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2015年4月20日 児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会(第8回)

雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室

○日時

平成27年4月20日(月)18:00~20:00


○場所

厚生労働省 専用第21会議室(17階)


○出席者

委員

松原委員長 秋山委員 泉谷委員 磯谷委員
木ノ内委員 草間委員 作本委員 笹井委員
佐藤委員 菅野委員 辰田委員 中板委員
浜田委員 平井委員 平田委員 藤川委員
藤平委員 卜蔵委員 武藤委員

オブザーバー

警察庁

厚生労働省

安藤雇用均等・児童家庭局長 木下大臣官房審議官(雇用均等・児童家庭、少子化対策担当)
古川総務課長 大隈家庭福祉課長
田村虐待防止対策室長 寺澤家庭福祉課長補佐

○議題

(1)課題・検討の方向について
(2)意見交換
(3)その他

○議事

○寺澤家庭福祉課課長補佐 それでは、定刻となりましたので、ただいまから第8回「児童虐待防止対策のあり方に関する専門委員会」を開催いたします。
 委員の皆様には、お忙しい中お集まりいただきましてまことにありがとうございます。
 本日は、岡井委員、加藤委員より御欠席の御連絡をいただいております。
 本日の予定でございますが、前回第7回に引き続きまして第6回の専門委員会において、自立に向けた支援のあり方に関して事務局から御提示させていただいた4つの課題のうち、課題(3)及び課題(4)について委員の皆様からプレゼンテーションしていただき、意見交換を行うこととしております。
 本日は、課題(3)につきまして木ノ内委員、卜蔵委員、武藤委員、秋山委員、泉谷委員から、また課題(4)につきまして草間委員、平井委員、藤川委員、磯谷委員、浜田委員からのプレゼンテーションを予定しております。
 まず、資料の確認をさせていただきます。
 配付資料につきましては、本日の座席表、議事次第。
 資料1でございますが、「自立に向けた支援のあり方に関する現状・課題の方向について」。
 資料2、木ノ内委員提出資料。
 資料3、卜蔵委員提出資料。
 資料4、武藤委員提出資料。
 資料5、秋山委員提出資料。
 資料6、泉谷委員提出資料。
 資料7、草間委員提出資料。
 資料8、平井委員提出資料。
 資料9、藤川委員提出資料。
 資料10、磯谷委員提出資料。
 資料11、浜田委員提出資料となっております。
 資料の欠落等がございましたら、事務局までお申しつけください。いかがでしょうか。
 それでは、進めさせていただきます。委員会の運営に当たりまして、委員の皆様へお願いがございます。視覚・聴覚障害をお持ちの方などへの情報保障の観点から、御発言等をされる場合には、発言を希望する方は挙手をしていただき、挙手をした方に対し委員長から指名をさせていただきます。指名を受けた方は、お名前を名乗っていただいてから御発言をするということにしたいと考えておりますので、御協力をお願いいたします。
 また、本専門委員会は公開で開催し、資料及び議事録も公開することを原則とさせていただきます。
 それでは、以降の進行は松原委員長にお願いいたします。
○松原委員長 天候が悪い中、御参集いただきまして感謝をいたします。早速、議事のほうに入ってまいりたいと思います。
 今日は、事務局から説明がありましたように課題(3)、課題(4)について各委員からプレゼンテーションをいただくことにしております。御担当いただきました各委員の方には、改めてお礼を申し上げたいと思います。
 最初に、課題(3)について事務局から説明をお願いいたします。
○大隈家庭福祉課長 事務局の家庭福祉課長の大隈でございます。資料1に沿って御説明させていただきます。
 表紙をめくっていただきまして、3ページでございます。
 課題(3)のうち、1として「施設として取り組むべき職業指導等のあり方と方法」ということで、左側は第6回委員会資料そのものですが、現状を記載しております。本日は、「課題」の部分について御説明させていただきます。
 まず、施設としての職業指導のあり方をどう考えるかという大きな課題がございます。
 その上で、職業指導員の役割についてどう考えるか。例示として、例えば実技実習だけでなく就労支援機関との連携等による児童に対する付き添い型支援や、職場開拓等の実施についてどう考えるかというものが2つ目の課題でございます。
 続きまして、福祉施策だけでなくハローワークの積極的な活用等、労働施策と連携した社会的養護の自立支援についてどう考えるかという課題がございます。
 4つ目ですが、将来的な目標を持ちにくい児童につきまして、自立支援に結びつける試みとして、これは例示ですが、地方における就労体験等を提供することについてどう考えるか。これは、例えば農林業の就労体験などが一つはイメージされるかと思います。
 それから5つ目ですが、自立に向けた支援の充実の観点から、現行の仕組みとしてございます自立支援計画及び子ども自立支援計画ガイドラインの見直しについてどう考えるかという課題がございます。
 次のページに続きがございまして、右側の「課題」の欄の一番上でございます。自立支援に貢献する企業の取り組みの紹介や人材不足の業界との連携など、民間企業の取り組みと連携して児童の自立に向けた選択肢を増やしていくことについてどう考えるかということで、これは、民間企業はさまざまな取り組みを行っているところもございますので、民間企業のニーズと、子ども側のニーズを合わせて双方にとってプラスになるようなことが考えられないかという趣旨で記載させていただいております。
 続きまして、施設退所児童等の離職防止や中途退学しない、させないための施設の取り組み状況をどのように評価するかということで、これは施設によっては非常に熱心に取り組んでいだいているところもありますので、そういうところについて例えばプラスに評価するというようなことが考えられないかという趣旨でございます。
 次に、進学を目指す児童等に対する支援をどう考えるか。
 続いて、一時保護中の児童について18歳に至る前に児童相談所が施設入所等の援助内容を決定した場合は、18歳を超えても措置できるという取扱いについてどう考えるかということで、これは左側の欄の下から2番目のところで、現行は18歳に到達した場合は施設入所措置を行うことができないという取扱いになっているところ、右側のような取扱いにすることについてどう考えるかという課題でございます。
 それから、最後の「○」もちょうど左の欄と右の欄が対になっておりますけれども、現行は措置延長後、18歳以上では措置変更ができない取扱いとしているところですが、右側に措置延長後の児童に対し、施設を変更するための措置変更を行うことについてどう考えるかという課題を掲げさせていただいております。
 それから、課題(3)の2で「里親や里親に委託している児童に対する支援」についても同様に課題を掲げております。
 5ページでございますが、1つ目は里親支援に係る児童相談所の役割、児童家庭支援センター等里親支援機関の役割についてどう考えるかです。
 2つ目は、里親支援を充実させるために、里親に委託された児童の自立支援計画策定について、現行は児童相談所が作成しておりますが、里親支援機関に委託することについてどう考えるかという課題でございます。
 最後の3つ目は、進学を目指す児童等に対する支援をどう考えるか。就職する児童ばかりではなくて、進学を目指す児童もいらっしゃるので、そういう方についてどう考えるかということで、これは施設で掲げた課題と共通の課題でございます。
 資料の説明は以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。なかなか難しい課題も提起をされておりますが、それぞれの委員の御発言の中にもこのようなことに関するコメントが入るかと思っております。ここの時点では、後でディスカッションは皆様方のプレゼンテーションを受けていたしますので、事務局の説明で不明な点があれば確認という作業をしたいと思うのですが、いかがでしょうか。よろしいですか。
 それでは、後ほどこの課題についても含めて各委員のプレゼンテーション、質疑応答等を進めてまいりたいと思います。そういうこともございますので、前回と同様、まことに申しわけないのですが、お一人様6分ということでプレゼンテーションをお願いしたいと思います。
 それでは、木ノ内委員からお願いをいたします。
○木ノ内委員 全国里親会の木ノ内と申します。課題(3)、確実な自立に向けて里親等に養育されている間に必要なことは何ができるかというようなことです。
 児童相談所の調べで2割くらいが虐待の体験を持つということですけれども、里親の実感としては虐待の感触が非常に強いと思っています。子ども達の状況としましては、自己肯定感、自尊感情が非常に低いということで、なかなか勉強やクラブ活動などに積極的にならないというようなことがあります。
 それから幼児、あるいは学童でもそうなんですが、発達遅滞が見られる。発達障害に似た症状を起こす場合がある。虐待の度合いがひどいと乖離性の障害といいますか、意識が飛ぶようなことが多くあります。
 それから、里親が優しく接するとかえって命令口調になったりというようなことがあってなかなかうまくいかない。特に思春期に関しては、暴力な言動であるとか非行に走ったりというようなことがありまして、家を壊したり、里親が身の危険を感じることがあったりとか、いろいろあります。
 これらに対する里親の対応としましてどういうことかというと、やはりお互いの信頼感醸成ということに一番関心を高く持っています。気長に普通に暮らすというようなことがとても大事なんじゃないかと思っております。
 里親だけではなくて里親仲間、地域社会、あるいは里親の友人だとか、非常に多くの人間関係を持つことによってうまくいくかと思っておりまして、イメージとしては“チーム養育”みたいなことを目指したいんですけれども、現在のところは非公式的なかかわりが多いんじゃないかと思います。
 普通の暮らしは、長期にわたって安定的に行われるということが必要である。安心、安全というようなことが言われていますけれども、もう一つ、安定というような形でパーマネンシーの配慮ということが必要だと思われます。
 それからもう一つは、里親から暴力を引き出すような行為というものが見られる。経験の浅い里親、あるいは自分の子ども、実子を育てたということに自信を持っている里親がなかなか養育困難になるケースがあるということで、被虐待児童などの場合にはその養育スキルをきちんと学ばないとなかなか対応できない。現在、専門里親という制度がありますけれども、なかなかこの人たちだけに担われていない。養育里親全体に被措置、被虐待児童がきておりますので、なかなか困難なケースが多いということです。
 1つ目は、専門里親の仕組みをもう一回見直す必要があるかと思っております。特に里親として気をつけるべきことは、子どもに対して信頼感を失うようなことはしない。これは当たり前のことですけれども、特に配慮しております。
 それから、専門的なアドバイスを必要としますけれども、なかなか里親の周辺にはそういった環境がない。それから、治療的な養育がなかなか行えないというような環境に里親の場合はあります。
 それから、子育てについて迷うような場合にスーパーバイズするような体制があるといいかと思っておりますけれども、なかなかそれもない。あるいは、レスパイトケアも十分にとれる体制にはなかなかなっていないというようなことがあります。
