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2016年6月8日 薬事・食品衛生審議会 血液事業部会 議事録

○日時

平成28年6月8日(水)17:00~


○場所

厚生労働省専用第22会議室


○出席者

出席委員(16名)五十音順

稲 田 英 一、 大 戸   斉、 大 平 勝 美、 岡 田 義 昭、
倉 根 一 郎、 鈴 木 邦 彦、 千 堂 年 昭、 田野崎 隆 二、
長 村 登紀子、 花 井 十 伍、○濱 口   功、◎半 田   誠、 
前 野 一 雄、 溝 上 雅 史、 室 井 一 男、 山 口 照 英
(注)◎部会長 ○部会長代理

欠席委員(6名)五十音順

衞 藤   隆、 小 幡 純 子、 嶋   緑 倫、 益 子 邦 洋、
三 谷 絹 子、 三 村 優美子、 

日本赤十字社

佐竹経営会議委員、日野総括副本部長、五十嵐技術部次長、井上経営企画部次長

行政機関出席者

武 井 貞 治(血液対策課長) 他

○議事

○血液対策課長 それでは定刻となりましたので、ただいまから「平成28年度第1回薬事・食品衛生審議会血液事業部会」を開催いたします。なお、本日は、公開で行うこととなっております。よろしくお願いいたします。本日は、衛藤委員、小幡委員、嶋委員、益子委員、三谷委員、三村委員から、欠席との御連絡を頂いております。なお、倉根委員におかれましては、30分ほど遅れて参加という御連絡がありました。本日は全委員22名中16名の御出席をいただき、定足数に達しましたので、薬事・食品衛生審議会令第9条により、本部会が成立しましたことを御報告申し上げます。また、本日は、日本赤十字社血液事業本部から、日野血液事業経営会議委員兼技術部長、佐竹血液事業経営会議委員、五十嵐血液事業本部技術部次長、井上血液事業本部経営企画部次長にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 本日の議題は、利益相反に関係する審議事項はなく、報告事項のみとなっております。カメラの頭撮りは、ここまでとさせていただきます。

 それでは、今後の進行については、半田部会長にお願いいたします。

○半田部会長 皆様、こんばんは。それでは、まず事務局より、資料の確認をお願いします。

○血液対策課長 それでは、お手元の資料を御覧ください。議事次第、座席表、委員名簿に続きまして、議題1に関連する資料として、資料1-1、「献血血液の研究開発等での使用に関する指針」に基づく公募に関する運営委員会での評価結果(平成28年度提供分)。資料1-2、国家戦略特別区域法における安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の特例の施行について。資料1-3、血液事業の実態に関する調査・報告(シンガポール)。資料1-4、HTLV-1抗体のスクリーニング検査について。資料1-5、トロンビンの供給停止について。資料1-6、平成28年熊本地震による一般財団法人化学及び血清療法研究所(化血研)の被害状況等について。議題2に関連して、資料2-1「血液製剤の使用指針」の一部改正案はについて、別添が1枚付いております。資料2-2「血液製剤の使用指針」改訂作業の現状。参考資料として、本日は7種類の資料が用意されています。併せて、机上配布のみの資料となりますが、血液製剤の使用指針()に関する資料、新旧対照表が一つ。最後に、日本人固有データの集積/開示に資する日赤保管検体のバイオリソース活用を目指す調査研究に関する資料があります。不足等がありましたら、事務局までお申し付けください。

○半田部会長 よろしいでしょうか。それでは、審議参加に関する確認事項の追加について、参考資料1の報告をお願いします。

○近藤補佐 参考資料1、審議参加に関する確認事項の追加について御説明いたします。

 本件は、審議参加規程の運用改善を図るもので、平成28年3月25日の薬事分科会で了承されて4月から適用されておりますので、御紹介いたします。

 薬事分科会審議参加規程については、平成21年より運用しております。独立した評価委員会で、少なくとも年1回、運用状況の評価を行うこととしております。

 この評価委員会の検討結果を踏まえて、昨年度、委員の先生方からの申告を事務局が製薬企業に確認する仕組みを試行的に導入することとし、平成27年4月より運用してまいりました。

 昨年4月から、今年1月頃までの運用状況を見ると、実際に申告の補正があったケースが、医薬品第一部会・第二部会を中心として、十数件ありましたので、一定程度の有用性があると考えられ、この仕組みを今年度より本格的に導入する運びとなりました。

 また、別添1が参考資料1の後ろにありますが、本格導入するに当たり、試行的な段階では、申告対象企業のうち、申請企業のみに確認していたところ、対象を競合企業にまで広げ、全ての申告対象企業に確認することといたしました。具体的な確認事項の追加の内容は、別添2のとおりとなっております。

 また、手続の流れに関しては、従前と変更はありませんが、手続の時間を確保できるよう、別添3のとおり、委員への申告の依頼を1週間前倒しして、開催3週間前から確認することとしております。事務局として、審議の中立性・公平性等の確保に努めてまいりますので、委員におかれましても、引き続き、適切な申告等への御協力をお願いいたします。以上です。

○半田部会長 それでは早速、議題1に入ります。議題1は、平成27年度運営委員会及び平成28年度運営委員会の審議結果についてです。まずは事務局から昨年度の審議結果、資料1-1から資料1-3について説明をお願いします。

○近藤補佐 事務局から説明させていただきます。議題1に関しては、資料1-1を御覧ください。「献血血液の研究開発等での使用に関する指針」に基づく、公募に関する運営委員会での評価結果を御報告いたします。

 この指針は、貴重な献血血液を研究に利用する目的で、平成24年に策定され、平成25年度提供分から、日本赤十字社の協力を得て運用が始まっておりますが、今回は4回目の公募となります。平成28年度提供分については、継続して提供することとなった210課題と、日赤の評価のみで承認となった新規12課題のほか、運営委員会での承認が必要な新規課題が、ここに挙げさせていただいた55課題となります。

 評価結果ですが、1.が「承認」。2.は「修正の上で承認」。3.は「却下」。4.が「保留」となっております。まず、1.の承認と評価された課題は34課題です。時間の関係から、一つ一つの課題に関する説明は割愛させていただきます。2.の修正の上で承認という課題が16課題です。これらの課題は、主に所属研究機関での臨床委員会での承認を条件としております。3.は却下と評価された課題が1課題あります。本課題の研究内容は、現在、国が感染症研究所と共同で行っている事業内容と重複していることが、その理由です。

 なお、4.に関しては、現段階では保留とし、今後、運営委員会で評価されることとなっている課題が4課題ありますので、御説明いたします。

 この指針の対象とする血液検体の中には、日本赤十字社が遡及調査のために、11年間冷凍保管しているものがあります。毎年500万人分の献血血液の保管検体が増えてきているのですが、保管期限を過ぎた検体は、平成19年より毎年廃棄されてきています。

 なお、この-20℃で11年間冷凍保管した保管検体は、どのような分析に耐え得るのかなど、質的な面からも、検討すべき点があったことから、これまで研究利用の対象とはなっておりませんでした。

 そこで、貴重な献血血液の有効利用という観点からも、この検体を利用するに当たっての諸処の課題、問題点について、昨年度から日本医療研究開発機構(AMED)の研究事業で検討していただいておりました。

 今年度からは、毎年500万人分廃棄されている保管検体を実際に研究に利活用していただきながら、どのような有効利用の方法が、今後考えられるのかを検討するフィージビリティスタディーをAMED研究事業の支援も受けながら開始することとなりました。

 詳しくは、机上配布資料の「日本人固有データの集積/開示に資する日赤保管検体のバイオリソース活用を目指す調査研究」という配布資料を御覧ください。

 具体的には、左下の主な取組にありますように、アレルギー及び女性の健康に関わる研究課題が予定されております。現在、研究者、AMED、日赤、厚労省の4者が研究利用の仕方や、提供方法について検討を進めているところです。具体的な研究計画が策定されましたら、運営委員会で御審議いただく予定としております。

 次に、資料1-2を御覧ください。国家戦略特別区域法における安全な血液製剤の安定供給の確保等に関する法律の特例の施行についてです。

 まず、概要ですが、一つ目の○を御覧ください。血液法第12条において、血液は生命維持に不可欠なものであり、むやみに採取を許すべきではないものとしていることから、原料採取を目的とした採血、及び血液を原料として製造できる物が血液製剤、医薬品、医療機器及び再生医療等製品に限定されております。血液法の条文に関しては、2ページの下に四角で囲って掲載しましたので、適宜御参照ください。

