ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(健康診査等専門委員会)> 第3回 健康診査等専門委員会(議事録)(2016年6月17日)




2016年6月17日 第3回 健康診査等専門委員会(議事録)

健康局

○日時

平成28年6月17日(金)16:00~18:00


○場所

厚生労働省 17階 専用第21会議室


○議題

(1)健康診査等に伴う事後措置等について
(2)特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会での経過報告


○議事

○高山健康課長補佐 それでは、定刻になりましたので、第3回「健康診査等専門委員会」を開催いたします。

 本日は、御多忙のところ御出席をいただき、まことにありがとうございます。

 本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、報道関係の方々におかれましては御理解と御協力をお願いいたします。

 初めに、本日の審議より、健康診査等専門委員会委員として新たに3名の先生方に加わっていただくことになりましたので御紹介させていただきます。

 全国保健師長会会長、青柳玲子委員でございます。

 国立研究開発法人国立循環器病研究センター理事長、小川久雄委員でございます。

 公益社団法人日本歯科医師会常務理事、高野直久委員でございます。

 以上、欠席の方を含め、16名の方が健康診査等専門委員会委員となります。

 続きまして、出席状況について御報告いたします。

 本日は、市原委員、清水委員、村上委員より御欠席の連絡を受けております。現在、委員16名のうち13名に御出席いただいていますので、厚生科学審議会の規定により、本日の会議は成立したことを御報告いたします。

 なお、本日の審議に当たって、参考人として大神労働衛生コンサルタント事務所代表、大神あゆみ参考人です。

 横須賀市こども育成部こども健康課長、森田佳重参考人です。

 国立研究開発法人国立がん研究センター 社会と健康研究センター検診研究グループ検診研究部長、斎藤博参考人です。

 自治医科大学学長、永井良三参考人に、参考人として御出席をいただいております。

 なお、永井参考人からはおくれてくる旨の連絡を受けております。

 それでは、議事に先立ちまして配付資料の確認をさせていただきます。

 議事次第、委員名簿、座席表、資料1から資料8、参考資料1から4を御用意しております。議事次第に記載されている配付資料一覧を御確認いただきまして、不足の資料等がございましたら事務局までお申し出ください。

 なお、資料6は、資料6と資料6別冊に分かれております。

 それでは、冒頭のカメラ撮りにつきましてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。

(カメラ退室)

○高山健康課長補佐 それでは、ここからの進行は辻委員長にお願いいたします。

○辻委員長 皆様、御出席ありがとうございます。本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 きょうの議題は、(1)といたしまして「健康診査等に伴う事後措置等について」、(2)は「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会での経過報告について」の2点であります。

 最初に、議題(1)「健康診査等に伴う事後措置について」に入りたいと思います。まず、資料1につきまして私のほうから、そしてまた途中からは事務局で説明させていただきまして、その後、産業保健、乳幼児健診、がん検診、学校保健、国保中央会の保健事業といったそれぞれの領域における事後措置等、あるいはその評価につきまして、大神参考人、森田参考人、斎藤博参考人、弓倉委員、飯山委員からそれぞれ御説明いただきまして全体の質疑に入りたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、資料1について説明させていただきます。

 資料1をごらんください。まず、開けていただきますと「評価の考え方」ということで、これは従来からの話をまとめているだけですけれども、現在の疾患自体を発見する「検診」、将来の疾患のリスクを発見する「健診」、それぞれにつきましてこのような流れがあるわけですけれども、健診・検診といいますのは検査だけではなく、その後の事後措置、たとえば精密検査ですとか治療、あるいは保健指導や生活改善を通じて疾病の予防につなげるといった、さまざまなことが行われます。したがって、単に検査の精度だけでなく、健診・検診のシステム全体を通じての目的の達成度という観点での有効性、安全性、効率性というものを評価することが必要であるということは当然ではないかと思います。本日は、この事後措置等につきまして御議論いただきたいということになります。

 次の3ページ目をごらんください。事後措置等というものにつきまして、このような4つに分類できないかということで類型化を試みてみた次第でございます。1つ目は情報提供、2つ目が保健指導ですね。これは、健診・検診結果に基づく行動変容を促す指導ですとか支援ということになります。

 3つ目が受療勧奨です。健診・検診結果に基づいて治療ですとか、あるいは精密検査を受けるための受診の勧奨を行う。

 4つ目にその他といたしまして、各制度に応じてさまざまなものがあるかと思います。この4つに分類したうえで、時間の枠で考えますと下の図のようになりまして、健診・検診の前、健診・検診の際、そして健診・検診の後ということになります。この3つのフェースで行いますので、事後指導「等」としたのは健診・検診後だけではなくて健診・検診の際、あるいはその前にも行うものだということで、この3つのタイミングのそれぞれにで情報提供、保健指導、受療勧奨、その他というものがあると考えてございます。

 次のページをごらんいただきたいと思います。「事後措置等のイメージ」をもう少し詳しく考えていきますと、効果的な事後措置等を実施するためには対象者の選定基準を決めたり、事後措置等の実施時期に応じた実施方法といったことをきっちりと明らかにしていく。さらに、それを実施するに当たって実施者が習得すべき知識や技術についての研修を行って、全体的な標準化を図るということも必要になってくると考えてございます。

 そこで、行動変容ステージごとに情報提供、保健指導、受療勧奨のあり方を考えてみたいと思います。情報提供につきましては、無関心期や関心・準備期の方は未受診で、実行・維持期の方は受診済みですけれども、それぞれの方についてどのような指導が必要なのかというと、健診・検診の前では無関心期の方に対しては健診・検診を受けることの意義について普及啓発をし、関心・準備期の方には健診・検診の詳細情報を提供して背中を押してあげ、実行・維持期つまり前回受診した方には前回の結果を提供することでモチベーションを上げていただくということがあります。そして、健診・検診の時につきましては、受診した方の年齢層に好発するそれ以外の病気について情報提供をして指導していくこと、あるいは継続利用可能な社会資源の情報提供、例えば子育てサロンなどについて情報提供をすることで受診者の方々に利益を与えることもできるのではないかと思います。

 そして、健診・検診を受けた後につきましては、行動変容につながる情報提供を行う必要がありますし、健診・検診の不利益や限界についてもお伝えしなければいけません。検査の結果をお伝えすることももちろん大事ですけれども、それに加えて行動変容ステージに応じた情報提供について、事務局とも議論しましてこのように提示させていただきますので、追加すべきことなど、後で御意見をいただきたいと思います。

 保健指導につきましても、健診・検診の最中、健診・検診を受けた後、その双方で行われます。無関心期の方については行動変容の意義について指導しますし、関心・準備期の方に対しては行動目標を設定していただいてその達成に向けた支援をしていく。

 また、実行・維持期の方に対しては、励ましや称賛、あるいは家族を含めた指導ということで取組を強めていくということもあると思います。

 受療勧奨につきましては、無関心期の方にはわかりやすい結果を提供すること。関心・準備期の方については、精密検査などに関する詳細について情報提供して不安の軽減等に努めることも必要ではないかと思います。

 実際に医療機関を受診済みの方については受診状況の確認、そして主治医との連携ということが必要になってくるのではないかと考えております。

 5ページをごらんいただきたいのですが、このような事後措置等がが実際に役に立っているのかどうか。そして、期待されるようなアウトカムが出ているのかどうか。そういったことについて評価する必要があるわけです。ですから、PDCAサイクルを意識して事後措置等を行うことが必要であります。評価の種類としましてストラクチャーの評価、プロセスの評価、アウトカムの評価、それぞれについて評価指標を設定した上できっちりとその評価をしていく必要があるのではないかということです。

PDCAサイクルを回していく中で質の向上を図ることが望むべき姿ではないかと考えるわけですが、それぞれの評価の種類ごとに考えていきますと、ストラクチャー評価とは事業を実施するための仕組みや実施体制を評価するもので、具体的な指標としては、職員の数や予算ということになります。

 また、プロセス評価は目標の達成に向けたさまざまなプロセスを評価するもので、保健指導の実施率といったような指標が出てくるのではないか。

 アウトカム評価は目標の達成状況を評価するものですので、生活習慣病の有病率や死亡率といったさまざまな指標が出てくると思います。

 これにつきまして6ページをごらんいただきたいのですが、さまざまな健診・検診が現在動いているわけであります。特定健診や乳幼児健診、学校健診、がん検診など、さまざまなものが行われていますが、それぞれにつきまして現状ではこのような観点での評価指標があるのではないかなということについて事務局の方でまとめていただきましたので、ご説明をお願いいたします。

○右田保健指導専門官 御説明いたします。6ページの資料でございますけれども、特定健診、乳幼児健診、続きまして学校健診、がん検診、それから一般健康診断の制度におきまして既存の資料で考えられる評価指標を整理したものでございます。それぞれストラクチャー評価、プロセス評価、アウトカム評価に沿って情報提供、保健指導、受療勧奨ごとにまとめてみたものでございます。

 今回、情報提供、保健指導、受療勧奨という枠組みを新たに考えたものは、必ずしもそのとおりに分類されているものではないこと。それから、健診・検診によりまして実施主体、あるいは制度の目的とは異なるものですので、健診・検診ごとの比較というのは一概にはできないところがあるということは前提で説明させていただきたいと思います。

 まず、特定健診につきましてストラクチャー評価ということで、そちらにございますように職員数であるとか、予算であるとか、こういうところが保健指導プログラム等に記載されているところでございます。

 プロセス評価につきましては、健診の受診率であったり、あるいは保健指導の実施率、継続率、こういうものが評価指標として挙げられてございます。

 アウトカム評価につきましては、特に保健指導の部分で行動変容の状況であるとか健診結果の変化、あるいは保健指導の対象者の減少率等について評価指標として挙げられているところでございます。

 続きまして、乳幼児健診でございます。こちらにつきまして、ストラクチャー評価については健診の事業計画、あるいは健診に携わる者に対する研修体制がストラクチャー評価というふうになってございます。

 プロセス評価についてでございますが、例えば情報提供の部分であれば受診率であったり、保健指導の部分ではフォローアップの率、あるいは健診に関する評価ということで精度管理等が挙げられてございます。

 それから、アウトカム評価につきましては「健やか親子21」における健康行動の指標というものがそれぞれアウトカム評価の指標として挙げられているという現状でございます。

 おめくりいただきまして、7ページの学校健診の評価指標でございます。こちらは、ストラクチャー評価のほうは現状の既存の資料では「なし」ということになってございますが、それぞれの実施主体等々で個別に行われていたり、あるいは学校健診では必ず実施するべきもの、あるいは予算措置されているものというところで、現状ではここも評価は求めていないという整理になってございます。

 プロセス評価につきましては、健診の計画であるとか事前事後の指導、あるいは事後措置の状況等が評価指標になっているという状況でございます。

 アウトカム評価につきましては健診結果に基づく保健指導、これらの結果に基づいた健康状況がどのように改善しているかというところで評価をしているということでございます。

 続きましてがん検診でございますけれども、がん検診のストラクチャー評価としては実施体制の評価ということで医師等の状況、あるいは実施手順の確立ということが評価となってございます。

