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2015年12月18日 第70回労働政策審議会職業安定分科会雇用対策基本問題部会議事録について

職業安定局 雇用開発部 高齢者雇用対策課

○日時

平成27年12月18日(金)10:00~12:00


○場所

専用第14会議室(中央合同庁舎第5号館12階)


○議事

○阿部部会長 それでは、定刻となりましたので、ただいまから「第70回雇用対策基本問題部会」を開催します。議事に先立ちまして、当部会に所属されます委員の交代がございましたので、御報告を申し上げます。労働者代表委員、芳野委員に代わりまして、JAM、総合政策グループ次長・小林委員です。

 次に本日の委員の出欠状況を報告させていただきます。公益代表の欠席は玄田委員です。労働者代表の欠席は近藤委員です。使用者代表の欠席は喜勢委員です。なお、猪熊委員は遅れていらっしゃるということです。

 それでは、議事に入ります。本日は前回に引き続き、「高齢者雇用対策について」を議題とさせていただきます。本日は事務局において前回までの議論を踏まえ、シルバー人材センターの「臨・短・軽」要件の緩和等に関わる基本的考え方についての資料及び今後の高年齢雇用対策について()とそして、本部会の報告書の案となる資料を準備いただいております。

 まず、シルバー人材センターの考え方の資料についての議論を行い、その後、本部会での議論の取りまとめに向けて、報告案について議論するという形で議事を進めていきたいと思います。

 それでは、事務局から、前回の委員からの指摘事項に関することも含めて、シルバー人材センター関係の資料について、御説明をお願いいたします。

○渡部高齢者雇用対策課長補佐 資料1と資料2に基づき、御説明させていただきます。資料1を御覧ください。前回、御指摘いただいたことに対しての資料です。

1ページ目ですが、産業雇用安定センターについて、出向・移籍の内訳や年齢別の実績について示してほしいというお話がありました。ここにありますように、平成26年度の出向・移籍の成立件数8,495件のうち、出向に係るものが2,361件、移籍に関するものが6,134件となっております。また、年齢別の内訳については、こちらの表のとおりとなっております。

2ページ目を御覧ください。産業雇用安定センターについては、その機能強化について、詳しい資料を示してほしいという御要望がありました。1で、体制の強化ということですが、平成25年度から企業の送出ニーズと受入ニーズの開拓を行う「出向支援協力員」の体制を強化してきたところです。また、平成26年度には、出向・移籍の対象者に対するキャリア・コンサルティング等を行う「出向・移籍支援コーディネーター」の体制を整備したところです。

また、機能強化の具体策としては、2に掲げている「高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業」の創設となります。こちらについては、3ページを御覧ください。

 この事業は、産業雇用安定センターが主体となって、高年齢退職予定者のキャリア等の情報を登録し、これに基づいて登録された高齢者を、65歳を超えて継続雇用が可能な企業へ円滑に移動させることを目的とした事業です。「一億総活躍社会の実現に向けて緊急に実施すべき対策」のひとつと位置付け、現在、平成28年度予算として改要求を行っているものです。

 事業の概要を、このポンチ絵で御説明申し上げると、まず、高年齢者雇用確保措置の終了を予定する65歳前の高齢者について、そのキャリア・能力・就業希望等の情報を企業経由で産業雇用安定センター内に構築された「キャリア人材バンク」というデータベースに登録していただきます。産業雇用安定センターについては、企業間の出向・移籍のあっせんが本来業務ですので、当初においては、企業経由での登録から始める予定ですが、今後、在職者や求職者の個人登録についても検討していく予定です。

 一方、産業雇用安定センターは、65歳を超えて継続雇用が可能な企業に対して、この登録情報を提供しつつ、受入情報を開拓し、また登録者本人に対しても、これらの受入情報を提供しながら、両者のマッチングを進めていくということです。また、この登録情報については、御本人の認める範囲で自治体や民間人材ビジネス、ハローワークに対しても提供し、それらの機関を通じたマッチングの機会の拡大にも役立てていきたいと考えているところです。

4ページ目を御覧ください。こちらは「シルバー人材センターが指導を受けた件数」です。前回の部会で71件と報告しましたが、その内訳を示してほしいと指摘があったところです。平成26年度に労働局から改善が指導された件数の内訳ですが、そこにありますように、発注者が会員に業務の実施方法等を指示しているようなものが49件、発注者が会員の就業時間等を指示しているものが38件、発注者が会員の特定、変更等を指示しているものが40件、会員が発注者の設備を使用しているものが46件、契約書の不備等が4件となっております。この労働局から指導を受けた事案については、全て是正済みであり、おおむね指導を受けてから2週間以内には改善の措置を講じております。資料1については以上です。

 続いて資料2を御覧ください。シルバー人材センターについては、これまでの部会で、様々な御意見や御指摘を頂いたところです。これまで事務局から説明してきたことも含め、御指摘を踏まえた考え方を整理したものがこの資料となります。1点目、「要件緩和の内容」に関してですが、こちらは前回の部会で要件緩和を行う部分がどこなのか、整理して示すべきという御指摘がありました。こちらについては、別紙1、別紙2として、この資料の後ろに2枚の資料を用意しておりますので、そちらの資料を御覧ください。

