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2016年2月23日 第2回組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会

○日時

平成28年2月23日(火) 17:00~19:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)


○議題

(1)アンケート調査結果について
(2)講ずべき方策に関する論点(案)について
(3)その他

○議事

○鎌田座長 皆様おそろいのようですので、少し早いですが、ただいまから「第2回組織の変動に伴う労働関係に関する対応方策検討会」を開催いたします。御多忙のところ、お集まりいただきましてありがとうございます。議事に入る前に、事務局から委員の出欠状況などを御報告いただきたいと思います。

○労政担当参事官室室長補佐 本日は、全員御出席となっております。また、政策統括官の安藤ですが、やむを得ない公務の都合で遅れて出席いたします。なお、今回から、机上にドッチファイルを置いております。今回は、第1回の検討資料を入れております。今後は、このファイルに前回までに使用した資料を、順次差し込んで、各回の検討会の中で御参照いただくこととしております。よろしくお願いいたします。

○鎌田座長 それでは、議事に入ります。初めにアンケート調査結果について、事務局から資料1について御報告をお願いします。

○労政担当参事官 御説明いたします。資料1を御覧ください。これは組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する調査ということで、企業と労働組合に対するアンケート調査をJILPT(労働政策研究研修機構)に要請して行ったものです。なお、実は、アンケートと、併せてヒアリング調査も行っております。本日は資料が整いませんでしたので、次回には結果も御報告できればと思っております。恐縮でございます。本日はアンケートの御説明をいたします。

 資料1です。企業と組合が同じ資料で分かれています。企業調査から順に御説明いたします。

 1枚目の概要にあるとおり、100人以上を雇用している企業を調査対象とし、抽出方法で調査しました。4.回収状況を見ると、有効回収数1,548件のものをまとめております。5.回答属性で組合の有無について書いていますが、「組合がある」という企業は30%、また、「社員会等、従業員の意向集約の場がある」という企業が25.8%でした。

 次ページです。(2)過去3年間の組織再編の有無です。○1会社分割について聴いていますが、分割会社として会社分割をしたのが1.3%、承継会社として会社分割して事業を受けたのが1.6%等となっています。○2事業譲渡のほうは、他社へ譲渡をした(事業譲渡があった)企業は2.8%、事業を他社から譲り受けた企業は5.7%となっています。その結果、ここにも数が書いてありますが、こういうパーセンテージですので、サンプルが数十というオーダーになっていることを御留意いただければと思います。今後、会社分割の中で、分割会社として分割をした会社と、承継会社または設立会社の結果を合わせたもの、要は、受け手のほうと、あと、事業譲渡の譲り渡したほう、譲り受けたほうという4種類の結果について、以下、報告したいと思います。

 3ページ、1(ローマ数字)分割会社です。サンプルは20となっています。1.分割の目的ですが、「グループ内の組織再編のため」、「本業に経営資源を集中して経営効率を高める。いわゆる採算性の低い部門を切り離して経営効率を高めるため」の順になっていて、高くなっています。

 2.会社分割の形態です。これは事業単位での分割か、権利義務単位での分割かを尋ねたものですが、いずれも「事業単位の分割」でした。

 4ページ、3.承継会社等との関係です。受け手の企業との関係については、以前から存在するグループ内の企業が60%、新たにグループ化した企業が35%ということで、この2つが大半となっています。

 4.承継会社等ですが、その分割会社から見て承継会社等が、現在も「存続している」という回答が85%でした。過去3年間の組織再編があったという会社を対象に聴いています。最大3年間ですので、組織再編の瞬間との開きはありますけれども、こういう回答です。

 (2)で、その分割会社から見た承継会社等の経常利益の変化ということで、分割直後と直近を比べたものですが、「黒字のままで、経常利益向上」「赤字から黒字に変化」「赤字のままだが経常利益改善」等々が、1020%台という形で分布しております。

 5ページ、5.労働者の移籍です。移籍の対象となった労働者と承継される事業との関係を(1)で聴いております。承継される事業に「主として従事」していた労働者が8割あり、一番多くなっています。そのページの下半分は、その労働者との協議や通知の実施状況です。これは「主従事労働者」「従従事労働者」「不従事労働者」に、対象別にグラフを作っています。概括的に言うと、対象労働者と個別に協議しているという回答が多くなっています。

 6ページ、(2)その移籍した労働者の移籍方法です。選択肢としては「その労働契約を分割契約等に記載して承継会社等に承継させた(会社法及び承継法による移籍)」が40%、「転籍合意方式(分割契約等に労働契約を記載せずに個別に同意を得たもの)」についても40%で、同じ程度となっています。

 (3)は、「主として従事」していた労働者のうち、移籍対象にならなかった労働者、いわゆる承継法で言うと、これは通知や異議の申出の対象になりますが、そういう人がいたという企業は20%です。そのうちで異議の申出があった企業はなかったということです。

 それに対して、(4)が「従として従事」とか、「全く従事していなかった」という者のうち、移籍対象になった労働者です。これも逆のパターンで、異議の申出があるパターンですけれども、移籍の対象になった労働者が「いた」という企業が25%で、異議の申出があった企業はなかったということです。

 6.賃金額の変化です。会社分割に伴う変化ですが、同一の賃金を「維持した」が、80%、「低下した」も5%あったということです。

 7ページ、7.労働協約の扱いです。これは大変恐縮ですが、労働組合員が承継されているかどうかを問わずに聞いておりますので、そこを注意して見る必要があると思います。「労働協約の規範的部分が承継された」が55%、「債務部分が承継された」が35%という回答となっています。

 8.労働組合との協議等です。事前に協議、通知・情報提供等があったかどうかという問いです。この選択肢を見ていただくと、左2つが労働組合と何かをしたという回答です。労働組合との関係では、「協議した」というのが3割。左から3番目、4番目の2つが、その他の社員組織と何かをしたという回答です。その中では「社員組織と協議はしなかったが、事前の通知・提供はした」という所が15%、「協議した」の所は10%になっています。そのほか、「協議・通知・提供がなかった」は5%、「労働組合・社員組織がなかった」というのは35%、そのほかに無回答が2社あります。

 8ページ、承継会社等、いわゆる会社分割で承継会社として受け手となった会社に聴いたものです。先ほどと重複する部分は飛ばしながら御説明いたします。1.会社分割の形態ですが、先ほどの分割会社のほうでは権利義務単位での分割がなかったのですが、こちらの調査結果では、権利義務単位の分割と答えた会社も一部ありました。

 9ページ、3.移籍して来た労働者の賃金額の変化です。会社分割直後(直近)と、現在について聴いております。直後も現在も、分割前と同等の賃金額は同じように多いのですが、賃金額が増加したという回答は、現在のほうが多くなっております。ここも多少、端折って飛ばします。
 10ページ、これは承継会社に聴いておりますが、承継会社がその分割会社の労働組合等や分割以前の会社の労働組合等と事前・事後の協議を行ったかどうかと尋ねた問いです。「事前・事後両方に行った」というのが9.7%、「事前に行った」のは32.3%、「行わなかった」が25.8%となっています。

 以上が、会社分割ですが、11ページ以降は、譲渡企業に聞いたものです。1.事業譲渡の目的については、グループ内の再編、採算性の低い部門の切り離し、本業の経営資源を集中し、経営効率を高める等の順に多くなっております。

 2.譲受企業との関係については、「グループ外の企業」が最も多いという結果となっており、残りは「グループ内」と、分割の場合とは傾向が違っていると思います。
 12ページは、3.同意の有無です。譲渡に伴って転籍又は出向した労働者から、その同意を取ったかという質問です。取った所が90.3%でした。

 4.転籍又は出向した労働者の賃金額の変化です。「同一の賃金額の維持」が80.6%で最も多く、低下、増加は、それぞれ一部あります。

 5.転籍又は出向対象になった労働者についてです。()は、移籍又は出向を拒否して会社にとどまった人の有無です。その者がいたというケースは11.4%の会社があったと答えています。()で、そういう人がいたというケースの中で、その後その人がどうなったかの結果は、「配置転換した」という回答のみでした。

 13ページ、事前に労働組合等と事前協議などをしたかということについては、棒グラフを見てください。同じように、上2つは組合と何かをしたという回答ですが、組合との関係では、協議をしたということが多いのですが、それ以外に、社員組織との関係では、協議か通知・提供では同じくらいになっています。「労働組合や社員組織等はなかった」という回答も別途あります。
 (2)労働協約の承継です。こちらは承継法のような法律上の承継の規定はないのですが、全部承継された、過半が承継されたが13.6%と6.8%ということで、2割ぐらいが何らかの承継はされています。承継されなかったが13.6%などとなっております。
 14ページの下半分を御覧ください。これは譲受企業についてです。2.賃金額の変化ですが、事業譲渡直後と現在とを比べております。いずれも、譲渡前と同等の賃金額が多いのですが、賃金額が増加したという割合が、やはり現在のほうが多くなっております。
 15ページ、3.組合等への対応です。(1)譲渡企業の労働組合と、譲受会社が事前協議、又は事後協議をしたかどうかということですが、「事前・事後の両方に行った」が9.1%、「事前に行った」が21.6%という結果です。会社に対する調査は、以上です。

 資料1のもう一つの束を御覧ください。労働組合に対する調査です。こちらは概要の2番にあるとおり、組合員数100人以上の組合から3,000組合を無作為抽出したもので、有効回収数が640件です。5番は、結果です。組織再編の有無ですが、「分割会社の組合として経験した」が4.1%、「承継会社の組合として経験した」が2.8%、「譲渡企業の労働組合として経験した」が4.1%、「譲受企業の組合として経験した」が3%となっております。いずれにしても、こちらも1020台の数のサンプルであるということをお含みいただければと思います。

