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2014年12月4日 第1回組織の変動に伴う労働関係に関する研究会 議事録

政策統括官付労政担当参事官室

○日時

平成26年12月4日(木)13:00~15:00


○場所

経済産業省別館11階 1115号共用会議室


○出席者

荒木座長、金久保委員、神吉委員、神林委員、高橋委員、富永委員

○議題

(1)座長の選出について
(2)組織の変動に伴う労働関係について
(3)今後の進め方について
(4)その他

○議事

○田口労政担当参事官室室長補佐 それでは、定刻より少し早いですが、ただいまから第1回「組織の変動に伴う労働関係に関する研究会」を開催いたします。

 皆様、大変御多忙の中お集まりいただき、ありがとうございます。座長が選出されるまでの間、事務局で司会を務めさせていただきますのでよろしくお願いいたします。

 初めに、本研究会の開催に先立ちまして、政策統括官の石井より御挨拶を申し上げます。

○石井政策統括官 政策統括官の石井でございます。

 皆様方におかれましては、大変お忙しい中、また、雨の降った足元が悪い中、御出席賜りまして誠にありがとうございます。

 組織の変動に伴う労働関係に関する立法措置といたしましては、平成12年に商法の改正による会社分割制度が創設されまして、それに合わせて労働契約承継法が制定されたところでございますけれども、最近では規制改革実施計画などを受けまして、会社以外の法人類型、具体的には農協と医療法人につきましても分割法制を導入することが検討されているところでございます。

 また、承継法が制定されてから10年余りが経過をしたところでございまして、この間、会社法の世界では様々な法整備がなされているところでございます。組織の変動に伴う労働関係をめぐる判例も大分蓄積をしてきているところだと思っております。

 この研究会は、このような状況を踏まえまして、実態把握を行って諸課題を整理することを目的としまして、労働法、商法、経済学の学識経験者の皆様方に御参集いただいて設置したものでございます。

 先生方におかれましては、専門的見地から、精力的に御議論賜れれば大変幸いに存じます。どうぞよろしくお願い申し上げます。

○田口労政担当参事官室室長補佐 それでは、早速、資料1の御説明をさせていただきます。

 研究会の趣旨についてですが、石井より御挨拶申し上げたとおりです。

 本日は第1回目ですので、名簿の順番に構成員の皆様の御紹介をさせていただきます。資料1の別紙をご覧ください。

 東京大学の荒木先生でございます。

○荒木委員 荒木でございます。よろしくお願いします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 弁護士の金久保先生でございます。

○金久保委員 弁護士の金久保です。どうぞよろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 立教大学の神吉先生でございます。

○神吉委員 神吉でございます。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 一橋大学の神林先生でございます。

○神林委員 神林と申します。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 立教大学の高橋先生でございます。

○高橋委員 高橋でございます。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 上智大学の富永先生でございます。

○富永委員 富永です。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 学習院大学の橋本先生は、本日は所用により欠席となっております。

 続いて、事務局の紹介をいたします。

 労政担当参事官の青山でございます。

○青山労政担当参事官 青山です。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 労政担当参事官室企画官の田村でございます。

○田村労政担当参事官室政策企画官 田村です。よろしくお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 私は、本日、司会を務めております田口です。よろしくお願いいたします。

 それでは、早速ですが、要綱に従いまして座長の選任に入らせていただきます。

 事務局の案としましては、荒木先生にお願いしたいと考えておりますが、皆様、いかがでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○田口労政担当参事官室室長補佐 ありがとうございます。

 御了承いただいたということで、本研究会の座長を荒木先生にお願いしたいと思います。荒木先生、今後の議事をよろしくお願いいたします。

○荒木座長 それでは、定刻ということでございますので、御指名いただきましたので座長を務めさせていただきます。皆様の御協力を得て円滑に進行させていただきたいと思います。よろしくお願いします。

 それでは、まず、本研究会の議事の公開について確認をしておきたいと存じます。事務局のほうから説明をお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 それでは、資料1、3枚目の「参考」をご覧ください。

 本研究会の議事については、開催要綱のとおり、「原則として公開」としております。ただし、資料の四角囲みにあるような場合、例えば個人情報を保護する必要があるような場合などには、座長の御判断により非公開とするという取り扱いにさせていただければと考えております。

 以上です。

○荒木座長 それでは、今の御提案いただいたような研究会の公開方法について何か御意見はございますでしょうか。

(「異議なし」と声あり)

○荒木座長 特にないということであれば、このように取り扱うということでよろしゅうございましょうか。では、そのようにさせていただきます。

 それでは、早速議事に入りますけれども、「組織の変動と労働関係について」と「今後の進め方について」、事務局のほうから御説明をお願いします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 では、組織の変動と労働関係について、資料2をご覧ください。

 まず、組織の変動と労働関係の概要について御説明いたします。

 2ページですけれども、企業の組織の変動の主な類型として、事業譲渡、合併、会社分割の3つの類型が挙げられております。それぞれ下に図示しているとおりです。

 次に、3ページ、4ページでは、事業譲渡、合併、会社分割の比較をそれぞれしています。

 事業譲渡については、会社法上の定義規定はございません。

 事業の全部または重要な一部の譲渡については、原則として株主総会の特別決議を要するという規定があるのみです。

 合併についてですが、吸収合併、新設合併とそれぞれ会社法で定義がございますが、権利義務の全部を合併後存続する会社、または、合併により設立する会社に承継するものです。

 会社分割についてですが、吸収分割、新設分割、それぞれ会社法に規定があります。事業に関して有する権利義務の全部または一部を分割後、他の会社または分割により設立する会社に承継させることとなっております。

 次に株主保護手続ですが、事業譲渡、合併、会社分割それぞれに規定がございます。株主総会の特別決議、反対株主の株式買取請求権、株主総会における承認など、それぞれ規定が設けられているところです。

 債権者保護手続ですが、事業譲渡については規定がございませんが、合併、会社分割にはそれぞれ規定がございます。官報による公告、既に知られている債権者への催告、異議を述べた債権者に対する弁済、相当の担保の供与、財産の信託についての規定がございます。

 次に、4ページに参りまして、事業譲渡、合併、会社分割の効果と労働契約の承継の際の労働者の同意、異議申立権について御説明します。

 事業譲渡につきましては、特定承継とされておりまして、譲渡会社と譲受会社の合意により、譲渡会社の権利義務を個別に特定して譲受会社に承継するとされております。債務の承継については、債権者の同意が必要とされております。

 労働契約の承継の際には、労働者の同意が必要となっております。

 次に、合併についてですが、包括承継とされております。消滅会社の権利義務の全部を存続会社に包括的に承継するということになっておりまして、労働契約の承継の際には労働者の同意は不要となっています。

 会社分割につきましては、部分的包括承継とされており、分割会社の事業に関して有する権利義務を分割契約の定めに従い、承継会社に包括的に承継するということになっております。

 労働契約の承継につきましては、承継される事業に主として従事している者で、分割契約に承継する旨の定めがないものについては異議申立権がある。

 そして、承継される事業に主として従事していない者で、分割契約に承継する旨の定めのあるものについては異議申立権があるというふうに整理をされております。

 続きまして、5ページ、6ページでは、組織の変動と労働関係に係るこれまでの経緯について整理しました。

 まず、平成11年、産業活力再生特別措置法案、そして民事再生法案の審議において、企業の組織変更に伴う労働関係上の問題の対応について法的措置を含め検討を行うことという附帯決議がされております。これを踏まえまして、平成1112月から、企業組織変更に係る労働関係法制等研究会が設けられました。

 提言の内容としましては、労働契約の承継について、合併については立法措置不要、営業譲渡については、現時点では立法措置不要、会社分割については、国会提出予定の商法の改正案とともに立法措置が講ぜられることが適切とされています。この提言を受けまして、会社の分割に伴う労働契約の承継等に関する法律、いわゆる労働契約承継法が国会に提出されたところです。

