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2015年8月26日 第37回労働政策審議会 議事録

政策統括官付労働政策担当参事官室

○日時

平成27年8月26日(水)
10:15~12:00


○場所

厚生労働省省議室(9階)


○出席者

【公益代表委員】

樋口会長、阿部委員、岩村委員、小杉委員、田島委員、土橋委員、山川委員

【労働者代表委員】

相原委員、板垣委員、逢見委員、神津委員、永芳委員、南部委員、野田委員、畠山委員、浜田委員

【使用者代表委員】

市瀬委員、浦野委員、岡田委員、岡本委員、工藤委員、栗原委員、土谷委員、椋田委員、渡邊委員

○議題

(1)平成28年度労働政策の重点事項(案)について
(2)法案の国会審議状況、分科会及び部会等における審議状況について
(3)その他

○議事

○樋口会長
 定刻になりましたので、ただいまから第37回労働政策審議会を開催いたします。議事に入る前に、8月1日付けで使用者代表委員の交代がありましたので、御紹介させていただきます。お手元に資料1として委員名簿をお配りしておりますので、御参照ください。
 日本郵船株式会社代表取締役会長の工藤委員でございます。よろしくお願いします。続きまして、事務局にも異動がありましたので、報告をお願いします。

○田畑労働政策担当参事官
 8月10日付けで事務局に異動がありましたので報告いたします。総括審議官の勝田です。以上でございます。

○樋口会長
 それでは、議事に入ります。本日の議題は、第1に「平成28年度労働政策の重点事項(案)について」、第2に「法案の国会審議状況、分科会及び部会等における審議状況について」、第3に「その他」となっております。
 はじめに、議題1の「平成28年度労働政策の重点事項(案)」及び参考資料の「『日本再興戦略』改訂2015」について、事務局から説明をお願いします。

○田畑労働政策担当参事官
 労働政策担当参事官の田畑です。議題1「平成28年度労働政策の重点事項(案)」について御説明いたします。資料2をご覧ください。
 1ページですが、人口減少の下でも、我が国の安定的な成長を実現していくためには、「全員参加の社会」の実現を加速させるとともに、人材育成、人材投資、適職での活躍等、労働生産性の向上に資する施策を展開することが必要であり、平成28年度の労働政策の重点事項としては、7つの柱を立てて取り組んでいきたいと考えております。
 2ページ、第1の柱は「全員参加の社会」の実現加速です。1つ目の項目は、就業促進のための取組です。1から6まであります。1は、女性の活躍推進です。育児・介護休業法については、先般、研究会の報告書を取りまとめ、公表しました。今後、労働政策審議会における議論を経て、平成28年の通常国会に改正法案の提出を目指しています。マタニティハラスメント対策の強化として、行政指導や啓発による未然防止の徹底を図るほか、マタニティハラスメントの防止に向けては、平成28年の通常国会における法的対応も含め、事業主の取組強化策を検討することとしています。また、女性活躍推進法(案)が成立した場合には、円滑な施行を図っていきます。女性の活躍推進のための積極的取組の推進として、「女性の活躍・両立支援総合サイト」については、そのユーザビリティの向上、マザーズハローワーク事業の強化などの施策を強化するほか、女性の活躍推進、ワーク・ライフ・バランスの実現、働き方改革の推進等に向け、より効果的に企業等へ働きかけを図るなど総合的な取組を進めるため、都道府県労働局の体制を整備・強化することとしております。
 2は、ひとり親に対する就業対策の強化です。充実策の方向性を取りまとめ、年末を目途に政策パッケージを策定することとしています。また、3ページ目の冒頭にありますように、自治体とハローワークの連携による取組の強化も図ります。
 3は、生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備です。65歳以上の高年齢者の雇用促進、雇用・就業機会の確保、シルバー人材センターの機能強化などに取り組みます。
 4は、若者の活躍促進です。若者雇用促進法(案)が成立した場合には、その円滑な施行を図るとともに、企業が積極的に職場情報を提供できる環境を整えます。また、新卒者等の正社員就職の実現として、新卒応援ハローワーク等における就職支援の推進、就職活動の終了を強要するようなハラスメント的な行為を行わないよう留意すべきことの周知・啓発、労働関係法令に係る知識の付与などに取り組みます。また、フリーター・ニート等に対しては、わかものハローワークや地域若者サポートステーションを通じた支援を強化します。このほか、若者の「使い捨て」が疑われる企業等への対応策の強化として、相談体制の充実や労働基準関係法令等の周知・啓発、重点的な監督指導を行います。
 5は、障害者の活躍促進です。障害者差別禁止及び合理的配慮の提供義務の円滑な施行のため、関係者への周知・徹底を図るとともに、事業主等への相談指導を行います。また、地域就労支援力を強化するために障害者就業・生活支援センターの実施体制の拡充、多様な障害特性に応じた就労促進の推進として、福祉、教育、医療から雇用への移行推進、ICTを活用した多様な働き方の推進、農業分野を含めた障害者雇用の職域拡大、精神障害者の就労支援モデル事業の実施、発達障害者の就労支援の充実・強化、難病患者に対する就労支援を推進することとしています。
 6のがん等の疾病による長期療養が必要な労働者や生活困窮者に対する就労支援の強化等にも取り組んでまいります。
 「全員参加の社会」の実現加速の2つ目の項目は、公正、適正で納得して働くことができる環境整備です。1は、非正規雇用労働者の正社員転換・雇用管理改善の強化等です。「正社員転換・待遇改善実現プラン(仮称)」に基づく取組などにより、正社員を希望する方の正社員化、非正規雇用で働く方の待遇改善等を進めます。正社員就職の拡大も図っていきます。労働者派遣法改正法(案)が成立した場合には、その内容についての周知広報、また、労働契約申込みみなし制度についても周知広報を行います。職業安定措置やキャリアアップ措置の着実な実施のための指導監督体制の強化、特定労働者派遣事業の見直し等に伴う円滑な移行支援及び許可審査体制の整備を引き続き行います。パートタイム労働者については、パートタイム労働法の着実な履行確保を図るとともに、企業表彰等の事業主支援を行います。正社員とパートタイム労働者の均衡のとれた賃金決定を促進するため、職務分析・職務評価の導入支援・普及促進を行います。
 2は、ワーク・ライフ・バランスの実現です。女性活躍推進法(案)の円滑な施行による取組に加え、労働基準法等改正法(案)が成立した場合には、法内容の周知や届出の受理等を行うための体制整備を図っていきます。また、法改正に先立ち、取引環境、労働時間の改善に取り組みます。さらに、働き方・休み方の見直しに向けた取組の促進として、ポータルサイトの拡充、中小企業事業主を支援する助成金の拡充、労働関係法令の徹底に向けて、情報提供等を実施します。テレワークについては、モデル事業の成果を踏まえた周知、普及に向けた支援などを行います。在宅就業については、企業への活用推奨の実施やガイドラインの見直し等を行います。多様で安心できる働き方については、職務や勤務地等を限定した多様な働き方の導入促進を図ります。また、有期労働契約から無期労働契約への円滑な転換を支援します。多様な正社員の導入の促進や、短時間正社員制度の導入・定着支援も行います。過重労働の解消に向けた取組、過労死等防止対策の推進としては、時間外労働や休日労働協定の適正化に係る指導、重点的な監督指導、過重労働解消に向けた労使の取組の促進を行うほか、大綱に基づき、過労死等に関する調査研究等、啓発、相談体制の整備等、民間団体の活動に対する支援など、過労死等防止対策の一層の推進を図っていきます。このほか、3求人内容の適正化に向けた取組、4持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備にも取り組みます。
 第2の柱は、労働生産性の向上です。この柱の1つ目の項目が人材育成を通じた労働生産性の向上です。参考資料の「『日本再興戦略』改訂2015」の7ページ以下に、「未来を支える人材力の強化」に関する記載がありますが、厚労省としても、以下に述べる事項を重点として取り組もうとしております。
 1は、職業人生を通じた労働者のキャリア形成支援です。労働者の職業生活の節目において、定期的にキャリアコンサルティングを行う「セルフ・キャリアドック」(仮称)を推進するための事業主支援、雇用型訓練を行う事業主等への支援の拡充、職業訓練コースの開発・検証を行う事業の実施に取り組みます。また、専門実践教育訓練給付についての検討、教育訓練休暇制度等の導入を行う事業主への支援の拡充、企業に対する表彰制度の拡充や、民間教育訓練機関の質の向上を図るための支援にも取り組みます。
 2は、産業界で活用される実践的な職業能力評価制度の構築等です。対人サービス分野を中心とした技能検定の開発の推進や技術的支援を行うほか、社内検定に取り組む企業への支援、技能検定制度についての見直しや、若年者が受検しやすい環境の整備等に取り組みます。
 2つ目の項目は、適職を得ることを通じた労働生産性の向上です。1は、ハローワーク等におけるマッチング機能の強化です。雇用仲介事業等の今後の在り方について、学識経験者からなる検討会の検討結果を踏まえ、労働政策審議会において議論を行うこととしております。また、ハローワークの求人情報、求職情報について、民間職業紹介事業者や地方自治体等への提供を行い、ハローワークにおけるマッチング機能の向上、「雇用対策協定」の締結の推進とともに、地方自治体が行う業務の一体的な実施にも取り組みます。
 2は、希望するキャリアの実現支援です。労働者の自発的・主体的なキャリア選択を可能にするための環境整備や産業雇用安定センターにおいて「試行在籍出向」プログラムをモデル的に実施する政策に取り組みます。
 3は、早期の紛争解決に向けた体制整備等です。参考資料の「『日本再興戦略』改定2015」の13ページに記載がありますが、これに基づき、予見可能性の高い紛争解決システム等のあり方についての具体化に向けた議論の場を立ち上げ、検討を進めることとしています。また、総合労働相談コーナーにおける相談体制の整備や、都道府県労働委員会の機能の活用促進等による個別紛争の早期の解決促進、会社分割・事業譲渡等の組織の変動に伴う労働関係の在り方についての課題の整理にも取り組むこととしています。
 4は、人材不足分野等における人材確保対策等の総合的な推進です。介護、看護、保育、建設などの分野において、人材確保プロジェクトの実施等による人材確保対策の推進、助成金の拡充や雇用管理改善促進事業の実施による「魅力ある職場づくり」の推進などの政策に取り組むこととしております。
 第3の柱は、地方創生に向けた取組の推進です。地域における良質な雇用の創出・人材育成等としては、若者等のUIJターン支援、地方自治体等と連携した雇用創出や人材育成、地方創生に向けた人材育成事業の実施、産官学による地域コンソーシアムの構築などに取り組みます。また、地域における女性の活躍・働き方改革の推進として、都道府県労働局に設置した「働き方改革推進本部」を通じて、労使団体及び企業トップへの働きかけや、これらの推進を総合的に進めるための体制の整備、強化を図っていきます。
 第4の柱は、外国人材の活用促進・国際協力です。留学生については、就労支援の更なる展開と支援体制を強化するほか、技能実習制度については、技能実習法(案)が成立した場合には、法律の施行を図るほか、外国人労働者の労働条件の確保、及び安全衛生対策の推進を図ることとしております。このほか、現地ビジネス環境整備を通じた日系企業支援の推進にも取り組んでいきます。
 第5の柱は、労働者が安全に健康に働くことができる職場づくりです。第12次労働災害防止計画を着実に推進することとし、第三次産業、陸上貨物運送事業、製造業等についての労働災害の防止、安全衛生優良企業公表制度の普及促進、介護労働者の安全衛生対策に取り組んでいきます。また、東京オリンピック・パラリンピック開催に向けた関係工事等に係る安全対策をはじめとして、建設業における安全対策の充実を図ることとしています。また、職場における健康確保対策の推進として、メンタルヘルス対策の周知徹底、小規模事業場に対する支援の充実、産業保健活動の支援や産業保健スタッフの人材育成等の充実強化などに取り組みます。化学物質取扱業務に従事する労働者の健康確保対策の徹底等では、化学物質のリスクアセスメントの義務化の円滑な施行を図るとともに、最新の知見を踏まえた規制内容の検討を行います。労働者の石綿ばく露防止対策については、その徹底を図り、また、工場労働者型訴訟の和解手続の推進を図ることとしています。パワーハラスメントの予防・解決に向けた環境整備、労働保険未手続事業一掃対策の推進と労働保険料の収納率の向上にも取り組んでいきます。
 第6の柱は、重層的なセーフティネットの構築です。雇用保険制度・求職者支援制度の国庫負担金の本則復帰の国庫負担については、雇用保険法附則の規定に基づき検討することとしております。また、中小企業退職金共済制度に対しては、加入促進を一層推進していくこととしています。
 第7の柱は、震災復興のための労働対策です。東電福島第一原発緊急作業従事者や除染作業を行う労働者の安全衛生対策、震災復旧・復興関係業務における安全衛生等の確保を図ってまいります。
 私の説明は以上でございます。

