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2015年8月20日 第1回 臨床開発環境整備推進会議 議事録

○日時

平成27年8月20日(木)10:00~12:00


○場所

主婦会館プラザエフ 会議室クラルテ(地下2階)
(東京都千代田区六番町15番地)


○議題

(1) 会議開催の趣旨について
(2) 疾患登録システムの構築状況及び今後の運営方針について
(3) 各業界からの要望事項
(4) その他、治験・臨床研究の推進について

○議事

○神ノ田課長 ただいまより、「第1回臨床開発環境整備推進会議」を始めます。事務局を務めます厚生労働省医政局研究開発振興課長の神ノ田でございます。どうぞよろしくお願いします。構成員の皆様方におかれましては、大変お忙しい中、本推進会議に御出席いただきまして、誠にありがとうございます。開会に先立ちまして、本推進会議の座長を務めます厚生労働省医政局長の二川より御挨拶を申し上げます。

○医政局長 おはようございます。厚生労働省医政局長の二川でございます。本日は、お忙しい中お集まりいただきまして、ありがとうございます。私が本推進会議の座長となっていますので、冒頭、一言御挨拶します。現在、御承知のとおり、政府におきましては、成長戦略の一環といたしまして革新的な医薬品あるいは医療機器等の創出を目指しまして、質の高い臨床研究・治験の推進に政府を挙げて取り組んでいるところでございます。

 厚生労働省におきましては、平成23年度から予算事業として、臨床研究あるいは医師主導治験の実施に必要となる拠点の整備を実施してまいったわけですが、昨年の医療法改正によりまして、法律上の位置付けとして臨床研究中核病院といった制度ができたところでございます。本日のこの会議にも既にメンバーとして御参加していただいておりますが、国立がん研究センター中央病院、東北大学病院、大阪大学病院、3病院を既に臨床研究中核病院として承認をしたところでございます。今後も要件を満たした病院につきましては、追加で承認をしていく予定にしているところでございます。

 こういった臨床研究の拠点のハードの面を進める一方で、効率的な臨床開発の手法の構築など、ソフト面の取組も大変重要なわけでございまして、今般、ナショナルセンター等に疾患登録システムを構築するとともに、この疾患登録システムを活用して産学官が連携・協力して効率的な実施をするための枠組み、こういったものを作ろうということで、これをクリニカル・イノベーション・ネットワークと呼んでいるわけですが、これを構築していこうということになったわけでございます。

 本日のこの会議ですが、臨床開発環境整備推進会議ということで、当面、クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築を含めまして、産学官が連携して革新的な医薬品・医療機器等を創出するための具体的な方策を検討する場ということで、設置をされたものでございます。構成員の皆様方、またオブザーバーとして御参加いただいている皆様方におかれましては、それぞれのお立場から活発な御議論をいただき、実り多い会議にしていただきますよう、お願いを申し上げたいと思います。冒頭、簡単でございますが、どうぞよろしくお願い申し上げます。

○神ノ田課長 ただいまの挨拶にもありましたとおり、本推進会議は産学官の関係者で構成されております。産学官それぞれの立場から、各会の代表者に一言ずつ御挨拶を頂戴できればと存じます。内閣官房健康・医療戦略室次長の中垣構成員より一言お願いします。

○内閣官房健康・医療戦略室次長 ただいま御紹介いただきました中垣でございます。今の二川局長の御挨拶にもございますが、革新的な医薬品・医療機器を開発して、経済成長につなげていくのだというのが、安倍政権の成長戦略の大きな1つの柱でございます。

 総理が本部長を務めております、私どもの健康・医療戦略推進本部で定めております健康・医療戦略の中でも、「臨床研究・治験の環境の整備を行って、世界で最も創薬等が進みやすい国にするのだ」ということが明記されているところでございます。

 また、私どもの本部の中で1度いろいろな研究者の方から成果を御報告していただいた際に、理研の高橋政代さんが加齢黄斑の関係の説明をされたときに、再生医療の関係では、今、日本が一番やりやすくなっていて、世界から非常に羨ましく思われているのだというお話をされたときに、総理が非常に嬉しそうにされて、「こういうことはせっかく言ってもらっても、記者は全然書いていくれないんだよな」ということを記者が入った中でも言いましたが、やはり記事にはなりませんでしたが、そういう高い評価を得ているということでございます。

 いずれにいたしましても、優れた基礎研究の成果を早く製品化して、国民あるいは患者に届けるということが最大の眼目でございますので、そういった観点から今回新たな臨床研究、臨床開発環境整備推進会議ができて、ナショナルセンターをはじめ、いろいろな臨床研究を行う大学病院等の成果にすぐつながるようになるのが、私どもとしても大いに期待しているところでございますので、是非、活発な御議論をいただいて、優れた成果を出していただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○神ノ田課長 学、アカデミアの立場を代表いたしまして、国立がん研究センター理事長の堀田構成員より一言お願いします。

○国立がん研究センター理事長 堀田でございます。学を代表してという立場でもないかもしれませんが、この領域につきまして、先行事例も経験しているということで、この会議にお呼びいただいたと認識しております。ネットワークづくり、あるいは疾患レジストリは、日本で必要だと言われながら今まで進んでこなかった。

 ただ、がん領域につきましては、地域がん登録あるいは院内がん登録という形で進めており、法で定められたものが20161月から全国がん登録として進むわけですが、これは必ずしもすぐに産業的なニーズに応えられるものかどうかは、いろいろ工夫が必要だろうと考えます。恐らくレセプトデータとか、そういうものと結合しないと、実態のところは見えてこないのではないかという気はいたします。いずれにしてもこういった先行事例も紹介しながら、即効性のある疾患レジストリ情報の共有がいかにしてできるかといったところで、お手伝いできればと思っている次第でございます。よろしくお願いします。

○神ノ田課長 産の立場を代表いただきまして、日本製薬工業協会副会長手代木構成員の代理でお越しの稲垣様より一言お願いします。

○日本製薬工業協会医薬品評価委員長(代理) 製薬協医薬品評価委員会の稲垣でございます。本来ならばこの場は、製薬協の研究開発担当の手代木副会長から御挨拶申し上げるべきところではございますが、本日、やむを得ない事情で欠席させていただきまして、代理で恐縮ではございますが、私から一言申し上げさせていただきます。

 今回、臨床研究・治験の基盤整備の推進の取組が進められることになりまして、これほどの規模でこのような意見交換・協議の場が設けられたということ、これは業界側としては大変有り難いことだと思っており、感謝しております。

 また、それとともに、クリニカル・イノベーション・ネットワーク事業、この本事業に対しても大きく期待しているところでございます。これから事業が具体的に進んでいく中で、また業界側といたしましても、いろいろと意見等を申し上げさせていただくことになろうかと思っておりますが、いずれにしましても産官学の連携がよりよい方向で進められるよう、業界側としても皆様方と一緒に努力してまいりたいと思っております。ということで、今後ともよろしくお願いいたします。

○神ノ田課長 ありがとうございました。本日はその他多数の構成員の皆様方に御出席をいただいておりますが、時間の関係上、お一人ずつの御紹介は割愛させていただきますので、適宜、お手元の座席表、構成員名簿を御確認いただきますようお願いします。また、本日は、拠点整備事業の対象病院からもオブザーバーとして御出席をいただいています。オブザーバーの皆様方からも是非積極的に御発言をいただきたいと存じますので、よろしくお願いします。

 配布資料の確認をします。お手元に、議事次第があります。そちらに配布資料一覧を載せていますので、併せて御確認願います。議事次第の下が座席表となっています。その下に資料1として開催要綱、資料2が構成員の名簿となっています。裏面にオブザーバーの名簿も付けています。資料3がクリニカル・イノベーション・ネットワーク関係の資料です。資料4-14-7が、各ナショセンと基盤研からの提出資料となっています。資料4-14-7まであるか御確認ください。資料5-1が日本製薬工業協会提出資料、資料5-2が日本医療機器産業連合会提出資料、資料5-3が再生医療イノベーションフォーラム提出資料となっています。その他、参考資料1として健康・医療戦略等、閣議決定された文書、本日の会議に関係する部分を抜粋したものを用意しています。参考資料2は、自民党が取りまとめた10のプロジェクトについてまとめた文書ですが、その1つとして、本日のテーマであるクリニカル・イノベーション・ネットワークの構築が取り上げられています。資料の不足等がありましたら、事務局までお知らせください。よろしいですか。

 これより議事に入りますので、円滑な議事進行のため、撮影等についてはここまでとさせていただきます。本日は、座長の二川医政局長が公務のため中座しますので、以後の議事進行については、座長代理の神田医薬食品局長が務めます。神田局長、よろしくお願いします。

○医薬食品局長 本日は第1回目の会議ですので、まずクリニカル・イノベーション・ネットワークの構想の成り立ち等について、私から簡単に御説明します。この構想は、お手元の参考資料123ページにありますように、今回の骨太の方針とか、あるいは日本再興戦略の改訂2015という所に位置付けられているわけですが、経緯的には自民党における経済再生本部の経済好循環実現委員会で、参考資料2にありますが、「2020 ジャパンチャレンジ」プロジェクト“10”という中のプロジェクトとして選ばれた経緯があります。

 もともとの経緯は、率直に申しまして218日に厚生労働省とNCの理事長の皆様方との意見交換会がありまして、その場で平成26年度補正で疾患登録システムを構築しているという御紹介が、各センターからありました。私もその場に出席させていただいて、我々もこういう登録が進んでいるのだということを理解しました。

