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2015年7月30日 児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会(第11回)
雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室
○日時
平成27年7月30日(木)10:00~12:00
○場所
中央合同庁舎4号館1208特別会議室
○出席者
委員
松原委員 | 秋山委員 | 泉谷委員 | 磯谷委員 |
岩佐委員 | 岡井委員 | 奥山委員 | 加賀美委員 |
草間委員 | 作本委員 | 佐藤委員 | 塩田委員 |
菅野委員 | 辰田委員 | 中板委員 | 西澤委員 |
平井委員 | 平田委員 | 藤川委員 | 藤林委員 |
藤平委員 | 卜蔵委員 | 星委員 | 松本委員 |
山田委員 |
オブザーバー
法務省 | 検察庁 |
厚生労働省
木下大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭、少子化対策担当) | 古川総務課長 |
大隈家庭福祉課長 | 田村虐待防止対策室長 |
大津総務課長補佐 | 小松虐待防止対策室長補佐 |
芦田虐待防止対策室長補佐 |
○議題
(1)新任委員の紹介
(2)検討事項について
(3)その他
○議事
○小松虐待防止対策室長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第11回「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。
委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。
なお、本日、加藤委員、木ノ内委員、笹井委員、浜田委員、武藤委員からは御欠席の御連絡をいただいております。また、磯谷委員、草間委員からはおくれるという御連絡をいただいております。
委員会の開催に際し、木下大臣官房審議官より御挨拶申し上げます。
○木下大臣官房審議官 皆様、おはようございます。審議官の木下でございます。
第11回の「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」に当たりまして、本日はお忙しい中、また暑い中をお集まりいただきまして、ありがとうございます。
本日、新しいメンバーの方がおられますけれども、この委員会は児童虐待防止対策のあり方を検討するために昨年9月に設置されまして、まず、予防あるいは初期対応について御検討いただきまして、昨年11月の末に中間まとめ、さらには本年3月から新たに社会的養護などの分野から9名の有識者の方々に御参加いただきまして自立支援を中心に検討の上、5月に中間まとめをいただきました。改めて皆様の御努力に感謝申し上げたいと思います。
このような中、今年の7月1日から、児童虐待に関する全国の共通ダイヤル189がスタートした際に、総理が児童相談所に視察に行かれまして、その後に児童虐待について年末までを目途に政策パッケージを取りまとめる。そして、夏を目途に方向性を決めるようにという御指示がございました。そういう中で、皆様には予防、初期対応から自立に向けた取り組みにつきまして、これまでの議論では明確にされていない項目ですとか、あるいはこれまで言及されている項目であっても、さらに補足、強調する必要がある点などにつきまして、児童虐待防止対策の方向性の整理のための闊達な御意見をお願いできればと考えております。
本日御議論いただき、また再来週10日にもう一度委員会を開催し、概ね中間的な取りまとめ、方向性のまとめをいただきまして、その後また秋から具体的な御議論という形になろうかと思いますので、どうぞよろしくお願いいたします。ありがとうございます。
○小松虐待防止対策室長補佐 カメラの撮影は一旦ここまでとさせていただきます。
初めに、委員会の運営に当たり、委員の皆様へお願いがございます。視覚・聴覚障害をお持ちの方などへの情報保障の観点から、御発言等をされる場合には、挙手をしていただきます。挙手をした委員の方に対し、委員長から指名をさせていただきます。指名を受けた委員の方は、お名前を名乗ってから御発言願います。
続きまして、本日の配付資料の確認をさせていただきます。
配付資料は、座席表、議事次第をおめくりいただきまして、資料1、この委員会の設置要綱。
資料2、昨年26年11月28日の委員会取りまとめ。
資料3、本年5月29日の委員会の取りまとめ。
資料4以降は、本日委員の方々から御提供いただきました資料でございます。
資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。
なお、本専門委員会は公開で開催し、資料、議事録も公開することを原則とさせていただいております。
それでは、以降の進行は、松原委員長にお願いいたします。
○松原委員長 おはようございます。よろしくお願いいたします。
時間の制約もございますので、早速、議事のほうに入ってまいりたいと思います。
先ほど木下審議官から、この専門委員会で議論してきた経緯の御説明がありました。2つの中間取りまとめをこの委員会ではしてきておりますが、これを1本の報告書にまとめていく作業の段階に入っていると認識しております。ただし、この児童虐待の問題というのは、多方面から予防から自立支援まで考えていかなければいけないということで、より幅広い分野からの御議論もいただきたいと考えまして、9名の新たな有識者に御参加いただいております。
そこで、まず新任の委員の方々につきまして、事務局より御紹介をお願いしたいと思います。
○小松虐待防止対策室長補佐 それでは、改めて新任の委員の皆様の御紹介をさせていただきます。
資料1の2枚目に委員の名簿が添付されておりますので、名簿の順に紹介させていただきます。
いぶき法律事務所弁護士、岩佐嘉彦委員です。
国立成育医療研究センター副院長、こころの診療部長、奥山眞紀子委員です。
社会福祉法人山梨立正光生園理事長、山梨県立大学人間福祉学部特任教授、加賀美尤祥委員です。
社会福祉法人救世軍世光寮副施設長、塩田規子委員です。
山梨県立大学人間福祉学部教授、西澤哲委員です。
福岡市こども総合相談センター所長、藤林武史委員でございます。
全国自立援助ホーム協議会会長、星俊彦委員でございます。
北海道大学大学院教育学研究院教授、松本伊智朗委員でございます。
認定NPO法人子ども虐待ネグレクト防止ネットワーク理事長、山田不二子委員でございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
先ほど申し上げましたように今日の議題は予防、初期対応から自立に向けた取り組みということで、今まで2つの提言、資料にも資料2、3で提供されているものがございますが、これを踏まえて御議論いただきたいと思います。
非常に大きなテーマですから、それぞれの方に20分でも30分でも御発言いただきたいところなのですが、せっかく参加をしていただきましたので皆さんから御意見をいただくということも大切かと思います。少し私のほうで時間を切らせていただいて、時間に制約を設けてしまいますが、よろしくお願いしたいと思います。
まず、新たな観点からの御意見をいただくということで、今回新たに参加をされました委員の方々から5分以内で御発言をお願いしたいと思います。
お見えになっていて、かつ、「あいうえお」順ということで御発言いただきたいと思いますので、まず岩佐委員からお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○岩佐委員 岩佐です。
少しお時間を頂戴します。ペーパーがなくて済みませんが、簡潔に私の現時点での意見を述べたいと思います。
この専門委員会の関係では、資料1の検討事項で、一時保護の実施とか、親子関係の調整の取り組みについてということが検討事項で挙がっておりますが、私の意見では、このようなことについて検討する上では、司法とのかかわりを考えるということが不可欠で、かつ、こういう点について断片的に司法とのかかわりを検討するということではなかなか状況が改善しない、もしくは問題点がより悪化する危険性があるということで、本来は司法の包括的な関与とか、そのあるべき制度みたいなものを考えるべきで、またその大前提としては、児童相談所の専門性が確保されていないといけないということであります。
できるだけ簡単に述べたいと思います。
1つは、虐待の関係で、特に児童相談所、家庭裁判所の役割分担を含めた、大きくどういうような対応をしていくのかということについての将来像が見えない中での議論で、恐らく現場も含めて、そのことについての不安が非常に大きくて、アドホックな感じで改正していっているということについては、かなり限界に来ているのではないかと私自身は思っています。
司法の関与に関して、私は弁護士ですのでそこを中心に述べますが、司法の関与に関しては、特に保護者と対立するような虐待ケースについては、児童相談所がいろいろ対応するというのは今の人的資源からすると当然と思いますけれども、現在の司法のかかわり方というのは非常に断片的で、本来は包括的にそこにかかわっていくということが望ましいと思っています。
一時保護に始まって、いろいろな指導や調査というのは、親権を事実上制限しているにもかかわらず現在行政だけで対応しているというのは法律上問題であり、また、いろいろな一時保護とか、つきまとい禁止とか、各種行政処分をしているのですけれども、非常にばらばらに行政処分が展開していて、親子にとっても、児童相談所にとっても、非常に使いにくいものになっている。この司法と行政の役割分担については、いろいろな批判もありますが、例えば裁判所が今やっている親権停止制度とか、成年後見制度とか、いろいろモデルになるものはあるのであって、決して司法の包括的な関与が難しいということにはならないのだろうと思っています。
ただ、この司法の関与のさらなる具体的なあり方というのはいろいろな検討も必要で、非行との関係をどうするかとか、児童相談所の都市部と非都市部での対応の違いとか、かなりいろいろな議論を要することにはなると思うので、一定の年限の中で海外の状況なども踏まえて積極的に検討していくことが要るかなと思っています。
一方で、この司法の関与をそういうようなモデルみたいなものを考えていくとする上での大前提としては、児童相談所の児童福祉司さんの専門性の確保が必須であるということです。これは研修でもう少し強化したほうがいいとか、そういうレベルの問題ではなくて、保健師さんとか、学校の先生とか、お医者さんとか、皆さんそうですけれども、要するに資格に結びついて、養成制度と結びついて専門的なものが確立されているのは大前提で、ここがなくて司法だけ入ると、結局ケースワーク機能が後退していって、司法に飲まれていくことになりますので、大きな方向性としては、単に研修しましょうとか、レベルを上げましょうということではなくて、抜本的なことを考えていただきたいと思っています。
こういう形で仮に一定の枠組みを考えていくことになると、やはり予防から最終的に自立に向けて、子供の安全確保と家族の支援という1つの理念が予防の段階であっても、たとえ司法が入っていろいろな介入的な対応をする場合であっても、その理念がずっと貫かれているということが非常に重要で、そこもなくなってしまうと、司法が入ってくるとかなりいろいろな対応が変わってきますので、その辺も大前提になるかな。
最後に、現行でも、例えば一時保護がどこまでできるのかという法律解釈の問題とか、28条の条文をどう解釈するかとか、基本的な問題とか、児童相談所が行う調査とか支援をどういう手順でするのかとか、そういうのが余り安定していないと私には見えます。これが全国レベルで安定しないと、司法に関与していると言われても司法は関与しようがありませんので、これは今すぐにでもいろいろなものを、枠組みを安定化させていくということも必須ではないかと思っております。
