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2015年9月7日 新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会(第1回)
○日時
平成27年9月7日(月) 16:00~18:00
○場所
中央合同庁舎4号館1208特別会議室
○出席者
委員
松原委員 | 秋山委員 | 泉谷委員 | 磯谷委員 |
井上委員 | 岡井委員 | 奥山委員 | 加賀美委員 |
加藤委員 | 木ノ内委員 | 草間委員 | 笹井委員 |
佐藤委員 | 塩田委員 | 菅野委員 | 辰田委員 |
中板委員 | 西澤委員 | 浜田委員 | 平田委員 |
藤川委員 | 藤林委員 | 藤平委員 | 卜蔵委員 |
星委員 | 松本委員 | 武藤委員 | 山田委員 |
オブザーバー
法務省 |
文部科学省 |
警察庁 |
厚生労働省
塩崎厚生労働大臣 | 安藤雇用均等・児童家庭局長 |
木下大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭、少子化対策担当) | 古川総務課長 |
大隈家庭福祉課長 | 田村虐待防止対策室長 |
小松虐待防止対策室長補佐 | 芦田虐待防止対策室長補佐 |
大津総務課長補佐 | 寺澤家庭福祉課長補佐 |
○議題
(1)委員の紹介
(2)委員長の選任
(3)委員会の運営等について
(4)児童虐待防止対策強化プロジェクト(施策の方向性)の報告等
(5)子ども家庭福祉の基本理念等について意見交換
(6)その他連絡事項等
○議事
○小松室長補佐 定刻となりましたので、ただいまから第1回「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
なお、本日岩佐委員、作本委員、平井委員からは御欠席の御連絡をいただいております。
また、佐藤委員からは、若干遅くなるという御連絡をいただいております。
初めに、委員会の運営に当たり、委員の皆様へお願いがございます。
視覚、聴覚障害をお持ちの方などへ情報保護の観点から御発言等をされる場合には、発言者は挙手をする。挙手をした発言者に対し委員長から指名をする。指名を受けた発言者は、氏名を名乗ってから発言するよう、御協力をお願いいたします。
では、開会の御挨拶を塩崎厚生労働省大臣よりお願いいたします。
○塩崎厚生労働大臣 厚生労働大臣の塩崎恭久でございます。
第1回の「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」ということで、長い名前でありますけれども、お集まりをいただきまして誠にありがとうございます。先生方には何かとお忙しい中のやりくりをしていただいて本当にありがとうございます。また、日頃から子どもや家庭を取り巻くさまざまな課題解決に向けて御努力をいただいておりますことに、改めて感謝を申し上げたいと思います。
さて、社会の変化に伴って子どもや家庭を取り巻く環境は大きく変化をしつつあります。安倍総理からは、こうした状況を踏まえて子どもの将来が生まれ育った環境によって左右されないことが大事であって、そういう厳しい状況に置かれているひとり親家庭あるいは多子家庭への支援の充実、また、社会的養護の推進及び児童虐待防止対策の強化に向けた政策パッケージを取りまとめて、年末までに策定をするようにという指示を受けているところでございます。
さらに、この政策パッケージの方向性につきましては、8月28日に総理出席のもとで官邸において第3回「子どもの貧困対策会議」が開催されました。そこにおきましてこの方向性について取りまとめが行われたわけでございまして、その場で私からも厚生労働省がしっかりこの政策パッケージを策定すること、さらには新たな子ども家庭福祉のあり方についての検討を速やかに開始し、次期通常国会に児童福祉法等の改正案の提出を目指すということを申し上げたところでございまして、まさにその大事なお役を皆様方にお願いをしようということでございます。
子どもと家庭をめぐる状況が多様化、そして複雑化をする中で、従来の制度や枠組みのままで対応していくのでは真の問題解決が困難であって、現場で対応に当たる方々も燃え尽き症候群に陥りぎみだということを伺っているわけでございます。もちろんこうした厳しい現実を政府の政策や法律だけで変えることもできないわけでございまして、また、制度を変えるにしても予算も時間も必要でございます。さらに最も重要なことは、制度を担う専門能力を有する人材を育成することではないかと思っております。
皆様方が懸念をされることも多々あろうかと思いますけれども、何よりも子ども家庭福祉の新たなあるべき姿を示して、社会全体で共有をし、そして、そのあるべき姿に向かって改めて動き出すということこそが今、求められているのではないかと思っているところでございます。
全ての子どもは適切な養育を受け、健全に育つ権利があって、その自立が保障されるべきという理念を明確に法律に位置付けたいと思っております。乳幼児を含めて自らの権利の主張ができない全ての子どもたちにかわって、その声を発するのが児童福祉法等の法令であって、そして制度やそれを担う人材ではないかと思っております。
虐待やいじめによって命すら奪われることが頻発する昨今の状況を正面から捉えて、子どもと家族が抱えている問題に的確に対応できるかどうかという観点から、現行制度を抜本的に見直して、国の宝であり、日本の未来を背負う全ての子どもたちをより豊かに育むことができるような、よりよい制度にしてまいりたいと思っているところでございます。
そのためにも新たな子ども家庭福祉の構築に際して、改めて国、都道府県、市町村、この役割と責任の分担を再整理、明確化して、また、民間とのパートナーシップと連携を進めて、官民の総力をあげて子どもと家庭を支えてまいりたいと思っているところでございます。
さらに、特別養子縁組や里親委託など、愛着形成重視を含む家庭的養護の一層の充実も重要な検討課題ではないかと考えております。
本日、こうして新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会を立ち上げさせていただきましたが、委員の皆様方のほとんどが8月までの児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会のメンバーでもございまして、精力的に御議論をいただいてまいりました。今般、報告書の取りまとめをいただいたわけでございますけれども、これらの議論を十分踏まえつつ、引き続き新たな子ども家庭福祉のあり方について御議論を賜りたいと思います。
本日、第1回委員会では、新たな子ども家庭福祉の基本理念あるいは定義、本委員会の今後の議論の枠組み、検討事項等について皆様方から御自由な御意見を賜ることになると聞いているわけでございます。皆様方には今後御議論を重ねていただき、年末までには皆様方のお考えを取りまとめていただいて、次期通常国会にしかるべき法案を提案、提出できればと考えておりますので、より一層の御協力を何とぞお願い申し上げたいと思います。
本日は大変お忙しいところ、このようにお集まりをいただきまして心から感謝申し上げ、また、年末までの、考えようによってはかなり短期でもございますから、ぜひ精力的に集中した議論をしていただいて、日本の未来を背負う子どもたちの将来を確かなものにしていっていただければ大変ありがたいと思います。どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございました。
○小松室長補佐 大臣はここで退席させていただきます。
(塩崎厚生労働省退室)
○小松室長補佐 カメラの撮影もここまでとさせていただきますので、よろしくお願いいたします。
(報道関係者退室)
○小松室長補佐 次に、資料の確認をさせていただきます。
配付資料は本日の議事次第、その次に座席表を御用意しております。右上に資料1と書かれた「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の設置について」という資料を御用意しております。
その次にA4横紙ですが、右上に資料2と書きまして「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の運営及び主な検討事項」といったレジュメを用意させていただいております。
資料3といたしまして、「児童虐待防止対策強化プロジェクト(施策の方向性)【概要】」といった資料を御用意させていただいております。
資料4といたしまして、「児童福祉法の目的・理念」という資料を御用意させていただいております。
参考資料といたしまして、真ん中あたりに「社会保障制度とは」といったレジュメを御用意させていただいております。
資料5といたしまして「子ども家庭福祉施策の内容」といったものを御用意させていただいております。
資料6といたしまして、本日、山田委員より資料の御提供をいただいておりますので、配付させていただいております。
同じように井上委員からも資料の御提供をいただいておりますので、同様に配付させていただいております。
参考資料1としまして、先ほど大臣の御挨拶の中でもお話がありましたけれども、「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会報告書」を配付させていただいております。こちらの専門委員会取りまとめには時間のない中、各委員会の皆様には御協力いただきまして誠にありがとうございます。本日この場で公表とさせていただいております。引き続きこの委員会の中で議論を深めていきますので、よろしくお願いいたします。
参考資料2といたしまして、「平成28年度児童虐待防止対策関係予算概算要求の概要」といった資料を御用意させていただいております。
資料の欠落等ございましたら、事務局までお申しつけください。
なお、本専門委員会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。
次に、委員の御紹介でございますが、お時間の都合上、先ほど資料説明で申し上げました「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の設置について」の中に、本日の委員の名簿を添付させていただいておりますので、そちらで御確認いただければと思います。
なお、このたび新たに井上委員に御参加いただくことになりましたので、井上委員の御紹介をさせていただきます。
○井上委員 大分県中津市からまいりました井上と申します。
このたび初めて参加させて頂きますが、児童虐待問題には30年ほど携わっておりますので、地域で培ってきたことを皆さんの御意見に反映しながらできることをしていきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いします。
○小松室長補佐 次に、委員長の選任でございます。
事務局といたしましては、「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」からの経緯も踏まえ、松原委員にお願いしたいと考えておりますが、いかがでしょうか。
(「異議なし」と声あり)
○小松室長補佐 ありがとうございます。御異議ありませんので、松原委員には恐れ入りますが、本委員会の委員長をお願いしたいと存じます。松原委員、委員長席へお移りいただけますでしょうか。
(松原委員、委員長席へ移動)
○小松室長補佐 それでは、これより先の議事は松原委員長にお願いしたいと思います。
