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2015年7月30日 第43回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会議事録

○日時

平成27年7月30日(木)10:00~12:00


○場所

航空会館 201会議室


○議題

1.最近の臓器移植の実施状況等について
2.心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について
3.臓器提供施設の負担軽減に向けた検討について
4.その他

○議事

○菊田室長補佐 定刻より少し前ですが、委員の先生方、全員おそろいですので、ただいまから第43回厚生科学審議会疾病対策部会臓器移植委員会を開催いたします。

 はじめに、委員長及び委員に異動がありましたので申し上げます。自治医科大学の永井前委員長が御退任され、後任の委員長として堺市立総合医療センターの横田先生に御就任いただいております。横田委員長、一言お願いいたします。

○横田委員長 皆さんおはようございます。永井先生の後を受けまして、この委員会の委員長を拝命致しました横田でございます。大変重要な案件もございますので、忌憚のない意見を頂き、委員会の運営に御協力のほどよろしくお願いいたします。

○菊田室長補佐 また、委員として新たに東京医科歯科大学の磯部光章先生に御就任いただいております。

○磯部委員 御紹介いただいた、東京医科歯科大学循環器内科の磯部です。私は、日本循環器学会で心臓移植委員会の委員長をしている関係もありますので、精一杯務めたいと思います。よろしくお願いいたします。

○菊田室長補佐 本日の委員の皆様の出欠状況ですが、今村委員、奥山委員、小幡委員、小中委員から欠席の連絡を頂いております。なお、本日は議題(2)の心臓移植レシピエント選択基準の改正に関して、心臓移植の基準等に関する作業班から東京女子医科大学の布田伸一先生に御出席いただいております。

 次に、事務局に異動がありましたので紹介いたします。61日付けで、移植医療対策推進室室長補佐の上村浩代です。

 それでは、資料の確認をいたします。議事次第の下に資料一覧があります。配布資料として資料1から資料5、参考資料は、参考資料1から参考資料5となっております。御確認いただき、不備等がありましたら事務局にお伝えください。また、机の上に現行の法令、ガイドライン等をまとめたファイルを置いておりますので、議論の際に参考にしていただければと思います。なお、この資料は次回以降も使用しますので、会議終了後は持ち帰らずに机の上に置いたままでお願いいたします。

 以降の議事進行は、横田委員長にお願いいたします。

○横田委員長 それでは、議事に入ります。まず議題(1)最近の臓器移植の実施状況等について、事務局から御報告をお願いいたします。

○阿萬移植医療対策推進室長 資料1及び参考資料1に従って説明いたします。資料1「最近の臓器移植の実施状況等について」では、パワーポイントで2枚の資料を付けております。臓器提供者数の推移(年別)は、今年の6月末現在になっております。前回1月の報告では、平成26年は減少傾向と報告いたしましたが、平成27年に入り1月から6月までの半年間の提供数でいきますと、対前年比で増加傾向に転じているところです。平成27年の上半期と平成26年の上半期で見ると、総数の伸び率では1.4倍、心停止下での提供では2倍を超えております。一方、過去から見るとまだ少ないので、今後ともいろいろな取組が必要になってくるものとは思っております。

 次の臓器提供数・移植実施数ですが、これは半年間の数字ですので、念のため御留意いただければと思いますが、御参照いただければと思います。

 次に、参考資料1に予算関係をまとめております。平成27年度臓器移植対策関係予算では、6.3億円を計上しております。その中で特に、臓器提供施設における選択肢提示対応支援ということで、4千百万円を計上しているものについて少し説明いたします。参考資料12枚目です。選択肢提示対応支援事業の実施イメージです。まず、脳死下での臓器提供を1事例以上経験している各施設に対して、その事例は家族申出なのか、それとも各施設から選択肢を提示されたのかを、まず確認いたします。その上で、選択肢提示を行われている施設については具体的な事例の詳細や、どのような対応をされたかについてさらに詳細な調査をした上で、内容を集約し全ての施設への普及を進めていくことを考えております。

 さらにポイントとして、最後の2行目ですが、選択肢提示を行った内容等の調査対象となった施設については、それに応じた負担軽減策、一部のかかり増し経費などについての費用の補助のイメージですが、負担軽減策を実施し、各施設における取組を支援することを考えております。このような形で平成27年度も進めていきたいと思っておりますので、御報告いたしました。以上です。

○横田委員長 ありがとうございます。ただいまの報告に対して、御質問等ございませんか。いかがでしょうか。

 私から1つ確認ですが、参考資料1の裏面の選択肢の提示を行っている施設の実態調査をして、そういったオプションの提示の支援をしていこうということですが、具体的にそのような形で提示していそうな施設は、今どれぐらい把握しているのかは分かりませんか。

○阿萬移植医療対策推進室長 具体的な施設数については、残念ながら把握しておりません。ですが、この前、日本臓器移植ネットワークが事例ごとの状況を集計し、御家族が申し出られたのか、施設から提示されたのかについて統計を出しましたが、臓器移植法改正後の事例ごとの状況では大体半々ぐらいになっていると承知しております。

○横田委員長 ありがとうございます。委員の方々、御質問ございませんか。

○有賀委員 全体で半々というのは、何施設ぐらいありましたか。

○阿萬移植医療対策推進室長 今、私が半々と言ったのは事例ごとですので。

○有賀委員 事例ですよね。これは、施設の数ですよね。

○阿萬移植医療対策推進室長 そうです。施設の数で言いますと、今、脳死下の提供事例を1事例以上経験している施設が大体150から160ぐらいはあると把握しております。そこにアンケートを送り、御家族からの申出なのか、施設の選択肢提示かを確認します。そういう意味では、事例単位での割合をそのまま当てはまるとすると約半分の80ぐらいになるかと思いますが、まだ具体的な割合は分かりません。15060をベースに調査をいたします。

○有賀委員 どの施設も2例やっているとして、半々だと150から160ですよね。

○横田委員長 私から、臓器提供の施設となり得る施設等にとってみると、こういう雛形があると、恐らく初めてのところはエントリーしやすいと思いますので、是非、いい見本があれば公開していただく形でやっていただけたらと思います。この報告について、よろしいですか。

 それでは議題(2)、心臓移植希望者レシピエント選択基準の改正について、事務局から説明をお願いします。

○阿萬移植医療対策推進室長 資料2-1、基準改正案の新旧対照表が資料2-2、さらに参考資料2-1から参考資料2-5まであります。まず私から、資料の2-1及び2-2、参考資料についても少し参照しながら説明いたします。

 資料2-1、心臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正について()です。本年に入り、2月及び5月に心臓移植の基準等に関する作業班を開催し、現行の心臓移植のレシピエント選択基準について検討を行っております。先生方に御議論いただいたのは、大きく分けて2つの論点があります。

 マル1、平成24年に、心臓移植のレシピエントの適応基準、これは選択基準とは異なり、心臓移植の適応があるかどうかの基準です。これは学会の先生方に自主的に定めていただいている基準です。その中で、望ましい年齢が「60歳未満」から「65歳未満」に拡大されたことを受け、選択基準では60歳未満の候補者を60歳以上よりも優先する形といたしました。これについては、一定数の症例が蓄積した後に、臨床成績などを踏まえて見直しを行うことになっておりました。今回、移植を受けた患者さんの状況の検証を行っています。

 マル2、現行の選択基準においては、ドナーが18歳未満の場合、医学的緊急度がStatus1、これは補助人工心臓などの装着を行っている場合ですが、18歳未満及び18歳以上のレシピエントが、補助人工心臓の装着などを行っていない18歳未満のレシピエントよりも優先する形になっております。今回この扱いについてどのようにするか、議論を行っております。1ページ目の下は、参考としてレシピエント選択基準の(抜粋)を掲載しておりますので御覧ください。

2ページ目は作業班での検討結果です。マル1について、平成261231日までに実施された心臓移植の後の年齢別の生存率などを見た結果があります。ここで参考資料2-1及び2-2を見ますと、心臓移植について、高齢の方への移植がどれぐらい増えるかということも1つのポイントであったわけですが、55歳以上ではありますが、数字的にいうと、それほど割合が増えていることはありません。参考資料の2-2では、心臓移植の生存率があります。症例数が少ないこともあり、55歳で区切っております。55歳以上で見ると、心臓移植手術を行った後の生存率が、55歳未満と比べてかなり有意に低いこともあります。このようなことから、資料2-1に戻っていただきますと、現行の順位についてはそのまま維持することが妥当との結論を作業班では頂いております。

 また、現行の選択基準においては、ドナーが18歳未満の場合には、18歳前後でレシピエントの優先順位を変えております。ドナーが18歳以上の場合には、60歳前後で優先順位を変えていることを踏まえ、今回ドナーが18歳未満の場合にも、60歳前後で優先順位を変えるということ。要するにドナーが18歳未満の場合には、18歳前後と60歳前後で区切りを付けるべきとの結論とされております。

