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2016年6月29日 新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会 第4回議事録

社会・援護局障害保健福祉部精神・障害保健課

○日時

平成28年6月29日(水)10:00~12:00


○場所

東京都千代田区霞が関1-2-2
厚生労働省 専用第21会議室(17階)


○出席者

伊澤構成員、伊藤構成員、荻原構成員、籠本構成員、河崎構成員
神庭構成員、佐竹構成員、田川構成員、樋口構成員、近森構成員
長野構成員、広田構成員、藤原構成員代理(天本氏)、松本構成員

○議事

○樋口座長 おはようございます。

 それでは、定刻となりましたので、ただいまより「これからの精神保健医療福祉のあり方に関する検討会第4回新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様におかれましては、ご多忙のところ、ご参集いただきありがとうございます。

 まず、資料の確認と本日の出席状況について、事務局からお願いいたします。

○鶴田課長補佐 事務局です。資料の確認をさせていただきます。

 お手元に配りました資料1、冊子として配っている資料になりますけれども、日本医師会からの提出資料になります。

 資料2は、松田構成員からの提出資料になります。

 資料3は、今後議論すべき論点についてまとめた資料となっております。

 このほか、これまでの本検討会における皆様からのご意見の概要を整理した資料を机上配付しております。今後の議論の参考のために用意したものですので、適宜ご参照いただければと思います。

 以上について、足りない資料等がありましたら、事務局までお申しつけいただければ幸いです。大丈夫でしょうか。

 本日の出席状況ですが、中板構成員からご欠席とのご連絡をいただいております。

 また、構成員の代理として1名の方にご出席いただいておりますので、ご紹介を申し上げます。藤原構成員の代理で、佐賀県健康福祉本部障害福祉課の天本様でございます。

○天本氏 天本です。よろしくお願いします。

○鶴田課長補佐 事務局からは以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

 早速、議事に入りたいと思います。本日はお二人のヒアリングを行った後に事務局からの説明を踏まえて、残りの時間で話し合いを進めていく予定にしております。ヒアリングにつきましては、お一方15分程度でお話しいただきました上で、その内容について、構成員の皆様からご質問並びにご意見をいただく予定でございます。早速ヒアリングに入りたいと思います。

 カメラにつきましては、ここでご退席をお願いしたいと思います。

(報道関係者退室)

○樋口座長 まず、本日の最初のヒアリングでございますが、日本医師会より精神保健委員会プロジェクトについて、松本構成員からお話をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○松本構成員 ありがとうございます。日本医師会常任理事の松本でございます。

 本日は、資料といたしまして、日本医師会の精神保健委員会の答申書を提出させていただいております。この冊子でございます。

 日本医師会では、一昨年、厚生労働省におきまして、長期入院精神障害者の地域移行に向けた具体的方策の今後の方向性が取りまとめられまして、長期入院精神障害者の退院に向けた支援のあり方、あるいは地域生活における支援のあり方等について検討が進められていることを踏まえまして、日本精神科病院協会副会長であられます河崎建人先生に精神保健委員会の委員長にご就任いただき、2年間にわたりまして、長期入院精神障害者に対するアウトリーチを含めた地域移行のあり方についてご検討いただきました。今般、その審議結果を答申としてお取りまとめいただきました。本会といたしましても、本答申の内容を尊重し、今後対応してまいりたいと考えております。

 河崎先生におかれましては、この場をおかりしまして、改めてお礼を申し上げますとともに、本日は答申の詳細につきまして、ご説明をしていただきますようお願いを申し上げたいと思っております。

○樋口座長 どうぞ、河崎先生、よろしくお願いします。

○河崎構成員 今、松本先生からご説明がございましたが、今般、日本医師会の精神保健委員会から答申をさせていただきました。皆様方のお手元には冊子が配られているところでございますが、その内容につきまして説明をさせていただきます。

 まず、1枚めくっていただきますと、「日本医師会精神保健委員会(プロジェクト)委員」というのがそこに書かれております。委員長を私が務めさせていただきまして、副委員長として、日本精神神経科診療所協会副会長の上ノ山一寛先生にお務めいただきました。また、委員の先生方は、見ていただいておわかりのように、全て精神科医療の専門の先生ばかりでございまして、精神科病院協会あるいは精神科診療所協会、そして、精神科医療を中心として各県の医師会の理事をなされている先生方が中心のメンバーでございます。なお、委員のお一人として、きょうも構成員としてご出席願っております田川先生に入っていただいておりました。

 目次を少し見ていただきたいと思います。今回の答申の内容でございますが、日本医師会会長の横倉先生から今回の諮問として、「長期入院精神障害者に対するアウトリーチを含めた地域移行のあり方について」ということでこの委員会がいただいたところでございます。

 7回にわたって審議をしてまいりましたが、目次を見ていただいたらおわかりのように、まず、地域移行ということでございますので、これまでの地域移行の対象になるのは、当然ながら現在精神科病院に入院中の患者さんたちでございます。ですので、最初に精神科病院における入院治療の現状がどうなのか、あるいはこれまでの精神科病院における入院治療がどういう形で行われてきたのか、そこにどういう問題点があったのかというところを記載させていただいております。その後、それぞれ精神科病院の立場、そして、精神科診療所の立場からということで、それぞれの立場で長期入院精神障害者に対する地域移行のあり方をまとめさせていただいております。

 次のページを見ていただきますと、「6.長期入院精神障害者の地域移行に向けたアウトリーチのあり方」ということで1つの章を起こしております。これは会長諮問の中にも、アウトリーチを含めて長期入院精神障害者の地域移行を議論するようにというご下命でございましたので、ここでアウトリーチについての議論をした内容をまとめさせていただきました。その後、「7.まとめ」と最後に「8.全体総括(提言に代えて)」を記載させていただいております。

 それでは、内容の説明に入らせていただきます。

 1ページ目から「1.はじめに」、2ページ目の「2.精神科病院における入院治療の現状」、そして、「3.精神科病院における入院治療のこれまで」というところを書かせていただきました。

 内容につきましては、これまでこの検討会あるいは分科会での議論の素材として国から提出していただきました資料等々が中心でございます。ただ、この中でそれぞれの精神科病院あるいは精神科診療所として、どのように精神科医療にかかわってきたのか、そして、この入院治療の中でどういう問題点があるのかというところは記載をさせていただいておりますので、この部分につきましては後ほどしっかりとご熟読いただければと思います。

 6ページ目をおあけください。ここからが精神科病院の立場からの「4.長期入院精神障害者に対する地域移行のあり方」でございます。

 まず、精神科病院の立場からしますと、どうしてこれだけ我が国において長期入院者が生まれてきたのかというところをしっかり議論をしなければいけないだろうということで、ここに記載したような内容のことをまとめさせていただきました。

 特に私どもとしますと、6ページ目の「マル1 長期入院者を生んだ要因」というところで、クラーク勧告のことを記載させていただいております。国が出すさまざまな報告書あるいはそういう内容に関して、クラーク勧告のことは余り記載されていません。しかしながら、長期入院者を生んだ要因を考えていく際にこれは非常に重要な示唆に富んだ内容であると思っております。

 そこに書いておりますように、昭和4211月から翌年2月までWHOから派遣をされてきましたデビット・クラーク博士が、我が国の精神医療保健の状況を全国的に調査されました。それで報告書をまとめて、時の政府に提言をしたのが小さな文字で書いているところでございます。

 要約しますと、当時はまだまだ日本の精神科病院や入院中の方たちは若い方が多かったわけです。当時のイギリスの状況が既に60歳以上の方が50%いらっしゃった。まだ、そのときは日本の国はたかだか4%だったのです。現状、我が国におきましては、65歳以上の方が54%にまで至っております。ですので、昭和42年の段階で、このままの状況で何ら余り政策を施さずに放置をすると、近い将来英国と同じような状況になるだろうから、ぜひ精神障害者の早期発見と適切なリハビリテーションを促進するための地域精神衛生計画が緊急の課題でありますよという提言がなされていた事実を、私たちはしっかりと共有をしないといけないと思っております。これがなかなか具体化がされなかったということがありまして、現状のこういう状況が生まれてきた一つの要因になっていると考えております。

 7ページ目は、精神科病院からの立場ということで適正化のことを記載させていただきました。現在、入院中の患者さんの中でさまざまなサービスを必要とする人たちが混在をしている。こういう混在をしている状況において、適切な状態ごとのサービス提供が行われなければ地域移行が進まないであろう、こういうことが精神病床の適正化であるとここに記載させていただいております。この内容につきましては、この検討会で日本精神科病院協会がヒアリングのときに述べさせていただいているところですので、詳細は割愛をさせていただきたいと思います。

 8ページ目を少し見ていただきたいのですが、精神科病院が本来の治療的機能としての役割に特化しているとすれば、精神病床の適正化は進められていくということであろうと思っておりますが、こういう適正化のどの方向についても財源の裏づけが必須のものであるということ、そして、財源なくして改革は望めないということも強調させていただいております。

 それと、具体的にこういう地域移行を進めるために、どういう資源あるいは施策が必要であるのかというのが、8ページ目の後段から9ページ目にかけて記載をしております。1つが多機能型の地域支援センター、2つ目が医療強化型グループホーム、そして、精神科病院の地域連携室というものを書かせていただいておりますが、これにつきましても、日精協のヒアリング時に詳細は説明をさせていただきましたので、また後ほど文章を読んでいただければと思っております。

10ページ目に、「介護施設における対応能力強化」ということを書かせていただきました。これは、現在の長期入院精神障害者の多くの方たちが65歳以上と高齢になられてきております。こういう方たちが地域移行を考えていく際に、地域の中で介護保険サービスをしっかりと受けていく基盤づくりが必要であろうと思っております。その際には、介護施設でこういう精神障害者の方たちに対する対応能力を強化しなければいけないということを書かせていただきました。

 次のマル5、「グループホーム整備推進の予算措置(公的整備)」というところでございます。これは、諸外国が地域移行を推進していく際には、地域の中で住む場所、住まう場所を確保することに重点を置いてきたと私どもは認識をしているところです。つまり、「コミュニティの整備が最初のステップ」であるということは非常に重要なキーワードであると思っております。ですので、今後の地域移行では、相当数の住む場所の確保が必要であるということは皆さんの共通する認識だろうと思います。

 その際に、これまでのように民間の精神科病院あるいは民間の企業体がグループホーム等々住む場所を用意するという考え方を変えないといけないと思います。ですので、国あるいは地方公共団体の予算でそういう住む場所を整備、建築をして、運営は民間に委ねることも必要ではないかということを今回提言させていただきました。

11ページの「4)地域移行を進めるために必要な取り組み」ということを書かせていただきました。これには「地域精神科医療の充実(訪問医療・看護とアウトリーチ)」、あるいは新しい概念としての「デイホスピタル」を示させていただきました。デイホスピタルというのは、いわゆる入院医療を回避しつつ、回復を期待するという形の考えで提案をさせていただいております。入院中でまだ病状の回復が十分でない方がこのデイホスピタルを利用しながら地域の中で生活をして、日中は医療機関で入院中と同じようなサービスを提供されるということをイメージしております。ですので、早期の退院を可能としますし、地域で生活をされている方たちは病状が不安定あるいは病状が悪化した際にすぐに入院という形ではなくて、地域の中での生活を持続しながらデイホスピタルで濃厚な治療が受けられるようにしていくということでございます。

