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2016年2月19日 第9回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録

○日時

平成28年2月19日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省共用第8会議室(19階)
         東京都千代田区霞が関1-2-2


○議題

・医師臨床研修制度の新たな到達目標・評価の在り方について
・その他

○議事

 

○吉本医師臨床研修専門官 それでは、予定より多少早いですが、皆様おそろいですので、第9回「医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ」を開催いたします。

 本日は、御多忙のところ御出席を賜り、まことにありがとうございます。

 カメラの方がいらっしゃいましたら、ここで退室をお願いいたします。

 続きまして、本日の御出席について御連絡させていただきます。

 伴構成員と前野構成員から御欠席との御連絡をいただいております。

 あと、大滝構成員からおくれて御出席との御連絡をいただいております。

 厚生労働科学研究班からは、高橋理先生、奈良信雄先生、野村英樹先生にお越しいただいております。

 以降の議事運営につきましては座長にお願いいたします。

 よろしくお願いいたします。

○福井座長 おはようございます。朝一番の会議で恐縮ですけれども、12時までには終わりたいと思いますので、御協力、お願いいたします。

 初めに、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○吉本医師臨床研修専門官 それでは、資料の確認をいたします。

 お手元にワーキンググループの議事次第と、それに続きまして座席表がございます。

 その後に資料1、1枚紙です。

 資料2-1として「日本医師会生涯教育カリキュラム」。

 資料2-2として「シラバス改訂 最終版」。

 資料2-3といたしまして「学習の参考となる文献一覧」。

 資料3として1枚の紙。

 資料4-1「臨床研修の到達目標、方略及び評価の骨格案」。

 資料4-2「ご議論いただきたい事項」。

 最後に、参考資料としましてワーキンググループの開催要綱がございます。

 あと、お手元にはいつも使用していただいているものですけれども、分厚いファイルがあるかと思います。

 不足する資料等ありましたら、事務局まで御連絡をお願いいたします。

○福井座長 それでは、議題に入ります。本日は、議事次第に書いてありますように、1番が「新たな到達目標・評価の在り方について」、2番が「その他」となっておりますが、今のところ「その他」はないはずですので、「新たな到達目標・評価の在り方について」の御議論をいただくということになります。

 前回のワーキンググループでは、新たな目標の骨格案について議論していただきました。

 本日は、そのときの御議論で御紹介がありました日本医師会生涯教育カリキュラムについて、小森構成員から御説明をいただきました後、下位項目を含む目標の骨格案について御議論いただきたいと思います。

 それでは、まず事務局より資料1の説明をお願いします。

○吉本医師臨床研修専門官 資料1、1枚の紙ですけれども、こちらは前回、12月2日の第8回ワーキンググループでの御意見、御議論と、臨床研修部会を1224日に開催しておりますので、そちらでの御意見、御議論、第8回のワーキンググループの資料にありました「ご議論いただきたい事項」に関連する御意見から事務局で抜粋したものを御紹介したいと思います。

 事項は4つほどございます。

 まず、1つ目の新たな到達目標案の構造等についていただいた御意見でございます。

 まずは「基本的価値観と倫理観をはじめとする資質・能力とに重複があるのではないか」といった御意見がありました。

 また、「基本的価値観や資質・能力の項目の順番について、医師個人に係る事項と社会に係る事項の流れを考慮すべきではないか」。

 遂行可能業務についての御意見が4つ並んでいますが、「遂行可能業務については、研修修了時に単独で実施することが可能となるべき業務を挙げてはどうか」。

 「遂行可能業務と資質・能力は、縦軸と横軸の関係になるのではないか」。

 「遂行可能業務は、実施にあたり様々な資質・能力が必要となるものとしてはどうか」。

 呼称の案としまして、「依託可能業務」であるとか「実施可能業務」といったような御意見がありました。

 2番目ですけれども、現在の経験目標の扱いについていただいた御意見には、1つ目「診察法・検査・手技の一部については、資質・能力や遂行可能業務に組み込めるのではないか。一方、症候・病態・疾患については、より適当な内容のレポート等、適切な評価が可能であるべきではないか」といった御意見。

 「現在経験目標となっている疾患群については、ある程度の提示がないと、幅広い研修を経験するためのプログラム作成に支障が出るのではないか」といった御意見。

 一方で、3つ目「資質・能力に幅広い診療能力が必要となる項目を組み込んでいくことも可能ではないか」といった御意見がありました。

 4つ目「疾患群は症候と結びつけて整理してはどうか。その際、日本医師会生涯教育カリキュラムを参照してはどうか」といった御意見がありました。

 そして、「終末期医療や小児に関連する事項等、特定の医療現場の経験が必要となる様な目標にすべきではないか」。

 最後に、「方略は各々の研修病院が工夫を凝らして策定するものであるため、評価でなされている様に、方略についても、研修病院のためのツールキット等を用意する、といった方法の提案もあるのではないか」といった御意見がありました。

 そして、3番目の御議論いただきたい事項で前回挙がっていたものとしては、「これまでの検討で目標に組み込むべき又は充実させるべきとの議論があった項目の到達目標等への組み込みについて」という項目がありまして、その例示として「外来診療に係る項目について」を論点として挙げていただいておりました。

 直接こちらの御議論ではありませんでしたけれども、遂行可能業務に関する御議論から関連する事項がありましたので、2つ挙げております。

 1つ目は「遂行可能業務については、例えば、救急外来に来た軽症かつ頻繁に遭遇する症状を呈する患者についての初期対応が単独でできる等、様々な資質・能力が必要となる項目としてはどうか」。

 そして、「遂行可能業務を資質・能力と縦軸・横軸の関係とすれば、例えば、外来診療が遂行できるという項目を設定すれば、資質・能力の項目数を減らせるのではないか」。こういった御意見がありました。

 最後に、評価についてです。

 1番目は「特に基本的価値観については、評価の工夫が必要ではないか」。

 「基本的価値観の部分についても、行動を通す等し、評価は可能ではないか」といった御意見。

 「各項目に対し、マイルストーン的な考え方を取り入れる方向ではないか」といった御意見。

 また、こちらは部会からの御意見ですが、「終了基準との関係についても、併せて考慮すべきではないか」。こうした御意見がありました。

 続けて、簡単に資料3についてもあわせて触れさせていただきます。

 こうした御議論、御意見を踏まえて、研究班のほうでは、今回下位項目を含んだ目標の案を提示いただいているわけですけれども、資料3は、前回のワーキンググループにおける研究班の真ん中のオレンジの四角に記載しておりまして、そして今回のワーキンググループの案を右の緑色、四角で囲んだところに記載しております。「基本的価値観」のところは項目数の変更ですとか資質・能力の並び順、または文言の変更等がありますので、適宜参考にしていただければと思います。

 事務局からは以上でございます。

○福井座長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして、小森構成員から資料2の御説明をお願いいたします。

○小森構成員 小森でございます。おはようございます。きょうはこのような機会を与えていただきまして、委員の先生方全員に感謝を申し上げたいと思います。

 先ほど事務局から説明がございましたように、前回の当ワーキンググループにおきまして、疾患群は症候と結びつけて整理してはどうかということの中で、福井先生から日本医師会の生涯教育カリキュラムについて御紹介をというお声がかりがあったということでございます。

 資料2-1をごらんください。表紙だけ縦長になってございますが、その後は横長になりますので、横にしてごらんいただきたいと思います。

 ずっとおめくりいただきまして、77ページをごらんください。日本医師会の中に生涯教育推進委員会というものがございます。一番左の枠に囲んでございますように、第3次、第5次、つまり、平成18年から平成22年3月までの4年間にわたりまして、それまでもございました日本医師会生涯教育のあり方、カリキュラムについて御議論いただいたわけでございますが、お示ししてございますように、委員長はきょうも座長をお務めの福井次矢先生でございます。

 中ほどに審議経過がございますけれども、右をごらんいただきますと、このワーキンググループ並びに推進委員会におきまして生涯教育推進委員会の小委員会のメンバーのほか、現在は連合学会になってございますが、当時は日本プライマリ・ケア学会、日本家庭医療学会、日本総合診療医学会、そしてオブザーバーとして日本老年医学会、日本臨床内科医会、日本小児科医会、また、日本専門医制評価・認定機構にも御参加をいただき、御議論を深めていただいたということでございまして、2009年からこのカリキュラムにのっとって日本医師会生涯教育制度が再スタートを切ったということでございます。

