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2015年9月17日 第53回 がん対策推進協議会(議事録)

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成27年9月17日(木)14:00~17:00


○場所

厚生労働省 専用第14会議室(12階)


○議題

(1)がん対策基本法の改正について
(2)がん対策加速化プランについて
(3)その他

○議事

○がん対策推進官 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第53回「がん対策推進協議会」を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。

 まず、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は、大江委員、宮園委員より御欠席の連絡をいただいており、中川委員からはおくれて御到着との御連絡を受けております。

 また、道永委員は本日所用により途中御退席されます。

 事務局の出欠状況ですけれども、健康局長の新村ですが、本日公務のため欠席をさせていただきます。

 また、健康局がん対策健康増進課長の正林はおくれて出席となります。

 それでは、以後の進行は門田会長にお願いいたします。

○門田会長 皆さん、こんにちは。きょうは久しぶりに3時間という少し長い予定がされておりますが、本日もどうぞよろしくお願いしたいと思います。

 それでは、最初に事務局より資料の確認をお願いいたします。

○がん対策推進官 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 資料1「がん対策推進協議会委員名簿」。

 資料2「がん研究に係るプログラムの今後の在り方に関する検討会」について。

 資料3「がん対策基本法について」。

 資料4「がん対策加速化プラン骨子案」。

 資料5「がん対策加速化プランの策定に向けて」。

 資料6「平成28年度がん対策予算概算要求の概要」。

 その後、参考資料といたしまして「がん対策基本法」。

 参考資料2「がん対策推進基本計画」。

 参考資料3「がん研究10か年戦略」。

 参考資料4「がん対策推進基本計画中間評価報告書」。

 参考資料5「今後のがん対策の方向性について」。

 参考資料6-1「がん研究に係るプログラムの今後の在り方に関する検討会報告書」の概要

 参考資料6-2「がん研究に係るプログラムの今後の在り方に関する検討会報告書」。

 参考資料7「希少がん医療・支援のあり方に関する検討会報告書」。

 参考資料8「地域緩和ケアの提供体制について(議論の整理)」となっております。

 また、本日は桜井委員、勢井委員、難波委員、馬上委員、山口委員、若尾委員よりそれぞれ資料を御提出いただいております。

 資料に不足・落丁等ございましたら、事務局までお申し出ください。よろしいでしょうか。

 以上をもちまして撮影を終了し、カメラを納めていただきますよう御協力をお願いいたします。

○門田会長 馬上委員の資料を持ってきてくれますか。

○がん対策推進官 済みません。馬上委員の資料でございますけれども、最後に委員の名前を入れる時間がなかったのですが、こちらの一枚紙になっております。

○門田会長 わかりました。皆さん、よろしいですか。

 それでは、本日の議事に入りたいと思いますが、その議題に入る前に本日は文部科学省から先ほど資料2にございましたが、がん研究に係るプログラムの今後の在り方に関する検討会の御報告と、それから山口委員ががん患者、家族の実態調査をされまして先日報道されておりましたけれども、その御報告をいただいて、それから議題に入りたいと思います。

 では、まず最初に文部科学省よりよろしくお願いいたします。

○文部科学省研究振興局研究振興戦略官 資料2を御覧ください。文部科学省研究振興戦略官の阿蘇でございます。

 文部科学省に設置いたしました「がん研究に係るプログラムの今後の在り方に関する検討会」について御説明させていただきます。

 文部科学省では、平成23年度から今年度までの予定で「次世代がん研究シーズ戦略的育成プログラム」というがん研究のプログラムを推進してきたところでございます。

 このプログラムは、がん研究10か年戦略に基づきまして文部科学省、厚生労働省、それから経済産業省が連携して推進しております「ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクト」のもとのプログラムでございます。この検討会は、現行の次世代がんのプログラムが今年度で終了するということから、次年度以降のプログラムのあり方を検討するために設置したものでございます。

 構成員のところでございますが、主査に上田龍三先生、副主査に宮園浩平先生を置きまして、堀田知光先生を始め17名の幅広い有識者の先生方から御意見を頂戴したところでございます。

 この検討会は、5回の審議を経まして報告書を取りまとめまして、この7月31日に開催されました文部科学省のライフサイエンス委員会に御報告をいただいたところでございます。

 この検討会におけます報告書の概要、それから本体につきましては参考資料6-1、それから参考資料6-2に配付してございますので後ほど御参考ください。

 資料2の2枚目をごらんください。文部科学省といたしましては、本報告書を踏まえまして平成28年度、来年度から実施をいたします次期プログラムについて「次世代がん医療創生研究事業」ということで概算要求をいたしました。この報告書に基づきまして概要でございますけれども、ジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトの一環といたしましてがんの生物学的な本態解明に迫る研究、がんゲノム情報など患者の臨床データに基づいた研究及びこれらの融合研究を推進して、画期的な治療法や診断法の実用化に向けて研究を加速するということで、早期段階で製薬企業等への導出を目指すというものでございます。

 こちらの研究のコンセプトでございますけれども、各種解析技術の飛躍的な発展によりまして、従来では得られなかった精緻かつ大量のエビデンスに基づいた画期的な治療法・診断法の開発が可能となってきましたこと、それからこれまで現行のプログラム等で個々の研究が進展いたしまして出口戦略を明確に意識した研究開発が進んできたということから、下に書いてございます3つの「アプローチ」、それから「主な研究テーマ」とございますけれども、例えば「患者に優しい高感度・高精度ながん診断法に関する研究」、それから「様々な副作用症状の緩和等に資する支持療法に関する研究」などに取り組むということで、予算要求を今しているところでございます。

 こちらの予算額でございますけれども、右上に書いてございますが、56.7億円を計上しているところでございます。

 文部科学省といたしましては、平成28年度以降も厚労省、経産省と3省が連携いたしましてがん研究が推進していけますよう、今後の予算調整に望んでまいります。

 御説明のほうは以上でございます。

○門田会長 ありがとうございました。委員の皆様、何か御質問があればここで出していただきたいと思いますが、いかがでしょうか。よろしゅうございますか。

 1つだけ、昔から気にしていたことがあるんですけれども、すごくいわゆる医学研究が中心になっているんですが、この社会学的な研究というようなところはどこで扱う格好になっているんでしょうか。このがんの社会学的な面というのは。

○文部科学省研究振興局研究振興戦略官 済みません。こちらはジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトということで2枚目のポンチ絵でございますが、基礎研究の成果を革新がん事業、あるいは企業へ導出するための研究でございまして、社会学的な研究はスコープに入ってございません。そちらのほうは、厚生労働省等で実施されているというふうに認識しております。

○門田会長 わかりました。それで、一切載っていないんですね。

 そのほか、どうぞ。

○西山委員 ただいまの御質問にかぶるのですけれども、新規医療の開発にターゲットを当てた研究のあり方に従った予算配分と今、お聞きしましたが、(癌治療の)現状は、この中間報告にもあるように、評価に不可欠な様々な項目、それからガイドラインに挙げられている標準的治療の本当の意義、副作用等々の研究が全然なされていないという状況にあって、本当に私どもが行っている日常医療の評価に関する研究は、文部科学省ではなくて厚生労働省のほうでフォローするということと理解してよろしいのでしょうか。

○がん対策推進官 後ほど加速化プランの議論の際に、がん対策についてということで事務局から御説明いたしますけれども、その論点の中でも新規薬剤だとか革新的な医薬品医療機器の開発のみならず、委員がおっしゃった副作用だとか標準治療のほうの推進も必要ではないかというような論点を挙げておりますので、またそこでも御議論いただければと思っております。

○門田会長 堀田委員、どうぞ。

○堀田委員 私もこの議論に参加した者の一人として少し発言をさせていただきますと、確かにこれを見ますと、ここに示された項目以外の予防研究などは本文に記載されています。その後は厚労でという話になるかもしれませんが、革新がんのほうでも問題がより本質的なものであればもう一回元の次世代がんに戻る。この図によりますと左から右へ一方通行のように見えるかもしれませんが、その都度、その都度、元へ立ち返るということからいいますと、そういったいわゆるリバースの研究も重要でありますので、そこからもう一回標的を探索するとか、そういったところに戻ることは常にやるということが前提になっておりますので御理解いただきたいと思います。

○門田会長 よろしいでしょうか。そのほか、どなたか御質問ございませんか。よろしいですか。

 ないようでしたら、この件につきましてはここで置きたいと思います。

 それでは、続いて山口委員のほうから、がん患者経験者の実態調査に関する研究についてということで御報告をお願いいたします。

○山口委員 お時間をいただきまして、ありがとうございます。「がんと向き合った4,054人の声」と題する2013年度に実施した「がん体験者の悩みや負担等に関する実態調査」の概要説明をさせていただきます。

概要報告の本体とその要旨をまとめた提出資料1と書いてある資料がございます。時間の関係で、提出資料1に基づいて説明をさせていただこうと思います。

 私は新たに加わった委員なのですが、そもそもがん対策基本法、あるいは推進計画の原点をもう一度しっかり考える必要があると思っています。「がん難民」というキーワードが語られて、それを防ぐためにがん患者の尊厳、それから希望を常に絶やさない。そういうことを意図して基本法が制定されてきた経緯があるのではないかと思います。

 時々、勘違いされるのですが、私が関与してきた拠点病院制度や今日、お話しするがん患者の悩み調査は、がん対策基本法が制定される前から始まっています。特に、悩み調査は、「がんの社会学」という学問として、その後、基本法の原点ともなった「がん難民」を作らないために、20年ほど前から取り組んできた研究の成果であることをまずは申し上げておきたいと思います。

 調査はこれまで二回、2003年の第一次調査と2013年の第二次調査として実施されました。第一次調査の結果を参考に、拠点病院を運営していく中で、例えばカウンセリングやリハビリテーションなどの社会復帰を目指す活動の診療報酬化が図られ、患者の不安を緩和する相談支援センターが全拠点病院に設置されるなどの成果につながってきました。

 それでは、今回の二次調査の内容について少し詳しく御説明いたします。1枚めくっていただいて図をごらんいただければと思います。下に2ページと書いてある上の図です。これは、研究班での古い推計で、現在ではもう少し精度の高い推計があると思いますが、現在、わが国には225万人の短期がん生存者(治療後5年未満)が暮らしています。ここには、治療中あるいは経過観察中、進行がん・再発がんの治療中、終末期緩和ケアの対象者等が含まれます。この群が、がん対策基本法で最も重要と考えられた患者さんたちです。

 そういう状況の患者さん一人に対して、配偶者、子どもさん、親しい友人などが周囲にいると考えますと多分5倍ぐらい、したがって1,000万人ぐらいの方ががんという問題を大変身近に感じておられると思います。未来に向けてのがん対策は極めて重要なのですが、同時に、今この世の中でがんという病気に苦しんでいる人たちに向けた強いメッセージを発信するのががん対策基本法、ひいてはこの協議会の存在意義だと思います。だからこそ厚労省等の協議会にしては非常にまれな形で患者会の方々が多数、委員として入られており、がん患者さんとしての視点で意見を述べることが求められているのも、そういう歴史を踏まえてのことだと思います。

 私どもの「がんの社会学研究班」では、できるだけこういう問題に対し、科学的なアプローチを行う目的で、下の図に書いたような、患者さんや御家族が向き合わねばならない悩みや負担を4つの柱、それから15の分類にまとめて分析できるように分類法を確立しました。

 3ページをごらんください。第一次調査の結果は、この協議会でもいろいろ参考にしていただき先ほど申し上げたような成果につなげることができました。そこで、今回の第二次調査では、この2003年と2013年の間にがん対策基本法を初めとしたいろいろな活動がなされたので、完璧ではありませんけれども、それらの活動の影響を見ることが一つの目的になりました。がん対策基本法や推進計画のビフォー&アフターで、我が国のがん対策にどのような変化が生じたかを調べてみたいと考えました。

 実際にデータを処理してみると、その下の図のように一次調査と二次調査の悩みや負担のパターンの変化が認められます。この研究ではその手法上、一つ一つの悩みの強さや悩みの数の多少を見ることはせず、10年の間隔を置いて実施された同一内容の調査間でがん患者の悩みにどういうパターン変化があったのかを分析することを主眼としています。その結果、診断・治療に関する悩み、あるいは症状・副作用・後遺症に関する悩み、それから社会的な問題に関する悩みは増加し、一方で漠然とした不安等の心の悩みが減少したというパターン変化が認められました。

 現在、拠点病院等、例えば静岡でいえば拠点病院と県指定の拠点で合計すると静岡県のがん患者さんの9割を診療するという状況になっておりますので、漠然とした不安が減ったということは、拠点病院の整備や相談支援センターの設置などの活動がかなり功を奏しているのではないかと思っております。その結果、悩みがより具体的になって他の分類に移っていることが実態であろうと考えています。

 

 4ページの上の図をご覧ください。この悩み調査は、複雑な構成に基づく調査でもあります。がん患者の悩みや負担について、患者さん御自身に自己記述で悩みを書いていただく調査と研究者が作成した十五の選択肢から選んでいただく調査を同時に実施しています。この図は、選択肢による結果で、2013年の段階で患者さんがどういう悩み、負担を抱えているかを大分類の項目から複数選択していただいた結果です。この上の7つ、8つぐらいの項目が、今、苦しんでいるがん患者さん、御家族に対してどういう施策を打っていくかということの参考になるのではないかと思います。

 特にその中で強調したいのは、その下の薬物療法に伴う悩みや負担が大変増えています。第一次、第二次調査の間で認められた最も大きな差異がこの問題でした。その理由として、まず、術前・術後補助薬物療法が非常に増えてきていることがあげられます。2003年の段階ではそれほど実施されていなかったものが、様々ながん治療において、多くの術前・術後の患者さんが治癒率を高めるために薬物療法を受けるようになったためです。次に、通院でがん薬物療法を受ける患者さんの数が非常に増加していることも理由の一つです。さらに、分子標的薬等の新しい薬剤による副作用に対してまだ医療機関側が十分に対応できていないというようなことを反映している可能性があります。この点については、対応を急がねばなりません。

 5ページ、今回の調査では、がん体験者が求める情報や支援を自由記述で記載してもらいました。自由記述の場合、最も心に残るものが記載される傾向があります。その結果を、4つの柱別にまとめたのがこの図です。

 診療、あるいは心に関するものがやはり多いのですが、特に一番多かったのがブルーの心の1番、「体験談を聞きたい、同病者との交流を図りたい。」これがやはり一番多かったということで、患者団体の重要性がこのあたりに出ているのではないかと思っております。

 患者団体に参加することを意識しているのかもしれないが、一人の患者として、近未来に何が起こるのか、治療も含めたシミュレーションをやっておきたいという気持ちが強いのだろうと考えています。

 それから6ページ、これは第一次調査によって社会の認識が進んだ就労の問題を扱っています。私たちの調査ががん患者さんの就労問題を世に出したという点では責任を感じており、今回はやや詳しい調査を実施しました。

まず、がん診療後の就労状況については、第一次、第二次調査で大きな差はありませんでした。とくに、依頼退職と解雇のパーセンテージともに34%強で、両調査間での差は認められませんでした。

 下の図では、就労に関して患者さんたちは何が必要かと考えているかを調査した結果です。制度の創設や周囲の人の理解が望まれています。

 以上の結果をまとめて考察しますと、7ページの上の図で、1加速化プランの3本の柱が示されていますが、本日、るる申し上げてきた、患者さんたちの悩みや負担に関する施策がやや乏しいように思います。この辺について、今回の議論で積極的に取り上げていただけると良いのではないかと考えます。特に、今の時点で悩んでいる200万人を超える患者の皆さんに対してどういう強いメッセージを発することができるのかということが、この協議会に課せられている一つの大きな使命ではないかと思います。