15ページから、精神科診療所の立場からの地域移行のあり方を記載させてもらいました。

16ページを見ていただきたいと思います。まず、精神科診療所が地域移行という中でどういう役割を果たしていけるのかということを議論いたしました。その際に、やはり出てきたのはこれまでの平成16年の改革ビジョン以降、その中で精神科診療所の役割についてはほとんど議論がされてこなかったということが1点指摘をされました。つまり、入院治療と地域生活の間に外来機能というワンピースがずっと欠けた状況でこれまでの議論がされてきたのだと。精神科診療所としてどのような役割が果たせるのか、あるいは精神科診療所がどういうふうに機能分化し、地域の中でその特性を生かしていくべきかということをぜひ議論すべきであるということの提案でございます。

17ページに書いておりますけれども、その際に、外来精神科医療機能をさらに強化しないといけないということが議論として出てまいりました。そして、精神科診療所の一番大きな強みは診療所での医療だけではなくて、例えば地域のさまざまな就労支援あるいは学校教育等々も含めて、地域の中でつなぎ、つながる機能を果たしていくのが診療所としてのこれからの方向性ではないか。つまり、地域のさまざまなネットワークのハブ機能を持っていくということの重要性が指摘されたところでございます。

 それと、ケアマネジメント機能の充実が必要であろうということも診療所の機能を充実させていくためには、ぜひこのケアマネジメントの考え方、手法がこれからもっと地域の中で浸透していくべきであろうということが指摘をされました。

 もう一点は、精神科診療所としまして強調をされたところは、地域責任制という考え方でございます。21ページのちょうど真ん中あたりに書いているところですが、ちょっと文章を読みますと、「そのような体制が構築されるためには、精神科病院と精神科診療所をはじめとする地域の医療機関とのきめ細かい連携体制と信頼関係がないと困難であろう。時には、この地域の精神保健医療福祉は、自分たちで守っていくという「地域責任制」という考え方も必要になってくると思われる」ということが診療所の先生方のご意見として、非常に強調をなされていたところでございました。

 もう一点が、その下に出ております「9)社会的責任について」ということでございます。当然ながら精神疾患が5疾病に位置づけられました。そして、救急医療体制の整備、充実を図るということになってきましたが、こういうところにも精神科診療所として、かかわっていくべきであろうということを提言させていただいております。

 そして、22ページの10)に改めて「地域責任制と連携」ということで、特にこの際の地域責任制は、二次医療圏という形で圏域を考えていくのが妥当ではないかということでございました。ですので、「今後の地域精神保健福祉を充実させていくためには、一定の地域内で情報連絡を密に行い、関係機関の信頼関係を醸成していく中で、各機関の役割分担を明確にし、連携協力体制を作っていく必要がある」ということでございました。当然、これは精神科病院との連携という意味でも、先ほど申し上げました地域責任制を充実させていくということになろうかと思います。

23ページの12)に診療所としての小括を書かせていただいておりますので、また見ていただけたらと思います。

 それと、アウトリーチのあり方については、これまでアウトリーチ推進事業がスタートしてから、アウトリーチそのものがなかなかしっかりと充実はしない現状がございました。その中で話として私どもで出ましたのは、アウトリーチそのものの意味あるいはアウトリーチの考え方が、立つ位置によって随分違うのではないかということがございました。26ページの「アウトリーチの本来の意味」で書いておりますのは、アウトリーチには、未受診者あるいはひきこもりの方たちを対象とする保健中心型のアウトリーチの他に、医療中心型のアウトリーチ、福祉中心型のアウトリーチが有り、この辺の概念をしっかりとみんなで共有しないといけないだろうということでございました。

 最後でございます。29ページに全体のまとめを書かせていただいております。ここでのポイントは、まず、「1)安全安心に地域移行をすすめるために」と書かせていただいておりますけれども、地域移行は場合によっては、当事者の方たちあるいは周囲の方たちに対して、さまざまな不利益を生む危険性は常にあるのだということを認識しないといけないだろうと思います。ですので、地域移行を考える際にはできるだけ可能な限りさまざまなことをしっかりと分析をして、さまざまな援助者が見守り体制を構築した上で、細心に進めるべきものでなければならないというのが1点でございます。

 「2)地域移行推進に必要な要素」ということで、図34を少し見ていただきたいと思うのですが、最後の図でございます。そこに「地域移行に必要な要素」と書かせていただいております。当然ながら意欲の喚起・意思の醸成、退院に向けた支援・治療等々がございますが、最も大事なのは地域住民の理解、偏見の除去、そして、協力支援と一番基本になるようなところの充実がこれまでなかなか図られてこなかったのではないか。実はこのことが国として、まず最も力を入れていくべきことではないかということを強調させていただきました。

30ページで最後にいたします。

 「4)病院・診療所・地域事業所・行政の連携による包括的サービスとは」と書かせていただきました。これは地域移行を支え、それをより実現していくためには、やはり医療と福祉の連携、それだけではなくて、高齢の精神障害者の地域移行を考えていくと、介護のサービス、さらにはそれぞれの地方公共団体としての行政の役割というものが、現在の高齢者を対象とした地域包括ケアに類似した形ではありますけれども、やはり精神障害者地域包括ケアを構築していかなければいけないのだろうということを最後の提言とさせていただいたところです。

31ページから32ページにかけましては、今、ご説明をさせていただいた全体総括として、提言にかえての内容を記載させていただいております。32ページの最後のところに「最後に」と書かせていただきましたが、「最後に、今回の答申でとりまとめられた地域移行の推進のための様々な提言の実現のためには、精神保健医療福祉に携わる関係者や国民の意識改革のみならず、国として十分な財源を確保した実効性のある施策の遂行が不可欠であることを強調したい」ということで、結びにさせていただいております。

 時間を延長してしまいました、申しわけございません。

 以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。

 それでは、ご質問あるいはご意見をいただきたいと思いますが、大変時間が限られておりまして、10分ぐらいでございますので、できるだけ簡潔に多くの方々からご質問、ご意見をいただければと思いますのでよろしくお願いします。どなたからでも結構でございますが、いかがでしょうか。

 どうぞ、籠本構成員。

○籠本構成員 自治体病院の籠本です。

 総括的なお話があるので、私の話はその中の部分的な話になると思うのですけれども、先般から言われています重度かつ慢性の基準が案として定められたということで、ここのプロジェクトの答申にも書かれていますが、重度かつ慢性の患者さんが各病院でどれぐらいおられるのか、これはできるかどうかわからないですけれども、もう630調査でやったらいいのではないかと思うのです。それぞれの病院の状況、重度かつ慢性の方で、これは今後の課題になっていましたけれども、クロザピン等の難治性統合失調症への使用の導入をどう進めていくかというのは非常に大きな問題で、課題だと思います。

 皆さんご存じだと思うのですけれども、平成24年度の精神科病院協会で調査をしていただいて、1年以上の入院患者さんの6割が精神症状が極めて不安定なために退院ができない。これは退院阻害の主因がそうなっているということでございます。その中の8割はクロザピンは一応対象ではないが、残りの2割はクロザピンを使ってみたらよくなるのではないかと、これは主治医の判断ですけれども、そういうふうに言われている。ところが、その数は莫大な数なのですが、今、クロザピンが使われている患者さん、対象者が4,000人、極めて少ないです。血液内科の問題とか検査の煩雑さがいろいろ現場からは挙がっていますけれども、CPMSの委員会の先生方にいろいろ検討していただいて、徐々に使いやすくしていただいているのですが、ニーズがこれだけあって、もしその治療をすればもっと改善する、あるいは地域に出ていける。ほかにも、外来患者さんでも病状がいまひとつよくない、入院はしていないけれども、もう一歩治療して、生活の質、ADLを高めることができるかもしれない患者さんは莫大な数がいるのです。これも使えていないのです。ここのところの根っこを入れて考えないといけない問題かと思っております。

 とりあえず以上です。

○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。

 伊藤構成員。

○伊藤構成員 日本医師会の報告書として、地域精神保健医療に関してまとめられたことは大変すばらしいと思います。特に病院団体も含めて医師会がおまとめになられて、個別にいろいろ指定したいことはありますが、例えば地域に責任を持つという考え方を強化するという内容、二次医療圏を考えていったらどうかというご提案、アウトリーチの分類などが、これから考えていかなくてはいけない重要な論点と方向性について指摘されていると思います。関係者の皆さんに敬意を表したいと思います。

○樋口座長 伊澤構成員。

○伊澤構成員 読み込みが不十分で、十分な論説ではないのですけれども、印象として感じたのは前回、田川構成員もおっしゃっていましたCommunity basedを強調された内容で、非常に響いてくるものがございました。まずはそのことを申し上げたいと思います。

 内容については、14ページが私の目を引いたのですけれども、「病院側スタッフの取り組み」の中で、地域移行を促進していくためには院内のスタッフの方々の背中を押すようなというか、外に向けての動き出しが非常に大事ではないかと思うのです。そこの中で書かれている2段落目の3行目あたり、「地域移行を進めるにあたり対象となる個々人の能力を正確に把握し、それらの対処をどのように行っていくのかがプランニングされなければ、地域移行は程遠いことになるし、それらを無視して行えば無謀な地域移行となって結果として大きな不利益を与えてしまうことになる」。まさにこれはアセスメントが大事というのをうたっていると思うのですが、それを進めていくときに、私はいろいろな場で申し上げているのですけれども、アセスメントを行うために体験の宿泊というか、トライアルの宿泊機能はすごく大事だと思っているのです。

 きょうは、その辺のことを問題意識として持ちながらこれを読んだときに、9ページに多機能型地域支援センターのご提言がありまして、これは前から日精協から出されている部分で、私も関心を持って見ておるのです。この機能の中にトライアルの宿泊みたいなものもぜひ入れていただいて、地域移行を促進していただく、その要素を強調していただきたいとともに、障害福祉サービスの今後の計画の中で、平成30年度までに自治体に地域生活拠点機能を持った支援施設を立ち上げていくという内容がございます。そことのリンクとか協働もぜひ視野に入れていただきながら進めていただきたいと強く思っております。

 長くなりますけれども、もう一つ。これは今回の答申の直接的な中身とは外れますが、記述がございますのでお話しさせていただきたいのです。1ページの中ほどから下のほうに精神科病床のことについて記述がございまして、OECDの病床の数の発表の中身が「我が国のデータは諸外国より若干多い程度である」ということを言い切っておられる。世の中に出回っている論説は、地球上に162万床のベッドがあり、33万~34万が我が国にある。つまり、2割を超えている。過剰なベッドの状況である。しかし、ここでは、そういう読み取りをしない、それをしていることのほうがおかしいのであるという書きぶりがありまして、これを裏づけるしっかりとしたデータを私たちはしっかりと見たいという思いを強めております。各種報道あるいはさまざまなオピニオンを担っている方々が右肩上がりの50年代~60年代の日本のグラフを見ながら、そして、同時に右肩下がりで諸外国が下がっていくというあのグラフを多用しながら、我が国の精神科の入院のありようを説明している状況は続いているわけですので、そこを覆していくような論説をしっかり裏づけとしてあらわしていただきたいという思いを強めております。

