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2015年7月17日 厚生科学審議会地域保健健康増進栄養部会健康日本21(第二次)推進専門委員会(議事録)

○日時

平成27年7月17日(金)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 中央合同庁舎第5号館 共用第8会議室


○議題

1.各項目の進捗状況について
    がん、循環器疾患、糖尿病、COPD
2.報告事項  
    (1) 第3回委員会に関する事項の結果の報告
        スマート・ライフ・プロジェクトにおける減塩の取組
    (2) その他

○議事

○斉藤課長補佐 お待たせしました。それでは、定刻を回りましたので、ただいまから第4回「健康日本21(第二次)推進専門委員会」を開催いたします。

 委員の皆様には、御多忙の折、お集まりいただき、誠にありがとうございます。

 厚生労働省健康局がん対策・健康増進課の斉藤でございます。本日はよろしくお願いいたします。

 初めに、本日の出欠状況ですが、今朝時点では御欠席という連絡はありませんでしたので、委員全体に御出席をいただく予定ですが、公共交通機関の遅れ等により、まだ到着されていない先生も一部いらっしゃいますけれども、開始させていただきます。

 本日の議題の検討に当たりまして、保険局より佐藤保健事業推進専門官が出席されております。

○斉藤課長補佐 また、一部、事務局に交代がありましたので、お知らせいたします。

 地域保健室長が小須田室長より堀川室長に交代しております。

○堀川地域保健室長 よろしくお願いします。

○斉藤課長補佐 次に、配付資料の確認をさせていただきます。お手元の配付資料をご覧ください。

 座席図、議事次第のほか、資料1「健康日本21(第二次)各目標項目の進捗状況について」、資料2、第3回委員会に関する事項の結果の報告、スマート・ライフ・プロジェクトにおける減塩の取り組み。

 以上のほか、お手元には参考資料1から8、委員提出資料1から4を配付しております。

 資料の確認は以上でございますが、もしお手元に配られていないもの、あるいは乱丁等ございましたら、事務局までお申しつけください。

 それでは、撮影のほうはここまでとさせていただきます。

 以後の進行は、辻委員長にお願いしたいと思いますので、委員長、よろしくお願いいたします。

○辻委員長 皆さん、おはようございます。

 それでは、早速議題に入りたいと思います。

 本日の最初の議題は、がん、循環器疾患、糖尿病、COPDに係る目標項目の進捗状況についてということであります。各疾患ごとに事務局から現状等を説明してもらいます。その後、各疾患を専門とされている委員の方々から目標項目に係る現状等を御説明、お願いしたいと思います。

 では、初めに循環器疾患と糖尿病から始めたいと思います。

 津下委員が総務省の会議と時間が重なっているということですので、先に循環器疾患と糖尿病の説明、質疑を行いまして、その後、がん、最後にCOPDという順番にしたいと思いますので、御了承のほどよろしくお願いします。

 では、まず循環器疾患と糖尿病について、事務局から御説明をお願いします。

○寺原たばこ対策専門官 たばこ対策専門官の寺原です。よろしくお願いいたします。

 資料1の2ページ目と3ページ目の循環器疾患について説明いたします。

 循環器疾患には5つ目標項目を掲げております。

 まず、1番目の「脳血管疾患・虚血性心疾患の年齢調整死亡率の減少」について、御説明いたします。この資料のほうは、「項目」「数値目標」「これまでの取組」「評価と今後の方向性」という形で進捗状況のほうを記入させていただいております。

 1番目の数値目標に関してですが、「策定時」「現状値」「目標値」というふうに並べております。脳血管疾患、虚血性心疾患に関して、女性におきましては、平成25年の値を見ますと、目標を既に達成している状況です。男性におきましても大きく減少傾向にあります。こちらはまだ目標には至っておりませんが、かなり低下をしてきております。

 取り組みとしましては、高血圧、脂質異常症、糖尿病、喫煙等の発症リスクに対して、それぞれの取り組みを今後も進めてまいりたいと考えております。

 2番目の「高血圧の改善」は、現状値を見てみますと、男女ともに策定時から変化が認められておりません。こちらに関しましても、栄養・食生活、身体活動・運動、飲酒といったリスク因子、生活習慣の改善の取り組みを今後さらに進めていかなければならないというふうに考えております。

 3番目の「脂質異常症の減少」は、総コレステロールに至りましては男女ともに減少傾向にあります。一方で、LDLコレステロールに関しましては、男女ともに策定時から変化が認められておりません。

 取り組みとしましては、厚生労働省の「e-ヘルスネット」等のホームページを通じて普及啓発をさらに実施してまいりたいと思っております。

 また、特定健診の必須項目としましてLDLコレステロール等が入っておりますので、保健指導のほうの充実も図ってまいりたいと思っています。

 次の3ページに参ります。4番目の「メタボリックシンドロームの該当者及び予備群の減少」になります。策定時と現状値を比べてみますと、該当者及び予備群は若干の減少傾向にありますものの、目標達成に向けてはまだまだ至っていない状況です。

 対応としましては、肥満を初めとした栄養・食生活、身体活動・運動、喫煙等の改善を促す必要がありますので、国民運動であるスマート・ライフ・プロジェクトをより活用したいと考えております。スマート・ライフ・プロジェクトは3つの柱、アクションプランがございますが、一昨年より健診の受診勧奨というものをスマート・ライフ・プロジェクトに追加しておりますので、健診も進めながら、この目標達成に向けて対策を講じていきたいと考えております。

 では、特定健診のほうをお願いいたします。

○佐藤保健事業推進専門官 保険局医療費適正化対策推進室保健事業推進専門官の佐藤です。

 私どものところで関係いたします項目といたしまして、特定健診・特定保健指導の効果検証の結果を取りまとめております。

 恐れ入ります。参考資料の6ページをご覧くださいませ。平成20年度から始まりました特定健診・特定保健指導でございますが、こちらにつきましては、全保険者に義務づけということで、進めさせていただいております。受診率などが少しずつ伸びてきているところですが、なかなか伸び悩んでいるといった悩みもございます。

 一方、特定健診・保健指導の効果について、私どもの保険局の中に、保険者による健診・保健指導等に関する検討会の下に効果検証のワーキンググループがございまして、こちらのほうでいろいろ分析結果をまとめさせていただいております。

 このワーキンググループは、資料の「検討経緯」といったところにございますとおりに、先生方に分析についていろいろとアドバイスをいただいているところでございます。

 今回のこの結果は第三次のものでございます。

 第一次の検証でございますが、特定保健指導の対象となった人たちで特定保健指導を受けた人たちと受けなかった人たちにグループを分けまして、その後の特定健診の結果がよくなっているのか、改善しているのかどうかというものを見たものが第一次でございます。

 第二次の効果検証につきましては、医療費、特に高血圧症、脂質異常症、糖尿病の3疾患に係る医療費について、同じように特定保健指導を受けたグループと受けなかったグループでどういう違いがあるかを見たものでございます。

 今回お手元にあります資料のほうは、第三次といたしまして経年的に取りまとめたものでございます。こちらのほうに概要でございますが、特定健診・保健指導による効果を経年的に見てみようということで調べたものでございます。

 その結果、図にありますように、特定保健指導を受けたグループは、棒グラフで言うと青いところで表示しておりますけれども、受けたグループのほうが腹囲の値とかが大変改善しているといったところが見てとれます。男性、女性ともに有意に差が出ております。

 下の折れ線グラフも、青い線が特定保健指導を受けた方たちですが、こちらも1人当たりの医療費が男性、女性ともに受けなかったグループよりも低く出たというふうな結果が出てございます。

 非常に簡単ではございますが、以上でございます。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、糖尿病につきましても事務局からお願いいたします。

○今井課長補佐 課長補佐の今井です。

 また資料1に戻っていただいて、資料1の4ページ、5ページ目をご覧ください。

 糖尿病の項目は4つございます。私のほうから各数値の推移や取り組みを御説明した後に、保険局より追加の説明をさせていただきます。

 (1)としまして、「糖尿病腎症による年間新規透析導入患者数の減少」を項目としております。これまでの取り組みとして、透析導入のリスク軽減を目的とした糖尿病高血圧の改善の取り組み、スマート・ライフ・プロジェクトにおいて、糖尿病腎症等の重症化予防事業を行った市町村を表彰するなど取り組みを実施しております。

 数値として年間新規導入患者数の人数は減少傾向にあるものの、目標達成に向けて、より一層合併症予防の取り組みなどを推進してまいります。

(2)としまして、「治療継続者の割合の増加」を項目としております。これまでの取り組みとして、特定健診の必須項目にて、空腹時血糖値やHbA1cの数値を計測し、治療が必要な者には受診勧奨を行っております。数値としての割合は、治療継続者の割合は増加が見られておらず、目標達成に向けて治療継続の推奨や受診勧奨の取り組みなどをさらに推進してまいります。

 (3)としまして、血糖コントロール指標におけるコントロール不良者の割合の減少を項目としております。都道府県保健対策推進事業などの事業を通して、各都道府県にて診療連携体制の推進をしております。

 数値の目標として、血糖コントロール不良者の割合は変化が見られないため、目標に向け、重症化予防について、より一層の取り組みを進めてまいります。

 次の5ページ目です。(4)としまして「糖尿病有病者の増加の抑制」というものを項目としております。これまでの取り組みとしましては、特定健診・特定保健指導にて空腹時血糖値やHbA1cの数値を測定し、検査結果に応じて保健指導を行っています。

 数値の目標として、有病者の人数自体は890万人から950万人と若干増加しておりますが、増加の程度は抑制できており、目標達成に向け、現在行っているようなスマート・ライフ・プロジェクトを通じた適切な食事と適切な運動の普及啓発などについての取り組みを引き続き推進してまいります。

 では、保険局のほうよりお願いいたします。

○佐藤保健事業推進専門官 保険局医療費適正化対策推進室保健事業推進専門官、佐藤です。

 参考資料の7ページをご覧ください。

 今、お話がありました糖尿病につきましてでございますが、特に保険者に義務づけられております特定健診・特定保健指導の中でも糖尿病は非常に重要な位置づけでございまして、私どもといたしましては、特に重症化予防ということで、糖尿病から人工透析になるのを防いでいく取り組みというものを支援してございます。

 資料の「背景」のところに書いてございますが、今、保険者においては、特定健診・特定保健指導の結果、レセプトデータが全部電子化され、保管されておりますので、これらを有効に活用しまして、加入者の健康づくりの推進、重症化予防といった事業の取り組みを今、進めているところでございます。私どもといたしましては、26年度、27年度にこうした形の支援をしております。