 さらに、マル2Status118歳以上のレシピエントとStatus1及び218歳未満のレシピエントの全体の予後を検証したところ、後者は前者と比較して下回っている結果が示されております。これは後ほど布田先生から細かく御説明いただければと思います。そのようなことも踏まえ、作業班ではレシピエントの優先順位について変更すべきとの結論です。

 さらに、18歳未満のレシピエントが優先されるところについては、現在でもドナーが18歳未満の場合に限られていることを踏まえて、同様にドナーが18歳未満の場合に限るとの結論とされております。その後、引き続き心臓移植の適応となる疾患の状況などを踏まえた優先順位の評価について、検討を行うこととされております。このような作業班での検討結果を踏まえ、次のような形での改正を提案させていただければと思っております。

 ポイントとして2点説明いたします。新旧対照表の3ページ目を御覧ください。臓器提供者(ドナー)18歳未満の場合です。右が現行、左が改正後の案です。ドナーが18歳未満の場合に現在では、補助人工心臓などが装着されているStatus1が最優先され、その中で18歳未満及び18歳以上となっております。それについて、新しい改正案においては18歳未満の年齢の部分が最優先され、Status1Status2。次にStatus1として18歳以上、さらに60歳前後で区分けする。その後にStatus2、同様に18歳以上、さらに60歳前後で区分けする形の案として提案させていただければと思っております。

 また、これまで「医学的緊急度」という用語を使っておりましたが、18歳未満であるということで予後が悪いという医学的な評価も加えることになる中で、「医学的緊急度」という用語がどうかという議論もありました。これは用語の問題ではありますが、「治療等の状況による優先度」と用語を変えております。説明は以上です。

○横田委員長 それでは、これは作業班のほうで検討されたということですので、本日お越しの布田参考人から追加で御説明をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○布田参考人 東京女子医科大学の布田伸一です。私は、日本循環器学会の心臓移植委員会心臓移植適応検討小委員会委員長を拝命しておりまして、今まで、日本循環器学会に申請された小児及び成人の予後について解析しました。参考資料2-345をご覧ください。

20107月の改正臓器移植法施行により、国内の小児心臓移植が欧米のシステムに近づき、成人の心臓移植例も増加し、また、待機のための植込型補助人工心臓が20114月に保険償還されて、心臓移植申請状況においても変化が認められた時期でした。また、改正臓器移植法施行以降に、成人では65歳未満まで申請範囲が広げられたこともあって、今回の検討においては、条件をなるべく一定にして検討するため、成人は受付時60歳未満までとしました。この対象症例において、国内での移植や、渡航移植に至らずに死亡されたOn-List-Deathの検討を行いました。その対象の内訳は、参考資料2-3の下に書いてあるとおりです。18歳から60歳未満の、いわゆる成人のStatus12、それから18歳未満のstatus12とあり、成人は238例と74例で多いのですが、小児の場合は、改正臓器移植法の後も申請例はまだ成人に比べては非常に少なく、28例、13例でした。

On-List-Deathの検討結果が参考資料2-4と参考資料2-5に記載されています。参考資料2-4は、国内移植、もしくは渡航移植に至らずに死亡に至ったOn-List-Deathの成人全体と小児全体の検討を示しています。統計上、有意差は残念ながら出ませんでしたが、Status12を合わせた小児全体41例の予後曲線は、成人全体、Status12312例より下回っているという結果でした。そして、小児全体が成人のStatus12とどうなのかについてが、その次の参考資料2-5に示されています。小児全体のStatus12における、いわゆる移植に至らずに死亡されたOn-List-Deathは、成人Status1On-List-Deathに比べて若干下回っていました。それから、Status2に対しては、観察期間を通して下回っているのですが、統計学的には残念ながら有意差は出ないという結果でした。以上です。

○横田委員長 ありがとうございます。特に、小児のデータを出していただいて先ほどの説明の補足としていただきました。この件については、同じく今回、磯部委員に入っていただいていますが、何か補足される事項はありますか。

○磯部委員 今、御説明がありましたとおりで、阿萬室長から詳細にありましたので、特別な追加ではないのですが、60歳以上の比較的高齢者のレシピエントについては、4年前に60歳未満が65歳未満に引き上げられたということで、その背景には植込型補助人工心臓が保険償還された。その保険償還条件が65歳未満であるということで、その整合性を取ることも1つの背景にあります。今回、法改正後の生存率を拝見しますと、やはりこの年代のレシピエントの術後生存率が比較的低いこともあって、60歳以上の順位を御提案のように変えたいという作業班での御提案だったと思います。

 それから、小児のほうは、もともと基本的には、やはり小児のドナーは小児に優先的に差し上げたいという社会的な背景がありました。ただ、それに当たってはそれなりの医学的根拠と疫学的な根拠が必要ということで、北村作業班の班長から、学会のほうにきちんとした法改正後のデータを出してくださいという要請がありました。それで、布田先生を中心に先ほどお示し頂いた生存率を出したものです。

 法改正後、症例がそれなりに蓄積したので、このような解析をいたしまして幾つか新しいことが分かりました。どういう統計を取るかというのは非常に難しくて、本日お示し頂いたのは、On-List-Deathということなのですが、当然、これは移植された方は除いてあるわけです。ですから、この中に、国内、国外の移植をエンドポイントに含めると、小児のStatus12も含めて、成人よりも有意に悪いというデータが出て参ります。ただ、移植を受けたことがこの検討に影響することも考えて、厚生労働省とも相談して、この形であれば納得できるデータではないかということで、出させていただきました。結論として、小児のStatus12も含めて成人よりも予後は同等ないしそれ以下と言えます。こういう根拠を持って、18歳未満の方に、18歳未満のドナーは18歳未満のレシピエントに優先的に、Statusにかかわらず、一応、12の順番で提供することを提案しました。以上です。

○横田委員長 ありがとうございます。ということで、心臓移植希望者の選択基準の改正について御説明を頂きました。論点は2点ありまして、まず、資料2-12ページの上の所、マル160歳前後での優先順位については、先般の変更後のとおりでいいのではないかということが1点です。この点について御意見ございませんでしょうか。60歳以上の成績の悪さをもってすれば、やはり差を付けておいてもいいということで、現行のままでいくということでよろしいですか。

( 異議なし)

○横田委員長 はい。異議がありませんので、一番については現行どおりで選定をしていただくことでよろしいかと思います。マル218歳以上を、あるいは18歳未満をどう扱うかということについて御意見を賜りたいと思いますが、いかがですか。

○山本委員 私は、反対ではないのですが、ただ、先ほどの布田先生のお話ですと、これは結局、有意差はなかった、証明できないということですか。客観的なデータとしては出ていないという。

○布田参考人 統計学的に、有意差有りをP<0.05としますと、そこに至らなかったということです。

○山本委員 有意差がきちんと客観的なデータとして出ていなくてルールを変えるということは、果たして説得性があるかどうかを考えなければいけない問題だろうと思うのです。私は反対ではないのですが、今後、ですからデータをもう少し蓄積していただいて、もう1回またここで出していただくということが可能であるかどうかということですが。

○布田参考人 いろいろとデータを分析しましたが、改正臓器移植法施行後まだ5年未満ということで、小児の症例がそれほど蓄積されておらず、例数の関係でどうしても統計学的に有意差を求められなかったというのが正直なところです。

○山本委員 やはり、これはルールを変えることによって不利益を被る人も出てくるわけです。ですから、その点、もう少し慎重と言いますか、データをきちっと蓄積していただけると大変有り難いと思います。

○横田委員長 山本委員の御説明は、変えるに当たってのきちんとした有意差を持ったデータではないのでということですが、その一方で、傾向としては表れているので、提案の意見については決して反対ではないということですね。

○山本委員 はい。

○宮坂委員 聖路加の宮坂ですが、基本的に賛成です。移植された方が含まれない統計ですので、発表に際してはあくまで傾向としての話であるとの表現を使うことになると思います。ただ、この指標での比較が良いのかは分かりません。もし表向きに出せるのでしたら、移植された方を含めたらやはり小児の成績は悪いのだというデータを出すなどして説明するような工夫が必要です。

○横田委員長 実際、先ほどの磯部委員の御説明の中で、移植を受けた方も含めてこの生存曲線の上に乗せてしまうとどういう形になるのでしょうか。

○磯部委員 布田先生のほうから御説明ください。

○布田参考人 5月のときの作業班の議事録に既に記載されていますが、エンドポイントを死亡、または移植にいたしますと、18歳未満の小児においては、Status12において有意差は認められないということでした。成人においては、Status12に比べて統計学的に有意に悪いという結果でした。そして、Status1同士で比べると、Status1の小児は成人のStatus1より有意に予後は悪く、Status2においても、小児のStatus2は成人のStatus2より有位に予後は悪いということで、エンドポイントを死亡及び移植として分けると、一番悪いのが、とにかく小児のStatus1、次いで、成人のStatus1と小児のStatus2、そして成人のStatus2という順番でした。