 1ページの○の二つ目は、今回の特例の施行の概要となります。背景としては、科学技術の進歩により、様々な疾患の患者さんの血液からiPS細胞を樹立する技術が確立されるようになりました。このような再生医療技術は、実際にヒトを対象に用いられるのみならず、iPS細胞等を用いて難病発症のメカニズムの解析や、治療薬の開発において、臨床試験を行う前に毒性や有効性についての評価を行えることができることなどが期待されています。

 現行の血液法においては、血液を原料としたiPS細胞から試験用細胞などの研究用具を「業」として製造できないこととなっておりました。しかし、このような研究用具は広く創薬研究等に利用されることで、医薬品医療機器及び再生医療等製品の技術革新に結び付くことが期待されております。

 そこで、血液法の理念・目的を踏まえながら研究開発の振興を図る目的から、国家戦略特別区域において、業として、血液を原料とした研究用具の製造を認める血液法の特例を作ることについて、平成26年度第4回運営委員会及び第2回血液事業部会にてお認めいただいたところです。

 その後、国家戦略特別区域法及び構造改革特別区域法の一部を改正する法律が、平成27年7月15日に公布され、同年、9月1日付けで施行されたこと、また、当該法律に基づき、今年2月29日に初めて事業の特定認定が行われたことを、平成27年度の第9回運営委員会で御報告いたしました。

 なお、2ページの※2の所にあるように、事業認定においては、貴重な血液を原料として研究用具を製造することから、一定の基準を満たした事業者が行うことが望ましいと考え、例えば三の第1項にあるように、採血時の同意説明の実施し、採血量は必要最小限とすること。また、採血及び製造手順書の作成、製造記録の保管などを事業認定要件としました。

 次ページのA4横の紙のポンチ絵は、事業認定の流れの概要を示しております。国家戦略特別区域内で事業を実施するためには、1.にあるとおり、区域計画が作成され、内閣総理大臣の認定を受けます。その後、2.にあるとおり、認定を受けた区域内の事業者が、厚生労働大臣の認定を受け、事業を行うことができます。

 次ページです。こちらのポンチ絵は、今般、関西圏の区域計画として、内閣総理大臣の認定を受け、その区域内の事業者として「株式会社iPSポータル」が申請をし、事業の特定認定がされました。認定に当たっては、先ほどの事業認定要件への該当性につき、申請書の添付資料等から確認したほか、製造施設を訪問し、製造設備等の確認を行っております。下の四角の中にあるように、患者の血液由来のiPS細胞から試験用細胞を製造し、患者情報と併せて、製薬企業等に提供することが新しい医療品開発を加速させ、難病に対する治療法の解明につながると期待されているところです。

 次に、資料1-3、血液事業の実態に関する調査報告です。平成25年に日本国内で発生した輸血によるHIV感染例を受けて、海外のHIV対策や、献血時の虚偽申告に対する罰則制度を設ける国の基礎情報の収集目的で、平成25年度はオーストラリアでしたけれども、それに引き続き、平成26年度はシンガポールを訪問調査しており、昨年度の第9回運営委員会で御報告いたしました。

 1ページ、1.シンガポールでの献血におけるHIVスクリーニング方法については、献血受付時の写真付きIDによる本人確認の徹底に加え、問診では、ウインドウ・ピリオドに関する知識の有無や、過去12か月間のHIV感染を疑う症状の有無。また、性行動に関しての具体的な内容が医師の問診項目に含まれております。別添1は、実際の問診票です。7ページは、真実を述べていることの宣誓書に署名することとなっております。

 資料1-3の最初のページです。2.献血におけるHIV陽性率についてです。2013年のHIV陽性率は、献血10万件中約10人でした。日本の陽性率の約10倍になっておりますが、これは、人口当たりの新規HIV陽性率とほぼ同じだとのことです。

 2ページ、3.検査目的の献血への対策です。シンガポールは多民族国家であることから、問診票及び問診医ともに4か国語に対応しています。また、コールバック制度もあります。

 HIVの匿名検査へのアクセスについては、特定の10か所の医療機関で行われていて、予約なしでも検査ができ、匿名性が高く、また検査方法も、口腔粘膜採取や指先からの採血など、侵襲性の少ない方法で行われています。検査は有料ですが、ハイリスクグループに対しては、HIV検査クーポンが配られています。また、non-resident(非居住者)に対しては、定期的なHIV検査が義務付けられ、外国人長期滞在者も、ビザ更新時に、陰性であることの申告・宣誓が必要となっております。

 4.献血に対する刑事罰の効果についてです。シンガポールでも、1997年の輸血によるHIV感染事例があり、厳罰化を望む世論の高まりを受けて、1999年に虚偽申告に対して、罰則を定めた条文が感染症法第11条に規定されました。法律の施行以降、適用されたケースは11件ありますが、いずれも男性で、偽証内容は全て性行為の事実に関するものでした。なお、HIV感染の事実を知った上で献血をした場合の罰則については、感染症法第24条に定められておりますが、適用されたケースはないとのことでした。刑事罰が導入された後も、献血行動の萎縮効果は認められず、献血者数は、むしろ増加傾向にあります。別添2には、シンガポールの感染症法を抜粋したものを添付しましたので、適宜御参照ください。

 まとめになります。シンガポールでは、HIVの検査義務のみならず、献血の虚偽申告に対して刑事罰を導入するなど、HIV対策が徹底されているのが特徴的でした。検査目的での献血、いわゆるマグネット効果の抑止には、担当者によると、刑事罰の導入の効果があったという見解でした。以上となります。

○半田部会長 それでは、質疑応答に移ります。委員の皆様方、よろしくお願いいたします。御質問、御意見はいかがでしょうか。

○室井委員 国家戦略特別区域のことですが、作った物を有償で企業等に売るわけですね。そのときに、例えば血液だったら薬価によって、製剤も、血液製剤も値段の方が決まっているのですが、有償の値段の決め方の原則というのは決まっているのでしょうか。

○血液対策課長 御質問ありがとうございます。通常の医療現場で使うような薬価で、国の方できちんと価格を決めるのですが、今回は業として行うということですので、特段、今の段階では、価格を決めずに、市場メカニズムの中で民間において決めていただくということになると思います。

○室井委員 極端に高い値段が付くとか、そういうことはあり得るのですか。

○血液対策課長 通常は、そこまではないと考えております。

○室井委員 はい、分かりました。

○鈴木委員 資料1-3、血液事業の実態に関する調査報告で、欧米諸国が数多くある中で、なぜシンガポールを調査したのか、その理由を教えていただけますか。

○近藤補佐 実際に刑事罰を導入している国は一部です。オーストラリアと、次にアジアのシンガポールが刑事罰を導入しているということで調べました。また昨年度は、欧州を調査しています。今年度は、北米の方の調査を予定しています。

○鈴木委員 シンガポールは、経済的には成長していますけれども、厳罰国家です。ガムを吐き捨てても罰せられるという厳しい国で、人によっては、明るい北朝鮮と言う人もいるぐらいです。日本にはなじまない部分もあるのではないかと思い、少し違和感を感じましたので、お話させていただきました。欧米の方も広く調べていただければよいと思います。

○近藤補佐 貴重な御意見をありがとうございました。

○田野崎委員 資料1-2の国家戦略特区についてですが、先ほどの室井先生の質問にも関連しますけれども、これは献血でなくてはいけないのか、あるいは有償で採血をしてもらったドナーからということに関しての規定はありますでしょうか。

○近藤補佐 現在は有償での採血はしておりません。疾患を持たれている患者さんから定期的な検査等の折に、採血量を増やして、少し頂くという形になっています。

○田野崎委員 よろしいですか。これは、こういう法律をということで、これからそういう可能性というのを許可するものなのかどうかという、そこに関する規定は考えられていらっしゃるのかどうかということです。

