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2015年3月19日 薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会 議事録

医薬食品局食品安全部監視安全課

○日時

平成27年3月19日(木)
10:00~12:00


○場所

中央合同庁舎5号館(厚生労働省)12階 
専用第14会議室


○議事

○山本部会長 それでは、定刻になりましたので「薬事・食品衛生審議会食品衛生分科会食中毒部会」を開催いたします。

 本日は、お忙しい中、お集まりいただきまして、ありがとうございます。

 本日、益子委員が少し遅れておられるようです。あと、賀来委員、中村委員、渡邉委員が所用のために御欠席です。

 また、参考人として、静岡市保健所食品衛生課・鈴木課長に御出席いただいております。ありがとうございます。

 次に、委員の異動がありましたので、事務局より御紹介をお願いいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 事務局の監視安全課食中毒被害情報管理室の梶原でございます。

 それでは、新たに委員になられた先生方を御紹介させていただきます。

 一般財団法人消費科学センターの工藤委員にかわりまして、同じく一般社団法人消費科学センターの雨宮委員が就任されております。

○雨宮委員 消費科学センターの雨宮と申します。よろしくお願いいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 それから、静岡県掛川市立北中学校の塩崎委員にかわりまして、山形県教育庁スポーツ保健課の齊藤委員が就任されております。

○齊藤委員 山形県教育庁スポーツ保健課の齊藤るみと申します。どうぞよろしくお願いいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 あわせて、事務局の異動がございましたので、御紹介させていただきます。

 食品安全部長に新たに三宅が就任しております。

○三宅食品安全部長 三宅です。よろしくお願いいたします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 企画情報課長に依田が着任しております。

○依田企画情報課長 依田でございます。よろしくお願いします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 HACCP企画推進室長に梅田が着任しております。

○梅田HACCP企画推進室長 梅田です。どうぞよろしくお願いします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 以上でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 それでは、議事に入る前に、事務局から配付資料の確認をお願いします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 お手元の配付資料を確認させていただきます。

 資料1 平成26年食中毒発生状況概要版

 資料2 平成26年食中毒発生状況

 資料3 安倍川花火大会で起きたO157食中毒について

 資料4 腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の早期探知・早期診断システムの構築

 参考資料1 腸管出血性大腸菌による食中毒の発生予防について

 それから、事前資料で別途追加されたものですが、

 参考資料2 食品への異物の混入防止について

 資料の不足等はございませんでしょうか。

 以上です。

○山本部会長 よろしいでしょうか。

 途中で落丁等にお気づきになられたら申し出ていただければと思います。

 それでは、議題に入りたいと思います。

 本日は、(1)として「平成26年食中毒発生状況」について御審議いただきます。

 それでは、資料1、2を用いて事務局から説明をお願いします。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 平成26年の食中毒発生状況を取りまとめましたので、御説明させていただきます。

 この食中毒発生状況の対象は、平成26年1月から12月までに発症し、食品衛生法第58条に基づき、都道府県知事等から厚生労働大臣に報告のあったものを取りまとめたものであります。

 資料2に沿って説明をさせていただきたいと思います。資料2をごらんください。

 めくりまして1ページ目には年次別食中毒発生状況を示しております。平成10年から事件数、患者数、死者数についての表になります。一番下の黄色い部分が平成26年の状況となっております。事件数でございますが、昨年同様1,000件を切りまして976件。25年と比べますと、45件、4.8%の増加となっております。

 続きまして、患者数でございますが、1万9,355人、平成25年と比較しますと1,447人、7.0%の減少となっております。患者数においては、昭和27年に統計をとり始めてから初めて2万人を切るということで、最も低い数字となっております。

 死者数でございますが、平成26年は2人となっております。詳しくは後ほど説明させていただきます。

 2ページ目をごらんください。年次別食中毒事件数と年次別食中毒患者数をグラフで示しております。上のグラフに関しましては、事件数でございますが、平成10年をピークに減少傾向があることがおわかりになると思います。下のグラフの患者数ですが、平成8年から平成12年までは4万人前後で推移しておりましたが、ここ数年は2万人から2万5,000人程度で推移をしております。特徴的なピークとしましては、平成8年の腸管出血性大腸菌O157による集団食中毒、平成12年の黄色ブドウ球菌による食中毒、18年のノロウイルスによる食中毒等々がございます。

 3ページ目から6ページ目につきましては、平成24年から26年、3年分の都道府県別食中毒発生状況を示しております。

 4ページ目以降ですが、全体のデータとは別に、患者数1人の事例が載っております。これは、カンピロバクターを中心とする1人事例を積極的に食中毒として取り扱われていることから別の表に示しております。

