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2016年5月23日 第2回データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会議事録

○日時

平成28年5月23日(月)16:00~18:00


○場所

全国都市会館3階 第1会議室


○議題

1.諸外国におけるICTとビッグデータの活用に関する取組みについて

2.社会保険診療報酬支払基金における業務効率化等に関する取組みについて

3.社会保険診療報酬支払基金によるプレゼンテーション

○議事

○西村座長 定刻よりもまだ1分ぐらい早いですが、皆さんおそろいですので、開始させていただきます。第2回「データヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた有識者検討会」でございます。きょうはお忙しい中、皆さんお集まりいただいて、大変ありがとうございます。

 きょうの出欠ですが、神成構成員から欠席の連絡をいただいております。あと、皆さんおそろいでございます。

 最初に、前回欠席されました葛西構成員、金丸構成員、林構成員、このお三方に簡単に自己紹介をお願いしたいと思っております。

 葛西構成員から、よろしくお願いします。


○葛西構成員 情報処理推進機構、葛西でございます。よろしくお願いいたします。

 前回欠席いたしまして、済みません。失礼いたしました。私、手短ですけれども、約15年ぐらいでしょうか、中央省庁と、今、独立行政法人におりますが、どちらでも、皆様とちょっと立ち位置が違いまして、現場でシステム導入をずうっとしてきております。その中で、制約条件であるとか前提条件とかさまざまな条件の中で、何とかシステムを実現しなければいけない状態を目の当たりにしている身としては、ちゃんとしたデータヘルスを実現するためにどのように、その制約条件、前提条件、1個ずつ課題解決すればいいかという現実的な問題にのみ、どちらかというと興味がございます。どちらかというと、データヘルス、余り特別に詳しいわけではありませんので、そちらはちょっと勉強させていただこうかなという状態でございます。どうぞよろしくお願いいたします。

○西村座長 それでは次、金丸構成員、よろしくお願いします。

○金丸構成員 金丸でございます。

 前回、ほかの政府関係の会議の座長をしておりまして、会議が重なりまして欠席とさせていただきました。私は、本業はデジタル技術、IT技術を活用した経営改革、業務改革を推進する会社の経営者でございます。政府の会議では、規制改革会議の健康・医療ワーキングの委員やIT総合戦略本部の本部員、それから、産業競争力会議の委員もしております。また、私自身は当社グループの健康保険組合の理事長も兼務しておりまして、そういう意味では、私の本業の知見と経験、そして保険者として、今回のテーマの検討会に関しまして、微力ながらでございますが、貢献したいと思っております。よろしくお願いいたします。

○西村座長 よろしくお願いします。それでは、次、林構成員、お願いします。

○林構成員 ありがとうございます。弁護士の林いづみと申します。

 専門分野は知的財産でございます。この会議には、規制改革会議の健康・医療ワーキング座長代理として、翁座長とともに参加させていただいております。現在、IoT推進コンソーシアムの委員としてデータ流通促進ワーキングや分散戦略ワーキング、内閣府では、人工知能についての懇談会やIT利活用の制度整備についての議論に参加しております。この会議を通じまして、この会議の目的としておりますデータヘルス時代の質の高い医療の実現に向けた制度ができるように、私も協力できればと思います。よろしくお願いいたします。

○西村座長 よろしくお願いします。

 それと、議事に入ります前に、もう一人、大臣の代理で、大臣補佐官の菅原晶子さんが御出席いただいております。ちょっと御挨拶をよろしくお願いします。

○菅原大臣補佐官 大臣補佐官をしております菅原と申します。よろしくお願いいたします。

 今回こちらで取り上げるテーマは今後の医療の質に大きくかかわる重要な課題だと思っておりまして、厚労省としても積極的に取り組んでいきたいと思っておりますので、専門家の皆様のお力をかりながらよいとりまとめをさせていただければと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○西村座長 それでは議事に入りたいと思いますが、最初に資料の確認を事務局からお願いしたいと思います。課長、よろしくお願いします。

○保険課長 事務局でございます。資料の確認をいたします。

 資料1 韓国健康保険審査評価院の機能・業務内容の紹介(廉宗淳氏御提出資料)

 廉先生からは、この資料とは別途、御厚意によりまして、机上配付資料「普遍的な医療保障を達成するための保健医療支出管理」という資料を参考配付させていただいております。

 資料2 諸外国の医療ビッグデータについて(満武巨裕氏御提出資料)

 資料3-1 審査・支払業務の効率化と審査支払機関が担う新たな役割について

 資料3-2 審査・支払業務の効率化と審査支払機関が担う新たな役割(イメージ)

 資料3-参考資料 診療報酬の請求から支払までの流れ等

              (以上、社会保険診療報酬支払基金提出資料)

 参考資料1 諸外国の審査支払制度(事務局提出資料)

 資料は以上でございます。資料に漏れ等があればお知らせいただきたいと思います。

○西村座長 漏れはございませんでしょうか。

 それでは、諸外国のビッグデータ等に関する専門家の先生方、それから社会保険診療報酬支払基金からのプレゼン等を予定しておりますが、最初に、韓国の健康保険審査評価院、HIRAに関する取組についてお願いし、続いて、諸外国のビッグデータの分析・活用について専門家の先生にお願いすると。それぞれ大体15分ずつお話を伺いまして、その後、ほぼ30分程度質疑応答ということにしたいと思っております。そういうことでよろしくお願いします。

 先生方の御紹介は、事務局の保険課長からよろしくお願いします。

○保険課長 それでは、ごく簡単に御紹介させていただきます。

 お一人目は、韓国の医療保険の専門家であります、e-Corporation.JP(イーコーポレーションドットジェーピー)代表取締役の廉宗淳(ヨム ジョンスン)先生でございます。

 お二人目は、医療情報学等の専門家でございます、医療経済研究機構主任研究員の満武巨裕先生でございます。

 以上でございます。

○西村座長 それでは、最初に廉先生からプレゼンをお願いしたいと存じます。よろしくお願いします。

○廉先生 それでは、韓国の健康保険審査評価院の機能と業務内容について説明を申し上げます。資料が2つあって混乱されるかもしれませんけれども、私が説明する資料は15分に合わせて説明するためのものであり、またもう一部、皆さんにお配りした資料は、昨年の12月、経産大臣、内閣補佐官と一緒にこの審査評価院を訪問した際に先方からいただいた資料であります。韓国政府の資料で、かなり細かい数字などが入っていると思いますので、御参考になればと思います。それでは説明いたします。

PP

 皆様も御存じだと思いますが、韓国の医療保険制度というのはそもそも日本の制度を土台にしてつくられたものであります。それもあることから、1998年ぐらいから本格的に実施されますが、医療保険審査をするためのシステムづくりなどがありまして、それを専門的にやってもらうためにつくられたのが健康保険審査評価院であります。3ページに詳細が書いてあります。

PP

 これが組織でございます。参考にしていただければと思います。

PP

 皆様と同じような仕事をする機構とその人員の比較をしていただければと思いまして書いてありますが、全員で2,115人、これが201412月現在でありまして、特にICTとどれほど関係あるかということを説明するために書いておりますが、一番下、ITと行政担当者というのが166名おりまして、ITの専門資格を持つPMPとかCISAとかICTの専門家がたくさん集まっていることを申し上げておきたいと思います。

PP

 次に、HIRAというのが審査評価院の略字でございますが、そのHIRAが持っているシステムの主な機能でございますが、医療サービスの基準を算定することと医療保険請求などに関するモニタリング、それとそれに対するフィードバックですね。その後、医療資源管理ということであります。医療資源管理というのは、医者先生とか病院の設備とかを全部入れて医療資源と申しております。

PP

 韓国では、厚労省という組織と同じような仕事をするところが、漢字が間違っていますが、保健福祉部です。韓国では、省ではなくて部と言いますが、この保健福祉部の下に国民健康保険公団というものがありまして、そこと一緒に仕事をしているのがこの健康保険審査評価院であります。健康保険公団というのはお金を集めるところでありまして、HIRAというのはお金を審査する品質分析をするところであります。

PP

 規模感がないといけませんので、規模感として、ちょっと変わったと思いますが、それほど違いがないと思って、医療機関総数をちょっと紹介しますと、2012年、4年も前の時点ですが、三次病院、大手病院が43、総合病院が317などなどがあります。特に日本と決定的に違うのは、三次病院というのがかなり大きいということが申し上げられると思いますが、多分アジアで一番大きい、アサン現代病院というのはほぼ3,000ベッド、セブランス病院というのは2,200ベッド、ソウル大学附属病院というのも2,000ベッド近くあり、大型化が進んでおります。

PP

 医療資源管理について説明申し上げますと、人材、それと装備、それと施設、この3つを保険審査評価院が管理しております。

PP

 特にこのごろ注目を浴びているのは、本日のビッグデータとも関係があるのですけれども、医療品質評価制度というのがありまして、病院から見るとかなり厳しいことでもあり、まともに病院経営をされている方から見ると非常にうれしいものでもあろうかと思います。目的は、医療の品質を分析して医療品質を向上させるためのものであります。また、医療品質の格差をなくす、また、コストパフォーマンスを上げるためのものであります。

PP

 この品質評価というのは2006年から始まり、2011年からは3段階のステージに上がっていって、今、4段階に入っていると聞いております。2012年時点で、品質評価項目というのがありまして、入院患者さんと外来患者さんごとに、ここから項目ふえていますけれども、個々の項目について各医療機関ごとの品質評価を行っております。

PP

 品質結果の活用でございますが、まず政府には政策開発のための情報提供として提供し、患者さんのためには病院選択の情報として差し上げております。医療提供者に関しては、自分の病院の評価がどうなっているのか、自ら見るようにしておりますし、また、健康保険審査評価院としては、この病院、品質悪いですということを教えて、その病院から上がってくる請求レセプトに関しては精査するようにということがあろうかと思います。

PP

 その次のページを見ていただければ、刺激的と思うかもしれませんが、韓国の医療保険財政も、日本と同様、それほど甘くない状況であります。ですけれども、この表を見ていただくと、風邪にかかっている患者さんが病院とか第三次医療機関などなどに行ったときにどれぐらい抗生物質を投与しているのかということでありまして、2002年4月にこの制度を始めて、抗生物質をたくさん投下している病院に対して指導した結果、見ていただくと、右肩下がりで抗生物質の投与が減りつつあります。一番減っているのはクリニックでして、26.9%も下落しております。

PP

 その次のページを見ていただくと、これはウェブなので、このように審査評価院のホームページで病院ごとの品質評価を公開しておりますが、これより激しいものが次のページでございます。

PP

 国民誰もがダウンロードできるスマホアプリがあります。左側を見ていただくと、病院別胃がん手術結果についての評価がありまして、携帯電話のアンテナみたいな表示がありますが、これは医療機関のミシュランガイドみたいなものです。この病院で胃がん手術を受けると、5つ星ですので、ここだと安全で、ここで手術を受けた人の存命期間が一番長いですということをその地域ごとに教えてくれております。さまざまな病気があるので、自分で病気を選ぶことが可能であると。

 今度は右側でして、先ほどの抗生物質の処方率とか、同じ風邪でも、この病院に行ったら3日で治るけれども、この病院に行ったら1週間呼ばれますよとか、そういったことを患者さんが自ら自分のスマホで選択して、自分の居場所からGPSつきで一番近いところの病院を選んでいくことになっております。