私は司法の関与の観点から申し述べましたけれども、この児童相談所の専門性を確立するというのはそれだけあらゆる分野に検討するところですので、ぜひそこも含めて御検討をお願いしたいなと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、奥山委員、お願いします。
○奥山委員 資料5をごらんいただきたいと思います。私のほうは具体的にいろいろ考えてまいりました。
まず総論ですけれども、児童福祉法の理念というのが割合ぼやっと書かれているので、実際に支援が行われるときに、生命にばかり目が行き、本当にこの子の権利が全て守られているかという議論にならないという問題があります。従って子供の権利に関してしっかりと書き込むべきではないかと思っております。
各論に入らせていただいて、児童相談所福祉司あるいは地域福祉の専門性の向上からお話しします。今、岩佐先生にかなりおっしゃっていただいたのですけれども、子ども家庭福祉士の国家資格が第一に必要です。ただ、それがなかなか難しく時間がかかるとすると、それを待っている余裕はありません。つまり、待ったなしの状況だと思いますので、国家資格を持った方たちの認定という形でもいいので、早く専門性の向上ということに取りかかるべきだと思っております。時間がないので詳細は資料5をご覧ください。
児童相談所の改革・機能分化ですけれども、189がスタートしたのに、その電話をしっかりと受けて、短時間で本当に何が問題なのかの情報を得て、緊急性があるのかないのかを判断し、それに対応するというシステムができておりません。しかも、189の電話が管轄の児童相談所につなげようとしているので、通告者が話し始めるまでに50秒近くもかかるということになっています。このままでは189が機能していないということになってしまうと思うのです。189が機能して、本当に子供を助けるためには、やはりトリアージを行うセンターが必要だろうと思います。電話を受けてきちんと緊急性を判断し、それを必要な場所に繋ぐということができるトリアージセンターです。どのようなカテゴリーで緊急性を判断し、どこに繋いたらいいかは資料5に書かせていただきました。警察にも協力をお願いすべきです。
そして、これまでの委員会の「取りまとめ」にも書かれていますけれども、児童相談所の機能が、介入と支援が一緒にあるということでいろいろな問題が起きています。私もそれをかなり言いわけに使われているなと思うことがよくあります。ですので、現在の児童相談所を危機介入するセンターと支援を構造化するセンターに分けて、親から見ても2つ違ったところがやっているのだというように見えたほうがいいだろうと思います。それに先ほどの裁判所の関与に関しましては、岩佐先生のおっしゃったように関与すべきだと思いますけれども、それがなかなかすぐにいかないということであれば、中間的なケアをもっと誘導すべきです。現在は分離するか、保育園に行かせるかだけですが、中間的なケアをきちんとすることが必要です。そのためには、在宅支援で現在行われている福祉司指導は有効に働いておりませんので、通所措置という形で、どこか中間的なケアができるところに通所させる措置ができるというような形に改定していくべきではないかと思っております。
それらの3つのセンターをバックアップするために、重症な子供たちの一時的なケアをする、加えて性虐待に対応するようなバックアップセンターをつくるべきで、そこは多職種で行うということを大原則にしていくべきだろうと思います。
支援の実動は市町村、要対協、民間というところがやることになると思いますけれども、支援の実動部隊の強化として、市区町村に総合的な子供家庭支援センターをつくって、できればワンストップでいろいろな子供家庭の問題に対応できるということが必要ではないかと思います。
もう一つ、母子保健の活用というのは非常に重要ですけれども、現在、母子保健法に子ども虐待予防や防止に対応する、もしくは特定妊婦に対応するということが一切書かれておりません。母子保健法の中にそれを位置づけないと、母子保健の活用がうまくいかないことが起きています。現場で一生懸命やっている保健師さんを上がとめるということすら起きておりますので、法律上の位置づけをきちんとやっていただきたいと思います。
そして、先ほども申しましたけれども、民間の中間ケアの活動を誘導する。そのための通所措置というのも必要だろうと思います。
1つ前のページに戻っていただいて、もう一つ非常に重要な提案をさせて頂きます。児童相談所の決定には、親は不服申し立てもし、そして、裁判も最近起こすようになってきています。一時保護に対する裁判も起こされています。一方で、子供は裁判を起こしたり不服申し立てをすることができません。その子供の代弁をするような機関、つまり子供の権利を守る第三者機関、オンブズマン的なものが必要だろうと思いますし、そこが児童相談所の第三者評価をするということも必要だろうと思います。そういう制度も入れていくことが必要だと思います。
最後ですけれども、社会的養護に関しては、本当はいろいろ申し上げたいことがあるのですけれども、一部だけ挙げさせていただきます。第一に、里親を広めていこうとしているのになかなかうまくいっていない。それに対して、専従里親を創設すべき時期に来ているのではないかと思いますのと、里親支援を児相が抱え込んでいる点が問題だと思います。実はうちの病院でも里親支援のプログラムを開発してやろうとしたら児童相談所がとめると言ったことが出てきているわけで、できるだけ民間の力を活用して里親支援ができるようにしていってほしいと思います。
最後に書いたのですけれども、私たちが虐待の世代間連鎖をなくすための支援に関してです。妊娠期から成人期になって、また妊娠をするというライフサイクルの中で、成人期への支援というのが完璧に欠落しております。ここの部分を一体どういうように構築していくのかということを考えていかなければならないということが1つ。
もう一つは、私たちがどの段階のケアにおいても常にこのライフサイクルを意識してケアをしていくことが必要だろうと思うのです。社会的養護の出身者が子供の虐待死事件を起こしています。
○松原委員長 奥山先生、ぼちぼち。
○奥山委員 はい。
最後、一言だけ。それ(社会的養護出身者による虐待死事件)に対して、どんな養育をしたのかという検証すらされていません。やはり世代間連鎖を止めること、つまりライフサイクルを見据えた支援を意識した養育というのが必要だろうと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。非常に心苦しくお声をかけているのですけれども、お許しいただきたいと思います。
加賀美委員、お願いいたします。
○加賀美委員 ありがとうございます。
私、今、思い出して、これは原点回帰みたいな発言をするわけでございますけれども、そもそもこの委員会がスタートした時点で申し上げたことと余り変わっていないなと改めて思っております。
そもそも論ということになります。私の資料、資料6のところをご覧いただきながらでございますが、これは逐条読みますと大分時間がかかってしまいますので、またごらんいただければと思います。
そもそも児童相談所の問題についてということでスタートしておるわけでございますが、家庭内子ども虐待が近代化の所産というようなとらえ方で、もう既に理解をされている時代だと思います。だとするならば、子ども虐待は社会構造の変容に伴う家族問題であるというくくりの中で、改めてその対応はソーシャルワークの観点に立った構造としての新たな子ども家庭ソーシャルワークシステムをつくっていく必要があるということが前提だと申し上げておきたいと思います。
虐待問題に関して、児童相談所は親権と子権がバッティングするという状況の中で、分離保護に終始しているわけですけれども、この構造は戦後の戦災孤児保護の時代の収容保護パラダイム(と私はあえて申し上げます)の構造とほとんど変えられないままにそれをずっと使い続けてきています。それがこの親のいる子どもへの対応の時代になっても同じ状況が続いているというところに根源的な課題があるのかと認識しております。
7万3,765、7万3,802人ですか。この数字そのものが氷山の一角であるということは大方の理解であるところでありますけれども、これを欧米、特に英語圏の国々のデータと比較すると、それらの国が人口比1%ほどという実態から考えると、我が国のそれは恐らく現状で実は20倍ほどあって、それが顕在化をしていないというような推量もできるわけでございます。しかも、先ほど申し上げた収容保護パラダイムの中で分離保護される子どもたちは、おおむね3%から4%、残りは元の家に戻されるという形で翌年また通告の対象になっていく現実がずっと続いているということをまず我々は真摯に受けとめなければいけないだろうと考えます。
そういう中で、児童相談所はその分離保護という枠組みの中で、親との対立構造の中で苦戦をして若い職員ばかりになっているような実態があるわけでございますが、そういう観点から言っても、先ほど来、お二人からもう既にお話があったような職員の専門性、専門資格化、あるいはこれはまたほかの方もおっしゃるかもしれませんけれども、既にこの委員会でもたくさん議論されている単なる専門性の問題ではなくて、専門資格化して業務独占的な資格にしなければもうだめではないのか。こんなようなことも考えております。
いずれにしましても、この新たな子ども家庭ソーシャルワークシステムというような言い方を申し上げましたけれども、そのソーシャルワークシステムを形成するテーマは、虐待問題を養育問題と理解するならば、保護から養育へという流れになるだろうと考えます。保護から養育へという新しいソーシャルワークシステムをどうやって形成するか。それについては、先ほど奥山先生からも提言があったシステムの問題がございました。私は、子どもの社会的養護の保護先という立場で児童養護施設に長くかかわってきた立場から申し上げると、先ほど申し上げたように、ここに資料もつけてございますけれども、欧米各国と比較して、我が国の保護児童数というのは、実態とすれば3万~4万という数字でございます。この数字は、例えばドイツと比べると4分の1程度ということになれば、社会的保護を必要とする子どもの枠組みも拡大しなければならないだろう。しかし、それ以上に、この虐待の拡大の流れの中で、その子どもたちの一番問題になるのは、保護でき切れない子どもたちの問題にどうアプローチするか。そのことが実は最も大事だろうと考えます。
したがって、新たな家庭福祉システムの中には、在宅支援という枠組みの中の取り組みが最も大事になってくるのでしょう。その制度改革全体に対しての基本理念として、私はここに幾つかの歴史的な流れをふまえての現状から、最後に基本理念として「全ての児童は、適切な養育を受ける権利を有するとともに、その自立を保障される」とくくってみました。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、続きまして、塩田委員、お願いいたします。
○塩田委員 私は社会的養護の子どもたちのよりよい自立支援のためにという観点で少し。
現在、児童養護施設の子どもたちの平均在籍期間は約5年弱です。我々は、その5年間で子どもたちの課題を修正して親元に帰す、または里親宅に委託に移行する。社会自立に導くなどの支援を行うわけですが、その中で課題が解決し切れないまま支援を終結しなければならないことを問題視しております。
要因としては、1つは児童相談所のアセスメントが不十分、十分ではないということで、家族の問題が十分把握できない。そこで起きてきた子どもにかかわる発達の積み残し状況の欠落を明確にされないことがあり、当然そのことは自立支援計画の制度の担保ができない状況を生じさせます。