 次に「自立に向けた取り組み」ですけれども、自尊感情を高める。自信を持って取り組めるように働きかける。そういったプログラムみたいなものがあるといいんですけれども、手探りのまま自尊感情を高めるような活動をしております。
 それから、生活スキルを身につけさせるという意味で、いわゆる暮らしの中で時間を守ったり、約束を守ったり、言葉遣いだとか、そういった生活スキルをきちんと養う。そういうことがないと、なかなか自立の前提につながらない。
 それで、もう一つの前提としては自己選択の能力、よくやるのは3つくらい示してこの中のどれかを選びなさいというようなことで、できるだけ選択をして自分が選んでいくというような能力を身につけさせる。そういう生活スキルと自己選択の能力があって、初めて職業概念を教えることによって自立が可能なのだろうと思うのですけれども、職業概念に関しては折に触れて社会の仕組みであるとか、あるいはどんな職業があるのか。テレビを見たりしている間に話をしたりとか、そういうようなことをやっております。
 これは、アメリカの場合ですけれども、16歳になると里親でもソーシャルワーカーでもない自立のための担当者がつけられるというようなことで、自立をきちんと意識させる活動が必要なのではないかと思います。
 「自立のフォロー」についてちょっとお話をさせていただきますと、18歳ではやはりなかなか無理で、20歳でも難しいんじゃないか。できるだけ大学だとか助走期間をつくっていきたいかと思っています。そういう面で、静岡県で今22歳まで今年度から県単で支援をするということを始めまして注目させてもらっています。
 それから、里親家庭で高校以上への進学は4割を超えていますけれども、基本的には里親の経済的な負担に負うところが多いのでこの辺のところですね。
 それからもう一つは、やはり進学はしたんだけれどもドロップアウトしてしまう。そういうことが多いので、措置解除の後の動向調査をするとともに、その見守りと支援の仕組みをきちんとつくっていかないことにはなかなか難しいのかなと思っております。
 それで、「里親及びファミリーホーム養育指針」というものをつくりましたけれども、その中で措置解除後も帰ることのできる実家のような役割というようなことが書かれておりますが、里親が実家のように機能するための制度整備というものがなされていないので、ぜひその辺の整備をしてほしいかと思っています。
 それから、先ほどアメリカの話をしましたけれども、ILP、インデペンデント・リビング・プログラムというのがありまして、ユースが中心となって自立をしていく。自分たちが自分たちの活動支援、リーダーを養成したりしておりますが、2010年の予算総額が1億4,000ドルといいますからかなりな金額になっておりまして、世界のどこを見ても要保護児童の自立というのは大変なんだなと思っております。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして卜蔵委員からお願いいたします。
○卜蔵委員 ファミリーホーム協議会の卜蔵です。それでは、お話をさせていただきます。
 資料のほうは、初めにファミリーホームの説明を入れさせていただきました。どういう制度なのかというところで御存じない方ももしかしたらいるかもしれませんので、入れてまいりました。あとは、この4月に家庭福祉課から出たファミリーホーム事例集の実態調査の中から、ファミリーホームに委託されているのはどういう状況にある子ども達かということも入れさせていただきました。委託児童のうちの被虐待の割合が半数近く、ほかに障害であるとか、発達の遅れとか、課題を持った子どもが多く委託されているということです。
 それと、1ページの一番下のところですけれども、これは委託児童の構成割合ということで、中高生で半数近く、45%くらいの割合で委託されているということです。自立支援というのは子どもの委託を受けたときから始まるということで、本当に社会に出るときが自立支援のときではなくて、日々の養育そのものが自立支援の一環であって、また個々の子どもへの丁寧なかかわり、ニーズに応じたかかわり、そして子どもが大切にされている、愛されているといった安心感、安全感が非常に大事だということは言うまでもないことです。それを大前提とした上で、具体的なところで書かせていただきました。
 そして、今の追加で資料をお渡ししたんですけれども、これは平成23年に宮城県で社会的養護のネットワークをつくっているんですが、そこで宮城と山形と岩手と福島と4県の児童養護施設から退所した児童についての自立の追跡調査を行った報告書ですので、これもどうぞぜひごらんになっていただきたいと思います。
 これは施設は施設だけ、里親は里親だけということで取り組むのではなくて、社会的養護の全体で取り組むべき課題だと思っています。社会的自立を特に控える子ども達、例えば中高生、高校生にとっては非常に切実な問題であって、できることは早急に手をつけて行う必要があると思っています。
 特に、例えば里親ファミリーホームは子ども達にとって実家としての役割も果たせるところで、子ども達に対して自立支援の果たせる部分は多いのかなと思っています。そのネットワークでいろいろ話が出てきた中でも、特に児童養護施設から社会に出る子ども達の課題、その困難性というのは非常に高いものがあって、そうしたことは本当に全体で考えていかなくちゃならないと思っているところです。
 2ページの「必要な取り組み」ということで、1つは高学齢児でも施設から家庭養護、里親とかファミリーホームに移行を進められるようにするために高校生の措置費を充実していただきたいということです。
 非常にローカルな話なんですけれども、例えば宮城県の場合ですと仙台市内に養護施設が集中して、勉強が苦手な子どもは仙台市内の高校には進学できないで郡部の学校に進学する。それで、通学に例えば2時間ぐらいかかったりして通う子ども達も少なくないわけなんです。それで、結局3年間続けられないで中退してしまうというような子ども達も出てきている。今の社会で高校卒業というのは本当に最低限必要なところであって、それを支援していくためにも年齢の大きくなった子ども達でもファミリーホーム、あるいは里親に委託していけるような、そんなことを考えていかなくてはいけないのかなと1つ思っております。
 それから、すごく具体的なことですけれども、例えば「資格取得費の弾力的な運用」ということで、これについても自治体によって非常に運用に格差があります。例えば、運転免許取得には使えないようなところもあったりということで、子どもの自立のために益になるというところで改善が望まれるということがあります。
 それから、「措置延長の改善」ということで、これも自治体によって運用に格差が大きいです。いまだになかなか認めない自治体もありますし、あとは例えば自宅通学でなければ認めないとか、自宅通学でなくても寮でなければ認めないとか、いろいろな自治体によって運用に違いがあるということで、子ども達にとっての利益という観点から運用の改善が望まれるところです。
 それから、先ほどの木ノ内委員の御発言の中にもあったことだと思うんですけれども、現状だと20歳の誕生日前日までということになっておりますので、年度の終わりまで延長していただけると子ども達にとってはいいのかなと思います。子ども達の誕生日によって大きな差が出てきます。例えば4月、5月の子であれば措置延長を1年しか認めないようなこともあって、これは何とか年度終わりまで延長していただけたらいいかと思います。
 特にファミリーホームの場合で考えますと、子どもが6人委託されていてその中で進学して措置延長をしていただく。ただ、例えば2年生の途中で措置解除になれば新たに子どもが委託されてきて、実際には定員6人のところを場合によっては8人子どもがいるとか、そういったような状況も生まれてくるという現状があります。
 それから、進学する児童のための支援ということで、現状の制度の中でも今、措置解除になる子どもにしか進学支度費というのは出ないわけですけれども、措置延長の子どもにもそういった支度費は出していただけたらということです。
○松原委員長 ぼちぼち時間ですので。
○卜蔵委員 済みません。そういうことです。
 あとは、障害のある子どもの自立ということもこれから十分考えていかなくちゃいけないのかなと思います。
 それから3ページ、最後のところは実態調査報告書からということで、ファミリーの養育者からの自由記述ということを参考に挙げさせていただきました。
 以上です。ちょっと長くなりまして済みません。
○松原委員長 ありがとうございます。もう少しゆっくり伺っていきたいところなのですが、ほかの委員の方々の御発言もいただきたいと思います。
 それでは、武藤委員お願いいたします。
○武藤委員 それでは、提出資料に沿って説明させていただきます。
 最初に3~4年前に行ったのですけれども、NPO法人「ふたばプラットホーム」で行った社会的養護施設等の出身者の実態調査ということで、それを6ページ以降につけさせていただいております。ぜひ今回の課題(3)、課題(4)に対して参考になるんじゃないかということでつけさせていただいています。
 最後のページにかかわっていただいた方々のお名前も書いておりますので、御参照いただければと思います。これは、概ね卒業後15年以内の里親か施設かの子ども達の950名の回答からとったことであります。特徴的なところは1ページのところに入れておきましたので、ぜひ御参照いただければと思います。
 私のほうは、2ページ以降に今日提案したいことについて書かせていただいています。取り分け2ページの1番のところに「自立支援策として重要なこと」ということで、自立についての合意形成が必要ということを書かせていただきました。意外と自立支援といっても、自立の概念だとか目標とすることに大分違いがあって、施設によっては自立支援と言いながらどんどん大学に行かせようというところと、いや大学なんかは難しいよというようなところを含めてあるみたいなので、やはり国全体を挙げて今回施設運営ハンドブックだとか、それから運営指針だとかをつくったわけで、ここに掲げているくらいの水準はぜひ実現できるような制度をつくっていくべきなんじゃないかという思いがあります。
 その上で今、何に取り組むべきかを明確にすることが必要ということで、以下、2番、3番のところに各施設で取り組むこと、それから都道府県単位で取り組むべき課題、それから国を挙げて取り組むべき課題ということで、3点に振り分けをしながら提起をさせていただいています。
 施設のほうは「自立支援計画書の立案と実行、振り返りと再プラン化のプロセスの点検を」、これは意外と措置している児童相談所及び各都道府県が施設措置後の自立支援の点検ということを十分していないという実態があることです。ここで書かせていただいたのは、第三者委員によるチェックだとか担当福祉司によるチェック、それから担当主管及び都道府県単位の、ここでは児童福祉審議会等と書きましたけれども、各措置後の子ども達の権利や、それから自立支援が本当にきちんと行われているのかどうかということのチェックをしないと、非常に各施設間の格差等々が出ているような気がします。
 それから、2番目に「自己肯定感を育む取組みと自立のイメージが図れる取組み」ということで、この課題については施設の中で行うということになります。自分のこれからの生活や将来の展望をする作業ですが、職員とともに自立支援計画をもとにしながら今後の自立についての展望をするのですけれども、なかなか担当職員だけでは難しくて、進路指導だとか、先ほどありましたが、職業指導だとか、そういうことも含めてやると、やはりそれにかかわる専門職といいますか、専門スタッフが必要なんじゃないかと思います。東京では自立支援コーディネーターを配置しているとか、そのほか山形県だとか広島県等々ではこの自立支援の専門スタッフを導入していることがあって、ぜひ国を挙げてそこらあたりの専門職の配置が必要なんじゃないかということを提案させていただいています。
