ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 腎臓移植の基準等に関する作業班> 第8回腎臓移植の基準等に関する作業班 議事録(2016年3月9日)

 
 

2016年3月9日 第8回腎臓移植の基準等に関する作業班 議事録

健康局難病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成28年3月9日(水) 15:00~17:00

 

○場所

中央合同庁舎5号館 厚生労働省17階 専用第21会議室
東京都千代田区霞が関1-2-2

○議題

1 腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の見直しについて
2 その他

○議事

 

○伊藤補佐 定刻より少し早いですが全員そろいましたので、ただいまより「第8回腎臓移植の基準等に関する作業班」を開催いたします。班員の先生におかれましては、お忙しいところお集まりいただき誠にありがとうございます。本日は、水口班員より御欠席の連絡をいただいております。また、今回法的・社会的な観点から御意見をお伺いするため、成城大学の山本先生にお越しいただいております。開会に先立ちまして、事務局の異動がございましたので御報告いたします。移植医療対策推進室長の鈴木です。室長補佐の上村です。私は室長補佐の伊藤です。よろしくお願いいたします。それでは室長の鈴木より御挨拶をさせていただきます。

○鈴木室長 今日は先生方ありがとうございます。私は、室長を10月からさせていただいている鈴木と申します。作業班は非常に長い歴史があってされているということです。逆に言うと、少し長くなっているところも反省していかなければいけない点だと思っております。

8回目で某かの形が今日は出ないかと思っております。それは議論の結果が出るのか、あるいは議論の中の経過が大事になるかというところはあると思います。基本的にこれまでの議論で私どもが聞いているところは、現在運用している基本構造は大きく変える形ではないと。その中でどういう形でこの作業の成果を出して、そして臓器移植委員会という審議会の委員会に上げて、世の中に貢献していくかということだと考えております。医学的な議論はこの場ではありますが、それがかなり出尽くしている状態で、作業班の作業も、一旦今日で区切りを付けていければと考えております。基本構造改革ということをやるわけではありませんが、移植の関連学会やこういった所では、当然発生したものの作業が今後出てくるかと思いますので、それは作業班の結果を審議会等の指示を仰ぎながらやっていくという形も1つの考え方だと考えております。

 今日はそういったような状況を踏まえて、先生方には学術的な視点から議論をしていただいて、我々どもがこれから進んでいくべき方向性や、そういったところをサジェスションいただけるような方向が出るかと考えておりますので、委員長、先生共々よろしくお願いいたします。

○伊藤補佐 頭撮りはここまでといたします。これ以降はカメラ等による撮影は御遠慮ください。それでは、以後の議事進行は松尾班長にお願いしたいと思います。

○松尾班長 班長をしている松尾です。これまで非常に熱心に議論をいただきまして、詰まるものは詰まって、まだ幾つか積み残した課題があるということで、これらについても、一方でなるべくエビデンスを基にしながらも、この作業班としてもある程度の結論を出していく必要があるのではないかと思います。

 そういう観点で、積み残した課題についていろいろ調査もしていただき、事前に意見をいただいている点もありますので、迅速に要領よく進めていきたいと思います。2時間を予定されておりますので、今日も活発な御議論をいただいて、まとまったところで研究班として委員会のほうに作業班の意見を提出していきたいと考えておりますので、よろしくお願いいたします。それでは、会議を始めたいと思います。まず、事務局から資料の確認をお願いします。

○伊藤補佐 お手元の議事次第に、資料と参考資料の記載がありますので確認ください。資料の不足や落丁等がありましたら事務局までお知らせください。

 配布資料として資料13、参考資料1、参考資料2-1、参考資料2-2、参考資料2-3、参考資料35です。

 資料1が腎臓移植希望者選択基準の改正経緯、資料2が腎臓移植のレシピエント選択基準等に関する検討事項、資料3が第8回腎臓移植の基準等に関する作業班の事務局まとめ()があります。

 参考資料1として、資料2の補足データ、参考資料2-1が水口班員の提出資料、参考資料2-2が服部班員の提出資料、参考資料2-3が西班員の提出資料、参考資料3が腎臓移植希望登録者の状況、参考資料4が腎臓臓器提供(ドナー)の適応基準、参考資料5が腎臓移植希望者(レシピエント)の選択基準を付けております。不足、落丁等ありましたら、事務局まで御連絡ください。

○松尾班長 よろしいですか。もしないものがありましたらお申し出ください。初めに、腎移植希望者レシピエントの選択基準について御検討をいただきたいと思います。まず、事務局から、「腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正経緯等」について、資料1に基づいて説明をお願いします。

○伊藤補佐 資料1、腎臓移植希望者(レシピエント)の選択基準改正経緯等について御説明いたします。経緯として、平成7年に制定された腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準においては、阻血時間の短縮のため、都道府県内配分を中心とすること、並びに小児患者及び長期待機患者の優先度を上げることなどを考慮し、平成141月に改正を行いました。

 その後、平成217月の改正臓器移植法の成立を踏まえ、平成221月、選択基準における親族への優先提供に関する規定を定めました。

 平成233月には、比較的待機時間の短い若年者(1620)に加点を行うこと、地域、待機時間、HLAの配点の重み付けを同じようにするよう補正することを内容とした改正を行いました。

 さらに平成245月には、膵腎同時移植の取扱いについて検討しました。今回の議論として、前回の第6回、第7回腎臓移植の基準等に係る作業班における検討事項に関する議論を踏まえ、本日の会議では、各検討事項に関して医学的データに基づく更に踏み込んだ議論を行うことになっております。

 改正の議論の年次系列としてはこのようになっております。平成2612月より、第6回、第7回、今回で第8回目になりますが、3回目の議論となっております。

 次のページ、平成28229日現在の臓器提供者数の推移となっております。平成27年には、全体で前年度よりもようやく少しずつ臓器提供が伸びているような状況になっております。

 次のページ、腎臓移植件数の推移を暦年で付けております。御参考にしていただければと思います。

○松尾班長 今回の作業班における検討事項について議論を進めていきたいと思います。前回の第7回の腎臓移植の基準等に関する作業班において、非常に活発に議論をいただきましたが、その内容を事務局で整理をしていただいています。これから議論をしていただくに当たって、最初に事務局から整理した内容を少し説明していただければと思います。その前に改正の経緯等についてはよろしいですか。もし疑問の点がありましたら御質問等をお願いしたいと思います。ここには事実が淡々と書かれていると思います。よろしいですね。少し前後しましたが、前回の議論のまとめを、資料2について事務局から説明をお願いします。

○伊藤補佐 資料21ページに基づいて御説明いたします。前回、平成27515日に開催された第7回腎臓移植の基準等に関する作業班におきまして、レシピエントの選択基準に関し、以下の検討項目について議論を行いました。

 本日の会議におきましては、以下のとおり検討事項を整理して、本邦の腎臓移植に関するデータを基に議論を行う必要があるとされた項目(網掛け)に関して議論を行いたいと思います。

 前回の会議における検討事項ですが、1.待機日数とHLAの適合度の点数の取扱いについて。待機日数よりも0ミスマッチを優先すべきかどうかという点。2.Age-match制度の導入の是非について。3.2腎同時移植についての是非について。4.C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱いについて。その他の事項として、5.移植腎機能無発現腎であったときのレシピエントの対応としておりますが、こちらも検討事項に加えております。レシピエントには、何らかの救済策を講じるべきであるとしましたが、医学的データが不足しており、長期的な検討が必要となっておりますが、こちらのほうも前回結論が出ておりませんので、もう1度検討したいと思っております。6.PRAの検査の再評価は、関係学会に依頼し、結果を踏まえ、検討が必要ということで終了しております。7.Inactive制度の制定に関しては、平成284月より腎移植のレシピエントを各施設で定期的に経過観察するということになりましたので、長期的な検討が必要ということで、こちらも終了しております。8.生体腎移植ドナーが腎不全となった場合の優先権の付与に関しても、医学的データなどが不足しており、長期的な検討が必要ということで、前回の会議では終了しております。以上です。

○松尾班長 1番から8番まで検討してきたわけですが、678については、一応前回で議論は終了しております。今日は15について議論を頂くのですが、この整理について何か委員の皆様方から、これまでの議論の経緯を踏まえて御意見がもしありましたらお願いします。

○服部班員 東京女子医大の服部です。ここには挙がってないのですが、いわゆる20歳を超えた若年成人に優先ポイントを少し与えてはどうかという議論もあったかと思いますが、その辺はいかがでしょうか。

○松尾班長 若年成人について結論はどうなっていましたか。

○両角班長代理 議論はましたが、結論は出ていないというか、20歳を超して何歳まで加算して、どういう点数の傾斜をかけるかということに対して、シミュレーションもできていませんし、データが全くなかったというところで終わっていました。成人年齢に達した瞬間に加算ポイントがゼロになるのは何とかならないかという思いは、皆さんと共有できたのですが、新しい加算ポイントを与えてというところまでの論義は前回できないで終わったかに覚えております。

○松尾班長 年齢は結構連続的ですが、一方で、例えば小児の定義とか、ある年齢で決まっているところで、その辺りでなかなかデータに基づいてやれないところがあって、継続審議というよりは、もう少し症例が増えるのと、社会的な背景がもう少し変わってきたところでやるかということです。今、服部先生と話をしていたら、例えば大学を卒業するときは22歳とか24歳になるのですが、そのときまでに移植ができているかできていないか、ということも結構大きな影響があるという話だったのですが、それはまだ俎上には乗せてないです。

○服部班員 そういう議論もあったということを、よろしくお願いします。

○松尾班長 よろしいですか。コメントは付けておいていただくと。そのほかにいかがですか。もしよろしければ、具体的な検討に入りたいと思います。最初の待機日数とHLAの適合度の取扱いについて議論を頂きたいと思います。

 資料2、資料3、参考資料1があります。この課題について、前回までに作業班として決定したこと、今日検討すべきことを改めて整理してもらうために、資料に基づいて事務局から説明をしていただいて、それから先生方の御意見を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○伊藤補佐 待機日数とHLAの適合度の点数の取扱いについて御説明いたします。現行の基準の優先度を決定する項目である搬送時間、HLAの適合度、待機日数、未成年者の構造を変更する必然があるかどうか、前回までは本邦の腎移植の現状、データを基に議論をしていただいたと思います。

 現状として、待機時間が長い患者様が優先される仕組みとなっており、新規登録者はなかなか移植の機会が回ってこないということがあります。それ以外にHLAの適合度が0ミスマッチのものに関しては、16ミスマッチの者に対して移植後の成績が良い、生着率が良いと言われているということが現状です。

 現状に対する検討事項として、参考資料1を御覧ください。参考資料1のスライド番号34になっております。こちらは現在の腎移植の点数のポイントの制度を図に現したものです。

