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2015年7月17日 独立行政法人評価に関する有識者会議 年金WG(第1回) 議事録

○日時

平成27年7月17日(金)15:28~17:53


○場所

厚生労働省専用第12会議室(12階)


○出席者

山口主査、大野構成員、川北構成員、引間構成員、光多構成員、安浪構成員

○議事

(以下、議事録)

○政策評価官

 定刻になりましたので、ただいまから「第1回独立行政法人評価に関する有識者会議 年金WG」を開催いたします。私は、政策評価官の大地と申します。有識者の皆様方におかれましては、大変お忙しいところ、本WGの構成員をお引き受けいただきまして誠にありがとうございます。本日は天候が不安定で、また大変お暑い中、御参集いただきましたことに、重ねて御礼申し上げます。

 今回は第1回の会合ですので、私のほうからこのWGの位置付け等について御説明させていただきます。昨年6月に成立した独立行政法人通則法の一部を改正する法律の施行に伴い、独立行政法人の業績評価等をこれまで実施してきた各府省の「独立行政法人評価委員会」が廃止され、本年度から主務大臣が独立行政法人の業績評価を実施することとされております。また、主務大臣が実施する評価については、改正独立行政法人通則法第28条の2の規定に基づき、総務大臣が定める「独立行政法人の評価に関する指針」において、評価の実効性を確保するために、必要に応じて外部有識者の知見を活用すること等が示されております。

 これらを踏まえ、厚生労働省においては、所管する11の中期目標管理法人の評価に際し、外部有識者の知見を活用することを目的とし、客観的かつ専門的な立場から助言を頂くために、独立行政法人評価に関する有識者会議の5つのWGを開催し、有識者の皆様方から御意見を賜ることとしております。

 後ほど、事務局のほうで本WGの主査をお願いしております山口構成員に議事進行を引き継ぎさせていただきたいと存じますが、それまでの間は、私のほうで議事進行をさせていただきます。本WGの開催に当たり、情報政策・政策評価審議官の安藤から一言御挨拶させていただきます。

 

○情報政策・政策評価審議官

 情報政策・政策評価審議官の安藤です。山口先生をはじめ、先生方におかれましては、独立行政法人評価委員会に引き続き、本会議への御参加、誠にありがとうございます。評価官からお話させていただきましたとおり、独立行政法人通則法が改正になり、大臣が直接評価をする形になりました。これは、独立行政法人に対する指導・監督の実効性を高めていくという趣旨だと存じますが、何をどう指導・監督していくのかにつきましては、引き続き先生方の知見が不可欠だと考えております。つきましては、これまでと同様忌憚のない御意見を賜りますようお願い申し上げます。それでは、よろしくお願い申し上げます。

 

○政策評価官

 続きまして、構成員の皆様方を御紹介いたします。お手元の参考資料15ページが全WGの名簿になっております。こちらに沿い、五十音順に御紹介いたします。武蔵大学経済学部教授の大野早苗様です。京都大学大学院経営管理研究部教授の川北英隆様です。上智大学特任教授・上智学院財務担当理事補佐の引間雅史様です。公益財団法人都市化研究公室理事長の光多長温様です。公認会計士の安浪重樹様です。本WGの主査をお務めいただくこととなります、横浜国立大学名誉教授・帝京大学経済学部教授の山口修様です。以上6名の皆様に、本WGの構成員に御就任いただいています。どうぞ、よろしくお願いいたします。

 本WGにおいては、年金積立金管理運用独立行政法人の業績評価、すなわち独立行政法人通則法第32条第1項各号に規定される年度評価、中期目標期間見込評価及び中期目標期間実績評価について御意見を賜るとともに、これらに関する重要事項についても意見聴取の対象としております。よろしくお願いいたします。

 本日の議事及び平成27年度以降の中期目標管理法人の評価について、室長補佐の今宮から御説明させていただきます。

 

○政策評価官室長補佐

 政策評価官室で室長補佐をしております今宮です。本日の議事及び平成27年度以降の中期目標管理法人の評価について御説明いたします。本日の議事は、お手元の議事次第のとおり、年金積立金管理運用独立行政法人の平成26年度業務実績評価に係る意見聴取についてです。参考資料11ページを御覧ください。政策評価官の大地より御説明させていただいたとおり、改正独立行政法人通則法の施行に伴い、本年度より主務大臣が法人の評価を実施することとされており、厚生労働省においては、所管する中期目標管理法人(11法人)の評価に際し、外部有識者からの意見聴取を行うこととしております。本WGにおいては、本年度担当する年金積立金管理運用独立行政法人の平成26年度業績評価、いわゆる年度評価と、平成26年度が中期目標期間の最終年度に該当する法人が対象となる、中期目標期間実績評価について御意見を賜ることとしております。このうち、本日は年金積立金管理運用独立行政法人の年度評価について御意見を賜ることとしております。

 続いて、平成27年度以降の中期目標管理法人の評価について御説明いたします。参考資料2のカラーのポンチ絵が4枚ありますので、こちらを御覧ください。資料の1枚目は、これまでの独立行政法人の評価と、平成27年度以降の独立行政法人の評価を対比する形で整理しております。最初に評価主体・評価の体制等についてです。改正通則法の施行に伴い、法人の業績評価については主務大臣が実施し決定することとされ、厚生労働省においては、評価に際して外部有識者の知見を活用し、改正通則法第32条第1項各号に規定される年度評価、中期目標期間見込評価、中期目標期間実績評価を実施することとしております。なお、これまで各府省の評価委員会がその役割を担ってきた、役員の退職金に係る業績勘案率の算定や、法人の財務諸表、組織・業務全般の検討等については、改正通則法の施行に伴い、本年度より主務大臣において算定、決定等が行えることになることを踏まえ、これらの事項については、本WGにおける意見聴取の対象事項には基本的には含めておりません。

 続いて、評価基準等についてです。これまでは、各府省の評価委員会が、それぞれ評語、評価基準、評価様式等を定め評価を実施してきたところであり、厚生労働省においては評価委員会が定めた評価基準に基づき、中期目標を定めた項目ごとに5段階の評定を付す個別評価と、法人全体の状況について記述による総合評価を昨年度までは実施してきましたが、改正通則法の施行に伴い、本年度からは改正通則法第28条の2の規定に基づき、総務大臣が定める独立行政法人の評価に関する指針において、統一された評語、評価基準、評価様式に基づき評価を実施することとされ、中期目標を定めた項目ごとに評定を付す項目別評定と、法人全体の状況について評定を付す総合評定により評価を実施することとされております。

 最後に第三者機関の役割として、各府省の評価等に対する総務省の関与についてです。これまでは、各府省の評価について、総務省が二次評価を行い必要に応じて意見を述べるほか、各府省の評価委員会が算定した役員の退職金に係る業績勘案率について、決定前に意見を付すとともに、中期目標期間の終了時においては当該法人の組織・業務全般の検討に関し、主務大臣に対して勧告を行ってきたところですが、改正通則法の施行に伴い、本年度からは、中期目標期間の終了時において中期目標期間見込評価、業務・組織全般の検討、そして次期中期目標の策定に関し、主務大臣に対して意見を述べることとされております。

 続いて資料の2枚目です。こちらは、年度評価の流れについてです。中期目標期間評価、見込評価、期間実績評価についても同様の流れで実施することとなります。左側の評価項目についてです。評価項目は、原則中期目標を定めた項目を単位として設定することとなりますが、的確な評価を実施する観点から、評価項目を更に細分化することも可能とされております。

 実際の評価においては、これらの評価項目ごとに、まず項目別評定として中期目標の達成状況、中期計画の実施状況等を考慮して5段階、SDの評語による評定を付すこととなります。項目別評定においては定量的・定性的双方の観点から評価を実施し、B評点を標準とし評定を付すこととなり、定量的指標が設定されている評価項目については、目標値の達成状況が100%以上120%未満の場合には標準であるB評定を付し、120%以上の場合にはA評定を、80%以上100%未満の場合にはC評定を付すこと等とされております。

 なお、中期目標等において難易度が高いとされた評価項目については、これらの基準により付した評定を1段階引き上げることを考慮することとされております。その後、総合評定として、先ほどの項目別評定を基礎として、法人全体の状況について記述及び5段階(SD)の評語による評定を付すこととなりますが、そのうち5段階の評語による評定については、重要度が高いとされた評価項目について十分に考慮するとともに、法人の信用失墜事象が生じた場合には、その程度に応じて、項目別評定を基礎とした評定から引き下げることとされ、特に法人組織全体のマネジメントの改善を求める場合においては、是正措置が実施されるまでは、A評定以上の総合評定は行わないなどの調整を行うこととされております。

 こうした一連の評価を行うに当たっては、先ほどの資料の上のほうに緑色の背景で囲っている部分に2つの○がありますが、そのうちの2つ目の○の記述に関してです。独立行政法人の評価に関する指針においては、必要に応じて外部有識者の知見の活用等の手法を適用することに加え、法人の長からのヒアリングを実施するほか、監事等からも意見を聴取するなど、役員等から必要な情報を収集し、法人の実情を踏まえた的確な評価を実施することとされております。

 そのため本WGにおいては、まず中期目標の事項別に2つのパートに区分し、項目別評定について御議論いただき、その後、日々のマネジメントや監査等を踏まえ、現在の法人の業務運営の状況や、今後の課題、改善方針等について、法人の理事長、そして監事からコメント等を頂き、最後にそれらを踏まえた形で法人全体の状況について評価をする総合評定について御議論いただくという流れにしておりますので、よろしくお願いいたします。参考資料2に係る説明は以上です。

 なお、本日こうしたカラーのパンフレットを構成員の皆様方のお手元に配布しております。こちらは内閣官房、内閣府、総務省、財務省、そして我々厚生労働省が協力して作成し、内閣府の政府広報室が発行したものです。政府全体で取り組んでいる、一体改革の背景・趣旨等を分かりやすくまとめたものです。構成員の皆様方におかれましては、内容的に既に御承知かと存じますけれども、取組内容の御紹介として参考配布させていただきましたので、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○政策評価官

 ここからの議事進行は、山口主査にお願いいたします。

 

○山口主査

 昨年とは形が変わりましたけれども始めさせていただきます。年金積立金管理運用独立行政法人の平成26年度の業務実績評価についての議論です。初めに、「国民に対して提供するサービスその他の業務の質の向上に関する事項」に係る項目別評定について議論します。法人及び法人所管課から、ポイントを絞って簡潔に説明を頂き、その後に質疑応答という流れで進めていきます。まず法人のほうから、項目別評定調書のNo.-1から1-9に係る業務実績及び自己評価についての説明をお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 年金積立金管理運用法人審議役の青木です。資料1-1を主に用いて御説明いたします。この自己評価は、参考資料3の総務大臣が定めた独立行政法人の評価に関する指針を踏まえて自己評価を行っているものです。資料1-11ページから6ページが評価項目1-1です。そのうち1ページが年金積立金の管理及び運用の基本的な方針です。平成22年度から平成26年度までの5年間については、厚生労働大臣から第2期中期目標が示されております。この中期目標に基づき、(1)のとおり平成2610月に基本ポートフォリオを変更しております。また(2)のとおり、各資産のベンチマーク収益率の確保に努めております。さらに(3)のとおり、これまで同様、資産構成割合の維持・管理、各資産について運用機関構成の見直し、各運用受託機関についてその選定・管理等を行っております。

