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2016年1月28日 第1回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会 議事概要

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成28年1月28日 18:30~19:30


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

青野氏、磯山事務局次長、浦野氏、大内氏、金丸座長、小林(庸)氏、冨山氏、中野氏、松尾氏、御手洗氏、柳川事務局長、山内氏、山川氏

○議題

(1)「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」について
(2)その他

○議事

○金丸座長 

定刻となりましたので、ただいまから第1回「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」懇談会を開催いたします。

  皆様、大変御多忙の中、お集まりいただきましてありがとうございます。また、遠方からお越しくださいましてありがとうございます。塩崎大臣の御指名によりまして、本懇談会の座長に就任いたしました金丸でございます。よろしくお願い申し上げます。

  初めに、本懇談会の開催に先立ちまして、塩崎厚生労働大臣より御挨拶をいただきます。

 

○塩崎厚生労働大臣 

皆さん、こんばんは。大変お忙しいところ、また御遠方を万障お繰り合わせをいただいて、第1回目の「働き方の未来2035:一人ひとりが輝くために」という懇談会でございますが、御出席を賜りまして誠にありがとうございます。

  急な御案内で皆様方に大分御無理を言って、お聞きをいたしますと、子供を預けざるを得ない時間帯だという率直な御意見も頂戴いたしたところでありまして、今後はもう少し子育てにも配慮をしっかりする、そういう運営をぜひ金丸さんにもお願い申し上げたい。私どもが一番気にしなければいけないのでありますが、気をつけてまいりたいと思います。

  少し長目になるかもわかりませんが、思いを込めて少しお話をしたいと思います。先週末、0泊2日という強行日程でダボスに行ってまいりました。去年も行ってまいりましたが、今回は国会もあって0泊2日という最短記録の滞在でありましたが、その際に家族の役割に関するセッションに出てくれと言われて出てまいりました。人数はすごく少ないパネリストでありますが、コーディネーターは英国在住のイラク人の女性でありました。それから、香港在住の英国人、これは男性でありましたが、あとインド人が女性、アメリカ人も女性、そして私、それだけの人数でやりました。

  バックグラウンドは非常に色々でありましたけれども、変わりゆく家族像の中で、子供とか高齢者のケアを誰がどういうふうに家族の中でもやっていくのか、あるいは家族外でやるのかとか、あるいはあるべき働き方とか、企業が果たすべき役割などについて、さまざまな議論をしたわけでございます。いずれにしても、よくわかったことは、それぞれの国や立場で色々な変化が起きている。その中で、どうやって皆が個性ある生き方をできるようにするかということについて、本当に皆、懸命にそれぞれ取り組んでいるということがよくわかりました。

  日本は、少子化、高齢化、人口減少、労働人口の減少という4つの要素が全部、言ってみればなかなか厳しいという状況にあるのは、G7の中だけでは日本だけです。ドイツがややそれに近いのですけれども、ドイツは外国人が入ってきて労働人口はまだ増えていたりするわけで、そういうようなことで、この4つともがなかなか厳しい状況であるというのは日本だけでありましたし、そのこともこのパネリストの皆さんはわかっていました。例えば、日本は2060年には高齢化率が40%になるそうですねと、そういうことまで知っておられたわけであります。そういう意味では、日本がどうこういう問題を乗り切っていくのか、そしてまた家族の中でも色々な役割が変わりつつある、そういう中で日本がこういう問題をどう乗り切っていくのかということについては、働き方を含めて世界が注目しているということがよくわかりました。

  今日、お手元に安倍総理の施政方針演説をお配りしておりますけれども、1月22日にこの施政方針を演説しました。その中で5ページから6ページにかけて、一億総活躍社会づくりの意味合いというのを述べています。それを見ますと、こう書いてあります。

  女性も男性も、お年寄りも若者も、一度失敗を経験した人も、障害や難病のある人も、誰もが活躍できる社会。その多様性の中から、新しいアイデアが生まれ、イノベーションが湧き起こるはずです。さらに、その実現に向けて最も重要な政策課題については、一人ひとりの事情に応じた、多様な働き方が可能な社会への変革。そして、ワーク・ライフ・バランスの確保が必要であるということを明確にしています。

  つまり、1億の方々がおられたら1億通りの働き方、あるいはそれぞれの置かれた環境と希望に応じた、時間的にも空間的にも従来よりはるかに自由度の高い働き方があるべきであって、それによって一人ひとりがそれぞれ個性ある生き方を選べる、そんな日本にしていきたいというのがこの施政方針演説で言いたかったことではないか、目指すところではないかと私は思っております。

  これまで安倍政権は3年間の成長戦略の中でも、雇用制度改革、人材力強化を重要な柱として掲げてまいりました。また、今年の春に取りまとめの予定であります「ニッポン一億総活躍プラン」においても、生産性革命及び働き方改革は全ての政策にかかわる横断的な課題という位置づけで重視されているわけでありまして、中でも、これまで均等・均衡待遇と言っておりましたけれども、これを同一労働同一賃金の実現に踏み込むという考えを安倍総理は明らかにしたところでございます。

  また、今国会は労働法制が審議をされることになっておりまして、長時間労働抑制など、ワーク・ライフ・バランス確保のための各種政策とか、あるいはフレックスタイム制度の拡充、専門性の高い仕事において時間ではなくて成果で評価をするという新しい仕組み、我々は高度プロフェッショナル制度と呼んでいますが、これの創設とか、多様な働き方の選択肢を増やすための制度改革を行おうということで、労働基準法の改正などの成立を目指していこうと考えています。

