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2016年3月4日 第19回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会 議事録

医薬・生活衛生局審査管理課化学物質安全対策室

○日時

平成28年3月4日 10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎第5号館 3階共用第6会議室


○議題

・室内濃度指針値の見直し等について
・その他

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまから、第 19 回シックハウス(室内空気汚染)問題に関する検討会を開催いたします。委員の先生方には、御多忙のところ御出席いただきありがとうございます。

 前回の検討会以降、委員の入れ替わりがありましたので、御紹介いたします。五十嵐委員と吉田委員が御退任されまして、新たに国立医薬品食品衛生研究所(以下「国立衛研」という。)の酒井委員が御就任されております。

 本日は東委員より御欠席の連絡を頂いておりまして、委員総数 11 名のうち 10 名に御出席いただいております。また、参考人としまして、横浜薬科大学の香川先生に御出席いただいております。それでは、座長の西川先生、以降の議事進行をお願いいたします。

○西川座長 最初に、午後からこの会議室を使う他の予定が入っておりますので、円滑な議事進行に御協力いただければ幸いでございます。まずは、事務局から配布資料の確認をお願いいたします。

○事務局 資料は議事次第、委員名簿、座席表、資料 1 「ナフタレンの実態調査」、資料 2 TVOC 標準試験法の確立」、資料 3 「室内空気中及びハウスダスト中のフタル酸エステル類」、その下に参考資料 1 「シックハウス問題に関する検討会の開催について」、参考資料 2 「室内空気中化学物質の指針値の見直しの仕方等について」、参考資料 3-1 「平成 25 年度夏期室内空気全国実態調査及び無作為抽出による実態調査の結果概要」、参考資料 3-2 「ベンゼンのばく露について」、参考資料 4 WHO 評価書 ( ナフタレン ) 」、参考資料 5 EPA 評価書 ( ナフタレン ) 」、参考資料 6 「環境省評価書 ( ナフタレン ) 」です。資料に不備などありましたら、申し付けいただければと思います。

○西川座長 資料のほうはよろしいでしょうか。それでは、議事 (1) 「室内濃度指針値の見直し等について」です。本日は 3 つの点について御検討いただくこととしております。 1 つ目は「 WHO 空気質ガイドライン指針値が策定されているナフタレンについて」、 2 つ目は「現在、暫定目標値と暫定試験法が定められている TVOC( 総気発性有機化合物 ) に関する標準試験法について」、 3 つ目は「室内空気中及びハウスダスト中のフタル酸エステル類について」です。ここで、前回の検討会から 2 年ほど空いておりますので、まず初めに、室内濃度指針値の見直しスキームについて、思い出していただくために、事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 それでは、参考資料 2 を御覧ください。こちらは、前々回の平成 25 年度に開催された第 17 回シックハウス問題検討会にて御了解いただきました「室内濃度指針値の見直しスキーム」です。 2 枚目の図を御覧ください。見直しの条件として、 1 番上の四角で囲ってある部分ですが、指針値への採用を検討すべきとされた化学物質のリストにつきまして、 A. WHO 空気質ガイドラインなどの指針値を十分に下回っている場合には採用しない、 B. 室内発生源の寄与が低いと考えられる化学物質は採用しないこととしております。この判断につきましては、右横の四角で囲った部分にありますように、全国実態調査や、その左横の四角で囲った部分にあります「測定方法・ばく露評価に資する情報に基づく初期ばく露評価」を参考に、御判断いただくことになります。

 その結果、検討対象となった化学物質につきましては、下の矢印のほうに進みまして、既存のハザード情報を基に初期リスク評価を行いまして、次に詳細ばく露評価、詳細リスク評価を行ったうえで、検討対象となる化学物質の優先付けを行いまして、室内濃度指針値を設定することとなります。簡単ですが、以上です。

○西川座長 ありがとうございました。委員の皆様方におかれましては、このスキームに従って御検討いただければと思います。

 それでは、 1 つ目のナフタレンについての実態調査結果の報告です。ナフタレンは、 WHO ガイドライン指針値のある物質ですので、先ほどのスキームでいいますと、採用を検討すべき化学物質かどうかの判断をするということとなります。それでは、御報告を神野委員からお願いいたします。

○神野委員 名城大学の神野でございます。私のほうから、 WHO ガイドライン値策定物質であるナフタレンの実態調査について御報告させていただきます。お手元の資料 1 を御覧ください。ページ 2 からページ 4 までの部分は、 WHO のガイドラインをそのまま引用したものです。おそらく後ほどの資料の評価文書に含まれていますので、簡単に概略を紹介させていただき、実態調査の結果を御報告させていただきます。

2 ページ目です。ナフタレンについては、動物実験においては上気道の腫瘍、人においては溶血性貧血が症状として現われることが報告されております。

3 ページ目です。ここで重要なことは、ナフタレンに関しては WHO では閾値が存在するというモデルによって、ガイドライン値が定められているということです。

4 ページ目です。 WHO の評価においては、投与量 53mg/m^3 のナフタレンにばく露したときの結果を基に、これに安全計数を導入して、ガイドライン値が定められています。そのガイドライン値というのが、 0.01mg/m^3 であるということです。この値につきましては、後ほど紹介する実態調査の結果とも関連しますので、御記憶願えればと思います。また、もう 1 つ重要なのが、ナフタレンに関しては、 4 ページ目の中ほどにありますが、年平均値として評価すべきであるという文言が、 WHO のガイドラインに盛り込まれております。この点につきましても、後ほどまた問題になるかと思いますので、御記憶いただければと思います。

 では、実態調査の結果について御報告させていただきます。私が国立衛研に在職中のデータですので、 2012 年度(平成 24 年度)、 13 年度(平成 25 年度)ということで、多少古くなっていますが、これについては現在も国立衛研において、今日御出席の酒井委員のほうで引き続き御検討されており、ほぼ同等の結果が得られていると伺っております。調査時期は、 2012 年度夏季、 2012 7 月から 9 月に 111 軒、同年度の冬季、 2012 12 月から 2013 年の 3 月、同じく 111 軒の調査を行いました。更にこれに関しては、 2013 年度の夏季におきましても、 93 軒の調査を行って、 2012 年度の夏季の調査が妥当であることを確認しております。

6 ページ目に、 2012 年度全国調査の結果を御報告させていただいております。左右ありますが、左側が夏の居間の結果です。右側が夏の寝室の結果です。これに関しましても、人が居間と寝室で、それぞれほぼ同じ時間を過ごすという仮定に基づいて、ばく露評価をすることが必要ということで、 2 つの部屋について調査を行っております。その結果は、夏では、その下に示しましたように、 WHO ガイドライン値の超過軒数が 4 軒、比率にしますと、 4/108 3.70 %)となります。この 108 というのは、更にその下に御説明しておりますが、全 111 家屋のうち、夏季及び冬季の調査において同一の住居で測定が行われたものについて解析を行っております。その結果、居間では 3.7 %、更に寝室では 6.5 %のお宅で WHO のガイドライン値を超過しているという結果になっております。

7 ページ目に、 2012 年度の夏季累積度数分布を示しています。ここでは 95 %タイル値を示しておりますが、夏季の居間の 95 %タイル値は 6.2 μ g 、寝室はこれよりもはるかに高い 26.1 μ g/m^3 という結果が得られており、夏季の寝室の 95% タイル値は WHO ガイドライン値を超えているということになります。