 「評論家にはなるな、何かを提案せよ」というのが静岡がんセンターの方針なので、加速化プランの対象として、「短期的な視点、予算もかけない、来年度から実践」という条件で考えますと、即効性が期待できる対策事例として、情報、対話、支援の分野でいくつかの提案ができるように思います。まず、国立がん研究センターも私どもも、あるいは多くの団体がウエブサイトや冊子を出しておりますので、そのリスト化、全患者に例えば配るとかを考える。対話に関しては、拠点病院の相談支援センターを中信に相談件数、カウンセリングの件数、緩和ケアなどについて下限を定め、活性化を図ることも一案です。

 また、支援として、拠点病院で行った支援の内容、そしてその件数、これについても報告を求め、次の評価のときに使う。こういう地道な努力によって、状況の改善が図られるのではないかと思われます。

 以上です。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。10年間の比較ということで、この間にがん対策推進基本計画が全体的に見れば相当浸透してきているという評価が最初あったかと思うのですが、患者さんたちの気持ちのところですね。もう少し検討する余地があるというようなお話だったと思いますが、どなたか御質問ございますか。

 若尾委員、最初にお願いします。

○若尾委員 若尾と申します。ありがとうございました。10年間の経過がわかる貴重な資料だと思うのですが、1つだけ基本的なことを教えていただきたいと思います。

 3ページ、がん患者の悩みや負担というところで前回の2003年の調査、それから今回の2013年の調査のnがここに書かれていますが、このnの範囲は両方とも同じ静岡の患者さんでしょうか。それとも、もうちょっと広範囲な県をまたいだというような対象になっていますでしょうか。

○山口委員 まず、この調査結果は全国の患者さんから得られた悩みや負担の数です。患者数は第一次調査が8,775人、第二次が4,054人です。その方々が最もつらかったと思ったことを自由記述で書いていただいて、それを私どもが読んで分類し、解析しています。従って、お一人から2つ、3つの悩みが提示されていることもあります。悩みの数で言えば、第一次では二万数千件、第二次では9,600件となります。

 

○門田会長 よろしいですか。

○若尾委員 ありがとうございました。

○門田会長 勢井委員、どうぞ。

○勢井委員 勢井です。このがん患者の悩みや負担ということで、悩みの大きいものが2つほど先ほど山口先生のほうからお話がありましたけれども、症状、治療、副作用、後遺症、検査、治療方針と、いろいろ患者さんから出ていますね。それに対して、それが実際の医療現場のほうにフィードバックされたとか、されるとか、そういったことはあるのでしょうか。また、あったのでしょうか。それとも、全くそれは関係ないということですか。

○山口委員 そうシンプルに片づけられても困るんですけれども。

○勢井委員 済みません。

○山口委員 この研究は、まず厚生労働省の研究班としてスタートし、がん患者の悩みについての実態調査を主たる目的としました。その結果は、本協議会の議論や診療報酬に反映されていますからがん対策に関して、あるいは医療現場にある程度フィードバックはされていると思います。

強調したいのは、この研究を進める過程で、可能な限り、がん診療連携拠点病院の医療スタッフと患者会の皆様との間の議論を深めてきた点です。報告書概要の資料3、研究組織に研究参加者のリストがありますが、多くの医療スタッフが患者会の方の生の声を十数年にわたって拝聴してきました。このような議論は医療現場に直接反映されています。

 ただ、公式には、実態調査結果を医療現場に強制することはできませんので、こういう内容について協議会の席で御議論いただき、必要な事項を基本法や推進基本計画や加速化プランに反映させ、全国に広げていくことが必要だと思います。

 なお、拠点病院の評価をしている立場から申し上げると、第一次調査で重要だと考えられた項目が、除々に、拠点病院の評価項目に入りつつあることも事実です。従って、調査結果は様々な形でがん対策や医療現場に反映されつつあるといって誤りではないと思います。問題は、それがどの程度のスピード感で実施されるかにもよると思います。

○勢井委員 では、今後病院側の方向としては、その患者側の声を聞くことによって治療であるとか、そういった悩みに対して現場のほうでやっていくということはできるわけでしょうか。

○山口委員 多分、それは私がお答えできる問題ではないと思います。私の役割は、今がんの患者さんはこういう悩みを持っているんですよということを可能な限り医療機関や医療スタッフに伝えることだと考えています。それをどう反映させていただくかは、それぞれの病院の責任者やがん医療を担当する方々に託されています。もちろん、多くの医療機関、医療スタッフが、このような調査結果をより良い診療に活用していただけることを望んでいますので、何かいい知恵があったら、逆に教えていただきたいと思います。

○勢井委員 できたら、次回にでも持ってきたいと思います。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、堀田委員どうぞ。

○堀田委員 ありがとうございます。こういうデータで10年間、特にがん対策基本法の前後で比較するというのはなかなかない調査だと思いますので、非常に貴重な中身を含んでいると思います。1つだけ申し上げますと、全国に幾つか、百数十の病院でしょうか、協力を得てこれだけの数を集めているわけですが、それを任意で協力してくださったところということになるのと、それから前回のときと今回のときと施設等が必ずしも一致はしないということですので、調査対象の比較性や代表性はちょっと冷静に見る必要がある部分もあるかと思います。

 昨年、患者体験調査をこの協議会のもとで行ったものにつきましては全国の都道府県、あるいは地域がん拠点の中からランダムに病院を抽出して、しかも患者さんも院内がん登録に基づいてランダムに選んでやっているので、代表性はかなり確保したということからいうと、ちょっと性質の違うデータではあるので、細部で見ると何かここが違っているねというところはデータ的に患者体験調査と違うところはあるかもしれませんが、そこはそういうバックグラウンドが少し違うというところを勘案して御理解いただけるといいと思います。

 先ほど勢井委員からおっしゃったような、どうやって生かすかというのは、まさにこの場でこういったことをもとに次の家族プラン、あるいは基本計画にどうやって生かしていくかということになるんだろうと思います。ありがとうございます。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、馬上委員どうぞ。

○馬上委員 済みません。最後に1つだけ、希少がんと小児がんの立場からちょっとお願いしたいんですけれども、これだけの大人数のコホート研究ということで、私も静岡のがん会議サテライトフォーラムに参加させていただいて大変勉強になったんですが、その後、御発表になった石川先生にお伺いしましたら、これだけの人数がいても希少がんとか小児がんというものが救い上げられないというふうに伺いまして、もし今後機会があれば、希少がんとか小児がんとか、大変数が少ないものについても調査を行っていただきたいと思いました。

○門田会長 確かにそうですね。ありがとうございました。

 では、お答えをどうぞ。

○山口委員 小児がんの御家族の方というのは、三重苦と言われています。若い夫婦なので収入は少ない、そういう中で医療費がかかる、さらに医療費以外の出費も多い、加えて、子どもさんが遠くに入院していれば無理をしてでもお見舞いに行く、結局、共働きでも母親は仕事をやめざるを得なくなる。そうすると、収入がさらに減る。

 そういう問題はずっと以前から指摘されているのですが、小児がんや希少がん患者を支える家族の暮らしについての悩みを調査したものはあまり見たことがありません。むしろ患者団体の方々が中心になって調査をする必要があるように思います。

○門田会長 湯澤委員、どうぞ。

○湯澤委員 先生、ありがとうございました。今の資料で7ページのところですけれども、JTSのSのところですね。支援というところで、拠点病院の支援内容と件数についての報告を求めるとなっておりますが、こちらについては、患者さんとご家族の現状を知る上では大変重要な事柄かと思っておりまして、今後、協議会等の場などでそのような御報告をいただける予定とか準備はおありかどうかというところをお聞きしたいのですが。

○山口委員 拠点病院の評価をして、その存続の可否を決める座長をやっておりますものですから、現時点ではこれは評価項目には入っておらず、従ってデータを出すことは、今は不可能です。私の提案は、そういう項目をさらに加えていったらどうだろうかということです。

○湯澤委員 ありがとうございました。

○門田会長 よろしいでしょうか。

 では、吉田委員どうぞ。

○吉田委員 7番目の「がん体験者が求める情報や支援」、ここで男女でどういった濃淡というか、特徴があるのか。あとは、世代別というか、そこら辺ももう少し具体的に、もしデータとか資料とか特徴があればざっくりといった形でもいいですけれども、教えていただけますでしょうか。

○山口委員 承りました。これは全て男女、年齢別に層別化できますので、次の機会にでも簡単に御報告をいたします。

○吉田委員 よろしくお願いいたします。

○門田会長 まだそのほかにもあろうかと思いますが、時間の関係で次に進ませていただきたいと思います。

 本来の本日の議題の1番目にまいりたいと思います。「がん対策基本法の改正について」ということに移ります。

 この改正については、議員連盟のほうで関係者の人たちをヒアリングしておられるということは聞いておりますけれども、前回のときにも言いましたが、やはりこの協議会というのはがん対策の方向についての意見を申し述べるということから、ぜひここでディスカッションしたいということを申し上げたと思います。

 そこで、本日はまず事務局からこの基本法の概要を説明していただいて、そしてまた今、委員の皆様からも意見が出ておりますので、その話を聞かせていただいて少し議論を深めたいと思います。

 では、事務局のほうからお願いします。

○事務局 それでは、事務局より資料3を用いて基本法の内容について説明をさせていただきます。

 参考資料1として、基本法の全文をおつけしておりますので適宜御参照ください。

 資料3のスライド番号2のところですが「わが国のがん対策の歩みについて」ということで整理したものでございます。これまでのがん対策ですが、一番左の「法律」のところで、平成18年6月に議員立法でがん対策基本法が成立し、それを受けまして真ん中のところ、平成19年6月からがん対策推進基本計画が閣議決定されてがん対策を推進している。また、研究に関しましては昭和59年から10か年戦略を10年ごとに改定をして推進しているところでございます。

 また、後ほど議論させていただきます、がん対策加速化プランはこれらのがん対策をより一層、推進するものという整理になっております。

 資料をおめくりいただきまして、スライド番号3番は基本法の概要をあらわした1枚絵となっております。協議会の位置づけや基本計画の策定、または基本的施策としてどういうものを進めていくかということが書かれております。

 以降で、その内容について説明をさせていただきます。

 スライド番号4番が基本法の構成でございますが、基本法は第1章「総則」の中で目的、基本理念、関係者の責務等を定めております。また、第2章として「がん対策推進基本計画等」、第3章といたしまして「基本的施策」の中で、がんの予防及び早期発見の推進、がん医療の均てん化の促進、がん研究の推進等ということを定めております。そして、第4章のところで協議会についての規定が定められておりまして、附則として「施行期日等」が記載されております。

 スライド番号5番に移っていただきまして、第1章の「総則」のところですが、基本法の目的といたしまして「我が国のがん対策がこれまでの取組により進展し、成果を収めてきたものの、なお、がんが国民の生命及び健康にとって重大な問題となっている現状にかんがみ、がん対策の一層の充実を図るため、次に掲げる事項を定めることにより、がん対策を総合的かつ計画的に推進する」としております。

 また、「基本理念」といたしましてはがんの克服を目指し、がんに関する専門的、学際的又は総合的な研究を推進するとともに、研究等の成果を普及・活用し、発展させること。また、がん患者がその居住する地域にかかわらず、科学的知見に基づく適切ながん医療を受けることができるようにすること。がん患者が置かれている状況に応じ、本人の意向を十分尊重して治療方法等が選択されるようがん医療を提供する体制を整備することということが定められております。

 また、総則の3つ目、「関係者の責務等」のところで、国、地方公共団体、医療保険者、国民、医師等の責務が定められております。

 スライド番号6番に移っていただきまして、第2章の基本計画の記載のところでは、厚生労働大臣は関係行政機関の長と協議するとともに、協議会の意見を聞いて基本計画の案を作成し、閣議決定をして閣議の決定を求めることとする。また、厚生労働大臣は関係行政機関の長に対し、基本計画の実施等について必要な要請をすることができる。また、都道府県はこの基本計画に基づいて「都道府県がん対策推進計画」を策定することとされております。

 「基本的施策」といたしましては3つありまして、「がんの予防及び早期発見の推進」のところでは、がんの予防の推進、がん検診の質の向上、がん検診の推進のために必要な施策を講ずる。

 また、「がん医療の均てん化の促進」のところでは、専門医等の育成や拠点病院・連携協力体制の整備、がん患者の療養生活の質の維持向上、がん医療に関する情報の収集提供体制の整備等の記載がされております。

 また、研究の推進のところでは、本態解明や診断、治療に関する研究の推進と、がん医療を行う上で特に必要性が高い医薬品・医療機器の早期承認に資する環境整備のために必要な施策を講ずるとされております。

 資料をおめくりいただきまして、スライド番号7番のところに本協議会の規定が記されております。厚生労働省に基本計画の策定に係る審議会として協議会を置くということと、協議会の委員はがん患者及びその家族、または遺族を代表する者、がん医療に従事する者並びに学識経験のある者のうちから厚生労働大臣が任命し、委員数は20名以内とする。

 また、附則といたしまして施行期日を定めており、この法律の施行期日は平成19年4月1日とするという記載をされております。

 スライド番号8番は「基本法と基本計画・協議会の関係」をあらわしたものでございますが、政府は基本計画を策定しなければならないとされておりまして、基本計画に定める施策については当該施策の具体的な目標及びその達成の時期を定めるものとする。また、厚生労働大臣は基本計画を作成するときは協議会の意見を聞く。また、基本計画については少なくとも5年ごとに検討を加えて、必要があると認めるときには変更しなければならないとされております。

 この条文に基づきまして、スライド番号9番、10番のところで基本計画が定められて推進しているというところで、スライド番号9番のところが19年6月の「がん対策推進基本計画」、1期のものでございますが、目標といたしましてがんによる死亡者の減少及び全てのがん患者・家族の苦痛の軽減・療養生活の質の向上を掲げておりまして、がんの早期発見、予防や放射線療法・化学療法の推進等々の施策を進めてきたところでございます。

 スライド番号10番に移りまして、基本計画については5年後に改定を行いまして第2期の基本計画を策定して、新たに全体目標として「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」、また、重点的に取り組むべき課題のところでは、「働く世代や小児へのがん対策の充実」、また分野別施策では小児がんやがんの教育・普及啓発、就労の問題などを取り上げたところでございます。

 最後のスライド11番のところが、各都道府県の条例に関してのスライドになります。現在、35道府県においてがん対策の条例が制定されております。この中では、がん対策基本法に明確な記載がなく、条例に記載のある項目もございまして、下に掲げていますように就労支援やがん教育、小児がん対策、女性のがん対策、受動喫煙防止の対策、骨髄移植の促進などの項目が記載されている条例もございます。

 これらも、国では第2期の基本計画に位置づけておりましたり、別途法律で定めていたりするものもございますが、議論の参考としていただければと思います。

 事務局からの説明は以上です。

○門田会長 ありがとうございました。皆さんから御質問、あるいは御意見をいただきたいと思いますが、今、桜井委員、難波委員、馬上委員のほうから資料を提出していただいておりますので、お3方に資料の説明をしていただいて、そして全体でディスカッションを進めたいと思います。

 最初に、桜井委員お願いします。

○桜井委員 ありがとうございます。がん対策推進基本法の改正に関してですが、私の桜井委員提出資料、2番のほうを先にごらんになっていただきたいと思います。

 一般社団法人全国がん患者団体連合会、ここにおきまして6月16日付に加盟団体、今回のこの患者委員の中にもここに加盟している団体の方がいらっしゃるかと思いますけれども、こちらのほうで意見を取りまとめまして、「国会がん患者と家族の会並びに国会議員の皆様」へということで、改正に関する要望書を提出しております。

