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2004年3月23日 第10回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録
医薬食品局審査管理課化学物質安全対策室
○日時
平成16年3月23日(火) 14:00~16:00
○場所
経済産業省別館10階 共用第1028会議室
(東京都千代田区霞が関1-3-1)
○議題
・ 室内濃度指針値等について
・ その他
○議事
○事務局 事務局でございます。時間開始より若干早いのですが、先生方、全員おそろいですので始めさせていただきたいと思います。
本日は御多忙のところ、第 10 回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会にお集まりいただきまして、本当にありがとうございます。本日は全員の委員が御出席でございますので、合計 10 名の先生方で進めさせていただきます。
開催に先立ちまして、審査管理課長より一言ごあいさつを申し上げます。
○審査管理課長 審査管理課長の岸田でございます。本日は年度末のお忙しい中、また天候のお寒い中、御出席いただきましてありがとうございます。
このシックハウス問題につきましては、快適で安全な生活環境を提供する上で重要な問題でありまして、従来から関係省庁と連携を取り、総合的な取り組みを進めてまいりました。
本検討会で審議いただきました結果につきましては、関係省庁による施策の基本指針となるものでありまして、近年では昨年7月に改正建築基準法が施行というところにもこの結果が反映されています。また、ホルムアルデヒド対策を始めとしますシックハウス対策が一層、この検討会の成果を基に進展しているわけでございます。
本日の検討会におきましては、アセトアルデヒドについて、 WHO が指針値を変更する意向を表明したことなどにつきまして、現状を御報告させていただきます。幅広い御議論をいただきますとともに、総合的な御評価をお願い申し上げたいと思います。
厚生労働省としては、今後とも精力的にシックハウス問題対策を進める考えですので、先生方におかれましても引き続き御協力をお願い申し上げまして、簡単ではございますが、あいさつとさせていただきます。
○事務局 それでは、座長の林先生、よろしくお願いいたします。
○林座長 本日は、御多忙のところお集まりいただきましてありがとうございました。これから、第 10 回「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会」を開きます。
まず、事務局から本日の配布資料の確認をお願いします。
○事務局 それでは、今日お配りしております配布資料について御説明をさせていただきます。
資料の右肩に「資料1」と書いてありますものが資料一覧になっておりますので、これをご覧いただきながら御確認をいただければと思います。
まず、資料1として、この資料一覧がございます。
その次、資料2として1枚紙で本日の議事次第となっております。
資料3として、本検討会の委員名簿が1枚紙でございます。
資料4でございますが、これは横の形の紙となっておりまして、本日の座席表となっております。
資料5は、ホチキスどめしておりますが、右肩に平成 14 年2月8日、「シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 中間報告書-第8回~第9回のまとめについて」というものでございます。
資料6は、横1枚の表になっておりまして、「アセトアルデヒドの吸入毒性に係る国際的な評価一覧」というものでございます。
資料7-1は、「厚生科学研究費補助金 生活安全総合研究事業」からの抜粋ということになっております。
資料7-2ですが、こちらは「厚生労働科学研究費補助金による室内濃度の測定結果」で、これにつきましては安藤先生の方からデータをお送りいただいたものについて、1枚の紙にまとめています。
資料7-3は、両面コピーの1枚紙で、「室内空気対策研究会 実態調査分科会 2002 年度 調査報告書」となっております。
資料7-4は、平成 13 年度農林水産省補助事業の報告書で、「付加価値向上技術調査・開発事業報告書」の抜粋となっております。
続きまして、参考資料についてご説明をいたします。なお、参考資料につきましては非常に大部にわたりますので、委員のみの配布ということにさせていただいております。
まず、参考資料1でございますが、アセトアルデヒド室内濃度指針値に係る WHO の状況ということで、両面コピーの1枚紙となっております。
次に、参考資料2ということで、これがホチキスどめのちょっと厚い資料になっておりますけれども、「 IPCS ENVIRONMENTAL HEALTH CRITERIA 167 」、アセトアルデヒドに関する IPCS の評価文書がございます。
それから、参考資料3として、「 IARC Monographs on the Evaluation of Carcinogenic Risks to Humans 」、アセトアルデヒドに関するサマリーの部分を載せたものでございまして、これが両面コピーの1枚となっております。
参考資料4でございますけれども、アップルマンのインハレーションにおけるアセトアルデヒドの毒性をラットで評価した文献となっております。
参考資料5も同じくアップルマンの文献で、これもアセトアルデヒドの毒性に関する評価の論文を挙げてございます。
参考資料6は、アメリカの EPA から発行されております「 Integrated Risk Information System 」、アセトアルデヒドに関する部分を出させていただいております。
参考資料7は、カナダの評価文書でございまして、「 Canadian Environmental Protection Act,1999 」、このアセトアルデヒドに関する文章を出させていただいております。
参考資料8-1は、 EU の状況の文書でして、表題は 「 Indoor air pollution: new EU research reveals higher risks than previously thought 」となっております。
参考資料8-2ですが、「 Institute for Health and Consumer Protection Towards Healthy INDOOR AIR in Europe 」の資料がございます。
参考資料9につきましては、先ほど資料8で御紹介をいたしました文献そのものを付けております。これが参考資料9-1から9-8までダブルクリップで一まとめにしております。
以上でございます。不足等ございましたら、御連絡をお願いいたします。
○林座長 どうもありがとうございました。いかがでございましょうか。資料がそろっているようであれば、先ほどの資料2の本日の次第に従いまして、議事に入らせていただきます。
本日の議題は、「アセトアルデヒドの室内濃度指針値について」とされていますが、事務局から説明をお願いします。
○事務局 それでは、資料に沿って御説明を申し上げます。
本日は、既に室内濃度指針値が策定をされておりますアセトアルデヒドに関して御議論いただきたいと考えております。まず、資料5をご覧ください。当検討会第8~9回のまとめになっております。
こちら、1枚めくっていただきますと、まず室内濃度に関する指針値の概要というものがございます。ここに書かれておりますとおり、室内濃度指針値につきましては、現状において入手可能な科学的な知見に基づきまして、ヒトがその化学物質の示された濃度以下のばく露を一生涯受けたとしても、健康への有害な影響を受けないであろうとする判断により設置された値でございまして、既に 13 物質について策定をいただいたところです。
また、これらの指針値につきましては、今後集積される新たな知見や、それらに基づく国際的な評価作業の進捗に伴いまして、将来必要があれば変更され得るものということで定められてきたところでございます。こういったことが資料の1ページに書かれております。
実際に、アセトアルデヒドの室内濃度指針値につきましては、この資料の別添1の1から実際の表の結果が書かれております。こちらのページをめくっていただきまして別添1の2ページというところからが、実際に、当時アセトアルデヒドについて御検討いただいた結果ということになっております。
アセトアルデヒドの室内濃度指針値につきましては、第8回、それから第9回の当検討会におきまして御審議をいただいた結果を踏まえまして、平成 14 年1月に現行の 48 μ g/m^3 という値が定められたところでございます。
