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2015年5月15日 第7回腎臓移植の基準等に関する作業班 議事録

健康局疾病対策課移植医療対策推進室

○日時

平成27年5月15日(金) 15:00~17:00


○場所

厚生労働省19階 共用第9会議室


○議題

1 腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の見直しについて
2 その他

○議事

○田中補佐 定刻より少し早いですけれども、先生方がおそろいになりましたので、ただいまより「第7回腎臓移植の基準等に関する作業班」を開催させていただきます。

 委員の先生方におかれましては、お忙しいところお集まりいただきまして誠にありがとうございます。本日は脇田委員より御欠席の御連絡を頂いております。

 開会に先立ちまして、健康局の田原疾病対策課長より御挨拶を申し上げます。

○田原課長 疾病対策課長の田原でございます。「腎臓移植の基準等に関する作業班」の開催にあたりまして、一言、御挨拶申し上げます。松尾班長はじめ班員の先生方には、大変お忙しい中御参集いただきましてありがとうございます。また、平素より移植医療の推進に多大なる御尽力、御協力を頂いております。この場を借りて感謝を申し上げます。

 改正臓器移植法が施行されましてから5年が経過しようとしております。既に300例を超える脳死下での臓器提供が行われておりまして、提供者やその御家族の尊い意思によりまして、多くの方々の命が救われております。

 一方で、例えば腎臓の移植希望の登録者数などを見ますと、今年の4月末現在で12,688人と、多くの方々が移植を待っている状況にございます。このような中、限りある提供臓器の公平、適切な配分につきまして、社会的な関心が非常に高まっているという状況でございます。

 本日の作業班では、昨年の1225日に開催をいたしました第6回作業班に引き続きまして、具体的なデータも踏まえながら腎臓のレシピエント選択基準におきます待機日数と、HLAの適合度に係る点数の取扱い、それから小児ドナーから小児レシピエントへの優先的な臓器提供などにつきまして、御議論をお願いしたいと考えております。本作業班におきます議論などを通じまして、レシピエント選択基準について、医学的なエビデンスに基づきつつ、社会的な要請にも応えまして、より実態に則した適切なものにしてまいりたいと、こう考えておりますので、本日、どうぞ御議論をよろしくお願いいたします。

○田中補佐 また、田原課長につきましては、業務の都合により途中で退席させていただく予定としておりますので、御了承いただきたいと思います。

 それでは、以後の議事の進行は松尾班長にお願いしたいと思います。松尾班長、よろしくお願いいたします。

○松尾班長 それでは委員の先生方、お忙しいところお集まりいただきましてありがとうございます。

 前回、非常に活発に御議論を頂きまして、宿題が幾つか残っているわけですけれども、特に、今日は各種様々なデータを用意していただきましたので、それに基づいて議論を進めていきたいと思います。

 それでは早速会議を始めたいと思います。まず最初に、事務局から資料の確認をお願いいたします。

○田中補佐 それでは、本日の資料の確認をさせていただきます。お手元の議事次第に資料と参考資料の記載がありますので、参考にしてお手元の資料を御確認いただければと思います。資料の不足や落丁等がありましたら、事務局までお知らせください。また、会議の途中でも何かお気付きの点がありましたら、随時お知らせいただければと思います。よろしくお願いいたします。

○松尾班長 それではよろしいでしょうか。お手元に資料の一覧が、目次もございますので見ていただきまして、それでは、初めに事務局から腎移植希望者(レシピエント)ですが、この選択基準の改正の経緯等について、資料1に基づいて説明をお願いしたいと思います。

○田中補佐 それでは資料1に基づきまして、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準の改正の経緯について御説明をさせていただきます。

 まず経緯についてですが、平成7年に制定されました腎臓移植のレシピエント選択基準のこれまでの改正の経緯につきまして、1ページ目は記しております。前回は平成261225日に第6回腎臓移植の基準等に係る作業班を開催させていただきまして、先生方に御議論を頂いたところですが、本日は、前回の作業班での検討事項に関する御議論を踏まえまして、各検討事項に関しての医学的データに基づく、更に踏み込んだ議論をお願いできればと考えております。

 続いて2ページ目につきましては、本邦における臓器提供の状況について示しております。まず、臓器提供者数の年別の推移ですが、このデータは平成27430日現在のものです。本年は430日ですので、約3分の1が経過をしたところですが、脳死下での臓器提供につきましては21例、心停下での臓器提供につきましては11例ということとなっております。前年と比べますと、若干、脳死下、心停止下ともに増加傾向ではありますが、やはり心停止下での臓器提供がここ数年の傾向と変わらず、少ない傾向にあります。

 続いて3ページ目は、腎臓移植のみ取り上げてみた移植の件数の推移です。暦年の数字となっておりますが、本年は現時点で脳死下での腎臓の提供に関しましては40例、心停止下では21例となっております。

 続いて4ページに関しましては、腎臓移植のレシピエント選択基準を検討する上での考え方につきまして、お示ししております。こちらは前回の作業班でも資料としてお出ししたものでして、特段の御説明はさせていただきませんが、レシピエント選択基準を議論する上で前提となる考え方を示しておりますので、御参考いただければと思います。経緯については以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。この資料1についてはよろしいですね。それでは、資料2に基づきまして議論を進めてまいりたいと思います。前回、第6回の腎臓移植の基準等に関する作業班において、非常に活発に御議論いただいたわけですが、その事項について、事務局で整理をしていただきました。本日の会議で、改めてどのような検討事項があるかということを整理していただきましたので、資料2の冒頭に前回会議のまとめがあります。これについて、これは復習ですけれども、事務局からまず説明をお願いします。

○田中補佐 資料2に基づいて説明いたします。腎臓移植のレシピエント選択基準に関する検討事項です。平成261225日に開催された第6回腎臓移植の基準等に関する作業班において、腎臓移植希望者(レシピエント)選択基準に関して、8項目の検討事項に関して御議論いただいて、今後の方針について整理を行いました。本日の会議においては、このうちの4項目について、本邦の移植成績及び腎移植に関わるデータを基に、御議論をお願いしたいと考えております。本日は、下の「前回の会議における検討事項」ということで8項目挙げておりますが、こちらの太字下線で網掛けにしている4事項について御議論いただく予定としております。

2ページに前回のまとめを示しております。こちらが現行の腎臓レシピエント選択基準と前回の作業班における議論のまとめをしたものです。左側には現行基準の構造が示してあります。レシピエント選択基準に当たっては、搬送時間、HLAの適合度、待機日数、未成年のポイント加算の4項目の合計点数を基に、優先順位が決定しているところです。右側ですが、前回御議論いただいた8項目を、政策的判断を要する事項と技術的判断を要する事項の2つに分類しております。

 まず、主に政策的判断を要する事項として、待機日数の重み付けの変更、移植した腎臓が機能しなかった場合の扱いの変更、Age-match制度の導入という3項目については、レシピエント選択基準の構造に関わる事項と言えます。こちらの3事項については、本日御議論いただくこととしております。

 また、主に技術的判断を要する事項として、PRA検査の再評価、2腎同時移植の基準の明確化、待機期間の細分化という3つの項目がありましたが、1つ目のPRA検査の再評価については、近年の新たな検査方法の普及など、医学的知見が変化していることも踏まえて、まずは関係学会で検討していただくこととなっております。2つ目の2腎同時移植の基準の明確化については、日本臨床腎移植学会において、データの収集及び解析をしていただいておりますので、結果については本日、御発表いただく予定です。その結果を踏まえて御議論いただく予定としております。3つ目の待機期間の細分化については、前回Inactive制度の導入について御議論いただいたところですが、移植施設の管理体制も含め、長期的に検討いただくこととなっております。したがって、本日は、政策的判断を要する3つの事項と技術的判断を要する1つの事項の4つについて、御議論いただければと思います。前回までのまとめとしては以上です。

○松尾班長 以上、本日のこの会議で検討する事項についての整理がありましたが、議論を始める前にここまでのところで何か御意見、御質問等ありませんか。

 具体的な中身の議論に入りたいと思います。資料2の最初にある政策的判断を要する事項のうちの一番上ですが、待機日数とHLAの適合度の点数の取扱いについてということから、議論に入っていきたいと思います。これについて、事務局から現状と、大事なことは付随するデータ、検討事項について整理したものを説明していただきたいと思います。よろしくお願いします。

○田中補佐 1つ目の検討事項である「待機日数とHLAの適合度の点数の取扱い」について、説明いたします。資料の3ページになります。枠の中に書いてありますが、歴史的に「待機期間が長い者が優先される」ということで優先順位を決定してきたところがありますが、現在の選択基準においては、新規登録者については移植の機会がなかなか回ってこないという現状があります。移植機会の公平性を鑑みますと、待機期間が長い者が優先されることについては議論の余地があると言えます。以上より、現行基準の優先順位を決定する項目である搬送時間、HLAの適合度、待機日数、未成年者という構造を変更する必然性があるかどうか、本邦の腎臓移植の現状及びデータを基に御議論いただければと考えております。