 それから、「都道府県単位として取り組むべき課題」ということで、社会的自立や就労のために持っておいたほうがよいような資格だとか技能ですね。そういうものを積極的にとれるような案、方策を都道府県ごとにもっと積極的に立てるべきなんじゃないかと思っております。それに対しての助成金制度等々を積極的に実施するということが必要なんじゃないかと思います。
 それからもう一点は、児童養護施設等の就業支援事業の取り組みというのが平成21年度から安心こども基金などを使いながら今、行われているんですけれども、これの効果測定というんでしょうか、それぞれの都道府県ごとに十分この職業支援ができているのかどうかということを、国を挙げて調査をすべきなんじゃないかということで提案をさせていただきたいと思います。
 それから、国全体として行うべきことということで3番のところに書かせていただきましたが、今、「社会的養護の課題と将来像」の中に自立支援の計画ということでここに書かせていただきましたけれども、1~7までの取り組みを行っております。まだまだ行き届いていない部分もありまして、部分的には行われている部分もあるんですけれども、中途半端な取り組みではなくて、掲げた目標はきちんと実施できるように積極的に実施する姿勢が必要なんじゃないかと思います。
 取り分け大学進学の助成制度だとか、措置延長の積極的活用だとか、それから退所児童等アフターケア事業の開設の促進だとか、そういうところがまだまだ十分ではないと思いますので、今後立てた目標といいますか、施策については全部実行できるような取り組みが必要だと思っています。
 それから、今後新たに国全体として行うべき自立支援策ということで、1~6まで提案をさせていただいています。大学進学等を推進するということであれば、在籍、在園する期間に払うべき入学金だとか前期授業料などは、上限は設けるとしながらも措置費から支出をしていいということなどにすべきなのではないかと思っています。これは、もう既に東京ではそういうことで実施をしているところであります。
 それから、施設や里親から大学進学支援を支えるための仕送りができるような制度を設けたほうがいいんじゃないかと思っています。
○松原委員長 ぼちぼちお願いします。
○武藤委員 今日はあまり時間がありませんので、以下は、具体的にここに書いておりますので、ぜひ御参照いただきたいと思います。以上です。
○松原委員長 せかしてしまいまして、済みません。ディスカッションの時間もとりたいものですから。
 それでは、秋山委員お願いいたします。
○秋山委員 あきやま子どもクリニックの秋山です。私は、小児科医の目から見た児童養護施設の子ども達の姿をお伝えしたいと思っています。
 東京都は平成20年に4つの提言を行って、その1つに「虐待を受けた子どもへの治療的ケア体制」というものがあります。その体制の一つとして専門強化型の施設があり、私はその専門スタッフとしてかかわって1~6のところを担っております。
 次に、これから私が勤める就学前まで預かっている施設の子ども達の様子を紹介していきます。このデータは数年前のものですので、現在入所している子ども達ではありません。養育環境によって発育に影響が出ていることは知られています。下線にありますように、身長が伸びない子ども達がいます。
 最初のグラフですが、体格は普通ですが、身長は伸びない。次のグラフですけれども、体格が小さくて身長が伸びていない子ども達がいます。施設に入ってからもなかなか身長の改善が見られない子もいますし、また里親の交流が始まって身長がストップした子どももいます。
 次のグラフですけれども、入所時の年齢、それから性別、診断名、虐待の有無によってその発育に差があるか、偏りがあるか調べましたが、その偏りはありませんでした。
 次に、子ども達の診断名です。入所している子ども達で、正常な発達と考えられるのはわずか20%でした。
 その次に「子ども達の発達年齢」というグラフがありますが、これは各々の子ども達の発達を示すグラフです。黒の線が実際の年齢、赤の年齢が発達年齢です。実年齢よりも8割の子ども達が何らかの遅れがあるのがわかります。
 次のグラフは、その「発達年齢の推移」を見てみました。一番左端が実年齢です。その次に落ち込んでいるところが、入所したときの発達年齢です。その後、その落ち込みは半年後に上昇してキャッチアップをしています。これは、恐らく施設の生活の安定によってもたらされているのではないかと思います。しかし、3~4歳以降、発達が頭打ちになってくることもあります。
 そこで、次ですけれども、施設の「保育環境」を見ました。この施設の保育環境は2つの特徴があります。1つは園内保育があるということ、その園内保育も正常なお子さんと発達に遅れがあるお子さんの2つを用意しています。そして、施設外の療育施設を利用しているということです。通常、福祉の二重措置ができず、療育施設には通えないんですけれども、幸いにもここは受けてもらっています。
 次に、細かい表がありますけれども、これは子ども達の保育の利用状況です。「○」が園内施設、「◎」が幼稚園、「△」が療育施設などとなっています。この表から見ても、1~2歳児への手だて、それから毎日通う、通常であれば幼稚園に毎日通う3歳児も毎日保育をしていただきたいと思っています。
 次の表ですけれども、もしも園内保育や二重措置がなければ多くの子ども達が施設内だけの生活になるということがわかると思います。施設の中での生活というのは育児ということになりますけれども、育児は自分が経験したこと、あるいは保育や教育、研修、あるいは配偶者、同居者によって変化し得るものです。また、施設にはその歴史や文化があるということもわかりました。
 その育児観というものを知りたくて職員の経験とかアンケートをとったこともあります。そのアンケートの中の一つで、しつけについてもさまざまな考え方があることがわかりました。
 その次の「職員の業務」ですけれども、その担当職員は子ども達の生活を支え、支援が必要な子ども達の対応をし、保護者とのかかわり、関係機関との連携、そして記録というさまざまな多忙な仕事が求められています。
 以上から、私は「こどもの発達・学習支援のために」、施設においても年間カリキュラムとか月案、日案の作成を施設内で統一して育児のばらつきをなくしたいと思います。しかし、職員の多忙な業務を考えますと、それを補充するためには地域、外部機関の活用が必要かと思います。そのためには、二重措置の問題を解決する必要があります。
 専門職の活用、これは子ども達の発達、成長、あるいは情緒面に関して評価をして対応することが必要かと思います。また、そういうことによって施設職員への育成にも手助けになるのではないかと思います。
 また、子ども達は環境の変化によって慣れるために時間がかかって、その時間、発達上滞ることがあることもわかりました。継続した環境、施設変更は最小限にとどめることだと思います。
 最後に、「今、あなたが一番したいこと」という高校生の声を書きましたが、小さいときからの環境が大切です。長期的な視点で積み残しのないようにしてあげたいと思いますし、そしてこういう高校生の声にこたえてあげたいと思っています。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、泉谷委員お願いいたします。
○泉谷委員 目白大学の泉谷でございます。資料に沿って説明させていただきます。
 今までずっと実際に支援をされている皆様のほうからいろいろ御意見をいただいたかと思いますけれども、皆様の御発表とかぶるところもかなりあるかと思いますが、私のほうでは理論的な点からのお話も含まれてくるかと思います。
 まず1つ目には、やはり武藤委員もおっしゃいましたけれども、子どもの自立の概念ということで、ここに3名の先生方の概念を提示させていただきましたが、いろいろな概念があるところで、一体どこを目指していくのかということをきちんと定義していかなければ自立ということについての議論をしていけないのではないかということが1点、私の中で疑問としてあります。
 その自立の支援を見ていく視点というところで(2)のところからになりますが、やはりこの自立というのは子どもの視点に立って考えるものかと思います。タイトルにも「確実な自立」とありますけれども、確実な自立というのは一体何かと正直思うところがあります。
 それから、今日事務局のほうから出ている資料の中でも、中途退学をさせないとか、しないというような形がありますけれども、誰にとっての自立かということを考えたときに、子どもとか若者は失敗とかを繰り返していく中で成長していくということを考えると、その失敗をしたり、やり直すことがどこで保障されるのか。それがなければ、やはり子どもの本当の自立にはつながらないのかと思います。
 その失敗ややり直しを支える体制づくりということをしていく必要があるかと思いますけれども、当事者の子どもにとっては誰にでも相談ができるというわけではありませんので、やはり施設に入った後だけでなく、長期的に見たところで施設の職員の皆さんや里親さん、児童相談所の職員の方たち、それから地域で支えてくださった皆さんたち、いろいろな支援者の方たちと彼らを支援していくような体制づくりということをして、失敗してもやり直せるということを保障していくことが必要かと思います。
 これについては、18歳で終わるというものではないかと思います。今日事務局の資料のほうで職業についてということで出てきましたけれども、実は18歳までというのは職業のスタートラインに立つところの相談であって、実際は始まった後をどう支援していくかというところも見据えて考えなければ効果はないかと思います。
 木ノ内委員のほうからアメリカ等の報告で、ユースという若者の年代の人たちへの支援ということのお話がありましたけれども、やはりこれから自立ということを見ていくときには子ども、それから若者という年齢、18歳を超えたところの支援も含めた支援体制を考えていく必要があるかと思います。
 次に、草間委員の資料のほうでもありますので簡単にさせていただきますけれども、やはり当事者、実際に社会的養護を経験した人たちからの支援というのが実際の子ども達にとってはとても必要なのかと思います。
 ただ、その当事者の人たちもさまざまな生活をしていらっしゃるかと思いますので、そういった人たちが支援者となれるような、支援者として活動できるような体制を保障していくということも、逆に専門職としてはこれからの課題として挙げられるのかと思います。
 次に、将来を見据えた方針の選択とネットワークということで書きましたが、ある児童養護施設の施設長さんからお話を聞いたときに、いい学校に行くことだけが全てではないというお話を聞きました。ちょっと知的な面で障害のあるお子さんがサポート校に通うことを、その自治体ではサポート校の費用が出るということがありましたので、そこで非常に伸び伸びと3年間高校生活を過ごして自信をつけて、いわゆる一流企業というところに就職をしていって今も頑張って仕事を継続しているというようなお話をお聞きしました。
 その子どもが将来どういうふうな生活をしていくのかということを見据えたところでどんな選択肢をとっていくのかというところは、さまざまな地域の情報を活用してやっていくことにつながるかと思いますけれども、そういったさまざまな情報を得ておくこと、それからそういった情報を使っている人たちとネットワークを持つことが必要になってくるかと思います。
 「更なる課題」としては、3つ考えるところがあります。