○樋口会長
 ただいまの説明につきまして、御意見、御質問がございましたら御発言をお願いいたします。

○工藤委員
 工藤でございます。よろしくお願いします。ただ今、御説明がありました最初の「全員参加の社会」の実現加速、これは労働力人口減少の折、大事な施策だと思います。資料2の3ページ、3生涯現役社会の実現に向けた雇用・就業環境の整備に関して、1点だけ述べさせていただきたいと思います。高齢法の改正によって、事業主は65歳の方々の職の確保を求められます。資料に記載のあるとおり、今後は65歳以上の方も是非働いていただきたい。これは当然の成り行きだと思いますし、大事な施策だと思います。そうした中、雇用保険部会で65歳以上の方にも雇用保険を適用するか否かという議論が進んでいると伺っています。この点に関しまして、65歳を超えますと、弊社でもそうですが、健康、体力の面で個人差が出てまいりますので、一律的な対応とならないよう慎重な検討が必要ではないかという点が1点です。
 また65歳以上の方は公的年金受給資格がございます。そういう方々に雇用保険を適用すべきか否かという議論があると伺っております。雇用保険部会で本件を検討される際には、いろいろな観点を加味いただいて、慎重な議論を是非お願いしたいと思います。ちなみに現行制度では、65歳以前から同一事業主の下で働いている方が、65歳を超えてお辞めになるときは、基本手当ではなく一時金の支給を受けています。しかも64歳以降は雇用保険の納付を免除されています。そういったこと等々も踏まえて慎重な御議論をお願いしたいと思います。以上です。

○浦野委員
 浦野でございます。資料2の5、6ページにありますワーク・ライフ・バランスの実現について意見を述べさせていただきたいと思います。7月末に過労死等の防止のための対策に対する大綱が公表されました。従業員が健康でいきいきと働くことが企業の競争力の源泉だと考えており、大綱にありますように過労死をゼロにし、健康で充実して働き続けることのできる社会の実現に向けて、経済界としても積極的に協力してまいりたいと思います。
 これまでも経済界は、機会あるごとに働き方・休み方改革への取組を各企業に促してきており、現在、その気運が非常に盛り上がっています。例えば6月には経団連、日本商工会議所、全国中小企業団体中央会、経済同友会の経済4団体が共同で、働き方・休み方改革に積極的に取り組む企業の事例を紹介するセミナーを開催いたしました。そうしましたら500名以上の方に御参加をいただきました。セミナーでは、働き方の改革にはトップが強いリーダーシップを発揮すること、管理職が適切なマネジメントをすること、そして労使のコミュニケーションが非常に重要であるという認識を出席者全員で共有できたと思っております。
 弊社でもワーク・ライフ・バランスのための制度を導入しており、より実効性のあるものとするためには、働き方を具体的にどのように変えていくべきか労使の研究会で議論しています。先日も発表会を開催したところです。
 次に政府が従来の働き方を見直すきっかけとして呼び掛けている「ゆう活」についてです。先般、榊原経団連会長が塩崎厚生労働大臣より直接要請を受けたことから、会員企業に周知と協力を依頼いたしました。その後、経団連で調査を行ったところ、何らかの形で「朝型勤務」を導入しているという企業の回答が少なからずあり、従来の労働慣行を変革しようという企業の姿勢が非常に強くなっていると感じています。
 弊社では1989年よりフレックス勤務を導入しており、今、約4,000名以上の人が対象となっていますが、最近は中でも「朝型」を選択する社員が目立って多くなってきています。
 今通常国会に上程されている労働基準法改正法案は、多様で柔軟な労働時間制度の創設だけでなく、例えば監督指導の強化や、年5日の年次有給休暇の義務化といった働き過ぎの防止のための取組が盛り込まれた非常にバランスのよいものになっていると感じています。したがって、同法案の早期の成立を経済界としても強く希望しています。
 働き方の見直しそのものは、一企業で解決できる問題ばかりではありません。やはり商習慣や社会風土によるところも非常に大きいと感じています。今後も社会全体の取組となるよう関係者が協力していくことが必要だと思います。厚生労働省には、とりわけ中小企業に対してのきめの細かい施策支援をお願いしたいと思います。私からは以上です。

