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2016年4月26日 第1回社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討会 議事録

社会・援護局福祉基盤課

○日時

平成28年4月26日(火)10:00~12:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○議題

(1)社会福祉法人の会計監査について
(2)その他

○議事

○田中室長 おはようございます。

 定刻になりましたので、これより第1回「社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討会」を開催させていただきます。

 まず、福祉基盤課長から一言御挨拶申し上げます。

○岩井課長 本日は御多忙のところ、御参集いただきましてありがとうございます。社会・援護局の福祉基盤課長の岩井でございます。

 先月末に「社会福祉法等の一部を改正する法律」が成立いたしました。来年4月の施行に向けまして、本格的な準備を開始しております。そのため、先週19日に昨年2月以来の社会保障審議会福祉部会を開催したところでございます。

 その福祉部会におきましては、会計監査人の設置義務対象法人の規模をどうするかといった点を含め、御意見をいただいたわけでございますが、専門的・技術的な検討を要すると考えられます会計監査や控除対象財産に関する検討項目につきましては、検討会において一定の専門的・技術的整理を行い、適宜、福祉部会に報告することとされました。これを踏まえまして、今回、検討会を開催し、御参集いただいた次第でございます。

 本検討会では、会計監査の対象範囲、例えば証明範囲などをどうするか、会計監査人を設置しない法人に対する支援をどうするか、控除対象財産の算定ルールをどうするかといったことについて御議論いただきたいと考えております。

 今回の改革における柱の一つでございます財務規律の向上に向け、非常に重要な議論となりますので、皆様のお知恵をお借りしたく、よろしくお願い申し上げます。

○田中室長 引き続き、構成員の皆様の御紹介をさせていただきます。五十音順に御紹介させていただきます。

 柴毅構成員でございます。

 千葉正展構成員でございます。

 松原由美構成員につきましては、10分程度おくれて御到着と聞いております。

 山田尋志構成員でございます。

 それでは、議事のほうに入らせていただきたいと思います。資料の確認をさせていただきたいと思いますが、検討会の議事次第の次に資料1ということで2枚紙がございます。資料2という厚い資料がございます。よろしいでしょうか。

 それでは、私のほうから、まず会議の趣旨について御説明させていただきたいと思います。

 資料1をごらんになっていただければと存じます。「社会福祉法人の財務規律の向上に係る検討会開催要綱」ということで添付をさせていただいております。

 「1.趣旨」でございます。今ほど課長の挨拶の中にもありましたことと重複いたしますが、基本的には社会保障審議会の福祉部会で、法律の施行に伴う主な整理事項等について御議論をいただいているところでございまして、机上に構成員の皆様には参考までに配付させていただきましたが、先日、4月19日に社会保障審議会福祉部会が開催されまして、会計監査人の設置基準等について御議論いただきました。

 こうした基準につきましては、引き続き福祉部会のほうで御議論をいただくということでございますが、開催要綱に記載がございますように、専門的・技術的な検討を要すると考える項目につきましては、別途この検討会で一定の専門的・技術的整理を行うこととしたものでございます。この検討会の議論につきましては、適宜福祉部会で御報告をするということで考えております。

 次に、「2.検討課題」でございます。この検討会における検討テーマは大きく2つございまして、会計監査に関するものが1つでございます。もう一つが控除対象財産に関することでございます。

 本日、(1)の会計監査に係る事項について御議論いただきたいと考えておりまして、項目につきましては1から3、会計監査人候補者の選び方、会計監査の実施範囲(証明範囲の設定)、会計監査の実施内容(重点監査項目の設定)、こうしたことについて皆様方から御意見をいただければと考えております。引き続き次回、今申し上げた項目に加えて、会計監査人非設置法人に対する専門家の活用方法について御議論いただきたいと考えております。

 その次に、(2)控除対象財産に係る算定ルールとか、各種係数の設定の考え方といったことについて御議論をいただきたいと考えております。

 スケジュールでございますが、4にございますとおり、4月下旬から7月にかけて4回程度実施ということで、本日、第1回目ということでございますが、計4回程度、今ほど申し上げましたテーマにつきましてそれぞれ2回ずつ御議論いただいて、結論を得られるところは結論をいただき、引き続き議論をするところは引き続き議論していくということで考えております。

 なお、この会議は、今回と次回、会計監査に係ることということで、通常の取り扱いとして公開で審議をいただきますが、控除対象財産に係る議論につきましては、法人固有のデータ等を取り扱います観点から、非公開で開催させていただくということを予定しておりますので、あらかじめ御承知おきいただければと存じ上げます。

 とりあえず私から趣旨の説明は以上でございます。

 なお、会の持ち方ですが、特段、座長というものは設けませんで、事務局から御説明を申し上げますことについて、それぞれ御意見を頂戴できればと考えております。

 ここまでの点で何か御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、資料2を私ども事務局から御説明申し上げたいと思います。

○内野課長補佐 それでは、資料の御説明をさせていただきたいと思います。福祉基盤課の内野と申します。よろしくお願いいたします。

 まず、資料2を1枚お開きいただきまして、今回3項目御議論いただければと思っております。1番目といたしまして、会計監査人候補者の選び方、2番目、会計監査の実施範囲(証明範囲の設定)、3番目、会計監査の実施内容(重点監査項目の設定)ということで御議論いただければと思います。

 次の1ページ、「会計監査人候補者の選び方」でございます。今回、一定規模以上の社会福祉法人につきましては会計監査人の設置が義務づけられるということになりますが、まず選び方、手続として、ここで図にありますように、6、監査契約を締結するまでにどのような手続が必要になるか、必要とするかということを御議論いただければと思います。

 上のほうに矢印を引っ張ってありますが、1から6までございます。下の青い囲みで1、2と書いてあるのと連動しておりますけれども、会計監査人に係るスケジュールの例として示させていただいております。

 年月の記載につきましては、例示ということで示させていただいております。まず、1の部分ですけれども、社会福祉法人のほうで複数の会計監査人候補者からの提案書、見積書を入手していただくことになるのではないかということ。それから、2として、会計監査人候補者の選定をしていただく。それから、3、予備調査及び改善期間が長目に幅をとらせていただいているということでございます。

 予備調査につきましては、余りこの言葉が知られていないということもあるかと思いますので、解説をさせていただければと思います。4ページの「予備調査について」ということでございますけれども、どのような調査をするのかということでございます。会計監査人候補者は、監査の依頼人である社会福祉法人が監査に協力する体制にあるのかどうか、会計監査に対応可能な内部統制が構築されているのかどうか、あるいは計算書類等が会計基準に準拠して作成されているのかどうかというものを調査する必要があるということでございます。

 具体的な内容といたしましては、下に項目例として挙げさせていただいておりますけれども、1番目から6番目まであるということで、最初に法人の概況の理解。法人の沿革とか業務内容などを確認する。次に理事長と面談をして、ガバナンスの考え方を確認する。それ以降、諸規程の整備状況、過去の計算書類等のレビュー、会計方針選択の妥当性、内部統制の整備状況等を確認していただくということでございます。予備調査は、下の※印のところでございますけれども、そこで洗い出された課題を改善いたしまして、会計監査年度の期首までに監査を受けるために必要な体制を整えていただく必要があるということでございます。場合によっては、法人の監査受け入れ体制の整備状況によっては監査を受けることができない可能性もあるということで、そういうことがないように、ここでは十分な体制準備期間が必要ではないかと考えております。

 資料をお戻りいただきまして1ページをごらんいただければと思います。先ほどの3のところ、予備調査及び改善期間ということで、期間の幅はあると思いますが、一定の期間を持つ必要があるということでございます。その後、4に行きまして、理事会にて会計監査人の選任に係る評議員会の議題を決議していただく。その後、5、定時評議員会にて選任をしていただき、6の監査契約の締結に至るということでございます。会計監査人候補者を選任するまでにこのような手続があるということを踏まえていただきまして、次の2ページに進んでいただければと思います。

 「(2)会計監査人候補者選定について」ということでございます。先ほどのように、複数の会計監査人候補者から提案書、見積書を入手していただいて、下に書いてあるような選定基準の例を参考にして、比較検討の上、会計監査人を選定していただくこととしてはどうかと考えております。