 一方で、私どものほうで製薬業界の方々と定期的に意見交換をしていますが、製薬協の幹部の方々と意見交換をしていますと、日本でイノベーティブな薬を開発するインセンティブはあるのかどうかということで、日本の強み、弱みについて意見交換をしていますと、マーケットサイズは全世界で言うとアメリカが4割、日本は1割しかないので、マーケットのサイズは小さいと。治験の開発コストも非常に小さな医療機関がたくさんあって、コストが非常にかかると。薬価制度についても価格を1回設定されると、上がることはなくて下がる一方だということで、日本で開発するインセンティブはいったいどこにあるのだと。通常の感覚で言うと、アメリカでまず開発をして、医療機器だったらCEマークを取っているヨーロッパでまず開発するのが一般的な常識だというお話がありました。

 そういう中でいったい日本で開発してもらうためには、どうしたらいいのかというお話でしたが、その中でPMDAのこれまでの増員等の御努力によって審査期間をかなり短縮してまいりまして、ドラッグラグ、デバイスラグについてもほぼ解消している状況にあって、透明性とか予測可能性は非常に上がってきたと。これは日本の特徴はサイエンスレベルは非常に高いので、そういう点では開発のポテンシャルがあるのではないかということで、先ほど申しましたような日本のデメリットである開発コストが非常に高いという部分を、いかに効率的に治験開発をしていただけるようにしていくのかということで、製薬協の皆さんから、全部の薬というのではなくて、日本に強みがある分野、例えばC型肝炎とか、高齢化が進んでいるので認知症とか、難病であるとか、ターゲットを絞って日本が得意な分野で開発を促進するようにできないかというお話はありました。そういう中でナショナルセンターで進めておられます疾患登録とか難病の登録等と、医薬品の開発を何とかつなげていけないかということでできたのが、この構想です。

 先ほど申しましたように、518日に自民党の日本経済再生本部における経済好循環実現委員会におけるコンペがあり、そこの選考に勝ち残り、616日にお手元にあるような10のプロジェクトという形で選定をされ、結果として6月末に決定された骨太の方針とか再興戦略に盛り込まれるようになったのが経緯です。

 会議に当たりましては、クリニカル・イノベーション・ネットワーク構想だけではなくて、もともと参考資料1に書いてある健康・医療戦略の中に、臨床研究中核病院とかナショナルセンターなどの症例の集約化を図って、質の高い臨床研究・治験が確実に実施できる仕組みを構築していくという、より広い観点がありますので、そういったことも含めてこの構想を推進するとともに、臨床開発環境の整備についても、幅広く御議論いただく場としてこういう会議を開催したということです。簡単な経緯としては、そのようなことです。

 次に、事務局から、具体的な構想の概要について御説明します。

○神ノ田課長 資料3を御用意ください。1ページに、「クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)の背景と概要」ということでまとめています。背景の1つ目の○にありますように、医薬品、医療機器等の開発については、世界的にコストが高騰していて、1新薬当たり約3,000億円かかるという報告もあります。そのような中で疾患登録システムを活用した新たな臨床開発の手法が開発されていて、3つ目の○にありますように、国内においても国立がん研究センターにおける先駆的な取組として、“Scrum-Japan”という取組が始められています。希少がん患者の治験組入れを効率的にする仕組みとして、10以上の製薬企業の参画を得て運用されています。また、4つ目の○にありますように、その他のナショナルセンター等においても、平成26年から疾患登録システムの構築を開始しています。

 こうした背景の下、クリニカル・イノベーション・ネットワークの概要ですが、下にありますように、各NCの疾患登録システムを臨床研究・治験に対して最大限活用するために関係機関のネットワークを構築し、産学連携による治験コンソーシアムの形成や、登録情報を活用したレギュラトリーサイエンス研究等を行っていくというものです。こうした取組により国内開発の活性化、海外メーカーの国内開発への呼び込みを目指しています。

2ページを御覧ください。「医療法に基づく臨床研究中核病院」ということで、既に本年4月に施行されています。施行後、11の病院から申請を受け付けて審査等を進めてきたところですが、先ほど医政局長の挨拶にもありましたとおり、先の87日にこちらの3病院について承認を行っています。また、今年度中に更に数か所の承認が見込まれている状況です。臨床研究中核病院では、下に記載していますが、被験者、優秀な研究者、研究依頼等が中核病院に集績されることで、質の高い臨床研究・治験が実施され、革新的医薬品等の実用化の促進が図られると、そういったことが期待されているものです。

3ページを御覧ください。「国立高度専門医療研究センターにおける治験・臨床研究推進事業」についてまとめています。上の囲みにありますとおり、医療分野研究開発推進計画において、NCについて幾つかの課題が挙げられています。企業との連携、症例集積性の向上、手続の効率化、ネットワークを強化、あるいは右の所で、バイオバンク、ゲノム解析、ゲノムコホート研究の基盤強化と、こういった課題が指摘されている中、その解決策として、中ほどの囲みにあるように、治験・臨床研究について企業等との連携を強化する仕組みの構築について取り組んでいます。具体的に、1つには、企業等との治験連携事務局、これは平成27年度設置ということとか、2番目には患者レジストリの構築という取組を進めているところです。

4ページを御覧ください。こちらに各NCの疾患登録システムを一覧で整理しています。後ほど各NCより説明が予定されているので、ここでの説明は割愛します。

5ページを御覧ください。「クリニカル・イノベーション・ネットワークの構築」ということで、その概要をまとめていますが、真ん中にNCと臨床研究中核病院があります。こちらにおいて、疾患登録システムの構築、治験コンソーシアムの形成、治験連携事務局の設置といった取組をして、周りにあるPMDAAMEDと企業等、また左上にある基盤研とか国内ネットワーク病院、アジアの病院と、国際的なネットワークも組んでいくということで、そういった中で臨床開発を加速させていきたいということです。そして、ネットワークの方針を関係者で協議する場として、下にありますが、臨床開発環境整備推進会議を設置し、本日、開催したということです。

6ページを御覧ください。「クリニカル・イノベーション・ネットワーク(CIN)推進プロジェクト」ということで、本日の会議である臨床開発環境整備推進会議において、運営方針、進捗管理等を行っていくこととしています。推進会議の下にがん、循環器等の7つの疾患領域ごとにワーキンググループを設置したいと考えています。ワーキンググループにおいては、疾患登録システムの設計等について、関係者で意見交換をすること、また、治験連携事務局においては、治験等の相談の一括受付、治験コンソーシアムにおいて、NCや協力企業で構成し、疾患登録情報を活用した治験を実施していくことです。PMDAにおいては承認審査になりますが、この承認審査の経験をしっかりと推進会議あるいはワーキンググループ等にフィードバックする中で、こういったサイクルを回すことで臨床開発を加速していくことを狙っています。

7ページです。「今後の予定」ですが、今後、ワーキンググループを設置していきたいと考えています。こちらのワーキンググループについては、各ナショナルセンターが主導していただき、疾患登録システムの内容とか情報提供の方法を御検討いただきたいということで、この場には企業、PMDAAMEDなどにも御参画いただきたいと思っています。

 併せて2ですが、各ワーキンググループの横串を刺す仕組みの構築で、厚生労働省の主導により、治験、リクルートレジストリ、対照群代替用レジストリなど、各ワーキンググループに共通する事項について議論を進めていきたいと考えています。こちらには、全ナショナルセンター、企業、PMDAAMEDなどに参加していただきたいと考えています。説明は以上です。

○医薬食品局長 それでは、次に議題2に移り、「疾患登録システムの構築の状況や今後の応援方針について」、各ナショナルセンターからそれぞれの概要について説明をお願いします。

 まず、国立研究開発法人国立がん研究センターの堀田構成員から、5分程度でお願いできればと思います。

○国立がん研究センター理事長 それでは、私どもの取組について、先ほどの疾患登録レジストリについては院内がん登録あるいは全国がん登録ということで、標準化されたものが既に動いておりますので、そこは割愛させていただきます。そしてまた、Scrum-Japanについては、各所で発表もしておりますので、その件に関しても今回は割愛させていただいて、特にUnmet Medical Needsに当たる、がん領域でいえば希少がんや小児がんあるいは難治がんといったものについて、今後どう展開していくかについての提言を、させていただきたいと思います。

 まず、がん対策推進基本計画、2012年に始まった分野別施策と個別目標の中に、以下のことが書き込まれています。「実際には患者数が少ない」「専門の医師や医療機関が点在、あるいは少ない」といったことから、なかなか情報が集約できていないという問題が、特に希少性のものについてはあります。

 次の4ページに、例えば希少がんの中の肉腫の診療体制を見てみると、日本では大学病院とがんセンターを含め、約120の施設があります。そのうち86の施設で希少がんに対する相談窓口というものを学会で認定していますが、このように極めて広く散在しています。

 下の図を見てください。推定患者率が、例えば、希少がんは十万人に対して6未満と一応考えると、図の左に寄っているのが希少がんですが、改めて見ると、3ぐらいからもう既に300施設以上で診ている。だから実際に年間に1例診るか診ないかという患者を300施設で診ているという状況です。これではなかなか標準化もできないし、実際に患者登録も進まないだろうということです。