○横田委員長 ということだそうです。今の順番が、恐らく傾向として今回の選択基準に変える根拠になっているのだろうと思うのです。ほかに御意見ありますか。

○相川委員 小児の心臓の、特に小さい子に関しては提供の数が極端に少なくて、6歳未満は今まで3例しかないわけですから、これはサイズマッチングで考えると、やはり小児に行く機会が小さい子供に関しては非常に少ない。この統計では海外に行く子供たちも入っているのですが、小さい子供たちはほとんど海外で心臓移植を受けているのが現状であります。それも、イスタンブール宣言以来、国際小児移植学会から渡航移植は行わないようにと日本は批判されているのです。そういうことを考えてみると、やはり国内で小さい子供に対して提供のチャンスを増やすということは、そういう国際世論からも考えて、これは妥当な意見だと私は思います。

 もう1つは、心臓の生存率が、参考資料2-2を見ていても、18歳未満に関しては10年で生存率は91.7%と、かなり成績がいいわけですから、移植を受ければ、54歳より超える年齢よりもはるかに成績がいいと、これはもう有意差が出ていますので。提供された限られた数の臓器を有効に生かす点から考えても、子供に関しては有効に使えるのではないかという結論に私はなると思うのです。ですから、できればこの意見に私は賛成したいと考えています。

○横田委員長 相川委員の御意見でした。ほかに小児の選定について御意見はありませんか。

○有賀委員 御家族、要するに移植医療に身内の心臓が使用されるという、ドナー側の御家族から見れば願わくは若い人にと言うか、そういう気持ちというのは結構あると思うのです。ですから、そういうことは、いわゆる統計的有意差うんぬんだとか、生存率がどのようなとかいう客観的な、いわば場合によっては科学的と言うか理屈の世界と言うか、そういう話で議論しなければいけない部分に比べると、情緒的で取り上げることが難しいジャンルなのだと思うのです。私自身は、やはり人の心をという観点からすると、できるだけ若い人に行ったほうがいいと思う心情というのは、社会全体として何とか汲んでいくような共同体でありたいなという気がするのです。その部分を考えると、今までの議論は確かにサイエンティフィックで大変有意義と言うか、ここならではの大事な議論だと思うのですが、私は、御家族の人たちの心の部分を何とか汲み取るような、そういう場面も是非という感じです。ちょっと、別に国民を代表しているわけではないのですが、長年生きてきて、やはり人の心って大事だなとつくづく思う次第で発言しただけです。以上です。

○横田委員長 ありがとうございます。有賀委員の人となりが分かる発言ですが、有賀委員ないし相川委員も言われていることはそのとおりだと思います。

○佐野委員 岡山大学の心臓血管外科の佐野です。私のところにはたくさんの複雑心奇形の子が入院をしていますので、そういう施設から少しお話をさせていただきたいのです。議論に出ているような科学的なことはすごく良く分かるのですが、相川委員が言われたように、日本では余りにも小児心臓移植例が少ないので、有意差は検証してもなかなか出ないと思います。外国では、当然のことですが、症例がたくさんありますから明らかに有意差があります。

 もう1つの問題は、例えば複雑心奇形で手術をしている子や家族は、出来たら治療をしている施設でしてほしいという希望が強いので、他施設で移植だけすることに抵抗がある家族は移植登録を希望しません。岡山大学では小児の心臓移植は今はできないので。登録せずに亡くなっている子は実はたくさんいます。そういうのを含めると、やはりStatusでも非常に悪いと思うのです。また移植登録を真剣に考える御両親は、できたらドナーは若い子にしてほしいと御両親は皆さん言われます。そういうのも含めると、有意差はないかもしれませんが、世界のデータからすると有意差はあると思いますから、今回変えていただければと思います。

○横田委員長 ありがとうございます。ほかに御意見は。

○宮坂委員 聖路加の宮坂です。先ほどと全く同じ意見ですが、有意差だけで言うのは無理ですので、それ以外の状況を説明するのが大事だと思います。症例数の少ない子供では、いつまでたっても統計的には差は出ないです。つまり、統計的に出なければいけないということだけに固執することはできませんが、逆に、この委員会はそうした場合にでも結論を出せるいいところだと思うのです。

○横田委員長 貴重な御意見を頂きました。

○渡邊委員 小児の症例を増やすのはとても難しいかなと思うのは、臨床をやっていて、親御さんから提供の申出があったとしても、やはり、アクシデントで外傷とかのときに脳死状態になってと言われたりしていると、どうしてもそこに虐待とかの観点がすごく重みがあって、やはり疑わしいものがあるのだったらもう提供は、というので、そういう状況の中で小児の伸びというのはなかなか難しいのかなというのを最近感じているのです。

○横田委員長 先ほど、相川委員も言われていましたが、やはり、ドナーとしての提供側の数が絶対少ない。それは、お子様という非常に若い人たちの生活環境と関係しているわけです。その中で、臓器提供になりうる施設のほうでも、オプションを提示するときには、御本人、御家族に対する対応というのは大変難しい面もあります。そのようなことも確かに今、渡邊委員が言われたとおりだと思います。この件に関しては、委員の方々は今、話を聞いていると反対はまずないと思いますが、ただ、説得と言いますか、規約を変えるわけですから、もう少し補足的なデータ、あるいは今後引き続き一定の期間を置いてまた検討するという山本委員の補足の意見もありましたので、そういうことを踏まえて、この案をお認めいただくことはいかがでしょうか。よろしいですか。

( 異議なし)

○横田委員長 それでは提案されたとおりに、事務局は改定の内容を発出できるように事を進めていただきたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○阿萬移植医療対策推進室長 今の山本委員のお話との関連です。例えばということですが、新旧対照表の4ページ目の現在の一番下の所を御覧ください。実は、もう今回の検証が終わったので基準からは削除されていますが、例えば、「60歳以上のレシピエントに対する心臓移植については」「2年を経過した時点又は200例に達した時点のいずれかの早い時点を目処として、その臨床成績などを踏まえ再度見直しを行うこととする」というのがあります。こういう2年とか200例とかいうのを入れるのはちょっといかがかというのはあるかと思いますが、大体このようなイメージで、今後検討するという形を入れると、山本委員の言われた話にも対応できると思いますので、これをそういう形でお認めいただけるのであれば、事務局のほうでそういう形で準備させていただきたいと思います。

○横田委員長 最後のその他の所に、今後、数がどうかは別にして、見直していきますということを付記することで事務局は対応したいということですが、よろしいですか。山本委員、それでよろしいですか。

○山本委員 ありがとうございます。

○磯部委員 学会として、引き続き、今後症例がどんどん増えていくと思いますので、引き続きデータを出して検討させていただいて、疑問にお答えしていきたいと思います。ありがとうございます。

○横田委員長 それでは、この御提案いただいたマル1マル2については、いずれもお認めいただいたということでよろしいでしょうか。

 それでは、議題の(3)です。「臓器提供施設の負担軽減に向けた検討について」の説明を事務局からお願いします。

○阿萬移植医療対策推進室長 次は資料3及び参考資料3を御覧ください。臓器提供施設の負担軽減に向けた取組については、前回1月の委員会の場で先生方に御議論を頂きまして、それに基づいて、今対応をこういう形で進めているということを参考資料3で付けております。これについては、別途先生方にも御送付しておりますので、後で御覧いただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 本日は、同じく1月のときに御議論を頂いた内容について、今後の扱いについて、このような形でいかがでしょうかということで、事務局の案を作らせていただいたものです。それが資料3ですので、それに基づいて御説明をさせていただきます。問題の所在については、1月に御報告したのと基本的には同じですが、おさらいまでに少しコメントをさせていただきます。臓器移植法の運用に係るガイドラインの中では、いわゆる「脳死とされうる状態」にあると診断する場合には、具体的な検査方法についてはガイドラインではなく、移植医療対策推進室作成の質疑応答集におきまして、法的脳死判定における検査方法に準じて行うことが望ましいという形で、厚生労働省から示しております。これについては、現場の先生方からいろいろ御指摘を頂いております。例えば、「脳死とされうる状態」の診断で、法的脳死判定における検査方法に準じるということは、実質的に脳死判定は3回行うことになって厳し過ぎるのではないかというお話です。また、御家族からの申出などにより早い時点でその意向が確認されたとしても、「脳死とされうる状態」の診断を行った上でないと法的脳死判定に進めない扱いということは、提供施設の負担になっているのではないかという御指摘です。

