ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(食品衛生分科会食中毒部会)> 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録(2016年3月16日)




2016年3月16日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

○日時

平成28年3月16日(水)
10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館(厚生労働省)3階 
共用第6会議室


○議事

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 それでは、定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開会いたします。

 本日、進行を務めさせていただきます監視安全課食中毒被害情報管理室の梶原です。よろしくお願いいたします。

 開会に当たりまして、道野監視安全課長から御挨拶を申し上げます。

○道野監視安全課長 皆さん、おはようございます。生活衛生・食品安全部監視安全課長の道野と申します。よろしくお願いいたします。

 私、実は食品安全の行政も随分長く携わっておるということもございまして、これまでも大変お世話になった委員の先生方はたくさんいらっしゃるわけでございますけれども、今後とも引き続きよろしくお願いをいたします。

 本日の食中毒部会につきましては、平成27年の食中毒の発生状況について御報告をし、御承知のとおり、ノロウイルス、カンピロバクターの食中毒はなかなか減らない。むしろふえているという状況がございます。

 一方で、その対策も、これといった決め手を欠いているというのが実情でございまして、そういったものを今後どうやって打開していくのかに関してもいろいろ御意見をいただいて、私どもとしても、28年度どういう取り組みをしていくかということについて整理をしていきたいと考えております。

 そういった意味で、カンピロバクターの28年度の事業に関しても、少し内容が固まってまいりましたので、御報告もさせていただきたいと考えております。

 本日は、皆さんお忙しい中、せっかくお集まりいただきましたので、統計の内容がどうこうというよりは、むしろそういった対策面といったことを中心に御議論いただければと思いますので、よろしくお願いをいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 ありがとうございました。

 次に、委員の異動がありましたので、事務局から御紹介させていただきます。

 高知県健康政策部食品衛生課の竹内委員にかわりまして、栃木県保健福祉部生活衛生課の清嶋委員が就任されております。

 国立感染症研究所の渡邉委員にかわりまして、同じく国立感染症研究所の倉根委員が就任されております。

 群馬県衛生環境研究所の小澤委員にかわりまして、山口県環境保健センターの調委員が就任されております。

 山形県教育庁スポーツ保健課の齊藤委員にかわりまして、鹿児島県教育庁保健体育課の櫁柑委員が就任されています。

 次に、事務局の異動がございましたので、説明させていただきます。

 本日、業務により欠席しておりますが、食品安全部長には福田が、企画情報課長には赤澤が着任しております。また、先ほど挨拶いただきました監視安全課長に道野、食中毒被害情報管理室長に梅田が着任しております。

 本日は、参考人として、国立医薬品食品衛生研究所食品衛生管理部第一室長、朝倉先生、同じく、国立医薬品食品衛生研究所安全情報部第二室長、窪田先生。

 本日の部会は16名の委員のうち、雨宮委員、石川委員、賀来委員の3名の委員が欠席ということでございましたけれども、13名の委員の御出席ということなので、薬事食品衛生審議会の規程に基づき成立していることを御報告いたします。

 では、東海大学海洋学部の山本教授に部会長をお願いしてありますので、議事進行は部会長にお願いしたいと思います。よろしくお願いします。

○山本部会長 おはようございます。

 それでは、早速、議事に入りたいと思いますが、初めに、事務局で配付資料の確認をお願いします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 それでは、配付資料の確認をさせていただきたいと思います。

 皆様のお手元のレジュメの下に、

 資料1 平成27年食中毒発生状況概要版

 資料2 平成27年食中毒発生状況

 資料3 食品媒介感染症被害実態の推定

 資料4 食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理に関する研究

 資料5 食鳥肉における微生物汚染低減策の有効性実証事業について

 参考資料1 ノロウイルスによる食中毒の予防について

 参考資料2 感染性胃腸炎の流行に伴うノロウイルスの感染予防対策の啓発について

 以上でございますが、資料の不足はありませんでしょうか。

 なければ、よろしくお願いします。

○山本部会長 ありがとうございます。

 それでは、議事に入りたいと思います。

 まず、平成27年食中毒発生状況について御審議いただきます。

 それでは、御説明をよろしくお願いいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐

PP

 それでは、27年の食中毒発生状況を取りまとめましたので、御説明させていただきます。

 この食中毒発生状況の対象は、平成27年1月から12月までに発症し、食品衛生法第58条に基づき、都道府県知事等から厚生労働大臣に報告のあったものを取りまとめたものであります。その詳細については資料2の「平成27年食中毒発生状況」に示しておりますが、資料が膨大であるため、27年の特徴的な部分と、発生の多かったノロウイルス食中毒についての分析結果を資料1の「概要版」として作成しました。この資料1の「概要版」に基づいて御説明したいと思います。

PP

 食中毒事件数・患者数の推移を示しております。平成27年の事件数は昨年まで2年連続で1,000件を切っていましたが、27年は昨年から23.2%の増加で1,202件となっております。患者数は2万2,718人で、平成26年と比較しますと17.4%の増加となっております。死亡者数は6名となっております。詳しくは後ほど説明させていただきます。

 年次別食中毒事件数・患者数も平成10年をピークに減少傾向でありますが、27年については増加している傾向でございました。

PP

 大規模食中毒事例である500人以上の事例を上の表に示しております。平成27年の大規模事例は2件発生しておりますが、2件とも愛知県内で発生しています。

 1件目は、昨年3月に仕出し屋で製造された昼食弁当を原因とするノロウイルス食中毒です。原因とされている昼食弁当は3日間提供されており、3日間の延べ摂食者数は1万2,000人となっておりますが、実際には重複する部分も多くありますので、約4,000名程度の方が喫食されていると考えられます。患者数は576人となっております。不顕性感染であった従事者由来の二次汚染が原因ではないかと推察されております。

 2件目は、仕出し屋で製造された弁当を原因とするサルモネラ属菌食中毒であります。当該事業者は幼稚園・保育園用お弁当の製造を専門としており、本事例も幼稚園・保育園児の患者を中心に多く発生しております。患者便と検食のマカロニソテーからサルモネラ・ティフィムリウムが検出されており、一部患者からはノロウイルスも検出されております。原因としては、食材の加熱不十分か、二次汚染の可能性もあるとの報告を受けております。

 下の表は、27年の死亡者が発生した事例を5例示しております。いずれも家庭で起きた自然毒が原因とされる食中毒です。

 1件目は、札幌市で発生しており、お手元の資料では原因食品が不明となっておりますが、患者の吐瀉物と血液からコルヒチンが検出されていることから、イヌサフラン等のコルヒチンが含まれた有毒植物による食中毒であると推察されております。

 2件目も札幌市で発生しております。植物性自然毒を含んだ、これもイヌサフランの球根を間違えて喫食した事例でございます。

 3件目についてもイヌサフランの誤食事例でありますが、これも庭に生えていたイヌサフランの地上部を生のまま喫食したという事例でありました。

 4件目は、フグの内臓を喫食した事例でありました。調査したものの、入手先は不明ということでありました。

 5件目は、アオブダイの自然毒のパリトキシン様毒を原因とする食中毒であります。これも入手先は不明でありますが、調査したところ、アオブダイの流通は確認されておりません。

PP

 これは平成25年から27年の年齢階層別食中毒患者数のグラフになります。傾向としてはほぼ例年どおりでありますが、12月に愛知県で幼稚園・保育園用仕出し弁当による大規模食中毒事例が発生しているため、1歳~4歳の年齢層が例年より増加傾向を示しております。

PP

 これから3枚のスライドは、平成25年から27年の3年間について月別の発生状況を示しております。事件数と患者数ですが、27年は1月から3月に例年よりも食中毒の件数が多く発生しております。患者数も事件数に影響されて1月から3月は多い状況でありますが、特に3月は愛知県でノロウイルスの食中毒大規模事例が発生しているため、患者数が年間で一番多く発生しております。また、12月も、愛知県のサルモネラ属菌の大規模事例の影響で多くなっております。

PP

 平成25年から27年の病因物質別の月別発生件数を示しております。先ほど説明した27年1月から3月まで多かった部分については、赤い部分のノロウイルスの食中毒の件数が多かったためであると言えます。また、例年どおり、夏場にはカンピロバクター等、細菌による食中毒が多い傾向というのは変わらなくありました。

PP

 月別の病因物質別患者数を示しております。1月から3月にノロウイルスを中心としたウイルス性食中毒が多く、特に3月のノロウイルス患者数は例年より多い傾向でありました。また、夏場に細菌性食中毒が多くなっておりますが、2712月は、愛知県で発生したサルモネラ属菌の食中毒事例により患者数が増加している青の部分であります。

PP

 原因施設別の事件数を示しております。原因施設別の事件数としては、「飲食店」が742件で、全体割合61.7%、前年比で言うと25.8%増加しております。次に「不明」「家庭」「旅館」「仕出屋」という順になっております。

PP

 患者数についても、「飲食店」の1万2,734人が全体割合56.1%と最も多く、次いで「仕出屋」「旅館」「事業場」となっております。事件数と比較すると、大規模食中毒2例などの影響で「仕出屋」の割合が多くなり、「家庭」の割合が少なくなっております。

PP

 原因食品別発生状況については、最も多いものが「その他」になり、総数は629件、次いで「魚介類」「複合調理食品」「肉類・加工品」「野菜・加工品」の順番でございます。「その他」は629件ですが、そのほとんどが食事しか特定されず、食品まで特定できなかった事例となっております。

PP

 患者数も「その他」が最も多く、1万6,442人で、全体割合72.4%、次いで「複合調理食品」「魚介類」「肉類・加工品」「魚介類加工品」「野菜・加工品」という順になっております。

PP

 原因食品別の事件数、年次推移を示しております。例年の傾向と比べると、「その他」と「魚介類」が多くなっている傾向がございます。

PP

 病因物質別の発生状況を示しております。平成27年の事件数は、「ノロウイルス」481件、全体割合が40%、次に「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」が318件、全体割合26.5%であります。3番目には「アニサキス」127件、次に「植物性自然毒」58件、「動物性自然毒」38件、「ぶどう球菌」33件、「サルモネラ属菌」24件の順になっております。

PP

 患者数でも「ノロウイルス」による1万4,876人が最も多く、これは全体の65.5%を占めております。次いで「カンピロバクター・ジェジュニ/コリ」による患者数2,089人、全体割合9.2%、3番目には、12月に発生した大規模事例が含まれているため「サルモネラ属菌」によるものが1,918人となっております。次に「ぶどう球菌」「ウエルシュ菌」「化学物質」。化学物質についてはほとんどがヒスタミンとなっております。

