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2016年4月1日 第5回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会 議事概要

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

2016年4月1日 14:00~16:00


○場所

厚生労働省専用第22会議室(18階)


○出席者

青野氏、磯山事務局次長、浦野氏(WEB参加)、大内氏(WEB参加)、金丸座長、小林(庸)氏、小林(り)氏、冨山氏、中野氏(WEB参加)、松尾氏、御手洗氏、柳川事務局長、山内氏、山川氏

○議事

○金丸座長 

定刻となりましたので、ただ今から第5回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会を開催いたします。皆様におかれましては、大変御多忙の中をお集まりいただきましてありがとうございます。本日は浦野さん、大内さん、中野さんはWeb会議で御参加です。なお、今回より皆様のお手元に、これまでの当懇談会の資料をまとめたファイルを置いておりますので、必要に応じて御参照いただければと思います。

1つ目の議題は、山内様から資料1に基づき「高付加価値サービスを支える働き方について」というテーマで御説明をいただきます。それでは、山内様よろしくお願いいたします。

 

○山内氏 

山内です、よろしくお願いいたします。本日はテーマを頂いたものの、それに対するお答えを持ってこられるというわけではないものですから、関係しそうな、私どもが今どういう働き方、あるいは社員がどういうことを考えながら今現在提供させていただいているサービスを維持しているのか。このようなことを報告させていただいて、そこから少し掘り下げながら、もし御討議いただけるような形になれば幸いかと思います。

 パワーポイントの資料を付けさせていただいておりますので、1枚おめくりください。これは、自己紹介レベルの内容です。ポイントは2段目にあるように、グループに社員が19万人います。特に宅急便サービスをさせていただいております社員は、ヤマト運輸で現在16万人います。これが全国4,000か所に分かれて、皆様の地域地域の中でサービスを提供し、日々宅急便を集荷、配達させていただいています。4,000か所と申しましても、1つの店、これをセンターと呼んでおりますが、それぞれのエリアを担当していて、大体1センターに20名ぐらい、社員がフルタイマー、パートタイマーを合わせて構成しているのが現在の形です。従って、分散型の組織であるというのが、全体統制が難しい組織である、ということが私どもの特徴です。

 真ん中にある宅急便の個数は、年間で16億個、今年は17億個取り扱いさせていただきました。約1500万個を皆様からお預かりして、500万個をお届けしています。これを、およそ5万人の社員が実際にお届けしています。500万人のお客様からお預かりして、500万人のお客様にお届けするということで、それだけ多種多様な方々にお会いして、サービスを提供させていただいています。これが私どもの特徴になろうかと思います。

3ページは会社の沿革で、自己紹介のようなものです。私どもは1919年に創業し、あと3年後の2019年で100年を迎える会社です。また、宅急便は、今から40年前にスタートしており、今年でちょうど40歳になります。おかげさまで今では個人の生活の中、あるいはビジネスの中で御利用いただいており、社会的インフラになれたかなという感覚を持っています。

4ページでは、宅急便の色々なサービスを作ってきたことを御覧いただきます。これは年数とともに宅急便の個数が伸びてきた歴史的な推移です。色々なサービスを次から次へ作っていくことにより、お客様に喜んでいただくことはもちろんのこと働いている社員にとっても、お客様から、「ヤマトさん、今度また新商品が出たね」とか、「あれいいね」と言われることによって、どんどん働く喜び、誇りが持てる。それで、またお客様の声を拾い上げてくる。それが商品、サービスにつながる。私どもの中では、第一線でお客様に接している社員が色々な声を拾い上げながら、サービスに結び付ける、開発に結び付ける、こういうサイクルができている。こういう歴史的なものを積み重ねてきたことがヤマトの強みかと思います。この色々なサービスを出していくということが、実は働き方にも大きな影響を結果的には与えてきたということかと思います。

5ページは、そんな中で働き方をお話しするのに、私どもの宅急便というサービスがどんな特徴を持っているかという説明です。宅急便はもちろん製造業ではなくサービス業です。サービス業の特徴である無形性。それからサービスを提供すると、それと同時に消費も行われるという、生産と消費が同時に行われる同時性。サービスは、今の段階では人がサービスをしておりますので、お伺いしているセールスドライバーという社員、この人による生産性の違い、あるいは品質の違いが非常に大きく出ます。

 詳しく言うと、無形性というのは、サービスというものには形がないものですから、お客様は事前に製品を手で確認することができません。ですから使ってみないと分からない、使って初めて良さが分かる、これがサービスの特徴かと思います。製品がないがゆえに、私どもの場合はお伺いしているセールスドライバーが、ある意味商品ということになるわけです。例えば、山川さんの所へお邪魔しているセールスドライバーの態度がすごくぞんざいで態度が悪いと、そのドライバーが悪いのではなくて「ヤマトさんは態度が悪いね」となるわけです。逆に、お邪魔させていただいているセールスドライバー心配りができて、良い対応であれば、「あっ、ヤマトさん良いね」となります。サービス業であるがゆえに、形がないがゆえに、人そのものがサービスの質を決める形になる。これが無形性ということです。従って、人の重要性が非常に出ます。

 次に同時性についてですが生産と消費が同時に行われる。ですから当然サービスをためておくことはできません。製造業であれば、事前に作ったものを検品チェックして、不良品をはじくなど、色々な手立てを先にすることができるわけですが、サービスは同時に行われますので、瞬間瞬間が勝負になります。従って、このことからも、働いている人次第、ということになります。サービスをする人間が、ある意味で商品そのものとなるというのは、この同時性から来る特徴です。

 最後に人的依存性ですが、サービスを提供するのが人であるがゆえに、セールスドライバーがお客様に褒めていただき喜んで良い仕事をしたいと思っていると、生産性も上がりますし、サービスの質も上がる。ところが、出掛けに喧嘩をすると、本当はいけないのですが、それをちょっと引きずって、サービスの質や生産性を落としてしまう。人の働く気持ち、モチベーションによって非常に大きく左右される、これが製造業とは違うサービス業の特徴と言えるかと思います。

 従って、私どもはサービス業であるがゆえに、お客様に接する第一線のセールスドライバーが社内では一番重要だという位置付けにしております。サービスを提供する第一線のセールスドライバーが、お客様の色々なニーズ、御要望といったものも拾ってきます。私どもの会社の原動力になっています。一人ひとりの働き方が非常に重要である。それを会社も認めて、そういう働き方をしているというのが、私どものサービス及び働いていただく方との関係における特徴と言えます。

 では次に、一人ひとりどうやってその働き方をあるべき形にしていくのかということについてお話ししたいと思います。6ページは、「原動力としての内発的動機」と書きました。良いサービスを会社の代表として提供できる社員を、分散型組織の中で、管理型でない方法でどうやって維持していくのか。マニュアル管理だとか、統一管理というのは無理です。4,000か所もあって、同時に毎日大勢の社員が働いています。私なりに考えると、そこには3つのポイントがあると思っています。

1つは価値観・理念の共有です。クロネコヤマトの社員はどういう価値観を持つべきか。私達は、世のため人のために役立ちたい、役立つことでお客様に喜んでいただきたい、そしてそのことは自分にとっても嬉しいことなんだという価値観を会社として持っていますし、それを社員と共有するような形で日々行っています。もちろん研修もありますが、研修というよりも日々の仕事の中で、そのチームの中でそういう思いを持って働いている。正直、お客様に相対してお客様が喜んでくれることを嬉しいと思えない社員、効率重視で面倒くさいとか、人と相対するのがおっくうだ、というような社員は弊社では続きません。辞めていってしまいます。

そういうことでいくと会社の価値観が、自分の感性、自分の性格に合っている方にだけ残っていただいている。そういう意味で、働いている方の向き、不向きというのも価値観の共有の中に入っているのかと。そういうことをずっと維持するためにも、我々の理念・価値観は「私達はお客様に喜んでもらうということを常に追求するんだ」、という思いを常に持つ。ここは会社として揺るがない1つの特徴です。

2つめのポイントが自主性の発揮です。価値観が共有できていると、それに基づいて自主性を発揮しやすい仕組み作り、環境作りをするようなります。「思い」はあっても、それを実際に発動できるような環境にないと、先ほど言ったように、なかなか一人ひとりが動く形にはならない。一人ひとりが自主的・自律的に動けるためには、自分で判断して自分で動ける環境をやはり作っておくべきだと思います。

3 つめのポイントが承認です。自分の責任においてしたものが成果につながると、今度はその成果を正しく認めることが大切です。そのための仕掛けを社内では色々と用意しています。これによって承認される喜びといいますか、自分の存在を確認できるということが、結果的に自分の「喜び」であったり「誇り」につながり、自分の仕事へのこだわる思いとかにつながっていくのではないでしょうか。

 この承認される、正しく認めてもらえることがあることによって、それが実感されて、また次につながり、グルグル回っていくような仕掛けになります。これによって、働く社員が誰かの指示で、あるいは管理の下で働くのではなく、自主的・自律的に自分で動いていく。そういうものをこの内発的動機として捉えています。これがあることによって、今までにないプラスアルファのサービス、プラスアルファの心遣いなど高付加価値なサービスが生み出せたり、あるいは日々接している中で、高付加価値なサービスを提供することができます。

 それでは、この3つをどのようにして実践していくのかということを次にお話します。3-1を御覧ください。まず価値観・理念の共有についてです。これは、理念として共有している私どもの社訓です。「ヤマトは我なり」という全員経営の考え方、2つ目の「運送行為は委託者の意思の延長と知るべし」という、サービスが先、利益は後という考え方、3つ目の「思想を堅実に礼節を重んずべし」という会社として法を遵守し、正しい姿勢として会社はあるべきなのだという、コンプライアンスの姿勢。この3つを社訓として、毎日毎日全社員が唱和しています。これを徹底しております。

 この社訓が概念だけ、言葉だけにならないようにそれがどういう行動なのかを、皆で事例を共有しながら、あるいは仕事の中で先輩から後輩に指導し、実践できるようにしています。物流行はAIが進化するとなくなる仕事と言われています。理念を実践していく力はAIでも研究したり経験を重ねることで、高めていくことはおそらくできるのだと思うのです。しかしAIと違うのは、相対しているお客様がどう感じているか、それをどう汲み取って、自分がそれにどう対応できるかを見つけ出していくという、感性のようなところが最後はものを言うのではないでしょうか。そこの最後がロボティクスとは違うところなのかなということを今は何となく感じています。