 その結果として、臓器提供施設の準備が整わないということもありまして、本人や御家族の臓器提供の意思がかなえられなくなっているのではないかという懸念もあります。特に、臓器移植法の改正5年後ということで、各紙、いろいろアンケート調査の結果が、記事に最近載っておりましたが、正に「臓器提供施設の準備が整わない」ということで、今後はどうすべきかという御指摘もなされているところです。

3つ目の○ですが、脳死下での臓器提供事例に係る検証会議のまとめについては、5月に公表させていただいておりますが、現在のルールが分かりにくいために、施設によって守っている所と守っていない所の乖離がかなり出てきているということで、それは問題ではないかという指摘もなされております。1ページの(参考1)(参考2)は後で御覧いただければと思います。

2ページ、検討1.「脳死とされうる状態」の診断について、法的脳死判定における検査方法に準じた方法で行うことを求めるのかどうかということを検討させていただきました。法的脳死判定、死亡かどうかを法的に確認するための手続については、当然のことながら、引き続き厳密な手法による検査を義務づけることを前提とした上で、この前の1月の御議論では、2つの御意見があったと認識しております。1つ目が、「脳死とされうる状態」の診断においても、一定の指針が必要という観点から、現行どおり、法的脳死判定における検査方法に準じることを求めるべきという意見もあり得ます。

 その一方、「脳死とされうる状態」の診断は、一般的な医療行為の一環として行われるものであり、そもそも「脳死とされうる状態」を定義する必要はない。または、法的脳死判定における検査方法に準じることを求める必要はないという意見も承知しております。

 そのような中で、ある意味、間を取って、どのような形で整理することができるかという観点で考えたものが、次の「対応()」です。これについては、一定の指針を示すという観点から、現在、自発呼吸の消失、これは「脳死とされうる状態」の診断の場合には無呼吸テストまでは行うことは必要ないとされておりますが、そういう前提条件を満たした上で、「脳死とされうる状態」の確認を行う項目については、現行どおりとしていただくと。即ち、深昏睡、瞳孔の固定・散大、脳幹反射の消失、平坦脳波については、それぞれ施設の責任において確認していただくことは、現行どおりにするという前提です。その上で、検査方法については、各臓器提供施設において、治療方針の決定等のために通常行っているものと同様の方法で構わないということで、先ほど申しました質疑応答集の中などに明示するのはどうかと考えております。

 ここでは、特に、平坦脳波の確認が一番問題となってくると思います。そのときに「法的脳死判定マニュアル」による厳密な方法ではなく、各施設が通常行っている医療行為の中で、平坦脳波と判断している方法であれば、それで良いということを想定しております。一方、脳幹反射の消失については、7つの種類の脳幹反射の消失を確認することが法的脳死判定においては求められております。それぞれの検査方法等についても、法的脳死判定マニュアルなどで細かく定めておりますが、この「脳死とされうる状態」について、脳幹反射の消失については、施設の通常やっているやり方で確認してもらえばいいということを前提としたとしても、7項目全てを満たすことを求めるかどうか。または、「脳死とされうる状態」の診断の場合には、7項目ではなく、それぞれの状況で例えば5つとか4つとか、施設として脳幹反射が消失しているということを確認できれば、それでいいということにするのかどうかについては、事務局のほうでは判断が付かなかった部分がありますので、ここで御議論を頂ければと思っております。

3ページ、御家族からの申出などにより、早い時点でその意向が確認されたときに、重ねて「脳死とされうる状態」の診断を行うことを求めるのかどうかという論点です。これについても同様に、マル1、御家族からの申出等により、早い時点でその意向が確認されたとしても、「脳死とされうる状態」の診断を行うべきという意見もあり得る一方、マル2、家族からの申出があった場合には、もう「脳死とされうる状態」の診断は行わずに、具体的に申し上げるとコーディネーターを呼んで、コーディネーターからの説明を聞いた上で、同意をされれば、そのまま法的脳死判定に進んでもいいのではないかという意見もあり得るものと考えております。

 これについては、事務局のほうで整理した前提で申し上げますと、「対応()」のところで、脳死下での臓器提供を前提とする場合には、当然、臓器提供施設の負担にも配慮しながらということではありますが、通常の医療における回復困難かどうかの判断だけではなく、法に規定する脳死判定を行ったとしたならば脳死とされうる状態であるかどうかを判断することを求めるということになっております。したがって、従来の扱いと同様に、家族からの申出等により早い時点で臓器提供に関する意向が確認されていたとしても、「脳死とされうる状態」の診断が行われるまでは、法的脳死判定には進まないという扱いにしたほうがいいのではないかということで、御提案をさせていただいております。

 その中で、具体的なそれぞれの臓器提供施設における診療の流れなどとの関係もありますので、下に※を2つ付けております。それぞれの状況によりまして、柔軟な形で、トータルな形で「脳死とされうる状態」が判断できるのであれば構わないという形にするということで、柔軟に対応できるのではないかというのが1点です。

 また、(検討1.)におきまして、「脳死とされうる状態」の検査方法については、各施設が通常行っているものと同じで構わないということで、やるのであれば「脳死とされうる状態」の診断をきちんとやってくださいとお願いしたとしても、施設の負担にはさほどならないという気もしております。(検討1.)(検討2.)はかなりくっ付いているところがありますので、議論として整理しづらいところもありますが、事務局としてはこのような形で御提案をさせていただいております。よろしくお願いします。

○横田委員長 法的脳死判定前の、いわゆる「脳死とされうる状態」の診断について御説明を頂きました。厳密にやると結局のところ、法的脳死判定に相当する諸検査を3回やることになるのではないかということで、以前ももう少し簡素化できないかと。実際には臨床医は規定どおりのことをやらなくても、それに近いそれ相応のことをやって、「脳死とされうる状態」を判断して、御家族に説明しているのが一般的であるという御意見もあったかと思っております。今の御説明について御意見等ありませんか。

○有賀委員 3ページの下の所に「『脳死とされうる状態』の検査方法は各施設によって通常行っているものと同様の方法で構わないということとするのであれば」とありますが、患者さんが脳死状態になってしまって、最終的に治療を諦めざるを得ない、ということは栗栖先生も多分一緒だと思いますが、脳外科にしても、救急センターの集中治療室などにおいても、今のような状況を医師として、主治医として把握するということにおいては、基本的には「通常行っているものと同様の方法で」と書いてある、この方法でやっているわけですよね。ですから、開頭した後の患者さんに、例えば頭蓋内圧を計っているとか、頭蓋内圧を計ると脳灌流圧が分かりますので、それで血液が流れる水準以下であることを把握するとか、その他諸々のことがあって、患者さんの脳死状態、脳死であるという状態を把握しているのです。そういう意味では、私たちから見れば、臓器提供に患者さんがつながるかどうかは別にしても、確実にこの方が、今言った病態に陥っていて、先の見通しがないという、そのことを決める、そのクライマックスこそ主治医にとっての最も大事な場面なのです。

 そういう意味では、例えば臓器提供になるときに、かつての臨床的脳死の判断をなさいましとか、もっと過激な言い方をすると、脳死判定の全ての項目について、きちんと2回やりなさいということについては、主治医の究極の一番大事なクライマックスの部分からすると、少し作法に準じてやりなさいというものに限りなく近いのです。ですから、社会的な意味がありますので、もちろん死亡を宣告するという、その人の究極的な人権に関しては終焉を意味するものですから、そういうふうな社会的な意味があるので、作法と言うには多少表現の仕方が悪いのかもしれませんが、いずれにしても社会的な意味を持つそれらよりも、はるかに主治医からすると医学的な判断が非常に重要であるという場面をよく理解していただいた上で、各施設において通常行っているものと同様の方法で構う、構わないという問題ではなく、もともとそういうものだと。

 したがって、そういうふうになる前に、御家族がかくかくしかじかで臓器提供うんぬんという話がもし出れば、それは、あなたの言っていることは理解するけれども、治療は続けていますという話になるわけです。しかし、そうなったあかつきには、そうだねということで、判定をしたら「脳死とされうる状態」を確認するかということについて言えば、今のお話のように、無理矢理作法を繰り返す必要はなかろうということになります。

 私自身は、法的脳死判定基準がきちんとあって、そのきちんとした脳死の判定基準を医学的には脳死ですが、満たさない患者もいるという社会的な、いわば私たちから見れば矛盾のあるような社会の規範を十二分に分かった上で、少なくともここで議論されている、やったならば脳死とされる状態の診断というのは日常的な診断。私たちが普段使っている、またはそれぞれの施設がチームとしてやっている、それで十分ではないかと正直に思う次第です。栗栖先生、そうですよね。普段の病棟にいればきっとそうだろうと思います。

