ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2015年6月1日)
2015年6月1日 第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録
健康局結核感染症課
○日時
平成27年6月1日(月)14:00~
○場所
厚生労働省省議室(9階)
(東京都千代田区霞が関1-2-2)
○議事
○滝室長補佐 定刻になりました。ただいまより、第 10 回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産・流通部会を開催いたします。本日は御多忙のところ御出席を頂き、誠にありがとうございます。本日の議事は公開ですが、カメラ撮りは議事に入るまでとさせていただきますので、プレス関係者の方々におかれましては御協力のほどよろしくお願いいたします。また、傍聴の方は傍聴の際の留意事項の遵守をお願いいたします。
初めに、本日の委員の出欠状況について御報告いたします。本日は委員 10 名のうち、庵原委員、伊藤委員、坂元委員、西島委員、福島委員、細矢委員、森委員、山口委員の 8 名に御出席いただいております。また、小森委員、三村委員からは御欠席の連絡を頂いております。現時点で厚生科学審議会の規程により定足数を満たしておりますので、本日の会議が成立したことを報告いたします。また、本日は 2 人の参考人をお呼びしておりますので、御紹介いたします。国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター長の小田切孝人参考人、国立感染症研究所インフルエンザウイルス研究センター第四室長の信澤枝里参考人です。
それでは、議事に先立ちまして、配布資料の確認をさせていただきます。議事次第、配布資料一覧、委員名簿、資料 1 から 5 、参考資料 1 まで用意しておりますので、配布資料一覧と照らし、不足しております資料がありましたら事務局にお申し付けください。
それでは、部会の開催に当たりまして、井上結核感染症課長より御挨拶申し上げます。
○井上結核感染症課長 こんにちは。結核感染症課長でございます。各委員、それから参考人の信澤先生、小田切先生におかれましては、本日は御多忙のところ御出席いただき、ありがとうございます。改めまして御礼申し上げます。
この部会は、各先生方御承知のように、これまで 9 回開催され、予防接種基本計画の策定のほか、研究開発・流通に関する議題に関して御議論いただいてきたところです。本日は議題としては 3 点です。議事次第にありますように、 1 つには予防接種法附則第 6 条に定められました損失補償契約について、 2 つ目としては基本計画のフォローアップで、幾つかの新たなワクチンの開発状況について、 3 点目は、この秋のインフルエンザの流行状況等株選定理由、それから、細胞培養による季節性インフルエンザワクチンの実用化への取組に関してです。それぞれに関して活発な御議論をお願いいたします。厚生労働省としては、今後とも予防接種施策の推進に取り組んでまいります。引き続き各委員の先生方の御理解、御協力をお願い申し上げ、御挨拶とさせていただきます。どうぞよろしくお願いいたします。
○滝室長補佐 冒頭のカメラ撮りにつきましては、ここまでとさせていただきますので、御協力をお願いいたします。次に、審議参加に関する報告をいたします。本日の議事内容において、個別に調査審議される品目はありませんので、本日の議事への不参加委員はおりません。それでは、庵原部会長に議事進行をお願いしたいと思います。よろしくお願いします。
○庵原部会長 それでは、議事に入りたいと思います。議題 1 、予防接種法附則第 6 条損失補償についてですが、事務局から説明をお願いいたします。
○滝室長補佐 予防接種法附則第 6 条損失補償契約について、事務局より説明させていただきます。
資料 1 です。まずはじめに損失補償契約についてですが、新型インフルエンザ等感染症発生時に、当該感染症に対するワクチンが世界規模で需要が逼迫している状況下において、早急にワクチンを確保しなければ、国民の生命及び健康に重大な影響を与えるおそれがある場合に、薬事法上の特例承認を受けた輸入ワクチンによる予防接種の健康被害に係る賠償により生ずる海外メーカーの損失等を国が補償する契約となります。この契約の規定を設けた背景ですけれども、平成 21 年の新型インフルエンザ発生時に、ワクチンの生産体制の実情を踏まえて、ワクチンが十分に行き渡るよう、海外からワクチンを輸入することとしました。その際に、海外のワクチン製造販売業者から、製造販売業者に損失が生じた場合の諸外国と同程度の国による補償が求められました。このため、健康危機管理の観点から、緊急かつ例外的な対応として、新型インフルエンザ等感染症ワクチンに限り、特例承認を受けた製造販売業者に生じた損失を政府が補償するための契約を締結できるよう、新型インフルエンザ予防接種による健康被害の救済等に関する特別措置法において、損失補償の規定を設けて対応しておりました。そして、今後も同様の事態が生じた場合に、必要なワクチンを海外から確保できるようにしておく必要があるため、平成 23 年の予防接種法改正において本規定を設けたところです。
さて、損失補償契約の期限ですけれども、施行日の平成 23 年 7 月 22 日から 5 年間に限定しております。この 5 年に限定した理由については、平成 23 年度当時、今後 5 年以内に細胞培養法による新型インフルエンザワクチンを開発することにより、約半年間で全国民分のワクチンを国内で生産できる体制が構築されるまでの経過的な措置としたためです。本日はこの予防接種法附則第 6 条損失補償契約が平成 28 年 7 月 21 日に期限を迎えることから、期限以降の損失補償契約の規定の必要性について議論いただければと存じます。
ここで、新型インフルエンザワクチンの生産能力について、今の現状を報告します。まず、新型インフルエンザワクチン細胞培養事業の現状です。現在、国内 3 社 ( 化学及血清療法研究所、北里第一三共ワクチン株式会社、武田薬品工業株式会社 ) で、 8,500 人分が整備済みとなっております。また、平成 28 年度第 1 四半期までには北里第一三共ワクチン株式会社の 2,000 万人分の実用化が見込められることから、この損失補償が切れる平成 28 年 7 月 21 日までに、細胞培養法によるワクチンは、約 1 億 500 万人分の生産整備が整えられることになります。また下段ですけれども、従来の鶏卵培養法による生産能力につきましても、製造開始時期ごとに若干幅はありますが、 600 万人分から 2,600 万人分の生産能力をもっています。
これらのことを踏まえて事務局からの規定期限についての対応案が次のページとなります。期限 ( 平成 28 年 7 月 21 日 ) までに細胞培養法で約 1 億 500 万人分、鶏卵培養法で 600 万から 2,600 万人分の製造体制が整備される予定となっていることから、ワクチンを輸入する可能性は低いのではないかと考えます。つまり、予防接種法改正による規定の期限延長はしないということで、事務局案を提出させていただきます。庵原先生、よろしくお願いいたします。
○庵原部会長 ありがとうございました。この議題につきまして何か御意見、御質問はございますか。
○坂元委員 これをもし廃止して、将来また必要だという事態が生じたときに、この規則は政省令ではないと思われますが、もしこの規定を将来もう一度作ろうと思った場合には、どれぐらいのタイミングでできるのでしょうか。そこだけお教えいただければと思います。
○滝室長補佐 今回この時期にこの議題を出したのは、平成 28 年 7 月 21 日にこの期限が切れることから、期限を延長する場合は法改正になるものですから、ある程度期間を要するということで、今日の部会の議題としました。また、まとめの下のポツの所で書いていますけれども、期限延長をせず、仮に万が一輸入ワクチンが必要となった場合は、平成 21 年度と同様に、特別措置法により損失補償契約の規定を設けることを検討したいと考えております。
○細矢委員 背景の所で分からなかったので教えていただきたいのですけれども、この損失補償というのは、健康被害に係る損失の補償とこの契約から読めるのですけれども、実際にこの背景の中での製造販売業者に損失が生じたということは、これは健康被害ということですか、それとも、購入に関わる損失と考えるのですか。
○滝室長補佐 健康被害についての補償になります。
○庵原部会長 これは健康補償ですか。購入業者が損失を生じた場合ではないのですか。
○高城予防接種室長 補足ですけれども、輸入ワクチンについての補償という考え方の中で、当時、ワクチンを一定程度輸入する要件の中に、海外と同様の補償をしっかりと確保するようにという話もありました。そうしますと、例えば日本の中での被害救済としては、 PMDA 法と予防接種法があります。国へ申請すれば、それに対する健康被害の救済は既存の制度でできるのですけれども、例えばメーカーが健康被害で訴えられたときに、それに関する補償もしっかりと出すようにということで、そこの部分も国でカバーするようにということがありましたが、そのような制度は日本にはありませんでしたので、今回の新型インフルエンザの輸入のワクチンについては、国のほうで特別措置をしました。今、委員のほうから御指摘がありましたように 2 点、国による補償の部分と、メーカー側が訴えられて、それに対する補償についても、しっかりと国のほうで面倒を見るようにということで、それが面倒を見られるような形で対応したのが当初の法律であったということです。
○細矢委員 そうしますと、購入しなければ問題はないわけですよね。法律が続いていても特に損失が出るわけではないので、このまま継続していることに何か問題はあるのでしょうか。
