ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 周産期医療体制のあり方に関する検討会> 第3回周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事録)(2015年11月27日)




2015年11月27日 第3回周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事録)

○日時

平成27年11月27日(金)10:00~12:00


○場所

三田共用会議所 大会議室(3階)


○議事

○伯野救急・周産期医療等対策室長 それでは、定刻になりましたので、第3回「周産期医療体制のあり方に関する検討会」を開催させていただきます。

 構成員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中を御出席いただきまして、まことにありがとうございます。

 まず初めに本日の構成員の御出欠でございますが、本日は峯真人構成員から御欠席との御連絡をいただいております。

 また、山本構成員からは、少しおくれると御連絡をいただいております。

 今回は参考人としまして宮崎大学産婦人科、鮫島浩先生。よろしくお願いします。

 そして日本医科大学産婦人科、中井章人先生にお越しいただいております。どうぞよろしくお願いいたします。

 それでは、議事に入ります前に、お手元の資料の確認をさせていただきます。

 お手元に議事次第がございます。また、構成員名簿、座席表がございまして、さらに資料は1~5という形でお配りさせていただいています。

 資料1が「周産期母子医療センター整備の現状等について」でございます。

 資料2でございますが、田村正徳構成員からの資料でございます。

 資料3でございますが、鮫島浩参考人からの資料でございます。

 資料4が中井章人参考人からの資料でございます。

 資料5が「第2回検討会補足資料」でございます。

 参考資料1でございますが、「周産期医療体制のあり方に関する検討会」開催要項。

 参考資料2でございますが、「日本母体救命システム普及協議会」運営規定を参考資料として用意させていただいております。

 資料の不足等ございましたら、お知らせいただければと思います。

 よろしいでしょうか。

 また、前回の検討会の資料などをファイルとしてお手元に御用意させていただいております。適宜参考として御活用いただければと思います。このファイルについては、会議終了後、机に置いたままにしていただいて結構でございます。

 事務局からは以上でございます。以降の進行は、座長にお願いいたします。

○五十嵐座長 御説明ありがとうございました。

 皆さん、おはようございます。きょうは4人の方から御説明をいただくこととなっておりますので、早速始めたいと思います。

 まず、周産期母子医療センター整備、特にINCUの現状と病床、医師数のバランスについて、資料1の説明を厚生労働省の医政局地域医療計画課、資料2の御説明を田村構成員からお願いいたしますので、続けてお二人、御説明をお願いいたします。

 それでは、よろしくお願いします。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 厚生労働省から、まず資料1の説明をさせていただきます。

 資料1の2ページをごらんいただければと思います。ことしの3月に閣議決定されました少子化社会対策大綱におきまして、周産期母子医療センターの整備、そしてNICUMFICUの整備を掲げておりまして、このページの一番下にございますとおり、NICUにつきましては、平成31年度までに全都道府県で出生1万当たり2530床を整備する目標を掲げておりまして、平成26年度のところを見ていただきますと、6県で目標の達成ができていない状況ではありますが、平成26年度のデータでは、全国平均としては30.4床となっておりまして、平成23年度の26.3床と比較しますと、全国的には整備が進んでいる状況かなと考えております。

 次に、3ページをごらんいただければと思います。こちらはNICUMFICUの数の経年的な推移を棒グラフで示しております。いずれも近年増加傾向にございます。先ほど申し上げましたとおり、折れ線グラフが出生1万対のグラフでございますが、NICU30.4床となっております。

 次に、4ページをごらんいただければと思います。こちらは都道府県別の出生1万当たりのNICUの数でございますが、先ほど申し上げたとおり、目標に達していない県が6県ございますが、目標に達していない県でも多くはかなり目標に近い数値となっております。

 5ページをごらんいただければと思います。こちらは患者の需要、ニーズがどうなっているかという視点でございますが、青の棒グラフが1,000グラム未満の超低出生体重児、赤の棒グラフが1,000グラム以上1,500グラム未満の極低出生体重児でございますが、特に青の棒グラフを見ていただきますと、1,000グラム未満の超低出生体重児の出生数が、この35年間で約2倍に増加しているという状況でございます。

 折れ線グラフは、全出生数に対する極低出生体重児や超低出生体重児の割合でございますが、いずれも増加傾向となっております。

 6ページをごらんいただければと思います。こちらは周産期母子医療センターのNICUの規模でございますが、上段が総合周産期母子医療センターでのNICUの規模でございます。総合周産期母子医療センターでも、6床以下の比較的小規模のNICUが全体の約3割となってございます。

 下のほうが地域周産期母子医療センターでございますが、こちらはNICUの設置が必須ではないということもあって、ゼロというセンターもございますが、3床以下のNICUも一定程度あるという状況でございます。

 7ページをごらんいただければと思います。これ以降はMFCIUでございます。厚生労働省が周産期医療体制整備指針というものを定めておりますが、そこで定められているMFICUの施設の基準がございます。それが上段に記載しているものでございまして、下段のほうが、診療報酬で母体・胎児集中治療室管理料の施設の基準でございます。この2つが施設の基準としてございまして、下段の管理料の基準では、下線を引いておりますが、専任の医師が常時、母体・胎児集中治療室にいることが条件となっておりまして、これをクリアできないセンターもあるという実態がございます。

 そちらが次の8ページでございますが、まず診療報酬上の管理料を算定できているMFICUの出生1万当たりの病床数を都道府県別に示したものでございまして、NICUと違いまして国の目標は掲げておりませんが、平均としては7.1床となっております。

 9ページをごらんいただければと思います。こちらは、指針で定めているMFICUの基準に合致しているMFICUの出生1万当たりの病床数を都道府県別に示したものでございます。先ほどの管理料よりも若干多く、全国平均では8.5床となっております。

 本日の議論のベースとして基礎的なデータを示させていただきましたので、議論の参考にしていただければと思います。

 私からは以上でございます。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 では、続きまして田村先生、お願いいたします。

○田村構成員 田村でございます。

 私の資料は、厚労科研の「地域格差是正を通じた周産期医療体制の将来ビジョン実現に向けた先行研究」の昨年度と今年度の研究成果が大部分でございます。

 1ページ目でございますが、これは我が国の超低出生体重児の中でも500999グラムの赤ちゃんの死亡率が、人工呼吸管理を初めとする各種医療機器及び体制の整備に伴って、40年前には80%以上の赤ちゃんが未熟な肺による呼吸障害で亡くなっていたのが、今は主なNICUでは90%以上が助かるようになってきています。

 それは非常に喜ばしいことなのですが、3ページを見ていただきますと、これは我々の施設での数字でございますが、横軸が在胎週数で、縦軸がNICUに入院していた期間でございます。

 これを見ますと、例えば24週の赤ちゃんの場合は、NICUに平均8カ月以上も入院を続けるということで、先ほど挙げましたような小さな赤ちゃん、もしくは以前は助からなかったような赤ちゃんを助ければ助けるほどNICUの滞在期間が長くなって、結果的にNICUのベッドが不足していくということでございます。

 次のページを開いていただきますと、平成6年は厚労省が全国に周産期ネットワークを展開するという方針を決めていただいたころでございますが、そのころに我々も加わって算定した数字と、平成21年、いわゆる墨東事件の後にいろいろ計算したものが入っております。この15年間で出生数は明らかに減っておりますけれども、2,500グラム未満の低出生体重児はふえています。これは15%ぐらいで余り大したことはありませんが、劇的に変わってきているのが、新生児死亡率が約半分になっているということです。NICU1,000の出生当たり2床あればいいだろうというのが平成6年当時の計算だったのですけれども、それが平成21年の計算結果では3床は必要だということで、先ほどのお話のように厚労省がいろいろな努力をしてくださいまして、今、3床という目標値は、全国平均としては達成できたということでございます。

 その次が、長期入院児と退院時人工呼吸管理児の全国推移でございます。

 青棒が1年以上NICUに入院している患者の数で、これを我々は長期入院児と定義いたしました。

 赤は人工呼吸器をつけたまま1年以内にNICUから退院した児の数です。これを見ますと、いわゆる“墨東病院事件”が起きて、NICUに長期入院児がとどまっているということが、お母さんの命さえも危険にさらすということがわかって、NICUを早く開けなければいけないということで、一時はNICUの長期入院児は減っておりましたけれども、その分だけNICUから人工呼吸器をつけたまま、一般病棟もしくはお家に帰される患者さんがどんどんふえてきていました。驚くべきことは、2013年に追跡調査をしましたところ、NICUの長期入院児が再びふえる傾向に転じて、それを超えて、NICUから人工呼吸器をつけたまま退院せざるを得ない赤ちゃんが右肩上がりにふえているということがわかりました。

 その次の6ページでございますが、日本小児科学会の会員数と日本新生児生育医学会の会員数が書いてあります。

 ここでは赤字で、日本新生児生育医学会の会員数もどんどんふえているように見えますけれども、実はことし、日本未熟児新生児学会が日本新生児生育医学会に社団法人化されまして、そのときに会員数を実態調査しましたところ、このときの赤字の数字よりも250名ほど幽霊会員がいるということが判明しまして、実際の日本新生児生育医学会の会員数は、そこでがくんと減っております。

 小児科学会の中に占める日本新生児生育医学会の会員の割合も、一番下に書いてありますように、少しずつですけれども減る傾向が見えます。

 7ページでございますが、先ほどからお話が上がっていますように、NICUのベッド数は、1,000出生当たり2床から3床に、1.5倍にふえました。しかし、NICUで働いている医者は、それこそ私のような年寄りも含めてですけれども、ほとんど横ばい、もしくは減ってきているという状態のもとで、これは2013年までの数字しか出ていませんけれども、NICUで働く新生児科医1人当たりが診ているNICUのベッド数は、逆に1.5倍にふえているというのが、今の問題でございます。

 それで、都道府県別の1,000の出生当たりの新生児医師数ですけれども、これは、あくまで新生児生育医学会に加盟している方の人数です。ですから、名誉会員とかそういうお年寄りの方で、実際はほとんど現場で働いていない方も含めておりますけれども、それを新生児科医、医師数として計算して各都道府県別に見ますと、1,000の出生児当たりの数が、トップの香川県と茨城県の間では4倍もの格差がございます。

 9ページでございますが、ちょっと見にくいかもしれませんけれども、横軸がそれぞれの都道府県の新生児生育医学会の会員の平均年齢を示しております。縦軸が出生1,000当たりの会員数を示しております。一番厳しい赤の1のところは、分娩する新生児科医が少なくて、しかも年寄りの多い県を示します。

