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2016年6月29日 第44回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成28年6月29日(水)15:00~17:00


○場所

厚生労働省専用第21会議室(17階)


○議題

(1)前回の臓器移植委員会での了承事項等の報告について
(2)腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の検討について
(3)最近の臓器移植の実施状況等について
(4)(公社)日本臓器移植ネットワーク(JOT)について
(5)その他

○議事

○伊藤室長補佐 ただいまから、第44回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。本日はお忙しいところお集まりいただき、ありがとうございます。約1年ぶりの臓器移植委員会となり、委員、事務局とも異動がありますので、御紹介いたします。初めに委員長及び委員の異動について申し上げます。堺市立総合医療センターの横田前委員長が御退任され、後任の委員長として厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第3条の規定に基づき、疾病対策部会長から東京医科歯科大学の磯部先生が指名されております。磯部委員長より、一言お願いいたします。

○磯部委員長 御紹介いただきました東京医科歯科大学循環器内科の磯部でございます。この度、大変重要な委員会の委員長を拝命いたしまして、身が引き締まる思いをしております。私は20年ぐらい前から移植免疫の基礎研究をしてまいりましたが、現在、日本循環器学会の心臓移植委員会の委員長として、主にレシピエント側の承認申請、あるいは心臓移植のシステムについての臨床の仕事をさせていただいております。微力ですが、全力を尽くしますので、先生方の御協力を頂いて任務を全うしていきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○伊藤室長補佐 また、任期満了に伴い、委員に変更がありましたので、新たな委員になられました方の御紹介をさせていただきます。北九州市立八幡病院の市川委員、京都大学の上本委員、岩手医科大学附属病院の小笠原委員、藤田保健衛生大学坂文種報徳會病院の加藤委員、フジテレビジョンの木幡委員、福井県済生会病院の平澤委員、東北大学の水野委員、日本医科大学の横田委員、以上の8名の委員の方に新たに御参画いただいております。本日の委員の皆様の出欠状況ですが、山本委員から欠席との御連絡を頂いております。

 次に、昨年の臓器移植委員会の開催以降、事務局の異動がありましたので紹介いたします。健康局長の福島靖正です。難病対策課長の平岩勝です。移植医療対策推進室長の鈴木章記です。移植医療対策推進室室長補佐の林久善です。最後に、私は移植医療対策推進室室長補佐の伊藤孝司です。よろしくお願いいたします。

 それでは、福島健康局長から挨拶をさせていただきます。

○福島健康局長 健康局長の福島でございます。本日は委員の先生方には大変お忙しいところ、また足下の悪い中にお集まりいただきまして、ありがとうございます。今回、約1年ぶりの臓器移植委員会ということで、前回の委員会で御了承いただいた内容に基づいて、この1年の間に私どもは通知の改正を行ってまいりました。中でも「脳死とされうる状態」の診断方法について、従来、法的脳死判定に準じた方法を行っていただいたわけですが、これについてその各臓器提供施設で行われている一般の脳死判定と同様の取扱いに変更させていただいたということで、これについては臓器提供施設からは一定の御評価を頂いていると私どもは感じているところです。しかしながら、脳死下の臓器提供数は、法施行から本日に至るまで383例と、まだ少ないという現状にあります。本日は3月に行われた腎臓移植の基準等に関する作業班での検討結果等について、私どもから報告して御審議いただきますが、この本日の審議が臓器移植に関する課題の解消につながるよう、委員の皆様方には忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げまして、簡単ですが私からの冒頭の御挨拶とさせていただきます。本日はどうぞよろしくお願い申し上げます。

○伊藤室長補佐 続きまして、本日使用する資料の確認をさせていただきます。議事次第の配布資料を御覧ください。資料1「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の検討について」、資料2「最近の臓器移植の実施状況等について(報告)」、資料3(公社)日本臓器移植ネットワーク(JOT)について(報告)」です。参考資料として、参考資料1「脳死下臓器提供に関する検証資料フォーマット(様式2)」、参考資料2「臓器提供手続に係る質疑応答集新旧対照表」、参考資料3「心臓移植希望者(レシピエント)選択基準及び心肺同時移植希望者(レシピエント)選択基準 新旧対照表」、参考資料4「臓器移植の実施状況等に関する報告書」、参考資料5「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準」、参考資料6「現行制度における課題」、参考資料7「〈腎臓〉臓器提供者(ドナー)適応基準」、参考資料8「指示書に対する業務の改善状況について(報告)」となっております。過不足等ありましたら、事務局までお伝えください。また、机上に現行の法令・ガイドラインをまとめたファイルを置いておりますので、議論の際に御参考ください。なお、このファイルは次回以降も使用いたしますので、会議終了後、持ち帰らず机の上に置いたままにしていただきますようお願い申し上げます。

 それでは、頭撮りはここまでといたします。これより、今後の議事進行を磯部委員長にお願いします。

○磯部委員長 お手元の議事次第に沿って、議題に入っていきたいと思います。まず、議題(1)「前回の臓器移植委員会での了承事項等の報告について」です。事務局から御報告をお願いいたします。

○伊藤室長補佐 まず、議題(1)「前回の臓器移植委員会での了承事項等の報告について」です。参考資料1を御参照ください。前回、臓器移植委員会にて了承いただいた5類型施設への負担軽減に関しての事項になります。臓器提供が終了した後、適切な救急治療が行われたか、脳死判定は適切に行われたかを検証会議として行っております。この検証会議のための資料として提出していただいていた資料を、これまではカルテのコピーを含め、多くの資料を臓器提供施設の方から提出していただいていたわけですが、その資料作成も5類型施設の負担になっているということで、最低限の資料にまで軽減しております。こちらは昨年9月に公表し、本年1月から運用を開始しております。

 参考資料2も、前回の臓器移植委員会にて了承していただいた5類型施設の負担軽減に関しての事項になります。それまで臓器提供を行う場合の2回の法的脳死判定の脳死とされうる状態の診断を、質疑応答集では脳死判定に準じた方法で行うことが望ましいとしてきましたが、多くの施設では脳死とされうる状態の診断にも法的脳死判定を行っており、合計3回の法的脳死判定を行っている状態でした。3回も脳死判定を行うことが5類型施設の負担となっておりましたので、脳死とされうる状態の診断は各施設での治療方針の決定等のために行われる一般の脳死判定と同等でよいとしております。こちらは昨年9月に質疑応答集の変更という形で、5類型施設への事務連絡をしております。

 参考資料3も、前回の臓器移植委員会にて了承していただいた事項になります。心臓移植希望者(レシピエント)の選択基準の改正になります。従来まで、ドナーが18歳未満の場合に、status118歳未満のレシピエント、次にstatus118歳以上のレシピエントという順位で移植準備を選択しておりました。改正した点ですが、ドナーが18歳未満の場合には、status118歳未満のレシピエント、次にstatus218歳未満のレシピエント、次にstatus118歳以上のレシピエントという順序で、小児を優先的に選択することに改正されております。こちらの選択基準は、実際、昨年1218日の小児の臓器提供事例のレシピエント選択から運用が開始されております。

 最後に、資料4は臓器移植の実施状況等に関する国会での報告書になります。平成9619日、参議院の臓器移植に関する特別委員会において、毎年国会に報告書を提出することが附帯決議されております。これまでは臨時国会にて報告しておりましたが、この度、参議院厚生労働委員会の理事会にて、今年度より通常国会にて報告することが決定しました。それに伴い、これまでの報告書では、調査期間などの締め日がまちまちであったため、本年度から年度末締めで可能な部分は集計し、519日に厚生労働大臣より国会報告を行っております。来年度からは報告書の集計などは全て年度締めにて報告する予定となっております。議題(1)の報告に関しては以上です。

○磯部委員長 ただいまの御報告について、御質疑等ありますでしょうか。検証の資料フォーマットについて、法的脳死判定のシステムについて、心臓移植の年齢に関する変更、国会への報告書を年度末締めから年度締めに、主にそういった項目について御報告いただきましたが、御意見はありますか。よろしければ、今の御報告は御了承いただいたということで、先に進みます。

 次の議題に入ります。議題(2)「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の検討について」です。こちらも事務局から御説明いただけますでしょうか。

○伊藤室長補佐 「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の検討について」、説明いたします。参考資料6は、腎臓作業班で提出いただいた資料となっております。資料1に沿いながら説明いたします。資料1、また、参考資料63ページを御参照ください。まず、現状を説明いたします。参考資料63ページです。現在の腎臓移植の移植待機患者数は12,000人を超え、また待機期間として15年以上待機されている方が2,000人以上となっているのが現状です。

 資料1、腎臓移植(レシピエント)の選択基準について、現行制度ですが、参考資料5は現在運用されております腎臓移植希望者(レシピエント)の選択基準となっております。現行のレシピエント選択基準では、前提条件、ABO式血液型を満たすレシピエントが複数存在するなどの場合は、(1)搬送時間、(2)HLAの適合度、(3)待機時間、(4)未成年者の各項目の合計点数により優先順位を決定しております。搬送時間とは、虚血による腎機能への影響を考慮し、臓器を提供する施設の所在地と同一の都道府県・ブロック内のレシピエントに加点を行っております。HLAの適合度は、移植後の拒絶反応防止のため、適合度の高いレシピエントに高い加点を行っております。待機日数は、登録から移植までの待機日数の長いレシピエントに高い加点を行っております。未成年者は、小児・思春期の成長障害を考慮し、未成年者のレシピエントに高い加点を行っております。

 ここで、これまで現行制度における課題として、(2)の現行制度における課題の5つに関して、平成26年から平成28年まで3回、「腎臓移植の基準等に関する作業班」を開催しました。課題として、2腎同時移植について、Age-match制度の導入(小児から小児レシピエントへ)、待機日数よりも0ミスマッチを優先すべきかどうかについて、移植腎機能無発現であったレシピエントの対応について、C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱いについて議論してまいりました。