○神津委員
 私も労働時間法制の関係について、いくつか意見を申し上げたいと思います。
 説明いただいた資料との関係では5ページの労基法改正に関連しますが、まず労働基準監督行政に関して申し上げたいと思います。今年3月の衆議院予算委員会における総理の答弁を契機にしまして、今年5月から、違法な長時間労働を繰り返している企業に対する指導・公表が行われています。これは法令に基づかない公表はできないという、従来の政策の重大な変更であると認識していますが、今回の重点事項には記載はなされていません。
 また、今年4月には、違法な長時間労働を行う事業所に対して監督指導を行う過重労働撲滅特別対策班、通称「過特」を東京と大阪の労働局に新設し、7月には大手小売企業を労基法違反の疑いで書類送検したといった報道がありました。こうした取組については一定の評価はできるわけですが、労働法令違反全般についての実際の送検数ということでいえば非常に限られており、必ずしも厳格な対応が図られていない実情が残念ながらあるのではないかと思います。こういった取組を一罰百戒の取締りに終わらせるということでなく、労働基準監督行政の強化を重点事項と位置付け、全国労働局で労基法違反に対しては毅然とした対応を行うこと、そして業界ごとの集団的な指導を強化することを、まず強く求めておきたいと思います。残念ながら、労使関係の埒外に置かれている職場もかなりあるという実態の中で、そういったことを申し上げておきたいと思います。
 次に労基法改正法案についてです。従来から意見を申し上げていますが、今回の労基法改正案は、長時間労働を抑止するための規制強化策も含まれているものの、労働側からすると、より踏み込むべきと感じざるを得ず、法案に盛り込まれた長時間労働抑止策は必ずしも十分でないということを申し上げざるを得ないと思っています。また、高度プロフェッショナル制度の創設や裁量労働制の拡大といった規制を大幅に緩和する施策が盛り込まれており、極めて問題が大きいと言わざるを得ません。長時間労働を削減することが本来望まれるところなのですが、今申し上げたこの2つの制度は、かえって長時間労働を生み出すことになると強く懸念しています。まずは昨年11月に施行された過労死等防止対策推進法を政府として真摯に受け止め、過労死ゼロの実現に向けて、法整備を含めて抜本的な対策を講じるよう強く求めるところです。
 もう一つですが、7月24日に過労死等の防止のための対策に関する大綱が閣議決定されました。しかし、過労死ゼロに向けた目標が消極的ではないかと感じています。対策の内容も不十分で、過労死等防止対策の効果的推進を国の責務とする過労死等防止対策推進法の要請に応えるものとは言い難いのではないかと感じています。6月に公表された2014年度の労災補償状況によりますと、過労自死が過去最高の99件となっています。これ以上働く者が過重労働によって命を失うような事態は何としても食い止めなければならないと思います。そのためには長時間労働抑制の規制強化は不可欠です。連合としては、各職場で自組織から過労死等を出させないという「連合過労死ゼロ運動」を行うことを、今後2年間の運動方針に盛むべく検討を行っています。過労死の問題は行政の取組だけではなく、労使共通の課題です。これこそ労使が一体となって取り組むことであると使用者側委員の皆様方にも御提案したいと思います。1日も早く痛ましい過労死が職場からなくなるよう、労使が連携して取組を進めることが極めて重要と考えています。以上です。

○永芳委員
 私は、5ページの「1非正規雇用労働者の正規社員転換、雇用管理改善の強化等」に記載のある、労働者派遣法改正案に関し、意見を申し上げたいと思います。
 労働者派遣法改正案は現在、参議院で慎重に審議が行われている最中であり、労働側としては成立を前提に重点事項として掲げることについては同意し難い。この点をまず申し上げたいと思います。
 また、これまでも労働政策審議会本審をはじめ労働力需給制度部会等において繰り返し主張してきたことですが、今回の法案は、世界標準である臨時的・一時的な働き方とする原則に反し、実質的な間接雇用法制となっている点、均等待遇原則が盛り込まれておらず派遣労働者の低所得を放置したまま不安定な派遣労働を拡大する内容となっている点など、労働市場や政策面から見ても大変大きな問題があると考えています。
 また、国会審議におきましても、労働力需給制度部会で議論してきた課題を含め、派遣労働は臨時的・一時的とする原則にもかかわらず過半数組合等が反対しても派遣の継続が可能であること、雇用安定措置の履行確保が全く不十分であること、更に労働契約申込みみなし制度の適用となる派遣労働者への通知義務がないこと、不適格な派遣事業者に対する是正や排除の仕組みが不十分なことなど、非常に多くの課題が浮き彫りになってきています。
 加えて、法案の施行日は9月1日であり、あと6日後に迫っており、法案どおりの施行は困難であると言わざるを得ません。新聞紙上で9月30日施行に修正するとの報道もありますが、仮にそのような修正を行ったとしても、過去の法改正においては成立から施行まで最短で5か月の施行準備期間を置いています。こうした点からしても、もはやこの状態は異常事態としか言いようがありません。今回の重点事項案では労働者派遣法改正案が成立した場合には、その内容について周知・広報を行うと書かれていますが、このような無理な法案改正を行い派遣労働者や求職者が不利益を被るようなことは絶対あってはならない。こうした点を強く申し上げておきたいと思います。以上です。

○市瀬委員
 5ページの働き方・休み方見直しに向けた取組の促進のところで、「仕事と生活の調和に取り組む中小企業事業主を支援する助成金の拡充を図る」とありますが、確かに様々な助成金制度が整備されています。しかし、せっかく助成金があっても十分に活用されず、結果として執行率の低いものもかなりあります。その原因は主に2つあると考えていますが、第1には、使い勝手の問題です。助成金制度を創設したり見直したりする際には、中小企業にとっても使いやすい制度となるように、申請の手続、記入の内容、必要な提出書類、支給要件等についての配慮をお願いしたいと思っています。第2には、周知の問題です。私も本審議会や分科会の委員になって、初めて知った助成金もかなりたくさんありました。せっかく良い助成金の制度があっても、それが知られていないために活用されていないということは残念です。実際にはまだまだ知らない中小企業が多いのではないでしょうか。周知についても工夫をしていただきたいし、商工会議所としても協力をしていきたいと思っています。よろしくお願いします。

○岡本委員
 岡本でございます。私からは労働者派遣法改正法案と、労働契約申込みみなし制度についてコメントさせていただきたいと思います。資料2の5ページに労働者派遣法改正法案について記載がありますが、改正法案は6月19日に衆議院で可決され、現在、参議院厚生労働委員会において審議が行われているところです。この改正法案は複雑な期間制限のあり方を分かりやすくするとともに、派遣業界の健全化と派遣労働者のキャリアアップ機会の強化などを盛り込んでおり、派遣労働者と派遣元・派遣先それぞれにとって意義深いものとなっております。何よりもこの労働政策審議会において審議が尽くされまして、公労使でおおむね妥当と取りまとめたものでありますので、早期に成立することを強く期待しております。併せて、改正法案が成立した暁には速やかに政省令の審議を行い、周知に努めていただきたいと思います。
 また、2012年改正で導入された労働契約申込みみなし制度が10月1日から施行されます。既に7月10日に通達が発出されていますが、この制度は民事的効力を有する規定でありますので、最終的には司法判断に委ねる部分が多く、関係者にとりましては大変分かりにくい内容となっております。先日、東京労働局主催による説明会が実施されたと聞いておりますが、現場での混乱が生じないように、全国的な周知徹底に努めていただくようお願いを申し上げます。以上です。

○畠山委員
 6ページの「4持続的な経済成長に向けた最低賃金の引上げのための環境整備」に関連して意見を申し上げます。資料では「すべての所得層での賃金上昇」との記載がありますが、先月、地域別最低賃金の改定目安が全国加重平均で18円引き上げられました。一方で、家内労働者の最低工賃の見直しは3年に1度とされており今年は2年目にあたりますが、そもそも家内労働者の最低工賃は、家内労働法第13条において「同一地域の同種類似の労働者に適用される最低賃金の均衡を考慮して定めなければならない」と定められています。また、長期にわたって最低工賃が据え置かれているということを改めて認識いただき、最低賃金との整合性を十分踏まえた最低工賃の引上げを各都道府県に対して強く御指導いただきたい。前回の本審議会でも発言しましたけれども、再度のお願いということで申し上げます。以上です。

