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2015年2月12日 第6回 今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会

雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課

○日時

平成27年2月12日(木)10:00~12:00


○場所

厚生労働省 共用第8会議室(19階)


○出席者

委員

佐藤座長、池田委員、石山委員、神吉委員、武石委員、田代委員、中井委員

厚生労働省

安藤局長、木下大臣官房審議官、蒔苗職業家庭両立課長、飯野職業家庭両立課育児・介護休業推進室長、中井職業家庭両立課長補佐、川島老健局振興課長補佐

○議題

1.有識者等からのヒアリング
 諸外国における仕事と介護の両立支援 ~法制度と企業の取組に関する文献調査~  (池田委員)
2.これまでの議論の整理

3.その他

○配布資料

資料1 諸外国における仕事と介護の両立支援 ~法制度と企業の取組に関する文献調査~(池田委員資料)
資料2  仕事と介護の両立モデル(介護離職を予防するための職場環境モデル)(事務局資料)
資料3 これまでの議論の整理(第1回~第4回研究会の議論について)
参考資料1 成長戦略進化のための今後の検討方針(抄)

○議事

○佐藤座長 皆さんおそろいですので、第 6 回「今後の仕事と家庭の両立支援に関する研究会」を始めさせていただきます。本日は、両角委員が御欠席ということです。  

 議事次第になります。本日は、まず池田委員からヒアリングということで、諸外国の仕事と介護の両立支援について文献調査をしていただきましたので、それについてお話ししていただくことになります。その後、前回 10 日ですが、時間の関係で御報告する時間が取れませんでしたので、今日、平成 25 年度の仕事と介護の両立支援事業、「介護離職を予防するための職場環境モデル」について、事務局から御説明いただきたいと思います。それぞれ、御報告の後、いつものように質疑の時間を設けたいと思います。その後、議題 3 として、これまでの議論をまとめていただいていますので、それについて議論をすることにしたいと思います。これまでの資料はいつものようにファイルにありますので、適宜、御活用いただければと思います。

 それでは、まず、議題 1 ということで、池田委員から御報告いただければと思います。では、よろしくお願いいたします。

○池田委員 池田です。おはようございます。前々回に、国内のアンケート調査について御報告させていただいたことに続いての報告となります。諸外国の仕事と家庭の両立支援について、今年度 JILPT で調査研究をしてきました。その中から、介護に関する部分について、まず文献調査をした上で、現地調査もしてきたのですが、今日は、文献調査の中から、欧米諸国がどういう法制度を備えているのか。また、個別の企業においてどういう取組があるのかという点について、報告いたします。諸外国においても、法定で規定されている範囲以外の所でいろいろ自主的な取組が行われているということで、両立支援の制度がどういうメニューをそろえておく必要があるのかとか、どういうメニューが諸外国にあるのかを概観するという報告になると思います。

 資料は、こちらのパワーポイントで作った横長のスライドと、あと、ちょうど今年の 1 1 日に、ドイツで介護休業に関する法律の改正法が施行されたばかりで、実は、昨年 11 月に、当機構の山本研究員と私が現地に行って改正法について聞取りをしてきたのですが、情報の鮮度が高いほうがいいということで、昨年 12 25 日に JILPT から発行された『 Business Labor Trend 』の 1 月号の 50 ページから改正法について解説しています。今回の報告の中でも少し触れていますが、ドイツは非常に日本とよく似た制度の作りになっています。そういう意味で、非常に参考になる部分が多いのではないかと思いますので、適宜御参照いただきながら御議論いただければと思います。

 では、本題に入ります。資料 1 2 ページ。まず、「はじめに」ということで、欧米諸国の高齢化の状況がどうなっているのかを簡単に図表で示しています。と言いますのは、これからいろいろな国の紹介をしていく中で、この国が 10 年後の日本の姿だと言える国があるかというと、実はなくて、むしろ、欧米が 10 年後の我々の姿だと思って、日本を注目しているというのが、ドイツとかイギリスに行ってみた率直な感想です。

 それはどういうことなのかと言いますと、端的に言って、日本は先進国の中でも顕著に高齢化率が進んでいる国だということです。左の図は、「高齢社会白書」から引用されているもので、皆さんよく御存じかと思うのです。今の現役世代の介護に注目すると、この右側の、平成 22 年度の「出生に関する統計」という所で報告された資料なのですが、今、ちょうど 50 代、現役で仕事と介護の両立が切実な問題になっているコーホート、これがちょうど 1960 年代前後のコーホートに当たるわけです。欧米でもこの世代が仕事と介護の両立に直面していることになるのですが、ここの出生率がやはり日本は著しく低いという状況にあります。つまり、家族の中で介護の担い手の数といったときに、兄弟とか、そういう面で、例えばイギリスとかドイツに私が行ってきて話を聞いてみても、どうも話がうまくかみ合わないと思うところがここです。まだ、家族の中での分担が多少できる、そういう国と、日本のように、例えば、一人っ子が親を 1 人で介護するとか、夫婦それぞれが一人っ子で、それぞれ自分の親を介護しなければいけないと。前回、一昨日、津止先生が御報告されたような現状というのは、日本が今、欧米諸国よりも進んだ状況にあるという前提でのこれからのお話だということを、まず御承知おきくださいということです。

3 ページは各国の法制度です。育児休業に比べると、極めて多様性が大きいということが言えます。前回、中里先生から御報告いただいたように、育児休業も、法制度の中身については多様性が大きいのですが、介護については、そもそも長期の休業を法制化していない国もあります。典型的にはイギリスです。数日単位、合理的な期間の Time off が認められる程度ということで、 Long Term Leave の規定はありません。また、長期休業がある場合も、例えばスウェーデンが典型的ですが、終末期の介護に限定して、看取りのための介護休業という規定になっている国もあります。

 その一方で日本は、一応、想定されている介護の場面というのはあるのですが、どういう介護の目的でということは、法律で規定されていない。日本のように、介護の場面について限定がない国がドイツです。

 また、もう一方で、日本で言う時短勤務に当たる部分ですが、柔軟な働き方の部分で言うと、例えば、パートタイムのような契約変更が、もうそもそも介護の事由を問わずに認められる、そういう国がヨーロッパにはあります。 EU 指令等で、パートタイムの契約変更に伴う不利益取扱いというのはできないことになっていますが、イギリス、オランダがその典型的な国と言えると思います。その一方で、介護のために期限付きで勤務時間の短縮を行うことを法制化しているのがドイツです。つまり、短時間勤務の扱いについても、通常どおりのパターンの契約変更とか、通常どおりの法制度の枠組みで対処すればいいという考え方から、介護に特有の制度を設けるという国まで制度の作り方に多様性があるということです。

 それを一覧表にしたのが 4 ページ以降です。少し申し遅れましたが、本日典拠している主な文献は、 1 ページ目のスライドに載っていますが、 Eurofound OECD が各国の仕事と介護の両立支援について調査した報告書です。法制度については OECD の報告書が非常に詳しく解説をしていて、また、企業の取組については Eurofound の報告書となっています。こちらは、インターネットでもダウンロードできますので、御興味のある方は適宜御参照いただければと思います。

4 ページに戻っていただき、介護のために利用できる各国の休暇・休業に関する法制度ということで、一番上に、日本の介護休業と介護休暇について書いています。例えばイギリス、ドイツ。少し青く囲っていますが、イギリスでは緊急時の休業 (time off for emergency) ということで、これは期間そのものの規定もありません。「合理的」な期間となっていますが、通常想定されるのはやはり数日ということで、日本の介護休業のような長期的な休業というよりは短期的な休暇という意味合いが強いです。

 一方、ドイツは、後ほど言いますが、短期の介護休暇と休業となっています。介護休業に短期と長期と両方あって、長期の介護休業というのは 6 か月までとなっていて、日本の 3 か月に 1 回というのと非常によく似た法律の作りになっています。

 それから、フランスは、もともとは家族連帯休業で、看取り休業と少し括弧書きしていますが、終末期のための介護、家族のためというのがあったのですが、その後、 2006 年に家族介護休業というのが、日本の介護休業に近いようなものが新たに作られているということです。

 また、スウェーデンに関しては、先ほど言いました看取りのための休業となっています。その他、オランダ、デンマーク、ベルギー、フィンランド、アイルランド、ポルトガルと並んでいますが、本当に、各国ごとに法律の作り方に多様性があるのですが、どちらかというと看取りのための休業ということが、特に北欧諸国では目立つかと思います。デンマークもそうです。

 次に、短時間勤務に関わるところです。イギリスに関して言うと、よく御存じのように、 Flexible working というのが子育てのためにまず導入されて、それが介護のために拡大されたということになっていますが、実は昨年から、イギリスでは、事由を問わずに Flexible working を申請する権利が認められるようになっています。

 一方、ドイツでも、通常のパートタイムへの契約変更というのができるわけですが、これとは別に、後で少し詳しく御紹介しますが、家族介護時間という、日本で言う短時間勤務に相当するものを別途法制度として持っています。というところです。

 実は、いろいろ見てきた中で、ドイツとイギリスが参考にできる部分が多そうだということで、現地調査もしてきたということもあって、少しドイツとイギリスを軸に、これから詳しいことを御紹介していくようにしたいと思います。

8 ページにいきます。先ほど、日本とよく似た制度をもっているということでドイツの介護休業を述べさせていただきましたが、少し詳しく御紹介しておきたいと思います。ドイツの介護休業制度というのは、介護時間という法律として規定されていまして、最長 10 日の短期休暇と最長 6 か月の長期休業の 2 段階から成っています。どちらも分割ができない、 1 回限りの取得で無給となっています。日本の介護休業が想定する介護発生直後の準備とか、態勢作りという部分で言うと、これは、実は(1)の最長 10 日の部分でカバーすることになっています。(2)の部分は、実際上の日常的な介護を担うために 6 か月となっています。ドイツの場合も、介護保険によるサービスがあるのですが、日本に比べるとサービスの適用範囲は広くないということで、どちらかというと家族が直接的に介護を担うことが社会的に期待されている面があります。そういう意味で、この 6 か月は長期の休業として実際に介護を行うことで割り当てられているものです。

 除外規定としては、 15 人以下の事業所は適用除外となっています。あと、(1)と(2)は、一応、規定としては別々なのですが、最長 10 日の間にいろいろ、例えば親族同士でどう分担するかとか、あるいは、介護保険の手続をするかということの体制作りを行う。その後に、(2)の 6 か月に入るということで、一応、連続して取得することを想定しています。事業主のほうも、(1)の 10 日の間に、例えば代替要員を確保したりとか、そういうことで、 6 か月間人が抜けるためのいろいろなアレンジメントをするという想定の法律になっています。所得保障の部分で言うと、(2)の期間中、 6 か月の長期休業の間、無給になるわけですが、社会保険料については、介護保険の中からこの部分が充当されることになっています。