 また、平成27年の腸管出血性大腸菌については、件数、患者数とも比較的少ない状況となっておりました。

PP

 全体の発生状況を説明してまいりましたが、平成27年は、1月から3月に多く発生したノロウイルス食中毒により、件数、患者数とも増えた傾向でありました。そこで、病因物質別に個々に見てみたいと思いますが、最初に、平成27年に増加していたノロウイルス食中毒について自治体からの事件票及び詳報を分析してみましたので、報告させていただきます。

 最初にノロウイルスの食中毒の発生状況、年次推移を示しております。ピンク色の棒グラフは事件数、青色の折れ線グラフは患者数を示しております。赤い点線が過去10年の事件数の平均、青の点線が過去10年の患者数の平均を示しております。平成27年のノロウイルスの食中毒の件数は平均値を大きく上回っておりますが、患者数については平均値に近い値となっております。

PP

 ノロウイルス食中毒の推定を含む原因食品別発生状況を示しております。これを見ますと、「その他」と「魚介類」の件数が多くなっております。「魚介類」については割合も増加しており、1月から3月に発生している事件に、生ガキ等、二枚貝の関与している事例が多く認められました。

PP

 ノロウイルスの食中毒の原因食品は「その他」に分類されている事例が一番多く発生していますが、その333件について自治体からの事件票報告で原因食品の記載状況を確認しました。ほとんどの事例が「飲食店の原因施設が○月○日に提供した食事」という記載になっておりました。食事について限定されているものの、食品に限定されていない状況が多く認められました。

PP

 スライド18はノロウイルスの原因施設別の発生状況を示しております。原因施設は、過去10年と比べて「飲食店」の件数の割合が増えている状況が確認できております。

PP

 こちらがノロウイルスの遺伝子型の発生状況を示しております。自治体が報告書に記載されているものに限りますので、全体的な統計とは言えませんが、昨年通知をしているGII.17というものが比較的多く発生しております。また、全体的にはGIIを中心として発生している傾向ということが言えます。

PP

 こちらについては、ノロウイルス食中毒の発生要因を分析するため、平成28年1月の時点で報告されている自治体からの食中毒詳報から推定を含む発生要因について分析をしました。ノロウイルスに感染していた従事者から食品への二次汚染が原因と考えられるものは全部で65%ありました。そのうち、先行発症がなかった従事者由来の事件が40%弱で、先行発症があった従事者由来は22.8%でありました。また、生ガキ等二枚貝の摂食等が関与している事例が約20%、二枚貝の加熱不十分というものが10%弱ありました。27年は、推定が含まれているものの、二枚貝等が関与しているものは30%弱の発生があったということが認められました。

PP

 従事者由来の事例については、原因食品別の発生状況を示しております。全体の傾向と同様に、従事者由来の食中毒というのは食事のみに限定されているということで、「その他」に分類されている事例が多くありました。

PP

 従事者由来の事例について、自治体からの詳報の考察部分などから、発生要因について分析したものを示しております。1事件につき複数要因が記載されているため、従事者由来の事例と考えられる37件を母数とした割合を示しております。従事者健康管理記録がないという事例が8割以上あり、その他、手袋の装着不備、トイレの設備の不備など、手洗い等が十分にできていないという状況が確認できました。複数要因が影響しているため、これらの衛生管理向上などを行う必要性はありますが、発生要因が明確になっていない事例が多い状況でありました。

PP

 これは、平成26年に開催された食中毒部会でノロウイルスによる食中毒の発生予防について議論いただき、通知した内容を示しております。先ほどの分析結果によると、これらの1の項目に対する対策がいまだ十分とれていないために発生しているという状況が確認できました。

PP

 続いて、近年、発生数が多いカンピロバクターの食中毒について御説明したいと思います。主な原因食品別の年次推移ですが、「その他」と「不明」事例を除きますと、やはり「肉類・加工品」の事例が多いことがわかります。原因食品の内容を確認したころ、生食及び加熱不十分な鶏肉が関与している事例が多く報告されています。

 カンピロバクター食中毒につきましては、この後「食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理について」という議題で、朝倉先生から厚生労働科学研究の成果などについて報告いただくことになっております。

PP

 クドアの食中毒事例について示しております。クドアは事件数17件、患者数169件と、昨年に比べて約60%減少しております。

PP

 最後に、アニサキスの食中毒について示しております。アニサキスについては、事件数127件、患者数133件と、昨年と比べて60%以上の増加を示しております。

 長くなりましたが、以上で平成27年食中毒発生状況についての説明を終わらせていただきたいと思います。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明に関しまして、御意見、御質問をお願いいたしたいと思います。いかがでしょうか。

 今村先生。

○今村委員 この結果そのものは特に異存ないし、このとおりだと思うのですけれども、ノロの発生と食中毒全体の発生のことについて毎回言わせていただいている御意見ですが、今、どう見ても冬場のほうが食中毒が多いという状況になっていて、学校で教える際にも実は冬場のほうが多いのだよということを言っています。冬場が多い理由というのは、やはりノロウイルスが増えているからなのです。ノロウイルスは食中毒という面もありますけれども、感染症という面が非常に強い。サルモネラとかであれば、間違いなく個々の数が中心なのですけれども、ノロウイルスの場合は、社会全体が50万人とか100万人とかがノロにかかって感染されて、それがあふれ出て食中毒の世界にやってきているものなので、総体的な数といったときに、食中毒の中で占めるノロウイルスの割合というのは非常に大きいのです。社会的に見たら、本体の感染症としてのノロが大きく影響していて、食中毒の統計を見たときに冬場のほうが多くなってしまっているという現象が起こっています。これに対して、食中毒は冬場に起こるものだというのは間違ったことで、なかなか矛盾に満ちた状況になってきていると感じています。

 基本的にはノロは感染症として扱っていくべきものだと私は思っています。ただ、食中毒としての問題点は、今、お示しいただいたものそのものなので、統計のときに、ノロを除いた場合はどうなるかという統計を出すとか一工夫していかないと、冬場に食中毒が多いものだとなっていくことそのものは余り望ましいことではないと思っています。

 意見としては以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 清嶋委員、どうぞ。

○清嶋委員 栃木県でございます。地方自治体ということで栃木県の取り組みを御紹介したいと思います。

 実は、栃木県におきましても、ノロウイルスの食中毒というのは非常に件数の多いものになっております。昨年度、26年度ですけれども、その予防対策として、ノロウイルス食中毒防止のためのシステム、「システム」と言うと大げさですけれども、試みを開始しました。「栃木県ノロウイルス食中毒予防推進期間設置要領」というものを定めまして、二段階で予防のための啓発をやっていこうという試みでございます。

 栃木県の場合、過去10年間におきまして、11月1日から3月31日までに発生した事件の8割以上がノロウイルスによるものというデータが出ております。そこで、この11月1日から3月31日までの4カ月間を「栃木県ノロウイルス食中毒予防推進期間」と定める、これが第一弾の啓発となります。その時期になりましたら、マスコミ等にお願いして、そういった期間に入りましたという情報を第一弾でお知らせする。

 それから、ノロウイルス食中毒の発生の危険が高まった時期を捉えてもう一弾の取り組みをする。これは「栃木県ノロウイルス食中毒特別警戒情報」を発信するというものでございます。どういうタイミングがここに該当するかですが、過去10年間のデータを分析しその時期を推測いたします。感染症対策部門で発表しております感染症発生動向調査における本県の感染性胃腸炎の定点医療機関当たりの報告数を参考に、その危険をお知らせするというものです。この仕組みを立ち上げましたのが平成26年度の1023日でしたので、ちょうど1年間、平成27年でどうであったかということについて検証は行っておりませんが、実数としましては、平成27年の事件数が全体で11件、件数で27%、患者数で25%という数字が出ております。効果があったかどうかはまだ何とも言えないところでございますが、そのような取り組みを開始したところでございます。

参考までに御紹介いたしました。

○山本部会長 ありがとうございました。

 そういう情報提供というのは今後も非常に大事だと思うのですけれども、注意喚起ですね。

 具体的に感染性胃腸炎が起こったときに、ノロウイルスなのかどうかということの把握というのは、砂川先生、どのようになっているのでしょうか。

○砂川委員 感染研にて感染症発生動向調査を担当しております室の室長である砂川です。

 御参考までに申し上げますと、「感染性胃腸炎」として小児科定点より報告される患者さんの情報につきまして、2015年、昨年をざっと見ておりますと、一番高かったのが第51週の定点当たり10という数値でありました。過去10年ぐらいの中では、2006年に全国で定点当たり22という非常に高い値を示した年もありましたので、そこからしますと、2015年で観察されたピークは半分程度の高さでありました。その前の2014年が、定点当たり11.5ぐらいがピークでしたので、基本的には2015年は大きく変わった年ではなく、大きな流行状況は観察されなかったようでした。感染症発生動向調査の観点からは、そのような所見が見られておりました。

 とはいえ、食中毒として上がっている事例は非常にたくさんありますので、毎年のこととはいえ、食中毒にも関係しているノロウイルス対策を冬場に向かって強化していくというのは、今後もやっていかないといけないことだろうと思います。

 また、新型ノロというところで非常に注目を浴びましたGII.17について申し上げます。病原体サーベイランス、これは、全国の地衛研と感染研とが連携して行っているサーベイランスです。病原体サーベイランスは現時点ではまだボランタリーベースの情報提供ではありますが、全国の地衛研で検査され、ご共有いただいている情報を見ますと、毎月の状況の中での推移としては、大体5%から15%以内ぐらいの範囲でGII.17の報告が寄せられており、その中で、徐々にですけれども、割合が増加する気配は少しあります。ただ、これは印象でしかありませんので、引き続き警戒して情報を見ていこうと思っているところです。

 総体的に、感染症の発生動向調査の情報も見ながら、食中毒対策も強化していくことの必要性というところをすごく痛感しているところです。

○山本部会長 ありがとうございました。

 砂川先生にもう一つ質問です。そういった病原体サーベイランスで上がってくるときに、食品との関連があるのかないのかという情報はくっついてくるのでしょうか。

○砂川委員 ありがとうございます。

 これは、各自治体の衛生研究所のほうが非常に熱心に調べていただいて、情報として寄せられている場合があります。今、分析された情報をお示しすることはできないのですけれども、集団発生の場合もありますし、あと、個票という形で寄せられる場合もあります。全部ではありませんが、そういった情報が病原体サーベイランスの情報に含まれていますので、今後、そのような分析を強化していこうと思います。

