ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ> 第4回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録(2015年8月19日)




2015年8月19日 第4回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録

○日時

平成27年8月19日 10:00~12:00


○場所

経済産業省別館1111号会議室
  東京都千代田区霞が関1-3-1


○議題

・関係団体等からのヒアリング
・その他 等

○議事

第4回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ

 

 

 

                                    日時 平成27年8月19日(水)

                                          10:00~12:00

                                    場所 経済産業省別館1111会議室(11階)



○吉本医師臨床研修専門官 それでは定刻になりましたので、第 4 回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループを開催いたします。本日は御多忙のところ御出席を賜り、誠にありがとうございます。

 まず、初めに事務局に異動がありましたので御紹介いたします。医師臨床研修推進室室長の田村でございます。専門官の吉本です。よろしくお願いいたします。

 ここでカメラは、退室をお願いいたします。

 続きまして、本日の出欠状況について御連絡させていただきます。所用により、高橋構成員、田中構成員、伴構成員、古谷構成員、前野構成員から御欠席との御連絡をいただいております。金丸構成員から、交通状況等により遅れて御出席との御連絡をいただいております。

 今回、ヒアリングを行う関係団体等からの参考人として、御発表順に日本内科学会認定制度審議会前会長で、現顧問の渡辺毅先生、日本救急医学会教育・研修統括委員会委員長の森村尚登先生、日本外科学会理事長の國土典宏先生、日本麻酔科学会副理事長・教育委員長の稲田英一先生にお越しいただいています。尚、厚生労働科学研究医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究班より、「医師のプロフェッショナリズムを踏まえた到達目標の在り方に関する研究」の御担当で、前回の第 3 回検討会には参考人として御出席いただいた野村英樹先生、そして「人工動態や疾病構造、医療提供体制の変化等を踏まえた到達目標の在り方に関する研究」を御担当の聖ルカ・ライフサイエンス研究所臨床疫学センターの高橋理先生、同じく大出幸子先生にも今回お越しいただいております。また、文部科学省医学教育課からは、平子企画官にお越しいただいております。

 以降の議事運営につきましては、座長にお願いいたします。それでは福井先生、よろしくお願いいたします。

○福井座長 それではよろしくお願いいたします。最初に、事務局より資料の確認をお願いいたします。

○吉本医師臨床専門官 それでは資料の確認をいたします。まず、議事次第です。その後に、資料 1 「これまでの検討状況及び今後の進め方について」です。その後、先生方からいただきましたヒアリング資料ですが、「ヒアリング資料 1 」「ヒアリング資料 2 」「ヒアリング資料 3 」「ヒアリング資料 4 」の 4 部がございます。また、参考資料 1 として「ワーキンググループの開催要項及び構成員名簿」、参考資料 2 として、今回の参考人の先生方の名簿、参考資料 3 として「臨床研修の到達目標」、参考資料 4 として、前回のワーキンググループで資料としておりました厚生労働科学研究「医師臨床研修の到達目標とその評価の在り方に関する研究」の報告についてということで、 ( 別添 1)( 別添 2)( 別添 3) を合わせてとじております。また、参考資料 5 として、「到達目標・評価の在り方にかかる論点について」。これは以前、ワーキンググループで使用した資料です。最後に参考資料 6 として、「卒前教育・医師国家試験・臨床研修・専門医に関するスケジュール」ということで参考資料を一つにまとめております。

 過不足等ございましたら事務局まで御連絡いただければと思います。以上です。

○福井座長 資料についてはいかがでしょうか。よろしいでしょうか。

 ヒアリングに入らせていただく前に、これまでのワーキンググループでの検討状況について、事務局より説明をお願いいたします。

○吉本医師臨床専門官 それでは資料 1 ということで一番上の 1 枚紙を御覧ください。今回、参考人の先生方もいらっしゃっているということで、簡単にこれまでの状況を御紹介したいと思います。

 平成 25 12 月の医道審議会医師分科会医師臨床研修部会の報告書で到達目標とその評価については人口構造や疾病構造の変化等の観点から、その内容を見直す必要があるとの御指摘があり、次回平成 32 年度の見直しに向けて、別途、検討の場を設けて検討していくという提言があり、設置されたのが本ワーキンググループになります。現在までに 3 回の検討会を開催し、この目標と評価の在り方について検討するために関連データ等の収集や分析を行っていただいている研究班の先生方から報告等をいただいてまいりました。今回以降は関連団体等からのヒアリングを中心に進める予定となっており、御紹介しましたとおり、本日は 4 つの学会から参考人の先生方にお越しいただいています。そしてヒアリしングを踏まえて到達目標及び評価の具体的な見直し案をワーキングにて改めて御議論いただき、平成 28 年度中に取りまとめ、医師臨床研修部会に報告できればと思っております。

 簡単ですが、今までの経緯と今後の予定です。以上です。

○福井座長 本日は、第 1 回目のヒアリングとなります。最初に、日本内科学会の渡辺先生より御説明をお願いいたします。時間の関係上、プレゼンテーションは 15 分程度でお願い致します。その後、質疑応答の時間を 10 分程度取りたいと思います。

○渡辺参考人 内科学会の渡辺です。内科学会では、 3 月まで審議会の会長ということで認定制度の委員長をやっておりましたが、現在は顧問という形です。日本専門医機構でも働かせていただいております。今回このお話を頂きまして非常にうれしいと思ったのは、我々はこの 4 5 年の間、ずっと内科の専門医制度に関しての改革の議論をしてまいりました。ところが、気がついたのは、その前にある初期臨床研修制度にほとんど視点が当たっていなかったなと感じました。そういう意味で、新しい視点を作っていただいたことに関して感謝申し上げたいと思います。

 逆に言えば、まだ正式な議論を、例えば内科の認定委員会等でやっておりません。したがって、私が今日申し上げるのは、もちろん理事長や審議会長には資料を見せていただき同意はいただいているのですが、あくまでも機関決定されたものではないということで、かなり私的な意見が入っていると思います。ただし私が思うに、多分、内科の医師の大体の総意ではないかなと思う時点でお話したいと思います。

 まずは、内科の特徴があります。各診療科で特徴があります。内科の特徴は御存じのように、釈迦に説法なのですが、まず患者が臓器別に診療を受けられるわけではありませんので、必ず総合内科的なインタビューから始まって鑑別診断、治療選択に入っていくという過程があります。もう 1 つ大事なのは、医学は非常に進歩しておりますので、コンサルテーションや紹介などという、かなりサブスペシャルティーの領域、若しくは外科の領域とのコンタクトといいますか、コンサルテーション、紹介があり、これを全てが内科の業務だと私どもは思っております。したがって、専門医制度の構築に関しても、この考え方が基本にあるということでお話したいと思っております。

 現在のところ、総合的な内科の専門医としては、総合内科専門医が走っておりますし、内科系には 13 のサブスペシャリティーの専門医がおります。実際に、内科の専門医制度を考えるときに考えなければいけないのは、内科の場合はサブスペシャリティーで主にいきている方、もちろん濃淡はあるのですが、あくまでも常に総合内科的な視点をもって診療しなければならないところがあると思います。外科も当然そうなのでしょうが、内科の場合は特にそういうことが多いです。簡単に言えば、サブスペシャリティーとジェネラリティーというのは、一人一人の人の中でも、それから制度の中でも、かつ医者のキャリアの中でも調和はしていなければいけないだろうと思っております。ということで、平成 16 年まで旧専認機構が以前からありまして、専門医制度を持っている学会の集まりの中で、内科系関連学会という所で、ちょうど初期臨床研修制度が入る年までは、こういう 2 段階制度でした。我々は長く 2 階建て制度と呼んでいたのですが、こういう制度がありました。認定医が 3 年で、それからサブスペシャリティーの専門医と同じにジェネラルの専門医として内科専門医があると。ところが、初期臨床研修制度が入ってまいりまして、それが平成 16 年だと思いますが、いろいろ議論があり反対論も強かったのですが、基本的には初期臨床研修制度の 2 年をこの認定内科医の研修の 3 年に組み入れたということがあります。これが、結果として何を生んだかというと、平成 16 年以降は多くの場合、先生方も感じられていると思いますが、内科系サブスペシャリティーのほうに内科の医者が流れていくと。実際的に、この 1 年というのが本当にジェネラルな研修をするには短かすぎるということがあります。したがって、サブスペシャリティーが優位な内科制度になったことは否めないと私どもは思っておりますが、今回の新制度に移行するに当たって、これは内科側が是正しなければいけない課題として、こういうものがあると思っております。

 長年、このような学会が作ってきた専門医制度に関しては、現在の日本専門医機構の前身である専門医制度評価・認定機構の中で議論が行われてまいりました。その結論といいますか、我が国の専門医の基本構想というのは、基本的にいえば、スーパードクターではないと。標準的な医療をきちんと提供できる医者ということが、まず定義され、その中の制度の目的としては、 1 つはミクロ的な視点からいえば「良質な医者の形成」である。カリキュラム、プログラム、指導体制、それから評価が入る。と同じに、より効率的に適正数の医者が配置できるように努力する。専門医制度でこれができるわけではありませんが、少なくとも、この邪魔をしないというようなことがマクロ的な視点からあるということが分かりました。それを受けてというのかどうかは分かりませんが、厚労省で専門医制度に関する検討委員会があり、一昨年この最終答申が出ました。おおむね抜粋しますと、学会ではなくて第三者機関を作ろうということと、 2 段階制度兼、総合診療専門医というものをつくろうということが骨子になった答申が出ました。それを受けて、日本専門医機構が、昨年 5 月に結成され、こういう組織で動いております。基本的な部門としては、評価認定部門の中に、専門医の認定・更新をする部門と、プログラムの認定・更新をする部門とに分かれていることが大きな特徴です。アメリカの制度と違うのは、アメリカではプログラム評価は ACGME という独自の評価が外部にありますが、日本の場合は組織の力の問題だと思いますが、これはなかなか外に出すほどの力はまだないということで、同じ屋根の下にあるということです。

