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2016年5月30日 第1回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会(議事録)

健康局がん・疾病対策課

○日時

平成28年5月30日(月)15:00~17:00


○場所

航空会館 701~702会議室(7階)


○議題

(1)座長の選任について
(2)緩和ケアに関するこれまでの議論と今後の議論の方向性について
(3)その他

○議事

 

○事務局 定刻となりましたので、ただいまより第1回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会を開催いたします。構成員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。事務局を務めさせていただきます厚生労働省健康局がん・疾病対策課の濱と申します。座長が決まりますまでの間、進行を務めさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、初めに検討会の開催に当たりまして、大臣官房審議官の樽見より御挨拶を申し上げます。

○樽見審議官 大臣官房審議官健康担当の樽見でございます。どうぞよろしくお願いいたします。本日はお忙しい中、第1回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会に御参集いただきまして、誠にありがとうございます。

 構成員の先生方におかれましては、何かと御多用の中にもかかわりませず、今回、構成員に御就任いただきましたことに、まずもって心から感謝を申し上げる次第でございます。本来であれば健康局長がまいらなければいけないところですが、ちょうど今、大臣用務でどうしても外せないという形になっておりますので、代わりまして私から御挨拶をさせていただきます。

 我が国のがん対策につきましては、平成186月に成立した「がん対策基本法」及び「がん対策推進基本計画」に基づいて進めてまいったところでございます。特に緩和ケアにつきましては、この基本計画において重点的に取り組むべき課題の1つとされて、「がん」と診断されたときから、緩和ケアの推進を掲げているところでございます。

 平成244月以来、緩和ケアの推進の観点から、緩和ケア推進検討会において、これまで4年間にわたり計19回の議論を重ね、がん診療連携拠点病院を中心といたしました緩和ケアの提供体制の整備、あるいは緩和ケア研修の実施、診療報酬による評価といった形で、がんにおける緩和ケアの推進に努めてまいったところでございます。

 しかしながら現場では、いまだ多くの患者さんが身体的あるいは精神的な苦痛を抱えていらっしゃるという状況にございます。来年夏からの次期がん対策推進基本計画を策定するということになっておりますので、それに向けた作業の一環としてこの検討会での議論を始めていただくということになるわけでございますが、併せて今検討会においては、循環器に対する緩和ケアの推進ということについての議論も行っていただきまして、緩和ケア全体の底上げ、課題解決に向けた施策に反映をしてまいりたいと考えているところでございます。

 構成員の皆様方におかれましては、それぞれのお立場から御自身の知識や御経験に基づいた有意義な御意見を頂きまして、緩和ケアの更なる推進に向けて活発な御議論を賜りますよう、よろしくお願い申し上げる次第でございます。簡単ではございますが、会の始めに当たりましての御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 続きまして構成員の皆様方の御紹介をさせていただきます。恐縮ですが、お名前を呼ばれた際に御起立していただき、一言御挨拶いただきますよう、よろしくお願いいたします。

 公益社団法人日本薬剤師会常務理事の有澤賢二構成員です。

○有澤構成員 有澤でございます。薬局を中心とする薬剤師の立場から、いろいろと意見を言わせていただきたいと思っております。よろしくお願いいたします。

○事務局 国立循環器病研究センター心臓血管内科部長の安斉俊久構成員です。

○安斉構成員 安斉でございます。3年ほど前から循環器疾患に特化した緩和ケア治療を立ち上げて活動をしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 淀川キリスト教病院緩和医療内科主任部長の池永昌之構成員です。

○池永構成員 淀川キリスト教病院の池永でございます。前回の検討会から参加させていただいております。対策基本法ができ、より緩和ケアという言葉が一般市民にも伝わるようになってきましたが、更なる発展について、力を注ぎたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 国立がん研究センター東病院精神腫瘍科科長の小川朝生構成員です。

○小川構成員 国立がん研究センター東病院の小川と申します。どうぞよろしくお願いいたします。主に緩和の中でも精神心理的ケアを担当しております。その領域から何らかの貢献ができればと思っております。よろしくお願いいたします。

○事務局 明治薬科大学臨床薬剤学研究室教授の加賀谷肇構成員です。

○加賀谷構成員 明治薬科大学の加賀谷と申します。前回の委員会から続けさせていただいております。私は緩和医療薬学という立場と、あと薬剤師の立場と両方で是非お話させていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○事務局 広島大学大学院医歯薬保健学研究院応用生命科学部門循環器内科学教授の木原康樹構成員です。

○木原構成員 木原と申します。この度から構成員に加えていただきました。広島県における慢性心不全の患者さんたちのチーム医療を中心に活動しております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 一般社団法人CSRプロジェクト代表理事の桜井なおみ構成員です。

○桜井構成員 桜井です。私も今回より参加させていただきます。がんと診断されて11年たちますが、多くの仲間の看取りに関わってきました。もっともっと患者さんと家族の手に届くように尽力したいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○事務局 一般社団法人WITH医療福祉実践研究所がん・緩和ケア部部長の田村里子構成員です。

○田村構成員 田村です。私はがんの緩和ケアの相談支援という所でソーシャルワーカー、社会福祉士の立場で、患者さん・家族の暮らしといろいろな不安を、こういうプロジェクトで更に安心できるような形に、一緒に取り組ませていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 東京大学医学部附属病院放射線科准教授の中川恵一構成員です。

○中川構成員 中川でございます。私は放射線治療が専門ですが、また緩和ケアにも関わってまいりまして、平成15年から12年間は東大病院での緩和ケア診療部の部長も兼任してまいりました。また、がん対策推進協議会の委員も発足から今に至るまでやらせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 がん研有明病院がん疼痛治療科部長の服部政治構成員です。

○服部構成員 服部です。がん疼痛治療科というのを立ち上げて、ペインクリニックの技術を、がんの患者さんの痛みの治療にどんどん役立てていき、広めようということで、今、仕事をしております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 東京ふれあい医療生活協同組合副理事長、梶原診療所在宅総合ケアセンター長、おれんじほっとクリニック所長の平原佐斗司構成員です。

○平原構成員 平原でございます。今回初めて参加させていただきます。92年から、がんの在宅緩和ケアをやりたくて在宅医になった医者です。ここ10年は非がん疾患の緩和ケアを専門というか、テーマとしてやっておりまして、恐らく今回、そのテーマのために呼ばれたのだと思います。現在、日本在宅医学会の副代表理事をさせていただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 聖路加国際大学学長、聖路加国際病院院長の福井次矢構成員です。

○福井構成員 緩和ケア部門を有する病院の管理職にあります。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 京都府立医科大学疼痛・緩和医療学講座の細川豊史構成員です。

○細川構成員 細川でございます。前検討会からの引き続きとなりますが、この第1回がん等における緩和ケアの更なる推進に関する検討会にまた参加させていただきました。今回より循環器関係の先生方が加わっていただくとお聞きしました。我々の施設の緩和ケアチームでは循環器や呼吸器の患者さんの緩和ケアを既に実施し始めているところです。近い将来、緩和ケアが、がん、循環器や呼吸器の患者さんだけでなく、全ての疾患で亡くなる患者さんに将来広がっていくことを祈念いたしております。新しいこの会ができたことに対してこのような観点から非常に期待しております。今後ともよろしくお願いいたします。

○事務局 特定非営利活動法人周南いのちを考える会代表の前川育構成員です。

○前川構成員 前回と前々回の専門委員会とか、緩和ケアのほうでずっと関わらせていただいております。ただ私は、患者経験者とがん患者サロンをボランティアで開催しております。患者サロンをしておりまして、7年間で3,000人ぐらいの方が来られています。そういう方の声や、心の中を、私の中で咀嚼しながら、この場で発言させていただきたいと思います。時には厳しいことを言うかもしれませんが、よろしくお願いいたします。

○事務局 公益社団法人日本医師会常任理事の道永麻里構成員です。

○道永構成員 道永と申します。前期に引き続き構成員となりました。またよろしくお願いしたいと思います。

○事務局 東京医科歯科大学大学院医歯学総合研究科・臨床腫瘍学分野教授の三宅智構成員です。

○三宅構成員 三宅です。よろしくお願いします。今回から参加させていただきます。私自身は緩和ケアが専門なのですが、私の分野は緩和ケアと化学療法を担当しております。それから、大学のチームとしては循環器の患者さんが結構いらっしゃいますので、是非、いろいろ勉強させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○事務局 川崎医科大学附属川崎病院看護部長付参与の山田佐登美構成員です。

○山田構成員 山田でございます。私は多分、日本循環器看護学会の立ち上げと、今も幹事をしているのですが、慢性心不全看護の認定看護師教育を今まで立ち上げてやってきたということと、大学病院と尾道市の自治体病院等におりましたので、地域連携だったり、在宅医療、在宅看護というところで看護管理者の立場から発言をさせていただければと思っています。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 なお、公益社団法人日本看護協会常任理事の川本利恵子構成員より、約1時間ほど遅れるとの御連絡を頂いております。

 続きまして、事務局の紹介をさせていただきます。厚生労働省大臣官房審議官の樽見です。健康局がん・疾病対策課長の佐々木です。同じくがん対策推進官の丹藤です。同じく課長補佐の清住です。事務局の紹介は以上です。

 それでは、資料の御確認をお願いします。「座席表」「議事次第」資料1は開催要綱、資料2は構成員名簿、資料3「緩和ケアに関するこれまでの議論について」、資料4「がん対策加速化プランへの対応状況(緩和ケア部分抜粋)」、資料5「今後の議論の方向性について()」、資料6「がん診療を担う医療機関における緩和ケア提供体制について(池永構成員提出資料)」、資料7「基本的な緩和ケアの研修について(小川構成員提出資料)」。

 参考資料1「がん対策推進基本計画(緩和ケア関連部分の抜粋)」、参考資料2「緩和ケア推進検討会報告書」。以上です。資料に不足・落丁等がありましたら、事務局までお申し出ください。

 以上をもちまして、カメラを納めていただきますよう、御協力のほど、よろしくお願いいたします。

 それでは、議題1「座長の選任について」に移りたいと思います。資料1は本検討会の開催要綱ですが、3.その他(2)におきまして「本検討会には、構成員の互宣により座長をおき、検討会を統括させる」とされております。構成員の互選により座長を選任していただきたいと思いますが、どなたか御推薦いただけますでしょうか。

○道永構成員 聖路加の福井次矢先生を推薦したいと思います。

○事務局 ただいま福井構成員の御推薦がございましたが、そのほかにはいかがですか。それでは、福井構成員に本検討会の座長をお願いしたいと思いますが、よろしいですか。

                                    ( 拍手賛同)

