ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(指定薬物部会)> 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録(2015年11月24日)
2015年11月24日 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録
○日時
平成27年11月24日(火)16:00~
○場所
厚生労働省専用第14会議室
○出席者
出席委員(9名)五十音順
石郷岡 純、 遠 藤 容 子、 桐 井 義 則、◎鈴 木 勉、 |
関 野 祐 子、 曽 良 一 郎、 成 瀬 暢 也、 花 尻 瑠 理、 |
宮 田 直 樹 |
(注)◎部会長 ○部会長代理 |
欠席委員(2名)五十音順
妹 尾 栄 一、○和 田 清 |
行政機関出席者
木 下 勝 美 (監視指導室長) |
他 |
○議事
○監視指導室長 「薬事・食品衛生審議会平成27年度第8回指定薬物部会」を開催させていただきます。本日は大変お忙しい中、委員の先生方には御出席を賜り、誠にありがとうございます。
本日は、妹尾委員、和田委員から御欠席の連絡を頂いております。成瀬委員は少々遅れられるということです。現在のところ、当部会の委員数11名のうち、8名の御出席を頂いておりますので、定足数に達していることを御報告いたします。
本部会の公開・非公開の取扱いについては、総会における議論の結果、会議を公開することにより、委員の自由な発言が制限され、公正かつ中立な審議に著しい支障を及ぼす恐れがあると判断されたことから、非公開とされています。また、会議の議事録の公開については、発言者氏名を公にすることで、発言者等に対して外部からの圧力や干渉、危害が及ぶ恐れが生じることから、発言者氏名を除いた議事録を公開することとされておりますので、あらかじめ御了承いただきたいと存じます。
それでは、以後の議事進行は鈴木部会長にお願いいたします。
○鈴木部会長 最初に事務局より資料の確認をお願いいたします。
○事務局 資料1、資料1-2、資料2、参考文献は1~13、参考資料が1~3です。以上です。
○鈴木部会長 資料がお手元にない場合には、お知らせ願います。よろしいでしょうか。
本日の議題は、「指定薬物の指定について」です。審議物質について、事務局より説明をお願いします。
○事務局 今回御審議いただきたい物質については、国内外で流通実態が認められた物質です。資料1には、各物質の名称、通称名、構造式が1~8まで、それぞれ記載しております。これらの物質について指定薬物として指定し、規制対象とする必要があるか否かについて、御審議いただきたいと思っております。資料1-2は御審議いただく物質のほか、構造が類似する指定薬物や麻薬などについて一覧表にまとめたものです。資料2は、国内外の基礎研究や動物実験の結果等について、物質ごとに中枢神経系への影響を中心に取りまとめたものです。
資料1-2を説明させていただきます。詳細は資料2を用いて御説明いたしますが、資料1-2に審議物質及び構造が類似する物質の概要を取りまとめていますので、御説明いたします。1ページに、審議物質1.AB-FUBINACA 2-fluorobenzyl isomer、審議物質2.FUB-JWH-018、構造が類似する指定薬物、麻薬であるJWH-018の症状観察結果、自発運動量への影響、カンナビロイド受容体活性のデータをまとめております。審議物質1.及び審議物質2.は、カンナビ受容体に活性を有し、抑制の作用を有する物質と考えております。
2ページに、審議物質3.の5-MAPDB、構造が類似する指定薬物の症状観察の結果、自発運動量への影響、セロトニン受容体活性、モノアミントランスポーター阻害、マイクロダイアリシス試験によるモノアミン量の変化のデータを取りまとめております。審議物質は、セロトニン受容体活性やモノアミントランスポーター阻害は弱いものの、モノアミン遊離促進作用を有し、興奮の作用を有する物質であると考えております。
3ページに、審議物質4.の4-FBF、指定薬物であるAcetylfentanyl、麻薬であるFentanylの症状観察結果、自発運動量への影響、オピオイド受容体活性、マイクロダイアリシス試験によるモノアミン量の変化のデータを取りまとめております。審議物質は、オピオイド受容体活性やモノアミン遊離促進により、興奮や抑制の作用を有する物質であると考えております。