結果として、児童養護施設における支援の段階で問題解決に焦点が当てられないまま年数だけが過ぎていきます。そのために十分な自立性とか社会性が養われないまま社会に出していくことにもなります。もしくは、問題が解決していない家庭に戻り再入所を繰り返すことも少なくありません。一方、施設側もそのようなことに無頓着である施設もあるので、ともに児童相談所ともどもアセスメント機能をきちんと向上させていくような取り組みが必要であるかと思います。
2つ目として、現在の児童福祉法のシステム上、子どもの措置は18歳までです。措置延長の積極的活用をしても20歳までしか施設に在籍できない状況です。そうした子どもたちは、ほとんどの子どもたちが愛着の形成に課題を抱えている子どもたちです。虐待環境から分離されて、やっと施設や里親宅に行って、ようやく安全を保障され、養育者に依存をするところから子育ちが始まるわけですが、スタートが遅れている分、一般家庭の子どもたちよりも情緒的、自律的には物理的に時間がかかるしものと思っております。また、その後、せっかく大学に進学できたとしても、学費や生活費が潤滑でないために退学する子どもたちが後を絶ちません。ですので、せめて大学卒業までの措置を保障することや、就職して仕事が安定するまでの猶予期間を措置の中で加味するシステムに変更する必要性を強く感じています。
また、現在の児童福祉法では、高校3年生、既に18歳の誕生日を迎えている子供たちは措置ができない縛りがあります。昨今の入所状況を鑑みると、高3での入所依頼は決して少なくないです。その点の改善を急がなくてはならないと考えています。
となると、自立援助ホームとのすみ分け問題が発生するかもしれませんが、子どもにとって選択肢がふえることは有意義であると思っております。また、このように子どもの個別性に沿って支援を日常からするためには、職業指導員などと支援の目的を特化するのではなく、柔軟に子どもの課題に対応できるために職員の増配置を必要としているのが児童養護施設の現場でございます。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、西澤委員、お願いいたします。
○西澤委員 どうも西澤でございます。
いろいろ話をしなければいけないと思いつつ、私も加賀美先生の流れではないですが、そもそも論をしっかりやっておこうと思っています。
お手元の資料11にありますので御参照いただいたらと思うのですが、何でそもそも論をと思ったかというと、危機感を持っていないといけないなと思ったのです。私がこの業界といいますか、子供の虐待の問題にかかわって35年、現場でいろいろな虐待のケースをずっと見てきましたし、一方で、大学教員として研究者の端くれに身を置いて25年、こういった子供福祉の展開というのをまとめてきたわけですけれども、全体像から見て、私たちは間違った道を歩んできているというのを本当に強く思います。それを何とか早く気づいて、正しい道に戻らないといけないのではないかと思っているのです。
私が1980年代にこの仕事をするようになったときに、児童相談所は基本的に今の児童福祉法にもありますけれども、親と手を携えて子供の支援をやっていくのだという流れで仕事をしていて、当時のケースというのは今日で言う不登校です。登校拒否とか、あるいは家庭内暴力、子供が親に暴力を振るうというような事態で、親も一緒に困って児童相談所と手を携えてそのケース、子供に当たっていたという時代があって、これは基本的にずっと長らくのコンテクストだったように思います。それが1980年代の半ばぐらいから変わってきたのが、親と手を携えることができないケースというので、言うまでもなく、子供虐待、ネグレクトのケースなわけですが、そういうものがあらわれてきました。でも、当時は極めてまれな事例として相談業務の中に一部そういうような虐待のものが入っているという形だったのが、それが言うまでもなく年々増加して、今や児童相談所の中心業務になっているのだろうと思います。
ただ、残念ながら、児童相談所へあくまでも相談でやっていくのだという姿勢が変わらないものだから、介入をするということに関して極めて後手に回ってしまって子供が死亡するということがずっと続いているのだと思うのです。それに対して、我々、何をやってきたかというと、介入の権限を強化していくという方向で、児童相談所にもっと介入、子供の保護をしろというのでいろいろな法改正を重ねてきて、制度をそういう形へ持ってきたのだけれども、これは明らかに現場の感覚と乖離しているのだろうと思います。そういう意味では、そういった戦後の加賀美先生が言うような流れでできてきた児童相談所、あるいはそれを中心とした子供家庭福祉の全体像を今ここで抜本的にスクラップ・アンド・ビルドしていかなければいけない。
つまり、多分今の児童相談所は支援を行っていくという形をとったほうがむしろなじむのだと思うのです。そうすると、やはり子供を保護して、子供の権利を守るという機関を新たに創設していかなければいけないというところに、早く正道に戻っていかないと。 それとあわせて見ていくと、一時保護所の問題が全然議論されてこなかった。御存じだと思いますけれども、一時保護所は児童相談所よりも先にできているわけです。1945年に浮浪児収容所としてスタートして、それ以降、機能は全然見直されてないわけで、考えてみるとその当時の浮浪児たち、戦災孤児を集団管理して、身辺自立を覚えさせて集団生活になじませて、何のためかというと、その後の養護施設での集団生活になじむように整えるというのが当時の浮浪児収容所、戦災孤児収容所の大きな機能だったわけです。それが一度も検討されないままに今日でもそういうことをやっている。藤林先生もいらっしゃいますし、全てがとは言いませんが、そういうような枠組みで仕事をしている一時保護所はいまだに結構多いのです。そういったところをもう一回、これもスクラップ・アンド・ビルドしてちゃんと個別対応のアセスメントセンターを作る。もちろん、緊急保護等を行わなければいけないし、そことの司法関与も考えなければいけないのだけれども、子供のアセスメントをちゃんとできるようなそういう機関を、シェルターを伴ったそういう機関をちゃんとつくっていかなければいけないと思っています。
もう一つは、先生方、いろいろな施策を提案されて、新しいシステムを提案されますけれども、やはり私は非常に臆病なので、そういったものに関してはまずパイロットスタディーでちゃんと実験していかなければいけないのだろうと思います。例えば機関を分けるなり、アセスメントセンターをつくるなり、支援プランを出して、支援ゴールを定めて支援を行っていくなりについて、どこかの自治体であるとか民間団体と国と都道府県もそうですが、協働してモデル事業としてまずはやって、ソフトウエアというのをきちっと固めていく必要があるだろうと思っています。どうもありがとうございました。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、藤林委員、お願いします。
○藤林委員 では、もう早速、本題に入りたいと思います。
私は福岡市の所長に就任しまして13年目になるわけですけれども、この間の法改正を経る中で虐待対応の推移を見てまいりました。その推移を踏まえながら幾つか提案させていただきたいと思います。
私が就任しました平成15年当時の福岡市児童相談所、ほぼ全員が行政事務職だったわけですけれども、少しずつ児童福祉司を増員しまして、21年度から福祉職・社会人福祉職を採用し、約7割以上が何らかの専門性を持った児童福祉司になったわけです。そういう意味で、行政事務職集団からやっとソーシャルワーカー集団になったわけですけれども、これはやっとスタートラインに立ったというわけで、それだけで虐待対応が大きく変わったわけではないと思っています。
そもそも私はソーシャルワークの専門ではないのですけれども、ソーシャルワークの基本は支援的なものですから、児童虐待の介入、特に職権保護や立入調査のような法的権限の行使に際しては、どうしてもその後の支援や対応のことを担当者が考えてしまうという面があります。子どもの保護の判断基準は子供の安全の優先ということは理屈でわかっていても、介入と支援が同一機関であることの限界があります。また、介入がソーシャルワークの枠組みの中で行われているという限界もあると私は思います。
よく医療機関の方々から、医学的な客観的な事実があるにもかかわらず、なぜ児相は保護しないのかという声を耳にしますが、このギャップの中には、児相の中にその後の支援、対応を考えるという発想がどこかにあるのではないかと思います。
また、保護後は、多くは同意をとって施設入所、里親委託になるわけですけれども、どうしても保護者、親権者の意向に影響を受けてしまう場面が多く、家庭復帰が保護者主導になりがち。これは塩田先生が言われたようなところがあるかなと思います。
一方、28条ケースなどで、家族にカウンセリングや医療機関の受診を提案しましても、当初の対立がありますからなかなか乗ってこないケースというのも非常に多くあり、養育態度、養育観が変わらないまま何年も、場合によれば18歳になるまで出入所が続くというケースも多くあります。
そこで、私ども福岡市は平成23年度より、常勤の弁護士を配置することにいたしました。法的権限行使に当たっての法的な妥当性に対して迅速な判断をしてもらおうということです。ここでソーシャルワークの視点に加えてリーガルな視点やバックアップが入ることで、今まで抜けていた事実認定の重要性に気づき、また、子どもの安全優先のために自信を持って取り組めるようになってきたと思います。以前では手をこまねいていたようなケースにも積極的に保護、立入調査を行うことができたというように思います。
また、保護後の28条申し立て件数も年間10件前後と増加してまいりました。もちろん、書面作成は弁護士がするわけですから職員の法的権限行使に伴う事務的な負担もかなり軽減されたと思います。配付資料に書いておりますように、この5年間の経験から、必要時に迅速に子どもの安全を確保するためには、従来のソーシャルワークから、法律家との協働によるリーガル・ソーシャルワークモデルが必要と提案したいと思います。
ただ、常勤弁護士を配置しても解決しない問題は幾つか残ります。やはり介入と支援が同一機関である矛盾は残ったままですから、保護後の保護者からの長時間にわたる対応が日常業務を大きく妨げます。また、その後の関係構築も困難なままです。また在宅支援にしても、分離後の支援にしても、児童相談所からの指導や支援に乗ってこないケースは相変わらず多くあります。たとえ家庭裁判所からの勧告があったとしても効果はほとんどないと思います。
ここで、裁判所からの直接的な関与があると変わると私どもは思っております。一時保護にいたしましても、その事前審査や緊急時の保護後速やかな審査を受けることで保護者の対応は少なくて済むと思います。また、児童相談所からの支援や指導がうまくいかない保護者に対しても、裁判所から命令という法的強制力という枠組みの中で支援につながるケースも少なくないと思います。
また、分離ケースでは、どうしても変化が望めないケースにはパーマネンシーの保証も行うことができるかと思いますし、その際には、現行の特別養子縁組制度を変えていく必要があるのではないかと思います。
ただし、裁判所の関与、いわゆる司法関与を実現するためには、現在の児童相談所の体制を大きく変えていく必要があると思います。
1つ目の提案といたしまして、児童相談所に例えば弁護士が日常的に児相の会議に出席するとか、または書面作成を行うなど現行の法的対応機能強化事業の予算の拡充であるとか、常勤、非常勤弁護士を配置することを国として推奨するとか、または児童相談所運営指針などに位置づけていくというのもあるのではないでしょうか。
2つ目に、ほかの委員さんも言われましたように、職員の専門性強化、児童家庭福祉士のような国家資格の創出も検討いただきたいと思います。
時間が来ましたので、3番目については資料をごらんください。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、星委員、お願いいたします。
○星委員 星です。