○事務局 それでは、恐縮ですが、福井座長、座長席への御移動をお願いいたします。福井座長より改めて一言御挨拶を頂けますでしょうか。

○福井座長 聖路加病院の福井です。私は緩和ケアの専門家ではございません。総合診療を主催しておりました。京都大学で、麻薬の使用量が驚くほど少なかったために、緩和ケアでの麻薬の使用量を増やす活動をした覚えがあります。循環器をやっている頃に、90歳ぐらいの大動脈弁閉鎖不全の方が、一切治療を受けたくないと言われて、亡くなるのをベッドサイドで看取ったことがあります。そういう経験がどのぐらい役に立つか分かりませんが、今回のこの検討会のまとめ役をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

○事務局 ありがとうございます。それでは、以降の進行は福井座長にお願いいたします。

○福井座長 それでは、議題2「緩和ケアに関するこれまでの議論と今後の議論の方向性について」に移りたいと思います。本日は、事務局からの発表の後、お二人の構成員から資料を提出いただいておりますので、その内容の説明をしていただいた後、構成員の皆様から広く御意見を頂きたいと思います。最初に事務局より、これまでの検討状況についての説明をお願いします。

○事務局 それでは、事務局より資料3、資料4、資料5の御説明をいたします。まず資料3「緩和ケアに関するこれまでの議論について」です。資料33ページ、スライド番号が右下にありますが、スライド番号3です。34に「緩和ケアの歴史」について書いております。我が国では1980年代にホスピスが誕生し、1990年代には診療報酬が新設されている状況です。2006年にがん対策基本法が成立し、第1期の基本計画では「治療の初期段階からの緩和ケアの実施」、2012年の第2期の基本計画には「がんと診断された時からの緩和ケアの推進」が盛り込まれております。

4枚目は、緩和ケアの推進の状況です。前身の「緩和ケア推進検討会」が20124月に立ち上がっております。20156月には、がん対策推進基本計画の中間評価報告書が出されております。また、昨年12月には「がん対策加速化プラン」が策定され、本年4月に「緩和ケア推進検討会報告書」を取りまとめている状況です。

 スライド5は第2期の「がん対策推進基本計画」になりますが、重点的に取り組むべき課題及び分野別施策に、がんと診断されたときからの緩和ケアの推進が盛り込まれてあります。

 スライド6は、がん対策推進基本計画よりの抜粋です。参考資料1にも抜粋資料を付けております。取り組むべき施策として、主に9つの項目を盛り込んでおります。がん診療に緩和ケアを組み入れた診療体制の整備、あるいは拠点病院を中心に緩和ケアチームや緩和ケア外来の診療機能の向上を図る。あるいは緩和ケア研修会の質の向上や緩和ケア教育、普及啓発などが取り組むべき施策として盛り込まれている状況です。

 また、個別目標として、3年以内に緩和ケアの研修体制を見直す。これに関しては、昨年2月に研修会の開催指針の一部改正を行っております。5年以内にがん診療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解し、知識と技術を習得することを目標とする。特に、がん診療連携療拠点病院では、自施設のがん診療に携わる全ての医師が緩和ケア研修を修了することを目標としております。もう一点、3年以内に拠点病院を中心に緩和ケアを迅速に提供できる診療体制を整備するとともに、緩和ケアチームや緩和ケア外来などの専門的な緩和ケアの提供体制の整備と質の向上を図ることを目標としてまいりました。

 スライド7以降は個別の施策になります。まず「がん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修会」についてです。平成283月末時点で、修了者数は73,211名の医師及び歯科医師となっております。

 スライド9は「がん医療に携わる看護研修事業」として、昨年度までの3年間、がん診療に携わる看護師の指導者を育成する事業を行っておりまして、約1,600名の指導者を養成しているような事業を行ってまいりました。

 スライド10は、がん診療連携拠点病院の指定要件の概要です。主にがん診療連携拠点病院の中で緩和ケアをどのように進めていけばよいのかということで、緩和ケアチームの人員配置、あるいは求められる主な取組として、真ん中に列挙しているようなことを行ってまいりました。

 スライド11も、緩和ケア推進事業として行ってきたものです。都道府県がん診療連携拠点病院において、この3月までに緩和ケアセンターを整備することを進めてまいりました。緩和ケアセンター長やジェネラルマネージャーという人員を置くという形で進めてまいりまして、右側には緩和ケアセンターにおける主な活動内容を書いております。緩和ケアチームや緩和ケア外来、緩和ケア病棟等を有機的に統合して、そのような専門的な緩和ケアを提供する院内拠点組織を整備するという目的で行っております。具体的には、特に緩和ケアチームが主体となり、以下の8つの活動を行うことを求めております。

 スライド12は「がん対策推進基本計画中間評価概要」です。昨年6月に概要をまとめておりますが、緩和ケアの部分を抜粋したものです。全体目標として、全てのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上に対しては、身体的苦痛や精神心理的苦痛の緩和が十分に行われていないがん患者が34割ほどいるという状況が報告されており、それに対して全てのがん患者とその家族の苦痛を緩和することができるよう、引き続き体制の検証と整備を進める必要があるという提言が挙げられております。

 また、重点的に取り組むべき課題及び分野別施策においては、拠点病院でがん診療に携わる全ての医師が緩和ケアを修了することに向けて、より一層の緩和ケア研修の受講勧奨を実施する必要がある。また、拠点病院以外の医療機関や緩和ケア病棟、在宅医療等における緩和ケアの提供体制の構築について、その在り方を更に検討するとともに、在宅医等も積極的に緩和ケア研修会を受講できる体制を構築していく必要がある。引き続き緩和ケアの普及啓発を推進する必要がある。また、医療従事者に適正な使用法を周知するとともに、患者に対しても適切な指導が行われるよう、緩和ケアセンターの活用等を含めた体制の整備を図る必要がある等が、引き続きの検討の必要な項目として挙がっております。これらは、第3期基本計画策定に当たっての検討が必要という提言がされております。

 スライド1314は昨年12月に策定された「がん対策加速化プラン」の概要です。緩和ケアに関しては、がんと共生の所に記載が盛り込まれております。14ページ目の右下に緩和ケアの具体策を述べています。

 スライド15は、「がん対策推進協議会の委員より提出された意見」として、先ほどの「がん対策加速化プラン」への提言の中で、緩和ケアについて出された意見で、「がん対策加速化プラン」には盛り込まれなかったところですが、このような内容は第3期基本計画策定に当たっては検討が必要という形で残されています。

 途中になりますが、資料4を御覧ください。資料4は「がん対策加速化プランへの対応状況」の緩和ケアの部分の抜粋です。緩和ケアについては、主に7点加速化プランに盛り込んでおりますので、簡単ですが、対応状況を御報告いたします。

1点目は、緩和ケアチームの実地研修について盛り込んでおります。現在4月の時点で、全国19か所の拠点病院の緩和ケアチームに実地研修を受け入れていただく形で依頼をしている状況で、現在、募集をしているところです。

2点目は、苦痛のスクリーニングの事例集の件です。本日の机上配布資料の黄色の冊子にありますが、厚生労働科学研究において、昨年度木下班で苦痛のスクリーニングの事例集を作成していただき、この4月に厚生労働省のホームページ等で公開している状況です。

3点目は、緩和ケア研修会を引き続き行い受講を進めるということで、こちらは都道府県を通じて拠点病院に受講促進の協力を4月に依頼しているという状況です。

 また、緩和ケアに関するガイドブックがあり、それの改訂を進めることを4点目のプランとして盛り込んでおり、こちらは今年度厚生労働科学研究において、本日構成員で御出席いただいている小川先生にガイドブックの改訂を検証していただいているところです。

 また、遺族調査についても盛り込んでおりますが、こちらは関係団体等と連携しつつ、調査方法を含めて今後対応していく状況です。

 さらに、緩和ケアに携わる者や施設間の調整を担う人材育成に関しては、今年度の地域緩和ケアネット構築事業として取組を始めたところです。また、訪問看護ステーション等の看護師を対象とした研修を実施することに関しても、日本看護協会に委託をした形で地域緩和ケア等の研修事業を始めたところです。

 最後に緩和ケア病棟の件ですが、緊急の症状緩和目的の入院を受け入れる緩和ケア病棟の評価を検討する件については、今年度の診療報酬改訂において、外来患者がん患者在宅連携指導料及び緩和ケア病棟入院料、緊急入院初期加算として新設して対応したところです。

 資料316枚目に戻ります。こちらは「緩和ケア推進検討会報告書の概要」です。こちらも参考資料2に報告書を付けておりますが、特に下段にある「今後検討すべき課題」を報告書の最後にまとめております。拠点病院における緩和ケア提供体制の在り方。例えば緩和ケアセンターの運営や苦痛のスクリーニングの実施体制などを1点目の課題として残しております。2点目は、拠点病院以外の医療機関における緩和ケア提供体制の在り方。3点目は、全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを身に付けるための方策として、今後検討すべき課題として、この3点を残している状況です。

 スライド17以降は、今年度の緩和ケアに関する事業内容についての概要です。資料3、資料4の説明は以上です。

 引き続きまして、資料5の説明を事務局からさせていただきます。資料5は「今後の議論の方向性について」の案です。スライド2は、「がん対策推進協議会における今後の議論の進め方」です。スライド34にその概要を書いています。次期基本計画策定に向けて議論すべき項目のうち、検診、医療提供体制、緩和ケアについては、それぞれの検討会において、その課題や対応案を議論した上で、今年の8月を目途に提言をがん対策推進協議会に報告して、次期基本計画に盛り込むべき事項を議論することになっております。ですから緩和ケアに関しては、まずこの基本計画にどのような内容を盛り込むのかという議論をしていただくことも1つの目的で、出された御意見は協議会と連携しつつ進めていくというスケジュールになっています。

 スライドの5は、「本検討会で検討すべき論点について」の案です。こちらは、先ほどの緩和ケア推進検討会の報告書における今後検討すべき課題の3点を中心に、議論を進めていただけたらと思います。アは、がん診療を担う医療機関における緩和ケア提供体制の在り方。イは、全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを身に付けるための方策。ウは、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制の在り方を議論していただければと御提示いたします。