3ページ目の下の「現状」です。献腎移植の移植待機者の平均日数は、参考資料のスライド番号5枚目ですが、腎臓移植者の平均待機日数があります。現在の献腎移植の移植待機者の平均待機日数は10年を超えているような状態で、現状では新規登録者はなかなか移植の機会が回ってこないことがあります。また、優先順位を決定するHLAの適合度については、現在適合度が高い度合いに応じて加算されておりますが、世界的に見ても文献上も、HLAの適合度が0ミスマッチのものに関しては、16ミスマッチの者に比して移植後の成績が良い、生着率が良いと言われております。HLAの適合度が移植時の長期予後に関与していると言われているところです。

4ページですが、このような現状を踏まえた上での検討事項です。1つ目は、待機期間に重きを置くような優先順位の決定について、どのように考えるかということです。2つ目ですが、HLAの適合度における0ミスマッチに関して、どのように評価するかということです。これは近年の免疫抑制剤による移植成績の向上も踏まえてどのように考えるかということです。こちらに関しては、先ほどの参考資料の13スライド目から28スライド目に掛けて、HLAと生着率についてのデータを示しております。本邦におけるHLAの適合度による生存・生着率は、特に18スライド目にHLA0ミスマッチの場合と16ミスマッチの場合の生着率の比較が載っておりますが、この結果から言えることは、HLA0ミスマッチの場合は16ミスマッチに比べて生着率が良いということです。

 このようなデータを踏まえて、HLAのミスマッチ、0ミスマッチに関して、1以上よりも優先するかどうかということについて御議論いただければと思います。

 以下に事務局より案として、HLAの適合度における0ミスマッチについて、現状よりも優先を行うとした場合のイメージを2つほどお示ししております。4ページ目ですが、1として「HLAの適合度における0ミスマッチを最優先とする場合」とあります。下に表を示していますが、こちらは0ミスマッチを最優先とする場合の順位付けのイメージ図を書いたものです。表の下の※に説明書きを書いておりますが、0ミスマッチを最優先とする場合は、HLA0ミスマッチの場合は合計点数に関係なく、ミスマッチ1以上のレシピエントよりも0ミスマッチを優先することとなります。0ミスマッチのグループ内での順位付けは、年齢及び地域、待機日数の合計点数により順位付けが行われることとなります。また、HLAミスマッチが1以上の場合は、現行のレシピエント選択基準のとおり、地域及び待機日数、HLAの適合度、年齢による合計点数を基に順位付けが行われることとなります。また、このような運用を行う場合は、現在のブロックから選択するという運用を全国展開するのかどうか、全国の移植希望者の中から選択をする必要があるかということについて、御検討いただくという問題が出てくるかと思っております。

5ページ目の2つ目の案について説明いたします。2つ目は「HLAの適合度における0ミスマッチの点数を増点する場合」とあります。こちらは現行のレシピエント選択基準においてはHLAの適合度における0ミスマッチは14×1.15点となっておりますが、この14点という点数配分を見直して、1ミスマッチ以上のレシピエントより優先することとするかどうかが案の1つです。イメージとしては表にお示ししたとおりですが、※の所です。この場合においては、HLA0ミスマッチのレシピエントに対しても、現行のレシピエント選択基準のとおり地域待機日数、HLAの適合度、年齢による合計点数を基に順位付けは行われますが、HLA0ミスマッチの点数自体を増点することにより、0ミスマッチの方々の優先を行うという方法です。これを運用するに当たっては、何点の増点を行うのかという問題がありますので、そちらについても議論をする必要があるかと考えております。

 以上2つの案についてお示ししたところですが、現行の基準の優先順位の決定項目であるHLAの適合度について、変更を要する必要があるかどうかということについて、先生方に御議論いただければと思います。事務局からは以上です。

○松尾班長 ただいまの事務局からの説明について、まず資料についての御質問、御意見はありますか。データとして分からないところはありませんか。よろしいですね。それでは御意見を頂きたいと思いますが、どなたからでも結構です。いかがでしょうか。資料23ページ、4ページ、5ページに、議論の論点といいますか、ポイントが出ておりますので、これを御覧になっていただいて、あるいはこれ以外の論点でも結構ですが、御自由に御発言いただければと思います。いかがでしょうか。

○両角班長代理 レシピエント配分案を変更する際の考え方の基本になるのですが、従来の考え方はポイント制度です。4つの因子をポイント化して、トータル点で評価をすることが基本でした。そうすると、搬送時間、HLA適合度、待機日数、未成年というこの4つの項目に関して、ポイント制度が、従来の概念が壊れるような構造の変革は難しいと思います。基本的にポイント制度の大枠の構造を変えない形で配分案の見直しをやれないかと思います。見直しが目指すものは、登録した方が非現実的な年数がたたないと移植ができないという現状を打破できる結果につながるようなポイントの与え方を工夫するのが現実的だと思います。今お示しいただいた、0ミスマッチを最優先とする場合、これはポイント制度に乗せられるかどうかが課題です。二つ目のご提案はポイント制度に簡単に乗ると思います。そういった議論をしたほうが現実的かと思うのですけれども。

○相川班員 0ミスマッチに関しては、16ミスマッチよりも生着率が良いということが分かっています。全体の06のものを見ると、0ミスマッチ、3ミスマッチ、2ミスマッチ、1ミスマッチ、4ミスマッチという生着率の順番が、かなり接近していて、余り差がないと判断します。ポイント制だけでやると、もし0ミスマッチの方に当たらないと、恐らく1ミスマッチ、2ミスマッチの方に行くことになってしまって、生着率にあまり差が付かなくなってしまうのではないかというように危惧を覚えるのです。だから、私の意見としては、最初の0ミスマッチに優先権を与えるほうがいいように思います。そうでないと、この生着率の差がきちんと反映しない形になってしまうと思うのですけれども。

○西班員 両角先生、相川先生の御意見、どちらも一理あるのですが、0ミスマッチを最優先すると、左側の4ページのシステムですと大体今19で、0ミスマッチの人が1としたら、16ミスマッチの人が9の割合ですので、なかなか同一地域の方が当たらない可能性があると、広域搬送システムがきちっとしていないと駄目なのですが、この間、相川先生が御指摘になったように、今、臓器搬送にも大きな課題があるということなので、もし左側のほうを採用するとしたら、全国の地域をまたいで、全て6ブロックまたいでの広域搬送システムをしっかり作り上げるしかないと思います。そういう面では、確かにせっかくの0ミスマッチの利点をいかすことができなくなる5ページのほうは、現実的ではあるのですが、鍵は広域に全部のブロックをまたいで搬送できる、きちっとしたシステムをこの際作るかどうかということも関わってくるのではないかと思います。

○両角班長代理 提供される条件として全例が心停死下ではなくて脳死下に移行した場合には、広域搬送の問題は多分問題ないと思います。地域点が導入されたときの経緯を考えますと、心臓死下の臓器提供においては、虚血時間が長時間の人たちが極めて生着成績が悪かったということを背景に配分規則が変わったという事実があります。現状で60%が脳死下で40%は心停死下ということを考えると、虚血時間の長短の背景を無視していいかということも吟味されないといけないかという気がします。

○湯沢班員 技術的なことになるのですが、広域搬送してでも0ミスマッチを優先するかというときに、数から言うと私自身は臨床家としては、やはり成績を考えると0ミスマッチを最優先にしたいと思うのですが、そのときにもう1つ問題になるのがクロスマッチの問題で、現在ですと各ブロックごとに置かれている血清でクロスマッチをしているわけです。ただ、理論的に考えますと、私も組織適合性学会で仕事をしていることから言えば、0ミスマッチならクロスマッチは要らないことになるのですが、そうすると広域搬送も必ずしも不可能ではないというか、広域的なクロスマッチが要らないことになりますので、比較的容易に搬送というか、対応はできるのではないかと思ってはいます。HLAタイピングの精度が最終的に問われることになりますが、それが確認されさえすれば、クロスマッチなしでの移植は可能になるので、比較的容易なのではないかと思ってはいます。

○松尾班長 難しいところですけれどもね。

○水口班員 そうですね。私は西日本ブロックですが、ブロック内での搬送といっても、中国・四国などだと航空機を使えないような所があり、ブロック内でも時間がかかりますから、離れていても航空機を使ったほうが早いというのもあります。搬送は、ブロック内とか全国は関係なく同じような条件、時間的にはそう変わらないのではないかと思うのですけれども。

○服部班員 前回欠席しまして、議論内容を今理解しているところです。0ミスマッチを優先するというのは、場合によっては10何年も待たずにチャンスがあることを想定して0ミスマッチ最優先案を取り上げているということで、よろしいでしょうか。

○湯沢班員 0ミスマッチの場合には最優先とした最初の左側の案は、そういうことから生まれたことだと。

○服部班員 0ミスマッチ例の移植成績がいいとの結果を背景にして、0ミスマッチであれば10年よりも早くチャンスが巡ってくるかもしれないということですね。確認の意味でお尋ねしました。

