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2015年9月8日 第91回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

○日時

平成27年9月8日(火)16:00~18:00


○場所

厚生労働省専用第12会議室


○議題

(1)雇用保険法第60条の2第1項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準の一部を改正する告示案要綱について(諮問)
(2)求職者支援制度の今後のあり方について 
(3)平成28年度予算概算要求の概要について 
(4)その他

○議事

○小杉分科会長 定刻となりました。定足数に達しておりますので、ただいまから第91回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。本日の出欠状況ですが、浅井委員、橋本委員、原委員、大久保委員、豊島委員、大隈委員が御欠席です。河本委員は所用により、17時頃に退席される予定です。

 議事に先立ち、本年427日付けの委員改選により新たに能力開発分科会委員に就任され、今回が初めての御参加となる方を御紹介いたします。使用者側代表委員、キヤノン株式会社取締役人事本部副本部長の中村委員です。また、事務局にも人事異動がありましたので紹介いたします。波積職業能力開発課長です。

 それでは議事に移ります。議事次第にありますとおり、本日の議題は、「雇用保険法第60条の21項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準の一部を改正する告示案要綱について(諮問)」「求職者支援制度の今後の在り方について」「平成28年度予算概算要求の概要について」「その他」の4件です。では最初の議題、「雇用保険法第60条の21項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準の一部を改正する告示案要綱について(諮問)」です。これは本日付けで厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛てに諮問がなされ、これを受けて本分科会において審議を行うものです。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○伊藤育成支援課長 議題1について、資料1-1から1-3に基づき御説明申し上げます。前回の本分科会において、専門実践教育訓練に係る御検討を頂きたい論点として、現行の3類型に加え、文科省が整備を進める職業実践力育成プログラムと、これ以外に他の類型と同等の水準を満たすものの追加について、事務局の考え方を御説明して御審議いただいたところです。前回の審議を踏まえ、このうち職業実践力育成プログラムに係る課程類型の追加に関わる指定基準改正について、本日お諮りするものです。

 資料1-1が諮問文書です。専門実践教育訓練に係る指定基準に関しては、制度創設時に大臣告示として整備させていただいております。したがって、この度の指定基準の改正に関しても告示の改正という形式で、それに関わる要綱そのものが資料1-1です。この説明資料が次の1-2ですので、そちらを開いていただけますか。

 資料1-2の上の「指定基準()」のうち、マル1マル2マル3とクロマル1の1の部分が、告示で規定しようと考えている指定基準のポイントになる部分で、※の部分がいわばその補足です。指定基準の考え方です。1点目として、今回の類型に関しては、文科大臣が職業実践力育成プログラムとして認定したものであることを前提とします。前回の報告の段階では、文科省ではまだ準備中でしたが、その後の7月末日に文科大臣による職業実践力育成プログラム認定基準がリリースされています。ちなみに、その後の資料1-33ページ以下に文科省の資料があります。基本的には前回御説明申し上げたものと同様に、実践的な授業方法による授業が一定比率を占める等、一定の要件を満たすものを対象とするという考え方です。

2点目として、現行の3類型と整合する考え方の下での期間等の要件です。正規課程については1年以上2年以内、履修証明プログラム(サーティフィケイト)については、120時間以上2年以内といった要件を設定するという考え方です。

3点目は専門実践教育訓練の目的を踏まえ、中長期的キャリア形成に資するものとして、局長が定める基準に該当するという要件を定めるという考え方です。より具体的な考え方としては、下の※にありますように、特定の職業の実践的能力習得に資するもの、又は非正規雇用労働者や子育て女性など、「特定の労働者層」のキャリア形成上の課題に即した就職促進・キャリア形成に資するものといった考え方です。

 また、講座レベルでも、現行の3課程に係る講座レベルの要件と同様の要件を設定すべきという考え方の下、正規課程と履修証明プログラムに共通して、訓練修了後の就職等の状況と書かせていただいておりますが、より具体的には就職又は継続の就業率が80%以上といった基準、大学院における正規課程にあっては、現行の専門職大学院と同等の基準ということで、定員充足率の実績があります。具体的にはその下の※にありますように、60%以上といった基準を設定するという考え方です。

 以上の考え方を概念図として整理したのが下の内容です。職業実践力育成プログラムとして認定されたもののうち、今ほど申し上げたマル2マル3、更にクロマル1の講座レベルの要件のいずれも満たすものを、専門実践教育訓練の対象として指定するという考え方です。右下にありますように、対象とならないプログラムの典型的な例としては、マル2の要件を満たさない3年の正規課程、マル3の要件を満たさない専ら起業やボランティアの育成を目的としたもの、あるいは職業との関わりがあっても、その内容やレベルが入門的・基礎的レベルにとどまるものなどを念頭に置いております。また、これらの要件を満たしたとしても、就職(継続)率が80%といった基準を満たさないものに関しては指定対象外です。こうした幾つかの要件によって絞り込みをしていくという考え方です。

2ページが今後のスケジュールの考え方です。文科省においては職業実践力育成プログラムに関して、7月末日に告示を公布し、既に募集を開始して、来年4月に認定プログラムの第1号開講を目指し、今後審査を進めていくと承知しております。専門実践教育訓練に関してもこの仕組みと相乗効果を期すという観点で、本日御審議を頂いた上で速やかに指定基準の告示等の所要の措置を行い、指定講座の受付・審査等を行った上で、適用期間としては同じく平成284月を予定しています。

 更に前回、専門実践教育訓練全般について様々な御意見を頂いたということで、関連参考資料を資料1-3として添付しております。ポイントのみ、かいつまんで御説明申し上げます。専門実践教育訓練に関しては、先日、平成2710月に新たな講座指定を行ったところです。これらも含めて、最新の講座指定等の状況は1,840弱です。前回の質疑の中で御説明申し上げたように、その分野や現時点での受講の状況などは、非常に限られたデータしか捕捉できない状況ですが、関連資料を添付しております。3ページ以下は、この度の諮問の前提となる「職業実践力育成プログラム」そのものの概要です。御参照いただければと思います。

6ページは、前回、この専門実践教育訓練の目的や具体的な内容等について、より正確な説明に心がけるべきという観点からの御指摘を頂いたところです。現状、私どもとして進めている教育訓練施設や受講者側に対する関係省庁との連携、様々な媒体などを通じての周知、講座検索等のサービスの概要についてお示ししております。本分科会の御意見も踏まえ、更にこうした周知広報等の取組の充実を図っていきたいと考えております。

 また、本制度の実績等についても、様々な御指摘を頂戴したところです。雇用保険データそのものによる集計分析はもとより、より多角的な分析を行うという観点から今年度後半、指定講座、また指定講座における受給者の状況について、いわゆるアンケート調査による把握・分析を行い、その状況に関して本分科会に報告を行い、本制度の今後の在り方について、幅広く御審議を頂ければと思います。こういった調査の在り方についても是非、御意見を賜りたいと思っております。

 最後に前回、論点としてもう1点御提示した、他の類型と同等の水準を満たすと考えられる課程類型の検討の件についてです。8ページ、9ページは前回お示ししたものと同じ資料です。前回はこれらの資料を用いて、現在対象となっていない民間資格の取得を目標とした教育訓練プログラムの在り方等について検討が考えられるのではないかということで、更に次の資料にある現在の一般教育訓練における講座指定の状況なども踏まえながら、御説明・御審議を頂いたところです。

 この資料を更にブレークダウンしたものが10ページです。現状では民間資格取得を目標とする教育訓練講座は、情報関係と事務関係にほぼ限定されているという状況です。これらの分野における各一般教育訓練給付での指定講座、目標とする資格、講座数の多いものを掲げております。情報通信技術関係の資格が多岐にわたり、現在、一般教育訓練の中で位置付けられているという状況です。私どもは現在、これらの教育訓練施設に係るヒアリングなども実施しているところですが、これら分野の資格教育訓練の実態は、公開資料やデータだけではなかなか分析困難な部分もあります。前回も考え方を若干御説明申し上げたように、こうした新たな類型について、当面の重点としてまずは情報通信技術分野などを念頭に置き、関連する専門家の皆様方の御参画もいただきながら、専門的・技術的観点からの検討、その前提となる実態把握などを行った上で、一定の考え方等を整理した時点で、改めて本分科会にもその状況などを御報告した上で、専門実践教育訓練の指定基準の在り方等について、御審議を頂ければと考えております。