3-2を御覧ください。これはサービスが先ということの理念の実例で、私どもは送る方の気持ちを、受け取られる方に届ける。物を届けるのではなくて、思いを届けるのだよ、ということでお客様の立場に立ったサービスをしているということを図解したものです。

3-3も価値観の共有の例です。これはどこの会社でもそうだと思いますが、クレームだとか要望をいかに吸い上げて、サービスへつなげていくか。これを、様々な形で実践されていると思います。私どもは、先ほど申し上げたように全国4,000か所で働いている16万人の社員一人ひとりが、お客様と直接接している中で、自分でその声を挙げて、それをサービスにつなげるといったサイクル、あるいはそういう声が挙がるような仕組みを持っていることにより、自分で動けるといった環境がある。自分でしたことが次につながる、こういう環境を何とか作って維持していくということで、このサイクルを継続できるようにしています。

 今までは価値観の共有についてでしたが、次の4-1からはは自主性を発揮しやすい仕掛けとして何をやっているのかについてです。自主性を発揮しやすい仕組みとして、先ほど「全員経営」という言葉を申し上げましたけれども、この考え方は目的・目標を明確にして、細かなやり方は規定せずに社員に任せる。社員一人ひとりには、会社の代表として責任を持ってやってもらうということです。大事なのは、自分で考えること、そして自分で判断して、自分で決め、自分が動くという、自己責任を第一線のセールスドライバー一人ひとりに持たせています。それが、結果的に達成感になり、働く喜び・誇りになると思っています。

 そうは言うけれども、自ら考え、自ら決め、自ら動くという、自主的・自律的な動きにどうやってもっていくのかというのはなかなか難しいところです。それを実際の仕掛けとしてやっているのが4-2です。これは今申し上げた、全員経営、自主的・自律的な動きをしていけるような形になる幾つかの仕掛けです。

まず、冒頭に理念・価値観の共有というのは社訓、あるいは一人ひとりのセンターでの行動といったものから、常に学習する、先輩が指導をする、ようにしています。

 次に権限移譲の仕組み、それから成果の見える化といったものが非常に効いているのではないかと考えています。権限移譲の仕組みとしては、エリア責任制と小集団組織というのがあります。

まずエリア責任制についてですが私どもが皆様のお宅へお邪魔するときに、自分たちで自分のエリアを持っています。大体1km四方であったり、何百世帯という形で、自分が担当するエリアを持っていて、そこには個人のお客様もいれば、商店もあるし、会社もあります。自分自身がお客様に対するサービス責任を負います。これはお届けするのもそうですし、荷物をお預かりするのもそうです。お客様と相談して、何時にお伺いするか。会社の場合には契約運賃もあり、運賃を幾らにするかというのも、セールスドライバー一人ひとりが自分で決めることになっています。

 きちんとエリアに対する責任、お客様に対する権限を持たせています。従って自分のお客様という感覚ができますし、逆にお客様から何か変化があったら、すぐに自分で対応する。大変だけれどもその分自分の責任においてやったがゆえに、分かりやすく言うと、例えば個数が増えたり、褒められたりすると、モチベーションが上がって次につながる。責任と喜びが裏腹の関係にあるエリアセンター制を持っています。

 もう1つの小集団組織というのは、チームを10名ぐらいの小さな単位にしています。一人ひとりの責任が明確になるということに重きを置いています。昔2030人という組織でやっていたときにはなかなかうまくいかなくて、10人ぐらいの単位にしたときに、お互いの責任の重さが変わったのです。そうすると、責任が重くなったことによって確かに大変なのですけれども、先ほど申し上げたように、やる気といいますか喜びにつながる場面が増えてくることがあります。少数精鋭という言葉がありますが、私どもが社内で言っているのは、小集団というのは少数精鋭なのだと。少数になってやるから精鋭になれるのだと。優秀な精鋭を集めて少数でやるのではなくて、少数にしていくと、一人ひとりの責任、やり甲斐が明確になって精鋭化していくよね、ということでの成長を期待しています。

 さらにもう1つ違う観点で、成果の見える化があります。セールスドライバーがお邪魔するときに必ず携帯端末を持って、一個一個荷物の情報を入れます。、ちゃんと時間通りお届けできたか、あるいは何個の荷物をお預かりしたか、色々な一人ひとりの動きがデータとして日々リアルに入力してます。この情報は全国から吸い上げる仕組みになっています。翌日の朝には、全国で昨日の結果がどうだったのか分かりますし、その店全体でどうだったかも分かります。セールスドライバー一人ひとりが昨日はどうだったのだということが分かるような仕掛けになっています。

この自分の成果が見える化される、自分のやったことがフィードバックされるのが、リアルタイムの非常に短いサイクルにすることによって、自分自身を振り返る。他と比べて悪い、それは何故だろう、ここはどうしたらいいのだろうか、と考える材料が自ら取れるというのは、ITを入れたことによって、一人ひとりの自主性・自律性を強めることにも寄与しているのではないかと思っています。

3つ目の、正しく認めてもらうという承認の部分の仕掛けです。1つは人事制度です。私どもの特徴は、360度評価として、仲間・同僚から評価をしてもらいます。そして業績だけでなく人間性について評価をします。ここが、他とはちょっと違うところかもしれません。先ほど申し上げましたように、サービス業という特性から、何を認めてもらえるのか、何をやると自分は褒めてもらえるのかということを、この人事考課を通して、自分自身で知ることが大切です。例えば大切なのは人間性なのだよということで、いつもお客様のことを考えているか、仲間が困っていたら助けてくれるかとか、単純な質問なのですけれども、これを16万人全員で、1人が仲間10人に対して質問します。それを一人ひとりが答えて、それらを全部集約して本人に返す。そうすると、自分が周りからどう見られているのか、項目別に出てきます。自分はこのように見られているから、こういうことに気を付けなければと。もともと会社からどういうことを求められているのかということも確認できる。これが上司からだけだと、何となく一方的なイメージになるのですが、いつも一緒に働いている同僚・仲間からであれば、そこはかなり納得性が社員の側にはあるのではないか。このように自分自身を認めてもらう、この人間性のところを入れることによって、働き方を自分で変えていけると認識をしています。

 もう1つは5-2に、同じ認めてもらう仕組みの中でも、褒め合う文化ということで、「満足BANK」という制度を入れています。何か良いことをしたり、お客様から褒められていたようだとか、自分の仕事を手伝ってくれてありがとう、といった感謝の気持ち、あるいは良かったことを褒めたい、ということを登録できる社内専用の仕組みです。それでポイントがたまるとバッジがもらえます。これは、誰かから褒められたら、当然褒められた人はポイントが貯まりますが、相手を褒めた側にもポイントが自動的に貯まります。したがって、他人の良いところを見ていて、褒めて、褒めて、褒めてあげるとポイントが貯まっていって表彰される。お互いが良いところを見つけようとするそんな行動があって、一人ひとりの周りへの見方が変わってくるというのが、この仕組みを入れてから起きています。

 このように、自主的・自律的な働き方を維持し、それによって自分が働く喜びを感じられる。そういうことが、一人ひとりが管理されずに働ける、弊社のような分散型の組織の運営が成り立っているということかと思います。

 次のスライドはお手元に付けさせていただいてなくて申し訳ないのですが、ヤマトでは女性は、全体で35%。パートの中でみると女性が約半分働いていただいています。主婦の方々を中心に、パートの方に非常に多く働いていただいています。このように多くの主婦の方に働いていただけているのはポイントがあります。この方々は職住接近でなければいけないですし、自分が働きたい時間、働くことができる時間の中でしか働かないような仕組み、あるいは働ける曜日にだけ働くようなフレキシブルな時間設定ができる仕掛けが必要です。さらに主婦の場合は、残業が絶対に発生しないような中での労働の組み方、この3つのポイントを徹底していくと、主婦の方が短時間で働いていただける。これが、私どもが地域地域で多くの主婦の方に働いていただいている理由かと思います。

 ここで言いたかったのは、いわゆる働きやすい職場づくりをどんどんしていかないといけないですし、ここには書いてありませんけれども、色々な作業がある中で、どういう仕事であれば女性、どういう仕事であれば高齢者ができるかということで、業務を細かく分けながら、それぞれがやれるような仕組みにしております。そして、ここの裏にITでサポートできる仕組みを今入れようとしています。これが入ることによって、パートの方々も、もっともっと働いていただけてでダイバーシティが進められるのではないかと日々取り組んでいます。

 非常に雑駁で申し訳ないことでしたけれども、働くということが、単に効率を上げるだけではなくて、働いている人がどう感じるか、特にサービス業のような私どもの場合は、そのためにはどういうことを大切にしているのかを御紹介いたしました。どうもありがとうございました。

 

○金丸座長 

山内さんありがとうございました。ヤマトの経営理念と、それを実行されている社員の方々のモチベーションアップと、そしてインセンティブみたいなことの工夫をお聞かせいただいたと思います。それでは、皆様と意見交換させていただきます。30分程度の時間となりますが、御自由に御発言いただきたいと思います。

 

○磯山事務局次長 

どうもありがとうございました。私がびっくりしたのは、実はマニュアルがあるわけではないという、全国一律同じマニュアルでやって集配をしているのではないかと思ったのですが、そうではないということだったと思います。最後の成果のところで、人事評価をするときに、どういう形で成果を把握して、それが給料とかにダイレクトに反映される形になっているのかどうか。あるいはモチベーションを色々高める方法を御説明になりましたけれども、このモチベーションを高めるという1つに、給料に反映されるというのもかなりあるのか、あるいは実は給料にはそういう成果はあまり反映されない仕組みなのか、この辺をちょっと教えていただけたらと思います。

 

○山内氏 

まず、この成果の確認のところですが、5-1に「目標管理」と「人間性評価」と書いてあります。年の始めに目標、例えば自分のエリアのお客様の発送個数をどれぐらい伸ばすとか、あるいはサービスのエラー率をこれぐらいに抑える等の目標設定をその店の中でしまして、その数値結果に基づいて決まる目標管理が1つあります。そういう意味でいうと、そこは数値管理になろうかと思います。