○高城予防接種室長 このまま継続していきますと平成 28 年の秋に、いわゆる特別のメーカーの部分をカバーする部分の有効期限が切れるのですね。来年の秋に切れてしまうということです。平成 30 年までには全国民分のパンデミックワクチンを、国内のワクチンで供給できる体制が整うのですけれども、平成 28 年の秋の時点では、季節によっては若干カバーできない部分がある。季節性の部分でオンシーズンのとき、 12 月、 1 月の部分については 600 万人分のカバーしかできない。そうすると、従来の細胞培養事業でやっていた部分では 1 億 5,000 万人分、それにプラスして鶏卵培養法では 600 万人分ということで、 1 億 1,000 万人ちょっと分ぐらいは確保できるのですけれども、大体 1 億 3,000 万人余の人口がいるので、若干そこの部分で足りない部分は出てくる可能性はあります。それを輸入のワクチンで埋める可能性というのはどれだけあるのかを考えたときに、そこまでは必要ないのではないか。万が一輸入しなければならないという判断に至った場合には既存の、例えば予防接種法の中に規定があり、それが平成 28 年7月までという記載になっていますけれども、そこの部分を少し変えれば、対応ができるのではないかと考えております。そういう意味で法改正をしてまで更に延長する必要がないのではないかという提案です。
○庵原部会長 これは放っておけば切れるのですよね。
○高城予防接種室長 はい。
○庵原部会長 要するに、これを継続しようと思うと法改正がいるという。
○高城予防接種室長 そういうことです。
○庵原部会長 ですから確認ですが、「法改正するまでの必要性はない」というのが事務局の御意見ということでよろしいですね。
○高城予防接種室長 はい、そのとおりです。
○福島委員 追加で確認です。今回、新型インフルエンザ等ということで、インフルエンザに限らず、それ以外の感染症も対象に損失補償契約というのが継続になっていると思うのですけれども、もし期限が切れた場合に、インフルエンザ以外の感染症の脅威が起こったときにも特措法での対応を考えておられるということでいいでしょうか。
○滝室長補佐 資料 1 の一番下に書いてあります新型インフルエンザ等感染症ワクチンとは、感染症法第 6 条第 7 項に規定する新型インフルエンザ等感染症に係るワクチンをいうということで、新型インフルエンザ等感染症とは、新型インフルエンザと再興型インフルエンザに限定をしております。
○庵原部会長 その他何か御意見ございますか。なければ事務局案でよろしいでしょうか。
( 異議なし )
○庵原部会長 事務局案に異議がないようですので、事務局案を承認という形でこの部会はまとめたいと思います。この議題につきましてはこれで終わります。
続きまして、新たなワクチン開発状況等についてです。森先生から説明をお願いします。
○森委員 それでは、今回、ヒトヘルペスウイルス 6B に対する新たなワクチンの開発ということで、現状をお話いたします。
資料 2 の次のページを御覧ください。その目的ですが、本研究では、利便性及び安全性の高い新たなワクチン、即ち社会的ニーズの高いヒトヘルペスウイルス 6B 、私たちは HHV-6B と呼んでおりますが、そのワクチンを作製し、安全性及び有効性を明らかにすることを目的としています。
次ページをお願いします。「ワクチンの必要性」です。この HHV-6B ですが、生後約 6 か月から 1 歳半の全ての乳幼児に感染し、突発性発疹を引き起こします。突発性発疹は高熱を伴い、時に重篤な合併症、熱性けいれんや脳炎を発症させます。 HHV-6B による乳幼児の脳炎は、我が国で年間約 150 ~ 200 例とされており、インフルエンザに次いでいると言われています。そして、その 50 %に神経学的後遺症を残します。さらに、初感染後、全ての人に潜伏感染しますが、そのことによって特に移植後の HHV-6B 再活生化による脳炎が問題視されています。しかし今、効果的な制御法が存在しないというのが現状です。
次を御覧ください。そこで、私たちはヘルペスウイルス 6B のワクチンの開発が必要と考えました。
次はウイルス粒子の絵になります。このヒトヘルペスウイルス 6B 、 HHV-6B はヘルペスウイルスに属しまして、図にありますように、球状の形をしたエンベロープを持つウイルスです。そしてそのエンベロープには、特異的なウイルス糖タンパク質が数種類突き刺さっています。そこの横に書いていますが、糖タンパク質 Glycoprotein ということで、例えば Glycoprotein H であると「 gH 」などと私たちは呼んでおります。
次ページを御覧ください。次のページは、ヒトヘルペスウイルス 6B のヒトへの感染の第 1 段階という図です。こちらは細胞を示しておりまして、ウイルス粒子がありますが、このウイルス粒子の、先ほど示したウイルス特異的な糖タンパク質が宿主の細胞の特異的な受容体を認識し、鍵と鍵穴のようにくっ付くことにより、初めてウイルスは細胞の中に侵入していくことができます。すなわち、この糖タンパク質と受容体の結合がウイルスの細胞への侵入に必須のイベントということになります。
では、次のページを御覧ください。次は、同じようなウイルス粒子の絵です。私たちの仕事を御紹介させていただきます。このヒトヘルペスウイルス 6B のエンベロープには、数種類の糖タンパク質が存在するのですが、私たちはその gH/gL/gQ1/gQ2 という 4 種類の糖タンパク質が結合している複合体が、 HHV-6B には特異的に存在することを見いだしました。そして、その細胞側の受容体である CD134 というものを見付けました。この CD134 なのですが、活性化された T 細胞にのみ発現しています。そしてこの HHV-6B は、活性化した T 細胞にのみ侵入し、ウイルスを増やすことができます。ですので、この結果はつじつまが合うと思います。
その過程において、私たちは、ここに存在する四量体の中の gQ1 及び gH に対するモノクローム抗体が中和能を持つことを見付けました。しかし、この gH/gL/gQ1/gQ2 という四量体が存在しないと、 gQ1 や gH に対する中和能は産生できないということが分かりました。これは即ち、この四量体の構造が必要だということです。また、この CD134 という受容体に結合するためにも、 gH/gL/gQ1/gQ2 という 4 量体の存在が必要であるということが明らかとなりました。
次の図は、 gH/gL/gQ1/gQ2 複合体ワクチン原とするという図です。この四量体の中の gQ1 と gH という分子に免疫原性があるということを見付け出しましたので、この四量体をワクチン原としてできないかと考えました。この四量体は、この図にありますように、 gH という部分をアンカーとして、エンベロープという膜に突き刺さっています。そこで、このアンカーの部分を取りまして、この gH/gL/gQ1/gQ2 という複合体を可溶化した状態で作製するということに成功しました。その可溶化物をワクチン原とするということをしてみました。
次ページを御覧ください。その可溶化させた HHV-6B 複合体を、まずマウスに皮下接種してみました。接種方法としては、 2 週間ごとに 3 回接種し、 1 か月ごとに全採血しまして、血清中のウイルス抗体価及びウイルス中和抗体価を測定いたしました。
次のページを御覧ください。次は中和試験という所です。中和試験を行いました。その方法は、 PBS はコントロールなのですが、 PBS あるいは HHV-6B 複合体を接種したマウスの血清と HHV-6B ウイルス液を混ぜまして、それらを T 細胞に感染させます。もしこの血清に中和抗体が含まれていますと、 HHV-6B は T 細胞に感染することができません。それを調べてみました。 4 つの図があります。左上の図なのですが、これは HHV-6B に感染させた細胞で、 HHV-6B の抗原が発現しているのを示しています。すなわち、これはコントロール PBS を打ったマウスの血清と HHV-6B を混ぜ合わせて T 細胞に感染させたということなのですけれども、この結果から見ますと、 HHV-6B は感染していることが分かります。
ところが、 HHV-6B 複合体を免疫したマウスの血清と HHV-6B を混ぜ合わせて T 細胞に感染させても感染しないということが分かりました。即ちこの結果は、 HHV-6B の糖タンパク質四量体を免疫したマウスの血清中には、 HHV-6B に対する中和抗体が誘導されていたことが明らかになり、この四量体というものは、 HHV-6B に対する中和抗体を誘導するということが示唆されました。
以上をまとめます。 HHV-6B のワクチン原の探索を今回行いました。そして、 HHV-6B ワクチン原となる得る HHV-6B gH/gL/gQ1/gQ2 複合体の精製法を樹立しました。そして、この HHV-6B gH/gL/gQ1/gQ2 複合体が液性免疫誘導能を有することを動物において確認しました。 HHV-6B 構造タンパク質複合体の精製を行い、今後は免疫誘導エピトープを決定するために、立体構造解析に向けた条件を現在探しているところです。
本研究は、一部厚生労働省科学研究費補助金及び本年度からは AMED の支援を受けており阪大微研会との共同研究で行っております。以上です。
○庵原部会長 この説明に関しまして、御質問はございますか。
○細矢委員 不活化ワクチンなので大丈夫なのだと思うのですけれども、ターゲットが乳児になりますね。特に 6 か月以前の乳児ですので、移行抗体がある時期だと思うのですけれども、これについては特に、抗体があっても産生はされると考えているのですか。
○森委員 そこは移行抗体を更にブーストさせることができればいいかなと考えております。こちらは免疫原になりますので、これらのタンパクに対する抗体が若干存在していても、更に投与することでブーストして抗体価を上げて、消えていくのを持続させることができればいいかなと思っております。
○細矢委員 もう 1 点は、対象が乳児になりますので、 Glycoprotein だけで単独で本当に抗体を産生させられるか、あるいは免疫学的に記憶が残るのかどうかということはいかがでしょうか。
○森委員 そこは重要な課題となってきますので、今のところでは、それが十分だということはお答えできないのですが、マウスとか、更には霊長類で乳児を用いて研究を進めていきたいと思っております。
○庵原部会長 私から 2 つほど。これは HHV-6B の感染粒子から抽出されているということで、リコンビナントに遺伝子を入れてタンパクを作ってくるという方法ではないということですか。
○森委員 そうですね。この四量体を細胞で発現させまして、リコンビナントのタンパク質を取りました。ですので、ウイルス粒子から生成したものではありません。
○庵原部会長 リコンビナントということは、何かの細胞を使って製造している?