 プロセス評価としましてはがん検診の受診率、それから受療勧奨の部分では要精検率、精検受診率等が評価指標となっている。

 アウトカム評価につきましては、がんの死亡率ということになってございます。

 おめくりいただきまして、8ページでございます。こちらは労働者の一般健康診断ということでございますけれども、ストラクチャー評価につきましては代表的なところで申しますと健診の実施機関の選定状況であるとか、あるいは保健指導の部分では衛生委員会の設置状況というところをストラクチャーの評価として見ているということでございます。

 プロセス評価につきましては、健診の実施の周知状況であるとか医師等からの意見聴取、あるいは衛生委員会への報告状況等ということになっております。

 アウトカム評価につきましては、情報提供の部分であれば通知の実施率、あるいは健診の受診率、保健指導の部分であれば保健指導の実施率、受療勧奨であれば受療勧奨の実施率等が指標として挙げられているという状況でございます。

 以上、説明でございました。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、この資料1に最終的には戻ってくるわけでありますけれども、御検討いただく材料といたしまして、さまざまな先生方から御説明いただきたいと思います。

 最初に、産業保健の領域から大神参考人お願いいたします。

○大神参考人 大神労働衛生コンサルタント事務所の大神と申します。本日は、このような機会を頂戴してありがとうございます。

 私のテーマとしましては、「産業保健領域における一般健康診断後の保健師の事後措置等に関する実施事例から」、「効果的な健診を模索した経験より」ということでお話をさせていただきます。

 まず、私の自己紹介を簡単にさせていただきます。私は学校卒業後、保健師の資格を取り、比較的大手の企業3社で5年から8年の経験を積み重ねてきました。そして、4年前に開業しまして今は複数事業場の対応をしております。

 ざっとこれまでどのぐらいの事業場に関与してきたか振り返ってみますとおおよそ90事業場で、延べ人数ではなく実数として、ある程度数年単位で変化を見た労働者の数というと2万人ぐらいになるかと思っております。

 そして、私がやってきたことは狭い意味の保健指導、つまり個別や集団への疾病軽減を目的とした活動に加えて、関係する人や組織全体を見渡した対応を心掛けてまいりました。本日の話題提供は、私の経験に基づくものなので主観や偏りが幾らかあることを御容赦いただきたいと思います。それでは、早速資料に沿ってお話をさせていただきます。

 「産業保健領域の事後措置の実態」は、これは感触ですが、事業場における一般定期健康診断は事業場の義務として対象者の100%受診が課せられています。おおむね実施されていますが、実施の難しい職場もあるというのを実感しております。

 常勤、非常勤にかかわらず、事業場、健康保険組合、労働衛生機関等に含まれる健康診断機関に所属している保健師は「保健指導」を行っていて、それは行政に所属する保健師よりも時間をかけている感触があります。法令に基づくことによるもので保健師等による保健指導が努力義務となっているということから、そこに時間を割いている背景があるかと思います。

 しかしながら、各事業場の状況として、標準化された特定保健指導を除いてその方法は画一ではありません。各事業場に応じた方法でなされていることが多いのですが、事業場の諸事情、(1)事業場の経営の特徴、(2)事業主・管理監督者、衛生管理者等の理解、(3)産業医や保健師の力量等から、必ずしも十分と言いがたい方法がなされている場合もあります。

 改めてなのですが、恐らくこれまでもこちらの委員会の中でお話をされていると思いますけれど、簡単に産業保健領域における「一般健診」の目的について確認をしておきたいと思います。

 このように私は捉えているのですが、医療上の措置を適切に行って、就業上の措置を適切に行って、労働者の健康状態に起因した災害につながらないようにする。労働者が健康状態に応じた働き方ができるようにする。労働者のセルフケア(自己保健)能力の向上を図って、就業の継続、QOLの維持、向上を図るという目的が達せられるように、PDCAサイクルを運用できるのが効果的な健診であるとしてこれまで私が取り組んだ事例について報告したいと思います、

 報告は2事例としていますが、機微情報に当たることを考慮して事業場の特定を避けるために複数事業場の実態を類型化してまとめました。

 まず、「A事業場の取り組みから」ということでお話をしたいと思います。この事業場は社員が一定のところで仕事をしていて、それから集団検診を行っている。比較的、歴史の長い事業場に多かったパターンです。

 こちらの事業場の「強み」は、集団健診を複数日間、1日の実施時間も長くとった実施で利便性が確保されています。そして、産業医は近隣で診療行為を主として行っていて、医療の利便もあります。

 ただ、「弱み」としましては、私が関与したときには大抵の職場で事業場全体の健康状態がわからないと言われることが多かったです。受診率は6割程度のところ、全体像把握の難しさが言われていたことはあります。

 そして、受診勧奨を各管理職に一斉連絡で行っても受診率が向上しない。どうしたらよいのだろうというようなことも困り事として聞くことがありました。そして、再三、文書通知を個人にしても、再検査、要医療機関受診の受療率も芳しくない。受療率は3割から5割程度で、適切な勧奨方法がわからないといったようなことが顕在的なニーズというよりは、話を聞いていく中で潜在的なもののニーズとしても困り事として聞かれました。

 そういうことから、「課題の特定」としては以下の3点を挙げました。

 健診以外の健康状態に関連する統計からの事業場の仕事と健康状況の把握をした上で、では健診をどのようにやっていくかということ。詳細は、括弧の中に書いているとおりです。

 それから、健診実施状況の詳細の確認ということで、括弧の中に書きましたけれども、労働者の視点による健診運営の不備の確認、労働者の仕事を含む生活、健康行動と健診結果の関連を確認する方法や場面確認の特定。

 3点目として健診運営に関する関係者の困り事と健診全体の運営に関する認識の確認ということをいたしました。

 それで、先ほど事務局からお示しいただきました事後措置に関して、健診前、健診時、健診後、情報提供、保健指導、受療勧奨というカテゴリーの切り口でちょっとまとめてみてはいかがですかというお話をいただきましたので、それに当てはめて書かせていただきました。枠の関係で、これが全てを網羅しているものではない点を御了承いただければと思います。

 例えば、情報提供として、まず健診前には健診運営会議による関係者の認識統一と運営方法の改善のための情報提供によって健診の目的と実施を目立たせる工夫をしようということを積み重ねました。

 それから、各労働者の健診受診票に前年度と前々年度の健診結果を記載する情報というものが必要ではないかと、それを取り入れることを考えました。

 そして、各職場単位の健康状況の特徴や受診率について安全衛生委員会で共有し、より具体的な関心を惹起することを考えました。これは、複数の事業場で行っていることです。

 次に、健診時については自社の会議室等を利用した集団健診の利点を生かして、各検査の待ち時間の目に触れる場所に自社の健康状況の特徴の提示とともに、関連して役立ちそうな健康情報、例えばVDTに関する留意事項等も掲示したり、セルフケアに役立つと思われるリーフレット類の配布を行いました。

 健診後には、情報提供としましては健診結果を経年併記することで変化を捉えるようにして、各労働者の反応から、よりわかりやすい「健診結果通知」の記載方法になるように都度、改訂を重ねていきました。

 そして保健指導、これは横軸で見ていただいて、健診前は基本的に問い合わせ対応以外は余りなく、健診時には2分から5分であったとしても問診場面を利用して、できれば保健師が全労働者に「元気で働けているか」ということを尋ねる場面を設定する。そして、各労働者の困り事と、保健医療職の捉えた懸念事項や大事にしてほしい視点を一言二言でも伝える。そして、その反応からわかった定性データの蓄積も健診の参考情報として扱うようにしました。

 健診後には、自律的な相談につなげられるように、保健医療職が呼び出して行う保健指導は最小限になるように事後措置のあり方を検討しました。「呼び出し型」の保健指導というのは、どうしても労働者側が待ちの姿勢になってしまうことが私の経験の中でありましたので、どこで呼び出すことを区切るか考えた経緯がございます。

 実施後の相談方法の複数の明示と例示をしたり、「呼び出し型」の保健指導の基準の検討、それはパニック値であるとか就業検討等に関しては必ず行わなければいけないというような切り分けをいたしました。

 そして、受診勧奨として、健診前は問い合わせ対応以外はこれも同様にあまりなくて、健診時には前年度「要医療機関受診」の判定ながら未受領だった人についてはその事情を尋ねた上で、今後の受療勧奨についての説明を行い、またその反応からわかった定性データの蓄積も要受療に対する認識や関連する状況の参考情報として扱うようにしました。

 健診後には、健診の所見とあわせて受診時の本人の会話も参考に受療勧奨を行いました。

 受療勧奨が必要な者の中で「就業上の措置」の検討が必要な基準、それから治療中でも健診結果所見の程度から「就業上の措置」の検討が必要な基準を産業医と相談して設定し、その意味づけを対象者にもわかりやすい表記になるようにして、社内全体でも共有できるようにしました。これが、A事業場の取り組みです。

 そして、B事業場の取り組みについてお話しします。これは、近年ふえてきている分散事業場が多いです。それから、出先の仕事が多く、比較的歴史が浅くて、急成長しているような会社で幾つかあった事例を取りまとめております。

 こういった事業場では、個別の健診受診が行われております。受診期間は年間で長期に確保して、複数医療機関の受診設定で利便性が確保されていることがあります。

 個別受診健診によって、健診について個人や家族の関心が非常に強<なるといったような「強み」もあります。

 反面、「弱み」として、労働者の転出入が多く年間を通じた健診受診による受診管理の難しさが言われることがあり、また、分散事業場が多くて労働者が単独で出先で業務に携わることが多く、個人への連絡がとりづらく、受診率は頑張っても60%しかいかないといったような困り事を聞くことがあります。

 健診受診は個人に委ねられる部分が多くなるもので、個人の関心や認識に左右される医療機関の個別受診が、「医療」と「検診」の同一視につながることもあります。

 「課題の特定」については、先のものとほとんど似たようなものになるのですが、最後に書きました3番目の「健診運営に関する関係者の困りごとと健診全体の運営に関する認識の確認」では、外部委託内容の吟味ということが含まれてきます。

 そして、A事業場と同様にB事業場の取り組みについても同じようにまとめさせていただいたのですが、ここではA事業場と重複しない独自の取り組みの箇所、下線を引いた部分についてのみ御説明いたします。

 情報提供として、まず健診前には個別受診が多いということを考えて、周知媒体をより明確に、より多くし、より具体的な関心の惹起を行うということが加わります。

 次に、健診時には、これは外部個別受診なので、「情報提供」「保健指導」「受療勧奨」どれにも共通しますけれども、各健診機関、医療機関では情報提供、保健指導、受療勧奨を行う場合もありますが、行わないこともあるというのを前提に健診の一連の運営方法を検討するということを行っています。

 また、健診後には、健診結果については非常に細かなテクニックであるのですけれども、「家族とも共有、相談することをお勧めする」といった一文を追記したところ、これに反応される方も多かったという感触は得ています。

 また、健診結果をイントラネット等で、個人が経年変化を確認、個別相談もできるものにしました。

 このような方法を行っている事業所は多いのですけれど、関心がないと見ないのも実感としています。

 そして、保健指導の健診後の対応としては、健診結果をイントラネット等で個人が経年変化を確認し、あわせて個別相談ができるものを取り入れて、一方で年に1回はできれば健診後の面談を全員に対して行うことが、仕事のあり方も丁寧につかめるということもあって検討を進めているような事例がございます。

 これまでお話しした取り組みから垣間見えたのではないかと思いますけれど、次の資料ですが、改めて「最も短時間、低コストで最も効果的な一般健診の姿はどんな姿か?」考えてみたいと思います。