 待機日数としては、50年ということはないのですが、0から大体20年、25年のところで待機日数ポイントが付いております。HLAポイントのほうは、14点×1.15ということで、0ミスマッチから2ミスマッチ、4ミスマッチ、6ミスマッチまでの点数がこのように変わっております。搬送時間に関しては、同一圏内で12点、同一ブロックで6点。未成年者に関しては、16歳未満が14点、16歳以上20歳未満では12点という点数が付いております。

 このように、待機時間に重きを置く優先順位の決定について、どのように考えるかということ。また、2番目の適合度における「0ミスマッチ」をどのように評価するか。「0ミスマッチ」を最優先とする場合、搬送時間における地域について、現在の「同一都道府県内(12)」「同一ブロック」あるいは「ブロック外」に区分した検索方法及び点数を変更し、全国の移植希望者から検索する必要があるか。若しくは、HLA適合度における「0ミスマッチ」の点数は、現行のレシピエント選択基準という14×1.15点となっておりますが、これを見直すかどうかということを、前回の作業班で検討していただいたと思います。

 前回までの作業班で決定した方向性として、まず「ポイント制」は維持する。日本及び海外のデータから「0ミスマッチ」の成績が良いことが明らかであり、「0ミスマッチ」を重視することに異論はないという点。また優先の方法として、「0ミスマッチ」を最優先すると、現在のポイント制が崩れてしまうので、増点による優先をするほうが現実的と決まりました。その場合、増点することで上位に0ミスマッチが確実に上がるようにしないと、0ミスマッチを優先した意味がなくなるといった点。また増点の具体的な点数に関してはシミュレーションが必要と、前回の作業班で決まりました。

 今回、我々が0ミスマッチに対する増点はどの程度必要なのかシミュレーションを行いました。参考資料15ページから御覧ください。59ページまでが0ミスマッチの生存率、生着率を見たものです。0ミスマッチ数が06ミスマッチまでの個別の生存率、個別の生着率では有意差は認めておりませんが、0ミスマッチかあるいは16ミスマッチを併せたもので見ますと、生着率に有意差があるという結果になっております。

10ページ、実際の事例を用いて各ブロックでの最高得点を表示しております。ドナーの成人例15事例を集めて見ております。合計ポイントが32.7339.81ポイントとなっております。HLA、待機時間、ブロック、小児のポイントを合計すると、32.7339.81ポイントまでとなっております。平均で36.288ポイントとなっております。

 関東甲信越A型で39.81ポイントを御覧いただくと、この内訳として、4番目に待機している方が0ミスマッチです。この方は待機日数が14.72ポイント付いておりますので、2番目まで上がることになれば、合計得点で2点から3点加えれば上位に入ることができます。

 同様に中国・四国地方のA型が35.42ポイントありましたので、第3位に付けていた方の合計得点が35.392番目は35.42ですので0.1ポイント付ければ2番目までに入る。ところが、同様に中国・四谷地方のこのドナーさんの場合26位、35位にも同様に0ミスマッチの方がいましたが、この方たちの待機年数がかなり少ないがために、この下位に入っているという状況です。

 それに伴って、仮想レシピエントと書いてあるところがあります。年齢が○□△と書いてありますが、上から成人の場合、16歳~20歳の場合、16歳未満の場合と仮想レシピエントを作ってみました。そうしますと、所在ブロックが612点ということで、0ミスマッチでは16.1が全員のポイントに付きますが、待機日数が0、今日登録した患者さんを仮想してみますと、成人の場合点数が22.128.1点付くことになります。そうしますと、現在のドナー15事例の2位までに入るためには、4.6317.71加算しなければ入らないという状況です。小児の場合、1620歳の場合、最大で5.71ポイント付ければ入る。16歳未満の場合は3.71ポイントを加算すれば、0ミスマッチの場合2番目の上位まで入るという結果になっております。

 このようなシミュレーションを行って、資料3を御覧ください。前回までの作業班における内容を事務局でまとめてみました。1番目の待機日数とHLAの適合度(0ミスマッチ)の点数の取扱いについて、結果として、成人の場合18点以上の加算が必要になってきます。1620歳では6点以上、16歳未満は4点以上の加算が必要になります。これを同一ブロック、同一都道府県でやっておりますので、全国区に広げれば更に612点の加算が必要です。上記の加算の場合は非常に大きな加算が必要になってきますので、これまでのポイント制の意味合いが大きく崩れることになるのではないかと考えます。

 「医学的妥当性」「社会的妥当性」「実施可能性」「まとめ案」としておりますが、医学的妥当性としては、HLA適合度で生着率016ミスマッチでは有意差がありました。社会的妥当性として、HLA適合度0ミスマッチは生着率は非常に良いですが、個別にミスマッチをした場合、有意性が崩れるため、社会的に説明が難しいのではないか。透析治療によりHLA適合度にかかわらず、生存率に差がない中、長期間待機している者より優先させるべきという説明が難しいのではないかということです。

 また、実施可能性として、大きな加算をしますと、従来のポイント制が崩れるため不可能ではないかと考えております。待機時間よりHLA適合度を優先させるだけの明らかな医学的根拠がないのではないかと考えております。まとめ案として、「0ミスマッチ」を前回の作業班で「特出し」にしないと決定しているため、医学的安全性及び社会的妥当性により現状維持が望ましいのではないかと考えております。以上です。

○松尾班長 事務局案を示していただきましたけれども、先生方から御意見を頂きます。

○湯沢班員 移植を担当している現場の者としては、現実的に移植を希望してきた患者さんが、これは「11年」と書いてありますけれども、成人だけで言うと14年なのです。東日本で最近私が統計してみると16年になっています。それは、心停止下の提供が極めて少ない。むしろ改正されたために、心停止下の提供が減って、腎移植だけを希望している方に対しては、待機日数が増えてきているのが現状です。

 東日本で16年という現状を踏まえると、移植を希望してきた患者さんに登録したときに、「あなた、16年待つんですよ」という説明をしなければならないというのは、移植医としては極めてやっていられないという思いが強いのです。こんな腎移植に希望が持てますかということになってしまうのです。

 現実的に、0ミスマッチの方は極めて数が少ないわけです。そんなに幾つもあってということだったら問題ですけれども、数少ない0ミスマッチの方だけでも、待機年数ゼロ年で移植できるような希望が持てるのだったら、一般的には16年だけれども、あなたに極めて合う場合には、待機年数がゼロというか、極めて短い期間で移植できますよという希望が与えられるような、移植医療を私はしたいと思うのです。現実的に目の前に来た患者さんに、「あなたは16年ももらえないんですよ」というような医療がまともな医療だとは、とても現場では思えません。極めて少ない人に対して、多少なりとも可能性を残して、待機年数が極めて少ないということで持っていけるのだったらば、私は非常に希望が持てる移植医療になると確信します。

 それと同時に、その点数の計算の中で、例えば小児で14点とか、都道府県とか、待機年数を加えると特出しすることになるかもしれませんけれども、全国シェアでどうこう言うよりも、例えば単純に考えて20年、25年という14点、15点ぐらいの点数が付くのだったら、決して特出しすることにはならないと思うのです。小児は14点というぐらいの考え方をすれば、小児に優先的に行くようなこととして、同一のレベルで私は十分受け入れられることなのではないかと思っております。とにかく私は移植の現場の者として、とても16年待つような移植医療をしたくない。患者さんに希望を持たせるために何らかの救済策があってもいいのではないかというのが私の思いです。

○松尾班長 他に意見はありますか。これに対してはいろいろ意見があると思います。

○相川班員 湯沢先生の意見に100%賛成します。もう一つは「医学的な妥当性」と書いてあります。これは先ほど湯沢班員が言ったように、HLAの適合度ゼロというのは非常に数が少ないために有意差が出なかったのです。ヨーロッパのデータ、アメリカのデータを見れば一目で分かります。全部合っているものは成績が良いというのは当たり前な、常識的なことなのです。日本だけ、Nが少ないからこのようにエビデンスがないという話になっているわけです。世界のデータを見れば明らかです。

 イギリスでは、ベネフィッシャーマッチングと言って、HLAの適合度、特に0ミスマッチに関しては優先的にそちらの患者さんに行くように既になっております。これは日本だけの制度ではないのです。一番の問題点は先ほど湯沢班員が指摘したように、成人の場合は待機期間がほとんどのファクターになってしまって、待機期間以外のものは打ち消されてしまうというのが非常に問題点だと思います。私どもの所に患者さんが登録にまいりますけれども、平均待機期間は何年かという話の中で、少なくとも12年、場合によっては16年ぐらいだという話をすると、その時点で絶句してしまいます。だから、人によっては登録しない方もいます。

 そういう意味において、余りにもこの待機期間のファクターが多く、重要になっているために、何とかこれを他のファクターで補填するようなものを、患者さんのためには考えるべきだと思います。最初の案で、これは特出しにしないというように決定されておりますが、本来これは特出しされるべきだと思います。前回の会議ではそのように発言しておりますし、今もこういう制度で問題があれば、特出しにすべきではないかと考えています。

○松尾班長 他に意見はありますか。

○両角班長代理 正直なところ、免疫抑制薬が非常に進歩した結果、移植腎正着成績に与えるHLAの差は小さくなったことは事実です。その中で推計学的有意差が残るのは0ミスマッチだけというのは事実です。したがって、0ミスマッチが優先されることに医学的な妥当性はあると思います。

 その次の考え方として、0ミスマッチの候補者が無条件に優先的に提供腎の配分を受けることができるとすると、従来のポイント制度の背景が維持できない可能性があります。0ミスマッチの人が短期間で移植を受けるチャンスが増えるという制度を設計してもいいと思うのですが、例えば0ミスマッチのレシピエントに腎臓が提供されるために20点足さなければいけないというような非現実的なポイント制度を壊すようなことをやるのではなくて、従来ある最大のポイントの加算を超さない範囲で行えばいいです。0ミスマッチは、ブロックを越えて、全国搬送などという話も前回出ていましたけれども、ブロックの中で収まるようなという形で動いたほうがいいと思います。

 そういうことを考えると、特出しを考えて妥当な点数、実際には小児とか同一都道府県の加算対象を参考にすると、最大加算しても12とか14という数字が妥当です。移植の待機期間の短い方でも移植を受けることができますよねという変更を導入しながら、現在の登録待機者からこんな長く待ってきたのに、自分たちはどんどんチャンスがなくなるのかという声も出ないと思います。ポイント制度の基本構造を変えない中では、特出しを考えたほうが、収まりがいいのかという気はします。

○松尾班長 山本先生何か御意見はございますか。

○山本参考人 私はこれを見せていただいて、特に変える場合に、これはかなりのエビデンスが必要だと思います。機会の公平性という中には、医学的な適合性といいますか、妥当性だけではなくて、社会的な妥当性ということも加味して、それはバランスを取らなければいけないということだろうと思うのです。これは簡単な言い方で言えば、移植医療に対する社会の目から見た公平性が担保できるかということだろうと思うのです。