この算出につきましては、ここの評価文書にございますが、まず基となる NOEL として、この別添1の3ページにございますラットの経気道ばく露の試験結果を評価いたしました。この経気道のばく露試験の結果、 NOEL を 270 μ g/m^3 ということといたしまして、そこに必要な不確実係数を掛けたところでございます。
不確実係数につきましては、別添1の4ページをご覧いただきますと、下に(9)というものがございまして、この2つ目のパラグラフから説明がございます。
種差として 10 、個体間差として 10 、そのほかに遺伝子傷害性の懸念があること、当該試験が4週間という比較的短い試験系であること、そして動物を用いた発がん性試験で上皮の過形成などの刺激による発がんが生じていることなどを考慮して、さらに 10 を掛けることといたしまして、合計 1,000 を用いております。
さらに、用いた試験ですが、これが1日6時間、週5日投与という試験条件がございましたので、これを1日 24 時間、週7日ということで換算をいたしまして、先ほど申し上げました 48 μ g/m^3 の値が導き出されたところでございます。
また、本日は、当時参考といたしました引用文献のうち主要なものを、先ほど御紹介をいたしました参考資料2から5ということで添付をさせていただきました。
続きまして、参考資料1をご覧ください。
昨年 11 月になりますが、日本におけるアセトアルデヒドの室内濃度指針値を策定する際の参考文献の一つとしておりました、 WHO における空気質ガイドラインにおけるアセトアルデヒドの濃度指針値につきまして訂正の動きがございました。関係する書簡のコピーを、委員の皆様には配布しています。これは、従前、 WHO のガイドラインの値が 50 μ g/m^3 としていたものを 300 μ g/m^3 に訂正するという内容のものでございます。書簡では、 WHO のガイドラインが参考文献として引用している、先ほど参考資料2でお示しをしました EHC (ENVIRONMENTAL HEALTH CRITERIA) を引用したために 300 μ g/m^3 になったということを言っております。
この点につきまして、私どもの方から WHO に訂正に関する技術的な根拠、側面といったものについて問い合わせをしているところでございますが、現在のところ、正式な返答が来ていないという状況でございます。
なお、非公式ではございますけれども、 WHO の方から今後ガイドラインにつきまして、最近の情報を踏まえまして専門家会合などによる見直しに着手をする予定という見解が示されております。
また、国内でも指針値策定以降に室内空気濃度の測定結果など、いろいろな情報が入っておりますので、それについて御紹介をさせていただきたいと思います。
本日は、こうしたアセトアルデヒドをめぐる、 WHO を含めた国際的な動向を含めまして、事務局で入手をいたしました最近の状況を御報告申し上げるとともに、今後の検討に向けた幅広い御議論をいただきたいと考えております。
続きまして、資料6をご覧ください。
こちらが、先ほど申し上げましたように、事務局で調査をした範囲になりますけれども、アセトアルデヒドの吸入毒性に係る国際的な評価を一覧にした状況をお示ししたものです。現在のところ、いずれの国・地域においても義務的なものとは位置付けておりませんで、あくまでガイドラインということで運用されているものでございます。
若干、内容について説明をさせていただきますと、日本につきましては、私どもの方で定めた指針値を掲載させていただきました。
それから、次のカラムにございます IPCS 、こちらにつきましては参考資料2にございます EHC の中から指針値を示しております。
EHC につきましては3つの指針値が出ておりまして、まず日本と同じ文献を基に不確実係数をかけて評価をしたもの、発がんリスクによるモデル研究による指針値、それから、ヒトへの刺激のデータを基に算出をした値と、3種類の値が出ております。こちらにつきましては、特に WHO 等の正式見解ではないことが文章の冒頭で示されているところでございます。
それから、アメリカの状況につきましては、詳しくは参考資料6を併せてご覧いただければと思います。アメリカの EPA 、 環境保護庁の方で出しておりますリスク評価文書の中で吸入毒性に関する濃度の指針値が出ております。これに関しては、リファレンスドーズということになっておりまして、参考資料6の2ページにございますけれども、1.Bのところにございますとおり、安全値としては 9 μ g/m^3 となっておりまして、この下の方に不確実係数の考え方というものが出ているところでございます。
続きまして、カナダの状況でございますけれども、参考資料7をご覧ください。 こちらもカナダの保健庁環境省の方で出されている評価文書ということになっております。非常に分厚い資料になっておりますけれども、この中の 33 ページ、それから、 35 ページに吸入に関するガイドライン値が出ているところでございます。
カナダについても、 EHC と同じように複数の値が示されておりまして、 490 μ g/m^3 、それから 390 μ g/m^3 ということになっております。こちらにつきましては、まず 490 μ g/m^3 につきましては、日本と同様に不確実係数をかけるという形での値になっております。
それから、2番目の値でございますが、これは同じ文献を用いておりますが、ベンチマークコンセントレーションの手法を用いた方法ということで、基になる値が変わっております。
それから、申し訳ございません、資料6に誤りがございます。日本の安全値(耐容濃度等) 48 μ g/m^3 ですが、これは「 30 ppm 」となっておりますのは、「 0.03 ppm 」の誤りでございます。訂正をお願いいたします。
私どもの方で調べた限りでは、主要な国についてこのような状況となっております。
それから、資料6の注2にございますように、 EU は今、検討中ということでございますので、その資料を御紹介させていただきます。参考資料8-1、8-2でございます。
これは、いずれもインターネットでも入手できるものですが、 EU におきましては現在、附属機関であるジョイントリサーチセンターというものがございまして、ここにおきまして室内空気汚染物質についてばく露限界などを定めるプロジェクトを動かしております。
参考資料8-2を1枚めくっていただいたところにグループがございまして、今のところ対象として 13 物質を考えているということで、これを2つのカテゴリーに分けております。特に「 high priority 」ということで、優先的に検討するものの中にアセトアルデヒドが入っております。
この資料の中には出てきておりませんが、私どもの方でこのジョイントリサーチセンターの方に問い合わせをしたところ、今年末を目途にばく露限界値などを提案していきたいということで、文献の収集であるとか、ばく露状況の調査といったような事業を進めているという情報が入っております。
続きまして、室内濃度などの国内の状況について御紹介をさせていただきたいと思います。資料7-1から7-4までご覧ください。資料7-1と7-2につきましては、当検討会委員でもあります安藤先生の方からいただいたデータを御紹介させていただくものでございます。
資料 7-1は、抜粋になっておりページが飛んでおりますけれども、最後をご覧いただきますと、実際に測定をされた濃度が出てきます。こちらの測定時期というのが 2000 年 10 月から 2001 年3月まででして、表 II -2の2つ目の欄になりますが、それぞれの物質、それから外の空気の濃度の状況が出ております。
リビングルームに関しては平均が 21 、最大値が 400 、最小値が 1.0 、それから、寝室につきましては、平均が 22 、最大値が 370 、最小値が 1.0 。外気につきましては平均が 3.1 、最大値が 8.7 、最小値が 0.7 となっております。各濃度の分布の状況につきましては、この図 II -1の下の2つのグラフが、アセトアルデヒドに関するものとなっております。
資料 7-2につきましては、継続して測定をされた結果について、今ちょうど取りまとめの時期ということでございますので、データのみをいただいたものでございます。後ほどまた、追加で説明いただけるかと思いますけれども、これも測定値が、今ご覧いただいているような状況になっているものでございます。
続きまして、資料7-3でございます。