 一方、社会福祉法人の契約行為につきましては、透明性が必要ではないかということもございまして、本来、選定委員会などの場を持っていただいて選定していただくことが望ましいのではないかと考えておりますが、法律が3月31日施行ということで、29年4月以降の施行までに施行の準備期間が余りないということも考慮いたしまして、理事会決議などの弾力的な運用も可能とすることとしてはどうかということでございます。

 下記の選定基準の例は、他法人の例などを参考にして記載されていただいております。選定基準の例としまして、(1)監査実施体制等の評価。この中には1として監査の方針や考え方がどうなのか。あるいは、4のところですが、監査のスケジュールがどうなのかということ。(2)監査費用の評価。監査報酬見積費用総額がどうなのかということ。それから、次のページに行きまして、(3)監査実績等の評価。1のところですけれども、非営利法人、株式会社等も含めて監査実績がどの程度あるのかどうか。(4)品質管理体制の評価。こういう選定基準の例を参考に、比較検討していただいて、会計監査人を選定していただいてはどうかということでございます。

 3ページ下の※印でございますが、上記の選定基準の例は網羅的に例示をさせていただいているということでございまして、各項目につきましては各法人に御判断いただくこととしてはどうかと考えております。

 それから、大きい項目の2番目になります。5ページをお開きいただければと思います。「2.会計監査の実施は範囲(証明範囲の設定)」でございますけれども、証明範囲を設定する必要があるのではないかということで御議論いただければと思います。5ページには、改正社会福祉法の関係条文を記載させていただいております。

 6ページをごらんいただければと思います。こちらにつきましては、現行会計基準に基づきまして、社会福祉法人が作成している計算書類ということでございますが、それが橙色の部分になります。法人全体を事業区分、拠点区分に分類をして、それぞれで計算書類を作成している。さらに、拠点区分ごとにサービス区分の内訳、附属明細書を作成しているということでございます。

 参考に青い網かけをしているところがございます。公益財団法人・社団法人、法人全体として、正味財産増減計算書、以降、この範囲の計算書類を作成しているということでございます。社会福祉法人につきましてはそれに該当する法人全体の部分、法人単位の資金収支計算書等々がございます。その下に事業区分ということで、さらに作成をしないといけない。一番右のほうを見ていただきますと、法人全体が第1様式、事業区分については第2様式というように、さらに拠点区分ということで、拠点区分資金収支計算書というものが第4様式になります。

 拠点区分というのは、例えば特別養護老人ホームを運営していて、その中でデイサービス、ショートステイなどを運営されているときには、この中の拠点区分ということで作成していただくということで、第4様式が定められているということでございます。

 その下にさらに附属明細書でございますけれども、サービス区分ごと、その拠点区分の内訳としてのサービス区分ということで、先ほどの例で申し上げますと、特養の部分、あるいはデイサービスの部分、ショートステイの部分をそれぞれサービス区分ごとに作成をするというような構造になっております。このように、社会福祉法人はかなり多くの計算書類を作成しているということでございまして、この範囲をどう考えるかということでございます。

 7ページをごらんいただければと思います。「(2)監査証明範囲に関する考え方」について整理をさせていただいております。大きく右と左に分けておりますが、左のほうは第1様式まで、法人全体部分のみ証明範囲にしてはどうかという整理です。右のほうに行きますと、第1様式~第4様式、これは拠点区分までの整理としてはどうかというようなことを整理しているものでございます。ここで我々のほうで決めているというわけではなくて、一番少ない部分、多くなる部分ということで整理をさせていただいて、こういう考え方の整理があるというところで御議論いただきたいと思います。

 一番上の会計基準との関係で申し上げますと、まず第1様式までのところは、社会福祉法人会計基準により法人が作成すべき計算書類の一部が監査証明範囲に含まれないというようなことになるのではないかということでございます。ただし、括弧書きのところですが、法人全体の計算書類は拠点区分ごとの計算書類の積み上げになっているということでございますので、必要に応じて拠点区分ごとの計算書類についても当然確認の対象になってくるということでございます。

 一方、第1様式~第4様式は、社会福祉法人が作成すべき計算書類と監査の証明範囲が一致するということでございます。2行目に行きまして、附属明細書の部分で考えてみますと、法人全体の附属明細書のみが監査証明の対象となり、1様式までとすると監査工数が限定的になるということでございます。一方、第1様式~第4様式を証明範囲にしますと、法人全体の附属明細書だけでなく、拠点区分ごとの附属明細書も監査証明の対象となることから、監査工数が多くなるのではないかということでございます。

 次に、その下の他制度との比較でございますが、先ほど公益財団・社団法人の例もありましたように、他法人制度との監査証明範囲の比較においては、同程度の分量になるのではないかと考えております。

 一方、右側に行きますと、事業区分別、拠点区分別、サービス区分別の計算書類等が監査証明の対象になる点において、他法人制度と比較をすると監査証明の範囲がかなり広くなるのではないかということでございます。

 それから、一番下の法人負担の部分でございますが、1様式までといたしますと、第1様式から第4様式まで監査証明範囲にする場合と比較して、法人側の負担は限定的となるのではないかということです。右側の第1様式~第4様式のところでございますが、こちらまで範囲を広げますと、法人内での収入(収益)、支出(費用)の配分方法まで監査証明範囲が及ぶということになりますので、監査を受ける側の法人側の負担が大きくなるのではないかということでございます。

 このような整理をさせていただいた上で、次の8ページをごらんいただければと思います。(3)として「計算書類及び附属明細書について、どこまで監査証明対象とするか」ということでございますが、上半分の青書きしているところ、これを分けるとすれば、1の法人全体、2の事業区分別、3の拠点区分別、これを全体を見るのか、その一部を見るのかというようなことで、どこかでラインを引く必要があるのかどうかということでございます。

 下半分の橙色の枠囲みのところでございますが、これは附属明細書になります。1の法人全体の下に矢印が出ていますが、それに関係する法人全体として作成しなければならない附属明細書として、一番上から借入金明細書、寄附金収益明細書、以下ありますが、法人全体を監査証明範囲とする場合には、附属明細書についてもこの範囲が証明範囲になる。一方で3の拠点区分別のほうを監査証明範囲にするということになりますと、それぞれ一番上から基本財産及びその他の固定資産の明細書、これは拠点区分単位で作成する附属明細書ということになりますので、拠点区分別まで証明範囲とするとなると、以降、授産事業費用明細書までも含めて証明範囲にすることになるということでございます。このような状況を踏まえまして、監査証明対象をどのように設定するかということを御議論いただければと思います。

 それから、9ページ、「3.会計監査の実施内容(重点監査項目の設定)」でございまして、どのような視点で監査を実施していくことがいいのかということの御議論をしていただければと思います。

 まず「(1)内部統制」に行く前に、次のページとその次のページをお開きいただければと思います。10ページ、11ページになります。「(2)社会福祉法人における不適正事例(新聞報道より)」でございますけれども、昨今の新聞報道された不適正の事案でございますけれども、幾つか整理をして並べさせていただいております。

 例えば一番左、関係者への利益供与というものがございます。その中に4つほど事例が入っておりますけれども、一番上、概要のところのすぐ下でございますけれども、例えば前常務理事とつき合いのある会社と保守や清掃業務を一括契約、高額契約にもかかわらず入札未実施ということ。その下、前理事長が関係する給食会社が給食代金を水増し請求、高額契約にもかかわらず入札未実施ということ。その下、理事長の長男と次男が役員をしている食品会社から給食や食材を購入しており、購入代金は通常価格の1015%上乗せと。その下、前理事長や親族の土地を法人に購入させながら、所有者の名義を変えず、法人から賃借料として毎年800万円程度支払わせるということ。

 これらについて整理して考えますと、その右、代表的なリスクの例というものが浮かび上がってくるのではないかということです。例えば、理事会における十分な議論がなされていないのではないか。その次、適切な経営理念、あるいは倫理規程が浸透していない。職務分掌がないということ。それに対応する内部統制の例としては、これは全社的な統制が機能していないのではないかということが言えるかと思います。

