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2015年5月26日 厚生科学審議会疾病対策部会 第39回難病対策委員会 議事録
健康局疾病対策課
○日時
平成27年5月26日(火)16:00~18:00
○場所
厚生労働省 専用第22会議室(18階)
○議事
○前田疾病対策課長補佐 定刻より少し前ですが、委員の先生方おそろいですので、ただいまから「厚生科学審議会疾病対策部会第39回難病対策委員会」を開会いたします。委員の皆様にはお忙しい中をお集まりいただきまして誠にありがとうございます。まず、本日の委員の出席状況ですが、金澤委員長、五十嵐委員、小池委員から御欠席の連絡を頂いております。また、道永委員からは少々遅れるという御連絡を頂戴しております。事務局ですが、新村健康局長は所用により欠席させていただきますので、御承知おきいただきたいと思います。本日は参考人として専門家の方々をお呼びしておりますので、順番に御紹介をしていきたいと思います。
私から見て右側に参考人の先生方にお座りいただいておりますが、順に御紹介いたします。一般社団法人全国膠原病友の会の代表理事で、JPAの代表理事の森幸子様です。東京都医師会の角田徹理事です。国立病院機構東埼玉病院の川井充病院長です。東京医科歯科大学消化器病態学/消化器内科の渡辺守教授です。東京医科歯科大学膠原病・リウマチ内科学分野の上阪等教授です。国立精神・神経医療研究センター神経研究所の武田伸一研究所長です。国立精神・神経医療研究センタートランスレーショナル・メディカルセンターの後藤雄一副センター長です。以上の方々にお越しいただいております。
カメラの撮影はここまでとさせていただきます。傍聴の皆様におかれましては、傍聴時の注意事項の遵守をよろしくお願いいたします。また、金澤委員長から欠席の御連絡を頂きましたので、厚生科学審議会疾病対策部会運営細則第4条第4項に基づきまして、委員長の職務を行うものとして、あらかじめ福永副委員長を御指名させていただいております。このため、以降の議事進行については福永副委員長にお願いをいたします。
○福永副委員長 それでは、まず資料の確認をお願いいたします。
○前田疾病対策課長補佐 資料の確認をさせていただきます。クリップ止めの議事次第をはずしていただきまして、委員の先生方の名簿と、先ほど御紹介いただいた参考人の先生方の名簿です。座席表がありまして、資料1-1として「基本方針の検討について」、資料1-2として「医療提供体制に係る論点メモ」、資料2は森参考人の提出資料、資料3は角田参考人の提出資料、資料4は川井参考人の提出資料、資料5は渡辺参考人の提出資料、資料6は武田参考人の提出資料となります。資料の欠落等ありましたら、事務局までお申付けください。また、傍聴の皆様にお配りしている中で、資料6の武田先生の資料の8ページに訂正がありましたので、訂正したものをお配りしております。また参考として、膠原病の手帳を森参考人から頂戴しましたので、そちらのほうも配っておりますし、傍聴の方々には入口に置かせていただきましたので御参考としていただければと思います。不足等ありましたら御指摘をお願いします。
○福永副委員長 さっそく議事に入りたいと思います。本日の最初の議題は「基本方針の検討について」です。本日は難病対策に係る施策のうち、難病の患者に対する医療を提供する体制の確保、難病の患者に対する医療に関する人材の養成、その他難病の患者に対する医療等の推進について御議論いただくこととしております。これらに関係する参考人の方々からのヒアリングを予定しております。順次発表いただいて、最後に質疑応答、意見交換をさせていただくという形で話を進めさせていただきます。参考人の方々の発表時間についてはお一人様15分程度を目安にお願いしたいと思います。本日は5人の先生方からお話を伺うため、参考人の先生方には申し訳ありませんが時間厳守でお願いいたします。また、時間がまいりましたら事務局からお声をかけさせていただきたいと思いますので、その点をよろしくお願いいたします。最初に一般社団法人全国膠原病友の会の代表理事の森幸子様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○森参考人 このたびは発言の機会を頂きまして誠にありがとうございます。お手元に資料及び「膠原病手帳」という緊急医療支援手帳をお配りしております。本日はこの中から掻い摘んで発言させていただきたいと思います。
お手元の資料の番号でお話をさせていただきます。2番です。全国膠原病友の会は、難病対策要綱策定の1年前の1971年に発足しました。現在、東京、大阪を拠点に全国35の地域で相談活動や専門医による医療講演、相談会、交流会などを開催し、参加できない方にも医療情報等をお届けするために機関誌や冊子などの発行を重ねています。本日は患者から見た膠原病医療の実態を事例として御紹介させていただき、ではどうすればよいのかという点について御検討いただくに当たり、私どもの願いを述べさせていただきたいと思います。
3番、4番を御覧ください。膠原病という疾患は、全身にわたる炎症性の免疫異常による幾つかの疾患の総称です。このたびの指定難病にも大変多くの疾患が対象となっております。発熱や体重減少といった全身症状から、皮膚や関節、そして肺、腎臓、心臓などの臓器障害など、全身に多彩な症状が現われます。一人一人、その症状の出方も強弱も違うという特色を持っています。
5番には、当会が調べた調査ですが、抱える症状によって一人が幾つもの診療科にかかっている状況にあり、それぞれの所で膠原病に対する理解と十分な連携が必要となっています。そのためには核となる膠原病の専門医が必要ですが、6番のグラフにあるように、全国に専門医は少なく、地域格差が大きいのが現状です。
7番、8番です。これを日本地図上に載せた資料を作成しました。地図で御覧いただいても、例えば関東地方と南紀地域の違いは明らかで、患者が通院するにも大変困難な現状があります。また、当会にも最も相談や問合せが多いのが、この病気はどこで診てもらえるのか、専門医のおられる病院を教えてほしいというものです。
そこで専門医がおられる医療機関、その規模が一目で分かるマップ化の作成を現在進めております。これは地震や災害などの緊急時の医療体制にも役立つようにしたいと思っております。
これに合わせて、9番で、皆さんのお手元に御配布いただいた膠原病手帳(緊急医療支援手帳)。この緊急医療支援手帳は、東日本大震災での教訓から、当会で命を守る活動として毎年作成しているもので、日常は、主治医と患者さんの間でのコミュニケーションを図り、診療の記録として検査結果や治療法について書き込んでいただくためのツールとしてお使いいただき、年間を通して体調管理や、それらに役立てるものとして御利用いただいております。また、急な体調悪化や災害など、予期しない緊急時には、専門医による診療は難しい状況が多く、病状説明も難しいため、医師や救急隊などにもこの手帳を見ていただければ、患者の状況をある程度御理解いただけるようにと緊急医療支援、災害対策という意味で発行させていただいております。
これから当会に寄せられた膠原病医療の現状をお話させていただきます。資料には代表的なものについて、大きく状況に分けて掲載しております。まず、10番の所です。診断がなかなかつかず、幾つもの病院を回らざるを得ない現状があり、確定診断まで長期時間がかかり、病状も悪化していることがあるという問題です。
例えば事例1)では、20代の女性、日光過敏やレイノー現象といった症状が出たものの、患者は病気の症状とは捉えずに、医療機関には受診していなかった。その後、関節痛が出現し、整形外科に通うがレントゲン所見の異常はなく、湿布薬での対処を繰り返していた。妊娠をきっかけとして高熱、全身の痛み、胸膜炎による呼吸困難にて緊急入院。そこでは、妊娠中毒症の疑いと言われ、母体の危険を考え中絶を勧められました。3日後の休日診療にて、大学病院からの派遣医師により、膠原病が疑われ転院。全身性エリテマトーデスと確定診断が付き、治療を開始され無事出産となりましたが、臓器病変は残る状態となりました。
事例2)では、10代女性、力が入らない、体がだるいとの症状で、幾つかの病院を受診しましたが、筋ジストロフィーではないか、ミオパチーではないかと言われるが、どの医療機関でも良くなる傾向はなく、更に医療機関を探し、ようやく専門医により皮膚筋炎との診断が付きました。治療が始まるが、既に筋肉の損傷は激しく、歩けない状態になっていました。
11番の事例3)です。この男性の場合は不明熱で入院、体重減少、手足の腫れと痛み、幾つかの医療機関を受診し、膠原病の疑いまでの診断は付きましたが、そのまま経過観察となり、ようやく専門医にかかり、腎生検の結果、全身性エリテマトーデスと診断。当初の症状出現から8年が経過していました。その間に病状により仕事も退職せざるを得ない状況となりました。
また、12番のように、診断は付いても専門医の下での治療は受けておらず、より良い治療にたどり付くまでに長い期間がかかっている人も多くいます。ここでは事例5)、事例6)を見ても、良くならないことに不満を抱きながらもなかなか主治医に言い出せない、どこで診てもらえばよいのか分からないといった情報がない中での不安な状態が長く続き、この間に悪化している現状も窺えます。
13番には、専門医が少ないために、遠くの医療機関には通えないという患者や、専門外来での予約が取りにくい、ゆっくり受診できる環境にないといった課題があります。また、14番のように、慢性期においても、かかりつけ医と専門医の連携が難しく、「難しい疾患なのでうちでは受けられない」と、風邪や歯科治療でも診察すらしてもらえなかった、かかりつけ医を受診しても、膠原病の相談はできないといった声が寄せられています。
15番です。以上の問題がある中で、より良い医療提供となるために、なかなか診断が付かない、より良い治療にたどり着くまでに時間がかかるという点については、私たちはより多くの皆さんに膠原病について知っていただくことが重要と考えます。市民公開講座などで、一般社会での知識の普及や、医師への研修、診断基準や診療ガイドライン等の周知、最初に訪れる医療機関での診断力を高め、専門医につなぐなどして早く確定診断が付き、適切な治療が始まることが必要と考えます。
16番です。急性発症する重症型についても、その病状に熟知した専門医による診断が必要で、臓器障害での臓器の専門科への受診、又は救急受診から速やかに膠原病専門医の診断治療に結び付く体制が必要と考えます。専門医間のネットワークが全国各地での診療等にも利用できるものとして機能し、病病連携や地域によっては遠隔医療支援システムなどによる各地域の実情に合わせた体制整備をお願いしたいです。
17番です。慢性期には、かかりつけ医と専門医による連携により、患者は毎月遠くの医療機関に受診しなくても体調管理が可能となる体制、また、大学などからの専門医の派遣により、患者が近くで受診できる環境へと整備していただくこともお願いしたいと思います。
18番に、滋賀県での実例を示してみました。