 7ページ目に移らせていただきます。患者規模別発生状況について示しております。平成24年から26年、3年分をグラフに示しております。1事件当たり1人から10人の事件が最も多く、患者数が多くなるほど事件数が少なくなるという傾向になっております。これは例年どおりの傾向を示しております。また、501人以上の事例は4件発生しました。これは後ほど詳しく説明させていただきます。

 8ページに年齢階層別食中毒患者数のグラフを示しております。例年どおりでございますが、2040歳代の年齢層が多いという傾向を示しております。26年は25年に比べて患者数は減少しておりますが、20歳未満の患者数については昨年より増えている傾向がございます。

 9ページをごらんください。先ほどお話ししました500人以上の事例を上の表に載せております。500人以上といたしましては4件発生しております。

 1件目は、昨年2月の食中毒部会で浜松市から説明をいただきました、学校給食で提供された食パンを原因とするノロウイルス食中毒であります。患者数は最大の1,271人となっております。

 2件目は、飲食店で調製されたキーマカレーを原因とするウエルシュ菌食中毒であります。弁当としては約1,700食を提供しており、900人の患者が発生しております。提供前日に調理したキーマカレーを適切な温度で管理しないで保管し、提供したことが原因であると報告を受けております。

 3件目は、仕出し屋が調製した三色丼弁当の鶏そぼろを原因とするぶどう球菌食中毒であります。741人の患者が発生しております。これも、夏休みに入ったばかりの時期にスポーツ大会などで提供された弁当で発生しております。

 4件目については、静岡市内の花火大会の露店で販売された冷やしキュウリを原因とする腸管出血性大腸菌O157食中毒であります。この事例については後ほど静岡市保健所食品衛生課長の鈴木課長から説明がありますので、省かせていただきます。

 その下の表にあります死者の出た食中毒事例は2例で、いずれも家庭で発生しております。

 1例目は、自然毒-植物性自然毒、野草のイヌサフランによるものでございます。

 2例目は、植物性自然毒-フグを喫食した死亡事例です。2例目については、患者が勤めていた飲食店で処理後廃棄されたマフグの肝を自宅に持ち帰って1人で喫食した事例でございました。

 次の10ページ目から13ページ目につきましては、月別の発生状況を示しております。平成24年から26年の3カ年を整理して示しております。10ページ目の上の段に事件数と患者数の一覧表を示しております。平成26年の事件数につきましては、1月が一番多く114件、3月が2番目で100件となっております。

 次に、11ページ目をごらんください。月別発生事件数を上の2人以上事例と下の1人事例と分けてグラフに示しております。

12ページから13ページにこの月別の病因物質の内訳を示しております。

12ページは、全体の病因物質名を示しており、26年1月では、病因物質としてはウイルス、いわゆるノロウイルス等によるものが最も多く、3月にはノロウイルスに次いでカンピロバクター等、細菌によるものが多いということがわかります。

13ページには、2人以上及び1人事例の病因物質別月別発生状況が示されております。1人事例には、7月がピークの細菌、カンピロバクター食中毒と、9月から増えてくる寄生虫、アニサキス食中毒が多く見られます。平成26年は12月に1人事例が多く発生していますが、一番多いのはアニサキスで、次に多かったのが自宅等で食べているフグのテトロドトキシンの食中毒でありました。

14ページには、月別の患者数発生状況を示しております。26年は1月の4,921人が一番多く、次いで3月の2,144人、7月の2,012人となっております。

15ページには、月別患者数を2人以上事例、1人事例に分けて示しております。2人以上事例は、14ページの全体と傾向が同様となっております。また、1人事例は、月別事件数と同数になりますので、同様に10月と12月は多く発生しております。

16ページには、月別の病因物質別患者数の発生状況を示しております。冬場にノロウイルスを中心としたウイルス性食中毒が多く、夏場に細菌性食中毒が多くなっております。26年1月の患者数は500人以上の食中毒で説明させていただきました、浜松市で発生した1,200人を超える食中毒事例を初めとしたノロウイルス食中毒がほとんどであります。26年7月の患者数では細菌性食中毒が多くなっておりますが、この3分の1以上は長野でのブドウ球菌食中毒と静岡市の腸管出血性大腸菌食中毒の患者でございます。

17ページには、2人以上事例と1人事例に分けて示しております。2人以上事例は、16ページの全体と同様の傾向となっております。また、1人事例については、13ページの事件数と同数になりますので、説明を省かせていただきます。

