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2016年3月11日 第4回 特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会

○日時

平成28年3月11日(金)10:00~12:00


○場所

航空会館 B101会議室


○議題

(1)特定健康診査の健診項目について(尿腎機能・詳細な健診)
(2)その他

○議事

○中田健康課長補佐 定刻になりましたので、ただいまから、第4回「特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会」を開催いたします。構成員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただきまして御礼申し上げます。本日の出席状況につきましては、藤内構成員より御欠席の連絡を頂いております。また、本日の検討に当たりまして、参考人といたしまして福島県立医科大学の渡辺毅特任教授に御出席いただいております。よろしくお願いいたします。

 配布資料の確認です。議事次第の裏に資料16、参考資料12があります。落丁等ありましたら御連絡をお願いいたします。また本日、渡辺教授から発表内容のレジュメをまとめていただいたものを机上に配布していますので、そちらも併せて御覧いただければと思います。また、パイプファイルに前回までの資料と、あと机上に「標準的な健診・保健指導プログラム」の改訂版の冊子を配布していますので、御参考としていただければと思います。資料等、落丁等ございましたら事務局までお申し付けください。よろしいでしょうか。

 撮影はここまでとさせていただきます。それでは、以後の進行は永井座長にお願いいたします。よろしくお願いいたします。 

○永井座長 それではよろしくお願いします。本日の議題は「特定健康診査の健診項目について(尿腎機能・詳細な健診)」です。事務局で前回の議論の整理と議論を踏まえた今回の資料をまとめていただいています。最初に、資料13について事務局から説明を頂き、その後、各研究班の成果として参考人と構成員に発表をしていただき、論点に沿って議論を進めたいと思います。では、事務局から説明をお願いします。

○高山健康課長補佐 事務局です。それでは資料1の御説明に当たりまして、まず参考資料1「議論の進め方について」を御覧ください。前回、前々回の検討会でも提出したものですが、前回、第3回検討会では、参考資料11ページ目の3「個別の特定健康診査の健診項目等の見直し」という所で、脂質、肝機能、代謝系について御議論を頂きました。今回第4回では尿腎機能・詳細な健診の御検討をお願いしたいと考えています。

 資料1にお戻りください。「第3回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会の概要」を付けています。前回の検討会ではこのような御検討を頂いたので、こちらも御参照ください。4ページ以降には、第1回、第2回のこれまでの検討会の概要もお示ししていますので、御参考としていただければと思います。

 資料2を御覧ください。本日御検討いただきます尿腎機能・詳細な健診について、特定健康診査・特定保健指導の満たすべき要件のうち、検査、事後措置に当たる(4)(7)までの要件をどの程度満たすかについて、永井座長に代表研究者をお願いしています厚生労働科学研究補助金「特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究」の研究班において御検討いただき作成いただいたものです。網掛けとなっている部分は、それぞれの項目を特定健康診査として実施する際に現状で課題が指摘されていると考えられている箇所となります。

 尿腎機能検査の目的の部分です。こちらは、虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子の評価を行うことではなく、腎機能異常の重症化の進展の早期の評価を行うことでよいかどうかが課題とされています。また、検査の対象集団をどう考え、また事後措置についてどのような対象者に対してどのような介入を行うべきかを整理する必要があるとされています。また、尿蛋白(eGFR)の検査の精度/有効性については、濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価する可能性があることが課題であり、血清クレアチニンの検査の精度/有効性については、推算値であるeGFRは実測値と比べてばらつきが大きく、計算式に年齢が加味されていることから、対象集団によっては過大評価する可能性があることが課題とされています。

 続いて、血液一般検査の目的です。こちらも、虚血性心疾患、脳血管疾患の危険因子の評価を行うことではなく、貧血の重症化の進展の早期の評価を行うことでよいかどうかが課題とされています。また、検査の対象集団をどう考え、また事後措置について保健指導及び受診勧奨判定値が定められていないものもあり、どのような対象者に対してどのような介入を行うべきかを整理する必要があるとされています。

 続いて、12誘導心電図及び眼底検査です。こちらも対象集団について、現在40歳から74歳で前年の健診結果等において、(1)血糖高値、(2)脂質異常、(3)血圧高値、(4)肥満の全ての項目について一定の基準に該当した者のうち、医師が必要と認める者について実施するということでよいかどうかが課題とされています。また、事後措置について、保健指導及び受診勧奨判定値が定められていないことから、どのような対象者に対してどのような介入を行うべきかを整理する必要があるとされています。また、眼底検査の精度/有効性については、片側の眼、片眼の測定では眼科疾患の多くを見逃している可能性があるのではないか。また、写真判定は安定した手技だが、判定は判定医の経験、技量に左右される可能性があるのではないかということが課題とされています。

 資料3を御覧ください。以上の課題を踏まえて、資料3に尿腎機能・詳細な健診についての論点をお示ししています。尿腎機能の測定についてです。尿腎機能検査は、糖尿病等の生活習慣病、虚血性心疾患や脳血管疾患等を発症する可能性の高いハイリスク者を抽出しているか。尿腎機能検査は、虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、腎機能障害の重症化の進展を早期にチェックするためのものかどうか。尿腎機能検査は「基本的な項目」とすべきか、「詳細な健診の項目」とすべきかについてどのように考えるか。また、尿蛋白の測定についてです。尿蛋白は、濃縮尿や希釈尿では過大あるいは過小評価の可能性が指摘されていることから、健診項目としてどのように考えるか。また※にありますが、第3回特定健康診査・特定保健指導の在り方に関する検討会では、「尿糖は健診項目から廃止することも可能とする」とされていますので、こちらも踏まえた議論をお願いします。

 血清クレアチニンの測定についてです。血清クレアチニンは尿蛋白の測定に比べて精度は確立しているか。また、血清クレアチニンは年齢や体格の影響があるため、推算糸球体濾過量を用いることがありますが、対象集団によっては過大評価する可能性が指摘されており、健診項目として活用するためには、どのような点に留意すべきかについて御議論いただければと考えています。

4ページ、「詳細な健診の項目(血液一般)についての論点」です。血液一般検査は、虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、貧血の重症化の進展を早期にチェックするためのものでよいか。血液一般検査は、詳細な健診の項目として実施しているが、必ずしも特定健康診査で実施される健診項目の検査の目的である最終エンドポイントとしての虚血性心疾患、脳血管疾患等の危険因子の評価、また、生活習慣病の重症化の進展の早期の評価を目的とするものではないと考えられるため、健診項目として見直してはどうか。

5ページ、「12誘導心電図についての論点」です。12誘導心電図は、虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、心疾患の重症化の進展を早期にチェックするためのものでよいか。12誘導心電図は詳細な健診の項目として実施しているが、検査で評価可能な疾患、例えば左室肥大、心房細動等を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定してはどうか。

6ページ、「眼底検査についての論点」です。眼底検査は片眼の測定では眼科疾患の多くを見逃している可能性があること、写真撮影は安定した手技だが、判定は判定医の経験、技量に左右される可能性があることが指摘されているが、どのように対応することが可能か。眼底検査は虚血性心疾患や脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、眼疾患の重症化の進展を早期にチェックするためのものでよいか。眼底検査は詳細な健診の項目として実施しているが、検査で評価可能な疾患、例えば糖尿病性網膜症、高血圧性網膜症などの特性を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定してはどうかとしています。これからの議論の参考にしていただければと思います。事務局からは以上です。

○永井座長 ありがとうございました。それでは資料4を御覧ください。「特定健診・保健指導における健診項目等の見直しに関する研究」、私が代表者で班研究を行ってきました。この資料については班員の岡村先生から御説明をお願いしたいと思います。

○岡村構成員 それでは資料の御説明をします。1ページ目にこの班の健診項目の検討、施策実効性の検討をしたグループ名のお名前を頂いています。

2ページ目は、前回までの考え方、基本項目の考え方ということで再掲しています。繰り返しになりますので言いませんが、国際的に見て、あと脳・心血管疾患の発症予測ということから考えますと、高血圧と糖尿病と高コレステロール血症と喫煙というのが、基本的には脳・心血管疾患の発症予測に共通に用いられている基本指標であるということで、これらについては、きちんと評価してその人のリスクを見ていく必要があるだろうというのが前回までの話だったと思います。あといろいろ入っていたり入っていなかったり、あくまでも一般集団ではなくて患者さん用の予測評価指標であったりするものが幾つかあって、例えば肝機能であり、今回お話になっている腎機能などもそうなってくるのですが、これについては研究班として個々に文献レビュー等で検討したということです。

3ページ目です。「検証項目各論2」ということで「腎機能検査」になります。腎機能検査のほうで文献レビューというのを研究班として行いました。どういう選定基準かと言うと、国内のコホート研究であること。国内の健診制度の仕組みを検討していますので、国内のコホート研究であるということと、エンドポイントが脳・心血管疾患と糖尿病、それからここでは腎機能の低下、透析を含むものもエンドポイントに含めていました。あとエンドポイントには様々なクオリティというのがありまして、エンドポイントの取り方の質も吟味しています。それから、1次予防のセッティングということで、これは、脳・心血管疾患の既往者の集団であるとか、糖尿病の患者さんの集団とか、腎機能障害の患者さんの集団というのではなくて、一般集団、地域・職域の普通に生活している方のコホート、前向き研究をレビューしたことになります。この条件でかけますと101件がヒットしまして、その結果、クオリティチェック等とか、あとヒットはしたけれども全然関係のない論文等もありまして、結果10件の論文が選定されて、あとそれ以外にガイドライン等を見たりとか、ハンドサーチ等を行って更に1件を追加しました。その文献数のまとめがそこにあります。アウトカムが腎機能低下・透析、脳・心血管疾患となっていますが、それぞれ検討内容が重複しているものは括弧で示しています。結論的に申しますと、蛋白尿は腎機能の低下を予測する。それからCKDは脳・心血管疾患の発症・死亡を予測するという文献が多く、日本人の一般集団においても、腎機能異常が将来のリスクを予測することは明らかであろうということが全体の結論です。

456ページには、参照した論文のアブストラクトテーブルというのを記載しています。詳細は見ていただいたら明らかなので、ここでは述べませんが、4ページは腎機能で、尿蛋白とクレアチニンを用いているもの。5ページが尿蛋白を用いているもの。6ページが血清クレアチニンですが、基本的にeGFRを使っているものが多いのですが、それを用いているものとなります。基本的には、一般集団のリスク予測には非常に有用であるというのが全体の結論です。