○南部委員
 私からは、女性の活躍推進について意見を申し上げたいと思っています。女性活躍推進法案は昨日の参議院内閣委員会で賛成多数で可決されましたが、これは先の衆議院の審議におきまして、女性の活躍推進は、「経済成長のためだけでなく、個性と能力の十分な発揮がまず重要である」ことが明確になるよう、法案修正がされています。この内容を実効性のあるものにするために、全ての女性の個性と能力の十分な発揮ということで考えるのであれば、働く女性の過半数を超える非正規労働者についての取組の強化が不可欠です。この法案に基づき行動計画を策定することになっていますが、実態把握が不可欠であり、そのためには非正規労働者を含めた雇用管理区分ごとの実態把握が必須であると考えています。そのためには労使の連携、対話が更に重要であると思いますので、積極的な対応をお願いしたいと思います。
 もう一つは、この女性活躍推進法案について、「事業主等に対する法の内容の周知」との記載がありますが、単なる従来型の周知にとどまらず、本当に法案の実効性が高まるように、そして非正規労働者の底上げになるような積極的な周知を是非ともお願いしたい。
 さらに、本法案は今週中にも成立の見通しとなっていますが、成立した暁には、企業は来年4月施行に向けて女性活躍に関する行動計画策定・公表ということになります。そうなれば今後、都道府県労働局の雇用均等室には多くの問合せ等が行われると思いますが、この均等室自体、正規職員ではなく非正規職員が対応に当たるということが多くあると聞いています。女性の活躍推進を図る部署がこのような実態では、現状の改善は望めないと考えます。重点項目にも記載はありますが、本省の指導強化も含め、是非、推進体制の強化を図っていただきたいと考えています。よろしくお願いします。

○渡邊委員
 私からは2点申し上げたいと思います。まず第1点は中小企業の経営環境や労働生産性の向上についてです。我が国企業の経営環境は、安倍政権の経済政策によって総じて改善しております。しかしながら、中小企業、小規模事業者では円安による原材料価格などの仕入コストが高まっているほか、電力料金の増大や、人手不足に伴う募集賃金引上げによる人件費の増大などといった影響が広がっており、その対応に大変苦慮しております。また、取引先企業の海外進出による受注減少や、地域における人口減少などのマイナス要因もありまして、中小企業の経営強化に大きな改善を見るまでには至っておりません。このような現状を踏まえますと、我が国企業の99%以上を占め、雇用の約7割を支えている中小企業、小規模事業者の活力を高めることが、我が国にとって重要な課題であると考えております。したがって、中小企業の労働生産性を引き上げることは喫緊の課題であります。労使ともにメリットを享受できる柔軟な働き方を推進していくためにも、労働基準法をはじめ、各種の提出法案の早期成立を期待しております。
 第2点といたしまして、雇用保険の国庫負担のあり方についてです。雇用保険の国庫負担のあり方について一言申し上げておきますと、直接、失業の影響を受ける労働者と使用者としての企業、財政金融政策や労働政策によって失業の発生に一定程度関与している国の三者の皆が当事者であり、皆で雇用保険を支えていくことの必要性と過去の経緯を踏まえ、平成4年以来、引き下げられている国庫負担率をできるだけ早期に本則に戻していくことの重要性を、委員の皆様方と認識を共有していきたいと思っている次第です。以上です。

○土谷委員
 女性の活躍推進法案に関して意見を述べさせていただきたいと思います。昨年秋の臨時国会で一旦廃案になり、今国会に提出されました法律案は今週中にも成立する見通しというお話ですが、未だに成立していない状況です。同法案の施行日が2016年4月1日とされており、法案の成立が遅くなればなるほど、常時301人以上の雇用をしている企業を対象に義務規定となる女性の活躍推進に関する取組、具体的には一般事業主行動計画等を、施行日までに準備する期間が非常に短くなることを懸念しています。また、女性の活躍に関する状況把握や女性の職業選択に資する情報公表の項目、行動計画の策定に関する基本的事項等、各企業が取り組む際に必要な事項は法案成立後、雇用均等分科会で議論されて省令や指針で示されると伺っています。各社が計画策定に速やかに着手して、4月1日に間に合わせるために、できるだけ早い時期に示していただくようお願いしたいと思います。
 女性の活躍推進は企業の最重要課題の一つと考えています。女性の割合の多い当社におきましても、女性の管理職比率における数値目標を設定して、その実現に向けて退職抑制と育成、この2点に重点的に取り組んでいます。一例を申し上げますと、新入社員全員にメンターの配置、ライフイベントに合わせて働き方を選べる制度の拡充、また、キャリアデザインセミナーの開催など様々な取組を行っています。
 取組の内容は業種・業態を含め各社様々であると思いますので、省令・指針の作成に当たっては各企業の実情を踏まえた柔軟な対応で、現実的な取組が行われるものにしていただきたく存じます。併せて、法律の施行に向けた十分な周知をお願いしたいと思います。私からは以上です。

○板垣委員
 2ページの「1女性の活躍推進」の1点目に記載のある育児・介護との両立の一層の推進について、意見を述べさせていただきます。
 8月7日に、厚生労働省の有識者研究会が育児・介護休業法の見直しに向けた検討結果についての報告書を取りまとめています。この報告書では、介護休業制度の分割取得を可能とすることや、所定労働時間の短縮措置等の選択的措置義務について介護休業で認められている93日間の期間上限から切り出すことを検討すべきとの考え方が示されています。こうした点については一定の評価ができるものと受け止めていますが、介護休業制度の期間につきましては、現行の93日を延長することに極めて慎重な考え方が示されており、不十分と言わざるを得ません。介護離職を防ぐためのセーフティネットの拡充策となるよう、抜本的な見直しが必要であるという意見を述べさせていただきたいと思います。
 もう1点は、非正規雇用労働者の育児休業についてです。この点については、取得率の低さといった実態を踏まえ、「雇用の継続を前提とした上で、紛争防止等の観点から適用範囲が明確となるよう、取得要件の見直しを検討すべき」との考え方が示されていますが、具体的な見直しの方策については提示がなされていません。有期雇用労働者が育児休業をほとんど取れていない。その背景には有期雇用労働者の育児休業の取得要件が厳しく、かつ、分かりにくいことが存在しています。労働者本人だけでなく企業が制度を知らない、又は誤った解釈をしている。こういったことで、本来、発生すべきでない不利益変更であるとか雇止めなどのトラブルも発生しています。こうした観点からも、有期雇用労働者の育児休業の取得要件に関する抜本的な見直しが求められていると思います。雇用形態にかかわらず、就業の意思のある方が就業継続できるような取組の強化をお願いしたいと思います。以上です。

○野田委員
 私からは、重点事項の3ページから4ページにかけて記載がある、若者の活躍促進に関連して意見と要望を申し上げたいと思います。
 連合本部には、「なんでも労働相談ダイヤル」という労働相談チャネルを設置していまして、多い月になりますと、2,000件を超える様々な悩みとか労働の相談が寄せられています。その分布状況なども見てみますと、業種・業態、更には雇用形態、年代を問わず様々な御相談がありますが、最近の特徴としては、学生を含む若年層の相談が増えているということが挙げられます。本日の新聞で某進学塾に対して労基法違反に係る是正勧告が行われたという記事も拝見いたしましたが、いわゆるブラックバイトと言われるような課題が、大きな社会問題になっています。このブラックバイト問題への対応の更なる強化が必要であるという認識を持っています。今後ともの監督行政の徹底をお願いしておきたいと思っています。
 そうした観点で重点事項案を拝見すると、新たに、高校生の就職ガイダンスに労働関係法令に関する知識の講義を追加するという施策が盛り込まれています。この点は歓迎したいと思っていますが、その際には就職を見据えた知識だけでなく、ブラックバイトの実態に即した知識、内容、更には機会の提供を、是非お願いしたい。厚生労働省として学生を対象としたキャンペーンの実施、更には労働条件に関する情報サイトで学生のアルバイト向けにリーフレットを掲載していることについては承知しており、この点は大事なことだと思っていますが、ブラックバイトでは、「辞めたいのに辞められない」という状況もあると聞いているところです。これらのトラブルに対応できる知識など、実態に即した知識を学生が享受、学ぶことができる機会の提供に向けた施策を検討いただきたいと思います。
 さらに、たとえ法令違反ではないという場合においても、アルバイトという立場の学生に過大な責任を課すという状況も報告されています。学生の本分は学業ですから、学業に支障を来すような働かせ方については問題があると思っています。この問題は、将来を担う若者をどう育てていくかという観点に立って対応するべきですので、労使、更には大学などの関係者が知恵を出し合って取り組む機会が必要ではないか。この点についても検討いただくことを要請申し上げておきたいと思います。以上です。