 簡単ですけれども、読み上げさせていただきます。

 まず「従来のがん対策基本法におけるがん対策の推進に関して」というところで、1番、「救える命を救う」「避けられるがんを防ぐ」ための対策が不足しているということ。2番目は「緩和ケアと在宅医療の推進が不足しています」、3番目は「がん対策を総合的に推進するための制度が不足しています」、この3つを「従来のがん対策基本法におけるがん対策の推進に関して」ということで挙げております。

 2つ目の視点としては今後のがん対策基本法、つまり今回の改正に伴って必要な新たな項目といたしまして「小児がん・希少がん・難治がんの対策が新たに必要です」、2番目としまして「がん患者の就労を含めた社会的な問題への支援が新たに必要です」、3番目としまして「がん患者と家族の権利と尊厳を守るための対策が新たに必要です」ということ、この3つをまとめて次のページ、加盟団体の賛同団体一覧が載っておりますけれども、こちらのほうで意見を出させていただいております。

 私のほうからは、提出資料1番のほうに戻っていただきまして、この全がん連のほうに出させていただいた内容の中、細かい条文の項目等もありますけれども、私としてはこの中から4枚目の部分、2番の「新規に盛り込むべき条例」といたしまして「●」の2番目、第九条として新規に患者団体の責務というようなものを追加してはどうだろうかということを強く考えております。現行も、責務の中で国民ですとか、あるいは医療関係者等はあるんですけれども、この10年間、患者支援団体の活動のほうはかなり充実してきておりますが、やはりこの患者支援団体がミスリードをしてしまう可能性もあるわけで、正しくその科学的根拠に基づいた啓発、それから患者支援団体を展開する一つの役割としての位置づけを明記していただければと思うと同時に、関連して第一条においても「国、地方公共団体、医療保険者、国民及び医師、患者団体の責務を明らかにし、」と付記することを望みたいと思います。

 参考として下に消費者保護の基本法があるんですけれども、こちらのほうも昭和43年の改定のときに「消費者の責務」として、「消費者団体の責務」という新しい言葉が入りました。これにおいて、消費者保護の担い手の一つとしての消費者団体が位置づけられたという動向もありますので、患者団体におきましてもこういった位置づけが必要なのではないかと思っております。

 ほかに患者委員のほうから補足して、あるいは追記してこの法令関連に関して述べていただきたいことを続けていただければと思っております。

 私からは以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、引き続きまして難波委員のほうからお願いいたします。

○難波委員 難波でございます。ありがとうございます。

 私のほうからは「がん対策基本法」の改正に関する要望書及び「がん対策加速化プラン」の策定ということで、一緒に取りまとめて要望書を提出させていただきました。

 項目は4項目ございます。上から読み上げさせていただきます。「1.がん検診受診率向上のための施策の見直しと強化」「2.マイナンバー制度の連動等検診情報の一元管理」「3.女性や若年性のがん対策の検証と改善」「4.がん情報提供のあり方に関する検討会等の設置」、細かくはぜひこの内容をお目通しいただきたいと思います。

 いくつか補足として申し上げると1番目の「がん検診受診率向上のための施策の見直しと強化」というところです。厚労省で発表していただきました2007年の子宮頸がんの受診率を参考にしているのですが、そのとき24.5%だったものが2013年には42.1%に上昇しているにもかかわらず、6月に発表になった死亡率の上昇というところでは2005年から2015年までの間に5.9%子宮頸がんの死亡率が上昇したということを鑑みても、以前の調査資料によると、検診率が50%になった場合は2015年の死亡率が4%減少するというような調査もあったようなんです。

42.1 %の検診率になったという推定と、もし50%になっていたならば4%減少していたであろうというような根拠が、さっぱりわからない。これまでたくさんの施策等を行ってきたと思うのでぜひこれら再度検証等を行っていただき、より効果のある、よりがん対策を加速化するプランという施策を策定していただきたいと思っております。

 あとは、2番目です。現在、私どもの団体のほうで女子大生に向けた調査を行っているんですが、子宮頸がんは20歳から検診を推進しているわけですが、彼女たちは地元出身地から大学の所在している現在の住所に住民票を変更していないという学生たちが多くいらっしゃいます。

そういった意味でも20歳の女性たち全員に対して検診というものを推奨していく。その市区町村ではなく、日本全国で20歳に対しては検診に対する発信、クーポンであるとか、無料の検診を推奨していく必要があるのではないかと考えました。

 最後の4番は、6月2日の浜本元委員の御意見も参考にさせていただいているのですが、先ほど桜井委員のほうからも発言があったように、やはり患者団体だけではなくインターネット、報道、書籍等での情報ががん患者のストレスになる可能性もありますし、ミスリードしている事例というのが多く見受けられます。これらに関してがん情報提供に関するあり方に関する検討会等を設置していただきまして、国が責任を持って、規制ができるのかはわからないですけれども、指導等を行っていただきたいというような内容でございます。

 ありがとうございます。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは、最後に馬上委員お願いいたします。

○馬上委員 ただいま全がん連の要望書や桜井さんの要望書、または難波さんの要望書で、小児がんや希少がん、若年性がん、難治性がんの対策について、そして患者家族の権利と尊厳に関しての対策を盛り込んでいただき、本当にありがたく思っております。

 小児、若年成人の長期支援体制に関連しまして、小児や思春期、若年成人、つまりAYA世代の立場から、または希少性、難治性、遺伝性の立場、または先ほど吉田委員からお話がありました性別の違い、そういった点から基本理念である第2条第3項、こちらは今、御説明がありましたけれども、「がん患者が置かれている状況に応じ、本人の意向を十分に尊重して治療方法が選択されるよう、がん医療を提供する体制を整備すること」とありますが、こちらにぜひ「がん患者の置かれている状況に応じ」の前に、ライフステージやがんの特性、そして性別の違いなどといった言葉を入れていただきたく思っております。

 また、全てのがん患者ががんになっても安心して暮らせる社会の構築の実現のためにも、「医療を提供する体制の整備」の後に、治療中、治療後の社会心理的や、患者及び家族の生活の質など、サバイバーシップに配慮すること、という文言を入れていただきたく思っております。

 特に小児がんの立場から申し上げますと、小児期の強い治療による後遺症、合併症は一生涯続くものです。社会に参加する前に自立できず、また就労もできず、障害者支援や難病の支援制度から外れてしまい、高額医療制度がありますが、その自己負担医療費を支払っていくことさえも難しい状況があります。このことは第16条の患者家族のQOLの向上にかかわることであるとも思いますので、そちらのほうで明言していただきたいと思います。

 御参考までに、机上資料の表をごらんください。こちらは、「小児がんに関連する社会保障」という題になっておりますが、AYA世代についてもフォーカスされている図になっていると考えております。

 上の欄で、ゼロ歳から75歳までさまざまなライフステージのバーがありますが、その下にそれに伴う社会保障制度などが書かれています。

 真ん中に、20歳から40歳までの間に四角くぽっかりと空いている部分があるのがおわかりになると思います。こちらは、私自身は福祉が手薄いことをあらわしていると考えております。この時期、小児がんで就労できない、または障害者の支援制度、難病の支援制度から外れてしまっている場合は、基本手当、雇用保険、傷病手当、社会保険もなく、障害年金もなく、下の生活保護のほうまで真っ白い四角が広がってしまいます。

 また、社会人である方もこの20歳から40歳までの間、経済的に脆弱な年代であったり、また妊孕性の問題や偏見からの未婚率といった社会的な問題、または若くして結婚されてお子さんがいる方はまさに子育て世代ということで、この年代には心理社会的、そして経済的問題が山積みになっているところだと思います。

 小児の治療中、治療後には合併症のために学校を長期に欠席せざるを得ないが、訪問教育がない。義務教育ではありませんが、97%が一般的に高校進学する中、病院の院内学級にはほとんど高校がないことなど、教育を受ける権利が損なわれているのではないかという事例も存在します。ぜひ16条にはそうした年代があることを念頭に置きながら、がん患者全体の療養生活中だけでなく、治療後の患者と家族の生活の質の向上のために政策を講じるということを加えていただきたく思います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。非常に具体的な御提案をいただきましたが、今まで事務局、それから3人の委員の方からの御意見がございましたが、それに関する質問、あるいはコメントと同時に、また資料は提出していないけれども、ぜひこういうところという御意見がありましたら頂戴したいと思いますが、いかがでしょうか。

 では、若尾委員どうぞ。

○若尾委員 若尾です。ありがとうございます。

 資料は提出しませんでしたが、短く2点ほどお願いしたいことがございまして申し述べさせていただきます。

 今、施行されている基本法でいえば、第7条は医師等医療関係者の責務という形で入っているのですが、医療関係者の方々の努力は多分この法律がなくてもあったかと思います。とても大きな成果が出ていると思うんです。そこで、この条の後に、もしできるようでしたら医療機関等、個人ではなくて医療機関自体の責務というようなものが入っていくといいなと思うんです。救える命は救う。苦労しなくてもいい苦労はしなくて済むというような環境の構築には医療機関の役割がとても大きいので、できたら医療機関の責務というようなことが入るといいと思います。

 それから、もう一点は第17条です。これは多分この策定当時、がん登録の法制化ということを見据えてできている条だと思うんですけれども、ここを今度はがん登録の利用というような形で書き込んでいただけるとありがたいと思います。これもやはり均てん化というところにつながったりするわけですけれども、患者がデータを提供して細かいがん登録データがそろうわけですが、患者自身が欲しいデータがその欲しい形で発表されるかというと、現時点ではちょっと難しいかなというようなところがままあります。地域や国の動向を見る研究の上に役に立つということは、回り回れば患者のためになるわけですけれども、現に患者が自分はどこの病院に行ったらいいんだろう、どこどこの施設はどういった医療成績なんだろうかというような具体的な情報を得るために、この基本法の中に患者利用のための担保をされるようなことが含まれると、とてもありがたいと思います。以上、2点です。

○門田会長 ありがとうございました。そのほか、どなたかございませんか。

 では、堀田委員どうぞ。

○堀田委員 今、がん対策基本法が10年目を迎えるにあたって、さまざまな見直しや状況の変化に対応するような議論が進められていると思いますが、法律というのは私は専門家ではありませんけれども、こういった基本法というものは理念とか責務、あるいは基本事項を整理して広く解釈できるようにつくるというのが基本だと思うんです。ですから、個別的なものについてはできるだけ基本計画なり、あるいはその他の条例なりという形で整理すべきものであるので、こういうものをいじくり回すというのは私自身は余り賛成でありません。

 私は、この基本法というのは大変よくできていると思っています。私は薬事法の改正の論議のときに、このがん対策基本法を見本にしてつくってくださいとかなり強く訴えた経緯もあり、これに対しては非常にリスペクトしています。したがって、本当に直すべきところは皆さんで議論をして直すべきだけれども、読み込めるところは読み込めばいい。それが、私はこの法律に対する態度ではないかと思います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 今、堀田委員のほうから基本法というものについての考え方をおっしゃっていただきましたけれども、確かに基本法で細かいものを書いていると、書いていないことは外れるのかというようなことになり出したらおかしなことになるという危険性はありますね。

 ですから、そういった意味で申しわけないんですけれども、この件については余り時間がないんですね。今回ここでディスカッションするくらいで、あとはメールをいただくかくらいしかないので、今、堀田委員がおっしゃっていただいたから特にあえて申し上げたいのは、そういうふうに大きな基本計画の方向性としてこんなことをという、具体的な話もさることながら、こんな方向性の何かということが欠けているのではないか。追加してもらったほうがいいんじゃないか。私は皆さんにこれはぜひあればおっしゃっていただきたいと思うんですけれども、いかがでしょうか。急に言われても出にくいかもわかりませんが。

 馬上委員、どうぞ。

○馬上委員 今も申し上げたんですけれども、私は本当に素人なのであれなのですが、この基本法を何回か読んだときに、どちらかというと医療体制のことを非常に明確にしているような感じを受けたんですけれども、この第2期の基本計画ではがんになっても安心して暮らせる社会の構築ということを掲げていますので、患者のQOLということについてもやはり入れていったほうがいいのではないかと私は思って先ほど発言させていただきました。

○門田会長 ありがとうございます。この基本法のスタートのときというのは全国でいろいろな患者会、また、大阪で第1回患者大集会でしたか、ありましたね。ああいう形で、あのころは場所によって受けられる医療がここまで違うんだということが皆さんの大きな話題で、その当時、均てん化ということが非常に重要ではないかというのがこのときの法律の中心に入っていたような気がするんです。

 そういった意味で今、馬上委員から教えていただいたような医療のことが多くなったというのは確かにそうだと思います。ですから、もう少し医療施設の問題云々という、均てん化よりもさらにその次の何か大きなものを言うことができれば、ぜひそういう要望を出しておくべきかという気がいたしますけれども、どなたか御意見ございませんか。よろしいですか。

 そうすると、問題を大きく取り上げたがために意見が出しにくくなった方もいらっしゃるかもわかりませんが、これは先ほど申しましたように余り時間的ゆとりがないので、皆さんから今は出なくてもメールで出していただいて、そしてそれを事務局と私のほうで整理させていただくということをお認めいただければ、後から気がついた、これはどうだというようなことをぜひ挙げていただくというふうにしたいと思いますけれども、そういうことでよろしいですか。

(「異議なし」と声あり)

○門田会長 では、この件につきましては時間の関係からそういうふうな扱いにさせていただきたいと思います。基本法という形の意見は、漏れのないようにぜひ御検討をいただきたいと思います。ありがとうございました。

 それで、本日は3時間という予定になっておりますので、この議題の1が終わった段階で5分間だけの休憩、あの時計で10分のところまで休憩をとりたいと思います。よろしくお願いいたします。

 

(休  憩)

 

○門田会長 それでは、そろそろ時間ですので席に戻っていただきたいと思います

 では、後半は議題の2で「がん対策加速化プランについて」ということで進めたいと思います。まず最初に事務局のほうから資料4、5、6について説明をしていただきたいと思います。そして、それから資料を提出していただいております桜井委員、勢井委員、難波委員、馬上委員、若尾委員から、引き続きその資料の御説明をしていただき、そしてその後、3本の補足プランが挙がっておりますけれども、それを軸に個々3つのものについてディスカッションを進めていくという方法でやっていきたいと思います。

 まず、最初に事務局のほうから御説明をお願いいたします。

○がん対策推進官 では、まず資料4の「がん対策加速化プラン骨子案」をごらんください。

 「基本的な考え方」が最初にございまして、その後、具体的な施策として3本の柱を立てております。この中で基本計画には明確な記載はないのですけれども、新たに追加しているものとして2)の9の「がんに係るゲノム医療の推進」というものを入れております。こちらは後ほど御説明いたしますが、ゲノム医療に関しては政府全体で今、取り組みを進めていこうという動きがございますので追加をしているところでございます。

 次に、資料の5をごらんください。「がん対策加速化プランの策定に向けて」ということで、がん対策全体に関する資料をまとめさせていただきました。

 スライドの3が基本法の概要、スライドの4が基本計画の概要、そしてスライドの5でございますけれども、こちらは平成27年、ことしの6月に取りまとめました中間評価の概要になります。例えばですが、下にあります年齢調整死亡率の推移というところで、2005年で92.4だったものが2013年では80.1となっており、減少傾向ではあるんですけれども、全体目標の達成が難しいというような予測が出ております。ほかに喫煙率の減少、それからがん検診受診率の向上のより一層の推進が必要であること。それから、緩和ケア等の提供体制の検証と整備。がん教育・普及啓発、がん患者への社会的苦痛の緩和等の取り組み、こういったものを一層推進することが重要と指摘をされております。