 現在のところ、基本領域が 18 プラス 1 で、現在は 19 領域になりましたが、サブスペシャリティーが 29 領域のものがこの専門医機構から認定されております。この中に、内科は今度、総合内科専門医ではなくて「内科専門医」に一本化しようということになっておりますし、「総合診療専門医」も、つい先日プログラムが認定された段階にきております。今回の「専門医制度改革の骨子」は、国民に分かりやすいとか、学会ではなく、できるだけ第三者機構など、いろいろなことをプロフェッショナルオートノミーによって運営することになりますが、もう 1 つ大きな臨床研修との絡みでいいますと、診療に従事しようとする医師は、 2015 年卒業以降の問題ですが、 19 のいずれかの基本領域に入ることを進める、求めるという項目があります。これは、非常に大事なことだろうと思います。なぜかというと、臨床研修はゴールではなくて、やはり基本領域の専門医が医師のキャリアのゴールだと我々は認識しております。

 そういうこともあり、内科学会では評価認定機構の議論に、厚労省の議論、それから専門医機構での議論をみながら、毎月のごとくワーキンググループで会議を行い、結論として、この 4 年ほどの間に新しい制度に移行しようとなりました。骨子としては、認定内科の 3 年を 5 年の新・内科専門医制度に一本化して、現在の総合内科専門医は指導医、研究医を含めた指導医に移るということです。総合医構想に関しても、何らかの関与をしていこうということです。これは、内科学会員 10 万人強に配ったパンフレットなのですが、要約した骨子を配っておりますし、つい先日 7 19 日に日本専門機構からこのようなプログラムの整備基準 ( ) が承認され、 7 25 日に公表しております。この内容は、新内科専門医・指導医の内科医ジェネラリストとしてのゴールと考えていただいてもよいと思うのですが、専門医としては、かかりつけ医から総合内科的視点をもったサブスペシャリストと、内科医は非常に幅が広いということを認識いただければと思います。

 指導医に関しては、指導医であり、かつリーダーであり研究者も含めるというような形で、論文等に関しての作成も非常に大事なものだと考えております。このことを、新しいプログラム要件の中では専門医の目標 (Outcome) ということで書き込んでおります。この 1 2 3 は先ほど申し上げました 4 つの内科専門医の医師像と同じことを書き込んでいると考えていただいて結構です。指導医に関しても、同じように資格要件等を書き込んでおります。

 実際にどのように研修するかに関しては、カリキュラムがありす。現在のところ、総合内科と腫瘍内科、高齢内科、老年内科に分かれておりますが、それ以外に臓器別に各カリキュラムがあります。カリキュラムというのは、御承知のように内科医としての、ある意味での目標ですので、それを実際にどう運用するかに関しては、研修手帳を使います。実際に修了の要件としては、このカリキュラム全体を幾つかにカテゴライズいたします。例えば「神経」で言えば、脳血管障害、感染性疾患というような形で、これが 67 プラス総合内科が 3 つありますので 70 のカテゴリーがあります。目標は、これを内科の専門医研修の間に、この中でどれかをヒットすることです。症例としては、 200 症例を診てほしいと。と言いますのは、もちろんカテゴリー A というのは重要な疾患で診るべきなのでしょうが、実際の患者に当たるかどうかは、研修医、専攻医の問題ではありません。したがって、この中でどれかぐらいはできるだろうという現実的な判断です。

 実際問題としては、 3 年間のプログラムです。したがって、目標はあくまでも 270 なのですが、修了要件としては 160 症例、 56 疾患の、おおよそ 8 割できたところで、症例申請をしても構わないだろうと考えております。ただ、少なくとも総合性は非常に大事だろうということですので、各領域に最低限、この程度は経験してほしいという修了要件は掲げております。

 どうやって運営するかに関しては、これは初期研修及び臨床研修制度の EPOC を大分参考にしていると思います。どういうことかといいますと、電子手帳は紙ベースではなく、 Web ベースです。今、このサーバーで注文を出しておりまして、現在構築中です。 2 年後に出来上がればいいと思っておりますが、専攻医が登録し、プログラム指導医が評価をいたします。要件としては 160 症例で、目標は 200 です。これが、即ち専攻医のマイページと指導医のマイページがあり、これを全部データを蓄積していきます。なぜこういうことをやったかといいますと、外科には NCD という手術の登録システムがあり、全国のほとんどを網羅しております。内科にもそれを求められたふしもあるのですが、内科はそれは無理だということで、ならばこういう登録システムで症例登録をやっていこうということです。手術の数と患者の数とは圧倒的に違うということを御理解いただきたいと思います。

 具体的には、こういうページが各症例ごとに、専攻医と指導医のページができ、 EPOC をかなり意識していると考えていただいて結構です。 Web 上で、査読も、外科の場合は手術という非常に大事な手技がありますが、内科の場合はきちんと病歴を論理的に書けることが内科医の必須の素養だと思います。したがって、試験の前には査読を必ずやります。手帳の中から、各領域の 29 症例を提出していただき、 Web 上で査読委員が査読をすると。駄目な場合は戻すということで、形成的にやっていこうということで、合格して初めて試験を受ける資格ができるというような制度を考えております。実際に、これをキャリアパスといいますか、継時的に書きますと、初期臨床研修の 2 年と基本領域の 2 年で症例を出していただいて、査読を 1 年かけてやると。この間も、経験は積んでいくわけですね。おおよそ、 7 8 割経験した段階で、ここで出せるというような形になります。

 それと同時に、内科の特徴は、ほとんどの方が現在のところサブスペシャリティーに移っていくということです。ほかの幾つかの診療科には基本領域で終わる科もあります。先ほどの 2 階建てもありますが、内科の場合はほとんどの方がサブスペシャリティーに移っていく研修を受けると。ここが、 1 つの特徴です。

 もう 1 つは、内科系の大学院をどう扱うかを非常に議論いたしました。ただし、もちろん基礎系の大学院で試験管を実験室でというのはもちろん認められないのですが、内科の大学院であって、かつ臨床研究若しくは臨床も同時にやっているということに関しては、これも新しいプログラム要件の中で所属は認めると。ただし、研修要件、修了要件に関しては、特別な扱いをするわけではないと。同じ要件を出していただくのは大前提です。したがって、時間的には 1 2 年余計にかかる可能性は非常に大だと思っております。

 内科の専門医の到達目標として、 4 番、 8 番、 10 番は、内科にスペシフィックな専門知識、経験ですので割愛いたします。もう 1 つ大きな項目として、学問姿勢や、医師としての倫理社会性というのがありす。即ち、内科のプログラムの到達目標の内容というのは、医療人として必要な基本的な姿勢や態度、若しくは素養と、専門領域の目標に大きく分かれております。ほかの専門領域はどうかと見てみますと、これはホームページに出ているものですので、内科とはかなり両極にある外科 ( 整形外科、形成外科 ) を見てみても、こういうものを書き出しますと、ほとんどのものに 2 つ項目があります。医療人として必要な基本姿勢・態度、専門領域の目標に、少し独断が入っていると思いますが、大雑把に分けられるものと思っております。

 翻って、医師の臨床研修の到達目標は、今年の 3 月の医政局の通知を見てみますと、まずは行動目標として、基本的な姿勢が出ております。これに関しては、内科、若しくは他の専門医制度の到達目標のジェネラルな部分と同一性がかなりあるのではないかと思います。ただし、言葉は大分違います。したがって、私どもがこの委員会、若しくは厚労省にお願いしたいのは、臨床研修の到達目標としての重点としては、この専門医制度の前段階としての基本的な姿勢や態度、若しくは素養というものに向けていただきたいと考えております。この委員会の 7 2 日の資料を拝見しますと、コミュニケーションなどが出ております。これは、そういう意味では非常にいい目標かなと思っております。逆に内科のほうは、先ほど申し上げましたように、初期研修を余り意識した制度設計をしてこなかったので、例えば言葉などもすり合わせができたら到達目標の評価が非常にやりやすいのではないかと感じました。ですから、何か用語や、その他に関するすり合わせも考えていただいたほうが、項目別に評価はしやすいだろうと思います。これは、一種の提案です。

 では翻って、経験目標を考えてみますと、これも厚労省の通達の中にありますが、私どもは専門医制度の現状を考えたときに、例えばこれが悪いという意味ではないのですが、周産期、精神医療、終末期の現場でやらなければいけないだろうと。これは、全ての専門医がやらなければいけないのだろうかという疑問を持っております。もちろん、医者の素養として、これが必要なことは認めるのですが、初期臨床研修制度というのは最大 2 年間ですから、 2 年間に本当にこれが習得できるとは私はとても思えないということが正直な感想です。これは、ちょっと言い過ぎかもしれません、率直に言わせていただければ。ならば、もう少しベーシックなところに重点を置いたシンプルなものを作り上げていったほうがよろしいのではないかと考えております。

 実は、それに関して、平成 21 年に臨床研修制度の見直し案が出ました。質の向上を目的とすると同時に、医者不足への対応というのはマクロ的な視点だと思うのですが、必須項目を内科救急、地域医療とすると。あとで、國土先生から何かコメントが出るとは思いますが、こういうことになったわけです。あとは、指定の基幹型の臨床研修病院の指定基準や、募集定員の上限を設けるというようなことが出たわけです。それに関して、内科学会で 2010 年に、大学附属病院、教育病院、関連病院に、これに関する意見はどうかというアンケートを取りました。そうしますと、初期臨床研修制度が、この間に 5 年ほど行われているものに関しては、おおむね評価はよろしいのです。悪いという方ももちろんいらっしゃるのですが、多くの方は臨床能力は上がったのではないかと思い、初期臨床研修制度一般に関しては必要なのだと。どの分野がよくなりましたかというと、やはり一番多いのは救急です。それまでは、救急がないがしろにされていた面があるのではないかと私は思っておりますが、内科もこれに気づいて、この時点から JMECC という救急講習を内科学会の中でやり出した 1 つの大きな契機なのです。ですから、救急が大事だということを認識させていただいたと感じております。