PP

 その次、韓国の健康保険の運営でございますが、保健福祉部があり、国民健康保険公団があり、国民健康保険審査評価院というのがあり、被保険者、このような状況でお互いに情報交換とデータの交換が行われております。

PP

 次に、その審査評価院が持っております情報システムの紹介をいたします。この保険審査評価院の情報システムというのは2002年から本格的に開発されておりまして、本日に至っております。2002年といえば、キム・デジュン大統領が電子政府オープンの元年として宣言したものでございまして、電子政府の一環としてこの保険審査が行われております。

PP

 左側に、データがどこから入ってくるのかと。療養機関、製薬会社、それと4大保険連携センター。それらがポータルシステム経由で入ってきたり、療養機関ポータルサイトから入ってきたり、国民ポータルから入ってきたりしていて、保険審査に使われたりデータ分析に使われたりして、あと、活用されるのは国民健康保険公団、保健福祉部、それと報勲公団、日本で言えば恩給を管理するところです。それと食品医薬品安全処、医薬品の安全をチェックするところです。その後、市郡区と書いてありますが、日本で言えば市町村であります。

 おもしろいのが1つありまして、ここの下に赤で書いてあるものがあります。4大保険連携センターというのは、韓国は2000年から4大保険が連携されております。国民健康保険、国民年金、厚生年金、労災保険、雇用保険、4つがシステムで連動されておりまして、例えば私が就職したら、自動的に国民年金が解約されて厚生年金に移り、保険も変わります。私が会社をやめたら、自動的に自分が住んでいる市町村の医療保険と国民年金に入れかわります。自分が申請しているわけではありませんので、保険資格と年金資格が1日でもとまることはなく、自動的に行われております。それがあるゆえに、2003年から行政情報共同利用センターというのが韓国のいわゆる総務省の傘下に設置されておりまして、各政府機関、自治体間に、証明書など発生しないように、住民票を国民に持たせることがないように、証明書を持たせることがないように、政府機関間のデータ連携システムが構築されておりまして、例えば我々がお金払わないといけない国民年金、厚生年金、医療保険費用、雇用保険費などなどを一括で全部徴収して、それで各機関に分ける仕事をする国民年金管理公団というのがありまして、そこが医療保険も全部徴収して、一括で分けることになります。前の民主党政権が歳入庁というものをつくろうとしていたときに、多分、参考にされたと思います。

PP

 当然ながら、全国の病院から請求レセプト電算というのが100%近く入ってきますので、システムがとまったら大変なことになりますから、災害復旧システムというのがありまして、バックアップのバックアップといって4段階のバックアップがあります。特に韓国は日本のように災害リスクはありませんけれども、戦争リスクというのがあるので、この4段階のバックアップをとっております。

 細かいことは、後で資料を見ていただければと思います。

PP

 「診療費審査システムの処理フロー」というもので、韓国の場合は基本的に医療保険請求を病院から100%近くオンラインで行っております。オンラインといっても、EDIで行うものと、こちらのホームページを経由して入力するものと2種類ありまして、送られてきたものについては各医療機関ごとに、Aランク、Bランク、Cランク、Dランクというのを内々に決めて、基本的に人工知能で請求レセプトを全部チェックした上で、怪しいところだけ、画面審査ということで専門家たちが審査する工程を経ているようです。したがって、大抵、請求されてから1カ月以内に全部オンラインでお金が振り込まれるということなので、日本の病院に比べてかなり経済的にはいいということであります。早く振り込まれますので。

 かわりに、コンピュータで審査していて怪しいという指摘がありますと、韓国の保健福祉部のホームページに、ワースト10の病院ということで、不正請求する病院は必ず3カ月間名前が公表されますので、不名誉にならないためにまともにしないといけないと言われております。

PP

 この審査をするときに、自動審査というのはどのようにするかということでありますが、1ステージから5ステージまであります。

PP

 次に、審査が決定されて、後で事後管理もしております。審査されたことについて不満などがありましたら、異議申立てを行うことも可能であります。

PP

 この保健医療情報の分析をするシステムでございますが、先ほど申し上げたように、審査評価院では体系的にデータを管理しておりまして、後で使うということで、後医療のためのデータが約305TB、今集まっていると言われております。そういったデータをもとにいろんなシステムに活用しております。

PP

 その活用のところでData Warehouseというのがありまして、私自身も聖路加国際病院で7年半、ITアドバイザーをやっておりましたが、日本の病院もデータの後利用をしますとか言っていろいろやっていますけれども、少なくとも私がいる間、まともに後利用できたものがほとんどなくて、先生からいろいろ頼まれて直接エクセルで何かつくってあげないといけなかったりして、そもそも電子カルテって何のために導入したのだとさんざん叫んだ記憶があります。

 韓国の審査評価院のData Warehouseを見ていただければ、まずは統計レポートというものを出していただけるのが230種類、それと、平には304人の健康データを分析する専門家がおります。現在蓄積されたデータ量は1,500億レコード、210TBぐらいあるみたいで、これをA4の紙で積むとエベレスト山の2,288倍だそうで、かなりData Warehouseに力を入れているような感じを受けていました。

PP

 もう一つがDURでございます。日本もDURをやっているという話を聞いておりますが、同じことをやっていると思ったら全然違うのでちょっと説明したいと思います。各病院から、病院内でどういう薬を処方するのか、それをクロスチェックされていると思いますが、韓国の場合は、国内の全ての薬局と全ての医療機関を全部オンラインでチェックしております。なので、Aという病院で薬もらって、Bという病院に行ったり、Cという薬局に行って薬をもらったら、それらのクロスチェックも全部できると思えばよろしいかと思います。

各病院で医者先生がオーダリングシステムで処方箋を発行した時点でオンラインで全部チェックされるので、物すごいリスクであり、物すごいレスポンスです。これが遅かったら各病院が処方できませんので、そういう意味で24時間リアルタイムで監視しておりまして、この審査評価院の報告によりますと、各医療機関や薬局からクリックしたときに、1件を処理する時間というのは0.05秒以内に処方していいですよという情報を提供しているのだそうです。

PP

最後に、医薬品流通情報も管理しておりまして、これは日本には絶対ないと思いますが、韓国では、製造したこの薬はどう見ても年間1万トンしかない、輸入したのが1万トンしかないのに、審査評価院に請求として上がってくるのは2万トンだったり、つじつまが合わないものがいろいろありまして、それをどう管理するかということで、医薬品工場から、生産されたら生産量を報告してもらって、流通していったら、卸し屋さんから流通量を全部オンラインで申告してもらって、病院で申告してもらうので、どこに在庫がたまっているのかというものを全部チェックするのだそうです。

PP

最後でありますが、こういった重要なシステムを管理していることから、ハッキングとかに漏えいされる可能性もありますし、システムのレスポンスが遅いと各病院から苦情が来ますので、そういったものを24時間365日、この下にありますように、ハッカー対応とかシステム監視などモニタリングを行っておりまして、品質を向上させていると聞いたものであります。

 以上でございます。

○西村座長 どうもありがとうございました。質疑応答はもうお一方のお話を伺った後でと思います。

 引き続き、満武先生からのプレゼンをお願いしたいと思います。

○満武先生 医療経済研究機構の満武でございます。

 「諸外国の医療ビッグデータ」について、約15分、情報提供という御依頼をいただきましたのでお話しさせていただきます。後で説明させていただきますが、私が厚生労働科学研究の戦略研究に採択されまして、NDBの複数年データを扱う機会を得ていることが御依頼いただいた理由の一つかとも推測しております。

 資料2の1枚目をめくっていただきますと、前回会議でも詳細に説明がありました日本の医療保険データや特定健診データを格納したデータベース、レセプト情報や特定健診等データベースについて、これからNDBと表現させていただきます。

 NDBと類似の諸外国データベースは、日本のNDBのように全国民を対象としているというような悉皆性はないのですけれども米国の高齢者のメディケアと低所得者用のメディケイドデータを蓄積しているCMSのビッグデータ、日本と同様の社会保険方式で悉皆性のある韓国と台湾が医療レセプトのデータベースが存在します。韓国の事例は既に御説明がありましたので、きょうは米国と台湾の例、そして日本のことについて少し説明させていただきたいと思います。

 また下に書いてありますとおり、フランスとドイツに関しましては、数年前に私が調査した範囲内では、フランスは病名を収集していない、ドイツは疾病金庫及び地域医師会単位で収集して、国家としてデータは収集してないということですので、今回、説明からは割愛させていただきます。

 2ページ目、「CMSの一億人規模ビッグデータ」は、1990年代からデータが蓄積されており、近年もさらに大きなビッグデータが構築され、新たなビッグデータ分析部門もCMS内にできまして、多くの実績が公表されています。少し古いですけれども、これは2014年のヘルス・アフェアーズに掲載された論文でございます。

 右上のほうの図は、医療の質をはかると言われている30日以内の再入院率の年度ごとの結果で、これは徐々に改善しているという結果です。このようなものがさまざまな観点から分析されている。下のものは地区単位で表示されています。これは一例にすぎず、先ほどの韓国の例でもさまざまな指標がありますけれども、続々とホームページで公表されているところです。また、医療費を削減することを目的の一つとしたイノベーションセンターも米国内で2012年に設立されまして、このモニタリングが3カ月後にはできるようになっているということでございます。また、レセプトをチェックしてさまざまな不正検出ができるようになっておりまして、現在、私が調べている限りでは、1,047通りのプログラムがあるところでございます。

 次のページをめくっていただいて、上のほうに書かれているのはエクセルのデータをCMSからダウンロードできるというオープンデータです。医師ごとに、住所とか、各医師がどういう医療サービスを提供しているのかということを全て公開してしまっているのですね、メディケアとメディケイドのデータを提供する医療機関に関しまして。こういったデータ国民がダウンロードすることによって、どこに行けばどういった治療を得られるか、等の情報が公開され出しました。本当にさまざまなデータがダウンロードできる。ただ、こういったデータを使って、どこまで有効性があったのかとかいったことについては、さまざまなジャーナリストたちが、データはあるけれども、どのように使っていいかわからないということも書いておられるといったところがございます。

 次の4ページ目のスライドでございますけれども、台湾では1995年に国民皆保険プログラムが導入されておりまして、皆保険です。この皆保険制度で、診療報酬支払のためのレセプトデータを、国民医療保険局という厚生労働省に当たるところがデータベースを構築しておりまして、国家健康調査機構といったところが管理しております。

 台湾は日本のNDBと同様のデータベースでございますけれども、下に示しましたようなデータ、例えば入院レセプトとか外来レセプトとか、こういった現在の日本のNDBでも保有しているようなデータが研究者用にさまざまな形で提供されている。なおかつ、被保険者マスタとかファイルとか言われているものもあります。スライドの下に行きますと、それぞれの医療機関がどういう病床を持っているかとか、あと、どういう医師がいるのかといったこともマスタとして保管しておりまして、日本のNDBにはないものも研究用に提供されているところでございます。

 次の5ページ目のスライドになりますけれども、こういったデータを、一、二、三、四、五ということで、集計データや、2番の個票データ、3番も特定主題データの疾患ごとの個票データでございますけれども、あとランダムサンプリングしたデータとか、こういった多種多様なデータを国がつくって提供しているという段階で、非常に使い勝手がいいというところでございます。