 以上、諮問事項とそれに関わる関連資料等の御説明、御報告を申し上げました。何とぞよろしくお願い申し上げます。

○小杉分科会長 ただいまの説明について御質問、御意見をお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

○新谷委員 今、事務局から説明を頂きましたが、資料1-38ページが本日検討すべき守備範囲であるということが、分かりやすく書かれています。その右下にある青い枠囲みの部分、専門実践教育訓練の枠組み中で文部科学省がまとめられた、職業実践力育成プログラムの扱いについて厚生労働大臣が指定する基準を審議するというのが、今回の内容と理解しているところです。

 そこで、審議の一番の課題である資料1-1の告示案要綱について、縦書きのものが示され、その解説をしたものが資料1-2という御説明を頂いたのですが、この資料1-1と資料1-2の関係で、教えていただきたいことが1点あります。資料1-2に書かれているもので資料1-1に書かれていないのが、資料1-21ページにあるマル3のア)とイ)の要件です。ア)というのが特定の職業に関する実践的職業能力の習得に資するもので、イ)がキャリア形成上の課題に即した就職促進・キャリア形成に資するもの、と書かれてあります。このア)とイ)というのは資料1-1との関係で、どう読めばいいのかというのをまず教えていただきたいと思います。

○伊藤育成支援課長 現行の3課程類型に係る指定基準に関しても、その要件等の骨子のみを大臣告示で定めた上で、より具体的な基準については、これを踏まえた能力開発局長定めという形で規定し、統合的な運用を図っているところです。こうした現行の告示及び局長定めの体系との整合性も確保した上で、今回の職業実践力育成プログラムに関わる課程類型に関しても、現行の3類型について規定しているものと同等の要件の骨格はこの告示の中で定めます。それ以外の部分に関しては局長定めの中で、より具体的な基準を示して運用することが適当ではないかということで、このような構成にさせていただいております。

○新谷委員 分かりました。ということは、職業能力開発局長が定める基準というのが大臣告示の中にあって、それを具体的に受けた職業能力開発局長通達というものが資料1-2のア))であるということですね。そういった意味では資料1-1だけでは正確な中身が分からない。要するに、どういう基準で認定するのかというのが分からないわけです。資料1-1のア)とイ)の中身が分からないと、職業能力開発局長が定めた基準というフレームだけが資料1-1で分かって、その具体的な認定基準は資料1-2でないと分からない、というロジックになっているわけですね。

 その上でお聞きしたいのは、ア)とイ)の要件についてです。要するに課程レベルの要件と講座レベルの要件という2つの要件があって、マル1は文部科学省の職業実践力育成プログラムで認定されたもの、マル2は履修期間のことが書いてあって、マル3が正しく職業能力開発局長が定める基準に該当することですが、具体的にア)とイ)の運用がどうなっていくのかというのが分からないと、我々はイメージがつかめないのです。教えていただきたいのは、文部科学省の職業実践力育成プログラムが731日付けで告示され、既に大学等への公募がスタートしているとお聞きしております。これは文部科学省の所管ですので、厚生労働省のほうでどれだけ把握されているかは分かりませんが、実際にどのような分野の講座が、どの程度応募されているのかを教えていただきたいというのが1つです。

 もう1つは、想定されるマーケットというか、応募されてくるであろう講座のイメージについてです。ア)とイ)の要件を発動することによって、認定されるであろう講座と認定されないであろう講座のイメージが分かれば教えてほしいのです。資料1-21ページの右下に、指定対象となる講座と指定対象とならない講座についての事例が幾つか書かれているのですが、もう少し詳細な考え方を教えてほしいのです。中間段階でなかなか明確に言えない部分があるとは思いますが、先ほど申し上げたような具体的な事例を、我々の共通認識に立てるようなものとして、是非お示しいただけないかというのがお願いしたい点です。

○伊藤育成支援課長 文科省とは当然、この制度の創設に向けて、様々な情報交換等を行っているわけです。その中で、文科省として新たな職業実践力育成プログラム認定にどの程度の数が出てくるのかについて、私どもから文科省所管部局のほうに照会しております。現時点で、社会人を対象に設定された正規課程又は履修証明プログラムで文科省サイドの要件を満たし得るもの、これはもちろん文科省サイドの一定の見込みが入っていますが、700前後ではないかという見込みを持っています。この制度の浸透に時間を要し、また、文科省としても幾つかの要件を付しているわけですから、この700が全て認定基準を満たすことにはなりません。初年度という観点ではそのうちの1割強ぐらいの申請を、一定の見込みの下で推察しているという説明を受けています。

 ただ、7月末に公募が始まり、大学等を対象とした説明会を先般、既に開催されているということです。その説明会には、今申し上げた7001割強を上回る3桁の大学が参加しているということですので、場合によっては当初推察していた見込みを上回る認定申請があり得るという認識です。

 こうした文科省サイドの認定基準を満たしたものの中で、今回の資料1-2で御説明申し上げた、当方として考えている基準によりどのようなものが選定され、どのようなものが選定されない可能性が高いのかということについて、資料1-2の内容を若干補足する形で御説明いたします。もちろん、これも一定の推定見込みによるものですが、定性的な観点で御説明申し上げたいと思っております。

 まず、局長定めということを考えている、特定の職業に関する実践的能力習得に資するものとして想定される類型です。ここに書いたもの以外に、現実に大学で社会人等を対象に運営されているコースの中で、例えば幼稚園の教諭の実務経験者を対象に、保育士として求められる最新専門の知識習得を目標とした課程が存在します。これは保育士資格取得の特例措置の位置付けにもなっているわけです。こうした人手不足が顕著なもの、社会保障を支える保育士といった人材育成に資する課程です。

 それから、育児などで退職した看護師などを対象としたものです。医療の世界ですので、当然、医療の知識は日進月歩ということで、最新の看護や介護、運動療法などに関わる知識・技能の習得を目標とした課程が、現実に運営されております。今日申し上げた個々の課程の実績等の基準を満たすとするならば、こうしたものが特定の職業に関する実践的能力習得に資するものの類型として考え得るのではないかという想定を持っております。

 また、特定の労働者層のキャリア形成上の課題に即した就職促進・キャリア形成という観点では、子育て女性や非正規労働者などを念頭に置いておりますが、現時点で文科省から情報提供を受けている中で、非正規労働者に特にスコープした具体的な課程というところまで、私どもが把握しているわけではありません。ただ、子育て女性に関しては、育児などを契機に退職した女性などを対象に、主に事務系分野、逆に言えば特定の職業にひも付いているわけではないということになるわけですが、そうした分野での再就職や職場復帰に共通的に資するような、実践的な知識・技能付与のための課程が、現実に運用されているという説明も受けております。こうしたものに関してもこの類型の中での位置付けが、大いにあり得るものの対象と考えているものです。

 逆に、文科大臣の認定基準を満たし得るけれども、今申し上げた2点のいずれの基準にも該当し得ないものとして、専ら起業、専らボランティアというのも1つありますが、それ以外に、例えば○○初級コースといった形で、職業に関する知識・技能の習得を目標としているものの、基礎レベル・入門レベルにとどまって、中長期キャリア形成に資するものとは位置付け難いものとか、職業に関する専門知識習得を目標としているものの、その職業が、専ら公務員の身分で職業上必要とされる知識・技能の習得を目標としたものに関しては、政策的な意義は一定あるものの、雇用保険制度による専門実践教育訓練の中での位置付けにはふさわしくないという考え方を持っております。

 もとより、専ら語学・会話の知識技能の習得を目標としたもの、あるいは一般に趣味・教養という側面が強いと考えられる能力習得を目標とした課程については、おそらく文科大臣の認定基準も満たし得ないという考え方です。以上のような考え方の下で文科省が定めた基準を満たし、認定を受けたもののうち、今日御説明申し上げている考え方を前提に、この専門実践教育訓練の基準を満たすものがいかほど出てくるのかについても、私どももいろいろ検討・分析はしているところですが、今回の要件の肝の1つである講座ごとの就職等率といった個別の実態に関しては、それぞれ指定申請という手続に入らない限り、私どももあらかじめ把握することは困難です。ですから文科省サイドの認定基準を満たし、認定を受けたものの何割程度がというところまで、率直に言って正確に見込むことは難しいところです。