 別紙1は「シルバー人材センターの業務取扱範囲」を図示しております。表にあるように、「現行制度」においては「臨時的・短期的なもの」、又はということで、「軽易な業務」というものが規定されております。「臨時的・短期的なもの」については、日数の制約についておおむね月10日程度という運用を行っておりますが、一方で時間制約については、特別な制約はなく、労基法等が適用されるという形になっております。逆に「軽易な業務」のほうは、日数制約については特別な制約がないという中で、時間制約については、おおむね週20時間以下というものを定めているところです。これに右側の黄色の部分ですが、今回、要件緩和としては、国家戦略特区法の特例の規定ぶりを参考にしておりますが、「能力を活用して行う業務」というものを追加する形です。この業務については、「軽易な業務」に付け加える形で、日数については特別の制約がないという中で、時間制約については40時間まで可能と整理しております。

 これをより視覚的にイメージしやすいように整理したものが、次のページの別紙2です。こちらは縦軸に週当たりの就業時間、横軸に月当たりの就業日数という形で取らせていただきますと、現行の「臨時的・短期的な業務」については緑で示した部分、月10日程度の制約があって、週の制限がない。現行の「軽易な業務」については青の色で示した部分です。週の制限は20時間あって、月の制限がない。こちらが現行、取扱い可能となっている範囲ですが、これに「要件緩和に係る業務」としては赤い部分になります。色が付いている部分は、これまでも取り扱われた部分で、白かった部分はこれまでできなかったところが可能になる部分という形で整理できるかと思っております。

 資料21ページの2にお戻りください。「民業圧迫等を防止する仕組み」ということで、要件の緩和は民業圧迫等のない範囲で行うことが重要であって、次の(1)(6)のような措置を法律のほか、省令や指針などによって定めることとしてはどうかとしております。その中で、矢印として、法律や省令等に書き切れない部分については、【QA】のような形で整理をして、徹底していくことではどうかということです。

 そこに挙げておりますのは、御指摘も踏まえた形で、センターの業務は「臨・短・軽」が原則であり、要件の緩和はそれを前提として行うものであること。センターの業務は労働者保護を図ることが前提であり、要件緩和を派遣・紹介に限ることとしたのは、そのためであること。センターが公益的な事業を担う団体としてそれにふさわしい活動を展開する必要があること。また、後で出てきますが、要件緩和に係る意見聴取を行うべき「地域の関係者」について、具体的に考えられる例といったことについて、【QA】という形で整理してはどうかということです。

 以下は民業圧迫を防止するための措置の内容になりますが、(1)が「要件緩和が認められるための基準の作成」ということです。前回の資料でも示しておりますが、厚生労働省が定める基準に適合すると認められる場合に、要件緩和を行うという仕組みとして、その基準としては3つ挙げておりますが、地域の高齢者の就業の機会の確保に必要なものであること、競合する事業者の利益を不当に害することがないこと、他の労働者の就業機会に著しい影響を与えることがないこと、こういったものを定めてはどうかと。

 次のページです。更に具体的にどのような指標等を用いて判断することが考えられるかについては、【QA等】の形で例を示してはどうかということです。例えばとして、当該地域の高齢化の状況、シルバー人材センターの活動状況、関係者から聴取した意見、派遣事業者の活動を表す指標、求人の充足状況等や、求人・求職の動向といったようなものが想定されるかと思っております。

(2)が「業務等の範囲の指定」ということです。業務の範囲としては、地域に加え業種、それから職種を指定することとしてはどうかということです。また、前回、部会で御意見を頂いた「期間」についてですが、当初指定した内容に変更が生じる場合に、指定の解除や追加により適切に対応するということと、後で出てきますが、フォローアップを着実に実施するということで、実質的に期間限定した場合と同様の効果が実現できるようにしてはどうかということです。

(3)が「関係者からの意見聴取」です。あらかじめ「地域の関係者」の意見を聴取することとして、「地域の関係者」には、そこに4つほど挙げている、市町村長、シルバー人材センター、要件緩和の業務と競合する業務を営む事業者を代表する者、当該地域で関係労働者を代表する者といったところを想定しております。更に具体的に、どのような者・団体等が考えられるのかということについては、【QA等】の形で例を示すこととしてはどうかということです。

 次のページです。(4)が「国の関与の手続」ということで、国としても、広域的な労働市場へ与える影響等の観点から確認するということで、地域等の指定には国の関与を必要としてはどうかということです。どのような形で国が関わることが適当かということについては、地方自治や地方分権の観点から、関係省庁と調整をする必要があるというところです。

(5)が「問題が発生した場合の指定の解除」です。要件緩和を行った対象業務が厚生労働省が定める、先ほど出てきた基準に適合しなくなったときは、遅滞なく指定を解除することを定めてはどうかということです。

(6)が「実施状況のフォローアップ」です。要件緩和を実施する都道府県においては、指定時だけではなく必要に応じて随時関係者から意見聴取を行う等といったことで、実施状況を適確に把握して、必要な場合には指定の見直しを検討することが適当であるということを【QA等】で示すこととしてはどうかということです。また、国としても、施行状況をしっかり把握して、把握した状況については、必要に応じ、ホームページ又はこの部会の場等でも報告してはどうかということです。

3点目、「適正な就業環境の確保」ということで、シルバー人材センターの適正な就業環境を確保するためのガイドラインの作成ということです。これについては、前回に御指摘等を頂いたことを踏まえ、例えばシルバーの派遣・請負の区分に関する留意事項や、契約の締結に当たり明示しておくべき事項、また適正な報酬や就業条件を確保するために留意すべき事項、それから就業時の事故等に対する保険の適用など、会員に周知しておくべき事項といったことを定めてはどうかと考えております。また、シルバーの適正就業の確保については、派遣事業に関する指導監督についても、しっかり対応していくことにしてはどうかということです。