78ページから1枚戻って74ページ、75ページに一覧、カリキュラムコードが載ってございます。1番から84番。その中の1番から15番につきましては、私どもは「基本的医療課題」と呼んでございますが、16番以降については、まさに症候ということでございます。

 ずっとお戻りいただきまして、表紙から2枚めくっていただいて、6ページ「一般目標」でございます。「頻度の高い疾病と傷害、それらの予防、保健と福祉など、結構にかかわる幅広い問題について、わが国の医療体制の中で、適切な初期対応と必要に応じた継続医療を全人的視点から提供できる医師としての態度、知識、技術を身につける」としてございます。

 しばらくおめくりいただきまして、専門職としての使命感以降、先ほどの基本的医療課題というものにつきましては8ページから解説してございますが、これはきょうの症候とは若干違う点でございますけれども、改訂をさせていただきました。資料2-2に一旦飛んでいただいてよろしいでしょうか。「日本医師会生涯教育カリキュラム CC1CC15シラバス改訂最終版 平成28年2月2日」としたものでございます。

 これをおめくりいただきますと、今年度の生涯教育推進委員会、倉本秋先生に委員長をお願いしてございますが、この委員にも福井先生に御参加を賜っているところでございます。

 この委員会のもとに、新しく基本的医療課題にシラバスを改訂しようということで、右のページのワーキンググループをつくらせていただいて御議論を賜りました。ここでも福井次矢先生に委員長をしていただいてございます。

 このことについては、きょう詳細に申し上げませんけれども、めくっていただきまして、4ページ「CC1:医師のプロフェッショナリズム」。そのほか並んでございますが、それぞれ「ねらい」「目標」「方略」「評価」につきまして、一定の書式にした上で御提示申し上げ、このことについては現在日本医師会の理事会でも御承認を賜っておりまして、本年4月1日から「日本医師会生涯教育制度カリキュラム2016」として全国でお使いいただく予定にしてございます。

 ちなみに、現在、日本医師会員は17万人おられますけれども、この生涯教育制度のカリキュラムに何らかの形で御登録をいただき、勉強していただいている方が12万人余り、また、日本医師会員外の方も1万人余り。全国で13万、14万という医師の方々がこのカリキュラムにのっとって研修をしていただいているということでございます。

 もとに戻って資料2-1でございます。4枚おめくりいただきまして、症候別の臨床問題への対応といたしまして、「ショック」に始まりまして、それぞれの症候の一覧があった上、ずっと掲載されてございます。

 それぞれその詳細につきましてページを書いてございます。「1 ショック」、28ページとしてございます。「ショック状態を診断し、おおまかな原因を見極め、専門施設に搬送するまでの適切な初期対応ができる」としたものでございます。

 それに基づきまして、28ページをお開きください。縦に「ショック」と書いてございまして、左のほうにそれぞれの項目別の観点が掲載してございます。1番として「適切な病歴聴取ができる」、2番として「病歴を踏まえて、必要な身体診察ができる」、3番として「優先度に配慮して臨床検査を施行できる」、4番として「病歴、身体所見、検査所見を踏まえて、鑑別診断のための病態・疾患を列挙できる」、5番「専門医に紹介すべき病態・疾患を判断できる」、6番「自ら継続管理してよい病態・疾患を判断できる」、7番「エビデンスに基づいた標準的なマネージメントができる」として、それぞれ症候別に記載したものでございます。

 こういう形で症候、つまり、患者さんは、私は何々病であるということをもって医療機関を訪れるわけではなく、それぞれ体のさまざまなお悩みを持ってこられる。そのことに対して臨床推論を段階的に的確に行うという構造立てになっているということでございます。

 ちなみに、現在医師国家試験、さまざまな改定が系統立って行われてございますが、出題基準改定部会が開催されてございます。御紹介のように、必修項目の中の1番は「医師のプロフェッショナリズム」でございますが、あとは必修として主な症候として100足らずの症候について列挙され、それに対する対応ということが持ってございます。それが必修とされているということもこういったことと大いに関連した考え方ではないかなと思ってございます。

 そういうことでございまして、実はこの内容等、あるいはこれまでに至った経緯の詳細につきましては、福井次矢先生に大変な御尽力を賜り、日本全国の医師がこれに基づいて学んでいるということを御紹介申し上げたいと思います。

 福井先生、これでよろしいでしょうか。

○福井座長 はい。

○小森構成員 ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明につきまして、何か御質問、御意見等ございますでしょうか。

 前回、田中先生の御発言から始まったことですので、まず先生から何か。

○田中構成員 ありがとうございました。

 私もこれに登録しているような気がするのですけれども、体系立って見せていただくのは初めてで、大変印象深く思いましたし、今までここで議論されてきたことのかなりの部分がここにもう既に包含されているように思うので、前回も申し上げたのですが、こちらで考えたもの、あちらで考えたもの、それぞれあるのですけれども、医師のライフステージを考えれば、卒前、臨床研修、専門研修、生涯教育、このステップが一つのコンセプトで統一されて、ステージ別にここだったらここまでやるというふうにやっていくのがいいのではないかと思うのです。そのときに、これだけ時間をかけて各方面の意見も踏まえて検討されたものがあれば、こういったものをベースに考えて議論していくのがいいのではないかと私は個人的に思いました。

○福井座長 ありがとうございます。

 奈良先生、全部横断的にという視点から先生には研究班でもいろんな作業をお願いしていますが、先生の御意見を伺えればと思います。

○奈良研究分担者 ありがとうございます。

 卒前教育におきましても、これからモデル・コア・カリキュラム、改訂作業が入りますけれども、やはり症候を学生の立場で見て、どのように病態を判断していって診断につなげるか、重要になっています。学生と臨床医研修と一緒にFDを行う機会がありましたが、そこで臨床研修医の目から見て医学教育の課題を聞いたときに、臨床推論を十分に教えてもらわなかった、学んでこなかったというのがあります。症候学中心に卒前教育、臨床研修を進めるのは非常に良いことだと思います。卒前のモデル・コア・カリキュラムと国家試験出題基準も改定中ですが、生涯教育も含めて一貫性をとれた研修、教育が充実することができると思います。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。どうぞ。

○田中構成員 あともう一つは、タイミングとして今はかなりいい時期ではないかと思うのです。コアカリも見直しが行われている。それから国家試験も見直しが行われている。それから専門医制度も今、見直しが行われているので、こんなに3つもシンクロナイズドできるときはないので、これを機会にぜひそういうことを検討していただければありがたいと思います。

○福井座長 ぜひ厚生労働省と文部科学省で連携をとっていただいて、また専門医機構とも連携をとっていただいて、一貫性のあるものにできればと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。中島構成員、どうぞ。

○中島構成員 日医のこのカリキュラムは皆さんでつくられたわけですけれども、福井先生の意見、随分ボーンとしては通っていますね。だったら、もうそれでいいのではないですか。何の問題もない。

○福井座長 実はこれを日本医師会でつくったときはいろんな問題があって、私の思いどおりにはなりませんでした。いわゆるかかりつけ医の機能を最低限これで担保しようということでつくったものですので、研修医も幅広い基本的臨床能力を2年間でつけようということになれば、かなりのところがオーバーラップしますので、これをベースに研修をしてくださいというところを組み入れるのは可能ではないでしょうか。これはまさに構成員の先生方の御意見で決まるところだと思います。

○中島構成員 異存ございません。

○福井座長 古谷先生。

○古谷構成員 研修の場ということを考えますと、これは生涯教育の面ではすごくいいとは思うのですが、実際に研修医が働いている場所が例えば専門診療科の病棟であったりすることを考えたときに、もちろん専門診療科の病棟でも、日々、例えば吐き気が出てきたりという症候が発生するわけですが、研修の中で学ぶほとんどのことがこの後のこと、病気が決まってからのことが多くなってきているのが現状だと思います。

 それに対して、もしこういう目標を設定するというと、研修の場として外来であるとか救急とかをもう少し重視していくというような方向性も視野に入っているということでよろしいのでしょうか。

○福井座長 それにつきましては次の資料で説明といいますか、提言はしたいと思っています。

 神野構成員、どうぞ。

○神野構成員 私も非常にすばらしい資料だと思うのですけれども、これも次に話があるのかもしれませんが、例えば鑑別診断で病名がいっぱい出てくるわけですね。それを『六法全書』を全て覚えるみたいにして各鑑別診断の病態とかを覚え出すと、結局、またもとのもくあみというか、臓器別になってしまうわけです。

