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2016年1月25日 第2回麻しん・風しん対策推進会議

健康局結核感染症課

○日時

平成28年1月25日(月)15:00~17:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○議題

(1) 麻しん・風しんの発生状況について
(2) 麻しん・風しん対策への取組状況と評価について
(3) 麻しん・風しん排除に向けての最近の動向と今後の取組について
(4) その他

○議事

○氏家課長補佐 ただいまより、第2回麻しん・風しん対策推進会議を開催いたします。本会議は、感染症法及び予防接種法に基づく、麻しん・風しんに関する特定感染症予防指針に規定された会議でありまして、施策の実施状況に関する評価や結果を公表し、必要に応じた施策の見直しについて提言を行う目的で設置され、今回が第2回目となります。本会議の開催に先駆けまして、普及啓発のイベントを実施いたします。進行は厚生労働省健康課正林課長にお願いいたします。

○健康課長 皆さんこんにちは。健康課長の正林と申します。普段は健康課というのは、煙草対策とかアルコールの飲み過ぎに注意しましょうとか、そんな仕事をしているのですが、今日はちょっと司会をさせていただきます。

 昨年この会に出られた方は御記憶かと思いますけれども、このはしかと風しんの対策会議は、私が結核感染症課長時代に立ち上げました。当時、丁度予防接種世代のお子さんを持つ有名な方をということで、たまたま石田さんは私の高校の野球部の先輩でありまして、ちょっとそういう関係でお声をかけたら、快くお引受けをいただいて、それで何年か前から毎回、毎回御夫妻にこうして参加いただいております。今日はよろしくお願いします。

○石田構成員 よろしくお願いします。

○東尾構成員 よろしくお願いします。

○健康課長 さらに、今日はふくろう保育室というここの建物の2階にある保育所から、一番下は6か月、一番大きな子で111か月のお子さんとそのお母さん方、計6組の園児と保護者の皆様にお集まりいただきました。今日は本当によろしくお願いします。

○ふくろう保育園室の方々 よろしくお願いします。

○健康課長 それでは、最初に石田さんから簡単な御挨拶を頂けますでしょうか。

○石田構成員 皆さんこんにちは。ふくろう保育室の園児の皆さん、それから保護者の皆さん、そして保育室の先生方、お集まりいただきまして、お会いできて嬉しいです。よろしくお願いいたします。私どもも3歳になる息子がおりまして、1歳のときに麻しん・風しんの混合ワクチンを受けさせていただきました。そして日本も皆様御承知のとおりと思いますけれども、20153月で麻しん、いわゆるはしかのほうは排除ということをWHO(世界保健機関)から指定を受けまして、つまりもうなくなったということです。それで風しんのほうはワクチンでも防げるということで、引き続きワクチンの接種をこれからも我々も協力してやっていきたいし、今、実はお腹におりますけれども、きっと女の子ですけれども、風しんのワクチンを受けることになると思います。これからも我々、何か事あるごとに、今、正林課長がおっしゃった、何か年代によって多分国の方針とか、そのときのいろいろな医学的な見地から、ワクチンを受けたり受けなかったりとかそういう部分もあったかと思います。これからそういう普及に向けて、皆様といろいろお話合いをしていきたいなと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

○健康課長 ありがとうございました。今日は石田御夫妻以外に、やはりこういうワクチンについて専門的なお立場から少しいろいろ御意見を頂きたいと思い、中野先生にお越しいただいております。中野先生、麻しん・風しんについて、何か簡単な解説などをお願いできますでしょうか。

○中野座長 正林課長、どうもありがとうございます。石田さん、東尾さんとは1年半ぶりぐらいですね。本年もどうもありがとうございます。それとふくろう保育室の皆様方、今日は本当にありがとうございます。なかなかお子様たちがこれだけフラッシュを浴びてどきどきしているのではないかなと思いますけれども、ある意味でいい経験になると思いますので、よろしくお願いいたします。

 ちょっと簡単に私のほうからも麻しん・風しんについて、ざっくばらんにお話させていただきます。この会議は2つの病気をターゲットにしています。さっき石田さんにも触れていただいた麻しんと風しん。おっしゃっていただきました麻しんは昨年日本が排除状態になったと。排除とは漢字2つですけれども、排除て何なのかなと考えてみたら、この国で流行する土着の病原体が消えたということです。ですから、病原体は消えてもワクチンはやはりずうっと続けないといけないのです。うっかり忘れてしまったら、その病気に掛かってしまったら、子どものはしかはとても重い病気ですから、排除は達成されたけれども、ワクチンはしっかりとやっていただきたいのです。ですからきちんと、3歳のお子様は打っていただきましたけれども、次の女の子も1歳になったら忘れずに打っていただきたいですし、保育室の皆様方も1歳はきっと打っておられると思いますが、万が一忘れている方、あとこれから1歳になる方がみえたら、是非打っていただきたいと思います。

 それともう1つの風しんです。風しんは2013年ぐらいですか、一番問題となったのは。これは何が問題となったかというと、先天性風しん症候群といって、お母さんがこの病気に掛かることによって、お腹の赤ちゃんに影響が出る。それは特に妊娠前半にこの病気に掛かると大変なことになると。東尾さんは去年も確かコメントを頂いたと思いますけれども、きちんと石田さんも含めて抗体を調べていただいて、大丈夫だったという力強い言葉を去年のこの会でも頂いたと思います。今年も是非、そのお言葉を支えににして、また新しい私たちの元気が出るコメントを頂ければと思います。今日はその2つの病気についてやっていくことになると思いますので、引き続きよろしくお願いいたします。

○健康課長 中野先生、どうもありがとうございます。今日お越しのふくろう保育室の皆様方、ふくろう保育室というのは一昨年仕事と育児の両立とか、女性の活躍とワークライフバランスの推進を目的に省内に設立されて、現在12名の園児を受け入れております。両親ともが社会で活躍しながらの子育てや、忙しい中でも子供の予防接種を受けていただくことの重要性を我々厚生労働省も、もっともっと宣伝していかなければいけないなと感じております。今日、お二人のような著名な方々にお越しいただいて御協力いただけたらなというようにも思っています。そこで、ふくろう保育室の保護者の方から、是非何か一言頂けたらと思いますが、あらかじめ御指名をさせていただいています。島谷さん、一言お願いできますか。

○ふくろう保育室保護者(島谷様) こんにちは。本日はお目にかかれて光栄です。お招きいただきましてありがとうございます。島谷と申します。息子は19か月のジュンと言います。麻しん・風しんのワクチンについては1歳のお誕生月に受けました。そのときはまだおとなしくてポカンとしながらただ打たれていましたけれども、先週末は4種混合のワクチンを受けましたが、覚えたての痛いという言葉を、やたらはっきり「痛い、痛い、痛い」と、連呼しながらも大絶叫し、大騒ぎして予防接種のワクチンを受けました。段々子どもの成長とともになかなかワクチンを受けるのが難しくなってはきますけれども、こうやって集団生活をしている一員として、予防接種を受けることは最低限のマナーだと思っていますし、何よりその病気に掛かって子どもが苦しむことは親としてはなるべく避けたいという思いがありますので、これからも予防接種はしっかり打っていきたいと思います。ありがとうございました。

○健康課長 ありがとうございました。もう12人、事前に石田さん御夫妻に何か御質問をされたいというように伺っています。米本さんはいらっしゃいますか。パパの育児への関わりについて聞いてみたいということです、どうぞ。

○ふくろう保育室保護者(米本様) うちも2人目が行けたらいいなと思いつつ、パパはお仕事で忙しくて、なかなかあれなのですが、今、何かパパの積極的な関わり具合ですとか、これからの御予定とか、何か普通の人でも参考になりそうなものがありましたら教えてほしいなと思います。

○石田構成員 時間の許す限り、可能な限りではありますが。やはり可愛い子供を見ると自分たちの人生もありますけれども、もう一度自分と息子、あるいは娘との人生をもう一度生きるみたいなそういう感覚で、理子にもいろいろ教わりながらお風呂に入れたり、一緒に入ったりして、とにかく一緒にいること。公園に行ったりそういう時間をなるべく増やしていこうと、そのように思っています。そして、御飯を食べたり、あるいは男同士の遊び、今だったら例えば鉄道だったり。あとまだ小さかったときには、ほぼ毎日、自分が仕事に出てないときは散歩したりして、そういう接触ですね、そうすることによってお父さんも忘れられずにすむみたいな、そういう部分があります。いざとなったらお母さんですけれども、そういった意味で時間をいろいろ共有していきたいなと思っています。何といってもスキンシップが大事かなというように考えています。今はそういう時間を持つことが一番目と、すごくこちらも一番可愛いときといいますか、ずうっと子供は可愛いですけれども、そういう時間を楽しみながら、動物園に行ったりいろいろな同じ時間を過ごしたいなと思っています。