○血液対策課長 確かに、今後、使用量が多くなってくると、そういった懸念が生じてくるということかと思います。多分このお話は、より具体的に、今どういった目的や用途で使われていくかという点については若干触れた方がいいかと思いますが、現在は難病、若しくは希少疾病と言われるようなアルツハイマー疾患のような方とか、パーキンソン病のような方に限定しております。そういう方々の病気の解明とか、将来的には、その創薬に向けた研究に期待するという考え方から、御本人の同意に基づいて、無償で提供いただいているような状況です。ですから、将来的には提供いただいた方も、裨益する可能性があるということと、非常に数が少なくて、これは今後の展開にもよりますが、現段階のところ、数名、10名を超えるような、数量的なレベルになりますので、無償で、善意で御協力いただくという仕組みになっております。もちろん今後、事業が大きくなるようであれば、またそれは別途、御相談ないし、又はきちんとした決まりを作っていくことを考えております。

○半田部会長 基本的には、これは献血と同じ考え方でよろしいわけですね。ですから、血液法の拡大解釈ということで、よろしいわけですね。

○血液対策課長 血液法の理念でというところです。

○近藤補佐 追加です。血液法第16条に、有料での採血を禁止しており、研究用具を製造する場合においても、有料での採血は禁止されているというように解釈しております。

○半田部会長 ありがとうございます。

○岡田委員 シンガポールを選んだ理由というのは、私も実は、この調査に参加していまして、2013年に輸血によるHIV感染があったときに、やはり供血者が虚偽の申請を行っていたことが明らかになったので、それを防ぐために、何らかの刑事罰も必要ではないかとかという意見がありましたので、世界を見て、実際そういう虚偽の申請をした人に対しての罰則のシステムがある国を選んだところ、一つがオーストラリア、もう一つがシンガポールです。オーストラリアに関しては、そういうシステムがありますが、実際に適用例がないということが分かり、その次に、シンガポールが実際にその刑事罰があるということで、訪問して調査しました。

 一番の問題は、献血したときに、HIVが分かったときに、何らかの刑事罰になると、献血者が減るのではないかとか、そういうことを一番心配していましたけれども、その影響について、規制当局に行って話を聞きましたが、全然そういう影響がなくて、献血者が増えていることが分かりました。その一方で、十何人は実際に虚偽の申請をしているということで、刑事罰を受けているということも明らかになりました。こういうのは正直言って、ヨーロッパとかではなかなかないので、解析する国としてはシンガポールは、一つの例として参考になると思って選びました。

○半田部会長 ありがとうございます。鈴木委員、よろしいですか。

○鈴木委員 その献血の虚偽の申請で刑事罰というのは世界で唯一でしょう。シンガポール自体が厳罰国家ですから、そういう意味では、少し特殊な国なのです。ですから、シンガポールでやっているからというのは当てはまらないと思います。もう少し欧米の状況も見る必要があります。虚偽の献血で刑事罰を科したら、我が国においては、献血に対するイメージを非常に悪化させると思います。シンガポールはほかも厳罰ですから、皆さん納得しているのかもしれませんけれども、我が国では、それは当てはまらないので、そういうことをすべきではないと思います。

○半田部会長 ありがとうございます。それでは、最後に。

○大戸委員 資料1-1について確認の質問です。感染症マーカーが陽性だった血液も、有償で必要としている施設や研究所などに提供しているという理解でよろしいわけですか。

○血液対策課長 御指摘のとおりです。

 

 

○半田部会長 ありがとうございました。それでは、時間の都合で、次にいきたいと思います。資料1-4について、事務局から御説明をよろしくお願いします。

○近藤補佐 資料1-4、「HTLV-1抗体のスクリーニング検査について」を御覧ください。これは先月の第1回運営委員会で日本赤十字社より報告されたものです。1.現状についてですが、献血血液に対するヒトT細胞白血病ウイルスI型、いわゆるHTLV-1の抗体検査は、1986(昭和61)に導入され、既に30年以上たちますが、導入以降、輸血によるHTLV-1感染事例は報告されておりません。この抗体検査は、現在CLEIA法で行われておりますが、抗体陽性の製剤は出庫されておりません。抗体陽性となった検体については、ウェスタンブロット法による確認検査が行われ、検査結果は献血者に通知されております。

 このHTLV-1は、逆転写酵素構造を持つRNAウイルスですが、白血球のうちのTリンパ球に感染し、細胞同士が接着することで伝播することが知られております。平成16年より血小板製剤の白血球除去が開始され、平成19年からは全ての輸血用血液製剤が保存前に白血球(HTLV-1が感染するTリンパ球)が除去された製剤となり、更に安全性が高められてきたところです。現在、国のHTLV-1の総合対策の中で、HTLV-1の検査精度の向上や発症リスクの解明に向けて、標準的なHTLV-1ウイルスのPCR検査方法等の研究推進がなされているところです。なお、母子感染予防対策においては、ウェスタンブロット法で判定保留となった検体に対して、HTLV-1プロウイルスDNAを測定する核酸検査の有用性が示されてきております。

 そこで、献血血液の抗体検査で1.0のカットオフ値前後の値を示す微妙な反応性を持つ検体、すなわち前回検査で抗体陽性ウェスタンブロット陰性でも、次の検査で抗体陰性となったような検体635本を対象に、プロウイルスDNAの有無を日赤の研究所が検査したところ、15(2.4)で検出され、それらの検体はCLEIA法の抗体検査で0.50.9の間に分布していたとの結果でした。

 その結果を踏まえ、日赤は2015年3月以降、暫定的に献血血液のHTLV-1抗体検査で0.60.9を示した検体の出庫を見合わせ、その検体の中でプロウイルスDNA陽性検体がどのぐらい含まれるのかを調査したところ、次ページの4.調査結果のような結果となりました。CLEIA法で0.60.9の値を示した検体1,066本を対象に、プロウイルスDNAを検査したところ、8本(0.75)が陽性でした。そのうち、4人の献血血液は過去の献血においてHTLV-1抗体検査陽性であったため、製剤として出庫されていませんでした。残りの4人について、保管されていた検体中のプロウイルスDNAを検査した結果は、()の「保管検体(献血者A~D)のプロウイルス検査結果」という表です。A~Dの方の献血血液は抗体検査陰性であったため製剤化されておりますが、赤血球製剤に関しては、投与された症例(合計23)について遡及調査が行われた結果、献血後の検体を検査できた2例について、いずれも輸血による感染が確認されなかったとの報告です。

23名の遡及調査の結果については、委員限りになりますが、机上資料の別紙の資料を御覧ください。また、別紙の脚注の2)現在の輸血によるHTLV-1感染のリスクを評価した文献の「要約」にありますように、日赤が血液製剤で実施している保存前白血球除去により、現行の白除後の輸血用血液製剤でHTLV-1が感染する可能性は極めて低いと報告されております。

 元の資料の5.今後の対応についてです。2015年3月以降は、抗体検査でカットオフインデックス0.6以上の製剤は、出庫されておりません。検査技術の進歩により、これまでも抗体検査試薬の改良が進められてきたところですが、今回の日赤の調査結果を参考に、試薬メーカーは更に良い検査試薬の開発を日赤と共同して進めており、近い将来、改良された試薬が認可され、精度に問題ないことが確認されれば、早急に献血血液のスクリーニング検査に導入される予定とのことです。以上となります。

○半田部会長 質疑応答に移りたいと思います。委員の皆様、いかがでしょうか。

○濱口部会長代理 核酸検査について、ちょっとお聞きしたいと思います。ここでは陽性か陰性かということで出されています。追加の参考資料の中には、全体としてどのぐらいのコピー数が感染に重要だったかということが書いてあるのですが、カットオフ値が0.60.9のところの検体を核酸検査をしたときのコピー数等のデータが、もし定性法ではなくて定量法で測定されていて、お持ちであれば、どの程度のものだったのか教えていただければと思いますが。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 お答えします。ほとんどのものは0.01%未満でした。その中で、2、3本が0.5%というものと0.3%というのが一つぐらいずつあったと記憶していますが、そのほかのものは定量限界以下か、あるいは0.01から0.020.03%のものだったのです。

○濱口部会長代理 高いものはないということですね。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 高いものはないですね。先ほどの0.5ぐらいの高めのものは、極めて昔のものなのです。

○田野崎委員 これまでもウイルスがPCRで出てきても感染例がないということから、十分、今の段階でも安全であるということではあると思うのですが、一応、ウイルスが出ているものを献血製剤として使うのは難しいと考えて、安全性を考えると、このようにするのは仕方ないかなと考えられるのですが、一方で妊婦健診などでは、フォールス・ポジティブが非常に多くて、陽性とされている方に対しては、いろいろ問題にもなっているということが言われていると思うのですが、今度は男性も入ってくることになると思うので、例えば献血で陽性と言われたときには、御本人にそれをちゃんと教えて、更に細かな確認検査をすることが速やかにできるような体制がとられることに関しては進められる方がいいのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 告知のことでしょうか。