 こういった実態を諸外国と比較すると、アメリカでは全体で13施設、イタリアでは4施設、最近のイギリスでは13施設と聞いていますが、その程度です。この状況の一方で、次の5ページですが、治験の場合は臨床試験としては、医師主導も含めてPMDAに届出がされますが、その内容が非公開であったり、どこで何をやっているかよく分からない。あるいは、実際にどこの施設でやっているかまでは出ていないことがあります。かつては公正取引上、問題があるので制限されていましたが、今はそれはないはずです。そういった情報をしっかり出さないと、実際にはどこで何をやっているか分からないということです。

 もう1つは、それ以外の臨床研究についてはUMIN-CTRJapicで公開していますが、これも公開の内容は任意に任されているので、なかなか把握しづらいということです。

 次いで6ページです。希少がんの開発については以上の理由で、一般の患者が試験情報へのアクセスを非常にしにくい状況です。担当医も何をどう進めていいかという情報をなかなか得られていない。したがって、患者が臨床試験の実施医療機関にたどり着かないという問題が現状です。それらをいかに解決すればいいかということで、既存のシステムを少し考えてみると、希少がんについて、国立がん研究センターの「がん情報サービス」の中に、がんの臨床試験を探すという項目を昨年度から立ち上げました。これだとがんの領域、あるいは都道府県の中に医療機関がありますが、治験の状況から検索で入って、どこにどのような治験が動いているかが分かるような検索システムを、一般の方々が使うためのシステムを公開しています。しかし、先ほど言ったような問題があって、悉皆性あるいは中身の充実といったことを行えば、もう少し疾患の集積性が、こういった面からもできるのではないかという提案です。

 最後のページです。解決すべき問題としては繰り返しになりますが、治験情報の網羅性が欠如しているということで、これは何らかの通知等でしっかりと登録することを指導していただきたいと、米国ではそのようなことがなされております。

 もう1つは、医療機関の情報の問題としては、JapicUMIN-CTRに試験自体は登録されていますが、医療機関がその試験に参加しているかはしっかり書かれていないことが多いし、組入れ基準がはっきりしないといった問題もあります。このベースを使えば、これはがんに限らず治験や臨床試験の進捗状況、あるいはどこでやっているかということが分かるシステムなので、これを十分に活用できるのではないかという提案です。以上です。

○医薬食品局長 それでは引き続き、国立循環器病研究センター理事長の橋本構成員の代理でお越しの桑島政策医療部長、よろしくお願いいたします。

○国立循環器病研究センター政策医療部長(代理) それでは資料4-2です。国立循環器病研究センターの現在の疾患登録システムの準備状況ということで、昨年度の補正予算以来、様々な疾患登録の仕組み作りをさせていただいております。その状況について御報告しますとともに、ワーキングの方向性についても御報告を申し上げたいと思っております。

 まず1ページです。今の国循(国立循環器病研究センター)で登録を考えているのは、大きく4つの疾患の分類があります。脳卒中、成人先天性心疾患、胎児不整脈、心不全です。脳卒中は既存の様々なシステム、後ほど2ページで御報告しますが、それらの既存のシステムを、国循のほうで事務局機能を集中させて、全国の様々なデータを取ってこようと準備を進めております。

 表の中を少しずつ説明していきますが、脳卒中の所で、目的については既存の医師主導治験、こうした試験への患者の組入れという形で目指しておりますが、これは現在の仕組みですので、そういう意味ではもう少し幅広く企業の皆様方にも御協力、御参画いただけるような治験に発展させていくことも十分に可能かと考えておりますが、今は医師主導治験の内容を主に記載しております。

 そうした中で、脳卒中の中でも特にrt-PAの静注療法の施行される患者様の中で、いろいろと情報を集めております。特に施設の状況ですが、現在、37施設の全国でもかなり中核の脳卒中を扱っている施設からの情報を頂いておりますが、もう少し全国規模で、各都道府県ごとにそれぞれ拠点があると思うので、そうした施設の連携を更に強化していきたいと思っております。そういう意味では現在も進行しておりますので、また発展させていきたいと思っております。

 成人先天性心疾患と胎児不整脈についてです。これは小児関係の登録なので、成育医療センターとも十分に協力しながら展開していきたいと思っていますが、特に、成人先天性心疾患は小児の難病ですので、その難病がある意味で長く生きられるようになり、そういう意味では内科の先生方にも十分にこの診療を移行していこうという趣旨ですが、そうした中に各種治療との結び付きも十分に考えていくつもりでおります。

 胎児不整脈もなかなか早期発見が難しい疾患ですが、その中でも非常に珍しい疾患ですので、各施設の登録を進めたいと。特に総合周産期医療センターとの関係を深めていきたいと思っております。

 それから1番右ですが、心不全です。心不全の原因も様々ですが、特に今、国循で取り組んでいるのが、いわゆる拡張型の心不全の対応ということで、現在、登録の仕組みを作っておりますが、このほかにも様々な心不全のタイプがあるので、それらとの連携もこれから考慮が必要になると思っております。

 スケジュールを一番下に書いてありますが、平成282月ぐらいまでには、システムの構築を図っていきたいと。更にその翌月ぐらいに望んでいますが、次の年ぐらいから患者登録の開始を更に進めていきたいと思っております。

2ページ目は軽く触れますが、先ほど脳卒中の仕組みということで、現在幾つか、左側に3つほど大きな固まりがありますが、SAMURAI、それからATACH-IITHAWSといったこれらはそれぞれ、いろいろな研究の登録の仕組みですが、国循が中央事務局を務めることになります。これらの中核ということで、私どもがこれから登録管理を進めていきたいと思っています。更に追加ですが、右上に、海外のネットワークとの連携も現在進めていて、NIHStrokeNetと連携強化を図る事業を展開しております。

 最後のページはワーキンググループの運営方針です。いろいろ書いてありますが、平たく申し上げるとメーカーや参加の企業の皆様方とよくよくお話をして、その中身に合ったレジストリに切り替えて、作り込んでいきたいと思っていて、一番下にもありますが、在京のNCとの合同の開催もいろいろと考えていかなくてはいけないのではと。特にテーマとして生活習慣病に関わることもありますので、連携が更なる発展を望む場合に必要ではないかと思っております。以上です。

○医薬食品局長 ありがとうございます。引き続き、国立精神・神経医療研究センター理事長の樋口構成員、よろしくお願いいたします。

○国立精神・神経医療研究センター理事長 お手元の資料4-3を御覧ください。1ページ目は御存じの方も多いと思いますが、このセンターのミッションがどういうものであるかを示したものと、下のほうには私どもが病院と研究所の2つを持っていて、その間をつなぐ臨床と研究の橋渡しを行うという意味で、トランスレーショナル・メディカルセンター、メディカル・ゲノムセンターなどセンター内センターを立ち上げていることを御覧いただこうと思って、ここに用意しました。

 次のページですが、NCNPが有する患者情報登録システムは、既に私たちが立ち上げて実績を得ているシステムです。それについて示しております。私どもの所では、難治性・希少性疾患が大変多いのですが、しかしその集積はなかなか難しいのが先ほど来の話にもあるところです。したがって、2009年に神経・筋疾患患者登録、Remudyと略しておりますが、これを立ち上げました。Remudyとはどういうものか。対象疾患は、筋ジストロフィーを含む遺伝性の筋疾患ということで、それに加えてIBISS(Integrative Brain Imaging Support System)、これはBrainImagingを中心にしておりますが、これを立ち上げております。さらに現在進行中、構築中であるのが、Remudyの経験を基にして、これをモデルとして、精神科領域でのレジストリを構築し始めているところです。主な登録項目はその右に囲っております。

 次のページです。Remudyに関しては、御承知の方もいらっしゃるかと思いますが、図にどのようなものかは大体示しており、およそジストロフィンの異常症に関しては、1,428名登録されていて、全国の疾患の約3分の1をほとんど登録させていただきました。Remudyを活用することにより、実際に治験の対象となる患者数や分布の把握が可能になりました。それから試験の実施可能性を調査することが容易になりました。そして、臨床研究・治験への参加者を募集することができるようになりました。さらに自然歴の研究が可能になり、その一例として、右下に示していますが、「ステロイドによる歩行機能の延長効果」を御覧ください。これはRemudyを用いた研究の横断的観察研究の例で、プレドニゾロンを使うのは有効であることを示したものです。

 次のページです。これは治験実施病院のネットワークを構築するということで、これも既に立ち上げて実績を持っております。筋ジストロフィー臨床試験ネットワークというものです。右の日本地図の所に参加している施設を記してありますが、このシステム、ネットワークを用いて、国産初のアンチセンスの核酸医薬品であるデュシェンヌ型の筋ジストロフィー治療薬に関して、早期探索的な臨床研究を行うことができました。そして、そういったことに対しては他施設や海外から情報提供の依頼が来ており、その内容については、右の囲いの中に書いております。括弧内のTREAT-NMD経由が国際機関を介した依頼でした。

 以上から、難治性・希少性疾患以外にも患者登録システムの在り方を検討することが、このネットワークをモデルにして、今、可能になってきているところです。

 次のページは、後で御覧いただければと思いますが、今の患者リクルートの流れの図になっております。

 最後のページです。運営方針の所ですが、ワーキング長、そしてワーキンググループの構成員がそこに書いてあります。3つの・で示しているのが、センターで収集した患者情報をより幅広く効率的に活用できるように、一元管理する方法を検討している内容です。2番目は、担当領域における治験・臨床研究の促進に資する患者登録システムを検討することを行っております。3つ目としては、先ほども出ましたが、企業からのヒアリングを行いつつ、情報提供に向けた具体的な問題点について、今後、検討を重ねていきたいと思っております。以上です。