○湯沢班員 0ミスマッチを最優先の提案をさせていただいた者の1人としては、とにかく今、待機している患者さんを年に1回更新させるときに、何の希望も持てないのです。例えば登録したからといって、14年、15年先ですよというよりは、このパーセンテージでいうと1割ぐらいということになりますが、それで最優先で提供される可能性があるのだったら、大いに夢が持てることになるのではないかという気持ちがあります。

○水口班員 私も同じ意見ですね。だから、そこで搬送ということはそんなに問題にならないのではないかと思います。

○松尾班長 これは生着率を着目点の1つにしているのです。もう一方で、待機日数はどちらかというと順番とか優先権みたいな考え方で、10年以上も待って、要するに待機日数と生着率との関係はどうなっているのですか。やはり長く待っているほど生着率は悪くなりますか。どうなのですか。

○湯沢班員 以前この班会議のときに出てきたのですが、ネットワークで登録を取りますと、待機年数を13年未満と13年以上で切ったときに一番差が出るのです。要するに13年以前の人が13年以降の人に比べると、一番有意に成績が良かったと。その差が一番出るのが13年です。そうすると、実際上はほとんど全ての人が成績が悪い状態で移植されていることになってしまって、臓器提供の意思がいかされにくい形になっているのが確かだと思います。ですから、成績を考えるのだったら、待機年数が13年以下の人に移植したほうがいいということになってしまうのです。前の班会議のとき、確かネットワークからそういう統計が出たと思います。

○松尾班長 13年というと4,500日か4,600日か、そんなものですかね。

○湯沢班員 そうですね。4,000何百ですね。

○松尾班長 だから、全事例で4,300日ですから、13年というと大体平均に近いところに来るわけですね。ということで、HLAのデータを見た限りは、少なくとも0とそれ以外とは、それ以外の1以降のデータは全く差がないということで、0とそれ以外を分けることについては異存のないところです。その重み付けをどのようにするかということで、少なくとも今ポイント制でやっている、1ミスマッチ、2ミスマッチ、ずっと段階的に点数が細かく付いているのですが、これは余り意味がないということですね。

○相川班員 この先のデータを見ますと、HLAミスマッチの有意差がある、ないを見ますと、DRに関しても、クラス1のABに関しては、全て合っているものとないものとは有意差が出ていますが、ほかのものはほとんど関係なくなっていて、余り点数の意味付けと合致しないような形になってしまっていますね。今、免疫抑制剤が非常に良くなっていますので、そういう差だけではそれほど生着率に影響しなくなっているのではないかと。ただ、HLAが全て合っていると、かなり条件がそろってしまいますので、それはほかと比較して成績が良いということが出るだけで、あとは点数の重み付けというのは、今はなかなか意味付けが難しくなってきているのではないかと思います。

○松尾班長 そうですね。それと、率直な御意見を伺いたいのですが、確かに0とそれ以外では、統計的に有意差はあるのです。有意差はあるのですが、この差はどの程度のものなのか。要するに重み付けするときに差が出る程度で、例えば新たに点数を付けるといったときに、どの程度付けるのか。これはどうですか。これは言うのはなかなか難しいと思います。

○両角班長代理 これはなかなか難しい問題です。統計的有意差があるといっても、臨床的にどのぐらいの違いかという明確回答にはならないものですから。ただ、理論的に考えると、例えばクラス2のミスマッチがあった場合には、腎移植後経過の中で、クラス2に対する抗ドナー抗体が出現するリスクになる免疫学的バックグラウンドを持つわけです。長期経過後に移植腎機能が失われる人の多くが慢性抗体関連型拒絶反応が原因であるということになります。そういったことを考えると、ここに現れている差以上に、特にクラス2のミスマッチがあることはマイナスだとは思いますので、そういう意味では0ミスマッチに優先権があるのは非常に理解しやすいと思います。

○相川班員 細かく言うと、今、両角先生のお話がありましたが、クラス2の抗体ができると慢性の抗体関連型拒絶反応になり、移植腎機能が失われます。斡旋時に調べないDQのほうがDRより多く抗体ができることが知られています。だから、その辺のことが反映できない状態になっています。

○両角班長代理 今のHLA検査にはHLA-DRしか入っていません。慢性抗体関連型拒絶反応にDPは関わっていないようです。DRDQは抗体関連型拒絶反応の免疫学的背景で重要になっています。それを考えると今HLA検査として登録されている6つのHLAのクラス1、クラス2の項目に関して、100%必要十分な検査が行われているのではないということになります。ですから、湯沢さんが先ほどおっしゃられたクロスマッチは要らないというのは無茶でして、クロスマッチはやはりなくならないですね。

○松尾班長 そうしますと、今、御意見を大体伺いますと、現行のままでいっていいという先生はいらっしゃらなそうだということなのです。そのときに、HLA適合度の優先度に関して、0ミスマッチ、これはイメージ図が4ページにあるように、これを最優先してここに持ってくると、多分、従来よりは順番がガラッと変わるだろうと思いますがいかがですか。

○湯沢班員 そうですね。1割ぐらいの人は、これで待機年数に関わりなく選択される可能性が出てくるわけです。20年間で約1割の人が0ミスマッチになっていますね。

○松尾班長 もう1つの考え方は、HLA適合度の0ミスマッチの、これは最優先ではなくて、点数にある程度重み付けをするという考え方があるのですが、具体的にどうするかは別にして、多分このどちらか2つになると思うのです。その辺りのところはいかがでしょうか。もし今日御意見がある程度一致すれば、そういう方向で具体的にやって、最終的にはここで全部決まるわけではありませんが、その影響などもきちんと評価をして、最終的に決めないといけないということになるのですが、方向性としては今言った2つの方向性のいずれにすればよろしいかということです。HLA0ミスマッチを重視するというのは、今の御意見で皆さん賛成だし、検査をする意味が出てくるということです。

○服部班員 今まで搬送時間、HLA適合度、待機日数、そして年齢という4つのポイントを勘案しながらやってきたという経緯があるので、0ミスマッチを最優先するよりは、0ミスマッチに関してのみ重み付けをするほうが、大きな混乱がなくてよいように思います。

○湯沢班員 この4つの項目について、前も作業班のときに、どうしても待機年数が増えてしまうために、待機年数のポイントを、例えばLogの式を変えていくと、どれだけ待機年数のポイントが下がって、短期間の人も選ばれるかというシミュレーションをさんざんさせていただいたのです。そうすると、実は待機年数がほぼ0にならない限り、ほかの待機年数以外のポイントが階段状になりますから、階段の中に待機年数のポイントがずっと全部入ってしまって、待機年数のポイントを例えば100分の1にしようが、年が10年を超えた人のポイントを100分の1にしようが、何分の1にしようが、ほかのが階段上にいるから、結局は長い人が優先されてしまうのですね。そうすると、階段上のたった1点、2点の中に、どのぐらい待機年数が優先されないで短い人かといっても、10年を経ない限りは点数はLogでいくので、結論から言うと、よほど待機年数を今までの仕組みを階段状から変えない限りは、結局は待機年数が長い人が優先させられてしまってどうしようもならないと。1ポイントの中に、例えば待機年数10年以上の人がずらっと入ってしまいますから、根本的なこの構造を変えない限り、10何年の人が絶対優先されてしまうことになって、10何年という待機年数が全然変わらなかったと。だから、その根本的な構造を変えない限りは、もう10何年のままで行き続けることになってしまうと思っています。

○松尾班長 待機日数についても先ほど13年という話があったのですが、今の先生の御意見は待機日数そのもの、考え方を例えばポイント制にするにしても、もう1回考え直したほうがいいということですか。

○湯沢班員 そうすれば、また別の選択基準にはなっていくと思いますが、今のような式で待機年数のポイントを付けている以上、4つのポイントで選んでも長い人が第1優先になってしまって、何も解決されないことになると思うのです。

○松尾班長 要するに待機日数の重み付けを低くして、HLAのマッチの重み付けを高くすると。そうすると改善されるということですね。

○湯沢班員 0ミスマッチの人をよほど高点数に付けるということなどがない限りは、ポイントシステムで0ミスマッチのポイントを高くしても根本的な解決にはならない。

○服部班員 前回の改定のときに、16歳から20歳未満には12点加点していただいて、それで随分チャンスが広がりましたので、その場合には思い切ってポイントを上げないといけないかもしれません。

○松尾班長 だから、その考え方が今の0ミスマッチを増点するということになります。これをどの程度やるかということです。

○湯沢班員 だから、それを1点、2点ではなくて、相当大幅にやらない限りは、待機年数のポイントを超えるぐらいにならないということです。

○松尾班長 これを全部、相対的に変えると、テクニカルには難しい。片方を下げて、片一方を上げるというのはなかなか難しい。

○湯沢班員 例えば、今、服部先生からお話がありました小児に12点とか16点というのは、実際にはこのポイント制から言うと、待機年数の一番多い14ポイントを超えるのです。そうでもしない限りは0ミスマッチが。そうすると、結局先ほどのポイントを付けるといっても、左側と同じことになってしまうわけですね。