2ページは、いわゆる被用者年金一元化法により、当法人、国共連、地共連等は、共同でモデルポートフォリオを策定し、更にこれに適合する基本ポートフォリオをそれぞれ策定することとされました。モデルポートフォリオについては、関係大臣が策定した基本趣旨に基づき、国共連等とともに検討を進め、本年10月の法施行日より約半年早く3月に公表できたものです。モデルポートフォリオの策定は各法人間、あるいは当法人内での調整を要するものでしたが、共同して鋭意取り組み、早期に策定できました。

 ここで、評価項目1-1の自己評価について申し上げます。各評価の視点に照らし、引き続き適切な取組を行い、併せてこのモデルポートフォリオの策定も行っており、所期の目標を上回る成果を上げたものと考えております。このためAとさせていただいております。

36ページは、評価項目1-1の続きです。3ページは、当法人の資産の管理運用について定める管理運用方針の見直し等について記載しており、昨年度も資料記載のとおり4回にわたり、必要に応じた速やかな見直しを行っております。

4ページは、昨年度も従前同様の枠組みにより、評価の視点に沿った運用受託機関の選定、管理、評価を適切に行っております。定性・定量評価を合計した総合評価の点数が一定水準に達しなかった運用受託機関には解約等の措置を講じており、昨年度の解約は外国株式アクティブ1ファンド、資金の一部回収、配分停止は外国株式アクティブ1ファンドでした。また、外国株式アクティブ4ファンドに資金の追加配分を行っております。

5ページは、各年度において、資産ごとのベンチマーク収益率が確保されるよう努めたかです。左下の表は、超過収益率の昨年度実績です。国内債券、外国債券、外国株式は±0.1%未満で、おおむねベンチマーク並みでしたが、国内株式は-0.21%でした。マイナスの要因は、アクティブ運用の一部において、昨年度収益率が低かった銀行セクターの時価構成割合がベンチマークより高めになっていたことなどです。なお、本年度に入って4月、5月には銀行セクターの収益率はTOPIXを大きく上回っている状況もあります。

712ページまでは、評価項目1-2のリスク管理です。自己評価は標準のBとしております。昨年度は基本ポートフォリオの変更がありましたので、年度を通じて、これを踏まえたオペレーションとリスク管理を行っています。7ページ記載のとおり、国内債券は基本ポートフォリオ変更前の、6月末から9月末、基本ポートフォリオ変更後の10月末に乖離許容幅を超過しましたが、11月末以降乖離許容幅に収まっております。変更前の基本ポートフォリオの乖離許容幅の範囲内で機動的な対応を行うとともに、新しい基本ポートフォリオの方向性を加味した資金の回収・配分を行いました。基本ポートフォリオ変更後は、乖離許容幅の範囲内に収まるよう、資金を回収・配分しております。また、フォワード・ルッキングな観点からのリスク管理の強化を図っております。なお、このオペレーションについては、運用委員会に方針を御説明するとともに、年度計画等につき、必要な規定改正をした上で行っております。また、市場への影響に十分配慮しながら行いました。

8ページは、対複合ベンチマークの超過収益率の要因分析です。基本ポートフォリオどおり運用した場合の複合ベンチマークの収益率と、実際の収益率の差の要因を基本ポートフォリオの変更前後に分けて分析しております。変更前は、実際の収益率が、複合ベンチマーク収益率を0.46%上回り、資産配分要因が+0.47%となっています。これは、基本ポートフォリオの変更の方向性も加味しながら、複合ベンチマーク収益率より市場収益率の低かった国内債券を、基本ポートフォリオに対して平均的にアンダーウェイトにしていた一方、市場収益率が高かった国内外の株式をオーバーウェイトにしていたことなどによるものです。

 変更後は、実際の収益率が、複合ベンチマーク収益率を1.78%下回り、資産配分要因が-1.99%となっております。これは、11月以降新基本ポートフォリオへの移行過程であったため、複合ベンチマーク収益率より市場収益率の低かった国内債券が基本ポートフォリオに対してオーバーウェイトになっていた一方、国内外の株式がアンダーウェイトになっていたことなどによるものです。

9ページの上段は、各資産のリスク管理です。従前同様トラッキングエラー等、資産に応じた指標を毎月モニターし問題がないことを確認してきたほか、信用リスク、カントリーリスク等についてもモニターし、問題がないことを確認しております。

10ページは、運用受託機関のリスク管理です。左にあるように、運用受託機関へガイドラインを提示、併せて各ファンドに運用スタイルに対応したベンチマークを設定しています。昨年度は、1件の軽微なガイドライン違反が認められ、口頭注意等を行いました。また、運用体制の変更は21件ありました。

11ページは、資産管理機関のリスク管理です。資産管理機関に対してもガイドラインを示していますが、昨年度は再発防止策の適正な実施を求めたものが1件ありました。

12ページは、自家運用のリスク管理です。法人内で、運用部からインハウス運用室に運用ガイドラインを提示し、関係部室による牽制機能を働かせながら適切に行っております。なお、自家運用のファンドごとの運用実績などについては、業務概況書のほうで開示などに努めております。

1317ページまでは、評価項目1-3で運用手法等に関するものです。評価の視点に、「各資産ともパッシブ運用が中心となっているか」とありますが、昨年度末の時点では、各資産ともパッシブ運用が約79割ということで、パッシブ運用が中心でした。収益確保や運用効率化のため、昨年度はその下に書いてあるような見直しなどに取り組みました。1つ目は、国内株式における日本版スチュワードシップ・コードの受入れ。2つ目は外国株式におけるベンチマークの変更と証券貸付運用の開始。3つ目は、物価連動国債運用の開始。4つ目は、トランジション・マネジャーの選定。5つ目は、外国債券のマネジャー・ストラクチャーの見直しです。

 当法人としては、この評価項目については、従来からの評価の視点に適合した取組とともに、今申し上げましたような運用効率化等に寄与し得る多くの取組により、所期の目標を上回る成果を達成したと考え、自己評価をAといたしました。

14ページで、下のほうの外国株式パッシブ運用については、運用効率の向上を図るため、先進国株式のみのMSCI KOKUSAIから、新興国株式を含むMSCI ACWI(除く日本)にベンチマークを変更しました。さらに証券貸付運用を開始し、51億円の収益を得ております。

15ページの物価連動国債運用は、インフレリスクに対応するため年度当初から開始し、昨年度末には時価総額が8,673億円となっております。トランジション・マネジャーは、国内外の株式及び外国債券について選定いたしました。外国債券の運用受託機関構成の見直しについては昨年度公募し、最終の第3次の審査まで実施いたしました。公募ではエマージング債券、ハイイールド債券なども含めて対象としております。今年度に入り、運用機関構成に関して残された検討を進めております。

17ページに飛び、時価総額の減少してきた財投債の管理・運用ですが、資料記載のとおり、引き続き適切に行っております。

18ページと19ページは評価項目1-4の透明性の向上です。この項目についても以下具体的に申し上げますが、様々な取組の実施がなされ、所期の目標を上回る成果を上げたものと考えていて、自己評価をAとしております。

 昨年度は18ページに記載しているように、業務概況書などの速やかな公表はもとより、基本ポートフォリオの変更時には理事長が記者会見を行い、パネルを使用するなど分かりやすさを工夫した説明を行っております。また、当法人の投資原則、行動規範を策定し、国民に分かりやすい説明内容も併せホームページで公表しました。さらに取材等対応規程を制定し、広報体制・取材等の対応を明確化するほか、全般に英語版資料の充実なども図っております。

19ページは運用委員会です。運用委員会については、昨年8月より基本ポートフォリオを含む中期計画等の策定変更につき、新たに事前承認の対象としました。さらに昨年10月に運用委員会の下に、投資原則、行動規範の立案等を任務とするガバナンス会議が設置されました。昨年度、運用委員会そのものは例年より多い15回、ガバナンス会議は5回開催しております。運用委員会では、基本ポートフォリオの変更、新中期計画の策定をはじめ、資料の右側に記載した事項について、熱心な御議論を頂いてきました。

2027ページは評価項目1-5の基本ポートフォリオです。基本ポートフォリオについては、昨年6月に厚生労働省より、平成26年財政検証が示され、また厚生労働大臣より検討作業前倒しの要請を頂きました。これらを受けて、運用委員会で7回、運用委員会の一部委員による検討作業班で6回、計13回にわたって精力的に御議論を頂きました。その後、厚生労働省の旧独立行政法人評価委員会年金部会においても御審議を頂き、当初想定していた本年4月ではなく、これより5か月早い昨年1031日に変更・認可を頂きました。

 なおその後、本年度からの第3期中期計画の策定に当たり、新たな基本ポートフォリオが引き続き効率的であることを確認しております。また、この度の基本ポートフォリオの変更については、後ほど申し上げます法人の自主的な取組による創意工夫を盛り込んでおります。本評価項目については、このように見直しの早期実現、法人の自主的な創意工夫という面において、所期の目標を大きく上回る成果が得られたものと考えております。

 さらに総務省の独立行政法人評価に関する評価の指針に照らすと、重要で難易度の高い目標については、評価を1段階引き上げることが可能とのことです。そこで基本ポートフォリオの見直しという、重要で難易度の高い本項目については、自己評価をSとさせていただきました。

21ページで、変更後の基本ポートフォリオは下の表と注書きです。注書きでは、オルタナティブ資産についてはインフラ、PE、不動産等を明記し、リスク・リターン特性に応じ、国内外の債券、株式のいずれかに区分し、資産全体の5%を上限とする。また、乖離許容幅の中で、市場環境の適切な見通しを踏まえ、機動的な運用ができるとしております。注書きの今申し上げたような点は、当法人の自主的な取組による創意工夫です。

22ページは、上段で基本ポートフォリオの変更の前提となった厚生労働大臣による、中期目標の変更の内容を記載しております。基本ポートフォリオについて、実質的な運用利回り1.7%を最低限のリスクで確保する等が示されました。これを踏まえ、当法人は従来の基本ポートフォリオの策定方針を、下段の(1)(4)のように変更いたしました。(2)のうち、賃金上昇率を下回った場合の平均的な不足率、条件付平均不足率を考慮した点などは、当法人が自主的に創意工夫したものです。

2326ページまでは、昨年10月に独立行政法人評価委員会で御審議いただいた際の説明内容や、基本ポートフォリオ変更時の公表内容と同様のものです。時間の関係もありますので、恐れ入りますが説明は省略させていただきます。

27ページは、年金積立金の運用は長期的な観点から行うものですので、参考的な位置付けになるかもしれませんけれども、昨年度における基本ポートフォリオ変更の効果を試算したものです。昨年度の収益率の実績は12.27%であり、旧基本ポートフォリオの資産構成割合のとおり、運用したと仮定して推計した収益率9.27%を3%上回っております。

