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2016年2月16日 実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議

医政局医事課

○日時

平成28年2月16日(火)14:00~


○場所

厚生労働省17階 専用第21会議室


○議事

○海老名課長補佐 ただいまより、平成 27 年度「実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議」を開催させていただきます。事務局です。私は厚生労働省医政局医事課の課長補佐をしております海老名です。どうぞよろしくお願いいたします。

まず、資料の確認をさせていただきます。座席表、議事次第、構成員の名簿、それから議事次第に書いてあるとおり、各実施団体からの提出資料があります。本日は 8 施設からプレゼンテーションをしていただきますので、 8 施設分あるかと思います。過不足等ありましたらお知らせください。

  本日御出席いただいている先生方の御紹介をさせていただきます。構成員名簿を御覧ください。平成 27 年度から初めてこの事業に加わっていただいている施設もありますし、毎年来ていただいている施設もありますけれども、改めて御紹介させていただきます。まず有識者の先生方です。東北薬科大学病院病院長の近藤先生です。慶應義塾大学医学部の小林先生です。北海道大学大学院医学研究科の七戸先生です。順天堂大学大学院医学研究科の内山先生です。杏林大学大学院医学研究科の松村先生です。

  本日御発表いただく先生方を御紹介いたします。初めに名古屋市立大学医学研究科統合解剖学分野の植木先生です。札幌医科大学医学部解剖学第 2 講座の藤宮先生です。東北大学大学院医学・研究科細胞組織学分野の北田先生です。千葉大学大学院医学研究員環境生命医学の鈴木先生です。東京医科大学救急・災害医学分野の本間先生です。東京医科大学人体構造学分野の林先生です。岡山大学病院集中治療部の武田先生です。岡山大学大学院医歯薬学総合研究科の大塚先生です。愛媛大学医学部解剖学・発生学の松田先生です。産業医科大学医学部脳神経外科の西澤先生です。以上の先生方で本日は説明させていただきます。

  本日、評価委員の先生方には、これから各施設の御発表を聞いていただきまして評価をしていただきます。この結果については、各施設のほうに後日フィードバックをさせていただきます。また、本日は解剖という非常にセンシティブな案件を取り扱いますので、会議のほうは非公開としております。この成果などを広く今後も発展させていくために、議事録又は資料については公開とさせていただきます。議事録、資料については公開前にまた確認をしていただきますので、御協力のほどよろしくお願いいたします。本日の進行につきましては、近藤先生にお願いしたいと存じますが、よろしいでしょうか。

                                   ( 異議なし )

○海老名課長補佐 ありがとうございます。それでは、以降の議事進行は近藤先生よろしくお願いいたします。

○近藤座長 進行を務めさせていただきます、東北薬科大学病院の近藤です。今年でこの評価会議は 3 年目になります。過去にも報告していただいた方は要領を御存じかと思います。お話をしていると結構長くなってしまいます。設定された 2 時間のうち、最初の 1 時間ぐらいで発表と質疑応答をしていただきます。後半の 1 時間はフリーのディスカッションということで進めますので、御協力をよろしくお願いいたします。本日初めての御報告の名古屋市立大学からの発表は 7 分、その他の施設については 5 分で発表をお願いいたします。早速報告を始めます。 1 番目は、名古屋市立大学からお願いいたします。

○名古屋市立大学植木先生 名古市立大学医学部解剖学の植木です。よろしくお願いいたします。平成 27 年度から初めてこのサーチカルトレーニングに係る事業に参画させていただくこととなりました。まだ、いろいろな体制の整備、あるいは具体的な手技の進行の仕方など不案内なところが多々あります。審査委員の先生方に御指導いただくことがあろうかと思います。今後ともよろしくお願いいたします。

私どもは、平成 27 年度はおおむね 9 月辺りから始めさせていただきました、キャダバートレーニングの現状の御紹介と、課題と思われるようなところに関して御報告させていただき、先生方からの御指導を仰ぎたいと思いますので、よろしくお願いいたします。

  名古屋市立大学では、こういう診療科に係るキャダバートレーニングを実施させていただいております。これまでに実施済みのもの、あるいは今年度末 3 月までに講習会の予定が組まれているものをここにまとめております。消化器、呼吸器、形成外科、腎・泌尿器科という所が、これまでキャダバートレーニング講習会を実施しております。

  今後実施予定となっております耳鼻咽喉科、頭頸部外科、整形外科等の診療科においても、あらかじめこれまでに医師医療法によって手技を施した御遺体によって試験解剖を診療科内で行っていただいておりますので、今後 3 月末までにキャダバートレーニングの講習会を進めていただくに当たって、技術的な問題はないのではないかと考えております。

  以下、実際にこれまでどのような診療科が何をさせていただいているのか、どの程度の人間が集まってキャダバートレーニングに当たっているのか、ということに関して御説明いたします。消化器外科においては、去年の 9 月以来キャダバートレーニングを行っており、主に腹腔鏡を使ったエンドスコープを用いた、膵頭十二指腸切除術を行っています。これに関しては、平成 27 年に 2 回。 2 回目のキャダバートレーニングにおいては、膵頭十二指腸切除術に加える形で、特に上腸間膜動脈の右半腫リンパ節郭清といったものを加えてトレーニングを実施しました。

  受講者は、 3 献体について、 1 つの御献体について、 3 名ずつの受講者、愛知県内、学外の 5 病院から医師の参加を募って行わせていただきました。 2 回目においても、私どもの所では中部東海エリアのキャダバートレーニングの拠点にしていただいておりますので、東海 3 県が中心とはなりますが、加えて富山、福井といった、日本海側のエリアからも、今後は参加者を募る形で、キャダバートレーニング講習会を実施してまいりたいと考えております。

  これが、消化器外科の研修風景になります。通常の医学部の解剖実習室を用い、そこにエンドスコープを持ち込み、イメージングシステム、そして病院のほうからは ME にも加わっていただく形で、エンドスコープの機械的な操作のアシストを受ける形で進めております。

  呼吸器外科においては、新任の中西教授を、英国ラキタ病院から迎え、積極的に腹腔鏡を用い、エンドスコープを用いた肺葉切除術、あるいは心脳内肺動脈、肺静脈の確保といった手技を実演していて、学内からの講師に加え、愛知、三重、岐阜といった学外の病院からの受講者を募り、 3 献体を用いて実施いたしました。呼吸器外科に関しては、今後は呼吸器外科学会のバックアップを得る形で、私どもの名古屋市立大学を、キャダバートレーニングの拠点化にしていただく形で、今後そういう専門医養成の際のライセンシブイにも、こういうものを加味していただくという方向で動いております。

  さらに年度内にもう一回、 3 月に講習会を行い、肺葉の切除術、心脳内血管剥離といった手技の講習会を実施する予定でおります。

  形成外科、腎泌尿器科においても去年は 1 回ずつ、そして形成外科においては年度末に 1 回の講習会を実施予定です。形成外科においては、漏斗鏡手術を年度内に 2 回、名市大病院、あるいは名大病院からの講師によるキャダバートレーニングが行われ、受講者は愛知、三重、岐阜といった学外の病院からの参加者を募り、 2 献体、 3 献体を用いて行われております。

  腎泌尿器科においては、エンドスコープを用いた膀胱全摘術、それから後腹膜鏡の腎摘除術を 1 回行っています。これも名市大病院の腎泌尿器科の医師の指導の下に、愛知県内からの受講者を募り、 3 献体によって行いました。

  耳鼻咽喉科、頭頸部外科は、村上教授が愛媛大学から着任しております。愛媛大学の松田教授にもいろいろな御指導を頂きながら、キャダバートレーニングを計画、そして年度内に 1 回させていただく予定となっています。耳下腺の腺葉深葉の摘出術が予定されていて、学内病院の耳鼻咽喉科の医師 3 名の下で、 9 名の受講者を県内 4 病院から募り、 3 献体で実施することになっています。

  実際にキャダバートレーニングに当たった講師の評価の代表的なものを抽出すると、こういうところに集約されてくるのではないかと思います。非常に Thiel 法を用いた御献体というものは、生体の近似な状態が保たれている。膜の剥離、血管の遊離などといったものをやっていく上には大変有利なサンプルであって、今後の手術手技の研修、手術手技の向上といったものに大変有用なのではないかと考えられたと。こういうところに、代表的な評価は集約されてくるのではないかと存じます。

  キャダバートレーニングを行わせていただき、幾つかの課題として私どもが考えた点を、事務的な問題、あるいは手技的なテクニカルな問題を幾つか列挙させていただきました。事務的な問題というと交付決定の時期、それぞれの解剖学講座、臨床系の講座といったものは、財政的には汲々とした中でやっておりますので、やはり交付決定を迅速化していただきたいと。私どもの所へ交付決定が実際にまいりましたのは 11 6 日でした。それ以前にも当然 Thiel 法を用い、受け入れた献体の処理というのはしております。来るべき交付決定に備えて準備を進めていたというわけですが、やはりこの辺りの交付決定の迅速化を図っていただきたいということを第一に挙げさせていただきました。

  第 2 として、それとリンクしていることですが、こちらの事業が単年、単年で申請、それから採択といったことのサイクルが繰り返されています。今後、腹腔鏡を使って外科的な手術を大規模で行っていく段には、やはり大型医療機器を導入する必要もあります。そういうことから財務的な基盤を確立することも考えると、やはり複数年化していただきたいということが課題としては挙げられるのではないかと考えております。

  第 3 も資金の流れに準じたものですが、こういう研修を運営していくに際し、どのような形をとらせていただくのが一番よろしいのか。ある場合には NPO 法人への事業の委託といったこと、あるいは臨床の医局が主体的となって進めることということがあります。最大公約数的な、どういう状態でやらせていただければ、今後は外部の資金に委ねることなく、自己資金と、プラスアルファの参加費を徴収してやっていくことができるのかという、この辺りでモデルのようなものを一案として提示していただくなり、集約していただくことにより、こういう制度が永続していくのではないかと考えました。

  次に技術的なテクニカルな問題として、やらせていただいて感じたことをここにまとめさせていただきました。第一に現状では解剖実習室を使っておりますので、半年程度医学部の学生実習室は占用されておりますので、その間にキャダバートレーニングをやる際には空間的な制約が、あるいは時間的な制約が出てくる。そういうことで、専用の施設を設ける必要がある。こういうことにも、今後この事業が長期化して、ある程度予算の面でまとまったお金が見込まれるようになれば、施設の箱の整備といったことにも財源を充てていくことができるのではないかと考えております。名古屋市立大学は、この点で若干特異的な事情を抱えているので後ほど御説明させていただきます。

  第 2 に、脳組織に関する点です。 Thiel 法を用いて脳外科がキャダバートレーニングを行おうとした際に、やはり脳組織が生体に比べて軟化しているということ、あるいは神経組織がやや色合い的に黒ずんで見えるといった点が問題として浮かび上がってまいりました。これは Thiel 法に内在した問題であろうかと思いますが、今後 Thiel 法、あるいはアルデヒド工程といったものを組み合わせることでもって、この脳組織のハンドリングをより行いやすいようなものにしていく必要があろうかと思っています。