 それから、日頃の姿勢ということでの右側の人間性評価のところを加味して、標語を決めていく、ABCDEみたいな標語を決めて、その決まった標語によって1%、5%それぞれ上がるような処遇への結びつきにしています。むしろセールスドライバーの場合は、日々自分のエリアで行う業務のうち、固定給でもらえる部分と業務インセンティブのようものがありまして、業務インセンティブがおよそ3割ぐらいです。業務インセンティブは仕事量、例えば何個お届けしたか、何個荷物を集めてきたか、あるいはどういったお客様を新規で取ってきたかということによって動きます。従って、その部分での給与への大きな跳ね返りというのは、実はあまり大きくはありません。今言った仕事量によっての変化はあるのですが、ここの目標管理と人間性評価によって給与が人によって大きく開くかというとあまり大きくはありません。。上がってはいくのですが、やはり日々の中での仲間との会話とか、センター長と呼ばれているリーダーから、「お前すごかったじゃないか」、あるいは仲間で「ええ、磯山さんすごいね」、あるいはお客様から言われた言葉をヤマトファン賞で表彰されたとかが結構処遇のモチベーションとしては効いているのかなと。給料だけが、安定的に一定の幅でもらえますけれども、それが跳ねるから、減るからということでのインセンティブはあまり弊社の場合は働いていないというのが正直なところだと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

 

○中野氏

働く側として、権限譲渡をして、自分の工夫で利用者の満足度を上げていくということをしたときに、どんどんサービスを良くすることで働き方が悪化するということはないのでしょうか。それを感謝してもらえるからという喜びで報いるという形にしてしまうと、やりがいの搾取になってしまうのではないかと思います。過度な負担を強いないための工夫などはあるのでしょうか。

 

○金丸座長 

よろしいでしょうか。

 

○山内氏 

御指摘のとおりです。良いサービスを提供していこうということで、無制限に、例えば配達の時間を夜1時間延ばしてしまうとか、そういうことをしてしまうと本人の負担になりますし、それを取り囲む周りの一緒に働いているメンバーの負担になってしまうことが当然起きます。従って、これは一定のルールであるとか、一定の労働時間の中であるとか、そういった範囲の中での工夫、ということになります。例えば新たなサービスとして付加したい場合は、それを商品化してサービス化するという手続きが必要です。工夫というものを具体的に言うと、例えば赤ちゃんがいるような御家庭にはチャイムを鳴らさないようにするとか、いわゆる気配り心配り。あるいはちょっと重いものは家の中までお届けするような一工夫、そういった意味での良いサービスということです。

 

○中野氏 

ありがとうございます。

 

○御手洗氏 

素晴らしいお話をありがとうございました。私はヤマトさんは大尊敬している会社なので、個人的に大変勉強させていただいて、ありがとうございます。今回の懇談会のテーマにも直結するかと思いますので、一番興味がある点なのですが、自主性・自律性を重んじられた働き方を実現されているというお話だと思うのですが、そもそも自主性を持った働き方というのは、みんなに向くものなのか。ヤマトさんのように組織の中での工夫があれば誰でもできることなのか。それとも先ほど6ページのお話のときに、人によって向き不向きもありますというお話があったかと思います。6ページのお話をされたときは、向き不向きの内容というのは、効率性を重んじるだけではなくて、人に感謝されることが好き、そういったことについての向き、不向きだったと思うのですが、もう1点、色々なことを任されて自ら考えて自ら動くというその自主的な働き方についての向き、不向きもあると思います。もし、把握されていたら、具体的な数字として、例えば採用で来た人の中で向かないなと思って外している人の割合、それから離職率、在職期間などを教えていただけると少しヒントになると思いました。

 

○山内氏 

今仰っていただいたとおり、自主的・自律的にとは言うものの、まず最初にお話しておかないといけないのは、全員がそうなりきれているわけではないというのが1つあります。それから、もう1つ、どこまで自主性・自律性を認めるかというのも、会社のサービスとしてのルールであったり、先ほど中野さんから仰っていただいた労働条件の中での範囲とか、この枠はもちろんあるということです。自分で配達する順序を変えてみたりとか、荷物を配達するときに色々色々と変えてみたり、そういった自主的・自律的ということですので、幅はそんなに広いわけではないということになります。でも、その範囲の中でもやはり日々仕事をしていく中で自分の工夫が生かせる、自分の工夫が何らかの形で自分にフィードバックされてくるというのは非常に働きがいにはつながっているようです。

 御質問の、人にそういったサービスが感謝されることを感性として持っていて、それを喜びとして感じる方は、これは間違いなく継続してくれますし、ある意味仲間のリーダーみたいな存在になっていってくれます。でも、その度合いは人によって非常にバラツキがあるというのも事実です。今の仕事を継続する最低限のルールを守ってやるということだけの社員ももちろんいます。そういった方について、仕事に対する積極性とか、仕事に対する発言が多いかというと、やはりそのチームの中ではそういう方々は非常に弱いというのが実際の現場の空気感だと思います。ですから、宗教まではいきませんが、文化に馴染む人、文化的なものとして会社の風土に馴染む、馴染まないがあるのではないかと思います。

 従って定着率は、他のサービス業よりも多分ちょっと低いのではないか、離職率が若干高いのではないかと感じております。事務職まで入れると数パーセントになるのですが、第一線のセールスドライバーですとそれよりも高くなる。決められた時間までに届けなければいけないというプレッシャーもありますし、実際に重い荷物を、体力を使いながら、雨の日でもやらなければいけないという、仕事環境としては結構厳しいということもありますから、使命感や思いがないと、継続性が比較的低くなってしまうというのは、具体的な数字で申し上げられなくて申し訳ないですけれども、私どもの経験値からいくとあります。離職率については、乗務職、ドライバーの職と事務職での違いとかを、これは調べてまた御報告させていただけたらと思います。

 

○御手洗氏 

お客さんに喜んでもらうことが好きかというような指向性もあると思うのですが、そんなに任されたら困ると、マニュアル化してほしいと思うような人もいるのでしょうか。例えば、人工知能が出てきているとか、ある程度単純作業はこれから人の仕事ではなくなっていく可能性がある中で、人はどれぐらい自主性が好きなのかということは大きなテーマだなと思って、自主的な働き方そのものが嫌いとか、嫌がる人は、感覚値としてどれぐらいいらっしゃるのでしょうか。

 

○山内氏 

自主性と責任というのは裏腹、セットだと思うのです。自主的だからゆえに責任も自分で負いますから、そこを考えると、私どもの中でも自主的に動かない人間ももちろんいます。決められたルール通りの中で動く、そういったことを指向する人もいます。ただ、会社としてどちらにより重きを置いていくかというと、自主的に働く方の方を、評価も良くしているので、結果的に評価されないから退社されていく、そういうサイクルになっているのかなと。間違いなくマニュアルどおりに動くことの方がストレスを感じずに働けるという方々がやはりいらっしゃいますね。

 

○御手洗氏 

そうですよね。

 

○山内氏 

ええ、これはもう間違いないと思います。問題はあと、どの程度技術でそこをサポートできるかということで、サポートする範囲をどこまでにするかというのもあるのかなと。効率とかパターン化をより徹底して全てを奪ってしまって本当にいいのだろうかというのは、現場を預かっている私の感覚としてはちょっとあるかなと思います。

 

○御手洗氏 

ありがとうございました。

 

○金丸座長 ありがとうございます。青野さんどうぞ。

 

○青野氏 

御質問させていただきます。宅急便の事業で社員の方は16万人でよろしいでしょうか。

 

○山内氏 

はい。

 

○青野氏 

セールスドライバーの方が5万人。

 

○山内氏 

はい。

 

○青野氏 

ということは11万人は別の仕事をされている方がいらっしゃると認識しました。今日のお話はセールスドライバーの方が中心だったと思うのですが、逆に他の職種の人も結構いっぱいいるのだなと思ってびっくりしました。その時に、採用などを分けておられるのか、分けておられるのならどれぐらい、この本社の人、事務職の人と分けておられるのか。その後、雇用形態ですが、何パターンぐらいあるのか、ざっくり教えていただけませんでしょうか。

 

○山内氏 

まず、人数の分布は、宅急便に関わっている方が16万人いるのですが、そのうちフルタイマーでセールスドライバーとして働いていただいているのが5万人で、加えてあと3万人ぐらいはパートタイマーで働いていただいています。従って、全体のうちざっくり半分が主に配達、皆さんの所にお邪魔させていただいているセールスドライバーで、残り半分は例えばターミナルで荷物を方面別に分けたりとか、その後の事務処理をしたりとか、事務の人間が約半分いるというのが全体の業務構成になっています。

 採用に当たっては、職種別と勤務時間別に採用しています。採用単位は地域別です。本社で一括して採るのはいわゆる新卒者だけで、全体の5%くらいです。ほとんどは現地現地で地域に密着した雇用をしております。では、採用を判断するのは誰かといったときには、現地の先ほど申し上げた4,000のセンターを束ねている70の支店があるのですが、その支店単位で採用の可否をやっているという形になります。

 雇用形態については、無期雇用の正社員の形と、同じくフルタイマーだけれど有期の社員、それからパートの短時間での時間契約の社員が、16時間で週20時間働く方と、10時間だけとか、15時間という形で、これは一人ひとり話をして契約をさせていただく形で、例えば何々社員というパターンにはなっていません。一人ひとりの雇用形態で、それを組み合わせてシフト管理をしているというのが私どものやり方になります。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。小林さんどうぞ。

 

○小林()氏 

どうもありがとうございました。2つ質問です。私もよくやってしまうのが、例えば実家から何かものを送ってもらう、それでお前はいつなら家にいるのかと言われて、土曜日の午前中ならいるかなというので、土曜日の午前中に時間配達して送ってと頼んで、でも金曜日まですごく働いてバタッと疲れて寝てたら、寝坊してヤマトさん来ちゃったと。そこで電話したら、本当は午前中に出なければいけなかったので、何とか午前中に来れませんかと言って、よく来ていただいて、悪いことしたなと思って、2回も来てもらって申し訳ないなと思うのです。そのとき、私は典型的な人見知りの日本人なので、本当はすごく有り難いのに、あまり感謝をドライバーさんに伝えられないのです。多分そんな人が多いのではないかと思います。何というか、なかなか内発的動機というのはすごい面白いと思うのですが、セールスドライバーさんは、内発的動機でお客さんがありがとうと言ってくれたことを感じる機会はそんなにあるのかなというところが1つあります。例えば配達個数とかは1つの指標だと思いますが、なかなかそれだけで捉えられないような成果というのはあるのではないかと思うのですが、その辺り、内発的動機との関連はどうなのかというところが1つ目です。

 もう1つが、働いている人の満足度みたいなものを測るような取組、例えばES調査みたいなものをされているかどうかをお聞きしたいと思います。

 