○健康課長 理子さんはいかがですか。今、石田さんが言ったことは大体本当ですか。

○東尾構成員 大体本当ですけれど、ちょっと何かしどろもどろでしたね。どれだけ本当にやっているのだろうと思うようなぐらいのゆったりな感じでしたけれども。主人が最初に言っていましたけれども、時間の許す限り頑張ってやってくれているので、家にいる時間帯は、どうしても仕事柄、夜や夕方の仕事が多いので、夕方は一緒にいられないので、朝、過ごしてくれるのですが、朝は本当に、一緒に、夜中何時に帰って来ようが、朝は息子と一緒に678時に起きてくれて、スクールに行くまでは遊んでくれているので、そういう時間だけでも、家にいるときは家事は私が頑張ってやるので、子供と遊ぶ時間をつくってやるように心懸けてきたら、本当に息子はパパのことが大好きなので、今のところはうまくいっていると思います。

○健康課長 そのほか、西川さん、いらっしゃいますか。何かお聞きになりたいことがあると。

○ふくろう保育室保護者(西川様) お子さんの予防接種で苦労されたこととか、何か工夫されたことがあったら教えてください

○東尾構成員 私がマイクを受け取ります。やはりスケジュールですよね。生ワクチンは1か月打てないとか、いっぱい打ったらどれが反応するか分からないというのは、皆さん本当に同じでしょうけれど、それに悩みまして、先生が言ってくださるスケジュールと、あと冬の季節だとそれにインフルエンザを入れるか入れないかという生ワクチンを迷いまして、任意と定期とそれをどうするかというのを迷いましたけれども、うちは一応全部打ちまして、スケジュールも先生と相談して、というのが一番大変だったのと、それこそ子供もジュンくんのように泣くときと泣かないときがあったのですけれども、しょうがないなと思って、我慢してもらって、けど、泣きやんでくれたので、息子のことを思って頑張って一緒に泣かずに、あれね、親が泣きそうになりますよね。一緒に泣きながらもやっていましたね。なので、これから増えるか減るか、混合になってくれるといいなと思いつつ、けれど混合は混合で大変で、子供にとって負荷が掛かるのではないかとか心配しながらスクリーニングを頑張ってやりたいなと思っています。

○石田構成員 先生でも、正林課長でもいいのですが、医学の定説みたいなものがやっぱりこう動いていくところもあるではないですか。去年まではそう言われていたのに、今年からは違うとか、そういうことを一般に分かりやすいように、あるいは例えば仕組みが変わってきたとか、先ほどのようなことを私もちょっと分からなかったのですが、もう無くなったのかなと、ということは打たなくていいのかなというように自分では思っていたわけですね。そういうことを是非教えていただくというか、何かで新聞やメディアの皆さんのお力も含めて、言っていただければいいかなと思うのです。どうしたらいいか分からないというか、去年まではそうだったので今年もそうなのかなとか、あるいは5年前は違っていたけれども、今はこうだとか、そういうことをどんどん真説と言ったらあれですけれども、新というのは新しいではなくて、真の説をずうっと我々が理解できるように流していっていただきたいなと。すみません。

○中野座長 ありがとうございます。

○健康課長 今の石田さんのリクエストは多分我々に対してだろうと思います。しっかりと最新の医学情報を集めて、できるだけタイムリーに情報発信はしていきたいなと思っています。

 それでは、お子さんたちも飽きてきたようなので、最後にすみません、石田御夫妻に、これから妊娠を希望される方とか、それからそのパートナーの方とか、そういう方々に対して、風しんのワクチンについて、それからもしできればはしかのワクチンについても何かメッセージを最後に頂けたらと思います。

○東尾構成員 やはり予防できるものは予防して、準備できるものは準備して、そのためには知識がないとできないことだと思いますので、しっかりとした勉強をして知識を持って、風しんもそうですけれども、いろいろな予防接種を含め、風しんの予防接種をしっかり受けていくことをお勧めしていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

○石田構成員 発信という意味で、我々もできましたら率先していろいろなワクチンその他を、法律ないしは、お勧めをそのままもってやっていきたいなと思っております。とにかく防げるものはワクチンで防ごうということで、この世界一安全で平和で、そして健康的な国という、それをまた続けていきたいなと思っております。微力ながら協力させていただきます。よろしくお願いいたします。

○健康課長 どうもありがとうございます。最後に、フォトセッションを、お二人を囲んでそれからお子さん方、保護者の方々、一緒になって写真を撮りたいと思います。

                                  (写真撮影)

○健康課長 どうもありがとうございました。これにて冒頭の普及啓発イベントを終了いたします。ふくろう保育室の皆様はここで退場されます。どうもありがとうございました。

                           (ふくろう保育室の皆様退場)

○氏家課長補佐 時間になりましたので、ただいまより第2回麻しん・風しん対策推進会議を開催いたします。初めに、委員の出席状況を御報告いたします。本日は、後藤構成員、調構成員、竹田構成員より欠席の御連絡を頂いております。また本日は参考人として、川崎市健康安全研究所長の岡部先生に御参加いただく予定ですが、少し遅れて参加されるとの御連絡を頂いております。また、東京都福祉保健局健康安全部感染症対策課の西塚参考人に御出席を頂いております。

 続いて、事務局より配布資料の確認をいたします。お手元の資料を御覧ください。議事次第のほか、配布資料一覧として、資料1~資料4-3まで、そして参考資料13まで御用意してありますので、もしお手元に不足の資料等がありましたら、事務局までお申し付けください。申し訳ありませんが、冒頭のカメラ撮りについてはここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。以降の議事運営については、中野座長にお願いいたします。

○中野座長 それでは、議事に入ります。まずは、お手元の資料13について構成員に説明していただいた後で質疑応答をしたいと思います。資料1「麻しん・風しんの発生状況について」、事務局から説明をお願いいたします。

○国立感染症研究所感染症疫学センター長(大石) 資料1について説明します。麻しんについての説明です。下の段は、麻しんによる年別死亡報告数を示しております。1999年から約30名の死亡者数はその後減少して、2012年の死亡者数は0になっているというデータが示されております。次は、定点あたり麻しん患者報告数です。このデータは、1999年から2007年までの当時感染症発生動向調査で、定点把握疾患として麻しんの患者数が報告されておりました。その頃のデータです。赤の線が麻しん患者全体、そして青の線が成人の麻しんです。このように、1999年からずっと症例数が定点報告でも多かったわけですが、20052006年と下火になったかというところですが、2007年にまた症例数の増加がありました。ここでは、多数の高校、大学が麻しんの患者発生によって休校になり、社会的な問題になりました。これまでの成人の麻しんの急速な増加がここで見られております。

 そういった状況を踏まえて、20071228日に、麻しんに関する特定感染症予防指針が告示されました。この中では、2012年までに麻しんを排除し、その状態を維持するということがうたわれましたが、その後見直され、2015年度までに麻しんを排除し、WHOの認定も受けて、その状態を維持するということがうたわれたわけです。そして、この特定感染症予防指針の告示以降、2008年から5年間をかけて、中学校1年から高校3年でMRワクチン(麻しん・風しんワクチン)の2回目の接種を行うという施策を行ったわけです。

 次のページは、年齢別予防接種歴別の麻しん患者報告数が示されております。これは、2008年のものです。まだ高校生の中で流行が起こっていたときのデータです。ここにありますように、1歳未満、そして1020歳までの年齢層で、患者数が多くなっております。この中には、ティーンエージャーの中には未接種者の数が多くなっていることが分かると思います。2008年には、9人の麻しんの脳炎が発生しております。全員10歳以上の方々でした。

 その後、先ほどの特定感染症予防指針の告示だけでなく、下のページにありますような様々な啓発活動を行いました。国立感染研のホームページを活用したり、パンフレットを配布したり、ポスターを作ったり、あるいはこういうCDを作って教材として使っていただいたりして、啓発活動を行ってまいりました。

 次のページは、2008年以降の麻しんの患者報告数が示されております。2008年からは、麻しんの患者の全数を把握する全数把握疾患として、サーベランスの方法を変えております。2008年は、1万人を超える大規模な全国流行があったわけですが、翌年からは症例数が激減していることが分かると思います。しかしながら、2011年、2014年には、フランスを含むヨーロッパからの輸入、フィリピンを含むアジアからの輸入例。要は、かなり症例数が減ってきても、海外から麻しんウイルスが持ち込まれ、そして流行が起こってしまうということが、少数例ながら報告されております。

 下のスライドは2011年の状況ですが、2011年はフランスを含むヨーロッパからの輸入があったときですが、患者数としては1年間で434例でした。この年齢別の患者報告数を見ていただきますと、1030歳までの年齢層の患者の発症が激減していることが分かると思います。