資料2-1を説明いたします。通称AB-FUBINACA 2-fluorobenzyl isomerです。指定薬物であるAB-FUBINACA等と構造が類似する化合物です。マウスに被験物質のS体又はR体を0.2mg/kg、1.0mg/kg、5.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、1時間、2時間の行動・中枢神経症状の観察を行った結果を2ページにまとめています。表1がS体の結果で、表2がR体の結果です。なお、被験物質は1.0mg/kg及び5.0mg/kgの投与液調整の際に結晶が析出したため、用量依存性が確認できなかったことから、定性的な評価結果となっております。
S体では洗顔運動の抑制、外界反応の弱い抑制、触反応の弱い抑制、痛反応の弱い抑制、払いのけ動作の弱い抑制等が認められたほか、スニッフィング及び掻痒感様症状が観察されております。R体では、S体の場合と同様に、洗顔運動の弱い抑制、外界反応の弱い抑制などが認められたほか、スニッフィング、掻痒感様症状、上体を起こして背を丸めて体を縮める異常姿勢等が観察されております。
続いて、3ページ、4ページに、S体又はR体を1.0mg/kg腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定した結果を示しております。S体及びR体ともに、総運動量、1回の移動距離が3cm以上の大きな運動量、立ち上がり回数及び総移動距離は対照群と比べて有意な差は認められませんでした。
5ページに、ヒトカンナビノイド受容体(CB1及びCB2)に対するアゴニスト活性EC50を測定した結果を示しております。S体のCB1受容体の値が2.92×10の-9乗、CB2受容体の値が2.44×10の-9乗で、R体のCB1受容体の値が1.41×10の-8乗、CB2受容体の値が6.27×10の-10乗となっております。他の文献に、麻薬であるJWH-018のCB1受容体及びCB2受容体に対する親和性等の知見がありましたので、参考として下の表に示しています。JWH-018では、CB1受容体のEC50の値は1.47×10の-8乗となっております。その他、海外における流通状況については、2014年にラトビアで流通が確認されております。これらの結果から、AB-FUBINACA 2-fluorobenzyl isomerはカンナビノイド受容体に活性を有し、抑制の作用を有する物質と考えております。
資料2-2を説明いたします。通称FUB-JWH-018ですが、麻薬であるJWH-018などと構造が類似する化合物です。マウスにFUB-JWH-018を0.2mg/kg、1.0mg/kg、5.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後30分、1時間、2時間の行動・中枢神経症状の観察結果を7ページにまとめております。
洗顔運動の抑制、自発運動の抑制、筋緊張度の抑制が用量依存的に認められたのに加え、腹這い姿勢で動かない、動きが鈍い、ケージ壁に寄り掛かる異常姿勢等の様子が観察されております。
続いて、自発運動量の測定結果です。8ページに、1.0mg/kgを腹腔内投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量の測定結果を示しています。総運動量は、投与後20分から40分で対照群と比べて減少傾向にあり、特に30分で有意な差を示しています。1回の運動量が3cm以上の大きな運動量は、投与後20分から40分で対照群と比べて減少傾向にあり、特に30分では有意な差を示しています。立ち上がり回数は、投与後30分から50分で対照群と比べて減少傾向にありますが、有意な差は確認されませんでした。総移動距離は、投与後20分から40分で対照群と比べて減少傾向にあり、特に30分では有意な差を示しております。なお、固体ごとの経時的パターンが著しく異なり、中間部で鎮静化し、後半に目覚めて活発に活動する個体が認められたため、ばらつきの多い結果となっております。