 資料12ページ目から各論についてです。2腎同時移植について説明いたします。現状として、現在の腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準(以下、選択基準)は、1人のレシピエントに対して1腎を提供することのみを想定しており、1人のドナーから2人のレシピエントへ移植可能となっておりますが、1人のレシピエントに対して同時に2腎を提供することは明文化されておらず、運用が曖昧となっておりました。腎臓作業班で検討した論点として、ドナーの腎機能が低く、1腎のみでは腎機能が不十分である場合、体重が軽い小児のドナーの場合において、2腎同時移植を可能とすることの医学的妥当性があるか、また医学的妥当性がある場合、レシピエントへの2腎同時移植を行う場合の具体的な判断基準を定めるかどうか、これが論点となっております。この論点に基づき提出いただいた資料が参考資料65ページから7ページ目になります。6ページ目ですが、これまで実際に脳死下、心停止下の7事例で、2腎同時移植が行われております。7例中6例は6歳未満の小児から2腎同時移植、1例は高齢の腎機能が1腎では不十分なときの2腎同時移植で、これらを行っております。

7ページ目の左側のグラフですが、体重20kg以下の小児ドナー、6歳未満相当のドナーからの移植腎生着率は、En blocと書かれている2腎同時移植に比べ、Singleと書かれている1腎移植のほうが成績が悪いことが海外からも報告されております。また、右の表で、体重15kg以下の小児のドナーからの移植では、1腎の場合、2腎移植の1.5倍の腎廃絶のリスクがあるというのが世界中で報告されております。

 このような医学的な検討から、作業班での検討結果としては、2腎同時移植については医学的妥当性があることから、選択基準を改正し明文化すべき。ただし、レシピエントへ移植するときの具体的な判断基準は規定せず、12の個別の事例ごとに臓器移植ネットワークが選択基準に基づき選ばれたレシピエントの担当医、メディカルコンサルタントの意見を踏まえ、当該レシピエントへあっせんすべきとしました。

 この腎臓作業班での検討を踏まえた方針案として、選択基準を改正し、2腎同時移植が可能である旨を記載する。具体的な改正内容として、ドナーが6歳未満の場合は2腎同時移植を可能とする。また、ドナーが成人を含む6歳以上の場合は、ドナーの腎機能が一定程度以下であり、1腎ではその機能が不十分と判断されるときは、日本臓器移植ネットワークが選択基準に基づき選ばれたレシピエントの担当医(移植医)及びメディカルコンサルタントと相談し、2腎同時移植を行うことを可能とするという方針案としました。

○磯部委員長 論点が5点ありますが、まず全部御説明いただいて、それから個別の議論ということですね。

○伊藤室長補佐 はい、検討していただければと思います。

○磯部委員長 先に進めてください。

○伊藤室長補佐 続きまして、2番目のAge-match制度の導入について(小児ドナーから小児レシピエントへ)の説明をいたします。現状と課題ですが、脳死下での小児ドナーからの心臓、肺及び肝臓が提供される場合には、現在、若年層レシピエントへ移植されることが多いですが、脳死下での小児ドナーから腎臓が提供される場合は、その提供事例の全て24例で、3060代の成人レシピエントへ移植されております。現在の選択基準に基づき、未成年者のレシピエントは加点がなされているものの、待機日数の長さに応じた加点が優位となっているのが現状です。腎臓作業班で検討した論点としては、小児ドナーから腎臓の提供なされる場合は、小児レシピエントへの移植を優先すべきではないかということが論点となっております。

 参考資料69ページ、10ページを御覧ください。腎臓移植の待機日数ですが、平均で約11年待機しないと順番が回ってこないのが現状です。また、10ページは実際の小児事例、4事例を基にポイントを見ております。実際の事例では、小児で待機している患者さんは、小児の加算ポイントがあっても、赤字で書いてある20位から30位以内の所にきますので、小児の臓器提供が出ても回ってくることは余り期待できないのが現状です。そこで、腎臓作業班での検討結果として、小児ドナーからの腎臓提供は小児レシピエントを優先するべきであり、またその場合の「小児」の年齢を何歳までとするかについては検討が必要であるとなりました。また、同時に作業班に出席いただいておりました法律の参考人からは、小児レシピエントを優先することについての医学的根拠が必要ではないかという意見が出されました。

 そこで、作業班が終了してから今回の臓器移植委員会の開催まで、腎臓作業班の先生方より医学的根拠を提出していただいております。参考資料611ページから13ページになります。11ページでは、小児の透析患者さんでは成長障害が顕著です。図1の左側が身長、右側が体重のグラフになりますが、移植前の身長は標準偏差から非常に低く、また移植後には改善するものの平均より低くなっております。また、身長は徐々に改善するという報告がありますが、少なくとも19歳未満までは低いままというのが現状と報告されております。

12ページ目を御覧ください。そこで腎臓移植を行えば成長障害の改善が可能ですが、標準レベル以上に成長が改善・発達するためには、移植腎機能が良好な状態で、しかも長期間保たれなければならないということが腎臓移植の世界で分かっております。この良好な思春期成長を獲得するためには、糸球体濾過量、腎臓の血流量(GFR)60以上、必要であると報告されております。図2、図4ですが、図2で左のグラフが脳死患者さんで18歳以下のドナーからの腎臓提供、真ん中が生体腎移植での18歳より大きいドナーからの提供、右側が脳死ドナーで18歳より大きいドナーからの提供になります。○がGFRという糸球体濾過量のグラフになりますが、18歳以下の腎臓は移植後も長期間にわたり、つまり移植後、年数がたっても良好な腎機能を保っている。ただ、18歳より大きい生体ドナー、あるいは心停止、脳死ドナーの場合は、腎機能が徐々に悪くなっていくことが分かっております。

 また、図3ですが、移植後の腎機能の大きさは16歳以下の腎臓は年数とともに大きくなっていくことが証明されており、図3Aが腎臓の大きさを見ております。Group1と書いている実線の部分が16歳以下の腎臓の成長を見ております。また、図3Bにも●の実線の部分で、16歳以下の腎臓が血流量がどんどん良くなって、改善していくことが現れております。

13ページはドナー年齢と成績、腎臓のサイズミスマッチについてのグラフとなっております。表1、図5ですが、腎臓移植後の生着率では、ドナー年齢が高いと短期・長期とも生着率が悪くなると報告されております。また、図6は、サイズミスマッチにより、ドナー/レシピエントの体表面積比が小さい、つまりドナーが小さくてレシピエントが大きい場合、図6の波線のグラフですが、生着率が悪いことが報告されております。このような医学的な根拠が腎臓作業班から提出されました。

 要約すると、小児の透析患者は成長障害が著しいということ。また、小児ドナーへ移植した腎臓の腎機能が良好でなければ、成長障害の改善に至らないこと。16歳未満の小児ドナーの腎臓は、移植後、成長し大きくなり、長期間にわたり良好な腎機能が保たれること。大きさが合わない腎臓を移植されたレシピエントは生着率が良くないこと。これらのことが提出されたので、方針案として腎臓移植作業班を再度開催し、これらの資料を基に小児ドナーからの提供は小児レシピエントへ優先すべきか、またその場合の「小児」の年齢を何歳とすべきかについて、医学的な妥当性の再確認を行うこととしてはどうかといたしました。

3番目の論点、4ページ目、待機日数よりも0ミスマッチを優先すべきかについてです。現状と課題ですが、現在の選択基準では待機日数の長さ、HLAの適合の度合に応じて点数を加算しておりますが、文献上では待機日数の長さにかかわらず、HLAの適合度が0ミスマッチのレシピエントは16ミスマッチのレシピエントに比べ、移植後の成績が良い、生着率が良いという報告があります。腎臓移植の待機期間が長期化しているレシピエントが多数おり、待機日数の長さに応じた加点が優位となっております。これらを受けて、腎臓作業班で検討した論点として、待機日数の長さよりも0ミスマッチのレシピエントが優先されるよう加点すべきかどうかということを議論しました。

 作業班での検討結果です。参考資料616ページの生着率のグラフですが、日本で脳死、心停止で行われた腎臓移植3,063例を対象として、結果を観察しております。HLAのミスマッチで見ると、06ミスマッチ全てでは有意差はありませんでした。

 ただ、同様に次の17ページの生着率の表では、0ミスマッチと16ミスマッチで比較してみると有意差が出てくるような状態で、5年で0ミスマッチの場合は78.7%の生着率、16ミスマッチは74.4%の生着率といったグラフとなっております。

 これらの医学的な根拠から、腎臓作業班で検討した結果ですが、腎臓作業班でもこちらの意見はまとまらず、両論併記となっております。2つ意見がありました。0ミスマッチのレシピエントを16ミスマッチのレシピエントよりも優先するべきという明確な医学的根拠がないので、現行のままとすべきというのが1つです。また、逆に待機日数が0日のレシピエントであっても、移植の機会が得られるよう、0ミスマッチの場合には加点により優先度を上げるべきというのが2つ目の意見で、結局まとまらずに今回、両論併記で報告しております。これにより、この検討を踏まえた結果、現時点では待機日数の長さより0ミスマッチを優先することについて、明確な医学的根拠が示されておりませんので、引き続き腎臓作業班で医学的根拠を収集することとしてはどうかという結論にしております。

4番目の議題、移植腎機能無発現であったレシピエントへの対応についてです。現状と課題ですが、ドナーから提供された腎臓が機能せず(移植腎機能無発現)、再度、移植が必要となる患者さんがいます。当該患者が再度、移植を希望する場合には、既に腎臓移植を受けたことから、改めてレシピエント登録をすることが必要になり、その登録をした時点が待機日数の起算点となることから、移植前の待機期間を維持することができません。腎臓作業班で検討した論点として、移植腎機能無発現であったレシピエントは移植をしなかった場合と同様の取扱いとし、移植前の待機期間をそのまま維持すべきかどうかを検討しました。

 検討結果ですが、参考資料620ページです。こちらは19954月から201312月まで、日本で行われた脳死・心停止下での移植腎機能無発現の事例となっております。透析離脱不能例が脳死で3.2%、心停止で8%、合計、平均で7.5%という結果になっております。この後、再び腎臓移植を受けている患者さんが4事例ありますが、その4事例の待機日数が11年から13年で、再度待機して腎移植を受けているという現状です。これらの結果から、腎臓作業班での検討結果として、腎機能がドナー側の原因で無発現であった場合、移植をしなかったこととし、移植前の待機期間をそのまま維持するという結論になりました。ただし、こちらも腎臓作業班で移植腎機能無発現であったレシピエントの担当医、移植医が、無発現の原因がドナー側の理由によるものである医学的根拠を示す必要があるのではないかという意見もありました。