○森委員 そうですね。将来的にはベロ細胞とか、そういった細胞を使う必要があるかなとは思っています。こちらは普通のマンマリアン系の、今回ワクチンには使えないだろう細胞を使いました。その細胞にこの 4 つの遺伝子を導入しまして、上清中に分泌されるものを更に精製して免疫原としました。
○庵原部会長 それと、もう 1 点は、立体構造を持った形で、リコンビナントが出来上がってくると思われるのかということと、逆に言うとタンパクだけだとアジュバントは要らないのかという 2 点です。
○森委員 こちらが出来上がってくるものが、立体構造を維持している必要があります。その証明は、今回私たちが同定した CD134 というレセプターを発現する細胞に結合できるかということで確認しました。今回の四量体は結合することができましたので、立体構造を維持すると考えました。
○庵原部会長 タンパクを入れるときには、アジュバントがないと強力な免疫にならないかなという、そこなのですが。
○森委員 正に御指摘のとおりで、アジュバントの必要性があると考えています。今回、新たなアジュバントをいろいろな先生で作られていますので、共同研究を行って、良いアジュバントと合わせたいと思っています。
○庵原部会長 ほかにありますか。
○西島部会長代理 移植後の再活性化ということですけれども、これはシチュエーションとしてはどういうことなのですか。
○森委員 移植後に免疫抑制剤を投与しますので、免疫が落ちてしまうということで、潜伏感染していたウイルスが再活性化してきて、ウイルス血症を起こすということになりまして、それで脳炎を発症するということが報告されています。
○山口委員 今の西島先生の御質問と関連するのですが、移植後だけでしょうか。それとも、例えば、今、免疫抑制抗体でインフリキシマブとか TNF- αを中和するようなもので B 型肝炎とか再活性化というのが起こるのですが、そういうときの活性化というのは、 HHV-6B ではあまり起きないのですか。それとも起きる可能性はあるのですか。
○森委員 ちょっと今のところは報告がないので不明です。
○山口委員 あとは、 6 か月前に、感染する前に、突発性発疹の前に打たないといけないという話が 1 つありますが、これは、持続感染したあとの治療用ワクチンという形では難しいということなのですか。
○森委員 一度乳幼時期に感染して突発性発疹を起こしますと、マクロファージに潜伏感染をすると言われておりまして、そのときは害を起こさないです。その後、免疫抑制時に、初めてウイルスが増えてきますので、治療用としては、例えば移植患者さんの治療用というか、予防用というか、そういうのは可能かもしれません。
○山口委員 要するに gQ1a の抗体価が上がっていれば、免疫抑制がかかったときにも、液性免疫は働くと考えたのですが。
○森委員 すみません。もう一度。
○山口委員 抗体価が上がって維持しておけば、再活性化が起きるときにも、液性免疫が働くのではないかなという。免疫抑制剤を打っていても。
○森委員 そうですね。ですので、液性免疫だけではなくて、細胞性免疫が再活性化には関与しておりますので、今回お示ししませんでしたが、やはり、アジュバントは今後探していくのですけれども、細胞性免疫も誘導できるアジュバントが、再活性化に関して必要になると思います。乳児の場合は、液性免疫の誘導でも十分かと思っております。
○庵原部会長 ほかはよろしいですか。では、西島先生、その次は小田切先生。
○西島部会長代理、抗原のミューテーションは比較的起きないのですか。
○森委員 そこで、抗原のミューテーションは確かに可能性があるかなと思っていたのですが、 DNA ウイルスは意外とミューテーションが RNA ウイルスに比べて少なく、また、今回私たちが作製できた gQ1 に対するモノクローナル抗体は、同じところのエピトープを持つものがたくさん取れてきまして、かなり安定しているアミノ酸ではないかなと考えています。
○小田切参考人 議長が発言を許してくれたのですが、事務局から参考人はこの件に関しては発言権はないということです。
○庵原部会長 そうなのですか。
○滝室長補佐 庵原先生が了解されれば。
○庵原部会長 どうぞ。
○小田切参考人 ありがとうございます。 HHV-6B をワクチンとして開発するという方向性で動いているとすれば、この複合体というのはある程度の製造量・産生量を確保する必要はあると思いますが、先ほど庵原先生の御質問の最初の所にもあったのですが、これは細胞に導入して組替え体として発現するということをおっしゃっていますけれども、そうすると、今度はヒトの製剤として使うためには、遺伝子導入による発がん性とかそういう問題が起こってくると思うのですが、実用化としていかに大量生産できるかという戦略はあるのでしょうか。
○森委員 今考えていますのは、もう既に認可されている細胞、例えばベロ細胞と言ったのですけれども、そういった細胞に、この遺伝子をステーブルに発現させまして、その細胞を大量培養する系を作りたいと考えています。
○小田切参考人 ということは発がん性に関連してくると思うのですが、それは。
○森委員 出てきたステーブルにしました培養上清を使いまして、培養上清から更に精製して、四量体をメインに精製して、そのものをワクチン原としようと思っていますので、それが発がん性があるかという問題にはなってくると思います。それも、動物なり更に霊長類なりで調べる必要が発がん性はあるかなと思うのですけれども、もともと持っている細胞側の遺伝子は、できるだけ持って出ないように作製するつもりです
○山口委員 発がん性の問題なのですが、 WHO のガイドラインで、腫瘍細胞でなければ 10ng/dose ショットで DNA が残存していても、以下であれば普通は発がん性は考えられないというふうに書かれています。
○庵原部会長 この組替えの話に関しましては、今日の「その他」の所で審査管理課のほうから生ワクチンの場合のレギュレーションがどうかとか、不活化ワクチンの場合のレギュレーションの考え方はどうかというのが、提言というか、発言がありますので、そのときに話題がありましたら続けてディスカッションしていきたいと思います。
それでは、ほかにこの HHV-6B ワクチンに関しまして、よろしいですか。できればいいなと思いますけれども、今、突発性発疹は年齢が 1 歳を越えて発症するようになっていますので、確かに生後 6 か月までにうまいことワクチンができれば予防ができそうな気がしますので、よろしくお願いいたします。
それでは、よろしければ、次の話題に入ります。議題 3 、 2014/15 シーズンのインフルエンザの流行状況と株選定理由についてということで、小田切参考人のほうからよろしくお願いいたします。
○小田切参考人 資料 3 に基づいて報告します。 2014/15 シーズンの国内・海外でのインフルエンザの流行状況、流行したウイルスの性状を、それぞれの WHO センター及び国内センターとしては感染研ですが、解析しました。それに基づいて次のシーズン向けのワクチンの株の選定をしましたので、報告します。
2 ページの世界地図が書いてある資料ですが、これは海外のインフルエンザの流行情報や流行したウイルスを入手するために、 WHO 世界インフルエンザ監視・対応システムというネットワークが構築されています。そこにスモールポッチで示しました各国のナショナルインフルエンザセンターがそれぞれの国で流行しているウイルス・検体を採取して、★で示した WHO インフルエンザ協力センター(季節性では 5 か所、ズーノシス ( 動物由来 ) のウイルスでは 1 か所)に送って詳細なウイルスの分析を行って、どういうウイルスが今シーズン流行していたのかを把握するわけです。
3 ページですが、実際、 WHO のネットワークにそれぞれの国で分離したウイルスの情報や検体を送っているのが、グリーンで示してありますが、白で抜けている所が、その報告のシステムがない、若しくは協力していないという国になります。アフリカ地区、南米、インド、インドネシア地区が、その報告がない地区です。今回報告する海外の情報は、グリーンで示した所から得られている情報なわけです。
4 ページですが、そのようにして WHO のシステムに登録、情報を提供されましたものをまとめたのが、これです。上のグラフが北半球の流行パターンでして、北半球はいつもどおりの流行のピークがありまして、流行しているウイルスは円グラフで示しましたように、マジョリティーは H3N2 、いわゆる香港型と言われるウイルスであったわけです。それに次いで B 型という順番でした。
5 ページは、国内の流行状況です。折線グラフで示した赤の部分が今シーズンの流行パターンですが、今シーズンの特徴は、過去 3 シーズンに比べまして流行の立ち上がりが少し早かった点です。
その下の円グラフで示しましたように、国内で分離・検出されました流行株のほぼ 9 割は、 H3N2 であったということです。それに次いで 7 %が B 型山形系統でした。 A(H1)pdm09 、 B 型のビクトリア系統の流行はほとんどないと、そういう状況でした。週ごとのウイルス検出状況を 3 段の棒グラフで示しますが、一番上が今シーズンです。その前のシーズンは、 A(H1)pdm09 が流行の主流であったので、それとは様相がかなり変わっていたということです。
ここからは、国内・海外の流行しているウイルスの亜型ごとの特徴について、まとめてお話します。最初は、 H1 パンデミックウイルスの流行ですが、冒頭にもお話しましたように、このウイルスの流行は殆どの国でなかったのが今シーズンです。ただいくつか H1 パンデミックウイルスによる流行があった国は、南半球で言うとオーストラリア、それから、ヨーロッパの一部の国で散見されたという程度です。