これは、室内空気対策研究会よりいただいた資料でございます。こちらにつきましては官民共同の研究会ということで、各省庁、それから大学などの研究者の先生方、それから主たる業界の方々の中でやっているというものでございまして、この中でも住宅に関する室内濃度を測定したというものでございます。この室内空気対策研究会につきましては、財団法人の建築環境・省エネルギー機構、それから住宅リフォーム紛争処理支援センターの方が事務局をしていただいているものでございます。こちらも抜粋になっておりますので、今日は表紙と該当するページのみを御紹介させていただいているところでございます。特に、アセトアルデヒドに関しましては 2002 年度から調査が始まったということでございますので、今回は新規の住宅に関する1点のみというか、経時的な変化ではなくて、まずここがスタートということで測定をした結果を御紹介させていただきます。
1,390 件の測定をしておりまして、平均値が 0.017 ppm 、中央値が 0.02 、最大値が 0.12 ということでございます。また、分布の状況は資料に掲載されている表の状況になっております。
続きまして、資料7-4をご覧ください。
こちらは室内濃度ではなくて、建材として用いられる天然木材の放出状況を測ったものということで、林野庁の方の御協力をいただきまして、資料とさせていただきました。平成 13 年度の農林水産補助事業ということで実際に測定をされたものでございます。これも抜粋になっております。4ページから試験条件が書かれておりまして、ちょっと飛んで試験条件を表にしたもの、それから実際の測定をしているシステムの写真などがございまして、 26 ページというところから、実際に測定をした揮発性有機化合物の放散状況が出ております。各図について、アセトアルデヒドが上から2番目のカラムに出ておりまして、それぞれ測定の状況が示されているところでございます。非常に少ないものでは5以下ということもございますけれども、特に針葉樹林からの図6であるとか、それから、熱処理をした針葉樹ということで図8などをご覧いただきますと、 24 時間後ということでかなり短い時間ではございますけれども、このような測定の状況になっています。現状の情報を、御紹介させていただいたところですけれども、それぞれ、現在も引き続き研究事業が続いておりまして、ちょうど今とりまとめの時期に当たることから、平成 15 年度などの研究成果などにつきましては、また来年度以降、さらに御紹介をできるものが出てくるかと考えております。
続きまして、資料8でございます。
こちらは文献の一覧表となっておりますけれども、表題にございますように、アセトアルデヒドに関する「 in vitro における遺伝毒性等の知見について」ということで、最近の状況を含めました論文引用をしたものを一覧表として掲載をさせていただきました。遺伝毒性に関する知見につきましては、林先生からも御示唆をいただきました。
本日は、文献集を提示するのみとさせていただきますが、このアセトアルデヒドに関する遺伝毒性の評価につきましては、先ほど御説明をしたような形で、不確実係数に影響してくるファクターでもございます。専門的な分野でもございますので、今後、さらに当検討会の林先生、広瀬先生、そのほかに複数の専門家の先生方にも御参画をいただいて、こういった毒性の評価又はその周辺の知見を含めて御評価をいただいて、また、この検討会の場で発表いただいてはどうかと事務局の方では考えております。
今日、用意をさせていただいた資料は以上でございます。
先ほど申し上げましたように、本日はアセトアルデヒドをめぐる最近の状況を御報告させていただきますとともに、今後、検討するに当たっての論点を整理させていただくということを目途に幅広い御意見をいただければと思います。よろしくお願いいたします。
○林座長 どうもありがとうございました 。 非常に詳細な御説明で 、 ちょうど今回が 第 10 回 で、第9回が2年ほど前のものですけれども、今の御説明で経緯が明確に御理解いただけたかと思いますけれども、それでは、ただいまの事務局の御説明につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。活発にお願いいたしたいと思います。
○土屋委員 多分、 EHC のガイドラインと厚生労働省で出したガイドラインの根拠となる文献というのは、要するに、アップルマンと同じものを使っていると思います。その評価の仕方が、厚生労働省で以前出したものは 不確実計数 は 1,000 であるというのは両方同じなのですが、実際に実験そのものが1日6時間ばく露で5日間、そういうものを加味した評価を入れているわけですね。
ですから、その辺の差でこれだけ変わってくるのですが、安全係数の 1,000 のうち、 EHC ですと長期間ではない 14 週のものと、あと発がん性の予測というか、そういうような辺の懸念から 10 が入っているのですが、それとは別に、一般的に実験条件を加味したばく露評価というか、そういうものが別にまた厚生労働省の場合には入れて評価しているわけですが…
○林座長 文献にあるものではないでしょうか。
○土屋委員 例えば、6時間で5日間ですから、その辺を補正といいますか、1日という形にしていると思うのですが、その辺の差で値が変わってきていると思うのですが、その辺の評価の仕方というのは一般的に専門家の方はどういうふうに評価されているかというのを、お聞きしたいと思います。
○林座長 私が申し上げるよりも、広瀬委員の方に説明をお願いできますか。
○広瀬委員 毒性に関しましては、先ほど事務局が御説明されたように、発がん性の試験では、これは NOAEL が設定できないということで、4週間の試験を評価の対象としておりますので、まず、そこのところで不確実係数をある程度掛けないといけないと考えています。
さらに、遺伝毒性という点で、 in vitro ではっきりと遺伝毒性が出ておりまして、さらに in vivo の試験でもラットに 1,000 ppm で5日間吸入ばく露をさせますと、 DNA プロテインのクロスリンクが出てくるというようなことがございまして、これは発がん性が鼻腔にあることを示唆しています。それで、この DNA プロテインのクロスリンクもやはり発がん性の見られている鼻腔で認められているということから、この発がん性にはかなり遺伝子傷害性が関連しているだろうということが考えられます。
したがいまして、当該試験が4週間ということ、それから遺伝子傷害性があるというようなことを考えると、通常の種差 10 、個体差 10 に加えまして、さらに 10 を掛けるということは当然かと思います。したがいまして、 NOAEL の 270 を 1,000 分の1にするということは非常に合理的だと考えられます。
ただ、その1日6時間週5日の実験結果を、1日 24 時間週7日に換算するということは、私は専門ではないので、どういうふうに判断をするかということは議論の余地があると思います。
○林座長 ただいまの土屋先生の御質問は、結局、 24 時間普通はばく露するのを6時間で実験しており、かつ、週7日でばく露するのを5日の実験系で行っていることの補正を最後の評価に入れるべきかどうかということで、広瀬委員の今のお答えは、今回の評価式が適切かどうかは多々問題があるかもしれないけれども、当然こういうファクターは入れるべきであるということですね。
内山委員、お願いします。
○内山委員 私も、 WHO が返答してきた内容について、少し腑に落ちないところもあるのですが、空気質ガイドラインのほかのところを見ていただければ NOAEL と、それを不確実係数で割ってそのままの形のところのガイドラインもありますし、そうでないものもほかの物質で結構あります。
そういうものは、私どもはこの実験状況からこのような換算をして、そのような値にすべきであるというふうに解釈しておりました。ですから、それは実験条件として、ばく露条件が2種類の患者さんであって、これは不確実係数ではないというふうに大気環境基準の方でもそういう考えで多分やってきておりますし、ほかの室内ガイドラインでも同様の手法で制定したものもありますし、教科書的にも、動物実験をヒトのばく露( 24 時間暴露)に外挿するときには、そういうものをまず補正してから、それで後は不確実係数を掛ける。ですから、そこのところは不確実係数の定義の中にも入っていないと思います。
ですから、この4週間のばく露では短いから、さらに計数をかけるというのとは別の問題であって、 350 になっていても私は間違いではなかったというような気もしているのですが、そこの辺りの考え方が公式の文書に残っているのかどうかちょっと分かりませんが、ほかのものに関してもそういう目で見てみれば、 NOAEL をただ単に不確実係数で割ったものではないものも空気質ガイドラインにはあると思います。
○林座長 ばく露条件の補正であって、不確実係数ではないということですか。