  このような足元で、あるいは2020年初頭を見据えた政策を一つ一つ進めているわけでございますけれども、同時に大事なことは、従来よりもさらに長い視野、具体的には20年ぐらい先を見て、2035年頃を見据えた働き方のビジョンを明らかにして、それを踏まえて今日のことも決めていく。短期的、中期的なこと、長期的なこと、これらについてもやはりずっと先を見た上でビジョンを持って決めていったらどうだろうかということを考えて、この懇談会を発足させていただいたところでございます。

  多様な分野から、20年先でも十分現役で働いていらっしゃるであろう方々にお集まりいただいたということだと思っておりますが、言ってみれば、ゼロベースから御議論を賜りたいと思っていまして、ちなみに47.5歳というのが今回のメンバーの平均年齢であります。これはアドバイザーを含まないメンバーだけの平均年齢でありますが、そういうことで、是非、こだわりのない議論をお願い申し上げたいと思います。

  実は去年、保健医療の分野で「保健医療2035」というのをやっていただきまして、提言を出していただきました。「保健医療2035」策定懇談会というのがあって、これまた平均年齢42.7歳という若い皆さんから、120項目にのぼる政策提言をいただきました。その提言書が出た後、普通、大臣が何か思いついて報告書をつくったら、あとはそのままお蔵入りというのが多いのですけれども、「保健医療2035」はそうはさせじと、省内に保健医療2035推進本部というのをつくって、すぐできること、少し考えればできること、なかなかすぐにはできないけれども、代案を出すという3つぐらいに分けて、それぞれ工程管理をしながら、今一つ一つ政策提言を実現に結びつけているというのが実態でございまして、今回の皆様方からいただく御提言も、是非、こういうような形で実際に実現をしていくということに結びつけていきたいと考えているところでございます。

  これはもう釈迦に説法でありますけれども、最近、IoTとか、AIとか、色々なことを言われておりますが、技術革新というのは確かに目覚ましいものがあって、それによって産業構造、あるいは就業構造、働き方とか、すっかり大転換をするということが十分あり得るわけです。これまで労働法制というのは、どちらかというと製造業中心の発想からできているのではないかという指摘をよく受けてまいりました。そういうようなことでありますから、当然それを見直さなければいけない。そして、ヒト・モノ・カネともに国際的に激しく動いているわけであります。

  また、社会経済システムの大きな変化が予想される中で、一人一人の希望や選択に基づきながら、しかも個々の持つ個性とか特性、可能性を最大限に生かした働き方というのは何なんだろうか。あるいは、性別、年齢、国籍を問わず、また障害をお持ちになる方々も含めて活躍できる、真に多様な働き方の実現を目指す必要があるのではないかと思いついているところでございます。

  他方、人の労働の移動が活発化をして、先進国を中心に少子高齢化による労働力の減少というのが、先ほど申し上げたとおり起きています。アメリカだけは別ですけれども、知識経済というのが進んでいる。人材の重要性がいよいよ高まっているわけでありますので、その意味では各国とも外国人の人材をどう確保するのかということが大変活発で、人材獲得競争というのが世界規模で行われているように思えます。

  そういう中において、では我が国が人材を維持し、さらに獲得していくためには、グローバルな水準で見ても、この働き方が通用するものがなければ、日本としてうまくいかないのではないかと思いますので、そういう働き方も実現をしていかなければならないと思います。

  以上のような問題意識から、今回検討いただく働き方の未来ビジョン、働き方改革が、その結果として個人の幸せはもちろんのこと、生産性向上に寄与して、ひいては持続可能な経済成長や豊かな経済社会のシステムをつくり変えることができるように、幅広い視点で御検討をいただければありがたいと思っております。

  色々御負担をかけることになりますけれども、ぜひ精力的に議論していただいて、今、夏頃の取りまとめということを想定しております。「保健医療2035」のときもそうですけれども、お若い方々はここに集まらなくても、ネットで色々な形で意見交換ができたりしますし、また合宿みたいなこともやっていたように思います。それはもう皆さん方がどう考えるかによるので、決して私が押しつける話ではございませんから、是非、いい提言をつくっていただくために、時間の許す範囲内でやれることは何でもやっていただければ、私どもは何でも御協力申し上げようと思っております。

  それから、事前に申し上げましたけれども、欠席をどうしてもしないといけないというときにウェブ会議を活用しようということで、この間も医療系ベンチャーの懇談会をつくっていますが、その時は1人はたまたま出張していたので、シリコンバレーからウェブ会議に参加をしてくださいましたから、そういう意味で、どこにいようとも議論していただけるように手だてを尽くしてまいりたいと思っておりますので、よろしくお願い申し上げたいと思います。

  長くなりましたが、このようなことで熱い思いを持って、今日こうして大変ユニークな皆様方にお集まりいただいて、今からわくわくどきどき皆様方の議論に大いに期待を申し上げ、私もできる限りフォローしながら、参加できるときは参加してまいりたいと思いますので、ひとつよろしくお願い申し上げて最初の御挨拶にさせていただきます。

  よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

塩崎大臣、ありがとうございました。

  塩崎大臣は、所用のため、会の途中にて御退席される予定です。

  それでは、議事に入りますので、カメラの頭撮りはここまでとさせていただきます。御協力のほど、よろしくお願い申し上げます。

 

○金丸座長 

それでは、議事に入ります。

  資料1の開催要綱を御覧ください。本懇談会のメンバーとアドバイザーの方々は開催要綱の2枚目にあるとおりでございます。皆様には、後ほど御発言いただく際に、簡単な自己紹介をいただきますので、よろしくお願い申し上げます。

  また、本懇談会を運営するため、事務局を置くこととしております。大臣の御指名によりまして、柳川先生に事務局長、磯山先生に事務局次長にそれぞれ御就任いただくこととなっております。

  柳川先生、磯山先生、よろしくお願い申し上げます。

  続いて、事務局から本懇談会のテーマである働き方の未来を検討するための基礎的な材料として、日本を取り巻く社会構造の変化、労働法制の変遷等について御説明をお願いいたします。