最後に、難病は医療自体も不完全で、その体制も未完成です。行政、診療側、患者側、研究者等、より多くの関係者が共に知恵を出し合い、前向きに話し合っていけることを期待しております。また、患者会も、専門医の協力を得て、確かな医療情報を広く伝える役割や、発病からのショックや長期にわたり治療を続ける患者の精神面での支えとなる役割、そして、生活の工夫などの体験的知識による相談機能など、多くの支援を担っています。まだ患者会のない疾患、患者会のない地域などには、どうか医療機関、保健所や難病相談支援センターなどの支援により、患者が希望を持って生きていくことができるよう、患者会設立など、患者同士のつながりの機会を作ることについても御支援いただきたいと願っております。医療提供体制について御検討をよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○福永副委員長 どうもありがとうございました。次に東京都医師会理事角田徹様からお話をお伺いしたいと思います。よろしくお願いいたします。
○角田参考人 東京都医師会理事の角田です。1ページを御覧ください。私は外科消化器科、つまり胃腸科です。三鷹市医師会に所属しております。東京都医師会では担当理事をしておりますが、決して難病の専門医ではございません。3枚目を御覧ください。東京都の全図が出ております。
改めてですが、私が今からお話するのは東京都、つまり大都市でのこととして、決して全国に共通するものではないことをまず御理解いただきたいと思います。現在、東京都の人口は1,330万人おります。総世帯数は約680万世帯で、1世帯当たりの人口は1.96人という現状です。
また、東京都における医療施設は、東京都内に登録している医師の総数は、平成25年12月31日現在、4万1,498人、つまり医師数は約4万1,500人の医師がおります。その中で私ども医師会に所属している医師、これは情報も含めていろいろなものを流せるのですが2万113名です。ですから、都内に登録している医師のうち約48.5%が東京都医師会に所属していただいている現状です。ちなみに病院数は、公的・私的の病院数を合わせて、平成25年10月1日現在646病院。診療所としては1万2,758診療所です。合わせて1万3,400余の医療施設が東京都にはあります。また東京都には13の大学病院があり、私ども医師会構造で言いますと、都道府県医師会の下に郡市区医師会があります。郡市区医師会と同列で大学医師会があります。13の大学のうち12の大学が実は医師会を持っておりますが、私は三鷹という所で、地図の真ん中にある北多摩南部2次医療圏の一角ですが、三鷹市という所に杏林大学病院があり、杏林大学病院だけは独自の医師会を持っていなくて、私ども三鷹市医師会に所属していただいているということで、逆に非常に連携はしやすいという環境にあります。そういったことをまず一つ御紹介して、1枚戻っていただきたいと思います。
私は開業医ですので、一般の医家、開業医の役割として少し考えさせていただきました。まず、初診、まだ診断が付いていない、ないしははっきりとした症状が確定していないような患者さんがいらした場合どうするか。これは全てのほかの疾患でもそうですが、私ども一般医家は、自分たちで診て、一般的な感冒や胃腸炎以外の病気の場合には、きちんとした病診連携の下に専門病院へ御紹介します。初診の診断未確定の患者さんについて、私どもの所で即難病という形で診断することは普通は多くありません。ただ、私どもが持っている知識において、専門医療機関に御紹介したほうがいいという場合には御紹介します。
2ページを御覧ください。そのときの基準として、通常の病診連携としては、やはり地域の基幹病院に御紹介する。病診連携の形です。私が所属している三鷹市医師会は、北多摩南部2次医療圏で人口約100万人です。今お話した杏林大学病院、武蔵野赤十字病院、多摩総合医療センター、慈恵医大第3病院等があります。また都立の神経の専門の病院がありまして、この辺の連携は大変よく取れていると考えています。
また、地域の連携に関するネットワーク以外に、自分が出身した大学であったり自分の経歴での情報という、大きく分けて2つあると思います。私は東京医科大学が出身ですので、やはり母校の先生方でどういった専門の先生がいるのか把握しております。
3ページは先ほどお話を申し上げました。4ページです。1つは、私どもかかりつけ医機能として普段診ている患者さん、ないしは地域の患者さんを紹介する場合。もう1つは、私どもが診ていないのですが、診断が付いてある程度安定した段階で、専門病院から地域へ紹介されるという場合が考えられます。このときもそれぞれの専門病院は、地元の地区医師会との情報のやり取りの下、各地域にどんな先生がいらっしゃるか、また、そのかかりつけ医がどういう専門性を持っているかという情報をある程度お持ちと思っております。これについては、各地区医師会に御紹介していただけると、地区医師会から情報をお流しすることができます。また、それぞれ都内の病院というのは連携医療機関のリストをお持ちです。ですから、各病院が独自に連携先医療機関として把握しております。ここで大切なのは、情報というのは一覧表で出ているのではなくて、それぞれ顔と顔が分かる、つまり、フェース・トゥ・フェースの連携でないと、紹介する医師も、例えば専門医療機関からかかりつけ医、ないしは逆でかかりつけ医から専門医療機関に御紹介するときも、患者さんに向かって、この先生が専門だからというのではなく、この先生はこういう方ですということで信頼性を持った形での紹介が大きいではないかと思います。ですから、私どもは余り大きくない地域ですが、紹介のときの情報提供というのは、個人といいますか、フェース・トゥ・フェースで、御紹介させていただく先生、医局、そこの医療機関がよく分かっていることが1つ大きなポイントではないかと思います。
私ども三鷹市医師会は、以前から杏林大学が会員として加盟しておりますので、そういう意味では非常に連携がよく取れているかと思います。そして、30年来、「地域ケア会議」という形で、地域で難病患者さん、ALSの患者さんの人工呼吸器も含めて、いかに地域で連携して診させていただくかということで会議を月に1回行っております。また、今のように地域主治医のない患者さんを受け入れるときに、「在宅ケア打ち合わせ」として、患者さんの御紹介をどこの医療機関にするかという会合をしております。医師会としては2か月に1回各会員の医療機関にアンケートを取りまして、例えば在宅の受け入れの可能な人数であったりとか、それについての条件等を調査しております。
5ページを御覧ください。今お話した地域ケア会議、在宅ケアの打合せを三鷹市医師会では行っております。地域ケア会議は昭和55年から、もう既に35年近くなりますが、毎月1回、この場には医師会の担当理事であったり、在宅診療医、ないしは行政、訪問看護ステーション、基幹病院、あとは人工呼吸器の方が多いので、都立神経研等も含めて、スタッフが一堂に会して、いろいろ困った事例等の情報交換等、対応を検討しております。
また、地域で主治医が決まっていない患者さんについては、在宅ケア打合せを毎月行っており、医師会の担当理事と在宅医、同じようにコーディネーターである都立神経研の方を含めて検討してお願いしている次第です。2か月に1回ですが、私どもの地区の会員宛てに在宅受入れの調査をして、私どもの三鷹市医師会がどのぐらいのキャパシティがあって、どういう患者さんを受け入れられるのかということは常に医師会が把握している状況です。
6枚目を御覧ください。これは難病患者さんに限りませんが、専門医療機関に御紹介した場合、その患者さんが専門医療機関で診断を付けていただいたり、ないしは治療していただいて、ある程度治療方針が決まった場合、私どもはその患者さんを再び拝見させていただくことになります。その際の私どもの立場としては、1つは以前からかかっている「かかりつけ医」としての役目です。これは日常診療であったり、医療、福祉等に関する御相談に乗って、地域での患者さんというのは以前から家族ぐるみで私どもは拝見しておりますので、そういった形でのかかりつけ医としての役割をいたします。
もう1つは、「専門医と連携する地域主治医」、つまり難病であったり、がんの診療等も含めて、私どもは2人主治医制を常に提唱しているわけですが、専門医の先生にきちんとした診断を付けていただいて、治療方針を決めていただく。それにのっとって私どもが地域で拝見させていただく。その際に重要なのが、これはがん診療のときにも言えることですが、具体的な指示といいますか、専門医の先生から、専門医ではない一般のかかりつけ医に対して、こういった治療法でやってくださいと。そのときのポイントが、例えば、再び専門医の先生方にすぐ紹介しなければいけない基準、こうだったらすぐ連絡をくださいというようなこと。あとは検査で、例えば何箇月に1回この検査をしてくださいというようなこと。あとは、ここの部分について気を付けて診てくださいというような指示の下に、私どもは難病患者さんであったり、もっと数の多いがんの治療後の患者さんを拝見しております。このときに非常に重要なのは、専門医ではない私どもに対しての具体的な指示です。
がん診療では連携パスというのが今提示されておりまして、患者さん自身が自分の情報を持つということは非常に重要ですが、それを見ることによって、今後どういうふうなスケジュールで自分が、ないしは私どもが患者さんを診るかということがきちんと明記されています。検査はこの間隔、治療はこういう形で、年に1回は必ず専門医に診ていただくという形のパスです。それが情報共有にもなりますし、場合によっては、漏れと言っては言い過ぎかもしれませんが、治療上の本来やるべき治療をしない、本来やるべき検査ができないということを防ぐことになるかと思います。
参考までに7枚目を御覧ください。これはがん診療における施設基準、連携をしてがんの患者さんを拝見するときのものです。都内には33の計画策定病院があります。その33の病院から地域へ御紹介する。そのときに、それぞれの病院の近くの地域の情報は御存じかもしれませんが、全都的にはなかなか把握できない。これについては、病院のまとめ役の都立駒込病院が33の計画策定病院のリストを作成し、東京都医師会としては、各地区医師会を介して会員の先生方に、このがんの患者さんなら診れるという形で手を挙げていただきました。それをそれぞれまとめて、お互い情報を交換する。例えば私ども東京都医師会の会員は33の計画策定病院のリストを持っている。都立駒込病院から33の病院へは、私どもの会員の地区において、この会員はこのがんなら診れるということをそれぞれ交換している次第です。
8ページ、少し古いデータですが、平成22年10月1日現在で、それぞれ情報をまとめました。当時、46の地区医師会かあり、その会員の2,062の医療機関が「がん治療連携指導料」の連携医療機関として手を挙げていただいて、情報を上げます。会員数は約2万人ですから、約10%の医療機関ががん診療の連携に携わっていただいているということです。
こういった形で進めているのですが、御存じのようにがん診療の連携パスは、5大がんについての連携ですが、地域によって、がんの種類によって、一生懸命進んでいる地域もあれば、まだまだそうでもないという所までかなり温度差はあります。ただ、1つの参考にはなる資料かと思ってお持ちしております。
