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2015年2月17日 第3回組織の変動に伴う労働関係に関する研究会 議事録

政策統括官付労政担当参事官室

○日時

平成27年2月17日(火)10:00~12:30


○場所

厚生労働省 専用第23会議室(6階)
(東京都千代田区霞が関1丁目2番2号 中央合同庁舎5号館)






○出席者

荒木座長、金久保委員、神吉委員、神林委員、高橋委員、富永委員、橋本委員

○議題

(1)農業協同組合の分割に伴う労働関係について
(2)その他



○議事

○荒木座長 それでは、定刻より若干早いですけれども、全員おそろいということですので、ただいまから第3回「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」を開催したいと思います。

 皆様、大変御多忙の中、また雪まじりの中、御参集いただき、ありがとうございます。

 議事に入る前に、事務局から委員の出欠状況について御報告をお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 本日は全員出席となっております。よろしくお願いいたします。

 以上です。

○荒木座長 それでは、早速議事に入ります。本日の議題は、「農業協同組合の分割に伴う労働関係について」ということでありますが、前回御都合の関係で御出席できなかったUAゼンセンの皆様に御来場いただいております。そこで、まず冒頭、医療法人関係のヒアリングをさせていただければと存じます。

 それでは、UAゼンセンの皆様、御説明をどうぞよろしくお願いいたします。

UAゼンセン(原田氏) それでは、話をさせていただきます。UAゼンセンの原田と申します。どうぞよろしくお願いしたいと思っております。

 資料のほうは資料1ということでつけてありますので、そちらのほうを御参照いただきたいと思います。

 私どもは、略称としてUAゼンセンということであります。

 組織としては、労働組合2,474組合が加盟しているということで、組合員数にしますと、1518,000人ほどが昨年の秋の段階で加盟をしているということであります。

 全国組織といいますか、ナショナルセンターとしての連合に加盟をしている組織であるということで、連合に加盟をするいわゆる産業別の労働組合ということで御理解をいただきたいと思っております。

 資料1の真ん中に図を載せさせていただいております。上の図につきましては、国際組織との関係等について記載をさせていただいておりますので、御参照いただきたいと思います。

 下の表には私どもUAゼンセンの内部の組織の関係を記載しております。多様な産業が私どもに加盟しているということでありまして、大きく3つの部門制という形にさせていただいております。製造産業の関係、流通の関係、それ以外のサービス業、ここに医療の関係も含まれるわけですけれども、総合サービス部門ということで、そういう3つの部門に分けた中で活動をさせていただいております。

 主要な労働組合につきましては、下のほうに各部門ごとの組合名が入っておりますので、御参照いただきたいと思っております。

UAゼンセン全体としてはそのような形でありますが、医療にかかわるところでは総合サービス部門、医療と介護の関係も私どものほうに所属しているということであります。この資料を事前にお出しできなくて大変恐縮なのですけれども、そちらのほうの組合数という意味では、医療・介護の関係で61組合、8万2,000名ほどの方々が私どもに加盟をしているということになります。

 その中で、介護を除く、直接病院関係等々、医療の関係で申し上げますと、43組合で約1万1,000名の方が組合員になっているということであります。

 今回の研究会にかかわる中で、特に法人の種別というようなことが恐らく問われてくるところだろうと思います。43組合ある中でいわゆる一般の医療法人とされるところが23組合で、約6,000名ということであります。半分以上が医療法人などということであります。

 特定医療法人というところが4組合あります。

 社会医療法人というところが1組合ということであります。

 その他、公益財団法人、宗教法人等で15組合というような構成になっているということであります。

 あらかじめこちらのほうで確認させていただいた中でいきますと、医療法人として23組合あるわけでありますけれども、16組合が社団法人であるということを確認しておりまする2組合が財団ということでありまして、残りの5組合はまだ確認ができていないという状況であります。大変恐縮です。

 社団法人、財団法人、回答いただいた中で、いわゆる「出資持分あり」というふうに回答したところが6組合ございまして、「なし」というところが12組合であったということであります。

 組織の概要ということについて、医療の法人の関係の内訳も含めてまず報告をさせていただきたいと思います。

 2点目として、資料1の裏面、労使関係の現状ということであります。私どもの所属の組合の労使関係については、おおむね良好であるというふうに認識をしております。労働協約の関係で係争になって、労働委員会のほうにあっせん申請をしたところが一部あります。それと、賃上げの交渉の中で同じようにあっせん申請をしたというところもありますが、ごく一部でありまして、ほとんどの組合については良好な労使関係が形づくられているというふうに考えているところであります。

 3番目の組織変動に伴う労働問題の関係については、同席しております古川のほうから説明をさせていただきたいと思います。よろしくお願いいたします。

UAゼンセン(古川氏) UAゼンセンの古川でございます。医療・介護・福祉部会で副部会長をさせていただきまして、医療の現場で働く者ということで、きょう出席させていただきました。

 組織変動に伴う労働問題ということですけれども、いろいろ医療機関があるわけですが、その中で、1つは、これに直接関係するかどうかわかりませんが、アウトソーシング化が進んでいるのも事実でございますし、また、私の病院におきましたら、企業立の病院がそこを閉院するということで吸収したという形もございます。

 冒頭言いましたアウトソーシング化というものにつきましては、例えば部署でいきますと、検査とか栄養科、調理部門とか、看護助手とか、医療の中では医師、看護師以外にするべきものがございますが、そういうところでアウトソーシング化が進んでいるということもあります。

 ただ、これは内部の組織を特に機能的に上げろという考え方ももちろんあるのですけれども、おおむねコストの管理上の問題ということで捉えております。ただ、それに伴うことにおきまして、その中で労働問題というのが発生するわけで、転籍、それに伴う退職ということがございますが、やはり不安定感というのは隠せないもので、そこで労働問題に大きくかかわってこなければいけないという部分がございます。

 もう一つは、私の医療機関で、ある1つの医療機関を吸収ということがあったわけですけれども、その中で大きく問題となったのが、医療・介護の世界では流動性の高い職種であるというぐあいに思っております。特に看護師等は、母体が変動することによって不安感とか、その先がどうなるかという雇用と生活の不安感が一番でありましょう。そういうところで離職が進んでいって、その期間は運営が大変厳しい状況になったというのも一つございます。

 もう一つは、医療機関というのは、医師という職種がございますけれども、医師は、私たち労働組合には加入していないわけなのですが、大学の医局の人事とか大学の違いとかで、再編におきましては、経営上の問題として大きく問題があったということを間接的に聞いております。

 医療法人の分割ということもこの中に議題としてあるわけですけれども、労働条件というのは、労働組合として大変大きな関心事であります。一般の企業でありますと、統廃合というのはよくよくある話でございますが、医療という世界におきましては、今まであまり聞かない。入社といいますか、病院に入るときにそういう考え方もない形で入ってくるわけで、今後そういうふうな方向で行くときには、労働者の意思と無関係な分割、統合というのは、丁寧な対応が必要ではなかろうかというぐあいに思っています。

 特に先ほど言いました流動性の高い職種ということで、地域の医療を守るに当たっては、そこのところが崩壊するような形ではあってはならないと思いますので、より丁寧な形が望まれるかなというぐあいに思います。

UAゼンセン(原田氏) それでは、最後、レジュメ上は「医療法人の分割に伴う労働条件についての意見」ということで、項目を入れさせていただいております。

 今、古川の話にもありましたけれども、医療の現場に携わる皆さんというのは、看護師さんを中心にして、資格に基づいて働いている、そういう職業であるということの中で、言うなれば市場流動性が高いというところがあろうかなと思っておりますので、そういった部分を丁寧に取り扱っていただかないと、こういう組織変動ということを契機にして大量に離職をするということも心配されるところかなと思っております。

 会社分割手続等もあるわけですが、そういった形で違う法人に再編され、そして従業員もそこに一緒に異動することになるわけですけれども、言ってみれば、新しい会社に新たに就職するような意味合いを本人たちにとってみれば持つということがありますので、そういった側面をぜひ御留意いただきたいなと思います。

 労働協約等、現行の組織、労使関係の中で結ばれていることについては、しっかりと承継をされていくべきだと考えているところであります。

 承継先の企業に労働条件を合わせるということの中で、安易に一方的な労働条件の変更がなされるようなことがないようにということも非常に心配しておりますし、こういったことについても配慮が必要だろうということです。ですから、同様に引き継ぎ先で労働組合としての組織がしっかり活動できるような、こういったことについても配慮が必要ではないかと思っています。

 もともと人の確保が重要な産業であると考えております。労働協約の承継等がしっかりなされることということです。ですから、そういう意味では、事前の労働組合との協議、合意の上で分割の手続というものに進んでいくということが必要だろうと思います。

 現行の中でも分割計画書等を含めて、労働組合に通知をするということは、たしか株主総会の2週間前ぐらいまでということになっていたと思うのですが、これでは労働組合として議論をすることができない。議論をするということは、ただ単に労働組合として反対する云々ではなくて、しっかり議論をし、当事者が納得した上でそういう組織再編に臨むという体制を労働組合として整えるという役割もあるのだろうと思っておりますので、何でもかんでも労働組合として反対するということではありません。そういう意味でも事前にみんなでしっかり議論をさせていただき、納得し、合意したものについては、それぞれの皆さんに改めてしっかり認識をいただき、納得をいただくと。こういう役割が労働組合としてもあるものというふうに思っておりますので、そういった部分についてもしっかり配慮いただいて、分割云々という話があるようでありますけれども、進めていただくという体制にしていただきたいなと思っております。

 甚だ雑駁でありますけれども、とりあえずUAゼンセンからの報告とさせていただきたいと思います。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、どうぞ御自由に御質疑をお願いいたします。橋本委員、どうぞ。

○橋本委員 医療法人の労使関係について、御説明ありがとうございました。

 アウトソーシング化がかなり進んでいるというお話がございましたが、アウトソーシング化の際に労働組合としてはどのような対応、例えば雇用は委託先に承継されるようにとか、労働条件はどうするかなどについて、どのような対応をされているのか、教えていただければと思います。

UAゼンセン(古川氏) 一番は御本人さんの納得性の問題になりますけれども、それに事業体がそういう方向性であるというふうな事前の協議をして、その後にそこに移籍される、またはそれを機に退職されるという方のある意味条件的なものを話すわけですが、結果、後味の悪いような形になってしまうのが常なのですね。もともと医療機関のそういう職種というのは、地場で採用された方がたくさんいるわけで、そういうふうにアウトソーシングしたときに、ある一つの事業体に入ったときに地域の流動性が発生してくるのですね。そうすると、そこではもう勤めないよというふうな問題もたくさん出てきます。そういうところで大変苦労したなというのがあるのですが、いかんせん、最後は本人様の納得性ということで、それに伴うような条件を法人側と話していったという経緯がございます。

○橋本委員 ありがとうございました。

○荒木座長 どうぞ。

○神林委員 どうもお話、ありがとうございました。2点確認したい点がございます。

 1つはUAゼンセンでカバーされている職種なのですけれども、医療産業に関してはどういう職種がカバーされているかというのが1点目。

 2点目は、先ほど来丁寧な対応とか丁寧に取り扱うというのがキーワードで出てきているのですが、丁寧な対応とか丁寧に取り扱うという意味は、最後に強調されていた事前の労働組合とのコミュニケーションをしっかりしてほしいということに尽きるというふうにお考えでしょうか。