 スライドの6ページ目に行きまして、それでは現在の日本のNDBの研究者用データがどうなっているかといいますと、これはこの間の厚生労働省の有識者会議のホームページから持ってきたものでございますが、従来、NDBから提供されるデータは、日本の現在の電子レセプトというのが大変複雑な形で、研究者自身では(私も複数年のNDBデータを利用しておりますけれども)大変使いづらい。そういった使いづらいデータを加工しやすい形として研究者に提供する特別抽出ということがございます。有識者会議の承認を得ないといけないのですけれども、こういった親切なやり方で日本も現在提供している。加えて、1カ月分のレセプトを切り出して提供するというサンプリングデータや、台湾で昔から行っているような基本データセットというのも最近提供が始まりました。それ以外にも、NDBオープンデータ、今年度中に公開されると有識者会議の資料に書いておりますけれども、こういった集計情報もどんどん公開される予定だといったことです。現在日本は、提供開始から2016年の3月までに、94件ぐらい提供件数があると言われております。ただ一方、韓国は1年間に、これは2013年のデータですけれども、115件、台湾は270件であるということです。日本は、メニューがそろってきておりますので、今後に期待できるというところでございます。

 次のスライドでございますけれども、残念ながら、現在のNDBというのは医療保険データはかなりの量、いわゆるボリュームが蓄積されておりますけれども、ビッグデータに必要と言われている高速に検索できるというV、ベロシティと言われるV、また特定健診のデータはありますけれども、介護データやそのほかのデータ、あるいはリンケージが他のデータベースと接合できるようになっていませんので、バラエティといいわれるVがないと言われています。ただ、ここがまさにこれから期待されているところで、7ページにありますとおり、このビッグデータ系の厚生労働省の研究費も最近かなりふえてきているところでございます。

 8ページ目のスライドでございます。これが電子医療レセプトの例というところで、レセプトの専門家は、これを見てすぐ電子レセプトとおわかりになるかと思いますけれども、実際の電子レセプトはこのように単なる、これはCSVデータと言いますけれども、いろんなデータが電算化されて、符号化されて、蓄積されているもので、これを一個一個解読していかなければいけない。研究する上では、それぞれのコードをどういう医薬品が使われているのかというのも解読しなければいけないということで、大変使いづらいものになっております。こういったものに関しまして、日本がレセプトも先進国でいち早く導入した国でございますけれども、韓国や台湾は日本のレセプトの欠点を十分調査し、改善した形で構築して、分析しやすい、審査しやすいという形になっていると聞いております。

 次のスライドでございます。レセプトは、先ほど説明したとおり、分析者のことはなかなか考えていない、そもそも業務データでしたので、使いづらい形になっています。日本の現在のレセプトデータは、1件のレセプトが複数のレコードに分化されていて、今我々が持っているデータだと400億件あるのですね。それを普通のデータベースで回そうとすると何十年もかかってしまうというところでございますけれども、最近、ビッグデータ技術が盛んになってきておりまして、私自身も東大の生産技術研究所のビッグデータチーム、喜連川研究室といいますけれども、そこのビッグデータの解析基盤を使っていると瞬時にさまざまな分析ができるという例を9ページ目、10ページ目に掲載させていただきました。

 10ページも既に公表した資料でございますけれども、レセプトは、私が持っているデータは月単位でございまして、10ページは月単位で、例えばアレルギー性鼻炎の月別患者数、1月から3月にかけて患者数がふえて、地域も都道府県単位ぐらいでしかわからないのですけれども、九州のほうから東北のほうに移っていくと。こういったものがわかるようになっております。近年では日計表というデータもレセプトに組み込まれておりますので、精度がどんどん高くなってきております。ただ、先ほど説明したとおり、レセプト、業務データでございますので、病名と薬剤の関係がなかなかわかりづらいとかいったこともありますので、そういったことがクリアーできたらかなり世界最先端のデータベースになるのではないかなと思っています。

 「次世代NDB構築の提言」ということで最後のスライドにまとめさせていただきました。我々、厚生科研の一環でさまざまな提言もしております。NDBデータ、確かに健診データの突合率が悪いとか、そういった報道もあります。また、諸外国のデータベースと比較しますと、被保険者台帳がないということでかなり研究的な制約もあるところでございますけれども、ただ、こういった欠点があるにもかかわらず、日本にも大変大きな利点があると思っておりまして、まず、日本はOECD加盟国内でも、米国の次に人口が多い。また、CMSデータは高齢者がメインでありまして、韓国は混合診療が許可されておりますので、全医療保険サービスを把握できるかどうか、私個人はちょっと疑問に思っております。日本のデータはそういうことはないと。また、介護データも、2000年の導入当時から電算化されておりますので、今後そういったものもNDBデータに加わることで多様性も持ち、技術もすごい早いビッグデータ技術(テクノロジー)が出てきていますので、次世代NDBシステムにそういったものを組み入れることで世界最高峰のビッグデータになる可能性があるなと我々考えておりまして、研究を進めているという段階でございます。

 ちょっと時間を超過してしまいましたけれども、以上でございます。

 

○西村座長 満武先生、どうもありがとうございました。

 それでは、今から約30分程度、お二人のお話に対する質疑応答をさせていただきたいと思います。挙手を願いまして、それで順次質問していただくとありがたいですが、いかがでしょうか。

○松原構成員 御説明ありがとうございます。私ども、医療を担当して供給する立場においても、データ分析することは非常に大事なことだと思っています。したがって、いろいろなデータが出ていることをうまく利用して、さらに発展していくということについては、前回も申しましたように、個人情報の保護がきちっとできて、患者さんの大事な健康情報が漏れなければ、進めていくべきだと考えています。

 その中で違和感を感じたのは、データが処理しにくいから、制度を変えなければいけないというのは何か本末転倒のような気がいたします。本来であれば、患者さんにとって一番良い医療を供給して、この積み重ねが来たものを検討すべきです。データが読みにくいから、あるいは分析しにくいから、時間がかかるから、医療のやり方を変えろというのは少し乱暴なような気がいたします。一番大事なのは、やはり患者さんにとって一番よい医療を受けられることであります。

○西村座長 今のお話はどちらの方に対する御質問ですか。

○松原構成員 後の方の。

○西村座長 わかりました。

○松原構成員 それと、もとに戻りまして、参考資料1を見ていただけますでしょうか。「社会保険方針をとる諸外国の審査支払制度」という参考資料1がございます。ここにおいて、日本と韓国、ドイツ、フランス、アメリカと比べながら、特に2枚目には韓国との比較がございますが、事務局に1つお聞きしたいのが、日本と韓国と並んでいて、「公的医療保険の医療費」というのがございます。ここの、公的給付というのは社会保険制度と、国が出している費用の合わせたものということでよろしゅうございますか。つまり、国が税金で集めた金を使っているのが81%とあるのですけれども、実際は公的ですから、これは社会保険制度の中での集めたお金と税金の中から日本の国家が直接出しているお金を合わせてということですね。つまり、自己負担が残りの19%であるということでよろしゅうございますか。

○保険課長 そういう意味でございます。

○松原構成員 そうすると、日本が37.4兆円で、韓国が3.6兆円です。余りにも韓国が低いのですが、さらにその中で55%が公的給付ということは、韓国の国民の数から考えれば、日本の10分の1ということはございませんので、さらにその中で55%しか公的給付が行われてないということは、問題となっているデータについては、要するに国の出しているものが大きな割合を占めていて、あとは、先ほどお話があったように、混合診療で、別のところで国民が直接お金を出しているという意味ですね。つまり、そこのところは把握できないということをおっしゃっているという理解でよろしゅうございますか。

 何を申しているかといいますと、実は日本と韓国、制度が、同じように見えていてもかなり違います。日本の国は国民みんながみんなを支えるという制度でありますので、この大部分においては、国民のお金が社会保険として集められ、税金である国家のお金と合算されて、そして全体をほぼ賄っているということでございますが、このような支出が3.6兆円しかないということは、このデータの本来の姿というのは、医療費の一部しか解析してない。その税金の仕組みであると思えるのですが、私の勘違いでしょう。

 また、実はドイツにおいては、ここにありますように、社会保険方式で全部をドイツではよくやっていてと見えますが、実際にはドイツの制度というのは日本と全く違います。まず、真ん中に書いているように、一定所得以上の被用者、つまり、お金持ちの会社員の人たちは別保険です。しかも、国家公務員、地方公務員も別保険であります。さらに自営業者も入れる。これは別保険でありますので、国が関与できない私的な保険がかなりの率でお金持ちを見ています。そうしますと、実際ドイツを研究しますと、どれぐらいの費用の差があるのかといいますと、ドイツはそういった私的保険が、同じ医療をしても3倍払ってくれる。公的保険は3分の1だから、私的な保険で十分に利潤を上げて、そしてそれを公的な保険で給付が足りないところに回しているというのが実際のドイツのやり方であります。

 それを考えると、日本の国は国民みんながみんなを支えているという方式の中で大きなデータベースになっていますが、そういったことを踏まえた上で日本の保険がどうあるべきかを議論しないと、先ほど申しましたように、データが分析しにくいから、間違っているから医療制度をやり直すというのは違います。やはり国民にとってどのような医療がいいのか、その積み重ねにおいて、実際にその中で分析できるものは分析し、また病名のコードが多過ぎて分析できないというのであれば、それは何年かけてでも早目早目に改正していけば対応できることであります。

 さらに、日本の国は国民もみんな、地震以外は、今のところ幸せな状況であります。そこの中で我が国の医療保険をどのようにしていくか、これをこの会で議論していただきたいのでありまして、日本の保険制度が、分析しにくいから間違っている、出来が悪いというのは同意できないところであります。その事を十分理解した上でやっていただきたいと思います。

○西村座長 どうぞ。

○山崎構成員 今、松原構成員の御指摘なさったことは、私、とても重要なことだと思っているのですが、同じ日本と韓国の医療保険制度の違いの資料の今のところでございますが、日本は19%が自己負担だというわけですけれども、自己負担といっても、結局、保険診療の自己負担がほとんどでございまして、純粋な自由診療はごくわずかだと見ていいと思います。

 そこで廉先生にお尋ねしたいのですが、韓国の場合、45%が自己負担だとして、その45%の中で全く価格が統制されてない自由診療の部分はどれぐらいあるのか、ちょっと聞かせてください。

○西村座長 廉先生、今の御質問にお答えいただいて、それで、松原構成員の話もちょっと感想をおっしゃっていただくとありがたいと思います。

○廉先生 まずは、今、山崎先生から質問された件については、今回のこの資料、私が調査したものではありませんので、私、ちょっと答えにくいです。ですので、それは必要であればちょっと聞いて正確なことをお伝えしたいと思いますが、確かに韓国は日本と違って混合診療がありますので、保険がきかないのも結構あります。ありますけれども、ではここに書いてある数字の、乱暴な言い方で、5倍ぐらいしたとして比較したらどうなのかなという感じはいたしますので、そこは本質から見てどれほど違いがあるかというものをちょっと考えていただきたいと思います。

 またもう一つは、松原先生からのお話の中で、私にどこまで質問されたのかわかりませんけれども、私自身、こういった医療情報のコンサルをしておりますが、病院から電カルを導入したいと言うと、私は、とりあえずやめたほうがいいと申し上げます。それは理由がありまして、ある意味、先生と通じるところがありますが、医療そのものの質を上げるために電カルを使うのか、要するに効率を上げるために電カルを使うのかという観点から全然違うと思いますので、そういう意味では松原先生の意見と共通するところがありますが、もう一つ、せっかく集まったデータなので、匿名性ができて、みんなの健康のための研究ができるのであれば、わかりやすいデータフォーマットにしていくのも、お金がかからないのであればいいことではないのかなと思います。