 1つは、社会的養護といったときに現在、施設に措置されている間は非常に子どもへの支援は手厚いけれども、地域に戻ったときに子ども達への支援が十分でないというようなお話を聞くことがあります。在宅型社会的養護への支援ということは既に必要性が言われておりますけれども、生活場所によってやはり利用できる社会資源サービスが異なるということで子どもに不利益が及ぶということがあってはならないかと思います。
 それから2番目ですけれども、欧米では子どもの時期に資金を導入して支援をすることが、その後の大人になってからの支援をするよりも効果が大きいというようなことが言われておりますので、そういったことについても長期的な調査を含め、国で費用対効果についてきちんと検証されることが必要かと思います。
 それから3番目ですが、子どもの自立というのは年齢があってそこで終わるというものではないかと思います。やはり長期間支えていく担い手ということが必要ですし、私自身は18歳を超えて25歳くらいまでというような範疇の中で子ども達、若者を支援していく体制をつくっていくことが必要かと思います。そこには行政だけではなく民間機関、当事者、それから地域住民の方たちの参加も必要かと思います。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
 各委員の御発言を聞いておりますとかなり重なる部分もありまして、その重なっている部分というのは非常に大切な論点かと思っております。それで、この事務局のほうの資料1で提示をしていただきましたところ、課題のところは大体問いかけの文章になっておりますので、このことについてもこう考えるという御発言もいただきたいですし、それぞれの各委員のプレゼンテーションに関するコメント、御質問等もいただきたいと思います。どなたからでも結構です。御発言をお願いしたいと思います。それでは、お願いいたします。
○辰田委員 八王子児童相談所の辰田です。
 施設入所、または里親委託になって、子ども達の自立に向けて武藤委員からも話がありましたとおり、その間際になって自立について考えるのではなくて、入所の時点から考えていかなければならないと思っています。
 それと、施設でも自立支援計画等があるのですが、そこに児童相談所も丁寧にかかわっていく。それには児童相談所側の今の体制についても変えていかなければならないと思っています。
 18歳を超えての対応についてですが、いつまで支援をするか。年齢の線引きというのはなかなか難しいと思います。大学を進学して大学を卒業するまで、ストレートにいけば22歳です。でも、頑張っている子がいて医学部までいくと6年間、または大学に転部したりとか、そうなるとではいつまでというところが曖昧になってしまう。
 あとは、成人男子、成人女子になった人に対して、措置という考え方が果たしていいんだろうか。慎重に議論していかなければならないと思います。
○松原委員長 ありがとうございました。自立支援について、事務局のほうからは里親部分のところで、この支援計画策定を里親支援機関に委託するということについてどうだろうかという問いかけがされておりますが、木ノ内委員、あるいは児相のお二方はこういう点はいかがですか。どうぞ。
○木ノ内委員 木ノ内です。18歳を超えていつまでを措置期間とするかというような問題ですけれども、やはり自立というのは徐々に手を離していくというのでしょうか。措置をこれで解除しますというのではなくて徐々に手を離していくような取り組み、手を離しているんだけれども、必要があればまた手を出すというようなことで、その自立の過程というのは解除措置みたいなことではないような気がします。
○松原委員長 計画を立てるのに里親支援機関に委託をするというのはいかがですか。自立支援計画です。
○木ノ内委員 実感としては里親支援がまだ私たちというか、里親の手に届いていないという感じがしておりますので、なかなか難しいと思います。
○松原委員長 お願いします。
○菅野委員 滋賀の菅野です。里親さんと児相の関係性ですね。児童相談所は里親さんに委託しているほう、措置元と言えばいいでしょうか。支援に関する相談をするということは、評価をされて子どもを引き上げられないかみたいな関係性になるところがある。できれば支援機関と里親さんで相談をしてというふうにいくほうがいいのかなという気はするんです。
 ただ、自立支援計画自体を里親さんが立てるという体系が、まだまだなんですね。児童相談所が委託のときには出して、次からは里親さんがということになるのです。滋賀県では里親支援機関がそこをサポートしていこうと動き初めています。そこで相談をして出してくださいという関わりがあるんですが、なかなか適切に出てきにくい。様式の検討をしたり、試行錯誤しながら、これからなのかなという気がしています。
○松原委員長 ありがとうございます。
 では、お願いいたします。
○平井委員 今の自立支援計画を委託するという点についてですが、今、各児童養護施設等に里親支援専門相談員の配置がどんどん拡大していますので、里親専門支援相談員はうちもそうですけれども、施設で一応経験者というか、ある意味ベテランの職員は里親支援専門相談員をしていますので、自立支援計画なども今までやった経験がございますので、そのあたりと一緒に共同していくというのも一つじゃなかろうかと思っておりますが、いかがでしょうか。
○松原委員長 ありがとうございます。
 それでは、木ノ内委員お願いします。
○木ノ内委員 施設の中に里親支援専門相談員がいるのですが、特定の地域に施設が偏在しているといいますか、都市部にないということで、里親からしてみるとやはりもっと近くに里親支援専門相談員がいると日々の活動に相談できるんですけれども。
○松原委員長 ありがとうございます。
 草間委員、お願いします。
○草間委員 自立について言うと、今日も発表がありましたけれども、非常に多面的な要素があるということです。
 わかりやすく言うと、児童の世界で言うと社会的な自立という意味合いが強い。身体障害者の世界の自立というとどちらかというと社会のアクセス権、社会参画権のような意味合いです。一方、高齢者でいうとADLというか、生活の自立、いわゆる日常生活動作の自立、このような意味合いで捉えられているイメージがあると思われますいずれにしても、社会的な自立、子どもの場合には自立を連続性として捉えていく必要がある。でもその連続した過程には、不確実性が存在する。子どもは仕事や学校を急に辞めてしまったりするので、この不確実な事態に対応した支援をどういうふうに切れ目なくやっていくか、シームレスな支援が求められる。
 そのときに、繰り返しになるんですけれども、国としての機関のハローワークとの連結、それから生活困窮者自立支援法というものが4月から施行されましたので、ここの運用を上げていく。つまり、ここの生活困窮者の自立支援の制度をうまくミックスしていくことによって、自立援助ホームでカバーできないものを地域でカバーできる。こういう観点もあるのではないかと思っています。
 それから、現場での自立支援でとても大切になる援助で2つ申し上げますと、1つはキッザニアというものがある。疑似的な職業体験ができる。お金はかかりますけれども、これは非常に有効だろうと思っています。
 もう一つが、自尊心がどうしても低いということが今日の委員会でも意見が出ていましたけれども、これは私の経験から見てもそのように思います。どういうふうに上げていくかの援助の一つに、ライフストーリーワークというものがあります。これはイギリスで開発された援助方法ですけれども、これを現場の中でやっていくというのも一つ考えられるのではないかと思っています。
 それから、里親の支援団体が自立支援計画をつくるというのは、条件を整備していけば将来可能性はあるのではないか。つまり、ある程度研修を受けた方、経験値のある方、資格を持っている方に担っていただくというような制度設計でやっていけば、将来資源としてあるわけですから可能性はあるのではないか。これをやっていかないと、前に進めないとも思っています。以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
 ちょっと論点を変えまして、複数の委員からいわゆる当事者、かつての施設生活を経験された方の参画という御意見が出ているのですが、後ほど草間委員も報告されるということでしたから複数がさらにふえるんですけれども、このことについて何か追加の御意見があれば、あるいは新たな御意見があれば伺いたいと思いますが、いかがでしょうか。
 では、草間委員お願いします。
○草間委員 当事者が参画するというのはピアサポートでいいんですけれども、一方でやはり担保されなければいけないのは専門性ということですね。つまり、共感だけでは仕事ができないということです。ここの専門性を担保して当事者性があれば、さらにより近いものができるのではないか。つまり、専門性の担保というのは非常に必要だろうと思います。
○松原委員長 ありがとうございます。
 あとは、事務局のほうから全般的に自立支援ということで企業との連携、あるいは農山村部の農林漁業との連携、さまざまな角度からの提案が出ております。一方で、なかなか18歳まででかちっとした就労先というものができないのではないか。転職というようなことも前提に置いた支援が必要ではないかというような御意見も委員の中から出ておりますので、10代後半から20代にかけての自立支援ということで何か御発言があればいただきたいのですが、いかがでしょうか。
 では、お願いいたします。
○平田委員 秋山委員から、非常に育ちに課題がある子どもたちへの支援の難しさについて出されたのですが私も児童養護施設を併設しておりますので、乳児院からある程度課題を抱えた子どもが児童養護施設へ措置変更になり長期在籍後の自立を考えるときに、以前あった職親さんのような、仕事から帰ってくると御飯が準備されている、生活も含めてみてもらえるところがあるといいなと思います。施設にいる間でもその生活への慣らしの期間というのでしょうか。自活できるまでサポートする期間、子どもがどこを苦手としているのか、仕事が続かないきっかけになりそうなことへの対応などができるといいと思います。出た後の課題も確かにあるけれども、その子が困ったときに支援を求めるためにはどこを訪ねればいいのかなど、自活へのシステムがあるといいなといつも感じています。
 それと、今、中間就労などの支援策が出されていますが、私はあの制度は児童養護施設の自立に使える資源だなと思っています。退所前に自立支援のシステムをつくってもらいたいと思いました。
○松原委員長 平井さん、自立援助ホームから何か御発言がありますか。
○平井委員 後ほど今の中間的就労とか、そういったことも含めてお話いたしますので。
○松原委員長 では、後ほどお願いいたします。
 木ノ内委員、お願いいたします。
○木ノ内委員 木ノ内です。先ほどから、当事者が当事者を支援する仕組みということで、海外でもそういった取り組みがあるんですけれども、やはり難しいのは20代というのはあらゆる適用能力にさらされるんですね。社会適用もそうですし、生活スキルがないと遅刻もして会社から首だなどと言われるし、それから仕事の能力も問われる。非常にあらゆることが20代に迫ってくるので、そこをきちんと区分けしてあげて、この問題にはこうというような整理がちょっと必要なのかと感じています。
○松原委員長 ありがとうございます。
 では、武藤委員の発言を最後にしまして、次に移っていきたいと思います。武藤委員、お願いいたします。
○武藤委員 当事者の参画ということでは、在園しているときはそうでもないんですけれども、社会に出ようとするとき、今回私どもの施設で言うと高校3年生が社会に出ようとした間近になると結構いろいろな不安が出てきます。その際に、卒業生に来ていただいて、こういうときにはこういうことで自分たちは乗り切ったよということなども含めて、そういう体験談をしていただく機会を毎年設けているんですけれども、とても子ども達もそのことで励ましだとか勇気をもらっているというような状況があります。