○両角班長代理 方法論として、いろいろな考え方があると思うのですが、かつて、バランスを変えたいということで、HLAの重しを少し高くして、1.15倍にしたことがありましたね。同じような捉え方で、例えば待機日数に関しては、これは余りにも評価が重すぎるということであれば、0.8掛けをして下げてしまって、0ミスマッチの人だけは14点ではなくて、ここだけ20点にするとか工夫できると思います。基本はポイント制度であるというところは変えないとするのか、0ミスマッチはポイント制度から離れて、とにかくそこだけ配分される可能性を高くするように持っていってしまうのかでは従来からの考え方の基本が変わります。ポイント制度を変えるという話に関してはもう少し議論が要る話になりますので、やり方としてはポイント制度を残す形で工夫をする、というのはほかの因子はポイント制度で評価されるわけですから、待機日数の評価を下げるとか、0ミスマッチだけは非常に高いポイントを与えるといった工夫で処理をするのが現実的かという気がします。

○水口班員 結果的には0ミスマッチの方へ大部分が移植されるというポイント付けですよね。

○湯沢班員 そうですね。例えば14点付けることになりますと、待機年数のポイントを超えますから、待機年数0でも0ミスマッチの方には提供されると思います。

○両角班長代理 実際に何点がいいか分からないのですが、例えば0ミスマッチだけは20点にするとかいうポイントでもいいし、プラス10点でもいいです。待機に関して、長期待機者は皆さん近似したポイントになっていますので、それが重すぎるなら係数をかけて下げるかですね。

○湯沢班員 それはシミュレーションできることなので、してみる手はあります。

○松尾班長 そうですね。今、両角先生がおっしゃったことは非常にリーズナブルだと思うのです。基本的にはポイント制は残すけれども、重み付けを変えると。そのときに、どういう重み付けをしたら、どういう結果になるかとシミュレーションができますから、シミュレーションした上で、もう1つ大事なことは、今までこういうのでやってきたので、患者さんはいろいろな思いがあるので、それを勘案した上で落ち着くべきところに落ち着かせて、でないと、いきなりバッと変えると、楽しみに待っていた人が全部機会を失うと。ちょっと言い方が悪いのですが、そういうようだと。

○服部班員 私も全く同感で、前回の基準改正の際に、長く待っている患者さんから直接ご意見をお聞きする機会がありましたが、患者さんの心情を考慮すると、両角先生がおっしゃった待機のところを0.8掛けするというのはやめたほうがいいかと思います。それはそのままにしておいて、0ミスマッチだけ増点するほうが宜しいかと思います。

○西班員 大雑把な基準を見ていきますと、今の現状として10年以上の人が多いので、待機日数がどうしても10点以上に。0ミスマッチを更に10点以上、14点から24点とか25点とか、場合によっては30点ぐらいとか、一気にほかを離してあげれば優先されると思います。

○湯沢班員 そこまでいかなくても、小児で12点、16点加算したことが随分、優先的に小児に提供になっているのです。多分そのぐらいのポイントでいいのではないかと思うのです。

○西班員 そこはシミュレーションして。

○相川班員 ただ、問題なのは先ほど言ったように0ミスマッチの方に行かないと、ほとんどが1ミスマッチの方に順位で行かれてしまうと、01ミスマッチは差があるわけですから、理論上おかしくなってしまう。

○西班員 やはりジャンプアップを10点以上ぐらいしないと駄目だと思います。

○松尾班長 ですから、このデータを見ると、0とそれ以外はこういう累進制でなくてちゃんとメリハリをつける。これはデータからも明らかですからね。

○相川班員 だから、シミュレーションをしていただいて、0ミスマッチの方がほとんどになるというような条件で収めないと、半分ぐらいは1ミスマッチとか2ミスマッチが入ってしまうと、なかなか難しいと思います。

○松尾班長 それでは、一応ポイント制は残す形で、HLA0ミスマッチについて増点するという方向性で意見が一致したかと思います。今後これを運用していく上で、増点をどのような規模にして、その結果どうなるのかシミュレーションも行った上で、最終的に決めるということで、事務局にはそのような対処方針で今後少し作業していただくということで、よろしいですか。

○田中補佐 分かりました。

○松尾班長 2番目の議題というか、ポイントに行きたいと思いますが、「Age-match制度の導入について」です。これについても、最初に事務局からこの前、宿題になりました検討事項についての説明とデータ等をお願いしたいと思います。

○田中補佐 それでは続いて2議題目です。Age-match制度の導入について御説明いたします。資料は6ページです。小児のドナーから腎臓の提供があった場合は、小児のレシピエントに腎臓が提供されるよう優先度を上げてはどうかということです。現状はドナーが小児の場合、ドナー家族の心情として子供の臓器は子供に提供したいという感情があるということをお聞きしております。また、現行のレシピエント選択基準の取扱いとしても、未成年者に関しては16歳未満については14点を加算、16歳以上20歳未満については12点を加算することとなっております。本邦における小児腎臓提供(16歳未満)ですが、参考資料の1112スライド目を御覧いただくと、年齢分布等が載っております。レシピエントに関しては年齢分布を見ると、1014歳という年齢階層が多くなっておりますが、レシピエントの年齢全体を見ると、070歳と幅広い年代の方のレシピエントに16歳未満の腎臓が移植されております。小児ドナーから高齢レシピエントへの移植が行われることが少なくないというデータになっているかと思います。

9スライド目ですが、その他の臓器の移植はほとんどの小児ドナーの場合は若年のレシピエントに臓器提供がされることが多くなっておりますが、腎臓に関しては高齢ドナーに多く移植されているような状況です。現在の腎臓移植待機者の平均日数は先ほど御覧いただいたように、5スライド目にお示ししておりますが、未成年者は約2.5年前後の平均待機期間に対し、成人に関しては約12.3年と、10年ほど未成人と成人とでは待機期間が違うという結果が現状です。

 ここからは本邦の移植成績について見ていくことにいたします。移植成績については、2960スライド目に移植成績を示しております。まず、ドナーの年齢に着目すると、ドナーの年齢による移植後の生着率・生存率に関しては、有意差は認められませんでした。ただしドナーの年齢が高齢(60歳以上)の場合では、その他の年齢層のドナーの場合と比べ生存率・生着率ともに低い傾向がありました。

 続いてレシピエントの年齢に着目します。レシピエントの年齢に関しては、レシピエントが高齢(60歳以上)の場合、ドナーの年齢にかかわらず、生着率・生存率が明らかに悪いことが示されております。こちらはスライドの51525960に示されているデータです。海外の状況については、後ほど相川委員に御発表していただく予定です。

 以上の現状を踏まえた上での検討事項は、本邦の移植成績や平均待機期間を考慮しても、小児レシピエントに対して現行の基準以上の加算をする必要性があるか。また小児の優先をした場合に、長期待機者、特に高齢者の納得が得られる説明が可能かどうかについて御検討いただきたいと思います。

2つ目として、高齢レシピエントの生着率は60歳未満のレシピエントに比べ、有意差をもって悪いことが示されております。高齢レシピエントに小児ドナーの腎臓を提供することは、医学的・社会的に妥当と言えるかどうかについても、御議論いただければと思います。また最後に、小児ドナーから小児レシピエントの移植に関しては、社会的にも強い要望があることを踏まえた上で、今後の小児ドナーの臓器提供の在り方や小児レシピエントの取扱いについてどのように考えるかについて御議論いただければと思います。もしこの小児ドナーから小児レシピエントへの優先がされることになると、適応となるドナーとレシピエントとの年齢についても考える必要が出てくるかと思いますので、そちらについても併せて御議論いただければと思います。事務局からは以上です。

○松尾班長 これも非常に微妙、難しい問題です。どなたからでも結構ですので、御意見をお願いします。既にある程度未成年と成年ではかなり待機期間上は差があるのですけれども、更にこれを強化することも含めてです。

○田中補佐 相川班員から先ほど海外の状況ということでありました参考資料3の御説明を頂きたいと思いますが、よろしいでしょうか。

○松尾班長 よろしくお願いします。

○相川班員 参考資料32枚組のデータです。元データはこちらにまとめられている補足に入っております。これはNAPRTCS(North America Pediatric Renal Trials and Collaborative Studies)2010年のレポートです。これが一番新しい、小児腎移植患者に関してのレポートです。参考資料1枚目はどういう背景になっているのかが出ています。EXHIBIT1.4では、年齢別にNの数が書いてあります。その下にエイジグループで0125612131718以上。これで20歳未満で切っていることになっております。

1枚目の裏側、これは献腎ドナーで、いわゆる献腎移植、死体腎移植でドナーの年齢によって小児の20歳未満の移植の成績がどうなっているかを出したものです。左側にDonor  Ageと書いてあります。このグラフに着目していただきたいと思います。それをエクスポジャーしたのがこのページ3になります。ページ2の裏側のものを大きくしたものですが、この2歳未満の献腎ドナーからの小児への腎移植、死体腎移植の場合は、ほかの年齢と比べて明らかに生着率が低下していることが分かります。術後早期の落ち込みがかなりひどくて、ほかのグループとは非常に差がついてしまっている。最初の時点、1年未満で非常に差がついてしまっている傾向が認められます。