 一方で、低下した分野は何かと言うと、一般内科なのですね。これは、あくまでも内科の医者からの視点なので、内科から見れば内科が当然落ちたと思うでしょうし、外科から見れば外科が落ちたと思うと、これは当たり前だとは思うのですが。弾力的な運営はどうですかということに関して、若しくは新しい基幹型病院の指定基準、それから定員枠に関しては、おおむね 4 割から 5 割ぐらいの方がフェイバーだったという結果が出ております。これを考えますと、平成 21 年の改定 ( 見直し ) に関して、私どもの受け止め方は、特に内科から見ますと、内科の到達目標は非常に多様だというお話をしました。かかりつけ医から研究医まで、サブスペシャリスト、ジェネラリスト、病院のジェネラリスト。そうしますと、このところの選択肢の向上や後期研修へのつなぎを弾力的に運営していただきたいというのが、私どもの第 2 のお願いです。

 ある方は、一般能力で基本領域の専門性のほうに重点を置いていくこともありではないかというのが率直な私どもの意見です。それが可能だということに関して、これは他の学会に関しては分からないのですが、先ほど言葉の問題を申し上げましたが、では研修施設としてはどうなのだという話になりますと、内科の教育病院のうち、 92 %以上は臨床研修の指定病院なのですね。逆に、内科学会の関連教育病院、特殊病院、関連病院の中のほとんどが、臨床研修病院なのです。したがって、同じ施設の中でほとんどが移っていくのですね。ですから、そこで言葉、基準、その他の整合性が取れれば、非常に効率的な初期研修になるのではないかというのが、私どもの意見です。

 まとめですが、今回の専門医制度の改革で、医師の共通の最終ゴールというのは、やはり基本領域の専門医であろうと。では、初期にお話があったように、初期研修の目標が総合診療できる、プライマリーケアができるということに関していえば、総合診療の専門医というのができるわけですから、そういう意味もあって、そうではないかと考えております。医療体制に関しては、これは時間のこともありますが、可能であれば同じことを繰り返さないで効率的にリンクしていただきたい。それから、内科医に関していえば、非常にサブが多く、サブに移る方がほとんどで、しかも目標がかなり多様であることを意識していただきたいと思います。具体的には、初期の 1 年目に関しては、全領域に必要な項目に絞っていただきたい。そして、最大 2 年で現実的に習得可能な、将来的な目標ではなく、現実に可能ということを意識していただきたいと思います。それから、内科に関しては、臨床研修施設と内科の研修がほとんど重複しておりますし、ここのところは言葉、評価基準等をある程度統一化できるのではないかと考えておりますので、是非そうしていただきたいと思っております。

 それから、医師像が多様ですので、 1 年目、 2 年目に関して、各年度ごと、これは専門医制度では必須になっておりますが、 1 年目、 2 年目、 3 年目の各年度ごとの目標を立てていただいて、 1 年目の目標に到達した方はどう動くか、どう捉えるか、 2 年目を修了したときにどうするかということで、多様性を持てる制度にしていただきたいと思っております。逆に、先ほど申し上げましたが、内科の専門プログラムの到達目標の評価等に関しては、この初期臨床研修制度で取られている EPOC 等の評価に関しては、一部取り入れているつもりなのですが、もっと勉強させていただいてやらせていただきたいと思います。最初に申し上げましたように、そういう意味で、内科を含めた専門医制度の委員会、若しくはこの臨床研修に関する意見交換や相互の調整があっていいのではないかと感じている次第です。以上です。

○福井座長 ただいまの御説明について、御質問や御意見がありましたらお願いいたします。先生のプレゼンテーションの中で、内科の先生のほとんどがサブスペシャリティに移行すると何度かおっしゃいました。ジェネラルを専門的にやる人は、将来内科からはほとんど出ないということでしょうか。

○渡辺参考人 それは、そうではないと思います。現に、内科の専門医の 4 5 割は開業医です。一時的に若い人たちが、初期研修をして内科の専門医になったときに、ある領域を極めたいときも当然多くの方があると思います。ジェネラリストになって、かつ内科を超えたジェネラリストになりたい方は総合診療に行くのだと思います。内科のジェネラリストというのもあります。

 サブスペシャリティの専門医を取る方は過半数以上、かなりの部分だと思います。ただし、もう少しライフステージといいますか、その後その人たちがどう生きていくかを考えると、これは厚生労働省の資料にもあるのですが、 40 50 歳ぐらいになってくると、過半数の方々がかかりつけ医になっていっています。したがって、我々はその時 5 年間の制度設計ではなくて、将来 10 年後、 20 年後に地域でかかりつけ医になる、若しくはプライマリーケア医になるときの素養を養成していると考えております。もう少し時間の経緯で見ていただければと思います。

○大滝構成員 詳しく、かつ建設的なお話をいろいろ伺えて大変有り難い機会になったと思います。症例経験の登録システムについて伺います。初期研修でもこういうことを今後更に進める必要があります。 EPOC では御存じのように、症例の登録は、統一的なシステムになっていません。場合によっては卒前も含めて、こういうものをより充実させていくことが、いろいろな意味で必要になってくると思います。

 今回のご説明では、患者さんの年齢と性別と ID を入れて、氏名は入れないという形になっています。かなりセキュリティを高くしなければいけない情報が多いと思うのですが、サーバー、 ID 、パスワード管理などについて、どこがどのように管理するのかについてお伺いします。

○渡辺参考人 個人情報と言えるのかどうか。名前は出しません、生年月日も入れません。私どもは、基本的にそれほど抵触する余地はないと思います。最近はそういうことに関しての考えもあります。これは、クローズドのシステムです。当然パスワード管理、 ID 管理をやりますので、誰でも見られるわけではないです。逆に、専攻医のマイページを指導医が見られるわけではないです。指導医しか見られない、それ以外の方はシャットアウトします。そういう意味で個人情報の問題に関しては大丈夫かと思っています。今はシステム設計をしている段階で、注文を出して、会社のほうでかなり進んでいると思います。その時点で、そのことは現在非常に話題といいますか、世間から注目されていることなので、詳しい設計に関して、もし御疑念があれば、制度の変更は可能です。ここを直したほうがいいのではないかという御意見を、逆に頂いたほうがいいかと思います。

 私どもは、現時点でパスワード管理をする、決して外に出ないクローズドのシステムで管理する。名前などの、本当の意味でのコアな個人情報は入れないということで乗り越えられるのではないかと考えています。

○金丸構成員 大変詳しく、分かりやすくありがとうございました。まだ議論の途中かもしれないのですが、内科のこういう構築の姿と、自治医科大学の卒業後の義務を通した姿の整合性といいますか、その建設的な絡みは、現時点でどのような位置付けを想定されているのでしょうか。

○渡辺参考人 自治医大だけではなくて、防衛医大とか、産業医大とか、いわゆる卒業後に義務のあるもの。それから、現在は私もいた福島県立医大は、その地域枠は 30 何%になっています。その方々も、県とか公的団体から奨学金を頂いていますので同じことなのです。今や自治医大が特別ではなくて、かなりの部分、少なくとも 3 割近い方々が何らかの義務を負う。一昨日だったか昨日だったか、防衛省からも、防衛医官をどうにかしてくれという要望も出ていましたけれども、そういうことに関しては考えております。

 内科の場合、特別の連携施設を作っています。これは詳細なので本日は出しませんでした。専門医制度に関しては、基幹施設と連携施設というので、単独研修は駄目というのが原則です。これは、もしかしたら地域医療が崩壊するかもしれないからということです。そこに、もう 1 つ特別連携というのがあります。これは、基幹施設、連携施設には必ず指導医が必要要件として必要になります。その他幾つかの外形基準があります。

 特別連携施設というのは、例えば自治医大の先生方が、山の中の診療所に派遣されました、それは認めようと。ただし、基幹施設の指導医が連絡を取って、簡単に言えばテレビ電話でもいいのですが、何かを出していただく。それで、週に 1 回帰ってきてカンファレンスに出るとか、症例を相談するというようなシステムを具体的に提示していただければ、 1 年未満に関してはいいですという話です。それは、防衛医大でも、産業医大でも全て地域枠の方にも適用するということです。現在はそのぐらいのところだと思います。

 自治医大に関して、もう 1 つ大事だと思っているのは、私は福島医大に赴任して 18 年いました。 18 年前を考えると、扱いが画一的だったのです。自治医大へ県から派遣されている方は、帰ったら 1 年目はどこ、 2 年目はどこで何をやると。その後医師が不足して、特に東北地方ですから大変に不足している。いろいろな所から申入れをして、私どもも是非大学でも研修して、その方の将来でというので、大学での研修が義務年限の中で認められました。いろいろな条件を出していくと、その出資者といいますか、その雇い主のほうの変化も起こってくると考えております。内科の制度としては、特別連携施設を設けて、そこでできるだけクッションを置こうということです。もう 1 つは、できるだけ自治体等、県等々に働きかけていただくと、いろいろなことが変わってくるのではないかと感じております。

○金丸構成員 自治医大の建学の理念というのがそもそも前提として、いかに僻地で活躍、貢献しつつ、こういう専門医制度とよりよい形で絡むか。ここの両方の柱を抜かさないように専門医制度の構築の議論が是非根底にあることが望ましいのではないかと思います。

○福井座長 時間の関係もありますので、次に移ります。渡辺先生、どうもありがとうございました。日本救急医学会の森村先生にプレゼンテーションをお願いいたします。

○森村参考人 お時間を頂戴してありがとうございます。日本救急医学会教育研修統括委員会の委員長を拝命しております、横浜市立大学救急医学の森村です。よろしくお願いいたします。本日は、先ほどの渡辺先生と同様、私どもの所の救急医学会会員全員の総意として、まだなかなか取りまとめの機会を得ておりません。このお話を頂戴した後、本委員会の中で持ち回りながら意見交換をさせていただき、かつ代表理事に目を通していただいた上での報告とさせていただきます。どうしても私見が多少入りますが、その場合には私見ですと明言させていただきます。