○松原委員長 改めまして、明治学院大学の松原です。よろしくお願いいたします。
先ほど大臣の御挨拶の中にもありましたように、8月28日の報告書を受けまして、新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会が立ち上がることになりました。スケジュール的にはかなりタイトなものになるかと思いますけれども、皆様の御協力をよろしくお願いしたいと思います。委員長として皆さんの御議論の手助けができればと思っております。
本委員会は、本日の資料についております設置の趣旨にもありますように、社会の変容等に伴う子どもと家庭を取り巻く今日的な課題に対応するため、子ども家庭福祉のあり方について包括的に検討するとともに、その議論を踏まえた児童虐待の発生予防から自立支援までの一連の対策のさらなる強化について検討するとなっております。
ただ、全くゼロから踏み出すということではなくて、これまでの「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」で積み重ねた議論というものがございますから、これを継承しながら必要な課題についても議論をし、さらに新たな課題も出てくれば、そのことも御議論いただきたいと思います。
ただ、児童福祉法改正、次期通常国会という話が大臣からありましたので、一定の期限というものが定められております。事務局にその進め方について資料を使って御説明いただきたいと思います。よろしくお願いします。
○古川総務課長 では、私から説明させていただきます。
資料2を御覧ください。「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会の運営及び主な検討事項」という資料でございます。
中段に「主な検討事項」と書いてございます。今、松原先生のお話にございましたように、これまでも「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」で丁寧に御議論をいただいてまいりました。こうした議論を踏まえまして大きくテーマを括りまして整理すると、こうなるのではということで記載させていただいたものでございます。
国、都道府県、市町村の役割と責務。
児童福祉司の国家資格化。
特定妊婦等情報の確実な把握。
児童虐待の母子保健分野における位置づけ。
司法関与。
トリアージセンターの設置や介入と支援の分離。
要保護児童対策地域協議会の強化。
関係機関等による調査協力や児童相談所から市町村への事案送致。
一時保護所のあり方。
里親制度、特別養子縁組。
措置解除後の継続的な安全確保措置。
児童養護施設等における親子関係再構築支援。
18歳に達した者に対する支援。
施設退所後のアフターケアの推進 等
ということでございます。
もちろんこれで全て尽きているということではないと思いますけれども、それらのテーマは深く広範にわたるというところでございますので、一旦、事務局としてはこのような形を整理させていただいたところでございます。
そのテーマを下にありますが、より深掘りした御議論をいただくためにワーキンググループを設置してはどうかということで説明をさせていただいております。なお、その際には併せて、子ども家庭福祉のあり方に関する理念、本日御議論いただきますけれども、そうした新たに理念に基づきつつ、民間との協働やアウトリーチ型支援という全てのステージについてこの視点を持ちつつ、議論いただければと考えているところでございます。
1枚おめくりいただきまして2ページでございますけれども、これを2つに分けて御議論いただいたらどうだろうかということで提案させていただいているところでございます。新たな児童虐待防止システム構築検討ワーキンググループ(仮称)と書かせていただいております。もう一つは、新たな社会的養護システム構築検討ワーキンググループということでございます。
今、一つの考え方ということでございますけれども、この2グループで御議論いただければどうかということでございます。
段取りについては3ページでございますが、検討スケジュール(案)を示させていただいております。仮に本日このワーキンググループで2グループ立ち上げるということで御了解をいただきました場合でございますけれども、各委員の皆様にはまずメンバーをワーキンググループどこにお入りいただくかお決めいただいた上で、早速にもワーキンググループの日程調整に入らせていただきたいと思います。そして1、2それぞれ御検討をしていただきまして、下にありますけれども、11月中旬ぐらいまでにおおむね4回程度と書かせていただいております。もちろん議論次第によって日程は変わり得るものです。議論を深めていただきまして、その検討状況については適宜本委員会、専門委員会に報告していただくという形で議論を確定させていくことを考えているところでございます。
そして最終的には12月頃をめどとして2月に国会へ法案というのは1つルールがございますので、そこをゴールといたしまして折り返しますと1月に児童部会へ報告。そうしますと専門委員会としての取りまとめは12月頃になろうかと思いますけれども、もちろんこれは議論次第ということではありますが、こうしたことを一定の念頭に置いていただきまして、議論を深めていただければと考えているところでございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
私からもこれだけのメンバーが一堂に会して議論するとなると、お一人何分ということでかなり時間を限定しなければいけませんので、少し密な議論をしていただくということでワーキンググループの設定をお願いしましたが、このことについてはいかがでしょうか。特に御意見ないですね。
それでは、ワーキンググループを設置するということで、一応仮称ですが、この2つのワーキンググループでさせていただくことにして、参加について事務局から御説明いただけますか。
加賀美委員、どうぞ。
○加賀美委員 今のワーキンググループの枠組みの話に係ることなのですが、1番目の子ども虐待の問題を広く議論するという意味で、かなりこれまでの流れとつながるところだと思っているのですが、2つ目の新たな社会的養護システムと言ったときに、ここに挙げられてくる検討事項等とありますけれども、極めて狭義の意味の社会的養護の領域に限定的になることでよいのか。というのは、全ての子どもの健全な養育、適切な養育をという理念を上げていくというようなお話もありましたし、そういうことからすると、その全ての子どもという領域が社会的養護というところで、その全体が議論できるのかというところが気になりました。
○松原委員長 先ほど冒頭で申し上げましたように、古川課長もコメントされましたが、積み重ねてきている部分はありますが、全くそこに限定をして議論を制限するということではなくて、本日も御議論いただきますが、理念をきちんと踏まえて議論をする。あるいはそれに基づいて新たな視点が出てくれば、これは最初のワーキングも含めて新たな検討をしていく項目というのは上がってきて当然だと考えておりますし、加賀美委員が前におっしゃった養育全体の課題であるというのは、私も理解しているつもりです。
○加賀美委員 了解しました。
○奥山委員 だとしたら養護ではなくて、新たな社会的養育ではないですか。
○松原委員長 仮称ですので、そういう御意見があれば改めても構わないのですが、ほかに御意見ありますか。
施設での養護だけに限らず里親、養子縁組あるいは通常の子育て家庭への支援ということも当然、養育という言葉を入れると概念としては入ってくると思います。ただ、どの部分で法改正をやるかというときにかなりもう少し現実的なことも出てくるかと思いますし、場合によっては都道府県、国、市町村との役割分担のようなところにも話が及ぶかもしれませんので、そのことを御認識いただきながら、今、社会的養育という名称にしたらどうだという御意見が出ましたが、いかがでしょうか。
では、社会的養育というように、これは仮称ですのでこういう議論をしながら改めることにしたいと思います。
それでは、その点を確認しまして参加の方法についての説明に移りたいと思いますが、よろしいですか。では、事務局の方でお願いします。
○古川総務課長 ワーキンググループの設置につきましては御了承いただけたということでございますので、そのような形で設置をさせていただきたいと思います。
それぞれの委員の方がどちらのワーキンググループに御参加いただくかということでございますが、それにつきましてはまず各委員から御希望を伺いまして、ワーキンググループを構成したいと考えておりますので、後ほど事務局の方に御希望のワーキンググループを仰っていただければと思います。
もちろん重複でどちらも御参加いただけるということであれば、排除するものではありませんので、むしろ積極的に御参画いただけるというのは、ありがたいと思っておりますので、御希望を後ほどお寄せいただければと思っております。よろしくお願いいたします。
○松原委員長 よろしいでしょうか。
それでは、ワーキンググループの持ち方はそういう形にさせていただきます。
では、次に準備された議事を進めてまいりたいと思います。先日、官邸で行われました「すべての子どもの安心と希望の実現に向けた副大臣等会議」において、児童虐待防止対策強化プロジェクト(施策の方向性)が了承されております。このほかに事務局から資料が提出されておりますので、その説明をお願いしたいと思います。
○古川総務課長 引き続きまして資料3につきまして説明をさせていただきます。
今、松原先生からお話がありましたように「すべての子どもの安心と希望の実現に向けた副大臣等会議」におきまして、中身の了承をいただきまして、その上でその後、開催されました「子どもの貧困対策会議」で取りまとめられた児童虐待防止対策強化プロジェクト(施策の方向性)というものでございます。
ポイントのみ説明をさせていただきますので、恐れ入りますが、3ページをお願いします。虐待の発生状況などを鑑みますと、まず発生予防の強化ということが重要だということで、望まない妊娠、若年者の妊娠等について、関係機関からの情報提供の新たな仕組み及び子育て家庭へのアウトリーチ型支援などを通じて、行政や民間と子育て家庭の接点を確保して支援につなげ、虐待の発生を未然に防止するという視点から検討すべきだという整理がされてございます。
2は関係機関の情報共有による最適な支援ということでございます。児童相談所、市町村などの関係機関が、共通の判断基準によりアセスメントを行う新たな仕組みを通じて情報を共有する。これを通じて全ての支援を要する児童に対し、質の高い最適な支援を実現することを目指すということでございます。
3は自立支援とフォローアップということでございます。個々人の状況を踏まえまして里親委託や養子縁組など、家庭的な環境で養育することを推進するとともに、最後の方に飛びますけれども、居場所づくりの推進などフォローアップをすることによって、確実な自立に結びつけるように支援をしていくということでございます。
そして、こうした一連の取組につきましては、継続的に見直しをするということが4番目でございます。大臣からもお話がありましたけれども、次期通常国会に児童福祉法の改正法案の提出も念頭において検討を進めるということでございますが、それらの対策が効果的に機能するよう、必要な検証を行い、定期的に見直しを行うということを定めさせていただいております。
また、こうした取組に通じまして、民間との協働やアウトリーチ型支援ということで、できる限りプレイヤーを増やす、民間の知恵をいただく、待ちの姿勢ではなくて積極的に打って出る取組を充実していくという視点を、常にどのステージにおいても持っていくというところでございます。