 そこで、これらの検討結果を踏まえた方針案として、現在、移植腎機能無発現の原因がドナー又はレシピエント、どちら側にあるのかを判断するための基準がありませんので、まずは診断基準を関係学会で定めることとして、その後に腎臓作業班で移植腎機能無発現であったレシピエントの取扱いについて、ドナー側が原因である場合は、移植前の待機期間を維持するという方針で検討することとしてはいかがでしょうかとしました。

5番目の議題、C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱いについてです。現状と課題ですが、平成26年、平成27年にC型肝炎ウイルス、HCVに対する経口の抗ウイルス薬が保険適用となり、90%以上の治癒率が得られるようになってきております。現在の選択基準及びドナー適応基準ですが、参考資料72(2)HCV抗体陽性ドナーは慎重に適応を決定するとはなっておりますが、現在もHCV抗体陽性ドナーからの腎臓提供はHCV抗体レシピエントに限り可能となっております。しかし、今後、当該医薬品の使用により、HCV抗体陽性であっても、実際ウイルスが血中に存在しないレシピエントや、そういった脳死又は心停止ドナーが増加することが考えられますが、その取扱いを変更する必要はないかどうかを検討しました。また、C型肝炎ウイルスのgenotype別で取り扱うことについてどうするかを検討しました。

 作業班で検討した論点として、現在、選択基準及びドナー適応基準では、HCV抗体陽性ドナーからの腎臓提供はHCV抗体陽性レシピエントに限り可能になっているから、変更する必要はないかどうか検討しました。

 参考資料622ページ目にあるフローチャートですが、現在、臓器移植ネットワークにて、このフローチャートを検討しておりますが、C型肝炎の治療の進歩もあり、改変する必要があるという結論にはなっております。また、これらを受けて、腎臓作業班での検討結果として、血中にHCVのウイルスが存在しない場合でも、腎臓にC型肝炎ウイルスが残存している可能性があるので、現在の選択基準は改正する必要はない。また、C型肝炎ウイルスのgenotype等により、C型肝炎抗体陽性ドナー及びC型肝炎抗体陽性レシピエントの取扱いを変更することは、腎臓だけではなくて、現在、肝臓と小腸もC型肝炎抗体陽性ドナーを可能としておりますので、そういったところにも同様に関係する問題でもあることから、関係学会等で議論していただく必要があるのではないかという検討結果になっております。

 これを受けて、HCVgenotype等により、HCV抗体陽性ドナー及びHCV抗体陽性レシピエントの取扱いを変更するためには、臓器ごとの学会で定めるレシピエントの適応基準の改正が必要となることから、関係学会で議論していただくこととしてはどうかという方針案としました。これで議題(2)「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の検討について」の説明を終わります。以上です。

○磯部委員長 問題が多岐にわたっていますが、これから1から5のそれぞれの論点について御議論いただきます。その前に、ただいまの事務局からの説明に、御質問はございますでしょうか。

○木下委員 内容は非常によく分かったのですが、諸外国の考え方を必ずしも踏襲する必要はないと思いますが、例えば欧米ではこういう事案についてどのように考えておられるのか、我々は素人ですので是非そのことを1つ付け加えていただけたら有り難いです。

○伊藤室長補佐 欧米については、C型肝炎の患者に対してはC型肝炎のレシピエントが選択されるとなっております。HIVのドナーであれば、HIVの患者にといったことで、感染症同士でマッチしているレシピエントが選択されるようになっております。

○木下委員 全般的に、2腎であるとか。

○伊藤室長補佐 全体的に話をさせていただきますと、2腎同時移植については、諸外国でも、体重15kg20kg以下の小児に関しては全て2腎同時移植、また腎機能が悪いドナーの場合は2腎移植がされております。小児から小児へということになると、諸外国の全てで、小児のドナーが出た場合は小児のレシピエントに行くことになっています。

 待機日数よりも0ミスマッチということに関しても、待機日数と0ミスマッチの加点の度合いというのがほとんど同じぐらいになっています。日本の場合は臓器提供が少ないということになり、待機人数が多いということで、現在のところこの待機日数が非常に優位になっていますが、海外の場合では待機日数とHLAのミスマッチ数というのはほぼ同等の扱いになっております。

 こちらの移植腎機能無発現であった場合に関しても、こちらは再登録するときはそのままという形になっています。

○磯部委員長 諸外国では、このとおりになっているという説明でした。ほかにどうぞ。

○上本委員 木下先生の御質問に追加というか、もう少し聞きたいと思います。欧米で小児から小児への移植の場合、6歳未満のドナーの場合も2腎でやっているのでしょうか、それとも小さな子供に小さな腎臓を2つに分けてやっているのでしょうか。

○伊藤室長補佐 6歳未満の小さいドナーが提供された場合、例えば3歳同士のドナーとレシピエントであった場合でも、3歳のドナーから2腎を頂いて、3歳のレシピエントに2腎を植えるという方法でされています。

○相川委員 東邦大学の相川です。2歳未満に関しては、ナプロティクスのデータ上、余りにも小さすぎるため小児の腎臓を移植すると成績が悪いというのが出ているのです。非常に小さな子には、むしろ大人の腎臓のほうがいいのではないかというデータが出ております。

 ただ、2歳未満の子のレシピエントというのは、待機患者として日本には存在しませんので、これは余りないのですが。先ほど厚労省から説明があったように、小児の腎臓を2つとも子供に移植するのが通例です。

○磯部委員長 ほかに事務局の御説明に、御質問はごさいますか。そうしましたら、また論点ごとに話をしていきますので、先に進めます。

 まず、第1点目、2腎同時移植の方針案は、御説明いただいたとおりですが、いかがでしょうか。

○猪股委員 今の御質問の答えと関連するので、私も認識したいのですが、1番目と2番目のことが矛盾しないのかどうか。つまり、子供がドナーのときは、2腎同時に1人にあげると。2番目の論点では、年齢のマッチングです。先ほど上本先生が聞かれたように、相川先生は成績がいいとおっしゃったのですが、その成績のほうがはるかに良くて、2人に分けてあげるよりは1人に2つあげるほうがいいということがはっきりしているのかどうか、そこをお伺いしたいのです。

○相川委員 参考資料67ページを御覧ください。ここのEn blocというのが2腎で同時にしているもので、singleというのが1腎です。これはもう明らかに体重20kg以下、つまり6歳未満のドナーからは、2腎を移植したほうが成績が良かったということが示されています。

 そのほかに、アメリカでは確か5歳未満だったと思いますが、5歳未満の場合には2腎で同時に移植すると規定されています。あと、腎臓の大きさについて、長径などがあり、それも6cm未満の場合にはそのほうがいいというデータもありますし、大体、日本人の体格からすると、6歳未満、体重20kg以下、それから体重15kg以下は特に2腎でやらないと成績が悪いということがはっきりしていますので、この資料を参考に2腎同時移植について是非考えていただきたいと思っています。

○横田委員 日本医大の横田です。今の参考資料66ページによると、既に7例行われているということです。ということは、この方針案にのっとった形で、既に先行して施行されている解釈でよろしいのでしょうか。

 もう1点は、先ほどの猪股先生の質問と被るのですが、Age-matchになると、6歳未満から6歳未満のときには1腎となるのですか。6歳未満から6歳未満でも2腎ということになるのですね。

 後半の質問は分かりましたので、1つ目の質問の、既に7例施行されているということは医学的な判断だと思うのですが、それを正式に認めたらどうかという解釈でよろしいのでしょうか。

○相川委員 私は臓器移植ネットワークの理事もしており、3月までは東日本支部の担当理事をしておりました。東日本で発生した小児の腎臓の臓器提供について、年齢と大きさ、長径などについてコーディネーターから報告があり、これは2腎で移植しないと1腎では機能しないだろうということで文献、症例報告を提出し、それをコーディネーターに示して、移植医療対策推進室とともに検討し、これを先行して行っております。ただし、Age-matchingの制度はなかったものですから、当然従来どおりの規則によって、大人に2腎同時に提供されました。だから、既にネットワークの中では、コンサルタント及び担当理事がその医学的な判断をして、それをコーディネーターに伝え、移植医療対策推進室と検討した上であっせんを行ったということです。

○伊藤室長補佐 先ほどの猪股先生の御質問に関しての返答です。こちらの方針案として、6歳未満の場合も2腎同時移植を可能とするということですので、必ず2腎でしないといけないというわけではありません。1腎でいけるというレシピエント判断であれば、1腎でもいいと考えております。

○加藤委員 条件の中に、例えば死戦期の状況などの規定はございますか。ここには「心停止下」「脳死下」と一言で書いてあるだけなのですが、そのときの状況に関しては何か縛りがありますでしょうか。

○伊藤室長補佐 特に縛りはありませんで、心停止、脳死下というのは何もありません。

○相川委員 追加してよろしいでしょうか。

○磯部委員長 どうぞ。

○相川委員 皆さん御存じのように、心停止下の場合には、非常に低血圧で心停止するまで長期に待機するということがあり、移植後腎機能が発現しない確率も高いですし、腎機能が発現しないために、7割以上の方が透析をするというのが現状です。だから、2腎同時移植のときも同じようなことが心停止下の場合には考えられるということです。

 ただし、ドナーの腎機能が悪い場合、これは子供でなくて大人でもドナーの腎機能が悪い場合に、実際に1例ほど、2腎で提供されている事例があります。そこに示してあります。これもネットワークの中で十分に医学的な判断をした上で、コーディネーターにその判断を伝えて移植医療対策推進室と検討し、行われたものです。アメリカでは既に、腎機能、状態によってデータが出ており、数値が出ているのですが、アメリカと日本は体格も事情も違いますので、当然それを勘案しなくてはいけませんので、今回はメディカルコンサルタント及び臓器移植ネットワークの中の医学的な判断によって行うということで、その判断を任せるということにしています。

○磯部委員長 事務局案は、2腎同時移植を可能とすると明記するという御提案でしたが、そのように進めさせていただいてよろしいでしょうか。では、事務局案について、当委員会として了承するということで、次回委員会で具体的な改正案を事務局からお示しいただきたいと思います。

2番目の論点についてです。Age-match制度の導入で、小児から小児、これも諸外国ではこのように行われているということですし、前回の臓器移植委員会で心臓については同様の制度を提案し、お認めいただいたところです。これについて御意見を頂ければと思います。相川先生から何か追加はございますか。