 以上です。

○西村座長 では、満武先生、よろしくお願いします。

○満武先生 松原先生、ありがとうございました。松原先生御指摘のデータ構造を変えろというのは、私は言ったつもりはございませんで、申し上げましたのは、研究をする上でさまざまな、こういうことができたらいいとか思うのですけれども、それがなかなかやろうと思ってもできないときがあるものですから、研究者の愚痴と考えていただければと思います。

 ただ、さまざまな障害がありますけれども、最新のビッグデータ技術によっていろんなことができるようになってきていて、未来は明るいと。なおかつ、厚生労働省の研究のメニューも、以前と異なりまして、6ページ目に示していただいたとおり、4種類ぐらいできまして、これからまさに爆発的にいろんなアウトカムが出てくるのではないかというようなところで紹介させていただいたところで、使える限界はあるけれども、使えるものはどんどんとにかく使おうという、そこは松原先生の意見と全く同意見でございます。

 以上でございます。

○西村座長 どうもありがとうございました。今回別に韓国と同じことをやろうという趣旨で来ていただいたわけではないと思いますので、松原構成員の御意見、ぜひこれから検討してまいりたいと思います。

 では、金丸構成員、よろしくお願いします。

○金丸構成員 ちょっと座長に再確認したいのですけれども、この会の目的といいますか、議論の論点ですね。初回ちょっと出席できなかったので、ぜひそれを再確認したいと思います。というのは、皆保険の制度をいじろうということを検討するつもりで私は実は参加しているつもりは全くありません。ですから、松原委員がおっしゃられたような、他国を見て、保険制度そのものの改善とか改良についてこの会は議論するものだとまず思っていません。そこを確認したいと思っています。

 それから、韓国の廉様の例は、大いに学ぶべきだと思っています。実は医療分野だけでなくて、98年以降の韓国の電子政府の改革、それは民間まで波及しまして、例えば金融分野においても韓国と我が国においては随分差ができていますので、ITの利活用といいますか、ITの、特に先ほどリアルタイムみたいな御指摘がありましたけれども、リアルタイムで情報交換をする、そして、国民の多くが持っているスマートフォンというような国民負担のツールも有効活用するという国家的な全体の進捗については私は大いに学ぶべきだと思っておりまして、廉様のお話はそのようにお聞きしました。

 それから、満武さんの御指摘は、これももっともでございまして、今ごろ企業経営においてCSVのファイルデータを前提としてやっている経営はまずありません。ですから、制度を変える必要はないのですけれども、議論によってはデータのフォーマットについては最新のといいますか、技術革新いっぱい起きている時代なので、これからの時代にもふさわしいようなデータフォーマットには変えるべきだと。だけど、変えるときに現場の、例えばお医者様と患者様のやりとりであるとか、そこに何かデメリットを与えるようなことがあってはいけないということで、発生データが格納されるまでのプロセス、その途中にはアナログとデジタルが混在しますので、できる限りデジタルを活用する。集まったデータについては、PDCAサイクルを回して医薬の発展とか、医療の発展のため、あるいは国民のデータヘルスに活用するためにどうすべきかというので、これはデータベースの活用でございまして、私はそのように捉えているのですけれども、ちょっと座長から再確認といいますか、補足していただければありがたいと思います。

○西村座長 この件については、前回配付された資料2というのがございまして、大きく分けて2点、この会議では依頼されております。1つは、保険者機能強化と医療の質の向上ということで、このあたりで、きょうは順序逆ですが、満武先生にお願いしたデータヘルスの推進等とインフラ整備をどうやってやるかということが話題となって、しかも、これがもう一つの課題と関係しているので、現在の審査・支払機関のデータは社会保険と地域保険に分かれて集積され、かつ十分な連結がされておらず、地域医療全体像を把握できない。こういう問題を1つどうやって扱うかというのがこの会議の課題で、もう一つは、この後話題になると思いますが、審査の効率化、統一化の推進と組織体制のあり方ということが議論のテーマでございまして、これに関してはこの後議論があると思いますが、規制改革会議のワーキングから提出された資料に基づいて、この後、社会保険診療報酬支払基金の皆様からお話を伺うという手順になっておりますので、おっしゃる、まさにそのとおりで、ちょっと御質問があったので省略しましたが、松原構成員の話はちょっと話がそれたのではないかという印象は私も持ちました。率直に申してそういうことでございます。

 今の確認の上で、皆さん、きょうの韓国の事例、あるいは日本のビッグデータの状況についての説明に御質問、御意見等。

 では、山本構成員。どちらか、お二人で相談なさってください。

○山本(隆)構成員 では私から。短いですから。廉先生、どうもありがとうございました。HIRAの実情、よくわかりました。

 昨年の1月に、アメリカのCMSからも来ていただいてシンポジウムを開いたのですけれども、我々と最も大きな違いは、データアナリストをどれぐらい持っているかなのですね。例えば今の保険局にデータアナリストが何人いらっしゃるのか、あるいはこれから議論される支払基金や国保連合会に一体何人いらっしゃるのか。アメリカのCMSには70名以上の専任のデータアナリストがいらっしゃいますし、HIRAにも、先ほどのお話では結構いらっしゃる。

 データアナリストがいらっしゃるから、データをどう使うかという観点で、私は形式を変える必要なんて全然ない、要するにプリプロセスをどれぐらいやるかということだと思うのですね。もともと診療報酬請求に最適なフォーマットであるので、それが機能している限り別に変える必要はなくて、ただ、データは存在するのだから、それを使いやすい様式に変換すればいいだけの話なので、そのための労力は、今のITの世界ではそう大したものではないのですね。

 ただ、そう大したものではないのですが、私もNDBの有識者会議の座長をやっていますけれども、なかなか進まないのですね。やはり本当のニーズをきっちり見極める人が現場に少ないというのが最も大きな理由だと思うのですね。したがって、これから日本でこういうヘルスケアのビッグデータを議論するのであれば、やはりその中核にデータアナリストをどれだけ用意できるのかというのが非常に重要な視点だと感じました。

 以上、感想でございます。

○西村座長 もう一人の山本構成員。

○山本(雄)構成員 済みません。手短に。1つずつ質問があるのですけれども、まず廉先生にお伺いしたいのは、いただいた資料の7ページに、保健福祉部の下にNHISというところとHIRAというところと2つ分かれていて、左側のNHISは予算集め、価格設定、それから健康増進をやり、HIRAのほうはきょうお話をいただいたようなことをやると。非常に合理的な気がしておりまして、これが分かれた理由みたいのを御存じだったらお伺いしたいというのが1つです。あたかも、見ますと、公的資金を使って被保険者さんの医療費を負担しますよと、そういう仕事をしているNHISは、支払うに当たって、被保険者、国民の皆さんが健康増進維持に取り組んでいることも確認しつつやっている。一方で、支払側のHIRAは、支払うに当たっては、支払先の医療機関が質の高い医療をきちんとやっているか監視しながら支払うのだと。お互いに相手方に対するチェック&バランスといいますか、ガバナンスを効かせているように見えるのですけれども、それを意図してこういう仕組みをつくったのか、たまたま歴史的背景になったのかというのをお伺いしたいというのが1つ。

 それから満武先生には、いただいたデータの6ページ目の研究者用データのところでございますけれども、きょうの議論でデータのフォーマットが使いにくいと。私も、使っていても本当に使いにくいなというのはすごく感じるところですけれども、それから、山本構成員がおっしゃっていたアナリストがいないというのも感じるのですが、実はその間の部分で、マスタ管理が非常に悪いというのは前回も申し上げたのですけれども、もう一点、NDBもそうかもしれませんが、元データがアナリストに届くまでの間にどれだけデータが加工されてしまっているかという、データ抽出ないしは修飾のプロセスが非常にブラックボックスの中でやられている感があって、これは用途に非常によると思うのですけれども、1億2,000万人の統計情報を出そうという世界ではそのぐらいの修飾があってもそう大差ないはずですが、これはNDBの用途として、今後例えば医薬品の効果検証だとか、副作用情報の判定であるとか、そういうものを使おうとした場合に、そうしたデータ収縮があると相当誤差が出るだろうと思うのですね。そのあたりに関しては、ICT活用による医療の質の向上という目線で考えると避けてはならないポイントだと思うのですけれども、何か知見ですとか、このような質の担保をしているのだというのがあればお聞かせください。

○廉先生 先にお答えいたします。韓国のほうがうまくやっているように多分見えると思いますが、うまくやっています。それは、韓国だってうまくやってないのではないかということで皆さんが慰められても困るので言っておきますが、たまたま、優秀だからではなくて、日本が先にやって、それを見てベンチマーキングして足りないところを補ってやろうとするから、後発者がうまくつくるのは当たり前ですね。

 それにプラスして申し上げたいのは、1997年、韓国経済危機で国が一回つぶれて、病院も多くつぶれたのです。で、医療機関再生の観点で、どうやるべきなのか。まず1点目、お金がないので、医療保険、ちゃんと維持したい。だったらば、医療行為に使うお金は減らさなくても、お金を払うために、要は請求レセプト電算も含めて、そちらに無駄にかかっているお金はなくしたい、そういうことがあってここまで来たと思います。

 まずは、日本国もIT戦略というものを出しておりますけれども、韓国は、経済破綻の後、ICTインフラの上に行政を立て直す、医療を立て直す、教育を立て直すということでやっていましたので、全てにおいてITプランの上でものを考えたというのが大きい理由かと思います。先ほどおっしゃっていた役割分担とか、全てそういうものを考えてつくったものであります。これは韓国の保健福祉部だけでなくて、全ての省庁においても同じことです。重複投資はしない、なるべくコンピュータの力を借りる、そういうことであるかと思います。

○西村座長 今の話は、実はちょっと私の特権で、副座長の森田さんがかなり韓国のことを調べておられて、さっきの7ページの説明については彼が詳しく、うまく説明を、日韓比較という観点から。

○森田副座長 韓国に詳しいというわけではありませんけれども、なぜ分かれているかということですが、日本においても保険者と支払基金は一応分かれているわけですね。ただ、保険者の数が日本はたくさんあって、審査のほうは2系統しかないということです。韓国の場合、今、保険者が1本になっています。なぜ2つにしたかというのは、いろんな機能分化とか組織的な理由もあると思っております。日本も制度上はたしか各保険者が審査することもできないわけではないと思います。そういう意味で言いますと、韓国だけ特別というわけでは必ずしもないということです。