○栗栖委員 少し加えさせていただいて、広島大学脳神経外科の栗栖です。前回もお話させていただいたのですが、私たちは時間経過で判断しているわけです。この点で急にパッとこうなったというのではなく、実際、ここに書いてある意識の問題、瞳孔の問題、脳幹反射の問題等を見ながら、そういう状態は変わらない。一方では、尿崩症の状態が起きてきて、それを何とか乗り切って安定してきたら、非常に体動、体位変換等でも不安定になってくる状態とか、そういうことを踏まえて、これはまず間違いないということを臨床的に感じて、それではということになってくると思うのです。

 ですから、その過程を踏まえて、多くはきちんと診断して、そこで御家族に、こういう状況ですというお話をしているわけです。ですから、時間の経過を踏まえて判断をして行っていることを1つ強調しておきたいと思います。1つの時点でパッと変わる病態ではなく、数日間の経過を見ながら判断していると。それは特殊的なことをやってはいなくて、やはり臨床所見が一番大事であるということで、私たちは経過をきちんと踏まえて判断しているということです。最重症、不可逆状態の状況であるということを分かった上で、御家族に説明するというステップを踏まえているという形になっています。

 ここに書いてある御説明があったように、(検討1.)(検討2.)の対応が一部ダブっているというのは、そこにもあると思うのです。通常の診療の中においての判断というのが、(検討1.)の対応の○に書いてある部分で、平坦脳波を毎回毎回確認しているかといったら、むしろこれはいよいよ最後になってやるということになっていて、前の3つまでの段階に関しては、通常の診察でずっとチェックできるわけですから行っているという形になると思います。

 脳幹反射の消失についてもいろいろあるわけですが、もちろん対光反射も含めて、いろいろな反射を臨床的に見られるもので見ていくと。それを全て毎回毎回やっているわけではないが、いよいよ経過として間違いないといったら、もちろんチェックすることになるというパターンできていると思います。実際の流れといいますか、そういうことを踏まえての話です。

○横田委員長 私も委員長で意見を言っていいかどうか分かりませんが、私もどちらかというと救急の医者ですので、今、栗栖委員がおっしゃったように、やはり、自分たちの診療の経過の中で、全てを満たさなくてもその経過の中で臨床医というのはある程度判断している。ただ、御家族に説明をしたりするときに、その中で最も中核になるようなファクターを持って説明するというのは、それぞれ原疾患が何によってか多少違います。なかなか一律に決められないところがあって、場合によっては脳血流がないことをもって説明したりとか、それぞれ状況によって違うかと思います。

 この議論というのは、当初、臓器移植の法案ができる前にかなり議論されたことで、今更、蒸し返す必要はないかとは思いますが、臨床医の判断を重視するという、有賀委員のもと通りの姿に戻してもいいのではないかということもあるのではないかと思います。

 議論の焦点を絞って、御提案いただいた中に、資料32ページ、「脳死とされうる状態」の確認項目、そうは言ってもある程度示しておく必要があるという御提案です。下線が引いてある所は現行どおりとして、その次の下線の所は、検査法については、各施設の通常行っているものと同等の方法で構わないのではないかという文言で明示してはどうかという御意見です。

 先ほど阿萬室長からありましたように、一番下の所の脳幹反射の全てをやるのかということについては、事務局のほうでは決断できないので少しもんでおいてほしいということです。この点はどうでしょうか。

○宮坂委員 小児集中治療での立場からですが、救急と基本的には同じです。実際に脳死判定をするときのプライオリティーは臨床診断にありますので、脳幹反射は本来基本的に全てやるべきだと思います。つまり1番は脳幹反射、その次が無呼吸試験ですが、今回無呼吸はもう一応外れていますので。3番目に脳波ということになります。脳波検査は臨床の場では一番時間も取られますし、その間の治療や処置も止まるという、いろいろなことがあります。ですから、脳波はここに書かれた形でいいと思います。脳幹反射に関しては臨床診断の基本ですので、そんなに時間がかかるわけではないし、一応法的に定められたものを全てやるというのがいいかと思います。

○横田委員長 その点についてはいかがですか。

○有賀委員 我が国においては、法的脳死判定については、世界的に見ても数の多い。そういう意味では、普通のと言ったらおかしいですが、人形の目反応とか、いろいろあるのだと思いますが、比較的手のこんだカロリックテストとか、議論の余地の多い、もちろん局長通知のほうには、三叉神経領域に痛みが与えることによってとしてありますが、脊髄毛様体反射とか、その辺の議論が少しあるようなものも入っていますので、私は普通の脳死判定で出てくるような部分でいいのではないかという気がします。

○宮坂委員 先生と同じことを言っているのだと思いますが、脳幹反射に関しては私も同じでなくてもいいのではないかと思いますが、法的に入っているから仕方がない。しかし、実際、臨床でやっているときには、例えば角膜から順番に入っていくと、途中で動いたらやめます。ですから、本当のときは最後にカロリックでやってもおかしくない。カロリックもフルにやるのではなく、片方をやったときに動いてしまったらもちろん駄目ということで、余り細かく規定する必要は確かにないと思うのですが、全部やらなくていいと書くのは抵抗があります。特に臨床判断が脳死判断だという前提で標準を作った立場でもあるので、そこのところは気になります。

○横田委員長 ですから、脳幹死を確認するのにきちんと7項目を見ておきましょうと。

○栗栖委員 そでで私が言ったのは、通常ずっと経過を追っているときは主立ったものをやって、いよいよ最後にこうだなと思ったら、そこは全部ちゃんとやると。そういう形で見ているのが実状ですが、その経過を追って見ているから、例えば、そこまで来た人がリカバリーされることはまずないという状況できています。

○宮坂委員 一番大事なのは、脳波検査を簡略化することですね。

○栗栖委員 ですから、最終的に、というところに持ってくる段階で、そこでそろえればいいと。その間は、臨床経過と主立ったものできちんと見て追って、そのリカバリーがないということを。

○横田委員長 そうすると、脳幹反射の確認については、7項目は外せないと。

○宮坂委員 脳幹反射は、7項目全部と書くか臨床に準ずると書くかはともかく、どれか良い方法が1つだけでもいいと解釈されるようになると困ります。脳波検査に関しては、残念ながら、今はこれだけ重要視されてしまっていますので、削除は社会的に難しいかと思っています。

○横田委員長 脳波のほうは、規定どおりの形でなくていいですよということは賛成ですか。

○宮坂委員 大賛成です。

○横田委員長 脳波の件は恐らく有賀先生の御意見で。

○有賀委員 これはこれでいいですね。

○横田委員長 この脳幹反射の消失を、何をもって判断するかというところは、やはり、「法的脳死判定の項目に準ずる」と書くのでしょうか。

○宮坂委員 私も、脳幹反射の消失は全項目チェックすべきと言いながら、理論倒れしているのですが、法廷の7項目の中には必要はない項目もあると思っています。

○有賀委員 法的脳死判定をしたとすれば、要するに満たされると思われる脳幹反射の消失ですよね。

○宮坂委員 そうですね。

○有賀委員 変な話、万が一、本当にやってみたら動いたという話が出たら、こんなのは赤恥もいいところですからね。そういう意味では、法的脳死判定をしたときに困らない程度に脳幹反射をきちんと見ておけということだと思うのです。

 いろいろな患者さんがいますから、交通事故だと、本当に脳幹がバンと切れているような患者さんもいますから、そういうふうなときに、もちろん別に見るのですが、ここに書いてある「・・・に準ずる」ということにして、また縛るようなことは余り冴えた感じではないかと思うのです。

○宮坂委員 「準じて」だと、「従って」というように解釈されてしまう。

○有賀委員 何となくなってしまうのではないですか。

○宮坂委員 そうであるのだったら、全部曖昧にしておいたほうがいい。とにかく臨床現場は脳波さえ外れれば相当楽になると思うのです。

○横田委員長 この7項目全てを満たす、あるいは脳死判定に「法的な項目に準ずる」という言葉を入れなくてもよろしいですか。

○山本委員 ガイドラインでは「法に規定する脳死判定を行ったとしたならば」と書いてあるわけです。「したならば、『脳死とされうる状態』にあると判断した場合」ということですので、7項目はやはりないと法に規定する脳死判定を行ったとしたならば、それは満たしますよという判断はできないということではないですか。

○有賀委員 いや、先生、そうではないのです。全ての脳幹反射が独立事象であれば、先生の言うとおりなのです。独立事象でないから、臨床医は判断できるのです。だから、我が国は7つもあるのです。本当のことを言ったら7つもいらないのです。