 2は、新生児科医は少ないけれども、多少若い世代が多い県です。

 3は、新生児科医の数はそれなりにいるけれども、年寄りが多い県です。

 4が、その中間。

 5が、新生児科医が若くて人数が多い県です。一番理想的な姿です。これを地図にプロットしましたのが、その次の10ページでございます。

 これを見ていただきますとわかりますように、北関東以北の県と、四国、九州当たりが非常に厳しい状況で、先ほど言いました新生児科医の数も少なくて、平均年齢も高いという分布が一目でわかるようになっております。

 その次に、我々が全国の総合周産期センターの責任者に、「おたくの仕事量に対して新生児科医の医師は足りていますか?」という調査をしました。これを若手の医師に送れば、大抵みんな足りないと言うに決まっていますので、ある程度経営のことも考えなければいけないNICUの責任者に過不足状態を聞いたわけでございます。それが12ページでございます。

 それを一目でわかるようにお示ししましたのが13ページでございまして、13ページの赤は、NICUの医者が「仕事量に対して足りない。」、青は「一応充足している」というところで、先ほどの新生児生育医学会の会員数が少なくて年寄りが多いというところが、やはり赤が多いということがおわかりかと思います。

 その次の14ページでございますが、NICUの新生児科医が足りないという理由にも2種類ありまして、大きく分けると、一つは「ポストが足りないのでふやせない」。それで足りなくて困っている。それを緑で示しています。

 赤で示しているのは、「ポストがあっても応募する医者がいない」。より深刻な状況のところであります。

 これで分けますと、大体3分の2のところが、「ポストがあっても新生児科医が来てくれない」。そういう深刻な新生児科医不足の状態であるということがわかります。

 それに関連しまして、「欠員に対する採用見込みはどのような状態か?」というところで、「不足している」という59施設の中では、「採用見込みがない」というのがほとんどを占めております。

15ページでございます。これは、これからの新生児科医の医師はどのぐらいが適切かということを考えるために貴重な資料になるかと思うのですけれども、今、挙げましたNICUの責任者が、「医師はとりあえず足りている」といったところを上段、「不足」と回答したところを下段に挙げております。

 両方とも、NICUのベッド数は平均してほぼ14床で余り変わりません。そこで勤務する医師、これは常勤医師で研修医を除いておりますけれども、「医師が一応足りている」と言っているところは、常勤医師が9.2人です。「足りない」と言っているところは、平均して6.9人です。

 「足りない」と言っているところに、「どれぐらい常勤医師がふえれば、何とか今の業務がこなせますか?」という質問をしましたところ、くしくもその数が9.2人ということで、「足りている」と言っているところの現在の常勤医師数とほぼ一致しております。

NICUは大体3床単位でつくることが多いので、14床を15床に補正すると、充足しているという施設の常勤医数は、NICU15床当たり常勤医が10名、それプラス研修医が妥当ではないかという数字が、根拠を持って示されたのではないかと思っております。

 その次の16ページですけれども、今のNICU15床当たり常勤医師数10ということを一つの目標としていきますと、過半数の施設がそこまで達しておらず、その半分以下の5人以下というところも非常に多い。これも地域格差が大きくて、千葉と京都の間では約4倍の格差がある。4倍の格差があると言いますけれども、京都のほうはそんなに多過ぎるというほどではなくて、ぎりぎりいっぱいの10人をちょっと超えている程度ですが、足りないという千葉、兵庫、高知、埼玉、このあたりは先ほどの本来必要と思われる医師数の半数以下だということを御確認いただければと思います。

 ということで、総合周産期母子医療センターのNICUでは、NICU15床当たり10名の常勤医プラス研修医が必要ではないかと考えます。できれば将来的には、常勤医が当直、夜勤での医療安全面、勤務帯に関係なく安定したベッドコントロール、専門医の養成研修ができるようにするために、各都道府県の最後のとりでであるべき総合周産期センターのNICU15床当たり常勤医10名は、周産期、新生児の専門医であることが望ましいと考えられます。

 次の18ページは総括でございます。全国の総合周産期母子医療センター施設長への人材育成アンケートから、24時間体制下で安定したベッドコントロール、安全体制、専門医養成研修面から、NICUベッド数15床当たり、新生児専門医医師数として10名以上プラス研修医が目安となる。

 それから、NICU専門医師は全国的に不足して、その都道府県ごとの格差が非常に大きい。

 特にNICUの専門医師のポストがあっても応募者がいない都道府県が多いということが、非常に大きな問題である。

 それについて、後で参考のところにつけてありますけれども、全国の総合周産期センターにNICUの人員配置についてアンケートをいたしました。総合周産期センターで、先ほどの15床に対して10名ということであれば、「NICU3床なら2名でいいのか?」という質問をしましたところ、先ほどもありましたように、総合周産期センターでも9床とか6床しかない病院が結構ありまして、そういうところでNICU3床当たり2人ということであると常勤医が4人であったり、6人であったり、それで徹夜に近いNICUの勤務をさせるということは、労働基準法上もとてもできないということで、NICU3床当たり2人という決め方ではなくて、具体的には最低7名がいて、その上にベッド数が多いところでは、この3対2の割合で常勤医が配置されるのがふさわしいのではないかという意見が多数ございました。

 新生児医療を担当する常勤医師は専門医が望ましいということに関しては、今それを決めてしまうと、まだ専門医がそこまで認定されておりませんので非現実的で、逆に専門医がいないからということで、NICU加算ベッドが減らされるのではないかということで、反対もしくは保留の意見が多ございました。

NICUの中に理学療法士や臨床工学士、病棟薬剤師などを常駐させるということに関しましては、80%以上の施設から、ぜひそうしていただきたいという要望が出ておりました。

 これからNICUの医師不足と地域格差に対応するための提言としての案をお示しします。まず、新生児科医師不足への対策としては、長期的には小児科専門医の研修の過程で、従来よりも新生児医療の占める比重を高めることによって、新生児医療の出来る医師の育成を推進する。

 看護師の活用と他職種の連携ということで、NICU看護師のスキルアップを図る。医師・看護師以外の専門職が、NICUにおいて専門性を生かした役割を担うことによって医療の質の向上を図る。

 国全体としましては、NICUの病床数は目標値に達しましたけれども、地域格差が大きいですので、広域搬送を含めた搬送体制を強化することによって、地域による過不足を何とか補う体制が必要ではないかと考えられます。

 新生児科医師不足対策の具体的な点としまして、小児科専門医研修期間中のNICU経験を明示していただきたい。今は小児科学会の中の専門医の資格を取るために、「新生児の症例も見なければいけない」ということはありますけれども、「NICUで勤務しなければいけない」という規定はありませんので、例えば赤ちゃんの黄疸であるとか、赤ちゃんの髄膜炎であるとか、そういう症例を診ていると、もうそれで新生児の研修は終わったとすることができます。しかし、そうではなくて、例えば「最低限3~6カ月はNICUで研修を積む」ということを専門医制度の必修項目の中に入れていただきたい。

 それから、日本新生児生育医学会では、毎年夏に2泊3日の若手医師育成の研修セミナーを開いておりまして、そのセミナーの参加者は、確かにその後、新生児科医として周産期センターに残っている率が高いということがわかっておりますので、こういった活動を学会も努力いたしますし、国としても、ぜひそういう活動の御支援をお願いしたいと思います。

 最後に、広域搬送のお話で、埼玉県は人口723万で、総合周産期センターは我々の施設1カ所しかありません。東京都は人口1,200万で、総合周産期センターが13カ所あります。そこに大きなNICUの格差がありますので、東京都にお願いしまして、埼玉県は母体と新生児搬送の連携体制を、つくっていただいております。

 東京都は、平成21年に東京都の母体・新生児搬送コーディネーターシステムを設立しまして、埼玉県は23年度から、同じく母体・新生児搬送コーディネーターシステムを設立いたしました。コーディネーターは両者とも助産師さんが24時間体制でやって下さっています。平成2410月から、東京都と埼玉県間で緊急対応を開始しまして、埼玉県からお願いすることが圧倒的に多いのですけれども、東京で病床があいているときには、埼玉県の患者さんを積極的に受け入れていただく。そのかわり、東京都にお送りした患者さんが落ちついたときには、埼玉県から埼玉県の医師が専用の救急車に乗ってお迎えにいってバックトランサーをするということを、現在、行っております。

23ページの折れ線グラフですけれども、埼玉県で搬送コーディネーターシステムに、“収容先が見つからないという事例”が挙がったときに、これは助産師さんが24時間体制でやっているのですけれども、搬送コーディネーターが搬送先を見つけてくれるまでの平均時間でございます。

 開始した早々は、我々もコーディネーターの方もなれていなかったので、平均83.3分ぐらいかかっておりましたけれども、それがだんだんなれてきて、4060分ぐらいでできるようになってきていたのが、東京都のほうが、実は墨東病院事件が起きて、総合周産期センターを9カ所から13カ所までふやした一方で、埼玉県内の2カ所の地域周産期センターのNICUが閉鎖せざるを得ないという事態が発生しまして、それで再びコーディネーターが見つけられるまでの時間が82.8まではね上がりました。そこで、緊急対応を東京都に積極的にお願いして、一時また見つけられるまでの時間が短縮しておりましたが、一応の緊急対応執行期間が終わったということで、平成25年4月に一旦緊急対応は終了ということになりました。そうしたら、再びまた搬送平均時間が73.9分にはね上がって、ここにおられる岡井先生を初めとする東京都の周産期医療協議会の先生方や、東京都の医師会の先生方にもお願いして、東京都にいろいろ陳情いたしまして、再び東京都が緊急対応を開始してくださるようになって、現在は、平均搬送時間がこれだけ短い時間になって、非常に安定した搬送体制ができるようになってきております。東京都の行政及び周産期医療の関係者の皆様方に、深く御礼を申し上げたいと思います。

 「資料-参考」のところを簡単に説明させていただきます。最初の26ページのところですが、これは総合周産期センターの施設長に対するアンケート調査結果です。現在、看護協会が北里大学で新生児集中ケア認定看護師制度を行っておりますが、そこの認定看護師さんを積極的に周産期センターに採用して活用をするということに対しては、ほとんどの施設長に賛成をしています。