 スライドの6のほうも、個別の施策に関する中間評価の概要となっております。こちらは、ちょっと省略をさせていただきます。

 次のページ、スライドの7ですが、こちらも協議会のほうで「今後のがん対策の方向性についての概要」ということで、これまで取り組まれていないものに焦点を当ててまとめたものです。

 1番の「将来にわたって持続可能ながん対策の実現」の中では、例えば中ほどの「費用対効果」であるとか先制医療、そして大規模データベースの構築、一番下の3番についてですけれども、AYA世代のがん対策や遺伝性腫瘍、認知症対策と連動した高齢者のがん対策などが掲げられております。

 資料のスライド8が「全体目標に対する進捗状況」ということで、このままいきますと目標が達成できないのではないかといった推計が出ております。

 その後、スライド9、スライド10、スライド11については先ほど基本法のほうでも説明いたしましたので割愛いたします。

 スライドの12からが「がんの予防・早期発見」になります。

 1つ目が「がんの早期発見」ということで、スライドの13には基本計画における記載を載せております。科学的根拠に基づくがん検診の実施だとか、受診率50%を達成することを目標として挙げております。

14が「がんの早期発見に関する施策の進捗」ということで並べております。

 スライドの15ですけれども、「市町村のがん検診の項目について」ということで、現在胃がん、子宮頸がん、肺がん、乳がん、大腸がんということで5つのがん検診のほうを市町村に対しては推奨しているところです。

 また、がん検診については「がん検診のあり方に関する検討会」を断続的に開催しておりまして、スライドの17ですけれども、現在は乳がん検診、それから胃がんの検診についてその検診項目や検診間隔、そして検診の対象年齢などを検討しているところです。

 このがん検診につきましてはスライド18で再掲をしておりますけれども、その20%の内訳をスライドの19に示しております。これは、基本計画を策定したときにお示ししたものですけれども、この検診受診率の50%で4%程度の死亡率減少効果を見込んでいるということなのですが、このままでいきますとスライド20にあるとおり2.5%減にとどまるのではないかと推計されています。

 スライド21が「がん検診の受診率の推移」でございまして、徐々に上がってはいるのですが、まだ50%には到達していないということと、全体を通じて女性の受診率が低いということが言えるかと思います。

 スライド22は「がん検診未受診の理由」で、受ける時間がない、費用がかかる、がんであるとわかるのが怖い、健康状態に自信があるというような理由を回答される方が多いようです。

 スライド23ですけれども、受診率に関する国際比較でございますが、欧米諸国、韓国などに比べますと低いという状況です。

 それで、下のスライド24ですけれども、乳がんと子宮頸がんの年齢調整死亡率を国際比較したものを載せております。欧米諸国が徐々に下がっているのに対して日本は徐々に上がっている、あるいは横ばいから若干上がっているという傾向で、これが検診受診率だけが要因かどうかというのはわからないんですけれども、それも一因ではないかということでお示しをしております。

 スライド26がこれまで国のほうで取り組んできたことですけれども、「がん検診に関する推進事業」ということで、検診のクーポン券や検診手帳の配布などを実施してまいりました。子宮頸がん、乳がん検診については平成21年度から、大腸がんについては平成23年度から5年間ということで開始しております。平成27年度の予算としては25億円となっております。

 次のスライド、27番目ですけれども、当然市区町村のほうにおいてもさまざまな受診率向上に向けた施策をとっていただいておりまして、ソーシャルマーケティングの手法を活用した方法であるとか、個別のアプローチや効果的なメッセージの発信や、個別未受診者に対して電話で勧奨するというような取り組みがされております。

 ここまでが受診率の話なのですが、次のスライド、28からが国の指針以外の市区町村のがん検診の実施状況をお示ししております。市区町村のがん検診につきましては、これは市区町村の事業なんですけれども、国のほうでどういったがんに対してどういった検査項目をやればいいかというガイドラインをお示ししております。

 ただ、一方で例えば胃がん検診ですとガイドラインに現在入れていない胃の内視鏡、それからペプシノゲンとかヘリコバクター・ピロリの抗体検査、肺がんであれば胸部CT、乳がんであればエコー、子宮頸がんであればHPV検査、こういったところを既に実施している市区町村も一定程度見られるということです。

 それから、29枚目のスライドですが、国のほうで進めている5つのがん種以外のがん検診、一番多いのが前立腺がんに対するPSA、肝臓がんに対するエコーだとか子宮体部の細胞診といったところが、指針のほうには入れてはいないのですが、市区町村のほうで独自に実施しているという実態がございます。

 スライドの30番からが「がん検診の精度管理の手法」ということで、こちらは精度管理については現在チェックリストのほうを作成して国立がんセンター中心に事業評価をしていただいているところです。

 スライドの31を見ていただきますと、そのチェックリストというのが項目としては例えば名簿を作成してとか、スライド32のほうに示しているような項目が入っているんですが、その遵守率というのは改善傾向ではあるのですけれども、まだ7割程度ということで、より精度管理についても進めていくことが必要ということです。

 スライド32で、例えば対象者への受診勧奨だとか、未受診者への再勧奨、一番下の仕様書というのは実際にがん検診を提供する事業者に対する仕様書の中に精度管理項目が含まれているかどうかといったところがまだまだ実施率が低いという状況にあります。

 それから、スライドの33ですけれども、こちらがもう一つの問題点といいますか、課題でございまして、市区町村以外のいわゆる職域で受けていらっしゃる方というのが一定程度おられるのですが、ここでは事例として全国健康保険協会、いわゆる協会けんぽのほうで受けていらっしゃる方がどの程度いるかということをお示ししております。

 見てとれるのは、その市区町村で特に胃、肺、大腸に関しては協会けんぽの一般検診の中に既にがん検診の項目が含まれておりますので、552万人と挙げておりますが、若干これよりは少ないと思われるのですけれども、市区町村の検診を受ける人よりも多い方が既に協会けんぽのほうで受けられているということで、これ以外にさらに健保組合もございますので、かなりの方が職域で受けているというのが現状でございます。

 ただ、この職域におけるがん検診というのは、現時点においては市区町村に対して出している指針がそのまま適用されるというわけではなく、参考にしていただいているところは多いんですけれども、適用の対象者というところで、今後その職域に対するがん検診をどのように考えていくかというところも課題かと思います。

 下のスライドが、その企業の検診について国の取り組みといたしましてがん対策推進企業アクションというものを実施しております。現在、1,700を超える会社のほうに参加をしていただいておりまして、研修であるとか、情報の提供だとか、そういったものを進めております。

 それから次のスライド、35ページですが、かかりつけ医による検診受診といったところも今後考えていけるんじゃないかということで、これについては平成26年度の診療報酬改定でかかりつけ医の評価というものの中の一項目として健康診断や検診の受診勧奨を行うということがその算定要件として含まれているところです。

 スライド36からが、「がん教育・普及啓発」になります。37が基本計画における「がんの教育・普及啓発」の記載ということで、ここでは特にがん教育について御説明をいたしますとスライドの38でございますが、こちらは平成27年の3月に取りまとめられた報告書の概要になりまして、2番でがん教育の定義だとか、がん教育の目標、その具体的な内容といったところ、そして検討課題として教材や指導参考資料の作成、外部講師の確保、さらに教職員に対する研修などがまとめられたところです。

 こうした報告書に基づきましてスライド39ですが、平成26年から文部科学省のほうでがんの教育総合支援事業というものを進めておりまして、現在21道府県市となっておりますが、モデル事業のほうを開始しているところです。

 スライド40にございますとおり、今後のスケジュールですけれども、28年度までモデル事業を継続していく予定にしておりまして、その後は何とか全国展開を目指すというふうに聞いております。

 スライド41からが、たばこ対策になります。

42が基本計画における記載ということで、平成34年までに成人喫煙率を12%にして未成年者の喫煙をなくすということを目標に掲げております。

 スライド43ですが、こちらは健康日本21の目標とそろえておりますので、喫煙率の減少に関しては平成34年度を目標達成の年度としております。

 スライド44ですが、「喫煙率の年次推移」ということで、徐々には下がっているんですけれども、少し下げどまっているといいますか、やや鈍っているということが見てとれるかと思います。

 スライド45が「中学生・高校生の喫煙者割合の推移」ということで、こちらも下がってはいるものの、まだ一定程度はいるという現実です。

 スライド46が「受動喫煙の状況」ということで、徐々に下がっていますが、例えば飲食店などはまだ高い状態が続いております。

 スライド47がたばこ対策の一例ですけれども、がん診療連携拠点病院の強化事業の一部として禁煙専門の相談員を配置したり、下のスライドですが、安衛法の改正の中で受動喫煙防止措置の努力義務というものを盛り込んでおります。

 その他、スライド49ですが、「その他のたばこ対策に関する取組」として「禁煙支援マニュアル」の改訂、シンポジウムやウエブサイトを活用した情報提供、さらにスマート・ライフ・プロジェクトといいまして、これは健康寿命を延ばすことを目的にした事業でございまして、運動とか食生活、禁煙、それから検診の受診、こういったところをその柱としているのですけれども、それに参加している企業・団体・自治体と協力・連携した国民運動として禁煙を推進しているところです。

 スライド50からが「感染症等によるがん予防」ということで、51番がHPV、肝炎ウイルス、それからHTLV-1の中間評価の内容を抜粋しております。

 下のスライド52でございますけれども、HPVに関しましてはがん検診といった意味でも重要な内容でございまして、現在HPVの検査を併用した場合の子宮頸がんの検診が有用かどうかということについて研究を進めているところです。

 スライド53が1つ目の柱の論点案となっておりますが、がん検診についてはその受診率がまだ低いということ、精度管理の充足率の低い項目があるということ、さらに保険者の提供しているがん検診については市区町村の提供するがん検診よりも多いという傾向なのですが、その実態がつかめていない。こういった現状を踏まえて受診率の向上、精度管理の向上、保健所の提供するがん検診のがん対策における位置づけや実態把握等についてどのように考えるかという論点を挙げています。

 がん教育につきましては現在モデル事業を実施しておりますが、平成29年度からのがん教育の全国展開の開始に当たって、その実行に当たっての課題、対応策をどのように考えるか。たばこ対策に関してもこれまでさまざまな対策をとっておりますけれども、今後のたばこ対策、特に受動喫煙防止対策についてどのように考えるか。そして、感染ウイルスなど、発がんリスクを高める感染症に関する対策や研究等についてどのように考えるかといった論点を挙げております。

 2つ目の柱、「がんの治療・研究」についてですけれども、スライド55が拠点病院の歩みということで、平成13年の8月から拠点病院制度というものを開始いたしまして、56にあるとおり現在352カ所の地域がん診療連携拠点病院、49カ所の都道府県がん診療連携拠点病院、そして新しく始まった地域がん診療病院が現在20カ所、特定領域がん診療連携拠点病院が1カ所となっております。一番下にあるとおり、空白の二次医療圏は84カ所ということです。徐々には減っております。

 それから57がその要件でございまして、スライドの58もその要件になりますけれども、平成26年の1月から新しい要件となっておりまして、診療実績のほうを追加しております。

 それからスライドの59ですけれども、地域がん診療病院ということで、これは拠点病院のない二次医療圏に整備するということで進めております。その要件は人材の配置の要件であるとか、診療実績は緩和されているといったところが拠点病院と異なる点です。

60枚目ですけれども、「がん診療連携拠点病院における標準治療実施割合」ということで、これだけでもって標準治療が実施されていない。個々の状況がありますので100%を目指すものではないのですが、この数値を見てとれるとおり、必ずしも実施されていない可能性があるのではないかということで提示をいたしました。

 スライド61からは希少がん、難治がんですけれども、62が希少がん分野に関する基本計画の記載です。

 それに基づきまして検討会のほうを開催いたしまして、63にあるとおり必要な情報の不足、それから情報共有の困難さなどが課題として掲げられました。

 その後、それに対する施策として64にあるとおり病理診断、人材育成、情報の集約・発信、相談支援、研究開発といったところが今後取り組むべき施策として掲げられております。

 それから、65で「難治性がんの対策について」も10か年戦略のほうにも記載されておりますし、今後のがん対策の方向性においても難治性がんについての研究開発の必要性が盛り込まれているところです。

66枚目からががん研究の話になりますけれども、68枚目ががん研究10か年戦略ということで、平成26年の4月に策定をされました。研究開発において重視する観点として中ほどですが、がんの根治を目指した治療、それから苦痛の軽減、がんの予防と早期発見、がんとの共生といった観点を入れております。

 また、69枚目ですけれども、がんの研究に限らず医療分野全体としての研究開発推進計画が内閣官房の健康医療戦略推進本部のほうで決定をされておりまして、その中でがんについては数値目標のほうも入れております。

 その下、70枚目がそういった計画に基づいて現在3省で連携をしてジャパン・キャンサーリサーチ・プロジェクトを進めておりまして、AMEDのほうで予算の運用が進められております。それで、文科省の次世代がん、厚労省の革新がん、そして経産省の未来医療を実現する医療機器・システム研究開発事業、こういったものを連携とりながら進めております。

71枚目ですけれども、これは革新がんですので厚労省の担当部分になりますが、領域1から領域6というところに分けてそれぞれ研究を進めておりますが、先ほど委員から指摘がありましたけれども、この領域3の新規薬剤開発というところがやはり予算上も一番大きいという状況にはなっております。

 スライド7273は会議の冒頭で文部科学省より報告がございましたので省略させていただきます。

74の「ライフステージを意識したがん対策の充実」ですけれども、76にあるとおり小児がんに関しては小児がんの拠点病院を15施設、中央機関を2施設選定をしております。

77枚目がその概要と、78がその地図の配置になっております。

79枚目ですけれども、拠点病院の検討会ではがん登録だとかコールセンターの設置、それから患者さんの集約、在宅医療支援体制、長期支援、AYA世代への支援、こういったところが課題として指摘をされております。

80枚目ですけれども、特にAYA世代に関してですが、働く世代のがん患者とは異なった就労支援が必要だとか、生殖機能温存に関する正確な情報、あとは一番下ですが、遺伝性腫瘍に対する医療・支援のあり方についての検討の必要性などが盛り込まれております。

81枚目から「がんに係るゲノム医療の推進」ですが、がん領域におけるゲノム医療といたしましては1から3のとおりゲノムの診断、それからファーマコゲノミクスということで、薬の副作用の回避のための遺伝子計算だとかゲノムの創薬、一番大きな例としては分子標的治療薬になりますけれども、そういったことが挙げられるかと思います。

83枚目が、その分子標的医薬の承認状況ということでその一覧をお示ししました。

 また、もう一つ、視点といたしましては遺伝性腫瘍症候群がございまして、こちらはその病的な遺伝子の変異が遺伝して発症する症候群全体を指しておりますけれども、その例といたしましてこちらに並べております。

85枚のスライドが、発がんには生活習慣と環境要因と遺伝素因といった原因があるわけですけれども、このFさんのように遺伝素因が大きく、がんになる確率が非常に上がるということで、こういった方は遺伝性腫瘍として分類をしております。

86枚目ですけれども、「健康・医療戦略の推進体制」ということで、この中で健康医療戦略推進会議のもとにゲノム医療実現推進協議会というものが立ち上げられております。こちらは、内閣官房の健康医療戦略室のほうが事務局となっております。