○山本委員 法的脳死判定だと、それだけきちんと独立項目で入っているわけですね。

○有賀委員 いや、だからそれはそういうふうな書き振りで入っているだけで、あれは医学的に。

○山本委員 いや、書き振りで入っていても、それはやはり独立項目になっているわけですから。

○有賀委員 ですから、先生、議論しているのです。私たちは社会のルールに従わなければいけないけれども、医療で亡くなるまでの間は私たちがやっているわけですから。

○山本委員 おっしゃっていることは分かるのですが、ただ、ここに書いてある「法に規定する脳死判定を行ったとしたならば」という縛りが入っているので、これを無視することはできないでしょうということを言っているのです。

○有賀委員 無視しているわけではないから、独立事象でないところの脳幹反射のどれとどれをどういうふうにしようかという話を今しているのです。

○山本委員 ですから、7項目はやはりきちんと満たすということが前提になっているのではないでしょうかと。

○有賀委員 ですから、脳死の判定を社会的にやらなければいけないときには、我が国ではそうなっているのです。

○山本委員 我が国の議論をしているわけですから。

○有賀委員 だから、医学の議論をしているのです。

○山本委員 医学の議論かもしれませんが、ガイドラインがこうなっているということを踏まえなければいけないということを申し上げているのです。

○有賀委員 だから、医学の議論をしているのです。

○山本委員 医学の議論だけで、全部突破できませんよと。

○有賀委員 だから、困っているのではないですか。

○山本委員 ですから、だとしたら、このガイドラインをどうしますかと。「法に規定する脳死判定を行ったとしたならば」という文言は削除しますかという問題です。

 先生がおっしゃったことだとすれば、医学的な脳死判定を行ったとしたならば、「脳死とされうる状態」でいいということですよ。

○新村健康局長 委員長、仕切って下さい。

○横田委員長 分かりました。

○新村健康局長 これは正式な審議会ですので、勝手にお話されないようにお願いします。委員長の指示に従ってほしいと思います。

○横田委員長 今議題になっているのは、ガイドラインの中に法的に規定する脳死判定を行ったとしたならば、「脳死とされうる状態」。その「脳死とされうる状態」の診断について、今、ある程度簡略化できないかということの話をしていると。

○宮坂委員 脳死判定の前の段階ですから、全7項目でしなくてはいけないとする必要も必ずしもないのですよね。ただ、私が言ったのは、7項目のうちの2つは、私自身もなくてもいいのではないかと思ってはいますので、7つ全部やると書くのは確かにどうかと思います。これに準じたとすればいいかと思います。

○横田委員長 山本委員、これはもともと、もし規定する脳死判定を行うとしたならば、そういう状態ですよということで。

○山本委員 7項目に全部当てはまりますよというあれですよね。

○宮坂委員 脳死判定の場合はそうですね。だが、これはその前の話です。

○山本委員 ただ、これは法に規定する脳死判定を行ったとしたならば当てはまりますよということですよね。

○横田委員長 という状態を判断する。だから、これを厳密に先生のおっしゃるような形になると、本当の意味では3回やらないといけないと言ったのですよね。

○山本委員 そういうことになってしまうと。

○横田委員長 その議論をもう少しそこは簡素化できないかということで、御意見を求めていると理解していただきたいと思います。

○山本委員 ただ、この文言をどうするかという問題が最後残りますよということを言っているのです。

○横田委員長 ただ、日本語の取り方だと思うのですが、もし脳死判定を行ったとしたならば、今の時点で、その状況を「脳死とされうる状態」の事前判断です。本当は全部イコールでなければいけないということですが、その状態を判断したと。要するに、どの判断でするかは医師の裁量だと思うのです。あとで法的脳死の判断が控えているというのであれば、恐らく本当の意味の法的根拠は担保されるはずなので、その前の判断は緩くとは言いませんが、ミニマムリクワイアメントでいいのかなというのは、私個人的には思うのですが。山本委員の文言を変えるまでやらないといけないかというのは、ちょっと。

○山本委員 趣旨は変えるということではなく、これはどういうふうに。

○佐野委員 ガイドラインを変えるというのはできないのですか。

○阿萬移植医療対策推進室長 まず、ガイドラインに書かれている法に規定する脳死判定を行ったとしたならば、「脳死とされうる状態」ということについては、既に今の段階で脳死判定上行われる行為を全て行わなければいけないという話には解釈としてはなっておりません。例えば、法的脳死判定を行う場合には、無呼吸テストは必ず行っていただくことになりますが、「脳死とされうる状態」の診断の場合には、無呼吸テストはそういう形では行わずに、通常の診断の中で無呼吸であるということを確認すれば、そこはいいという形になっております。そういう意味では、今回のガイドラインの中で言うと、必ずしもある意味法的脳死判定の全ての項目をリハーサル的に、もう1回やらなければいけないということにはなっていないというのが1点あります。

 ただ、その意味で「脳死とされうる状態」と判断した場合というのは、各臓器提供施設におきまして、いろいろな状況を判断して、ここまでの状況が確認できていれば、その後に脳死判定をやったとしても脳死と判定されるであろうということを、その医療機関として判断した場合という形にはなっているかと思います。ただその場合、法律上の法的脳死判定をやったときに、脳死と判定と判断されるかどうかという確度といいますか、それはどれぐらいが確定するかというところで言うと、法的脳死判定の同じことをやっていただいたほうが一番望ましいのは望ましいので、そこのバランスをどう取るかという話だとは思います。

 その意味で「脳死とされうる状態」の診断の場合でも7項目の検査が全て必要かどうか。ここまで議論になるとは余り思っていなかったのですが、要するに、7項目は一律にきちんと検査しないと駄目という話なのか、7項目をやらなくても、それぞれの施設において、個別の状況によっては、その中の一部の項目を検査すれば法的脳死判定の場でも、7項目、ちゃんと消失が確認できると判断できるであろうということなのか、という趣旨です。

 宮坂委員もおっしゃった形で、具体的な規定の仕方は確かに難しいかと、今の御議論をお伺いしながら思っておりました。各臓器提供施設において、もしも、自分たちの責任で判断するから、例えば1項目だけやれば脳幹反射は消失したことにしていいという判断をされると、それはなかなか検証するときに、それこそ先ほど有賀委員がおっしゃったように、後から赤っ恥をかくという話にもなりかねませんので、そういうところも含めて、安全サイドに立つと、救急医療現場の先生方からすると、余り現実的ではないのではないかという御指摘はあるかもしれませんが、行政的には7項目をちゃんと検査してくださいとお願いしたほうがクリアカットではないかという話もあろうかと思います。

 しかし、そのところはそういうことではなくて、そういうことまでする必要はないという御議論もあろうかと思います。正にその点が我々のほうでは判断がつかなかったところです。

○横田委員長 やはり、下線の引いてある所で、マル3、脳幹反射の消失というのは、それはそれなりに医学的には非常にしっかりとした意味を持っていると思います。それが、7項目がいいのか、いや、何項目がいいのかという議論になると、恐らく目くじら立てて検査をしないといけないという人もいるでしょうし、臨床的な流れの中で、脳幹反射の消失を幾つか見て判断される先生もいらっしゃると思います。

 そういう意味において、ここの全体像が各施設で行われている判断にお任せしていいという流れと一致するのではないかと思うので、委員長としては、この書きづらで7項目はどうのこうのとか、表に出す必要はないかという気はします。最初に宮坂委員も、そこはしっかりとしておかないといけませんという貴重な意見だとは思いますが、有賀委員も臨床の中ではそうではないといいますか、担当医の判断でやっているという大きな流れがあるので、それでいいでしょうと。医学的にも必ずしも別の事象を見ているわけではないのだというお話だと思うのです。

○宮坂委員 そのまとめでいいと思います。やはり、7項目ではなく、5項目以上とかいろいろ書くと、その理由がまたいろいろ難しいですので、今の書き方でいいのではないかと思います。

○横田委員長 山本委員、いかがでしょうか。

○山本委員 先ほどの御説明で納得いたしました。趣旨は分かりました。

○横田委員長 次に、1つ目の所と連動はしますが、今のような提案された形で、「脳死とされうる状態」を判断するということにして、その前に御家族の意思提示はあった場合でも、脳死とされうる状態の判断は、それに準じて行うかどうかというのが2項目の検討です。御家族からの申し出があった場合でも、そこはショートカットできないということで、2番目は議論の余地は余りないかと思いますが。よろしいですか。ということで、御提案を頂いた方向で、それは事務局におまとめいただいて発出できるようにしていただきたいと思います。よろしくお願いします。それでは、議題(4)、「脳死下の臓器提供事例の検証について」ということで、よろしくお願いします。

○阿萬移植医療対策推進室長 資料4及び参考資料4-1から4-3までを併せて説明します。資料4に基づき説明しますが、参考資料のほうも御参照ください。

 まず、これまでの経緯ですが、「脳死下での臓器提供事例に係る検証会議」は、脳死下での臓器移植が一般の医療として国民の間に定着するまでの暫定的措置ということで、平成12年に当時の厚生大臣が参集する会議として設置されております。以降、現在までに約220例、具体的に言うと217例ですが、検証を行っております。検証済みの事例が100例を超えて以降、おおむね50例ごとに統計的な情報を集約しておりまして、この5月に100例のまとめを公表しています。