 

○鈴木労働政策担当参事官 

事務局でございます。

  資料2を御覧いただきたいと思います。まず、大臣が冒頭申し上げたとおりでございますけれども、そういった日本の状況につきまして、戦後から将来にわたる推計まで概観できるような資料を改めてピックアップしてつけてございます。本日は、時間の関係で、ざっと項目だけ御説明したいと思います。

  3ページにつきましては、戦後から現在までの失業率等の推移を書いてございます。

  4ページから9ページが、人口の推移、出生率、高齢化率の推移、それから将来推計、各国比較などを書いてございます。
  10ページから12ページにつきましては、労働力人口につきまして推移と各国比較、将来推計。これから労働力人口が非常に減っていくということを記述してございます。
  13ページから14ページにつきましては、戦後からこれまでの産業別の就業者の状況とか、今後の将来推計について載せてございます。
  15ページから17ページが、最近増えております非正規労働者につきまして、どの層が増えているのか、その増加の中身はどうか、さらに自ら望まずに非正規になられた不本意非正規と言われる方の割合などを記述してございます。
  18ページにつきましては、労働時間の推移を記述してございます。
  19ページから20ページは、M字曲線等で代表されます女性の年齢別の就業率とか就業形態について資料を載せてございます。
  21ページにつきましては、高齢者の就業率の国際比較。我が国は大変就業率が高いですので、そういった数字を載せてございます。
  22ページから23ページにつきましては、GDPの推移、それからその国際比較を載せてございます。
  24ページから25ページに関しましては、日本が非常に低いと言われております労働生産性の国際比較とか、どの分野が遅れているのかといったアメリカとの比較を載せてございます。
  26ページにつきましては、開廃業率の国際比較を載せてございます。
  27ページ以降、法律関係の資料をつけてございます。
  28ページにつきましては、現行労働法の体系。
  29ページから32ページにつきましては、戦後の労働法がどのように変遷してきたかという主な改正点をピックアップしてつけてございます。
  34ページ以降につきましては、昨年と今年の国会に提出いたしました労働関係の法案、これは提出予定も含んでございますが、その概要をそれぞれお付けさせていただいてございます。

  資料3に参ります。大臣も申し上げましたけれども、今回の施政方針演説で働き方改革に触れられている部分が非常に多くありますので、その部分についてアンダーラインを引いてピックアップしまして、これは全文を載せてございます。

以上でございます。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  続きまして、本日は初回ということでございますので、メンバーの皆様から簡単な自己紹介と、今回の働き方の未来についての懇談会に対するテーマ等への御関心がありましたら、それもあわせて御発言をいただきたいと思います。時間は1人2分程度でおまとめいただければと存じます。

  初めに、私の右隣の柳川さんから順次行かせていただいてよろしゅうございますか。では、柳川事務局長、お願いいたします。

 

○柳川事務局長 

東京大学の経済学研究科におります柳川でございます。よろしくお願いいたします。

  私は、産業構造が変化していく時にどういう政策が必要かということを考えていたのですけれども、その中でやはり労働とか働き方というのが非常に重要だということに思い至りまして、最近はそういうところに研究の重心が移ってきております。

  先ほど大臣がお話しになりましたように、2035年ということを考えますと、やはりグローバル化は非常に大きな形で進展するのだろう。それから、松尾先生がいらっしゃいますけれども、技術革新が非常に大きく進む。そういう中では、やはり働き方は大きく変えていかなければいけない。

  一方では、少子高齢化が進んで、寿命が延びているということでございますので、1つは幾つになっても元気でやる気のある人が働けるような社会にするということが少子高齢化の中では圧倒的に重要だろうと。それから、女性だけではないのですけれども、子育て、介護、こういうもので働き方が止まってしまうことがないようにというのが非常に大きな、これから必要になってくることだろうと思います。

  その観点でいきますと、現状の正社員というのがかなりハードルが高いといいますか、何か硬直的で、多様な働き方を実現する上では難しいということで、もう少し多様な正社員というものをつくっていけないかと思っております。もう一つは、技術革新が大きく進んでくるとすると、どこかでスキルアップであるとか、スキルの陳腐化に対応するような教育なり能力開発をしていく。こういうことを制度化していく必要があるのではないかと思っております。

  細かい議論に関しては、また議題が進んだところでお話しさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、松尾先生、お願いいたします。

 

○松尾氏 

東京大学の松尾と申します。人工知能の研究をしております。

  今日もグーグルの人工知能が囲碁でプロに勝ったというニュースが出ていましたけれども、このところの人工知能の進展、特にディープラーニングという技術がコアになっていますが、非常に目覚ましくて、特に認識を必要とするような仕事が今後大きく自動化されてくるのではないかと思っています。

  そういう中で、人工知能にとって代わられる職業というような話題もよく出てきますけれども、今後重要になってくるのは対面のコミュニケーション能力であったり、総合的な価値判断能力であったり、そういう人間らしいところがより重要になってくるのではないかと思います。

  同時に、恐らく長期的には個人が企画とか経営をするような、より企業数が増えて、個人事業主が増える、そういった社会になっていくのではないかなとも思っておりまして、そのあたり色々議論をさせていただければと思っております。

  よろしくお願いします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、青野さん、お願いいたします。

 

○青野氏 

サイボウズの青野といいます。今、グループウエアという情報共有のソフトをつくっています。情報共有のソフトですから、働き方と直結することもあって、こういうところに呼ばれる機会が増えています。