 では、実際の健診制度に持ってきたときの有病率等がどうなっているかというのを見ています。これは国内を代表するコホート集団等で、班研究として実際のデータで整理したのを7ページに記載しています。男女別に対象集団の名称が入っていて、注意していただきたいのは平均年齢という所で、大体地域の集団は6065歳ぐらい。職域ですと50歳弱ぐらいが平均年齢になります。それぞれのメタボリックシンドロームの有病率というのが入っていますが、職域が入るといろいろばらつきはあるのですが、大体全体として2030%ぐらいのメタボリックシンドロームの有病率が男性だとあって、女性だと510%ぐらいである。ここで何を言いたいかといいますと、右端のメタボリックシンドロームの中のCKDの有病率と、非メタボリックシンドロームの中のCKDの有病率に差があるかどうかを見たのですが、これは、実際の日本基準のメタボリックシンドロームで定義すると、両方に有病率に差はないということになります。一番の理由は、腹部肥満がないとメタボから外れてしまいますから、メタボではなくても血圧が高ければ当然CKDの合併があることになるので、これで見ると差が余り出てこないというのが全体の結果でした。

8ページです。CKDの管理というのは、私どもが考えますに例えば血圧であるとか、高血糖であるとか、随伴する危険因子の管理が非常に重要になってくるのです。このメタボリックシンドロームと関係する危険因子の合併数ですが、危険因子がゼロというのはCKD以外に危険因子がない人たち、それから危険因子の数が1個、2個、3個以上と増えていった場合にどうCKDの有病率が変わっていくかを示したものです。集団ごとにばらつきはもちろんあるのですが、基本的に今、危険因子が2個、3個と多くなってくるとCKDの有病率は高くなってくるということになりますので、先ほどのメタボの有無でやるよりは、この個数でやったほうが上がり方は割と素直に反映して有病率は増えてくるということと、それからもう1つは、危険因子ゼロ個の所なのですが、随伴する危険因子が多いと基本的にCKDの有病率も増加するのですが、ほかの危険因子を伴わないCKDも大体510%ぐらいありまして、各集団で大体全部その範囲に入っていますが、ほかの危険因子を伴わないCKDというのも510%ぐらいあり、これはほかで出ている報告ともほぼ一致しているのではないかと考えています。

9ページ、今度は逆に見方を変えて、CKDがあったとき、CKDがなかったときの比較ということです。CKDがあったときに、例えば血圧が高い人、又は耐糖能異常、ここは実際の高血圧とか糖尿病も含みますが、それ以上の人がどれぐらい合併しているかを見たものはそこに示すとおりです。CKDの人で例えば地域の集団となりますと、非常に耐糖能と血圧高値の基準がストリクトに今、決められていますので、それだと89割ぐらいがもう既にCKDがある方だと血圧高値か耐糖能異常があることがわかります。ところが逆に、CKDがなくてもこの2つのどちらかということになりますとほぼ同等の有病率になってしまいます。すなわちCKDの有無によるそれぞれの危険因子レベルの有病率の差が、そこに示したように大体510%ぐらいの間です。当然職域のほうが差はもちろん大きくなってくるのですが、地域においてはCKDの有無で血圧高値と耐糖能異常の有病率が、CKDのほうがもちろん多いのですが、劇的な差はないというのが全体の状況でした。

10ページ、これはデータがアベイラブルだった4地域について、CKDと蛋白尿の合併がどうなっているかはそこに示したとおりです。これもよく指摘されていますが、eGFRで判定された方、ここで示すCKDというのはeGFRが悪かった人のみという意味なので、実際は蛋白尿も含めてCKDだと思うのですが、ちょっとここでは便宜的にeGFRだけが悪かった人ということで定義していますが、CKDと蛋白尿が両方被る方というのは12%ぐらい。蛋白尿だけの方というのが大体23%ぐらい、多くて5%ぐらいです。CKDだけ、要するにeGFRだけで引っ掛かる方が10%ぐらいになります。あと、全体を見ていただけたら分かりますが、eGFR60でカットオフポイントを切りますと、蛋白尿だけのときと比べて、大体地域だと有所見者が10%増加すると推測されることがここで分かりました。

 ここまでは実際の健診データを見た横断解析となりますが、11ページのほうは、今度は5つのコホート集団というのを使って、大体追跡期間が1015年、もっと長いところもあるのですが、そこで、CKDにほかの危険因子が被ったときに、脳・心血管のリスクがどれぐらい上がっていくかを調べたのがここに示したものです。これが男性集団でのデータになります。一番左端のリファレンス、1.00と各集団でなっている所がCKDもなくて何の危険因子も持っていない人ということになります。黒い棒より左の4つの棒グラフはCKDがない集団で、黒い棒よりも右側の集団というのはCKDを伴っている集団となります。ここでは脳・心血管疾患がアウトカムですので、高コレステロール血症も危険因子に加えて、一般的な危険因子の個数をカウントしているという状態になっています。一見して明らかなのですが、CKDがあって危険因子が2個、3個以上みたいなところになると、非常に脳・心血管のリスクが高くなることがわかります。ところが、危険因子が1個とか危険因子を伴わないCKDになるとリスクがそこまでは上がってこないということで、下線を引っ張っている所が統計学的に有意差があったところになりますが、黒で示したCKD単独という所になると、例えばここで有意なリスク上昇を示したのはSuita研究の1集団だけだったというのがここでの結果です。一応、あとこれは年齢と飲酒と喫煙は別途調整したハザード比を示しています。

 図2です。こちらは女性のデータになります。女性のデータも男性と基本的な傾向は一緒なのですが、1箇所左端のCIRCS研究、これは磯先生がやられているコホートなのですが、そこの黒い所だけ女性の危険因子を伴わないCKDのリスクが跳ね上がっています。ただ、ここは信頼区間まで載せるスペースがないので入れてないのですが、ここのイベント数は3例しかないということで、女性のリスクを出すときは非常にイベント数が少ないのでリスクがばらけます。逆にNIPPONDATA80とか90みたいに、CKD単独だとほとんどリスク上昇を認めていない集団というのもあることになりますので、女性のほうはヘテロジェネティが大きくて、これをメタアナリシスで統合するのは無理だと結論付けられます。ただ、いずれにしても、CKDがリスクであることは間違いなく、特に危険因子が2個、3個合併しているような人は非常にリスクが高いということは前向き研究でも示されたと思います。

13ページです。「関連学会におけるCKDの取扱い」というのをガイドラインから引っ張って、腎臓学会は今日、渡辺先生から資料を頂けるということで、関連学会のほうだけこちらで整理しました。糖尿病学会、これは近々「2016」が出るということなのであれなのですが、今、手元にある「2013」のほうでやりました。糖尿病性腎症の治療にどういうものが有効かを見ますと、早期腎症の発症予防には厳格な血糖、血圧管理。早期腎症の治療には、ACEARBによる治療と減塩。それから顕性腎症には、ACEARBによる治療と降圧、減塩、蛋白制限食。こういうことが記載されています。

 それから、2番の日本高血圧学会のガイドラインの「2014」は、治療の基本方針のところで、蛋白尿・アルブミン尿、低いeGFR、慢性腎臓病、確立された腎疾患は「臓器障害」という定義になっていまして、臓器障害というのはそれがあるだけで高リスクであると。高リスクだとどういう対応になるかと言うと、血圧が140/90以上あった場合は直ちに降圧薬治療の対象であるというのが高血圧学会のガイドラインでの取扱いになります。

 次が日本動脈硬化学会のガイドライン「2012」での取扱いになります。ここでは13章に慢性腎臓病という章がありまして、ここでもCKDは高リスク病態であるので、絶対リスク評価以前に直ちに高リスクと分類される。この場合は、LDLコレステロールを120mg/dL未満を含めた包括的リスク管理が推奨されることになります。ほかの集団であれば、例えばいろいろなリスクファクターを絶対リスク評価して治療目標値を決めるのですが、CKDは糖尿病等と一緒にそれが存在するだけで高リスクなので、直ちにLDLの治療目標が決まるという扱いになっているということでした。ここまでが、永井班で調べました尿腎機能についての簡単なまとめになります。

14ページ、今度は詳細項目について調べました。あとは、詳細項目というのが歴史的経緯で入っていることもありますので、一応新しいものも別途調べようということで、ここでは、上下肢血圧比というのも同じ趣旨で文献レビューしたらどういう状況になっているかを同時にやっています。選定条件は先ほどの腎機能等と同様です。まず貧血検査の所ですが、ここはちょっと後で補足します。貧血検査(ヘモグロビン)になっていて、これについては、患者さん集団ですと実はいっぱいあるのですが、一般集団について脳・心血管疾患との関連を示唆するエビデンスはないというのが、国内については報告の状況でした。あと、ヘマトクリットとか赤血球数についてです。ヘマトクリットについては実は文献がありまして後で紹介しますが、これは、実際の健診で自施設に検査室を持っていない所は健診で赤血球数とヘマトクリットを使うことはできません。持って帰る間に壊れてしまいますから。それで今、ヘモグロビンだけが項目として入っている状況になっているかと思うのです。ということで、ヘモグロビンを中心に検討したと。それから、心電図ですが、心電図は下にあるように文献数が、これは日本人の一般集団だけで21件ヒットして、前向きでイベントと脳・心血管疾患に関連するという論文はそこに示したとおりです。様々な所見を予測していますが、文献数が一番多いのが心房細動であったということ。それから、その下の眼底検査です。眼底検査の文献数は8件です。これについても、脳・心血管疾患とのアウトカムを認めた論文が8件です。ABIについても、予測するという論文がありましたが、やはり歴史が浅いと文献数も少なくて、これは2件ということになります。

 この辺を含めて次に行きます。1517ページまでが12誘導心電図についてのアブストラクトテーブルです。18ページが眼底検査についてのアブストラクトテーブルとなって、脳・心血管疾患の予測能としてはそれぞれ優れていることが示されているかと思います。

19ページです。心房細動の文献数が一番多いと言いながら、4つで、次の3つと比べて1個しか多くないではないかという疑念を持たれるかと思うのですが、実はレビューした幾つかのコホート研究では、そもそも心電図所見とアウトカムとの関連を検討する際に、除外基準として心房細動を用いている研究が多いと。要するに、リスクが高いのは分かっているから、最初にもう解析から除外しましたというのが結構ありますので、それを含めると非常にリスクが高い、要するにエビデンスは多いのだろうということが分かるのと、それから、持続性心房細動の有病率は50歳を超えると12%で、70代前半で24%ということなので、その辺の数がいるということ。それから要医療になったとすると、抗凝固療法で大体60%ぐらいリスクは減るというメタアナリシスがあるという状況かと思います。