 今回第 1 回医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループの皆さんが、到達目標、あるいは評価の在り方に係る論点を御提示いただきました。今回は、ここをクローズアップしてお話をさせていただきます。

 まず、到達目標に係る論点として、人口動態・疾病構造変化の観点によるものがいろいろあります。これに伴って到達目標を変えるということが議論されております。我々の領域から提案というか、御共有いただきたい点は、緊急度の判定体系の理解を、初期臨床研修医たちにさせるべきであろうということです。そのバックグラウンドですけれども、現在の救急出動件数がこのように右肩上がりに非常に多くなっています。高齢化率が上がっているところが大きいと分析しております。

 これに対応する方略として幾つか、もちろん数を増やして対抗するという考え方もありますけれども、その中の一環として、病院の連携や、後方病院との連携もそうなのですが、そもそも発症から傷病者が受療するまでの間の緊急性の高さの尺度を、それぞれ市民から院内の看護師の緊急度判定に至るまでの、横串にした体系を作りましょうということが、この 4 5 年の間に関連部門で進められています。現在は、地域によっては市民が Web を使って自分で緊急性を判断できるシステムを、行政が動かしている所があります。これは、基本的には今後全国的に展開していくような考え方です。電話相談を看護師が行ったり、あるいは 119 番で緊急性を測って、現場に投入する救急車の数や人員を分ける。あるいは、病院の中で看護師さんが緊急度の判定をして、医師が接触する時間の短さを判定するということをしております。

 これらの各段階での緊急度判定が、地域限定ながら行われているということを認識した上で、我々全員が鳥瞰図といいますか、 bird's-eye view といいますか、全体のシステムを俯瞰して認識した上で自分の役割を知ることが非常に重要だと考えております。これが 1 点目です。したがって、今回平成 27 3 月時の到達目標に当たる所で言うと、行動目標の医療の社会性と制度の理解の所に、緊急度の判定体系を理解するということを加えるのは、今後の疾病の構造変化においては重要なのではないかと考えております。

2 点目は、同じく到達目標に係る論点ということで、医療提供体制の変化です。これは救急医療のみならず、ここにも書かれておりますけれども、医療機関の分化を進めていくことを進めるに当たって、救急医療療域においては御存じのように、初期・二次・三次という 3 つの枠組みの中で、救急医療が市民に提供されています。当然ながら、少ない情報で救急隊が、あるいは傷病者自身が医療機関にアクセスしますので、どうしてもその的中率は 100 %になりません。したがって、医療機関同士、あるいは医療機関群同士の連携システムが不可欠になります。

 それとともに、病院前をプレホスピタルと表現しますが、プレホスピタルにおいて救急隊員の活動の質向上が非常に重要だということが分かります。平成 3 年から医師の主導の下、平成 26 年に至るまで上級の救急隊員という位置付けで、米国のパラメディックというシステムを手本にしながら、日本語では救急救命士が導入され、処置拡大が進んできました。これらは、こちらの資料のように、明らかに院外で行う医療行為です。この医療行為を行うに当たり、いろいろ法的な整備や教育体制、その後の検証体制を我々は腐心してまいりましたが、最も新しいところでは、ショック症状に対して、心停止に至る前に静脈路を確保する。あるいは、低血糖症例と疑うような場合にはブドウ糖を投与する。一言で言うと簡単に見えますけれども、これはバックグラウンドとして、例えば山間部から遠い医療機関へ運んでくるまでの間に心停止に至ってしまうケースが散見されます。あるいは、ブドウ糖さえ投与すれば、傷病者が非常に良くなる。いわゆる二次救急と言われている医療機関で対応できる傷病者が、意識障害ということで三次救急に集中する、これによって需給バランスが崩れる。これらがバックグラウンドにあります。 臨床研修医たちが救急隊員がこういうことをすることを知らないと、いろいろな齟齬が出てくる、いろいろなコンフリクションを起こすということは想像に易いと思います。彼らの一連の医療行為実施に当たっては、医師による事前計画は当然ありますし、教育・検証体制・再教育といった一連の質保証が必要になります。これは、我々の学会でも、まだ議論の最中なのですけれども、どうしても日本語にすることがなかなか難しくて、直輸入のメディカルコントロールという表現をそのまま使っております。これら全体が大事になります。

 これは、厚生労働省の担当部局の方がまとめているものですけれども、メディカルコントロール体制についてのスライドです。ここにも、メディカルコントロールは今言ったような 1 2 3 4 4 点からなるのだということを明示しております。これらについて、少なくともこういう体制があり、こういう職種があるのだということを、臨床研修医の時代から絶対に教えるべきだろうというのが我々の主張です。

3 点目は、医学部の教育内容との連続性です。これに関しては、連続性が必要だということは論を待たないと思いますし、我々も、皆さんが御検討されたことに対して、ほぼ全面的に同意しております。既に国公立大学の救急医学教育プログラムのカリキュラムの在り方部会の中で、全国でアンケート調査をして、合意形成いたしました。その中で、医学部の中ではこういう 12 項目を教えるべきであろうというコンセンサスを策定しております。単位数は 22 単位の座学と、 8 単位の実習でこのようなことをやったほうがいいだろうと。恐らくこういう合意形成の下に、初期臨床研修をくっ付けていくのがいいだろうと考えております。

 診療能力に関しても御指摘のとおりだと思います。経験の有無ではなくて、「習得」が絶対に必要である。そういう文言は絶対に必要だろう。現在、日本救急医学会は、臨床研修医のカリキュラムについてホームページ上に掲載しております。これは、臨床研修医用です。この中でも、経験を問うものが多いです。一般目標として、一部このように「身につける」という表現を使わせていただいております。ここでも、習得に関連した「指導できる」、特にこれは心肺蘇生を含めた一次救命処置を「指導できる」というところは、具体的に行動目標として習得に当たるような表現の言葉を使っておりますけれども、ほとんどが「経験」にとどまっているところに、やはり問題があろうと思っております。行動目標も同様です。

 災害医療に関する行動目標では、体制の把握ないし説明にとどまっております。また、先ほど示したように緊急度判定体系を知るだけではなくて、具体的に簡単なところは習得する必要があろうと思っております。また、我々は、いろいろな科との連携をしなければいけませんので、このような全体のコンピテンシーを図っていくチーム医療に関して、特にコミュニケーションの観点から、到達目標を置くべきだろうと言っております。

 一例ですけれども、救急患者の病態は急いで上級医にコンサルテーションしなければいけないのですが、それを口頭で短時間でやらなければいけない。先ほどのメディカルコントロールであるならば、病院が組織の人々と良好なコミュニケーションを取ることができる。こういうことも 1 つのコミュニケーションの評価項目として入れるべきだろうと思います。

 もう 1 つ、診療能力としては、緊急度の判定です。ここは飛ばしますが、近年は重症度ではなくて、緊急度という考え方を持っていかないといけないだろうと学会の中でも検討しております。これは重症化するスピードであり、診療側で言うならば持ち時間である。窒息ならば 1 分以内ですし、心停止なら 10 分、開放骨折ならば 6 時間という形で、これは普通に歩いている方が突然坂を転がり落ちていくときのスロープの角度が正に緊急度です。その間の下の X 軸の部分の「時間的余裕」こそが診療の持ち時間です。これらに関してを考えさせながら、具体的な方略を習得させる概念と方法も必要です。

 災害医療における優先度、これは科を問わず全員が専門性を超えて、一定の手順でやらないと駄目だということを、若いうちから共通認識としてお願いするというのが大事だろうと思います。この緊急度判定は、個人個人の緊急度判定と、それによって人・物・場所・スピードを差別化する緊急度判定と、他者比較でする緊急度判定をしつつ、人・物・場所・スピードと順番の差別化をするという概念並びに方略を教えるべきであろうと我々は考えております。

 最後は、評価に係る論点です。これは皆さん御指摘のように非常に難しいということです。私たちが今のところ言えるのは当たり前の話になってしまいますけれども、 360 度評価、他の職種間や診療科間の連携に対する評価や、患者対応に対する評価、あるいは看護師、いろいろな他職種による評価が大事であろう。あとは、事前に経験値だけを自己評価として出させる方法ももちろん大事なのですけれども、事前にこういう評価表を策定し、習得の程度をあらかじめ決めた項目と基準で評価する。

 これは私たちの所でやっていますけれども、 Onion-skin System 、英国では玉ねぎの皮のシステムと呼ぶようです。受講者を教えている人間を、医学生が教えて、その医学生の教え方を研修医が評価し、その研修医の指導を指導医が評価するという方法です。これは、事前に作成した評価表に従って行うものです。これはベッドサイドです。これが最後のまとめです。お時間を頂きましてありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございます。大変分かりやすく御説明いただきました。それでは、御質問、御意見がありましたらお願いいたします。

○神野構成員 神野でございます。ちょっと古くさいことを言うと、私たちが医学教育を受けた昭和 50 年代は、正に救急の創成期は、各科の専門の先生が集まって救急医学講座というものを作ったという時代から進歩してきたのだと思います。鶏か卵かというような話をしますが、正に今教えていただいた緊急度をきちんと理解するためには、これはやはりインスピレーションではなくて、ある程度いろいろな知識を十分に持った方々が、鑑別診断をきちんとやって判定するということが必要になってくる。その鑑別診断をきちんとできるというのが今の医学部教育できちんとできるかどうか。もし、なかなか難しいとするならば、その後、臨床研修の早いうちに救急に回るのはいかがなものか。初期臨床研修の中でも各科の経験をして、ある程度いろいろと専門的知識を身に付けたほうから救急に入ったほうがいいのではないかというような気がしますし、そうは言うものの最初に教育する意義もあるのかもしれません。だけれども、やはり救急室にいらっしゃる方々は、もう、生きるか死ぬかの方がたくさんいらっしゃるわけで、そのときに、医者に成り立てに近い人が診るというのも、非常に国民にとっては危険な話になるというように思います。この辺の所、時期ということでいかがでしょうか。