○田野崎委員 告知と検査と、両方になるかと思います。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 陽性の通知は現在でもしております。ウェスタンブロットで陽性だった方には全員通知してはいます。

○田野崎委員 そのときに、確認検査をすべきであるなどということについて、妊婦健診のときには更に細かなことをちゃんとお話していると思うのです。そういうことについてはいかがなのでしょうか。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 一つは妊婦健診のときと同じように、こちらでもウェスタンブロットでは判定不能がありますので、それについては核酸増幅検査等で、それも全部が分かるわけではないですが、少しでも確定率が上がることが感染研の濱口先生の研究班で分かってきていますので、日赤もそれをちょっと考えなければならないなとは考えております。

○半田部会長 医療機関には紹介されているのですね。医療機関には紹介、現在そういうトラックはあるのですね。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 もちろん、こちらでは全部医療機関とか、あるいは国の方では保健所も勧めておりますので、その効果は分かりませんが、そういったパンフレットは全部そろえて全員に通知してはいます。

○長村委員 確かに献血で陽性だったという方も、日赤の方から医科研に紹介いただいています。速やかに保健所というよりはやはり医療機関に行って、ムンテラも含めて、抗体陽性キャリアの可能性があるということで、医療機関に速やかに紹介される方がいいかと思いました。

○日本赤十字社日野経営会議委員HTLV-1陽性の通知をした経緯がありまして、スクリーニングを始めた当初から、厚生労働省と一緒に検討してきました。当時は凝集法という試薬でスクリーニングしておりましたので、凝集法とEIA法と別法で、当時はIF法という方法だったのですが、3法で陽性の方に対して通知していました。その当時から、日赤だけではなくて保健所も一緒になって、血液対策課がいろいろと動いてくださっていたという経緯がありまして、先ほど佐竹がお話したように、保健所もという話になっていたと思います。

○溝上委員 HTLV-1については、地域特異性が非常に強いという特徴がありますが、九州などの先行例では、どのようになっているかということを教えていただけると有り難いです。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 おっしゃるとおり、九州の方は血液センターからの通知がいきますと、医療機関に行かれる方が非常に多いですし、また向こうではいろいろなメディア等で一般の方がHTLV-1についてかなりよく知っています。ですので、向こうでは保健所もありますが、一般医療機関に直接行く方が非常に多いのですが、問題は地方の方です。こちらは医療機関を紹介するにしても、なかなかどこの医療機関を紹介したらいいか分からないというところが結構多いです。そこが非常に問題になっていて、血液センターから通知が行った人がどういった足跡をたどっているかといったところを、かなり大規模なアンケートを行いました。これは厚生労働省の研究班、AMEDの研究班でそういったことをやりましたが、実は医療機関等を受診する人はかなり少ないということが分かってきております。その辺は大きな問題になっています。医科研の内丸先生の研究班でそのようなことが分かってきております。

○半田部会長 ありがとうございました。次に、事務局の方から資料1-5の御説明をお願いいたします。

○金子専門官 資料1-5、「トロンビンの供給停止について」説明いたします。こちらの資料は5月31日の運営委員会で審議されたものです。1.経緯として、トロンビンは通常の結紮によって止血困難な小血管、毛細血管及び実質臓器からの出血に効能・効果がある製剤です。国内3社が製造しており、平成27年度の供給本数は約2.5万本、売上高は約3,700万円です。今般、一般社団法人日本血液製剤機構(JB)より、トロンビンについて供給停止としたいとの相談がありました。理由としては、トロンビン製剤には、ヒト由来製剤とウシ由来製剤がありますが、トロンビン市場が減少する中で、ヒト由来製剤のシェアが約2%と小さくなっていること、専用の設備で製造する必要があり、小量生産もあいまって不採算の状況であることが挙げられて、市場の大半を占めるウシ由来製剤で代替できると考え、販売中止手続に入りたいとのことでした。なお、ウシ由来製剤を製造販売するメーカーには、代替品として紹介することを了解いただいており、関係学会からも御理解いただいたとのことです。

 また、ウシ由来製剤の添付文書に重大な副作用の記載がありますが、国内での報告事例や発現頻度から見て問題ないと考えるとのことです。

 資料の裏、2ページに移って、JBからの相談を受けて、トロンビンを製造する他の国内2社に問い合わせたところでは、供給停止に関して異論はないとのことでした。

 2.対応案として、国内のトロンビン市場におけるヒト由来製剤のシェアが小さくなっており、ウシ由来製剤で代替可能と考えられること、不採算の状況であること、関係学会に御理解いただいたこと、ウシ由来製剤特有の副作用について問題は生じないと考えられることから、トロンビンについては供給停止に向けた手続を進めたいと考えております。ただし、原料血漿の有効利用の観点からは、各社において、トロンビンを使用した新製品の研究開発の取組をお願いする予定です。また、一部の他製剤の製造工程において、トロンビンを使用している現状や、危機管理上の観点から、承認を整理することについては別途、慎重に検討を行います。なお、ウシ由来製剤の副作用については注意深く情報収集を継続し、緊急時にヒト由来製剤を供給できるようにフォローアップを行う予定です。なお、5月31日の運営委員会においては、各委員から再生医療の分野でトロンビンの需要があると思われるので、再生医療関係の学会の意見を聞いた方がよい、献血由来の有効利用を考えていただきたい、ウシ由来製剤に副作用が出た場合に備えてリスク管理として代替の確保ができるよう考えていただきたいといった御意見を頂いております。

 今後の予定としては、運営委員会や本日の血液事業部会の御意見を踏まえた上で、今後、関係学会や医療機関などから供給継続の希望がないかを確認いたします。これらの結果を踏まえて、再度、年末に開催予定の血液事業部会に諮りたいと思います。以上、資料1-5について説明いたしました。

○半田部会長 委員の皆様、質疑応答はいかがでしょうか。

○鈴木委員 ヒト由来かウシ由来かといったら、普通はヒト由来と言われるのではないかと思うのですが、そのヒト由来のシェアが2%とほとんどないのは何が原因なのでしょうか。価格が同じだったらヒト由来を選ぶと思うのですが、何が原因でほとんどウシになってしまったのかを、教えていただけますか。

○半田部会長 事務局、いかがでしょうか。

○血液対策課長 今、直接的なデータはないのですが、一つは価格という指摘があるかと思います。あと、製造業者等にも確認をしますが、安全性の観点です。ウシ由来のものでも十分、これは欧米も含めてなのですが、既に世の中の趨勢がそういった形で、ウシ由来のもので対応するような状況になってきているというところかと思います。また、もう少し詳しく調べまして、委員の皆様にお知らせしたいと思います。

○鈴木委員 ヒトとウシで、価格はどのぐらい違うのかを教えていただけますか。それはすぐ分かるでしょう。

○血液対策課長 今データがないものですから、調べて、また後日、御連絡させていただきます。

○山口委員 今の件に関してなのですが、多分トロンビンというのは、もともとトロンビン時間を測定するとか、凝固時間を測定するという場合に使われるので、必ずしも直接投与ではないということであるのではないかと推察するのですけれども。ですから、価格というよりも、それだけではなくて、再生医療で、むしろヒトである必要が、どうしても要るところはもちろんあるのでしょうけれども、そうでないところもあるのだろうとは思うのです。

○半田部会長 これは医療用ということですね。試薬ではなくて、医療用のことについて言っているわけですね。違うのですか。そうですね。

○金子専門官 実際には、この2%のシェアのうちでも、結構多くの割合が体外診断薬の原料として使われているという実態がありまして、本当に医療用として使われているシェアはもっと小さいと聞いております。

○大平委員 トロンビンの話で、医療用で使われるにしても、また試薬として使われるにしても、2%というのは、全体の市場率としては、供給の2%がJBの問題なのですね。

○金子専門官 そうですね。2%のうちの約8割から9割をJBが占めていると。

○大平委員 市場を圧迫しているということで、よく遺伝子組換えでトロンビンが使われていることがあるということは、考えられるのですか。

○金子専門官 欧米の状況を調べたところですと、米国では遺伝子組換えのトロンビンが結構出ていまして、市場のかなりのシェアを占めるとは聞いております。

○大平委員 先ほど委員からの質問にもありましたが、ヒト由来のものとウシ由来のものとがどのぐらいのコストの差があるのかなどというのは、こういう議論をするのに土台がないとちょっと分からないので、そういうところも出していただいて検討した方がいいのではないかと思います。

