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2015年8月18日 クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会 第4回議事概要

○日時

平成27年8月18日(火)10:00~12:00


○場所

(株)三菱総合研究所 4階大会議室


○議題

■構成員
 金子座長、大山構成員、津下構成員、友池構成員、永井構成員、長瀬構成員、長谷川構成員、山崎構成員、山本構成員

■オブザーバー
 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室及び健康・医療戦略室、経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課、(一財)NHKエンジニアリングシステム、(株)NTTドコモ、(株)カナミックネットワーク、(株)セールスフォース・ドットコム、DeSCヘルスケア(株)、(株)東芝、(株)日立製作所、KDDI(株)、ソフトバンク(株)、日本電気(株)、日本電信電話(株)、日本ユニシス(株)、富士通(株)

■厚生労働省
 橋本厚生労働大臣政務官、今別府政策統括官、安藤情報政策・政策評価審議官、片岡医療技術情報推進室長

■総務省
 長谷川総務大臣政務官、南政策統括官、池永大臣官房審議官、今川情報流通振興課長、吉田情報流通高度化推進室長

■ゲストプレゼンター
長崎県上五島病院院長 八坂氏
済生会滋賀県病院病理診断科参与 加藤氏
国際医療福祉大学三田病院病理部教授 森氏
東北大学病院病理部副部長/准教授 渡辺氏

○議事

(1)   開会

 

(2)   長谷川総務大臣政務官挨拶

長谷川総務大臣政務官による挨拶が行われた。

 

(3)   橋本厚生労働大臣政務官挨拶

橋本厚生労働大臣政務官による挨拶が行われた。

 

(4)   K 映像デモンストレーション

一般財団法人 NHK エンジニアリングシステムより8 K 映像のデモンストレーションが行われた。

 

(5)   プレゼンテーション

長崎県上五島病院院長 八坂氏より資料4-1、済生会滋賀県病院病理診断科参与 加藤氏より資料4-2、国際医療福祉大学三田病院病理部教授 森氏より資料4-3、東北大学病院病理部副部長 / 准教授 渡辺氏より資料4-4に基づき、それぞれプレゼンテーションが行われた。

 

(6)   意見交換

大山構成員

       モニターの大きさについて、視力 0.9 の人が 30 cmの距離で明視できる大きさは 1 ピクセルあたり 100 μ m が限界なので、 4000 ピクセルで 40cm のモニターを作れば、目がよい人が近くで見ないとその差はわからないというところまでたどり着く。したがって、診断のために画質を追求していくと、モニターのサイズは 20 数インチよりも小さくなってくるかもしれない。

       カメラ側の性能向上も重要であり、 8K カメラのダイナミック・レンジ等が改善しないと、病理診断において期待される水準に及ばない可能性がある。特に色再現では、 3 バンドを超えるバンド数にすれば、同じ 8 ビットでも再現性は変わるので、ただビット数を上げるだけではなく、バンド数を増やすなどして最適解を別途考える必要がある。

       顕微鏡による病理診断は3次元で見ていることになるとのことだが、顕微鏡から得た映像を調整していると思われる。調整の影響はどの程度あるのか。

 

(東北大学病院病理部 渡辺氏)

       顕微鏡の場合は両目による立体視であるため、奥行きのある3次元で見ていることになる。奥行きのある検体から得られる情報は2次元に比べると多い。バーチャルスライドの z 軸を取るといっても通常の立体視とは異なり、顕微鏡の立体視で見えるものを画像にするのはなかなか難しいと感じている。

 

(山本 構成員

       細胞診は、立体視を通じて核の形をイメージすることでわかることもあり、平面画像は万能ではない。かつてモニターもない中で術中迅速診断を毎日行っていたときは、肉眼での所見を重視し、画像のみでは判断が難しいときは、手術現場に見に行った。その後、いくつかの病院ではモニターを見て診断をしていたが、ズームはできても解像度や色再現性が悪く、病理の素養がある外科医の説明を聞きながら見ないとわからないこともあった。一方、 8K のデモンストレーションの映像は、肝臓の表面の小さな白い点も見えており、説明を受けなくても診断ができる。肉眼所見をあの精度でできれば、病理医にとって相当助かる仕組みだと感じた。

 

(東北大学病院病理部 渡辺氏)