○医薬食品局長 ありがとうございました。引き続きまして、国立国際医療研究センターの春日構成員、よろしくお願いいたします。

○国立国際医療研究センター理事長 国立国際医療研究センターの春日です。それでは、資料4-4を御覧ください。次のページにありますが、現在、私どものセンターを中心に行っている糖尿病の症例、登録クラウド事業について説明します。左上に、各医療機関がありますが、我が国において電子カルテのデータをそのまま効率的に集めるのは、ベンダーがいろいろ違う電子カルテがあるので、非常に難しい点がありましたが、現在、SS-MIXという規格を用いて、それらを1つに集めようということが大分行われるようになってきました。

 そのシステムを用いて、電子カルテデータとの連携による効率的な症例登録システムを立ち上げたいと思っております。匿名化されたデータは暗号化通信により、クラウドセンターに蓄積され、研究テーマに応じて施設横断的な症例データが研究者に提供される仕組みです。収集項目の検討や研究テーマの検討・選定に当たっては、日本糖尿病学会と協力・連携して進めることにしております。まずは30施設、3万人の実証試験を行うべく、準備を進めております。これは本年度のAMEDからの調整費を頂き、初めて、この30施設、3万人の実証試験が可能となっております。症例レジストリの構築が遅れた糖尿病研究において、こういうデータベースができることは、いろいろな意味で糖尿病医療に貢献するものと確信しております。

 次を御覧ください。今、お話した糖尿病レジストリがクリニカル・イノベーション・ネットワークに貢献するに当たっての論点というか、問題点ですが、中央においては、患者は全て匿名化されておりますので、企業が治験を企画する際にcriteriaにマッチする全国的な患者の割合などを提供することはできるわけです。すなわち、治験の実施可能性に関する情報提供はできると思いますし、さらに治験実施企業と治験criteriaに適合する患者が多く存在する病院とのマッチングなどもできるのではないかと思っております。

 それに加え、基本的にはこのようなレジストリ参加者の包括同意事項に企業への情報提供を含める作業が必要ではないかと。参加者への同意の取り方に検討が必要と考えております。

 次のページを御覧ください。これは私どもの国立国際医療研究センター全体のレジストリのイメージです。お話した糖尿病レジストリは、多施設レジストリですが、それ以外にHIV/エイズのレジストリは全体で3,500例ぐらい、2,000例に関しては疾患コホートとして、最長20年ぐらい追い掛けている症例の登録と、いろいろなサンプルが蓄積されています。

 肝炎レジストリに関しては、肝炎と肝がんを合わせて1,000例程度のレジストリがあります。肝炎に関しては、私どもが肝炎情報センターを中心とした全国肝疾患診療ネットワークの中心になっていて、例えば最近ではC型肝炎に対する新規健康治療薬の第III相試験を、私どもと全国肝疾患診療ネットワークを用いて第III相試験を実施し、その結果を基に今年度保険収載をされた実績があります。国際感染症レジストリということで、マラリアとかデング熱の希少な感染症のレジストリも現在作っていますので、今後、更に充実したものにする予定です。

 次のページを御覧ください。私どもが今後、クリニカル・イノベーション・ネットワークに貢献するに当たっての運営方針で、レジストリの構築、データ集積、人材育成、いろいろな意味での電子化、それから患者レジストリによる提案型治験・臨床研究の誘致、レギュラトリーサイエンスの協力などを考えております。よろしくお願いいたします。

○医薬食品局長 ありがとうございました。続いて、国立成育医療研究センター理事長の五十嵐構成員、お願いします。

○国立成育医療研究センター理事長 成育医療研究センターの五十嵐です。どうぞよろしくお願いします。資料の最後のページから説明させてください。私どもの施設は、小児総合医療施設協議会の中心的な役割を担っておりまして、今、34施設がこの協議会に加わっております。その中で9施設、それからおよそ40の開業の先生たちの電子カルテをネットワーク化し、医療情報を収集するシステムを構築しております。

2ページを御覧ください。この小児医療情報収集システムを利用し、本年度は小児分野の希少疾患あるいは難病等、具体的に申し上げると、本年度から小児慢性特定疾病が705疾患に拡大したのですが、この疾患の登録を始めたいと考えているところです。今年度は都立小児病院、神奈川こども医療センター、そして私ども成育医療研究センターの3施設の電子カルテから、この小児治験ネットワークを使い、登録を始めたいと考えているところです。計画としては、本年度は3,000件ぐらいを行い、来年以降はできれば34施設まで拡大して、最終的には3万件のデータを収集したいと考えております。国内主要地域の網羅性を確認して、被験者候補検索システムと併せて、精度の高い医療情報レジストリシステムとして、品質評価分析等にも利用したいと考えています。

 それに合わせワーキングを設置しますが、3ページにあるように、多くの企業に参加していただくために参加依頼をしたいと考えています。御存じのように、小児分野はなかなか新薬を開発することが、特に日本では難しいとされていますが、ワーキングでは企業、ナショナルセンター、PMDA等の関係者が集まり、自由な意見交換ができるような工夫をしていきたいと考えています。特に小児用製剤の開発をする場合に、企業にとってどのような障害があるのか。そしてまた、それを解決するにはどのようなことを、これからしなければいけないのか。これは疾患登録システムの評価を含め、多面的に考えていきたいと思っています。

 そして最後に、予算、政策、審査方針等についても、関係機関といろいろ情報交換をすることによって改善に努めたいと考えています。さらに、ほかのナショナルセンターやワーキンググループとの共同開催も今後、計画しているところです。以上です。

○医薬食品局長 ありがとうございました。続いて、国立長寿医療研究センター理事長の鳥羽構成員、お願いいたします。

○国立長寿医療研究センター理事長 よろしくお願いします。2ページ目を御覧ください。こちらの医療研究センターでは、もの忘れセンターを5年前に開設して、4,000例ぐらいの認知症疾患等のデータベース、バイオバンクへのDNAの蓄積を行っております。この中でMCIという軽度認知障害は650例ぐらいで、当センターだけで日本全国の治験の受け皿になることはできないといった規模感があります。治験の規模感としては、MCIの登録が1治験当たり1,500例ぐらいが必要とされておりますので、数千例の母集団が必要であろうということです。

 もう1つ、サルコペニアの臨床研究ですが、これらは全国的に全く登録のない所で、これから治験を行うに当たって、どのぐらいの規模で集めていったらいいのか。外来の患者で、約1割がサルコペニアということが分かっているので、これも数千例のサルコペニアを集めるのは、それほど難しいことではないと思います。

 次のページを御覧ください。ポンチ絵ですが、心身の自立を妨げる要因の中で、疾患登録でMCIの特異性は、5年間で半分ぐらいは認知症に変わっていってしまうので、縦断的にアクティブな登録制度が必要だということが一番違う所かもしれません。また、MCIとサルコペニアをなぜ一度に行うのか。次のページを見ると、虚弱やサルコペニアの方は、黒棒で示したように、海外文献ですが、認知症の発症が倍ぐらいあるということで、同時に見ていく疾患登録システムが両者の健康寿命の延伸に有効であることを示しています。

 最近の筋脳相関という新しい概念も出てきていて、疾患登録の意味が位置付けられると思います。

 その次のページですが、MCI、サルコペニアデータベースの構築においては、他のNCと同じように、クラウドを使ったSS-MIXという、いろいろな電子カルテによらないものを行うと同時に、データ収集についてはよろしいのですが、画像の国際的な標準化やクラウドセンターについては、まだまだこれからの開発が必要だと考えられております。また更に、このようなレジストリの治験においては、国内の治験だけではなくて、海外との共同の治験、その汎用性についても今後考慮していくことが、特にワーキンググループで必要なこととなっております。

 最後のページですが、これまでに登録いただいた多くの医療機関が、MCIレジストリ及びサルコペニアレジストリについて、今後、年間で少なくともMCI1,000例、また、サルコペニアについては年間で数千例の登録が可能であろうと考えております。これらを有機的にどのように利用していくかについては、ワーキンググループで、どのような治験に、どのような対象をということで、有機的、縦断的なレジストリを構築いたしますが、企業の方と、ニーズに対して相談していきたいと考えております。以上です。

○医薬食品局長 続きまして、医薬基盤・健康・栄養研究所理事長の米田構成員、お願いいたします。

○医薬基盤・健康・栄養研究所理事長 医薬基盤・健康・栄養研究所の米田と申します。よろしくお願いいたします。私どもはこの4月に、医薬基盤研究所と国立健康・栄養研究所が統合されまして、新しく国立研究開発法人としてスタートしました。これまで革新的な医薬品等の創出への貢献ということで、本会議に参画させていただいていると理解しております。

 次ページですが、私どもの基盤研では、これまで難病の創薬に向けた取組、それから基盤整備・支援を行ってまいりました。設立時、10年ほど前になるのですが、遺伝子を活用した創薬に向けた遺伝子資源研究室を設置して、難病創薬に向けた取組を開始しておりましたが、その後その研究室を改組して、平成22年度より難病資源研究室という名前に変えて、難病バンクの事業を進めてまいりました。難病患者の試料に求められる事柄としては、取り間違いがないということのみならず、臨床情報など、患者情報を求められるようになりまして、試料付随情報としての管理にも対応できるような難病バンクを作ってまいりました。加えて、より希少な難病を研究対象としたいという多くの研究者の要望と、自ら研究に参画したいという希少難病の患者さんの思いをつなぐために、患者さんと研究者、それから主治医をつなぐ場として、R-Squareと名付けておりますが、そういう場、システムを設けて、その運営を開始しているところです。