  サイボウズが面白いのは、2005年に28%という不名誉な離職率を記録しまして、1年後4人に1人がいない。それまでいわゆるITどベンチャー、土日出勤当たり前みたいな会社をやめまして、100100通りの働き方というのを掲げてやってきまして、今どんどん離職率が下がって、多分去年3%ぐらいまで落ちています。それを実録としてまとめた『チームのことだけ、考えた』という本を先月出しましたので、またよろしければ読んでいただきたいと思います。

  今回は、どんな政策提言ができるかわかりませんけれども、頑張ります。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、浦野さん、お願いいたします。

 

○浦野氏 

小松製作所で人事部をやっております浦野と申します。

  私どもの会社は、いわゆるトラディショナルな製造業の代表的なところでございまして、まず、自分が企業の観点から申しますと、やはり20年後も会社組織というのはきっとあろうなと思っていまして、弊社の場合は、まずサステナブルに競争力を保てる会社をやっていくということと、社員一人一人が豊かな人生を歩めるかということ。特に20代から70歳ぐらいまで働かれるとなると、50年間の中でどういう人生設計をしていただいて、よかったなと思っていただくことをやっていくということは、今、私ども組合も含めて一番の会社としての立場でございます。

  今回のことにつきまして、少し先のことということで、さっき先生からもお話が出ましたけれども、ロボットとどうやって協働していくのか、そういう観点で、何が機械化されていくべきで、何が人間がやるべきかみたいなことは、一つ観点としてあるかなと思っております。

  もう一つは、グローバルな流動性がもっともっと高まるという中で、日本が働く場所として魅力的であり続けるかどうかというのは、特に若い方たちはどう考えているのかなというのは非常に気になるところです。

  3番目は、大都市にどうしても人口も色々なものも集中してしまって、地方もとてもいいところがあるのですけれども、なかなか両方がうまくバランスよくやれていないというところもありまして、大都市と地方みたいな観点でも、ぜひ皆様とお話しできればと思っております。

  以上でございます。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、大内先生、お願いいたします。

 

○大内氏 

神戸大学の大内と申します。労働法を研究して、教えております。

  私自身も最近こういう人工知能やロボットといったテーマについて非常に関心を持っておりまして、今日はこういう場に呼んでいただいて、非常に嬉しく思っております。

  まず、私自身が今どういう問題に関心を持っているかということを、総論的な話ですけれども、簡単に申し上げます。2つありまして、1つは労働法の専門家ということで来ているのですが、労働法自身が非常に大きな変革の必要が出てきているだろうと思っています。

  労働法の基本にある理念というのは、産業革命の製造業を中心とした、そこにおける働き方というものを前提とした従属性の保護ということにあったのです。それが、色々と産業構造が変わっていく中で、これまでは従来型の労働法のアプローチを微調整しながら対応できたのだろうと思います。しかし、今起きている変化、これから20年で予想される変化は、おそらく労働者の従属性という枠組みで考えていくのではうまく対処できないのではないかと思っています。おそらくITなどの技術の発展のなかで従属性の意味も変わるし、もしかしたら従属的な働き方ではなくて、もっと自営業者が一般的になるような社会になるかもしれない。そういうときに労働法は何をすべきかということを今考えていて、まだ結論が出ていないのですが、こういう場で色々議論を聞いて勉強したいと思っています。

  今の話は多分世界中どこでも起きている問題なのですが、もう一つは、日本固有の問題で、正社員の問題です。これは柳川先生も触れられましたけれども、日本の正社員というのはかなり特殊なものがありまして、結局、正社員というのは長期的に雇用されて企業が技能育成をしていく。そういう対象であるのが正社員であるというふうに言えたと思います。しかし、今出てきているのは技術のすさまじい進展でありまして、企業内においてスキルの形成とか教育というのは難しくなってきている。これにより、当然、正社員像は変わっていかざるを得ないわけです。

  日本の雇用政策というのは、正社員をモデルにして、それとの関係で色々考えてきたわけですけれども、正社員というモデルが変わってくるならば、雇用政策はどうあるべきかということが大きな問題になっていきます。これは非常にチャレンジングなテーマで、まだなかなか出口が見えないところでありますけれども、こういう場で色々なお話をお聞きしながら、考えていきたいと思っています。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、小林さん、お願いいたします。

 

○小林(庸)氏 

三菱UFJリサーチ&コンサルティングの小林と申します。よろしくお願いいたします。

  私は今、主として政策研究を経済学とか、もしくは統計学をベースとしながらやっておりまして、一方でちょうど3年ぐらい前まで経済産業省で2年ほど、成長戦略づくりとか社会保障改革みたいなこともやってまいりましたので、ある種、産業政策、産業構造と働き方みたいなところから関心を持って参りました。

  今幾つかお話があったところと重なるところもあるのですが、私自身、裁量労働制でして年俸制で、例えば経費を使うと私の給料が減るみたいな、まさに自営業みたいな働き方をしているのですが、逆にそれゆえに昼間に全く関係ない人に会いに行ったりとか、余り会社に言うと怒られますが、映画を見に行ってしまったりする場合もあって、それが実は広い意味では自分の働き方とかイノベーションにつながっているなという気がしていまして、そういった点から少し働き方を考えていきたいなと。

  私自身、最近、ソーシャル・ビジネスとか社会的企業の方のヒアリングとか、データ分析をさせていただくと、面白いのは社会的企業の方は働き方が非常に多様ですね。しかも、意外だったのですけれども、社会的企業の方は成長というか、新しい分野を切り開いていく意欲がある方が非常に多くて、単に雇用の受け皿ではなくて、成長のドライバーなのではないかと、最近企業さんを回っていて非常に思うというところを1点目で申し上げたい。