○相川委員 海外のことをもう少し詳しくお話しますと、Age-matchingというのはユーロトランスプラントで、いわゆるヨーロッパで一番最初に行われたものです。考え方としては余命の長い子供に関しては成長の問題、そのほか余命の問題からして長期に生着する腎臓を提供したほうがいいということで、お年寄りの腎臓を付けるとどうしても生着期間が短いということもありますから、お年寄りの腎臓はお年寄りに、その余命を考えてあっせんするということで、ユーロトランスプラントでは随分前から施行させております。

 イギリスのAge-matching制度は、とりあえず子供のドナーの場合はまず提供されるのは、どの年代の腎臓も子供です。それからPRAという、いわゆるHLAの抗体がある、パーセンテージが高い方が選ばれる。ただ、これが子供でHLAの高い方が、一番最初にプライオリティがあり、そこに行くことになっています。

 アメリカに関しては、アメリカはAge-matching制度をしばらくやっていなかったのですが、去年の12月までは35歳未満の腎臓は子供に優先して、35歳以上の腎臓は子供にやってはいけないというコードがありました。12月から少し変わってはいますが、コンセプトとしては同じような考え方です。

 そういうことで、各外国全てが、このAge-matching制度に関しては、実際は行っていたというのが現状であり、やっていなかったのは日本だけということになります。

○磯部委員長 社会通念上も、そういうことで受け入れられるのだと思いますが、今回は医学的根拠を示してくださいということで、今事務局案でお示していただいているように、その根拠が示されたという解釈でよろしいですね。

 問題は、年齢を何歳にするかということがはっきりしないということで、これについて、事務局から御提示いただいたわけですが、その辺りについて御意見はございますか。

○木幡委員 フジテレビの木幡と申します。長年臓器移植の取材をさせていただいております。それとは少し違うのかもしれないのですが、小さなお子さんを亡くしたドナー家族が臓器提供をするという決断をされるというのは、非常に重い決断ということで、実際にその家族の方から、お気持ちとして、高齢の方を軽んじるわけではないのですが、余命が余りない方ではなく、是非子供にあげたいというような気持ちというのはあるのでしょうか。

○奥山委員 実際に経験しています。ほとんどの場合に、「同じぐらいの年頃の方にわたるのですか」というのは、腎臓に限らず聞かれることが多いと感じています。

○木幡委員 とても小さなお子さんのケースですか、何歳ぐらいという線を引くのは難しいのかもしれませんが。

○奥山委員 小さいお子さんほど、そういうことを聞かれることが多いように思っております。

○有賀委員 木幡さんが言われたように、決断をするお父さん、お母さんの気持ちを考えると、少なくとも死ぬ順番が狂っているわけです。おじいちゃん、おばあちゃんが死んで、お父さん、お母さんが死んで、それから子供が死ぬというなら人々は耐えられるけれども、逆が起こっています。その状況において臓器提供をするということを考えると、親御さんの気持ちを十二分に察しなければいけないだろうという観点で私も何年か前に発言したことがあります。医学的な根拠はどうあっても、答えはそちらでなければいけないだろうというようなことを思っていたのですが、今回は医学的な根拠という話なので、それはそれでいいと思いますが、もう少し踏み込んで。

 ヨーロッパやアメリカは、そのような気持ちを汲むというような文化についての記録はどうなっているのですか。

○磯部委員長 どなたかお答えいただけますか。

○相川委員 ヨーロッパとかアメリカは分からないのですが、もともとの制度がAge-matchingになっていますので、小児ドナーの両親の心情で規則ができているのかは分かりません。

○有賀委員 医学的な根拠は後から付くわけですから、初めの頃にそうだったという話は、人々の考えがそうだったのではないかと、今更、よりそのように思うのですが。書いていなければ分からないというのではなくて、先生は向こうに行かれていますので、周りの人は、ここでいうコーディネーターの方たちと同じような経験をされているのかなと思って、お聞きしたのです。

○相川委員 私はイギリスで実際に臨床をやっておりましたが、子供の臓器提供はやはり苦しいもので、自分で摘出するときに非常に心情的に抵抗があったのをよく覚えています。もちろん、子供の腎臓はイギリスではほとんど子供に行っていましたので、そういうことを考えずに子供に移植をしておりましたが。

○磯部委員長 はい。

○相川委員 もう1つ追加してよろしいでしょうか。私、2回前の腎臓の作業班で発言しておりますが、東日本支部の飯田コーディネーターから、ある大学病院から提供された小児ドナーの母親からの手紙を託されました。そこに書いてあったのは、お子さんを失われた悲しみ、できればお子さんに臓器を提供したい、それを何とかできないかと、そういう趣旨のお手紙でした。

 それを作業班で読み上げまして、記録にも残っております。それを代表するように、奥山委員もおっしゃいましたが、ほとんどの親御さんはそのような思いがあるというのは間違いないと私は考えています。

○磯部委員長 木幡さん、今のでよろしいですか。

○木幡委員 はい。

○見目委員 昨日少し調べてみたのですが、6歳未満で脳死判定とされた201411月の事例があり、そのときは女の子だったのですが、心臓は10歳未満の男の子、肺は10歳未満の男の子、肝臓は10代の女性、腎臓は50代の男性と40代の女性に移植されました。

 それに対してお父さん、お母さんが文書を出していまして、それを読むと、娘の回復を期待し見守ってまいりましたが、辛く長い時間を経て、回復の見込みがもはやないことを受け入れるに至りました。臓器提供という形で病気に苦しむお子さんを助けることに、娘はきっと賛同してくれると思いますと。こういう文章なわけです。

 ですから、当然ながら、40代、50代の方がいい悪いではなくて、そういうことは想定していないのだと思うのです。たまたま結果がそうなってしまっているのであって、そういうことは望んでいない、想定していないと思います。ですから、恐らく自分がその立場になったときに、後で気持ちの収拾を付けるのが大変だと思います。

 よく似たことで、これは小児ではないのですが、10代の女性が脳死した場合の例があります。これは20154月です。18歳以上の10代の女性の記事が載っていまして、18歳か19歳ということです。その方が提供されたときには、心臓は60代の男性、片方の肺は40代の女性、肝臓は60代の男性、膵臓と片方の腎臓は50代の男性、もう片方の腎臓は50代の男性に提供されています。

 これを見たときに、自分が親だったらどう思うのか、あるいはこういうものを見た方が、自分の家族に臓器提供の話が起こったときにどう思うのか、ちょっとすっきりしないものが残ってしまうと思うのです。

 まず着手しなくてはいけないのは小児だと思いますが、その後はもう少し観点を広げて、年代の差が余り大きいのというのは、世の中の通念上は受け入れられにくいのではないかと思うのです。若しくは提供した後に後悔が残ってしまう。そこは抑えていく方向で考えないと、臓器提供を増やすことにはつながらないのではないかと思っています。

○磯部委員長 事務局から何かございますか。

○鈴木移植医療対策推進室長 いろいろと御意見をありがとうございます。後ほど、実績のところで話をしようと思っていたのですが、現実問題として小児の移植は非常に少ないです。私が着任して1年はたっていませんが、4件、これは多かったと思います。それで今は15件、18歳以下となっています。先ほど木幡委員から話のあったような最後の感想がきているということは重々承知しております。

 我々ども、いわゆる脳死判定をする施設の負担を軽減することを皆様方に決めていただきました。もう1つ忘れてはいけないのは、ドナーの方々がやってよかったと思えるようなこと、こういったところは充実しなければいけないという方針で取り組んでおります。

 ですので、そういったこともやりつつとはいえ、何でも勝手にやってはいけないというところがあるので、どうにか医学根拠も作れたかなというところですので、今回の御提案に至ったという次第です。

○磯部委員長 御異論のある方はいらっしゃらないと思いますが、小児ドナーから小児レシピエントへの移植という方針そのものについては、皆さん御賛同いただいたと思います。もう1つ、事務局から御提示いただいた何歳ということについては、まだ検討が必要であるという御判断だったと思いますが、心臓は昨年に18歳ということで切らせていただき、18歳以下は18歳以下にということで決めた経緯がありますが、腎臓については引き続き根拠を検討していただくという御提案だと思います。そういう方向でよろしいでしょうか。次回の委員会で選択基準の改正案を諮るということで、御異存はございませんでしょうか。では、そのように進めさせていただきます。ありがとうございました。

3番目、待機日数よりも0ミスマッチを優先すべきかについての御提案です。御意見、御討議をお願いします。

○上本委員 参考資料617ページを見ますと、0ミスマッチの場合は学術上は差があるということですよね。実際に0ミスマッチというのは、患者は待っている人が多いですから、ドナーの状況によっていつでも出てくるのでしょうか。

○伊藤室長補佐 次の18ページを御覧ください。先ほどは説明をいたしませんでしたが、こちらは実際の直近の15事例のドナーを調べております。そうしますと、この15事例中2例に0ミスマッチがあります、そのうち、やはり当たりやすいというか、日本人は比較的狭い事例ですので、比較的合いやすい方の場合ですと、例えばA型の中国四国の赤く消している所で、1人のドナーに関して30ミスマッチの方がいらっしゃいました。もう1人のほうは1人しかいなかったのですが、大体15分の2で割合としては少ないのは現状です。

○上本委員 ということは、かなりの確率であるということは、この17ページの図をどう評価するかということですね。

○相川委員 約10%で、それほど多くはありません。10%の方が、HLAが全部同じだと考えていただいていいと思います。

○磯部委員長 ほかに御意見はありますか。

○横田委員 私は、事務局の方針に賛成なのですが、1617ページの表は、かなり統計的な操作が入った形で、一見16ミスマッチがこの形では有意差があるとなるのですが一方、16ページを見ますと、5ミスマッチ、6ミスマッチがむしろ良いというようなことになるので、ここはやはり更に医学的な根拠を集積するということで、私はいいのかなとは思うのですが、いかがですか。

○相川委員 すみません、私は分かりやすくしました。日本はNが少ないのでこのようになっておりますが、アメリカのUNOSのデータでも、ユーロトランスプラントのデータでも、コラボレートリスタディのデータでも、HLAの順番、0ミスマッチは断トツにいいというのは、明らかなのですね。これは、Nが少ないから、このようにどうしてもなかなか有意差が出ないようになっていますが、死体腎移植の場合には全てHLAのミスマッチ順に成績が出るのが常識です。