       遠隔診断の中で、病理と放射線、皮膚科、脳外科の先生と一緒に総合的遠隔診断をやった際、皮膚の診断には出っ張りや色合いが重要であり、皮膚の画像診断は病理よりはるかに難しいと聞いた。 8K は皮膚科への応用も期待できると思う。

 

(済生会滋賀県病院病理診断科参与 加藤氏)

       K ディスプレイで色を 10 ビットで再現しても、映像の専門家は 8 ビットと変わらないと言っていた。今のバーチャルスライドは 4K には対応しているが 8K には対応していないが、ディスプレイよりは CCD (撮像素子)の問題のほうが大きい。

 

(津下構成員)

       研修医時代に手術室に入って補助的な仕事をしたが、外科手術の様子や技法を補助者の視野から精細に見ることはできなかった。 8K の映像はトレーニングにも非常に有用ではないか。

       遠隔診療では表情などの視覚や聴覚は補えるが、嗅覚や触覚が無い中での診療にもどかしさを感じる。遠隔で診断やカンファレンスする機会は多々あるが、対面ならば患者さんのにおいからそれが病気由来のものかわかるなど、知らないうちに情報を得ていることもあるように思うが、どのようにお考えか。

 

長崎県上五島病院 八坂氏

       患者のにおいや触診の情報は重要。特に虫垂炎や盲腸の場合や、体内に菌が入ると呼気がにおうこともある。触診は、認知症の治療のみならず、一般的な診療として非常に重要。においや触診なしに診断していいのかと感じることはある。

       しかしながら、へき地や離島では医師が不足しており、遠隔診断が一定の役割を担うことで解決できることも出てくる。例えば、一度会ったことのある患者であれば、特にへき地や離島では生活環境や家族環境もわかるので、遠隔地から診察しても、以前の症状と今の症状が違うということもわかる。このように、へき地や離島では長くそこで医師をしている人が多いので、遠隔診断で医師不足を補完する部分もあると考えている。

       また、私の病院には皮膚科の専門医がいないため月に一度来てもらっているが、皮膚の遠隔診断については、 8K により肉眼での立体視と同等のことができると、総合診療医が診察しながら、遠隔から皮膚科の専門医が後ろ盾として診ることで診断率がアップすると思う。

 

(長谷川構成員

       遠隔医療学会での研究では、先ほどの嗅覚などの点もあり、遠隔での初診は難しい。他方、慢性疾患のようなある程度所見が決まったものの経過の管理や、在宅医療といったケアに近いものなど、遠隔医療も適材適所で行っていくべきと考える。

 

長崎県上五島病院 八坂氏

       初診は医療機関で対面で行い、高血圧・糖尿病など定期的な通院が必要なものについては遠隔医療による対応、もし別の病気にかかったらまた病院に行って対面で診断を受ける、といった流れが考えられる。

 

(経済産業省ヘルスケア産業課

       現場の医師と 8K の議論をした際、肉眼の代替ばかりでなく、波長を変えるなどして、目で見えないことも見えるようにしてほしいという意見があった。波長を変えたりして、例えば目では見えなかったものが見えるというような方向性も考えられる。 8K はもっとバリエーションが広いのではないかと思うが、お考えを伺いたい。

 

国際医療福祉大学三田病院病理部 森氏)

       昨年パリで行われたデジタルパソロジー学会で、切片に赤外線や紫外線を当てて癌かどうかをある程度判定するという事例発表があった。いわばデジタル染色のようなもので、今までと同じ染色によるのではなく、波長を変えるなどこれまでとは違うやり方による診断の取り組みも進んでいる。

 

(大山構成員

       8K のような高精細なものも非常に重要であるが、色再現も重要で、その観点からは、 4K のカメラ 2 台分にして、 3 バンドを 6 バンドにするだけで大幅に診断に必要な画像の精度が上がる可能性があるというアプローチもある。

       デジタル染色については、細胞に染料がどう入り込むかと言う形態学的な特徴を光学的にどう捉えるか、すなわち計測できるかにかかっている。まだ研究の域を出ないが、可能性は十分あると考えている。そのためにも色の測定装置は必要で、モニターのほうはよくできているが、カメラのほうの技術開発が必要である。

 

(長谷川構成員

       2 月に遠隔医療学会で外科医に 8K を見せたところ「糸が見える」というコメントがあった。ヘッドカメラで見るのは大変なので、 8K モニターが目の前にあれば、それを見ながら手術したほうがよいのでは、とのことであった。また、これだけ鮮明だと立体感が出て、ただでさえ触覚がないので、かなり助かるということだった。