 代表的なリスクの例の続きですが、不適切に高額な購買が行われる。不適切な権限に基づいて購買が行われる。購入費の水増し請求をさせて裏金がつくられているということ。これにつきましては、対応する内部統制の例といたしまして、購買プロセスのチェックが不十分ではないかということが推測されるのではないかということでございます。

 もう少し事例を紹介させていただきますと、その前にその下の代表的なリスクの例ということで、毎年800万の賃借料のところでございますけれども、これについては理事会での議論がない、職務分掌がない、不適切な権限に基づいて固定資産取得が行われるリスクがあるということで、対応する内部統制の例としては全社的な統制、あるいは固定資産管理プロセスが十分機能していないのではないかというようなことが言えると思います。

 それ以降、理事長等の法人の財産の私物化ですとか、あるいは寄附金が使途不明ということで、資金管理のプロセスなどもチェックが不十分な部分があるのではないかというような内部統制の例について整理をさせていただいております。

 このような事例を踏まえまして、9ページにお戻りいただければと思います。「(1)内部統制について」ということで、会計監査人につきましては一般に公正妥当と認められる監査の基準に従って、計算書類等を対象として会計監査を実施していただくということです。ただし、会計監査を行うに当たりましては、法人における業務を管理運営するための法人の内部統制の仕組み(以下、「内部統制」という)の存在を前提として実施されるものではないかということでございます。したがいまして、会計監査の実施に当たりましては、計算書類等の作成の前提となる内部統制の整備、あるいは運用状況についても検討を行うこととしてはどうかと考えております。これらを行うことによって、経営組織のガバナンスの強化にも資するものではないかと考えております。

 左下の内部統制の三角の図を見ていただきますと、一番下に「内部環境・外部環境」とあります。その上に「全社的な内部統制」。先ほどの事例でも全社的な内部統制が十分機能していないのではないかということでございましたけれども、ここでは全社的統制、IT全般統制、決算・財務報告プロセスという全社的な内部統制の分類がありますけれども、特に全社的な統制の部分には注力する必要が、昨今の事例を踏まえるとあるのではないかということ。それから、その上、「業務にかかる内部統制」ということでございますけれども、先ほどの御紹介した事例を踏まえますと、例えばここでは右のほうに購買プロセス、在庫管理プロセス、固定資産管理プロセス、以降ありますけれども、先ほどの事例を踏まえると、例えば購買のプロセス、固定資産の管理プロセス、資金管理のプロセスというものが、昨今の事例では特に注意して見る必要があるのではないかと考えられるのではないかということでございます。ここにつきましても御議論いただければと思います。

 説明は以上になります。

○田中室長 以上、一括して資料の御説明をさせていただきました。

 あと残り90分程度ございますので、それぞれ目安で30分程度ずつ各項目について御議論いただければと考えております。

 進め方ですが、各項目について、とりあえず大変恐縮ですが、構成員名簿の順、五十音順に御発言いただいて、またその御意見によって少し議論を進めさせていただければと思います。

 まず、会計監査人候補者のやり方につきまして、柴構成員からお願いいたします。

○柴構成員 会計士協会の常務理事の柴でございます。

 資料の1ページ目でございますけれども、大体一般の会計監査人の選定プロセスとしてはこういった流れになっているのかなということで、そういった観点からは特に会計士協会としては違和感は持っていないという状況でございます。ただ、残念ながら準備の期間が短いかなというのは感じるところではありますが、法案が通った関係上、こういうちょっと急ぎのタイミングで進めていかなければいけないのかなとは思っています。

 それから、補足ですけれども、予備調査という言葉がありますが、これは公認会計士や監査法人が会計監査業務を受け入れるに当たっては、監査基準により、受け入れのリスクを評価しなければならないことになっており、これに基づきますと必ずこれはやらなければならないということになっております。

 それと、ここで出た問題点を把握して、これであれば改善いただければ監査を受けられますよねというような評価ができれば、その後の監査契約に向けて法人と協力して進めていくということになると思っています。

 それから、改善期間でございます。ちょっと短いのですけれども、組織とか仕組みとか、いろいろと改善することがあれば、会計士が指導して、これを改善していただくというような期間だと御理解いただければと思いますが、私の経験で言いますと、理事長の方には当然しっかり理解していただかなければいけないのですが、キーとなるのが施設長の方々でありまして、そういった方々に御理解いただくということも重要な作業だと私は認識しております。この改善期間の間にそういった施設長の方を集めて、いろいろとお話をするようなことも実務的にはあるのかなと思っております。

 それと、選定基準の例でございますが、こちらは独立行政法人が会計監査人を選定する上で、大体こういった内容のものをお使いになっているということで、そういったものの例を参考になさっているということでございますので、これについては特に会計士協会としては違和感があるという話ではございません。

 私のほうは以上です。

○田中室長 ありがとうございました。

 引き続き、千葉構成員からお願いします。

○千葉構成員 まず、選び方のところですが、資料の1ページの絵が出ておりまして、幾つか気になるところはあるのですけれども、特にこの流れでいくと、いわゆる正式な監査契約が29年6~7月ぐらいということになりますが、これは逆に実際にやられている柴先生にお伺いできたらと思うのですけれども、その前の予備調査というのは別途契約が要るのかどうかということがあって、それは別の契約に基づいてここをまずやっておいて、それでだめだったらだめ、いいならいいという形でいくのかどうかというのがわからなかったというのが一つです。

 もう一つは、同じく準備期間が、これは柴先生のほうも御指摘されましたけれども、非常に短いなという印象を受けています。私もつまびらかには知らないのですけれども、先行する事例等で、かなり過去ですが、証取監査を導入されたころとか、または大学法人の監査が導入されたときなどは、この準備期間というのが1年を超える期間でたしか設定されていたように理解していまして、特に会社の場合だと、そういう会計の統制環境というのが社会福祉法人よりは一般的には十分できているのではないかという中でもそれぐらい準備をとったのに、社会福祉法人の場合、これでいくと半年になってしまって、法律上、もうここは決まったからしようがないというのはあるのですが、せめて実施について何か政令なり省令の中で手当てができないものなのかというのは気になるところではございます。

 それから、これは監査を依頼する社会福祉法人の側に特に認識しておいていただきたいなと思う点で、別にここの資料には書いていないのですが、会計監査人になるべき者という方は、監査基準上、独立性を非常に要求されています。よく社会福祉法人の場合だと、会計士が監事に就任されているケースがあるのですが、少なくとも公認会計士法の規定に基づくと、過去1年以内、役員等になった方というのはたしか監査できないはずなので、そういう独立性というのは、当然これは会計士の方は御存じのはずなのですけれども、依頼する社会福祉法人の側にもそこの事情というのは周知しておく必要があるのではないかという気がしています。

 あと、選定基準、2ページ以下のところなのですが、これは確かにこういうもので一つ一つ見るともっともなのですが、これは果たして法人がこれを見て評価できるのだろうか。例えば(1)の1の当該法人に対する監査の基本方針とか考え方がうちに合っているか合っていないかとか、そういったことは、これをどう評価していいのかというのがわからない項目が幾つか入っているのではなかろうかという気がしていたので、そこら辺の実行可能性というところでちょっと疑問を感じたというところでございます。

 以上です。

○田中室長 どうもありがとうございました。

 事務局からお答えすべきものもあろうかと思いますが、とりあえず柴構成員からお答えできる範囲でお答えいただければと思います。

○柴構成員 最初に、予備調査、あるいは改善期間の契約は別かどうかいうことですけれども、通常は別に行っているのかなと思っています。予備調査の場合、1週間弱程度で終わりますので、その程度のコスト負担でお願いできるのかなと。それから、改善期間につきましては、その延長上、特に手間がかからないようであれば、お電話でお気軽に相談いただければ対応できる程度であれば別に契約は結びませんが、研修をやってくれとか、ここをこう直しましょうというような話になったときには、それなりの工数がかかりますので、それは別途契約させていただくということが一つでございます。