 これは、以前、私の先輩の保健師から経験則ながら究極の職場の健康診断はこんなものだと思うよと、教わったものです。年に1回、健康診断で顔をあわせたときに、元気かと尋ねられたら、その人なりに今後1年の仕事と生活のことを思い浮かべられて、その後、行動化されて1年後に同じ対応を繰り返しながらも元気で働ける人が多い職場になっていく姿を描くことが大事なんじゃないかと言われました。

 これを図式化してみたのが、こちらの写真の入った8と書いてある図です。まず、健診受診率100%がかなう企画・運営がある。これは産業保健の特徴だと思います。それは事業場が災害防止や安全配慮の対策を行いやすく、一方で労働者、受診者が自律的でその後の健康行動につなげられる。そして、ある程度精度の担保された健診項目は適切かつ最小限であること。これを、一つの考え方の例示として挙げさせていただきました。

 さて、現状で行われるべき対応が行われにくい理由について考えてみました。

 1つは「事業場の経営に関連した特徴」で、経営の主導権を持つ者が本当に多くの職場においては「産業保健」の考え方を知らないと言われることが多いです。それから、事業場のグローバル化、分散事業場の拡大等、事業場の主たる事業の対応に経済的、物理的に追われて対応が後手になりやすいこと。それから、営利を追求する主たる事業ではないので、対応人数を少な<、外部委託で安価で簡便にしたい業務になりがちだということがあるように思います。

 そして、幾らか重複しますが、「認識や役割期待のズレ」として、事業主・管理監督者、衛生管理者等の認識に、例えばこれは余りよろしくないたとえかもしれませんが、テレビの健康番組やホテルのサービスのように「あると便利だけど無くてもよい」という認識や、事業主責任とはいえ、何からどのように手をつけてよいかわからない。衛生管理者も非常に流動性がある。そういったことがあるように思います。

 そして、産業医、保健師等の役割認識の課題もございます。診療医を兼ねている場合に、医療上の措置と就業上の措置を同一のものとして扱うことがあったり、保健師としても医療上の措置についてはわかるし行えるけれども、就業上の措置をどういうふうに絡めて関与してよいかわからないといった課題があるように思います。

○辻委員長 済みません。ちょっと時間が延びていますので、よろしくお願いします。

○大神参考人 残り、スライド2枚分について御説明いたします。

 「健診の場面での評価指標」、事務局からの要請で、評価指標は何かと問われると定量的なものに加えて定性的なものもあるように思って、まとめてみました。四角の枠で囲んだところは、普遍的によく言われている評価指標だと思います。

 加えて、それぞれの割合がよく、使われますが、右側に縦書きで書きましたように、その意味するものをアセスメントして対応する能力の適切さも評価対象になるのではないかと提案させていただいたのと、枠外に書かせていただいた、労働者(受診者)主体、労働者(受診者)の連続した生活をより意識した視点に着目することが必要ではないかです。労働者側からすれば、自分の就業状況を含んだ生活のありようと健康状況をあわせて語れる力というのも必要ではないかということが、今回まとめさせていただきながら気づいた点でございます。

 そして、一番下に書きましたように、この資料作成に当たって私たちが評価指標と言ったときには、私たち保健医療職の視点が強いこともある。もしかしたら、それぞれの立場にとっての指標というのも考えたほうはよいのではないかとも思いました。

 最後に、「まとめ」です。産業保健領域での健康診断は、医療上の措置を適切に行って、就業上の措置を適切に行って、労働者の健康状態に起因した災害につながらないように、労働者が健康状態に応じた働き方ができるように、労働者のセルフケア能力の向上を図って就業の継続、QOLの維持、向上を図ることが目的と考えますが、そもそも健診の企画・運営をこの目的に沿った整理のできていない実態が、効果的な健診運営につながらない要因になっているのではないかと考えています。

 そしてもう一つ、保健医療職主導の「呼び出し型」の保健指導は感染症等には有効でしたけれど、生活習慣病等には必ずしも有効ではないものもあるというのが経験則的に言われています。

 対象者の行動変容の前提として、対象者が仕事の要因も含めて「自身の健康をしっかりグリップできる条件が整っているかどうか」を確認しながら、それを整理した上で自律的に保健指導・健康相談を受けられる方法を、対象集団に応じて「健診前」「健診時」「健診後」、それぞれの時期に考えることが有効ではないかと考えます。

 時間超過して失礼いたしました。

○辻委員長 ありがとうございました。

 では、続きまして乳幼児健診の領域から、森田参考人お願いいたします。

○森田参考人 よろしくお願いいたします。では、資料のほうをどうぞごらんください。

 横須賀市は、人口が約41万人の中核市でございます。出生数は2,600前後、合計特殊出生率は1.23%と、やはり少子化に悩ましいところでございます。

 本日は、本市の乳幼児健診について御説明させていただきます。平成27年度の受診率としましては、乳児健診が98.9%。1歳半健診が97.3%。3歳児健診が95.1%という現状でございます。ほぼ毎年、同じような傾向となっています。

 次のページで「乳幼児健診について」ですけれども、皆様御存じのように根拠法令は母子保健法となっております。

 「目的」は、乳幼児の病気の予防と早期発見及び健康の保持・増進ということで、「費用」は無料です。「項目」のほうは規則で細かく決められてございますので、ほぼ全国で同じような内容で健診を実施しています。

 「本市における乳幼児健診の位置付け」です。平成27年2月に、子ども・子育て支援新制度のスタートに向けて「横須賀子ども未来プラン」という市町村の事業計画を立てました。これは、これまでの次世代育成支援プランを包括して、また「健やか親子21」の趣旨も踏まえてつくられております。

 大柱が5本ございまして、乳幼児健診はこの大柱に「安心して子どもを産み育てやすい環境づくり」の中柱の「(1)子どもと母親の健康づくり」に位置づけられています。内容としては、「病気や発達障害、虐待等を早期に発見し的確な指導を行えるよう、乳幼児健診の質の向上を図ります。健診未受診者の状況を把握し、未受診者に対し、子どもの健全育成に欠かせない重要な保健、福祉情報を提供します。」ということになっています。

 具体的な数値目標はまだ設定されていないところが課題ですけれども、この2点については確実に行うという行動計画を持っております。

 次に、「乳幼児健診の流れ」です。まず、周知としては妊娠中の母子手帳を交付する視点から出産後の母子保健サービスのことを説明し、保健師の役割ですとか健康診断の意味、健康福祉センターの利用の仕方などを一から御説明させていただいています。そこから妊娠中の教室やサロン、また出産後の赤ちゃんの訪問といったあらゆる機会を利用しまして健診の周知に努めています。

 そして、健診の実施です。健診は問診から始まりまして、計測、診察、相談というふうに進んでいきますが、まず初めにカンファレンスを行いまして前回の健診から経過観察の子、または初めてですけれども、何らかの御心配や困り事を持っている御家族についての情報交換を行います。そして、発育や発達について、またはさまざまな保健指導を行っています。

 事後フォローとしては、個別支援、集団支援、他機関との連携など、さまざまですけれども、終了した後に必ず多職種でカンファレンスを行いまして、この保健指導の内容が妥当であったかの総合判断、またフォローの方向性を最終決定しています。

 保健指導のポイントですとか、マニュアルといったものをつくっております。本日、12ページ以降の資料に参考でつけてございますので、よろしかったら後ほどごらんいただければと思います。

 続きまして、「事後フォローについて」、少し詳しく御説明したいと思います。事後フォローは、その方の様子によりまして「助言・事後指導」、センターというのは健康福祉センターでございますが、「センターによる継続支援」、ここでは地区担当保健師による個別支援のほかにフォローアップ教室といった集団支援、または個別の発達相談などを行っています。

 また、「関係機関との連携による継続支援」、これは地域の社会資源といったものの情報提供もありますし、医療機関、療育相談センターなど専門機関との連携もございます。

 そして、この事後フォローの「評価」については個別の評価を行っています。月に1回、その地区を担当する保健師でチームを組んでおりますので、一件一件、この方についてはこのような健診で方向性が出て支援した結果、今月はこのような状況でした。次は3カ月後に訪問しますとか、3カ月後にどこそこに紹介した病院に確認をしますといったようなチーム会議を行っています。または、関係機関との連絡会などを行っています。

 次に、この事後フォローを行いました1年後の経過についてです。平成26年度に中央健康福祉センターというところで研修を受けた方のその後の様子ですけれども、例えば1歳半検診で要フォローとなった方が1年後にどうなったかというと、ほぼ半数近くの方は終結をしていますが、57.6%の方は継続して、大体ほとんどの方がそのまま3歳児健診までフォローが続くような状況でございます。また、3歳児健診で要支援になった場合の1年後は、ほぼ9割の方が終結をしております。

 このことから、1歳半健診後の事後フォローは継続率が高いので、やはり中長期的な見通しでここを丁寧にフォローしていく必要があるのではないかということで、1歳半健診後のフォローに力を入れています。

 また、3歳児健診後はある程度発育発達も見えてくるということと、集団に入ることでの効果というのも高いので、やはり入園する方が多いですし、そこに入園するまでの支援と、そこにうまく乗れるような関係機関との連携をとっていくということで、顔の見えるような環境をつくるということを中心にかかわっております。

 次のページに、「事後フォローの例」を2例挙げてございます。お時間の関係もありますので、よくある事例ということで2例挙げておりますので、よろしかったら後ほどごらんいただければと思います。

 最後に、まとめとしまして3つのカテゴリーに分けました。

 まず、受診率を向上させるために私どもが努力していることになりますけれども、繰り返しになりますが、あらゆる機会に周知をしていくこと。

 それから2番目として、済みません。「母子手帳」ではなく、これは「母子健康手帳」です。母子健康手帳の存在がやはり大きいと思います。妊娠中から子育て期まで専門機関と保護者の方、それぞれが記入をしていきますので一緒に成長の節目に確認をしていける、ともに使っていく手帳ということで、これを常にお父さん、お母さんはごらんになっていらっしゃいますので健診を受けるということが当たり前のような気持ちになってくださっているのかなというふうに感じています。

 また、環境的な側面としては土曜、日曜健診など、働いている方が受けやすい体制ですとか、未受診の方への訪問をしているんですけれども、なぜ健診を受けられないのかということをお聞きしまして改善できるものはしています。

 例えば、乳児健診1歳半というように年齢で区切ってしまうと、お子様がちょうど同じ月に乳児健診にも行かなければいけない。3歳児健診にも行かなければいけないとなると、さすがにちょっとおっくうになってしまうことがありますが、同じ日に月齢が違っても健診が受けられるような体制をこの土曜健診、日曜健診で持っておりますので、こういうことを実施することで少し改善してきたかなというふうには感じました。

 それから、「効果的な事後フォローのポイント」として、これができているかどうかは別としてなのですけれども、やはりその方に合った成長の支援を行うために個別支援が基本であること。それから、今までの子育てや価値観を尊重してニーズを引き出していく。

 この方たちの家族としてのライフステージというんでしょうか、そこに支援を重視していますので、どちらかというと健診はそこのプロセスの中の一コマというような位置づけで、できるだけ中長期的な視点で支援をするということにしています。ですので、先ほどの事務局の方の説明の中で、うまく入るところもあれば、ちょっと母子保健だと枠にはめにくいところもあるのかなということは正直感じました。