  第 3 に整形外科、あるいは形成外科がキャダバートレーニングを行う際に、 X 線を使った透視を行う必要がある。これは、通常の解剖実習室では遮閉がされていない所でやることになりますので、やはり技術的な制約を受けることが出てまいります。この点についても、シールドを施した手術で整形外科がキャダバートレーニングを行えるように、シーアームを用いて行えるようになれば、今後大変に発展が見込まれるのではないかと考えております。

4 番目、 5 番目の点として、 Thiel 法というのは大変安全なものだと考えておりますが、そうは申しましてもアルデヒド工程の御遺体と比較して若干の不安な点は残されております。その辺りをどのようにしてクリアしていくのか。臨床医であるとか、技術職員が安心して献体をハンドリングすることができる。ここまで対策を施せば大丈夫だろうという点をまとめていって、今後その辺りのコンセンサスは得られるようであればよろしいのではないかと考えました。

  通常のアルデヒドの工程に比べて、随分ウェットな御遺体ですので、私どもも火葬する際に、火葬先の職員の方々に少し違和感を持たれます。この辺りでキャダバーで終わった御遺体の最終的な火葬まで持っていく手はずの詳細、具体的な問題点といったものを少し整理したほうがいいのではないかと考えました。

  最後に、名古屋市立大学では、公共的なキャダバートレーニングのための施設を整備する必要があろうということで、愛知県のほうにいろいろお願いをして、平成 28 年の秋に、キャダバートレーニングの専用センターを造っていただくことになりました。こちらは、通常のオペ室にはオペ台を 5 ユニット。遮閉が施されていて、通常のオペ室のようなものに、解剖台のようなものを持ち込んだというものです。こちらは、キャダバートレーニングだけではなかなかお金が付かないということがあり、キャダバーを用いて、私どもが別途に関わっております、新しい MRI の開発をしてきた際に、キャダバーを用いさせていただくということです。そういう枠組みで愛知県のほうから少しお金を頂き、それで専用のセンターをこの 11 月に竣工予定で、今整備しているところです。以上ざっとではありますが、私どもがこれまで半年程度関わらせていただいた現状と、その中で感じ取った課題のようなものを話させていただきました。御意見、あるいは御質問を頂ければ幸いです。

○近藤座長 ありがとうございました。ただいまの御報告に対して御質問とかコメントはありますか。

○小林委員 トレーニングの中では、教育と研究に分類が分かれていますが、ただいまの御発表ではほとんど教育を中心にやられていると思います。最後のお話は研究を今後やるというような方針の発表と思います。私の質問は、今後のトレーニング見学者がどのぐらいおられるのか、お伺いしたいと思います。ここのガイドラインでは、参加者は医師又は歯科医になっています。それ以外の人は、企業の人も含めて参加者扱いになっています。その数の実態を教えていただけますか。

○名古屋大学植木先生 今後の方向性として医療機器の開発というものを組み合わせてということを考えております。それは平成 28 年度以降に実施ということです。現状の見学者というのは、例えば病棟回りをしている M5 の学生です。こちらがおおむね 30 人とか 40 人という数が、このキャダバートレーニングの会場を取りまいて、実際に指導医がそれを実演する。あるいは場面場面、物に応じて M5 の学生が実際に手を動かしてエンドスコープを操作するというような機会を与えたりしています。

  研究と申しますのは、具体的に手術手技の改良といったところで、呼吸器外科などは研究論文のようなものをまとめようとしております。研究というのは、現状はそういう手術手技の改良に関わる研究解剖といったところです。

○小林委員 今の質問は、外科学会での報告書の分類です。研究および教育をそれぞれ ABC に分類してあります。

○名古屋大学植木先生 ありがとうございます。

○七戸委員 具体的な質問をさせていただきます。腹腔鏡下の膵頭十二指腸切除術の件です。御遺体に固定液を入れるタイミングによって、膵臓の自己融解による使いやすさや、実習に向いている、向いていないというのが分かれてくるのではないかということが想像されますが、いかがでしょうか。

○名古屋大学植木先生 何体かの使っていただく献体にあらかじめエンドスコープを入れて、実際に 1 回内覧していただきます。その状態で良いものを 3 体選んでいただくということをしております。ただ、現状では先生がおっしゃられたような、融解しているというような、処理からの時間にもよるかと思いますが、そういう御遺体は見いだされてはおりませんで、比較的実用的な状態にとどまっています。

○七戸委員 ほぼ全御遺体大丈夫だということですね。

○名古屋大学植木先生 はい、そうだと思います。

○七戸委員 肺に関して言うと、開胸の既往があったりすると、実施はできないと思うのですけれども、これに関してはどのようなスクリーニングをしているのですか。

○名古屋大学植木先生 体幹の外科の際には、既応症として、これまでどういうオペを受けているかということをやりますし、胸腔鏡、腹腔鏡を使う際には、やはり 1 回腹腔鏡を入れていただいて、中の様子をざっと見ていただきます。変に癒着が起きているものは使えませんので、それは耳鼻科のほうに回すというような融通を利かせていただいております。

○七戸委員 実施数が多いですが、サージカルトレーニングに賛同されている白菊会ですか。

○名古屋大学植木先生 愛知県では不老会という団体が動いていて、 4 団体合同でやっております。おおむね 2,000 人に、口頭と文書で説明して御了解を頂いております。年度、年度で 80 体程度が Thiel 法も強化していただく形で入れていただいております。そういう意味では、十分量を今は確保させていただいているのではないかと思います。

○内山委員 解剖の先生方はどの程度関与して、どのぐらい時間を取られているのですか。

○名古屋大学植木先生 サージカルトレーニングは休日にやることが多くて、現状では我々スタッフは新しいもの好きということもあり、全教員が出て、事前に解剖的な座学を 2 時間ほどやります。その後にサージカルトレーニングに入っていただいています。そういうことで、私どものエフォートも 20 %、 30 %という現状は割かれていると思います。今後はだんだんと、特任教員のようなものを設けたりということで、エフォートを増やしていきたいと思います。現状は、結構スタッフ……やっております。

○松村委員 遺体の管理・保管等の設備、それから人員投入についてはいかがでしょうか。それから、セレクトされて遺体を各分野に振り分けるというような感じですが、その辺はどういう形でやられているのですか。

○名古屋大学植木先生 この事業を始める前に、私どもは遺体の保管庫等を整備しました。現状では図書館の書庫のような形で、割合とシステマティックに 100 体程度並べることができる御遺体の保管庫を整備いたしました。こちらは、解剖の私どもの講座の自前の資金でやらせていただきました。

 あとはどの診療科に割り振るかということですが、御遺体が 1 体入ってくる度に、現状は各診療科から助教の先生、あるいは若い先生に来ていただき、必ず 12 診療科の先生方に一度集まっていただいた、全部見聞していただくシステムを採っています。そういう中で、適当な診療科に配分させていただいています。そういうシステムを構築しています。

○松村委員 その際に、学生実習用の御遺体というのはどのようにセレクトされるのですか。

○名古屋大学植木先生 基本的には医学部の解剖実習のプライオリティが一番高いと考えておりますので、まず学生解剖実習のための 25 体は確保いたします。残る 80 体について、現状では Thiel 法のキャダバーに適したとみなせる 40 体程度を別個に保管庫に保管しているという状況です。

○近藤座長 また後でも時間がありますので、ここまでとさせていただきます。どうもありがとうございました。 2 番目は札幌医大の藤宮先生よろしくお願いいたします。

○札幌医科大学藤宮先生 札幌医大の藤宮です。よろしくお願いします。ハンドアウトの 2 ページを御覧ください。私どもは 4 年連続で、平成 24 年度、平成 25 年度、平成 26 年度、平成 27 年度と頂いています。平成 27 年度は結構少なくて大変でしたが、平成 27 年度の実績報告をします。平成 27 年度のまとめが 5 ページにあります。年々増えていっているのですが、平成 27 年度は 13 施設に行なっていただいています。

6 ページから、平成 27 年度にどういう施設がトレーニングを行なったかを順次挙げています。 6 ページは脳外科のセミナーで、これは札幌医大の脳外科の同門の先生が行なっています。

7 ページは整形外科の研修です。これも札幌医大の同門の先生が行なっています。

8 ページ、 AO Trauma Course - Hand Wrist ということで、世界外傷外科学会が主催の全国規模のセミナーを行なっています。

9 ページは、これも同じく、 AO Trauma Course Foot Ankle のセミナーです。全国規模で多くの施設から参加していただいています。

10 ページは、日本肩関節学会キャダバーワークショップということで、これも学会主催の全国規模のものです。

11 ページは日本口腔外科学会・日本顎関節学会です。

12 ページ JOSKAS です。

13 ページは日本肘関節学会。

14 ページは脊椎のセミナー。

15 ページは婦人科の先生方が行なっているものですが、参加者は全国から来られています。

16 ページは胸腔鏡下食道外科手術セミナー。

17 ページは腹腔鏡下鼠径ヘルニアセミナーです。

18 ページは麻酔科のワークショップです。アンケートはずっとありますので、これはもう飛ばします。

23 ページに、これまでどういう形でこの頂いた予算を使ってきたかを挙げています。平成 27 年度に関しては 257 万円の支援を頂きましたので、ほとんどを人件費に使っています。

24 ページは「本事業に対する要望」です。本学の特徴は、全国規模の学会が主催するワークショップを毎年開催していただいているということで、これからも継続的な施行が望まれています。今回、この事業から支援していただいているお金で、事務局担当者 1 名を雇用しています。継続していくためには、どうしてもやはり慣れた事務局担当者 1 名を雇用していくことが最重要課題と考えています。それ以外の消耗品などの様々な出費に関しては、受益者負担として、セミナーの参加費、また主催団体からの奨学寄付金という形で賄うことが可能です。以上です。よろしくお願いします。

○近藤座長 どうもありがとうございます。毎回聞いても、非常に幅広くいろいろなことを実施されて。整形の領域が結構多いですね。いろいろな、肩とか手首とか、整形の領域というのは細かく分かれて多いのですね。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。

○近藤座長 何かありますか。

○小林委員 実績もあり、たくさんのコースをおやりになっていて、大変感銘いたします。お教えいただきたいのは、今後の予算組の参考になるかと思うのですが、人件費で大体 200 万から 350 万前後でしょうか。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。

○小林委員 やはり、本質的に、解剖学教室に負担になっているから補助員がいないといけないというのは考えるべきことでしょうか。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。はい。解剖学講座からは職員を出していません。このサージカルトレーニングの支援をしていただいたお金で担当者を 1 人雇っているのですが、この 250 万というのでは足りませんので、別の所から不足分を支出しているわけです。

○小林委員 もう 1 点、機械の、大型機器等の企業からの貸出し等がなかなか難しいと思います。公取法の問題とかいろいろあるとは思うのですが、何か特別な枠組みみたいなものはありますか。 NPO で動かすとか何かあるのでしょうか。