以下は少し詳細版でございますので、時間の関係上、省略をさせていただきたいと思います。
資料4につきましても若干補足説明をさせていただきたいと思います。「児童福祉法の目的・理念」でございます。今回、児童福祉の新たなあり方というものを御議論いただくということでございますので、現行の規定がどのようになっているかということを簡単に報告させていただきます。
児童福祉法の第1条、児童福祉の理念の規定でございます。「すべて国民は、児童が心身ともに健やかに生まれ、且つ、育成されるよう努めなければならない。2 すべて児童は、ひとしくその生活を保障され、愛護されなければならない」という規定になっております。
中段以下が解釈といいますか、コンメンタール部分でございますけれども、1つ目の○ですが、児童は未完成の社会的な弱者として基本的人権が保護されるべきであって、国民が、それぞれの立場において育成に責任を負っているということを明確にした規定だということでございます。
第2項の2つ目ですけれども、児童、親に対してのみではなく、国及び地方公共団体に対しても上記の権利を有するということを明確にしたものだという解釈になっているところでございます。
2ページ、児童育成の責任ということでございます。「国及び地方公共団体は」ということで、その責任が書かれてございます。「児童の保護者とともに、児童を心身ともに健やかに育成する責任を負う」というところでございます。
3つ目の○ですけれども、親など児童に対して親権を行使する者は、民法によりその責任が定められているということですが、それだけでは不十分である。児童を現に監護している「保護者」と、国及び地方公共団体に対し、指導の福祉に対する責任を負わせたものであるという解釈でございます。
3条は原理の尊重ということで、全て児童に関する法令の施行に当たっては、1条、2条の規定を尊重して行わなければならないというところでございます。
3ページ以降は関連いたしまして、児童虐待防止法の目的・理念というところでございます。条文は長いので省略をさせていただきますが、1つ目の○を申し上げますと、児童虐待は、家庭におけるしつけとは異なり、親権や親の懲戒権によって正当化されず、児童の人権を著しく侵害し、その心身の成長及び人格の形成に重大な影響を与えるということが明確にされておりまして、そうしたことを踏まえまして3つ目ですが、こうした児童虐待問題の早期解決の緊急性に鑑みて法律が制定されたということが書いているわけでございます。
4ページは児童に対する虐待の禁止ということで、「何人も、児童に対し、虐待をしてはならない」という、保護者の児童虐待のみならず、保護すべき児童に対し何人も虐待行為は許されないという根底を流れる考え方を明確した規定ということでございます。
国及び地方公共団体の責務というものが4条に書いてございます。項目だけ申し上げますが、第1項は体制を整えてきちんと虐待防止対策を整えるようにすべきだということ。2項及び3項は質の向上という観点から、研修所等の必要な措置をとるべきだということ。
6ページ、いわゆる広く制度というものを理解していただくという観点から、啓発活動に務めるということ。
第5項は、調査研究及び検証を深めていくということ。
第7項でございますけれども、地域において互いに助け合いながら児童の健やかな成長を見守るための近隣社会の連帯が求められているということで、全ての方がこの虐待防止のために参加いただくということが書いてあるところでございます。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、具体の施策とか法改正のありようについては、これから先ほど設置をお認めいただきましたワーキンググループで検討していくことになりますので、本日は土台になる部分、子ども家庭福祉の基本理念について意見交換をしたいと思います。
全ての方に御発言をいただきたいと思います。そのときには各委員からは、今後のワーキングの持ち方の御議論もあると思いますので、理念等についての御意見とともに、今後の議論の進め方についても御意見があれば追加していただきたいと思います。
タイマーをまた出してきまして、お一人申しわけないのですが、2分程度で御協力をいただけますと最後に追加の発言を皆様方からお願いする時間がとれます。井上委員は今回、初の御参加ですので最後に倍の4分をとりたいと思いますので、それでも4分かというのはあるのですけれども、進行に御協力をいただきたいと思います。
着席順であいうえお順ということになると、この委員会では秋山委員がトップバッターになります。磯谷委員の次に井上委員を一旦置いて先へ行きたいと思います。
2分たちましたら、場合によると私の方で「そろそろ」というお声をかけるかもしれませんが、御容赦願いたいと思います。
それでは、秋山委員からお願いします。
○秋山委員 広い意味での子ども家庭福祉というところで、地域の現在の課題を1つ申し上げたいと思います。
現在、地域の課題として思春期以降の支援の薄さがございます。妊娠期から母子保健で支援された子どもたちは、就学で学校保健に引き継がれます。ケースによってはスクールソーシャルワーカー、子ども家庭支援センター、児相が関わっています。その支援内容は十分と言えなくても中学までは比較的周囲の目があって、支援が行き届く環境にあります。しかし、中学卒業後を期に地域の目が少なくなり、自ら相談しなければ支援が行き届かない状況に陥っています。教育も子家センも現在は対象が18歳となっていますので、それ以降、空白の期間が生じて特定妊婦などの母子保健で再度関わるようになることが懸念されています。
そこで思春期以降の支援を思春期医療、地域保健、子育て世代包括支援センターなどで充実させていただき、母子保健につなぐサイクルを構築していただきたいと思っております。
空白期間を作らない体制が地域にできますと、社会的養護の子どもたちも早期に地域の資源が利用できるのではないかと思っています。現在、子家センや児相だけではケースを抱え切れなくなっている現状を考えれば、地域の人材育成、環境整備をお願いしたいと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、泉谷委員、お願いします。
○泉谷委員 目白大学の泉谷でございます。
子ども家庭福祉というところで、この専門委員会でも言われてきたことですけれども、1つ提案させていただきたいのが、横の連携ということから縦の連携を考えていく時代に来ているということです。
生活困窮者支援の方では伴走型支援ということが言われてきておりますけれども、子どもの子育て、子どもの成長に伴って一緒に支援者も家族と一緒に子どもを育てていくというような、共に歩む支援をしていく必要が出てきているのではないかと思います。その支援の網からこぼれてしまう人たちが現実、出てきている中では重層的な支援体制を作っていくというところで、行政だけではなくて民間、地域力をフル活用していく時代に来ているのではないかと思います。
もう一点は、子どもの養育というのは日本では母親に責任があるように言われている印象があります。母親にとって子育てというものがすごくプレッシャーになってきているというところで、母親への支援というものがされてきていますけれども、松原先生もおっしゃっていますが、子育ての社会化をもう一度きちんと見直していくという時期に来ているのではないかと思います。
その上で専門職の向上はもちろんですけれども、社会全体で子どもの育ちを保障していくという点を考えていくべきではないかと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
磯谷委員、お願いします。
○磯谷委員 私からは2つお話をしたいと思います。
1つは体罰に頼らない子育ての推進ということです。現場で見ていますと例えば厳しくしつけないと子どもがだめな人間になってしまうと思い込んでいて、児童福祉司が子どもを保護しようとすると、「お前たちは責任とれるのか」、「厳しく育てないと、俺の子どもが将来いいかげんな男になってしまう。そうなったら、どうするんだ」というようなことを言う親もいるわけです。昔、厳しく、時にはたたいて育てるという養育が美化されていた時代もありましたので、そういった過去の遺物にすがりついてしまうところがいまだにあるのだろうと思っています。
最近は虐待が子どもの脳にも深刻な影響を与えることが明らかになっていますから、そういった科学的な視点も踏まえて体罰に頼らない子育てというものを推進していくことは、大変重要ではないかと思います。
今年の3月に、日弁連でこういった点につきまして、厚生労働大臣に対しても提言をさせていただいているところでございます。
2つ目は、子どもの権利擁護がきちんとなされているかということを国レベルで監視する第三者機関の設置です。さまざまな制度や施策が本当に子どもの権利擁護という観点からうまく機能しているのだろうかというところは、常に見ていく必要がありますけれども、既存の省庁がやるにはいろいろ「しがらみ」がありまして、本当に子どもの視点あるいは子どもの権利という視点だけで物を見ることができるかというと、なかなか難しいのではないかと思います。この点も国連の子どもの権利委員会の示す総括所見などで盛り込まれてきたことでもありますので、ぜひそういった第三者機関の設置ということも考えていく必要があると思います。
以上です。
○松原委員長 岡井委員、お願いします。
○岡井委員 愛育病院の岡井でございます。
私の立場は先ほどもお話が出たと思いますが、児童の養育、育児の中心になっている母親、お母さんの支援をどうするか、必要な人を援助するために、どうするかということです。それから、母親になる前の妊婦の状態でそういう問題を抱えている人たちをいかに抽出して支援していくかという、その辺の議論をしていきたいと思っています。
それとは関係ないのですが、このチャンスを逃すと本日発言できないかもしれないので1つ発言させてください。先ほど見ていたら、法律の中に既に第4条で通知義務等について必要な広報その他啓発活動に努めなければならないと記載されています。私はこの間、産婦人科医会でこういうパンフレットを配付されたのを見てきたのです。これは、児童の虐待かと思ったら、いち早く189番に電話してくださいというパンフレットですが、これは私、その会以外では目にしたことがないのです。それから、家内にも聞いてみたのですが、これは一度もどこでも見たことがないとのことです。せっかく作られたこのパンフレットはどれぐらいの数作って、どこに配布しているのか。ここには妊婦さんの問題も解決できればいいということで、妊婦に関する悩みや不安がある場合には1人で悩まず御相談くださいと記されています。すばらしいパンフレットなのです。それでもっと活用しないと、ここの第4条をきちんと履行していることにならないのではないかと思います。
この点、1回担当者の人に詳しく聞きたいと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
○古川総務課長 作成数等の具体的数字は今、持ち合わせておりませんので、後ほど整理をして報告をさせていただきます。
○岡井委員 お願いします。
○松原委員長 奥山委員、お願いします。