○岡田委員
 岡田でございます。私から2点申し上げたいと思います。第1は、今、お話がありました若者の活躍促進における若者雇用促進法案の円滑な施行についてです。前回の審議会でも申し上げましたとおり、若者雇用促進法案の内容は、若者の適職選択に向けて環境整備やニート等の対策を強化するものであり、非常に高く評価していますが、前回の審議会から国会での審議に進展が見られないようですので、非常に残念です。新卒を応援する中小企業の認定制度は本年10月からの施行を予定しており、時間的な余裕がありません。また新卒求人の情報提供については来年3月からの実施予定とされていますけれども、学生の就職活動と企業の採用活動に大きな影響を与えるにもかかわらず、未だに制度の詳細が明らかになっていません。法案成立後には速やかに政省令の審議を行って、新制度の十分な周知徹底に努めていただきたいと考えています。企業現場での混乱が生じないように、よろしくお願いいたします。
 2点目は、6ページのセルフ・キャリアドックについてです。能力開発やキャリア形成において自ら保有する知識や能力、経験などを振り返り、今後のキャリアについて定期的に考えることは当然のことであり、重要なことであると考えています。セルフ・キャリアドックといった名称とはしていなくても、自社の研修体制や面談などの場で、そうした機会を積極的に取り入れている企業は増えていると思います。弊社でも事業計画をカスケードする形で各自の目標設定を行うとともに、その遂行に必要なスキルであるとか身に付けるべき能力について、半期ごとに上司と振り返りを行い、自分の今後のキャリアの可能性を広げられるように努めています。また、新卒時、3年目、その後、職位ごとにキャリアの棚卸しを行い、自己の強み、弱みなどの課題の再認識をする機会を設けていますし、能力開発ポイントという形で、主体的に自分の能力を広げていけるような資金的な援助等も行っており、優秀な人材を育成する努力をしてきています。
 このように多くの企業ではそれぞれに合った形での取組をしています。定期的なキャリアコンサルティングが広く普及していくためには、中小企業における取組が鍵となると考えていますが、今後、厚生労働省においてマニュアルの作成であるとか、キャリアコンサルティングの導入実施を行う企業に対する支援を行っていくとのことですので、できる限り分かりやすくコスト面にも配慮した内容とするなど、中小企業でも取り組みやすいものにしていただければと考えています。私からは以上です。

○相原委員
 6ページから記載のある「2 労働生産性の向上」に関連して意見を申し上げたいと思います。
 1点目は、現在、雇用情勢が改善しており、この点は結構なことであると思いますが、この機を捉えて中小企業を含めて職業能力開発を後押しするような「攻め」の施策を打ち出すべきである、ということです。1990年代以降、民間企業における教育訓練費は漸減、低下傾向にあります。人口減少社会を迎えた今、「ヒト」が中心となって、労働人口のマイナスというインパクトを日本全体で乗り越えていくという大変重要な局面にあるわけで、労働政策分野からもその強い決意と具体的な政策を打ち出していくべきだと考えています。したがって、キャリア形成を助ける一層の助成金の充実や、企業と大学が連携して新たな職業開発能力のメニュー開発など、具体的な方策に着手し、実行していくことが必要であろうと思います。
 2点目は、非正規労働者や女性という観点も含めた全ての働く者の能力開発に向けた底上げの施策の必要性についてです。人的資本を蓄積し、その蓄積した人的資本を発揮する機会を増やしていくという観点が非常に重要ですが、言うまでもなく、今や非正規労働比率が4割、女性に至っては非正規労働比率が5割となっていることが現状です。そうした中、正規労働者以外の方に対するOJTやOff-JTといった能力開発機会は十分ではありません。非正規労働者の方にOJTやOff-JTを実施した事業所の割合は、正社員にOJTやOff-JTを実施した事業所の割合と比較しても5割弱と非常に乏しい状況です。非正規労働者に対する能力開発機会をより強化していくことが必要であると思っています。具体的な政策の展開を期待したいと思います。

○逢見委員
 私からは、7ページの「3早期の紛争解決に向けた体制整備等」について意見を申し上げたいと思います。
 「『日本再興戦略』改訂2015」に基づいて、予見可能性の高い紛争解決システム等の在り方について、具体化に向けた議論の場を立ち上げるとされています。これは、いわゆる「解雇の金銭解決制度」の創設を含むものと理解していますが、これは産業競争力会議あるいは規制改革会議などの労働者代表が参加していない場で検討、提起されたものです。ILOの三者構成原則については労働側から後ほど改めて意見を申し上げますが、このような労働政策審議会を軽視するような形で議論を進めることについては、厚労省に対して危機感を持っていただきたいと思います。
 その上で、「解雇の金銭解決制度」についての意見を申し上げます。まず、「『日本再興戦略』改訂2015」では、「解雇無効時における金銭救済制度」と「救済」という表現が用いられています。辞書を引きますと、「救済」とは苦しむ人を救い助ける、とされております。ここで用いられている「救済」する対象は誰なのか。もし、この「救済」という対象に、不当解雇として労働者が訴えて裁判で不当解雇として解雇無効という判決をもらって敗訴した使用者を含むということであれば、これは社会正義から言って、許し難く、国民に対する欺瞞ではないかと思います。
 更に、6月には、厚生労働省から報道発表された予見可能性の高い紛争解決システムの構築に関する調査結果が出されております。これによれば、労働審判の解雇等に関する申立ては1,670件で、そのうち1,195件で調停が成立しております。また、平成25年度の第1審の通常訴訟における解雇の訴えの終局事案は947件で、そのうち和解が444件です。一方、解雇無効という判決が出た事案はわずか195件にとどまっています。このように考えますと、解雇をめぐる紛争はそんなに多くないわけで、解雇の金銭解決制度を議論するような立法事実が乏しく、制度の導入の必要性が本当に高まっているのかということについて、大いに疑問を感じます。そういう中で、本当に議論する必要があるのか。私は制度創設の必要性そのものが乏しいのではないかと思います。
 また、もし仮に議論するということであれば、初めに「解雇の金銭解決制度」の創設ありきではなく、現在労働紛争解決手段として活用されているあっせんや労働審判や和解といった解決手段、特に労働審判については紛争解決システムとして利用者からは高い評価を受けていることを踏まえて、これらの制度がより有効に活用されるにはどうしたらいいかというような観点から、慎重な議論をすることをお願いしたいと思います。
 加えて、解雇法制というのは、雇用システムの安定に直結するセンシティブな問題です。アメリカのようなemployment-at-will、解雇は自由という形に日本もしていくというような方向にいくとすれば、これまでの相互信頼に基づく労使関係を揺るがしかねない。また、日本の強みである従業員の高いロイヤリティも損ないかねないという懸念を孕んでおりますので、その意味での慎重な議論をお願いしたいと思います。

○栗原委員
 私からは、経験を踏まえ、2つほど意見を述べさせていただきたいと思います。一つは、4ページの障害者の活躍促進です。障害者の差別禁止、合理的配慮義務について、平成28年4月から施行されます。現在、平成30年の法定雇用率に向い、進んでおります。その中で、特に今問題になるのが、精神障害を持たれている方に関してです。ハローワークに募集に行きますと、精神障害の方を多く紹介されます。なかなか雇用経験のない企業が紹介されることに対して、トライアル雇用という1年間のすばらしい制度をつくっていただきました。ただ、雇用の中でトラブルやいろいろな問題が出てくるという話も聞いております。ですから、ここで精神障害の就労モデル事業を実施ということで、いろいろと制度を考えていただいているわけです。平成30年に向けてあと3年あります。ですから、その間にもう少し内容を踏まえながら、少しずつ方向を探っていっていただき、またいろいろな施行をしていただきたいと思います。
 もう一つは、8ページの技能実習制度の問題です。外国人の活用の件ですが、技能実習について、私どももいろいろと海外からの技能実習制度受入れで、実習雇用をしていた経験もあります。ただ、雇用の受入側もさることながら、海外の送り出し側にも問題があると思っております。そのあたりで、円滑な推進をするためには、送り出し側も受入側も、国でいろいろなチェックができるような方向付けができれば、円滑にいくのではないかと思っております。