 それから、先ほど挙げましたように、常勤の臨床心理士、これは今の整備指針の中でも、「総合周産期センターには臨床心理士を配置しなければいけない」となっておりますけれども、常勤とは限らないということと、今、NICUが集約化してベッドがどんどんふえてきておりますので、複数必要ではないかということで、「NICU15床以上では複数配置」ということで、それに対して、ぜひそうしてほしいという意見が87.5%、理学療法士、臨床工学士、病棟薬剤師の配置についても多くの施設が専属配置をお願いしたいとしております。

 総合周産期センターのNICU3床当たり2人の常勤医の配置ということに関しては、先ほど言いましたように、6床とか9床しかNICUがないところでは、逆に4人とか6人の新生児科医で勤務するのは大変だということで、反対意見のほとんどの理由はそういう意見です。

 常勤は専門医が望ましいという29ページのところも、反対、保留が多いのは、今のところ専門医がそれほどいないということと、かえってNICUの加算が取れなくなると困るということから、まだ受け入れてもらうには至っておりません。

 最後に、広域搬送を連携するための広域周産期医療協議会の設置ということに対しては、反対する施設は1カ所しかございませんでした。

 以上です。

○五十嵐座長 御説明ありがとうございました。

 それでは、NICUの整備に関する問題点あるいはそれらに関する解決策につきまして、御議論をいただきたいと思います。御質問も含めましてお願いいたします。

 どうぞ。

○飯田構成員 共同通信の飯田でございます。

 田村先生に教えていただきたいのですが、8~10ページで見せていただきましたような都道府県ごとの差はどのような要因が想像されるのか。逆に、香川県が大変うまくいっているように見えるのですけれども、そうであればそこに何かがあるのか、教えていただきたいと思います。

○田村構成員 例えば香川県で言いますと、香川大学の小児科の教授が代々新生児専門であるということで、比較的新生児科医が多くいますけれども、そうかといって産科の先生が多いかというとそういうわけでなくて、そういうアンバランスがあるかと思います。

 鳥取あたりは人口が少ないものですから、必要最小限度の医者をNICUを回すために24時間配置すると、人口当たりは見かけ上多い数字になります。

 東京都は、やはり先ほど言いましたように墨東病院事件があって、総合周産期センターを9カ所から13カ所にふやして、全国から優秀な新生児科医をたくさん集めておられますので、こういう差が出てきてしまっているという状況でないかと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○岡井構成員 田村先生のお話の中で、NICUの病床数と医師の数の関係のお話がありましたけれども、15床に対して10人、3対2という関係で、これは少ない病床に当てはめると、新生児医療というのはもちろん24時間管理をする必要があって、当直ということを考えたら、3床のベッドに2人では、1日に置きに当直という話になって大変だと。しかし、多くすると、新生児の患者さんが3人いて、新生児の医者が7人いても、仕事は余りないということにもなりますね。そうすると、ベッド数もある程度の数を確保した集中化という話にしないと、新生児科を専門に勉強した先生の活躍の効率が悪くなるということだと思うのですね。

 都会はある程度それができると思うのですけれども、お産の話もそうですが、地方に行きますと1カ所に集めてというのはなかなかできないので、地域のいろいろな問題があるのですけれども、その辺のところを具体的に何か考えていらっしゃるのでしょうか。

○田村構成員 先ほどの資料1にもありますけれども、今でも、総合周産期センターでも6床もしくは9床しかないというところは結構たくさんあります。これはやはり人口が少ない県で、これだけのNICUしかやれないということで、先生が先ほどおっしゃった3床に対して7人いるということはあり得ないので、最低でもNICUは6床ありますから、そこに対して7人医者がいて、毎日当直をして、やはり新生児科医としての医者の仕事はフォローアップも含めてふやそうと思えばどんどんふやせますので、それは何とかなると思います。

○岡井構成員 地域にもよりますね。

○田村構成員 今回は総合周産期医療センターだけのデータでございます。

 実は埼玉医大総合周産期母子医療センターで何とか我々がやれておりましたのは、以前はこういう小さなNICUのある大学病院から研修の方を毎年1年とか2年とかの期間限定で派遣していただいて、お互いギブ・アンド・テイクでやれていたのですが、今、全国的にNICUのベッドがふえたというのは、それだけからいけばいいことなのですけれども、逆に言うと、それぞれの地域のNICUで、今までは研修に出せていたところが、ベッドがふえたためにそれを診るので精いっぱいで、とても大きな施設に研修に出すことができなくなっているという反面も、今あるのではないかと思っております。

 ですから、そういう比較的規模が小さくてたくさんの患者さんを経験できないところから大きな施設に半年とか1年という短期の留学でもできるような体制、例えばその間のお給料については何らかの補助金を出すとか、そのような形にして交流できる体制整備が必要ではないかと思っております。

○五十嵐座長 鮫島先生、どうぞ、

○鮫島参考人 宮崎大学の鮫島でございます。

 田村先生、ありがとうございました。今、岡井先生からも地域という話が出ましたので、少しお話ししたいと思うのですけれども、例えば宮崎とか南九州の一部のところを見ますと、結局専門医という体制をとりたいにもかかわらず、医者の数が少ないので、一人の医者が新生児もやり、南九州であれば、産科もやり、婦人科もやり、麻酔科もやり、不妊症もやり、腹腔鏡もする。一人が10役ぐらいしないと臨床を維持できないほど医師の数が減っている。

 そういう体制を組んでいくというのは、その地域にいる限り仕方がないと思うのですけれども、そこに専門医というのが乗ってきますと、専門医ということでほかのことができないぐらい集中をしないといけない。そこに二律背反が起こってきてしまうところがありますので、その辺のところは少し余裕を持てるレコメンデーションが必要なのかなという気がいたしますが、いかがでしょうか。

○田村構成員 おっしゃるとおりで、やはり専門医を取るためには一定の症例を経験しないとなれませんので、確かにベッドが少ないところで診ておられる施設ほど、専門医の資格を取るのに長い時間がかかるということもありますから、専門医の資格認定の条件に対して、ある程度そういうことも加味した制度案を考えるということも、学会としても検討すべきかと思います。

○鮫島参考人 先ほど数が少ないところは、その方々がもっと数の多いセンターに行って勉強をすると言ったのですけれども、僻地といいますか、宮崎市内でも僻地だと思うのですけれども、どのように考えているかというと、都会で少し余っている人たちに来ていただいて、そこでやっていただいたほうが物すごく充実してくると。それでないと均てん化が進まないところがありまして、地域の方がちょっと少ないので少しマイナーな意見になりますけれども、何かしないとぎりぎりのタイトロープの中で仕事をしているというのが現状かなという気がいたしています。

 ありがとうございました。

○五十嵐座長 どうぞ。

○海野構成員 ちょっと話が戻るようで申しわけないのですけれども、資料1の4ページ目に、病床数がどれだけあるかということがございます。田村先生の資料2の16ページ目がNICUの勤務医師数。この両方を比較してみると非常におもしろいなと私は思って、それで少し御意見をいただければと思うのですが、15床当たりの常勤医師数が少ない総合周産期センターがある県が千葉、兵庫、高知、岩手、山口、埼玉ですね。その中で、こちらのNICU病床数のほうを見ますと、山口や高知は、人口比では病床数がちょっと多いのですね。ということは、総合周産期センターでそれなりの大きな箱をつくって、そこ中心のNICUの診療を考えておられる。ただ、医師が充足できないという構図だと。

 一方で、茨城や広島とかは、NICUの病床数は少ないのですね。一方で15床当たりの常勤医師数のほうになると、茨城や広島は10名の基準を少し超えているぐらいになっている。要するに、ここはNICUの箱がまだできていないのだけれども、できるところに何とかNICUのドクターが集まって、それで診療をしているという構図だと。

 この間のあれでNICUの病床数に関しては整備が進んできているという御認識だと、先ほど厚労省の御説明があったわけですが、現状では、例えば茨城はかなり少ない数字ですね。現時点では、これをこれからどのように進めていかれようと考えておられるのかということと、その中で新生児科医療を担うドクターをどのように確保するのかという議論と、両方必要な気がするのですね。それぞれの地域で取り組みの違いもあるのだと思いますけれども、その辺について、今、厚労省でどうお考えなのかという件と、田村先生はこれをどのように分析されているか、教えていただければと思います。

○五十嵐座長 何かありますか。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 厚生労働省でございます。

NICUがまだ満たされていないところについて、どういう考えなのかということ。

○海野構成員 その整備をこれからどうするか。かなり進んできたのは確かですけれども、まだ至っていない部分があると思うのです。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 今の目標は全都道府県で2530ということなので、今、聞かれると全ての都道府県で整備をしていただくのが望ましいと考えているというところなのですが、きょう御議論いただきたいのは、先生方もおっしゃっていただいているとおり、病床数の増と医師確保というのは両輪で進めなければいけないというところで、無理にどんどんふやしていくことがいいのかどうかというのは、当然議論としてあるのだと思います。

 ですので、いろいろな御提案をいただいていますが、広域搬送とかそういったことも含めて、恐らく地域ごとに状況はかなり違うところがありますので、当然ふやしていただくのが望ましいのですが、いろいろな課題が地域ごとにあると思いますので、その辺を踏まえながら、地域では医師が少ない中で、ただ、近くの隣県にNICUがたくさんあるという状況であれば連携をしてやるというやり方も当然ありますので、その辺は一義的に言うのではなく、各都道府県でしっかり考えていただきたいというところなのですが、県としてもその辺をしっかり見ていただきたいと思っていますし、また、きょうの御議論でいろいろな御提言をいただきたいと思っております。