○奥山委員 子ども家庭福祉ということの理念的なところということでございます。まず子ども家庭福祉といったときに中心は子どもなのだと思います。子どもに巣としての家庭を一緒に支えていくという考え方なのだろうと思うのですけれども、そこで福祉という言葉に少し着目すると広い意味での福祉なのか、いわゆるチャリティー系の福祉なのかということで考えていきますと、やはりここでは新たな子ども家庭福祉と言ったときには広い意味の子ども家庭福祉、Well-beingということを重視した考え方に立ち戻りたいと思います。
参考資料としていただいたセーフティーネットというところに関しましても、社会保障というところで書かれていますけれども、セーフティーネットだけでは子どもは無理なのだと思います。力のないままネットに引っかかったら、引っかかり放しになってしまうわけで、ネットから自立していく力をつけなければいけない。そこが一番重要なところだと思います。
そういう広い意味での福祉ということを考えたときには、保健も医療も全て子どもの福祉に資するものということになると思いますので、福祉を担う人というのはものすごく重要になります。ですので、やはりここでは児童福祉司の国家資格化ではなく、子ども家庭福祉士の国家資格化ということを考えてほしいと思うのです。虐待に限られたそこだけのものではなくて、児童相談所だけのものではなくて、子ども家庭福祉全体を担う人としての「司」ではない「子ども家庭福祉士」を考えてほしいと思います。
それから、そういう子ども家庭福祉ということを考えたとき、先ほどもお話が出ていた子どもの権利ということが非常に重要になるのですけれども、児童福祉法その他の理念を資料で、今、読ませていただいたのですけれども、生きる権利から育つ権利までは多少何とかなっているとしても、参加する権利が余り書かれていないと思うのです。子どもの発言権の確保と、発言できない、先ほど大臣もおっしゃっていた小さい子どもに関しては、そのアドボカシーをきちんとするということが重要です。従って、この前の会でお話させていただいたように、親は児童相談所に文句はつけられるのですけれども、子どもは文句をつけられない。そこをきちんとするシステムを、ぜひ1に入れていただきたいと思います。
それから、2のところで1つだけ。先ほど養育にしてほしいと言ったのは、ほとんどの子どもが在宅で支援をされているわけです。市町村や要対協での支援を受けているわけで、そういう子どもたちが大きくなったときというのも、ぜひお考えいただきたいと思います。
○松原委員長 加賀美委員、お願いします。
○加賀美委員 加賀美でございます。
養育理念については私なりの考え方を以前の会議にペーパーで、養育理念策定の資料として出したつもりなので、そこは屋上屋を重ねることになりますが、改めて、子ども虐待は養育の問題であるという観点から言って、その養育の問題が理念とどのようにつながるかということを確認しておきたいのです。私は、虐待が関係性の不全に陥る子どもたちを形成してしまう。つまり他者とくっつく力というか、他者と関係を作る力を著しく阻害するというのが子ども虐待だと括ると、つまり、子どもたちの自立の問題に極めて重要な意味を持ってくると考えます。
そういう観点から考えると、今日、子どもの貧困、ひとり親家庭の問題、もちろん子どもの発達不全の問題、あらゆる観点から虐待による養育不全が極めて重要な意味を持っているということを確認した上で、新たな子ども家庭福祉のあり方というのは、あらためて家庭という言葉をくっつけて子どもの問題を考えるという時代になったという意味での「新たな」という意味だと私は解釈しております。
もう一点、この状態が極めて深刻な状態で広がっているという現実から考えて、先ほど大臣のお話にもありました子どもは社会の未来であるという観点から考えると、子どもの状態像が国の未来にどういう影響を与えるのかという極めてマクロな視点で国策として、あるいは政策としてそのことをどう捉えるのかという点、それから、そのために制度をどうするのか。その制度を具体的な子どもの支援にどう落とし込むのかという3つぐらいの段階でこの議論をしていく必要があると考えております。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。
加藤委員、お願いします。
○加藤委員 児童家庭福祉の理念ということですけれども、第1条と同じですが、子どもの育ちの保障と家族の支援と地域における支援推進というのを理念に置きたいと思っております。
そして、児童福祉法は昭和22年に制定されているものですが、子どもの権利条約が1994年に批准されております。それで子どもの主体性の尊重ということでは、子どもの意見尊重ということもどこかに入れていただくことが必要ではないかと思っています。そして、そういった理念に基づいて施策を推進するにしても、それをきっちりと支援に届く人が必要になります。児童相談所もそうですが、子どもたちの成長を手伝う人たち。そういう人たちの専門職化というのがさらに必要になってくる。私の方は市町村の相談員が現状、人口10万以下でしたら一般職の人たちが相談に乗らざるを得ない状況になっておりますので、そういう資格化の問題、あるいは専門職配置というものを特に願っております。
順次課題として新たな児童虐待システム構築ということですので、このカテゴリごとに段階に進めて、理念に即した議論がなされることが大事なのではないかと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
木ノ内委員、お願いします。
○木ノ内委員 全国里親会の木ノ内です。
今年から社会的養護の課題と将来像というものが始まりまして、15年計画でスタートしているのですけれども、施設の小規模化とか家庭養護ということでこれから15年どのようにやっていくのか。歓迎すべきところですけれども、一層の家庭養護の推進ということを期待しております。
1つ言いたいのは、社会的養護というものが国民全体にどれだけ理解されているのだろうかということで、虐待の防止であるとかこれまでもやってきたわけですけれども、虐待あるいは貧困ということで、子どもにとって重要な社会的養護というのはセーフティーネットになっていると思うのですが、なかなか社会的養護が知られていないということで命を落とすとか、大変な思いをしている子どもたちの命を守るということができるのではないかと思うので、例えば要保護児童というのは4万人前後で推移しているわけですけれども、違った見方をすれば受け入れのキャパで決められているのではないかということもあります。人口比で見ましても日本の場合、要保護児童というのは他の国に比べて少ないのです。それが暮らしやすい国ということでしたらいいのですけれども、十分知られていないという意味で割合が低いというのであったとしたら問題なのではないかと思いますし、ぜひ子どもたちのセーフティーネットとして社会的養護という仕組みがあるんだということ、国民全体に理解してもらいたい。もっと利用しやすい仕組みにしてもらいたいと考えております。
今後の進め方として、ワーキングチームというのはこれだけ人数も多いわけですから、とても歓迎しております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
草間委員、お願いします。
○草間委員 東北福祉大学の草間です。
私から4点申し上げたいと思います。
まず1点目が、児童福祉法の第1条第3項に、自立を通して自己実現を図らなければならないという理念を盛り込む。全ての児童は自立を通して自己実現を図られなければならないという規定を入れてはどうか。自己実現の意味する所は、先ほど奥山先生がおっしゃったWell-beingという意味での自己実現です。
2つ目が、努力規定よりさらに踏み込んだ記載のものも入れたらいいのではないか。例えば虐待防止法では、通告義務を怠った場合には諸外国の例でいくと罰則規定がございます。努力規定よりもさらに踏み込むものを検討できないかというのが2点目です。
3点目が、EBPです。Evidence based policyというもの。科学的根拠に基づいた政策推進をPDCAサイクルでやるということを付帯事項か何かで盛り込んでいくことが必要だと思います。エビデンスに基づいた政策づくりというのは日本とか韓国は遅れています。EBPを入れていくことが今後益々必要となります。いろいろな識者が指摘をしているところです。
4点目が、磯谷先生がおっしゃった体罰と虐待というものがうまくリンクしていないので、体罰によらない子育ての推進というものを児童虐待防止の観点からももっと強力に進めていく必要があるのではないかと思います。
以上、4点です。
○松原委員長 ありがとうございました。
笹井委員、お願いいたします。
○笹井委員 沼津市子ども家庭課の笹井です。
私から具体的なお話をして意見を言いたいと思います。
今年の夏休みに100均ショップから、朝から夕方までほとんど店内で過ごしている小学校2年生の子がいる。何か悪いことをするわけではないけれども、客層も余り良くなく、自分たちもこの子のことを気にかけているものの、連れ去りなどが心配になったので連絡しましたという通告がありました。このような状況は直ちに虐待と言えるものではないと思いますが、継続していくと非行や犯罪被害に巻き込まれるリスクが高くなると言えると思います。
従来、夏休みは子どもたちが家族や地域とのふれあいの中で楽しく過ごす期間であったかと思いますが、核家族化や少子化という社会的な変化もあって状況は大きく変わっているように思います。
冒頭の100均ショップの件は夏休み中でしたが、小学校の協力も得て改善に向かいましたが、この子に夏休みだけでも放課後児童クラブが利用できれば当座の問題解決が図れたのですが、同地域の放課後児童クラブは待機児童が出ている状況ですし、保護者も希望しないため、それには至りませんでした。
このようなことを踏まえて少し意見を言います。今年度から市町村が子ども・子育て支援法に基づく事業を計画的に進めていくことになり、要保護児童対策地域協議会もその一つとなっていますので、他の子育て支援事業との連携を図って児童虐待の防止と要保護児童の支援につなげることが市町村の大きな課題と考えます。
2点目として、児童に対する福祉サービスは、高齢者や障害者に対するサービスと比較すると、質、量ともまだまだ少ないと思いますので、さらなる拡充を図る必要があると考えます。
最後に、妊婦・出産包括支援事業が医療と福祉の連携の中で行われようとしているのと同様に、児童福祉と教育の連携がこれまで以上に非常に重要と考えます。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
佐藤委員、よろしくお願いします。
○佐藤委員 私は親の当事者責任としての妊娠、出産、子育てではないものをぜひ理念にしていただきたいと思います。
私どものところで思いがけない妊娠の相談窓口の運営を大阪府から委託を受けて運営をしているわけですが、先日も親から離れてひとり暮らしをしていて臨月なのですけれども、誰にも相談できず、とにかく内緒に1人で産みたいという相談が寄せられ、匿名のメールの相談で住所もわからず、何とか四苦八苦していろいろな資源につなげようとしているところです。まだ陣痛は来ていないということなのですが、生まれた子どもはどうするのかとか、やりとりをしていて、このように成人ではあるのですけれども、1人に課せられた妊娠、出産、子育て。国が祝福しない1人の責任としての性行為の結果としての妊娠、出産、子育てでは決していけないと思っています。