 2点お願いします。

UAゼンセン(原田氏) 最初の御質問は、カバーされている医療関係のということでありますけれども、医療・病院の関係、それから介護は在宅、施設等々も含めてあります。それと医療の関連という意味ではいわゆる医療事務です。これはまさにアウトソーシングされていく中で、受託者の企業、いわゆる個別の企業名になりますが、ニチイ学館さんというところも労働組合があり、私どもに所属しているということになります。主にはそういったところだと思います。

○神林委員 基本的に法人別といいますか、企業別組合という格好で組織されているというふうに考えてよろしいですか。

UAゼンセン(原田氏) 介護だけはクラフトユニオンという形にさせていただいておりまして、横断的に一つの日本介護クラフトユニオンという組織をつくっています。それ以外については基本的に法人別、企業別の組合であるということになります。

 2点目です。現行私どもが考えている中では、労働組合があるところについては、先ほど来申し上げたように、労働組合の内部で十分な討議ができる、組合員の皆さんとコミュニケーションができる時間といいますか、期間というものを確保した中で、まず通知があり、私どもにそういう時間をしっかり与えていただく必要があるかなと思います。私どもの立場としてはそれに尽きるかなというふうに思います。

○荒木座長 関連してですけれども、1法人に1組合みたいなのが主流とお聞きましたが、組織率というのはどのくらいなのでしょうか。

UAゼンセン(原田氏) 産業の中ということでしょうか。

○荒木座長 例えば法人単位では、組合がある場合には皆さん加入されているという状況かどうかということですが。

UAゼンセン(原田氏) 現行は少なくとも過半数はしっかり確保し、従業員代表の立場を確保するという意味もありますので、ほとんどのところは、今、申し上げた中で言えば、過半数を超えているところが多いと思います。

○荒木座長 そうですか。ありがとうございます。

 どうぞ。

○神林委員 コミュニケーションに関してなのですけれども、お考えになっているのは、現在の使用者と労働組合との間のコミュニケーションで、将来の使用者との間のコミュニケーションというのはどのようにお考えでしょうか。

UAゼンセン(原田氏) 現行の使用者との交渉ということはあり得るわけですが、分割手続と言っていいのかわかりませんが、そういった手続、具体的なものが見えてきたときには、恐らく引受先の企業なり法人なり、新たな使用者というところとも交渉ができるような権利がもし確保できるのであれば、それは一つ望ましい形かなと思っています。

○荒木座長 1点、丁寧な対応ということにも関係するのですが、現在はそういう組織の変更というのは事業譲渡とかの場合が多いと思うのです。その場合には労働条件はどうなるか。おっしゃったように、新しい会社に就職するのと同じ状況なので、労働条件がどう変わるかというのが大きな課題になると思いますが、会社分割の場合は、合併と同じようにそのままの状況で労働関係が承継されると。ですから、労働条件が維持されるのが原則と考えております。

 今回、会社分割という制度が適用されることになった場合に、現在の事業譲渡の状況と比べて、ここは困るとか、これが懸念材料であるといったことが特にあるかどうか。もしあれば御指摘いただければと思いますが、いかがでしょうか。

UAゼンセン(原田氏) 分割手続の中では、分割計画ということの中で、ある意味本人の同意なく新しいところに移っていくということが一番のネックなのかなというふうに思っていますので、今の状況から言いますと、その辺、事前に本人同意をしっかりとるということができるのかどうか、ちょっとわかりませんが、先ほど来申し上げております本人の納得性ということをしっかり確保できるような仕組みにしていくというところが必要なのかなと思っております。

○荒木座長 ありがとうございます。

 ほかにはいかがでしょうか。

 よろしいようでしたら、医療法人のヒアリング、今回はUAゼンセンの皆様にお越しいただきまして、大変貴重な御意見を伺いました。ありがとうございます。

 それでは、引き続きまして、本日のテーマであります「農業協同組合の分割に伴う労働関係について」の議論に移りたいと思います。

 本日は、農業協同組合の分割の担当部局として農林水産省経営局、農業協同組合の関係労使として全国農林漁業団体職員労働組合連合(全国農団労)、全国農業協同組合労働組合連合会(全農協労連)、そして全国農業協同組合中央会(JA全中)の皆様にお越しいただいております。お忙しいところ、どうもありがとうございます。

 それでは、最初にそれぞれから資料等の御説明をいただき、全ての報告が終わった後にまとめて質疑応答、議論を行いたいと思っております。

 それでは、まず農林水産省から農協における分割の仕組みについて御説明をお願いいたします。

○農林水産省 農林水産省協同組織課の岩崎と言います。よろしくお願いいたします。

 私のほうから農協の概要につきまして御説明させていただきたいと思います。

 まず、資料2のほうが提出させていただいている資料なのですが、1ページ目をごらんください。こちらのほうは農協の性格ということを記述しております。農協につきましては、農業協同組合法という法律を根拠にしております。こちらのほうで農協についての設立根拠とかそういうものが書いております。

 まず、農協というのはどういうものかと申しますと、農業者が自主的に設立した組織でございまして、農業者が農協を利用することでメリットを受けるために設立した協同組合でございます。

 設立に当たりましては、15人以上の農業者が発起人となりまして、組合員たる資格を有する者が参加しまして設立総会を開催し、その発起人の方々が行政庁、農協の監督関係で申し上げますと、通常のいわゆる農協というところにつきましては都道府県、連合会等ございますが、そちらのほう。もしくは県を越えるような農協でございましたら、農林水産省、農林水産大臣が認可を受け付けますが、認可申請を受けて、認可を得て設立するというような形で、認可で設立された法人でございます。

 法人の性格でございます。こちらのほうは農協と株式会社を比較した表になっておるのですけれども、株式会社につきましては、株主の出資により設立する組織でございまして、基本的には1株に1票を基本としており、脱退につきましては株式譲渡を基本としております。

 剰余金の配分につきましては、出資配当というものが基本という形になっております。

 それに対しまして、農協につきましては、一定の資格要件を満たす組合員の自主的な相互扶助組織ということになっておりまして、1組合員が1票を持っており、加入脱退の自由ということで、これは協同組合原則にのっとっているのですが、加入脱退の自由。

 剰余金の配分は、利用高配当を基本としておりまして、利用高配当以外に出資配当も行っておりますが、こちらのほうは一定率以内としまして、農協の場合であれば年7分、連合会は年8分という形で、出資配当につきましては制限がされております。

 法人の事業の利用者につきましてでございますが、株式会社につきましては特段限定がないかと思いますが、農協におきましては組合員が利用することが基本ということになっております。

 そのため、組合員以外の者につきましても利用することは可能ですが、一定量の員外利用規制というものがございます。

 法人税率等につきましては、株式会社は現在25.5%でございますが、農協につきましては協同組合ということでございまして、若干軽減されておりまして、19%という形になっております。

 事業の範囲でございますが、株式会社におきましては、金融とか保険とか、そういう一部の事業につきましてはさまざまな業種規制、制限がございますが、基本的には定款で定めれば自由に事業を行えることになりますが、農協におきましては、農協法で定める事業ということで、法律のほうに行える事業が列挙されております。こちらの範囲内でそれぞれの農協でどういう事業を行うかということを定めております。

 また、よく話題に上るのですが、独占禁止法の適用関係等につきましては、株式会社は全面適用ということになりますが、農業協同組合につきましては、農業者が集まってできた協同組合ということでございまして、共同行為につきましては適用除外ということになっておりますが、不公正な取引方法、例えば排他条件付取引とか、そういう不公正な取引方法については当然のごとく適用されることになっております。

 2ページ目は農協の組織についてでございます。農協の組織につきましては、大きく分けて地域レベル、都道府県レベル、全国レベルということで、大体3段階になっているところが多いです。

 地域レベルには総合農協ということで、いわゆる農協というところがございまして、そちらにつきましては現在では694農協。総合農協ということで、さまざまな事業を行っている組合でございます。

 県レベル、全国レベルには連合会等ということでそれぞれ組織されておりまして、都道府県レベル、全国レベルにはそれぞれの事業ごとにそれぞれ連合会がございまして、基本的に指導とか監査を行うような部分につきましては、各都道府県に農業協同組合中央会、全国レベルには全国農業協同組合中央会というものがございます。

 経済事業は、一般的に農産物の販売とか営農とか生活資材とかの供給を行っている事業でございますが、都道府県レベルでは経済農業協同組合連合会、全国レベルでは全国農業協同組合連合会、いわゆる全農という組織がございます。

 信用事業、いわゆる金融事業につきましては、都道府県レベルには信用農業協同組合連合会、全国レベルには農林中央金庫というものが存在しております。

 共済事業、一般的に言うところの保険事業の関係につきましては、都道府県レベルの連合会は現在存在しておりませんで、全国レベルに全国共済農業協同組合連合会というものがございます。

 以前、都道府県レベルにも共済農業協同組合連合会というものがございましたが、12年4月に一斉統合ということで、全国共済農業協同組合連合会に統合しております。そのため都道府県レベルには共済関係の連合会がないということになっております。

 言い忘れましたが、経済農業協同組合連合会につきましても、以前は各都道府県にございましたが、今、組織再編というか、組織統合ということで、3536の都道府県におきましては、全国農業協同組合連合会、全農と統合しておりまして、各県にある経済連として残っているのが8経済連。こちらの資料のほうに書いてありますが、北海道、静岡、福井、愛知、和歌山、熊本、宮崎、鹿児島のほうに経済連として存在しているところでございます。

 信連については33信連ということで、こちらのほうも統合が進みまして、農林中金に12県のほうが統合されているという状況でございます。

 地域レベルに総合農協というものがございますが、総合農協というのは、ここの事業内容で書かれております経済事業とか信用事業とか共済事業とか、そういうさまざまな事業を行っている農協につきましては、一般的に「総合農協」と言うのですが、このほかに「専門農協」ということで、信用事業とかを行わないで、畜産とか酪農とか園芸といった特定の生産物の販売とか購買事業を中心に行う農協というものがございまして、こちらのほうが719農協ございます。

 組合員につきましては256,000人いるというような状況でございます。

 3ページ目は農協数の推移ということでございます。農協数の推移につきましては、見ていただくとわかるとおり、昭和35年におきましては農協のほうは1万2,050農協ございましたが、25年度末におきましては731農協という形になっております。

2610月1日現在で694農協ということ。

 農協につきましては、農協系統におきまして経営基盤の強化を図る観点から合併を進めてきたという経緯がございます。

 今まで農協につきましては基本的に市町村ごとにございましたが、合併により規模が拡大しまして、複数の市町村を区域とする広域合併が行われております。

 その結果、前のページの総合農協の下のところに書いてあるのですが、1県1JAというような県域を区域とする農協が3農協ほど存在しております。

 続きまして、4ページ目は農協の職員数の推移でございます。こちらのほうは昭和45年からの数字を記載しておりますが、ピーク時は30万人ということで、平成5年がピークになっておりますが、平成24事業年度におきましては21万人台にまで減少しているような状況になっております。

