育能力を促進しようということが理念になっております。いわゆる心の病気の女性に対するケアだけではなくて、同時入院することによってマザーリングのスキルの評価や訓練もできたり、時には司法精神医学的なアドバイスを行うということをやっております。

40ページ、英国でどのような人が入院しているのかということなのですけれども、鬱病が43%、多いです。次に統合失調症という割合です。平均入院期間は6週間、結構短くなっています。母子ユニット自体はサッチャー政権から非常に削られておりますし、現在も1112ぐらいで、なかなかお金がかかるものですから、数は減らされております。

41ページは、独立型のバーミンガムの見取り図です。いわゆる併設型ではなくて、こういうように完全に独立した敷地の中で、8床のベッドで緻密な対応をやるといううらやましいユニットです。こういうものが母子ユニットの非常に典型として機能しております。

42ページ、これは私が三重病院というところにいたときに、母子ユニットを小児科病棟の一角につくってみたのです。意外と核家族の方には非常に好評でした。日本でこういう母子ユニットというものはなかなかつくれないといいますか、これは小児科病棟に精神疾患の患者さんを入院させるわけなので、精神保健福祉法という法律からするといろいろ無理があったりすることもあって、そういうことが課題であるわけです。でも、こういうニーズはもちろんあると思いますし、今後の理念としては、日本でも精神科の母子ユニットというものもモデルとして考えてもいいかなと思います。

 最後ですけれども、44ページ、いわゆる階層サービスとしてのモデルとして、いろいろ症状に合わせて対応する医療機関や医療福祉というものがあるということをモデル化したものです。

45ページは、地域の総合病院が核になって、単科の精神科の病院や精神科クリニックあるいは産婦人科病院や産婦人科クリニックなど、この連携をやっていくということがこれから必要になってくると思います。ですから、ここはやはり重症度別に考えて治療を行うということが必要になってくるかと思います。

 最後の提言ですけれども、産科の先生方も精神疾患は診断がわからなくても、重度か軽度か、それはわかるのではないかと思うのです。だから、そういうことで産婦人科のガイドラインにもそういう重症度をこれから併記するということが、来年度のガイドラインにも示されているように、そういう形で評価していただいたらいいかなと思います。

 先ほど申し上げましたように、過去の精神科の既往歴、治療内容に関しても、ルーチンに聞いていただくということです。

 それから、重症の精神疾患の患者さんに関しては、再発リスクを抑えるためのプランニングを行うということです。

 あとは、総合周産期母子センターや地域周産期母子医療センターにリエゾン精神科医療の整備を行う。これは、精神科医がひとり医長というところが結構少なくないのです。そこの問題もあるのですけれども、そういうリエゾン精神科医学の中で周産期を得意とするような人材をこれから養成していくということも考えております。日本総合病院精神医学会と日本周産期メンタルヘルス学会がこれからも協働しながら、そういう分野の人材養成や学会活動を行っていこうということで考えております。

 最後に、精神保健福祉機関と母子保健機関の連携です。いわゆる縦割り行政と言われるところは、ここがこれからきちんと共有と継続というものが提供されていかないとなかなか難しいのではないかと思います。

 長くなりましたけれども、以上です。

○五十嵐座長 どうも御説明ありがとうございました。添付資料についてはよろしいですか。

○岡野参考人 はい。

○五十嵐座長 それでは、お三方から御説明をいただきましたけれども、この精神疾患を有する周産期の女性が今、大変ふえていて、それに対していろいろ対応をされているわけですけれども、まだまだ不十分であることと、これについては先進諸国、特に英国でも20年ぐらい前から対応しているのだけれども、英国においてもまだ不十分だということで、いろいろな問題点、それから、新しい取り組みを含めましてもきょう御説明いただきましたけれども、何か御質問、御意見、いただけますでしょうか。