○山本部会長 ありがとうございます。

 梅田室長。

○梅田食中毒被害情報管理室長 先ほど栃木県の取り組みを御紹介いただき、また、感染症対策ということでの御指摘も今村委員からいただいております。感染症として取り扱うかどうかということについての議論はあろうかと思いますけれども、現在の取り組みとして御紹介させていただきますと、参考資料1と2にありますように、シーズンに入る前、27年9月にノロウイルスによる食中毒の予防ということで、先ほどもありました、これまで検出例の少なかった遺伝子型GII.17の検出の可能性も今後あるということで注意喚起をさせていただいております。

 また、毎年、結核感染症課と連携して、シーズンに入ったということが探知されますと改めて注意喚起をさせていただくということで、10月に通知を出させていただいているということでございます。

○山本部会長 ありがとうございます。

 ノロウイルスに関しましてほかに追加の意見はございますか。

 野田先生、どうですか。

○野田委員 御説明ありがとうございました。

 道野課長から対策を中心に議論いただきたいというお話もございましたので、今後どのような形で対策を進めたらいいかということについて、少し私見を述べさせていただきたいと思います。

 1点目として、調理従事者対策に関して、23番のスライドでお示しいただきましたけれども、手洗い、塩素消毒、衛生管理などいくつか対策のポイントが記載されていますが、今後必要になってくると思われるのは、これらの対策がちゃんと実行できているかを簡単に確かめるというか、検証するシステムを導入することが求められると思います。これらは人が行うことですので、やりましょう、やりましょうと言うだけではなかなか実効性を伴わない側面があるかと思います。これらがちゃんと実行できているかを検証できるシステムみたいなものが導入できればと思っています。

 それから、お話の中でありましたけれども、昨シーズン、27年1月から3月、二枚貝関連の事例が非常に多く発生しました。これは余談ですが細かく分析しますと、GII.17が多く関与しています。GII.17に関しましては、先ほど砂川先生からありましたけれども、実は小児の病原体サーベイランスから余り見つかってこなくて、二枚貝関連の食中毒は比較的多いという特徴がみられます。二枚貝の事例は近年増加傾向にあります。また、二枚貝の中にはいろいろなノロウイルスが蓄積され、それを生や加熱不足で摂取すると複数のノロウイルスに感染することから、ノロウイルスの進化の面からも非常に重要な側面がございます。従いまして、2枚貝の安全性確保に向けた対策につきまして、強化していく必要があると思います。

 3点目として、消毒剤に関しましては、次亜塩素酸ナトリウム等が推奨されてはおりますけれども、必ずしも万能ではないということがございます。欧米では、消毒剤の評価方法についてガイドラインとして出ていますけれども、国内ではそういったものがないことから、本当に市販の消毒剤が有効かどうか、一般の人が検証することはなかなかできないということがあります。そのため、消毒剤の評価方法のガイドラインをつくるなどの、ウイルスの不活化方法についても対策を進める必要があるかと思います。

 それから、行政サイドの問題として考えますと、ノロウイルスの食中毒としては不顕性感染の調理従事者が関与する事件が非常に多いというデータが出てきています。不顕性感染に関しましては、業者側に立ちますと、責任者や当事者にとっては、不顕性感染であるということは、どちらかというと都合がいい話になるわけです。本当に不顕性感染だったかというところについての細かな調査が今後求められるのではないかと思います。

 また、ノロウイルスの食中毒におきましては、先ほどのお話にもありましたけれども、原因食品が特定されていなくて、いついつ、どこどこでの食事のように報告される事例が非常に多いということがあります。それから、遺伝子型別につきましても、平成19年の当部会からの提言として、遺伝子型までしっかり調べましょうという提言も出ております。しかし、現実には食品からのウイルスが検出されるとか、遺伝子型別が報告される事例は多くないという側面がございます。自治体のほうは多忙な業務の中で大変だろうと思いますけれども、そのあたりも今後もう少し強化していく必要があるのではと思っています。

 以上です。

○山本部会長 対策に関する提言をどうもありがとうございました。

 課長、何か。

○道野監視安全課長 ありがとうございます。

 幾つか御意見、御提言いただきました。

 まず、感染症との関係で申しますと、御指摘のとおりではあるのです。ただ、それで夏場の細菌性食中毒の予防がおろそかになるというところまでは行っていないとは思うのです。実は先ほどの食中毒のデータを見ていただいてもわかるとおり、例えば数日間の食事が原因ではないか、むしろ感染症的に感染しているものであるというような側面もあると考えていまして、非常に調査が難しいというか、現場でいろいろな問題があり、調査に対しての課題あるのだと思います。

 今、野田先生からも御指摘いただいたそういう遺伝子型別の問題なども含めて、ノロウイルスの食中毒調査について、ほかの細菌性食中毒に比べて、結果として精度がかなり低い部分もあると思います。この辺は、国立感染症研究所の御協力も得ながら、実際に現場でどのような調査をやって、このような結論になってきているのかとか、先ほど手洗いの問題などの御指摘もございましたけれども、現場でそういう対策がどの程度とられているのか。多分、食中毒が起きた施設以外でも、恐らく、こういう問題というのは同じようにあるのだろう。それから、顕性か不顕性かは別にして、ウイルスを持っている従事者の方も恐らくいらっしゃる。そういう中で、現象としてこのように集発が出てきていることに関しては、もう少し掘り下げていかないと、しっかりとした対策になかなかたどり着けないのではないかと考えております。そういったことも含めて、28年度に関して、まず、感染症の専門家の先生方にそういった内容について御検討いただきたいということで、今後、御協力をお願いしたいと考えております。

 可能であれば清嶋課長に、もしも今、そういった現場の状況について御指摘いただけることが何かあればぜひお願いしたいと思います。特に先ほど出ていました遺伝子型別などは、我々のほうに報告が来るもの全てがそういったチェックがされているものではない、実証されているものではないということもございます。その辺について何か御知見があればお願いできればと思います。

 あと、野田先生から幾つか御指摘いただいた点についても、28年度に対応できるものについてはできるだけ対応するようにしたいと思います。お金のかかるものについてすぐに動けるかどうかということもあるかもしれませんけれども、少しでも進められるようにと考えております。

○山本部会長 ありがとうございました。

 清嶋委員、いかがでしょうか。現場での対応ということについて何か御紹介していただければ。

○清嶋委員 今、対策で何か思い浮かぶということではないのですが、1つ、栃木県保健環境センターのほうで、ノロウイルスの不顕性感染者と、どのぐらい排出するのかという調査をした結果がございまして、全国食監協のほうでも発表させていただいたものです。細かい母数その他は省略させていただきますが、結論としまして、不顕性感染者の調査におきましては、年間を通じて健常な食品取扱者の1.25%がノロウイルスを保有している。

 もう一つのウイルスの排出期間につきましては、実際に患者さんであった方の追跡調査を行ったものでございますけれども、食品取扱者がノロウイルス感染後に1~2カ月間ウイルスを排出しているというデータが出てまいりました。

 そういうことを踏まえますと、先ほど申し上げた栃木県の取り組み、最初に啓発するというのは、それはそれで注意されるのですけれども、しばらくたって、1~2カ月して、その辺がちょっと緩んでくる。それから、マスコミのほうで食中毒の報道をされましても、今、警戒情報が出ていますよ、発信されていますよという部分は省略されていってしまいます。今年度でございますが、3月になりまして立て続けに発生しております。そこの対策をどうしていったらいいか、これから考えていかなくてはいけない部分なのかなということを非常に強く感じております。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 調先生、どうぞ。

○調委員 地方衛生研究所の代表として、遺伝子型別の話が出ましたので少しコメントしたいのです。

 食品からノロウイルスを検出するというのは、カキの場合は方法論もかなり確立していますし、ウイルスの量も多いということで、多くの場合可能であると思うのです。ノロウイルスの感染症といいますか、下痢症は、10個か100個ぐらいのノロウイルスで感染が成立する。患者の場合は、1グラム当たり10の6乗から10乗ぐらいの非常に多量のウイルスを持っていますので、患者あるいは従業員の便からウイルスを検出するというのはそんなに難しいことではないと思います。

 多くの場合、遺伝子型がほとんどの地方衛生研究所で決定されていると私は理解しております。ただ、それが報告に上がっているかどうかはまた別の問題だと思うのです。上がっていないケースがあるとすれば、ウイルス量が少なくて遺伝子配列が決定できなかったということはあると思います。また、中核市の保健所でもノロウイルスの食中毒検査をしていまして、その場合は、リアルタイムPCR法だけでやっていますから、GIとGIIの遺伝子型しかわかりません。配列を読まないとGIのどういう方であるか、GIIのどういう型であるかというのはわかりませんので、基本的に地方衛生研究所から上がっている情報については遺伝子型は決定されていると思います。

 食品の検査ですけれども、カキ以外の場合は非常に少量のウイルスで感染が成立することから、回収の方法は野田先生が開発された方法を御周知いただいておりますけれども、技術的にもなかなか難しいですし、ウイルス量も少ないので、必ずしも検出できるとは限らない。

 やはり大規模な食中毒の場合には、食品の検査を行うべきかもしれませんけれども、かなりの地方衛生研究所の意見を聞いたところ、通常の食中毒において食品からのウイルスの回収というのはなかなか難しいだろうし、実質上困難であるという意見をいただいております。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ほかにノロウイルスは特に御意見ないですか。

 いろいろ御意見いただきましたので、引き続き、国立感染研と国衛研の協力のもと、この対策についてやっていっていただきたいのと、行政サイドでも感染症部局との連携をとりながら続けてこれを検討していっていただければと思います。

 ノロウイルスについてはこれで一旦締めたいと思います。

 その他食中毒について何か。

 五十君委員、どうぞ。

○五十君委員 資料12ページのスライドの24番になります。

 カンピロバクターはまだ細菌性食中毒の患者数、事件数として非常に多いわけですが、その事件数の推移で、原因となるものをグラフで示していただいているところで、恐らく、これはカテゴリー分けとかそういった問題だとは思うのですが、「肉類・加工品」に対して「不明」が非常に少なくなっておる。これは明らかにされてきていて、いい傾向だと思うのですが、「その他」というカテゴリー分けが最も多くなってしまっている。この「その他」に当たるものは実際にどんなものなのか。鶏肉関連のほうがこちらに入ってきているのか。そのあたりの情報をいただけるとよろしいかと思うのでよろしくお願いします。