そのウイルスの性状を分析した結果を国内と海外についてまとめたのが、 7 ページです。国内ですが、この亜型の流行はありませんでした。僅かながら検出されたウイルスは、現在使っていますワクチン株である A/California/07/2009 に抗原性が類似していたということです。それから、現時点でノイラミダーゼインヒビターに対する耐性株は、この亜型から国内では検出されていません。
海外について見てもほぼ国内と同じ状況で、海外で流行しているのも、ワクチン株 A/California/07 に類似しているものであって、耐性株も散発的にしか検出されていないということで、国内においても海外においても、流行のパターンは昨シーズンから全く変化がないということです。通して見ますと、 2009 年から H1 パンデミックウイルスはほとんど変化していないのが特徴です。
次は、 H3N2 香港型ウイルスです。世界地図ですが、これも冒頭でお話しましたように、 H3N2 の流行は多くの国で主流を占めたのが今シーズンです。日本、ヨーロッパ、アメリカ、カナダが濃い茶色で示しているとおりです。
その分析の結果が 9 ページです。これは国内の状況です。今シーズンの H3N2 の流行の特徴は、昨シーズンの後半、 3 ~ 4 月ぐらいに新たに出現した遺伝子系統樹のグループ分けをしますと、クレードの 3C.2a 、それから 3C.3a 、これに分類されるウイルスが流行の主流を占めたことが特徴です。この主流を占めたグループは、現在使っていますワクチン株、海外では A/Texas/50 、国内では A/New York/39 というウイルスをワクチンに使っていますが、これに対して抗原変異株です。すなわち、昨シーズンの後半から今シーズンにかけて、アンティジェニックドリフトが起こったわけです。
今、国内・海外で流行している 3C.2a 若しくは 3C.3a のウイルスは、 A/Swizerland/9715293/2013 というクレード 3C.3a の代表株と抗原性が類似しています。耐性株は、国内で 1 株のみ検出されている状況です。
10 ページですが、これは先ほど言いました、クレード 3C.2a 若しくは 3C.3a がいつぐらいから出てきて今シーズン主流になったかを、月ごとに表しています。この 3C.2a および 3C.3a 変異株群は紫色とオレンジ色に示していますが、 3 月、 4 月から出てきたわけです。この頃は、既に 2014/15 シーズンに使うべきワクチンの株の選定が終わった時期以降で、これが夏を経過して冬になって主流になったという経過です。これは海外でも全く同じ状況でした。
11 ページ、これは海外の状況です。海外も日本と全く同じでして、 3C.3a 若しくは 3C.2a が流行の主流であって、これは国ごとに少しずつ状況が違いますが、例えば隣の中国は、日本と違いまして 3C.3a が流行の主流であったという報告があります。いずれにしましてもこれらは変異株群ですので、海外で使っている A/Texas/50 というワクチンに比べまして、 70 %以上が変異株であるということです。
その下に国内外の流行株のまとめということで、海外の状況、国内の状況を総括し 2 つのポッチの文章で表しています。昨シーズン終盤から変異株が検出され始め、 2014/15 シーズンはそれらが流行の主流となったと。このため流行株とワクチンとの抗原性のミスマッチが起こったということです。したがいまして、次の冬向け、次シーズン向けにはワクチン株の変更は必要でありまして、今、流行の主流になっていますクレードの 3C.2a 又は 3C.3a からワクチン株が選定されるのは妥当であるという結論です。
次は、インフルエンザ B 型です。 B 型はどの国でも流行はマイナーであったことは、この図から分かると思います。インフルエンザ B 型には、山形系統、ビクトリア系統、 2 つの大きな系統がありますが、国内も海外も山形系統が B 型の主流を占めるという流行のパターンです。国内では、 B 型に対する薬剤の耐性株は現時点では検出されていません。
まず、国内の山形系統ですが、山形系統は、更に遺伝子系統樹から 2 つのグループに分かれまして、クレード 2 は今シーズン使いましたワクチン株の入る Massachusetts が入るグループで、もう 1 つは Phuket で代表されますクレード 3 、この 2 つのグループがあります。今シーズン、国内で流行したウイルスは、 Phuket のグループ 3 に入ります。
一方、ビクトリア系統ですが、国内ではほとんどウイルスが検出されていません。流行がなかったわけですが、僅かながら検出されたウイルスは、 WHO が 4 価の場合はということで推奨しています Brisbane/60 、若しくはその類似株で最近の代表株である Texas/2/2013 に類似したウイルスが検出されております。
14 ページですが、海外の状況。これは国内と全く同じでありまして、山形系統はグループ 3 に入ります Wisconsin 若しくは Phuket に類似したものがほとんどであったということです。それから、ビクトリア系統もマイナーですが、 Texas/2 若しくは Brisbane/60 というウイルス類似株が海外ではやっていますが、最近の傾向としましては、どちらかと言いますと、 B/Texas/2/2013 に類似したものがビクトリア系統の中では多数を占めているという傾向が見られています。
こういう国内・海外での流行ウイルスの分析状況を踏まえまして、来シーズン向けのワクチン株として、ここに示す 4 種類のウイルスが選定されました。次の報告で厚労省からあると思いますが、 2015/16 シーズンからは、 4 価ワクチンが導入されるということになっていますので、ワクチン株は 4 種類選定されました。すなわち、 A 型では、 H1 パンデミックウイルスとしては A/ カルフォルニア /7/2009(X-179A) 、これは変更ありません。 H3N2 は、 A/ スイス /9715293/2013 の株で、製造株としましては NIB-88 が選定されました。 B 型は、山形系統から B/ プーケット /3073/2013 の株、ビクトリア系統からは B/ テキサス /2/2013 、この 4 種類が選定されました。
参考としまして、その下に WHO が次シーズン用に推奨しました株を挙げておりますが、ほぼ日本の選定と同じ結果です。そこに赤いポッチでお示ししましたが、以前、この部会でも御報告しましたように、最近の H3N2 ウイルスはワクチン製造用に卵で増やして製造株にしますと、卵に馴化して抗原変異を起こします。今回選定されましたスイス株 (NIB-88) も、例外なく卵に馴化する抗原変異という影響を受けています。我々は、このワクチン株選定を検討する上で、今の流行の主流でありますクレード 3C.2a 及び 3C.3a いずれからも、ワクチンの製造候補株の検討をいたしました。現在準備されているワクチン製造候補株の中で、卵馴化による抗原性の一番程度の低いものということで、スイス株が選ばれました。そのことを付け加えて御報告とさせていただきたいと思います。
○庵原部会長 これに関して追加説明ということで、事務局お願いします。
○滝室長補佐 小田切先生の御発表に補足をさせていただきます。インフルエンザワクチン株選定のための検討会議で 4 価ワクチンを選定していただいたのですが、これについて、参考資料 1 にて説明させて頂きます。まず、「平成 27 年度インフルエンザ HA ワクチン製造株の検討について ( 回答 ) 」ということで、国立感染症研究所所長から当省の健康局長宛てに株選定の結果の回答を頂戴しました。この中では、 A 型 2 株及び B 型 2 株を入れた 4 価ワクチンを御選定いただいた結果をご報告頂いております。一枚おめくり下さい。この結果を受け、健康局長通知として、平成 27 年度インフルエンザ HA ワクチン製造株を決定させていただきました。真ん中ぐらいですが、なお書きの所に「なお、平成 27 年度より 4 価のインフルエンザ HA ワクチンを導入する」と記載させて頂いております。さて、 4 価ワクチンとして決めた理由ですが、これまでインフルエンザワクチン製造株は、 A/H1N1pdm09 、 A/H3N2 、 B 型の 3 種類が含まれておりまして、このうち B 型については、山形系統あるいはビクトリア系統のどちらか一方のワクチン株の選定をさせていただいておりましたが、
「 4 価ワクチンの導入理由」の所を御覧いただきたいのですが、最近、 B 型については、山形系統とビクトリア系統の混合流行が続いておりまして、 WHO においては、 2013 年南半球向けのシーズンから 4 価ワクチンのワクチン株が推奨され、また、アメリカにおいては 2013/14 シーズンから 4 価ワクチンが製造承認されておりまして、世界の動向は 4 価ワクチンへと移行してきております。このことから、わが国においても 4 価ワクチン導入の是非をインフルエンザワクチン株選定のための検討会議において御議論いただきました結果、 4 価ワクチンを選定していただき、 2015/16 シーズンより A/H1N1/pdm09 、 A/H3N2 に加えて、 B/ 山形系統および B/ ビクトリア系統の 4 価ワクチンとさせていただきました。
なお、一番下に生物学的製剤基準の改正と書いておりますが、ワクチンウイルスの株数が増えるということから、生物学的製剤基準のタンパク質量含有試験をこれまで一般試験法のタンパク質定量法を準用して試験するとき、 1mL 中 240 μ g 以下でなければならないというものを、 1mL 中 400 μ g 以下でなければならないというふうに改定させていただいております。