 恐らく必要なのは、能力として、こういう症候があったときに、何を見たら鑑別できるかとか、誰に聞いたら鑑別できるかとか、辞書を全部覚えるといったようなものから、できるだけ臨床推論するためのツールとかプロセスとか、そちらのほうを重視するような仕掛けが必要なのかなと思いました。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 今、先生方がおっしゃったこと全てとオーバーラップすることだと思うのですけれども、卒前、医師国家試験に合格した段階での各疾患別の知識というのは、研修医は十分に持っておると判断しておりますので、今お話に出ました臨床推論、いわゆる症候から疾患に組み上げていく能力を鍛える時期が幅広い診療能力、あるいは頻繁に遭遇するような疾病や外傷を学ぶ期間だと思われますので、そのあたりを明記していただいて、疾患一つ一つ覚える時期ではない、今まで持っている知識を総合して活用する能力を身につける時期であるという内容が網羅されるといいかなと感じました。

○福井座長 金丸構成員。

○金丸構成員 私も日医の生涯教育カリキュラム、全てを見させていただくのは初めてで、いろんな先生方がかかわって練っていただいたものがあるのだなと印象深く見させてもらったのですが、これにもあるように、私、従来から発言の部分で基本的な価値観、資質のところが、ここにも最初のところで項目として「医療専門職としての使命」「全人的視点」がうたってあるのですね。学部教育から初期、専攻医、ここのところが強く太い柱で一貫して育っていく中で、今、議論があったような症候論あるいは個別の診療ということにつながっていくのかなと。1番のところが学部、そして初期も議論していただいている流れとまさに一致しているのだなと思ったところでした。

 ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございます。

 清水構成員。

○清水構成員 ありがとうございます。

 症候の部分については皆様のおっしゃるとおりだと思うので、形として縦軸、横軸の関係をうまく積み上げていけばいいのかなと思います。

 お示しいただいた資料2-2のシラバスの改訂のほうですけれども、ここに書かれていることが、これから私たちがつくろうと思っている骨格案とかなり重複している。もちろん、重複して当たり前だと思うのです。そうしましたら、先ほど田中先生がおっしゃられたように、卒前の部分はこれからコアカリが変更になるのだと思いますが、専門医制度についてはここの担当ではないかもしれませんが、今のうちにできれば卒後の臨床研修、生涯学習に至るまで何か一貫したフレームができるといいのではないかなと思った次第です。

 医師会のこのシラバスがとてもすばらしいので、きょうこれを拝見して私は感銘を受けておりました。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 中島構成員。

○中島構成員 とても細かいことなのですが、資料2-2「日本医師会生涯教育カリキュラム」のそれぞれのところは、「ねらい」「目標」「方略」「評価」という形になっていますけれども、「ねらい」というところだけ和語なのですね。小学校の授業でも「ねらい」と「まとめ」というのは必ずしなさいと教えられている。これは漢語に変えたほうがいいのではないかと思います。「ねらい」は、的があって狙うのでしょう。

○福井座長 「目標」と「ねらい」の違いですね。

○中島構成員 ここを「目標」にしてしまったものだから、「目的」と書きにくくなって、「ねらい」にしたのではないかなと僕は思ったのだけれども、まあ、考えてください。

○福井座長 小森先生、また考えていただいて。

○小森構成員 ありがとうございました。

 ちょっと補足でございますが、カリキュラムコード1から15については、改訂作業に伴いましてお示しをした資料2-1の2009とは若干変わってございます。例えば「医の倫理」につきましては「臨床倫理」と「研究倫理」に分けたこと。それから、東日本大震災を踏まえまして、「災害医療」という項目を新たに設けたこと等がございます。

 それから、神野委員が言われましたようなルートといいますか、工程表、マップ、そういったことのために、当面一度に全て改訂ということはなかなか困難な事項でございましたので、今回はカリキュラムコード1から15について一つの改訂作業を行ったということでございまして、症候につきましても、神野委員が言われたようなさまざまなアプローチについて、次年度以降、順次改訂をしていくということもあわせて御報告を申し上げたいと思います。

○福井座長 古谷構成員、どうぞ。

○古谷構成員 十分全部はまだ確認していないのですけれども、1つだけ、教育者としての医師、後進教育をしていくということに関して、この内容には盛り込まれているのでしょうか。

○小森構成員 済みません。すぐお答えできないです。申しわけございません。

○福井座長 それについても話し合いはしたのですが、どこにどういう格好で生かされているのか、よく覚えていないのですけれども。「プロフェッショナリズム」の中には入っていなかったかな。

○古谷構成員 できれば具体的に教育に関して、医師が後進を育てていくということを明記していただけると、もっと医師を育てていく環境をうまくつくっていけるのではないかと感じておりますので、御検討いただければ幸いです。

○小森構成員 ありがとうございます。

 福井先生がおっしゃられましたように、中の議論ではそういうことがございました。幾つか散らばってあるようですが、体系的な記載としてはないと思いますので、今回改訂したばかりなので、すぐというわけにはまいりませんけれども、肝に銘じておきたいと思います。ありがとうございます。

○福井座長 もう一つ、小森先生からコメント、御紹介いただければと思いますが、このシラバス改訂案は、専門医機構が行っているカリキュラムとの関係で、この中の幾つかの項目は、多くの専門医のプログラムでも使っていただけるようにとの意図でつくられているということ。

○小森構成員 御紹介ありがとうございました。

 これは福井先生も委員でおられましたけれども、専門医の在り方に関する検討会の報告書におきまして、全ての医師が医の倫理やチーム医療等、さまざまな問題について学び続けることが必要であるということが明記されたことに伴いまして、専門医機構の「プログラム整備基準第1版」におきまして、共通講習として、全ての医師が学び続けなければいけないものを必修、そして求められるものとして列記をされました。私も専門医機構の理事として参画してございますが、各学会を含めて、これまでのさまざまな議論の中で、今後専門医である方々が更新をされるときの要件というものについて、共通講習は5年間で最低5単位、最大10単位。もちろん、何十単位研修されてもいいわけでございますが、それが必修とされまして、こういったことにつきまして、日本医師会生涯教育制度カリキュラムのカリキュラムコード1から15を履修されたことは、専門医機構、つまり、18の基本領域学会につきましても、共通講習を取得したということに該当するということ、相互理解のもと、そのように運用されるということになってございます。

 したがって、そういったことも踏まえまして、議論の中の材料として御議論を賜ったということがございます。

 福井先生、ありがとうございました。足らざる点を補っていただきました。

○福井座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。片岡構成員、どうぞ。

○片岡構成員 現行の研修目標にも「症候」というのは羅列してあり、日本医師会生涯教育制度カリキュラムと内容的には重なっている部分が多いと思うのです。今回、先生方の御意見でも、臨床推論を学び、それから今まで得てきた知識を臨床の現場で活用することを学ぶべきというのが一番大事なところであるということは一致しております。日医のカリキュラムには、まず症候があって、それをどういうふうに現場でアプライしていくかというプロセスの表があったと思います。このカリキュラムを研修医向けに応用するとしても、症候から臨床推論を学んでいく過程が重要であることを明記する必要があると思います。そこが明記されないと「一応見た」というチェックリストに終わってしまう可能性があるのではないかと思ったので、日医のプロセスが書いてある表は非常にいいのではないかなと思いました。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 それでは、また後で時間がございましたら、思いついたことを御発言いただきたいと思います。

 次に、資料4-1について説明を研究班からさせていただきたいと思います。資料4-1と4-2をごらんいただきたいと思います。

 最初に、4-1についてです。これは研究班の分担研究者と協力研究者に何回もお集まりいただいて、まとめてきているものでございますが、まだ最終案ではありません。構成員の先生方の御意見を伺いながらブラッシュアップしていきたいと思っています。現時点までの案ということで説明させていただきます。

 1ページ目の最初の点線で囲ってありますところは「臨床研修の基本理念」です。これについては変わりがございません。

 1が「臨床研修の到達目標」で、4ページ「2 臨床研修の方略」「3 臨床研修の評価」ということになっておりますが、そのうちの1についての説明ということになります。

 1ページ目「医師としての基本的な価値観」、そこに5項目挙げております。これはプロフェッショナリズムの中の基本的な価値観をまとめて記載しようとしている項目です。この順番は、臨床研修部会のほうで、個人から始まるオーダーなのか、社会という視点から始まるオーダーなのかによって統一をとったほうがいいのではないかという御意見をいただきましたので、社会の視点からの順番になっています。