次に貧血です。先ほど、ヘモグロビンについては一般集団でのエビデンスというのは国内からはほとんどないのですが、ヘマトクリットに関しては、4番、5番の文献、これは両方とも久山町研究から出ている論文だと思いますが、これについては特に脳梗塞のリスクと関係するという論文がありました。ただ、先ほど言いましたように、自前で検査室を持たない施設の場合は、検体を取って運んでいる時間が長いとその間に破壊してしまうこともあるので、ヘマトクリットと赤血球数は余り意味は持たないということで、今回ここではヘモグロビンのように追究をしていないという状態です。ABIについてはそこに示したとおりですが、一般集団のエビデンスがまだ少なかった。ただ、非侵襲性であり新たな臓器障害の先々のスクリーニング手段にはなるのかもしれないということでした。

 詳細項目の最後の補足で、20ページに、ちょっと歴史的な経緯になりますが老人保健法の基本健診。これは1983年~2007年まで行われていたものですが、それにおける心電図と眼底検査の位置付けを示しました。この手のものを文献レビューするときに、前提条件が何かという仮説を間違えると妙な結論が出てしまう可能性があるのです。例えば、心電図の検査は虚血性心疾患を見つけるためにやっていたわけではないので、、それで帰無仮説を組む、要するにスタディ・クエスチョンを組むとまずいわけですが、もともとは高血圧の重症度評価として、この2つは入っていたという面があります。ですから老人保健法の第一期の健診では、血圧が高い人にのみ心電図と眼底検査を実施するというスキームになっていまして、一般診査が血圧、検尿になっていて、血圧が高い方は次のステップで精密検査として心電図、眼底、貧血を見るという形になっていたという背景があります。要は、心電図は左室肥大、眼底検査は細動脈硬化ということで、高血圧性の臓器障害の判定をしようとして健診項目として入っていたという歴史的経緯があります。これを踏まえて、文献レビューにおける心電図のL-high-Rであるとか、ST-T、眼底所見については、高血圧の臓器障害のリスクを評価している可能性があると考えられます。したがって、脳・心血管疾患のリスクが上昇するのはある意味当然でして、先ほども言いました高血圧治療ガイドラインの「2014」では、左室肥大、これは心電図とか心エコーで判定されます。あと眼底の高血圧性網膜症は、これらがあると臓器障害で高リスクとなっていて、血圧が140/90以上であれば直ちに降圧剤治療をする対象ということで、ガイドライン上は整理されていることを申し添えたいと思います。以上です。

○永井座長 ありがとうございました。続いて資料5について、渡辺参考人から、ただいまの資料23の論点と関連させて御説明をお願いいたします。

○渡辺参考人 今、永井先生の研究班の結果を岡村先生のほうから発表していただきまして、CKDが心血管イベント若しくは末期腎不全の予後規定因子であるということに関しては間違いないだろうというお話だったので、私は、この委員会で出していただいた疑問に対してお答えする形で発表したいと思います。

2ページに書いておりますが、私どもは厚生労働省から過去に3回科学研究費を頂いて、特定健診に関するCKDの位置付け、保健指導のあり方、さらに特定健診を基礎とした医療連携のモデルをテーマに研究してまいりました。本日の発表はその結果を中心にお話したいと思っています。それらの研究は現在も続いておりまして、現在完成しているデータベースの解析は、腎臓財団から助成を頂いて現在も福島医大の寄附講座で続けていますし、現在AMEDからの研究費で行われている進行したCKDの実態解明と診療指標確率を目的とする山縣班の中の疫学研究ワーキンググループではさらに発展したデータベースの構築を行っています。

3ページです。健診受診者のデータ回収はまだ進行中の所があるのですが、おおよそ初年度である2008年から毎年6070万件のデータが回収される予定です。2009年の赤のバーは初年度からのリピーターという意味で、大体6割です。我々のデータの一つの特徴は、北海道から沖縄までの全国の自治体と契約しまして、自治体では連結可能ではあるが我々には匿名化されたデータを戴きますので、自治体の協力で個人のデータが縦列につながるということです。

4ページです。我々の1回目の研究班では、ほとんどが横断研究によって、CKDまたは心血管イベントと種々のリスク因子の相関に関する解析を実施しました。このリスク因子をもつ方に重点的な保健指導を行うシステムを構築することが、我々のテーマとして掲げられております。その結果、例えば糖尿病にならなくても前糖尿病段階、高血圧でなくても前高血圧状態で既にCKDの発生が多いとか、肥満でなくても体重の増加、正常高値の血清尿酸値とか、いろいろなものが新しいリスクと判明した訳です。そのほか、特定健診の特徴であるアンケートによる食習慣や運動習慣とCKDの相関関係も判明しました。

5ページは縦断研究の結果です。CKD若しくは心血管イベントの発症をアウトカムとして解析して、横断研究と同じような多くの新しいリスクが相関するという結論を得ております。もう一つの研究目的は、保健指導の要項を作ることもあります。また、健診に血清Crや尿蛋白測定のコストをかけて、医療経済的なベネフィットがあるかを解析しております。後で結果をお話します。

3回目の研究班では、一番ハードなアウトカムとして死亡の要因解析で、2008年の受診者が2012年までの間にどのような形で亡くなっているかを解析しました。厚労省に申請しまして、いわゆる死亡個票を利用させて頂き、自治体にお戻しして、そこで居住地域と生年月日、死亡年月日、性別から健診受診者と死亡者の突合を行うことで、7年間に死亡した受診者のICD10による死因を解析しております。

7ページに、現在までのデータを示します。健診受診者の入手データは70万人弱ですが、実際に自治体においていろいろなデータの欠損があり、30万人弱の受診者に関して、突合ができております。死亡総数が3,764で、下にICD10による死因を示します。比較的意外だったのは、死因としては、がんが非常に多いことです。比較的短い間の検討ですのでこういう結果が出るのかもしれませんが、今後が、死因別に要因を解析する予定です。

8ページです。これは、この委員会から頂いた課題で、CKD対策において、健診での検査と医療現場で行う検査は違うのではないかという疑問に答えるものです。当然、両者は異なります。私どもの意見は、特定健診のCKD対策に対する役割は、危険因子であるCKDのスクリーニングと重症度判定までを行うことです。重症度判定を行う意味は、受診者が保健指導対象か、保健指導のレベルは何か、若しくは、受診勧奨対象なのかを決める目的に対して重要です。その作業に関しては、尿蛋白と血清クレアチニン値は、当然CKDの定義に必須な要素ですので、両者が必要であろうと考えております。 

9 ページは、先ほど岡村先生からのお話とほとんど一致するデータです。我々の研究班での初年度の対照受診者は68万人ほどですが、実際に血清クレアチニンが測られたのが6割ですので、その約33万人でCKD重症度を分類しました。特定健診対象は高齢者であるからと思いますが、日本人全体のCKD頻度より多い約18%ほどです。その中で蛋白尿が陰性若しくは擬陽性は約13%あるのです。先ほどのお話では、10%程度というお話でしたが、我々のコホートでは少し多めということです。

10ページでは、左の表は蛋白尿陰性のCKDの数をステージ別に見ると圧倒的にGFR分類の3に属するものが多いということを示し、右の表は、年齢別に見てみると、やはり高齢者になるほど、蛋白尿陰性でeGFR60未満のCKDが多いこと、この特徴は特に男性で顕著であり、女性では年齢によるそ影響はれほど大きくないということを示しています。

11ページは、「標準的な健診・保健指導プログラム」の改訂版におけるCKDの取り扱い方を示します。これはエビデンスがあってではなく、2回目の木村先生の研究班での検討を基にした腎臓学会でのコンセンサスといえるものです。すなわち、eGFR5060で尿蛋白(-)を保健指導対象と現在は考えております。そのため、保健指導のトリアージをするにも尿蛋白だけでなくeGFRが必要ではないかと考えております。受診勧奨後の医療では、尿蛋白定性検査だけではなく、定量検査が必要になると思います。eGFRが必要ではあると思いますが、これは年齢や体格に影響を受けるものなので、適応があれば、イヌリンクリアランスは非常に手間が掛かりますので、クレアチニンクリアランスなどの精密腎機能検査が必要な場合があると思います。同時に病因検索のための諸検査を実施し、腎専門医への紹介後は腎生検などの特殊検査が検討されます。その後、1213ページにある医療連携の運用や病因や病態に対する治療効果の判定に関しても尿蛋白定性とeGFRは逐次併用していくべきと考えております。

14ページです。頂いた課題としては、尿蛋白とeGFR若しくは血清クレアチニン検査が対象とする疾患についてです。釈迦に説法的なのですが、基本的に、尿蛋白定性反応はほとんどアルブミンを反映するので主として糸球体疾患のマーカーです。一方、血清クレアチニン値は腎機能を表すマーカーで、当然、意味が違います。しかし、先ほど岡村先生からも話されたように、両方とも末期腎不全と心血管イベントの予知因子です。

糸球体疾患である各種腎炎や糖尿病性腎症などの早期診断には尿検査が重要です。ただし、糖尿病性腎症は、以前はアルブミン尿若しくは尿蛋白の陽性が診断の要件だったのですが、最近の様々な疫学研究等観察研究の結果、尿中アルブミンが正常でも腎機能が低下する例が多数報告されています。これらの例では腎組織学的にも腎症に特有の所見が証明されております。それらを踏まえて、腎臓学会と糖尿病学会の合同委員会で、一昨年の12月に、糖尿病性腎症の病期分類の改訂が行われました。

16 ページは、CKDと糖尿病性腎症の病気分類、重症度分類の対照表です。私が矢印を入れた部分は、概念的に従来の糖尿病性腎症の病期分類は、青の方向に向かっていくことを前提にして、顕性アルブミン尿が出て、初めて腎機能が低下するとされていました。しかし、現在の糖尿病性腎症の病期分類は、1期の正常アルブミン尿、2期の微量アルブミン尿の病期でも腎機能低下が起こるということになっています。したがって、最も代表的な糸球体疾患である糖尿病性腎症ですらeGFRを追加しない限りは病期の判定ができないことを意味していると考えています。