○田村構成員 いみじくも今、挙げられた広島ですけれども、私たまたま最近、広島の県立病院と市立病院の2カ所、総合周産期センターを拝見させていただきまして、彼らのところでは、NICUの加算が取れている病床は確かにこのぐらいしかないのですけれども、床面積の問題と看護師さんの数の問題で、彼らは実際的にはGCUでも人工呼吸器を使っているような患者さんを入院させて、ほかのところであればNICU加算を取れているような患者さんも診ているという状況でした。そういう形で、広島市内は地価が高いようで、そう簡単に増床をすることは難しいということで、そういう個々の事情も入ってきているのだろうと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○鶴田構成員 資料1の7ページについてですけれども、私は関東信越厚生局内の特定機能病院における総合周産期母子医療センターを複数見させていただきました。7ページのMFICUにかかる基準は、上のほうは医政局長の通知で、下のほうは保険局の通知でありますが、少し運用を考えないと現場は難しいのかなと思いました。上と下の専任の医師の配置基準では8時間勤務を前提にすると、6床に対して必ず医師は3名プラスαいないとだめです。しかし、実際にMFICUに入院している妊婦が、母体異常で入院しているか、胎児異常で入院しているかでは医療従事者の手間が違う。必ずしも病床利用率が100%でないので、MFICUの仕事量は限られていて、その隣にMFICUではない産科病棟があって、産科病棟がばたばたしているときに、MFICUには患者さんがいなくて何も仕事がないときに、MFICU勤務の看護師が産科病棟に行くと、全部の保険診療の返還を求められた時期がありました。従って、この上と下の通知文は上手く運用を考えないと、現場においては非常に大変かなと思ったことがあります。

 このことは保険局に話をしたのですが、こういう医政局と保険局の制度論と運用が本当に適切かどうか、考えさせられる実態があるということだけ指摘をしておきたいと思います。

 それと、資料2の15ページについて、この数字の見方ですけれども、上の医師の充足と下の不足は、この状態で両方とも9.2名必要だという理解だと、ちょっと理解に苦しむのですが? 上では入院総数が313.3名、1,500グラム以下が50.8名、それで医師9.2名で充足している。下では入院総数264.4名、1,500グラム以下が43.8名で、医師6.9名では少ないので、9.2名欲しいということであれば、本当にこの数字が一致しているとは理解しがたいのですけれども、そこはどのように解釈すればいいのでしょう。

○田村構成員 その辺は個別の事情があると思います。例えばここで挙げておりますのは、1,500グラム未満と1,000グラム未満しか数を挙げておりませんけれども、例えば外科的疾患、心臓外科の疾患を扱っているとかそういったことまで挙げていきますと、当然極低出生体重児は入院数が少なくてもNICUの多忙さとしては大変ということで、そういったことも入っておりますから、もっと細かい分析が必要であれば2次調査をしてみたいと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかに御意見・御質問はありますか。

 どうぞ。

○山本構成員 日本助産師会の山本でございます。

22ページの埼玉県の母体・新生児搬送コーディネーターシステムの件なのですけれども、今、順当に運用されているというお話がありましたが、現在、札幌、東京、埼玉でも助産師が搬送コーディネーターを担っているという報告がありまして、それを全国的にも展開していって、産婦人科の先生、小児科の先生たちと緊急事態を同じように感じられる助産師が担当するということに関して、今後推進していきたいという意向がおありでしょうか。

○田村構成員 少なくとも埼玉県に関しましては、助産師会が24時間体制で取り組んでいるということは、我々新生児科医や産科医とのコミュニケーションが非常によくとれて、定期的に行っておりますコーディネーター会議でも活発な議論がなされています。一方的に医師から、「こうしなさい、ああしなさい」と言うだけでなくて、「現場としてはこういう問題があるので先生方もこういうことを考えてください。」ということを率直に言っていただけて、非常にいい関係がとれていますから、基本的には理想的な体制ではないかと思っております。

○五十嵐座長 いろいろと御意見をいただいていますけれども、ほかにありますか。

 福井構成員、お願いします。

○福井構成員 資料2でございますが、26ページに先生が調査されたデータが示されております。認定看護師等を活用しレベルの高い看護ケアの実践に努め、その実績に応じて周産期センターを評価するということについて、8割以上が賛成しているという結果を大変興味深く拝見いたしました。15ページに、NICU常勤医師の必要人数案を示していただきましたが、NICU入院児の体重や重症度等の状況から、どのような児であれば専門的な教育を受けた看護師が対応でき医師の負担軽減につながるとお考えでしょうか。また、周産期医療に必要な医師と看護師の数の関係性は、どのように検討することができますでしょうか。当該看護職養成の教育目標につながるため、お聞かせいただきたいです。

○田村構成員 我々としては、医師の不足の分を代行していただける看護師がふえるということは、もちろん歓迎というか、ぜひお願いしたいところでございます。けれども、それ以上に、多くの病院では大人とか大きな子供の採血、注射は看護師さんがやっておりますけれども、周産期センターでは、特に非常に小さな赤ちゃんの採血とか処置になりますと、どうしても心配だということで医師自身がやっていることが多いのです。そういったところを看護師さんにやっていただくということは、単にそこの医師の労働を軽減するだけでない赤ちゃんにとってより優しい医療を行う事が出来ます。例えば今、我々は「NICU入院中の赤ちゃんの痛みのケアのガイドライン」を作成して啓発活動をしているところです。NICU入院中の赤ちゃんは足の裏から採血されたり、気道吸引などの痛いケアを平均して1日何十回と繰り返されています。それが将来にその赤ちゃんの発達や精神的な問題に影響するということに関しては、もう科学的な根拠が出ているので、できるだけ痛みに配慮したケアをしようということで、既にガイドラインを昨年出して各種の新生児医療関連の学会から承認されております。けれども、現状だと、例えば当院でも朝8時になりますと、医者が、赤ちゃんが寝ていようが起きていようが足の裏を突っついて、全員採血をして回って、それを検査に回してということをしております。しかしもしちゃんとそこにいる担当の看護師さんがやってくれるのであれば、その赤ちゃんの状態に合わせて、「寝ているのだから今はそっとしておこう」とか、「目覚めて、泣いて、お母さんが来て抱っこをしているときに採血しよう」とか、そういう赤ちゃんの立場に寄り添った対応ができます。ですから熟練した看護師が今まではNICU医師が行っていた検査や処置を出来る様になることは、単に医師不足対策だけでなくて、先ほど言いましたように、NICUは単に命を助けるだけでなくて、何カ月も入院する成長をする場所になっておりますから、その赤ちゃんの成長をできるだけいい方向に、肉体的にも精神的にも支えるために、それは大事なことではないかと思います。そうすると、その人数だけいればいいという問題ではないと思います。

○五十嵐座長 どうぞ。

○海野構成員 資料2の26ページにございますように、今、新生児集中ケア認定看護師養成コースというのは、私どもの北里大学の1カ所しかないのですね。そうすると、どれだけの必要性があるのかということもありますし、また、私どもが調べてみてもいいのかもしれないのですが、この認定看護師さんたちが現にどこでどういう勤務をしているのかということが非常に重要だと思うのですね。どういう能力を身につけて、実際にどれだけ活躍できるか。

新しい制度ですから、NICUの中でどれだけ働けるか、あるいはどれだけの部分を担えるのかということになってくるのかなと私は感じております。実際にみんながどこで働いているかということについて、データがあれば教えていただければというのが1点。

 あとは、認定看護師の養成コースが全国で1カ所というのは、それを希望する方々にとってはハードルが高いのですね。やはり全国で数カ所でも、とにかく認定看護師のコースが進められるような形で、何とかこの体制が整備できないかというのが私どもの願いでございます。

○五十嵐座長 米国ではナースプラクティショナーがかなり新生児医療に参画しています。単に医師の仕事を肩代わりするだけではなくて、先ほど田村先生がおっしゃったように、子供たち、赤ちゃんの状態に応じてできるだけ将来の生育を視野に入れたきめ細かな対応をするという点で、ナースプラクティショナーの人たちの力も必要として一緒にやっていると理解しております。看護師の医療への参画に関しましては御指摘をいただきました。もちろん結論はすぐに出ないと思います。さらにデータが欲しいという御指摘が幾つかありましたので、資料がありましたら次回以降にお示ししていただきたいと思います。それでよろしいですか。

 どうぞ。

○海野構成員 NICUで新生児医療を担う医師が足りないということに関しては、地域差も大きいということで、お示しいただいたデータで明確に示されていると思うのですが、これをどうやってふやしていくかということに関して、田村先生のお話ですと、小児科の専門医制度の中での取り組みというのを一つお示しいただいておりますが、現実問題として、それぞれの地域で新生児医療を担う医師を確保する具体的な方策は、行政的な観点でも何らかの支援を考えていただきたい。もうこれだけ周産期医療体制が整備されて、非常に高い水準までたどり着いていることは間違いないと思うのですが、これからそれをさらに維持・発展させるためには、この不足部分を何とか改善の方向に向かっていかせるというのが、次の周産期医療システムには必要なことのように考えますので、その辺について御検討・御議論いただけないかと私は思うのです。

○田村構成員 よろしいですか。

○五十嵐座長 どうぞ。

○田村構成員 厚労省の方の中にも、楽観的にはこれからお産がどんどん減ってくれば、NICUの必要数もどんどん減るだろうと考えておられる方もおられるかと思いますけれども、少なくとも10年、20年という単位では、先ほどお示ししましたように、平成6年に我々は、1,000出生にNICUは2あれば十分だと考えていたのが、実はハイリスクの妊娠、赤ちゃんがふえてきて、しかも、そういう赤ちゃんがどんどん助かるようになって、平成21年にはNICUのベッドが足りなくなったことが社会問題化することになった。

 これからは、恐らく産科のほうもますます医療が進歩して、今までは妊娠できなかったような方が妊娠されて、そういう方は必ずしも元気な赤ちゃんをお産みになるとは限りませんから、そういう方がこれからふえていくということを視野に入れると、これから先、このまま待っていれば、そのうちNICUの医者も足りるし、NICUのベッドもこれで十分になるよというのはちょっと楽観的でないかと思います。やはり10年、20年の単位では、今の危機的な状況がさらに悪化する可能性があるということも頭に入れて、いろいろ対策を御検討いただきたいと思っております。

○五十嵐座長 どうぞ。

○鮫島参考人 今の点は、海野先生も言われましたけれども、決してNICUだけの問題ではなくて、MFICUの産科もだろうと思うのですが、どうしても二層構造的なことを考えておかないといけないと思うのですね。

小児科も、産婦人科も、全体の数としてふえてはいない。少なくとも産婦人科はまた減り始めている。それぞれの診療科の中で、例えば小児科の中でNICUを担当する新生児専門医、産婦人科の中で産科を担当する専門医は、その構造の中でさらに減っている。そのダブルパンチを受けている。その全体をどうにかふやすということがなければ、その先のサブスペシャリティーもふえないのだろうと思うのですね。そこを厚労省としてどのような対策をとっていただけるのか。早く手を打たないと、かなり限界のところに近づいているというのは、MFICUでも感じているところです。