 事業内容はこちらに書いてございますが、保険者は主治医の先生と連携をとりながら、被保険者、加入者に対してこうした重症化の予防の取り組みを丁寧に進めていくといったものでございます。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、糖尿病について、津下委員からお願いいたします。

○津下委員 委員提出資料の1ページをお開きください。糖尿病分野について、一次予防、二次予防、三次予防の立場から、 少し深掘りして、性・年齢階級別にどのような実態になっているのかということをお示ししまして、対策につなげるヒントを得たいと考えております。

 まず、(1)でありますが、先ほど糖尿病が疑われる者、可能性が否定できない者のデータが示されましたが、これを性・年齢別にグラフにして示したものでございます。

 これを見ていただきますと、特に40代、50代の男女とも糖尿病の可能性または疑われる者が減っておりまして、60代、70代につきましては、大きく変化はしていないという状況であります。平成19年から24年に 性が否定できない者が減ってきていると考えられます。

 次のページをお開きください。

 糖尿病予備群について、4050代が減り 6070代は余り変化がなかったということについて、若干の考察になるかと思いますが、2ページの(2)、性・年齢別の腹囲基準と血糖異常の関連を見たものです。これは国民健康・栄養調査のデータであります。

 上が男性、下が女性でありますが、男性で腹囲が基準値以上と未満で血糖の異常、有所見率がどう違うかということを見ておりますが、例えば30代ですと、腹囲が基準値以上が未満の16.8倍、50代でも2.4倍ということで、腹囲が大きいことが糖尿病のリスクを高めております。

 高齢者でもそうなのですが、1.3倍ということで、その影響は若干小さい。

女性の場合も、40代だと4倍で、若い世代のほうが内臓脂肪型肥満の影響が強く、70代ぐらいになってきますと、もちろん肥満の影響はありますが、それ以外の影響、非肥満でも血糖の異常者がふえるというような結果が、国民健康・栄養調査の結果で出ております。

 その下は、国民健康・栄養調査のときのHbA1cの分布であります。年代別の分布で見ておりますが、5.15.2から0.2刻みになっているので、ピークという言い方が正しいかどうか、微妙なのですけれども、20代から40代までは5.15.2%のところにピークがありまして、そのピークが加齢とともに崩れていくといいますか、下がってきて、右側へシフトしていく様子がわかります。これは国民全体のA1cが加齢に伴ってこのように変化しているという実態が見えてきたということです。若年期からどんどん右側へシフトし、本当の血糖の正常者というのがどんどん減ってきて、60代以上は大体5.6を最頻値とした分布になっていて、それ以降は余り動いていない、こういう状態になっております。

 その解説になるのですけれども、3ページをご覧ください。

 これは、日本糖尿病学会が「第3次対糖尿病5カ年計画」、ことしの5月21日に出した図を掲載させていただきましたが、糖尿病になる原因としてメタボ、生活習慣が大きいし、遺伝もありますけれども、加齢の影響もあるということをしっかり押さえていかなければいけないということ。

 その下にありますが、特に糖尿病患者さんでは60代以上の患者さんが増えてきておりまして、右側「加齢変化」という中に幾つかの要素があります。

 まず、1点がインスリン分泌の低下でありますけれども、体質という点もありますが、若年期の肥満との関連もあります。肥満のためにインスリン抵抗性が高くなると、膵臓に過剰のインスリン分泌の負担がかかります。その結果、インスリン分泌能が次第に低下して、高齢になったときに糖尿病になる高齢期の糖尿病は、若年期の肥満の影響を受けているという観点から、より若年期の対策が必要ということになります。

 一方、高齢者では筋肉量が減るとか身体活動量が減ります。筋肉は糖代謝臓器でもありますので、筋肉量が減ると糖尿病につながりやすいことがわかっています。若年期のメタボ対策、高齢化のサルコペニア、フレイル対策ということが、これからの糖尿病では非常に重要ではないかと考えられます。

 次に、4ページをお開きください。先ほど保険局から特定保健指導の効果について、腹囲と医療費の話が出たのですけれども、HbA1cについて、種々の検査についても全て追跡をして検討しております。

 ほかの血圧とか脂質については、保健指導実施群では低下をするということが見られましたが、HbA1cにつきましては、少しほかの検査と違う動向を示しております。赤が対照群、コントロール群です。メタボでも保健指導を受けなかった人たちは、年々右肩上がりでHbA1cが高くなってきているということが分かります。保健指導を受けた青のところなのですけれども、翌年度は下がり、そしてその後、徐々に上がってくるという結果になっております。

 ということで、メタボの方ではそのまま放置していると年々糖尿病に近づいていくことがわかりました。特定保健指導のように早期の介入が糖尿病の発症をおくらせるという意味で重要な役割をしているのではないかと思います。

 特定保健指導については実施率の課題もありますので、できるだけ受けていただく人をふやし、できるだけ糖尿病の発症をおくらせるというような取り組みが重要であろうと考えております。

 5ページをお開きください。次に、糖尿病を指摘されたことがある人、または糖尿病が強く疑われる、HbA1c6.5%以上で、治療をしている人の割合ということで見ております。先ほどの国全体のデータでは余り増えていないという結果でありました。これを性・年齢階級別で見ていきますと、全体では61.2%が受療していますということでありますが、30代、40代、50代、50%程度であります。女性も40代までの、糖尿病を指摘されたけれども、治療しているという方は4割を切っているという状況で、60代、70代になると、治療実施率7割程度ということになっております。

 5ページの下の段は、HbA1c6.5%以上で服薬しているかどうかということなのですが、実際には高齢者の場合、6.5%以上だからすぐに薬ということではないので、治療していても服薬はしていないという人がいるのは当然と思いますが、どちらかといえば、若年者のほうが服薬治療をしている人が少ないという結果が得られておりますので、このあたりの対策が必要だと思っております。

 次が6ページであります。これはナショナルデータベースではできなかったことなので、愛知県特定健診データベース、105万人のデータで分析しております。HbA1cNGSP8.4%以上の割合についてみています。このデータは、国保43万人、協会けんぽ25万人、健保28万人、共済8.4万人ということで、比較的バランスのよい集団になっております。

 見ていただきますと、計のところなのですが、男性の1.6%、女性の0.7%の方が、HbA1c8.4%以上でありました。男性のほうが2倍多い。透析導入率が男性のほうが2倍なので、やはり高値者を放置しているということが影響しているというふうに考えられます。見ていただきますと、50代の男性は2%とか、高齢者よりもむしろ高い方が多いという結果でありました。

 右側の図は実人数を出しておりまして、黄色が未治療、緑が治療中ということで、治療中でもA1c8.4%以上の方の人数が緑です。黄色は治療につながっていない方です。40代、50代では8.4%以上の半分が治療につながっていないという状況であります。現在、データヘルス計画を進めているところでございますので、データが悪い方で治療につながっていないという方については、大きな損失になっているということをしっかりお伝えしていく必要があると考えております。

 6番は、治療中の人でもA1cが高いということがありまして、治療中の人でA1cの状態がどうか。左側が割合、右側が人数になっております。40代、50代ですと、赤のところ、これはNGSPでなくてJDSで表現してあるので、0.4を足していただかなければいけないのですが、8.4%以上が、4050代だと4分の1の方が治療中でも十分なコントロールが得られていない。高齢者のほうが十分なコントロールが得られている方が多いという結果になっております。

 女性についても同じような結果になっていました。

今回お示ししたデータは健診を受けた方のものでありまして、もう一つその外側に健診を受けていない、未受診の方々がいるということを忘れてはいけないのですけれども、受けた方の中でも悪い状態の方がいる。また、未治療の方がいる。そして、治療をしていても十分なコントロールになっていない。特に若い世代では、治療の継続がどうなのかとか、服薬をきちっとされているかとか、さまざまな観点で受診しやすい体制をつくっていくということも大事だろうと思っています。

 (7)の図、糖尿病腎症による新規透析導入患者数につきましては、2008年ごろより横ばいか、若干下がる傾向が見えてきております。透析については、糖尿病のコントロールだけでなく、高血圧やそのほか喫煙とかの要素もありますので、複合的な要因がありますが、増加の抑制がかかっております。

 透析導入年齢につきましては、2000年の63.4から66.8に上がっております。透析導入年齢は、全体では7580歳の年齢層が最も高いということがありますので、透析患者数の減少以上に、例えば75歳までの透析患者数と言えば、もっと減っている可能性が期待できるのかなと思っています。

 8ページ、対策です。特定保健指導というシステムもあり、治療もでき、そしてコントロールもつけられる手段もできてきましたが、患者さんまたは住民、労働者、働く人がきちっとそれぞれのサービスにつながっていっていないということや、それぞれが分断されているということがありますので、地域でこのようなデータを確認しながら連携を進めていくということが重要かと思っております。

 私たちは、治療中の人のデータがこうなっていますとか、未治療の人がこれだけいますというデータを、糖尿病の医師の会などでも紹介して、病院の中だけでなく、地域にも目を向けていただくというような働きかけをしているところでございます。

 8ページの下、まとめになっております。メタボの対策は効果があった。保健指導の効果だけでなく、ポピュレーションアプローチの効果も大きくて糖尿病は若干抑制されつつあると思います。高齢期については、さらに身体活動の活発化とか、ほかの要素も含めた対策が必要だと考えております。

 二次予防については、治療につなげていくということが大切です。透析や視覚障害については、生活保護の理由として糖尿病の合併症の方が多いというデータもありますので、そういう点でもこれからも対策をしっかりしていく必要があると考えております。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 では、循環器疾患について、岡村委員からお願いします。

○岡村委員 そしたら、引き続きまして、今の津下先生の続きの資料の9ページからになります。循環器疾患につきましては、そこに「公衆衛生における予防」と入っていますけれども、一次予防のところと、運動とか栄養、たばこ、アルコールが非常にかかわってきます。

 二次予防ということになると、これは公衆衛生での定義なのですが、健診ということになりますが、そこにあるように、がん検診の場合は病気そのものの発見ですが、循環器の場合は病気そのものを見つけるのではなくて、ハイリスク者のスクリーニングであるということで、大きな違いがあります。

