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2015年11月20日 第12回組織の変動に伴う労働関係に関する研究会議事録

○日時

平成27年11月20日(金)15:00~15:50


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)


○議題

(1)組織の変動に伴う労働関係に関する研究会報告書(案)について
(2)その他

○議事

○荒木座長 それでは、御出席予定の先生はおそろいですので、ただいまから第12回「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」を開催いたします。皆様、大変お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。まず、事務局から委員の出欠状況について御報告をお願いします。

○労政担当参事官室企画調整専門官 本日は、神吉委員が御欠席となり、神林委員は用務のため途中退席されます。以上、よろしくお願いいたします。

○荒木座長 それでは、早速議事に入ります。本日の議題は前回に引き続き、「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会報告書()」について議論を進めていきたいと思います。まずは事務局から資料1の説明をお願いします。

○労政担当参事官 御説明いたします。報告書について、前回()を出して御議論をいただき、前回の御議論を踏まえて事務局で一部修正いたしました。そのほか、表現の適正化等も図る修正も施しております。本日は前回の御議論を踏まえて修正した部分を中心に御説明いたします。資料1が修正した後のもので、参考資料1として前回からの変更箇所が分かる見え消し型のものも用意しております。大変恐縮ですが、変更点を説明する便宜上、参考資料1で御説明いたします。一部、誤植、軽微な修正部分の説明は省略いたします。

3ページ以降が現状の整理です。4ページの(2)の会社法の制定の○1の所に「一定の営業の目的のために組織化され、有機的一体として機能する財産」というように修正していますが、これは会社法における「営業」、今で言う「事業」についての判例の言いぶりに正確に修正したものです。

9ページ以降が組織の変動の実態についてです。9ページの3のはじめの5行に導入の記述があります。ここで幾つか修正しております。これは業者等のヒアリングについて表記している部分でしたが、今回この研究会での議論の中で、必ずしも全体の実態が分かったものではないことをきちんと記述したほうがいいのではないかという御指摘を受けまして、主に「なお書」の所に、「以下はこのヒアリングに基づくものであり、必ずしも我が国における組織の変動の実態の全容を把握、分析したものではないことを付言する」という形で書かせていただきました。

10ページは表現の適正化です。報告を受けた内容を整理する部分のうち、簡単に言うと、会社分割と事業譲渡の特徴の違い、それを踏まえた利用方法の違いについて、両方の共通点とか相異点の整理が余りよろしくなかったので、表現の整理をし適正化をしています。

11ページ以降が諸外国の法制の記述です。特に1213ページにかけての部分を修正しております。分かりにくいのですが、12ページの真ん中の段落の「労働条件の変更については」の部分で、EU諸国での個別労働条件の承継と集団的労働条件の変更について、EU既得権指令をはじめとする各国の状況を書いてありましたが、実は今回全部消しています。12ページの下から続く段落では、集団的協定の承継の扱いという側面で、その集団的協定の承継とか移転先での協定があった場合の扱いなどを書いてありましたが、実質的にはほぼ同じ内容でしたので統合しました。見え消しですと12ページの下半分ぐらいにある8行ほどの新しい部分でまとめて書いてあります。趣旨は変わりません。特にその上の段で、EU指令のことを書いた上で、ドイツ、フランス、イギリスにおける特に集団的に規制されていた労働条件の帰趨について、1年間変更できない等の記述を紹介する形として再整理しております。

16ページ以降は今後の方向性です。16ページのはじめのほうも事業概念から権利義務というように会社法が変わったことに伴う影響の表現の適正化です。16ページの下のほうも、会社法制定により権利義務としたことで「営業」という概念をやめたことについて、会社法での判断の根拠の文言を整理したものです。