 1.社会的使命と公正性

医師としての社会的使命を自覚し、社会のニーズとその変化に目を向け、信頼に値する誠実さや公正性を示す。

 「公正性」につきましては、説明文がございます。

平等な医療の提供、限りある資源の公正な配分、説明責任の履行、守秘義務の遵守、利益相反の適切な管理などを指す。

 2.公衆衛生の向上への寄与

人の集団や地域を対象に、健康や疾病予防の課題に取り組む。

 3.人間性の尊重

患者と家族に誠実に向き合い、個々人の有する知識や感情、意向、また社会的・文化的な背景に配慮し、信頼関係を醸成する。

 4.組織やチームとしての成果最大化

組織やチームの一員として、目的を共有し、互いの理解を深め、協同して医療の質の向上や患者安全に貢献する。

 5.自らを高める姿勢

自身の心身の状況を認識・コントロールし、生涯にわたり自らを振り返り、向上を図る。

 2ページ目です。ここから「資質・能力」です。以前検討されたときのコンピテンシーに当たります。ここに全部で8項目ございます。

 1.コミュニケーション

患者・家族や医療従事者間の良好な関係性を築き、医療を実践する。

(1)適切な身だしなみ、言葉遣い、礼儀正しい態度で患者・家族をはじめとする他者に接する。

(2)患者・家族にとって必要な情報を整理し、分かりやすい言葉で説明して、主体的な意思決定を支援する。

(3)患者・家族のニーズを身体・心理・社会的側面(地域の特性を含む)から把握する。

(4)他の医師や医療従事者等と適切なコミュニケーションを取る。

 2.チーム医療

医療従事者を始め、患者にかかわる人々が互いの役割を理解し、連携する。

(1)組織やチームの目的を理解する。

(2)チーム各構成員の役割分担と連携・責任体制を理解する。

(3)他の医師や医療従事者等と適切なタイミングで情報を共有する。

(4)チームの構成員に教育的な配慮をする。

(5)地域包括ケア等を提供するため、関係機関や諸団体の役割を理解し、連携する。

 3.医学知識と問題対応能力

発展する医学の最新知識を身につけ、幅広い症候・病態に対応する。

(1)主な身体的・精神的症候について、鑑別診断と初期対応ができる。

(2)臨床上の疑問点を解決するための情報を収集・評価し、患者の身体・精神的健康や生活の質を考慮した臨床判断を行う(EBM=Evidence Based Medicineを実践する)。

(3)保健・医療・福祉の各側面に配慮した診療計画・患者教育計画を立案し、実践する。

3はどちらかというと知識で、4がスキルについての項目になります。

 4.患者へのケアと診療技術

基本的な臨床手技を用いて患者の苦痛や不安感へ配慮しつつ診療する。

(1)医療面接ができる。

(2)基本的な身体診察ができる。

(3)基本的な検査と手技、治療ができる。

(4)診療内容や根拠を適切な記録として残す。

(5)処方せん等の保険診療に必要な文書を適切に作成できる。

(6)診断書、死亡診断書、死体検案書その他証明書を作成できる。

 5.医療の質と患者安全

患者および医療従事者にとって良質かつ安全な医療を提供する。

(1)医療の質を評価し改善することの重要性を理解する。

(2)医療安全上、報告・連絡・相談と記録が重要であることを理解し、実践できる。(3)医療事故等の予防及び再発防止と事故後の対応ができる。

(4)院内感染、与薬事故、転倒転落等の重要性を理解し、予防や対応ができる。

(5)医療従事者の健康の管理(予防接種や針刺し事故への対応を含む)の重要性を理解し、実施できる。

(6)医療機関、チームで医療の質と患者安全に取り組むことの重要性を理解し、対応を講じる。

 6.医療の社会性

医療の持つ社会的側面の重要性を踏まえ、各種医療制度・システムを理解し、活用する。

(1)保健医療に関する法規・制度の目的と仕組みを理解し、活用する。

(2)健康保険、公費負担医療を理解し、活用する。

(3)地域の健康問題やニーズを把握し、必要な対策を提案する。

(4)予防医療・保健・健康増進の視点を持つ。

(5)地域包括ケアシステムを理解し、その推進に貢献する。

(6)災害時や感染症パンデミックなどの非日常的な医療需要に備える。

7.医療における倫理性

医療、医学研究、医学教育に関連する倫理的な問題を認識し、対応する。

(1)人間の尊厳と生命の不可侵性を尊重する。

(2)守秘義務を果たし、患者や研究参加者のプライバシーに配慮する。

(3)倫理的ジレンマを認識し、相互尊重に基づき対応をする。

(4)利益相反を認識し、適切に管理する。

(5)医学研究や医学教育における透明性の確保に努め、不正・不法行為の防止に寄与する。

 8.リサーチマインド

医学と医療における科学的アプローチを理解し、学術活動を通して、医学医療の発展に寄与する。

(1)診療上湧き上がってきた疑問点を研究課題に変換する。

(2)科学的研究方法を理解し、活用する。

(3)臨床研究や治験の意義を理解し、学術活動に関心を持つ。

 最後のページです。「遂行可能業務」として、まだ十分な内容ではございませんが、現在のところの考え方です。完全に独立して遂行可能な業務はなかなか思いつかないというのが正直なところで、2年間の研修修了時には、指導医を含む上級医に連絡がとれる状況で以下の業務を単独で行うことができるとしました。「初期救急」「一般外来」「入院患者の管理」。非常に大ざっぱなくくりですけれども、とりあえずの案として出させていただきます。

 2と3につきましては、前回から議論が進んでおりませんので、省略させていただきます。

 以上、逐語的に説明させていただきました。資料4-2は吉本先生に準備していただきました。御議論いただきたい事項として、到達目標案の基本的価値観、資質・能力等が挙げられています。

 基本的価値観、資質・能力の上位項目と、丸の数字で示しました下位項目について、そして遂行可能業務について幅広い御意見をいただければと思います。

 そして、時間がございましたら、現在の目標の中の経験目標の取り扱い、それから評価の方向性などについても御議論いただきたいと思います。

 しばらくの時間は、今、説明させていただいた資料4-1の到達目標、基本的な価値観、資質・能力、遂行可能業務について御意見いただければと思います。よろしくお願いします。伊野構成員、どうぞ。

○伊野構成員 ありがとうございます。

 先ほど古谷構成員がおっしゃったように、今回の「基本的な価値観」の中に、後進の教育、育成への貢献というのは、最初のプロフェッショナリズムのところで野村研究分担者もお話しになっていらっしゃいましたし、先ほど福井先生がおっしゃったように、以前の日本医師会の行動目標の8ページ「2.継続的な学習と臨床能力の保持」のところには、3番として「後進の育成に積極的にかかわることができる」という文言が入っておりますし、ここでもそういったことを入れていただければと思うのですが、いかがでしょうか。

○福井座長 それにつきましては随分議論して、野村先生からもいろんな案をいただきました。が、最後の「基本的な価値観」のところではその文言が明確にはなっていません。「組織やチームとしての成果最大化」の「組織やチームの一員として、目的を共有し、互いの理解を深め、協同して医療の質の向上や患者安全に貢献する」というところに教育の文言が別個に入っていたのですけれども、いろんな人の目を通すうちに、簡略にということもあり、そして「協同して医療の質の向上」というところに含まれるのではないかという意見もございまして、省いた案になりました。

 それから、2ページ目の「チーム医療」の(4)に「教育的な配慮をする」という文言を入れることによって、これである程度カバーできるのではないかと思いこの案になったといういきさつがございます。

 どの程度明確に「基本的な価値観」のところに書き出すかということについても御議論いただければ、また研究班でも話し合いしたいと思います。

 ほかに。先に高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 今の点なのですけれども、確かに「資質・能力」の「チーム医療」のところに書いてあるのは拝見しましたが、「医師としての基本的な価値観」にぜひ入れていただきたい項目の一つだと感じましたので、御検討というか、御協議をお願いしたいと思います。

 もう一点なのですけれども、「基本的な価値観」全体がいわゆるプロフェッショナリズムをあらわしているということは、第2回、3回くらいの議論から一貫しているので、よくわかるのですが、ただ、全体をまとめてプロフェッショナリズムを意図して、あるいはプロフェッショナリズムに基づく研修に配慮してこのような構成になっているという文言がどこかに欲しい。つまり、プロフェッショナリズムの文言が1文字も入っていないというのが気になりましたので、御協議いただきたいと思います。