○庵原部会長 これについて、どなたか御意見はありますか。
○伊藤委員 H1N1 型が今年出てきていなかったのですが、これはワクチンが効いていたから出てこなかったのですか、それとも H1N1 型の流行が出てこなかったというのと、どちらというふうに考えるのか、よく開業医の先生方から質問を受けるのですが、お答えを頂けると大変有り難いと思っています。
○小田切参考人 正確には分かりませんというのが正確なところですが、多分、このウイルスが出てきてから 5 年以上たつという状況でして、かなりの人たちがこのウイルスに対する基礎免疫は持っているだろうということで、流行しにくい状況であるとは思います。しかし、そういう状況で、去年は H1 パンデミックウイルスが流行の主流になったわけなので、この流行が主流になったり、下火になったりするパターンの繰り返しのメカニズムは、正確なところは分かりません。
○福島委員 最新の情報について、御報告をありがとうございました。 H3 の抗原連続変異についてお尋ねしたいのですが、抗原連続変異はインフルエンザというウイルスの特性上、ある程度起こるのは仕方がないかと私は考えているのですが、このシーズンの変異はかなり大きなものだったのでしょうか。
それと関連して、欧米では、昨シーズンのインフルエンザワクチンの有効率が例年と比べて少し低かったとお伺いしていますが、抗原連続変異が影響したというお考えなのでしょうか。先生の御存じの範囲でよろしくお願いします。
○小田切参考人 最初の質問で、どれぐらいの抗原変異の程度だったかということですが、私たち感染研の解析の結果、それから海外の WHO コラボレーティングセンターの解析結果を見ましても、ワクチン株をベースにした場合に、抗原変異の程度は比較的大きかったという成績が出ています。
2 つ目の質問で、ワクチンの効果が低かったということは、 1 つ目の抗原変異の程度が大きかったのも 1 つの原因です。もう 1 つは、先ほど言いましたように H3N2 のワクチンは卵馴化による抗原変異を持っているということで、流行株自体の変化による抗原性の乖離が起こったこと、プラス更に卵馴化による変異と、このダブルパンチが起こったので、ワクチンの有効性が低下したと考えています。
○福島委員 追加で質問いたします。昨シーズン、国内では、先生がワクチン株の選定にかなり慎重になられて、卵馴化による抗原変異が起こりにくいワクチン株を選定されたと理解しています。その場合、昨シーズンの国内のワクチン有効率は、欧米ほどは低くないというふうに期待できるのでしょうか。
○小田切参考人 非常に重要な質問だと思います。確かに国内のワクチン株は海外若しくは WHO がリコメンドしたテキサスと違ったニューヨークを選んだ理由は、卵馴化の抗原変異の程度が改善されたものを採用したのですが、残念ながらそれ以前に流行株自体がドリフトを起こして抗原変異してしまったので、その卵馴化の改善が生かされなかったわけで、せっかくニューヨーク株を選んだわけですが、その効果がうまく発揮できなかったのが現状です。
○細矢委員 同じく H3 のことについてですが、 2014/15 シーズンは、世界的に 3C.2a 、 3C.3a の流行が中心だったとお聞きしたと思うのですが、世界中で 2013/14 シーズンの後半から 3C.3a 、 3C.2a が全世界で出始めていたと考えていいのですか。
○小田切参考人 正におっしゃるとおりで、これは日本もそうですが、海外でもちょうど 3 月下旬頃からこういう新しいグループに入る変異ウイルスがぽちぽちと出始めていて、それが夏の間、すなわち南半球で流行の主流になり、さらに、半年後の北半球の冬に主流に置き変わってしまったと、そういう経緯をたどっています。国内も海外も同じ状況でした。
○細矢委員 全世界でぽんぽんと同じような株が出るとは考えにくいので、どこかから世界中にディストリビュートしたのではないかと想定するのですが、そうではないのですか。
○小田切参考人 はい、恐らく出発点はそうだと思いますが、それがじわじわと全世界に時間を掛けて広がっていったということです。サーベイランスで検出できるレベルまでウイルスが増えてきたというのは、大体 3 月下旬頃からという状況です。
○細矢委員 そうすると、 2014 年の南半球の流行の主流は、この形だったということですか。
○小田切参考人 そうです。 9 月の時点で南半球のワクチン選定会議に世界中から流行しているウイルスの分析情報は集まるのですが、 3C.2a 、 3C.3a がかなり増えてきている状況が、 9 月の時点で報告がありました。ですので、更に半年後の北半球ではもっと増えるだろうという予想が、その時点で立ちました。
○細矢委員 その選定を南半球の結果を待ってからというわけにはいかないわけですね。要するに、今のだと来シーズンは当たらない可能性もあるわけですよね。
○小田切参考人 南半球の選定ということは、 9 月に行われますので、それでは次のシーズンは北半球のワクチンの供給には間に合わないです。
○細矢委員 絶対間に合わないですね。
○小田切参考人 北半球のワクチンの選定は、大体デッドラインが 3 月下旬です。そこで決めて、初めて 10 月のワクチン供給に間に合うという状況です。
○細矢委員 分かりました。
○庵原部会長 H3N2 が卵馴化するときの方向性と自然が変異する方向性は、全く別の方向で動いているわけですか。いや、同じ方向に動いてくれればいいのですが。
○小田切参考人 残念ながらインディペントに起こっています。
○庵原部会長 全然別ですか。
○小田切参考人 はい、別です。
○山口委員 卵馴化が割とずれてしまう原因というお話を頂いたと思うのですが、将来的に細胞培養に切り替えるときには、そういうことは起きにくいと考えてよろしいのですか。
○小田切参考人 はい、次の信澤室長からの報告で触れると思いますが、 H3N2 ワクチンに関しては、細胞培養に置き換えると、馴化する抗原変異は起きにくいというプレリミナリな成績が得られていますので、恐らく今起こっている卵馴化による抗原変異という問題は、細胞培養ワクチンにすると解決できるのではないかと期待しています。
○庵原部会長 小田切さん、もう 1 点いいですか。これはリコンビナントにしてしまえば、変異に対して対応は、要するに馴化に対する対応は可能ではないのですか。
○小田切参考人 それはできないと思います。リコンビナントというのは、どのものを言うのですか。
○庵原部会長 いや、今、海外ではリコンビナントのインフルエンザワクチンができていますので、要するにヘマグルチニンとかノイラミダーゼを細胞に入れて作れば、欲しいヘマグルチニンのシークエンスでそのままタンパクはできてくるので、細胞馴化の変化はクリアされるのではないかということなのですが。
○小田切参考人 はい、分かりました。卵に対する馴化という問題は、多分起こらなくなる可能性は高いと思うのです。しかし、今度は新たに組替えをするために使った細胞に対する馴化で変異するという可能性は、否定できないと思います。そこは検証していく必要があるとは思います。
○庵原部会長 4 価になることに関しては、委員の先生方は特に異論がないということと、タンパク量が 400 μ g まで上がるのですが、なぜ 3 分の 4 倍にせずに 400 μ g まで上げたかというのだけが引っ掛かるのですが、その辺は事務局か小田切先生か、何か御意見はお持ちですか。普通ならば 240 μ g から 300 μ g ぐらいでいいのに、 400 μ g まで上げたというのは。
○小田切参考人 それでは私から。 3 価の規定は上限値は 240 μ g ということで、 3 種類のウイルスをワクチンに盛り込むと、ほぼ 200 μ g を超える状況で、上限値に近いかぎりぎりの所で、下手すると検定で不合格になるという状況だったのです。それを 4 価にした場合に、 400 μ g に上げたのは、 1 つはその辺の上限値をある程度幅を持って取れるようにということで考えたわけです。それから、事務局から報告はありませんでしたが、一応、臨床試験は小児でもやっていて、ある程度問題ないということが確認できているので、 400 μ g の 4 価ということに踏み切ったものと思っています。
○庵原部会長 御意見はほかによろしいですか。そうしたら、特にないようでしたので、次の話題に入ります。先ほどから話題になっていますが、細胞培養季節性インフルエンザワクチンの実用化への取組についてということで、信澤先生、よろしくお願いします。
○信澤参考人 では、細胞培養インフルエンザワクチン実用化への取組についてお話します。資料 4 に沿って説明いたします。初めに、簡単に背景を申し上げますと、先ほどから話が出ておりますが、現行の鶏卵培養ワクチンは、ワクチン株が鶏卵に馴化するために抗原性が変わることがあり、問題視されてきました。それを回避する目的で、細胞培養ワクチンの導入が検討されていますが、細胞培養ワクチンにも幾つかの検討すべき課題があることを、これまでの本部会でお伝えしてきました。資料の右下にページ番号を付けております。
2 ページ目を御覧ください。その課題を挙げております。初めに、細胞培養ワクチン株作製法の確立です。現段階では、日本ではワクチンの製造所が各社の細胞を用いてワクチン株を作製することが予定されています。しかし、各社の細胞というのは異なりますので、細胞によってはウイルスの増殖性や抗原性が異なる可能性があります。ですので、このような問題を解決し、ワクチン株を安定して作製する手法を確立することが必要になります。それが 1 つ目の課題です。