 順にお示しします。スライドの7のアに関してです。スライドの8はがん治療をどこで受けているかを示した資料ですが、一番右の端に全国計が書かれています。白はがん診療連携拠点病院で治療を受けている患者の割合で、青ががん診療連掲拠点病院以外の病院で治療を受けている数です。地域差はありますが、約4割が拠点病院以外でがん治療を受けているという状況です。

 スライドの9及び10は、「緩和ケア関連診療報酬の算定回数」です。緩和ケア病棟入院料及び緩和ケア診療加算。スライド10では、がん性疼痛緩和指導管理料等を示しておりますが、300床以上のように、病床数の多い病院では、それら緩和ケア関連の診療報酬の算定回数は多い傾向ですが、病床数が少ない所は診療報酬の算定がなかなかできていない状況で、場合によっては緩和ケアがなかなか進んでいないのではないかということが推測されるような資料としてお示しさせていただきました。

 続きましてスライド11です。「がん患者はどこで看取られているか」という資料です。平成26年度のデータを当課で作成しておりますが、がん診療連携拠点病院で亡くなる患者は約4分の1で、約4分の3のがん患者は、拠点病院等以外の場所で看取られているという状況です。

 スライド12は、以上の3点を踏まえて、拠点病院の緩和ケアもこれまで以上に推進しつつ、拠点病院以外の医療機関についても、緩和ケアを充実させていくことが重要ではないかと提案させていただきます。

 スライド13は、イの全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを身に付けるための方策です。

 スライド14は、WHO総会における緩和ケアの強化に関する決議の中で、緩和ケアの教育部分を抜粋したものです。この決議においては、緩和ケアの教育を3段階に分けて考えているという状況です。一番上に基本的な修練あるいは継続教育として、全ての医学部、看護学部教育の必須科目として、また、プライマリーケアの提供者、そこには医療従事者や社会福祉士等などに対する実践的な訓練として統合されるべきと述べられています。また、生命を脅かす疾患の患者に日常的に関わる全ての医療従事者に対しては、中間的な修練が行われるべきと書かれております。

 専門職に対する緩和ケア教育という3段階に分けて教育に関して書かれており、基本的な緩和ケアの修練、教育は全ての医療従事者、プライマリーケアの提供者も含めた方々に対して行うべきであると決議には述べられています。

 スライド15は「緩和ケア研修会修了者の所属施設について」、当課で作成した資料です。昨年9月時点での研修修了者は、約62,000人です。そのうち拠点病院に所属する修了者は、約24,000人で、左下の円グラフにありますように、約4割が拠点病院の医療従事者が修了しているという状況です。全医師から見ますと、拠点病院に所属する医師は約4分の19万人ですので、拠点病院以外に従事する医師もたくさんおられますので、拠点病院のみならず、拠点病院以外に所属する医師等にも緩和ケア研修会を受けていただく必要があるのではないかということでお示ししています。

 今まではがん診療に携わる全ての医療従事者、基本的な緩和ケアを理解し、知識と技術を修得することが目標として掲げられていることを踏まえ、がん診療に携わる医師等に対する緩和ケア研修を実施してまいりました。拠点病院以外でも緩和ケアを実施するために、基本的な知識を全ての医療従事者が身に付けるべきとの認識が重要ではないかということで御提示させていただきました。

 スライド17です。ウは、循環器疾患の患者に対する緩和ケア提供体制の在り方についてです。2002年の世界保健機関(WHO)の緩和ケアの定義を載せております。緩和ケアの対象は生命を脅かす疾患となっていることは御存じのことかと思います。

 スライド19WHOの報告で、成人の終末期に緩和ケアを必要とする者の疾患別割合です。Cardiovascular diseases、いわゆる心血管系の疾患が必要とする割合として1番に挙がっています。2位ががんという状況で、がんのみならず、心疾患、循環器疾患の患者も緩和ケアを必要とされていることが報告されています。

 一方で、緩和ケアについて議論するに当たっては、「疾患群別の予後経過」として、がんは比較的長い間機能は保たれますが、最期の2か月ぐらいで急速に機能が低下すると言われております。心疾患末期においては、急性増悪を繰り返しながら徐々に機能が低下して、最期に比較的急に低下するという経過の違いがありますので、この違い等も踏まえつつ、検討・議論が必要ではないかと考えられます。

 スライド21は当課で作成した資料で、平成2610月の患者調査からのもので、「傷病分類別にみた施設の種類別推計患者数」です。300床以上の病院、300床未満の病院、そして一般診療所の外来患者数を記載したものです。300床未満の中小病院や診療所では悪性新生物の患者の割合は3.8%、あるいは0.6%となっておりますが、循環器の患者等は18%、あるいは16.5%のように、中小病院や診療所では、がん以外の患者の割合が多いという推計もされることがあります。

 スライド22に記載しましたように、中小病院や診療所のように地域に近い医療機関の場合、がん以外の患者の割合も多いと推計されます。また、緩和ケアの対象患者は、特定の疾病に限定されるものではなく、がんに並び循環器の患者も緩和ケアを必要としています。がん患者への緩和ケアに加え、循環器疾患の患者への緩和ケアについても検討してはどうかと記載しました。

 スライド23。最後のスライドは、本検討会の進め方の案です。本日第1回の検討会を開催しておりますが、おおよそ1か月に1回検討会を開催しまして、9月ぐらいを目途に、適宜協議会と意見交換をしつつ、協議会のほうに提言のようなものを出せればと考えている状況です。事務局からは以上です。

○福井座長 ありがとうございました。続いて「がん診療を担う医療機関における緩和ケア提供体制について」、池永構成員より御発表いただきたいと思います。

○池永構成員 淀川キリスト教病院の池永でございます。お時間を頂きましてありがとうございます。私から前回の検討会の内容も含めて、今後がん診療を担う医療機関並びに更なる緩和ケアを広げるための緩和ケアの提供体制について、課題を述べさせていただこうと思っております。

 スライド2枚目。緩和ケア推進検討会において、報告書を4月に提出しております。その中において「今後検討すべき課題」として、拠点病院における緩和ケアの提供体制、例えば緩和ケアセンターや苦痛のスクリーニングの実施体制。そのような点についての課題を挙げております。2番目として、拠点病院以外の医療機関における緩和ケアの提供体制の在り方。3番目が、全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを身に付けるためにということで挙げております。

 まず、拠点病院における緩和ケアの提供体制の在り方について、スライド3枚目にまとめております。特に拠点病院、都道府県の拠点病院においてこの春までに緩和ケアセンターの設置が義務づけられたわけですが、このセンターの現状の把握がまだ十分にできておりません。急に作られた所もあれば、ある程度長い期間をかけて充実したセンターの機能を発揮している所もあるとも聞いておりますが、その現状の把握が非常に重要であると考えております。いろいろな調査方法、質問紙であったり、実地調査等が考えられると思いますが、現在のこの緩和ケアセンターの運営において何か課題はないだろうか、そのような分析。また設置によってその拠点病院全体がどのように変化したのか、影響を評価する必要があるのではないかと考えます。

 加えて、例えばスクリーニングについての課題、資料も今回添付されておりますが、スクリーニングの課題、また実施についての人員への影響であったり、事務職員の配置等の課題も残されているのではないかと考えられます。その上で、緩和ケアセンターの要件を再評価する必要があるということでもあります。

 また、この中において緩和ケアセンターの重要な機能の中に、地域連携においての課題があります。この地域連携においては、先ほど事務局からもお話を頂きましたが、地域緩和ケアネットワーク構想事業の中においての地域緩和ケア連携調整員、このようなものを拠点病院の緩和ケアセンター等が中心となりというような文言が付け加えられておりますが、現在、緩和ケアセンターは都道府県拠点で設置されておりますので、やはり地域連携を具体的にしていくには非常に範囲が広すぎるという点において、十分評価していく必要性がある。また現在、地域連携においては、様々な情報が拠点病院を中心にがんの情報はそろっておりますが、それを公表し、患者や関連医療機関がどのように利用できるようになるかというような公表についても、評価していく必要があるのではないかと考えられます。

 最近患者会からお声を頂いておりますが、拠点病院で治療が終われば、患者さんは地域の病院に戻っていくということが多くあります。そのようなとき、患者さんが「どのようにすればいいのでしょうか」という声に対して、なかなか拠点病院としては「それは自分で決めてください、患者さんで希望に合わせて判断してください」というような声で困ったという患者会の声が前回の研修会でありましたが、そのようなことに応えるということが、拠点病院としての機能として必要と考えられると思われます。

4枚目。併せて拠点病院における緩和ケアの提供体制の在り方です。緩和ケアチームの実地研修が加速化プランに挙げられて、診療機能の高い所に低い所が実地研修を行い、それで良いもの、ところを持ち帰るという大きな目標が立てられておりますが、ただ研修を受けて終わりではなくて、何を研修するのか、また緩和ケアのチームの質というのはどういうものなのかというようなことも、検討していかないといけないと思われます。

 特に自施設の緩和ケアチームの課題が何であって、何を学ぶことによってどのように良いものにしていくかというPDCAサイクルが緩和ケアチームにも必要なわけですが、その評価をしていくシステムの構築が重要であると考えられます。本年度から緩和医療学会において、セルフチェックプログラムという、緩和ケアチームに対してのプログラムを試験的に開始しておりますが、そのような自施設を評価して、その自施設の課題とその解決方法を実地研修によって学ぶということ。時には研修ですので、チームの活動の改善計画書を提出する、義務づける等の働きかけも重要であり、この研修がより充実したものにするためにも大切だと考えております。

 また項目の中に緩和ケアチームの地域連携、特にアウトリーチというような、地域に降りて行って専門的な緩和ケアを地域によっても発揮することが求められておりますが、その点においての人員の問題、また課題というものは何かということを、考えていかなければいけないと考えております。

5枚目。次に、拠点病院以外の医療機関においての緩和ケア提供体制の在り方についてまとめております。特に先ほど事務局から報告がありましたとおり、拠点病院以外においても、がん患者さんを看取るということ、終末期を過ごしていらっしゃる所ですので、地域医療を担う中小病院・地方病院、また在宅療養支援診療所、最近では強化型であったり、緩和ケア充実診療所というような在り方も作られておりますが、そのような拠点病院以外の施設においての緩和ケア提供体制を充実していかなければならない。

 現在のところ常勤の精神科医のいないような中小病院・地方病院は多いわけなのですが、そういう所では緩和ケア診療加算が取れない状況で、緩和ケアチームが活動しても十分な診療報酬の手当がないような状態がございます。そのような緩和ケアチームをどう育てて機能を発揮してもらうかということが、課題として残されていると考えられます。