2830ページは評価項目1-6の市場及び民間の活動への影響に対する配慮です。引き続き可能な限り市場の価格形成や民間の投資行動を歪めないよう配慮しております。具体的には、国の年金特別会計の寄託金償還等については、専ら財投債の償還金、利金、短期資産を活用することにより対応できました。また、新基本ポートフォリオへの移行のため、国内債券の売却、国内外の株式の購入等、市場運用資金の回収・配分が必要となりましたが、市場動向を踏まえつつ、時期を分散して回収・配分を実施いたしました。

29ページは、議決権行使状況です。当法人は株主総会での個々の議案に対する判断は行っておりませんが、運用受託機関にガイドラインを整備していただき、その策定状況、あるいは行使状況を法人が評価することを通じ、言わば間接的に管理しております。昨年度においてもガイドラインを提出していただき、行使状況などの報告を受け必要に応じてミーティングを実施しております。その結果、昨年度の議決権行使の取組は、各運用受託機関ともおおむね良好であったと考えております。

30ページは、日本版スチュワードシップ・コードに関する取組状況です。金融庁が、昨年2月に公表いたしました日本版スチュワードシップ・コードですが、その趣旨内容については左のほうに記載しております。左下にあるように、スチュワードシップ活動を通じた企業価値の向上等により、中長期的な投資リターンの拡大が図られることは、年金積立金の性格からも適切と考えられます。このため、当法人は昨年5月には「スチュワードシップ責任を果たすための方針」を策定・公表し、コードの受入れを実施いたしました。

 さらに、昨年度の取組を運用受託機関と当法人自体に分けて右側に記載しております。国内株式の運用受託機関は、全て8月末までにコードの受入れを表明しております。運用受託機関における取組例としては、企業との事業戦略に関する建設的な意見交換の実施等、資料記載のとおりです。当法人自体の取組としては全ての運用受託機関を対象として、スチュワードシップ活動を把握するためのヒアリングを実施し、総合評価の1項目として評価を実施するとともに、ヒアリング結果はホームページに掲載しております。また、スチュワードシップ責任、ESG投資等について委託調査研究を実施いたしました。

 以上が評価項目1-6ですが、従来からの適切な取組とともに、日本版スチュワードシップ・コードについて、同コード制定後速やかに明確な方針を示し、受入れを公表し、当法人の自主的な取組による創意工夫を行っていて、所期の目標を上回る成果を達成したと考え、自己評価をAとしております。

31ページは、評価項目1-7、年金給付のための流動性の確保です。自己評価はBとしています。これは、年金給付のために運用資産を取り崩して国に償還し、年金給付に使われるという仕組みで、いわゆるキャッシュアウトです。昨年度のキャッシュアウトについては先にも触れましたが、市場運用資産の売却を行うことなく対応できました。また、基本ポートフォリオの見直しに併せ、財政検証で想定されている第3期中期目標期間のキャッシュアウト見込額に対応するため、市場で売却する必要のないキャッシュアウト等対応ファンドを、平成25年度末の16兆円から昨年度末の26兆円に増額しました。さらに、従来は原則として月次で実施していた市場動向の把握・分析について、経済環境コンサルタント2社を新たに採用し、コンサルタントの知見を活用し、本年1月以降週次で行っております。

3241ページは、評価項目1-8の内部統制の一層の強化に向けた体制整備等です。32ページの上の枠囲みにあるように、独立行政法人改革等に関する基本的な方針という、平成2512月の閣議決定で、運用委員会について資金運用の重要な方針等について実質的に決定できる体制を整備するとされ、また昨年6月の日本再興戦略改訂2014では、法人のガバナンス体制の強化に触れられております。一方、昨年10月の運用委員会では、ガバナンス体制の更なる強化に関し、具体的な内容の建議がなされました。

 これらを踏まえ、昨年度においては内部統制の一層の強化に向けて多くの取組を行いました。そのうちの4つを下のほうに記載しております。昨年8月から、先ほど申し上げました運用委員会の議決による事前承認制を導入しました。次に、運用に係る専門人材の理事任命が行われCIO兼務とされました。次に、理事長が運用に関する重要な意思決定を行うに当たり、事前の審議を行うための投資委員会を設置しました。このほか、コンプライアンス・オフィサーを新設しております。

33ページは、内部統制の一層の強化に向けた体制整備の続きです。先ほど申し上げましたように運用委員会は、投資原則の立案等を行う「ガバナンス会議」を設置しました。これは、他の独立行政法人では余り見られない当法人独自のガバナンスに関する取組であるとも考えられるところです。そして、ガバナンス会議5回、運用委員会5回の検討を経て、本年3月、投資原則、行動規範を策定いたしました。投資原則は真ん中の枠囲みに記載している4つの文章です。また、行動規範は、その右側に書いてある事項について規定しております。投資原則、行動規範については、下の枠囲みにあるように、策定後直ちに理事長から全役職員にメールを送付し、周知徹底を図りました。

34ページですが、内部統制については、平成23年度に策定した内部統制の基本方針により、資料記載のとおり大きく5つの体制を確保し、責任体制の明確化を図ってきました。

36ページに飛び、運用受託機関については引き続き運用受託機関等説明会、定期ミーティング等において、関係法令等の遵守の徹底と確認を行っております。

37ページは内部監査です。引き続き理事長の直属である監査室が行っており、内部監査と情報セキュリティ監査を実施しております。

38ページは、監事監査の充実・強化の取組実績です。監事監査は、決算監査、業務監査、重点事項監査、経常監査が行われております。なお、監事をサポートする体制の強化のため、本年1月に監事付を設置しております。

39ページは、管理及び運用能力の向上です。平成2512月の独法改革等に関する基本的な方針を踏まえ、この1月には高度専門人材の確保ができるよう給与体系の見直しを実施しました。また、同月理事の任命があったほか、2月にはオルタナティブ運用担当職員及び運用リスク管理責任者の募集を開始しております。

40ページは、職員研修の実施です。内部統制の研修や、専門資格取得の促進を行っております。

42ページに飛び、資格取得等の支援です。証券アナリストについて申し上げれば、昨年度末で33名が試験に合格しております。

 以上3242ページまでが1-8の内部統制の一層の強化に向けた体制整備等という評価項目です。32ページ、33ページ、39ページ等で御説明申し上げましたように、昨年度は従来からの取組とともに、内部統制の体制整備、管理運用能力の向上について、当法人の自主的な取組による創意工夫を重ね、所期の目標を大きく上回る成果が得られたと考えております。当法人のガバナンスの強化については、基本ポートフォリオの見直しとともに、予て日本再興戦略でも盛り込まれていることからも、本評価項目は重要で難易度の高いものと考えております。そのような項目について、所期の目標を大きく上回る成果を得たと考えられることから、自己評価はSとさせていただきました。

43ページは、評価項目1-9の調査・分析の充実等です。自己評価はBとしております。調査研究の充実については、平成25年度から2年間、大学との共同研究を実施しており、研究テーマは長期的な運用の枠組みについての基礎的研究でした。研究結果については、基本ポートフォリオの策定方法、リスク分析等に活用しております。委託調査研究についてはテーマは毎年度変えて行っておりますが、昨年度はスチュワードシップ責任等の在り方、公的年金積立金・資産財政統合リスク分析に関する調査研究を行いました。先ほど申し上げましたように、昨年度は基本ポートフォリオの変更に併せ、経済環境コンサルタントを新たに採用し、適切なリバランス等のため活用しております。

44ページと45ページは、委託調査研究の内容について触れております。45ページの資産財政統合リスク分析についての調査研究については、公的年金の資産サイドだけではなく、財政サイドも含めた分析ツールを作成し、将来は基本ポートフォリオの策定等に役立てることができればという考え方から、分析ツールの原形となるようなものを作ることとしたものです。

 評価項目1-9は情報セキュリティの強化等も含まれていて、46ページはその内容です。外部委託のSecurity Operation Centerを用いた不正アクセス防御・通信監視・次世代ファイアウォールの導入、不審メールに対するセキュリティの強化などを新たに講じたほか、模擬標的型攻撃メールを用いた対策訓練なども実施していて、更なる強化に努めていくこととしております。また、従前の情報システム室を部に格上げして2課体制とし、そのうち1課は情報セキュリティ対策課とする体制整備を行いました。第1グループの説明は以上です。

 

○大臣官房参事官

 引き続き、法人所管課運用担当参事官の森から、今の自己評価を踏まえた大臣の評価の事務方案について説明いたします。この評価の方法ですが、先ほど政策評価官から説明がありましたように、総務大臣からは、自己評価結果を踏まえ、主務大臣はこの自己評価書を十分活用して評定する。仮にこの評価書が法人が質が高い自己評価書を提出され、十分な説明責任が果たされている場合には、自己評価書を最大限活用するという形で指針が示されているところです。

 最初に、項目別評価に入る前に、この法人の評価の特殊性について簡単に説明いたします。4のその他評価に関する重要事項です。この法人については、ほかの独立行政法人と違い、総合的な評定について特則があります。年金財政のために運用している法人ですので、中期計画の実施状況の調査及び分析のほか、年金積立金の運用が年金財政に与える影響についての検証結果を踏まえて総合的な評定をするとなっております。また、先ほど申しました総務大臣の独立行政法人の評価に関する指針の中に、閣議決定や政府の種々の改革方針があった場合においては、そのことに関する事項について適切に評価をすると書いてあります。この法人については、具体的に見ますと、日本再興戦略改訂2014において、公的・準公的資金の運用等の見直しということで、GPIFの基本ポートフォリオについては、デフレからの脱却、適度なインフレ環境への移行など、長期的な経済・運用環境の変化に即して適切な見直しをできるだけ速やかに実施する。それから、スチュワードシップ・コードを踏まえた対応を速やかに実施する。そして、基本ポートフォリオの見直しと併せて、運用とガバナンスの強化は車の両輪とも言われますが、ガバナンス体制の強化を図ることが示されております。これは、項目別の評価を説明する前に申し上げたいと思います。

 具体的な項目的評価については4ページからです。1-1の管理運用の基本的な方針、運用の目標ですが、先ほど申しましたようにこの法人の自己評価については、総務大臣の決定に即して記載されており、評価の視点に即し業務実績を具体的に記述する等十分な説明責任を果たしているということで、最大限尊重する形となっております。ただ、先ほども評価官室から説明がありましたが、定量的な目標、指標が設定されていない場合においてA以上の評価をするためには、評価に当たってきちんと過去の実績等を指標として量的に優れているかどうかを判定しなければなりませんので、量的な分析を「なお」以下に示しております。管理運用方針については、昨年度は先ほど申しました閣議決定の関係もあり、基本ポートフォリオの見直しや日本版スチュワードシップ・コードの受入れ等、管理運用方針について4回改正をしております。これは、最低限1回となっておりますので、標準を相当程度上回っていると認められるものです。指摘事項ですが、ベンチマーク並みの収益率のより一層の確保に取り組むべきだと考えており、その事項について指摘させていただいております。

 続いて、11ページの1-2のリスク管理です。ほかの項目もそうなのですが、法人の自己評価については先ほど申しましたように、質が高く十分な説明責任が果たされていると考えています。ほかの項目も以下同様ですが、最大限尊重する形になっております。リスク管理については、より一層の強化。これは幾ら強化しても強化し足りないことがありますので、鋭意取り組むことが望まれるという形になっております。定量的に評価してみますと、法人は市場の動向の把握について月次だったものを週次に変えていますので、4倍の取組をやっているのですが、法人は定性的な評価も踏まえてBですので、その点については特段記載しておりません。