 続いて、ドイツの短時間勤務、これがかなりユニークな法律になっています。「家族介護時間法」ということで、これは 2012 年に施行された法律です。実は、これがいろいろ使い勝手が悪いということで、改正された法律の内容をこちらの『 Business Labor Trend 』に載せているのですが、基本的なフレームは変わらないので、今もこういう作りになっているということで御理解ください。家族介護時間法は、最長 2 年間の時短勤務、最大 50 %まで勤務時間が短縮できます。この間、最低週 15 時間以上は勤務しなければならないとなっています。要するに、半分までは減らせるけれども、その半分が 15 時間を下回っては駄目だということです。ただ、このときに、例えば 50 %勤務時間が下がったら、当然賃金も勤務時間短縮分の 50 %減るというのが、日本の短時間勤務の制度ですが、ドイツでは、減らした分の半分を前借りできます。現地に行って聞いてみても、端的に言って、これは前借りだという言い方をしていました。 5 つまり、労働時間を 50 %減らしても 25 %分の賃金減額で済むことになります。ただ、何で前借りという言い方をしているかと言うと、その後 2 年間を経過して、フルタイムに復職した後も家族介護時間をしていた分は 25 %分減ったままとなるのです。

 例として、例えば週 40 時間勤務から週 20 時間勤務に短縮しましたと。だけれども、賃金は、先ほど言いましたが、半分は保障されるので 20 時間分ではなく 30 時間分になりますと。ただ、 40 時間フルタイムに戻った後も、賃金はしばらく 30 時間のままなのです。これで清算することになっているのです。その清算ですが、現地で聞いた話によると繰上返済とかもできるらしいのです。例えば、残業した分で返済したり、貯金を貯めて返済したりということもできるそうです。なので、組合サイドでは、もう完全にこれは前借りだという言い方をしていました。

 これによって、要するに、勤務時間短縮に伴う所得ロスを何とかしたいというのが政策サイドの意図なのですが、これはなかなかうまく馴染みそうで馴染まないところがまだ多いようです。なので、今また改正法を作ってどうにか使い勝手のいいものにならないかということをしているという状況です。

 ただ、ドイツの場合は、後ほど紹介しますが、賃金と労働時間の関係は、すぐに働いた分を支払うというようにしないで、時間貯蓄制度みたいな形で少し時期をずらして労働時間、賃金を相殺するという考え方がもともと国としてあって、その考え方の一環としてこういう制度を設けています。

 次に、逆に日本と違って、本当に介護休業も介護休暇も規定としては非常に少ないというか、ほとんど無いに等しいというのがイギリスの状況です。イギリスの場合は、先ほど言いましたが、介護のための休暇は緊急時のための Time Off が規定されているのみです。これは「合理的な長さ」という言い方をしていて、日数、回数の具体的規定はなく、しかも無給となりますが、だからといって、ただの欠勤と違うのは、やはり子の介護のための休暇ということで休んだ場合には不利益取扱いと解雇の禁止が適用されることになります。

 それ以外に、使用者との契約変更により勤務する時間の長さや時間帯、勤務場所の変更を請求する Flexible Work の権利が 2006 年、それに先立って、子の養育について認められたものが成人家族の介護・看護の対象を拡大して 2014 年から一般の労働者へも拡大していることになっています。この Flexible Working というのが介護との両立でもよく使われています。

 ただ、どちらの国も、先ほど言ったように、法定の制度が十分に整備されているとはいえない状況です。イギリスの場合は規定そのものが少ないですし、ドイツの場合も、これは必ずしも使い勝手がいいという労使の評価にはなっていません。やはり、労使の自主的な取組、イギリスで言えば、使用者が独自に開発したプログラムによる支援というものがいろいろ行われているのが現状です。そういう意味で、両立支援の取組がどういうメニューをもっているのかという意味で、 11 ページで企業の取組、 Eurofound の報告書で記載されているものを少し御紹介したいと思います。

 まず、いろいろな両立支援の取組があるのですが、いわゆる、先ほど言いましたような休暇・休業、あるいは、勤務時間短縮という法律に沿うような、それは法定を上回る形で実施するようなもの、あるいは、 3) の柔軟な働き方、 Flextime みたいなものも含めて、 1) 2) 3) の労働時間関連のものから、少し介護そのものに対する支援ということが言われていたりとか、あるいは、この後のお話とも関係するのですが、事前の心構えとか、意識啓発というものがメニューとして入っていたりとか、あるいは、職業上の健康管理とウェルビーイングという言い方をしているのですが、介護者の健康管理が 1 つの課題になったりとか。 7) は外部の機関と連携をするということで、主に 4) 5) 6) 7) に関わるところというのは、かなり労使が自主的に取り組んできている部分に当たるかなと思います。

 休暇・休業に係る施策というのは、例えば日本でもそうですが、法定を超える休暇・休業の機会を与えるとか、あるいは適応範囲を柔軟にするということです。追加的な休暇の蓄積方法 ( 時間貯蓄等 ) というのがあるのですが、これはドイツの少し特有な考え方なので、後でまた御紹介します。長期休業と関連すると、やはり長い期間取ると復職しづらくなるということ、あるいは、きちんと労働契約が継続できるかどうかと不安に思うことがあるので、そういうことに対するケアをしっかり行うとか、あるいは休業に伴う不公平なキャリアとか不利益がないようにするということです。いわゆる、日本でも法定を上回る休業を設けるときによく言われているようなことが、ヨーロッパでも行われているという状況です。

 報告書にはいろいろな国の事例があって、例えばアイルランドとかスロベニヤとかの事例とかも結構載っているのですが、いろいろな国を取り上げるとと背景要因がいろいろあって分からなくなるので、ドイツとイギリスに限定して少し事例を紹介したいと思います。余り詳しく事例が載っているわけではないので、私が現地で聞きかじったことなども少し補足しながら解釈していくようにしたいと思います。

 まずは、イギリスのエネルギー会社の事例として、長期休業中の契約と復職支援が挙げられています。このエネルギー会社では、いわゆる短期の休暇、ここで言う短期の休暇は、先ほど言った Time off 以外に、この間、 NEC で御紹介いただいたような、介護のために使える会社独自の休暇、そういうものに加えて、長期の「キャリアブレイク」を介護のために利用することができるということ。この場合には、やはり、きちんと適切に復職できるような支援がプログラムとして設けられていて、例えば、ボスが連絡を取り続けてコミュニケーションを絶やさないとか、そういうことをやっていますということでした。余り詳しく載っていないので、簡単に済ませます。

14 ページ、時間短縮に係る施策と、報告書の中では柔軟な働き方を分けています。まず、勤務時間短縮の分では、先ほどのドイツの家族介護時間による、やはり時間短縮に伴うマイナス要因の影響、特に、経済的な影響とかキャリアの影響、そういうものに対してどうするかが主なトピックになっています。あと、柔軟な働き方という意味で言うと、フレックスタイム、これはやはり欧米では、フレックスタイムをうまく回すために職場マネジメントの工夫が必要だという話。それから、テレワークが結構盛んに行われているみたいなのですが、テレワークに関しては、ただ家族的責任というよりは、少しやはり職種とかにも限定されるという話のようです。

 まず、時間短縮に係る施策の部分で言うと、これは実際にドイツに行ったときにも、すでに労使の自主的な取組で家族介護時間みたいなことはやっている、というお話をエピソードとして聞いてきました。休業中の賃金補填ということで、この会社の従業員は、 3 12 か月の長期休業と同じ期間のパートタイム就業が認められている。つまり、 3 12 か月間の間、長期休業を取った後、また、同じだけの期間、パートタイムで働くことができると。休業中の所得交渉で賃金の前借りができますと。先ほどの話とよく似ているのです。休業中に 30 %の賃金を、つまり全く所得がゼロにならないで 30 %分賃金をもらうことができる。その後、パートタイムで復職するのだけれど、その 30 %の賃金を働いている間に返すことができる、そういう制度がこの保険会社にはありますという話なのです。

 ほかにも、ドイツで割とポピュラーな制度として使われるのが、時間貯蓄制度の長期決済です。この報告書にはなかったので印刷には載せていないのですが、、残業した分をすぐに残業手当としては支払わないで口座に貯めておくのです。例えば、繁忙期に残業した分、閑散期に逆に休暇を取ったりとか、早帰りとかして、その分は、残業口座からその時間分を消化していくという方法を取っています。その清算は大体 1 年間でするケースが多いのですが、例えば、家族介護みたいな何か特別な事由のときに労働時間を柔軟に使えるよう、例えば 3 年とかそういう長い期間で決済するような仕組みをつくる。その中で仕事と介護の両立支援をやっていくということがドイツの企業では一部行われているみたいです。割と中小企業ではそういうやり方が好まれるみたいです。やはり残業手当とかいろいろな部分でコストが安く済むということがあるみたいです。

 それから、柔軟な働き方の部分で言うと、イギリスのエネルギー会社の、フレックスタイムをどうやってうまく柔軟にやっていくかということに関わる施策で、やはりチーム単位で役割と責任を提示して、その合意を得ることで働く介護者のケア責任がチーム全体の人にとって透明になるということです。これによって、介護のために休暇を取る必要が生じたとき、他のメンバーが仕事をカバーする、しやすくなりますよということを、割と職務の範囲が明確だと言われているイギリスでも、やはり、こういうお互いカバーし合うことがうまくいくということで紹介されていました。

 それから、テレワークの部分です。テレワークに関しては、介護そのもののためにというよりも、どちらかというと、会社の働き方全体を見直すという方針の下でテレワークを推進していて、それを介護にも適用することが行われているようです。イギリスの電話会社でテレワークを行うという事例が載っているのですが、テレワークを奨励し、これを可能にするという会社の方針に沿って介護支援としてもテレワークに注いでいるということなのです。テレワークは、労働者が効果的に働きながら介護の必要性に対応することを可能にする制度だということで載っているのですが、余り介護に固有の問題の解決に役立つということよりも、全労働者に Flexible working を適用していくという流れの中で、特に、テレワークについても働き方の新しい方法として推進していくという流れがあり、その中に介護も位置付けられているということのようです。

 それから、柔軟な働き方に係る施策で、これにドイツとイギリスの事例が両方載っています。就業時間中に、介護の用事のために仕事を中断したりとか、電話とかメールをすることを認める、要は、職務専念義務違反にならないようにするということのようです。日本でも、仕事の時間中にケアマネさんと電話で話す時間を取るとか、あと、最近よくやっている中抜けとか、つまり、半日とかという単位ではなくて、お昼、少し 1 時から 3 時の間に抜けてきて、それでいろいろ用事を済ませるとか。そういうことをインフォーマルにしないで、きちんと管理職の同意を得てそういうことができるようにしますよという事例が載っていました。ここまでは、もともとが、ある程度ポピュラーな施策の運用部分のノウハウみたいな事例なので、これだけ読んでもピンとこないところもあるのですが、普段、我々が議論している通常の労働時間管理の話と非常によく似たことが言われているかと思います。