 ありがとうございます。

○五十嵐座長 大変重要な御指摘だと思います。ありがとうございました。

 それでは、まだ御議論はあると思いますが、時間も押していますので、資料3の御説明。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 先生、1点だけ。

○五十嵐座長 どうぞ。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 先ほどの海野先生のNICUの基準というか、目標を満たしていないところについてなのですが、確かに今、全都道府県で目標達成というのを掲げておりますが、これまでの議論で医師の確保が難しいとか、そういったことでなかなか現実的でないというところについては、恐らくそれぞれの都道府県でいろいろな工夫をされて、何とかニーズに対して供給を賄っているということだと思うのですが、その辺がどうなっているか、2530を満たしていない県について、我々としてもしっかりヒアリングをして状況を把握していきたいと思っています。

 以上でございます。

○五十嵐座長 ぜひ、それはお願いしたいと思います。

 それでは、次の議題に移りたいと思います。資料3の説明を鮫島参考人からお願いいたします。

○鮫島参考人 それでは、御説明いたします。資料3をごらんになってください。

 2ページですけれども、まず、現状のMFICU基準ですが、NICUのような整備目標、例えば先ほど2ページでいきましたが、31年度に都道府県で2530床といった整備目標自体はございません。ただ、現状としまして、100万人の医療圏、これは年間出生数1万件の3次医療圏がカバーするひとつの目安として人口100万当たりということですけれども、総合周産期母子医療センターを1カ所整備し、そこは6床以上が望ましいということが指針で出されています。

 現状は、先ほどもありましたが、平均値1,000出生当たり0.85という状況であります。

 次のページですけれども、最初の0.6床の基準はどこにあったかというのでひも解いてみますと、十何年前に大阪府立の末原先生が科研費で行った事業がありまして、それを見ますと、MFICUの最低必要病床数は、出生1万当たりですので7床、稼働率を加味して約9床と試算されています。

 このときの基準になりましたのは、東京都の母子保健統計と大阪府立母子保健総合医療センターでの症例の動きということでありましたので、今回、同様に東京都の周産期医療整備計画、これが平成27年3月に出ておりましたので、その実態調査と、平成26年度の厚生労働省医政局調査の数値を用いまして、データをとってまいりました。

 4ページですけれども、MFICUのことについて少し述べてみたいと思います。

 左端に重症度。下から上に上がっていくと重症になってくるということです。

 一般のICUNICUを書いてありますけれども、下に青線で引っ張って書いてありますように、一般のICUNICUは、重症症例の発症後に規定されているということでかなりわかりやすいところがありますが、MFICUはそういうものではございませんで、突発的な事象以外に予防的なものもかなり含まれています。

 予防的というものを上の赤括弧に示してありますが、発症予測が困難である。例えば前置胎盤というものは、出血しない限りは何のことはない。ただそこにいるだけですけれども、出血し始めると突然突発事象となって高度急性期に入ってまいります。

 同様に、妊娠高血圧症候群等も、軽症から突然重症化するということで、これの予想も困難だということで、そのようなものも含めてMFICUに入院して管理をしているというのが、実情であります。

 したがいまして、突発事象が起こりますと、我々は最大瞬間風速と呼んでいますが、そういうことになるときと、さざ波のように穏やかなとき、その2つがある。

今回MFICUをどのレベルに設定すべきかというところで、5ページを見ていただきますと、本当に急性期で大変だというところを狭義のもの、予防入院も含めて広くとる、その2つの考え方があろうかと思いますが、今回は必要最小限のMFICUの病床数はどのレベルだということを大きな概念として検討をしてまいりました。

 6ページをごらんください。大変込み入った数字で申しわけございませんが、これは東京都の周産期整備計画に伴う実態調査です。これは8万分娩のものを書いてございます。妊娠中の管理として早産を3つに分け、分娩中の管理として緊急帝王切開、予定切開、その他重症PIH、重症妊娠高血圧症候群、DMは糖尿病、妊娠糖尿病、その他の内科合併症、突発事象として癒着胎盤、産科DIC、分娩中の異常事態というもの、そのようなものが東京都でどれぐらい試算されているかというのをもとに計算してあります。

 一番上の行を例にとってみますと、2227週の早産、1,000グラム未満の出生が予定されますが、これは東京都の中では約1,000分娩当たり6例と出ていますが、先ほど来の日本の統計全体を見ますと1,000分娩当たり3ということですので、この厳しいほうをとりますと、Aのところに1,000分娩当たり3例。

その方たちの我々のところでの入院管理が必要だった大まかな平均が21日、3週間ほどでございましたので、その3週間を掛けますと63日ということになります。

MFICUの担当割合をその全体の90%としますと、掛けたのが56.7日間。地域は残りの10%なのですが、実を言いますと、1,000グラム未満の超未熟児でも全てをMFICUでやっているかというとそうではなくて、やはり開業医の先生のところ、基準をとっていないところでも生まれていますので、そこで前回も使われていました大体10%ということで、地域ではその掛けたものを一番後のカラムに示してあります。

 これらを用いまして、妊娠中の管理、分娩中の管理は緊急帝王切開のみをMFICUでやろう。普通の帝王切開は一般病棟でオーケーということで、全く入れていません。

重症妊娠高血圧症候群も重症だけという形で計算をしてあります。

糖尿病に関しましては、1型、2型の本当の糖尿病は管理するけれども、妊娠中に出てきた妊娠糖尿病は、わずかしかMFICUで管理する必要がないだろう等々で計算をしてございます。

 そのようにして見ますと、左の一番下のほうに書いてありますけれども、総合での延べ日数が222.5日。これを365で割りますと、ベッド数として1日のベッド数が0.6床。一方、地域のほうは0.099床となりますので、これを足しますと1,000分娩当たり0.7090.71ぐらいであろうと想定いたしました。

 ただ、これは推測値で、見ておわかりのとおり、かなり大ざっぱな割合を推測して当ててありますので、かなりの変動域はございますが、かなり厳しめにとってこれであろうと思われます。

 まとめますと、7ページに書いてございますが、MFICUの必要数は1,000出生当たり0.71、そのうちの総合が0.61、地域が0.1程度ではないかと推測いたしました。

NICUの基準では、80%の稼働率としていますので、0.7180%の稼働率で1,000出生当たり0.89と算定されます。

 したがいまして、現状値1,000分娩当たり0.85ということで、大体合っている指数かなと計算されました。

 次、めくっていただきますと、今、述べたことと同じですけれども、最低のMFICU必要数は1,000分娩当たり0.89。ただ、算出の問題点として、ここに挙げましたけれども、条件づけ等々のことでかなりの推測値が入っていますので、誤差はあるものと考えられます。

 それから、東京のデータを用いていますので、これが日本全体にジェネラライゼーションできるかどうかというのも、また別の問題があります。

 この次のことは、次の幾つかのデータでお示ししますが、当直体制が整わない、人数が少ないということでMFICU加算が取れていない病床等々の問題もありますので、一概にこれで全てというわけではないということではございますが、前回の方法と同じような方法で試算すると、現在の0.850.89、合っているのかなと思われます。

 引き続きまして、9ページ。MFICU整備の地域格差について、特に人口の少ない医療圏、広域医療圏ではどのように配置すべきかということについて書いてございます。

10ページを見ていただきますと、これは都道府県別に香川から山梨までX軸に書いてございますが、そこでのMFICU1,000出生当たりの数が示してあります。

 香川の2近くのところがございますが、一番少ない群馬、山形では記載がございませんでした。

 3本の線が引っ張ってあります。一番上は病床稼働率を加味した0.89というライン。次がそれを加味していない0.71という算定値。一番下の0.6床というのは、もともとの整備指針という形で、このようなことでございます。

 これで見てみますと、おおよそ平均値と同じということですので、上に上がっているところ、下に下がっているところもございます。

 そこで次のページをめくっていただきますと、グリーンの◎で書いてありますのは、広域搬送システムによる搬送を近隣から受けていると考えられている県です。すなわち、福岡、東京、大阪、愛知という大都市圏でございます。

 それから、赤い*が書いてありますのは、分娩数が8,000件に満たない県であります。

 これを見ていただきますと、全体はばらついていて大きな傾向はございませんが、0.89床を超えているところは、整備が進んでいるところと、広域搬送、分娩数が8,000件に満たないというところで、このようなところは整備がある程度進んでいると見てもよろしいかと思われます。

 一方、0.6床を下回っているところもまだまだ1617あるというのも事実でございます。

 そこで、これらがどのような問題を起こしているかということで、次のページをめくっていただきますと、ドットがないということで、皆さんどっとお疲れになられると思いますが、ドットがある資料を持っていらっしゃる方もおられると思います。これを見ていただきますと、X軸は、MFICU1,000分娩当たりの病床数で、0.710.89というところが、先ほど来出しましたが、算出したところであります。

 周産期死亡率は、現在0.4前後というところですので、これを見ていただきますと、MFICUが少ないところからMFICUの数が多いところまで全て均一化していまして、MFICUの数が多いからといって周産期死亡率がいいわけでもなく、低いからといって悪いわけでもない。ただ、これは世界の基準から見ますと、1,000分娩当たり0.4というのは物すごくすばらしい数字でありまして、そのトップレベルの中のわずかな差だと思われます。むしろこれを読むのは、0.71よりも少ないところが、これだけドットがありながら周産期死亡率がいい。ここは何らかの努力あるいはMFICU加算を取れていないベッドでの努力といいましょうか、そのようなものがあらわれているのだろうと思います。

 したがいまして、こういうところはどのように今後手を入れていくのかというところが、今、やるべきところかなと思われます。

 最後、13ページが全体のまとめですけれども、現状では、MFICU1,000分娩当たり0.89と試算されます。これは現状の0.85と比較して、現状をあらわしている。ある程度充足されていると言ってもいい基準であろうと思われますが、これはかなり厳しめの基準ですので、最大瞬間風速が吹くときには厳しいところもあろうかと思われます。

MFICUの病床数は、都道府県間で0~2前後と非常に大きな格差があります。人口の少ない医療圏あるいは広域をカバーするための医療圏というところでは、個々の問題があろうかと思われますが、むしろ現在は、足りていないところにどのような手当てをするのかということも含めて、ある程度考えなければいけないと思われます。

 最後に2つ書いてありますが、地域によっては搬送の工夫、これは広域搬送等のことを含めたことで、先ほどNICUでも出ていましたが、同じようなことをMFICUでも考える必要があるということ。