 3ページ以降、同じように4パターンを御説明いたします。3ページが分割会社の労働組合のパターンです。目的については、グループ内の再編が一番多く、その他、経営資源の集中、採算性の低い部門を切るという順番と多くなっています。
 2.形態ですが、事業単位の分割が多く、一部は権利義務単位という回答もありました。
 4ページ、3.承継会社等との関係です。これは会社と似ている傾向で、「グループ内の企業」が46.2%、「新たにグループ化された企業」は26.9%であり、両者で大半となっています。
 4.承継会社等についてです。分割会社の組合から見て、承継会社等が、現在どうなっているか、存続しているという回答が84.6%でした。分割会社の組合から見て、()経常利益の変化ですが、「黒字のままで経常利益向上」が18.2%、「赤字から黒字に変化」、「赤字」等々の結果は、1割、2割台になっています。
 5ページ、5.の(1)移籍の対象となった組合員です。それが事業との関係ですが、「事業に主として従事していた組合員」が61.5%等の順に多くなっていますが、その他の「従として従事」も含めて、多少の数が出ております。その下半分は、その組合員との協議や通知が行われたかどうかについてです。これも組合員と事業との関係別に棒グラフを作っています。概して、対象者にもよりますが、主従事とか、従従事の組合員の場合には、労働組合が代理で協議したという割合が一番多くなっています。個別協議も、その次に多くなっていることが言えるかと思います。
 6ページ、()移籍した組合員の移籍方法です。分割契約等に記載して承継させたという会社法、承継法に基づく方法が55.6%、転籍合意方式が38.9%となっています。

 (3)は、主として従事だけれども、移籍の対象にならなかった組合員がいたというケースは16.7%とありますが、異議の申出のケースはなかったということです。
 これに対して、(4)の逆パターンの「従従事」又は「不従事」で、移籍した人のケースはあり、そのうち、異議の申出が25%、これは実は1組合なので、1と書きましたが、その方のその後の状況としては、配置転換という回答でした。

 6.賃金額の変化です。「分割前後で同一の賃金額を維持した」が83.3%と多く、「差額を補填した」という回答が、その残りとなっています。

 7ページ、7.労働協約の取扱いです。これは、移籍対象となった組合員がいた労働組合に聞いています。労働協約の規範的部分の承継がなされ得るというパターンかと思いますが、承継されたという回答が88.9%と多くなっております。

 8.事前協議の有無です。「事前に協議した」が42.3%で、「事前通知・提供があった」は38.5%です。

 8ページ、9.事前に情報提供や労働協議のプロセスに関する組合の評価です。多少項目によって、「満足している」「やむを得ない」のどちらが多いかという関係は変わりますけれども、概して、どちらも3、4割前後です。項目で言うと、ほとんどの項目で、どちらも「満足」「やむを得ない」が4割前後辺りで拮抗しているということが言えるかと思います。

 次は、9ページ以降です。これは承継会社の組合に聞いた会社分割のパターンです。重複する部分を飛ばして9ページの下の(2)を御覧ください。新設分割の場合に、新しく設立会社で、組合の組織をどうしたかという問いについては、「別の単位組合を設立した」と「既存の分割会社の組合の下部組織とした」が同等ずつありました。サンプルが少ないので注意して見ていただく必要があるかと思います。

 組合の10ページです。分割会社と承継会社の関係については、以前から存在するグループ内企業が多いという結果です。

 3.賃金額の変化です。分割直後については、全てのケースが同等の賃金額ということですが、現在になると、多少「増加した」が入っているということです。
 12ページを御覧ください。これは事業譲渡ということで、まず譲渡企業(譲り渡したほうの会社)の労働組合に聴いています。1.事業譲渡の目的ですが、グループ内の組織再編、経営資源の集中、不採算部門の切り離し等の順に多くなっております。

 2.譲受企業との関係については、グループ内というのもありますけれども、やはりグループ外が多いというのが、会社分割とは多少異なっている結果だと思います。

 3.出向・転籍で採用された労働組合員がいた場合、同意をしたかどうかについては、94.7%が同意しておりました。4.事業譲渡に伴う賃金額の変化は、89.5%が維持したということで、残りは補填をしたということです。

 5.転籍・出向を拒否した組合員がいたかどうかについては、「いた」という組合が23.1%ありまして、その拒否した組合員がどうなったかという問いについては、「配置転換された」が83.3%等で多くなっています。
 14ページ、6.事前譲渡に関する協議については、「会社と事前に協議した」が57.7%、「協議しなかったが、事前通知・提供があった」は、26.9%です。
 (2)労働協約の承継については、「全部承継された」が38.5%、「過半が承継」が23.1%ということで、6割ぐらいが何らかの形で承継されたという回答です。
 15ページ、(3)情報提供や労使協議プロセスの評価です。「やむを得ない」という回答が65.4%で、一番多くなっております。23.1%が「満足している」ということです。

 次に、8.転籍又は出向した組合員の参加状況ですが、「引き続き譲渡企業(元の企業)の組合員に加入している」が36.8%、「譲受企業の組合に加入」は、31.6%等々の結果となっています。
 16ページ、譲受企業の組合のパターンです。下段ですが、2.賃金額の変化です。譲渡前と同等額という結果が85.7%で、一番多くなっております。
 17ページ、(2)労働協約の承継の結果です。これも先ほどと傾向が余り変わらないので、ここで省略いたします。資料1については、以上でございます。駆け足で恐縮でございました。

○鎌田座長 それでは、資料1に関して御質問、御意見がありましたら、自由に御発言をお願いいたします。

○久本委員 では、素朴な質問です。企業の5ページ目に、会社分割に伴う労働者の移籍とありますが、承継される事業に「主として従事」している労働者が80%ということになっていますが、逆に20%はどういうことなのかが、ちょっと分かりにくかったのですけれども。その辺がよく分かりませんので、御説明いただければと思います。

○労政担当参事官 そうですね。恐らく、主として従事していないので、「従として従事している」か、「全く従事していない」か。これはマルチアンサーなので。

○久本委員 対象の労働者はいないというのが15%ですが、つまり、会社分割そのもののイメージなのですけれども、15(3社)だけなのですが、イメージ作りで気になったということです。

○鎌田座長 何か想像できることを、ちょっと事務局としては言いづらいですか。

○労政担当参事官 そうですね。「主として従事しない」とは、やはり間接部門、総務部門的な所にいるけれども、ちょっとその人は、一緒にある個別の事業本部が移る場合に、総務部門の、間接部門の人も一部、移籍するというのが、我々がよく言う、従従事とかを説明する場合に使われる例なので、それが本当に今回のこの例かはちょっと分からないのですけれども、そういうのが1つ考えられると思います。

○鈴木委員 回答される方が、もしかしたら会社分割、しかも移籍という言葉に捉らわれて回答したために、出向が入っている可能性はないのでしょうか。

○労政担当参事官 調査表上、分かりやすくというか、一般的な分かりやすいところで、「移籍」という表現を使ってしまったので、例の転籍合意方式も出向を排除していませんので、当然、排除はされていないと思います。実際に、この項目の中での内訳までは分からないところです。

○鎌田座長 なるほど。十分あり得ると思います。そのほかにありますでしょうか。

○荒木委員 これは20社から回答があったのですよね。

○労政担当参事官 はい。

○荒木委員 その会社が主従事労働者がいました、従従事労働者もいましたとか、そういうようにして回答しているから全部足すと、20を超えますね。

○労政担当参事官 はい。

○荒木委員 そういうものなので、このグラフの読み方としては、企業によっては両者がいたり、主従事労働者がいたりとか、そういう数値なのではないでしょうか。だから、残り20%がどれかにかかっているとか、そういうものではないようなグラフではないのでしょうか。

○労政担当参事官 はい、申し訳ございません。そのとおりです。これはどのような労働者が対象になりましたかということで、幾つでも答えてくださいというように聞いています。だから、80%の会社は主従事が1人でもいたということを答えておりますが、残り2割が、そうではない場合もあるということです。

○荒木委員 会社単位ですね。

○鎌田座長 会社単位ですね。あとは、いかがでしょうか。この調査対象は、常用雇用労働者100人以上を雇用する企業にというようになっていますね。

○労政担当参事官 はい。

○鎌田座長 100人以上にした理由は何かあるのですか。

○労政担当参事官 効率的に迅速に行おうという場合に、会社分割を中心に、企業の従業員規模が大きいほど分割等の実施割合も高いということで、組織再編をしている割合が高い。もちろんそれ未満の会社もやっていらっしゃいますが、一定の割り切りをして、切ったということです。

○鎌田座長 先ほど、ヒアリングでも調査されたということですが。

○労政担当参事官 はい。

○鎌田座長 ヒアリングのほうはどうなっていますでしょうか、つまり、その事業規模というか、常用労働者の規模。

○労政担当参事官 実はヒアリングは、この調査に答えてくださった方から、協力できる会社や組合と、あと、多少その他の所でも聞いていまして、その他の中には、これより規模が小さい所も若干は含んでヒアリングはしております。

○鎌田座長 なるほど。本日の段階で御紹介いただけるようなものは、特にないということですか。

○労政担当参事官 そうですね。すみません、きれいなものになりませんが、状況を今、JILPTに確認したところ、それほど今回の調査と、全体的に全然齟齬があるようなことは見受けられないということです。抽象的なお答えですが、正確ではありませんけれども聴いております。また、そこは分析して、次回以降、御紹介したいと思います。

○鎌田座長 そうですか。では、お願いします。あとは、ありますでしょうか。どちらが早かったか分かりませんが順番にいきます。

○鈴木委員 素朴な質問で恐縮です。組合調査の17ページの円グラフ、図表29ですが、右側に、選択肢の中の「労働協約は無かった」というのが0%にもかかわらず、協約が「承継されなかった」という回答があることについて、どういうケースが想定されるかを、もしお分かりになれば教えていただきたいと思います。

○労政担当参事官 協約がない。

○鈴木委員 承継されなかったというのが4組合、36.4%あるということがどういう理由なのかについて疑問に思いましたので、お聴かせいただきたいと思います。

○労政担当参事官 はい、組合に聴いていますので、確かに協約はあったのではないかと思いますが、ただ、事業譲渡ですから、個別な協議で承継も決めていきますので、何らかの理由で、だから新しいところの協約でやるとか、勝手な想像ですけれども。前の協約を使わないことに何か理由があったのではないかという程度しか思い付かないです。

○鈴木委員 これは想像でしか過ぎないのですけれども、事業譲渡の場合、ポーションが少ないケースがあるので、そこの事業所に組合員が移らなかったためというようなことは考えられるのでしょうか。

○労政担当参事官 制度の設計上、組合に聴いていますから、普通は自分の所の組合員が承継にされた場合かと思われ、確かに、限定的に移籍した組合員がいないケースがなかったかどうかはわからず、いる場合に、必ず限定するという調査の設計にはなっていないので、その可能性はゼロではないと思います。普通は組合員がいるから、そのように答えているのかとちょっと思ったのですけれども、私も分からないです。