続きまして最後の所を御覧ください。私ども三鷹では神経難病患者さんについては約20年以上前から地域で受け入れる、特にALSの方で人工呼吸器が付いている方については積極的に地域で診ていきたいということで、都立神経病院等と連携しながらしております。そうしますと、幾つか課題がありまして、総論的には、非常に医療的な技術の進歩によりまして、生命予後が延びております。それに伴って、患者さん御自身が高齢化して、合併症の管理や、ないしは長期の入院がなかなか難しいという御時世があります。あとは、難病ですから積極的な治療法が余りないという課題があります。
医療機関にとってみますと、1人の患者さんに人工呼吸器、気管切開、胃瘻、膀胱瘻等、たくさんの医療行為が複数に及んで投入されるわけです。それに伴う、今現在保険診療は「まるめ」の形ですから、経済的な諸問題もあります。また、例えばALSの方であれば神経内科医が拝見するわけですが、神経内科医の先生が胃瘻の管理であったり、膀胱瘻の管理といったことを必ずしもトレーニングしてきていない。大学、専門病院では習ってきていない。今はどちらかというと、学会での研修というのは専門医を作るという研修が多いのですが、そういった総合的なことをするトレーニングが十分ではないのではないかと思います。
また看護系の問題で言いますと、訪問看護ステーションを入れるわけですが、やはり、1か所の訪問看護ステーションで1人の人工呼吸器の患者さんに対応するのはなかなか難しい現状があります。ですから、複数の訪問看護ステーションで対応していただく形になります。
また、介護の面で見ますと、ケアマネージャーの方にいろいろ介護のプランを立てていただいたりしますが、そういった知識と経験が余り多くない場合には、ケアマネージャーの方も混乱してしまう場合があります。また、医療系や看護系に比べて、介護系のスタッフの出入りが大変激しい、絶えず入れ替わる状況で、せっかくスキルというか、経験を積んだ方がまた移動してしまうことによっての問題点があります。どうしても重症な方に関してはチーム医療ということでしなければいけないのですが、まとめ役としてのかかりつけ医の役割というのは非常に重要なものがあります。今言ったいろいろな諸問題が実はあり、各チームのそれぞれのメンバーに負担がかかっている状況です。また、看取りの問題と書きましたが、がん等の場合と同様ですが、人工呼吸器の倫理的な中止の問題とか、その辺も含めて、まだまだ現場ではいろいろと検討しなければいけないことがあります。
私どもかかりつけ医として難病の患者さんを在宅で診ていく上で、ないしは診断を付けていただく上で、やはり必要なのは情報かと思います。ある程度、東京都ではそういった医療施設・機関も多くありますし、情報という形では私どもが手に入れることは比較的容易ですが、やはり、顔を知っているといいますか、本当にその先生を知っているということが、紹介するときには大きなポイントになります。また、チームでないと在宅、ないし地域では診れません。そのときに、公的な費用を入れていただかなければならないのですが、聞くところによると、どうしても絶対数の多い高齢者対策であったりとか、がん対策などには割と行政、議会の理解は得られるのですが、本当に困っていらっしゃる少数である難病の患者さんに対しての全体的なコンセンサスといいますか、公的資金をしっかり投入していただくことについて、今一つ理解の少ない方もいらっしゃるかと聞いております。その辺については是非国民全体に対する啓発活動も含めてお願いしたいと思います。雑駁な意見ですが、現場でのお話をさせていただきました。以上です。
○福永副委員長 どうもありがとうございました。次に、国立病院機構東埼玉病院長の川井充様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○川井参考人 機会を与えていただいて、ありがとうございます。スライドの1枚目、東埼玉病院について簡単に書いています。埼玉県の蓮田市にある病院で、写真にありますように、非常に環境が豊かで、敷地面接は17万平方メートルあります。私たちのコアアイデンティティーは「人生を考える医療、豊かな環境」ということで、長期間にわたる医療が必要な人に対して、その地域の医療機関と協力をしてQOLを重視した専門的医療を提供するとともに、行政と連携して療養環境の改善に努めるということ。あとは、急性期医療機関と連携して、在宅医療に向かって切れ目のない医療を提供することを取り上げて使命としています。
診療機能ですが、1944年に結核の療養所としてスタートして、かつては865人程度の患者さんが入院をしていましたが、現在、結核の病床は30床です。しかし埼玉県の結核の医療の拠点病院となっています。また、HIVの患者さんの県内の3分の1を診療しています。それから難病医療、特に神経・筋疾患、免疫系疾患、炎症性腸疾患、呼吸器疾患に関する診療をやっていまして、埼玉県難病医療連絡協議会の事業や難病相談支援センターの事業を受託したりしています。
在宅医療、訪問診療、在宅看取りということも、これは地域の要請に基づいてやっており、埼玉県の在宅医療連携拠点事業を受託しています。あと、難病ということで、治療が非常に重要ですが、臨床研究部で筋ジストロフィーの国際治験を国立精神・神経医療研究センターの下で行ったり、ALSの治験を行ったりしています。
次のスライドです。うちの病院は、縦軸はいろいろな種類の医療ということで書いたわけですが、医療の幅は確かに限られていて、いずれも慢性疾患で難病、あるいは一生ものの病気を扱っていますが、横軸は、それぞれやはり人生を考えたときにどういう設えが必要かということで段々と発展してきまして、障害者の医療であれば在宅医療、ショートステイを重視し、そして訪問診療を、特に難病を軸にして、高齢者、がんも行っています。認知症、ロコモ・フレイル、そして訪問看護、緩和ケアというほうに今は伸びていこうとしているところです。難病は一生ものの病気でありますし、その人の人生がどうなっているかを常に考えなければいけないというときに、地域でイニシアチブをとって、これを自分たちで全部やろうというつもりは全くありませんけれども、どういうことが大切かということを分かるためには、ある程度こういうことをやっていることが必要ではないかと思っています。
続いて4枚目です。埼玉県の難病相談支援センターと難病医療連絡協議会の事業を受けていますが、この左のほうは患者さんから、右のほうは医療従事者を相手に支援を行っています。相談支援で圧倒的に相談件数が多いのは、神経・筋系疾患で、いかに生活が重要かということ。医療と生活と介護、これらが一体となったサービスが提供されなければいけないということを日々の経験から非常に感じています。埼玉県の場合は、毎月第3水曜日に、県疾病対策課難病担当の方と、障害難病団体協議会の患者さんの代表の方、そして連絡協議会事務局が情報共有と相談のために連絡会をもっています。右のほうには保健師さんたちの研修会の図が書かれています。保健師さんはなかなか3日続けて研修に出るのはつらいのです。県内でこういう研修をやるのは非常に好評です。
次のスライドです。代表的な2つの病気について特徴などをお話したいと思います。1つはALSです。この病気は治療方法がなく、症状は急激に悪化して短期間のうちに地域で療養体制を構築しなければいけない病気です。患者さんの人生について模式図を右に書きました。患者さんが自覚する発症から診断が確定するまで、この間非常に患者さんはつらい思いをしていますし、診断が確定してから人工呼吸器を装着するかどうかを決定する、装着しなければこれは必ず亡くなるのですが、この間というのは、実は告知をして、療養体制を構築し、呼吸管理をして栄養法について適切な処置を行い、コミュニケーション法について患者さんに覚えていただき、気管切開人工呼吸療法の選択の有無を決定する。やらなければいけないことがとてもたくさんある時期です。そして、左のほうの、初診診断がALSである方は大体1割、発症から初診までが大体5、6か月、発症から診断確定までは1年半を大体要しています。これはちょっと前の調査ですが、現在もほとんど同じだと私は思っています。初診の医療機関は様々で、診療所、大学病院、大学病院を除く総合病院、大体同じような比率です。初診の診療科は整形外科、神経内科、内科、脳外科というように分布しています。埼玉県の特徴は、東京に行っている方が非常に多いということで、遠方の医療機関に通院して、いよいよ通院できなくなると地元に紹介されてくるという方が、これは無視できない数いらっしゃいます。これは患者さん側にも確かに問題はあると思いますが、一番困るのは患者さんでありまして、必要なこと、この*の間にやらなければならないことがたくさんあるのですが、この部分は実際には2年あるかどうかで、人によってはもっと速いのですが、この間に適切な地域での医療提供体制が構築できないまま地元に帰ってくるというような方が非常に多いということが、私たちがいつも悩んでいる点です。
次は筋ジストロフィーの場合です。こちらは200の2次に追加された疾病の代表ということで選ばせていただきました。希少疾患でも特に数が少ないということがありますが、診断と治療ケアに高度の専門性があり、治療開発が急速に進んでいる領域です。この病気は遺伝性の病気です。原因遺伝子が違うと違う病気というように理解すべきであり、その原因遺伝子の数はどんどん増えています。小児発症のデュシェンヌ型が代表的で、4、5歳で歩行障害で発症し、10歳で歩けなくなり、かつては20歳以前に亡くなっていましたが、現在は適切な医療で寿命は2倍以上に延びています。この病気で大切なことは、診断が付いたときに、これは治らないと言って医療から切れてしまうということがないようにすること、幼少期の診断から医療に適切に移行できることと、小児期から成人期にかけて、小児神経科から神経内科へ適切に移行できる必要があります。また、発達期ですので、教育の観点も必要です。呼吸管理の技法、集学的な治療、多職種の共働ということが大事です。
ここで1つ強調したいことですが、この病気の診断は幾つかの階層がありまして、右下の、筋ジスであることの診断と臨床型がデュシェンヌ型であるという診断、分子レベルでジストロフィンが欠損しているということ、DNAレベルでエクソン52が欠失している。例えば、エクソン52の欠失まで診断しないと、次のエクソン51スキッピングの治療に行けないということがあります。この面の進歩は著しいものです。このようなことがありますので、一般の診療医は多分専門医に紹介すると思いますが、専門医は多くの場合は御自身で診断ができなくて、更にこういった病気の専門医を紹介するということで、国立精神・神経医療研究センターとかNHOの病院とか、また大学もこういうことに取り組んでいらっしゃる大学がありますので、そういう所に紹介をされます。ここで、遺伝子診断、病理診断とありますが、必ずしも患者さんが移動する必要はなくて、検体あるいは情報ということで、コンサルテーションをすればよいということがありますので、こういうところが大事だと思います。
次は患者登録システムです。武田先生が後ほどお話されますので、これは飛ばしたいと思いますが、患者さん自らの意思で登録をしていただいて、そしていろいろな治療の進歩の情報と、患者さんの登録による治験の推進という両面をもっている事業です。