  2点目が、松尾先生の御専門だと思うのですが、ある種、技術が転換していくスピードにどうやって人が追いついていくのかというのが重要なポイントだと思うのですが、それを政策的にサポートするときに、海外ではかなりエビデンスの蓄積が進んできているなと、昨年ロンドンやシカゴに行って話を聞いて思っていまして、労働移動の転換とか、移動というものを進めるための政策はたくさんあると思うのですが、そこのエビデンスづくりみたいなところもあわせて進めていくことが大事なのではないかなと最近意識しております。

  ぜひ、活発な議論に参加させていただければと思います。よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、中野さん、お願いいたします。

 

○中野氏 

中野円佳と申します。よろしくお願いします。もともと新聞記者で、厚生労働省の担当をしていたこともあります。そのときは9階の記者クラブのソファで寝るような働き方をしていたのですけれども、今日はこんな席に呼んでいただいてしまいました。

  『「育休世代」のジレンマ』という本を2014年に出版しまして、女性の総合職、正社員で非常に恵まれているように思われる立場の人たちでも、まだ出産後にやめざるを得ない、あるいは意欲を冷却するという言い方をしているのですけれども、なかなか活躍できないという現状を本にしました。その後、新聞社を退社しまして、女性活躍やダイバーシティ、働き方の関連で、各種発信をしております。

  また、昨年11月に第2子を出産しまして、今、育休中ではあるのですけれども、株式会社チェンジウェブというところに所属しています。ここでは企業のダイバーシティ推進や女性のリーダー養成の研修を手がけていまして、ダイバーシティの推進にしても、女性リーダーの育成にしても、問題を突き詰めていくと必ず働き方の問題に当たるという印象を受けています。それは、女性が成長機会を獲得していけなくて、スキルを身につけられないという面でも、女性のウィル、つまり自分が管理職になっていきたいとか、こういうことを実現していきたいという意欲をそぐものとしても、背景に働き方の問題があると思うので、この問題に真摯に向き合わなくてはいけないと思っています。

  2035年ということで、私は子供が2人いるのですけれども、彼らが23歳と20歳になり、ちょうど働き始めるかもしれないぐらいの年です。「お母さん、20年前から問題がわかっていたのに、何をしてたの」と言われないように頑張りたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、御手洗さん、お願いいたします。

 

○御手洗氏 

気仙沼ニッティングの御手洗瑞子と申します。よろしくお願いいたします。

  今は気仙沼で編み物の会社をしているのですけれども、ちょっと前のバックグラウンドからお伝えすると、大学を出て最初はマッキンゼーに勤めまして、年俸制の世界におりました。その後に、ブータンという国の政府に勤めて、民主化して選ばれた最初の首相のもとで、国が自立するための産業育成の仕事をする。特殊な立場で呼ばれて行ったので、ちょっと周りより給料が高いのですが、月3万円という給料です。ブータンでは、そのようなレベルの給料で、ものすごく優秀な人たちが働いているのです。これはかなわないなと思いながら、仕事をしていたのですけれども、震災が起こって、日本に戻りました。東北で一時的な復興支援に頼らない、自立して持続していく産業をつくろう、働く人が誇りを持てる仕事をつくろうとしたのです。日本はブータンよりずっと人件費が高いですが、被災した地域に住むおばちゃんたちは、別に英語がしゃべれたり、コンピューターが得意だったりするわけではありません。そこに新しく仕事をつくるというのは、大きなチャレンジでもありました。気仙沼ニッティングという編み物の会社を始め、今、編み手さんが練習生を合わせて60名強になりました。3年ぐらいで気仙沼の中では比較的大きい会社になりました。

  気仙沼も、少子高齢化などが進行し、企業にとって働き手の確保は課題です。そんな中、なぜ気仙沼ニッティングにはそんなに人が増えているかというと、自宅ででき、かつ自分のペースでできる仕事だからです。出来高制にしており、納期も設けておりません。そうすると、介護や育児、家業の手伝いなどがあり、フルタイムで働きに出られない人がみんな集まってきているという形です。仕事の種類が少ない小さい町では、貴重な受け皿になっているのだと思います。

  今回の懇談会におきまして興味があるところとしては2つあります。ただ、そもそも時間感覚の大いに違う課題が交ざっているので、この辺は整理して話を進めないといけないのではないかと思っています。

  まず、短期的なものとしては働き方の問題です。特に地方においては職場の種類が少なく柔軟な働き方がなかなか難しいですので、それを実現していくだけで参画できる人が増えていくと思っています。ただ、今回の懇談会の名前は「働き方の未来2035」になっていますけれど、こうした働き方についての課題は、2016とか2017とか、せいぜい2020ぐらいの課題ではないかなと思っています。それぐらいのスパンで進めていくべきことかと。

2035 という長期の視点で考えるとき、より重要なのは、何が人間の、特に日本人の仕事として残ってくるのかというところかと思います。本質的に仕事というのは、付加価値を生んで、それに対する対価をいただいているということかと思います。AIの進歩ですとか、先ほど私はブータンでは月給3万円で優秀な同僚と働いていたと言いましたけれども、グローバル化が進行していきフラットになっていったとき、何が私たち日本人の主たる仕事になっていくのかということは非常に難しい問題ではないかなと思っております。

  どうぞよろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、山内社長、お願いいたします。

 

○山内氏 

ヤマトホールディングスの山内と申します。どうぞよろしくお願いいたします。

  私どもは、社員がグループで20万人おりまして、日々、それぞれの地域地域でお客様に直接サービスをさせていただいている、労働集約産業の代表のような、会社でございます。今回参加させていただくのも、いわゆるサービス業的な仕事をしている、しかも地域地域で主婦の方をはじめ色々な方に働いていただいている、そんなことから参加させていただけたと思っております。

  今、20万人と言いましたが、20万人のうち半分の10万人はフルタイマーで働いており、あとはパート、要は自分の時間、短時間、3時間とか4時間、あるいは週のうちの3日と4日というような形でのパート的な働き方をしているのは10万人です。全体の中で35%ぐらいが女性で、そういった意味では本当に多様な働き方をしていただいているのが今の状況になります。