19 ページ、介護関連の施策です。ここが、企業独自の取組としては非常にユニークなところで、日本でもこの後、議題 2 で出てくる話と関連するところかと思うので、少し詳しくお話ししたいと思います。労働者が、介護に関する知識をもっていないことから両立に戸惑うだろうという想定で、介護についての情報提供とか相談をしていくとか、あるいは、介護者がどういう形で介護に臨むかという研修をすることが行われています。あるいは、経済的支援とか介護サービス関連の支援を行うとか、あるいは、実際に介護そのものを提供するということをやっています。

20 ページ、ドイツの自動車メーカーの事例です。これは従業員主導で、いわゆる介護者支援のネットワークを作っていくことをやっています。情報提供や相談、イベントの開催等を従業員が行っています。情報提供サービスには、例えば介護の初期に行うべき基本的情報を載せたリーフレットを配ることも行ったり、社内のイントラに自助グループや介護サービスに関するインターネットのリンクを張ったりということで、従業員がそういう介護情報にアクセスできることをやっている。ただ、自動車メーカーですから、生産工程の従事者の場合は IT 、メールやインターネットにアクセスしないこともあるので、紙の情報も載せているという工夫をしているという事例でした。個人的な相談の部分では、メールや電話、あるいは直接に会って、介護の肉体的・精神的な疲労について対処することをしていて、従業員同士が助けるようなネットワークを会社としても支援しているということです。

21 ページ、介護関連の支援の事例です。将来の介護に備えた研修が挙がっています。まだ介護は始まっていない従業員に、これから介護が始まったときに慌てないようにということで、ドイツの健康保険組合が製薬会社と、その製薬会社が立地している他の企業と協力して行っている取組です。こちらにありますが、 5 つのパートからなる研修を実施していて、年 2 回、従業員に対して研修を行っています。 5 つのパートというのは、ここにあるのですが、介護の必要性とその種類、経済的・法的な問題、認知症、高齢期うつ、日々の介護の実践的な支援といった、トピックを開けて、その中から関心のあるものを選んで受講してもらうということのようです従業員のパートナーも参加できるという研修もあるということです。

22 ページ、こちらはドイツの電話会社の例です。介護サービスの提供事業者と連携するという事例が挙がっています。会社が設けている「家族の週」に地域の非営利介護事業者の代表を招いて、ドイツの一般的な介護支援制度とともに、その地域で提供される介護サービスがどういったものかについて情報提供を受けると。全ての従業員がこの情報にアクセスできて、介護サービスの紹介を匿名で受けると。誰がどの事業サービスを受けているかは内緒にして、紹介を受けることができるということをやっています。ドイツの場合は、割と事業所単位の雇用で、余り転居転勤をしてあちこち移動することが一般的でないようです。なので、事業所が立地している所で自分たちも住んでいて、家族もいてということを前提にしたサービスだと思います。

23 ページ、これは非常にユニークだと思ったのですが、退職者とパートナーによる介護支援ということです。退職者 1 名と従業員のパートナー 4 人から成る 5 1 組のネットワークというのを社内で作って、緊急時に従業員の要介護者の世話をする支援サービスを実施ということなのです。ですから、 1 2 3 4 5 1 人退職者がいて、例えば、急に介護の用事が入って家に行かなければいけないけど、自分は多分残業しなければいけないとしたら、代わりに行って、みたいなことを社内でやっているようです。そして、退職者が 1 人いるというのは、その人はフリーで動けるということなのではないかと思います。これも、先ほど言ったドイツの場合は、割と職住近接で、余り遠方での介護がなく、別居介護が多いみたいなのですが、近居での介護が多いようですので、そういうことで、代わりに残業してもらうのではなくて、代わりに行ってもらうということをやるという、なかなかユニークだと思いますが、そういうことをやっているということのようです。

 次は、意識啓発と能力開発です。能力開発は、どちらかと言うと、通常の職業能力開発ではなくて、介護に対応するための能力を身に付けるということのようです。

25 ページに行きます。意識啓発のセミナーを行うことがまず 1 つです。それから、スキル開発という意味で言うと、ラインマネージャーの研修ということが 1 つのキーになることが報告書でも強調されていました。男性に焦点を当てるというのはドイツの製薬会社の事例ですが、まだドイツの場合は、介護は女性の問題という意識が強いようです。しかし、男性でも実際に介護をしている人がいるわけで、自分がそうなったとき慌てないように、介護について議論することを避けがちな男性従業員にターゲットを絞ってやる研修をしているようです。 1 つの工夫の事例としてそういうことが載っていました。それから、仕事と介護を両立するためには、ラインマネージャーの理解がないとなかなかうまくいかないということで、会社の文化に馴染む方法で部下を管理するよう、継続的な管理職研修を行うということが載っていました。

26 ページ、健康管理の問題がもう 1 つ出ています。介護者のアセスメントということで、イギリスの公衆衛生提供団体の事例が載っています。働く介護者が介護関連の支援を必要としていることが明らかになったら、組織は地域の NGO に連絡を取って相談し、介護者をそこに行かせることができるということになっていますが、健康上の問題を発見されたら適切な措置を講じることになっています。

7 番目は外部との連携ということです。これは、企業としての取組をより前向きに行うために、例えばイギリスで言うと、 CarersUK という民間の介護者支援団体が、 Employers for Carers という、また少し別の団体を立ち上げて、使用者に対するいろいろな両立支援のプログラムとか情報提供をやっています。例えば、ここに出ているイギリスの電話会社の場合は、使用者団体の中で、かなりリーダーシップを取るような立場をとっていて、それによって、個社での取組を少し社会的なムーブメントとして盛り上げていくという、それによって、また自分たちの会社にもプラスのフィードバックがあるという、そういうことを行っているようです。

 今度は、ナショナルイニシアチブに参加ということで、ドイツの電話会社の事例です。最近、日本でもナショナルイニシアチブという言い方を時々見るようになりますが、ここで言っているのは、政府がいろいろな両立支援の推進プログラムを実施するときに、積極的に参加して自社の取組を公表するようなことをする。そのことが取組の推進にとって非常にプラスだという事例でした。少し事例が断片的な部分もあるので、私が現地調査で。現地調査の話は、また別途時間を設けてする機会があればしたいと思いますが、少しそこでの聞きかじった話も補足しながらの報告となりました。分かりにくいところがありましたら御質問いただきたいと思います。報告は以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。海外の思慮深い両立についての、法律的な仕組みはどうなっているかと、企業の取組ということについて、ヨーロッパ中心に御紹介いただいたのですが、多分比較するときに大事なのは、それぞれの国の高齢化の程度が日本に比べて違うということと、もう 1 つは介護保険制度によるような、介護支援サービスがどうなっているか。あと、家族の規模など、その辺がかなり違うので、それを踏まえて考えることが大事だと思います。ただ、それを踏まえても、多分企業レベルの取組というのは、かなり日本でも割合先進的な議案に取り組んでいることと、かなり重なるかなと思いました。

 それでは、今の池田委員の御報告について、追加的にもう少し説明をしてほしいとか、ここは分かりにくい、どうなのとか、あるいは御意見でも結構ですので、よろしくお願いします。

○武石委員 どうもありがとうございます。すごく参考になりました。ドイツの制度について少しお聞きしたいのですが、所得保障のことがいろいろ考えられているのですが、これは基本的に、ドイツは制度が無給になっているので、結構所得保障のことが議論になって、日本の場合は介護休業は雇用保険の給付金があるので、少しドイツと事情が違うと考えていいのかどうかというのが 1 点。

 それから、ドイツはこの法律が出来たのが 2000 年、 2006 年、 2012 年なのですが、これを統合して 2015 年に新しい法律が出来るということで、要はこういう制度が利用されていく中で、いろいろな課題が出てきて、法律改正になる。日本は要はあまり制度の利用がないので、なんとなくこれまで法改正ということがない。その辺りのドイツの事情を教えていただければと思います。

○池田委員 ドイツでも介護休業、先ほどの介護時間は利用されていないです。 2008 年に統計を取った結果でも、本当に数パーセントというところで、日本とよく似た制度になっています。

 家族介護時間が施行されたのが 2012 年なのですが、その間に実際にそれを利用したと把握されている人数も、極めて少ないようです。制度として浸透度が低いということです。

 なので、もう少し使い勝手をよくしたいというところで法律が改正されていると理解しています。ただ、所得保障の部分が、特に家族介護時間の部分の所得保障の在り方ということが、すごく今回の改正でも焦点になっていた部分です。これは後で BLT を読んでいただければ分かるのですが、実はそれまで使用者から前借りしていた部分ものを、違う公的機関からのローンという形で所得保障を得るようになりました。介護休業ではなくて時短の部分の所が、そのように変わってきています。

 あと、介護中の所得保障の部分で言うと、実はドイツの介護保険制度は、現金給付があるのです。現物給付だけではなくて、現金給付があって、日本で言うと児童手当みたいなものですが、要介護者が現金給付をもらって、それで自分の家族に介護してもらうということができる仕組みになっているのですが、それが休業中の生活費の足しになっているという指摘もあるのですが、「足し」という言い方をしたのは、それで生活できるほどたくさんもらっているわけではなくて、そういう意味ではやはり所得の問題というのが大きいというのは、ドイツの 1 つの特徴かなと思います。

○武石委員 やはり制度利用が少ないということですが、分割不可というのがありますよね。これは問題になっていないのですか。

○池田委員 分割不可は、あまり問題になっていないです。そこが、ある程度サービスを利用しながら、足りない部分を家族がスポット的に補うという日本の発想と違って、ある程度家族がしっかり介護することをドイツの制度は想定しています。ただ、その「しっかり」の仕方が日本と少し違います。別居が多いので、例えば朝要介護者のもとに行って、一通りのケアをして出勤して、また帰ってきてというサイクルを考えた場合、大体、要介護者 1 人には 3 人ぐらいの親族が平均して付くそうです。プラスそこにサービスが入ってくるという、そういう中でやり繰りしていくということなのです。

○武石委員 ありがとうございます。

○佐藤座長 ほかの方はいかがですか。これは池田さんが分かればですが、 4 ページのフランス、スウェーデンの終末期ケアの状態で取れるというのがありますよね。多分これは前も少しお話があったのですが、例えば末期がんと宣告されて、多分そういうのでこれを使えるのだと思います。ただ、そのとおりにならない。