 そして、3点目の評価についてですけれども、乳幼児健診の質の向上というところでは、隔月で母子担当者会議を多職種で行っております。そこでさまざまな課題に対しての解決方法を相談したり、マニュアルを作成したりしております。

 また、対象者の方へは、例えば待ち時間が長くて子供が泣いてしまってというような御感想を聞くと、待ち時間のアンケートをとってみたり、調査をしてみたりというような形で、そのとき、そのときの評価の改善ができるような努力はしています。

 ただ、やはり客観的な評価指標というのがまだ本市の中では確立していないというのが課題です。今、「健やか親子21」の健康水準の指標のアンケートとっておりますので、そういうものを見ながら検討していければと思っています。

 そして、2つ目の「未受診に対する保健、福祉情報の提供」、これはこちらに書いてある件数の方につきましては全て家庭訪問を実施して情報提供させていただきました。以上でございます。

○辻委員長 ありがとうございました。

 続きまして、がん検診の領域から斎藤参考人お願いいたします。

○斎藤参考人 斎藤です。どうぞよろしくお願いします。

 がん検診における事後措置といいますと精度管理かなと思ったのですが、今回のテーマは受診勧奨と情報提供ということで申し上げます。

 ちょっと言いわけがましいのですが、私は今回ピンチヒッターで、余りこの課題をそしゃくしないままにきておりますので、どれだけこの委員会の御参考にしていただけるか非常に心もとないところですが、この課題について御説明いたします。

 資料の2ページ目ですが、既にこの検診に関する条件はもうこの委員会でも多分、御説明があったと思いますが、このうち受診勧奨と情報提供にかかわるものは10項目のうち、この太字で示した4項目かと思われます。科学的根拠、リスクの最小化、自己決定権、インフォームド・チョイス、こういったことを踏まえてこの受診勧奨と情報提供を捉えるべきだと考えます。

 まず受診勧奨ですが、この受診勧奨の体制というのは今回の委員会の課題に合うのかどうかわかりませんが、受診勧奨はがん検診に関しては実績のある、科学的根拠もある受診勧奨体制としてコール・リコールシステムというのがございます。それから、ハイリスクな未受診者の行動変容についてのメッセージというのが最近注目されており、この2点についてまず話します。

 1枚めくっていただいて、がん検診の目的である死亡率を下げる体制としましては、ヨーロッパを中心とした組織型健診というものがありまして、これは我が国の健康増進事業で行われる検診を非常に厳格にきちんと定義した枠組みを持っています。

 その2つの柱は、まずその検診法や対象集団が定義されていて、それが法律レベルなどで明記されているということが1つであります。この仕組ができていればprogramです。これで正しい検診を正しい対象に提供するということで、もう一つは受診勧奨に関しては受診率を高くしてそれを維持するために、この対象者を網羅的に把握してその名簿を整備更新し、その対象に対して受診勧奨を個別に行う。これは事前の話で、その事後として未受診者を把握して再受診勧奨を行うという体制です。しかも、受診勧奨のインビテーションはパイロット段階から100%近い段階までありまして、これができていればPopulation-basedです。ですから、ProgramかつPopulation-basedで、その最下段にあります普及完了の状態までいくと、左に示すものは子宮がん検診ですが、死亡率減少は著明に達成しております。それで、受診率は80%前後であります。こういうことが達成できる。

 我が国は、残念ながらまだnon-programnon-population-basedに位置して分類される状況にあり、それで成果に到達できないということがあります。現在、この仕組みは改善といいますか、建設中というようなところです。このようなコール・リコールシステムというのが国際的には実績がある方法になっています。

 それで、5ページ目ですが、我が国でそういった仕組みが効くかどうかという話なのですが、これは主に大腸がんで地域の検診事業の中で、あるいは研究として行ったものです。受診勧奨は系統的に行っていない地域で、これに再受診勧奨を加えた上段の3つとか、それから新たに再受診勧奨を加えたもの、最後はランダム化試験ですけれども、個人の背景別のメッセージをやるというものですが、いずれも受診率向上は達成されています。この受診率の上げ幅が小さいのは、介入した時期が必ずしも年度いっぱいではなくて限定した数カ月前後の期間ということにも要因としてありますが、いずれにしろこういった方法、仕組みが日本でも効くということがわかると思います。

 1枚めくっていただいて6ページですが、問題はこういった実施がどのぐらい行われているかというものです。これは2015年度の実データですが、1,800弱の自治体に対して調査を行い、約1,580の自治体が回答していますが、集団検診に関しては正しくない対象者も含めて一番甘い基準でせいぜい7%の自治体がこういったシステムを行っている。それで、3つ目のカラムですが、指針どおりになると3%ぐらいしかこういったことをやっていないということになります。自治体が受診率を高くするための仕組みを整備していないということがわかります。

 これが個別検診と言われる、同じ健康増進事業の中でも家庭医のところで窓口となって行われる健診になるとさらに低く、1%を切る状態になります。乳がん、子宮頸がんで若干高くなっているのは、クーポン事業をやったことを契機に一時的に行われたということを反映していると考えられます。

 次に、未受診者の行動変容についてのトピックです。未受診者というのは非常にハイリスクですが、心理的には幾つかのセグメントに分かれることが明らかになっています。我々の研究で4つ、あるいは5つのセグメントがあったのですが、これを3つに代表することができています。1つ目は、検診に関する知識がなく無関心な層。2つ目は、結構知っているのですが不安ですね、キャンサーウォリーが働いていかない。3つ目が、よく知っているのですが、まだ受けていないというグループです。

 次をめくっていただいて、こういったグループにインタビュー調査などから適切なメッセージというものを開発いたしまして、無関心者には少し脅かすような、がん検診を受けなければ危ないですというようなテーストのメッセージ。2番目は、同じようなことを言うよりも受けると助かりますというテーストのメッセージ。それから、3番目は実際の受診の方法など具体的な情報を与える。こういうものが適切であるというのが予備的な調査でわかっています。

 次のページですが、これはランダム化試験でありまして、対象者の約2,000人弱にこのような背景を調べるアンケートを行いまして2,000人弱の背景を同定します。それを3対1割りつけで、ランダム割りつけをします。そうしますと、このセグメントの3つが均等にといいますか、3対1できれいに割りつけられていますが、これにアジャストしたメッセージを送ります。そうすると、各セグメントで3倍から4倍、全体で4倍の受診率向上が認められました。これは乳がんに関するものですが、大腸がんでも同じデザインの試験をやっていて同じ結果が得られています。このように、個人の背景に合わせたメッセージによる受診勧奨が有効だということがわかってきましたが、実際にどう使うかというのは今、検討中であります。

 次をめくっていただきますと、情報提供です。これはたくさん申し上げたいことがあるのですが、1点に絞ってお話をしたいと思います。これは先ほどの検診の必須条件のところにありましたが、検診の有効性に関する情報をいかに行うかということに尽きます。

 次のスライドです。教育的な図で大変恐縮ですが、がん検診には利益、不利益がありますが、スクリーニングテストは陽性、陰性と分かれ、それぞれにがんあり、なしの4つ目が書けます。それで、偽陽性、偽陰性といったところがデメリットであるのは言うまでもなく、感度・特異度100%のケースは存在しないために、検診を一旦始めると必ず不利益は発生します。一方、がん死亡の減少というメリットはあるかどうかはわからないということが言えます。

 そこで、今度は利益であるがん死亡の減少に関する科学的根拠を提供するということが必須であるということになるわけです。それから、不利益に関する情報の提供も必要であるという整理になるかと思います。

 次をめくっていただいて、しかし実際はこういった科学的根拠、要するに有効性があるという以外の検診がこの対策の検診でどんどん増加していまして、何と現在78%近くなっているということです。これは、がん対策に逆行している現状であります。それで、利益が確保されない分、不利益だけははっきりあるということで、これは国民に不利益を余計に与えている可能性があるわけです。

 この要因としてはその次のスライドですが、我々の調査で検診関連学会の評議員へと、それから保健師への調査ですが、がん検診の有効性のエンドポイントが発見率であるという誤解がこのもとになっている要因であるということがわかっています。これはがん検診、あるいはそれ以外の健常者を対象にしたものも余り医学教育に入っていませんので、そこが非常に問題だとかねてから考えております。

 次をめくっていただいて、こういった対策の検診以外も含めて検診技術というのは出ては消え、出ては消えして、場合によってはコマーシャルベースに乗って使われて、それで消えてしまうということを繰り返しているわけです。これは、提供する側も、それからそのユーザー側も、検診の有効性を理解していないことに起因していると考えられます。

 次の図ですが、検診法は当初は既存の診断技術あるいは新規の検診法も、科学的根拠は検診としてはないわけです。それで、精度評価がまず行われます。それはがん患者を使って臨床診断がんで測定されますが、これは診断法の評価としてはいいのですが、検診法の感度としてはすべからく過大評価になります。それで、健常者で測定、しかも前向きに測定をすることが求められていますが、実際に我が国でこういった例はごく一部でしかこれまではありません。ここで生き残った者が最終的な死亡率が下がるかどうかの疫学的な研究に回るわけですが、その前の精度評価でさえ大半ががん患者での測定になっています。

 次をめくっていただくと、これはその精度評価に関してのPhaseの概念を示したものです。まずは臨床診断がんでやるんですけれども、最終的に健常者の集団で実力を測る必要があるというスキームですね。「PhaseI」「Phase II」「Phase III」といっています。

 その次のスライドですが、こういったPhase IIIを用いないと著しい過大評価になるという例が幾つか知られていますが、これは一時はやったPET検査ですね。今でも検診法としていいと思っている人がいるわけですが、これは胃がんに対する検診法についての感度です。既存の報告ではPhase Iのもので7、8、9割の感度が報告されていて、T1のステージに限局しても40%、これが健常者で測ると10%にすぎない。こういったことは大腸がんなどでも報告されていますが、どこら辺の水準で証拠があるかということがわからないと、ユーザーもやみくもに検診を受けてしまうということになると思います。

 それで、最後のスライドです。これらをまとめますと、「受診勧奨」に関しては、がん検診についてはこういった対象者名簿をつくってする基盤整備・普及、その上で有効なメッセージを投げていくといったことがこれから求められています。

 それから、「情報提供」はやはり何といっても科学的根拠に基づいた有効性に関する情報は必須であって、それから不利益についてはあまり説明しませんでしたが、これも非常に大事であります。健常者というのは患者に比べてリスクが極めて低いので利益を受ける可能性も低いわけです。くじが余り入っていない箱からくじを引けというようなことでありますので、受診を勧奨するからにはきちんとこの辺の利益、不利益の情報を与えた上で自己決定をする支援、こういったことが必須だと考えます。

 それで、この委員会で言うべきことかどうかわからないんですけれども、がん検診に関しては法的な制約はありません。例えば、検査薬に関していうとエビデンスがなくても使える現状です。評価もないままにコマーシャルベースにまでのっていっている例があると聞いていますが、そういったところに何か規制をする、あるいはクレジットをつける、国民にわかるような情報をつけるような仕組みを何か考えないと、いつまでたってもこの状況は変わらないのではないかということで締めくくらせていただきます。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして学校保健の領域から弓倉委員お願いいたします。

○弓倉委員 弓倉でございます。本日、学校心臓検診の話をひとつさせていただきますけれども、その前に学校検診におけるアウトカムというところは本日の資料には出しておりませんが、やはり身体計測指標が挙げられるのではないかと思っております。