○山本部会長 いかがでしょう。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 平成27年のデータについて詳しく精査をしていないのですが、26年がカンピロバクター食中毒が多かったため、その原因食品について精査をしたのです。記載については、ノロウイルスと同じように「○月○日の食事」というふうに書かれているのですが、括弧で書かれているのは「鶏刺しを含む」とか「鶏のたたきを含む」という記載が多くあります。

 これは調査の中でですが、食中毒を感知してから原因施設に調査に入ったときには、その現品等はないので、食品等の検査はなかなかできていないという調査状況がある中で、メニューを見ると、鶏刺しとか、鶏のたたき、鶏の湯引き等の鶏肉の料理がメニューとしてある。ただ、調査結果の中で十分に鶏肉とは言い切れないということで、食事等になっている事例も多くなっているのかなと感じております。

○山本部会長 ありがとうございました。

 そうすると、「その他」の中には、そういう鶏に関連したものが含まれていることがあると推定されてはいるということですね。

 カンピロバクターに関しましては、この後、朝倉先生からお話をいただいた後、少し議論をしたいと思いますので、カンピロバクター、ノロウイルス以外で何か。

 益子さん、どうぞ。

○益子委員 川崎市宮前保健所の益子です。ちょっと戻ってスライド3です。

 死亡した食中毒の例、ほとんどが自然毒なのですけれども、年齢を見ると、皆さん70歳以上で高いということ。要するに死亡に至るのは年齢が関係しているのか。若い人も食べているのだけれども、死んでしまうのはお年寄りなのか。それとも、お年寄りにこういうものを食べる習慣があるのか。どのように考えたらよろしいのでしょうか。

○山本部会長 これは道野課長から。

○道野監視安全課長 私のほうから。

 個別の事例について当たってみますと、例えば宮崎県のアオブダイというのも、結局、入手先ははっきりとはしないのですけれども、要は、もらった魚を煮たと。それはブダイとの誤食なのですね。

 あと、フグに関しても、入手経路はよくわからない。ただ、患者の家族の方も若い方が食べておられて、その人たちは発症していないのです。それは、たまたまフグの有毒部位でないところを食べて発症しなかったのか、それとも、同じものを食べていて発症していないかというのはちょっとわからないです。

イヌサフランの関係は、いずれも喫食した方のみが発症している状況です。恐らく、誤食ではないのかというものが多いのです。やはり、家庭菜園だとか、庭に生えていたとか。自宅で亡くなったところが見つかったとか、行者ニンニクと間違えるというケースもあるようですけれども、個別に何と取り違えて食べたというところまでは調査としては追及できなかったようですが、いずれも、お年寄りが召し上がって、それで亡くなった。ただ、家族の方がイヌサフランに関しては3件とも。1件は不明になっていますけれども、これはコルヒチンが出てきた事例なのですが、3件とも御家族は召し上がっていないという事例であります。恐らく誤食に近い話なのではないかとは思われます。

○山本部会長 よろしいですか。

○益子委員 ということは、お年寄りはそういう危険な行為をしたがるということですか。

○道野監視安全課長 一概には言えないと思いますけれども。

○山本部会長 逆に、危険だという認識がないというほうが正しいのではないかと思うのです。それで、自分から積極的に自然のものを食べようとするということから間違いが起こったという感覚ではないかと思います。

 ワイドショーなどでもそういうのが最近取り上げられたりしていますけれども、一般の方がそういう知識をもう少し持っていただくことが重要なのかなとは思います。

 何かありますか。

○梅田食中毒被害情報管理室長 特にお年寄りだからということではないのかもしれませんけれども、恐らく、背景情報としては、日ごろから野草なりをおとりになって食べていらっしゃるとか、自分で釣ってきたものを食べられるという習慣がおありになったようではあるということでございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 西渕委員、何か。

○西渕委員 私もこれに関係したことですけれども、まず、患者さんが皆70歳以上ということで、これは憂慮するべきことではないかと。だんだん高齢化していっていますので、こういう方がこういうものを好んで食べるということ。それから、原因食が、この5つのケースのうち1つだけがフグで、それ以外は余り一般に知られていないようなものなので、今後、こういう傾向があれば、こういう年齢層、リスクグループに対してこういう情報を提供して、周知徹底していったほうがよろしいのではないかという気がいたします。

○山本部会長 御意見ありがとうございました。

○道野監視安全課長 ありがとうございます。

 この事案、自治体から上がってきている情報というのはそんなに多くはないので、どのような状態のお年寄りだったのかということも含めて、また、こういった方々への情報提供はどういうやり方が一番効果があるのかということについてももう少し検討させていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

○山本部会長 調委員。

○調委員 済みません。先ほどのノロの遺伝子型のところでちょっと補足させていただきたいのです。

 遺伝子型が決定することの非常に大きな意味というのは、カキの喫食の場合は、患者さんから多数の遺伝子型が検出される。これは、カキがノロウイルスを蓄積していますので、その理由で複数の遺伝子型が検出されるわけですけれども、その場合はカキが原因であるということを強く示唆すると思います。

 それから、従業員と患者さんの遺伝子配列が全く一致するということも極めて重要な情報で、平成19年のノロウイルス対策ガイドラインの中に、従業員と患者さんの遺伝子型を決定してその一致を示すようにという文言があるのですけれども、先ほど言いましたリアルタイムPCR法だけでIとIIの遺伝子型を決めることができるので、そこを配列と書いていただくと。ただ、遺伝子型のIIという一致だけでは、ほとんどがGIIなのでわからないわけです。しかし、行政担当者はリアルタイムPCR法で遺伝子型が決定できるので、それでいいではないかという考えをお持ちの方もたくさんおられる。遺伝子配列が一致することをきちんと示しなさいということを書いていただけると非常にありがたいと思います。

○山本部会長 御意見ありがとうございました。

 可能であれば、そういう通知も含めて発出するということを検討いただければと思います。

 五十君委員、どうぞ。

○五十君委員 先ほどの死者の出た事例に関してもう一度確認したいのです。

 3例がイヌサフラン関係(推定)ということになっているのですが、これは、先ほど課長から少しコメントがありましたように、推定になっているのは、行者ニンニクと間違えて食べたとか、そのようなことなのですか。喫食するような類似の食材との混乱とか、そういうことなのでしょうか。

○山本部会長 課長、どうぞ。

○道野監視安全課長 事実関係ですので。

 そうではなくて、イヌサフランは見つかっていないです。だから「不明」になっているのです。ただ、患者さんの胃の内容物か、血液か、尿か、生体材料からコルシチンが見つかったということ。それと、残食の中に行者ニンニクがあったと。背景はそういう話ですので、他の死亡事例の記載とちょっと違っているということでございます。

○山本部会長 よろしいですか。

 ほかにないようでしたら、次に進みたいと思います。

 それでは「食品媒介感染症被害実態の推定」について、国立医薬品食品衛生研究所の窪田室長から御説明をお願いいたします。

○窪田参考人

PP

 窪田です。よろしくお願いいたします。「食品媒介感染症被害実態の推定」の厚労科研の砂川班で行っております研究成果を発表させていただきます。

PP

 まず、この研究の目的ですけれども、科学的証拠に基づいた食品衛生行政における施策決定や評価に活用できるようにするため、食品媒介感染症のより正確な被害実態を長期にわたり継続して把握することです。

 その手法に関しましては、まず、検査機関において、宮城県及び全国についての多年度にわたる菌の検出情報を収集し、また、住民電話調査を行うことで下痢症患者の医療機関受診率及び検便実施率を推定し、それらのアクティブサーベイランスデータを用いて確率分布を適用したモデルを構築することで、モンテカルロシミュレーション法により被害実態の推定を行います。

 具体的にその次のスライドで説明させていただきます。

PP

 まず、下痢症の患者さんの報告される模式図です。食中毒等で下痢症患者が発生した場合に、ピラミッドの一番下になりますが、実際に下痢をして医療機関を受診なさる方というのはその一部になるわけです。実際には、下痢をしても数日間で治ってしまうから医者に行かないで治してしまうという方がいらっしゃるわけです。それで医療機関を受診した人は減ってしまう。

 さらに、医療機関を受診した際に、実際に菌を確定するために行う検便の実施ですけれども、検便を行わずに薬だけもらって帰ってしまう方が多い。検便を実施する方はさらに減ってしまう。さらに、その中から菌が検出される方は、このピラミッドの頂点部分になるわけですけれども、ここで菌が検出されて食中毒と認定された場合に、その一部が報告されているという形になります。現在のパッシブサーベイランスシステムだとあくまで全体の患者数、実際の被害者数の氷山の一角しか拾えていない部分があります。もっとたくさんの患者数が存在するということになると思います。

 そこで、米国のフードネット等も同じような手法でやっているのですけれども、我々の研究班では、まず、検査機関における菌の検出数をスタートラインにして、検査感度、精度及び報告率など検査機関におけるデータから、検便検体数が実際にはどれぐらいあるはずであるというのを推定し、検便検査率、実際にどれぐらい検便が行われているかというデータを積算することで、実際にはどれぐらいの人が医療機関を受診するはずだったのかというところを推定し、下痢のときにどれぐらい医療機関を受診したかという医療機関受診率を掛け合わせることで、実際に菌が検出された数からどれぐらいの下痢症患者数がいるかというのを推定するという手法でございます。

 それぞれの項目の掛合わせる積算要素ですが、検査機関のデータ。ここは、検査精度とかそこら辺ですけれども、そこの調査を行っておりませんので、実際はカバー率等で行っています。詳細は次からのスライドで説明させていただきますが、概要です。

 検便検査率ですが、現在は電話による住民調査、実際に不特定多数の方に電話をかけて調査を行って、下痢のときにどれぐらい医者に行ったか、また、その際に検便を行ったかというのを問い合わせるという手法を使っております。赤い四角で囲まれている部分です。以前、予算的な問題で電話調査を行っていなかったときは、医療機関における医師に対する「検便実施をどれぐらいやっていますか」というアンケート調査や、医療機関受診率に関しては、集団食中毒における受診率、どれぐらい受診したかという調査の結果を利用しておりましたが、電話による住民調査のほうがよりバイアスのかかっていない実態だろうということで、現在はそれを利用しております。