○内山委員 そういうふうに私は理解しております。
○林座長 池田委員、どうぞ。
○池田委員 少し確認で、この資料6がございますが、そこで不確実係数が 5,600 倍となっていますが、これは 1,000 倍の間違いということでしょうか。
○事務局 事務局から説明いたします。ここには「等」という言葉を入れておりますが、この 「 5,600 」は時間ごとの換算と、それから不確実係数を掛けたものでございます。括弧の中に○・×が書いてあるものがございますが、○があるものが時間の補正をしたというものでありまして、日本、アメリカ、カナダと換算をしているという状況でございます。ですので、池田委員の御指摘のとおり、日本については、不確実係数は 1,000 ということになります。
○池田委員 分 かりました。
次に、 違う観点の質問ですが、この参考資料1にもありますように、 WHO が「エラー」という言葉を使って明確に間違いを認めているという感じなのですが、そのエラーの内容というのは具体的にどういうものなのでしょうか。いまだに WHO から返事が来ないというのも含め、その辺の経緯をもう少し詳しく説明いただければと思います。
○化学物質安全対策室長 残念ながら正式に回答が来ておりませんので、お話しできる部分が少ないわけでして、あくまでも、推測の部分が入る話ということで聞いていただきたいのですが、 WHO が言っているところによれば、 WHO 、 ILO 及び UNEP の合同機関でございます IPCS の環境保健クライテリアをそのまま引用すれば、本来でしたら 300 になるということです。現在の WHO の指針値である 50 について、日本の指針 48 というのは近似値、言わば有効数値の取り方の違いのような要素もございますので、 WHO における当時の議論において、 300 から 50 への換算について、十分な検討経緯等が必ずしも現在、 WHO の方で分かっていないのではないかというふうに考えております。
以上でございます。
○池田委員 それでは、分かっていないので、こういう回答が来たということでしょうか。
○化学物質安全対策室長 今からしますと、基本的に WHO の方で空気質のガイドラインを定めるときに、 IPCS の環境保健クライテリアをそのまま引用しているはずだというのが WHO の非公式な見解でございまして、そうしますと、基の環境保健クライテリアが 300 なので、確かに WHO の空気質ガイドライン上は 50 という値が出ていますが、それは誤りであって、 300 だという見解になったということを非公式には伺っております。
○林座長 どうぞ。
○荒記委員 質問ですが、今回のこの指針値をつくるに当たって NOEL を使っておりますね。この辺は専門ではなく、私が今まで承っていた話では、基本的にこの指針値を出す場合には NOAEL を使って、又は、ベースとなる情報が人間の値なら、それは個体差のルールがあるという値でやるべきだという認識でした。特に私どもの専門の中毒学、特に人間の中毒学の考えからしますと、単なるエフェクトと、それからアドバースエフェクトは違います。従って、特に人間の毒性を考える場合には、基準はアドバースエフェクトを考えなければいけません。
これはどう違うかというと、基本的にエフェクトがあっても人間の健康に影響があるかどうかということが論点となります。人間の健康に影響があるようなエフェクトがアドバースエフェクトだという考えで、ヒトの中毒学はずっときているわけですが、今回の検討では NOEL を基準に使ったということです。
当然、エフェクトレベルとアドバースエフェクトの補正値は全然違うものです。例えばですが、1桁ぐらい違ったりすることもあります。そこで、何を指標にするかということが議論になるのですが、室内空気質の領域ではどう考えるのでしょうか。要するに、 NOAEL を使わないでいいのでしょうか。
○林座長 普通は NOAEL を使いますね。ただ、この場合には、後で広瀬委員に補足していただくとして、 NOEL という言葉を使うのか、 NOAEL を使うのか、これは非常に問題になってくると思います。
それから、もう一つ、これはいつごろの文献になりますか。これはかなり古いでしょう。
○事務局
基となりました文献につきましては、先ほどアップルマンの紹介をさせていただきましたが、
1982
年、
86
年ぐらいの文献を引用させていただいております。
○林座長 その場合には、気道の粘膜の炎症性変化、それから上皮の変性というか壊死というか、そういう変化を見ていますね。そうしますと、そういう変化があって、影響が遺伝毒性で見るのかそうでないかということが分からないと、ベースとなる値を NOEL とするのか、 NOAEL としていいのかという区別が、なかなかつくのは難しいと思います。
広瀬委員の方から何か、補足はございますか。
○広瀬委員 ただ、ここで NOEL としているのが、実際は NOAEL の可能性が高いのではないかと思います。
これは、変化としては鼻腔に限られているわけでありまして、最終的には発がん性が見られているということです。それから、その前段階では過形成又は鼻腔の炎症が見られるとされています。それで、そのさらに前段階としては、呼吸器系の症状、例えば、鼻の粘膜への刺激性等が見られるということですから、例えば鼻腔への刺激性を取っても、これはかなり NOAEL に近い判断になろうと思います。ですから、実際的には NOAEL に近い NOEL と解釈しております。
○荒記委員 それですと、やはり論理的に、これを NOAEL と考えて計算したと書くべきではないかと、私は思います。
要するに、基本的な計算の仕方の原則が崩れてしまいますよ。少し過激な言い方にすると、でたらめに計算したと言われかねないと思います。
○林座長 この辺のことを申しますと、広瀬委員は IPCS のデータ を見て、これは NOEL ではなくて NOAEL とした方がいいとおっしゃるわけですね。しかし、 IPCS の評価書 では NOEL と書いてあると。
どうですか。 IPCS で NOEL と書いてあると、オリジナルの著者の言葉をそのまま引用するのでしょうか。事務局、どういう解釈ですか。
○化学物質安全対策室長 IPCS の評価書は NOEL と記載しています。
○林座長 そうすると、リスク評価するときは、原著の著者の言葉を優先するのですね。それで、今度は実際に WHO の手紙を見てみますと、 NOAEL と書いていると。
○荒記委員 それはデータの解釈の問題で、日本はこの委員会として独自に考え方を決めているわけですから、元のデータを借りるにしても、日本のこの委員会はそれを NOAEL として考えたということは全然問題ないと思います。むしろそうすべきだと思うのですがいかがでしょうか。
○林座長 そういうことは容易だと思いますが、事務局としてはいかがですか。
○事務局 必要に応じて、適宜訂正はさせていただきたいと思います。
○林座長 科学者は、自分の論理でもって論説するのと、やはり著者の言葉を尊重するという習慣はあると思います。それで、この場合には、今の議論を踏まえると、 NOAEL とみなすことはできるということですから、あまり本質的な問題ではないのではないかと思いますが。
○荒記委員 NOEL と NOAEL の違いというのは、本質的な問題と考えます。
○林座長 本質的な問題だけれども、私たちはこれを区別できると。それで、広瀬委員は文献では NOEL とは言っているけれども、これは NOAEL と見なせるとおっしゃいました。ですから、 NOAEL として計算しても構わないですが、資料上は著者の言葉を引用しただけと思います。
NOEL は、ただ毒性があるかないかという、誰でも言える区別であって、 NOAEL はいろいろな影響を加味して人間の判断が加わって決定したものですから、これは違うものであると、毒性学では、いつも考えているものと思います。櫻井先生、何か。
○櫻井委員 全く NOEL であるか、 NOAEL であるかというのはいつも考えていることですが、今回の場合は NOEL と NOAEL が一致していると私は解釈しました。
それで、通常 NOEL と考えているのが、本当は有害でないなと思うときだけ、 NOAEL と採用するというようなことを合意して、リスク評価等を進めていると思います。そうでない場合は、 NOEL と NOAEL がほぼ一致していると考えている場合が多いですね。そういうときは、あえて NOAEL というふうに言わないで、 NOEL と言っているのが実情だと思います。
NOEL であるか、 NOAEL であるかというのをまず議論すると、やはり人によっては少し意見が違ってくることもあるでしょうし、なかなか判断が難しいですが、多くの場合は一致して、 NOEL と言っているのは、この場合は NOAEL なのだから、さらに安全サイドに立った評価はしないという感じでやっていると思います。