○札幌医科大学藤宮先生 うちの場合は、主催団体の学会それぞれがリースとかしています。

○小林委員 学会ではどうでしょうか。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。私の所は余りそういうことは面倒はみていません。

○近藤座長 ほかにありますか。

○松村委員 もう 4 年間もずっと、その前からずっとされているので、技術的なこととかそういうのは問題はないと思うのですが、先生が今、奇しくも言われたように、これからの人件費とかマネジメントの部分というのは、やはり難しい部分がかなり出てくると思うのです。人材、それから遺体のマネジメントもそうですし、機器のマネジメントは、先生が言われたように各学会が負担することになってはいるようですが、これからだんだん広がっていったときに、それをどこまで、受益者負担と言うとおかしいのですが、各学会が網羅できるかというところはあるかと思うのです。その辺についての先生のほうからの要望はありますでしょうか。

○札幌医科大学藤宮先生 現時点で、セミナーの参加費は 3 万から 7 万くらいの幅があります。これは、講師料とか、機械のリース料とかで必要な経費です。それ以外に奨学寄付金と今回書いているのですが、 1 体に対して 10 万頂いています。大体 1 つのセミナー当たり 5 体出しているのですが、それは棺代とか火葬代とか、そういう献体をめぐる費用です。今のこの費用の中でコンスタントに事務局担当者を雇えるかどうかというと、決して雇えるわけではありません。うちは、解剖学の教員は一切このセミナーに参加していませんで、私一人が共催者として開催の前に 10 分ぐらい挨拶をする程度で、あとは全て事務局担当者が行なっているわけです。週末にかけてのことがほとんどなのですが、前もって部屋の準備とか、様々な業者とのやりとりとか、その期間中の対応などは 1 人で行なっているので、やはり、コンスタントにこの 1 人を雇う費用をどこから持ってくるかというのが、これから継続する場合の大問題と考えています。

○近藤座長 ありがとうございます。実際、学会主催のワークショップが結構多いということは、学会のほうでも、いろいろ学会員の教育トレーニングのために先生の所の施設などを使わせていただくことに非常に意味を感じているからだと思うのです。例えば機械の話がありましたが、そういった学会などから経費を取るとかそういうことはないのですか、全然。

○札幌医科大学藤宮先生 それは恐らく、主催者が、学会からの援助を自分たちの開催にまつわるような出費に使っている可能性はあります。しかし、私の所では、各学会からどれくらいのお金が主催者のところに行っているかというのは分からないです。

○近藤座長 学会と主催者とはまた別なのですか。

○札幌医科大学藤宮先生 主催者はどんどん変わっていきます。例えば、肩関節の学会でしたらその会長は毎年変わるわけで。

○近藤座長 会長が主催する形なのですね。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。

○内山委員 よろしいですか。大学の中の組織と、それから今、言った各学会の組織と、大学の中の各学会のメンバーという具体的な関わりというのは如何ですか。要するに、全体のオーガニゼーションはやはり大学が行っているのですか。

○札幌医科大学藤宮先生 はい。

○内山委員 それから個々の学会との関係というのは、各学会の人たちがやっているのですか。

○札幌医科大学藤宮先生 倫理委員会を通してもらわないと、このサージカルトレーニングはできません。本学の倫理委員会は、大学の職員でないと倫理委員会に申請できないことになっているので、必ず、関係学会は本学の教授を主催者に据えてやっているわけです。私が共催という形を取っています。

○内山委員 全体のオーガニゼーションは、大学としては倫理委員会だけで、その他全体の立案をする組織(財務関係を含め)はないのですか。

○札幌医科大学藤宮先生 ないです。

○内山委員 そこでいろいろなトラブルは一切起きないのですか。特に、遺体の扱い、それからそれぞれ(大学)の先生方がほとんど関与しないとすると、解剖体の扱いとか、解剖後の遺体の処理に関して、どこまで解剖の教室が関与していますか。一切関与しないのであれば、どこがどういう形で主催し、遺体の処理をしているのかということが問題にはならないのですか。

○札幌医科大学藤宮先生 参加していないと言っても、その管理責任というのはやはり解剖学の教授、私がかなり負っているので、遺体の提供のところから、納棺、部屋の片付け、そして火葬に及ぶまで、そのセミナーの参加の団体から必ず人を出してもらっています。例えば、セミナーが終わった後、納棺して火葬に行くまでのステップ、これも、きちんとそこでセミナーに参加した人たちが必ず人を出して手伝うと、最初からそのように私が決めているので、ただ使ってそれで終わって、あとは知らないということにはなっていません。

○近藤座長 先生、どうもありがとうございます。それでは、また後で議論ができますので、よろしくお願いします。

  次に進みたいと思います。次は東北大学の北田先生、よろしくお願いします。

○東北大学北田先生 東北大学の北田と申します。どうぞよろしくお願い致します。私の資料ですが、毎年のことですが、他大学でこれから手術手技研修を始めようという先生方の参考になるよう作成しておりますので、去年、一昨年との重複部分がございますが、ご了承いただければと思います。

  <スライド2>私たちは、篤志献体の会「白菊会」の方々に十分な配慮を心掛けるということで行ってきております。<スライド3>平成 24 年に開始する 1 年以上前から白菊会の方々に働き掛けをしてきておりまして、全会員への意向調査を最初に行っています。<スライド4>また、白菊会入会時、あるいは亡くなられたときに、きちんと説明して文書を交わしております。<スライド5>更に、白菊会の方々、あるいは御遺族の方々に、手術手技研修の成果について、逐次ご報告させていただいております。

  <スライド7>この手術手技向上研修に先立って、専門委員会というものを立ち上げております。<スライド8>まず、専門委員会に各診療科からの研修の提案を提出していただきまして、実施の 3 か月以上前からこの専門委員会で審議を行い、 2 か月前に倫理委員会、あるいは場合によっては利益相反マネジメント委員会で審議を行い、承認を得た上で手術手技研修を行っていただくという形を採っております。<スライド9、10>基本的に、いずれの診療科も実際の手術とほぼ同様の手技を行っていただくということ。また、受講者の実力に合わせて解剖学的知識の確認や、実際の術式の修得を目指す、ということを目的としています。更に今年は、また後ほど説明致しますが、コメディカルの方々、具体的には、看護師、理学療法士等の見学を行っています。

  <スライド11、12、13>このスライドは具体的な手術手技研修の内容を示しています。参考までに入れております。

  <スライド14>このスライドが手術手技研修の実際の写真になります。

  <スライド15>これまでにアンケート調査を行ってきております。実際の手術とほぼ同等の手術手技研修を受けられたということで、平均して 10 段階中 8 以上の評価をいただいております。<スライド16、17>これらのスライドに書かれた内容は昨年度と同一ですので省略しますが、非常に良い評価を頂いてきております。<スライド18>昨年度より記名式アンケート調査を行っていて、東京医大の本間先生のお仕事を参考にさせていただいて行っています。研修前、研修後、そして研修終了後の半年後に理解度のアンケート調査を行って、連結可能匿名化を行ってデータを解析しています。 10 段階に関しても、比較的細かい段階を設けて評価をしていただいていて、そこで特筆すべきことが 2 点ありました。これら 2 点がこれまでに示されてこなかった点ですので、本研修事業の有効性が有意差をもって示されたのではないかと考えています。

  <スライド20>手術手技研修における問題点と、その解決についてです。これらは、昨年度とほとんど変わりませんが、次の点です。<スライド21>前回、手術手技検証を行った上で器具が紛失してしまったということがあります。今年度は、そうした問題点を払拭するということで、見学者として看護師を加えています。看護師による器具出し・手渡し・確認を行うことで、手術器具の紛失を防ぐ手だてを行っております。こうした、看護師の見学、あるいは手術手技と同様の行為を新たに行っていただくことを始めています。

  <スライド22>東北大学における手術手技研修の変遷ですが、参加診療科は徐々に増えて、来年度は恐らく 8 診療科になる予定になっています。ところが、受講者数は、来年度は恐らくプラス 2 30 になるだろうと思うのですが、大体 400 名前後と頭打ちとなっております。これ対し、昨年度・一昨年度から、講師の数、御遺体の数、あるいは研修の時間、これらを増やしていくことで研修そのものの充実化を図っていくという段階に入っております。

  <スライド23、24>これらのスライドは昨年度と同一ですので、省略します。

  <スライド25>最後のスライドです。これまでの議論で費用の問題が出てきていましたが、東北大学でも今年で 4 年目、来年で 5 年目になりますが、その先の手術手技研修の予算状況を考え、参加費徴収というのは恐らく 6 年目以降は必要になってくるだろうと思いまして、内規の策定に今、取り掛かったところです。適切な内規が策定できましたら、公開する形で、他大学が手術手技研修を開始するというときに、どういった形にすれば参加費を徴収できるかの参考にできればと考えています。以上になります。御静聴いただきましてありがとうございました。

○近藤座長 どうもありがとうございます。いかがでしょうか。

○小林委員 新鮮凍結御遺体を扱い始めて、解剖学教室での御負担の増はどんなことでしょうか。

○東北大学北田先生 東北大学では御遺体の処理については、 3 系統ございます。 1 つはホルマリン固定、 1 つは Theil 法固定です。もう 1 つは凍結遺体になります。凍結遺体は整形外科の研究のみに使用しています。 Theil 法固定遺体に関しては、この手術手技向上研修のみに使っています。今年度は 14 体使用しています。この Thiel 法にかかる費用に関しましては、こちらの補助金で賄っています。 Theil 法固定を行うときには技術職員のみで処理することができています。凍結遺体の場合は、実際に臨床研究に用いる整形外科の先生方に来ていただいて、最初に採血して感染状態を調べていただくこと、次に AI 、オートプシー・イメージングの CT 室に運んで行って CT を撮ってもらってそれを戻すという部分で、臨床の先生 1 名の方に毎回お世話していただいているという形になります。

○小林委員 口頭で白菊会の方から同意を取られていると述べられましたが。

○東北大学北田先生 書面です。

○小林委員 凍結に関しては如何でしょうか。

○東北大学北田先生 と申しますのは?