○鈴木委員 ありがとうございます。

○鎌田座長 次は村上委員なのですが、狩谷委員の質問は関連してですか。

○狩谷委員 関連してです。

○鎌田座長 では、お願いいたします。

○狩谷委員 我々の所で多いのは、もともと譲受する会社に労働協約があって、そこに譲渡されるということで、もとからあった労働協約が消滅してしまうという例が多いです。だから、承継されなかったケースはそういう事例ではないですか。

○労政担当参事官 ありがとうございます。

○鎌田座長 ありがとうございます。

○村上委員 質問ではなくて、感想ですが、企業調査の10ページや15ページなどに、「労働組合等との事前又は事後の協議を行ったかどうか」ということが出ています。ここでの回答結果をどう見るかということが今後、次の議論につながるのではないかと思っております。10ページの回答結果の場合、31の回答数だけで全てを語れるわけではない点や、無回答が3割以上あるという点を、どう評価をするのかという問題はあります。しかし、やはり組合調査と照らしてみると、組合があれば、ある程度の協議をしているところも、協議なり通知なりしている所もあるのに対し、組合がなければなかなか協議が行われていないのが実態です。15ページでは、事業譲渡の際の組合との事前・事後協議の有無が記載されていますが、こちらはもっと少なくて、協議を確実に行ったというのが3分の1強で、その残りは行わなかったか、または無回答という結果が出ています。これらの結果から、やはり協議を行うべきことをきちんとアナウンスしていくことの必要性が現れているのではないかと思います。

○鎌田座長 ありがとうございます。そのほかにありますでしょうか。

○村上委員 もう1点ですが、企業調査の9ページには、会社分割の際の賃金額の変化が出されていますし、また14ページには、事業譲渡の際の賃金額の変化が出されています。「賃金額は増加した」という回答が割と多くなっているのですが、これらの質問の際に、定昇やベースアップ等を含んでいるかいないのかがよく分からない部分があります。つまり、同じ人が、勤続2年たち、3年たちすれば、その分、賃金額が増加していくということも考えに入れて、「賃金額は増加した」と回答している企業もあるのではないかと考えています。純粋に賃金表が書き換わって増加したということなのかどうなのか、この点はどのように理解すればよいのか教えていただければと思います。

○労政担当参事官 確かにアンケートでの聞き方は、分割前後とか、その後の現在との関係で賃金額がどうなりましたかということで聴いているだけですので、ベースアップの分は除くとかにはなっていません。当然、それを含んで上がったというケースは排除されていないと思います。

○鈴木委員 村上委員の最初の御発言に関してですが、協議の実施率については、事実として受け止めないといけないと思っていますし、協議の重要性ということを否定するわけでは全くないのですけれども、実務的には、協議の仕方についてはケース・バイ・ケースであります。重要なことは、労働者の理解と協力を得ることが、結果としてできているかどうかという点にあると思っております。7条措置も「協議その他これに準ずる方法によって」というような扱いになっていたと思います。だから、協議、そのものだけが捉らえていないので、その理解と協力が一切、得られていないかというのは、少し幅を持って見ないといけないのではないかと個人的には思っているところです。

○鎌田座長 何か、ありますか。

○村上委員 次の議論に関わってくる問題かと思いますが、理解と協力というものを得さえすればいいと条文上はそういうことなのかもしれません。しかし、事業再編時には切り離される方、残る方もいるわけですから、自分の職場がどうなるのかといったこと等については、全体的に労働者の代表なり、労働組合の代表と協議していくことが、やはり必要であると思っています。

 7条措置は理解と協力を得るように努めるものとするとされているとおっしゃるのでしょうけれども、協議があるからこそ、円滑に事業の再編というものができるわけで、協議もなしにでは働く労働者も、企業もウィンウィンの関係にある事業再編はなかなか難しいのではないかと思っております。そこは、きちんと現状を受け止めて、必要な施策を考えていくべきだと思っています。

○鎌田座長 ありがとうございます。そのほかにありますでしょうか。なければ、これから「論点()」のところで、また議論があるかと思いますので、そこのところで再び戻っていただいて結構だと思います。

 それでは、次の「講ずべき方策に関する論点()」に移りたいと思います。これについて御説明をお願いします。

○労政担当参事官 資料2を御覧ください。講ずべき方策に関する論点()を出させていただいております。これは前回の御議論を踏まえた労働契約承継法の法令、指針や事業譲渡に係る通知等も見て、あとは研究会報告書も参考にしながら、事務局で講ずべき方策のたたき台として、この論点()を提示させていただいております。

 御説明いたします。資料2を主に説明しますが、途中で一部、参考資料の参照もしていくような説明も挟みますので、恐縮ですが、よろしくお願いいたします。1番の「会社分割について」です。はじめに、会社法の制定による会社分割制度改正への対応です。1つ目の○が事業に関し有する権利義務です。それから会社法制定によって分割の対象が、事業から「事業に関して有する権利義務」に変わったことへの承継法での対応の論点です。承継法における「主従事労働者」の判断基準としては、労働者の雇用や職務を確保するといった労働者保護の観点から、引き続き「事業」概念によることとしてはどうかと書いております。

 その次が、今の「事業」概念に関わる更なる論点です。「事業」概念によることとした場合に、その「事業」については、一定の事業目的のために有機的一体として機能する権利義務のまとまりであることを基本としつつ、とあります。これは()にあるように、商法上の、そういう考え方はありますが、そうしつつも、3行目以降ですが、具体的にどのような単位等で考えるかについては、会社の組織、業務分担の体制などから見て、その事業に主として従事する労働者が事業とともに承継されることで、その労働者の雇用や職務が確保されるような権利義務のまとまりであれば「事業」と捉えるといった、事業の考え方を明らかにすることが考えられるのではないかということで、承継法としての考え方を表明する提案となっております。

 次の3ポツ目です。1パラ目は、承継される不従事労働者は、現在、5条協議の対象と、指針上はなっていないのです。そういう労働者は通知の対象であり、異議申出権も有していること等を踏まえて、5条協議の対象として加えてはどうかということを書いております。後段の「また」の項ですが、事業に至らない権利義務レベルの分割の場合として、そうした場合に承継されない不従事労働者とあるところに解説を加えると、事業というものがない分割の場合ですので、かつ、それで承継されなければ承継法上の、例えば5条協議や異議の申出の対象にはならないのですが、そういう労働者のうちでも、その権利義務の分割が、その職務の内容等に影響し得るものについては、7条措置という労働者全体の理解と協力を得る措置とは別に、職務の内容等の変更があれば、その説明など一定の情報提供を行うことが望ましいことを周知してはどうかということです。5条協議の対象としなくても、ある一定の情報提供が望ましいという趣旨で書いております。

 次の○が「債務の履行の見込みに関する事項」で、会社法制定により、会社分割で必要とされていた履行の見込みがあることが変更され、履行の見込みに関する事項を開示すればよいことになったことに伴う対応です。それに伴い、可能とされている債務超過分割などの際に、不採算事業とともに承継される労働者、あるいは不採算事業に残留する者も生じうることになりますが、それを踏まえると、債務の履行(の見込み)に関する事項も7条措置の対象ということで、これは労働者全体の理解と協力を得る措置ですが、その対象であることを明確にして周知を行うとともに、5条協議の際には「債務の履行の見込みに関する事項」も説明することとして対象事項に含めるといった対応を行ってはどうかと提示しております。5条協議のほうは、債務の履行に関する事項が指針上、説明事項として明示されていないので、「含める」といった表現で提案しております。

 次のポツが、また、以下のように、個々のケースに応じた紛争解決の可能性等についての周知、紹介も考えられるのではないかという提示をしております。○1不採算事業に承継又は残留させた一部の労働者を解雇する目的で会社分割制度を濫用した等の場合によっては、法人格否認の法理、公序良俗違反等の法理等の活用で事後的に争えるということです。個々については、後ほど裁判例で御説明しますが、そういわれているような個別の対応を、法理での解決ということを想定した周知、紹介と提案しているものです。

 ○2が未払賃金等の弁済期の到来した債権を有する場合に限れば、労働者も会社法による詐害的会社分割による残存債権者による請求権を行使できることとしております。大変恐縮ですが、これは制度が別の法律なので、参考資料1は、会社法制定による分割制度に関する各種資料をまとめたものですが、その4ページに詐害的会社分割における請求権のことが書いておりますので、御参照いただければと思います。これは採算部門が残ったような場合に、承継されなかった債権者は、そのままだと回収見込みの低い不採算部門を会社に請求するしかないのですが、それが平成27年5月施行の会社法改正によって、承継会社のほうにも請求できることとなりました。承継会社が持っていた財産の範囲ではありますが、恐らく回収見込みを高めようという趣旨で想定されますので、労働者については請求権が発生していないと駄目なので、未払賃金等に限られるかもしれませんが、紹介するという趣旨で書いております。

 参考資料1を見ていただきましたが、また資料2に戻ってください。2ページです。裁判例等を踏まえた対応です。○の5条協議等の法的効果は、日本IBM事件の最高裁判決を踏まえており、5条協議が全く行われなかった場合又は著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には、主従事労働者は労働契約承継の効力を個別に争えるということについて、その際、7条措置はその態様がその判断における一事情として問題になり得ることを含め、周知してはどうかということを書いております。2番目の○は、転籍合意と労働契約承継法との関係です。これは承継法等が労働者保護の観点から通知等の手続や異議申出権を設けている趣旨を踏まえ、転籍合意による労働契約の移転という方法を取ることについて整理し、周知してはどうかという提示です。1つ目に転籍合意による労働契約を移転する場合にも、5条協議や通知といった承継法上の手続は省略できないということです。

 ○2転籍合意により労働契約を移転する場合には、労働者に対し、あらかじめ会社分割による承継であれば、労働条件を維持したまま承継されることや、主従事労働者が分割契約等に定めがない場合には、会社分割による承継から除外されているということについて、異議申出権を行使できることを含めて説明すべきことということで、承継法上の権利手続の説明を加えております。