○森村参考人 ありがとうございます。連続性があるということ、医学教育から臨床研修に対して連続性が必要であるということを前提に、一部私見が入りますが、非常に大事な御指摘で、医学教育をしている立場からは、救急の話を先にしても駄目で、やはり各科でどの疾患があって、どういうことがあるのかといったことを先にやっていただいた上で、緊急性の話やアルゴリズムを教えてあげるといったところが、恐らく想起させる知識獲得という点で、よいのではないか漠として思っております。ただし、初期臨床研修に関しては、もしかすると、研修場所によっては逆で、先に緊急性の高いものを経験しながら行っていくというのも手かもしれません。そもそも、現行の 3 か月間だけ救急医療部門でやって、それで救急医療ができますということは、当然そのようなことはなくて、 2 年間を通じてやるものだと私は思いますし、その 2 年間の中での、例えばアルゴリズムとか、アプローチの仕方を救急部門で教えることができるけれども、他の科の研修中には、そのアプローチ法を使いながら各科のものを肉付けしていくという方法もあるのではないかと思います。答えは出ておりませんが、どちらがいいのかをもうちょっと議論しなければいけないかと思っております。ただ、具体的には、回るときには結構、組合せとか、人数の問題があるので、必ずそのように、我々の理想どおりには回れないのが現状のような気がいたします。

○福井座長 神野先生、どうぞ。

○神野構成員 今おっしゃっていただいたことですが、常々、この到達目標・評価の在り方という観点からすると、救急は、もちろんおっしゃるように、一時期救急に行くのもあれですが、各科に回っているときに積極的に救急に行くことがとても大事ですし、あるいは総合診療なども各科に回っているときに、ある枠だけ総合診療の外来をやるとか、そういった少しハイブリッド型の研修制度というものも必要なのかと思いました。以上です。

○森村参考人 ありがとうございます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○片岡構成員 私も、神野先生、森村先生の意見に全く賛成です。確か以前のアンケートで、どの科を何箇月間経験しましたかということで、救急の経験期間が 3 か月という施設もありました。それはブロックでのローテーションの機会以外のところでの経験というのが余りないということだと思いますけれども、私も 2 年間を通じた連続した救急医療の経験というのは必須だと思います。外来研修に関しても、こういった能力、アルゴリズムを身に付けるという意味でも総合診療のなかでも救急的なことは、やはり経験を積みながら重ねていくという観点から継続的な研修は必須だと思います。その辺りも今後につなげられたらいいのではないかと思いました。

○森村参考人 ありがとうございます。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○大滝構成員 とても参考になるお話でした。特にシステムの全体を見られるように全員がなるべきだというご指摘は、大変重要だと改めて思いました。評価についてもう少し伺いますが、指導医が中心になってベッドサイドで到達度を評価することは有効だろうと思いますが、もう動き始めているのか、例えばどういう症例とか、状況とか、手技について、いつ、どれぐらいの数をということを学会として、お作りになっているのか、その辺りのことを教えていただけますか。

○森村参考人 答えは「ノー」です。学会としてはまだやっていなくて、いわゆる先行的に幾つかの所がやっており、本日例示したのは私どもの施設がやっているものです。もし、それで御参考になるのならば、これは 3 か月間終了する最後の中で、我々の所は 2 か月間、いわゆるクリティカルケア、 1 か月間は ER といったハイブリッドの研修をして、それで、それぞれのアルゴリズムを教えてから 2 年間を通じて、そういうものをやりなさいといった方針でやっていて、これをお見せしたのはクリティカルケアのほうの 2 か月目で、意識障害患者が来たときのシナリオを用いて、集中治療室で既に安定化している傷病者の方に対して、初期診療のアプローチをさせて、きちんと診れているかどうかという項目をチェックします。それから、そのときには接遇も見ておりまして、どんなにセデーションを受けていても、挨拶をしてから診療を開始してているか、それから、セルフケアですね、個人防護をきちんとしているかとかを評価表で見ています。終わった後、上級医が一応、総括評価ではなくて、形成評価をします。「合格」という表現はしますが、そうやってフィードバックするという形を取っております。

○伊野構成員 ありがとうございます。多分 ER をもっている病院が、とても理想的だと思いますが、各病院が一次、二次、若しくは三次のみといったばらつきがあるのですが、先生として、初期研修医がトレーニングを積むには、どういった環境が理想的だとお考えでしょうか。

○森村参考人 理想ですか。

○伊野構成員 というか、この現実を踏まえて。

○森村参考人 なるほど。初期から三次まで全部やっている病院に研修するというのが恐らくは一番やりやすいのですが、地域によって救急医療は地場産業というように呼ばれていますから、それぞれ全部やっている所もありますし、初期と二次はやっているけれども、三次は別という所もありますので、正にそれは、今、僕らが機構の連携のプログラムの中で、基幹病院と連携病院とをうまくプログラムを組んで、ハイブリッドで必ずやるようにすればいいと思います。ただ、その 3 か月間だけで救急医療ができるわけではないですから、病院は分かれてでもいいですから、現状の日本はそうなっておりますので、それを両方全部見せるということが大事です。その上で 2 年間研修されるということです。お答になっていますでしょうか。

○伊野構成員 ありがとうございます。

○福井座長  1 点。卒前教育での質を各大学で最低限確保しようという試みというのは、今後とも更に続けられるのでしょうか。

○森村参考人 はい、続けます。これはものすごく力を入れて、重点項目の 1 つになっておりまして、現在私立大学のアンケートも終了しまして、全体をまとめているところです。

○福井座長 ありがとうございます。それでは続いて、日本外科学会の國土先生にプレゼンテーションをお願いいたします。

○國土参考人 失礼しました。日本外科学会の理事長を務めております東京大学の國土です。本日はこのような機会を頂きまして、ありがとうございます。思い返して見ると、 2 年前の 3 月に医道審議会から突然、ヒアリングのお話をいただいて、そのときに外科研修を必修から准必修に格下げになったことを是非戻してくださいということで申し上げたのですが、残念ながらそうなりませんでした。その先の見直しは早くて 5 年後だという話を聞いておりましたので、学会の中でも力が抜けてしまいまして、常設でこれを検討する委員会は作りませんでした。そういうこともあり、本日は急遽、先ほどと同じように私の私見が多々入っているようなお話になるかと思います。

 最初に少し背景を御紹介させていただきますと、私どもの日本外科学会は、現在会員数は 4 万人弱で日本内科学会に続いて多い学会です。御覧になっていただくとお分かりになりますように 2004 年の研修制度の改革直後に入会者数がかなり下がりました。これは制度上のこともあります。つまり、今までは外科志望者が卒後すぐ外科学会に入っていたのですが、新研修制度下では 1 年、 2 年遅れて入るようになったということです。しかし、その後の回復が御覧のように 1 段下がった所で止まっているという事実を見ますと、外科離れがやはり進んでいると思います。それから、専門医としては、年間 800 人ぐらいが取得しています。ピーク時は 1,000 人を超えておりました。今はこのぐらいの数になっております。後期研修については、 3 年目から外科研修に入る医師の数は、ちょっと減っているので、今後更に減るのではないかということで心配しております。

2 年前の話を蒸し返して恐縮ですが、そのときに話したことを簡単に申し上げると、スライド 1 番目の主張は無視していただき、外科を必修に戻していただきたいということ。その根拠の 1 つは、臨床医学を体系的に見ると、内科学とともに外科学は大きな臨床体系であり、必須であるべきであるということです。それから、初期研修医にはいわゆる小外科、つまり縫合や切開とか、そういうことができればいいという考え方がありますが、その小外科の手技を会得することが外科の本質ではないということを強調させていただきました。

 また、卒前教育に臨床実習があり、これも参加型に変わり、今非常に充実しようとしております。それと、これから大きく変わろうとしている専門医制度、その間に挟まれた部分が初期研修ですので、当然この 3 つの期間を一貫して検討すべきであろうということを申し上げました。今回の資料を拝見すると、そういう考え方で検討されているということがわかりましたので非常に有り難く思っております。それと、もう 1 つは、専門医研修へのスムーズな移行がやはり重要になるかと思います。そういうことでいろいろ申し上げました。これについては、端折らせていただきます。

 論点に入りますが、まず、到達目標です。私どもの外科専門医のカリキュラムと見比べながら話をさせていただきます。まず、外科において、臨床研修医が学ぶべきことを考えてみると、繰り返しになりますが、緊急処置や小外科の手技だけではなくて、「手術治療」という侵襲的治療の適応と限界とを理解して、生体に加わる侵襲に対しての生体反応を周術期管理を通して学ぶことであると考えております。

 具体的には、例えば術前の患者評価、それから、術中ももちろんありますが、周術期の管理、術後の管理ということになります。インフォームド・コンセントも重要ですし、集学的治療も重要であると。いろいろなかなり広い範囲をカバーすると考えております。

 「臨床研修の到達目標」を拝見すると、例えば、 A の部分に入る項目の多くは、外科研修で経験ができると思います。この部分について意見を申し述べるとすれば、これは一部の外科医の意見ではありますが、止血については、圧迫止血法以外の部分も入れてはどうかとか、切開・排膿については、本当に全ての研修医に必要なのか。皮膚縫合法は必須だとしても、切開・排膿は、特殊な状況ではないのか、そのような意見がありました。