○池田委員 そうですね。

○佐藤座長 でも、これは日数で上限があるわけですね。そんな話は全然聞きませんか。分からなければいいですが。

○池田委員 そこはフォローできていないです。すみません。

○佐藤座長 どうもありがとうございます。特に企業の情報は貴重だと思うので、なかなかそういうのは分からないので。

 それでは、続きまして一昨日時間がなくてできなかった平成 25 年度仕事と介護の両立支援事業、これは厚労省がやられている事業ですが、そこで作成された「介護離職を予防するための職場環境モデル」について、御説明いただければと思います。よろしくお願いします。

○飯野職業家庭両立課育児・介護休業推進室長 それでは、私から説明申し上げます。今日の資料 2 に資料を入れてあるので御覧ください。最初に、このようなモデルを作成した経緯について、少し御説明したいと思います。タイトルのすぐ下の箱を御覧ください。最近、人口構造の高齢化に伴いまして、企業の従業員の高齢化も進んでいます。

 一方、これまでこの委員会でも御議論がありましたが、世帯の構造も、専業主婦よりも共稼ぎ世帯が多くなるなどの社会状況を背景として、これから親の介護に直面する可能性の高い、 40 歳代、 50 歳代の労働者の中には、将来親の介護に直面した場合の、仕事と介護の両立に対する不安をお持ちの方が多くなってきている、高くなってきているという状況がありました。

 私も含めて、通常はどなたにも親御さんはいらっしゃいますので、必ず親の介護には直面するということ。しかも 40 歳代、 50 歳代ということで、企業の中での管理職になる時期とおおむね重なると、この前、 NEC の田代委員からも御説明がありましたが、そういう状況があるということが、子育てとは少し違う特徴かなと思っています。

 このため、この箱にもありますが、これから仕事と介護の両立支援の取組を始めたい。また、仕事と介護の両立支援の取組として、何をすればいいか分からないという、企業の経営者の方や、人事労務の担当者を対象にして、従業員の介護を理由とする離職を予防し、従業員の仕事と介護の両立を支援する、仕事と介護の両立を行えるような職場環境作りに取り組んでいただきたいと考えまして、介護離職を予防するための職場環境モデルを提示したいと考えまして、昨年度、平成 25 年度に委託事業で実施したものです。

 本研究の座長である佐藤先生に、この検討委員会の座長をお願いしまして、検討を行っていただきました。また、この検討委員会には、本研究会の委員をお願いしている池田委員にも入っていただきました。このモデルの完成後、パンフレットを作成しまして、シンポジウムを開催するなど、モデルの周知を図ってきたところです。今日は少々お時間を頂きまして、この平成 25 年度に構築したモデルについて御説明します。

 なお、今年度、平成 26 年度におきましては、全国の 100 の企業に、このモデルを実際に導入して、かつ取り組んでいただくという実証実験を今行っています。この実証実験の経過を踏まえて、またモデルを見直すこととしていますので、また見直し後、改めて機会を設け、説明させていただきたいと考えています。

 それでは、この図の左下の枠を御覧ください。 1 5 に色分けした 5 つのステップを、取組が必要なことと考えています。まず 1 つ目は従業員の支援ニーズの把握、 2 つ目は制度設計・見直し、そして 3 つ目は介護に直面する前の従業員への支援、 4 つ目は介護に直面した、 3 つ目と違うのは実際に介護に直面した従業員への支援ということです。そして、 5 つ目は働き方改革ということ。この 5 つのステップに、企業に取り組んでいただきたいと考えています。

 それぞれの内容については、右側の欄を御覧ください。まず 1 番目ですが、従業員の支援ニーズの把握です。企業として、仕事と介護の両立に取り組むに当たっては、従業員が介護に直面しているかどうか、何か困っていることがないか、現状と課題を把握することが、まずもって重要であり、また必要だと考えています。その把握する方法としては、ここにあるように人事・総務・労務部などが行っていただきます、全社的なアンケートですとか、育児休業・介護休業制度などの利用者を対象としたヒアリング、そして上司による面談、又は人事面談等を通じて行っていただく把握ということが、有効かと考えています。

 その下の 2 番目ですが、両立支援制度の設計・見直しについては、まずもって大前提としまして、育児・介護休業法に規定されている育児休業や介護休業などの規定が、就業規則などに整備されていることが大前提として必須だと思っています。その上で先ほど申し上げたように、従業員の支援ニーズの把握を行った上で、そのニーズは合っているかどうか、更には制度の利用状況ですとか、介護離職の状況などと合わせて確認をしていただきまして、社内制度の見直しですとか、設計などを行っていただくことが重要だと考えています。なお、このときに、介護の問題に直面した経験のある従業員や、また、介護に係る支援制度を利用した従業員へのヒアリングによって、従業員のニーズに合った支援制度となるように見直しを行うことも、効果的だと考えています。

 そして 3 点目は、介護に直面する前の従業員への支援です。介護に直面する前の従業員にとりましては、介護についてはあまりにも分からないことが多く、漠然とした不安を抱えている方々が多いと考えています。したがって、実際に介護に直面する前に、介護に関する一般的な知識、また、情報の提供をはじめとしたセミナーを開催したりしまして、情報提供を行うことにより、気付きのきっかけを提供し、この不安を解消するとともに、実際に介護に直面する前に、何らかの事前準備を促すことも期待できるかと考えています。

 また、従業員が実際に介護に直面した際に利用可能な、会社の自社の両立支援制度について、従業員に分かりやすく周知することが、仕事と介護の両立についてのイメージを持っていただくことから、安心感にもつながると思っています。ついては、例えば企業におきましては、就業規則に明文化することはもちろんですが、パンフレットやハンドブックの作成ですとか、また、イントラネットへの掲載などを行っていただき、様々な方法で周知を図ることが有効だと思います。

 更には、介護には様々な問題が生じる可能性もあります。実際には経験してみないと分からないということもあります。このため、介護経験者の話を聞いたり、従業員同士の情報交換、意見交換をできる場の提供ですとか、関係情報の入手もでき、介護に関する不安や悩みの軽減にもつながると考えています。更には地域の相談窓口や、専門家などの活用も大いに役立ちますので、これらに関する情報の提供も、企業としては重要ではないかと考えています。

 なお、このペーパーには記載していませんが、介護に直面する前に、企業が従業員に働き掛けるとよい、有効だと考えられる 6 つの項目という形でも整理しているので、合わせて御紹介します。 1 点目は仕事と介護の両立を企業が支援するという方針のアピール、 2 点目は介護に直面しても仕事を続けるという意識の醸成、 3 点目は企業の仕事と介護の両立支援制度の周知、 4 点目は介護について話しやすい職場風土の醸成。先ほど池田委員の発表にもありましたが、どうも企業の中で言いにくいというドイツの事例がございましたけれど、介護について話しやすい職場風土の醸成。そして 5 点目は、介護が必要になった場合に相談すべき、地域の相談窓口の周知。最後の 6 点目は、親や親族とコミュニケーションを図っておく必要性のアピール。やはり介護する状況が生じた場合には、自分だけでなくて親族、また、親とも相談できるようなコミュニケーションをとっておくことが必要だという、この 6 つの項目についても整理をしているところです。

4 点目は、介護に直面した従業員への支援です。実際に介護に直面した従業員に対する支援も不可欠だと考えていまして、 4 番目の項目に入れています。例えば企業において、従業員の両立支援制度の利用実績が少ない場合、その利用が躊躇されたり、上司や周囲の従業員の理解が得られにくいといった事態が生じることも想定されます。従業員が介護に直面したという情報を入手した際には、人事担当部門が本人や、また、直接の上司の相談に乗るなどして、両立支援制度を利用しやすい職場環境を整えることが重要だと思います。

 一方、従業員が介護に直面したという情報を入手できない場合であっても、社内に介護についての相談窓口を設け、相談できる体制を整えておくことが、従業員の不安の軽減に大変重要だと考えています。

 一方、社内の担当者には相談しにくい場合ですとか、社内ではどうも相談に対応できる人材がいないという場合には、外部の専門機関の活用ということも有効だと思っています。仕事と介護を両立させるためには、地域の介護サービス、専ら介護保険によるサービスということになると思うのですが、このような介護サービスの利活用は不可欠だということになりますので、まずは地域の相談窓口ということであれば、地域包括支援センターにアクセスできる情報の提供が重要だと考えています。なお、この地域包括支援センターについては、自社の労働者の住居地のセンターではなくて、要介護となる方の、御両親がお住まいのセンターということになりますので、提供する情報についても注意が必要だと考えています。

 なお、このペーパーには記載していませんが、企業が介護に直面した従業員に働き掛けるとよいと考えられる 6 つの項目を整理しているので、御紹介します。 1 点目は先ほども少しお話をしましたが、相談窓口を設けた場合、相談窓口での両立課題の共有ということ。 2 点目は、企業の仕事と介護の両立支援制度の、手続等の周知ということです。 3 点目は、上司との働き方の調整。 4 点目は職場内の理解の醸成。そして 5 点目は、上司や人事による継続的な心身の状態の把握。 6 点目は社内外のネットワーク作りということを掲げています。

 最後の 5 点目、働き方改革です。働き方改革というのは、働き方の柔軟化の推進ということでもあります。仕事と介護の両立のためには、ただいま申し上げてきましたような支援制度の整備ですとか、利用できる雰囲気作りに加えて、実際に制度の利用が可能となるような職場作り、すなわち柔軟な働き方を選択できる環境の整備ということが必要だと考えています。全ての従業員に時間制約があるということを前提とした、職場環境を整備していないと、介護に直面した従業員が躊躇なく制度を利用したり、離職することなく仕事と介護の両立、更には管理職自身が両立を図ることは困難だと考えています。このためには、まずは日頃の働き方を見直すことが重要だと考えています。

 介護は要介護者の状況、介護の期間、親族を含めた介護の体制、利用できる地域のサービスなど、個々の状況によって相当違ってまいりますので、仕事と介護の両立のためには、仕事と育児の両立以上に様々なニーズがあると考えています。このため、法定どおりの最低限の支援制度を整備することは必須ではありますが、従業員のニーズに応じて、働く時間、例えば勤務時間、始業・終業時刻、出勤日、更には出勤日数ですとか、働く場所など、多様な選択ができる対応を行うことが望ましいと考えています。

 以上、雑駁ではありますが、平成 25 年度に構築した、介護離職を予防するための職場環境モデルの説明を終わらせていただきます。ありがとうございました。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。確か平成 24 年から始まったのかな。平成 24 年、 25 年の 2 年間で、企業が社員の仕事と介護の両立を支援するために、どんな取組が必要かということで、企業が取り組むときの参考になるような情報を提供するというもので、平成 25 年度に一応パンフレットが出来ているということです。

 ここに 1 5 とありますが、特に働き方改革のところは、仕事と子育ての両立支援とかなり重なる部分があるわけですが、仕事と介護の両立支援で言うと、 2 4 は特に違ってきますし、特に (3) の事前の情報提供がすごく大事になるということで、そこでどういう情報提供をしたらいいかとか、提供の仕方について説明するような状況になっています。