○椋田委員
 私から9ページの安全衛生について、一言意見を述べさせていただきたいと思います。言うまでもなく安全衛生は企業活動の基本中の基本であり、これはいつの時代も変わることがないと思っております。事業者は、労働者の安全の確保あるいは健康の保持に当たって、しっかりした対応をとって責務を果たしていきたいと思っております。特に9ページをみますと、建設、製造、陸運といった各業種の安全対策の面から、メンタルヘルス対策、化学物質の取扱いにおけるリスクアセスメント、石綿のばく露防止対策、パワハラ防止といった多岐にわたる対応が事業者に求められております。これらは事業者にとっても大変重要な課題だと受け止めているところです。
 また、(2)の中に職場における健康確保対策の推進ということで、労働者の治療と職業生活の両立支援を推進することが書かれております。事業者は、こうした面でも両立支援に力を尽してまいる必要があると思っております。ただ、どうしても業種や業態、規模などが異なるために、企業ができることに濃淡が生じている、あるいは生じてしまうことは避けられないと思っております。一律に高いレベルの対応を求められても、応じられない事業者が出てまいります。厚労省が事例集を出していただいていたかと思いますが、個々の事業者が事例集などを参考にしながら、それぞれの置かれた状況に照らしてベストと思われる対応を自ら行うことが重要と思っております。その上で、行政には、十分な対応を行えない事業者に対する支援策をしっかりと講じていただきますよう、この場を借りてお願いしたいと思います。

○浜田委員
 私も、労働安全衛生について、大きく3点ほど意見を申し上げます。
 まず1点目。9ページの(1)に、12次防の記載がありますが、12次防では平成25年から5年間で死亡災害、死傷災害を15%減少させるという目標が定められた上で、重点業種ごとに個別目標と対策が掲げられています。私も長年第三次産業で働いておりますが、第三次産業のうちの小売業、飲食店では20%以上、介護などの社会福祉施設では10%以上の死傷者数を減少させるという目標が設定されています。ところが、平成26年までの実績をみると、現在の進捗状況では小売り・飲食店でそれぞれ2%悪化し、社会福祉施設に至っては11%悪化するといった真逆の結果が出ているのです。そうした状況にあるにもかかわらず、平成28年度に実施すべき重点項目の中には、12次防の目標達成に向けた取組に関する具体的な記載がない。この点に問題意識があるということを一つ申し上げておきたいと思います。
 次に2点目。第三次産業においては、努力している企業もあるかとは思いますが、歴史のある製造業の企業と比べて、労使ともに労働安全衛生に対する意識が低い職場も存在するのは事実ではないかと思います。労使の意識改革は大変重要であり、これまでの職場レベルでの取組を振り返りますと、職場の安全衛生の体制整備が非常に重要だと考えております。政府は、昨年3月に「安全推進者の配置などに係るガイドライン」を示していますが、その中では安全管理者等の選任が義務付けられていない業種があります。選任が義務付けられていない業種であっても、常時10人以上の労働者を使用する事業場に安全推進者を1名配置するなどして、第三次産業又は中小、零細企業での安全第一という意識改革が行われるよう求めたいと思います。
 最後に3点目。本日の資料では「各業種の特性に応じ、労働災害の防止を図る」とありますが、私は労働安全衛生というのは人の命に直結するものであると思っています。政府は、政策の基本に「安全なくして労働なし」ということを位置付け、労働衛生行政にあたっていただきたい。この点を改めてお願いを申し上げたいと思います。その意味で、例えば、労働基準監督官を増員して監督指導を強化することや、労働安全衛生施策の周知徹底を図ること、更には業界団体の集団指導を行うなど業種別の対策に必要な基本的対策も是非強化をしていただきたい。平成28年度には、予算措置が必要な政策も含め、これまでよりも更に踏み込んだ対応を検討し、実施するようお願いしたいと思います。

○神津委員
 労働時間の問題について、一言補足をさせていただきたい。先ほどの発言の中で、残念ながら労使関係がない職場の実態も踏まえての対応が必要という視点で意見を申し上げたのですが、使用者側の浦野委員からの御意見も含めて、前向きな経営者が改革を進めておられるところも多々あるということも十分承知しています。また、労使関係の中でしっかりと時短に向けた取組を進めている職場もあると理解をしているところですが、そうでない職場がいかなる実態にあるかということに目を向けなければならないと思います。よく言われる表現として、ダラダラ残業といった表現が安易に使われますが、ダラダラ残業ということ自体がおかしな話で、残業というのは、上司と部下の認識の共有の下で、上司の命令に基づき実行されるのが本来の姿です。先ほど申し上げた過労死撲滅に向けた労使共同の取組の提案も含めて、経営管理、マネジメント改革が重要ではないかということを補足的に申し上げておきたいと思います。

○樋口会長
 御意見が主だったと思います。特段御質問はなかったと認識しておりますが、事務局から何かありますか。

○生田職業安定局長
 これは、個別に答えていると相当長い回答になってしまいますので、皆さんからいただいた御意見については十分頭に置きながら対応していきたいと思っております。65歳以降の高齢者への対応、あるいは派遣法の施行に向けての対応、若者雇用対策、あとは雇用保険の国庫負担の問題、あるいは障害者の雇用の関係など、様々な御意見をいただきましたので、きちんと対応していきたいと考えております。

○岡崎労働基準局長
 労働時間等いろいろな御意見をいただきましたが、私の感じているところでは、労使ともに過労死はいけませんし、働き過ぎもいけないと思っていただいていると思います。それをどうやって進めるかと、やはり一部にそのような方向に向かっていない企業もあるのも事実です。そういうところに、どうやって厳しく対応していくかを含めて考えていかないといけないと思います。法律については、いろいろな御意見があることは承知しておりますが、その中でもいろいろなきっかけになる部分もありますので、私としましてはまた審議会でもいろいろな御意見をいただきながらではありますが、とにかく働いている中で労働災害や過労死も含めて、そのようなことがないような社会をどうやってつくるかということで努力していきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○宮川職業能力開発局長
 職業能力開発は、まさに攻めのという形で御意見をいただいたところです。今回、成長戦略を踏まえたセルフ・キャリアドックや助成金の活用、非正規労働者に対する能力開発など様々な対策について、今日の御意見を踏まえて然るべく対応していきたいと思います。また、技能実習制度は現在法案の審議中ではありますが、相手国との関係についても整理させていただきたいと考えております。よろしくお願いいたします。

○安藤雇用均等・児童家庭局長
 女性の活躍推進、また育児・介護休業法の見直しについて御意見を頂戴いたしました。これは、このあと予定している雇用均等分科会でも御議論いただくことになりますので、本日いただいた御意見を踏まえながら充実した御審議ができるように努めてまいりたいと考えております。また、最低工賃についての御指摘がありました。これは、地方労働審議会で御判断をいただく部分がありますので、そちらの公労使の御意見を丁寧に伺いながら、適切な最低工賃の決定の在り方が実現されていくように、事務局である都道府県労働局を指導してまいりたいと考えております。

○樋口会長
 労使双方からそれぞれ御意見をいただきましたので、これについても是非、今後御議論を進めていただきたいと思っております。また当面、予算編成作業があるかと思いますが、厚生労働省には委員の皆様の御意見を反映できるような形で進めていただきたいと思っておりますので、よろしくお願いいたします。
 それでは、次の議題に移ります。議題2「法案の国会審議状況、分科会及び部会等における審議状況」について、事務局から説明をお願いいたします。

○田畑労働政策担当参事官
 はじめに私から、第189回通常国会における法案審議状況について説明いたします。資料3をご覧ください。前回5月13日の本審で御報告して以降、変化があったところだけを説明いたします。1の女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案ですが、6月4日衆議院本会議で可決され、今参議院で審議中です。先ほど委員の方からの御発言にもありましたが、昨日の参議院内閣委員会で採決されている状況です。その点を補足いたします。4の労働者派遣法の改正案ですが、6月19日に衆議院本会議で可決され、今、参議院において審議中です。前回からの変化があった部分は以上です。