 どうぞ。

○山本構成員 日本助産師会の山本でございます。

 最後の資料4の岡野先生の御発表、すごくよく理解できまして、厚労省のほうで今、日本助産師会が担当させていただいている、まさにこのことなのですけれども、産後鬱と産後入院を絡めた研究をしております。同じようなことが出ております。産後鬱の精神疾患を保有している方というのはふえているということもありますけれども、鬱っぽさということで、産後鬱の疾患までは至っていない鬱っぽい方々の対応というものにも力を注がなければいけないような状況だと思っています。

 モデルが、先生の表現では精神保健、母子保健という使い方でしたけれども、私たちも医療モデル、それから、母子福祉モデルという表現を使いました。その中で、お母様方が1カ月までの間、産後100日の間に、自殺を含め問題が多いという結果も出ているので、まず育児行動がとれているのかということがすごくキーになるということがわかりました。その育児行動というのは、授乳すること、赤ちゃんを抱っこすること、おむつをかえること、リズムをつけて授乳行動ができるのかどうかということがすごく大事になってきていて、母乳をうまく飲ませられない、ミルクを与えても赤ちゃんがすぐ泣く、置くと泣く、抱っこしていないと赤ちゃんが静かになってくれない、泣き声というのは産後のお母さんの精神にとってすごくするどく刺さるものがあって、お母さんは授乳が終わって赤ちゃんとともにゆっくり休めるという繰り返しのリズムができることによって、精神が安定するということがわかりました。

 ですから、ここに関与できる、鬱っぽさに関与できる人は誰かというと、先生がここに示しているように、産科医を含め保健師、助産師、子育て支援というところが出てきています。今、全国的にもレスパイト、産後入院、それから、新生児訪問、訪問指導というものがどんどん広がりつつありますけれども、まだ遅々として進まないのが現状ですので、私はこの鬱っぽさに対応する、私たちがこのチームの一員として助産師が動けるようなシステムをもう少し明確につくり上げていく必要があるかと思っています。

 先生は20ページに「クライアントのニーズに最適な人的資源を選択すると、最大限の効果が発揮しやすい」と明記されています。まさにこれは分娩初期にかかわらず、妊娠中からの適切な指導が、その後の妊娠、分娩、出産、産褥とつながっていきますので、病院の助産師を初め、地域で動いている助産師たちにその機会を存分に与えていただけるようなシステムづくりを整えていかなければいけないと感じています。

 ありがとうございます。

○五十嵐座長 どうもありがとうございます。

 御質問ではないですね。ありがとうございました。

○山本構成員 失礼しました。

 ここの岡野先生の20ページに関してなのですけれども、この助産師というのは、まず病院助産師をメーンに据えていると思いますが、地域には地域保健所の訪問助産師のみならず、助産所というものがありまして、その助産所の活用に関しての先生のお考えはいかがでしょうか。

○岡野参考人 失礼しました。病院助産師の方ではなくて、地域も含めてです。私もそういう方と一緒にお仕事をすることがありますし、そういう方からの要請があって産後鬱を診るということもあるのですけれども、私が思うのは、産後ケアというのは最近いわゆる箱物と言うと怒られますが、あれを結構うまく活用すれば、そういう産後鬱のお母さん、あるいは、おっしゃった産後鬱までいかないような軽度のメンタルヘルスを抱えた方に対してもいい機能をするのではないかと思っております。ただ、産後ケアをやる場合は、やはりメンタルチェックをきちんとやった上でやっていただくほうが安心できるかなと思うので、できたらそういう精神保健関係の評価を受けるということができればいいかなと思っております。

○山本構成員 最近は箱物と言いながら、現在、助産院が全国に何百とありますけれども、その中で、助産師職を持っている人たちが全国、保健指導をメーンにやっている助産師たちもたくさんいますので、その方たちが訪問しながらあるいは助産所に訪れて、そして、適切なケアを受けることによってスクリーニング機能も果たしていると考えています。そして、私たち助産師の指導によって改善していくケースと、それから、これはもう明らかに病院で治療が必要だと判断するケースがありますので、そういうスクリーニング機能としても役割を果たしているように思います。