○山口委員 別件なのですが、有効利用ということで、トロンビンを使うような開発をお願いしているという話なのですが、医療用具でトロンビンとフィブリノーゲンがもともと付いているようなものが、幾つか製品として出ていると思うのですが、それは海外メーカーばかりのような気がするのです。ある意味、需要はあるのではないかと思うのですが、日本企業が開発してくれないと、なかなかそういう需要を満たしてもらえないということがあるのかなと。その辺も本来どのぐらいトロンビンの需要があるのかを調べていただけるといいのかなという気がいたします。

○長村委員 これは本当にヒト由来のものが不要になったのか、それともほんのちょっとでも実は必要なところがあって、結局また海外からヒト由来トロンビンを輸入するような形になるのは本末転倒のような気がしますが、その辺りは大丈夫なのでしょうか。

○半田部会長 いかがでしょうか。

○血液対策課長 今、委員から御指摘があった点については、事務局としても非常に重要な課題というように認識しております。最後のところに「フォローアップを行って、慎重に対応する」ということの中には、実際ウシ由来に切り替えていく中で、どういった問題が出てくるのかということを情報収集していきたいと思っています。併せて、国内の生産体制を当面の間、維持して、必要な場合には供給できるような状況にもっていきます。今後、先ほどiPSのお話もありましたが、本当にiPSなどでヒト由来が永続的に必要であるという状況になりましたら、これはヒト由来のものを今後も供給できるような、そんな体制も併せて検討したいと考えております。

○長村委員 是非お願いします。

○岡田委員 2ページの一番下に書いてある「薬価削除に向けた手続」というのは、ちょっと早すぎるのではないでしょうか。

○半田部会長 早すぎるということですね。

○岡田委員 いろいろ検討する事項があれば、残しておいた方が、何かのときにはすぐヒトのものが使えると思ったのです。

○半田部会長 これは確認なのですが、日本製薬と化血研はヒトのトロンビンを生産しているのですね。

○血液対策課長 化血研は作っています。

○半田部会長 そうですね。日本製薬も作っている。

○金子専門官 作っております。

○半田部会長 ですから、二つ企業がある。JBだけではないので、代替があるということで、そこの部分が一番重要だと思うのです。よろしいでしょうか。次の議題に移りたいと思います。資料1-6の説明をよろしくお願いいたします。

○金子専門官 資料1-6について説明いたします。こちらも5月31日の運営委員会において、一般財団法人化学及血清療法研究所(化血研)から報告されたものです。4月に発生した熊本地震により、化血研の生産設備や機械などが被害を受けました。現在も大部分の生産ラインは停止しておりますが、一部の包装ラインなどは稼働を開始しており、今後も復旧した生産ラインから順次、稼働を再開すると聞いております。なお、臨床検査業務は通常どおり実施しているとのことです。

 化血研では、常務理事をプロジェクトリーダーとする震災復旧プロジェクトを震災直後に発足させ、被災状況の調査・確認や製品の生産・供給体制の復旧を行っているところです。

 3.の今後の対応についての中で、本年6月上旬を目途に、震災復旧プログラムを策定する予定とありますが、震災復旧プログラムについては、昨日、化血研からプレスリリースが出ており、それが一番後ろの参考資料7の2枚目以降になります。「平成28年度熊本地震」による影響について(第3報)を御覧ください。1.復旧状況として、原液生産は6月上旬より一部再開し、包装及び検査設備はおおむね復旧、充填設備は6月下旬から順次復旧する予定となっております。また、設備復旧や製品の安定供給を達成していくために、震災復旧プログラムを策定し、今後は本プログラムに沿って復旧を進めていくとのことです。なお、震災復旧プログラムには、社外秘の情報が多く含まれるため、その中から公開可能な情報を抜粋の上、「製品供給の見通し」として公表しております。

 2.製品の供給については、製品在庫、検定合格済みの中間製品、検定中の中間製品について、順次、包装や出荷を再開しているとのことです。詳細については、3枚目以降の「製品供給の見通し」を御覧ください。右下のページ番号4ページの資料に、血漿分画製剤の生産設備復旧及び製品供給の見通しがあります。こちらの表の右から二つ目の欄に、生産設備復旧の見通しとありますが、9月までには全ての製剤の生産設備が復旧する見通しです。また、一番右の欄の製品供給の見通しとして、代替製品がないなどの製剤については、市場在庫が一定量ありますので、早期に生産設備を復旧させることで、引き続き安定供給が可能であるという見通しとなっております。また、下の方の※2の製剤については、他社の代替製品の供給状況、製造施設等の復旧状況などを見ながら、出荷再開に向けて調整していく予定です。

 なお、表の下、欄外の※1の所で、化血研の全ての血漿分画製剤については、承認書と製造実態の齟齬等を解消するための一部変更承認を取得したことを追記しております。

 参考資料7の1枚目に戻って、昨日の化血研のプレスリリースを受けて、厚生労働省から「ワクチン・血液製剤等の供給について」というプレスリリースを出しております。記の3.ですが、血液製剤については、現時点では不足しないと見込んでおります。以上、資料1-6について報告させていただきました。

○半田部会長 委員の皆様、質疑応答をよろしくお願いします。いかがでしょうか。

○大平委員 早くに復旧の過程をたどるというのは大変重要かと思いますが、かなり破損されたり、また修復の所があったりということで、そこの内容についてはよく分からないところがありますが、その中で生産ラインなどが厚生労働省とかできちっと検査をされているのかどうか。それがきちっとされて、認可が滞りなく行われるのだろうと思いますが、そこは信頼を置いてよろしいのでしょうか。

○半田部会長 いかがでしょうか。

○血液対策課長 今後その復旧については、まず今インフラの整備が中心になっていると思いますので、そこをきちっと復旧していただくというところに注力しているところかと思います。生産体制が整いましたら、今度、生産に移りますので、いわゆるGMPとか、きちっと生産できるような体制についても、併せて今後、検査をしていくということになります。そういった復旧の状態と生産の状態を併せてみて、参考資料に表が出ておりますが、安定供給に向けて今、復旧作業を行っているということです。代替製品があるものとないものとで状況は多少異なっているのですが、代替製品がないとか、シェアの大きいものについては、ここにあるように安定供給に支障はないという位置付けになっており、ほかに代替品があるものについては、代替品も使っていただくということになると思いますので、全体としてみると、代替品も含めて血液製剤としては安定供給に特段の支障はないと考えております。そういった流れの中で、復旧計画を位置付けて、今後もしっかりと対応していくことを考えております。

○半田部会長 大平委員、よろしいでしょうか。

○大平委員 工場内の生産ラインの整備がきちっとされて、それが検査されて、通常の業務として変わりなく行われるようになるのかどうかというところが、安全性の問題などを含めて一番気になったところだったので、そこをしっかりと。これまで少し化血研の問題というのは、厚生労働省の方でも目が行き届いていないところがあったと思われるので、そういった点をきちっとやっていただきたいと、注文なのですが、よろしくお願いいたします。

○半田部会長 貴重な御意見を頂いたということで、よろしくお願いします。

○稲田委員 こういった災害、今回は熊本が上がったわけなのですが、災害は日本全国いつでもどこでも起こり得るということを考えると、分画製剤を含めて、血液製剤をどこで作っているか。それから、もしどこかが駄目になったとき、ほかの所が供給できるかとか、そういった全国的なネットワークみたいなものはあるのかどうか、ちょっとお聞きしたいと思います。

○半田部会長 いかがでしょうか。

○血液対策課長 御指摘の点は、健康危機管理の観点からも非常に重要かと思いますし、それについては従来からリスク分散をするということで、その一つの方策として、生産工場ですが、北は北海道から関東近辺、京都、熊本ということで、全国的に同時に震災が起こるということはなかなか考えにくいものですから、地域分散をして生産ラインを保つといった対応を考えているということです。それから、在庫について考えることが非常に重要かと思います。血液製剤の場合は、販社、卸しという流通在庫をかなり持っている所もありますので、流通在庫まで考えると全国いろいろな所に流通の拠点があるとため、今までリスク管理として、想定されるリスクへの対応をしてきたところです。