 次ページです。そのような難病研究、難病創薬支援を基盤にして、今、難病疾患登録システムの構築に参画しております。臨床調査票の入力をIT化して、それらのデータを収集・集積して、データベース化して解析し、難病の病態解明、難病創薬にいかそうという施策です。難病に指定されている疾患全てが入力の対象となり、臨床調査個人票の全ての項目が収集データとなります。一元的なデータの管理により、難病創薬に貢献すると想定される経年的なデータが蓄積されて、国際比較に向けた連携のハブにもなることが期待されています。このような難病疾患の登録システムは、正にクリニカル・イノベーション・ネットワークで対象とされるような疾患の多くに加え、希少疾患もデータベース化、活用することが考えられ、平成28年度中に運用開始を目指しております。

 次ページです。これら難病疾患の登録システム、データベースを臨床開発環境整備にどのようにいかしていくか、現在の検討内容をお示ししております。難病患者データベースでは、難病指定医が入力してくださる臨床調査個人票の項目について、全ての情報が収集されて、蓄積されます。ナショナルセンターや臨床研究中核病院などからの依頼に応じて設置される予定のデータ提供審査会で、これらを審議した後に、それらのデータを提供することになると思っております。活用目的に適合した解析データの提供として、左下に幾つかの例を示しております。これら対象疾患全てのデータの提供を目指したいと考えております。

 次ページです。臨床開発環境整備において、私ども基盤研においては、希少難病を対象として参画したいと考えており、希少難病版のCINのようなもののワーキングも設置したいと考えております。ワーキングの運営方針としては、対象疾患データ提供の審査の在り方、難病データベースの価値付加とその提供についての議論を進めていくことを考えております。治験の促進に向けて、リエゾン事務局を置き、ナショナルセンター、それから臨床中核病院での患者集積性が低いなどの理由で、実施しにくい難病を対象として、CINの機能を分担させていただければと考えております。そのためにはこれまで続けておりますデータベースからの解析だけではなくて、R-Squareを拡充して患者さん、研究者、その他のナショナルセンターをつなぐ場を提供していきたいと考えております。以上です。

○医薬食品局長 以上でナショナルセンター、医薬基盤研からの疾患登録システムの現状、方針について御説明いただきました。短い時間の中でありがとうございました。ただいまの説明について、御質問、御意見などありましたら、どうぞ御発言いただければと思います。

○国立がん研究センター理事長 疾患レジストリを何の目的でやるかということについて、あくまでここの場は産学官の連携で、どの疾患の患者が、どういう施設にどれくらいいるかということがしっかりつかめることが重要なのです。一方、本来の疾患レジストリは悉皆性を求めて、全体の罹患率、あるいは死亡率といったものをしっかりと把握することが大事です。それらはある意味では性格が極端に違うと思うのです。悉皆性を求めて、標準的な項目についてしっかり集めるのと、ある程度数は限られても、これは例えば臨床開発、研究あるいは治験に必要な数が集まれば、そこでしっかりしたデータが集まればいいということでやっていくのか。この辺を最初にしっかり押さえておかないと、方向性がまとまらなくなるのではないかと、今聞いていて思いました。

○医薬食品局長 私がお答えするのがいいのかどうかわかりませんが、この疾患登録システムの基本的な考え方としては、正に治験の開発環境を整備していくという観点からしますと、悉皆的なデータを集めて、がん登録はどちらかというと、この過程でもがん登録との関係はどうなのだという御議論は、自民党の中でもありました。間違っていたら訂正していただければと思うのですが、がん登録は主としてどのぐらいの発症があるのかとか、あるいはステージがどのように進んでいるのかとか、健診とか治療施設をどうするか、がん政策全体を立案する上での統計的なデータを作る所にプライオリティがあるというのに対して、むしろがんセンターでもやっておられるScrum-Japanみたいなものは、どちらかというと臨床開発のための登録を進めていくという考えではないかと思っております。そういう意味でいうと、政策の基本的な統計を得るというよりは、むしろ今回、業界の方々にも参加していただいている意味としては、できるだけ開発につなげていけるような疾患登録情報を集められないかと。システムによって、どこまでの情報が集められるかといろいろあると思いますが、業界側の御意見もできるだけくんでいただいて、実際にそれが開発に結び付くようなことでつなげていければと、CINの趣旨はそのようなものだと考えております。

○国立がん研究センター理事長 そうだと思います。この会議の趣旨はそう理解しています。ですから、悉皆性を求めて全数把握するということではなくて、一定の業界のニーズに応えられる規模のレジストリをしっかり押さえられることが大事であれば、それはそれで本当の意味の全国疾患登録とは別に考えるということを最初に確認しておかないと、ちょっと混乱するのではないかと思いました。

○医薬食品局長 貴重な御意見をありがとうございました。ほかに御意見はありますか。

○日本医療研究開発機構理事長 今ナショナルセンターの先生方から御発表のあった登録システムですとか、国際医療センターのあれでCDISC準拠とかいろいろ書いてありますが、ソフトウエアというか、登録のために必要な、つまりデジタルでデータベースを作ろうとする基本的な作り部分は、もう既にナショセンは全部同じ仕組みでやっているという認識でよろしいのでしょうか。全く違うのですか。そうすると、それを統合的に扱って、例えば高齢者で複数のいろいろな病気を持っている方ががんになったときに、その人たちにどういう対応をするかなどというデータベースの作りは、やるのは相当難しいということなのでしょうか。どなたでも結構なのですけれども。

○国立長寿医療研究センター理事長 バイオバンクのときのデータ蓄積の中で、各々システムが違っていても、電子カルテから情報を上乗せするようなシステムは6NCで一緒にやっておりますので、難しいというか、技術的に乗り越えるものはあっても、取り出せないことはないと思っております。ただ、先ほど申しましたように、複雑な画像の統一的なものについては、まだ構築されていないと思います。

○医薬品医療機器総合機構理事長 末松先生の御質問に答える格好になると思いますが、今PMDAMID-NETという仕組みを展開しております。これは全国の10の医療機関と組んで、それぞれ様々なベンダーで作った診療情報をかき集めるわけです。でも、かき集めるに当たっては、もちろんSS-MIXを使ってやるのですが、非常に細かくクオリティをコントロールしながら、つまりそれぞれの病院で違った符号を付けているところがありますので、その辺をしっかり調整して、最終的に全部集めてもいいというところまで今、調整中です。これは将来的には1,000万人規模の患者さんの情報を集めていこうと思います。もちろん入院中心だろうと思うのですが、これによって我々の狙うところは、主目的は安全性の確保。つまり、いろいろな薬を使ったら、患者さんにどの程度の影響が出ているのかということを1,000万人規模で見ていくと。そうすると、今まではただ報告症例でしかなかった副作用が、どのぐらいの割合で出てくるのかを予測できるだろうと思うし、単なる別のことによる障害かどうかも予想できるわけです。これを狙って今作っているところです。これはたまたま今は10の医療機関ですが、できれば多くの医療機関に加わっていただければ、もっと価値のあるものになるだろうと思っているところです。

○医薬食品局長 先ほどおっしゃったように、PMDASS-MIXを使って、ベンダーが違っても共通の形式でデータが集積できるようにというようにしていますが、国立病院機構も基本的に同じシステムを入れていただくということで、今、話合いをしております。そうすると、かなりの症例数はそのようにできるのではないか。それから、再興戦略などでは、違うシステムの間のデータの互換性をどうやってやっていくのかということも、次のテーマとして取り組んでいきたいと考えております。

○事務局 事務局から恐縮ですが、先ほどの資料3の一番最後、7ページです。今後の予定の2.ですが、今後、私どもとしては御指摘の点も踏まえて、ワーキンググループの横串を刺す仕組みの構築を目指していきたいと考えております。先ほどナショナルセンターの各先生方からの御発言もありましたように、レジストリ同士でも連携協力をしていきたいといった需要があるというお話もありました。また、システム上のいろいろな違いもあろうかと思いますが、そういった中で相互に連携協力ができるようなことも試行しながら、こういったワーキンググループに横串を刺すような、例えば研究班のようなものも立ち上げることを考えながら、問題の解決、あるいはより良い手法について検討を進めていければと考えております。

○医薬食品局長 ほかに御質問、御意見はありますか。次の議題に移りたいと思いますが、また何か追加でありましたら、御意見、御質問は後でも結構です。続きまして、議題の3番目の各業界からの御意見をお伺いしたいと思います。まず、日本製薬工業協会の稲垣様から説明をよろしくお願いします。

○日本製薬工業協会医薬品評価委員長(代理) 製薬工業協会医薬品評価委員会の稲垣です。資料5-1を使って、製薬協としてのクリニカル・イノベーション・ネットワーク及びこの会議に対する期待ということで紹介させていただきます。我々は以前よりこの種のクリニカル・イノベーション・ネットワークに対して、高い期待を寄せておりました。