 ○3は、分割契約等に定めのない主従事労働者が異議申出権を行使した場合には、承継法第4条第4項の効果によって、労働条件を維持したまま承継の効力が生ずる。これに反する転籍合意は無効になることも、併せて整理、周知ということを提示しております。

 次のポツは、今のことに関連する事項で、労働者に説明するべきこととなったこととの関係です。承継法第2条第1項で、主従事労働者等に一定の通知をすることとなっておりますが、その通知事項にも、会社分割により承継される場合には労働条件を維持したまま承継されるという、もともとの解釈でやっていましたが、それをきちんと説明することで通知事項に含めてはどうかということを書いております。次は「なお書き」です。転籍合意というものがありましたが、出向の場合を書いております。出向は分割会社との間の労働契約を維持しながら、承継会社と労働契約関係を設定することですが、その場合にも5条協議や通知といった手続は必要だということを周知してはどうかと書いてあります。ただし、異議申出権を行使し、分割による承継を選択した場合には、分割による承継法上の承継ですので、分割会社との元の契約関係が終了という点が変わることに留意すべきということで、ただし書きで書いております。

 「その他」ですが、前回は特に論点項目として出してはいませんでしたが、労使間の協議等の重要性なども議論されましたので、その他として書いております。5条協議、個別の協議、あとは7条措置という全体の理解と協力を得る措置に関して、前掲の5条協議の対象労働者及び対象事項の拡大が承継されない不従事労働者に拡大する等々の話ですが、それとともに更なる周知等により徹底してはどうかということを提示しております。

 3ページ目以降は、団体交渉との関係です。労働組合との団体交渉が同時に行われることや前回の御議論も踏まえて整理しております。1ポツ目が現在の指針にも同じ趣旨のことを書いておりますが、労働組合法上の団体交渉については、労働条件等、団体交渉の対象事項に関する適法な団交の申入れであれば拒否できないことを改めて徹底してはどうかということで、書いております。

 次のポツですが、団体交渉をする場合の相手方の問題です。前回も親会社や持株会社の場合が出てくる場合もあるというお話もありましたので書いております。団交の相手方は一般に労働契約上の雇用主であるが、親会社や持株会社が関与する場合も含めて、雇用主以外の団体交渉に応ずべき者としての使用者性については、最高裁判例による「基本的な労働条件等について雇用主を同視できる程度に現実的かつ具体的な支配・決定することができる地位にある」という考え方で、使用者性が認められるという考えですが、そういう考え方をはじめとして、これまでの判例の積み重ね等があることに留意することを周知してはどうかと書いております。下に最高裁判例の判示部分を()として付けておりますので御覧ください。次の「また」ですが、会社分割に伴う不当労働行為責任、労組法上の使用者の地位の承継に関する裁判例がありますので、これを参考事例として紹介してはどうかということも書いております。

 次のポツが承継後の労使関係の円滑化ということを目的として書いております。労働協約について、承継法上の定めの内容ではありますが、労働組合員が承継される場合には、分割前の労働協約と同一の内容の労働協約が承継会社等に存在することとなっております。また、その債務的部分の承継の取扱いについて分割会社と組合の間で合意することもでき、それに従って承継となることになっております。それらを法律には書いてあるのですが、特に、承継会社のほうが十分に認識することが承継後の労使関係の円滑化に資すると思いますので、十分に認識して、労働組合との間で必要な対応を行うよう周知してはどうかということを書いております。

 最後のポツは、協議そのものの話ではないのですが、異議申出権との関係で、「異議申出を行おうとしていること又は行ったことを理由とした解雇その他不利益な取扱い」の禁止については、今は指針にやってはならないと書いていますが、更なる周知を図ることも、併せて提案しております。以上が分割についての論点です。

 事業譲渡については、3ページ以降です。大変恐縮ですが、参考資料の2と3を並行して参照していただければと思いますので紹介します。参考資料2が現行の承継法の「5条協議・条措置関連条文及び指針の内容」です。1枚目が5条と7条と7条に関する施行規則です。2枚目が5条に関する指針の定め、3ページ目が7条に関する指針の定めですので、それを参照いただきながらと思います。参考資料3は現在、厚生労働省のほうから地方の出先のほうに出している、「営業譲渡に伴う労働関係上の問題への対応について」という通知の事業譲渡に当たって従事すべき事項の部分であり、それらを参考にしている部分があるので、参照しながらお聞きいただければと思います。

 資料2の3ページの事業譲渡の1つ目の○です。まず、労働者との間の手続等、個別の労働者内での関係です。1ポツ目は事業譲渡時における承継に関する法的性格は特定承継ということで、労働契約を承継させる場合には、民法625条第1項の規定に基づき、承継予定労働者から個別に同意を得る必要があることを周知してはどうかということを書いております。参考にしている「通知」などについては数字で書いておりますので、御参照ください。

 次のポツです。今言ったような同意が必要な承継を予定している労働者の同意を得るに当たり、円滑な組織再編と労働者の保護といった観点から、譲渡会社は労働者との間で以下の点に十分留意しつつ協議を行うことが適当であることとしてはどうかとしております。○1協議においては、事業譲渡に関する全体の状況、譲受会社の概要、債務の履行(の見込み)に関する事項、譲渡後の労働条件等を十分に説明し、従事する予定の業務内容、就業場所、その他就業形態等について協議することが適当であろうとしております。以上が現在の承継法の5条協議の部分を参考にしております。○2承継予定労働者の労働条件を変更して譲受会社に承継させる場合には、承継に関する同意を得る際に、労働条件の変更についても、同意を得る必要があることを入れております。○3同意を得るべき時期より前に、時間的余裕を見て協議を開始することとしております。○4は情報提供について、意図的に虚偽の情報が提供された場合に、民法96条第1項の規定(詐欺又は脅迫の場合の意思表示は取り消すことができるという規定)に基づいて、同意を切り取り消すことが可能な場合があることとしております。

 ○5が団体交渉との関係であり、労働条件等に関する労組法第6条の団体交渉の対象事項については、譲渡会社は、当該労働者との協議を行うことをもって労働組合の適法な団交の申入れはもちろん拒否できないということで、別途それは応じなければいけないということを書いております。

 ○6ですが、協議に当たっての労働組合の範囲の関連でございまして、労働者が個別に民法の規定により労働組合を代理人として選定した場合には、譲渡会社はその当該労働組合と誠実に協議することと書いております。

 次は解雇についてです。これは協議そのものではないのですが、現行通知でも注意喚起をしている部分がありますので、それを参考に最近の労働契約法の制定による解雇権濫用法理の法制化も踏まえながら整備しております。○1譲受会社への労働契約の承継に労働者が同意しなかった場合の話ですが、その承継に同意しなかったことのみで解雇が可能となるものではなく、客観的合理性を欠き、社会通念上相当と認められないとされた解雇は、解雇権の濫用として無効となることを書いております。

 ○2事業譲渡に伴う解雇です。整理解雇に関する判例法理の適用があり、働いていた部門が譲渡されたことのみで解雇が可能となるものではなく、これも客観的合理性を欠き、社会通念上相当と認められないとされた解雇は、解雇権の濫用として無効になるとして、後段のほうは○1と同じです。

 ○3解雇が解雇権の濫用とされる場合に、譲渡会社は、譲渡部門以外の他部門への配置転換など、当該労働者との雇用関係維持のための相応の措置が必要となることと書いております。

 次のポツが承継する際の注意事項として、労働者を承継するために、労働者の選定を行う際には、労働組合に対する不利益な取扱い等の不当労働行為など法律に違反する取扱いを行ってはならないことを周知してはどうかということです。これも通知で言っていることです。

 次のポツは、今の話にも一部関わるのですが、個別にそういう判断がされることを書いています。労働契約の承継の有無や労働条件の変更に関して、裁判例においても労働者との間の黙示の承継合意の認定や法人格否認の法理、公序良俗違反等の法理等を活用して、個別の事案に則して、不承継等の目的などに応じて、譲受会社との雇用関係の有無などが判断されていることに留意すべきとともに、裁判例についても周知してはどうかとしております。以上が個別の労働者との関係です。

 次は、労働組合との間の集団的手続等としております。1ポツ目ですが、円滑な組織再編と労働者の保護といった観点から、譲渡会社の労働者の理解と協力を得るため、譲渡会社と組合等との間で協議などがなされることが適当であることとしてはどうか。この場合、以下の内容も含ませて示すことは適当ではないかとしております。○1過半数労働組合又は過半数代表者との協議、その他これに準ずる方法によって譲渡会社に雇用する労働者の理解と協力を得るよう努めることが適当であることとしております。これも承継法の7条措置を多少、参考にはしております。○2対象事項として、事業譲渡を行う背景・理由、債務の履行(の見込み)に関する事項、承継する労働者の範囲、労働契約の承継等に関する事項等があることとしております。○3承継予定の労働者との個別の協議の開始までには、集団的なほうにも協議を開始し、その後も必要に応じて適宜行われることが適当であることと書いております。

 次のポツは、法律上の団体交渉の関係です。これは先ほどの個別と同じく、団体交渉の対象事項については、譲渡会社は、先ほど説明したような手続が行われることをもって組合による適法な団交の申入れを拒否できないことを周知すると書いております。これも同じです。

 次のパラも、会社分割のほうでも書いたことではありますが、団交の相手方の問題です。中身は一緒なので省略しますが、要は持株会社などが関与する場合も含めて、最高裁判例による一定の法理によって、雇用主以外の使用者性が判断されているということを周知するという趣旨を書いております。

 6ページ目は、今の話の関連で、特に使用者性を判断するパターンの1つとして、前回も御議論のあったように、譲受会社と元の譲渡会社の組合との協議、団交の関係です。これについては、譲受会社について団交の申入れの時点から近接した時期に、組合員らを引き続き雇用する可能性が現実的かつ具体的に存する者であれば、事業譲渡前でも組合法上の使用者に該当するとされた労委命令例がありますので、それについては、参考事項として周知してはどうかということを書いております。

 3として、その他です。合併については、現行通知に基本的なことはありますので、合併は事業譲渡とは労働者に与える影響も違うのかもしれませんが、併せて周知することとしております。1ポツ目が、合併により消滅する会社の権利義務については、包括的に承継されるので、労働契約についても存続会社に包括的に承継されることを書いております。2ポツ目は、合併に伴う労働条件についても包括的に承継されるので、そのまま維持されるものであることを書いております。論点は以上です。