 長くなりました。以上です。

○樋口座長 どうぞ。

○近森構成員 近森ですけれども、今回の答申は入院から地域包括ケアの方向性もしっかり押さえられており、非常にすばらしい答申ではないかと思います。もうちょっと時間をかけてお聞きしたいと思っているのですが、問題なのはこういう答申が出ても、全国の多くの病院が動かないということです。こういう自覚のない精神病院が非常に多くて、いまだに収容型の入院医療が現実として続いているのが一番問題なのではないかと思います。

 一般医療におきましては、急性期の7対1看護では重症度、医療・看護必要度のA、B、Cの25%ルールとか、回復期のリハではFIMの改善率が非常に強く求められて、アウトカムを出さないといけない。そして、慢性期の療養病床でも、医療区分の2、3という医療必要度が非常に高い患者さんが8割いないと認められないという、一般医療で行われているような仕組みづくりをしっかり精神科医療の中に導入していかないと、日本の精神科病院は変わっていかないのではないか。診療報酬でも医療法でもいいと思いますが、何かいい方向に行く仕組みづくりを考えてつくっていかないと、日本の精神科医療は変わっていかないのではないかと思います。

○樋口座長 広田構成員、どうぞ。

○広田構成員 私は、626日の病棟転換の反対の集会へ勉強に行って、思わず意見も言ってきました。後でまとめて意見を言います。

○樋口座長 ほかにはいかがですか。河崎構成員、先ほどの質問に対してですか、どうぞ。

○河崎構成員 さまざまなご意見をいただきまして、ありがとうございます。いろいろと評価をしていただいている部分もございますし、あるいは問題として指摘をしていただいているところもございますが、まず、近森構成員からこうは言ってもなかなかそれぞれの精神科の病院が変わっていかないのだ、そこをどうにかしないといけない、まさしくそのとおりだろうと思うのです。

 ただ、個々の精神科の病院の努力だけでは、なかなか達成できない課題も多々ございます。そのあたりは、本音の話の中で、どういうふうに国の施策が構築をされていけば、あるいはさまざまな地域の特性をどのように考えていけば、それぞれの病院が構造改革を行えていけるのかという議論はしっかりしないといけないのだろうと思いました。

 それと伊澤構成員からは、さまざまなところで日本の精神科病床は多いと言われている中で、今回の答申として、これはOECDの比較からしても、日本の国は若干データ的には多い程度であるということについてのちゃんとしたデータを示してほしいというご質問だったと思います。

 これは、我々がこれまで日本精神科病院協会として分析をしてきた中でも、OECDのデータとして出ているものは、我が国が考えている精神病床の考え方と、諸外国の考えている精神病床の考え方がかなり変わっているというのは事実です。例えば認知症の方が入院されているところは精神病床に含まないとか、あるいは平均在院日数云々の計算のときに関しても、日本で言うスーパー救急あるいは急性期治療病棟だけの計算で平均在院日数を出されているということも明確になっております。ですので、あとは個人的にそのあたりのところを十分に説明させていただくことは可能かなと思っています。

 以上です。

○樋口座長 もう一方、どうぞ、お願いします。

○佐竹構成員 総合病院精神学会の佐竹です。1点の質問と1点の意見があります。

 1点の質問は、デイホスピタルに関してのご質問なのですけれども、ちょっと私の中でイメージがはっきりしなくて、これがいわゆる急性期の入院を短くして、1年以内に退院させる期間を在宅でやる形のためのデイホスピタルなのか、そのあたりの対象者となる方がどういう方なのかをもう少し具体的にお話しいただければと思います。

 もう一点はアウトリーチのお話なのですけれども、確かに諸外国でアウトリーチが広まったときには、諸外国のシステムは保健と医療が一体化していますから、日本のように3分割する必要がなくて、やはり日本とは違う展開の形になるのかなとは思うのです。

 今、訪問であったり、アウトリーチと、言葉が先走りして、非常に訪問の件数がふえてしまっている現状は確かにあって、ただ、実際に訪問が必要なのか、ある程度のマンパワーが必要なケアマネジメントが必要なのか、その点が非常にはっきりしない。訪問の診療報酬であればそれだけのマンパワーはちゃんとつけられますという形で、実際には訪問をしなくても、ある程度密なケアマネジメントができるようなシステムがあれば、それにかわって、訪問という高価な診療報酬をたくさん使わなくてもいいのではないかというふうにも思っているのです。

 ケアマネジメントは、時によって訪問も必要になる。ご本人の状態を見に行かなければいけないということも含めて、いつも訪問ではない、でも、ケアマネジメントとしてある程度の診療報酬があったほうがいいのではないかというのが私のもともとの意見であって、その辺に関して、もしよければご意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

○樋口座長 河崎構成員、どうぞ。

○河崎構成員 まず、時間の都合でデイホスピタルのところを十分に説明ができませんでした。お手元の資料の41ページに図18というものがございます。ここに「デイホスピタルの役割と機能」という形で図を示しておりますけれども、簡単に申し上げますと対象となるのは、例えば急性期で入院をなされた方が入院治療を行っていく中で、精神症状的にはまだある程度入院治療が必要であると。ただし、夜間の生活については家族の方などからご協力をいただける場合には、早期に退院をしていただいて、日中の病院の中での医療をデイホスピタルという中で行っていくということで、入院期間の短縮が図れるのではないかというのが1点ございます。
 もう一点は、地域の中で生活をなされている方の病状が再燃をしたあるいは悪化をした際に、家族の方がまだ十分に見守りができる状況があれば、そこの部分についてはデイホスピタルを利用して、入院を回避しながら外来機能としてのデイホスピタルを利用していくということで、これも入院の予防が期待されるのではないか。その両方の面を考えているところでございます。

 アウトリーチについては、先生がおっしゃられたとおりだろうと思っています。ですので、これからアウトリーチを我が国でどのように充実をさせていくのかというときについては、マンパワーの充実を図るのか、あるいはケアマネジメントの手法をどのようにそこにつけ加えながらアウトリーチの質の向上をどういうふうに図っていくのか、このあたりはこれからのさまざまなところでの議論でぜひご検討していっていただければと思っているところです。

○樋口座長 大分時間が迫ってきておりますが、神庭構成員、最後に。

○神庭構成員 簡単に一言。最後の図34を見ていて、一番下に来る「地域住民の理解、偏見の除去、協力支援」がないと、地域移行は最終的にはうまくいかないと思うのですが、日本ではこれまでこの取り組みはほとんど行われていないし、諸外国を見ても決してうまくいっているところばかりではないので、関係各機関が力あるいは知恵を合わせて、この問題にこれから大きく取り組んでいく必要があると思います。

○樋口座長 ありがとうございました。

 まだまだご意見、ご質問があろうかと思いますが、きょうの予定の課題が2つ残っておりますので、河崎構成員からいただいた報告も含めて、最後に総合討論的にご意見をいただければと思いますので、とりあえず先へ進ませていただきます。

 次は、松田構成員からよろしくお願いいたします。

○松田構成員 産業医科大学の松田でございます。

 今、一般病床、療養病床で機能別の病床数を推計する地域医療構想というものが走っております。私たちの研究は、地域医療構想における病床機能別病床数を考えるためのロジックを作成しましたので、これはこれからの精神病床のあり方を考えるための参考資料としてご説明させていただきます。

 1ページおめくりください。ここに「病床機能別病床推計の考え方」というものがございます。これはどういうふうにやったのかといいますと、基本的には、今、国はナショナルデータベースといいまして、全てのレセプトを集めております。これがデータベース化されたものがNDB、ナショナルデータベースというものです。急性期病院は、今、DPCという患者分類に基づいて全てのデータを集めておりますので、平成25年度、2013年度の1年分のDPCとナショナルデータベースのデータを使いまして、高度急性期、急性期、回復期、慢性期を区分するということを考えたわけでございます。考え方につきまして、また後ほど図で説明したいと思います。

 「専門調査会推計の考え方」とございますけれども、地域医療構想策定ガイドラインというところで推計方法が示されましたので、まず、それに基づいて患者数の推計を行っています。患者数の推計をどういうふうにやったのかというと、機能分化を進めること、療養病床における医療区分1の70%は入院以外で対応する、療養病床入院受療率の地域差を縮小するという3つの仮説に基づいて推計を行っています。私たちが行いました推計は基本的には患者数の推計でありまして、これに病床利用率を考えて、必要病床数を推計するということをやっております。

 言葉の問題で少しわかりにくい部分もありますけれども、慢性期を入院と在宅も含めて考えておりますので、今回、慢性期というのは、療養病床の入院と介護施設、在宅の3つを合わせたものになります。

 4ページをごらんください。どういうふうに急性期、回復期、慢性期を区分したかということをお話ししたいと思います。今回、私たちが厚生労働省からいただいたロジック作成の宿題といいますのは、地域ごとの傷病構造、性・年齢階級別の構造、地域間の傷病ごとの患者移動の3つを勘案して、それぞれの地域における病床機能別の病床数を推計しろという非常に難しい宿題をいただいたわけです。

 現在、患者さんの地域間の移動、傷病構造というものが全てわかる枠組みとしては、先ほど申し上げました、日本の急性期病院に使われているDPCという患者分類がございます。このDPCというのは、例えば肺がんの肺切除術あるいは胃がんの胃切除術という傷病名と医療行為を組み合わせた分類になるわけですけれども、4ページの図は何かといいますと、一本一本がDPCという分類になります。DPCの支払い分類しましては包括というまるめになっているのですが、後ろのところで個々の患者さんについて何をどれだけやったのかという非常に細かい医療行為の情報が入っております。医療行為の情報には出来高の点数がついておりますので、その点数の変化に着目しています。

 これはどういうことかといいますと、前に戻っていただきたいのですが、2ページをごらんください。一般病床の患者さんについて、急性期、回復期、慢性期と考えていくわけですが、急性期とは何かといいますと、多分、入院してから患者さんがいろいろな医療行為を受けて落ちつくまでが急性期だろう。落ちつくまでというのは、それぞれ医療行為が発生するわけですので、日々の出来高換算でのコストはだんだん下がっていくだろう。この時期が急性期だろう。一般病床における回復期というのは、退院に向けて移行する時期ですので、そうすると、日々の医療行為としては非常に落ちついている時期だろう。一般病床におきましては、ほぼ慢性期というのは発生しませんので、患者さんがいなくなる時期、退院する時期が慢性期に相当するだろうという基準を考えました。