 このゲノム医療推進協議会のほうでは、88枚目にございますとおり、既に中間取りまとめというものをまとめておりまして、これまでの現状だとか、我が国の国際的な位置づけ、さらに89枚目で今後実施していくこととして質の確保された試料・情報の獲得・管理、それから「理解と協力」とありますけれども、倫理的、法的、社会的課題への対応及びルールの整備、研究の推進、それから人材育成、こういったところを省庁の枠を超えて政府として取り組んでいくべきというような提言をいただいております。

 スライド90が、この「がんの治療・研究」に関する論点案です。

 1点目ががんの拠点病院についてですけれども、枠組みとしてはそろいつつといいますか、指定はしておりますが、必ずしもその均てん化が図られているわけではないということで、今後その質の向上についてどのように考えるか。

 希少がんについては報告書の中で提言されている情報の集約・発信、人材育成、病理診断等について進めていくことについてどのように考えるか。そして、研究についてですけれども、現在AMEDのもと、関係省庁が一体となって推進しております。薬剤開発に関連する研究が多く行われているのですけれども、10か年戦略で重視する観点とされている患者さんや家族の苦痛の軽減、予防と早期発見、がんとの共生等に資する研究についても、より一層充実させていく必要があると考えております。

 また、薬剤開発とともに難治性がんに関する研究、それ以外の分野の研究も推進し、研究者・医療者・患者等の関係者が一体となって研究をさらに強化していくためにはどのような施策が考えられるだろうかという論点を挙げております。

 小児がんについては、拠点病院、治療機関の医療体制を今後どうするかということと、AYA世代に対する医療支援のあり方をどうするかということを論点として挙げています。

 ゲノム医療に関しては、先ほど申し上げたとおり協議会のほうで中間取りまとめが策定されまして、先日厚労省のほうでは9月7日に大臣のもとにゲノム医療実現推進本部を立ち上げております。こういったことで、今は前に進みつつあるんですけれども、がん領域におけるゲノム医療の推進についてどう考えるかといった論点を挙げております。

 3本目が「がんとの共生」ということで、92枚目が「緩和ケア」に関する基本計画の記載となっておりまして、93枚目にこれまでの進捗状況を記載しております。

94枚目ですが、緩和ケアについてはこれまでも述べてきましたけれども、早期から専門的なチームがかかわることで生命予後が改善するといった論文も示されております。

95枚目が緩和ケア研修会の受講者数、それから開催回数ということで、現在約5万8,000人の方が受けたということ。それから、拠点病院の指定要件の中にも看護師さんの配置であるとかスクリーニングの徹底、緩和ケアチームの専従看護師の役割などを新たに入れております。

 また、スライド97から99までが診療報酬における評価を例としてピックアップいたしました。

 スライド100は、24年度から開始している「在宅緩和ケア地域連携事業」でございまして、在支診のリストの作成であるとか、緩和ケア研修の実施などをその事業内容としております。

 そしてまた、101ですけれども、平成28年3月までには拠点病院のうち都道府県の拠点病院のほうで緩和ケアセンターを設置して、外来の緩和ケアから緩和ケア病棟、緩和ケアチームといったところを俯瞰して見られるセンターを整備することを求めております。

 一方で、スライド102にございますとおり一般市民の緩和ケアの認識ですけれども、まだ緩和ケアの認知度として知らないという方が30%程度、それから開始すべき時期の認識についても診断されたときからと御回答いただいている方も6割程度いらっしゃるのですけれども、14%くらいの方ががんが治る見込みがなくなったときからと回答しております。

103枚目、医療用麻薬の認識ですけれども、正しく認識されている方もいらっしゃるのですが、「だんだん効かなくなると思う」とか「最後の手段だと思う」といった誤った認識をされている方も3人に1人程度はいらっしゃいます。

 スライド104ですが、医療用麻薬の利用についても日本は欧米諸国に比べますと低いという状況が続いております。

 スライド105、地域緩和ケアの提供体制ということで、これはことしの8月に緩和ケア推進検討会のほうで取りまとめた内容です。下の四角ですけれども、地域の調整を行う地域緩和ケア連携調整員のような方の人員の配置であるとか、早い段階から地域の医療機関や訪問看護ステーション、拠点病院との連携を促進すること。そして、最後にあるとおり、がん患者や家族に対する看護相談のあり方等についての御提言をいただいております。

106は参考ですけれども、拠点病院における専門の看護師さんの配置をお示ししておりまして、徐々にふえているということです。

 また、スライド107ですけれども、これまで拠点病院を中心にお示しをしましたが、実際には終末期という点においては拠点病院以外のところでみとられている方がかなり多くございますので、今後はその拠点病院以外の一般の病院における、ここの死亡場所というところでは終末期のケアということになりますけれども、そういった論点もあるかと思います。

 また、108枚目ですけれども、「治療による副作用や合併症の現状」ということで、きょう山口委員のほうからの発表にもありましたが、がん自体の症状、それから治療による副作用に苦しまれている方というのもかなりいらっしゃるということです。

 ただ、109にございますとおり、ガイドラインのほうは米国や欧州に比べますとまだまだ少ないという状況で、110の臨床研究も海外に比べると少ないといった状況です。

111ページからは就労支援でございまして、113ページにあるとおり平成25年度から健康局、それから労働部局のほうでそれぞれ就労支援に対する事業の連携をして実施をしております。

114が、その拠点病院のほうの相談支援センターに産業カウンセラーや社労士の方に来ていただいて相談を受けるといった事業です。

 それから、115が「治療と職業生活の両立等の支援対策事業」ということで、これはがんに限っているわけではないのですけれども、就労継続支援の指針の作成。

 そして、スライドの116は「がん患者の就労支援について」ということで、ハローワークを活用したモデル事業、または2番には「事業主が活用しうる主な施策」ということで、例えばトライアル雇用奨励金などを掲げております。

117は、そのモデル事業の概要ですので省略いたします。

118が「就労支援に関する主な取組」ということで、課題といたしましてはまだまだ相談先がわからないとか、それから拠点病院について中ほどですけれども、まだそのニーズの把握が不十分であるとか、企業にとってみると病状の把握が難しいとか、そういった課題が挙げられ、それぞれに対する取り組み等を報告書の中で提言をいただいております。

119枚目、「がんとの共生」に関する論点です。課題といたしましては検討会で指摘されているとおり、例えば地域医療機関との連携だとか、あるいは看護師さんの積極的な緩和ケアへの参画、拠点病院以外の病院における緩和ケア、そして国民の認識がまだ不十分ということ、それから医療用麻薬の使用量がまだ少ないということ、さらに治療による副作用や合併症で苦しんでいる方もまだいるということで、さまざまな多くの課題があるわけですけれども、そういった中で今後の緩和ケアのさらなる推進、治療による副作用、合併症の軽減のための研究、標準治療の普及等についてどのように考えるか。

 就労支援についてですけれども、現在厚労省のほうで事業に取り組んでおりますが、今後の相談支援、あるいは患者さんや主治医・産業保健スタッフ・人事労務担当者等の連携・情報共有のあり方についてどのように考えるかということです。

120ページは、全体に通じるということで再掲しております。

 続きまして資料6でございますけれども、簡単に御説明いたします。平成28年度がん対策予算の概算要求ということで、250億円要求をさせていただいております。3本の柱に沿って今回分けておりますけれども、大きなところではがん検診の約25億、それから肝炎対策ということになりますが43億、それから大きなところだと拠点病院への補助金の事業と研究のところが多くなっております。新しく盛り込んでいるところは2番の「がん治療・研究の推進」で、(1)の希少がん医療提供体制等強化事業ということと、その次のがん集学的治療・ゲノム医療推進事業ということで、これは拠点病院のほうにCRCであるとか、遺伝カウンセラーを配置するといった事業になっております。

 「がんとの共生」の新規事業といたしましては、地域緩和ケアのネットワーク構築事業ということと、それから看護師さんに対する地域緩和ケア研修等事業がございます。

 事務局のほうからは、以上になります。

○門田会長 ありがとうございました。

 膨大な御説明をいただきまして、先ほどは委員の皆さんの御意見をということを言いましたけれども、この段階で今、御説明をいただいたことについての御質問があればいただきたいと思います。ちょっと膨大過ぎましたが。

 では、桜井委員どうぞ。

○桜井委員 非常に膨大なんですけれども、スライドの117ページに「がん患者等に対する就職支援事業」ということで、今日、答えは出ないかもしれないのですが、ここにある実績、就職率が平成26年度43.6%と出ておりますが、これが一般の方のハローワークを通じた就職率とどう違っているのかということについて知りたいと思います。

 それから、あとは定着率ですね。こちらについてもわかるようでしたら教えていただきたいと思います。

○がん対策推進官 済みません。担当が労働部局ですので、途中でわかればメール等でお知らせしますけれども、次回までに調べてまた御報告させていただきます。

○門田会長 そのほか、いかがですか。

 では、山口委員どうぞ。

○山口委員 新たに加わった委員として、基本的な質問をさせていただきたいと思うのですが、先ほど、少し議論がありましたけれども、がん対策基本法、推進基本計画並びにこの協議会の目標、目的について、委員の皆様がどう考えておられるのかという点について知りたいと思います。

 間違いないのは、今回の加速化プランがつくられる背景となった死亡率の問題等があります。「治るがんは確実に治す、治らないがんも将来は治したい。」ここは重要なポイントだと思いますし、よくわかります。一方でがん対策基本法がつくられた最大の要因となった、今、苦しんでいる患者さんたちをどのようにして少しでも楽になっていただくのかという視点が、出席させていただいた中での議論や提示された資料からは少し見えにくいように思いました。その点を、協議会としてどういう形で反映させていくのか?

これまでの加速化プランの説明を考慮すると、拠点病院は多分一つの重要なポイントなのだと思われます。私自身もやらせていただいていたのでよくわかります。

 それから、最後のがんとの共生という部分も、今、苦しんでいる患者さんを支援するプログラムだと思われます。しかし、ここに挙げられている緩和ケアと就労支援の2つの項目だけで、対応できるかというと問題は決して解決しないと思います。

結局、死亡率などの数値的なものや公衆衛生学的な考え方に基づくがん対策が主流になることを否定はしませんが、そもそもこの基本法並びに本協議会の目的には、「今、苦しんでいる患者を支援する」というもう一本の柱があるはずだと考えています。全体の協議の中で門田先生にお答えいただくのは失礼かもしれないので、どなたでも結構ですからこの点について教えていただければと思います。

○門田会長 先ほどの説明の資料5でいきますと、2ページですね。No.5番のところの第2期までの全体目標という形で、今、山口委員がおっしゃっていただいたところの2番ですね。1番目が死亡率、2番目が「すべてのがん患者とその家族の苦痛の軽減と療養生活の質の維持向上」ということですね。それから、最後にあったのは第2期から加わった「がんになっても安心して暮らせる社会の構築」、ここの(2)のポイントは非常に重要だということを山口委員がおっしゃっていただいて、先ほどの御発表もこういうことに基づいたものだと思うのですが、一応この線できているということはそのとおりですね。

 ですから、今、事務局のほうから説明がありましたのは、ありとあらゆるものについてこの3つの柱に分けてみるとこういうふうに今まではなっています。でも、最後にこれを、どう考えるかということで我々に振られているわけですね。ですから、事務局的には論点整理としてああいう形に振ってきたけれども、これをどうするかというのは今、山口委員がおっしゃられたようなことも含めて、本来どうあるべきで、それがどういうふうなスピードでいって加速化プランとは何を意味するのか。

 ここのところは多分、加速化プランというものの解釈の仕方でいろいろ出てくると思うんです。加速化プランということで、目標を何とかしていくための加速化プランだったら今まで計画になかったことも出てくるのか。そうでなしに、計画は計画として残っているので、その計画が動いているのが思うようにいっていないところをサイドからどうするのかというふうな意味での加速化プランという考え方もできるだろうと思うので、ちょっとこれはまた全体のディスカッションのところで改めてやらせていただきたいと思いますが、よろしいですか。

 そのほか、何か事務局の説明についての御質問をどうぞ。

○西山委員 説明のスライド109110のところで、副作用や合併症に関するガイドラインがまだ本邦では少ない。それから、副作用や合併症に関する臨床研究が少ない、という御指摘がありましたけれども、これに対して今回のこのプランの中でどのような形で予算を組んでいるのかとか、そうしたことについてお教えいただきたいのですが。

○門田会長 細川委員、どうぞ。

○細川委員 その前に今の御質問とかぶるのであれなのですけれども、実はこのガイドラインに関しまして、多分神経障害というのは化学療法による神経障害のことを指しておられると思うんですけれども、これは臨床腫瘍学会からガイドラインが出ておりますし、それからもう一つ、がん疼痛に関しては薬物療法などと書かれていますが、現在がん疼痛に効くと言われているのは一つには放射線と、一つにはペインクリニックの神経ブロックですけれども、神経ブロックに関しましてもペインクリニック学会からガイドラインが出ておりますので、ちょっとそこの部分は訂正をいただきたいということを先にお伝えしておきます。

○がん対策推進官 資料について、大変失礼いたしました。この副作用だとか合併症に対する研究費ということですけれども、平成28年度の予算要求といたしましては今、革新がんとして108.6億要求しているところですが、その内訳をどうするかというのはまだ今後の議論かと思います。

○西山委員 それからもう一点ですけれども、どうしてもこれからは在宅・緩和ケアとの地域連携という事業がとても重要なポイントになり、改正医療法でも地域連携法人ができ、地域の連携のケアシステムの構築が進んでいるという段階なのですが、確認をしたいのはこのがん医療と介護等のケアに関する事業とは別建てとして走るのでしょうか。全体として統合された流れの中で走っている、またはいくべきものなのでしょうか。

 混乱しているのは、がん診療連携のシステムを構築するという事業と、包括的地域連携システムが、事実上ほとんどばらばらに走っているように思える点です。両者の立ち位置について、現状についてお教えいただけますでしょうか。

○がん対策推進官 地域連携に関しては在宅医療も含めてですけれども、がん医療に限らず医療提供体制全体として現在、国として進めております。その中に地域包括ケアなども含まれてくるわけですけれども、ではその中でがんに関する在宅医療というか、在宅緩和ケアとの連携といったところは、もちろんその全体の中でも進める話なのですが、例えばがん医療に特化した課題というのは当然あると思うんです。

 例えばモルヒネというか、医療用麻薬の話であるとか、あとはがん患者さんならではの経過の短さとか、そういったほかの疾患とはまた違った視点というところもあるかと思いますので、そこはまたがんのほうで個別に取り組まなければいけない課題というのもあると思うんですけれども、在宅医療との連携という視点ではがんに限らず全体で進めていく話かと思います。ちょっとお答えになっていないかもしれないですけれども。

○西山委員 今日、たびたび議論になっておりますのは「今、救える人を救う。今、苦しむ人たちを救う」ということがきわめて重要な目標のひとつであることを再認識すべきだということであり、がん対策を進めていく上で一番重要なこの要素を促進するためのプランが必要で、将来に向けての研究や対策だけではなく、今ある状況を正確に把握して、それを改善するためにどうするか。について考える必要があると思います。

 ですから、このテーマの中でいえば「がんとの共生」というところがとても重要なポイントだと思うのですけれども、そこに対するコンセプトと施策、またそれらに対する予算が少し弱い案のように思ったものですから、その辺のことをお聞きいたしました。

○門田会長 いろいろあるかと思うのですが、これは事務局の今の全体のこれからのディスカッションのための流れの御説明をいただいたので、ここで事務局に対していろいろおっしゃっていただいても話が進みにくくなりますので、事務局が今、発表した内容でわかりにくかったところの質問にとどめたいと思います。そして、次のディスカッションに入ったときにもう少し深く入っていきたいと思いますが、よろしいですか。