PP

 研究のこれまでの概要を説明させていただきます。

 宮城県となっておりますが、全国のデータをいただく前に、最初の研究のスタートラインは、宮城県の医療検査機関の御協力をいただきまして、そちらの小規模な臨床、限定された地域での菌検出情報から推定を開始させていただいたという経緯でございます。

 宮城県における臨床検査機関からの菌検出情報に電話住民調査の医療機関受診率及び検便実施率。あと、先ほどのピラミッドの下は下痢症の患者数になるわけですけれども、そのうちどれぐらいが食品由来食中毒であるかというのは、現時点ではデータとして調査を行えていない。日本におけるデータはないので、アメリカの論文の食品寄与割合。それぞれの検出数、下痢症患者数のうちどれぐらいが食品由来であったかという率を利用しております。

 宮城県の食品媒介感染症推定患者数をそのように推定しました。

 さらに、インターネット調査を以前に研究班で行いまして、下痢症発症率及び医療機関受診率、検便実施率を宮城県と全国で比較しましたところ、宮城県のほうが全体的に高い。ちゃんとお医者さんを受診するということで、人口比率をそのまま日本全国の人口で掛け合わせたとしても過剰推定にはならないということになりますので、本当はもっといるということになると思います。それを掛け合わせることで日本全国のデータとして推定を行っておりました。

 数年前から全国を対象とした検査機関から御協力いただけるようになりまして、そちらの全国を検査対象とした菌検出情報をいただけるようになりました。同じように、そちらからの推定を行いまして、こちらの電話調査の医療機関受診率は、宮城県と全国は対象が違いますので別の電話調査をやっておりますが、それを掛け合せることで、直接、日本全国の食品媒介感染症推定患者数を推定することを行っております。それぞれが大きさの全く違うデータなのですけれども、傾向及び確認のためにお互いのデータを比較するということを行っております。それを実際に、氷山の一角の頂点から、さらに一部が報告されている食中毒統計の食中毒としての報告患者数との傾向の比較及び動向の比較を行っております。

 これは平成16年から21年度まで森川班、平成22年度から23年度まで岡部版、その後、砂川班で現在継続中であります。

PP

 具体的な推定結果に移らせていただきます。

PP

 まず、宮城県のデータから説明させていただきます。宮城県の医師会の2検査機関に御協力いただいております。その2機関がどのぐらい宮城県全体をカバーしているかというのは、データとしては調査を行っておらず、この検査機関長さんのエキスパートオピニオンにより52%ぐらいを我々2機関でカバーしているだろうという情報をいただきましたので、それを利用しております。

PP

 次に、電話住民調査の結果、調査の詳細を説明させていただきます。

 今まで宮城県で夏と冬に1回ずつ、全国調査として夏に冬に1回ずつ、各2週間の期間を設けて電話調査を行いました。全国調査の場合には全国、宮城県調査の場合には宮城県内の一般家庭を電話番号でランダムに選択しました。マスコミ等でよく言われているランダム・デジット・ダイヤリング法(RDD法)という方法で家庭をランダムに選択しました。そのままですと、電話をとられる方というのは、在宅の方、お年寄りの方とか主婦の方に偏ってしまいますので、家庭内で次に誕生日が来る方を回答者として選択するということで、さらなるランダム化でバイアスを減らしております。

12歳から15歳の子供が該当した場合には、親の了承を得た上で本人による回答を行っていただき、12歳未満の子供の場合には、親による代理回答を行っていただいています。

 質問内容ですが、過去4週間において下痢・下血・嘔吐等の有無を質問し、症状があった方にはさらに、その際に医療機関を受診したか否かを質問。そして、実際に医療機関を受診しましたという方には、受診時に検便検査を行いましたかという質問を行いました。

 有症者の条件としましては、24時間以内に3回以上の下痢もしくは1回以上の嘔吐・下血があった人で、慢性疾患や飲酒、薬物影響や妊娠その他の除外条件を適用しています。

PP

 電話調査の結果をお示しします。

 全国と宮城と両方のデータが入っている表ですが、右側が宮城県の2006年冬と2007年夏に行ったデータです。それぞれ1万件、1万2,000件のコール数で、有効回答数は2,000件になるように電話調査を依頼しました。

 回答率は、20%、17.7%と想像していたよりは高い回答率。実際に電話をかけたうち、2割、17%、20%の方に御協力いただけたということになります。

 そのうち有症者は、それぞれ70人と74人、3.3%、3.5%。下痢症の患者さんが一般の中から3.5%ぐらいいらっしゃるということになると思います。

 そのうち、医療機関を受診なさった方は、それぞれ38.6%、31.1%となります。

 さらに検便実施者数になりますと、14.8%、8%という方が検便までしていただいたということになります。

PP

 夏と冬のデータを統合するとデータ量が多くなるということで統合しまして、それぞれを確率分布のモデルに入れて1万回施行したところ、宮城県においては医療機関の受診率は32%、下痢をした場合には3割の方が医療機関を受診なさっている。そのうち1割の方が検便を実施している。9割の方は検便をなさらないということになるわけです。このようにして数値化しております。

PP

 この次の図は、具体的にどういうふうに推定が行われるかという説明図で、2005年の1年分だけを例としてお示しします。

 カンピロバクター、サルモネラ、腸炎ビブリオの3菌についてデータを収集して行いました。この3菌を選んだ理由は、食中毒としてたくさん報告されているという部分と、以前より問題になっている菌だということ。同時に、各検査機関で下痢症検便検体が来た場合に、ほかの菌もあるのですけれども、この3菌は基本セットとして検査を行う菌の1つであるということです。すなわち、検便として来た場合に必ず検査を行っているということで設定しております。

 具体的に「検出数」というところがそれになります。先ほど申し上げました52%ぐらいをうちの検査機関がカバーしていますよというのを掛け合せると、宮城県内でその倍ぐらいいるだろうという形になります。さらに、検便検査率11%ぐらいを掛け合わせて、さらに32%を掛け合わせることで推定患者数がこれだけいるだろうとなっております。海外で人口10万人当たりという推定を行うことが多いので、出しております。

 これからお見せする全ての数字でちょっと注意しなければならない点は、全て確率分布を掛け合わせた数字になっておりますので、これはあくまで平均値になります。下に図があります。推定結果の最後の数字はこのようなグラフになるのですけれども、このうちの平均値を数字としてあらわしていますので、実際にはこの5%から95パーセンタイルの数字というと、ここからここまでの間の分布となります。平均値はあくまで平均値として参考までに出しているということで、数字には幅があるということを御理解いただければと思います。

PP

 先ほど少し申し上げた、実際に下痢症がこれぐらいいた場合に食品由来の割合はどれぐらいなのかという数字になります。日本においてはそういう研究及びデータがありませんでしたので、米国の研究による下痢症被害実態における食品由来割合を使用して、下痢症患者数から食品由来下痢症数を推定しました。

 実際にCDCMeadの論文ですが、下痢症に感染した場合にカンピロバクターは8割が食品由来にあるのだろうと。サルモネラは95%、腸炎ビブリオは65%だろうという数字になっております。それを利用しました。

PP

 宮城県におけるデータをお示しいたします。

 検出数が左から3列目、推定下痢症患者数となったのが次の右の列で、10万人当たりを出しています。その次が、食品割合を掛け合わせた、実際に食中毒患者、食品由来患者がこれぐらいいるだろうという数字になります。一番右側が、食中毒統計により報告された患者数となります。

 後ほどもまとめたデータ等をお示ししますが、報告されていない患者がこれぐらいたくさんいるのではないかという推定結果とともに、食中毒の報告数と実際に検出されたものから推定された数字ですけれども、年度によって増減が必ずしも一致していないということになります。

 また、県単位で見た場合には、腸炎ビブリオの2007年のデータの627人という1つだけすごく大きいのがあるのですけれども、これは宮城県の事業者さんの例で、東京都やらほかのところに出荷された食品ですので、実際に患者さんの発生は別にあったのですけれども、まとめて宮城県で報告するという形になったため、このような突出した数字が1つ出ております。実際に宮城県の患者数はその括弧内の17人となっております。

PP

 実際にインターネット調査から、医療機関受診率や検便実施率は、全国と比較した場合に宮城県のほうが高いことから、人口比を掛けてもオーバーエスティメート(過剰推定)にはならないということで、掛け合わせてみたときの比較がこの表になります。これは後ほどまた出しますので飛ばさせていただきます。

PP

 次に、全国のデータからの推定を御説明させていただきます。

 現在、全国の検体を検査している3社さんに御協力いただいて、データをいただいております。さらに、腸管出血性大腸菌もしくは大腸菌O157報告数をいただいて、全数報告でありますので、それと各社の検出数を見ることで、どれぐらいの全国の検体をカバーできているかというのを推定しています。2013年の場合にはそれぞれ1.2%、2%、16.7%で、3社を合計すると19.9%。全国の検体の約2割がカバーできているという推定をしております。

PP

 先ほどの電話調査の全国版ですが、全国の調査でも1万3,000件のコール数で16.9%、15.2%。協力する人が宮城県よりちょっと少ないデータになっています。実際の下痢の有病率は3.7%、4.4%。医療機関を受診するのは29.9%、18.9%となっております。

 検便実施者数は、2009年冬の調査のときには8.7%だったのですが、2014年夏に行った調査では実は0人という調査結果が出てしまいまして、ちょっと数字が出せない状態になっております。ただ、確率分布の中には入れることができますので、この2つのデータを統合して分布を出しております。ただし、0人が入ったことによって全体の宮城県やこちらのデータだけに比べると、推定する患者数がふえてしまうというバイアスがかかってきてしまっております。

PP

 実際にその2つのデータを統合しますと、医療機関受診率は28.2%、検便実施率は5.8%になります。

PP

 同じように行いますと、全国データからの結果はこのようになります。検出数から推定下痢症患者数、そして食品由来の患者数になります。

PP

 その次のスライドは、宮城県データと全国データからの推定食品由来患者数の比較の図となります。こちらを見ていただくと、宮城県データからの推定と全国データからの推定は結構大きな数字の差になってしまっていると感じられると思いますが、あくまで宮城県のデータサイズと全国のデータサイズは大幅に違うということと、特定の地域であることからそういうバイアスがかかっていると考えることができます。