 ですから、データ結果が出るまでにというのが、タイムラグというのを幾つか想定しなければいけないところがあって、欧米のガイドラインでも大体10年以内の発症・死亡リスクとか、最近だとライフタイムのリスクでハイリスク者を見ていこうという話がありますので、時間軸というのが少し違ってくる可能性があるということを認識いただければと思います。

 次のページです。循環器の場合は、予防については三層構造というのを常に考えなければいけないところがありまして、疫学研究をやるときでもそうなのですが、生活習慣があって、次に危険因子、高血圧とか脂質異常とか糖尿病とか、喫煙だけは影響力が大きいので、ここに入れていますけれども、こういうリスクファクターを持つことによって、最終的に脳卒中や虚血性心疾患を起こすということになります。

 例えばがんの疫学だと、真ん中のリスクファクターのところがあまりなくて、生活習慣からがんという疫学研究になるのですが、生活習慣のところだけを見ておくと、例えば塩が減ったけれども、全然減らないけれども、血圧はどうなったのだという話に必ずなってくるので、積み上げというか、三層になっているということを認識した上で、対策を考えていかなければいけないということかと思います。

 日本人については寄与危険割合とかいろいろ計算するのですが、どう見ても高血圧の影響が一番大きい。あと、男性だけに限ったら、たばこも同じぐらい上がってくるのですけれども、血圧については、エビデンス的には、基本的に80代ぐらいまでは血圧が高くなると死亡発症リスクが高くなるということ、生活習慣の改善で低下させることができるということが、これはインターベンションでも、ヒストリーとか歴史的な分析でもわかっているということです。

 服薬については、重症者の早期服薬というのも非常に大事なことになって、例えば重度の者になったら、もう生活習慣だと改善しませんから、早く見つけて、それは薬を飲ませなければいけないという対応が必要になります。

 そして、指標としては、収縮期血圧が一番予測能が強いということがわかっていますのと、血圧を下げて困る人というのは、これは少しという意味ですけれども、少し血圧を下げて困る人はいないという前提に立っておりますので、国民の収縮期血圧の平均値を低下させるという目標値設定になっております。

 次のページなのですけれども、血圧を下げるということについて、ある程度観察研究、介入研究のエビデンスがはっきりしているものが1から4番までのところで、栄養については減塩と野菜・果物。これはカリウムの摂取をふやすということです。そして肥満者を減らす。

 運動量をふやすということ。

 飲酒量が非常に多い人というのは、当然血圧が高くなるので、そこの対策が必要。

 先ほど言いましたように、飲むべき人は早めに降圧剤を飲んでもらったほうが、先々のコストが低くなるということになるので、いつまでも保健指導だけで引っ張るわけにはいかないということもあります。

 今の目標値というのが、これらの効果を収縮期血圧の集団の平均値の変化に置きかえるという目標設定を現行しておりますので、栄養、運動、飲酒については、それぞれのグループから目標値設定がされておりますので、それが集団全体をどれだけ動かすかということを推定して、そこにありますけれども、血圧は正規分布しますが、山の頂点が4ミリ動くということで、国民の平均血圧を下げるという目標値を設定しております。

 次のページです。この4ミリというのは、個人で見たら誤差みたいになるのですが、集団の4ミリの意味合いというのを委員会等では説明しておりますけれども、これは例えば国民健康・栄養調査で70代の男性で、血圧の平均が140で、標準偏差が17.5とする、こういう分布を仮定すると、血圧の区分によって、そこにいるような分布をされていると。

 山の頂点が4ミリ動くということは、下の図にあるように、全体の分布が左にシフトしますので、色が赤く塗ってあるほうが死亡発症リスクが高い集団ということになりますので、全体の色合いの面積というのはかなり減ることになります。ですから、面積と色の濃さの積というのが最終的な死亡数、発症数ということになりますので、山が左のほうに動くと、全体の死亡数が減る。そういう推計をしています。

 ほとんどのものは既存の厚生労働省の統計からとれるのですけれども、血圧カテゴリーごとの循環器疾患死亡率というデータは公的にはありませんので、それは疫学研究からとってくるということになります。

13ページの上に「厚生労働科学研究によるPooled解析」と書いていますが、これは1地域だけだと代表性がどうかという話になってきますので、北から南まで代表的なコホート研究に全部入っていただいた統合研究班というのを私のほうでやっておりますので、そこから血圧区分別の死亡率を算出して、13ページの下のところに死亡率の推定というのがありまして、年齢区分別に例えばSBPが動くと死亡率がどのように動くかという推計がそのグラフのほうでされています。

80代の110mmHgのところだけ人数が少ないので、ちょっとばらけていますけれども、基本的にはどの年代でも右肩上がりで死亡率が上がるということ。それから、年齢が変わると、実際の絶対リスクということになるのですが、死亡率、縦軸が物すごく高くなるということがこれを見たらわかるかと思います。

 あと、コホートの死亡率というのが実際の集団の死亡率と乖離していますので、そこは実際の一般的な日本人集団の死亡率に合わせて修正乗数というのをつくって、実態に合わせるということをして計算しているということになります。

 次のページをお願いいたします。高血圧で死亡率が高くなるのは当然なのですけれども、例えば今の血圧の区分で医療費がどうなるかというのを分析した結果があるのですが、これは1年後の医療費がどうなるかということで、何十万人かの集団でやってみた分析なのですけれども、例えば至適血圧から血圧の区分が上がっていくと、翌年の医療費が上がる。医療費の分析というのは、正規分布しないとか非常にやりにくいところがあるのですが、これは医療費が上位1%に入ってしまうリスクということで、実は1%の人が全体の医療費の25%を使っています。要するに、翌年に倒れて入院するような医療費の使い方ということになるのですが、それが血圧のグレードが上がると高くなりますし、治療が入ると下がるということが明確に見てとれるかと思います。

 だから、血圧の外来医療費は予防コストも入っているという考え方になるので、外来医療には高額の入院を減らすという意味もある程度入っているということを意味しているかと思います。ここは血圧についての整理です。

 脂質異常症のほうはその下に書いておりますけれども、トリグリとかHDLがありますが、基本的に下げて病気が減ったというエビデンスがあるのは、LDL、総コレに対する介入だけです。だから、例えば中性脂肪を下げてイベントが減ったとかいう一般集団でのデータはほとんどないですから、根源的にはこれがポイントです。

 メタボが出てきたのも、LDLを下げても発症する人がいるので、どういう人かという検証をするときに上がってきたということなので、もともとはLDLが本丸だということで、動脈硬化学会では皆、それが前提としてわかっているので、逆に議論をせずに、メタボだけがぽんと外に出てきたという感じになっているかと思います。

 コレステロールについては、予防効果が観察されるのは70代までで、80歳以上について、75歳以上でもそうなのですが、下げて病気が減るというエビデンスというのはありませんので、80歳未満についても推定目標設定をしているということ。

 そして15ページの上のほうを見ていただけたら分かりますが、ポピュレーションアプローチではなくて、脂質についてはハイリスクアプローチの設定をしています。これはなぜかというと、全員コレステロールを下げて大丈夫かということ、すなわち若干低いところの懸念が別途ありますので、これは上のほうを減らす目標としています。しかも、脳卒中に対する影響というのが大きくないのがわかっていますので、虚血性心疾患を減らすという目標設定をつくっているということになります。

 その下は喫煙率の目標で、喫煙については、リスクであることはほとんど全ての観察研究等で一致していますので、これについては、循環器疾患との関連を疑う余地はほぼないだろうと思います。

 ということを踏まえて、16ページの上のところで、先ほどの三層構造の考え方にほぼ対応した形で全体の目標値の設定がされていることが、見たらわかるかと思うのですが、一番下に生活習慣に相当するもの、2段目に危険因子に相当するもの、一番上に実際の脳血管疾患と虚血性心疾患というふうに三層に積み上がっている。

 喫煙はニコチン依存症という考え方と、通常、生活習慣と危険因子を例えば一緒に解析に入れたら、大体生活習慣のほうが消し飛んでしまいますけれども、たばこだけは一緒に入れても全くびくともしないぐらいリスクとして強く出てくるので、喫煙だけは二層目に入っているということになります。

 一番下の層については、血圧についてだけ組んでいるのですが、脂質についてはいろいろあって、はっきりこれをしたらいい悪いということについては議論が幾つかあるので、国の目標にこうしてくださいと入れるのは、ちょっとやりにくいという判断をしたので、一番下には入れていないということを御理解ください。

 これも医療費の関係ですが、引き続き私どもでやっている研究があるのですが、下は実際に危険因子の個数と5年間の年平均医療費を比較。これはした前向きの調査結果です。だから、最初の健診所見を見て、その後5年間の医療費がどのぐらいかかるかというのを見たものですけれども、血圧とコレステロールと糖尿病と喫煙、これらを持っている個数、要するに、0個から3個以上というふうに分けて、実際に医療費がどうなるかというのを見たものがそこになるのですが。医療費は年齢の影響が非常に大きいですから、見ると、だんだん年齢が上がると右肩上がりで医療費が上がっていきますが、丸をつけたところは何を言いたいかというと、危険因子を3個以上持っていると、ちょうど10歳上の危険因子が0個のところと医療費が同じぐらいになるということがきれいに出ているかと思います。

 逆に言うと、一番見込める医療費の効果というのは、その下限ぐらいだろうということで、年齢を乗り越えてまで減らすことができるかどうかというのはかなり難しいということが、これで見てとれるかと思います。

 今後の方向性なのですが、17ページの上は、市町村の現行の受診率等をもとに、特定健診の全体へのインパクトというのを推計してみたのですが、受診率が3割しかないとすると、そのうちの有所見者が3割。保健指導を受ける方がそのうちの2割ぐらいで、保健指導に参加して、3分の1が脱落して、受けた人の半分が改善するということになる。母集団全体への効果というのが0.6%しかないというはじき方になってしまいます。

 企業等はもっといいと思うのですが、実際は年齢が高いところからほとんど循環器疾患が出てきますので、この数値を上げようと思うと、結局、受診率の分母の土台のところをふやさないと、なかなか全体へのインパクトが出てこないということです。

 未受診の理由というのが下にありますけれども、これは以前私どもが未受診者対策の研究班というので全国調査をしたのですが、受けていない理由は、医師を受診しているから受けませんという理由が一番多いのですけれども、あとは体調が悪くないから受けない、自称「健康だから」というのが多く、「時間の都合」というのがより高い。これは集団をいろいろ変えて調べたのですけれども、どこでやってもこの理由が挙がってくるということになるので、これは多分共通的な問題なのだろうと考えております。