 以上のようにシルバーに関係する考え方を整理したところです。説明については以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。それでは、ただいまの事務局の説明について、御質問、御意見等があればお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○小林委員 資料13ページにある、「高年齢者退職予定者キャリア人材バンク事業(仮称)」について、質問が2点ほどあります。1点目は、本制度を創設するときに、高年齢退職予定者のマッチングを支援し、就業促進を図る内容が図に示されており、この図の真ん中には「高年齢退職予定者」と書かれていますが、その予定者については、具体的には60歳代という理解で良いのかどうか、厚生労働省の見解を伺いたいということが1点です。

 もう1点ですが、上のほうになりますが、「民間ビジネス機関等」とあるのですが、これが具体的にどのような組織を示しているかということを確認したいと思いますので、よろしくお願いいたします。以上です。

○阿部部会長 それでは、御質問ですので、お願いします。

○北條雇用開発企画課長 お答え申し上げます。「高年齢退職予定者キャリア人材バンク事業」の目的は、通常、65歳まで企業で雇用確保措置がなされることになっている方々が、65歳を超えて、ほかの企業で雇用されるような道筋を付けるということでありますので、対象者としては、65歳の前、例えば63歳や64歳というイメージをしています。

 それから、「民間ビジネス機関等」ですが、これは許可を取った民間紹介事業者を念頭に置いて考えているところで、そことのマッチングに資するような求職情報、求人情報をお互いに交換するというイメージです。

○阿部部会長 よろしいですか。では、ほかにいかがでしょうか。

○小林委員 要望ですが、資料11ページには産業雇用安定センターについての事業実績等が記載されておりますが、事業実績については産業雇用安定センターのホームページにも載っておりました。今後、この制度の導入以降には地方自治体やハローワークを介したマッチングが何件あったのかという実績内容を、是非とも情報開示していただきたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

○北條雇用開発企画課長 検討してまいります。

○阿部部会長 お願いします。それでは、ほかにいかがですか。

○村上委員 シルバー人材センターに関する資料について、意見を述べさせていただきます。資料23ページの(6)ですが、「実施状況のフォローアップ」として、前回の部会において要件緩和を実施する業務の範囲の指定に関して、期間についても明確にすべきという意見をさせていただきました。それについては、今後のフォローアップ等を行って、指定の見直しをしていくということで、大体できるのではないかということになっております。是非、指定の見直しについてはQAというような形ではなく、告示などで示していただき、より的確になされるようにしていただきたいという要望です。同じ3ページの3のガイドラインの作成についてですが、これまで労働者保護の観点から重要であるというお話をさせていただいてきておりますので、しっかりと事項が分かりやすく示されるようにしていただきたい。

 もう1つ、これに関連して、資料14ページについて、1点御質問させていただきたいと思います。シルバー人材センターが請負で行っていた場合に、実際には請負ではないような形になっていた事例について、「会員の就業時間を発注者が指示している」というような事案などがこれだけあったということですが、その上にある説明文では「労働局から労働者派遣法に基づき改善を指導された」となっています。これは労働者派遣法に基づく指導なのか、職業安定法に基づく指導なのかというと、シルバー人材センターと会員の間に雇用関係がないのであれば、労働者派遣法ではなく、職業安定法なのではないかと思うのですが、これに対する厚労省の見解とともに、鎌田先生、森戸先生もいらっしゃるので、先生方から御見解を頂ければと思います。

○阿部部会長 では、まず、1番最後の請負の際の問題点を、どのようにしているかということで、派遣法か基準法かということで、どちらからいきましょうか。

○福士高齢者雇用対策課長 あくまで請負の関係は、改善を指導されたという中身については、労働者派遣法に基づいて改善がなされたという形だと思います。

○阿部部会長 先生方は何かありますか。

○森戸委員 実は私たちも今、同じことを思っていて、こちらでも内輪で話していたのですが、村上委員がおっしゃったとおりで、派遣法だと、労働者派遣なのにちゃんとしていないという指導ですよね。労働者派遣ということは雇用関係がある前提なので、これは会員と請負契約になっているから、この時点で派遣法に基づく指導ではないのではないかと私たちも実は思ったのですが。

○福士高齢者雇用対策課長 適法な請負ではなく、実態として労働者派遣が行われている場合には、派遣法の中での違法という、派遣法に基づいて改善を求めているというのが実態のようなのですが。

○森戸委員 この場合の請負というのは、この紙によれば、あくまでセンターと高齢者の間が請負契約だと書いてあるのですが、そうではなくて、行った先と請負契約という意味ですか。

○北條雇用開発企画課長 この派遣法に基づく改善は、本来、シルバー人材センターが派遣事業者として会員を雇用して派遣事業として行うべきであった事例にもかかわらず、請負で行った場合に、労働局が指導を行うという意味で、派遣法に基づく指導ということです。

○森戸委員 派遣としてやるべきであった。

○北條雇用開発企画課長 本来は労働者派遣として労働者派遣法に基づき派遣すべきであったのに、そこを請負でやってしまったことが問題であるということです。派遣法に基づく派遣事業として、事業を展開しなければいけなかったという指導です。

○森戸委員 では、労働者派遣ではないものに、労働者派遣にすべきだったという指導をしているというわけですね。

○北條雇用開発企画課長 シルバー人材センターは、派遣事業をやれることになっていますので、派遣事業、職業紹介、請負事業いずれもやることができるわけです。どの業態でやるのかということについて、請負事業でやったことが適切ではなく、派遣事業の枠組みでやるべきであったという場合、派遣事業者としてのシルバー人材センターにおいてやるべきだったということを指導されていると御理解いただければと思います。