 参考資料4-2、黄色の「医学検証のまとめ(ポイント)」なども見ながらお聞きください。医学的検証に関しまして、各臓器提供施設においては、全ての事例で、原疾患に対する的確な診断、そして、行いうる全ての適切な治療、適切な法的脳死判定が行われていたという判断をいただいております。そういうことも踏まえて、検証への対応に係る施設側の負担軽減を含めて、検証の在り方に関する検討が必要という趣旨の御提言をいただいております。我々のほうとしては今回、これは検証会議の先生方とも御相談した上でのことですが、平たく言うと、現在、検証に当たって、各施設からかなり大量の報告をいただいておりますが、かなり経験を積んでいる臓器提供施設についてはそれを減らすことができるのではないかという発想での御提案です。

 次に、参考資料4-3を御覧ください。各臓器提供施設からの提出資料等の扱いで、左が現在のものです。まず、検証会議として作成の上公表するもの、御家族の了承がいりますので全て公表されているわけではありませんが、検証会議として公表する前提で作っている報告書との関連で申しますと、その下に、臓器提供施設のほうから提出していただく資料については、我々は3つのカテゴリーに分けることができると思っています。青の線でくくっているのが、臓器提供施設から実際に報告書として書いて出していただくものの中で、救命治療などの経過のサマリーをいただいております。更に、脳死判定記録書・的確実施証明書、これは法的に作成が義務付けられているものですが、現状報告書を書く場合には、基本的にはこれらの記載を転記して、整理をして、そして、評価をする形で基本的な構図は行われております。しかし、それ以外に、右下の緑で囲ってある所ですが、MRICTなどの画像検査の結果及び脳波記録については必ず御提出いただき、検証会議において、専門の先生方、特に医学的検証作業班において確認をしていただいております。それに加えまして、各施設のほうから報告書として出していただく中で、いろいろなバックデータとして、例えば、病院前救護はどのような状態だったのか、また、来院時の所見・処置、原疾患の治療などの詳細について、具体的なデータも含めて報告書の形で出していただいた上で、熱型表、その他、診療記録、看護記録なども含めて出していただいています。一定要件を満たした臓器提供施設については、左下の部分、施設のほうから書いていただくものの中でいうと、病院前救護、来院時の所見などのバックデータの部分、及び、熱型表、看護記録、その他の診療記録の部分につきましては、出さなくてもいいということでいかがかということです。

 どのような施設がこれを出さなくてもいいとするのか、資料4で説明させていただきます。1ページ目の下から2つ目の○の所です。臓器提供者が18歳未満の場合には、事例はまだかなり少ないということと、あとは特に、先ほど渡邊委員も少しおっしゃいましたが、虐待の場合を除外する対応なども含めて、追加でやっていただく部分もいろいろありますので、臓器提供者が18歳未満の場合には引き続き、全ての資料を出していただくことが必要だと考えております。その上で、各臓器提供施設において、過去5年以内に脳死下の臓器提供を行ったことがあり、また、それ以降継続して、その施設において脳死下の臓器提供を行う体制をとっていること。5年というのは2つの意味があります。1つ目が、カルテの保存年限が5年で、実際に臓器提供事例を行うとき、過去どうだったかを参照するとき、5年以内であれば必ず院内に記録が残っているはずであるという観点です。

 もう1つ、今の時点を起点としますと、これはたまたまですが、5年前に今の脳死判定マニュアルが改定されており、平成22年に新版として出ております。ということは、今から逆算して、67年前だと昔のマニュアルに沿って行われていることになりますので、提供の経験があるとカウントできないのではないかということで、5年と期限設定しております。

 更に、「それ以降継続して当該施設において臓器提供を行う体制をとっていること」という所については、かなり細かい想定になります。例えば、4年前に1回提供が行われていたとしても、3年前、2年前に、病院の改廃や統合などによって一時的に臓器提供を行う体制がとれていない場合もありますので、そこがきちんと継続していることが重要だと思います。これにつきましては、我々は年に1回、6月末現在で、臓器提供施設になり得る施設に対して、提供の体制がとれていますかと、全ての施設にアンケート調査を行っておりまして、それで一応確認できます。例えば、4年前に11例を行って、それから、3年前、2年前、1年前に、我々が行っている調査に対して、提供する体制が整っているという回答をいただいている場合には、そういう所についてはそういう経験ありということで、提出資料についてはかなり削減できるようにすると考えております。

 あと、今後どのような不測の事態があるかも分かりませんので、特に慎重な検証が必要となるような特段の事情はないことという要件も入れております。今の時点で想定しているのは、基本的に無いとは思いますが、例えば、ドナーの御家族から苦情があったというような場合には、たとえ経験をされている施設でも、最初から詳細な資料をバックデータも含めて頂くことが必要かと思います。更に、検証を行っている中で、救命治療の経過のサマリーがきちんと出されていないような場合も含めて、検証作業班及び検証会議において、必要があると判断すれば追加で資料を求めることもあるという前提ですので、その意味では、最終的なアウトプットとしての中身がきちんと作られる形になりますが、その前提として、ある程度の経験をされている所については、負担はかなり軽減されるのかということで、このような形で提案をさせていただく次第です。

 この流れで、資料42ページ目ですが、検証については、臓器提供施設の検証だけではなく、あっせん業務の検証もあります。これについてはこの後に報告もしますが、今、臓器移植ネットワークにおいて、あっせんの誤りの再発防止策や体制刷新の話もあります。そういうことがきちんとできるまでは、あっせんのほうの検証については、例えば省力化するよりも、しばらくは今のままを続ける必要があるだろうと思っていますので、今回の提案については臓器提供施設の関係のみです。以上です。

○横田委員長 検証のやり方について、こういうふうに書いてはどうかということですが、御意見はありませんか。

○宮坂委員 簡略化することはすごく賛成なのですけれど、その中で、「CTMRI等の画像検査結果の記録」と書いてあります。結果は、上の欄の、救命治療等の経過のサマリーに結論なり診断なりが書いてありますので、画像そのものを出す必要はないかと思いますが、どうでしょうか。

○阿萬移植医療対策推進室長 それについては、そのような御意見もあろうかと思いますし、我々も選択肢としてはそういう形もあり得るかと思っておりました。検証会議の先生方とも相談した結果、このような形でさせていただいておりますが、それは臓器提供施設の側の負担と検証するときの、ある意味、どこまで検証するのかのバランスで、このような形で考えているということです。

○宮坂委員 診断結果だけという形もあり得るわけですね。

○阿萬移植医療対策推進室長 はい。ただ、画像検査の結果、脳波記録については、いろいろと準備が大変だというお話もあろうかと思いますが、基本的にはあり物を出していただければいいので、そこはやはりお願いをすべきではないかということで、検証会議とすると、ちゃんともらっておいたほうがいいというお話もあって、そういう形になっております。

○横田委員長 ということだそうです。よろしいですか。

○宮坂委員 私の意見は別ではありますが、ここでは質問ということでした。

○有賀委員 脳波の記録にしても、CTにしても、今は電子媒体ですよね。電子媒体で渡せばいいと。

○阿萬移植医療対策推進室長 そうです。電子媒体で頂ければ。電子媒体で頂いて、それを我々のほうで、検証会議の委員の先生方に見ていただくときにはパソコンを使って。それで、プロジェクターでお見せしていますので、電子媒体で頂くという形で可能だと思います。

○有賀委員 電子媒体で渡すのであれば、普段の仕事の延長線上で、今時は患者さんを紹介したりされたりするときも、電子媒体でいってしまいますので。ですから、普段の景色と余り変わらなければ負担感はないのではないですか。全部フィルムにして出せとか、脳波も、多分私たちは紙で読んだ世代ですが、今時それを紙にしようとなると、それはそれでえらい騒ぎになると思うので。

○横田委員長 近年、いろいろな所で、検証する機会がありますが、画像は電子媒体でというところが多いようです。性能の良いビューアがありますので、日常の診療の照会に付けて出す程度のものでいいということですよね。

○阿萬移植医療対策推進室長 現在、検証を行っていただいている場合も紙では出しておりませんので、全てプロジェクターで見ていただいていますので、そもそも紙で頂く必要はありません。

○宮坂委員 根本的なことかと思いますが、検証委員会が、この脳波は平坦だったことを確認する、そういう責任まであるのかが1つあるのですね。というのは、画像を出したとしても、最終的には平坦脳波という報告があれば、検証の目的ではこれはこれでいいわけですよね。だから、記録はあればいいと、出せと言う必要はないのではないかと思います。そもそも、最終的にデータにならないと、情報として残しても意味がないし、プロしか読めないわけですから。