 ただ、今回の地震を踏まえて、自然災害だけではなくて、いわゆる法律に関するコンプライアンスの問題等も発生したということも踏まえて、そこは安定供給に関するリスク管理の体制をしっかりと構築していく。また、先生方から今後いろいろ御意見を頂けると思いますので、そういった御意見を踏まえて、より確実な供給体制を目指していきたいと考えております。

○稲田委員 ありがとうございました。

○半田部会長 ほかにいかがですか。よろしいですか。それでは、議題2に移りたいと思います。「平成28年度適正使用調査会の審議結果について」、資料2-1の説明をよろしくお願いします。

○近藤補佐 資料2-1「血液製剤の使用指針」の一部改正案についてです。これは5月20日に行われた平成28年度第1回適正使用調査会で審議され、国に答申された事項の報告です。まず、血小板製剤について御説明します。

 現行の血小板製剤は、血漿に浮かした状態で製剤化されていますが、血漿中に含まれる物質によって、蕁麻疹、発熱、呼吸困難、血圧低下、アナフィラキシーショックなどの副作用を起こす方がおります。種々の薬剤の全投与を行っても副作用の発生を押さえることのできない患者に対しては、血小板製剤の血漿を洗浄・置換液に置き換えることで副作用を軽減させることができることから、学会で指針が作られております。それに関しては参考資料2を御覧ください。

 参考資料2は、洗浄・置換血小板の適応及びその調製の指針(Version ) です。これは、日本輸血・細胞治療学会が策定したもので、洗浄・置換血小板が、より安全、かつ適正に調製・使用されることを目的として作成されております。

 資料2-1に戻り、経緯に関してですが、医療機関からは、かねてより洗浄血小板の製剤化について要望があり、日本輸血・細胞治療学会及び日本血液学会からも製造及び供給に関する要望書が寄せられていたことから、今般、日本赤十字社が平成28年3月28日付けで、照射洗浄血小板製剤の製造販売承認を取得したことを受けて、当該製剤の適正使用を推進するため、「血液製剤の使用指針」の一部改正を学会の先生方の御協力を得ながら、検討いたしました。

 3枚目にある別添資料は「洗浄血小板製剤の医薬品製造販売承認の取得について」というものです。承認された品目は、照射洗浄血小板-LR「日赤」と、照射洗浄血小板HLA-LR「日赤」ですが、各々200mL10単位製剤で、本年9月の供給開始に向けて準備していただいております。

 製造方法に関してですが、自動血球洗浄装置と血小板保存液を用いて洗浄し、血小板製剤の血漿をこの保存液に置換して血小板を浮遊させたものとなります。

 効能・効果については、現行の血小板製剤と同じです。有効期間に関しては、保存液が改良されたことから、製造後48時間となっております。ただし、採血後は4日間を超えないこととしております。現行の濃厚血小板製剤と洗浄血小板製剤の添付文書については、参考資料4と5に添付しましたので、適宜御参照いただければと思います。

 資料2-1の1枚目に戻り、改正の主旨に関してです。洗浄・置換血小板に関する項を、現在の血液製剤の使用指針に新たに設けて、対象患者を示して、また根拠となる文献を示しております。

 概要です。1)アナフィラキシーショックなどの重篤な副作用が1度でも観察された場合、2)種々の薬剤の前投与の処置等で予防できない蕁麻疹、発熱、呼吸困難、血圧低下などの副作用が2回以上観察された場合、3)やむを得ずABO血液型不適合の血液製剤を輸血する場合で、輸血しようとする製剤の抗体価が128倍以上の場合、又は患者が低年齢の小児の場合、この三つの状態にある患者に対しては、血小板製剤の輸血による副作用を防止する目的で、血小板を洗浄した後、患者に投与することが望ましいと追記しました。具体的な改正案については次のページの新旧対照表を御覧ください。また参考資料2に、学会の指針がありますが、こちらはエビデンスに基づいた指針であり、血小板洗浄術加算においても、この学会の指針を参照することとなっております。医療現場の混乱を避けるため、表現ぶりに関しては、今回は学会の指針に合わせたものとさせていただいております。

 2)種々の薬剤の前投与の処置等についてですが、こちらも学会の指針に合わせたもので、種々の薬剤は単剤投与による処置も含まれるとの解釈とします。

 3)「患者が低年齢の小児の場合」という箇所に関して、委員より年齢や体重を明記すべきではないかという御意見を頂きましたが、学会の先生及び適正使用調査会座長との協議の結果、エビデンスがまだ十分にないことから、そのままの表現にしています。

 3ページを御覧ください。こちらは日赤の製剤名変更に合わせて修正することになった項目を四つ記載しております。一番上の「赤血球濃厚液」という表現ですが、現行製剤では赤血球液に統一されたことから修正しております。なお、「赤血球製剤の製剤名の変更は現場での混乱を招くのでは」という適正調査会の委員からの御指摘を受けて、参考資料3の63ページの「参考15」に、赤血球濃厚液の製法と性状という項目がありますが、現在の実態に即した正確な記載にすべく、学会及び日赤血液対策課で検討した案を作成しました。作成した案に関しては、机上配布資料でお配りしている「血液製剤の使用指針()」を御覧ください。こちらに関しても6364ページにかけての項目になりますが、赤字で追記した部分を御確認ください。

 もう一つ、机上配布参考資料として、3枚の紙の新旧対照表も付けております。こちらでは全ての項目に関して新旧対照を網羅しております。なお、洗浄血小板製剤の有効性や安全性に関するフォローアップに必要な情報に関しては、今後、学会や日赤の協力を得ながら情報収集等に努めてまいります。以上です。

○半田部会長 今回、血液製剤の使用指針を改定するということで、一つは洗浄置換血小板の適応等々について加えたこと。もう一つは、現在の赤血球製剤は「赤血球液」という名称になっているので、前回、その前の「濃厚液」を削除して、「赤血球液」に全部変えたという内容です。

 それでは、委員の方々、質疑応答をよろしくお願いします。いかがですか。

○室井委員 洗浄血小板は製造許可されてできたものだと思うのですが、こういう製剤は、海外では製品として認可されたものはあるのでしょうか。

○日本赤十字社五十嵐技術部次長 全部調べ切れているわけではありませんが、イギリスの製剤のプライスリストの中に、洗浄がプレミアムという格好で書かれています。例えば赤血球製剤にも薬価が付いているのですが、それに加えて幾らという書き方がされているのは確認しています。

○室井委員 特別なものという意味では、そうですね。

○日本赤十字社五十嵐技術部次長 そうですね。ほかにプレミアムとなっているのは、例えばHEVの検査とか、そういうものも含めてプレミアムという万能性の価格として設定されているものがあります。

 あとは製剤として医薬品の承認を得たものがあるかと言われると、確認はできていない状況です。

○室井委員 この製品はすごく大事にしてほしいと思うのです。是非お願いします。

○半田部会長 よろしいですか。花井委員。 

○花井委員 一つ気になるのは、今のプレミアムの話で、これも明らかにプレミアムなのですが、ただし、有効性も効能・効果も同じものとして出るので、薬価も当然、同じ値段が付くと思います。そうすると、病院のオーダーに100%応えられない状況が出てくることがないかというのが、一番の懸念です。

 先ほどのABOで、今どき、まさかABOで今はないからということはないと思いますが、例えばB19陰性とか、いろいろ細かいオーダーがあって、現状は赤十字社として輸血血液製剤で病院のオーダーに応えられないとか、例えば1単位、2単位というのもあるかもしれませんが、そういうのはどの程度あるものなのですか。

○日本赤十字社五十嵐技術部次長 ここで規定しているABOというのは、主にLHマッチを優先して、ABO型は異型のものを使うということがあります。

○花井委員 それは、まだありますか。

○日本赤十字社五十嵐技術部次長 まだあります。Rh-とかもあり得る。

 

○花井委員 というのは、一般論として、例えば2単位なのに1単位しかないとか、結構、病院の現状はこうですから、今回の例で言えば、洗浄血小板がまだちょっと足りないので、その症例のときは普通の血小板を使ってほしいみたいなことが起こり得るのか、起こり得ないのかというところが気になるところです。

○日本赤十字社日野経営会議委員 日野です。その部分に関しては、厚生労働省も今回指針を改定していただいた後ということもあって、日赤とすれば、今のところは9月の時点では製造キャパがあるというのは事実です。