○荒記委員 最近、 細かい健康影響の検査の仕方、評価の仕方が非常に精密になってきて、人への健康影響の微小な変化が、どんどん分かるようになってきている状況です。要するに、この分野の科学がどんどん進みますと、基本的に NOEL と NOAEL は分けなくてはいけないとなっているわけです。
ですから、今回、 NOEL と NOAEL を同じだと考えるなら、 NOAEL と書くべきだと私は思います。
○櫻井委員 言っていることはよく分かります。多分、そのようにならざるを得ないときも来るかもしれないとは思っております。
○荒記委員 でも、この委員会でそれをやらないと混乱してしまうわけです。ですから、今回、実際作った指針値の考え方が混乱してしまっているというのは、この辺のあいまいさが影響していると私は思います。
○林座長 一つ言わせていただきますと、 NOEL と NOAEL は違うということは、毒性学をやっている人はほとんど分かっていると思います。 NOAEL を使っている人も分かっています。ただ、私たちに提供されるデータの中で、本当に NOEL と NOAEL をきちっと区別できるデータもあるし、そうでないデータもあります。
それで今回の場合には 、おそらく、 NOEL と 言っているのは、 実際には NOAEL なのだろうと推測ができる。そうしますと、このデータでは NOEL は取れないのです。
確かに、昔は NOEL を使っていたけれども、毒性学の実験技術、研究技術が進歩していけば、今まで分からないものでも影響が見られたということで、 NOEL がどんどん低くなっていくということもあるわけです。ですから、ヒトに有害であるかどうかの判断を加えた NOAEL を使わなければ、毒性学は成り立たないということは、だれでも分かっている論理的な話です。
ただ、私たちみたいに昔の、そのことがまだ十分に研究していただいてない時代のデータでは、 NOEL と NOAEL が混同していたりすることがあるので、先ほどの櫻井委員がおっしゃったように区別できないこともあるというようなことで、非常に難しい問題が伴ってくることもあるということではないかと思います。先生がおっしゃっていることは、私たちも一番気にしていることなのです。
○荒記委員 これ以上、議論していても仕方が無いですが、私が考えるのは、指針値を決めるときには、あくまで NOAEL を基準に考えて値を計算すべきだという原則を確認できるのかどうかということなんですね。確認できるのだとすれば、やはりそのようにしてやるべきだと思います。
昔のデータというのは、確かに NOEL のものが多い。ですが、最近では NOAEL のデータがどんどん出てきていますから、それをはっきり分けておかないと、それから計算した指針値が、1桁も2桁も違う値が出てしまう危険があるので、これはちゃんと指針値を出すに当たって、 NOAEL を使ったということを明確にすべきだと思います。
○林座長 この中で、毒性学のそういう評価の仕方を書いておられる先生方は何人もおられると思いますが、皆様、 NOAEL を使うということをきちんと書いておられます。ですから、やはりその点は NOAEL を使うという点については、あまり問題ないと言えると思います。
どうぞ。
○内山委員 荒記先生がおっしゃるのは非常に重要なことだと分かるのですが、一方で、ホルムアルデヒドは臭気、においを感じる閾値で指針値を考えています。あれは明らかに NOAEL ではなくて、別の観点でこの指針値を決めています。シックハウス症候群ですとか化学物質過敏症と言っていいのか分かりませんが、そういう方々にとっては非常に意味のある一つのエンドポイントであって、その書き方でその症状を訴える方が大分減ったというのは事実ですので、毒性学的には確かに NOAEL がエンドポイントとして重要なポイントであると思うのですが、今後、そういう高感受性の方のことを考えてくると、 NOAEL とは別にもう一つ、何か臭気のようなものをエンドポイントとして決めるべきものも出てくる可能性としては残しておきたいというふうに思います。
○荒記委員 決め方はルールを決めれば良いと思います。 NOEL から決めるなら決める。ただ、問題は、そこから出した指針値を計算した場合、その出した指針値そのものが一人歩きしてしまいますから、そうすると恐ろしいと思います。
出た指針値が NOEL を基に計算されたのか、それとも NOAEL を基に計算したかによって、その指針値の解釈が全然違うわけです。例えば、その指針値を超えたら健康に影響があるかどうかという観点からいくと、 NOEL で決めた指針値であれば、これは必ずしも健康に影響があるとは言えないわけです。
ですから、解釈に関わる問題ですから、この指針値を出すに当たって NOEL を使ったのか、 NOAEL を使ったのかはちゃんと明確にすべきだと思います。
○林座長 どうぞ。
○櫻井委員 そうしたいという気はあるけれども、神のみぞ知るというところがありまして、これは NOAEL であると言い切れる人はなかなか少ないと思います。今、においですら室内空気汚染の場合には問題になるかもしれないと言われています。
ですから、私はできればどんな NOEL であっても、とにかくエフェクトが発見されたらその予防ができるぐらいに、できるならばしたいというのが正直なところです。ただ、値があまりに低くなり現実的な数字ではなくなるのであれば、何らかの議論が必要かと思います。
○荒記委員 その場合、出した指針値は NOEL を基に計算したとはっきり書いてあればいいと思います。
○櫻井委員 必ずしも有害ではないかもしれないけれども、この値を基に計算したとはっきり書いておけばいいわけですね。
○荒記委員 そのとおりです。
○化学物質安全対策室長 本日の議論も含めて、今までの当検討会での議論の中で必ず NOEL であるか、 NOAEL であるか、きちんと検討会に報告としてまとめさせていただいております。
また、それに基づいて毒性学の先生方を中心に、その NOEL であるか、 NOAEL であるかを勘案して、最終的に不確実係数等を決められて指針値を算出しており、そこの齟齬はないと事務局は理解しております。
○林座長 確かに、リスク評価の基準値として NOEL を使ったか、 NOAEL を使ったか、 LOAEL を使ったかということは一般では書いてあります。今回の場合、著者は NOEL と書いてあるので NOEL としてしまったが、これは実際には NOAEL ということなので、正確に NOAEL と書いておいた方が間違いないのではないかという御指摘でごもっともだと思います。
○櫻井委員 先ほどの計算の件ですが、例えば資料6は日本もカナダも、一応全部、週5日で1日6時間というばく露の補正をしています。アメリカもそうです。○が付いていますから、補正そのものはしているという理解でよいでしょうか。
○事務局 はい、時間の補正はしています。
○櫻井委員 ある程度、ばく露補正するのは当然で、今までも大体そうしていると思います。補正しなければ、このデータでは週5日で1日8時間というばく露で得られたデータだけど、指針値では毎日 24 時間連続ばく露を想定していますので、とても同等とはみなせないから、何らかの補正は必要だと考えられます。それを補正するのに、こんな機械的な方法しかないですが、それを採用しているというのが実態なので、ですからこの EHC では補正していないのは、私はおかしいと思います。
○林座長 まさにそのとおりです。さっき広瀬委員もおっしゃったのは、この EHC 補正の仕方がこれでいいかどうかは問題であると。特にラットの場合には、確かに鼻腔の粘膜にばく露するときに、ばく露する条件がヒトとかマウスその他の動物に比べて違うということがありますね。ですから、ホルムアルデヒドの場合でも、反応が非常に強く起こるということもありますので、本当にこの補正の方法でいいかどうかということは、広瀬委員のおっしゃるとおり考えなければいけないと思いますし、これが今後の問題になると思います。
○内山委員 補正のことは、私も同意見です。
もう一つ考えていただきたいのは、いつもこういう基準をつくるときの引用文献は外国のデータが多い、特に疫学データは外国の方のデータが多いということがときどき問題になります。特にアセトアルデヒドの場合は、アセトアルデヒドの脱水素酵素欠損の方が非常に東洋人には多い。特に日本では 30 %から 50 %ぐらいの欠損率だろうと言われておりまして、欧米の方よりもお酒に弱いという方が多い一つの原因になっているわけですが、そうしますと、大体血中濃度、又は呼気中の濃度が同じアセトアルデヒドの吸入、又はアルコールでもそうですが、非常に高くなっているということがヒトやアセトアルデヒドの脱水素酵素ノックアウトマウスの実験で観察されています。私どもの研究中にやった実験では、同じばく露をしてもノックアウトマウスの方の血中濃度は、コントロール群の約6倍になるというようなデータがあります。