○福士高齢者雇用対策課長 一つ例がありますので、これで申しますと、現在、締結している全ての請負委託契約の内容を再点検して、不適切であると判断された内容については改善することということで、適正な業務請負が可能な業務であるか否かを再検討しなさいと。ですから、今、北條課長が言われたように、「本来、派遣でやるべき業務ではなかったのか」ということを再検討しなさいということを、指導という形で指導票が出ております。

○阿部部会長 現場というか、実態としてはそういう指導を行っているということなので、今のところは派遣法ではないということですね。

○森戸委員 これ自体は別に間違っていないわけですね。これは事実なのですね。

○阿部部会長 村上委員はよろしいですか。

○村上委員 そのような理解でやられているということは分かったのですが、釈然としない部分は少し残っています。お時間いただいて恐縮ですが、もう1点伺います。労働局が指導する前にこういう状態であったときに、では発注者が偽装請負を受けていたということになって、労働者派遣法の直接雇用申込みみなし規定が掛かっていくという理解でいいのでしょうか。

○阿部部会長 結構難しいですね。

○福士高齢者雇用対策課長 少しお時間頂いて、確認してお答えさせてください。

○阿部部会長 そうですね。ただ、実際に派遣や紹介が、ある意味、これから拡大していきますので、この辺りはしっかりと、どうなのかというのは確認しておいてもらったほうがいいかもしれません。

 では、今、確認頂いているということで、先ほど村上委員から御要望がありました、指定の基準を告示でということと、それから、ガイドラインの事項をもう少ししっかり書いておくということは、御要望として承りたいと思うのですが。

○福士高齢者雇用対策課長 ガイドラインについては、少し専門的な知識の人を参集しまして、しっかり検討会を開いて、ガイドラインはしっかり作っていきたいと思います。それから、告示の問題は今後、少し検討させていただきたいと思います。

○阿部部会長 では、ほかにいかがでしょうか。

○市瀬委員 シルバー人材センターについてですが、商工会議所が実施した、「人手不足に関する調査」では、全体の約5割が人手不足であるという回答を頂いており、高齢者をはじめとした多様な人材の社会参画が必要であると考えております。その点においても、今般のシルバー人材センターの要件緩和はより広い業務を提供することにつながり、民業圧迫等その他に配慮した形で進めるのであれば、異論はありません。しかし、現状のシルバーセンターの認知度については、「大体の役割を知っている」と回答した割合が、やはり55歳以降のどの世代においても半数以下であり、単なる制度改正にならないためにも周知の徹底が必要であると考えております。以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。何かありますか。

○福士高齢者雇用対策課長 その辺の周知については、しっかり我々も周知していきたいと考えております。

○市瀬委員 よろしくお願いいたします。

○阿部部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。特にありませんか。先ほどの村上委員の御指摘は、労働者の保護というか、高齢者であってもやはり労働者ですから、その保護については、しっかりやっていかなければいけませんが、今、この場でお答えされますか。

○福士高齢者雇用対策課長 派遣部の人に来ていただくということで、今ちょっと手配しておりますので、申し訳ありません。

○阿部部会長 では、どうしましょうか。この後の議題2が「報告書()についてということですが、報告書()をやった後に戻るか、それとも、お待ちして、報告書()にいくか。

○福士高齢者雇用対策課長 よろしければ、報告書のほうをやった後でお答えしたいと思います。

○阿部部会長 そうさせていただいてよろしいですか。では、議題2の、報告書()に進めさせていただきたいと思います。

 それでは、今申しましたように、今回、事務局から部会報告()が出ておりますので、これについて事務局から資料の説明をお願いしたいと思います。では、よろしくお願いします。

○渡部高齢者雇用対策課長補佐 資料3をお開けください。部会の報告案です。資料の読上げをもちまして説明とします。

                       今後の高年齢者雇用対策について()

 我が国においては、少子高齢化が進展し、総人口は2008年の12,808万人をピークに減少局面を迎えており、65歳以上人口が総人口に占める割合である高齢化率は、2060年には40%近い水準となることが推計されている。

 こうした中で、高年齢者の就労意欲は高く、労働力人口に占める高年齢者の割合や高年齢者の就業率は近年上昇を続けており、内閣府が実施した「平成25年度 高齢期に向けた『備え』に関する意識調査」によると、65歳を超えても働きたいとする者が約5(70歳くらいまで」20.9%、「働けるうちはいつまでも」25.7%など)を占めている。

 少子高齢化の進展に伴い、将来に必要な労働力人口が減少することが懸念される中で、働く意欲のある高年齢者が、長年培ってきた知識や経験を活かし、年齢にかかわりなく活躍し続けることができる「生涯現役社会」を実現することがますます重要となっている。

 高年齢者の雇用を巡っては、2012年に高年齢者雇用安定法が改正され、企業における希望者全員の65歳までの雇用確保の仕組みが整備されたところであり、201561日現在で、31人以上規模企業の高年齢者雇用確保措置の実施割合は99.2%、希望者全員が65歳以上まで働ける企業割合は72.5%となっている。

 一方で、2014年には、団塊の世代全体が65歳に達しており、今後の高年齢者の雇用対策については、改正高年齢者雇用安定法に基づく65歳までの雇用確保措置の確実な実施を基本としつつ、65歳を超えても働きたい高年齢者の就業機会を確保していくことが課題といえる。