○小林委員 記載があったもので質問したのですが。

○東北大学北田先生 凍結に関しても、つまり、研究に用いるのか、あるいは教育に用いるのか、どちらかという形で、○×で同意を取っております。

○七戸委員 コメディカルの見学というプレゼンテーションがあったと思うのですが、これには 2 つの意味があると思うのです。 1 つは、本当に新人ナースが機械出しをトレーニングするためのいわゆる見学というか、手術補助の実習と、もう 1 つは、実習をスムーズに行うために、いわゆるプロフェッショナルにお金を払ってそれを手伝ってもらうということもあり得るとは思うのです。これはどちらを意味しているのですか。

○東北大学北田先生 現状では中間に当たります。比較的慣れた看護師の方に来ていただいて、例えば、少し最近離れていた方とか、またそれで手術室に復帰される方とか、そういう形で、どちらかというと全くしたことがないという看護師でもないですし、非常に慣れた方にお金を払ってという形でもありません。その中間にいる立場の方です。

○七戸委員 大学病院とか、あるいは関連の病院で、外科のドクターが来るときに一緒に連れて来るという形になりますか。

○東北大学北田先生 そうですね。現在、看護師等のコメディカルの方は、大学内部の方に来ていただいております。

○七戸委員 大学内部ですね。あともう 1 つは、参加費の徴収に関して、内規を策定することなのですが、外科学会のガイドライン委員会で見ていますと、今、ほとんど参加費を取っている研修のほうが増えてきていますが。

○東北大学北田先生 これが実はすごく大変でして。

○七戸委員 はい。

○東北大学北田先生 結局、内規を決めるに当たって、大学の本部と非常に頻繁なやりとりを行う必要が生じております。その参加費がいくらというのは何を理由に決めたのだということで、その内訳を全部記載しないといけないという事情があります。逆に言うと、それだけ東北大学の中で非常に厳しい審査を受けて作成しますので、ここできちんとした内規が決められれば、恐らく他大学でもそれを参考に使っていただけるような、どこに出しても恥ずかしくないような内規が作れるだろうと思っております。ですから、かなり時間を掛けて、今、作っているところです。

○七戸委員 そうすると、解剖学教室にお金の入るシステムを作っているということですか。

○東北大学北田先生 解剖学教室とはまた別な財布を作って、という形にはなります。

○七戸委員 参加費もそこに入れて、企業の寄付とかもそこに入れてということになるのですか。

○東北大学北田先生 現状、企業の寄付は考えていません。

○七戸委員 考えていない。

○東北大学北田先生 はい。

○七戸委員 分かりました。ありがとうございます。

○内山委員 よろしいですか、簡単に。遺体のための費用が大学というか国から出ているわけですが、それはかなりの額のはずです。サージカルトレーニングで使用した遺体の処理、それから火葬に至るまで全て賄っても余りあるくらいのお金が出ていると思うのですが。

○東北大学北田先生 実は余りはないです。逆に減っていってる状態です。

○内山委員 それは、大学によって配分の仕方が多少違うということでしょうか。

○東北大学北田先生 あると思います。

○内山委員 東北大学の配分の仕方はかなり変わってきたということだと思うのですが。

○東北大学北田先生 はい。

○内山委員 そこのところが実際にどのくらい使えるのかが問題ですね。というのは、大学によって調整ができるわけですから。その時に、必要なものとして、卒後研修の人たちを更に教育するという医学部の立場から、公的なお金を使ってこれは進めるべきだという、即ち大学の中で采配できるのではないかという立場を取られるのですか。それとも。

○東北大学北田先生 実際には、これは大学ですべきことだとは私は思っていません。病院である程度何らかのお金を作っていただいて、そして藤宮先生が仰っていらっしゃいましたが、最低事務員一人分ぐらいのお金がないとまず回らないですし、それを行って更に内規を策定して参加費を取って、それでも恐らく参加費は 3 万円から 5 万円程度となると思います。ただ、診療科によっては、特に顔面の骨切り術を行う形成外科等ですと、計算すると 1 15 万円ぐらいになってしまって、参加費徴収での手術手技研修が資金的に回るのかどうか難しいところがあります。また、実際、運営費交付金で御遺体関係のお金が充当されておりますが、毎年 3 %ずつどんどん減ってきていますので、どちらかというと、そうした資金はあてにすることは難しいのではないかと思っています。

○近藤座長 こういう経費のことは全体の討論でもしたいと思います。どうもありがとうございます。それでは先に進みます。

  千葉大学の鈴木先生、お願いします。

○千葉大学鈴木先生 よろしくお願いします。まず、実績の報告です。昨年 4 月から今年の 1 月までの間にこれだけ、 5 講座、 16 件の手技教育を実施しています。内容ですが、基本的に、希望した全ての手技が実施可能です。これは毎年同じことを実施出していますので、この表で簡単にまとめています。

  参加人数ですが、圧倒的に整形外科が多いです。やはり各関節、脊椎、脊椎も首と腰で分かれていますので、それぞれがそれぞれのスタンスで人を集めてやっております。取りあえず今回提示する出すものでは、参加人数 290 名です。昨年は 254 名だったのですが増加しています。内訳は、千葉大以外の外部参加者が 171 名です。昨年は 114 名だったのですが、これも増加しております。教育は 3 月にあと 2 件予定しています。千葉大は研究をかなりやっており、新鮮凍結死体を中心に研究をいっぱいやっていますので、こちらで人数がまたたくさん入っております。参加者は合計で 350 名は間違いなく超えて 400 名近くになると思います。ニーズが増加の一途で、いろいろな所から問合せが来るのですが、「もう来年は多分無理ですよ」などと言ったら「再来年でいいので」などと言われてしまいます。再来年を「いいよ」と言っていいのかが分からないのですが、と言いつつ、「できるだけ早く対応しましょう」などという形で御願いしています。会話をしています。

  前回残った課題で、このような 4 点があったのですが、今回はそれだけ軽く触れようと思っています。倫理審査を迅速審査にするといいのではないかというお話を頂いたので、早速、迅速でやってみました。おおむね、お陰様でスムーズに倫理審査が進むようになりました。ただ 1 点、審査委員がいつ返事をするかという点で、何かメール審議のようで、期間が一定でないというのが露呈しました。実は「今後の課題」に入れましたのが、このガイドラインが出来る前は、うちは包括の倫理審査で 1 つ通してあるのでいつでもできますよという体制だったのでした。すが、そのときに起きた事象で、患者の神経症状が急速に悪化してしまったので、来週か再来週に緊急でオペをすることになったことがありました。したいという依頼があって、その手術が、論文で 1 個、世界で 1 例しか報告が 1 個しかない術式なので、それが本当にできるのかリスクを見たいということで、献体を使って手術シミュレーションを 1 回実施したことがあるのです。その際は、もう倫理審査は先に包括で通っているという前提でしたので、すぐに御遺体を手配して実施しました。だったので、今は倫理を通らないとできない形にしてあるのですが、そのときには論文に書いてあるとおりにやってみて、論文に書いている以上のリスクがすごくあるということが術前実際に分かり、実際の手術が安全にできました。実際、キャダバーで 1 回、ネジを締める順番が 1 回個違っただけでボンと事故が起きたのですが、実際の手術ではそれを踏まえて、完璧に安全にできたというようなコメントを執刀医から頂きました。が、実は過去にはありましたので、それがこのメール審議の 1 2 週間返事が来ないなどというのがあると、今後使えないなと、そこはちょっと残念なところです。患者さんの利益は大きいのではないかとは思うのですが。

  外部医師をできるだけどんどん入れましょうということでやっております。全体に、やはり県内が圧倒的に多いのですが、参加者数も増えますし、外部施設からも増加しています。今まで既に外部団体は少しはやっていたのです。札幌医大さんほどではないのですが。今回、先ほど札幌医大さんがおっしゃっていた AO というものの、 AO Spine スパインですね、脊椎グループが開催をしたいということと、あとはやはり口腔外科学会、札幌医大の数箇月後で、同じメンバーの方が参加されたりもしていましたが、そちらもやりたいということで、学会希望のものが 2 件ありました。これは全国公募で、募集をかけると 15 分で完売というような盛況ぶりです。

  今後の課題です。やはり外部団体の人、全くの他大学の先生たちが来ても、前日に準備に来ることもできませんし、大体「解剖教室はどこですか」みたいな話になってしまいます。ので、内部の共同で開催する各臨床講座の人たちが準備に奔走するというような形になります。その人たちが、大学院生などを中心に何となく手伝わされているというのが、永続させるにはちょっと問題かなと、やはり思います。学会からの問合せもどんどん増加しており、御遺体は既に千葉大でも不足傾向にありますので、できるだけ多くの大学所で取り組めるようにレールを引いてあげる必要があるのではないかと思っております。

  経費は、先ほどの札幌医大さんもそうでしたが、研修事業費は今年も 250 万ぐらいに減額となっております。昨年ここでも言ったのですが、スコープの破損が 70 万円でした。実は冷凍庫が 2 週間前に壊れまして、今、見積りを出しているところです。こういった修理の希望の金額は突然降って涌いてきますので、非常に予算組みが不安です。あるということで、私たちも、実は参加者からお金を集めているわけではないのですが、クリニカルアナトミーラボというものの運営経費をこのように集めています。参加者数に応じて、主催講座の奨学寄付金から、翌年度に前年度の実績分を頂いています。参加者から徴収するかどうかは、主催講座に一任なので、私たちのラボから見れば、全部、内部の支えてくれている臨床講座の奨学寄付金だけで運営しているという形になります。立ち上げ時は、ガウン、手袋、フルに 1 セットを定価で計算すると 3,500 円ぐらいになりましたので、 1 人当たり 4,000 円分を必要とします。 4,000 円を払ってくれれば、こちらで全部、物品は用意されていますよという形にしてあります。今回は新鮮凍結死体だけではなくて Thiel 法なども導入するということで、施設管理費という名目で 6,000 円を更に上乗せして、 1 1 回参加すると大体 1 万円というのが絶対に必要ですと決めています。それ以外に、それぞれの講座が、機械を借りたり何かをするのであれば、それは純粋に奨学給付寄付金で出していただいてもいいですし、参加者から取ってもいいです。それは皆さんにお任せしますという形でやっています。課題ですが、金額自体、これで普通にやっと運営できるかなというレベルなので、故障などには全く対応がおぼつかないという形になります。

  最初は、せっかくの機会だからたくさんの見学者を呼びましょうという形でやるのですが、教育の密度を上げるために、慣れてきた先生たちは、やはり、一人一人がどれだけできるかということも重要視します。ので、御遺体は多めに、参加者数は抑えて、 1 体当たり 2 人や 3 人で本当はやりたいというような希望が、当然どんどん増えてきています。そうすると、 1 人当たりで運営費を集めさせていただいているという形だと厳しいものが出てくるかなと考えています。参加者数に比例した予算とは別に、献体数に比例した私設施設維持費などの導入を検討する必要があるのではないかと考えています。ちょうど、タイのチェンマイ大学でもこのようなキャダバーラボを、国家予算だったか、大きく運営しているやっている所の先生とお会いする機会がありました。その際に、献体 1 体当たりの値段のようなものは日本では到底受け入れられない感覚なのですが、という話をさせて頂きました。いただいたときに、タイは仏教国であります。すが、あちらも献体は当然無償です。ただ、それを適切に維持して、適切にラボを運営するためにはお金が当然かかるので、それを献体数で計算するというのは当然ではないですかというふうには言われました。そういったものを我々も考えなければいけないのではないかと考えています。