 一方、冬季は気温が下がることもありまして、若干濃度は低くなっておりますが、 8 ページにお示ししましたように、比率で申しますと、冬の居間では 0.9 %、 1 家屋のみですが、寝室のほうも同じく 1 家屋ということで、 0.9 %のお宅で WHO ガイドライン値を超えております。

 次のページに累積度数分布を掲載しておりますが、 95 %タイル値は、冬の居間で 4.6 μ g/m^3 、同じく冬の寝室では、 4.9 μ g/m^3 という値となっております。

 これから読み取れる傾向としましては、気温の高い夏の寝室で高い測定値が得られているわけですが、これに関して、次年度の夏に再度調査を行っております。その結果を 10 ページにお示ししておりまして、 93 軒の中で居間の超過軒数は 4 軒、比率にいたしますと 4.3 %、一方、高めの値が出る傾向のある寝室では、超過軒数は 7 軒で、比率にいたしますと 7.5 %ということになります。

11 ページに累積度数分布をお示ししましたが、この場合は夏の居間でもほぼ WHO ガイドライン値に匹敵する 9.6 μ g/m^3 という高い値となっております。また、寝室においては 33.2 μ g/m^3 ということで、これは WHO ガイドライン値の 3 倍の濃度になっております。

 このように、私どもの調査では、夏季の寝室が最も高い値になるのですが、年間を通して、常時ナフタレンが検出されているという状況が明らかになっております。

 最後のページには、傍聴者の配布資料には入っていませんが、冨士経済トイレタリーマーケティング要覧の 2014 版にあります「衣料用防虫剤の成分別販売額」の統計資料を載せています。これによれば、現在最も広く用いられている防虫剤は、販売価格のベースでいいますと、ピレスロイド、又はバラジクロロベンゼンということになります。ナフタレンに関しては、非常に低い値となっておりますが、私どもの調査で、依然として高い値で検出されるお宅が存在するということが明らかになっています。以上、簡単ですが、私のほうから御報告させていただきました。

○西川座長 ありがとうございました。それでは、ナフタレンについて御検討いただきたいと思います。今の説明ですと、実態調査の結果、 WHO ガイドライン値を上回るケースが冬季は居間、寝室ともに 1 %未満でしたが、夏季は居間で 3.7 %と 4.3 %、寝室で 6.5 %と 7.5 %ということです。見直しスキームからしますと、 WHO 空気質ガイドラインの指針値を十分に下回っている場合には採用しないということですが、上回るケースが見られるということでは、採用検討対象に含まれることとなろうかと思います。これについてはいかがでしょうか。御意見をお願いいたします。

○中井委員 先ほど神野委員がおっしゃったように、年平均値で WHO は確認するべきということだったと思いますが、例えば仮の計算でかまわないのですが、年平均値を求めると、どのくらいになるのでしょうか。例えば、居間に 12 時間、寝室に 12 時間いると仮定した場合、夏と冬を考えた場合に、年平均値だと、どんな分布になるのか教えてください。

○神野委員 年平均値の計算方法といたしましては、先ほどお示しした夏季と冬季の居間および寝室の 95 %タイル値を平均していただければ、先ほど中井先生がおっしゃった値になろうかと思います。その結果は、年平均値としても、 95 %タイル値で 10 μ g/m^3 を超えるということになると思います。

○西川座長 よろしいでしょうか。

○角田委員 平均値の話で 95 %タイル値に多分似ていると思いますが、調査対象となった家屋が一緒なのかどうかで変わってきますし、あと、ばら付きが大きいと平均値というのはあまり意味をなさないことになるので、どのように年平均というものを考えたらいいのかということが少し議論となると思うのですが、代表値として平均値が適当なのでしょうか。

○神野委員 角田委員のおっしゃることは、先ほど御紹介のありましたスキーム案で申し上げますと、おそらく詳細ばく露評価の段階で、厳密にどの程度の家屋が超過しているかという議論になると思います。私どもが行った全国実態調査というのは、スキームの中では、初期ばく露評価に相当する部分のデータになろうかと思います。したがいまして、 WHO のガイドライン値を超える可能性は十分にあるという情報が得られた、ということで御理解いただければと思います。

○坂部委員 リビングで超過している家と、寝室で超過している家というのは同一の家ですか。それとも、別の家なのでしょうか。

○神野委員 これに関しては同一のお宅です。

○池田委員 今と関連する話で、聞き漏らしたのかもしれませんが、今回の実態調査の対象となった家屋というのは、どういう基準で選ばれたお宅で、それぞれのデータで、重複している家があるのか、それとも全て全く別の家屋で行っているか、その辺のサンプルの属性の説明をよろしくお願いいたします。

○神野委員 私どもで一連の実態調査を行っておりますのは、地方の衛生研究所に御協力いただいて、そこで選定していただいた家屋で行っております。申し遅れましたけれども、 2012 年度の 111 件の調査を行ったお宅と、 2013 年度の 93 件のお宅は重複しないようにしております。

○西川座長 その他よろしいでしょうか。そうしますと、最初に御提案しましたように、ナフタレンを検討対象とするということで、次の段階である初期リスク評価等に進めていただければと思います。それでは、前回同じく、 WHO ガイドライン指針値のある物質として、ベンゼンについて検討しましたが、採用検討対象とするかどうかの結論に至っていないと認識しております。これについて、事務局から御説明をお願いいたします。

○事務局 ベンゼンにつきましては、前回の検討会におきまして参考資料 3-1 にございますように実態調査の結果が示されて、 WHO のガイドライン値を上回るものが見られるということが明らかになっています。ただ、御議論いただいた中で、ベンゼンの発生源は排ガスなど外気由来のものもあるため、室内由来かどうかの検討は引き続き課題である旨の御指摘があったところです。ここで、室内由来の発生源として線香やタバコなど考えられることも踏まえまして、ベンゼンにつきましては初期リスク評価などの作業を進めつつ、外気由来との関係についてどう考えるのかという検討も、併せて行っていくこととしてはいかがかと存じます。このように事務局から御提案させていただきますけれども、委員の先生方、御意見を頂ければと存じますので、よろしくお願いいたします。

○西川座長 ベンゼンを検討対象としておいて、外気由来との検討を並行して先に進めるという事務局の御提案ですが、それに対して御意見をお願いいたします。特にないですか。ないようでしたら、事務局から提案いただいたとおり先に進めたいと思います。ありがとうございました。

 それでは、次の議題に移ります。現在、暫定目標値と暫定試験法が定められている TVOC (総揮発有機化合物)に関する標準試験法についてです。香川参考人から、これまでの検討結果の御報告をお願いいたします。

○香川参考人 横浜薬科大学の香川と申します。よろしくお願いいたします。私のほうから、今、御紹介のありました「 TVOC 標準試験法の確立に向けて」と題しまして、私と、今、名城大学にいらっしゃる神野先生が、国立衛研に在職しておりました昨年度に、分析法の妥当性の評価をした結果を、お話したいと思います。