次に、望ましい医療提供体制です。まず診断ということで、これは難病指定医を作って、診断の質を上げる趣旨であったわけですが、残念ながら専門外の領域も診断できてしまうような仕組みであり、やはり診断精度の向上にそのままぴったりと制度がうまくいっているとは思いません。やはり領域別という形で決めなければいけませんし、イメージとしては、障害者福祉法の第15条指定のイメージというのがむしろそういうほうに近いのではないかと私は思います。研修会を開かなければいけませんけれども、今のどの領域でも診断できる体制では非常に難しいのではないかと思っています。これが1点です。
2つ目に、やはりドクターに階層性があって、これはどっちが上ということはないのですが、一般の診療をされている先生が、領域の専門医に、これは都道府県の難病指定医に当たりますが、患者を紹介される。そして都道府県の指定医の先生は、大体は大丈夫なのですが、非常に希な病気の場合は、その病気の専門医に紹介したり、コンサルテーションができるような体制が必要だと思います。また、患者さんに直接行っていただかなくても、患者さんの検体や画像を送るとかでこれは診断がスムーズにいくことができると思います。これに対して、費用の保証というのが必要であると思います。その次に、都道府県内に、難病指定で臨床情報個人票をたくさん書いていらっしゃる先生を中心に領域別の部会を作るということで、情報のネットワークをちゃんと構築する必要があると思います。
9ページです。診断が確定した後について、拠点病院と医療圏ごとの基幹病院は、診療実績に考慮して、領域別に編成すべきではないか。拠点病院と言っても全然違って、この病気は診ていないということが、やはりどうしても出てくるのではないかと思います。治療が主体の場合と、進行性で療養が主体の場合とは、ちょっと分けて考えなければいけませんが、いずれにしても病気の種類によってどこで診てもらうかが違ってくると思います。生活を考慮した治療が可能な施設に関して適切に情報提供される必要があると思います。また、治療に当たる医師が専門的医療内容に関して適切に相談できる体制も必要であると思いますが、診断に関する枠組みがそのまま使えるのではないかと思います。
一方、進行性で療養が主体の病気は、今日これは別のテーマと思ってしまったのですが、非常に大切で、相談支援センターの相談件数が実際に多いです。それから、患者の人生をトータルに見られる施設を中心に体制を整備すべきであること。保健所を中心に組織する地域難病対策協議会の役割が非常に大きくて、全県的な支援が必要だということ。高齢者在宅医療と共通する枠組みであって、施設間の連携、多職種の連携、行政間の連携というのは、全く同じ仕組みを使っていると思いますので、こういうことを意識すべきだと思います。また、特に在宅人工呼吸療法の実施者は一元的に把握できるようにすべきではないかと思います。顔の見える関係と情報のネットワークが非常に重要で、私どもも在宅医療を地域と一緒にやっていますけれども、これが正に課題であると思います。
最後に、難病セカンドオピニオン外来です。私たちは相談支援センターをやっていますが、医療的な医学に関する質問は、本来はドクターに直接できればいいのですが、ドクターが直接電話に出たりあるいは対面しますと、そこで診療が始まってしまいます。責任関係が不明確なままこういうのが始まるのは非常にまずいので、実際はセカンドオピニオンという形を採るべきであろうと。ただ、難病の方は経済的に非常に厳しいことも当然ありますし、また一方、無料だとこれは特定の先生にものすごいつらい思いをさせてしまうことになると思います。ということもありまして、自費診療の枠を維持しながら、費用負担を軽減する仕組みを何か作ればいいと私は考えています。例えば、回数は限定するにしても、セカンドオピニオンをもう少し楽に受けられるような仕組みがあるといいのではないかと思います。
最後のスライドは、私が今申し上げたことをポイントにして書き換えたものですので、時間の関係で省略させていただきます。以上です。
○福永副委員長 どうもありがとうございました。次に、東京医科歯科大学消化器病態学/消化器内科教授の渡辺守様からお話を伺いたいと思います。よろしくお願いいたします。
○渡辺参考人 よろしくお願いいたします。本日は東京医科歯科大から私、消化器内科の渡辺と、膠原病・リウマチ内科の上阪教授の2人でまいりました。私は潰瘍性大腸炎・クローン病という炎症性腸疾患の専門でありまして、厚生労働省の難病研究班の班長を既に10年以上務めさせていただいています。今日は、難病診療において、ネットワークを構築しなければいけないのではないかという、私どもの反省に基づく提案をお伝えしたいと思います。
2ページを御覧ください。東京医科歯科大学附属病院では、2012年4月に5つの先端治療センターからなる難病治療部を新設し、高度な診療技術を集約した難病疾患のトータルケアを目指してきました。センター設立以前も色々な科に高度な診療技術を有する専門医を多数配置して、複数診療科によって行われてきたのですが、患者さん側から見ると縦割りの病院組織しか見えてこないという問題点がありました。横のつながりを明確に打ち出して、患者さんが安心して受診できる体制を是非つくらなければならないということで、3ページのような疾患別プラットフォームによるセンター方式診療で、患者さんにも分かりやすいトータルケアを実践する体制を考えました。例えば、膠原病・リウマチ先端治療センターであれば、膠原病内科、整形外科、理学療法部、手術部、看護部、薬剤部が一体になり、一人の患者さんの診療にあたる。潰瘍性大腸炎・クローン病治療センターであれば、消化器内科、大腸肛門外科、放射線科、光学診療部、病理部、手術部、看護部、薬剤部等を合わせて、患者さんがいつでもトータルケアを実感できるような横断的な診療体制を可視化することによって、患者さん・家族のアクセスを容易にし、また難病診療の教育・研究を充実しようということを考えました。その目的で4ページの、センター方式診療で更に質の高い難病治療を実現させるために「難病治療部」というのを作った訳です。
これは難治性疾患治療の全てのステージで我が国における高い水準の医療を提供するということで、発症早期から進行期から難治例まで、幅広い難治疾患で飛躍的な患者QOLの向上を目指して、しかもその途中には病診連携による、大学、関連施設、地域病診療施設の役割分担もして、難病治療部を運営してきました。5ページに示しますが、当時は、膠原病・リウマチ内科の当時の宮坂病院長、神経難病の水澤副病院長、私と3人の厚労省難病研究班班長がそろっていましたので、東京医科歯科大学に2012年4月新設した「難病治療部」の中には厚生労働省の指定難病を対象とするセンター、すなわち膠原病・リウマチ先端治療センター、潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センター、神経難病先端治療センターという3つのセンターが入りました。
6ページを御覧ください。難病治療部の創設によって、新患の難病患者さんの受入れが急増しています。この3センターの新患患者数の増加を見ればお分かりになりますように、難病の患者さんを広く受け入れる窓口として、積極的に公報・活用して、軽い患者さんから重い患者さんまで全て診るということで3つの先端治療センターでこの3年間に累計1,832名の新患難病患者さんを受け入れてまいりました。我々の潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センターでも3年間で710名で、炎症性腸疾患の領域では最も新患患者さんを集めた施設として読売新聞に紹介されています。
7ページです。多くの難病患者さんを受け入れる体制が、質の高い臨床研究と画期的な新規治療法開発に直結したということで、例えば潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センターでは、小腸の内視鏡検査が一気に350例もできまして、質の高い臨床研究ができました。それから画期的な新規治療法の開発を患者さんの協力を得ながらできまして、これはAMED/JST事業の再生医療実現拠点ネットワークの拠点Bにも選ばれまして、トランスレーショナルな研究の面でも非常によかったということが挙げられます。
8ページ目からはこのセンターを新設した事の問題点を挙げさせて戴きます。1つ分かりましたことは、専門性の低い一般施設に共通する難病診療の問題点です。その1つは、診断と治療における問題点で、難病を難病として診断できない、また治療によっても非常に悪くなってから難病の患者さんを送ってこられる施設が非常に多い事です。それから、難病ではない疾患を難病として治療していたり、逆に不適切に高額治療が継続されているという問題点があることが分かりました。
この治療における問題点を詳しくお話し致します。適切な重症度判定に基づく適切な治療の選択ができていない、これは非常に大きな事だということが分かりました。この結果として、内科的治療の限界を判断し外科治療へ受け渡すタイミングを逸することによって、難病の患者さんが重症化する。それから逆に、軽症患者さんに高額かつ過剰な治療、例えば生物学的製剤等を選択することによって、これも不適切に使用する例が存在することが分かりました。もう1つ、適切な治療が開始されていても、十分な薬剤投与量、期間を判断できないということで、不十分な薬剤投与量を継続し、不十分な投与期間で終了してしまうために、難病が重症化してしまう。そのために高額な治療が継続されるという大きな問題点があることが分かりました。
9ページです。最も大きな問題点として専門性の低い診療施設から難病治療部への一極集中が加速してしまうことが分かりました。例えば診療圏外から患者さんの紹介が加速した結果、我々の所で一極集中してしまい、患者さんが非常に多くなってしまいました。そのために何が起きたかと申しますと、診療上の諸問題が起きました。例えば我々の潰瘍性大腸炎・クローン病先端治療センターでは、専門医師診療が過剰な負担となってしまいました。これは例えば難治・重症例を含む500人以上の患者さんを1人の医師が診る、これは実際には無理があることですが、そういう状況を受入れざるを得ないというような診療・管理体制の問題が起こってしまうことが発覚いたしました。しかも診療スペースが不足していまして、増加する患者さんに対応可能な外来ブースや病床も不足していることが分かりました。3つ目として、専門・特殊検査の増加によって、施行医への過剰な負担が起きてしまうことが分かりました。また、専門性が高く、診療担当医が自ら施行しますので、検査数は飛躍的に増加したのですが、逆に上部・下部といった一般的な内視鏡検査の一般的な患者さんへの施行が遅れてしまうという問題点も出てきました。特殊な検査ですけれども、小腸の検査やMRIによる検査がとても混んでしまって、これもほかの検査を圧迫する、例えば小腸の内視鏡をするために上部の内視鏡が10件減ってしまうというような負担を起こすことも分かってきました。もう一つの最も大きな問題点は紹介された患者さんの多くは地域の病院に戻ることを希望しないため、最後の砦への遠距離通院、例えば三宅島や山梨、広島などからの遠距離通院・治療も受け入れざるを得ない状況に陥ってしまった事でした。