 その際、高年齢者の就業理由は「生活の糧を得るため」という者が多いものの、特に65歳以上では「健康にいいから」「いきがい、社会参加のため」という者も増える傾向が見られる等、高年齢者の就業ニーズは多様であり、こうしたニーズを踏まえた施策を展開していく必要がある。

 また、そのためには、企業における雇用機会の確保の促進や再就職等を希望する高年齢者に対する支援の強化とともに、企業を退職した高年齢者等の活動の中心となる地域社会において、多様な就業機会が確保されるようにしていくことが重要である。既にいくつかの自治体において、地域の関係者が連携して高年齢者の就業機会を確保・提供していく取組が進められているが、こうした取組を普及させていくことや、定年退職後の高年齢者等に対し、地域の日常生活に密着した仕事を提供しているシルバー人材センターの機能強化等に取り組むべきである。

 当部会においては、このような問題意識の下、今後の高年齢者雇用対策として取り組むべき施策等について検討を行ったところであり、その結果は以下のとおりであるので報告する。

 この報告を受けて、厚生労働省において、法的整備も含め所要の措置を講ずることが適当と考える。

1  企業における高年齢者の雇用の促進

(1) 企業における高年齢者雇用については、平成24年の高年齢者雇用安定法の改正により、希望者全員の65歳までの雇用確保措置を講じることが企業の義務とされたところであり、未実施企業に対する指導の徹底等により、これが確実に実施されるようにしていくとともに、改正法施行後における高年齢者の雇用動向等を把握することが必要である。

(2) その上で、法的な義務を超えた65歳を超える高年齢者の雇用の確保については、企業の自主的な取組を支援していくことが適当であり、高年齢者を多数雇用する事業主や高齢者向けに健康管理制度等を導入した事業主等高年齢者の雇用確保に積極的に取り組む企業に対する支援が必要である。

(3) 雇用確保措置の対象とならない高齢の有期雇用労働者への対応は引き続きの課題であり、当面は、高年齢者に限らず有期雇用労働者については、「反復継続して契約の更新がなされているときには、期間の定めのない雇用とみなされることがある」とされていることを周知していくことが重要である。また、65歳までの雇用機会確保を図るため、無期雇用への転換を図る事業主を支援し、これを促していくことが必要である。

2  中高年齢者の再就職の支援

(1) 高年齢者の就職支援については、これまでも高年齢者就労総合支援事業等の取組を進めてきたところであるが、特に60歳代後半の高齢者にとって、ハローワークが重要な入職経路となっている現状も踏まえ、ハローワークにおける65歳以上の高齢者に対する就職支援を強化していく必要がある。

(2) また、自社内にとどまらずに活躍の場を探す高年齢者については、人手不足に悩む地域の中小企業やNPO等における雇用に繋げていくことも重要であり、このため、労働者本人の意向を最大限に尊重した上で、産業雇用安定センターによる出向・移籍のあっせん機能を活用していくことが必要である。

3  地域における多様な雇用・就業機会の確保

(1) 高年齢者の就業機会の確保において、地域の果たす役割は重要である。このため、地方自治体が中心となって、地域の実情を踏まえた高年齢者雇用のあり方を協議、推進していくため、地域の高年齢者の就業に関する機関で構成する協議会を設置することができるようにし、その設置促進を図ることが必要である。

(2) その際、協議会の構成員としては、地域のニーズや高年齢者の多様な就業ニーズを的確に反映することができるよう、関係行政機関、シルバー人材センター、労使関係者、社会福祉協議会、地域の金融機関、NPO等、地域における高年齢者の就業機会確保に関係する関係者を幅広く含めることができるようにすることが必要である。

(3) また、協議会においては、地域の高年齢者の就業機会に関する計画等の作成に関することやその実現のために必要な事業の実施に関することについても協議を行うことが適当であり、国としても、地域の主体性を尊重しつつ、協議会が定めた事業の実施に対する支援や、取組状況のフォローアップ、普及促進等を行うことが必要である。

4  シルバー人材センターの機能強化

(1) 高年齢者の多様な就業ニーズを踏まえた就業機会を確保していく上で、シルバー人材センターの機能強化を図ることは重要である。このため、シルバー人材センターにおいては、従来からの清掃や剪定等の職域ばかりにとどまらず、人手不足分野や育児支援等の現役世代を支える分野における就業機会の拡大に取り組んでいるところであるが、こうした取組を今後とも積極的に展開していくことが期待される。

(2) また、シルバー人材センターが取り扱う就業については、現状で、臨時的かつ短期的又は軽易な業務に限定されているが、シルバー人材センターが、生きがいとしてこうした就業を希望する高年齢者に対して就業の機会を提供していくものであるという原則は堅持しつつも、将来我が国の必要な労働力が減少していくことが懸念される中で、より長く働き

たい高年齢者の就業ニーズ等にも対応することができるよう、この取扱業務に係る要件は緩和することが適当である。

(3) ただし、その際、取扱業務に係る要件の緩和を行ったことにより、労働者保護を害することになったり、民業を不当に圧迫することや地域の労働市場へ重大な影響を及ぼすようなことのないよう、以下の措置を講じる必要がある。

1要件緩和は、シルバー人材センターの業務のうち、就業者の適切な保護の観点から、職業紹介事業及び労働者派遣事業に限って実施すること。

2要件緩和の実施は、シルバー人材センターの指定・監督権限を有する都道府県知事が、厚生労働省が定める基準に適合すると認められる場合に、対象となる業務の範囲や地域を指定することにより可能とすること。