○横田委員 しかし、N3,063ですよね。それなりに症例数はあるのかなと思います。

○相川委員 0ミスマッチの数が310しかありませんので、全体の数はそうであっても、それほど多くはありません。これは、Nの数が多いところは、全て順番になっていますので。私はイギリスで働いていましたが、私のいた時代からイギリスではもう0ミスマッチが優先的、Beneficial matchingと言って、ほかのものより優先されていたのが事実です。今も、実際に0ミスマッチと、先ほどの子供、それからHLAの抗体価が高い方の3つが合わさっているものが、まず最初にプライオリティがくることになっています。

 アメリカにおいても、アルゴリズムでは0ミスマッチがやはり優先されております。ユーロトランスプラントでも同じように、点数化はされていますが、実際は0ミスマッチの方に行っていることがほとんどだと思います。

 問題は、長く待機している方の移植を受ける権利ももちろんあるのですが、長く待機している方に移植をすると、私は移植医なのでよく分かりますが、平均待機期間が15年、17年の方に移植すると、非常に動脈硬化が強くて、手術が大変になるということです。それから、当然透析をそれだけ長い間やっていますので、術後の合併症に非常に苦労します。ですから、待機期間、0ミスマッチの方は、免疫学的に拒絶反応はまず起こらないと考えていいと思いますし、また抗体価が高い方も、HLAは全部合っているわけですから、そういう方にも安全に移植できるという意味で、これはやはり推進すべきだと私自身は考えております。

○上本委員 もう一点よろしいでしょうか。確認なのですが、HLAのタイプによって、0ミスマッチに当たる確率は違うのでしょうか。つまり、皆さんイーブンに0ミスマッチが当たるチャンスがあるのであれば平等だと思うのですが、いかがでしょうか。

○相川委員 やはり、日本人に多いHLAというのは、当然型があるのですね。それから、イギリスのレジストリー、コードを見てみますと、当たりやすいHLAと当たりにくいHLAをきちんと出してあります。ただ、日本人はやはりヨーロッパよりもどちらかというとHLAが合わせやすい、島国の民族なものですから、そういう意味ではそれほど広がりは私はないと思いますが。

○磯部委員長 相川先生の御経験では、欧米では0ミスマッチは圧倒的に生着率がいいということなのですが、本日はそれは提示されていませんので、やはりそれを拝見した上でないと、なかなか意見を集約するのは難しいのではないかと思います。では、この日本人の3,000例のデータ、5年で4%の差をどう考えるかということと、順番を入れ替えることに対する議論もあろうかと思います。この場では、なかなか集約するのが難しいような気もするのですが、どのようにまとめたらいいかについて御意見はありますか。

○小笠原委員 そもそも、何で最初からミスマッチを先に持ってこなかったのですか。そこがよく分からないのですが。何で、今頃、こんな話になってきたのですか。その議論がよく理解できません。私が、後から入ってきたからかもしれませんが。

○磯部委員長 事務局、いかがですか。

○伊藤室長補佐 すみません、これは脳死が始まる前の心停止のときから続いていることですので、かなり昔の話で私たちも存じておりません。

○小笠原委員 そうですか、分かりました。

○相川委員 日本では、待機期間がほとんどのファクターを占めてしまって、ほかの点数よりも待機期間の点数のほうが非常に高くなってしまい、全てそれで決まってしまうと。成績も何も関係なく、それで決まってしまうということで、それはおかしいのではないかということで、今、見直しが入っているのだと思います。

○小笠原委員 分かりました。

○磯部委員長 現状ではどちらとも決めがたい様々な意見が出ましたので、本日の意見を集約して、作業班にお伝えいただき、議論を続けていただくという方向で、よろしいでしょうか。では、その方向でよろしくお願いいたします。

 では、4番目の論点に関して、御意見を頂きます。無機能腎であったレシピエントについて、その登録、待機期間を維持するかどうかという御提案です。御意見はありますか。

○木幡委員 移植を受けて透析に戻ってしまったら、移植を受けたときの待機日数を自分の持ち点、持ち日数として、もう一回臓器移植ネットワークのランキングの中でここに入るということで、戻し入れるということですか。

○磯部委員長 そうですね。

○伊藤室長補佐 結局腎移植を受けても、透析から離脱できない、全くその腎機能が働かないという状態です。ですので、今まで透析をしていて腎移植を受けたら、一旦そこで待機日数はリセットされてしまいますので、また登録をしたらゼロからのスタートになるのですが、その移植をした腎臓が全く働かなくて、結局透析も離脱できないという状態になってしまいますので、そういった場合は救済をするということで、待機日数を維持するままということです。

○木幡委員 移植を受けてから、透析に戻るまでの時間は、換算されないのですか。

○伊藤室長補佐 そこは、換算されずにということです。透析が離脱できない原因として、ドナー側の原因なのか、それともレシピエントの原因なのかを、きちんとはっきり分けないといけないのではないかという議論がありましたので、ドナーの原因であればそのまま、レシピエントの場合でしたら、レシピエントの長期間の動脈硬化、あるいは手術的な技術の問題などがありますので、それは除いたほうがいいのではないかというような意見がありました。レシピエントのせいではないときに限りというような条件が付きますが。

○木幡委員 それは、病院側が判断するのですか。

○伊藤室長補佐 その判断をどうするかが、1つの問題点として挙げられております。

○木幡委員 それで、病院側が臓器移植ネットワークにまた伝えるとか何かをして、初めて戻るということなのですね。

○伊藤室長補佐 はい。更に医学的な話になりますので、学会で診断基準をきちんと整備していただいてと考えております。

○磯部委員長 質問ですが、その方は次のドナーが現れたとして、2回目の移植になりますが、その成績は1回無機能腎を経験して2回目の腎移植をするということでの不利益といいますか、成績の悪さなどはないのでしょうか。

○伊藤室長補佐 不利益は、可能性としてあります。

○磯部委員長 手術が1回増えるわけですよね。

○伊藤室長補佐 そのレシピエントの方が1回増えますので。

○磯部委員長 そのことは勘案しないで、待機期間は延ばすと。

○伊藤室長補佐 そのまま維持して、もし希望があればということになりますが。

○渡邊委員 そうなった場合に、またすぐ上位に戻って対象になった場合と、その期間ある程度また待つ場合とでは、臓器が悪くなり生着にかなり影響するのですか。

○伊藤室長補佐 すぐした場合と、また11年待機した場合ですと、恐らく50代、60代で待機して全く発現しなかったといった場合には、もう恐らく次のチャンスはないと思います。30代、40代ですると、今度は5060代でもう一回チャンスが回ってくるという形になりますので、そのような方に対してはもう一回チャンスをということになります。

○渡邊委員 やはり、その年代に、10年後にもう一回移植を受けた場合の成績は。

○伊藤室長補佐 成績としては、長期の透析が増えますので、やはり透析期間が長くなればなるほど、ほかの手術後の合併症などのリスクが更に増すと考えられます。

○横田委員 特に注意をしなくてはいけないのは、ドナー側の原因でリセットをしたときに、臓器提供家族の気持ちを十分に配慮した対応が必要です。家族の気持ちとしては、ずっとレシピエントの体の中で一部自分の家族が生き続けていたことが提供のきっかけになることが多いと思います。また、臓器の機能が悪いために、移植を受けた方の体調が悪化したということが明らかになると、提供家族の想いは複雑だと思います。そのような意味で、ドナー側の問題で機能しなかったということが、余り公にならないような形の配慮は必要なのかなとは思います。

○小笠原委員 全く逆の議論なのですが、もしレシピエントのせいで生着しなかった場合は、この方はもう二度とできないということになります。要するに、それが情報として出てきますよね。この方は、レシピエントのせいで明らかに手術が難しいから、やっても駄目だと。その場合でも、そのことを全く勘案せずにそのままリセットされると。しかし、そのデータは必ず残りますよね。そうすると、それを実際に選択するときに、レシピエントを選択するときに、この方は前に着かなかったからという、これは不利益というか、医学的には当たり前なのですが、しかし患者にとっては不利益ですよね。そういうことはあり得ないですか、あり得ると私は十分思うのですが。それは、私は医学的にはしょうがないと思うのですが。

○伊藤室長補佐 原因としては、レシピエントが原因ということで、拒絶反応の収拾がつかなくて、腎臓が廃絶してしまったなどのいろいろな理由があると思います。そういったときは、1回移植を受けたのだから、次の方にチャンスを、そのレシピエント側の拒絶反応などの理由でしたら、もう一度チャンスは。

○小笠原委員 あることはあるのですか。

○伊藤室長補佐 そういうことは、あることはあります。

○猪股委員 1つは、腎臓でのプライマリーのファンクションの定義が明確であることが非常に大前提だと思うのです。ドナー側の要因か、レシピエント側の要因か、私自身は肝臓をやっていますが、肝臓から考えるとかなり分けることは難しいのではないかという気もするのです。それから、レシピエント側の要因とは言っても、患者のせいなのか、医者のせいなのかというところもあると思うので、仮に医者のせいだとはっきりしていたとして、それをレシピエント側の要因だから駄目だとするのも、少し腑に落ちないところが一般的な考え方としてはあり得るのではないかという気もいたします。

○磯部委員長 その辺りの診断基準は、関係学会で定めてくださいというのが、事務局の御提案だったと思いますが。

○有賀委員 今、事務局から、拒絶反応という話が出ましたよね。それは、どちらのせいなのですか。

○伊藤室長補佐 拒絶反応はレシピエント側、あるいは主治医側の免疫抑制剤の使い方などが問題になってきますので、ドナー側ではないのですが。

○相川委員 質の悪い腎臓をあっせんしてしまったために、レシピエントが機能を発現しなかった場合には、待機期間を0にしてしまうのはおかしいのではないかという、これが基本的な考え方です。フローサイトメトリークロスマッチを3年前から全部実施するようになっていますが、実際的にはそれほど拒絶反応は、今はそんなに短期間で起こることはまずないのです。これは、大体1回も拒絶反応が発現しなかったものが対象です。