 パンフレットはなくなってしまったのかな。ネットからはダウンロードできると思います。あと平成 25 年度は、これは企業向けですが、介護に直面した社員が、仕事と介護をどう両立したらいいかということも、確か平成 25 年度に作っています。それで平成 26 年度は、このうちの 1 3 を取り出して、先ほど御説明がありましたように、中堅企業を中心とした全国 100 社の企業に御参加いただいて、実際に 1 の社員のニーズ把握をしていただいて、それを前提に (3) の情報提供の検証をやって、その結果、介護不安が軽減するとか、自社の両立支援制度の理解度が高まるとか、仕事の継続の可能性が高まるかどうかみたいな検証をする。

 あと、もう 1 つは制度ですよね。法定もきちんと当然守られていて、かつニーズに合ったような、つまり利用要件などが分かりやすいかとか、そんなことを御検討いただくというのを今やっていて、多分 3 月末にはまとまるかと思いますので、まとまったらまた御報告させていただきます。御質問があればどうぞ。

○田代委員 質問というか、特に 4 番の「直面した従業員への支援」の中で、人事担当部門の相談窓口とありますが、そうなると非常に専門的な知識なりスキルが必要だと思うのですが、いろいろな人事業務がある中で、介護の専門家というのを企業内に置けるのかなというところが正直あります。

 当然、 1 3 、ニーズを把握したり制度の周知をするというのを、いろいろな研修でやる。これはやれるのかなと思います。さらに、地域やケアマネの方とか、そういう社会全体の体制がしっかりあって、そこにうまくつなぐという役割ぐらいはできるのかなと思うのですが、相談窓口となると、現実的にどこまでいくのかなという懸念があります。

 育児や出産の場合、いちいち企業で相談しなくても、保健所だとか地域のいろいろな所に行ったほうがネットワークも既にあって、そこでいろいろな妊娠・出産の不安解消とか、あるいは子育て期の不安解消とか、相当の所が消化できているのではないかと思うのです。

 では、同じようなイメージのことが、介護という問題で、地域の中でできるということも一方でないと、企業側の中の相談窓口というのに変に頼られても、現実的には困ってしまうなと、これは正直な感想なのですが。

○飯野職業家庭両立課育児・介護休業推進室長 御意見ありがとうございます。ここの 4 番目に書いた中で、例えば企業が従業員の介護の状況を全く知らないということもありましたので、やはり申し出ていただくと。それで、会社として用意している、両立ができるような働き方について相談に乗っていただくということが、まず第一歩の目的です。

 その上で、多分私自身もそうだったのですが、親の介護が急に出てしまうと、どこに相談していいか分からないときに、例えば先ほど申し上げたような地域包括支援センターにまず相談に行ってみたらという、その入口の所の御教示をいただくということが、企業で一番必要な第一歩ではないかと考えています。御意見ありがとうございました。

○佐藤座長 ここは今御説明があったように、具体的な両立の仕方についてのアドバイスを企業にしろというのは、個別度も高いですし、企業側もそれだけの専門的な知識を持った人を置けないので、そこは期待するのは難しいと思っています。

 基本的には、社内にはこういう制度があります、介護休業は実はこのように使うんですよ、働き方も短時間勤務を選べます、これは情報提供です。あと、もう 1 つは地域包括支援センターに行きましたか、介護認定を受けましたかと、そういう基本的な情報を提供して、あとは社員自身が両立をマネージメントしていただくしかないかなと。

 ただ、もちろんある程度規模が大きくなれば、外部のアドバイスできる機関と契約して、依頼することも可能だと思います。ただ、規模が小さい所になってくると、そこまではいきませんので、外部の地域包括支援センターに行きなさいとか、介護保険制度があること、一応事前提供していると思いますので、こういうのを知っていますかということを確認する程度かなと思っています。御指摘のとおりだと思います。

 ほかにはいかがでしょうか。よろしいですか。必要があればダウンロードして見ていただければと思いますし、 4 月以降、今年度の事業についてまとまったら、多分御報告する機会があるかと思いますので、よろしくお願いします。

 それでは、本日のメインといいますか、池田さんのもメインだったのですが、議題 3 ということで、これまで研究会の場で御議論していただいたもの、何度か取りまとめについて議論したわけですが、 4 回までの議論をまとめたものを用意していただいているので、それについて御説明いただいて、更に委員の皆さんの御意見を伺えればと思います。では、よろしくお願いします。

○中井職業家庭両立課長補佐 資料については資料 3 と及び参考資料 1 を御用意ください。資料 3 でこれまでの議論の整理を説明させていただく前に、参考資料 1 として付けたものを最初に御説明いたします。平成 27 1 29 日に、産業競争力会議で決定された成長戦略進化のための今後の検討方針です。この中で、多様な担い手を生み出すための環境整備と、女性の更なる活躍推進ということで、男性が育児を行うことや、家族の介護による離職への対応策として、男女ともに子育てをしながら働き続けることができる環境を整備するため、現状、低い割合にとどまっている男性の育児休業取得率を高めるための実効性の高い方策について検討を進め、男性が育児を行うことを進める。併せて家族の介護による離職を余儀なくされる者が多いことに鑑み、その対応策を検討する。このような決定がなされました。この研究会の検討課題と大いに関連するところで、このような決定がなされていることも御承知おきいただければと思い、御紹介させていただきました。

 続いて、資料 3 は「これまでの議論の整理」で、第 1 回から第 4 回研究会の議論についてです。第 1 回から前々回の第 4 回までの間に出た御意見について、検討課題ごとに記載しております。かつその中でまとまりごとに整理したものです。それに対応する形で、右側の箱に、現行制度の内容を記載しています。御意見の中で下線の引いていないものは、第 1 回、第 2 回の研究会でもお出しいただいた御意見であり、既に第 3 回研究会に提出した資料の中に入っているものです。それに加え、第 3 回、第 4 回で御意見として出していただいたものを、下線付きで追加しております。下線のない御意見については、既に以前提出済みの資料で御覧いただいていることから、かい摘まんで御紹介いたします。

 検討課題 1 「仕事と介護の両立のあり方」、 (1) 「介護休業のあり方」です。まず、「介護休業の分割取得」ということでまとめました。この中で、介護休業は本当に必要なときまで取得を控えておこうという心理が働くため、分割が可能とすれば、取得をする人が増える可能性もあるという御意見を頂きました。第 3 回、第 4 回の御議論の中では、○の 4 つ目以降ですが、いつまで介護が続くか分からない不安に対し、分割取得がよいのではないか。調査によると、分割取得ができる場合には、離職防止につながっている。長い期間の休業を取る又は望む労働者より、短い期間でこま切れに取り、両立を図る場合が多い。休業・休暇については 2 週間以内が非常に多い。過去 1 年間で実際に休業した日数も 7 日を超えることは少ない。介護休業の分割のニーズとして、 3 回から 4 回を複数回が、「分からない」を除き最も多くなっているという調査を御紹介いただきました。

 また、これまでの御意見として、分割取得を認める場合、所得保障の視点も必要であるとか、介護休業の分割がいいのか、介護休暇の日数を増やすほうがいいのかの視点での議論が必要だという御意見を頂きました。それに加えて箱の中の一番下ですが、両立の見通しが立てられるという意味で、実際に取る人がそれほど多くなかったとしても、介護休業の分割取得や、柔軟な働き方を制度として作っておくことが大事ではないかという御意見を頂きました。

 これに関して現行制度はどうなっているかということですが、 1 ページに戻って右側の箱にある、介護休業は、法律上、「対象家族 1 人につき、要介護状態に至るごとに 1 回、通算して 93 日まで」取得可能です。介護休暇は、対象家族が 1 人であれば、年に 5 日まで、 2 人以上であれば年に 10 日まで取得可能となっています。また、介護休業の申出の手続に関する内容として、休業に係る対象家族が要介護状態にあること。休業開始予定日及び休業終了予定日等を明らかにして、原則として休業開始予定日の 2 週間前までに、書面等により事業主に申し出る必要があるとされています。介護休業給付に関しても、休業と同様、対象家族の同一の要介護状態につき 1 回、通算して 93 日まで受給可能とされております。

2 ページに戻り、「介護休業の期間」という形でまとめた御意見です。 1 つの会社の例として、当初は要望により介護休業・短時間勤務の期間を延長してきたが、期間の延長では解決せず、経済的援助や、孤独感、焦燥感を解消するコミュニティ形成へと支援施策が発展した。これらの支援政策に関し、共済会を活用しているという御紹介を頂きました。一方で介護休業については、電機連合加盟の組合において、通算 2 年等法定を超える組合も多い。また、これに関連して、介護がいつまで続くか分からない不安に対し、介護休業が 93 日で十分なのかという御意見を頂きました。再掲になりますが、先ほど御紹介したとおり、調査によると長い期間の休業を取る、又はその労働者よりこま切れに取って両立を図っている場合が多い等という御指摘も頂いています。

2 ページの一番下の○で、調査によると、 3 か月を超える介護休業が認められる勤務先でも、継続就業をしている場合はそれほど変わらない。実際に継続就業している人が希望する日数も、「分からない」を除き、 93 日以内の割合が最も高いという調査を御紹介頂きました。現行制度については、先ほど御紹介したとおりです。

3 ページで、「介護休業の対象となる要介護者」とまとめております。これまでの御議論の中で、例えば育児・介護休業法上の要介護状態の判断基準について、現在の介助の在り方に合わせた形で条件を検討する必要がある。介護休業は高齢者だけではなく、非高齢者 ( 子どもや障害者 ) も対象であることに留意が必要である。今後、対象として増加する層は高齢者であることから、高齢者に焦点を当てるべきなのではないかという御意見を頂きました。

 これに関連した現行制度は右側のポツです。法律上、「負傷、疾病又は精神上の障害により、 2 週間以上の期間にわたり、常時介護を必要とする状態」を要介護状態として規定しております。常時介護を必要とする状態の判断基準について、現在、解釈通達において規定しているところです。

 「経済的支援」としてまとめた部分です。これまでの御意見の中で、所得保障に関して、休業に対する経済的補填と、それに加えて介護サービス利用等にかかる負担に対する経済的補填の 2 種類があるのではないかという御指摘を頂いております。第 3 回、第 4 回では、○の 3 つ目以降になりますが、介護休業という制度に関して、所得が低い層の方にも十分生活が担保できる制度の構築が必要ではないかという御意見を頂きました。又は、介護費用の心配があるという課題に対し、介護休業時の社会保険料免除や、費用補助が考えられるのではないかという御意見を頂きました。年休を使うので、介護休業をそれほど使わなくてもいいというのは、年休の消化率を上げていこうという動きもある中で、年休の趣旨からして問題があるのではないかという御意見を頂きました。