○岡崎労働基準局長
 資料4をご覧ください。資料4-1の労働基準局関係の分科会等の審議状況です。一つ目の安全衛生法関係ですが、昨年の国会で成立しました労働安全衛生法の施行に関わって、施行日を決めたり、あるいは化学物質のリスクアセスメントについての対象物を決めたいというような政省令です。
 2つ目は電離則ですが、これは原発における緊急作業時の特例について、あらかじめ決めておこうと。福島の場合には、特例的に後追いでやりましたが、あらかじめ枠組みを決めておこうということで省令を改正したものです。そのほか安全衛生関係で、ロープ高所作業や防虫剤等に用いられるナフタレン等の問題、あるいは鋳物の製造工程の粉じんの問題など、いくつか必要なものについて省令改正をすることになっております。5ページは中小企業退職金関係です。1つ目は利回りの見直しです。2つ目は独立行政法人関係の施行のための政令です。
 最後に、目標の関係については、19ページから別紙としてありますが、目標について年次有給休暇、あるいは週労働時間60時間以上の方の目標について、前年よりは良くはなっているのですが、目標には届いていないということです。これもいろいろ御議論はありますが、今提出をしております改正法の中でもこれに関わるものもありますので、そういったことを含めて対応していきたいと思います。20ページは、安全衛生についてです。先ほど少し御意見もありましたが、平成24年と比べると、やや減ってはいるのですが、目標との関係ではうまくいっていないのではないかということです。特に、業種等にもよりますので、そこについてはしっかりやるようにということになっております。

○生田職業安定局長
 21ページ以下の資料4-2、23ページです。1つ目は、建設雇用改善計画(第九次)案の検討についてです。これについては、建設労働者の雇用の改善等に関する重要事項を定めております現行の建設雇用改善計画(第八次)の期間が今年度末になっております。このため、建設労働専門委員会において、平成28年度からの5年間の第九次建設雇用改善計画のための検討を開始していただいたところです。今後、今年度中の告示に向けて更に検討を進める予定です。
 2つ目は、2014年度の年度評価及び2015年度の目標設定についてです。これについては、2014年度の年度評価、2015年度の目標について、今年8月5日に開催されました第106回職業安定分科会において御審議をいただきました。今後、委員の皆様からの御意見も踏まえ、内容が確定し次第、公表することとしております。
 3つ目のその他ですが、一体的実施事業、及びハローワーク特区、あるいはハローワークの求職情報の提供について御検討、御審議いただいております。5月13日以降の安定局所管の分科会等における審議状況については、以上です。

○宮川職業能力開発局長
 職業能力開発分科会関係を説明いたします。資料の35ページをご覧ください。分科会は7月23日に開催し、内容は2点でした。1点目は、専門実践教育訓練の指定基準の見直しです。文科省において創設されました「職業実践力育成プログラム」のうち、一定の要件を満たすものを加えること、更には、現行制度では対象とされていないプログラムのうち、中長期的なキャリア形成に資すると考えられ、他の対象過程の類型と同等の水準を満たすものについて、新たに専門実践教育訓練の対象にすること等に関し御議論いただきました。資料等については36ページ以降に付けております。委員からの御意見を踏まえ、引き続き検討することとしております。
 2点目は、2014年度の実績評価及び2015年度の年度目標です。具体的には41ページ以降です。41ページが2014年度の実績評価です。また、43ページに2015年度の目標一覧を載せていますが、それについても設定することを議論させていただきました。2016年度の目標設定に当たっては、自己啓発や企業内能力開発の政策効果等を図る目標の在り方について検討していくことが適当である等の御意見をいただいたところです。今後、内容が確定し次第、公表する考えです。

○安藤雇用均等・児童家庭局長
 雇用均等分科会については、前回5月13日の労政審以降今日まで開催がありませんので、分科会の議論の概要は報告できませんが、雇用均等行政をめぐる動きが様々ありましたので、47ページの1枚紙に沿い、今後想定される議題についての説明を申し上げます。
 まず、本日午後2時から雇用均等分科会の開催を予定しており、本日は平成21年の育介法の改正に当たり、それに付けられた附則第7条検討条項を踏まえ、研究会において検討しました報告書について委員の皆様に御報告をし、その内容についての御議論をいただくことを予定しております。また、2014年度の雇用均等分科会の年度目標の評価と2015年度の目標設定についても御議論いただきたいと考えております。
 また、女性の職業生活における活躍の推進に関する法律案については、先ほど説明がありましたように、昨日25日に参議院の内閣委員会で採決が行われ、近日中に成立する見込みと考えております。施行期日が来年4月1日ということで、法案が成立した後には省令・指針について審議会で速やかに御議論をいただけるように努力をしてまいりたいと考えております。
 マタニティハラスメント対策の強化については、雇用均等分科会においても女性活躍推進法案を御審議いただく中でも御議論いただいた経緯もあります。また、6月26日に政府の「すべての女性が輝く社会づくり本部」の中で、女性活躍加速のための重点方針2015を決定し、この中でもいわゆるマタニティハラスメントの防止に向けて、次期通常国会における法的対応も含め、事業主の取組強化策を検討するとされたところです。こうしたことを踏まえて、分科会においても今後、男女雇用機会均等法などの見直しについて御検討いただきたいと考えております。

○樋口会長
 ただいまの説明について、御意見、御質問がありましたらお願いいたします。よろしいですか。よろしければ、議題2は以上といたします。
 最後に、「その他」ですが、先日、雇用政策研究会の報告書案の中間とりまとめが行われました。これについて、事務局から説明をお願いいたします。

○生田職業安定局長
 資料5をご覧ください。雇用政策研究会の中間とりまとめです。樋口会長に座長をお務めいただいております雇用政策研究会では、昨年の2月に「仕事を通じた一人ひとりの成長と、社会全体の成長の好循環を目指して」を副題とした報告書をまとめていただきました。その後、労働市場において人手不足感が高まっているということ、あるいは人口減少下の我が国の喫緊の課題であります「地方創生」について、国と地方が総力を挙げて取り組むことになったことなどを踏まえ、昨年2月の報告からあまり間を置きませんが、再度研究会を開催し、前回の報告書で言及した様々な論点のうち、「人的資本の質の向上」、「全員参加の社会にふさわしい働き方の構築」、「人手不足産業」あるいは「地域の雇用機会の確保」などについて焦点を当てて、更に掘り下げた提言を行っていただきました。この概要について報告いたします。
 まず、今回の報告書案のポイントですが、「人口減少下での安定成長」をいかに実現していくかが非常に大きなテーマです。その場合に、労働力の質の向上という観点からの「人的資本のポテンシャルの最大発揮」と、労働力の量の確保の観点からの「構造的な人材不足への対応」という2つの大きな柱を立てております。
 左側の人的ポテンシャルの最大発揮ですが、これについては「幼児期から高齢期までの生涯を通じた能力開発」と「個々の能力が最大限発揮される環境整備」という2つの項目を盛り込んでおります。上の「幼児期から高齢期までの生涯を通じた能力開発」については、就学前や学校教育の段階では、学びの中で基礎能力を向上させ、就職後については働きながら能力開発を進めることと、節目節目におけるキャリアコンサルティングの実施により、能力の棚卸し、あるいは職業生活設計の明確化を図っていくことが望まれるところです。それと同時に、正社員以外の方々のキャリアアップ支援、あるいは正社員化を進めていくことも重要です。こうした取組により、働く方々の能力を高めることと併せ、その能力を最大限発揮できるような環境を整備することも重要です。これについては、マッチング機能の強化などにより我が国全体での人材の最適配置を進めるとともに、長時間労働の抑制、あるいは「多様で柔軟な働き方」の推進、公正な処遇の実現、ハラスメント対策の推進が求められるところです。
 次に、「構造的な人材不足への対応」です。これについては、上にあります「人材不足分野における対策」ですが、行政と業界団体などが連携し、労働条件などについて改善していくことが重要です。それから、人材不足を好機と捉えて、省力化を通じた技術革新を進めること、あるいは個別分野の状況に応じた支援を進めていく必要があります。「地域雇用対策」については、これまでの地域間の雇用機会の格差対策という観点にとどまらず、「人口減少対策」を念頭に検討していくことが求められております。その際には、「人の生活を支える」という視点が重要です。この視点に立ち、各々の年齢層に応じた人材還流のための施策、あるいは人材育成施策を実施すること、それから、良質な雇用を創り出していくこと、地域の関係者が連携して地域の特性に応じた施策を推進していくことが重要です。
 まとめとして、こうした取組を通じて、労働生産性の向上を図るとともに、構造的な人材不足が生じている分野や地域における生産能力の確保を図り、経済成長、ひいては国民生活の物心両面での向上を実現していくこととしております。以上のような内容で、中間的なとりまとめをしていただいております。

○樋口会長
 ただいまの説明について、何か御質問、御意見がありましたら、御発言をお願いいたします。よろしいでしょうか。それでは、このほか何か御発言がありましたらお願いいたします。