  今回参加させていただくに当たって、関心があるのは、これから労働力が社会構造的に少なくなっていく中で、私どももそうですし、日本の特にインフラ的な、物流なんかはまさにそうだと思いますが、縁の下を支えるようなインフラをどう維持するかということになっていったときに、労働力をどう維持していくのか。そして、そこで働く人々が幸せ感といいますか、日本人の場合、働きがいイコール生きがいみたいなところが私はあると思いますので、それをどう残していくのかというところが一番大きな関心テーマとしてはございます。

  そんな中で2つほど特にフォーカスしたいなと思っているのは、1つが新しいテクノロジーというのが間違いなく生産性も高めますし、働き手の幅も広げていくことになると思いますが、その新しいテクノロジーとどう共存していくか。活用はもちろんするのですが、活用し過ぎると、それに使われてしまって、その指示のもとで働くようなことになり、生きがいがなくなっていく。したがって、新しいテクノロジーを使いながら、それとどう共存をしていくかということをどのような形で目指していくのか。これが1つめの関心事です。

  もう一つは、働く方の幅をどう広げるか。よく言われるように、これから高齢者の方、主婦の方、それからボーダーレス化を迎えていく中での外国人の方々、こういった方々がどう働く場を広げられるのか。そのために社会としてどういったものをそろえなければいけないのか。あるいは、法規制も含め色々なものを変えなければいけないのか。こういった環境づくりはどういったことをしていかないといけないのか。これが2つめの関心事となります。

  皆さんと色々と議論させていただきながら、新しい気づきがあればと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、山川先生、お願いいたします。

 

○山川氏 

東京大学で労働法を専攻しております山川と申します。よろしくお願いいたします。

20年後の予想は、法律家には特に難しいことでありまして、働き方も変わると思います。しかし、今ちょうど山内委員が仰ったことに同感しました。変化の中で変わらず重要なのは、働きがいということではないかと思います。働くことで得られる充実感のようなものは、個人の幸福にとって非常に重要な要素と考えます。未来の話をしているのに大正時代の話をするのは恐縮ですけれども、吉川英治さんという小説家は大正時代に、「はたらいた俺にはあるぞ夕涼み」という川柳を書いていまして、働くことの充実感を端的に示したものではないかと思います。こうした働きがいを感じながら仕事に当たることによって、企業の付加価値を高めていくことが重要と考えます。

  また、労働政策としては、色々環境が変わる中でより多くの人たちの働きがいを確保して増進していく。そういう環境整備が労働政策の一つの役割ではないかということです。こうした働きがいという関心事項も踏まえまして、私の研究者としての関心事項は、労働政策の実現の手法、労働政策の実現のあり方というようなことです。

  色々これから考えていくことになるわけですけれども、例えば3つ簡単に申しますと、1つは、最低労働基準を確保して、紛争解決システムを整備することが前提のようなことですけれども、2番目はより実質的なことで、より高いレベルといいますか、望ましいレベルについては自発的な取り組みを重視する。資料にもございますけれども、女性活躍推進法のように企業で自発的な計画を立ててもらう。そういうことが政策実現の手法として考えられます。これが2点目です。3点目は、働きがいを持って働くためには、それぞれの納得性を高めるという観点が出てくると思いますので、そういう意味では情報の開示とか説明責任を充実させるということも考えられます。

  あとは色々御議論をお聞きして、さらに考えていきたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

ありがとうございます。

  それでは、冨山さん、お願いいたします。

 

○冨山氏 

冨山です。今日ちょっと遅れた理由は、直前にIoT推進ラボのマッチングイベントがありまして、あれはオープンイノベーションをやりましょうということで、大企業もいれば、ベンチャーもいれば、割と歴史ある中小企業もいるし、色々な人が集まっていたのですけれども、ああいう場所というのは、つくづく思ったのですけれども、残念ながら日本型正社員的空気と合わない場所ですね。

  何が言いたいかというと、イノベーションが社会の発展や経済の発展をドライブしている時代に、単一的な、ある種の労働慣行であったり、正社員のモデルというのが正規であって、それ以外は非正規とするという世界観でやっていること自体がもうアウト・オブ・ザ・クエスチョンだと私は思っていて、もっと自由であっていいし、もっと多様であっていいし、それが豊かさだと思うのです。

  正社員というワーディングをずっと言われてきたのは、あれは大体ふざけたワーディングで、これは英語にならないのですね。多分、英語でフルタイムとパートタイムというふうに訳すのですけれども、これは時間がフルタイムワーカーかパートタイムワーカーということで、正規と非正規、レギュラーとイレギュラー、何やそれという話です。

  ですから、私は現実問題として、これは日本のある社会的発展段階において、ある産業領域において、加工貿易立国時代においてたまたま日本の当時の産業構造と社会的な価値観とにフィットしたので、そういうものが固定化したのだと思いますが、そういう時代はもうとっくの昔に終わっているのですよね。多分30年前に終わったと思います。

  その一つの私の思い出として、1992年から7年まで、ソフトバンクモバイルの前身のデジタルツーカーグループというところで言わば「派遣」のサラリーマンをしたことがあるのです。大阪の会社で働いていたのですけれども、その会社はそれこそ日産とか新日本製鉄、JRとか、名だたる会社の出向でつくった会社なのです。出向で来た人たちは、日本型正規雇用ですから、大阪に転勤しろと言われたら行かなければいけない。日本型正規雇用を正当化する理屈として、その苦痛を受け入れてくれて生産性が高いかわりに正社員の特権があるのだという説明になっているのですけれども、その苦痛を受け入れた人がみんな集まっていくわけです。本当は苦痛を受け入れているので生産性が高いはずなのですけれども、集まっているおじさんたちのほとんどが働かない。実に働かない。社員の半分ぐらいはそういう人たちで、残りの半分は派遣なのです。派遣のお嬢さんたちと、それからローカルのプロパーで採用している、どちらかというと学歴ははるかに下のお兄ちゃん、お姉ちゃんたち。こっちのほうが100倍働くのです。