例えば妊娠中からの支援にしても、費用負担等もいろいろな制度ができ上がってはきているのですけれども、それでもなおかつそういうところにつながりにくいような人たちもいますし、妊娠期からの支援にしても、こういう妊娠葛藤に悩む段階からのちゃんとした相談窓口がありません。例えばドイツでは妊娠葛藤法における匿名相談所、秘密出産規制法などがありますし、秘密裏にするのではなくて、生まれてくる子どもの人権に寄り添った形での児童福祉法の展開というものを、ぜひ進めていただきたいと思っています。
さらに、その中の細かい点ではありますけれども、生まれた正常新生児は全く保険がききませんで、自費の新生児管理保育料、1日1万円前後がかかります。経済的な問題を抱える親にとっての費用負担軽減と、新生児を出生直後から国民として認識できるよう、新生児管理保育料の保険適用というものがあれば、隠し通すこともなくなるのではないかと思っているところです。ぜひともよろしくお願いいたします。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
塩田委員、お願いします。
○塩田委員 塩田です。
私は虐待の防止が重要であるとともに、虐待を受けてきた子どもたちがそれ以上傷つかないシステムづくり。社会的養護下の子どもたちが、そこ養育先で子どもらしさを取り戻して安寧を得られるシステムづくり。そして社会に自立していく力をそこで育んでいくシステムが必要かと思っています。そのためには子どもが家庭で保障されてこなかった愛着の形成や、家族によって背負わされた課題を明確にし、解決し、そして発達を促進されながら育っていく。そして自立支援が進んでいくような社会的養護のシステムが構築できるような議論を続けていきたいと思っております。
○松原委員長 ありがとうございました。
菅野委員、お願いします。
○菅野委員 彦根の子ども家庭相談センターの菅野です。
私は現場的なところで児童虐待に対応しているわけですけれども、育ちのために必要なものは何かという視点が虐待対応の中で一番大きなポイントとして置いています。ですから、こういう歪んだ育ちをしていく子どもたちへの支援と関わりの中から、子どもたち全体にフィードバックできるものがないかと考えています。
伴走型という話を聞きました。児童相談所は昔、伴走型で長い期間支援をしていたなということを思い出しました。現実的に現場は今、大臣から話がありましたようにバーンアウトが激しいです。専門性の向上、職員を育てるということ自体がかなりハードで難しい現場になっています。ですから、こういう理念を形にしていく上で人をどのように育てるのか、育成していくのかというところが議論されることを期待して、私の話にさせていただきます。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、辰田委員、お願いします。
○辰田委員 八王子児童相談所の辰田です。
子ども家庭福祉を考えた場合、児童相談所はその支援の対象は子どもが中心であるのですが、実は当然、皆さん御存じのとおり、養育する保護者にどれだけ相談関係を構築して、そこに支援を入れるかと考えております。そのために児童相談所と特に市町村においては、共通のアセスメント方法に基づき支援の共有と役割を明確化していくことが有効であり、また、その家庭生活において市町村だけでなく施設、NPOなどの関係機関と連携して、子どもの安全確認を行うとともに家庭全体の相談支援、時には指導を行うといった体制強化を図っていくことが必要だと考えています。
あと、児童相談所の課題としましては当然職員の量だけではなくて質、専門性をどのように向上させていくか。児童福祉司はさまざまな相談に対応できる高い専門性と経験が求められる職種です。とりわけ児童虐待の対応については知識や技術を必要とすることから、そういった職員の要請をするシステムの検討がさらに必要だと考えています。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
中板委員、お願いします。
○中板委員 日本看護協会の中板でございます。よろしくお願いいたします。
私は保健師ですので、保健師の視点でお話をしたいと思います。
保健師は精神保健福祉活動も行っておりまして、その中で特に神経症圏で対応している患者さんたちの多くが、愛着形成プロセスが頓挫されたまま、いかなる支援も入らず、結果的に生きづらい状況に至っているということがございます。これは特定妊婦においてもしかりだと思います。要するに個人のライフサイクルで捉えていく育ちの保障というものが不十分かなと思うところで、今回の子ども家庭福祉の理念として個人個人、一人一人のライフサイクルで捉えていく育ちの保障というものが必要ではないかと思っております。
高齢者対策の方が、若干先を行っているのかなと思っておりますけれども、認知症対策など、早期発見チームといった入り口のことももちろんやっておりますが、今、中心になっているのは多職種協働で在宅療養を支える仕組みでございます。こちらは保健、医療、福祉一体型で進めておりまして、地域包括支援センターが核になっております。現在、地域密着型のブランチも含めて7,800カ所あるという状況の中で、今回、国が出している子育て世代包括支援センターというものをとても期待したいと思っております。
こちらがまだそういった意味では地域密着型にはなっておらず、規模が少し大きいのかなと思っておりますので、地域密着型で自助、互助と連動した形の横の連携、縦軸全てが保障された、一貫して見ていける子育て支援センターができることを期待しております。
以上です。
○松原委員長 西澤委員、お願いします。
○西澤委員 山梨県立大の西澤です。
私は臨床の人間なので、余り法律の理念を語る資格はないと思うのですけれども、日頃児童福祉法の中下で仕事をしていて疑問に思っていることが幾つかあるので、そういう点を時間の許す範囲で例示させていただいて、そのほかの議論につなげていただければと思います。
まず1つは、この児童福祉法の理念という部分で第1条に愛護という言葉があって、いつも気になっているのですが、私は愛護と聞くと動物愛護しか浮かばない。これの本当の意味は何なのか、子どもの権利保障というような観点は全然ないのではないかという、権利としてあっても受動的なものにすぎないような気がします。
そういう意味では先ほど加藤さんもおっしゃいましたけれども、子どもの権利条約というものと対照しながら、新たな理念を作成していくというか、見出していくのが大事かなと。その中で,生まれた子どもがどのような養育環境にあっても、等しく発達権を保障されることがとても大事かなと思います。この前の委員会でも、子どもの自立年齢は何歳なんだという議論がありましたけれども、それも一般家庭で育とうが、社会的養護で育とうが、同様の発達権が保障されるといった観点が非常に重要ではないかと思っています。
もう一点、私の読み違えかもしれませんが、国及び地方公共団体と常に言われるのですけれども、こう書かれることによって国と都道府県と市町村の役割が不明瞭になってしまうということが起こるのではないかと思うので、国の役割、責務と地方公共団体でも都道府県、政令指定都市と市町村の責務をしっかり分けて考えられるような書き方になればいいかなと思っています。
それから、「児童の保護者とともに」という記述が第2条で常に気になるのですが、虐待のケースではそれがなかなか許されないといいますか、保護者とともにやっているからこそおかしくなってしまうという事態があると思うので、そのあたりを何とかしていければいいのではないかと思います。
ちょうど2分です。
○松原委員長 御協力ありがとうございます。
浜田委員、お願いします。
○浜田委員 大阪で弁護士をしております浜田です。
理念の話と申しますと、そもそも児童福祉の守備範囲は一体どこからどこまでなのかということを考えたいと思います。
現行の児童福祉法は御承知のとおり、対象は18歳未満の児童となっており、もう少し対象を広げている規定でも未成年者までとされています。ただし、その年齢までを支えているだけでは足りないということは、今まで積み重ねてきた専門委員会の議論の中でも自明のことと思います。
そうなりますと、児童福祉法の目的、理念というのは資料でお配りいただいたようなたてつけに今なっているわけですけれども、では我々は一体誰をどこまで支えるのかということを、大上段の話かもしれませんが、意識したいと思います。
こう思いますのは、結局のところこれまでの議論の中でも、理想論といいますか、あるべき論という話と、対して現実的な制約、例えば人とかお金とかほかの機関との関係というようなところが混ざってしまっていたのではないかと思うからであります。もちろんどちらも必要な要素ではあるので、当たり前のことなのかもしれませんが、少なくともそのあたりの話は、これは「べき論」の話をしているのか現実的な制約をしているのかということを区分けして考えなければならないのかなという気がいたしました。
具体的な形としては、直近で見込まれる、または見据えるべき法改正の話ということももちろん必要なのだろうけれども、前の専門委員会で出てきたかと思いますけれども、将来像がどうあるべきかというところもきっちり考えて、今やるべきことが何なのかというような順番で、そこのたてつけをしっかり意識しながら議論ができるといいかなと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
平田委員、お願いします。
○平田委員 平田でございます。
ちょうど夏の終わりに3件、立て続けに一時保護委託を受けました。その中で10代の夫婦の養育疲れ、しかも虐待の疑いだけど、調査が間に合わないという受入れですが、実際、子どもは非常に育ちの状態がいいし、よく育てられているようすです。しかし、児童相談所のアセスメントがなかなか間に合わず面会できないまま今に至っています。委託をお受けしたときから、子どもおよび家族のアセスメントが始まりますし、親子関係の再構築への取り組みも始まっていくのだろうと思います。
秋山委員がおっしゃった空白のない母子保健につながるサイクルが非常に大事だなと思うのは、この若い夫婦が以前に関係機関との関係があっていたのに、それが生かされなかったということ。それと虐待は養育の問題だという加賀美委員のお話にもあったように、支援は本当に同時進行で、支援のあり方はオーダーメイドでないとなかなかうまくいかない。それと体制整備については柔軟性が必要だという3点を非常に感じております。在宅で対応していた課題一時保護委託になると、社会的養護の枠の課題に入ってしまうというのも非常に不可思議な現実なのだろうと思いますので、子ども家庭福祉という中においては本当に在宅、一般家庭の方たちが相談しやすい場所、頼れる場所ができるようなシステムの中で考えられることを望みたいと思います。
○松原委員長 ありがとうございます。
藤川委員、お願いします。
○藤川委員 アフターケア事業部の藤川でございます。
施設を出た後の子どもたちの自立支援をしている立場から申しまして、頂いた資料の児童虐待防止法の目的・理念(その3)のところでは、体制の整備とか自立の支援等いろいろなことが入っていますし、次のページも近隣社会の連帯が求められていると入れていただいているのですが、私の立場から申しますと、出来ればここに企業との連携を入れて頂きたいのです。企業の支援をうまく取り入れるというようなことはとても大事ではないかと思います。虐待を受けていようと受けてなくても子どもたちは施設を出たら、あるいは施設で生活をしていない子もそれなりの年齢になれば、みんな社会で生きていくわけでして、そこで企業というのは切り離せないわけです。企業の方からも社会貢献を何かしたいと思っているのだがどうしていいか分からない。ということで私どもにご連絡をいただくことがよくあります。そういう企業とうまく連携をすることによって子どもたちの雇用に結びつくとか、子どもたちに何らかの支援が繋がることがあるのではないかと常々思っています。