 もう一つは、人的資源不足の問題、医師配置の工夫ということで、MFICU基準をとっていないところでの成績のいいところへの配慮をどのようにするかというところが問題かと思われます。

 以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 それでは、資料3につきまして御議論をいただきたいと思います。

○中井参考人 質問ではないのですけれども、4の内容も大分重複しているので、一緒にやってからのほうがよろしいかなと思います。

○五十嵐座長 それでは資料4も、これから中井参考人に御説明いただきたいと思います。

○中井参考人 なるべく短時間で済ませます。

 私のほうでは、今と同じようなMFの状況、人的状況に関して現状調査を主に行いました分析をいたしました。

 表紙に書いてある1.~5.までのさまざまなデータソースを採用しました。

 2ページ目から解説をさせていただきますが、まず、御存じのように地域の総合周産期母子医療センターにはMFがございまして、総合の100施設に加えて、今、地域は41施設ございます。一番下段、総数で言うと869床。

 医師数なのですけれども、1,931とありますが、先ほど来議論に出ています産婦人科医の中でも産科に特化した医師数がこちらです。上段のほうに総合と地域の医師数をそれぞれ書いてありますが、これはその施設に属する医師なので、実際に産科診療に携わっているかどうかというのは、違う医師も含まれているという数字であります。

 次の3ページ目、下段のほうですけれども、これが施設と医師の配置の状況を示したもので、総合周産期は分娩数当たりで言うと、1万分娩に1施設の配置。地域を合わせると、各自治体、2,600分娩に1施設でありますけれども、格差は15倍から7.3倍という格差になります。

MFの病床数は、先ほどから出ていますように1,000分娩当たり0.85床で、自治体間格差は6.7倍で、約7倍が施設の格差ということです。

 一方、下段にあります医師数なのですけれども、これはそれぞれ1,000分娩当たり総合の医師とMFの医師数を書いてありますが、13.417.6倍という自治体間格差があります。これは第2回の検討会で、昨年度、私ども田村班でやりましたデータを御紹介いただいたのではないかと思いますが、全産婦人科医の自治体間格差というのは2.34倍ですので、やはり総合周産期やMF施設においてはさらに厳しい現状になっているということで、下はXYチャートで医師と施設の相関があるということを示しましたが、恐らくは医師数が律速段階になっているのではないかということを示唆するものです。

 4ページをごらんいただきますと、今の数字、施設数と医師数の自治体ごとのものを書いてございます。赤い字のところが平均値を大きく下回るところで、網かけにしてそれぞれを示してありますが、施設と医師両方が少ないという自治体が6自治体ございました。後ほど私なりの対策例を示させていただきますので御記憶ください。

 次に5ページですが、今度は診療機能と自治体間の格差なのですが、まず、これは総合と地域を合算した施設が自治体内のどれぐらいの分娩を扱うかということですが、全国平均は23.7%です。しかし、ここにも7倍近くの格差があります。

 下のXYチャートは、横軸に分娩数の割合を示し、縦軸にリスクの一つの指標として帝王切開率を書いてございますが、例えば右下のほうの山梨県では、全県の60%近くの分娩を周産期母子医療センターがやらなければならない状況になっている。つまり、分娩施設が少ないわけですから、当然ローリスクが多く含まれますので帝王切開率は低い。

 一方、佐賀県ですとか田村先生の埼玉県あるいは福岡、九州方面に多いのですけれども、診療所分娩が多いようなところですと、10%前後ですから、いわゆる濃縮したリスクを扱って、本来、周産期母子医療センターのイメージというのは、皆さんこちら側にお持ちなのかもしれませんが、実際では各自治体のニーズというのがございますので、決して山梨や福井あるいは岩手といったところを責められたものではなくて、それは必要に応じた施設機能になっている。これを一律の基準で縛るのは難しいのだというのは、一番初めに痛感したデータでございます。

 続きまして6ページですが、今度は私のテーマの一つであります母体搬送に関してのデータを、総務省、消防庁の1年間のデータから持ってきたものですが、まず、発生率というのがわかりました。これは今まで余り出たことがないのではないかと思いますが、全分娩数と全周産期搬送が行われた数を割りますと4.2%。妊婦さんというのは高齢の方もいますが、大部分は20代、30代です。残念ながら同世代の緊急搬送パーセントというのは出ていないのですけれども、全体の救急搬送というのは、おおよそ人口当たり4%内外の救急搬送が発生しておりますが、恐らく年代ごとに区切ると、この年代の中では、妊産婦というのは非常にハイリスクのグループに当たるのではないかということを推察する数字だと思います。

 その下に、今度は受け入れ側、MFICUの取り扱い割合というのは、各自治体の中で起こった救急搬送のうち、MFICUが一体何パーセント収容したかということが示されています。ここは随分格差がありますが、これは隣の宮崎の鮫島先生のいろいろなすばらしいシステムがあるのでこういうことになっているのではないかと思います。

 それから、MF1床当たりの搬送数、医師一人当たりが受け取る1年間の搬送数を見ますと、こちらはやはり施設より医師のほうで格差が大きくなっているところであります。

 そして、MFICUの断り率というのは、消防庁のデータではなく、厚労省の周産期調べのほうで、依頼件数と受け入れ件数が出ておりますので、計算したものですけれども、逆に言えば83%は断らず受け取っているので、これは非常にいい数字なのではないかと私は思いますが、やはり自治体間にさまざまな差がございます。

 下段のグラフを2つ見ていただきますと、断る率は一体何に依存するのかというのをいろいろ調べたのですが、この2つが少し弱い関係があったのです。やはり医師一人当たりの搬送数が多ければ、当たり前ですが断る率が高くなる傾向。

 そして、1,000分娩当たりのMFICUが少ない自治体で断る率が比較的高いのではないかというデータであります。

 特にMFベッド数のほうでは、グラフ中に十字を書いてございますけれども、仮にですが、1,000分娩当たり1床で分けますと、カイ二乗検定をするわけですね。ツー・バイ・ツーの検定をすると、1床未満の自治体で断り率が高いという結果が出ました。

 続きまして7ページは、今度は医師の就労状況を調べました。ポイントだけなのですけれども、推定在院時間、1カ月にどれだけ病院にいるかということを推定した計算がございますけれども、それで見ますと、一般の病院、周産期指定を受けていない病院の平均は、それでも289時間で過労死の基準を超えるぐらいの平均なのですけれども、周産期母子医療センターでは315時間と、25時間以上長いわけです。つまり、1日に換算すれば1時間以上労働時間が長く、過重労働になっていることが伺えるデータです。

 その因子は一体何だろうと見ますと、これもすごくシンプルですけれども、MFICU1床当たりの医師が少ないところでは当直回数が多い傾向になりますし、また、MFICU1床当たり2.4人以下のところですと在院時間が長い。先ほどの右側のほうですけれども、同じ傾向になります。もっとも、これは相関性も、一応ぎりぎりですけれども、有意差が出るということなので、医師数に依存しているということです。

 8ページをごらんください。今度は、そういった医師の負担と診療所が扱う分娩率を見てみたのですが、先ほど同様、各自治体の中で診療所がどれぐらい分娩を扱っているかという頻度を見ますと、診療所の分娩が多い自治体でかえって搬送が多くなるとか、いろいろ思ったのですけれども、そういう有意差は出ませんで、若干ではありますが、医師の労働負担が軽減される傾向にあった。ローリスク妊婦の負担減少が、労働負担減少に寄与しているのではないかということを示唆するデータでございます。

 その下は周産期予後との関係を示したもので、これは人口動態調査、平成21年から25年の5年間の平均値で、先ほどの鮫島先生のお話と重複しますので簡潔にしますが、4.2の平均値で非常に低いものです。

 そして、今、挙げましたMFのベッド数であるとか断り率等々の指標と比較しますと、周産期死亡率はどれも関係ありません。特にMFが少ないから死亡率が高いということもございません。

 そして、厚労省の周産期医療体制調べにおける評価点と総合の評価点、地域の評価点をそれぞれ調べたのですけれども、それと比較しても、特に評価点が高いから周産期死亡率が低いということもないようでございます。

 それと、診療所の分娩率。これが影響するという御意見もあるのですけれども、それもごらんのとおり、高い自治体、低い自治体と分けて検討をしましたが、特に差はありません。

 言いかえれば、医師の少ないところでも、人的努力によってこの数字が支えられているのだと考えられました。

 少し飛んでいただいて、13ページをごらんください。結論といいますか、まとめです。

 上はまとめですのでお読みいただければと思いますが、2段目のところにあります搬送受け入れ改善には、1,000分娩当たり1床のMFが目安となるのではないかという提案です。それと、MFICUの医師の労働環境の改善には、1,000分娩当たり2名あるいはMF1床当たり2.4名の医師がいれば、ある程度改善する目安になるのではないかということであります。

 そして、私なりに提言と言うほどではないです。対策なのですけれども、考えてみたことは、この3つです。

 やはり医師は急にふえません。ですから、何としても既存の施設を有効活用しなければいけないということ。

 それから、地域を越えた搬送。これも先ほど来言われていることであります。

 3番目には、診療所の活用・支援というのも、周産期母子医療センターを支えるためにも重要なのではないかということであります。その実例を冒頭話しました6個の自治体でお示ししたいと思います。10ページにお戻りください。

 こういう数字も余り出ないと思うのですけれども、これは既存施設、今の施設ごとの1,000分娩当たりの医師数をMFの医師、MF以外の医師で書いてあります。MF以外の医師というのは、MFがない地域で働いている医師、それから、冒頭言いました総合と地域でも産科に特化して働いていない先生方の数。一般病院は参考までに書きましたが、こうして見ますと、先ほどの6県のうち、例えば群馬県、長野県というところでは、MFの医師数は少ないのですが、MFがない地域の医師数がそれぞれ右下に書いてある全国平均の1.7人を上回る、2倍近い数字になっているので、例えばこういった比較的医師のいる施設にMFを設置するであるとか、何か対応をするということができるのではないか。

 それから、鹿児島県は、MFがない地域の先生方がそんなに多くはない。平均をちょっと上回る程度なのですが、産科に特化していない先生方は結構いらっしゃるので、この辺の内部事情はわかりませんが、いかがかという提案です。