 最後のページは、今後の方向性ということになります。今の受診率等を含めまして、市民啓発方法の開発ということがまず大事になってきて、目の前にいる人はまだ何とかなるのですが、来ない人に対してどう働きかけるかというのが、これは全ての分野の共通課題だろうと思うのですが、啓発の仕方を科学的に考えるということが必要になってくるのではないか。

 あと、環境整備というのも大事で、やはり法的な整備をしていただくと否応なく動き出すというところがあります。

 運動施設であるとか、分煙・禁煙の徹底。適正飲酒につながる環境の検証ということで、たばこにも甘いですけれども、お酒にも結構甘いというのが、特に日本の社会にはあるかと思います。

 働き方も、健康に時間を割ける働き方を考えなければならないということ。

 最後に、今後、生活習慣、危険因子、因果関係等の検証はさらに必要でして、しかもこれも結構誤解があって、最近でも食べ物のコレステロールの摂取と血清のコレステロールの値がごちゃごちゃになって報道されていたりして、非常に問い合わせが多くてこちらも困っていたケースがあるのですが、そういう方向を含めて考えいかなければいけないと考えています。

 最後に、先ほど年齢調整死亡率が、男性は目標を達成していますという話が出ていましたが、循環器の対策の本丸は、高血圧の平均値部分と高コレステロール血症の部分の平均有病率のところです。年齢調整死亡率では、循環器は非常に高齢者の死亡原因であることに留意すべきです。例えば75歳で切ると、がんは、75歳以上の死亡者と75歳未満の死亡者がほぼイーブンになるのですが、循環器疾患は、75歳以上で亡くなる方が、それ以下の年齢層と比べて2.5倍ぐらい多いのです。

 ですから、年齢調整をすると、特に昔の基準人口を使うと、当時の80歳以上とかの高齢層はかなり少ないので年齢調整上の問題があります。物すごいよく出る可能性があって、そこはもともとわかっているのですが、こちらで勝手に基準人口をつくるわけにもいきませんので、その辺の課題は今後残ってくるかなというふうに考えております。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 これまで糖尿病と循環器疾患について御説明いただきましたけれども、これにつきまして、委員の皆様から御質問、御意見、いかがでしょうか。深井委員、どうぞ。

○深井委員 深井です。先ほどの津下委員と岡村委員、いずれにも分野間の分断とか、健診を受けない人にどうアプローチをするかというのが大きい課題になっていますし、例えば歯の問題で言うと、健康日本21(第二次)では、NCD予防と重症化防止の基本的な要素として運動、栄養、休養、たばこ、アルコールや歯と口の健康というのが入っていることはご承知の通りです。了解済みだと思うのですが、例えば津下委員のスライドで言うと、3ページ目の日本糖尿病学会のこの図とかいうことが出てくると、どうしても医科と歯科というのは情報が分断されていて、この例で見れば、糖尿病等の合併症が歯周病にはなっているのですけれども、歯周病のコントロールがうまくいかないと、血糖値のコントロールがうまくいかないというエビデンスも出てきています。何より糖尿病を指導するときの生活習慣なり食生活指導の際に、歯の数が少なければ、炭水化物がふえたり、野菜や果実の摂取量が減るというエビデンスもはっきりしていたり、あるいは肥満との関係も出ていますので、そういうことをこの会議で発信する場合に注意をして、歯科の情報もそこに入れたほうが効果が上がります。

 また、例えば8ページ目の最後のスライドも、日本糖尿病学会のスライド等が図示されて出ていくと、一般の人たちが見るときに、歯や口の健康のところにフォーカスが当たりにくくなりますので、今後、この会議ではぜひそういうふうな取り組みとデータの示し方をしていただきたいと思います。

 それは循環器疾患に対するアプローチでも同じことなのですけれども、2008年ぐらいにメタアナリシスで歯の数や歯周炎と循環器疾患とのイベントの関係が出ています。また、2012年の台湾のデータですけれども、1万人規模で7年間追跡した結果、定期的に歯石除去等を受けていると、心血管イベントが3割ぐらい減になるというような報告が出ています。どうしても歯科の場合には、ナショナルデータベースで電子レセプトの状況が遅れていましたが、今、レセプト数で9割、医療機関数で8割ぐらいになっています。これから国のデータ等が出るまでの間は、疫学データあるいはコホートデータ等を参考に議論を加えていけばいいし、例えば歯科患者の中で昨年行った公益財団法人8020推進財団のした調査では、1万2,000人規模の歯科患者を対象に、全国調査をすると、1週間の調査期間内で受診した60歳台の初診患者で糖尿病の現病歴のある人が10%弱いるのです。ですから、そういうふうに分野間で協力をして取り組んだほうがより効果的だと思いますので、ぜひ今後検討していただきたいと思います。

 以上です。

○辻委員長 どうぞ。

○津下委員 ありがとうございます。

 歯科の情報がなかなか医科に入ってこないという現実がありますし、こういう公衆衛生的な場面では、私、今回できるだけオフィシャルな絵がいいだろうと思いまして、先ごろ糖尿病学会がしっかり糖尿病対策に取り組まれるというものを引用させていただくことで、学会も病院の中の医療だけではなく、地域に取り組むという姿勢を知っていただくという観点で出したのですが、口腔保健、歯科に関して十分な記載がないということに関しましては、やはり情報の十分な。日常臨床でのコラボレーションが進んでいないことの一つのあらわれかもしれませんし、私もこういう仕事をするようになって、ああ、そうなのだと思いましたけれども、病院にいるときには、糖尿病の合併症というと、目と腎臓ばかり気にしていたという実態もありまして、情報のやりとり、そういうことも先生からいろいろ情報をいただいて発信できるようにしたいと思いますのですので、今後ともよろしくお願いいたします。

○辻委員長 よろしいですか。

○岡村委員 同感です。

○辻委員長 中村委員、どうぞ。

○中村委員 歯科に関連して、糖尿病と喫煙の関連でちょっとコメントをさせていただきます。今や喫煙と糖尿病の発症については、Surgeon Generalのレポートの最新版(2014)で喫煙と糖尿病の関係が確実と示されており、今や糖尿病は喫煙関連疾患と位置づけられています。にもかかわらず、今日の津下先生が提出された資料の3ページに糖尿病学会が作成した糖尿病の発症と重症化の関連要因が引用されていますが、喫煙については触れられておらず、今後、糖尿病学会としてきちんと関連性を指摘して取り組みをしていただければと思っております。糖尿病学会は、多くの学会が禁煙宣言をする中で、今なお禁煙宣言をしていません。そのことも含めて、学会としてきちんとやっていただくことが、今後糖尿病の予防対策、また、重症化予防ということでも重要だと思います。

 津下先生に申し上げることではないのかもしれないのですけれども、よろしくお願いします。

○津下委員 糖尿病の発症だけでなくて、合併症には喫煙が非常に大きい。例えば足の壊疽の方や透析に対して喫煙というのは非常に大きな影響があるということで、その辺は臨床医も非常に認識しておりまして、患者さんの指導の中には必ず入っているというふうに思いますが、禁煙宣言については私も存じ上げなかった。済みません。このあたりも、データで喫煙者と非喫煙者で糖尿病の発症がどれだけ違うとか、それから合併症の進展がどれだけ違う、そういう疫学的な情報もこういう中にどんどん取り込んでいって、またきちっと見ていきたいと思います。また情報をよろしくお願いいたします。

○辻委員長 吉村委員。

○吉村委員 深井先生の内容に関して、私どもは、ロコモの原因疾患としてOA、変形性関節症、骨粗鬆症が大きな原因になっておりますが、それらと糖尿病の影響が言われておりますし、また、メタボの個数と変形性膝関節症の発症、あるいはロコモの個数とメタボの個数、お互いの発症の関連について、この間論文も出まして、メタボとロコモというのは、予防という観点から見ると非常に親和性があるので、糖尿のときも運動、栄養に関してはロコモも同じですので、お互いに一緒になって両方とも予防のほうに進めていければというふうに考えております。

○辻委員長 どうぞ。

○津下委員 糖尿病の骨粗鬆症の場合に、骨密度が下がらなくて、カルシウムはあるのだけれども、骨質、骨の蛋白質が変性して脆弱性が高まるということで、そういう観点でもロコモとか整形外科的疾患に着目しているのが一点。

 それから、糖尿病になると、大抵医者から運動しろと言われるのですね。そうすると、いきなり1万歩歩いて膝を痛める人が結構いて、その人の関節障害とかそういう状態に合わせて、適正化とか段階的に進めていくこととか、そういうところもしっかりと丁寧に指導していく必要がありますので、その辺も健康運動指導士さんとか、OTPTさんの力もかりながら一緒にやっていく必要があるのかなというふうに思います。どうぞよろしくお願いします。

○辻委員長 よろしいでしょうか。

 ほかにどなたかございますか。谷川先生、どうぞ。

○谷川委員 たばこが出まして、次、睡眠の話をしたいのですけれども、健康日本21(第二次)の111ページから「休養」というのがありますが、初めに「こころの健康」ということが書いてありますけれども、2番目の「基本的な考え方」のところにようやく睡眠というのが生活習慣病のリスクになるということ、エビデンスが挙げられておりまして、特に睡眠時間といびき、睡眠時無呼吸。これは先ほどの岡村先生の高血圧、まさしく睡眠時無呼吸の方については、集団レベルで5ミリぐらいは確実に血圧が上がっておりますし、また、糖尿病に関しましても、睡眠時無呼吸の中等度以上の方は、将来、新たな糖尿病発症の寄与危険割合が10%ということを我々のほうでもコホート研究で示しております。

 しかも余りコストがかかりませんので、睡眠時間といびきとか無呼吸対策というのは、どうも健康日本21を見ましても目標とちょっとずれているなというか、生活習慣病の予防ということからすれば、スペシフィックな睡眠時間とかいびきとか、今後そういうのも入れていただければと思いますので、また今後の検討課題としてお願いしたいと思います。

○辻委員長 ありがとうございました。今の谷川先生の御指摘についてもこれからまた検討していきたいと思います。

 では、次の項目のがんに移りたいと思いますので、事務局から御説明をお願いします。

○高橋課長補佐 がん対策・健康増進課の高橋と申します。

 では、がんの2つの項目について、説明したいと思います。お手元の資料は1番を御参照ください。また、参考資料1も御参照いただければと思います。

 がんにつきましては、項目が2つございまして、1つ目が「75歳未満の年齢調整死亡率の減少」ということを掲げております。数値目標といたしましては、22年の84.3から25年の80.1と減少傾向を認めておりますが、平成27年の目標値であります73.9には届かない見込みということが予想されております。