 また、リソースの少ないような地域や施設に、専門的な緩和ケアチームがアウトリーチを促進するような施策の検討。中小病院や診療所と拠点病院の専門家が共同診療を行う、また訪問診療に同行するというようなことも何らかの形で進めていく必要性が、緩和ケアチームのリソースが少ない所では重要であると考えられます。

6枚目のスライド。緩和ケア病棟についても、今回、診療報酬において様々なアプローチをされております。入院期間によって入院料の層別化が早くから行われております。これもまた急性期病院と同じような形とも言えるのだろうと思います。また在宅から緊急入院に対する評価が、本年度から診療報酬に組み込まれております。

 しかし一方で病棟数が年間増加しております。昨年度で15病棟が増えておりますけれども、その中でまだまだ十分な人材が不足している。またケアの質の確保が難しいというような問題が残されております。このような点から恐らくこの先、急性期型の緩和ケア病棟、どちらかというと人材豊富であり、なおかつ緊急入院に対応していくような人材豊富な緩和ケア病棟と、あとは人材は若干少ないのだけれども、在宅療養の難しい人をやや療養的にも見ていく機能があるというような、療養型の緩和ケア病棟というように分かれていくのではないかと考えています。現在でも全国の緩和ケア病棟の在院日数を調べると、約30日前後というような施設と、40日以上の施設とに若干分かれております。このような層別化というようなことも、今後、緩和ケア病棟の適応体制を充実させていくためには、重要であると考えております。

7番目のスライド。全ての医療従事者が、基本的には緩和ケアを身に付けるための方策ということでまとめております。特に緩和ケア研修会を、拠点病院以外の医師に義務づけるために必要になってくること。1つには、診療報酬でも手当されておりますが、在宅療養支援診療所の医師に対して、緩和ケア研修会の受講を要件化していく。たくさん受けていただくことが重要であると考えられております。これは診療報酬の上で手当がされております。またがん関連の認定医、学会の認定医、専門医の更新時における緩和ケア研修会の要件化は、今回がん治療認定医の中に組み込まれましたので、非常に受講生が増えているということも一定の効果が評価できます。

 そのほかにの学会の認定医・専門医においての更新において、このような受講化を要件化することにより、効果的な働きかけができるのではないかと思われます。

 また、がん緩和ケアに特化しないような研修会のプログラムの作成ということも、今後重要になってくるかと思います。症状緩和だけではなくて、特に緩和ケアの考え方、全人的な苦痛についての評価、あとはコミュニケーションという部分、また地域連携、またアドバンスケアプランニングというような内容を評価したがん以外の診療を行っている医療従事者に対しても、効果的な研修を組み立ていくことが重要と考えられます。

 最後8枚目、循環器疾患の緩和ケア。今回、構成員の中にも専門家の方がたくさんいらっしゃいますので、私自身もそんなに専門ではない中でお話させていただくことは、大変恐縮ではございますが、いろいろとまた教えていただければと思います。現状と目標について、がんと比較すると病態の改善が症状緩和にも役立っていきますので、病態に対する治療が、やはりがん緩和ケアと比べて必要になってくるのではないかと思われます。ただ単に御本人の御希望に合わせて水分を摂ってもらう、栄養を摂ってもらうだけではなくて、水分管理であるとか、ADLの管理、心拍数や心拍数の調整というような介入も非常に重要になってまいります。

 あと、トラジェクトリががんとかなり違うと。やはり生命予後の予測というのは非常に難しいという問題を、我々は現場においても感じております。一方で、やはり人生の最終段階における医療に関する希望を確認しておくということ。そういうようなアドバンスケアプランニングというような働きかけが、より重要な疾患ではないかと思われます。そのような前提において、緩和ケア研修会のプログラムを作っていくことが重要かと思います。

 ただ問題点として、もともと緩和ケア医と循環器内科医というのは、これまで余り関係を強く持ってこなかったというところもありますので、より一層連携していかなければならないと思っております。これまで私自身、緩和ケアチーム医をしておりまして、ASOの痛みに対しての医療用麻薬の使用であるとか、あとは終末期においての鎮静についての御相談というのは受けてまいりましたが、今後、先この関係を深めていくような働きかけは重要だと思っております。

 また多くの症状緩和の治療というものは、がんをベースに日本では広まってきておりますが、いわゆる心不全の末期の状態においての症状緩和、また呼吸困難に対してのを医療用麻薬の保険適用拡大、神経・筋疾患においては保険適用が特例として認められておりますけれども、心不全に対してもこのような保険適用の拡大というものも重要ではないかと考えております。

 以上、私から御報告させていただきました。ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございました。それではもうお一方、小川構成員からの御発表を伺った後、ディスカッションをしたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。

○小川構成員 国立がん研究センター東病院の小川と申します。よろしくお願いいたします。私からは「基本的な緩和ケアの研修について」、今までの経過等を簡単にまとめて御報告させていただきます。資料7に沿って御説明させていただければと存じます。今回は2枚目に大きな主な内容をまとめております。今までの研修の現状を、これは事務局からも先ほど報告がありましたが、それを簡単に御紹介させていただき、その中で様々な今までの緩和ケア推進検討会等で明らかになった課題。その中でどのような検討が、恐らくここの検討会での重要な課題になるかと思いますけれども、この辺りがというところを幾つか提示させていただきたいと思います。

3の所からお願いします。これは先ほど事務局からも出ましたスライドですが、資料の5の所とも絡むのですが、緩和ケアの教育がどのような構成になっているかというのを示したものです。大きくは「専門的緩和ケア」という専門家の育成と、「基本的緩和ケア」、これは先ほど出ましたけれども、生命の危機的な状況に対する医療従事者であれば誰もがというところで、医師、看護師、薬剤師等が対象になる、そのような領域です。そのほかに更に基礎的な領域としては、この「緩和ケア的アプローチ」というのがあり、主にこれが学部の教育であったりとか、そのようなところに一部該当するかと思います。今回は、この中の基本的緩和ケアのところについて進めていきたいと思います。

4枚目の、「がん対策推進基本計画」において、様々な領域で個別目的として掲げられております。例えば教育研修のところでは、5年以内にがん診療に携わる全ての医療従事者が基本的な緩和ケアを理解するという文言はありましたし、体制の整備とか、あるいは達成すべき目標という中に、最終ゴールとして、患者さんとその御家族が、がんと診断されたときから身体的・精神心理的・社会的苦痛などに対して適切に緩和ケアを受け、こうした苦痛が緩和されることを目標とするというような中で整理されております。

 実際にこのがん対策推進基本計画等にのっとって、幾つかの施策が実施されてきました。これは5枚目に簡単にまとめておきました。医師そして看護師、薬剤師と幾つかの職種で、厚生労働省で主催、主に中心となって進められている研修と、様々な学会等が進められている研修等が混ざっていますが、大体それぞれの領域と、そして専門と基本的緩和ケアとが進められているのが分かるかと思います。

 このように進んできた中で、幾つかいろいろと検討会等で課題になったものがあります。これを7枚目に、主によく出てくるというものを私のほうで幾つかピックアップをさせていただき、まとめておきました。まず、最初の頃からこの緩和ケアの研修会で出てきているのが、やはり臨床への負担というのがそれなりに大きいのではないかというのが、常に出てきておりました。研修会の企画・運営が大変ということと、12日というような構成が参加者の負担が大きいと。そのためには受講率が上がらないのではないか、というところが繰り返しテーマとして挙がったことはあるかと思います。

 またもう1つ効果に対する話として、実際に拠点病院の緩和ケアというものは向上したのかどうか。これは後でまた述べますけれども、多分その評価を何でするかというのがなかなか難しい領域ですけれども、評価が受講者数ということで、その質が見えてこないというところで出てきた議論かと思います。実際にこの背景にはこういう教育研修ならではの難しさですけれども、求める結果と教育効果というものの間にはギャップがあるということがよく言われていまして、その辺の課題設定とかゴール設定というのが、恐らく次にこういう研修をするときには非常に重要になってくるのかなと思いました。

 また、教育研修の場の問題というのもこのときに議論が出ております。緩和ケアの研修というのは基礎教育であって、医学部の中での教育で実践されるべきで、臨床でずっと扱い続けるのはどうかというのが出てきております。この辺りの内容等を、恐らく今の緩和ケアの研修会という中には、緩和ケア的アプローチと言われる広く基礎的な内容と、症状緩和を中心とした基本的な緩和ケアの両方を扱っていることがあります。その辺りを場合によっては整理をしていくとか、それぞれの役割を担うというようなわけで整理をしていくことも重要かと思います。

 また拠点病院以外の場所での緩和ケアというのが、ここにきて非常に重要な課題として挙がってきています。そこに関しては、本当に今これからの課題として出てきているところかと思います。ここには拠点病院と恐らくそれ以外の一般病院という所、そして在宅(地域)と、少し先の遠い課題になりますけれども、施設等というのが含まれてくるのかなと思いました。

 この中で、まず最初に臨床への負荷とか受講率の問題が非常に大きかったのですが、これに関しての背景と今の現状を御報告させていただきます。8枚目で挙げておりますが、この教育というものを実施する、あるいは研修というのを実施して、それがすぐに臨床の結果で評価できるかというところは、やはり海外でも日本でも議論になるところかと思います。

 例えば海外におきましても、こういう初期研修に対して痛みに対する教育的な介入というのを実施して、その効果を評価したという、そういう研究もあります。そうしますと、いろいろ診療録とかインタビューとか、処方せん等を見ると、オピオイドの理解とか、あるいはこういう依存への恐怖というのがそのうちに減った。

 要するに教育効果としては見られているのですけれども、アウトカムとしてその患者さんの痛みが改善したかどうかというのは、改善しなかったというように言われております。要するに教育効果というのはベーシックな教育として非常に重要なのですが、これをするのが直接にいろいろな多方面に影響しますので、一部の領域にダイレクトに効いて、それが効果として現れるというのはなかなか評価が難しいと。それよりは少し一歩手前になるのですが、例えばこういう緩和ケアの重要性を理解して、緩和ケアチームにコンサルテーションを出すとか、そういうほうがまだ行動の割合直接的なところに効きますので評価がしやすいのではないかということが出てきています。