 まず、お手元の資料 2 2 の表ですが、今までに 13 物質について室内濃度指針値が策定されておりまして、実際に室内濃度を測ってみて、その指針値を満たしているのか、それとも超過しているのかを議論する際には、当然のことながら標準化された試験法を用いて採取、測定した結果に基づいて、判断していかなければいけないわけです。今のところ、こちらにお示しした 13 物質のうち、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒドに関しては、本検討会の室内空気中化学物質の測定マニュアル ver.2 、それから中間報告書 - 8 回及び第 9 回のまとめ別添 2 で、 DNPH 誘導体化 -HPLC 法で測ることになっています。また、その下のトルエン、キシレン、エチルベンゼン、スチレン、パラジクロロベンゼン、テトラデカンに関しましても、同じ測定マニュアル、それから中間報告書 - 6 回及び第 7 回のまとめ別添 2 の部分で、測定方法として固相吸着 / 溶媒抽出 -GC/MS 法をはじめとする所定の方法で測るように示されております。

 次の 3 のスライドですが、農薬であるクロルピリホス、ダイアジノン、フェノブカルブに関しましては、中間報告書の第 4 回及び第 5 回のまとめ別添 2( 暫定案 ) として、固相吸着 / 溶媒抽出 -GC/MS 法という測定方法が示されています。その下の可塑剤として主に使われているフタルジ -n- ブチル、フタル酸ジ -2- エチルヘキシルに関しましても、これも暫定案として固装吸着 / 溶媒抽出 -GC/MS 法、固装吸着 / 加熱脱離 -GC/MS 法で測定するようにとされています。現在、この農薬または可塑剤の試験法に関しましては、国立衛研の副所長である奥田先生が、代表を務めていらっしゃる化学物質リスク研究事業(厚生労働科学研究費)で、試験法を確立する方向でここに出席していただいている齋藤先生、田辺先生にも参加していただいて、今年度から作業を開始しております。

 同じく、今回の発表のメインである暫定目標値策定物質の測定方法として、 TVOC の方法に関しても、中間報告書 - 4 回及び第 5 回のまとめ別添 3 の所で、ある程度詳しくは示されています。測定方法といたしましては、現在のところ固装吸着 / 加熱脱離 -GC/MS 法と、固装吸着 / 溶媒抽出 -GC/MS 法で測定すると示されています。ただ、表の下にお示ししている、これは第 4 回、第 5 回のまとめの抜粋ですけれども、詳細な TVOC 測定手順を作成・公表するまでの間、現時点のスキームは、欧州委員会共同研究センターの報告による勧告手順を参考にし、以下の通りとしたいということで、現段階では暫定的な案ということになります。

 少し御紹介しますと、採取と分離に関しては室内空気中化学物質、この発表の前半にもお話ししました個別定量物質の採取方法に基本的に従うとしています。検出と定量に関しては、 TVOC 値のスクリーニングのために直接読取法で、指定範囲内のピーク面積をトルエン換算値として求めることとなっています。スクリーニングにて暫定目標値を超過するような場合は、 GC/MS 法により、できる限り個別物質の同定及び定量を行うということになっています。定量した物質に相当するチャート上のピークのトルエン換算値を差し引き、代わりに厳密に定量した値を加えるとなっているのですが、ここで厳密に定量するという操作をするためには、どういう化合物が含まれているかあらかじめ想定して、標準物質を準備して検量線を作った上で定量しないと、厳密に定量したということにはなりませんから、こういう部分は今行われている方法と整合性を取らなければいけないということで、現在、試験法に関して、国立衛研の奥田先生が研究代表者を務められる厚労科研の班研究で、測定方法を確立することを目的とした研究が今年度から進んでいます。

 それに先行しまして、私どもが国立衛研に在職していた時に実施した実態調査においては、次のスライド番号 5 にお示しする採取方法に則って室内空気を捕集いたしました。採取方法と測定方法に関してお示ししますと、これは個別定量対象物質となりますトルエン、 o-,p-,m- キシレン、 p- ジクロロベンゼン等の揮発性有機化合物の測定方法として、細かいですが、固装吸着 - 溶媒抽出 -GC/MS 法でも、固装吸着 - 加熱脱離 -GC/MS 法でも、いずれも新築住宅と居住住宅では異なるサンプリングの方法で実施することとなっています。つまり新築住宅では 30 分、居住住宅では普通の生活を過ごしながら 24 時間サンプリングするようにと示されています。一番下にお示しした容器採取、これはキャニスターという容器にガスを捕集して、その後そのガスを GC/MS で分析する方法ですが、いずれにしましても新築住宅と居住住宅では異なるサンプリングの方法を用いて、現在、測定が行われています。

 前後しましたけれども、その下のスライド番号 6 には、 TVOC の表の下に書いている TVOC 測定手順作成・公表するまでの間、現時点のスキームは「欧州委員会共同研究センターの報告書による勧告手順を参考にし」という文言がありますけれども、その報告書による勧告手順として少し抜粋を紹介させていただきます。 1. 吸着管としては TenaxTA 吸着体を用いる。ここでは 2. 加熱脱着によって採取した VOC を吸着体から GC カラムに移して、 3. 分析には非極性の GC カラムを使用する。 4. が重要ですが、クロマトグラムでは、 n- ヘキサンから n- ヘキサデカンまでの部分に見つけられる化合物を考慮すること。 3. に書いてある Column の材質によっては、ヘキサンからヘキサデカンまでに抽出されるような物質が、若干、変わるということがありますので、今はこの Column の仕様に関しても、どういうものがいいのかということを精査していく必要があるということで、検討が進められています。

 スライド番号 7 で、引き続き勧告手順 (2) になります。先ほども少し御紹介しましたが、 5. 個別の検出ピークに基づいて、なるべく多くの VOC を定量する。その際には、少なくとも別途示す必須 VOCs リストに含まれる化合物及び検出上位 10 ピークに、それぞれ該当する化合物を定量することとなっていますが、その「別途示す必須 VOCs リスト」というのも、今の段階で何が適切なのかというリストを、構築する必要があるだろうということになっています。 TVOC の算出法に関して、 6. 7. 8. で勧告手順が示されているわけですが、今の段階では暫定案に近いような状況ですので、この方法を整備して標準化をすることで暫定目標値である 400 μ g/m^3 を満たしているか、それを超過するのかという議論が成立することになりますので、試験法を確立することが非常に重要になってくるわけです。

 この発表のメインとしましては、私どもが昨年度、暫定目標値の見直し及び試験法の確立について議論されている TVOC について、「採取」ではなくて「分析方法」の妥当性を明らかにすることを目的として、スライド番号 9 で敬称を略させていただいていますが、私どもを含めて 5 機関の先生方に御協力いただきまして、分析法の妥当性を評価いたしました。調査方法としては、スライド番号 10 にありますように市販の VOC 混合標準溶液 (50 物質入っているもの ) を買ってまいりまして、私どもの機関で希釈して Tenax 管にヘリウムを流しながら、一定量捕集をさせました。これを 1 機関当たり 5 本、これはばらつきを見るために 5 本お配りしたということになります。同じように検量線用として、資料にお示しする段階希釈になるように同じようにヘリウムを流しながら、吸着させた捕集管を各機関にお送りしました。実態調査になりますと輸送の過程で汚染が生じるということがありますので、 Travel Blank として未処理の吸着管を、活性炭を充填したステンレス容器に入れて宅急便で送る。これは実態調査でも宅急便で協力者の方に送るということがありますので、同じように宅急便で各機関に送って測っていただきました。