○新谷委員 その上で、もう一度確認します。資料1-21ページ、マル3のア)とイ)の読み方についてです。ア)というのは、特定の職業に関する実践的職業能力のことだから、初級レベルの講座は該当しない。ある職業があって、その職業の中での実践的な分野に限るということで、「特定」というのは別に限定しないこととしています。ある職業の中のレベル感について、後半では実践ということで書いてあるのですが、イ)のほうは特定の労働者層ということにしており、ある労働者ではなく、※が2つ出ていて、非正規労働者や子育て女性を想定して、ここでの「特定」はある程度限定するということで、2通りの書き分けをしています。今申し上げたように、ア)のほうは「特定の」という文言に特定の意味はなくて、レベル感を表すための前置詞であって、イ)のほうは「特定の」という文言である領域の労働者を想定するという前提で書き分けています。そういう理解でいいかどうかということを確認させてください。

○伊藤育成支援課長 私どもの意図するところは、新谷委員がおっしゃったとおりです。逆に申すならば、こうした表現が同じワーディングで若干意味合いの違う表現を使うことによって誤解を与える可能性があるとするならば、最終的な局長定め等の細目の整理に当たっても、本日の審議も踏まえ、更に正確を期していきたいと考えております。

○小杉分科会長 ほかに御意見はありますか。

○島村委員 資料1-31ページに、指標の表がありますが、真ん中に廃止講座が▲で表示されていて、7講座163人分の定数が既に廃止です。始まって間もない中で、既に7講座が廃止というのはどういういきさつなのかということと、そもそも指定する段階で講座に何ら問題が見つからなかったのかという、この2点をお伺いします。

○伊藤育成支援課長 資料1-32ページの脚注の意味するところですが、これまで指定した1,800余りの講座のうち、7講座について廃止ということで指定対象外になっているわけです。これは厚労省が定める基準を満たせなくなったという理由で指定の取消しをしたという意味ではなく、その講座自体に定員を満たす応募者等が確保されなかったという理由で、講座そのものが廃止されたということを意味しています。

 専門実践教育訓練に関しては、現状でも専修学校の職業実践専門課程などの3つの課程類型を対象とし、本審議会でも御審議いただいた基準の下で指定を行ってきたわけです。大まかに申し上げますと、指定基準の考え方としては教育訓練施設・機関全体としての適格性という観点と、今日も御審議いただいておりますように、課程内容に関して職業実践教育訓練、中長期キャリア形成に資するかどうかという観点と、もう1点は、今回も御審議いただいているものと同等の講座の過去の就職等の実績です。大まかにはこれらの基準の下で審査を行った上で、このいずれも満たすものを指定してきたということです。

 逆に申し上げますと、指定の段階ではその定員を新たな講座について充足するかどうかというところまで見ているわけではないのです。そのプログラム内容とそのプログラムが過去に展開される中で、就職等のパフォーマンスをしっかり上げてきたかという観点で指定を行っています。もちろん、せっかく指定したものがこのように廃止となることは望ましくないことではあるわけですが、様々な事情の下で、当該講座について定員が満たされたり満たされなかったりします。満たされなかった場合に、教育訓練機関の立場でこのように廃止されるということは、あり得る話であると私どもも考えているところです。

○高橋()委員 資料1-2の指定基準の話です。先ほどまでは課程レベルの話だったのですが、私からは講座レベルの要件について確認したいと思います。課程レベルの要件では、就職(継続)率が80%以上と書いてあるわけですが、確認したいのが、この就職(継続)率というものが一体どういう定義なのかということです。就職(継続)率の分母と分子はどういう計算をするのかというところを、まず確認したいと思います。加えて、これは訓練のいつの時点での率になるのですか。訓練開始時なのか、訓練期間中なのか、訓練終了時の後、一定期間経過後なのか、この辺を伺いたいと思います。

 それから、大学院における正規課程については、就職率と定員充足率の2つの要件があるわけですが、それ以外の所は就職率だけでOKとなっており、定員充足率は問わないということになっております。なぜ大学院における正規課程以外は定員充足率が要らないのかという点を確認したいと思います。講座のレベル担保という意味からも、定員充足率という指標が必要ではないかと思いますので、よろしくお願いします。

○伊藤育成支援課長 まず資料1-2にお示ししている、講座レベルの要件の1つである就職(継続)率の定義に関して、補足説明を申し上げたいと思っております。まず補足の時点ですが、それぞれの講座に関して申請、直近、過年度の該当講座に関わる実績として報告を求めています。したがって、平成26年度に申請する講座であれば、平成25年度の該当講座の実績です。タイミングについてはそのような考え方です。

 次に就職(継続)率の定義です。制度発足時に、本分科会でもいろいろ御議論いただいた点です。まず、この就職(継続)率の分母は、今申し上げたような意味での該当講座の入学者数を分母に置いています。分子に関しては就職者数と在職者数を足し上げたものです。より具体的には、就職者数は入学受講開始段階で就職していなかった方のうち、指定申請までに就職に至った方をカウントいただきます。ただし、就職の中にいわゆる臨時的な仕事までは含めないという考え方です。また、専門実践教育訓練というのは当然被保険者、在職者の方も対象とします。就職率だけですと、フェアに実績を把握することができないので、在職者ということで受講開始時点で就職していて、受講を経て引き続きその職にある人、あるいは受講開始時点で就職をし、何らかの理由で一旦離転職をしたけれども、指定申請までに他の職に転職して、申請の段階で職にあることが確認された方です。

 今申し上げた定義の下で、分子としては就職者数と在職者数をカウントして、これを入学者数で除して、ここで言うところの就職(継続)率として報告を求めます。これが80%以上であることを要件の1つとしています。これが講座レベルの就職(継続)率に関わる要件の考え方です。

 次に、もう1つの要件である定員充足率の実績に関して、その考え方を補足的に申し上げたいと思っております。定員充足率に関しては、現行の3課程類型の中でも業務独占、名称独占資格を目指す施設や職業実践専門課程については、この要件を設定しておらず、専門職大学院についてのみ、定員充足率という要件を設定させていただいています。この間の御審議の中で、専門実践教育訓練制度について目的に照らした運営を図っていく上で、取り分け専門職大学院に関し、社会的評価といったものが制度全体として必ずしも定着していない中で、当該講座の課程そのものが社会人のニーズに真に資するものとして活用されているかどうか、何らかの客観的指標の中で把握する必要があるのではないかという御指摘もいただきました。

 私ども事務局としても、文科省と御相談やいろいろ検討する中で、当該課程の社会人との関係での社会的評価を最も端的に表す客観的な指標ということになると、定員充足率というのがその代表的なものとして挙げられるのではないかという考え方です。その下で当面の基準の1つとして、専門職大学院について60%という定員充足率基準を設定しました。今回追加を検討している類型の中で、大学院の正規課程に関しては、専門職大学院と学校教育法上は区分されていますが、対象者層、教育内容等、非常に類似性の高いものということで、現行の3類型に係る要件との整合性を可能な限り尊重するという考え方の下で、大学院における正規課程については専門職大学院と同様に、定員充足率実績を要件として付加することが適切ではないかという考え方の下で、このような要件設定をさせていただいています。

 逆に申し上げますと、それ以外の課程類型、例えばサーティフェケイト(履修証明プログラム)については、そのような評価基準が必要ないのかどうかという議論も、ただいま委員から御指摘いただいたように、当然あり得るかと思っております。そういった基準設定が全く意味がないものと、私どもが考えているわけではありません。ただ、文科省などからいろいろな説明を聞く中で、履修証明プログラムについてはもともと機動的な設置・運営というのが1つのポイントです。

 定員そのものの設定に関しても、専門職大学院あるいは大学院正規課程のように、リジットに設定されているわけではないと理解をしています。したがって、こうした機動性を旨とした課程に関して、定員充足率に関し、厳格な基準を設けたとしても、定員そのものについて弾力的な取扱いをされてしまった場合に、余り意味がないものになってしまう。そういったことからしますと、履修証明プログラムに関しては、現行の職業実践専門課程などと同様の考え方で、当面は今申し上げた意味での就職あるいは在職(継続)率などを通じ、就職、中長期的キャリア形成に資するものかどうかを判断することが適切ではないかという考え方の下で、この度の基準の考え方の御説明です。

○小杉分科会長 この基準は、専門職大学院を指定するときに少しハードルを高くしたほうがいいという、ここでの議論の結果、充足率というものを入れていったという過程があったかと思います。大学院というのは特別で、普通の専門学校などよりちょっとハードルが高い。そういう意味で、進学する方が特定の人に偏ってしまうのではないかとか、いろいろな議論があったと思います。そこで大学院だけ、少し指定の基準を上げたという過去の経緯があったのではないかと思います。