 次の11ページにありますのは、圏域を超えたらどのようなことがあるかということで、周産期センターまで60分以上を要する妊婦の頻度。これは前回の検討会で、ここで参考人になられた石川先生に協力をいただいて作成したものでありますが、横軸に自分の自治体内で完結した場合、縦軸に自治体を越えた場合です。

 例えば佐賀県を見ていただくと右端に飛び出ていますが、自治体内で見ますと、何と20%以上の妊婦さんが60分以上を要するということになるのです。

 一方で、佐賀県を越県して他県に依存した場合は、5人前後ですから4分の1ぐらいにそういう妊婦さんを減少させることができるということ。

 そういった観点で先ほどの6県を見てもらいますと、鹿児島は余り効果的とは思えませんが、少しはよくなる。福島、千葉に関しては効果を出す可能性があるという位置づけになろうかと思います。

 最後に、12ページ目に「産科診療所の活用」とございますが、この6県をよく見ていただきますと、診療所の分娩率が群馬を除いて平均を比較的上回っていますし、今、名前が出なかった岐阜県などでは、7割ぐらいが診療所分娩になっています。ですから、これが少ないMFのベッド数あるいは医師数を補完して、今日までやってきているのではないかということを示すデータになるのではないかと思います。

 私からは以上でございます。

○五十嵐座長 御説明、どうもありがとうございました。

 それでは、資料3、資料4、両方につきまして御議論をいただきたいと思います。御質問も、ぜひお願いいたします。

 どうぞ。

○海野構成員 MFICUの必要な病床数を考える上で、MFICUが実際にどういう役割を果たしているのかということが結構大きな要素かなと考えております。一つ大きな要素は、NICUに向けてハイリスクな胎児が最適化された状態で、NICUに入院できる条件をつくるための受け入れの部分が非常に大きな部分としてあると思うのですね。

 結果的にMFICUの病床数等が周産期死亡率にダイレクトに影響しないということに関しては、受け入れの体制があること自体が周産期死亡率の改善のかなりの部分を占めている可能性はあるのかなと感じました。ですから、MFICUの規模の問題とか、そこでの病床数の問題よりも、こういう体制をこれまでつくってきた、MFICUNICUの両方がある総合周産期母子医療センターの体制をつくってきたということが、この数字を支えている一つの要素なのではないかと感じられます。

MFICUの考え方の中には、いろいろな疾患の対象があるわけですけれども、やはり周産期施設にハイボリュームな人的なリソースを集中することによって、ハイリスクの妊産婦さん、あるいは胎児・新生児を必ず受けられる体制をつくるということで進められてきているところがあると思うのですね。ですから、非常に小規模な体制でMFICUを維持しようとすると、そこに非常な無理が加わるだろうということになるかと思いますので、そういう観点で、MFICUの病床数に何が直接関係するかというと、そこに勤務する看護師、助産師さんの数というのが直接そこに関係しますので、それが実際の今の体制を支える大きな要素なのかなと感じられました。

 そうすると、必要病床数が今回の推定で0.89という数字が出ていますけれども、まず、前提となっていた0.6という数字があって、それに到達できていないところがまだかなり残っているということを考えますと、MFICUに関しては、まだまだそれを整備する段階が続いているという認識で、その整備に対する対策を進めていっていただくのがよろしいのではないか。まず、そこの足りないところを上げていくことによって、より地域でのハイリスクの妊娠分娩に対する環境を整備することが、それぞれの県でできるのではないかと感じました。ですから、そういう観点でお考えいただけたらどうかと思います。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

○岡井構成員 よろしいでしょうか。

○五十嵐座長 どうぞ。

○岡井構成員 今、海野先生が言われたとおりだと思うのです。というのは、MFICUの分娩数当たりの数と周産期死亡率は余り関係がないという両先生方のデータを見て思ったことですが、エンドポイントを死亡というので置くと、これぐらい少ないものですから、なかなか差は出ないものだと思います。でも、質という面で見れば、先ほど具体的な例としては、いい状態で出産に至ってNICUに引き継いでいけるということで、現場でいたら、こういうシステムになっていて向上しているというのは、自分が携わってきて明らかなことだと思いますし、母体のほうも、死亡と言うと本当にわずかな人しかそういう最悪の状態にはならないですけれども、その前にどれぐらいぐあいが悪い、あるいはいい質の診療を受けられるかというと、やはりMFがあるとそれだけしっかりした質の医療を受けられると思いますので、死亡率と相関しないから余り必要ないという考えにはなってもらいたくないということを強調しておきたいと思います。

○五十嵐座長 御指摘ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○飯田構成員 ちょっと本筋からは外れるかもしれないのですけれども、改めて今回の就労状況の数字を見せていただいて、当直回数の8回とか10回とか、改めて敬意を表するといいますか、大変だなというのを感じたところでございます。

 部外者の意見で本筋からは外れるかもしれませんけれども、前回の議論でも、若い女性の先生が多くなっているということを聞きまして、今回、いわゆる女性活躍の中で産みやすい環境をということでも議論をされているテーマではありますが、ここで働いていらっしゃる先生御自身の持続可能な労働といいますか、先生方御自身が燃え尽きて離れてしまわれないような施策を、もちろんこれまでも進めていらっしゃると思いますけれども、改めてこのあり方検討の中で、いつかどこかで少しそういうことも触れていただきたいなと思いましたので、申し述べさせていただきました。

○五十嵐座長 この点も重要だと思います。ありがとうございます。

 ほかはいかがでしょうか。

 どうぞ。

○海野構成員 本当に御指摘いただきまして、ありがとうございます。

 産婦人科に関しましては、前回のときにお示しいたしましたように、総合周産期センター、地域周産期センターで現場を支えているのは、本当に30代の女性が6割以上を占める。この世代が支えてくれているというのが現実でございます。その中でこれを持続可能な形にしていくためには、少しでも勤務条件の改善ということが必要だろうということで、私ども産婦人科学会では、こういう周産期センターを中心として大規模化・重点化をして、基幹施設としてしっかりとした勤務環境を提供できる状況をつくりながら、一方でその地域の安全で安心な妊娠、分娩環境も確保していくということで進めたいと考えております。

 恐らく小児科、新生児科でも、当直回数はきょうお示しになられなかったですけれども、大体似たような状況にありまして、その中でのことですから、私は新生児科医をふやすということを考えると、全体としてふやさないと勤務環境がよくならないというところがありますので、そこを何とか積極的な対策を進めていく必要があって、産科のほうも私どもとやっていくわけですけれども、新生児科医に関しては人数的に少ないのですね。

要するに、小児科全体の中での新生児科医の数、新生児を専門にされている先生方の数は少ないですし、勤務している施設も、ここに示されている何百という単位のNICUのある施設だということで考えていただくと、必ずしもすごくたくさんのことをやらなければいけないということではないのですけれども、積極的な施策が必要なのではないかと感じております。

○五十嵐座長 どうぞ。

○飯田構成員 重点化ということももちろん大事なことですが、もう一つ、今、民間企業でも女性活躍の計画などをつくります際に、医療現場は大変参考になっております。例としてはジョブシェアリングがありまして、2人のお医者さんで1人の担当をされるとか、短時間正規雇用といった扱いとか、この辺は私どもメディアでも大変長時間労働や当直が多いのですけれども、医師の世界の施策に学べることが多いということで、参考に研究をさせていただいているところでございます。

 ですので、重点化に加えて、一人一人の女性医師の働きやすい施策というのも一層進めていただければと思う次第でございます。

○五十嵐座長 ライフステージに応じた働き方あるいはより理想的な支援策については、現実にいろいろなところで行われております。そういうものを積極的に導入することと、求職中のドクターに臨床に参入してもらうような支援策なども大事ではないかと考えています。

 ほかはいかがですか。

 どうぞ。

○鮫島参考人 先ほど鶴田構成員から少しお話が出ましたけれども、MFICUの当直体制で、産婦人科、産科医がずっとしているわけですけれども、本当のことを言いますと、それ以外に分娩体制の医者も24時間体制でほとんどのところでいないといけない。

MFICUは、例えば胎児のインディケーションでありますと、救急が起こることはほとんどないということになりますので、そこは非常にゆっくりしているわけですね。赤ちゃんが生まれてすぐ、NICUにしっかりと手渡しするために必要な管理をしているだけですけれども、そのようにMFICUの中の重度母体救急症と胎児救急症のための安定化している人、その安定化している人がいるときに、例えば産科のほうでお産とかとなって、MFに入るほどではないけれども多少手がかかるというときにうまく使わないと、こちらが物すごく忙しくても、MFの人間はそちらに行ってはいけないことになっているのですね。ずっといないといけないのですね。MFICUの中には、1人24時間体制でいないといけない。

 ところが、本当に地域の厳しいところになってくると、そのようなことを言っては首が回らないということもありますので、先ほど鶴田構成員が言ってくださいましたが、やはり運用という面では、緊急の場合はそれ以外である等々のことも含めて、運用を少し考えていただく必要があるのかなと思います。

 実を言いますと、分娩後非常に落ち着いて何もなかったという人が、産後1週間、2週間がたって大量出血で運ばれてきて、その手当てが物すごく要る。結局、分娩周辺なのですけれども、分娩の直前直後ではなくて、かなりおくれて癒着、胎盤、その他というので大変な問題が起こるという、今までなかった母体適応といいますのが、今、大きな問題になってきていますので、その辺の適用をどのようにするかというところも、今後少し考えていく必要があるのかなと現場では考えています。

 以上です。

○五十嵐座長 大変重要な御指摘をありがとうございました。

 ほかはよろしいですか。

 どうぞ。

○鶴田構成員 都道府県の立場から少しお話ししたいと思います。私は現在、静岡県にいますが、静岡県は比較的標準的な数字になっています。しかし、現実的には、先ほどの労働時間でもあるように、現場の努力によって維持されているのが実態だろうと思います。

 先ほどの広域搬送の話についてですが、静岡県は言わば3つの県で成り立っており、浜松を中心とした地域と、静岡及び伊豆半島を中心とした地域からなっていますけれども、それぞれの地域に総合周産期母子医療センターがあります。県域、県境の個別の症例は別にして、県全体としては県内で完結しています。

 しかし、2次医療圏という観点からすると、お産も大分厳しいという状況があります。

 今後、既存施設の活用という話がありましたが、診療所の場合は、前回のデータで医師一人当たり240人ぐらい、総合周産期母子医療センターが医師一人当たり60人ぐらいの分娩を取り扱っています。一方で、産科診療所の医師の高齢化という問題もあるので、総合的に考え、周産期医療体制をどうするかというのは非常に難しい点があると思います。