 もう1つは、50歳以上のドナーから提供された小児の死体腎移植の成績が黄色の線です。これは最初の段階ではそれほど成績の差は出ていないのですけれども、4年以上、特に5年、7年になると217歳、そして1849歳に比べて明らかに低下してくる。つまり50歳以上からの死体腎移植では長期にわたる成績が悪くなっています。

 もう1つは、2歳未満のドナーからは短期に成績が悪くなってしまう。そういう結果だと思うのです。この解釈は、2歳未満の小児の腎臓を使った小児への腎移植は手術が技術的に非常に難しい点があるのが1つ。もう1つは、小児のドナー腎は血栓を作りやすいという事実があります。もう1つは、小児のレシピエント自身も実は低年齢においては血栓を作りやすいというように言われていますので、その要素が噛み合って2歳未満の幼いお子さんからの子供への死体腎移植は余り成績が良くないということになっております。

 もう1つは黄色い線の50歳以上の方です。これは高年齢になるとレシピエントの生着期間は短くなるというのは、どこの国のデータでもそうなっておりますので、たとえそれを子供にやろうが大人にやろうが、レシピエントが子供であろうが大人であろうが、長期において50歳以上の腎臓の生着率は低くなる。それでこういう結果になっているのだと考えます。だから今の意見としては、小児の亡くなった方からの献腎移植は小児へとなっておりますが、2歳未満の場合には、場合によってはこれほど成績が悪いわけですから、大人に移植をしたほうが成績が良いという結果になってしまいます。ここの点だけは注意が必要だと思います。

 あとは、2歳以上の場合は有意差は出ておりませんので、2歳以上の腎臓の場合には、子供に移植しても非常に良い成績が保てるという結果でございます。以上です。

○松尾班長 これは海外の成績で、本邦ではデータが少なくなかなか難しいのですね。

○相川班員 6歳未満の子供の腎臓の提供自体が今まで3例ですか、非常に少ない状況になっておりますので、このNAPRTCSのデータを見ると、Deceased Donorだけで4,971例ということで、結構多い症例なので、やはりこれが一番確かなデータだと思っています。これは服部先生が詳しいです。

○水口班員 相川先生、質問ですが、2歳以下の腎臓は、これは成人に移植すれば成績としては良いというのは、そのようなデータはあるのですか。

○相川班員 あります。少なくともこの2歳未満の子供にやるよりは、小児にやるよりは。

○水口班員 成人のほうが良いですか。

○相川班員 はい。

○水口班員 ありがとうございます。

○松尾班長 議論としては確かに2歳で切れるのですが、これは我が国の事例としては極めてレアケースということになりますよね。

○相川班員 そうですね。

○松尾班長 ですからそこは置いておいて、議論を進めていただければと思うのですが、議論のポイントは資料2で先ほど説明されたとおりです。(1)(3)7ページにありますが、これに従って議論していただければと思います。いかがでしょうか。小児レシピエントに対して、現行基準以上の加算をする必要があるかということです。納得が得られるかどうかというのは、ちょっと別問題にいたしまして、要するに高齢レシピエント、60歳以上ですが、これは生着率が悪いということですけれども、この方々に小児ドナーの腎臓を提供することは、この医学的に妥当かと社会的に妥当かというのは、これはずいぶん意味が違うのですが。

○水口班員 医学的成績もありますが、やはり心情としてですね。

○松尾班長 これはこの前、ずいぶん議論していただきました。

○水口班員 そうだと思いますけれども。

○松尾班長 これ1つ取っても議論は喧々諤々の非常に大きな問題で、あと15分でできるかという問題がありますが、是非、活発な御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○相川班員 もう1つ先ほどの意見に追加してもよろしいでしょうか。スライドの49番です。ドナーの30歳未満で、レシピエント30歳以上と30歳未満の生存率を比較しているのですが、これは生着率ではなくて生存率ですが、60歳のデータを除けば、これは差が出ているのです。生存率に関しては、やはり30歳未満のドナーの腎臓は、30歳未満の方に移植したほうが生存率は高いというデータが出ています。実はエイジマッチングというのは、もともとはどちらかと言うと、生存率からきた話でもあるのですね。というのは高齢者の方は若者に比べて生存期間が短いのは当り前ですので、その短い生存期間を十分な腎機能を持って生着できればいいという考え方で、高齢者の腎臓は高齢者にということが始まったのが原点ですから、全てが生着率で考慮することではなくて、実は生存率で考えていかなくてはいけない部分も非常に多々あると私は思います。

 実はアメリカでエイジマッチングをやったのはつい最近なのですけれども、小児は35歳未満の腎臓を使わなくてはいけないともうルール化してしまっていますので、その根拠もある意味では生存率・生着率、両方を含めたものですけれども、生着率が差がないからといって、そのままにしてはいけないと私は考えます。

○松尾班長 いかがですか。

○両角班長代理 49番のスライドは、正直言うと読み方は難しいですよね。この結果から強引に持っていくというのは、なかなか難しいというのが正直な印象です。

○相川班員 でも、どの年齢で、例えばアメリカのように場合によっては若年の腎臓はなるべく小児へということであれば、どこかで年齢は区切らなければいけないわけです。

○両角班長代理 小児からの提供腎を小児へというのは、これはとても分かりやすいです。問題は何歳の人をですね、というところの根拠がなかなか難しいというのが本音です。

○松尾班長 これも先ほどの話と一緒で、統計的にはこうやって細かくやっていくと30歳で、一応統計的には切れてくる。そういう話なのですよね。

○相川班員 そういう意味では差が出てないのです。実際、小児のドナーから小児の移植の患者さんが、生存率・生着率がいいというデータは、ここには載っていないですから。ただ、同等だということが悪いということではないということは分かっているのですけれども。小児へ移植してもですね。

○服部班員 今回はここにも書かれているように、富山の事例がやはり社会的にはインパクトが大きかったですよね。学生にも聞かれましたが、どうして子供の腎臓が大人に行ってしまうのかと。シンプルに小児からの提供は小児へとの考えがいいのかなと個人的には思います。

○西班員 この間、服部先生がおっしゃったことを一応代弁をさせていただいたのですが、移行医療を考えても、移行期の小児の方というのは、幅広く16歳というところで区切られていますけれども、20代、30代前半ぐらいまで、移行期の方ですが、やはり移植が一番その方とその後のQOLあるいは社会生活や仕事の面でも高いということで、やはり医学的な面ではなくて、社会的な面では優先させてあげたい。それから今、高齢社会になっていて若者が減りますので、高齢社会を支えるためにも元気な若者が必要だと。そういうことで御理解いただけるように待機している方に説明をする。小児の場合は、若い方の腎臓は小児というか、若い方に行くことを認めてもらう。そういうことは理解は頂けるのではないかと思いますが。

○両角班長代理 今回の議案には上がっていないのですが、前回に出てきた話で、20歳を超した段階で小児加算ポイントがゼロになるという問題ですよね。20歳からポイントをテーパーして、ある年齢までは小児ポイントを持たせてあげるという形を導入してあげたほうが、より具体的かなと思うのです。そういったことも少し議論できるといいかなと思います。

○服部班員 西先生や両角先生のご意見の通りです。前回の改正で、未成年というくくりで16歳から20歳未満には加点をしていただきましたが、20歳を過ぎると全くノーチャンスになってしまいます。そういう子供がたくさんいるのです。そのような子たちはこれから献腎移植のチャンスに恵まれるまでの十数年間透析をしなくてはならないとなると、もうほとんどが社会復帰はできないです。企業への就職も、同じ腎不全でも腎移植をしていればほとんどうまく企業に入っていきますが、透析だとなかなか企業は受け入れてくれないので、先ほど両角先生がおっしゃったような20歳を超えたら、ある年齢までちょっとテーパリングしていただけると、社会復帰という点では非常に大きいと思います。

○水口班員 私も大賛成です。やはり非常に長期、30年、35年という患者さんを診ていると、20歳、30歳ぐらいから透析を始めて、50歳、60歳になってくると非常に悲惨ですから、そういった方はやはり救っていくようなシステムというのは大事だと思います。

○松尾班長 ほかに御意見はございますか。そうしましたらこの課題についても現状のままでいいという先生は1人もいらっしゃらなくて、基本的には変更するのですが、基本的な概念としては子供から子供へというのが基本的なコンセンサスと思いますが、そのときにレシピエントの考え方については、要するに小児をどのように捉えるか。そこがポイントだと思うのですが、1つの考え方は両角先生はじめ何人かの先生が言われたように、ある程度テーパリングをする。もう1つの考え方は、もうある程度年齢を切ってしまっていくという考え方もあると思います。その辺りはどうですか。

○服部班員 小児の別の角度からの捉え方として、思春期と若年成人を合わせたAYA(adolescent and young adult)世代という言葉があります。現在、国際的にも国内的にもこのAYA世代の医療をどのようにすべきか、どうすれば自立した社会人にできるかということが大きな関心事になっています。世界的には1624歳ぐらいまでをAYA世代と呼んでいますので、できれば24歳ぐらいの年齢層までを含めてサポートしていただけると、小児科医としては大変有難いです。