○山内氏 

まず1点目ですが、確かに「ありがとう」と言っていただけるケースは非常に稀です。まして感謝のお手紙とかメールを頂くのは本当に極々稀です。「どうも」とか、出て来たときに判子を頂くのですが、そのときの応対とかで、ドライバーは感覚的にこの人はとっても有り難がっていただけているなというのは分かるようで、そういった感覚はあります。ただ、それが例えば今仰ったように指標化されて、あるいはそれが数値化されてフィードバックされるようなものというのは、ちょっと残念ながら入れられていません。

 実はそれを仕掛けとして作るために、エリアのお客様にモニターとしてアンケートを取るとか、隠れモニターで何人か置いておいて、その方から評価を頂くようなことも1回やりかけたことがあったのですが、ばれてしまって駄目なのです。会社のドライバー一人ひとりのほうがよく分かっていて、仲がいいものですから、「ちょっと、よろしくお願いします」みたいな話になって、全然駄目だと。それで採用したのが仲間の評価です。ドライバーは、エリアの中で担当しているので、必ず3日に1度休みがあります。そうすると、その自分のエリアのお客様に誰かが行かないといけないということになります。例えば山川さんに行っていただくと。山川さんが行ったときにそのお客様が言うわけですね。「あれ、今日は山内さんはどうしたの、いつも来てくれるのに残念ね」とか、「いつも山内さんはいいのよ」とか、「山内さんは嫌だから替えてよ」って、結構そういった仲間内というのは、お客様と接する中で実は分かることがあります。だから同じ職場の同じチームでやっている中で相互評価を入れているというのが、お客様から評価をいただくかわりに仲間から評価をもらうことが評価を見るときの考え方になっています。だから、仲間がみんな、あいつはヤマトのセールスドライバーとしていいなと思う人は、多分お客様から見てもいいだろうと、こういうことで人間性評価というのを入れているということで、具体的な指標としてはなかなか出せていないというのが1つ目のお話です。

 満足度のES調査は、これとは別に1年に1回しております。ただ、どの数字がどこまで高ければいいのかは分からないものですから、時系列でどう変化しているか。例えばパートの作業の方がどう感じているか、あるいはどういう時間帯でパートで配達をしていただいている方のESが上がっているか下がっているか、あるいはどういう項目でというのは見る形にして、それは職場職場の単位に切って、戻して、これは管理者がそれを使いながら色々と手を打つということは行っております。ただ、なかなかES調査の推移だけで実際に働き方を変えるところまではいけていないのが正直なところかなと思います。

 

○冨山氏 

同業で一緒の仕事をしているので、中身は共感しているのですが、逆に、先ほどちょっとあった事務職で、いちばん日本型正規雇用に近い感じの人というのが事務職だと思うのですが、超々マイノリティ、多分社員の中の人数でいうと少ないのでしょうね。

 

○山内氏 

いわゆる総合職的な事務職の人間は少ないですけれども、お客様が来たときに荷物を受け付ける事務職が多くいます。

 

○冨山氏 

だからジョブ型の方は一杯いると思いますけれど、それは厳密に言うと日本型正規雇用ではないので、いわばジョブディスクリプションがなくて、何でもやります、実は何にもできませんのタイプになりがちな人たちは、バスもすごく少ないのですね。逆に私自身は、AIとかが入ってくると、この人たちの仕事が一番なくなるのではないかと。

 実は現場の配送とかは結構人間がやり続ける世界だと現実的に感じていて、そういうのも思いながら、でも一方で、新卒だと、一般的に優秀な人材はそっちのほうが割と採りやすかったりするのですね。我々みたいなこういう業態において、いわゆる日本型正規雇用で働いている総合職事務職の人たちの明日はどうなるのだろうかと思ったりするのですが、その辺はどうでしょうか、言いにくいことがあるでしょうけれど。

 

○山内氏 

普通の事務総合職は多分、冨山さんが仰ったように、段々要らなくなっていってしまうのかなと、仕事を取られてしまうかなと思います。何が残るかというと、1つは労務管理と言いますか、先ほど言ったチームを束ねてその人たちのモチベーションを、「お前、すごく頑張っているじゃないか」みたいに、そういうことを言う人達という形での労務管理は、やはり人の仕事として残るのかなというのがあります。

 それからサービス開発ですね。色々なクレームとか事務処理のどこに問題があるかは見つけられるのですが、その潜在的なニーズを、想像力を働かせて、「こうかな、ではこういうことがいいのかな」というのは、ちょっと理屈でなかなか申し上げられなくて申し訳ないですが、やはり経験値を積んだ人間だとそういうものが働くのかなと思います。そういった領域はやはり残るのであろうと。多分、そういう領域の部分に、経営マネジメント、それ以外はなっていくのかなという感覚は持っております。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。褒めるのも得意な人工知能ロボットが出てくる気もしないわけではないですが。

 

○柳川事務局長 

今のお話も少し関連するのですが、少数精鋭で10人ぐらいの単位の方が一番上手く回せるというお話はとても興味深かったのですが、これでどのくらいのことまでができるのかというのがちょっと関心があります。例えば今仰ったようなサービス開発とか、そういう少し高度なものまで、そういう単位で任せていけるようなことが将来的に考えられるのか。あるいはそれはなかなか難しくて、もう少し本質的にはこういう配送のところでの工夫だとか、そういうところのチームワークはできてもということなのか、その辺のイメージをちょっと教えていただきたいです。

 それから10人の中での働き方についてです。先ほどの雇用のフルタイムとかパートタイムとかの構成は、チーム編成のところの現状と、本来ベストの在り方みたいな、何かお考えがあれば教えていただきたいと思います。

 

○山内氏 

まず1点目です。10人ぐらいでできる範囲は、やはり業務的なところでの工夫で、エリア特性に応じた特徴、例えば山間部で高齢者の一人住まいが多いから必ず会話してこようぜとか、業務の中における部分が非常に大きいです。あとは運賃決めとかそういうことになりますので。エリア限定でも、自分の10人のエリアだけではなくて、何々市を4か所でやっていれば、4か所でこの市に対してのサービスをちょっとやってみようよというのはできるようにしてあります。これはそのエリアのお客様に告知をして、その範囲の中でやるような地域限定商品サービスも、例えば観光地で、駅からホテルまで当日のうちに、昼もらえれば夜までに届けるようなサービスをこのエリアでやってみようという自主性の判断は持てるようになっています。そこは割とフレキシブルですけれども、全社統一の商品とかホームページに掲載していくような、あるいは国交省に届けるようなサービスというのはできないようになっています。これが範囲です。

 チーム編成、チームの中でいきますと、実はこれはエリアによって随分違います。例えば、企業ばかりあるような所は、フルタイマーの正社員が一斉に入って顧客交渉もしながらやっていくのでフルタイマーばかりになっています。住宅地で個人のお宅が多いようなエリアは、半分はフルタイマーの正社員ですけれども、半分はパートの方で構成しています。正社員4人にパート社員6名のようなチーム編成になっていて、そこはエリア、エリアにおいてフレキシブルに自分たちで組み立てられるようになっています。

 

○柳川事務局長 

ありがとうございます。

 

○磯山事務局次長 

この宅配便業界というのは猛烈な、人がいないとできないサービスだと思うのですが、足下はかなり人手不足だというように伺っています。将来にわたって人材は採用出来続けるとお考えになっているのか、あるいは510年を見た上で、何か今やっている仕事を他の、例えばロボットとか、絵空事かどうか分かりませんけれども、例えばドローンで物を運ぶみたいなものも出てきていますが、そういうことを本格的に取り組もうとしているのか、あるいはやっぱりここは人でやらなければいけないと思われているのか、この辺をお願いいたします。

 

○山内氏 

まず業務の中で、先ほど申し上げた後方の仕分けという業務は、ほとんど機械化していけるようにしたいと思い、今新しい技術で機械化を進めています。だからここはどんどん人がいなくなる、なくてもできる形にしていこうということです。

 集荷・配達の部分につきましては、今の業務をもう少しセグメントしていく形になるかと思います。というのはどういうことかと言いますと、会話をしたかったり相談をしたいようなお客様については、セールスドライバーが人間として配達をしていく。一方で、荷物を人から受け取るのが嫌だという方も結構いらっしゃるのですね。やはり煩わしいというのがありまして、今、取り掛かっているのが、例えばロッカーを設置していくとか、コンビニエンスストアとか色々な所で受け取れるように選択の幅を広げていきます。私どもが配達しなくても、他の方法を色々と取り入れてチャネルとして広げていきます。同じ業務量がどんどん個数が増えていっても対応できるようにしていこうと考えています。

 テクノロジーでは、ドローンは多分、緊急品とか特別なエリアだけは活用できるのかと思っています。むしろ、イメージでは、ロッカーがありますが、自分で指定しておくと、そのロッカーに荷物を入れておいてもらって、そこで引き取っていくとさらに自動運転とセットにしてそのロッカーが各家庭までいくような、自動運転とセットにして、そういう方が現実的かなということで、ここは人手を介さないものをいかに新しいテクノロジーを入れて実現していくかというのを我々は大きなテーマとして持っています。ただ、先ほど申しましたように、そのときには、あくまでプレミアム的なサービスを御利用になるお客様については人で対応し、お客様の好みによって、届けてくれさえすればいいんだよというようなお客様については、今申し上げたようなテクノロジーを使って対応していくというのは、大きな考え方としてはあることになります。

 

○冨山氏 

中山間部などは必要があるでしょう。

 

○山内氏 

そのような工夫はやっていきたいと思います。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。次の議題に移らせていただいて、またプレゼンが終わりましたら、全体で意見交換をさせていただきたいと思います。

 山川さんから、資料2に基づきまして、「労働法制の基礎にあるものと将来への視点」というテーマで御説明を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○山川氏 

よろしくお願いいたします。今日のお話は2つの柱からなっており、1つは労働法制について、働きがいを支えるものという捉え方をしてはどうかということです。パワーポイントではないのですが、参考資料として、経団連の広報誌にかつて掲載したエッセイ(「働きがいを支える労働法制」経済トレンド20111月号)と、労働関係の新聞に載せたエッセイ(「働きがいのある仕事」労働新聞2004126日号)があります。もう1つの柱は、将来の労働法や労働政策の実現手法について新たな視点を取り入れてはどうかということで、論文「労働法における法の実現手法」(岩波講座現代法の動態第2巻『法の実現手法』(2014年))が参考資料になります。御報告はパワーポイントでさせていただきます。普段パワーポイントを使うようなことをしておりませんので、稚拙なスライドになっておりますが、申し訳ありません。