22ページの1-3、運用手法、財投債の管理・運用です。これについては、評定についても法人の考えを最大限尊重すると。定量的な分析は、一昨年は法人で日本株のパッシブ・アクティブ運用受託機関は応募件数が56件でしたが、昨年度の外国債券のパッシブ・アクティブについては、GPIFもかなり関心が高まったのか、127件の応募ファンドがありまして、これを丁寧に審査いたしましたので、過去を相当程度上回っているのではないかと考えております。指摘事項、23ページですが、引き続き運用改善に取り組むことが望まれるというコメントが書いてあります。

 次に、1-427ページ、透明性の向上です。法人のA評価に対して、では定量的に見たらどういうことが言えるのかということですが、最近GPIFの運用も国際的に関心が高まっており、英文でプレスリリースをしてくれという要望がありました。GPIF、平成25年度は6回でしたが、英文のプレスリリースを8回いたしまして、しかも日本語のプレスリリースと同時ということですので、定量的にも過去を上回る取組が認められると考えており、年金については引き続き情報公開、広報活動の充実を図ることが望まれるというコメントを差し上げているところです。

32ページ、1-5、基本ポートフォリオについては、先ほど紹介いたしましたように、通常の改正のほかに日本再興戦略において特に示されている。また、できるだけ速やかに実施するということで、非常に難易度も高いものと考えられるところです。これについては、先ほど法人からも説明がありましたが、より重要かつ難易度の高い課題として課せられており、普通でしたらAだと思いますが、1ランクアップでSとすることが適当ではないか。また、定量的な評価ですが、従前ですと財政検証から大体10か月で見直しを図っておりますが、今回は5か月間で見直したということですので、2倍の200%ですので、定量的にも標準を顕著に上回っていると考えております。

33ページの指摘事項です。いろいろと御心配いただいた話もあり、マクロ経済や市場等の動向も注視しまして、今回設定しました長期的な前提に変化がないか、年金財政も踏まえて定期的に検証を行うことが重要で、必要に応じて見直しをすることが望まれるという形でコメントを差し上げているところです。

 続いて、1-6、市場及び民間の活動への影響に対する配慮です。法人の自己評価を最大限尊重してAということです。定量的には、今までは目標になかったのですが、日本版スチュワードシップの受入れを踏まえ、一昨年度は受け入れていなかったので当然0件なのですが、それに関して全ての受託機関に対してヒアリングを行っていますので、定量的にも相当な取組について評価できるのではないかと思います。また、この取組については、企業経営等に与える影響を考慮しつつ、長期的な株主等の利益の最大化を目指す観点から、適切な対応を行うことが今後とも望まれるというコメントを書かせていただいたところです。

 続いて42ページ、1-7、年金給付のための流動性の確保です。ここについては、先ほど法人から説明がありましたように、キャッシュアウト等対応ファンドで対応しております。このファンドの創設自体は平成23年度の話ですので、法人ではBと評定されたと伺っております。これについては、特段コメントは差し上げておりません。

44ページ、1-8、内部統制の一層の強化に向けた体制整備等です。これについても、先ほど日本再興戦略において、ポートフォリオの見直しと併せて迅速に行うこととなっています。ポートフォリオの見直しとともに、法人でできるガバナンスの強化を図るということで、非常に駆け足でインテンシブに検討していただいたと考えております。定量的な評価は45ページにあります。ガバナンス会議を運用委員会の下に設置したのですが、会議の開催件数は26回ということです。平成25年は12回ですので、2倍以上、執行部に対して運用委員会等が働きかける、ガバナンス会議等が実施されていますので、監視状況の高まりは顕著に認められると考えております。以上です。

 

○山口主査

 今、1-1から1-9に係る業務実績について、法人から自己評価、そして法人所管課から評価の案を説明いただきました。それでは、皆様方から御意見、御質問等をお受けしたいと思いますが、まとめてやってもよろしいですか。1つずつやったほうがよろしいですか。では、まとめて1-1から1-9に係るものについて、御自由に御意見あるいは御質問を頂ければと思います。

 

○引間構成員

 基本ポートフォリオの大幅な変更と、それに伴う実際のポートフォリオの移行という大変な大仕事に取り組んでおられて、御苦労の多い1年だったのではないかと思います。通常ですと、パフォーマンス評価の観点ですと、複合ベンチマークに対して実際のポートフォリオのパフォーマンスがどうだったかを見るわけですが、今回の場合は、それだけではあまり参考にならないのかなと。一応データとしては8ページにもありますが、基本ポートフォリオ移行後のパフォーマンが複合ベンチマークに対して下回っているからといっても、この期間は完全にポートフォリオの移行期間ですからそれをそのまま評価するのは適切ではない。むしろ数字でどうかというよりは、しっかりと市場の環境等を十分配慮いただきながらポートフォリオの移行を進めていただいた結果として、このようになっているのではないかと考えております。

 むしろ気になっているのは、例えば個別の資産クラスごとのパフォーマンスで、これも各資産クラスごとにベンチマークと比較されておられるわけですが、いわゆるパッシブ運用も含めた全体のパフォーマンスをベンチマークと比べて、ベンチマーク並みの収益率であれば目標達成という評価をされているわけです。やはり、これは全体でもパッシブが8割以上を占めているわけですから、実際はアクティブ運用のところで相当大きくぶれないと、大体ベンチマーク並みという結果になる可能性が大きいだろうと思います。そういう意味では、むしろアクティブ運用のところでしっかりとアルファが取れているかどうかに、より焦点を当てた分析なり評価がされていて然る可きではないかという感じがしております。

 その中で、今回やや気になったのは日本株のところです。見ますと、昨年度だけではなくて、過去4年ぐらい継続してアンダーパフォーマンスとなっておりますので、この辺りを十分に要因分析、精査をする必要があるのだろうと思います。一応の要因分析はされていて、恐らく通常の分析のツールなどを使われると、このような言い方なり結果になるのだと思います。例えば、「銀行セクターの割合が高かった」というような言い方になるのだろうと思います。このような要因分析ですと、恐らく余り将来に対するインプリケーションが出てこないと。やはり御検討いただきたいのは、例えば去年あたりから、スマートベータであるとか、いわゆる評価ベンチマークのTOPIXと異なるマネジャー・ベンチマークを採用して、各運用機関でマンデートとして与えているケースが増えていると思います。数からいっても、半分ぐらいがマネジャー・ベンチマークがTOPIX以外というのがあるようにお見受けするのです。そうすると、まずはそういったマネージャー・ベンチマークの効果を純粋なマネジャーの評価と切り分けて分析をしないと、なかなか将来に対するインプリケーションが出てこないと思います。スマートベータ自体の検証もこれから継続的に必要になってくると思いますし、そういう分析ができれば、例えば問題が起きたときに、それが本当にマネジャー・セレクションの所で何らかの課題があるのか、あるいは全体のマネジャー・ストラクチャーで何か見直しが必要なのかといったところのより深い将来につながる分析ができると思いますので、その辺りを是非お願いしたいと思います。

 このことは、多分日本株だけではなくて、お話の中で例えば外国債券についても、これからハイイールドあるいはエマージング債券に更に分散をしていかれるという方向性だと伺っております。そうすると、この部分でも同じような課題が出てくると思いますので、ベンチマーク選択効果とマネジャー評価みたいなものを厳密に切り分けて分析をされていくのが、更に今後の運用の高度化につながるのかなと思いました。

 

○山口主査

 何か法人からありますか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長

 今の引間先生の御意見について、今回特に銀行セクターがオーバーウェイトだったと。これは、特に伝統的アクティブ、それからスマートベータアクティブ、私どもは平成25年度末に大きく入れ替えをいたしました。その中で、特に伝統的アクティブで割安株の戦略は、長期的には勝てる戦略であろうということで我々は選び取って残した戦略でした。その戦略では、やはり銀行株はいろいろなバリエーション指標で見れば割安だということで、少し多めに持っていたのが、昨年度1年間は効果が出なかったということです。これは、長期的に我々は観察していく必要があるだろうと考えているところです。

 それから、御意見がありましたスマートベータのベンチの効果と、そのベンチに対するアルファということで、我々も昨年1年間アルファと引き比べながら試行錯誤的に分析はしつつあるところで、引き続きこうした取組はしっかりやっていきたいと考えております。

 それから、今、外債についても御意見がありましたとおり、エマージング、ハイイールド等、通常の世界国債とは違った分野にも乗り出そうかということを検討中です。その際には、おっしゃるとおりベンチマークの効果、それからベンチマークに対して運用機関がどれぐらい超過収益を乗せられるのかをきちんと分析しないといけないということは既に認識をしているところで、引き続き十分な分析、管理をしてまいりたいと考えているところです。

 

○川北構成員

 特に評価に対する意見ではないのですが、今、引間さんがおっしゃったところに関連して、1つ気になっているのが、ベンチマークの選択の仕方をどうするのかということです。そういう意味で、13ページにあります評価の視点のパッシブ運用というのはそもそもどういう定義なのか。この辺りは、引き続き基本ポートフォリオを考える上でもう少し深掘りしないといけない。いろいろなベンチマークが考えられる中で、今後の法人の運用を考える上ではかなり重要な役割を果たすのかなと思っています。

 それに関連して、スチュワードシップ・コードの受入れに関するところで、結局法人としては間接的に受託機関の管理をやっていくわけですが、実際のアセットマネジメント会社はスチュワードシップ・コードを活用することになる。実際の運用先、法人に対しては、法人がきちんとコーポレートガバナンス・コードを活用していくことの監視と評価が求められているわけです。まだ初年度なのでスチュワードシップ・コードに関しても各アセットマネジメント会社は試行錯誤の段階でしょう。私が付き合っているアセットマネジメント会社の中も、かなりまちまちで、私自身が想像している以上のことをやっておられる会社もありますし、時流に乗っているだけのような会社もあるわけですので、この辺りの見極めを今後きちんとやっていただく必要性があるのかなと思います。ですから、この点、より一層力を入れてやっていくため、法人自身の体制なり、視点を今後とも高度化していっていただくことを私自身としては期待したいと思っております。意見というよりは、コメントです。以上です。

 

○光多構成員

 いろいろとお伺いしたいことはあるのですが、時間の関係で3点だけに絞ってお伺いしたいと思います。1点目は、先ほど説明いただいた評価項目一覧で、自己評価と主務大臣の事務的な評価が全部同じになっているのです。そうすると、我々の会議はどういう位置付けになるのでしょうか。要するに、先ほど説明いただいた中で、主務大臣が評価に際し、必要に応じて外部有識者の知見を活用という形がこの委員会だとすれば、自己評価があって、例えばこの委員会でのやり取りを聞いて事務局で評価されるという形も1つの案かと思うのです。しかし、事務局案があって固まっているのであれば、我々がいろいろ議論するというのはどういう意味があるのかなということです。