 そのときにこのデータを見ると、これは3つか4つある中で、ほとんど有意差はないという状況で、果たしてこれだけの点数を加算。例えば先ほど御説明がありましたように、これで加算すると上に行かなければ意味がないということだと、成人の場合は18点も加算しなければいけないということです。16歳でも6点の加算が必要です。それだけの加算をするだけのエビデンスが果たして得られているだろうか。つまり、社会を説得するだけのエビデンスがあるのだろうかということだろうと思います。これは、やはり慎重に考えていくべきなのではないか。

0ミスマッチの人がグンと上へ行くと、今16年というお話がありましたけれども、その人たちはまた遅くなるわけです。遅くなって、幾ら待っても駄目ではないかという話になると、それ自体移植医療に体する信頼が損なわれることになるのではないか。それが、エビデンスがきちっとしっかりしているのならかなりの説得性を持つだろうと思いますけれども、その点でこれだけの加算をすることについては、やはり慎重であるべきではないか。腎臓の場合、臓器の提供が少ないということは別途考えていくべき問題であって、ただ単にエビデンスがない中で、この点数を上げればいいということには必ずしもならないのではないかと思います。

○西班員 私は、神戸大学の腎臓内科の医師として、移植を受けた方を診るという内科医の立場からです。大変長期の透析期間を経て移植を受ける方は、いろいろ内科的な合併症が多くて、移植後の管理も大変難しいということがあります。世界のドナーの選択基準というのは、必ずしも各国同じではないと思います。日本は以前から決まっている、いわゆるいろいろな医学的パラメータを加算するという、ある意味では非常に公正な選択基準を作っています。

1つ欠けているのが、移植を受けた方の予後とかQOLを加味していないというのは大きな問題だと思います。例えば60歳で透析に入られて、16年経ったときに移植に当たると75歳でもう受けられないということもあります。40歳で移植に入って、56歳で移植を受けた方は働けるとか、そういう社会的な、希少なドナーの方の臓器の医療資源を有効に使うためには、正直言って移植後の予後とQOL、米国ではこういう形で選択しているのだと思いますけれども、もう一回考え直すということは、大幅に待機期間を短縮することが絶対に必要で、現行のパラメータだけを使っていれば、どんなにいじってみても、恐らく僅かな待機期間の減少にしかならないと思います。

 ただ、これは社会的な議論が必要であって、法的な問題もあると思いますし、患者さん方の反対もあると思いますし、いろいろなことがあると思います。医療資源、社会資源である臓器提供を有効に考えるためには大きな議論をして、もう一回基準を見直すということをどこかでしてもよいのかと思います。

○松尾班長 なかなか難しいところです。本日は、取りあえずこれは親委員会のほうに提出する案として、意見が一本にまとまらなければ、まとまっていなくてもいいのではないか。きちんと論理的に通っている意見であれば、こういうものは両論併記が可能ではないかと思います。移植を希望する患者さんが長いこと待っていて、希望が持てないというのは、先ほど山本先生がおっしゃったとおりで、誰かが先に行くと、その他の人は希望が非常に後退することになります。だから、0ミスマッチは早く行きますよというので、もし希望が与えられるとするのであれば、それは全体として正しくないのではないか、ということにもつながるかなと思うのです。

 しかし、今回、西先生が言われたように、根本的にやっていると、これはものすごい時間がかかります。現時点でどの程度の改善になるのか分かりませんけれども、見直すべきものがあれば見直すという案で、もしこれが親委員会のほうで根本的に考え直せということであれば、相当大々的に1からやる必要はあるかと思います。ただ、今回のこの班の任務としては、親委員会に対して意見を書いておいていただければいいと思うのです。この班の作業部会の意見として、どうしても一致しなければ、今の意見を両論併記にします。併記なのですけれども、特出しするのか、一定点数を与えるのかというのはまだ意見があれなのですが、その辺りのところはいかがですか。

○両角班長代理 これは、なかなか難しいと思います。今回の議論の根本原因を考えてみると、臓器提供が少ないから起きていることです。制度設計を考えていく中で、臓器提供が増加するような形での提案につながらなければ、現在の状況である非常に少数の提供数しかなくて、増加傾向もなくて、待っている人の期待も大きくならずに、何かジリ貧の状態になっているという現状は変わっていかないと思います。

 ですから、西先生がおっしゃられたように、もし大幅に変えるのなら、やはり臓器提供が増えていくような、臓器提供は国民の理解が得られなければ増えない、あるいは医療者の協力を得られなければ無理なわけですから、そういうメッセージ性があるものでないと難しいのかという気はします。移植に深く関わっている医師としては、非常に長く待っている人の権利も十分分かっていますし、今登録する人の機会の無さでの絶望感も分かっているものですから、どちらも何とか解決したいと思うと、結局提供数が増えるしかない。それしか出てこないものですから、それ以上は具体的な提案ができないです。

○松尾班長 湯沢先生いかがですか。

○湯沢班員 もう一つ考えなければいけないファクターは移植後の成績です。先ほど西班員からお話があったようなことです。数年前に臓器移植ネットワークがまとめた統計で、腎臓移植後の成績と待機年数の関係を検討したものがあります。一番有意に生存率に差が出てくるのが13年なのです。13年未満は極めて少ないのですけれどもあることはあって、それと13年以上。要するにその年限をどこで区切ったときに一番差が出てくるかとしたときに、13年で区切ると一番差が出てくる。13年未満の人と、13年以上の人では明らかに成績が違うとなったときに、現状では成績が悪いほうの人に移植をしている。

 それが提供者の意思を尊重することにつながっているのか。むしろ成績が悪いのが分かっていながらも、現状ではそこに移植せざるを得ないという制度が現実的にあるわけです。これも根本的には考え直さなければいけない問題だと思います。根本的には先ほど両角先生がおっしゃったように、提供者が少ないことが問題なのですけれども、現状では、とにかく移植成績が悪い方向に移植しているのだということは認識していただかなければいけないと思います。

○相川班員 確かに提供数が少ない、提供数を多くするというのが一番肝心で、大事なことです。提供数が少ないのであれば、その希少な腎臓はやはり大事に使わなければいけない。有意差はないという話は出ていましたけれども、先ほど申しましたように、ヨーロッパのコラボラトリースタディでは、莫大な数をやると1ミスマッチずつ全部きれいに並んでしまうのです。これは周知の事実です。日本はNが少ない数でやっているからこのようになってしまっているだけなのです。その辺を考えると、全くエビデンスがないということは言えないと思います。

○松尾班長 議論をもう一つしていただきたいのは、もし優先度を与えるとして、どのようにするかというのを具体的に議論していただきたいのです。

○湯沢班員 待機年数のポイントで見ると、12年、13年、14年、15年という12点、13点で十分なのではないかと思います。それは小児でも、例えば16歳から20歳というのは、何回目かのときに足すことによって優先度が増しましたけれども、それと同じレベルで十分説得力があるのではないかと思っています。先ほどの全国レベルで突出するというよりは、むしろ都道府県内なり、同一ブロックの中でゼロがいれば優先されることになりますから、それでいいのではないかと私自身は思っています。

 現実的に全国シェアでということになったら、クロスマッチなどはとてもできないわけです。血清は同一ブロックの中でしか保存していませんから、そうするとそれが現実的なことではないかと思っています。ですから、点数で12点というのが妥当な線ではないかと思っています。

○松尾班長 山本先生、御意見いかがですか。

○山本参考人 私は、そもそも加算すべきではないという立場です。相川先生にお聞きしたいのですけれども、この生着率で72か月というところで差が出ると言われました。これを見ると3ミスマッチ等の関係では、そんなに有意差はないのではないかと思うのです。そう考えると、0ミスマッチだけ特に加算するということがエビデンスとしてあるのかどうかというのが私にはよく分からないのです。しかも加算する場合に、先ほども申し上げましたけれども、上に行かなければ意味がないわけです。かなり上へ行って、中に入ってくる。

 そのためにはこの図でありますように、18点以上の加算というのが成人だと必要だということです。それだけ加算するだけのエビデンスが本当にあるのだろうか。これは不利益を受ける人もいるわけですから、その人に対しての説得性というのが果たしてあるかということだろうと思うのです。その辺を考えないと、やはり移植医療全体に対する信頼が損なわれていくということをもう一回考え直すべきだろうと思います。

 小児の場合、18歳とか20歳とか、これはまた別途考えていくことが必要なのであって、これの有意差がない段階で加算するというのはちょっと無理があるのではないかと思うのです。

○相川班員 HLA0ミスマッチに関しては10%以下の方が恐らく当たることになると。今までの換算だとそのぐらいになると思います。だから、去年で言うと、200の腎臓が出た場合だと、20人がそれに該当する。全部当たった場合です。だから、そんなにものすごく当たる人が多いというわけではないと思うのです。

○松尾班長 まあそうなのですが、一方で根本的には、あえて言いますけれども、このデータで加算をする説明の根拠になるかというのが、多分今提起されている問題なのです。そこがクリアできれば、あとはどの程度加算するのかということになると思います。

○相川班員 御指摘のあったように、これは0ミスマッチと他のミスマッチだけが有意差があるので、点数をうかつにポイントして、1ミスマッチの人に行ったらこれは整合性が取れなくなってしまいます。

○松尾班長 そうです。しかも先ほど言われたように、ヨーロッパのデータで、非常に階層的に症例数をたくさんやると、1ミスマッチずつ有意差が出ているのに、例えば、ゼロが18点で、他が0点というと、これは説明がなかなか難しいのではないですか。

○湯沢班員 私がこれを強調する1つの理由は、とにかく待機年数がゼロの人にでも希望をということがあります。ただ、これはゼロだけの話ではないのです。10何年待たなくても、例えば0ミスマッチの人は5年でも6年でも優先度があるわけではないですか。そうすると、何も不公平があるわけではなくて、0ミスマッチに当たる確率は誰にでもあるわけですから、12年、16年待たない人にだってチャンスはあるわけです。

 実際に3,000例の中で300ぐらいですから約1割の人なのです。この人は待たなくても優先と言っても、待機年数ゼロだから優先されるのではなくて、0ミスマッチだから優先されるのであって、何も5年、6年だってそれは均等にあります。だから、0ミスマッチに加点すること自体が不公平であるということには全くならないと思います。その0ミスマッチに当たる確率は誰にも公平にあるものです。ですから、それで選ばれた人が、たまたま移植されることについての不公平感はないのではないかと思います。

 それを、単純に年数を待つことによって、優先権があるのかというと、その待っていることはもちろんポイントとしてありますけれども、待っていたことが無になって、0ミスマッチの確率がなくなるわけではないわけですから、数学的な確率で考えれば全く同一なわけで、不公平感はきちっと説明できればそれでいいのではないかと思います。