○細川委員 今のディスカッションに必要なことだと思うので、以前から申し上げていますけれども、日本は医学と法学に関しましてかなり言葉の定義というものがきちんとされていないことが多いんです。

 それで、今、私は立場的には痛み、ペインクリニックと緩和医療と両方の立場からここに来ておりますので、緩和ケアでがんとの共生の部分が出てくるということなんですけれども、実は最初の緩和ケアのところで94番のスライドになるのですが、この時点では早期から専門的な緩和ケアチームがかかわるということで、最初のときに出ました早期からの緩和ケアというのは専門的な緩和ケアという定義がされているんですけれども、今がんと診断されたときの緩和ケアというものが実は混乱していまして、基本的な緩和ケアをやるのか。それとも、緩和ケアチーム等々の専門的なものが最初からかかわるのかということを、実は緩和医療学会の会員ですらコンフューズされていたり、がんセンターの偉い先生がこれを混同して書かれていたりすることが実はあるんですね。

 当たり前のことですけれども、がんと診断された全てのがん患者さんに最初から専門的な緩和ケアができるというのは全く不可能なことです。ですから、そのためにがん診療に携わる医師に対する緩和ケア研修、PEACE研修会をやり、主治医になる先生方やがんの看護協会もやっていますし、ELNECなどもありますけれども、看護師の緩和ケアに対する知識も高めていただいて、最初に担当した看護師や主治医になった医師が緩和ケアを提供できるというのが、厚労省の言うところのがんと診断された緩和ケアというふうに私は解釈しているんですけれども、ここをきちんとやっていただかないと、ここでもはっきりとそうであると言っていただけないと、あちこちでかなり有名な先生方が違ったことを書いておられるのでコンフューズ、混乱が起こっているんですが、そこだけちょっと教えていただけませんでしょうか。

○門田会長 では、指名します。中川委員が第1期のときから、初期からの緩和、診断時からの緩和というように第2期に切りかえましたけれども、そのことで細川委員の解釈を今、述べていただいた。それは、一般の医師たちも含めて緩和ケアを研修してもらいながら、いわゆる緩和ケアの専門的なものを初期からやれというのではなくて、一般の人がその精神を持ってがん患者さんを扱うというのか、ケアするというふうな解釈でいいんですかと言われているのですが。

○中川委員 そのような議論だったと思いますし、私自身もそもそもこの場でも問題になってきたスクリーニングというのはそういうことですね。全く細川委員のおっしゃるとおりです。

○門田会長 そういうことですね。最初からずっと参加している中川委員に急に当てましたけれども、そういう流れの中できて、ですから必ずしもいわゆる緩和ケア、緩和の専門医というところの技術をもって云々というところにはなっておらずに、緩和ケア的な精神的といいますか、立場で、患者さんにがんの病名を伝えるときでもそのケアというのか、思いやりが乏しいような医者がいますよねというようなディスカッションからですね。

 ですから今、細川委員がおっしゃられたとおり、少なくともこの計画を第2期のものとしたときの我々の意見はそうだと。

○中川委員 補足いたしますと、それが証拠にがんにかかわる全ての臨床医が緩和ケア研修を受けるというのはそういうことでございます。

○細川委員 ありがとうございました。もう一点あります。実は、医療用麻薬の消費量の話は永遠にといいますか、初期からずっと出ているんですけれども、確かに全くがん患者さんに対してオピオド鎮痛薬、医療用麻薬を投与しなかったときに関しましては、この消費量の多寡というものがかなりがんの痛みに対する治療の効果と並行していたところがあるんですけれども、幾つか誤解があるので、私はこれは下手に話をするといろいろな方が来ておられますので誤解を招くんですけれども、実は日本以外の国では日本で医療用麻薬に相当するオピオイド鎮痛薬というものは実はがん以外のものに使われているものがほとんどなんですね。

 アメリカにおきましては、多分がん以外に使われているものが95%くらいだと言われているほどでありまして、多い少ないだけでは判断できない。

 ただ、昨年報告いたしましたように、我々のところでも全然使用量が少ないんです。つまり、余りそういうことに対してきちんとした治療をされていないところでオピオイドを投与した場合にぐっとその成果が上がるのは事実なんですけれども、実はインターベンションですね。放射線で痛みの治療をしたり、ペインクリニックのできる先生がいて、神経ブロックができるような施設では正直、私のところの施設もそうなんですけれども、物すごく減ってくるんですね。圧倒的にこの数年間で麻薬の使用量というのは半分くらいになっているんです。

 だから、テクニックというか、やり方が上がれば消費量は減るのと、それから低いところで何もされていないところはもうちょっと使うというところがこういう数字になって一緒になると、さらにがんの痛みでないものと使われているのが一緒に交じっているので、これだけで話をすると実は余り大きな声では言えないんですけれども、がん患者さんにもその医療用麻薬といいますか、いわゆるオピオイドの依存というのは起こるんですね。

 これには2つの要因がありまして、これに従って不必要な量をどんどん使ってしまうというようなケースがあるのが1つと、それからもう一つですけれども、がん疼痛という言葉の定義をごっちゃにされている方がおられて、がんの患者さんの痛みとがん疼痛とちょっと分けていただかなければいけない。

 つまり、がん患者さんは一人の人間なんですね。それで、現在日本で6カ月以上の慢性の痛み、これは腰痛だったり、ひざ痛を持っている方の割合というのは20%に近い。この中には、当然がんの患者さんも含まれる。そうすると、がん患者さんの持つ痛みというのは、皆さん方が想像される骨転移とか膵がんのようながんそのものによる痛みを持っておられるんですね。

 実は、私は30年前に初めてがん患者にかかわったときは多くの方が本当に1年で亡くなられて、我々が見る患者さんというのはほとんどがんそのものの痛みだったんですね。ですから、その当時はがん患者の痛みイコールがんそのものの痛みと考えて問題がなかったんですけれども、今65%の方が5年以上生きられるんです。そうすると放射線治療、先ほど出ました抗がん剤による神経障害、これは全部がん患者さんの痛みなんですけれども、これは痛みの専門家の分類でいえばいわゆる慢性疼痛と入るので、WHOや緩和医療学会が出しているガイドラインに沿ったオピオイドの使い方と全然違うんです。

 驚かれるかもしれませんが、慢性疼痛にはいわゆるレスキュー投与はしないんですね。これをそこそこわかっている医療者は、がん患者さんが痛いと言っているからといってどんどん使わなければいけないよという形で、実は術後、乳がんとか、開胸術の後の創部痛などにレスキューをどんどん使ってしまって、結構大変な状況をつくっているというのは、2年前から私は話をあちこちでするようになったのですけれども、あちこちで、いや実は、実は、実はというような感じで経験者がすごく多い。ペインクリニックの専門の先生たちの中では、80%の方が同様の症例を経験しているというところにきているんです。だから、消費量が少ないというだけではどうか。

 それともう一つ、日本には今トラマドールというオピオイド鎮痛薬ではあるんですけれども、医療用麻薬に指定されていない薬があるんですが、これは関東、東北、北海道はまだ使われ方が少ないんですけれども、関西、伊勢、西日本ではかなりこれが使われていて、これでほとんどコントロールできる初期のがんの痛みというのはすごくたくさんあるんです。これは、全くこの中にカウントされていないんです。

 フェンタニルというお薬があるんですけれども、これはほとんど今、手術に使われていて、がんの痛みで使っているのはパッチだけなんです。そういったものが全部コンフューズされているので、この大ざっぱなところだけで話が常に出るのですけれども、これは今後避けていただきたいということがございますので、よろしくお願いいたします。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは、堀田委員どうぞ。

○堀田委員 がんセンターの誰がそう言っているのか知りませんけれども。

○細川委員 先生のところのがんセンターではございませんので。

○堀田委員 私は緩和ケアというものを特別に取り出さなければ、そうやって物事を語らなければいけない医療というのはどういうものだろうというのを常々感じるところがあります。本質的に緩和的なものを含んでいるのが医療じゃないか。それ以外に切り離した医療というのはあるのだろうか。

 例えば、化学療法なり手術なり放射線治療をやったらやりっ放しで、何が起こってもそれは緩和のチームがやればいいと考えている医療者はほとんどいないとは思います。ですから、医療の中に緩和というのは含まれるんだけれども、逆に今の医学教育とか研修の中でその辺がかなり先進的な知識や技術を学ぶほうに主流として力が注がれてきたので、相対的にこういったところが弱くなったという認識のもとにやっていると思うんです。

 ですから、特別に訓練された専門家だけが緩和をやるという話では全然ないと思いますし、またいわゆる終末期のホスピスケアとも緩和というのは違うわけですから、そこのところはきちんと整理してやっていかないといけないと思います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。二十何年か前に緩和医療学会があったとき、私はシンポジストで呼ばれて行って、緩和医療を外に出すことによって本来の医療の中に緩和的精神が抜けていく危険性があるのではないかということをあの当時言いました。それが、今のようなディスカッションの話になっていると思うんです。そのあたり、やはり少し医学教育そのものを見直していかないと、緩和ケア、緩和という単語だけで物事を考えていくと多分間違いを犯す危険性があるのではないかと思います。

 では、最後に堀部先生お願いします。

○堀部委員 ちょっと話題が変わりますが、資料6についての質問です。

 そもそもこの加速化プランが出たときには、何らか加速するために補正予算か何かで上乗せされるとか、今年度にそれに向けた対策が出るのかなと思っていたのですが、見当たりません。この予算を見る限りでは次年度予算の中で34億の上乗せがされていますが、これは右の数字とプラスでなっているので、単に34億が移動しただけという感じで、総理が厚労大臣に指示して下ろしてきた加速化プランもそうですが、今回堤示されたプランは基本的にがん対策として次にやらなくてはいけない課題を網羅して示しています。

そういう意味ではこれでよいかもしれませんが、加速するためにはそれなりのお金も要りますし、その中で重点を決めて短期間のうちに推進するというような方策が要ると思うのですが、ちょっとこの資料6からはその辺の加速化の精神が見えません。その辺の特にお金の面に関してお伺いしたいと思います。

○がん対策推進官 確かにちょっとスケジュール感という意味で、指示では加速化プランを年内目途につくるという一方で、当然その予算要求のスケジュールというのは夏ごろにも概算要求が出るということです。

 ですので、本来であれば加速化プランが出てから予算という形であればよかったんですけれども、そういう意味ではちょっと今回難しくはなっているのですが、ただ、ここで予算要求している中で、この加速化プランで記載されたことをより推進していくためには、こういったところに掲げられた予算をどのように使ったらいいかとか、そういった視点においても御意見をいただければと思っております。

 順番が逆というところは確かにあるかもしれませんけれども、それはまた29年度の予算であるとか、そういったところへの反映も考えられると思います。

○堀部委員 補正予算で何か加速化するとか、そういう発想はないですか。

○がん対策・健康増進課長 ゼロではないのですが、補正予算がそもそも組まれるかどうかというのは全く今わからないんです。それで、ゼロではない意味は、こうやって概算要求を次年度に出していて、それが前倒しになって、それが補正予算という形になることもあるのでゼロではない。

 ただ、補正予算は今の段階ではわかりません。

○門田会長 予定より大分おくれてきているのですが、後ほど委員の皆様の御発言を聞いてからまた全体のディスカッションができると思いますので、そちらに移りたいと思います。

 それでは、桜井委員、勢井委員で、難波さんは先ほどのところでも同じようにお話いただきましたのでちょっと省略させていただいて、馬上委員、若尾委員、できるだけ時間を節約してお願いしたいと思います。

 まず、桜井委員から最初にどうぞ。

○桜井委員 ありがとうございます。私のほうからは、提出資料3番と4番というのがあると思います。それで、4番のほうから先にお話をしたいのですが、全国がん患者団体連合会のほうで加盟団体のほうにアンケートを実施しまして、加速化プランに対する要望書をまとめております。これについて読み上げさせていただきます。

 まず、最初に予防についてです。「従来より行われてきたがん検診受診率向上のための施策について、その効果について検証と改善を行うとともに、必要に応じて大きな転換を図ること」。

 2としまして、「がん検診の推進にあたって、科学的根拠に基づいた対策を実施するとともに、国はその実施について自治体に対して責任をもって指導を行うこと」。これは、自治体においてかなり検診の実施内容、項目等もばらつきが大きいということからこういうことを述べさせていただいております。

 3番、がん予防の推進に当たって、科学的根拠に基づいた対策を実施するとともに喫煙率の減少、こういった根拠が明らかな対策についてはやはり国が責任を持って対策を実施すること。

 続きまして、「治療・研究」の分野につきましては、がん登録がスタートいたしましたので、このビッグデータ、データベースを活用して科学的根拠に基づいた標準治療や支持療法の実施割合を高めるとともに、がん医療に関する情報公開と可視化を進めることということを挙げさせていただいております。加速化プランのほうの資料にもありましたが、例えば制吐剤の使用率等々を含めましてもかなりばらつきがあります。こういったものについて、きちんと把握をしていただきたいということを思っております。

 それから、5番目にいきまして「身体的・精神的な痛みを軽減するための緩和ケアや支持療法を、全てのがん患者が受けられるようにするとともに、患者の意思決定を支えるサポートを充実させること」ということを挙げております。これは、エンドオブライフケアの話も含めて私は考えていただきたいと思っております。

 6番、「小児がん、希少がん、難治がんを中心に、診療体制の構築と革新的な医薬品等の開発を推進するとともに、がん研究を推進するための基盤整備と患者参画を進めること」。

 続きまして「共生」について、7番は「拠点病院を含む入院医療機関は、地域のかかりつけ医や在宅緩和ケアを提供できる診療所との連携を促進し、患者と家族の立場にたった情報提供と相談支援を行うこと」、いわゆる地域完結型の医療というのはきちんとやってほしいということです。

 それから8番目にいきまして、「がん患者の生活を支える諸制度について、患者と家族への情報提供や利用支援を行うとともに、患者と家族が利用しやすい制度変更を検討すること」。

 9番、「2人に1人ががんに罹患する日本において、「がんになっても安心して暮らせる社会」を構築するために」、日本も社会全体がかかわる形、マルチステイクホルダーの形でがん対策を推進することという、この9つを全がん連のほうからは挙げさせていただきたいと思います。

 続きまして、私のほうからはこれに関連して資料の3番になります。いろいろと書いてはあるのですけれども、この中から私が特にお願いしたいことを3つほど絞ってお話をさせていただきたいと思います。

 1つ目は先ほど来、出ております遺伝性腫瘍に関する事柄です。ゲノム推進協議会のほうで、例えば2番の治療研究の推進、1)番のところに私は挙げておりますけれども、GA4GHのほうには参加されているということをもう聞いておりますので、かなりこのゲノムの個別化治療、それから個別化検診に関してはこれから動いていくと思われますが、その中でも確実に遺伝性の疾病として認められているものがあります。これは乳がん、卵巣がんだけではなくて、大腸がんですとかほかの膵臓がん等々にもございますので、この部分に関しましてはやはり遺伝子検査、それから予防的な治療、これはリスクリダクション効果がもうあると言われておりますので、これに関する予防切除なり薬物療養の投与、こういったものに対してやはり3割の保険適用を強く求めたいと思います。

 それから、では、こういった血縁者の人たちが何で検査を受けないのかといったら、やはり検査を受けることによる社会的な不利益が大きい。例えば、民間の保険会社さんにもう入れなくなるんじゃないかですとか、就職のときに差別されてしまうんじゃないか。結婚ができなくなってしまうんじゃないか。こういった社会的な不安というものを常に抱えるわけですね。

 それで、こういったことに対してこれからゲノム推進協議会のほうでさまざまなホールゲノムシークエンスとか進んでくると、もっといろいろなものが多分わかってくると思います。