そういう問題点をどう解決したらいいのかを、3センターの先生と考えました。1つは、やはり病診連携を少し発展させることが必要ではないかと、11ページのようなことをまず始めました。我々の先端治療センターで受けた患者さん、これは主に診療所とか地域病院からですけれども、それを専門家がいる連携拠点病院や連携クリニックに病診紹介するという、これは逆紹介や病診紹介基準の共有によって病診連携体制を明確化した上で送る。更に一般病院と難病連携拠点病院は、例えばカンファレンスによって情報を共有することで密度の高い病診連携により、意欲のある地域病院・クリニックを積極的に育成するということを目指して来まして、最初はある程度成功していました。地域拠点、クリニックで難病患者さんが安心して受診できる環境を、ある程度最初はつくれたのではないかなと思っています。
ところが、それ以上に患者さんが増え過ぎてしまいまして、これは12ページの上の一般的病診連携では追いつかなくなりました。我々は新しい難病診療ネットワークを何とか構築しなければいけないということになり、ちょっと変わった方式を採りました。これはどこでも採れる方式とは思われませんけれども、我々が採っているTMDU(Tokyo Medical and Dental University)型の難病診療ネットワーク方式を御紹介したいと思います。
東京医科歯科大学附属病院に来られた患者さん、これは医療連携推進センター地域連携室を通して受け入れますが、患者さんがある程度落ち着いた段階で、一般診療所、地域病院に帰ってくださいと言っても、なかなか帰っていただけないことが分かりましたので、その途中として、連携拠点病院という関連病院を作り、そこに我々の東京医科歯科大学の専門医を派遣するという方針を取りました。もちろん派遣は週1~2回程度ですが、だいぶ機能するということが分かりました。そこで良くなった患者さんは診療所、一般病院にお返しすることをやってきました。すなわち、地域の拠点病院に逆に専門医師を定期的に派遣することによって、専門外来を開設する。これは医学部附属病院地域連携室を中心に拠点病院の病診連携体制をネットワーク化することによってできたものです。
13ページです。このTMDU型難病診療ネットワークによってどうなったかと申しますと、丸で囲んでいますが、いろいろな医療圏ができるようになりまして、こういう中核施設、地域拠点病院に専門医を派遣した結果、開業医の先生とか地域の中核病院に患者さんを送れるようになりました。しかも、診療所のレベルに送る場合には、一定の基準を共有して、拠点病院と連携する事にしました。例えば逆紹介基準として、膠原病・リウマチであれば、ステロイド投与量が維持量になったり、免疫抑制薬・抗リウマチ薬で副作用がコントロールされていること。潰瘍性大腸炎・クローン病では寛解導入に成功し、かつ適切な維持療法が確定していること。それから画像診断は再評価を必ずしていただくという条件を付けて、逆紹介基準を設け、お返しする。こういう地域中核病院を逆に拠点化することによって、「一極集中」から「ネットワーク型診療」へということで、地域における難病診療を適性化することにより患者さんの重症化と過剰・不要な高額医療を抑制することがある程度できるようになったのではないかと思っています。
ただ、これは我々の病院だけでできることではありません。全国的にどうしたらいいのかを我々は考えまして、このTMDU型難病診療ネットワークを普及していこうということで、厚労省難病班会議の中でお話をして、中核施設・拠点施設を担えるような専門医を育成するということで、我々の施設でクラークシップ体制を設けました。例えば北海道大学、福島県立医科大学、山梨大学、岡山大学、広島大学、国立国際医療研究センター等から、専門家になりたいという方を我々の病院で受け入れまして、そういう方が自大学に戻られた時に中心としてまた地域にネットワークを作っていく。このTMDU型難病診療ネットワークの普及によって、これはどこでも恐らく起こると考えられる一極集中を解消して、患者さんに適切な難病診療を提供できる体制の構築を実現したいということで、班会議を通して、できるだけ多くのいろいろな各大学病院及びセンターからこの病気に関連ある先生方を、今集めているところです。以上です。
○福永副委員長 ありがとうございました。次に、国立精神・神経医療研究センター神経研究所所長の武田伸一様からお話を伺います。よろしくお願いいたします。
○武田参考人 本日はこのような機会を与えていただき、ありがとうございました。私は国立精神・神経医療研究センターの武田と申します。私の所は名称が長いものですから、NCNPと呼ばせていただきます。
2ページです。これはNCNPで難病等の患者さんがどのように診断を受けるかを1枚にまとめたものです。左側のやや下のほうを見ていただくと「患者紹介」というのがあり、全国の医療機関から患者さんが紹介されてきます。
次のカラムを見ていただくと、例えば神経内科の場合に、年間1,677人の方が入院すると、そのうちの約10%が神経系の未診断あるいは診断未確定で、そのほとんどが難病の患者さんです。次に筋系未診断が5%います。そうすると、神経内科に入院する方の15%ぐらいが、診断が付いていないために、私たちの施設に入院されることになります。但し、これはほかの病院でも多く行われていることです。
私たちのNCNPがほかの病院と違うところは、左側の「患者紹介」の上に「生検筋等」という記載がオレンジであります。私たちの所には、生検筋等の検体が直接送られてきます。
その生検筋等を使って病理診断をいたします。ただ、この数年はそれに加えて、ほとんどの場合に血液ゲノムを使いますが、遺伝子診断を行います。いわば患者さんが受診するのを1階とすると、2階が筋肉等の検体を用いた病理診断、血液ゲノムを使った遺伝子診断が3階になります。
特に、今日は、NCNP-MGC(Medical Genome Center)のセンター長である後藤先生にも来ていただいているわけです。このような構造を使えば全部の患者さんで診断が付くかというと、決してそうではありません。それについては、後ほど簡単に触れさせていただきます。
こうして難病に挑んでいくときに先行する例がございます。3ページ目と4ページを御覧ください。これは川井参考人が既にお話くださったことです。指定難病の追加に選ばれている筋ジストロフィーについては、1つは、患者さんの登録制度ができております。現在NCNPを中心に運用され約2,000人の患者さんに登録を頂いておりますが、基本的に全員遺伝子診断ができております。
次に、患者さんを結ぶのが登録制度であるのに対して、新しい治療をするために医療機関のネットワークを作っております。それが、筋ジストロフィー臨床試験ネットワークです。これは患者さんの登録制度と手を携えることにより新しい治療を患者さんにもたらすことができます。
もう1つ、この2つの制度を使うと患者さんの自然歴(Natural History)を明らかにすることができます。つまり、この病気はどういう経過をたどるのかを多数例の患者さんで知ることができます。新しい薬剤の治験をするときに、患者さんの自然歴が分かっていれば、コントロール(対照例)とすることができます。それで、3ページ目、4ページ目の筋ジストロフィーを前例として、ほかの難病にどのように取り組むかということが極めて重要です。
5ページ目を御覧ください。これが私たちNCNPの最大の特徴だと思います。左側に、筋生検標本がどのぐらい集積しているかを書いています。昨年度末のデータですが、約1万5,000検体あります。毎年800例以上集積が続いております。しかし、それには問題があります。実は、800例という生検筋の数は我が国で行なわれている筋生検の約8割に達します。すなわち我が国で行われている生検で得られた筋肉の8割がNCNPに集中していることになります。これは一極集中の例になります。
ただ、もちろん良いことがあります。今度は右側を見ていただくと、それをどうやって使うかです。送られてきた検体の組織の写真を見ますと、青い細胞の中に黒っぽい構造物が見えます。これは異常構造物です。それをヒントにします。同じ異常構造物を示す症例を集積して、今度は血液ゲノムを使って遺伝子診断をします。その結果として、こういった管状構造物を示す筋肉の病気の型について、新しい遺伝子異常を見出すことができました。これは新しい疾患概念の提出になります。これは良いことになります。しかし、問題も多いわけです。
では、こういった検体がどのようにNCNPに集中しているかを6ページ目で示します。下の段を御覧ください。私たちのところに来る検体の9割は、NCNP病院以外から送られてくることが分かります。主に、関東が多いですが、北海道から九州、沖縄まで分布しております。全国からこのような検体が参ります。また、そのうち病院の種類でいうと、やはり大学病院が多くて48%です。筋病理に加えて、先ほど血液ということを申し上げましたが、ゲノムの遺伝子診断をやった場合でも、ほぼ同じ傾向です。
特に遺伝子診断について、どのように進めているかを7ページ目にごく簡単にまとめております。これを見ていただきますと、既に病気の原因遺伝子が分かっている場合、例えば川井先生が御紹介になったデュシェンヌ型筋ジストロフィーの場合はジストロフィンという遺伝子が原因だということが分かっています。その場合ですと、比較的早く遺伝子診断ができて、臨床応用は可能ですし、保険適用もあります。
ところが、原因遺伝子が分かっていない場合は、それを探索する必要があります。これは医療というよりは探索的な研究です。しかも、患者さんのゲノム遺伝子を全部調べると、恐らく遺伝子変異の候補は100以上あります。その中から、本当に病気の原因になる遺伝子変異を見付けなければいけません。それには大変な手間がかかります。
しかも、その遺伝子変異が病気の原因であることを細胞、場合によってはマウス等を使って確認することが必要になります。したがって、大きな隘路になります。ここまでが現状です。
このような課題に対して私たちがどのように考えているかを、以下で述べます。8ページ目は、先ほどの骨格筋の生検の一極集中の問題です。この場合メリットももちろんあります。集約化されているので迅速に正確な診断ができます。新しい遺伝子の変異だと探索的な研究が背景に必要ですが、私たちの所は十分な実績があります。また、こういった診断の先には、新しい治療があります。それについても、患者登録やネットワークがあることが強みになりますが、デメリットも明らかです。一極集中しているので、先ほどの東京医科歯科大学の先生と同じです。依頼数は余りにも多く、担当者は休日でも、深夜2時、3時までやっております。もちろん、ほとんど手弁当で、正当な報酬を頂いている訳ではありません。それ以上に、これは御依頼いただくときに、依頼元に十分な検討をしていただけるかという大きな問題が出てまいります。いわゆる格差の問題が出てきます。
それに対して私たちは、隣にいる後藤先生もしょっちゅう出張して生検をやっております。30年間ですが、筋肉の標本をどう読むかというセミナーを行い、500名以上の方を育成をしております。しかし、それでも不十分だと考えています。
9ページです。このように努力をして、未診断の方全部で診断が付くか。いや、そういうことはございません。診断が付かない場合があります。ただ、筋病理をやっているメリットとして筋肉が悪いかどうかは分かります。その次に遺伝子診断にいく。先ほど説明したとおり既知の遺伝子変異の場合は比較的容易です。しかし、未知のものは非常な困難があります。