 恐らくこの検討会で議論することになるかと思いますけれども、こういう教育は、教育として当然基本的なものを理解して普及する上では重要なのですが、これを単に1つしたからといってすぐに臨床でその痛みの緩和というのが、なかなか結果として変わるのはやはり距離がちょっと遠いのではないかと。もしもこの検討会で、例えば拠点病院の痛みの変化というのを意識するのであれば、網羅的な基礎教育だけでは恐らく話がちょっと遠くて、より臨床現場の行動を変える、具体的にいけば実際にどんな行動が望ましいのかとか、あるいは行動を行う上でのバリアというのが臨床で幾つかあるのですが、そのバリアを取り除くようなプログラムを一緒に考えて、その行動を促さないとなかなかその効果が見えにくいのではないかなと。そのようなところが1つ課題になってくるかと思いました。

 幾つかその辺りを踏まえて明らかになった課題として、恐らくこの辺りがこういう研修・教育のところでは重要になってくるかと思います。それは9枚目に簡単にまとめております。臨床への負荷とか受講率というところでは、費用対効果の問題というのがやはり重要になるかと思います。教育というのも、ある意味投資です。特に人的資源の投資が大きいかと思いますけれども、費用対効果を考えながら何を目標にするかという、そこの設計というのが重要になってくるかと思います。それが多分こういう検討会での重要な課題になってくるかと思います。

 当然ゴールを設定しますので、その測定の方法とか目標をどうするかというのも併せて考えますし、具体的に誰をターゲットにするのかとか、そういう対象の検討も非常に重要になるかと思います。要するに臨床の場に即した形で研修というのがされると、より効果的になるかと思います。

 また教育研修の場の設定としては、この辺のところに医学部教育というところとの問題になるかと思います。特にコミュニケーション等というのが、割合医学の基礎教育にもかなり重点的に置かれるべきところですし、臨床で何を求めるかというところと、埋めるべきところが何かを詰めていくのが大事かと思いました。

 また、拠点病院以外の場所でもこのセッティングの問題は非常に重要になってきました。恐らくがんの緩和ケアと、例えばこういう心不全と循環器の緩和ケアをするときには、患者さんの流れとかを意識しながら組んでいく必要が重要になってくるかと思います。その辺りを踏まえて幾つか34で「検討が望まれる項目」という形でまとめております。

11枚目に「教育研修は介入である」ということで、先ほどのを簡単にまとめています。恐らくこれも投資です。企画して講師をする人もありますし、参加する人もその間の時間を投資するということですので、何らかを変えないと、アウトカムが出てくるというのが現場の動機としても非常に重要になるかと思います。このときには教育として正しい理解が得られたとしても、それが正しい行動として臨床に現れて、患者さんのアウトカムを変えるというとこにはまだ距離があると。実践的な行動が何かというのを具体的に示したり、バリアを取り除くというような工夫というのを、現場に伝えていくのが一つ次のステップとして重要になるかと思います。

 このようなプログラムというのは、よく教育介入プログラムとして疫学とか行動科学では議論になるのですが、大体この12枚目に挙げるような6点を評価していくことが、この辺の設計上では重要になるかと思われます。

 大事なことが特に13枚目に1例として挙げておきましたが、誰に対してするのかというのが、かなりその臨床のゴールを定める上で重要になるかと思います。例えば外科医の先生なのか、腫瘍内科医の先生なのか、一般医ということになるのかで随分違いますし。当然一般医と在宅医というのでも診ている患者さんは変わりますし、セッティングが違います。特に使える医療資源とか、マンパワーというのが違いがありますので、その辺を意識した検討が重要になるかと思います。

 実際に、幾つかその辺がまだ十分には詰め切れていないのですが、例えば拠点病院としては、今の現状はこのようなものかと思うところを14枚目にまとめています。恐らく今、様々な基本的な緩和ケアの研修会というのがかなり進んできて、目標として90%というように、基本的な知識とか、その辺りに関してはほぼ達成できるようになるのではないかと思います。そうすると、拠点病院においてまだ提供が十分でないとすれば、例えばそれが痛みのアセスメントがまだ足りないとするのであれば、それをできるようにするとか。あるいは診断時に十分に情報提供がなされていないというのであれば、そういう情報提供をするためのプログラムなり行動を示すことが、具体的に変えるという次のステップになるのかと思いました。例えばここの14の所でいけば、基本的な緩和ケアで実際に担当する側の治療医の先生とか担当の看護師が、痛みのアセスメントを実施できるようにするにはどうしたらいいかとか、オピオイドを処方できるにはどうしたらいいかとか、例えば情報提供するにはどうしたらいいかとか、多分その場を固定して決めていくことが重要かと思います。

 例えばそのような案として15ページのような形で、誰に、何を、どのようにとかというような形で整理をしていくと、この辺のプログラムというのがより具体的に何をするかが見えてくるかと思いました。

 また、拠点病院は割合がんという話でスムーズに整理できるのですが、拠点病院以外の例えば一般病院とかになってくると、もう少し複雑になってくるかと思います。例えばこれはがんの一般病院といったとき、先ほどがんの患者さんがどのような拠点病院以外の所で診られているのは、それ相当あるという話でしたけれども、大きく言うと2つ分けられる可能性があります。まず1つは、拠点病院以外の所でがんの治療から一貫して継続して掛かっている患者さんがおられます。そういう病院があるというのが一群。もう1つは、拠点病院の後方連携病院として恐らく担っているような病院があるかと思います。そうすると治療期の病院というのが、ある程度集中をしたりとか、より緩和ケアに向かっていくところを担う、そういう病院とか、幾つかに恐らく分けられてくる可能性があります。

 また、最近では特に緩和ケア病棟が、先ほど池永構成員から御説明ありましたように、かなり病棟が増えてきて、地域の中で緩和ケア病棟にがんの患者さんが割合集約化されてくる傾向が見えてきている地域があります。そうすると一般病院の中で逆にがんの患者さんを余り診なくなってきて、そこに対してこういう教育を、がんに関する話を提供するのが効果的なのか、あるいはそういう所にはより循環器とかそのようなのが濃密なプログラムのほうが好まれるかとか、多分、変わってくる可能性がありますので、その辺の背景を知ることも重要なのかなと思いました。

 その辺りがまだ十分には未検討ですけれども、そういうのを踏まえますと、例えばこういうがんに関していけば、16枚目のように、幾つかの痛みであったり、実施の体制というのが検討できるかと思います。ただ、拠点病院以外の病院になりますと、概して医療従事者は非常に少ない中で、人的な余裕はないギリギリの状態だと思います。こうなると、この地域で例えばその病院の中に1つずつ緩和ケアチームを作るというのは、正直言ってマンパワー上、現実的ではない。このプライマリー・チームが基本的な緩和ケアをまず最低限実施できるような、例えば担当医とか担当の看護師さんが痛みのアセスメントができるようにするとか、基本的な情報提供ができるような、そういう簡便なプログラムというのが望まれるかもしれません。やはりその辺のセッティングの検討が重要かと思いました。

 踏まえますと、その辺を幾つか17ページに整理しています。基本的な例えば病棟の指導的な立場の医師とか主任クラスの方とか、そういうところにまず伝えて、伝達行使をしていただくとか。中には病院によってはどうしても関心がある所とない所では分かれますので、関心がある所は最初より促進的にするためにワークショップをするとか、幾つかこのような切り分けというのができるかと思います。

 以上を最後に簡単にまとめますと、教育研修を今後進めるに当たって、まず目標を一度しっかりともう一回組み直したほうがよいかと思います。多分緩和ケアという言葉は非常に重要なのですが、少しその意味合いというのが具体的な行動に見えにくい面がありますので、痛みであったり、身体的な苦痛であったりとか、より具体的なターゲットと、それに関わる医療従事者が誰かというのを示していくのが、プログラムを組む上で重要かと思います。例えば痛みであれば、スクリーニングでいくならばスクリーニングですし、オピオイドの処方なら処方というように、ターゲットを決めればより見えやすくなるかと思いました。

 また、こういう研修というのは費用対効果というのもやはり重要で、全て質の向上となってしまうと、どこまで行ってもきりがなくなってしまい、どうしてもそこになるとゴールが見えにくくなりますので、見えやすいゴールと、その期限であったり、投資する医療資源というのを検討していただくと、より効果的な組分けができるようになるかと考えております。以上ですけれども、簡単に御報告をさせていただきました。ありがとうございます。

○福井座長 ありがとうございました。構成員の皆様から御意見を頂きたいと思います。45分ぐらいあります。テーマは提供体制であれ、研修制度であれ、循環器疾患の緩和ケアであれ、何でも結構ですので、思いつくところをお話いただければ、次回には事務局で構成員の皆様の御意見をまとめて、それをたたき台に更に検討を進めることができると思います。いかがでしょうか。

○桜井構成員 ありがとうございます。桜井です。私もこの検討会の内容を見ていて、あっ、すばらしいことが進んでいるなと感じながらおります。私どもの団体で昨年末、「がん遺族200人の声」という調査を行わさせていただきました。というのが、今、患者さんのアウトカム調査をやられているのですが、どうしても人生の最終段階の部分で亡くなる6か月前の部分というのは、御遺族に聞かないと本当のところが見えてこないと思っておりまして、それでこういった調査を行いました。

 私からはこの検討会で考えていただきたいことというのが3つほどあります。1つ目は「つなぎ」の部分です。緩和ケア病棟あるいは外来の利用率をこの調査の中でも調べたのですが、10%~15%程度しかいらっしゃらないのです。緩和ケア利用者内での質の格差、地域格差というのも当然ありました。そのほかにも患者さんが抵抗感があったり、主治医がなかなか手放さないという現状なども見えてきました。是非、一般病棟それから拠点病院以外のもの、それから地域間を「連携」という、まずは緩和ケアに対してどのように到達させるのかという部分も、是非議論していかなくてはいけないと思っております。

2つ目は、「寄り添える環境づくり」です。特に家族の方です。この調査でも家族の介護離職というのが100人に1人ぐらいいらっしゃいました。がんというのは通常の介護と違って、ある程度介護期間の限界が見えているにもかかわらず、ご家族の方が離職をされているという状況。それから有職者の方に限っては皆さん有給休暇、若しくは欠勤で御家族に寄り添っている。これが現状です。ですので、この家族がどうなのかという部分も、是非この緩和の議論には入れていただきたい。これは先ほど小川先生からも御意見がありましたけれども、費用対効果の換算をするときに、諸外国ではこのシャドーワーク、いわゆる主婦業の方とか、家族の寄り添いとか、こうしたところのスコア管理というのも全て行っていった上での、在宅なのか病院死なのかというところの検討が行われておりますからこういったところも考えていきたいなと思っております。