○西村座長 それでは、満武先生、もう一つの質問のほう、よろしくお願いします。


○満武先生 山本先生、ありがとうございます。こうしたら理想だというのは幾つかあるのですが、私自身で把握している知見という観点で2つありまして、まず元データがあり、そしてNDBに蓄積されているデータがあると。NDBのほうには、1つは請求データしかない。これは審査があって、修正があったりしたレセプトの分が反映されてないので、NDBデータをそのまま足しても、厚生労働省が統計を出している国民医療費とはなかなかイコールにはならない。また、さまざまな審査が、どういうことを過去なされたかといったところもなかなか分析するのは難しいのではないかなというのが1点と、あと2つ目は、これは最近になって我々も認識してきたのですけれども、紙レセプトは収集されていないと。我々は、医学会、日本糖尿病学会や日本高血圧学会とも研究しているのですけれども、腎臓学会から特に要望があるところは、移植に関するデータは従来から紙だったということもあり、このデータについてです。腎臓学会はNDBデータを使って何を知りたいかというと、透析をやって、その後に腎移植があったかについてです。腎移植は、何十年ももつわけではないので、移植腎臓がだめになって、また透析に戻った患者さんが何人ぐらいいるのかと。そういった方が全国どこの地域でどこの医療機関で受診しているのかと。これは医師として、学会としてきっちり把握したいのだけれども、そこがなかなかできないといったところもあるので、こういう医学会の要望というのもこれからさまざま出てきておりますので、そういったものを酌み取る何かチャネルみたいなものを将来的につくっていただければ、もっとリッチなデータベースになると考えております。

以上でございます。

○西村座長 もう一つ、真ん中で加工があるのかどうかという御質問があったような気がするのですが、私、加工の意味がわかりにくいので、もうちょっと。

○山本(雄)構成員 レセプトデータの構造は、きょう資料にありますように、数字でずらっと並んでいるのですが、そこには、例えばテキスト情報があったり、あとは、未コード化傷病名と言って、電子化されてないけれどもテキストで残っているような情報。そうしたものを研究用途で使う際に、全てテキストを排除していますよというような出し方、あるいは未コード化傷病名の未コード化という結果だけを教えてしまって、お医者さんが入れた病名は全くキャンセルされてしまうというやり方があったり、幾つか、データを修飾してしまうプロセスというか、手順はあるのですね。それはそれで扱いが簡便になるという意味ではいいのですけれども、研究の正確性に関して疑義が出てしまうというのはトレードオフみたいなところがありまして、そこについて、NDBがどうしているという詳細をお尋ねするつもりはないのですけれども、その精度管理というものがないと、今後のICT活用による医療の質向上につながらないだろうと。そこに関する知見等があればということで。

○西村座長 わかりました。私、審査の関係と勘違いしましたが、そっちではなくて、研究ですね。

○山本(雄)構成員 はい。

○満武先生 これは山本座長が大変お詳しいかと思いますけれども、私が外部で見ている範囲では、精度管理、大変重要です。ただ、あれだけの大きなデータで複雑な構造のものを瞬時にさまざまな観点から精度検証できるだけのシステムがやはり限られた予算の中で、なおかつ期間の中でつくっているので、全システムではできていなかったと。近年、新システムになりましたので、まさにそこでこれから出てくるのではないかなと考えております。

○西村座長 もうお一方。

○山本(隆)構成員 NDBの場合、サンプリングデータセットや基本データセットは確かにコード化された病名で全部処理していますから無くなっていますが、特別抽出の方は、御希望があればコメント欄の病名でも全部残っていますから、これをデータベース側で管理するのはすごく大変なので、研究者の方々にやっていただくということになると思います。

○西村座長 渡すということですね。

 では、よろしくお願いします。

○林構成員 廉先生に質問させていただきます。大変勉強になりました。ありがとうございます。

 審査の作業の中で人手が必要な部分はどこか。どのような部分で韓国では人手を使っていらっしゃるのかという点を質問したいと思います。特に資料1の5ページでは、7つの「支院」というか、支部があるようで、そこに566人の方がいらっしゃるそうです。そして全従業員の約67.5%が薬剤師、看護師などの医療専門家ということですが、人手を使った審査というのは実際にどういう資格者が何をしているのでしょうか。それから、お医者様の審査というプロセスがない中で病院の評価をなさっているのか、その点も教えていただければと思います。

○廉先生 日本医師会も結構手ごわいと聞いておりますが、韓国医師会も決してやさしくありません。その話ですが、4ページの組織を見ていただくと、院長の下の右側に診療審査評価委員会というのがあります。ここで対外的に発表することに対しては、韓国医師会と全てもんでから発表しております。なので、この審査評価院、勝手にいろいろやっていたらえらいことになりますから、誰が見ても客観的に反論できないようなものしか発表できないので、そうはいっても、日本の常識で考えると、韓国の保健福祉部のホームページにワースト10とか載るというのは多分日本ではあり得ないと思いますが、そのようなことだと思います。

 それと、誰が審査するのかというものに関して、5ページに、67.5%が薬剤師、看護師と書いてありますが、ほとんど審査に携わる方々です。医者先生も一部おられますが、大抵看護師と薬剤師が審査に当たっております。

○西村座長 こっちは医師はおられないですか。

○廉先生 いらっしゃいますけれども、多くないです。で、基本的に大半が、25ページの第1プロセス、第2ですが、受付処理をされたら、基本的にノーマルなのは全部自動審査なのです。だから、人間が関与しません。しませんけれども、累積データを持って、こちらの医療機関はランクAとかランクBとかがあって、常に精密審査しないといけないと思われるところはなるべく綿密に見たり、ワーストだったら全部人間が見たり、そういう区分けをしながら審査をしているのだそうです。だから、こちらから見て誠実に請求するところはほとんどパス。そうでないところだけが、先ほどの人々の目を通しての3番の画面審査ですね。左側に画面審査とありますが、画面審査を一部ということになっております。よろしいですか。

○林構成員 ありがとうございます。人の目を通した画面審査をする場合7つの支院に分けてその作業をする必要性はどこにあるのでしょうか。

○廉先生 済みません。もう一度。

○林構成員 支部が7カ所あるようなのですが、それを分ける必要性はどこにあるのでしょうか。

○廉先生 多分、支部はその審査のためでなくて、審査は全部本社でやると思います。支部は別の苦情に対する対応とかほかのところがあろうかと思います。

○林構成員 わかりました。ありがとうございます。

○西村座長 どうもありがとうございました。

 お二人に対する御質問はまだあろうかと思いますが、もう一つ大事なヒアリングを予定しておりますので、お二人、大変恐縮ですが、また御質問等があったらお答えをいただきたいと思いますので、きょうはお二人の先生、お忙しいところ、大変ありがとうございました。

 それでは、時間の関係もありますので、次の話に移りたいと思います。2つ目のテーマのプレゼンでございます。社会保険診療報酬支払基金から参考人の方が御出席いただいております。今回は、規制改革会議からの御指摘を受けて、基金のほうでどのような改革を考えておられるか、15分程度お話を伺い、その後質疑応答ということにしたいと思います。

 それでは、基金の代表の理事長さんからまずお話をよろしくお願いします。

○河内山理事長 西村先生初め本検討会の先生方には、私どもの最近の状況並びに改革の方向性について意見を述べる機会をいただきまして、まことにありがたく、御礼申し上げます。

 最初に、出席しております宗像理事、それから助川顧問を御紹介申し上げます。宗像理事は医師でございまして、長い期間、東京の審査委員、あるいは審査委員長として審査を実践されてきた形でございますが、今、理事を務めていただいており、助川顧問は主にシステム担当ということで仕事をしております。

 それでは、座ってお話を申し上げたいと思います。15分お話をさせていただきます。

 まず、冒頭でございますが、診療報酬の審査のあり方につきましては、本日も委員御出席でございますが、政府の規制改革会議において、現行の支払基金を前提とした見直しではなく、診療報酬の審査のあり方をゼロベースで見直すべきだという視点のもとで議論されていると承知いたしております。

 具体的な論点としましては、ICTの最大限の活用、これにより人手を要する事務を極小化を図るべきだという御意見、並びに審査に関する統一的な判断基準の策定、また、そのコンピュータチェックへの反映、あるいはチェックの精度の向上を図るべきだという御意見をいただいております。また、審査基準の情報開示についても行うべきだという御意見をいただいておりまして、それらが主要な論点だと考えております。こういう議論につきましては、これまでの私ども支払基金の組織の取組が不十分であるという指摘を受けたと極めて厳粛に、また危機感を持って受けとめているところでございます。

 このため、本年2月でございますが、私をヘッドとしました改革の検討チームというものを支払基金の中に設置しまして、支払基金自らが改革案を示すべく、極めて短期間ではございましたが、精力的に、これは実務をよくわかった者で検討してまいりました。そういうことで、本日はその検討を経てとりまとめました改革案の基本的な骨子ということになると思いますが、皆様方に御説明申し上げたいと考えております。

 それでは、資料をちょっとごらんいただきたいと思いますが、資料3-1の「審査・支払業務の効率化と審査支払機関が担う新たな役割について」に沿って御説明を申し上げます。

 まず1ページ目でございますが、改革案のとりまとめに当たって、支払基金という組織の立場ではなく、医療保険制度の一翼を担う診療報酬の審査支払機関として長年その業務に携わってきた専門機関の立場から、社会保障制度改革推進法、あるいは厚生労働省の「保健医療2035」に示されました基本的な考え方を踏まえまして、効率化と質の向上の両立という視点を十分念頭に置いて検討したものでございます。また、これまでの考え方や現行の仕組みにとらわれることなく、自ら目に見える具体的な対応案を示しまして、新たな組織に生まれかわる、このような視点も念頭に置いて検討を行ったものでございます。

 以下、改革案の骨格3点を申し上げたいと思います。まず第1は「徹底した効率化を通じた審査・支払の充実」。審査・支払の意義として、遅滞のない期限内の支払、また患者本位の医療が保険診療ルールの枠内で行われることを適正に確認・確保する。こういう本質的な点につきましては、当然のことながら維持するということを念頭に起きつつ、コンピュータの段階で審査を完結できるものについては完結すると。これまで行っていないことでございますが、ICTを最大限活用しまして、ルールのチェックを行います。そして、医師の判断を要する複雑なもの以外はそこで審査を完結させる。これによって職員の審査事務の削減、効率化を図るということを掲げております。後ほど改めてその全体像については御説明申し上げます。

 それから、審査のチェック項目を公表しまして透明性の向上を図るということも検討いたしております。これは医療機関にとりましても査定の着眼点というものが明らかになりまして、適正な請求行為につながると考えております。それから、審査判断基準の統一。これは医療の一定の幅を見積もりつつ、説明のつかない審査判断の際は、可能な限り解消を図る。また、支払基金の支部の間のみならず、国保連とも審査判断基準を統一していくということでの統一の話でございます。

 それから、手数料を複数設定するなど効率化を実施していくということも考えております。そういう効率化を通じて審査体制、これは組織、人員についてゼロベースで見直すことによりまして、審査事務職員の配置は全国数カ所に集約するということについても、今回の改革案の中では考えているところでございます。

 それから大きな2番目でございますが、ビッグデータの活用・分析を通じた健康増進であるとか、あるいは疾病予防への貢献。これは膨大なレセプトデータを取り扱っている特徴、あるいは強みを活用します。さらには、国保連とデータを相互に利用・活用することや、NDBの管理を担うということが可能であればそういうことを担わせていただきまして、より多くのデータを集積して、これを多面的に分析して、利用者の意向に即して提供する。これは大臣も御指摘でございますが、支払基金も頭脳集団として生まれ変わるというようなことを行うことによって持続可能な医療保険制度に貢献したいと考えているところでございます。