 会計士と監事の関係につきましては、千葉構成員のおっしゃるとおりでございまして、会計士協会としてもここら辺は問題があるということで、4月に「社会福祉法人の会計監査人就任に当たっての独立性に関する留意事項」という審理通達を出しております。ですので、会計士のほうには情報は行っているのかなという状況でございます。

 選定基準でございますが、これは私のほうが答えるのかどうか、ちょっと別の問題なのかもしれないのですけれども、一言だけ言うと、今、通常の会社の監査役さんが会計士を評価して、契約を継続するかしないかを評価しなければいけないという時代になっていまして、今まで会計監査人とおつき合いをいただいている監査役様たちも、なかなかこの点は御苦労なさっているというのが多分現状だと思います。ひとえに会計士協会がきちんと我々の仕事をアピールしていないということも原因かと思いますが、ここら辺はなかなか御理解いただくまでには実務の積み重ねが相当必要なのかなという感想は持っています。

 以上でございます。

○千葉構成員 そういう意味では、先ほどの1ページのタイムスケジュールの中で、予備調査に関する契約というのを明示しておいたほうが、特に法人に示す際にいいのかなという気がしております。

 以上です。

○田中室長 ありがとうございました。

 残りを事務局から少しお答えさせていただきたいと思います。1点目はよろしいかと思いますが、2点目の準備期間の問題でございます。これは繰り返しになりますが、何せ法律が通ったのが3月31日、施行についても29年4月、これは変えられないところでございます。政省令の手当てということで千葉構成員はおっしゃられました。基本的には、会計監査を導入するということについてはもう決まっていることでございますが、御案内のとおり、政令でまた対象法人を決めるというときに、やはり実行可能性というか、円滑に実施できるというところをきちっと考えてその基準を定めるということになろうと思いますので、そこで少し工夫をさせていただければと考えております。

 選定基準の話は、柴構成員からも少しお話しいただきましたけれども、これはあくまでも独法のものでございますので、社会福祉法人にぴったり合うのかどうかというのはこれから少し工夫をしたいと思いますし、当然、社会福祉法人の方にも御理解いただくように、機会を捉えて周知のようなものはしていきたいと考えております。

 以上でございます。

 引き続き、松原構成員、お願いできますでしょうか。

○松原構成員 スケジュール案を見ますと、7月、見積書の入手で、8月、会計監査人候補者の選定、これはあくまで例示ということではございますが、大体これぐらいのスピードで行かないと間に合わないということだと理解しますが、前回の福祉部会に出席させていただいて、そのときにも思ったのですけれども、会計監査人の設置を義務づける法人の事業規模をどうするかというのはもう決定したのですか。

○田中室長 まだ決定はしていません。

○松原構成員 そのとき感じたのは、例えば収益はどれぐらいの規模のところが負担できますかというお話をみんなで検討ということだったのですけれども。営利企業であれば、まさにいろいろな複雑な取引をして、海外取引もあって、為替取引もあってという非常に複雑なことに対して、社会福祉法人というのは非常にシンプルな事業をしておりまして、そういうところに対して営利企業と全く同じ監査項目を当てはめていくのか、もっと重点的に絞っていけるのか、それによって費用は同じ事業規模でも営利組織よりもずっと社会福祉法人は安く済むのかどうかですね。費用がどれぐらいなのか、監査の費用が幾らなのかわからずして、社会福祉法人が負担できるかどうかがわかりませんので、そこがわからないと、結局どこを対象にできるのかというのがわからないのではないかということを懸念しております。

 規模によっては1,000万だ、億だといううわさまで出ておりまして、一般産業と違って、社会福祉法人が行っている事業のほとんどは公的費用で、税か保険料で賄われておりますので、項目をどこまで絞っていけるのか、そういうことがもう決まっていてできないのであれば、費用の明確化というのがまず求められる。その費用が全くわからずして、対象だけ決めてこのスケジュールと言われても、ちょっと法人も厳しいかなと。また、お金の使い方として国民への説明責任という意味でも重要かなと考えております。

○岩井課長 今、松原先生からいただいたお話、いろいろと御心配はあると思うのですが、前回の福祉部会におきましても、当然そういう心配の声もあったわけですが、一方、会計監査人というものは営利企業であるのか、いわゆる公益法人であるかによって、当然会計制度が違うところもありますし、重点は違うということで、そこをまさに今回議論していただきたいと思っております。

 一方で、その費用のことは置いておいたとして、会計監査人というものは、先だっての福祉部会において部会長からもお話がございましたが、自分たちがどういうことをしているかの説明責任を果たすという意味で、監査というものの必要性が議論され、法律でも制定されておりますので、そこは必要性とか目的が大きく違うものではないだろうと。ガバナンスをちゃんとするという意味でも必要なのではないかという議論になったかと考えております。そういう意味では、目的とか必要性については、またここで一から議論する話ではないのかなと思います。

 一方、本日もお話しいただきますけれども、監査項目とかそういうところについて、あるいは重点のところをどこにするかという議論はしていただければなと思っております。

○松原構成員 舌足らずだったかもしれません。目的や必要性について、私は全く異論はございません。大賛成でございます。ただ、例えば営利で売り上げの大体何%ぐらいだよと言われているものをそのまま準用するとか、そういうことには適さない事業ではないかなということに留意して頂きたいということでございます。

○柴構成員 監査報酬の話でございますが、我々の報酬は基本的には監査にかけた時間に、各会員が持っていると思うのですけれども、標準的な単価を掛けて、それが監査報酬として積み上がっていくということでございます。おっしゃるとおり、事業が複雑な会社につきましては、同じ売上高でも監査の工数がふえますので、その分監査報酬は高くなります。

 一方、単純な事業であっても、複数の拠点があって、それぞれがてんでばらばらな管理をしている場合には、それぞれの拠点を見に行かなければいけないということになります。統一的な管理をしていただければ、幾つか見に行けばいいということで、これは内部統制の話ですけれども、内部統制の整備状況によって我々は工数を減らすことができるということでございまして、一般に売上高と監査報酬の比較表というようなものが出ていますけれども、それによって監査報酬を決定しているということではないのかなと思っております。

○松原構成員 売上高に比例してやっているわけではないというのは十分理解しているのですけれども、要はどれぐらいかかるのか、それは社福の内部統制によって変わるということなのですけれども、例えば簡略化できればこれぐらいだし、内部統制できていないのだったら最低でもこれぐらいかかるというおおまかな費用の明示がないと、なかなか厳しいかなと思います。

○岩井課長 先生の問題意識もよくわかるのですけれども、今回の会議の議事進行上は、まずは監査項目などを整理していただいて、私の理解で言うと、予備調査などが行われる中で法人のガバナンスが改善されて、今、柴先生からもあったのですが、内部統制ができてある程度まとめてやっていけば、かなり効率的な監査ができるのではないかなと思っております。そういうことも含めて、監査項目とか重点というところについては、そういう観点からも議論いただきたいと思っております。

○田中室長 また、重点監査項目、監査範囲については、後ほど時間がありますので、とりあえず会計監査人候補者の選び方につきまして、山田構成員からお願いします。

○山田構成員 まず、1ページの会計監査人候補者の選び方ですけれども、これは制度上の決められた日程の中でということで、こういう案が出ているのもやむを得ないかなと思って見ておりました。ただ、2ページからの候補者選定のところですが、千葉構成員と松原構成員からも御意見が出ておりましたけれども、社会福祉法人の監査をしていただくということについて、一般の営利法人との違いも含めて少し御意見がありましたが、社会福祉法人も含めて、こういうかなり大きな事業、しかも公益的な、あるいは非営利の事業を経営という形で行うことが始まってまだ日が浅いと思っています。

2000年ごろまでは、どちらかといえば行政の措置、指示でやっていた事業で、2000年以降も保険料、公費で行っているのでけれども、2000年ごろから、15年ほど前から経営をしなければいけなくなってきたという、経営の歴史が非常に浅い。

 それから、10億円以上というのがまだ決定していないということですが、多分20億円以上のところは全法人の2%ぐらいと聞いておりますので、仮に10億円以上が監査要件とすますと、監査を受ける法人の七、八割が10億円台かなと思います。そうなると、規模と内部統制、本部機能との関係というのは非常に未成熟なところが多いのではないかなというのが2点目。