 平成12年、労働契約承継法に関する審議において、合併・営業譲渡を始め、企業組織の再編に伴う労働者の保護に関する諸問題については、学識経験者を中心とする検討の場を設け、速やかに結論を得た後、立法上の措置を含め、その対応のあり方について十分に検討を深めることという附帯決議がされたところです。これを受けまして、労働契約承継法制定後、平成13年2月から、企業組織再編に伴う労働関係上の諸問題に関する研究会が設けられました。報告の要点としましては、営業譲渡については一律なルール設定は困難、合併については、全ての権利義務が包括的に承継されるため、基本的には法的な問題はない、会社分割については施行後間もないこともあるので、今後の状況を見つつ、必要に応じて検討することが適当とされています。

 こちらの報告書につきましては、参考資料で補足します。参考資料1に各報告書の提言について概要、報告書を添付してあります。

 平成14年の報告書については、参考資料1の20ページです。こちらに研究会の報告の概要がございます。こちらで営業譲渡について一律のルール設定は困難というふうにされていることについて補足したいと思います。

 営業譲渡については、法的性格、その経済的意義、我が国の雇用慣行、営業譲渡やそれに類する事業・施設の譲渡の多様性を考慮すれば、一律なルール設定は困難とされております。

 以降の報告書本文の中に記載があるのですけれども、法的性格につきましては、合併と会社分割についての権利義務の関係は包括承継、これに対して営業譲渡については特定承継、権利義務関係の承継について異なる仕組みとなっていることを念頭に置かなければならないとされています。

 それから、営業譲渡の経済的意義については、譲渡部門の売却益をもとに新規分野や中核部門に投資を行うなど、企業経営全体の戦略に活用されることから、譲渡部門の雇用は減少するが、新たな投資によって別の部門で雇用が増えることも想定される。また、不採算部門の整理や倒産法を活用した経営破綻事例において活用されることから、企業再生が可能になり、不採算部門の引き受けによって雇用確保につながることも想定されると指摘されておりまして、労働契約の承継について営業譲渡に向けた交渉を阻害するような規定を設けることは慎重にならざるを得ないとされております。

 我が国の雇用慣行については、会社に就職するという意識が強く、会社内での人事ローテーション、配置転換の慣行があり、特定の営業施設と労働者の結びつき方は極めて多様。裁判例にも、本人の意思に反して譲受会社に移るように言われて争いになっているケースが多いということを踏まえ、営業施設と労働者との間に有機的一体性があるものとして固定的にとらえることは適切ではない。そして、EU既得権指令のように、譲渡部門で働いていた労働者が、その営業譲渡に伴って譲受会社に移ると整理をすることには疑問があるとされておりまして、「一律なルール設定は困難である」とされております。

 それから、解雇規制に関してですけれども、この平成14年の報告当時は判例による権利濫用法理でしか対応されていなかったということもありますので、営業譲渡に伴う労働契約の承継ルールのみを法律で定めることはバランスを失すると指摘されております。

 これらを踏まえまして、営業譲渡の際に労働契約関係の承継については法的措置を講ずることは適当でないと結論づけられているところです。

 参考資料から本体の資料にお戻りください。

6ページの報告の要点の最後のポツのところですけれども、円滑に企業組織再編が行われるためには、企業が判例法理を含めた現行の法的枠組みを踏まえ、労働関係に配慮しつつ対応するとともに、労使間で十分な情報提供、協議が行われることが必要であるから、企業組織再編に当たっては、企業が講ずべき措置、配慮すべき事項に関する指針を策定し、その周知を図ることが必要というように結論づけられています。

 その後、平成14年、会社更生法案の審議に際しては、「現在、政府において検討を進めているガイドラインを早急に策定するとともに、施行後、当該問題の実態把握に努めた上で、法的措置を含め必要な検討を行うこと」との附帯決議がされております。

 これも踏まえまして、平成15年4月には、都道府県労働局長宛てに営業譲渡に伴う労働契約の承継や労働条件の変更など、労働関係上の諸問題に関する相談等への対応に当たり留意すべき事項を通知したところです。

 以上がこれまでの経緯です。

 7ページは、組織の変動に係る法制度の主な動きを整理したものです。

 企業が経営効率を高め、組織の再編が柔軟にできるように一連の法整備が設けられております。平成9年、商法の合併手続の簡素化以降、独占禁止法、民事再生法、会社更生法などさまざまな規定が設けられております。

 続きまして、8ページ以降、労働契約承継法の概要について説明いたします。

 9ページですが、まず、労働契約承継法の趣旨です。

 会社分割制度では、分割会社と承継会社が締結または作成した分割契約の定めに従って、分割会社の権利義務が承継会社に包括的に承継されることになっています。このように、労働契約について労働者の意思と無関係に承継されると労働者に与える影響が大きいことから、労働者保護の観点で会社分割の労働契約の承継について会社法の特例を定めるために制定したというものが労働契約承継法でございます。

 次に、労働契約承継法の内容ですけれども、労働契約承継法は、会社分割に当たっての労働契約の承継、労働協約の承継についての会社法の特例、労働者・労働組合への通知、労働者の理解と協力を得る手続について定めているものです。また、関係指針なども制定されております。

10ページは、労働契約の承継及び労働協約の承継について整理したものです。

 会社分割の場合に労働契約が承継されるかは、承継される事業にその労働者が主として従事しているか、分割契約にその労働者が労働契約を承継する旨の定めがあるかによって、以下の4つのケースに分かれております。

 ある労働者が承継される事業に主として従事している場合、分割契約に承継させる旨の定めがあれば承継会社に承継されるということになります。

 主として従事しているにもかかわらず、分割契約に承継させる旨の定めがない場合、会社法上は不承継となりますけれども、労働契約承継法では異議の申出をすると承継会社に承継されるということになります。

 次に、労働者が承継される事業に主として従事していないにもかかわらず、承継会社に承継されるというように分割契約に承継させる旨の定めがあった場合は、こちらは異議の申出をすると承継会社に承継されないということになります。

 そして、主として従事していない場合、分割契約に承継させる旨の定めがなければ、こちらについては不承継ということになっております。

 次に、労働協約の承継についてですけれども、労働組合員が承継会社に承継される場合、原則として当該承継会社と分割会社の双方で会社分割の効力発生前と同一内容の労働協約が労働組合との間で締結されたものとみなすとされております。

 続きまして、11ページ、12ページですけれども、こちらでは、労働者等との協議及び通知の手続について整理しております。

 こちらにつきましては、左のA、B、Cとありますが、労働者の理解と協力を求めること、そして、労働契約の承継に関する労働者との協議をすること、労働者・労働組合への通知をすることということになっております。

 まず、「労働者の理解と協力」についてですけれども、対象となる労働者は、分割会社が雇用する労働者全てとなっております。こちらの労働者を対象に会社分割を行う背景及び理由、債務の履行に関する事項などの協議事項を全ての事業場において、事業場の労働者の過半数を代表する労働組合、または過半数を代表する者との協議をしなければならないと定められております。

 次に、Bの「労働契約の承継に関する労働者との協議」ですが、こちらについては、対象となる労働者は主従を問わず承継される業務に従事する労働者です。協議事項としては、協議対象である労働者に係る労働契約の承継の有無、承継するとした場合、承継しないとした場合の労働者に従事させることを予定する業務の内容、就業場所などについて個別の労働者との協議が必要とされております。

 次に、「労働者・労働組合への通知」ですけれども、こちらにつきまして対象となる労働者は、承継される事業に主として従事する労働者、そして、主として従事する労働者以外の労働者であって、承継会社に承継される労働者、この対象となる労働者に対して分割契約に当該労働者が承継される旨の定めの有無、当該労働者の異議申出期限日などの通知事項を書面で通知しなければならないとされております。

13ページに行きまして、労働者の理解と協力を求めるとされている7条と、個別の労働者との協議をしなければならないとされている5条協議についての判例がありますので御紹介したいと思います。

 「参考」に書いております日本アイ・ビー・エム事件です。こちらについては、7条措置、5条協議に違反がある場合に、労働契約承継の効果を争うことの可否についての判断がされている事案です。

 概要につきまして御説明いたします。

 上告人は、A社における労働者であったところ、A社は事業部門の一部を会社分割しました。その際、上告人の労働契約は分割により新設されたB社に承継されます。この点に関し、上告人が承継手続に瑕疵があるので労働契約がB社に承継されないと主張し、A社に対し、労働契約上の地位確認、損害賠償を求めたという事案でございます。