 これらに関連して現行制度は、先ほども御紹介したとおり、要介護状態にある対象家族の同一要介護状態につき、 1 回の介護休業期間について、休業開始前賃金の 4 割が介護休業給付として支給されるという制度があります。

 介護費用の補助という御意見もありましたが、それに関連しては 2 ポツ目を載せております。法律上、事業主は、短時間勤務制度等の措置として、括弧内の(1)から(4)のいずれかを、介護休業した日数と合わせて少なくとも 93 日は利用できるようにしなければならないとなっています。(1)から(4)のいずれかが、(1)短時間勤務制度、(2)フレックスタイム制度、(3)始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ、(4)介護サービスを利用する場合、労働者が負担する費用を助成する制度、その他これに準ずる制度となっています。

4 ページで「その他」でまとめています。これまで、育児の場合は労働者が子育てに関われるようにする制度としているが、介護の場合は、仕事と介護の両立のために準備する期間であり、労働者が介護を抱え込まないための「介護準備期間」のようなものだという御意見を頂きました。これに加えて第 3 回、第 4 回の議論において、 3 つ目の○で、調査によれば、勤務先に介護休業制度がある、つまり就業規則等によってルールが定められているような場合に、継続就業している割合が高くなるという御指摘もありました。

 「 ( 就業規則等によってルールが定められている ) 」に関して、現行制度を右側で御紹介しております。ポツの 1 つ目として、育児・介護休業法上、介護休業は形成権であり、事業主の措置義務とはなっておらず、介護休業規定を設ける義務はないとなっています。その一方でポツの 2 つ目で、労働基準法上、常時 10 人以上の労働者を使用する事業所の事業主は、就業規則を作成しなければならないとなっております。その中で、例えば、休日・休暇等の、いわゆる絶対的必要記載事項については必ず記載しなければならない。この休日・休暇に関して、育児・介護休業法による育児休業、介護休業、子の看護休暇、介護休暇もこの休暇に該当することから、就業規則に付与要件、取得に必要な手続、期間について記載をする必要があるとされています。

 これに加え、育児・介護休業法上、事業主は休業中の待遇や、休業後の賃金等の労働条件に関する事項についてあらかじめ定め、これを周知するための措置を講ずるように努めなければならないと規定されております。これにより、常時 10 人未満の労働者を使用する事業所の事業主についても、育児休業や介護休業の規定を定め、周知するという努力義務を負っています。

 検討課題の (2) 「介護期の柔軟な働き方の充実」です。最初に「介護休暇」とまとめております。これまでの御意見として、○の 2 つ目で、ケアマネージャーが最低限必要な頻度で家族とコミュニケーションが取れるように、両立に関する制度を設計する必要がある。その際にケアマネージャーの負担やワーク・ライフ・バランスにも留意し、平日や昼間に面談等ができることが重要であるという御指摘を頂きました。

 第 3 回、第 4 回の議論の中では、 5 ページの○の 1 つ目以降ですが、介護保険サービスを利用するに当たり、家族も同席することが求められるプロセス ( アセスメント、モニタリング等 ) があるが、相応の時間 ( 半年に 1 回や、各 60 分等 ) を要し、実際には同席できていない実態がある。家族の対応が必要なのは、年 4 回+毎月 1 回、各半日未満ぐらいであると思われるという御指摘がありました。

 また、家族からケアマネージャーに対する相談として、要介護者が徘徊し、いなくなったであるとか、急遽仕事が入ったため、デイサービスからの受け取りができない等、急な対応に苦慮するという相談が見受けられるという御指摘がありました。

 介護に関わる対応は、突発的、短期間のケースが多いと。非常に大きく柔軟な働き方、例えば在宅勤務、半日・時間単位年休、半日・時間単位の介護休暇、短時間勤務など、こういう柔軟な働き方の充実が必要なのではないかという御指摘もありました。

 年休がフレキシブルに取得できる会社では、まずはそちらを先に使い、無給になる介護休暇は、年休を他の必要な休暇のために取っておくことのバランスを見て、最後ギリギリのところで使うというような現象が起きているという御指摘がありました。それに加えて 5 ページの一番下の○で、介護休業の分割も重要だが、 1 日単位で休暇が取れる介護休暇を増やすことも重要であるという御指摘もありました。

 こちらの現行制度として、 4 ページの下の右側の箱に、介護休暇について書いてあります。既に御紹介したとおりですけれども、要介護状態にある対象家族の介護、その他の世話を行う労働者は年に 5 日、 2 人以上であれば年に 10 日、 1 日単位で休暇を取得できることになっています。それに加えて対象家族の介護、その他の世話の内容ですが、(1)対象家族の介護、(2)対象家族の通院等の付き添い、対象家族が介護サービスの提供を受けるために必要な手続の代行、その他の対象家族に必要な世話、これらがその他の世話に当たるということが省令で規定されています。

 介護休暇の取得の手続をポツの 3 つ目に書いています。介護休暇は、休暇を取得する日や理由等を明らかにして、事業主に申し出る必要がある。ただし、介護休暇の利用については緊急を要することが多いことから、当日の電話等の口頭の申出も取得を認め、書面の提出等を求める場合は事後となっても差し支えないこととすることが必要であると規定されています。

 「介護のための柔軟な働き方に関する制度 ( 所定労働時間の短縮措置等、時間外労働の制限等 ) 」ということで 6 ページにまとめております。こちらは、これまで○の 1 つ目のように、いつまで介護が続くか分からない不安に対し、現行介護休業と短時間勤務を合わせて 93 日とされているが、切り離すことも検討すべきといった御意見が、これまでに頂いたものです。

 それに加えて、第 3 回、第 4 回においては 6 ページの真ん中辺りで、多目的に利用できる「ファミリーフレンドリー休暇」という、有給の休暇を介護を理由に取っている人が多い。一方で、介護休業や短時間勤務を取得するケースは少ないという御意見を頂きました。一方で短時間勤務について、電機連合加盟の組合においては 3 年間、あるいは事由消滅まで等、その期間を長く設定している組合もあるという御紹介を頂きました。再掲としておりますが、先ほどもありましたとおり、介護に関わる対応は突発的、短期間のケースが多いと非常に聞く。柔軟な働き方の充実が必要なのではないかという御意見も頂きました。その他調査によれば、介護休業制度に加えて、残業や休日労働を免除する所定外労働免除の制度がある場合は離転職割合が低くなるという御指摘も頂いております。

 こちらは現行制度としては右側で、先ほど御紹介したとおり、短時間勤務制度等の措置として(1)から(4)までのいずれかを利用できるようにする必要があるというものがあります。これに加え、ポツの 2 つ目は、いわゆる時間外労働の制限として、要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者が請求した場合には、事業主は 1 か月 24 時間、 1 150 時間を超える時間外労働をさせてはならないとされています。ポツの 2 つ目は、いわゆる深夜業の制限です。労働者を深夜 ( 午後 10 時から午前 5 ) において労働させてはならない。労働者が請求した場合に、この時間に労働させてはならないとされています。

7 ページの (3) 「その他」です。こちらは、「労働者に対する情報提供」ということでまとめております。その中で、これまで介護保険の制度に係る情報提供は重要であるとか、労働者が地域包括に事前に相談しても、事前に介護が発生してから対応すると回答を受けていることも多く、事前に介護についての教育をすることは非常に重要であるという御意見などを頂いています。

 これに追加して第 3 回、第 4 回では○の 5 つ目以降で、企業の中に介護の専門職による相談体制を築くことは、社員が会社にいながらにして相談でき、また介護の現場に企業・社員のニーズを伝えられるため、有効なシステムではないかという御指摘を頂きました。公的介護保険の仕組みが分からない、適切な介護サービスが受けられるか分からない、両立のための制度が分からないなど、情報不足を不安に思っている労働者が多い。それに対しては、プッシュ型の情報提供 ( 介護に直面する前の準備、介護が必要になったときの対応等 ) や、ロールモデルの提示、相談窓口の設置がよいのではないかという御意見を頂きました。それに加えて調査によれば、離職者に関し、介護休業を取得しなかった理由として、勤務先に制度がなかったという割合が高くなっており、労働者に法令上や企業の制度の存在がきちんと届いていないことの影響があると思われるという御指摘がありました。

 これらに関連して右側の現行制度です。ポツの 1 つ目については、第 1 回で介護保険の仕組みに関して説明していただいたときにも御紹介していますが、介護保険法に基づく「介護サービス情報の公表制度」において、都道府県がインターネットにより介護サービス事業所、施設の情報を提供している。これにより事業所の比較検討が可能となっているといった現行制度があります。御指摘の中で、勤務先に制度がなかったという割合が高くなっているところもありましたので、先ほども御紹介した就業規則に関連する内容を再掲しております。

8 ページで、「労働者のニーズ把握」ということでまとめております。これについても、これまでの議論の中で、企業において従業員の誰が介護の課題を抱えているかを把握することがまずもって難しい。辞めるときになって初めて企業が知ることもあるので、コミュニケーションの仕組みから議論する必要があるという御意見などを頂いております。第 3 回、第 4 回のヒアリングの中で、直接の上司にはいろいろ相談していると思うが、オープンにしたがらない話のため、実情やニーズが人事側には上がってこない問題点がある。企業による労働者のニーズの把握が、労働者自身の仕事と介護の両立のための制度などに対する意識を変えていくきっかけにもなるといった御指摘もありました。

 「労働者のニーズの把握」ということに関して、右側に現行制度としてありますのは、法律上、事業主は、育児休業の取得申出等が円滑に行われるようにするため、労働者の配置、その他の雇用管理、休業期間中の労働者の職業能力の開発及び向上等について、必要な措置を講ずるよう努めなければならないという規定が置かれています。これに関する指針上、「当該規定により育児休業又は介護休業をしている労働者の職業能力の開発及び向上等に関して必要な措置を講ずるに当たっての事項」として、「労働者の状況に的確に対応し、かつ、計画的な措置が講じられることが望ましいものであることに配慮すること」とされております。

 これに関連して解釈通達上、「計画的に措置が講じられること」というのは、労働者の状況に的確に対応するため、労働者数の多い事業所においては、介護休業する労働者の発生する数を未然に予測し、様々な状況に対応できるよう、多様な類型のプログラムを用意するとともに、弾力的に運用が可能となるようにしていくこと、というような関連する内容が規定されているところです。

9 ページで「ケアマネージャーの役割」ということでまとめました。第 3 回、第 4 回の中で、介護に関する主な相談者は、家族の次にケアマネージャーの割合が高く、その重要性が見て取れるといった御指摘を頂きました。家族支援の重要性を踏まえれば、仕事と介護の両立に関し、最低限の知識を付与するのが重要である。育児・介護休業法について知識を持ってもらうのも重要であるという御指摘を頂きました。