9ページに、ヒトカンナビノイド受容体(CB1及びCB2)に対するアゴニスト活性EC50を測定した結果を示しております。FUB-JWH-018のCB1受容体の値が2.82×10の-8乗、CB2受容体の値が1.22×10の-7乗となっております。他の文献に、麻薬であるJWH-018のカンナビノイド受容体に対する親和性の知見がありましたので、参考として表に示しています。JWH-018では、CB1受容体のEC50値は1.47×10の-8乗となっております。その他、海外における流通状況については、2015年にフランスにおいて流通が確認されております。これらの結果からFUB-JWH-018はカンナビノイド受容体に活性を有し、抑制の作用も有する物質であると考えております。
資料2-3を説明いたします。通称5-MAPDBです。指定薬物である6-ABDBなどと構造が類似する化合物です。マウスに5-MAPDBを2.0mg/kg、20mg/kg、100mg/kgを経口投与し、投与後30分、1時間、2時間の行動・中枢神経症状を観察した結果を11ページにまとめております。2.0mg/kgの投与群では、対照群と比べて目立った変化はありませんでしたが、20mg/kg投与群では、洗顔運動の抑制等が認められたほか、姿勢が傾いたり腹這いになるなどの異常姿勢が観察されております。100mg/kg投与群では、攻撃性の亢進、洗顔運動の亢進や抑制、触反応の亢進、耳介反射の亢進、角膜反射の亢進、払いのけ動作の亢進、懸垂力の抑制などが認められたほか、鼻から胸部に至る流涎による汚れ、腹這い姿勢などが観察されております。また、100mg/kg投与群では、5匹のマウスのうち1匹が投与20分後に死亡しております。
運動活性の影響については、20mg/kgを経口投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定した結果を12ページに示しています。総運動量は、投与後50分~70分と100分~150分で、対照群と比べて増加傾向にあり、特に60分~70分及び120分及び150分では、有意な差を示しております。1回の運動が3cm以上の大きな運動量は投与後50分~70分、100分~150分で対照群と比べて増加傾向にあり、特に60分~70分、120分では有意な差を示しています。立ち上がり回数は投与後100分~150分で対照群と比べて多い傾向にあり、特に100分及び120分では有意な差を示しております。総移動距離は、投与後50分~70分と100分~150分で、対照群と比べて多い傾向にあり、特に60分~70分、120分及び150分では、有意な差を示しています。
続いて、モノアミントランスポーター阻害作用について検討した結果を表に示しております。5-MAPDBのドパミンに対するIC50が1.0×10の-4乗を上回る結果となっており、セロトニンに対するIC50が8.9×10の-6乗となっております。陽性対照物質であるコカインのドパミンに対するIC50が3.3×10の-7乗、セロトニンに対するIC50が9.2×10の-7乗となっております。
13ページにマイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化の結果を示しています。実線が5-MAPDB、点線に丸印が麻薬であるMDMA、点線にバツ印が蒸留水の結果です。5-MAPDBの投与後、セロトニン、ノルアドレナリンが投与後から180分後の測定終了まで有意に増加することが確認されております。ドパミンは投与後140分まで有意に増加することが確認されております。
14ページにセロトニン受容体(5-HT2A及び5-HT2C)に対するアゴニスト活性、EC50を測定した結果を示しています。5-MAPDBの5-HT2A受容体のEC50が1.0×10の-5乗を上回る結果で、5-HT2C受容体のEC50が4.41×10の-6乗となっております。これらの結果から、5-MAPDBはモノアミン遊離促進により興奮の作用を有する物質と考えております。
資料2-4を説明いたします。通称4-FBFですが、指定薬物であるAcetylfentanyl等と構造が類似する化合物です。こちらの物質名ですが、一部誤りがありましたので、正式な名称を読み上げさせていただきます。N-(4-フルオロフェニル)-N-[1-(2-フェネチル)ピペリジン-4-イル]ブタナミドとなります。こちらの名前が正しい名前ですので、御修正をお願いします。
続いて、中枢神経系への作用について説明いたします。マウスに4-FBFを2.0mg/kg、20mg/kg、100mg/kgを経口投与し、投与後30分、1時間、2時間の行動・中枢神経症状の観察結果を16ページにまとめています。