 それから2点目ですが、今のベンチマークとの関係ですが、やはり評価の中に、一応おおむねベンチマーク並みと。中期目標でいくと、ベンチマーク並みの水準を確保するのが目標なのですが、それについて「おおむね確保した」と書いてあるわけですね。この表現でいいのかが、未だに分かりません。例えば、国内株式でいきますと、0.21%で、もしこの0.21%を戻すと、私が単純に計算すると、国内株式の運用額によると、ベンチマークを確保しなかったことによって600億のマイナスであったということですので、やはりこの辺りについて例えば国民の皆さんに、600億ぐらいだけれども、おおむねという形で本当にその一言で表現していいのか。これがまずかったというわけではなくて、確かにポートフォリオを変えられるので、この間利益率だけを、収益だけをやっていくと量の確保ができなかったという面があるかもしれないですよね。したがって、この時期において、こうこうこういう理由で、例えば新しいポートフォリオへの着地を考えるということも含めて、この辺りが若干達しなかったという表現で。私は達しなかったのは別に悪いこととも思いません。少なくとも、おおむね確保したという表現で、これで国民全体が納得するのかということです。

3点目は、業務概況書の中に、私が前から申し上げておりますインフラ投資、これは年金運用として社会のインフラが整備されていけば、それだけ経済がよくなっていき、それがまた回り回って人々の年金も含めて効果があるという形ですので、これは是非やるべきだと思います。昨年度のインフラ投資で、「収益額は投資信託が保有する外貨建て資産の時価評価による為替差損等により-7億円となりました」と。そうすると、これは何かオープンファンドのような形だったのか。例えば、昨年度のどの時期か分かりませんが、為替レートはずっと円安に振れているときに、この-7億円というのは、通貨にもよりますが、「為替差損等による」というのが、きちんと説明ができているのかなという感じがいたします。以上、3つお伺いさせてください。

 

○政策評価官

1点目について、事務局からご説明いたします。一覧を御覧いただきますと、確かに全て法人の自己評価と事務方の評価案の評語のアルファベットが一致をしているわけですが、これらが一致しているからといって御意見が不要ということでは全くありません。評価案について、本日の構成員の有識者の皆様から頂いた御意見等を踏まえて、今後、評価書の内容を修正した上で大臣に諮り、大臣の評価として決定するという流れが今後あります。法人の自己評価と所管課の評価案の評語が一致しているからといって、御意見を賜る余地がないなどということは全くありませんので、そこは御意見を賜りたいと思います。

 

○情報政策・政策評価審議官

 事務方案でございます。

 

○光多構成員

 そうすると、今日の我々のディスカッションを聞いて、これを事務方でまた第2次を作ると。そうしたら別に今日の会議では、事務方案がたまたま一緒だということもあるのですが、出さなくてもいいのではないですかね。何か、もう事務局で決まっているのであればという感じもするのですが、GPIFから出て我々がディスカッションをしたところを踏まえてお作りになるほうが、何か素直な感じがいたします。

 

○政策評価官

 そういった御意見もごもっともですが、所管課案は目安といいますか、このように考えるということをお示ししておりますもので、意見が同じなので御意見を賜りたくないということは、所管課としては全くないと思いますし、事務局としてもそのように考えております。この評価はどうかといった御疑問等があれば、法人に御質問を頂くなり、所管課に御質問、御意見を頂ければと思います。

 

○山口主査

 今の御意見に対して、何かコメントはありますか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 各資産の超過収益率についてお尋ねを頂きましたが、国内株式については、-0.21ですが、これについては国内株式全体としてはベンチマークを下回ったと認識しております。他の3資産については、±0.1未満ということで、それぞれの各資産についてはおおむねベンチマーク並みと。そのようにこれまでも運用状況の開示等においては整理をして、公表させていただいております。国内株式については、全体としてもベンチマークを下回ったと認識しており、また4つの資産ともそうですが、国民向けに公表しております業務概況書で、パッシブ、アクティブ別の収益率とその要因については掲載をしております。

 また、ある資産が-0.1を超えて下回ったというような場合に、これはもちろん当法人内部においては改善していかなければならないという認識で、運用の改善に向けた検討をしてきているというような状況です。

 それから、インフラの資産への投資についてお尋ねを頂きました。平成26年度にインフラ資産に投資しまして、年度末の投資残高が約55億円となっておりますが、この間、円が現地通貨に対して上昇したことが主な要因となり、約7億円の差損が生じたものです。インフラ共同投資の投資額は昨年度末時点ではこの水準ですが、投資の本格化はこれからです。インフラ投資に係る投資信託は外債に区分して管理しており、基本ポートフォリオ上、外債同様の位置付けであり、外債全体については個々のマネジャーにおいて為替ヘッジすることもあるのですが、基本ポートフォリオ上は為替ノーヘッジを前提ということでやっております。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人運用部長

 インフラ投資について、1点だけ補足をいたします。これはOMERSと共同投資ということで、先進国のインフラ設備に投資をしていこうというものです。投資が少しずつ進んでおりますが、3末に投資をしたものについては実はユーロ建て、ヨーロッパの資産で、昨年ドルに対しては円は安くなったのですが、ユーロは逆に円高に振れており、これで差損が出たという状況でした。

 

○光多構成員

 分かりました。2点目の質問の件ですが、大体今おっしゃったことで結構かと思います。先ほど引間委員もおっしゃった、アクティブがかなり足を引っ張っているとか、その辺りについてもう少し整理をして、これでいくと31敗だからいいのではないかみたいな話があり、やはりこれはこうこうこういうことでこうだったということをきちんと評価、表現されたほうが、国民に対しての説明は付くと思うのです。何回も繰り返しますが、下回ったからまずかったということでは全くないのですよね。やはり、きちんとこういうことだということの説明責任を果たしていく形が私は必要だと思います。

 インフラについては分かりました。しつこいですが、この中に競争を入れられないかと。要するに、これは理事長と協定による随意契約ですよね。したがって、インハウスの随意契約になっているので、せっかくインフラ投資をおやりになるのであれば、何かその中に競争を入れられないかというのは、再び意見として申し上げておきます。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長

 インフラ投資というのは、普通はそれぞれ資金運用者がファンドを作って、それがいわゆるGPと呼ばれて、彼らが資金を集めて運用していくのが一般的な形なのですね。我々がやるとすれば、執行責任者ではなく、そこにリミテッドパートナー、いわばお金を出して運用してもらう立場で入るのが一般的な方法なのですが、現在はそれがまだ法律上認められておりません。したがって、我々は投資信託という形を使って有価証券の形でやらざるを得なかったので、そういう競争入札などはできませんでした。将来、LPとしてファンドに出資ができるようになれば、今度はファンドを公募すると。公募の仕方にもいろいろありますが、そのような競争入札的な方法ができるのですが、現状は法律上認められていないということで、こうなっております。

 

○山口主査

 先ほどの引間委員と今の光多委員は、例えば1-1の自己評価がAになっているのは、Bのほうがいいのではないかという御意見ですか。

 

○光多構成員

 レベルですね。私は、Aはちょっと引っかかりますね。ですから、やはりこの中で一番の戦力は国内株式だと思うのですね。確かに、アクティブ、パッシブの運用もあるかもしれませんが、Aというのは。今回120%以上ですので。

 もう1つお伺いしたかったのは、ポートフォリオの変更は1-1の評価に入っているのですか。あとのほうの1-5で評価しておられて、大きな変更があったのですが、1-1にもポートフォリオの変更が評価として入っているのですか。単に、ここは実績だけではないようにも受け取れますが。

 

○引間構成員

 私の論点は、むしろ今の評価基準そのものを見直す必要があるのではないかということです。現行ではアクティブもパッシブも含めた全体に対して、ベンチマークからそう離れていなければベンチマーク並みということで「目標達成」という評価基準になっていると思います。そういう観点ではAでもいいのかなと。ただ私の論点としては、その評価基準自体をむしろ見直していただいたほうがいいのではないかと。つまり、先ほど申し上げたように、よりアクティブのところでしっかりアルファが取れているのかどうか。もちろん、パッシブのところでトラッキングエラーの管理などは、当然今までどおりにやっていただく必要はありますが、これだけ大きなパッシブポートフォリオで余り変なことは起きないような感じはしますし、これから、より運用の高度化を目指す上においては、アクティブのところでの評価によりスポットライトを当ててしっかりやっていく、という意味での評価基準の見直しをされたらいかがでしょうかというのが私の論点です。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(総務・企画等担当)

 今の点について申し上げますと、今回の評価項目の1-1は、モデルポートをもともとここまでに作りなさいと言われたものから早く策定したということで、おっしゃるアクティブ、パッシブ込みのアルファの議論も全体の一部ですが、モデルポートフォリオを予定よりも早く、関係機関と一緒になって作ったということが、全体としてはA評価ではないかということです。正直言いまして、資産ごとのアルファだけをAとかBと言ったわけではありません。

 それから、これは先ほど理事長から申し上げましたOMERSとの共同投資についての補足なのですが、今回OMERSとの共同投資とはどういう考え方かといいますと、私どもは、インフラ投資についてこれまで先行してやってきたほかの年金基金などの機関投資家と共同してやるのがいいのかなという判断が先にありまして、そういった中でOMERSのような所と共同でやるのがよいのかなと。

 通常、公募といいますとまず案件が、誰と組むかが全くなくて、運用機関にいろいろと手挙げをしていただくということで公募でやるわけですが、ある程度相手方を特定してこれまで実績、能力がある、特に海外の公的な年金基金であるOMERSと共同投資をやるということで始めたものです。かつ、手法としては現状では投資信託というスキームでやらざるを得なかったというところです。そういった意味では、もともとアプローチの仕方が共同投資というアプローチの仕方で、案件や相手方は広く募集するというよりは、そういう共同投資という相手方の能力、知見も活用しつつやろうというところから始まったものです。そういった意味で、公募というようなもので始めるような性格のものではなかったということは補足で申し上げたいと思います。

 もう1点だけ補足ですが、川北先生からスチュワードシップ・コードの話がありました。これについては、私どもは今、こういったものを専門的に取り扱う、GPIFとしてそこを担当する職員を公募しているところで、まだ締め切りが終わっていない段階です。そういった職員の採用が進めば、また更にそういったもののGPIF側としても充実を図っていって、運用機関ともいろいろな話をしながらレベルアップを図っていけるのではないかという段階です。以上、3点まとめて補足をいたしました。

 

○大臣官房参事官

 立付けの話だけ説明いたします。法人の自己評価については、通則法で国民に対する説明責任の履行及び法人の業務運営の改善に活用ということで、630日に送付を受け、速やかに公表となっております。他方、主務大臣の評価については、正に事務方案ですし、そこの評価の欄に、先ほど私から指摘事項、業務運営上の課題、改善方策についてコメントを差し上げたところです。ここの欄で、例えば引間先生、光多先生の御意見を反映させるような形が、また1つの方法としてあることを申し添えさせていただきます。

 

○山口主査

 ありがとうございました。ほかに。すみません、先に大野さんから。

 

○大野構成員

 内部統制の一層の強化に向けた整備等に関する点についての御質問です。こちらのお点がS評価ということで、その理由として、日本再興戦略の中で強化することが求められているといったようなことが背景にあると伺っております。目標を上回るということで、運用委員会ですとか、開催回数を増やしたというようなことと、あとは、ガバナンス委員会を設置されたといったようなところで目標を上回るようなことをされているというところは、そうかと思いますが、もう1つのS評価をされている基本ポートフォリオのところでのS評価というところと比較させていただきますと、S評価というところに若干、違和感を感じたというところがございます。