 併せて、参考資料の御紹介だけさせていただきます。参考資料1は、先ほど御紹介した会社法制定による分割制度の改正などを説明した資料ですので、御参照いただければと思います。ちょっと時間の関係で個々の説明は省きますが、会社法の関係が4ページまでとなっております。あと、5ページ目に労働契約法の制定により、労働条件の変更についての法理、あとは解雇についての規定が設けられたということで、最新のものを踏まえながら、整理する必要があるという趣旨で書いております。あと、6ページは倒産法制における労働組合等からの意見聴取の手続が取り入れられることが増えており、その例です。

 参考資料2は先ほど申しましたが、「5条協議・7条措置関連条文及び指針」です。参考資料3が先ほども言いましたが、営業譲渡、いわゆる事業譲渡ですが、それについての現行の通知の該当部分です。参考資料4が、裁判例・命令例ということで、会社分割、事業譲渡それぞれの論点に言及したものを中心に述べております。

 1ページ目が会社分割で、日本IBM事件から始まり、使用者性、不当労働行為責任の承継等に関する判決裁判例です。2ページ以降が事業譲渡で、2ページ目と3ページ目の上までが、合意の認定や法人格否認の法理により個別的労働関係に関する承継、不承継の判断をされているものです。3ページ目の下半分が集団的労使関係ということで、事業譲渡において、まず不承継が不当労働行為とされた事件、一番下が先ほどの論点の最後で見た譲受会社の使用者にも団交応諾義務と使用者性を認めたという例です。御参照いただければと思います。

 参考資料5は、今の話にも関連しますが、労働組合法の団体交渉に関するものです。団体交渉の団体交渉拒否や不当労働行為に関する条文ですが、参考資料5の裏に朝日放送事件という「使用者性」についての最高裁の判示部分を載せております。

 参考資料6を御覧ください。先ほどの労働組合法の使用者性の関係で持株会社についてどう考えるかということを検討した懇談会のまとめです。3ページだけ少し紹介させていただきます。3ページの3の1パラ目の最後の部分に、「これまでの判例の積み重ね等を踏まえ現行法の解釈で対応を図ることが適当」と書いてあり、先ほどの「朝日放送事件」の判示部分が紹介されております。この前に先ほどの論点を書いております。

 類似の話として、参考資料7に、「投資ファンドにより買収された企業の労使関係の研究会報告書」ということで、投資ファンド等の使用者性について検討した研究会ですが、使用者性の部分を抜粋しております。これも恐縮ですが、3ページ目の一番下の「以上を踏まえると」のパラを御覧ください。下から3行目ぐらいですが、親子会社間の親会社や純粋持株会社に係るこれまでの「使用者性」に関する考え方が基本的に該当すると考えられるということで、投資ファンド等の使用者性についても「基本的な労働条件等について」という朝日放送事件の判示に記載された内容を引用して判断すべきであるということをうたっているものです。

 参考資料8は、海外の諸外国の組織再編に伴う労働法制であり、先に行われた研究会のときに調査したものを踏まえてまとめたものです。EU、ドイツ、フランス、イギリス、アメリカです。参考資料9は、前回に御説明した研究会報告です。参考資料10、参考資料11は、過去の研究会報告や承継法の法令指針ですので、適宜、御参照して、御活用いただければと思います。説明は以上です。

○鎌田座長 資料2について御質問、御意見を頂きたいのですが、大きくは会社分割と事業譲渡に分かれておりますので、まず、1の会社分割について御質問、御意見を頂いて、その後、2の事業譲渡に進みたいと思います。では、会社分割についてお願いいたします。

○村上委員 何点か申し上げますが、全体的には前回もいろいろ申し上げておりますが、使用者性の問題にも踏み込んでいただいた点は評価できる点があると思っています。ただ私どもとしては、全体的に「もう一段上」に、指針等のレベルよりも、より強いレベルで規定していただきたいということがあります。その上で細かな点を少し確認させていただければと思います。まず1点目は、資料2の1ページの1つ目の○の「事業に関して有する権利義務」の2つ目のポツで、「事業の考え方を明らかにすることが考えられる」と書かれていますが、その「明らかにする」とは、どこで、どのような方法で明らかにすることを考えているのかをお伺いしたいと思います。

 2点目は、次のポツで、5条協議の対象について、承継される不従事労働者についても5条協議の対象に加えてはどうかとの記載があるのですが、この点は私どもとしても加えていただきたいと思っているのですが、指針上ということではなくて、もう少し上のレベルで規定できないのかということです。

 それから、3点目は、そのポツの末尾に、事業に至らない権利義務レベルの分割の場合について、承継されない不従事労働者のうち、権利義務の分割が、その職務の内容等に影響しうる者について、一定の情報提供を行うことが望ましい旨を周知してはどうかとあるのですが、ここでの全体的な周知というのがどういうレベルでの周知なのかということも少し教えていただければと思います。まずは以上です。

○鎌田座長 3点御質問がありました。

○労政担当参事官 はい、分かりました。まず事業の考え方を明らかにする2ポツ目の話ですが、それはこちらもよく考えたいと思いますし、あれですが、基本的に、なるべくは指針を踏まえて、労使の皆さんに現場で対応していただくので、指針で書くことが適当と思われるところは指針で書きたいと思っております。その指針で書ききれる中身なのか、もっと柔らかいレベルで促すのかというのがありますので、そこはまた考えたいと思いますけれども、ただ事業概念の考え方は、正に会社法では、事業概念をやめて、承継法だけで独自の概念として事業で考えることである以上、何らかの考え方はきちんと示しておく必要はあるのかなと。承継法としての事業の趣旨というのは示してあることで、指針中心に書ければと事務局は思っておりますので、そこは少し検討させていただきます。

 あと承継される不従事労働者も、5条協議の対象ということですけれども、これは現在の法律と指針の構造として、5条協議については、法律上は、法律の商法の附則5条では、「労働者と協議する」とだけ書いてあって、具体的な範囲について指針に定めている構造からすると、指針での、今は事業に従事する労働者しか対象に入っていないので、指針で書くことを考えていたわけです。

 3番目に、同じポツの下の周知についてですが、これは望ましいということで5条協議という世界とは別の話ですので柔らかい話かと思うのですが、これは指針になるのか、もっとパンフレットとかのレベルになるのかも含めて少し検討したいと思います。大概的なことを申しますと、確かに周知とか紹介とかありますけれども、基本的にはきちんと労使に対応していただくようなものはなるべく指針に書きつつ、例えば裁判例の紹介とか、そういうものにつきましては、パンフレットやQA等で参照いただくという方法もありますので、ものによっては、それぞれレベルに分けて整理しなければと思っているところです。

○鎌田座長 追加でありますか。

○村上委員 特にないです。

○田坂委員 今の点について一言申し上げたいと思います。法律にないものは指針、あるいはパンフレットでいろいろな方法でということだと思うのですが、企業側としては、仮に法律にはなくて指針に書いてあるという場合、指針であっても非常に重く捉えて日々業務をしているというところを一言申し上げたいと思っています。今までないことを新たに付加する、あるいはこういったことが望ましいということを法律以外の手段・媒体によって新たに示されるということは、非常に大きな意味を持つということです。繰り返しですけれども、企業側にとっては指針と言えどもパンフレットと言えども、非常に大きなパワーをもっているということはちょっと御認識いただければ幸いかと思っています。その点で申し上げると、1ページ目の○の3つ目のポツの最後の部分に、権利義務レベルで分割がされて承継されない不従事労働者がいるという場合に、一定の情報提供が望ましいという部分ですが、例えば、ある日突然、その人がやっていた関係の不動産契約、あるいは株式合弁契約が分割という形でなくなる。だから、その人の仕事は明日から関係がなくなると。そういう場合には一定の情報提供・周知をせよ、ということですが、実務ではそういった場合には、当然のごとく情報提供・周知が行われているところではないかなと認識しております。この点に限って言えば、望ましいのはもちろんですし、エクストラのことを企業側に求められている部分でもないので、こういうことが指針とかパンフレットに書かれても問題はないかなとは思っている部分ではあるのですが、事と場合、あるいは職種によってはそうならないものも出てくるのではないかなと思っている次第ですので、一言ここで申し上げさせていただきました。

○鎌田座長 御意見ということでよろしいですか。

○田坂委員 はい。

○鎌田座長 そのほかはありますか。

○石崎委員 細かな点かもしれないので恐縮ですが、今話題に出ましたが、「承継されない不従事労働者」に対して情報提供をするという点に関しまして、「職務の内容に影響しうる者」という限定というのか、そういう不従事労働者に対してということで書かれているかと思うのですが、この「職務の内容等に影響しうる」というのはどの程度の範囲といいますか、イメージとして書かれているのかをちょっと確認させていただければと思います。その後に、「職務の内容の変更があれば」とありますので、こうした場合は、もちろん含まれるということだと思いますけれども、もうちょっと広いものとして想定されているのかどうかという点について教えていただければ幸いです。

○労政担当参事官 非常に、それは表示されたように、ケースバイケースだとは思っております。自分のやっている職務に何らかの影響があることを全く知らないケースがあってはいけないという趣旨で、今、田坂委員からも当然やっているとおっしゃっていますので、半ば当然と思いながら注意喚起として書いていることですので、範囲をどこまでというのはそれほど明確にできているわけではありません。主としての職務の内容が多少変わる、仕事の一部でも週に1日でも関わっているもので、変更があれば説明するという意味で考えています。確かに職務の内容の変更がない場合とか、どんな場合を広げるかというのは、ちょっとすみません、それは個々のケースなのかなと思います。それはなかなか難しいかと思います。むしろ労使の方々の御意見をお聞きしたいと思ったところです。

○鎌田座長 何か労使の方でこの点について御意見があればお願いします。

○村上委員 先ほども少し申し上げたのですが、職場が分割されるとか、事業譲渡されるというのは、自分がそのときにその業務に従事していたかどうかだけではなくて、たまたまそこに従事していたけれども、もしかしたらその業務に変わるかもしれなかったということもありえます。このように、事業再編は、会社全体の問題でもあるわけで、会社内で全く関係ない人というのは基本的にはいないと私たちは思っています。だから、組合や労働者の代表との協議が必要だということを申し上げています。ですから、「職務の内容に影響しうる者」という点は、会社全体の中で判断すれば、例えば東京本社のほかに北海道に工場があるような会社で事業再編があるというときには、もう転勤の可能性はほとんどないような人であれば別ですけれども、そうでない場合は東京本社勤務の労働者にも影響しうると考えて情報提供をするということになっていくのではないかと思います。多分、企業の実務でも、そのように判断して情報提供が行われているのではないかと思っています。