 小学校から高校まで毎年身長、体重がほぼ全員の児童生徒は測られておりますので、膨大な数の身体指標の数値が得られております。乳幼児とかにBMIを使うのは余り適当ではないわけでございまして、母子健康手帳でも使われている身長体重曲線ですとか、成長曲線、肥満度曲線、こういうものが使われるわけですけれども、その基準値になるものにつきましては平成12年度の乳幼児身体発育調査と、それから同年度の学校保健統計調査の身体計測値が使われておりますので、こういうことも一つのアウトカムになるのではないかと思っております。

 また、寄生虫の保有率が55年前は小学校で21%、中学校で16.7%あったのですけれども、最近では小学校で0.13%、中学校で0.08%まで低下いたしまして、集団検診できちんとした寄生虫の管理を行えばここまで寄生虫卵の保有率は減少するということがわかってきたことも一つの成果ではないかと思っております。

 それは別件でございまして、本日御紹介いたしますのは学校心臓検診を私が6年前に発表したスライドを持ってまいりました。ですから、学校生活管理指導表のようなものは抜けておりまして、そちらのほうは口頭で御説明をさせていただきます。学校心臓検診だとこんなことがわかるということを理解していただければ結構です。

 私が東京都医師会の役員のときにつくったものでございまして、2枚目をめくっていただきますとよろしいのですが、昭和63年度から東京都教育委員会から東京都医師会が委託を受けて東京都の都立学校の心臓検診判定委員会というものを設置して都立学校の心臓検診を行っているというものです。

2008年まで、この結果は実は外部に公表してはいけないというふうに許可されていなかったのですけれども、このような事業評価はきちんと外部に情報発信するべきだと私が訴えましてつくらせていただいたものでございます。都立高校の生徒、1188,571人の結果をまとめてみました。学校心臓検診は最初の数年は手探りで行っていた状況もあるようでございますし、また昔のデータには利用できないものや欠落したデータもございますが、大体こんなものだということで見ていただければと思います。

 次のページをお願いしたいと思います。これは、都立学校の心臓検診の流れです。検診機関というのが中央にございますけれども、この各検診機関が学校に出向いて心電図検診を行います。検診機関でまず医師がオーバーリードといって心電図を読み直しまして、健康調査票とあわせて何らかの所見があるものを判定委員会に送ります。そこで、委員が心電図と健康調査票を調べます。これを1次検診と呼んでおります。

 さらに、追加の診察とか運動負荷検査や心エコーが必要だと追加検査が必要と判定されますと、当該生徒に検診機関に出向いていただいて指定された検査を受けていただいて、その結果をまた判定委員会で検討いたします。これを、2次検診と呼んでおります。

 その結果、さらに精密検査や医療が必要であると判断された者は、指定された専門医のいる医療機関に紹介されます。これを、精密検診という名前で呼んでおります。

 4枚目にいっていただきます。4枚目は、それぞれの受診者数でございます。生徒の数が減っているというのはございますが、1次検診、2次検診ともに100%近い受診率であることがわかります。これは、本当に学校健康診断の特徴でございます。

 5枚目にいっていただきますと、左側が1次検診で事後措置としての管理指導区分、これが学校指導検診の事後措置になるわけですけれども、A、B、C、D、Eというふうに分かれておりますが、高校生になりますと何らかの心臓疾患が見つかっている生徒の多くは既に病院で診てもらっているということがわかります。病院管理治癒が54%と、多い数字でございます。それで、管理不要の42%というのは特に何も心配することはないというものでございます。

 ここにE可、E禁とございますが、E可の場合は例えばアスリートのようなクラブ活動までしてもよろしいというものです。E禁はそういうアスリート系のものはちょっとやめてください。1年後とか、指定された年にもう一回心電図を撮ってくださいというクラスになります。Dは、さらに運動制限とかが入ってまいります。

 右側に追加検査を必要とされた2次検診の内訳を示してございますが、E可と判定される生徒が65%、管理不要が26%です。それで、ある程度の制限が必要とされてくるE禁以上というのが1%、さらに要精密検査、いわゆる医療機関に行っていただく方が8%という方で、2次検診の大体10%弱が比較的重めの生徒であるということがわかってきております。

 次のページをお願いしたいと思います。6ページ目は都立学校の心臓検診で判定した先天性心疾患、どんな先天性心疾患を持っているかということの内訳でございます。心室中隔欠損症が最も多くて、心房中核欠損、肺動脈狭窄、そして案外ファローが多いということがわかります。こういうことは保健所等のデータでは出てこないもので、学校検診でようやく出てくるようなものかと思っております。

 次のページを見ていただきますと、これは不整脈を含めた心電図異常ですね。心室期外収縮が最も多いんですけれども、QT延長症候群とされるものが3%いるとか、WPW11%くらいいるとか、そういうものがわかってまいります。

 8ページ目をごらんください。後天性心疾患は、ここでは主に川崎病を取り扱っております。川崎病の既往を持っている方が9割方いらっしゃいますが、この既往歴のある方というのは川崎病の既往歴はあるんだけれども、既に冠動脈の後遺症はないという判定を既にされた方という意味づけになってございまして、管理不要扱いになります。川崎病の後遺症を持っている、いわゆる冠状動脈の動脈瘤と思っている方はこういう方々の中での4%を占めているということがわかりました。

 次のページをごらんになっていただきたいと思います。9ページ目は、学校管理下の突然死の原因として非常に重要になります心筋症ですね。こちらのほうもnとしては少ないのですけれども、左側の図を見ていただくとわかりますように毎年少ないのですが、ある程度の数は心筋症の方が見つかってきているということがわかっております。

 結語、最後のページに書いてございますけれども、このように学校心臓検診をきちんとと行いますとさまざまな情報を得ることができます。疾病につきましては、重症度を考慮いたしまして学校生活管理指導表というものができておりまして、それに基づいて事後措置を行います。そういうところまで体制的にはできておりますが、課題はいろいろございます。健康診断実施は各都道府県、区市町の教育委員会に任されておりますので、検査法とか判定基準などは全国で必ずしも統一されていない。あとは、全国レベルでこれらのデータを疾病単位で取りまとめる仕組みができていなということです。

 例えば、これらの病気が見つかっても、学校へは心臓検診で異常が見つかった。では、どのように文科省に報告するかといいますと、「心臓の疾病・異常」という形で報告されることになっておりまして、その内訳が不整脈なのか、心筋症なのか、先天性心疾患なのか、あるいはその他の心疾患なのか、そういうものは統計に取られておりません。そのあたりが、学校心臓検診の結果をきちんとアウトカムとして出すことの困難さであろうかと思っております。以上でございます。

○辻座長 ありがとうございました。

 では、最後になりましたけれども、国保中央会の保健事業の評価につきまして飯山委員からお願いいたします。資料8になっております。

○飯山委員 国保中央会の飯山でございます。資料が少し後のほうにございますが、「国保・後期高齢者ヘルスサポート事業における保健事業の評価について」という資料でございます。

 国民健康保険における保健事業につきましては従来国庫補助がございますが、現在の補助事業の中に標記の国保後期高齢者ヘルスサポート事業がございます。これは最初のフレーズにございますように、平成26年度から3カ年、保険者が実施するデータ分析に基づく保健事業の計画、実施評価、いわゆるPDCAサイクルの取り組みについて支援するために、47都道府県の国保連合会に公衆衛生学、看護学の大学等研究機関、地域医師会等の関係者の先生方、都道府県職員、地域関係者等、2710月時点で326人の先生方を構成員とした「保健事業支援・評価委員会」を設置しているところでございます。さらに、この事業をサポートするために、国保中央会に「国保・後期高齢者サポート事業運営委員会」を設置いたしております。

 次のページに、このヘルスサポート事業のガイドラインを掲載してございます。その中で特に評価に着目して申し上げますと、事業の評価について検診や保健指導等の保健事業の実施体制、過程、評価について効果を立証し、今後の事業の見直しや改善を図り、次年度の企画立案につなげるために行っておりますので、この別紙1の下のほうにデータヘルス計画の策定支援、個別保健事業の計画策定支援、個別保健事業の評価と3つに大きく分けてございますけれども、それぞれ下のほうに支援評価委員会の支援手順という欄がございます。

 それで、それぞれのところでよく見ていただきますと、それぞれのPhaseでもその時点での評価を行うということで、個別保健事業を終わって全てを評価するのではなくて、途中、途中でも評価を行っていくというのが支援評価委員会の支援の仕方の特徴でございます。

 この評価自体につきましては、次の別紙2にございますように4つの区分、ストラクチャー評価、プロセス評価、アウトプット評価、アウトカム評価、この4点から行っております。実際の市町村の保健事業でどういうことが一番行われているかということを申し上げますと、やはり特定検診の未受診者対策、それからポピュレーションアプローチ、特定保健指導等未利用者対策、受診勧奨安定値を超えている方への受診勧奨、こういったことが行われていますので、先ほど来お話がありますように検診そのもの、それから事後措置というところが市町村の保健事業では行われた。それについて今、申し上げましたような4つの評価を行っているところでございます。

 従来の保健事業でまいりますと、評価は実施した事業量に対するアウトプット評価が中心でございましたが、事業を評価する上では事業の比較内容や実施体制が事業目的に応じて適切であったか否かを評価するストラクチャー評価や、実施過程が適切であったかを評価するプロセス評価も重要な視点となってございます。

 この4つの評価をさらに詳細化するということで別紙3でございますけれども、国保中央会ではストラクチャー評価やプロセス評価の面から評価する基準といたしまして、保健事業の手順に沿った評価基準というものを過去の事業支援の中から作成いたしまして、各保健者の皆様方に保健事業の自己評価に活用していただいているわけでございます。

 保健事業の手順に沿った評価基準といたしましては別紙3に少し細かく記載してございますけれども、企画立案に関するもの、準備に関するもの、それから事業実施で行うもの、最後に評価として行うものというように区分けして、それぞれを活用していただいている。このようなことで事業を行っているところでございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、これまでの御説明を参考にいたしまして全体の御質問、御討議をいただきたいと思います。今までの個別の話につきましては、時間の関係できょうは議論の対象ではなく、もう一度資料の1をごらんいただきたいのですけれども、この資料1の「健康診査等に伴う事後措置等について」ということにつきまして先生方から御意見をいただきたいと思っております。

 まず、御議論いただきます前に確認でありますけれども、事後措置等の質の向上を図るためには事後措置等についても評価することが必要なのだということでありまして、この評価を行うためには事後措置等の枠組みを設定すること、それから2つ目には評価の方法ですとか評価指標を設定すること、この2つが必要なのではないかと思いますけれども、このような前提で御議論いただくということでよろしいでしょうか。

 それでは、まず資料1の3ページをもう一度ごらんいただきたいと思います。ここにおきましては、「事後措置等の類型化」ということでこのように区切らせていただきました。タイミングとして検診の前、検診時、検診後で、それぞれに事後措置等がかかわるということで、その事後措置等の中身として情報提供、保健指導、受療勧奨、その他、この4項目が掲げられています。これにつきまして、何か修正もしくは御追加ありますでしょうか。