 また、電話調査の結果も、全国データは0人というのが出てしまっているのもあって、より大き目の推定に多少振れてしまっているという部分も影響していると思います。

 見ていただきたいのは、数字もそうなのですが、あくまで食中毒患者報告数の変化の差の部分です。例えばカンピロバクターの2011年、12年、13年あたりを見ていただくと、食中毒統計では報告患者数は減り続けているにもかかわらず、2013年では検出数がふえて、変化が見られています。また、腸炎ビブリオのところでも、2011年、12年、13年あたりも一致していない等、変化があります。この理由の1つとしましては、最初に申し上げるのを忘れたのですが、この手法で一番有効なのは、食中毒報告はアウトブレーク等の事例が多くなってくるわけですけれども、そこら辺に報告されないような散発事例の患者数も含まれた推定の数になりますので、報告等に上がってこない患者さんのアウトブレーク事例の入っていない、散発事例の患者さんが入っていると考えていただければと思います。

PP

 最後のまとめになります。最初の概要の結果ですけれども、比較しましたところ、既存のサーベイランスシステムによる食中毒報告数の400倍から5,900倍等の患者数の存在が推定されました。報告患者数の年度毎の変化も推定患者数と一致していないことから、既存のサーベイランスシステムは非常に重要で効果的なのですけれども、そこにさらに散発事例等も含まれたアクティブサーベイランスシステムがあるとより正確に状況を把握できるだろうということが推測されました。

PP

 本研究により得られるデータの特徴と期待される効果ですが、アウトブレーク患者に加え、食中毒として報告されることのない散発事例の患者も含めた患者数を把握するデータであり、散発事例も含めた被害実態を把握することが可能となる。また、長期間にわたる発生傾向を把握することが可能となります。大規模アウトブレーク等による食中毒発生動向把握への影響を抑制することが可能となります。また、発生傾向の把握により、行政施策の立案等が可能になるとともに、その行政施策の施行前後を比較することで、その効果の評価等が可能になります。大きいアウトブレークが起きますと、ふえた、減ったというのが大きく引っ張られますので、そのようなもののない散発事例も含めた推定を行うことで、実際の比較がより容易になると考えます。欧米を中心として同手法による被害実態把握が広く行われていることから、国際的な比較等も行うことが可能になります。また、被害実態把握における各種研究の基礎データとなります。例えば経済的な損失とか、さらに深めたような推定を行う場合に、まずはそのベースとなるデータとして活用可能だと思われます。

PP

 今後の研究の方向性ですけれども、まず、このアクティブサーベイランスは継続性が一番大事だと思います。ベーサルのデータとしてこれぐらいの移行をしている。そこが動いたときにどう考えるかというのに非常に有効に活用できるようなシステムですので、その継続を行っていきたいと思います。

 そして、推定精度の向上。まず、検査機関のカバー率の推定や電話調査の医療機関受診率等、電話調査で「0」が出てしまった部分とかの改善を検討していければと思っています。また、食品由来割合、食品寄与率。この菌はどれぐらい食品に由来しているのか、原因しているのかという部分の推定は、アメリカのデータを使用していますので、そこら辺も研究することで、日本に特化したような、アメリカと日本とは食習慣が違う可能性がありますので、そこら辺の影響もないように、なるべく少なくするような精度向上を図りたいと思います。

 また、対象微生物の拡大です。今、3菌で行っていますけれども、これをほかの菌に関しても多くしていくように努力していきたいと思っております。ただ、ノロウイルスはこの会議でもたくさん出ておりまして、各方面からもノロウイルスの推定はできないのかという御意見を多々いただくのですけれども、最初に申し上げたように、この3菌に関しては必ず全部の検体で検査をしている基本セットですが、ノロウイルスはそうではない。あと、ノロウイルスの場合には、ヒト・ヒト感染が多くて、食品由来割合というのも考えなければならないということで、同じシステムですぐできるという形ではないのですが、非常に重要な内容だと思いますので、今後検討していきたいと思います。具体的には、アメリカのCDCとかですと、カイザーパーマネンテという健康保険医療機関、システムがありまして、そこら辺でコホート研究みたいな形で協力していただいて、そのコミュニティーの中で実際にノロウイルスがどれぐらい発生しているのかというのを検討したりしている例もあります。

 以上です。ありがとうございました。

○山本部会長 ありがとうございました。

 時間がちょっと延びてきております。

 この研究内容の御紹介というのは、以前、調先生の前任である小澤先生から、食中毒統計だけでは一般の人をミスリードするおそれがあるということから、実際に裾野としてどれぐらいの患者数が存在するのかという御意見がありました。それを受けての研究ではないかと思っております。

 これに関しまして、何か御質問、御意見ございますか。

○今村委員 ちょっと1つだけ。

 すばらしい結果で、大体こんなイメージだと思うのですけれども、数字のつくり方でぜひ確認したいことがあります。

 後ろから3枚目のスライド、全国の被害実態推定のところのカンピロバクターの検出数を見ていると、2006年から2013年にかけて結構ふえていっているのですけれども、推定患者数が随分減ってきている。この推計方法だと、検出数がふえていくとこれがふえていくような気がするのですけれども、これは何で減っていくのですか。

○窪田参考人 この検出数というのは検査機関からいただいている生データでございまして、それぞれの年度の検査機関のカバー率なのです。新しくなればなるほどカバー率が上がってきている形でございまして、その影響でございます。ちょっとわかりにくい表になってしまっていて申しわけありません。

○今村委員 わかりました。

○山本部会長 ほかにございますか。

○調委員 カンピロバクターは特に潜伏期間が長くて、症状も特異的ではないので、患者数の把握というのは非常に難しいところですね。こういうスタディーは非常に貴重だと思います。

 イギリスでは、2009年、2010年のフード・スタンダーズ・エージェンシーの報告書があるのですけれども、そこで32万人という推定数を出していまして、イギリスは6,000万人ぐらいですから、日本のあれにすると60万人ぐらいの患者数があるだろうと。その報告書の中に、カンピロバクターによる社会的損失というのは非常に大きくて、なかなか許容できるものではないというような非常に大胆な報告書になっているのです。

 また、アメリカでも、CDCの雑誌のEID2011年でしたか、推定患者数は84万人ぐらいという報告がありましたけれども、2015年の米国のデパートメント・オブ・アグリカルチャー(農務省)の報告書は、その数字を使って、エコノミックバーデンが20億ドルぐらいあるという推定を出しています。それからすると、日本の患者数というのは、もしそれの10倍あるとすると、非常に大きな社会的なインパクトがある数字だろうと思っています。

 また、カンピロバクターは下痢症だけではなくて、3,000人から1,000人に1人ぐらいがAMANタイプという、運動ニューロンの軸索が障害される重症のギランバレー症候群を発症すると言われています。そういう意味で非常に注目すべき推定患者数が日本でやっと出されたというのは非常に注目すべき報告であろうと思っています。ありがとうございました。

○山本部会長 ありがとうございました。

 砂川先生、どうぞ。

○砂川委員 窪田先生には非常に重要な研究をやっていただいていて、とても重要な情報を出していただいていると思います。

 今、厚労科研の砂川班とは違うAMED片山班という下痢症ウイルスの研究班のほうで、ノロウイルスの推定受診患者数の推計を、私のほうが別途やっております。要は、インフルエンザの推定受診患者数が毎週のように報告されますが、それと同じ手法で、内科の定点の数をふやしつつ、感染性胃腸炎の推計受診患者数を算出してみようというものです。手法が違いますので、片山班で出てくる情報と、窪田先生が食中毒班の中でやっていただいている方法などと比較していきながら、より精度の高いノロウイルスの被害実態の推定というところに結びついていければなと思っております。

○山本部会長 ありがとうございます。

 ほかに。

 中村先生。

○中村委員 1点教えていただきたい。

 先生の行った推定は、RDDを使った住民に対する電話調査が基本になっていると思います。有効回答率が全国でも宮城県でも2割いくかいかないかぐらいなのですけれども、一般的に、マスコミがRDDを使ってやっている世論調査などでは、有効回答率が5割とか7割とかそれくらいいっていて、先生のこの研究では、それに比べると有効回答率が随分低い印象があるのです。その辺の理由というか、御検討をどのようにお考えでしょうか。

○窪田参考人 海外の電話調査の結果とかと比較するとかなり高いほうだと思うのですね。その世論調査がどのような調査か、どのぐらいのサンプルサイズでやっているかというのはちょっとわからないのですけれども、そういう影響もあると思います。これは結構長い質問票の調査で、まず最初に、こういう研究でこのために厚生労働省として調査をしていますという説明を長々として、御了承いただいた後にやっているので、そこら辺の了承いただけるというところまでの説明の時点で、ああ、もういいですと言われてしまう可能性はあるかと思います。ただ、そこは非常に大事な部分だと思いますので、了承いただいて、データをいただくという部分は、そこの部分の影響もあるかもしれません。

 具体的にここが影響ですというのは、電話調査会社の方ともお話ししたのですけれども、必ずしもこれは低い回答率ではなくて、むしろ、意外と回答してもらえていますねという印象を持たれていたので、それは調査内容と話題の内容、こういう調査ですといったときの内容によって違ってくるのかもしれません。

 余り専門的ではないので、そこの部分はいいお答えができなくて済みません。

○中村委員 ありがとうございました。

○山本部会長 よろしいですか。

 課長、どうぞ。

○道野監視安全課長 先ほど部会長から御紹介あったとおり、本部会で従来から課題になっていた数値といいますか、データを途中経過ということですけれども、御報告をお願いしたわけです。

 我々、こういった施策を立案していく中で、特に社会的な説明をしていくという場面では、こういった数値というのは非常に重要ですし、また、経済影響に関しても表に出していくことになると、やはりこういったデータがベースになってきますので、行政的にも必要かつ重要な課題と認識しています。

 今、HACCPなどに関しても議論しているところですので、そういった施策としての必要性を説明していく上で必須ということもありますので、ぜひ全体像についても早い段階で示していただけると、かなりいろいろな過程があるということはよく理解しておりますけれども、そういったことも含めてお示しいただければ非常にありがたいと考えております。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ほかに御意見ございませんか。