3都道府県知事が、要件緩和を実施する地域等の指定を行うに当たっては、要件緩和を行おうとする業務に関する地域の関係者の意見をあらかじめ聴取するとともに、広域的な雇用情勢や労働力需給への影響等の観点から国の関与を必要とすること。

4要件緩和を実施する地域等の指定は解除することができるものとすること。

(4) さらに、シルバー人材センターを通じた就業について、会員である高年齢者の適切な就業環境を確保することも重要である。このため、派遣・請負の区分に関する基準や会員の就業条件等に関すること等、シルバー人材センターが業務運営に当たって、発注者、会員それぞれとの関係の中で留意すべき事項について、適正就業確保のためのガイドラインとして示していくことが必要である。なお、シルバー人材センターが行う労働者派遣事業及び職業紹介事業については、許可ではなく届出により事業を実施することが可能となっているため、シルバー人材センターの適正な事業運営を確保していく必要がある。

 以上です。

○阿部部会長 ありがとうございました。それでは、報告書について事務局から説明がありましたが、報告書案についての議論を始める前に、先ほど村上委員からあった御質問について、需給調整事業課長がいらっしゃったので、すみません、お忙しいところありがとうございますが、村上委員の御質問は大体御理解なさっていますか。

○松本需給調整事業課長 はい。

○阿部部会長 では、お願いします。

○松本需給調整事業課長 御質問は、シルバー人材センターと発注者の間の請負契約で就業していながら、それは偽装請負との指摘を受けた場合において、派遣法上の労働契約申込みみなし規定が適用されるか否かという御質問と承っていますが、間違いないでしょうか。

○村上委員 はい。

○松本需給調整事業課長 では、これはシルバー人材センターであろうと、そうでなかろうと、この労働契約申込みみなし規定は適用対象です。ただ、労働契約申込みみなし制度では、幾つか要件があり、御案内かとも思いますが、いわゆる偽装請負等の場合については、偽装請負という状態があるというのも当然ですが、労働者派遣法又は労働基準法その他の法の適用を免れる目的があるということ、善意無過失であるということ、といった要件も満たした場合に、労働契約の申込みをしたものとみなされるということです。

 適用があるということと、その上で実際にそれがみなされる状態になっているということは大分違うわけですが、一般論で申し上げれば、行政指導を受けた時点で善意ではなくなります。善意ではなくなった状態で、翌営業日以後に指揮・命令をして役務の提供を受けたということであれば、善意でない状態で偽装請負状態が継続しているということですし、また、そういうときには、目的があったという事実認定をされる可能性が高くなります。ということかと存じますが、お答えになっていますか。

○阿部部会長 村上さん、よろしいですか。

○村上委員 はい。

○阿部部会長 今の点について、何か御意見、御質問等はありますか。特にないですか。

○鎌田委員 今の課長からの御答弁は、シルバー人材センターが労働者派遣事業であるということを前提にした御答弁ということで、そういう整理でお聞きいただければと思います。

○阿部部会長 先生、だから、それをあれですか。

○鎌田委員 でも、質問者は一応これで。

○阿部部会長 つまり、派遣の状態のところでそういう問題が起こったことでいいのですよね。そうではなくて、請負のときに。

○村上委員 そうです、請負で。

○阿部部会長 根っこにあるのは、請負状態で契約をしている際に偽装請負があった場合に、派遣法が適用されるのかということだと思うのです。

○松本需給調整事業課長 そもそも偽装請負は、契約形態としては請負であるけれども、これは派遣でやらなければいけない状態ということを前提としていますので。

○森戸委員 多分、混乱してしまうのは、ややこしいのは、請負が2本出てきているから、今ここで議論になっていたのは、実はシルバーと会員との間が、ここが労働契約ではなくて、請負でやっている場合の話をしていたのです。そうすると、センターが高齢者を雇用していないので、労働者派遣ではないですよね。その場合も今のみなしが適用になるのかというと、それはいかがですか。

○松本需給調整事業課長 その請負がまさにどういう請負かということかと思います。発注者とシルバーの間の請負とシルバーと高齢者との間の請負が、真に請負かというお話も考えなければいけないと思います。つまり、労働契約申込みみなしの場合には、雇用契約が発注者側から労働者に対して労働契約の申込みがあったものとみなす制度ですので、そういう意味で請負人と労働者が雇用契約を前提としているのは御指摘のとおりです。まさに実態として、シルバーと高齢者との間が、これは雇用ということなのか、純粋に請負なのかという話は、これも論点になり得ます。御指摘のとおりです。

○森戸委員 もし純粋に請負だったら、先ほどの話はみなしという話にはいかないのですよね。

○松本需給調整事業課長 真に雇用契約でないということであれば、そういうことです。高齢者・シルバー間が純粋に請負なのであれば、直ちには適用されない。

○森戸委員 そうですね、もし、そうだったらということですね。

○村上委員 はい、分かりました。

○森戸委員 来ていただいて、いきなり失礼ですが、今、村上委員がおっしゃった4ページの問題の資料は、私の理解では、少し考えていたのですが、まず、「シルバーと高齢者が請負契約を締結して行う」と書いてあるので、それで仕事をしていたけれども、ここに指導の内容があるように、「発注者が実際は会員に業務の実施方法等を指示している」という問題がありました。