 ですから、1点目に申し上げた社会福祉法人がいわゆる経営という性格を持ち始めて日が浅いこと、そして10億円以上というのは一定の規模とはいえ、20億に満たないところが多くを占めているのではないかと思われること、いわゆる本部機能、統制機能に未成熟な点があるのではないかということを考えますと、松原構成員がおっしゃっていましたが、これはあくまで例ということですけれども、その辺を勘案して監査対象法人規模を設定すればどうかと思います。

それから、2ページ、3ページのあたり、重点的な候補者選定基準、特に会計の御専門の方から見て、社会福祉法人に非常に通暁しておられる方もおられますが、そうでない方も多いと思われますので、特に2ページの(1)の7の監査のサポート体制とか、こういう法人の実情と監査人をつなぐような役割、こういうところかかなり大きなポイントになってくるのではないかと思います。

 4ページの予備調査も、2点目と関係があるのですけれども、これも松原構成員がおっしゃっていた内部統制の機能が充実しているか、していないかによって、かなり重点項目というか、ポイントが変わってくると思われます。

 今後、この制度が一定定着していって形が見えてきたら、またいろいろな課題も解決されると思いますが、当面のところでは今申し上げたようなところが大変気になるところです。

 特に社会福祉法人の場合は、公費を使って、社会福祉法の第2条の限定列挙された社会福祉事業を行うために設立されて、かなり厳しい監査というのですか、定期的な監査を受けながら統制された中で、行政的な規制の中で運営しています。ですから、いわば今回の一定の規模以上のところについて、会計監査人というのは一応制度上やむを得ないと思いつつ、社会福祉サービスを提供する経営、しかも社会福祉法人のように公的な仕組みの中で監査を受けながら事業を実施している経営体、こういうことに対しては従来の監査の仕組みの中でもう少し継続して知見を蓄積してからという気もしますが、こういうことはもう決まった以上、やむを得ないと思います。ただ、今申し上げたようなことが現場としては大変気になる点だと思います。

○田中室長 ありがとうございました。

 今、山田構成員からお話がありましたとおり、基準が決まっていないところもあって、それと並行しながら御議論いただくということで、日程の関係上、御理解いただくとして、またいろいろな御指摘をいただきましたので、基本的な流れについては特に御意見はなかったかと理解しておりますが、個別の2ページの選定基準の例とか、また少し工夫できるところがあれば工夫をしたいと考えております。

 ほかに、この点に関して何かございますでしょうか。

○千葉構成員 これはこの項目で言うべきことかどうかわからないのですけれども、これは社会福祉法人さんの会計監査人という形になるので、先ほども何人かの構成員の方がおっしゃっていたように、企業とは一味違うとか、統制環境も随分違っていたり、制度的な規制環境も違っていたりということもあるので、その固有の事情というのを当然会計士の方は監査に入る前に準備調査をされると思うのですが、例えば運営費の使途制限とか弾力運用とか、かなりマニアックな規制がかかっているところもあって、それをしっかり熟知して、そこに不正な流用がなかったかとか見きわめなければいけない。そういう資質のある公認会計士の方は、まだまだ世の中に十分いらっしゃらないのではないかなと。これは失礼な言い方で、会計士協会さんに失礼なのですが、何となくそういう感覚を受けるのです。

 そういうところで言うと、当然こういう仕組みを社会制度として今後定着させていくということはとても重要だと思うので、そういう方向の社会基盤を受ける側、受けるというのは監査を実施する側、監査法人さんなり会計監査人のこういうことができる資質というか、業務能力というか、そういう形の確保も図っていく必要があるのではないかと思っています。

 以上です。

○柴構成員 ありがとうございます。

 確かに社会福祉法人につきましては、今まで法定監査ということはございませんでしたで、そこに造詣の深い会計士というのはそう多くいるという状況ではございません。この状況を受けて、会計士協会といたしましては、名前が紛らわしいのですけれども、公会計協議会という中に社会保障部会というネットワークをつくって、そこに会員を募って、情報提供とか研修の実施等、対応をするということで今やっております。今のところ1,000人程度の加入者がおりますので、この辺の教育等を充実していけば、期待に応えられるような体制づくりも可能なのかなということで進めているということで御理解いただければと思います。

○田中室長 どうもありがとうございました。

 それでは、また何かございましたら追って御意見をいただくとして、引き続き「2.会計監査の実施範囲」について、少し御意見を頂戴できればと考えております。また繰り返しで恐縮ですけれども、柴構成員のほうから御意見をお願いできますでしょうか。

○柴構成員 先ほど来、監査コストの問題も議論されておりますけれども、我々の会計監査というのは基本的には法人単位の決算書に対して意見を表明するというスタンスになっておりまして、そういったことから考えても、法人全体の財務諸表を監査の証明の範囲にしていただくということが会計士にとっては助かるのかなと理解しております。

 ただ、ここに書いてありますように、法人全体の計算書類は拠点別の積み上げでございまして、拠点別は個々の取引を仕訳を切って集計していくというプロセスがきちんとできていなければ、法人全体の決算書に対する意見も当然言えませんので、そういったところは内部統制という観点でテストもして見ていくということでございますので、そういったことで我々は第1様式であればなと思っているところでございます。

○千葉構成員 証明範囲の話ですが、こちらに御説明があったように、特に計算書類の範囲をどういうふうにするかというところの御説明かと思うのですが、その前に一つそもそも論というところで一応問題提起しておきたいなと思います。これは先ほど松原構成員の話もあったのですが、要はこういう会計監査を行うということが何かというと、その本質というのが、財務諸表、計算書類における虚偽報告のリスクをできるだけ低減させようという社会制度だと私は認識しています。一般にもそういう認識をされていると思うのですが、その虚偽報告というのは大きく2つの構成要素からなっているのかなと思います。

 1つは誤謬による虚偽報告、もう一つが不正による虚偽報告。これは一般に監査のテキストなんかにも必ず書いてある2つの分類なのですが、そういうことを踏まえて範囲を考えるという一つの考え方があるのではないかなという気がします。

 特にどれぐらい細かくとか、深くとか、きっちりした監査、または虚偽報告リスクを避けるような取り組みをさせていくかということは、結局、監査というのも一つの管理機関であるとするのであれば、そこにかかるコストとそれによって得られる便益のバランスをよく考えておく必要があるのではないか。

 これが例になるかどうかわからないのですが、いわゆる米国のSOX法が導入されたときでも、過度な財務諸表の信頼性を担保しようとしたあまり、現場の負担というのを招いてしまって、例えば収益性とか成長性を阻害してしまったという苦い歴史的事実もあるわけでありまして、やはりそこはどちらかに偏り過ぎるということは適切ではないだろうという気がします。そういう意味では、監査によって達成される、または得られる便益というものを頭に置きながら、そこにかけるコストを考えていくというのも一つの考え方ではないかと思います。

 逆にそれをもう一歩進めて考えると、虚偽報告によって生じる社会的、経済的損失というのは何なのだろうと。例えば会社の場合であれば、株主の配当原資に影響したり、そもそもそういう不適正な会計をやっているということで社会的な評価を下げたりして、企業価値がそもそも落ちてしまうということもあって、投資家等に対して甚大なる損失を与えるわけですね。また、それが大企業であれば、証券市場そのものの秩序を揺るがしかねない事態を招くという恐ろしさもあるわけです。しからば、翻って社会福祉法人の場合、そういった損失とか、社会的影響、経済的影響というのがどの程度あるのだろうか。もっと言えば、社会福祉法人はもともと財団的性格もあるし、非営利だということもあるので、事業経営の成績というのを分配するわけでも何でもない。そこにおいて虚偽というのはあるとすれば、一つは誤謬なのだろうし、先ほど言ったような話ですね。もう一つは、この事例にも、ちょっと後ろのほうに入ってしまいますが、着服等の不正によるものもあるのかなと思いますので、要はそういうあたりをどうしていくのか。これは3番目の話にかかるのですけれども、そういうものを視野に置きながら、何を証明範囲にしていくのかということを考えていく必要があるのかなと思います。