○岡野参考人 わかりました。私も余り数は見ていないので、機能的なところというのはもちろんあったかと思います。失礼しました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかにいかがでしょうか。

 どうぞ。

○田村構成員 岡井先生の発表で、身体的な疾患での妊産婦死亡よりも自殺のほうがはるかに多いということで、非常にショッキングなことでございました。岡野先生のお話の中で、我々はそういうお母さんが精神的に病んだり鬱になったりしたときには虐待問題ということはいつも頭に置いて危惧したのですけれども、先生の御発表の資料によると、それだけではなくて、子供自身の発達にもいろいろ大きな悪影響を及ぼすということで、新生児科医としてもこれは真剣に考えなければいけないことだということがよくわかりました。ありがとうございました。

 先ほどから出ております、岡野先生のところの20ページのチームモデルでも、岡井先生の11ページのところのチームモデル、多職種協働のところでも臨床心理士が入っております。これは、一応総合周産期母子医療センターは今、基本的には必須の職種ということになっておりますが、我々が全国調査をさせていただいたところでは、その総合周産期センターで周産期医療整備指針の中で明記していただいたおかげで、臨床心理士さんを雇用するとなると、いろいろ国や県からの補助金などをいただいたりできるのですけれども、それにもかかわらず常勤の臨床心理士を総合周産期センターにきちんと配置しているところはまだまだ少数で、ほとんど非常勤の方が多いのです。そういう方は今、NICUのベッドがどんどんふえてきて、非常に過剰な労働環境で、うちなどでも2年、3年たってくるとバーンアウトしてしまうということが起きております。我々はこういう臨床心理士さんの仕事がどんどんふえてきているので、ぜひとも常勤でするということと、NICUのベッドが多いところでは複数で配置すべきだということなどを研究班としては厚労省に提言したりして、そういったこともできれば今度の新しい周産期医療整備指針、今度は地域医療計画のほうに組み込まれることになろうかと思うのですけれども、それを検討していただきたいということをぜひ厚労省の坂上先生などにもお願いしたいと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 御意見ありがとうございます。先生のおっしゃるように、臨床心理士等を配置して精神的なケアも行うことは非常に重要だと考えています。ただ、先生のおっしゃるとおり、地域の実情などいろいろありますので、確保となると複数できるのかという話もありますので、過剰な取り合いになることも懸念されますし、そこのあたりは慎重に検討していく必要があるのかと思いますので、必要性は十分認識しておるのですけれども、よく地域の実情などを把握させていただきながら検討していきたいと考えております。

 以上です。

○田村構成員 正直に言って、臨床心理士さんで総合周産期母子医療センターなどで母子の親子関係の形成などに関心を持っている方はたくさんおられます。問題は、病院側がそういう方を常勤で雇用するとなるとコストがかかりますので、そのために雇用を控えたり、雇用しても非常勤で済ませているというのが現状でございますので、地域で臨床心理士さんが足りないので雇用できていないということはほとんどないと思いますので、そういうことを念頭に置いた上で、また対策をお願いしたいと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 峯先生、どうぞ。

○峯構成員 私は小児科の開業医でございますが、実は今、皆さんのお話をお伺いしていて、周産期から子育て支援という面からお母様たちの不安を減らすという考え方、早いうち、初期のうちからかかわるということ。もう一つは、私どものところに来たときには既に危機的な状況で、ぐったりした子供さんを抱っこしてお母さんが茫然と立っていたら、実はこの子の首を絞めました、私もこれから死のうと思いますと、そういう極端なケースも実は時々あります。

 そうしますと、子育て支援云々ということになりますと、先ほど御紹介いただいた大分はペリネイタルビジット、ですから、産前から産後までを含めて小児科医と産科医と地域のスタッフがみんな一緒になってやると。ただ、これは実は厚労省からのお話で、最初はプレネイタルビジットということで随分進められたのですが、なかなかそれも根づかないのです。これが本当にうまく動いているのは大分と北九州ぐらいで、ほとんどが動いておりません。しかし、それをやっていきませんと、助産師会の方も含めて一緒にやっていかないと底辺から広げていくことは多分できないだろうと。