 では、今村先生どうぞ。

○今村委員 健(検)診前の事後措置も前年に受けているということを前提にして事後措置という言葉を使われていると思うのですけれども、先ほど各先生からいろいろな御発表をいただいて、そもそも健(検)診を受ける前の情報提供、それは健(検)診を受けていない人たちも含めてですが、情報提供の意義は非常に重要だと思っております。

 例えば、100%受けなければいけない義務のある健診も受けていないという実態があるとすると、それは本人の自己責任で受ける、受けないという話ではないわけです。

 そういうことも含めて、例えば一般の方は自分が受けている健(検)診はどういう意味なのかほとんど理解していないのではないでしょうか。働いている労働者の方たちも、特定健診や事業主健診と言っているのは、提供者側のいわゆる法律の枠組みで言っているだけであって、受ける方たちはほとんどそういうことを理解していない。私は、もっと広くそういうことを理解していただくための事前の情報提供というのは非常に重要なのではないかと思っておりますので、そういう範囲で含めていただければありがたいと思います。

 それから、先ほど委員長から詳しく御説明いただいた、構造、情報提供、保健指導、受診干渉、そしてストラクチャー、プロセス、アウトカム、これは非常にすばらしいと思って伺っていたのですが、唯一気になっているのは、さきほどの飯山委員のご説明ではアウトプットとアウトカムをきちんと分けておられる。実は、この6ページから後にずっと書いているのを見ますと、アウトカムとアウトプットが混在しているところが散見されます。そこはぜひアウトプットとアウトカムを分けるという整理をしていただいた方がよいと思っております。私からは、以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。これにつきまして何かございますか。ほかでも結構ですけれども、この事後措置等の類型化につきまして今、今村先生から言われた話としては、事後措置等ということにはなっているけれども事前のこともかなりきっちりやるようにということがあったかと思います。これにつきましては、いかがでしょうか。

 井伊先生、どうぞ。

○井伊委員 事後措置等の類型化については、これは割とわかりやすいかと思いました。

 その前の「評価の考え方」のところに、評価のイメージとして検診があって事後措置等があるのですけれども、先ほど私は横須賀市の御発表を伺って、実施主体をこの検診はどう位置づけているのかということが大変その事後措置のあり方までつながっていくと思いましたので、評価の考え方の前提が必要なのかと思いまして、事後措置等の類型はこれで何の異論もないのですけれども、考え方に少し加えるべきかと思いました。

○辻委員長 ありがとうございました。非常に貴重な御意見だと思います。そのように変えていきたいと思います。ほかにどなたかございますか。

 では、本田委員どうぞ。

○本田委員 ちょっと関連して質問なのですけれども、事後措置のことはそれでいいのかもしれないですが、私も先ほどの各先生方の発表を聞いていて、今回のことに関係があるのかどうかもわからないのですけれども、そもそも何の検診でどういう項目をしているのかというのが、がん検診はもとより学校検診も全国でばらばらで、そういうばらばらのものをばらばらやっていて、できています、できていませんと言うのはどうかと思っています。

 例えば、ちゃんと国が指針を出しているがん検診があるとか、指針がないものであればつくるとか、そういう事前のことというのはここでは関係ないという分け方なのでしょうか。ちょっとわからなくて質問なのですけれど。

○辻委員長 その辺、事務局のほうはいかがですか。

○右田保健指導専門官 こちらの検討会では、全てその自治体等で行われている検診を対象に考えているということでございます。

○福島健康局長 評価をする場合、もちろんどういう項目を採用しているかどうかということも含めて、つまり有効なもの、有効じゃないものも含めて、そういうことも多分評価の対象にすべきでありますし、先ほど今村先生がおっしゃったように最初の情報提供から始まって最後の出口まで、それは回っていく場合もあるので事前、事後というのをどう分けるかという議論はありますけれども、そういう意味では検診を取り巻く全ての要素というものを評価の対象にすべきであるというのがまず基本であって、その際にどういう観点で見るかというとき、3ページにあるような行う対応の仕方の違いと、それから評価の観点は、先ほど特にストラクチャー、プロセス、それからアウトプット、アウトカムという観点で評価をすべきということについて、多分そこの基本的な考え方については私どもはそうだと思っておりますし、きょうプレゼンしていただいたそれぞれの個別のものは、それぞれの目的に応じてそれぞれ違うのですけれども、そこを全部、これは検診全体についての統一的な考え方を整理する会なので、そういう観点では今、御質問のあったことも含めて当然に評価をすべきであろうと事務局としては思っておるということです。

○今村委員 本田委員に御質問なのですけれども、様々な健(検)診の中で項目がばらばらだということをおっしゃっているのですか。そうではなくて、当然その対象となる世代によってどのような検査を行うのかというのは長い歴史のなかで、それぞれ専門家がこの世代にはこういう項目が必要だということで議論をされてきた。

 ただ、その健(検)診を行うに当たって事前の情報提供や、実施後の保健指導、事後指導のいわゆるストラクチャーがそれぞれの健(検)診ごとにばらばらなので、日本にある健(検)診全体としてそれを整理したいということをここで議論するという理解で私はいるのですけれども、いかがでしょうか。

○本田委員 私の理解がよくわかっていないのですけれども、年代によって違ったり、目的が違うわけですから、それぞれの大きな検診の項目が違うのは当然です。

 でも、例えばがん検診でもいいですし、学校検診でもいいのですけれども、その同じ検診がそれぞれの自治体なりそれぞれの学会なりでされていますね。そこで採用している項目が違うという状況を評価しないのか、それはどこで評価するものなのか、それはここでは関係のない議論なのかということを今、質問したので、それは評価の対象だというふうな理解だったのですが。

○福島健康局長 先ほどがん検診の例がございましたけれども、がん検診であればがん検診の項目が、我々が推奨しているがん検診ではないものを採用している市町村が実際にある。例えばそういうことを含めて、その市町村が個別の事業として評価する場合に何を見るかという観点、つまり評価者を誰にするかという観点でまた違ってくるのですけれども、市町村がその検診自体をどういうふうに評価するかという観点で評価すべきものと、それから国としてそういうものがなされているということをどう考えるのか。多分、それは評価者の視点によって変わってくると思います。

 それで、がん検診はがん検診で、がん検診の検討会がずっと従来からございますけれども、その中でも特に加速化プランの中でも推奨しない検診というものを今後明らかにしていくということを示しております。

 これは、やはりきちんとエビデンスのないもの、明らかになっていないものについて、そういうものについてはやはりそうではないということも含めて、もちろんその判断は最終的にそれぞれの自治体が判断をされるものかもしれません。実施者が判断されるものかもしれませんけれども、私どもとしては推奨しないものは推奨しないということも含めて明らかにしていくことが大事であろうという考え方になっているわけで、そういうことも含めて全体としてそういうことがどれくらい行われているかということについては、私どもとしてもそれは把握する必要があるという観点で今、本田委員がおっしゃったように項目の違いというものも把握すべきであろうということについては当然、私どもは視野に入れているということで申し上げたということです。

○辻委員長 森委員、どうぞ。

○森委員 3ページで、事後措置の考え方は、記載された範囲でまったく異論ありません。一方、2ページの評価の目的に「目的の達成度などの有効性・安全性・効率性も評価する必要がある」と、当たり前のことが書いてあるのですが、評価の目的として、目的の達成度より、5ページにあるような改善に結び付けることの方が重要ではないかと思います。

 というのは、後でストラクチャーとか、プロセスとか、アウトカムの評価をしたときにこれは本来、並列なものではなくて、例えばアウトカム目標が達成できないときにどこが問題になったのかということを、ストラクチャーやプロセスの評価と結び付けて見ていき、改善すべき点を明らかにしていく。その方が、改善が結果的に起こりやすくなります。

したがって、評価の目的に改善という言葉があったほうがいいのではないかと思います。

○辻委員長 ありがとうございます。その観点は非常に重要ですので、盛り込んでいきたいと思います。ほかにございますか。

 次は、4ページに移っていただきたいのですけれども、「事後措置等のイメージ」ということで、対象者の選定基準の設定でありますとか、実施時期に応じた実施方法の明確化、それから知識や技術の研修ということで、大きく3つ書いてございますけれども、これにつきまして追加はないでしょうか。もう一つ、情報提供、保健指導、受療勧奨のそれぞれについて例示させていただきましたけれども、これにつきましても何か追加するようなこと、あるいは何かキーワード的なことをお出しいただければ深めようがありますので、それにつきまして何か御意見をいただければと思います。よろしくお願いします。

 森委員、どうぞ。

○森委員 それほど多い例とはいえないかもしれませんが、職域において、健診の前に保健指導を行って、健診に向けて改善を目指させるという例があります。

 それはなぜかというと、多くの受診者には、健診場面において、いい成績を上げたいという動機がありますので、その前の準備の段階からかなり積極的に関わり、さらには健診後の生活習慣も維持させようとする試みです。それによって、結果的に全体の健康高度が向上するというような取り組みをしている企業もあるので、一部の企業であっても、ここを斜線にしてしまうのはもったいないと思います。

○辻委員長 この保健指導のところですね。検診前のところで、保健指導のところが斜線として何も入っていないところですね。ありがとうございます。

 ほかにどなたかございますでしょうか。

 では、青柳委員どうぞ。

○青柳委員 今、森委員がおっしゃられたように、地域保健活動におきましても日ごろの活動の中であらゆる場面を通じてポピュレーションアプローチを情報提供等も含めて行っておりますが、継続的に健康相談等でフォローしているというケースもあり、その結果次の検診受診につながったり、生活改善につながっているという現実もありますので、この保健指導の検診前は斜線ということではなく、ここにはさまざまな行動変容ステージに応じた受診勧奨や生活改善に対する保健指導も行っているということで、ぜひそれを明記していただきたいということが1点です。

 それから、「事後措置等」という表現が現場の地域保健活動の中ではなじまない気がします。保健師活動の中では、検診の延長線上に保健指導や情報提供があるわけではなく、あくまでも検診はその人をより健康な状態にするための一つの手段であると考えておりますので「事後措置等」という表現がどうなのか、この場で提案はできないのですが、ほかに適切な表現があるのか、再考をお願いしたいと思います。

○辻委員長 ありがとうございます。私もというか、事務局も含めてその問題意識は大変持ってございまして、ネーミング募集中でございますけれども、それも含めて御意見をいただきたいと思います。どなたかございますか。

 では、飯山委員どうぞ。

○飯山委員 先ほど来、検診の前のところが話題になっておりますけれども、市町村で特定検診の検診時期等を定めているわけですが、その前のところでいつもかかっている主治医の先生に、この前見たら特定検診を受けていないけれども、今年は行ったらどうかというように勧められると相当効果があるということを、検診実施率の向上した保険者から聞いておりますので、これもぜひそういうことがあればと思います。

○辻委員長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。

 春日先生、どうぞ。

○春日委員 先ほどの議論と関係あるんですけれども、ピントがずれているかもしれないのですが、特にがん検診に関して検診の限界といいますか、あるいは一般的なイメージとして、がん検診を受けていればがんに関して絶対に安心だと誤解されてしまうようなところがあるので、それはこれからの問題なのかもしれないのですが、やはり検診のこの方法ではこれくらいのものだということまで今後はお知らせするというのはどうかという印象があります。

○辻委員長 ありがとうございます。

 斎藤先生、これについて何かございますか。

○斎藤参考人 非常に重要な御指摘だと思います。先ほどもちょっと言及しましたけれども、利益だけではなく不利益の情報も同じレベルで提供するということが必要だと思います。