 それで、これを合法的な方向に持っていくのが多分2通りあって、1つはこういう指示をするなと。指示をしなければ、本当の純粋な、ただの請負になるから、こちらのシルバーと高齢者ではなくて、発注者とこちらの契約も請負になるから、指示をするなと。これは指示をしてしまっているのは、こちらは雇用関係がないから、労働者派遣ではなくて供給だと。労働者供給になってしまっているから指示をするなという方向に。だからこれは派遣法ではなくて、多分、職安法に基づく指導ですが、そういくのか。若しくは指示をしたままでいいから、こちらを雇用契約にしろと。労働者派遣にすればシルバーは派遣できるのだから、そうすると違法ではなくなると。それで、私はそちらの指導をしているという意味に理解したのですが、それでいいですか。

○松本需給調整事業課長 この資料の事例でどうかは、私はその事例についてさっぱり分からないのですが、一般論として申し上げれば、森戸委員がおっしゃることは、どちらもあり得ることだと思います。

○森戸委員 どちらもあり得て、ただ、ここで出た資料だと、どうもそのときは労働者派遣にしろと。つまり、発注者は会員に業務の指示をしていいから、こちらを雇用契約にしろという指導をしているという資料が恐らく出された、というふうに理解しているのですが。

 逆に言うと、そういう指導しかしないのか、つまり労働者供給になっているから、業務の指示をするなという指導はしないということなのかというのは、多分、村上さんとか私の疑問ですが、そういう実態というか、そういう実務、あるいは法的にそういう方向しかないということなのかとは、多分そういうことですよね。

 ただ、指導の方向は分かりました。だから、派遣という形にしろという指導をしていると。だから、業務の指示はしていいと。就業時間の指示もしていいと。するなら派遣にしろという指導をしていると。だから、疑問はそれは派遣法に基づく指導なのかというのが、多分、素朴な疑問なのですよね。つまり、元は派遣ではないから。派遣にしろというのは、派遣法の指導なのかという少しややこしい話なのだけれども、多分、そこを御疑問に思われたので、質問が出たのだと思います。

○鎌田委員 この「労働者派遣法等に基づき」で、そこは職安法込みというふうにお考えいただいたほうがいいのではないか。

○阿部部会長 私は今回、そういう意味で整理がついた気がしているのですが、指導の仕方は現場でいろいろあると思うのです。ですから、派遣でいくのか、それとも請負でいくのか。請負でいくのだったら、法違反のないように、どういうことをやりなさいと。派遣でいくのなら、法違反のないように、どういきなさいというのを少し整理していただいて、労働者が不利な状況にならないようにしていただくのが、村上委員の質問から出た問題を解決する策かと私は理解しましたが。

○村上委員 いろいろ解説もいただきまして、ありがとうございます。検討会を開催しガイドラインを策定していくということですので、その検討会の中で議論いただき、なるべく違法な状態にならないように、違法な状態とはどういうことなのか、シルバー人材センターの皆さんにも発注者の皆さんにも分かるような内容にしていただきたいと思います。

○阿部部会長 では、そういうことでお願いします。

○福士高齢者雇用対策課長 しっかりやっていきたいと思います。

○阿部部会長 松本課長、お忙しいところお出ましいただきまして、ありがとうございました。

 それでは、議題2に戻りまして、報告書案について、御意見、御質問等があれば承りたいと思います。いかがですか。

○紺谷委員 報告書案の取りまとめというところですので、この間の何回かの部会での議論も踏まえて、これまでも意見を申し上げてきた中身ですが、報告書案では高年齢者雇用安定法が定める、65歳までの高年齢者雇用確保措置を実施している企業割合は99.2%ということについては、これまで本部会でも説明を受けてきたわけであります。労働者側としては、その制度実施も大切ですが、高年齢者雇用確保措置導入後の運用状況について、希望者全員が65歳まで雇用確保されるよう、これまで意見を申し上げてきたところです。

 そういったことを踏まえて、報告書案の1(1)の終わりのほうの行に、今回、「改正法施行後における高年齢者の雇用動向等を把握することが必要である」との記載をしていただいたわけですが、これに関して2つ質問をして確認したいと思っています。1点目は、「改正法施行後における高年齢者の雇用動向等を把握することが必要である」というふうに記載した趣旨について、厚労省の見解を確認しておきたいというのが1点です。もう1点は、「高年齢者の雇用動向等の把握」については、具体的にどのような方法で把握するのかを念頭に、このような記載をされたのかということをお伺いしたい。この2点です。

○阿部部会長 では、お願いします。

○北條雇用開発企画課長 「高齢者の雇用動向等の把握」という部分について、その趣旨と具体的な把握の方法をご質問いただきました。一般的に法律を施行した後は、その効果、影響について、的確に把握していくことが不可欠です。高齢者雇用安定法を平成24年に改正し、経過措置を除いて希望者全員の65歳までの雇用確保措置が企業に課されたことについては、今お話がありましたとおり、雇用確保措置の導入企業が99.2%まで達しており、改正の効果が浸透していると言えると思います。

 ただ、その法律の効果、影響について把握するためには、今申し上げた制度の導入の状況だけではなくて、制度の実際の運用の状況も把握しなくてはいけないと考えています。ここの話で申し上げますと、解雇や退職事由に該当していないにもかかわらず、雇用確保措置の対象とならない場合など、そういった運用の事例があるかどうか、把握していかなければいけないと考えています。そういった趣旨で、「雇用動向等を把握することが重要」と記載したものです。