 現在かなり厳しい、本当に命を落とすお母さん、あるいは子供を道連れに死ぬお母さんたち、あるいはお母さんが入院状況になって、子供の虐待の場合を見ると、お母様が精神疾患での重度の虐待例というものは実は非常に多くて、私も児童養護施設の嘱託医をやっておりますが、その中にはお母様が精神疾患で子供さん3人全部次から次へと赤ちゃんを産むけれども、産んだら全部乳児院から児童養護施設と、結局お母様は育てることができない、そういうケースも決して珍しくないので、そのように既にかなり厳しいケースに対する例えば自殺予防のGPEネットワークというものがありますね。ああいうものを含めて、本当に自殺をどうにか食いとめなければいけない。そういうことで緊急に動くシステムと、底辺から子育て支援をするシステムと、両方を同時にやっていかないといけないと思います。

 まさに、このリエゾンの関係だと思いますけれども、今回一番最初の議題でもいろいろなところが統合的にかかわる、それは統合的に一つのものにするのではなくて、その中の本当に必要なものは何なのか、この部分は分けると。それぞれの立場として絶対に残さなければいけないという幾つもの項目を具体的に立ててこのシステムをつくっていかないと、なかなかうまく進まないのかなという気が現場ではしておりまして、御意見をさせていただきました。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○福井構成員 日本看護協会福井でございます。よろしくお願いいたします。

 本日資料を準備していただきました。資料をごらんになっていただけますでしょうか。

 この周産期医療体制のあり方に関する検討会は、総合周産期や地域周産期を整備していくとともに、一般病院で行われている出産環境も整備することが対象になっていると理解しております。一般病院での出産場所が、他科と産科の混合病棟になっておりその数がふえています。その混合病棟で行われている出産環境への対応と、そこで入院している期間に、母子へのケアが不十分にならざるを得ないという実態があります。そこで、一般病院の出産環境の機能整理を今回の検討会の機会に、ぜひ行っていただきたいという要望です。メンタルヘルスケアを確実に行っていくための場の確保が必要という観点からも、この資料を準備させていただきました。

 1ページの下の段です。産科混合病棟の実態を日本看護協会で調べました。

 現在、分娩取り扱い施設は2,280個所ぐらいあります。この分娩取扱い施設の、約半数は診療所で、その半数が一般病院と総合周産期、地域周産期ということになります。病院の産科混合病棟の実態は平成24年度で1.3%、平成20年の北島博之先生の実態調査と比較すると6.3%増えています。

 また、産科以外の他科診療患者を同時に受け持ちながら助産ケアをしている病院は、機能別で見ても総合周産期で5%、地域周産期で30%、一般病院ですと63%ほどです。

2ページスライド3です。これらの産科混合病棟は、出産環境の本来のあるべき姿に戻して、出産場所の確保と、周産期に必要なケア環境、特にメンタルヘルスケアも確実に行っていくための場にすることが必要だという考えからの提案です。ブルーの囲みの中にあるのは、総合周産期や地域周産期をイメージしています。

 グリーンの枠の下にある赤で囲った「病院」と書いてあるところが一般病院で、この一般病院を「母子のための地域包括ケア病棟」といったようなイメージにできるとよいのではないかと考えました。他の診療科とは別に、出産がここで行われ、必要な育児支援がタイムリーに受けられ、病院から助産師が地域に行って、関係者と協働して母子支援も行うというようなことをイメージしています。このような体制と出産環境をつくっていくことが必要なのではないかと考えています。