そうしますと、遺伝子欠損の方、つまりアルコールを飲めない方がアルコールを飲むと、食道がん、上皮の口腔がん、頸部がんの発生リスクが非常に高くなるという疫学調査も出ております。これは人種差の一つとしては割と分かっているデータ・物質だと思いますので、そういう人種差も考慮した基準もあっていいのではないかと思います。それで、新たな事実が分かってくれば、だんだんそういうものを取り入れて、指針値を見直していってもいいのではないかと思います。まだ先の話かもしれませんが。
○林座長 櫻井委員、何か。
○櫻井委員 私も同じことを言いたいなと思っていたのですが、例え WHO の指針値が 300 でも、日本の指針値はそれより低いということは十分妥当性はあるのではないかなと思いました。
○林座長 ほかに何か。どうぞ、安藤先生。
○安藤委員 少し気になることがありまして、それはホルムアルデヒドのガイドラインを設定したときの考え方は、たしかヒトへの刺激性ということで最終的に決めたのですが、そのとき、当然ホルムアルデヒドというのは発がん性及び遺伝毒性があり、つまり動物実験のデータというのは、大量にあるという状況でした。それでは、そういう発がん性のデータをなぜ我々は採用しなかったのかということになります。そのときの解釈は、いわゆる齧歯類の鼻腔の病変というものは確かにあり、それが元で発がんし得るということだった。 ただし、その鼻腔での齧歯類の病変というものはヒトの鼻腔とかなり構造が違うと。つまり、齧歯類特有の発がんという区間であるので、動物試験のデータは評価から一旦外すという考え方だったと思うのです。少し記憶が明確ではありませんが、そういうことから、ヒト影響ということに、かなりの問題意識で議論をしていったというふうに思っていますが、もしその考え方をしますと、このいわゆる別添の遺伝毒性についての評価というもの、もちろん、それはあるわけですが、そこの比重というものがかなり変わってくるのではないかと思います。
○林座長 私が、先にお答えしますので、広瀬委員、その間に補足を考えておいてください。
最初に、ネズミとヒトとで構造が違うというのは事実です。ただ、違う部分というのは、ラットの方が空気を介して鼻腔の粘膜に及ぼす時間というか、気流の速度がかなり違うようです。
ですから、例えば1年間呼吸しても、ヒトの鼻腔の粘膜よりもラットの鼻腔の粘膜の方が、物質に過剰にばく露するということになります。
それから、もう一つ、ヒトの場合、これまでホルムアルデヒドの場合に、櫻井委員がおっしゃったように、においというエンドポイントがありました。ホルムアルデヒドに関しては、においによる刺激が一番敏感なのです。粘膜の変化というのは、刺激性に基づいているので、においを感じるか感じないかというところで、刺激性が及んでいるか及んでないかということが判断できます。
それで、今度は刺激性のにおいの影響の中に、今回の場合には遺伝毒性が含まれているかどうかということで、先ほど先生がおっしゃったように遺伝毒性をどの程度考慮に入れるべきかどうかということは、確かに今回考えなければいけないポイントの一つだと思いますが、先程言いましたように、ラットとヒトとの間で気道の構造等が違うということ、それから粘膜の変化の機構が、プロセスが違うということがあります。
それでは、広瀬委員。
○広瀬委員 非常に難しい問題なのですが、ラットでは鼻腔には嗅上皮と、それから呼吸の上皮、それから前の方には扁平上皮があるのですが、全体的にラットの場合には、化学物質を吸入した場合すぐに毒性が出やすくて、最終的には発がんに容易に至るわけです。一方で、ヒトの場合には、ラットに比べてかなり抵抗性が高いです。嗅上皮又は呼吸上皮、鼻腔のそういう上皮の腫瘍というものは非常に珍しいということを考えると、ラットに比べるとヒトの方はこういうような刺激性の物質に関しては、かなり感受性が低いのではないかということが考えられます。
○林座長 もう一つ申しますと、私、ヒトとネズミとが上皮の粘膜が全く同じだと申しましたが、厳密に言うと、気道の粘膜を構成している細胞が多少違います。今までの実験結果だとすると、ネズミの方がこのように割合敏感なことを示唆するデータはあります。ですから、本質的には違わないと思います。
どうぞ。
○田辺委員 少し話題が変わりますが、建築に携わっている立場の方からこの問題といいますか、少し背景の御説明とコメントをさせていただきます。今回、2年ぶりに検討会が開かれた背景に、実際、アセトアルデヒドの室内濃度の測定データについて、指針値を超過している事例がかなりの住宅で見られるということが一つあるのではないかと思います。
その超過している理由の中に、いわゆる日本で伝統的に使ってきた木質の無垢材等の自然材からの放散があるということが、建築に携わっている立場の方にしても非常に驚きでもありますし、作り方にもよると思うのですが、それは皆さんが指針値をこれだけ大きく扱われて、議論をされているところにあるのではないかと思います。
私どもの研究などでも、木材から放散するということもわかっておりまして、この点は2年前の第8回の検討会のときに私が発言していると記憶しています。 48 という指針値がなかなか木造の住宅には厳しい値ですということは申し上げていると思うのですが、その後いろいろ研究が行われて、木造建材だけでなく一部の接着剤の中にもアセトアルデヒドを放散するものがあって、まだ少しメカニズムが分かっていないものもありますが、やはり先ほど林野庁のデータでありましたように、木材からの放散というのは、かなりの程度あるということが分かっています。
処理されたものに関しては多くないものもありますが、実際に木造で住宅を建てた場合に第3種換気といって、室内を負圧にするような環境にしますとすき間から風が入ってきますので、要はそういったところからの放散で室内濃度が高くなる例が実際にございます。
これで、 WHO がガイドラインを変えたからというわけではないのですが、建築に携わっている立場からすると、是非先生方に同じ理論でぶれのない指針値の決め方で、きちんと決めていただくことが極めて重要だと思われます。これは、 13 物質を自治体によっては管理値にしたり、その半分を管理値にするようなところも実はありまして、単なる指針値だけでは終わらないところがあります。ただし、一つの物質だけ指針値を守れないからどうこうという議論だけをしますと、他の指針値が信用できなくなるわけでして、是非、新しいデータが出れば指針値を見直すのは当然だと思いますが、きちんとした議論をしていくことによって、建築で対策が行われたり技術開発が行われたりするのではないかと思います。
ただ、木材の方は大変心配だろうというのはよく分かります。それは、ホルムアルデヒドについての建築基準法及び政令においては室内濃度が 100 μ g/m^3 という値に対して、無制限に使える建材ということで5μ g/m^2 ・ h という放散速度基準を設定しています。これを 48 にそのまま当てはめると、2μ g とか3μ g 程度の1時間当たりの放散量の材料しか使えないということになります。
先ほどの木試験材の材料のところを見ていただくと、要はほとんどのものが使えなくなる可能性がある。特にホワイトウッドですとかマツ材などは放散が多いということもございまして、それでは面積制限をすればいいのではないかという議論もありますが、実はホルムアルデヒドなども、実際の消費者がこういう問題に非常に関心を抱くようになりまして、やはりほとんどが最高等級の材料にシフトいたします。本来、日本で伝統的に使ってきた材料をどういうふうに考えるかということも、背景にかなり大きな問題としてありますので、学問的にぶれない議論を是非お願いしたいと思います。
それから、もう一点、私どもは先ほど紹介があったチャンバー法等で測定していますと、トルエンですとかホルムアルデヒドとか、昔から毒性が分かっているものに関しては実験データも非常に多く指針値が設定されやすいので、代替の建材をすぐ使いたくなる傾向にあります。
実際に VOC が、炭素が C 6から C16 ぐらいまでを定義していますが、それより炭素数が1つとか2つ多いような SVOC と呼ばれるような高沸点の材料が代わりにかなり使われ、 VOC はほとんど出ませんと言っているようなものもあります。その新しいリスクに対しての見識というのも、是非こういう場で御議論をいただいて示していただければと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。石川委員、どうぞ。