 スライド番号 11 ですが、原則として、それぞれ 5 機関で通常検査を実施している測定条件で分析していただくようお願いしました。定量方法としては n-Hexane から n-Hexadecane の保持時間の範囲に溶出する VOC のピーク面積を積算していただいて、 Toluene に換算して TVOC を算出していただくようにお願いしました。「ただし」と書いてあるのですが、スライド番号 16 50 物質のスタンダードの Chromatogram を示していますけれども、四角で拡大した部分、ピークが重なっているように見える部分がありますが、 11 にお戻りいただいて、 n-Hexane Ethyl-Acetate の分離が悪い場合には、 n-Hexane の前に溶出する Ethyl-Acetate も併せて積算して下さるようお願いしました。

 スライド番号 12 50 種類の VOC のリストです。この中には n-Hexane より早い時間に検出される、沸点が低くて TVOC に入らないという物質も入っていますけれども、これが、一般的に Indoor air 50VOC として使われているものですので、これを対象にして測っていただきました。

 次のスライド番号 13 は、 5 機関のそれぞれの分析条件をお示ししたものです。

 次のスライド番号 14 から結果の紹介に入りますが、スライド 14 は、どのように妥当性評価をするかということですが、ここに書いてあります「真度」、どのぐらい確からしい値が出せるかと、あとは「精度」です。 5 本同じ量の VOC を捕集した吸着管をお送りして、そのばらつきを見るということで、繰り返して測った場合に、どのぐらいばらつきなく測れるかという「真度」と「精度」の 2 つを目安に妥当性を評価しました。結果を先にお示ししますと、今回の調査では 50VOC を各 50ng 添加した吸着管を測定していただいたところ、 Toluene 換算値として定量した、その定量値がここに示す 1,858ng から 2,256ng で、相対標準偏差は 8.5 %でした。この生データというのが結果 -4 、スライド番号で言うと 19 になります。 5 機関の 5 回の平均 TVOC(Toluene 換算値 ) として、 1,858 から 2,256 で、標準偏差が 8.5 %で 10 %未満であったということになります。

 次はスライド番号 15 になりますが、機関間でのばらつきは 10 %未満のばらつきですが、機関の中で繰り返し測ったときに、そのばらつきの程度はどれだけだったかというのが結果と考察 -2 になります。結論からお話しますと、各機関における 5 回繰り返し分析の結果では、相対標準偏差は 1.1 %から 6.5 %の範囲内でした。

 その生データが次のスライド番号 18 です。数字がたくさん書いてありますが、 ID 01 から ID 05 の機関で Sample1 から Sample5 を測った、それぞれの Toluene 換算値の数字が書いてあります。その平均値と標準偏差が最大でも 6.5 %で、ばらつきがほとんどないと言っていいかと思いますが、精度よく測れているということになります。

 その上のスライド番号 17 ですが、各機関で定量のために引いていただいた検量線の直線性も非常に良いという結果でした。

 スライド番号 15 にお戻りいただくと、「今回の調査では Toluene 換算値としての添加濃度は不明ではあるが」と書いてありますが、「不明」というのは、各 50 物質のクロマトグラムのシグナルの強度も、それぞれの物質で違いますので、 Toluene 換算値としたときに何が正解であるかというのが非常に難しいということで、不明であると書かせていただきました。不明ではあるのですが、真度あるいは精度ともに、いずれの相対標準偏差も 10 %未満であるという結果が得られたことから、加熱脱離、 GC/MS による TVOC 測定の妥当性が検証されたものと考えられ、各機関でこのような分析方法で測定した場合には、妥当性が検証されたものと結論付けました。

 まとめの最後のスライド番号 20 になります。少し問題がございまして、先ほど少しお示ししたように、使用する Column とか分析の条件によっては、 TVOC として積算される化合物として入ってこないものがあります。例えば、今、可塑剤として使われている TXIB という物質は沸点がかなり高いので、 Column によっては n-Hexadecane の後に出てきて、 TVOC には積算されないという問題もありますので、その辺りの分析条件を精査することと、あとは TVOC を分析するときにスキャンモードで測ることになりますので、機械の汚染とか操作中の汚染で、バックグランドがかなり出てしまうという状況も多少観察されていますので、バックグランドをいかに低くするか。そのための方法を標準化するということで、今、まさに今年度から始まった、奥田先生を研究代表者とする厚労科研費の指定研究で精度の良い測定法を作っていくということで動いています。私からは以上になります。 ○西川座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について委員の先生方から御質問、コメント等がございますでしょうか。

○角田委員 こういう分野は素人なのですが、お聞きしたいのは、大体、 10 %ぐらいずれるのが、このような測定では普通なのかという点が 1 点と、もう一つは、調査方法のところで最初に標準試料を作られますが、通常は、それを配るときにランダム化して配るということをされているかと思います。つまり、たまたまカラムの充填の順番によって高い濃度になってしまい、同じ順番で送ったら、各々の測定場所で異なってしまったということでは困ると思うので、その辺、標準化するためにどのように注意されて標準試料を作って送られたのか、説明をお願いしたいと思います。

○香川参考人 最初の御質問の 10 %のばらつきがどの程度かいうことですが、ばらつきが低ければ低いほど、それはより良い方法であるかと思いますが、この程度のばらつきであれば、全国の衛研の先生方とか保健所で測っていただく分には問題がないレベルという判断です。

2 番目に御質問いただきました、あらかじめこちらで既知の量の VOC を添加するという操作で、これまで神野先生の研究室では実態調査として内部標準を添加するという操作を行っていて、技術を持っている者が実施すると、非常にブレの少ない標準試料を作れる状況にありましたので、ランダムにしてもしなくても、おそらくばらつきのない吸着管をお配りしていると思っています。

○角田委員 作った順でばらばらにしないで、例えば 1 2 3 4 5 と作ったら、その作った順番で送ったという感じですか。

○香川参考人 それは、そういうことも含めまして偏りがないようにしております。実際にかなりの本数の捕集管を測定してばらつきがないことを確認しております。

○角田委員 そうであれば、資料に記載いただくと、試料の作り方によって偏りがないことがわかって良いと思います。

○香川参考人 ありがとうございます。

○西川座長 よろしいでしょうか。そのほか、中井先生、どうぞ。

○中井委員  2 点、お聞きしたいのですが、 1 点は、機関内、機関間も含めて良い精度ということですが、もう少し個別に分けていただいて、例えば 16 枚目のスライドにあるようにクロマトグラフを考えた場合に、検出された物質は全て同じだったのか。最終的にトータルで評価することになるのですが、トータルが合っていればいいという話は少し違うかなと思いますので、その辺がどうだったのかというのが 1 つ。 2 点目は少し意図がよく分からなかったのですが、測定法の確立というのはどういうふうに考えていけばいいのか。この資料の場合、 Tenax を使って加熱脱着しての施設間の整合性を見ているということで、これは分かるのですが、 Tenax を使って今後ずっと、例えば溶媒(抽出)法とかは議論せずにこれから進めていって、その後、どうするのか。それも含めて御紹介いただければと思います。

○香川参考人 最初の御質問で、例えばスライド番号 16 、これは国立衛研のクロマトグラムのチャートを示したものですけれども、中には Blank が高く出てしまって、その Blank を差し引いたものを TVOC として定量解析している機関もありましたので、それで先ほど Blank をいかに抑えるかが重要だということで、どのようにすれば Blank が抑えられる標準法にできるかということを、検討しています。