 これに関して、現状は右側ですが、これは御紹介を頂いたところですけれども、介護支援専門員の法定研修については見直しが行われ、平成 28 年度から新たな科目により実施されることになっております。このうち、次の各研修課程の演習の科目において、家族支援の指定が必要な事例を新設しました。専門研修課程 I 、専門研修課程 II 、更に主任介護支援専門員の更新研修課程の中に、家族支援の視点が必要な事例ということが新設されています。

 「その他」としてまとめました。○の 2 つ目で、介護休業という形を望まない場合に、いかに介護サービスで支えるかという論点になります。育児・介護休業法と介護保険等は、利用する側から見ると一体のものであるという実態に則して考える必要があるという御指摘を頂きました。在宅介護の場合と併せて、施設介護の場合に施設を探したり、入所した後で家族としてやらなければならないことという視点で考えることも必要ではないか。一方で、両立されたメニューは家族と企業だけではなく、施設介護もきちんと受けられるような仕組みにしていくことが必要ではないか。遠距離介護に関する不安については、ロールモデルの提示や、勤務地の配慮、移動等費用面での補助が必要なのではないか。仕事と介護で精神的にきついことが課題であり、メンタル面など、介護している人に対するケアや孤立を防ぐ取組等が必要なのではないかという御指摘を頂いております。以上が、仕事と介護の両立に関するところです。

2 は、「多様な家族形態・雇用形態に対応した、育児期の柔軟な働き方の充実」です。第 3 回、第 4 回の研究会では余り新しい御意見は頂かなかったと考えております。簡単に第 1 回、第 2 回で御議論いただいたところと、それに対応する現行制度を御紹介します。 (1) の育児休業の中で、「育児休業の分割取得」としてまとめております。育児についても分割取得の議論ができるのではないか。一方で、育児休業については現行、法定を上回る措置を導入している企業も多い。現行制度は、原則 1 回に限り育児休業をすることができるとされているのに加え、ポツの 2 つ目で、子の出生後 8 週間以内の期間 ( 産後休業の期間内 ) にされた最初の育児休業については、特別な事情がなくても再度の取得が可能となっております。

 「非正規雇用の労働者の育児休業」とまとめました。非正規雇用の労働者の育児休業の取得要件に関する御意見を頂いております。この中で所得保障と雇用継続はそれぞれ別の問題として考えられるのではないか等の御意見を頂いております。法律上、現行制度として、法律上は期間雇用者でも一定の要件を満たす場合には、育児休業をすることができると規定されていて、その要件は小さな文字で書いてある所を御参照いただければと思います。

(2) 「子の看護休暇」については、これまでの議論の中で特段御意見を頂いてはいないと思っております。現行制度は右側にありますので、適宜御覧いただければと思います。

(3) 「勤務時間短縮等の措置、所定外労働の免除等」です。男性の子育ての関わりを増やすためにも、勤務時間短縮等の措置、所定外労働の制限について、小学校低学年まで対象年齢を引き上げてはどうかという御意見を頂いております。勤務時間短縮等の措置等について、フルタイム勤務に早く戻ると継続就業ができない働き方を放置したままで制度として延長することは適当かどうかは要検討であるといった御意見が出ました。

 これらについて、育児に関する制度は右側に載せてあります。短時間勤務制度は、 3 歳までの子について事業主の義務である。あるいは介護と同じように、時間外労働の制限の規定がある。小学校就学前までの子について事業主の努力義務が、フレックスタイム制等々を図っているということを、右側のほうで御説明しております。

3 は、「男性の仕事と家庭両立の推進」が検討課題としてあります。この点に関しては、先ほど御紹介した産業競争力会議の決定の中にもあるところですので、是非議論を深めていただければと思っております。これまでの議論としては、男性の育児への関わりについては、長時間労働がネックとなっているという御意見を頂いております。男性が、保育園へのお迎えができる環境を整備する必要がある。多様な男性の子育て参加を進めることが重要であり、特に専業主婦がいる男性の子育て参加をどう進めていくのかが問題であるという御意見もありました。

 右側に現行制度として、いわゆる「パパママ育休プラス」として、両親がともに育児休業をするなど、一定の要件を満たす場合に、原則 1 歳から 1 2 か月までに育児休業期間を延長できるという制度があります。それらに関しては既に御説明したところですので、適宜御覧いただければと思います。

4 は、「その他」です。「転勤配慮」とまとめました。法律上の話かどうかは別として、育児期・介護期の転勤配慮について、現行の転勤の在り方を前提とした議論のみならず、現行の転勤の在り方そのものを含めて議論が必要であるという御意見を頂いております。

 現行制度では、法律上、事業主は労働者に就業場所の変更を伴う配置の変更を行おうとする場合に、その就業場所の変更によって子育てが困難になる労働者がいるときは、当該労働者の子育ての状況に配慮しなければならないという規定が既に置かれています。

 これに関連して、先日「まち・ひと・しごと創生総合戦略」が閣議決定され、その中にアクションプランというものが入っています。その中において、転勤については、まずは企業における転勤の実態を把握するための実態調査を行うことが記載されております。その中で、当該実態調査の結果を踏まえ、企業の経営判断にも配慮しつつ、労働者の仕事と家庭の両立に資する転勤に関する雇用管理のポイントを、 2016 年度以降 5 年後までに策定することが閣議決定文書の中で記載されています。

 長くなりましたが、御説明は以上です。

○佐藤座長 どうもありがとうございました。残った時間でまた御意見を伺いたいと思います。例えば 4 ページの左側の上から 5 行目、 ( 武石委員 ) というのは残ってるかな。皆さん、発言が、ちょっと趣旨が違う、どこを発言したか分からなくなっている、それはいいけど、そこから私の趣旨はこうだったというのがあれば先に伺って、その後もうちょっと強調したい、追加したいことがあれば伺いたいと思います。

○池田委員 すいません、簡単な誤植です。 2 ページの左側、上の箱の 1 行目、「 3 4 回を複数回」は「 3 4 日」。

○佐藤座長 すごく短くしてありますので、なかなかその辺難しいと思いますが、趣旨が誤解を招くということがあれば。

○石山委員 すいません、用語ですけれども、ケアマネジャーの表記がケアマネージャーになっているのですが、通常ケアマネジャーというように、ネの後はのばさなくていい。

○佐藤座長 いらないということね。横にのばすのは 1 個だけだと。

○石山委員 はい。

○佐藤座長 はい、分かりました。いいですか。それでは、余り時間が 20 分弱になりますので、どこからでも結構ですけれども、もうちょっとここを強調したい、こういうのは少し、今日、ここをもう少し議論したいでもいいですし、よろしくお願いします。

○神吉委員 ここの表でいうと 3 ページですが、「介護休業の対象となる要介護者」で、 2 つ目のポツのところは私が発言したところだと思いますので、これについて若干補足したいと思います。今回の研究会もそうですし、一般的に介護というものは両立の大きな課題となってきているという文脈で、高齢化が進んでいると説明をされることが多いと思います。これから高齢化を迎えて、高齢者として介護の対象となる方が非常に増えてくるという、 3 つ目の○はそのとおりだと思うのですが、法の制度設計が違うということはもう少し留意されてもいいのではないかと思います。その右側の欄で、「常時介護を必要とする状態」の判断基準についての解釈通達がありますが、この解釈通達では介護保険制度における要介護状態と必ずしも一致するものではないことがはっきりと言われております。続きまして、負傷、疾病又は身体上、若しくは精神状の障害とは、負傷又は疾病による場合、負傷又は疾病にかかり治った後障害が残った場合、及び先天的に障害を有する場合を含むと明記をされています。そうなりますと、結局、育介法の対象となる要介護者というのは、幼児期から青少年期、若年期、中高年期、老年期、全てにわたっているはずだということになります。諸外国の説明は今日いただいたところですが、家族介護ということで家族というもので線引き、年齢で線引きはされていません。また、イギリスに関しても、ケアというのはこれは全て含んでおり、実際に法の制度設計としては切れ目なくなっているということだと思います。それにもかかわらず、介護といった場合に、日本の場合、高齢者介護ばかりが念頭に置かれることで、幾つか問題が起きているのではないかと思いますので、 2 点ここで指摘したいと思います。

1 点目に関しては、高齢者介護である場合とそれ以外の介護である場合で、ニーズが違うのではないかということです。実際どうか分かりませんけれども、例えば考えられるのは、高齢者介護に関しては終末期が近い。育児と違って、いつ終りか分からないという指摘もありましたけれども、いつか終末期がくるということで、看取りが大きな問題となるというのは高齢者介護の特徴ではないかと思います。それが障害児である場合とは異なるのではないでしょうか。ですので、高齢者介護に適切なスキームというものが、その他の場合にも妥当だとは限らないというのが 1 点目です。

2 点目に関しては、高齢者介護がどうして社会的に注目されるようになったかということで、前回のヒアリングにもありましたし、今日の仕事と介護の両立モデルの説明にもあったのですが、働き盛りの男性労働者に影響が大きいという理由づけです。 40 代、 50 代、 60 代となると管理職であるし、社会的な損失が大きいということで、前回のヒアリングでは、そういった枠組みからすると、今までの「女性モデル」では限界があるという説明があったと思います。

 こういった論理に乗って高齢者介護を中心として取り上げるということは、逆に高齢者介護以外の介護は、「女性モデル」で対応できるのだからそれでいいといっていることと同じではないかと懸念します。管理職の男性が介護で離職することは社会的損失だけれども、生まれた子どもに障害があるような、キャリア形成期の女性が離職することは、これは社会的損失ではないのかといった問題を想起させると私は考えています。

 それから、労働法体系の中での育介法の位置づけについても申し上げたいと思います。本来,育介法の介護の対象者としては,先ほど申しましたように幼児期から老年期まで、全ての家族が対象となっています。それにもかかわらず、育児の幼児期と介護の高齢者という、ごく限られた、特殊なニーズを持つ労働者に対する特別な規制だと位置付けられることは、育介法の果たしうる役割に対する過小評価ではないかと思うわけです。この脇道整備的な位置づけは,本来の育介法の展開を阻害しているのではないかと思います。

 その他,情報提供のところで,介護保険と一体化されているのだから、介護保険の情報提供が大事だと議論されていますが、本当は療育に関する情報提供など、いろいろと対象になるはずです。、介護のうち高齢者介護のみを対象とする点は,ボリュームに着目すればそうかもしれないけれども、制度設計にとってはそれだけではないということを留意すべきではないかなと思っています。今のところ以上です。

○佐藤座長 今日はいろいろ意見を伺っておくことにしたいと思いますので、ほかにもどうぞ。今のように、もう少しこの辺を議論したらということでも結構ですので。

○武石委員  2 つです。 1 つは介護休業の法律ができたときは介護保険の仕組みがなくて、家族が介護するという世界の中で法律ができたと思うのですが、その後介護保険のサービスが充実してくる中で、どこかに書いてあるのですけど、介護サービスと一体となって連携した休業の在り方を、きちんと考えなくてはいけないのではないのかなということが全体の意見です。