○松尾班長 先生はそうおっしゃるのですけれども、何と言ったらいいのか、そういう考え方で法的に本当に公平性を担保されるのか。これはちょっと詰めて考えなければいけないのですが、その辺りについて山本先生はいかがですか。確かに誰にでも0ミスマッチのチャンスはあるわけです。

○山本参考人 だけど、そのときに当たった人はグンと上がってしまうわけです。そうすると、そこで待っている人は下がってしまうのです。その意味では0ミスマッチだけを加算するということが、果たして待たせる人、あと不利益を被る人が必ずその時点ではいるわけですから、その人に対して公平と言えるかということだろうと思うのです。

○松尾班長 そこでゼロかそれ以外かというのもあるのです。先ほどの相川先生の発言で、1ミスマッチずつかなり段階的になっていたのです。そうすると1から6の人は全部一緒で、その他大勢でいいのか。そういうのもありますよね。

○湯沢班員 考え方で、0ミスマッチの人と、0vs16ミスマッチの人が永久に分かれるわけではなくて、例えば、たまたまあるときに0ミスマッチの人が10%の確率で選ばれたとします。残りの90%の人は、次のドナーのときには公平にまた0ミスマッチに当たる確率があるわけではないですか。

○山本参考人 それはそうなのですが、問題はその移植ですよね。個別的な移植です。その個別の移植のときに、移植の機会の公平性というのは保たれているのか、ということがやはり問題だろうと思うのです。そのときに急に、待機日数がゼロで、0ミスマッチの人だけでボンといってしまって、せっかく待っていたのにそれが後順位になってしまうというと、その人にとっては極めて不利益と言いますか、不公平なのです。その人がいなければ、その人が移植できた。それは、その点では、不公平というのはその個別的な移植においては不公平が生じるではないかと。

 そのときに、そういう不公平が生じたときに、合理的な根拠があればいいと思うのです。法の下の平等でも、合理的な根拠さえあれば、それは不平等にはならないわけです。

○松尾班長 ですから、そのときに実際の問題としては、提供される腎臓は非常に少ないので、1つは機会の公平性という問題があり、もう一つは先ほど言われましたけれども、少ないのだからこれをできるだけ有効に、長いこと着く人にやろうという考え方が一方にあるのです。その方針はちゃんと決めておかないと。多分ここでの議論は、恐らく子供を除いて議論の方向性としては、少ないのだから成績が良い方向に持っていこうという視点と公平性があって、今は両方を加味されたポイント制になっています。

 そのときに、このHLAのマッチングの度合いの比重を上げる方、上げるとすればどのように上げるかという議論ですので、これは元に戻ってしまうのです。それが大事なことは、待機している患者さんや、あるいは社会に対して、きちんと妥当性を持って説明を、多分、こういう少ない現状では100%はできないと思うのです。多少の不公平は、いろいろな見方をすると出てくるのでしょうけれども、全体的な該当性、妥当性というか、それが得られるような提言と言いますか、委員会に出すときにそういう提言であればよいかなと。要するに、その論理をきちっと書ければいいのです。

 もし書けなければ、今意見が分かれた意見を、それぞれ理由を付けて併記して出す。延々ずっとやっていて結論が出ればいいのですけれども、まだ次がありますので時間のこともあります。実際に委員会にもし上げるときには、作業班での現在までの議論としては、こういう意見が出ましたと。その理由はこうですと。意見1があり、意見2がありますと、そういう形で上げさせてもらうことでどうでしょうか。

○伊藤補佐 はい。

○松尾班長 それで、もし法の上での平等と言いますか、そんなことも含めて議論しろと言うのであれば、またそれはしっかりとやるということで、現時点ではそういうまとめしかしようがないですね。

○両角班長代理 そう思います。この議論がなかなか収束しない一番の原因は、関係者が其々に異なった閉塞感を持っているからと思います。例えば、登録した患者さんにとってみると、いつまでたっても腎移植を受けることができないという閉塞感があります。これから登録する希望者にとってみると、登録はするけれどもいつになったら移植を受けることができるのだろうかという閉塞感があります。移植の手術をされる先生方にすると、実際には末期腎不全に至って透析を行って20年、30年という待機者に移植手術されますので、大変に難しい手術をする状況になって、患者さんの生命のリスクを背負いながらの手術をされることになります。その後フォローアップする移植医、あるいは腎臓内科医にしてみると、移植はしたけれども、幾つかの重大な合併症を残しているため、長期生存は難しい、という状況なのです。

 社会の中で、脳死後の臓器提供、特に6歳未満からの提供が始まってきた中で、子供に対してはもっと移植のチャンスをという声が挙がっているにもかかわらず、腎移植以外の他の臓器はそうなっているのに、腎臓だけはいつまでたっても、なんで高齢者に行くのという声があります。誰もどちらにも動けないという状況があると思います。そうなると、現在まで行ってきた臓器提供の増加しない課題も含めて臓器配分ルールの根本的見直しをしない限りは、改善しないと思います。両論併記になったときに、なぜ併記になったのかという背景をきちっと示さないと、一体何をしているのですかという話になると思います。

○湯沢班員 私が移植医として強調させていただきたいのは、腎移植に希望が持てる移植医療であってほしいのです。正直言って、今は登録人には何の希望も持てない。よく登録するなと逆に思ってしまうぐらいです。こういう現状は、やはり多少の不公平感とか問題はあるかもしれませんけれども、何らかの形で打開していかない限り、腎移植医療は成り立っていかないのではないかと、私は強く確信しています。移植医療の現場では、移植医はそういう思いで全員がいると思うのです。そこを、とにかく移植医はこうなのだということを強く強調したいと思います。

○松尾班長 先生のお気持ちは非常によく分かります。総論として私には全く異論はないです。何度も言いますが、0ミスマッチに加点することによって、果たして希望は湧くのか。これは数が変わらない限り、登録した人の当たる確率も結局は変わらないのではないですか。それは、0ミスマッチは平等に来るのですけれども、確率は限りなく低いわけです。そういうこともあります。

 これについて、私は0ミスマッチを優先する理由として、これをやると希望が持てるという理由では、ちょっと書けないかと思っています。むしろ、それよりも移植の成績をきちんと良くするという観点で書いておく。献腎数といいますか、腎臓提供数の増加率は別途議論する必要がある。もし、ものすごく増えたとしたら、今のポイント制がいいのかというのは、多分完全・・・というのは、少ないから今はこうやっているのですけれども、多いときには、それこそ0ミスマッチを最優先でというのはあり得ると思うのです。逆に言うとそういうことなのです。もし加点する場合には、現在の小児に付与している最大14点を超えない範囲で加点する、というところは皆さん大体よろしいですか。御意見を2つ併記でといいますか。

 ここの委員の方で、どちらかというと移植医療に実際に携わっておられる方は、0ミスマッチはある程度優先度を与えるべきだという意見が多いということも併記して、一方、このデータも見て、それから公平性の観点から見て、現状では変えないほうがいいかもしれないという意見があったということで併記して出すと。この原案を作ってもらって、皆さんに回してもらって、そこへ皆さんが加筆するということでよろしいでしょうか。そういうことでよろしくお願いいたします。

 続いて、エイジマッチ制度の導入の是非について議論をします。これも事務局のほうから、前回までの作業班で決定した方向性と、今回の検討事項について、簡潔に説明をお願いします。

○伊藤補佐 簡潔に説明させていただきます。Age-match制度の導入の是非についてですけれども、小児ドナーからの腎臓の提供があった場合は、小児のレシピエントに腎臓が提供されるように優先度を上げてはどうかというところになります。資料25ページに、(現状に対する検討事項)(前回までの作業班にて決定した方向性)と書かせていただいています。前回までに作業班で決定して方向性としましては、社会的観点から小児から小児への優先は必要と考える。小児の腎臓は、透析への移行のことも考慮し、小児と言わず若い人に優先提供すべき。先ほど服部先生が言われたところですけれども、それと優先提供される年齢については検討が必要ということが、前回まで決定した方向性になります。(今回検討が必要な事項)として、こちらのほうもシミュレーションを行うといったことと、もう一つは、服部先生に提出していただいた参考資料2-2を御説明させていただくということになります。

 まず、我々のシミュレーションのほうの結果を御説明させていただきますと、参考資料113ページになります。ここに、平成2831日現在における18歳未満から脳死下の臓器提供の一覧をお示ししています。こちらを見ていただきますと分かりますように、心臓、肺、肝臓といったところは、10代のレシピエントの方に行っているものが多いのですが、腎臓の場合、40代から60代、特に5060代の方が非常に多いことが社会的には大きな問題になっているのではないか、という御意見がございました。次の16ページからドナーに関して、レシピエントの年齢で16歳以上、20歳未満、30歳以上vs30歳未満といった所で、27ページまで生着率、生存率を見ていますけれども、特に小児のドナーにおいて有意差はないといった結果となっています。

 こちらのほうも実際の事例を用いて、各ブロックでの最高得点を表示しています。28ページになりますが、ドナーの小児事例4事例のポイントを見ています。その際、合計ポイントが34.03-41.03、平均が37.69ポイントになっています。こちらは、それぞれ個別に小児が含まれている所を確認したところ、小児の場合は20位から30位以内の所にしか挙がってこない。やはり小児の場合は待機年数がかなり少ないので、ポイント数が現在の小児ポイントを加えても、上のほうの小児のドナーが出ても小児のレシピエントには当たらない現状になっています。

 現在のまとめとして、資料32.に書いていますが、レシピエントにポイントを更に加算させることを考えて同様のシミュレーションをしますと、待機年数が0の場合は更に12点加算しないと、小児のドナーが来たときに小児が当たらないだろうと考えられます。

(医学的妥当性)として、小児ドナーからの移植では生存率、生着率に有意差は認めていません。一方で、小児レシピエントが移植を受けなかった場合に、生命予後・合併症、成長障害などが、成人より重篤であり、移植を早く受けたほうがよいとの医学的知見があれば、そういったことで小児のレシピエントを早く移植してあげるという妥当性があるかもしれません。

(社会的妥当性)として、小児ドナー家族からも高齢レシピエントへ提供されることに疑問の声も出ており、小児ドナーから小児レシピエントへの優先提供というのを、社会的な観点から検討が必要だと考えられています。小児ドナー数は非常に少なく、成人あるいは長期待機患者への影響は少ないのではないかと考えられます。その他の臓器、特に心臓移植では18歳未満が、現在、小児ドナーの場合、小児レシピエントへという優先提供になっていますけれども、ほかの臓器に足並をそろえて小児ドナーの腎臓を小児レシピエントへ優先させるべき医学的根拠が明確でない限り、社会的説明はちょっと難しいのではないかと考えています。

(実施可能性)としても、小児レシピエントへ優先提供するということであれば、さらに加算することでシステム上は実施可能と考えています。

(まとめ案)として、優先提供される年齢に関しては、加算制度のある16歳未満あるいは20歳未満にさらに加算するほうが、現行制度を崩さないという意味合いからよいのではないかと考えています。小児ドナーから小児レシピエントへという医学的妥当性はないのではないか。一方で、ドナーの年齢にかかわらず小児レシピエントを現状より優先させる医学的・社会的妥当性はあるのではないかと考えました。以上です。