 4ページを見ていただきますと、縦軸が医療資源投入量、これが出来高換算のコストですけれども、入院期間が長くなるにつれて、いろいろなDPCで特徴はあるのですが、大体500点~1,000点ぐらいのところになると屈曲点がある。要するに、ぐっと下がってきて平らになるわけであります。そうすると、大体このぐらいのところに急性期と回復期の区分点があるだろう。

 逆に今度は下のほうを見ていただきますと、大体300点~500点ぐらいの下のところというのはほとんど点数が発生しておりません。多分、この時期に回復期と慢性期の区分点があるだろうということで、この幅をもちまして委員会に提案をいたしまして、急性期と回復期の区分点は600点、回復期と慢性期の区分点をここには225点と書いてありますけれども、175点で区分するということを考えたわけです。

 これで何をやったのかというのが6ページになります。右上の図をごらんください。これは一つのDPCだと思ってください。例えば肺がんの肺切除術という患者さんの入院日ごとの分布を1年分集めて、このようにまとめています。このC1より上の患者さんを全部集めますと何かといいますと、これは肺がんの肺切除術だと思ってください。そうすると、肺がんの肺切除術で高度急性期に相当する患者さんが1年間で延べ何人いたのかという数になります。それで年末年始の補正をして365日でありますと、肺がんの肺切除術という患者さんの高度急性期に相当する人が何人いるのかという推計ができます。それを病床稼働率で割りますと、これが肺がんの肺切除術の高度急性期の病床数になるというたてつけになっています。これを全てのDPCについて行いまして、全てのDPCについて高度急性期、急性期、回復期、慢性期の病床数を求めたということが今回やったことであります。

 ここで、DPC以外のレセプトはどうしたのだということになるわけですが、DPC以外のレセプトにつきましてはナショナルデータベースを使っております。ナショナルデータベースというのは、どこの誰かはわからないのですけれども、一人の人をずっとひもづけて追いかけることができるというデータベースの仕様になっています。それで何をやったのかというと、改めて1入院ごとにデータをつくり直して、1入院ごとのデータにした段階でそこから医療資源病名を推定して、医療行為と組み合わせてDPCを発生させる。要するに、今回は全てのレセプトについてDPCを発生させて、DPC以外のレセプトについても同じようなことをやって推計をやった。これが今回のポイントになります。

 7ページをごらんください。非常にわかりにくい説明のスライドになっていますけれども、これを説明させていただきますと、要するにこれで何をやったのかといいますと、例えば2013年のDPC別、病床機能別、性年齢階級別、患者住所地別、医療機関住所地別の患者数が求められます。これを2013年の性年齢階級別、患者住所地別の人口で割ってあげますと受療率になります。これに例えば2025年度の患者住所地別、性年齢階級別の人口を掛けますと、推計年度のDPC別、病床機能別、性年齢階級別、患者住所地別、医療機関住所地別の患者数が求められる仕様になっています。

 これをわかりすく説明しますと、例えば7074歳の肺がんの肺切除術を必要とする女性で、横浜に住みながら川崎の高度急性期病床を必要とする人がどのぐらいの病床数を全体として必要とするのか、こういう推計ができるわけです。要するに、傷病別、病床機能別に患者さんの地域間の移動を踏まえて病床数を推計するということをやったというのが今回の地域医療構想でございます。これが一般病床の推計方法です。

 加えまして、今回は少し官邸の意向等もあるのですけれども、療養病床につきましては、地域間の入院受療率の地域差が非常に大きな問題になりました。8ページをごらんください。これは医療区分1と言われている、療養病床に入院している患者さんの中では一番軽い部分に入るわけですが、軽いといってもいろいろな重症度の方がいらっしゃるのですが、そういう方の70%の相当の患者さんを地域に出した段階でどのぐらいの受療率が下がるのかということを見たものです。最大が高知県の10万人当たり391人、最小が山形県の81人、中央値が滋賀県の144人ということで非常に大きな差があります。この地域差を2025年までに解消することを前提に、今回の療養病床の推計を行っています。

 9ページをごらんください。療養病床の地域差の解消の方法が基本的には2つあります。1つは、2025年に最小である山形県よりも受療率の高い二次医療圏につきましては、全て山形県並みにする。これがパターンAと言われている一番厳しいものです。それは難しいので、せめて最大値である高知県の受療率を滋賀県並みにする。これは大体0.34ぐらいになりますけれども、これを山形県よりも入院受療率の高い二次医療圏に全てかけてしまう形で病床数を推計する、これはパターンBになります。それでも難しい場合は、パターンBで2030年を目標年度とした場合がパターンの特例というものになります。

 そうやって病床数の推計を行いまして、10ページも飛ばしますけれども、全国で必要病床数を推計したのが11ページの結果になります。この中には、非常に興味深いことが幾つかあるのですけれども、例えば左側が現状、2013年です。医療施設調査では134.7万床あるわけですけれども、推計結果では115万~119万床になっています。ただ、左側の病床機能報告のところを見ていただきますと、こちらで123.4万床となっております。届け出漏れがあるとしても、恐らく6万床か7万床ぐらいは現在休眠状態にあるということがわかるだろうと思います。

 その上で、推計結果を見ていただきますと、今回の推計をやりますと、いわゆる一般病床と言われているところが高度急性期、急性期、回復期となりますけれども、これが大体90万床ぐらいになります。慢性期は24.2万床~28.5万床ですが、その隣の29.7万人~33.7万人は現在であれば療養病床に入院して治療を受けている方たちを、この分だけ在宅等で見るという推計になっています。この療養病床のところをどのぐらい本当にやれるのかということが、今回の地域医療構想の議論の中ではいろいろと問題になっているわけでございます。ただ、もう一つは患者さんの高齢化を踏まえまして、一般病床の中でもいわゆる回復期と言われているところのニーズが高くなるという推計になっております。

12ページをごらんください。今回、こういうことを一般病床と療養病床でやりましたけれども、これを本当に精神病床に応用できるのかということは、この後考えなければいけないことだろうと思います。恐らく精神病床につきましても、医療資源の必要度はおおむね経時的に低下していくと考えられますけれども、実際に患者によるばらつきがどのぐらい大きいのか、例えば長期重症患者の存在ですとか、病態の違いの範囲をどういうふうに見ていくのかということが課題だろうと思っています。

 もう一つは、「病棟単位で高度急性期、急性期、回復期、慢性期を区分することができるのか」という問題があります。私自身も、いわゆる非常勤でありますけれども、精神病院に勤務したことがありますが、かなりまざっているので、患者さんを本当にこういうきれいな形で区分できるかどうかということについては、少し考えなければいけないだろうと思います。そうしますと、一つの案としては入院期間で分けるという代替案があるだろうと思います。3カ月未満、3カ月~1年未満、1年以上。その上で、医療資源の必要量を何らかの形で評価していくことが必要だろうと思います。

13ページ、14ページは今まで出ている図ですので、また後で見ていただけたらと思います。参考のところで何も言わない、やっていないかといいますと、少しやっている部分がありますので、現行のDPC分類における精神科領域の患者分類をお示ししたいと思います。

16ページをごらんください。これが現行のDPC、いわゆる急性期の病院に入院している患者さんの精神科分類ですが、ここに挙げていますように傷病名で分けた6分類だけになっております。非常に楽な分類です。一般病床ですので、必ずしも精神科の治療を目的として入院された患者でない方がほとんどですので、こういう分類でやっていますけれども、それでも少し詳しく見ていきますとちょっと違う結果が出てきます。

17ページをごらんください。これは、私どもの研究班で、急性期病院に入院された統合失調症の患者さんの入院日数に関連する病院の分析をしたものです。どういう条件があると長くなるのかということが見てとれます。有意確率のところを見ていただくとわかるのですが、実際に隔離がある方、Gaf levelが3未満の方、高齢者、精神科専門療法を受けた方は在院日数が長くなります。

 ただ、ここには示していないのですけれども、精神科に関しましてADLの情報もとっております。ADLの改善度とかGaf levelの改善度を見ますと、精神科専門療法が入った患者さんでは明らかに改善がされています。Gaf levelに関しましても30で切っているのですが、これを20にしますともう少しきれいに出てきます。

 次をごらんください。実は、これはフランスでも同じように精神科の患者さんをこういう患者分類という方法でやっているのですが、そのときに鍵となるのが隔離があるのかないのか、GAF scale20なのか20未満なのか、それから、重篤な身体的な傷病があるのかないのか、過去の入院歴ですとか、そういうことでかなりきれいに分けているのですけれども、恐らく我が国においても、何らかの形での精神科の患者さんの状態像を表現する手法を使っていかないと、正しい評価はできないのかなと思います。

 参考2は、患者調査の結果と社人研の推計を使って病床数を推計するというロジックも開発していますので、ご参考までにまた見ていただけたらと思います。日本の患者調査は、性・年齢階級別の傷病別の入院受療率みたいなものがわかっていますので、それにそれぞれの地域の将来の性・年齢階級別の人口構成を掛け合わせると病床数の推計ができますので、そういう形で推計する方法をやっています。

 最後のページですけれども、「平均在院日数を変化させた場合の推計(福岡県・北九州医療圏)」という非常にラフな推計でもやっています。例えば第4期障害福祉計画のところで入院3カ月時点の退院率を64%、入院1年時点の退院率を91%と書いてありますので、そんなふうにして計算しますと、大体平均在院日数が177日になります。大体180日ぐらいで見ていただきますと、現在、既に9,968床ぐらいある病床が2010年レベルでも5,400ぐらいになるということですので、そういう意味で、もし第4期障害福祉計画を実行していこうとすると、それなりの病床数の削減が可能なわけですけれども、ただし、これは医師会の報告書にありましたように、あくまで受け皿がちゃんとあっての話だろうと思います。地域の中にそういう受け皿がなければ、これは難しい話だと思います。

 私ごとで恐縮なのですけれども、実はフランスで医系技官の見習いをやっていたのですが、そのときに実は精神科の担当をさせていただきました。向こうは非常に受け皿が大きいのです。地域の中に居住施設がちゃんとあって、居住施設の隣にいろいろな授産施設が、その人の症状に応じて入れる施設がいっぱいあります。ちゃんとその人の労働能力などを審査する委員会がちゃんとありまして、産業医等が1カ月に1回はちゃんと行って診ているということをやっているわけですけれども、多分、そういう地域の中の受け皿をきちんとつくっていかないと、それから、医療と社会保険との連結点をちゃんとつくっていかないと、この在院日数の短縮はなかなか難しいのではないかということを研究者の立場としては実感しているところでございます。以上でございます。

○樋口座長 どうもありがとうございました。大変貴重な分析をしていただいた報告でございました。どうぞご質疑をお願いいたします。いかがでしょうか。どうぞ。

○近森構成員 ここにありますように、高知県は全国でも一番ベッドの多い県です。こういうようにベッドが多いですけれども、本当に稼働しているベッドはどうかというところを最近調べてみましたら非常に大きく変わっています。高知県は一般病床が全国平均の倍です。そして、療養病床は3.5倍になっています。だけども、例えば急性期でしたらA、B、C25%ルールだとか、回復期でしたら改善率、そして、慢性期は医療区分の2、3が8割以上という、いろいろな誘導が診療報酬ではっきりしてきまして、さらに加算もので連携を誘導するような形が強力に進められています。