 最後は、これだけ良い施設、これだけ良い医療、これだけ良い研修内容があるにもかかわらず、到達できない部分としては、「制度の問題」がやはりあると思っております。介護認定制度の部分で、特に2号被保険者の方たちの介護保険の利用率は非常に悪いです。この部分も平成22年に通達が出ていると思うのですが、この後どうなったのかという検証を是非お聞かせいただきたいと思っています。用具に関する通達、それから介護認定に関する通達の2つほど通達が出ておりますけれども、この結果としてどういうことが現れてきたのかという部分です。私どもの調査でも、通達前と通達後で分けてやっておりますけれども、非常に悪い結果が出てきております。こういったところ、家族が、あるいは患者が家に帰れる環境づくりもしていただかないと、帰れないのが現状です。家に帰っても段差がある、酸素ボンベに縛り付けられた生活をせざるを得ないというのが現状です。こういう制度の部分も考えていきたいと思っております。

 それと介護保険と少し関係しての部分ですけれども、2号被保険者の方もそうですけれども、39歳未満のがんの患者さんの看取り、それから小児がんの患者さんたちの看取り、こういう部分もこの検討会の中で考えていくことが何とかできないかなと、私としては考えていきたいと思っています。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○三宅構成員 医科歯科の三宅と申します。小川先生には研修会の分析と今後の課題をまとめていただいて勉強になりました。ただ、私は今は東京ですが、前任が栃木、前々任が茨城でした。この研修会は都道府県によってかなり温度差があります。特に茨城では最初から医師2、薬剤師1、看護師1という多職種の研修会にしていました。医科歯科では、来年の厚労省の目標もあるので非常に受講生が増えてきて、医師(あるいか歯科医師)のみに対して年3回行っていますが、他の職種の方にはご参加いただいていません。病棟ではやはりリンクナースあるいは、病棟薬剤師と協働して緩和ケアが進んでいく状況なので、この研修会レベルも多職種を対象に行った方が、より有効なアウトカムが出るのではないかと考えております。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○山田構成員 山田でございます。私は尾道でアウトリーチという点で、少ない資源の中でどうやって地域で、がんに限らず循環器疾患患者の、緩和ケアをやっていくかというところで、持てる病院、施設は人的資源は地域で共有するというそういう意識を高めないといけないと思い、取り組んでいました。

 実際に自治体病院だったこともあり、緩和ケアチームを在宅並び施設、それから開業医の先生たちの要望に応じて、積極的には出していましたけれども、うまくいった例とそうでない例とかありました。アウトリーチをしていくときに、やはり標準化が十分でないということと、地域でいろいろ緩和ケアの教育もあって、それぞれ開業医の先生を初め、ナースもコメディカルも受けてはいるのですが、いわゆる総合病院というような組織化された所で働いていらっしゃる方は、チームといっても割と相談がしやすいですけれども、地域のそれぞれのところというのは、1人こうしようと思ってもなかなかつなげていけないというところで、それをどこで、地域の中でどうチームを作っていくかというような課題がありました。

 人的資源を出す側とすると経営的、経済的な問題や個人情報の問題があったり、地域に出るということは責任も分散するので、最終的に責任は誰がという点や、最終的に御家族を含めて患者さんも同意或いは納得をどう得ていくのか?等課題を感じました。いろいろな人が御自宅や施設を訪ねて行くということにかなり抵抗感をお持ちになる人たちもおられます。

 教育とつなげてそれを考えてみると、やはり拠点病院なり拠点病院に準ずるような病院から人材を外に出すことによって、訪問看護とかケアマネージャーとか、地域のクリニックの先生やナースたちも一緒にやることで具体的に学べ、かなり教育効果が出て、地域の中では非常に評価は得られたのですが、それをどのようにシステム化するかというところでは、なかなか教育的なシステムができなくて、実践の中でやっていくしかなかったというような状況がありました。

 今後は特に慢性心不全の方を中心とした循環器疾患についても、チームの在り様、まずはチームを作るということと、それを地域でどう活用するかというところを考えていくべきだと思っています。

○平原構成員 平原です。1つは、在宅へ専門的緩和ケアが必要な方がどのぐらいいらっしゃるのかなというのが、率直に言って疑問です。ほとんどそういうニーズという、全くないことはないのですが、確かにアウトリーチということができるととってもいいと思うのですが、大部分は力のある在宅医で普通に診れてしまっているところがあります。実際に私どもの施設やあおぞら診療所や幾つかの在宅緩和ケアを熱心にやっている所の調査で、大体7割ぐらい自宅で看取りをしているのですが、その3割はほとんど介護的な理由です。介護的なことが破綻して病院に入院されているので、在宅にまで来ていただいて、専門的緩和ケアを提供しましょうという人はどれだけいるのかなというのがまず疑問ですし、また緩和ケアのリソースがあるとおっしゃいますけれども、緩和ケア病棟は人が少ないですので、私はホスピス緩和ケア病棟の医師教育部会の中でいろいろ議論をしていましたけれども、やはりどこも医師が少なくて、非常に困っている状況の中で、実際現実的にできるのかどうかという問題。

 もう1つは、カナダとか樽見先生に緩和ケア医療学会に来てもらったときに、向こうの緩和ケアチームの29%が非がんの方の相談だと言っていましたけれども、日本で最近の学会を見ると大分増えてきてはいるのです。ただやっている所は限られていますし、まだまだたくさん院内の非がんの方の緩和ということにできているわけではないと思うので、効率的なことも考えると、やはり急性期の様々な病気の方に緩和ケアチームが関わるほうがより効率的ではないかなと思うわけです。ですから、具体的にはその地域の中で緩和ケアにある程度卓越した医師と一般のかかりつけ医か連携を取る形が本筋で、そのアウトリーチはできたほうがもちろんいいですけれども、非常に難しいケースも中にはあるので、できたほうがいいですけれども、それが本質ではないと思います。

 もう1つ教育研修のことですが、小川構成員がおっしゃったとおり、やはりやるならそのパフォーマンスが変わらないと本当にやっても難しいということになるので、率直に私もピースは受けましたけれども、あれを受けたからといってかかりつけの先生の行動が変わるとはちょっと思えなくて、知識は増えるでしょうけれども、本当に行動が変わるかなというのは疑問に思っております。

 むしろ私は辻哲夫先生、東大の高齢社会総合研究機構の先生から柏プログラムのプログラム開発を委託されて、柏でその多職種の中で医師が回れるような研修を企画したところ、初期の研修者が、今まで在宅の看取りは全然やったことがない方が、2か月後には在宅の看取りをされていて、パフォーマンスが変わっているのです。だからもっと違う枠組みの研修をするというか、違う形の研修を考えていったほうが、少なくとも在宅の医師の行動が変わるのかなと。仮に在宅や病院でそういう研修をするとしても、枠組みをどう作るかのほうが大変で、それを現実的にどう作れるのかということも同時に考えていかないといけないので、既存の枠組みが走り出している中で、それを有効に活用していくことが大事ではないかなと思います。

○福井座長 ありがとうございます。

○前川構成員 とても初歩的なことなのですが、昨年度までは、がんの緩和ケアのことばかり緩和ケア検討会で検討しており、循環器について、私たちがん患者経験者や一般国民は、循環器でも緩和ケアがあるんだというようなレベルにある方も私を含めて多いと思うのです。それで、循環器でどのような状態のときに緩和ケアが必要なのかという流れを教えていただければ、すごく有り難いと思います。

 もう一点は、先ほど濱さんから、バッジやポスターや県の緩和ケアセンターのことなどの報告があったと思いますが、この緩和ケアの検討会でいろいろなことを投げかけて、各地でやっているけれども、進捗状況は把握できていないのではないかと思いますので、これが本当に必要なことかどうかも含めて、この検討会で実地で調べるか、どのように調べるかは分からないのですが、知りたいと思っております。

○福井座長 もし、循環器の先生で少し御説明いただければ有り難いです。

○安斉構成員 国立循環器病研究センターの安斉です。確かに、緩和ケアと心不全は、なかなか結びつかないと思います。私自身、5年前に国循に赴任した際には、最先端の医療で心不全を治療するということで、心移植、あるいは補助人工心臓の治療を目指してやってきたわけです。そういったことが対象になる患者は本当にごく一部で、ほとんどの患者はそういった対象にならずに、心不全がどんどん増悪していって、最終的には呼吸困難、あるいは全身倦怠感が強くなって亡くなってしまいます。

 それから問題なのは、先ほど病みの軌跡のところにありましたが、慢性心不全の方は、急性増悪で何回も入退院を繰り返し、その都度循環器医としては救命できると信じて、最終的には治療するわけです。循環器医は、緩和ケア医とは全く逆の立場にあり、常に積極的な治療をして救命するといった方針を持っている先生がほとんどなのです。ですから、ACPという概念を知っている先生はほとんどいらっしゃらないかと思いますので、その都度全力を尽くしてしまうと。それで、患者からも家族からも、どういう希望があるかをしっかり聞いていないというのが現状だと思います。最終的には、強心剤依存状態になって、またようやく人工呼吸器を離脱できたとしても、その後積極的な治療を続けざるを得なかったり、あるいは透析をしなければいけないというような様々な侵襲的治療が加わっていくわけです。そうなってまいりますと、患者は非常に苦痛になってまいります。

 あとは、強心薬は保険で在宅で使用ができない状態になっており、それが在宅緩和ケアができない理由になるわけです。病院にずっと入院して、そういった強心剤依存状態でいなければいけないというのは非常に苦痛だと思いますので、そういった現状を目の当りにして私も初めて緩和ケアは大事だということが分かり、3年前に緩和ケアチームを立ち上げたというのが現状です。

 実際に、病院の職員、医師全員に対して、緩和ケアが必要と感じるかというようなアンケートを取りますと、8割から9割の医師がやはり必要だろうと。実際に、そういった必要な場面に遭遇したという結果が出ております。それをもって、我々も自信を持って今、コンサルトに対応しているのですが、大体年間70件から100件近くのコンサルトがあり、対応している状況で、その件数はどんどん増えてきております。

○木原構成員 安斉先生に大体仰っていただきましたが、追加で申し上げます。いわゆる、がんの患者と循環器の患者の共通点からいえば、両方死ぬということです。ですから、悪性疾患ですよね。がんだけではなくて、心不全という診断が下された人も、これは予後が悪いということです。ただ、がんの患者は、あなたはがんですよと言われたときから、恐らく患者自身がある意味で死を考え始めるのですね。ところが、心不全という診断がついても、あなたは心臓が悪いですねと言われて死を考えるかといえば、そうではないと。ちょっと悪くなって入院するけれども、また医者が助けてくれると患者も思っている。医者も助けなければいけないと思って助けるということです。ですから、共に悪性疾患なのだけれども、患者、あるいは医療従事者の基本的な考え方というものが違っているところが1つです。