 それからもう一点ですけれども、今日私が提出したペーパーの3ページのところに書かせていただきましたが、社会的養護の子ども達は小さいころから割と偏った経験をしているような子ども達が多いです。ですから、学習支援だけではなくて未知の体験というか、さまざまな職業体験だけではなくて、自分たちの趣味や習い事だとかも含めて、また、やったことのないことを体験することや行ったことのないところに行ける体験を通じて、いろいろなことができるというような場をぜひ設定したいと思っているんです。
 そのためには措置費だけではなかなか難しいので、さまざまな企業や団体から今こういうことだったら援助できますよということなどの要請もいただいていますので、そこをしっかりコーディネートしながら、そういう社会の資源だとか、そういうところを大いに利用していくというんでしょうか。ぜひそういうさまざまな資源や支援の一覧みたいなものを出して、もっと全国各地で使えるようなシステムにしていくといいんじゃないかと思います。以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
 今日の課題(3)と(4)はかなり連動しておりますので、(4)に関して少しプレゼンテーションいただきまして、(4)及び(3)にかかわっての全体的な議論にいたしたいと思います。
 それでは、課題(4)につきましてまず事務局のほうから御説明をお願いいたします。
○大隈家庭福祉課長 それでは、課題(4)につきまして、再び資料1でございますが、6ページからでございます。
 課題(4)は「施設退所児童等の円滑な自立のための居場所づくりの取組と工夫」ということで、その中のまず1つ目が「自立援助ホームの機能や施設における居場所づくりの取組と工夫」ということでございます。
 この資料のつくりも今までと同様、左側は第6回の専門委員会資料をそのまま記載しております。
 右側の「課題」ですが、まず1つ目として、自立援助ホームについてこれまでの役割、これは就労を前提として就労しながら自立に向けた支援をするというこれまでの役割に加えまして、例えば、大学進学者向け等の新たな類型を設けることについてどう考えるかということでございます。
 2つ目は、施設退所児童の居場所づくりや施設の実家的機能についてどう考えるかということでございます。
 それから、課題(4)の2つ目は次のページですが、「2施設退所児童のアフターケア」ということで、これも右側の「課題」で3つ掲げております。
 まず、施設退所児童のアフターケアの充実に当たりまして都道府県の役割をどう考えるかということです。
 左側の欄で、現行の児童福祉法では児童福祉施設の定義の中でアフターケアについて規定されているというところですが、これについて都道府県の役割についてもどう考えるかということが1つ目です。
 2つ目は施設退所後の見守り支援をどう考えるかということで、これも対応する左側の欄につきましては上から3つ目、退所後も見守り支援が必要な児童については児童家庭支援センター等に対する指導委託も可能ということですけれども、その3つ下のところで、実際の実績を見ると指導委託には地域差もあって全体としては低調だというような現状を踏まえた2つ目の課題でございます。
 それから最後、3つ目のところで、自立の見込みがどうしても立たない児童等に対する支援をどう考えるかということで、事務局で考えられる課題を掲げておりますが、これに限らず幅広くプレゼンテーションいただければと思います。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、先ほどと同じように、今この時点での御不明点がなければ、プレゼンテーションを受けまして全体のディスカッションの中でまた事務局の課題提起にも各委員からのお考えを伺いたいということにしたいと思いますが、よろしいでしょうか。
 それでは、この課題(4)につきましては、草間委員、平井委員、藤川委員、磯谷委員、浜田委員からのプレゼンを事前に依頼してございますので、順次、やはり同じくお一人6分ということでお願いをしたいと思います。
 それでは、草間委員お願いいたします。
○草間委員 東北福祉大学の草間です。
 現状として見たら、結論から言うと、居場所が非常に少ないということです。
 ただ社会的養護の世界で、居場所づくりが始まったのは2000年代以降になりますので、取組自体は非常に新しい事業だと言えます。現状ではまだ少ないけれども、私は前に一歩一歩進んでいると見ています。いい状態で進んでいるということです。現実課題としては、制度が非常に脆弱なため居場所がふえていないということです。
 参考は2つの切り口があると思うんですが、一般の方々が支援をしている場合と、それから当事者によるセルフヘルプでやっている場合があります。
 一般の場合については多分、厚労省のほうで把握をされているかもしれませんが、幾つか出てきているということです。ただ、都道府県まで広がっていないというのが現状です。
 一方、当事者による支援団体ということですが、これは2015年2月現在です。ちょっと動きがあるかもしれませんが、全国で12カ所くらいある。実態は一部の団体を除いては非常に不安定ということですね。
 例えば、2番目の「日向ぼっこ」、これは都からも助成を受けたりしています。あるいは、武藤委員のほうの「ふたばふらっとホーム」については施設、法人がバックアップしているので比較的いいんですが、それ以外については非常に大変だという現状です。こういう居場所づくりを行う団体がつくられてきているということが、ポイントです。
 「課題」としては非常に少ないということで、一番大事なニーズが捕捉できない。把握ができない。そうすると、ニーズが潜在化してしまうということですね。ということは、制度をつくってもミスマッチが起こりやすいということで、負のスパイラル化というのが一つあるだろうと思っています。
 「対策」はどういうことが考えられるか。居場所があまり無いのだから、これは整備するしかないということです。「県庁所在地に1ヶ所整備」、この意味はもっと厳密に言うと、人口が多いと職業選択肢が広がる。職と住というのは一体です。ですから一般的には、県庁所在地の自治体は、人口を多く擁する分、多くの職種があるため県庁所在地に1ヶ所整備する施策が考えられる。
 一方で、高校卒業の子たちが行くということでブルーワーカーで行きますので、そうすると工業都市とか、そういう物づくりのところに就職する可能性があるから必ずしも県庁所在地とは言えないんですけれども、県庁に1カ所必要だろうと思っています。
 2つ目には自立支援員の配置ということです。武藤委員からもありましたように都ではコーディネーターが配置されておりますが、彼らの居場所で専門職が自立支援や相談援助、コーディネートを行っていく。そういうソーシャルワーク的なセンスを持った専門職が必要だろうと思います。ヒト、モノ、カネの整備です。
 それから、2つ目が横の連絡会というものも必要だろう。この連絡会を設けることは、行政によっても情報がきっちりと把握できる。モニタリングができるということですね。制度のミスマッチの回避をすることもできるということです。
 「こどもっと」という当事者団体をまとめる団体があります。朝日厚生事業団がここの運営費を出しています。当事者団体を繋ぐ連絡会組織を設けることが、3つ目で大事だろうと思っています。
 4点目としては「情報発信」です。厚労省ホームページとか、あるいはその委託を受けた当該団体等のウエブサイトにおいて、あるいはSNSを使って情報発信を行っていくということが大事です。
情報発信の実施第1段階では、まず施設長さんに対して、全養の大会等やブロック協議会の大会において、今度こういう当事者支援団体(居場所)ができましたという発表をしていく。そうすると、施設長から職員にその情報が伝わります。自立援助ホーム協議会にも情報発信していく。第2段階では、退所児童向けにOB会等とかを通じて施設長や職員から伝えていただく。このような2段階方式で情報発信は実施してみてはどうかと思っています。
 話しを変えます。事務局から出された課題にありました大学者向けの新たな類型というのは一つの自立援助ホーム形態としてとてもいい提案だと思います。そういう特化した自立援助ホームというのがあってしかるべきではないかと思っています。
 それから、課題の2つ目にあった施設児童の居場所というのは、当事者のほうが有効性が高いかもしれません。一方、実家的な機能については施設とか、育った里親とか、そういうふうな整理ができるのではないかと思っています。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、引き続きまして平井委員お願いいたします。
○平井委員 全国自立援助ホーム協議会の平井でございます。
 資料の1ページのところで、少し課題等をまとめてみました。
 2ページ以降はまたゆっくり見ていただければと思っていますが、自立援助ホームの入居対象ということです。少しケースをピックアップして、それぞれの相談経路別にまとめたものがございますので、このような子ども達が一応対象になっているんだなということで御確認いただければと思います。
 まず「自立援助ホームの機能と役割」ということで御存じかもしれませんが、自立援助ホームは昭和63年児童自立相談援助事業という、当時の厚生省ですね。局長通知で出されてから、若干の補助事業ということで始まっております。それで、児童福祉法内の事業としては平成10年の児童自立生活援助事業を経て、それで対象児童は前々から変わらず義務教育終了後から大体18歳、延長で20歳までというようなことで受け入れを行ってきました。
 その後、平成21年の児童福祉法の一部改正によってここが大きく変わりまして、厚労省の御理解もいただきながら補助金体制からやっとこの措置費の体制に変わって、それで20歳未満までの子ども達等の措置が可能となった。ここが一番大きく変わって、また子ども達にとっても少し有利になったところじゃなかろうかと思っております。
 それで、大体施設対象児童等が多いんですが、その中で簡単に言いますと児童養護施設の出身者が半分ぐらいはおります。そればかりじゃなくて、家庭で親子関係不調、虐待等の理由で年齢が高くなってからそういった子ども達が児相を通じて直接入居に至るケース、あとは家裁や保護観察所から行き場がないということで委託される子ども達の受け入れも行っている現状でございます。司法絡みの子どもも、実は社会的養護の施設出身者というのが結構多くございます。
 入居者の状況を簡単にそこに書きましたが、もちろんその児童養護施設等を退所後、就労するんですけれども、離職して行き場を失ったという子。それと、やはり年齢が高くなってから性虐待とかが発覚し、入所に至ったケース。それから、先ほども言いましたように親子関係不調とか、そういったことによって家出や非行、犯罪傾向に走って児相や家裁を通じて入居に至ったケース。あとは、軽度の知的障害とか精神疾患、発達障害等を抱えて、なかなかやはり就労に結びつかないケースの相談で入居している子ども達もおります。
 それから、そこに書きましたように自立援助ホームは今、全国で118カ所ぐらいありますが、その中で入居者のうち何らかの虐待を受けたケースは6割強というところにあります。あとは20歳の問題、20歳の壁の問題ですね。なかなか就労に結びつかずに20歳を超えてしまうケースですが、これも各ホームの善意というか、職員のボランタリーによって面倒を見ているというケースも結構ございます。