 ただ、問題は、例えば今の限界についてどの指標を提供するかということです。つまり、市民がそれを受け取って本当に腑に落ちるかどうかということですが、例えば感度というのがあります。ただ、感度というのはがんによっても違いますけれども、検診が繰り返しのプログラムであることとか、いろいろな説明が要りますので、そういった指標をどう伝えるかですね。死亡リスクがどのくらい下がるかとか、そういったいろいろな情報がありますけれども、今は例えば1万人に提供した場合にどのくらいの人が精検を必要として、その中にどのくらいのがんがいて、落ちるがんはどれくらいでというふうな例がよく出てくるのですけれども、どういった情報を提供するかというのは我々も検討中というところです。重要な課題だと思っております。

○今村委員 お2人の御意見はもっともだと思うのですが、今、国はまずとりあえずがん検診の受診率を上げるということを国策としてある程度目標としている。その中で、我々は患者さんに接するなかで、もちろん先生方もそうだと思うのですけれども、詳しい情報を提供したときにそれを患者さん自身が適切に判断できるかどうかというのは大変大きな問題で、今、斎藤先生がおっしゃったような感度であるとか、そういう話をしても医学の専門家であってもなかなか理解が難しい中で一般の人にその選択、メリットとデメリットを提供したときに、では私はどうすればいいのですかということを必ず我々に訴えてきます。そうすると、我々はできるだけ受けた方がいいという趣旨のことをざっくりとした言い方で伝えることになる。

 ですから、アカデミアの世界の中である程度ここまで情報提供すれば国民にも理解していただけるという具体的なことを出していただかないと、詳細になればなるほど難しくなるというのが正直な感想ですので、ぜひそこは先生方によろしくお願いしたいと思います。

○斎藤参考人 それは、本当に重要なことだと思っています。

 もう一つ必要なことは、先ほど来、出ていましたけれども、やはりコミュニケーションということで、別枠でエビデンスに基づいた情報についてコミュニケーションをどうするかということをもっと検討しなくてはいけないと思っております。

○辻委員長 ありがとうございます。ほかにどなたかございますか。

 では、まず井伊委員、その後に迫委員どうぞ。

○井伊委員 ただ資料の構成なんですけれども、3ページの事後措置は4つあって、そしてイメージは3つで、「その他」がない。

 それから、最後の評価指標の例では「その他」が出てくるので、「その他」を入れて資料をつくっていただいたらいいと思いました。

○辻委員長 ありがとうございます。

 迫委員、どうぞ。

○迫委員 ありがとうございます。先ほどがん検診のお話を伺っておりまして、対象者の方の自己決定という部分に非常に感銘を受けたところでございます。全ての検診はやはりどう選択されるかというところが重要と思います。今回のこのイメージにしても、それから評価にしても、実施する側の視点であって、受診された方の評価の視点というものが入っていないような気がいたします。

 その辺は健やか親子の指標には若干入っているのですけれども、多分とりにくい数字だろうと思われますし、特定検診であっても、また特に義務の産業保健の検診等の中で未受診者がまだまだ非常に多いということを考えていきますと、自己決定のところとあわせて対象者の自己評価、参加の意欲というあたりをきちんと評価していくべきではないかと思いました。以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 あとは、資料1の6ページ、7ページのところで、評価指標として「なし」と書いているところがあるのですけれども、この「なし」というのは「ないであろう」ということではなくて、現時点では思いつかないという部分も多々ありまして、これにつきましてこういうのはどうであろうかとか、あるいはもう既に書かれているものについても御追加とかございましたら、何か御意見をいただきたいと思います。

 では、弓倉委員どうぞ。

○弓倉委員 済みません。学校保健でストラクチャー評価は全てなしになっているのですが、申しわけありません。私がもうちょっとお話すればよかったかと思うのですけれども、情報提供につきまして学校では今、全ての学年の児童生徒の保護者に保健調査票というものを配っておりまして、そこで現在のお子さんの保健状況ですとか、健康診断のお知らせですとか、そういうものを提供しておりますので、これは情報提供の中で保健調査票というものは入れられるかと思います。

 それから、保健指導のところも乳幼児健診で従業者への研修体制とか、そういうものを入れているようですので、それを入れることが許されるならば、ここには学校医及び養護教諭の研修体制というものがございますので、これは文科省主催の講習会等もございますし、それを加えていただければよろしいかと思います。

 あとは、受療勧奨につきましては少なくとも心臓と腎臓と糖尿病、それからアレルギー疾患につきましては学校生活管理指導表といって、これは日本学校保健会がつくったもので、法律に書き込まれておりませんが、学校生活管理指導表をつくるときには文科省の方が入っていただいて、そして文科省がそれを認めているという形でこれをつくって全国の学校に使っていただいておりますので、学校生活管理指導表を入れていただければと思います。

○辻委員長 ありがとうございます。

 まだ御意見はあろうかと思うのですけれども、次の議題もございますので、これにつきましてはここで閉じさせていただきますが、御意見がありましたら、メールやお電話で事務局のほうにお伝えいただければと思います。どうぞよろしくお願いします。

 では、議題の2に入りたいと思います。本日は、参考人といたしまして、特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会の永井良三座長に御出席いただいています。まず、永井先生のほうから検討会での検討の概要についてコメントいただいた後、事務局から資料6を説明していただきます。その上で、また改めて永井先生のほうから資料7を用いて検討会のポイントについて御説明いただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○永井参考人 私は、特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会の座長を務めております。

 資料6をごらんください。「特定健康診査・特定保健指導の在り方について」、これまでの議論の整理が掲載されております。私は、この目的、何のためにこうした検討会が行われているかということを最初に御説明いたしまして、内容につきましては事務局からお願いしたいと思います。

 検討会の目的は2ページ、1枚めくっていただいた裏側に記載されております。特定検診は、平成20年度から高齢者の医療の確保に関する法律に基づいて、保険者が40歳から74歳までの被保険者、被扶養者に対して実施しているものであります。

 内臓脂肪の蓄積が生活習慣病の発症に大きく関与おり、内臓脂肪を減らすことによって糖尿病、虚血性心疾患、脳血管疾患等の発症リスクの低減を図ることができるのではないかという考えに基づいています。そこで、血圧、血糖、脂質等に関する健康診査の結果から、生活習慣の改善が特に必要な方々を抽出して、医師、保健師、管理栄養士等がリスクの程度に応じて動機づけ支援、積極的支援等の生活習慣の改善のための指導を行う。これによって、生活習慣病の予防を行うことが目的であります。

 しかしながら、法律によりまして5年を1期として定める。すなわち、平成30年度に第3期の特定健康診査等実施計画が開始されるため、この時点で検診項目等の見直しを行う必要があるということで検討会が発足いたしました。

 検討会では、科学的エビデンスということを重視し、文献あるいは厚生労働科学研究等によって新たに蓄積されましたデータに基づいて、特定検診に必要な項目、実施方法等の技術的事項について検討してまいりました。

 内容につきましては、事務局からお願いいたします。

○高山健康課長補佐 事務局でございます。特定検診・特定保健指導の在り方に関する検討会の整理のポイントについて御説明をさせていただきます。

 資料の6の、まず6ページをごらんください。検討会では、目的や特定検診の基本的な考え方についても議論が行われました。

 「1.特定健康診査の目的について」ですけれども、特定健康診査の目的は、虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子である糖尿病、脂質異常症、高血圧症を評価すること、危険因子の増悪によって惹起される生活習慣病の重症化の進展を早期に評価することである。」と整理されました。

 基本的な考え方について議論されましたけれども、これらの虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子である糖尿病、脂質異常症、高血圧症を評価する基本的な項目と、危険因子の増悪によって惹起される生活習慣病の重症化の進展を早期に評価する詳細な検診の項目で、かつ介入可能なもので検診項目は構成されるべきであろうという考え方のもとで議論が進みました。

 第2回の専門委員会のほうに脂質のところまでは御報告をさせていただいておりますので、10ページの代謝系のところからポイントを御説明させていただきます。

10ページの「2)尿糖について」ですが、「尿糖は健診項目として廃止することも可能とする。」という結論になりました。尿糖は腎臓の排泄閾値に影響を受けること、特定健康診査では血糖もしくはHbA1cの血液検査が実施されますので、健診項目から廃止することも可能であるという結論になりました。

 それから4.の「肝機能について」ですけれども、肝機能検査は肝機能障害の重症化を早期に評価するための検査でありますので、基本的な項目ではなく詳細な健診の項目へと位置づけを整理するというような議論が行われました。

11ページの2)ですけれども、肝機能検査の対象者などについて検討が行われまして、肝機能検査はNAFLD/NASHやアルコール性肝障害等を対象疾患とする。そのため、血圧、脂質、代謝系検査が保健指導判定値以上の者や問診等で不適切な飲酒が疑われる者で医師が必要と認める者に対して実施するとされました。

 また、「3)肝機能の検査項目について」ですが、特に虚血性心疾患や脳血管疾患等の発症予測能の低いAST(GOT)は、特定健康診査の健診項目から廃止することも可能であるというふうな議論が行われました。

 続きまして、5.の「尿腎機能について」ですが、肝機能検査と同様の議論が行われまして、こちらも基本的な項目から詳細な健診の項目へと位置づけを整理するというような議論が行われました。

 2)対象者のところですが、尿腎機能検査では40歳から74歳の対象者に多く見られる、腎機能障害である高血圧による腎硬化症、糖尿病による糖尿病性腎症等を対象疾患とする。そのため、血圧や代謝系検査が保健指導判定値以上の者で医師が必要と認める者に対して実施するとされました。

 また、検査項目ですが、2)の1つ目の「〇」のところに記載があるのですけれども、若年者に多く見られる腎機能障害の主な原因は、尿たんぱく検査が早期発見につながる慢性糸球体腎炎である一方で、中高年者に多く見られる腎機能障害の主たる原因は、糖尿病性腎症や腎硬化症ではないかということから、3)になりまして特定健康診査の詳細な健診項目としては血清クレアチニン検査を実施するものとする。糖尿病性腎症等の重症化予防などが課題となっている保険者が、尿たんぱく検査をあわせて実施することも可能であるという結論になりました。

 その下の2つ目の「〇」のところに、より詳しい内容が書いてございますが、先ほど申し上げましたように中高年者に多く見られる疾患では血清クレアチニン検査を実施することが妥当ではないかという内容が書かれてございます。

 また、6.目ですが、「血液一般について」の議論がされましたが、血液一般、特に貧血検査とよく呼ばれているものですけれども、貧血の重症化を評価するための検査である。しかしながら、先ほど永井座長からもお話がありましたが、内臓脂肪の蓄積に起因する生活習慣病ではないという整理になりまして、特定健康診査において実施すべき検診項目としては廃止をすることも可能であるという議論が行われました。

 続きまして、7.目の12誘導心電図です。12誘導心電図は現在、次年度に詳細な健診として実施するということになっておりますけれども、臓器障害が出ている方を対象とするというような議論が行われまして、次年度ではなく速やかな受診勧奨を行うこととする。ただし、特定健康診査において速やかに検査の実施が可能な場合は、引き続き詳細な健診として実施することは妨げないというような結論になりました。

 また、2)で心電図検査の対象者についてですが、心電図検査は左室肥大や心房細動等を対象疾患とすることが妥当ではないか。そのために、血圧が受診勧奨判定値以上の者や問診等で不整脈が疑われる者で医師が必要と認める者に対し実施するという整理になりました。