18ページをごらんいただきたいと思います。原因施設別の発生状況を示しております。一番左に原因施設の種類、その右に事件数、患者数を示しております。事件数で見ますと、最も多いものが飲食店の590件で、全体の60.5%、前年比7.5%増加しております。その次に、不明、家庭、旅館、給食施設を含む事業所、仕出し屋という順になっております。これは、平成25年とほぼ同じ傾向でございます。患者数についても、飲食店の1万264人、全体割合53.0%と最も多く、次いで、仕出し屋、旅館、製造所となっております。

19ページから22ページまで、原因施設別に見た事件数及び患者数の年次推移を示しております。

19ページには、主な原因施設別に見た事件数の年次推移を示しております。飲食店での事件数が最も多く、590件でありました。また、ここ数年の傾向である不明事例の減少とともに、全体的な傾向についても昨年と同様でありました。

20ページに1人事例を抜いたデータで年次推移を示しております。2人以上事例で示すと、原因施設不明と家庭の数が大幅に減っております。

21ページには、原因施設別に見た患者数の年次推移を示しております。事件数と比べると、仕出し屋、旅館が多くなっております。患者数で見ると、大量調理施設が多い仕出し屋、旅館での食中毒事件の場合、大規模化する傾向があることがわかります。また、25年に比べると製造所、販売所が多くなっております。製造所は、浜松市で発生したノロウイルス食中毒が含まれており、販売所は、静岡市で発生した腸管出血性大腸菌食中毒が含まれているためであると思われます。26年は学校を原因とした食中毒が10件と、ここ数年では少なかったため、患者数も減少しております。

23ページをごらんいただきたいと思います。原因食品別発生状況を示しております。最も多いものがその他となり、総数は453件、次いで魚介類、不明、肉及びその加工品、複合調理食品、野菜及びその加工品の順でございます。その他453件と説明をしましたが、444件につきましては、食事しか特定されず、食品までは限定されていない事例となっております。患者数につきましても、その他が最も多く、9,814人、次いで複合調理食品、肉類及びその加工品、穀類及びその加工品、魚介類という順になっております。

24ページから27ページにつきましては、原因食品別の事件数、患者数についての年次推移をグラフであらわしております。24ページでは、原因食品別の事件数年次推移を示しております。25年と比べると、肉類及びその加工品が35件増加しております。

25ページには、2人以上に絞ってグラフにあらわしております。24ページの全体と比べると、原因食品不明と魚介類が減っております。

26ページには、原因食品別の患者数年次推移を示しております。25年と比べると、肉類及びその加工品と穀類及びその加工品が増えております。肉類及びその加工品では、500人以上の事例で説明した長野県で発生したブドウ球菌食中毒741人などにより増加しており、穀類及びその加工品については、浜松市のノロウイルス食中毒1,241人の原因食品食パンであるため増加したものであると思われます。

27ページには、その患者数を2人以上事例に絞って示しておりますが、全体と同様の傾向になっております。

28ページには、病因物質別の発生状況を示しております。患者数ではカンピロバクター・ジェジュニ/コリが306件、全体割合31.4%、次にノロウイルス293件、全体割合30%でございます。3番目には、アニサキスの79件、全体割合8.1%で、その次に植物性自然毒の48件、クドアの43件、サルモネラ属菌の35件、植物性自然毒の31件の順になっております。患者数で見ますと、最近の傾向どおり、ノロウイルスによる食中毒の患者数が1万506人と最も多く、54.3%を占めております。次いで、ウエルシュ菌によるものが2,373人、全体割合12.3%、3番目に、カンピロバクター・ジェジュニ/コリによるものが1,893人となっております。細菌性食中毒の分類の中で、チフスの食中毒が1件、患者数18人発生しております。チフス菌による食中毒は、平成11年に食品媒介のチフス菌感染症を食中毒として報告するようになってからは初めての事例となっております。

29ページに主な病因物質別食中毒事件数の年次推移を示しております。毎年、カンピロバクター及びノロウイルスが多くなっておりますが、26年はカンピロバクター・ジェジュニ/コリが昨年比で34.8%増えて、ノロウイルスを抜いて一番多く発生しております。発生数はカンピロバクター・ジェジュニ/コリが306件、次いでノロウイルスが293件で、ノロウイルスについては10.7%減少しております。

30ページには、主な病因物質別食中毒事件数の年次推移を2人以上事例に絞って示しております。2人以上については、ノロウイルスが一番多く、次にカンピロバクター・ジェジュニ/コリとなっております。