 それから、ICTを活用するということで成果を最大化するということでございますが、審査・支払の効率化、あるいはビッグデータの活用、いずれも膨大な情報を的確・迅速に処理しつつ、高品質のサービスを実現するために最大限ICTを活用する。これは、我々の業務が紙からだんだん電子化されたという時代は、いわゆる作業を電子化する、あるいは自動化するという意味ではコンピュータをどんどん使うということはこれまでも行ってきたところでございますが、今日のようなICTの長足の進歩ということを一方で積極的に取り入れまして、ICTを活用する組織へ仕組みを変えていくということが我々としては非常に大事だということを非常に重視した検討でございます。

 2ページ以降で具体的な検討の視点について考えておりますが、お読みいただきますと大体書いてあるとおりでございますが、まずは今回は簡素ということを第一にしまして、簡素・効率と、それから高品質というのを第一番目に掲げております。それから、当然のことと言えば当然と思いますが、公平・公正・透明、それから、国民及び関係者の理解と納得。これは審査・支払制度を支えます国民、医療関係者、保険者の理解と納得が得られるような仕組みを目指してまいります。

 それから、最後でございますが、保有するデータを分析・提供しまして、頭脳集団として、先ほど申し上げました疾病予防、あるいは健康づくりに貢献するという新たな付加価値を創出する。あわせて、これは法律等の関係もございますが、支払基金の自立性を高める取組も皆様の御理解を得て進めていきたいと考えているところでございます。

 3ページ目でございます。ICTを活用することによって、審査の段階についての御説明を申し上げたいと思います。お手元のもう一枚の大きなA3の資料でお示ししております審査の段階化を図に示したものをあわせて御参照いただきたいと思います。

 これは、ごらんいただきますように、左側のほうで審査のレセプトの種類というものを幾つか種別化すると同時に、右側のほうで、どのような考え方でこの改革を行っていくか。そして、下のほうで手数料についてもどのような差をつけていかれるかというようなことをイメージでお示ししたものでございます。

 まず、上のほうにASPとございますが、現在も行っております医療機関からのレセプトの受付前の事前チェックをより充実させまして、受付で返戻することが明らかなレセプトは受け付けずに、医療機関に返却するということが入り口でございます。次に、受け付けたレセプトでございますが、コンピュータチェックの精度を向上させることによりまして、審査を4区分に段階化することをここでお示ししております。

 一番左側の、初診料の請求など明らかに審査判断にまぎれのないレセプト、図でいうところの赤字のでございますが、簡素なコンピュータ審査で完結する。これは10%を見込んでおります。それから、このことについてはレセプトの審査・支払の手数料の引き下げを行うこととさせていただきたいと考えております。この1以外のレセプトについては詳細なコンピュータチェックを実施しますが、図のでごらんいただきますように、コンピュータチェックで審査を完結させるレセプトというものについてお話を申し上げたいと思います。

 例えば初診から1カ月以内の特定疾患療養管理料の算定などというルールがございますが、これは診療報酬ルールに適合するかしないかについてコンピュータで確実に判断されると考えますと、これは職員や審査委員の審査に至らずに、コンピュータで審査を完結させるというようなことを今回の改革案では示しております。

 それから3でございますが、コンピュータチェック後に職員が目視を行いまして、審査委員の審査までに至らず、職員段階で審査を完結させるレセプトで、これは図のでございます。診療報酬ルールに適合しているかどうかの判断について、コンピュータでは完結できませんが、職員の目視確認は要するもの、あるいは医師が判断するところまでには至らないというものがこの分類でいうでございます。このを合わせまして、コンピュータ完結と職員完結は全体の7割程度強をこの部分におさめていくということを想定しております。

 それから、3につきましても、コンピュータの精度、いわゆる職員完結の精度向上を図ることによりまして、コンピュータで完結するものへの移行ができるかどうかということについても今後検討していく。言ってみれば、だんだんと人の目によるものを少なくしていこうという方向でございます。

 そして最後でございますが、医学的な判断を要する審査委員による審査を必要とするレセプトについては、今でもそうでございますが、これはかなり重点的に先生方に見ていただく必要があるということで、これは2割程度におさめていけるのではないかと想定しておりますが、この辺については、逆に言うと重点的に保険者からも医療機関側からも十分に納得が得られる審査を行っていくということを考えております。

 この4段階のプロセスを構築しまして、審査の抜本的な効率化と質の向上を図っていきたいと考えております。

 それでは、もう一回もとの資料の4ページにお戻りいただきたいと思います。もう一つ重要なポイントでございます「審査の統一性の確保」でございます。患者本位の医療を実現する上で、審査判断における一定の幅は認めると。しかしながら、統計分析等も通じて審査の統一的な判断基準の策定を一方で推進していきたいと考えております。あわせて、最終的な判断を合議して策定していくという仕組みを導入していくことを考えております。これらを通じまして、合理的な説明のつかない支部間の差異を解消していくということが大きな狙いでございます。

 そして、統一されました判断基準は全国共通のコンピュータチェック項目に反映させまして、効率化と質の向上を図っていくこともあわせて行っていきたいと考えております。

 いずれにしましても、コンピュータで完結できるレセプトをふやしていくということで、この統一化も職員の事務を減らしていくことにつながると考えております。

 それから、先ほど申し上げましたように、国保連との共通化というものについて、これは取り組まなければならない課題だと考えております。

 その上に立って、5ページ目でございますが、支部及び審査委員会の体制のあり方について申し上げます。審査・支払業務の効率化を推進しまして、支部・職員体制のあり方をゼロベースで見直しをする。たとえICTを最大限活用したとしましても、患者本位の医療のためには、医師等による審査・目視判断が一切不要になるということはございませんので、これは引き続き適切・着実に機能するということが極めて重要だと考えております。そのため、審査委員会は、審査委員の確保や、あるいはピアレビューが地域内で行われることの有用性、そうした機能に鑑みまして、我々としましては、地域単位で審査委員会が果たしている機能は存続することが、これは国民の利益にもつながると考えております。

 一方で、ICTの活用、あるいは審査基準の統一の取組を進めることで審査担当職員の事務を効率化しまして事務量を減少させる。これによって、その業務実施場所自体も柔軟に対応することが可能になると考えております。

 ただし、災害対応等を念頭に置きますと、審査事務実施場所は複数必要ではないかと考えておりますので、先ほど冒頭に申し上げましたように、全国数カ所程度に集約していくということを考えております。

 なお、審査委員会の運営のサポートであるとか、あるいは各地の保険者、都道府県や市町村、医療機関等に対する説明、あるいは情報提供などのサービス対応を考慮いたしまして、必要最小限のリエゾンオフィスは地域単位に設置することが必要ではないかと考えられます。

 6ページ目でございます。審査の透明性の向上。これはチェック項目の公表、それから医療機関の請求段階からの適正化、いわゆる早期対応というものを図っていきたいと考えております。審査のチェック項目、あるいはチェック内容を具体的に審査機関や保険者に公表することによりまして、医療機関からの請求を適正化する、あるいは保険者の業務範囲を明確にすることによりまして保険者の負担を軽減するということにもつながると考えております。

 このような観点から、統一的、客観的な判断が可能なコンピュータチェック項目につきましては公表を進めていくことを考えているところでございます。

 それから5番目、「請求・支払業務の効率化」でございますが、請求・支払業務の実務は既に実質的には外部に委託しております。今後は審査システムの改修・工夫によりまして一層の効率化、経費節減を実現するとともに、効率化に資する工夫は外部化に限らず、柔軟に実施していきたいと考えております。

 最後は「新たな付加価値の創出」でございますが、レセプトデータを保険者横断的に有するということはほかにない有利性を持っていると思います。このため、ICTを積極的に活用しつつ、そのデータ分析をした上で保険者等に提供する。これにより、審査・支払業務のみならず、シンクタンクの役割に積極的に取り組みたいと考えております。また、国保とのデータ連携、さらには中立・公共的性格を有することから、NDBのデータのマネジメントについても積極的に対応していきたいと考えております。

 以上、改革案をまとめたわけでございますが、これは支払基金自らが変革していくことの重要性を意識したからにほかならないわけでございます。大きな変革でございますので、当然のことながら、段階を踏んで実施していかなければなりませんし、一定の期間、時間も要すると思います。また、ここにお集まりの先生方初めさらに利害関係者もたくさんおいでになりますので、そういう関係者の方々の理解を得ながら進めていくことも不可欠だと考えております。

 しかしながら、こういう形でお示しした以上は着実に実現を目指して取組を進めていきたいと考えておりますし、世界に冠たる国民介護保険の維持・発展に一層貢献できるよう、専門家の先生方のアドバイスであるとか御理解もいただいて着実に進めていきたいと考えているところでございます。

ちょっと時間延びまして、大変失礼いたしました。

○西村座長 御苦労さまでした。

 それでは、質疑応答に入りたいのですが、まず、この会議の一つ、さっき申したように、規制改革会議のワーキングからの要請に応えるという趣旨がございますので、会議のワーキングのメンバーの方から御質問を伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。

○森下構成員 どうもありがとうございます。何点か御質問があるのですが、最初のところは3ページ目で、「審査委員による審査を行うレセプト(20%程度-α)」となっていますけれども、現状が20%で、スタートが20というのはどうも納得いかないのですけれどもね。要するに、スタート時点でこれだけの上記の改革をすれば20%も残るはずはないだろうといいたいわけです。おっしゃるのはだから-αなのでしょうけれども、これは少なくとも目標がどれぐらいかというのを明確にしてもらわないと、実際のところ、どの程度変わるかというのは全く見えてこないと思うのですね。ですから、まず第1点目としては、ここのところをどの程度のイメージで考えられているかというのをお聞きしたい。

 それから2点目は、今度は6ページのところですけれども、私は審査基準は公表すべきだという意見でありまして、「審査の透明性の向上と早期対応」というところで、「70%以上査定されている項目」とありますがなぜ全部の公表ができないのか非常に不思議なのですけれども、この部分というのは、一体何のために全部公表しないのか、そこが1つ非常に不明確かなあと2点目として思っています。

 3点目、期間、それから時期に関してはいろいろとまだかかるというお話でしょうけれども、いろいろかかるというのを、時間をとっていただきたいというお話はしてないと思うのですね。御自分たちでこれだけの改革案、これは大変すばらしいと思うのですけれども、まとめられたのであれば、早急にぜひお願いしたいということで、目標の時期もはっきりとお教え願えればと思います。

 3点、よろしくお願いします。

○河内山理事長 森下先生の御質問にお答えいたします。

 現状も、我々、審査の履歴というのをずっととっておりますので、分析しますと、やはり医師に判断を仰がなければならないような内容のレセプトというのは、今後ICTが発達しましても一定程度残るだろうと。そういう観点から、どう少なく見積もっても、出発時点であろうと、それから出発して当分の間であろうと、2割+α、できれば-αの方向で改革していくというのは当然ですけれども、これはやはりレセプトの中身というものを詳細に具体的に検討すれば、幾つか残っていくだろうと私どもは思っております。もちろん、まぎれのない方向へ、これは請求の内容等々が変わっていくことによって、あるいはルール自体が明確化することによって当然変わってきますので、現状で言うと、出発点から始まって、徐々にこれは減らしていく努力をしていくというのは当然だと思います。

 それから、7割程度の話につきましては、審査の中身にかかわりますので、私が申し上げるよりは、後ほどちょっと宗像理事からお話をさせていただいたほうがいいと思いますので、そのようにさせていただきます。