○松尾班長 ということで、これもなかなか難しいです。一応、これまでの議論をまとめていただきましたが、御意見を自由にどうぞ。これも端的に言ってしまうと、小児から出たものは小児にやるのか、加点で対応するのか、この辺りなのですが、成績から言うと、今、お話があったように差はないということですが、いかがですか。どうぞ。

○西班員 西でございます。先ほども申し上げましたように何をアウトカムとして判断するかということで、もちろん、生着率、生存率というのは大事なアウトカムですが、現状、日本の社会構造を考えますと若者が減って年寄りが増えて、社会的に高齢者を支えるためには若い元気な人が増えていただかないと困るということがありますし、社会的な理由で小児の方が元気になっていただく必要があると思いますので、小児から小児というこの制度は国民の方にも受け入れていただけるのではないかと思います。

○両角班長代理 両角です。Age-match制度は、前回の議論では小児とか高齢者を含めていろいろなものが話題としてあったのですが、現実的な対象と言うと小児しかないという認識になったと思います。6歳未満からの提供では、社会的に話題性のあるニュースになりますから特に注目されました。なぜ、この子供の腎臓が高齢者に行くんだろうという意見が社会では強かったと思います。社会的な立場から見たときに、小児ドナーからの提供では小児レシピエントが優先されてなぜいけないのかなという気がします。本論から離れますが、臓器移植の推進ということを考えても、私はあってもいいのではないかと思いますし、この小児のage-matchは導入されたらいいと思います。対象年齢として18歳未満が事例で出ていますが、18歳未満なのか、今の加算ポイントから言うと16歳と20歳未満と分かれていますから、そのどちらの年齢にするのかは別として、小児から小児へというルールがあってもいいと思います。

○松尾班長 これは、先ほどのHLAの議論と違ってドナーのほうにも関係して、ドナー側のモチベーションも非常に大きく影響する可能性があると思います。ですから、そういう意味では、これはしっかりアピールする必要があるという気がするのですが、どのようにアピールするかです。先ほどの2つ、この辺、山本先生、どうですか。これも法的にどうこうと言って、非常に難しいから決まらないと思います。だから、ここに「社会的妥当性」と書いてあるのですが、それが果たしていろいろな面から通用するのか。

○山本参考人 私は、結論から言うと加算のほうがいいのではないかと思います。小児のものは小児に行くというのは、ちょっと説得性がないのではないか。というのは、移植では親族の優先提供は例外的であり、ドナーのほうの意思というのは別に尊重しないで公平で行くんですよというのが原則だろうと思います。それが最初、臓器移植ができたときの理念だろうと思います。だとすると、小児の家族が小児にあげたいという意思は確かにあるけれども、それは移植医療の観点からは、それだけで決めるというのは妥当ではないだろうと思います。

 心臓などの場合にはサイズの問題があるので、小児のレシピエントの場合には小児からでなければ適合できないという医学的制約があるので、それは意味があると思いますけれども、腎臓の場合はそうではないのではないかと思います。小児から小児へという場合に、例えば21歳の人はどうするのか、25歳の人はどうするのかという問題も出てきますので、小児から小児へというのは必ずしも説得性のある議論ではないのではないか。むしろ加算で対応するほうが、妥当性があるのではないかというのが私の考えです。

○松尾班長 加算にすると、あと本当にそれですっきりするかと言えば、もう既に加算はされているので。

○山本参考人 やるとすればです。

○松尾班長 加算にした場合、さらに全体に影響しますよね。

○両角班長代理 加算ですと、従来の小児加算ポイントとの整合性なども気になります。

○湯沢班員 湯沢ですけれども、移植の現場のことを言いますと、常に小児からの腎臓が60代の人に行くことに妥当性は感じないのです。というのは、6歳から6歳未満、実際にはもっと小さい方からの腎臓が60代の人に行って30年は着かないわけです。ところが、同じ小児に行けば、現状では50年、60年の可能性が大いにあるわけじゃないですか。そうすると、医学的に考えれば成績を悪くする移植はあり得ないと思いますし、ですから、私は小児のものは小児という思いが強いです。そのやり方としては、加算と言っても単純に小児レシピエントに加算するだけだと、例えば60歳の腎臓が小児に行くことになっても、これは申し訳ないと言うか、できることなら小児のをという思いがありますから、小児と一緒で例えば18歳でも20歳でもいいですが、そこのドナーからの提供については、より小児にポイントを高くするというようなことになれば、より小児から小児に行きやすい。

○松尾班長 小児のドナーが出たときに、そのときには。

○湯沢班員 小児のポイントを高くする。

○松尾班長 ポイントを高くする。

○湯沢班員 ええ。

○松尾班長 これは、そういう意味。

○湯沢班員 これは、そうではないのではないですか。単純に。

○伊藤補佐 そういう意味ではなくて、全体的に小児を全てに優るようにポイントを付けるということ。いずれにしろ小児が一番最初に、どんなドナーが出ても小児がということ。

○湯沢班員 そうすると、例えば今言った60歳、70歳の腎臓が小児に行くことにもなってしまうわけです。

○伊藤補佐 可能性はあります。

○湯沢班員 それに、あまり妥当性は感じないのです。それよりは小児の。

○松尾班長 そうすると、これは全体にものすごく大きく影響しますよね。

○湯沢班員 ええ。だから、小児からの提供のときだけ小児にというポイントの付け方が。

○松尾班長 ただ、そのとき、先ほど山本先生が言われたように、小児が出たときに小児のドナーを特別扱いするのかと、こういうのが妥当性があるのかということなのですが、これまでの議論では、大体、社会的妥当性は十分得られるのではないかということなのですが。

○湯沢班員 医学的に成績に差がないと言っても、30年、40年、50年では明らかに差が絶対あるわけじゃないですか。そこまで。

○山本参考人 小児から60歳という極めて極端な例だと思うのですが。

○西班員 極端ではないですよ、先生。

○松尾班長 日本ではあるのです。

○山本参考人 実際にありますけど、それは非常に極端な例であって、小児から例えば25歳とか、30歳に行く可能性だってあるわけです。

○西班員 でも、実際にない。

○山本参考人 実際になくても、これからはある。可能性の問題ですから。小児から小児へと言うと、その可能性も結局、なくなってしまうのです。結局ね。

○松尾班長 年齢は後で方向性の所で議論します。

○山本参考人 これ、小児と言うと、幾つを念頭に置いているのでしょうね。

○松尾班長 方向性の所で、冒頭、服部先生が言われたように、では何歳までなんだというのが全般的にはあるのですが、特にこの小児の定義ですね。どれぐらいの人たちにやるのかという定義ですが、今、小児は何歳なのですか。18歳ですか。

○服部班員 何歳までを小児とするかは、いろいろな定義・考え方によって違います。1つの考え方として、慢性疾患を有する小児の成人期医療への移行(トランジッション)までを見据えた場合には、24歳までを小児及び思春期若年成人という範疇で包括します。

○両角班長代理 ただ、従来の臓器移植に関わるところの小児に関しては、16歳未満と20歳未満という2つの基準を持っているわけですから、その基準と別のスタンダードを持ってくると混乱しますので、少なくとも16歳、20歳というところを想定して話を進めなければいけないです。あとポイント制度も、現在、12点、14点というかなり大きなポイントが乗っかっていますので、そこにまた小児に加算するというのも何かすごく馴染まなくて、もともとの制度設計そのものが壊れてしまうと思います。ですから、もし社会的な合意が得られるのであれば、やはり小児は小児というところで年齢を考えたほうが分かりやすいなと、我々、現場に近いとそう思います。

○西班員 私も先ほど言いましたように、そういう小児から小児というのは、はっきり言えば20歳という区切りで決めていただいても、いいのではないかと。

○松尾班長 16歳以下の者を20歳までの人にやると、そういうことですか。

○西班員 今、服部先生がおっしゃったように、移行医療という考え方が日本でも急速に広がっていまして、今、ガイドラインも小児腎臓学会、日本腎臓学会で合同で作っているわけですが、移行医療期というのは従来よりも幅広い年齢層になっていて、小児から内科の移行の時期というのは20歳過ぎまで十分入っていることが、共通の世界的な認識ですので、20歳というのは決して高過ぎるということはないような気がいたします。

○松尾班長 そうしたらですね、小児ドナーから小児レシピエントへという原則で、この班としては小児ドナーというのは16歳未満ですか。

○両角班長代理 年齢の設定を、従来、腎移植に係る小児としては16歳、20歳という二つの区分を使ってきているものですから、そこに18歳を入れてくるというとなぜなのか、心臓の移植が18歳だというところからの年齢に根拠があるのであれば心臓に合わせて18歳も1つですし、移行期医療で捉えて広めを取るならば20歳ということになります。

○松尾班長 いや、いいのですが、小児ドナーの小児というのは、今、何歳ですか。

○両角班長代理 16歳未満ですか。

○松尾班長 16歳未満ですね。レシピエントのほうは、対象になるのは20歳ということでいいですね。

○菊田補佐 小児からの提供に関する部分の18歳で、今、切られているのは、児童福祉法上の児童の定義が18歳未満になっているからというところがございますので、もし小児ということで切ることの参考になるのであれば、その部分もあるのかなとは思います。

○松尾班長 だけど、一般に小児レシピエントはメディアにも出てくるので、それはどっちに使われているのですか。

○菊田補佐 提供事例の中で小児事例で扱っているのは18歳未満です。

○松尾班長 18歳。

○菊田補佐 はい。

○鈴木室長 ちょっと、よろしいですか。ここは医学的な見地というものが大きいわけでございます。そうしますと、そういったいろいろな違った分野のものがあることを書いていただくのはいいのですが、一番強調していただきたいのは、医学的見地から考えたときには、今の年齢について根拠となるところとして、こういうことが考えられるという議論が必要と考えます。こういう形のほうが、多分、班の性格としては非常によろしいのではないかと。そこのところだけちょっと踏まえていただいたほうが、非常に説明がしやすいのではないかという気がして聞いていました。

○松尾班長 だから、児童法上では18歳だけど、実際の医学的な統計を取っているときには16歳でみんな計算されているのですね。

○両角班長代理 16歳未満ですね。

○服部班員 16歳未満ということですか。

○両角班長代理 ですね。

○松尾班長 そこで止まっているのですが、いずれにしても、基本的には小児ドナーから小児レシピエントというのを、この班では、一応、推奨するんですが、一方で先ほど山本先生が言われたように、これは結論だけ持って行くのではなく、審議過程をきちんと委員会でもう1回見てもらうというのが大事ですから、そういう意見がありましたということを付属意見で付記してもらって報告するということで、よろしいですか。