       INS1500 で遠隔医療をやっていたころは、まさかタブレットで同じ画質で見られるとは思いもしなかった。医療従事者がみな 8K を使うような時代になると、さまざまな用途が広がることを期待している。また、皮膚科については、今はテレビ会議システムでトライアルをやっており、できれば 8K を勧めたいが現状では大変かもしれない。

 

(長瀬構成員

       上五島病院で今使われている遠隔医療システムは三代目とのことだが、初代、二代目、三代目と装置が変化していくとき、連続性という点で問題ないのか。また、費用をどのように工面しているのか。患者が利益を得るわけだが、患者の費用負担はどうなっているのか、患者負担はなしでやっておられるのか。非常に現実的な点について、お伺いしたい。

 

長崎県上五島病院 八坂氏)

       連続性については以前のデータとの比較は必要ない。今の患者さんのためのものなので、連続性についての問題はないと考えている。

       費用は一番の問題点で、今までは全て補助金。例えば、二代目は旧通信放送機構( TAO )の補助金、三代目は地域医療再生基金によるもので、 10 年後、どうするかという問題がまた出てくる。遠隔医療を進めるには、補助金ではなく、診療報酬点数でこのレベルのものを遠隔診療で使えば 10 年分のコストに見合うというような設定がされると遠隔診療はもっともっと進むと思っている。特に医師数が少ない地域は導入の効果があるので高めの診療報酬をつけるなど、どのような地域でどのような利用価値があるかによって診療報酬に差をつけるということもあり得る。前回の改定でも少しそのようになってきたので、これを広げてほしい。

       現在、遠隔診断の患者の負担はゼロである。今でも画像診断には少し診療報酬がついており、救急の場合は無料で診てもらっているが、通常は 1 件当たりの金額を決めて診てもらう側の病院が持ち出しで支払っている。

 

(永井構成員

       8K モニターは素晴らしいと思う。今日は遠隔診断、病理の話が中心だったが、まず現場ですぐ使いたいのは教育。先ほど話のあった手術台の周りの研修医だけではなく、手術中 ICU で待機している医師や看護師が 8K を見ながら今どんな状況か見ることができれば勉強になるし、 ICU で待つことが苦にならない。

       もう一つの方向性としては、できればファイバーの内視鏡に 8K カメラが組み込めればよいが、実現までまだ時間がかかると思うので、まず腹腔鏡手術を8 K モニターで見ながらできるようになれば、外科医はすぐに飛びつくと思う。小型化やカメラの開発は日本が得意な分野だと思うので、ぜひ技術的な面でもこうした点を展開していただければと思う。

 

(友池構成員)

       今日は、色々なところで画像の扱いが工夫されていることを知ることができ、非常にありがたかったが、資金面での持続性が重要である。病理診断や遠隔診療における8 K の活用は現場のニーズがあり、必要度が高いので、補助金だけでなく継続して発展できる工夫が必要。

 

(一般財団法人 NHK エンジニアリング 藤澤氏)

       今回のモニターが 85 インチと大きいのは、ドットピッチを如何に細かくするかということが課題で小型化が難しかったためだが、 55 インチや 13.3 インチのものなども開発できてきているので、表示装置の小型化はあまり大きな問題にはなっていかないのではないかと思う。

       8K 技術は撮影と表示の両方の技術があって効果が発揮できる。逆に言うと、 8K で撮影して 4K 2K の表示装置で画像の一部を拡大して見るというような形態など色々な利用のバリエーションがあり得ると思う。

       波長バンドについては 2K では紫外線に感度のあるイメージセンサーで撮るカメラは開発できており、蝶々の鱗粉などで非常に面白い映像が撮れる。 8K 化はこれからの課題。

       8K 機材のコストは市販レベルに至っていないことから2 K や4 K と比較してまだまだ高い。しかし 4K 対応のテレビやハンディカムがここ 2 3 年で急激に安くなってきていることを考えると、 8K においても低コスト化が進んでいくように思う。また、放送だけでなく医療分野など様々な産業分野で8 K 技術の利用が進むと、それらの相乗効果によって8 K 機器の低コスト化が進むことが期待できるのではないかと考えている。

 

 