31ページには、主な病因物質別食中毒患者数の年次推移を示しております。毎年、ノロウイルスの患者が突出して多いことがわかると思いますが、26年は昨年より22.1%減少しております。次に多いのはウエルシュ菌で、昨年より177.9%も増加しております。これは、先ほど500人以上の事例で説明した、京都市で発生したキーマカレー弁当を原因食品とする事例で900人の患者が発生しております。

32ページには、主な病因物質別食中毒患者数の年次推移を2人以上事例に絞って示しております。

33ページは病因物質別の食中毒事件数の年次推移を示しております。全体的に減少傾向でありましたが、カンピロバクター・ジェジュニ/コリが26年は増加しております。その他主な細菌については全体的に減少傾向であると思われます。

34ページは、病因物質(主な細菌)別食中毒患者数の年次推移でございます。25年に比べましてウエルシュ菌1,519人、カンピロバクター342人、ブドウ球菌623人増加しております。ウエルシュ菌につきましては先ほど触れましたが、ブドウ球菌についても500人を超える事例で説明しました、長野県で発生した鶏そぼろ弁当が原因の事例で、741人の患者数を数えております。

35ページ以降のグラフで示しておりますが、主な病因物質別に見た原因食品別及び原因施設別の事件数及び患者数の年次推移のデータとなっております。

47ページをお開きいただきたいと思います。47ページには、原因食品別腸管出血性大腸菌事件数の年次推移を示しております。肉類及びその加工品で14件となっております。これは、福島県で加工された馬刺しを原因とするO157事例と、北陸地方を中心としたステーキチェーン店で発生したO26事件等が発生しております。

 同じページの下段に原因施設別腸管出血性大腸菌事件数の年次推移を示しております。原因施設では、飲食店が21件と増加しております。これも、先ほど申し上げた事例等によるものと思われます。

49ページには、原因食品別腸管出血性大腸菌患者数の年次推移を示しております。肉類及びその加工品については、先ほどの福島県で製造された馬刺しを原因とする食中毒88人の患者が出ております。また、野菜及びその加工品の510人は、この後の議題でもあります静岡市の冷やしキュウリを原因とする食中毒事例が患者数510人であります。

 同じページの下段に、原因施設別腸管出血性大腸菌患者数の年次推移を示しております。同様に、静岡市の事例により販売店が増加しております。

 また、63ページから66ページにカンピロバクターの食中毒事例についてお示ししております。事件数、患者数は増えているものの、昨年と同様の傾向であると思われます。

 次に、67ページから70ページについて、ノロウイルスの食中毒事例についてお示ししております。カンピロバクターとは逆に、事件数、患者数は減少しておりますが、傾向は例年と同様であると思います。例年どおり、原因食品別では食事までは特定できておりますが、食品の特定には至らないという事例が多いため、その他が多いという結果になっております。

71ページには、クドアによる食中毒事例を示しております。クドアは、事件数43件と、昨年に比べて22件増加しております。患者数も429人で、昨年に比べて185人増加しております。下にサルコシスティスの食中毒事例を示しておりますが、26年は発生しておりません。

72ページには、アニサキス食中毒事例について示しております。アニサキスは、事件数79件と、昨年に比べて9件、10%ほど減少しております。患者数も79人で、昨年と比べて10人減少しております。

 平成26年の食中毒発生状況についての説明は以上でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局の説明に関しまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。いかがでしょうか。

○今村委員 意見ですけれども、非常によくまとめてもらっていて、よくわかるデータだと思います。意見というのは、ここ10年ぐらいを見ていると、食中毒の傾向が大きく変わってきているなということを実感しております。最初の10ページ、11ページあたりの月別推移を見ていてまず思うこととして、今まで食中毒というと、やはり夏場だったのですけれども、1年中起こっているという状態がしばらく来ておりました。ただ、ここ数年を見ていますと冬場のほうが多いのですね。今、実際に、公衆衛生をお医者さんに教えている立場として、今までどの教科書にも夏場が食中毒と書いてあるのですけれども、冬場が食中毒と書かなければいけないような数字的な状況になっておりまして、その傾向が随分変わってきているなというのはあります。