○松尾班長 もう1つは相川先生がおっしゃったように、生存率は先ほど出たように、なかなか微妙なところはあるのですが、1つの根拠としては30歳というのもあるということなのですが、たぶん今日おそらくこれ以上の議論は進まないと思いますので、先ほどの基本的なコンセプトは私が申し上げたとおりで、変えていく、子供の腎臓は小児と言わずに若い人にと。その若い人に行くのですが、年齢も含めてどういう仕組みにするかについては、引き続き検討事項にさせていただくことでよろしいですか。その辺りについてはもう少し、後でまた個別に先生方の御意見を事務局からお伺いします。御意見と、それからもし根拠になるような資料などがあればお願いしたいと思います。先ほどの問題もそうですが、これもそうですが、やはり社会的な影響や、待っていらっしゃる方、特に長期待機者の方々がどのように思われるか。あるいは我々がきちんと説明ができるかも最終的には大きな問題になると思います。数字だけでバシバシ切ってしまうと、いろいろ反発も起きるかと思います。それはまた総合的に最終的な段階で議論をしていきたいと思います。事務局はそういうことでよろしいですか

○田中補佐 はい、そのように。

○松尾班長 ではそういうことにいたします。続いて2腎同時移植の規定について議論をしていただきたいと思います。事務局から説明をお願いします。

○田中補佐 それでは、3議題目の2腎同時移植についての規定について御説明いたします。腎機能が低く1腎であると、移植腎機能が不十分であると判断される場合、2腎を同時に移植することを可能にすることについては、前回の作業班において合意されたところです。本件を運用する際には、2腎を移植する際の具体的な判断基準を定めることが必要ではないかという御意見を頂いておりました。

 まず、現状について御説明させていただきますと、選択基準上は1人のレシピエントに対して1腎を提供することを想定しており、1人のレシピエントに対する2腎提供については、現在のところ明文化はされていない状況です。

 また、心停止下での腎臓移植に関しては、メディカルコンサルタント及び移植医、提供医の判断に基づいて、現在においても2腎同時移植は行われているところで、現在までに4事例、脳死下が1例、心停止下が3例の2腎同時移植が行われております。

 本邦で行われた2腎同時移植については、全て小児ドナーから成人レシピエントへの移植でした。また、いずれの事例においても、移植後の腎機能は安定しているとのことです。よって、本邦での2腎同時移植においては、低腎機能ドナーから1レシピエントへの腎移植は行われていないということでした。

 また、先ほどの参考資料16174では、本邦の腎移植における腎移植ドナーの入院時の血清クレアチニン値と、移植時血清クレアチニン値を示しております。こちらを見ますと、入院時の血清クレアチニンも最終クレアチニンも、術後の生存率・生着率には影響を認められないというデータが出ております。また、2腎同時移植の詳細な検討については、後ほど西委員より御発表いただくこととしておりますので、よろしくお願いいたします。

 ここで事務局より、以上を踏まえた本件の現状に対する検討ポイントを御説明いたします。9ページです。1つ目としましては、2腎同時移植を可とする場合、体格の小さい小児ドナーからの2腎移植及び、低腎機能ドナーからの2腎移植、いずれに関しても可能とするかどうかということについて御議論いただければと思います。

 また、今の上記を運用する場合には、メディカルコンサルタント及び移植医、提供医による一致した医学的判断により、2腎を移植することを可能としてよいか、若しくは2腎を移植する際の具体的な判断基準を定めるかということについて御議論いただければと考えております。事務局からは以上です。

○松尾班長 それでは、西班員から参考資料2を提供いただいておりますので、この説明をお願いします。

○西班員 今、御説明があったように、臓器移植ネットワークのほうから、田中先生の御尽力もありまして、2腎同時移植のケースが過去にあったかどうかを情報提供いただくことができまして、臓器移植ネットワークのほうからは4例ありますということで返事がありました。同時に、日本臨床腎移植学会の評議委員の方へアンケートを行いまして、実際に経験があるかどうかということをお聞きするような形で情報収集させていただきました。

 情報が時間的に後から入ってきたものもあって、最終的に、実は、臓器移植ネットワークから4例あるというお答えは、恐らく、2012年か2013年までの資料であって、2013年、2014年、2015年の資料まで合わせると、4例ではなくて、実際には5例行われていたようです。ただ、臓器移植ネットワークからの情報を中心にして、一度、4例だということを日本臨床腎移植学会の御協力いただいた先生方に、アンケートの結果として、状況として、この資料2の真ん中辺りですが、小児から成人への2腎同時移植が行われており、ドナーは04歳の方で、全て成人の4060代の方に移植されて、いずれもかなり生着率、成績は良いという結果でした。海外では、成人から成人への2腎同時移植が、特に腎機能の悪いドナーの方から行われている実態があるのですが、恐らく日本では、成人から成人への2腎同時移植は行われていないのだろうと思われます。

 細かいケースのデータですが、次のページで表になっています。本邦の5例の小児から成人への2腎同時移植の具体的なデータです。このデータを見ていただくと、ドナーは0歳代というか1歳未満の方もいらっしゃるのですが、そういう方がドナーとなって、成人の50代、60代の方に移植されても、きちんと生着されているようです。むしろ、初期よりも腎機能がやや良くなっているような経過も見られますので、もしかしたら腎臓の成長というのもあるのでしょうか。

 実はこの5例のケースのうち、case1case5が既に論文化されており、国内の公文のペーパーにケース報告となっております。case1case2のそれぞれの中にコメントが書いてある大事な所を抽出しました。表の下の所に書いてありますが、ドナーの体重が、文献1においては1520kgsingleなのか、2腎同時のen-blockと言いますが、en-blockの形での移植の境目ではないかというコメントがありました。文献2case5に当たるのですが、case5の症例報告では、片腎の重量が70g以上あれば成人への片腎移植の選択ができるが、それ未満であれば、en-blockが進められるのではないかということです。

 結論から言いますと、現状で5例、小児から、しかも6歳未満の方、中には1歳未満の方も含めて、4060代の成人の方に移植されているのですが、実はうまくいっているというか、成功しているようです。

 ちなみに、成人から成人へのケースは、日本では経験がないようです。ただ、海外の文献が幾つかありますので、成人から成人への2腎同時移植の2つの論文を少し、グラフを掲載しておきました。どのくらいの腎機能のドナーの方が2腎同時移植、成人から成人へされているかということなのですが、日本では今、原則、GFRあるいはクレアチニンクリアランスが80以上ということが1つの基準ですが、GFR60ぐらいのドナーの方を移植しているという現状で、平均ですが、GFR20程度落ちている方を移植しているという現状です。そういう方で2腎同時移植した場合は、生着率に関してはsingleで移植した方と大きな差はないということが、この2つの論文には書かれております。以上です。

○松尾班長 ありがとうございました。非常に貴重な症例も含めて資料を提出いただきました。それでは議論をしていただきたいと思います。いかがでしょうか。

○両角班長代理 確認なのですが、これのcase234は本当に脳死なのですか。

○西班員 ネットワークからの回答なので、脳死ということだったと思います。

○両角班長代理 6歳未満の小児の提供という形で報道されているものと、数が実際、合わなくなっています。

○西班員 そうですね。ちょっと個々の資料を今日は持って来なかったのですが、一応、脳死ということで回答いただいたので。必要でしたら、もう一度確認はさせていただきます。

○相川班員 論文化されているのですか。

○西班員 そうですね。あと、論文化された論文も資料が付いております。

○相川班員 それが、これの1と。

○西班員 15です。

○松尾班長 先ほどのディスカッションのポイントで、特に2番目の判断基準などはなかなか難しいところがありますね。要するに、対照がないので。

 もう1つは、これは先ほど年齢の問題が出ましたが、この事例は6歳未満というか、かなり小さい子供の腎臓、いずれもこれは一番若い人で40何歳ということだったので、前提としては、もっと若い人に植えると、当然、腎機能は多分もっと出るという前提でしょうかね。ですから、むしろ、若干年がいった人に行ってもうまくいっているということぐらいでしょうか。若干、まだデータが十分ではなく、判断するのになかなか難しいようなケースですよね。

 どういう御意見でも結構ですので。ただ、これは多分、現場では、どういうふうに判断して、どういうふうに進めるかというのは、今は恐らく、手術や移植をする側の現場の判断ということになっていると思うのですが、ここに何らかの指針、余り厳しい基準ではなくて、指針のようなものがあればよいかと思います。データからいって、厳しい基準は作るのがなかなか難しそうですね。その辺りはいかがでしょうか。

○両角班長代理 相川先生に質問なのですが、小児というより幼児ですよね。乳幼児の提供があった場合に、2腎提供を考えることになると思うのですが、それをen-blockで植える形になりますよね。その場合、年齢で切れるのか、腎臓のサイズ、重さなのか、長径なのか、何かそのようなガイドを示して、例えば60g以下とか、長径が6cm以下などという腎臓に関しては、2腎同時提供が望ましいとか、en-blockでそれを移植する手術を考えるというような形の基準ならば、小児腎移植をたくさんやっていらっしゃるエキスパートとしては納得できる基準に、何となくならないですか。