(7)   とりまとめ骨子(案)について

 総務省 吉田情報流通高度化推進室長より資料4-5に基づき、とりまとめ骨子(案)の説明が行われた。

 

(8)   意見交換

(金子座長)

       今回の懇談会を通じて、本懇談会の議題については厚生労働省と総務省が一緒になって進めなくてはならないということをひしひしと感じている。経済産業省や内閣官房にも積極的にご参加頂いており、ぜひ連携を進めてほしい。

       とりまとめ骨子(案)の中で、代理機関(仮称)に関する制度整備が検討されているとの記述がある。これは、本人同意や機微性のある個人の情報をどう取り扱うかということと密接に関係することであり、制度化されるとかなりやりやすくなる可能性もあるし、しかし制度設計は難しいと思っている。 PHR やクラウドを使うということと関わりが深い制度になるだろう。この代理機関(仮称)に関する制度設計は現状どうなっているのか。

 

(内閣官房健康・医療戦略室)

       IT 総合戦略室と健康・医療戦略室が共同で事務局をし、関係省庁全てが参加している「次世代医療 ICT 基盤協議会」においては、デジタル化されたデータを適切に利活用していく基盤を作っていくことが大きな目的の一つである。そのときに、国自らデータベースを作って利活用を進めていくという部分もあるが、個人の情報を預かって利活用できるようにする機関を国が認可するような制度を、医療に限らず作っていくことを IT 総合戦略室で検討しており、これを医療にも活用できないかということを、次世代医療 ICT 基盤協議会で議論している。検討中の制度は医療分野に限ったものではないので、その制度を医療の現場に応用した場合に具体的にどのような課題があるかという点を次世代医療 ICT 基盤協議会では議論しているところ。

 

(内閣官房 IT 総合戦略室)

       IT 総合戦略室では、医療に限らずその他のユースケースも含め包括的に捉えて代理機関(仮称)を制度化すべく検討を進めつつあるが、個人情報保護法の特例を制度化する等も含め、分散している個人の情報を個人の代わりにセキュアに収集・管理し、活用するための制度を検討している。例えば、 PHR を具体的に進める上で制度的な障害があれば、検討をしたい。

 

(永井構成員)

       これまであまり議論がなかったのかもしれないが、人工知能や機械学習もテーマとしたほうがよいのではないか。画像の自動診断、データベースを用いた治療方針決定、医療技術の検証やシーズの探索など、人工知能は大きなテーマになるので、ぜひ採り上げていただきたい。

 

東北大学病院病理部 渡辺氏

       東日本大震災の経験から、データを自分で持つのは危険だと我々自身が一番よくわかっているが、災害医療に関する様々な場で、クラウドに上げて医療データを守るというと、何か問題があった時に自分たちの責任になる、という理由で医療現場から強い反対がある。クラウドを使ったデータのやりとりを進めるには、医療現場の人に周知し理解してもらうことが重要。また、責任の所在、ハッキングへの対応などもぜひ検討して頂きたい。

 

(津下構成員)

       PHR は本人にどのようなメリットがあるのかを訴求することも重要だが、医療機関、保険者、国にとってのメリットも示していかねばならない。どういうケースで、どの情報がどのレベルで出していくのかというルールを明確に示さないと不安を招く。また、患者の経済的メリットや医療機関の診療の質が高まることが期待されるが、一方で検査費や薬剤費が減って病院の経営が厳しくなることも想定される。現在のように、再度病院で検査を受けさせれば収益があがるという構造では、なかなか進まないのではないか。保険診療とどうリンクさせて、 PHR を活用するほうがメリットが大きいという制度にしていくかが必要。

 

東北大学病院病理部 渡辺氏

       災害医療の観点からはお薬手帳の電子化が重要という議論がなされている。災害時にお薬手帳がなくなると、どのような病気にかかってきたのかどんな薬を飲んでいるのかわからなくなってしまうため、電子化されクラウドに情報があると便利という議論はあるが、それでも現場の了解が得られないというのが現状。患者、国民にとってのメリットをもっと明らかにすることが必要。

 

(金子座長)

       医療の現場では誰がどのように費用負担するか、どのようなメリットがあるのかということはあまり議論できていない。プレーヤーは事業者や患者、自治体などもおり、国の診療報酬がすべてではないが、コストの分担についての検討は重要である。

 

(大山構成員)