1枚目、2ページ目になりますが、労働法制の基礎にあるものと「働きがい」について、少し申し上げます。よく言われる、労働は商品ではないということですが、私自身はむしろ、いったん労働は商品であると考えて、いかなる意味で特殊な「商品」であるかということを考えたほうが有益ではないかと思っています。特殊性の第1は生命・身体・精神を持つ商品であるということで、それがゆえにセーフティネットや生活の安定・安全と健康が必要になるということです。

2つ目の特殊性は、労働の機会というものは時間とともに消え去るために貯蔵ができないということです。そうすると、労働という商品を売らざるを得ない労働者の交渉力は弱くなる。そうであるがゆえに、交渉力のサポートや取引の円滑化のための労働市場システムの整備が必要になるのではないかということです。

3番目の特殊性、これが今回のお話では強調したい点ですが、商品といっても自らの意思によって成長・向上できる商品であるということで、これは山内さんの御説明で非常に納得して伺っていたところですが、働きがいを持つことで成長・向上していくということです。そうであるがゆえに、能力開発や、あるいは機会の格差の是正といったことで、働きがいを持って働けるような環境整備をすることが、法政策の役割として出てくると考えております。スライドの*の部分は、こういう特色は法律上は労働者とはいえない個人請負の方などについてもかなり当てはまる場合があるのではないか。それからすると、前回も話題になっていたように、労働政策の対象を拡大することも考えられるのではないかと思っております。

 次のスライドになりますが、2035年ということで、法学者にはよく分からない点が多いのですが、将来、働き方が変わったとしても、働きがいというものの重要性は変わらないのではないか、むしろ知的労働が中心となってくると、働きがいというものの意味が一層増大するのではないかと思っております。どうすれば働きがいが増進されるかという点についてですが、スライドの次と次です。厚生労働省が行った調査で、どのような人事管理をすると働きがいが強まるかという調査があり、そこでスライド2枚を用意しております。

1つは、研修や能力開発、いわば将来を見据えたキャリアの設計と能力開発により働きがいを感じるという回答が高いというアンケート結果です。もう1つは、従業員の意見の反映、あるいは裁量を与えるということで働きがいを感じるという調査結果です。これは先ほど山内さんの御報告、御説明でまさに裏付けられているという感じがいたしました。

 次のスライド、2「労働法・労働政策の実現手法」に移ります。伝統的な労働法の実現手法は、いわば行政指導と刑事罰ということではないかと思います。やや新しい手法として、法律に違反した企業名を公表するという手法が出てきており、最近の法改正では、この手法を取り入れたものが増えてきております。現実に雇用機会均等法などでは、法違反をした企業名が昨年の秋に初めて公表されるということが起きてきております。これは法違反をしたという情報を社会に流通させて、市場での評価を下げるというような機能を持つものではないかと思われます。

 もう1つ、これは伝統的と言えば伝統的ですが、やや新しい動きがあったのは、労働紛争の解決を通じて労働法を実現するということで、裁判等が典型的なものですが、法違反に対して紛争解決という形で実現するということです。

 次の7ページですが、これは伝統的な手法の中でも、労働基準監督署の監督の運用状況を示したデータです。一番右にあるのは、労働基準監督官が監督した場合に、どのぐらい法違反をしているか、この法違反というのは労働基準法や労働安全衛生法という、もちろん監督署が権限を持っているものですが、これがかなり高く、監督に当たってのターゲットの付け方などにもよるわけですが、この10年ほどは60%台後半で推移していますので、最低基準の確保については、なおこうした行政の役割は大きいのかと思っております。

 次が、紛争解決を通じた法の実現に関わるデータです。個別労働紛争、労働者個人と雇用主の間の紛争がこの20年ほど増えてきております。あるいはもっと長期的かもしれません。そこで新しい個別労働紛争の解決システムが整備されてきております。その結果、第三者機関で紛争が取り扱われる例も増えております。ここで挙げたのは都道府県労働局における労働相談の件数ということで、特に折れ線のほうが紛争に関わる相談件数です。概ね毎年25万件前後の紛争関係の相談がなされているとのことです。その他に、労働審判制度といった裁判所でのシステムも整備されておりますが、この点は省略いたします。

 次のスライドに移り、新たな手法のお話になります。1つは自発的な法遵守、コンプライアンスというか、法律そのものの要求ではないとしても、政策的な目標を自発的に達成することを促進するための手法で、インセンティブの付与ということですが、ここも多様化が進んでいる、あるいは、多様化が考えられるということです。

 アは、伝統的なもので、助成金を国等が出して経済的インセンティブを与える。雇用調整助成金は、例えば企業が経済的に苦境に陥ったときに、解雇を避ける措置を取った時には助成金を出すというもので、リーマンショックのときには一定の効果があったというような分析があったかと思います。これは伝統的な助成金の仕組みです。あとは、労働法の域を超えるわけですが、税制によって経済的なインセンティブを与えるることもあり、雇用促進税制や賃上げ税制などの幾つかの例があります。

 次がウで、この辺りからかなり新しくなってきますが、公契約(公共調達)を通じた経済的インセンティブというものも考えられます。かなり強力なものとしては、アメリカ合衆国のアファーマティブ・アクション計画というものがあり、人種差別や男女平等の問題で実際上の差別をもたらしている障壁を改善するための行動計画を立てて、実行した企業だけが連邦政府と取引ができるというものです。一定の取引高という条件がありますが、連邦政府と取引するためにはこの雇用平等のための改善計画を立てなければいけないという形でインセンティブを与えているというパターンがあります。色々なものが内容としては出てきますが、1つは、よく見るもので新聞の求人広告があります。アメリカで新聞の求人広告を見ると、イコール・オポチュニティ・エンプロイヤー(equal opportunity employer)ということばが広告の頭に出てくることがあって、それはアファーマティブ・アクションの一環で、当社は雇用差別をしませんということを求人広告で明らかにしています。そういう仕組みもアファーマティブ・アクション計画の一環になります。

 日本は徐々にこれらの仕組みが採用されつつありますが、従来は障害者雇用の問題、あるいは労働法ではないですが、環境の問題について、このような仕組みが採用されてきました。つい最近、ワーク・ライフ・バランスを公共調達の際のプラスファクターにするという手法が採用されつつあります。1つは女性活躍推進法の条文において、行動計画が認定された場合には国の入札等において考慮の対象になるという規定があり、これの実現が進みつつあるようです。いわば行動計画の中でワーク・ライフ・バランスということが盛り込まれた場合には、公共調達における加点事由になるという仕組みです。これによって、ワーク・ライフ・バランスの実現をした企業を、公共調達において一定程度優遇するという形のインセンティブを与えるという仕組みになります。

 エもインセンティブの1つですが、社会的インセンティブと言ってよいでしょうか。一定の政策的な要件を満たす企業には、シンボルマークを使うことを認めて、社会的な評価を高める、いわゆるレピュテーションといいますか、評判を利用する形のインセンティブです。この例は、くるみんマーク、えるぼしマークなどです。御存知かとは思いますが、「くるみんマーク」は次のスライドにありますが、次世代法といわれる法律に基づく認定企業に与えるマークですし、今日から施行される女性活躍推進法では、「えるぼしマーク」というものの使用を認める仕組みが採用されております。こうしたマークを使うということで、社会的な企業の評判を高める仕組みであると言えると思います。

 さらに新たな手法の御紹介に移ります。次のスライドになりますが、情報の利用ということです。労働条件・雇用環境についての情報開示という手法です。これも新たな立法で、若者雇用促進法という法律がありますが、新卒の求職者が要求した場合に、事業主が一定の労働条件を開示する義務を負うという定めがあります。これは求職者が就職に当たって参考となる情報を得ることができ、それによって企業を選択するという仕組みです。また、情報の開示と逆の話ですが、この若者雇用促進法では、一定の法違反をした企業に対しては、ハローワークが新卒の求人の受理を拒否できるという条文があります。ハローワークを経由するということに限定されますが、これは言ってみれば労働市場からの情報を遮断するという形で規律を行ったものであり、情報の利用ないし不利用というか、拒絶というか、そういう点で共通性があります。

 もう1つが、また何度も出てきますが、女性活躍推進法であり、これはまた後で出てきますが、行動計画を立てなければいけないことと、立てた場合には、その行動計画を社会に対して開示することが義務付けられます。それから、例えば女性の役員比率といった女性活躍の状況も、社会に対して開示することが義務付けられております。厚生労働省でウェブページには女性の活躍推進企業データベースを設け、開示するためにわざわざ各企業がサイトを開く必要がないようにし、これを利用して開示できるという一種のサービスを行っております。

 こうした情報開示は色々な意味があると思いますが、1つは求職者にとってです。これは女性に限らないですが、各企業の女性活躍の状況、先ほども申したように、ワーク・ライフ・バランスも行動計画では重要な要素になりますが、それが開示されたものを参考にして企業を選択することができます。特に今は労働市場がタイトですので、労働市場における企業間の人材獲得競争を通じて労働政策を推進するという機能を持っているかと思います。要するに、女性が活躍できるような企業に、女性に限らないかもしれませんが、有能な人が集まる。労働市場というものを、労働者が競争するだけではなくて、企業も良好な労働条件や職場環境を通じて、有能な人材獲得のために競争する。本来、労働市場はお互いが競争するものですので、そういう形で情報開示という仕組みを利用していくというシステムです。もう1つの仕組みは、日本は恥の文化といわれているので、あまり恥ずかしいものは公表できないといった意味も、もしかしたらあるかもしれません。

 次のスライドです。もう1つ別の意味での情報を活用した法の実現手法ですが、労働法の周知の促進ということです。学校レベルで労働法教育を行うべきだということは、既に色々と推進されていますので省略します。現実の職場での法の周知も重要ではないかと考えております。人事担当や法務担当などの担当者の方はよく労働法を勉強しているのですが、それがなかなか職場まで降りていかないということがあります。ですので、職場での法の周知が重要になりますが、実は既に労働基準法の昭和22年制定の法律に条文があります。

 囲みにあるように、使用者はこの法律及びこれに基づく命令の要旨等々を、「労働者に周知させなければならない」という規定があります。しかし、条文上、備え付けることで足りるということであり、解釈上、例えば法令集を従業員が自由にアクセスできる場所に置いてあればよいということで、実際には職場の従業員が立ち寄れる所に法令集等が置いてあれば、それで良いようです。これをより実質的なものにすることを検討してはどうか。 次のスライドを御覧ください。字がすごく細かいですが、これを読んでいただきたいという趣旨ではありません。これはアメリカの雇用差別禁止法に関するポスターです。アメリカでは大部分の労働法規について、その内容をポスター等で職場に掲示すべきであると義務付けております。「雇用機会均等は法律の要請です」と12行目に書いてありますが、これによって職場レベルでの法の周知が図られるということです。