 そうした上で、やはりがん研究、このゲノム研究と両輪になってあるべきものとして患者擁護の視点を欠かさないでいただきたいと思います。両方が対になって初めてゲノム研究を私は推進していくと思っておりますし、アメリカでもGINA法、それからイギリスのほうでも消費者協定等が結ばれておりますので、この点についてぜひ国際的ネットワークから見習いながら両輪をつくっていただきたいと思っております。

 それから、2つ目はがん研究のほうに関してですけれども、4)番で何を言っているかと言われるかもしれないんですが、やはり海外を見ているとメディカルエリアというところが必ずあるんですね。そこに全ての機能が集約化されております。日本でもこれからデータベースをいろいろ集めていく、もしくは集められていると思いますが、これがばらばらになっているのを一つにまとめていく上で、やはり場というものがすごく必要なんじゃないかと思っております。

 それで、国立がん研究センターに行きますと目の前に広大な土地が空いておりまして、私はもともと都市計画屋なものですからああいった土地を見ると、今の時期を外すと二度と手に入らない土地だと思っているんですね。なので、ここにぜひトランスレーショナルリサーチセンターとかフェーズ1、フェーズ2の専用の施設ですとか、データベースセンターですとか、あとは緩和ケア病棟、それから家族、患者向けの宿泊施設、ヒーリングガーデンとか、あとはベンチャー企業を育てるためのインキュベーションオフィスとか、こういったものをぜひ集約するような、こういったものはジャパンキャンサーリサーチプロジェクトの一環なのかもしれないんですけれども、その場の確保としてぜひ考えていただきたいと思っております。

 それから、最後ですけれども、先ほど全がん連のほうの要望からも出ておりましたし、私は検討委員として参加させていただきましたがんと就労のほうの検討会でも出ていたのですが、社会保障制度改革の検討ですね。3番の「がんとの共生」の1)番です。これは企業の努力、それから病院の中にハローワークを設けるということだけではなくて、制度そのものに対しても踏み込んでいかなければいけないのではないかと思っております。

 これは、山口先生の研究発表のほうからも患者の声として制度を望む声は毎回挙がっています。10年前から挙がっているんです。それで、今回も柔軟な働き方を望むですとか、制度が欲しいということが何度も出てきているので、やはりこれを無視してはいけないと思っております。

 ですので、今、考えられる関連事項としては1つ、傷病手当金の分割取得化をできるようにしていただきたいと思います。今のように開始日から1年6カ月だと、再発したとき使えない可能性が出てくるんですね。ですので、分割して取得できるようにしていただきたいと思います。

 それから2つ目は介護保険認定の迅速承認、これはほとんど間に合っていないのが現状です。やはりこの部分、患者と家族が安心して寄り添えるようなエンドオブライフケアの充実というものを制度としても担保していただきいと思います。

 それから3つ目、後遺症ですとか体力の低下、こういう不可逆的な要素を持っている症状というのはかなりあるんですね。特に、小児はすごく多いと思っております。こういったものに対して、やはり本人の努力で済ませる。それから、障害者手帳を取りに行こうと思ってもなかなか難しいんです。症状固定、部位欠損というものが求められてしまって、症状が不安定になるとなかなかとりにくいというところがありますので、ぜひこの部分に関して不可逆的な症状、ではこれが何なのだということは学会等々でも議論をしていっていただきたいのですが、やはり障害者手帳の適用の拡大、それから障害年金の利用の促進、こういったところについても働く意欲を応援するためのものとしてぜひ制度の改変を要望していきたいと思っております。

 私からは、以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは、続きまして勢井委員のほうからお願いいたします。

○勢井委員 申しわけないのですが、緊張したわけではないのですけれども、ちょっとトイレに行ってきます。

○門田会長 わかりました。

 それでは、その次に馬上委員お願いいたします。

○馬上委員 先ほどのがん対策加速化プラン骨子案を見ながら、私は文面がないので口頭で申し上げます。

 がんの早期発見についてですけれども、検診では希少がんや小児がんはほとんど発見できないことから、道永先生には申しわけないのですが、一次医療圏での注意喚起、また医師会などへのチラシとか勉強会、研修などを強化していただきたいと思っております。

 がん教育・普及啓発ですが、がん教育については小児がんとか世代ごとの違いなどについても詳しく教育の中でやっていただけるということでとてもありがたいと思っておりますが、普及啓発について、がんの負のイメージというのは何年も前からずっと負のイメージのままで、全くそのイメージというのは改善されていないというような印象を私は持っております。確かではないんですけれども、やはり小児がんのお子さんを持つ方で離婚される方が多いような感触も持っておりまして、この加速化プランで国を挙げて国民ががんを正しく理解して、そして能動的にがん対策に入っていけるような、ちょっと言い方は悪いですけれども、キャンペーンとか、そういったものを行っていただきたいと思っております。

 あとは、希少がんの対策、難治性がんの対策ですけれども、先ほど事務局のほうから御説明があったとおり、国立がんセンターが事務局となって今後診療体制を構築していただけるということでとてもありがたく思っておりますが、患者のほうからは希少がんは非常にたくさんありますのでどこから手をつけていくのか。そして、その目標ですね。何年後にはこうあってほしい。そういった目標をきっちりつけていただいて、なおかつその進捗状況の評価というものも大切だと思っておりますので、ぜひお願いしたく思っております。

 それから、ライフステージを意識したがん対策の充実についてですけれども、先ほど基本法のほうでちょっと申し上げてしまったのですが、やはり小児がんは合併症が多いということで長期の支援が必要であるとか、障害者手帳が取りにくいということを桜井委員にも言っていただきましたので、そういった支援は強力にしていただきたいということと、今、がん登録法ができて小児がん登録も全登録という方向で向かっているんですけれども、どんな治療をしたことによって10年、20年に2次がんとか内部障害、いろいろなものが出てくる。そういったことをナンバー制度の医療情報にひもづけて追跡調査をしたり、またはその実態を把握していただいて合併症の治療開発や、または合併症がない治療の開発、経験者自身の健康管理マニュアル、そしてフォローアップスケジュールの確立をお願いしたいと思っております。

 難治性がん、小児は80%は直る時代と言われておりますけれども、20%の方は難治性でありますので、その難治性の小児のがんについてもスポットライトを当てて今、臨床試験がほとんどない状態でございますので、ぜひ臨床試験を推進していただきたいと思っております。

 最後にがんとの共生についてですけれども、終末期医療は小児の場合、診療所の先生方がとても努力してやっていただいているところもあるのですが、なかなか見ていただける先生方が見つからない場合もあります。そういった場合、やはり拠点病院のほうでぜひ地域の診療所と連携をとっていただいて、親子2人きりで精神的に大変な負荷がかかって崩壊につながっている事例もありますので、ぜひそこのところの連携をよろしくお願いしたいと思います。

 それから、がん患者の就労支援については先ほども申し上げましたけれども、内分泌障害が合併症の半分くらいを占めておりまして、これについては障害者認定が下りないということで、やはりQOLが非常に下がっているということです。それで難病支援にも入れず、そして既存のハローワーク、障害者手帳がないと何なんですかという話になって難病支援もないと、難病でもないですしねと言われて、既存のハローワークの就労支援制度に当てはまらないケースが出てきてしまいます。

 それに関しては皆さんすごく苦労されているので、合併症のエビデンスがないのでこうなんですよと言えないところがあるんですけれども、小児がん経験者はいろいろな合併症があって大変なんですということを理解いただいて既存のそういう就労支援をやっていただきたいのと同時に、やはりその相談支援ですね。心理的にも追い詰められている方が多くて、症状改善のためにわからないものですから医療機関を渡り歩いたり、あとは妊孕性の問題とか、自立できないで医療費がかさむばかりで社会参加もできない。そして、ひきこもりになってしまうという事例も多くあります。そういったことの社会的、心理的支援というものも強化していただきたいと思っております。

 あとは、教育の面について最後に1つだけ、先ほど申し上げましたけれども、病気の子どもたち、がんだけには限らないのですが、訪問教育とか、あとは院内学級の確立という点が完全じゃないところがありますので、ぜひそこのところは文科省の方にもお願いしたいと思っております。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、勢井委員お願いします。

○勢井委員 どうも済みません。風かなとちょっと思いながら今、考えていました。

 この宛先なんですけれども、まずあえて書きませんでした。例えば、文部科学省の誰それ様であるとか、厚生労働省様であるとか、門田会長であるとかということは書きませんでした。

 なぜかといいますと、このがん対策というものはやはり全員で全ての方が連携してやっていかないと進まないんじゃないかと私は常々思っております。これはここにおられる方を初め、ほかの方々にもということで、そういうメッセージということでとってください。

 予防と共生というところで、予防といえば検診率を向上するとかありますけれども、この共生のところで教育もあれば、就労もあれば、また医療者とも共生しながらと、そんなふうに勝手に考えております。それで、これは徳島で実際やっていることなんですけれども、前回のこの協議会でもちょっと発言させてもらいましたが、高校生を対象にしてことしで丸5年、大学生からいきますと丸6年目に入っております。

 それで、先ほどお金の話が結構出たんですけれども、私なりにちょっと試算してみました。計算すると3億円ぐらいあるんじゃないか。その根拠というのはここには入っていないんですけれども、委員の皆様にはメールで回してあります。徳島が高校で38校、全国でいえば5,116校、38校で大体講師の方々には一人当たり1万5,000円ぐらいの交通費込みでお金を支払ってという形で計算して220万、それを全国5,116校で計算すると約3億になる。この220万で、6,600人の生徒に一応講義をすることができる。

 もう一つの左側のほうは全がん連さんの内容ともちょっとかぶりますけれども、コール、リコール制度ということで、こちらのほうも私なりに積算してみました。阿南市を例に挙げますと、阿南市は人口は7.6万人、この3.2億の根拠ですけれども、クーポン対象者の、それも大腸がんに限って45歳、50歳、60歳を対象にコール、リコールを行う。そのリコール費用だけで約20万円なんですね。それで、対象の人数が2,800人。20万なんですけれども、人口7.6万人で1億2,000万、これを単純にその比率で掛けますと3.2億ほどかかってくるという計算です。

 そのお金の下に、リコールの場合、再受診を推奨する通知を行う。そういうことで検診率をあげる。当然、上がると思います。

 先ほど3億円と言った高校生への講座ですけれども、学生さん、子どもから大切な方、親御さんであったり、親せきの方であったり、恩師であったりとか、お兄ちゃん、お姉ちゃんだったり、いろいろあるんですが、自ら進んで受診する後押しがやはりできる。

 前回もこれを出させてもらったんですけれども、なぜ今回あえてもう一回出したかというと、ぜひこういうことを全国的に考えてやっていただけたらということで、別にこれが最良の方法でないかもしれません。他県でもやっています。そういうものを、実際に現場を見られてやるのが一番早いのかなと思っているんです。

 加速化プランということで、まずは文言のほうでまとめていくんでしょうけれども、やはり生で見て肌で感じるというか、生徒の目の色が全然違うんですね。そこは中川先生もいろいろやっていると思うんですけれども、特にやはり体験者の方の話には学生は目がぱっと開きます。そういうことで書かせてもらいました。

 3枚目のほうに残りの「出前講座」のスケジュールがあるんですけれども、10月6日に富岡西高等学校、これは阿南市なのでたまたま私の住んでいるところです。女性の講師しかいなかったので広島から頼んだりして、そういうことで2点ほど言わせていただきました。ありがとうございました。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは、最後になりましたが、若尾委員お願いいたします。

○若尾委員 今回の加速化プラン、これはがん対策推進基本計画第2次の計画遂行の中にも含まれていて、それをけん引するものだと思っています。

 それで、今回総理からの指示を受けて加速化させ、大きく牽引しながら第3次につなげていくための一つのバトンのような形で考えていけばいいのかなと思って意見を述べさせていただきます。

 私の資料の中に、75歳未満のがんの年齢調整死亡率の年次推移を入れました。これはもう皆さん見慣れているグラフだと思いますので、こんなものだよねというふうな形で見ていただけると思うんですが、男女合わせた全体のがんの年齢調整死亡率、それから部位別の年齢調整死亡率をこうやって見てみますと、全体としてなだらかな右肩下がりなんですね。大きく変わっているものもまれにありますが、全体としてはなだらかな右肩下がりで、前の委員さんの報告の中でもありましたけれども、2015年の死亡率は17%減だろうというようなことで推定されています。これは、ある意味、私たちががん対策推進基本計画の中でやってきた施策が実効性のある対策にはなっていなかったということの裏返しとも言えるような気がするんです。

 では、何をしたらいいんだろうとなってくるわけですけれども、今までと同じようなことをしていたのであれば大きくは変わらないということが、このなだらかな右肩下がりが物語っていると思います。今回、総理が指示してくれた加速化プランの中で論点整理として3つの柱がありましたけれども、大きく分けて予防・早期発見ということと、それから治療ということを主に意見を述べさせていただきます。

 今回、年齢調整死亡率がなだらかな右肩下がりだったということは、エビデンスのある予防対策と、早期発見がうまくできていなかったんじゃないかと思うわけです。それで、いろいろ見てみますと予防としてのエビデンスの一番大きいものはまずたばこ対策だと思います。このたばこ対策がうまくいかない理由は、私は素人の視線で考えてみると、たばこ事業法が一番大きな原因じゃないかと思うわけです。たばこを税収の財源として見るのではなくて、薬機法の中に取り込まれる問題として考えるようになれば、成人年齢が18歳になったからといってたばこの喫煙の許可を18歳からというような議論にはならないんじゃないかと思うわけです。

 そこで、このがん対策を推進する協議をする私たち委員の中で、できましたら協議会として、世界に恥ずかしくない日本の姿勢をしめすためにもたばこ事業法の廃案、もしくは改正というようなことを要望なり意見書なりできないかということをひとつ提案いたします。

 それから、原因が分かっているがんへの対策強化、これも今まで予防・早期発見の中で出てきましたけれども、特に私は女性ですから聞いていただきたいと思うわけですが、子宮頸がんに対する対策は重要視していただきたいと思ってここに書きました。子宮頸がんは、前回の中間報告の中にありますが、原因が分かっているのに年齢調整死亡率が上がっているというがんであるわけです。

 これの一つの原因は、もしかしたら子宮頸部の腺がんというようなことがあるのかもしれません。親しくさせていただいている産婦人科学会の先生ともお話をした中で、子宮頸がんの見つけにくい腺がんがふえているんだよねというようなことを聞いて、グラフにしてみたらやはりふえているのがわかりました。こういったことも考慮に入れた、予防・早期発見の対策をお願いしたいと思います。

 また、これも今まで出ていますけれども、これらのがん検診に対するインセンティブはどうしても必要だと思いますので、加速化プランの中でそういった方向性を示していただけるといいなと思います。女性と男性のがんの罹患の年齢階級別罹患率を見てみますと、男性は定年間際に上がっていくがんの罹患のグラフが、女性は働き盛りが多くなります。そのときに、今のままではそこの女性たち、その年代の女性たちはがん検診を受けるということに余り大きな意味を持てないのかもしれません。そこで、そういった女性たちに対してもインセンティブがあるんだというようなことが意識づけられれば、受診率の大きな向上になるのではないかと思います。

 次に、加速化プランの2番目の視点です。治療ということで、これについても意見を述べたいと思います。このがん対策推進協議会の中間報告の中で自然減というような言葉が出てくるわけですが、この自然減という言葉はとてもわかりにくくて、この自然減の中にも医療の進歩や検診の制度の進歩等が入っています。