自立援助ホームは社会的養護のシステムのどん詰まりというか最後のところになっていろいろな子供が流れてくるのですけれども、虐待の被害に遭った子供たちが言ってみれば我々大人は借りがあると考えると、18歳とか20歳でその借りを返して帳尻を合わせるということは全く不可能であるということを毎日思い知らされております。
要するに、時間がかかる。だけれども、時間がない。20歳で切れるかといったら、どうにもならない。社会的養護の対象、20歳だとか22歳だとか、25歳だとかという議論をしているのですけれども、どうもそれがぴんと来なくて、25歳だろうが30歳だろうが、必要なことを我々はしていかなければいけないわけで、それは措置の年齢が22歳というのは現実にそぐわないなという思いを複雑なことを感じながらやっているのです。
時間がかかるところをどういうようにやっていくのかというところがなくて、連鎖を断つという、要するに虐待の連鎖を断つということが言われていますけれども、ぎりぎりやって20歳で切れてしまう。またその子供が新しくケースとして上がってくるまで、先ほど奥山先生の資料にも書いてありましたけれども、それの連鎖を断つことはできないような気がするのです。連鎖を、方向を少しずつ修正していって、虐待を受けた子供が虐待をする親にならない。あるいはその子供がちゃんと普通に育つ。そういうところまで世代を超えた切れ目のない支援をしていかなければいけないということで、そこのところを考えれば対象になるのは20歳だとか25歳だとかという話ではなくて、必要な子供に必要な支援をしていくということを子供から大人になるところまで一回転、あるいは親になるところまでちゃんときちんとした形にしていかなければいけないのかなと思います。
大学に行って卒業しようかという子供もいれば、全く働けずに虐待の後遺症を抱えて、医療とのつながりの中で仕事どころではない子供たちがすごくいるのですけれども、これが20歳になったときにどうにもならないですね。普通の生活保護とかいろいろな制度があるとはいえ、虐待を受けた子供のことを理解してくれるところがほとんどなくて、我々はそこの間に挟まって非常に苦労しているところです。それぞれの力に応じて必要な支援を必要なだけ続けていくということを我々は考えていかなければいけないのではないかと思います。
それと、あと中間的なケアということがありましたけれども、自立援助ホームに来る子供たちも社会的養護のそれまでかかわりのなかった子供たちが突然思春期過ぎにいろいろな問題があらわれて、今まで施設生活の経験がなかった子供たちがかなり来るようになっていて、そういう子供たちがもっと早く中間的な分離でもないし、放置でもないし、そういうことをやっていくことが必要だと思って、私たち、スーパー学童保育と呼んでいるのですけれども、栃木県でモデル事業ですが今始めているところです。その辺のところも含めて考えていく必要があるかなと思います。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、松本委員、お願いします。
○松本委員 松本でございます。
これまでの何人かの方が既におっしゃったことはなるべく避けながらと思いながら、でも、重複することもありますので、御容赦ください。また、資料がありませんので、申しわけありません。
何人かの方から、そもそも論であるとか理念の重要性ということがお話しされました。全く同感であります。それは制度設計とのかかわりで言うと、岩佐さんから、アドホックな改正で一体どこに行くのだろうということもありましたし、これまでの制度の評価ということで西澤さんから一定の評価が出たと思うのです。そういうそもそもの理念は何であるかということを改めて報告書をまとめるという段階で、こなれていないにしても何か書き込んでいただけると次の議論につながるのではないかと大変考えております。その点が1点であります。
理念とか原理原則というときに、1つは虐待問題でいうと親の生活のゆとりといいますか、安定ということをどう図るのか。特に格差が拡大していく社会の中でどういうようにそれを図っていくのかということが1点、具体的にあると思います。
もう一つは、子供の問題ですので、子供が成長し、発達する権利をどう保障していくのかということも大変重要な観点かと思います。
もう一つは、自立という言葉で言われるのですけれども、子供が大人になって、市民としてどういうように生活していくのか。
もう一つは、家族を形成して子育てということになったときにどういうようにそれを支援するのかという市民的権利と子供が大人になったときの子供の養育の保障、この2点が結局自立という観点、あるいは連鎖ということの具体的な中身だと思います。こういうことも含めて、まず理念というように考えたいと思っています。
話したいことはいっぱいあるのですけれども、自立支援ということにかかわって2つです。
1つ、今、星委員から時間の長さということについてお話が出ました。そうすると、これはこれまでいろいろな関係機関の連携ということで、横の連携の話がいっぱい出てきましたけれども、年齢を超えてシステムを切らない、支援を切らない。同時期の関係機関の支援をつなぐというときと同時に、年齢を超えて支援をつなぐという観点が非常に大事だということになります。そういうときに、やはりシステムをたくさんつくるというだけではなくて、あるいは居場所をたくさんつくるのではなくて、誰がその子の担当ワーカーであるのか。例えば20歳を超えて25歳か30かわかりませんけれども、きちんと指名されたワーカーが公的な責任を持つ。具体的な支援の実行ということはそれぞれのワーカーなり担当の方がされるでしょうし、また、そこで育った具体的な養育者が継続することはあるでしょうけれども、支援の担当しているワーカー、児相が、担当ワーカーが20歳になったら仕事がなくなりますということではなくて、市町村なり児相なり公的なところで25なり30なり、一定のところまではその人が担当ワーカーとしてきちんと責任を持ちますというシステムが必要だろうと。これは年齢で切らないという意味であります。
そうすると、今度は全体、制度的な枠組みで、現在の年齢要件をどう考えるのかという問題になってまいります。そうすると、これは現行の児童福祉法というものを年齢要件の観点からどういうように考えるかということが出てきます。これが具体的な2点目であります。担当ワーカーという問題と、年齢要件の問題です。
最後ですけれども、これは全体像にかかわって、全体像がよくわからない。今、社会的養護に関する統計、厚労省の5年ごとの調査にしても、児童虐待に関する毎年のデータについても、かなり断片的であります。5年ごとぐらいでもいいですので、もう少し踏み込んだ実態がわかるような家族の生活の状況であるとか、措置後の状況であるとか、その出た後の問題ということについて、少し踏み込んだデータを蓄積していくこと、統計データとしてアクセスできるようなものを整備していくことも決定的に不足をしているかと考えております。そのときに大事なことは、やはり当事者の子供なりそこで育った人たちの声をどのようにそこに反映させるかということもお考えいただきたいです。
今、原理原則の話を申し上げました。そこで、親の問題、子供の権利、そして、その人たちが大人になったときの市民的権利と子供の養育をする基盤の整備ということの原則。年齢要件の問題と担当ワーカーの継続性の問題。もう一つは統計データの整備という観点で申し上げました。
以上であります。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、山田委員、お願いいたします。
○山田委員 では、山田からは3点ほど指摘させていただきたいと思います。
山田の資料、資料13、分量が多いので最後のほうの3ページにポンチ図を用意しておりますので、そちらをごらんになりながらお話を聞いてください。
まず、現行の制度では、児童相談所にしろ、市区町村にしろ、通告を受理した機関が初動の調査を行うことになっています。そのため、軽症の事例が児童相談所に通告されて、ただでさえ忙しい児童相談所の職員を疲弊させています。また、重症の事例が市区町村に通告された場合、児童相談所送致の手続のために対応にタイムラグが生じるといった危険も指摘されているところです。
そこで、ポンチ図の1つ目をごらんください。先ほど来、御指摘のあるとおり、7月1日に『189』が始まりまして、児童虐待通告電話が3桁化されたわけですけれども、これを効果的に活用するためにも奥山委員がおっしゃったとおり、『トリアージセンター』の設置ということが重要です。これは先ほど問題点として指摘しました通告事例の重症度と通告受理機関とのミスマッチを防ぐためにも重要です。
トリアージの内容としては、虐待の種別分類、緊急度、重症度の判断を行うということで、専門的に行う児童虐待通告受理センターとして『189コールセンター』を都道府県に1つ程度設置して、通告を全てこちらに1本化し、無駄なくタイムリーに調査ができるようにすべきと考えております。
また、このポンチ図の右側の3つ目あたりになりますけれども、児童相談所の児童福祉司さんから聞かれる声として、先ほども藤林委員から御指摘があったとおり、「後々保護者を支援しなければならないということを考えると、調査介入時に毅然とした対応ができない」というジレンマがありますので、『児童虐待調査介入センター』というものと継続支援を行う従前の児童相談所とを分けるという必要もあると考えているところです。
続きまして、子ども虐待・ネグレクト事案に対する家庭裁判所の関与についてです。日本は2010年に国連 子どもの権利委員会から、「包括的な子どもの権利法が制定されていないことを懸念する。日本が国内法を子どもの権利条約の原則及び規定と完全に調和させるための措置をとるよう、強く勧告する」と勧告を受けています。特に、子どもの権利条約第9条第1項の「児童がその父母の意思に反してその父母から分離される場合には、権限のある当局が司法の審査に従うことを条件とする」という規定に関してですけれども、保護者の同意がなくても児童相談所長が必要と認めれば措置ができる一時保護という日本の制度が、この子どもの権利条約に準拠していると言えるかどうかについては異論のあるところだと思います。
そこで、ポンチ図の2つ目をごらんください。左側が現行の児童福祉法等によるたてつけです。家庭裁判所は、家庭内で発生している児童虐待という人権侵害を直接審判することはせず、児童相談所の措置が職権乱用になっているかいないかという点を審査するというたてつけになっているため、家庭裁判所は『ケア受講命令』等を保護者に直接発出することができません。そのかわり、児童相談所を所轄する都道府県に対して指導措置をとるべき旨を勧告し、その勧告内容を保護者に知らせるという枠組みになっています。
これをこのポンチ図の右側のように、家庭裁判所が家庭内の人権侵害である児童虐待を直接審査して、一時保護、親権停止、親権喪失などの審判を下すというたてつけに変更すれば、一時保護措置に司法の審査が加わることになりますから、国連の勧告に応ずることができますし、親権停止の審判を受けた保護者に対して直接『ケア受講命令』等を発出することができるようになります。
3つ目としまして、多機関連携チームの枠組みによる司法面接の制度化について御提案申し上げます。
まず、多機関連携チームの原語である英語ですが、Multi-Disciplinary Teamですので、通常はMDTと略されますけれども、日本の場合、多職種の連携というよりも機関間の連携ということが課題になりますので、私はこのMDTを『多機関連携チーム』と通常、訳しています。
物的証拠が乏しくて子どもの陳述が非常に重要になる性虐待では、このMDTがとりわけ重要になります。そこで、ポンチ図の3つ目をごらんください。この左側に矢印が上向きと下向きで書いてありますけれども、児童相談所や医療機関は、子どもの将来を保障することに関心を持っています。一方、捜査機関である警察・検察は、子どもに過去の起こった犯罪のほうに関心があります。