 そういうことで、今、高知県の一般急性期の病床は高度急性期をやっている基幹病院に急速に収れんしています。一般急性期の空床が進んでいます。そして、慢性期は医療区分の1を多く入れている医療療養の2とか、介護療養の病床が非常に空洞化してきて、医療機能の高い病院に医療区分の2、3の患者さんは行っていますし、医療区分が低い患者さんは介護施設とかその他の施設へ今は移行して、中途半端に施設化した慢性期の病床は空洞化しています。

 だから、高知県のベッドは2025年から50年の日本の医療のあるべき病床数に急速に収れんしているのですよ。高知県は人口が少なくて、患者数が少ないです。そして、ベッドが多いとこういう状況が起こるのです。だから、私は精神科病床についても、社会的入院の方がそこに入院できないような診療報酬上の誘導をしていかないと、いつまでたっても現在の精神科医療はよくならない。ぜひ診療報酬上の誘導をうまく組み合わせして、精神障害者も地域で暮らせるような体制をつくっていただきたいと思っています。

○樋口座長 ほかにはいかがでしょうか。

 どうぞ、河崎構成員。

○河崎構成員 日精協の河崎です。

 松田先生、どうもありがとうございました。

 先生が今回の病床機能別の病床推計の考え方、一般病床あるいは療養病床について非常にわかりやすくご説明いただいたわけですけれども、それを精神病床にどのように応用できるのかというところについてなのですが、このあたりはどういうふうに応用するのかという前提には、例えば一般病床、療養病床でしたら、各医療圏の中でどれぐらいの受療量なのかという議論でございますよね。精神は少なくとも今は全県一区で大阪府なら大阪府、東京都なら東京都、あるいは県の中で必要病床数が規定されているわけですけれども、その中でそれぞれの県の中でも精神病床の偏在がかなり明確に、特に東京や大阪などはすごくあるわけなのですけれども、先生、そのあたりのところはどういうふうに考えていけばいいのかというのは何かございますでしょうか。

○松田構成員 この研究とは別に福岡県で、精神科の患者さんがどういう受療動向であるのかということを調べたことがあります。福岡県の場合は割と偏在がないのですけれども、多くの方たちは二次医療圏内で入院あるいは外来に通われていらっしゃいます。日医の報告にもありますように、精神保健というのは地域包括ケア的な考え方でやっていくべきだろうと思います。そうすると、その地域の中で通院、入院、そして、社会復帰ができる仕組みをつくっていかないといけないと思いますので、そういう意味では県全体や二次医療圏で考えるより、30分ぐらいで移動できる圏域で仕組みはつくり直すべきではないかと思います。

 そういう意味で、一つは例えば総合病院精神科のあり方も大きな課題になってくるだろうと思います。今、身体合併症を持っている精神科の患者さんはかなりいらっしゃって、そういう方たちがかなり急性期でぽんと入ってきますので、そうすると、急性期のところの精神科はある程度総合病院の精神科という形でのことも少し考えていかないといけないと思いますので、偏在があるところはこの後のいろいろな病床の見直しなどで、偏在を解消していく方向でやっていかないといけないのではないかと思っています。

 もちろん偏在が起こってしまった根本のところには、先ほど神庭先生が言われたみたいに、山間部に病床を集めてしまってきたという歴史的な経緯があるわけですけれども、そういうものは解消しなければいけない時期に来ているのではないかと思います。

○樋口座長 どうぞ。

○河崎構成員 先生のおっしゃることはよく理解できます。ただ現在、精神病床の約9割は民間の精神科病院が担っているわけです。そうしますと、地域偏在になっている病床の主たるものはやはり民間の精神科病院で、偏在を解消していくというのはイメージとすると、それぞれの精神科病院をある程度淘汰していくことがなければ、偏在の解消にはならないのではないかと正直思うのです。果たして、それはすごく大きな問題をいろいろ抱えているわけで、先生のお立場でそのあたりの何かいいお考えがあれば教えていただきたいと思います。

○松田構成員 精神科のいろいろ病態像がどういう分布をしているのかということがまだ把握できていない部分があるので、いいお答えができるかわからないのですけれども、一つは、精神科病院同士のアライアンスみたいなものは考えていかなければいけないだろうと思います。その上で、連携、アウトリーチをどういうふうにつくっていくかだろうと思います。先進的な病院の幾つかはいわゆる山間地、ちょっとへんぴなところにありながらも、アウトリーチとしての機能を都市部に持たれているところがかなり今は出始めていると思うのですけれども、そういう形で偏在を解消していくやり方でもいいのではないかというふうには思います。そのときに重要になってくるのは、先生の答申の中にありましたように診療所の役割になってくるのかなと思います。

○樋口座長 ほかにはいかがですか、伊藤構成員、どうぞ。

○伊藤構成員 松田先生は、日本の医療制度の設計のベースとなるエビデンスを出されている先生で、かつ、精神科医療にご理解をいただいている先生なので、ぜひしっかりとこれからの方針、方向を示していただきたいと思います。

 お話をお伺いして、一つだけ、精神疾患領域で大事な論点に少数のグループがかなりの医療資源を使っているという点であります。日本でも、海外でも入院率を予測する最も重要な要因は過去の入院歴です。つまり、何度も入退院をされる方々の一群いらっしゃって、その方が急性期入院医療を使われる。これは逆の側面から申し上げると、地域においては医療型のケースマネジメントが必要な方で、たまに入院される脆弱な方ということができます。このグループをどう明確にしていくか、今後大事になると思います。5年後、10年後になるかもしれませんが、ぜひ研究していただけるとありがたいです。

○松田構成員 ありがとうございます。

 フランスだけではなくて、イギリスとかドイツ、アメリカも精神科の分類をつくってきたわけですけれども、18ページにもありますが、先生がおっしゃられたように過去の3カ月以上の入院歴というものは非常に医療資源の必要度に関係してくる。これはかなり固定された証拠だと思いますので、多分そういうものを踏まえて分類はつくっていくということが大事だろうと思います。

○樋口座長 ほかにはいかがですか、よろしいですか。どうぞ。

○近森構成員 ちょっとお聞きしたいのですが、一般医療においては、血液検査とか画像診断というエビデンスに基づいて診断がなされ、ガイドラインがかなりはっきりしていて治療が行われていますので、DPCの診断群分類が非常に根拠に基づいたものになっています。精神科の場合、診断自体が非常に難しい面もあると思うのですが、そういう意味ではDPCに余り影響はないですか。

○松田構成員 それは、これから多分やっていかないといけないだろうと思います。実際問題として、例えばこの答申の中にもありましたけれども、一つは統合失調症が軽症化してきている問題の一方で、いわゆる境界期というものがかなり出てきていて、そこのところをどういうふうに分類していくかということは非常に難しいだろうと思っています。特に境界期の人格障害みたいなものとか発達障害みたいなものになってきますと、薬の治療よりは認知行動療法というものになってきますので、そういうものをどういうふうに分類に入れていくのか。それで評価するとしても、私は1~2年あたりの評価は無理だろうと思っています。諸外国もそうですけれども、大体1カ月単位での評価という形になっていますので、そういう形でやっていけばそれほど大きな困難はないのかなというふうには思っています。ただ、いずれにしてもデータを見ながらだろうと思います。

○樋口座長 よろしいでしょうか。

 大体時間でございますので、松田先生、どうもありがとうございました。

 本日の3つ目の議題でございます。事務局にこれまでのヒアリング等々を踏まえて、今後議論すべき論点についての案を作成していただいております。これをまず説明していただきまして、ご討論を願いたいと思います

 事務局、お願いします。

○鶴田課長補佐 事務局です。資料3を使ってご説明をさせていただきます。

 本分科会の役割としては、論点整理になりますので、まずは論点整理をするためのたたき台としてこちらの資料を準備させていただいております。議論の時間をなるべくとったほうがいいと思いますので、資料の説明はなるべく簡単にしたいと思います。

 まず、1枚おめくりいただきまして、「1.精神病床のさらなる機能分化について」の「マル1 精神病床の将来推計及び目標値についてどのように考えるか」としております。

 現状ですが、1つ目の丸のところで精神保健医療福祉の改革ビジョンのことを記載しております。このビジョンにおいては、精神保健医療福祉体系の再編の達成目標として、平均残存率、退院率が掲げられ、この目標の達成により、10年間で約7万床相当の精神病床数の減少が促されると明記されていました。病床数の変化を見ると、平成17年の35.4万床から平成26年の33.8万床へと1.6万床の減少となっております。

 2つ目の丸は、先ほど松田先生からもご説明がありましたが、地域医療構想について記載をしております。

 3つ目の丸は、第4期障害福祉計画における成果目標について記載をさせていただいております。

 検討の視点の1つ目の丸ですが、「それぞれの地域の特性を踏まえた、あるべき地域精神保健医療福祉体制の構築を目指して、精神病床の将来推計の検討を進めることについてどう考えるか」。

 2つ目の丸として、「また、入院後3カ月時点の退院率などの目標値について今後どのように設定することが適切か」とさせていただいております。

 「マル2 「重度かつ慢性」に関する調査結果とその活用についてどのように考えるか」。

 1つ目の丸として、平成24年に取りまとめられています精神科医療の機能分化と質の向上等に関する検討会では、地域で生活することが非常に困難な状態にあり、長期に入院が必要な患者を「重度かつ慢性」であると概念整理し、調査研究を通じて基準を明確にするといった方針が示されました。

 2つ目の丸として、厚生労働科学研究において、「重度かつ慢性」の基準案が策定され、全国調査によりますと、1年以上の入院患者の約6割がこの基準案に該当するといった調査結果がヒアリングの中で説明されております。

 3つ目の丸として、改正精神保健福祉法に位置づけられている指針においては、重度かつ慢性の症状を有する精神障害者以外の精神障害者であって、1年以上の長期入院をしているものについては、退院支援や生活支援等を通じて地域移行を推進する方針が示されています。

 検討の視点ですが、1つ目の丸、厚生労働科学研究班の策定した基準案に該当しない長期入院患者、1年以上の入院患者の約4割に相当するわけですけれども、この長期入院患者についてどのように考えるか。その際、身体合併症による入院治療を必要とする患者への対応をどのように考えるか。

 2つ目の丸、厚生労働科学研究班の策定した基準案は、現時点における一般的な地域精神保健医療福祉体制の水準を前提としたものであることから、あるべき地域精神保健医療福祉体制を見据えた基準とするためにどのようなことが考えられるかとしております。

 1枚おめくりいただきまして、「2.精神障害者を地域で支える医療の在り方について」。

 「デイケア・訪問看護・アウトリーチ等の医療機能の在り方についてどのように考えるか」。

 1つ目の丸で、改正精神保健福祉法に指針が位置づけられ、平成26年4月から適用されている。

 2つ目の丸として、当該指針では基本的な考え方、また、基本的な方向性が明記をされています。

 検討の視点ですが、「デイケア・訪問看護・アウトリーチ等の医療機能を活かした地域精神保健医療の充実に向けて、これまでのヒアリング内容や、先駆的な地域における取組を踏まえながら、自治体の役割分担を含め、精神障害者を地域で支える医療の在り方についてどう考えるか」。