       災害に際し自治体がとるべき対策とマイナンバー制度が始まることとの関係の中で、制度的に議論が遅れているのが、個人番号カードに使われる顔写真の利活用に関すること。現状では、顔写真のデータは保存が認められていないのでカード発行後廃棄することになっているが、災害時のことを考えると、最も有効な生体情報は顔写真である。災害時等においては、個人番号カードに使われる顔写真を、災害時を始め金融や医療など生活に必要なサービスに利活用できるようにすることも必要ではないか。

       PHR については、 20 数年来やってきてなかなか進まなかったが、近年は状況が変わってきている。 2005 年ごろに社会保障カードを検討していた時には、どこの医療機関にかかったのか記録が残れば、その医療機関でどのような診療が行われたかがわかるわけで、医療情報を集約するのではなく各医療機関が安全かつ適正に情報を保管する仕組みを作れば、診療情報がトレースできると考えていた。医療機関側が管理する医療情報等の安全で確実な保管場所としてのクラウドの利用も一つの策として考えられる。個人の医療情報について、健康 保険の資格確認がスタートするとすれば、 情報実体ではなく情報のありか(ディレクトリ)が確実に記録できるので、利活用に向けた第一歩が踏み出せるのではないかと期待している。

 

(山本構成員)

       ディレクトリに関して言えば、厚生労働省の事業をベースに連携医療のためのレジストリサービスの在り方が標準化され、日本における医療の推奨標準を決める HELICS 協議会で一度承認されている。そのうち XCA Cross-Community Access )のレジストリについては OID を使うことが国際規格になっているが、医療保険のオンライン資格確認に使われる公的個人認証サービスのシリアル番号を用いる手法に置き換えることはそう難しいことではない。 XCA HELICS 標準となっており、おそらく近いうちに厚生労働省の推奨標準になると思われるが、今後、例えば、これから行う東京都での病院・診療所間の連携も XCA ベースで行うなど、異なるネットワーク間でも容易に連携を行う時代になってきているので、あと一歩努力すればレジストリサービスの利用は可能になるだろう。

       わが国では糖尿病手帳という仕組みがうまく利用されている。患者数が推定で一千万人、糖尿病手帳が数百万部発行されているので相当のカバー率であり、眼科と内科との連携や病院間の連携など、紙ベースの PHR としてうまく使われている。ただし、紙ベースであるために数百万人のデータを一括して扱うことができないために、日本の糖尿病の状況を一括して分析することができない。正しく電子化されればプライバシーの侵害なども起こり得ず、数百万人のデータを分析すれば糖尿病の現状が解析でき、医療政策や医療経済においても合理的判断が可能となる。

       お薬手帳については、すでに電子化されたお薬手帳がどんどんできているが、薬局間の互換性がなく、他の薬局に行くと違うアプリをダウンロードしなければならないという現状にあり、これではお薬手帳の意味がなくなるので早く手を打たなくてはならない。

       このように、 PHR といっても、これまで全くなかった仕組みを導入するのではなく、お薬手帳、母子手帳、糖尿病手帳など、我が国の診療を支える素晴らしい手帳文化を持っているので、これをうまく電子化・クラウド化し利用価値を高めるのが最初のターゲットではないかと思う。

 

(山崎構成員)

       母子手帳は大変有用だが弱点もあり、例えば虐待や発達障害の疑いは母子手帳に書けないが、医師や先生等の関係者にとっては重要な情報である。こうした情報をどのように分けて使っていくかが問題。

 

(津下構成員)

       現在 2500 万人の特定健診のデータが国に集められ、分析可能となっている。 PHR は、特定健診のように実施することが義務化され、広く使われているものから始めるのがいいのではないか。こうした基盤になるデータの収集・整備は国がルールを決め、現在保険者が健診等の受診勧奨に割いているエネルギーの効率化や政策検討にも役立てていくべきではないか。その上で、例えば、糖尿病など患者の疾患ごとのアプリケーションを本人同意・希望の上で上乗せしていくのがよい。このような形で、性・年齢や病気の種類によって異なるアプリケーションが出てくるとしても、互換性を持たせた上で進めていくことが重要。

 

(9)   長谷川総務大臣政務官及び橋本厚生労働大臣政務官発言

最後に長谷川総務大臣政務官及び橋本厚生労働大臣政務官から発言があった。

 

(10)   閉会

 

 

 

以上


(了)

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