2枚目ですが、これは77日の健康・医療戦略参与会合で、うちの多田会長が話をした資料の一部ですが、真ん中の四角にありますように、このような形でいろいろな作業をしていただける機能を持つというところで、これが医薬品開発にもつながるということで期待しているところです。特に赤字の所ですが、各種疾患登録情報を用いて、国立高度専門医療センター及び臨床研究中核病院を核としたネットワークが構築されることにより、症例集積性が向上し、治験期間が短縮するのではないか。あるいは、四角の一番下の赤字の所ですが、この事業を通じて治験・臨床研究に必要な生物統計家等の人材が育成されることで、臨床研究や治験の質の向上につながるのではないかと期待しているところです。

 スライド3ですが、そのためにはこういう会議体を発足して、中の事業でマネージできるようになったことを非常に高く感謝しております。今後この会議体が司令塔という役割を果たして、ゲノムデータとかICTデータ等、各種データを活用して、医療への貢献が進んでいくことを期待しているところです。ただ、この会議体がより効果的な活動を行うためには、最近ほかのところの事業等でも話があるようですが、適切なKPIを設定して、この会議体の中でのKPIの達成状況等をフォローしつつ、クリニカル・イノベーション・ネットワーク事業全体のPDCAサイクルを回していくと、このような役割を果たすような会議体としてなることが必要なのかということも考えているところです。

 この資料の中でありますように、様々なデータを組み合わせることにより、医薬品開発に貢献するというところでのイメージがスライドの4ページ目です。オレンジ色の四角、右上から左下に向かって、創薬研究、治験・臨床研究、そして市販後という形で医薬品の開発が進んでいくわけですが、この中で本事業の持つ意味は緑の四角で書いてあるコホート研究、このような役割になるのかと我々としては考えているところです。つまり、様々な患者さんを対象とした研究で、病態の自然歴を追い掛けたり、あるいは病態と正常な方との組織とを比較することで、当該疾病に関する様々なデータが得られるわけです。その中で出てきたデータの中で、例えば組織からのゲノム、あるいはオミクス等の情報、これらはそのまま創薬研究の所で新規の創薬ターゲットを発掘するときの材料として使われます。また、そのときの患者さんのいろいろな病因を見ることによって、個別化医療につながるかもしれません。

 ただ、それとともに、コホート研究の中で診療データ、あるいは各種検査データを自然歴、すなわち疾患進行の時間軸に沿って様々なデータを集積していただくことにより、治験・臨床研究のところになるわけですが、長期にわたって進行していく疾患において、どのような指標が疾病の進行を示すバイオマーカーとなるか検討され、さらには治療法の効果のサロゲートとなるバイオマーカーの探索につながるのではないか。そして、実際、進行を予防する薬剤ですと、投与前より症状が良くなる改善効果は期待できませんので、発症の早い段階で治療を開始することが必要になります。どのような段階で薬を投与し治療を開始すればいいのか、そのような情報もここのコホート研究の中からデータとして得られるのではないか。そのような情報は、我々企業としては治験・臨床研究の計画を立案する上での重要な参考になりますし、それら治験の結果が最終的には医療においても治療計画の最適化につながるということを期待しているわけです。

 このような形でデータが使えるようになることを期待しているのですが、そのために必要なこととして、5ページ目です。疾患については、様々なばらついた疾患患者さんのデータが入っていては使いものになりません。そういう意味では、最初に対象疾患における患者さんの診断方法、あるいは診断基準がしっかりそろって、かつこれが数多く全国の多くの施設で同じような形でデータとして集まってくる、こういったものが非常に重要になるのかというのが1番目に思っているところです。

 それとともに、次の集まってきたデータを治験に利用するというところでは、医薬品開発の活用を意識した疾患ごとでのデータ集積ということで、それぞれ疾患によりどのようなデータが必要になるかは変わってきますが、いずれにしても医薬品開発に使えるデータが集められることが必要です。診療、あるいは各種検査経過、それらが各個人単位で経時的に集められるところも重要になるかと思います。もう1つは、それらのデータを企業が開発に使える同意取得等のテクニカルな問題もあるかと思います。このように医薬品開発に使えるような形で、そのために必要なデータを各疾患ごとに集めていただけるような形が有り難いのかと期待しているところです。

3番目ですが、そのようなデータが蓄積した暁には、それらのデータを使って医薬品の有効性や安全性の新たな評価方法を構築できないのかといったことも討議していただければ有り難いと思っております。これは具体的には、例えば患者数が極めて少ない疾患の場合、医薬品の有効性を確認する手段は、ある一定期間投与した後に対照群と薬効群との間で有意差があるかという形で薬効を検定するわけなのですが、患者数の少ない疾患では2群での検定に必要な症例数を集めるのは無理ですし、また長期にわたって投与しなければいけないときに、疾患で苦しんでいる患者さんで対照群を置くことが本当に適切なのかと、このような話もあります。そのような点で、例えばここで取られたナチュラルヒストリーのデータ、これが頑強なものであれば、それを対照群として薬効群だけで試験を行い、レジストリー研究で得られたヒストリカルデータと比較するような承認の仕方なども検討いただければ有り難いのかなと。あるいは、希少疾患で非常に患者数が少ない場合、少ない例数の中でものを言うための必要なサロゲート、長期にわたって変化するものを事前に予見するようなサロゲートのバイオマーカーによる評価でも、薬の評価として認められるといった検討もできてくれると有り難いのかと思っているところです。

 後ろのスライドの6とスライド7ですが、これは先ほどの堀田先生のお話の一部と絡むところですが、今のような情報は医薬品の開発をする上で必要な部分で、開発のための参考となるデータの数が集まれば十分なところなのですが、その一方でまた例えばリクルートの促進等を考えたときには、もうちょっと悉皆性・網羅性の高い、かつ病院等を転院してもデータとして追えるような仕組みも、考える必要があるのではないかというところで、そういった意味での患者さんを登録してレジストリとして追い掛けていくような仕組みも、また1つ必要になるのかと考えております。これは参考として、そういったことも今後の討議の中に入ることとは思っておりますが、こういったことも検討していただければ有り難いというところです。製薬協からは以上です。

○医薬食品局長 続きまして、日本医療機器産業連合会副会長の鈴木構成員の代理でお越しの瀬尾様、お願いいたします。

○日本医療機器産業連合会(代理) 医療機器開発の観点から要望を説明したいと思います。まず、要望の背景を御理解いただくために、スライド2枚を使って、医薬と違う医療機器の特性について説明します。

2枚目です。医療機器の開発の特徴を示した図で、この資料は医薬基盤研究所ホームページから引用しております。ここに示しているとおり、医療機器の開発の源泉は医療現場、正に医療が行われている現場にニーズが発生するものです。また、そこで医療機器の開発を行うとともに、周辺技術の革新に伴って改善・改良を行っていきます。図にあるとおりPDCAを回しながら、常にそれを繰り返していく。これが医療機器開発の1つの大きな特徴になっております。

 続いてスライドの3ページです。医療機器の開発における治験の特性ということでお示ししました。左の枠、青い所が「一般的な特徴」ということで羅列しております。まず何よりも対象となる症例数、患者数が少ない。お医者様の手技が影響してくる。機器の単価が高い、盲検性試験が難しい場合が多い、などの特徴があり、意味合いとして右側にある3つに集約されるかと思います。そもそも患者さんが少ないということと同時に、侵襲を伴うことが多いということですから、重症の患者さんを対象とするということで症例数が少なくなります。また、既存の治療の効果がない患者さん、投薬等の治療では効果がない患者さんが対象となることが多いですから、これもデータを集めるという意味で難しい側面があります。

 以上の背景を踏まえて、要望を2つほど説明します。スライド4です。要望の1点目になります。ここでは先ほどのスライドに示したとおり、医療機器の開発は治験デザインの制約が存在していて、データを集めることも問題があります。そういう意味でも、疾患登録システムの取組は大いに期待できるということなのですが、その上で治験デザインの制約を軽減する一手として、疾患登録システムのデータを是非、治験の比較対象データとして使わせていただきたい、利用させていただきたいということを1点目に挙げております。今後の検討事項の代表的なものを幾つか記載しておりますが、このデータの利用が実現することで、医療機器治験に内在する大きな課題の1つが解決に向かうのではないかということを考えております。

 スライド5ですが、2つ目の要望となります。医療機器は疾患の治療ではなくて、身体機能の代替という役割のものも多くあります。植え込み機器に多い特性になりますが、それらの医療機器の使用成績の集積が患者さんのQOLの確保や機器の改良・改善へつながっていく礎となるということです。既に医療機器においても登録システムはあり、2つ記載しています。主なものとしては使用成績評価を前提とした法規制の下の登録システムがあります。現時点で、その登録システムの問題を幾つか記載していますが、何はともあれ登録率の低さという問題が第一にあります。それを解決する意味でも公的資金の投入を頂いて、医療機器登録コンソーシアムを是非立ち上げたいということを要望として挙げております。多種多様な医療機器に関するレジストリのデータを産官学で有効に使用していくための検討をしたい、そういうコンソーシアムを構築したいというのが2つ目の要望です。以上です。