○相川班員 まず、腎臓のimmatureの幼児では、これは服部先生が詳しいと思うのですが、普通は3か月までは非常にimmatureなので、3か月以内の移植は非常に成績が悪いし、良くないと言われています。

○服部班員 腎機能の発達は、生後2歳から3歳位で成人レベルに達します。また生後2歳から3歳の体重は、12kgから15kgです。ですから、1つの基準は23歳以下のドナーであれば、en-blockがいいというぐらいの基準になるのかなと思いますが。

○相川班員 3か月までのドナーはなかなか難しいということが言えると思います。先生が言ったように、私たちは、大体、長径6cm、やはり6070gというのが、singleでやるか、または、dualでやるかという判断になっていると思います。

○両角班長代理 参考データとして、2歳若しくは3歳未満であって、腎重量が60g以下、若しくは腎長径が6cm以下の場合には2腎同時提供が好ましいなどということであれば、小児に関しては基準ができると思います。問題は大人の腎機能のよくない方の2腎提供の基準を作れるかどうかですよね。

○相川班員 それは非常に難しくて、それは両角先生も前回の会議でコメントされていますが、日本臓器移植ネットワークでも実は先日、東日本であった症例ですが、どうしても2腎でやりたいと。腎機能が悪いのです。入院時の腎機能も悪いし、その後も悪くなっていると。でも結局、ルールがないものですから、1腎の斡旋を優先して行っている間に時間がたち、結局、1腎は廃棄してしまったという結果になりました。移植された1腎はどうなったかといったら、非常によく機能しているのです。だから、なかなか一概には、大人の場合にはそういう基準がないものですから。しかも、このデータを見ても、入院時のクレアチニン、その後のクレアチニンを見ても、予後は変わらないというデータが出ていますので、それでエビデンスを取って判断するというのは、非常に難しいと思います。

○両角班長代理 成人に関しては基準として、腎機能で示すのはまず無理だと思います。もし2腎提供されることがあったとしたら、ネットワークの現在のドナー情報の所に、腎臓の重量を書く所があるのですが、サイズの記載欄がないです。それから、肉眼的な所見、写真がないのです。2腎提供する場合には、少なくともこのフォーマットでちゃんとした情報が残るようなことを摘出医にお願いするとか、何か基準を示していかないと、いつまでたっても変わらないと思います。メディカルコンサルタントの判断で、実際には多分、摘出の先生の御判断になると思うのですが、そういったものをお願いする形で、というぐらいの基準だったら作れるかなと思うのですが。

○松尾班長 それだと、成人の機能低下腎をやる場合に、その機能低下の原因によっても違いますよね。原因によっては、移植した後、良くなることも当然あり得ますよね。

○服部班員 腎臓の重量や大きさというのはどうなのですか。

○両角班長代理 大きさは意味がありますし、重さも意味がありますし、肉眼的な所見も大事だと思うのです。それは多分、非常に熟練された摘出の先生は、これは無理だとか、いけるという判断を、今、していらっしゃると思うのです。メディカルコンサルタントの判断が間違っているとは思わないものですから、そうであれば、2腎提供が望ましいと判断されたデータを列記されれば、それで皆さん判断されるのではないかと思います。

○相川班員 形態や重量で判断するのは簡単だと思うのです。問題はやはり、虚血状態の腎臓で腎機能が低下した場合、本当に機能するのかどうか。その判断が非常に難しいです。そのほうが圧倒的に数は多いと思います。

 ただ、統計上は、やはり例えば尿が48時間出ていなかったものが悪いとか、そういう統計はもちろん出ておりますが、それはもうケース・バイ・ケース。1腎でもそういう統計が出ています。2腎を使うとどうなったかという統計はないと思います。日本では数が少なすぎて、ないと思います。

○服部班員 成人のドナーの場合には、2腎にするかどうかの基準作りは現実的にはかなり難しいのではないですか。

○相川班員 日本臓器移植ネットワークで、実は、非常に悪い条件の腎臓が提供されて、24時間無尿で、ある多くの待機患者がいた移植施設が「この腎臓は使えない。」と判断し、すべて降りてしまったために、かなり順位が下位のほうまで行ったのですが、患者さんがどうしてもやってくれと言う所がありました。その施設は腎臓を移植することを受け入れましたが、48時間ぐらい無尿だった腎臓が本当に大丈夫なのかということで、コンサルテーションがあったのです。私は、場合によっては2腎を使うことも考えなくてはいけないという話をしたのです。結局は1腎で移植をされました。機能しています。ですから難しいのです。

○西班員 でも、それは度胸が要りますね。

○松尾班長 それは、例えば国外などで詳細なデータはないですか。

○服部班員 西先生が調べて、余りそういうものはないと言っていましたよね。

○松尾班長 いや、そうではなくて、例えば1腎だけを使って。

○西班員 1腎を使った人がどうなっているかということですよね。

○松尾班長 腎機能が低下した腎臓を使ってやったときに、どういうシチュエーションでは使わないかという点についていかがですか。

○西班員 それの参考になるかと思うのですが、4ページを見ていただくと、これは2007年の臓器移植データブックですから、今はもっと数があるのだと思いますが、移植されなかった数がそこに載っています。それで見ますと、灌流状態が悪くて移植に至らず、1腎だけ移植したという症例が書いてありますので、こういう数の、状態が悪いけれども1腎だけ移植したというものがありますので、これが2007年ですから、その後もありますから、何例かはきっとあるのだろうと思います。それだけを抽出して調べるということが、これも臓器移植ネットワークの方の協力が必要だと思いますが、可能であれば、データがそろうだろうと思います。

○松尾班長 論理的には、1腎移植した場合に、どういう状態では成績が悪いか。そういうときに、2腎を移植すると、どういう可能性があるか。この2つでしょうね。後者はなかなか難しいのですが。推測になる。

○西班員 日本ではされていないので。

○松尾班長 日本では難しいのですが、外国ではどうですか。

○西班員 外国の例でしかない。

○松尾班長 同じような状況で2腎移植したときに、そのアウトカムはどうなったかというのを、もし分かれば、腎機能低下時の若干の参考にはなるのではないかと思います。

 それから、先ほどの体重の小さい小児ドナーからの2腎移植についても、おおまかな目安は大体作れるのですが、これについても、もう少しデータが必要なのではないかという気がするのです。こういうもののデータは取れますか。日本ではなかなか難しいかもしれないのですが。

○服部班員 小児ドナーの場合どうだったかという報告は、海外からはあるかと思いますが。

○松尾班長 申し訳ないのですが、時間の関係で、やはりこれはもう少しデータが必要かなと思います。この間から、なるべくデータを取って、データに基づいてやろうという話がありますので、小児の場合も、成人の腎機能低下腎の場合も。

○西班員 では次回、小児のen-blockの。

○松尾班長 ちょっと先生のほうで、データを是非、事務局のほうに提供していただいて、状況を教えていただくということでお願いしたいと思います。

○服部班員 小児ドナーのほうは私がやります。西先生は成人の方をお願いします。

○西班員 では、もう少し成人のデータをそろえて、文献的な解析になりますが。

○松尾班長 よろしいでしょうか。

○西班員 あと、ちょっと質問というか、小児のen-blockの場合、腎重量をきれいに量っていらっしゃる症例と、一塊となっているので全体重量と書かれているものがあるのですが、なかなか腎重量というのは量るのは、一塊となっているので難しいような気もするのですが、量れるものなのでしょうか。

○相川班員 最近うちでは全部、腎臓の重量は量っています。生体腎移植の場合でも、やはりこれは清潔に重量を測定しなくてはいけないので多少面倒臭いところがあるのですが、恐らく、一緒にen-blockで摘出したものをそのまま量ったのではないかと思います。プリパレーションして1腎ずつにしてから量るというと、少し手間が掛かりますし。

○両角班長代理 1腎ずつ量るというのは、現実的ではないと思います。

○西班員 そうすると、腎重量で決めるというよりは、やはりドナーの体重。

○相川班員 でも形態が同じであれば、それを2で割って考えればいいわけですから。

○西班員 1つはドナー体重で決めていくという論理も。

○両角班長代理 年齢と体重、年齢と体格。

○西班員 それと、腎重量というのか。

○相川班員 腎臓のサイズですね。

○西班員 むしろ腎臓のサイズですかね。

○両角班長代理 長径が一番信頼できるでしょうか。

○西班員 長径がよろしいのですかね。ではその辺りも、成人にも、重量やサイズなどまで含めた論文があると、次回までに報告させていただきます。

○松尾班長 是非よろしくお願いいたします。

○西班員 それと、訂正ですが、事務局から訂正のほうをお願いします。

○田中補佐 参考資料22ページの、本邦の小児から成人への2腎同時移植例ということで、case1からcase5まで書いておりますが、こちらは、case1は心停止、case2も心停止です。case3が脳死の事例、case4も心停止ということになりますので。