具体的に申しますと、企業名を言っていいかどうか解らないのですけれども、当アフターケア事業部で開催している施設に入っている子どもたちのソーシャル・スキル・トレーニングでは株式会社資生堂には「身だしなみセミナー」でご支援頂いていますし、先週の土曜日は「話し方セミナー」として、株式会社毎日放送のアナウンサー部長が発声の練習とか、コミュニケーションのとり方の講座を開催して頂きました。又、HSBCにもご協力をいただいています。企業にとってもご支援頂くことによって社会的養護の子どもたちのことをご理解いただく機会になるし、それがまた次の支援につながるという良い連鎖があるのも事実なのです。だから企業という言葉を理念のところに入れていただきたいというのが私の願いでございます。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
藤林委員、お願いします。
○藤林委員 福岡市こども総合相談センターの藤林です。
私は児童相談所なのですけれども、児童相談所や市町村の今までのあり方というものが本当に子どもの権利を守ることができているのだろうか。そういうことを改めて考えさせる報道が先週2つあったと思っております。
1つは川口市で祖父母殺害の少年が懲役15年の高裁判決が出ていまして、改めて報道を見ますと、この少年の育ちは社会として十分保障されていたのかということを考えさせられる報道だったと思います。
もう一つは、千葉県で一時保護を解除された子どもが、その後に頭部外傷で搬送され死亡したというケースです。その後、父親が逮捕されたと報道されております。
この事件については検証を待たないといけないので、報道だけで判断するのは慎重にしなければいけないと思うのですけれども、振り返って8月28日に出されました児童虐待対策プロジェクトを読んでみますと、一時保護や措置の解除に際しての方向性が提案されているわけなのですが、本当にこういった方向性でこのような事件が防げるのだろうかと改めて思います。
大臣の冒頭の挨拶で言われていますように、抜本的な見直しと言われております。司法関与も含めた抜本的な見直しが今後必要と思っているわけなのですけれども、また、対策強化プロジェクトの2ページ目を見ますと、「司法関与の検討に際してはその検討に先んじて、児童相談所の機能や役割などの検討を行う必要がある」と書かれています。
それでは、いつまでたっても根本的な検討に進まないと思えますので、今後のワーキングでは司法関与の検討も並行して進めたいと思っています。
もう一点、追加ですけれども、私はぜひ2つの委員会に参加したいのですが、福岡から来ておりますので1つしか参加できないので、この機会に社会的養護について意見を述べたいと思います。
児童相談所の現場では高年齢児童の受け皿が非常に乏しいという問題がありまして、その中で一部の施設やファミリーホームさんの負担が非常に大きくなっているという課題があるのかなと思っています。児童自立支援施設または情短施設のあり方についてぜひ検討いただきたいと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、藤平委員、お願いします。
○藤平委員 私は理念の中で、市町村の役割についてお話をしたいと思います。
市町村の立場としては、一番身近な支援機関ということになっておりますので、まずは子どもの安全、安心を優先に対応しなければいけない。そのためには児童虐待の予防啓発について今後も非常に重要となりますことから、関係機関や住民への協力、連携に努めていきたいと思っています。
そうした中で市町村として関係機関との連携の中では、要保護児童対策地域協議会がございますので、本報告書にもありますように、今後も要保護児童対策地域協議会の機能強化が重要であると認識しております。
市町村の役割の中では妊娠期からの切れ目のない支援についても、市町村が家庭との接点を増やすことが今後においても重要となっておりますから、産前産後での子育て支援の充実を図ることや、人の配置ということでは子育てケアマネジャー、保健師が対面訪問の機会をふやすということで児童虐待のケースが少なくなればと思っています。しかし、課題もあって有効な施策を考える中ではそれらを対応する職員数の問題であるとか、専門性の確保が重要となっておりますので、適切な職員配置と専門職の確保の仕組みを考えていければと思っております。
最後に、市町村が一番身近な支援機関でありますから、支援の中では教育問題、生活環境、福祉制度の支援という重要な点もありますので、今後も検討会の中でそういった議論も深めていければと思っています。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
卜蔵委員、お願いします。
○卜蔵委員 ファミリーホーム協議会の卜蔵でございます。
私は自分自身の市町村の中で、私は小さな町に住んでいるのですけれども、その中で要対協とか子どもの支援の現場の中で感じていることをお話したいと思います。
よく言われることなのですけれども、社会的養護の中に入った子どもはまだ幸せだということを言われて、そこに前段階の非常に支援の必要な子どもたちがたくさんいる。そこの子どもたちをどう支援していくかということが非常に大事になってくると思うのですが、なかなか社会的養護に出てくる前の要支援家庭をどれだけキャッチアップしていくかということが非常に大事だと思っています。
また、実際に要対協で要支援家庭に入っている家庭、それに対して市町村、町の保健福祉課であるとか、あるいは学校が支援したいと思っても、なかなかその家庭自体が支援を拒む。そういった中で町あるいは学校がその対応に苦慮しているというケースが見受けられるのですけれども、どれだけ一番子どもの近い場所での市町村であったり学校であったりが、対応力、専門性とか、そういったところをどれだけこれから強化していくかとが課題になってくるかなと思います。恐らく市町村でも地域での力量の差というのは非常に格差が大きいと思いますので、くまなく全市町村できちんとした対応力をつけていくことが、これから必要になってくるのだと思っています。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
星委員、お願いします。
○星委員 星でございます。
自立援助ホームからの話になりますけれども、今からですと20年近く前に児童福祉法の中に自立という言葉がやたらふえてきて、社会的養護の目的をきちんとしたものとして非常にこれは大きな意義があったものだと思いました。それまでは要するに15歳になれば、あるいは18歳になれば社会に出して、あとはどうなろうと知ったことではないという施設がいっぱいあったのですけれども、だんだんそういうことはなくなってきたようには思います。ですけれども、自立というのは終着点ではないのです。自立が何かということをよく考えてみないといけないと思うのですが、単なる1つの節目ではないかという気もするわけです。
自立をどう捉えるかということで、それが目標というようになってしまいますと、どうしても急かすとか、促進するとか、指導することが次に出てきてしまうのですけれども、自立というのはそういうために出てきた言葉ではないのではないか。私も自立援助ホームにいてこんなことを言うのも変ですけれども、職業指導とか大学進学とか資格取得、SSTとかいろいろなことがあって自立のために必要なことだと議論がなされているのです。それは否定しませんけれども、それが中心ではないのではないかという気がしていまして、社会的養護のシステムの中で子どもたちが受け取るべきものの一番大事なものは人の要素ではないか。自分にとって特別な何かが、その子に形成されているのか。心の中に思い出せば心が安らかになる。安心できるような人がいるのかどうか。パーマネンシーという言葉がありますけれども、その問題を言っているのですが、来年の3月いっぱいでいなくなってしまうとか、18歳になったらいなくなってしまうとか、20歳になったらさよならとか、そういう関係ではなく、一生この人と一緒に生きていくんだという存在を誰もが持たなければいけないわけで、一人ぼっちで社会に出してはいけない。一人ぼっちでは生きていけないということを私どももう一回考え直して、いかに保障するかということを誰がどこでやるのかということを、きちんと具体的に検討していかなければいけないのではないかと思います。
○松原委員長 松本委員、お願いします。
○松本委員 北海道大学の松本でございます。
理念ということで考えを述べよということでございますので、理念という言葉をいろいろな施策や取組を支えている、あるいは依拠すべきようなもの、考え方というように捉え直して何点かお話したいと思います。
1点目は、何人かの方が既におっしゃっておられますけれども、子どもの権利を中心とする。その際に、本日の資料では児童福祉法及び児童虐待防止法の理念のところも出していただいていますけれども、我が国の法体系を考えますと1つは憲法、もう1つは子ども権利条約です。憲法というのは、子ども権利というのは人権そのものの歴史の中でできていますので、これまで人類が獲得してきた人権という考え方に乗っているんだということを明確に考えるべきだ。その1つの国際的な合意としての子どもの権利条約ということを位置付ける形で、理念というものを捉えていくべきだということが1点であります。これは当たり前のことでありますけれども、再確認ということであります。
2点目はそれと関わりまして、子どもが大人になっていくプロセスをどう支えるかということが以前から議論になっております。そうすると、子ども期の問題だけではなくて、特に子どもから大人になっていく移行期、若者期の市民的権利の保障。職業、社会参加も含めた市民的権利の保障ということとセットで考えるという観点が重要かと思います。
これは今、星さんがおっしゃったような子どもが社会で生きていく、市民として生きていくときに誰がどう付き合うのかという問題にも関わりますし、また、次世代の世代を養育していく家族がどういう環境の中で形成されていくかという家族の形成の問題にも関わると思いますので、これが2点目です。
3点目は家族の話になりますときに、子ども家庭福祉となってくると家族も大事、子どもも大事という話になってきます。やはり子どもが中心と考えたときに家族という仕組みに依存し過ぎない社会。子どものことは家族というシステムを抜きに考えられません。逆に家族という仕組みに依存し過ぎない。我々の社会というのは子どもの養育あるいは費用にしても養育行為にしても、家族という仕組みに過度に依存している社会ではないか。それを少し和らげるという観点を貫くべきだというのが3点目。
最後に1点です。そう考えますと例えばジェンダー平等の問題です。主な虐待者というのは母親が多いのです。それは母親が養育行為を担当しているからです。特にこれからの家族のあり方を考えるときに男女が平等である社会を目指すという中に、これからの家族の形を考えるということが子ども家庭福祉のことを考えるときにとても大事だと思っています。
以上であります。
○松原委員長 武藤委員、お願いします。
○武藤委員 理念のところでは、何人かの方からも発言されておりますけれども、子どもを権利の主体として尊重すると考えると言える、そこを強調すべきなのではないかと私も同感であります。
ただ、理念的な部分からすると、昭和22年からほとんど理念の部分は改変されていないということで、理念というのはとても重要だと思うのです。ただし、現実と理念との乖離のところがあり過ぎるのではないかと思っております。