 それぞれの農協の事業の担当職員の状況でございますが、24事業年度のところで見ていただきますと、信用担当部門が26.8%、約27%。共済担当職員におきましては約19%。購買担当職員につきましては約20%。販売担当職員につきましては7.5%。営農指導員につきましては6.7%、約7%。その他、共同利用施設とか、それぞれ施設等を持っておりますので、そういったところに配属されていたり、その他いろいろな事業をやっておりますので、その他の部分で20%ということで農協の職員が配置されているというイメージでございます。

 5ページ目は農協の組合員数の推移でございます。組合員につきましては、正組合員と準組合員という2種類の組合員がございます。

 まず、正組合員につきましては、基本的には農業者ということで、その農協の地区内に住所等を有する農民の方、もしくは農業を営む法人の方が正組合員としての資格を有しております。

 もう一つ、準組合員というのがございます。準組合員につきましては、その農協の地区内に住所を有する個人の方がなることができます。また、その農協から事業に係る物資の供給もしくは役務の提供を継続して受けている者。農協を継続して利用している者であって、その農協を利用することが相当と認められる者。こちらのほうは農協が判断されることになるかと思いますが、そういう方々が準組合員ということで資格が与えられております。

 以前、農協の組合員数につきましては、昭和35年におきましては、組合員トータルで653万人程度いたのですが、平成24事業年度には約1,000万近くの方々が組合員になられているという状況でございます。正組合員につきましては年々減っておりますが、準組合員については年々ふえているということで、現在では準組合員が正組合員を上回っている状況ということになっております。

 6ページ目は組合員の年齢構成でございます。こちらの表を見ていただくとわかるとおり、70歳以上の層が正組合員の約4割を占めており、この世代の方々の出資金とか事業利用が次世代にうまく継承されない場合は、若い方々が農協とかをうまく利用していただかないと、農協運営に大きな影響が生じるおそれがあるという現状でございます。

 7ページ目は農協の事業についてでございます。農協はさまざまな事業を行っておりますが、主な事業について簡単に説明させていただきたいと思います。

 7ページ目のところに書いてあるのが農畜産物販売事業でございます。こちらのほうは、農業者の協同組合ということで、農協のメインとなるような事業かと思いますが、こちらの事業の内容としましては、組合員が生産した米や青果物、畜産物などを販売する事業でございます。

 この事業の流れといたしましては、農協におきましては組合員から米とか生産物の販売委託を受けまして、先ほど組織のところでございました連合会に対して販売の再委託とか、もしくは卸売市場などを通じて農家から預かった農産物を販売するという形になって、委託したものを販売するケースが一番多い手法でございます。

 一部では組合員からの買取販売とか、実需者・消費者への直接販売とか契約販売を通じた形での販売行為を行っているところもございますが、金額的にはあまり大きくはなく、基本的には販売委託という形で行っていることが多い形になっております。

 農協の取扱高につきましては、昭和60事業年度の6.6兆円がピークになっておりまして、平成24事業年度では約4.2兆円という形になっております。

 次に、生産資材購買事業につきましてでございます。こちらにつきましては、農協が農業者の集合体ということでございまして、農業生産に必要な生産資材を農家、組合員の方々に販売するということでございまして、肥料とか農薬とか農業機械などを共同購入し、組合員に対しまして供給する事業でございます。

 通常の事業の流れといたしましては、組合員から農協が予約注文という形を受けまして、一定程度集めた形で全農や経済連に対しまして注文を集約しまして、全農や経済連が肥料メーカーとか農薬メーカーなどと価格交渉を行って、その結果、農協を通じて組合員へ供給するというような流れになっております。

 また、農業者は取り扱う分量というのがさまざまでございますので、大口利用者につきましては割引等の対応も行っております。

 こちらのほうの生産資材購買事業の取扱高につきましては、昭和59事業年度の3.4兆円がピークになっておりまして、24事業年度では約2兆円程度というような取扱高になっております。

 事業規模的なものをちょっと見ていただくと、8ページ目の下の右側のところにちょっと書いてあるのですが、全農さんの規模、売上高が5.1兆円ということで、三菱商事には及ばないのですが、三井物産とか住友商事とか伊藤忠商事とか、その付近とは同程度の規模ということになっております。

 9ページ目です。このほかに利用事業、加工事業、農業経営事業というものも農協では行っております。

 利用事業につきましては、カントリーエレベーターとか育苗センター、もしくは農産物直売所などを設置しておりまして、こちらのほうは組合員が共同利用する事業でございます。最近では、これは上物というものになりますので、稼働率が低下したり、合併が進展したおかげで施設の余剰ということが発生しておりますので、そういったものをうまく活用もしくは再配置するということが課題になっております。

 加工事業につきましては、例えばお茶とか乳業とか、組合員が生産した農産物を加工する事業でございます。加工事業を行っている農協は401農協ございまして、約4割の農協につきましては加工品の商品開発に取り組んでおりますが、近年では例えば女性部の方々が中心となって、小規模なものとか地域の事業者と連携した取り組みを行っている例もございますが、あまり多くはないという状況でございます。

 農業経営事業は、農協が直接または出資などをしまして農業経営を行うという事業でございます。こちらのほうにつきましては、現在この事業を行っているのが54農協、経営農地面積は170ヘクタールということでございます。

10ページ目は生活物資購買事業ということで、先ほどの購買事業と異なり、生活物資に絡む購買事業ということでございまして、プロパンガスや食料品など、組合員の生活に必要な物資を共同購入して供給する事業でございます。一般的に皆さん方がよく見られるAコープとかそういうものが農協の生活物資購買事業ということでございまして、近年では農協直営から子会社とかそういう会社に店舗事業のほうを移管するというケースがふえているような状況でございます。

 このほかに老人の福祉事業とか、その他生活関連事業というものがございます。こちらのほうにつきましては、地域のボランティア活動、介護保険事業など、そのような事業を行っているものでございます。

11ページ目は信用事業の関係でございます。こちらのほうは一般的に貯金とか貸し付けを行っている事業でございまして、農協の全体的な事業規模につきましては、農協全体で91兆円ということで、こちらの貯金残高のほうを見ていただくと、三菱東京UFJ130兆、三井住友銀行が98兆、みずほ銀行が97兆ということで、みずほ銀行並みの事業、取扱高というか、貯金残高ということになっております。

12ページ目は共済事業についてでございます。共済事業につきましては、いわゆる保険事業でございます。こちらのほうは、組合員の事業・生活に生じた事故による損失を救済する事業ということです。

 事業方式としては、農協と全共連の共同元受方式ということで、農協と全共連が共同で組合員との共済契約を締結するような形で事業を実施しております。すみ分けとしては農協が普及とか推進とか事故受付など支払い事務を行い、全協連では商品開発とか引受審査、もしくは保険料で集めました責任準備金等の積み立て・運用等を行っております。

 事業規模的には、下の表に書いてあるとおり、生命におきましては、日生には劣りますが、第一生命とかそういう保険会社と同等ぐらいの資産規模がございまして、損害保険では損保ジャパンとか東京海上、そのような損保会社と同様の規模ということになっております。

13ページ目は「与党取りまとめを踏まえた法制度の骨格」ということで、こちらのほうから今回導入します組織分割の背景となったものでございます。

13ページ目に提示させていただいておるのが、農林水産業・地域の活力創造本部が官邸のほうに設置されておりまして、この創造本部というのは、内閣総理大臣が本部長となっておりまして、内閣官房長官、農林水産大臣が副本部長となっておりまして、2月13日に決定されたものでございます。

 左、右になっているものは2月13日に決定されたのですが、その前に左側を見ていただきますと「平成26年6月与党とりまとめ」と書いておりますが、こちらは昨年6月に与党で取りまとめられまして、「農林水産業・地域の活力創造プラン」として政府で決定されたものでございます。

 この中で組織分割につきましては、14ページ目の(3)、昨年6月段階の取りまとめの中で、「単位農協の事業の対象者(担い手農業者・兼業農家・地域住民)が複雑化する中で、それぞれのニーズに応じて事業を適切に運営する観点から、事業の内容、対象者に応じて、子会社の活用など、適切な組織形態を選択できるようにすることも必要である。その際、単位農協が実際上地域のインフラとしての側面を持っており、組合員でない地域住民に対してもサービスを提供していく必要が生じているが、一方で農業者の協同組織という農協法制の下では員外利用規制は本質的なものであり、対応に限界があることに配慮する必要がある」ということ。

 その下の○のところに「必要な場合には、JAの組織分割や、組織の一部の株式会社・生活協同組合等への転換ができるようにする」ということで、組合員もしくは地域住民のニーズに応じた形での組織形態をとれるように、その中での組織変更とか組織分割という手法を考えましょうということで、取りまとめで記載されているところでございます。

 今般2月13日に、農林水産業・地域の活力創造本部におきまして、農協について、その選択により、農協みずからが判断しまして組合を設立する新設分割や組合から株式会社、消費生活協同組合等への組織変更ができる規定を置くということで、そういう法制度の骨格というものが決定されたところでございます。

 組織分割の背景となった部分は、この決定に従いまして我々としては法制化に向けて現在検討中という状況でございます。

 ページをおめくりいただきまして、17ページ目のほうに規制改革実施計画というものがございます。こちらは昨年6月に閣議決定されたものでございますが、18ページの18というナンバリングのところに「組織形態の弾力化」というものがございまして、こちらの中で「単協・連合会組織の分割・再編や株式会社、生協、社会医療法人、社団法人等への転換ができるようにするための必要な法律上の措置を講じる」ということで、規制改革の実施計画の中に記載されておりまして、その実施時期につきましては、平成26年度に検討・結論、法律上の措置が必要なものは次期通常国会、今、開催されています通常国会に関連法案の提出を目指すということで、閣議決定、規制改革実施計画というもので方向づけがされているところでございます。

19ページ目につきましては、順番が前後してしまうのですが、農協のガバナンス関係の話でございまして、なかなかいい資料がなかったので、法律上の条文のほうを提供させていただいておるところです。

19ページ目が総会関係の農協法上の規定でございまして、株式会社と同様、農協には総会というものがございまして、こちらのほうは毎事業年度1回招集しなければならないというふうになっております。その総会では何を決定するかということでございますが、こちらの四十四条のところに書いてございますが、定款の変更とか、各種規程の設定・変更、事業計画の設定、もしくは財務諸表とかの決定などが総会で決定されることになっております。

 四十六条というのが下段の真ん中ぐらいに書いてあるのですが、例えば定款変更とか組合の合併とかにつきましては総会の特別議決ということで、通常だと過半数の議決で承認されるのですが、議決権の3分の2以上の多数による議決が必要という形になっております。

20ページ目につきましては理事会関係の規定でございます。理事会におきましては、株式会社で言うところの取締役会に似たようなものでございまして、いわゆる執行機関ということで設置されております。その業務としては、理事会が組合の業務を行うというところでございます。理事の職務としましては、真ん中辺に書いてあるのですが、三十五条の二、理事は法令、法令に基づいてする行政庁の処分、定款とか総会の決議を遵守し、組合のため忠実にその職務を執行しなければならないということで、法定されております。

 また、理事の中から代表理事を選任することになっておりまして、こちらのほうは三十五条の三ということで、「理事会の決議により、理事の中から組合を代表する理事を定めなければならない」ということになっております。こちらのほうは株式会社とかの代表取締役みたいなものでございます。