 それから先ほど田坂委員からご意見がありましたが、私どもとしては、なるべくパンフレットではなくて指針できちんと記載していただきたいと考えています。

○鎌田座長 いかがですか、この点について、また別のことでも結構ですが。

○狩谷委員 その次の項目ですが、「債務の履行の見込みに関する事項」の所で、いわゆる不採算事業の承継の話ですが、「不採算事業とともに承継される労働者、又は不採算事業に残留する労働者」とあり、この2つに対する対応が、7条措置の対象であるということを明確にして周知を行うとともに5条協議の説明事項に含めるとされ、周知と説明ということになっています。これはたまに起こるのですが、いわゆる泥舟分割が実際にあるのです。そのときに経営側は、ほとんど確信犯的にやるのです。だから7条措置の対象であることを周知徹底しようが何であろうが、分かってやるのです。となると周知徹底しても、これは余り意味がないのです。このような規定を設けることはいいことで、有り難いことですけれども、やはりそれ以上の措置がいるのではないかと思います。一番の問題点は、この2つのパターンの労働者には、異議申出権がないのですね。ここをきちんとフォローするということが必要なのではないかということです。

 併せて、労働契約承継法制定当時、「債務の履行の見込みがあること」は不採算部門切り離しのための分割など乱用的な会社分割を防ぐ一つの要件となっていたことを踏まえれば、泥船分割といったいわゆる債務超過分割は、企業分割ではもうできないのだというような法的な措置がいるのではないですか。

○鎌田座長 という御意見です。これは質問のところでもあるかと思いますので、まず事務局から何かありますか。

○労政担当参事官 御意見として受け止めました。事務局はこれを書いた思いだけを申しますと、確かに不採算事業とともに承継残留するという人がいることになったというのはそのとおりだと思います。5条協議とか7条措置というのが全く弱いかというと、5条協議は承継の有無を含めて説明をして協議をするものです。後ほど出てくる日本IBM事件にもあったように、5条協議が全く行われなかった場合又は著しく不十分などとすると、承継の効力さえ争えるという法的義務を認められるということになっていますので、正にきちんとその場で説明をすることの重要性をまずうたいたいと思っておりました。先ほどのアンケート調査結果でも、異議の申出権で何か、本当にサンプルが少ないのでそれが全てということは全くないのですが、異議の申出権があっても、恐らくはその前段階の協議で様々な調整をされているのかなと事務局も見ていまして、やはり協議が実施されることが、まず重要なのではないかということがありました。

 ただ、もちろんそういう御意見はあると思いますので、御意見は御意見として承りたいと思います。研究会の際にも債務超過分割は確かに行われうるようになったのですが、債権者からの意見や手続もあるので、それほど容易にやれるものではないという御指摘もありました。実は行われていないということではないのですが、なかなかやりにくいということとか、今回の調査でも不採算事業の承継される労働者は、一定の割合としてあるなと我々も思いましたけれども、その後経営が改善したという例も他方で多いので、そういうことも含めて、きちんと労働者との協議を調整していただくことなのではないかという思いもありました。異議の申出権の拡大という話は、承継法の趣旨そのものに関わるので非常に重い議論として受け止めますけれども、近々に措置することを考えると事務局としてはこういう提案になったということです。分割そのものができないようにするという話は正に会社法制そのものに労働側からどう食い込んでいくかという大きな議論で、議論の設定自体が、この労働にとどまらない議論になるというものですので、なかなかこの研究会でというわけにはいかないのかなということで、重いものとして受け止めて聞いておりました。

○鎌田座長 何かありますか。

○狩谷委員 それと関連するのですが、債務超過分割では分割そのものができないようにするという話はまさに会社法制そのものに労働側からどう食い込んでいくかというこの検討会で支えきれないぐらいの重い議論だということですけれども、しかし現場の実態はそういうことでいっぱいあるのです。論点(案)では、「個々のケースに応じた紛争解決の可能性等について周知、紹介する」とあり、例えば不採算事業に承継又は残留する労働者を解雇する目的で会社分割制度を濫用した場合には、「事後的に争いうること」と書いていますよね。事後的に争いうると言ったところで、さっき言ったように、確信犯的に不当労働行為にせよ、何にせよ、不法行為にせよ、違法行為にせよ、やるわけですよね。だから、この「事後的に争いうる」ということを言うのではなしに、前段でそれを食い止める、

そういう措置を法的に取らないのかということなのです。不当労働行為ですと、よく言われますけれども「やり得」なのです。違法行為であろうと不法行為であろうと、やりきって労働組合をたたき潰せば勝ちなのです。だから争いごとになったところで余り意味がないのですね。しかし先ほども申し上げましたが、このような規定を設けることは有り難いです。それはそうなのですが、もう少し踏み込んで規定していただけないかなということです。

○鎌田座長 御意見として頂いておきます。

○労政担当参事官 事務局ばかりですみません。なかなか実際に「事後的に争いうる」と言ったところで、先にやられてしまうというのが実態というのは本当に勉強になりました。本来それを救済するために労働委員会制度はあるということもあるので、制度を受けもっているものとしては、それはなるべく使って、事後になるかもしれませんけれども、救済を勝ち取っていただければなという思いはあります。あと、「事後的に争いうること」と書いたのは、事実を書いたというよりは、こう書くことで、労使、特に会社にとっての警告になるというか、いざこういう争いになると、必ずしも事業譲渡の不承継等をそのままできるわけではないということで、その未然防止にもなるかなという期待を込めて提案しているものです。

○村上委員 先ほど狩谷委員からも発言がありました点で、私どもは前回も申し上げたのですが、泥舟分割の場合だけではなくて、承継の定めにある主従事労働者については異議申出権が必要であると考えております。たまたまその事業等に従事していた労働者が分割の対象になるというときに、自分はやはりもとの会社に残りたいということを言う権利はあるのではないかと思っておりますので、その点をまず申し上げたいと思います。

 それから、この検討会は労働関係の検討会であることは、重々承知はしておりますけれども、検討会が設置された目的を踏まえれば、会社法などによって企業組織の再編の法制度の整備が進んできた中で、労働関係から見ると、労働者保護の観点でややバランスを欠いているのではないかというところです。この点については、研究会での検討もされて、検討会を立ち上げられたというように受け止めておりますが、現状、会社法制定等の組織の変動を促す法整備と労働者保護ルールでは、バランスを欠いているのではないかという問題意識は、是非この検討会の意見としてまとめていただけないかと思っております。

○鈴木委員 ありがとうございます。ただいま、労働者保護のバランスを欠いているのではないかという御指摘と、主従事労働者に異議の申出権を認めるべきではないかという御意見がございました。これも前回と繰り返しで恐縮なのですが、承継法そのものは、会社法が労働契約について自動承継の効力を認めるということを前提に、それまで従事していた事業から切り離されるという不利益が生じるので、それを保護しようというのが承継法の目的だと思います。その意味では、主従事労働者に異議の申出権を付与するというのは、承継法が本来予定している保護からは外れるというように私は考えております。円滑な組織再編と、労働者の保護のバランスをとることが重要でありますが、承継法の保護の範囲というのは自ずと限界・限度があるのではないかというのが1点目に申し上げたいことです。

 それから実際問題、主従事労働者全員に来てもらわないと会社分割が機能しないというようなこともありますので、ドラスティックな改革がありますと、結果として会社分割が使われなくなるおそれというのも考えておかないといけないと思っております。

○久本委員 非常に、一番コアの問題だと私も思っています。この会議でできるのかと言われると難しいかもしれないのですが、にも関わらず、やはり重要なのは、雇用関係をどう考えるかです。先ほどお話があったのですが、自分が個々の仕事、この仕事をやると職務単位であるとか、勤務地単位で雇用契約を結んでいるのであれば、その部分がある意味で分割されます。したがって分割されるのだから、その仕事をしているというのは、ある意味でロジカルなのです。ところが、例えばいろいろな所に移れという配置転換で、本人がそこへ行きたいと言ったわけでもないのに行って、たまたま行ったらそこが不採算事業だったということで切り離されたということになってくると、それはいかがなものかということになるわけです。雇用関係の結び方と個々の労働者の権利・義務関係みたいなところが実は非常に絡んでいて、その点がこの点を難しくしているのではないかというのを非常に強く感じるところです。この場でやるにはちょっと話が大きすぎると思うのですが、そういった雇用関係のあり方そのものと、個々での権利義務関係を整理する必要があって、それをしないと個々の問題の根本的な解決にはつながらないような気がしています。

○村上委員 私も鈴木委員がおっしゃるように、これまでの承継法の考え方というのはそういうことだったという理解はしています。承継法の保護目的を踏まえれば、主従事労働者の異議の申出権はないという設定にされてきたということだと思うのですが、ただそれで今後もいいのかということで申し上げています。この検討会の中で結論が出るかどうかというのは大変難しいとは思っておりますが、本当に異議の申出権が全くないままでいいのかというと、そこは考えないといけないのではないか、異議の申出権のあり方も再検討する時期にきているのではないかということです。

○鈴木委員 繰り返しになりますが、バランスは必要だと思っているのですが、御提案の主従事労働者に対して異議の申出権を認めるというのは、もう一方のバランスを取るべき円滑な組織再編に支障が来すのではないかということを申し上げているということで、御理解をいただきたい。

○村上委員 理解しろと言われてもなかなか難しいです。異議の申出権があったとして、そこはどのように企業側が労働者と話し合って承継・不承継を選択していくかということになるのではないかと思います。不採算事業だけではなくて、家庭の事情とか、いろいろな事情があって移れないという方々もいらっしゃるでしょうし、そういう人たちも無理無理に移らないといけないということでは、やはり労働者保護のバランスを欠くと考えています。承継の定めのある主従事労働者に異議の申出権があると円滑な事業再編ができないということでは必ずしもないのではないかというように考えておりますが、このテーマだけで議論していても時間がなくなってしまうので、それについては今後も検討していただければと思っております。