 そういった経緯があり、2015327日に、日本は麻しんの排除状態にあることがWHO西太平洋事務局によって認定されました。ほかの国々も認定をされておりますが、日本が認定されたわけです。

 下の段を御覧ください。2009年以降は毎年1,000人以下の報告数になっておりますが、2015年は35例と全数報告開始後最少の患者数であったことがお分かりになると思います。

 次のページは、麻しんの検査診断の考え方についてまとめてあります。医療機関で、麻しんと臨床診断がされると、こういう検査診断が大事であるということで、ここにまとめてあります。1.は、遺伝子検査でウイルスを検出する方法です。2.は、抗体検査です。複数の検体を使って、遺伝子検査と抗体検査をします。どちらも検査室診断ですが、こういったものの組み合わせから診断をしていきます。結果的に、2015年には9割近くの症例の検査室診断が行われるようになっているということで、その検査室診断の制度の高さも麻しん排除の要件としては評価されたと理解しております。

2015年に発生した症例で、ウイルスの遺伝子型を決めたものがここに示されております。患者の情報もここに記載しておりますが、遺伝子型B3D8D9H1、これらは全て外来性のウイルスであると考えられます。渡航歴等から分かることは、インドネシアやアジアの諸国からの輸入例であることが確実に確認されていることが、大変大事なポイントであろうと思います。

 次のページは、MEASLES-RUBELLA Bulletinということで、WHOの西太平洋事務局から報告されたものです。ここには、20131415年の西太平洋事務局地域における人口100万人当たりの患者数が示されております。モンゴルに注目していただきたいのですが、201314年は0報告ですが、2014年にモンゴルは麻しん排除が認定された国ですが、2015年には大きな流行がありました。このように、日本だけでなく、麻しん排除を受けたモンゴルであっても、このように周辺の国々からこのウイルスが持ち込まれて流行が起こる、常にそういったリスクがあるということを考えておく必要があろうかと思います。

 下の段には、20155月から10月までの6か月間に発症した麻しん患者報告数を示しております。西太平洋事務局、アジアの地域を見ますと、日本は報告数が少ないのですが、それ以外の国々はかなりの症例数が報告されていることがお分かりになると思います。こういった国々からウイルスが持ち込まれる可能性があります。流行国に行くときには、麻しん・風しん混合ワクチンを接種していただきたいということと、持ち込まれても広がらないように接種率を高く維持しておくことが大事な要件であろうと思います。

 次のページは、年齢別の麻しん抗体保有状況2014年度のものを示しております。抗体陽性率は、1歳未満では当然ながら予防接種が行われていませんので低いのですが、それ以外は90%以上を保っていることが分かります。8年前、14年前と比較しますと、格段に接種率が向上していることが見て取れると思います。こういった状況ですので、麻しん排除の維持をこれからも努めていく必要があると思います。

 次に、風しんに入ります。2008年以降の風しん患者報告数の推移を最初に示しております。2008年以降は、麻しんも風しんも全数把握になっております。そういったことから、20082009年と症例数は全数であっても少なかったわけですが、2011年に少数、又は2012年にかなりの症例数が出て、2013年に大きな流行がありました。この間、中1・高3相当の方への2回目の予防接種をずっと行っていたのですが、その中でも後から話しますが、接種したのは中高校生なのですが、大きな流行は成人の流行として起こってきたということです。

 下の段は、年齢群別の風しん抗体保有状況を示しております。ここで分かるように、男性、女性で分けて示しておりますが、平成24年に流行が起こったときの抗体陽性率を示したものですが、御覧いただきますように、3050歳までの年代で男性の抗体陽性率が低下しているということです。すなわち、ここに風しんウイルスに対する感受性者が存在しているということです。

20131年間の男女別の年齢別予防接種歴別の風しん累積報告数を示しております。症例は、男性、女性で分けて書いてありますが、男性のほうで見ていただきますと、やはり20歳ぐらいから症例数が増えておりますが、50歳ぐらいまで大きな山があります。そして、この人たちの多くは、接種歴が不明であり、接種がない人たちです。女性のほうを見ますと、症例数は少なく、2030歳ぐらいまでに偏っております。その間にあります予防接種歴の説明ですが、明らかに3050歳までの間の方々に対しては、女子中学生に対して1回の集団接種が行われております。一方男性では、この年齢の方々は接種歴がないということになります。その中で、この大きな流行が起こってきたことになります。また、22歳は男女幼児に個別接種1回であるとか、男女中学生に医療機関で個別接種1回、この辺りの接種率が低かったこともあり、2030歳までの人たち、特に男性のほうに症例数が多くなっていることが分かるかと思います。

2013年に報告された患者の2060歳の男性風しん患者9,862例の中で、感染原因・感染経路に記載があった症例では、1,761例の中では職場関連が68%と非常に多くなっております。同僚から、あるいは職場で風しん患者との接触があった、職場で流行があったという記載があります。

 次のページは、先ほどと同様、2060歳の女性の風しん患者2,515人の中で、妊婦が25例(1%)でした。この中で、感染原因・感染経路に記載があった588人のうち、職場関連とされたものが35%、家族からが33%でした。このように、特に男性に有意ですが、職場関連の感染が多く、女性の場合は家族からが多いです。

 風しん流行の特徴と課題ですが、近年我が国では成人例(特に男性)が多い。成人男性は風しんワクチンを受けたことがない人が多い。先ほどの予防接種制度の説明にあったとおりです。妊婦(特に妊娠20週頃まで)は注意がが必要です。風しんに対する感受性者かどうかの把握(抗体検査)が必要です。発しん出現前後1週間は感染力があると考えて対応する必要があります。診断が非常に難しい疾患です。妊婦の注意が必要というのは御存じのとおり、特に妊娠20週頃までの風しんウイルスの感染を受けると、先天性風しん症候群の発生があるわけです。

 次のページは、風しんと先天性風しん症候群(CRS)の週別性別患者報告数を示しております。201113年に、青で示している男性の流行、赤で示している女性の流行がありました。時期的には、流行のピークは20135月頃ですが、縦線で示しているのは、いわゆる先天性風しん症候群の報告です。そのピークは、2013年末から2014年の初めに起こっており、ちょうど流行のピークから57か月の間隔を置いて、先天性風しん症候群のピークが起こることが知られておりますが、そのとおりの結果になっております。1例、点線で囲んだマルがありますが、これは難聴の症状が生後しばらくして明らかになった、いわゆる先天性風しん症候群の症例です。これが2014年にしばらくして報告されており、2012年からの合計では45例が報告されたことになります。

 下の段には、予防接種歴・罹患歴記録が示されており、記憶は当てにならないという記載の意味は、接種歴を記憶していると思っても実際は違っているということです。その下に、風しんはかかったと思っていても半分が風しんではなかったという研究結果があると書かれてありますが、それは次のページの論文に示されております。

 かかったと回答していても、風しん抗体が認められない感染が確認できないという人が半数以上であったということです。逆にかかっていないと回答した人にも、実際は感染している人が11名いたことが示されております。こういった事実から、記憶は当てにはならないということを言っているわけです。成人の予防接種記録が重要である。予防接種歴や罹患歴が不明ならば、ワクチンを受けることを考える。抗体検査を受けて陰性、あるいは抗体が不十分ならワクチンを受ける。実際抗体検査をしても、そのまま陰性であるということが分かりながら放置したら、抗体検査を受けても意味はありません。検査診断の重要性を示しております。

 研究報告については説明いたしました。その下は、週別風しん報告数2015年のデータを示しております。これは、2015年第1週~51週、ほぼ1年間のデータですが、158例が報告されております。ここで症例数が多くなっているのは、昨年も職場での集団発生が散見されております。

 そのため、20143月に「職場における風しん対策ガイドライン」を感染研で作成し、これを全国の職場に配布している次第です。ここの表1に書いてありますように、風しんの予防接種が望まれる対象者としては、本人が妊娠を希望しておられる方では、非妊娠期に風しんの予防接種を2回することが望ましいということです。それから、職場・家族に妊婦・妊娠出産年齢の方がいる方、海外出張、国内の流行地への出張、あるいは公共施設等多数の者が利用する職場に勤務している人たちでも、風しんの予防接種を少なくとも1回することが望ましいとしております。このようなガイドラインを作ったお陰もあり、2013年の流行の頃より、2015年の2つの集団発生のときには、自治体と工場などの職場で男性の方に予防接種をするような施策、対応をしていただき、このガイドラインも少しずつ現場に浸透していきつつあると実感しているところです。

 職場でできる対策としては、感染症にかかった場合は、無理をせず休める環境を作ること。知識というワクチンで、感染源・感染経路を考える。人にうつるということで、知識を持つこと。そして、普段から感染症対策を行い、予防接種を受けやすい環境を作る。成人男性の風しん対策として、昭和37年から昭和62年に生まれた男性は、風しんワクチンを定期接種として受ける機会がなかったわけですから、この方々は積極的にワクチンを受けていただきたいということです。