 最後のほうに、一応課題です。自立援助ホームの本来の役割というのは要綱とか法上にうたってあるんですが、自立一歩手前で短期間の援助で社会生活へ向けて移行できるように、そういった就労を前提とした支援を行うということが一つの役割、目的なんですが、状況的にはいろいろな家庭の問題、または自分自身のハンデを抱えてなかなか自立が難しいケースが混在しているというところです。ですから、自立援助ホームの今の職員というのは、本当に子ども達に対する対応力が必要となってきております。
 それから、就労まで至らないケースが多くございますので、先ほどもちょっと出ていましたように就労支援はもちろんのこと、中間的就労のそういったシステム強化が必要じゃなかろうか。それによってそういった職場の体験とか、あとは協力雇用主を求めまして、それでそういった発掘をしていく。子ども達に理解ある協力雇用主ということです。
 それから、昔ながらの職親の開拓ですね。これを私としては復活させたいというか、里親制度同様に職親制度を構築して就労支援を行うということで、里親さんの里親手当と同じように職親手当みたいなものもちょっとつくって、子ども達を一応そこへ預けて面倒を見てもらうというシステムも必要かと思っております。
 あとはそこに書いてあるとおりですが、ステップハウスというものですね。社会的養護の子ども達というのは、仕事を失うと経済的にも困惑して結局自分の居所も失うということで、そういったための一時的な居場所、ステップハウス等の整備も必要かなということがあります。
 あとは、当事者の団体の相談事業等ですね。先ほど草間委員からも言われたように行っておりますが、もう少し強化というか、援助をする人たちが気軽に相談できる居場所を充実させるということが必要です。そのためには、先ほどもおっしゃっていたように専門性も必要になってくると思います。
 あとは、20歳までの措置が可能なんですが、19歳で措置入所というケースも結構あるんですね。そうすると、あとわずか2~3カ月しかホームにいられないというケースもございますので、その辺の20歳の壁というところをどういうふうに考えていくかというのも一つの課題だと思います。
 それと、住宅事情が厳しい。やはり社会的養護の子ども達は保証人の問題もそうですけれども、そういったことを考えると公営住宅等の優先入居や、これは「定額」ではなくて「低額」です。済みません。低額の入居等のシステムを導入できないかということも一つあります。
 それから、今の自立援助ホームはある意味、子ども達は入居中には守られているのですが、やはり外へ出た後、このあたりが手薄になるというのがありますので、我々は仮称ですが、社会生活支援専門職員というような人を配置してそういったことを担うということが必要になってくるかと思っております。
 以上です。済みません、長くなりました。
○松原委員長 ありがとうございます。
 それでは、次に藤川委員お願いいたします。
○藤川委員 アフターケア事業部の藤川でございます。当事業部の活動や取り組みと工夫を御説明申し上げます。
 アフターケア事業部という名称のとおり、施設を出た後の子ども達のアフターケアをするためにできた法人の事業部です。どういう取り組みをしているかと申しますと、資料に(1)「健全育成事業」とあります。まず1通信として年に3回施設退所児にお手紙を出しています。他に暑中見舞い、年賀状、クリスマスプレゼント等を発送し、つまりは年に6回2カ月に1度、何らかの形で子ども達に元気でいますか?というような激励の気持ちを届けています。
 次に2就職予定者支援プログラム、これはソーシャル・スキル・トレーニング(SST)ですが、この事業は施設を出た後の子ども達ではなく、施設及び里親に入所中の中学3年生から高校3年生を対象にしています。これはアフターケア事業ということではないかもしれませんが実は大切な事業です。理由は私がアフターケア事業部に参りました16年前、子ども達は出身した施設の先生と一緒でしか相談に来なかったのです。
 それは何故なんだ?何故一人で相談に来ないのだろう?ということを子ども達にインタビューした結果、子ども達からは「行ってもどんな人が相談にのってくれるか解らないから不安」「相談場所がどこにあるか解らないから不安」との返答が多くありました。不安だから尚更、相談に行きにくいということに気がつきました。
また、何とか相談に来てくれても、その相談内容をよくよく考えてみますと、そんなことは施設の中に入っている間に教える事が出来るのではないか?と思える様な内容が多かったのです。
 それはどういう内容かと言いますと、左側の表に今年度のソーシャル・スキル・トレーニングのプログラムを掲載しています。この内容は全て実際の施設退所児童の相談事例です。一つ一つ説明していくと時間がございませんので、後ほどご覧頂きたいと思います。
さて、右側には参加施設数と参加者延べ人数の表がありますが、参加者数は7年前からどんどん増えています。
 なぜ私がここに挙げさせて頂いたかと申しますと、施設に入所する子ども達が7年前からどんどん増えていった訳ではなく、参加する子ども達が増えてきたのです。初めは高校3年生だけだった参加者が、ソーシャル・スキル・トレーニング開催日に施設や学校の行事と重なったらその会は参加できないから高校2年生から参加できませんかという施設側からの御要望があったり、あるいは施設のほうも特別支援学校に通っている子どもは受講が難しいかもしれないと思って御遠慮なさっていたのですが「同じ施設の中で同じ高校3年生なのにあの子は行けて、なぜ僕は参加できないのですか?僕も参加したいです。」と本人からの申し出があったり、あるいは、参加した高校3年生の子が施設職員に、「ぜひ来年の高校3年生も参加させてやって下さい。」と子ども達から施設に言って下さるというようなことがありまして、施設からこういう子ども達は参加できますか?とか高校2年生から参加させたいのですがどうですか?というご依頼について全てを受けたので、結果中学3年生から高校3年生を対象にしたということになりました。
 ちなみに平成25年度ですが、延べ人数1,551人の中で6人に1人が特別支援学校の子どもでした。平成26年に至っては4人に1人の割合で、特別支援学校の子どもが参加しています。大学進学を目指す子も、特別支援学校の子も皆、同じように自立支援の講習会に参加しています。その効果は、右下の表でまとめています。施設入所中から私たちアフターケア事業部の職員と仲よくなっているということが、施設を出ても、「ああ、この人達がここにいるんだな」と思って安心して相談に来てもらえるのが大切なポイントです。
 講習会場も社会福祉センターで当事務所と同じフロアに会場がありそこで開催しますので、この場所にこの人達がいるんだと、施設退所前に子ども達との関係をつくるということが施設を出てから相談に来やすいという支援につながるポイントだと考えて、そういう工夫をいたしました。
 ほかにはパソコンセミナーを開催しています。プレゼントでございますが、これはクリスマスプレゼントとして、イブの日に翌年のカレンダーを子ども達に贈りまして、そのカレンダーにアフターケア事業部の電話番号やメールアドレスなどを載せています。普段は当事業部のことを忘れていても、何か困ったことがあった時に、カレンダーを見てはっと思い出して当事業部の事務所に相談に来るという子ども達も結構います。
 後はフリールームですが、これはもうどんどん遊びにいらっしゃいよ!というスタンスで、家庭の居間をイメージして応接セットを用意し誰もが寛げる様に工夫をしています。また、他にも退所者が集う行事も開催しています。
 実はソーシャル・スキル・トレーニングでは大阪府下の施設の子ども達はほとんど参加しますので、いろいろな施設の子ども達同士で仲よくなります。最近解ったことですが、違う施設の子ども達と仲よくなることによって、子ども達がお互いに励まし合える。自分の施設の中では他の子とどうしてもうまくいかなかった子でも、ほかの施設の子ども達とウマがあって、自立生活をしていて困った時にお互い相談に乗れたとか、とても良い関係になっているという話をよく聞きます。先ほど武藤委員から、施設を出る前に先輩のお話を聞くとすごくよかったという御発言がございましたが、当事業部もソーシャル・スキル・トレーニングの第11回のときに「先輩の体験談」というプログラムがあり、講師は概ね施設を出て2~3年の先輩にお願いしています。大人になってすばらしいお仕事をされている施設出身者はたくさんいますが、あえて施設を出て2~3年の先輩、本当に2~3年前までソーシャル・スキル・トレーニングを受講して私にがんがん怒られていた子ども達が社会人となり、「君たち、今まで藤川さんに怒られて嫌だっただろうけれども、社会に出たら施設の先生みたいに誰もが優しくはしてくれないんだよ」ということを伝えて身近に社会生活の現実を感じてもらえるような工夫をしています。
 次の2ページは、当事業部にどういう人たちが相談に来ているのかという表です。当然圧倒的に施設出身の子ども達が多いです。後は参考に見ていただけたらと思います。
 次に、3ページです。当事業部で一番大切な活動が(2)「相談援助活動事業」です。とにかく子ども達が困ったときに相談に来てくれないと、声を出してくれないと私たちは相談に乗ることができません。私たちも専門職である弁護士さんとか、精神科のドクターとか、いろいろな専門家とのつながりを持ちながら子ども達の相談に乗っています。相談内容は参考までに見ていただけたらと思って数字を出しました。
 次のページですが、講演会を開催したり、「就業支援事業」をしたり、今までの御意見にもございましたが、本当に子ども達は就労体験はほとんどありませんので、施設に入っている子どもについては夏休みに企業にお願いして職場体験の実施をさせて頂いています。最後の5ページも私が思っている点を課題として掲載させていただきましたが、今まで委員の皆様方がおっしゃったこととほぼ同じでございます。以上でございます。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、磯谷委員お願いいたします。
○磯谷委員 私のほうは、1つは「18歳に達した未成年者と児童福祉法上の措置」に関するお話と、もう1つは「接近禁止命令の拡張」に関するお話です。
 最初の「18歳に達した未成年者と児童福祉法上の措置」については、むしろ事務局が(3)の課題として提示していたもので、その意味で少し外しているかもしれません。問題意識は1ページにまとめましたが、児童福祉法というのは基本的には18歳に満たない者を対象にしているけれども、児童福祉施設入所等の措置について満20歳まで延長することができるほか、親権喪失等の親権制限の請求についても20歳になるまで行うことができることになっているわけです。
 しかし、まず1点目ですけれども、児童福祉法第28条に基づく家裁の承認を得てとった施設入所等の措置が、子どもが18歳に達した後に2年の期間が満了した場合、果たしてその更新の承認の申し立てが可能なのかどうかというところについて、必ずしも名文上は明らかではないというふうに考えられます。脚注にこれを肯定する見解があることを付記しておきましたけれども、少なくとも明らかでない。
 加えて、その延長期間中に、例えば虐待防止法に定められている面会交流の制限とか、接近禁止命令などは利用できないのではないかというふうに考えられます。これらの対応は「児童」を対象にしているところ、18歳に達すると「児童」ではなくなるからです。
 また、先ほどちょっとお話が出ましたけれども、18歳に達した後の措置変更の可否というふうな問題も、同じようにあるかと思います。
 それから、児童相談所長は親権喪失等の請求をすることになっているんですけれども、そのための情報収集の手だてを考えると、実は皆、「児童」であることが前提となっていて、この18歳に達した後の子どもについて使えるようになっていないのではないか。さらに、同じ理由で一時保護も利用できないのではないかということになります。