 基本ポートフォリオのところに関しましては、これは確かに、国民的な意味からしましても非常に重要性が高い。そして、下振れリスクの最小化ですとか、様々なシミュレーションを行っていらっしゃって、速やかに基本ポートフォリオの構築をされたというところでS評価に値するといったようなところのお話は納得できるところがあるのですが、もう1つ、日本再興戦略に触れられたというようなところでAからSに格上げされたといったような御説明を頂いたのですが、基本ポートフォリオのところのS評価と比較させていただきますと、どうなのかなと若干思った次第です。ですのでもう少し、このような工夫をされてこれはS評価に値するですとか、そういったところの記述なり御説明を少し追加していただけますと、2つの項目がS評価というところでの違和感が消えるのかなと思った次第です。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 今、内部統制に関する自己評価をSとした理由について、もう少し説明が要るのではないかという御指摘かなと認識しております。資料にも、管理・運用の理事を任命したとか、あるいはコンプライアンス・オフィサーを導入したということに加えまして、私どもが今回、Sという形を付けさせていただいたポイントといたしましては、我々の執行部門の中ではなくて、運用委員会という外部の有識者から構成される会議体が適切に監視できる仕組みを強化したというところが大きく申し上げて2つあるのかなと、このように自己評価しております。

1つは、資料にもあるのですが、昨年8月から重要な事項につきまして運用委員会の事前合議という形を導入しております。これは、基本ポートを含めて中期計画を策定したり改定したりする場合には、法律上、「運用委員会の議を経て」と、こういう文言が入っております。ただ、議を経てということ、そこを踏まえて実際に運用委員の皆様にお諮りいたしまして、重要な項目については、あらかじめ事前の承認、議決を頂くという形で自分を自ら縛るような形の仕組みを導入させていただいたというのが1点です。

 もう1つは先ほど来の御説明にもあったのですが、投資原則あるいは行動規範といった法人の基本的な運用管理に関する方針を執行部門が作るということではありませんで、運用委員会の中に設けられたガバナンス会議というところで何度も御審議いただいて、運用委員会として建議という形で、そして、実際にその議決・建議を頂いて執行部としてそれを受け入れさせていただくというような形で指針が出来ております。こういった例は恐らく、独立行政法人の中を見渡しましてもなかなか例のない、それから、日本の公的年金、あるいは、広く年金の中を見渡してもなかなか例のない仕組みを導入できたのではないかと感じております。先ほどの事前合議制と合わせて、自己評価ではありますがSという形を付けさせていただいたと、こういうことです。

 

○山口主査

 ほかに御意見はございますか。

 

○安浪構成員

 では私から、ちょっと細かい質問になるのですが、今回の基本ポートフォリオの変更で今年度は15兆円という最高益が出たのですが、国民の一般の目からすると、株価が下がった場合どうなるのかと、そういう心配もあると思うのです。その辺を考えて業務概況書を見ていますと、26ページ、27ページですか、この27ページで「総合的に勘案すると、今回のポートフォリオは、必要な積立金を確保しつつ、下振れリスクの最小化を図った最も効率的なポートフォリオといえる」というような理由付けで説明されているのです。ですからこの26ページ、27ページは、やはり国民が持っている不安を、払拭するというのですか、ファイナンス上もこれでいいのですというような説明の資料になると思うのです。そういう意味では非常に重要な資料かなと私は見たのです。

 この中で質問なのですが。27ページの上から4行目に「経済中位ケースでは40%、市場基準ケースは25%となった」という数字が出ているのですが、これは、26ページの基本ポートフォリオの属性の表にいろいろ数字が出ているのですが、この数字から算出できるのですか。それともこの40%と25%というのは全く別に計算シートがあって出されたのか、細かいお話で恐縮ですがこの根拠を教えていただきたいのです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 投資戦略部長でございます。今、先生がおっしゃいました40%と25%ですが、27ページの下のグラフの一番右側の、例えば経済中位ケースですと、平成51(2039)の所で一番太い線が財政計画上の予定積立金額です。これに対して、基本ポートフォリオということで上に点線で、真ん中があって、もう1つ点線があります。

 

○安浪構成員

 市場基準ケース。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 経済中位ケースです。

 

○安浪構成員

 はい。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 太線の財政計画上の積立金額の所が180.8兆円になっています。

 

○安浪構成員

 はい。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 それで、中央値というのが基本ポートフォリオのちょうど真ん中、確率的にちょうど真ん中の50%の所が194.2兆円です。それで下に、「25%タイル」で、下から25%のラインが159.2となっています。ちょうどこの太線の所より下回っている確率が大体40%ということです。

 

○安浪構成員

 太線を下回っている。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 予定積立金の180.8兆円を下回るところの確率が大体40%ぐらいになるというイメージです。

 

○安浪構成員

40%というのはこの表のどこ。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

40%と書いていません。

 

○安浪構成員

 書いていないですよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 中央値というのは下から50%の所になります。

 

○安浪構成員

 下から50%。はい。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 点線の25%タイルは下から25%で、下から25%よりは上で50%よりは下に予定積立金があると見ていただけますか。

 

○安浪構成員

 経済中位ケースで40%。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

50%と25%の間に。

 

○安浪構成員

 間だから。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 それをきちんと計算しますと40%ぐらいになります。

○安浪構成員

 間は、75%の半分で37.5%ではないですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 中央値が下から50%ラインで。

 

○安浪構成員

 ええ。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 それよりも下にありますから、50%よりは確率は低いわけです。この太線は50%よりは下になります。

 

○安浪構成員

 この太線が50%よりも下ですよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 太線は50%よりは下ですから、下回る確率は50%よりは少ないのですが、25%よりは多いということです。

 

○安浪構成員

 それが40%だということですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 そうです。これはあくまでも計算結果をグラフにしたものですので、何パーセントぐらいかというのをきちんと計算すると40%になっているということです。

 

○安浪構成員

 そうすると、細かい計算シートというのは別にあるわけですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 計算というのはこの26ページのこういったデータを使って、10万回のシミュレーションをやっています。

 

○安浪構成員

 では、26ページの表の数字からは直接40%というのは出てこないのですね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

27ページの上から2行目の最後のほうに書いてございますが、10万回のシミュレーションをやって、その分布をグラフで表すと、大体40%ぐらいの割合で下回るということです。

 

○安浪構成員

 一般の国民は分かりますかね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 丁寧に御説明をしていかなければいけないと思っています。

 

○安浪構成員

 それと、この比較されているのが、今のポートフォリオと、比べている対象が全額国内債券とした場合の比較というような。27ページの上から5行目に「比較のため全額国内債券運用の場合で」とありますよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 はい。

 

○安浪構成員

 全額国内債券と比較すれば良くなるのは当たり前。要するに、従来も全額国内債券で運用していなかったわけですよね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用リスク管理室長

 先ほどの話とは別です。

 

○安浪構成員

 論点は2つあるのですか。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人投資戦略部長兼運用管理室長

 全額国内債券の場合は、結局、積立金はほとんど確保できないということになります。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 補足させていただきます。まず2種類あります。27ページで先ほどの御質問は、どうして新しいポートフォリオを全額国内債券100%のほうと比較しているのかという御質問だったと思うのです。

 

○安浪構成員

 そうです。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 もともとの考え方として当法人の中では、国内債券並みというようなリスクの捉え方があるよねということですとか、そういった考え方に基づくと、1つの比べる対象としては、全部国内債券でやったものが果たしてその必要な積立金に何十年か後に達しているのかどうかというのをまずお示しするのが一番大事だということで27ページがあります。

 それで今、実際に御質問の点につきましては28ページに、正に旧基本ポートフォリオとの比較ということで資料をお付けしております。それを見ていただきますと、絵が細かくてお分かりいただきにくいところもあるのですが、この黒い太線は変わっておりません。

 

○安浪構成員

 ここで旧と比較しているわけですね。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 さようでございます。

 

○安浪構成員

 分かりました。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 よろしいでしょうか。

 

○安浪構成員

 では、40%と25%というのは何となく分かったのですが、一般国民がこれを理解できるかと。今年度は15兆円も利益が出ているけれども、では、株が下がったらどうなるのかというような不安を持っている方も中にはいらっしゃるので。いや、理論上はこういうことなのですということでやっているのですと。だから理論的な裏付けとしてこの資料が出ていると。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 シミュレーションという形ですね。

 

○安浪構成員

 シミュレーションといいますか、一応、分析ツールを使ってやった結果はこうですという御説明で、国民の方がこれで理解してくれるかどうかというところだと思うのです。

○年金積立金管理運用独立行政法人企画部長

 この御指摘の資料は非常に重要だというのは正におっしゃるとおりでして、実際に基本ポートを見直したときにも、理事長から直接この資料を使って御説明した一番重要な資料でした。そういう意味ではこれは引き続き、いつか終わるということではありませんので、国民の皆様に御理解いただける資料をこれからも作っていくということは正におっしゃるとおりと考えております。

 

○山口主査

 時間の関係もありまして、先に進んでよろしいですか。先ほど大野さんが体制整備について御質問されて法人から説明があったのですが、あれは、S評価ではなくてAにすべきだという御意見ですよね。

 

○大野構成員

 あるいは、S評価にとどめておくのであれば、それに該当するような説明を通知していただければ。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 先ほどの青貝部長の説明に補足させていただく部分もございますが、この内部統制の項目の中には管理及び運用能力の向上という項目もありまして、39ページだったかと思うのですが、ここに書いてありますような、給与水準のかなり大幅な見直し、理事の任命、公募の開始、こういった項目もこの内部統制の項目の中に含まれていて、こういった分野でも相当の取組ができたと考えております。

 それと、内部統制体制につきましては法律制度の改正等によって対応するというような考え方もあろうかと思うのですが、私どもとしては、現在の制度の中でどれだけできるかという観点で鋭意取り組ませていただき、私どもとしては、かなりやれる、最大限に近いようなレベルのことができたのではないかという認識は持っております。失礼いたしました。

 

○山口主査

 ほかの委員の方は、これについて何か御意見はありますか。

 

○光多構成員

Sはやはりきついです。重要な項目であり、かつ、Sというのはやはり一番上ですよね。確かにそれは分かりますよ。本当はおやりになりたいことがもっとたくさんあるのだけれども、これを全部運用委員会に持ってきて、こういう形で内部統制はできましたという形、多分、GPIFのここまでやりたいというところの8合目ぐらいだと思うのです。ちょっとSはきついと思います。

 

○山口主査

 ほかの委員はどうでしょうか。

○安浪構成員

 基本ポートフォリオのSですか。

 

○山口主査

 いいえ、違います。

 

○安浪構成員

 内部統制のほうのSですか。

 

○山口主査

 体制整備のほうのSです。御意見はございませんでしょうか。御意見がないというのはこのままでいいのではないかということかなと理解しますが、委員の中で2つの流れがあるということで整理させていただきたいと思います。別に集約しなくてもよろしいですか。はい。