攻撃性の弱い亢進、反復動作の亢進、洗顔運動の抑制、痛反応の亢進や抑制、挙尾反応の亢進、耳介反射の亢進や抑制、角膜反射の亢進や抑制、払いのけ動作の弱い亢進や抑制などが認められたほか、体が傾く異常姿勢、立ち上がると不安定に倒れる様子、腹這い姿勢でのケージ壁に寄り掛かった左旋回歩行などが観察されております。
自発運動の測定結果については、17ページに20mg/kgを経口投与し、投与後3時間までの10分ごとの自発運動量を測定した結果を示しております。総運動量は、投与後10分~70分で対照群と比べて多い傾向にあり、特に10分~30分及び70分では有意な差を示しております。大きい運動量についても、投与後10分~70分で対照群と比べて多い傾向にあり、特に10分~20分及び70分では有意な差を示しております。立ち上がり回数は、投与後40分~70分と、100分~120分で、対照群と比べて多い傾向にあり、特に70分及び100分では有意な差を示しております。総移動距離については、投与後10分~70分で対照群と比べて多い傾向があり、特に10分~30分及び70分では有意な差を示しております。
18ページに、マイクロダイアリシス試験によるモノアミンの経時変化の結果を示しています。4-FBFの投与後、セロトニン、ノルアドレナリンが投与後から測定終了(投与3時間後)まで有意に増加することが確認されています。ドパミンについては投与後100分まで有意に増加することが確認されております。
19ページに、オピオイド受容体(ミュー及びカッパ)に対するアゴニスト活性EC50を測定した結果を示しております。4-FBFのミュー受容体のEC50が5.72×10の-9乗、カッパ受容体のEC50が1×10の-5乗を上回る結果となっております。
他の文献に麻薬であるFentanyl等のオピオイド受容体に対する活性の知見がありましたので、参考として表に示しております。Fentanylでは、ミュー受容体のEC50値が2.88×10の-8乗、カッパ受容体のEC50値が2.91×10の-7乗、デルタ受容体のEC50値が7.90×10の-7乗となっております。そのほか、海外における流通状況については、2014年にポーランドにおいて流通が確認されております。これらの結果から、4-FBFは中枢神経に作用し、興奮や抑制を示す物質であると考えております。
以上の4物質につきまして、指定薬物として差し支えないと考えますが、よろしく御審議のほどお願いいたします。
○鈴木部会長 事務局より説明のありました4物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。□□先生から、流通実態はいかがですか。
○□□委員 □□□□での分析調査の結果ですが、御説明のありました4物質のうち5-MAPDBに関しては、粉末及び液体の状態の製品中から検出しております。
○鈴木部会長 御意見はいかがでしょうか。
○□□委員 12ページの総運動量の所(Fig.4)です。通常は、controlではと、時間が経つにつれて鎮静化していくのだけれども、その鎮静化が見られなかったという表現なのか、増加したという表現なのかということです。私どもですと、だんだんおとなしくなっていくという現象が見られなかったと、薬理的には表現することがあるのですが、これを増加としていいかどうか。表現の問題なので。事実と、表現ではないので大きな問題ではないのですが、どちらの方が正確かというところで御意見を伺いたいと思いました。
○鈴木部会長 事務局からお願いいたします。
○□□委員 ほかの委員の方の御意見でも構わないのですが。
○鈴木部会長 ほかの委員の先生方から御意見をお願いしても結構です。今の物質は、12ページの2-3の物質ですね。
○□□委員 そうです。
○鈴木部会長 そこの運動量。
○□□委員 そうです。突出してどこかだけが大きく出ていれば、増加したでもいいと思うのですが、全体として50分以降、全体的に有意差が付いているということで、通常見られるような、おとなしくなっていく、運動量が減っていくという現象が見られないと判断できるのかと、この場合は。全体に全部上に上がっているのでということで、どこかだけが増加したというわけではないので、そこの表現の問題なのですが、どちらを取るか。
○鈴木部会長 文章として、問題は、11ページの方の(2)の3行目、4行目ですか。
○□□委員 「増加した」という言葉が出てきたのは、「多い傾向」とありまして。
○鈴木部会長 「多い」と書いてありますね。
○□□委員 「多い」というのは間違いではないので。
