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2015年7月17日 クラウド時代の医療ICTの在り方に関する懇談会 第2回議事概要

○日時

平成27年7月17日(金)10:00~12:00


○場所

総務省7階 省議室


○議事

出席者

■構成員
 金子座長、秋山構成員、大山構成員、久野構成員、近藤構成員、津下構成員、友池構成員、長瀬構成員、長谷川構成員、武藤構成員、山崎構成員、山本構成員


■オブザーバー
 内閣官房 情報通信技術(IT)総合戦略室及び健康・医療戦略室、経済産業省 商務情報政策局 ヘルスケア産業課、(一財)NHKエンジニアリングシステム、(株)NTTドコモ、(株)エムティーアイ、(株)カナミックネットワーク、(株)セールスフォース・ドットコム、(株)東芝、(株)日立製作所、KDDI(株)、ソフトバンク(株)、日本電気(株)、日本電信電話(株)、日本ユニシス(株)、富士通(株)


■厚生労働省
 橋本厚生労働大臣政務官、今別府政策統括官、安藤情報政策・政策評価審議官、鯨井情報政策担当参事官、片岡医療技術情報推進室長


■総務省
 長谷川総務大臣政務官、南政策統括官、池永大臣官房審議官、田邊情報流通高度化推進室長


■ゲストプレゼンター
 神戸市保健福祉局長 三木氏

議事要旨

(1)   開会

 

(2)   長谷川総務大臣政務官挨拶

長谷川総務大臣政務官による挨拶が行われた。

 

(3)   橋本厚生労働大臣政務官挨拶

橋本厚生労働大臣政務官による挨拶が行われた。

 

(4)   プレゼンテーション

株式会社セールスフォース・ドットコムより資料2-1、ソフトバンク株式会社より資料2-2、株式会社エムティーアイより資料2-3、神戸市保険福祉局長 三木氏より資料2-4に基づき、それぞれプレゼンテーションが行われた。

 

(5)   意見交換

長瀬構成員

       北海道は検診の受診率が低く、受診率向上に力を入れている。特にがん検診。例えば胃がんはピロリ菌、肝がんは肝炎ウイルス、子宮頸がんはヒトパピローマウイルスなど、原因が特定されてきているものについては検診によって早期発見できるにも関わらず受診率が低い。また、内視鏡による胃がん検診を受けたい人は多いものの、内視鏡の検査を行う人材が少ないといったミスマッチもある。

       クラウドを活用して、レントゲン検査や内視鏡検査のダブルチェック・トリプルチェックを効率的に行うことで検査の精度を向上させるとともに、収集した資料を蓄積して本人のために活用することで、精度を担保しつつ効率的ながん予防を可能とし、ひいては健康寿命の延伸につなげることができると考えており、北海道でやっていきたい。

 

津下構成員

       21 世紀における国民健康づくり運動(健康日本 21 [1] 」においては、疾病対策として、がん検診の受診率の向上を目標としているが、欧米ではがん検診は 3 年に 1 度などという単位で受診の有無を判断している。日本でも、単年度の受診率を向上させることよりも、複数年度で評価する必要があるが、現在は PHR が不備のためできていない。また、例えば性・年代、喫煙、ピロリ菌保有履歴等の有無など、個人にあわせた検診の頻度を踏まえた勧奨こそが効率的かつ効果的な健診制度のためには重要である。そのようなエビデンスと、検診受診状況等を経年的に把握可能な ICT システムを組み合わせていくことが重要である。

       さらには、検診を受診した人と受診していない人が結果的にどのようになったか追跡できるとよいのではないか。例えば、検診の受診有無の情報とレセプト内容や死亡データを紐付けて分析できるようなシステムが構築できると、検診の有用性を示すエビデンスの構築にもつながる。

 

大山構成員

       日本は米国と比較して、医療データの分析に工学系の人材が関わることが圧倒的に少ないと感じている。自動健診やコンピューターを使った AI の活用が進んでいないが、この構造を変えていく努力をしていかなければ、日本の医療に将来はないと考えている。日本の医療制度は世界的に見て非常に優れている。この素晴らしい日本の医療制度を効率的に回す仕組みを作ることが、世界に対する日本のリーダーシップを発揮する良い例になる。

       本日プレゼン頂いた(株)セールスフォース・ドットコムやソフトバンク(株)のサービスは日本の医療制度の中にどう位置付けられるのかという点と、 EHR PHR の効果が出ている例、有償にしても顧客が満足感を得られる例はあるのかをお聞きしたい。例えば、母子健康手帳は親にとって価値があるが、これを電子化した場合、予防接種が予定どおり受けられなかったときに何をすればよいか等の情報提供機能を付加すればさらなる価値を提供できると思う。