第2条で国や地方公共団体の責任という部分を言っているのですけれども、この責任追及みたいなものが現実的に十分されていないのではないかと思っております。結果的には生きる権利や成長する権利、自立する権利が脅かされているという実態があって、やっと子どもの貧困対策などを含めて国をあげてやろうということで始まろうとしておりますけれども、結果的にはその対応という部分が放置されているのではないかと思っていますので、その責任も含めてこの専門委員会の中で明確にしていくことが必要なのではないかと思っております。
もう一点、今回のこの専門委員会の進め方なのですけれども、時間が余りないので短期間の議論になりますけれども、ぜひ現場サイドの提案だとか、積極的にこういうことが必要だということを盛り込んだ検討にしていきたいなと思っています。
また、事者視点といいますか、自立支援なんかもそうなのですけれども、当事者の視点もぜひこの中で、短期間なのですが、盛り込んでいった方がいいのではないかと考えております。
以上です。
○松原委員長 山田委員、お願いします。
○山田委員 山田です。
準備してきた内容は西澤委員、松本委員、武藤委員に先を越されてしまっていて、重複は避けたいと思いますけれども、でもさらに申し上げると、「愛護」という言葉は再考すべきだということとともに、子ども・子育て支援法、子どもの貧困対策推進法、子ども・若者育成支援推進法など子どもに関する特別法はみんな「子ども」という言葉を使っているのに、児童福祉法だけがいつまでも「児童」ということでいいのでしょうか。これらの法律には子どもの定義が書かれていません。児童福祉法にしか18歳未満の者という定義がないわけで、ここできちんと「子ども」という言葉を法律用語に持ち込んだ方がいいのではないかという印象を持っております。
第2条の国と地方公共団体が同格規定になっているというのも絶対見直すべきで、これは大臣もおっしゃっていましたけれども、国、都道府県、市町村の役割分担を明記するということはぜひ盛り込んでいただきたいというところです。それから、松本委員おっしゃっていたとおり、子どもの権利条約との整合性を「児童福祉法」、この後どういう名称になるかわかりませんけれども、改正法に盛り込んで整合性をきちんととっていただきたい。
それから、今までの児童福祉法や児童虐待防止法の改正というのは主に児童相談所、さらには市町村に権限を付与するということで「子どもを守りましょう」というものの考え方で進めてきたわけですけれども、例えば親が虐待しているときに親を支援してもなかなか虐待はとまらないのと同じように、児童相談所や市町村に力がなければ、児童相談所と市町村にいくら権限を与えたって子どもは守れないわけで、そういうパラダイムをチェンジする必要があって、保護者のニーズとか関係各機関、児童相談所、市町村だけではなくて警察や検察もそうですけれども、また裁判所もあると思いますが、関係機関の都合とかニーズよりも、まず子どもの福祉を最優先にするという理念。
今般、私の団体はチャイルドファーストジャパンという認定NPO法人に名称変更したのですけれども、「チャイルドファースト」、「子ども第一の原則」というものをぜひ理念の中に、言葉遣いをどうするかということはまた検討の課題だと思いますけれども、いろいろなこと、いろいろ対立するニーズとか権利とかあるかもしれませんが、子どもの権利を最優先にするという認識をぜひ理念の中に盛り込んでいただきたいと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
井上委員、お待たせいたしました。4分で御発言をお願いします。
○井上委員 お手元に資料を準備しましたので、6ページを見ていただければと思います。
私は大分県中津市から来ました小児科の井上です。専門は発達行動小児科学、地域小児科学といいます。私は人口8万6,000人、出生数830人前後の、ダイハツ車体の本体が群馬から移ってきましたこともありまして出生率、県平均8.5に対して9.8という地域。そして合計特殊出生率も県平均1.56に対して1.86と高くなってきている小規模市町村の一開業医です。
お手元の資料のように、アウトリーチを続けながら子ども虐待臨床に30年近く関わってきました。特に市町村での仕事は20年を超えました。その経験から、子どもの健全な育成、Well-beingや子ども虐待予防の観点から重要と考える取組支援について述べさせていただきたいと思います。
私の立ち位置は、厚生労働省や先生方のような委員会の皆様が先駆的に作成してくださった施策をかみ砕いて、市町村現場にいかに適合させ、地域の現状に合った制度としていくかを行政外部から継続して、また、子どもと養育者に近い立場から模索してきた者となります。
お手元の資料に行きますが、最初のページからいくつか論点をお話していきたいと思います。それと、その前に理念のことがありましたので触れさせていただきたいと思います。理念に関しては社会性の発達、社会化と言うのですが、ソーシャライゼーションの理論を先ほど星先生とか松本先生たちが言ってくださっていましたが、愛着理論の基本というものを明確に出して、それからどのような過程を経て定型発達から逸脱してきた子どもさんたちの状態を理解し、ケアを私たちがしているのかという点を明確にする視点が必要なのではないかと思います。
現在、社会化の定型発達に関して諸外国ではきちんと整っておりますし、それに伴う家族の発達に関しても整ってきておりますので、ぜひ考えていただけたらなと思いました。木ノ内委員も言われていたと思います。
私たちは現在、市町村でやっていますが、大事なのは小さい間は市町村の保健師さんたちを中心にきちんとしたケアをしていくことが大切だと思います。これは既に今まで討論されてきていました冊子を読ませていただきまして、佐藤委員とか中板委員たちがきちんと言われていますが、母子保健に則って最初は入っていくことがとても大事になります。
平成20年度から始まりましたこんにちは赤ちゃん事業の結果、現在7年目になりますが、私たちの地域では気になる家族があった場合、それを地域医療対策課に連絡しますと、ほぼ3時間以内にほとんどのデータがそろってくるという状態になっております。そこに中津市の要対協と児童相談所が緊急性を一緒に考えていきながら、これは児童相談所がメインに関わる事例と判断した場合は、すぐ繋ぐという形にしております。
2ページは健診ですが、健診も集団検診としまして、これも全部私は参加しておりますが、地域医療対策課の保健師がフォローしております。その中に子育て支援課の保健師さんが入り、あるいは家庭支援センターの心理士さんが1歳6カ月、3歳6カ月等に入っていきまして、そこで交流しながら一緒に見ていくという制度を中津では作っています。その結果、顔の見える連携というのが非常に作りやすくなっております。
3ページではヘルシースタートおおいた地域推進対策と言うのですが、これは時間の制限があるのでポイントだけ言います。小児科、精神科、産婦人科が連携できております。この事業は大分県の事業としてあり、それと同時に大分県北部地区産後メンタルヘルス地域連携パスといいまして、中津市内の精神科の開業の先生たちが一緒に作ってくださったシステムができております。このように本委員会の先生方が作ってくださる施策をうまく活用すれば、このようなことができますよということを1つ案として出させていただきましたので、何かありましたら使っていただけたらなと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、私も委員の1人ですので2分いただいて発言したいと思います。
理念のところで言いますと、児童福祉法というのは成立時の時代的な制約があったと思いますので、「される」とか基本的に受け身の言葉が使われています。子どもが主体的にするという形で能動態にはなっていないのです。ですからもしそこまで議論が及んでいけば、そういう表現だけではなくて、実際に子どもが権利主体として我々が一緒にやっていくという理念で、あるいはもちろん代弁することも必要でしょうけれども、そういうことが考えられればいいかなと思っております。
ただ、大きな議論になりますので、まずは子どもの成長、発達を守るという議論も必要かなと思います。
本日、新たな委員会が立ち上がる中で冒頭、少し幅広に養育ということを考えるべきではないか。奥山委員も多くの子どもが虐待通告されても、それは在宅で子育てを継続しているというコメントがありまして、そのとおりだと思うのです。だとすると養育支援のメニューをきちんとどこがどのように担っていくのか。本日は母子保健の話も出ましたけれども、大切なところです。ただ、総合的にやっていくということであれば、生活圏域の中できちんとそういうものが総合的に提供できる、教育も含めてだと思いますけれども、そういう体制を作り上げていく。そういうことに今後の法改正で1歩でも2歩でも踏み出せれば、私としては大きな成果を上げることができるのではないかと思います。
本日は例えば体罰の問題など新たな視点も出ましたし、資格については「子ども家庭福祉士」という新たな用語も出ましたから、今後ワーキングでもいろいろ御議論いただくヒントもいただけたのかなと思います。
さて、皆様の御協力がありましたのでフリーディスカッションの時間を取ることができました。もう名指しはいたしません。私が首を振っている間に手が挙がるのが分かりましたら、順次名指しをしたいと思います。いかがでしょうか。加賀美委員、お願いします。
○加賀美委員 今、言うか、と言われそうな話をさせていただきます。
これからの議論が進んでいく方向性で、そこに到達することを願って児童福祉法改め、子ども家庭福祉法ということを目指したいということを申し上げます。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
他にいかがでしょう。松本委員、どうぞ。
○松本委員 この議論の出発点といいますか、政策的なコンセプトの中に子どもの貧困対策のある種の政策パッケージなり、政策の取組の中の一環としてこれも位置づくというように理解できるような御発言もあったのですけれども、仮にそうだとしますと子ども家庭福祉という領域が、子どもの貧困対策あるいは広い意味での貧困対策とどのように関連するのかということは、全体の議論の中でどこかで一度整理されることが必要かなと思っているのです。そのことが1点。
そういう場合に、子どもを中心とした施策というようになる場合に、家族のところの不平等をどう解決するかというのは大きな話。貧困対策そのものですけれども、家族のところの不平等なり家族でのある種の格差ということが、子どもの方に跳ね返らないような仕組みをどう考えることができるかが、子どもの側から見たときの大きな基本線だろうし、そのことが子どもの権利ということを守ることに重なるんだ。それは貧困対策との接点といいますか、組み込まれていくところの重要な点ではないかと思います。
これは私の考えですけれども、そこももし全体のところで議論があれば。あるいは最後のまとめのところかもしれませんが、そのように思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
ほかにいかがでしょうか。奥山委員、どうぞ。
○奥山委員 先ほど星委員もおっしゃっていたのですけれども、自立、自立というのが独り歩きしていて、みんなが思っている自立というものにかなり違いがあるのではないかと思うのです。特に私の友達からも自立してはまずいのではないのと言われたのですけれども、要するに人間は依存し合わなければ生きていけないのに、一人で立ってしまったらまずいでしょうみたいなことを言われたことがあります。