  マンパワーです。最近、新潟大学でも教員の補充凍結というニュースが新聞で出ました。実は本学でも、解剖学教員は既に減員されていまして、解剖学兼任教員が 4 月から 2 人退職で補充なしという形になって、私も 4 月から戦々恐々としています。るのですが。運営交付金経由の大学教員の増加は、もう到底見込めないと思っています。とうとう雇用人まで切られ始めましたので、設備のものなども無理だと考えています。臨床医の教育として、ほかの財源、病院なのか厚生労働省なのか分かりませんが、そういった財源で働く人で、解剖学教室で働く人が必要です。できれば医師者がいいと私は思っています。が、医師が必要ではないかと思っています。あとは、企業等の支援の道筋を定める必要があって、そのときには、営利か非営利かというのを第三者が見て、付かない迷わないようにルールを明確にきれいにしてあげるのが大事ではないかと考えています。ありがとうございました。

○近藤座長 いろいろな課題についてまとめていただきましたが、いかがでしょうか。

○内山委員 非常に分かりやすくて、問題点もクリアで、これからやらなくてはいけないこともかなりはっきり先生方が理解されており、非常に素晴らしいと思います。一番の問題は、基幹講座というか、医学部の基礎講座の基幹に関わること、その教育に大学がどのように対応するのかということです。これが一番大事なことだと思います。先ほども質問しましたが、東北大学に対してもこの点は言えることです。やはり広義の解剖教育に対しての理解をどうやってこれから得ようとするのか。企業化するとか、先生の言った奨学寄付金を各科で整える等の事柄は、今、取りあえずやらなくてはならないからやるのだということで、謂わば経過処置として仕方がないことだと思います。この点を含めてですが、やはり公的なお金を獲得するための方法を一番主に置くということを先生はお考えでしょうか。それとも、今様に外部からお金を取ってやっていくということを基本にするのか。そこをどうお考えですか。

○千葉大学鈴木先生 千葉大学でも、公的なお金でいろいろな事業をというものが、千葉大でも、私もいろいろな所の先生がドンと持ってきて、それでやるのですが、それが 3 年とかで終わった後に、必ずみんな大変な事態が、特に人件費を中心に大変な事態が起きているのです。私は教育とはそんな砂上の楼閣みたいに危ういそういうものではないと思っています。

○内山委員 今言われているお金というのは、国から来る運営交付金です。確かに交付金は減っていますが、その中で、基幹教育に対してどういう働き掛けをこれからしていったらいいのかということです。医学全体としてそれが必要とされるのか、あるいは、もっと臨床の方に、あるいは、臨床に関わる教育以外は要らないのだということでもっと切っていくのかどうかということです。

○千葉大学鈴木先生 今の運営交付金というのは内部のお金だと私は思っていたので、いわゆる外部資金とちょっと勘違いしていました。たのですが、私は本来、この事業は運営交付金で行くべきものだと思っています。これは大学教育の基本のものだと思っています。今、先生の言葉、いろいろな先生からのお話を聞いても、基礎と臨床との教育という 2 つをすごく分けて使う傾向があります。、昔から分かれたようなイメージで、基礎の教育を充実させるとか、臨床の教育を充実させるというのはいっぱいコメントを頂くのですが、私は医者をやってきたみた中では、何かそれは全部 1 つなのではないかと感じています。医者を育てる教育という 1 つのジャンルであって、どうも大学の中でも、もう少しまとめる動きを私自身は見せたいのです。

  今、実際にキャルクリニカルアナトミーラボを始めてから、臨床の先生たちが御遺体を使って、ものすごくうれしそうに解剖の話で盛り上がっています。るのです。これを学生に見せることで、どれだけ私たち医師が人間の体から知りたいことがあるのかと、君たちも一生その気持ちをずっと持ち続けるのだよというのを教育に導入したいのです。、実は今現在、全ての外科が解剖実習まで来てくれて、千葉大の解剖教育を支援してくれています。、私は苦境と思っているかもしれませんが、これはもう一緒なのだと、基礎教育、臨床教育、教育関係なしな分ける必要は無いのだということものを解剖教育の面からまず導入しています。何となく学生の評価は非常に高いので、この試みはいいかなと思っています。なので、どうしても基礎だ臨床だ、文科省だなのか厚労省だなのかみたいな話も出てくるのですが、もう少し、医者を一生育てていくような形で、大学が卒後教育もやる、卒業後も、そういう教育の場なのだという気構えを出せるようにしていきたいと思っていますが、のですが、まだ時間が掛かります。

○近藤座長 この議論は本当に全体的な議論になろうかと思いますので、またもう一度やろうかと思います。先生、どうもありがとうございます。

  次に進みます。時間もかなり押してきたので、よろしくお願いします。

○東京医科大学本間先生 東京医科大学の本間でございます。よろしくお願いします。昨年度の評価会議でも報告させていただきましたが、東京医科大学では人体構造学主導で、より手術手技研修に適し、経済的かつ安全な遺体保存法として、飽和食塩溶液固定法の共同開発を行いました。さらに、この保存法は、外傷手術手技研修のやり易さ等を踏まえた研修で誌上報告しております。

  今年度は、本研修事業に参加した複数科(分野)で、この飽和食塩溶液固定法による遺体を用いての研修を行っています。スライドは脳外科と救急で研修を行った受講生の献体評価アンケートをまとめたものですが、飽和食塩溶液固定法 (SSS ) は、視覚、触覚、研修への有用性ともに、従来のホルマリン固定法に優っているとの結果になっています。

  次に、各分野での研修の実績を報告します。まずは脳神経外科学分野です。ここでは 2 つの研修が行われました。最初に、下垂体ハンズオンセミナーです。対象は脳外科専門医習得前後の医師を考え、学会を通じた公募で受講生を選定しました。セミナーのスケジュールを供覧します。もう一つは、頭蓋底手術を研修する Skull base micro cadaver dissection course です。対象は、後期研修医を含めた医師経験年数 10 年目前後を意識し、学内関連施設への広報により受講生を選定しました。

  コーススケジュールを供覧します。 2 日間コースになっています。スライドは、飽和食塩溶液固定法遺体における手術顕微鏡写真ですが、血管の張りや弾力性も保持されており、血管縫合等の手技も十分に実習可能とのことでした。

  次は麻酔科学分野です。昨年に引き続き「献体による神経ブロックの臨床解剖学的研究会」が行われました。対象はペインクリニック科専門医習得前後を意識し、ペインクリニック普及協会を通じた公募と指導講師による推薦で受講生を選定しました。研究会スケジュールを供覧します。

  次は口腔外科学分野です。今年度より初めての献体研修、「献体によるインプラント骨造成の臨床解剖学的研究会」が開催予定です。対象は後期研修医を含めたインプラント手術を習得しようとする歯科医、口腔外科医とし、学内関連施設への広報により受講生を選定しています。本研修は 2 20 日開催予定となっていますが、研究会スケジュールを供覧します。

  最後に救急・災害医学分野です。まずは、従来から継続して行っている「献体による外傷手術臨床解剖学的研究会」です。これは、後述するアドバンスドコースと区別するために、基礎コースと称させていただきます。本コースのみにはホルマリン固定遺体を使用しています。受講対象も従来どおりで、外科専門医習得前後を意識し、学会を通じた公募と、指導講師による推薦で受講生を選定しました。研究会スケジュールを供覧しますが、これも従来と変更はありません。今年度の参加者概要を供覧しますが、受講者、見学者、スタッフを含め、総計 115 名になる予定です。

  今年度、救急・災害医学分野では、従来の基礎コースの発展型としてのアドバンスドコースを、飽和食塩溶液法固定遺体を用いて開催しました。受講者は、これまで基礎コースを上級グループで受講した者とし、全対象者に e メールにて受講案内を送り、希望者全員を受け入れました。アドバンスドコースの内容は、肋骨固定術、肺切除術、肝切除術、大動脈損傷修復術、骨盤創外固定とガーゼパッキング、そして、基礎コースでも行っていた下腿筋膜切開術です。これらは、かなりの高難易度手術を含んでいます。実習内容の一部を写真で供覧しますが、出血のみは体験できませんが、肝切除術などを教科書的に体験することが可能でした。

  参加者概要を供覧しますが、事前に行った関連手技に関する自己習熟度評価は研修後に有意に上昇し、自由感想欄でもかなりの満足度がうかがえました。

  このアドバンスドコースの受講生は、過去に基礎コースを受講しているので、その臨床実践についても追跡調査しています。これまでは半年後の追跡調査しかできていませんでしたが、今回、 1 年後以上の長期追跡が可能となりました。各種手技が実践され、救命に役立っていましたが、特に印象的だったのが、本来は外傷手術が専門でない消化器外科医が、研修を受けたことによって手技が実践可能になったとの感想を述べている点です。救急外傷患者は、外傷専門医のみでは対応しきれず、こうした、特に地域で頑張っておられる一般(消化器)外科医の先生方に本コースを受講していただく意義は高いと思われました。

  総括です。飽和食塩溶液固定法を用いた各診療科の研修が進み、受講生、講師からは生体に近い実習が可能との高評価を得ています。救急・災害医学分野では、平成 24 25 年度の献体研修受講生を対象に、発展研修を実施。これらの受講生から、既受講研修から 1 年以上たった現在、研修で得た手技が実臨床で生かされているとの効果を追跡確認する ことができました。以上です。ありがとうございました。

○近藤座長 ありがとうございます。何かありますか。

○小林委員 先生の所は、 Acute Care Surgery で特色のある御遺体のトレーニングをやられていると思います。見学者が少なくて、ほとんどが参加者と思います。実務をやる方が多いので余り経費がかからない状態で、遂行しているのではないかと拝察します。 Acute Care Surgery を行う場合に、解剖学教室に対する負担度は、金銭的にはどのくらいでしょうか。補助金が入っている間で、恐らくそれでまかなっていると思うのですが、その点はいかがですか。

○東京医科学本間先生 今までのプレゼンにもありましたように、私たちも、この事業費を得て、いわゆる専任の作業員、具体的に言えば葬儀業者の方と補助作業員の契約を結びました。その方々に事前の準備から後片付け、会場の設営までを手伝ってもらっています。そのことによって、解剖学教室の教員の負担はかなり軽減されていると考えているのですが、やはり、その辺りの負担金が年間で 300 万円前後かかっています。今後、この委託事業費がなくなった場合にどうなるのかということが先ほどからも議論になっていますが、その辺りを踏まえて、今後献体研修が独立したコースになっていく場合には、やはり参加費の徴収ということを、奨学寄付金等の交付も含めて考えていかなければならないかと思っています。

○近藤座長 よろしいでしょうか。また後で議論したいと思います。どうもありがとうございます。

  それでは、次の岡山大学の武田先生、よろしくお願いします。

○岡山大学武田先生 岡山大学の武田です。よろしくお願いします。岡山大学では、 2012 年から 4 年間、この事業に参加させていただいています。毎年大体、この過去 3 年間は 200 名前後が参加しております。今年度は御覧の 7 つの診療科が岡山大学で臨床解剖を行っています。