 いただいた計算書類の分類の体系に基づいてどこまでやるのというところで言うと、これは現実的に言えば、多分第1様式のあたりのところが落ちどころなのかなという、結論が先走ってしまってはいけないのでしょうけれども、現実的だろうと思うのです。ただ、先ほど柴構成員もおっしゃられたように、社会福祉法人会計の場合、基本的には拠点区分の積み上げということになりますから、結局、全体を評価、証明しようとすれば、拠点の幾つか、または監査リスクを低減させるのに十分な数の拠点は少なくも対象にせざるを得なくなるということもあるので、拠点全部をしっかり調査するよりは楽になるとは言え、やはり一定の第4様式に対する拠点の監査というのが入らざるを得ないだろうということは考えられます。

 特に、今回の特定社会福祉法人という規模のものを考えたときには、小さいものもあるのでしょうけれども、一般的には多分拠点数にしても2桁以上行ってしまうようなケースというのもあると思うのです。

 そうやって考えていくと、拠点のベースで全部を監査対象にするというのは、これはもう膨大なコストがかかって、先ほどのコストベネフィットのバランスを考えたときに余り現実的ではないし、そこまでコストをかける意味があるのだろうかというところに至ってしまうのかなと思っております。全体的にはそんなイメージです。

 質問があるのですが、7ページの「監査証明範囲に関する考え方」という表があるのですが、これの他制度比較というところで、右側の欄で「事業区分別、拠点別、サービス区分別の計算書類等が監査証明の対象になる点において」というのは、サービス区分まで監査証明の対象になるのでしたか。拠点区分までではないですかというのが質問です。もう一つは、「支出(費用)の配分方法まで監査証明範囲が及ぶことになり」というのが次の欄に書いてありますが、これもどの程度までそういうのが出てくるのか、何を想定しているのかというのが資料の「※」だけ見てもよくわからなかったというところがあります。

 もう一つ、次の8ページのところで、仮に法人全体の計算書類の会計監査ということを考えて、第1様式だけを射程に置くとした場合、当然その中の重要な事項、特に監査リスクを含んでいるような重要事項については当然監査範囲に入れるべきになるのだろうと思うのですが、例えばそれが実際の取引が裏づけられるようなものはいいのですけれども、見積もり計算が入ってくる、例えば引当金とか減価償却等々のものについては、ある意味操作可能性というか、恣意性が挟まりやすいリスクの高い部分になります。

 そういうことで考えると、仮に法人全体の第1様式だけを考えたときでも、その附属明細書で特にリスクの高い引当金明細書あたりは、実は一緒に持っていないと多分監査意見を表明できないいのだろうなという気がしていて、拠点区分にぶら下がっているこの附属明細書はそもそも拠点区分が監査対象ではなくなったところからすごく遠い感じを受けてしまうのですが、実はこういうものも含めて試査しないと多分意見表明ができないのだろうなという気もしていて、そういうところを範囲にするべきものと、そのための証拠を集める範囲というのは全く別物だということを考えておく必要がある。

 そうなると何が起きてくるかというと、法人負担が一定程度そこに伴って生じてくるということもあるので、監査の実施可能性のときに、先ほどコストという話もあったのですが、その対象とする体制づくりの法人側の人的コストとか労力というのも相当程度かかってくる可能性もありますから、ここの範囲は相当慎重に考えておく必要があるのではないかと思います。

 以上です。

○谷川専門官 千葉構成員から御質問のありましたサービス区分別は監査証明の対象になるのですかという件ですけれども、第4様式、拠点区分の計算書類まで監査証明対象に含めますと、拠点区分ごとに作成している附属明細書についても監査証明の対象となりますが、拠点区分ごとの附属明細書にサービス区分別の附属明細書が含まれておりますので、そういった御説明をさせていただいております。

 もう一つ、法人内での支出(費用)の配分方法まで監査証明範囲が及ぶかどうかの件でございますけれども、事業区分、拠点区分、サービス区分と、各区分ごとの計算書類、附属明細書をつくる過程で、共通的な支出(費用)については合理的な配分基準で配分することになっており、通知で配分基準の例をお示しはしているところではございますが、そちらについても合理的な配分基準が選定されているのか、継続的に選定されているのかといったことが監査証明の対象になるということでございます。

○千葉構成員 理解しました。ありがとうございます。

○松原構成員 千葉構成員が、私が申し上げたいことを100%言ってくださったので、特段申し上げることはないのですけれども。費用対効果からいけば、やはり第1様式に対象を絞らざるを得ないと私も認識しております。どんな観点で見る必要があるかというと、私は非営利性が抵触するようなことがあるかないかというところが非常に重要だと考えておりますので、例えば先ほど、今後の話ですけれども、不適正事例でありましたようなことがない、市場価格と比べて飛び抜けて高い価格の取引をしていないとか、そういうところのチェックも場合によっては必要になるだろうと思っております。そういう意味では、先ほど千葉構成員もおっしゃったように、拠点区分の積み上げなのでテストエグザムで見ることは必ず必要だろうと考えております。

○山田構成員 私も松原構成員と一緒で、千葉構成員がおっしゃったことに納得しながら聞いておりました。

 ただ、今回の会計監査人によるいわば監査によって、社会福祉法人に対する社会的な信頼性がこれで担保されていくということが大きな目的だと思うのです。そういう意味では、柴構成員に質問させていただきたいのですけれども、7ページの監査証明範囲、第1様式まで、これが他制度との比較で言えば同等程度ということを書いてありますが、先ほど千葉構成員がおっしゃったように、拠点別のところまで踏み込んでいかないと証明できないような事項も出てくると思われますが、いわば社会福祉法人に対する信頼性というのを担保するのに、この7ページの証明範囲の1号様式まで、私もこの形が現場の負担ということを考えればと思うのですけれども、柴構成員はどうお考えなのかということ。

 もう一点が、やはり現場の負担です。社会福祉法人は多くの事業をやっているといっても、児童、障害、高齢、いずれも拠点ごとはそう大きくはない事業で、しかも松原構成員がおっしゃったようにシンプルです。日常の人材の育成と福祉のサービスの質を丁寧にということを黙々とやっている法人が多分ほとんどでして、とはいえ、社会的な信頼を担保するためにこういうことを制度としては必要ではあると思うのですが、千葉構成員の言い方を借りれば、コストと便益のバランス、要するに過度な担保によって収益性や成長性阻害というふうにおっしゃいましたけれども、そういうことのないようにというのは現場としては十分配慮していただきたいと思います。

 以上です。

○柴構成員 監査証明の範囲の問題と監査の重点項目の問題とが、区分して説明するのが結構難しいのですけれども、決算書は監査証明の対象ですよと。ただ、決算書を積み上げる上で、例えば先ほど千葉構成員がおっしゃっていた引当金については、個々の内容についてまで見に行かなければ全体として合っているよということも言えないので、そして全体として合っていますという意見になるのだということなのです。それとか、固定資産も各施設にあるわけでして、それを法人全体の決算書しか見ないので、施設の固定資産を見ないかというと、そういうことはなくて、それがきちんと帳簿に計上されていて、それが全体として法人全体の決算書につながっているのですよというところを見なければ、当然全体に対する意見も言えないということでございます。

 それと、今、会計監査に対しては不正リスクに対する要請というのが物すごく強くなっておりまして、こういう事例を見れば、そういった御心配は多分社福のほうでもあるのかなと理解しております。会計に直接関係のない不正であっても、経営者がそういったものを放置するような体制であるということであれば、我々としては監査意見が言えないですねというような対応をとらざるを得ないということで、そういったことも決算に関係ないから見ないとか、そういうことではなくて、やはり重点項目としては経営者の方はきちんと経営されていますねというところをまず前提となるような手続も、実際、会計監査では実施するということは御理解いただければと思います。

○田中室長 よろしいですか。何かあれば。ありがとうございました。ほかはよろしいですか。

 ここについては今頂戴しました御意見を整理させていただいて、少し具体的にどこどこにするのかということを私ども事務局で少し検討させていただいて、次回御提示をさせていただきたいと考えております。