○新谷委員 今、高橋委員が質問して答弁と説明を頂いて分かったのですが、「就職(継続)率」という言い方が、やはりしっくりこないのです。先ほど職業安定局の会議に出ていたのですが、普通、「継続」と言うと、就職して継続しているという、要するに定着率というイメージがするのです。今の説明だと、もともと被保険者資格がある在職者で、この講座を受けながらでも在職して、終了後もずっと在職している人の率ということなのですね。そういうイメージであれば「継続」の前に、「在職継続率」というような言葉を補ったほうが、よりイメージがつかめるのではないかと思いますので、検討いただきたいと思います。

○伊藤育成支援課長 承知いたしました。

○小杉分科会長 ほかにございますでしょうか。

○高倉委員 資料1-311ページに「検討会開催のイメージ」の1の検討事項の所に、「当面の重点として、情報通信技術分野」と記載があります。その後はどういった分野、民間資格をイメージされていて、どのようなスケジュール感で検討しようとしているのでしょうか。

○伊藤育成支援課長 現行の制度の中で、民間資格及びこの取得に資する教育訓練プログラムの実態把握が一定程度可能なものは、この一般教育訓練給付制度などに限定をされてしまいます。その中で把握し得る民間資格取得を目標とした講座のマジョリティーとしては情報通信技術分野があり、また一般的に考え、この専門実践教育訓練制度が目指す中長期キャリア形成への寄与等の観点からすると、有力な分野として考え得るのではないかという考え方の下で、今回この資料の中でも「当面の重点」として、この情報通信技術分野をまずは検討、ということで、お示ししているところです。

 逆に申し上げますと、この一般教育訓練給付制度以外の切り口で、この情報通信技術とは少し違う視点ということになるのかもしれませんが、真に中長期的キャリア形成に資する民間資格取得を目標とした教育訓練、それぞれ一定のボリュームがあるということが、何らかの端緒で確認されるとするならば、同じような形で専門的、技術的検討を行い、言わばその中でものになるという心証を得られたものについては、その検討成果も含めて、本分科会にお諮りすることはあり得るかと思っていますが、現時点でその具体的な端緒を持っているもの、有望なものとして私ども事務局が把握している範囲内では、この情報通信技術分野以外に、大きな塊としては見当たらないという意味で御説明申し上げているものです。本分科会も含めて、他の分野でも同様の観点から有望というものがございましたら、いろいろ御示唆も頂く中で、今般、段階的、継続的に検討していくということは当然考えられると思っております。

○高倉委員 例えば金融業界においてファイナンシャルプランナーのような、AFPの上級資格のCFPとか、流通業界や百貨店における認定眼鏡士やシューフィッターなどが非常に労働市場で評価されているという認識もあるものですから、そういう高く評価されている民間資格を具体的に加えていただくことを、是非検討いただきたいと思います。

○伊藤育成支援課長 承知いたしました。

○小杉分科会長 それはこれからということで受け止めていただければと思います。ほかにございますでしょうか。

○新谷委員 高倉委員が申し上げた民間資格について、資料1-311ページに検討会の開催イメージが書かれていまして、「検討する」とお答えを頂いたと私はお聞きしたのですが、それはどのタイミングで、どこの場で検討されるのでしょうか。これを見るとこの検討会のイメージは、「当面の重点として、情報通信分野を検討する」と書かれていて、今年の9月に1回目を開催し、年内に検討会の報告の取りまとめをすると書いてあるのですが、この中に私どもが申し上げたような、労働市場の中で評価されている民間資格についても検討すると理解していていいのですか。

○宮川職業能力開発局長 伊藤から御説明しましたように、まずは情報通信技術分野ということで検討させていただきます。検討会のメンバーもここに書いてありますように情報通信分野の方を入れて、そのほかに企業の人材育成の専門的知識のある方を入れて、まずは情報通信分野で検討いただいて、それの成果をまず今年度中に上げようというのがここに書いてあることです。

 高倉委員、新谷委員から御説明のあった今後のものについては、こういう検討会でやった成果とか経過とか、そういう経験を踏まえた上で、必要な体制を別途作って検討していくし、その検討のスタートは今回と同じように、この分科会にお諮りした上でやっていくというように考えております。

○小杉分科会長 そろそろこの議論を終わりにしたいと思います。当分科会として、雇用保険法第60条の21項に規定する厚生労働大臣が指定する教育訓練の指定基準の一部を改正する告示案要綱については妥当と認めるという旨を、私から労働政策審議会会長宛てに御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

(異議なし)

○小杉分科会長 ありがとうございます。事務局から報告文案の配布をお願いいたします。

(報告文案配布)

○小杉分科会長 お手元に配布された報告文案により、労働政策審議会会長宛てに報告することとしてよろしいでしょうか。

(異議なし)

○小杉分科会長 ありがとうございます。そのように報告させていただきます。

2番目の議題「求職者支援制度の今後の在り方について」に入ります。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

○松瀬就労支援企画官 資料216ページをお開きください。まず現状と課題について御説明いたします。雇用情勢は改善しており、受講者数は減少基調にございます。また、他方で求職者は訓練を受けるよりも早期就職を優先するといった傾向にあります。こうした中でも、求職者支援訓練を必要とする特定求職者のニーズを、潜在的なものも含めてしっかりと捉え直し、見直す必要があるのではないかといった問題意識を持っているところです。

 加えて、育児等でキャリアを中断した女性への支援、あるいは建設人材への対応等からも、この訓練の活用が図れないかということです。

 論点1の「訓練カリキュラムの在り方について」を御覧ください。1つ目の○です。求職者が早期就職を求める中にあって、この訓練カリキュラムがそれに資するものになっているか。2つ目が、育児でキャリアを中断した女性等のうち一定の就業経験、社会人スキルをお持ちの方々に、今の訓練カリキュラムが適当なものとなっているか。3つ目の○は、他方で、今なお離転職を繰り返す非正規労働者に、よりふさわしい訓練カリキュラムは考えられないか。その他、より就職につながるような方策はないかということです。

17ページです。2つ目の「女性の活躍促進等について」です。後ほど御紹介いたしますが、求職者支援訓練は女性の受講者が非常に多いという特徴がございます。こうした中で、母子家庭の母等に何か配慮ができないかという問題意識です。3つ目は、いまだに全国的に人手不足感が非常に強い建設分野について、現行のカリキュラムは適当か、あるいは何か新たな措置が考えられないかという問題意識です。4つ目は、「訓練実施機関の確保について」ということで、訓練実施機関の減少傾向が見られますが、これに対して何か手が打てないかという問題意識です。なるべく多くの御意見を頂ければと考えております。

 主な資料について簡単に御説明いたします。21ページをお開きください。このグラフはハローワークの求職者支援訓練の説明会に一旦足を運びながら、結果的には受けることを断念した方々のアンケート結果を抽出したものです。母数は少ないのですが、こういった回答傾向から、本来求職者支援訓練に来てほしい方々の心理的な隘路などが見て取れるのではないかということで載せたものです。圧倒的に、「訓練内容についていけるかどうか不安」という回答でした。続いて、「訓練期間が長い」「訓練を受けるよりも早く就職したい」等の回答が続いております。

22ページを御覧ください。これは訓練を受講し終えた方の属性を調べたものです。左の男性を御覧いただきますと、受講前の通算在職期間が20年以上あるいは10年以上という者を合わせますと、40%を超えている状況です。他方、就業経験なしあるいは1年未満といった者も全体の4分の1です。女性も若干の変動はございますが、同様に、社会人経験、就業経験をお持ちのグループと、そうでないグループが併存していることがお分かりいただけるかと思います。

26ページです。これはJILPTの調査からの資料です。求職者支援制度を利用して、もっとこうなればいいと思ったことはありませんかということに対する自由記述をJILPTにて分析した結果です。これを見ますと、赤書きにありますように、「授業の内容をより高度化してほしい」というグループがある一方、「授業内容をより簡単にしてほしい」というグループがあり、2つのグループに大きく分かれたということです。一つの支援訓練コースを受講していても、大きく2つのグループが存在するのではないかということです。

27ページは、各都道府県労働局が事業主に対してアンケート・ヒアリングを行ったものです。多くの事業主が社会人基礎力、すなわちマナー、接遇、仕事理解といった基本的なもの、我々は「社会人スキルと」呼んでおりますが、こういったものをしっかりと教授してほしいというニーズを非常に強く提起しているところです。