○福井座長 「1 臨床研修の到達目標」の説明として、今回の案の考え方の基本を書き出せればいいのかもしれないですね。

○高橋構成員 はい。ありがとうございます。

○福井座長 先に古谷先生、手を挙げられましたので。

○古谷構成員 今の意見と全く同じなのですけれども、コンテンツとして含まれているという状態は確かにわかるのですが、明記しないとそれは目標にならないので、そういったことをお題目というか、ちゃんと上位の項目として明記されることが必要かなと僕も感じましたので、ぜひ御検討いただければと思います。

 もう一つですけれども、今回大きく変わったところの一つとして「リサーチマインド」というのが入っておりまして、これまでは研修医はどちらかというと研究活動はむしろできないということになっていたのですが、これは例えば研修中に研究を行っていくということも視野に入れている、むしろそれを積極的に支援するというような方向で検討された内容なのでしょうか。

○福井座長 その部分は、前回は「科学的探究」という項目でどの程度求めるかということでしたが、かなりの部分EBMに包含されるということもありまして、今回は「リサーチマインド」に焦点を合わせています。ある程度はそのような能力を身につけるほうがいいのではないかと私自身思っています。

 研究班の先生方の御意見をいただければと思います。

 卒後研修の中で臨床研究の能力を身につけようというのは国際的な流れにはなっています。

○古谷構成員 2年間の研修期間ということを考えますと、とてもやり切れないぐらいの豊富な内容になっている中で、例えば大学病院の研修医の場合、研究をかなりしたがる傾向があることを考えますと、これが入ってくると、日常の臨床プラスさらに研究をやっていくということで、どちらかというと少し無理な研修を行っていくようなイメージがどうしても頭に描かれてしまう。

 では、日常臨床の中で、例えば週5日の中の1日を割いて研究をやっていくかということに関しても、すごく非現実的な感じもしたので、ここはこれまでとかなり大きく変わった部分なのかなというふうに個人的に感じたので、こういう発言をしました。

○福井座長 大滝構成員、お願いします。

○大滝構成員 大滝です。

 ここのところについては、福井先生からもお話があったように、いろいろ議論して、私の理解では、基本的に全員に研究をさせるということでは全くありません。

 ただ、幾つかこういった内容を含む事項をある程度明示したほうがいいのではないかという理由があります。この前のこのワーキンググループの会議でも議論がありましたが、卒前、卒後、生涯教育の間の連続性、どの時期も同じ目標に向かって学ぶことを意識したときに、全員が研究に従事するということではないのですが、研究に対する理解を深めるということが目標の中に明示されなくて問題ないのかということです。それで果たして卒前や生涯教育、専門医の養成という時期の目標と合意ができるのかについて考えて、研究に関する内容をある程度は項目に入れようという理由の一つになったと記憶しています。

○福井座長 ちなみに、現在の到達目標に「リサーチマインド」の中の(3)はそのまま入っている文章なのです。「臨床研究や知見の意義を理解し、学術活動に関心を持つ」というのは、そちらから持ってきた文章のはずです。

 奈良先生、どうぞ。

○奈良研究分担者 今、卒前ということが出ましたけれども、卒前のモデル・コア・カリキュラムにも「リサーチマインド」という言葉が入っています。ここでは必ずしも試験管を振って論文を書けという意味でなくて、むしろ日常の診療の中で何か課題を見つけたとき、どうやって解決するかという意味での研究マインドですから、あっていいと思います。

○福井座長 神野構成員、どうぞ。

○神野構成員 臨床的な研究マインドということですね。これは動物実験をしろとか試験管を振る話ではないとするならば、自分たちが経験した症例等を通してもう少し深く症例を集積するとか、あるいは分析するとか、あるいは文献で検索をするということは大いにやるべしと思うので、「臨床的」ということをきちんと明記されればと思います。

 もう一点、別な話をしてもよろしいですか。

○福井座長 どうぞ。

○神野構成員 今、臨床研修医を見ていて、彼らが一番やりたくないのは介護系のことなのです。ただ、実際問題として病院の多くの入院者さんは高齢者がふえています。その中で、介護保険の理解等々について、「チーム医療」とか「医療の社会性」のところに「地域包括ケア等」とか「地域包括ケア」が入っていますので、そこで包含していると言えばそうなのかもしれないですけれども、どこかに一言書いておくと、ちゃんと書いてあるから勉強しろとしっかり言えるのではないかなと思いました。

○福井座長 その議論も行った上で、この言葉で全部入るかと思って出した経緯がございます。どういう書き方をすればよろしいでしょうか。確かにそれを強く意識した案にしようととは思っています。

○神野構成員 「チーム医療」の「地域包括ケア等を提供するため」というところをもうちょっと詳しくというか、例えば「介護保険制度を理解して、医療と介護の連携を理解するために」とか、そういったことがちょっとあるといいかなと思いました。

○福井座長 また検討させていただきたいと思います。

 ほかには。田中構成員、どうぞ。

○田中構成員 「臨床研修の到達目標」の「基本的な価値観」というのは1から5まであるのですが、ここに書かれていることは現在のことだろうと思うのですけれども、医師というのは、あすの医療に対する責任というのもあると思うのです。教育と研究というのはそういうものだろうと思うのです。ですから、ここにそういったことを盛り込んでいただくと、教育のこと、つまり、後輩たちを育てるということも盛り込まれますし、8番の「リサーチマインド」の「診療上湧き上がってきた疑問点を研究課題に変換」、研究に昇華していくと。これが日医のカリキュラム2016にはどうなのかわからないのですけれども、生涯にわたって全ての医師が持つ視点ではないかなと思いました。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。金丸構成員、先に。一瞬早く手が挙がりましたので。

○金丸構成員 済みません。資料3に関連した資料4-1というところで、頭書きのところの項目の文言に関することなのですが、資料4に全部落とし込んであるのですが、一つは、「資質・能力」の8項目、前回の8回ワーキンググループで例えば7番の「倫理観」とかが変わって、ニュアンスを新しく、「医療における倫理性」と変わっているところの経緯なのですが、先ほど日医の生涯教育もそうですけれども、確かに医療における倫理性は、核としての倫理性としては当然基本的な価値観でいいのですが、人と人の倫理というところが、学内の教育、ここでどうこうというのではどうかわかりませんが、人としての倫理ということも倫理観というところがここには以前あったような気がするのです。前回のワーキンググループで。私個人的には、7番「倫理観」は、幅広い人としての倫理観も入っていたように理解していたのです。

 ところが、実際には「医療における倫理性」。やや狭まった倫理性ということで、もちろん核なのですが、この辺が何か気になるかなというところが一点です。これは一貫した、そもそも医師となるというか、入り口の学部教育にも関連することかなとも思うので。

 もう一つは、ちょっと細かいことで恐縮なのですが、「患者安全」という言葉が単語としてあるのかどうかがわからなくて。例えば「患者の安全」とか。今ごろはこういう言葉が単語としてあるのかどうかが素朴にわからなくて、それが一点です。

 「コミュニケーション」のところで、これは前回議論させていただいて、大変すばらしい表現で、また改めて考慮していただき、ありがとうございました。

 「資質・能力」の「1.コミュニケーション」の4番目「他の医師や医療従事者等と適切なコミュニケーションを取る」。そして、その後の「チーム医療」との重なりももちろんあるのですが、ここはコミュニケーションはもちろん含めているのですが、「コミュニケーション」の下に「患者・家族や医療従事者間の良好な関係性を築き、医療を実践する」ということがうたわれている部分が大項目というか、全体のまとめであるので、「適切な連携をとる」とか、上との重なりぐあいを考慮していただいて、もう少し何かあったほうがいいかなという感じです。