○鈴木部会長 「対照群に比べて多い傾向にある」と。
○事務局 私が説明の際に「増加」という用語を使わせていただいているので、先生がおっしゃるとおり、そこの行動が増加なのか、落ち着いていくところが落ち着かなくて動いているような状態なのかというところについては。
○事務局 □□先生の御発言で御異存がなければ、私どもの説明のときに「増加」という表現をしたのですが、全体として落ちていく中での有意差がキープされた状態で落ちているようなニュアンスで、こちらが「増加」と説明してしまいましたが、対照群と比べて多い傾向だと、要は見た目のそのままで、書いてある文章のとおりという理解に落とさせていただこうかと思います。
○□□委員 分かりました。
○鈴木部会長 では、11ページの記載どおりということですね。
○事務局 はい。
○鈴木部会長 ほかにいかがですか。
○□□委員 確認です。資料2-1で、作用についてはR体とS体とをそれぞれ評価されていて、定義の方では両方の異性体が含まれるような形の化学名と構造式を書いています。この委員会の考えとしては、これはR体もS体も同等に作用があると判断して、一括して指定するという解釈でいいのでしょうか。
○事務局 その解釈で結構です。そこをどこまで厳密にやるかということもあるかと思うのですが、この規制の全体の流れを見ていきますと、例えば包括指定方式などで見ていったときに、こういった興奮毒性であったり、抑制系であったり、こういったものを一つ一つ見ているわけではなくて、「十把一絡げ」という表現はよくないかもしれませんが、がっぽりと評価していくことを考えますと、しかもこれは実際に流通しているものがピュアで、プラスマイナスでいっているものもあればそうでないものもあります。もともとの原料がプラスマイナスのラセミ体ですと、最後にラセミ体が出来上がってくる可能性もありますし、そういった意味では、規制上はプラスマイナスの片方で引っ掛かったものについては両方のものとしてみなして評価した方が規制全体としてのバランスはよろしいかと思います。規制の仕方が荒っぽいのはよく分かるのですが。
○□□委員 了解いたしました。それで二つお聞きしたいのですが、一つは、実際に流通しているものは、R体なのかS体なのか、それとも混ざっているのでしょうか。その辺の情報はお持ちでしょうか。
○鈴木部会長 事務局からお願いします。
○□□委員 これは非天然のアミノ酸なのですが、合成品が出回っているから、両方混じっているのかと想像はしているのですが。手元に資料がなければ結構です。
2番目に、参考までに伺うのですが、同じ厚労省の中の医薬品の構造式の表記法を参考に御説明しますと、この形の表現では立体配置が分かっていない。「分かっていない」というのはどういう意味かというと、R体100%かもしれないし、S体100%かもしれないし、ラセミ体の1対1かもしれないし、場合によっては片方が多くて片方が少なくてもいい、つまりR体とS体の比率に関しては0から100まで拘らないという意味で全てが包含されるので、指定薬物の構造の書き方あるいは化学名の書き方としては、それが一番広く包括できるので、いいのではないかと思います。
参考までに申しますと、きちんと不斉の構造を書いて、横に添書きとして、「及び構造異性体」という書き方を、局方とか日本の一般的な名称で、かなりのものはしてあります。それは逆に言うと、R体100%又はS体100%であってラセミ体は含みませんので。そうしてしまうと比率がはっきりしないものはそこに入ってこないということになってしまいます。
○鈴木部会長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。よろしいでしょうか。
それでは発言が出尽くしたと思いますので、審議をまとめます。ただ今御審議いただきました4物質は、いずれも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。
それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 資料1-2を用いて説明いたします。4ページに、審議物質5.の3-FPM、6.のMephenmetrazine、構造が類似する向精神薬の症状観察結果、自発運動量への影響、モノアミンリリース、トランスポーター阻害のデータをまとめております。審議物質は、モノアミントランスポーター阻害作用により興奮の作用を有する物質と考えております。