 判旨については14ページに詳しく書いてありますので、14ページをご覧ください。

14ページ、まず、7条の労働者の理解と協力を定めるということについて、最高裁は、7条の措置は会社分割に対して努力義務を課したものと解しています。7条措置において十分な情報提供がなされなかったがために、5条協議がその実質を欠くことになったといった特段の事情がある場合に5条協議違反の有無を判断する一事情として7条措置のいかんが問題になるにとどまると判示しています。

 次に、5条協議違反(個別労働者との協議)についてですけれども、最高裁は、ある特定の労働者との関係において、5条協議が全く行われなかったときには、労働契約承継の効力を争うことができるものと解するのが相当であるとしています。また、5条協議が行われた場合であっても、その際の分割会社からの説明や協議の内容が著しく不十分であるため、法が5条協議を求めた趣旨に反することが明らかな場合には分割会社に5条協議の違反があったと評価してよく、労働契約承継の効力を争うことができると判示しております。

 続きまして、15ページです。

 先ほど説明した労働契約承継法は、労働者保護の観点から制定されているものですけれども、会社分割に係る商法中の労働者保護の観点からの規定として、法案審議時に以下の説明がされておりますので御紹介いたします。

 まず、会社分割の対象を営業単位とすることにより、会社の財産の個々別々の切り売りによって会社が解体されることがないようにしています。

 それから、各分割する会社、あるいは営業を承継する会社が分割によって債務の履行の見込みがなくなるような場合には分割を認めないとしています。

 それから、債権者保護手続を設けることにしておりまして、労働契約から生じた未払い賃金債権などを有する労働者については、この債権者保護手続により保護を受けることができるとされています。この債権者保護手続の対象である債権者として、労働者は分割に対する異議を述べる機会を与えられているとの説明がされています。

 2番目に申し上げた債務の履行の見込みがなくなるような場合には分割を認めないという点についてですけれども、平成17年改正商法により、債務の履行の見込みがないことは会社分割の無効事由ではなくなっております。

 続きまして、16ページに行きまして、会社以外の法人類型における分割法制導入の検討状況です。

17ページ、農協における分割法制導入の検討状況です。

 農協につきましては、平成26年6月、日本再興戦略、規制改革実施計画により、単協・連合会組織の分割・再編ができるようにするための必要な法律上の措置を講じるとされておりまして、平成26年度検討・結論、法律上の措置が必要なものは、次期通常国会に関連法案の提出を目指すとされております。

 これにつきましては、農林水産業・地域の活力創造プランにおきまして、単位農協の事業の対象者(担い手農業者・兼業農家・地域住民)が複雑化する中で、それぞれのニーズに応じて事業を適切に運営する観点から、必要な場合には組織分割ができるようにするというふうにされております。

 次に、医療法人における分割法制導入の検討状況です。

 こちらにつきましては、日本再興戦略(平成26年6月)によって、会社法の会社分割と同様のスキームを医療法人について認めるとされておりまして、年内に検討し、その結果に基づいて制度的措置を速やかに講ずるとされております。

 こちらにつきましては、産業競争力会議で、地域で必要な医療を確保するため病床機能の分化・連携を推進する観点から、会社法の会社分割と同様のスキームを医療法人について認めるというように説明がされております。

 以上で資料2は終わりです。

 続きまして、資料3の説明をさせていただきます。

 資料3は、「今後の進め方について」でございます。

 本日は第1回目でございますが、第2回、第3回については、農協・医療法人の分割に伴う労働関係に関する検討をしてはいかがかと考えております。

 そして、第4回以降については、個別企業からのヒアリング、裁判例の整理、諸外国の法制度の比較、労使団体からのヒアリングなどを進めていきまして、平成27年夏以降、取りまとめをしてはどうかと考えているところです。

 資料の説明については以上となります。

○荒木座長 ありがとうございました。

 それでは、ただいまの資料の説明等について何か御意見、御質問等がありましたら、よろしくお願いします。

 よろしいですか。何かありますか。

 資料2の15ページで、会社法制定時にいろいろと会社分割についても分割制度を導入したときと少し了解が変わったのではないかというような議論がありました。それについてもここで説明がありまして、最初は履行の見込みがなければ分割はできないというふうなお話だったのですが、その見込みのあることというのが見込みに関する事項ということで、あることというのが要件ではなくなったような議論があるようですが、この辺はどういう状況なのでしょうか。

 高橋先生。

○高橋委員 今回のお話から少し外れるかもしれませんけれども、履行の見込みというのは会社分割の段階での予測でありまして、現時点での黒字・赤字という面では、赤字かもしれないですが、今後の展開としてキャッシュフローが非常に入ってくるかもしれないということがあり得る事業について外に切り出せないというのはちょっと行き過ぎであろうという考え方がありまして、履行の見込みがあることということが分割の要件になるということをやめましょうかという説明になっております。平成17年の会社法では、履行の見込みがあることを開示事項にする、そして、履行の見通しがない場合には分割ができないというような形にはしないというふうになりました。

 その結果、現時点ではもしかすると赤字かもしれませんということが少なくとも周りにわかるようにすれば足りるのではないかということで、事前開示事項にしまして、これは見込みがある、ないということではなく、現時点でこのような状況の事業について切り出しますという情報を提供することになりました。おっしゃられたとおり、この点につきましては会社法では分割の要件にはしないことになっております。立法担当官はそのような説明をしており、一般的にもそのように受け入れられているのですけれども、一部学者の間では、やはり、そうは言っても、赤字会社がいっぱい建ってしまうというのはあまりよろしくないのではないかという見解はございまして、分割無効の原因にしてはどうかという有力説は根強くあるという状況になっています。ただ、実務の方は、きっと見込みがなくても分割できるのだろうというふうに考えていらっしゃるのではないかと推察いたします。

 今、15ページの話が出てきたついでにもう一点申し上げますと、1点目の事業単位の点につきましても、あまり強い意味で有機的一体性を求めるというのではなく、契約書・計画書にどのように書くか、ある程度一体性があればこれは承継して、これは承継しないというふうに個別に除外することも契約書の書き方によっては可能にはなると考えられております。これも商法時代とは若干趣が変わっているかなというところでございます。

 そして、この3点目を言うかどうかはちょっと迷うところではございますけれども、債権者保護手続の中に労働者が含まれるか、これもまた実は難しいところです。債権者保護手続で保護を受ける債権者というのは、弁済期が到来している債権者でなければならないとするのが一般的でございます。労働者の場合、将来の労働賃金の支払い請求権ということになりますと、現時点では弁済期が到来している債権者ではないものですから、労働者が債権者保護手続の債権者には該当しないという考え方のほうがむしろ多いのではないかと思います。

 もちろん債権によって違いがありますから、弁済期が到来していて債権者となり得るということもあるのかもしれませんが、教科書等では、労働者は入らないとするもののほうが多いのではないかと存じております。

○神林委員 それは未払い賃金ですか。

○高橋委員 現時点で未払い賃金になっていて、弁済期が到来しているという場合であれば、債権者には入り得るとは思います。ただ、将来的であれば。

○神林委員 ここで書いてあるのは未払い賃金とか社内預金とか、既に勤務した期間に対応する退職金債権というのは。

○高橋委員 そうですね。ですから、弁済期が到来している場合であれば、債権者保護手続の債権者には該当すると思うのですけれども。

○神林委員 到来しているかどうかというのはよくわからないのですけれども。

○高橋委員 そうなのです。それが難しいところなのです。

○神林委員 退職金とかは、退職しなければ到来しないのですよね。よくわからないのですが。

○高橋委員 具体的に到来している、金額がはっきりわかっていて到来しているという形でないと入らない。これは商取引債権でも同じでして、将来的にも契約がずっと継続するということがわかっていても、現時点で弁済期が来ていなければだめであるというふうに解するのが通常のようでございます。