 もう1つは、先ほど平原先生が仰ったこととも関連するのですが、平原先生は急性期だけでいいのではないかというようなお話もされました。心不全の患者を考える上で、もちろん悪くなって入院してきたときには、みんなで集中治療等々いろいろやるわけです。大体1回入院して、費用が100万円かかります。そういう医療を行って退院させるのですが、また入院してきます。なぜか。つまり慢性期に問題があるのです。病気がありますので、その患者が日々の生活をしている上で、いろいろ破綻が起こり、余裕がないのです。その中で、やはり患者側の要因が多数を占めております。要するに、薬を飲み忘れたり、摂ってはいけない食事を摂ったり、あるいは遊び過ぎたりと、そのような患者側の要因があることを考えると、急性期で入院してくる度に数百万円の医療費を費やしておられるわけですが、そこを回避しようと思えば、慢性期の介入がどうしても必要だと我々は考えるのです。

 それから、慢性期の方が数か月単位ではなくて、患者によっては年余にわたって、345年の間に4510回と入院をされながらだんだん弱っていかれるというようなプロセスがあります。そこを回避するためには、慢性期の介入は患者にとってもとても大事なことなのですね。クオリティー・オブ・ライフを維持するということは、要するに入院しない生活を送ることが一番で、患者にとっても入院回避はとても大事なことです。そこには、やはり慢性期の介入が必要だということを考えております。

 それから、心不全はやはり悪性の疾患ですし、最終的には死が訪れますので、ACPを中心とした考え方は、安斉先生が言われたように、循環器の医者は分かっていないというか、そういうことを自体を教えられていないわけです。ですから、死に至る病としての介入の仕方や、患者にもそういう教育をしていくことの必要性はすごく感じます。そういう意味では、緩和という中に大きく包括していただければと思っております。

○田村構成員 私も、前からこの緩和ケアの推進検討会に参加させていただいています。平原先生がおっしゃったように、いろいろなことを考えても、ある中のものをどうやって使いながら、患者、家族、エンドユーザーにとってベターなものにするかを考えると、桜井構成員もお話されていましたが、例えば3点をどう資源につないでいくか、あるもので環境をどう整えるか、ある制度をどうやって使ってそれを少しでもベターにするかというのは、残念ながら家族化プランの提言の中には意見としての部分でパワーポイントの15にありますように、相談支援のことが少し盛り込まれなかった提言としては残っているのですが、正にこの相談支援の部分だと思うのです。

 患者や家族がどんなことが気がかりで、どのようにしたらいいのだろうと思っておられるところを、どうやって拾って、あるものにつなぐかというところは、やはり相談支援の部分を充実させるのが必要ではないかとずっと思っています。そして、小川先生が書いてくださった資源の心理社会的なサポート、支援で、小川先生の資料の15番の就労支援と孤立の予防の社会的支援と書いてあります。これは、正に療養環境整備のための最低限の社会資源の活用や、今、国が作ってくれている仕組みをどうやって使うかという知恵を、患者や家族と一緒に、ソーシャルサポートをどう使うかを相談支援でバックアップしていくことができたらいいのかなと思います。

○服部構成員 がん研有明の服部です。初めてこの検討会に参加させていただいています。これまでの話を聞いていると、緩い地盤の基に剛健な建物を建てようとしているのかなという感じがしてしまいます。1つ目は、細かいことになるかもしれませんが、言葉の定義についてお伺いします。事務局と小川構成員、池永構成員からの発表を聞いていて、「医療従事者」というのがたびたび出てきますが、これが医師を限定しているのかがはっきりしません。研修会に関しても、「医療従事者の研修会」が医師の研修なのか、医療従事者全体の研修なのかがはっきりしないので、言葉の定義をきちんとしたほうがいいのかなと思います。

 それから、がんの診療に携わるがん緩和ケアの研修会に関してですが、これも具体的にがんの診療に携わる医師というのは、何科の医師が対象なのかというのがはっきりしていないから、みんなエクスキューズで逃れてしまうというところもあるのかと思っています。

2つ目は、緩和ケアチームに紹介する道筋です。前検討会のワーキンググループの報告では、緩和ケアチーム自体が十分に機能していない施設が非常に多いとされています。緩和ケアチームの質に関しての検証はどうなっているのか。主治医からなかなかコンサルトされないのは、理由があるのではないでしょうか。私が診る患者に心疾患があれば、私は循環器の先生にコンサルトするように、専門家にコンサルトします。一方で緩和ケアチームにコンサルトがされないのはなぜかということの検証が、まだ足りていないのではないでしょうか。

10年たって研修をなぜまだこんなに受けていないのか。なかなかはっきりとした結論が出されていないのではないでしょうか。つまり、研修をなかなか受けない、研修受講率が非常に低い原因は一体何なのかを、はっきりさせるべきなのではないでしょうか。

 3つ目として、実地研修の施設選定も、そもそもその施設が本当に地盤の固い緩和ケアチームとしてやっているのかどうかが、はっきりしていないのではないでしょうか。今まで、がんの緩和ケア研修をやって来ましたが、循環器疾患の患者の話になりますと、緩和ケア自体の質が全く違うことになります。このとき、がん緩和ケア研修会を基に新たな研修会を作るのか?どういう形にしていくのか?。恐らくがん緩和ケア研修会を一番受けていないのは循環器の先生だと思います。一番がんに関係ないからということで、今まで受けていなかったのでしょう。根本的なところはある程度一緒だというのであれば、今、がんの緩和ケア研修会をやっているのでそれを受けてもらうのも1つでしょうし、新たな形でベーシックな緩和ケアの研修会を立ち上げて、そこに全ての科を入れる。たとえば呼吸器内科、呼吸器疾患、神経疾患などいろいろな人も出てくると思うので、そういうものすべてに共通のベーシックな緩和ケアの形と、がん、循環器、呼吸器などと専門的に分けていくのかといった方向性を検討してみたらどうなのか。どうでしょうか。それをどうすべきなのかを、これから決めていったほうがいいのではないかと思います。

○福井座長 もし、確認できるようでしたら、医療従事者という言葉について、共通の定義を頭に描いてお話されているものなのか、がんの診療に携わる診療科の医師は、どういう診療科なのか。どこかで明確に定義されているのでしょうか。もしなければ、次回でも結構です。

○細川構成員 先ほどコメディカルという言葉が出てきたのですが、これは現在では原則使わないでおこうということになっております。医師以外のメディカルスタッフという表現になります。メディカルスタッフというのは、医師も含めて今、服部構成員がおっしゃっていた医療従事者とイコールであると考えます。英語の語源とその直訳、そして普遍的となって英語をカタカナの日本語にした場合、いずれもで、意味合いが変わってくることが多いわけです。ですので、今、座長がおっしゃったように医療従事者の定義、医療従事者の業務の内容の定義なども他の用語の定義と同様に明記していただくことが重要と思います。もし最初に作ったもの意味合いに付属するものが出てくれば、足していったらいいと思います。次回から早急に医療者とはこの定義であるという言葉を決めていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

○がん対策推進官 緩和ケアの研修会を実施した後に、現況報告書を提出していただくのですが、その際にがん診療において、がん患者の主治医や担当医となる者の算出基準について、母数として次に掲げる診療科の医師を含むこととされています。消化器内科、消化器外科等の消化器系の診療科、呼吸器内科、呼吸器外科等の呼吸器系の診療科、乳腺外科、内分泌外科等の乳腺内分泌系の診療科、泌尿器科、婦人科等の泌尿器系生殖系の診療科、耳鼻科、耳鼻咽頭科、頭頸部外科、口腔外科等の頭頸部系の診療科、血液内科、腫瘍内科等のがん化学療法系の診療科、放射線治療科、放射線腫瘍科等の放射線治療法系の診療科、緩和ケア内科、ホスピス科等の緩和医療系の診療科ですので、循環器は入っていないというのが回答です。

 その他、例えば麻酔科、脳外科、整形外科、血管外科等の循環器系、診療内科、精神科等、先ほど申し上げた母数に該当しない診療科については、当該医療機関によって母数に付け加えるかを判断することになっております。

○桜井構成員 小川先生が提出されている13ページですが、教育の対象と緩和ケアをシーズンに分けている所は、頭の中を整理する上では非常に分かりやすいと思っております。循環器の方というのは年齢的にはどのぐらいがメインになってくるのでしょうか。恐らく、死にゆく過程は一緒だとは思うのですが。

○木原構成員 桜井構成員の質問に答えたいと思います。高齢者、特に、今我々が直面しているのは、地域に行くほど多い75歳以上の後期高齢者、田舎に行けば80歳以上、そういう人たちは、もしかしたら1つ、2つ、3つのがんを乗り越えたあとの人なのです。ですから、がんは3つほど切ったけれども、どうしても心臓は治らないみたいな感じの人が、今、本当に心臓で苦しんでおられる方です。

 それから、一昔前までは心筋梗塞などは、男が中心としてかかる病気なので、男の病気だと思われていたのですが、特に閉経後に進んだ動脈硬化、高血圧などをお持ちの80歳以上の女性の方も、心不全で非常に苦しんでおられるのが現実です。ですから、循環器領域での緩和と、もう1つの側面は、高齢者医療という側面がありますので、そこは付け加えておきたいと思います。もちろん、若い人の心不全もあります。

○桜井構成員 そう考えますと、この13ページで見ていっても、やはり年齢によって使える制度なども全く違ってきますし、御本人をめぐる家族環境も全く違ってきてしまいます。ですので、もしこの表を使うのであれば、死にゆく過程は一緒であっても、使える制度や課題などが全て違ってくると思います。それを、一旦整理するなり何なりの物事を始める基礎づくりも必要なのかなと思って、拝聴しておりました。

○中川構成員 冒頭数分遅れてまいりましたので、ひょっとすると最初に事務局等から御案内があったのかもしれませんが、この検討会のゴールというか、例えば報告書を作るのか、その辺りはいかがでしょうか。事務局にお答えいただきたいのですが。

○がん・疾病対策課長 ゴールということに関しては、本日の先生方の御議論を聞いておりまして、はっきりしておかなければいけないことがあると感じております。がんの緩和ケアに関しては、がん対策基本法に基づく、第3期基本計画の策定作業がありますので、それに向けた検討をしていただきたいと思っております。第2期計画で、緩和ケアに関してやってきたことの検証と、第3期計画でどのように取り組んでいくかは、基本計画の策定作業に間に合なければならないという制約があります。