 もう一枚めくりまして、最後の論点になりますが、「3.多様な精神疾患等に対応できる医療体制の在り方について」。

 「多様な精神疾患・患者像への医療の提供についてどのように考えるか」。

 まず、現状ですが、1つ目の丸として、平成25年度からの第6次医療計画において、新たに精神疾患が追加され、5疾病5事業として運用されています。

 2つ目の丸として、改正精神保健福祉法上に指針が位置づけられています。

 この指針の中では、入院医療中心の精神医療から精神障害者の地域生活を支えるための精神医療への改革の実現に向け、精神障害者に対する保健・医療・福祉に携わる全ての関係者が目指すべき方向性を定めています。また、多様な精神疾患・患者像への医療の提供として、児童・思春期精神疾患、老年期精神障害等、自殺対策、依存症、てんかん、高次脳機能障害、摂食障害などが位置づけられています。

 平成30年度の第7次医療計画の実施に向けて、医政局において、今、医療計画の見直し等に関する検討会が実施されており、改正精神保健福祉法の指針と整合性のとれた見直しを行う必要があります。

 検討の視点ですか、「第7次医療計画の策定へ活かせるように、『良質かつ適切な精神障害者に対する医療の提供を確保するための指針』に沿って、これまで実施してきた事業の成果や地域における取組を踏まえながら、効果的かつ効率的な地域精神保健医療提供体制の在り方についてどう考えるか」。

 以降は、これまでの分科会等でお示ししています資料を参考資料としてつけさせていただいております。説明は以上です。

○樋口座長 ありがとうございました。

 それでは、これから35分ぐらいございます。議論すべき論点についてという説明がございました。これについてのご意見を頂戴していきたいと思います。どの項目からでも結構でございます。

 どうぞ、田川構成員。

○田川構成員 診療所協会の田川です。

 「2.精神障害者を地域で支える医療の在り方について」ということなのですけれども、この前のヒアリングでも申し上げたのですが、ここにあるデイケアとか訪問看護、アウトリーチは一つの手段であって、基本的には全体として、その方の生活をいかに支えていくかというところで、医療も福祉も保健も介護もいろいろ協力していくのだという地域包括ケア的な考え方で臨まなければいけないと思います。この前のヒアリングでも話したように、医療機関の連携機能がとても大事になってくると思うのです。ですから、「これまでのヒアリング内容や、先駆的な地域における取組を踏まえながら、自治体の役割分担を含め」ではなくて、この前に「保健福祉との連携のあり方や」という文言が「自治会の役割分担」の前に必要になってくるのではないかと思います。

○樋口座長 ありがとうございました。

 ほかにはいかがでしょう、どうぞ。

○近森構成員 近森ですか、マル1とマル2についてちょっとお話ししたいと思います。急性期は3カ月をめどにできるだけ早く退院してもらうように、診療報酬上の逓減制をぜひ導入していただきたい。そうすれば患者さんを早く地域に帰すという医療機関の動機づけが強まりますので、そういうものを導入してはどうかという提案です。

 もう一つは、重度かつ慢性という非常に膨大な研究のもとに出た基準ができましたので、ぜひこれを利用して、社会的入院の患者さんが入院できないような形にならないかなと思っています。例えば3カ月過ぎて1年以内は、重度かつ慢性の患者さんが病棟に5割は必要だとか、1年を過ぎると8割は必要ではないかなという仕組みづくりをぜひ考えていただきたいと思っています。現実でも、1年以上の重度かつ慢性の患者さんは精神科の病床に6割おられますので、そういうものを例えば8割に上げることで、2割の社会的入院の方が強力に地域に帰れるようになります。けれども、100%は無理だと思うのです。やはり2割ぐらいの余裕がないといけないと思いますので、そういう形にできればなと思います。

 あとは、重度かつ慢性の判断基準ですけれども、これは一般医療の重症度、医療・看護必要度に非常に似ています。そして、こういう患者さんの状態を把握するのは、私は24時間365日患者さんに接している看護師さんの記載をもとに判断すべきだと思います。先生方に意見書を書いていただくというのは、お忙しい先生方は大変だと思いますし、カンファレンスはやるにしても非常に手間がかかります。看護師さんの記載をもとに重度かつ慢性かどうかを判定する。判定の方法については、精神科の看護協会が普及に尽力してくれると思いますし、そういう形になれば非常にいい形になっていくのではないかと思います。

 以上です。

○樋口座長 広田構成員。

○広田構成員 6月5日は「ヘイトスピーチ」と日本中の新聞が大騒ぎした川崎に行きましたが、「20人のヘイトスピーチ」に対する「カウンター」と呼ばれている600人の「在日支援市民」を私は、反政権運動、活動と感じた。神奈川県警の若手機動隊員は今後のデモを想定した予行演習に、「ヘイトスピーチ」、20人くらい警護、反対している集会の人たち警護、神奈川県警で有名な広田和子も警護されたという感じでした。

 当日あちこちの市民や通行人等の感想は「なにもない」「大騒ぎして反対しなくても」とか多かった。個人の事件も神奈川県警をたたいたのと同様、沖縄の元米軍兵のことで米軍をたたいてた。「610日、女性兵士の交通事故発生で外出禁止令を出した」と新聞で読み横須賀ベース前に行って、うちに帰ってきたのは翌日の朝7時。お風呂に入って、寝て、生活のリズムが戻って、「すごいわ、三十何年ぶりにリカバリー」と思っていたら、過労で風邪引いたらしく、議事録校正中です。その間、かかってくる電話は受けられるけど、マナーモードにならない等。出会った「IT技術系・・・」「いろいろなことをITの技術系とか電器屋さんがやれる時代」と言われました。これもFBI連邦おとり捜査官、国の委員である広田和子に「電話を使うな」と受け止めて、快適な生活になりました。24日に厚労省に来たら「連絡とれなくて心配している」と言うから、「心配は、私を待っている官僚の彼だけでいいの」「心配するより交通費の入金を」と言いました。

20011219日から国の委員、日精協の敵ながらあっぱれ津久江先生とやり合って、河崎先生はやり合う性格ではない。ここの委員「変わった」と言う人が多いけど、患者さんを退院させられない、ベッドが多過ぎる、マンパワーは少なくて、診療報酬は安い、精神科医療課題の4点セット何も変わっていない。これを今回こそ変えたほうがいい。

 日本のマスコミ元米兵で軍属のことオバマ大統領に安部総理から話をさせた。オバマ大統領、森さんという被爆者、被爆米軍兵の石碑まで自分のお金で建てた人を抱いた角度がすごい。黒人兵というのは昔のぶら下がりのお姉さんたちに「1にブラザ、2に白人、3に日本人」と大人気だったけれど、黒人だからこういう気配りをと感動しながら写真を眺めて、共同通信から買って大きなパネルにして彼と一緒に暮らすとき飾ろうと思っています。

 日本人は何をやりたいのかと疑問に、2001年からずっと感じています。根幹を変えなければ、近森さんもわかりやすく。言うことを聞かない病院がある、そんなことはここで言ったって、こういうことをするぞと。山崎先生は悪代官にもなれるぐらいの意気込みで会長をやっている。何をとはっきり本音で。私は先程も発言した4点セットを。診療所協会も、地域を束ねと、国防婦人会ではない。今は戦後71年。

 私は12回海外に行っています、1995年夏、アイルランドのスライゴ、ボランティア活動しているご夫婦宅で、そして、3年前の11月アメリカのワシントン元補佐野崎宅でホームステイを。インディペンデント、大人も子供も自立でした。こちらは、共依存の医者たちコ・メディカルが連携してどうするの、誰のための連携、自分の不安の解消では。

 前回話した、横浜市旭区の件、東北からもSOSの電話、向こうの不動産屋さんに会ったり、近隣に会いに行ったら、鍵がかかっている家がいっぱいあって、「認知症が家の中にいる」「お話を聞いて下さい」と中年のお嫁さん。その看る人たちがいなくなったとき、日本の認知症がより社会問題化する。

 そういう本質的な課題がいっぱいある中で、小手先のことばかり。オバマ大統領、広島に行く直前。岩国の米軍基地の格納庫の中でスピーチ、「かつての敵国が最強の同盟をつくって、この地域、世界の繁栄につながったりする」とベースは信頼、協力。

 私たちが患者、医者、行政を超えて何よりも大事なのは信頼関係です。田川先生だったら、という信頼。広田和子では、嫌よと言うことがあるかもしれないけど、断られるのも自立。そういう信頼がベースにあって、連携というのは日本だったら協力ではないですか。

 先ほど言っていた救急のところもやらないと、医者が燃え尽き症候群になってしまう。精神保健指定医、クリニックもお金がいいからとっている、協力することで医者の力量も上がり、プライドが持てる、患者にとっても重要なことです。

 私はきょうモンペを履いてきた、71年前も日本は竹やり訓練をモンペ履いてやっていた。OECDだ、フランスだ、イギリスだ、アメリカだと言うけど、何より自立、ノーも言える日本人でないと。

 2年前検討会終了後、マスコミ数社が「日精協からお金受け取っている当事者」と取材に来ました。個別に「あの人が広田さんのことを批判していた」指された人は、長谷川君という人で病棟転換の勉強会でも、いない人の名前を出して「日精協の委員に入って・・・」と批判的な言い方をしたから、「日精協の委員に入ったまでを発言して、その後の主観は聞き手に任せれば、公明正大、フェアにいきましょう」と発言をしました。そのとき伊澤さんも壇上にいました。ここへ来ていると、4点セット以外、住宅施策を打たないで、PSWのハローワーク。それがずっと続いて、今回も横浜市の自アシを国に導入するというけど、あんなものあるためピアサポートは育たない、「いわゆる内なる偏見の患者が」スタッフにすがったり等、くだらなすぎて、「横浜市の施策をやめるべき」と発言しても、大物の政治家が背後にいたのでしょうね、国は通した。

 伊澤さんに私はお願いしたい、OECDのベッドは関係ない。「OECDの女性が日本人の女性より働いているから、日本の女性は不幸だ」とマスコミが報道して、「女が輝く」と政治家も騒ぐけど、大きなお世話。「世界一幸せ度が高いのはブータン。」日本で入院治療が必要ではない、この瞬間も社会的入院で、長期入院と呼ばれてしまっている、「国内の拉致被害者」が入院している。その時々の「世論だったり、」「ベッドが余っていたから」、国の施策で安かろう悪かろうで入れてきた。日本として、どのぐらいのベッドが必要かという話をすれば。