 それから、時間の関係もあって申し訳ないのですが、私の時間管理が不十分で失礼しました。この後もまだあります。ただ、これを一遍にやってしまったので言い足りないところとか、この項目についてこの評定はおかしいというのがもしありましたら言っていただいて、大体いいのではないかということであれば先に進みたいのですが、1-1から1-9の項目についてコメントしておきたいことがございましたらお願いしたいのですが。それでは、もしありましたらまた後でということで、次の事項に進めさせていただきたいと思います。

 次は2-1から4-1になるのですが、業務運営の効率化に関する事項、財務内容の改善に関する事項及びその他の業務運営に関する重要事項に係る項目別評定について議論したいと思います。それでは、先ほどと同様に法人及び法人所管課からポイントを絞って簡潔に御説明いただき、その後、質疑応答にしたいと思います。まず、法人からお願いします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人審議役

 それでは、第2グループにつきまして御説明申し上げます。47ページ~49ページは、評価項目2-1、効率的な業務運営体制の確立です。中期目標が変更され、資料記載のように平成26年以降の給与水準については、高度で専門的な人材確保の観点から弾力化について検討することとされたことを受け、中期計画等を変更し、弾力化に取り組むことといたしました。そして、外部コンサルタントの支援を受けて検討を行い、高度専門人材を円滑に確保できるよう本年1月には、運用専門職員等の給与水準について市場の報酬水準を勘案した設定を行う等、給与体系を見直したところです。

48ページの上のほうで、運用専門職員の新たな給与水準の考え方等を記載しております。その下は業務運営体制の効率化に係る組織体制の見直しで、1月のCIOの設置のほか、投資戦略部に運用リスク管理課を設置しております。

49ページは人事評価制度の運用です。右側にありますように、昨年度は従前同様、実績評価と能力評価を行っております。実績評価は目標管理型ではありませんが、実績評価はボーナスに反映させる一方、能力評価は昇給等に反映させております。人事評価につきましては、運用専門職員に係る業績連動性の高い給与体系の導入等もありまして、目標管理型制度の導入の必要性が高まっております。このため本年1月に外部コンサルタントと契約を締結し、その支援を得て同制度導入に向けた検討を開始しております。

 以上が評価項目2-1ですが、47ページ、48ページ等に記載した給与水準の改正、組織体制の見直し等を踏まえれば所期の目標を上回る成果を達成したと考えられますことから、自己評価をAとさせていただきました。

50ページから評価項目2-2、業務運営の効率化に伴う経費節減です。こちらは、自己評価をBとしております。一般管理費についてですが、第2期中期目標期間の前年度である平成21年度予算に対し、中期目標期間の5年間で15%節減、毎年度当たり約3%の節減としておりました。平成26年度は、5年目ということで約15%の節減ということで、これを踏まえた予算の範囲で執行を行いました。同様に業務経費についても、平成21年度予算に対し中期目標期間の5年間で5%の節減、毎年度当たり1%の節減となりますことから、平成26年度は5%の節減となり、こちらも予算の範囲内での執行を行い、一般管理費及び業務経費ともに、目標どおり節減を行いました。

 なお、契約について申し上げますと、一般競争入札等により節約を図るとともに、競争性がない、いわゆる随意契約については真にやむを得ないものに限定しており、あとは、全て競争性のある契約により対応しております。人件費につきましては、ラスパイレス指数ですが、昨年度においては100を切っており、国家公務員を若干下回る水準となっております。

51ページは、管理運用委託手数料の水準です。グラフを御覧いただきますと、昨年度は総額291億円となっております。手数料率は0.02%で、平成25年度以前とほとんど変化はありません。昨年度は国内株式の運用受託機関構成の見直しをしまして、これによる手数料率の節減効果が約21億円でした。ただし、相対的に手数料率の高い外貨建て資産のウェイト増加や、運用資産全体の時価評価額が増加したことにより約59億円の増加があったことにより、平成25年度からの実際の増減額はプラス約38億円となっております。

 あと、パワーポイントの資料にはありませんが評価項目として、ほかに3の財務内容の改善に関する事項、4のその他の業務運営に関する重要事項といったものがあります。これらにつきましてはA3の資料の70ページとか74ページに記載させていただいておりますが、いずれも自己評価をBとしております。評価項目3については、財務内容の改善、予算収支計画は適切で、所期の目標を達成していると考えております。評価項目4も、事務所移転などの事項につきまして、昨年度できることは適切に取り組んできたと考えております。第2グループの説明は以上です。

 

○山口主査

 ありがとうございました。

 

○大臣官房参事官

 法人所管課です。私から、法人がAを付けてきたものに関して私どもで量的に評価した部分だけ御説明させていただきます。

60ページ、効率的な業務運営体制の確立です。主としてマネジメントの部分です。このマネジメントにつきまして、本項目につきましては、CIOの設置、投資委員会の設置、運用リスク管理課の設置、給与体系の見直しという形で、大きな見直しを4つやっています。通常ですと組織の見直しはなかなか難しいので、平成25年度はオルタナティブ投資に関する体制強化の取組のみを行ったのですが、そういう形で量的にも目標を上回っていると認められるということです。私の説明は以上です。

 

○山口主査

 ただいまの評定項目2-1から4-1に係るそれぞれの説明について、御意見、御質問等がございましたらお願いいたします。

 

○川北構成員

 今説明していただいた資料の51ページですが、以前の独法評価委員会でもときどき言っていたことなのですが、管理運用委託手数料率の引下げが、本当に適切な状況になっているのかどうか。この機会なので言っておきたいと思うのですが、検討をお願いしたいと思います。厚生労働省が監督されているので、厚生労働省にも関わってくると思うのですが、今回の基本ポートフォリオの見直しにおいて、国内の株式、海外の株式の比率を引き上げられた。だから、株式の運用パフォーマンスがかなり大きな影響を持つと思います。

 そういう中で、これだけの規模の運用をされているわけなので、特に日本株に関しては、どうしてもパッシブにならざるを得ない。これは私も理解しているのですが、そうだとすると実際に上場している各企業が本当にうまく経営をやっていて、いいパフォーマンスを上げることが年金全体のパフォーマンスを相対的に高めていくことになると思うのです。

 そうすると、何をやるべきか。これはコーポレートガバナンス・コードとかスチュワードシップ・コードにうたわれているように、実際に間接的ではあるかもしれないですけれども、上場企業に対する監視を高めていく必要性がある、若しくはエンゲージメント的な対話を進めて、よりよい経営に持っていく必要性があると思うのです。そうすると、何が必要なのかというと、そういうことを真面目にやっているアセットマネジャーを選定することが非常に重要なわけです。

 ですから、単に目に見えたフィーを引き下げるかどうかという話ではなくて、対話をやらないこと、若しくはそういうことをサボっている運用機関を選定してしまえば、機会損失が非常に大きく生じてくると、私は思っています。

 そういう意味で、この部分に関しては、これがどこのコメントなのかは分かりませんが、つまり2-2に入れるのか、それとも運用手法の所なのか、もっと一番大きな基本的な考え方かよく分からないのですが、この資料全体にスチュワードシップ・コードが何回も出てくることと整合性をとり、運用に関する努力とそれに要するコストを重視していくべきだというコメントをどこかに入れていただければ有り難いというか、国民的な観点からすると重要になってくると思います。

 ですから、この2-2の評価を変えるとか変えないとか、そういう議論ではなくて、もう少し長期的な観点で、管理運用委託手数料をどうするのかという観点を注記していただければ、非常に有り難いと思います。私の意見です。

 

○山口主査

 ほかに御意見はございますか。

 

○引間構成員

 川北先生とほぼ同じことを申し上げようと思っていたのですが、今のお話の観点でいって、特に51ページの評価の視点の所で、「引き続き低減に努めたか」というのが評価の視点になっているというのは、これは見直しをしていただく必要があるのではないか。要するに、運用管理手数料については、安いほうがいいというものではありません。運用機関もどんどんリソースを投入して、しっかりと運用力を向上してもらわなければいけないし、年金スポンサーとしては、非常にクオリティの高い運用商品を採用しなければいけないというときに、安いほうが評価されるのだという評価体系を持っているということは、目指す方向性と異なるということになります。この辺りは、無駄なコストを省くのは当然のことですし、サービスなり運用の内容に見合った手数料なり、運用報酬を払うというのは当然のことですが、少なくとも評価の視点として、「低減に努めたか」というのは見直しをしていただく必要があるのではないかと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長

 おっしゃるとおりだと思いますが、去年の国内株式のマネジャースタッフの見直しにおいて、そういうエンゲージメントに非常に力を入れているところも採用しています。ここは委託手数料は非常に高いです。ただし、まともにエンゲージメントをやるとそんなにたくさん投資ができませんので、投資金額も少ないという状況ではありますが、ただ単に委託手数料だけを見て、安いところから拾ってくるようなことはしておりません。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事(管理運用業務担当)CIO

CIOの水野でございます。いろいろな御意見ありがとうございました。今の川北先生と引間先生のスチュワードシップ・コードに関する私どもの取組と、資産運用機関のフィーとの絡みについて、私の観点から1つ補足をさせていただきます。

 まず1つは、運用機関への手数料が、いわゆる一般のコストセンターのコストのように管理されていくということについては、我々も少し違うのではないかと思っております。

 一方で、今後、特にアクティブのファンドマネジャーの選択については、管理報酬控除後のアルファのレベルによって評価していくということを考えておりますので、そういう意味では、超過収益をたくさん上げるマネジャーであればフィーは高くても構わないということに、私どもは考え方を変えていっております。

 スチュワードシップ・コードに関しては、ここは我々の中期計画等にも、市場に影響を与えない、あるいは企業経営に直接影響を与えない等の縛りがあるということも御理解いただきたいところで、その範囲において、できる限り資産運用機関に対して我々から、彼らができるだけ動いて、日本経済全体のベータを上げてもらえるようにという観点からは動いていかなければいけないのですが、そこに関しては我々も運用員の方々の意見も聞きながら、そこには私どもの関わり方について様々な意見があるということも御理解いただければと思っております。

 ただ、先ほど申し上げましたように、昨年、委託調査研究で、GPIFを通してどういう取組方をするかということも調査をしていただいておりますので、それに基づいて今回スチュワードシップ・コード専門人材の採用も行っておりますし、GPIFのやり方を試行していきたいと思っております。

 

○山口主査

 予定時間が過ぎており、幾つか残っておりますので、先に進めさせていただいて、もし御発言等があれば、もう一度戻りますので、議事を進めさせていただきます。

 次に、法人の監事より、業務の監査結果等を取りまとめた監査報告について御説明いただくとともに、監査等を踏まえた現在の法人の業務運営の状況や今後の課題、改善方針等について、コメントをお願いしたいと思います。最初に事務局から、法人の監事及び監査報告について説明をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 法人の監事については、法人の理事長と同様、主務大臣から任命された独立の機関であり、法人の業務を監査することによって、法人の適切な業務運営を確保し、当事者体制の確立に資する責務を負っております。このため、監事が監査等において把握した業務の運営状況や問題点等について、直接監事から意見を聴取するなどの機会を設けることについては、評価に関する指針等においても記載されているとおり、主務大臣による評価に資するものであるという観点から、本日は通則法第19条第4項の規定に基づき作成される監査報告について御説明を頂くとともに、監査等を踏まえたコメントを頂くこととしております。それでは、法人の監事より説明及びコメントをよろしくお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人監事(吉江)