  まず最初に、これまでに経験した課題と解決策です。 2013 年度は、エコーを解剖体で使用することを目的に、 Thiel 法を行い、解剖前日に 4 10 Lの生理食塩水を輸液しました。こうすることによって、ほぼ生体と変わらないエコー画像を得ることができました。 2014 年度は CT MRI の画像撮影を実習前に行いました。倫理委員会の承認を得た後に撮影を行い、水分量の多い部位、例えば腹部では 1.5 T、少ない部位では 3 Tの MRI 撮影が適していました。また、動脈内、静脈内にシリコンを注入することによって、このような臨床に近い血管の膨みを得ることができております。

  今後の課題です。岡山大学は、 2012 年度は 440 万円交付金を頂き、 2013 年度は 870 万円を頂きました。しかし、 2014 年度は 504 万円となり、今年度は 257 万円となっております。何とか総事業費 500 万円程度を維持するために、昨年度は 150 万円の参加費を、今年は 300 万円の参加費の徴収を目標としております。この参加費が事業に与える影響をまとめましたので御報告したいと思います。

  これは麻酔科のデータですが、 2013 年度、無料のとき、メーリングリストがあり、メーリングリストを流すとあっと言う間に約 1 週間で目標人数の 70 名に達しています。 

それが、 2014 年度、 2 万円徴収すると 35 名ぐらいのところで頭を打ちました。今年度、 3 万円になりました。増額したのですが、 2 万円のときとほぼ同じ人数で一旦頭を打ち、 14 日たったところで 2 回目のメール配信を行うと 60 名に、更に 3 週間後にもう一回メール配信を行って、約 70 名に達しています。このグラフから言えることは、きちんと何回もメールを送って情報を周知すること。そして、募集期間を十分、 1 か月程度保つことによって、何とか有料コースでも運営可能であると考えております。

  参加者の分布を調べてみました。青色が参加費無料のとき、赤色が参加費 3 万円のときです。見ると、有料、無寮にかかわらず、岡山から交通手段が最も簡単な新幹線で乗り換えなしの領域から多くの参加者が来ていることが分かります。北海道と沖縄は飛行機の直行便があって、何名かは来られています。東北地方は岡山からの交通の便が悪く、ほとんど参加者がありません。また、 X 軸は参加者の卒後年数です。右に行くほどベテランです。特に参加費の無料か有料かによって参加者の分布にばらつきはありません。ほとんど同じでした。また、神経ブロックの実際の施行例ですが、 100 例以上行っているベテランが右端、 10 例以下のほとんどビギナーが左端ですが、これも参加費による差は認めませんでした。

  まとめです。岡山大学は参加者数が大体 200 名前後で推移しています。そして、 5 番、 6 番、有料化した場合は、募集の周知と募集期間の確保が必要です。また、有料化は参加者の分布に大きな影響は与えませんでした。有料化とは関係なく、交通アクセスの良い地域から参加者が来られる傾向にありました。以上です。ありがとうございました。

○近藤座長 ありがとうございます。トレーニングに寄与するための処理の工夫をいろいろされているということ。それから、これはなかなか独特の調査だと思うのですが、参加費があるか、なしかで、どのような参加の動機付けになるかというようなことについても調べていただきました。いかがでしょうか。よろしいですか。特になければ、また後で。どうもありがとうございました。

○愛媛大学松田先生 愛媛大学の松田です。よろしくお願いします。本日は、この配布しております広報のために作成した記念誌ですが、これを中心に説明させていただきます。裏表紙に謝辞を入れております。表紙のほうは、大学のスタッフ以外に、このセンターの開所式には白菊会の理事長、副理事長をお呼びしております。白菊会理事長の挨拶の中で、自分は見返りを求めない献体に志願したけれども、ここで手術手技というのが、白菊会自身の子や孫にも直接恩恵が返ってくるということで、思い掛けない喜びであるという有り難いお言葉を言っていただいております。

  現状です。 15 の臨床講座と解剖学講座、すなわち 16 講座と、 6 センターです。 AI センター、人工関節センター等を含めまして、ここの手術手技研修センターの運営委員会が全体を把握しているわけですが、ここが中心になっていろいろなことをやっています。

  昨年は年間 600 名でした。参加者の割合としては、学外の割合のほうが多くなっています。参加者としては、四国以外にも、九州、中国、近畿、関東辺りからも参加者があります。実は、まだ 2 月にも結構大きな、学会に関連するような研修がありますので全部把握はできておりませんが、多分、医師、歯科医師の参加者が 600 名を超えるだろうと思っております。

  ここからは各科の活動内容について説明いたします。全部、 Thiel 法で固定された柔かな御遺体を用いており、こういう所では、内視鏡、腹腔鏡を使ったものが主体です。耳鼻咽喉科、脳神経外科はこういう手術顕微鏡のようなもの、それから内視鏡を使って、かなり大掛かりな研修を行っております。整形外科も人数は非常に多いです。外部講師を招いてやっている所が多いです。眼科も目ではなくて涙道を中心に、外部講師を呼んで一生懸命やっている状況です。これらの大きなものに比べて、産婦人科のほうでは、むしろ女医さんが中心になって、夜中に夜な夜な現われてきては、私は彼女たちをアマゾネスと呼んでいるのですが、そういう人たちが、計 8 回研修を行ってきました。非常に熱心に手術研修をしております。麻酔科は、こういうガイド下のブロックをやっています。歯科・口腔外科が行ったアンケート結果では 9 割以上が「有用」又は「非常に有用」であるという結果が出ています。

  この 2 20 21 日に 2 つの学会との共催で手術手技研修を開催すると言っております。ここでは、学会の方針として 10 万円の参加費を徴収するということなのですが、うちは 5 万までにしてほしいと言っているのですが、学会の方針ということで、そうなるということです。

  これは強調したいところなのですが、総合臨床研修です。研修医の研修に、このシミュレーターを用いて、その後、御遺体で胸腔穿刺、腰痛穿刺などの基本的な手技をやりますと、これは非常に好評で、愛媛は非常に地方ですので、何といっても医師を確保することが最も重要とされています。平成 22 年度は 50 名以下だったのですが、今年は 115 名の卒業生に対して、外の他大学からの希望者も含めて 100 名近くの医師を確保することができたということで、この研修自体が非常に評価されております。

  それ以外に、内科では C アームなどを使ってカテーテルをやったりしています。それ以外に、脳神経外科と耳鼻科、それから脳神経外科と整形外科辺りの関連する所でのジョイントセミナーも盛んにやられております。 AI センターの CT 、それから、 C アームを実習室内で、こういうふうなエリアを引いて、その中では自由に使っていいということで、技官に国家試験を取ってもらい、自由に使えるようにしております。

  最後、将来的な希望として、 daVinci を使ったロボット手術を御遺体でさせてほしいと言われており、「どうぞ」と言っています。ただ、これは高いので、なかなか難しいと考えております。ただ、今年、県の医師会の予算から 1,000 万円ほどの支援がありまして、それのお陰で、こういう本格的な手術の台を 3 つ整備することができました。これにより、中央から著名な方をお呼びして研修を行うというようなことができるようになりました。以上です。ありがとうございます。

○近藤座長 ありがとうございます。いかがでしょうか。では、 1 つだけどうぞ。

○内山委員 先ほどの歯科学会でやる場合に、参加費 10 万円の内訳は分かっているのでしょうか。

○愛媛大学松田先生 内訳は分かりません。これは学会に任せているようなのです。

○内山委員 その内容が、もし営利に関わるようなことがあると、そのことに関してはどのように対応するのでしょうか。

○愛媛大学松田先生 学会ですから営利に関与してはいないとは思うのですが、そこは一応、そのようには申し上げてはおりますが、そこを内部まで見てはおりません。把握はしておりません。

○内山委員 やはり、そこの内容まで関与することが重要なのではないでしょうか。

○愛媛大学松田先生 分かりました。ありがとうございます。

○近藤座長 ありがとうございます。重要なところではないかと思います。先生、どうもありがとうございます。

  最後に、産業医科大学の西澤先生、お願いいたします。

○産業医科大学西澤先生 産業医科大学の脳外科の西澤です。産業医科大学は昨年度に初めて厚生労働省にこの事業に採択していただき、今年が 2 年目になります。現時点における取組と現状について御報告したいと思います。

  事業遂行までの経過です。 11 5 日に厚生労働大臣の名前で交付金が決定したという通知を頂きました。この以前の 5 25 日に採択されているという通知を頂いていますので、この流れの日付けが前後してしまうのですが、外科系の診療科全科に参加の有無を確認し、参加するというところに大学の倫理委員会と利益相反委員会に書類を提出していただきました。実際に事業の計画を立案したのは、昨年の 11 月から 12 月というところです。これは 8 科ですが、脳神経外科、整形外科、耳鼻咽喉科、第 2 外科 ( 呼吸器外科 ) 、泌尿器科、産婦人科、救急医学、第 1 外科 ( 消化器外科 ) です。昨年もこの 8 科だったのですが、ここから参加希望がありましたので、予算の作成と日程の調整を行いました。

  学内で昨年に採択していただきましたときに体制整備を行っていますので、外科手術手技専門委員会、倫理委員会、利益相反委員会、病院長・学長ということで、専門委員会で審査して、それを病院長・学長に報告します。倫理委員会にかけ、及び利益相反委員会から承認していただき、学長に報告するという流れができております。

  これが、今年度の主な事業の内容です。例えば第 2 外科は呼吸器外科の手術の基本と応用編です。整形外科では、関節内視鏡、脊髄外科の手術です。産婦人科では傍大動脈リンパ節という流れになっていると思います。脳神経外科は頭蓋底外科と内視鏡外科ということで、 2 回行う予定としています。

  これが産婦人科が出したブローシャですが、このような感じで研修内容と日にちを出して募っています。これが耳鼻咽喉科が作ったブローシャですが、 3 5 日と 3 6 日の 2 日間で、手術手技実習を行うことにしております。これが第 1 外科、消化器外科ですが、これも第一部と第二部に分かれており、上部消化管、大腸骨盤、肝・胆・膵と分かれています。これは 1 31 日に終わった、救急部で行った研修事業です。学内外から 32 名の方が参加され、このように研修を行っております。

  これが今までの済んだ所なのですが、第 2 外科は計 14 名で、学内 5 名と学外が 9 名、整形外科が 5 名で学外が 10 名、産婦人科は学内が 6 名で学外が 7 名、岐阜からも 2 名いらっしゃっています。救急は多くて 32 名で、福岡の県内者の方が 12 名、県内者の学外の方が 12 名いらっしゃったということです。まだ半分しか済んでおりません。

  このサージカルトレーニングで得られた効果ということで、全ての科でアンケートを取っているのですが、この Thiel 法の素晴らしさというか、実際の手術と同じような感覚でトレーニングを行えるということと、困難な手術アプローチを経験できたので実際の手術に有用だろうということと、非常に特筆すべきかなと思ったのは、実際の手術ではこの操作はできないなと hesitate してしまうようなトレーニングが、このトレーニングで得られたという御意見がありました。それから、若手にいきなり手術はさせられませんので、若手の手術の教育にこのトレーニングは非常に役に立ったということです。