 それから改革のスピードでございますが、今回打ち出した内容で、我々の自己責任というか、我々の努力で行える部分で言いますと、レセプトの中身を分析して、よりまぎれがないものについては自動化していくということについては、今の支払基金の仕組みではそのまますぐあすからというわけにいきませんので、これは今システム刷新の努力をしておりますので、そういうタイムスケジュールに合わせて、1年目でどこまでやる、2年目でどのようなシステムの改革を行うみたいなことで数年間は要するだろうと思いますが、そこからスタートする。

 それから、より中身を充実していくということで言うと、これは当然投資を必要とする内容でもございますので、今は保険者の方々に費用負担をお願いしていますので、その費用対効果みたいなものも十分お示しして、ほかに財源求めようございませんので、その財源見合いの面もありますので、その辺は十分御相談をしてシステム改革は行っていくということを考えております。

○宗像理事 7割程度以上のものは公表すべきだと。査定にしましても、請求どおりにしましても、レセプトの非常に複雑な個別性というのがございまして、診療行為なり薬剤なりで一定のものが常に出るわけではないので、ある程度完結できるようなものが大体こういうことだったら7割ぐらいになるだろう、7割以上は最低ということになるだろうというものは公表すべきだろうと考えています。公表の仕方がいろいろありますので、こういう場合には査定ではないとか、こういう場合には請求どおりにすべきだろうとかいうことも必要になるのかもしれませんけれども、現在のところでは審査委員会の統一的な見解として公表できるのはそれぐらいではないかなと考えております。

○森下構成員 時期に関しては、御自分たちでここまでのものを出すのであればある程度明確な時期があって言われているというのが普通の認識だと思うのですね。いつになるかわからないというお話だと、改革しないというのと余り変わらないのではないかと思いまして、ぜひ時期は明確にしていただきたいなと1点思います。

 それから、先ほど20%-α、まさか+αで言われると思わなかったのでびっくりしたのですが、普通に考えたら、10%ぐらいに抑えるというのが多分一つの目標だと思うのですけれどもね。多分それができるということで今回の改革がまとまっているのではないかと思うので、そこは数値目標がないという改革では私は意味がないかなと思います。

 それから、先ほどの公表に関しても、コンピュータチェックする以上、そんなに幅が本来出るはずがないと思うのですね。70%しか査定が合わないというのがもう既におかしいコンピュータチェックだと思うので、そこももう少し数字を含めて検討してもらわないと、絵に描いたモチになりかねないかなという危惧を持っております。

 大変意欲的な改革案だと思いますので、ぜひ数値目標、それから時期に関して明確にしてもらうというのが重要かなと思います。

○西村座長 ありがとうございました。今の話は次回以降に対応を教えていただくということでやりたいと思います。

 どうぞ。

○金丸構成員 規制改革会議全体の話は、座長代理されていた林先生のほうがよく御存じなので後で聞いてほしいのですけれども、私は、冒頭申し上げました業務改革とIT改革を本業としておりますので、その観点からもちょっと触れさせていただきます。

 まず、あれは1~2カ月前ですか、2~3カ月前ですかね、規制改革会議に皆さんお越しになられたあのときの会議と比較すると、随分変身といいますか、前はいかにできないかという御説明だったのですけれども、きょうはほとんど我々が指摘したようなことはやっていただけるという宣言なので、宣言としては私は大いに評価をしたいと思います。短い期間で、こういう正式な場でコミットメントをなされているのは大いにいいなと思いました。

 それで、幾つかのリクエストと幾つかの意見があるのですけれども、リクエストは、支払資金の現状の組織体制図みたいなものができる限りわかるようなものを出していただきたい。それから、1件当たりのレセプト、1件当たりの処理時間とコストも現状出してほしい。そうした上で、支払にかかわるタイムラグといいますか、現場でお医者様と患者様が病院で、本人負担を除いた残りの部分の支払に関しても相当時間がかかっているわけですから、今回の改革をすれば、病院に対する支払のスループットといいますか、そういうのも早くなる。あるいは、保険者としては、発生しているデータがより早く把握できることによって、決算期というか、期ずれのないようにもしたいものですから、ぜひ支払に関する、時間に対するターゲットも決めてほしいなと思いました。

 それから、きょう宣言案は立派だったのですけれども、森下先生おっしゃられた目標値の20%-α、70%+α、これでは全くだめです。もしそれがきょうのお答えであれば、もともと私たち、河野大臣から、支払基金さん全体が今後のこういう機能を運営していただくのにふさわしい組織かどうかも含めて検証してこいということなので、そういう目標設定だとまずおかしいと。

 なぜそんな目標設定になっているのかなとちょっと想像するのですけれども、これはぜひお考えいただきたいのですけれども、最後にレセプトのデータでお医者様の専門医の御判断というのが必要になる部分が、あると思うのですね。だけど、専門医の方と、人と、それからコンピュータの仕組みが対立する構図ではなくて、韓国の例だと、人工知能という話がありましたので、専門医の皆様の、ここはこうではないかという知見はどんどん人工知能に入力の経験として反映されていきますので、対立するものではないのですね。ですから、今後は専門医の先生方がレセプト一枚一枚を細かくごらんいただくということも初期は必要なのですけれども、だんだんそれが減っていくので、専門医の方々がむしろAIと同一のチームになるということで、対立する構図でないので、だから、10%とか、それから70%を例えば80%に上げるということは私はそんなには目標として難しくないことだと思います。

 それから、コンピュータのチェックは従来ですと静的な機能なのですね。誰かがプログラムを書いて、そのプログラムどおりに判断するということなのですけれども、今後はそれが変わって、自分で自己革新をAIのほうがしていきまして、その自己革新を手伝うのが専門医の先生の知見なので、それはそのように考えていただくともっとその数字がアップするのではないかということで再検討していただきたいなと思います。

 それから、皆さんの支払基金の中で改革チームが形成されたというお話があったので、その改革チームのメンバー表といいますか、体制図みたいなものもぜひ開示してほしいなと思います。

 以上です。

○河内山理事長 いずれの御注文というか、御要請も用意してお示ししたいと考えております。AIの活用についても、これは我々もいわゆる検討は緒についたばかりなので、具体的な目標設定等についてはまた専門家の先生方の御意見を聞きながら行っていきたいと考えております。

○金丸構成員 それから、皆さんが、システム刷新計画というか、刷新までいかなくても改善計画をなさると思うのですね。長期的には刷新ですけれども、しばらくの間は今の既存のシステムを有効活用せざるを得ないと思います。ところが、そこのシステムの刷新とかシステムの改善の能力について、私の意見としては、甚だというか、大いに疑問を持っているので、そこは勝手に刷新と勝手に改善は、なさらないでほしい。厚労省もちゃんとそこは見ていただきたい。

 以上です。

○西村座長 林構成員、いかがですか。

○林構成員 ありがとうございます。

 まず最初に、規制改革会議からの森下委員、金丸委員がそれぞれおっしゃいましたとおり、このたび支払基金から、ゼロベースの見直しに向けたこうしたコミットメントをしていただいたことに深く感謝申し上げます。本当にありがとうございました。本日ここに至るまで基金の中でどれだけ話し合いの御苦労があったかと考えますと、本当にその点感謝申し上げております。

 ただ、せっかくこのような検討の場が設けられまして、金丸委員初め、AIのシステムの専門家がおられるわけですから、今まで基金の中でお考えになっていたその業務改善を別の専門分野から見てよりよい形にするいい機会であると思います。ぜひ今回お出しいただいた案をもう一つ掘り下げて、本当にデータヘルス時代と言えるような制度にする機会にさせていただきたいと思っております。その意味で、効率化の点では、具体的にいかにこのシステムを合理化していくかということがベースになります勝手にシステム刷新や改善しないでというお話が、今、金丸委員からあったのですが、そこがやはりベースになりますので、その議論をこの会議でもう少し掘り込んでいくことが必要であると思っております。

 それと、審査の統一性は、今、申し上げたICTのベースを整えた後に、国保も踏まえて情報の統一と審査の統一性ということをやっていくべきだと思っております。そういったことを前提として、基金の体制のあり方の議論があります。今回も大分考えていただいたと思うのですが、1点確認させていただきたいと思います。A3の表の資料3-2で、真ん中に「職員が目視 ※極力少なくする」というところから緑色の線がのところに入っておりまして、「業務の効率化に応じて審査体制をゼロベースで見直し(全国数箇所)」と書かれております。ここの「全国数箇所」のものと、それから、御説明の中でありました審査委員会の仕組みを地域に置いたときに、それへのサービス対応するリエゾンオフィスをこの審査委員会に併置する形なのでしょうかね。「地域単位で置く」というお話が2つあったかと思います。「全国数カ所に置くもの」と、それから「リエゾンオフィス」というものはどのぐらい違うものとしてお考えなのか、規模感と数、そのイメージを教えていただけますでしょうか。

○河内山理事長 まず、リエゾンオフィスで審査委員会をどうサポートしていくか、あるいは現場での関係者とのやりとりをどうつくっていくかということでございますが、具体的な事例を申し上げますと、支払基金が医療機関に対しまして、例えば請求どおりの場合、査定を行う場合は、その結果が通知された当日からたくさんの問い合わせ、あるいは苦情、審査委員会に説明を求める、これは電話というのはたくさんかかってまいります。これをきちんと納得性のあるものにするためには、地域地域の審査委員会と、それをサポートするリエゾンオフィスというのはどうしても必要だと。そういう意味で、リエゾンオフィスというのは最低限のものは必要だと。それがどれぐらいのものなのか、最低限これぐらいというのは、今のところまだ具体的に人数計算までは至っておりませんが、今の支部ごとの職員数に比べますとこれはかなり少なくなっていると。

 一方で、この審査をどうサポートしていくかという、審査部門をサポートするのに数カ所の人員体制が必要かということについては、何カ所かというのは、日本の災害対応等々考えますと、余り少なくして機能しないということになったのでは、これは今回の熊本でもそうですが、ああいう状況のときほど実は円滑な診療報酬の支払というのは重要になってまいりますので、現場の先生方、医療に没頭していただいていますので、あとサポートするのは幾らかの箇所のそういうものは必要だと考えていますが、これはまた具体的にどれぐらい審査体制が簡素化できるかということについてと相見合うものでございますので、今のところまだ明確に示せる状況ではございませんが、だんだんと少なくしていけるというのであればだんだん少なくしていくみたいな感じで今考えております。

○林構成員 またその点についても今後協議させていただければと思います。ありがとうございました。

○西村座長 飯塚構成員。

○飯塚構成員 今、3人の先生からはおほめの言葉があったわけですが、私はこの資料を見て、3人の先生方はレセプトの審査という分野からは少し遠いところにいらっしゃるのでそう思われたのでしょうけれども、私から言わせれば、よくもまあこう嘘を書いたなと思っています。

 まず第一に、3ページをごらんください。3ページの1、「簡素なコンピュータ審査で完結させるレセプト」が10%程度あると。初診料とか再診料のみのレセプトが10%あると。理事長は、外来管理加算というのを御存じですね。要するに、何の処置もしない、何のリハもしない、ただ再診だけというのには外来管理加算というのがつくのですよ。その外来管理加算がないレセプトなんていうものはないですよ。私は前回、200万枚レセプトを見たと申し上げましたが、私が見たレセプトで、再診料、初診料だけのものなんてありません。まず、この10%の根拠を明らかにしてください。