 次に、もう1つの新たな手法です。これはやや次元が違ってきます。「ルールの自己設定」とありますが、法律によって画一的なルールを強制するのが、これまでの労働法制のスタイルですが、そうではなく、各企業や職場の実情に合わせて、いわばカスタマイズされたルールを自分で作ってもらうという仕組みが一部採用されつつあります。もともと次世代法でワーク・ライフ・バランス等の行動計画が義務付けられていたのですが、女性活躍推進法も女性の活躍に向けて行動計画を作ることを義務付けております。

 こうしたカスタマイズ型のルールの自己設定は他にも応用できるのではないか。例えば労働時間の見直しの行動計画が考えられますが、労働時間問題はかなり企業の実情によって異なる所があろうかと思いますので、そのような行動計画や、今、非正規従業員の処遇改善の問題が出てきていますので、非正規従業員の処遇の見直し行動計画など、色々応用ができそうな感じを個人的には持っております。

 行動計画の中身は色々ですが、一種のPDCAサイクルで実現していくことが想定されています。女性活躍推進法については次と次のスライドがありますが、女性の活躍について状況を把握して課題を分析した上で、その課題に取り組むための行動計画を策定して、周知や公表をしていく。あとはステップ3としては、役所への届出がありますが、その後で取組を実施した上で、効果を測定し、また新たな行動計画につなげる。正にPDCAサイクルが法律によって求められるに至っております。

 次の17ページを御覧ください。これは自発的に行うことももちろん考えられますが、一種の公的な要請に基づき、法律が関わる場合には、どのようにしてルールの自己設定などの実現を促進するかが問題になります。これはこれまで出てきたお話を、ここでも応用できることになると思いますが、行動計画の策定自体を義務付ける他に、例えば計画が適切であると行政が認定した場合にはインセンティブを与える。公共調達での加点事由としたり、あるいはマークの利用といった様々なインセンティブが考えられます。あとは「評判」の利用ということで、行動計画の公表など色々な活用状況の公表等によって、社会的な評判を利用して、政策の促進を実現していくことが考えられます。

 次のスライドの(4)は本日のお話の2つ目の柱のまとめ的なものです。労働法や労働政策の実現手法は多様なものがあり得るということで、それをどのようにミックスしていくかが将来的な課題になるのではないかと思っております。例えば、重大・悪質な法違反については、やはり取締りや監督の徹底は求められるかと思います。最近でも労働基準監督官が増員されたりしておりますが、これは一方では真面目な企業が馬鹿を見ないというか、法律を守って損をすることがないようにして、公正競争を促進するという視点もあるところです。

2番目が、既に進展はしておりますが、紛争解決という形での労働法の実現の促進です。今、厚生労働省で別の所で検討会を行っておりますが、労働紛争解決システムの透明化あるいは利用の促進が考えられます。更に言えば、法律でどうこうという問題ではあまりないのですが、企業の中で紛争に至らないうちに苦情や不満に対応するといった、企業内での苦情処理のようなことも人事政策上は課題になるかと思っております。

3番目が、強制的な手法に代えて、いわば自発的な法の遵守を促進する、そのための手法の多様化が考えられます。インセンティブと言っても補助金以外も様々なものがありますし、情報開示を促進することによって、労働市場あるいは商品市場も含まれるかもしれませんが、市場によるモニタリングという形で政策を促進していくこともあり得るところです。

 最後が、ルールの自己設定ということで、画一的なルールではなくて、実情に即したルールを企業あるいは労使で考えてもらう。これは、上から降ってきたルールに比べると、自分達で考え出したルールですので、守る意欲も、もちろん、上から降ってきたルールでも守る意欲は十分あると思いますが、自分達で作ったルールですから、非常に守りやすいというか、守ることに対する意欲がより強まると思います。また、内発的ないし自発性が尊重されるということで、1本目の柱として申しました働きがいの促進とも調和するような性格を持つのではないかと思います。

 これらの様々な手法は一律には考えられないわけで、例えば評判の利用と言っても、企業によっては評判など全然気にしないという企業もあるかもしれませんし、また、健康や安全に関わる問題については、介入の度合いがより強く要請されるという場合もあるわけです。従って、結論としてはポリシーミックスという形で、多様な手法があるということを念頭に置いて、色々とミックスさせて考えていくことになろうかと思います。雑駁ではありますが、以上で私の報告は終わらせていただきます。ありがとうございました。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。それでは、皆様と意見交換をさせていただきます。では、小林りんさん、お願いいたします。

 

○小林()氏 

ありがとうございました。私、労働法はものすごく不勉強なので、初歩的な質問だったら申し訳ありません。この懇談会はずっと、10年、20年の間に非常にたくさんの割合の職業が入れ替わっていくとか、あるいは副業が盛んになるのではないかと色々な議論がされてきましたけれども、それを踏まえたときに、労働法上で、これは20年後の日本にふさわしくないのではないかと思うような労働法の条文、ないしは条文がなくても、過去の判例で色々決まってしまって、それによって制約を受けている部分が随分あると思いますが、そういった観点から、これはなくてもいいのではないかとか、変わった方がいいのではないかというものがあればというのが、1つです。

 冨山さんに質問してもいいですか。冨山さんの目から御覧になられて、労働法に限らず、何かこれが変わったら同一労働同一賃金をもっと簡単にできるのではないかということがあれば、是非、伺いたいです。よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

それでは、まず山川さんからお願いいたします。

 

○山川氏 

なくてもよいものについて、あまり包括的に勉強しているわけではないのですが、例えば労働基準法に罰則規定がかなりあるのですが、罰則規定は今の労働基準法に全部必要なのかということはあろうかとは思います。例えば、サービス残業とか、労働基準法ではないですが、安全衛生等のようなものには罰則があってしかるべきかと思いますが、例えば、労働条件の開示等について罰則を適用した例は、あまり聞いたことがありません。情報開示は重要ですが、先ほどの問題関心との関係では、刑罰的な規制の中には外してもいいものがあるのではないかということがひとつあります。これまで思い付いたものは、それだけです。また、冨山さんがお答えになられている中で、考え付いたら追加したいと思います。

 

○小林()氏 

ありがとうございます。

 

○金丸座長 

では、冨山さん、お願いいたします。

 

○冨山氏 

結論から言うと、日本型正規雇用はやめたほうがいいと思います。あのような生産性の低いことは絶対やめたほうがいい。だから、日本でも職務定義をちゃんとやって、仕事をしてもらう、それでいいのです。全然困りません。別に生産性改善活動はできます。それを書けばいいのだから。よく製造業の人が言う話は、「アメリカではできない」。やっているじゃないですか。世界中やっているんです。だからあれは別にジョブディスクリプションがあるからできないんじゃなくて、それを定義すればできるのであって、だから結果的に先ほどチラッと言いましたが、何でもできるような顔して何もできないような人がたくさん中高年でたまるんですよ、管理職で。役所もそうかもしれませんが。

 これが、全く生産性が、私は色々な会社の再建をやってきて、もう100%間違いなく大丈夫なのは、40代以上の正社員、総合職正社員は半分にしても何も困りません。これはもう断言します。審議会でも言います。これは本当に困りません。困ったことは1回もないので。 あの幻想はやはり経済界も含めてそろそろみんな放棄したほうがいいですよ。だって、これで現実にそういう働き方をしている人たちが、一体、そもそも日本に何人いるんですか。現実に、名実ともに終身年功制のもとで、あのような働き方をしている人たちはもう大企業の正社員のみ、全体の2割ですよ。8割の人はそうじゃないところで働いているのです。だからもうあの幻想を捨てないと、ここに書いてあるとおりで、この先、日本の企業はひたすら競争力を失うだけです。世界的にもまず通用しません。

 あと、もう1つ言うと、オムロンとかもグローバル化しているのですが、実は、社員の3分の2以上は海外で働いているのです。欧米や新興国で働いているのです。オムロンの社員も欧米に行けば、当然、その先はちゃんと職務定義をやらないと駄目なんです。では、欧米で働いているオムロンの社員は、生産性は低いのかというと、低くないですよ。むしろ高い者が行っています。だから、あれも幻想です。要するに、社内の中で言ってしまうと、かつ日本の中で、いわゆる正社員で働いている人はほんのちょっとですから、そうすると、超ガラパゴスなのですよ、日本の正社員と言われているものは。だから、もちろん欧米型がいいとは必ずしも言いませんが、そろそろ古いそういうもの、幻想は捨てて、もう一度これからの時代に本当に、別に総合職正社員がいていいのですよ、おそらく、本当のエリートの一部の人はジェネラリストでないといけないです。だけれども、多分、世界的に今時に、金丸さんはよく御存じだと思いますが、世界で言うジェネラリストというのは、漫然と何か色々なことを知っていますではなくて、複数のプロフェッショナルなスキルを持っている人のことを言うのです。だからPhDマスターとか、Wマスターとか、そういう人のことをジェネラリストと言うのです。だから明らかに定義がずれちゃっていて、これははっきり言って勝負にならないです。だから、私はここはもうさっさとやめた方がいいと思っています。これが1つです。

 山川さんの質問と半分かぶりますが、先ほどやめちゃった方がいいというか、どうしたって、これはやはり越えなければいけない壁の問題として、このインセンティブの話の中で、さはさりながら、現状、日本の労働法制、あるいは裁判例の慣行、実態としてやはりインセンティブの方向が多分1つになっていて、この国ではやはり日本型正規雇用が雇用の王様なんですよ。何だかんだ言って、そのヒエラルキーが明らかにあって、要するに、連合の組合員の多くもそうですよね。あるいは経団連企業のような会社で働いている正社員の人もそうです。何だかんだ色々言っているけれど、本音では士農工商はやはりあって、判例などを見てもそれを前提にした判例を、裁判官自身もそういう所で働いているのでしようがないのでしょうけれども、そうなっていて、それがやはり本音と建前が、色々な法制を用意すればするほどずっとどんどん遊離してきていて、なおかつ王様流儀で働いている人はどんどん減っているわけです。