 また、株式会社等と同じように監事という者もおりまして、こちらのほうは三十五条の五に書いてあるのですが、「監事は、理事の職務の執行を監査する」ということになっておりまして、監事の職務としては、使用人とか理事とかに対しまして事業の報告を求め、組合の業務及び財産の状況の調査をすることができますし、また、理事が不正の行為をするおそれがあると認めるときは、それを理事会に報告しなければならないということになっております。

 1ページめくっていただきまして、21ページ目は合併関係の規定でございます。現在、組織分割につきましては、その手続につきましても先週決定した段階ということで、具体的なところは現在検討中ということでございますが、同じような組織再編に係る農協法上の仕組みとしまして合併というのがございまして、その合併の手続、農協法上の規定でございます。

 四十九条、五十条に合併に当たっての債権者保護手続が規定されておりまして、合併は認可でございますが、そのときの審査というか、見るべき点というものが六十条のところに規定されております。

22ページ目につきましては経営局長通知ということで、行政庁のほうの認可を受ける際の審査要領ということで、局長通知で定めております。こちらの審査要領に基本的事項とか形式的事項、定款の内容に関する事項というものが書かれているとおり、こういった観点できちんと審査しなさいということで書いております。

 ちょっと時間が延びまして大変恐縮でございますが、農協についての手続の関係の資料の御説明でございます。

 分割に当たりましては、現在まさに検討中ということで、具体的な手続は今、検討している段階で、提示できるものはございませんが、今後ほかの制度等々を見習いながら具体的に詰めていくというような状況でございます。

 申しわけございません。以上でございます。

○荒木座長 どうもありがとうございました。

 それでは、こちらの事務局から資料の説明をお願いします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 それでは、資料3の御説明をいたします。

 1ページ目をご覧ください。一番上の四角囲みのところですけれども、今回検討するに際しての視点を書いております。株式会社や合同会社の分割については、労働者保護の観点から労働契約承継法が定められているが、農業協同組合の分割制度の導入への対応を考えるに当たっては、株式会社や合同会社との違いを検証することが必要ではないかと記載しております。

 点線の中については、労働契約承継法の趣旨、労働契約承継法の内容を書いております。こちらは第1回の資料と同様でございます。

 2ページ目は株式会社の分割・合同会社の分割における主な手続を整理したものです。

 左の欄にございますように、分割契約、分割計画、株主総会、総社員の同意、行政庁の認可、株主保護手続、債権者保護手続、効力発生、登記などの手続が定められています。

 農業協同組合の分割については、先ほど農水省様の説明がありましたけれども、農業協同組合の合併や会社分割等の仕組みを参考にしつつ、現在検討中ということになっております。

 3ページは、参考ですけれども、第2回でお示ししたものと同様で、株式会社の会社分割手続の流れを整理したものです。第2回と同様ですので、説明は割愛させていただきます。

 4ページは、合同会社の会社分割手続の流れです。こちらも第2回と同様ですので、説明は割愛させていただければと思います。

 続きまして、参考資料の御説明をさせていただければと思います。

 参考資料は「農業協同組合の組織の変動に伴う労働関係に関する裁判例について」ということで、2つの事例を御紹介したいと思います。ページをおめくりください。

 まず、大曲市農業協同組合事件です。事案の概要です。

 旧X農協を含む7つの農協が合併してY農協が新設され、合併後、Y農協は就業規則に基づく統一した退職給与規程を新たに作成したが、退職金の支給倍率が旧X農協のものより低いことから、一方的に労働条件を不利益に変更するもので効力を有しないとして、旧X農協からY農協に引き続いて勤務していたAら(3名)がY農協に対し旧X農協の支給基準による退職金と既に支払われた新規程によるものとの差額の支払いを求めた事案。

 一審は労働条件の不利益変更に「合理性あり」としてAらの請求を棄却したが、二審は「合理性なし」として容認した。Y農協はこれを不服として上告した。

というものです。

 判決の要旨です。

 合併に伴う労働条件の統一の論点は、3つ目の○ですので、3つ目の○をご覧ください。

 本件についてみるに、Aらの給与額は合併に伴う給与調整等により相当程度増額され、退職時の基本月額に支給倍率を乗じて支給される退職金額は、支給倍率の低減による見かけほど低下しておらず、Aらが被った実質的不利益は決して二審判決がいうほど大きなものではない。他方、一般に、従業員の労働条件が異なる複数の農協、会社等が合併した場合に、労働条件の統一的画一的処理の要請から、旧組織から引き継いだ従業員相互間の格差を是正し、単一の就業規則を作成、適用しなければならない必要性が高いことはいうまでもないところ、本件合併に際してその格差を是正しないまま放置するならば、合併後のY農協の人事管理等の面で著しい支障が生ずることは見やすい道理である。加えて、本件合併に伴ってAらに対する給与調整の退職時までの累積額はおおむねAらの請求額程度に達していることが窺え、また、Aらは、旧X農協在職中に比べて、休日・休暇、諸手当、旅費等の面において有利な取扱いを受け、定年も延長されており、これらの措置は、退職金の支給倍率の低減に対する直接の見返りないし代償ではないにしても、本件合併に伴う格差是正措置の一環として、新規程への変更と共通の基盤を有するもので、新規程への変更に合理性があるかの判断に当たって考慮できる事情である。

としております。

 最後の○です。

 新規程への変更によってAらが被った不利益の程度、変更の必要性の高さ、その内容、及び関連するその他の労働条件の改善状況に照らすと、本件における新規程への変更は、それによってAらが被った不利益を考慮しても、なおY農協の労使関係においてその法的規範性を是認できるだけの合理性を有するもので、新規程への変更はAらに対しても効力を生ずるものである。

とした事案です。

 続きまして、神奈川信用農業協同組合の割増退職金請求事件についての御紹介です。

 事案の概要です。

 一定の要件を満たした従業員から退職の申出があった場合に、その承認のもとに定年扱いとして退職金を割増しとするという就業規則上の選択定年制を有するX農協は、経営破綻による事業譲渡、解散の方針及び選択定年制に基づく退職の申出を承認しない方針を決定し、その後、全従業員を解雇し、その事業全部をY農協連合会等に譲渡して解散したところ、本件選択定年制に基づく退職の申出をしたが承認されなかったX農協の従業員Aらが、X農協に対し割増し退職金債権を有することの確認を求めた事案。

 一審はAらの請求を容認し、二審もX農協の承諾に係る裁量権の行使(不承諾)が合理的なものであるとはいえないとして一審判決を支持したため、X農協はこれを不服と して上告した。

 判決の要旨です。

 X農協が選択定年制による退職の承認をするかどうかに関し、就業規則及びこれを受けて定められた選択定年制実施要項において特段の制限は設けられていないことが明らかである。もともと、本件選択定年制による退職に伴う割増退職金は、従業員の申出とX農協の承認とを前提に、早期の退職の代償として特別の利益を付与するものであるところ、本件の申出に対し承認がされなかったとしても、特別の利益を付与されることこそないものの、選択定年制によらない退職を申し出るなどすることは何ら妨げられていないのであり、その退職の自由を制限されるものではない。したがって、Aらがした選択定年制による退職の申出に対し、X農協が承認をしなければ、割増退職金債権の発生を伴う退職の効果が生ずる余地はない。

としたものです。

 参考資料の説明は以上です。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、今日お越しいただいている農協の皆様、農協関連の労使関係について御説明を伺いたいと思います。

 まず、全国農団労の書記長、小川宏様から御説明を伺いたいと存じます。よろしくお願いいたします。

○全国農団労 全国農団労の小川と申します。よろしくお願いします。

 私どもの組織の名称は、全国農林漁業団体職員労働組合連合ということで、今から26年、27年前に設立したときは、第一次産業の協同組織の職員の組織化を考えていたわけですけれども、なかなかそこまで行かずに、現在の組織は単位農協、先ほど御説明のあった総合農協がメインです。そのほかに県域の連合会と関連子会社の労働組合も若干組織しておりまして、先ほどの農水省の御説明ですと、例えば県域に共済連という組織はないというふうにおっしゃっていましたが、ただ、ブランチのような形だと思いますけれども、共済連何々県本部というのがありまして、当然そこにも労働者がおりますので、そうした県域の労働者、労働組合も組織しております。

 マル4「組織概要」ですけれども、私どもは原則的に道県を加入のユニットとしておりまして、15道県ありまして、16組織。16組織なのは、島根県に今、申し上げました県域の連合会の労働組合と単位農協の労働組合、2組織あります。それで16です。

 ペーパーの下のほうに行きますと、1県1農協に合併した県域の労働組合、あるいは複数農協が存在しますが、そのうちの1つの農協の労働組合が加盟しているというところで、右方に「単組加盟」と書いてあるところは、そういう複数農協の中の1農協の組合が加盟しているというふうに御理解いただければいいと思います。

 上部団体は、ナショナルセンターとして連合、国際組織とすればIUF(国際食品労連)に加盟しております。

 めくっていただきまして、労使関係の現状です。特に現在係争中の事件というのはありません。

 マル2、マル3ですが、後ろのほうにつけましたアンケートを参照していただいて、現状ということについて述べていきたいと思います。

 マル2「労働時間管理に関する現状」です。結論から申しますと、農業協同組合の現場というのは、ありていに申しまして、労働基準法をきちんと守っていないのではないのかなということであります。近年、私どもの組織内の農業協同組合に対しても労働基準監督署が是正勧告、不払い残業を支払えということがふえております。

 アンケートベースですけれども、例えば労働時間に関して、残業代がどれぐらい支払われていますかということは、9ページの秋期のアンケートの問3というところですが、「殆ど支払われている」という回答は44.4%です。逆に言えば、5割以上が一部もしくは全く残業代が支払われていないというのが一つの現状ではないのかなと。

 同じように、振替休日を完全に取得できていますかということで、11ページの秋期アンケートの問5ですけれども、「殆ど取得している」というのは58.5%。これも逆に言えば、4割が一部もしくは全く取得できていないというのが現状であります。

 こうしたことがありまして、7ページなのですけれども、あなたは今の労働条件に満足していますかという設問であります。「満足」と「まあ満足」を足しても43.2%、「不満」「やや不満」を足しますと48.7%ということで、このアンケートは経年的にとっているわけですが、常に労働条件に関する不満のほうが多いというのも率直な実態なのかなというふうに思います。

 8ページのアンケートは、あなたが「不満」もしくは「やや不満」と答える背景、要因に関してです。最も多いのが業務に対する推進あるいはノルマで66.8%。次は「賃金が安い」という回答で、50.8%。これは複数の選択です。「労働時間が長い」というのが32.9%ということ。「労働時間が長い」というのは、所定内労働時間は一般的で、1,800時間くらいなのですけれども、残業あるいは不払い残業というのが日常化しているところが一つの背景にあるのではないかと私たちは考えております。

 マル3「人事制度に関する現状」です。基本的に定期昇給がある年功型の賃金体系というのが主流でありますが、その中でも最近は複線型の人事制度が入ってきまして、総合職、一般職と分ける単位農協もふえてきております。