「自立」するためには、必要な時に依存できる力を育てるということが非常に重要なことになるので、そこの自立ということの意味をみんなで再確認しておくことも必要なのかなと思いました。
松本委員、どうぞ。
○松本委員 今の奥山先生のお話と恐らく関連して、最初に養護という言葉をもう少し広く養育というような言葉に置きかえて広く考えようということの関係なのですけれども、養育というときの主体は誰かということなのです。子どもは誰に育てられるのかというときに、もちろん家族なり親というものを抜きには考えられないわけですが、先ほどから同じことの繰り返しかもしれませんが、親だけでは育てられないというのはごく一般的な姿なんだということを確認する。それは特に世話という意味でもそうですし、あるいは費用調達という点でも今、家族の負担は限界を超えている。費用調達と世話という行為そのものの両方を見直すといいますか、養育という観点から見直したときに、養育の主体という観点を見直したときに、もう少し費用調達の部分をどのように家族から分散できるかということと、世話というものを家族が分散できるかということが基本線かなと思います。養育という観点をもう少し広く。でないと、逆に養育の主体である親の役割の強調ということだけに終わりますと、これは一方で意図とは離れたところで理解されるとなりかねないと考えます。
以上です。
○松原委員長 菅野委員、どうぞ。
○菅野委員 皆さんのお話を聞いていて、私自身、児童相談所で30年以上働いていて、心理職でやってきて、子どもらが発達していく上で何が必要なのか。何が欠けているせいでこのようになってきたのかという課題、問題を抱えた子どもたちの応援をしてきたというのを思い出してみて、今、自立の話がある中で自立と孤立って違うという議論を随分していたと思います。要するに急かす。急げという形です。どんどんと自立していけという話。でも、ある意味モラトリアムの時期、温めていく時期というのが心理療法とかいろいろな支援をしている中で必要だということを随分と肝に銘じて仕事をしてきたなと思います。それを思い出しました。だからある意味、もちろん自立という中に依存もあるでしょうし、協調もあるでしょうし、いろいろな課題があるというところは幅広で議論できたらいいのかなという思いを持ちました。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
加賀美委員、お願いします。
○加賀美委員 自立から養育という流れになるというお話があったと思うのですけれども、松本先生のお話の中で子どもはどこで養育されるのかという話。だからあえて私は新たな社会的養育システムだと申し上げたい。つまり社会的養育システムをどう形成するかが今、求められている。そういう意味で冒頭申し上げた国の施策というところのマクロな観点からも、その議論はしておく必要はあると考えているということと、ついでに自立について、私は自立とは依存のすぐれた形だということを申し上げます。○松原委員長 ありがとうございます。
西澤委員、どうぞ。
○西澤委員 いろいろなことを言って良いということが分かったので、1つは山田先生に言われてしまいましたというか、私が言うべきだったのですが、児童という言葉は問題があると思います。「児」というのは御存じかと思いますが、頭の割れた者という意味で、「童」というのは眉毛に入れ墨が入った奴隷の子どもという意味なのですが、どちらも人としての人格を認めていない言葉で、非常に取るに足らない者という意味になってしまいます。そういう言葉狩りをするつもりはないですが、この際だから変えていただければと思っています。福祉の先生が沢山いらっしゃる中で申しわけない、釈迦に説法みたいですが、日本の福祉というのは家制度に立脚してきたという戦前の歴史があって、非常に安直、安上がりな福祉を作ってきたわけで、戦後,そこをリフォームしていくという流れの中で、いまだに家族依存ということが,精神保健福祉法や生活保護法にも見受けられます。家族に依存する扶養義務といったような,近代の先進国では見られないような規定があって、できるだけ家族で助け合いなさいみたいな恤救規則の精神がいまだに残っておるという状況の中で、子ども家庭福祉法の創設においてそういったところに手をつけることができないか。特に子どもの発達を保障するというのを家族に依存するからいろいろな問題が起こっているわけで、そういったところを乗り越える法律にしていっていただければと願います。
○松原委員長 磯谷委員、どうぞ。
○磯谷委員 私は中身というよりも心配性なものですから、一体この短期間で何をやるのだろうというところが一番心配なわけです。スケジュールを拝見して、私の理解不足かもしれませんけれども、ワーキングを2つ立ち上げて、検討状況については適宜専門委員会へ報告と書かれていますけれども、結局は第2回の専門委員会に報告をするだけのような形なのでしょうか。それともワーキングは何か続いていくようなことを想定しているのでしょうか。もとよりこれまでの会議で論点として挙げられていたもの、さらにはまだ上っていなかったものも「等」ということで議論の対象にしていただけるのか。しかし、そうすると議論の対象が非常に幅広いものになって、はたして多角的に検討していけるのだろうかと思ってしまいます。
わずか数か月の期間でそれをやるのはなかなか困難ではないかと思うのですけれども、そうだとすると、その後も引き続き検討していかなければならないものが多々出てくるのではないか。そのあたりについてもぜひ何か今回法案を出しておしまいということではなくて、しっかり先につながって、しかも次に何をやるとか、そういったところまで見据えた議論ができればなと思います。意見でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。御心配いただきました。
私も委員長という立場でいろいろな議論をしている間に、何も決まらないで通常国会の日程が来てしまうというのは困ると思っておりますので、ぜひワーキングの中でこの期間の中で、これはまず改正をしたいというものが出てきたら良いと思っておりますし、あとは次の議論に委ねる部分あるいは場合によっては少しモデル的にどこかで実施してみるような提案も含めて、実現を図っていくということも一方で大切なことだと委員長として考えております。
木ノ内委員、どうぞ。
○木ノ内委員 今のお話もありますように、広い範囲で議論がされるような、してもいいようなお話なので心配もしていますけれども、西澤委員からも出たように、専門委員会のタイトルにもありますように子ども家庭福祉という問題をもう一回、一つ一つを考えてみると、子ども=家庭の中でということは気になるので、子どもの福祉の中に自治体、地域の問題もありますし、国の問題もあるし、そうやって考えてみるとかなり子ども=家庭の中でというような安易な入り方ではなくて、子ども家庭福祉という3つをもう一回どこかで考えてみる。枠の中では違いますけれども、子ども家庭福祉というだけではない、そこをもう一回乗り越えるような作業をどこかでやりたいと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
では、藤林委員、お願いします。
○藤林委員 私も今から4回のワーキンググループでどこまで議論が深掘りできるのかというのは非常に懸念しているところがありまして、このメンバーを半分にするわけですが、大体このメンバーがどのような意見を話されるということは分かってきたので、この中でどこまで深い議論ができていくというのは疑問に思うところです。
これも今、考えついたことなのですけれども、深掘りしていくために前回の専門委員会でもゲストというか、参考人を呼んでいたように、例えば虐待死亡について長年ずっと研究してきた子どもの虹情報研修センターの川崎センター長さんを呼ぶであるとか、特別養子縁組であれば日本女子大の林先生とか、長く30年以上取り組んできた家庭養護促進協会の岩崎さんであるとか、児童相談所の支援と介入のあり方については愛育研究所の山本先生が長くずっと議論してこられていますし、または資格化についてはこの方面についての専門家を入れていくとか、そういう少しその分野の専門家を入れた深掘りの議論もあるのではないかと思ったところです。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
山田委員、お願いします。
○山田委員 ちょっと話がずれるかもしれませんけれども、第11回のときの資料にも出していますけれども、民法学者の水野紀子先生の資料、論文などを読むと、子どもの権利とか家庭内問題に家裁が関与してこなかったというのは、明治時代、裁判官が少なかったとか、そういった社会的なインフラの問題があって形づくられたものが、結局、百何十年も同じように続いてきてしまっているということがあるので、児童虐待問題、子ども虐待に対して家裁が直接関与してくるということを、12月までに決められるとはもちろんとても思えないので、この点についてはかなり真剣な議論というか、かなり時間をかけた議論が必要なので、この部分はもう少し長期的にワーキングを、別のワーキングを作るなり、ワーキングの中のワーキングを作るのでもいいので、もう少し議論をして今の枠組みを児童福祉法の改正だけではなくて、もっと国家のあり方というか、子どもの人権をどう守っていくかという視点でもう少ししっかり議論していただけないでしょうか。明治時代の遺産をいつまでも引きずっていていいとは私は思っていません。
○松原委員長 ありがとうございます。
前回の民法改正でもかなり時間をかけて、研究会から始まっていますので、十分まさに深掘りした議論が必要なのかなと思っております。
それでは、実際の持ち方みたいなことについてもどうなのかという話もありましたので、事務局からワーキングとの時間日程についてアナウンスをお願いしたいと思います。
○小松室長補佐 御連絡申し上げます。
先ほど委員長から御説明がありました各ワーキンググループへの御参加の御希望につきましては、今週金曜日、11日までに事務局に申していただきたいと思います。本日中に一旦、返信いただくためのメールを私から各委員にお送りしますので、それに御返信という形で御連絡いただければと思います。
次回日程につきましては、各委員の御都合を伺った上で改めて御連絡申し上げます。
以上です。
○松原委員長 磯谷委員がおしゃっていた2回目の専門委員会と3回目の専門委員会の間というのは、どういう間隔になるのですか。
○古川総務課長 結局これから本日をきっかけに議論していただきますので、その状況次第ということでありますが、それなりのまとまった節目に親委員会といいますか、本委員会に御報告すべき段階のところで御報告させていただくということで、議論を踏まえて適宜判断させていただきたいと思っております。
○松原委員長 ということは、場合によっては2回目と3回目の間にまだワーキングをやっていることもあり得る。
○古川総務課長 それはあり得ることだと思っています。
○松原委員長 ということで進めてまいりたいと思います。
では、本日の第1回目の、これは新たなという表題がついて子ども家庭になっていますね。「新たな子ども家庭福祉のあり方に関する専門委員会」を閉じさせていただきたいと思います。ありがとうございました。
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