  先ほどから皆様も述べられていますが、事業運用における課題は多くあると思います。特に、予算配分と日程の調整に苦労いたしました。専門委員会が予算配分を調整しているのですが、それと日程調整に苦労しました。今回は、昨年無影灯を購入しておりませんで、腹部外科及び産婦人科、泌尿器科で、全く無影灯のない状況でやっておりましたので、なかなか見えなかったということで、無影灯はレンタルするよりも購入したほうが安いということが分かり、無影灯を購入することになりました。そのお金が少しかかりました。それと、どうしても講師の方をたくさん呼びたいという科があり、そういうところの交通費を含めた謝金というところが大きくかかったということです。

  それから、各科から献体御遺体に対する要求があり、例えば腹部外科だと腹部の手術をしていない、産婦人科だと腹部の手術をしていないということがあるのですが、それに応えるだけの御遺体が必ずしも充足するかというと、それがなかなかそうはいかないというところもありました。

  それから日程ですが、 1 月から 3 月に行わなければいけないといううちの学内の内部事情があります。 12 月の末まで系統解剖の実習が行われていますので、その間は遠慮してほしいということがありましたので、実際には 1 月からトレーニングを開始しました。この 1 月から 3 月なのですが、実際にはこの中にセンター試験、大学の入試、特に保健衛生学部と医学部の入試がありますので、この期間は学外者は学内には入れてはいけないという規定があります。そういう意味で、そこを避けないといけないということで、この 1 月から 3 月で非常にタイトなスケジュールでやらないといけないので、調整に少し苦労したというところです。

  それから、解剖学教室の技官の方に与える御負担が非常に大きくて、学内の規定で、技官には時間外手当が出ないという規則があるのです。これは大分やり取りをしたのですが、どうしても駄目だということで、代休しか駄目だということで、この技官の方は結局ボランティアとして来ていただいているのですが、何とかしてこの技官の方の御負担に応えないといけないと考えております。まだ検討中です。

  今後の課題ですが、予算配分をどうするかということで、今回も産業医科大学は全部無料で行っています。これはどうしても事務が OK してくれませんで、取ったときにそのお金をどのようにしてプールするのか、誰が管理するのかということは、どうしても難しいということがあって、まだまだ内規を作るというところまではいっておりません。不足分を各科で何とか補填するしかないかなとも考えているところです。

  それから日程調整で、この過密スケジュールを本当にどうするか。採択が続けばの話ですが、今後も過密スケジュールが続くと思います。これをどうするか。そのためには、やはり手術手技向上研修事業を行うための場所の確保です。先ほど愛媛の先生がおっしゃいましたが、あのような贅沢なことはとても産業医科大学のような貧乏大学ではできませんで、これを一体どうするかというのが問題になるかなと。

  受講料は今回も取っておりません。これは大学全体の問題として、どこを窓口にして、どこにプールして、その収支決算をどうするのかということが問題になりますので、今回も無料ということにしました。ここも大学の学内で、皆さん非常に重要な事業であるということは認識していただいていて、今後も続けないということは認識していただいています。例えば倫理委員会の外部委員の先生がおっしゃったのですが、その方は法学関係の方でしたが、「そういう事業は是非やってください、是非続けてください。そうでないと、私たちは安心して手術を受けられません」とおっしゃいました。そういう意味で、これを続けていかないといけないと思っているのですが、そういう予算の面でどのようになるのかというのが、まだまだ解決しないといけない問題かなと思っています。

  あと、先ほど申し上げましたが、解剖学教室スタッフ、特に技官の方の負担の軽減をどうするかということは、私たちの今後の課題だと思っております。ありがとうございました。

○近藤座長 個別の質問はいかがですか。

○七戸委員 いわゆるガイドラインに従って新たに立ち上げたのは、多分初めてだと思うのです。ここのほかに発表されている先生方は、以前からされているという施設ばかりだと思います。。

○産業医科大学西澤先生 うちは昨年からです。

○七戸委員 ガイドラインで立ち上げるに当たって、何か問題になったところ、あるいはガイドラインの問題点などについてお気付きの点があれば、教えていただきたいと思います。

○産業医科大学西澤先生 お金の面という意味ではなくて、全体を通してということですか。

○七戸委員 はい。

○産業医科大学西澤先生 全体を通しては特にはございませんでした。私事で申し訳ありませんが、脳神経外科は先行して 7 年ぐらい前から、うちは献体御遺体の会は医聖会というのですが、医聖会の皆様方にその重要性をいつもお話させていただいていましたので、そういうバックグラウンドがありましたので、昨年始めるに当たって、全体的なフローチャートを先ほどお見せしましたが、体制整備をするのは比較的スーッとできたというところはあると思います。

○近藤座長 大分時間が過ぎてしまいましたが、全体的な話合い、今後の課題の解決に向けて、今日報告していただいた方々も交えて、ディスカッションをしたいと思います。

  今の話をいろいろ聞いていると、実際に使う施設と人員は卒前の学生を教育する施設と解剖学教室の皆様の力と場所を使って、卒業した後の医師を教育するという、少し不思議な構図になっているところが、財務的に参加費を取ること、あるいは運営上ですっきりいかないということの 1 つの要因のようになっているようにも思うのです。そこら辺をクリアしていかないといけないのかなと思うですが。大学ですから、解剖学講座 1 つの問題ではなくて、大学全体としてどのようにして、こういう医師の教育というものをしていかなければいけないかということを考えなくては解決できない問題かもしれません。そういうところからして何か御意見があればと思いますが、いかがでしょうか。

○東北大学北田先生 東北大の北田です。先ほどから、内山先生が何度も発言されていらっしゃるように、解剖学教室が関与する意味というのは、私自身は大きく分けて 2 つあるのではないかと考えています。

1 つは、御遺体あるいは御遺族の尊厳を守ることです。これは解剖学に所属する人間でないと理解が難しい部分があります。例えば研修に使うハンドアウトですが、これに写真が出ています。患者さんの写真を出すときには、目に黒いラインを入れたりするのですが、御遺体の場合はそのまま出すことがあり、これは尊厳という意味でいうと私たちは同じような扱いをしてほしいと思っている部分があります。尊厳を守りたいというのが 1 つ目の点です。

  もう1つは、費用の部分です。献体していただくに当たって、これは全くの無償の行為ですので、営利団体にお金が渡るようなことはあってはならないということです。内山先生からも御指摘があったとおりで、参加費を取るのであれば、お金の流れはどうなるのかをはっきりさせるべきであろうと思っております。私たちも内規を決めるに当たって、なるべく企業からの献金はできるだけ排したいと思っています。というのは、やはり営利団体とのはっきりとした壁というか、区分というか、これをきちんとすることで篤志献体の会に関与する方々への説明も付くだろうと思っております。ですので、確かに解剖学教室の負担というのは金銭面、労務等とあるわけですが、やはり解剖学教室の人間が関与すべきところは関与していくべきだろうと思います。

  運営に係る費用については、医学部というよりは卒後教育、生涯教育に当たる部分ですので、病院等から何かお金を苦面していただくような流れがあると、やりやすくなる部分も大きいのではないかと思います。その上で、必要であれば参加費を取っていく。私たちはそれについて、お金の流れを明確にして、問合せがあればきちんと示せるような内規を作りたいと考えています。今回の私たちはテストケースと考えておりますので、そこで得た知見等を開示して、ほかの大学がやりたいとなれば、こういったことを参考にしていただければと考えている次第です。

○内山委員 先生の御発言は素晴らしいと思うのですが、先ほどの岡山の話で、お金がこれだけ足りないから 200 万円を参加費として取った。次に 300 万円足りないから 300 万円取ったという、機械的に割り切れるものなのでしょうか。将来を見据えて考えると、どうやって不足分を苦面するのか、岡山大学医学部ではこの問題をどのように解決していくべきか、そこまで考えておられるのであれば、お聞かせください。

○岡山大学大塚先生 「機械的に」というよりは、必要に迫られてというところのほうが大きいと思います。今回は補助金の額が 270 万ということだったので、それで全体の事業そのものを縮小するわけにもいきません。一方で、事業規模をそれだけ維持するためには一定の金額はかかるわけです。それは御遺体を収集して、それからいろいろな処理をする部分で使わせていただいている解剖体経費というのが研究科全体にありますが、それはそれとして、実際に使っているわけです。この事業の中でも見えないものとして使われているわけです。

  一方で、 Thiel 固定法などの試薬であるとか、そういうものは補填できるわけですが、そういうものは見えない形で支出されているわけです。もちろん、遺体収集に当たった技術職員の人件費なども、見えない形で使われているわけです。

  そういうかかる事業費の消耗品であるとか、そういうものをどうやって捻出していくのかということになって、それから外部講師を招いたときの講師謝金をどうやって賄っていくのか、そこのところを受益者の方々から一定金額は頂くしか方法がないというのが、今の実情です。

  これは全体的な医師の教育であると考えて、それで公的なお金で賄っていただけるのであれば、そのほうがはるかにいいというのは分かりきっている話ですが、一方、外国にどこかの企業の招待でセットで行かれる、そしてどういう由来の御遺体か分からないような御遺体での研修を受けてくるということも耳にはするのですが、それは我が国が医師を育てていくというところで、いいのか悪いのかという原点に立って、この事業を考えていかなければならないと私は思っています。

○内山委員 大学としても厚労省に働き掛けていきたいと。

○岡山大学大塚先生 是非。

○小林委員 御発表いただいた先生方の真摯な態度で、ここまでこの事業が大きく発展していることに大変感銘を受けました。しかし、現状は、解剖学教室の負担度が、今は善意で動いていることが、補助金が今後どうなるかによって非常に大きな起点になっていると感じます。

  一方、愛媛の医師会の寄付の例は大変感銘しました。団体からの寄付行為に関して学会なりでオーソライズして行くべきかと思います。例えば公取法です。「団体性」、「公益性」、 3 つ目が非常に難しいと思いますが、「通常の医療業務との関連」、これで寄付行為が決まるらしいのですが、その判断が非常に難しくなってくるところがここの事業にあると思います。やはり高度な機械など、いろいろなものを使うときにこの問題をどこかで解決しないといけないと感じました。

  もう 1 点は、窓口となる解剖学教室と外科系の臨床教室が、どうコミットメントしていくかという、一番根幹に関わることです。この事業は厚労省がお金を出しているのですが、大学教育のカリキュラムとするには、文科省にも土俵に乗っていただく必要があります。大学の幹講座である解剖学教室と各外科系の教室が、医師の手術手技の安全性確保を含めこれだけいい仕事をしていますので社会に訴えて行く必要を感じます。先生方にお願いなのですが、素晴らしい研究成果、事業成果だと思うので、是非専門の学会で PR していただきたいと思います。日本外科学会では、補助金をもらっていない所も報告書をどんどん出してきています。私どもはその報告書を拝見してコメントを書く仕事をしていまして、補助金のない所も相当の数が出始めています。先生方の事業の成果のインパクト度は各学会を通じて徐々に浸透していると思うので、是非その点をお願いしたいと思います。