 実質的な御議論がかかわるものとしては17ページです。まず17ページの真ん中の辺りに「他方」というパラグラフがあります。5行目の「つまり、非主従事労働者」に(不従事労働者)と加えていますが、これは前回の御議論で権利義務のみに該当する人がどういう扱いになるのかということについては、「事業」との関係では、従従事なのか不従事なのかを明確にするべきではないかと、実態としては、どちらかによって、キャリアパス等で違ってくるのではないかという御意見もありましたので、この場合は非主従事労働者とくくっている者のうち、不従事労働者ですので、そこの括弧で明記しています。

 その下の部分です。見え消しで見えにくいのですが、「事業」概念を承継法は維持する、捉えるというように考えるということを記述している部分ですが、ここは前回御議論がありました。特に会社法の扱いとの比較で、会社法が「事業」の概念の不明確さ等から、その概念を使わないとしたのですが、承継法では引き続き「事業」概念を用いることについて、説明を分かりやすく書くべきではないか。また、その「事業」概念の承継法における重要性などをもう少し突っ込んで書く、捉えるべきだと。そういう議論をしていただき、それをきちんと反映すべきという御指摘を頂きましたので書き直しております。かなり直していますので、ほぼ読み上げる形で御説明いたします。「これらを踏まえると」からの所です。「企業組織に関する法令である会社法では、「事業」概念の不安定さがあることに加えて、債権者保護のために「事業」概念を維持する必要性も乏しいとして、「権利義務」単位での会社分割を可能としたが、労働者保護を目的とする承継法において、同法上の権利、労働契約の承継等の法的効果の帰趨を「権利義務」単位によることとすると、これまで主として従事していた業務から切り離されるという不利益が労働者に生じるおそれがあり、労働者の雇用や職務を確保するといった承継法の労働者保護の趣旨からは問題である」というように、会社法ではもう使えなくなったけれども、承継法の労働者保護といった趣旨からは重要であり、やめてしまうと問題であるということを積極的に書く形にいたしました。そういうことで、続きますが、「このため、承継法における「主従事労働者」の判断基準としては、引き続き「事業」によることが妥当であると考えられる」というように結論付けております。

 次のパラで「事業」概念を維持する際に、更に承継法上よく考えることという趣旨で書いています。これを読み上げます。「この場合、「事業」概念は、会社分割に際して労働契約の承継等の法的効果の帰趨に関わる重要な判断要素であるが、もはや会社法に由来する概念ではなく」というのは先ほど言いました、会社法も使っていない、会社法の概念ではなく、「承継法の趣旨を踏まえて理解をすべき概念と位置付けられることになる」という形で、承継法の趣旨を踏まえた概念という形で明確に書いております。

 この判断は最終的には司法が下すものではあるが、労働者保護という承継法の趣旨を踏まえた「事業」の概念の一層の明確化も重要な課題と考えられる。承継法におけるこの「事業」概念の重要性ということ、それゆえに、その明確化は必要ということを、もっと明確に会社法に由来しないことも含めて書いたものです。

 あとは、基本的には文言の適正化についてです。18ページから続く不従事に対する5条協議に関する文章の中の19ページの上のほうで、途中から申し上げるのは大変恐縮ですが、「事業が観念される」等の言葉を加えております。これは権利義務のみの承継の場合の扱いについて、5条協議の対象とするかということを言っている部分です。権利義務の場合の不従事労働者というものを考える場合に、従従事労働者が5条協議の対象になっていることの対比を論じている部分ですが、ここで対比をする際には、従従事労働者が「「事業」が観念される場合の従従事労働者」として、5条協議が必要とされていることとの対比で論じるべきですので、ここを明確に書いております。

20ページ以降は裁判例等を踏まえた対応を書く部分です。20ページの最後から日本アイ・ビー・エム事件の最高裁判決の紹介をしています。これは前回、最高裁判決がいう5条協議の趣旨の書きぶりが、ちょっと違うのではないかという御指摘を受けまして、確認をしましたところ、そのとおりでございました。大変申し訳ございません。最高裁判決で言っている5条協議の趣旨の引用を正確にし直したものです。会社分割は、主に以上です。