 日本の国が、「世界一安全だ」と、あこがれてお金のない滞日が入国しているこの時代のこの国ベッドがどうなのかということをやるべきで、「地域派と日精協の対立をやめてほしい」。名古屋の国際会議場で元課長の福田さんも、広田も言った。ぜひ小異をすて大同にたって一枚岩。先月、来日され苦情聞いたりして、サミット出席、岩国基地で在日海兵隊員と海上自衛隊員3000人に激励などのスピーチ、核保有国として唯一原爆投下したアメリカ大統領としてプラハでの歴史的スピーチでノーベル平和賞受賞しながらも、核のボランを持参し、現役としては初めての広島入り、被爆者の森さんを、この角度で抱きしめた。胸には国旗のピンバッジが。黒人初の孤高な超大国、アメリカ合衆国大統領でもあるバラク・オバマはすごかった。海外の話をするのだったら、この分科会も、すごいと思える発言をしましょうよ。

 私は相談員もひいて相談者が全員卒業され、彼と一緒に暮らす直前すっきりしました、引いたスタートは生活支援センターの職員が様々の場面対等でないと感じていた。そして、ある日、又、ひとり仲間が亡くなった。「患者さんが死にたいと言うと駆けつけた」。私も電話をもらい、「駆けつけたらそれは依存」と。「広田さんに言われた」と本人から聞きながら駆けつけた職員。「かつて死なれたトラウマ」で、駆け付けて、「患者さんの主治医に指示を仰いでいた」。こんなのはプロではない。私は警察から頼まれようが、どこだろうが駆けつけて、自分の判断でやりこなして、ここはちょっと聞いてと判断したら、個別ではなく普遍的に、信頼関係のある医者にかつて参考意見を聞いたこと何回かあります。連携以前に、一人一人が人間としても、プロとしても力量を上げる。

 最後です。26日、山本眞理さんが壇上にいました。久しぶりに参加した懇親会の二次会で彼女は「患者さんを退院させて、現在ある精神科医療のお金でベッドを削減して、福祉に回さないで、その中で診療報酬を上げたらいかがですか、と河崎先生に話したのよ」と言うから、「そうだったの、眞理ちゃん、」だからといってそのとおりにならないかも知れないけど、子供でもわかるような算出にしたほうがいい。日本の医療の中で「精神科医療3分の1の安さだ」と氏家さんという人も発言していた。安かろう悪かろうをやめて、患者のため皆さん、よろしくお願いします。

 それと、長野先生が言った診断名を見直すというところには、コ・メディカルも力を出して、「長野先生、精神分裂症と言っていたけど、広田さんは確かにいろいろなことを発言したり、行動するけど、精神分裂症ではなくて想像力の豊かな人ではないのですか」とか言えていたら私はここに存在していない。多くの仲間たちの人生も違っていたかも知れない。対等な関係を医療、福祉、行政、患者とも、外国のことを話されると、奉って講義を聞いているような感じ、すばらしいを連発しないで、フランスだっていろいろなことがあるでしょうという深まった質疑を。

○近森構成員 広田さん、今、本質的なことをお話しされたと思うのですよ。

○広田構成員 いつも本質ですよ。

○近森構成員 だから、それをどうやったら実現できるかを私は言っているだけの話です。

例えば、急性期の患者さんを早く治して地域に帰すということは、それだけのスタッフが要ります。そして、それだけのスタッフがいれば医療費は上がります。そして、長期の患者さんは、どうしても長期に入院しないといけない患者さんだけに限っていくと、社会的な入院の患者さんは地域に帰れます。そして、長期入院が減っていきます。

 こういうように、診療報酬でも何でもいいですからそういう仕組みをつくって、急性期はできるだけ早く多くのドクターとスタッフで治していく。当然、単価は上がっていきます、医療費が上がります。そして、できるだけ必要のない患者さんは出ていただく。そうすると、本当に手間のかかる患者さんはふえますので、どうしてもスタッフもふやさないといけないし、医療費も上げないとやっていけません。

○広田構成員 わかりました。

○近森構成員 そうでしょう。

○樋口座長 その中身についての議論は、さらにこの後深めていくことになると思いますが、とりあえず今のこの論点の中で、どうぞ、長野構成員

○長野構成員 3つの論点のところで、まず、1番目の将来推計のところなのですけれども、今まで病床数の将来推計に関して、ここまでの経過で真っ向から推計に取り組むというところは、実はここ10年参加しながらできなかった状況もあったのだと思うのです。今回も平均残存率、退院率のところで7万床相当と言いながら1.6万床、これも中身は総合病院がなくなったり、非常に厳しいなくなり方をしていて、本意とするところではない印象もあります。

 今回、なぜこれが減らなかったのかとか、本当に今回、これからの将来推計がどうなのかというところにそろそろ直面をして、先ほどの海外との比較もしっかり、アメリカもナーシングホームとかいろいろ見に行ったのですけれども、本当に劣悪な病棟に近い施設もたくさんあるのは事実だと思うのです。

○広田構成員 そうなのよね、イタリアもね。

○長野構成員 そこも本気で向き合って、表舞台で本当にどれぐらいいるのだというところをしっかり検討する段階に来ているのだろうと思っていて、その論点が要るのかなと思っています。

 あと、精神科病床の偏在の問題なのですが、東京、大阪は本当にどうにもならないというか、すぐにはどうにもならない県もあると思うのですけれども、実際に県の中では、二次医療圏域を設定しても、ある程度ちゃんと点在していて、やれる県もあるのではないかと思っていて、ただ、できないところに合わせて全国的にこうなっているところが課題で、やれる県から二次医療圏域にきちんと落とし込んでいくことも考えていく段階に来ているのかなと。もちろん民間病院が中心ですので、偏在をいきなり違憲ということもそう簡単にはできないのは重々わかりますので、できる県から取り組んでいく準備が必要なのではないかと思います。

 あと、重度・慢性のところですが、「約6割が、基準案に該当した」というところが非常に興味深くて、ただ、膨大な検討をして、現段階で意見は出し尽くされてきている印象もあって、これは非常に個人的な意見ですが、まずはもう走らせながらこの4割の方々をどうするかということを真剣に考え、さらにこれはどんどん狭まってこなければいけないので、走らせていくことが必要なのではないかと思います。

 それと、デイケア・訪問看護・アウトリーチのところで、デイケア・訪問看護は検討が弱いところはあるのですけれども、各論が今までかなり検討され尽くしてきつつ、弱いところは補いながらも、各論で一つちゃんとやらなければいけないのはアウトリーチのところ、答申の中にもありましたけれども、導入の時点から言葉の定義が曖昧なままここまで来ていて、アウトリーチが訪問の置きかえで使われていたりとか、中身の議論が本当にできていないと思うので、アウトリーチの中身の議論をしつつ、先ほど田川先生の連携の話がありましたけれども、ここにケアマネジメントをどう導入するかという論点は要るのではないかと思います。

 あと、多様な精神疾患のところですが、実は依存症、てんかん、高次脳機能障害、摂食障害のスキームがほぼ同じなのです。

○広田構成員 スキームというのは何ですか。

○長野構成員 枠組みです。例えば29ページ、30ページ、31ページと右の絵が全部同じです。非常にやはり未熟に感じます。私たちの現場もそうですが、精神科の医療の中でてんかんの人、摂食障害の人たちが埋もれていて、十分な治療を受けられていない状況が全国にあると思うのです。バックアップを頼もうにも、バックアップの機関がどこにもない地方も幾らでもあると思うのです。このバックアップというのはとても大事だと思うのですけれども、これを精神保健福祉センターと保健所に任せられるのかとかなりの心配があって、もし、こういうバップアップ体制をこのあたりを中核にやっていくのであれば、医師も含めた専門家の配置をしていかないと、絵に描いた餅になるだろうと思っていて、このモデル事業の予算額もとても気になっていまして、この予算で検証されていくことで、実際、皆さんの生活が守られていくのかということを考えると、これは早急に充実させていかなければいけないのかなと思います。

 以上でございます。

○樋口座長 ありがとうございました。どうぞ、松本構成員。

○松本構成員 先ほど、松田先生が最後のところでご自分の話をされたときに、フランスの例をとって、地域の受け皿が非常に大きいとのお話しでした。結局、早期退院にしても、退院した先のところが全く整備されていないのに議論はできないと思うのです。やはりそういう整備をしてからの話で、近森先生の本当にせっぱ詰まったお気持ちの中で、もう診療報酬で誘導しようというのは、気持ちはわかるとだけ言っておきますけれども、余りにも乱暴過ぎると私は思います。もう少しというか、やはりもっともっと整備をして、そちらへ力を傾けないと、これは本当に絵に描いた餅、我々の答申も本当にそうだと思います。だから、これを浸透させていくためにどういう努力をしていくかということだと思います。

○樋口座長 6人いらっしゃいますね、あと15分。

 それでは、発言をまだされなかった方を優先的にいきましょう、荻原さん。

○荻原構成員 ありがとうございます。

 1点だけ、「1.精神病床のさらなる機能分化について」なのですけれども、「検討の視点」で「それぞれの地域の特性を踏まえた」という文言があるのですが、これを本気でやらないと、先ほど長野先生もおっしゃられていましたけれども、これをどうやるかと。前回、前々回の分科会でも、医療と福祉、それはどちらがどうのではなくて、地域特性に応じたということをやはり今回やらなければいけないだろうという議論があったと思います。

 その意味では、この「特性を踏まえた」ということをどのようにやるかをちゃんと出さないと、結果的にはオールジャパンでどうするか、日本全体でどうするかだけの話になって、今も松本構成員からありましたけれども、絵に描いた餅になってしまう。そうであるならば、この「地域の特性を踏まえた」ということについては、長野構成員から出ましたように、モデル事業でもいいからとにかく走らせるということをする必要があるのではないかと思っています。

 きょうは時間がないので、まず、この1点だけをお伝えします。

○樋口座長 伊澤構成員。

○伊澤構成員 今のお話に少しかぶるのですけども、東京とか大阪の地域偏在の話がしきりに出ておりますけれども、東京の実情でいくと、23区に比べて多摩地域26市は非常に病床が多いです。特に西の西多摩地域というのはたしか万対で68ぐらいです。その中のコアになっているのが青梅地域で、人口14万人に対して3,000床を超えるベッドがあって、人口万対170近くになっている。多分、断トツ世界一なのですけれども、とても強い地域偏在があります。

 今、おっしゃったように「地域特性を踏まえた」というところは本当に真剣に考えて進めていかないといけない。実は青梅の病院の中に区部からの方がたくさん転院されてきていらっしゃるのです。そこで長期化しているのですよ。その方々の退院を応援しているのですけれども、長くその病院にいると、処遇としては開放処遇ですから、時間制限があるけれども、ご自由に外出をどうぞということで、皆さん近隣の食堂やスーパー、美容院、歯科診療といったところに出入りしているのです。そうすると、地域になじみができるのですよ。

 その方々が退院しようと考えたときに、もう何十年も前の区部に戻るという気持ちではなくて、その病院がある地域に退院したいのです。そうすると、そこの自治体は持ち出しが多くて、とてもではないがたまったものではないと。だから青梅ではやめてくれ、区部へ帰してくれという話です。これが随所に出ていて、地域移行はそういったところでも難航しているのです。ですから、今あった議論は物すごく大事で、スタートさせる何か特別な措置なり何なりも施していくような、そういう姿勢が必要だと思っております。