2 番目に、この意図は何なのかということですけれども、そもそも先生がおっしゃるように、加熱脱離と溶媒抽出法という 2 つの方法が残っているわけです。先日、田辺先生にもコメントを頂いたのですが、前のシックハウス検討会の分析方法に関する議論の中では、ここで実施した加熱脱離という分析装置を持っている機関が、おそらくあまりにも少ないだろうということで溶媒抽出を残しておくという議論があったようです。ただ、溶媒抽出法で測った TVOC の値と加熱脱離法で測った TVOC の値が、どのぐらい違うのかというデータは、おそらくまだ精査されていないということで、私どもの実態調査では精度のいい方法として TVOC を加熱脱離 GC/MS で測りました。今、ほかの機関で、どのぐらい同じような精度で測れるのかというのが知りたかったというのが第一なのですが、神野委員のほうから何か補足いただけますか。

○神野委員 中井委員の御指摘のとおりでございまして、そもそも指定研究で試験法を作成しなければいけないという議論になったのが、 TVOC に関しては標準品というのが、当然、ないわけですので、測定方法に非常に依存する値であるにもかかわらず、これについては、まだ現行ではしっかりとした試験法、分析法が定まっていないということです。そうすると、暫定目標値を達成しているか否かの議論自体が曖昧になってしまうということで、そういった意味で、まずは試験法を確立しなければいけないということでこの指定研究が始まっているかと思います。

 その際に、先ほどの香川参考人からの説明でもございましたように、 1 つは溶媒抽出法を汎用性のある試験法として残すべきかどうか。その場合には溶媒抽出法と加熱脱離 GC/MS 法が、ほぼ同等の結果を出せることを検証してからでないと、残すという議論にならないのではないかということが、 1 つ問題として挙げられると思います。

 さらに、先ほどの個々の化合物については、新築住宅と居住住宅でサンプリング法が異なっているのですが、 TVOC に関しては居住住宅の試験法のみで、現在のところ新築に関しては定まった方法がありません。これに関しても今後、様々な化学物質について指針値化が議論される際には、当然、その試験法が必要になろうかと思いますが、その際に、新築と居住住宅を別個に考えていくという従来の考え方を踏襲したほうがいいのかどうか。その辺を、できればこの検討会で御議論いただいて方向性を示していただけると、検討のほうも速やかにいくと思っています。

○中井委員 資料に書いてあるのはそのとおりだと思うのですが、実際に測定する地方自治体や研究所の方々が、現場で体験する問題だと思います。今回、協力いただいた所は結構慣れている所が多いと思うし、テクニックも少し上の所であるということと、田辺先生もおっしゃったようですが、その測定機器を持っているのかどうかも併せて検討していかないと、化学的な議論で終わってしまうので、現場での実用性を一緒に考えていっていただければと思います。

○西川座長 田辺委員、お願いします。

○田辺委員 今回の検証は、極めて高い精度で検討が行われており大変すばらしいと思います。 1 つは、厚労省の指針値物質に関して、個々の物質に関しては分析機関などが内標準を出して、きちんと濃度は測れると思いますが、実際にトラブルが起こると、一部の物質の濃度が低いから、例えば 4 つの VOC が低いからというだけでは、ほとんどの方は納得されない。トータルの化学物質量が低いということが問題解決のための非常に大きな手段で、そのためには TVOC が毒性とは直接関係ないけれども、室内の空気が汚れていないということを表わすためには非常に重要であると思います。

2000 年前後にシックハウスの問題が出たときに、当時は全国で加熱脱着装置を所持している所が少なくて、 FID を用いて溶媒抽出で、まずは測れないかということを検討しました。ところが、問題は、精度を上げれば上げるほど、濃度を高く測れる可能性があるのです。ということは、精度が悪い機械を使うと濃度が低く出るので、あたかも安全のように思われてしまう。ここが実は非常に重要な点です。今回、神野先生、香川先生が行った仕事は QC(Quality Control) QA(Quality Assurance) に関わるお仕事で、非常に重要だと思います。 ECA のヨーロッパはその後、 ISO 16000-6 JIS A1965 だったと思いますが、規格化されていきますけれども、質と信頼性の部分の検討が日本では不足していました。ヨーロッパではラウンドロビンテストを結構やって、研究機関で当時、スパイクした Tenax を配って同じような分析結果になるかということが行われていたのです。日本では、それが行われていなかったのですが、今回、日本の研究機関で行われて、 RSD 8 %とか、極めて高い精度で行われたということが重要であろうと思います。

 実際には加熱脱着装置が高価なので、それがどこまで普及しているかということだと思いますが、 15 年前に比べれば普及度が上がってきているので、こういうスパイクしたサンプルを全国の測定を始める所に配ることによって、商業的に空気分析されている機関も加えて、それらの測定の質と信頼性を確保していくのが、実はこのシックハウスの対策検討会としては、極めて重要な仕事ではないかと思います。

 神野委員に御質問したいのは、 1 時間又は 20 分サンプリングしたときに、 TVOC で言うと、どのくらいの気中濃度に相当するか教えていただければと思います。

○神野委員 私どもでサンプリングするときは、吸着管 1 本当たり 2.88 リットルの空気を吸引しておりますので、ここに示しました 2000 という値を概算として 3 で割っていただくと、それが実際の空気中の濃度になります。したがって、およそ 600 μ g/m^3 TVOC に相当する値を測定しているということになります。

○西川座長 よろしいでしょうか。

○池田委員 今回の結果は、すばらしく各機関の間で測定値が合っていると思います。というのは、私、 15 年ぐらい前、それこそシックハウス問題が話題になる前ぐらいに、建設会社大手 5 社の方々と分析会社 2 機関とが一緒に集まって、私はその当時、国立保健医療科学院に所属していましたが、同じ部屋の空気をサンプリングして、結果を比較したのです。ホルムアルデヒドは倍ぐらいの誤差範囲だったのが、ほかの VOC の類は桁違いという状況で、それぞれの機関、特に民間の機関からは、これは発表しないでくれということで、結局、結果を公表せずに終わってしまったということがありました。それに比べると、この各施設間の結果というのは、驚くほど合っている。当時、こんな結果が出たら、これはわざと合わせたのではないか、と言われるほど合っていると思うのですが、それほど分析技術が進んだのだろうと思います。

 ただ、こういうトップレベルの分析機関は進んだとしても、実際、民間ではまだまだそんなに変わらない。下手すれば桁違いの結果が出ているかもしれないわけです。しかも、更にここでは今、固相吸着法とか溶媒抽出法ということですけど、それ以外のもっと簡便な方法での TVOC の測定というのも現場ではなされていると思いますので、その辺もどうするかということを神野先生レベルでは考えていただいて、そういったいわゆる簡易測定法も含めて検討いただければということを思いました。すばらしい研究だと思います。

○西川座長 神野先生、香川先生、何かございますか。

○神野委員 池田先生、ありがとうございます。私どもでも、どこまで汎用性のある試験法を作るかということに苦慮しているわけですが、 TVOC に関して言えば、標準となる試験法を確立した後でないと、簡易測定法の妥当性を検証することができません。そういう意味で、まずは今日、御紹介させていただいた加熱脱離による TVOC 測定法の確立を先行して進めていきたいと考えています。試験法の開発については今後は酒井委員を中心にご検討いただくことになろうかと思いますが、その際に、例えば TVOC の汎用試験法として溶媒抽出法についても検討を行っていくべきか、新築住宅の試験法についても別途検討すべきかどうか、ということについてこの検討会で方向性を示していただけると、おそらく試験法の作成作業もはかどるのではないかと思います。その点について御意見を頂ければと思います。