 もう一つ、大きく変わったなと思うところが、29ページ、30ページに食中毒の原因菌の欄がありまして、サルモネラとかビブリオの数が劇的に減ってきております。特にビブリオはほぼゼロになっています。10年ほど前までは、食中毒というと、夏場のビブリオ、サルモネラという組み合わせであったのですけれども、今、上位の5番にも入ってこないという状況になってきました。特にビブリオは本当に留意しなければいけないと言うことさえもはばかられるぐらい減ってきています。これは施策の成果だと思うのですけれども、世の中の傾向が、今まで思っていた傾向とこれだけ変わってきているので、そのことを広く広報していって、世の中の認識を変えてもらう必要があるのかなと思います。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 傾向が随分変わってきた。平成10年のとき、サルモネラや腸炎ビブリオがすごく多かったので、さまざまな対策をとったと。サルモネラは卵の対策をとって、腸炎ビブリオは、菌数とか、ゆでダコ、ゆでガニに見られるような冷却用の海水を滅菌海水にするとか、温度管理を徹底させたことが非常に大きな要因だったと思います。しかしながら、ノロウイルスとカンピロバクター・ジェジュニ/コリがどうしてもまだ残っているという状況なので、その辺は今後さらに対策をとっていかなければいけないのだろうと考えております。

 ほかに御意見、御質問等ございますか。

 石川先生。

○石川委員 毎年言っているのですけれども、資料1の概要版のところにまとめて書いてある内容ですが、全体としては過去最低となっているということでまとめられています。基本的には、私は報告の問題とか、この数字をどうやって持ってくるのかというところの問題があるので、今ほど言われましたサルモネラとかビブリオについてはそういうことが言えると思うのですけれども、国民的な立場から、これを予防するためにどうするかといったら、例えば29ページにカンピロとノロウイルスのどちらが多いとかいう数がありますね。今はカンピロとノロウイルスが競っているような感じに見えますけれども、臨床的にはノロウイルスがはるかに多いわけです。全く比べものにならないほど多くて、こういう事実をきちんと国民に知らせないと、いつまでたっても、食中毒が減ってきましたということは言えないと私は思っているのです。

 私たちは子供たちにも学校保健の立場で予防の手段をいろいろと教えたりしております。先ほど、学校保健会で作っているわかりやすいポスターを届けてくれました。お肉はしっかり焼いて食べようねと。こういうものを学校に貼って、若いときからの教育の中でこういうものをつくっていただく。こういうことを国民的にやっていかなければいけないわけです。そうしたら、今あるノロウイルスとか、そういったものに対して、正確な数を把握してどうしたらいいのかということを説明していかなければいけない義務があると思うのです。ですから、この年次推移についてはそういうものだということをここの概要のところにもきちんと書いていただきたいのです。報告の問題ということで、数字は報告が上がってきているものでありますよということですね。

 そうやって考えますと、例えば3ページを見ると、広島と、大阪、兵庫の数が県別で大変多いように見えますね。こういうのも、なぜかということはわかっている。大阪、兵庫、広島だけ多くて、真ん中の岡山だけすごく衛生的にいいかというと、決してそうではないわけです。そういうことを事実としてちゃんと伝えていかなくてはいけないと思っております。

 以上です。

○山本部会長 貴重な御意見、ありがとうございました。

 食中毒統計というのは、報告ベースということになっておりますので、年次推移という言い方で単純には見られない部分もあるかもしれません。しかしながら、一定の傾向として、皆さんの関心も高まってきているところがあると思いますので、さらにノロウイルス、それからカンピロバクターについての注意喚起は進めていっていただければと思います。

 ほかにございますか。

 どうぞ。

○砂川委員 感染研の砂川です。

 今の御意見と大体同じような印象ですが、基本は、やはり報告感度の問題というのが自治体によってかなりあるだろうと思いますので、そういったあたりは考察に含めるべきだというのは全く同感です。食中毒統計が、恐らく歴史的な経緯もあって、継続性というのが非常に重要な報告でもあるということで、全体の枠組みを大きく変える必要があるかどうかというのはまたちょっと違う議論になるだろうと思うのです。例えば1例のみの問題が多いアニサキスとか、そういったものが、例えば他の集団のもの、2例以上、1例のみとで何とか分けようとしているところで工夫されている点というのはわかるのですけれども、これが混在してしまっているということは、集団の問題と個々の問題とがちょっとごっちゃになっているということとか、そういったところも感じますので、そういった意味で、先ほど出ているような、単純に減ったという形の結論のみで喜んではいられないだろうというところが非常にあります。

 私が関係している研究班でも、それぞれ出ている患者さんのカンピロバクターであるとか、サルモネラとか、ビブリオもそうですが、恐らく数十倍の推定患者数は確実にいる、そういった推定などもありますので、リスクコミュニケーションの方法としては気をつけて情報伝達をしていただく必要があるだろうと思います。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございます。