○荒木座長 大変ありがとうございます。よくわかりました。

 最後の点は、立法当時の説明は、あたかも既に勤務した期間に対応する退職金債権を根拠に債権者異議が申し立てられるかのごとく説明されていましたが、退職金債権は退職時に初めて発生する債権と理解されておりますので、立法担当官の説明は、我々が聞いても「そうなのかな」という点はあって、具体的に未払い賃金があれば、それは債権者だと思うのですが、そうでない限りは、おっしゃるように、現時点ではどうかという議論が出てくるのはわかるところではあります。

○神林委員 全く素人なのでお聞きしておきたいのですけれども、債務の履行の見込みがない営業譲渡も可能ということは、赤字部門だけ切り出してそこだけ潰すということは可能だということなのですね。

○高橋委員 見込みというのがどの程度の見込みかということなのですがあまりひどい場合には、さすがに分割無効なるのではないかとは思います。明らかに意図的にそういうことをやっているという場合には。ただ、そのあたりははっきりはしておりません。立法担当官の解説では、現時点で赤字であったとしても切り出すこと自体は妨げないとされ、そのように一般的に理解されております。

○荒木座長 それは会社法の立法ということですね。

○高橋委員 そうです。

○荒木座長 分割法制を入れたときは。

○高橋委員 ではなくて、平成17年会社法の立法担当官です。

○荒木座長 わかりました。

 平成12年に会社分割法制を入れようというときに全体がストップしたのは、労働関係において、それは非常に問題ではないかということで、まさに労働契約承継法をつくったのですが、その当時は、赤字部門を切り出して労働者を全部そこへくっつけていって、それで結局倒産してしまったというようなことに悪用されるのではないかという懸念が非常に強くて、そういうことはありませんと、債務の履行の見込みがあることというのが要件ですからというふうな話だったものですから、それとは状況が少し違ってきているということはあるのですね。

○高橋委員 そうですね。

 昨今では、赤字部門の切り出しではなく、黒字部門だけ切り出して、もとの会社は赤字というパターンもありまして、もとの会社のほうを潰してしまう場合もあります。そこに労働者が残っていたり、残っていなかったりというケースもありますので、見込みの問題だけではないのかもしれません。そのような形で分割を利用してしまうということ自体の問題なので、この要件だけの問題かどうかはちょっとわからないところではあります。

○神林委員 でも、その点はほかの債権者も同じですよね。

○高橋委員 そうです。

○神林委員 多分、労働者だけは特別な存在であるというわけではないと思いますので、長期的な関係を持っている取引先とかがだまくらかされて、「えー」と言っている間に会社が潰れてしまってお金をもらえないという話になって、それは会社法の方とかはちゃんと見ているわけですよね。そういうことがないようにしないといけない。

○高橋委員 そうですね。分割無効や債権者異議手続というのは、赤字の会社が出ていってしまって、そこに債権が継承されるというパターンを念頭に置いておりまして、大体商取引債権者は、この面倒な債権者異議手続がを省略するため、重畳的に両方の会社に請求できるという仕組みにすることも非常に多いです。

 先に申し上げました、黒字のほうを移転して赤字会社が残るというパターンの場合は、今回の平成26年度の改正で若干手当てをしたところではございますけれども、詐害行為取消権に近い形で救済をしております。この場合は、分割無効事由にならず、旧会社に残る債権者も無効の請求権者ではないということになるので、そのように手当てをしております。

 詐害行為があった場合には、両方の会社に同じように請求できるとしているのが新しい改正法ですけれども、詐害行為取消の場合だと、新しい会社のほうから財産を取り返してくるという救済です。これも裁判例ではかなりよく見られる救済になっております。

○神林委員 そういうロジックというのは、労働者には当てはまらないのですか。両方請求権があるというのは、よくわからないのですけれども。

○高橋委員 そうですね。労働者にはなかなか当てはまりにくいかもしれませんね。

○金久保委員 その既発生の労働債権があれば同じだと思うのですけれども、それ以外の問題は考えられていないのではないですか。

○高橋委員 出向とかいうならともかく、両方に所属しているという状態はなかなか考えにくいと思います。。

○神林委員 もやっとした長期雇用というのは、そういうもやっとした債権が起きまして、それがどういうふうに保護されるかというのが多分本質的な問題だと、僕から見るとそう思えるのですけれども、それは商法上のほかの債権者についても似たようなロジックなのかなと思いまして。

○高橋委員 商法上は、とにかく両方に請求できればそれでもうオーケーだというような感覚がありますので、救済の方法もそのような形にしております。もとの会社と新しい会社の両方に請求ができるという手法です。

○荒木座長 私も会社法については素人なのでお聞きしたいのですけれども、そういう労働者以外の債権者の場合に、基本的に念頭に置いているのは、既に債権を持っている方の保護がメインではないかという印象なのです。労働関係は、今の賃金ではなくて、これから雇用関係や将来展開していく地位を保護する必要があって、アメリカみたいに解雇が自由であったら保護する必要はないのですけれども、ヨーロッパとか日本のように雇用契約という地位は簡単に将来に向けて自由に解消するべきではないという規範のもとだと、ほかの債権者のようにお金の問題で清算してしまえばいいでしょうでは済まない、だから別途の対応が必要になってきているかと思うのです。

 お話しになった詐害的な会社分割ですか、最近非常に問題になっているというふうに聞いているのですが、既にお話しになったかもしれないのですが、どういう場面でどういうのが詐害的で、それが結論としては無効原因ではないけれども、分割の効果を否定するような対応をしているということなのでしょうか。

○高橋委員 そうですね。詐害的な会社分割と申しますのは、大抵、もとはそれなりの会社で、どこかの事業部門がよくないという場合に、黒字部門だけ動かす。通常の場合、分割会社が事業を移転しますと、対価が入ります。大抵、対価は分割して新しくできた承継会社なり新設会社の株式です。ところが、この株式の価値が、実は移転した事業に比べるとかなりもの足りないとか、あるいは、株式の価値がすぐに希釈化されることを予定しているスキームであった。実は、対価として入ってきたものが均衡ではないというような状況になる、これを詐害的だと考えています。この詐害性の認定は大変に難しゅうございまして、ケース・バイ・ケースとしか申し上げられません。例えば裁判例に見られるケースでは意図的に詐害の意図を持って黒字部門だけを動かして、しかもこれまた非常に偏頗的と申したらいいのですか、債権者を切り分けて、たとえば金融債権だけをもとの会社に残し、商取引債権を移転させるパターンが見られます。新しい事業でも商取引を行わないといけないから移転させるんですね。でも金融機関からお借りしたお金に関しましては、ちょっとごめんなさいというですね。

○神林委員 そんなことができるのですか。

○高橋委員 してはいけないと思うのですけれども、そういうスキームで私的な整理の一環でございますね、そういうやり方をとったケースというのが散見されるようになりました。しかも困ったことに、分割無効の訴えが出せるのは承継会社に承継した債権者だけで、もとの会社に残った残存債権者は、対価が入っているので財産は変わらないでしょうということになっておりますので、分割無効などは請求できないというのが大原則なのでございます。

 残存債権者を何らかの形で保護したいということになりますと、新しい会社のほうに請求ができるような仕組みにしていきたいということになります。改正法になる前の段階で、一番多いのは詐害行為取消訴訟でして、もと会社が非常に苦しい状況になっておりますので、担保価値のある資が特定できるような状態になっていることもあります。、あるいは価値のある財産がそれなりにまとまって切り出された場合、被担保債権が金銭債権の場合は、債権額に応じた財産の取り戻しを請求することになります。分割無効ではありませんので、分割自体の効力を否定することはありませんが、一部の債権のみを取り戻すというような解決をしておりました。ただ、これは請求した者勝ちという詐害行為取消権にはよくある御批判があります。

○神林委員 というのは、1社が債権を請求して。

○高橋委員 そうですね、最初に請求したところが事実上の優先弁済を受けてしまう状態になるので、早い者勝ちという状況があり、あまりいい解決策ではない、それならば、詐害的な分割を受けた残存債権者は、みんな等しく新設会社に請求できるように、両方に対して請求できるようにしようというふうにしたのが、今回の平成26年の会社法改正で入れられた規定でございます。