 また、「薬物療法ができる」という到達目標がありますが、もう 1 つ重要な治療法である手術治療についての記載がないという意見があり、「手術治療について理解する」ということを到達目標に加えていただきたいということを申し上げたいと思います。それから B の到達目標を拝見すると、これもやはり外科研修で経験することの多い病態がかなり含まれていると思います。最近カテーテル治療や内視鏡治療など内科領域でも侵襲的治療が急速に増えておりますが、そういう領域に進む医師にとっても、やはり基本的な診療姿勢として外科医が担っていたもの、外科治療から学ぶことが多いであろうと考えます。繰り返しになりますが、臨床研修の到達目標として、一番下にある手術治療を是非加えていただきたいと申し上げたいと思います。

 次に、 3 の経験が求められる疾患、病体について拝見すると、私の専門の消化器系について少し見ますと、このような項目がリストアップされています。今、癌は非常に大きな疾患対象ですが、主な癌が全て到達目標に入っているわけではありません。例えば、日本に多い食道がん、大腸がん、膵臓がん、胆道がんが、この中に入っていないということがわかります。癌については、やはり体系的に何らかの到達目標があってもいいのではないかと思います。

 専門医制度は、渡辺先生が詳しく述べられましたので、外科に関する部分だけ少し申し上げます。外科の場合は、外科専門医が 1 階建てになりまして、卒後 5 6 年ぐらいで取得します。実際にはもっとかかることがあります。 2 階建てまでは新しい制度でも固まっておりますが、消化器外科、心臓外科など4つのサブスペシャリティーがあります。実は、その上の 3 階建て部分もありますが、これはまだ今のところ、具体化はしておりません。これが外科専門医プログラムです。細かいことは省略いたしますが、全般的に初期研修到達目標の更にグレードアップしたものと考えていただいて良いと思います。全臓器をカバーしているということが特徴かと思います。特に重要なことは、外科の場合は、手術という非常にはっきりした目標があります。特に手術経験 350 例のうち術者として 120 例以上経験する必要があります。これは当初から決められたノルマでありまして、新しい制度でもこのノルマ(水準)を下げないようにしようというように考えております。このように修練の年限よりも症例数で絞られますので、専門医資格を取得するのはさらに時間がかかることもあり得るということになります。現状は卒後 1 年目から、外科を研修で回れば、その手術症例もこのカウントに入れてよいということになっております。新専門医制度でも同じルールになるように、今専門医機構と交渉しているところです。このスライドはちょっと見にくいかもしれませんが、卒業した時点が上で、段々時間がたつにつれてこのようになると考えられます。初期研修が 2 年で、外科の専攻医が 3 年ぐらいでトータル 5 年ということになります。指導医になるには、もう 1 回更新しなければいけませんので、更に 5 年かかる計算になります。サブスペシャリティーはその後から段々順番に加わっていく、重なるようになるというように理解しております。

 事前に頂いた論点について、簡単に一部意見を申し上げると、例えば患者の高齢化は、外科においても大きな問題です。全ての患者さんが高齢化しております。今は平均年齢で 70 代の患者さんが手術を受けるという時代です。 80 代の患者さんも決して珍しくありません。

このスライドに書いてあるようなことは全て非常に重要な点だと思いますし、このような項目は、やはり総合病院の外科研修で最も研修ができるであろうと考えます。

 私は専門ではありませんが、緩和ケアというのは、必ずしも末期の患者さんだけではなくて、がんと診断されたら、早期に緩和的なことを考慮しなければならないというのが今の考え方だと思います。つまり、がん患者を経験すれば、必然的に学ぶわけですから、あえてここに書く必要もないのかと感じました。

 もう 1 つ論点の中で、外来での対応が増加していることの御指摘があったかと思います。これについては次のスライドでお話いたします。それから、在宅医療、あるいは看取り、これは先ほど渡辺先生からお話があったかと思います。私も同感です。これはあえて、到達目標にしなくても、医者であれば必要に迫られて経験することだと思います。これを逆に必須にしてしまうと、かなり硬直した研修になるのではないかと、私は思います。外来の対応については、外来手術は確かにあるかもしれませんが、術後経過を経験できないことが問題です。患者が帰宅してしまえば、その研修医にとっては全く分からないわけです。基本はやはり入院患者で、術前から術後までトータルで経験できる症例を研修対象にすべきであろうと考えます。

 それから、もう 1 つ重要な点は、先ほど言いましたが、卒前教育と、その後の専門医教育のつながりということを常に考えなければいけないと思います。参加型臨床実習などが始まって、今後国家試験の内容も見直しがなされようとしています。卒業時にどこまで到達するかによって、結局、初期研修のスタート地点での実力が決まるわけです。そこでのレベルアップが見込まれるのであれば、できれば今 2 年の研修を1年に圧縮してほしいというのが外科全体としての希望です。

 専門医については、先ほども言いましたように、外科研修は 3 年目からスタートという漠然とした理解もあったのですが、是非 1 年目スタートにしてほしいと思います。例えば、こういうネットの記事がありますが、スチューデント・ドクター制度導入で、卒前に多くのことは教えられるだろうということです。そして、ここに 9 か月と書いてありますが、要するに卒前教育が充実すれば卒後1年未満の期間に、かなりの診療実技は修得できるであろうといった意見もあります。

 一般的な外科医の卒後キャリアを 1 年から 10 年目ぐらいで考えてみますと、最初の 2 年間が初期研修で、 3 年から 5 年目ぐらいが後期研修、その後大学に帰る。私共の教室では大学に帰っていろいろな研究が始まります。外科専門医研修が 3 年目から 5 年目ぐらい、それから、消化器外科サブスペシャリティーがその後で、その後に 3 階建て部分の修練もあります。申し上げたいのは、それぞれの専門医研修を少し前倒しすること、少なくとも基盤の専門医研修プログラムと初期研修期間がどのようにオーバーラップするかということを是非検討いただきたいと思います。

 評価については、非常に難しいと思いますが、古くさい言葉になるかもしれませんが、外科の場合は手術ができること、術者をさせてもらうこと、つまり指導者から術者を任せられること自体が評価だと思います。信頼できない部下、評価しない部下に術者をさせるはずがないからです。今は NCD で各医師の手術実績は全部保証されておりますが、この手術数そのものが評価につながると考えております。ということで最後にもう 1 回、外科研修を是非必修にしてほしいということを主張させていただき、日本外科学会の意見とさせていただきます。御清聴ありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございます。ただいまの御説明について、御質問、御意見等をお願いいたします。

○小森構成員  1 点よろしいですか。到達目標と評価と違うことで恐縮ですが、臨床研修を受けてらっしゃる方のアンケートでは、外科を志望される方は研修前と研修後で違いますが、おおよそ 10 12 %で、平成 22 年から平成 26 年まで横這いです。三師調査では外科を標榜している方が 9.7 %で、そういう意味ではそれより多いと。それから、最近、外科学会に入会される方が少なくてというのは、マクロ的のみならずミクロ的にも大変問題だと思っていますし、危機感は共有しているというように思っていますが、外科学会の入会者は、究極的には全体の医師数の何パーセントぐらいがいいと、先生はお思いでしょうか。

○國土参考人 それは難しいご質問ですね。というのは、外科医がどの仕事までやるのかで必要数が変わるからです。現在、外科医を無理矢理増やすよりは、外科医に外科医としての仕事をやらせて、外科医ではなくてもできる仕事を、例えばメディカルクラークにやっていただくとか、そういう方向性の努力も進められています。確かに減っている、減っているばかり言うなと言われるかもしれませんが、感じているのはやはり外科全体数の問題と同時に、専門領域別割合も重要だということです。例えば、より厳しい、忙しい繁忙度の高い領域に志望者が少なくなっているとか、そういうようなことがやはり問題かと思っております。ですから、すみません、適正な外科医数についてはなかなかお答えできないと思います。

○小森構成員 到達目標と評価とは違うことをお聞きして、御無礼しました。

○福井座長 神野先生、どうぞ。

○神野構成員 資料 31 ページに、到達目標にかかる論点の所で、慢性疾患とか、せん妄、リハビリとか、あるいは緩和ケアのことが出て、その中で総合病院の外科研修でも最も研修できると吹き出しを付けていただきましたが、全く私もそのとおりだと思っております。今、内科が良性疾患は内科的治療が非常に発達している以上、外科は段々「がん科」になっている。そうすると、ここに書いてあるような終末期医療、あるいは緩和ケアというのは、大学病院以上に一般の病院の外科医の負担にもなるかもしれませんが、外科に担っていると。そうすると、臨床研修の到達目標の中で、いろいろ御意見を頂きましたが、外科的な考え方というものをもうちょっと入れ込むことに関しては、私は大賛成です。ただし、では臨床研修の初期臨床を 1 年にしたときに、今、到達目標を増やせという御意見がたくさんある中で、年限は減らしていいのかということについて、御意見を頂くと幸いです。

○國土参考人 すみません、矛盾したともとれる要望が 2 つあって恐縮です。これは私の個人的な意見ですが、 2 年やるとしたら、 2 年目に専門医的なところを、外科系に進むのであれば外科的なことを一生懸命やって、 1 年目は本当に基礎のところを研修するのが良いと思います。ですから 1 年に絞れと主張するならば、そこに無理矢理外科を必修にしろとは、ちょっと申し上げられないと思います。 2 年の初期研修制度を維持するのであれば外科は必修であろうと、特に後半の部分ですね。そういう理解でお願いしたいということです。

○福井座長 ほかはいかがでしょうか。

○清水構成員 今の 2 年間の必修の中で、外科的な考え方ですとか、外科的な到達目標が少ないことは私も常々感じていたのですが、理念にあるように、将来、専門とする診療科に関わらずという点から、外科学会として、エッセンシャルミニマムとして、この到達目標の中に更に入れておきたい項目を、あえて絞るとしたらどのようなことになりますか。

○國土参考人 あえて絞るとしたら、外科治療、手術治療というのを理解して、どういうふうに適切にコンサルテーションできるかという、そういうところではないかと思います。