 (2)以下は条文ですけれども、少し飛ばしますが、例えば3ページの児童福祉法25条の2というところにいわゆる要対協の規定がありますけれども、ここも対象や目的については児童という枠組みになっておりますし、またその後の13条の3、これは情報の共有ができる部分ですが、これも児童ということになっているということであります。
 4ページの「対策」のところですけれども、そもそも論として27条1項3号の施設入所等の措置について18歳から20歳に引き上げるべきという考え方もあると思いますし、私も基本的にはそれは非常にありがたい話だと思いますが、そうすると恐らく児童福祉法自体がもう18歳から20歳に対象を引き上げるということに等しくなるんだろうとも思われるので、仮にそこまでちょっといけないとして、「ア」のところは児福法31条2項の延長の措置についても、先行する27条1項3号の措置が28条1項、または2項ただし書きの家裁の承認によってとられているときには、親権者の意に反する場合であっても家庭裁判所の承認を得てこの延長の措置をとることができるというふうに明記をすることが考えられると思います。
 また、条文をここで引用していなくて申しわけないのですが、31条4項のところに、この法律においてこの延長の措置というのは27条1項3号の措置とみなすというふうな規定はあるんですけれども、「この法律」、つまり児童福祉法のみを指しており、児童虐待防止法は対象になっていないんですね。ですから、児童虐待防止法もそこに含めることによって面会交流の制限等をできるようにするということも考えられるのではないかということであります。
 「イ」のところは親権喪失等について、つまり18歳に達した後も要対協とか、児童虐待防止法13条の3などの制度が利用できるようにする必要があるんじゃないかということですけれども、この会議で前に議論になりました児童相談所の一般的な調査権限と、それに対する応答義務というのが有用だという結論だったと思います。そこのところを、例えば18歳で区切るのではなくて20歳までというふうにすれば、相当程度これでカバーできるのではないかと思います。
 2つ目の「接近禁止命令の拡張」は、平成23年の法改正のときにも随分議論をされました。私の理解としては、決して意味がないとか必要がないということではなくて、制度設計には随分いろいろと考えなければいけないことがあるという趣旨で見送られたものと理解をしています。
 やはりそれでも実際の施設現場で聞いてみますと、退所した後こそその児童につきまとったり、さらにはお金を無心するというような親がいるようですので、接近禁止命令は基本的には施設退所後にこそ必要性が高まるんだろう。
 そうすると、例えば児童虐待防止法のものとは少し別に、子ども自身が裁判所に対して接近禁止命令を申し立てる制度というものを創設するとともに、子どもがかつて施設入所などの措置をとられていた場合には児童相談所が支援をする。こういうことも考えられるのではないかと思います。以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。
 それでは、引き続き浜田委員お願いいたします。
○浜田委員 浜田です。大阪弁護士会所属の弁護士です。今日、私からは「未成年後見人の活用について」ということでお話をさせていただきたいと思います。
 言うまでもなく施設等の退所児童全般にかかわるものではありませんし、未成年後見人の制度としましては別に18歳とか、18歳超えの人に対象が限られるものではありません。なので、そのものずばりなのかどうかはわかりませんが、御提案させていただきたいと思います。
 今日焦点を当てますのは、自立に際して法的な課題を抱えているようなお子さんにこの制度が適用できる場合には有効であろうと考えるということです。施設等から自立をしていくに当たって、子ども達は住む場所を決め、行き先を決め、電話を買い、ほかにも物をいろいろ買いという形で環境を整えていくわけです。こういうときに、その法律行為について、未成年者がそれを単独で行えるのかという問題が実はある。
 自立を望む子ども達の中には、法定代理人たる親権者を有しない者が、少ないかもしれませんが、存在をしております。典型的には親御さんを死別で亡くされた場合でしょうが、親権喪失・停止等によって親権を行使する者がいないという場合もあり得ます。そういうときには、法律は未成年後見人を選ぶということになっているわけです。
 未成年後見人につきましては、昔も今も大多数の場合は親族が務めているところです。しかし、近時においては私どものような弁護士を初めとする専門職が未成年後見人等に選任されるケースが数としてふえております。
 2ページに入りましたところに、大阪弁護士会の統計データをざっと載せておきましたけれども、直近の4年間で3倍以上に増加をしているということが実績として出てきております。
 では、この「未成年後見人の活動」、もちろん親権者がいない子どもに対してのみ選任されるわけですが、どのような活動を行っているかということです。今、法的な課題がある場合と申し上げましたが、実際の活動は法的なものに必ずしも限られず、その下にも書きましたように事実上の支援活動のようなものも行っております。
 例えば、ひとり暮らしの子どもを訪ねて行って一緒に御飯を食べようかという話をすることもそうですし、施設に入っている子だったら施設に訪ねて行ってというふうなこともやっております。関係機関とのつなぎをいろいろにやるというのも、未成年後見人の得意とするところかとは思っております。
 2ページの下のほうに、私が経験した実例を書きました。児童相談所長の申し立てによって親権喪失審判を得て、その後も施設で入所していた子どもについて、高校卒業後に寮つきの会社に就職するに際して私が未成年後見人に就任をしまして契約の同意とか、その後の財産管理の指導とかを継続的に行ったというケースがあります。この子は、ちなみに20歳になりましたけれども、今でもたまに「最近どう?」という形でやりとりをしております。
 めくっていただきまして、3ページです。未成年後見人がいることのメリットとして、特に私どものような外部の弁護士がやる場合には、児童相談所でもなく、施設でもなく、里親でもない。全く関係のないところから、この子どもにかかわる大人が1人ふえるというような意味合いを持とうかと思います。
 ですので、時と場合によっては児童相談所、または施設さんとかと意見交換だったり、激論になったりすることもあるんでしょうけれども、違った立場から子どもの利益のための代弁ができる。それで、調整活動も行えるというところが一つのメリットかと思っています。
 あとは、施設の種類等がお子さんによって居場所が変わったりして、未成年後見人は基本的にはずっと未成年後見人ですので、子ども達と継続的なかかわりを持つことができるということもメリットかと思っております。
 課題として、幾つかそこに挙げました。「特に、専門職後見人について」ということでいいますと、義務がなかなか重たい。また、実際上、保証人となっているケースも多数あります。保証人ということになると、本当に下手すると丸抱えで保証人がかぶるということもありますので、結構ここは心理的には我々としても負担が大きいところです。
 「報酬」の問題も、やはり見過ごすことができません。大阪弁護士会で把握しているところ、直近2か年度を調べましたら、推薦依頼件数の約2割は全く報酬が見込めないようなものでありました。厚生労働省で一部の件について、平成24年度から、報酬の補助、または損害保険料の補助も含みますが、そういう支援事業を始めていただいています。
 ただ、私どもの立場からすると要件が厳しくて、なかなかそれが一般化できているものではないというふうなところが課題としてあろうかと思います。
 また、4ページの4番のところに書きましたけれども、「成人後のかかわり」というところです。ほかの委員の方からも出ているところですが、未成年後見人も当然のように子どもが20歳になったらそこで仕事としては終了です。ただ、その後も支援の必要性が失われるものではありません。
 具体的なイメージがあるわけではありませんけれども、何らかの法的な裏づけをくっつけながら成人後も我々、元未成年後見人が関与を続けられるような体制がつくれないものかというふうには検討していきたいと思っております。
 以上のとおり、なかなか日の当たらない分野、まだまだ知名度が低いところでありますけれども、施設の方、児童相談所の方、またはもちろん国の方にもこのような未成年後見人の活動についてぜひ知っていただいて、活用についてともに議論できるといいなと、こんなふうに考えております。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。
 それでは、この課題(4)につきまして事務局が準備しました問いかけ、あるいは各委員からのプレゼンテーションへのコメント等をいただきたいと思います。かかわって第3の課題のほうに及んでもよろしいかと思いますので、御自由に御発言いただきたいと思います。いかがでしょうか。
 武藤委員、お願いします。
○武藤委員 居場所づくりの問題で、先ほど草間委員のほうから話があったとおりですけれども、いろいろなタイプがあってもいいんじゃないかと考えております。
 この退所児童等アフターケア事業に700万円程度の補助金を受けるということに対して、内容的にハードルが高いような気がするんですね。各施設だとか地域ごとにあってもいいのかなと思っております。ですので、少しA型、B型じゃないですけれども、施設で気軽につくっていって、そこを居場所づくりにしていくというようにハードルをちょっと下げると、もっと各施設の当事者の人たちだとか周りの支援者の人たちが、このぐらいだったらできるねということが多分できると思います。
 最終的には、都道府県ごとに複数の居場所づくりを目指すのであれば、この退所児童等アフターケア事業の中身だとか補助のあり方というものをもう少し検討して、実態的に皆さんができるようなシステムをもう少し検討してもいいんじゃないかと思っています。以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 木ノ内委員、お願いします。
○木ノ内委員 浜田委員にお聞きしたいんですけれども、未成年後見人について法人後見人の制度が、最近でもないですが、できました。
 ところが、まだ全然普及しないで今、岡山に1カ所あるぐらいのものでしょうか。これがふえない理由というのか、どうしたらふやせるのかというところをお聞きしたいと思います。
○浜田委員 浜田です。今、御指摘のとおり法人後見人は、私どもが把握している情報でも、ほとんどない。岡山の「えがお」という法人程度しか耳にしておりません。
 これが、伸びないところについて、私も確たる知見があるわけではないですけれども、各方面からいろいろにお聞きしますと、ちょっと様子見のところがあるのか。何かそういうのはできないですかねというふうに言われてはおりますけれども、なかなか踏み切れるには至っていないのかなと。
 もちろん、例えば養護施設を運営する社会福祉法人とか、あとは場合によっては弁護士法人とか、そういうものも受け皿の一つと想定されたようには聞いております。また、本当はそれ専門の受け皿法人があったほうがいいのであろうというふうには考えておりますが、よくわからないんですけれども、もしかするとそこまでやらなくてもまだ何とかなってしまっているということが1つです。
 あとは、やはりその負担が大きいという面がどうしてもネックになっているのか。法人で抱えてしまうと余計に負担が大きくなってしまうというふうなところも、もしかすると原因の一つに挙げられるのかなというふうには考えております。以上です。