 いずれにせよ、実はアイ・ビー・エム事件にちょっと関係があるところではあるのですけれども、分割の効力はそのままにして、関係する法律問題だけ何とか個別に対処するという解決策になります。アイ・ビー・エム事件の場合も最高裁は、分割の効力はそのまま、労働の承継のところだけ何とかするという解決策なので、考え方としてはよく似ているのかなと存じます。

○神林委員 同時に請求するということは、労働の場合は。

○高橋委員 ないのでしょうね。労働者の方はもといた会社に戻りたいという。

○神林委員 戻りたいという選択はできるようにするというのが、何となく債権を持っているということと対応しているのかなという感じがしますね。

○高橋委員 似ているというか、そういう解決策なのかなというふうに拝察いたしました。

○荒木座長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○金久保委員 1点質問なのですけれども、先生がおっしゃるように、よい部分だけを切り出して会社分割をして、残った部門の会社は、悪い部門だけですから倒産とか清算せざるを得なくなると思うのですけれども、そうすると残った部門に残った労働者というのは職を失うということになると思うのですけれども、そういう事案で分割会社に債務の履行の見込みはないと思うのですけれども、ということは、そういう事業の再生で会社分割が使われているときの債務の履行の見込みというのは、こと分割会社で言えば、全く見ていないというか、そこは全然無関係、見込みがなくてもいいという前提で処理されているという理解でよろしいでしょうか。

○高橋委員 原則としては対価があるので、分割会社のほうは、実質的には対価としてやってくる株式がどの程度の価値がある、大体非上場の株式になりますのでなかなか金銭には変わらないようなものかもしれませんが、少なくとも対価が来て、その結果、間接的にもとの事業を所有しているというふうに見られる限りは、分割会社の履行の見込みがなくなるとは考えておりません。

○金久保委員 考えていないというか、同価値の株式を持っているので、むしろ履行の見込みがあるように考えるという趣旨ですか。

○高橋委員 間接的に価値を把握された、価値は保持されているということになるので、見込みというか、実際はどうかわかりませんけれども、理念的には履行の見込みは以前とかわらないというべきですね。

○金久保委員 当面のキャッシュフローがよければいいみたいな、そういうことでもないということになりますね。

○高橋委員 そうですね。非常に理念的なところです。

 株式を通じた確保ということになると、厳密には債権者より劣後する地位に置かれるはずですので、構造的には、どうしても今までよりも立場は低くなるとは思います。債権者であれば同等だったはずなのが。

○神林委員 間接的になってしまう。

○高橋委員 そういう形での価値の確保になっていきますので、構造としては、本当は理念的にも従前の会社のままの財務状況だとは言いにくいとは思います。

○金久保委員 会社分割時にこういう議論がされていたということは、会社分割制定時は事業の再生に会社分割を使おうという発想はあまりなかったということになるのでしょうか。

○高橋委員 あったのではないかと思います。むしろ、そのために多少赤字であっても切り出すということを許しているということなのではないかと思います。

○神吉委員 高橋先生ばかりに質問で申しわけなのですけれども、昔は赤字部門の切り出しが主流だったけれども、最近では黒字部門の切り出しが増えてきたというのは、やはりそれはどちらを分割するかというのが、今までおっしゃったような話の流れで、分割会社のほうに関しては債務の履行の見込みというのが特に問題視されないとか、そういうことが効いているということですか。

○高橋委員 恐らくは、分割無効の訴えの対象者にならないし、債権者異議手続の対象者にもならず、つまり、何も言わないまま切り出せる、組織の形を変えることができるということに気がついてしまったからではないかと。

○神吉委員 もともと枠組みとしては変わらないけれども気づいてしまったというところで、こちらのほうが使いやすいという話になったということですか。問題が起きにくいということですか。会社の意図した通りになりやすい。

○高橋委員 分割する側としてはですね。つまり、採算部門、不採算部門を分けようと思っている側としては、なるべく債権者に気づかれないようにそっとやりたいという形なのですけれども、債権者に何も言わないでいい、債権者異議手続として通知する必要もないという形の分割です。

○神吉委員 これからはそちらが主流になるのでしょうか。

○高橋委員 それをしてほしくないために、今年改正がありました。

○神吉委員 どちらを切り出そうと同じような効果にしておかないと、あまり規制の意味がなくなってしまうということ。

○高橋委員 詐害性の認定が非常に厳しいので、実はそんなに簡単には詐害的であるとは認められていません。赤字、黒字という単純比較ではないのですね。ただ、破産法上の否認が問題となるような事例だとほとんどひっかかるのではないか。つまり、どちらかがすぐ破産するというような場合だとわかるのではないかという。

○神林委員 いずれにしても非対称なわけですね。出ていくものしか見ないという非対称な形になっているのが問題の根源になっているのですよね。

○高橋委員 そうだと言えると思います。

○神林委員 それは将来的には対称に、どちらも見なければいけないというふうに変わっていくというような方向なのですか。

○高橋委員 なっていないと思います。基本的には、やはり対価が入ってくるから分割会社は大丈夫というのが建前になっています。

○神吉委員 しかも対価性を見るしかないということなのですね。

○神林委員 それを前提で話を進めないといけないのですね。

○荒木座長 確認ですけれども、15ページの注の2の「平成17年改正前商法では、会社分割の当事会社に」というのは、当事会社というのは、承継会社・新設会社、分割会社もですか。

○高橋委員 両方です。

○荒木座長 ということは、黒字部分だけ分割して、残った会社が赤字になってもだめだというのが平成12年当時は、そういうことだったのですね。

○高橋委員 原則としてはそうですが、もとの会社は対価があるので、普通は大丈夫ですと考えられておりました。

○荒木座長 見込みがあるというふうに解したということですか。わかりました。

 要するに、見込みあることが、見込みに関する事項に変わったということが効いている、やはりそれが一番大きいのでしょうね。

 それから、従来は営業単位、事業単位で分割をしますという説明をお聞きしていたのですが、平成17年の会社法制定時には事業単位である必要はないというふうに、そこは明確に変わりましたね。実際の分割というのはどうなのでしょうか。そういう事業単位ではないような分割というのは沢山あるのですか。

○高橋委員 基本的には事業単位ですね。あまり意図的に除外するというような形でもないとは伺っているのです。普通に何とか事業というふうにされているものを切り出すというふうには伺っています。

○神林委員 事業単位ではない分割というのは何ですか。

○高橋委員 有機的一体性がどうのというのをあまり厳しく言わず、ただ粛々と契約や計画書に、この事業がどういう財産で構成されているというのを書いて、それを包括的に移動させる。この財産が抜けていたから、これは営業ではないとか事業ではないというようなことを言うわけではないというぐらいの感覚です。

○荒木座長 商法のほうでも営業、事業は何かという大議論があるみたいで、営業が確定して、その営業に属するかどうかで会社分割の対象になるという話ですと、前の段階が実はよくわからないということだったので、そんなことを議論する必要があるだろうかというので、要するに会社分割計画とか契約に書いた債権債務であれば承継されるということでいいのではないかとか、そういうことですか。

○高橋委員 はい、さようでございます。

○神林委員 残すものは書く必要がないのだと。

○高橋委員 そうです。

○神林委員 全部書けていないと、それはそれで大変なわけですね。

○高橋委員 そうなのです。

○神林委員 これはややこしいですね。

 ちょっと話は変わるのですが、労働契約承継法をつくるときには、今のような話というのは全然考えていなかったわけですか。というのは、よい部分だけ出して悪い部分だけ残すという、そういうことは考えられていたのですか。

○荒木座長 だから、それも確認したのです。両方だめよということなので、債務の履行の見込みがあるという場合に限って、だから悪いものだけをもとに残す、あるいは悪いものを切り出す、いずれにしても履行の見込みがなければ分割制度は使えませんというのが平成12年で。

○神林委員 こういう話になっているという。

○荒木座長 では、そういう濫用はないのですねということで、それを前提に、しかも事業単位で、営業単位での承継であるという、ここで言われている営業単位として履行の見込みがあることというあたりですね、それを前提にできたのが平成12年の労働契約承継法だったのです。

○神林委員 そうすると現状では、赤字部門だけを残して、黒字部門だけ分割をします。赤字部門にずっと雇用されていた被用者に対しては、話を聞く義務は全くないですよね、残る会社ですから。