○清水構成員 外科の、要するに、手術に対しての知見や経験を、もうちょっとやってほしいということでよろしいでしょうか。

○國土参考人 先ほども言いましたが、小外科の技術そのものについては、余り重要ではないと考えております。

小外科の経験を積むことではなくて、どのような患者さんを、外科で早くコンサルトすべきなのか、あるいは、すべきではないのか、そういうところを判断していくほうが重要だと思っております。

○清水構成員 ありがとうございました。

○福井座長 最後に私から1点。森村先生に伺ったことと同じですが、大学を卒業する時点で、外科的な知識や技術を全ての大学で、こういうレベルにしてほしいということは学会として何かされておりますでしょうか。

○國土参考人 臨床実習についてですか。

○福井座長 臨床実習も含めまして。

○國土参考人 そこについては、学会としての対応が非常に遅れています。先日、国家試験のヒアリングにも呼ばれて、学会として何も検討していないことに気がついた次第です。これからやらなければいけない領域だと思っています。今は専門医制度とか、医療安全とかそちらのほうに忙殺されております。個人的な考えとしては、スチューデント・ドクターでできる範囲ですね。特に結紮技術などは学生のうちに習得できると思います。学生にはよく言っているのですが、結紮ぐらいは研修を始めるときに、できる人とできない人ではスタートダッシュで違うよと。学生でもできる手技は教えられると思います。もう 1 つは、外科的な考え方ということと、 2 本立てになるかと思います。

○福井座長 よろしいでしょうか。ありがとうございました。

 最後になりましたが、日本麻酔科学会の稲田先生にプレゼンテーションをお願いしたいと思います。

○稲田参考人 皆様おはようございます。日本麻酔科学会の稲田でございます。私は以前、別の会で、やはり医学教育と臨床研修制度というところでお話をしたことがあります。今回は現状についてと、それからこういった臨床研修制度から専門医制度へどのようにつなげていくかというところのお話をしていきたいと思います。これは理事長には見ていただいていますが、理事会とかを通しておりませんので、私の意見が入っています。私ども麻酔科について、先ほど森村先生が麻酔は分かりやすいとおっしゃったのですが、どうも麻酔科の臨床研修だけ余り評価されていないのではないかといいますか、麻酔って何なのだろうと、我々が、術中に麻酔科医が付いてバッグを押しているような映像はよく出るのですが、それでは麻酔ってそれだけなのだろうかと。そうではないのではないかという話を少しさせていただきたいと思います。現在、麻酔科の研修におきましては、毎日マンツーマンでの教育が行われるということで、研修医に対しまして認定医、多くの病院では専門医以上が 1 1 で、それも日替わりで付くような形で指導するほかに、毎日のカンファランスで、チームでの指導もする形での教育が行われています。そういった点で現在の到達目標にしてもかなり多くの症例を経験して、それを達成しているということがあります。臨床研修制度の講座目標の 1 つに、チーム医療がありますけれど、麻酔管理というのは本当にチーム医療の、どの診療科も全てそうですが、麻酔はその典型であろうと思います。先ほど渡辺先生からもお話がありましたように、術前にコンサルトして内科の先生方とコンタクトをする。それから全ての症例、余り大きな症例は当たらないわけですが、ほかの外科系の診療科の先生方とコンタクトがあります。それから看護師さん、それから臨床工学技士の方といったメディカルスタッフの方との連携は非常に重要になってくるわけです。それから輸血ということになれば当然、輸血との関連ということで、麻酔科としては、関わりのない診療科はないと言ってもいいぐらいということになります。

 もう 1 つは、行動目標の中に、問題解決能力がありますけれども、これは毎日マンツーマンの教育ということで、 1 8 時間近くマンツーマンの教育が行われることになります。ここで 1 つ、やはり強調しておきたいのは、麻酔管理です。先ほど術中の中でバックをしているだけではないかというのではなくて、実は麻酔管理というのは術前の評価から術中の管理、それから術後の鎮痛、鎮静、こういったものを含めた周術期管理が麻酔管理であるということを是非、御理解いただきたいと思います。また、対象とする年齢に関しても、新生児から、初期臨床研修では新生児が当たることはまずありませんが、乳児から 90 歳代、あるいは 100 歳といった高齢の方にまで対応する。性別も男性、女性に対応することになります。それから先ほども高齢者の方が非常に多くなってきたという中で、高血圧や喘息、 COPD あるいは腎・肝疾患、血液疾患といった様々な併存疾患を持つ方に対応することで、非常に多くの疾患を経験できます。米国麻酔科学会などは、麻酔科医の位置付けの 1 つとして、ここにありますような周術期の内科医、周術期の医師 (Perioperative physician) といった位置付けをしております。また術中に関しては、出血をする、血圧が上がったり下がったりする、不整脈が出るなど、こういった点で、やはり救急例にかなり近いところもあるということで、プライマリーケア実習としては非常によい診療科であろうと思います。

 もう 1 つは、麻酔における安全管理は非常に重要なものになっております。普通の手術、あるいは内科で死亡率が何%ということがあるわけですが、麻酔管理上のミスによって患者さんが死亡するということ、これはあってはならないことです。麻酔関連の死亡率は非常に下がっており、 1 万症例中で 0.4 症例程度といったような形になってきております。

 そうした中で、標語として「 Vigilance 」という言葉があるわけです。学会はいろいろな「麻酔関連偶発症例調査」がありますが、こういったものをいろいろ調査しながら、その中で、いろいろ浮き彫りにされてきた問題点についてガイドラインを作って安全性確保のための対策を実施、推進しております。

 また行動目標の 1 つに、症例呈示がありますが、毎朝カンファレンスをするということで、術前評価に基づいて、今日は術中どんな麻酔管理をするのだ、また、術後はどんな麻酔管理をするのだということに対してプレゼンテーションをして、そしてチーム全員でディスカッションをするという点で、こうしたプレゼンテーション能力も育てられることになります。

 経験目標ということになりますと、なかなかファーストタッチというわけにはいかないのですが、術前診察においては、全身評価をする。また気道の確保をするということがございますが、こういった患者さんの身体所見、病歴、服用歴といったものに基づいて、麻酔計画を含む周術期の診療計画を立てます。その上で、指導医と相談をして、インフォームドコンセントを取得するというように、非常に術前から術後にわたって幅広く経験できるということです。

 また経験目標として、基本手技の中でどんなところがメインになるかというと、麻酔は気管挿管だけ教えればいいのだといったような議論もあるわけですが、実際には、麻酔科の場合には、こういったバッグ・マスクによる気道確保、気管挿管、それからその後の人工呼吸、術中にはいろいろと呼吸状態も変化するわけです。そういったものに対する人工呼吸まで含めた気道管理というものが 1 つあります。

 それから、血管カニュレーション ( 静脈から動脈、中心静脈 ) 。それから、脊髄くも膜下麻酔の場合は、脊椎穿刺。胃管挿入。また術中には、基本的な輸液管理や、出血に対する輸血管理というものも行われていくわけです。また、経験目標の中には経験すべき疾患として多くのものがあるわけですが、麻酔管理という場合には全種診療に対応するということで、外科的な疾患、産科的な疾患、中には、うつ病などといった精神科的な疾患にも対応する。年齢に関しても先ほどお話したように、乳児から高齢者まで対応するということがございます。先ほど麻酔科の臨床実習は、少し underestimate されている、あるいは誤解されているのではないかというような話をいたしました。また、先ほどから出ています評価という点で、アンケート調査の結果に気管挿管の技量というものがございます。これを見ますと、気管挿管はできると答えた人たちが 90 %を越えるということで、麻酔科以外でも恐らく挿管研修はされているとは思うのですが、ほとんどが麻酔科の臨床研修で挿管実習するということで、かなりの技術習得ができていることが分かるかと思います。

 それから麻酔科は、幸い選択実習という形で、 1 年目 1 か月の中の選択ということに入っているわけですが、実際の研修期間を見ますと、 1.9 1.9 2.1 ヶ月というように、過去3年間をみても約 2 か月間の研修をしている人たちが多いということです。こういった 2 か月程度の研修期間があることで、先ほどのように、 90 %以上は気管挿管ができるということが可能になってくるわけです。こういった気管挿管の技術といいますのは、全診療科で必要ですし、救命、救急の蘇生においても必要な技術ということで、恐らく 2 か月あれば、救命救急士に要求されている少なくとも 30 例以上の挿管ができるだろうということが分かるかと思います。

 では、研修医たちは麻酔科実習をどのように評価しているかというと、麻酔科研修後、研修前の麻酔科志望者は、 3.2 %、これが修了後には 4.9 %となっていまして、多くの診療科の中でも非常に増加率が高い診療科ということになります。これは先ほどお話をしたように、麻酔科における臨床研修というものはかなり充実したものであることを示す 1 つの証拠であろうかと思います。では、ほかの診療科のどういったところから移ってくるかと言いますと、内科系、外科系、小児科ということで、幅広く年齢層を扱うという点で、小児科からも来ることがありますし、先ほどお話をしたように、周術期の医師、周術期の内科医といったような、恐らく総合診療的な見地からこういった内科系志望の方も麻酔科へ志望を変えるといったようなことがあろうかと思います。

 今度はこういった臨床研修生は、どういったように専門研修につながっていくのかということになるわけです。これは現在、私どもが作っている専門医取得のためのプログラムのうち必要症例数としては 600 例というものを考えております。恐らく 4 年間のうち 3 年間は麻酔をするであろうということで、そのうちには、小児手術や帝王切開、心臓血管手術、胸部外科の手術、脳神経科手術などといった特殊なものを含めた上での 600 例ということになっていますし、そのうちの 1 部は臨床研修での経験も含めるということになります。この専門研修プログラムの中で、こういう麻酔だけではなくて、その他に、ペインクリニック、緩和ケア、集中治療といった総合的な分野での活躍というものも期待するということで、プログラムの中には選択として、半年から 1 年間はこういったほかの領域も研修するということで専門医になられるといったプログラムを組んでいるわけです。先ほどから緩和ケアに関して初期臨床研修医の目標に入れるかどうかという議論がありますが、やはり私どもとしては、かなり専門性が高いということで、緩和ケアというものに関しては、こういった専門制度の中で各領域の中に含まれていいのではないかというように思っております。