2 つ目の課題としては、細胞培養ワクチン製造株の指定法の確立です。日本では、細胞培養ワクチン株候補を、今申しましたように、ワクチン製造所が所有の細胞で作製することになります。したがって、幾つもの細胞で作製されたワクチン株候補の中から、ワクチン製造株をどのように指定するのか、その指定法を確立することが必要になります。
3 つ目の課題としては、細胞培養ワクチンの HA 抗原量測定試薬作製法の確立です。これはワクチン製造後に、国家検定で測定されるワクチン中の HA 抗原量の測定に関する課題です。現行の国家検定では、ワクチン中の HA 抗原量は、一元放射免疫拡散法という試験法で測定しています。この同じ試験法が、細胞培養ワクチンの場合にも用いられることが予想されていますが、その測定のための試薬の作製法がまだ確立されていませんので、それを確立し、同様の試験が行えるようにする必要があります。
これらの課題に取り組むために、 3 ページ目に示しましたような会議体を発足させました。前回の部会で、上から 3 つ目までの会議体については報告いたしております。 4 つ目の AMED の研究班をこの 4 月から発足させ、ワクチン製造所に研究協力者として参加していただき、今示しました課題への取組を行っているところです。本日は、最初の課題であるワクチン製造用ワクチン株作製法の確立の進捗状況を中心にお話をいたします。まず、ここで言うワクチン株はどのように決められるのかを、これまで説明しておりませんでしたので、簡単に説明いたします。
5 ページ目に、ワクチン株の決定法を簡単に示しました。先ほど小田切先生からも報告がありましたが、インフルエンザの流行期に入りますと、 WHO の国際的インフルエンザネットワーク、 GISRS と言われますが、その機関が各国の流行ウイルスを臨床検体から、 MDCK 細胞で分離し、その分離したウイルスの抗原解析あるいは遺伝子解析をし、ウイルスの情報を WHO のワクチン選定会議に提供します。そうしますと、 WHOVCM というものが、そのワクチン会議ですが、この会議でその提供された情報を基に、流行しているウイルスの代表と言える抗原性を示すような株を基準株として選定します。この基準株のことを、通常プロトタイプ株と呼んでいます。このプロトタイプ株そのもの、あるいはこれと抗原的に類似である株を用いて、ワクチン株を作製することが推奨されます。これは鶏卵培養ワクチンのときの選定法ではありますが、恐らく細胞培養ワクチンの際にも同様の手法が用いられることが予想されます。
この仕組みでいきますと、プロトタイプ株が決定してから、ワクチン株を作製することになってしまいますが、そうしますとワクチン製造がとても間に合いませんので、実際には基準株、プロトタイプ株選定時には幾つかのワクチン株候補が作製されています。ちなみに、この WHO のワクチン会議は北半球用には 2 月、南半球用には 9 月に行われています。
では、その細胞培養ワクチンを日本で作製していくときにはどういうプロセスを考えているかを、 6 ページに示しました。左上から順番に、まず地方衛生研究所などの関連機関から感染研に臨床検体を分与していただきます。感染研では、その臨床検体からウイルスを分離するわけですが、その分離する際に臨床検体中のウイルスゲノム量や、流行しているウイルスの抗原解析情報を参考にし、ウイルスを分離する検体をある程度選びます。細胞培養ワクチン株作製の際には、臨床検体からウイルスを分離するときに用いる細胞は品質管理されていることが必要とされていますので、感染研でウイルス分離に用いる細胞は品質管理済みの細胞です。感染研でウイルスを分離した後、矢印が下のほうに行き、ワクチン製造所にその分離したウイルスを分与いたします。ワクチン製造所では、各社が保有していますワクチン製造用の細胞でウイルスを増殖させ、ワクチン製造が可能になる程度にウイルスが増殖するまで、各社の細胞で継代を繰り返します。そして作製されたものが、細胞培養用ワクチン株候補となる可能性のあるウイルスということで、 pccCVV と言います。この pccCVV を各ワクチン製造所が作製します。その pccCVV は再び感染研に分与していただき、感染研ではそれがワクチン株として妥当であるかの評価を行います。実際には、先ほど申しましたプロトタイプ株と抗原的に同等であることの確認を行います。そして、同等であることが確認されてはじめて、そのワクチン株候補の可能性のある pccCVV はワクチン株候補 ccCVV となるわけです。
実際にこのプロセスが日本で稼動可能なのかを検証するために、昨年暮れから試行実験を行いました。それが 7 ページ目です。まず、感染研で NIID-MDCK 細胞を用いて、既存の臨床検体からウイルスを分離しました。分離したウイルスの抗原解析を行い、ここに示します各シーズンの A/H1N1pdm09 、 A/H3N2 、 B/Yam 、 B/Vic の各ウイルス 2 株ずつを準備しました。各ワクチン製造所で準備状況が異なりますので、分与時期や、検討していただいた株数は今回は異なっております。早い所では 12 月にウイルスを分与した後、すぐ高増殖株の作製ができ、 1 月から抗原解析などを行っています。
今回、まず試行的に行った実験の結果、明らかになった問題点を 8 ~ 9 ページに示します。まず、感染研側のウイルスを分離する際の問題として、先ほども話がありましたが、 NIID-MDCK 細胞で継代することにより、やはり細胞への馴化変異が起きました。特に、 A 型の H1N1pdm09 ウイルスでは、 NIID-MDCK 細胞への馴化による変異が起きています。
それを回避する手法として、臨床検体中のウイルスゲノム量が多い検体を選び、細胞での継代数を減らすことによって、ある程度変異の導入が回避できることが分かりました。今後はなるべくその方法で分離していく予定です。
また、最近の H3N2 、先ほどで言いますと 3C.2a というクレードに入るウイルスは、 MDCK 細胞での分離が難しい、余りよく分離できないことが言われていますが、確かに NIID-MDCK 、 NIID 保有の MDCK 細胞でも、必ずしも効率良く分離はできていません。この点に関しても、検体中のウイルスゲノム量の検討などによって改善していきたいと思います。
次に、ワクチン製造所側の問題です。この 5 月までに各社の進捗状況を中間報告としてお知らせいただいた結果をまとめますと、やはり各社で細胞が異なるために、ウイルスの増殖性や抗原変異の入り方が製造所ごとに異なっておりました。それぞれの問題に関しては、各社で検討いただくしかないのですが、抗原変異の問題に関しては感染研でも、ある程度対応が可能ではないかと考えています。その対応法は 9 ページ目の一番下にありますが、日本分離株がプロトタイプ株となる仕組みを作るということです。先ほど申しましたように、 WHO のワクチン会議がプロトタイプ株を決めるのですが、その際に日本から日本分離株の情報を積極的に提供し、プロトタイプ株として日本で分離された株を選んでもらえる機会を増やすということで、ワクチン製造所に分与する株そのものが、もともとのプロトタイプ株であれば、製造所で継代を何回か繰り返した後に、仮に多少変異が起きたとしても、プロトタイプからの大きな抗原性の乖離ということが避けられる、避ける可能性が多少は期待できるのではないかと考えています。
10 ページは、実際に細胞培養ワクチンが実用化された際に予想されるスケジュールです。左下のほうから御覧ください。実際、日本ではインフルエンザワクチンの接種が 10 月ぐらいから始まります。したがって、その 10 月にワクチン接種を可能にするためには、大体 1 月~ 3 月までの間に、その接種ワクチンを作るワクチン株の選定をする必要があります。この国内のワクチン選定会議にワクチン株候補を出すためには、遅くとも 2 月ぐらいまでには先ほどの ccCVV が作られている必要があり、そのまま逆算しますと、前年の 12 月ぐらいからワクチン製造所では pccCVV を作製し始めていただく必要があり、ワクチン製造所で作製するための基になる株は、感染研から 9 月ぐらいから提供していく必要があります。感染研では、提供する株の性状とか抗原性、特に抗原性を重視し、 3 月ぐらいからはそのウイルスの分離を行って、準備することが必要であることが予想されます。今年度は、実際に行う予定のスケジュールに沿って 2 回目の試行実験を行っていきたいと考えています。
最後の 11 ページ目に、今後の取組をまとめてあります。まず、細胞培養ワクチン株作製法の確立としては、今行っている試行実験の 1 を続け、最後までできるまで継続します。試行実験の 2 として、 10 ページに示した実用化のスケジュールで実際にワクチン作製まで行けるのかを、実際に行ってみます。それから 2 番目の製造株の指定法に関しては、 2 回目のワーキンググループを早急に開き、指定法に関してのルール作りをしていきたいと思います。 3 番目の HA 抗原量測定試薬作製法の確立については、現在行っておりますワクチン株作製の試行実験 1 で出来たワクチン株を基に、ワクチンに相当するようなものを試験的に製造所で作っていただき、それを基にワクチン中の HA 抗原量の測定法を検討し、測定する試薬をまず作り、測定法を確立できるようにしていきたいと考えています。以上です。
○庵原部会長 今の信澤先生の御説明に関しまして、御質問はございますか。
私からお聞きしたいのですが、パンデミックの株、 H1N1 は細胞馴化で変異しやすいと。 9 ページに書かれています製造所で使用する細胞への馴化、これは H1N1 以外の細胞も製造所では起こったということですか。
○信澤参考人 はい。多少起きている細胞もありました。