○医薬食品局長 続きまして、再生医療イノベーションフォーラム会長の戸田構成員、よろしくお願いいたします。

○再生医療イノベーションフォーラム会長 それでは1枚めくっていただきまして、今回の1枚目は、CINに再生医療技術を組み合わせて、我々としては治験先進国を実現したいということを提言したいと思います。この疾病登録情報というのは極めて重要な取組だと思っており、非常に良い流れだと思っております。こういう情報を積み上げていくだけではなくて、先ほどそういう議論もありましたが、これを使って何を実現するのかということを明確にしたら、もっと重点化や優先順位やスピードなどというところが同時に達成できるのではないかということで、釈迦に説法ですが、日本は患者さんのロイヤリティ、文化的な背景、言語、いろいろな意味で治験をやりやすい環境にあると思っておりますので、このようなデータを使って、是非、治験先進国を目指していきたいということを提言したいと思います。ここにそういうことを既に書いております。目標として、経済効率的な治験を実施できるような環境をと。正に治験・臨床開発の加速が国家レベルでの課題だということで認識しております。そういうことで、具体的に再生医療という観点で申しますと、現在、ヒト試験の一部を細胞で評価するということをやっていくことが、非常にスピードアップにもつながると思っております。

2枚目です。これも資料からの抜粋なのですが、1. で、レジストリの主な登録項目がいろいろありますが、これは是非、全部とは言いませんが、どこから入るというのは後で申し上げますが、細胞を準備しておく。これはバイオバンクという観点もありますし、ゲノム解析にも使えます。再生医療の技術というか、セルサイエンスの技術を使えば、2. に書いてありますように、iPS細胞を経て、病体モデルを作って、サイエンス的な裏付けを取っていくということで、先ほどのデータのばらつきその他も含めて、もう少し合理的な説明、解釈ができるのではないか。

 次です。日本発、世界初の創薬支援システムの構築、これは先ほどの繰り返しになりますが、治療ヒストリーにひも付けされた細胞を用いて、世界に先駆けた創薬支援システム。この中に、当然、ディスカバリーとディベロップメント、臨床開発も含まれるわけです。一方では、その下に2行書いてありますが、全領域で網羅的にやるということは非現実的だと思っております。この情報も使って、現時点で大体もう80点から90点のレベルにある、満足度の高いところを、また、より精緻化しても余り意味がない。むしろ、中枢神経や、がんなど、マーカーが存在していない、存在しても極めて限定的、しかもアルツハイマーのような極めて定性的な臨床治験で、非常に結論を出すのが難しい。こういうような、現時点でも50点以下のようなところを、せめて70点、80点のレベルに持っていくというのが、非常に現実的な課題設定ではないかと思います。これはサイエンスの問題だと思っております。新しいサイエンスをどんどん導入する、繁栄させることによって、現在ある情報にも、単なる情報の見方とか整理の仕方が、より効率化していくのではないかと思います。

 最後ですが、今、カリフォルニア州では、3,000人のiPS細胞を集めております。今年度で750800人集まります。健常者が500人で、病気の方が2,500名、iPS細胞にはもちろん病態等の情報も全部入っています。こういうことでいち早く、しかも州レベルでこういうことが行われ始めていますので、我々も是非、サイエンスの一流の我が国で、こういうiPS細胞の技術を、臨床治験の精度アップ・加速化に使っていくべきだということを、ここで申し上げたいと思います。

 最後のページは、これは少し古いのですが、2011年なのですが、やはり日本が売上高上位150品目の薬の中で、一番左がアメリカですが、ブルーが一番目に上市しているもの。これで大体、アメリカという国が新薬を一番最初に導入する、大体50%、150品目のうちの半分は世界に先駆けて導入している。日本は一番右です。これは12つの理由ではなくて、いろいろな意味で我が国が抱えている、新しいものを先駆的に取り上げていくというところが少し欠けているのではないかということで、これは少し古いので、最近はもう少し改善されていると思いますが、現時点でこのデータしかないので、あえてこういう状況も含めて共有化させていただきたいということです。以上です。

○医薬食品局長 ありがとうございました。産業界の方々から御意見を頂きましたが、御意見や御質問等がありましたら御発言いただければと思います。よろしいでしょうか。

 業界のほうは、希少疾病、あるいは医療機器の特性を踏まえて、ナチュラルヒストリー的なものを取っていただいて比較対象群にしたいというような御意見が強いようですが、今後、ワーキングの中で更に具体的な議論を深めていければと考えております。

 それでは、クリニカル・イノベーション・ネットワークに限らず、幅広く臨床研究・治験の環境整備に関して御意見があれば承りたいと思いますので、御意見がある方はどうぞ御発言いただければと思います。オブザーバーの皆様方の中でも、御意見等ありましたら御発言いただければと思います。

○北海道大学病院病院長(オブザーバー)  趣旨は非常によく分かりました。私が発言している理由の1つは、いわゆる旧難病の希少疾患というと、AMEDからお金を頂いて、私もこの前、インタビューを受けてきたのですが、ある難病の主任研究者をやっておりまして、ICD10にある疾患名は恐らく2万ぐらいあるのです。病気は2万ぐらいあると思うのです。その中で日本では今、110くらい難病指定されていて、恐らくナショナルセンターの方が把握して、レジストリを作っている疾患は、実際は110くらいの中でそんなに多くはないと思うのです。ですので、ビックマップというか、もう少し、その他の、ナショセンや臨床研究中核でカバーできないような数の、実はしかもイノベーションが起こりそうな創薬のキーを持っていそうな研究班が難病班の中にいると思うのです。それが、このCINの中に含まれるような形式をとらないと、疾患の悉皆性、つまり、多分110300ぐらいに増やすというお話も伺っていますので、そういう、その他の希少疾患をどうやってこのネットワークがトレースしていくのかというところについて、少し何か案があればということで、お伺いしたいと思いました。

○医薬食品局長 米田理事長、どうぞ。

○医薬基盤・健康・栄養研究所理事長 今、先生がおっしゃいました難病ですが、希少疾患も含めて、ナショナルセンターが取扱いできないような疾患に関するレジストリや、データベースを作るというのは、我々医薬基盤・健康・栄養研究所の難病バンクの使命だと思っており、実際に、先ほど御説明しました3ページにも書いてあるのですが、難病疾患登録システムを立ち上げて、運用できるように、そのスタートを目指して、今、作業しているところです。

○日本医療研究開発機構理事長 今の御質問に対して1つだけ指摘させていただきます。希少難病を含む研究開発をどのように進めるかということに関して、私どもの所でInitiative on Rare and  Undiagnosed Diseases(IRUD)と呼ばれるものをスタートさせました。まず小児バージョンから成育医療センターの松原先生に代表者になっていただいてスタートしたところです。今後、大人版のIRUDというのも並行してスタートさせるつもりです。そのときに重要なことは、ナショナルセンターと大学病院だけではなくて、いわゆる開業医の先生方の中に、非常に難病の研究のレベルの高いことをやられて、貴重な症例をお持ちの方がたくさんいらっしゃいまして、そういったものを全国から拾うという仕組みです。

 もう1つは、データベースをグローバルに展開しなければいけないということがあり、日本はなぜか、40年の難病研究の歴史があるにもかかわらず、国際コンソーシアムに入らなかったという非常に不思議なことが起きていました。このため730日にIRDiRCというインターナショナルコンソーシアムにAMEDとして加盟しました。そのIRDiRCと、Global Alliance for Genomics and Health(GA4GH)という、比較的基礎の方も含んだゲノムの研究者といったところが連携して、グローバルなデータベースの構築というのを、今、検討がちょうど始まったところだと思います。そういったノウハウを国内の研究者あるいは臨床家の先生が自由に使えるような環境をAMEDとしては整えていく必要があるだろうと考えております。

○事務局 事務局の参事官をしております磯部と申します。今、難病のお話が少しありました。実は今回のCINを考えるに当たり、先ほど局長からお話がありましたように、ナショナルセンターで疾患登録システムを構築していくということで、これを基本にしていくということですが、いろいろな分野、例えば学会が構築をしているレジストリなどがあります。必ずしも全部ナショナルセンターと基盤研で、全ての分野がカバーできるのかと言ったら、なかなか厳しい部分もあろうかと思います。実際にこのCINの運営に関しては、例えば、ある分野では、この学会のこのシステムを応援していくほうが、当面はいいのではないかというようなことも出てくると思います。そういったことについても、考えていかなければいけないというのは、今後の課題だと思いますし、先ほどの医療機器の登録システムがあります。これはかなり歴史がありまして、これについては関係の学会が協力して、苦労して、データベースを作ってきているところもありますので、こういった努力も応援する必要が出てくると思います。

 ナショナルセンターを中心に置いていますが、そのほかのなかなかカバーしきれない分野について、例えば学会などにあるレジストリをどういうふうに扱って応援していくかなどということについても、これから考えていかなければいけない課題だと思っております。

○慶應義塾大学病院病院長(オブザーバー)  私も免疫難病の分野で関わっていますが、いわゆる難病の各厚生労働省の班で、このクリニカル・ディベロップメントのデータベースを作るのは難しいのではないでしょうか。個人調査票が1年に1回しか出てきません。そのため1年間の治療については、一時点のみのかなりラフなデータしか集まってきません。ですから、堀田先生が最初に言われたように、コホート研究をやるのか、臨床開発の環境整備をするのかということによって、作るものが全く違う。臨床開発を進める協議会であるという目的を明確にしておく必要があると思います。

○国立がん研究センター理事長 今の竹内先生と私も認識は同じだと思うのですが、要するに、例えばこれを治験活性化のために使うということであれば、少なくとも治験の組入れ基準が明確になるようなデータでなければ意味がないわけです。

○慶應義塾大学病院病院長(オブザーバー)  その観点で残念ながらSS-MIX2のみを使用 するのは無理です。

○国立がん研究センター理事長 だから、そのことを押さえておかないと雑多なものが出てきて、結局使えませんよという話になるような気がしますので、そこが多分、ワーキングの一番のポイントになると思います。