 引き続き、議題の3でございます。9ページ、「会計監査の実施内容(重点監査項目の設定)」につきまして、御意見を頂戴できればと考えています。繰り返しで恐縮ですが、最初に柴常務理事からお願いします。

○柴構成員 内部統制についてですが、会計監査上必要ですよという話はここに書いてあるとおりなのですが、やはり我々が一番気にしているのは、「法人全体に影響を及ぼすような基盤となる経営方針や経営判断に関する仕組や体制」ということで、その中でも最も我々が重要視しているのはトップの方の誠実性ということでございます。トップの方が誠実であれば、それに応じてきちんとした仕組みづくりも行うでしょうし、そこに働く方々もそういった影響を受けてくるというふうになりますので、そこをまず一番重要視していきたいということと、ここについては今の監査基準では経営のトップの方と十分にコミュニケーションをとりながら、ディスカッションしながら監査を進めていくということでございますので、我々が一番注目する点はこの点でございます。

 内部統制のほうについては当然見ていきますけれども、ここに挙がっているそれぞれのプロセスについては、事故も起きているということですので、当然見ていくということでございます。

 繰り返しになりますが、内部統制の整備、運用状況がよければ、我々は監査のテストの件数は減るということができますし、逆にこれが整ってなければ、取引全件を見に行かなければいけないというようなことまで起こり得ますので、この辺については我々は十分注視していきたいということと、これによって経営の透明性を高めていくということに資するのかなと理解しております。

○千葉構成員 重点監査のところなのですが、確かに御例示があるようにいろいろな不適正な事例があったということで、一言で言うと、多分これはほとんどが不正による虚偽報告になるのかなと思うのですね。

 そういう意味では、先ほど私が申し上げたように、虚偽報告リスクのうちの不正の部分というのは一つあるのですが、もう一つは誤謬というところもあるのだろうというところがあって、これについては、実は多分皆さん御存じだと思うのですが、日本公認会計士協会さんのほうでも研究報告17号とか19号という形で、企業及び企業環境の理解並びに重要な虚偽表示のリスク評価を社会福祉法人に適用する場合の留意点とか、19号のほうは、財務諸表監査における不正を社会福祉法人に適用する場合の留意点という形で、実際に企業の不正リスクの長年の経験 やノウハウを使って、社会福祉法人はここを重点に見たらいいよというのも示されているので、その辺は当然見ていって、またそこの使えるものは使っていくというのが必要なのかなという気がしています。

 それから、先ほど申し上げたように、虚偽報告リスクの関係の特性で言うと、私は広く一歩引いてみて考えたとき、社会福祉法人の社会的信頼を高めていくという目的を考えたときに、今まではどちらかというと所轄庁による監査・指導というのがそれを担保してきた。もっと言えば、もともと社会福祉法人の実情というか出自が、公の支配に属するものという形の憲法89条の要請にも一つ対応したものだということで言うと、もともとこの制度そのものが公の支配のもとにあったものだった。ただ、ここに来て、利用契約制度等でその態様が少し緩んできている。さらに地方分権などの中で、監査を担う実態である現場の一般市等々との監査体制が少し不十分でないかという指摘も聞いているというところもあるのですが、ただ、今まで私もいろいろ自治体の監査指導担当の部局の方と話をしていると、共通に言えるのは、ここで言う内部統制環境、特に不正を防止するような、またはその不正を発見するような監査・指導というところについては、比較的行政の今までの監査・指導も一定の効果を持っていたと思うのです。

 もっと言えば、先ほど申し上げたように、措置費の資金使途制限とか弾力運用とか、非常に細かい技術的な要件を知らないとできないようなところについては、逆に行政が一番そこの辺は得意にしている監査になっているというところで言うと、ある意味、虚偽と誤謬というところで言うと、虚偽リスクのほうについては、今までもかなり行政庁、所轄庁による監査というのでカバーされていた部分もあったのではなかろうかと思います。

 そういう意味では、社会全体のコストと考えたときに、そこの部分はありながら、なおかつ公認会計士の方もそこまでやるというと、屋上屋を重ねるようなことにもなるのではないのか。そこはそれで行政庁のほうの監査というのは、一つの会計監査人の方が前提とするというか、入手する証拠として統制環境の状況というのを使ってもいいのではないか。

 ただし、その場合に一つ問題になってくるのは、今の監査体制は多分複数年に1回の監査サイクルになっているので、そうすると多分会計士の方はそれでリスクを評価しろといっても無理だよということにもなりますので、ちょっと難しいところはあるわけです。逆に言うと、所轄庁が一番苦手としているのは、財務諸表、複式簿記がわからないとか、発生主義は何だとか、こういう方々がほとんどでありますので、そこはむしろ会計士の方というのは一番得意とされているところだろうと思います。

 そういう意味では、虚偽報告リスクと誤謬報告のリスクというのは、ある程度社会的に分業し合ってやるという方法も一つあるのではないのか。会計監査人の重点項目というのは、どちらかというと誤謬に基づく虚偽報告リスク、誤謬というのも正確に言うと不正なのか誤謬なのかというのは非常にグレーゾーンが大きいですから、不正を働く意図があっても、間違っていましたと言えば済むということもあるので、明確に識別はできないものの、例えば制度要件に合致していないような使途に使うとか、そういうものというのは明らかに客観的に判断できるものでありますから、そういうものについての不正はもう所轄庁の監査のほうにある程度委ねて、統制環境の要素にしてもそういうのを勘案した上でやる。いわゆる社会的に監査というのを、監査機関というのを社会的監査というか、そういう概念があるのかどうかわからないですけれども、そういうふうにして所轄庁と会計監査人の役割を分けていくという考え方も重点化する一つの視点ではなのかなと思います。

 ただし、その場合もあくまで会計士監査というのは会計士の独立性というのが担保されなければいけませんから、そこのところをどう折り合いをつけるのか。行政庁、所轄庁の監査をやっているから、ここは会計士はやらなくていいよ、だから免責されるよというのかどうなのか、どう制度設計をつくり込むのか難しいところはありますが、そういう分け方として法人負担を減らしていくというのも一つの考え方ではないかと思います。

 それから、重点項目の不正の話の関係でちょっと気になったところが1点あって、社会福祉法人の場合によくあるのが、特に入所施設の場合、入所者の金員の預かり、金品の預かりと言ったらいいのでしょうか、いわゆる入所者預かり金とか入所者預かり品というものの管理に結構よく不正が起きたり、流用したり、着服したりということも起きていて、これは実は今財務諸表上はオフバランスになっているはずなのですね。そこのリスクというのはどう考えていくのか。それを会計監査人として意見表明の対象の中に含めるのかどうかというのを考えておくべきかと思います。

 以上です。

○田中室長 ありがとうございました。

 所轄庁の話がございまして、確かに今回、法人さんの自律的、自主的な統制ということで会計監査人制度を導入するということですが、一方で、御指摘があった所轄庁の監査と実態上は重複するということになります。

 所轄庁の監査は基本的には法令適合性を確認するということですし、会計監査人さんの監査というのは、こちらはある意味では内部統制を含めた監査ということで、どこまでが重複してどこまでが重複しないのかということの整理も必要だと思いますし、観点は多少違ったとして、会計監査人の監査というのはいわゆる内部統制がきちっとできているかどうかということ、先ほど柴構成員からお話をいただきましたけれども、トップの方が誠実かどうかということがございましたが、そうしたことで内部統制が確立されていくということが確認されれば、法令適合性というものもきちっとされているということはおのずと推認されるということもあろうかと思います。

 ですから、両方、会計監査人もやり、所轄庁もやりということを、今のままの形でやるのがいいのかどうかということについて、法人負担との関係から、私どももう少し内容を整理した上で、あり方については検討したいと考えております。