 また、「把握の方法」ですが、この具体的な中身については、今後検討してまいりたいと考えていますが、高年齢者御自身から聴く方法もあるでしょうし、高年齢者を雇用する企業から聴く方法もあるでしょうが、今申し上げたことが分かるように、必要事項を尋ねていくアンケート調査によって把握していくことになろうかと、今のところ考えています。

○阿部部会長 紺谷委員、いかがですか。よろしいですか。

○紺谷委員 はい。それで、これは要望したいのですが、私は労働側の委員として出席していますが、この制度自体、基本的に企業に義務付けられているものですよね。場合によっては行政機関なり、国が事実上の雇用主になっているような状態、それから公的な機関、例えば独立行政法人であるとか、公益法人であるとか、そういった国から財政支出をされている機関、すなわち改正高年齢者雇用安定法が適用されるべき所において、実は制度がきちんと出来上がっていない、あるいは運用がきちんとなされていないというケースがあります。民間企業に対して、こういった厳しい対応を課しているわけですから、行政の立場、官の側で事実上の違法行為みたいなことがないように、同じ行政機関としてきちんと監視していただきたい。

 参考までに申し上げますと、私の出身は在日米軍基地の労働組合ですが、こういった日本の法律が適用除外にされるケースが結構あります。同じ防衛省が雇用主ではありますが、今、正に65歳までの雇用確保について、制度は作ってあるけれども、実際の運用はきちんと入っていないという深刻な問題を抱えていますので、ここは議事録を残していただかなくて結構ですが、そういったことがあるのだと。ほかにも事例があるのだということだけは、実態として承知しておいていただきたいと思っている次第です。

○阿部部会長 それでは、御要望ですので、御検討いただければと思います。

○北野委員 私からは1点質問があり、厚労省に確認したいと思っています。資料3の報告書案の4「シルバー人材センターの機能強化」の項ですが、これまで本部会で労働側から臨短軽、この要件を緩和するのであれば、シルバー人材センターの派遣事業若しくは紹介事業、これらについては、事業所と同様の規制を課すべきであるというふうに意見を申し上げてきました。4の末文のほうになると思いますが、「労働者派遣事業及び職業紹介事業については、許可でなく届出により事業を実施することが可能となっているため、シルバー人材センターの適正な事業運営を確保していく必要がある」という報告になっています。

 これは確認ですが、今後、万が一、シルバー人材センターにおいて適正な事業運営を確保されていないという実態になった場合は、これは届出制を許可制に変更するという理解でいいのかどうか、厚労省の見解をお聞かせいただきたいと思います。

○阿部部会長 では、お願いします。

○北條雇用開発企画課長 シルバー人材センターは、まず業務を適正かつ確実に実施することができる法人ということで、知事の指定を受けている法人です。それから、公益法人として知事の監督・命令を受けています。また、その業務を適正かつ確実に実施することができない場合は、指定の取消しもあるという仕組みになっているわけです。シルバー人材センターはこういう仕組みの下で、その業務を適正かつ確実に実施することができる仕組みが担保されていると考えられることから、派遣事業と紹介事業について、許可ではなくて届出で行うという仕組みになっているということです。

 今後、シルバー人材センターにおいて、派遣及び職業紹介の業務の範囲を拡大することが進められていくわけですが、仮に届出制の下では、指導・監督を行った上でも、その業務を適正かつ確実に実施することができないことが認められる事態になった場合については、現在の届出制を許可制に変更することも検討していかなければいけないと考えています。

○阿部部会長 北野委員、よろしいですか。

○北野委員 はい。

○阿部部会長 ほかにいかがですか。特にありませんか。それでは、御意見、御要望がありましたが、高齢者雇用対策については、これまで当部会において皆様から精力的に御議論いただいたものと思っています。当部会における検討については、先ほど事務局から読み上げていただいた案で取りまとめてよいと私は思っているところですので、本報告案を労働政策審議会から厚生労働大臣へ建議すべきであるという結論に達した旨を、職業安定分科会へ報告したいと思いますが、いかがですか。

                                   ( 異議なし)

○阿部部会長 ありがとうございます。では、事務局から職業安定分科会への報告文案をお配りします。

                                 ( 報告文案配布)

○阿部部会長 お手元の案のとおりですが、これでよろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし)

○阿部部会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告します。

 高年齢者雇用対策については、本年10月から議論を始め、委員の皆様の御協力を得て議論を進めてまいりました。本日、このような形で取りまとめることができたことについて、厚く御礼を申し上げます。ありがとうございました。

 最後に、生田職業安定局長より御挨拶をいただきます。

○生田職業安定局長 一言、お礼の御挨拶を申し上げます。委員の皆様には、本年10月以降、大変精力的に御議論を賜りました。本日、このように報告を取りまとめていただきまして、深く感謝を申し上げます。少子・高齢化が進む中で、生涯現役社会の構築、あるいは高齢者に多様な就業機会を提供することなど、高齢者雇用対策の充実は喫緊の課題と考えております。そして、これは政府の進める「一億総活躍社会」の中心的なテーマでもございます。本日も含めまして本部会で頂きました御意見を十分に踏まえながら、今後、運用面も含めましてしっかり対応していきたいと考えております。

 今後は頂いた報告を基にいたしまして、法案を作成いたしまして、改めて法案要綱につきまして、この部会にお諮りさせていただきたいと考えております。引き続きよろしくお願い申し上げます。

 簡単ではございますが、御挨拶とさせていただきます。ありがとうございました。

○阿部部会長 それでは、以上をもちまして終了します。本日の署名委員は、紺谷委員及び福田委員にお願いします。本日もお忙しい中、どうもありがとうございました。


(了)

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