29ページです。これは基礎コースの在り方についての資料です。現在、基礎コースは最低でも3か月というコース設定ですが、その99%がパソコンスキルや文書作成、つまり、どこのオフィスでも通用するスキルだろうということで、そういったものをやっております。そこに書いてありますように、1か月あるいはそれ未満の期間であっても、これらの資格取得に到達する実力を養成することができる訓練コースがございます。昨今、早期就職を求めるニーズが非常に強くなっておりますので、期間の短い基礎コースの中でも、こういった訓練コースを認めてはどうかという問題意識です。

30ページです。ここから2つ目の論点についてです。基礎コース、実践コースともに、女性の受講者が非常に多いことがお分かりいただけます。31ページの右が女性の属性です。各棒グラフの上から2つ目が、「配偶者なし」「子供あり」ということで、若い層で言えばシングルマザーに該当する層ですが、ここが2割以上を占めていることがお分かりいただけると思います。女性が多く、かつその中でもシングルマザーが非常に多いわけです。これが受講者の一大特徴と言えるかと思います。32ページです。したがって、既に公共職業訓練(委託訓練)で実施している託児サービス付きの訓練といった配慮が考えられないかというような問題意識です。

34ページからは3つ目の論点の建設人材の対応についてです。いまだ建設人材が不足しているという職業安定業務統計の御紹介です。35ページは、震災特例措置として、青森、岩手、宮城、福島、茨城の5県で行っている技能講習のこれまでの実績を御紹介しております。

36ページです。これは公共訓練の委託訓練ですが、同じく震災に伴っての特例措置として、岩手県において総合オペレーション科を平成23年度から実施しております。どういうものかというと、右下に水色の表があります。単に技能講習を受けさせるだけではなく、例えばPC関連の学科あるいはスキルの授業を行ったり、関連法規の勉強をしたり、更には接遇、就職ガイダンスのような社会人スキル科目も盛り込んだ、総合的な科目になっているところです。これは定員充足率が8割をコンスタントに超えており、非常に受講者からの評判も高い。様々なことを学べるので集まりがいいということです。他方、就職率も7割超えということで、非常に良好です。この単価が1か月に10万円程度ということになっておりますので、建設人材に関して、1か月10万円というのが、1つの単価の目安になるのではないかということを御説明する資料です。

38ページです。折線グラフのうち黄緑については、分母が認定機関数、分子が申請機関数です。すなわち、これが1.0、横に赤い線を引いておりますが、ここに貼り付きますと、申請すると全てが認定されるという競争が働かない状態になっているということで、これは基礎コースですが、今のところ13県があります。紫の折線グラフは分母が計画定員数、分子が認定定員数ということで、定員ベースでの分母と分子を比較したものですが、地方によっては当初立てた計画を大きく割り込んで、認定できていない状況が見て取れます。

39ページからは実践コースです。黄緑の折線グラフが1.0に貼り付く数が増えて、38都道府県になっております。紫の折線グラフは基礎コースよりも、更に下のほうに振れていることがお分かりいただけるかと思います。

4041ページをお開きください。これは昨年4月から適用しました雇用保険適用就職率の状況で、御案内のとおり、2回基準を下回ると欠格に引っ掛かってきます。40ページが基礎コース、41ページが実践コースということで、赤は既に1回基準を下回っているものです。雇用保険適用就職率を基準として適用するという思想は正しいわけですが、適用の仕方については、ひとえに我々の検討が甘かったところかもしれませんが、この適用の仕方について改めて見直しの機会を与えていただきたいという御提案です。

○小杉分科会長 ただいまの説明について、御質問、御意見をお願いいたします。

○河本委員 早めに退席いたしますので、先に意見を述べさせていただきます。まず、求職者支援制度の適用について、求職支援制度を使われる方が減っていることをどう捉えるかという課題はあるとは思っていますが、少しでも早く就職する方をサポートしていくという観点で今示されている論点から意見を述べたいと思います。

1点目が、訓練カリキュラムの在り方のところです。社会人スキル科目は不要、余り効果的でないといった意見も出ているのですが、お伺いしたところによると、専門的な講師の方ではなく訓練をやられる方が同時に行っているということもお伺いいたしました。そういった意味では、このカリキュラムをより効果的にするために専門スキルを持っているような人材育成会社といった、専門とするような機関にカリキュラムを分けて、委託をしていくような方法を考えられるのも効果的ではないかと思います。全体のカリキュラムが1つになって、教える機関も1つになっているのではなくて、細分化して、より専門的な所にやっていただくとか、そのカリキュラムを履習する、履習しないというものを選択していくようなことを考えてはどうかと思っております。

 あと女性の活躍推進のところで、「女性が非常に多い」という御指摘がありましたが、託児所を確保するのは非常に有効な活用だと思います。一方では、今は在宅で学習する仕組み、いろいろなスキルを身に付ける方法も進んでいるのではないかと思います。そういったeラーニングによるカリキュラムといったものを活用していくことも、よりこういった訓練を受けていく方法として有効なのではないかということを考えております。

○松瀬就労支援企画官 例えば24ページは既に受講した者からのアンケートです。多くの者が、基本的に社会人スキルである自己理解、仕事理解、マナーなどを高く評価しております。他方、25ページのように、年代層を見ると社会人経験のある方々だと思うのですが、こういった方々にとっては若者と一緒に受けるのは時間の無駄だということです。大多数は社会人スキルを評価しているわけです。また、27ページにあるように、求人事業所からは、「社会人スキルはしっかり教えていただきたい」という意見がありますので、社会人スキル科目が必要である層については、社会人スキルを強化しなくてはいけないと思っております。

2つ目の論点についてです。例えば在宅でも学べるeラーニングについては、昨今様々な方面から御提案、御指摘がありますので、我々としても外郭団体において、最近研究会を立ち上げて、公共訓練での実現可能性について検討を始めたところですので、その成果を待って考えていきたいと思っております。

○河本委員 社会人スキルのところはどういった経験を持たれているのか、10年、20年とかなり在職期間の長い方は何を必要とされているのかということも考えてカリキュラムを組んでいく必要があるのではないかということで、必要ないというよりも、よりマッチしたものと、その中身を高度化していく必要があるという観点で申し上げました。

○小杉分科会長 ほかにございますか。

○諏訪委員 今のと関連しているのですが、22ページの訓練カリキュラムの在り方についてです。かなり在職期間が長い方が訓練を受けられているということで、今後の在り方として、女性も多いという観点から、起業、開業、独立というのも視野に入れて、カリキュラムを組んだらどうかと思いました。

○松瀬就労支援企画官 昨年度から適用した雇用保険適用就職率は雇用保険の被保険者になるだけではなくて、その適用事業所の事業者になることも含まれております。そちらでは対応しておるのですが、訓練カリキュラムそのものについては御意見を頂きましたので、これから検討の参考にしたいと思います。

○田口委員 資料236ページの「人手不足分野における訓練コースの設定についてマル3」、これは岩手県において特例的に実施されているということです。非常に定着率も就職率も高いということです。建設業の人材不足に対して、非常に的確な措置を取っていただいていると思っておりますが、これは今後実績が積み重なった場合、全国的、特に地方の人手不足が激しいものですから、建設業に人材を迎え入れるために、一般的な特例措置を外していただいて、制度的な設計として組み入れていただくことはできないのかどうか。そういう方向性のお考えはおありなのかどうか、お伺いします。

○松瀬就労支援企画官 すみません、慌てておりまして、説明を省いておりました。現在は青森、岩手等でやっているのですが、そこにとどまらずに全国的に建設人材育成のための訓練コースの枠を設けてはどうか。その際に、現行の6万円の枠では業者が乗ってこないのではないかということで、単価の1つの目安として、36ページをお示ししたところです。

37ページを御覧ください。これは公共訓練(委託訓練)に関してですが、平成26年度まで、各都道府県に対して単価6万円ということでお願いしていたところ、平成27年度は10万円ということでお示ししました。まだ計画段階ですが、10万円であれば多くの業者に参入していただけるのではないかというグラフです。やるとすれば、この辺りを目安にしたいと考えております。

○小杉分科会長 ほかに御意見などはございますか。

○新谷委員 各論の論議にも一部入っているのですが、求職者支援制度の在り方についての検討を始めるということですが、この求職者支援制度自体は我が国の雇用におけるセーフティネットを重層化するということで、私ども労働側からも創設に向けて要望し、実現した制度として重要な制度だと思っております。