 それから、もう1つ、腎臓はほかの臓器と違って、2腎、臓器提供が出る場合が通常です。通常2腎とも状況が悪ければ、そういうことも当然考えなくてはいけません。また、腎臓移植をした直後に、もう皆さん今は施設で生検をやっていますので、その生検の所見を見れば、その腎臓の質の程度が分かります。又は、拒絶反応かどうかも判断できると思います。ですから、そういうことを学会等で検討して、いろいろと診断基準を作ろうと。ただし、猪股委員がドナーの原因かレシピエントの原因かを鑑別するのは難しいとおっしゃいましたが、アメリカではそのようなことは関係なく、3か月以内に廃絶したものは全て待機期間を元に戻すということに規則上なっております。

○加藤委員 先ほどの話なのですが、もう一回手術をして、もう一回駄目で、再手術をしたときに、問題は結構あるのでしょうか。他科では、再手術はときどきあることなのですが、また10年待ってという場合は話が違うと思いますが、近々に手術をした場合に、何か手術的なことで問題が発生するのでしょうか。

○相川委員 通常、外科の症例は皆同じだと思いますが、最初の移植手術から少なくとも3か月から半年おいて行わなければ、状態が悪いものですから、いい成績がとれないというのが1つです。それが、最低限の条件だと思います。もう1つは、少しそれよりも長くおいた場合にどうなるかというと、一番問題なのは、最初に入れた腎臓の抗原に対する抗体ができているかどうかです。また、移植は右でも左でもできますので、2回目も可能です。私自身、5回目もやったことがありますが、そのぐらいの回数は何とかできるのが腎移植の特徴です。

○磯部委員長 なかなか意見集約が難しいですが、待機時間を維持すること自体については、大勢はよろしい方向できていると思うのです。ただ、判断基準については議論の余地があると思いますし、学会、あるいは医者の要因ということもあるかもしれません。その辺りの基準は改めて作らなければいけないと思うのです。移植前の待機時間を維持するということについては、御賛同いただけますでしょうか。

○相川委員 もう1つ、腎臓の作業班で、実は山本委員から法的なことでお話がありました。臓器移植ネットワークでは、3か月以内で無機能腎であった場合には、あっせん料を請求していないのです。これは、法的には移植を受けていないのと同じだという御発言がありました。ですから、待機期間を元に戻せと。法的には待機期間をすべて戻すべきだということを追加しておきます。

○有賀委員 保険診療上のルールがあるのではないですか。

○相川委員 いや、しかし実際ネットワークでは請求していないのです。

○有賀委員 だから、していないことそのものが間違っているのではないですか。

○相川委員 理事長は、そのように言っています。

○磯部委員長 よろしいでしょうか。これは了承ということで、基準については今後作業班や学会等で御検討いただくということで、4番は終わります。

 次はC肝について、御意見はありますか。なかなか難しい議論で、事務局や作業班でもまとめ切れなかったということだと思います。この場で御意見を頂ければ、また先の議論にもつながりますが、いかがでしょうか。

○相川委員 C型肝炎について、臓器移植ネットワークで一番問題になっているのは、C型の抗体陽性で、しかもウイルスがたくさんある腎臓を、抗体は陽性なのだけれども、治療で治して、ウイルスがいない患者に移植していいかどうかということで、議論がありました。今は、皆さんも御存じのように、C型肝炎の抗ウイルス薬は非常に良くなり、耐性でないものは90%以上治るということで、待機の患者で実際に抗体は陽性なのだけれども、ウイルスがいない患者がたくさん出てきています。また、ドナーに関しても同じです。このルールでは抗体陽性ですから、ウイルスのPCRのことは全くこの中に入っていないわけで、抗体陽性から抗体陽性という規則しかないものですから、この辺りがあっせん上非常に迷うところです。

 ただし、これからいろいろな議論が出てくると思うのです。移植した後も、この抗ウイルス薬で治せるのではないかと。ですから、むしろ待機患者にリスクを話した上で現在のルールとおりに行ったほうがいいのではないかというような、いろいろな議論が今出ております。

○磯部委員長 いかがでしょうか。学会等で議論は必要でしょうが、方針案としては学会で御検討いただきたいという作業班の結論だったと思います。心臓や肺は、そもそもC肝の規定がないというか、禁忌になっているのです。ですから、もし腎臓なり小腸のほうでそういうことが議論されるのであれば、やはり同時にほかの臓器についても議論しないと、同じレシピエントが出たら、例えば腎臓はいいけれども、心臓は同じ理由で駄目だというのは、公平性の観点で問題が出てくると思います。腎臓から御議論いただければいいと思いますが、今後はそういったことも視野に置いておかないといけないのかなと思います。御意見はありますか。では、5番は学会で更に御検討くださいという結論にさせていただきます。15を通じて、追加で言い残したことなどはありませんか。

○木幡委員 腎臓において小児から小児への移植が優先となるのは、大体いつ頃になるのでしょうか。

○磯部委員長 年齢がまだですから。

○鈴木移植医療対策推進室長 一応、今御指示いただいた形でいけば、できるだけ早く作業班を開催させていただくと。それから、年に2回ぐらいこの会議を開くこととしています。方針案を委員長からの指示のとおり今後、改正案等でお示しするというスキームの中で、まずは私たちは努力をしようと思っています。医学的な年齢が出るかどうかが鍵となると思います。

○磯部委員長 近々にということで、よろしいですか。

○木幡委員 はい。

○磯部委員長 ほかによろしいですか。それでは、次の議題に入ります。議題(3)「最近の臓器移植の実施状況等について」、事務局から説明をお願いいたします。

○伊藤室長補佐 「最近の臓器移植の実施状況等について」御説明いたします。まず資料22ページから御参照ください。平成910月から平成28531日までの臓器移植提供事例を示しております。脳死下での臓器提供事例は377例で、法改正の平成22年より増加していることが分かります。しかし、この件数を年度締めでくくってみても同じような状況であり、ここ数年、臓器提供数はほぼ同じような数で伸び悩み、横ばい状態であることが分かります。

 続いて3ページを御参照ください。脳死下での臓器提供者数を見ております。平成22年の法改正後より家族同意の臓器提供が可能となっており、全体の3分の2は家族同意の提供であることが分かります。また、15歳未満の小児の臓器提供事例は、年間数例程度にとどまっていることも分かります。

4ページは、脳死下・心停止下での臓器提供後の臓器移植の実施状況と移植希望者、つまり待機者の表です。移植件数はここ数年、ほとんど数は変わっておりません。この移植数に対して待機患者は、かなり多くの数が待っているというのが現状です。また、括弧内は20歳未満の10代の待機患者数です。

 続いて5ページです。先ほど見目委員から出された方も入っていると思いますが、こちらがこれまで本邦で行われた18歳未満の臓器提供事例の全てです。また、臓器移植者の年代も全て載っておりますので、御参照ください。

 続いて67ページが、日本臓器移植ネットワークが法改正5年の経過の際にまとめた、18歳未満の小児の臓器提供に関しての資料です。こちらはネットワークのホームページに掲載されているものです。まず6ページの説明からいたします。先ほどまでの臓器提供数では、小児の事例が年間1例から多くて4例程度であることが分かっております。実際に日本臓器移植ネットワークへ上がってきている情報提供数が、法改正後から2015331日までで97例ありました。ところが実際に臓器提供されたものは14例となっており、臓器提供に至らない様々な理由として、このように掲載されております。これら提供に至らなかった理由として、「施設の体制整備がまだ」というのが非常に数を多く占めているということを認めております。

7ページが選択肢提示についてです。つまり、脳死とされうる状態の後に主治医の先生方から家族の方に、臓器提供も可能だということを説明していただいたのが選択肢提示で、そちらが33例です。また、主治医が「脳死に近いですよ」と言ったときに、家族から申し出られたのが64例あります。これらの理由で臓器提供に至ったのが5例と9例というように、非常に少ない。しかも家族から申し出ておられるにもかかわらず、「施設の体制整備がまだ」というのが12例あったりということで、そういった様々な問題があることが分かります。

 そこで8ページを御参照ください。小児だけでなく、成人の臓器提供も問わず、臓器提供の場面における様々な問題に対して、我々厚労省としてもハードの面から、あるいはソフトの面からの施策・研究を行っております。厚労省では毎年5類型施設に対して、体制整備ができるかどうかのアンケート調査を行っております。5類型施設が862施設あり、その中で体制整備なしという施設が54.8%ということで、半数以上を占めております。これらの体制整備を補助するため、日本臓器移植ネットワークを通じて補助事業を行っております。隣に書いてあるのがその補助事業の内容で、地域支援事業、体制整備事業、技術研修会などを通じて体制を整えていただくよう支援しております。

 また、ソフト面として、先ほどは小児事例の情報提供数でしたが、実際に昨年、平成27年の日本臓器移植ネットワークへの情報提供件数は、437例ありました。しかし心停止・脳死下の両方を合わせて、実際の臓器提供に至ったのは91事例ということで、情報提供数から臓器提供に至るところが非常に少ない。こういったところでは一体どういったことが問題になっているのか。この原因の精査を政策研究として、ここに2つ挙げています。主にソーシャルマーケティング手法を用いた理想的な対応方法の確立と、脳死患者の家族に選択肢提示を行う際の対応のあり方に関する研究を通じて、こういったところを現在解析して、最適な選択肢提示などを考えているところです。以上が資料2の説明です。

○磯部委員長 臓器移植の件数と提供の件数、特に小児の件数あるいは臓器移植に至らなかった、提供できなかった理由等について、詳細に御報告いただきました。先生方も御意見がいろいろあろうかと思います。いかがでしょうか。

○平澤委員 資料の18歳未満からの臓器提供事例で、家族の申出が64例あって、施設の体制がまだというのも含めて、4割ぐらいが心停止後の連絡がなかったとか、その後の連絡がないという数になっていると思うのです。私は院内で働いている者として、体制整備がまだということに関しては、自分たちの病院には一体何が必要なのかとか、一体その病院をどういうようにマネージメントしていったらいいかというのは、きっと病院によって性格が違ったり、いろいろ違うと思うのです。やはりそういうところはすごく膝詰めで一緒にやっていっていただきたいと思います。私もあちこち回っていると、院内コーディネーターの方も大体12年半で皆さん代わってしまうのです。ですから、ようやく慣れた頃に次の方に新しくなってというところもあって進まないのかもしれません。そういったところは今後、どういうように考えておられるのですか。