例えば遺伝子診断が付いても、蛋白質レベルの酵素の測定を行うために、ほかの大学病院に紹介する場合もあります。より大きな問題は、冒頭の参考人の方からも出ておりました。どの領域の病気か分からなくて、私たちが提案したルートに乗らない場合というのが、一番大きな問題だと思います。
10ページ目に診断後のフォローアップの体制を示しています。私たちが扱っている神経・筋難病は、原則的に個別化医療の対象です。したがって、一人一人の患者さんで診察の体制は変わります。全部を述べることは難しいのですが、多くの場合根治治療はありませんので、対症療法を中心に、御紹介していただいた病院に返事を差し上げることになります。
特に、合併症がある場合は大変です。紹介元の総合病院で合併症を中心に見ていただきます。ただし治療の方針その他については、NCNPに相談していただくことがあります。また、一部の疾患では新しい治療が出てきています。しかし、それは多くの場合は治験です。治験というのは、患者さんが望んでも、必ずしもそれを受けることはできません。高度な専門医、例えばNCNPの専門医に御相談いただく必要があります。それを書いたものが11ページです。
冒頭の図とこの図が資料として重要ですが、私は連携が非常に大事だと思います。3種類の医療機関が想定されます。真ん中にくるのが、地域の基幹総合病院です。ここには難病指定医がいて、なおかつ総合医としての役割を果たしていただく必要があります。それは多くの患者さんには合併症があるからです。しかし、2番目に、かかりつけ医が大事です。今日も東京都医師会からお話がありましたが、ちょっと風邪をひいたとき、場合によっては人工呼吸器の調子が悪いとき、すぐに駆け付けていただける先生が重要です。それから、3番目に広い意味での診断、治療の方針を出すためには、私どもNCNPのような難病診断治療研究センターが必要です。より重要なことは、この3者が連携をして難病に挑むことだと私たちは考えております。
最後のページは、私たちの願いを書いております。ごく簡単に申し上げますと、遺伝子診断は我が国においては制度化されておりません。市中には遺伝子診断があふれております。私は一番大きな問題はカウンセラーの不足だと思います。遺伝子診断を制度化し、難病の遺伝子診断については保険適応を考えていただく必要があります。
それから難病医療に関しては、その体制整備を進める上でNCNPの場合には、センターとして頂いている運営費交付金を使わせていただきました。しかし、恒常的に、長く安定した体制を作っていく上では、事業化していただく必要があります。例えば筋病理の診断がそれに当たります。また、患者登録制度とネットワークについては、その各論は企業と協力していくことで良いと思いますが、中央事務局あるいは、そのひな形は、是非事業化していただきたいと思います。それらを超えて、必要なものは人材でして、私たちが若いときは、ドクターとナースが病院におりました。しかし、今はそれでは不十分です。こういった難病に挑むためには、カウンセラー、理学療法士、治験コーディネーター、治験のナース、生物統計・数理・倫理の専門家といった方がおりませんと、新しい時代の難病医療はできないと私たちは考えております。以上です。どうもありがとうございました。
○福永副委員長 ありがとうございました。
事務局から資料が提出されておりますが、何かございますでしょうか。
○前田疾病対策課長補佐 資料1-1、資料1-2を用意させていただいておりますので、ごく簡単に説明させていただきます。
まず資料1-1です。おめくりいただき、「基本方針の検討の進め方(案)」です。毎度御用意しているように見えて、実は違う所があり、線を引いている所が変わっております。基本方針で定める事項が(1)から(8)まであり、これまで逐次御議論いただいております。本日は(2)の「難病に係る医療を提供する体制の確保に関する事項」、(3)の「難病に係る医療に関する人材の養成に関する事項」、(8)の「その他難病に係る医療等の推進に関する重要事項」について御議論いただければと思います。これまでの難病対策委員会で、これで基本方針に定める事項の全てについて御議論賜ったという形になります。
医療提供体制等に関することについては、次のスライドです。難病対策を平成25年12月に取りまとめていただきました中の、一番左下の第1の「効果的な治療方法の開発と医療の質の向上」の中で御検討賜ったと承知しております。その中で、専門医とかかりつけ医の連携、患者さんの動きだけではなく、全国的な取組としてネットワークが必要なのではないかという御提言を頂きました。また、そういうデータを管理して医療の質の向上につなげるために研究を進めていく。スライドの5ページ目で、総合的な支援体制を講じていくということで御意見を賜ったものです。6ページ、7ページは、それに関する医療提供体制で、具体的にどのような文言で取りまとめさせていただいたかについてまとめています。
次の8枚目です。医療の人材の養成というところで、研修ということで実施している事業について御案内しているものです。
最終ページです。テーマでいくと、(8)「その他難病に係る医療等の推進に関する重要事項」ですが、難病の患者に普及啓発していく、あるいは支援していくという観点のときに、どういうツールがあるかというところで、これは難病に特化したものではありませんが、東京都でヘルプマークという形で、実際にヘルプマークを患者さんに付けていただいて、支援が必要な方についてカード状の大きさのものを付けて、支援をということで東京都が推進しているものです。難病患者にそういった施策が必要かどうかという点についても、御議論いただければと思っております。
資料1-2です。普段は論点メモは用意していないのですが、今回は「医療提供体制に係る論点メモ」という形で御用意しております。医療提供体制というと、それこそ厚生労働省で局が1つ大きな審議会を設けるぐらいの大きな話で、議論も多岐にわたるところだと思います。この難病対策委員会という委員会で医療提供体制といえば、難病の中で、難病の患者の特性を御勘案いただき、通常の一般的に厚生労働省のいうところの「医療の機能分化と連携」を超える特徴的なものがありましたら、是非御議論を賜れば、最後の取りまとめに非常に有益ではないかという形での御提案です。そういう特性であるとか、マル2のほうは、その中でそれぞれの機能分化したところのポイントであるとか、そのスキルアップというところで、どういうところに重点を置いて施策を講じていけばいいかについて、御議論を賜ればというところでの簡単なメモ書きです。事務局からは以上です。
○福永副委員長 それでは、本日のヒアリングの内容に関して、委員の先生方から御質問を含めて御意見、御発言を頂きたいと思います。今日の参考人の先生方は、どの先生方も15分でピシャッと終わりまして、約30分あります。そういうことで時間の関係もありますので、5人の参考人のどの参考人にでも結構ですので、御質問、御意見を賜りたいと思います。いかがですか。
○伊藤委員 今日は素晴らしいお話を頂きまして、ありがとうございました。日頃、患者側としてはこの体制はどうなるのだろうかということで具体的な姿が見えていなかったのですが、今日、各先生方の御発表をお聞きして、皆様それぞれがすごく努力をして様々なことを検討しているなと思いました。
しかし、日本全国を見ると、果たして地域ではどういう具合にこれが展開されるのかという不安もないわけではないのですが、今日の先生方の御発表の中にそれぞれ特徴もありまして、それぞれの病気の特徴なのか、地域の特徴なのか分かりませんが、全部をまとめた形のものを全国一律に実施するのは困難かと思っておりますので、諸先生方の今までの御経験から何かおっしゃっていただければと思います。それと、私どもの立場から言えば、厚生労働省の疾病対策課から提出された資料1-1のスライド2と書いてある所ですが、例えばこの難病対策の基本的な在り方については、専門医療の充実というか、研究の体制づくりなども言っており、「難病対策の基本理念及び基本的事項」に、「難病の治療研究を進め、疾患の克服を目指すとともに、難病患者の社会参加を支援し、難病にかかっても地域で尊厳を持って生きられる共生社会の実現を目指す」と明記してあるわけです。そういう意味で、専門医療からの観点と、あと、諸先生方も実際の経験の中でおっしゃっていた地域との連携は、今後、全国的にどのように進めたらいいのか、進めるべきかということもお聞きしたいと思います。
また様々なデータの蓄積をしておられる所がありますが、これを長く維持するのは、どういう財源をもって長く維持することを保証されるのか。あるいは首都圏、その近郊ですと、大学病院もたくさんありますし、先進的な地域の医師会の取組は伝統的にありますので、比較的連携の構図は取りやすいのだと思いますが、地方ではどのような所を基点にして、それを作られたらいいのかといことも伺いたいと思います。
患者会の側からも幾つかデータがあります。例えば「難治性疾患の診断がつくまでに通った医療機関のおよその数について」という平成22年度の患者実態調査などでは、1~2か所で診断がついたのが、それぞれ3分の1ずつで、あとの3分の1は3~10か所以上という数字が出ています。そうすると、少なくとも3分の1以上の人は1か所ないし2か所では診断がつかなかった。自ら患者があちこち歩いたという中で、セカンドオピニヨンのことについても触れられておりましたが、現実にそういう仕組みの中に、こういう患者たちを入れていくことが可能だとすれば、今の段階で考えられる可能な方法はどのようなことかということを、先生方のお得意の分野だけで結構ですので、教えていただければと思います。
○福永副委員長 それでは、伊藤委員の御発言に関して、それぞれ立場が多少違うかもしれませんが、どなたでも結構ですので、参考人の方々から御意見を賜りたいと思います。川井参考人いかがですか。口火を切ってくださればと思います。
○川井参考人 私も参考人の先生方のお話を伺っていて、病気によって違うなとすごく感じました。私は例として2種類挙げましたが、治療が本当にメインになっている病気と、具体的な治療法はないが、今、開発が進んでいて、それにどのようにこの制度を合わせるかという領域と、残念ながら今のところは治験は少しあるが、基本的には療養体制の構築がメインになるものとで、やるべきことは多分すごく違うのだなということが違いの1つです。
もう1つは、同じ首都圏でも、私は埼玉県におりますが、埼玉県は日本で一番人口当たりの医師数、看護師数が少ない所です。何が起こっているかというと、皆さん東京に行く。しかし、東京に行って、神経難病の場合は全然違う治療があるわけではないのです。でも、患者は東京に行きたがります。これは患者側の問題かもしれません。
そして、本当に必要な地域での医療体制の構築は、どうも東京の大病院は余り得意ではないようで、通えなくなってくると、そこで切れて帰ってくる。その時点では非常に大切なことをやらなければいけない時期が無駄にされている。何をしなければいけないかというと、地域でできるものは地域でやったほうがいいのです。何が必要かというと情報です。情報が足りない。患者はどうしても東京という気持ちは私は否定はしませんが、必ずしもそれが良いことになっていないということを、きちんとお伝えして、地域でもできるものは地域で。それがむしろ大切だと思います。