15ページは、そういうことを踏まえて、主なCKDの原疾患の特徴を示しています。糖尿病性腎症の場合は、やはりそうは言ってもアルブミン尿が早期診断マーカーとして生きているが、例外が多くあり、eGFRも同時測定しないと見逃す例も多いということです。糸球体腎炎の早期診断法は検尿で以外はないし、逆に、腎機能が落ちてからでは治療の効果が非常に低下するということがあります。3番目の血管疾患ですが、代表的な腎硬化症に関しては、蛋白尿陰性の例が多く、かつ、緩徐ではありますがeGFRが低下してくる例が多くて、これが今、15%近い透析導入の原因になっています。

17ページです。戴いた課題は、尿蛋白定性検査の精度です。現在いろいろな検査キットが出ていますが、 (1+)がアルブミン尿の30mg/dLに相当するように標準化されています。検査自体の誤差に関しては、それほど大きな問題はないだろうと考えます。ただし、飲水状態による濃縮・希釈の影響をうけます。しかし、健診や診療現場でも同じなのですが、末期腎不全と心血管イベント発症の予知能力と医療経済的メリットが証明されています。

18 ページですが、国際腎臓学会でのコントラバーシーカンファレンスでの解析結果です。eGFRが低下するごとに総死亡、心血管死亡、CKDの進展、末期腎不全ハザード比が上昇し、その臨界点が大体eGFR60であリ、かつ、アルブミン尿の程度によって更にハザード比がかさ上げされることを示しています。したがって、尿中アルブミンとeGFRは独立性を持ったリスク因子であるので、両方測らなければ、リスク評価ができないと主張している根拠です。

19ページです。先ほども高山課長補佐からもお話がありましたが、健診で使用されている尿蛋白定性検査は主に尿のアルブミン濃度を反映します。本来、危険予知因子としては、1日の蛋白若しくはアルブミンの総排出量を見るべきなので、臨床現場では1日約1g排泄される尿中Cr値で補正した値を利用します。特定健診の研究班の検討ではないのですが、我々が検討した9,000人ほどの外来高血圧患者さんでの実際の医療現場で尿蛋白定性検査結果と尿中アルブミンを尿中Cr値で補正した場合の異常の割合の相関を見たのです。尿蛋白定性が「-」のときでも、アルブミン尿の異常は30%位、「±」では6割強です。ただし「+」以上になれば、現実にはほとんど異常アルブミン尿です。すなわち、尿蛋白定性検査は、リスク評価の感度に関しては問題があるのですが、「+」に出たものを拾い上げれば、リスク評価に十分に役立つと考えております。では、1回の検査で「-」、若しくは「±」の偽陰性の受診者は、希釈尿の影響が考えられ、検査を毎年繰り返すことで感度が上昇すると考えております。

20ページは、私どもの研究班で、18ページにあるアルブミン尿による心血管イベントの予知の能力が尿蛋白定性反応にもあるかということを確認したものです。やはり、腎機能低下とともにイベントの頻度は上がりきます。また、腎機能が正常でも尿蛋白が増えれば頻度は上がるのですが、アルブミン尿を使用する場合に比べて、上昇の程度が低く、感度は悪いと考えています。理由は、「-」の中に異常アルブミン尿が含まれていることを反映しているのだと思います。

21ページは、まだ論文化されていないのですが、尿蛋白陽性が、今までは透析導入の強い予知因子であるとは言われていたのですが、死亡個票との突合データを我々が解析してみると、尿蛋白が死亡の予知因子にもなる可能性が示唆されました。ただし、沖縄と福島の例を挙げているのですが、死亡率に大きな差があるのが何故かは未だ疑問です。両コホートでは平均年齢が多少違うのが原因の一つですが、今、背景因子を検討しているところです。

 次に、22ページは、血清クレアチニン検査とeGFR推算式の精度についての纏めです。クレアチニン自体の測定関しては、以前行われたJaffe法という化学法は現在の日本では一切使われていません。測定方法が酵素法に統一されて、標準化もほぼされて、それほど大きな測定誤差はないと考えています。ただし、血清クレアチニン値を腎機能評価に使う場合は、その値が主に筋肉量に依存していますので、年齢、性別や体格の要素の要素で乖離する可能性があります。一方、正確に腎機能を測るイヌリンクリアランス法は非常に手間のかかる検査ですので、測定が簡易な血清クレアチニン値と年齢、性別などで推算するために作成したのが、いわゆるGFR推算式です。

 次の23ページは、見にくい図で申し訳ないのですが、日本における各点で表される900例において、いろいろな推算式を用いた推定GFRとヌリンクリアランスによる実測GFRの相関を示します。推算式の原型はアメリカのMDRD研究で作られた推算式ですが、日本人では体格的な問題から誤差がやや大きいので、日本腎臓学会で作成した日本人用に作成した推算式が左下のものです。赤い矢印を御覧になってお判りのように、腎機能が正常に近づくと、ばらつきが大きいのです。この式では、バイアス、すなわち推定GFRの実際のGFR値からの差が平均して-2.1位です。それから、±15%、合計30%の幅に全体として75%が入るという程度のばらつきです。ただし、これは機能検査という非常に煩雑な検査を1つの血液検査値を使って代用するので、ある程度の誤差は仕方がないと考えています。

 また、図に矢印でお判りのように、CKDの領域になると、eGFRと実測値の誤差の幅は少なくなってきます。したがって、これは正常に近い腎機能を評価するものとして使うよりは、むしろCKDの有無、若しくは、CKD重症度の評価として使うのが正しい使い方ではないかと思っております。

24ページです。我々の研究班での検討で、このようなeGFRが縦断研究の期間での新規の心血管イベント発症のオッズ比との相関を、肥満者と非肥満者で分けて、収縮期血圧別に見たものです。上述のeGFRが実際には充分に予知能力があり、特に肥満者において顕著な傾向があることが示されています。

 次に、健診における血清クレアチニン検査と尿蛋白検査について医療経済的な視点から述べます。要するに健診に使うコストと、それから得られる医療経済的なメリットを検討する方法を図示したものが25ページです。これはマルコフモデルというもので、筑波大学の近藤先生という医療経済学者が使用されたモデルです。

26ページは、近藤先生の1つの論文における医療財政負担に関する結果です。要は、健診でお金をかけるが、それが早期発見、早期治療でどれだけイベントを抑えるか、進行を抑えるかということで戻ってくる財政負担に対するベネフィットを計算した結果です。尿蛋白検査に関しては、左上にあるように、15年ぐらいの間に10億円程度の財政負担を軽減する、要するにキャッシュバックされるという結果です。右の下にあるのは血清クレアチニンに関する結果で、現在の検査実施率60%を前提に、全員に血清クレアチニンを必須検査にした場合の財政負担は15年で約39億円ではないかと彼は推定しています。私は、医療経済面に関してはよく判りませんが、尿蛋白検査はコストベネフィット面でも意義のある検査だろうと考えております。

27ページは、血圧や血糖などのほかのリスクに対する検査によって、その結果であるCKDのスクリーニングが可能という疑問に関する反論の纏めです。

具体的には、次の28ページに示します。横断研究の結果では、血清Crを測った33万人強の受診者で、高血圧・糖尿病(薬服用も含む)を除外して、さらに肥満と尿蛋白1+以上を除外した場合も、やはり10%ぐらいの方がeGFRで見るとCKDであることを示します。先ほど岡村先生から、リスク因子のないCKDの頻度は510%という話でしたが、我々の結果は本質的に同じと思います。

 次の29ページは、実際に尿蛋白が「+」以上になっている方の背景です。メタボが有る、高血圧が有る、糖尿病が有るというのに比べて、絶対数は比較的少ないのですが、一番強い要因は腎疾患の病歴です。したがって、特定健診でのアンケートや保健指導における保健師さんたちの質問なども重視すべきと思います。

 次の30ページに、尿検査、血清Cr測定を健診で実施すべき頻度についての知見を纏めました。2014年にJAMAに報告があるのですが、eGFR2年間で30%低下する方に関しては、末期の腎不全の発症率が有意に高いとされます。したがって、2年間でマイナス30%というものを臨床研究での腎機能低下のサロゲートマーカーにできるのではないかというのがこの論文の趣旨なのですが、少なくとも隔年にはeGFRを測定すべきことを示唆しています。

31 ページに示す2014年に行った我々の縦断研究でも、新規の心血管イベントの発症予知に、eGFR低下、高血圧や蛋白尿はもちろん有意なのですが、それ以外にeGFR1年間にマイナス10%の低下が有意な危険因子であることを示しております。これは、経年的に血清Cr値を測定する意義を示唆しています。

32ページは我々の検討結果ですが、eGFRの年間低下量が、不思議なことに、上昇しても低下しても心血管イベント新規発症のリスクになっているということを示しています。eGFRの変化量の重要性を示唆しています。

 次に、我々が新しく証明したCKD若しくは蛋白尿の出現のリスク因子の例を示しています。糖尿病は当然CKD若しくは蛋白尿の出現のリスク因子なのですが、33ページには、健診で血糖が100126若しくはHbA1c5.76.4という前糖尿病状態でも、特に両方ある場合には有意なリスク因子でることを示しています。少し不思議なのですが、IFG、すなわち空腹時血糖が高い方は、HbA1cのみ高値に比較してより有意であることも判明しました。

 次の34ページです。血圧がベースラインで正常、または正常高値の方が高血圧になる方と、そのまま130140の間の正常高値を維持する方がいますが、赤く囲んでいる正常高値のままの人でもCKDの発症リスクが有意に高いことも判明しました。健診における値ですから日内変動を見ているわけではないので解釈が難しいのですがが、健診での正常高値はCKD発症のリスクであることも示唆しています。

 したがって、腎臓学会の意見というよりは私見が入るのですが、こういうハイリスクの方に関しては、可能なら毎年検査したほうがいいのではないかと思います。ただし、もうCKDで治療に入っている方は毎年やる意味があるかどうかに関しては検討を要するだろうと思っています。そのことに関しても、私どものデータベースでCKDのない方の経過を解析することで、ある程度の答えを出せるのではないかと考えております。

 次に戴いたテーマは、特定保健指導以外のCKDに効果的な介入方法ということです。いわゆるメタボリックシンドローム、糖尿病、高血圧、脂質異常等に関する介入以外にCKDに対する介入としては、やはり蛋白制限があり、それから薬剤の使用、特にNSAIDsに関しての取扱いが非常に大事だと思います。すなわち、腎機能別に薬剤の投与量を変えることも大事ということです。