方向性の異なるこれらの機関全てが子どもの被害事実に関する情報を必要としているわけです。しかし、子どもが被害事実の詳細を語るとき、その子どもは虐待体験を再体験することになり、フラッシュバックや解離症状を起こす危険性もあります。ですので、バラバラに各機関が被害事実を聞くのではなく、一緒に聞けば重複を避けることができ、子どもの心理的負担を大幅に軽減できます。
○松原委員長 済みません、そろそろ。
○山田委員 いろいろな機関に繰り返し質問されることで陳述内容が変遷したりすることも防げます。ですので、「医師による診察を、児相はA先生、警察はB先生、検察はC先生とバラバラに診せることがないのと同じように、全ての機関が知りたい被害事実であるならば、代表で専門家が聞きましょう」というのが司法面接ですので、御提案させていただきました。
○松原委員長 ありがとうございます。
ところどころせかしてしまいまして申しわけございませんが、共通する御提案、それぞれの御専門からの御提案がありましたが、今まで御参加いただいた委員の方々も、この新たに加われた委員の方々に触発されていろいろお考えだろうと思いますので、申しわけないのですが、お一人2~3分ということで区切らせていただきます。
秋山委員からコメントをお願いします。
○秋山委員 私は、資料2について、2点ほど意見を述べさせていただきたいと思います。
資料2の3ページですけれども、妊娠期からの相談しやすい体制の整備についてです。先日、5人の遺児が自宅から発見されたという痛ましいニュースがありました。特定妊婦の妊婦情報は記載のとおりに、産科医療機関が市町村につなげると明記されてありますが、産科医療機関だけではなくて、地域における医療機関、福祉施設、学校など、あらゆる機関がセンチネル、見張り役となって妊娠や出産の情報を市町村につなげていく工夫の必要があるのではないかと思います。
4ページの最初には、情報が市町村に提供され、医療・保健・福祉が連携した体制が必要と記載されていますが、この部分も医療・保健・福祉教育などが支援だけではなく、地域の見張り役となって両方の役割があることを明記してはいかがでしょうか。
2つ目ですけれども、10ページの要対協についてです。特定妊婦の問題について、産科医療機関の関与、また精神疾患を持つ保護者の増加によって、精神科医の関与が大切なことは議論されました。そのほかに、要支援児童に対する地域の医療機関が関与することも大切と考えます。なぜならば、地域の医療機関は乳幼児健診、予防接種、日常疾患で児童を把握しており、また、その後についても長期にわたり児童の身近な機関となり得るからです。また、社会的養護の児童の自立に向けた取り組みにも、医療機関は児童の心身の健康を見守ることができますし、また、発達障害など専門的支援ができる機関になり得ます。そのためには、代表者会議だけではなく、多くの医療機関が要対協に参加し、かつ、個別ケース検討会議に参加できるような工夫が必要と考えております。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、泉谷委員、お願いします。
○泉谷委員 目白大学の泉谷でございます。
今日、いろいろな先生方から児童相談所の専門性の強化というようなお話がありましたけれども、児童虐待を発見できる場所というところで、学校ですとか、保育園、幼稚園というところがあるかと思います。そういったところで学校の先生、保育園、幼稚園の先生方が虐待を発見するポイントというところがまだまだ十分でないところもあるのかなという気がしています。
そういう発見をするポイントですとか、発見をして児童相談所なり市町村につなげばそれで終わりということではなくて、発見後も一緒に支援をしていくチームの一員として学校ですとか保育園、幼稚園がどういうようにかかわっていくべきなのかというところの各機関の役割をそこで働いてらっしゃる先生方にもっと理解を深めていただきたいという思いがあります。
先日来から学校の先生方が忙しいというようなことがニュース等で報道されておりますけれども、教員養成の課程ですとか研修の場面というところで小学校、中学校の先生方、幼稚園の先生方への虐待に関する知識、理解の強化ということもあわせてしていただきたいなと思います。
○松原委員長 ありがとうございました。
岡井委員、お願いいたします。
○岡井委員 私からは、産婦人科医療現場での対策ということで、これまでもお話しさせていただいたことに多少追加して御説明したいと思います。
資料2で秋山委員の続きになりますが、3ページの特定妊婦の検出に関しては、これまでの妊婦健康診査では身体的な状況の把握ということに力を入れてきて、その妊婦さんの家庭環境がどうであるとか、精神的な状況がどうであるとかということに余り気を使われてこなかったということがありますので、これからはその辺に力を入れていこうということを医会挙げて考えております。
特定妊婦というのは家庭環境の問題があったりですとか、あとはいわゆる望まない妊娠と言われるケースですが、そういうものに対しては助産師さんのほうが医師よりもよく患者さんとそういうことを話し合う機会がありますので、助産師さんが妊婦さんと相談し合えるような機会を妊婦健診のどこかに入れていくというようなことが1つです。
その望まない妊娠に関しましては大変難しい問題で、なぜかといいますと、まず、そういう方々は医療機関を受診しないということがしばしばあるわけです。全くこちらが手を差し伸べることもできないうちにという話ですので、それは望まない妊娠を防ぐというところに力を注ぐしかない。これは4ページのエのところの「思春期からの生と性に関する啓発と研究」、ここが日本は相当おくれています。例えば15歳以下の妊娠というのは年間1,500例もあるのです。それはなぜかというと、中学のときに必要な性教育を文科省がさせてくれないというおかしな状況になっているので、そういうこともこの虐待を防止するという対策の中のほんの一握りの部分ですけれども、しっかり力を入れていかなければいけないところだろうと思っています。
もう一つ、ここに出ていないのですが、前にお話ししましたけれども、妊婦さんの精神障害というようなものは非妊時よりも頻度的にはふえてきますので、それを妊娠中に見つけることが大事になります。今、産婦人科学会と医会とで合同の産科診療ガイドラインという診療のための指針づくりをやっていますので、その中に、妊娠のいつごろこういうテストをすれば不安神経症と鬱状態の人をある精度で抽出できるという検査を探していまして、妊娠中のどこかで調査して、そういうリスクのある人を検出することを今検討しているところです。精神障害の人と、家庭の問題というか、特定妊婦と言われている人を上手に検出して、あとは要対協連携をとっていくわけですが、そこのところをしっかりやっていきたいと思っています。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、草間委員、お願いします。
○草間委員 私は大きく2つ提案、意見したいと思っています。
1つ目です。4月から生活困窮者自立支援法という法律ができて、生活保護に至るまでのゲートキーパーの役割が期待されています。昨日のNHKの7時のニュースでも神奈川県社協と相模原市の事例が紹介されておりました。この法律の運用というのはこれからであって、今後検証が必要だと思います。社会的養護から見た場合、生活困窮者自立支援法の対象者とならない、社会的養護のゲートキーパー的な法律をつくってはどうか。それが仮称社会的養護法です。何歳に区切るかというのは議論がいろいろ出ておりますが、22歳または25歳、あるいは30歳までといろいろ年齢が想定されます。私が提案する仮称社会的擁護法では、30歳と考えました。ただ、この法律は、大きな制度をつくることになるので、現実的にはなかなか難しい面があります。そのようになった場合を想定すると、介護保険の介護認定や障害者支援における障害認定などのように、養護認定をして対応していくことが考えられる。先ほど松本先生からもありましたように、養護認定をして対応していく制度設計はどうか。それによって、社会的養護における福祉が30歳とかある一定年齢までケア・サービスを担保していく。そうすることで、ケアワーカーと児童福祉司の継続性というのも担保される。こういうケア・サービスができるのではないかというのが1点目の提案です。
2点目です。虐待というのは、不確実性です。誰がいつ起こすか分からないという非対称性という問題を構造的に持っている。それをどのように不確実性を低減していくかという取り組みの例を提案したいと考えています。モデル事業を実施してはどうかという話は、西澤先生からありましたけれども、私も虐待介入のモデル事業を実施してはどうかと考えております。公募型で従来の社会福祉法人あるいはNPO法人、あるいは民間団体等が公募型の虐待介入予防の事業をやってみてはどうかと思います。
私はこのような公募型事業を14年半前、季刊児童養護Vol.32No.3号において提案したことがあります。具体的な事業として、子供用品に特化したリサイクルショップ開設事業が考えられます。この子供リサイクルショップによって、ヒト・モノ・カネ、情報の4つが流通します。本事業によって虐待の早期把握が可能となり、把握した情報を関係機関につないでいく虐待早期介入モデル事業が展開出来ます。以上のことから、公募型早期虐待介入事業を提案させていただきます。
私からは以上2点でございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、作本委員、お願いします。
○作本委員 作本です。
各委員の先生方の意見を聞いていて、いかに虐待を未然に防ぐか、大切なことは予防なのだろうということを痛感しております。先ほど星委員からも、親子関係の再構築あるいは虐待を受けた子供の修正をするのにも莫大な時間がかかるという意見がありましたので、妊娠期から、あるいは奥山委員の言われましたように、それ以前からというところにもっと時間を費やしてやっていきたいと思っております。
特に要保護の実務者会議では年々数がふえていって、時間内に終わらないのです。そこで、やはり予防だというところに立ち返りました。しかし、近隣の市町村ではイタチごっこだという声も聞かれます。予防を行うのに専門職あるいは行政だけではとても無理なので、昨年から子育て支援員の養成を始め、今年度から子育て支援員が4カ月健診の通知を持っていくという仕組みをつくりました。そうして、地域の子供たちを把握する。そして、ここに赤ちゃんがいる、ここに子供がいるということを直接行って把握しています。
当町でも、これから子供の分野でも民生委員の協力が必要だということで、実際に赤ちゃん訪問に行っています。今度、八女市や子育て支援員の制度がある山口県の光市に視察に行く予定であり、みんなでサポートをしていく体制づくりを考えております。
2番目に、虐待はいつ起こるかわからないので、先ほどお話しした専門職だけではなく、住民課の窓口あるいは水道課の窓口など、全職員挙げて子供の権利を守るということを学んでいます。志免町は子供の権利条例を制定しておりますので、昨日職員一同、全員で研修を受けました。新たにチームワークの一人という形で行政職が入っていくことが必要だと考えております。
虐待対策としての子育て支援という部分では、妊娠期から出産、育児とどのように切れ目ない連携をしていくかが大切です。フィンランドのネウボラのような支援ができれば本当にいいのでしょうけれども、人材の確保がなかなか難しいというところで、それぞれの自治体に合ったやり方でサポートしていくことが重要だと思います。そして、妊娠期からの親子関係をどう育てていくかということを考えていかなければいけないと思っています。
あるいは今年度から産後産前ヘルパーの導入も職員の中で多々ありました。産前や産後にヘルパーさんをつけるということを疑問に思う声もあります。管理職等は子育てに無縁だった年代ですのでぴんと来ないようです。
今後、自治体も知恵を絞って予防に力を入れていきたいと思っています。
○松原委員長 申しわけありませんが、ぼちぼち。
○作本委員
○松原委員長 それでは、佐藤委員、お願いします。