○松尾班長 case4もですか。

○田中補佐 case2case4は心停止ということになりますので、訂正させていただきます。

○西班員 すみません、私が拾ったときに間違えたままで、申し訳ございませんでした。

○松尾班長 では訂正をお願いいたします。これは引き続き、データ、資料を出していただいて議論を続けたいと思います。

 最後に、これはデータに基づいてというより考え方の問題だと思うのですが、移植をした後、腎機能が出なかったというレシピエントの方々、これの取扱いというか、対応をどうするかということで、これはまず、事務局のほうから説明をしていただいて、それから議論をしていただきたいと思います。よろしくお願いします。

○田中補佐 最後に、移植腎機能が無発現腎であったレシピエントへの対応についてです。献腎移植の後、移植腎が機能せず、透析離脱ができなかったレシピエントが、再度移植登録を行う際の待機期間の取扱いをどのようにするかということです。

 現状について御説明します。現状では、献腎移植の後、移植腎が機能せず、再度移植の待機をすることになった患者については、1度移植を受けたため、再度登録する場合の待機期間はゼロからとなります。以前の待機期間を持ち越しすることはできないということになっています。

 また、参考資料1の一番最後のページ、7576のスライドを見ていただきたいのですが、19954月から201312月に腎臓移植を受けたレシピエント3,063例のうち、移植腎機能無発現腎であった事例については、脳死、心停止からの臓器提供を合わせて229例、全体の7.5%ありました。また、移植腎機能無発現腎であった229例のうち、再度の移植登録を経て移植を受けた事例は4事例、心停止下が3例、脳死下が1例でした。再移植までの平均待機日数は、4,160日±475日で、10年以上の待機をされております。

 これらを踏まえての検討ポイントですが、献腎移植後、移植腎が機能せず、透析離脱ができなかったレシピエントが再度移植登録を行う際、待機期間を継続とする扱いを行うことが可能かどうかということについて御議論いただければと思います。また、その場合の基準の設定はどのように考えるかということに関しても御議論いただければと思います。事務局からは以上です。

○松尾班長 それでは御意見をよろしくお願いいたします。これはなかなか難しいのですが。データというよりは、先ほど言いましたが、考え方の問題になります。

1つは、先ほど、一番最初に議論いただいたように、待機日数の重みが若干、大きな影響を与えないかもしれませんが、そういう議論も先ほどしていただきましたが、更にそれに加えて、ゼロか100かではなくて、ある程度優先順位を与えるのかということも含めて御意見を頂きたいと思います。いかがでしょうか。

○両角班長代理 これは本当に根拠も何もなくて、ただ、日本の場合には、特に心停止後の提供例のPrimary nonfunctionの比率が8%と結構高いということを考えると、長く待った、かなりのリスクを冒して手術を受けたが、移植腎機能は発現しなかった。移植を受ける機会があったのだから待機期間がゼロに戻るというのは本当にいいのかなという疑問です。見直しはできないのでしょうかというお話です。科学的な根拠等々全くない話ですので、皆さんが、いや、1度移植を受けたのだから、チャンスがあったからいいじゃないのというご意見であれば現状どおりになります。移植腎機能無発現は極めて例外的な話であるというには、8%は多すぎるのではないかとも思うものですから。

○松尾班長 確かに8%は結構多いですね。

○両角班長代理 多いと思うのです。

○相川班員 私も臓器移植ネットワークの東日本の担当理事をしておりますので、こういうことが起こると、非常に心が痛い思いをいつもするのです。これまでブロックセンターの時代からこれは随分議論がありまして、両角先生が御指摘のように、これだけのリスクと条件を話した上で了承して受けたのだから、ほかの人を考えると受けていないわけだから、そのぐらいのチャンスを上げたのだから、またゼロに戻していいという議論と、それは余りにもひどいじゃないかと。その患者が別に悪いことをしているわけでもないし、薬を勝手に飲まなくなったなどという話ではないですから、もともと条件が悪い腎臓をあっせんしたからこういうふうになったわけで、その人自身の問題ではないと。だから、待機期間をまたその上に12年間も課せられるのはどうかなと。そういう議論がいつも対立して、結論がいつも出ないままになっているのです。ただ、現状どおり、ここ何年間、もう3回か4回ぐらい議論はした覚えがあるのですが、現状のままでという結論にはなっています。

 ただ、やはりこの数字を見ると、私は、非常に多くの患者がこれだけ苦しんで、しかも、1回も透析から抜け出られなくて、また透析に戻った方を、もう1回、12年間待たせるというのは、心情的に非常につらいのです。これが全て、脳死の腎臓で、条件の良い腎臓を我々が提供であっせんしていたら、これは考えなくていいかもしれませんが、これはやはり考えていただいたほうがいいのではないかと、私は思います。

○湯沢班員 実際に候補者が選ばれてきて、その方に連絡するときに、やはりある程度、移植のリスクを話すときに、すごく良い腎臓ですよとかをどこまではっきり言うかという問題がありまして、丸っ切り良いか悪いかを言わないで移植にはなかなか持っていけないところもあります。

 例えば、脳死状態で提供されたら、余り言ってはいけないことですが、お薦めはしませんが良い状態の腎臓が移植できることははっきりしているわけで、一方で、非常に条件の悪い腎臓を移植するときには、やはり、その旨はお伝えしないわけにはいかないわけです。そうすると、その条件が悪い移植のときに、どれだけの患者さんが、今度は拒否されてしまうか。待機年数がゼロになるということになると、やはりそれをどんとん断っていくということになる可能性が出てくると思うのです。

 ですから、移植する者からすれば、ある程度リスクを話して移植というふうにしたときに、やはり、それでも移植していただいた人について、Primary nonfunctionだったからゼロになるということになると、拒否される方が結構多いことにつながることにもなりますので、是非、Primary nonfunctionの場合には継続できるようにしてあげれば、より移植の機会が増やせるというか、比較的悪い条件の移植でも可能になるのではないかということを考えます。

○松尾班長 ほかに御意見はありますか。

○湯沢班員 移植候補者が選ばれたときに、良いか悪いかを全く触れないということはないですよね。いかがですか。

○水口班員 大抵は患者さんのほうから、どういう状況ですかと聞かれます。

○松尾班長 普通は聞きますよね。

○湯沢班員 そのときに、ちょっとでも悪いような要素があったときに、気軽に断られてしまうような状況というのは、必ずしも好ましくないと思うのです。

○松尾班長 現行のままでいいと考える先生はおられますか。どなたもいらっしゃらないということで、そうしますと、一応、ここでのコンセンサスとしては、移植後、腎機能が全く出ないと、Primary nonfunctionの患者さんについては、何らかの対応策というか救済策を講じたほうがいいであろうと。それは患者さんにとってもそうですし、先ほど湯沢先生が言われたように、受ける側の受ける覚悟というか、そういった選択にも大きく影響するので、何らかの救済策を考えたほうがいいだろうと。

 ただ、ではこれをどのように反映するかというのは次の問題になるわけですが、先ほどゼロか100かと言いましたが、その中間もあり得るのかということなのです。

○湯沢班員 1つ忘れていました。ネットワークの規程では、普通では腎をあっせんしていただいた場合には10万円のあっせん料をネットワークに払うのですが、Primary nonfunctionの場合にはあっせん料を払わなくていいことになっているのです。そういう、ちょっとエクスキューズというか、ネットワークのほうも申し訳ないという気持ちがあるのではないでしょうか。

○松尾班長 ということで参考御意見でしたが、これについては、一応、何らかの対応策は取るということで、どのように取るかということについては、次回までにもし事務局のほうで事前に委員の先生方の意見聴取も含めてしていただくといいかなと。次にいきなり意見を述べていただいてもいいのですが、多分これについては、根拠というのはあるのですが、いわゆるデータ的なものがありませんので。

○相川班員 ただ、低値移植をすると、やはり手術のストレス、体力の消耗、免疫抑制剤を使用しているわけですから、即ゼロにして待機に載せるということは事実上なかなか難しいです。

○松尾班長 それは難しいですね。

○相川班員 ですから、通常は手術して最低でも1か月以上、普通は大体3か月間ぐらいは猶予を持ってリストに載せてあげることになります。

○松尾班長 ですからこれは、移植手術の後、その方の体調を見て、これでオーケーということになったら、その時点からスタートするということでいいですよね。3か月になるのか、人によって多分、違うと思うのです。そういうことも含めて、是非、次回の検討事項にしたいと思います。よろしいですか。

○田中補佐 はい。

○松尾班長 それでは、本日予定していた議案については、前回同様、大変活発に御意見を頂きまして、方向性が大体見えたのではないかと思います。あとは、もう少し詳細に議論をして詰めていきたいということになります。あとは事務局にお返ししますので、今後の予定等についてよろしくお願いします。

○田中補佐 本日は活発な御議論を頂きまして、誠にありがとうございました。また、本日頂いた御意見を踏まえまして、検討事項の整理、レシピエント選択基準について我々のほうで、事務局で案を作りまして準備させていただきたいと思います。

 次回の開催に当たっての準備に関しましては、先生方に御意見等をお伺いさせていただきたいと考えておりますのでよろしくお願いいたします。それでは終了させていただきます。

○松尾班長 どうもありがとうございました。また次回もよろしくお願いいたします。


(了)
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