2ページスライド4です。「母子のための地域包括ケア病棟」では、妊娠、分娩、産後も継続したケアを行う。助産外来でもメンタルヘルスケアのためのメンタルチェックを行う。これらのことが集中してできるような環境を整える。妊娠中は助産外来でケアをうけ、「母子のための地域包括ケア病棟」では分娩を行い、産後には、助産外来や母乳外来で産褥期のケアを行い、援助空白期間と言われている特に2週間目ぐらいには、手厚く母乳育児相談を行うなど、これらは「母子のための地域包括ケア病棟」で行うとよいのではないかと思います。

 岡井先生の資料スライド6や岡野先生の資料スライド8にあります通り、産褥期一年未満の自殺の時期として産後1カ月健診から3、4カ月までが自殺例数が多く、大変重要な時期であるということがわかっているわけですけれども、その間のケアを十分に行うためには、産科混合病棟ではなくて、「母子のための地域包括ケア病棟」、このように言うかどうかは別にあるかとは思いますけれども、このような環境の中で地域と連携しながら母子支援、育児支援、家族形成支援を行っていくことが必要ではないかという提案であります。

3ページスライド5ですが、この台形で示したところが総合周産期、地域周産期、一般病院で機能別にしたところです。現在年間約100万件の出産があって総合周産期と地域周産期で約25万件、一般病院で約25万件、診療所と助産所で約50万件の分娩が行われています。その一般病院で行われている約25万件、4割のお産の出産環境が母子のメンタルヘルスケアを提供する環境としては課題が多すぎるということです。この一般病院での出産環境が整備されていくことが、妊産婦のメンタルヘルスにかかわる上でも大変重要ではないかと考えています。ぜひこの機会に、一般病院の出産環境の機能整理を行うという観点からも周産期医療体制整備指針を見直していただきたいです。

 以上です。

○五十嵐座長 これは厚労省への要望ということですね。ありがとうございます。

 どうぞ。

○海野構成員 資料2に関連して少し教えていただきたいのですが、この中でお示しいただいているのは、周産期母子医療センターでの精神疾患合併妊娠に対する受け入れの体制の話だと思うのです。それで、厚労省の認識として、どれだけ受け入れが悪いのか、どういう問題が現場で発生しているのかということに関しては、どういう御認識でおられるのかということなのです。

 現実問題として、今まで周産期母子医療センターは、精神科の対応まで余り話題になっていなかったところもあって、救急対応を中心に考えてきていたところがあると思いますので、受け入れられないところがあるのはしようがないのが今の現実だと思います。そうすると、受け入れられる施設、センターのほうでそちらは引き受けていたりなどということを現実には現場ではやっていると思うのです。そういう中で、実際に受け入れに問題が発生している地域がどのぐらいあって、どのぐらいのそういう患者さんたちが発生しているのか、それに対してどう対応しようとしているのかという観点が必要かと。都道府県の立場からすると、実際にこれを整備しようとするとどのぐらいのボリュームの問題なのだということが必要になると思うのですけれども、その辺について何か教えていただきたいということ。

 あと、前に救命救急との連携のとき、母体救命の連携の体制をどうつくるのかという議論が行われていたときに、救命救急医療の側の医療提供体制があるわけですね。その医療提供体制と周産期側の医療提供体制とうまくすり合わせをするという作業を懇談会でやっていたということがあります。今回、特に精神科救急にもさまざまな課題があると思いますし、私の認識では、特に精神科領域の身体合併症を持った患者さん方の受け入れ体制というものに関しては、いろいろな施策も行われて補助金などもついていたりします。そういう状況の中で、この周産期の合併症というか、精神科の立場からすると、妊娠という合併症ということになるのかもしれません。そういう状況の患者さん方に対して、どういう取り組みが今まで行われてきているのか、あるいは行われていないのかということとの両方ですり合わせないと、周産期側からのアプローチだけでは問題はスムーズに進まないはずだと思いますので、その辺についてどういうお考えであるのかということを教えていただければと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 御意見ありがとうございます。まずは1点目のどのぐらいのボリュームかということなのですけれども、ボリュームとしましては、学会の先生方にお聞きして、今回も資料の2などで提示させていただいているように、合併症を有する方の2、3%ぐらいは精神的な合併症を持たれているというのは把握しているところなのですけれども、では、全国でどれぐらいの搬送困難事例などが生じているというのは、なかなか我々も情報を持ち合わせていない状況です。ただ、今回プレゼンいただいた岡井先生ですとか岡野先生のお話しにもありました通り、困難になっている事例が散見されるということで何かしらの対応は必要ではないかと考えているところでございます。そういった面でも、しっかりと精神科分野と周産期分野の連携が必要ではないかということで、論点として提示させていただいたところでございます。