○西川座長 ありがとうございます。溶媒抽出法を含めた検討にするのかということと、新築を対象とするかということについての御意見かと思います。田辺先生、よろしくお願いします。

○田辺委員 前者の溶媒抽出法をどうするかに関しては、どのくらい普及しているかを含めてだと思いますが、少なくとも詳細で精緻な測定法というのができれば(溶媒抽出法の)評価ができるわけであって、その測定法の作成に向かっていくということだと思います。 2 番目の新築に関しては、厚労省にシックハウス検討会ができた当初から、住宅の新築部分よりも住んでいる者と生活用品を含めたものを評価しようというのが厚労省の立場であったわけです。私は建築にいますので、造る立場からすると責任分担しておきたいという気持ちもあって、例えば小学校ができたときに、建築サイドが造った小学校自体に問題があるのか、それとも児童とか先生が持ち込んだ物に問題があるのか。それを分けるということを考えると、新築時の評価、これは JIS ISO で体系ができているので、是非、盛り込んでいただければと思います。新築の指針値をどうするかということは、また別の問題で考える必要があると思います。

○西川座長 ありがとうございます。そのほかはよろしいでしょうか。

○中井委員 やはり新築ならではの問題というのは田辺委員がおっしゃいましたけれど、住まう側からすると、何があるか分からないというのもありますので、そこは検討対象に入れていただきたい。正直、部材に含まれているものを足し算すれば出るかというと、必ずしもそうではないと思いますし、そこは安全という言い方がいいか分からないのですが、是非その辺は検討しておいていただきたいというのは、個人的に思います。

 分析法に関しては田辺委員がおっしゃったように、測定機器の普及度みたいなところも含めてだと思うのです。今、測定をしようと思うと、商業的な測定機関か地方の自治体の方がやらざるを得なくなってくるかなと思いますし、その辺の人たちが対応できないというのは、やはりまずいかなと思いますので、一番精密な方法と、少し簡便な方法、それがどのくらい精度に差があるのかも含めて、少し整理した上で、検討を進めていただいたほうがいいのではないかなと思っています。

○西川座長 新築については、対象とする方向で進めていきたいと思いますが、溶媒抽出法を含めた試験法を、どのようにしたらよいかということですが、その点についてはいかがですか。やはりそれも含めて検討していくべきというお考えですか。

○酒井委員 平成 27 年度、平成 28 年度も国立医薬衛生研究所において、全国実態調査が継続しています。その中で平成 27 年度に関しては、 22 の地方衛生研究所の御協力を賜っていますので、まずはその研究所が所有している機器の調査等は早急に始めることができます。また、今回参加いただいた 22 機関以外にも、地方衛生研究所と国立医薬衛生研究所のネットワークを持っていますので、まずは機器の普及率の実態調査から早急に始めさせていただければと考えます。

○齋藤委員 溶媒抽出法を入れるかどうかの議論で、おそらく入れるとしても加熱脱着と溶媒抽出を比べますと、必ず測定値が違うと思うのです。絶対一緒にはならないということで、でも、どちらが正しいかというようにするのではなく、その両方をやったときにどれくらいの差があるか、そういうデータを持って、どちらもこういう値は出せるのだけれど、これくらいの差がありますよという 2 本立てにしていただけると、皆さんが採用しやすいのかなと思います。

 やはり加熱脱着装置は値段で言うと 1,000 万円近くしますので、それを維持するというのは、かなり自治体にとっては負担であることは間違いないので、私どもの機関では所有していますが、やはり持っている自治体の方は非常に少ないですから、できれば加熱脱着のみに限らず、溶媒抽出でやったとすると、おそらく測定値に差は出るかもしれないですが、こういう方法であれば大体信頼できる測定値で測れるのではないかという方法をお示しいただけると、非常に有り難いのではないかと思います。

○西川座長 溶媒抽出法も捨てがたいという御意見だと思いますが、やはり酒井委員がおっしゃったように、まず実施施設における機器の普及状態を確認してから、順序立てて進めていきたいと思います。ありがとうございました。そのほかはよろしいでしょうか。それでは、 TVOC の試験方法については、標準試験法の確立に向けて、引き続き御検討いただくということでよろしくお願いします。

 それでは、最後の議題に移りたいと思います。室内空気中及びハウスダスト中のフタル酸エステル類についてです。神野委員から御説明をお願いします。

○神野委員 こちらの室内空気中及びハウスダスト中のフタル酸エステル類については、昨年度までの厚生労働科学研究の指定研究で実施したものです。同時にいろいろな準揮発性有機化合物( SVOC )を測定しておりますが、その結果については厚生労働科学研究の報告データベースのほうに掲載してありますので、御興味のある方は御覧いただければと思います。本日は室内濃度指針値が定められているフタル酸エステル類及び、その代替として用いられている化合物について調査を行った結果を御紹介させていただきたいと思います。

 まず 2 ページ目ですが、これは室内濃度指針値の一覧表です。「揮発性有機化合物」という項目名がありますが、実際はこの中に準揮発性有機化合物に分類されるものも含まれています。その典型的な例が、フタル酸ジ -n- ブチルとフタル酸ジ -2- エチルヘキシルで、可塑剤として使われるこの 2 化合物が、現在の室内濃度指針値の策定物質となっています。ちなみに、その指針値はフタル酸ジ -n- ブチルが 200 μ g/m^3 、フタル酸ジ -2- エチルヘキシルが 120 μ g/m^3 ということです。私どもの調査の主な目的は、実際に現在の居住環境において、空気中のフタル酸エステル類がどの程度の濃度で検出されるのかというのが 1 点と、もう 1 つはその存在形態、つまりガス状と粒子状、いずれの形態で空気中に存在しているかということについて、知見を得たいということで調査を行いました。

3 ページ目に研究班の組織を示していますが、私が国立衛研在職中に研究代表者を務めさせていただきまして、本検討会委員であります齋藤委員、北海道衛研の小島先生と武内先生、神奈川衛研の上村先生、今日お越しの香川参考人、早稲田大学理工学学術院の金先生に御協力いただき、この研究を進めてまいりました。実際のサンプリングについては、 4 ページ目にお示しした調査協力研究機関ということで、これは全国実態調査に参加いただいている機関と重複するのですが、こういった地方の衛生研究所の皆様の御協力を頂いて、調査を進めてまいりました。

 調査方法ですが、 5 ページ目を御覧ください。調査時期は 2014 年の 7 9 月、比較的気温の高い時期を選びました。調査家屋は 50 軒の居間です。寝室の調査も合わせて行いたかったのですが、この次に御説明するサンプリングに係る制限から、居間のみをサンプリングの対象としました。調査対象化合物はフタル酸エステル類 5 物質です。そこに挙げましたように、 Dibutyl Phthalate Benzylbutyl Phthalate Di(2-ethylhexyl) Phthalate Diisononyl Phthalate Diisodecyl Phthalate 、それぞれ略語として DBP BBP DEHP DiNP DiDP と呼ばせていただきますが、この 5 化合物について調査を行いました。