 今後の課題として、海外での流行を監視することが重要です。流行国への渡航前には、是非ワクチンを打っていただきたいです。万が一、ウイルスが輸入されても広がらないようにワクチンの接種率を高めておく。1人発生したらすぐ対応するということを心がけて、風しん排除に向けて対策を進めていくことが大事です。女性は小児期も含めて妊娠前に2回のワクチン接種を行っていただきたい。風しん流行後も成人男性に感受性者が多数蓄積していることを忘れてはなりません。もう二度と国内で風しんの流行を起こさないようにするためには、小児のみならず、免疫を持たない成人が予防接種を受けて免疫を獲得する必要があります。

 最後に、日頃より感染症発生動向調査、感染症流行予測調査に協力いただいております医療機関、自治体、保健所、地方衛生研究所の皆様に感謝申し上げます。

○中野座長 大石先生、どうもありがとうございました。麻しんと風しん2つの疾患について、特に過去1年間を中心に発生状況について御報告を頂きました。御質疑は、まとめてあとで行います。次に資料2「学校における麻しん・風しん対策について」、高橋構成員からお願いいたします。

○高橋構成員 学校における麻しん・風しん対策についての取組経過等についてお話いたします。平成19年度に高校、大学を中心として、学校などで麻しんが大流行いたしました。従来は、乳幼児の疾患と考えられがちであった麻しんを学校保健上の重要な課題として位置付け、学校における麻しん対策の重要性が認識されました。特に、学校及びその設置者が麻しんの感染力と重篤性を十分理解し、日頃から予防対策を行っていくこと、万が一、麻しんが発生した場合には迅速な対応を取っていくこと、そして対策を進める上では、学校医及び地域の保健関係機関などと緊密に連携しながら、効果的な麻しん対策を進めていくことが確認され、各都道府県、学校等では、学校における麻しん対策ガイドラインに基づく取組が進められました。この中には、風しんの記述もあり、学校における感染症の大きな対策の指針となりました。

 まず1つ大きな柱として、平時における取組が掲げられました。その1つ目として、定期予防接種対象者への積極的な勧奨が行われました。特に、平成194月に予防接種に関する制度の改正があり、1期・2期のほかに3期・4期として、中学生、高校生の年齢に該当する子供たちへの定期予防接種がスタートいたしました。2つ目として、そして、児童生徒の定期予防接種の状況などを的確に把握をすることが求められました。学校では、麻しんが発生したときの措置について判断をする重要な情報になりました。特に、子供たちの免疫状態の把握、第3期、第4期麻しん・風しん定期予防接種の状況の調査に積極的に学校は協力をいたしました。現在も就学時健康診断等では、第2期の予防接種状況も確認をしております。入学後は、保健調査票等で罹患歴、予防接種歴等も確認をしているところです。

 3つ目として、学校医及び地域保健関係機関等との連携体制ですが、連絡経路などがしっかり確認をされたと思います。情報及び行動連携についても確認が取れました。特に、麻しんや風しんが発生したときの対応、行政機関等への連絡など、きめ細かく準備等が進められる中で、体制が整えられていきました。

4つ目の麻しんの予防についての啓発ですが、先ほど紹介がありましたたくさんの資料を学校に提供していただきました。文部科学省等から配布されました通知、リーフレット、ポスターなどを学校現場では掲示をするほか、子供たちへの指導に有効に活用しています。また、保護者の方、家族の方へも正しい情報を提供することが求められました。そこで、学校医の先生等にもお願いをしてお話をしていただいたり、学校保健委員会等を有効的に活用したりしました。また、職員に対して研修会等を実施し、職員自身が麻しん・風しんに対して正しく理解することが重要でした。先ほどお話がありましたが、「知識というワクチン」という言葉もその頃使われていた記憶があります。

2つ目の柱としては、教職員の健康管理が大変重要視されました。職員がガイドラインの中に入っておりますフローチャートにより、全員が自分の状況を確認しました。学校によっては、安全衛生委員会を活用し、職員自身の健康管理だけではなく、職場、家族、そして保護者の方たちへも配慮が必要だということを確認したところもあります。

3つ目の柱としては、麻しんが発生したときの対応です。麻しんの発症が疑われる児童生徒・職員が1名でも発生した場合は、すぐに対応が開始されました。特に、疑いの段階で速やかに学校医、教育委員会等に報告し、次の対策を検討していきました。終息宣言までの間は、学校医や地域の保健関係機関等と協力し、連絡を取り合い、指導を頂きながら、対応を進めていました。麻しんを発症した児童生徒・職員が不当な扱いを受けることのないよう、十分配慮をすることもとても重要なことでした。

1.,2.,3.と書きましたが、関係機関への連絡、感染拡大防止策、そして終息宣言に基づく対応という一連の流れは、麻しんが発生した学校、地域にとっては非常に長い期間を要しました。私も、県の教育委員会でこの担当課におりましたときに、麻しんの集団発生に伴い学校閉鎖をするという状況がありました。 4つ目の柱として、都道府県に設置されています麻しん対策会議への協力があります。定期予防接種状況の提供等、各学校で状況把握をしたものを提出するなどの協力をしました。

 成果として、そのような対応を通じて、麻しん・風しんに対する理解と予防のための意識が向上したのではないかと感じております。特に、定期予防接種の実施率が少しずつ上がってきており、結果として麻しんの排除につながっていたと考えられます。また、学校医及び地域の保健関係機関等との連携体制の整備が整えられたと考えております。

 今後の取組として、1つ目に麻しん・風しんを含む感染症予防に関する情報提供の在り方を考えていく必要があるかと思っております。たくさんの情報を提供していただいておりますが、児童生徒・保護者・職員にとって分かりやすく印象に残る内容であることや提供の仕方などを工夫をしていくことが必要ではないかと考えております。

2つ目として、第2期麻しん・風しん定期予防接種率の向上を図っていくことが大切だと考えております。接種率については、高くなってきておりますが、それが維持していくことが重要だと思います。学校等では就学時の健康診断のときなど、確認を進めているところです。

3つ目としては、平時の感染症予防対策や発生時の対応について、再度確認をし合い、情報の収集の仕方、提供の仕方、連携体制の在り方について見直し、改善を図っていく必要があるのではないかと思います。

○中野座長 どうもありがとうございました。学校における麻しん・風しん対策ということで御紹介いただきました。次に資料3「平成26年度風しん抗体検査事業実績」ということで、御報告は西塚参考人からお願いいたします。

○西塚参考人 東京都の取組です。この度、東京都の取組を紹介する機会を頂きまして誠にありがとうございます。東京都では、区市町村と一体となり、風しん排除に向けた取組を全力で進めております。平成26年度風しん抗体検査事業実績の御報告です。平成24年から平成25年の風しん流行を受け、都内のほとんどの自治体で、平成26年度から先天性風しん症候群対策として、風しん抗体検査事業を実施しております。

 この度、都内自治体における平成26年度風しん抗体検査事業の実績を集計いたしました。1番は、都内区市町村における抗体検査事業・平成26年度実績のまとめです。抗体検査の受検者、詳しくは右側に書いてありますが、この中で20歳台女性のうち免疫が十分でない方は、ここではHI16倍以下としておりますが、37.8%いました。他の年代でも免疫が十分でない方が約3割いました。

2番は、抗体検査についてです。都内のほとんどの自治体で、主に19歳以上の女性を対象としておりますが、抗体検査を実施しております。検査費用は全て無料です。また、免疫が十分でないことが判明した場合に受ける予防接種について、一部の自治体で助成を受けられる制度を持っている所もあります。都民に対する呼び掛けですが、今後再度風しんが流行することも十分考えられること。自分自身や家族などを風しんから守り、生まれてくる赤ちゃんを先天性風しん症候群から守るために、風しん予防に取り組んでもらいたいというメッセージを発信しております。まずは抗体検査、風しんの罹患歴や予防接種歴の有無が分からない方は、抗体検査で抗体保有状況を確認するようにと呼び掛けております。また免疫が十分でない方には予防接種、定期予防接種対象者、抗体検査で免疫が十分でない方は必ず予防接種を受けるように呼び掛けております。

 裏面で、2つ目の事業の御紹介です。「職場で始める!感染症対応力向上プロジェクト」についてです。都内には960万人が働いていて、感染症が発生すると、適切な対応を怠った場合、企業活動にも支障が出るということです。東京都では東京商工会議所、東京都医師会と連携し、企業の感染症対策を支援する新プロジェクトを平成27年度に開始いたしました。平成24年から平成25年の風しん流行では、東京都の場合年齢別の患者数で、90%が2060歳の働く世代でした。経営の視点で言うと、職場内で感染が広がった場合には、企業活動に支障が出るということです。従業員の健康維持ゃ、企業のリスク管理として、多くの企業の参加を呼び掛けています。