○石川委員 このお知らせをいただいてから半年ぐらいでしょうか、世界の文献を読んでみていたのですが、ほとんど基本的な実験というのはラットとかそういう類の研究が多いです。遺伝毒性を除くと、いろいろな変化が出た値というものは、この指針値よりも少し上の値でやられていることがございます。少し紹介すると、神経細胞膜の反応の差が出たというのが 50 μ M ですし、 NMDA レセプターという N -メチル- D -アスパレートのレセプターがこういう微量化学物質の場合、非常に問題になっていますが、その場合も 10 μ M となっています。
それから、ホルムアルデヒドとアセトアルデヒド同量の投与でどういうものが出るかという悪性腫瘍に関する実験について、事務局には一部資料をお送りしたのですが、そういうことで、かなり安全サイドに立ってこの指針値が決められたなと私自身は思っておりました。
そこで今度は実際の患者さんがいるかなということを調べてみたのですが、私たちでアセトアルデヒドについて 150 件ぐらい調べたデータがあって、患者さんの場合 50 件ですけれども、その中にアセトアルデヒドが極めて高い、かつ、シックハウスのような症状が出たというのは、北里の私たちの病院で1例と、仙台の方で1例、その2例が疑われるかなと思っています。その2例は非常に強いアルコール脱水素酵素の欠損があるように思われる、非常に感受性の高い方でした。それ以外の症例については、すべて相関係数を取ったり、いろいろな計算をやってみましたが、アセトアルデヒドが原因と疑われる症例はございませんでした。先ほどからいろいろ御議論があるのですが、もう少し世界中の文献をしっかり当たるべきであり、拙速にここで結論を出してしまうのはまだデータ不足かと思います。
ホルムアルデヒドは、先ほど安藤委員の御意見の中でもたくさん文献があるとおっしゃっていたのですが、アセトアルデヒドは意外に少ない。ですから、特にヒト毒性に関してはほとんどゼロに近いと思うので、その辺りをもうちょっと検討してみたいと思います。
以上です。
○林座長 どうもありがとうございました。
ただいま、先生方からいろいろ御意見をいただきましたが、やはり遺伝毒性の取扱いについては、まだいろいろ問題があるだろうということでした。それから、換算式のヒトと動物との呼吸について、ばく露形式が違うということで、その換算式をどうするかというような問題、それから人種差の問題など、文献調査又は場合によっては何か調査等をしなければいけないかもしれませんがそうしますと、何かこれを検討するためのワーキンググループみたいなものを作らなければいけないのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。 安藤委員、何かございますか。どうぞ。
○安藤委員 先ほど内山委員が少しおっしゃった、いわゆるここでアルコール云々というのは少し違うかもしれませんが、結局そこに行き着く話も出てきてしまうわけで、そうすると、この委員会ではいまだに不明確なところがあるのですが、ばく露というのをどのような位置付けにするか。
当初、検討会が始まったときは、経気道ばく露だけで考えていた。我々はそうではなく、総合ばく露だという考え方だった。そこが若干かみ合わないまま、検討が進んできていることは事実なのです。つまり、総合ばく露という考え方に立つかどうかという、これは非常に大きな話になってきます。つまり、経口ばく露も考えるのか、経皮は少ないとしても、そういう総合ばく露という中で評価していくのかどうなのか、これを明確にしておかなければいけないだろうと思います。先ほどの NOEL と NOAEL の議論もそうですが、その原則を少し明確にする必要があるかなという気がします。
もし、その経口ばく露も考えるとするならば、少し飛躍した話になるかもしれませんが、例えば今、食品安全委員会というのが動いていて、これは食品という観点で経口ばく露の評価をやっているわけですが、いわゆる総合ばく露という考え方からすると、そういうところに依頼するのも一つだろうし、いろいろな考え方があるだろうと、そんな気がいたします。
○林座長 どうもありがとうございました。
新しい文献を一つ二つ引っ張ってみますと、実際問題として、半分の文献は今の安藤先生がおっしゃった総合ばく露の問題なのです。ですから、やはりここでは経気道ばく露だけが問題になっていますが、今度ワーキンググループで検討するときには、やはり総合的に考えるという必要はあると思いますが、事務局はいかがお考えでしょうか。
○事務局 ありがとうございます。今日の御議論の中で、特に毒性学の部分を含めた議論が非常に多くございました。今の総合ばく露の観点も含めまして、この検討会の中の先生も含めまして座長と相談をいたしまして、ほかに専門の先生方にも御参画をいただきワーキンググループを作りまして、そこで検討をさせていただきます。また、国際的な結果もございます EU 等も今後指針値を出してくることがございますので、その辺の方向性がある程度目途が付いた時点で、また検討会の方にワーキンググループの検討の結果なども御紹介をさせていただきながら、引き続き検討をするという方向でやらせていただきたいと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。
それで実は、さっき田辺委員のおっしゃった御質問といいますか、御意見ですが、これは非常に重要だと思います。ぶれのない指針値づくり、ぶれのない評価をしてほしいと、すべきではないかということですね。
個人的な所感で、あとで事務局の方から回答をいただきたいのですが、ぶれのない指針値の評価をするということは非常に重要です。そうしないと、本当に比較ができないですから。ただ、ぶれのない評価をするためには、ぶれのないデータが提供されていなければならない。現状、そのデータが、必ずしもぶれがなくはないわけです。
それで、私たちはもう既に1回から9回までの間に指針値を決めてきていますが、やはりその時々で得られる情報を基にして評価をしています。そのときに、リスクの可能性がある場合には、やはり私たちは安全面を重視して評価してきました。ただ、もしもデータが十分にあれば、指針値が変わるかもしれないということは十分わかっているわけですが、やはり厳しい評価をする。それで新たなデータがあったら、また変えるかもしれないというような前提で評価をしている。言うなれば予防原則でやっているわけです。
ただ、予防原則を適用するということは、さらに調査を続けて、我々が今までやった評価が妥当かどうかということを検討する必要があるわけです。それで妥当であるとすれば、指針値は改正しない。妥当でないというデータが出たら指針値を変えるということが、予防原則の原則だと思うのです。そういう意味で、ここで問題になるのは、データが不十分なために非常に厳しい評価をしたというものと、データが十分にあって、これはこれで大体いいのではないかという評価をしたものについて同じ扱いにしていくということが、一見ぶれのように見えるわけです。
ですから、できれば、データ不十分な指針値と十分な指針値について、区別ができるようになると非常に便利ではないかと思います。例えば、 WHO ですと、 temporally の TDI とか、 ADI とか、又はそれに対しての full の ADI 、 TDI というようなことを使いますが、そういうような何らかの区別ができているとすると、これは田辺委員のおっしゃったぶれのない指針値をつくるということの少しの説明にもなるのかなと思うんです。
○田辺委員 私が申し上げたのは、指針値そのものの値がぶれないということだけではなくて、今、御議論があった、どういう係数をどうやって掛けていくかというときに例外があって、例外の適用の際だけ高くなるとか低くなるということがないというプロセスの透明性が必要だと思います。
○化学物質安全対策室長 先生方の御指摘ごもっともでございます。まず林座長の方から御指摘がございましたデータについて、すべて客観的に判断するだけの十分な材料がないというのは、特に一般的にヒトで毒性のデータを取るわけにはいきませんので、そこのところはどうしても動物実験に頼らざるを得ないというところはありまして、毒性学の先生方の御苦労は多いわけでございます。
本日の資料でも、資料7の方で厚生労働科学研究費補助金の事業の結果を示していますが、現在も一部におきましてはシックハウスに関する厚生労働科学研究費補助金の事業は続いておりますし、今後も研究費であるとか行政経費を活用いたしまして、外国の文献の収集のみならず、我々自身もできるだけ科学的な根拠のある指針値を設定できるよう、そこの基盤整備は行っていきたいと考えております。