 実際の調査に用いた機器の写真を、その下の 6 ページ目に示していますが、室内空気を流速 10L 毎分で 24 時間採取しました。採取空気量としては 14.4m^3 ということになります。粒子状物質について、その粒径に従って分類するために、サンプリング装置の拡大した部分の写真にお示ししている「インパクター」と呼ばれる装置を用いて、室内空気中の粒子状物質を「 10 μ m 以上のもの」、「 10 2.5 μ m のもの」、更に「 2.5 μ m 以下のもの」、これが PM2.5 ということになりますが、その 3 段階に分粒して採取を行いました。また、粒子状物質をインパクターで除いた後のガス状物質の捕集には、オクタデシルシリカゲル (ODS) フィルターを用いてサンプリングを行いました。

 一方、これも以前の検討会で田辺委員、池田委員から御指摘を頂いていることかと存じますが、ハウスダストが SVOC の主要なばく露源となる可能性もあるということですので、ここではハウスダストについて、塑剤を一切含まないサンプリングが行えるように、右側に示したフッ素樹脂で作成したハウスダストサンプリング装置を用いて、調査を行っています。

 その結果について御報告させていただきますが、 7 ページ目に Dibutyl Phthalate(DBP) の結果を示しています。ここは申し訳ありません、数値を入れていませんが、 DBP に関しては調査結果の中央値が 0.65 μ g で、 1 つ上に出ている、左側の図で上に出ているポイントがありますが、これが最大値で 3.6 μ g/m^3 ということになっています。右側に累積度数分布を示していますが、大部分のお宅では 2 μ g/m^3 以下ということになっています。

 一方、室内濃度指針値は定められていませんが、ヨーロッパ等で問題となっている Benzylbutyl Phthalate についての結果を、その下の 8 ページに載せています。これは検出率が非常に低いので、先に右側の累積度数分布を御説明しますが、およそ半数のお宅では検出できない、不検出という結果になっています。検出濃度も非常に低く、これも数字は記載しておりませんが、中央値が 0.004 μ g/m^3 で、最大値はその約 10 倍の 0.044 μ g/m^3 となっており、検出濃度が極めて低いと言えるかと思います。

 また、 DEHP については、左側に示した図の中央値は 0.6 μ g/m^3 で、一番上にある値が最大値 1.3 μ g/m^3 ということになります。

 室内濃度指針値が定められた当時は DEHP が主として塩ビの可塑剤として用いられていましたが、最近は Diisononyl 、あるいは Diisodecyl が代替として用いられる場合もありますので、今回はこの代替物質についても調査を行っています。その結果、 Diisodecyl については全く検出されなかったのですが、 10 ページにお示ししましたように、 Diisononyl に関しては、室内空気中から検出される状況にあることが明らかになりました。ただ、その濃度は DEHP のおよそ 10 分の 1 程度であり、中央値で示しますと 0.01 μ g/m^3 、最大値で 0.14 μ g/m^3 ということですので、私どもの調査では初めて検出されたものですが、濃度としてはまだかなり低い値であると思います。

11 ページ目です。室内環境中ということで考えますと、実際はハウスダストにかなりの量のフタル酸エステル類が吸着して存在しています。 11 ページには DBP 12 ページには Benzylbutyl の結果をお示ししましたが、極めて高いところでは、例えば DBP ではハウスダストの 1g 当たり 600 μ g を超える値で検出されるお宅が存在します。

13 ページ目には DEHP の結果を示しています。フタル酸エステル類の中ではこの DEHP の濃度が最も高く、中央値は 1,000 μ g を下回っていますが、最も高いところでは 6,000 μ g/m3 という濃度で検出されています。先ほど空気中からも検出されるということを御報告しました Diisononyl に関しては、 14 ページに示したように、やはりハウスダスト中にも存在していることが明らかになりました。

 次の 15 ページ目には、室内空気中の粒子状 Phthalate の存在状態の割合ということでお示ししています。これらの SVOC は大部分が空気中に粒子状物質として存在していることが知られています。今回の私どもの調査でも、 15 ページに示しましたように、比較的沸点が低い DBP でも 70 %程度、 DEHP に至っては 90 %ほどが粒子状物質として存在しているという結果が得られております。

 今回、冒頭で申し上げましたように、粒子を分粒して測定していますので、粒子サイズについての情報も得ることができました。それによれば、 PM2.5 と呼ばれる、肺の深部まで達することが知られている粒子に吸着しているものの割合が半分以上であるということになります。つまり空気中に存在している粒子状物質としての Phthalate は、肺の深部まで到達する形状で存在しているという結果が明らかになっています。

 その原因を探る目的で、幾つか相関を検討してみました。 17 ページの左側に DBP 、右側に DEHP についてハウスダスト中の濃度と空気中の濃度の相関をお示ししましたが、一目瞭然で分かりますように、全く相関関係は認められませんでした。したがって、必ずしも室内のハウスダスト由来のばく露と空気由来のばく露が相関するわけではないということになろうかと思います。

 ただ、フタル酸エステル類同士で相関を見ますと、 18 ページにお示ししましたように、上段には相関係数を、下段は P 値を示したものになりますが、少し状況は異なってきます。 DEHP DBP の間には、相関係数としては 0.384 ということで、必ずしも高いものではないのですが、明らかに有意な相関が見られるということで、室内でのフタル酸エステル類ばく露は、化合物間での相関がかなり高いということが明らかになっています。

 更に 19 ページですが、室内空気中の PM2.5 に吸着しているフタル酸エステル類がどこに由来するのかということについても調査を行っています。これは、全国調査とは別に 10 家庭を対象に、室内外のフタル酸について粒子状、ガス状を分別して定量したものになります。その結果、例えば右側のほうを御覧いただいたほうがよろしいかと思うのですが、 Bis(2-Ethylhexyl)Phthalate DEHP に関して言えば、グラフ内の右側が室内、左側が室外を示していますが、室内の PM2.5 のフラクションのみで検出される。つまり、その家屋の室外を同時に分析しても、室外の粒子状物質には、ほとんどフタル酸は吸着していないという結果が得られています。室内の粒子状物質の大部分は外気由来であると言われていますので、そうしますと、外気から粒子状物質が室内に取り込まれた後に、室内に存在するフタル酸がその粒子状物質に吸着し、結果として室内ではフタル酸エステル類が粒子状物質に吸着した形で検出されているという事実が明らかとなっています。

 室内濃度指針値との関連ということで結論づけますと、 20 ページにお示ししましたように、全国の 50 家屋を対象にした本研究の調査では、室内空気中の DBP 及び DEHP 、指針値化合物であるこれら 2 化合物の最高濃度は、それぞれ 3.6 μ g/m^3 1.3 μ g/m^3 であった。これらの値は、現在の室内濃度指針値の約 1/60 、約 1/90 ということですので、空気からのばく露に関して言えば、十分に低いレベルにあるという結論が得られました。以上です。

○西川座長 ありがとうございました。それでは、ただいまの御説明について、委員の先生方から御意見、コメント等をお願いします。

○広瀬委員 不勉強で申し訳ないのですが、ハウスダストのフタル酸は、粒子に吸着したフタル酸なのか、それとも、プラスチックの細かい破片がダストになったものなのかというのが分からなかったのと、あとは粒子当たりの DEHP の濃度が出ていますが、それは気中にダストがどれくらい舞っているかというパラメーターで補正するというのは難しいのですか。