 蛋白制限食は本当にCKDの進行抑制に対する効果は、まだコントラバーシャルなところがあります。これは実際に厳格な食事療法が実施可能かということに大きく関わっている問題だと考えております。多くの臨床研究結果のメタ解析としては、CochraneSystematic Reviewsでは、非糖尿病のCKDに対しては蛋白制限食の有効性は有意であるが、糖尿病では有意な傾向はあるが、統計学的な有意差はないというものが出ています。

CKDに対する治療としては、腎機能の低下抑制には糖尿病、高血圧の治療も大事なのですが、免疫学的な腎疾患に対する治療が非常に重要です。41ページでは、透析導入年齢の近年の変化を経年的に見たものです。腎硬化症や糖尿病性腎症の透析導入年齢の遅延に関しては、寿命の延びよりは少しは延びているのですが、御覧になってお判りのように、急速進行性腎炎(血管炎)、慢性糸球体腎炎や腎盂腎炎やSLEといった疾患が、CKDの透析導入年齢を近年大きく延ばしています。それは何故かというと、これらの疾患の治療法が急速に進歩したことを反映しているのだと思います。したがって、このような治療が可能な疾患、腎機能の低下を抑制できる疾患をどうやって洗い出すかという観点が健診では必要なのだろうと思います。

35ページに戻っていただきます。腎臓疾患の特徴は、CKD3b期以降の進行したCKDに対しては、貧血の治療、カルシウム/リン代謝異常に対する治療、血清カリウム是正、活性炭等々において臨床的なエビデンスがたくさん出ており、これはCKDに特有な治療です。

それから、CKDのみならず、チーム医療、地域連携は日本の医療の非常に重要な課題だと思いますが、実際にそれを試した研究としては筑波大学の山縣先生が班長であるFROM-J研究という戦略研究があります。1週間ほど前に論文化された結果が3940ページです。この論文はCKDに対する非薬物治療の効果を証明しています。この研究の対象は、糖尿病と高血圧をもつCKD患者さんが多いのが特徴です。ここでのB群というのは、特に栄養士さんが積極的に介入した群です。クラスター解析という研究方法ですが、医師会単位で積極的に介入する群と標準的に介入する群でアウトカムを比較するのですが、B群が積極介入です。その効果が、クレアチニンの2倍化やeGFR50%低下という腎予後の指標に関して有意差が出ています。特に、最もポピュレーションの多いCKD3において有意差が出ています。39ページの下の表は、A群とB群のグループ間で各種の薬物の使用の頻度を示します。薬物の使用頻度を抗糖尿病薬、尿酸低下薬、降圧薬、Statinに関しては差がないというより、むしろ積極介入群のほうが使用頻度の低いものもあるという結果が出ております。すなわち、この研究結果は薬物療法のみならず、非薬物的介入の効果の証明と思います。また、早期発見による保健指導の重要性を示唆するものと思います。

38ページには、生活習慣と蛋白尿、若しくはCKDの相関を示します。5つの健康的な習慣が少ないほど、すなわちゼロが非常に不健康ということです。生活習慣の変化も含めて、悪い生活習慣とその継続がCKD増悪のリスクになっていることを示しています。これらの生活習慣への介入は十分な効果があることが期待できます。

 追加ですが、36ページには、BMI別のCKD発症の縦断解析でも、肥満だけではなくて痩せている方にも非常にCKDの発症頻度が上がるのです。保健指導では、個別にリスクを考えなければいけないだろうと思っております。

 最後に頂いたテーマは健診として望ましいのは腎機能検査か尿蛋白かという御質問です。今までの話の結論からは、健診でCKDをスクリーニングすることを重視するなら両方必要だということです。ただし、健診のプログラムに関しては、全員を対象として画一的な健診を毎年やるべきかについては検討が必要です。個人的には、もし財政的な問題があるとすれば、CKD発症リスク別に層別化した健診プログラムを考える時期に来ているのではないかと現在考えています。以上です。

○永井座長 それでは、続いて寺本構成員から資料6について御説明をお願いいたします。

○寺本構成員 資料6を御覧ください。先日の会議の中でnon HDLに関して議論があり、動脈硬化学会に問いかけるスクリーニングとしていいかということで、26日に日本動脈硬化学会の理事会があり、そこでこのようにnon HDLをスクリーニングとして用いるということについて議論をいたしました。理事の方々からは基本的にスクリーニングとして用いることは問題ないということでした。

 ガイドラインを運営されている副理事長からも、これに関しては同意を頂いております。その際にもう一つの「脳心血管病予防に関する包括的リスク管理チャート」を昨年出しております。11学会の理事会で承認された内容と御理解ください。その際にスクリーニング、Step1aを御覧ください。基本検査項目の中にTCHDLの次にnon HDL-Cというものが書いてあります。これは食事をしてきてしまった場合を想定したスクリーニングとしてnon HDL-Cに関して11学会で合意いただいたということです。

1bの所で初めて空腹時のTGなどを測って計算式のLDLコレステロールを出しているという流れで、特定健診後の診療の場での使い方ということで、こういうものを出させていただいて、これは現在、日本内科学会雑誌に発表されており、日本医師会雑誌にも発表されていて皆さんに周知徹底をしております。

 先日、これに関して講演会を行いました。講演会に参加された先生方の反応ですが、70%以上の方がnon HDLを使用することは問題ない、ただ、LDLコレステロールと併用することも考えたほうがいいのではないかという御意見を頂いております。以上です。

○永井座長 ありがとうございました。続いて、事務局と構成員の発表について、まず質疑を行い、その後で資料3の論点ごとに議論を行いたいと思います。何か今の時点で論点以外にお聞きしておきたいことは、よろしいですか。

 もしよろしければ時間の関係もありますので、資料3を御覧いただいて論点ごとの議論に入りたいと思います。「健診項目についての論点」、A4の横のものです。まず、尿腎機能についての論点です。尿腎機能検査は、糖尿病等の生活習慣病、虚血性心疾患や脳血管疾患等を発症する可能性の高いハイリスク者を抽出しているか。予備群を減少させるためではなく、重症化の進展を早期にチェックするためのものかどうか。「基本的な項目」とするか「詳細な健診の項目」とするか。また、尿蛋白をどのように位置付けるか。血清クレアチニンの精度。eGFRが適切か。この辺りを最初に御意見を頂きたいと思います。

eGFRが確立された指標であるということは良いのですが、どうも私が臨床現場で見ているとイヌリンクリアランスとのギャップ、23ページの日本人向けに示されたeGFRの計算式ですが、左下の日本人、確かに40以下はイヌリンクリアランスとよく合うのです。しかし、406070を切り出してみるとこれは4割ぐらい過剰に診断してしまっている。40以下はいいと思うのです。正に健診でフォールスポジティブをできるだけ少なくしようというときにこれが適切かどうか。健診として見たときにどうなのでしょうか。

○渡辺参考人 推算式の持つ限界だと思います。ただし、これに関しては、例えばeGFR60未満の方の実際に予後調査をした場合にはそれが実際に指標になるという事実が重要と思います。また、先ほども申し上げたように、特にeGFR60未満でCKDと判定された方に関しては、経年的に変化を見ていく以外にないと思っております。

○永井座長 変化率がかなり重要だということですか。

○渡辺参考人 eGFRの変化率そのものが腎臓、若しくは心血管イベントの予後要因にもなります。それから、例えばeGFR50代後半の領域に一番フォールスポジティブの可能性が高いのですが、そういう方でまたeGFR 60以上に戻っていく方もおります。それが治療効果なのかどうかは判りませんが、そういう方に関しては、リスクのある方では保健指導を実施し、経年的に経過観察することで良いと思います。健診での検査頻度の問題とも絡んでくると思いますが、そういう方に関しては、経年的に見ていくことで予後が判明すると思います。

 実際に臨床現場で見ていると、eGFRがほとんど落ちてこない方も多いのですが、他のリスクが多いなど臨床的問題があれば受診勧奨して医療現場でクレアチニンクリアランスなどの精密な腎機能検査を実施すれば良いと思います。

○永井座長 指導の仕方が重要だと思います。先生方も経験があると思うのですが、高齢者でGFR5758と言われてどうしましょうと、心配で相談を受けたことがあると思うのですが、余り不安をあおる指導はよくないと思います。

○渡辺参考人 その考え方を踏まえて、保健指導の基準ではありませんが、専門医に対する紹介基準では、70歳以上の方に関してはeGFR40を切らない限りは紹介しなくてもいいとか、その代わり若い方に関しては、将来的な問題が危惧されるので、もう少し軽いeGFR60未満の段階から紹介すべきとしています。年齢別に基準を変えたのはそういう年齢を考慮した考え方です。保健指導の場合は今後の検討が必要です。

○永井座長 腎機能の位置付けですが、岡村先生から説明がありましたように、メタボがあってもなくても510%ぐらいは異常者がいるということをどのように考えるかです。そもそもメタボ健診が高齢者医療確保法で内臓脂肪に基づく生活習慣病を対象とするという、非常に大きな制約があるものですから、その中でメタボがあってもなくてもある割合の人がいます。非常に重要なのだけれども、それをどのように位置付けるかという問題なのです。

 例えば結核についても、なぜレントゲン写真を撮らないのだという話に少し通じるところがあります。一方でCKDはメタボあるいは糖尿病の重症度の指標として確立されております。そうなると今度、それは医療機関できちんと精査してもらえばよいではないかという話にもなってしまって、この辺をどのように説明するかなのですが、どなたかいかがでしょうか。

○門脇構成員 尿蛋白あるいはクレアチニンについて今日いろいろな資料を見せていただいて、非常にそれに基づいて議論ができる状況で大変よかったと思います。永井座長がおっしゃったように、やはり本来の健診の大きな枠組みの中でどのように位置付けるのかということが大事だということを考えると、一体尿蛋白やクレアチニンを我々が測ってどういう対象疾患を見つけるのかということが問題になるのではないかと思います。

 そうすると、糖尿病性腎症、あるいは今日、渡辺参考人からも話がありましたが、もっと軽い耐糖能異常の時期から尿蛋白との関連、CKDとの関連があるというお話もありました。もう一つは高血圧性の腎硬化症があるのではないかと思います。したがって、一つの考え方としては、特定健診の中で血糖値の異常や血圧の異常という方がいた場合に尿蛋白やクレアチニンの測定をして、糖尿病、耐糖能異常も含めた早い段階での腎症や腎硬化症を見つける。これは完全に健診の目的に合致しているところではないかと思います。

 ただ、永井座長も御指摘されたように、それ以外にももちろん腎炎などを含むようなCKDという問題があり、それは必ずしもこの健診の全体の目的ではないと思うのですが、その辺りの見逃している部分も出てくるので、それをどのように考えるのかという問題かと思います。