2324ページは事業譲渡の修正についてです。24ページの(1)の承継ルールの適用についての記述の一部です。上のパラの2つ目の、「このため会社分割や事業譲渡にはそれぞれの政策的妥当性」から始まるパラからですが、ここに「事業譲渡についても裁判等においては個々のケースの事情に応じた柔軟な解決がなされている」という言葉を入れています。実は、この論拠については、(2)手続上のルールについての下のほうですが、1パラの最後にも書いてあります。前回これについて、この論拠は(2)に書いてありますが、(1)の論拠ではないかという御指摘もありました。(2)の論拠であることの御説明は前にさせていただきましたが、併せてやはり個々に柔軟な解決がなされているということは、手続紛争の未然防止に資するとともに、個々の柔軟解決ができているということで、一律の強制ルールというものをする必要がないといった結論にもつながる論拠でもあると思われましたので、上のほうの論拠としても書く形で入れさせていただきました。主な修正は以上です。残りは表現的な修正ですので細かい御説明は省略させていただきます。

○荒木座長 ただいまの説明の資料1について、何か御意見があればお願いいたします。

○金久保委員 修正していただいた点ですが、これまでの意見がよくまとまっていて良いと思いました。細かい点で1点です。これは高橋先生にもお聞きしたいのですが、10ページの各制度の特徴と利用の所で、事業譲渡と会社分割との違いが書いてありますが、一般的には事業譲渡の場合は個別の移転の手続が不要であると。手続のその中身としては、譲渡会社と譲受会社の合意であり、もしそれが契約関係であれば債権者の同意であると。それに対して、会社分割はそのような手続が不要であるという言われ方をよくされるかと思いますが、ここは「合意」という言い方で書いてあるのですが、こういう形でも特に問題はないのでしょうかという点をお聞きしたいと思います。

○高橋委員 そうですね、どうでしょうか、どちらの表現も見ると言えば見ますので、移転について個別の手続が必要であるとしたほうが、より正確になるのかなという気はしております。合意自体は、つまり事業譲渡契約ということでとりあえず1本でいきまして、債権債務の移転や個別の財産の移転で登記が必要なものなどについては、11個手続をしなければならないという説明の仕方をしますので、厳密に申し上げると、個別に譲渡するための手続が必要であるという言い方をしたほうが、つまり3行目について、「合意」ではなくて、「手続が必要な」にしたほうが、より正確になるかと思います。答えになっていますでしょうか。

○金久保委員 ありがとうございます。

○荒木座長 3行目は個々の権利義務の移転についてですので、債権者の同意も必要ですか。

○高橋委員 そうですね。債権譲渡という場合になると、債権譲渡の対抗要件として当然債権者の同意ないし通知承諾が必要になります。その意味で同意が必要という趣旨でございます。

○荒木座長 そうすると、例えば、「しかし、個別承継のため、個々の権利義務の移転について、個別の手続や債権者の同意が必要な」という表現ではいかがでしょうか。

○高橋委員 よろしいのではないかと思いますが、債権譲渡の対抗要件具備の問題ですので、そこはいかがでしょう、通知だけというのもあるのかもしれません。

○荒木座長 そうですか。改めて読むと、ここで比較しているのが余りパラレルになっていないようです。「個別承継のため」に始まって、「個々の権利義務の移転について合意が必要」これは「個別の手続が必要な」として、その後はどう書いてあるかというと、「会社分割は、法定の手続を経て、包括的に権利義務が承継される」となっていて、余り対比関係がきれいにできていない気はいたします。結論として「このため、債権者との個別の合意は不要である」となっている。

○金久保委員 もし、「手続」で書くとすれば、5行目は、「債権者の同意など個別の手続は不要である」のようなことが考えられるとは思いますが、会社法の専門家から見ていかがでしょうか。

○高橋委員 今、金久保委員がおっしゃったとおりで、十分通るかと存じます。

○荒木座長 今のは5行目の所の「このため」以下の話ですか。「このため、債権者等の同意など、個別の手続は不要である」という形で「手続」として一貫して対比をするということにいたしますか。