○伊藤室長補佐 現在、日本臓器移植ネットワークを通じた補助として、地域支援事業とか院内体制整備事業、各種研修会を行っております。こちらは昨年度まで少し応募しにくい形となっておりましたので、本年度から少し変えさせていただきました。今募集しているところですが、現在たくさんの応募が来ております。特に小児の施設からも多く来ていると聞いております。そういったところを通じて、院内体制をきちんと整備していくということを考えております。

○加藤委員 各県が出しているオプション提示のものがあるかと思うのです。あれは5類型の所に全部徹底していらっしゃいますか。

○伊藤室長補佐 パンフレットですか。

○加藤委員 パンフレットというか、ごくシンプルなものですが。

○伊藤室長補佐 パンフレットは知っている施設と知らない施設がありますので、そういったものは都道府県コーディネーターを通じて、各病院に御紹介しております。

○見目委員 この委員会には何年か出させていただいているのですが、いつも感じるのですが、なかなか数字が伸びない、小児もなかなか数が増えないという中で、一体全体をどのぐらいの数に持っていこうとしているのかという話が、いつも全くないのです。そういうことがない中で、いつもここを直す、ここを直すと。大体どのように数字を持っていこうとされているのか、その辺はいかがでしょうか。今、頂いた資料を見ると、8ページにはJOTへの通報件数、提供数、そしてそこには「目標」という言葉が入っていたりするのです。およそどんな感じですか。

○鈴木移植医療対策推進室長 移植の数を幾つにしようということで、厚生労働省のほうで明確に立てているものはありません。ただ、私どもが移植学会などから聞いている数字というのは、まずは年間100例に到達しようということを聞いております。昨年は58例が脳死下でした。この58例が多いか少ないかという議論以前に、決して多いとは言えないというスタンスに立っています。その中で問題点がいろいろあるのだろうと。今回は特にそういったところを中心に出させていただきました。

 その改善策として先ほど来委員の先生方から、いろいろとより具体的にやったほうがいいのではないかということで、JOTの予算の関係もかなり精密な形で改編させていただいて、都道府県の関与なども深めるという形で今やっているところです。こういった今進めていることとかを、今後の委員会などでも報告させていただきながら進めていくわけですが、目標は明確には立てておりませんが、関係の学会等々で言っている数字として100というものがある中で、こういったところは関係者の方々が言っているものですから、今の58では足りないということで、しっかり増やしていくという認識でいるという形です。

○見目委員 何となくおっしゃることは分かるのですが、少し力不足というか、やっていけばそのうち改善が重なって100例になるというような。では、その100例は一体いつなのかというと、そこは多分返事がない。一方で最近見ていると、子供の渡航移植の数が増えているのかなという感じが、何となくしているのです。アメリカに行くお子さんに、そこを目指して募金をしているという活動が、前より増えているのかなという感じがしているのです。そこら辺をこのまま続けていると、先を見ていると危ないなという感じもするのです。

 ですから、そういうことをトータルで考えると、どこまでにどうするかということをもうちょっと明確に、旗を立ててやっていっていただく必要があるのではないかと思います。細かい改善はしている、あるいは細かい議論をする、具体的にやるというのも大事なことですから、それはもちろん望ましいことですが、もう一歩踏み込んで、では一体いつまでにどのぐらいを目標にするのかということを、もうちょっとはっきりしておいたほうがいいのではないかという気がするのです。そうでないとズルズル、ズルズルいつまでたっても余り変わらないという感じが拭えないのです。

○鈴木移植医療対策推進室長 目標についてどうこうという議論を、直接今やるつもりはありません。なぜかと申しますと、移植をやるに当たっては、やはりドナーがあっての話です。そのときにドナー家族の満足度などがしっかりしないことには、これを進めることは移植をしたいから進めているという形になってしまいます。移植という選択肢の提示は、終末期の1つの選択肢として、こういうものもあるという位置付けにしていかないといけないだろうと考えております。その中で今日はあえて、非常にいろいろ問題のあるところを説明させていただいた次第です。そういったものを踏まえてこれから先、我々もいろいろやらなければいけないのですが、そういったところをどうしていけばいいのかということも今のように頂ければ、これからの検討がより前進するのではないかと考えております。

○見目委員 2つあって、どちらを採るかという話ではないと思うのです。両方やらないといけない。御家族の満足度も上げなければいけないけれども、多くを救えるようにもしないといけない。一方だけの話ではないと思うのです。そう考えたときにある程度の数を持っておかないと、前進するのか何もしていないのか、どの程度どうなのかということが分かりにくい。海外から見ても、多分そうだと思うのです。やっていることは分かるけれども、「じゃあ、いつまでにどうするんですか」と言われたら、1つの答えもできないという状況がずっと続いているのではないかということを、何となく懸念するのです。

○磯部委員長 相川委員は何か御提案がありますか。

○相川委員 なかなかないです。

○見目委員 ただ、前に臓器移植ネットワークの方に、年間どのぐらいの数が考えられますかという御質問をしたときに、確か篠崎先生のほうから、年間このぐらいではないかという話がちょっと出たことはあります。

○有賀委員 今使っていた資料24ページに、希望者数として心臓500というのがあるじゃないですか。これを厚生労働省に計算しろと言っているわけではなくて、年間100あったとすると、5年で片付くのかという話です。その間にやはり移植しなくてはいけない病気の方が出てきますよね。そういう意味では年間どれぐらいやると、必要な人がそれほどひどくならないうちに何とかなるというシミュレーションができる気がするのです。これは恐らく心臓の学会や肺の学会、場合によっては腎臓の学会なども、それなりのことをやっているのではないかと想像します。それをどのような形で他人様に説明されるかという話は、また別の話になると思うのですが、このぐらいあるとこの国の臓器移植の対象になる患者が、それなりに安心して暮らせるという意味でのシミュレーションは、全くできないわけではないと私は思うのです。これは移植学会なり何なりが少し知恵を出していただければ、それなりの数字は分かるのではないでしょうか。

○磯部委員長 私は、心臓移植の適応検討の委員長を長年しております。大体毎年増えてはいるのですけれども、年間120140という数で漸増しております。移植の件数が増えればそのまま増えていきます。先ほど見目さんがおっしゃったように、実際に小児の海外が増えているのは事実です。非常に由々しいことだと思いますが、体外式の人工心臓で小児用のものが認可されたこともあって。結局、小児の心臓の提供はほとんどありませんし、かつ、人工心臓が進歩したということで、やはり小児の問題は非常に大きいのではないかと、改めて今日の数字を見て思っております。小児のほうについて、何か御意見はありますか。

○市川委員 資料27ページです。約5年間で100例ということは、年間20例ぐらいしか子供の脳死とされうる状態はノミネートされない。現実的に大人に比べて重篤小児というのは、それぐらい少ないのです。そういう意味ではかなり限られた数の子供が脳死とされうる状態になったときに、確実に移植に結び付けるという手立てを。例えば、「施設の体制整備がまだ」という答えがあります。これはハード面だけでなく、ソフト面なども入っていると思うのです。そういうところに対する問題点を洗い出して、それを検討するということをやっていかないと伸びないだろうと思います。先ほどAge-matchingの話が出ましたが、正に親御さんはずっと生き続けてほしいということで、大人にやりたいとは1人も思っておられないのです。同世代にしかやりたくない。もし私たちが「大人に行くかもしれません」と言ったら、それだけで嫌だということになると思います。

 もう1つは、心臓だけと言われた人は経験がないのですけれども、角膜だけとおっしゃる方がかなり多いのです。そのように複数臓器ではなく、単臓器の移植にも対応できるような体制が取れればいいのではないかと思います。いずれにしても子供の脳死判定や臓器提供の場面で、現在救急においてはいろいろな問題があると思います。こういう子供に特化した形での問題整理や、そういうものを解決していくような議論のできる場ができれば、もうちょっと前進するのではないかと思います。

 例えば、小児救急医学会では移植法ができたときに、移植ありきの脳死判定はするなという意見がすごく多かったのですが、今は随分変わってきました。やはり移植医療も1つの医療だということで、先ほど厚労省の方からも出ましたが、ターミナルケア、グリーフケアの一環として脳死というものを取り入れて、より理解を求めて、その1つのオプションとして臓器移植というものが自然発生的に出てくる、そういう環境をつくらなければいけないということで、小児救急医学会も今正にやっています。今週末にもあるのですが、小児救急医学会では6年連続で、脳死判定セミナーというのをしております。いずれにしても子供特有の問題があることを御理解いただいて、そういう問題整理ができる場をつくっていただければ有り難いと思います。

○磯部委員長 小児に特化して、ドナーを増やす方向で検討してはいかがかという御提案かと思います。

○水野委員 私も啓蒙は大切だと思います。数年前にパリ市に行ったときに、パリ市が計画した展覧会で、様々な芸術家に臓器提供をテーマとした作品を創作してもらって、「命から命の贈与」という美術展をしておりました。こういうことをパリ市という公的な主体が計画することが、印象的でした。日本では、このような啓蒙活動はありませんでしたが、それでも臓器提供に対する意識はゆっくり変わってきました。当初はある種の儒教的な哲学の影響なのか、アレルギーが強く、ドナー本人の自己決定を契機にして、平成9年の立法をまとめたわけです。今はもう少しそういう不合理な情緒的な反応を抑え込んで、合理的な議論ができるのではないかと思っております。

 私は、小児臓器提供のガイドライン作成の仕事をさせていただきました。そのときに、改正条文が不合理な内容を抱えていましたので、その条文の制約下でも、できるだけスムーズに進むことを目指して、ガイドラインを作成することに相当苦労した記憶があります。例えば、知的障害者はドナーになれないことも、全く理由がないのです。差別としか言い様がないと、私自身は思っております。

 また児童虐待がここで要件になることも不合理です。子供を亡くした親御さんが、自分はすごく悲しいけれども、この子の体を使って同じ悲しみを味わっている親御さんを救いたいと思って、提供を申し出たときに、お前たちは虐待していたかもしれないから調べさせてもらう、ということになるのです。児童虐待の可能性は、いくら調べ上げても、ある意味、絶対的な白というのは簡単にあり得ないのです。交通事故死であったとしても、精神的虐待をしていたので、子供が外へ出て行って交通事故に遭ったのかもしれないと言い始めたら、もう可能性を完全に白にすることはできません。その可能性が否定できないからと断って、遺体は荼毘に付されることになります。こういうことでは、申し出た親御さんに一番残酷な方法で、臓器提供を拒絶する手段とさえなりかねません。