地域でできる所がどこか分からないから行ってしまうわけです。そうすると、そのことを一番知っているのは専門医ではないでしょうか。ですから、専門医が集まって、この地域では誰が一番詳しいのかとか、そういったことをある程度情報を整理し、特に希少なものは地域を外れてナショナルセンターに行かなければいけない。あるいは筋ジストロフィーだったら、私はNCNPにずっといて、病理診断をやっていた人間ですから、地域で相当なことはできるのですが、そういう人間もかなりいます。ですから、そういう情報を伝えて、何分にも移動の不自由な方ではないですか。ですので、そういう方がなるべくフレンドリーに医療に乗っていかれるようにしていくことが大切なのだろうと思っています。やはり私は情報が、それも適切な情報が、フレンドリーな情報が必要なのではないかと思います。
○福永福委員長 渡辺参考人いかがですか。
○渡辺参考人 川井参考人がお話された事はその通りと思います。一方で私の専門とする潰瘍性大腸炎・クローン病は、非常に患者数が多い疾患で、適切な治療をすると多くの患者さんが社会復帰ができて、医療経済的には問題が残りますが、社会経済的には非常にプラスになるという疾患と考えていますので、神経難病などとは異なる面もあると思います。
伊藤先生がお話になられた様に、病気の知識を伝達することは患者さん側にも一般医師側にも大切です。厚生労働省班会議の班長をさせていただいた時に自前で15か所もいろいろな所を回って、患者さん向けの研究成果報告会を行い、合計1,000人以上の患者さんに集まっていただいて啓発したり、北海道、鹿児島、千葉、滋賀、奈良の医師会に御協力を仰ぎ、医師会単位で県内のいろいろな所で講演会をやってもらい、一般医師と知識を広げると言った地道な活動をしていったのです。しかしながら、そこの地域は良くなっていっても、全国でやるというのは、皆さんおっしゃるように困難です。また、自腹を切って、時間を割いてやっているので、是非、厚生労働省側で支援体制を作っていただきたいと思います。インターネットなどで情報が溢れかえっていますが、間違った情報もたくさんあります。我々はそれを何とか正さなければいけない立場にありますので、正しい情報を伝えたいということで一生懸命やっています。班会議で冊子を作ったり、全国で使ってもらうスライドを作ったり、いろいろな啓発活動をしていますが、なかなか全国には行き渡らない。診断とか、病気の概念という意味では非常に行き渡って、多くの先生方が分かるようになって、診断という意味では我々の場合はさほど困らなくなって、すぐに送ってくださることになったのですが、治療という意味ではまだ非常に大きな問題点を残しております。いかに連携を作るかということが我々の課題で、今日お話させていただいたのも、単なる地域病院とか中核病院の連携だけでは、どうしても一極集中は免れないということを考えますと、特に東京など患者が集中すると考えられる地域には、複数の難病拠点病院と新しいシステムを作る必要があるということは言っておきたいと思います。
○福永副委員長 角田参考人はいかがでしょうか。
○角田参考人 かかりつけ医の立場から言わせていただきますと、先ほど幾つもデータを頂きましたが、診断までに非常に時間が掛かる。これは症状がまだ確定していない状態で診断をつけるのは難しいと思います。ですから、かかりつけ医がファーストコンタクトみたいな形でしたときには、私どもは何か重大な病気などの診断はつきません。それを地域の基幹病院に紹介するわけです。地域の基幹病院にしっかりした先生がいて、それから更にその先生が、難病かもしれない、新規難病かもしれないということで御紹介いただくという形で、地域の基幹病院と難病の専門医療機関との情報共有が非常に重要ではないかと思います。私どもかかりつけ医はいろいろな疾患があるので、かかりつけ医のレベルアップも大切ですが、そこまで専門的な知識を全ての疾患で持つのは不可能ですから、そこは一つ重要かと思います。
あと御指摘の面で、難病患者に対しては医療的なケアとともに介護、つまり社会で尊厳を持って生きていただく。そこは正に地域包括ケアの考えです。私どもが患者を診るときには、確かに病気は診ます。そうなった病気の原因よりも、その方が社会生活する上で、どんな障害があるか。それに対して私どもは介護力を含めて、いろいろな医療の提供を提案するわけです。ですから、原因というよりも、がんの方もそうですし、ほかの病気も全てそうですが、私どもは社会で、自宅で暮らしていただくためにはどういうものが必要かということのマネージをすることを第一に考えています。
医療的なことをきちんと専門の先生方に教えていただければ、あとの生活を保つための介護力を導入したり、訪問看護師を導入したりすることは、私どもは高齢者を診ていますので、かかりつけ医の得意な分野です。ですから、そういったことでかかりつけ医の役目をきちんと指示していただいて、私どもは開業医として、医療を含めた形でのdisabilityに対してはマネージメントするという役目を持っております。
○福永副委員長 武田参考人、何かございますか。
○武田参考人 私は2つのことが大事だと思います。1つは、医療機関のネットワークで、どういう形にするかが大事ですが、我が国の、全国どこにいても高い水準の医療を受けられるという特色を是非守りたいと思っています。私自身地方出身ですし、それはよく分かります。
もう1つ大事なことは、先ほど検体のお話をしましたが、情報については集約化していくことが重要ではないか。それは遺伝子診断の情報もそうで、もちろん個人情報に十分配慮をしなければいけませんが、きちんと集約していく必要があるだろうと思います。
御質問にもありましたが、データベースをどのようにするのかが大きな課題になります。私たちの考えは、個々の病気に関しては事務局が必要で、全国いろいろな所にあっていいだろう。がんセンターの例もありますが、治療法の開発に結び付きますので、費用の資金を利益相反を考慮した上で、企業に出していただくような形を考えるべきだろう。ただ、データベースの中央事務局あるいはデータを集める方法は、できれば事業化してほしいと思います。
私たちが大学の先生から聞いたことですが、非常に立派な教授がデータベースをお作りになっても、教授の代が替わると研究の対象が別の病気になることがあるそうです。大学の役割を補うのはナショナルセンターだろうと思っております。しかし、財政的な制限がありますので、皆様とよく御相談をして、御指導していただきながら、そういったことを進めたいと思っております。
○福永副委員長 森参考人、何か付け加えることはありますか。
○森参考人 疾患によって状態というのも患者が求めるものも違うと思いますし、患者一人一人にとっても、発症時に急に重症化する場合もあれば、緩解期に入り、慢性疾患のような形の管理のときもありますので、それによって患者も求める医療が違ってくると思います。その辺りは先生方がおっしゃっているような連携がとても大事だと思いますが、本当のところは連携がなかなかうまくいっていないのが、すごく問題だと思います。きめ細かな顔の見える関係が、信頼を積み重ねることによって作っていけるのはとてもいいですし、それが基本だと思います。専門医とかかりつけ医の関係性を丁寧に作っていくことが大事だと思います。
私は滋賀県なのですが、医療機関に常勤医が1人もいなくて、外来に大学から派遣していただいてという形ですので、連携自体が非常に難しい状態にあるという所もあります。県の行政も非常に頑張ってくださっていて、重症患者入院確保事業というので、拠点病院、協力病院という形がありましたが、多くの都道府県は神経難病を中心に成り立って、作っていただいたと思います。滋賀県の場合、当初から血液系、免疫系、内分泌系、消化器、骨、関節等々といった分類の拠点病院、協力病院を積極的に作っていただき、連携していけるように進めていただいています。行政のほうも地域地域によって特色があると思いますので、その辺りも1つの工夫かと思います。また保健所を中心とした地域連絡協議会も、もっと地域に限定した形で組み合わせていくことも大事だと思います。
○福永副委員長 「連携」というのは2文字ですが、これが一番難しいところかと思います。あとは川井先生が言われた情報の共有というか、そういうことが一番根底にあるのではないかと思います。ほかに委員の先生方はいかがですか。
○本間委員 今日はお話ありがとうございます。森先生に伺いたいのですが、頂いた資料の6ページです。私どもは「専門医、専門医」といつも言うのですが、ここにある地域格差の関係で、都市部に専門医が多いのは、ある意味で当然だと思います。逆に地域格差を表す指標としては、専門医1人当たりの患者数とか、そういった均した感じのデータみたいなものがあったら教えていただきたいのです。今ないのなら後で出していただいても結構です。
○森参考人 人口割したものもありますので、提出したいと思います。
○福永副委員長 ほかにいかがですか。
○鶴田委員 厚生労働省の資料1-1の6ページの「医療提供体制の整備」という観点から渡辺参考人と武田参考人にお聞きしたいと思います。資料5の5ページにある指定難病を対象とするセンターの患者の数と医師の数を分かれば教えて下さい。
次にNCNPの組織での、例えば資料6の2ページにある未診断症例、筋疾患とそれぞれありますが、それぞれの患者数と、そこに働く医師の数を、もし分かれば教えて頂きたい。
○渡辺参考人 東京医科歯科大学難病治療部では専門医師が診られる患者数を決めておりまして、我々の所は潰養性大腸炎・クローン病に対して大体1人で200人診られるということで、今は8人の専門医で診ています。膠原病・リウマチセンター、神経難病センターも100~200人に1人の専門医という感じだと思っています。
○鶴田委員 それぞれのセンターにおいて、医師1人当たり平均で100~200人の患者さんを診て、1センターに8人の医師が配置されているということですか。
○渡辺参考人 そのとおりです。ですから、患者数がどんどん増えていっておりますので、専門医も増やしていかざるを得ない状況です。これ以上、患者数が増えると心配ではあります。従って、東京など患者さんが集中すると考えられる地域には、複数の新・難病拠点病院がなければやっていけません。
○武田参考人 資料6の2ページに、私たちNCNPの入院患者のデータを示しています。私たちの施設はベッド数は480で、神経内科・小児科、それから精神科をいわば特化した病院です。
ドクターの内、常勤医は僅か65名です。非常勤医はたくさんおりますが、常勤医としてはそれだけの数で、トータルの入院患者のうち約15%の、いわゆる診断未確定の患者さんを診ていることになります。非常勤医を含めてドクター1人当たり何人ぐらい診断未確定及び難病の患者さんを診ているかを明らかにしたいということであれば、改めて資料を準備させていただきたいと思います。