 松原構成員、お願いします。

○松原構成員 社会福祉法人が公の支配による組織であるということ、そして主な事業が措置事業であったり、または介護保険とかにしても非常に規制の厳しい事業ですよね。人員配置とか設備基準、いろいろ厳しい規制下で行われる事業を主な事業としている組織であること、営利企業のように過剰に利益を見せるメリットはないし、または課税されたくなくて利益を少なく見せようという要因も誘因もない組織であるということを考慮すると、社会福祉法人の非営利性が担保されているのか否かに重点項目を絞り込むことが必要かと考えます。本来の費用が親族との取引で、市場価格よりも高い価格の取引をしてしまっているとか、または理事長個人使用の車を法人で負担しているとか、要は本来は社会福祉法人で出た利益は社会保障事業にしか投下できないはずなのに、それが私的なポケットに入っているようなことがないねと、そこの確認を重点的にみる。この絞り込みによって、繰り返しますが、なるべく安い費用で監査していただきたいと思っております。

○山田構成員 先ほど千葉構成員がおっしゃったように、行政の監査というのは不正を発見するのにふさわしい内容というか、行政監査、所轄庁の監査でかなりそういうことというのはされるような気がしています。我々監査を受ける立場からすれば、この9ページに書いてあるような、購買プロセスも含めまして、入札とか、経理規程その他で厳しく統制されていまして、だから日常に関しては行政監査でかなりそのあたりはチェックされると思っています。ですから、やはり役割分担のところというのは大きなポイントかなと思います。

 それと、行政、所轄庁の監査は終日4人、5人でお越しになって、担当が分かれて、ポイントをかなり的確にごらんになります。そうなると、この9ページのさまざまなプロセスについては行政監査でチェックされますが、ここの不正事案にあるような結果しての取引が、松原構成員もおっしゃったような、非営利法人としてどうかと思われるような、まれの例だと思うのですけれども、こういうところまではなかなかチェックしにくい可能性はあると思っています。

 そういう意味では、今回の会計監査人による監査というのは、例えば現預金の出納の管理の部分、そしてさまざまな日常発生する取引で帳票書類に基づいて支払いをするという、いわば請求部分に対する支払い、その請求対象者の適切さ、大規模な修繕、高額な物品を購入するとき、これも行政監査でかなり厳しいチェックをされますが、結果としてその取引内容を踏み込んで、不適切な処理がないかどうか、こういうポイントについて、会計監査でも、屋上屋となるかもしれませんが、私はしっかりと見ることによって非営利性に対してさらに信頼感を強めるとは思います。

 いずれにしましても、先ほど申し上げたように、10億円規模の法人というのは、措置時代から少し事業展開した程度でも10億超える規模になりますので、しかも先ほども同じことを言いましたが、日常の福祉サービスの提供と人材の育成などにかなり労力を費やしている実態があります。いわば事務・管理機能の課題から生じる不正等、こういうことに対してしっかりと内部統制が効いているかどうかということが重要ではないわけではありませんので、これは大変大事なのですけれども、言いたいことは、皆さんもおっしゃっている、負担、費用、こういうものを最小限にしながら、今回の制度の有効性が担保される、この辺に十分留意していただきたいと思います。

 以上です。

○岩井課長 私は意見を言う立場ではないと思うのですが、今回の法改正を初めからずっと見ていた立場で、原点を申し上げたいのですが、今回の会計監査人の導入というのはどういうことかというと、不適正事例というものに対する世間の要望もあるわけですが、法案の資料を見ていただければわかりますように、これは内部のガバナンスの強化のために行うものなのです。ガバナンスの強化という視点から御議論いただきたい。

 なぜそういうことをするかというと、社会福祉法人というものが、公費、税金を使っているからであり、説明責任をきちんと果たしなさいという、国民からの要請があるわけです。基本的に立法措置として行ったのはそういう趣旨なのです。結局、先ほども一部お話があったのですが、その目的というのはそういう観点で捉えないと、その制度の趣旨を見誤るのではないかということであります。

 先ほど、先生方からお話がありますように、行政との役割分担というのは、実は福祉部会の報告書にも書いておりまして、これは重要な観点だと思うのです。ただ、昔のように措置でサービスを提供していた時代と違って、行政に言われたとおりに金を使えばいいということではなくなっています。また、法人側も自律性をずっと求めてきているわけです。その中で、法人という社会の構成員に求められている最低限のガバナンスというものを持たせる一つの手段として、会計監査人の力を借りようという趣旨なのです。そこはもう一度確認いただきたいということです。

 また、公認会計士の費用に使うのならばサービスに使うべきだという議論も確かによく福祉関係者からあるのですが、極論を申し上げますと、では行政の監査もやめて、その分利用者に還元すればいいではないかということと通じるところがあるので、そうではなくて、先ほどコストバランスというお話がありましたけれども、社会全体、あるいは法人全体としてどこにお金を使うことによってよりよいサービスになるのかという観点から御議論いただければと思います。

 そういう意味で、内部統制ということの一手段としてどこまで必要か、そして行政との役割については、はっきり申し上げて、社会福祉法人の会計の現状はよくない状況であり、そういうところでいろいろな不正なども起こる可能性もありますので、その点を全体として見ていただく必要があるのではないか。特に役割分担は重要な論点なので、私どももそこはぜひお知恵をいただきたいと思っております。

○松原構成員 ちょっと誤解があったかもしれないので、もう一度申し上げたいと思います。

 例えば、オランダなどは比較的社会保障が充実している国ですが、オランダではどんな小さな中小企業であっても、社会保障事業をしている以上、全事業者について公認会計士の監査を受けることが義務づけられております。私は大変これはいい制度だと思っております。

 ただ、言いたいことは、非営利組織としてのガバナンスの在り方です。それをどう監査していくのか。社会福祉法人が行う事業は複雑な営利企業と違う、非常にシンプルな事業ですので、いかに項目数を減らして費用を安くできるかということに、全く営利法人と同じやり方をするのではなくて、そこに知恵を絞っていく必要があるだろうと。そこを力説しているということで御理解いただければと思います。決して公的費用だから監査に使うのはもったいないとか、そういうことを申し上げているのではございません。公的費用だからこそ、アカウンタビリティーが重要であって、国民の理解を得るためにもこういった制度は必要だと、常日ごろ私は皆さんにもお話をしている立場でございますので、ご理解のほどよろしくお願いいたします。

○柴構成員 非営利なので、営利企業と違った監査があるだろうということでございますが、リスクを評価する上ではまさにおっしゃるとおりでございまして、営利と非営利で、先ほど松原構成員もおっしゃっていましたけれども、粉飾のリスク等は当然低いという認識に立ってリスク分析をすると思います。

 ただ、一方で営利と違って非効率なことを実施しているがために、そこに穴があるというリスクは実は我々も考えなければいけないのかなと。千葉構成員がおっしゃったオフバランスの預かり金なんていうのはまさにそのとおりでして、我々は今どうしていこうかというのを考えなければいけないなと思っているのですが、おっしゃるとおり、事業と組織内容等が似通っておりますので、会計士協会等で実務指針等の充実を図って、できる限り全ての会計士がそれに従って効率的に監査ができるというような体制づくりはこれから進めていきたいと思っています。

○田中室長 ほかはよろしいでしょうか。まだ時間はあります。

 とりあえずこの項目について、私どもも不適正事例の資料をつけてしまったので、そちらのほうに議論が集約されてしまった感もあります。また次回、少し全体を整理して、具体的事例も含めてお示しをさせていただきたいと考えております。

 それでは、本日予定されている議題は以上でございますが、これ以外についても何か御意見、御質問がございましたらどうぞ。

 よろしいでしょうか。

 時間前ですが、御意見、御質問がないようでございますので、次回は本日の議論を踏まえまして、もう一回私どものほうで方向性を整理させていただいてお示しさせていただくのと、検討課題の会計監査のところの4、「会計監査人非設置法人に対する専門家の活用方法」ということにつきましても、少し御意見を次回頂戴できればと考えております。

 なお、会計監査人非設置法人に対する専門家の活用、これは法律には出てこないのですが、福祉部会の報告書で、会計士さんであるとか税理士さんを活用するということで御報告いただいておりまして、次回からは税理士協会の方も御参画をいただいて、御意見を頂戴できればと考えております。

 次回の日程は、現時点で5月17日の4時からということで、内々に予定をさせていただいております。また、場所等は別途調整をさせていただいて、御連絡をさせていただきたいと思います。

 それでは、本日はどうもありがとうございました。


(了)

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