 プロジェクトの特徴を3点申し上げます。1点目は、企業団体、医師会、行政による支援体制です。2点目は、従業員の健康に関心のある企業に、目標を明確に示す「コース」を明示した。3点目は、質の高いオリジナル教材を作成し、提供するということです。昨年9月、東京商工会議所、東京都医師会、東京都の三者が、本事業推進のための連携協定を締結しております。それぞれの強みを生かし、参加企業をアシストいたします。

 東京商工会議所では、説明会や企業訪問の機会を捉え、本プロジェクト参加が、経営戦略上メリットであることをPRしております。また、参加企業に対して、相談や訪問などを行い、目標達成を支援しております。

 東京都医師会は、風しん抗体検査、ワクチン接種を実施する企業に対し、協力医療機関を地区医師会ごとに確保しております。また、産業医や地域産業保健センターが、産業医のいる、いない企業をシームレスに、産業保健の観点で指導しております。

 東京都は教材を作成しております。この教材の内容については、学術的な支援として、国立感染症研究所から協力も頂いております。東京都のホームページに、参加企業と達成企業の名称を掲載し、都民に対して企業の公衆衛生の取組についてPRしております。

 コースは右にある3つです。コースIは、取組を開始して持続する力となる、従業員向け研修の実施です。コースIIは、職場で感染症が発生した際、安心して患者が休めるように明文化することや、経営に影響を及ぼさないよう、事前に計画を立てておくBCPを作成するというものです。コースIIIは、風しんの抗体検査など、事業所単位で風しん抗体保有者9割以上とするものです。

1013日に事業開始を公表し、都内5か所で説明会を開始。1113日から実質的な事業を運用開始しております。122日現在の参加企業は延べ132事業所、達成企業は非公表1を含め5事業所になっています。本事業は、東京都長期ビジョンに計上されていて、世界一の都市東京の実現に寄与するものです。国並びに関係者、専門家の皆様には引き続き本事業の御支援を賜りますようお願いし、東京都の事業紹介を終わります。

○中野座長 ありがとうございました。風しん抗体検査事業と併せて、行政のほうで企業団体、医師会ともタイアップした、感染症対応力向上プロジェクトは素晴らしい取組だと思いますが、東京都の例を参考に御紹介頂きました。今から10分ほど時間を取っておりますので質疑応答の時間に入ります。資料1から資料3までの御説明を頂きましたので、御意見があります方は挙手をお願いいたします。

○小森構成員 東京都の取組について敬意を表します。始まったばかりということなので、まだ達成企業は少ないのだと思うのです。都民に呼び掛けをして抗体検査をされて、そして接種勧奨をされた後に、実際に予防接種を受けたかどうかの把握は大変だと思うのです。こういう事業を始めたばかりということなので、その数値は把握しておられないと思いますけれども、そういうことについての取組の今後の見通しはいかがでしょうか。

○西塚参考人 風しんの抗体検査受検の勧奨については、各区市町村でそれぞれ行われております。こうしたものも今後取りまとめていきたいと思っております。東京都のほうでは、もうちょっと年代が下なのですけれども、2期の漏れ者に対する勧奨については、包括補助という制度を持って、区市町村に補助をしているということです。このような区市町村に対する支援を拡充し、19歳以上の女性に広く受検勧奨ができるような形で、区市町村に取り組んでもらおうということで今検討をしております。そういう中で、数値も把握していきたいと考えております。

○小森構成員 これは皆さん御存じのように、2020年までの風しんの排除、そして先天性風しん症候群を二度と起こさないようにする予防接種、指針にもそのように明確に書き込んだということです。御担当者の方々は大変だと思うのですが、是非積極的に取り組んでいただきたいと、重ねてお願いします。

○中野座長 岡部参考人の御意見の前に、石田構成員、東尾構成員は東京都民でいらっしゃると思います。先ほど東京都のお話が出たので、コメントをもらうのにちょうどいいのではないかと思います。一般の方ではないですけれども、是非お願いいたします。

○東尾構成員 私は思ったのですけれども、子供が欲しいと思う治療をしていて、病院でいろいろな検査の中に風しんの検査も含まれていました。1人目の子供を授かるときには風しんの抗体があったのですけれども、2人目のときにはないと言われ、言われるまでは知らずに、それで治療を始める前に、まずは風しんの予防接種を受けてくれと言われ、受けて2か月を待って治療を開始しました。後で知ったのですけれども、無料で抗体の検査ができるということを、そのときには知らなかったのです。私はすぐに受けなければいけなかったので、すぐに予防接種を受けました。

 無料ということを知らない人も多いと思いますし、そういう検査をしたほうがいいのだという認知がまだそこまでいっていない。20代の女性は特にそうですが、30代のほうが意識があると思うのですけれども、少ないと思いました。私は、個人的には言える範囲で周りに言うのですけれども、限界があると思いました。無料で受けられるということは、どのように知ればいいのかと疑問に思ったので、どのようにして言っておられるのでしょうか。

○中野座長 きっと日頃から風しんのこととか、ワクチンのことも考えていない方も含め、届くメッセージが、ワクチンで防げる病気についてはとても大切だという、非常に良い見地からの御意見ではないかと思いました。どうもありがとうございました。

○石田構成員 いわゆる抗体検査を受けて低抗体者、抗体の値が非常に低いというのは、受けた医療機関で大体教えていただけるのですか。それで推薦されるわけですか。

○西塚参考人 一般的には、対象の年代の方に対し、5歳刻みとか3歳刻みなどの節目にはがきなどをお送りする形で、自治体のほうでは何十年前の予防接種歴や、かかったかどうかというのは分かりませんので、風しんについて知ってくださいと。そして、かかった、若しくは母子手帳などを見て、受けた記録がなければ、是非抗体検査を受けてくださいという形で呼び掛ける所が多いと思います。

○石田構成員 呼び掛けるというのは、どなたが呼び掛けるのですか。

○中野座長 石田構成員からの御質問は、抗体価のことですよね。抗体価が出たときに、低くて不十分なのかとか、打ったほうがいいのかという説明は、東京都の場合は検査をした医療機関にお任せしているのでしょうか。東京都から何かを行う場合もあるのでしょうか。

○西塚参考人 基本的には各区ともに、医療機関への受診において、そこに受診票などを発行するという形で、説明までそこの医師にお願いをしております。併せて、先ほどの職域の所では、例えば集団で特定健診の項目に追加をする、その中で企業のほうから働きかけをしていただくことも併せ、複合的にお示ししていくことを検討しております。

○石田構成員 例えば、大雑把に乱暴に言わせていただくと、30代と40代の男性、あるいは50歳までのと言いますか、一番抗体が少ないと見られる。でもその年代というのは、男性から見たらいわゆる赤ちゃんができるような、そこを人口というか、市町村もそうですけれども、最低でも働いている会社に義務付けると言ったらおかしいですけれども、そういうことも含めてやっていらっしゃると思いますけれども、徹底してやられたらすごくいいかなと。事業所と言いますか会社、いわゆる民間でない会社もありますからあれですけれども、やられたらいいのかとも考えました。

○中野座長 日常生活とか、日常の仕事の中でも、そのことに触れるときがあれば分かりやすいということですか。

○石田構成員 そうです。会社に貼っておくとか、そういうことがないと私たちは芸能界と雖も中小企業ですから、そういうのをほとんど見たことがないのです。渋谷区役所とか目黒区役所へ行ったときに、ちらっと見るのが恐らく最初で最後のような状況だと思うのです。いろいろな会社や事業所にも、そういうものを配布したりすると、もっと意識が高くなるのかと感じました。

○中野座長 それでは、岡部参考人お願いいたします。

○岡部参考人 参考人の岡部です。参考人なので参考までです。川崎市の場合、抗体検査は無料でやるという事業は国からスタートしているわけですが、そこで抗体が低い方、あるいは陰性の方にはワクチン接種に対する補助が川崎市から出ています。それで、かなりの方が最初の頃は受けたのですけれども、幸いなことに病気がなくなってくると、今度は関心というか興味も当然なくなりますし、情報源がなくなってくる。今年度一杯の事業なのですけれども、後半は受ける方がほとんどいなくなってきている状況です。これの解決は、特に年度末に向けてやらなくてはいけないという実施もあります。