 もう 1 つは、介護休業と介護休暇の関係ですが、前回、津止先生が介護はルーチンな対応と突発的、集中的に介護が求められるときがあるという話があって、多分ルーチンな対応だとこちらの介護休暇が非常に有効だけれども、最初に介護が発生した、症状が変わった、看取りというような、少し集中して休みが必要な時期が多分数回ぐらいあって、どういう時期に 2 つの制度を使い分けるのかというのを、少し意識した議論をしていったほうがよくて、 93 日を 2 つで分けましょうという考え方ですが、それぞれ休業と休暇の役割が違うような気がしますので、その辺りを少し峻別した議論が必要かなということを前回感じました。以上です。

○佐藤座長 ほかにはいかがですか。

○池田委員 介護に関して、神吉先生がおっしゃるとおり、例えば中高生の子どもが大病を患ったときにどうするかなど、いろいろなケースを法律の全体像として見失ってはいけないと私も思います。その上で、ボリュームゾーンとして、今、高齢者介護においても非常に使い勝手が悪いというか、なかなかうまく現場にフィットしていない部分についてそこに合わせていくというのは、人口構造上それはやはり軽視できない作業かなと思います。

 その上で、介護休暇の日数と介護休業の分割ということが、休む期間や日数の大きな議論になると思うのですが、常にこの問題を議論するときに問題になるのが、年休未消化分が日本では多いということですよね。つまり実際上、年休が当事者にとって非常に使い勝手がいいもの、よくできていることは否定しようがないと思います。その上で、さらに介護休暇という規定をこれからどのように考えていくかは、すごく大事な留意点だと思います。その上で、介護休暇も年休も、等しく不利益取扱いの禁止ということは言われていますということは、それはそういうことだと思うのです。正直、年 20 日の年休を、まるまる全部毎年使うということは、余り現実に想定しづらいという前提の下で考えるのか、それとは別に介護休暇をきちっと、例えば有給化するとか時間単位で取れるようにするとか、それ自体として充実させていくのか、それこそ当事者の、労使の御意見を伺いながら現実に沿った対応が必要かなと思います。

もう 1 つ一昨日、中里先生の御指摘があったところで、本当に私も何か刺さった物が取れたような気がしたのですが、パパママ育休プラスの扱いということですね。要するに夫婦のどちらかしか取れない期間が休業制度にあるということは、男性の取得にインセンティブになるということで、お母さんが取れる最大期間を超えて取れる部分がパパママ育休プラスの趣旨だとしたら、延長を 1 6 か月までしたら、さらに 1 8 か月まで延長できるというのが、要するにボーナス期間の、言葉の定義として捉えればそうかなと思うので、一昨日御指摘にあった延長規定を使ったら、パパママ育休プラスが延長期間に飲み込まれてしまうということは、どのように考えるのかは課題だと思います。具体的にどうこうするというのは後に置いておいて、宿題として残ったかなという感想を持ちました。

 あとは時短や残業免除の件についてもやはり同じだと思うのですね。夫婦どちらも取れるということになれば、現状においては女性が長くたくさん取ることになりますので、やっぱり男性が使えるということについて、要するにお父さんしか使えない期間や枠を考えていくのかは、一昨日の中里先生からの御指摘を踏まえた 1 つの宿題としてあるかなと思いました。

 それから、女性の継続就業は大事だという話が一昨日も出ましたけれども、そうすると有期契約の話が出てくるかなと思いますので、これはまだ議論の俎上に上ってないですけれども育休の議論をしていく、男性の育休のときに妻が非正規で働いていることを少し念頭に置いた議論が必要になるかなという、雑ぱくな感想ですが、以上です。

○佐藤座長 ほかにはいかがですか。

○中井委員 今、池田委員からもありましたが、介護休暇の日数の件ですけれども、確かに年休が全て消化されるというのは想定しづらい。実際として、ニーズといいますか使われている人数も少ないという中でどうするかは、非常に議論をしていかなければいけないし、難しい課題だなと思ってはいるのですが、この論点の中にも御意見がありましたが、両立の見通しを立てられるという意味では、やはり介護というのはなかなか先の見通しが立てられないといったことがありますので、そういったところの視点も議論の中で是非取り上げていただきたいといったところがあります。

 あと期間といった意味では、これも私が言っておりますけれども、短時間勤務と今合わせて 93 日、短時間勤務、若しくはそのほかの柔軟な働き方ではあるのですが、そこが一体で 23 日となっていますので、やはり先を見通せることでは日数をどうしていったらいいかも是非議論していただければと思っております。

 パパママ育休プラスですが、現場では実際なかなか周知されていないことがあります。どういうものかが、今の日本の環境の中ではなのかもしれませんが、理解をしにくい部分があるということがあります。やはり今、池田委員が言われたように男性の育児参加を本当に真剣に考えるのであれば、男性しか取れないとかそういったことも必要だと思いますし、それには非常に企業の理解が重要になってくるのかなと思う部分がありますので、男性の育児参加ももう少し議論ができればと思っております。以上です。

○田代委員  7 ページ目の情報提供の真ん中に、介護の専門職員による相談体制を企業の中で設置することが有効ということになっていますけれども、これは私が言ったのかどうか覚えてないのですけれども、先ほどの両立モデルで質問したとおりで、相談という言葉が余り企業側に全部負担がかかるような意味合いではなく、もちろんこういう体制を取ることは望ましいのですけれども、専門性が高くて個別性が高いので、そこには限界があるので、地域包括センターやいろいろな公的な機関との連携を構築していくことも重要である、そういうポイントも入れていただければと思います。

○石山委員 直接的に法律の作りとは関係がない部分ですけれども、高齢者の介護に関して申しますと、見通しが立ちにくいという意見がたくさん出たことと、介護休暇と介護休業の取得の仕方、普及というところで考えますと、高齢者の病気の発症から、介護の発症から看取りまでのプロセスというのは、ある程度疾患別でそのプロセスを示せるものがあると思います。ですので、この疾患の場合にはこのような経過を辿るので、こういったときには休業がいいとか休暇がいいというような、モデルを示すことによって見通しを持った取得の仕方ができるようになると思いますので、そういったものもまた一つかなと思います。

○神吉委員 先ほど武石先生と池田先生から出た、休業の分割でいくのか、それとも休暇を増やすのか、また有給にその休暇をしていくのかという話で、それがどれほど所得に関してプラスになるのかを、お金の出所との関係で考えていく必要があるかなと思います。企業にとっても有給でお金を払わなければいけないのか、無給でいいのか、それとも給付金で賄えるのかは大きいと思いますし、労働者にとってもかなり大きな意味があると思いますので、その違いですね。分割取得であればそれは当然給付金も分割できるという前提でないと余り意味がないと思いますし、そのパッケージで考える必要があるかなと思うところです。

○佐藤座長 そうしたら、私のほうから 2 つで、 1 つはケアマネージャーのことで、厚労省で一応要支援 2 までは在宅でというのは基本です。施設は要介護 3 というのが基本的考え方。要介護 2 までは在宅で、要介護 3 からは施設で。そうすると、もちろん初めから要介護 3 かなという人もいるわけですけれども、そうすると在宅となるとケアマネージャーの役割が非常に大事になってきて、調査でも相談先としてケアマネージャーの位置がすごく高いこともある。そうすると、働いて仕事と介護を両立させようとすると、いろいろな相談をケアマネージャーに持っていくことになる。他方で石山さんが言われたように、ケアマネージャーが要介護者の介護ニーズを把握するということは、それはちゃんとやらなければいけないのですけど、家族が仕事と介護を両立できるようなことのアドバイスという点でいうと弱いなという話もあったのです。そこをどうするかというのは結構あって、ですから、具体的に企業としてもなかなかそのアドバイスがしにくいので、できればケアマネージャーが仕事と介護の両立についても相談に乗ってくれれば、企業の負担もかなり減っていくこともあると思うのです。

 そういう意味で、 1 つはケアマネージャーさんにもう少し研修を受けてもらって、仕事と介護の両立についての勉強をしてもらって、お医者さんの産業医みたいな形で産業ケアマネージャーみたいなものを作るというのが 1 つあるかなという気がしています。ケアマネージャーさんに 2 週間とか 3 週間、少し勉強してもらって、両立についても相談に乗ったりアドバイスできるようなケアマネージャーが出てくれば、企業も例えば社内で研修をお願いしたり、そういうケアマネージャーさんに相談しなさいと言えたりするかなと思うのです。それは産業医というのがあるので、あるいはお医者さんが勉強してだと思うのですけど、それの資格を取って、そうすると、ケアマネージャーさんが勉強してもらって産業ケアマネージャーとするというのも 1 つあるかなと思いました。

 もう 1 つは、介護休業の取得要件で常時介護を要する状態をどうするかで、武石委員も言われたように、介護休業は介護保険制度ができる前にできたのね。だから、常時介護を要する状態というのは家族が介護をするということになったので、これをどうするかで、介護休暇のほうは施設を探したりするのもいいわけだよね。なので常時介護を要する状態というのを少し議論するのも大事かなと。例えば介護だけではないというと、実際お子さんが大きくなったような、例えばお子さんが不登校になります。そうすると両親かカップルでそれに対応したり学校の相談、いろいろあるわけですよね。実際上は非常に大きな課題ですけれども、結構難しいと思うのですが、何か常時介護をするというのをどう考えるのかは議論だけでもしたほうがいいかなと思っています。私からは以上 2 点です。ほかにはどうしてもということがあれば。何度か議論する時間があるかと思います。

○池田委員 今のお話でいうと、例えば高齢者でも単純に身体機能が特定の疾患と関わりなく落ちてくるということはあるので、そういう意味では疾病ということを結びつける定義が適切かどうかは時々私も思います。付け足しです。

○佐藤座長 それでは、まだまだ議論はあるかと思いますけれども、まとめたものに今日の議論を少し入れて整理していただければと思います。次回はまた、すいませんが池田委員から海外調査でドイツ、イギリスの介護休業制度の柔軟な働き方で御報告いただけるということですので、よろしくお願いします。

 それでは、事務局から連絡事項があればよろしくお願いします。

○中井職業家庭両立課長補佐 本日は誠にありがとうございました。次回の日程ですけれども、 3 20 日、金曜日、午前 10 時から 12 時でございます。それにつきましては、まだ調整中ですので、後日事務局から御連絡させていただければと思います。

○佐藤座長 今日は少し時間が過ぎましたけれども、ありがとうございました。これで終りにさせていただきます。


(了)
<<照会先>>

雇用均等・児童家庭局職業家庭両立課
電話 03-5253-1111(内7864)

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