  それで、日本型正規雇用というやつは派遣のお姉さんたちとローカル採用のある意味地域限定社員を搾取しているのだというのが、92年当時の私の認識でした。これはやはりアンフェアだし、生産性が低い。だからこの日本型サラリーマンシステムというのはもう今や競争力を失うのではないかなと思っていたら、その後、92年からこの二十何年間に起きたことというのは皆さん御案内のとおりであります。少なくともグローバル競争に直面している企業は、もちろんコマツさんのような例外はありますけれども、大半の会社は競争力を失ってきたわけであります。

  このような議論というのは、既に社会の実態と合わなくなっているけれども、色々な事情でまだ残ってしまっている問題を、一方でとにかく早く現状に合わせるというイシューと、実はそれだけでは足りなくて、もう周回遅れているときに後から追いかけて追いつこうとすると、追いついたころには世の中もっと先に行っていっていますから、蜃気楼のように先に行ってしまうので、そういうテーマと、やはり先回りをして、20年後、この視点のとおりもう先取りして、どうせ変えるのだったら先取りして先に行くということが私もすごく大事だと思っているので、それをどう先取りしていくか。

  その観点から、私は今、日本は実は極めて変えやすい環境にあると思っていて、こういった働き方の問題を議論するときに、潜在的な失業圧力が強い国や社会というのはなかなか大胆に変えることができません。これは私も多分この中で一番たくさんリストラをやってきた人間なので嫌というほどわかっておりますが、やはりこれは厳しい問題があります。

  とりわけリストラ的な話というのは、実は一流大企業のリストラなんていうのは大したことではないのです。所詮、彼らはエリートです。だから、ちょっとプライドを捨ててさえくれれば幾らだって仕事はあるのです。ただ、実際リストラなんかで一番大変なのは、例えば地方の旅館であるとか、むしろ下層労働者に近い立場で働いている人たちのリストラというのは人生の悲劇を生み出します。

  ところが、従来の労使の議論というのは、彼らの声を代弁する声はないのです。なぜならば、日本のそういうところは非組です。組合がありません。組合がある世界というのはないのです。経営者も、例えば経団連に加盟しているような経営者ではありません。ですから、実はそういったところというのは全く議論されないのです。実際、本当に失業するのはそういう人たちです。いわゆる失業問題が深刻なとき。

  ですから、そういった観点で言ってしまうと、要はそういう問題がこれからの日本はしばらくないので、とにかく人手が足りませんから、そういったところでも人が足りないのですから。そういった意味で、むしろ大胆にもっと先を見つめて、AIの問題も含めて、どういうふうな働き方を考えていくのかというのは、私は政策的にも動きやすい時期だと思っているので、むしろ世界に先行して、新しい働き方に即した制度や労働法のあり方というものをむしろリードしていくつもりで、こういう議論ができればなと思っております。

  長くなりましたが、以上です。

 

○金丸座長 

またハードルを一段と上げていただきまして、ありがとうございます。

  それでは、磯山先生、お願いします。

 

○磯山事務局次長

ジャーナリストの磯山友幸と申します。大手の新聞社に24年おりまして、5年前にやめまして、今フリーでやっております。1人株式会社で、株主1人、取締役1人、社長1人。規制緩和がなかったらできない会社でありますが、今、自由を非常に満喫しています。

  私は新聞記者時代は何をやっていたかというと、2002年から2006年までヨーロッパにおりまして、スイスとドイツの特派員、支局長だったのですが、ちょうどそのタイミングというのはシュレーダー改革ど真ん中でありました。2005年に選挙があって、シュレーダーは大負けして失脚してしまうのですが、当時の労働改革というのはもうどうしようもないぐらいの批判がありました。その後、何が起きたかというと、ドイツの経済の復活はシュレーダー改革がなければできなかったと。ドイツの今はないということだと思うのです。シュレーダーは左側の政権だからできたという人もいるのですけれども、非常に大胆な、過去とある意味決別するような改革ができたということで、それは労働分野だけではなくて、実は社会保障改革もやりましたし、あとは企業のコーポレートガバナンス改革というのもやりました。

  日本では、安倍内閣がコーポレートガバナンス改革に取り組み、冨山さんなどが関与されて大きく動いたわけですが、企業のあり方を見るときに、もう一方の働き方というのをどうやって変えていくのかというのは、大きな課題であろうと思います。

  今回は、20年後という話ですが、20年後というのは非常に先だというふうにイメージとしては思いがちですが、本当はそうではないのです。20年後の労働者というのはもう生まれていて、20年後にどれだけの働き手の人数がいるかはもう分かっているわけです。ですから、少し厚労省の英知を使わせていただいて、この分野は20年後にはこれぐらいの人材が欲しいのだけれども、実際にはいないとか、この分野には人を割く余裕がないとか、そういうシミュレーションができたら面白いなと。その上で、AIとかロボットの活用などで、人の労働をどうやって置きかえていくかという議論をするのが、実は地に足のついた議論なのではないかなと思います。

  どこまでそういう具体的なデータが積み上げられるかわかりませんが、私はずっと会計の分野をやっているけれども、会計士の世界なんかは、例えば今の合格率でいって受験生の人数が減っていったときに、会計士の業界は何年後にはこれだけの人数になって、もし上場企業が2倍になっていたら仕事は絶対に回りませんということは、もう論理的に答えが出るのですね。ですから、そういうシミュレーションを各業界でできたら面白いと思っています。