○阿萬移植医療対策推進室長 宮坂委員が今おっしゃっている話も1つの御意見としてあろうかと思いますが、施設のほうから報告をいただいているものについて、基本的には細かいバックデータを全て紙にして出していただきたいと、そこまではしなくていいだろうということですが。今、検証会議でやっていただいている場合も、例えば、画像検査の結果を一つ一つ見た上で、それについてはこういうふうな診断をしているとかについて、別にそれが間違っているという話にはこれまでなったことはないのですが、それは確かに診断どおりだなということも、その目できちんと確認できるような形にしてあります。あと、脳波についても、脳波のデータを出していただいて、平坦脳波だと施設は判断しているが、本当にそれが平坦脳波なのかどうかについては、実は全部確認していますので、そういう意味では、検証会議の先生方の御意思としては、これはすべからく出していただきたいという話です。

○横田委員長 恐らく検証はナマを使って、検査結果だけの報告ではなくて、判断根拠のナマをもって検証しているのですね。ナマというのは、元の脳波なりがどうだということをもって検証していると。恐らくその点は今まで全てやってきたので、そこまでやるのかというよりも、病院前救護なりのカルテ部分や看護記録に相当するところは省くということと、議論の争点は、1ページに書いてある3つの要件を満たす場合には、簡素化というか、その部分について省きますということ。むしろ御議論いただきたいのは、「5年以内に脳死下臓器提供を行ったことがあり」と書いてある部分と、18歳以下を対象にしますと、それから、特別な理由がある場合も対象になると思いますが、この3点について御議論はありませんか。

○渡邊委員 理解できていないのかもしれないのですが、提出を求めない部分というのは、5年以内に経験した施設と初めて経験する施設にどういう違いがあるのかと。全く必要がないのであれば初めての所でも必要がないのかと思うし、サマリーの書き方が不十分だから初めての所は全部求めると言っているのか、その辺りのところを教えてください。

○阿萬移植医療対策推進室長 基本的な考え方としては、できる限り臓器提供施設のほうの負担を減らす。もともとの前提としては、200例のまとめの中でもありましたように、医学的な所についてはきちんと行われているという前提ですが、その中でどこまで、可能な範囲で臓器提供施設の方々の負担を軽減するかが出発点です。その中で、検証会議のほうでも議論になっていたものが、本来であればバックデータ的なものもきちんと出していただいて、要するに、施設の側の言われていることだけで判断することか、どこまで可能であるかという形で考えていると御理解いただければと思います。ある程度経験をしている所であれば、これまでに脳死下での臓器提供もやっていて、しかも、体制もそれなりに継続していれば、何をやるかということも施設の中である程度共有されているでしょうし、そういう意味では、最初に出していただくものについてはある程度減らすことはできるのではないかと。ただ、まだやったことがなくて、初めてという所になりますと、具体的にどういう形でやっているのか、やっていいのかという所についても、当然シミュレーションはいつもされているとは思いますが、実際にされていないということであると、具体的な状況はどうだったかも含めて、記録もきちんとやっていただく必要があると思いますし、それを見せていただければということです。まだ1回目しかやっていない所については、バックデータも含めてきちんと出していただく必要があるという議論に、検証会議でもなっています。

○横田委員長 臓器提供の経験がないというか、初めての所については全てのデータをもって検証しましょうと。それは常識的なことでしょうね。個別化しているというのは敢えてそういうことで。経験を積み、しかも、既に検証を受けているということで担保されているのではないかとは思いますが。よろしいですか。

○渡邊委員 はい。

○横田委員長 ほかに、何か御意見はございますか。

○有賀委員 今のことに関連して。その施設が経験しているという話ですよね。それでいいと思ったのは、今の御質問に少し関係するのですが、移植医療に結び付けるような提供の全体の流れというのは、あるドクター1人の経験ではなくて、その病院が組織的に対応しなくてはいけないことになるのです。ですから、そういう意味では施設を単位にして、経験があるかないかという話は非常に大きい。最初の1回目の経験は、そういう意味では組織的な対応ができたことを示すが、症例に関して言えば、その組織的な流れの中でいいあんばいだったかどうか、とにかく1回は見させていただきたいと、こういうふうな意味ではないかと思います。

 今言ったように、2回目以降についても、病院は組織的な対応でやっているわけだから、ある看護師さん1人だとか、あるドクター1人だとか2人だとかという問題ではないので、場合によってはドクターが代わることもあると思いますが、病院の組織としてやっているということで、2回目以降は簡略化するというか、ポイントだけを聞けばいいのではないかということで話を進めていけるのではないかと、そういうふうに理解しています。

○横田委員長 実際に、臓器提供側の施設には脳死判定委員会なり倫理委員会なりを確実に通して、そういう背景があって事が起こっているということで言えば、恐らくこの臨床経過の中にもそれが見て取れることになると思います。

 ということで、御意見は多々出ましたが、事務局の提案の3つの条件を満たす場合にはこういう形で、一部のデータ提出を求めなくてもいいということでよろしいでしょうか。

○有賀委員 多分しょうがない意見なのかもしれませんが、宮坂先生などは恐らく子供さんを一杯見ているので、子供さんについてはいろいろと課題もないわけではないから、みんな出してもらいましょうねでいいのですが、18歳というのはほとんど大人ですよね。何とかならないのですか。

○横田委員長 ちょっとその議論は今日はやめましょう。18歳という区切りがずうっと続いてきていますので、この検討できた移植については。それでは、お認めいただいたということで、よろしいでしょう。

 次、議題(5)、日本臓器移植ネットワークの体制刷新等について、これも事務局から御説明をお願いします。

○阿萬移植医療対策推進室長 これは報告ですので、お聞きいただければと思います。既に先生方は報道等でも御承知だと思いますが、臓器移植ネットワークにおいては、昨年11月のあっせんの業務誤り、これについては1月の臓器移植委員会でも報告させていただきました。その後、3月にまたあっせんの業務誤りがありまして、我々としても、このような形であっせんの誤りが続発することそのものについて、単なる個別の再発防止だけでは足りない部分があるのではないかという考え方の下で、臓器移植法に基づく立入検査を行いました。その上で、330日に、厚生労働大臣からの指示として、再発防止のための改革の方針の6月めどのとりまとめ、そして、役職員の責任の明確化などについて指示を出しております。その結果、臓器移植ネットワークにおいて第三者委員会、臓器移植ネットワークとは直接関係のない立場の、理事とかではない方々で委員会を設置して、検証していただいたものを参考資料5として出しております。ちなみに、参考資料5の一番後ろのページに第三者委員会の名簿が掲載されておりますので、別途御覧ください。

 その第三者委員会の結論が69日に出ておりまして、提言のポイントとしては資料5に書いてあるように、基本的にはかなり厳しい御指摘をいただいております。今後は最優先事項として次の3点を至急行うべきある。まずは、システム上想定される問題点の洗い出し及び改修への反映、業務手順書の整備を含めた適切な業務基準の確立、そして、現行体制の刷新、これは常勤理事の交替や理事会体制の刷新等で、そういう提言をいただいております。その他、ここに書かれていますように、組織体制・処遇制度の見直しなどの具体策についても検討すべきで、今、臓器移植ネットワークにおきましては、まずは体制を刷新して、来月初めに臨時の総会を開いて、その議論の中で、総会をベースに新たな役員の選定委員会を立ち上げて、その委員会において理事の推薦をしていただいて、そして、新たな体制を作っていただく。その上で再発防止策や体制刷新案なども検討して、我々のほうに出していただく、そういう流れになっております。ということで、もともと大臣からの指示で6月末となっておりましたが、もう少し時間がかかるかと思います。今後の流れについては適宜、委員の先生方にもまた報告できればと思いますので、よろしくお願いします。私からの説明は以上です。

○横田委員長 ありがとうございました。この報告について御質問はありますか。今後も、動きがあったりどういう変化があったかと、この委員会のほうにも御案内していただくようにお願いしたいと思いますが、よろしいでしょうか。それでは、以上で用意している5つの議題は終わりましたが、その他のところで、是非この委員会でお話しておきたい御意見はありませんか。よろしいですか。

 それでは、これで今日の委員会を終わりますので、事務局にお返しします。

○菊田室長補佐 本日は活発な御議論をいただき、ありがとうございました。事務局におきましては、本日いただいた御意見を踏まえ、必要な手続を進めてまいりたいと思います。次回以降の開催については別途調整させていただければと思いますので、よろしくお願いします。以上でございます。

○横田委員長 ありがとうございました。

 


(了)
<照会先>

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代表: 03(5253)1111
内線: 2362,2365

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