○松原委員長 ありがとうございます。ほかにいかがでしょうか。
 では、お願いします。
○草間委員 (3)と(4)に関連するのですが、今、政府では子どもの貧困という問題について政策立案実行する方向に、大きくかじを切って動き出しています。社会的養護というと4万人ぐらい今でもあるわけですが、一方で社会全体を見つめると、子どもの貧困率が上がっている。特にひとり親家庭で半分以上が平均値以下の所得分布となっている。ジニ係数も若干ですが上がってきている。所得格差も上がってきているということです。このような現象が、社会的養護の部分をむしろ飲み込むような形で今、子どもの貧困は問題となってきている。
 とするならば、政府が今、力を入れなければいけないのは子どもの貧困対策になります。おそらく今後、いろいろな政策が打ち出されてくるはずだと思います。そのように進めば、社会的養護の資源が、貧困対策施策と連結できる可能性が出てくる。子どもの貧困から社会的養護を見ていくという視点が大切なのかなと感じます。
 その中で、自立支援の機関としては幾つか類型ができるのではないかと思います。例えば、生活系の自立支援施設としては救護施設、母子生活支援施設、自立援助ホーム。就労系としてはハローワークや民間のリクナビ、リクルート。相談系としては、大阪でやられているような大阪アフターケア事業部のような機関、居場所系としては、先ほど発言した団体が挙げられる。
 このように類型化した自立支援策パッケージとしてみれば、どういうふうに支援をしていくかは課題となる。特に、施設を出た子どもたちというのは、所在を捕捉できるのは1割ぐらいですから9割の子どもたちがひっかからない。そうすると、一般の貧困対策サービスというか、生活困窮者自立支援法で、残りの9割がひっかかってくる可能性が高いと言える。生活困窮者自立支援法で、ひっかからない社会的養護退所児童をカバーしていくという視点は大切だと感じました。以上です。
○松原委員長 ありがとうございました。ほかにいかがでしょうか。
 事務局のほうで居場所づくり、実家的機能という言葉が出ておりまして、一方で委員からのプレゼンテーションの中には仕事の退職と同時に居所も失うというようなお話があって、その居場所とか実家的機能の中には数日泊まるというようなこともあるかと思うんですけれども、藤川委員はたくさんの相談を受けていらっしゃっていて、今日寝る場所がないというような相談も御経験はあると思うのですが、どう対処をされていますか。
○藤川委員 藤川でございます。実は、当法人で自立援助ホームを3カ所運営しておりまして、「今日寝るところがありません」とか「3日間公園で寝ていました」という子どもがアフターケア事業部に来たときは、私はその子の手を引いて当事業部の自立援助ホームへ連れて帰ります。
 自立援助ホームを開所して10年になりますが、それ以前はカプセルホテルへ連れて行きまして、「明日の朝必ず迎えに来るからここで寝ておきなさい!」と言っておにぎりを買い与えてと、そういうようなことをしていました。そんな事例は多くあります。
○松原委員長 武藤委員もうなずいていらっしゃいましたが、何かありますか。
○武藤委員 施設の中に卒園していった子ども達が、ずっと何年もおられると困るんですけれども、1週間だとか、10日だとか、1カ月近くいて、そこでまた仕事を探してみるだとか、そういう場所を設けるということをやっています。
 全ての施設で実施するというのはなかなか難しいかもしれないですけれども、これからやはり地域の子育て支援だとかアフターケアだとかも含めて、多目的にいろいろなことで使えるような場所、スペースを確保できる施設整備補助のあり方にしていくことも必要だと思います。
○松原委員長 ありがとうございます。
 もう一方で、課題(3)のほうで事務局が提示されているように失敗しないにこしたことはないので、確固たる自立支援ということもしていかなければいけない。そういう意味で、藤川委員がされているソーシャル・スキル・トレーニングなどは大きな役割をしているのかなと思うんですが、これが大阪でやられていてほかの自治体へ広まっていかないというのは、何かそこに課題があるんでしょうか。
○藤川委員 藤川です。まさしく大阪の子はソーシャル・スキル・トレーニング講習会があっていいよね!というのではよくないので、何とか地方にも広がるようにしたいということで、御依頼があれば私は全国どこにでも行ってお話をしていますが、やはりノウハウを幾ら出しても、あんたは元気だからいいよ!という皆さん方のお声があったり、必要な経費、つまり金銭的なことの悩みもあって広まりにくいようです。
 ただ、お金だけの問題ではなくて、なくてもできるというようなノウハウも当事業部にはあるので、是非それを私の声を聞くだけでなく利用していただきたいとあちこちで申し上げているところです。和歌山県の児童養護施設協議会では今年度ソーシャル・スキル・トレーニングを開催する企画をしていますし、もちろん私も応援します。このように本当に少しずつですが、私も種まきに努力しているのですが、なかなか思ったようには進んでいないのが現状です。
○松原委員長 ありがとうございます。ほかにいかがですか。
 木ノ内委員、どうぞ。
○木ノ内委員 藤川委員にお聞きしたいんですけれども、おおむね5年間を一つの目安にしているようですが、この5年というのは何か理由がありますか。18歳でしたら、大体23歳ぐらいまでですか。その辺に理由があるのかどうか、お聞きしたいんですけれども。
○藤川委員 中卒で施設を15歳で退所した子は20歳までですね。それで、どこかで区切りをつけないとエンドレスになりますし、予算もかかるということと、1ページの上の欄に書いている通信の発行数の400~460通ですが、これはなぜこの様に幅があるのかというと、子ども達の多くは転居しても転送通知を最寄りの郵便局に出していないので、転居先不明となって、毎回20~30通は戻ってきます。それもあり、5年ぐらいを目途にしています。
 ただ、5年を過ぎた子ども達には返信用はがきを入れて本人の継続希望の意思確認をしています。引き続き送ってほしいと希望する子には続けて送っています。最長の子は30歳を過ぎていますがまだ送っています。ですから、5年はあくまで目途ということで、それもどこかで区切りをつけないとエンドレスになってしまうという、ただ単にそれだけのことです。相談に関しては、年齢に関係なく支援しております。
○松原委員長 ありがとうございます。
 さて、2つ目のプレゼンテーションは法的な課題も2つ挙がっているんですが、お二方からのそれぞれの課題提起、あるいは未成年後見人については制度運用のこともあるかと思うんですが、そのことにかかわって何か御質問、御意見があれば伺いたいのですが、いかがですか。
 磯谷委員、お願いします。
○磯谷委員 磯谷です。先ほどからちょっと議論を聞いていて思うのは、やはり18歳を超えて自立していく子どもに対して、仕組みとして例えば先ほどハローワークのお話なども出ました。いろいろな形での支援ですね。サポートというのが一つの大きなテーマとしてあるんだろうと思います。
 もう一つは、社会的養護を終わった後の人と人とのかかわりを、どうつないでいくのか。例えば里親委託期間が終了した後での子どもと里親さんとの関係をどう考えていくのかという問題があるわけですね。
 未成年後見人というのは、実は基本的には私的なものだというふうに理解しています。民法には裁判所の監督を受けるという規定はあるのですけれども、一方で、「親がわり」とも言われるように、親にかなり近いところがあるわけなんですね。だからこそ、浜田委員からも先ほどお話が出たように、未成年後見が終わった後もずっと子どもとかかわりがある。これは子どもにとってよいことだと思うのですが、これを一体どうサポートするのかというところも、もう一つ大きな問題だと思っています。
 社会的養護に話を戻して、里親にしても施設にしても、子どもとの関係は公的な制度としてスタートしているわけです。その公的な関係が終了した後の関係を、単なる私的な関係とみなして、当事者間に委ねるのか。そうすると関係が曖昧になって、里親さんなどは委託終了後に私的な関係を押しつけられていると感じるのではないか。
やはり、措置解除後も子どもとの長い関係を期待するのであれば、私的な関係ということで公が手を引くのではなく、公的なサポートを整えてバックアップする必要があるのではないかと思います。
○松原委員長 ぼちぼちと思うんですが、まだ数分余裕がありますので御発言をどうぞ。
○平田委員 平田です。乳児院では、十代で出産をされてお子さんをお預かりしたら、お母さんに知的課題があって障害者施設へ入所となりました。
 その保護者は年金などが生活費になっていると子どもお母さん双方への引き取り要求となります。お母さんが20歳になるのも待って、親権を移動し、双方の措置を続けるなど複雑なケースがあります。自立を考えるときに、全て社会に出せるわけではありません。そのようなときも、情報をつかんでいる市町村との連携があって引取要求の回避をし、それぞれの生活の場所が選べるということもあるというところも少し中で頭に置いていただけたらと思いました。
○松原委員長 ありがとうございます。
 草間委員、お願いします。
○草間委員 厚労省の中で将来の政策課題としての整理が一つあるかと思います。それが、マイナンバー制度です。いよいよ運用開始されます。本格運用がされると、さまざまなデメリットが懸念されています。他方メリットの1つとしては、個人の情報を公的機関が把握出来ることになり、運用次第で不確実性下にいる当該者を捕捉ができることです。
 社会的養護の対象となる方、あるいは生活保護になってしまう人は、いつ・だれが・どこでなるのか全く分からない不確実性という特色を持っています。誰が起こすか分からない。つまり、個人データが取れない。情報の非対称性がある。これらの課題に対して、マイナンバー制度は、弾力運用すれば解決できる。ただ、個人のプライバシー保障をどうするかという法的課題は一つあります。
 マイナンバー制度の弾力運用によって政策効果を上げる。社会的養護や生活保護、子どもの貧困対策といった問題を、我が国について責任を持ってやっていく。国民の幸福追求の実現のためにやっていくという強い思いで、マイナンバー制度とこれらの諸問題をどう捉えていくかということも、来るべきときの大きな将来課題、あるいは問題提起として持っておく必要があるのではないかと思っています。
○松原委員長 ありがとうございました。非常に大きな課題でした。
 大体想定をしている時間になりましたが、どうしてもという方がいらっしゃればと思いますが、よろしいですか。
 いろいろな御意見をいただきましたし、事務局サイドからの問いかけに直接答えていただいた部分、あるいは間接的にコメントいただいた部分もあるかと思いますが、今日の課題(3)(4)にかかわってのプレゼンとディスカッションはこの程度にしたいと思います。
 では、議事については以上ですので、次回の日程について事務局のほうからお願いいたします。
○寺澤家庭福祉課課長補佐 本日はありがとうございました。
 次回の専門委員会の日程につきましては、5月15日金曜日15時から17時、9階省議室を予定しております。
 次々回の御予定もお伝えしたいと思います。5月29日、同じく15時から17時で9階省議室の予定でございます。
 正式な御案内につきましては、また後日郵送させていただきます。よろしくお願いします。
○松原委員長 それでは、本日は皆様ありがとうございました。これにて閉会といたします。
 


(了)

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