資料1-2の5ページに、審議物質7.のMethylnaphthidate、審議物質8.のIsopropylphenidate、構造が類似する向精神薬や指定薬物について、自己投与による強化効果、自発運動への影響、セロトニン受容体活性、モノアミントランスポーター親和性のデータを取りまとめております。審議物質は、セロトニン受容体活性やモノアミントランスポーター阻害作用により興奮の作用を有する物質と考えております。
続いて、資料2-5を説明いたします。資料2の20ページとなります。通称3-FPMですが、向精神薬であるPhenmetrazineなどと構造が類似する化合物です。モノアミントランスポーター阻害作用について検討した結果を表に示しております。3-FPMのドパミンに対するIC50が6.09×10の-7乗、ノルアドレナリンに対するIC50が1.91×10の-7乗、セロトニンに対するIC50が6.45×10の-6乗となっております。
21ページに、他の文献による向精神薬であるPhenmetrazine、その立体異性体、Phendimetrazineのモノアミントランスポーター阻害作用に対する知見がありましたので、参考として示しております。表中の1.Phenmetrazineのドパミンに対するIC50が6.07×10の-7乗、ノルアドレナリンに対するIC50が1.53×10の-7乗、セロトニンに対するIC50が1×10の-5乗を上回る結果となっており、その立体異性体2.~5.も同程度の結果となっております。表中の6.Phendimetrazineのドパミンに対するIC50は、1.9×10の-5乗、ノルアドレナリンに対するIC50が8.3×10の-6乗、セロトニンに対するIC50が1×10の-4乗を上回る結果となっております。
運動活性に対する影響については、3-FPMを5mg/kg又は50mg/kg腹腔内投与し、投与後24時間の自発運動量を測定したところ、5mg/kg投与群では対照群と比較して自発運動量に有意な差は認められませんでしたが、50mg/kg投与群では有意に増加することが確認されました。22ページのFig.8が、3-FPMの投与後、1時間ごとの自発運動量の結果を示したものです。対照群と比較して、投与2時間~4時間後までの間において有意に増加することが確認されました。Fig.9は、陽性対照であるメタンフェタミンの結果となっております。Fig.10は、投与後0~6時間における自発運動量の変化を示したものです。点線で囲まれているものが3-FPMの結果です。コントロールを100%とし、有意に増加することが確認されております。また、投与後のマウスの行動を観察したところ、投与15分後に過活動が観察されております。
そのほか、海外における流通状況については、2014年にハンガリーにおいて流通が確認されております。これらの結果から、3-FPMはモノアミントランスポーター阻害作用を有し、興奮作用を示す物質であると考えております。
資料2-6を説明いたします。通称Mephenmetrazineですが、向精神薬であるPhenmetrazine等と構造が類似する化合物です。モノアミントランスポーター阻害作用について検討した結果を表に示しております。Mephenmetrazineのドパミンに対するIC50が2.92×10の-6乗、ノルアドレナリンに対するIC50が6.23×10の-7乗、セロトニンに対するIC50が5.41×10の-7乗となっております。
24ページに、先ほども御紹介した内容ですが、向精進薬であるphenmetrazine、その立体異性体phendimetrazineのモノアミントランスポーター阻害作用の知見を参考に示しております。運動活性に対する影響については、Mephenmetrazineを5mg/kg又は50mg/kg腹腔内投与し、投与後24時間の自発運動量を測定したところ、5mg/kg投与群では、対照群と比較して自発運動量に有意な差は認められませんでした。50mg/kg投与群では、投与後のマウスの行動を観察したところ、投与10分後に4匹全てが、けいれんを起こし、その直後に2匹が死亡しました。そのため、対照群との自発運動量の有意差の検討はできませんでしたが、増加傾向が確認されております。