 退職給与に関してですが、これはもちろん労使の協議が必要なわけですけれども、かつては在職年数掛ける退職時の基本給のようなシンプルな退職給与規程がメインストリームだったわけですが、最近では別テーブルといいますか、ポイント制ということで、いわゆる等級もしくは役職に比例しており、また別に退職事由係数を掛ける、そうした退職給与規程がふえています。したがって、職員にとってはキャリアパスというのが非常に重要にならざるを得ない実態になるのかなと思っています。

 それに伴って人事考課が行われるわけですけれども、能力開発型ということで入っているわけですが、実際は目標管理というよりもノルマ管理に近いことになっているのではないかなと思います。

 アンケートでどのように言っているかといいますと、<労働条件・職場環境に不満の原因-アンケートより>というところです。これは8ページの秋期アンケート問2というところを御参照いただければいいのですが、先ほど労働条件に対してどう思いますかと。まず、「不満」もしくは「やや不満」の原因です。推進、ノルマがきついというのが66.8%。先ほど述べたとおりであります。推進、ノルマというのは人事考課に密接にかかわってきまして、目標をクリアしなければ、次の考課に悪い反映、影響を及ぼす。したがって、キャリアパスにとっても極めて不利になってくるといったことが背景にあるというふうに私どもは考えております。

 下のほうの目標・ノルマが最も課せられている業務は何ですかというのは、圧倒的に共済契約です。先ほどありました共済を推進。先ほど農林水産省の御説明で、農協は共済連とすみ分けをしておりまして、普及・推進というのがメインの業務になっておりまして、それぞれの農協で目標を立てる。農協から職員一人一人に対して、もちろん専門職もあるわけですけれども、専門でない職員に対しても、数千万とか、あるいは1億、2億の保障金額をとってこなければならないというノルマが与えられているのが実態。結論からすれば、職員にとっても大きなストレスになっているということであります。

 以上が労使関係のざくっとした現状であります。

 労働者の構成であります。現在の農協の職員数というのは、全て合わせて20万人を若干下回っているということでありまして、ざっくりですけれども、そのうちの3分の1以上がいわゆる非正規。農協的に言いますと、直接雇用でも臨時職員とかパート職員ということになっております。私どもの組織で全部の農協を組織しているわけではありませんので、これはあくまで推計ですが、約3分の1は非正規ではないのかなと思います。

 その非正規に関して、属性的に言いますと、もちろん正職員になれなくて、臨時職員で入って、翌年の採用試験で優先的に正職員に登用されるという例もありますけれども、多くは一旦農協を退職して、とりわけ女性の方に多いのですが、臨時職員として再就職されるという方が非常に多うございます。

 何でそうなのかというと、職員の労働条件の一番の不満の原因であります共済等々の推進、ノルマというのは臨時職員には課せられないといったことがありまして、臨時職員にあえてなるということもあります。

 2ページから3ページにかけてですが、私ども労働組合としては、そうした非正規の労働者の労働条件の引き上げ、あるいは均等待遇を要求しているわけですけれども、成果的にはなかなか前進していない。私どもの組織は、農協数で100弱の組織ですが、毎年、そのうちの10以下の農協で若干時給の引き上げ、あるいは均等待遇というところに関して、臨時職員の方に年末一時金を、月数は別として支給される等々ありますが、大分部の農協では非正規の方の労働条件というのは非常に固着したままで、前進していないというのが実態であります。

 マル4です。職員、労働者の属性です。これはあくまで労働組合員ベースですので、簡単に言えば、正規職員であり、なおかついわゆる管理職でない、信用事業あるいは共済事業の担当というのが3分の2近くになっています。先ほど御説明があったような営農、販売とかと購買といった、いわゆるカテゴリーにすると経済事業というふうにくくっているわけですけれども、それが3分の1をやや上回る。それ以外は管理部門とか生活部門、利用事業等々になっております。

 職種間のジョブローテーションというのは、今、述べた経済事業の内部もしくは金融事業の内部というところで異動があるのが大体であります。もちろん、その逆もありまして、経済事業をメインにやっていた方が共済の推進、内部では「ライフアドバイザー」という職名があるわけですが、そうしたところに異動になる例も少なからずあります。

 ただ、実態からすれば、キャリアを追求するローテーションにはなっていないのではないかというふうに私どもは捉えております。

 4は農協の合併・事業譲渡に伴う労働関係の現状です。今までの例で、まずマル1は農協合併です。もちろん、合併すれば、合併した新たな農協に全て労働契約が承継されているのは言うまでもないわけですけれども、労働条件に関して言えば、新しい農協で、特に賃金面で統一されるということが非常にレアであります。特に最近では大規模合併が進んでおりまして、複数というか、例えば10に近い農協が合併する場合がありますが、その場合は10通りの賃金をそのままマイナスの意味で包括承継してきて、なかなか是正されないということがあります。

 特に1県1農協になるような大型合併は、旧農協単位に地区本部として10年近くそのまま存置いたしまして、その中で旧農協の労働条件、賃金等々をそのまま承継している。場合によれば労働時間も旧農協のままということが少なからずあります。

 本年3年に島根県が1県1農協に統合するわけですけれども、今、経営側の合併事務局が言っているのは、少なくとも3年間は旧農協単位の労働条件、賃金、労働時間、そして採用に関しても旧農協ごとに行うといったことが言われておりまして、労働条件の統一性ということに関しては、農協の場合、非常におくれているのではないかなと思います。

 2つ目の例は事業譲渡です。これも先ほど御説明があったように、アウトソーシングといいますか、子会社化してそこに事業譲渡するという例。もしくはそれぞれの農協が直営でやっていた事業を県域で経済連ないしは全農の県本部が、ありていに言えばスポンサーとなって県域の子会社を立ち上げて、そこに事業譲渡する例がありますけれども、特に生活部門、Aコープというスーパーマーケットのような部門、燃料部門、LPガスとか自動車燃料、あるいは農業機械の修理とか自動車等々の修理、いわゆる現業部門がそうしたアウトソーシング化にしております。今も進行形で進んでいますけれども、かつてかなりの農協で、あるいは県域で進みました。

 当然分割先、事業譲渡先には労働契約が承継されているわけですが、私ども労働組合の主張・立場は、民法上の絡みからして、雇用契約が変更になる場合は本人同意がまず原則だろうということであります。

 労働組合としては、母体である農協に残すということも選択肢を要求しているわけでありまして、農協もそれを認めるわけですが、ただ、業務の性格上、現業部門は専門性が高いので、金融や一般的な経済事業の経験、スキルがないということがありまして、大体新たな事業譲渡先、子会社のほうに本人が同意して転籍していくということであります。もちろん、その場合、労働条件に関しては包括承継するということを労使間で協議し、合意しているということであります。

 今後の農業協同組合の分割に伴う労働関係であります。

 マル1は、本会の趣旨に沿うかどうかわかりませんけれども、私どもとすれば、農業協同組合を分割することは基本的に反対であるということであります。

 先ほど農林水産省のほうから、農協というのは地域のインフラ機能があって、農業者の組合以外の方も利用している、それに適応して生活協同組合あるいは株式会社化ということを政府のほうでは検討されているというふうにお聞きしましたが、先ほど述べたとおり、実際に地域にお住まいの農業協同組合の組合員以外の方が利用する例えばスーパーマーケットとかLPガス等々に関しては、かなりの部分で子会社化し、アウトソーシングして、今の農業協同組合本体で員外利用規制に抵触するような例というのは大分解消、少なくなっているというのが事実であります。

 それ以外に、今、準組合員ということで利用していただいていますけれども、農業者でない準組合員の方が利用されているのは信用事業とか共済事業でありまして、これもアウトソーシングするのか、株式会社にするのかというと、これは農業協同組合がユニバーサルサービスを提供する観点から見て、農業協同組合の運営、事業を極めて阻害するという観点で反対だということであります。

 マル2です。今、述べたことに関連しまして、今、現行法でも単位農業協同組合から信用事業を例えば信連あるいは農林中金に事業譲渡することは可能でありますが、ただ、その場合、当該農協で担当していた職員の労働契約までは承継すべきではないのではないかと考えております。

 その理由は、先ほど申し上げましたとおり、今、信用事業の担当をしている、あるいは共済事業を担当している職員も一定の期間でジョブローテーションがありまして、他の業務にも当然異動するわけであります。そうした中で、農協の特殊性かもしれませんけれども、地域におけるワンストップサービスを提供していくというのは、労働者、職員についていくスキルでありまして、そうしたことが阻害されることになるという理由で労働契約の承継はするべきではないのではないかと考えております。

 また、信連とか農林中金というのは基本的にはホールセールでありまして、リテール機能を持っていません。地域における信用事業、金融事業等々の金融サービスという観点から考えれば、支店になるかもしれませんけれども、その職員は、そこで農協からの在籍出向という形で、ジョブローテーションがありつつ、引き続き労働することが望ましいのではないかと考えております。

 共済連に関しては今回の改正にはないように伺っておりますけれども、仮に将来、共済事業が事業譲渡する、あるいは共済連が株式会社化するという事態になっても同様の観点で考えております。

 最後ですけれども、単位農協が新たな農協を設立して分割される場合というのは、非常に悩ましいわけであります。今までそのような経験もないわけでありますから、原則的には雇用、労働条件は承継されるということが当然だと考えますが、どのような切り分けで新農協が設立されるかによりますけれども、その場合も母体となった農協から在籍出向をすることが望ましいのではないかと我々は考えております。

 以上です。

○荒木座長 小川様、ありがとうございました。

 それでは、引き続いて全農協労連から御説明、御意見をいただきたいと思います。全農協労連からは財政部長の黒部清明様においでいただいております。よろしくお願いします。

○全農協労連 よろしくお願いします。紹介いただきました全農協労連の黒部と言います。提出しました資料に基づいて説明させていただきます。

 全農協労連は、正式名称のとおりでして、農協並びに農協の連合会を中心とした労働者により、記載のように1956年に設立されています。

 ちょっと飛びますけれども、構成組織のマル4組合員数は2万9,600ほどで、なかなか農協の組織自体がわかりにくいと思いますし、なおかつ労働組合の組織形態についてはよりわかりにくいと思いますので、先ほどの農水省の岩崎さんの資料と重複するような形ですけれども、うちなりに整理した農協の組織をつけておりますので、これも拝見いただきながら、説明していきたいと思います。

 概して農協の労働組合への組織率というのは高くありません。特に上部団体の加入状況というと、職員組合レベルのところを含めると相当数あるのかもしれませんが、先ほど来出ていますように、「農協組織について」というところで言うと、単協で21万ほど。なおかつ臨時・パートの方が4万2,000人全国でいるというふうに言われていますので、トータルでは単協というところには253,000人ほどの労働者がいます。

 経済連は8県。

 全国統合した全農並びに全農の各県本部が35県あって、全農総体では8,200人ほどの職員と言われていますし、同様に、47都道府県が一斉に統合した2000年には全協連に6,200人ほどの職員。信連のところに「(10県は農中と統合)」とありますけれども、これは先ほどあったように「12県」が直近の数字では正しいと思います。

 ここは人数がわからないのですが、都道府県中央会、全中で2,000人ほどいるのでしょうか。聞いたら失礼なのですけれども。

JA全中 130人です。

○全農協労連 それは全中ですね。

 都道府県中央会から。

JA全中 2,300人。

○全農協労連 そのぐらいの職員がいるということですので、先ほど小川さんのところの組合員数並びに当労連2万9,000ほどというレベルの組織率になっているということが残念ながらあるということです。