 通常、報告ベースの10倍から100倍ということはこれまでも言われておりましたけれども、その辺は研究班のほうでまたさらに進めていただいて、明らかにしていただければと思います。

 ほかに。

 どうぞ。

○五十君委員 食中毒の原因施設別のデータが19ページにあるのですが、傾向としては、ここ10年ぐらい飲食店が非常に多いということが変わっていない、ずっと維持しているということに関しては、改めて少し検討しなくてはいけないと思われます。今後、減らしていくということになると、どうしたらいいかという対応を考えていかなくてはと思います。

○山本部会長 ありがとうございます。

 今年の4月からになりますけれども、管理運営基準にHACCPの選択型を導入するということで、その方向で飲食店のほうも考え方をどんどん新しくしていっていただければと思います。行政側としても、その辺の指導をこれからも続けていく必要があるだろうと思っております。

 ほかに。

 先生、どうぞ。

○石川委員 済みません。ちょっと細かく、原因のほうに絞っていきたいと思うのです。

 例えばノロウイルスで、場所別に原因施設別ということで出ているのです。年次推移でいきますと、69ページの下のほうです。このようなことになっていますけれども、実は、ノロウイルスの場合には、老健施設では集団的に毎年流行っている場合もあります。問題は、これを食中毒と言うかどうかということなのです。例えば、1日のうちに10人ぐらい一気にばっと症状が出たりすることもあるのです。保健所の方にも毎年注意されて、毎年のように起こることもあるわけです。その度にきちんと報告もしています。しかし、ここは食中毒の扱いにはなっていないのです。これは恐らく、施設のそのようなところでのものは食中毒とされていないかどうかということだと思うのです。ヒト-ヒト感染だとか、そのようなこともあるからだと思うのですけれども、その辺のところが気になります。

 例えば家庭ではどうなのか。家庭でのノロウイルスも一家中なったりすることもありますし、実際、私などは臨床的に多く経験します。そういうのは食中毒と言えるか言えないかということもありまして、ノロウイルスというのは判断としては非常に難しくなってくる。ここら辺のところはどのように考えていくかのということを気にしないと、ちゃんとした統計にならないのではないかと思っております。

○山本部会長 益子さん。

○益子委員 川崎市宮前保健所の益子です。

 私ども、現場で指導する職員、監視員などが、ノロウイルスに関しては、環境汚染もありますし、また、ノロウイルスが環境汚染から発症するというのも業者が非常によくわかっていますので、食品由来だというようにこちらが考えても、トイレで吐いたとか、その人によるものだとか、その吐いている人はノロウイルスは陰性だったのですけれども、それでも、検査が遅れたからその人はなっていなかったので、食品ではないとかと言って、非常に抵抗する業者もおります。

 また、従業員からノロウイルスが出ても、遺伝子検査までしないと、実際に本当に合っているかどうかということも、提供したものだということも言えなくなって、現場はノロウイルスに関しては非常に気を遣うというか、大変な思いをしています。

○山本部会長 御意見ありがとうございます。

 よろしいですか。

 どうぞ。

○竹内委員 保健所の立場から言わせていただきますと、ノロウイルスの関係につきましては非常に微妙な問題があると思います。その中で、やはり統計というものを重視してやっておりますので、何かを食べた後に急激に何時間後にたくさんの方が発生しているということになれば食中毒ということでやっておりますし、だらだらと続いていくことにつきましては、感染症というような方向でやっております。その点につきましては、保健所等ではシビアに考えてやっておりますので、そこらあたりも少し考えていただいたらとは思います。

 以上です。

○山本部会長 石川委員。

○石川委員 先ほど私、1日のうちに一気に10人ぐらい起こると言ったその原因が、食中毒であるか、どなたか最初の方の吐物があってそれが拡散したのか、この区別がつかないということなのです。ですから、発生するのがだらだらしているかとか、一気に出ているのかということだけではノロウイルスの場合には判断できないと私は思っているのです。その辺のところが保健所の方とは見解が全く違うと思っています。

○山本部会長 竹内委員。

○竹内委員 済みません。反論というわけではございません。

 この間、うちのほうでも食中毒の症状のようなものがあったのです。最初に吐いた方がいらっしゃって、司会者とか、そういう方に吐物が散って、食中毒かどうかという事件があったのです。その吐いた方も調べましたし、その周辺の方も調べて、施設の調理場とか調理人の方も調べたのですけれども、その吐物が原因ということで、食中毒ではないというようなこともつい最近ありましたので、全て吐物がというわけではないのではないかとは思います。