○庵原部会長 これは B も H3 も起こるということですか。
○信澤参考人 はい。
○庵原部会長 ということは、細胞培養にしても全ての型で起きるという。
○信澤参考人 はい。ただ、製造所ごとに検討の仕方も違いますし、 1 回しか検討していませんので、増やすウイルスを感染するときのその濃度ですとか、そういうのをもっと振ってもらって、変異が起こりにくい条件というのを、今後検討していただく必要があると思います。細胞に替えたからと言って、何も変異が起こらず、非常にうまく行っているという状況では、現段階ではないです。
○庵原部会長 ありがとうございます。どうぞ、山口委員。
○山口委員 先ほどの庵原先生の質問にも関連するのですが、組換えで作れば、 1 次構造そのものは非常に安定ではないのかなという気がするのですけれども。例えば、要するにウイルスを増やすという、その代替の方法としてなのですが、そのスプリットだけを増やすことを幾つか開発されている企業もあるかと思うのです。その場合には、 1 次構造そのものはそんなに変異するものではないような気がするのですが。ただ、その場合にはポストトランスレーショナルなグリコシレーションなんかが違ってくるということになるのでしょうか。
○信澤参考人 はい、そうです。具体的に会社名は申し上げませんけれども、やはり用いている細胞が異なりますので、必ずしも今検討している細胞培養ワクチンで使っているような細胞ではない場合は、修飾のされ方が違ってくる。その影響は、ある可能性はあります。
○山口委員 もう 1 つよろしいでしょうか。あともう 1 つは、感染研では MDCK をということで、クオリファイされた MDCK ということになっているのですが、各ワクチンメーカーは、パンデミックのときはそれぞれ違う、かなり違う細胞も使われているかと思うのですが、この場合、メーカーはどういう種の細胞を使ってもいいという前提に出すのでしょうか。それとも、 MDCK に限定するということになるのでしょうか。
○信澤参考人 いえ、ワクチンを製造する細胞として必要な条件をクリアしている細胞であれば、どの細胞でも構わないということです。
○庵原部会長 分かりました。ほかには、伊藤先生、どうですか。
○伊藤委員 今日初めて聞いたので、ちょっとびっくりはするのですが。卵の場合はあらかじめ感染研がワクチン株を決めて、それで製造し作られたものに関しても製造後に検定をするという話になっていると思いますので、基本的に違いがないということだと思うのです。この方法だと、各社が作って、それをもう 1 回感染研のほうでチェックをして、きちんとしたワクチンが作られていますねという話を見てから製造するという過程のように見えるのです。それをすることによって、逆に言うと、ウイルス分離から決定して製造になる株までのタイムラグが余計生じてしまうのではないか。初めから細胞培養みたいな話をすれば、先ほど出てきた、例えばワクチンの流行株が変わったときにも早目に対応ができるのかなと思っていたのが、逆に時間が掛かるのではないかという懸念が生じているような気がするのですが、そこら辺はどうでしょうか。
○信澤参考人 先生が今おっしゃいました、感染研でワクチン株としての妥当性を評価するというのはワクチン株であって、ワクチンの評価ではない。これは検定の意味ではないのです。あとは、いわゆる CVV と言われるワクチン株候補として妥当であるとして評価された株が出てくる時期に関しては、これまで鶏卵培養ワクチンでも、似たようなステップを、国内ではなくて鶏卵を用いて海外でやっていたわけで、その出来上がった CVV を、感染研の場合は、日本の場合には輸入して、それをメーカーに配っていたのです。海外で CVV を作っていた役割を日本の各製造所が担って、同じように 2 月ぐらいまでにワクチン株が出来るように作るという意味です。そのステップそのものは現行の鶏卵と、特に変わっているわけではないのです。ただ、問題なのは、日本でワクチン製造所は全く違う細胞でそれぞれ作製してきますので、鶏卵の場合には鶏卵で、ニワトリが国ごとに違うことはなかったので、 1 種類でしたが、同じウイルス、 1 つのウイルスを感染研から最初に分与しても、製造所で作られるワクチン株がそれぞれ違ったものが出来てくる可能性があるのですね。それをどのように評価するのか、みんな妥当であると評価されればいいのですが、もし全部妥当でなかった場合どうするのかとか。そこら辺の検証がむしろ問題になってくるかと思います。
○細矢委員 今、伊藤委員のおっしゃったことと同じようなことになるのですが、この 10 ページを見ますと、例えば今年、 2015 年の 10 月のワクチン株、ワクチン接種開始に選ばれる株は、 2013/14 年シーズンに分離された株ということになりますよね。
○信澤参考人 2013/14 シーズンの株から検討を始めるということになります。今回のように、途中で秋口から新たな株が出てきた場合には、間に合わないというか、至急その 10 月、 11 月に抗原変異株が出てきた場合には、それもワクチン製造ができるように分離して、製造所に分与していくという仕組みを作っていく必要があると考えています。
○細矢委員 例えば、 2014/15 年に新しい、また変異したものが出てきたと言った場合には、これは絶対選ばれないということですね。
○信澤参考人 いえ、秋口に、 10 月、 11 月、デッドライン 12 月ぐらいだと思いますが、それまでに出てきた場合には選ぶことは可能です。それは鶏卵の場合と同じです。鶏卵の場合にも、間に合わないときには、間に合いませんでした。
○細矢委員 組織培養になればもう少し早くなって、選んで短期間で製造できるのではないかと、ちょっと期待していたのですけれども。むしろ何か遅くなっているようなイメージがあるものですから、そこが何とかもう少し改善の余地はないのかなと思って、質問しました。
○信澤参考人 各社でそれぞれのワクチン株を作製するまでの時間が短縮できる工夫をしていただければ、その辺はある程度融通は利くのかもしれません。現時点では、鶏卵の場合と時間短縮に関しては、例えばパンデミックの場合には鶏卵の準備がないので細胞でやるということは意義があると思いますが、季節性の場合、鶏卵の場合と掛かる時間に関して、大幅に短縮ということは余り期待できない可能性があります。
○伊藤委員 もう 1 点いいですか。感染研で分離するのが MDCK 細胞というイヌの細胞で、その細胞培養をやっている所もあれば、アヒルの細胞を使ったりと、様々な所があって、逆に、 MDCK 細胞を使って、感染研で分離すると、例えば、アヒルの細胞なり他の細胞で増えるものが外されてしまうというか、かえってリミテーションになってしまうのではないかという懸念についてはどうお考えでしょうか。
○信澤参考人 はい、それもありましたので、ここ 2 、 3 年掛けて、感染研から分与した細胞が、ウイルスが各社の細胞にどの程度増殖可能なのか、検討していこうとしているのです。 1 回目の試行実験では、今先生がおっしゃった細胞は、 4 種類のウイルス全てではないですが、検討した1種類に関しては非常によく増えています。その懸念は、今検討した株に関してはありませんでした。感染研細胞で分離したウイルスがアヒルの細胞でも増殖性は良かったです。
○庵原部会長 ほかに。これは結局はインフルエンザウイルスが自然でどんどんドリフトしていくので、作るほうが選定する株が追いつかないということなのですね、結局は。
○信澤参考人 10 月、 11 月に急に変異が起きてしまうと、追い付かなくなる可能性があるということです。
○庵原部会長 ですから、幾ら細胞培養にしても、やはり自然の流れには、勢いには負けてしまうというか、追い付かない危険性はありそうだ、幾ら細胞培養にしてもウイルス変異は存在するという、そういう可能性ですね。
○信澤参考人 はい。
○庵原部会長 ほかに御意見はよろしいですか。ただ、卵から細胞培養に変えるという流れは変わらないのですか。この辺は事務局なり、感染研に確認したいのですが。
○滝室長補佐 昨年 9 月のこの研究開発部会では、いずれ季節性のインフルエンザワクチンについては細胞培養法も採用されることから感染研の先生方に技術的なところを検討していただいているところです。まだまだこの技術的な解決、課題をクリアするのには時間が掛かると聞いております。
○西島部会長代理 1 つ、卵で問題は、卵のアレルギーですね。それに対しては、培養細胞は非常に良いということでよろしいでしょうか。
○信澤参考人 はい。
○庵原部会長 ほかはよろしいですか。そうしますと、ハードルが幾つか先生から示されましたけれども、無事クリアされることを期待して、よろしくお願いします。それでは、この話題はよろしいですか。
続きまして、その他に入ります。前回の第 9 回研究開発及び生産・流通部会において、遺伝子組換え生ワクチンについて御議論いただいたところなのですが、本日はその補足として、医薬食品局審査管理課よりこのレギュレーションについての説明が頂けるということですので、よろしくお願いします。
○井本補佐 審査管理課から御説明させていただきます。資料 5 を御覧ください。前回御議論いただいたときに、遺伝子組換えの生ワクチンが法制上どう位置付けられるのかということを、 1 と 2 について御説明していきたいと思います。