 これまでの取り組みにつきましては、がん対策推進基本計画に基づいておりまして、こちらの計画では数値目標が設定されております。10年間で20%の減少ということになっておりまして、直近の10年間で算定したところ、平成27年が73.9という目標が設定されました。

 こちらに関しましては、さきのがん対策推進協議会の中間報告におきまして、目標設定がこのままだと難しいということも盛り込まれております。

 こういったことを踏まえまして、今後の評価、方向性といたしましては、喫煙対策、喫煙率の減少、並びにがん検診の受診率の向上といった対策を一層推進していくという方針であります。

 また、本年6月1日に開催されましたがんサミットにおきましては、さらなるがん対策の推進ということで、「予防」「治療・研究」「共生」を3つの柱としました「がん対策加速化プラン」を立ち上げ、こちらは年内をめどに策定を準備しているところであります。

 もう一つの項目「がん検診の受診率の向上」でありますが、がん検診は、お示ししております、胃がん、肺がん、大腸がん、子宮頸がん、乳がんの5つの項目につきまして、平成22年の時点では受診率がおおよそ20%から30%台というところが、平成25年にはおおよそ30%から40%に増加しております。

 取り組みといたしまして、これまで受診率の向上キャンペーンや好事例の共有、また、がん検診のクーポン券や検診手帳などを配布し、職域の検診につきましては、「がん対策推進企業アクション」という事業を通じまして受診率の向上に取り組んでまいりました。

 目標の数値といたしましては、受診率50%というところを目標としておりましたが、こちらにはまだいずれのがんも届いておりません。このため平成27年度も「新たなステージに入ったがん検診の総合支援事業」といたしまして、引き続きがんの検診のクーポン事業などを推進していく方針です。

 また、検診の受診率の向上につきましては、受診勧奨・再勧奨、コール・リコールや、精度管理などの議論もほかの検討会などで進めていくという方針であります。

 こちらからは以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、若尾委員から御説明をお願いします。

○若尾委員 それでは、今のがん対策推進協議会で報告された基本計画の全体目標の達成状況について、御説明いたします。提出資料3の19ページをご覧になってください。

 繰り返しになりますが、がんについては、2007年に第1期のがん対策推進基本計画ができまして、それが2012年6月に第2期に移行しているところです。このときに設定されました全体目標では、2007年のものなのですけれども、そのとき計測可能ということで、2005年の75歳未満の年齢調整死亡率を2015年に20%減少するというのを立てております。

20ページ上側です。20%の根拠としまして、これは2007年当時のものなのですが、自然減10%、喫煙率半減で1.6%、さらにがん検診受診率50%達成で4%、がん医療の均てん化で4.7%、合わせて10%加速して20%減という目標が立てられています。詳しくは脚注にありますホームページの資料をご覧ください。

 昨年度よりがん統計の短期予測という形で、今年度、2015年の年齢調整死亡率の予測を出しました。

21ページの上側をご覧になってください。あくまで予測値という形なのですが、今年度の予測値が薄いところになりますが、76.7ということで、目標値73.920%減に達しないで、17%減というのが全体の死亡率の予測として出ております。

 これを先ほどの算定根拠でありました要因別に見ましたのが、21ページの下側以降です。

 まず、喫煙率につきまして、15年の喫煙率の予測としまして、目標が50%減に対しまして、対数線形モデルでの予測となりますが、26%減という形になっています。目標の約半分しか達成できないということがあります。

 このグラフで×のところをご覧になっていただきたいのですけれども、2010年以降、×がほぼ横並びになっていて、下げどまりになっている状況です。さらに、健康日本21では2022年までに12%を目指すというものがあるのですが、それの根拠は禁煙の希望者がたばこをやめるということで、2010年には禁煙の希望者が37.6%いらしたのですけれども、2013年には希望者が24%と減っているという状況もあって、たばこ対策、非常に強化が必要な状況だと思います。

 スライド、22ページの上側をご覧になってください。これによる全体の死亡率への影響なのですが、これは肺がんの人口寄与危険割合から全がんの危険割合を出して、それで算定したものなのですが、50%減ったとして1.6%というのが目標となっています。それに対しまして26%減ですので、0.2%しか今回寄与していないという状況となっています。

 2つ目の検診受診率につきまして、先ほども御説明があったのですが、2007年、2010年、2013年の3点の国民生活基礎調査のデータを並べております。目標値としましては、50%ということで、2013年に従来よりは上がっているのですが、まだ目標値は達成していないという状況です。

23ページの上側をご覧になってください。目標値50%達成ということで、こちらで全体の死亡率が4%減るという目標値を立てているのですが、2013年度の国民生活基礎調査の受診率で2.5%減るという見込みを立てております。

 3つ目の均てん化の推進を生存率で見ているのですが、生存率につきましては、最新の生存率が2003年から2005年の診断例で、基本計画が始まってからの生存率がまだ出ていない状況です。なので、こちらにつきましてはX%という形でとらせていただいております。

24ページの上側をご覧になってください。その他の指標としまして、たばこでは未成年の喫煙率の減少。数値が書いてあるとおりです。

 がん検診につきましては、今回中間報告ということで、さまざまな指標を計測したのですが、指針に基づかないがん検診を実施している市町村の割合が逆に増えているという状況です。

 2番目のポツではチェックリスト。これは精度管理を行っている市区町村は増えている状況なのですけれども、指針に基づかない検診も増えているということがございます。

 均てん化につきましては、拠点病院等が増えているのですが、今後医療の内容をチェックするような体制が必要だと考えております。

24ページの下、先ほどの要因別のものを合わせたものなのですけれども、赤字のところです。自然減10%で、これはそのままとっていますが、たばこで0.2%、がん検診受診率50%達成で2.5%、均てん化はXとしていますが、合計で17%減ということで、ここからXを引き算すると、均てん化4.3%という状況で、いずれも目標を達成していないという状況です。

25ページ以降につきましては、要因別ではなくて、部位別の状況について分析したものです。

 やり方としましては、95年から2005年までと、2005年から2015年までの部位別の死亡率の変化率を比べたというものです。

25ページの下は胃がんの男女計です。胃がんの男女計は、95年から2005年が31.1%減少に対しまして、2005年から2015年では30.8%減と、ほぼ横ばいとなっています。

 次のスライドです。上側が大腸がんで、大腸がんが同じく10.2%の減少から9.1の減少と、減少率が鈍化している状況です。

 肺がんにつきましては下側で、9.47.5と、こちらも減少率が鈍化しているという状況です。

27ページの上側です。乳がんにつきましては、95年から2005年ではまだ死亡率が上がっていたというところなのですが、今回0.1%ということで、増加していたものが横ばいに変わったというところがございます。

 下側は子宮頸がん。こちらは3.4%増が5.9%増ということで、こちらは逆に増加が加速してしまっているという状況です。

28ページの上、肝臓がんでは32%減。こちらもウイルス対策等によりまして急激に減っておりますが、32%減がさらに47%減と、減少が加速しているという状況です。

 部位別の寄与割合を男女別に計画前と計画後で比べたものなのですが、男性では、左右のものを比べていただきますと、胃、大腸、肺の減少への寄与割合が減っているというところです。肝臓がその反面増えているというところがございます。

29ページの上側、女性です。女性で大きく目立つのが、乳がんが今まで増えていたのがほぼ横ばいになったということですが、やはり肺の減少への寄与割合が減っているということです。

29ページの下には年齢階級別の乳がんの年次推移を出しておりますが、若年層においては減っているのですが、高齢層が継続的に増えているという状況が続いております。

30ページをご覧になってください。繰り返しになりますけれども、20%減の基本計画の目標達成が85%の達成にとどまる見込みです。その背景には喫煙率、がん検診受診率などの目標が達成されていないということがあると思われます。

 がん種別では、乳がんが横ばいになりました。

 肝臓は減少していますが、逆に肺、大腸がんの減少が鈍化しているということです。

 対策としましては、先ほど御紹介ございましたが、年度内に「がん対策加速化プラン」が決められるということですので、そちらで遅れを取り戻して、これはあくまで予測ですので、2015年の死亡率は2年後に出ますので、そちらで今の予測値より上回るということが求められているところです。

 以上となります。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、がんにつきまして、委員の皆様方から御質問、御意見をお願いいたします。どうぞ。

○西村委員 北大の西村です。

 私、呼吸器科医として日常的に肺がんを診ているのですけれども、肺がん検診における肺CT検査の位置づけというのは、国の施策の中ではどうなっていましたか。

○若尾委員 肺のCT検診につきましては、まだ死亡率の減少の効果が確認されていないということで、対策型検診については推奨されていない状況だと考えております。

○西村委員 御存じかもしれませんが、アメリカで行われた大規模研究により、ハイリスクグループに対する肺CT検診が初めてエビデンスとして生命予後を改善し、死亡率を下げると報告されました。日本では東京都などをはじめとして、一部の地域では以前から積極的に肺CT検診が行われてきたという現実があります。しかし、全国的に見るとまだまだ肺CT検診は行われておりません。

 そういうことを考えると、そろそろ肺CT検診に関してある程度踏み込んでもいい時期に入りつつあるのではないかなというふうに呼吸器科医としては思うのですけれども。

○若尾委員 エビデンスが出てくれば検討がされると思うのですが、今の時点だと、まだそこまではエビデンスが蓄積されていないということで、今の時点では対策型検診には含まれていないという状況だと判断しております。

○辻委員長 ほかにどなたかございますでしょうか。村山委員、どうぞ。

○村山委員 1点質問なのですが、御報告の中でがん検診の受診率が向上してきているという点について、取り組みとしてさまざまなことをやっていて、好事例の共有もしているということなのですが、どのような取り組みが検診の受診率の向上に寄与したのか、そのあたりの分析というのはありますでしょうか。

○高橋課長補佐 がん検診の向上に向けた好事例の共有といたしましては、こちらにお示ししております受診勧奨・再勧奨などで個別に自治体などから御連絡を差し上げて、受診を促すといった取り組みが、最も効果があるというところで評価を得ておりますので、そういった好事例周知し、対策に盛り込んでいくことを視野に入れております。