 ただ、先生がおっしゃるように自分の施設で全て周産期も精神科も診るということはなかなか困難な施設もあると思いますので、そこはできれば自施設がいいのでしょうけれども、できない場合は他の精神科施設等と連携していくことが必要ではないかと考えているところでございます。

 2点目のほかの施策との連携というところなのですけれども、先生のおっしゃるとおり、精神科の救急搬送の分野では、近年、施策として制度としてかなり取り組みをさせていただいているところでございまして、また、診療報酬等でも評価がなされているところでございます。ただ、一方で、ここに提示していますとおり、周産期の分野と精神科の連携という部分では、総合周産期のセンターの対応状況を見ますと、なかなか対応できていない部分がありますので、またこれからここはさらに力を入れていかないといけないのかなということは考えております。ただ、先生がおっしゃいますとおり、救急搬送の分野などの連携は大事と考えておりますので、議題の1つ目にありましたとおり、医療計画の中で位置づけることによって、より救急の分野などと連携をして都道府県は考えていただけるのかなと考えております。そこは医療計画全体の取り組みの中で力を入れていけるのかなと考えておりますので、より精神科分野と周産期分野の連携といいますか、さらには救急分野との連携も図っていかなければならないのかなとは考えているところでございます。

○五十嵐座長 どうぞ。

○阿真構成員 ありがとうございます。

 岡野先生に質問させていただきます。私は地域では小児科を支援する活動をしておりまして、保育士さんですとかと一緒になって子供たちを、いつも親子を支援するような活動しているのですけれども、その活動の中で、地域のお母さんたちが、峯先生がお話しくださったように、きょう帰ったら子供に手をかけてしまうかもしれないということなどもかなり多くあります。ですから、きょうの御発表もすごく身近な問題としてお聞きしました。

 お聞きしたいことは、周産期精神医学というものを専門としてなさっている先生方が全国にどのぐらいいらっしゃるのかということです。周産期の専門外来というのはとても理想だなと思ってお聞きしていたのですけれども、全国で、現在、設置されているところは非常に少ないのではないかと思うのですが、専門として、周産期の精神医学の先生におつなぎしたほうがいいのか、その先生方がどのぐらいいるのかということをまずお聞きしたいこと。

 あと、精神科の先生であれば、重症でなければどの先生でもある程度診られるものなのか、精神科の先生に私たちの施設に来ていただいて研修をしていただいたこともあるのですが、別に周産期の精神医学の専門というわけではなかったと思うのですけれども、精神科の先生だったらどこでもおつなぎしてよいのかということをいつも疑問に思っています。というのは、おつなぎした先生が余り得意ではないとおっしゃることが結構多くて、地域でも保健センターの保健師さんですとか、いろいろな先生方とも情報交換しながら、どこのどの先生におつなぎしたらよいかという話はいつもしているのですけれども、精神科の先生でどの程度の先生であれば、妊婦さんや産後のお母さんたちをおつなぎしてよいのかというのはいつも迷うところで教えていただけたらと思うのです。