 ガイドラインを作るときには、何しろ法律の条文にありますので、不合理でも従わざるを得ず、それができるだけ弊害にならないように、警察と児童相談所に問い合わせれば機械的にクリアできるような形で作りました。しかし、この数字を拝見して仰天いたしました。臓器提供について余り理解のない日本の状況の中で、64名もの方が申し出てくださったのに、そのうちわずか9名しか実行に至っていません。その理由のうち、施設整備がまだというのも深刻な問題ですけれども、虐待の疑いが否定できないのが8名という、こんな痛ましい話はないと思います。虐待の疑いを完全に晴らすことはできません。ガイドラインは苦労して作りましたので、そこでの苦労を酌み取っていただいて体勢を立て直す必要があります。なぜこのような痛ましい無駄が起きてしまったのかを洗い出して、申し出たケースはできるだけ速やかに、虐待や体制整備がネックにならずに、実行に至るような体制をつくっていただきたいと思います。

○佐野委員 私は小児の心臓外科が専門ですので、自分に関係するので余り言わないほうが良いと思って今まで言わなかったのですが、今、機械的循環補助症例が増えていますが、先ほど委員長も言われたように、ベルリンハートという小児用の機械が認可されたのです。しかし、それを付けてもだいたい6ヶ月位しか待てませんから、日本では実際に移植をするという選択肢がほとんどありません。当然、親御さんは「外国に行きたい」と、ほとんどの人が言われるのです。外国ではベルリンハートを付けると、大体36か月が待てる時間で、その間にドナーが現れます。日本では今まではECMOしかないので、大体1か月でした。しかしそれでは海外まで運べません。日本は内科の先生や移植の先生のメンテナンスがすごくいいので、アメリカでは耐久時間が36か月でも、今の日本では1年以上もっています。しかし、それを付けても1年間に1人か2人しかドナーが出ないので、やはり可能性があるなら外国に行ってやりたいということで機械的補助循環が増えているのです。その問題が解決しない限り、外国に逃げることは止められないでしょう。

 もう1つは、適応側の数の問題を言われました。アメリカだと無脳児であろうと虐待児であろうと、亡くなった人の心臓があって、これを使わないのは臓器の無駄、ドナーの無駄という考えです。せっかく臓器があるのに使わないのは無駄だと、だから大切に使います。虐待の真相解明は臓器移植とは別個の話なので、また別の所で議論する。それが彼らの考えです。日本では意識の問題が大分違うので、そういうものがなかなか割り切れないというのが1つあると思います。

 それから小児心臓移植施設は、アメリカだとほとんどが小児病院です。多い所で多分年間20例位でしょうか。また、アメリカの小児病院というのは、大学附属の小児病院がほとんどなので、大学の大人のいろいろな施設やサポートが、十分使えるのです。しかし日本は全く別なので、全く使えない。これも大きな違いです。

 また、移植をするとコーディネーターとか、側面からいろいろなサポートをする人がたくさん必要ですが、今の日本の現状だと、限られた小児病院を除けば、90%以上の施設は人的にもお金の面でも、それだけの員数を割く余裕がない。だからマンパワーが非常に少ないのです。大学でも、岡山大学は肺移植や腎移植が多いのですが、それでもコーディネーターは全体で3人ぐらいです。私はアメリカによく行くのですが、アメリカに行くと例えばアーカンソーという小さな州の小児病院でも、コーディネーターなど、サポートする人たちは10人、20人います。その辺も1つの問題です。そういう多くの問題を解決しない限り、なかなか小児心臓移植は増えない。そういう意味で日本はかなり遅れていると思います。

○渡邊委員 虐待の件です。一昨年、私も小児のご家族から臓器提供の申出があった症例を経験しました。症例は転落で虐待という側面から完全に否定できない点で臓器提供を断念しています。警察は「問題ない」と言っていましたが、施設側はやはり一点の曇りもない状態の中でないといけないとのことで断念しております。現在の虐待という漠然としたガイドラインの中ではご家族が臓器提供を申し出ても踏み切れなくて断念したという事例が多くあると思う。事例の御家族も渋々「じゃあ」ということでご理解をいただきました。ですから虐待のところをもう少し、施設側が踏み切りやすい内容にしてもらえるといいのかなと思った経緯がありましたので、発言させていただきました。

○磯部委員長 まだまだ御意見はあろうかと思うのですが、時間もありませんし、小児のことを話し始めると、皆さんも口が止まらない。私も言いたいことはいっぱいありますけれども、是非そういうことを問題とする作業班を作っていただいて、議論を進めていただきたいと思います。また、目標を設定してくださいという御提案も、先ほど見目さんからありましたので、特に小児に特化して御検討いただくような形で。

○鈴木移植医療対策推進室長 非常に明確な方向をいただいて、ありがとうございます。作業班という形かどうか、早急に考えて委員長に相談させていただければと思っております。

○磯部委員長 よろしくお願いします。御発言できなかった方、申し訳ございません。続いて議題(4)JOTについて」の報告です。事務局から御説明をお願いします。

○伊藤室長補佐 日本臓器移植ネットワークについて御報告いたします。前回の臓器移植委員会は、昨年7月に開催されました。昨年1月にあっせんの間違いがあり、その後昨年の3月に厚生労働大臣に関する指示を出して、その後7月に開催されました。今回はその7月以降のことについて、時系列に書いております。平成279月には第三者委員会の提言を踏まえた新役員の選出を行い、新体制で改革を行ってきております。平成2712月には「指示書に対する業務の改善状況について(報告)」を厚労大臣に提出しております。それが参考資料8です。この参考資料8は、ホームページでも公開しておりますので御覧ください。

 主な改善報告事項として、管理運営体制の刷新、役職員の責任の明確化と処分、システムの再構築、あっせんに関する業務基準の確立を行ってきました。その後、平成284月になって組織体制・組織運用方法の在り方を検討し、一部実施しております。主な実施事項として、理事長あるいは専務理事直轄となる安全管理推進室を設置しております。また、システム管理部門の設置、あっせん機能の一元化といったところで、現在改革を進めているところです。平成285月には、先ほどお話した資料323ページに書いてある、地域関連事業に関する説明会を実施し、数多くの都道府県やバンクから要望が応募されており、現在80施設を超える所から問合せが来ていると聞いております。このように新体制となり、現在引き続き改革を行っており、今後我々も適切な指導を行っていきたいと思っております。

○磯部委員長 ただいまの御報告に御意見はありますか。

○平澤委員 ネットワークの検証のことです。臓器提供があったりすると、検証会議というものをやっていたと思うのです。提供事例に対する検証会議を開催しているというのを、私たちもよく見聞きするのですが、実際にこういう提供の事案があって、ネットワークの方だったり都道府県の方だったり、院内のコーディネーターが関わっていって、提供が終末していった後に、それがどういった形で行われて、こういうところに問題があったのかなかったのかという現場のコーディネーションなどの検証の機会はあるのでしょうか。

○鈴木移植医療対策推進室長 もともとこの委員会でやっていたのですが、やはり検証は別のほうがいいだろうということで、検証会議が設けられております。座長は、成育の名誉総長の柳澤先生です。通例上、最後まで救命措置をきちんとやったか、脳死判定がきちんとできたかという医学的な検証を行うチームと、あっせん業として適切にやられたかという、これはJOTの中ですが、この2つの作業部会でできた報告が検証会議に上がっており、毎月のように開催しております。ただ、まだ100例ぐらい遅れておりますので、速やかにそれが進むようにしております。また、検証会議が終わった後、いろいろと特異事項などもありますので、非公開でやっているのですが、検証会議の後には記者レクを行って公開しているという流れです。

○平澤委員 もう1点すみません。2ページの普及啓発事業費という所で縷々書いてあると思うのです。私たちが今後、院内で先生方にオプション提示をしていっていただくことを積極的に考えていった場合に、学校の医学部の教育の中でも臓器移植の内容のコマを設けるとか、ネットワークの方に来ていただくとか、早めの段階から理解をしていただくといいのではないかと思うのですが、その辺りはいかがでしょうか。

○鈴木移植医療対策推進室長 医学教育に特化したアプローチはまだしていません。ただ、脳死とは何かというのは、医学生だけが分かっていても何もならないのです。私どもは今、いろいろなパンフレットを教員が使いやすい形にして、教員が命の授業などに使えるようなものにできないかということで改編を始めております。まだ時間が掛かるかもしれませんが、毎年、中学3年生には教育委員会がリーフレットを配ったりしています。ところが、この使われ方が我々の思うほど伸びていないのです。その辺を改編することでほかの目的で使いつつ、その中身が入ってくるというようなことができるような努力をさせていただいております。学校のそういったところは、先生たちが使いやすいものを作ることを念頭に置いて、研究班などでも議論を投げかけているところです。

○磯部委員長 学校教育ももちろん大事ですけれども、確かに医者の教育はまだ遅れているところがあります。とても大事な御指摘だと思うので、今後御検討いただければいいと私も思います。ほかにありますか。

 それでは、用意した議題は以上です。その他、特にこちらで用意したものはありません。全体を通じて何か御発言はありますか。

○平澤委員 最後に1点だけすみません。先ほどのAge-matchingの件です。こちらに置いていただいた参考資料のレシピエントの選定基準を見ていたのですが、先ほど先生方もおっしゃっていたように、1つのワードとして、肝臓も18歳というワードがあったり、心臓も18歳というワードがあったり、肺も18歳というワードがあったりするのです。その辺に関して相川先生、18歳の可能性というのはあるのでしょうか。

○相川委員 これも実は議論をしております。御指摘のように、18歳で区切ったらいいのではないかという話をしております。ただし、腎臓の子供の優先ポイントは16歳未満と二十歳未満になっているので、やはりこの整合性を取らないといけませんから、もう少し作業班で検討が必要だと思います。

○磯部委員長 先ほどの結論は、それを検討していただくということでしたので、よろしくお願いしたいと思います。ほかによろしいでしょうか。では、以上をもちまして会議を終わりにさせていただきたいと思います。どうも御協力、ありがとうございました。


(了)
<照会先>

健康局難病対策課移植医療対策推進室
代表: 03(5253)1111
内線: 2365,2366

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