 先ほど相関を見られましたが、片方は気中濃度、片方はダスト当たりなので、加重の中で考えると、気中を舞っているダスト当たりの DEHP で相関を見ないと、比較できないのかと思いました。

○神野委員 御指摘ありがとうございます。後のほうの質問に関しては広瀬委員のおっしゃるとおりですが、このサンプリング方法では重さを測るところまでの量が取れないので、例えば質量ベースとか粒子数ベースでフタル酸量を表すことができませんでした。前者の質問については、確かにハウスダスト中のフタル酸エステル類に関して言えば、粒子径で分別はしているのですが、もしも塩ビの細かい粒子がハウスダスト中に混在したときに、それは除けていないと思いますので、粒子に吸着したものと破片由来のものをトータルとして測っていることになります。

○広瀬委員 次にお聞きしたいのは、ハウスダストからのフタル酸の測定法というのは、ダストから加熱処理とかで気化してくるフタル酸を測っているのですか。言いたいのは、肺に入ったハウスダストのどのくらいが、実態としてフタル酸が体内に入るかどうかというのが、多分今後リスク評価をするときに重要になると思いましたのでお聞きしました。もし、ダストのまま肺に入って、またそのまま体外に出ていくという話だと、それは体内には吸収されていないフタル酸になってしまいますので。

○神野委員 おそらく、ここでハウスダストとして御紹介している値というのは、本当の大きな PM2.5 とか PM10 というレベルのサイズではなくて、それよりも大きいものですので、ばく露経路としては、肺に入るという経路よりも、経口で取り込まれるサイズになるのだと思うのですが、測定法としては溶媒で抽出して測っています。ですので、ハウスダストを先ほどの採取装置でサンプリングした後、粗大の粒子を除いてから溶媒抽出で分析を行っているということになります。

○中井委員 気中の濃度が低いというのは、今までの研究成果から大体そのとおりかと思うのですが、ハウスダストのばく露量を覚えていないのです。多分いろいろな報告がなされていると思うので、他の研究で報告されている値がどのくらいなのか、もし分かれば教えていただきたいというのが 1 つと、ほかの研究との比較です。先ほどの PM2.5 のフタル酸の話ですが、あれは PM2.5 に付着したのですか。それとも 2 次生成したものなのでしょうか。 PM2.5 だけに付着するというのは、少し引っ掛かるのですが。

○神野委員 おそらく 2 次生成ではないと思います。ただ、先ほどの PM2.5 に付いている比率というのは 60 %ですし、多分、室内空気をサンプリングしたときに、粒子サイズとしては PM2.5 に分類されるものが一番量としては多いので、そういった意味で PM2.5 に付随している部分が高く出たと思っています。

 それぞれの濃度に関しては、今は手持ちで個々の数字を控えていないのですが、以前私どもが行った調査で申し上げますと、例えば DEHP に関して言えば、ハウスダストをどれくらい摂取するかという、ばく露量というのをどう見積もるかによって変わってくるのですが、計算上では食品および水道由来のばく露量の、数十パーセントにほぼ相当するようなばく露量になるという結果は得ています。

○中井委員 今回の調査では 5 物質が対象物質なのですが、ほかの物質については何か検出された形跡はないのですか。

○神野委員 それについてもテレフタレートとか、幾つかの化合物について分析は行っています。ただ、今回お示ししたデータとしては、室内濃度指針値が定められている、又はそれに類する化学物質ということで、的を絞ってお示ししていますが、詳しい調査結果については厚労科研費データベースを御覧いただければと思います。

○田辺委員 質問ですが、ここで言っているハウスダストというのは、浮遊粉塵中のダストにくっついているものか、留置しているものかというのが分かりにくくて、多分 PM2.5 だと浮遊粉塵になっていると思うのですが、いかがでしょうか。

○神野委員 説明が不十分で申し訳ありません。ここでお示ししているハウスダストというのは、掃除機でサンプリングされるもの、つまり床などに留置しているものを指しています。

○田辺委員 先ほどの PM2.5 に付いているのは、浮遊した粉塵に付いているということでしょうか。

○神野委員 そうです。

○田辺委員 なるほど。今回の研究では留置したものと、空気中に浮遊しているものがうまく分けてあるということですので、誤解のないように記載を工夫してはどうかと思います。ガス・パーティクル・パーティショニングといって、ガス相と粒子相でどういう割合であるかというのは、 UC バークレーのナザロフ博士などがかなり研究をされていて、多分 DEHP だと数パーセントくらいしかガス相がないのです。粒子に付着しているものが、空気中に存在する大半だと思います。

 彼らも、実験の中で換気をしたりして、室内に粉塵が入ってしまうと、逆に室内空気中のフタル酸発生量が増えるという研究は既に出ています。ただ、私は PM2.5 の付着割合が大きいというのは、ほとんどまだ論文でも読んだことがありません。この実験結果が正しいとすれば、人体の中に入る摂取のルートがかなり変わってくるので、精査すれば非常に素晴らしい知見ではないかと思います。

 もう 1 つ、留置しているものに対しては、例えば建材とか、そういうものから放散された物質が付着した場合と、ブリージングといって材料そのものから染み出してくる物質がそのまま粒子にくっつく場合と 2 つあります。私はブリージングしたものも、表面を拭くとかして、やはり系を分けたほうがよいのではないかと思います。今、この検討会では全て口から空気で体内に物質が入るという仮定をされているのですが、だから空気中を測っても全体の 1 %の濃度しか測れていないので、 1 μ g/m^3 とか 2 μ g m^3 くらいしか出てきません。空気中の粒子をサンプルするときは、おそらくサンプラーに粒子はくっついているはずなので、普通どおりサンプルすればいい。その辺りをどう考えるかを整理すると、さらによいデータになるのではないかと思います。

 フタル酸エステル類を心配する方もいらっしゃるので、自然素材で作った保育園で私どもも測定をしたことがあるのですが、最初は出所が特定できませんでしたが、濃度が高い所があって、それは実は上履きのゴムがすれて出てきていました。ある会社の上履きを小型のチャンバーで測ったら、 GC-MS が壊れるほど検出されたということがありました。ですから、やはり建材だけではなくて、そういう生活用品からも出るものがあるので、そこも考えて頂けるとありがたいです。最近は分析に非常にお金がかかって、測定も大変なので、なかなかこういう研究ができなくなってきていており、また、昔のようにたくさん研究費が付くわけでもないので、なかなかつらいのですが、今回の研究成果は貴重なデータなので、是非研究をこのまま進めていただきたい。

 ドイツでは WKI というフランホーファの研究所の人たちが、昔取った古いダストを最近倉庫から取り出して、分析しているのです。すると、 10 年前にあったものと最近のものでは、分析結果がやはり変わっていて、ある時点のダストからフタル酸の代替物質が出てきたりしているので、もし日本でもダストを採取したら、保存しておくと後で役に立つかもしれないなと思います。コメント的なことですが、ありがとうございます。

○神野委員 今後の調査の参考にさせていただきたいと思います。ありがとうございます。

○西川座長 その他はよろしいでしょうか。無いようでしたら、引き続き検討を進めるということにしたいと思うので、よろしくお願いします。それでは、その他として事務局から何かありますか。

○事務局 事務局からは特にありません。次回開催については、また追って御連絡させていただきますので、よろしくお願いします。

○西川座長 それでは、これにて本日の検討会を閉会します。円滑な議事進行に御協力いただきまして、ありがとうございました。


(了)

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