○医薬食品局長 貴重な御意見、ありがとうございました。ほかに御発言等ありますか。

○東北大学病院病院長 ちょっと別件になるのですが、東北大学病院の病院長をしております八重樫です。今回、臨床研究中核病院に採択されまして、今回のこういう事業が始まるということで、中核病院としては、是非参加して御協力したいとは思っております。

 ただ、本日の議論を聞いておりまして少し懸念が、本日ここに参加されている大学病院の皆さんが、文科省の橋渡し加速ネットワークプログラムの拠点でもあるのです。そこの中では、ネットワーク構築事業という、今回の資料3にあるのと非常に似た事業が、もう数年前から始まっていまして、その事務局が東北大学にあります。そこで幾つかの、例えばALSなどの疾患のレジストリが実際にこの大学間では始まっているのです。

 ですから、こういう事業が始まるときに、二重登録のようなというか、2つに全く別なことをやるようなことはしないで、是非一本化した、そこに全部吸い込まれて全然構わないと思いますので、そういうことを是非考えていただきたいと思います。

○大阪大学医学部附属病院病院長 大阪大学の金倉と申します。私どもは臨床研究中核病院に認定していただいて大変光栄なことと思っておりますし、身が引き締まる思いをしております。今後、臨床研究で新たな創薬あるいは医療機器の開発に貢献したいと思っておりますが、このクリニカル・イノベーション・ネットワークにどのように関与していくのか、あるいは、中核病院がどのように関係していくのか、もう一つどういうデータが必要なのかというのが明確に分かりにくいところがありますので、先ほど言ったような、治験の患者を集めるということであれば、十分、ある程度の疾患の人たちをプレパレーションとしてデータを出すということは可能だと思いますし、リージョナルに、例えば我々も大阪ですので、近畿圏、大阪圏の患者数をフォローすることは可能だと思いますが、経時的に追うというのは、どちらかといえば企業がやっていただくしか難しいのではないかと思ったりもしますし、もう少しネットワークをどのような目的で、どういうふうにするかということを、今後、協議をしていただいて、シンプルなスキームにしていただければと思っております。よろしくお願いいたします。

○医薬食品局長 ただいまの御意見等について、何かほかに御意見等がありますか。

○事務局 事務局から1点よろしいでしょうか。

○医薬食品局長 どうぞ。

○事務局 今の先生の御指摘の関係で、資料3ですが、ナショセンにおける疾患登録の話と、臨床研究中核病院との関係性という話だと思います。資料35ページですが、基本的にレジストリ構築そのものについては、各ナショナルセンターが現在取り組んでいるこのレジストリを中心に考えていきたいと考えております。

 その一方で、各臨床研究中核病院ほか、大学におかれましても、疾患登録といったようなことが行われている実態もあろうかと思います。これらが、可能な限り、協力をするといったような考え方もあろうかと思いますし、更には、実際に治験を実施する場として、臨床研究中核病院の機能が非常に重要になってくるというようなことを考えております。左側のほうに矢印もありますが、国内ネットワーク病院との関係、ARO機能ということもあろうかと思いますので、そういった点でも、是非、臨床研究中核病院の貢献をお願いしたいと、私どもとしては考えております。

○名古屋大学医学部附属病院病院長(オブザーバー)  名古屋大学病院病院長の石黒でございます。本日はオブザーバーとして出席しておりますが、先ほどの治験・臨床研究のためにこれを使うという話と、もう1つ、データベースといった考え方もあるかと思います。データベースの議論は、やはりもうすこし進めて考えていただきたいと思います。その理由として、今後、希少難病あるいは小児の先天性疾患といった希少疾患の治療開発になってくると、プラセボ対照の二重盲検試験を長期、例えば1年あるいは1年半といった長期の試験を組むことが倫理的に可能かということです。その場合、ヒストリカルコントロールといったものを置いて、効果を検討するといった見方もあるかと思います。こういった目的にも耐える、疾患の確固たるデータベースを作る力があるのは多分ここに集まっているナショナルセンターが中心になった場合のみと思います。それに向けて、ここの場所で議論していただかないといけないと私は思います。

 ただ、全ての疾患においてそれを作ることは困難です。やはり、かなり対象疾患を絞って、ちゃんとしたデータベースを構築する。その議論は是非ともしていただきたいと思います。

○慶應義塾大学病院病院長(オブザーバー) そのときにも、単に、いわゆる患者の登録だけでは駄目で、全ての臨床情報をセットで、経時的に追わないと、これはきちんとしたコントロールにはならないので。

○名古屋大学医学部附属病院病院長(オブザーバー) おっしゃるとおりです。

○慶應義塾大学病院病院長(オブザーバー) 単純なレジストリでは駄目だと思います。

○名古屋大学医学部附属病院病院長(オブザーバー) 単なる疾患レジストリでは駄目です。大切なことは、クリニカルデータがフルセットでそろっていて、できれば画像なども全部そろっているような、しっかりとしたデータベースができれば、これは本当に素晴らしいと思いますし、ここでしかできないと思います

○医薬品医療機器総合機構理事長 ちょっと薬事の立場からコメントをさせていただきます。来年の10月からCDISCが標準化されます。つまり、電子化情報といっても、しっかりとした国際的な協調の中で作られた電子化で、これは企業にとっては義務化されてまいります。これによって、全データは共通のものとして集められて、我々にとっては、それを使ってモデリング・アンド・シミュレーションなどの様々な応用に使う予定でおります。

 加えて、CFASTというのがあります。これは皆さん方は疾患領域別でいろいろお考えのところがあると思いますが、これについては、例えば糖尿病や喘息や痛みなどの様々な疾患において、同じように共通のデータの標準を作っていかなければならない流れがあります。これは今、アメリカとともに日本が始めているところで、これは好むと好まざるとにかかわらず、治験だけではなくて、臨床研究にも応用されてくるだろうと思うのです。したがって、先ほど皆さん方が御議論いただいたようなレジストリデータベースについても、多少そういうことを考慮した感覚で、この会議は持っていくべきではないかと思うところです。またこれから、我々は皆さん方にお呼び掛けする予定でおりますが、間もなくお願いすることになるだろうと思います。どうぞよろしくお願いします。

○国立病院機構名古屋医療センター院長(オブザーバー) 今の議論の続きなのですが、治験コンソーシアムとしてのファンクションを高めていくという観点になると、今言ったような、いろいろな情報が集約化されてくることが必要だと思うのです。そうすると、一方では医療機関にかかった患者さんの情報が、丸ごとあるセンターに集中してしまうということになると、これは倫理的なマターや、いろいろな問題や社会的な問題がまた出てくると思います。

 聞きますと、これはワーキングのほうの別組織として横串の検討会が厚労省を中心にされるということですので、是非こういう倫理的なマターや、いろいろ産学の障害的な問題を集中的にやっていただく必要があるのではないかと思いましたので、ちょっとコメントさせていただきました。よろしくお願いします。

○日本医療研究開発機構理事長 ファンディングエージェンシーの立場で1つだけ指摘させていただきたいと思います。臨床研究中核病院等の基盤整備を行って、恐らくそれを補助金という形でAMEDで運営・管理していくことになると思うのですが、現場の病院の先生方は、恐らくこの4月以降、リアルタイムに人件費のマネジメントなどをやられていて、そして、アカデミックイヤーの途中で、非常に貴重な補助金を配分するような形になると思います。その際に、この補助金を契約に基づいて、しっかりと中身を詰めて、かつ、それを執行するときに、もう年度のかなり後半期に予算が配分されるという問題がります。

AMEDとしては、その契約のスピードアップは当然、責務と考えておりますが、厚労省におかれましても、是非、予算の効果的な運用、AMEDのホームページにもいろいろ出しておりますが、更に踏み込んだ予算の弾力的運用のルール作りをしないと、現場の病院の先生方は大変な御苦労をされているということですので、是非その辺りについては深い御理解を頂きたいと思います。よろしくお願いします。

○医薬食品局長 ありがとうございました。ほかに御意見はありますか。ほかにありませんようでしたら、本日頂いた御意見を踏まえまして、更に今後、ワーキングで具体的なシステム構築についての議論を深めてまいりたいと思います。

 本日伺った意見の中で、悉皆的な登録というよりは臨床開発に力点を置くのですが、業界のほうからも、先ほど石黒先生からもありましたが、一定の範囲でデータなども集めていかないと、比較対象群などという話になると一定の臨床データを集めていく必要があるということですので、更にワーキングのほうで具体的な登録データをどうしたらいいかということについても議論を深めていきたい。その中で、各ナショナルセンターの疾患登録システムにまたがる問題が出てくれば、またこの場で御議論いただくようなことについても検討していきたいと考えております。

 それでは、最後に事務局から連絡事項をお願いします。

○事務局 今後の予定ですが、各ナショナルセンターのワーキンググループにおいて御議論を進めていただくということになりますので、次回、この会議の開催については、各領域ごとの登録システムの概要がある程度整理できた段階で、また開催したいと考えております。その際の日時、場所等については、改めて事務局よりお知らせしたいと考えております。

 また、本日の議事録については、作成次第、構成員、オブザーバーの先生方に御確認いただき、その後、公開させていただきますので、御協力のほど、よろしくお願いいたします。以上をもちまして、本日の会議を終了いたします。ありがとうございました。


(了)

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