 組織対象は今、申し上げたとおりで、関連会社や関連団体なども含めて組織していますが、当労連で言うと、2万9,000人のうち約9割、2万6,000人ほどが単協、いわゆるJAの労働組合の組合員となっています。

 どのように労働組合を構成しているかということなのですけれども、ほぼ小川さんのところと同じなわけですが、単協、農協のところで言うと、県単位を基本としています。県単位で言うと、複数の農協の労働組合の連合体組織のところもあれば、単一体組織のところもある。小川さんのところにもありましたが、県内で1つないし2つのところだと、全農協労連に農協の単位の労働組合として入っているところもある。それを合わせて28ということになります。

 「分会:193」と書いてありますが、これが単協の数と思っていただければいいのですけれども、実際全農協労連に入っているのは164です。そのほかに、先ほどもありました専門農協でありますとか、産直センターでありますとか、農協がつくっている関連会社の労働組合も入っています。あと、北海道では、今、合併して4つか5つ、農業共済組合というのがあるのですが、そこの労働組合も入っている。

 連合会労組のほうは、単組数にすると30単組になります。ここに書いてあるとおり、都道府県単位の連合会、ないしは今は全農、全共連は全国統合していますので、その県本部の労働組合が複数で単一組織をつくっている。つまり、全農○○県本部、全共連○○本部、信連、中央会。一番きれいなのは、この4つが単一の労働組合をつくって全農協労連に入っているということですけれども、それが4つではなく、2つだったり、3つだったりというところもありますが、そういった加入の単位になっている。

 並びに連合会が持っている関連会社、並びに全国レベルの団体というのは、農業新聞、これは会社になっていますけれども、出版関係をやっている出版・教育団体の家の光とか、そういった労働組合は個別に入っていますし、それらを合わせて30単組となっています。

 そのうち会社組織の労組が3つで、これは連合会からの関連会社ということですが、今言った家の光や農業新聞など全国レベルの労組が4つとなっているという状況です。

 執行体制、組織体制は見ていただければと思います。

 「農協組織について」のところで一番下に「関連会社」と書いてありますが、これは個々の農協の関連会社、全農あるいは全共連の関連会社、それぞれありますけれども、全農だけで今、120ほどの関連会社を持っているというふうに聞いております。

 労使関係の現状です。1つは労使交渉の形態ですが、基本的にはうちに入っている単位の、特に単協労の場合、連合体であったり、単一体でありますけれども、基本的には個々の形態ごとの交渉になっている。個別企業ごとの交渉になっているということがありますが、特に単協労の県組織が単一体になっているところで言えば、県本部が交渉に入る、あるいは何か必要があれば全農協労連も入るということはあります。

 2ページ目にかけて書いてありますが、全農や全共連を統合したところの労使交渉というのは、人事制度は、いずれの連合会、全共連にしろ全農にしろ一本化になっているのですけれども、先ほど言いましたように、労働組合は各本部ごとになっています。全農で言えば旧経済連、あるいは全共連で言うと旧都道府県の共済連単位で労働組合がなっておりますので、経営組織としては一本化になっていますが、労働組合は統合する前の状況になっているという中で、全農協労連としては、「なお」以下に記載しているような対応をとっているということです。

 本日のことにかかわることでちょっと欠落しているのですけれども、労働協約の締結状況についてです。連合会の労働組合については、一般的にいわゆる長文協約が多いです。なおかつ債務的な部分、労働組合活動であるとか、そういった部分が多くて、労働条件、いわゆる規範的部分の記載が弱い傾向があります。したがって、労働協約も基本的には自動更新規定を持っているところが多いのですけれども、連合会においては必ずしも協約を持っているところは多くないです。

 単協については、より協約の締結率は少なくなっていますし、なおかつ長文協約を持っているところは、当労連傘下でいうとほとんどありません。

 個別労の労働条件。先ほど小川さんもおっしゃいましたが、特に共済を担当していない職員も共済契約の推進を行う。そのほか、経済事業を担当していない職員でも購買事業、いろんな生活資材等を推進する、そういった通常の業務以外の業務が課せられています。いわゆる事業推進というふうに言うのですけれども、これらについては、先ほど問題になっていたノルマの課せ方等を含めて、今言った個別の労働条件について協約を持っているところが相当数あるということです。

 「(2)労使関係の特徴」です。それこそ合併に伴って、この十数年の間でも不当労働行為がここに記載の件数起きているということで、総じて農協の経営者には労使対等や、労働者が労働組合の権利を尊重するという意識が欠如しているということ。漠とですけれども、合併して大きくなっているにもかかわらず、そういった農協が多いということが問題だと思っています。

 労働者の構成です。

 その前に、労働者の状態。これも小川さんの指摘のとおりです。労働者の意識の状況でありますとか、あるいは人事制度や労務管理の傾向は共通しているというふうに思います。

 小川さんもおっしゃっておりましたけれども、JA単協段階では、いわゆる総合農協と言われるようにさまざまな事業を行っています。特に金融、信用事業や共済事業は、昨今コンプライアンスを含めて専門性が求められるところなのですが、基本的に異動・配転については、例えば共済だった人が経済関係とかというふうに、いわゆる事業の垣根を超えた異動、いわゆる正職員として採用されるのであれば、そのことを前提としておりますし、もちろん個人によって差がありますけれども、農協の職員たる黒部誰々ということで地域でも見られているので、違和感があるかどうかというのは、個人の受けとめ方かもしれませんが、そういった異動はあるということなのです。

 ただ、私どもとしては、前職を全く無視した業務への配転等については、本人の異議や問題があれば取り組むようにしていますけれども、今言ったことが1つの特徴と言えるかもしれません。

 ただ、傾向としては、経営者側もそれぞれの事業に特化した異動を心がけているというか、明文化したものはありませんが、状況としてはそういう傾向にあるかなと。職員自身も、それぞれの農協が複数やっている事業の中の特定の事業に専門化していく傾向というのはあるやに思います。

 先ほど農水省の資料にもあったとおり、信用・共済の業務に5割近い方がついているというのもあります。これも農協によって違いますけれども、傾向的には先ほどの農水省の全国平均の状況かなというふうに思います。

 あとは、21万の職員と言われていますが、4万2,000人ほどの臨時・パートがいて、25万人ほどいますし、21万人のうちいわゆる正職員と言われる方は、私どもの把握だと172,000人ほどなのです。常用者という表現、要するに、1年なりの期間の定めはあるけれども、反復更新しているという方が21万のうち3万8,000人。ですから、先ほど来出ている21万人というのは、172,000人の正職員と3万8,000人、約4万人余りの期間の定めがあって反復更新している常用者、プラス4万2,000人ほどの臨時・パートという構成になっておりまして、単協で言えば、常用者と臨時・パートを含めると32%ぐらい。非正規雇用の比率というのは、ここに記載の数字になるのではないかと思っています。

 連合会でも臨時職員あるいは嘱託職員、名称はそれぞれですけれども、有期雇用の職員というのは多いですし、なおかつ連合会で特徴的なのは派遣労働者がふえているということだと思います。

 合併・事業譲渡、組織変動に伴う労働問題です。

 農協合併については、3ページ目になります。当然農協法の68条で包括承継ということになっておりますが、先ほど1980年代後半、大曲市農協事件。これは秋田県農協労、全農協労連が組織的に取り組んで、労働条件の不利益変更に伴う判例では有名ですが、こういった切り下げが行われるケースは今でもあるということです。

 マル2として、当労連では、1県1農協のところで言うと、奈良県が一番最初で1999年。2年後かな、香川等、1農協のところがありますけれども、1農協になったところは、要するに、県内の農協が1つになって、県内の農協が会員となってつくっている連合会というのは、農協法の68条2項のほうで包括承継というふうになっています。包括承継は実務的には合併と同じだというふうになってはいるのですが、単協と連合会では労働条件の格差が相当あります。単協間でもあるし、連合会の間でもあるのですけれども、単協と連合会は漏れなく連合会のほうが労働条件がよくなっています。低い単協のほうが1つになって、そこに包括承継されるわけでして、連合会の労働者の労働条件というのは、統一された就業規則のもとでは引き下がっていると。

 包括承継ですけれども、手続的には転籍というふうになっております。もちろん、退職金等は通算されるのですが、転籍の一時金として、今言った年齢層ごとに一定の補償、転籍一時金として補償させるということもやってきましたということです。

 あと、農協の事業の分離・別会社化です。この間でも農協事業の一部、先ほどの図で言うと経済事業、生活購買で言うとAコープ、要するに、スーパー、ガソリンスタンド、あるいは葬祭事業や農業機械、自動車の販売・修理などの部門を別会社化にするということが起きています。多くの場合、農協の100%出資会社というパターンが多いのですけれども、全農協労連としては、基本的に転籍は認めず、出向で対応するよう指示していますが、実際には転籍せざるを得ないという状況もあります。

 この辺も先ほど言った事業の枠を超えての異動を前提として、そのことを是とする職員、労働者とずっとなれ親しんだ事業、仕事をしたいという方で、個々人の考え方も異なるのですが、私どもとしては、第一は本人の意向を大切にして対応するということですけれども、経営者側は、別会社に事業を譲渡するから転籍が必須というふうな物の言いようをしてくるケースが多いのですが、それについては基本的に認めていないということです。

 あと、連合会、特に全農あるいは経済の関連会社ですけれども、ここも単協の分離別会社化と、私たちのほうは事業譲渡、事業を分離して新たに設立した会社に移すので、分離・別会社化としていますが、連合会においてもそういった状況は同じだと思っていますし、基本的な対応についても、単協のところで進めさせていただいたところと同様です。

 (3)の最終のところ、全農の子会社は「100社以下」と書いてありますが、これは「120社」です。250社ほどの会社が今、120ほどになっています。全農と経済連の統合、会社の広域化によって再編成が進んでいるということです。

 4番目として県段階にある都道府県信連の農中への統合ですけれども、先ほど訂正させていただいたように、現在では12県が統合しています。ただ、実態としては、農林中金への統合といっても、農林中央金庫は各都道府県に支店を持っておりまして、多くのところが農林中金○○支店分室という形になっています。場所的にも農林中金が以前から持っていた支店での勤務でなくて、信連が入っていた建物の中で分室としてやっているということが多いです。

 残念ながら、当労連のところに入っている統合した県の組合がないので、労働条件がどのようになっているかというのは詳細にはわからないのですが、少なくとも全員の職員が農林中央金庫、実態としては何々分室に行くケースはほとんどないというふうに聞いています。単協労とか他の連合会の労働組合があるところの話を聞くと、単協に相当数が転籍を強いられた。あるいは首尾よく農林中央金庫のほうに先ほど言ったような形で移った方も労働条件が低下したと。農林中金の水準の労働条件にはほど遠い状況で勤務せざるを得ない状況になっているというふうに聞いております。

 農協の分割に伴う労働関係についての意見ですけれども、先ほど来規制改革実施計画並びに先ほど与党内での整理を含めて、今後農協法の改定等が行われる中で、農協の分割ということも入っておりますが、きょうの趣旨で言うと、その是非を問うところではないというふうに聞いておりますし、そのことは踏まえているつもりですけれども、先ほど小川さんからあった理由と全く同じです。そういう意味で、農協の分割ということについては異議があるというふうに言わざるを得ません。