 最後ですが、「資質・能力」の「3.医学知識と問題対応能力」の「臨床上の疑問点を解決するための」云々の項目です。「(EBM=Evidence Based Medicineを実践する)」ということなのですが、そもそもEBMの中に「NBMNarrative Based Medicine)」が入っているとは思うのですが、ここでややNarrative Based Medicineが薄らいだ部分もあるので、あえてここに表現することがもしできれば、「EBM並びにNarrative Based Medicineを実践する」とか、何か一言。ちょっと気になるのですが。そもそもEBMの中に包含されたという歴史の推移はあるのですが、独立しかけている、Data Based Medicineにやや近いような部分があるやに思うので、いかがかなと思いました。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 最後におっしゃった点は、あえて3の(2)の文章の1行目の最後「患者の身体・精神的健康や生活の質を」というところにナラティブ的なものがあります。もともとEBMはエビデンスプラス患者さんの価値観と医療者側の能力を考えてという3つのファクターから成り立つものですので、あえて「NBM」という言葉を出さなくても、精神的なところにも配慮してというところに一部はあらわされるかという気持ちもありました。

○金丸構成員 まさにそうやって書いてあったので、書いてある中で、EBMだけがここに書いてあることが何か気になったのです。

○福井座長 これを削除すればいいですね。

○金丸構成員 私も可能であればむしろないほうがいいのではないかと思います。せっかくここで、ナラティブのことを表現していただいているので。済みません。

○福井座長 「EBM」とか「NBM」を書き出さないほうがいいのかと思います。

 清水構成員、どうぞ。

○清水構成員 2点ございます。

 まず、1点目は「医師としての基本的な価値観」の「4.組織やチームとしての成果最大化」ですけれども、これもきっとすごく工夫されてこういう項目になったのではないかと思うのですが、特に「成果最大化」みたいな言葉は、読んだ方がすぐに理解できるかなという思いがあって、もう少し言葉として工夫が要るのかなと思いました。

 前は8項目だったのを5項目にされて、まとめられている点はよかったのですけれども、卓越性ということがこの中に含まれているのだろうと思うのですが、いわゆるプロフェッショナリズムの根幹をなすものがわかりにくくなっているのかなという気がちょっといたしましたので、またお教えください。

 2点目が「資質・能力」の「4.患者へのケアと診療技術」ですが、それ以外の項目が割と概念的な項目が多いと思うのですけれども、4番だけが結構行動的な目標になっているのかなと思うのです。

 恐らく「方略」のほうに書かれる項目と連動するのかもしれませんが、これだけが「資質・能力」として余りに行動的なので違和感があるのですが、それをもし検討されているのでしたら、お教えいただきたいと思います。

○福井座長 野村先生、どうぞ。

○野村研究分担者 今、お尋ねの件ですが、ここの部分は本来は「遂行可能業務」に含めるべき項目なのかという議論がありました。先に「資質・能力」をずっとつくってから「遂行可能業務」を検討し始めると、あ、これも書いてある、これも書いてある、これも書いてあるということになって、同時に検討しなかったので、先に「資質・能力」を検討したので、そちらにほとんど遂行可能業務的なものが入ってしまったのだと思うのです。ですから、そこは差し引きというか、取り出して「遂行可能業務」のほうに移すということは検討しないといけないのではないかなと私も思っております。

○清水構成員 ありがとうございます。

○福井座長 ただ、先ほどおっしゃった卓越性、エクセレンスにつきましては、いわゆる生涯教育とか、自分の診療能力をさらに高めていくとか、医学知識や研究に貢献する、今あるところからさらに一歩上を目指すという意味の言葉であって、その一部が「基本的な価値観」の5番に入っていて、常に自分を高めるという点、それして「資質・能力」の5番と「8.リサーチマインド」に一部が割り振られているというつくりになっています。

 いわゆるプロフェッショナリズムとして一般的に考えられていることを全部1カ所に書くと、プロフェッショナリズムそのものになってしまいます。そこで、あえて「基本的な価値観」として、みんなが同意できるような基本的な物の考え方を最初のところに書き出そうことで始めたといういきさつがあります。確かにエクセレンス、卓越性そのものを見れば、幾つかの場所に散らばっているというのが実情です。

 中島構成員、どうぞ。

○中島構成員 卓越性と言うと、卓越していない人はみんな楽をするような気がするので、やはり「向上心」とか「上を目指す」というふうにちょっと言いかえられたらいいのではないかなというのが一つです。

 もう一つは、先ほどのEBMもそうなのですが、「患者の身体・精神的健康や生活の質を考慮した」のところにNBMを入れたという気持ちがあるということなのですけれども、ここにあえて「EBM」を書かれたのは、文科省系への配慮ではないかなという気がちょっといたしました。

 それから、「資質・能力」の「8.リサーチマインド」というのも、大学の先生方皆さん、「リサーチマインド」が大好きなのです。僕などはほとんど忘れてしまいましたので、これを言われると、ぎくっとしてしまうのですが、やはり「臨床的リサーチマインド」とか、あるいは「科学的探求心」とか、こういう言い方のほうがいいのではないかな。2年間ですから。

 むしろこれらをつくるときに常に頭に置かないといけないのは、臨床研修の最終的な評価です。この評価のところを念頭に置かないで書いても、それは理想的なものができましたというだけのことになってしまうので、ぜひ評価と併せて考えていただきたい。

 僕は、評価について一言申し上げたいのですが、それは後にいたします。

○福井座長 「評価」をつくるときも、到達目標そのものに訂正が必要かどうかという作業は必ず行います。

 「リサーチマインド」について、大学におられる先生方はいかがでしょう。田中構成員、どうぞ。

○田中構成員 お隣に座っていますので。

 「リサーチマインド」と言うと、反感もあるかもしれないのですけれども、先ほど申し上げたことの繰り返しになりますが、我々は今の医療に対しても責任はありますけれども、あすの医療に対しても責任があると思うのです。ですから、教育と研究はあすにつながるので、それはどこかに書いておいたほうがいいと思います。

○福井座長 どうぞ。

○中島構成員 一言申し上げますが、「教育と研究はあすにつながる」と言われますが、一番関係があるのは経済です。そこのところの教育が全然できていない。これは嘆かわしいことおびただしい。それから、学会も経済状況の変化をどう捉えるかということ、こういう講演をしたら、これは評価から外すのです。こういうことが現実に起こっているということをぜひ知っておいてください。よろしくお願いします。

○福井座長 それは「医療の社会性」に組み込めるのではないかと思っています。先生がお読みになってすぐにその内容だと思われるような文言にはなっておりませんので、また考えたいと思います。

 小森構成員、どうぞ。

○小森構成員 ずっと戻って恐縮ですけれども、「リサーチマインド」という言葉は、本当にいろんなところに使われていいて、相当共通の認識ができてきたときに、これをあえて日本語にするのは大変難しい作業のような感じはいたします。ただ、臨床的な疫学研究のことが余り強調されるより、私は、基礎的研究を含め、そのことに対する敬意といいますか、そういう心を養っていただく、そういう気持ちも込めていただきたいので、「臨床研究」ということを余り強く出さないほうがいいのではないかなと思っていました。

 それから、確かに「患者安全」という言葉は、比較的耳なれない感じがいたします。日本医師会のカリキュラム、新しいシラバスではあえて「医療の質と安全」としておりますが、また御検討いただければ。

 それから、神野委員が言われた介護ということなのですが、3ページ「6.医療の社会性」の(1)は「保健医療に関する」となっていまして、とにかく長いのはいけないので、削るという作業をしないといけないのですが、実は国家試験のブループリントにも、最近は「保健」と医療」と「介護」と「福祉」というのは別の概念になってきて、いろんな会議に出ていますと、これは福祉が入っていないからおかしい、これは介護が入っていないからおかしいと。実はそういう状況があって、学生たちは国家試験のブループリントも見てくるので、その上で、「保健医療」とやってしまうと、では、介護と福祉はいいのかというふうに違ったメッセージになるかなという気がするのです。

 では、「保健、医療、介護、福祉」と入れて、長いなあと思いますし、いいアイデアということではないのですけれども、また御検討いただければいいなと。そうしますと、神野委員の言われたところは、そういうことでまた解決していくのかなという印象を持ちました。

○福井座長 野村先生、どうぞ。

○野村研究分担者 今、お尋ねの「患者安全」なのですが、WHOが「Patient safety」という言葉を使っているので、それの直訳という意味で「患者安全」という言葉を医療の質・安全学会等でも使っているようですので、恐らくこれは今後広がっていく言葉ではないかなと思います。

 それから、これは私の個人的な意見なのですが、「リサーチマインド」というのは、恐らく人によって全然意味が違うと思います。大学の先生方は、本当に研究することを考えていると思いますし、ただ、ここでのお話では、何か求められたときに研究に協力する、あるいはこういう珍しいケースがあったときにそれを報告するとか、どうもそういうレベルのものでコンセンサスが得られているようなので、「リサーチマインド」という、人によって捉え方が違う言葉は使わないほうが多分いいのだろうなと感じました。