25ページのFig.11が、Mephenmetrazineの投与24時間後までの1時間ごとの自発運動量の結果を示したもので、Fig.12が投与3時間後までの10分ごとの自発運動量の結果を示したものです。対照群と比較して、投与30分後から110分後まで増加傾向が認められます。Fig.9は陽性対照であるメタンフェタミンの投与24時間後までの1時間ごとの自発運動量を示したものです。Fig.10は、投与後0~6時間における自発運動量の変化を示したもので、点線で囲んでいるものがMephenmetrazineの結果です。コントロール100%と比較して増加傾向が確認されております。これらの結果から、Mephenmetrazineはモノアミントランスポーター阻害作用を有し、興奮作用を示す物質であると考えております。
資料2-7を説明いたします。通称Methylnaphthidateですが、指定薬物であるEthylphenidate等と構造が類似する化合物です。モノアミントランスポーター阻害作用について検討した結果を表に示しております。Methylnaphthidateのドパミンに対するIC50が9.16×10の-8乗、ノルアドレナリンに対するIC50が2.48×10の-8乗、セロトニンに対するIC50が3.67×10の-7乗となっております。
また、27ページに、当該審議物質であるMethylnaphthidate、その立体異性体、Methylphenidateのモノアミントランスポーター親和性について検討した結果が別にありましたので、表に示しております。(±)-Methylnaphthidate[threo体]のドパミンに対するIC50が3.39×10の-8乗、セロトニンに対するKi値が7.16×10の-8乗となっております。(2R,2'R)-Methylnaphthidate[threo体]のドパミンに対するIC50が、1.11×10の-8乗、セロトニンに対するKi値が9.48×10の-8乗、(±)-Methylnaphthidate[erythro体]については、ドパミンに対するIC50が2.08×10の-6乗、セロトニンに対するKi値が1.05×10の-7乗となっています。向精神薬である(±)-Methylphenidate[threo体]については、ドパミンが1.64×10の-7乗、セロトニンが1×10の-5乗を上回る結果となっております。向精神薬である(±)-Methylphenidate[erythro体]については、ドパミンが1×10の-6乗を上回る結果で、セロトニンが1×10の-5乗を上回る結果となっております。
続いて、運動活性に対する影響については、Methylnaphthidateを5mg/kg又は50mg/kg腹腔内投与し、投与後24時間の自発運動量を測定したところ、5mg/kg投与群では、対照群と比較して自発運動量に有意な差が認められませんでしたが、50mg/kg投与群では、有意に増加することが確認されました。28ページのFig.13が、Methylnaphthidateの投与後、1時間ごとの自発運動量の結果を示したものです。対照群と比較して投与1~2時間後までの間において有意に増加することが確認されました。Fig.9は、陽性対照であるメタンフェタミンの結果となっておます。Fig.10は、投与後0~6時間における自発運動量の変化を示したもので、点線で囲んでいるものがMethylnaphthidateの結果です。コントロール100%とし、有意に増加することが確認されております。また、投与後のマウスの行動を観察したところ、投与10分後に過活動が観察されております。このほか、海外における流通状況については、2015年にイギリスにおいて流通が確認されております。これらの結果から、Methylnaphthidateはモノアミントランスポーター阻害作用を有し、興奮作用を示す物質であると考えております。
資料2-8を御説明いたします。通称Isopropylphenidateですが、指定薬物であるEthylphenidateなどと構造が類似する化合物です。モノアミントランスポーター阻害作用について検討した結果を表に示しております。Isopropylphenidateのドパミンに対するIC50が5.35×10の-7乗、ノルアドレナリンに対するIC50が5.74×10の-7乗、セロトニンに対するIC50は1×10の-5乗を上回る結果となっております。また、30ページですが、Isopropylphenidateと構造が類似いたしますので、Methylnaphthidate等のモノアミントランスポーター親和性について検討した結果を参考に示しております。MethylnaphthidateやMethylphenidateと比較すると、モノアミントランスポーター阻害作用は弱いものの、Isopropylphenidatについてもモノアミントランスポーター阻害作用を有するものと考えております。