○鶴田委員 もう1点は、今の医師数から見て、厚生労働省資料では各都道府県に新・難病医療拠点病院の総合型を3次医療圏である各都道府県に1ヶ所設置するということですが、各都道府県の難病患者数と、そこに何人医師を配置するかという観点からすると、疾患によって違うと思いますが、これは現実的な案だろうかと疑問に思います。例えば、国立がんセンターが設置されてから、その後、対がん総合戦略を10年ごとに策定し、最初は病態解明から、今はトランスレーショナルリサーチを目標にしてがん対策を推進しています。国立がんセンターを核として各都道府県に都道府県がん診療連携拠点病院、2次医療圏に地域がん診療連携拠点病院を設置していますが、2次医療圏では必ずしも十分な医療がされていない現実があります。例えば症例の少ない小児がんであればブロック制の拠点病院を設置しています。難病の場合は、がんの歴史と比べて、どのレベルにあるかとか、そういう位置付けを見て、この医療提供体制が現実的かどうかを考える必要があるのではないかという気がします。
もう1点は、病院の経営として考えた場合に、東京医科歯科大学のこの部分の経営は普通に経営できるのか。例えば、がん診療連携拠点病院には診療報酬上、加点がされていますが、ああいう形のものが必要かどうか。それについて何か御意見があればお聞きしたいと思います。
○渡辺参考人 東京医科歯科大学難病治療部は、今は一般診療報酬の中でやっておりますが、がん拠点病院と同様に、新・難病拠点病院でも必ずインセンティブが必要だと思います。もちろん通常の検査、治療に関しては保険を通っているわけですが、件数の膨大さとシステムの構築を考えると、必ずがん拠点のように難病拠点の場合には、インセンティブがあって然るべきかと考えます。
○小幡委員 お話を伺っていて、難病も疾患が多岐にわたりますので、なかなか一律には難しいと思います。ここで議論すべきなのは、難病ならではの医療提供体制の在り方だと思いますが、幾つか出てきた論点の中で非常に大事だと思ったのは、患者が余り動くことなく、地域ごとの整備ということになりますが、画像とか検体を使った診断、それからネットワークでつなぐということで、これは是非ともやっていただきたいと思います。
難病指定医というのが、疾患によっては診断のところから非常に難しいわけですので、地域にもよると思いますが、一体何を求めるかという、そこの構築がかなり大変かと思います。そこでネットワークを使わなければいけないわけです。難病ならではという話になりますが、必要であれば、費用とか、普通の医療ではない形のインセンティブを与えるような、正に難病ならではの措置が必要になってくるのではないかという感想です。
○福永副委員長 御意見として承ります。伊藤委員、簡単にお願いします。
○伊藤委員 たくさんあったのですが、時間がありませんので1点だけです。角田参考人に伺いたいのですが、地域包括ケアとの連携が非常に重要になってくると思います。従来、地域包括ケアというのは、捉え方としてというか、直接携わっているのが障害者のケア、あるいは高齢者のケアという側面が強い中に、非常に医療の知識も必要とする難病が入り込む余地があるのかどうか。果たして専門的なケアマネージメントが保証されるのかということで、先進事例でもありましたら教えていただきたいと思います。
○角田参考人 先ほど御紹介しましたが、私は三鷹という所です。そこですと、主に都立神経病院からのALSの患者で、呼吸器が付いています。ですから、医療としては相当重度な方が在宅に戻るということでお手伝いしています。
そうしますと、正に御指摘のとおり、介護部門でもある程度医療知識を持っているとか、そこで非常に大きいのは訪問看護ステーションの役割だと思います。私ども在宅医が訪問看護ステーションなどと一緒に行政、しかも介護部門も含めてチームを組む。そのチームの中でブラッシュアップするというか、この患者についてはどうするかという議論をして、しかもそういった患者が複数名おりますので、チームを組んで、医療職から介護職へのいろいろな情報の伝達、場合によってはいろいろ教えていただく、教えさせていただくといったことが非常に重要になってくると思います。
そうしますと、顔が見える体制で、正に地域包括ケアのときに医療と福祉の合併なのですが、福祉部門、介護部門から見ると、医療部門というのは非常にハードルが高くて、なかなかアクセスできないという現状があります。そこで同じ場でいろいろな情報を共有して話をすることによって垣根を外して、情報の交換がスムーズに行われる。極めて重要だと思います。
御指摘のように、確かに医療としては重度ですが、そういったことでそれぞれの役目に応じて、こうなったら、こうしなさいということをきちんと明確にするマネージメントの仕方も統一のものがあれば、それは可能だと思います。ですから、その辺は難病は非常に大変な部門だと思いますが、本当に小さな集まりですが、顔と顔が見えるような体制で、1人の事例を中心に多職種が集まっての議論は極めて重要だと思っています。
○福永副委員長 ほぼ予定された時間になりつつありますが、何かありますか。
○駒村委員 武田先生の資料6の12ページで、「遺伝学的差別禁止法」という言葉があるのです。私は社会政策、経済学を学んでいて、分野が違うのですが、とても重要なイメージを持ったのです。先生はこれは行く行くは必要なのか、なるべく早く必要なのか、国内外、国外でどうなっているのか、国内ではどういう議論が行われているのか、簡単には難しいかもしれませんが、教えていただければと思います。
○後藤参考人 国立精神・神経医療研究センターの後藤です。私は臨床遺伝学を専門にしている立場から遺伝子検査をやっています。これはアメリカで既に法律ができておりまして、遺伝子の情報をもって人を差別してはいけないというものです。例えば遺伝子の変異を持っている方が保険に入るときに、その保険会社がそれで契約を拒否するなど、そういう差別をしてはいけないという法律ができています。遺伝子検査は積極的にやって、医療に使いながら、こういう医療上の差別を受けないようにしていく、若しくは福祉上の差別を受けないようにしていくという方向でやっています。
日本においては、その重要性は知られてはいますが、なかなか法律制定までには行っていない状況で、一部の方々から強く要望されてはいますが、まだ議論している最中という状況です。
欧米に関しても、幾つかの国がそれと似たようなことを実際にやっておりまして、法律ができているという状況です。ですから、これからゲノム医療を含めて、遺伝子の情報を使った医療を進めていくときには、遺伝子差別禁止法が当然必要になってくるだろうと考えています。
○駒村委員 行く行くはという感じで理解してよろしいですか。
○後藤参考人 はい。ただ、実際に保険診療の中にも遺伝子診断が入っておりますし、日本でも遺伝子の結果を踏まえた差別的な事例というのがあるので、それほど時間はなく、なるべく早く制定してほしいと考えています。
○春名委員 治療と就労の両立が課題になっている患者が増えていると思います。患者の調査をしますと、そういう相談については、看護師とかMSWではなくて、専門医が非常に重要な役割をされていることが分かっています。ただ今後、医療体制とか人材育成ということを考えますと、専門医は非常に忙しいと思いますので、その実態や今後の課題などを教えていただけたらと思います。例えばIBDとか膠原病とか。
○川井参考人 神経難病から少し離れますが、私どもは相談支援センターをやっています。そこでは就労の相談もかなり多いです。難病の就職サポーターというのがあり、相談支援センターは連絡を密に取りながら仕事をしています。就職サポーターはハローワークにいるのですが、数が非常に限られていて、現在、この瞬間は知りませんが、少し前までですと、全国で15都道府県にしか配置がなく、埼玉県には全県に1人しかおりません。その辺はまだまだで、見直していく必要があると実感しています。
○益子委員 厚労省の資料ですが、その他の難病の患者に対する医療等の推進に関するということだと思いますが、資料1-1の最後で、「東京都実施施策:ヘルプマークについて」というのがありました。難病の患者のみならず、見えないハンディキャップを抱えた方に対しては非常にいい制度だと思いますが、東京都だけではなく、広く全国でみんなが知っている制度でなければいけないと思います。これは厚労省が出してくださったので、厚労省のこれに対する考えはいかがですか。○福永副委員長 この問題について意見を求めようとしていたところです。いかがですか。
○伊藤委員 実は私も質問するのを忘れたのですが、先般JPAの総会で一緒に厚労省のアンケートを協力させてもらったのですが、その結果がどのようなことになっているのか、集約されておられるのですが、それをお聞きできればと思います。
○福永副委員長 事務局お願いします。
○前田疾病対策課長補佐 すみません。今、正確な資料を手元に用意しておりませんが、概要で申し上げて、伊藤委員から補足があれば是非と思うのですが、ヘルプマークは支援が必要なことのみを示すマークなのでヘルプマークをつけることがすなわち難病患者であると周囲に知られるということではないにしても、そもそも、自分が助けが必要だと表現をしたいという方もいらっしゃる一方、就労などのときにはちゃんと言った上で支援をして欲しいのだが、みんなに広く自分が支援が必要な人であるということを伝えたいわけではないという、両方の御意見があったと理解しております。
○福永副委員長 いかがでしょうか、伊藤委員。
○伊藤委員 このアンケートは、難病対策の周知のためマークが必要かという趣旨で、アンケートを行った。私が見た感じでは、難病患者としての支援を受けやすくするために付けたいか付けたくないかでは、付けたいとか付けたくないというのは半分半分で、むしろ付けたくないという人は病気のことを知られるのは嫌だというのが多いのです。
○森参考人 私自身も、伊藤委員もそうですが、外見上からはなかなか困難性を持っていることが分からない。私もすごく重症な骨粗鬆症も抱えておりますので、電車の揺れなどが非常に怖く、できれば優先座席に座りたい。ただ優先座席に座っていても、私も発病が若かったわけですので、若い時にはジロリとにらまれた経験があったりもしますし、場合によって、付けたり付けなかったりという利用の仕方ができるといいなとは思います。
またお腹に赤ちゃんのいらっしゃるマークも非常に全国的に普及しましたし、そのような形で難病に限らず、病気をお持ちで、助けが必要な患者などにも、このようなものが広がっていくことは、とても良いものではないかと私は考えております。
○福永副委員長 この問題に関しては、今後、また検討していくことになるかと思いますが、伊藤委員、それでよろしいですか。
そうしましたら、一応予定された課題を終わりにしたいと思います。今日はどうもありがとうございました。今後の予定について、事務局から御説明をお願いします。
○前田疾病対策課長補佐 委員の皆様方ありがとうございました。次回の難病対策委員会では、今日幾つか宿題という形で頂きましたが、それのお返しもあるかと思いますが、大体一通り議論いただきましたので、基本方針の案という形の最終的な取りまとめに向けて、できれば次回以降、御議論を賜れればと思っています。日程等につきましては、追って御連絡させていただきたいと思っておりますので、どうぞよろしくお願いいたします。事務局からは以上です。
○福永副委員長 それでは、本日の難病対策委員会はこれで閉会といたします。御出席の皆様どうもありがとうございました。
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