○山本部会長 この場で議論が尽きるとは思えないので、いろいろな事例がありますけれども、それについての考え方を少し整理していく必要があるのかなとは思います。ただ、今まで統計のとり方というのがそういう報告ベースでとってきていますので、その辺をいきなり変えるのも食中毒統計としてはやりにくいところがあるのかなという気がします。

 事務局からの意見は何かございますか。

○滝本監視安全課長 ノロウイルスについては、当然、ヒト-ヒト感染もありますし、食品を介しての感染も当然考えられます。食中毒になると、行政上、営業停止だとか営業禁止だとかいう行政処分が当然かかってきますから、そのあたりは保健所のほうで、先ほど竹内委員もおっしゃったような疫学的な調査だとか、いろいろな証拠を積み上げて食中毒というように断定をされているのかなと考えております。

 いずれにしても、どういうところに原因があったのかということをきちっと究明していただくというのが食中毒の再発防止につながるのではないかと考えております。ノロウイルスが出たからすぐ食中毒、あるいは感染症だということではなくて、緻密な原因究明が必要なのかなという感じはいたしております。

○山本部会長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○今村委員 今のノロウイルスの議論ですけれども、食中毒対策としては、今しっかりされていると思うのですけれども、これは感染症としての側面が非常に強いものだと思うのです。この委員会でも何度か言わせていただいていますけれども、本来、感染症としての対策がノロウイルスに対してもっととられていないと、食中毒面だけを防いでいても、感染症としての対策が後手に回ってしまって、食中毒としての対策を一生懸命されているのはよくわかるのですけれども、感染症としては非常に甘い対策になっている。数としても十分に把握されているかどうかもわからないという状況だと思います。O157が感染症の予防法に位置づけられて就業制限までかかっているわけなので、そういったこと等を考えるとちょっとアンバランスだなと思います。その部分というのがちょっと問題かなと。

○山本部会長 石川委員。

○石川委員 ですから、これは集団でいるところ、特に保育園、幼稚園、学校、それぞれに「予防すべき感染症」というような冊子を文科省と厚労省で作って、そこにはノロウイルスの吐物の処理の仕方だとか、そういったことをきちんと入れ込んで、皆さんに見ていただいているということです。

 それから、私たち医者のところですけれども、野田委員がいらっしゃいますが、野田委員の御協力も得て、全国的に感染症としてのノロウイルスの処理の仕方、啓発の仕方について、野田委員の言う糞口感染、指の先についた便をコップに溶かすと何匹ウイルスがいるとか、それがお風呂の水だったら何匹になるのだとか、そういうリアルなものを私たち医師会は全部ばらまいて、手洗いの大切さとか、そういったものを啓発しているわけです。そういうことをやっていかないとノロウイルスは減らないかなと思っています。

 もう一つは、実は飲食店の方にとってこれは死活問題になるというのはもう明らかなのですけれども、実はちょっと症状があっておかしいので、どうしてもやってくださいと言って、自費診療になるのですが、検査をされる方が増えています。PCR法でやりますと、これが大した症状がなくてもプラスになります。その方はお休みするわけですけれども、いつまでお休みしたらいいか、またわからないのです。ノロウイルスというのは、突き詰めていきますと、ちょっとした社会問題になりそうなことがあります。そういう点で、当局もこのことについてはしっかりと対策を打っていただきたいというのが私の希望です。

○山本部会長 ありがとうございます。

 寺嶋委員、どうぞ。

○寺嶋委員 ノロウイルスの議論がちょっと盛り上がっているところで別の話題になって恐縮ですが、たまたま2014年に大規模な事例が紹介されていますので、少しコメントをさせていただきたいと思います。

1990年代には、御存じのように、学校給食等で数百人規模の集団発生が多発したわけですが、最近は余りなかったと言っていいと思います。先ほど委員の方からコメントがあったように、施策が有効になって、サルモネラやビブリオの食中毒が減ってきています。また、実際に大量調理施設では、最近はHACCPの管理で施策的に注力されていることかと思いますが、去年の例でも、ウエルシュ菌やブドウ球菌等々、昔からあるオーソドックスなタイプの細菌性食中毒というのが発生するということから、そういう大量調理施設等に対する地道な管理や指導が継続的に行われていないと、こういうことが、1990年代に比べると減りましたが、やはり起こるのだという認識が