 監事の吉江です。資料1-4を御覧ください。まず裏を見ていただき、ここに監査の結果がございます。この監査の結果に記載しているとおり、財務諸表、決算報告書等の表示が適正であるという点を含め、監査において特段の問題はございませんでした。

 それから、3に別に書いていますが、独立行政法人に求められた事務・事業の見直し、資産・運営等の見直しについて、法人の講ずべき措置についても着実に実施されておりました。

 この監査結果に至った監査の方法ですが、1枚目に「監査の方法及びその内容」とあります。平成26421日に、理事長あてに通知した平成26年度監事監査計画に基づき、業務監査、決算監査を定期的又は随時実施しております。年度を通じて、理事長を含め役員等との意思疎通を図り、重要な会議に出席し必要な報告を受けております。また、厚生労働大臣に提出する書類を中心に、決裁資料及び報告資料等を調査いたしました。それから、会計監査人の業務の監視、意見の聴取を行っております。以上が監査報告の御説明です。

 次に、この監査を踏まえた現在の法人の業務運営の状況について、若干述べさせていただきます。平成26年度の業務については、非常に多くの、そして新しいことを大きな問題なく行ったと評価しております。さらに、それらの業務の遂行を通じ、運用方法やリスク管理について、各種会議での議論が深まってきていると感じており、これは大変にいいことだと認識しております。なお、1月に監事付きの職務を設置するなど、法人は監事業務への理解があり、監事業務を円滑に行うことができております。

 最後の今後の課題です。平成27年度からの新中期計画では、正にいろいろな新しいことが実行される予定です。新基本ポートフォリオの下での運用の多様化や、より高度なリスクマネジメントの構築などがその例です。それらに対応するために、今般体制を整えた内部統制システムをスケジュールどおりに更に整備し、また適切に運用していくことが重要だと考えております。それによりCIOの設置、理事2名体制、組織変更、高度専門人材の採用などの新たな仕組みが統合し、効果を発揮し、より効率的に機能することを期待しております。監事からは以上です。

 

○山口主査

 続いて、法人の理事長より、日々のマネジメントを踏まえ、現在の法人の業務運営の状況、今後の課題、改善方針等について、コメントを頂ければと存じます。よろしくお願いいたします。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長

 理事長の三谷です。御承知のとおり、昨年の10月末に基本ポートフォリオを変更して以降、私どもの行動というのは市場関係者から極めて高い注目を浴びているところがありますが、私どもとしては、これまで市場関係者の思わくをいたずらに刺激することがないよう配慮しながら、市場の動向を勘案しつつ、慎重かつ着実に資産のリバランスを進めてきておりますし、今後も進めていきたいと思っております。これが業務の現況です。

 今後の課題は、まず挙げられるのは、更に分散投資を一層進めていきたいということです。昨年初めに実施したインフラへの共同投資や国内株式の運用の多様化、物価連動国債の購入というのはその一部ですが、今後も伝統的資産の中での運用の多様化、現状、法的な制約はありますが、いわゆるオルタナティブ投資への分散を着実に進めていきたいと思っております。特に、現在のように国内の長期金利が極めて低水準で、ともすれば実質金利がマイナスになるという状況の下では、こういった分散投資というものを進めていくことは特に重要だと考えております。

 その際に重要なのは、言うまでもありませんがそれぞれの分野での専門家の採用ということです。幸い、一昨年末の閣議決定で、従来の厳しいルールが見直され、人材確保ができるよう職員数や給与水準の見直しをしてもよいという話になりました。それまでは、非常に厳しい制約があったわけです。そういう決定がありましたので、先ほどから出ているように、昨年、外部コンサルタント会社と契約し、いわゆる任期制の運用専門職員について新しく給与体系を定め、現在各分野ごとに、専門家の公募を開始しているところです。応募者は結構いるのですが、眼鏡に適う人が少ないということもあり、なかなか進捗しておりませんが、引き続きそれには努めていきたいと思っております。また、一般の職員についても研修等を通じ、特に高度な専門職員の採用ができれば、彼らの知恵も借りながら、専門性の一層の向上に努めていきたいと考えております。

 なお、これも先ほどから少し出ていますが、こういうことにより人員が増えますと、現在の事務所では収容しきれなくなりますので、新たな事務所の移転も計画中ということです。

 このほか、リスク管理体制の一層の充実、先ほどから出ている、より適切なスチュワードシップ責任の在り方、ESG投資の検討、インハウス運用の一層の活用、より機動的な運用を確保するためのマネジャーエントリー制度の導入等、様々な課題を検討しているところで、引き続き体制の整備を図りながら、これら一つ一つにしっかりと取り組んでいきたいと考えております。

 

○山口主査

 ただいまの御発言について、御意見、御質問等はございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、最後に項目別評定におけるこれまでの議論や、ただいまの法人の監事及び理事長の御発言などを踏まえ、法人全体の状況について評価する総合評定の議論に移ります。法人所管課より、総合評定についての説明をお願いいたします。

 

○大臣官房参事官

 また、このA3の大きな資料に戻っていただいて、2ページです。そこに総合評定、その総合評定については今まで御議論いただいた項目別評定に加え、法人全体に対する評価を基にして行いますので、そこについての事務方の案について書かせていただいております。まず、法人全体に対する評価、2から説明させていただきます。

 冒頭に申しましたように、この法人については年金積立金の運用が年金財政に与える影響、これはまだ特会の決算の関係があり、できましたらお届けしたいと考えておりますが、法人だけで見ると名目賃金上昇率を11.14%と大きく上回る利回りになりました。年金積立金については、先ほどの超過収益率の話も似たようなところがありますが、あくまでも中長期的に評価を行うものですが、新しい運用目標というのは、長期的な観点からすると名目賃金上昇率プラス1.7ですので、単年度ではありますが、これを大きく上回っている状況があるということです。

 あと、日本再興戦略については、基本ポートフォリオの迅速な見直しと、それに伴うガバナンスの強化を適切に実施しているということです。これを先ほどの項目の評価と合わせますと、中期計画における所期の目標を上回る成果は得られていると認められるということで、事務方案としてはAを付けております。

 

○山口主査

 ただいまの御説明について、総合評定ですが、御意見、御質問等はございますか。

 

○安浪構成員

 財務内容の改善に関する事項というのがBになっているのですが、決算数字上は純資産が3年間で利益が大きく出ましたので、33兆円あるのです。前に頂いた財務内容の改善に関する事項というのは、剰余金の使途というのは入ってくるのですか。それは考える必要はないのですか。剰余金が3月末で33兆円ありますから、それをどうされるかというのは。

 

○大臣官房参事官

GPIFについては、年金資産をそのまま運用していただきますので、剰余金についてはいつかの段階で、必ず年金給付に資するよう特会に国庫納付していただく形になっておりますので、そういう意味で他目的に使わずに有効に使われると考えています。

 

○安浪構成員

 見方を考えれば、国庫納付が一種の配当金のようなものですよね。国からの寄託金を受けて、利益を出して、利益を国庫納付金として支払うと。

 それは、キャッシュで厚労省に返せば、国民の厚生年金保険料を下げる原資になるのではないかという見方も片やあるわけで、積み立ててそのままずっと置いておいていいのかというのは、議論してもいいのかなという気もしたのですが。

 

○大臣官房参事官

 おっしゃられたように、剰余金については名目でして、それについてはGPIFで適切に株なり債券等で運用していただいていると考えております。

 

○光多構成員

 結論からいくと、総合評価はAでいいと思いますが、表現が「中期計画における所期の目標を上回る成果が得られているからA」というのは、行政用語としてはしようがないのでしょうけれども、私の感じでは、中期計画に予想しなかったような、非常に大きな変動又は課題があることに対して、「適切」というのもボキャブラリーが不足だと思うのですが、最大限の対応をされたと。私はそういう感じでのAなのです。

 ですから、こういう形で中期計画と比較しながら、ABだという年ではなかったのかなという感じがするので、表現としてはこうかもしれませんが、心はこれとは違う感じです。結論はAでいいと思います。

 

○山口主査

 ほかはよろしいでしょうか。元に戻ってコメントなどはありますでしょうか。よろしいでしょうか。それでは、本日の議事は終了します。最後に、法人及び法人所管課より、一言ずつ頂ければと思います。

 

○年金積立金管理運用独立行政法人理事長

 本日はお忙しいところ、ありがとうございました。私どもGPIFに対しては、御承知のとおり、様々な立場からいろいろな御意見や御批判があるところではありますが、私どもとしては、本年3月に定められた投資原則や行動規範を遵守しつつ、専ら年金保険者の利益のために受託者責任を全うしてまいる所存です。引き続き、よろしく御理解、御支援のほどお願いしたいと思います。

 

○大臣官房参事官

 法人所管課です。本日は御熱心な議論、どうもありがとうございました。皆様から頂いた御意見につきましては、主務大臣の評価、若しくは今後の課題などの記述に対して反映するよう調整しつつ、鋭意取り組みたいと存じております。

 また、例年ですと私どものほうで、年金財政に与える影響について御覧いただくところですが、今回は時期的に早まったもので間に合いませんが、これは取りまとまりましたら速やかに先生方のお手元に届くようにいたします。

 

○山口主査

 法人所管課におかれましては、本日の構成員の皆様から頂きました御意見、特に体制整備の評価について、「Sは過大ではないか」「Sならば十分な説明が必要ではないか」といった御意見もございましたので、そういったことも含めて、御意見等を踏まえて、評価書の内容の修正等について御検討いただき、内容の最終的な確定をよろしくお願いいたします。それでは、事務局から今後の流れと次回の開催について、連絡をお願いいたします。

 

○政策評価官室長補佐

 今後の流れについて御連絡いたします。本日御議論いただいた年金積立金管理運用独立行政法人の平成26年度業務実績評価については、この後、本WGにおける御意見、法人の理事長、監事等のコメントを踏まえ、先ほど評価官、参事官、主査からもお話があったように、必要に応じて本日の評定等の内容の修正を施した上、最終的な内容を確定させ、厚生労働大臣による評価として決定させていただき、その評価結果について法人に通知するとともに、公表させていただきます。決定した内容については、後日構成員の皆様にもお送りいたしますので、よろしくお願いいたします。

 次回の本WGの開催については、729()14時からと予定しております。場所はこの建物ではなく、中央労働委員会の7階の講堂を予定しております。議題は、年金積立金管理運用独立行政法人の中期目標期間実績評価、昨年までの話でいうと、最終評価の御意見を賜ることとしております。

 最後になりますが、本日配布しました資料の送付を御希望される場合には、事務局で送付いたしますので、机上にそのままにして御退席いただきますよう、よろしくお願いいたします。事務局からは以上です。

 

○山口主査

 本日は以上とさせていただきます。25分ほど予定を超過してしまい、主査の運営の不手際でございます。申し訳ございませんでした。長時間にわたり熱心な御議論を頂き、ありがとうございました。


(了)

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