 ただ、農協の分割に限らず、連合会を含めて、あるいは従前あった分離・別会社化、会社に農協の一部事業を譲渡するという場合に、当然のことでありますが、そういった組織の再編成、変動がある中においても、雇用が奪われることや一方的な労働条件の引き下げがないように法律的な整備を行うことが必要だという御意見を申し上げて、終わりたいと思います。

 以上です。

○荒木座長 黒部様、ありがとうございました。

 それでは、最後にJA全中から御説明、御意見をいただきたいと思います。JA全中のJA改革対策部課長の藤巻美由紀様においでいただいております。藤巻様、よろしくお願いします。

 

JA全中 全中の藤巻と申します。本日はお時間をいただきまして、大変ありがとうございます。

 資料6「JAグループの組織・事業の概要等について」を準備させていただいております。

 内容につきましては、既に農水省、農団労、労連の方が御説明いただいた中身とかぶりますので、今までの御説明を補足するようなところで簡単に説明をさせていただければと思います。

 1ページ目を開いていただきまして、これは基本的な話で、冒頭、株式会社と協同組合の比較がございました。より簡単にさせていただいている表が1ページのとおりでございます。

 農協の事業、さまざまやらせていただいていますというのを2ページ目、3ページ目に記載しております。基本的には農家の方が営農を行うということにつきまして、協同して事業を行っている中身がさまざまあるということでございます。

 2ページの緑の枠囲みの2つ目の○のほうに主な事業を記載しております。営農指導事業、生産資材・生活資材の共同購入、農産物の共同販売、貯金の受け入れ、農業資金・生活資金の貸し付け、生命・建物・自動車などの共済事業、高齢者福祉、介護事業等を行っております。

 3ページ目は、それを具体的に衣食住を切り口といたしまして、記載したのが左側でございます。

 右側は、JAの組織概要ということでございます。1月1日現在で、全国に信用事業を行う総合農協が694となっております正組合員が461万人、地域の生活者で組合員になっていらっしゃる方が536万人となっております。

 職員数は、農水省の統計ベースで211,000人ほど。1農協当たりで295名ということで、約300人程度の職員がおります。実際には1,000人を超える農協から50人ぐらいの職員の農協までさまざまな大きさの農協がございます。

 うち営農指導員が農協には平均で20名ほど、全体で1万4,000人おります。

 事業の規模につきましては、トータルでございますが、信用、共済、購買、販売、厚生ということで、そこにありますような一覧表のとおりでございます。

 1農協あたりで貯金は大体1,200億円程度、共済につきましては4,000億、購買で41億、販売で60億となっております。

 4ページが組織概要で、既に御紹介がありましたものでございます。ちょっと古い資料で大変申しわけありませんが、平成25年7月段階のものでございまして、農協数も総合農協703となっておりますが、これが現在は694ということでございます。

 組織再編の関係でございますので、組織再編のありようにつきまして、口頭で恐縮ですが、4ページの表をもちまして御紹介を差し上げたいと思います。

 まず、総合農協につきましては、大きく2つの組織再編を、法律上手当てされているものとそうでないものがございますが、実施しております。それが合併であり、事業譲渡ということであります。事業譲渡は後ほど御紹介いたしますが、信用事業と共済事業の事業譲渡につきましては法律で規定がございます。その他の事業につきましては、農協法の規定にはございませんで、通常の契約行為という形でやらせていただいております。

 県段階につきまして御紹介を差し上げたいと思います。

 上から参りますと、県の中央会でございます。全国につきましては、当方でございますが、全中という組織がありまして、中央会という組織につきましては、全国で48の法人を持っているところでございます。これにつきましては、今般の農協改革の議論の中で県の中央会は連合会に、全国段階の全中につきましては監査法人と一般社団に分かれるというような方向性が示されたところでございます。

 2つ目は、赤で色塗りをしているところでございます。これは経済事業の関係の組織で、全農が全国組織として1つございます。35県におきましては全農の県本部、支店長さんがそれぞれの県本部に置かれておりますので、それをイメージしていただければと思います。ただ、県本部は権限におきまして独自の機能を付与されている部分がございまして、労働組合につきましてもこの県本部ごとに置かれているということでございます。

 このほかに経済事業を行います県組織がございます。これが経済連と呼ばれているものであります。それから県域JAということで4県、経済連という組織がございましたが、県の農協が大きくなって農協のほうに事業が継承された。これは包括承継という手段でやらせていただいております。合併に準じる方法という形で事業が包括承継されたものが奈良、香川、佐賀、沖縄の4県ということです。

 全農につきましては、全農と35県の経済連が合併しました。

 北海道から鹿児島までの8県域が経済連という形になっております。

 次の青い四角囲みの部分が信用事業の関係でございます。信用事業につきましては、これも大きく2つに分かれております。1つは奈良県、沖縄県に代表されますように、47県にありました旧信連のうち奈良と沖縄につきましては、農協のほうに包括承継という形で移されているものでございます。35県域が信連のまま残っておりまして、現在は12県の信連が事業譲渡の方式によりまして、旧信連が担っておりました事業の一部を農林中金に、一部を農協のほうに譲渡されております。

 共済連につきましては、12年4月に一括で県の連合会が全国の連合会と一緒になったというようなやり方でございます。

 そのほか、厚生連もございます。

 そういったことで、組織整備、大きく合併と同類の効用となります包括承継、事業譲渡の方式によりまして、今の組織の形態になってきております。いるというような中身でございます。

 あけていただきまして、5ページはJAの数の推移を掲載しております。おおむね10年ほど前のものからであります

 6ページが合併・事業譲渡の手続についてでございます。

 次のページは、農協の新設合併の手順・手続について、どういう形で行われるかという手順を法律の定めに応じまして書かせていただいたものでございます。基本的には会社の合併と同じような手続をとっておりますが、大きく異なるところだけ御紹介を差し上げたいと思います。

 農協につきましては総代会という組織を持っております。総会が基本なのですけれども、正組合員が多い農協におきましては、正組合員の中から3年に1回選挙で総代を選びまして、この総代によって構成されます総代会というものが実質的に総会の機能を引き継ぐような形で実施しております。合併につきましては、総代会の特別決議によりまして行うことができるとなっておりまして、ただ、この中身につきまして、組合員にその内容を通知して、通知された組合員は、5分の1以上の同意を得て総会の招集をすることができるというような仕組みを一部持っております。そこが株式会社と若干違う面であります。

 新設合併のほうを御紹介いたしましたのは、直近の合併の形態は、従来は救済型の吸収合併のスタイルが多かったところでございます。株式会社ではこちらの吸収合併のほうが多いのが実情かと思います。農協は、直近におきましては救済型というより農協同士が新設する形での新設合併が多くなっているというのが特徴的なところでございます。

 戻っていただきまして、6ページでございます。手続関係につきまして、農水省のほうから法文の規定をもちまして御紹介があったところですが、定款によって定められている部分もございます。

 まず、農協法上に規定されているものといたしまして、合併、信用事業の譲渡・譲受、事業の全部譲渡につきましては、総会の議決によるところでございます。

 注1が下にありますが、一定の規模要件のもと信用事業を譲り受ける場合の組合におきましては、理事会での決定もできるというようなことになっております。

 共済事業の全部譲渡、包括全部移転につきましては、全共連のほうとの共同元受契約になっている関係もありまして、農協では今後あまり例がないのかなということで、この資料では省略をさせていただいておりますが、これも法の規定に基づきまして総会での特別決議という仕組みになっております。

 合併と信用事業譲渡、共済事業の全部譲渡、包括全部譲渡につきましては、債権者保護手続が行われる仕組みが法律上、明文化されているところでございます。

 事業の全部譲渡につきましては総会の特別決議でございますが、債権者保護手続の定めはないというようなことであります。

 そのほか、事業の重要な一部譲渡、事業の全部または一部の重要な譲受、子会社等の設立、株式の取得や出資、こういったものは定款でいずれも総会の決議事項というふうになっているところでございます。

 なお、株式の取得や出資の一部につきましては、一定金額以下の場合は理事会でも決定することができるということであります。

 Aコープ、SS等の事業譲渡につきましては、多くは子会社等を設立いたしまして、そこに事業を移管するという形で行ってきております。これらは御紹介のとおり、いずれも総会の普通決議事項で意思決定を行っているところでございます。

 重立った補足は以上であります。

○荒木座長 藤巻様、ありがとうございました。

 それでは、本日は12時半までの予定となっておりますけれども、残った時間で質疑ないし議論を行いたいと思います。どうぞ御自由に御発言ください。

○金久保委員 全国農団労の小川さんの資料の3ページの4のマル2のところで、転籍は本人の同意が前提となることを農協側と確認しているという記述がありますが、子会社をつくって事業を移すときに、実際に同意しないという人は全体のどれぐらいいらっしゃるか、わかりますか。

○全国農団労 率はわかりません。あったことはありまして、それは母体のほうの農協に残る。もしくは相当レアケースなのですが、母体からの在籍出向ということがあったことはありました。ただ、非常に少ない。ざっくりですけれども、当該のところの担当職員が仮に60としても、1名あるかないかぐらいで、本人の同意を得て、新たにつくられた子会社に転籍するというのが圧倒的大部分であります。ですから、本人が新たなところに行きたくないという反応は多分1割以下ではなかったかなというふうに思います。

○金久保委員 その方たちを出向扱いにして、職場自体は変わらないようなことになっているのですか。

○全国農団労 在籍出向した場合は、農協との雇用契約は変わりませんけれども、今までの私どものケースですと使用者側はあまり出向させず「では、農協本体で別の担当についてね」ということになります。雇用契約は維持しますが、業務に関しては別の業務に移しますと。これがいいか悪いかというのはちょっと別ですけれども。労働組合的にはあまりよくないのですが、そういうことがありました。

 したがって、別の業務につきたくないということで、転籍を選択する労働者が多いのではないかというふうに思っています。

○金久保委員 もう一点なのですが、同じページで、これは同意して移る人のことだと思いますけれども、「労働条件・権利に関しても包括継承することを農協と組合で確認している」という記述がありますが、そうしますと、実際に移った方の経済的な不利益というのは特にないということでしょうか。

○全国農団労 転籍した場合には、もちろん退職金ですとか賃金水準等々を引き継いで包括的に持っていきますから、当面ありませんけれども、ただ、10年たってくると母体であった農協と昇給のベースが違うということが多々ありまして、10年スパンで見ると、年収ベースで言うと上がり方が低いといった不利益は現実的にどうしてもあります。

○金久保委員 包括継承と言っても、賃金表などもそのまま移るということではないということですか。

○全国農団労 そうですね。包括と言っても、農協の場合、賃金表があっても、考課部分というのがありまして、それによって職能給部分が幾つ上がるかという、そうした運用の世界もまたあります。そうしたところであまり上がらないということです。

○金久保委員 わかりました。ありがとうございました。

○荒木座長 どうぞ。

○神吉委員 今のところに関連して、4のマル1のすぐ上のところなのですけれども、合併の場合に、賃金体系が一本化されても旧農協の賃金・労働時間のまま据え置かれるということが問題視されているのですが、基本的には承継していくということは、職務が変わらなければ賃金や労働条件も変わらないということが保障になるというふうな考え方だと思うのですが、それではまだ問題が残る、問題視されているというふうな理解でよろしいでしょうか。