 だから、ここはインセンティブの方向性というのはもっと複数あるべきだし、かつ本当に本音のベースでも平等であるべきだし、多様であるべきです。だとすると、例えばですが、今の解雇規制の問題は、やはりこれは避けて通れないですよ。あれは、はっきり言って大企業に勤めている正社員だけを守っているんです。あの制度では、中小企業で勤めている正社員は実質的に守られていないんだから。どう考えたって、金丸さんが規制改革会議で提起しているように、やはり中小企業で働いている、特に正社員の側に金銭救済を選ぶ選択肢を与えるなんていうのは当たり前にやるべき話で、なぜ、あれを認めたくないかと言うと、これは明らかに今の解雇規制で守られている人たちには関係ない話だからです。その既得権に異常に固執していて、はっきり言って、「金銭解雇なんてけしからん」なんてすり替え議論を一生懸命リードしている人は、中小企業で働いている正社員なんていうのはクズだと本音でそう思っているんですよ。そこを使い倒せることで、経営者も大企業の正社員もがいい思いをしているという世界が、やはり現実にあるので、そこは私は本気で変えるべきだと思う。

 もう1つ言ってしまうと、ダイバーシティの議論でいうと、これはある意味、インセンティブとダイバーシティの関係で言うと、インセンティブの射程をもっとダイバースにするべきです。だからあるものは、例えば企業体によっては、先ほどの離職率がありましたよね。うちのグループで言うと、バス会社は離職率が低い方がいいのです。できるだけ低くするように多分頑張りますよね。だけど、本体のプロフェッショナル組織は、2%、3%の離職率というのは不健全です。むしろ10%ぐらいの離職率がないとおかしいのです。そうすると、では、10%ぐらいの適正な離職率にむしろ引き上げることを、あるいはその適正のところに持っていくというインセンティバイズをする企業体もあっていいし、あるいは、労働法もそちらに誘導する労働法体系があってもいいし、逆にある業態はできるだけ低くするように、その多様性をどう、これは法技術的に難しいのかもしれませんけれども、私はそれがあった方がいいような気が実はしていて、例えば、そういう法創造的な、立法論的なアイデアがもしあったら、1つは教えていただきたいなと思っているのが、実はずっと思っていた質問であります。ありがとうございました。以上です。

 

○金丸座長 

私が言いたかったようなことを冨山さんに相当言ってもらいましたので。では、山川先生にボールが飛んでいきましたが、今の問題提起を踏まえて、何か法的に解決策とかアイデアがあればお願いいたします。

 

○山川氏 

2035 年ということではもうなくなってしまって、今、議論されていることになるかもしれませんが、私自身は、解雇権濫用法理については、特に大企業中心ということでもないのではないかと。要するに裁判、判例になれば中小企業でも、中小企業の特殊性ということは考えられますけれども、中小企業もしょっちゅう負けていますので、そのこと自体がいけないかどうかはともかく、紛争解決システムに乗っていけば、別に中小企業も大企業も関係なく解雇権濫用法理が適用されるということです。

 

○冨山氏 

すみません、よろしいですか。問題は、紛争にもっていくところまでの動機付けと経済的背景があるかどうかがここでは本質的な問題で、中小企業の従業員は、ほとんど組合員ではありません。それから、もともと労働者として弱い人たちです。従って、もちろん賃金も低いです。そうすると、もともと貯蓄もない人たちです。だから先ほど仰っていた労働市場における交渉力の非対象として典型的に当てはまるケースなのですね。そうすると、彼らにとって最も現実的な解というのは、小さな組織で、大体、不当解雇紛争を起こしているのは、ブラックな会社ですよ、これ。今の現状の解雇規制というのは、判決としては、ブラックな会社への職場復帰しか判決で取れないわけです。今の法体系というのは。そうであれば、さっさと、その金銭解決金をもらって、あるいはもらう前、裁判をやっている途中でも、さっさと次の正社員の仕事を見つけて、だから、そのバス会社に勤めていたら、うちのバス会社に転職してもらって、同時にしっかり元の会社からも不当解雇に対する金銭補償をもらえるようにした方が彼らを救えます。現状、法律的に職場復帰判決しか取れないので、転職したら、多分裁判は終わりです。だって、訴えの利益がなくなってしまうから。だから転職してもらって、その後、営々とうちから給料をもらいながら、2年分の紛争解決金をもらうという裁判をやる選択肢を与えたほうが、これはどう考えたって、現実に弱い立場の労働者を救うことにはなるはずで、現状、それの選択肢がないから、恐らくものすごい数が泣き寝入りになっているし、労働審判の金額は幾らぐらいでしたか、数十万円でしたか。

 

○山川氏 

メディアン(中央値)で100万円ぐらいだと。

 

○冨山氏 

100 万円ぐらいでしょ。

 

○山川氏 

ええ。

 

○冨山氏 

でも、これ仮にね、ヨーロッパ並みの解決金、仮に2年分だったら、500万円か600万円になるはずでしょ。だって、年収200万円、300万円はもらっているはずですから。

 

○山川氏 

そんな額にいきますか。

 

○冨山氏 

要するに何が言いたいかというと、100万円というのははっきり言って泣き寝入りですよ。だって、何故そうなってしまうかというと、結局、金銭判決が取れないから、労働者としては早く次の正社員の仕事を見つけたいと思うから、あるところで妥協せざるを得ないんです。この現実はやはり無視しては駄目で、だから結果的に、ある種、不当解雇するリスクというのは、実はすごく小さいのです、先ほどおっしゃったレピュテーションさえ気にしなければ。この現実はきちんと見つめるべきだし、あと、余計なことを言うと、前に審議官に大分色々言いましたが、さっき罰則の話を言いましたけれども、現状、業法上の安全監督にしても、あるいは労働法上の基準監督にしても、私はもっとシビアな罰則をやってもいいと思っていて、会社を潰してもいいと思いますよ。要するに退出命令を出してもいいと思っていて、これまでずっと、この議論のベースを人手が足りないという前提で考えると、そんなブラック会社は倒産させればいいんですよ、廃業させればいいんですよ。誰も困らないんだから。むしろそういう罰則はバンバン強化して、バンバン業務停止命令を出して、潰してしまったほうがいいと思います。はっきり言って労働者は困らないです。

 例えば、運送業や物流業やバス会社であれば、多分そういう人たちはヤマトさんで採用されるか、うちで採用するのです。それで解決していくので、むしろ、その辺どうですかね、審議官。

 

○金丸座長 

ちょっとこの話は、色々な意見がまた出てくることもあるし、これはひとつのテーマ設定になっているので、その他の方々にチャンスを移していいですか。

 

○磯山事務局次長 

ありがとうございます。本当は冨山さんの話を聞きたいのですが。先生がお配りになった7枚目の資料で、労働基準監督署による法律違反発見率というのがあります。これは定期監督なので、問題企業だけをピックアップしたわけではないのに、法律違反発見率が67%、68%になっています。先生はまだ行政の活躍の余地があると仰いましたが、私は逆で、これは、みんなが守らない法律になっているということなので、法律がとんでもなく時代遅れになっているか、現実から遊離しているということの現れではないかと思います。

 つまり、高速道路でいくら80km規制をしても、みんなが100kmで走っている。頭の固い警察庁でも、ようやく最高速度を120kmに引き上げるということをやり始めたので、労働基準法あるいは他の労働法制も現状から遊離しているところをどうやってカバーするかという議論をしないと、もう多分、これが追いついていないというのが、労働基準監督局、労働基準監督署の仕事がたくさんあっていいやという話かもしれませんが、この数字はちょっと異常なのではないかと。つまり7割方の人が守らない法律というのは、守る方が愚か者で、守らない人の方が当たり前ということになってしまうのではないかと思いますが、その辺、先生の御意見をお願いいたします。

 

○山川氏 

このデータ自体からは何とも言えないというか、ちょっとうろ覚えですが、諸外国でもそんなには変わっていないと思います。そもそも世界全部で労働法の規制が誤っているというのであれば話は別ですが、それほど世界的に遜色がある数字ではないと思います。それにしても、特に法違反の発見率が6割だから、そもそも必要のない規制かについては、ちょっとニュートラルというか、その中身次第であろうかと思います。先ほど申しましたように、これについては刑事罰から開放するとか、あるいは逆に、冨山さんが仰ったように、この問題については逆に刑事罰を強化するとか、そういったやり方で、個々的な問題になろうかと思います。特にこのデータから、どちらかの方向を決めるのは難しいのではないかと思います。

 また、サービス残業等がありますし、労働安全衛生で、ケガをしたり亡くなったりするとか、そういう事故もありますので、一律には言えないのではないか。あまりすっきりした回答ではなくて申し訳ありませんが、取りあえずそのぐらいでしょうか。

 

○金丸座長 

それでは、中野さん、お願いいたします。

 

○中野氏

 パワーポイントの18ページのルールの自己設定というところで、労使で考えるという話が出てきましたが、働き手が、紛争とまではいかずとも、働き方についての不満や改善策を企業に伝えたり交渉したりする枠組みとして、労使関係は今後どうなっていくのでしょうか。1つの企業の中での労働者が、正規、非正規、育児や介護を抱えながら働く人など、非常に多様化している時に、労働組合が労働者全体の利益をまとめるというのも難しい面があるかもしれないと感じます。社員が多様化していく中で、変えるべき労働法の枠組み、海外でどのようになってきているのかなど、参考になる事例などがあれば教えてください。

 

○金丸座長 

では、お願いいたします。

 

○山川氏 

ありがとうございます。やはり非常に根本的な点の御質問で、労使というように申しましたが、必ずしも労働組合だけを念頭に置いていたわけではありません。組織率の低下という現状の下では、色々なやり方があると思います。

 外国では、例えば従業員代表委員会や労使委員会のようなものを作るということは、ヨーロッパではかなりあるところです。組合がある所、ない所、色々ありますけれども、従業員代表委員会などという別組織を作るというのがあって、これは日本でもそういうものを作るべきだという提案があります。

 他には、企業の側から積極的に従業員の声を聞いていく。先ほどヤマトさんの話にもありましたが、色々なものがありまして、私が昔調査したところでは、ES調査とちょっと似ているかもしれませんが、従業員不満も含めて目安箱のようなもの、あるいはアンケート調査を実施したりして、意見を聞き上げるというか、吸い上げる。あるいはそのようなシステム自体を整備する。アドホックに、例えば、従来は労働組合ですと、組合の職場委員が職場を回って色々意見を聞くというパターンが多かったのですが、そういうものがない所でも、苦情、不満等について、オープンに声を聞くことができるようなシステムというか手続を整備するというような企業も出てきているということで、色々なやり方があると思います。法制的には、ヨーロッパでは従業員代表制のようなものが中心ですが、日本の場合は、企業別組合との兼ね合いがあって、従業員代表のようなものを作ると、企業別組合との関係がどうなるのかといった独特の問題は出てきます。以上です。