まず、 1 番です。昨年、今まで薬事法と言われていた法律が、「医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律」と変わりまして、今後は「薬機法」と略させていただきます。この中で、新しいカテゴリーの定義という意味で、再生医療等製品に当たるかどうかというのが 1 つの大きな考え方になるのですが、その括弧にその定義を抜き出しています。「人又は動物の疾病の治療に使用されることが目的とされるもののうち」ということですので、基本的には再生医療等製品として指定されるものは遺伝子治療、遺伝子導入したものであっても治療目的のものだけということに、薬機法上は指定されています。これに当たらないということで、このような遺伝子組換え生ワクチンで、予防目的で使われる医療用のものについては「医薬品」という形で整理されるようになっております。
第 2 条の第 1 項で、医薬品の定義があります。そちらでは目的が、診断・治療・予防の 3 つを掲げております。治療に使用されることが目的とするものだけ、特出しで再生医療等製品に指定するような法律構成になっております。前回御議論いただきました、予防という観点で使われる薬剤については薬機法上、医薬品という統制を受ける形になりますので、許可あるいは承認といったものも全て、薬機法の医薬品相当のものとして処理されることになります。
2 番です。薬機法以外に規制を受けるものとしては、実は遺伝子組換えしたものについては、環境への放出と言うのですか、生物多様性の観点から環境への遺伝子組換え製品への拡散防止策というものが国際協定で結ばれており、適切にすると。いわゆる、カルタヘナ法と言われているものです。
2. を御覧ください。「遺伝子組換え生物等の使用等の規制による生物の多様性の確保に関する法律」と、長い法律名ですが、いわゆる「カルタヘナ法」と言われております。こちらにおいて遺伝子組換え生物は環境に排出されますと、従来ある生物界に大きな影響を及ぼす可能性があるということで、その使用の種類によって主務大臣から規制を受けることになります。先ほど来ありました遺伝子組換えの生ワクチンを産業目的、要するに医薬品として開発することになりますと、治験薬製造段階から産業利用ということで、遺伝子組換え生物の拡散防止をするという意味で、厚生労働大臣の確認を受けなければいけなくなってくることになります。また、今回の製品については不活化されずに恐らく用いられるということでしたので、そうすると、封じ込め施策として、あらかじめ承認を取っていただく、確認を取ってもらう手続が必要になってくると思われます。
3. ですが、いずれにしても、開発する側においてはそういった法律の規制の細かい運用であるとか、あるいはどうすればその必要書類を集められるかについては、医薬品の審査する部門であります独立行政法人の医薬品医療機器総合機構の薬事戦略相談の中で、製品の開発という観点から、初期段階の品質確保や安全対策の指導助言、あるいは 2. のカルタヘナ法への対応についても、御相談に応じているという形で対応しております。いずれについても医薬品開発という形での問題でありましたら、そちらで一括して対応していただいているところです。概況ですが、以上です。
○庵原部会長 ありがとうございました。ついでで申し訳ないですが、不活化ワクチン、現在パピローマとか遺伝子組換えで作られていますが、これはどういうレギュレーションの中で現在動いているのですか。それだけ教えてください。
○井本補佐 基本的には、大きく分けて考えなくてはいけないのは、この 1. と 2. だけです。 1. は、医薬品とカテゴリーされるか、再生医療等製品とカテゴリーされるかですが、予防目的であれば、基本的に全て医薬品カテゴリーになることは、 1 番についての解釈は動きません。 2. については不活化されているかどうかなのですが、これは環境に放出したときの拡散防止のリスク評価になって関わってきます。完全不活化されてきますと、ここでの規制はぐっと緩くなるので、その等級に応じた確認なり、届出なりという形になるので、場合によっては全く影響がなければそういったことはなくなってきます。いずれにしても、拡散防止の観点でのリスクに応じた統制という形になります。
○庵原部会長 大分頭が整理されました、ありがとうございます。これに関しまして、何か御議論はございますか。まずは山口先生。
○山口委員 確認なのですが、生物由来技術部会で、予防用のものについて遺伝子治療にするという答弁があったのだけれども、昨年、薬機法が成立したときに、その予防を外すということで整理をし直したという理解でよろしいですね。
○井本補佐 基本的には、どこまでをどちらのカテゴリーにするかという議論もあるのですが、いずれにしても、薬機法で統制されるものであることには変わりはございません。その場合に、医薬品として流通規制を掛けるか、あるいは再生医療等製品で流通規制を掛けるかというのは、実際の特性に応じた細分類における運用の違いでして、いずれにしましても承認は必要になりますし、市販後安全対策をするための許可業体としての許可も必要になってございます。再生医療等製品についてはちょっと製品の特殊性がありますので、例えば卸売業を通さずに直接医療機関に納品されるような制度になるとか、若干その特殊性に応じた流通規制に変化のバリエーションがあるということだけなので、一般的に考えていただく場合には、医薬品並びの規制を受けるカテゴリーですので、それほどお気にされることはないかとは思いますが、おっしゃるとおりでございます。
○山口委員 もう 1 つよろしいですか。組換え生ワクでないものは、日本の国内で作れば、当然第二種のカルタヘナは掛かってくるという考えですよね。
○井本補佐 はい、そのとおりでございます。
多分ほかの方だと分からないかもしれませんが、第一種、第二種というのはカルタヘナ法でグレードを決めて、その拡散防止について取らなくてはいけない措置のグレードが違います。当然ながら、第一種というのは開放系で出ていってしまう可能性があるという意味で、危険性が高いものに位置付けられます。不活化されていないもので、当然出ていく可能性があるだろうということになりますので、基本的には大臣の承認を取ってもらう。申請して、これで大丈夫ですね、封じ込めは大丈夫ですねと、環境への破壊は問題ないですねという形の、ある意味承認申請と確認行為を行うということになるカテゴリーです。
一方、第二種というのは、基本的にはそれほどきつくないと。要するに、外に出たときに大きな問題がなく完全に封じ込められているような形で使われているものが、より低いグレードで、告示されているものをそのまま使うとか、確認不要のものであったり、あるいは申請確認という形で確認を受けるという承認まで至らないようなグレードを指すものです。いずれにしても、リスクに応じた手続を取っていただくことになります。
○庵原部会長 よろしいでしょうか。今後、キメラの生ワクチンがちょっと開発の方向に向かっています。実際、デングのワクチンが海外で承認されつつあって、キメラのワクチンですので、そういうものを日本に導入するに当たって、レギュレーションだけははっきりさせておきたかったのです。どうもありがとうございました。ほかに何か御意見はございませんか。どうぞ、森先生。
○森委員 今回のワクチンは、私たちも候補を作っているのですが、日本で作られて承認されたものがまだないと思うのですが、そのハードルが全然見えていなくて、どういうふうにすれば承認されるのかなと。とても抽象的なのですが、そこが悩んでいるところなのです。承認される段階がとても厳しいではないですか。例えば治験にしても閉鎖空間でしないといけないとか。そういうものは、どういった風に段階を経れば承認される可能性があるのかなという懸念があるのです。
○井本補佐 個別品目等について、私のほうから承認されますとか、されませんとか、お話しできるものではございませんが、ただ、先生の御懸念のように、特に前例がないものについての評価というのは、当然ながら規制当局のほうも安全を見ながら確認していくことになろうかと思います。例えば、環境への排出については、実際にその排出限界、体内でどのくらいまで希釈されるか。ある意味で、完全にそのウイルスが消失・消化されてしまうかといったようなものも、データをそろえていけばいくほど、安全性のエビデンスは上がります。ですから、エビデンスがそろえばそろうほど、より運用は楽になっていく方向には行きますので、そこら辺は実際に開発の個別の品目の特性に合わせて、審査チームのほうが独立行政法人の医薬品医療機器総合機構のほうで実際に情報を見ながら、御相談させていただけるものと考えています。そちらを御利用いただければよろしいかと思います。
○庵原部会長 ということは、開発に当たっては PMDA と個別相談しながら進めていくという、そういう方向でよろしいですか。
○井本補佐 アメリカなどでも、 FDA でも、実際には最先端のものについての評価というのはなかなかガイドラインにまとめ切れないところもございます。そういったところについては個別の事象ごとに FDA も相談に乗って進めているということです。日本も同じような形で、審査当局が相談の枠組みの中で、その得られたデータを基に、このデータならここまでですかねというのを 1 個 1 個、御相談に応じているところです。そちらのほうを御利用いただければと思っております。
○庵原部会長 よろしいでしょうか。どうもありがとうございました。大分頭が整理されました。それでは、今日の議事は以上で終わりです。事務局から連絡、よろしくお願いします。
○滝室長補佐 次回の日定は未定となっておりますので、改めて御連絡差し上げます。本日はありがとうございました。
○庵原部会長 どうもありがとうございました。
ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 厚生科学審議会(予防接種・ワクチン分科会 研究開発及び生産流通部会)> 第10回厚生科学審議会予防接種・ワクチン分科会研究開発及び生産流通部会議事録(2015年6月1日)