 

((株)セールスフォース・ドットコム  中須オブザーバー

       今後、 ICT を活用していかないと更なる医療費削減はできないのではないかと感じているが、その余地はまだまだあると考えている。一方、 PHR では誰が受益者であるかを明確にする必要がある。医療費の削減効果があるということであれば健康保険組合などが受益者であり、そこが費用負担するということを明確にして進めていくべき。あればいいな、では社会実装していかないので、医療費が削減できるシステムを目指し、受益者がその費用を負担するものとすべき。

 

(ソフトバンク(株) 大関 オブザーバー)

       医療従事者の負担軽減、個人の健康維持に ICT が役立つと考えている。現段階では他の企業から収益を得てサービスを提供することを考えているが、その先に誰が真の受益者で、どういうビジネスモデルであるべきかがわかってくるのではないかと考えている。

 

(大山構成員)

       アメリカでは受益者は保険会社と病院ということが明らかであるが、日本とは制度や医療の仕組みが異なる。アメリカで成功している仕組みを日本に適用するのは工夫が必要である。 ICT に関する追加コストが下がればうまくいくのか、あるいは元々普及している ICT 技術・システムをうまくフィットさせる仕掛けが必要なのか、 30 年来検討を重ねているものの自分としての答えを持つことが出来ていない。

 

(久野 構成員)

       多職種連携等のシステムでは便利な面がある一方で現場における負担は増えるといった課題もあるのではないか。現場の状況をどこまで考えていくか、誰がシステム構築・運用の費用を負担するのかが論点になる。

       ビジネスとしては、大手健保以外の中小健保や自治体の費用負担を求めるモデルには限界があるのではないか。 PHR で個人がデータを活用していくのであれば個人が費用を負担すべきであるというのが個人的意見である。個人が健康の重要性を認識し、ヘルスリテラシーを向上させていかなければ本質的な解決にはならないと感じている。

 

(ソフトバンク(株) 大関オブザーバー)

       現場では ICT リテラシーは課題となっており、現場の職員負担が大きい、情報が正しく入力されないという課題がある。サービス提供側として、現場の負担軽減のため、入力を簡単にするなどのサービス向上に努めている。

 

(山本構成員)

       メディカルケアステーションに関しては、導入している栃木県の医療・介護連携従事者からの評価は高い。仕事量が減ってやりやすくなったと好評であるところもあることをお伝えしておきたい。

       PHR で誰が受益者であるかという議論に関しては、「損をする人はいない」ということは確実である。また、リテラシーの問題に関しては、医療情報、健康情報を実際利用できる状況にならないと、それをどう使うか、あるいは個人をサポートするサービス産業がどう出てくるかという議論は建設的に進まない利用できるようになって初めてリテラシーの向上が図られるものと考えている。

       (株)セールスフォース・ドットコムのプレゼンテーションで話があったように、米国では医療機関が個人にデータを提供する義務があり、提供しないとペナルティが課される。 HHS (アメリカ合衆国保健福祉省)は本人が医療機関にデータを要求するのは個人の権利であるという PR をテレビでも行っていて、ブルーボタンという仕組みで自分の医療情報を自由に活用できるようになっている。今後は、個人の立場に立てば、医療関連のデータを受け取って、自らどのように管理していくのかが求められる状況になっていくだろう。日本においては、医療情報はこれまで個人が利用できる環境になかったため、使うことに慣れていない。まずは、医療情報を国民に提供する環境を整えた上で、リテラシーを含めて、どう使っていくのかを考えるべき。

       取り扱うデータの継続性をどのように担保するのか。まずはビジネスとして継続できることが重要だろうが、仮に企業においてデータの保持が難しい場合でもデータを保持できる仕組みが必要なのではないか。

 

((株)セールスフォース・ドットコム 中須オブザーバー)

       金融業界では、公益財団法人金融情報システムセンター (FISC) が作成した「金融機関等コンピュータ システムの安全対策基準・解説書( FISC 安全対策基準)」が安全対策の指針として広く活用されており、金融庁の「金融検査マニュアル」でもこれを参照するよう記載されている。この中で、データのバックアップが義務付けられるなど、データバックアップのルールがある。データの継続性を担保するための1つの解決策として参考になるのではないか。

 

(ソフトバンク(株) 大関オブザーバー)