○佐藤委員 妊娠期からの切れ目ない支援ということで、これまでもいろいろな方向から申し上げてきましたが、津々思いますに、やはり人類が何百万年と子供を産み育ててきた歴史を踏まえますと、自己責任としての妊娠・出産ではなかったというところが大きくあると思います。ですので、いろいろな政策レベルを展開するには根本的なところを考えなければならないのではないかというところの1点と、あと我が国の実態がどうなっているのか、あるいは虐待を受けた子供がどうなっているのかということで、虐待に関するデータを蓄積する必要があるのではないかということの2点を申し上げたいと思います。
私の資料は資料9のところにまとめております。
まず1ですけれども、妊娠届け出を全ての妊婦が行う仕組みが先ほどのネウボラの作本委員のところからも出てきましたが、これにも寄り添うというのが根本にはあることから出てきているところです。ですので、これをするにはどういうようなことがするかということで、2に妊婦健診・分娩と入院・新生児入院の費用の軽減化で健康保険を使うような制度に変えていったらどうかというようなことを挙げています。
もちろん北欧とか、あるいはニュージーランドとか、妊娠・出産費用が全て無料という、保険によらない無料の国もあるわけですけれども、我が国でそれが難しいとした場合には、こういう健康保険を使うということで制度の設計を考えると、可能性はあるのではないかということをここに掲載して、挙げています。
特に東京大学の公共政策大学院の資料を厚労省が最後に表3に大きくしてくれていますが、例えばこういうような日本では全部自己負担ですけれども、ドイツ、フランス、オランダ、スペイン、ベルギーではどういうようなことがあって、出産がどうなっているかということも書いていますので、根本から考え直す、それが必要ではないかと思います。
それに伴いまして、2ページの下です。新生児が殺されてしまうと全然出生届も出されなければ、何もわかりません。しかし、今、正常妊娠だとして子供が入院するのに、1日1万円ぐらいから数千円がかかります。これも親にとったら非常に負担が大きいところですので、産まれた新生児も全て保険適用とすることにすれば全ての新生児が把握できるというようにも思います。
妊娠期からの出産支援は先ほどの何百万年の人類の歴史と言いましたけれども、1人では子育てができない、やはり寄り添って妊娠、分娩、子育てを支援する人がずっとあったわけです。ですので、それには家族の関係が壊れている今、専門職として期待できるのは、保健師、助産師だろうと思います。きちんと家庭訪問できるだけの人材の確保が必要だということで、3ページの4のところにどれだけの人間が必要かということを書いていますので、ぜひ御検討いただきたいと思います。
5ですけれども、子供の虐待の登録、調査といろいろなデータを引っ張ってきて分析するのに、アメリカのNational Data Archive on Child Abuse and Neglectが非常に参考になろうかと思います。ぜひこういうようなこともばらばらとその都度その都度調査を行うのではなくて、統一した機関が国として責任を持って進めるということをやっていただきたいと思います。ちなみに、アメリカのNDACANは法律に位置づけられております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、菅野委員、お願いします。
○菅野委員 失礼します。30年以上児童相談所でどっぷり仕事をしてきて、この専門委員会に参加させていただいて、いろいろ勉強しているところを、感じているところをまとめました。時間制限が非常にありますので、いつもしゃべり過ぎてしまうので手短に伝えるために資料を用意しました。10をごらんください。
まず、虐待対応のシステムが機能不全に陥っているのではないかと思います。結果的に本来的にやらなければいけない子供の育ちの応援ということができていないというところが大きいのかな。専門性を備えた職員を大幅にふやさないと、小手先の変更というのは本当に破綻を早めるだけではないかなと感じています。小さい字で遠慮して書いたのですけれども、189の問題にしても、例えば電話、相談を受ける人の手当てはしましたという話ですが、1件ふえればそれで動く人間が何人ふえるかというように考えたときに、1つ制度をいじることによって人的にもお金的にもいっぱいかかるというところです。だから、基本的なところを各先生方おっしゃっているように、専門性とかいろいろな課題を確保しないことには、小手先のいじるということはやめたほうがいいのではないかと思っています。
その上で3点ほど課題を挙げました。これは既に議論されている中身ですので、頭出し的なところになります。
結果的に、専門性の維持とかサポートをいたして制度設計が最初当初なされたと思うのですけれども、現実問題を言いますと、例えば法的権限がないのに市区町村も児相と同じような強制介入的なかかわりをしています。しかも、それが非正規というか、嘱託の職員さんがほとんど担っているとして、結果的に職員とかいろいろなものの体制が整わない中で仕事ばかりふえているというのが現状です。
その図のほうは虐待対応の流れをあらあらであらわしています。これをどういうように分割していくのかというあたりが、次のスライドで述べます課題の対応になるのかなと思います。
次のスライドを見ていただきまして、すぐには変えられなくても広い視野でシステムを見直していく必要があるかなということと、当面の対応を書きました。虐待対応は、子供たちの育ちを応援するシステムの一部なのだなと思っています。そういう子供の育ちを応援するシステムのど真ん中に学校教育があるかなと思います。そういうところから外れた非行とか不登校といった個別な課題に対応するシステムとして、児童相談所はいろいろやってきました。
もう一つ、例えば母子保健を初めとするほかの支援のシステムと関連づけて、その上で虐待対応のシステムを再構築していく必要があるのではないかと考えています。おそれとか心配、不安というレベルで自分の仕事の周りを見ていると、虞犯少年への対応というのはおそれでいろいろなシステムが構成されています。対象が非常に狭いという意味ではシステム化しやすかったのかなと思います。虐待対応にそれを持っていくというのは難しいかなと思うのですが、1つ参考にならないかなと考えたりしていました。
当面の取り組みとしては、専門性の向上のために児相とか市区町村が情報を整理して判断するための例えば共通です。これは全国共通基準みたいなのが要るだろうなと思います。そういうアセスメントを共有したり、どう判断していくか。ここは教育が絡んでくると思います。
○松原委員長 済みません、ぼちぼち。
○菅野委員 はい。介入的な関与のできる職員の養成です。職員の配置とか、そういうものを示していくこと。いろいろな基準、統一基準みたいなものをつくっていただきたい。
最後のスライドは、子供を主役にした支援のイメージを図にしてみました。これは参考にしてください。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
せかしてしまって申しわけございません。
では、辰田委員、お願いします。
○辰田委員 八王子児相の辰田です。
現在、全国の児童相談所はことし7月から始まった共通ダイヤルによる急増する虐待の初期対応に追われております。その後の指導フォローアップが十分にできていない状況になります。専門的な支援を確実に行う体制の強化を図るために、児童福祉の専門性を、そして、その専門性を担保する、人材配置で、または児童心理司、児童精神科医師、保健師など多職種による専門職の配置、また法的対応を的確に行うための弁護士、または一時保護されている子供の行動観察を的確に行うための一時保護所の配置基準というのを新たに策定、または見直しすることが必要であると思っています。
また、児童相談所はその虐待通告に対する調査、アセスメント、法による介入を迅速かつ的確に行うために、児童相談所等が必要な情報を確実に得るようにしていきたい。個人情報保護にとらわれる余り、子供の安全がないがしろになってはならないと考えております。虐待防止法の規定に児童相談所などが行う調査に対する関係機関の回答義務化の明文化が必要であると考えております。
2つ目に、市町村との役割分担についてです。現在、市町村が受理する虐待通告の中で、児童相談所の機能が必要とする事例に対して、市町村から児童相談所への援助要請、また送致があります。逆に、児童相談所が受理する通告の中には泣き声通報など、初期調査の中で十分に市町村で対応できる通告も少なくありません。児童相談所がそれらの通告の調査、現認、援助決定の最後までかかわるのではなく、児童相談所から市町村へ送致できる規程を設けていただきたい。それぞれの専門性を生かす役割分担ができる仕組みづくりが必要だと考えております。
さらに、市町村の介入的な機能を果たす機会が増加しており、また一方で、市町村は住民に近い存在として継続的な支援を行う中核的な役割を担っています。この役割を果たすために、市町村について、その要支援児童について多様な育児支援策の充実を、または使いやすいサービスメニュー、そういったものを積極的に活用、展開を行い、地域全体で支えていくことが望まれると思います。そのことが結果的に虐待予防にもつながると思いますし、また市町村、児童相談所への負担軽減が図られると考えております。
以上です。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、中板委員、お願いします。
○中板委員 日本看護協会の中板です。保健師です。
資料2と3を踏まえながら、3点ほどお話をしたいと思います。
予防の観点から3点です。
まず、里親への支援ですけれども、実子を持たない親が里親になるということをお話しさせていただきましたが、実子を持つ場合とは違った子育てのプロセスを経ることになり、大変大きな葛藤を抱えることになります。しかしながら、母子保健サービスが一定の一般の家庭への支援サービスと同様に届いているかといえば、非常にそこは疑問です。
実際に例えば乳児健診などは、市町村が住民基本台帳から対象者を抽出いたしますけれども、住民基本台帳には世帯主と苗字が違うという形で、いわゆる里子とは書かれておらず縁故者という形の肩書になったりもします。この形で通知が行きますので、集団検診の場面でどういうことなのか事情を聞くという形になり、里親さんたちからは、私たちは特別扱いですねと、切ない思いでいっぱいですと、そういった声も聞かれます。非常に一般的な子育て支援が重要な里親さんたちであると認識しております。
そこで1点は、まず児童相談所が里親の措置決定された時点で、市の児童福祉課への情報提供については、親御さんたちに、里親さんたちに情報提供の同意がとられていると聞いておりますけれども、その先の母子保健への情報提供のつながりがないという状況です。これでは、この仕組みは先ほど奥山先生がおっしゃっていただいたようなことに通じるのですけれども、やはり母子保健法が、いわゆる母性並びに乳幼児の健全育成という、そこが目的となっていて、非常に曖昧な大枠で書かれておりますので、いわゆる虐待対応や虐待予防については所掌外といった位置づけが多くなされているのが現実ではないかと思います。ここの位置づけがはっきりすることによって、いわゆる里親さんたちへの子育て支援も含めて、母子保健の中で見ていくという位置づけがスムーズになるのではないかと考えております。
協力体制づくりという意味で1点です。
もう一点ですけれども、その母子保健の中でしっかりと里親さんたちも支えていくということを考えましては、具体的な方策として、例えば児童福祉法の乳児全戸訪問事業あるいは養育支援訪問事業、こちらについては、里親家庭も対象にするという形で加えていただくことができないだろうかというように考えます。里親さんは子供を預かって生活が始まるそのときから1カ月目と考えていただいて、いわゆる4カ月という枠にとどまらず里親さんたちへの乳児全戸訪問事業から介入していくということができないだろうかと考えます。