続いて、運動活性に対する影響については、Isopropylphenidateを5mg/kg又は50mg/kg腹腔内投与し、投与後24時間の自発運動量を測定したところ、5mg/kg投与群では、対照群と比較して自発運動量に有意な差は認められませんでしたが、50mg/kg投与群では、有意に増加することが確認されております。31ページのFig.14が、Isopropylphenidateの投与後1時間ごとの自発運動量の結果を示したものです。対照群と比較して投与2時間後までの間において有意に増加することが確認されております。Fig.9は、陽性対照であるメタンフェタミンの結果となっております。Fig.10は、投与後0~6時間における自発運動量の変化を示したもので、点線で囲んでいるものがIsopropylphenidateの結果です。コントロールを100%とし、有意に増加することが確認されております。また、投与後のマウスの行動を観察したところ、投与5分後に過活動が観察されております。そのほか、海外における流通状況については、2015年にイギリスにおいて流通が確認されております。これらの結果から、Isopropylphenidateはモノアミントランスポーター阻害作用を有し、興奮作用を示す物質であると考えております。
以上の4物質について、指定薬物として差し支えないと考えますが、よろしく御審議のほどお願いいたします。
○鈴木部会長 事務局より説明のありました4物質について、委員の先生方から御意見を頂きたいと思います。まず初めに□□委員から、流通実態についてお願いいたします。
○□□委員 ただ今御説明のありました4化合物について、いずれも粉末の形で複数回に渡って日本に流入していることが確認されております。また、3-フルオロフェンメトラジンに関しては、粉末の形で4製品から□□□の分析調査で検出しております。これらの製品に含有されていた化合物は、X線結晶構造解析において、RRとSSのthreo体であることを確認しており、今回の薬理実験に用いた化合物もいずれもthreo体を用いております。
○鈴木部会長 それでは、御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。○鈴木部会長 よろしいでしょうか。データもかなりしっかり出ておりますので、特に御意見はありませんか。それでは、まとめさせていただきます。ただ今御審議いただきました4物質は、いずれも医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律第2条第15項に規定する指定薬物として指定することが適当であると決議してよろしいでしょうか。ありがとうございます。それでは、引き続き事務局より説明をお願いいたします。
○事務局 今後のスケジュール等について説明いたします。本件の結果については、次回開催の薬事分科会で報告させていただく予定です。本日の結果を受け、指定薬物を指定するための省令改正の手続を進める予定です。また、いわゆる正規用途については、今のところ確認されておりません。いずれにしても、可能な限り適正使用に支障を来さないように対応する所存です。以上です。
○鈴木部会長 本日の議題は以上です。それでは、事務局からその他の連絡事項があればお願いいたします。
○事務局 次回の部会の日程については、12月中を予定しております。正式に決まり次第、御連絡させていただきます。また、本部会の資料は回収いたしますので、そのまま机の上に置いていただければと思います。
○鈴木部会長 委員の先生方、本日は御審議ありがとうございました。以上をもちまして、平成27年度第8回指定薬物部会を閉会いたします。ありがとうございました。
※ 備 考
本部会は、公開することにより、委員の自由な発言が制限され公正かつ中立な審議に著しい支障をおよぼすおそれがあるため、非公開で開催された
連絡先:医薬・生活衛生局 監視指導・麻薬対策課 課長補佐 佐々木(2779)
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 薬事・食品衛生審議会(指定薬物部会)> 薬事・食品衛生審議会 指定薬物部会 議事録(2015年11月24日)