 

○金丸座長 

どうぞ。

 

○冨山氏 

半分質問で、半分意見です。ヨーロッパは特に顕著ですが、もともと産業別組合ですよね。だから産業別組合になっているので、正規か非正規かという軸は日本ほどは顕著ではなくて、働き方が正規だろうが非正規であろうが、その産別組合として、色々な交渉をしているので、日本の組合構造よりは、その間の違いは割と組合運動の中に比較的包摂しやすい傾向があるのではないかという気がするのですが、その辺はどうなのですか。

 

○山川氏 

仰るとおりで、従業員代表との関係では、ヨーロッパの場合は産別の組合と住み分けが比較的できやすいというようなことがあると思います。

 あと、ヨーロッパの実情は大内さんの方がよく御存じかと思いますが、従業員代表制度を設計する時は、例えば代表の選出の仕組みを複線化するとか、広い形で色々な立場の人の意見や声を聞くような形で設計するということはあり得るかと思います。

 

○金丸座長 

それでは、どなたかいらっしゃいますか。では、御手洗さん、お願いいたします。

 

○御手洗氏 

2 点質問です。1点目は労働市場の健全性についてです。先ほど最後に女性の所で、これからは基本的には働き手不足なので、良い会社が評価されていくのではないかというお話があったかと思いますけれど、それは女性に限らず、労働市場が健全である限りは、一定レベルある機能だと思います。嫌な会社だったら辞めて、嫌だっていうだけではなくて、合わなかったら辞めて他へ行くと。ただ、例えば気仙沼にいると、東京に比べて、働き場の選択肢が少ないので、この機能が都市部に比べて低いかと。ヤマトさんの集配所はありますけれど、冨山さんのバス会社はないので、多分バス会社を1回辞めたら、もう行き先がないと思うのですが。なので、これが例えば産業種類が偏っているような、若しくはその雇用主が、例えば2社で8割方の雇用を持ってしまっているような町だとか、そういう労働市場が明らかに健全に働いていないと思われる地域が具体的にあるか、また、そういった地域だと相談件数が上がるというような相関が見られるかというのが1点目の質問です。

2点目の質問は、もしかしたら事務局の方にお伺いしたほうがいいかもしれないのですが、私のただの本当に個人的な不勉強なのですが、そのとき出席されていなかった方もいらっしゃるので、補足すると、うちの編み手さん達は他で働けない人が多い、フレキシブルな働き方がいいから、うちで働いている、うちは納期なしで自宅でできるのですと話をしたら、山川先生に「それはもはや労働者ではない」とばっさり切られたんです。ぐさっと来たんですけれど、その通りで、個人事業主として確定申告をしていただいていますと。

 そこで、労働者の定義で、労働法で誰の何が守られているのかというのをきちんと可視化させてみたいと思っています。ユニバースを人間全体と取って、例えば外国人労働者と日本人で何か差があるのか。働いていない人は入っていないとか、働いていても個人事業主に入っていないとか。そうすると、ここだけの話で、こっちの人は全部カバーされてなくて、今後のトレンドを見ると、例えば個人事業主が増えるとか、移民の問題が出ると、全くここはカバーされていないというようなことがあれば分かると有り難いと思いました。

 

○山川氏 

ありがとうございます。2つの御質問ないし御指摘で、1つ目は、要するに労働市場で、地域的な労働市場が言わば分断されていて、移動がしにくいものがあるかどうか。その辺のデータはよく分からないのですが、大変興味深いところです。つまり、労働市場の移動が困難な状況と、労働者の相談件数や不満の相関関係のようなもの。調べようと思えば調べられるかと思いますが、申し訳ありません、ちょっと今、把握しておりません。政策的には色々あるかと思います。

1つは、自分で言っていて、空疎に聞こえるかもしれませんが、地域の産業の振興のようなことにより、労働市場をより選択肢が多様なものにすることと、あと、移動の促進でしょうかね。ただ、移動できない人がどうなのかという問題はあるかもしれませんけれども。あとは、情報テクノロジーが高度化してくると、テレワーク等で、今でも色々な形で地域を離れてもできる仕事はできています。そのようなテクノロジースキルのない方の問題ということになりますと限界があるかもしれません。自分で言いながら、空疎な感じがして、申し訳ないところですけれども、いずれにしても、移動の促進のための手法は何か考えることがもう一方であるかと思います。古い話ですけども、昔は集団就職という形での移動があったわけですけれども。

2つ目の点についてですが、それは正に私の申し上げたかったところと共通していまして、これまでは労働政策の対象は労働者を基軸に考えてきましたけれども、労働法でなされている保護を与える必要性は、先ほど申し上げたように、労働者でない場合でもある程度あり得るのではないかと。そのような方について、労働者の場合と同じ手法は使えないかもしれないけれども、政策として翼の中に含めていくことはあり得るのではないかという問題関心でした。現状では、労働者となった場合には、大体保護の内容は統一されていますが、有名なのは、労働組合法上の労働者は労働基準法上の労働者よりは広いということで、典型的なのはプロ野球選手で、プロ野球選手は残業手当や深夜手当は付かないと思いますけれども、組合は結成できるということで、そこは代表的ですが、それ以外は、外国人については、外国籍であることを理由とする制約は少しはあるかもしれませんが、基本的には国籍差別が禁止されていますので、イコールトリートメントということになると思います。ただ、どういう場合にどのような保護を与えられているか、あるいは、どのような規律があるかを整理すること自体は有益かと思います。パートタイムの場合、労働時間が短いことによって、年休などの特別扱いがあったりすることで、幾つか特殊性はありますけれども、基本的には労働者、非労働者という切り分けが一番大きくなっていると思います。

 

○御手洗氏

 その場合の労働者というのは、雇用されている人という意味ですか。

 

○山川氏 

そうです。言わば指揮命令の下で労務を提供して賃金を支払われているという定義でしょうか。

 

○金丸座長 

松尾先生、今日は何かありますか。

 

○松尾氏 

いや、そんなにないのですが、くだらないことを言いますと、5ページです。何か調査があるのですが、「実施されている」と回答した者のうち「働きがいがある」又は「どちらかといえば働きがいがある」と回答した割合と、「実施されていない」と回答した者のうちとありますけれど、このグラフを見ると、おかしいのではないかと思います。ベイズの定理的に、片方はどれも50%ぐらいにとどまっていて、ちょっとおかしいのではないかと思いました。今の話に近いところでは、研究室でも人工知能やWebなどの研究をして、データ分析をしていると、これまでの勤務体系と全然合わないところがあって、夜中でもできますし、別に遠隔でもできるし、やる気になる時にやったほうが効率もいいので、そこは大学が規定する従来の勤務体系と相当乖離があると感じています。

 それから、山内さんに是非お聞きしたいと思っているのですが、特に物流というのがどうなっていくのかが私は非常に興味がありまして、先ほどバックオフィスはどんどん自動化していくと仰っていましたけれども、やっぱり全般的に自動化されていくのではないかと思いますし、その時に、例えば今、ガス管とか水道管みたいのがありますけれども、物流管というか、そういうのが社会インフラとしてできる可能性もあるのではないかと思います。要するに家に運ばれてくるものは毎日たくさんあるし、出ていくものもたくさんあるから、そこの効率化があるのではないかとか、かなり先を見通すと相当な変化が予想されるのですが、そこら辺をどうお考えなのか。

 それと、もう1つ、私はよく人工知脳で職を奪われるのではないかと質問をされて、大丈夫ですからといつも言っているのですが、そこを山内さんだったらどうお答えになるかをちょっと模範回答として教えていただきたい。

 

○山内氏 

まず、1点目の部分でいきますと、かなりの部分はインフラとして効率が上がっていく形の方向へ行くと思います。結局、物が届くのが今は色々な形でばらばらと動いているものが、ひとまとめになっていく。それが実現できるためには、デジタル化にあらゆるものがなっていかなければいけない。今でいうIoTみたいな形と同じように物流のIoTみたいな形で、事前に全て情報化されるような、これは物流業としても仕掛けをしていきたいと思いますし、それが実現できたときには、どうなるかというと、ロボティクスみたいなものがどんどん入っていきやすくなるし、一番最適効率なものが常にAIで導き出されて、それに基づいて動くような形になっていくのかと。そうすると、その部分での何か差別化が非常にしにくくなっていくのかなと。ただ、先ほど言ったように、物をただ単に届けるだけではなくて、そこで人と人とが接する部分で起こるコミュニケーションであるとか、そういった領域が、物流という、今後、物を届けるだけではなくて、人と人をつなぐような形になっていく部分に入っていくのかというイメージを感覚的には持っております。

 業務の自動化というところでいくと、同じような形になるのですが、より効率を求めて、サービスを受ける側が選択をするような形になるのかと。私はそういったものは機械的にやってもらえばいいというものについては、どんどんロボティクス化が進んでいくであろうと。いわゆるそれが利便だと感じる方と、ホスピタリティを持ったきめ細かいサービスとか心のこもったサービスみたいなものを求める部分もやはり残っていくと思いますので、そういう部分が人と自動化、ロボティクスで分かれていくのかなと。ただ、それをより良いサービスとして感じるためのサポートというのは、人の部分にも色々と入ってくるのではないかと思っています。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。それでは、時間になってしまいまして、本日はこれで終了させていただきたいと思います。Webでつながっている浦野さんと大内さんにおかれましては、次回にプレゼンをいただくことになっておりますので、そのときに今日話したかったことを含めてお願いしたいと思います。それと、中野さんには音声の調子が悪くて御迷惑をかけました。ありがとうございました。次回の懇談会は、今も申し上げましたとおり、浦野さんと大内さんから御説明いただく予定でございます。

 それでは、最後に厚労省から連絡があれば、お願いいたします。

 

○鈴木労働政策担当参事官

次回の懇談会は413日水曜日、10時から12時まで、場所は当省の12階の会議室で予定しております。詳細につきましては、別途御案内いたしますので、よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。本日は初めて全員が揃ったという記念すべき日でございまして、これからもお忙しいと思いますが、できる限り御出席を賜ればと思います。それでは、これをもちまして本日の懇談会は終了させていただきます。ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労働政策担当参事官室
03-5253-1111(内線:7992)

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