もう一点ですけれども、要対協について、これは本当に人員の配置、技術面のスキルの向上、枠組みについては、皆さん多くいろいろな形で語られてきたと思いますが、私も同様にその強化策としてはとても重要なことだと思っております。
一方で、なかなかネットワークレベルで要対協になっていないという自治体もまだ数少なくではありますけれどもございますし、ネットワークそれ自体もないという町もございます。やはり格差というものを広げないためにも、強化と同様に要対協が設置されていない自治体においては、こここそが強力にその設置を推進していただいて、できる限り差のない日本全国どこでも子供が守られる仕組みというものをつくっていく形にとっていただければと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
それでは、平井委員、お願いいたします。
○平井委員 平井でございます。
時間もございませんので簡潔に発言したいと思います。
まず1つは、児童福祉法の年齢条件、年齢枠の引き上げということです。まず、18歳、20歳の年度末とされたいということ。次に、一時保護委託についてですが、都市部では本当一時保護所が満床状態にあります。それに伴って一時保護委託が施設等へお願いされるわけですが、その場合、施設の生活の場合、突然そういったお子さんを受け入れるのではなくて、一時保護専用の設備を提供できるようにして、そこへ専門の職員を配置する予算化が必要ではないかなと思います。それによってアセスメントも含めて保護期間を安心して過ごせるようにしたいと思います。
次に、児童養護施設や自立援助ホームへの自立支援、担当職員の配置の必要性です。これによって、継続したというか、子供の将来的な自立へつながるような支援ができるのではないかと。
もう一つは、心理的な問題を抱えた子供の入所がかなりふえてきております。そこで、情端施設です。この機能強化と設置促進がある程度必要ではなかろうかなと思います。それと児家センとかなり専門的な相談を今受けるようになっております。そういった機能を有効活用するなどして、今で言う里親支援ですね。民間の活用による里親養成の推進等、それと今、国として里親を推進していくのであれば、里親支援機関事業を法定化する必要があるではなかろうかと思います。
最後ですが、児童養護施設等への機能として、親子関係再構築支援を明確化する場合には、やはりFSWの増員と一定の質を保ちながら、プロセスの標準化が必要だと思っております。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、引き続きまして、平田委員、お願いします。
○平田委員 平田です。
この資料2と資料3、通して読んで一番感じたのは、児童相談所の専門性の強化だというところでした。先ほど来、いろいろな提案をお聞きして、そこまでは考えられなかったものの、全体を通して児童相談所がスーパーバイズを行う専門職集団であるという位置づけでとりまとめがなされていますので、あるレベルをきちんと担保した形で実施されるのであれば意味あるとりまとめになるのであろうと。その担保をどうやるのか、本気でやるのかということなのかなと思いました。
それと、児童相談所においては、今のような行政職の異動職ではなく、やはり専門職採用として展開がされるものであるというのは大前提であろうと思いました。
2つ目は、家族再構築等と自立の課題を検討してきた中でも申し上げましたように、出口の問題だけではなく入り口からきちんと出口を想定した形でのアセスメントが行われた中で、養育がつながっていくという、それが関係機関のつながりということになるのかもしれませんが、今でもこの連携というのが非常に難しく、連携会議と言われながら、それが機能していないということが実態なのだと思うので、これが児童相談所の専門機能が上がればスーパーバイズを受けてうまくいくのか、そのあたりはよくわかりませんが、それは1つ大切な課題なのかなと思います。
最後が一時保護についてですが、資料3の2~3ページに書かれている一時保護所のところに年齢構成が幼児から思春期ということで、乳児は現在、以後も児童相談所の一時保護所で乳児の一時保護を行うということが入っていません。そうすると、乳児の一時保護は従来通りの乳児院、病院、最近始まった里親さんというところで考えておられるのか。先ほど西澤委員から一時保護に関して今まで検討されてこなかったということもありますので、きちんと一時保護において何をするのかということの業務を明確にした上での役割分担、委託というのが大事なのだろうと考えました。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、藤川委員、お願いします。
○藤川委員 藤川でございます。
施設を出た後の子供たちの支援活動をしているアフターケア事業部の職員であるということと、自立援助ホームの運営と現場を両方走り回っているという立場から申し上げたいと思います。
何人かの委員からも御提案がございましたが、あえて私も切望しているのでここで申し上げさせていただきたいのは、子ども達の中には児童養護施設を18歳で措置解除となり社会で生活するにはまだまだ不安定な状態の子がたくさんいます。大学に進学して措置延長してもらい施設で生活させてもらっても20歳で終わってしまう。力のある子は良いのです。でもそうでない子もたくさんいます。自立援助ホームの子ども達なども、星委員もおっしゃっていましたが、本当に育てるのに時間がかかるが時間がないのです。実はかかるのは時間だけではなくて、時間がない子に職員のエネルギーも半端なくかかるという状態です。19歳でホームに入所してきた子は20歳までに僅か数カ月で出ないといけなくなるわけです。自立する力もお金もないのに退所させないといけないということですから、これは全国の自立援助ホームの職員皆思っていることだと思うのです。そこなのです。だから、本当に、これは星委員と重なりますが、必要な子に必要な時に必要な支援のあり方が大事ではないかと思います。あなたは年齢が18歳ですから支援は終わりました。とか、20歳になったので終わりました。ということでは、本来その子に最も必要な支援が必要な時にうけられない。本当にそこでぷつんと切れてしまう。藤川さん、妊娠しました。生活保護で中絶するお金はないけど産んだら子どもの分はお金がもらえるので産むことにしました。という女子がいて、私は泣きながら話をしたことも何度か実はございます。
まだまだ支援を必要とする子ども達に対し、民間でできる支援には限界がございます。ここは何とか18歳で終わる、20歳で終わるということではなく、必要な子に必要な支援を続けることができるように何とかお願いしたいというところでございます。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、藤平委員、お願いします。
○藤平委員 浦安市の藤平です。
市町村の立場ということで発言させていただきます。
私も資料2の8ページのところにあります、市町村と児童相談所との役割というところでの意見を述べさせていただければと思います。
市町村は子供の安全・安心ということと家族を守るということで対応しております。当然ながら、市町村としての介入的な役割は必要であるということも認識しております。そうした中で、現実的には通報につきましては児童相談所、また市町村にも連絡が来る。そういった場合に初期調整や継続的な支援を行っているところで、市町村が介入するというところが出た場合に、その後の継続的な相談支援についての調整がかなり難しくなっているところがあります。その点は、児童相談所も介入、または支援というところで同じような問題があるというのは認識しております。
本来、市町村としての役割は家族支援というところを中心にやっていくことが望ましいということはわかっているのですが、現実的な対応としては介入と支援を果たしていかなければいけないということです。
そういった意味で役割分担を明確にしていくということであれば、先ほど菅野委員がおっしゃったように、何らかの手法として児童相談所と市町村でも共通のアセスメントを使うことによって、ある程度その中で新基準を設けて、役割区分を明確にすることで、この事案については市町村でも対応できるだろうと。ここから先については、児童相談所との連携が必要であるとか、支援をしていくという形が盛り込まれたらと思っております。
あと、先ほど来から職員体制の関係がありますが、児童相談所に関しましては、確かに専門員の確保というものが非常に重要になっていると思いますが。市町村においても職員配置はかなり厳しい状況にあります。要対協の運営でありますとか、緊急対応ということもありますし、実際に今市町村で抱えている問題ケースの数が増加傾向にありますので、そういったところでの職員対応が課題になっておりますので、児童相談所の職員配置基準とあわせまして、やはり市町村にもある程度の職員配置についての指針みたいなものを出してもらうことが必要ではないかなと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、卜蔵委員、お願いします。
○卜蔵委員 ファミリーホーム協議会の卜蔵でございます。
私のほうは自立支援のほうに関連して、少し具体的な個別的なことについて意見を述べさせていただきます。
1つは進学支援ということでお話しします。
施設関係の方ともお話しする機会が多々あるのですけれども、やはり児童福祉施設から進学する子供たちは非常に困難が大きいと感じています。進学することが全てではないわけです。就職、こういう仕事をしたいということで就職することももちろん大いにいいことですけれども、やはり初めから例えば進学を諦めて就職するしかないからということでは子供たちの生活意欲にもなかなかつながらなかったりすると思うのですが、そのためにもやはり子供たちにとって、進学していくことは手の届くものだとする必要があると思います。そのためには、再三言われていることですけれども、例えば給付型の奨学金であるとか、授業料の減免であるとか、加えて卒業までの措置延長ということが当然必要になってくると思います。
あと、例えば進学するについても、地方の養護施設だとか施設から通える大学あるいは専門学校がないというところもあるわけです。そうなってくると、措置解除となってひとり暮らしをするしかないようなケースも見られます。ですので、例えば新しい考え方として、卒業まで措置延長可能であるならば、進学を機に例えば里親委託に切りかえて、形式的に里親家庭を利用するという、そういったようなことも新たに考えられてもいいのかなと思っております。
もう一つ、アフターケア事業、または居場所づくりについてですけれども、実は私、しもこの春から仙台で施設の有志の方、あるいは実際の当事者の方も含めて、居場所づくり、またアフターケアの事業を始めたところです。始めてみると、いろいろなところから問い合わせあるいは見学が何件か来ていたりします。ニーズや関心が非常に高いというのは感じているところですけれども、やはり実際にこれから始めようとしている方、あるいはやっている方なども運営費が非常に大きなネックとなっています。これが全国的に居場所あるいはアフターケア事業の整備を進めていくためには、情報提供であったり、あるいは開設支援、また、ハードルを下げた事業開設が可能になるようなこともぜひ進めていただきたいと考えています。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
それでは、磯谷委員、2~3分ということでお願いします。
○磯谷委員 遅参いたしました磯谷です。
私の発言骨子は基本的に資料4にあるとおりで、本日は司法関与に限定して発言いたします。また、司法が絡む問題のなかでも刑事に関する問題や、比較的新しく出てきた所在不明児の問題、無国籍児の問題などについては、時間も短いため言及いたしません。さて、司法関与のうち民事的な側面については、将来的に理念として司法関与がより深まるということについては賛成で、したがって、将来の児童福祉のグランドデザインを描く中で司法関与を前向きに議論することには賛成ですけれども、しかし、一方で、短期的にみると、性急な司法関与にはマイナス面もあるということは考えておく必要があると思います。