○服部班員 医学的な知見が必要だということですが、本日の資料中にまとめていただいた(医学的妥当性)2番目、小児レシピエントが腎移植を受けなかった場合に、生命予後・合併症、成長障害などが、成人レシピエントより重篤であり、移植を早く受けたほうがよいとの医学的な知見は、データとして出せると思いますので、この点をしっかり進めていきたいと思います。

○松尾班長 では、それも付けていただいて、だから年齢のことについても今の議論を若干整理してもらって、それも付属意見というか、判決で言うと主文は小児ドナーから小児レシピエントなのですが、その理由を幾つか書いていただくということです。

○相川班員 先生がおっしゃるとおり、Age-matchingの根本的な最初のものは、小児から小児、お年寄りからお年寄りと、これがヨーロッパの基本ですので、それに立ち返っただけというふうに考えていただければいいと思います。ちょっと私が心配なのは、例えばアメリカなどでは35歳未満の腎臓しか子供には行かないわけです。そういうふうに決まってしまっているのです。お年寄りの腎臓は生着期間が短いということで子供には行かないようになっていますので、それもある意味で、35歳というのは小児とは言わないですけど、それは子供のことを考えて年齢でマッチングするような移植をやらないといけない。これはだから、基本的には同じ考え方だと思います。

○松尾班長 それは入れる必要がありますか。今回、小児に限ってでよろしいですか。

○相川班員 はい。

○松尾班長 続きまして、2腎同時移植について御議論いただきたいと思います。資料26ページ、ここに2腎同時移植について、これまで作業班で決定した議論の内容と方向性について書いてあります。事務局から簡潔に説明をお願いします。

○伊藤補佐 それでは説明させていただきます。2腎同時移植に関しまして、腎機能が低く、1腎であると移植腎機能が不十分であると判断される場合、2腎を同時に移植することを可能にすることについては合意されています。本件を運用する際には、2腎を移植する際の具体的な判断基準を定めることが必要ではないかといったことがありました。

(前回までの作業班にて決定した方向性)といたしまして、体格の小さい小児ドナーからの2腎移植については本邦で実施されており、海外にもデータがあるので、ある程度の基準を作成することは可能ではないか。また、低腎機能ドナーからの2腎移植については、日本からのデータでは議論は困難であるため、海外文献等の文献的考察が必要と。

(今回検討が必要な事項)として、服部先生と西先生から資料を出していただいています。参考資料2-2です。こちらが小児ドナーからの2腎の参考資料、西班員から提出していだいたものが参考資料2-3ですが、こちらは低腎機能のほうになります。今回、参考資料130ページに、これまでの2腎同時移植の事例を書いています。本邦で7例、2腎同時移植がなされています。1番から7番で、1番、2番、3番、4番、5番、7番が、全て6歳未満の小児ドナーから成人レシピエントへ行った場合で2腎同時移植がされています。また、6番の70歳代というのが心停止下で、これは虚血時間が長かったりといった様々な要因が絡み、70歳代の2腎が60歳代のレシピエントに行ったという2腎移植の事例です。全てこの7事例、現在も機能しているということを、日本移植ネットワークのほうから確認しています。

 こちらに関しての事務局でのまとめ案として、資料33ページを見ていただきますと、(まとめ案)として、1、体格の小さい小児ドナーでは体重15kg以下、こちらは後ほど服部班員から御説明いただきたいと思いますが、体重15kg以下(36か月相当)、あるいは6歳未満であれば2腎同時移植を可能とし、医学的妥当性の判断は、その都度個別に移植医、メディカルコンサルタント及び提供医により決定することでよいのではないか、とさせていただきました。2、の低腎機能成人ドナーからの腎移植に関しては、60歳以上あるいは70歳以上のリスクファクターがあれば、医学的な判断を移植施設が行い、2腎同時移植を考えることでよいのではないか、とさせていただきました。以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。これにつきましては、この(現状に対する検討事項)の所でも書いてありますが、要するに現行の決まりと言いますか、これは1レシピエントの1腎を提供するというのが、一応、前提になって書かれているのですが、2腎をやって悪いとは書いていないのです。それで、これまでの意見としては、要するに2腎同時移植を可能にするということを明文化した上で、実際の判断はデータもまだそれほど十分でないことでもあるし、現場のチームの判断に任せるというふうなことです。特に基準をいろいろ作るのかどうかという議論が出たのですが、現状では非常に難しいと。腎機能をある時点で判断しても、次の時点では変わっている可能性もあったりして非常に難しいので、そこのところは、現場のチームに任せるというところに収束しそうな感じがしていたと思いますけれども、何か御意見はございますか。

○西班員 西ですけれども、現場の判断ということで、もちろん私もよろしいと思います。前回、この班の会議のときまでは、実は小児の2腎同時成人への移植しかなかったのですが、その後、この期間の間に小児も増えまして、ついに成人からの同時2腎というのが日本でも出てきました。海外では20%ぐらい移植腎がdiscard、捨てられてしまうという事例もあって、実は日本では過去に、非常に状態が悪いとしてdiscardされた例はほとんどないわけですが、今回、この成人から2腎とられたという初めてのケースですので詳細を少し調べて、どういう条件でなされたかということを検証することが必要かなと思います。

 それから、私の参考資料2-3ですが、海外で成人の2腎を同時に移植している条件というものがあって、病理鑑定をしているのです。Remuzziスコアというのが、どうも世界では多く使われているようなので、こういうRemuzziスコアが、このケースに適用されたのか少し検証しておくことは必要ではないかと思います。今後、数は少ないとしても、そういう成人からの2腎同時移植が日本であるとして、現場での判断に生かしていただく情報提供というのも必要ではないかと思いますので、是非、検証をしていくことが必要かなと思います。

○松尾班長 そうですね。現場に任せると言っても、おおよその情報というか基盤的なものがないと、そのときの状況、状況で全然違うというのもまた問題になる。その辺りはどうですか。

○相川班員 よろしいですか。臓器移植ネットワークでは2つの種類の評価委員会がございまして、1つは中央評価委員会、これは脳死に関係するものです。もう一つは支部別で行われている地域評価委員会があり、心停止下の場合には地域評価委員会で評価することになっています。中央評価委員会では脳死のものを扱いますが、なかなか進んでいなくて1年遅れになっているような状況ですが、問題事例を先行させてやろうということになっていますので、そういう珍しい事例、しかも今後に関係するような事例は率先してやるように提案することはできます。

○松尾班長 ありがとうございます。現場のチームが判断すると言っても、どういう判断材料に基づいてそれぞれの事例を、より論理的に判断するかというのが必要なので、どこかで判断に資する情報が必要ですね。

○相川班員 情報の流れをお話しますと。小児の場合はコンサルタントという者、支部長、それに関係する医学的判断が行える者、これがまず判断をして、特に小児の場合は小児の移植を専門にしている先生、例えば服部班員とか、うちの小児の腎移植医の宍戸に直接意見を聞いてコンサルトしています。その上で臓器移植推進対策室にも御判断を仰いだ上で慎重に決定する。1腎にするか2腎にするかということも含めて慎重に決定しています。

 大人の場合、特に心停止下で条件が悪い腎臓の場合は、今回、初めて心停止下で2腎同時提供された事例がありましたが、その場合も同じようにコンサルタント、それからその地域の移植医、または担当理事が関与して、これも臓器移植推進対策室に、2腎同時でよろしいかと相談申し上げて、それは前回の審議会の資料も含めて検討し、医学的に妥当だろうということで初めて2腎を同時に提供するということになりました。

○松尾班長 ということで、情報はしっかり共有されていて、一定の水準と言うとおかしいですが、それは確保されているという状況下であれば、そういうふうにしてよろしいですかね。

○両角班長代理 これは既に、例えば小児の場合には2腎同時提供して行われていました。ただ、基準がなかったというところで、どういった基準ならば目安になるかということを作っていく必要があったというのが、今回の経緯です。そういう意味では体重と年齢という2つの因子が出てきましたし、成人に関しても低腎機能の提供者というところで、1腎提供の場合には移植腎機能が発現しない可能性があるけれども、腎提供することによって、大事な腎臓を廃棄することなく生かせるのであれば、それを生かしたいといった趣旨です。これは現場判断しかできないことですし、従来も動いているシステムの中に乗っかりますので、こういった形でしてくださいという指針を出すだけで十分だと思います。

○相川班員 ネットワークの現場では、ある程度の指針がないとコーディネーターが非常に混乱して、臓器のあっせんに関しても相当時間をかけないといけない。また、医学的な判断をあちこちに仰いでやらなければいけない。これは指標がないと作業がすごく大変なのです。だから、ここでの決定は非常に重要なことで、ネットワークでの腎臓のあっせんの作業に大きく影響することになります。

○松尾班長 そこで、その判断する基準と先ほど言われたのですが、この基準についてここでも検討したのですが、それで十分なのか。今後、さらにもう少し詳細に詰めたものをしっかりと示していくのか。この点についてはいかがですか。年齢、体重、いろいろなことを、一応、ここで議論はしましたけれども。もし必要なのであれば委員会への提案として、きちんとした基準をこれからそんなに時間をかけずに作って、各コンサルタントも含むような判断するチーム、それから現場の人たちにしっかりと流布していくという方針を、ここで出していただければ、あとは具体的なチームを作って具体的な基準を明示する。現行のままであればいいのですが、そうでないのであれば明示したほうがいいだろうと、そういうことですか。

○相川班員 ということは、例えば小児腎不全学会とか小児の移植をやっている臨床腎移植学会、そういうものに意見を投げてワーキンググループを作って、ある程度の指針を検討すると、そういう考えでよろしいでしょうか。

○松尾班長 そういう必要があるのかどうか。

○服部班員 前回の委員会で宿題が出まして、それをまとめたのが、今回の参考資料2-2です。前回の議論では小児ドナーの適正評価において、腎臓の重量、あるいは腎臓の長径、何をもってパラメータとするのかとの議論がありました。調べてみますと、参考資料221.に記したように、大多数の報告は、ドナー体重と年齢を小児ドナーの適正評価条件としています。そして、体格の小さな小児ドナーの定義は、大多数の報告において、体重20kg以下(6歳未満)としています。これは日本人の子供にもほぼ当てはまります。ですから、小学校入学前(6歳未満)の小児ドナーの場合には、2腎同時移植を考慮して対応する必要があります。ただし、体重20kg以下(6歳未満)の小児ドナーのなかで、2腎に分けて2人に腎移植をできる目安はどうかといった点が、議論になっているところです。