○永井座長 岡村構成員や渡辺参考人の資料にもありましたが、メタボの有無に関わらず、腎機能の問題はメタボには依存していないという問題なのですね。

○岡村構成員 厳密に言うと、日本の基準でウエストを必須要件にしたメタボということになるので、ウエストにかかわりなく血圧が高い若しくは血糖値が高いという縛りでかけると、当然かなりの方が被ってきますので、そこをどのように解釈するかです。だから、本当に保健指導でCKDを何とかするということになると、ウエストで制限をかけているということが今度は逆に問題になってきてしまうということがあるので、ここは多分どなたも同じ御意見だと、まず思います。

 全体の議論として、健診でやることと診療でやることが、どうしても我々医者の悪い癖で、だんだんこんがらがってきてしまうのですが、健診の場でまずしなければいけないのはスクリーニングなのですが、まず医療機関に送る人、医療機関に送らなくて手元にとどめて保健指導をする人を判別できなければいけないと。それから先ほどのいろいろな職種で連携して非常に良かったというのは、これは多分主治医を持ってきちんと治療されている方が、更に地域の保健師と協働したら良かったということなので、これは治療中の人の事例なので、特定保健指導とは少し位置付けが違ってきますよね。

 ですから、健診とその診療の区分をどこできちんとしていくかということをまず区別しなければいけないので、何らかの人を、とにかく要医療にしてきちんと送って、そこできちんと治療をしてもらうということについては、まず問題なかろうと。ただ、診療を絡めない状態について保険者の中で何ができるのかは別途議論が必要で、今これから考えなければいけないことになるのかと思いました。

○門脇構成員 先ほど高血圧のある方、あるいは血糖異常のある方と申し上げました。そこに岡村構成員からお話があったようにメタボの基準を満たす場合、つまり、積極的に支援の対象になる場合とそうでない場合があり得ると思います。メタボの基準を満たして、高血糖や高血圧があって尿蛋白、クレアチニンを測った場合に当然その対象は、いわゆる内臓脂肪を減らす介入の対象になるのですが、クレアチニン、尿蛋白が出ていれば、要医療というところに行く切っ掛けになるのではないかと思います。医療機関を受診させるべき段階ではないか、臓器障害の段階ですね。

 そして、もう一つは高血圧や糖尿病が、糖代謝異常があってメタボの基準を満たさない場合にも、そこで検査をしてクレアチニンや尿蛋白があれば、これも医療機関を受診させる良い切っ掛けになるのではないかということで、やはり国全体で今、糖尿病性腎症を始めとして透析をいかに減らすかということを考えた場合に、そういう仕組みをこの中で、医療機関を受診すべきハイリスク群を抽出するための方式という形で導入したらどうかと思います。

○永井座長 その場合にメタボだけを見たときに比べて、どれだけ感受性が上がるかです。健診ですので理想的にはいろいろ調べたほうがよいのでしょうが、どれだけ感度と特異性が上がるのかということが健診の問題なのだと思います。

○岡村構成員 もう1点、今のところで先ほど付け加え忘れたのですが、どうしてもスクリーニング検査としては感度に目が行ってしまうのですが、公衆衛生の立場からは特異度が高い、擬陽性が少ないということも非常に検査としては大事で、余り擬陽性が多いと信用がなくなって健診に来てくれなくなってしまいます。

 ですから、細かく見つけられるからいい、見落としがないと言われても、見落としがないということは、要するに擬陽性が多いということのバーターで、どちらかを上げたら必ずどちらかが下がってしまうので、特異度についても健診の場では大事だということをここで強調しておきたいと思いました。

○永井座長 そういう意味でeGFR5060という所では、4割ぐらいはイヌリンクリアランスだと60以上あるということです。特異度の問題になってくるのではないかと思います。

○津下構成員 2点あります。1点は、先ほどご指摘のありました通り、治療の必要な人が未受診になっているという状況があります。私どもの手元の国保の8,000人のデータで分析すると糖尿病性腎症、糖尿病はHbA1c6.5%以上で、尿蛋白が陽性の方のうち、4割が治療につながっていないという状況が分かりました。そこを放置していることによって腎機能低下を加速させるということがありますので、糖尿病の患者さん又は高血圧で十分に血圧がコントロールされていなくて腎機能が落ちている方については急ぎ治療をしていく必要があると思います。

 さらにFROM-Jの研究にあったように生活指導を組み合わせることが重要と思います。BMIが介入群で下がっているので、肥満傾向の方には生活改善を促すということが有効ではないか。全ての患者さんが糖尿病、高血圧が異常になったときにきちんと医療にかかって、そして医療機関で全て腎機能もきちんと見て生活習慣も行うということであればスクリーニングの必要はないかもしれないのですが、現在、糖尿病は国民健康栄養調査でも7割程度しか治療につながっていません。特に悪化する方については放置している方が多いという現状があるので、測るチャンスがあれば放置を抑えられるのではないかと思います。

2つ目ですが、渡辺先生の910ページにもありますように、eGFR4559かつ、尿蛋白が陰性のG3aの方が非常に多い。この方たちに対して、血糖、血圧が高ければまだ介入の余地があるのですが、それらの異常がない場合の対応が困ります。eGFRを表示し始めた当初は60を切っていることを知って、みんな腎臓が悪いのではないかと大騒ぎしていたのですが、結局、多くの方は数値が安定していてほとんど悪化していない。そういう現状があるので、カットオフの基準については注意が必要と思います。特に高齢者で尿蛋白がマイナスでeGFRが少しだけ下がっているという方は保健指導の対象にもならないと思います。

 第2期のときには、保健指導の対象にするという絵が先ほどありましたが、保健指導としても特段もすることがなくて、また来年健診で様子を見ましょうという話になってしまうので、厳密な意味での保健指導、保健師、管理栄養士のマンパワーをかける価値があるところはどこかということになります。導入するにしても基準の再検討が必要ではないかと思います。以上2点です。

○永井座長 最初の点ですが、医療がしっかりしていないからチャンスがあれば健診で行うべきというのは難しいです。

○津下構成員 そうですね。

○永井座長 保険者からそれは違うでしょうと言われてしまう。気持ちは分かるのですが。

○津下構成員 ただ大事なポイントは、治療になかなかつながってくれない患者さんが、健診は受けるけれども治療を中断している患者さんを拾い上げる機会として健診が使われているということです。

○永井座長 ですから、それはメタボをしっかり治療してください、合併症を診断してください、医療機関で行ってくださいという話になるのです。保険者は、納得しないと思います。

○津下構成員 健診の後の受診勧奨を結果表でしても受診につながらない人が現実にはいらっしゃるということで。

○永井座長 それは分かるのですが、これはお金と手間暇がかかる話ということと、保険者がかなり出資する話なので、この委員会は最終決定権があるわけではないのです。

○津下構成員 そうですね。やはり、そこでは介入効果との見合いで、義務化をどこまでするのかということとは別として、必要性については御理解いただける所が実施されるという形になるのかもしれないのですけれども。

○永井座長 重要な御指摘だとは思うのですが、もう一つは基準の問題です。渡辺先生も言われたように、対象を含めて、基準をもう少しサブグループ化したほうがよいだろうと思いますが。

○福田構成員 渡辺先生から医療経済性のお話があったので、少しだけコメントいたします。先生に御紹介いただいた26ページの腎機能検査の財源影響分析です。これを拝見すると、(a)ですね、何もしないときに比べて尿蛋白の検査をやると10年後には10億円程度の削減になるということですが、現状やっている蛋白と血清クレアチニンを60%やるというのは右下の(d)のものになると思いますので、10年後には39億円の医療費、お金がかかるということと、さらにそれに血清クレアチニンも必須にする、全員にやるということになると左のようになると思いますので、10年後には72億円とありますから、プラス33億円かかってくるということで、お金がかかるということです。

 さらに、お金がかかってもそれに見合った効果があればということは今の御指摘のとおりですので、25ページの費用対効果の分析は非常に重要で参考になる情報だと思います。これも少し前に論文を拝見しているのですが、現状から血清クレアチニンを必須にするということで増分費用効果比が論文中では算出されていて、やり方としてはこのモデルを使って適切にされていると思います。

 アウトカム資料としては、経済評価でよく使うのですが、Quality Adjusted Life Years、質調整生存年をきちんと使っております。ただ、結果を見ると現行のものに対してクレアチニンを必須化すると1QALY増加に対して900万円程度のお金がかかるという結論になっていて、本論文中では1人当たりのGDP3倍ぐらい許容できるのではないかということで費用対効果にという結論になっているのですが、一般的に日本で議論されているのは、1QALY増加に対して500600万円程度を目安にするという場合が多いので、それを考えると議論の余地があると思います。

○永井座長 腎機能を調べるということは、重症化の進展、早期診断という点はよいと思います。まず、そういう整理の下に基本的な項目にするのか詳細検査項目にするのか、つまり全員に毎年測定するのか、それこそサブグループ化ですね。

○門脇構成員 永井先生がおっしゃるとおりで、今御説明があったように1QALY当たり900万円というのは通常は余りジャストプライスとはされなくて、500万円というところがスタンダードだと思います。そういうことを考えると、これは全くサブグループ化しなかった場合のデータで、例えば、これを高血圧や糖代謝異常を持つグループにサブグループ化すると900万円から随分下がるのではないかと。事によれば2分の13分の1には容易に、ハイリスク群の設定によれば下がるのではないかと思います。そのときに、そこで費用対効果が担保されているとすれば、それは特異度、感度の問題からいうとどのようになりますか。

○岡村構成員 そこをなかなか直接的に結び付けるということは、結構難しいと思います。結局、残念ながら自分の見たものしか見えない。だから医療機関側は受診された方しか見ないので良かったですという声しか聞かないし、来なくなった人と会うことがないので、多分両方からの側面で見なければいけないということは恐らくあるのだと思います。

 それから、今の階層化をどのようにするかというときに、これは先ほど寺本先生に出していただいた包括管理チャートとも絡んでくるのですが、要するに普通に診療へ行かれたら、このステップでやりましょうということだと思うので、逆に、診療に行かれたときにこのステップでやっていただけるのであれば、今、受診中であろうとなかろうと健診項目は一律同じようになっているのですが、少なくとも診療されている方については別途、健診で測定する必要はないという考え方も無きにしも非ずということになります。健診としては診療に行かせる切っ掛けをどのようにするのかということとの絡みになると思います。