○千葉大学鈴木先生 千葉大の鈴木です。この前、文科省に伺って少し聞いてみました。乗り込んでみたのですが、こういう取組に医学部としてもう少し何か予算づけなどできないでしょうかのかというようなことを聞いたのです。が、私は知りませんでしたが既に附属病院などでの臨床教育にわずかですが予算が割り当ててあるようなのです。微々たる量らしいのですが、何かあると。そしてそれは現時点で当然使われてしまっているので、そこから振り分ける取るというのは多分不可能ではないかと思います。なのですが、唯一のチャンスとしては、コアカリキュラムにこれが必要というような形になるのであれば、というようなニュアンスのことだけは言われたのですが、学生でなく医師者の教育という点で、「うーん」といって長い沈黙で終わってしまったというところがあります。文科省も、なかなか難しいという感じでした。報告です。

○近藤座長 卒前教育の枠からなかなか出られないのですかね。

○内山委員 鈴木先生の今のお話は非常に重要で、コアカリキュラムに医学教育の根幹である実習の必要性に関する記載が、恐らくないと思うのです。だから、それがとんでもないことを起こす可能性が、これから出てきます。この点については臨床の方からも、解剖実習だけではなく、他の実習でも、これらの実習はコアカリの基幹の 1 つであり、そこに入れておかないと補助金の担保がなくなる可能性があるので、その点について働き掛けてほしいと思います。

○東京医科大学林先生 御礼を兼ねて一言だけお伝えしたいのですが、私ども東京医科大学はサージカルトレーニングをやっていく中で最もアカデミックなパブリッシュメントや広報活動をできている大学の一つと自負していますが、それはひとえにこの事業のお陰だと思っております。

  私から見ると、正直この事業はグラントであり、この事業がなかったら私は今のように土日に出勤し、御遺体を出し、皆さんと一緒に献花納棺をできているか。するしかないのですが、それを自分が主体的にできるかというと、実はとても自分に自信がないです。それでいうと、私以外教室員にもこれを求められるのは、この事業があるからだなと本当に思っています。なので、是非解剖学の教室に対してのインセンティブを考えていただきたいと思います。負担するという発想をしていると、やらない大学は「無理なところは無理」、やる大学は「無理でも頑張る」という発想にしかならないと思います。本学も実習期間が長いとか、御遺体数が厳しいといった問題があるという話を去年もいたしましたが、その中でもやっていこうと思えるのは、やはりインセンティブがあるからだということだけはお伝えしたいと思います。

○産業医科大学西澤先生 産業医科大学の西澤です。先ほどお述べになった解剖学教室のインセンティブは非常に重要なことだと思うのですが、ドクターの場合と技官の方の場合では、インセンティブの持ち方が大分違うのではないかという気がするのです。特に技官の方の場合は、自分が Thiel 法で固定して、実際に皆さんがサージカルトレーニングをやって、その御遺体をお片付けするということに対する、それは非常に重要な仕事であるという感覚というのをずっと持ち続けることができるのかどうかというのが、少し疑問に思うのですが、その辺はいかがでしょうか。

○近藤座長 いかがですか。

○松村委員 技官もそれなりにプライドをもってやっておりますので、その辺は特に問題はないと思うのですが、如何せん技官の数が足りません。恐らくほとんどの大学が 1 人ないし 2 人で切り回しています。結局、時間に追われてしまっている状態が続いています。

  先ほど来、経済的な問題というのはもちろん大きな問題としてあるのですが、もう一つは、最近御承知のように献体数、献体登録希望者というのは、平成に入ってから急激に増えてきました。それは確かにそうですし、それを献体数が多すぎるからといって、受け入れられないからといって献体登録を削減していた時代がずっと続いておりました。この外科研修が始まりましてから、外科研修における遺体の必要数が急激に上がってきました。これは各大学とも、この事業に参加している参加していないにかかわらず、上がってきていると思います。

  ただ、両方が上がってきているのですが、その間の管理運営する技官の数が極端に少ないので、ボトルネックのような状態になっています。

  受け入れてあげて、献体者の希望どおり、外科研修も含めていろいろなことに活用してあげたいという気持ちは、技官も我々解剖学教室の者も持っておりますが、如何せんそれを受け入れるだけの余地がないというのが、現在の実情だと思います。

  ですから、次々といろいろな方法を用いて、いろいろな先生方が新しい手技を開発することに対して、なかなかそれに協力できるだけの余裕が今の管理している解剖学教室にはないというのが実際のところだと思います。それを解決しないと、恐らくお金を出したから済むという問題ではないのだろうと考えています。

○東京医科大学林先生 事例として御紹介したいのですが、当教室の助手(技術職員)の一人は科研費を取得しています。それはサージカルトレーニングに適した御遺体を開発するという科研費です。今年、修士を取りまして、これから社会人大学院生として学位取得に向けて頑張っていこうというところです。そういう形のインセンティブもあり得るということをお伝えしておきます。

○七戸委員 七戸です。研究費や科研費の話が先ほどからありますが、今回のこういう事業が当たらない大学でも、始めなければいけないという現状がありまして、手術手技というのはどんどん高度化していますので、これには対応していかなければいけないと思います。

  その中で、参加費が無料であるというのは、在り方としては発展性がないと。何らかの形で外部資金が入るような仕組みを作っていかないと、このサージカルトレーニング自体が先細っていく、事業費が下がっていくのと同時に先細っていくというのがありますので、是非ともうまいシステムを先生方に作っていただいて、それを後から続く各大学が倣えるものがあればいいかなと考えておりますが、是非ともよろしくお願いいたします。

○松村委員 今、七戸先生がおっしゃったように、参加費は今後のことを考えると取らないでいることは難しいと思います。ただ、私どもの私立大学で言いますと、同族企業みたいなところがありますので、理事会が大きな権限を持っているわけです。理事会側から言わせれば、遺体で金儲けをしているように思われたくないという面があります。ですから、参加費は原則として取るなという方向も打ち出されます。

  ただ、これは参加費を取らなければ、費用、実費、その他も捻出できないというのが現状ですので、 1 つ考えられることは、やはり主催者若しくは大学が責任をもって、その経理を管理するという前提で行わないと、不透明性が出てくる危険性があると思います。例えば、あるマネジメント会社とか、学会のマネジメント部門が、大学とは独立した形で経理を行ってしまうと、大学の経理責任と別個になってしまいますので、そこに不透明性が出てくる危険があります。その辺を注意することで参加費を取るということを解消できるのではないかと思うのですが、いかがでしょうか。

○東北大学北田先生 平成 24 年にこの事業に参加させていただいて、今まで本当に有り難かったわけなのですが、その中で東北大学では整形外科が NPO を持っていまして、学会等を主催するときには NPO が主催あるいは共催という形で行っています。

 そういったものを参考に、 NPO でできないものかといろいろと模索したのですが、大学の事務から、松村先生が御指摘のような同じような御意見があり、 NPO になると基本的には大学の目の届かないところでの事務処理になるので、それは駄目だということになりました。やはり会社等、あるいは NPO も含めて、外部に事務系統、お金の流れを委託するということは難しいというか、なるべくすべきではないと考えております。少なくとも東北大学においては、そういったものを全て排して、お金の流れが全てクリアになるような形で今後内規を決めて、各大学にはいろいろな経理等ができるような大学はあると思うのですが、非常に厳しい所でも、こういう形であれば可能だろうというようなシステム作りをして、他大学がこれから行うというときの参考にできればと思っています。

○内山委員 一番最初の名市大からの発言にありましたが、企業化ということで昔から NPO の話が出ているわけですが、札幌医大も以前にはそのようなお話がありました。北田先生が言われたように、大学でこの事業を進めるに当たって、経理の風通しのよさということを根底に置いた上で、事業化を図るというところが、これからも肝心なのではないかと思います。○近藤座長 いろいろ御意見があろうかと思いますが、大分時間も過ぎておりますが、この際に 1 点言っておきたいということがありましたら。

○東京医科大学本間先生 東京医大の本間です。参加費に関して、別の観点から 1 つ報告申し上げます。いわゆる会を成り立たせる意味の経営的な問題からの参加費という点の他、受講生をセレクトするという意味合いにおいても参加費を取ることに関しては意義があるのではないかと思います。先ほど岡山大学の報告でありましたように、参加費を上げることによって、受講生の応募が減ったというのもありました。私は昨年度のこの評価会議で、受講生のセレクト・受講資格ということに関して小林先生から評価いただいて、その辺のことに関してはかなりこだわっているつもりなのです。今、私たちは、受講生は無料ということで受け入れているのですが、中には上司から「行ってこいや」という感じで、ただ応募しただけというような受講生も結構いるのです。そういった、あからさまに「これは違うな」という者は受け入れていないのですが、自分でお金を払って、しっかりと勉強するのだという意識を持って来てもらうということも、 1 つ参加費を取ることの意義があるのではないかと思います。もちろん、お金を払うから何をやってもいいのだとなられても困るのですが、一言付け加えさせてもらいます。

○近藤座長 ほぼ議論の焦点が、毎年そうかもしれませんが、お金の負担ということに集約されますね。ただ、いろいろ今回お話を聞いていますと、 1 回目、 2 回目、 3 回目と、だんだんそれぞれの大学での仕組み、こういった事業を実施するための仕組みが非常にきちんとできてきて、分かりやすくなってきていると思いました。

  一番最初にも話しましたが、これは実際は卒業してしまった医師の教育、生涯教育とも言うべきでしょうか、それに関わることです。最近の医師の教育を見ればシミュレーターを使ったトレーニング、動物を使ったトレーニング、それから遺体を使った医療技術のトレーニング、この 3 つは本当に今後欠かせない、医師の育成、医療安全にとっては欠かせないことだろうと思うのです。そういう意味では、単に遺体を使ったトレーニングシステムをどうしようかということにとどまらず、大学全体として、あるいは医学部と医学部の付属病院と言いますか、そういったものが一緒になって総合的なシステムを作るというぐらいにしていかないと、なかなか自立してというか、経理的にも自立してやっていくようなことは難しいのかなとも思いました。そういったことも、今後いろいろ検討して、いい仕組みというものを考えて、あるいはモデルケースみたいなものを作って、補助金を受けている以外の施設にも拡大していけるようにできればと思います。

  不手際で大分時間をオーバーしてしまいましたが、本日の議論の結果をまとめて、報告書として皆様にお返ししたいと思います。また、今後、これからも厚労省の努力により補助金事業は継続するのではないかと期待しております。この仕組みは本当に大事な仕組みだと思いますので、大変な時期はまだ続くかと思いますが、皆様の御尽力を是非お願いしたいと思います。よろしければ、これで本日の評価会議を終わりにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

  それでは、今日はどうもありがとうございました。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 実践的な手術手技向上研修事業に関する評価会議(2016年2月16日)

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