 参考資料2-2のアメリカからの報告(文献2)には、2005年から2010年の間に実施された体重20kg以下の小児ドナー2,352例の詳細なデータがあります。参考資料2-2中の図3を見ていただくと、体重20kg以下の小児ドナーの場合には、2腎・2レシピエント腎移植よりも2腎同時移植のほうが成績は良いです。しかし、図4を見ていただくと、手術手技も含めて体重が小さい小児ドナー腎移植に慣れているか慣れていないか、施設によって移植成績に大きな差が出ています。そして、参考資料2-2中の表1は、体重20kgの小児ドナーで2腎・2レシピエント腎移植した場合の移植成績をリファレンスとして、どれ位の体重まで2腎・2レシピエント腎移植が適正に実施可能かどうかを調べたものですが、体重が15kg以上あれば、2腎・2レシピエント腎移植も施設によっては十分に可能なこと、一方、体重が15kgよりも小さい小児ドナーの場合には2腎同時移植のほうが成績がいいことが示されています。

 以上をまとめますと、ひとつの目安としては、小学校入学前の6歳未満の小児(体重20kg以下)がドナーになってくれる場合には、基本的には2腎同時移植を考慮し、そのうち、体重が15kg(年齢は36か月相当)以上の場合には、現場の主治医の判断で、2腎に分けて移植ができると判断できれば2つに分けて実施することも可能です。しかし、体重が15kgよりも小さな小児ドナーの場合には、2腎同時移植が薦められるかと思います。以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。まとめに入りたいのですが、そうしますと、事務局の(まとめ案)の所にある1,2ですが、腎臓作業班資料33ページの下です。この1,2についての意見は大体一致しているということで、よろしいですか。3番として、これまでも出たのですが、我が国ではまだまだ情報が少ないということで、これについては引き続き収集しながら、適宜、担当者の所にしっかりと情報提供しながら解析は続けていくという提言で、よろしいですか。改めてまた作業班を作ってということでなくて、そういうことでよろしいですか。

○両角班長代理 それでよろしいと思います。あと、せっかく日本の2腎同時移植の事例がここに7例あるわけですから、このデータですと6歳未満になっていますけど、これは何歳で何キロであって、どういう状況になっているかということを含めて、もし例示されればもっと分かりやすくなりますので、そのほうがいいのではないですか。

○相川班員 ただ、これはコンフィデンシャルなのです。6歳未満というふうになっていますので。

○両角班長代理 確かに臓器移植での個人情報の取り扱いが、どうしても難しいのですね。

○松尾班長 ということですね。ちょっとこの扱いは、また別途、別の機会に検討して頂きたい。

○西班員 今の班長の御意見でいいと思いますが、これは先ほど相川班員もおっしゃったように、学会のほうでこういう事例が出てきたということで、特に成人の場合ですけど、改めてガイドライン委員会なども臨床腎移植学会にありますから、そういう中で作業班というかチームを作って検討するという方向で、学会のほうに少し提案させていただくと、それでよろしいのではないかと思います。

○松尾班長 是非、よろしくお願いします。では、この議題については、こういうことでよろしいですか。続きまして、C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱いについてです。これも事務局のほうから、これまでのまとめ、方向性をお願いします。

○伊藤補佐 簡単に説明させていただきます。C型肝炎抗体陽性ドナーの取扱いに関してですが、こちらは第6回、今回の議題で出させていただいたのですが、先生方にもう一度確認していただくという意味で出させていただきました。第6回、平成2612月の際にも同じことが出ているのですが、前回までは10ページの「C型肝炎抗体陽性ドナーからの腎移植に関する指針フローチャート」に沿ってレシピエントの選択を行うということを、第6回の作業班で確認しています。こちらに関しては、結論というか事務局案ですが、現在のレシピエントの選択基準、ドナーの適応基準といったところが参考資料4になりますが、1ページのドナーの適応基準といったところに「HCV抗体陽性」と書いておりまして、こちらの場合は「疾患又は状態が存在する場合は、慎重に適応を決定する」ということですので、C型肝炎のドナーさんが出ても、移植に臓器提供していただくことができるとなっています。

 また、参考資料5、レシピエントの選択基準の裏面になりますが、3.「具体的選択方法」の(3)の所、「C型肝炎抗体陽性ドナーからの移植は、C型肝炎抗体陽性レシピエントのみを対象とするが、リスクについては十分説明し承諾を得られた場合のみ移植可能とする」というように現在もガイドラインにありますので、こちらのフローチャートの内容に関しては、関係学会、あるいは肝臓の専門医も含めて、学会等で意見をまとめていただければと考えています。

 まとめとして、ただ、1つ違いますのは、このHCV-RNAというのはPCR検査が必要なのですが、こちらのPCRはドナーのほうで保険収載とかされていませんので、こちらの検査費用に関しては受益者であるレシピエントの各施設が負担しないといけないのではないかというのが、事務局からのまとめとさせていただいています。以上です。

○松尾班長 では、これについて御議論いただきたいのですが、いかがですか。

○相川班員 一番問題になっているのが、去年の4月からHCVの肝炎のウイルスに対する薬剤が出て、その治癒率が90%以上、耐性ウイルスがなければ非常に高い治癒率を誇る薬が出たものですから、そういう意味では抗体陽性であってもウイルスがいない人がいるわけです。最悪なのは、抗体陽性のドナーでウイルスがある腎臓を、せっかくウイルスを駆除した、ウイルスがいない抗体陽性の待機患者に移植してしまう、これが一番問題ではないかということで、ネットワークではその対応について非常に困っているのです。このものによると、全てリスクを話した上で、陽性ドナーから陽性レシピエントだけの定義になっていますので、ここら辺を明確にしていただかないと、非常に困ってしまうというのが現状です。それが一番困っているところです。

 あと、PCRの検査に関しては、移植検査施設が24時間体制で全てPCRのウイルスが測れるという状況ではないのです。ただ、そうは言っても、これはPCRを測らないと、実際に抗体が陽性であっても、ウイルスがいるかいないかによってずいぶん違いが出てきてしまうので、そこら辺を十分検討しないといけないということになると思います。

○松尾班長 ここに書いてあるのは、「医学的妥当性」「社会的妥当性」「実施可能性」と書いてあるのですが、今の話だとそのほかに、医学的妥当性の中に入るのかもしれませんが、再感染と言うのでしょうか、この問題があります。

○相川班員 結局、せっかく治療したにもかかわらず、もう1回ウイルスでばく露してしまうという。

○松尾班長 これは脇田先生、専門家としていかがですか。

○脇田班員 ただ、腎臓に関しては、要するに治療してもウイルスがいなくなった人の腎臓というのは、ウイルスもいないわけですが、腎臓に関してはウイルスの感受性もないので、そういう意味では問題がないと。

○相川班員 問題になっているのは、ドナーのPCRが陽性でウイルスがいる腎臓を、抗体陽性なのだけれど、PCRで陰性の方に移植していいのかどうかという、そういうリスクの問題です。

○脇田班員 なるほど。ただ、それは治療して治った方にという趣旨でしたよね。

○相川班員 そういう方が今後出てきてしまうということです。

○脇田班員 確かに治療をやってウイルスがいなくなると、抗体がしばらくは陽性のまま続きます。ただ、ウイルスが減ってきてなくなりますと、ある程度の期間をもって抗体も陰性化する方が結構いるということですので、非常に難しい問題。やはり治療歴も考えてもらわないと。そこはドナーの方が治療をやられて、陰性になっていて、ただ抗体だけが残っているという状況ですね。だから、そこのドナーの方に関しては、RNAの治療が終わったときに、それは検査をされているはずなので、そこをよく調べていただくということではないでしょうか。

○相川班員 ただ、今のガイドラインの判断ですと、このフローチャートでリスクを十分説明した上でやっていいということになっているわけです。でも、そういうウイルスがいっぱいいる腎臓を、せっかくウイルスを駆除した人に、医学的に移植していいのかどうか。

○脇田班員 それは、やはり移植はしないほうがよろしいと思います。

○相川班員 ただ、私が先生にお伺いしたいのは、例えそのようになっても、今の薬で場合によっては移植した後、治癒してしまうのではないかと。

○脇田班員 もちろん治癒というか、治療は非常に高い確率で可能だと思います。ただ、腎機能が戻っていれば、今の一番最初の治療でほぼ100%治るという治療は可能ですが、前回もお話したかもしれませんが、2型の場合は核酸アナログ中心の治療しかできませんので、そうすると腎機能が悪いと適応外ということになります。

1型の場合は肝臓代謝の薬のコンビネーションというのがありますので、そちらの90%程度、先ほどは耐性物の問題もあるという話でしたが、そういった問題がありますので、必ずしも全員が治るというところまでは行かない。

 それから、費用の問題があります。1回目の治療は最新の治療で、今は治療補助が出ますので、ほぼ月に1万円か2万円の補助でいけますが、再感染した後の2回目の治療に関しては、治療補助がされないという仕組みになっているのではないかということになるので、そうした場合はいわゆる普通の保険の適用で、3割負担なのか高額医療の対象ということかもしれません。

 ですから、もちろん治療すれば再感染してもかなりの確率で、要するに1度目で治療ができたわけですから、それは非常に確率があると思うのです。そこでレシピエントの方が、再感染をしてでも移植を受けたいという希望があれば、そこはどちらのリスクを取るかということかと思います。

○松尾班長 いや、それは希望だけで決められないと思うのです。やはりそこはある程度医学的な判断も考慮する必要があります。

○脇田班員 肝臓の状況によって、要するにC型肝炎に感染したからといって、移植をやると免疫抑制剤とかへ行くわけですよね。そうすると、またそこが問題ですよね。その前のときは違うわけですから。

○松尾班長 そうです。

○脇田班員 そこは分かりませんので、やはりそういったことを加味すると、感染のリスクがあるのに移植をあえてやるというのは、今、私は本人の希望でというのを言いましたが、それだけではやはり決められないでしょうね。

○松尾班長 それで、ここにも書いてあるように、これは腎臓だけの問題ではなくて、ほかの移植にも関係するので、検査をするのですが、その取扱いについてどうするか、もう少し協議が要るのではないですかね。

○相川班員 臨床腎移植学会では一応検討して、この件に関してはどうかという話があったのですが、これは選択基準と適応基準の問題がありまして、今のような議論は恐らく学会関係でやる議論だと思うのです。これがほかの臓器ということになると、もっと臨床腎移植学会だけではなくて、移植学会を含めて他臓器のことまで含めることになると思います。

○松尾班長 問題は、検討は学会でしていただくとして、結論が出るまでの間はどうするのかということですが・・・。

○相川班員 これもコーディネーターが非常に困るのです。

○松尾班長 そうですよね。だから、これは難しいのですが、ウイルスをいない人に入れるというのは、やはり通常考えると非常に大きな問題があるかなと思うのです。そのときに、薬が良くなっているとは言うものの、免疫抑制も使っているし、必ずしも100%治るなんていうことはないわけです。

 これは、仮にレシピエントのほうがOKしたとしても、それだけで踏み切るかということもあるので、これは迅速に学会で結論を出してもらって、それまで原則としてはやらないというのが常識的な判断かなと思うのですが、どうですか。