○福井座長 前回「科学的探求心」という言葉で書きましたら、中島先生からいろいろな御意見がありまして、それで私たち、ちょっと。

○中島構成員 「リサーチマインド」よりは前のほうがいいです。

○福井座長 それでは、その方向でまた案を練り直したいと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。片岡構成員、どうぞ。

○片岡構成員 「資質・能力」の「1.コミュニケーション」のところですけれども、1行目の「患者・家族や医療従事者間の良好な関係性を築き、医療を実践する」が一番大事な一文だと思うのですが、その次の(1)が非常に現実的というか、形骸的というか、例えばこれは何のための患者さんとのコミュニケーションかというと、基本的に誠実に向き合って、相手を尊重して、利他的に向き合うということが大事なので、そういった内容が数字の番号のところからは余り見えないので、そこを少し入れていただけたらと思いました。

 以上です。

○福井座長 ありがとうございます。

 神野構成員、どうぞ。

○神野構成員 先ほど日医のシラバスのときにちょっとお話しした話で、特に3番の「医学知識と問題対応能力」のところになるのかなと思うのですが、辞書を全部覚えるのでなくて、探し方をきちんと学ぶという考え方はどこかに入っているのかな、それとも入れたほうがいいのかなと思うのです。

 例えば80歳で、ヘビースモーカーで、咳がとまらなかったら、レントゲンを撮る。しかし20歳で、たばこを吸わなくて、咳が1週間とまらなかったときは、レントゲンでなしにほかのことをするのかなとか、そういうエビデンスに基づいた探究とか学び方、問題対応能力というのは、教えるほうもなかなか難しいのですけれども、どこか必要なことなのかなと思うわけです。

○福井座長 かなりの部分がEBMに含まれますが、検討したいと思います。

 ほかにはいかがでしょう。清水構成員。

○清水構成員 「資質・能力」の「2.チーム医療」の最初の説明のところなのですけれども、これは質問ですが、「医療従事者を始め」の「始め」というのは、何が含まれているのかなというのが質問です。というのは、今、チーム医療のチームメンバーの中には患者さん自身も入るという概念、一般的ではないかもしれませんが、そういう概念、考え方を進めようとしているので、患者さんもチームに加わる、患者家族もチームに加わるということがもう少しはっきりするといいのかなと思って、では、「医療従事者を始め」の「始め」の部分は何を指しているのかなと思った次第です。お教えください。

○福井座長 「医療従事者」の中に患者が入るということでしょうか。それとも医療従事者にはどういう人がいるかということをもっとわかるように書くべきということでしょうか。

○清水構成員 言葉が足らず、申しわけありません。

 医療チームの中に患者家族が入るという考え方だとすると、「医療従事者を始め」のところにかかわる方というのは、どういう方が含まれるのかなと思ったわけです。

 例えば医療従事者でないチームメンバーというと、患者家族以外に公的機関の職員とか事務の方が入るのでしょうか。その辺がはっきりしなかったので。

○福井座長 大滝構成員。

○大滝構成員 大滝です。

 これは研究班の中でかなり文言を整理したり、削ったりした作業の中で、当初は「患者」「患者家族」も入っていたと理解しています。それ以外の介護や福祉、地域の行政の方とか、いろいろなものが入ることを議論しました。そういった人を含むけれど、まずは医療従事者で、それを初めとするいろいろな人たちがそこに入る、という意味を短く表現したものがこういう形になっているのです。確かに今のお話のように、「患者」や「患者家族」というのをもう少し明示するという考え方はだろうと思いました。

 以上です。

○福井座長 確かに工夫したつもりで、「患者にかかわる人々」というのが全てチームを形成するというか、患者以外の全てのチームメンバーだということを表そうとしたのですね。

 だから、「チーム医療」という言葉を使うと、「患者」が入るかもわかりませんが、ここではあえて使っていないわけです。患者さんにかかわる全ての人が、と書こうとしたのですね。

 高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 質問なのですが、こちらでディスカッションしている「チーム医療」というのは、いわゆる患者さんを囲んだいろんな職種の人、あるいは社会の人たちで患者さんをケアしようというチーム医療なのか、それとも病気に向かって患者さんも一緒に、医療人とか社会の人が手を組んで立ち向かうチームなのか。いわゆる患者さんの立ち位置というのはどのあたりを想定されているのかがわからなかったのですが。

○福井座長 その議論は余り深めていないというのが実情でして、これだと患者さんに立ち向かう形のチームのように読めるのでしょうか。特別そういうことを意識して書いた文章ではないのですが。

○高橋構成員 患者さんに立ち向かうという意味ではなくて、患者さんを支える人たち、つまり、患者さんは置いておいて、みんなで頑張りましょうというスタイルなのか、それとも患者教育も含めたチーム医療、患者さんの協力を得ながらのチーム医療なのか、その考え方なのですけれども。

○福井座長 では、伊野構成員、先によろしいですか。

○伊野構成員 卒前でチーム医療を教育しているときには、昔は患者さんが真ん中にいて、それを取り囲む医療従事者や福祉、行政の方々だったのですが、今は「患者さんの自己実現」を真ん中に置いて、その輪のほうに患者さんや患者さんの御家族を入れたチーム医療というふうに医学生に教育していることが多いです。御参考になればと思いました。

○福井座長 中島構成員。

○中島構成員 同じようなことなのですけれども、これは患者さんによって違うのです。だから、患者さんをとりあえず横に置いておいてやらなければいけないこともあるし、患者さんを中心にやらないといけないこともある。それを臨機応変に組み立てることができることが大事なのですよ。

 だから、常に患者も含めてというふうに余り金科玉条的に教え込むと、よろしくない。

○福井座長 御意見がございましたら、ここをこういうふうに変えたらいいのではないか、とか。私も、抱えている問題によって、患者さんがチームの一員と感じられるようなアプローチが必要なときとそうでないときが現場ではあり得るのも事実ですので、そういう状況をうまく言葉であらわせられればいいなと思います。

 高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 一つの意見をお話しすると、反対意見が出ると思うのですけれども、「患者・家族を始め、患者にかかわる人々が互いの役割を理解し、連携する」。

○福井座長 患者も患者にかかわる人の中に入るということですか。

○高橋構成員 最初の文言のところだけを考えたのですが、「医療従事者を始め」ではなくて、「患者・家族を始め、疾病にかかわるあるいは外傷にかかわる、あるいは不利益な状況にかかわる」、そういった文言になるのかなと思いますが。ただ、これは一つの意見です。

○福井座長 今おっしゃったのは、「患者家族を始め」ですか、それとも「患者の家族を始め」ですか。

○高橋構成員 「患者・家族を始め、診療にかかわる」とか「治療にかかわる」とか。治療だけではないと思いますので、そのあたりの文言はちょっと思いつかないですけれども。

○福井座長 検討したいと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。野村先生、どうぞ。

○野村研究分担者 皆さんの御意見をお伺いしたいのですが、以前の案では「キャリア形成能力」というのを含めていたのですが、それは読み取れる文章ではなくなっていると思います。そのことについて、皆さんがどのようにお考えかをちょっとお伺いしたいと思います。

○福井座長 そのことにつきましては、この案をつくるところで、1ページ目「5.自らを高める姿勢」の「自身の心身の状況を認識・コントロールし」という言葉で、いろいろなキャリアステージを考えてやってくださいというニュアンスをあらわそうということになったといういきさつがございます。野村先生がおっしゃったように、キャリア形成という言葉が入っていた部分ではあります。

 このことにつきまして、どうでしょうか。高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 個人的な見解でありますけれども、「基本的な価値観」の5のところに含められているので、2年間という研修期間を考えれば、書かなくてもいいのかなと感じました。

○福井座長 また研究班でも検討したいと思います。

 よろしいでしょうか。

 「遂行可能業務」について、御意見をいただきたいと思います。私が最終的に考えてこのような案を出してたもので、研究班の先生方、全員のコンセンサスを得たものではございません。「遂行可能業務」のところには「資質・能力」とは違う切り口で、できれば働く場あるいは業務全体を書きあらわせるほうがいいのではないかと。まさに言葉のとおりですが。そこで「初期救急」とか「一般外来」、「入院患者の管理」という切り口としました。