○若尾委員 よろしいですか。目標値が受診率を設定していますので、どうしても受診率に目が行ってしまうのですが、受診率も上げる必要があるのですが、やはり精度管理をしっかりするということが死亡率減少につなげる大きな鍵だと考えております。それで、対策などにも精度管理を進めるということを入れていただいていまして、そちらも同時に進めているというところです。

○辻委員長 お願いします。

○村山委員 今の発言をさせていただいたのは、先ほど特定健診の受診率が低くて、それをどうやって上げたらいいかという話があったと思いりましたので、そちらの参考になるといいなと思いましてお伺いしました。

○辻委員長 今、若尾委員が精度管理という話をされましたけれども、とても大事なことであって、精度に対する信頼性があって初めて検診を受けると思うのです。ですから、精度管理というのは本当に大事だと思うのです。精度というと、感度、特異度という話に当然なるわけですが、今までは偽陰性例が把握できなかったので、事業評価という形でプロセス評価でやっていたわけです。しかし、プロセスが正しく行われたら、本当に感度、特異度が理想形を示すのかという裏づけが現実にはないわけですね。次善の策としてプロセス評価をずっとしていたのですが、今度、がん登録推進法ができまして、来年からかなりの精度で偽陰性例をきちんと把握できるようになります。

 ですから、がん検診の精度について、従来はプロセス評価しかできなかったのですが、今度はアウトカム評価としてきちんと精度の高さを担保していくことが可能になります。都道府県別、市町村別、あるいは検診実施機関別に、個別に検診の感度と特異度を評価していって、場合によっては、その情報をオープンにすることによって、さらに精度を上げるような取り組みを加速する、そういった取り組みもこれから可能になってくるのかなと思いますので、ぜひその辺も御検討いただきたいと思います。よろしくお願いします。

○若尾委員 どうもありがとうございます。

○辻委員長 どうぞ。

○樋口委員 私は、がんは門外漢なのですけれども、これを見たときに、膵がんというのが男性も女性も上がっているようなのですが、このあたりに対する言及が先ほどなかったですけれども、上がっている原因らしいものが特定されているのかとか、あるいはその対策は一体どうなっているか、そのあたりをちょっと教えてください。

○若尾委員 今回、部位別の寄与率等を出して、上がっているもの、下がっているものを出したのですが、実は臨床的にどうしてこういうことが起きているかということは今、検討しているところで、ことしの9月に昨年の死亡率が出た後に再度臨床家等を交えてディスカッションをして、臓器別の状況についてまとめようとしています。申しわけないですが、今の時点でなぜ膵がんが上がっているかということ、原因の解明まではできていない状況となっております。

○辻委員長 ほかにどなたかございますでしょうか。よろしいでしょうか。

 それでは、次の項目でありますCOPDに移りたいと思います。

 まず、事務局から御説明をお願いします。

○寺原たばこ対策専門官 お願いいたします。たばこ対策専門官の寺原です。

 資料1、進捗状況の表の5ページ目をご覧ください。参考資料のほうは10ページ目をご覧ください。

COPDにつきましては、目標項目として「認知度の向上」を掲げております。策定時にはCOPDの認知度は25%という値でしたが、現状値は30.1%になっております。目標値が80%ですので、大きく及んでいない状況です。

 参考資料の10ページ目ですが、推移を見ておりますけれども、年々ゆっくりと認知度が向上してきておりますが、向上率が非常に乏しい状況でして、昨年と比べると認知度が低下しているという状況にあります。

 また、その次からは各年代別と都道府県別の推移も参考として示しておりますが、どの年代別、どの都道府県別においても認知度は30%前後と大きく変わりはない状況です。

COPDに関しては、最大の発症要因が喫煙であるということもありまして、禁煙によって発症予防が可能であるということも含めまして、COPDの普及啓発、認知度向上に向けて、スマート・ライフ・プロジェクトですとか、厚労省の健康情報サイト等を用いてさらに対策を推進していきたいと考えております。

 事務局からは以上です。

○辻委員長 では、西村委員からお願いします。

○西村委員 資料をご覧ください。31ページからになります。

COPDは他の疾患と違いまして、健康日本21(第二次)で初めて取り上げられました。しかも目標は一般市民の疾患認知率を上げるということであり、この種の目標としては初歩的段階です。その背景をまずはお話ししてから対策の現状について御説明させていただきたいと思います。

COPDという病気は、高齢者の肺の健康という意味から大変重要な病気であります。死亡原因の順位という観点からすると、日本人全体の第9位、男性では第7位であり、高齢者増により漸増傾向にあるのですが、がん等に比べるとその影響は小さいと言えます。しかしながら、COPDは肺がんの背景疾患としても極めて重要です。また、この数年前から日本人死亡原因の第3位となった肺炎の背景疾患としても重要です。つまり、COPDはその疾患自体の重症化が問題というばかりではなく、“高齢者の肺の健康”全般を考えたときに大変重要だといえます。そこで、私ども呼吸器学会でもCOPDの認知率を上げて、早目に診断し、早期に治療介入するということが重要であるという認識に基づいてキャンペーンを進めております。

 もう一つの背景としては、呼吸器診療を専門としていない内科医あるいはプライマリーケア医におけるこの病気の意識が乏しいという現実があります。COPDを診断する上ではスパイロメトリーという検査が必須ですが、ほとんどのプライマリーケア医はスパイロメトリーを持っていないか、あるいは持っていても実際に使っていません。いわゆる生活習慣病を多く診ているクリニックなどで調査をすると、想像以上に患者が診断されずに潜んでいるという実態も報告されています。そういった観点から、この健康日本21におけるプロジェクトの目標は、一般方々にこの疾患自体をまず知っていただくこと、併せて、呼吸器を専門としていない多くの一般医、プライマリーケア医に対する啓発も行うということが基本的な考え方ということになります。

 私どもは、健康日本21(第二次)に取り上げられたことを契機に、これから御説明します「COPD啓発プロジェクト」という活動を進めております。産学が共同してCOPDの認知率向上の目標を達成するための活動身体です。

 ページをめくっていただきたいと思います。健康日本21では2012年に25%であった認知率を10年後の2020年に80%まで高めようという大変高い目標を掲げています。私の聞いた話では、「メタボリックシンドローム」という言葉がかつて全く使われていなかったのに、現在では多くの国民が知っているという現状に鑑みて、COPDについても同じような認知率の目標を設定したと聞いております。

 次に、どのような活動を既に行ってきたかということを御説明したいと思います。まずはテレビあるいは新聞等々のマスメディアを通じての啓発活動です。これまでやってみて我々が気づいたことは、テレビコマーシャルは、一時的には認知度の上昇に強く影響するのですが、経過と共に下がってくる傾向があります。一方COPDは高齢者に圧倒的に多い疾患ですから、新聞等々の文書媒体のほうが高齢者世代に対しては効果があるだろうという考え方にシフトしております。

 世代別の認知率調査の経緯をみると、若者世代ではこの何年か必ずしも期待するほど認知率が上がっているという状況にはありません。しかし、高齢者に限ってみるとそれなりに上がってきています。これは、新聞等々の文書媒体のほうが高齢者に対して効果があった結果ではなかろうかと解釈しています。 

お手元の資料にはどういったTVコマーシャルを過去にやったか、また次のページをめくりますと、新聞等々でどういったキャンペーンを現在やっているかということが示されております。

 また、日本医師会と協力して各地域の医学会とか日医のニュースを通じて一般医に対する啓発も進めております。

 また、関連プロジェクトといたしましては、日本呼吸器学会が主催する市民公開講座等の啓発事業も各支部単位で非常に数多く行われているという状況にあります。

 肺の健康という観点を、一般市民にわかりやすく伝えるという目的で、「肺年齢」という考え方を学会として取り入れました。スパイロメトリー、呼吸機能検査をしたときに、あなたの肺の健康状態は大体何歳ぐらいに相当しますよということを伝えることによって、単に肺機能が良いとか悪いとかではなくて、年齢相当で評価するという考え方を導入したわけです。 

このような様々な活動の結果として、お手元資料にもありますように、徐々にではありますけれどもCOPDの認知率は確実に上がってきております。

もう一点、私どもがCOPDに認知率を上昇させるために大変重要であると考えていることがあります。

それは、たばこパッケージに記載されている表示の修正なのです。これはこの会で以前にも申し上げたことがあるのですが、現在のたばこパッケージには4種類の表示のうちのひとつを選択できるようになっており、そのうちCOPDに関連した文言は「喫煙は、あなたにとって肺気腫を悪化させる危険性を高めます」と書いてあるだけなのです。COPDという疾患名はいっさい使われておりません。

 私ども呼吸器学会としては、COPDばかりでなく、肺癌や循環器疾患は言うに及ばず、全ての人の健康に関して、喫煙の有害性をもっと強く強調すべきであると主張しております。

禁煙活動をもっと厳しく進めるべきだという観点からも、たばこパッケージの表示について「COPD」という疾患名を使うとともに、より強い健康被害に関する警告の表現にしていただきたいと希望しています。そこで、日本呼吸器学会のみならず、日本循環器学会、日本内科学会、日本肺癌学会、日本医学会等々多くの学会のご賛同を得て合同で、厚労省と財務省に要望書を提出しております。

 私どもが、本件を大変重要だと考えております理由は、先に議論されたように喫煙者の減少が必ずしも期待通りには進んでいないという現状があるからです。

喫煙者が毎日目にするのがこのたばこパッケージです。そこにどういうメッセージがあるかというのは、国の姿勢の問題です。多くの欧米諸外国に比べて、現在のパッケージの表示メッセージは警告表現がマイルドであると言われています。

 もう一つ活動体として御紹介しておきたいのが37ページにありますGOLD日本委員会です。かつてWHO(世界保健機構)とかNHLBI(米国心臓、肺、血液研究所)のサポートにより設立された国際共同プロジェクトとしてGOLDGlobal Initiative of Chronic Obstructive Lung Disease)という組織体があります。COPDは世界的にみても人々の健康に大変深刻な問題であるという認識からスタートした活動体でありまして、COPDの啓発、あるいは治療の均てん化・標準化に大きな役割を果たしてきました。このGOLD2001年に設立された組織体ですけれども、少し遅れて日本支部GOLD日本委員会も設立されて活動しております。

 その活動のなかには、日本COPDサミットといったマスメディア向けの講演会開催、各種の市民公開講座、全ての都道府県における自治体担当者向けの講演会開催、一般市民向け啓発ツールの開発と提供などが挙げられます。