 そういう意味もあって、今後に向けて、その通知が出た後に日赤の方から医療機関側にも指針の主旨を御理解していただきながら、やっていきたいと思います。

○花井委員 それに関しては事実上、指針の書きぶりは、こういうときに使いなさいと書いてあるのですが、事実上、添付文書に代えて、この指針に沿って使うものであるということを情報提供して、そのような供給をするという理解でよろしいですか。

○日本赤十字社日野経営会議委員 そうです。

○花井委員 分かりました。ありがとうございます。

○大戸委員 別添の資料で、承認品目が洗浄血小板は全部10単位です。患者が低年齢の小児の場合、体が小さい子供を想定している一方で、10単位しか洗浄しないということになると、著しく小児は不利益になるのではないか。10単位購入して二つに分けて、半分は廃棄せざるを得ないような状況が考えられますので、整合性を取るならば、5単位製剤も承認してほしいと思います。

○半田部会長 今の5単位製剤、小児用にはという話ですが、何かありますか。

○日本赤十字社五十嵐技術部次長 今回の洗浄血小板の製造には、ACP215という血球洗浄装置を用いています。この洗浄装置のキャパが決まっていて、200mLの製造しか作れないのです。そういう理由で10単位に限定させていただきました。

 あと、洗浄工程で血小板が減少しますので、同様に高単位の血小板も洗浄するとなると、そのドナーの確保が困難になるという理由から、10単位製剤のみとさせていただいています。

○大戸委員 10単位製剤というと、価格が8万円か9万円します。5単位製剤ですと、4万円か、4万5,000円ぐらいだと思います。そうすると、精々5単位か、本当は2単位とか3単位でもいい人が10単位を購入しなければならないと保険医療を考えた場合に、保険に負担をかけることになります。

 もし、現実的に間に合わないのであれば、近い将来、5単位製剤の洗浄も目指すとか、そういう一言は入れるべきだと思います。

○半田部会長 大変貴重な御意見を頂きました。小児の場合、体重等々の適応用件を設ける必要についての御意見を大戸先生から先の適正使用調査会でいただいたわけですが、この辺も今後検討していくということでよろしくお願いします。ほかにいかがですか。

○田野崎委員 洗浄血小板は副作用が少ないということで、実際に臨床の現場では、非常に多くの医者がこれを使いたがっているというのが実際のところで、今は病院内で洗ったりするのも、製剤に手を掛けることになるので余り好ましくないと思いますが、実際には少しでも副作用が出てきた場合には、程度にもよると思いますが、洗浄血小板をという声がどんどん高まる可能性が高いと思います。できれば日赤としては、供給が間に合わないというのではなくて、将来的にも、これをどんどん生産できるような方向で検討していただくというように、ユーザー側はみんな思うのではないかと思います。このような方向性でよろしいでしょうか。歯止めが掛からないような場合にペナルティーがあるわけでもないですし、いかがですか。

○日本赤十字社日野経営会議委員 日赤の血小板の戦略と言いますか、今後の在り方について、今、検討しているところです。今回は3月28日に、この洗浄血小板を承認いただきましたが、近い将来は全ての血小板に対して、いわゆる置換血小板と言われているもの、そこはメーカー側が使っている置換の意味が少し違うかもしれませんが、なるべく輸血副作用が低減できるような血小板も検討しているところですので、そういったものもメーカー側には話をしていく必要があるかと思います。

○田野崎委員 もう一点、これで出てきた血漿はどのように利用していくのでしょうか。

○日本赤十字社日野技術部次長 先生がおっしゃられたのは、洗浄血小板の置換の方ですか。

○田野崎委員 そうです。

○日本赤十字社日野経営会議委員 置換血小板に関しては、第一義的な製剤の考え方は、もちろん輸血副作用の低減ということですが、もう一つの効果としては、大体100120mLぐらいの血漿を、別に分離することができますので、そちらの部分に関しては原料血漿に有効活用できるものと考えています。

○半田部会長 よろしいですか。ですから、洗浄血小板のときに上澄みの血漿は洗浄液で薄めてしまうから、それは使えないということで、廃棄するというか、有効には使われていないということですね。将来、置換血小板というものができた場合には、その血漿がよりセーブできて、それを原料血漿に回すことができるということですね。

○日本赤十字社日野経営会議委員 そうですね。

○半田部会長 よろしいですか。ほかにいかがですか。それでは、続きまして、資料2-2の説明をお願いします。

○近藤補佐 資料2-2の説明をいたします。こちらも第1回適正使用調査会にて報告された事項となります。「血液製剤の使用指針」ですが、平成17年に大きな改正が行われてからは小改正を繰り返してまいりました。大改正から10年以上たつことから、平成25年度から厚生労働科学研究事業で、名古屋大学附属病院輸血部の松下班長が主任研究者となり、「科学的根拠に基づく輸血ガイドラインの策定等に関する研究」が行われてまいりました。

 適正使用調査会の当日は、松下研究班長に参考人として御参加いただき、研究概要と、一部成果について御発表いただきました。血液製剤の使用指針に関しては、貴重な献血を有効かつ適正な使用を推進するという血液法の理念に沿って、国が策定している指針です。これまでも学会の先生方の御協力の下で作成してまいりました。

 血液事業部会適正使用調査会で御審議いただき、血液事業部会運営委員会にも報告しております。今回の科学的根拠に基づく学会のガイドラインを策定するに当たっては、3ページの左上にありますように「Minds」という診療ガイドライン作成の手引2014に沿って作成されております。

 学会ガイドラインの策定後どのように国の血液製剤の使用指針を改正していくかのプロセスについては、その右を御覧ください。大きく赤血球輸血、血小板輸血、FFP・凝固因子製剤輸注、アルブミン輸注療法、大量輸血療法と分けられております。それぞれに対して国にClinical Question(CQ)を設定し、システマティック・レビューによるエビデンスの検索・抽出が行われ、エビデンスの総体に対する評価が研究班の先生方の中で行われ、推奨グレードが決定されてきました。具体的な作業内容について、本日は割愛いたします。

 今後のスケジュールです。9ページの指針の改定に向けてという所です。今後、研究班の報告書が出来上がった先に日本輸血・細胞治療学会誌への投稿、また、パブリックコメント、出版を経て指針の改訂に向けた作業が始まります。

 この成果を基にして今年度中に国の指針改正をすることに向けて適正使用調査会の先生方及び日本輸血・細胞治療学会の先生方の御協力を得ながら改訂作業を開始し、今年中には新たな指針案を提案することを考えております。なお引き続き、松下班長が中心となり、もう一つの国の指針である輸血療法の実施指針の改正に向けてもAMEDの研究事業が今年度から始まっております。以上です。

○半田部会長 ただいまの説明に関して御意見、御質問、委員の方々、よろしくお願いします。

○大戸委員 この血液製剤については、輸血関係者よりも、実際に現場で使う臨床各科に与える影響の方がずっと大きくなると思うので、臨床医の意見が重要だと思います。これは輸血学会に言うのは変なのですが、輸血学会誌に投稿した後、パブリックコメントではなくて、パブリックコメントをもらうのは同時並行で構わないと思うのですが、順番としては、もっと早くから臨床の外科、内科、産婦人科、麻酔科あらゆる所に早めに、こういう案で動いていますということを通知していただければと思います。

○近藤補佐 貴重な御意見をありがとうございました。

○半田部会長 昨年アルブミンのガイドラインが新しく出来て、輸血・細胞治療学会では、出版される前にパブリックコメントを取ったと思うのですが、それぞれの関連学会へのコンセンサスを求めるようなアクティブなことはやっていなかったと思います。ですから、先生が今おっしゃったことは前もってアクティブに関連学会に意見を求めるということでしょうか。

○大戸委員 はい。

○半田部会長 ただ、パブリックコメントを求めるということではなくて、ということでよろしいですか。

○大戸委員 はい。

○半田部会長 ほかにいかがでしょうか。今のところ、改定に対するタイムスケジュールはどのようになっているのですか。

○近藤補佐 今年中には、秋の適正使用調査会までには改正案みたいなものを、学会の先生方の協力を得ながら、作っていきたいと考えております。

○半田部会長 よろしいでしょうか。次回の改定は本当に基本的な改定になりますので、非常に大きなことだと思います。よろしいでしょうか。御意見がないということで、それでは、議題の「その他」です。説明をお願いします。