  あとは、多様な働き方を進めるという観点では、企業自身が、コーポレートガバナンスもそうだったのですけれども、うちはこういう働き方をさせますとか、うちはこんな生きがいを求められる働き方をしていますというのをどんどん情報開示をしていただいて、会社の働き方の方針を見て働く人が企業を選んでいくという時代になっていくのではないかなと思います。有価証券報告書に企業が働き方の基本方針を開示するというのが一番手っ取り早いのではないかなと思っております。

  それから、私は事務局次長というような大命をお受けしているのでありますが、これは別に偉い役職ということではなくて、皆さんの雑用係を全て引き受けろということのようでございますので、色々な庶務連絡等、使っていただければと思います。

  この懇談会の設立の趣旨のところに、基本的に公開をするとあります。公開でやる理由は、国民的な議論を喚起するのだと書いてありましたので、ぜひメディアなどにもどんどん発信をして、例えば大手新聞に働き方2035の特集を組んでいただくとか、こちらからも働きかけますし、私自身も物書きですので、色々なところで情報発信をしていこうと思います。ここでの議論というのをきっかけに、世の中みんなで議論が始まればいいなと思っております。

  どうぞよろしくお願いいたします。

 

(塩崎厚生労働大臣退室)

 

○金丸座長 

どうもありがとうございました。それでは、私も最後に一言御挨拶させていただきます。

  今回座長を拝命いたしましたフューチャーアーキテクトの金丸でございます。

  日頃は、流通、金融、製造業の大きな会社の経営改革とIT改革を両輪で推進するためのデザインをしている会社を経営しております。金融機関のお客様の中には、地方銀行のお客様が主を占めております。それから、新しいところですと、インターネット証券のお客様と、私ども仕事をさせていただいております。そういう意味で、もちろんコンピューター技術の革新があって、それを踏まえた上での経営革新というのを目の当たりにしてまいりましたので、今回の座長を拝命したのかなと思っております。

  私の個人の体験で申し上げますと、三十数年前にアメリカに16ビットパソコンを若いチームでつくって売り込みに行っていたのですね。1983年時点の通信技術というのは、まだ非常にスピードが遅い時代でございます。

  ニューヨークの大きな会社でプレゼンテーションをしたところ、そのエグゼクティブが、このパソコンをうまく売るためにはソフトウェアが必要なので、今からソフトウェアの会社に頼みに行かなければいけないといって、その足で大会社の人がニューヨークから私たちがつくったプロトタイプのパソコンを持ってシアトルに行きました。日本から来たんだからトヨタのレンタカーを借りてあげようといって、実はカローラを借りていただいて、私はもっと大きいゆったりした車に乗りたかったのですが。3時間ぐらいドライブしたところに、丸太小屋に住んでいる5人の人達がいたのです。この人達はPh.D.をみんな持っていらっしゃって研究者なのですが、ライフスタイルというのは、1983年にシーズンごとにオフィスを変える人たちだったのです。

  その当時は日本には勢いがあった時代ですが、アメリカとの差というのはすごく大きいなと思って、それはソフトウェアとハードウェアとの付加価値の変遷を見ているわけですから。ニューヨークの大会社の人たちが小規模のベンチャーのところに自分のお金を使っていくという、このことにまず驚いて、さらにその人たちはシーズンでオフィスを変えて、4枚の名刺、名刺ではなかったのですけれども、4枚のアドレスが出てくる。それは通信を使いながら顧客とコミュニケーションをしているというのが1983年だったのです。

  それから比べると、我々はまだ、青野さんのところは今それを推進なさっておりますけれども、テレワークというのはもうこれだけ技術革新が起きたのに、そういう世界に行っていないので、今回、大臣の熱い思いを受けて、今日は皆様のお話をお伺いしてまいりましたけれども、かなり論点が、あるいはキーワードが出てまいったと思っております。ぜひ今後は皆様とともにフレッシュな発想で、さっき大臣はゼロベースで考えていいと仰いましたので、フレッシュ&ゼロベースでこの会議を推進させていただきたいと思っております。

  会議の推進については、場所と時間の制約のないような運営というのは、私もITのカンパニーを経営している身として、そういう環境も提供させていただく協力もさせていただきながら、夏までに世界がびっくりするような提言と言われたので、世界がびっくりするような部分は冨山さんに担当いただいて、マスコミへの発信の部分は磯山さんに御担当いただいたりしながら、このテーマは重いテーマでありますが、楽しくこの会議を運営させていただきたいと思っておりますので、今後ともよろしくお願いいたします。

  今日は皆様から、ショートスピーチで制約のある中から貴重な御意見を賜りましたので、今日いただいた意見をもとに、事務局長と事務局次長とも相談の上、もちろん大臣とも相談の上、論点とかキーワードを整理させていただいて、次回以降は皆様の中からプレゼンテーションを頂戴したり、あるいは外部の有識者の方々に、我々で足りていないところとか補強すべきところのヒアリング対象者もお呼びしたりしながら、その都度皆様にも運営につきましても御相談をさせていただきながら推進をさせていただきたいと思っておりますので、ぜひ今後ともよろしくお願いいたします。

 

○金丸座長 

それでは、事務局から何かありますか。

 

○鈴木労働政策担当参事官 

次回の日程等につきましては、座長、それから事務局の先生方と御相談の上、また御連絡させていただきますので、どうぞよろしくお願い申し上げます。

 

○金丸座長 

これをもちまして、本日の懇談会は終了とさせていただきます。本日はお忙しい中、しかも遠方よりお越しくださいましてありがとうございました。


(了)
<照会先>

厚生労働省政策統括官付労働政策担当参事官室

03-5253-1111(内線:7992)

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