○荒木座長 対象でないですね。

○神林委員 なので、聞く必要ない、そのまま残しておけばいい。自動的に会社が倒産してしまって、実質的に解雇できますという状況なわけですね。

○荒木座長 そもそもそういう分割は、履行の見込みがないから、そんな分割はないはずですという。

○神林委員 というのが前提だったけれども、現在では実はあるかもしれないということ。

○高橋委員 あるかもしれませんね。

○神林委員 わかりました。

○石井政策統括官 おぼろげな記憶なのですが、平成21年の産業競争力の再生法を改め強化法のときに第二会社方式を使って、そこでまさに発展部門を分割して残していく、残すところは基本的に清算するという前提になって、ただ、そういうスキームにおいてはしっかり労働者は協議をするとか幾つか条件をつけた上で、経産省主体ですけれども、いろいろ支援をしていくという仕組みがあって、要は全体トータルとして雇用の総量が維持できるようにという、そういう後押し法みたいなものができていたというふうに記憶しているのです。

 平成21年ですから、平成26年よりは少し手前なわけでして、パターンとしてかなりそういうものも現実には見えていた時期なのではないかと思います。平成12年当初の国会の審議でも分割のパターンは両方ありますということを国会でもかなりしっかり言われていますし、両方を念頭に置いていた、なおかつ、非常に景気状況が厳しい中で、企業の再編の中でそういうことをとりわけ支援をして、総量を残そうという時期もあったのではないかと記憶しているのですが、お詳しい先生方、もし補足をしていただければ幸いでございます。

○高橋委員 昔が赤字のほうばかりを考えていたかといえば、恐らくはそうかもしれません。とにかく分割会社のほうは対価が入るので大丈夫であるというのを大前提にしておりました。そして、詐害的な分割がふえたと申しますけれども、前から営業譲渡の形で同じようなことが行われておりまして、分割が使われたケースが問題になるようになったのは、確かに平成20年ぐらいからではないかと思います。大体おっしゃる時期なのではないかというふうには存じます。

 一説には、会社分割を私的整理に利用するよう助言した人がどうもいたのではないかというようなことも言われておりまして、裁判例が頻発するようになったのは平成21年からですかね、22年の東京地裁の判決が大変有名になりましたけれども、その前から少しずつ出てはおりました。

 とにかく黒字部門が外に出るということに関しては、必ず対価で入ってくるので、対価の形で補足できるでしょうというのが大前提にあるので、基本的にはあまり問題にしておりませんでした。

○神林委員 結局、残った赤字がどのぐらいかによるのではないですか。

○高橋委員 それはそうなのですけれども、どういう事業が移ったかの方ですね。やはり裁判例になるのは極端な事例ですので、事業というよりか唯一の財産が移転したというような状況をつかまえていることが多くなります。

○青山労政担当参事官 補足ですけれども、労働契約承継法上、11ページにありますように、分割の際には7条「労働者の理解と協力」という形で、分割会社が雇用する労働者全てを対象とする。実際には過半数または過半数代表との協議はする仕組みになっていまして、確かにこれが機能しているかという現実的なものは実態把握しなければいけないと思っておりますけれども、一応理解を得る手続は書かれているところでございます。ただ、アイ・ビー・エム事件で、努力義務だというふうに最高裁で言っているのも事実でございます。

○富永委員 7条の措置は集団的なものですよね。個別の労働者へのコミュニケーションが保障されているわけではないですよね。

○青山労政担当参事官 ないです。それはおっしゃっているとおりです。

○富永委員 あと、2条通知というのは、たしか残る人にはやらなくていいのですよね。

○青山労政担当参事官 そうです。

○富永委員 資料2の11のAの段階ではまだ誰が動くかわからない、だから集団的にしかやれないですけれども、動く人が分かった段階の2条通知のほうは、元の会社に残る人には個別にはいかないので、結局残る人はババを引きやすいということになりますか。

○青山労政担当参事官 そういう意味ではそうです。

○神林委員 意図的にできるでしょうね、と思いますけれども。そういう事件はまだないのですか。「えー」と言っている間に赤字会社に残されてしまって。

○富永委員 グリーンエキスプレス事件だったか、何かそれに近い事件がありませんでしたか。出向している間に所属部門が本当は譲渡されていたのですけれども、気づかずにというか、元の会社に残されてしまっていたとかいう事件があったような気がしますけれども。東京地裁で労旬か何かに載っていた事件。

○神林委員 まだそんなに目立って問題になっているというわけではないという。

○荒木座長 今まで問題となっているのは、本体がしっかりあって、1部門だけ、アイ・ビー・エムなんかはそうですけれども、もうこの部門はやらない、だから別の会社に分割・承継させようと、そういう本体はしっかり残るやつで、本体まで移ってしまって形骸のようにして残る事案は、まだ労働事件ではあまり。

○富永委員 先の事件は、もとの会社がなくなってしまい、その出向部門のやっている運送営業が先に行ってしまっていた事件だったと思います。分割先の会社との間の労働契約を認めたのではなかったのではなかったかと思いましたけれども、ちょっと記憶が確かではありません。

○神林委員 法律上はわからないのですけれども、結局、会社分割をして一つの部門を潰すということを考えたときに、分割をせずに一つの部門を潰すというのと、何がどう違うのかというと、債権者が分割をしたときには債権が2つに分割されるので、残るほうの会社の債権は完全に守られるけれども、分割されたところの債権だけは調整しないといけないということが違うということですか。

○高橋委員 特に詐害的な場合はそうです。つまり、この債権者には払う、この債権者には払わないというのは自分で切り分けるということが、あまりよろしくない話ですけれども、そういう意図で使われているところはあります。

○神林委員 それが意図で使われていることは、それが意図ではなかったのですか。

○高橋委員 それが意図ですとはっきり言うとまずいと思いますけれども。

○神林委員 リストラを促進するために会社分割を認めるというのは、そういうことですね。

○荒木座長 もともと平成12年に会社分割制度を入れたのは、それまではやろうと思ったら事業譲渡しかなかったわけです。事業譲渡と違って個別の債権者から同意がないと実際上できなかったり、いろいろな制約があって、時間はかかってしまうし、迅速なリストラクチャリングができないではないかというので、個別の債権者の同意などを得ずに、株主総会の組織的な意思決定でもって、権利義務関係の承継とかそういうことをできるというのが目玉で入ったのが分割法制で、そういう意味では、決して悪い意味ではなくて、迅速に企業を再生させる手段としても有効であると見られたのですね。

 分割の話ばかりになってしまったのですけれども、まさに事業譲渡の場合はどうかというのがあって、平成14年ですか、西村先生が座長の研究会報告で、きょう御説明があったように、事業譲渡について新しい労働契約関係の承継についてのルールが立法によって対応すべきかどうか検討なさって、そのときの結論としては、特段のルールを創設する必要はないのではないかというような結論になっているのですが、この点については状況が変わっている部分もあるわけですね。当時は解雇権濫用法理が判例法理のままで法律もないから、そういう法律もない濫用法理について営業譲渡に関する特別ルールをつくることができるのかとか、そういうことも一つの根拠にもなっていたというあたりもあります。最近の裁判例の展開とか、皆さんのほうが詳しいと思うのですが、そういうのを踏まえて何かお感じになっていることがあれば、あるいは諸外国、EUでは分割と事業譲渡は区別せずに同じように承継ルールをつくっていたりするのですね。そういう点なども踏まえて、何かコメントがあればお願いしたいと思います。

 この報告書でも書いてありますけれども、実際事業譲渡がなされるというのは、その会社の経営状態が相当厳しい場合によく使われるということなので、実は倒産法制なんかとの関係もよく考える必要はあると思うのです。

○神林委員 ただ、よくわからないのですけれども、法律的に事業譲渡と会社分割が全然違うというのはわかるのですけれども、実質起こっていることというのは、結局自分の今までやっていた仕事がどこか別のところにいってしまうということですよね。ほかに法律的な部分はいろいろあるかもしれないけれども、起こっていることはそういうことなので、それに対して労働者はそのままついていかせるというのを原則とするのか、それとも労働者は残しておいて、その会社との雇用契約なので、その会社の中で別の仕事を見つけてもらうというのを第一原則にするのかというのが、事業譲渡と会社分割では労働者にとってのプリンシプルが全然違うわけですね。それは何でそんなに違うのですか。