○全国農団労 例えば1県1農協、香川県の例ですけれども、雇用契約に関しては包括的に承継されていまして、合併前のときの労働条件・賃金水準というのは当然承継されているわけです。

 香川県で新たにつくった農協では、賃金表というのはもちろん整備されています。島根県はまだできないそうですけれども。だけども、旧農協単位の地区本部にそれぞれの賃金表を承継されると。これはちょっと法的にどうなのかわかりませんけれども。ですから、ダブルスタンダードといいますか、10農協が合併すれば、11通りの賃金体系が当面残ってしまうという例が大部分、圧倒的です。

○荒木座長 そうすると、全県で1つの賃金体系をつくったのですが、地区の農協自体でやってきた賃金体系を当面は維持すると。全県レベルのものに移行すればよろしいのでしょうが、移行がうまくいかないのは、特定の方を職能資格等でどこに位置づけるか、その辺の位置づけが難しいのか。そもそも賃金体系を統合しようとすること自体が難しいということか。どんな感じでしょうか。

○全国農団労 もう少し説明しますと、新たな賃金表を作り、直近上位で飛びついて、運用がそこでされる場合。もちろん、どこの農協にいたかによって格差があるという意味では賃金が是正されない。島根県などの例もそうですけれども、旧農協の地区本部ごとに何年間、数年間は今までの体系で運用という例もあります。

 この場合の賃金面の是正ができていないというのはその2つの意味がありまして、新たな体系表を運用しているのですが、スタートが違うために、額としての格差が生じている。体系自体はまた別だと。2つの面での是正ができていないという意味です。

○荒木座長 先ほど紹介がありましたが、大曲市農協事件は、8つぐらいの農協が合併して、統一的な労働条件にするために就業規則を変更して、その変更で不利益をこうむる方がいるのですが、変更自体が合理的であれば、それで統一ができると。そういう最高裁の判決が出ておりますけれども、そうしますと、合併したとしても、地区単位で全県単位のものに就業規則を変えてしまえば、法的にはそれで統一することができるように思うのですが、そういうことが実際上はなされていないということでしょうか。

○全国農団労 賃金表は別として、労働時間等々は統一するとありますけれども、農協の世界がアバウトなのかどうかわかりませんが、地区ごとの運用というのが特例、別表でまたついていたりということもありました。

 今おっしゃられるように、例えば労働時間をどこで統一するかということによって、どうしても不利益変更をこうむる労働者、旧農協の職員がいますので、ソフトランディングするということで、別表で旧何々地区本部は、何々地区本部はというところで定めた就業規則。今、香川ではそういうのはありませんけれども、そういう運用がなされていたところもあります。

○荒木座長 ほかにはいかかでしょうか。どうぞ。

○富永委員 どうも御説明ありがとうございました。

 同じ資料、先ほど、ジョブローテーションがあるので、分割とか事業譲渡は難しいという話がありましたけれども、業務間の異動については、金融畑とか何とか畑とか、特定の部門で動かすことが多いというふうに伺いましたが、それを超えた異動というのは結構あるのでしょうか。そんなに多くはないという感じなのでしょうか。

○全国農団労 地区によって違いまして、経済畑から金融畑、その逆というところが多いところもありますけれども、信用事業とか共済事業のシェアが高い農協の場合は、金融畑、信用と共済というところでの異動が比較的メインストリームになっているのではないかなと思います。

 先ほど報告したように、今、複線化で、そういう農協では総合職というのが入ってきますと、やはりそこでのスキル、ビルドしていくということがどうしても求められるということではないのかなと思います。

○富永委員 ありがとうございます。

 あと、総合職、一般職なのですけれども、一般職だと業務の変更がなくて、総合職だと変更が多いとか、そういったものではないのですか。

○全国農団労 あまり厳密には運用されていませんね。簡単に言えば、賃金のラインが違うということでありますし、昇格あるいは役席につく場合での差というところではないのかなと思いますけれども。

○富永委員 もう一つだけお願いします。非正社員の方が最近は結構ふえてきているということなのですけれども、臨時職員の方とかも、契約の切れ目で職場を変わったり、業務を変わったりといった、配転に似たことはあるのでしょうか。

○全国農団労 金融検査マニュアルの関係で、非正規、臨時職ですけれども、ある支店にずっといるというのはコンプライアンスに抵触するということで、一定のエリアで非正規、例えば準職員さんあるいは臨時職員さんでも店舗を異動していくということにはなっています。

○富永委員 ありがとうございます。

○荒木座長 どうぞ。

○神林委員 労働組合の方に2点お聞きしたいのですけれども、1点ずつお伺いします。

 1点目は、先ほど荒木さんもちょっとお話しになったところなのですが、なぜそこまで労働条件が農協によって違うのかということと、その結果をどう評価しているか。つまり、全県で1つの組織になったときに、労働条件というのは統一されるべきだというふうに考えていらっしゃるのか。それとも、地域地域の事情が違うから、労働条件は変化というか、違っていてしかるべきだというふうにお考えなのか、そこをまずお聞きしたいと思います。

○全国農団労 労働条件の違いの要因というのは、農業協同組合の形成というか、成り立ちの違いで、例えば一般的な会社で言えば、本社があって、各県に営業本部か何かあって、あとブランチであって、基本的には労働条件に差があったとしても1つの体系であるわけですが、ビルドアップといいますか、それぞれ戦後できまして、先ほど御紹介がありましたけれども、非常に小さい集落、市町村単位の農協が約1万以上あって、それが合併等々で積み上がってきたということ、そういう条件があって労働条件がかなり違うということはあるというふうに理解しています。

 ただ、それがそのまま放置されていいのかということでありまして、先ほど合併によっても賃金面での格差、賃金の体系による格差がまだ放置されているというのはその裏返しでして、それは統一されてしかるべきであろうということであります。

○荒木座長 黒部様。

○全農協労連 農協ごとの労働条件の格差が大きいというのは、以前でしたら、提示されている資料のとおり、農協の数が多くて、そういったことの反映だと思うのですけれども、昨今、資料にあるとおり、例えば最大の規模が1県1農協。あるいは私どもの認識でも、例えば数農協から多くても15から20ぐらいに集約、合併が進んでいます。

 体系云々の問題を除くと、合併が1990年代後半ぐらいからずっと進んで、農協間の経営状況の格差というのが広がっているということ。これは世間で言う賞与、私どもは一時金と言っていますけれども、それの支給月数等々を踏まえると、かなり格差が出ています。一時金、賞与についても。それは農協の経営状況の格差が広がっていることの反映だというふうに思っています。

 労働組合、全農協労連で言えば、もう60年近くになるわけですが、同じ農協に働いているのであれば、同じ労働条件ということは追求しているのですけれども、なかなかそういった状況の克服には至っていないという状況があります。理由については今、言ったようなところかなと。一番大きいのは、経営格差が広がっているということだと思います。

 私どもは、合併に伴って労働条件は統一すべきだというふうに思っています。

 先ほど出ていた話で言うと、賃金体系は、合併したところで旧農協のままというのは、私どもの認識ではありません。簡単に言えば、賃金表は統一されています。ただ、格付をする際に、旧被合併農協、出身農協の賃金を引きずっている。ですから、例えば同じ職位についていても、同じような年齢であっても相当格差が大きい。それを5年ぐらいで是正するということが、合併当初、労働組合に対しても説明があるのですが、それが実際にはなかなか進まないまま来ている。ひどい場合には、当初労使間で口頭上約束した経営者側の是正措置が講じられないまま曖昧になってしまうというようなこともあります。

 逆に1県1農協の場合、連合会を包括承継すると、連合会の出身の職員というのは賃金水準的には高いのです。そうすると、通常、何号俸の定期昇給があるという場合に足踏みをさせられるというふうなことがあります。その辺は、経営者側の理由で言えば、合併したけれども、経営状況があって、計画どおりに賃金の是正、経過措置がとれないのだというふうなことが説明されるということです。そういう状況のところがほとんどになっているということだと思います。

○荒木座長 もう一点。

○神林委員 わかりました。ありがとうございます。

 ということは、今度はその裏返しの質問になるのですが、農協を分割したときに、分割された農協の置かれた状況というのは、恐らくまちまちだというふうに予想することができます。経営状況が全然違うと。ということは、分割された後の労働条件というのは、分割されたときの状況によって大分違ってくるのではないかと思うのですけれども、それはどのようにお考えでしょうか。

○全国農団労 あまり農協の分割というのは想定できないので考えたことがないのですが、当然母体自体の労働条件、賃金なり全部が承継されるべきでありまして、ただ、現実的に農協が分割されると仮定しますと、要するに、農協がある意味では経済事業だけの専門農協化し、分割されて新設されることは、今の流れで言うと想定はできます。するかしないかは全く別として。そうした場合、旧農協の労働条件、賃金体系をしょっていったとしても、多分数年で経済専門農協というのは極めて収支が悪くなるといいますか、支払い能力論で言うとかなり難しくなるのではないかなというふうに思います。そのときどうするかというのは、ちょっと別な問題になってくるのではないかなと思いますけれども、原則的には承継されているのが原則だと思います。

○全農協労連 農協を分割した場合、御質問のとおりの状況にならざるを得ないと思います。今もありましたように、経済事業という場合、ちょっと広いのですが、生活あるいは営農、要するに、農畜産物の販売、農業生産資材の購買事業というのは、多くの農協が赤字の状況です。それを総合農協として全体で何とか収支を維持しているという状況が、昨今の農業情勢もあってより強まっていますので、特定の部門を分割した場合に、専門農協というのがどれほど数が少なくなっているかというのを見れば明らかなとおり、それは労働条件の引き下げにとどまらず、分割した新しい農協なりの経営自体がもたないというふうに思います。

 先ほど農水省の資料にもあったとおり、21万ほどの職員のうち営農指導員が1万4,0006.7%。営農指導という事業は、簡単に言えば、コストを下げて最適な方法で野菜を栽培する、農家にそういう指導をするわけですけれども、営農指導員そのものが利益を上げるということはあり得ません。その一点をとっても、農協が事業ごとに分割するということは、労働条件の問題で言っても御指摘した事態を生むというのは明らかだと思います。

○荒木座長 ほかに何か御質問ございましょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、そろそろ時間になりましたので、きょうはこれまでにしたいと思います。

 岩崎様、小川様、黒部様、藤巻様、きょうは大変貴重な御意見をどうもありがとうございました。今後の審議に役立てたいと考えております。

 最後に、議事の公開、非公開についてですけれども、本日も非公開に該当する理由は特段ないと思いますので、議事録は公開としたいと思いますが、よろしゅうございましょうか。

(「はい」と声あり)

○荒木座長 それでは、異議がないということで、議事録は公開ということにいたします。

 では、事務局から次回についてお願いします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 次回以降の研究会ですが、日時・場所について調整中ですので、追って正式に御連絡いたします。よろしくお願いします。

○荒木座長 それでは、本日の研究会は以上といたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労政担当参事官室
法規第3係 内線(7753)
代表: 03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 第3回組織の変動に伴う労働関係に関する研究会 議事録(2015年2月17日)

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