 逆に言うと、もう受診中の方については、クレアチニンはもういいですね、医療機関できちんとやってくださいという整理も恐らく可能で、そこを病診連携、あと地域との連携で、治療中の患者さんを連携してどのようにしていくかということは特定健診とは別の制度で、それぞれ地域医療では皆さんやろうとされています。先ほどの山縣先生の論文でも効果が出ている事業は、地域医療として別途組めるということで整理して考えなければいけないのかと思いました。

○寺本構成員 私自身は最初のスクリーニングの段階で、今、門脇先生がおっしゃったように、例えば高血圧や糖尿病があるという方々を層別化したときに、それはものすごく効果があるということが出てくるということを考えると、メタボや血圧の問題に引っ掛かった後でチェックするということに関してものすごく意味があることなので、確かに次のステップでいろいろ考えるという、医療の問題になってくるのかもしれないのですが、そういうもので引っ掛かった人には必ずやっていただきたいという項目としては非常に重要だと感じております。

○永井座長 渡辺先生、いかがでしょうか。

○渡辺参考人 メタボリックシンドロームとの関係から申しますと、日本の基準であっても、我々の研究結果でもメタボはCKDの有意な要因になっています。すなわち、CKDはメタボによる臓器障害の一つです。それから、体重増加やいろいろな生活習慣が悪いこともCKD発症に相関していますので、CKD対策にいわゆるメタボ健診と生活介入を中心とした保健指導の意味はあるだろうと思います。また、私どもが主張したいのは、メタボの保健指導をするときにCKDがあるかないかで、生活指導の重み付けが違ってくるのではないかということです。すなわち、CKDがある方の保健指導と、そうでない方の保健指導は、保健指導の密度を変えるべきではないか思います。そのようなCKDを考慮した観点からの保健指導の効果をある保健師のグループに検討して貰っています。

 それから、その保健師さんたちに6県か7県で何十万人かを対象にして調べてもらったのですが、現在高血圧、糖尿病、脂質異常症を治療中の方と未治療の方に分けて、蛋白尿は無いが明らかな透析予備群であるCKD3b4の頻度に両群にそれほど大きな差がないのです。これが日本の現実で、これをどう考えるかということだろうと思うのです。私自身はメタボ健診の法的な裏付けや制度的な制約はもちろん判るのですが、健診によって、治療を受けていないCKDを見つけることは国民的な健康とかのことから見ればメリットがあると思っております。

○永井座長 ただ、そこに踏み込むと、それこそ高齢者医療確保法を改訂しようという位置付けになってしまい、少し影響が大きいのですね。ですから、何とかうまく今の法律の中で読み込めるように位置付けることが重要です。そのためには詳細なスクリーニングのほうがまずは無難ではないかという気がするのですが。

○杉田構成員 分かりやすい御説明、とても勉強になりました。ありがとうございます。渡辺先生の資料の中で、先ほどの御説明の中では既に改訂版のほうで示されているということで飛ばされたのかと思いますが、11枚目を御覧いただけますでしょうか。尿蛋白とeGFRの関係をクロスさせて、このマスに入った方に、その後どういう保健指導をしていったらいいのかをまとめたものだと思うのですね。1次にするのか、2次にするのかという話にも絡んでくるのですが、1次にしていくと、(1)のゾーンの方々ももちろんなのですが、(4)の方ももちろんいるのですが、もともとの改訂版の中では背景になっている生活習慣の改善をという文言が今は保健指導という赤字で置き換わっているのですが、この方々ももちろん健診を受けるだけではなく、その後も保健指導が絶対ワンセットになっているのがこの案件なので、その後どう関わっていったらいいのかというのもしっかり示していかないといけないと思っております。

 今、FROM-Jのほうでは明らかに(1)のゾーンの方々なのかなと思ったのですね。既に、要医療の感じの方、そこまでいかない、もう少し前の方々に対してですと、現行の改訂版では、尿検査の結果と併せて考えると差し迫った危険はないと考えられますが、これ以上悪化させないために食生活の改善に取り組み、肥満があれば解消することと、高血圧があれば減塩に努めましょう、禁煙も大切ですという、すごく一般的な書き方になっているので、要は全員の方を対象にした場合のその後の保健指導をどうするかまで想定しないと、全員というのはそれこそ各保険者が納得しないのではないかと思います。

○渡辺参考人 この領域の保健指導の在り方になるのだろうと思いますが、保健師のグループの方々が検討された結果なのだと思います。このグループに関しては、いわゆるリスクファクターについて問診を含めて再度検索する、若しくは検査によるリスク評価をし、それに関して介入するというようなことを想定しているのだと思います。単に腎機能が落ちていますから、腎臓の機能低下をしないような生活をしましょうという話だけではないだろうと思います。

 先ほど、FROM-Jのことが岡村先生から御指摘がありましたように、あくまでもFrom-Jはかかり付け医によって医療ベースで行われているCKD患者の介入研究です。しかし、私が例として挙げたのは、私自身も共同研究者なので手前味噌になってしまいますが、薬物治療を強化しないで、非薬物療法だけで明らかに進行を抑制したことが大事なのだと思います。確かに、健診のレベルでの保健指導の効果でないことは事実なのですが、ただそれが医療レベルでできるのであれば、ちょっと飛躍するのですが、保健指導の場であっても非薬物的ということに関しては共通に効果が期待できると思います。しかし、このテーマに関しては、別に検討しなければ仕方がないとは思います。私どものデータベースを使って検討したいのですが、保健指導の対象は拾い出しできるのですが、実際に指導を受けたか受けないかということに関しては全く抽出不可能なのです。これは、別個のコホートで実施されていると聞いておりますが、その結果待ちだと思います。したがって、実際にeGFR5060領域の方に保健指導して、若しくはほかのeGFR領域の方にどういう効果があるかは、あくまでもまだ証拠のない話だとは思います。ですから、最初に申し上げましたように、これはおおよそのテンポラリーな1つの基準と思います。これからこの領域に関して検討が必要なのだということしか言えないだろうと思います。確定的にeGFR50から60は保健指導と決まったこととは考えていません。

○永井座長 そういう意味で、尿腎機能はやはり詳細な位置付けのほうが無難と思います。ではそのときに尿検査をどう位置付けるか。クレアチニンだけでよいのか、尿蛋白もしっかり見るべきかです。

○津下構成員 今の点で2点あるのですが、11ページに書かれている生活習慣改善指導の意味としては、本人に情報提供として腎臓に負担のかかる生活習慣をしないでねというメッセージを出すのですが、保健指導というと保健師等が介入することを意味して、かなりコストがかかる話です。そうすると、優先順位をここに置いていいのかという議論にもなります。情報提供、保健指導等の言葉の定義を明確にした議論をしないといけないのかなというのが1点です。

 それから2点目ですが、尿蛋白については、詳細な健診に入ったとして、糖尿病性腎症の診断のためには尿蛋白がよりeGFRよりは優先するということをCKDのガイドラインにも記載されているように、優先すべき項目というような位置付けになっていたかと思います一方でeGFR30を切ってくるような方は第4期に該当し非常にハイリスク者と考えられます。医療との連携の中で生活習慣改善のサポートを行う場合、そういう情報を保健指導者も一緒になってきちんとデータを取得して見ていく必要があると思います。第1段階で糖尿病を把握された場合、尿蛋白は外せないのかなと思っております。

○永井座長 詳細な検討をということですね。事務局にお伺いしたいのですが、これは労働基準局や保険局も関わってくる問題なのですね。そちらは、どのように考えておられるか、何か情報はありますか、

○高山健康課長補佐 労働基準局も、今並行して事業者で行われる一般健康診断の検討も始めていただいておりますが、まずは健康局のこちらの検討会でエビデンスを整理して、それをある意味参考にして議論が進みますので、まずはエビデンスを整理していただいて全体のすり合わせは、また事務局同士でも行いますし、労働基準局の検討を待つことも必要かと思います。

○磯委員 1つ別な視点での意見なのですが、先ほどからの高血圧と糖尿病のハイリスクグループに絞って行うという考え方と、例えば肝炎の健診と同じような考え方で5歳刻みで実施するとか、毎年ではなくて定期的な間隔を置いて実施するという考え方もあります。    先ほど福田先生がおっしゃったように、コストとベネフィット・エフェクティブを考えると、そのような考え方もあるかと思います。

○高山健康課長補佐 追加で発言いたします。先ほどの事業者健診との兼合いですが、もう1点、特定健康診査と一般の健康診断は行う目的が異なっておりますので、エビデンスはエビデンスで尊重しつつも、そういった観点の違いでまた議論がそれぞれで行われることは御承知おきください。

○永井座長 よろしいですか。

○磯構成員 eGFRが明らかに低い場合には、渡辺先生がおっしゃったように、医療のところで保健師や栄養士と連携して進行を抑えることは非常に重要です。ただ、eGFRが軽度低下している人に対しては現在の保健指導の体制で、全国的に十分に実行できるかという問題もあります。

○渡辺参考人 先ほどのお話にもありましたし、今の磯先生のお話にもありましたが、18ページのデータは日本のデータではないのですが、ほかにリスクがない、若しくはアルブミン尿はない方の血管イベントに対するハザード比はやはりeGFR依存です。もちろん、蛋白尿、多分他のリスクもそれをかさ上げする効果があることだと思います。すなわち、リスク評価に関する腎機能の独立性と言ってよいと思います。それから、先ほどからの経済のお話を伺っておりますと、いかにも血清クレアチニン検査はものすごく高い検査というイメージが強いのですが、ほかの検査のことは言い難いのですが、保険の点数から見ますと、血清クレアチニン検査は特定健診の必須項目になっている検査の中で決して高い検査ではありません。イメージとしてお金が余計にかかるからという議論には違和感があります。特に、今回はいろいろな項目に関しての見直しをなさっているという話を聞いております。そうしますと、相対的に財源に限りがあるのであれば、相対的に血清クレアチニン検査や尿蛋白のコストを考慮した意義はどうなのだという議論をして戴きたいと思います。前回の検討委員会の時も私は参考人呼ばれましたが、やはり厚労科研の研究をしていたからだと思うのですが、その時は、血清クレアチニンと尿酸の追加が適当か否かについて問題になっていたと記憶していますが、今回はそれらを足すかどうかという議論と違うと聞いております。そうだとしたら、対的な費用対効果の議論も是非していただきたいと希望しております。