 以上、COPDの認知率上昇の目標に関連して、現在の活動状況を御報告させていただきました。以上でございます。

○辻委員長 ありがとうございました。

 それでは、御質問、御意見をお願いいたします。若尾委員、どうぞ。

○若尾委員 どうもありがとうございます。

 こちらの前半部分の啓発プロジェクトなのですが、プロジェクトメンバーにいろいろ製薬会社等が入っていただいて、そちらの協賛という形だと思うのですが、新聞広告あるいはテレビコマーシャルなど、結構コストのかかる活動をされているなという印象を受けたのですが、実際に広告に使われるお金、どのくらいのお金を投資してこのような宣伝活動を行っているか。もしよろしければ教えていただきたい。

○西村委員 正確なところは分かりませんけれども、当初は億単位、年2億円ぐらい使いました。今はそれの半額ぐらいの額になっております。やはりテレビコマーシャル等は大変高額になるのですね。そういうこともあって、先ほど申し上げましたように、テレビコマーシャルが一過性であるということとあわせて、金額も相当かかるということがあって、今、新聞等にシフトしているということであります。

○若尾委員 ありがとうございます。それの資金は協賛金という形でメンバーから集めているということですか。

○西村委員 そのとおりです。

○若尾委員 ありがとうございます。

○辻委員長 どうぞ。

○中村委員 以前厚労省のCOPDの検討会に入らせていただいて以来、COPDのこの啓発プロジェクトについても関心を寄せています。一般国民にCOPDを認知していただくというのも重要だと思うのですけれども、ただ、予算を有効に使うという観点から言えば、私が以前から思っているのは、医療従事者、特に開業医などのプライマリーケアを担当する医師にCOPDの理解をもう少し深めていただいて、既存の健康保険制度の中で、例えばCOPD疑いというような方について、きちんとスパイロをやるということが大切でないかと考えています。日本医師会もプロジェクトのメンバーに入っておられるようなので、日本医師会と一緒になって組織的に推進して、日常診療における活動を通して患者さんを含めて、一般の国民のCOPDに対する認知を高めるアプローチも必要ではないかと思ったのですけれども、いかがでしょうか。

○辻委員長 どうぞ。

○西村委員 全くおっしゃるとおりです。今日お話ししたCOPD啓発プロジェクトの協賛として製薬企業の名前がずらっと並びますと、製薬メーカーとのCOI(利益相反)の問題が出てくる可能性もあります。ある疾患の認知率を高めるという崇高な目標が国民の健康のためというよりも、製薬メーカーのためというメッセージになるのは大変危ないわけですね。

 先生がおっしゃったとおり、一般医やプライマリーケア医の啓発も非常に重要です。幸い日本医師会の中にもCOPD啓発プロジェクトの活動体があり、製薬企業とはまったく無関係の活動が始まっております。その活動においては一般医向けに日本医師会・呼吸器学会が協力してさまざまな教育資材を提供したり、情報提供をしたり、講演会を開催しております。昨年から今年にかけて日本医師会ではすべての都道府県でCOPD講演会をやるという目標を立てて現在進行中です。

○中村委員 もう一点、よろしいですか。

○辻委員長 どうぞ。

○中村委員 COPD検診を対策型の検診として導入するかどうかは、以前の厚生労働省のCOPDの検討会でも議論になったのですが、当時のエビデンスで言えば、米国予防医学専門委員会のほうは推奨しないという結論なのですね。それはどういうことか。端的に言いますと、重症の方についてはワクチンや呼吸器のリハビリなど有効な介入手段があるが、軽症・中等症の方については有効な介入は禁煙に尽きるということです。つまり、禁煙だったら、COPDの検診をやるのでなくて、既存の保健医療の場で喫煙者を判別して、COPDの有無にかかわらず禁煙の働きかけをするのがよいという考えがベースになっています。

 その後、そのエビデンスがどういうものが出てきているか分かりませんけれども、変わらないとすれば、COPD検診を施策型の検診として導入するよりも、先ほど申し上げましたように、現行の健康保険制度を活用して、疑いのある方に任意で、医師からその患者さんにスパイロを勧めるとともに、たばこを吸っている方には、禁煙の保険治療をセットで行うとよいと思います。新たに制度をつくるよりも、今の制度をうまく活用して推進するということができるのではないかなと考えておりまして、そういうことをぜひCOPD啓発プロジェクトとして取り組んでいただけたらありがたいと思っておりまして、失礼ながらコメントさせていただきました。

○辻委員長 どうぞ。

○西村委員 この点も全く仰るとおりだと思います。症状をほとんど訴えない高齢者の患者さんにスパイロメトリーをやってCOPDと診断したときに、それがどういう意味を持っているかということに関しては当然賛否両論があります。特に後期高齢者の場合には、Over-diagnosisではないかという批判が常にあるのです。それが今、先生がおっしゃったような米国の考え方にもつながっております。

 私自身も、先ほど申し上げたように、一般医、プライマリーケアのレベルでリスクの高い人を対象に患者を診断していただくということがこの病気の啓発、さらにはこの病気の治療成績の向上につながると思っております。

 繰り返しになりますが、COPDは肺炎と肺がんの背景疾患、基礎疾患としても重要だということを是非啓発してゆきたいと思います。本邦のCOPD患者は必ずしも疾患自体により皆が早く亡くなっているというわけではけっしてありません。その点の啓発の仕方、間違った形でメッセージが伝わると、高齢者でCOPDを診断して何の役に立つのかといったような反論を受けてしまいますので、その辺は正しい形で伝えていきたいと思います。

○辻委員長 ぜひそのような方向でお願いしたいと思います。基本的にはたばこ対策というのも体系的にやっていけば、結果としてCOPDもそれ以外のいろんな病気もコントロールされていくということでお願いしたいと思います。

 ほかによろしいでしょうか。

 それでは、次の議題で、報告事項といたしまして「スマート・ライフ・プロジェクトにおける減塩の取組について」に進みたいと思います。

 では、事務局から御説明をお願いします。

○芳賀栄養指導室長補佐  栄養指導室、室長補佐の芳賀です。

資料2をご覧ください。先ほどご覧いただきました数値が入った横表の資料の6ページになります。

 スマート・ライフ・プロジェクトにおいて、食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む企業の登録に関しましては、前回の本委員会でいただいた御意見を踏まえ、今後の対応方針をまとめましたので、御報告します。

 まず、1点目といたしまして、食品中の食塩や脂肪の低減に取り組む企業の登録要件についてです。こちらに関しては、健康づくりの観点から、一定程度以上の減塩であれば十分意味があるという御意見をいただきましたので、健康づくりの観点から、高濃度にナトリウムを含有する食品において、一定の割合でナトリウムの含有量を低減することは、おいしく減塩することで無理なく減塩が継続され、また、国民における食塩摂取量の減少にも寄与すると考えられること。加えて、より多くの食品が一定程度減塩することによる食塩摂取量の減少も期待できるという観点から、スマート・ライフ・プロジェクトでの「食塩または脂肪の含有量の低減を行っている」企業の登録において、食塩の含有量については、従来品と比べて10%以上の低減を行っていることを登録要件とし、脂肪の低減についても同様の扱いとすることとしました。

 あわせて、食塩の低減については、該当食品の食塩の低減率並びにエネルギー、脂質、食塩相当量、カリウムの含有量についての情報、また、脂肪の低減については、該当食品の死亡の低減率並びにエネルギー、脂質、食塩相当量の含有量についての情報もあわせて提出することを要件といたしたいと考えております。

 また、2点目のスマート・ライフ・プロジェクトのロゴマークの商品への表示についてですが、こちらに関しましては、本年4月1日に施行されました食品表示基準の減塩(低減された旨の表示)の表示ルールに合致したものと誤認されることがないよう、また、個別の商品の推奨と誤解されることがないようにするため、個別の商品に「スマート・減塩 健康寿命をのばしましょう」などといったロゴは表示しないということで、前回お示ししました対応案のとおりで方針をまとめましたので、御報告いたします。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございました。

 ただいまの御報告につきまして、御質問、御意見ございますでしょうか。どうぞ。

○若尾委員 わからないので教えていただきたいのですけれども、この4月1日に施行された食品表示基準の減塩というのは、何か基準があるのでしょうか。

○芳賀栄養指導室長補佐 前回検討会での御報告内容になりますが、食品表示基準で「低減された旨の表示」ということに関して、「低い旨」という表示をする場合の基準というのが設けられておりまして、基準値以上の絶対差かつ従来品に比べ25%以上の相対差ということで、強調して低減を表示する場合の基準が改められましたので、そういった製品に関しての表示の基準に合致したものと健康増進として行う取り組みとが誤認されないようにという観点から、今回こういった対応を考えております。

○若尾委員 ありがとうございます。

 そうすると、相対差で25%ということだと、スマート・ライフのほうは10%以上ということで、より緩い形で商品をふやすというようなことですね。

○芳賀栄養指導室長補佐 そうですね。

 表示の基準というよりは、健康づくりのための取り組みの要件として設定するという観点がポイントになります。

○若尾委員 ありがとうございます。

○辻委員長 ほかにどなたかございますか。吉村委員、どうぞ。

○吉村委員 私も御質問させていただきたいのですけれども、このロゴを表示しないという理由は納得できるのですが、ロゴも使ってはだめで、それを登録するほうのメリットというのはあるのでしょうか。こういうのを続けていくためには、多少インテンションがないと続かないのではないのかなというふうに考えるわけですけれども。

○芳賀栄養指導室長補佐 こういった取り組みに御参画いただいているということを個別の商品での表示以外の方法で社会にお知らせいただくなどを想定しています。スマート・ライフ・プロジェクトは、もともとそういった趣旨がございますので、他の方法も工夫していただきながら、国民の健康づくりに寄与する努力をしていただいている企業であるということで普及していただければと考えております。

○辻委員長 よろしいでしょうか。

○吉村委員 はい。

○辻委員長 ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、そういったことで進めていただくということで、よろしくお願いしたいと思います。

 用意しておりました議題が大体整ってきたのですけれども、全体を通して、これまでの議論の中で言い足りなかったとか、あるいは質問したいことがありましたらば、どなたかお願いしたいと思うのですが、いかがでしょうか。

 私から1つよろしいでしょうか。保険局の佐藤専門官の出された参考資料5なのですけれども、特定保健指導、積極的支援を受けた方と受けなかった方で医療費が5,0007,000円ぐらい違うという話がありましたが、これは事実としてはそうなのですけれども、ただ、積極的支援が必要ですよというふうに言われて、実際参加する方とそれに参加しない方というのは、もともとの健康意識の差ですとか、あるいはたばこを吸うか、吸わないかとか、そういった生活習慣の違いですとか、いろんなものを引きずっている可能性がありますね。