 各都道府県間にものすごい格差がありますが、そこにいる産婦人科医とか、小児科医の数は決まっているので、その中でのMFICUとか、総合周産期母子医療センターとかの配置、開業医のところでの分娩数をどうするか、地域の中で分配を考えないと、最終的に提言された政策が果たして実施可能であるかどうか疑問があると思わざるを得ません。

 意見だけです。

○五十嵐座長 ありがとうございます。

 それでは、時間も押しておりますので、最後に母子保健課から、第2回の検討会の補足資料として御提示いただいております資料の御説明をお願いいたします。

○田中雇児局母子保健課課長補佐 母子保健課の田中と申します。よろしくお願いいたします。

 第2回検討会で峯構成員から、妊婦さんが妊娠して母子保健手帳を交付されるときに、何らかの地域の情報を提示できないかという御質問がございましたので、当課における取り組みを紹介させていただきます。

 資料5の1枚目、「妊娠・出産包括支援事業の展開」について、まず御紹介いたします。

 こちらは、現在さまざまな機関が個々に行っております妊娠期から子育て期にわたるまでの支援について一貫して取り組みを行う子育て世代包括支援センターを立ち上げまして、妊娠期から子育て期まで切れ目のない支援を実施するという事業でございます。

 このワンストップ拠点において、保健師、ソーシャルワーカー等を配置してきめ細やかな支援を行うことにより、地域における子育て世帯の「安心感」を醸成するとされております。

 平成26年度からモデル事業を開始しまして、モデル事業を29市町村で実施いただき、平成27年度は1014日の時点で、内示ベースですけれども、138市町村に実施していただいております。

 この取り組みは、おおむね5年後までに全国展開を目指すとされておりまして、こちらは「少子化大綱」や「まち・ひと・しごと創生戦略」にも記載がございますし、先日から開催されております一億総活躍国民会議でも、5年後の全国展開について触れられております。

 その下の部分ですけれども、子育て世代包括支援センターを立ち上げるということと、それに加えて地域の実情に応じて産前・産後サポート事業や、産後ケア事業を実施していただき、妊産婦等を支える地域の包括支援体制の構築を図ることとしております。

 次のページですけれども、この事業の中での子育て世代包括支援センターについて、御説明をさせていただきます。

 こちらは、妊娠期から子育て期にわたって、地域の関係機関が連携して切れ目ない支援を実施できるよう、必要な情報を共有し、支援を行い、または関係機関のコーディネートを行うこととされているものです。

 以下の要件につきましては、この9月に自治体にお示しさせていただいたところですけれども、3つの要件がございます。

 1つ目は、妊娠期から子育て期にわたるまで、地域の特性に応じて「専門的な知見」と「当事者目線」の両方の視点を生かして、必要な情報を共有して切れ目なく支援すること。

 2つ目は、ワンストップ相談窓口において、個別ニーズを把握した上で、情報提供や相談支援を行って、必要なサービスを円滑に利用できるよう、きめ細かく支援すること。

 3つ目に、地域のさまざまな関係機関とのネットワークを構築し、必要に応じ社会資源の開発等を行うこととされております。

 峯構成員から御質問がありましたように、まず、妊娠の届出というのは、母子保健法に基づいて市町村の窓口に行うことになっております。妊娠の届出がありますと、母子健康手帳が交付されますが、そのような母子手帳を交付する市町村の保健センターや、市町村が委託した施設等の窓口に、まず最初に妊婦さんがいらっしゃった際に、保健師等の専門職の方による面談を行い、チェックリストに基づいて個々に応じた支援プランを作成し、必要に応じて必要とされる関係機関につなげるという、妊娠期から子育て期にわたる切れ目のない支援でございます。

 次のページですけれども、産後ケア事業について御紹介いたします。

 こちらは「母子保健医療対策等総合支援事業」のメニューとして実施されているものでして、退院直後の母子に対して心身のケアや育児のサポート等を行い、産後も安心して子育てができる支援体制の確保を目的としております。

 こちらは現在のところは、先ほど御紹介いたしました子育て世代包括支援センターの実施が条件となっております。

 「対象者」としましては、家族等から十分な家事、育児などの援助が受けられない産婦及びその子で、かつ、「産後に心身の不調または育児不安等がある者」、または「その他特に支援が必要と認められる者」(ただし、病院等への入院を要する者は除く。)とされております。

 「事業内容」としましては、宿泊型またはデイサービス・アウトリーチ型により、母体ケアや乳児ケア、育児に関する指導、カウンセリング、心身のケア、育児サポート等が行われます。

 また「実施担当者」が示されておりますが、助産師、保健師または看護師等の担当者を必要に応じて配置することや、「実施場所等」が宿泊型、デイサービス型と要綱上示されております。

 実績ですけれども、26年度はモデル事業と同じ市町村数で29市町村。27年度も、産後ケア事業は子育て世代包括支援センターの実施が条件となっておりますので、こちらも子育て世代包括支援センターの内示ベースの実施状況と同じ138市町村となっております。

 母子保健課からは以上です。

○五十嵐座長 どうもありがとうございました。

 ただいまの御説明に対して、何か御質問がありますか。

 どうぞ。

○岡井構成員 今、出産の包括支援事業の図を見させていただいているのですが、この中に、いわゆる特定妊婦とかがあげられていません。厚労省でも非常に力を入れている虐待の防止のときに必ず問題になるのは、母親がきちんと育てていくことのできないような人、妊婦のときからそういう人を見つけて、何とか早い時期から支援をしていこうと。そういうことが大変重要だということで、今、そちらの審議会もやっていると思いますけれども、その辺のところがこの中に全く入っていないのです。そういうものも上手に入れていったほうがいいのではないかと思うのですね。

 例えば望まない妊娠の人は、どこにも相談ができないで、一人で悩んで困っているわけです。そういう人にどううまく手を差し伸べるかというやり方は、もちろん厚労省という名前を出すと逃げられるかもしれませんが、厚労省なりに後ろからサポートして、どこかの組織とかを活用してもらうような、しやすいような体制をつくってそういう人を救っていく。今、言った特定妊婦とか、そういう人に対する対応も、全体の中に入ってきていいと思うのです。

○田中雇児局母子保健課課長補佐 もちろんそのような方々への対応も含まれておりまして、特定妊婦の方はチェックリストで漏れなくチェックできるような仕組みをつくり、必要な支援を妊娠期から行っていくことを検討しています。例えばそういった方は、このようなセンターですとか、皆さんが集まってくるような場所にはなかなか自主的に足を運びにくいこともあるかと思います。そのような状況を配慮して、例えば妊娠期から自宅に訪問し必要に応じて支援を行う事業を行っている自治体もございますので、そのような取り組みも、今後子育て世代包括支援センターで十分行っていきたい次第でございます。

○五十嵐座長 どうぞ。

○阿真構成員 まだ27年度予定とか、26年度からの事業なので、本当にこれからなのかなと思うのですけれども、岡井先生の御意見とは逆で、チェックに挙がる方はこういうものに乗っかるというのはすごく理解しているのですけれども、ぎりぎり挙がらない方でかなり深刻な方が自分の周りですとか地域にもかなりいまして、保健センターの保健師さんのチェックとか、そういったものにもぎりぎり大丈夫で、でも、とても一人では子育てを続けられないという方が地域には結構いらっしゃるので、今、そういった方をじっくり見させていただいて、どこで救ってもらえるかなということをすごく思いました。

 やはり明らかに問題がある方は、ここに乗ってくることで救われる方もいるとは思うのですけれども、そうでないグレーの方がかなり多いということは意識して、救急だったらオーバートリアージと言うかもしれないのですけれども、ちょっと広目に救っていただけると。

 そうはいっても、保健センターの保健師さんたちとお話をしても、虐待のおそれのある方を救うだけでも物すごい数なので、ほとんど余裕がないということも理解はしているのですけれども、困っていらっしゃる方はたくさんいらっしゃるので、全てのところで全部を救い上げるというのは難しいかもしれないのですけれども、どこかで網に乗るような形で支援ができるといいかなと思っております。

○田中雇児局母子保健課課長補佐 貴重な御意見、ありがとうございます。

 もちろん全ての妊婦さんにこのシステムを利用していただき、必要な方に必要な支援が届くよう、最初の入り口のところでどういった支援が必要かを個別に見きわめられるようなシステムづくりを、今後行っていきたいと思います。

 ありがとうございます。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 ほかはよろしいですか。

 どうぞ。

○山本構成員 1つだけ質問をよろしいでしょうか。

 妊娠・出産の包括支援事業の展開ということで、150市町村に向けて支援センターの立ち上げということですけれども、実際はこのような役割を保健センターが現に実施しているわけですけれども、保健センターとは別に、また妊娠・出産に特化した包括支援センターを立ち上げていこうという意向でしょうか。

○田中雇児局母子保健課課長補佐 御意見ありがとうございます。

 そうではございません。市町村の保健センター等を活用する等、地域の実情に応じて既にある資源を活用し、先ほどお示しいたしました要件を満たせば子育て世代包括支援センターと名乗っていただけるように、現在課内で検討をしているところでございます。

○山本構成員 わかりました。

 それでは、現在ある保健センターが要件を整えて、看板を上げていけば、保健センターが支援センターの役割を担うという理解でよろしいでしょうか。

○田中雇児局母子保健課課長補佐 そのような理解で問題ございません。

○山本構成員 ありがとうございます。

○五十嵐座長 ありがとうございました。

 まだ御意見があるかもしれませんけれども、よろしいですか。

 それでは、きょうはたくさん御意見もいただきましたので、これをまとめまして、事務局は次回以降の検討会の資料としてご提出下さい。さらに、先ほど資料があったら出してくださいという要望もありましたので、御検討をいただきたいと思います。

 最後に事務局から何かありますでしょうか。

○伯野救急・周産期医療等対策室長 長時間にわたり御協議いただきまして、まことにありがとうございました。

 次回の開催ですが、また日程が決まり次第御連絡をさせていただきたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。

 ありがとうございました。

○五十嵐座長 それでは、きょうは大変活発な御議論ありがとうございました。これで終了したいと思います。


(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 周産期医療体制のあり方に関する検討会> 第3回周産期医療体制のあり方に関する検討会(議事録)(2015年11月27日)

ページの先頭へ戻る