 その上で、制度の見直しによって本当にセーフティネットが強化されることが大事だと思っているのですが、今回16ページに論点を示していただいたとおり、確かに多岐にわたる論点があると思っています。

 これも法改正があるのかないのかということとも絡んでくると思いますが、この多岐な論点をどのようなタイミングで、何回ぐらいこの分科会で論議して、取りまとめをいつにするのかによって、各回の論議の密度なども変わってくると思います。そういった検討のスケジュール感をまずお示しいただけないかなと思います。

○松瀬就労支援企画官 これは一義的には委員の皆様の審議に委ねるものなのですが、我々としましては、一応の目安として年末までにある程度の方向、報告書の案までを出していただき、年度末までに省令改正の手続を終わるという考えでやっております。

○新谷委員 ということは、もう9月ですから、毎月にどれぐらいの頻度で開催されるのか分かりませんが、回数なり、あるいは省令という話だったので、法改正事項ではなくて省令ベースでの改正の範囲でやるという理解なのか、回数などを教えていただきたいのが1点です。

 もう1つは、これから論議するに当たって資料を提示いただいているのですが、この制度を立体的に実態を把握しないといけないと思っております。しかし、今日頂いているデータは、申し訳ないのですが継ぎはぎのデータなのです。JILPTの資料であったり、皆さんのところの局の課長を集めたヒアリングであったり、ハローワークでの聴き取りであったりというデータです。お示しいただいているのは単純集計ばかりなので、前職の被保険者期間などは書いてありますが、例えば雇用形態別にはどうなっているのかとか、本日の資料の中にも「非正規での雇用を繰り返しされている層をどうするか」などありますが、それはどこからデータを拾ってくれば見られるのかとか。この制度が始まって以降、JILPT1回調査をしましたが、もう少し立体的にここの利用者のイメージがつかめるデータを、継ぎはぎではないデータをお示しいただいたほうが、限られた回数の中で論議を深めるという意味では大事だと思うので、もう少しイメージのつかめるデータの提示をお願いします。

○松瀬就労支援企画官 1つ目ですが、委員の御指摘のとおり省令の改正を予定しており、年末までにある程度の方向を出していただきたいと思っており、そこまでに4回程度ということです。

2つ目ですが、JILPTはこれまでに大きく2回の調査をやっており、2つ目のものの公表が本年の10月ぐらいということです。それを次回にはお示しすることができるのではないかと考えています。

 また、委員が御指摘のように、なるべく立体的にデータをお示しできるように工夫を重ねていきたいと思います。

○小杉分科会長 ほかにいかがでしょうか。

○島村委員 この制度自体は非常にいいものなので反対するという立場ではなく、続けていく上での質問です。この負担率についてですが、平成23年度に国庫負担と労使負担の比率が変わって、3年後に見直しをすることになっている中で、今回の頂いた資料には、それが論点としては上がっていません。今後の検討をしていく中で負担率の変更について、元に戻す、あるいはそのままいくという論点があるのかどうかということが、まず1つの質問です。

○松瀬就労支援企画官 3ページの資料だと思いますが、この施行後3年を目途として見直す規定を踏まえた見直しが7ページです。昨年41日から施行された分の改正になっています。国庫負担率は変わっておらずに27.5のままです。

○島村委員 国庫負担率については、今後論点として、元に戻す可能性というような話合いはあるのですか。

○松瀬就労支援企画官 これから幾つも見直しはあると思うのですが、少なくとも今般の見直しは、制度発足当初と状況が全く変わってきておりますので、こうしたときに今一度しっかりと特定求職者のニーズを捉えようという見直しですので、今回は入っておりません。

○島村委員 先ほどの質問に関連しますが、資料の3031ページを見ると、女性の受講者が非常に増えており、30代以上のシングルマザーの受講率も2割を超えています。雇用保険の対象外の方たちの受講が非常に増えており、労使負担のパーセンテージが多い気がいたします。

 今後の見直しの論点ですが、これだけシングルマザーの受講率が増えている以上は、社会保障政策として、雇用保険の枠組みで行うよりも国の政策としてやっていかなければいけないのではないかという気がしますので、その辺は今後の会議の中で論点に入れていただきますようお願いいたします。

○松瀬就労支援企画官 これは、労使双方の皆様から、かねてより御指摘いただいているところです。当然我々も継続的な課題と認識しております。

○小杉分科会長 ほかにはいかがですか。高橋委員どうぞ。

○高橋()委員 16ページから、見直しの論点が4点あります。この論点の1つとして、次の内容を御考慮いただければと思います。求職者支援制度というのは、そもそもハローワークに来る人を前提にしています。そこから2つあります。ハローワークに来ない人たちをどうするかという話です。ハローワークにも来ないような方たちの潜在的なニーズがどのようなものであるのか、そういうことの把握が必要ではないかと思います。

 もう1つも似たような話ですけれども、現在、失業期間1年以上の完全失業者が75万人もいて、ハローワークとの接点もなくなってしまった人がいます。そういう人たちに対して、どのようにアプローチしていくのか、呼びかけをしていくのか。従来の広報紙とか新聞とかいろいろあるのでしょうけれども、そういうやり方で果たして効果的な情報提供ができるのかどうか心配があります。的確な情報提供がなかなかできない、できなかった層に対して、どのように掘り起こしをしていくのか。そういう人たちを求職者支援制度のほうに誘導していくのかというやり方の問題についても、この論点の1つに加えていただければと思います。

○松瀬就労支援企画官 委員御指摘の点ですけれども、本当にこの制度を必要としている潜在的な求職者に届いているのかというのは、かねてより御指摘を頂いています。我々としても、各都道府県労働局に対して、単にハローワーク庁舎の中だけではなくて外部、公共の施設に出て広報をやる。あるいは様々な媒体、単に市町村の広報紙だけではなくて、もっと様々なメディア・媒体を使うようにという指示をしています。全国から好事例が集まってきています。それを横展開していき、ハローワーク外における周知広報の強化には徐々に努めています。当然継続的な課題とは思っていますので、引き続き努力してまいりたいと思います。

○新谷委員 今のは大事な所です。本日の資料では、受講者がどんどん減ってきているという分析をしています。それは、雇用情勢が改善してきたから、ハローワークに来る方が減ったという説明です。世の中にこの求職者支援制度が本当に周知されているのかと考えたときに、私事で言えば私の妻はこの制度を全然知りません。本当にこれが対象層に、先ほど申し上げたような長期失業者のような、本当に手を差し伸べて、来ていただきたい人に周知できていないのではないかという懸念があります。それは、どうやって測るかというと、多分世論調査などで測らないと、ハローワークで幾ら配布したって、対象者はもともとそこで絞り込まれているわけです。そこを把握しないと、本当に必要な人に光が当たらないのではないかと思うのです。そこの現実の把握方法を踏まえて、そこにどうやってアプローチするかを考えないといけないのではないかというのが指摘です。

 これは議事録が残るので申し上げておいたほうがいいと思うのです。先ほど島村委員が指摘された、シングルマザーに対して、社会保障でのカバーも必要ではないかという御発言に対して事務局が、それは労使から従来より指摘があったという答弁がありました。しかし、これまでそんなことは全然論議していないです。我々が論議してきたのは、求職者支援訓練制度の財源は一般財源でやるべきでないかというのが労使の共通認識だったのです。特定の層だけ社会保障でカバーしろなどということは、労使の共通認識にはなっておりません。そこの答弁は間違っていると思いますので、修正していただきたいと思います。

○松瀬就労支援企画官 まず、それは修正いたします。申し訳ございませんでした。1点目の世論調査については、あらかじめ御指摘を把握しておりましたので、安定局と併せて、単に我々の対象の求職者ではなくて、世間一般に対する調査ができるかということの検討を始めています。

○板垣委員 訓練カリキュラムの在り方について伺います。資料221ページに、「求職者支援訓練の受講に踏み切れない理由」の3番目に、「希望する職種の訓練がない」という回答があります。求職者が、具体的にどのような職種の訓練を希望しているのかについては、どのような把握がされているのかを教えてください。

○松瀬就労支援企画官 これは、求職者支援訓練制度発足当初からですが、求職者あるいは求人者のニーズについては、ハローワークが窓口で、求職者から把握した情報、あるいは求人者から把握した情報、更にはもうちょっと網羅的に把握するために、求人者・求職者に対するアンケート調査を行います。これを、国の認定事務を実際に行っているJEEDの各地方支部に伝達します。各都道府県ごとに設置している訓練協議会、実際に訓練の枠を決めるところですが、ここで検討の参考資料ということで提供しています。