○永井座長 今の尿蛋白の件、あるいは詳細健診の在り方は、次回までに論点を整理して、更に御議論いただきたいと思います。あとの課題ですが、血液一般検査は先ほどの資料34ページにありますが、血液検査一般をどう整理するかですが、いかがでしょうか。少なくとも、虚血性心疾患、脳血管疾患の該当者・予備群を減少させるためではないと、これはよろしいですね。貧血の重症化の進展を早期にチェックするためのものとして位置付けられる。それから、血液一般検査は、詳細な健診の項目として実施しているが、必ずしも特定健康診査で実施される健診項目の検査の目的である最終エンドポイントとしての危険因子の評価、生活習慣病の重症化の進展の早期の評価を目的とするものではないと考えられる。健診項目として見直してはどうか。つまり、廃止を含めて検討するかどうかです。高齢者で貧血が強ければ、まず消化管出血を疑いますが、そういう目的ではないのだということなのですね。そういう整理になると、廃止も可能とするということになると思うのですが。そこは、よろしいでしょうか。がん健診のほうで受けてくださいということになるわけですね。

○津下構成員 貧血の逆になるのですが、多血症といいますか、ヘマトクリットが上がっている場合に脳梗塞等が増えることがあります。ただ、そこにいく前にほかの検査でリスクファクターを発見できますので、わざわざそれだけを目的としておこなう必要もないのではと思います。

○永井座長 そうしますと、この点はよろしいでしょうか。もう一つ、5ページの12誘導心電図の測定について、心電図は虚血性心疾患、脳血管疾患等の該当者・予備群を減少させるためではなく、心疾患の重症化の進展を早期にチェックするという点です。それはよろしいですか。それから、詳細な健診の項目として実施しているが、検査で評価可能な疾患、左室肥大、心房細動等を踏まえて、実施する対象集団をより明確に規定してはどうか、サブグループ化してはどうかということですが。

○岡村構成員 対象集団の明確化は非常に大事で、現状の基準ですと何のために撮っているのかよく分からないことになりますので、前年の健診結果を見るぐらいで心電図を撮るのだったら、恐らくもう遅すぎるということになるでしょう。それから、もしその場で対象者をきちんと選定できるのであれば、そのときの状況、これは何でもいいのですが、不整脈の既往があるでも、血圧が高いでも限定の方法はもちろん幾つかあるのですが、その場でもし心電図を撮る対象種を明確に選べるのであれば、その場ではそういう人にやるのが一番現実的、かつ有効であろうと考えます。

○寺本構成員 私は、基本的にこの考え方でいいと思っております。2番目の心房細動の問題は非常に重要で、恐らく今後の日本のいろいろな疾病構造からすると、脳血管障害の一番大きなリスクになっていく可能性が、特に高齢化社会なので非常に問題になると思います。先ほど、対象者を絞ってとおっしゃっていたことと、これこそ毎年やらなければいけないのかというとそういうことでもないと思うので、ある程度の期間を置いてやっていくというような形の残し方をすることは私は可能だろうと思います。対象者を40歳からやるかというと、これは必ずしも必要ない気がするので、その辺りのところを少し整理されたほうがいいと思いました。

○永井座長 一度見つかったら、もうそれは医療機関でフォローしてもらうことですね。

○寺本構成員 それは、医療機関ですね。

○永井座長 健診としては、毎年は必要ないだろうと思いますね。

○寺本構成員 私たちも、このリスクチャートの中の最初のスクリーニングの所で、脈の異常は最初にスクリーニングすることになっていますので、その場合は即医療機関へという形に整理させていただいていますので、その辺りのところも一度考えていただければと思います。

○永井座長 意外と落とし穴になっているのは、血糖は落ち着いているけれども、糖尿病の歴史が15年、20年になった方は、どこかで一度心電図は撮らないといけないですね。

○津下構成員 心電図のことで2点あるのですが、1点は心電図で判定できることと、一般の方の受け止めが違っていて、心電図で異常がないと幾いくらほかの循環器リスクがたくさんあっても、心電図で心臓は大丈夫と言われたという一般の受け止めがあります。異常なしということで、リスクファクターを軽視してしまう危なさがありますので、実施するにしてもどういう目的で何を見ているのか、何しか見えないのかということは、きちんと言わなければいけないと思います。

 それから、労働安全衛生法の関係で言いますと、昔は非常に労働強度が強い職場が多かったとか、これからの負荷量とともに心電図チェックには一定の意味があったと思うのです。今回の場合にどういう目的でやっていくのかは少し立場が違うので、必ずしも高齢者医療確保法で必要とされる目的と合っていなくて、例えば5年に1回なり一定の条件で実施するほうがよろしいのかなとは思います。

○永井座長 詳細な健診として位置付けるのはよいのですが、もう少し対象者を明確化して、できるだけ医療機関で調べていただくということではないかと思います。津下先生がおっしゃられたように、説明が難しいのですね。正常だからよいのか、あるいは心電図の自動判定でよければ本当に大丈夫なのかとか、難しいですからなるべく医療機関に回っていただくということではないかと思います。

 それから、もう一つ6ページに、眼底検査の問題があります。眼底検査を医師が必要と認めるものについて、詳細な健診を実施すると。見逃されている可能性があると。判定は、判定医の経験、技量に左右される可能性があることが指摘されているが、どのように対応するのが可能か。両眼に対して行う。健診として眼科医が実施する。眼科医へも受診勧奨とする。虚血性心疾患、脳血管疾患の該当者・予備群を減少させるためではなく、眼疾患、あるいは合併症の重症化の進展を早期にチェックする。これはよろしいですね。眼底検査は、詳細な健診の項目として行っているが、これこれの特性を踏まえて対象集団をより明確に規定してはどうか。この辺りは、いかがでしょうか。

○津下構成員 そもそも眼底検査が入っている理由ですが、循環器予防ハンドブックで動脈硬化の進展具合や高血圧の影響を見ているというのが、もともと入った理由ではないかと思うのです。実際には眼底検査に期待することとして、糖尿病性網膜症がどうなのかとか、緑内障がどうなのかなど、いろいろなことが眼底検査では読めることを期待しているかもしれません。どこまできちんと読めているかということの差といいますか、見れているかどうかの不安、誰がどのように見ているかということの不安は実際にはあります。ですから、異常なしという判定がどこまでの判断の異常なしなのか。緑内障の視神経乳頭の変化などは見落とされているケースも多いのかなと思いますし、恐らく健診を導入したときにはそこまで求めていないと思われます。糖尿病性網膜症も本当はここに両眼でとか、周辺部も散瞳してというのは、糖尿病性網膜症の病変が周辺部に結構出てくることが多いのですが、無散瞳で網膜の真ん中だけ見ていていいのかということもあると思います糖尿病の患者に対しては、眼底検査をするというのより、精度が高い検査が必要であると思います。一方で健診における眼底検査の意味とは何なのだろうかというのをもう1回整理をしないといけないと思います。どういう目的で何を判定していて、そして判定の基準がきちんと標準化されているかどうか心電図のように自動判定がなされていればまだ標準化できるかもしれないのですが、全部主観で判定されていて、その現物も付いてこないとなると問題を感じます。疫学調査でデータを見ても使い方も難しいというような問題点もあり、実施するならばどういう対象者にしていくのか、精度をどう保つのか、が重要と思います。糖尿病の患者は健診のときに眼底検査をしただけで十分なのか、不十分なのか。その辺りもしっかりと言っていかないと、ご指摘のように見逃しの危険もあるのかなと。眼科医が周辺まで丁寧に見られるのとは違うと。

 ただ、一方先ほどの蒸し返しになってしまって、また永井先生に叱られると思うのですが、糖尿病でありながら眼底検査をずっとしていない患者がいかに多いことかというのもあります。そういう意味では、眼底検査のチャンスがあるというのは大事なポイントかもしれないと思います。

○岡村構成員 これは、もともとの趣旨からしたら明らかで、先ほど私の資料で示したように、心電図も眼底も老健法の高血圧の重症度評価として入っていたわけです。ですので、片眼の細動脈硬化みたいなのは、血圧が同じだったら両方であまり差があるはずはないので、片眼の細動脈硬化だけ見ろということで、そのキャリーオーバーできているから、片目だけなのだと思います。眼科の健診が、例えば緑内障などを見るのがこの法律の趣旨に合っているのかどうかという整理が必要で、眼科の健診をやるのなら、多分専用の法律なり制度が恐らく必要だろうということになります。要は、メタボリックシンドロームであるとか、脳・心血管疾患を予防するという観点に立つと、先ほど言ったような細動脈硬化や糖尿病性網膜症ももちろんということになるのですが、その範囲をどうするかを限定しなければいけないことになります。趣旨としては、もともと眼を見るための検査でないということになるので、何となく眼の検査をしているという錯覚を与えるので、いろいろなところで誤解があるだろうというようなことだと思います。ですから、先ほどと同じように、基本的にそれぞれのガイドラインで、高血圧も糖尿病も眼は見ることになっているはずなので、診療にかかっていたら本来はそこでやるべきであるということがまず基本原則です。ただ、先ほどの心電図と一緒で、その場でもし対象者を選び出すことができるのであれば、それは詳細な項目としてやってもいいという整理になるのが自然かなと、個人的には考えました。

○永井座長 ただ、そのときにその場で行うのがよいのか、受診勧奨にするのがよいのか、そこはいかがですか。

○岡村構成員 そうですね、心電図の場合は、例えばその場で血圧や脈がどうかぐらいを聞いてやるというのもやりやすいと思うのですが、眼底は、例えばその場で血液検査の結果が出ているかというのが絡んできますが、例えば血圧などだとできないことはないだろうと思うので、あとは保険者の工夫にもよるのかなと思います。基本は、要医療でしたら医療機関でということが原則なのだろうと思いますが、その場で血液検査を出している所もあるかもしれないので、血圧以外も全面的に排除すべきものではないだろうという気はいたします。

○永井座長 すぐその場で対応できる体制があればその場でしてもよいけれども、基本的には受診勧奨という整理のように思いますが、いかがでしょうか。よろしいでしょうか。まだいろいろな課題があろうかと思いますが、今日のところを整理して、また次回、御議論いただければと思います。大体時間になりましたので、今日はここまでとしたいと思います。事務局から、連絡事項等をお願いいたします。

○高山健康課長補佐 今後の日程について御案内申し上げます。次回の検討会ですが、45()を予定しております。後日、改めて正式に御連絡を差し上げますので、よろしくお願いいたします。

○永井座長 では、これで終了いたします。どうもありがとうございました。渡辺先生、ありがとうございました。


(了)

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