それから、指針値の中で先ほど WHO の temporally ADI のような暫定値について、一つの方法論と理解しております。これから定めていただく指針値、成分ごとにおきまして、例えばこれはこういう指針値であるけれども、こういうようなことというようなリマークであるとか、それからいろいろな注釈が付く場合には我々、正確に社会一般の方々に指針値の性格を伝えていく必要性があるかと思いますので、そこのところは是非、その指針値の設定に際して先生方の方から我々に御教示いただければというふうに考えております。
以上でございます。
○林座長 どうもありがとうございました。
いかがですか、何か。
○池田委員 それでは、少し確認なのですが、今回、いずれの場合にしても指針値をもし変えるような場合は、やはり新しい学術的な発見、知見が得られたとかそういうことで変えるべきであって、例えば、不確定な情報で WHO がガイドライン値を変えたから、日本の指針値も変えなければいけないというようなやり方は、決してしてはならないと思います。それに、 WHO も簡単にミスを認めた上でそのミスが何なのかという問い合わせをしても、なかなか簡単に返事を返さない。そういうような機関が変えたからといって、厚生労働省がそう簡単に変えるべきものではないと思います。
もう一つ強調しておきたいのは、国民の健康に最終的に責任を取るのは厚生労働省であって、 WHO ではないわけです。厚生労働省というのは WHO の下部機関でもないし、 WHO が云々だからというような印象を与えてこの指針値が変わるようなことがありますと、これは非常に具合が悪いことだと私は思っていますので、この点を少し強調しておきたいと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。
その点、いかがですか。
○化学物質安全対策室長 おっしゃるところ、ごもっともでございまして、あくまでも科学的に不確実性があるにしても、最終的には国民の健康を守る立場から、当然ばく露実態も非常に重要でございますけれども、まずそれはヒト又は動物のデータ等を中心に、安全サイドから見て今までこの指針値を定めてきたところでございまして、従来のこの物質を含めた 13 物質の指針値の連続性を含めて、今後も先生方には引き続き、基本的には国民の健康をきちんと守るという立場からシックハウス等を未然に防止するということを含めまして、指針値を是非設定していただければと考えております。
○林座長 どうもありがとうございました。ほかに御意見ございませんでしょうか。
土屋委員、最後に締めくくりの御意見を伺っておきたいのですが。
○土屋委員 毒性の問題は別として、一つ、先ほどの室内空気対策研究会の千三百幾つかの調査結果で大体 9.2% がアセトアルデヒドのガイドラインを超過しているという結果が示されていますが、私、ほかのところを見てみますと、例えば安藤委員の方でもそういう調査をとっくにやられていると思うのですが、超過率を見ますと、例えば東京都で平成 14 年に学校関係の 190 くらい調べたものですと、超過しているのは2か所だけです。それと、私が関連した東京都の別の調査でも2 % 台ぐらいしか超過していない。
おそらく、安藤委員のやられたところでも何%か低いデータが出ていると思うのですが、木材からアセトアルデヒドが出るというのは分かるのですが、実際の居住で本当にそれだけ基準を超過するところがあるのか、もう少し現状の確認の必要があるのではないかと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。
どうぞ。
○安藤委員 今の話になってまいりますと、実は話は相当複雑になると私は思います。つまり、室内空気又は空気中の化学物質を測るというのは、ものすごく難しいということを一般の方は全く知らない。これは大きな問題だろうと思っているので、そのうち、議論していかなければいけないと思っております。
つまり、様々な測定機関で測った場合、どの測定値が正しいのかという議論が必ず出てくるだろうと思います。流通の国際化が進展した場合は、そういうことが必ず出てくるだろうと思います。
ですから、今、早急にとは言いませんが、空気中の化学物質の測定精度について考える時期がそろそろ来るのだろうということも、どこかの時点で検討材料に入れていかないと混乱を招くという気がいたします。本検討会で議論するのがふさわしいかは不明ですが。
○林座長 どうもありがとうございました。ばく露評価もやらなければいけないということになるのですが。
どうぞ。
○土屋委員 今の安藤委員のお話のついでですが、この検討会で標準的な試験方法、測定方法というのを出しているわけですが、その内容としてやはり不十分なところがまだ残っているのです。それがそのまま2年経過して、実際測定する側も測定する方法として困っているところも現実にある。
例えば、明らかに間違いだというのは、 VOC を測るときのトルエンの質量指数が違ってくるとか、あとはフタル酸エステルを測定するとかの GC/MS の条件で測定するときに、ある条件だとピークが出てこないとか、そういうような部分もあるわけです。ですから、やはり標準的な試験方法としてここの委員会で出しているのであれば、そこをきちっと見直して、ちゃんとした標準測定法を出すという責任があると思うので、その辺の作業ももう少しやっていただければというふうに思います。
○林座長 この辺も確かに重要なことだと思いますけれども、田辺委員、何か御意見ありますか。
○田辺委員 これは是非、厚生労働省だけではなくて省庁間の連絡会議で連絡を取っていただければいいのではないかと思うのですが、化学物質の分析法に関しては経済産業省が JIS 化をされている一方、室内空気の採取方法に関しては国土交通省が JIS の専管をお持ちで、それから指針値の部分は厚生労働省がやられていて、実は測定法に多少違いが出ていたり、分析法に違いが出たりしているので、是非それらを統一してほしいと思います。最も望ましいのは、例えば JIS にするとか、又は厚生労働省でもってマニュアルを改定するというようなことになると思いますが、早期に ISO 、 JIS 等の整合性が取れるといいと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。
やはりばく露の方の問題を少し考える必要があるということを非常にいろいろな先生方からいただきましたが、こうなりますと、この問題はやはり省庁間の話し合いということも必要になってくると思うのですが、事務局、何か御意見ありますか。
○化学物質安全対策室長 おっしゃられますとおり、本日も各省庁の御協力をいただきまして、特にばく露関係のデータを提供いただいております。
やはり現実の指針値を運用する、具体的に言えば国民の健康を守る立場からも、ばく露状況を勘案しつつ、科学的な根拠に基づく指針値の設定が重要だというふうに理解しております。例えば、従来の例で言いますと、他省庁のデータで新築住宅のホルムアルデヒドが年ごとにどの程度減っていくかとか、いろいろな貴重なデータが得られておりますので、先ほど田辺委員から御指摘ございましたような分析法の統一、また土屋委員からございましたようなまだ不十分な試験法の見直しを含めまして、総合的に是非検討させていただければと思っております。
以上でございます。
○林座長 どうもありがとうございました。ほかに何か、御意見ございませんでしょうか。 もしないとしますと、先ほどのワーキンググループをつくって、今のばく露の測定値、それも含めて何か検討する必要があるのではないかということですが、何か事務局の方で今後の予定、または考えがあったら教えてください。
○事務局 ワーキンググループの設置等につきましては、座長とよく相談をさせていただきまして進めさせていただければと思います。
また、次回以降の検討会につきましては、今日いろいろ宿題をいただいておりますので、こういったものにつきまして、ある程度こちらの方で準備ができましたら、また日程調整などをさせていただくということで、次回以降の予定は申しませんけれども、また今日いただいた宿題を事務局の方で十分検討させていただきたいと思います。
○林座長 どうもありがとうございました。ほかに何か、御意見ございませんでしょうか。 それでは、なければ本日は先生方、非常に御多忙のところ御参加いただきまして、熱心な御討議をいただきましてありがとうございました。これで本日の検討会を閉会させていただきます。ありがとうございました。
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