○板垣委員 2013年のJILPTの調査結果を見ると、受講する訓練分野で就職を希望していた者は就職する割合が高く、就職するまで早く正社員として就職をしていたという結果が出ています。すなわち、求職者が希望する職種の訓練を受講できるようにすることが、質の高い就職につながるという点については、極めて重要だと認識しています。求職者が、どのような職種での就職を希望しているのかを把握するための調査を、より丁寧に行うことが大切だと思いますし、その調査結果に基づく、求職者が希望する職種の訓練を行っていく流れを作るのが非常に大切だと考えています。

 求職者の希望はもちろん尊重するべきですが、求職者の希望と労働市場における求人状況のマッチングなど、キャリア・コンサルティングを通じた訓練カリキュラムの設定を行うべきであると考えておりますので、意見として申し上げます。

○小杉分科会長 それは、受け止めていただいていいですか。

○松瀬就労支援企画官 御意見として受け止めたいと思います。現在の求職者支援制度では、キャリア・コンサルティングは必ず前置するという仕組みになっていて、その中で仮に地域の労働市場に全く合わないような希望を出された場合には、そのキャリア・コンサルティングの中で仕事理解、自己理解を促していくことになろうかと思います。引き続き努めてまいりたいと思います。

○高倉委員 35ページの、震災特例措置の設定に対する所についてです。この訓練期間は10日から1か月以内という短期間の研修ということです。我々の所にも、他の地方から同様の期間、短期間での研修を望むという声が入っていますので、その対象を拡大することはできないのか。それから、ここの訓練内容なのですけれども、ここに記載の個々の技能講習だけではなくて、多能工化を目指すような場合に、幾つかのものを一緒に受けるようなことができないのかを少し検討していただきたい。

 訓練期間が短期間ということになると、次回受講できるまでの期間、更には職業訓練受講給付金を受給できる期間、その双方のインターバル期間を少し短縮するような工夫はできないのかという問題提起をしたいと思います。職業訓練受講給付金の在り方は雇用保険部会の所管かもしれませんけれども、問題提起をさせていただきます。求職者に安心して支援訓練を受けてもらうという観点からすれば、訓練メニューとともに、職業訓練受講給付金のセットで考えていくほうがいいのだろうと思います。現行制度では、6年を経過しない場合には不支給になるという決まりがありますので、このインターバル期間の6年間を短縮することはできないのか。 少なくとも訓練修了後に一旦就職した者が倒産や解雇、いわゆる非自発的な離職を余儀なくされた人に限って、例えばインターバル期間を3年に短縮するとか、今回のような短期間の訓練であれば、なお更そういうインターバルの調整をするようなことは検討すべきではないでしょうか。

○松瀬就労支援企画官 最初の御指摘ですけれども、短期間でも受けられるような柔軟なもの、逆に多能工のような、よりバラエティに富んだようなものに対応できるような期間の設定というのも、御指摘を踏まえて我々も考えていきたいと思います。

2つ目の給付金との関係ですけれども、これは今御指摘を頂きましたので、職業安定局とも問題を共有し、何ができるかについては検討させていただきます。

○高橋()委員 何らかの制度の見直しをする際には、根幹となる考え方に基づいて行っていくべきではないかと思います。求職者支援制度の資料を見ると、様々な方々のニーズ等を聞いた関連のデータ等が用意されています。この制度を、そういう形でいろいろなニーズを聞いて、どんどん拡充していくことが果たして本当に効果的な制度となり得るのかと言うと、必ずしもそうでないかもしれないと考えています。

 この制度は、あくまでも早期就職につなげていくことが大事です。訓練カリキュラムの在り方等を考えるに当たって、ニーズを踏まえることは必要だと思いますが、就職率が高いのはどのような訓練なのかといった分析をしっかりしていく必要もあると思います。残念ながら本日の資料の中には、就職率に紐付いた資料等が出されていないので、そうした資料も出していただき、就職率が高いのはなぜなのか、その要因等を分析して、就職につながりやすい制度にしていくことを基本にしていくべきではないかと思います。次回、データ等を御提出いただければと思います。

○松瀬就労支援企画官 当然就職率等がその姿勢によって変わらないように、そういうデータをベースに検討することが重要だということは、我々も十分に認識しています。我々も、ニーズが全てだとは思っていません。ただし、本来受けてほしい方々、潜在的な特定求職者が、もし何らかの心理的なハードルを感じて受けないとすれば、それを考慮するのは見直しの1つの論点であろうということでお示ししたまでで、必ずしもニーズが全てだとは思っていません。

 就職率が高い職種を中心に考えるのは当然だと思っています。他方、この制度が当初対象として念頭に置いていた非正規労働者の方々にとってふさわしいものとなっているかという、単に数値ではなくて、質的なものも含めて考えていきたいと思います。もちろん就職率が重要であるという認識は、委員御指摘のとおりだと思います。

○小杉分科会長 この議題はここまでとしたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○新谷委員 高橋委員がおっしゃったとおりだと思いますし、今の答弁もそのとおりだと思います。先ほど板垣委員から申し上げたように、非正規の方々が、こういうキャリアを描きたい、こういう仕事に就きたいという本人の意思と、そういう職業に関する就職率の現実とをマッチングさせることが大事です。そのためにキャリア・コンサルティングが間に入って本人と話をして、受講につなげていく。そのための訓練講座を、ニーズと就職率との関係から見た適切なカリキュラムを準備しておくというのが、この求職者支援訓練制度を動かしていくためには重要だと思います。それは、全然異論はありませんので、そういう方向でこれは検討していけばいいと思います。

 もう1つ気になるのは、今回の資料で示していただいている訓練実施機関の確保の問題です。これは非常に悩ましい問題で、実際に制度を作ったとしても、訓練をやっていただく機関が全国にないと、今回も出されているように、地方においてはその不足感、撤退が深刻であるということ、これにも目を向けないといけない現実だと思います。今回の資料は、認定された機関の数だけが出ています。高齢・障害・求職者雇用支援機構のほうで開拓をやっていただいて、努力していただいていると思います。これは潜在的な訓練実施機関の数は全然データとして入っていません。今回問題となっている山口県が名指しで出ています。山口県は3件しか専門実践教育訓練の実施機関がないということですが、山口県にはもともと訓練実施機関そのものがないのかどうか。前には岐阜県が、愛知県との関係で訓練実施機関が少ないという分析がされていて、そうかもしれないと思いました。

 分母である訓練実施機関の数、要するに対象となり得る訓練実施機関がどのぐらいあって、それの開拓努力がどうなっていてというところもこれはセットで考えないと、今認定されている数だけで論議はできないのではないかと思います。

 就職率との関係でも山口県が出てきています。沖縄県は、かなり厳しい雇用状況の中にあります。ところが、訓練実施機関の就職率データを見ると結構健闘しています。山口県は、沖縄県に比べて就職率は良いと思うのです。しかし、この訓練だけ取ってみると、山口県は就職率がうまくいっていない。それは、どこかに問題があるのだろうと。要するに、それは環境の問題ではなくて、訓練実施機関に問題があるのではないかと推測されます。訓練実施機関のどこがいけないのか、厳しい沖縄県はうまく乗り越えているのに、山口県の訓練実施機関はなぜそれを超えられなかったのかという分析をすべきです。現行の基準が厳しいから一律的に緩めるという論議ではなくて、今うまくいっていない所の分析をもうちょっと詳細にやるべきです。駄目な所があるから一律全部基準を緩めましょうという論議はちょっと乱暴ではないかと思います。そういう前提で論議をしていただきたいと思います。

○小杉分科会長 それは、受け止めていただきます。ほかにないようでしたら、この議題はここまでとさせていただきます。3番目の議題は、「平成28年度予算概算要求の概要について」です。内容の説明を事務局からお願いします。

○宮下総務課調査官 資料3を御覧ください。1ページは「平成28年度概算要求総括表」です。概算要求額は、総額で1,781億円で、対前年度12億円の減額になっています。内訳は、一般会計の要求額が118億円、対前年度4億円の増額です。主な増額の要因は、外国人技能実習機構の運営に係る経費によるものです。昨年度は、年度途中から予算を計上しておりましたが、平成28年度は年間予算を計上したため増額となっています。