 今後の話として、例えばこれを毎日毎日言ってもすぐに忘れてしまいますから、何か月に一遍かはどちらかにお願いして、例えばメディアの方にお願いして、そのような情報を提供する。あるいは年に1回でも2回でも予防接種週間で、風しん予防接種週間というようなことでキャンペーンをやっていかないと、ここから先の話は2020年の目標もあります。病気がなくなるのはもちろん大いに結構で、関心がなくなるのはいいのですけれども、予防できる病気を予防しようというのはなかなか難しいので、積極的に呼び掛けていく必要があるのではないかと思います。

○中野座長 例えば、3月の第1週は予防接種週間なのです。多分私たち医療機関には毎年そのお知らせが来るので認識しているのですが、日本に住まわれている日本の方々にそのメッセージが届いているかどうかというと難しいところがありますので、定期的なメッセージというのはよろしいですね。キャンペーン週間とか。

○増田構成員 イオン株式会社の増田です。西塚参考人から御説明いただいた内容について質問させていただきます。本当は東京都の事業のコースを受講すべきなのかもしれませんが、コースIIの感染症BCPの作成というのがありますが、このBCPの中に出勤停止の指示とか基準があるかどうか。あるのであれば、どのような基準で、法的根拠に基づいて実施することになっているのかを教えてください。

○西塚参考人 BCPにおいては、お尋ねのように身近なインフルエンザやノロウイルス、胃腸炎、麻しん、風しん、場合によっては結核など、その企業に、対象にする疾患を選んでいただいた上で、1人がかかるとどれぐらい休むことになるというような目安の情報も提供した上で、ある程度こういう病気については、これぐらい勤務を休む必要があるというようなものも、あらかじめ目安として明記していただきます。最終的には、主治医の判断と、産業医などの判断に委ねられることになります。事前に、この疾患にかかるとこれぐらい休むものだと。そのときに、誰がどういう形でバックアップするかということを考えていただくことはしております。法的な裏付けなどはありません。学校保健安全法などを1つの目安などを提示しているにとどまっております。

○増田構成員 健康局の方にお尋ねします。従業員が感染症で、他の従業員に感染してしまうから休ませたほうがいいだろうと判断する場合の根拠としては、労働安全衛生法第68条「病者の就業禁止」というのがあります。その具体的な内容として、労働安全衛生規則第61条にもう少し細かい規定が3つあり、そのうちの1番目は、正確な文言は忘れたのですが、ほかの人に感染させる恐れがある場合となっています。具体的に何の病気だったらいいのかというのをたどっていくと、どうも結核しか明確に示されているものを見付けることができませんでした。麻しん、風しんに限らず、インフルエンザとかノロウイルスに関しても、法的根拠がなかなかない中で、出勤停止というのはイコール給料がないことになりますので、従業員にとってもかなりシビアな判断を指示しなければなりません。

 本人が、体調が悪くて休んでくれる場合は特に対応に苦慮することはないのです。マスクを付けて何とか働きますと申し出てきた場合に、対応に苦慮する場合があります。ほかの人に感染させるおそれがなければいいのですが、やはり感染してしまうので出勤を止めたほうがいいのではないかと思った場合に、究極的に会社側の懸念としては、給料を支払う、支払わないのところに帰結してくるのかと思います。職域の現場では、そのような課題があります。実際に資料1の大石構成員の資料も、風しんの所で「学校保健安全法などを参考に」というように、やはり参考なのです。確実な蔓延防止という観点では、こういうときには出勤してはいけませんという基準がないと、現場としてはなかなか対策を講じにくいと感じております。何かこういう根拠がありますというものがあれば教えてください。

○結核感染症課長 結核感染症課長です。御質問ありがとうございます。安衛法を根拠にというようなお話もありましたけれども、就業規則が各会社にあります。その就業規則の中で、その感染症をどう取り扱うかというのが最初に必要なのではないか、というのが民間の世界としてあるのではないかと思います。学校保健安全法を根拠に、参考にというのは、今日は先生がいらっしゃる中で申し上げるのは甚だ恐縮ですけれども、学校は子供にとっては生活の場です。学びの場でもありますけれども、生活の場なので、やはり感染症予防はすごく重要な場です。大人になれば、ものの分別というのは子供以上にあります。いわゆる教育の義務的な話、もちろん就労義務はありますけれども、そういう根拠も考え方もありますから、本来は何か規定を設けて、罰則などを設けてやるようなものではないと思っています。

 もちろん大きな意味では、社会防衛的な感染症法の考え方で、例えば蔓延を防ぐための措置等はあります。先ほどお給料等というお話がありましたけれども、そういう観点というよりは、感染症の蔓延防止、あるいは個人の健康をどう守るかというところで、ものの判断が本来あるべきではないかと思っています。給与の補償は、どちらかというと労使関係の話ではないかなと。先生も産業医なので御承知だと思います。企業の中、会社の中で、どうやって職員の安全を守るか、健康を守るかという観点で通常ものを考えるべきではないかという思いがあります。おっしゃる意味は分からないではないですけれども、これは我々も労働部局とよくよく考えていきたいと思います。

○中野座長 資料129ページに、大石先生からも、事務局からの資料にも、「学校保健安全法などを参考に」とあったのを私も気付いていました。増田構成員のおっしゃることも十分理解できます。例えば、本日は私も含めて複数人が学校保健安全法の今回の改定のときに一緒にやっていただいた先生方もいらっしゃっています。学校保健安全法を御覧になっても、インフルエンザの出席停止期間も、小学生と幼児で微妙に異なります。それは、宿主によってウイルスを排泄する期間が違うだろうと。ただ、その1日違うことで、厳密にウイルスが出ている、出ていないを区別できるかというとそうではありません。

 先立ってムンプスの出席停止期間が変わったことも、それもそこの基準ならば絶対にウイルスが出ていないかということではなくて、医学的には一概に線を引けないところもあると思います。本日は患者さんの会の方々にもお越しいただいています。麻しんもきっとそうなのでしょうが、免疫機能の未熟な胎生期に感染した場合は、どうしてもウイルス排泄は長引きます。ウイルスが出ている期間がどうかというと、それは長くはなるわけです。それがイコール別室に居ていただかなければならない、すごく長くするべきなのか。集団生活をどうするのかというのは、その出ている、出ていないだけの話では解決できないことがたくさんあると思うのです。子供たちは、できる限り社会生活、教育、集団の場に入れてあげたいのも事実だし、いろいろな刺激も与えてあげたい。

 先ほど御質問頂いたのは、企業の中での、職場でのということでしたけれども、そういうことも関係してくるので、医学的判断を交えて、何がベストかを個々に考えなければならないケースもあるかなということで、これは今後の課題かと思います。議論をしても結論が出ないかというところもあるのですが、非常に大切な課題をを御指摘頂きました。患者さんの会の方々からそれに関して何かありますか。以前にも、この会とか他の会でも話題が出たことがあったと思います。

○西村構成員 風しんをなくそうの会の患者会の西村です。私が今お話を伺っていて思ったのは、患者会としてはCRS時のウイルス排泄についてはいろいろお話をさせていただき、ウイルスの排泄がなくなるまでは保育園に入れないという問題があります。そこをどのように考えていくかという問題は去年もお話させていただいたかと思います。それに伴って、子供がウイルスを排泄しているからといって、親の私も職場に復帰ができなかったという事実がありました。そこも考えていきたいところです。

 私自身も保育士をしていて、自分の体調が悪くなったときに、平常のときは体調が悪くなったら休むのだよと上のほうからは言われるのですけれども、実際に熱が出ていたり、ちょっとせきがあったり、自分の声が出にくくなったときにどう判断するかというのが難しいところなのです。子供たちと接していいのか、それとも欠席をするべきなのか。はたまた相談して違う場所にいて、事務作業をして、保育には入らないのかという問題は日々の中で悩むところであります。休むとなったら嫌な顔をされるし、休まなかったらどこかへ行けという話になったりもします。

1つの目安として何か基準みたいなものがあったら、休むほうも休みやすいですし、職場のほうも、こういう基準があるからあなたは休んでくれというのは逆に言いやすいのではないかと思います。それなので難しいところではあるかもしれませんけれども、ある程度の基準を作っていただくということは必要ではないかと思います。

○矢野構成員 筑波大学の矢野です。非常に積極的な取組を拝聴させていただいて大変感銘を受けました。私からの質問は、東京都以外のその他の市町村、先ほど岡部先生からも川崎市の取組のお話がありましたけれども、他の都道府県ではどのような状況かを教えていただけたらと思います。

○渋谷構成員 愛知県の状況をお知らせしたいと思います。愛知県では、平成26年度には1,700人あまりが抗体検査を受検しています。これは保健所が委託した契約機関に検査をしていただく形で、保健所に検査票を取りに来ていただきます。そのうち低抗体価というのが、東京都と同じぐらいかなと思うのは、600人ということですので35%ぐらいです。平成279月までだと低抗体価が37%ぐらいというので、大体同じぐらいの割合で低抗体価の方がいます。