 これは全体的な流れの中でも言えるわけで、まず、この自然減という言葉の明確化をしてほしいんです。そして、全体的に見て引き算の中で均てん化というような数字が出てくるわけですが、治療に対する満足度が得られないことの一つに、均てん化が進んでいないというようなことがあるのではないかと思うわけです。

 では、何をもって均てん化というかと言うと、今のところそれははっきりしていませんので、ぜひこの加速化プラン、もしくは第2期のがん対策推進基本計画の中の評価の指標として、均てん化の指標はこれだというようなものが示されて、その指標に基づいて各都道府県のがん対策が進むようなことが必要ではないかと思います。

 私は地元が山梨県なんですけれども、中間報告の中でもあったセカンドオピニオンの説明を受けた患者の割合というのは、この数字よりもはるかに低いかもしれません。それから、標準治療の実施割合なども、限られた医療施設の中で限られたテーマだけしか取り上げていませんし、標準治療を実施していない割合の中にはいろいろな事情があるとは思いますけれども、これも大きな指標の一つになると思うので、これをもうちょっときっちりした制度の中で指標にしていただけたらいいなと思います。

 それから、中間報告の中では余り出てきませんでしたけれども、多施設共同臨床研究状況とか、臨床試験の機会というのは多くは都市部に限られて、山梨のようなところでは臨床試験に触れる機会さえ少なくなります。こういうことに対する情報提供や、選択肢を出してくれるようなことも均てん化率の中に入れていただけたらいいなというふうに望みます。治療という視点で加速化プランの中に入れてほしいということをまとめると、がん医療の均てん化対策と均てん化率の指標の作成ということを望みます。

 これは追加ですけれども、乳がんも医療がすごく進歩しているにもかかわらず女性の乳がんの死亡率は余り減っていません。これは生活習慣の改善ということができていないということが原因の一つと思われますので、生活習慣の改善策に対しても大きな力を注いでほしいと思います。

 以上、大きな2本の柱として予防・早期発見、それから治療という点で意見を提出いたしました。まとめますと、たばこ事業法の廃案、もしくは改正への提案等、協議会として何か意見が出せないかということ、原因がわかっているがん、特に子宮頸がんに対する対策の強化が必要ではないのかということ、それから、がん検診受診率に対する効率性、インセンティブ実施への提案、最後に、がん医療の均てん化対策、均てん化率の指標の作成です。これらを、加速化プランの中で早急に考えていただきたい項目として意見を申し上げます。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 以上、皆さんに述べていただきました。それぞれ興味ある内容を御報告いただきましたが、さて、我々としてどうまとめていくかということで、総合的なディスカッションをする時間があと15分しかなくなったのですが、中川委員どうぞ。

○中川委員 要望書という形でまとめておりませんけれども、資料4をちょっと見ながら意見を述べさせていただきたいと思います。

 まず、がん教育が取り上げられたことについては大変評価しておりますが、堀部委員、あるいは道永委員は御承知だと思いますけれども、文科省の検討会の中ではがんの専門医を含む医療者、またはがん経験者が学校現場に行くというようなことが報告書の中に織り込まれておりますので、今後この体制をどう整備するか、この加速化プランの中でも議論していく必要があると思います。

 もう一つ、「・」でつながっている「普及啓発」なのですが、私は桜井委員もおっしゃいましたけれども、職域の中でのがん教育というふうに位置づけるべきだと思います。というのは、子どもたちががんの教育を受ける一方、がん世代の親がやはり同じような情報提供を受けられない。私は自治体の市民セミナーなどに呼ばれることも少なくないのですが、出席していただく方のほとんどは喫煙しないです。また、逆に多くの人ががん検診を受けておられるんです。そういう方しか来ないんですね。

 そうでない方々を、ある程度の強制力をもってして受講していただくのは食育しかない。企業の場合には上長からの指示ということができますから、学校でのがん教育と職域でのがん教育というものを同時に走らせる必要があると思います。

 それから、たばこ対策については受動喫煙は大変重要なのですが、ともかく問題は本人の喫煙率が下がらないことなんですね。その20%減に対して、喫煙による効果は0.2%しかない。検診受診率の目標は達成できていませんけれども、やはり本人喫煙率の減少をどうするか。これは、本当に重要な問題だと思います。

 それから、子宮頸がんの話は若尾委員からも出ました。主だったがん、取り分け5大がんの中で年齢調整死亡率がほかは全部下がっているわけですね。これだけが上昇している。イギリスやアメリカの2倍近くであるというようなことは見過ごすことができませんし、ワクチンについても法定検診前に接種された方の副反応の保障ということも必要だと思いますし、またこの場でもこのワクチンの積極勧奨ということを今後どうするのか、考えていく必要があると思います。

 均てん化の中で、放射線治療がこの協議会の中でも余り話題にならなくて、今、先進医療会議の中でも問題になっている粒子線治療について、これも均てん化という中では重要な項目だと思っています。エックス線治療と比べてなかなか差が出にくいというような議論が多く報道されるんですけれども、粒子線治療そのものの線量集中性の利点ということの存在、これは間違いないですね。また、私が医者になったころはコバルト60などというのが主流でしたが、これがリニアックという装置にかわっていく。そういう世代交代の中での局面かもしれません。このことを含めて議論していく必要があるのではないかと思います。

 また、拠点病院の中で、医学物理士の配置は望ましいという形になっているのですが、これは国際的に見てもいるのが当然であります。今後、医学物理士の必須化も考えていただきたいと思います。

 最後、飛びましてがん患者さんの就労なのですが、この就労ができない。山口委員から本日御提出いただいた資料の中でも、やはり後遺症によって仕事ができにくいというところがかなりあるとなっておりますし、実際に私の患者さんでも、これはどう見ても障害者認定を受けていいのではないか。障害者認定制度というものが戦争などによって手を失う、目を失うというような方に主に支給されてきて、例えばがん患者さんのリンパ浮腫などはほぼ恒常的な障害になります。ですから、少しがん治療に伴う後遺症に関しての障害者認定のこともこのプランの中に入れていただきたいと思います。

 また、就労もそうなんですが、職域でのがん検診の受診率、ここにおいて産業医の先生の関与が実はもっとあっていいだろうと思っていまして、現在の労安法の中で産業医の先生のお仕事の中にがん対策というのが含まれていないとは言いませんけれども、やはり余り主な仕事になっていない。一方で、現役サラリーマンの死亡原因の半分ががんであります。そしてまた定年延長、あるいは女性の社会進出によって会社でのがん患者さんがふえることは明白ですから、今後、産業医の先生方が少しこの問題にも関与できるような環境を整備していただきたい。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。そのほかいかがですか。

 では、吉田委員、湯澤委員お願いします。

○吉田委員 時間が迫っておりますので、手短に言います。

 先ほどのたばこの議論についても私は若尾さんの意見に全く賛成で、今、自民党の中でお酒とたばこを18歳に引き下げるという議論があり、結局は両論併記という形で提言がまとめられるということなのですが、我々が加速化プランでたばこについて議論をしているのに、一方で政府与党の中からそういう議論があるのは、ちょっと真逆なことをやっているんじゃないかということです。厚労省、文科省、例えば教育現場では生活指導の先生が困るし、同じ高校3年生の中でたばこを吸える人と吸えない人がいるとか、生活指導の先生たちも非常に混乱するかと思いますので、そこら辺のところは文科省と厚生労働省の方々にはもう少し情報発信を頑張っていただきたいと思います。

 あとは、均てん化の関係でいえば、がん診療連携拠点病院指定はかなりの数ありますけれども、それの要件に満たない病院が幾らかあるという形で、患者サイドから見れば要件を満たした病院であるという形でいったら、では年間の手術件数が劣っているとか、それこそ緩和の流れで出てきた地域がん診療病院ということでちゃんと看板を変える。そこら辺はきちんとしたほうが、患者サイドのほうからすればいいのかなという気がします。

 最後にもう一点ですが、地域差について、この間、国立がん研究センターが発表した5年相対生存率で一部のがんについて地域によってばらつきがある。これについて食生活であるとか、あるいは拠点病院であるとか、病院のかかり方に対する意識等々について格差があるのでしょうけれども、こういった地域差についても加速化プラン、あるいは計画の中でこういうキーワードで何かしらの対策が求められるのではないか。地域格差の解消ということです。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 それでは、湯澤委員どうぞ。

○湯澤委員 「がんとの共生」のところなのですけれども、「緩和ケアの推進」という中で、今までがんと診断されたときからの緩和ケアと言っていますが、これは医療現場だけで行われるものではなくて診断された方の家族であるとか、その周辺にいる人の理解とか、支えとか、寄り添いというものが緩和ケアにつながるということも多くあると思います。

 それで、今、「がん予防の早期・発見」というところで中川委員もおっしゃいましたけれども、「がん教育・普及啓発」とありますが、職域を中心とした大人の教育というか、表面的には見えない副作用の理解であるとか、復職率の変化であるとか、そういったこともあわせて社会的な理解を深めていくことで、がんとの共生というところがより加速化するのではないかと思います。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。そのほかいかがですか。

 では、堀田委員どうぞ。

○堀田委員 ありがとうございます。この加速化プランというのは、恐らく基本計画の全体目標の一丁目一番地であるところの死亡率の減少が少し鈍っているのではないかというところにかなりフォーカスすべきと考えています。実際に対策を短期間に立てて実行するとしたら、目に見えるような形で提示しないと精神論になってしまいますし、後で加速化プランの評価をするときにもどこまでできたかわからないという話になりますので、そこはある程度絞ってやらざるを得ないんじゃないかと思います。

 そういう意味でいえば、行動目標というか、はっきりさせて、それはできたか、できないかということで、多分この加速化プランというのは1年か1年半ぐらいのスパンでの話だと思うんですね。そうすると、その次の第3期の基本計画にも突っ込んでいくわけですから、そこの中で実現すべきものというのはかなりたくさんある中で、この加速化プランで特に何をすべきかということを明確にしてやれることを目標にしないと、どこが加速化プランかよくわからなくなると思います。例えば1つ目の早期発見であれば検診率を高めるために何をすべきかという行動目標をつくる必要がある。

 今の検診というのは30%、40%いっているんですけれども、同じ人が毎年受けていて、受けない人は全く受けないという状況なんですね。ですから、これを例えば2年に1回でもいいから30%ずつ受けていただければ受診率は60%になるんです。そういう計算の方法なので、同じ人が毎回受けていても受診率は上がらないという状況です。

 外国の例では前年とは別のコホートというか、集団で検診がやられればそこで見つかるケースは結構あるので、同じ人を毎年やっているよりもいいというデータもあるということです。

 あとは、たばこについても、恐らく受動喫煙というのも私は一つの象徴的な意味では重要だと思いますけれども、実際の喫煙率の低下というところには直接には結びつかないだろうと考えます。もし直接的な効果を期待するのであれば、すぐできることはたばこ税を大幅に上げるしかないだろうと、即効性を考えるとそういうふうに思います。

 それから、感染症等につきましては既にいろいろな対応はできていて、これは確実に成果がここ10年ぐらいのスパンで出てきておりますし、年齢調整死亡率を下げた大きな理由も私はここにあると思っています。ですから、これは積極的に追加的に進めるべきだろうと思っております。以上です。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、山口委員どうぞ。

○山口委員 加速化プランに対して申し上げたいことは色々あるのですが、時間がありませんので文書で提出します。

委員の中でも少し勘違いされておられるような意見も結構ありましたので、可能な限り申し上げたいと思います。

一言だけ申し上げたいのは、本日、朝から意見を述べ、また、ほかの委員の方からも御賛同いただいていると思うのですが、やはり、今、悩んでいる患者さんやご家族にどういうメッセージを送るのかが重要だと思います。そこで、最初の基本法の議論に関して、基本理念のところに「全てのがん患者が尊厳をもった生き方を選択できる社会の構築」という文言に類する言葉を入れていただけないかと思います。この言葉は、本協議会の20156月答申で「今後のがん対策の方向性について」としてまとめられている中の文言です。本日の資料、「加速化プラン策定に向けて」という最後のスライドの2番目に記載されています。御検討いただければと思います。

 それから、希少がん、特に小児がん等に積極的に取り組むに当たっては、家族の問題が避けられませんので、そういった辺も勘案してこの基本法で「患者」と書いてあるところに、必要に応じて「家族」を加えるべきだと思います。以上の2点だけ強調しておきます。

○門田会長 ありがとうございました。

 では、課長どうぞ。

○がん対策・健康増進課長 済みません。時間がないので1点だけ、先ほど吉田委員から例のたばことアルコールの年齢の引き下げの問題について、実はきょう全く同じ時間、14時、2時から自民党の厚生労働部会、それから文部科学部会の合同会議というものが開かれて、その場に私も呼ばれて行っていてちょっと遅刻しました。

 文科省とか、日本医師会とか、学校の関係者も呼ばれてヒアリングをし、最終的に会の終わりの際に引き下げについて反対の声明文が採択されました。以上、報告しておきます。

○門田会長 ありがとうございました。そういう時間帯に重なっていたんですね。

 ほかにもあると思います。皆さんあるのですが、ちょうど時間になってしまいました。そして、これは基本法と違って少しだけまだ時間的ゆとりがあると思いますので、今、山口委員がおっしゃっていただきましたけれども、書類で出していただいて、そして次回までに事務局のほうでそれを整理していただいたものをもとに、次回もう一回意見交換できればと思います。

 それで、私はちょっと個人的なことになるかもしれませんが、先ほど山口委員もおっしゃっていただきましたし、若尾委員の御意見もそうだったと思うんですが、今、我々が考えなければならないことが、いわゆる第1期、第2期の基本計画として出てきているもの、それからもうすぐ後、第3期を計画しなければならないことと、そして今やっている加速化プランとは一体同じものなのか、違うものなのかということを考えていってそれを分けていかないと、3期と2期との間に何か似たようなものが出ていくということは私は避けるべきだろうと思うんですね。

 そうすると、ある意味、ここに事務局からこのプランの骨子案というのをどっと挙げていただいていますけれども、これは基本計画の考え方であって、こういう形で出していって全てに含めて加速化プランという、これはなまやさしいことではないし、どこにポイントがあるのかわからなくなるのではないかと私は思うんです。

 そういった意味で堀田委員もおっしゃっていましたが、やはりある程度はっきりと具体的に今、流れてきているものと次元を異にして、そしてそれをスピードアップさせるんだというところにポイントを絞って、それで確実にこれとこれ、例えば先ほどの税金の話もありましたし、何らかの形のインセンティブもありますでしょうし、または負のインセンティブもあるだろうと思うんです。

 だから、そういうふうな今やっているこの基本的な方針をサイドからサポートする何かということで考えていくほうが多分、今の段階では意味があるし、または第2期、第3期の計画との整合性ということも合うのではないかと思うんです。

 私はそう思うので、きょうはどちらかというと幅広く事務局からもそういう話でしたし、皆さんからいろいろなものを挙げていただきました。ですけれども、今の私の意見もちょっと加味していただいて文章をつくる場合は出していただけないかと思います。一方的なお願いになりますけれども、そうしないと多分、全体的な整合性が難しくなるのではないかと思うからです。

 そういうことで、本日は3時間の長い会議でしたが、もう時間が過ぎてしまいましたのでこれでお開きにしたいと思います。よろしいですか。

 では、事務局から何か連絡事項があればどうぞ。

○がん対策推進官 本日は、長時間の御審議ありがとうございました。

 次回の協議会は、1023日金曜日の14時を予定しております。追加の御意見がある場合には、事務局のほうへ文書で提出をお願いいたします。ありがとうございました。

○門田会長 それでは、本日はこれで終わりたいと思います。

 どうもありがとうございました。


(了)

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