 もう一点。私は個人的には、2年終わったところで研修医に完全に任せられる業務はほとんどないのではないか。上級医に何らかの形で連絡がとれる状況下で、というのが現実的かと思った次第です。

15分なり20分間、この点について御意見を伺えればと思いますが、いかがでしょうか。古谷構成員。

○古谷構成員 言葉の確認なのですけれども、「初期救急」という言葉と「一般外来」という言葉がどう定義されるのかということなのです。専門外来に対しての「一般外来」という言葉なのか。浅学で済みません。一次、二次、三次とかではなくて、「初期救急」という言葉が正確に捉えられないもので。

○福井座長 いわゆる一次救急なり二次救急の一部というのが頭にあるのですが、前の到達目標でも使われていた文言ではなかったかなと思うのですけれども、違いますかね。「特定の医療現場の経験」のところに、確かに「初期救急」という言葉はないですね。また検討したいと思います。一般外来といわゆる救急室は、多くの医療施設では異なるのではないかと思っていて、「救急」という言葉と「外来」という言葉を書き分けました。

 野村先生、どうぞ。

○野村研究分担者 お尋ねの件ですが、遂行可能業務、EPAは、もともとこの業務をこの人に任せられるということなので、救急という業務を任せられる、あるいは一般の外来というのは、初診と恐らく高血圧などの患者さんの再診も含めると思いますが、そういう外来を任せられるという意味合いでとっていただければいいと思います。

 ということは、逆に、普通の病院で救急と呼ばれているもの、普通の病院で一般外来と呼ばれているものを想定していただくとよろしいかと思います。

○福井座長 実はこれを定義しようと思うとなかなか難しい問題で、どうしたものかと思っています。いわゆるEPAにつきまして何か御意見をいただければ。大滝先生のほうから何かありますか。

○大滝構成員 大滝です。

 私は、基本方針として、いわゆる救急の一次、最初の対応、それから歩いてくる患者さんに対する、一部救急にもなると思いますけれども、外来診療、それからごく基本的な入院患者の管理というのが大きな範囲に含まれるということには賛成です。先ほどから話題になっている卒前や卒後初期、あるいは専門研修という連続性の中で、卒後初期研修で習得する範囲をもう少し具体的に明示するならば、医師会の生涯教育の目標とも共通しますが、「基本的な症候」とか「基本的な疾患」といった、「基本的な」という表現を入れたほうが良いのかもしれません。それに対比する意味である「極めて珍しい、かつ重篤な」ものまで初期救急をやれとか外来をやれというのではない、ということが伝わる説明文があると、よりわかりやすいと思いました。

 以上です。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。清水構成員、どうぞ。

○清水構成員 卒前の、今、私たちが研修病院として使っているのは、いわゆる前川班の一次水準、二次水準というので、今は新しくなったのでしょうか、スチューデントドクター制度になって変わったのかもしれませんけれども、そういうものとの整合性みたいなのは今後考えていくのでしょうか。

○福井座長 野村先生、どうぞ。

○野村研究分担者 前川レポートで言われていたのは、医学生が行ってよい医行為というもので、それに3つの水準があるという考え方でしたが、今回は研修を修了した段階でこういうことができるようになっていてほしいということで、まず研修医がやっていいことを記述する部分ではないということが一つです。

 もう一つは、研修を修了した段階ではフルライセンスですので、やってはいけないことは法律上ないということもありますので、これをやってはいけないということは書けないと思います。

 では、どういうふうに書くかというと、これは大滝先生がおっしゃったこととも関連しますが、一般的なものには対応できるけれども、自分が対応できないものが何かということの判断ができるようになるということをここに書き込めば、全てのことができるということになりますね。自分は対応できないという判断ができれば、ほかの医療従事者に応援を要請することができますので。そういう書き方になっていくのではないかなと思っているのですが、まだそこまでできていないという段階です。

○福井座長 どうぞ。

○清水構成員 今の点で、前川レポートの第1水準が、指導医がいればやってもいい項目になっていると思うのですけれども、あれはもっと単純な診察技術というか、診療行為だったと思うのですが、研修医だったら、少なくともそれは研修医が単独でもできるようになっていってほしいなと思ったので、どういうスタイル、フォーマットになっていくのかがよくわからなかったので、お聞きいたしました。

 ありがとうございます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 それでは、まだ時間がございますので、現行の経験目標にさまざまな疾病、症候などが書き込まれていて、医療現場の経験なども書き込まれています。これをどう扱うか。また評価の方向性などにつきましても、御意見がございましたら伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。田中構成員、どうぞ。

○田中構成員 エポックでいつも直面している問題なので、私のほうから御意見を申し上げたいのですが、これこそは、医師会が時間をかけて症候を整理されておられますので、それをベースに考えられたらよろしいのではないかと思います。

○福井座長 疾患自体については、きっとゼロベースで考えていいということですね。

○田中構成員 そうです。

○福井座長 私も全く違う構成になったほうがいいのではないかと思っています。

 中島構成員、どうぞ。

○中島構成員 「3 臨床研修の評価」について、一言お尋ねがてら意見を言いたいのです。

 「評価」のところがきちっとしていないと、医師会のものも一つ参考にはなるのですが、それ以外に根本的な問題として、判断としては初期臨床研修を修了したというのと未修了というものしかないのですね。この中間が必要だと思うのです。条件つきの修了とか、あるいはこの人は患者さんに直接接してはいけません、その範囲での医行為は結構ですとか。しかも負けたら敗者復活戦に出られるようにしておいてあげることも大切だと思います。

 僕は、当初医師法を改正しないとそういう判断ができないのかなと思っていたら、そうではないらしくて、臨床研修を修了していないと診療ができないという解釈に現在はなっているそうです。

 ちょっと補足して御説明を。

○吉本医師臨床研修専門官 診療できないと申しますか、現状の医師法では臨床研修をしていない方が診療に従事した場合は、結果的に医師法16条の臨床研修の義務の履行の違反になるということになります。

○中島構成員 そうなると、診療というのはどこまでの範囲を指しているのですか。

○吉本医師臨床研修専門官 診療については、医療機関で医業を行う場合、もしくは健診の場において医業を行う場合と。医業といいますのは、医行為を反復的に行うということになります。

○中島構成員 実は僕の念頭に一部あったのは、麻酔科医というのは、いろんな形で病院に不足してしまった状況が現実にあるけれども、絶対数は相当の数が養成されているわけですね。だけど、病理医と放射線読影医については絶対数そのものが足りないのです。臨床研修の目的とはやや離れますけれども、現実に僕たちが修了ですよと言うときの悩みとは関係はあるのですね。だから、この判断を二択でなくて三択にしてほしい。そうしますと、そのことを念頭に置きながら、価値観とか資質・能力、可能業務の個々の評価というものがつながってきますので、ぜひそこを三択にしてもらえないかなと。ここでの医師法上の問題をちょっと洗い出してほしい。

 それから、現時点で未修了になっている人たちが、これはただ単に中断しているだけなのか、あるいは本当にだめだと言われたのか、詳しい現状を知りたいということです。それを一つ、難しいかもしれませんけれども、よろしくお願いしたいと思います。

○福井座長 大分前のデータはございますね。未修了、中断の方々の割合と理由と、その後、実際に修了したかどうか表なっていますので、もし最新のものがあれば示していただければと思いますが。

○吉本医師臨床研修専門官 以前の資料にあるかと思いますが、ただ、データとしては平成18年から21年のものですので、また調査をする際には、先生の御指摘を踏まえて検討していきたいと思います。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。「方略」にしましても「評価」にしても具体的な案を出せなくて申しわけないのですけれども、少しずつ具体的な案の作成を進めていきたいと思います。

 全体についてでも結構ですので、御意見ございましたら伺いたいと思います。よろしいでしょうか。高橋構成員、どうぞ。

○高橋構成員 非常に厄介なところでこれを申し上げるのは恐縮なのですが、「方略」のところに含められております「経験が求められる症候・病態・疾患」はやはり。

○福井座長 これはゼロベースで考えますので。

○高橋構成員 これは確実に決めていただきたいと思いますので、よろしくお願いします。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

 もしないようでしたら、本日の議論はここまでとしたいと思います。

 事務局から今後の予定等について連絡がございましたら、お願いします。

○吉本医師臨床研修専門官 次のワーキンググループにつきましては、再度御連絡させていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○福井座長 それでは、本日の会議はこれで終了とさせていただきます。

 ありがとうございました。

 

 


(了)

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