 ただ問題なのは、昨年度はそのほとんどにワクチンを打っていただいているのですが、今年に入って、先ほど岡部先生もおっしゃっていたかと思いますが、85%ぐらいなのです。せっかく抗体価の検査を受け、低抗体価だと指摘をされている方には、もう少し打っていただきたいと思います。やはり関心が薄くなってくると打っていただけないのかということがありますので、その辺のPRは引き続きしていかないといけないかと思っています。また、愛知県の企業の中で、東京都のようなことはできていないのですが、一つ一つの企業にお願いするということは、現場ではなかなか難しい状況があります。東京都が実施されたような組織的な動きがないと、企業の方に協力してもらう下地を作るのは難しいのかという気がしております。これは意見です。

○中野座長 それでは時間のこともありますので、次の議題に移ります。その後にまた質疑の時間をつくろうと思います。次は資料4です。資料4は麻しん、風しん対策への取組状況と評価についてということで、事務局の氏家補佐から説明をお願いします。

○氏家課長補佐 事務局から、資料4-14-3について御説明します。資料4-1です。ページをめくり、「麻しんに関する特定感染症予防指針の概要」です。この麻しん特定感染症予防指針というのは、感染症法に基づき、2007年度に麻しんの対策を取りまとめたものでして、5年ごとに再検討、そして必要に応じて変更を行う規定ちなっており、資料には2012年度に改正された指針の概要を記載しています。目標に関しては、平成27年度までに麻しん排除の達成と、そして世界保健機関による麻しん排除の認定ということで、これは昨年の3月に認定を受けたということで目標を達成している状況です。かつ、その後も麻しんの排除の状態を維持することを次の目標に掲げていますので、現在、この目標に向けて対策を続けている状況です。

 続いて、届出・検査・相談体制の充実です。麻しんを把握するためには、まず医師の届出に基づき、必要な対策を行います。ですので、麻しんの届出については、可能な限り24時間以内、できるだけ早く速やかに報告していただき、それに対して対策につなげるという状況が規定されています。また、麻しんの数が少なくなってくるとなかなか臨床診断だけでは確実に麻しんと診断しにくい状況があるので、原則としては、全数に対して検査診断、具体的には抗体検査やPCR検査など、検査で確認した診断を実施していただいて、本当にこれが麻しんかどうかを確認する状況が作られています。麻しんと確定した際には、麻しんがその地域で感染を広げないように、そしてどこから感染をしたのかの把握するため、自治体に積極的疫学調査という形で調査を実施していただくような体制になっています。また、都道府県等においても、本日実施しているような麻しん対策会議を設置する規定があります。

 続いて、第1期、第2期の定期接種です。95%以上の接種を実施することを目標に掲げて実施しているところです。毎年、自治体にはその接種状況について報告を頂いて、今回の資料にも付けていますが、それを年2回報告している状況があります。

 次ページを御覧ください。2008年~2012年にかけて実施した第3期、第4期ということで、これは、2回目の麻しんのワクチンを接種していない中学1年生、そして高校3年生相当の年齢の方々に2回目の接種の機会を設ける制度で、5年間にわたり経過措置として実施しました。これは2012年度をもって終了していますが、こうした対策のお陰で、感受性者、免疫を持たない方の数が大幅に減ったというようなデータもあります。そして、その後には麻しんが1例でも出た場合、先ほど申し上げたような積極的疫学調査の実施等につなげることが決められています。

 その他、国際貢献としては、世界保健機関では2020年までに、世界に地域事務局が6つありますが、6つの事務局のうち5つの事務局で麻しんを排除することを目標に掲げています。日本が所属する西太平洋事務局においても、この麻しん排除の目標を掲げています。日本はいち早くその達成を認定されたところですが、昨今では国際間の渡航者の移動も多くなっていることもあり、こうした国際的な取組に積極的に関与することが規定されています。

 そのほか、国が実施する対策推進会議ということで、本日実施している会議についても規定がありますし、その他、各委員から御指摘があるような普及啓発の充実の重要性についても規定があります。

 次ページです。風しんに関する特定感染症予防指針は2013年の流行を受けて、その当該年度に制定された指針です。こちらも、目標としては、2020年度、平成32年度までに風しんの排除を目標としていて、また、その先天性風しん症候群の発生をなくすことも、併せて目標として掲げています。こうした目標を達成するに当たって、まず重要となるのが定期接種ですので、麻しん同様に95%以上の接種率を目標に掲げ、第1期、第2期、1歳児と小学校入学前1年間に対して定期接種を実施しています。

 また、風しんに関しては、これまでの事例と異なり成人で主に流行が起きることがありましたので、企業等との連携、こういうことも併せて対策が必要であるという重要性が指摘されています。このため、企業等とも連携し対策に当たっていくことが記載されています。そのほか風しんについては、2013年度の流行で45名の先天性風しん症候群の方が報告されていまして、こうした方に対して、できるだけ日本医師会や関係学会と連携しながら、そういう方々に対する適切な医療、そして支援が受けられるような情報提供及び制度のより適切な運用を規定しています。

 次ページです。前回開催された会議から約1年半の間に発出した通知及び事務連絡等について記載しています。平成2711月、10月、1つ目と2つ目の通知・事務連絡に関しては同一の内容のものですが、複数ある麻しん・風しんを提供している製造販売会社のうち、1つの企業が販売しているワクチンに関して麻しんの力価が低下している可能性があることが報告されたので、それに対する企業の自主回収の対応を通知しています。また、回収を実施した製薬会社が実施した力価の自社検査の結果概要や、必要に応じた抗体検査の実施等に関して情報提供がありましたので、そうしたことを事務連絡にて情報提供しています。

3番目のものについては、毎年実施している2期接種の就学前1年のうちに受けるものですが、就学前には地域での就学前健診というものがありますので、先ほど高橋委員から御指摘もありましたが、そういう就学前健診の実施を機会に必要な接種の勧奨を行っていただくよう文部科学省を通じてお願いしている内容です。

4番目に記載しているのは、先ほど申し上げた、世界保健機関から日本が排除状態にあることの認定に関するものです。日頃、皆様方の関係者のお陰でこの麻しんの排除目標の1つを達成できたことを通知したものです。

 次ページ、ワクチンの需給状況です。風しんの流行時も任意接種がどれくらいあるのかを、国としてなかなかデータで把握することが難しい現状がありますので、あくまで推計の数値ですが、製薬会社等の協力を得て、医療機関に実際に納入したワクチンの本数と国が実施している定期接種の実施数から、前者から後者を引いたものが推計される任意接種者数と定義して、A-Bと書いてあるものを、上段が麻しんのもの、下段が風しんのもので記載した状況です。平成24年度から少し風しんの流行が見られたところでして、麻しんと風しんの数をA-Bの所で比較していただくと、平成24年度については風しんの任意接種者数が増加、平成25年度の風しんの流行時には、任意接種を受ける方が大幅に増えてワクチンの数も安定的な需給状況が難しくなるような現状もありましたが、昨年度の状況を見ると、また任意接種者数が減少している現状がありまして、なかなか流行に応じた安定的なワクチンの供給の対応と、その後の継続的な対策の難しさがあるかと認識しています。

 次ページ、風しんの抗体検査事業等ということで、これは、風しんの平成25年度の流行を受けて、平成25年度の補正予算として風しんの抗体検査を無料で実施していただくための事業でした。成人の方の多くが既に抗体をお持ちの方もいらっしゃるということで、全員にワクチン接種をという考え方もありますが、まずは、抗体を持たない予防接種が必要な方を抽出するという考え方で、まず検査を受けていただき、そして、免疫をお持ちでない方々には必要な予防接種の対応を促していくという事業の内容です。平成26年度には、ここにも書いてありますが、全国的に106,684名の方が検査を実施したというデータがあります。また、これは補正予算での事業でしたが、本年度から、特定感染症検査等事業として事業を継続している内容です。

 次ページは、風しんに関する成人の推定感受性者数についてです。これも、成人でどれくらい免疫をお持ちでない方がいらっしゃるのかを把握することはなかなか難しいのですが、予防接種法に基づき実施している流行予測調査の中で、サンプル数は5,000程度のものですが、各年代に免疫のない方がどれぐらいの割合でいらっしゃるのかということが計算されているので、毎年実施しているものを、日本人人口の推計で掛け算したものがこちらです。東京都から報告を頂いた感受性者の定義がこちらのペーパーでは異なっていて、風しん抗体検査は8倍、16倍、32倍と倍々で上がっていくものですが、抗体が全くない方は8倍未満と定義しています。ですので、これは8倍未満の方のみの割合を算出したものです。東京都が実施したものは低抗体価、免疫はあるけれども十分でないという、16倍以下という形で算出したものですので、少し見ている内容が異なるという点があることは御承知置きください。