 研修終了前後での、先ほど麻酔科選択率の増加をお示しましたが、かなり女性の方たちが麻酔科を志望しているということです。そして、今は麻酔科医はどれぐらい不足しているのかということで見てみますと、現員麻酔科医数に対する必要医師数は、募集人員ということで見たデータですが、救急科医は非常に足りないことが分かりますが、私ども麻酔科医にしましても 1.16 倍といった計算になっています。ただ、米国と日本の麻酔科医の人口当たりの数は 3 分の 1 程度にしかすぎない。また米国においては、麻酔看護師というものがいますが、実際の麻酔科医の人口当たりの数は非常に少ないという現状になります。また、麻酔科医に対するアンケート調査でも、少なくとも今の 1.5 倍は必要だろうという調査がございます。これはただ、手術に必要な麻酔科医というだけであって、先ほどお話をしたようなペインクリニックであるとか、集中治療あるいは緩和ケアに必要な人員のことを考えると、潜在的な不足というのはこれよりはるかに大きいということが考えられます。

 これは麻酔科学会会員の年齢別の男女比となります。グラフの上のほうに行くほど年齢層が高くなっています。下の年齢層、現在の 20 代、 30 代を見ますと、女性が、半分以上を占めております。今後増えてくる女性医師が進む一つの道として麻酔科というのは重要な領域の 1 つであろうと考えられます。先ほどの志望理由の中でもそういったものが分かるかと思います。

 これは最後のスライドになりますが、現在の麻酔科研修というのは、現在設けられている臨床研修目標をかなりよく満たすものである。それから、技量の習得については、先ほど気管挿管だけをお見せしましたが、そういうことを考えると、少なくとも 2 か月の研修が望ましいだろうと考えられます。また、こういった初期臨床研修が充実することによって、今後、麻酔科専門医を目指す人たちも増える。そして麻酔科医不足も解消されるであろうことが期待されるということで、私のまとめとしたいと思います。どうもありがとうございました。

○福井座長 ありがとうございました。ただいまの稲田先生の御説明につきまして、御質問や御意見等はありますでしょうか。

○片岡構成員 ありがとうございました。 1 枚目のスライドで、もっと麻酔科研修の意義が評価されていいのではないかというスライドがあったのですが、岡山大学病院ですと、6割以上の研修医が選択研修として麻酔科の 3 か月間の研修をしております。理由としては、到達目標とアウトカムが非常にクリアであるということと、それを支える教育体制も整っているということ。どの科に行っても必要であるということ。これらが研修医が麻酔科研修を求める理由なのかなと思っています。これらの要因は研修医が求めているものの最大公約数だと思いますので、恐らくほかの分野、あるいは研修全体に関しても重要な観点なのではないかなと思いましたので、ちょっとコメントさせていただきました。

○稲田参考人 ありがとうございます。 1 つ、麻酔科医が足りないということが、実は臨床研修医たちが麻酔科医の指導の下に活躍できる場があるということで、これは逆に我々のピンチであるところが臨床研修という点では非常にポジティブに出ているところだろうと思います。そういった点で、やはり患者さんに対してしっかりとケアをする責任を持つ地位に置かれる、しかも監視下というか、指導の下にできるというところは 1 つ評価が高いところかなと思います。ただいまのコメントありがとうございました。

○中島構成員 全体についての質問は後でしたいと思いますけれど、麻酔科についてだけちょっと、簡単なことを教えていただきたいのですが。結構、都会では麻酔医がグループで開業しておられるということをよく聞きますけれど、そういうのはこの数値の中に入っていますか。

○稲田参考人 これは麻酔学会の会員数に入っております。

○中島構成員 それでも足りないということですね。

○稲田参考人 全く足りないです。麻酔科医は増加してきているのですが、手術件数は先ほどの人口の高齢化ということもあり、手術件数の増加が麻酔科医の増加数よりもさらに急角度で増加しているので、相対的な不足はずっと続いた状態になっております。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。中島先生、「全体の」と先ほどおっしゃいましたけれども、何か御発言はありますでしょうか。

○中島構成員 まだ考えがまとまっていなかったのですが。 4 人の方々のお話を聞いていますと、それぞれ専攻されている科がいかに大切かというお話を伺ったようで、大変勉強になりました。しかし一方で、 4 人の先生方の説明は、相当重なり合っていると思うのです。つまり初期研修で、どういうことを若い研修医に教えるべきか、覚えさせるべきか、体にたたき込むべきかというところが、ほぼ一致しているのではないかなと。内科の渡辺先生の御説明の 25 ページですか、「内科専門研修プログラム整備基準における到達目標の抜粋」というのがありますけれども、そこに、 6 1) 10) まで、どこがいいのか分かりませんけれど、似たようなものがいっぱい出てくるので、この中でもやはり中心になっているのは、専門職としての使命感、責務というのが、まず一番根本にあると思うのです。そしてその上にコミュニケーションの能力、これは患者さんとの能力でもあり、同僚との能力でもあり、他職種との能力でもあるということで、ここが抜けたら他のことが全てできても駄目だということだろうと思うのですが、現在の初期臨床研修ではこれができない人をどんどん合格にしてしまっているということが私は問題なのではないかと、実は内心ちょっと思っています、余り大声で言えませんが。そういうことで、この 2 年間の研修というのは、完全にポートフォリオ化して、きちんとデータを集めていく、そして、救急の先生がおっしゃいましたけれど、 3 か月で全部できるものではないと、 2 年間通してきちんと研修してもらうものですよと、ここをどうやってうまく研修の評価の中へ取り入れていくかというところに、私はポイントがあるかなと思いながら聞かせていただきました。ありがとうございました。

○福井座長 ほかに御意見はありませんでしょうか。よろしいですか。

 ときどき、 1 年間でもいいのではないかというお話を伺いますけれども、そのためにはどうしても、大学で全ての卒業生がどのレベルまでやってくれているかをできるだけ目に見える形にならないと、なかなか分からなくて、そこのところを是非、各学会で担保していただけるとすごく有り難いなと思います。

○國土参考人 私も主張しましたけれども、それは卒前臨床実習が充実してもう少し固まってから 1 年でいいのではないかと思います。

○福井座長 渡辺先生、何かありますか。

○渡辺参考人 私は 1 年を主張したわけではなくて、 1 年で行く人がいてもいいでしょうと。だから要するに、特に外科の先生などは内科以上に専門性が高いですから、そうすると本当に日本全体を考えたときに、全部の人が到達しなければいけない目標というのはそんなに、先ほど中島先生がおっしゃったように、コミュニケーション能力があって、ちゃんと患者さんと対応できてというようなことさえあれば、 2 年目の研修に関して言えば、例えば、もう内科に自分は決めていると、しかもインターベンションを一生やっていくという人もいるわけですから、その場合に彼らの、若しくは指導医の能力を使ってやる必要があるかどうかということです。ただ、逆に 2 年間みっちりやりたいという人がいてもいいし、さらに総合診療的なことにも進んでいく人もいてもいいという多様性が、やはり専門医制度でも今はあるわけですから、そこのところ、余り画一的にというとちょっと申し訳ないですけれど、 2 年間でこれだけぜったいやらなければいけないというような考え方ではなくて、私が申し上げたのは、 1 年目では少なくともここまで、そこから違う道へ行く人がいてもいいのではないかと。そうしないと、逆に専門医制度の中でも基本の中でも言われているのですが、今回、臨床研修を導入したことに関しては我々も評価しているわけですが、その専門医制度をまたガチッと入れていくと。日本の臨床研修はどうなるのだということもあるわけで、臨床研修はある程度若いときに、専門家になるかどうかは別として、一度はやっていたほうがいいというときに、そんな機会があるのかということと、日本は医者が足りないところで、そこにさらに2年 3 年を使うのが本当に効率的なのかということも議論していただきたいという意味です。

○福井座長 ほかにはいかがでしょうか。

○小森構成員 今日はどうもありがとうございました。 4 人の先生方の意見、それぞれもっともだというように拝聴したのですが、私も立場上、文部科学省の時点から医師国家試験、臨床研修専門医制度をずっと携わらせていただいていますが、それぞれの部会で共有していることなのです。ただ、時期的な問題と省がまたがっているというのと、改定の時期が幾つかあるので、そこがなかなか本当に有機的に動いていないという問題点があるのだと思います。そのことについては、それぞれの部会が基本的な考えは共有しているということです。たまたま全部出ていることもあって、私から御報告とはおかしいのですが、そういうことの中でやっているということは確認をさせていただきたいと思いますし、その中でどうするのかということはこれからの細かい議論だと思います。大変参考になりました。ありがとうございました。

○福井座長 ほかによろしいでしょうか。それでは、これで本日予定していましたヒアリングを終わります。渡辺先生、森村先生、國土先生、稲田先生には、大変お忙しい中、プレゼンテーションをありがとうございました。このワーキングで今後検討するに当たって、大変参考になる膨大な資料も御準備いただきまして、ありがとうございました。御礼申し上げます。

 それでは、事務局より今後の予定等について説明をお願いします。

○吉本医師臨床研修専門官 最初の資料 1 で御説明しましたとおり、今後も関係学会、団体等からのヒアリングなどを継続していく予定です。次回のワーキンググループの日程につきましては、また追って、事務局から改めて御連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。以上です。

○福井座長 本日の会議はこれで終了とさせていただきます。



(了)

ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 医政局が実施する検討会等> 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ> 第4回 医師臨床研修制度の到達目標・評価の在り方に関するワーキンググループ議事録(2015年8月19日)

ページの先頭へ戻る