○両角班長代理 私もそう思います。あと、ネットワークの中の検査センターがリアルタイムPCRを、HCVに関して対応をなぜできないかとか、できている所はどうなっているかというのを整備することが、一番必要なことですよね。それを進めていただければドナー側の課題は解決する問題ですので、ネットワークの検査委員会などの立場にある先生に頑張っていただいてと思います。

○脇田班員 あと、レシピエントのほうがかなり問題だと思いますので、レシピエントが抗体陽性でRNAが陰性というところが、一番の問題ということです。そこは、レシピエントのほうは事前にちゃんと検査できるわけですよね。肝臓、HCV抗体が陽性であれば、それは保険でRNAの検査もできますから、そこは事前に必ず測定をしておくということで、区分けをしていくということではないですかね。

○相川班員 先生、もう1つ質問をよろしいですか。サブタイプに関してですが、実はサブタイプが違うものに関しても、移植は今のところ高度ではやっているのです。ただし、理論的に考えると新たな感染を呼ぶことになってしまうので、そういう点ではいかがなのでしょうか。

○脇田班員 以前は2型のほうが治療しやすくて、予後も良いだろうということで、1型のウイルスを2型に感染している人に入れないという方向性があったと思うのですが、現在は逆に2型の治療が、腎臓の患者さんには特に治療しにくいということがありますので、できれば1型の感染している方には、1型からの移植が望ましいだろうということは言えると思います。

○松尾班長 それでは、時間のこともありますので、この件についてはまだ今後の課題が大きいと思うのです。先ほどの検査の問題、費用の問題、ここに費用負担の問題は書いてありますが、どうやって迅速にやるかとか、その結果をどう生かすかということについて、相当まだ全般的な議論が必要かなと思いますので、これは是非、関係学会が集まって検討していただきたいということでよろしいでしょうか。検査は進めておくということで。

 では、最後に移植後、腎機能が無発現であった腎臓移植に経ったレシピエントへの対応をどうするかということ、これも簡潔にお願いします。

○伊藤補佐 簡潔に御説明します。移植腎が機能無発現腎であった場合のレシピエントへの対応ということで、前回の作業班のときから検討していただいています。献腎移植後、移植腎が機能せず、透析離脱ができなかったレシピエントが、再度、移植登録を行う際の待機時間の取扱いをどのようにするかといったことになります。

 前回までの検討のポイントとして、待機期間を継続する扱いをすることが妥当かどうか、その基準の設定はどのように考えるかといったところで、何らかの救済策を講じるべきという方向性は決まっています。待機時間に関する考え方として、待機時間をゼロに戻すべきといった意見と、もう1つ、ドナー腎の問題であり、手術という侵襲を受けたにもかかわらず、自己要因ではないことで待機時間をそのままで再移植をするという、2点の考え方があると思います。これに関して、意学的な意見がありましたらということで、先生方にお聞きしたのですが、なかなか意学的な根拠というものが、これに関してはないと思いますので、社会的にどう考えるかといったことになるのですが、事務局の最後のまとめ案として、医学的根拠があって社会的に説明可能であれば、変更も可能であるのではないかと。ただ、現時点では今後の課題にするほうがよいのではないかという結論にさせていただいています。以上です。

○松尾班長 現行どおりということで、この点はよろしいでしょうか。移植に当たっては、先ほどのようなポイント制度があって、一応、現時点で考えられる社会的・医学的にベストの人に移植をしていると思われるので、もしほかに何か妥当な根拠があれば、これを変えていくのですが、そうでなければこのままでよろしいですか。ほかの先生方はいかがですか。

○相川班員 私は2の立場を言っていますが、実際は受けた患者さん本人の問題ではなくて、腎臓のクオリティの問題で、機能が1回も発現しないという方に、また平均待機期間11年を待たせるというのは、やはり問題ではないかと私自身は思います。それから、移植医の先生方からの御意見も、これについては非常に多いです。

○湯沢班員 私もこれは何とかしていただきたいと思っている1人で、やはり移植した患者さんになかなか説明できないところです。というのは、例えば移植腎機能が無機能だった場合に、ネットワークはあっせん費用を徴収しないのです。これは、ネットワークとしては申し訳ない思いというか、移植がなかったことと考えているわけです。一方で待機年数だけは元に戻るというのは、何か説明できないような気がします。

○両角班長代理 これは提案した立場ですので、何とかならないかなと本当に思っています。それで、日本の場合だと臓器提供の実態が、脳死が6割、心停止が4割くらいになっていますよね。かなり厳しい状況の心停止下の提供があると、そのうち8%前後が無機能になるリスクがあります。ほとんど脳死下提供になって、頻度が極めて少ないという話ならばいいのですが、かなり起きる可能性がある以上は、やはりゼロに戻してしまうのは大変申し訳ないという気がしますから、何か考えてくださると嬉しいなとは思います。

○松尾班長 ほかの先生方はよろしいですか。これは難しいですね。腎臓が次々と出てくればいいのですけどね。ということで、これについて本日の結論としては、引き続き検討でいいですか。今回、何かやりますか。もしやるとすると、どのような救済策を講じるのか、また細かくやらないといけないです。

○相川班員 待機期間の問題ですよね。待機期間をそのままにするか、または。

○松尾班長 短くするにしても、どれくらいやるのだという話が出ますよね。

○相川班員 そうですね。でも、それは医学的な根拠は全くないので、非常に難しいです。今までのを見ると11年でしたか。11.4±2.0、再移植までの期間はそれくらいかかるということですので、これだとほとんど普通に待機している方と同じになってしまうのです。

○松尾班長 これは私が決めるわけではないので、そうすると先生方の多くの意見は、1回も腎機能が発現しない場合には、何らかの救済策があっていいのではないかと。そういう方向に向けて今後、検討が必要であるという、そういう結論でよろしいですか。

○湯沢班員 すみません、先ほどのネットワークがあっせん費用を徴収しないという根拠は何なのですか。

○松尾班長 それは、やらなかったと取るのか。先生は何かありますか。

○山本参考人 徴収しないというのは、やはりやらなかったと見なすという解釈なのではないでしょうか。だから取れないのだと。やったということであれば、それは費用としては取るべきであって。

○松尾班長 そうですね。

○山本参考人 ですから、やらなかったのと同等に扱うというのが、その根拠ではないでしょうか。

○湯沢班員 だったら話は早いですけれど。

○西班員 実際、平均的に献腎移植を受ける方の年齢を考えると、もう110何年待つということは、ほぼ寿命が尽きているので、全く現実的ではないので、やはりリセットすることはよろしくないのではないかと思います。そのまま延長ということで。

○松尾班長 では、待機期間はそのままということ。

○西班員 はい。

○両角班長代理 取扱いがなかったことになっているのであれば、待機期間のゼロリセットもなかったことにして、以前の待機期間は触らずそのままに残すということですね。

○服部班員 ということは、現状を変更するということ。

○両角班長代理 そうですね、現状からは変更です。

○湯沢班員 実はこのことが、かつて臓器移植ネットワークの献腎移植の登録のパンフレットに書かれていなかったのです。それで私が問題提起したら、その次の年からは書かれるようになっていたのです。ですから、全く知らないまま私は、元に戻りませんよという話をしてしまったことがあって、ネットワークに問い合わせたら、そうではないと言われた経過があったので、ネットワーク自身も余りしっかりと認識していなかったというか、問題だと思っていなかったという経緯もあるのです。

○松尾班長 分かりました。それでは、先生方の御意見がそういうことであれば、平たく言うと、やらなかったことにするという意見で一致したようですので、そういう意見で、この班としては一致しましたと。あとは委員会がどう考えるかということ。

○相川班員 プライマリーノンファンクションであるという、やはり医学的な根拠が必要になります。何でもかんでもというわけにはまいりませんので。

○山本参考人 レシピエント側の事情による場合もあり得るわけです。

○松尾班長 いろいろあります。

○山本参考人 ありますよね。

○松尾班長 そしたら先ほどと一緒で、基本的な方向は、無機能腎の場合には原則としてやらなかったことにするのですが、ただし無機能腎であった原因、これをしっかり精査して、リセットしないでそのまま残すということが妥当であるかどうかという判断について、どのようにするかは今後、検討が必要であるということを「※」で入れて、それで上げてください。

○湯沢班員 今は払わなくていい場合も、ネットワークにはその理由というか、経過を書くことになっているのです。私は何回か書きましたが、それで初めてネットワークは払わなくていいことになるので、同じような書式でというか、報告を受けて。

○松尾班長 ただ、それよりはもっとしっかり、払わないといけない、払わなくていいという理由は、言い方は悪いのですが、払わなくていいようにいろいろ書けますので、そうではなくて、もう少し医学的・科学的にしっかりしたことを書いていただけるように。

○両角班長代理 例えば書き方として、提供された腎臓が、2腎ともに機能無発現であったような場合には、それは提供された腎臓に問題があったと考えやすいものですから、それを例として付けて、「この場合のように提供された腎臓の問題として機能無発現になったと思われた場合には」という文言でいけば説明しやすいと思います。実際、従来の事例を見ていますと、機能無発現のかなりの症例は両側腎が駄目です。

○相川班員 もう1つは、今は死体腎移植でも生体腎移植でもほとんどの施設が、生検を手術の直後、又は手術の直前に取っていますので、その生検所見を参考にしていただけると、ある程度の医学的な検証ができると思います。

○松尾班長 ということで、いろいろ意見が出ているのですが、これをしっかりまとめて、妥当なものに仕上げる必要があるので、それを今後検討すると。基本的な方向性としてはそうであるということで、委員会のほうに報告させていただいてよろしいですか。

 それでは、私の不手際で時間がかかりすぎたのですが、あとの6番、7番、8番、9番の所は最初に説明していただいたとおりで、一応こことしての結論を出していただいたと思います。以上で今日審議していただくことは全てですが、この後の予定について、事務局から説明をお願いします。

○伊藤補佐 本日は活発な御議論を頂き、ありがとうございました。また、本日頂きました御意見を踏まえて、検討を整理させていただきまして、先生方にメールなどで確認させていただきたいと思います。その意見を今年の臓器移植委員会のほうにかからせていただくことを予定しています。ありがとうございました。

○松尾班長 ということで、回覧をさせていただいて、是非また修正をお願いしたいと思います。以上です。長時間、どうもありがとうございました。

○湯沢班員 臓器移植委員会というのは、いつ頃開かれるのですか。

○鈴木室長 まだ未定ですが、日程などは全然確保できていないので、多分、新年度に入ってからになってしまうとは思いますが、できるだけ早く。

○松尾班長 ということですが、よろしいでしょうか。今日は本当に長時間、どうもありがとうございました。

 

(了)
<照会先>

健康局難病対策課移植医療対策推進室

代表電話: 03(5253)1111
直通電話: 03(3595)2256

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 健康局が実施する検討会等> 腎臓移植の基準等に関する作業班> 第8回腎臓移植の基準等に関する作業班 議事録(2016年3月9日)

ページの先頭へ戻る