 ですから、7,000円とかの差が丸々積極的支援による医療費減少効果だとはなかなか言いがたいところがあろうかと思いますので、もし可能でしたら、これはナショナルデータベースですけれども、そういった基本的な背景要因をマッチングさせるとか、あるいは多変量解析で調整するとか、そういった統計学的な処理をしていただければ、もっと説得力が出てくると思いますので、ぜひそれをお願いしたいと思います。

○佐藤保健事業推進専門官 ありがとうございます。

 こちらのほうは、ワーキングの先生方のほうもこれについてどういうふうにということで、今、お話がありましたように、参加される方の健康意識が高いということなどが大いに影響しているのではないかというふうな話が出ておりました。また今後とも進めさせていただきたいと思います。

 ありがとうございます。

○辻委員長 よろしくお願いいたします。非常に貴重なデータで、エビデンスになるだけに、より一層高めていただきたいということでのお願いです。よろしくお願いします。

 この委員会での議論全体を通しまして何か御意見とかありましたら、そういったこともお受けしたいと思うのですが、いかがでしょうか。深井委員、どうぞ。

○深井委員 冒頭申し上げたことに関連するのですけれども、例えばたばこの問題にしても、喫煙は歯周病とは歯の喪失のリスクとなることがはっきりしています。たばことか、歯や口の健康もそうなのですが、今、各項目の進捗状況を評価するところまではいいとして、今後アクションプラン等をこの検討会でする場合に、ぜひ分野を超えて、あらゆる場所でどういう一つの項目に取り組んでいくかという観点から検討していただければと思います。

○辻委員長 全く仰るとおりだと思います。特に今日はたばこの話がたくさん出ましたけれども、たばこのところを、循環器疾患、歯の問題とか、COPDとか、がんももちろんあるのですが、横串にして出していくということがとても大事だと思いますので、そのようなこともまたこれから考えたいと思います。どうもありがとうございます。

 ほかにどなたかございますでしょうか。どうぞ。

○宮野委員 ありがとうございます。

 今日の議論、説明を聞かせていただきまして、特定健診や特定保健指導のデータだけを見るのではなくて、ほかの指標との関係を理解することがより重要だなというふうに感じました。

 その中で、糖尿病などでいわゆる治療をしているけれども、適切な治療行動ないし治療改善行動が維持できない方が多くいらっしゃるのだなということを感じ、その中で薬局の薬剤師がそういう患者さんへ適切に介入して、支援をしていくことがより重要になっていくと思っております。

 平成26年度から薬局薬剤師を活用して健康情報拠点推進事業を進めてきておりまして、さらに国民の目から気軽に専門家に相談できる場所、正しい情報提供を行える場所とその姿を変えていくことになるかと思いますので、今後、健康づくりの支援薬局として期待をして活用していただければと思っております。

 以上です。

○辻委員長 ありがとうございます。

 今の服薬をしてもなかなかコントロールされていないというところも非常に重要なポイントだと思うのですが、それについては、今日保険局の佐藤専門官もいらっしゃっていますけれども、データヘルスでレセプトと健診データを個人単位でリンクすることによって、かなりわかってきます。岡村先生も、帰りました津下先生も委員でいらっしゃいますので、そういったところも含めてまたやっていただければと思います。

 山之内先生。

○山之内委員 その議論に付随してということになるのですが、心の問題、鬱が合併していると、やはり糖尿病の治療成績が悪かったり、そもそも鬱だと食べなくなりますので、それで血糖降下薬をもらっていて、食べていないけれども、薬を飲んでいいだろうかということで、放っておいているうちに糖尿病が悪くなる。そういうことも伺っております。

 当センターでも今、そういった関連性に関する前向きの研究がほかの部署で始まっているみたいなのですが、そういった観点、それからNDBなどを見る際に、あれは傷病名はあるのです。あれの中で副傷病名で鬱病や鬱関係の疾患があった場合、どういった差が出てくるのかといった点も興味深いところかと思っております。

○辻委員長 樋口先生。

○樋口委員 同じような話で恐縮なのですけれども、たばこはよく出てくるのですが、飲酒がいつも影を潜めているところがありまして、例えば糖尿病の中でも先ほどたばこの話が出てきましたが、糖尿病に関しては、飲酒のほうがはるか直接的な影響力があると思うわけで、インスリンがうまく使えなくなるとか、あるいは慢性膵炎でランゲルハンス島が壊れてしまってインスリンが出てこなくなるとか、そういう大きな問題があると思うので、そのあたり、ぜひ考慮いただきたいなと思います。

○辻委員長 ありがとうございました。

 ほかにどなたかございますか。北原委員、どうぞ。

○北原委員 済みません、非常に末端のところで健康管理活動をやっている立場からしてなのですが、COPDに関してですが、たばこを吸い続けている方たちに対応していると、「COPD」と言った時点、この文字4つでもう拒絶ではないですけれども、分かりにくいのではないかなという気がするのです。「メタボリックシンドローム」の「メタボ」という言葉が非常に頒布したのは、非常に分かりやすいし、日本語だしというところがあると思うのです。

 なので、「肺の健康」と言ったほうがよっぽど入ってくるような印象がございます。「COPD」と言って、そこに目が行くかというと、やはり一人一人の方たちが目が行かないというところも加味してPRの内容を考えていただきたい。「COPD啓発プロジェクト」のマークがとても爽やかなものですから、ちょっと目が行きにくいのではないかなというのが私の感覚であります。

○西村委員 実はそういう御批判はいろいろなところであります。例えば「たばこ病」と言ったり、「肺ボロボロ病」と言ったり、分かりやすい言葉にしなさいという意見が実はたくさんあるのです。しかし、中国でさえも「COPD」と表現しており、GOLD委員会が2001年に「COPD」を新規に定義して以来、世界中、あらゆる全ての国で「COPD」という病名を使っているのです。そのため、日本だけがその病気の名前を捨てる、日本語訳するというのはなかなかできないのです。

 そこで、先ほどご説明させていただきましたように「肺年齢」という言葉を導入して、肺の健康の重要性を訴えようとしているわけです。正面突破ではないですが、「COPD」という疾患名を残しながらも、何とか分かりやすく伝えようということで、先ほど「肺年齢」の紹介もさせていただきました。

○北原委員 「COPD」という言葉は絶対的に残したほうがいいと思のですが、「メタボ」みたいな感じで、サブタイトルのようなものがあったほうがいいような気がします。

○西村委員 仰るとおりです。ありがとうございます。

○辻委員長 中村先生、何かありますか。

○中村委員 先ほど辻先生が御発言されたことに関連するのですけれども、がん検診の受診率の見える化のことで質問したかったのですが、今後がん登録法ができて、そのあたりが整備されるということであればいいのですけれども、現在、市町村支援をしておりまして、宮城県のようにがん検診の受診率を一定の計算式、つまり、職場でがん健診を受けている可能性のある人を除いて、市町村が責任を持ってやるべき対象を特定して、それに基づいてがん検診の受診率を他の自治体と全国値と比較できるとよいと思います。宮城県のように県レベルで市町村別に公表されているところもあるのですが、そのような都道府県がまだ余りなくて、私たちが実際ある市町村と周辺の市町村を比較するのに、データをもとに集計していますが、非常に手間がかかりますし、市町村の人にとっても、隣の市町村と比べてがん検診の受診率、また、精度管理も含めてどういう状況にあるのかを用意に把握できるように、今後見える化が進んでいくことを期待しています。そのあたり、今後がん検診の受診率や精度管理の向上に取り組む上での基礎データの公表として検討いただければ、ありがたいなと思っております。

○辻委員長 ありがとうございました。

 若尾先生、どうぞ。

○若尾委員 その件につきまして、今、国立がん研究センターのほうで都道府県を対象としまして、精度管理を含めて、今の受診率の公表などについて、指導者研修会という形で毎年行わせていただいていまして、県の方にそれを学んでいただいて、それをまた県に立ち戻って各市町村担当者に伝えていただくということを進めております。

 あと、我々のがん情報サービスのホームページから全市町村別の受診率を公表させていただいておりまして、間もなく新しいデータも公表できる状況となっています。

 ただ、それですと見にくいので、それを各県別に出していただくのが望ましいものと考えておりますし、受診率公表も先ほど御紹介したチェックリストの中に含まれていて、そのアクティビティーを県間で比較するようなことも進めさせていただいております。

○辻委員長 よろしいでしょうか。村山委員、どうぞ。

○村山委員 先ほど岡村委員の御報告の中の「今後の方向性」というところで、生活習慣、危険因子、循環器疾患の因果関係、さらなる検証が必要ということがあったのですが、私も同感で、特に危険因子として高血圧が重要ということでしたけれども、高血圧が今、少し改善してきている。その要因、生活習慣の何がどの程度寄与しているのかという分析が今後できると、特に食生活の関連で私たちは減塩、あるいは野菜・果物の摂取の向上をやっていますし、あるいは肥満、そういったあたりでどのくらい効果があるのかということが分析できるといいなというふうに感じています。それに当たって、今、国民健康・栄養調査で都道府県間の差を見られるようになっていますので、そういったデータも活用できる可能性があるかなというふうに感じました。

 以上です。

○岡村委員 実際に公開されている統計だけで細かい分析は結構難しいので、先ほど言ったようなコホート研究同士の比較だと、かなり詳しいことが追求できるので、そういうのを含めて実際の血圧差がどのぐらいか、あと、血圧差が実際の死亡率にどのぐらい影響を与えていて、地域差を説明できるかとか、その辺を今、検討としてやっていこうとしているところで、そういう方向は非常に大事だと思います。

○辻委員長 よろしいでしょうか。

○村山委員 はい。

○辻委員長 大体予定された時間になってきましたので、本日の議題はここまでといたしたいと思います。

 最後に、今後のスケジュールなどにつきまして、事務局から御説明をお願いします。

○斉藤課長補佐 次回の第5回専門委員会の日程等につきましては、改めて日程調整の上、後日御連絡をさせていただきたいと思います。

○辻委員長 それでは、本日はこれで閉会といたします。

 どうもありがとうございました。


(了)
健康局がん対策・健康増進課: 代表電話03(5253)1111
課長補佐 斉藤(内線2975)
課長補佐 古賀(内線2346)

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