第一に、司法は証拠主義です。きちんとした証拠が整っていないと判断ができない。第二に、どうしても司法というのは中立的、公正な機関ですので、親の権利擁護、あるいは親の手続保障というところを当然考慮せざるを得ない。もちろん裁判所であっても子供の最善の利益を中心に考えるのではありますけれども、しかし、親の権利擁護あるいは手続保障という点は子供の保護との関係でマイナスに働くおそれは否定できません。第三に、司法関与を増やしたとしても、裁判所は受け身の機関ですから、アクションを起こすのはあくまで児童相談所であります。ですから、児童相談所に力がないと結局は働かないということになります。
私の隣におります岩佐弁護士は、昔おもしろいことをおっしゃっていました。弁護士あるいは司法というのは「飛び道具」だというのです。なるほどと、「飛び道具」であるとすると、それを使うソーシャルワーカーがきちんと力を持っていないと、それを使いこなすことはできません。ですから、私が骨子に記した4点は、いずれも司法関与を強めていくための前提条件、先に取り組まなければならないことであります。
時間がありませんので内容には触れませんけれども、何よりも児童相談所の専門性を確保するということ。それから、児童相談所の機能について、現在、いろいろと混乱があると思いますけれども、そこもきちんと整理をする。そして、より機能しやすくする必要がある。
それから、もし司法も含めて幅広く制度改正を検討するのであれば、やはり検証や研究というのは非常に重要であります。このあたりもまずきちんとやる必要があるだろう。
最後に児童相談所が適切に機能するための、骨子に「マイナーチェンジ」と書きましたが、チューンナップと言ってもいいかもしれませんが、
必要な小規模な改正についてもきちんとやっていく必要があるだろうということが私の申し上げたいことではあります。
○松原委員長 ありがとうございました。
私も3分ほどお時間いただきたいと思います。
皆さん、いろいろ御発言いただいていて共通というのは、こういう改革の取り組みをするときにまずきちっと理念をはっきりさせようということが共通で指摘されたと思います。磯谷委員の御発言もありましたし、ほかの方々から、そのためにもきちっとデータを集積しなければいけないし、継続的にそれを管理していくようなナショナルセンターも必要だろうという御発言があって、私もそのとおりだと思います。
そのことを踏まえて、法制度の改革については、児童福祉の中でできることと、関連諸領域、司法の関与もありました、母子保健との連携もありましたし、教育との連携もありました。そういったものの提案がなされてきたのかなと思っておりますし、このことに関して言えば、公私共同をどういうどういうように図っていくかということも大きな制度の見直しということでは必要なのかなと考えております。
それと、何よりも皆さん御指摘されるのは人の問題ですね。システムをつくっても、そこで人がきちっと機能しなければ、それがソーシャルワーカー、力があるきちっとしたソーシャルワーカー。資格をつくるというような御提案もありました。この人をきちっと質、量を担保していくことの必要性も指摘されたのではないかなと思います。ここまで全体のまとめですが、個人的な発言をさせていただきます。
加賀美委員がおっしゃっていたように、多くのケースは在宅での支援になります。そのときに、子供と親というセットで支援をしていかなければならないのだろうと思います。
訪問型もあるのかもしれませんけれども、加賀美委員が通所措置というお話されて、確かにそれもあるのかなと思いますし、私はその先に宿泊型の例えば週末とか平日、親子で泊まりに来て養育の方法を学ぶというようなやり方もあってもいいのではないかなと思いますし、その先には、母子生活支援施設が今、その機能を担っていただいていますけれども、入所型の親子支援。そういったものもあるので、母子生活支援施設がそういった宿泊型、通所型の支援を展開していけるかというような課題にもなるのかなと考えております。社会的養護を従来、母子生活支援施設も含めて考えてきておりますので、そのことも検討の視野の中に入れられないかなと考えております。
それでは、10分弱、今までの各委員の御発言を踏まえて御自由に御議論いただく時間が皆さんの御協力によって残せましたので、それぞれの委員の方々の御発言を受けて、この点を強調しておきたいとか、この点についてコメントがしたいということがありしたら挙手をお願いいたします。
松本委員、どうぞ。
○松本委員 1点です。
先ほど松原委員長のほうが簡単なおまとめをいただいて、大変そのとおりだと思いました。
1点、私も含めて何人かから年齢の問題が出ました。その点はぜひおまとめの中に入れていただければと考えております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
制度の変更の中で年齢のことは私も含めておりました。ほかにいかがでしょうか。
加賀美委員、どうぞ。
○加賀美委員 在宅支援の話がありましたが、これについては明確に公費負担ということをとり上げていく必要があるだろう。それがあって初めて実行できる。家事援助あるいは養育支援というような具体的な実践ができるのだろうと考えております。
○松原委員長 ほかにいかがでしょうか。
松本委員、どうぞ。
○松本委員 もう一点、これは皆様の御発言の中に出なかったので改めて今後検討していただければと。
いろいろな児童相談所の機能の問題が出ました。そこでいろいろ連携をとって、いろいろ意思決定していくプロセスをどう考えるか。ここで司法の関与をどう考えるかというのが1つの論点だったと思います。
もう一点、親なり、子供なり、当事者の意思決定にどのように参画をするか。あるいはそのとき当事者のアドボケートをするような専門職をどのように配置するかという点が今後大変重要な課題になるだろうと考えております。
当事者の参画があるほうがかえって、最初は混乱をしても、その後、いろいろな処遇の方針を決めていく、あるいは実行していくときに有効だということは幾つかの外国の例を見ても学べるところかと思いますので、出なかった論点かと思いますので、ぜひ今後検討していただければと思います。
以上です。
○松原委員長 児童相談所についていろいろな方がいろいろな御議論をされましたので、これは大きな論点になると思います。
西澤委員、どうぞ。
○西澤委員 確認です。私も初め、多くの人が児童相談所の機関を分割しなければいけない、介入支援を担当する機関をそれぞれ分離したものでしたいという意見があったので、それはまとめに繁栄していただきたいというのと、もう一点、話が全然出なかったのですが、特別養子縁組です。今のところは民法上の問題として行われているわけですけれども、これを福祉の範囲の中で養子縁組を推進していくというような新たな制度づくりが必要ではないかと思いますので、よろしくお願いします。
○松原委員長 ほかにいかがでしょうか。
加賀美委員、どうぞ。
○加賀美委員 やや補足でございます。自立の問題が出ておりました。根源的な自立の問題ということで、先ほど星さんからもお話があった18歳を超えた子どもたちの自立が極めて困難である。当然であります。社会的養護の場にある子どもたちが養育ということを前提にした養育のシステムの中で育っているのかという根本的な問題が社会的養護の子どもたちの自立を阻んでいる。つまり、基本的には0~6というような時期にスタートする人格形成期、つまりアタッチメント形成、そういう時点でしっかりとした養育支援が行われているということがあれば達成できるわけですから、虐待問題は養育問題だという捉え方の中で、児童相談所から始まる全ての社会システムが養育というところに視点を置いたシステムとして変えていかなければならないだろうということはあえてもう一度申し上げておきます。
その中で、虐待の世代間伝達というようなことで、私の資料にも申し上げてあるのですが、日本全体の子どもの虐待問題の世代間伝達の防止について2つの視点を明確にしておく必要がある。まず一点、先ほど0~6の話を申し上げました。0~6の社会的子育てシステムの中に、いわゆるアタッチメント形成を基本とするシステムとして、保育所あるいは幼稚園、その他幼児教育施設、そこに90%ぐらいの子どもたちが日中生活をしているわけです。そのシステムがアタッチメント形成を基本とする枠組みの中での養育あるいは保育の現場になっているのかということをまず申し上げておきたい。それをきちっとやれれば、かなり日本は回復できる可能性があるなと思っています。
もう一点社会的養護の子どもたちの問題については、重い発達課題の修正修復のための極めてスペシャルなケアだということをあえて申し上げておきたいと思います。そうしないと、必ず世代間伝達になってしまうということでございます。
以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございます。
最後の御発言になるかと思います。どうぞ。
○藤林委員 最後の発言の機会をいただき、ありがとうございます。
司法関与について少し私なりに整理したいと思っているのですけれども、それぞれの委員の考え方があるわけですが、多分この司法関与についての共通のところは、いずれも岩佐委員の言われるような総括的な司法関与が理想であり、磯谷先生言われるように、それはグランドデザインとして目指していくべきことであると整理できるのではないかと思うのです。そこに至るプロセスが多分委員によって異なる。非常に急いでやっていきたいという思いと、ここは慎重にエビデンスを集めてやっていくという考え方であるとか。児童相談所での準備としてロードマップを提案させていただきましたけれども、どのようなマイナーチェンジを行い、どのように進めていくことが必要なのか、みたいなことも法律家の先生方と、今後それぞれ意見交換とかできればいいのかなと思っております。
以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
一応、この委員会は夏までに、今日も十分夏なのですけれども、基本的な方針を出すということと、先ほど審議官がおっしゃっておりましたように政策パッケージということでは、年末までという展望がありますので、今日、いろいろいただいた御意見を事務局のほうで少し整理していただきまして、それとこれまでの専門委員会の御議論も踏まえるということで、これも幅広になります予防、初期対応から自立に向けた取り組みという、先ほどいわゆる縦の連携と松本委員おっしゃっていましたけれども、そんなことも大切さ、我々認識してやってきておるのですが、取りまとめ案というのをつくって、そのことの御議論をいただくというようなスケジュールで、この我々の状況の中で何ができるか、何をやっていかなければいけないのか、議論を次の回にはしてまいりたいと思いますので、取りまとめ案ということについては、今日の御発言をそれぞれ踏まえまして、私から事務局にお願いをして作成していただくということにしたいと思います。次回委員会については、これを御議論いただきたいと考えております。
それでは、次回日程等につきまして、事務局より連絡事項をお願いいたします。
○小松虐待防止対策室長補佐 次回の専門委員会の日程につきましては、8月10日、月曜日、時間は10時30分から12時までを予定しております。正式な御案内につきましては、追って送付させていただきます。
○松原委員長 それでは、皆様の御協力、しかし、活発な御議論もいただきました。予定をした時間に終えることができました。皆さんの御協力を感謝いたします。
本日は誠にありがとうございました。閉会をさせていただきます。
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