○狩谷委員 現実を見据えて議論してほしいのです。承継の定めのある主従事労働者で、残りたいのに残れない、全員移らなければいけないというのであれば、もう辞めますよ。異議の申出権がないということになれば、労働者は別に唯々諾々と従うのではなしに、自分の意に沿わなかったら辞めるという手段もあるわけで、そうなれば再編どころではなく会社が崩れますよ。これは実際に有り得るのです。むしろ労働組合があって議論をするからこそ、うまくいくという例が多いのです。それだけ言っておきます。

○鈴木委員 前回も申し上げたと思いますが、組織再編の多様性を担保することが重要であると思っております。本人の同意ということになると、例えば事業譲渡ということがあるわけですけれども、それとは違う仕組みで、包括承継という形の会社分割制度というのがあり、一方で本人の同意を得て取り行う事業譲渡があるというような多様性があることが組織再編の円滑化につながっているという思いが強いということをお伝えしたいと思います。

○鎌田座長 ありがとうございます。かなり根本的な問題提起もありまして、私としてはいろいろと根の深い問題があるなと感じました。ただ一方では、この検討会の土俵ということもあり、こうしたことも踏まえまして、いろいろな問題提起を頂いたということです。そこで、まだ事業譲渡のところは全く触れていないのですが、その前に荒木委員、どうぞ。

○荒木委員 会社分割のことで1点、論点()の2ページに、「会社分割時の転籍合意と労働契約承継法との関係(阪神バス事件)」とありますが、この議論は当該転籍合意をする労働者が会社分割の事業の主従事労働者であることを前提に議論されているというように私は理解しております。研究会の報告書もその文脈で議論が展開されていると思っておりますが、この2ページだけ読むと、その限定がどこにも出てきませんので、もう少し主従事労働者についての議論だということが分かるような形にしておいたほうがよいかという気がいたしました。

○労政担当参事官 基本的にはそういう趣旨で、主従事なのに定めがないので異議の申出権を行使した場合を前提で書いていますので、そのような趣旨かと思いますので、今後気をつけたいと思います。

○鎌田座長 ではそのように、少し表現ぶりを考えていただきたいということですね。そこまで突っ込んでいないですか、結構ですか。そのほか、分割に関しては。

○村上委員 今、荒木委員が指摘された転籍合意の問題ですが、転籍合意による労働契約の移転について周知をしていただくことも大事なのですが、そもそも会社分割というのは組織法上で許認可の移転であるとか、会計上、税務上の取扱いでもメリットがあるということで、会社分割制度のメリットを享受しつつ転籍合意を採用するというのは問題があると考えています。会社分割の場合であれば部分的包括承継なので、労働条件は変わらずに、そのまま労働契約が承継されるということであるにもかかわらず、転籍合意方式を採用することで労働条件の不利益への変更も可能となってしまうようなことで、承継法の立法趣旨の潜脱ではないかと考えております。この検討会の土俵という問題もありますけれども、周知だけではなくて、承継法には規定されるべきだと私たちとしては考えています。

○田坂委員 一言だけ、今お伺いして思った点ですが、分割というスキームであれば、従前の労働契約、労働関係、労働条件がそのまま移転するということはそのとおりで、今、決まっていることですけれども、転籍合意スキームの場合には常に不利益変更があるとか、不利益変更しかないという前提でお話が進んでいるような気がしています。場合によっては、分割して承継する会社の労働条件のほうがよい場合だってあるのではないかと思います。それであれば、承継法のスキームによるよりは転籍合意という形でやったほうが、労働者にはメリットがあったりする場合もあるのではないかという気もいたします。企業がやる転籍合意は、不利益変更を押し付ける場合しかないということだけを何か、クローズアップ、フォーカスされることだけはちょっとやめていただければと思いまして一言申し上げさせていただきます。意見です。

○狩谷委員 先ほど田坂委員がおっしゃったことですけれども、分割して承継する会社の労働条件のほうがよい場合には問題が起こりません。問題が起こるときは、不利益変更とか、そんなややこしい問題が伴うときなのです。分割に関してですが、いわゆる5条協議、あるいは7条措置ですね、これがきちんとなされなかったときに争うような仕組みはできているのですが、必ずしも分割自体そのものを問題にし得るような形になっていないのです。そういう意味では、この日本IBM事件でも地位確認請求訴訟ができるということでしょうし、後で出てくる裁判例も労働契約の確認訴訟しかないわけで、となればこの辺のところをもう少しきちんとフォローできる体制というのが法的に要るのではないかと思うのです。そのようなことで、周知云々ということで、ある意味ではそこまで書き換えていただいているのですが、更に踏み込んだ記載が要るのではないですか。

○労政担当参事官 本当に会社分割自体の効力の問題なので、なかなか土俵として、ここだけというのは難しいと思います。ちなみに5条協議の所に小さい字で書いてあるように、一応、商法上の協議ということなのですが、全く行わない場合などについては分割無効の原因になるとされているので、分割無効の訴えという仕組みがあり、できないことはないということになっています。実際活用しているかどうかはともかく、そういう趣旨の規定と併せて、労働契約承継の効力を争わせることもできることも示し、いろいろな選択肢は提示できるかと思っております。

○鎌田座長 時間も少し押してまいりましたので、よろしければ事業譲渡のところに議論を移していきたいと思いますが、よろしいですか。それでは、事業譲渡について御意見、御質問を頂きたいと思います。

○村上委員 事業譲渡について、私どもが前回いろいろと指摘したことも踏まえて、解雇についてや労働者との間の手続などについても、今の承継法指針をベースにした指針の策定という御提案だと思っております。この指針については前向きに捉えているのですが、私どもとして、あるべき方向としては法律に規定すべきだと考えております。その上で、5ページでは労働組合等との間で集団的手続等についても書いていただいている箇所についてです。会社分割の所にも「使用者性」の問題を書いていただいておりますが、これについて若干違和感を持っております。最高裁判決の朝日放送事件を引いていただいておりますが、朝日放送事件は「基本的な労働条件等について雇用主と部分的とはいえ同視できる程度に現実的かつ具体的に支配決定することができる地位にある場合」と書かれていますが、この3ページや5ページの本文においては、「部分的とはいえ」という部分が削除されており、「基本的な労働条件等について雇用主と同視できる程度に現実的かつ具体的な支配決定をすることができる地位」とされています。私は法律家ではないので、うまく整理して申し上げられないのですが、この点はまだまだいろいろ解釈の余地がある部分ではないかと思っております。やはり、「部分的とはいえ」ということを入れていく必要があるのではないかと。そうでなければ、「使用者性」の部分が大変狭いものになってしまうのではないかということを危惧しており、この部分の書きぶりについては引き続き検討していただきたいと思っております。

○鎌田座長 まず、朝日放送事件の引っ張り方の問題ですが。

○労政担当参事官 もし可能であれば、労働法の先生方に正していただければと思います。基本的に朝日放送事件を踏まえて書いていますが、「部分的とはいえ」というのは書いておりませんでしたが、正に部分的に認められるとされているところですから、入れるべきなのではないかと思いました。余り意識して外したということはしておりませんでしたので、もし間違いがあれば。

○鎌田座長 事務局は、意識して取ったというわけではないということですね。

○労政担当参事官 はい。

○鎌田座長 ということで、よろしいですか。では、事務局としては意識して取ったということではないということですので、そういった理解でお願いいたします。

○荒木委員 参考資料6の3ページでは、「部分的とはいえ」というのが抜けているのですね。ですが、参考資料7の通し番号の2ページの上から3分の1ぐらいの所は、「雇用主と部分的とはいえ同視できる程度」というように、こちらのほうが最高裁の判決としては正確な表現をされていると思います。

○労政担当参事官 はい、分かりました。

○鎌田座長 では、そういうことで。それでは、別の御意見、御質問でも結構ですので、どうぞ、お願いいたします。

○鈴木委員 ただいま村上委員から、この事業譲渡について法律に書いてはどうかという御指摘がございました。組合の調査の15ページを御覧いただきたいのですが、図表25に、事業譲渡における事業譲渡会社の組合の評価が載っております。これを見ますと、事業譲渡の情報提供や労使協議プロセスについて、「満足している」が23.1%、「やむを得ない」が65.1%ということで、「不満である」と「納得できない部分が多々ある」というのが右側にありますようにゼロです。そういう意味では、これを何か立法的な措置をもって変えるということについては、今のところ慎重であるべきではないかと思っております。

 もう1点は、事業譲渡に関しては、釈迦に説法ですが、究極的には民法625条で担保されている、すなわち労働者が任意に同意を行わない限り労働契約は承継されないという点に求めることができるのではないかと思っております。そういう意味で今回、事業譲渡の同意を取るに当たって、労働者との個別協議の指針を示すことは大変重要ではないかと思っている次第です。

○鎌田座長 これに関連して、あるいは別のことでも結構ですが、何かありますか。

○村上委員 今、事業譲渡については、労働組合側から特に不満が出ていないので法律にする必要はないのではないかという御指摘でしたが、アンケートに答えた組合はこのように回答しておりますが、実際の場面では、労使協議プロセスを経ないまま事業譲渡が進んでいってしまう企業や、また事業譲渡をされるときに雇用労働条件も大幅に下がっていくけれども、職を失うよりは、労働条件引き下げにもやむなく納得するしかなく、諦めていくという労働者もたくさんおります。是非そういう現実があるということも忘れずに、是非現状を踏まえて議論していただきたいと思います。必ずしも事業譲渡は民法625条で担保されているから何も法的規制が必要ないということではないと思います。

○鈴木委員 事業譲渡に限らないと思うのですが、私の感覚で申し上げると、裁判所の同意の任意性の判断は相当厳格だと受け止めております。先ほどおっしゃった協議がないまま進んでいき同意を取ることになると、個別ケースによりますが、それは任意性が担保されていないということで同意は無効になると思っております。救済方法については、恐らく過去では通常訴訟になるとなかなかハードルが高かったと思うのですが、労働審判という仕組みもかなり定着をしていく中で、その辺りは同意という点での担保がかなりできているのではないかというのが、私の考えです。