○高橋委員 はい。

○荒木座長 2行目から、「しかし、個別承継のため、個々の権利義務の移転について個別の手続が必要な事業譲渡とは異なり」、これでよろしいですか。

○労政担当参事官 今の点ですが、3行目、金久保先生が言われたのは、「個々の権利義務の移転について債権者の同意や手続」と、おっしゃったのですか。

○荒木座長 金久保先生は5行目の修正としておっしゃったと思いますが。

○労政担当参事官 5行目ですか、分かりました。

○荒木座長 「このため」以下の。

○労政担当参事官 3行目は手続だけですね。

○荒木座長 はい。今、私が言ったのは、「しかし、個別承継のため、個々の権利義務の移転について個別の手続が必要な事業譲渡とは異なり、会社分割は、株主総会や債権者保護手続等の法定の手続を経て、包括的に権利義務が承継される。このため、債権者等の同意など個別手続は不要である」ということです。

○労政担当参事官 はい、分かりました。

○荒木座長 そこはそのように修正することにいたしましょう。ほかにはいかがでしょうか。高橋先生、事業譲渡の場合は検査役の手続が必要で、これが時間がかかることを以前に聞いたのですが、これは今でも必要なのですか。

○高橋委員 なくなっています。事業譲渡の場合の検査役検査がなくなって、残りは設立のときだけになっていると思います。

○荒木座長 そうですか、ありがとうございます。ほかの点で何か御指摘はありますでしょうか。

 それでは、私から1点だけです。些末な表現ですが、見え消しの17ページの上から2行目からを読むと、「債権者の保護を図る必要性は乏しかったこと等であった」と両方を過去形にするのは変ですので、「乏しいこと等であった」というように、こちらのほうは「乏しい」にしましょうか。

○労政担当参事官 分かりました。すみませんでした。

○荒木座長 ほかの御指摘は特によろしいでしょうか。それでは、今、御指摘いただいた点は指摘のとおり修正することで、この研究会の検討結果としてはこの報告書のとおりということで御了承いただけますでしょうか。

                                     ( 了承)

○荒木座長 御了承いただいたということで扱わせていただきます。

 それでは、検討会は本日が最後になります。昨年12月に初回が開催されて、それから都合12回の検討をいただいたということになります。この間、皆様からは大変精力的に貴重な御意見を賜りました。ありがとうございました。このような形で無事に報告書を取りまとめることができたことについて、御礼申し上げます。

 それでは、最後に安藤政策統括官から御挨拶を頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。

○政策統括官(労働担当) 「組織変動に伴う労働関係に関する研究会」の取りまとめの会に当たり、一言御挨拶を申し上げたいと思います。

 今回の研究会では、承継法の制定から10年余りが経過して、また、経済社会の動きに伴い企業組織の変動が盛んに行われるという中で、雇用や労働条件の確保といった労働者の保護、また、経済のグローバル化等に迅速に対応していくための円滑な組織再編の必要性といったような観点から、諸課題を整理して新たな対応を行う必要性について、12回にわたり御議論を頂いたところでございます。本日、委員の先生方の御尽力によりまして、研究会報告書を取りまとめていただきました。荒木座長をはじめ、委員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、毎回お集まりいただきまして、御専門の立場から熱心に御議論いただいたことに、深く感謝を申し上げます。

 厚生労働省としては、この報告書にお示しいただきました方向性を踏まえて、今後、具体的な対応策について更に検討を続けてまいりたいと考えております。最後になりましたが、委員の皆様方には、引き続き私どもの行政に御理解、御協力いただけますようお願いを申し上げまして、私からの御挨拶といたします。本当にありがとうございました。

○荒木座長 ありがとうございました。それでは、事務局におかれましては、ただいままとまりました報告書に基づいて、必要な対応をしていただくようお願いしたいと思います。

 それでは、これをもちまして、「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」は閉会とさせていただきます。どうもありがとうございました。


(了)

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