○中川構成員 それは、提言という感じのものですか。

○がん・疾病対策課長 資料54ページと23ページにも示しておりますが、本検討会で基本計画の緩和ケアの部分の検討を行っていただくのですが、随時、協議会に議論の状況を報告し、協議会で例えば、更にこういう点についても議論すべきではないかというご意見などを頂きながら、検討を進めていただきたいと思います。最終的には、本検討会として、次期計画に盛り込むべき課題等をまとめていただく予定です。

 なお、循環器についてですが、今回、議論を始めていただくということで、現時点で、いつまでに何かをまとめるということは、考えておりません。本日、様々なご意見を頂いておりますので、議論の進め方について、座長とも御相談しながら考えてまいりたいと思います。

○中川構成員 もう一点よろしいですか。この検討会は、いつまで続けるというイメージでしょうか。特にないのですか。

○がん・疾病対策課長 この検討会については、今のところいつまでという期限は特段定めていません。

○中川構成員 私は、がんしか診てこなかった臨床医ですが、循環器というのは事実上心不全だということを教えていただいたと思っています。今後は、例えば同じようなCOPD、慢性閉塞性肺疾患や腎不全といったものも、緩和ケアの視点で見るとかなり疾患のタイプとしては近いと思うのです。これらは、順次対象にしていくというお考えがありますか。

○がん・疾病対策課長 循環器疾患対策に関しては、循環器疾患対策に関する法案が議員立法で国会に提出される可能性がございます。その法案が成立すれば、循環器疾患関係の様々な施策を検討していくことになると考えております。そうした状況を踏まえて、本検討会での緩和ケアの議論の中に、循環器疾患も対象としていただこうということです。

○中川構成員 そういたしますと、やはりこの検討会の中にワーキンググループのようなものを作っていただいて、がんと循環器は臨床経験として違うので、マインドとしては近いのかもしれませんが、そのほうが効率的な議論が進むようにも思います。

○がん・疾病対策課長 議論の進め方については、座長とも御相談しながら、事務局で検討したいと思っております。

○細川構成員 先ほど桜井構成員から、循環器の社会的背景、患者背景についての質問がありました。この質問とつながるのですが、安斉構成員にお願いですが、年に100人近い方を既に緩和ケアチームに紹介を受けているということですが、循環器関係の方の循環器緩和ケアチームへの紹介は、どのような内容のものが多いのでしょうか。

○安斉構成員 身体症状に対する緩和もやりますが、それ以外にも精神心理的な問題や、植込型の除細動器をされている方などは、それを停止するかどうかの判断であったり、倫理的な相談であったり、そのようなものも含まれております。

○細川構成員 そうですか、実は我々の施設の緩和ケアチームへの紹介も、死に瀕した状態での鎮静などが今のところ多いのです。しかし、循環器では、高齢者の方が多いということも踏まえ、専門の循環器そのもののケアだけでなく、眠れない、不安、という精神的なことや長期にわたるということで、経済的な問題のケアも含まれてきます。がんと循環器と疾患は違ったとしても、患者さんに初期の段階から関わる緩和ケアと考えた場合には、対応する症状やつらさのケアは似ているものがかなり多いと思います。そういった意味では、新たに循環器用のピース研修会のようなものを作るよりも、ピースの概念、内容をベースにプラスアルファーの形でやったほうが、先ほどの費用対効果を考えた場合にもずっと勘弁で早いかなという気がするのですが、いかがでしょうか。

○安斉構成員 私どもも、がんの緩和ケアから学ぶものは非常に多いと思っております。実際に、専門マニュアルなども院内で整備を始めたりしているところですので、是非そういう形でやっていきたいと考えています。あとは、循環器の緩和ケアに関する評価の指標に関しては、今年度、来年度とAMEDの研究で進めていく予定にしております。その際にも、がんの専門家の方に入っていただいて議論を進めていく予定となっています。

○平原構成員 1つは、小川構成員の話にありましたが、セッティングが違ったり、患者の流れが違ったりということがあり、院内で循環器のコンサルテーションがあるのと、在宅の方はかなり違います。私たちは、2000年から2006年までの在宅連続非がん死亡例242例の研究したときに、循環器疾患は56%だったのですが、全部の平均年齢が90歳でした。事件例の20例ぐらいの年齢も、大体90歳ぐらいでした。

3年前に、心不全の緩和ケアのテキストを、循環器の専門の先生と一緒に書かせていただいたのですが、そのときに意見交換をしたときは、やはり循環器の専門の先生が診ている心不全と我々が診ている心不全は違うのではないかという議論をしました。在宅の心不全の方は高齢で、90歳ですから、認知症もあります。老年症候群がかなりあって、認知症があると呼吸困難は余り訴えなくて、しかも在宅の方は半分以上動かないですので呼吸困難が出にくいのです。大体症状が出るのは、肺炎を起こして熱が出たときに心不全も同時に悪化するということで、肺炎の治療とともに心不全の治療が始まる方がほとんどなので、在宅で一般的な高齢者の心不全像というのはそういうものではないかと理解しております。したがって、その辺りのセッティングなどで、かなり学習する内容が違うのかなというのがあり、そこが1つ念頭に置かなければいけないと思っていました。

 もう1つは、先ほど木原構成員が言われたとおりだと思うのですが、慢性期の管理がすごく大事だと。緩和ケアの専門の先生が介入するのは、恐らく急性期が多いだろうという話なのですが、そもそも非がん疾患の緩和ケアが非常に重要だと認識されたのはイギリスの研究です。それぞれの方は、よもや自分が死ぬとは思っていなかったと。家族も、よもや自分が亡くなるとは思っていなかったということが、研究成果として分かっています。あなたは、ひょっとしたらうまく管理すれば来年も元気でいられるかもしれないけれども、ひょっとしたらこういう経過をたどる確率もあるという説明をきちんとされて、初めて認識するものだと思うのです。ですから、慢性期にそういうお話をされて、将来どのようにしたいですかという話を積極的にしていくような慢性期の管理がすごく大事です。

 アメリカのサポート研究でも、急性期に介入して結局うまくいかなかったというデータが出ているので、やはりアドバンスケアプランニングといいますが、これから先どうしたいかということをきちんと決めていくのは、慢性期の働きかけなので、そこのシステムを構築することがかなり重要な課題だなと思っております。

 最後に、なぜ循環器かというのは、今回、非がんを取り上げていただいてとても感謝していますし、循環器疾患も非常に重要な疾患の1つだと認識はしていますが、なぜ循環器だけなのかなというのは、率直のところ疑問です。この資料を見る限り、WHOのグローバルアトラスで、がんよりも多いということが根拠になっていますが、これは恐らく全ての国で利用可能なデータを使っているので、全ての国の死亡率と最後の1年間の苦痛と、それに疼痛の割合を掛けて算出したものですので、かなり実態とは違っていると思います。実際、私たちの在宅の242例の非がんの中で、心不全が最後に緩和ケアの対象になったのは56%で、COPDなどの呼吸器疾患が1割でした。認知症が2割、脳卒中が2割という割合なので、実態とは違っていると思います。アメリカのホスピスも、心不全の原因が2番目になったこともありますが、大体1112%ぐらいです。

 ですから、確かにパンデミックはこれから起こりますし、非常に重要な領域なのですが、心不全だけが重要ではないというところは、是非押さえていただきたいと思います。呼吸器疾患ですから、COPD単独で絞ってしまうと少ないですが、肺炎を除く呼吸器疾患の死亡の中でCOPDはたった2割ですので、ほかの呼吸器疾患を合わせるともっと多くなります。ですから、取り上げた根拠は、非常に有り難いのですが、もし取り上げるのであれば全部を取り上げていただきたいというのが、率直な私の希望です。

○服部構成員 私も、広げることは大事なことだとは思います。先ほど、細川構成員が言われたように、緩和ケア研修会を受けるということは、今度から外れていた循環器内科、循環器外科の先生は、必須という感じで上に上がると考えてよろしいのですか。

○がん・疾病対策課長 循環器疾患に関しては、検討を始めるところですので、具体的に例えば何かを施策にしていくかということは、現時点では、中長期的に御議論いただければと思っています。

○服部構成員 緩和ケアは恐らく全ての疾患に共通していくことは間違いないと思います。であれば、エクスキューズはもうなくして、全ての医師という形にしてしまったほうが、はっきりするのではないかという気もするのですが、いかがでしょうか。

○がん・疾病対策課長 この検討会で御議論を頂いて、検討の結果、最終的にどうするかということかと思います。本日は、ご提案の1つとしてそういうお話があったことはしっかり頭にとめておきたいと思います。

○三宅構成員 先日、独協医科大学の研修会に行ってきたのですが、そこでは教授会の総意で、受講対象の医師を(がん診療に携わる医師だけではなく)全員にしていました。そのためか、1回に150人という非常に大規模な研修会でした。今後、今の研修会の構造のままで全ての診療科に広めるのは、ちょっと無理があるのではないかと思います。例えば、疼痛の部分などは、ある程度スリム化して新しいプログラムにしていかないと、なかなか難しいのではないかという印象があります。対象となる医師の定義についてもあいまいな部分があり、個人的には、最終的に全ての医師を対象とすることが望ましいと考えています。

○田村構成員 出してくださった研修の7ページに、私も同じように全ての医師の身に付けるための方策の一番最後のベーシックな部分をみんなの科が受けるとすれば、という点ですが、相談窓口にいて、本当に緩和ケアの希望のご相談として受けているのはCOPDと神経難病で、自分たちも緩和の対象だと思っておられます。相談としては、実際には患者本人と御家族が多かったです。心不全に関しては、余り死ぬと思っておられないというのは本当におっしゃるとおりで、緩和の対象なのに緩和ケア病棟に入れれないという相談は、私自身はまだお受けしたことがありません。

○福井座長 本日はそろそろ会議を終える時間になります。いろいろな問題が提起されましたので、それらを踏まえて、次回以降のディスカッションをお願いしたいと思います。

 最後に、事務局から連絡事項等はありますか。

○事務局 次回の検討会に関しては、事務局より追って御連絡いたします。お忙しい中恐縮ですが、日程の調整のほどよろしくお願いいたします。

○福井座長 それでは、本日の会議は終了いたします。構成員の皆様、長時間にわたり、ありがとうございました。

 


(了)

健康局がん・疾病対策課

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