 こういった計算を実施したところ、20代から40代の男女、免疫が全くない方が男性で13.26%、女性で3.83%でしたので、これを各年代の人口で掛け算して全体の感受性者数を推計したものです。昨年度の数は、平成26年度は約400万人の方がまだ感受性がある、免疫がない状態であることが推計できます。年度ごとに見ていくと、こういった感受性者の数は減少傾向にあるわけですが、こうした方がある地域に一定程度いることで、感受性者が蓄積して流行が起こり得る状況がまだ続いている現状があります。

 続いて、普及啓発及び広報活動について御説明します。委員からも御指摘がありますが、流行がない中では、こういう対策に関心が薄れる傾向にあります。厚生労働省では、今年度、TBSが公開した「コウノドリ」というドラマ、こちらとタイアップして、リーフレットを作成する等、そういうドラマの中でもこのようなメッセージが発信できるような取組を進めてきました。また、主演をされている俳優さんに厚生労働大臣を訪問していただき、そういうポスター贈呈等で関心を高め、そして、昨年度実施した東京での予防啓発セミナーに続き、大阪でも今年度セミナーを開催し、そちらをマスコミの方にも広く取り上げていただいた状況があります。

 次ページです。またこういう普及啓発活動というのは、資料としても風しんの特設サイトを継続して運営し、そうしたところで、実際に啓発に使ったリーフレット、そしてセミナーの動画等を公開し、関心のある方に活用していただくような取組を継続しているところです。

 次ページは、先ほどから議論があります職域との連携というところで、経済産業省の取組です。東京証券取引所と共同の取組で、従業員の健康管理を経営的な視点で考え、戦略的に取り組んでいる企業を「健康経営銘柄」として選定し、それを公表することで、企業の健康経営の取組が株式市場等において、企業が適切に評価されるための仕組みであり、このような取組みが昨年度から開始されています。

 そこで、厚生労働省としては経済産業省に働き掛けて、企業の取組みを評価する項目として「感染症対策」という項目を充実させていただきました。内容を見ていただくと、インフルエンザなどということで代表されていますが、社内で予防接種を実施するような実績があるか、その予防接種を費用補助するような取組があるか。また、予防接種を受けるための特別休暇などの制度的な配慮、感染症に罹患した場合には、これもまた感染拡大を予防するための配慮があるか。また抗体検査時等の場合に、麻しんや風しんの抗体検査を実施しているか。これはあくまで企業の取組であり、評価項目の1つではありますが、こういう評価項目に必要な感染症対策を取り入れることで、企業の健康に対する取組の向上を促しています。

 最後のページです。今後の主な対策と課題ということでまとめました。指針に書かれているように、目標としては、麻しんの排除状態の維持、そして、風しんの2020年度までの排除があります。主な対策としては、まずは、きちんと定期接種を継続していく。そして接種率を向上させていく。こういうことが重要であると考えています。その他、輸入感染症等により国内で患者が発生した際には、これをいち早く把握し迅速な感染拡大措置を取る対応が常に求められます。また、こういう重要な感染症対策については、ホームページ等で普及啓発を引き続き継続していく必要があると考えています。また、妊娠を希望する女性を主とした風しんの抗体検査費用の事業助成というのも継続していく対策としてありますので、こうしたことを含めて、今後もまた対策を継続していきたい。 課題としては、御指摘にあるように、なかなか流行が見られない中での普及啓発、そして社会全体での対策の推進が挙げられますし、また、その検査診断の必要性についても、流行状況を見ながら今後検討が必要な状況と考えています。事務局からは以上です。

○中野座長 どうもありがとうございました。麻しん・風しんとも、各種対策により一定の効果は上げていますが、決してここでやめていいわけではなくて継続していくことが大切であることが、今回の御発表の一番の趣旨であったかと思います。構成員、参考人の皆様から、何か御意見ございますでしょうか。

○小森構成員 努力はしていらっしゃると思うのですが、厚労省のこれまでの対応については、極めて不満なのです。今日出された資料もちょうど1年半前ですか、一昨年の9月に出された資料と基本的に一緒です。何度も申し上げますが、2020年までに風しんを排除し、そして先天性風しん症候群を1人も出さないという強い決意で予防指針を決めていった。となると、この5年間、どういう手順でそれを達成していくのかをやはり明確に示したロードマップで議論をしないと、私は進まないと思っています。確かに、先ほど岡部参考人からも言われたような様々な難しい状況があることは承知していますが、例えば特定感染症検査等事業で風しんの抗体検査を行った、公費も入っているわけですから、各都道府県等においてどういう実施状況であるのか、そしてそれを踏まえて、問題点はどこにあるのか整理をして、都道府県に返す、この協議会で議論をすることが必要だと思います。

 それから、ずっと申し上げてきているのは、健康な成人男性の抗体価の測定、低抗体者に対する予防接種の実施が重要であるということです。労働基準局が、今日はここにいらっしゃらないのですが、こういう会議にはきちんと呼んで、そして対策をどう考えているのかと。東京都の例で、東京都医師会産業医の方々の積極的な活用をうたっておられて、これから強い推進をされることを期待したいと思いますが、やはり労働基準局の管轄なので、産業医の方々をどう活用して、そしてどのように把握をしているのかを国として把握して、そしてまたそれも還元をしてPDCAを回さなければなりません。

 それから、国税はなかなか難しいと思うのですが、例えば、地方の人口減少とかの対策として、知事はトップセールスをして企業を呼び込むときに県税の軽減措置とかをしているのです。例えば、従業員の方の感受性者が95%以下を達成したとか、そういう所には都は都税を軽減するとか、そういう大胆な措置を是非知事にお願いをしたいと思います。やはりそういう議論をこれから残された5年間でしっかり積み上げていくと。目標を達成するためにどこまで行ったか、どこが問題なのか、どうするのかと、こういう議論を是非していただきたい、したいと思っていますので、お答えも、是非課長よろしく。

○結核感染症課長 よろしいですか。では、お時間にも限りがあるので簡単に。すみません、御指摘、誠にありがとうございました。いつも鋭い御指摘を頂いています。ロードマップを作って取り組んでいこうという御指摘について、私ども考えていきたいと思います。特に産業衛生分野、労働衛生分野との連携というのは、同じ厚生労働省の中に部局がありますので、先生の御意見を踏まえながら、今後政策を考えていきたいと思います。その際には、日本医師会の産業医部会の皆様方にも応援を頂きながら、特に先ほどの健康男性への対応も進めていければと考えています。

 また、都道府県の実施状況についても、できる限りヒアリングをして、いわゆるPDCAサイクルを回して、その結果を踏まえながら、今後、自治体ごとにどういうことを取り組んでいただいたらいいのか、その自治体の特性はもちろんありますので、その特性を踏まえながらの施策も進めていただけるように、我々も支援していければと考えている次第です。以上です。

○中野座長 ありがとうございました。時間もありますので、ちょっと簡単に最後総括させていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 今日は、会議の最初に、麻しん・風しん対策の最初は、保育所の子供たちに来ていただきました。その場で、石田構成員、東尾構成員からもお答えいただいて、現場の本当の生の声が聞けたと思います。一定の効果がやはり、先ほど小森構成員から厳しい御指摘も頂戴しましたが、定期接種になって、麻しんの補足接種をやって、いろいろなサーベランスも充実して、いろいろな意味で効果が上がっていることは事実だと思うのです。その証拠として麻しんは排除が達成されたと。しかし、そうだからこそここで手を緩めてはいけない。では、ある程度コントロールされた状況でも、感染症対策が大切かということをどうやっていくかがこれからの大切なことかと、とても感じました。

 先ほどの御指摘と課長からのお答えを拝聴していて思ったのですが、例えば、インフルエンザワクチンの接種率が、いろいろな評価指標、病院の評価指標等、機能評価の指標としてそれなりに国内に浸透したのは確かだと思うのです。それがインフルエンザワクチンの接種率の向上に寄与したのは確かだと思うのです。何よりも分かりやすい指標でないといけないです。そして、作る指標は、いろいろな方々が納得できる、ああそれは、国を挙げてやはりみんなでやっていく必要があるのだよという指標が、この麻しんと風しんの対策の中でも見つかれば、いい方向性が出てくるのではないか。例えば、麻しんの感染症予防指針は5年たって改正して、今、2期目に入っています。風しんの指針が最初にできたのが2013年です。まだ5年はたっていないわけですが、これからその排除に向けて、策定後5年がきっといろいろな意味でも、改定するのか新しくするのかの目安だと思いますので、そこを見定めながら、どこに的を絞っていくのかをこれから見定めていくことが、この対策推進会議の役目かということも感じました。そのような次第です。時間もまいりましたので、本日はこれで終了したいと思います。どうもありがとうございました。


(了)

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