 それからその次、4番目、「審査委員による審査を行うレセプト」が20%-αと。これも、あなたたちは、私たちというか、ここにいらっしゃる先生たちを愚弄するのですか。今実際に審査委員がごらんになっているレセプトの率というのは2%から3%ですよ。もしも20%を見られるとしたら、例えば宗像先生がいらした東京都の支払基金の支部は月に1,000万枚レセプトが来ます。1,000万枚のうち20%といったら200万枚。それを300人の先生が見るとしたら、200万枚を300で割って、それで大体5日ぐらいいらしているわけだから、5で割ってと計算したら、1日に1,300枚になります。これは全部付箋のついたレセプトを1,300枚、1日に見るなんていうことはあり得ないです。スーパーマンだってそんなことできない。私がやって、せいぜい1日に50枚。問題のあるレセプトだったら50枚できるかどうか。

 そういうときに、今現状が20%とおっしゃったけれども、では東京都の審査委員は1日にその難しい付箋のついたレセプトを1,300枚見ているのか。それは見ていません。ここの数字は、ですから2~3%です。私、いろんなところに審査委員の友人がいます。君たちは付箋がついてないやつは見ないのかと聞くと、いや、付箋のあるやつを見るだけで手いっぱいだと。それ以外のものを見る、まず時間もないしというようなことはほとんどの先生がそう言います。

 つまり、この1の10%、これは数字で言えば、私に言わせれば限りなくゼロです。それから、4の20%というのは2~3の話です。2と3、今、コンピュータでチェックして、付箋がつかないやつというのは94%なのです。付箋がつくのは6%です。6%のうち職員が付箋はがしをやって、5%はがして、1%だけ、これははがせないねということで審査委員のほうに上げてくる。審査委員のところで、結局それが0.8%になります。今私が申し上げているのは、ことしの3月23日にそちらに行ったときに、私どもに出された支払基金のレセプト審査の流れというこの紙です。これは次回でも資料の中に入れてください。そして、今私が申し上げた、94%は付箋がつかないけれども、6%は付箋がつく。6%のうち1%は結局付箋が残り、5%は付箋を職員による解除ができているということ。この94と6と1と5、こういう数字も入れて見やすくして皆さんにお示しください。

 結局ここで出てくるのは、一番最後には、63万件の査定。63万件というのは、全体が7,800万件ありますから、0.8%です。つまり、1%、付箋はがしができない残ったもののうち0.8%が最終的に査定になるのだと。0.8%ですよ。あなたたちは20%ぐらい見るとおっしゃっているけれども、そうではないのですよ。せいぜい2%、3%の話です。ですから、この2と3、65%なんていうのはどこから出てきたのか。これは94%に限りなく近い数字のはずです。それから、その次の16%というのも根拠のない数字です。これは、今申し上げたように、6%に近い数字でしかないはずです。つまり、この3ページの1から4までの数字には、根拠がないと言うとあれだけれども、要するに嘘です。私に言わせれば。

 それから、その次、4ページのゾビラックスの話です。ゾビラックスを、通常10錠のところを20錠にしましょうというようなこと、これは支払基金としてののりを超えた話です。支払基金というのは、厚労省の告示とか、課長通知とか、そういう枠の中で審査することを保険者から委託されているものであって、2倍までは認めて、それ以上薬は認めないよなんていうことを、支払基金、あるいは各県の委員会が決めるなんていうことはとんでもないことではないですか。

年間3,000万円かかる薬の話、よく聞きますね。高額医薬品について。今、会長の先生いらっしゃるけれども、年間3,000万円の薬の話ですら、あの先生のところは2年かけたのですよ。保険対象として認めるかどうか。それを、ここに書いてあるのは非常に安易に、効能効果の2倍まで認めて、そこからは認めないとか、これはとんでもない話ではないですか。これは中医協とかが決める、議論するべきものであって、そちらの範疇ではない。全くのりを超えた話だと思います。

 それから5ページに、さっき林先生がおっしゃっていた全国数カ所という。これは組合の同意をとっていますか。この数カ所にすることについて。

○河内山理事長 これは支払基金の改革検討チームがつくったもので、今後それは当然、具体化するためには組合とも十分協議しなければなりませんけれども、その前段階でございます。

○飯塚構成員 私は今、民間会社におります。支店の統廃合というのは、計画の段階ですら労働組合協議です。それは労働組合法に書いてあります。盛んに支払基金は民間会社だとおっしゃるのであれば、まさにこの話なんか、ここは取締役会に準じるようなものであるとしたら、役会に出すときに組合の同意をとらないで出せるわけがない。そして、私が言いたいのは、大体支部の6割から7割は女性ではないですか。要するに支払基金は給料がよくて転勤がないからというので、優秀な女性がたくさん行くのですよ。で、6割7割は女性なのです。その女性たちが。

○西村座長 飯塚構成員、済みません。ちょっと時間もありますので、できるだけ簡略に、結論だけおっしゃっていただいて。

○飯塚構成員 はい。もう終わりです。こういうことに同意するわけはありませんので、これは現実的ではないと思います。

 以上です。

○河内山理事長 飯塚さんがおっしゃった幾つかの点で、また資料をお出ししますが、現状のレセプトを分析して10%、20%とやっておりますし、また宗像理事がお話しいただくのが適当かと思いますが、審査委員の先生方は大量のものを長年かけて審査していただいておりますので、通常考えられるよりは大変能力高く審査いただいておりますので、全く無理というわけではないと私どもは承知しております。

○西村座長 PDCAサイクルとよく申しますが、この話はもうちょっと順を追って、一気にここまで行くというのは、それは理想であると思いますが、もうちょっとプロセスを詳細に書いて話をしていただくとありがたいかなと思いました。

 時間もございますので、実は次回も比較的同じような議論をする予定でございますので、この基金に関してどうしてもという御意見がございましたら伺いたいと思いますが。基金ですよ。

では、お二人から。

○山本(雄)構成員 私から1点だけで、新たな付加価値の中でシンクタンクと言われて、えっとちょっと思ったのですけれども、審査・支払業務をやっていますと、レセプトデータを持っていますと。その中で健康増進、疾病予防に貢献と急に言われても、そもそも健康保険の範囲内に健康増進も疾病予防も入ってない中のレセプトデータを見て一体何ができると思っているのかというのが1つあって、これをやるぐらいだったら、先ほど飯塚構成員もおっしゃっていたように、今後の審査のあり方だとか支払側の診療内容に関してそのサポートをするというのはわかるのですけれども、前半で森田構成員言っていたように、あるいは韓国の事例もあるように、支払側のやるべき話と保険料徴収側がやるべき話をきれいに分けている話と全然相反するというか、そもそも可能だと思われているのか、ほかの業務のほうがよっぽどいいのではないかと思いますが、そこはいかがなのでしょう。

○河内山理事長 これはまさに支払基金の仕事の再定義をすべきだという大臣の御意向もあって、我々としましては、せっかく医療側からも保険者側からも信頼をかち得てこれまで業務を行っていますので、そういう延長線で、もし可能なものがあればということなので、山本先生言われたように、具体的にこれをイメージしているというのは、これから多くの方々の御議論の末だと思っております。我々としてはそういう方向も考えていきたいということを申し上げたところでございます。

○西村座長 松浦構成員、できるだけ短く、要点だけを。

○松原構成員 森下先生が数字の話をされましたけれども、そこのところがあって基金は数字を守っていかなければいけないのですが、韓国と制度が同じだという立場に立つと、ぎちぎちの数字が出ます。しかし、そうではないということを申し上げた、つまり制度が違うということを申し上げたところです。

 それから、20%がどこまで下がるかわかりませんけれども、これについては、私も実際にやってみた事がありますが、ある程度のところは医師に見せていただかないとならないと思います。200万レセプトを見たとおっしゃる方がいらっしゃいました。何カ月かけて見たかよくわかりませんが、我々も、レセプトを見るときに、最初見て、ああ、おかしいなと思うレセプトとおかしくないレセプトの差を大体経験積んでわかっております。ですから、かなりの枚数が見られます。そういった中で、重々に議論しながら、基金のできること、どこまでできるのか。それからデータベース、これは全く新しい考え方で、基金でデータベースを分析するのはすばらしいことだと思います。議論を続けさせていただきたいと思います。

○西村座長 済みません。時間が超過しました。ここできょうの会議は終了。佐藤構成員は次回必ず当てるように覚えておきますので。

 それでは、事務局のほうから、今後の日程、それから次回の検討内容ということに関して、何かアナウンスありましたらおっしゃってください。

○保険課長 きょうは支払基金のレセプトの流れについてはいろいろと意見も出まして、いろいろ疑義もありましたので、次回までに整理して、また資料を提出したいと考えております。

 次回の検討会の開催日ですけれども、正式には後日追って連絡したいと思っております。次回のテーマにつきましては、国保連の審査支払の取組について、国保連関係者の方からプレゼンテーションを予定しております。その後、これまでの議論を整理させていただきまして、中間整理に向けた御議論をお願いしたいと考えております。開催場所やその他の詳細については追って連絡いたしたいと思います。

以上でございます。

○西村座長 それでは、きょう第2回検討会をこれで終了したいと思います。

○金丸構成員 済みません。事務局は、今、飯塚構成員が御指摘された話だと、きょう出された数字は我々に対して事実は違うという御指摘ですよね。それからスタートしていただかないと、何事もなかったかのように次の工程に行くのは、受け入れがたいですね。規制改革会議であれだけ指摘して、この会議ができて、大臣がこの会をつくるということを御決断されて、支払基金もそれを受けたとおっしゃっていて、だけど、きょう出した数字が、もし飯塚構成員がおっしゃったことが本当だとすると、1桁も違う話でしょう。そんな話を改革しますとコミットしたときに出したということは、これ以上の議論は、これをはっきりさせないことには進める意味も私はないのではないかなと思っていますので、飯塚構成員が御指摘されたことの回答を次回の会議の一番最初に。

○西村座長 おっしゃるとおりだと思います。ただ、今の話は、嘘という表現は現状の話であって、基金の回答と飯塚構成員のギャップは将来ということ、ちょっと時間的なずれを置いて、だから、それは私申し上げて、現状はまだ調べてみないとよくわからないこともあると。

○森下構成員 申しわけないですけれども、その数字がベースに出ないと議論なんかできっこないですよ。確かに20%というのは、よく考えたらそんなにやっているのかと正直思いましたよ。今言われればね。でも、そのデータがないのに、改革なんかやりっこないではないですか。一番大事なことをごまかしているのか、わからないのか。もしわかってないのだったら、本当に当事者能力ゼロですよ。わかっていてごまかしているのだと本当に最悪ですよ。ここは絶対明確にしないと議論に入れないというのはそのとおりですよ。

○西村座長 わかってないのではないですか。いや、わかってないと思いますよ。数量的に把握は難しいと思います。

○森下構成員 わかってないのだったら、ここへ来てもらってもしようがないでしょう。済みません。座長がわかってないと言われると困ってしまいます。

○西村座長 その点、次回にやろうと思います。

○林構成員 議長、済みません。その回答だけは次回より前に書面で、少なくとも開催の1週間前には委員にお送りいただきたいと思います。

○西村座長 おっしゃるとおりです。私が言っているのは、一つの数字で出すことは無理だということを申し上げているわけです。それは言えると思いますよ。そこまで全部データ集めて、どれだけという正確な数字を出すことは。

済みません。ちょっと時間が超過しましたので、今の御指摘を踏まえて、事務局と基金と連携していただいて回答してください。よろしくお願いします。


(了)

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