○近藤補佐 議題3「その他」です。参考資料6は「適正使用に関わる最近の動向、関連調査について」です。こちらも第1回適正使用調査会にて虎の門病院輸血部長の牧野参考人に御発表いただいたものの報告です。

 背景としては、昨今、輸血療法が大学病院の外来だけでなく小規模医療施設へ広がってきた事情があります。輸血の副作用は輸血直後や輸血中のみならず、1枚目の図1にありますように輸血開始後2時間以上たってから見られる副作用も報告されております。外来で輸血された患者さんが帰宅後に症状が発現する可能性もあり、患者さん自身がどのような輸血療法を受け、その副作用にはどのようなものがあり、症状が見られたときにはどこに連絡すれば良いかについて把握しておくことが望ましいと考えております。

 患者様へ伝える方法については各医療機関に任されております。2ページの上の図2を御覧ください。これは平成26年度に行われた血液製剤使用実態調査報告からの抜粋です。外来にて輸血して病院を離れた後に副作用が発現した場合の対応策を決めているかどうかについてのアンケート調査結果です。2,471施設から回答があり、約3分の2の施設は口答説明を行っていると答えております。特に決めていない施設が約21%の530施設、パンフレットを手渡している施設は約13%の322施設、輸血手帳を作成して輸血に関する情報提供と連絡方法等を記載していると回答した施設は17施設ありました。そこで、この調査会では虎の門病院及び東京都輸血療法研究会での輸血手帳を使った取組について御発表いただきました。詳しい内容は3ページ以降を御覧ください。この輸血手帳がよりよいものになるように、現場の声を反映しながら改定を行っていくことです。

II.平成26年度血液製剤使用実態調査結果の訂正についてを御覧ください。国の事業として、血液製剤使用実態調査を日本輸血・細胞治療学会に委託して行っており、これは血液製剤の適正使用を推進する上で貴重なデータとなっております。昨年10月に行われた平成27年度第1回適正使用調査会において、日本輸血・細胞治療学会から調査結果を御報告いただきました。その後、一部の医療機関のアルブミンとグロブリンの入力データが訂正され、より正確なデータが上がってまいりましたので改めて調査会で御報告いただきました。8、9ページのグラフです。それぞれ上が修正前で、下のものが修正後です。

 当学会には、再発防止策として、今後はアルブミン製剤をグラム数ではなく、本数での報告を医療機関にお願いすること、また、極端にデータが動いた都道府県には担当者に知らせること、また、最終的なデータチェックを都道府県及び当学会調査統計委員会のメンバーでチェックしてから発表することなどを挙げていただきました。報告は以上です。

○半田部会長 ただいまの説明に関して、質疑応答をよろしくお願いします。いかがでしょうか。

○室井委員 輸血手帳はすごくいいと思うのですが、これは厚生労働省が一般化したいと思っているのですか。つまり、どのぐらいで使えるようなものにしたいという考えなのでしょうか。

○血液対策課長 御指摘ありがとうございました。今回、調査会で手帳に関する情報提供を頂き、以前から全国でこういう手帳を用いる話がありました。今回、この事業が試行的に始まりましたので、数年間状況を見つつ、実績報告も上がってくるかと思いますので、成果を踏まえた上で、今後の対応を考えていきたいと思っております。今後、先生方からもいろいろな御意見を頂いて将来的に、少しオールジャパンで考える必要性等がありましたら、是非、御意見を頂ければと考えております。

○濱口部会長代理 私もこの輸血手帳は非常にいいなと思っております。輸血を行った後に、その人が一生どういう状況になるかということをモニターしていくということは、非常に重要なことだと思います。4ページですが、輸血実施記録というものがあり、ここの部分に赤血球、血小板、単位数、いつ行ったのか等が書かれています。将来的に、どの製剤が投与されたのかということまで記録として残っていると、いろいろな意味でその後のモニターが非常にうまくできるのかと思います。

 現状においては、まだスタートしたばかりということなので、この程度でも結構だと思うのですが、将来的には製造番号をそこに入れておくということで、いろいろな情報が、単なる手帳というだけではなくてチェックできるのではないかと思っております。これは一つのアイディアです。

○大平委員 こうした手帳というのはとても有益だと思います。ただ、患者の立場から言いますと、お薬手帳等、いろいろな手帳が交付されるようになって管理が大変だなということが一つあります。長期的に輸血の問題はフォローが必要なのだろうと思いますので、何か、もう少し簡便で、そして、ほかとデータの共通性、関連ができるような形を考えていただけると管理がしやすいのではないかと思います。最初の試みとしては大変いいことだと思います。

○半田部会長 非常に貴重な意見を頂きました。ほかにいかがでしょうか。

○長村委員 東大医科研でも輸血手帳を作ってみて、今、運用しております。移植が多いので血液型が変わる等の情報も入れたりして。あと今、濱口先生がおっしゃった製剤は手帳にシールを貼れるようにしてあります。手で書くと面倒くさいのですが、そういう工夫があるといい。ただ、生化学も入れているのですが、余りたくさん入れすぎると、誰が書くのですかというところになります、その辺が少しジレンマです。

 あと大きくなりすぎると、持ち運びしにくくて患者が持っていらっしゃることを忘れてしまうということがあります。

○半田部会長 非常に貴重な現場からの意見ということで、ありがとうございました。ほかにいかがですか。よろしいですか。事務局は今の御意見も参考にして事を進めていただければと思います。

 本日、用意した議題は以上ですが、ほかに何かございますか。

○鈴木委員 前回、3月2日に、当部会で血漿分画製剤の連産で余った分画を、今は輸出が禁止されておりますが、それを認めてもいいのではないかという議論が出たと思います。それについて事務局からゼロベースで見直すという回答があったと思うのですが、その後、どのような見直し作業が行われ、いつ頃までに結論が出るのか教えていただけますか。

○血液対策課長 御指摘ありがとうございました。前回のこの部会で、ワクチン・血液製剤産業タスクフォースの件を紹介いたしました。その中で、今御指摘があったような海外に血液製剤を輸出していくような論点について議論されております。検討状況は、多くの方に御意見を頂いておりますので、その意見の取りまとめをしている最中です。外部の有識者の方々にも加わっていただいておりますので、そういう方々から今後、意見を頂いていく中で報告書をさらに取りまとめていくことを考えております。

 現時点では、例えば、何月に報告書が取りまとまるということまでは決まっておりませんが、血液事業部会とも非常に関係が濃い内容になると思いますので、この部会とは密接に連携を取る形で今後も考えていきたいと思っております。

○半田部会長 ありがとうございました。鈴木委員、よろしいでしょうか。

○鈴木委員 わかりました。

○半田部会長 ほかにございますか。

○山口委員 1点だけ、1-1のことで質問し忘れたことがありましたので、教えてほしいのですが、4.の段階で「保留」になっている、いわゆる5,000万人分の献血のセグメントが10年以上たつと廃棄されていくものを有効活用するという点なのですが、それは非常に結構なことだと思います

 多分、有効活用していこうと思ったときに、その後きちんとピックアップする。要するに何が言いたいかというと、層別された、例えば、年齢別等を割ときちんとできるシステムは、日赤で出来上がっているのでしょうか。結構、これは使おうと思うと、500万人ですので、非常に貴重なサンプルだと思うのですが、層別してやった方がいいというケースは結構あると思うので、その辺のシステムはどのようになっているのか、もし分かったら教えてください。

○日本赤十字社佐竹経営会議委員 先生のおっしゃるとおり、そこが一番問題で、実際にはかなり分類しづらい格好で保存されております。ですので、それを一つ一つ層別に、あるいはいろいろな統計に耐えられるようなシンプルな並び方にするということ自体が極めて困難なことですので、そこが一番の問題です。そこを何とかしていかなければならないので、今考えているところです。

○山口委員 ICチップを入れて、多分、今は入っていないと思うのですが、そうすると情報と結果の両方を合わせられるのかと思ったものですから。

○半田部会長 ほかにはございませんか。それでは、次の日程等については事務局から連絡をお願いしたいと思います。「薬事・食品衛生審議会薬事分科会平成28年度第1回血液事業部会」を終了いたします。本日は皆様ありがとうございました。

 

                                        


(了)

備考
本部会は、公開で開催された。

連絡先:医薬・生活衛生局 血液対策課 課長補佐 近藤(2905)

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