 それともう一点、短目にしますけれども「重度かつ慢性」です。この響きは前も申し上げましたけれども絶望的です。あなたには将来がございません、ずっと一生病院です。ある意味では、我々もそんなにかかわれませんみたいなことも同時に伝わっているような、そういう妙なネガティブなメッセージ性を持ったような言葉で、だから今後の検討の視点の中に名称についてはしっかり考え直すみたいなことを入れてほしいと思います。

 先ほど、河崎構成員のご発表の中にも、さらなる強力な治療を施行し、回復を目指す群と規定をされておりました。それに基づくのであるならば、高密度の医療を実施する対象の方々なわけですから、そういう表現をしっかり用いるべきではないかなと思っております。以上です。

○樋口座長 ありがとうございます。籠本構成員。

○籠本構成員 いろいろあるのですが、時間の関係もあるので、これは最初にも申し上げたのですけれども、1つは参考資料21にあります「兵庫県淡路圏域の取組 保健所による先駆的なコーディネーター機能の例」ということです。これは、病床数が370で3病院あって、人口もほどほどで、二次医療圏でと、一つのモデルになると思うのです。私は思うのですけれども、リーダーになるところがないと、地域を含めて、それからピアサポーターをどう生かすかということの音頭取りをやらないとだめだと思うのです。連携しますといってみんなが集まって何だかんだ言って、また次にしましょうねではだめなので、すぐれているものは成果も上がっていますし、それから月に1回保健所が音頭を取って問題解決の提案も全て行っているという、全てのところでやれるかどうかはわからないですけれども、地域の公衆衛生の拠点ですから、精神の問題というのは公衆衛生の拠点が力を入れてやらなければいけない。都心部はいろいろ資源もあって、いろいろな難題もあったのですけれども、地域でなかなかそういうのが少ないとか、まとまりがつきにくいとか広域であるということについては、やはり保健所が中核になって、先頭になってやるという位置づけにしなければだめだと思います。

 それと、先ほどてんかんも含めて、これからの多様な精神疾患に対応できるとあったのですけれども、右側が同じ絵ではないかと。同じ絵で、我々のところも依存症とか難治性の患者のモデル事業を引き受けているのですが、こんな絵のとおりやろうなんて全然思っていません。お金をもらうために一応仕様書を書きますけれども、こんなものでできるとは思っていません。でも、厚労省もこれでできるとは思っていないが、大体こういうイメージで、あとは地域で、モデルを地域の実情に応じた形でやってほしいということなので、それぞれ工夫してやっています。

 依存症に関しては、大阪は極めて依存症がたくさんいるところで、特にギャンブルがすさまじいのです。今までギャンブルに関しても相談するところさえない。医療機関に限らず何しに来たのだと言う。大阪でどうなるかわかりませんけれども、関係機関、もちろん行政もそうですが、支援団体から行政書士、弁護士さん、麻薬の取締官から、府域全体でやるアディクションセンターをつくって、それぞれどこかへ相談に行ったら、自分のところでやれないところはちゃんとほかのところとも連携、協働して、問題を整理してバックアップする。完全には脱却はできないかもしれない、また失敗するかもしれないけれども、やはり細くでも長くでも、失敗してももう一回やってみようと思ったときに受け入れて、それを支援していく体制をつくっていくものでないと。これはお金がかかりません。だから、こういうものをやはりやっていかなければいけない。

 それから、診療所もたくさんあって、初診に行っても、予約制ですと言ってなかなか診てくれないところがたくさんあるのですけれども、まずその中で一番嫌われるのは依存症。予約の電話で外しますとみんな言っています。予約の電話をかけても、依存症、あいてません、いっぱいですと言う。でも、普通に診てもらったらいいのです。別に依存症を治してくれとかではなくて、依存症に係る精神科的な問題とかいろいろな相談を窓口に入れてもらって、診療所でやれることをやってもらって、後はそれをつないでもらったらいいのです。その受け皿が必要なのにそれがまだできてないということは、そこを底上げするということを大阪では何年かかるかわからないけれども、ずっとやっていこうと思っています。

 そういうことで、依存症を挙げましたけれども、先ほども言いましたが、今、てんかんとか神経性食欲不振症も本当にはざまのところで、本当に苦しい思いをしているのです。どこも行くところがない。

○広田構成員 日本社会みんな依存症よ。

○籠本構成員 それはそうですけれども、なってしまった人は大変ですからね。

 もちろん大きな枠でのくくりというのは大事ですけれども、本当に泣いている人がたくさんいるところにちゃんと手厚い、別にお金はそんなにかけなくてもいいと思うのですが、みんなが手を差し伸べる制度というのは、それぞれつくっていく仕掛けをこれからしていかなければならないと思います。以上です。

○樋口座長 あと数分でございます。河崎構成員、簡潔にお願いします。

○河崎構成員 先ほどから議論の中で、これからの精神病床の果たす役割とすると、できるだけ早期に地域へ戻す。そして、長期の方たちについては、重度かつ慢性に該当しない人はしっかりとさまざまなかかわりをして、これも地域で生活をしていただこうということだったと思うのですが、そのための仕組みをつくるということを近森先生はおっしゃったと思うのです。私が一番大事なのは、先ほど松本先生もおっしゃられたように、あるいは松田先生もご指摘をなされていたように、どれだけ地域の中の受け皿をしっかりと整備するのかということの仕組みをまず優先すべきだと主張したいと思います。

 もう一点の重度かつ慢性についてなのですけれども、これは今回の大規模な調査を通じて、ここには「6割」と書いていますが、これをもう少し精査をしないといけないかなと思っています。ひょっとすると7割近くの方がこの基準案に該当する可能性もあるのではないかと思ったりします。

 つまり、これまで多くの1年超の人は社会的入院だとよく言われてきました。しかし、実際はこの基準案を用いてみるとそうではないのだということが一つはっきりしたのは、今回の基準案の策定の大きな意味があったと思っています。

 それと、これ以外の方をどういうふうに地域へ移行させていくのかということがこれからの大きな課題ですし、もう一点、この重度かつ慢性の基準案をどういうふうに使っていくのかという議論はこれからしないといけないのだろうと思うのです。もし、障害支援区分のような形の認定であるとか、あるいは介護認定のような形で使っていくのであれば、やはり医師の意見書が必要です。これを看護サイドだけに任せてしまうというのは、私はもっと議論をした上でやっていかないと、医師の意見というものをしっかりとそこには反映しないといけないかなと思います。

 以上です。

○樋口座長 最後、広田構成員、簡潔にお願いします。

○広田構成員 横浜市も「3,000万、5000万打って、さらに自アシを上乗せして来ているのは十数人、」「ご飯も食べる人少なくて」、「電話相談という名の話し相手、」そんな実態知ったら必要ないと市民があきれます。「こちらの生活支援センター無料で食事できる・・・」と言ったら、「・・・高福祉は人をだめにする」とカナダの日系人に2001年どなられた、福祉系社会資源作ったところも退院できてない。受け皿がないからと言っている時代ではない。住宅施策作らず、福祉という名の受け皿、そして、相談という名の話し相手施策。

 松田先生、さすが中労委、おいでになってよかった。国みたいな発言をされていましたけど、近森さんの言い方が適切でないのです。お金で誘導すると言われるの。野党だったら私も言います。そうではない。安いからきちんとした精神科診療報酬にしてくださいということを、日精協はデモでもかけたらどうですかと、たしか私も十数年前にアンケートを頼まれて書きました。国民が知らないところで、全部ごみためのようなことをやらされてきたこともある、それで患者は傷つき、家族関係も不幸にしている。

 安いということは上げなければ。そして、福祉をつくらなければいけないところがあると言ったとき、電話相談という話し相手とか自アシではない。話し相手ならきょうも電車の中でいっぱい子供たちに大人気です。イギリスの子もインドの子も。

○神庭構成員 神庭です。

○広田構成員 人ごとではないですよ。みんな、自分がどうなっているかということです。地域で愛を求めているおばさんたちがオレオレ詐欺に引っかかって大変な騒動の日本社会、「地域でお願いします」と余計なことをしなくても、一昨年冬「関東地方の刑事」さん「○○さんの近所の者です、お母さんが、」と電話をかけてしまう時代。「警察はお手上げです」、地域住民はそっとしておく。皆さんに必要なのは本人が自信とプライドを持てるように。そのためには安倍ちゃんではないけれど、先生方自身、「自信とプライドを」持ってください。

 それから、患者のことで不安を持ち過ぎです。私は社会的入院の仲間にも出会ってきたけど、今は電話を使っていません。これから彼と暮らしますから生活を変えますが、ご安心ください。広田和子に依存気味のいろいろな相談者も卒業できました。みんな広田和子を越えていきましたよ。私の悪口言えるくらいたくましくなっている、医者を越えていきますよ。そういうことだから基本は信頼関係。

 PSWの大野和男さんの講演を先日聞きましたが、かつてとてもいいことを言った。「広田さんと患者さんの信頼関係が治療だ」と。その通りで、私の活動は信頼関係が症状を、生活のしづらさを上回っていた。4人の主治医にめぐり会ったことで広田和子は精神医療を信頼できた、信頼関係のベースは人間として相手を尊重すること、公民権です。ヘイトスピーチも、DV法も、ストーカー法も、障害者差別禁止法も要らない。性別、肌の色、立場等超越して、平等で、対等で、人間として尊厳を持って、「マイ・フェア・レディ」のヒギンス教授とイライザのようにやっていただければ、多くの人が人間として尊厳を持って立派にやっていける。尊厳を奪っているのが医療、福祉、住民、行政、マスコミ等です。いいですか、奪わないように。社会資源あっても患者が退院してない、既にあるところを調査かけたほうがいい。今の福祉は、人間的にも質的にも低いから出られない。社会資源が患者を選んでいますよ、職員の不安で医者に電話もかけている。そんなものを福祉と認めません。私はよだれを流して、廃人のようになって、2時間しか横になれなかった、死のうとしても、首にひもをかけても死ぬ力もなかった精神医療の被害者です。それを思えばこの瞬間も退院できるのに、10万とも20万とも入院している仲間たちがいる。それを見殺しにしてとんでもない。「何があっても俺が守る」という彼に愛されて、私が幸せだから、より感じる。税金をコンシューマーのために使わないと、今に国民が怒り出す。日精協はデモでも何でもかけて、今も「精神科医療が安い」ことを国民に知ってもらったら。私は行けないかも知れませんが。

○樋口座長 それでは、時間が少し過ぎてしまいました。きょうの議論はここで終了とさせていただきます。事務局から次回以降の日程の説明をお願いいたします。

○鶴田課長補佐 次回の分科会ですが、7月15日、10時~12時を予定しています。

○樋口座長 本日はお忙しい中、長時間にわたりまして、ありがとうございました。

 これをもちまして、第4回「新たな地域精神保健医療体制のあり方分科会」を閉会といたします。お疲れさまでした。

 

 


(了)

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