○阿部委員
 前回の本審議会で勝委員から、労政審の議論の在り方に関して、分科会ごとに分かれて議論を行う中で、全体の整合性がきちんと確保されるように審議を進めていくことが必要なのではといった御意見があったと記憶しております。私も、職業安定分科会あるいは雇用対策基本問題部会で審議を進めていく上で感じたことがありますので、この際、意見を申し上げたいと思っております。
 先ほども紹介がありましたが、昨年秋からいわゆる若者雇用促進法の議論を雇用対策基本問題部会と職業能力開発分科会の双方で同時並行的に議論をしてまいりました。結果として特段の問題は起こってはいないと思っておりますが、雇用対策基本問題部会と職業能力開発分科会の議論がお互いに目指すべき方向でいくのか、そしてゴールにたどり着くのかと、当初不安を覚えたところです。
 我々が検討すべきテーマの中には、複数の分科会あるいは部会にまたがって議論するような内容のものもあると思いますが、こういったテーマの議論に当たっては、事務方たる厚労省で密接な連携を図りつつ、審議会の運営を進めていただくだけでなく、必要に応じて分科会あるいは部会の合同開催などを検討していただきたいと思っております。
 また、労政審ではこれまでも審議の過程で委員以外の方からヒアリングなどを行うといったことをやってきたと思っておりますが、労働政策の重要性に応じて、今後ともそうした運営上の工夫等をお願いしたいと思います。よろしくお願いいたします。

○樋口会長
 ほかにいかがですか。

○岩村委員
 私からも、労政審の議論の在り方について、少し意見を申し上げたいと思います。あらかじめ、私のほうで事務局にお願いしておりますので、資料を配っていただいて、それを基にお話しさせていただきたいと思います。
 今日、説明がありました来年度の労働政策の重点事項、あるいは次期通常国会に向けての法令等の議論が今後、各分科会あるいは各部会で行われていくことになると思っております。こうした議論を進めていく上で、労働政策の基軸となる考え方を今の時点で改めて確認しておくことが有益ではないかと考えた次第です。
 今、事務局からお配りいただきましたのは、平成19年12月に、この本審の場で議論をしまして、雇用労働政策の基本的考え方についてまとめた建議です。一番分かりやすいのは、資料の4ページだと思います。ここに、この建議の概要がまとめられております。そこにもありますように、雇用労働政策については、中長期的に一貫性があり、かつ実効性の高いものであることが必要だと思います。この建議においては、その基軸となるものとして、3つのポイントを挙げております。第1は公正の確保、第2は安定の確保、第3は多様性の尊重です。
 第1の公正の確保については、豊かな活力ある経済社会にふさわしい「公正な働き方」を確保すると具体的に述べられているところであり、例としては集団的労働条件決定システムの重要性の再認識や、働き方に関わらない公正な処遇の実現といったことが挙げられております。
 第2の安定の確保については、より具体的には職業の安定、すなわち「雇用の安定」と「職業キャリアの発展、安定」を確保すると述べられているところであり、雇用の安定については、例えば正規労働者としての就労を希望するパートタイム労働者等の正規労働者への転換支援、また、職業キャリアの発展、安定については、非自発的失業者、積極的な転職希望者の双方に適切に対応するために必要であるとして、雇用のセーフティネットの整備が挙げられております。
 第3の多様性の尊重については、これは労働者の能力発揮、企業による人材活用のための「多様な働き方」を選択できるようにするということが挙げられております。具体例としては、女性・高齢者・若年者・障害者等の多様なニーズに応じた就業支援が挙げられております。こうした3つのポイントについて、これらが重要であるということの認識が、この建議において提言され、これがこの審議会において共有されていると考えられております。そして、これを踏まえて労政審の審議を積み重ねていくことが必要不可欠だと最後に結ばれております。
 この建議については、私自身も当時、この本審の委員として関わっていたところです。この建議で述べられている、いわば前提となる事実の認識については、現在でもそれほど大きく変わっているものではないと思います。ですので、現在においてもこの建議の考え方は今後の労働行政を考える上での基本的な考え方として、なお価値があるものと考えているところです。したがって、各委員におかれましても、こうした建議が既にこの審議会において出されていることを十分に御認識いただいた上で、今後審議会に臨んでいただくことが、分科会あるいは部会における議論を有益にする上で非常に重要だと考えるところです。どうぞよろしくお願いいたします。

○樋口会長
 労政審での議論の在り方に関して、阿部委員から運営面、合同部会の開催やヒアリングの実施について御意見をいただきました。また、岩村委員から、今後の議論を有益なものとするために、かつて労政審で取りまとめた基軸となる考え方を踏まえて審議を行っていくべきだという御意見をいただきました。いずれも、労政審の審議を的確に進めていく上で重要な御意見であると私も認識しております。そして、また私どもも公益委員会議という形で勉強会を始めておりますが、そこで日本の労働市場をどうしたらいいかというようなことも含めて、意見をまとめていきたいと思っております。
 阿部委員の御意見については、事務方できちんと受け止めて、今後の運営について対応をお願いしたいと考えております。また、岩村委員の御意見については、各委員がその趣旨を汲み取っていただき、今後の労政審の審議に臨んでいただくことを私からもお願いしたいと思っております。
 このほか、何かありますか。

○神津委員
 関連する話ですが、労政審の在り方について、労働側から意見をいくつか申し上げたいと思います。
 1点目は、以前から何度も申し上げているのですが、労働政策の決定プロセスの在り方です。高度プロフェッショナル制度の創設などの労働時間法制の在り方については、労働者代表の参画していない産業競争力会議の場で議論され、閣議決定され、そして労政審ではその後の具体化の検討だけを行うといった進め方が取られたことについては、極めて遺憾だと言わざるを得ないと思います。また、高度プロフェッショナル制度の創設以外にも、例えば学び直し支援措置の導入やセルフ・キャリアドック制度の創設などについても、同じく三者構成原則の場以外で導入の方向性や枠組みが既に決定されているということで、こういった政策立案の在り方には非常に強い違和感を覚えております。
 2点目は、労政審の在り方に関わる意見です。若干重複する面もありますが、労政審は厚生労働大臣の諮問に応じて労働政策に関する重要事項を調査審議するということが第1の所掌事務とされています。また、阿部委員の御発言にもありましたが、労政審には、分科会や部会が多数設置され、それぞれの担当部署によって運営をされておりますので、例えば均等待遇の在り方といった局横断的なテーマの審議が行いにくくなっている面についても指摘をしておきたいと思います。
 また、岩村委員から発言があったことも頭に置いた上でなのですが、労政審としては、諮問を受けて審議を行うということだけではなく、公労使が責任ある立場で真摯な議論をし、積極的に大臣に建議をしていくことも必要ではないか。岩村委員が指摘された建議の事例もありますが、更に深掘りをしていくことも必要があるのではないかということを労働側からの問題提起として発言をしておきたいと思います。

○樋口会長
 使用者側、何かありますか。よろしいですか。本日、いろいろ御意見をいただきました。また、労働者委員から、特に労働者派遣法の一部改正案について、改めて御意見をいただいたところです。これらの法改正に関しては、関係する分科会での調査審議を重ねた後に、審議会として建議を行ったものですし、またこれを受けて厚労省が法律案要綱を作成し、その要綱の諮問に対して審議会としておおむね妥当との答申を行ったものです。労働基準法の一部改正法案要綱については、労働者側委員から、高度プロフェッショナル制度の創設等に関する反対意見等が付されていることも事実です。
 前回の本審議会の場でも申し上げたことではありますが、これまで労働政策審議会は労働の現場の当事者である労使代表に公益代表を加えた三者構成により専門的な見地から検討し、また労使が対立する論点についても丁寧に議論を重ね、一定の見解を取りまとめてきたところです。検討する課題については、労働者側、使用者側のいずれかに不満が残る結論となった場合もあったとは思いますが、公労使三者での議論によって最終的に導き出された結論については、政府はもとより、労使においても、これを尊重していただきたいと考えております。
 このように、労働政策審議会での真摯な議論の結果、出された結論については、公労使ともにそれを尊重するということが審議会としても非常に重要であると考えておりますので、改めて申し上げたいと思っております。どうぞよろしくお願いいたします。
 それでは、本日はこのあたりで閉会したいと思います。本日の会議の議事録については、本審議会の運営規程により、会長のほか2人の委員に署名をいただくこととなっております。つきましては、労働者代表の畠山委員、使用者代表の浦野委員に署名人になっていただきたいと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。
 本日の会議は以上で終了いたします。どうもありがとうございました。


(了)
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