○狩谷委員 我々の組織は、ここ10年で50数件の事業再編をやっているのですよ。そのうちの3分の1ぐらいは事業譲渡です。これは、問題が起こっているからこそ出てきているので、別に民法がうんぬんといったところで、実際に問題は問題として起こるわけですよ。一件、私がかなり担当したのは、やはり不当労働行為なのですよね。譲渡で問題が起こるのです。合併の問題は余り起こらないのです。何でかというと、法的枠組みがないのですよね。やりたい放題なのですよ。大体、譲渡で譲受会社というのは、譲渡会社が困って助けてあげるといって来るわけで、組合もそういう状況ですから、なかなか嫌と言えないのですよね。そういう実態が多々あるのですよ。そういうことで、例えば、「助ける代わりに組合を潰せ」とか、あるいは「上部団体から脱退しろ」というような条件を突き付けてくるのですよ。それは何かといったら、組合があったらやりにくいことを後々やりたいからなのです。確かに譲渡時には労働条件は下がりませんよ。魚を取るまでは餌を蒔かなければいけませんからね。そういう形でやった上で、いわゆる裸になって抱いてもらうと。そうなると、あとはやりたい放題ですよ。大体、これが実態です。

 不当労働行為で争いましたが、1件に2年半かかりました。ですから、そこまでできる組合がどこまであるかですね。大体は泣き寝入りしているのですよ。そういう実態です。アンケートを実施した方には失礼ですが、これは非常に表面的な回答結果だと思います。まず、本当のことを言わなかったり、そもそも回答しなかったり、いろいろとあると思うのです。そういう意味で言うと、このアンケートではなく、実際に世の中で起こっていることを見てほしいのです。

○鎌田座長 何かヒアリングのところで、これに関連して今御紹介いただけるようなものはありますか。

○労政担当参事官 ヒアリングの状況を、もう1回確認させてください。

○田坂委員 別の点ですが、5ページに「労働組合等との間の集団的手続等」が盛り込まれておりますが、念のための確認ですが、この検討会の目的が組織変動に伴う労働関係に関する対応方策ということからも明らかなように、労働組合等との間で何らかの協議が必要とされるのも、事業譲渡によって雇用契約の承継、あるいは移転がある場合にはということのみに限られているという理解でおります。ここの字面だけを拝見しますと、そういった限定がありませんので。雇用契約の移転がない、単なる取引き、売買、長期契約の事業譲渡といったことも実務ではありますので、そういった場合にまで労働組合等との協議が必要ではないですよということだとは思いますが、理解の再確認を念のためにさせていただければと思います。

○労政担当参事官 確かに、基本的に事業譲渡があって労働者を承継する場合を主眼に置いておりました。いずれにしても、労働者の地位、立場に影響がある場合以外の場合までは関係はないかと思います。事業譲渡に伴って承継される場合とか、解雇されるとかいろいろあるので、細かい射程についてはもう1回整理はしたいと思います。いずれにしても、事業譲渡そのものだけを協議するための措置ではないかと思います。

○狩谷委員 事業譲渡でよく問題になるのは、我々が一番歯噛みするのは、譲受会社との団体交渉ができないのですね。これが、決定的な問題なのですよ。そういう意味で、「譲受会社について、団交申入れの時点から近接した時期に、組合員らを引き続き雇用する可能性が現実的かつ具体的に存する者であれば…」うんぬんとありますがが、これはあくまで文言であって、「近接した」と言っても営業譲渡になると大体はスピードが問題になりますから、大体近接しているのですよ。大概は、現実的かつ具体的に存在しているのですよ。でも難しいのですよ。そういう意味では、この辺りの新しいアプローチがいるのではないかと私は思います。

 もう一つ、私が経験した例の1つですが、やはり親会社が絡んでいる例。親会社が自分の所の子会社の面倒を見ている。しかし、もう子会社の面倒を見切れなくなったから、別の会社に売り飛ばすという形で対応したわけです。問題は親会社なのですね。そこに団体交渉を申入れてできるのかといったら、なかなかできないのですよ。この場合大手の商社でしたが、2年半かかって、「すみません」と一言言わせ、あと設備投資の金を5億ほど引っ張り出して終わりました。そのようなことが関の山なのですよね。それでも、株も40%、50%保有していた親会社は「私に責任があります」とはなかなか言わないのですよ。非常に現実は難しいです。となれば、親会社との団体交渉権を何らかの形で規定する方向で議論が進めばと思っています。

○鈴木委員 狩谷委員がおっしゃるように、現実的かつ具体的にという判断が難しいのは、そのとおりだと思います。であるからこそ、一般的に適応し得る基準を定律化するのは、現時点では難しいと思っております。立法的措置を考えるべきかということについても、私は難しいという立場です。と申しますのも、一般的に譲渡会社も譲受会社も団体交渉に応ずる義務が仮に課せられるということになりますと、情報や交渉が錯綜されて、かえって建設的な協議、議論の妨げになる恐れがあると考えているからであります。

○狩谷委員 私は、10件ほど民事再生を手掛けているのですが、そのうち数件は、もちろん労働組合がかなり入ってやっているわけです。1つは、労働組合自身が民事再生を申請した例もあります。民事再生では組合も噛んでやるのですが、スポンサーを引っ張り込んできて、事業譲渡や会社分割という手法を使うのです。そのとき大概は、いわゆる譲受先の相手先と交渉するのですよ。それをきちんとやったほうがうまくいくのです。別に交渉することで企業再編は錯綜しません。むしろ、問題点ははっきりしますし、スムーズに進むのです。ですから、本当にうまいこと行かせようと思うのならば、世の中を円滑に回そうとするのであれば、その辺の法の枠組みを作る必要があると思うのですよ。むしろ、最初におっしゃったような、いわゆる企業再編で労使ともに万々歳といけたら一番いいわけですが、そういう方向に行こうとすれば、やはりきちんと団体交渉できる仕組みを規定することは大事だと思うのですよ。

○鈴木委員 譲受会社と譲渡会社との関係ですが、それぞれの組合との関係も千差万別だと思っております。例えば、必ずしも譲受会社が決定的なイニシアティブを持っているとも限りませんし、更に申し上げると、譲渡会社の経営者というのは誠実に団交をしていこうという姿勢をもって対応している経営者も多いと、私は思っているところです。それを頭ごなしに譲受会社と団交するということになると、労使関係の中に、ひびが入ることも懸念をするところです。そういったところも配慮しながら議論していかなければいけないテーマだと思っております。

○狩谷委員 そんなのやったのですか。私は、1件も経験したことないです。

○鈴木委員 ですから、労使間に信頼関係があるとは限らない実態があるなかで、そのような法的なスキームができたら、そういう問題が起こるのではないかということを申し上げております。任意に交渉される場合の話と、立法の話とはまったく話が違うと考えます。

○狩谷委員 むしろ、交渉はスムーズにいきます。

○鎌田座長 それぞれのお立場での御意見ということで承っておきたいと思います。

○久本委員 やはり、労働者保護の観点からすると、会社も労働組合もいろいろあると思っております。ですから、ここで重要なのは、当然非常に真摯にやられている企業もありますし、しっかりやっている労働組合もあるけれども、そうでない所もあると。そうすると、両方ある場合に、どのようなルールを作るのが一番正当なのかというような観点から、個々の議論をするのが一番よろしいのではないかと私は思っております。ですから、真面目にきちんとやっている会社がある意味で報われるような所でないと、良い経営者が報われて、労働者をないがしろにするような経営者は報われないようなものが社会的公正だと思いますので、そういう観点からどのようなものを作っていったらいいかを考えるのが、一番正当なのではないかと思っております。

○鎌田座長 あと、ほかに御意見はありますか。

○石崎委員 4ページ目の一番下の解雇について○3とされている所なのですが、非常に細かな点で恐縮なのですが、配置転換など相応の措置が必要になるというときに、「解雇が解雇権の濫用とされる場合」と書かれているかと思います。これは、解雇権の濫用とされないためにこういったものが必要になるということではないかという気がしたのですが、いかがでしょうか。

○労政担当参事官 ○1と○2で解雇権の濫用になるという場合を書いていて、そういう場合には解雇が無効で解雇が許されないのでそうなるということなので、結果的には、その御趣旨だと思うのですが、○1と○2を濫用されるケースと捉えると趣旨としてはそういうことかと思います。確かに、これを批判的に受け止める側としては、このような濫用とされないように、解雇権の濫用となるような解雇をしたいと思ったら、そうせずにきちんと配置転換を含めた雇用維持のための措置を取りなさいということを示すものになっているかと思います。これは法律的に書いておりますので、○1と○2の解雇権の濫用になる場合を書いてそれを受けていますので、そういう文脈になっているかと思います。

○鎌田座長 石崎委員、いかがですか。

○石崎委員 この配置が要請される法的根拠自体が、この解雇権濫用のルールかと思った次第でございました。もしかしたら同じことを違う言い方をしているだけの話なのかもしれません。

○労政担当参事官 結果的に、御示唆のとおりかと思うのですが、濫用とならないために、というか、濫用になるような解雇であれば、それは正に雇用が残さなければいけない場面であるのでそろえなさいと。結果的に言うと、そうすることで濫用とされないというのはそのとおりだと思います。

○鎌田座長 ほかに御意見はありますか。どうもありがとうございます。今日は、たくさんの御意見を頂きました。私としては、これは前回も議論になったことですが、いわゆる会社法を含めた全体に関わる本検討会の枠組みを超えた御意見もありました。それから、労使関係法、労働組合法に関わる、この検討会の枠組みを超えたような御意見もありました。こういったことも、もちろん十分御意見として頂いたわけですが、検討会の枠組みの中でどういったことが1歩前進になるのかという観点から、取りまとめの作業を進めていきたいと思っております。本日頂いた御意見をもとにして、次回は事務局で指針案などを含めた取りまとめのたたき台を御提示いただくと考えているのですが、そういったことでよろしいでしょうか。それでは、事務局はそのような準備をしていただきたいと思います。

 それでは、次回以降の検討会の開催について、事務局から連絡があればお願いいたします。

○労政担当参事官室室長補佐 次回以降の検討会ですが、3月中を目途に調整中ですので、追って正式に御連絡いたします。よろしくお願いいたします。

○鎌田座長 それでは、これをもちまして本日の検討会は終了いたします。お忙しいところ、どうもありがとうございました。


(了)

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