       企業の継続性、バックアップによりデータを保持するということの他、第三者機関によるデータの集約も一つの方法と考えられる。

 

(神戸市保険福祉局長 三木氏)

       紙ベースの情報であれば自治体が管理できるが、それでは ICT 化のメリットがなかなか活用できない。他方、自治体で ICT システムを導入する際、どのベンダーを選定するかは、特にこの分野では非常にクリティカルな問題となってきている。

       個人の医療情報を、どのようなルールで個人に渡し、管理するかという点について、前職の時から 10 年以上議論しているが、現時点で答えが出ていない。基本的には、個人のデータは行政に預けるのが一番いいと思うが、自治体が持つとなかなか活用ができない。

       厚生労働省が「介護予防・日常生活支援総合事業」の中で「介護予防手帳(仮称)」の活用を推進していることから、神戸市においても「介護予防手帳」により個人の介護関連の情報を管理する取組を始めるところであり、オプションの一つとして電子版介護予防手帳もあり得るのではと考えている。これについては、介護保険料を下げるというモデルを仮説検証して成果が得られれば国の施策に採り入れるべきと考えている。

       介護保険に着目したのは、介護保険に関する情報であれば自治体が全住民を対象とした情報を保有しており、公平性を担保できると考えたからである。また、母子保健はかなり医療情報が含まれるが、電子化のポテンシャルを持っていると思う。

       これらのデータは、公的セクターが預かり、医師会、医療機関、民間企業の合意を得て運営するというやり方もあるだろう。

 

(友池構成員)

       工学系人材の医療情報解析分野における参加について、欧米と日本との格差の指摘があったが同感である。ファンダメンタルなところでモノをどう作っていくかは非常に重要な問題である。日本では、システムを提供するプロバイダーとユーザーである医師が対立している構図が続いている。プロバイダーと医師が同じ土俵に立って密に議論を繰り返していかないと答えが出ない。 ICT の世界は短時間でどんどん進化する。同じ土俵でもっと本質的な議論を行い、何度もトライアルができるようにならなければいけない。

       課題の 2 点目は、ユーザーである医師の考えが日本に閉じている点。海外と日本との違いを意識したうえで、国内だけのための仕組みでなく海外も見据えた医療技術の開発が必要である。世界的に見て第一線で使えるモノづくりの仕組みが重要。そうしないと何も結果が残らないのではないか心配。

 

(武藤構成員)

       日本の医療 ICT 化の促進に関して、先進事例を参考に対策を検討する際に、これをどう日本全体に実装していくかを具体的に考えないといけない。実際に展開していくために、法制度や運用、プロモーション等の具体的なアクションをこの懇談会の成果としていきたい。

医師の中でも ICT が好きな人には普及していくが、それ以外の人には必ずしも浸透していかない。旧来の仕組みを変えるのであれば、突っ込んだ議論を経て、未来のための提言ができるとよい。

 

(近藤構成員)

       医療の ICT 化において誰が受益者であるか、医療機関か、保険者か、国民なのか、議論を深める必要がある。

       ( ) エムティーアイのルナルナの事例は 800 万人のビッグデータから予測ロジックを見つけてユーザーに提供しており、まさに研究そのものであって研究者にとって非常にうらやましい。研究者は自分の医療機関の中の情報の分析、解析ですら研究が進めにくい状況となっている。

       今後 PHR で医療のビッグデータが集まってきたときに、それをどのように公益のために活用していくのかについても、踏み込んで議論する必要がある。

 

(長谷川構成員)

       日本では、医療管理学、病院管理学などの社会医学的な研究が弱く、この懇談会で検討しているような話がなかなか進まない一因となってしまっていると感じる。この懇談会にも一人ぐらいは社会医学系の有識者が居るなど、社会学的観点を採り入れていくことが望ましい。

 

(山本構成員)

       医療分野における情報を紐付するための ID が必要という議論は PHR を議論する上では非常に重要で本質的である。一昨日、日本医師会での「医療分野等 ID 導入に関する検討委員会中間とりまとめ」 [2] が公表された。参考にしていただきたい。

 

 

(6)   長谷川総務大臣政務官及び橋本厚生労働大臣政務官ご発言

最後に長谷川総務大臣政務官及び橋本厚生労働大臣政務官からご発言があった。

 

(7)   閉会

 

 

以上

 



[1] https://www.mhlw.go.jp/www1/topics/kenko21_11/top.html

[2] http://dl.med.or.jp/dl-med/teireikaiken/20150715_5.pdf


(了)

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