 西渕先生。

○西渕委員 宮城県というところにちょっと質問ですが、なぜ宮城県なのか。

○窪田参考人 初めにデータをいただけるところを探しまして、全国津々浦々、問い合わせをさせていただきました。実際には数字しかいただいていないので個人情報とかは問題ないのですけれども、そこら辺にナーバスになっていらっしゃる方も多い部分と、あとは、労力的な問題も多少ありますので、御協力いただけるところがなかなかなかったのですね。そうこうしておりますときに、当時の宮城県の検疫所長の岩崎先生が同じような研究内容でできないかということに御興味を持っていただいていて、岩崎先生が取りまとめていただいて、宮城県の医師会のほうからデータをいただけるようになったという経緯でございます。

 あと、検査機関のカバー率が52%、医師会の検査センターが50%ぐらいカバーしているだろうという話をいただいているのですけれども、ほかの県だとそんなにカバー率が高いところはなかなかないという話でして、あと、民間検査に出してしまっているところが多いということで、データがなかなか集まりにくかったという経緯もございます。

○西渕委員 そうすると、これは宮城県のデータをもとに、宮城県の患者数を推定したデータになっていると同時に、それをもとに全国の患者数も推定する1つの手段として使われているというふうに理解していいですか。

○窪田参考人 当初は全国のデータがいただけていなかったので、それで仕方なく宮城県のデータから全国のデータを推定していただいている部分です。その後、ごく最近ですけれども、全国のデータをいただけるようになりました。そちらと、宮城県のデータもいただいておりますので、動向の整合性を比較するために引き続きいただいて比較検討しているところでございます。

 あと、本来でしたらほかの地域でもデータをいただけて、その地域ごとの比較ができれば、その地域ごとの発生動向とかも見えて興味深いと思うのですけれども、データをいただけるところまでなかなか行っていないというところでございます。

○西渕委員 そうですね。感染症によっては、地域によって発生率が大分違うと思うので。

○窪田参考人 ありがとうございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 今後、このようなデータを使いつつ行政施策に反映していただければと思います。さらに、これが出てくることによって、経済的な損失の推計にも大いに活用ができるのではないかと期待しております。この話題につきましてはこの辺で締めさせていただきます。

 次に「食鳥肉におけるカンピロバクター汚染のリスク管理」に関する研究ということで、国立医薬品食品衛生研究所の朝倉先生にお願いいたします。

○朝倉参考人

PP

 よろしくお願いいたします。

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 平成27年の食中毒発生状況等については、冒頭で事務局御担当者様から御説明いただいたかと思います。それ以前、2010年から14年、さかのぼること5年間での発生状況についてお示ししておりますのが左側の図になります。

 また、その中で、原因食品が特定された事例の割合ということで赤枠でお示ししておりまして、その詳細について、どういった食品が原因となっているかということをクローズアップして比率であらわしたのが右側の図になります。こちらで見ていただくとおわかりのとおり、従来、およそ6割から7割程度のカンピロバクター食中毒事例においては鶏肉が原因食品と推定されておりました。一方で、およそ2割もしくは最大で3割程度は牛肉が原因食品ということも言われておりましたけれども、2011年、それから12年、幾つかの食肉にかかわる施策の実施に伴って、2013年以降、牛肉を原因食品としたカンピロバクター食中毒の割合は減少傾向にあることがうかがえます。逆に申し上げると、鶏肉に対してのリスク管理の重要性がより増しているというのが昨今の事情かと思います。

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 そういった中で、農林水産省の資料を参考としまして、鶏肉、牛肉、豚肉における国民1人当たりが年間に消費する量を大まかにプロットした図を作成してこちらにお示ししてございます。青色でお示ししておりますのが鶏肉になります。一目していただくとおわかりかと思いますが、年次に応じてその消費量は増加傾向にあるということがうかがえます。

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 特に細菌性食中毒としては、その発生件数が最も多いということは従来から言われておりまして、近年の動向としては、原因食品として鶏肉がその重要性を増している状況にございます。

 カンピロバクター自体は、鶏生体の飼育段階ですでに腸管内に保菌が持続的に行われるという状況がございますので、農場での対策が根源的であるということはございます。一方で、現実的な問題としては、農場だけで本菌の制御を行うことは困難な状況にあるということもあり、農場から消費までフードチェーンを通じた総合的な対策を考慮すべきであるとの考えが認知されております。

 その後、2009年、食品安全委員会では、鶏肉中のカンピロバクター・ジェジュニ/コリ等に関する食品健康影響評価書が策定されました。同評価書においては、幾つか低減対策が提案されてございましたので、平成24年度から26年度にかけて実施された厚生労働科学研究においては、分担研究課題として、これにかかわる有効性の検証に取り組み、一定の割合でその有効性を評価することができました。

 しかしながら、それらの対策については現実的に実施が困難であるということも明らかとなったため、平成27年度からはより現実的な、実施可能なリスク管理施策の構築へ向けて、これに資する研究を行うべく、新たに研究班を開始した状況にございます。

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 以降、本年度から開始させていただきました研究班での研究計画、そして本年度の研究成果の概要をお示ししたいと思います。

 本研究班では、農場、食鳥処理、流通、消費の計4段階について、3年間での計画案を作成し、最終的に食鳥肉におけるカンピロバクターに対するリスク管理の向上を目的とした研究を進めているところです。

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 まず、農場段階においては、全国の計7農場を対象として出荷時齢の鶏盲腸便を採材し、それらにおける汚染実態を定性的に検討いたしました。

 まず、九州地方のA農場については、同時並行的に飼料中に抗生物質を投与した鶏群と投与していない鶏群というのが飼育されてございましたので、それらを比較しましたが、一般的に言われておりますように、抗生物質は一定の抑制効果をもたらすのであろうということが推察されました。しかしながら、同一の管理会社下にあるB農場においては、有薬飼料を与えていたにもかかわらず、全てが陽性となっており、抗生物質の投与等のみによる制御は困難であるということも同時にわかりました。

 また、北海道・東北地方の1農場については、出荷2日前のものを出荷時齢と同等とみなして対象としておりますけれども、それより以前の日齢についてもサンプリングを行い、その汚染実態を検討いたしました。しかしながら、これらはいずれの日齢時においても本菌が分離されないというような状況が把握されました。

 また、関東・甲信越地方の計4農場については、上の2農場が陽性、下の2農場が陰性となり、これらは同一の飼料形態で、同一の管理会社下にあるにもかかわらず、そうした場間で有意な差が見られる現象を把握いたしました。

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 これらのうち、カンピロバクターが陽性であるD農場とE農場、カンピロバクターが陰性であるC農場とF農場を代表的な農場として無作為に抽出し、各農場由来の盲腸便検体を構成する細菌叢について、16SrRNAパイロシークエンス法によって比較・検討を行いました。こちらにはその比較検討図をお示ししております。Y軸上には個々の農場由来検体における占有率を菌属レベルでお示ししております。農場間によって菌叢構成には大きく違いが見られるところも多々ございましたが、共通して見られたのは、一番下側から、ドレア、フェカリバクテリウム、そしてクロストリジウム等が優性に存在している状況が把握されました。

 また、その上に当たります紫のバーはバクテロイデスに該当しますが、本属菌についてはカンピロバクター陽性農場では低い構成比率であったのに対し、カンピロバクター陰性農場では高い割合、およそ15ないし20%程度の構成比をもって存在していることが明らかとなりました。

 この成績から、1つの候補としてバクテロイデスがカンピロバクターの鶏腸管内定着と関連性を示す菌群として同定されました。本属菌を含め、今後は対象農場を拡大しつつ、継続的な調査を行うことによってカンピロバクターの制御を菌叢のコントロールから検討するような計画案を策定してございます。

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 時間の関係から、こちらのスライドは割愛させていただきます。

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 食鳥処理段階においては、大きく分けて3つの検討項目を設定し、その実施に当たっております。

 まず、食鳥処理場においては、交差汚染の問題が最も対処すべき課題と認識されております。交差汚染を助長する1つの工程としては、中抜き、そしてその後のチラー冷却工程が重要であるということは周知のとおりです。

 1つ目として、中抜き装置については、これらを製造する機器メーカーへの聞き取り調査を行いました。平成4年に食鳥検査制度が開始されたときに比べますと、現在、製造・販売されている同機器に関しては、腸切れ等の発生はほぼ生じない性能を有しているとの情報を得ました。

 一方で、こうした機器を使った場合にも現場では一定の割合で腸切れ等が発生しているという状況もあることから、その要因について、現場での作業実態等を勘案した結果、中抜き装置については、食鳥の大きさの違いに応じて、その都度、機器の調整を行う必要がある一方、作業従事者の方がこうした対応をなされているか否かということが1つの大きな要因になっている可能性が推察されました。来年度以降は、定期的な教育訓練を通じて、その対応の有無等が腸切れ等の発生にかかわるか否かということを比較検討したいと考えております。

 また、エアーチラー導入施設の視察・協力依頼を行いました。そして、国内では少なくとも2カ所の処理施設においてエアーチラーが導入されているということから、その処理条件等に関する情報を収集するとともに、来年度以降、交差汚染というものが当該装置を用いた場合にどの程度発生しているものなのかということを実態データとして報告したいと考えております。

 あわせて、海外で既にHACCPを導入されている食鳥処理施設を視察し、衛生的な管理運営を行う上で有用性が期待される施設・設備の中で導入が比較的容易なものについての情報を収集しているところです。これらは国内での導入も可能性があり、今後、施設を新設あるいは改築される際に活用していただけるような資料として整理をしているところです。

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 続きまして、流通段階になります。先行研究においては、いわゆる研究用の緩慢冷凍装置を用いて、カンピロバクターの食鳥肉中での低減に有効であることを示してきました。しかしながら、現実的な視点から、冷凍処理の欠点としてよく言われることではございますが、緩慢冷凍処理を行った場合には品質の低下を招くおそれがあるということがございます。

 こうしたことを担保するために、食品業界で一般的に昨今使われるようになってきております、急速液体冷凍装置を一例として用い、その汚染低減効果について検討いたしました。

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 その成績概要をこちらにお示ししております。左側には急速液体冷凍を行った場合、右側には、これは空冷の緩慢冷凍を行った場合の鶏モモ肉中でのカンピロバクター生存菌数をパーセント表示した図になります。赤枠でお示しした箇所は、急速液体冷凍で3時間処理した時点での本菌の生存率は、およそ10分の1から100分の1程度まで低減する結果が得られました。緩慢空冷冷凍処理群において、同等の低減効果が満たされるためにはおよそ24時間程度処理を行う必要があり、急速液体冷凍処理法によって、より短時間で速やかに一定の汚染低減効果が図れるであろうとの知見を得ております。