○岡野参考人 ありがとうございます。

 まず最初の御質問ですけれども、実際に周産期精神科医の数ですね。別に学会登録までは、そういうものはしていないのですが、学会で精神科医のメンバーになっている人というのはまだまだ少なくて、全国では40ぐらいですかね。お恥ずかしい話なのですけれども、非常に少ないです。ただ、基盤には基本的にはリエゾン精神医学という、総合病院で精神科医、精神科はひとり医長というところが多いのですが、そういう先生方は大体みんな周産期母子医療センターが併設しているということであれば日常的にお仕事されているので、安心して任せることができると思います。正直に言って、私も三重県でも総合病院は幾つかありますけれども、きちんと対応している先生もいますし、自分の患者が妊娠したら、妊娠期の治療や母乳の問題で嫌だと言って私の専門外来に送ってくる特定の精神科医もたくさんいます。だから、非常に無責任と言うとおかしいのですけれども、苦手だという精神科医もいないことはないのですけれどもね。

 だから、やはり今はリエゾン精神医学、そこの分野で周産期を強化していく。そういう形で全国的に専門医の普及を図っていく、人材を養成していく、そういう流れを今、描いていて、日本精神科救急学会の会長さんなどとも連携をとって今後のことは考えております。ただ、現状としては非常にまだ寂しい限りだと思います。

○阿真構成員 ありがとうございます。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 これは例えば小児の専門の精神科の先生も非常に少ないですし、人材育成をしなければいけないと皆さんお考えですけれども、なかなか現実にはふえていかないということが大きな問題なのですが、精神科の分野でも周産期に対応できる方を育成するということが非常に大きな課題であるということが、きょうよくわかったと思います。

 では、最後にお二人に1つずつ、手短にお願いいたします。

○峯構成員 先ほどの各地域においてそういううまくいかない例はどうかと。最後、ちょっと触れますけれども、GPEネットワークというものが各地区でかなりつくられていて、一般の医療関係者と精神科の先生と救急と、この3つのネットワークをつくって、1年に何人ぐらいそこのネットワークから入院した方がいるかなどという、そのデータが多分出ていると思います。その中で、妊婦さんのことだとか、あるいは小児科医を含めた何らかの赤ちゃんに関連する例があるかどうかは、多分調べればある程度の情報はそこから持ってこられるのではないかと思うので、ぜひそれを調べていただければと思います。

○五十嵐座長 御指摘ありがとうございます。

 では、山脇参考人、お願いします。

○山脇参考人 きょうは貴重な御発表をいただきまして、子供たちの未来にかかわるような重大なリスクがお母さんたちのメンタルケアにかかっているのだなということがよくわかりました。

 海野先生に御指摘いただいた総合周産期母子医療センターでどう受け入れていくかという課題についてなのですが、厚労省がつくってくださった資料2の9ページ、一番右のところに、自施設では精神科疾患を合併した妊産婦さんの対応ができない(対応していない)とおっしゃったところが総合でも25%あって、地域では47%あるというのは、なかなか自施設では難しいということはあるとは思うのですが、実際に相談に行く女性の側からすると、かなりショッキングな数字だと思います。これはセンターの問題というよりは、精神科との連携がまだまだできていないということが課題だと思うので、次のページで御提案いただいたように、周産期医療センターの要件に何らかの精神科との連携をきちんと盛り込んでいただいて、岡野先生のような貴重な先生は全国津々浦々にいらっしゃるわけではないと思いますので、まずは精神科の先生方と問題意識を共有していただいてつながっていただいて、妊婦さんたちを精神科につなげていただくという仕組みを厚労省から示していただくことが大事かと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 それでは、時間になりましたので、これできょうの審議は終わりたいと思います。御協力をいただきまして、ありがとうございました。

 事務局から何かございますでしょうか。

○坂上救急・周産期医療等対策室長 事務局でございます。

 次回の開催についてですが、次回を本検討会の最終回の予定で開催させていただこうと考えております。日程など詳細につきましては、決まり次第御連絡させていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

 本日はありがとうございました。

○五十嵐座長 きょうの貴重な討議も次回の資料に反映させていただきたいと思います。

 それでは、これで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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