 会社法とかの話というのは確かにあります。それはそれで置いておいて、そことは独立して労働者との関係であれば、分割だろうと営業譲渡だろうと、とにかく仕事が動くということに関してはみんな同じなのだから、同じようにルールをつくってしまえというふうにはならないのですか。

○金久保委員 そこだと思うのですけれども、法的性格が違うけれども実態は同じだと、使われ方も同じだと、そういうことでしたら、多分同じ規律をすべきだという発想になりやすくて、いや、それは違いますということであれば、やはり違う規律でということになりやすいので、この間、会社分割で法改正や法解釈の違いがあって、より事業譲渡との違いというのがわかりにくくなっている部分もあると思うのです。同じ事業再生で使われているわけですから、分割も使われる、事業譲渡も使われるということの中で、一体どういうことで使い分けがなされているのかというのをさらに調査する必要があると思うのです。

○神林委員 現在のところ、その違いはあまり明確ではないということですか。

○金久保委員 明確な部分もあるのですけれども、実際の使われ方というのは、机上ではなくてもう少し調べたほうがいいのではないかと思っています。

○神吉委員 神林先生が言われたように、実態が一緒なのではないかというのは、先ほど荒木先生が言われたように、ヨーロッパは確かにそこに着目しているので、基本的には経済的な同一性というかがあれば、仕事が移るのであれば人も移るという考え方を基本にしていると思います。

 日本の場合は、会社に、というところがあるので、どうしてもそこに違いがあると思います。私が研究対象としているイギリスの法制では、日本の場合、承継のときに、10ページの表にもあるように、もとの会社と承継会社とがあったときに、主として従事しているかいないかというのを見つつ、基本的にはどちらかとの雇用関係があることを前提にこのスキームは設計されているのですけれども、イギリスの場合は、基本的に経済的な同一性があると承継されることを前提としていて、労働者は、承継に対して異議申し立てができ、それが認められた場合には承継されないという効果は発生しますが、もとの会社に戻ることはできないことになっています。承継会社に行きたくないという意思を尊重されるのですけれども、だからといって戻れるわけではないというところが。

○神林委員 それというのは、やめるということと何か違うのですか。

○神吉委員 それを解雇として扱ってはいけないことにはなっているのですけれども、労働者の自主退職という形になっているのです。それは仕事についていくのだという考え方があるのだと思います。

○神林委員 何となくお話をしていて、そこはやはり日本の考え方と大きく違うのかなという気がします。日本の場合、ジョブに張りついているわけではないので、ジョブが動いたからといって自動的に動いていくというふうには、なかなか現場も納得しがたいところがあると思うのです。ところが、会社分割の場合には法人自体が変わってしまうので、どちらの法人に行けばいいのかというのがいまいちよくわからないということになるのかなと。そういう違いはあるのかもしれません。

○荒木座長 日本の雇用はメンバーシップだろうと言われていますけれども、この会社に就職するという合意はありますが、この仕事のために雇われているのではない、ジョブ型ではないのです。ですが、労働契約承継法では、珍しくどちらかというとジョブ型で、今、主としてその業務に従事して、その業務が移るのだったら雇用関係も移しましょうと。労働者は、今やっている仕事が存続するのであれば、その仕事から引き離されて全然別の仕事をやるよりも、仕事と一緒に移るのが労働者にはより不利益が小さいだろうという考え方です。ヨーロッパは全部その頭できている。そのジョブのために雇われていますから、ジョブが移転するのだったら、雇用も当然移転すべきだという頭なのです。

 承継法を導入するときに、ここは非常に特殊な、ヨーロッパ的な発想でつくるということになるわけで、日本の実情に合うかなというのはちょっと考えたことはあるのですけれども、そういう一つの割り切りをいたしました。

○神林委員 合うのかなと考えて、合うという結論ということですか。

○荒木座長 このときはいろいろな考慮があったと推測するのですが、一つは、全部それでやってしまったら、その一つのルールしかないのです。会社分割はこういうルールでやってみましょう。でも、事業譲渡、営業譲渡というのは、従来どおりに新しいルールは入れずに、2つの違う多様な企業組織再編のルートがあったほうがいいのではないか。何しろ平成12年に初めてこういうルールをつくるわけですから、これは実際動かしてみてどう動くかわからないというときに、こういうルールでいいはずだと思って全部それでやってしまうと、実際の経済活動には妥当しなかったり、思わぬ不利益が生じたりしますから、従来型のツールである事業譲渡はそのまま置いておきましょう、新しいルールはルールとしてやってみましょうと。それでどういう状況か見ながら、問題があれば再検討しましょうというのが、平成12年のときの一つの判断だったと思うのです。

 事業譲渡と分割、何が違うのかというと、一番違うのは、民法625条という条文があって、それは権利の譲渡については本人の同意がなければできない。会社分割で承継の対象とした労働者だったら、その業務に主として従事していたら、嫌でも自動的に承継されてしまうのです。でも、事業譲渡の場合は、私は承継は嫌ですと言えば承継されないということなのです。

 それが会社分割のときは承継されるか否かを全て会社のほうで決めてしまうことができる。それは、やはり労働関係については非常に問題が生ずるだろう。そこで新しいルールをつくって、承継される場合と承継について異議を申し立てる場合のルールをつくった。それが事業譲渡の場合、本人が承継を選べるというのは一番大きな違いで、それでも問題がある場合については、裁判例が黙示的に承継の同意があったといって承継から排除された者を救ってあげるとか、いろいろな個別対応をしていましたので、そういうルートはルートとして維持して、新しい分割法制を入れて見てみましょうという、そういうことだったと思っています。

○神林委員 その発想はなかったですね。そうしたら、結構現場の人にどういうふうに使い分けているのか聞くというのはいいことかもしれませんね。事業譲渡にするか会社分割にするか迷ったときに、労働の問題で迷うということがあるかどうかよくわからないのですけれども、そういう事例があったときに、どういうところをポイントに置いて、例えば事業譲渡をチョイスしましたとか、会社分割をチョイスしましたとかという何かケーススタディーがあると。

○金久保委員 多分、労働の分野で関係して迷う部分というのはあると思うのです。というのは、今、承継法があるかないかで大分違いますので、そういうのもあると思います。

○神林委員 なるほど。

○荒木座長 金久保さんは、たしかアメリカも研究されていて、アメリカは基本的には承継ルールみたいなものは何もないのですね。

○金久保委員 はい。個別法もないです。

○荒木座長 そもそも解雇が自由ですから、承継という発想自体が出てこないですよね。

○石井政策統括官 1つ確認なのですが、やはり、そのときであっても差別的な取り扱いは入ってくるわけですか。それも一切ないのでしょうか。

○金久保委員 それは差別法でということですか、幾つも差別に関する法律はありますけれども。

○石井政策統括官 障害者とか女性だとか黒人だとか、承継をするとか譲渡するときに、その時点での人のセレクションにおいて差別的なものがあった場合は、それはだめということはかかってくるのですね。

○金久保委員 かかってくると思います。

○荒木座長 それは当然にかかってきますね。

○神林委員 特例子会社なんかはできないですよね。

 今回は、こういう話をするのですか。

○荒木座長 この研究会でどういうことを議論するのかということについても委員の皆さんから、ぜひこういうことをやってほしいというのがあれば、それもお聞きしたいとは思っていたのですが。

 最初、統括官からお話しいただいたように、平成12年に分割法制を入れて、その後、事業譲渡、営業譲渡については平成14年の時点で一定の研究会報告が出ているのですが、それからもう10年以上もたって、先ほど言及したように、分割法制はどう使われているのか、それを踏まえて事業譲渡について現時点でどうとらえるのかといったことが、相当時間もたちましたので少し勉強してみるべきではないかということですので、これをどうしたいとかそういうことではなくて、まさにここでいろいろと研究をしたいという趣旨の会合です。