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 また、実際に食鳥肉の加工施設に導入されておりますクラストフリージング装置を用いて、その汚染低減効果が実際にあるかどうかということを、1施設で比較検討いたしました。検体対象部位は、モモ、ムネ、ササミ、レバー、砂肝の5部位とし、冷蔵あるいはクラスト冷凍処理を行った後のカンピロバクター菌数と衛生指標菌数をそれぞれ算出してございます。モモを除く4部位の検体ではいずれもクラスト冷凍処理によって一定のカンピロバクターの汚染低減が示されました。

 一方、指標菌数に関しては、冷蔵処理群と冷凍処理群間で有意な差が認められたのは砂肝の一部にとどまり、カンピロバクターはいわゆる一般的な指標菌に比べ、冷凍に対する感受性が相対的に高いであることが示唆されました。

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 最後に、消費段階に関する検討結果になります。本年度は、南九州に流通しております、いわゆる生食用の鶏肉については、一般的に表面を湯引き、あるいは炙った状態で販売されてございました。対して、こうした処理が行われていない「加熱用」との表記のある鶏肉についても、半定量的にその菌数の分布を比較いたしました。

 検体数としてはまだ少ない状況にはございますけれども、総じて、いわゆる生食用の鶏肉検体については加熱用検体に比べ汚染菌数が低いということが示されました。

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 今後の主な計画についてこちらに列挙させていただきました。農場段階においては、先ほど冒頭にお示ししたバクテロイデス等の特定の菌叢を用いて、カンピロバクターの生存性自体への影響、あるいは鶏生体に投与した際のカンピロバクターの制御に関する影響評価を行いたいと考えております。

 また、食鳥処理については、エアーチラーでの実態調査とともに、教育訓練の有無によって、交差汚染、腸切れ等の発生がどの程度低減あるいは増加するのかといったところを検討したいと考えています。

 また、流通段階においては、表面を炙るような作業が鶏肉中での汚染低減にどの程度有効であるのかということを定量的に評価するとともに、今後、食品添加物として指定されるであろう過酢酸等について汚染低減効果の検証を行うということも考えております。

あわせて、冷凍処理を通じた品質の変化ということがどうしても着目されるところであると考えておりますので、こうしたことについても今後の検討課題とさせていただきたいと思います。

 また、消費段階では、異なる消費地間での汚染実態を比較するとともに、実際、今回の検討結果によって生食用での検体は総じて低い汚染菌数であったということを受け、これらを解体処理・加工している施設での衛生管理実態について把握したいと考えております。

 最後になりますが、市販の鶏肉中でそもそもカンピロバクターがどの程度生存するのかといったところも、消費者の観点、特にその保存の方法のあり方について議論する上では重要な知見が得られると考えますので、検討材料としたいと思います。

 簡単ではございますが、以上で発表を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○山本部会長 ありがとうございました。

 朝倉先生のただいまの御発表と事務局からのカンピロバクターに関する説明をあわせまし、御質問、御意見等がございましたら、お願いしたいと思います。

 失礼しました。事務局からの説明が抜けておりました。

○川越乳肉安全係長

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 では、監視安全課乳肉安全係の川越より資料5について説明をさせていただきたいと思います。時間も押しておりますので、簡潔に説明していきたいと思っております。

 資料5のパワーポイントの右下に振っております数字の2ページをごらんください。

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 この事業の目的。食鳥肉における微生物汚染低減策の有効性実証事業というものについて、平成28年度より希望する地方自治体において当該事業を行う予定となっております。この事業の目的としましては、先ほど国立医薬品食品衛生研究所の朝倉先生からお話のありました厚生労働科学研究の研究成果、その他、海外等で行われている食鳥肉におけるカンピロバクター等の微生物汚染低減策について、実際に食鳥処理場等の現場で実証を行うことを目的としております。

 事業の内容として、1つ目としましては、鶏の食鳥処理の段階で行われている冷却工程というところがございます。こちらになるのですけれども、今、全国の食鳥処理場においては一般的に次亜塩素酸ナトリウムというものが使われております。この次亜塩素酸ナトリウム以外の、例えば亜塩素酸水や微酸性次亜塩素酸水というものを用いて、実際にカンピロバクター属菌数等がどれぐらい低減するのかというのを検証していただきたいと考えております。

 2点目としましては、先ほど朝倉先生からも御説明がありましたとおり、生食を目的として食鳥屠体の焼烙であったり、ササミ等の部分肉の焼烙、湯引きというものが一般的に行われております。また、食鳥処理方式の違い。非常に専門的で大変申しわけないのですけれども、外はぎ方式と中抜き方式というものがございまして、外はぎ方式というものは

屠体から先に手羽先とかモモ肉等の部分肉をとった上で、最後に内臓を取り出す方式になります。

 中抜き方式というものは、最初に脱羽された屠体から内臓を取り出して、その後、部分肉をとっていくという方式になります。この食鳥処理方式の違いによってどれぐらいカンピロバクター属菌等が低減していくのか検証していただきたいと考えております。

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 次のページに移らせていただきます。3点目としましては、先ほど朝倉先生より御説明のありました冷凍処理につきましても、実際に現場でクラストフリージング処理といって、食鳥部分肉にマイナス15度程度の冷気を当てて急速冷凍させる方法もございまして、当該凍結処理が実際に現場で行われている例もございます。実際に行われている現場でどれぐらいカンピロバクター属菌等が落ちるかということも検証していただきたいと考えております。

 まとめとしまして、厚生労働省は、この実証事業の実証報告を取りまとめて、地方自治体の職員や食品等事業者の衛生管理に資する事例集等を作成して普及を図り、カンピロバクター食中毒の予防対策の一環として行っていきたいと考えております。

 以上でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 失礼しました。

 ただいまの説明と朝倉先生の御報告をあわせまして御質問、御意見ございますか。

○倉根委員 ありがとうございました。

 肉になってからは厚労省の管轄だとは思うのですけれども、なる前の、育てているところは恐らく農水が管轄しているところだと思うのです。そことの連携というか、非常に大切なところだと思うのですけれども、そこは実際にどういうふうになっておるのですか。

○道野監視安全課長 例えば、全国の食肉衛生検査所の研究の発表会などを見ていますと、一部の地域では、生産段階、農場でカンピロバクターがどれぐらい汚染しているかというデータを踏まえつつ、食鳥処理の段階でどのように菌数が動いていくかというような調査もやられていることはやられているのですけれども、先ほど朝倉先生から御紹介いただいたように、食品安全委員会の評価などでは、要は、一日の処理というのをカンピロに汚染されていない直腸群を先にやって、その後、汚染されているものをやるというやり方もあるのではないかという御提案をいただいているわけです。では、全国それが対応できるかというと、ほぼ不可能という状況もあって、やはりフィージビリティーのあるもの、現行の処理のシステムというものをできるだけ変えないような形でやっていくことを今回目指していまして、そういった意味で、食鳥処理場での汚染のベースラインを下げるということと、生食なり、それに準ずるようなもので提供する場合に、さらにどういう下げ方があるのか、そういうコントロールの仕方があるのかというのを整理してまいりたいということなのです。

 したがって、生産段階での連携というのは非常に重要ではあるのですけれども、行政面は連携できても、事業者サイドとしては、経済的な動きもあるものですから、優先順位を下げてまで動かすというところまでは実はまだ行けていなくて、むしろ現状のシステムの中でどれだけ改善するかを今回は目指しているという状況でございます。

○山本部会長 よろしいでしょうか。

 ほかにございませんか。

調委員。

○調委員 先ほどのCDCが発行しているEIDの論文の中に、ニュージーランドで2006年から2008年の2年間にカンピロバクターが半減したという論文があって、それは対策によるのか。その論文の中でも、サーベイランスのミステークではないかとか、食習慣が変わったのではないかとか、さまざまなディスカッションもあるのですけれども、ほかの国も結構似たような対策を。恐らくフリージングだと思うのですが、そういう対策をとっているところもニュージーランドほどは減っていないという報告もあるようです。そうはいっても、ニュージーランドが何をしたのか、実際に効果があったのか、そういったことも含めて、もしわかっていれば。実際、サーベイランスのミステークといっても、ギランバレー症候群が13%減ったという論文なので、恐らく、患者数は減ってはいると思うのです。そこでどういう対策がとられたのか、もし御存じでしたら教えてください。

○山本部会長 ありがとうございます。

 朝倉先生が前に調べられたと思うのですけれども。

○朝倉参考人 おっしゃるように、フリージングについては、初めに導入されたのがアイスランド、その後で、ほぼ同じ時期にニュージーランドとデンマークで導入された。それぞれにおいて少なくとも論文の成績としてはその後一定の低減効果があったということは、その3カ国については報告がされています。

 ただ、そこで実際に当たられた冷凍の方法だとか、そういった論文から読み取れない部分が多々あるということと、それらの3カ国と異なる点としては、そういった処理に当たる業者の数が当該国ではかなり集約されている。一方、日本では、比較的、その業者数が多岐にわたる、その形というのも多様であるということがありますから、あくまでも参考としつつ、その中の1つの手法として冷凍がどの程度有効なのか、品質等々の面も含めて現実的なものとして今後有効活用できるのかできないのかということを見きわめていきたいと考えております。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ほかにございますか。

 細菌性食中毒ではカンピロバクターが最後に残っているという状況ですけれども、これまで生食肉の対策として、牛の生レバーの提供禁止とか、豚の生食用の提供禁止というように、禁止、禁止で来ているのですが、鳥肉に関していきなり禁止かという話もあります。そうではない対策でうまくいっているサルモネラとか、腸炎ビブリオという例もありますので、その辺を踏まえて、可能な限り対策についていろいろ検討していただいた上で施策を打っていただきたいと思っております。今後、鶏肉に関する対策については、厚生労働省に十分に検討していただいた上で提言していただければと思います。朝倉先生の研究も期待されるところです。よろしくお願いいたします。

 来年度以降、実証研究もやるということですので、その辺のところも大いに活用していただければと思います。

 ほかに御意見がないようでしたら、これでこの話は打ち切りたいと思います。

 そのほか、事務局から何かございますか。

○事務局 そのほか、特にございません。

○山本部会長 それでは、本日の「食中毒部会」はこれで終了といたします。

 若干時間を過ぎてしまいまして申しわけありませんでした。長時間にわたる御議論、どうもありがとうございました。

 


(了)

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