 労働保険特別会計については、労災勘定の要求額は15億円で、対前年度8億円の増額となっています。主な増額の要因は、東京障害者校の建て替えに要する経費の計上によるものです。雇用勘定は1,648億円で、対前年度24億円の減額です。主な減額要因は、キャリア形成促進助成金の26億円の減額です。キャリア形成助成金については、執行実績が低い訓練コースについての減額を行う一方、日本再興戦略を踏まえ、雇用型の訓練等について増額を行っています。

2ページは、予算要求の主な施策です。「『日本再興戦略』改定2015」を踏まえて3本の柱、第1の柱は「未来を支える人材力の強化」、第2の柱は「『全員参加の社会』の実現加速」、第3の柱は「人材育成を通じた国際協力の推進」ということで要求しています。

 具体的な中身は3ページ以降です。第1の大きな柱である「未来を支える人材力の強化」として256億円。このうち1番の「職業人生を通じた労働者のキャリア形成支援」では、労働者のキャリア形成における「気づき」を支援するため、職業生活の節目において定期的にキャリア・コンサルティングを行う「セルフ・キャリアドック」の導入支援等を行うほか、人材育成の課題を踏まえた実践的な職業訓練の実施を推進するため、座学と実習を組み合わせた雇用型訓練を行う事業主等への支援などのための経費として163億円を計上して、83億円の増額となっています。

2番目は、「産業界で活用される実践的な職業能力評価制度の構築等」です。対人サービス分野を中心とした技能検定の開発の推進や、社内検定の普及を図るための支援のほか、技能検定について、人材ニーズに応じた職種・作業の設定・見直し、若年者が技能検定を受検しやすい環境整備等に取り組むために25億円を計上しています。

4ページで3番の「建設技能労働者の人材育成強化」です。人手不足が顕著な建設労働者の人材育成を強化するため、訓練から就職まで一貫して支援を行う事業について、対象職種を拡充するということで9.2億円を計上しています。

4番目は、「地方創生に向けた取組の推進」です。企業や地域の多様なニーズに対応した人材育成プログラムの開発等を支援する、地域創生人材育成事業について、地域数を9都道府県から16都道府県に拡充するなどにより60億円を計上しており、29億円の増額となっています。

 第2の大きな柱である、「『全員参加の社会』の実現加速」では、1,289億円を計上しています。1番の「女性の活躍促進・ひとり親に対する就業対策の強化」では、育児等で離職した女性の再就職が円滑に進むよう、求職者支援制度訓練において、育児等と両立しやすい短時間訓練コースの新設、託児サービス付き訓練コースを設けるなどのために8.4億円を計上しています。

2番目の、「若者の活躍促進」として、(1)ニート等の職業的自立への支援では、地域若者サポートステーションの経費を39億円。

3番目の、「障害者の職業能力開発支援の推進」では、求職障害者の増加に対応した、必要な訓練機会を確保する費用として53億円。

4番目の、「非正規雇用労働者の人材育成の推進」では、訓練の実施を通じた正規雇用労働者化を推進するためのキャリアアップ助成金などの費用として82億円を計上しており、対前年度34億円の増額になっています。

5番目の、「公的職業訓練等によるセーフティネットの確保」では、安定した就職の実現につなげるため、地域ニーズに対応した公共職業訓練や、求職者支援訓練を実施する費用として1,110億円を計上し、対前年度24億円の減額になっています。主な削減要因は、求職者支援訓練について、執行実績を踏まえ、訓練対象人員を54,000人から38,000人に削減したことによる減額です。

6ページで第3の大きな柱である、「人材育成を通じた国際協力の推進」では37億円を計上しています。このうち1番の「技能実習制度の適正かつ円滑な推進」では、冒頭に触れた技能実習法が成立した場合に、新たな技能実習制度を円滑に推進するための技能実習機構の費用として35億円を計上しています。一般会計、特別会計を合わせて20億円の増額になっています。以上です。

○小杉分科会長 ただいまの説明について、御質問、御意見をお伺いします。

○新谷委員 政府の今年版の成長戦略「『日本再興戦略』改定2015」でもかなりの文字数を費やして、職業能力開発について記載されていました。非常に重要なことだと思いますし、今回の概算要求の中身についても、雇用型訓練等々についての言及をして予算を付けているということで、非常に評価をしたいと思います。ただ、昨年との比較で見ると、今回示していただいている資料31ページは、予算額との対比で、概算要求の額が書かれていて、119億円弱のマイナスになっています。概算ベースで見ると、概算段階どうしの比較では、昨年から170億円減額した概算要求になっています。意気込みとしては、成長戦略を見ても、職業能力開発を見ても、政府としては前向きなことを考えているのかと思ったら、概算ベース同士で見ると、大幅な減額になっているのはどのように考えているのかを説明してください。

○吉永総務課長 予算としては、キャリア形成促進助成金についてかなり積んできましたが、実績との乖離が少々あるということで、一般型訓練の部分について大分抑制したことが、予算額の減少になっています。今回の予算については、執行状況を見極めつつ、必要な経費については十分確保できたのではないかと考えます。

○宮川職業能力開発局長 キャリア形成促進助成金については、政策課題についていろいろなコースがあります。そのコースの中には執行率が余りよくない所、まあまあの所といろいろあります。今回の成長戦略を踏まえ、政策課題的に取り組まなければならないものについては厚めに持っていき、執行率が余りよくない所については必要な減額なども行い、その差し引き計算の中で、調査官の説明にあったような結果になったと私どもは理解しています。

○新谷委員 分かりました。必要な施策については、十分な予算を獲得していただきたいと思います。この概算要求は、これから財務当局との折衝が始まると思います。是非十分な必要な金額を獲得していただきたいということをお願いしておきます。

○小杉分科会長 ほかにはいかがですか。

○三村委員 3ページの「職業人生を通じた労働者のキャリア形成支援」の1行目に「気づき」を、キャリア形成の上で育成する、支援をすると書かれています。「気づき」は、ある意味ではキャリア形成上の自己理解を指すかと思います。これまでも主張させていただいておりますが、こうした自己理解の基盤的取組みを始める時期は学校生活からです。

 先ほど来、ハローワークへ顔を出さない特定求職者をどうするか、訓練カリキュラムに付いていけないから不安であるという人たちのキャリア形成を行う時期としては、やはり学校生活からであると考えています。

 顕在化した問題を取り上げていますけれども、働く人たちが、自己理解を通したキャリア形成を早い時期に進めていく条件づくりが重要かと思われます。文部科学省のキャリア教育が先行するかもしれませんが、厚生労働省でもそれを支援する方向で、強力に盛り込んでいただければと思います。キャリア教育専門人材育成事業等も継続していただきたいと思います。

 子供たちの、学校生活と職業生活との接点としては、中学校の職場体験があります。これも体験を通した自己理解の重要な機会です。現在、その職場体験の実施日数が事業所の理解を得ることが難しく、減っている状況です。事業所が、中学の職場体験を支援できるシステム構築など厚生労働省側から取り組むことはできませんでしょうか。そういう形で、早い時期からのキャリア形成支援への配慮も予算に盛り込んでいただければと思います。これは要望です。

○吉永総務課長 特に、学生段階からの若い方についての、様々な支援の重要性については、私どもと職業安定局で共有して対応しています。先般御審議いただきました、若者雇用促進法の関係の中には、正に学校教育との連携、中退者対策、若い方の就職促進などが入っています。私どもの関係で言うとキャリア・コンサルタント制度を法制化するということと書いてありますが、こういう制度をいかに普及させていくかということで、学校段階でもキャリア・コンサルタントを使っていただくとか、ひとり親対策の中でも使っていただくとか、ジョブ・カードを活用していただくとか、そういうもろもろの施策を行っています。若者雇用促進法はまだ成立していなくて、本会議を待っている状況ですが、そういう施策の中で、三村先生がおっしゃったようなものが、具体的なサポートとして届くような実際の施策の展開を図っていきたいと考えています。

○三村委員 よろしくお願いします。

○小杉分科会長 よろしいでしょうか。ほかにないようでしたら、この議題はここまでとさせていただきます。最後に「その他」ということですが、委員の皆様から何かありますか。

(特に発言なし)

○小杉分科会長 特にないようでしたら、本日の議論は以上とさせていただきます。次回の日程については、改めて事務局から連絡させていただきます。本日の議事録署名人として、労働者側は新谷委員、使用者側は島村委員にお願いいたします。本日はこれで終了いたします。御協力をありがとうございました。


(了)

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