 ちなみに、これは次回以降にお聞きすべきかもしれませんけれども、今回の農協とか医療法人について課題になっているようなのですが、これは会社分割制度を使えるようにしたいということなのですが、そのニーズといいますか、どういうことなのですか。そこで雇われている人の関係が特に問題なのか、それとも、そうではなくて、むしろ財産関係の問題とか、どういうことなのですか。

○青山労政担当参事官 さらに調べたいと思いますけれども、17ページ、18ページの下のほうにありますとおり、農協につきましては、そもそも全体の株式会社化とか社団法人転換とかも含めて全体の組織改革というのが提言されている中で分割ということも進めようとなっているかと思います。多分、農協自体の改革の中で、農業の成長産業化というものがあるのだと思いますけれども、その中で下の囲みにありますとおり、単位農協の事業の対象者(担い手農業者・兼業農家・地域住民)が複雑化する中で、ニーズに応じて事業を適切に、ニーズごとに切り分けての運営ということもできるようにということでの提言がされているかと認識しております。実際、地元のニーズとか各農協さんの意向とかまではこちらもつかみ切れていないので、引き続き調査したいとは思っております。

 医療法人のほうは、これも医療という質の高いサービスを提供するという狙いの中で、病床機能を分化して連携しながらやっていくということもあるのではないかという議論で、分割という会社法と同じものが医療法人制度ではございませんので設けてはどうかという議論が産業競争力会議でなされたというふうに聞いておりまして、これもさらに背景等は引き続き調べたいと思っております。

○荒木座長 いずれもこれは株式会社でも合同会社でもないので、分割制度の対象になっていないけれども、それについて同じように組織再編のツールを与えたいということですかね。

○石井政策統括官 現在、それぞれの担当部局のほうで制度化に向けて検討されているというふうに聞いておりまして、ここに記載のとおり、年内に検討して速やかに講ずるとか、一応目算としては次の通常国会ということが念頭にあるやに聞いております。そうなってきますと、例えば会社のほうにつきましては、きちんとそういう法制があって、労働についての手当てはあるのに、こうしたところについて何も手当てがないままでいいのか、こういう問題が出てまいりますので、ここは少し切り離して、早目にここのところを御議論いただきたいというところで、先ほどの今後の進め方のところで、次回以降、まずここのあたりからお入りいただきたいということでお願いをした次第でございます。

○富永委員 全く不勉強なのですけれども、先ほど会社分割をリストラに使う話で、分割対価がちゃんとあれば大丈夫という話があったと思いますけれども、会社分割の場合は株式ですよね、こちらのほうの医療法人とかになるとどうなるのでしょうか。そこはお金とかになるのでしょうか。

○高橋委員 私も不勉強で全くわからないのですけれども、これはお伺いしたいのですが、農協の場合は経営が多角化しているから組織の形をきれいにしたいという御趣旨でこういう改革をされるという理解でよろしいのですか。

○田村労政担当参事官室政策企画官 そうです。基本的には本業のところに特化するとか。

○高橋委員 それをそれぞれの形にする、これは組織の再編では非常によくある分割を使いたいニーズですよね。多角化して大きくなり過ぎていろいろなところが重なったりして困ってしまったのできれいに直すというのとか、あるいは、使わないとこれは業務の範囲外だから別の会社にしましょうとかいうので切り分けるということなのだと思うのですけれども、分割した後どうなるかというのはイメージが全くつかめないのですけれども、全く別の組織体として、例えば農協さんがやっている何かの事業については、農協の手から離しますということになると、株式というと変ですけれども、持分とかそういうものを持つ、持たないというのは、考え方というか方向性はあるのですか。

 持株会社ではないですけれども、持分を持っているところがあって、そこから下にぶら下がりという親子会社的な姿を想定しているのでしょうか。それとも全く別の会社にすぱっと分けてしまって、違う業態の組織が並び立つということを想定してやろうとされているのかというのは、関係があるといえばありますよね。

○青山労政担当参事官 確認したいと思います。

○富永委員 地域単位で、それぞれが持っているキノコ部門とか葉菜部門とかについて、部門ごとに統合して、キノコ部門はキノコ部門でほかの地域のキノコ部門をくっつけて合理化するとか、そちらの使われ方ならいいなと思ったのですけれども、不採算部門を切り捨ててそこを潰してしまって、そこの人員削減に使うのは結構心配かなという気が。

○高橋委員 そういう話では多分ないのではないかという気が。会社分割はそういう部分はあるのですけれども、いろいろな多角化した経営をきれいに直しますという意味では、必ずしも職場がなくなるとかという話ではないのかも。職がなくなるというわけではなく、組織の形を整理するという目的なのかなというふうに。

○青山労政担当参事官 確かにおっしゃるとおりかもしれません。ただ、株式会社は会社分割を円滑にするスキームを持っているので、その同じスキームをこちらにも取り入れられたら円滑に進むだろうと、多分そういう趣旨なのだと思うのですが、ここも少し確認したいと思います。

○高橋委員 その後の形として、全く別法人というか、別組織が並び立つということなのか、それとも何かぶら下がる形なのか、上に親会社がいてぶら下がるという形なのかは、それによって雇用の形も変わるのかもしれません。

○神吉委員 承継法ができたときに、それが会社分割に関する債務の履行の見込みというのが要件となっているからということで前提として今の承継法ができているのであれば、今、変わってしまった会社分割の先ほど出てきた話ですけれども、それを前提として新たに農業とか医療法人の分割をした場合には、そのまま本当に承継法を準用するというのでいいかというと、同じような問題が起きてくるということですね。だから、実態としてどういう分割があり得るのかということを見てからでないとなかなか厳しいのかなと思うのですけれども。

○神林委員 それは、どちらが先かという問題もあるのではないですか。承継法、こんなのをつくってしまったからここを変えようとかといって変わるみたいな。

○神吉委員 実際ですとそういう不採算部門の切り出しみたいなことは使われないということを前提として承継法ができていて、でもそちらが変わってしまって、今、承継法をどうしようかという話があるときに、農協の分割後、そういうふうに不採算部門の切り出しに使われないとも限らないときに、もとの準用でいって一、二回で簡単に結論が出るのかなというところはちょっと不安なところがあるのですけれども。

○荒木座長 承継法は現行法としてあるので、分割の対象のときには別に農協だけでなくて、それが同じスキームに乗ってくるかどうかという話で、根本のところは現にある普通の会社でも承継法のルールで組織再編は動いている。それと同じように、扱うべきでないような問題があるかどうかというのが、まず確認すべきことですかね。

○神林委員 その点では、農協というのは確かに被用者もいると思いますけれども、ターゲットというか、主要なメンバーというのは、持分を持っている自営業者なので、ちょっと話が違うかなというのはあります。

 医療法人のほうはプロフェッショナルですから、もちろん事務職とか被用者の方もいますけれども、コアになるのはプロフェッショナルな方ですよね。なので、一般の労働市場とはちょっと違うメカニズムで動いているところがありますので、そのまま並行してとんと持ってきていいかどうかというのは多少話したほうがいいのではないかという気がします。

○荒木座長 この点については、次回、次々回ですかね、詳しく検討するということになりましょうから、今のような御意見も踏まえて用意していただけるといいと思います。

○青山労政担当参事官 違いをよく整理したいと思います。

○荒木座長 ほかに何かございましょうか。

 特にないということでありましたら、本日はいろいろと貴重な御意見をいただきましたので、これを踏まえて今後、事務局のほうでも御検討いただいて、用意をいただければというふうに思います。

 最初にお諮りしました議事の公開、非公開についてですけれども、本日、非公開にしなければいけないという事情も特にないかと思いますので、公開ということでよろしゅうございましょうか。

(「異議なし」と声あり)

○荒木座長 では、そういうことで取り扱うということにしたいと思います。

 次回以降の研究会の開催について、事務局からお願いいたします。

○田口労政担当参事官室室長補佐 次回以降の研究会ですが、日時、場所について調整中ですので、追って正式に御連絡いたします。よろしくお願いします。

○荒木座長 それでは、本日の研究会は以上といたします。どうもありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労政担当参事官室
法規第3係 内線(7753)
代表: 03-5253-1111

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 第1回組織の変動に伴う労働関係に関する研究会 議事録(2014年12月4日)

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