 「眼底検査について」も同様の枠組みで議論が行われまして、次年度に詳細な健診を実施するのではなくて、速やかな受診勧奨を行うということになります。

 2)の対象者のところですけれども、眼底検査は高血圧性網膜症や糖尿病性網膜症などを対象疾患とする。そのため、血圧または代謝系検査が受診勧奨判定値以上の者で医師が必要と認める者に対して実施するという整理になりました。

15ページにいきまして、「9.腹囲について」ですが、こちらも詳細なエビデンスが提示されまして検討が行われました。その結果、1)ですが、「虚血性心疾患・脳血管疾患は、腹囲にかかわらず血圧、血糖、脂質等の危険因子と関連している。」という整理になりました。

 続きまして、16ページで「腹囲の位置づけについて」ですが、そういう整理のもとで腹囲については基準以上の者で危険因子が重責する者では内臓脂肪の蓄積が危険因子を増加させる主たる原因である。そのため、腹囲は内臓脂肪の減少を図る特定保健指導の対象者を効率的に抽出する簡易な手法であるということが確認されました。

 しかしながら、腹囲は感度・特異度などの測定制度にも課題があるということもわかりましたので、より適切な検査法が今後求められるというふうに整理をされております。

 また、3)の「保健指導対象者の選定・階層化について」のところですが、保健指導対象者の選定・階層化基準においては非肥満者を含めて血圧、血糖、脂質等の危険因子による循環器疾患の発症リスクが高いものを抽出し、腹囲が基準以上の者については従来の介入方法、こちらは特定保健指導になりますが、これを選択する。また、腹囲が基準未満の者については新たな介入方法を行うことが妥当であるとされました。

 「腹囲の基準値について」ですが、検討会では「腹囲の基準値は、男性85cm以上、女性90cm以上とする。」というふうに合意をされました。こちらの理由については、2つ目の「○」のところに記載がありまして、女性の腹囲を85センチへ変更した場合の虚血性心疾患、脳血管疾患の発症リスクを実は研究班から報告をいただきましたが、腹囲を変更しても発症リスクがさほど変わらないということがわかりましたので、現在の基準値を維持するというような整理になっております。

 5)ですけれども、前回の検討会からの宿題事項でもありますが、現在は特定保健指導の対象とならない非肥満の危険因子保有者への対応について議論がされました。今までの検討会での議論も踏まえまして、循環器疾患による年齢調整脂肪率などを低減するためには、現在は特定保健指導の対象となっていない被害肥満の危険因子保有者に対して、従来の特定保健指導の対象者と同等程度の介入を実施していくべきであるとされました。

 それで、1つ目の「○」に記載がありますが、腹囲が基準未満で危険因子を保有する者のうち、内臓脂肪の蓄積がある者は特定保健指導で対応が可能ですが、内臓脂肪の蓄積以外の原因に起因する危険因子が集積する者についてはその原因を特定し、可能な介入方法を検討する必要があるということで、今後検討会でも研究班からの報告を待って検討していくものとしております。

 6)ですけれども、我が国のメタボリックシンドロームの診断基準が諸外国と異なるということをどう考えるかということで議論が行われましたが、こちらについてはメタボリックシンドロームの診断基準はこれらの検討も踏まえて学術的に再検討を行う必要があるだろうと検討会では意見が出されまして、今後学術的な検討を行うよう、関係学会に求めるということにしております。

 おめくりいただきまして、18ページです。「理学的所見(身体診察)について」ですが、特定健康診査においても自覚症状や既往歴等の確認などの問診、聴診、脈診などの基本的な身体診察が必要であるということが確認されました。特に、貧血や不整脈については質問項目での把握に加えて、身体診察での確認を行う必要があると考えております。

 最後に、「標準的な質問項目について」の議論が行われました。こちらは1つ目の「○」のところですけれども、糖尿病、脂質異常症、高血圧症などの危険因子や虚血性心疾患、脳血管疾患の発症・死亡の予測能等を踏まえて、既存の項目、追加の項目について検討された改訂質問票(案)が提出をされまして、その結果、以下のような議論が出されております。こちらは後ほど参照していただければと思いますけれども、さまざまな意見が出されまして、現状において一つの質問票というものを作成するというところまで議論が現在は至っておりませんで、今後継続的に検討していくべきものというふうに検討会ではさせていただいております。

 長くなりましたが、事務局からは以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、永井先生のほうから資料7を用いまして、検討会のポイントについて御説明をお願いいたします。

○永井参考人 資料7で、「腹囲に関する統計学的考え方について」、説明させていただきます。

 問題は、腹囲第一基準をどう考えるかということです。この背景には非肥満者もリスクがある場合には心血管イベントを起こす確率が高いということがあります。

 特に参考資料1の38ページ、あるいは32ページに非常に重要なデータが出ておりますので、後ほどごらんいただければと思いますが。資料7を最初に1枚めくっていただいた裏側に「リスクファクターの集積に関するROC曲線解析」があります。これは参考資料1の38ページに出ている図です。腹囲の基準を何センチにすると、危険因子を一つ以上もつ人たちを検出する感度と、危険因子を一つも持たない人たちを除外する特異性がどう変わるかということを示した図です。

ROC曲線というのはなかなかわかりにくいので、簡単に説明させていただきます。現在、男性では85センチ以上を肥満の基準値としています。その感度0.71、特異度0.56とは何を意味しているかということを、次のカラープリントの正規曲線の図で御説明したいと思います。

 これは危険因子がない群をA群とし、危険因子が1つ以上ある群をB群とする。左のグリーンは危険因子がない群で非肥満者が何%存在するかを示したものです。

85センチで切ったときに感度71%ということは、危険因子1つ以上持っている方のうちの71%をピックアップするということです。特異度56%というのは、危険因子のない人たちのなかで、腹囲85センチ以下56%になる。これが、感度と特異度の意味です。

 この図は腹囲を標準正規分布とし、有リスク者と無リスク者がそれぞれ1対1の数とした場合ですけれども、実際には危険因子を1つ以上持っている方は持っていない方の3.7倍くらいだというデータがあります。ですから、絶対数ではB群のほうが3.7倍ぐらいの面積になります。

 そして、1マイナス特異度というのが44%です。要するに、85センチ以上を肥満とした場合には、危険因子のある方と危険因子のない方がこんな面積の割合で混じってくる。あるいは、これは3.7倍したほうがもっと正確かもしれませんが、要するにフォールスポジティブ、フォールスネガティブがかなりあるということなのです。また2つのピークはかなり接近しているということです。

 次に、それぞれの群からどのくらいの頻度で心血管イベントが起こるかということが重要です。それが次の図です。ハザード比と書いてありますが、このハザード比というのは全循環器疾患の年齢調整ハザード比というもので、おおよそ心血管イベントと言っていいと思いますが、参考資料1の32ページから持ってきた数字が書いてあります。

 ただ、私がこの数字を記入するときに古いデータを使いましたので、訂正させていただきます。茶色のところのハザード比:動機づけ1.97というのは1.66に変えてください。積極的支援群は3.17ではなく2.92グリーンの縦線の部分、これは危険因子が1つ以上ある群で非肥満者ということになります。85センチ以下で、ハザード比が情報提供群で2.27ではなくて、これはリスクが1つの方で1.78倍、2つ以上の方で1.91倍です。いずれも有意差があります。また、細かい数字は訂正させていただいた図を公表させていただきます。

 それから、一番下の斜線の部分、危険因子がなくて肥満の方ですね。グリーンの斜線の部分ですけれども、これはA群の44%、ハザード比は1.09倍です。信頼区間0.64から1.86で有意差はありませんが、要するに危険因子がない方の85センチ以上は余り問題ないということです。

 それから、危険因子が1つ以上あって非肥満の方、グリーンの縦線ですが、この方々はリスクファクターの数によって1.78倍から1.91倍のハザード比があります。もちろん危険因子が1つ以上あって肥満の方が一番リスクは高いのですが、現在、85センチ以上を第一基準として保健指導をしますと、危険因子を持っていて、かつハザードも高い方々、これは有危険因子群の約3割にあたりますが、この方々が保健指導を受けていないということになります。このため果たしてこの腹囲第一基準というのが今のままでよろしいのかという問題提起となります。以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 予定の時間を若干過ぎておりますけれども、非常に重要なことですので、この資料6から7にかけまして5分から10分程度、少しお時間をいただいて御質問、御意見をいただきたいと思います。どうぞ。

○今村委員 事務局へのお願いです。今、特定健診保健指導の見直しについては御存じのとおり、健康局における永井先生が座長の「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」の中で、エビデンスに基づいて健診項目をどうするかということについて、根拠法にのっとって、内臓肥満の蓄積ということを前提にして生活習慣病という視点で健診項目を御議論いただいております。そのほか、実際にこの健診を国民に制度として実施するか否かについては、保険局の「保険者による健診・保健指導等に関する検討会」、さらに労働安全衛生法の事業主健診ともこれは結びついておりますので、労働基準局の「労働安全衛生法に基づく定期健康診断等のあり方に関する検討会」等が同時並行で走っているということがあります。

 このエビデンスに基づいた健診項目の決定というのは非常に重要なことですけれども、先般、新聞紙上で、健診の項目があたかもこうなるというような間違った報道がなされました。委員の先生方は、保険局の検討会に出ておられる先生もいらっしゃるし、皆さんいろいろな議論を聞いておられると思うのですけれども、そうでない方たちもいらっしゃるので、この検討会は健康局に設けられているにしても、やはり広く全般で健診とはいかにあるべきかということを議論するのであれば、他の検討会の議論についても同時に出していただかないと、ちょっとその議論が偏ってしまうかと思っています。

 実は、健康局の検討会の議論では今の内臓脂肪の蓄積ということを前提とすれば、貧血の項目というのは当然対象外という結論になるのでしょうが、保険局の検討会では、被扶養者にとっては、今、唯一国民として受診できる公的健診がこの特定健診しかないこと、加えて今は貧血大国である日本、特に女性の貧血というのが非常に問題になっている中で、こういった健診項目が落ちることは問題だという認識が保険局の検討会では示されています。

 そういった意味で、この検討会は広い視野で健診というもの、日本の国民が受けられる健診というものはいかなるものかということを論ずるのであれば、そういった議論も当然この検討会でやっていただくほうが私はいいと思っています。

 確かに法律の目的や理念は大事ですので、それを無視はできないにしても、その内臓肥満、蓄積に起因するものだけで本当にいいのかというそもそも論をどこかでやらないと健(検)診が変わらないというふうに私は思っています。私のお願いは、ちょっとくどくなりますけれども、ほかの検討会の議論についても報告をいただければと思っています。

○辻委員長 ありがとうございました。

 ほかにどなたか御質問、御意見はございますでしょうか。よろしいですか。特にございませんか。

 では、今村先生の御意見については事務局としてもやっていくということでよろしいでしょうか。

 それでは、ほかにないようですので、本日の議事は以上となります。その他につきまして、事務局から何かございますでしょうか。

○高山健康課長補佐 次回の検討会につきましては、また改めて御連絡をさせていただきます。以上です。

○辻委員長 それでは、本日の第3回「健康審査等専門委員会」を終了いたします。活発な御議論をいただきまして、どうもありがとうございました。

 


(了)

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