必要かなと思います。

 昨今は、こういうオーソドックスな食中毒菌だけではなく、きょうお話があるかと思いますが、腸管出血性大腸菌等を含めたいわゆるディフューズアウトブレイクのような形で見つかる。施設的に単一ではなくて、非常に広いところで起こるような食中毒も探知する。このような広域食中毒を探知する努力はされていると思います。一方で、繰り返しになりますが、大規模食中毒は大量調理施設で起こり得るのだということはもう一回振り返ってみないといけないかなと思いますので、ちょっとコメントさせていただきました。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ちょっと戻りますけれども、ノロウイルスについては、感染症部局との連携もとりながら進めていっていただければと思いますので、よろしくお願いいたします。

 腸管出血性大腸菌とか、菌の場合にさまざま変わってきているような状況がありますけれども、特に死者の出る腸管出血性大腸菌については、今後さらなる対策が必要かということで注意喚起していただいたということですね。

 ほかに御意見ございますか。

 どうぞ。

○石川委員 今度はノロウイルスではないのですけれども、先ほど馬刺しで腸管出血性大腸菌と言う話がありました。これは山本座長の生肉のところでは、馬刺しでは腸管出血性大腸菌というのは注意マークは出していないのです。これが詳細にわかったら、コメントしていただきたいということ。

 もう一つ、クドアが生けすの問題だということはもう原因がわかっているわけです。ところが、蓋をあけてみたら、このような事例が結構あるということで、生けすの対策についてはどのようになったかというのを教えてもらいたいのです。

○山本部会長 事務局、よろしいですか。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 馬刺しの食中毒について福島県から報告をいただいているものでは、馬の入ってくる農場が別々の農場であって、1つの屠畜場で、それは馬と豚の屠畜場なのですが、そちらで処理をされたものを馬肉の専用の加工場で処理をしているということです。汚染の実態でいうと、現在のところ、農場とか屠畜場での腸管出血性大腸菌は馬肉と馬の便等からは確認されていないと聞いております。製造工場で何らかの形で持ち込まれて、製造工場、いわゆる馬刺しの加工場で汚染されたものが2日間ぐらいの製造日にあったのですけれども、それが全国に広がったと見ております。

 それから、クドアについては、現在、国内の養殖場は対策が進んでおりまして、さかのぼり調査をしたところ、国内の養殖場に結びつくものは大変減っているという傾向にあります。しかし、輸入物の養殖物ではいまだに発生しているものもありますし、当然、さかのぼり不明というものもありますので、その辺の調査を十分に行い、関係部局と協力をしながらその対策を練っていくと思っております。

○山本部会長 よろしいでしょうか。

○石川委員 だけれども、馬刺しはかなり重大な問題だと思うのです。これは、山本先生、コメントを。

○山本部会長 基本的に馬が保菌している形ではないということで、処理をきちっとしていただければ、馬肉に汚染が拡大するということではないと思っています。ただ、今回の事例のような途中の加工工程において入ってくるということは十分あり得ますので、その辺のところの注意喚起ですね。生食用として用いるときには、そこの衛生状態、環境の衛生を徹底的にするというようなことで注意喚起していただければなという段階だと思っております。

 よろしいでしょうか。ほかにございませんか。

○五十君委員 追加のコメントをさせていただきますと、牛の議論の中では、もともと牛自身にいる腸管出血性大腸菌が原因となって発生している可能性が非常に高い。それに対して、馬自身の汚染実態は海外を含めて非常に低いレベルにあって、馬では食材自身から持ち込まれることによる生食のリスクは非常に低いだろうという議論がありました。加工の途中、いわゆるクロスコンタミネーションについては、恐らく今回の事例が初めてのことでありますので、当時の生食の議論に関して言えば特に問題はなかったということで、今後はむしろ加工工程のクロスコンタミネーションをどうやって防ぐかという対策が重要ではないかと思います。

 以上です。

○山本部会長 よろしいでしょうか。

 それでは、時間も過ぎてまいりましたので、資料2の関係の食中毒の発生についてはこれで閉めたいと思います。

 続いて「安倍川花火大会で起きたO157食中毒について」、静岡市保健所食品衛生課・鈴木課長から御説明をお願いいたします。

(鈴木参考人説明者席へ移動)

○鈴木参考人 静岡市保健所食品衛生課長の鈴木と申します。提供は昨年7月、患者数が出始めたのが8月ということで、静岡市で行われた花火大会におけるO157による食中毒について御説明させていただきます。よろしくお願いいたします。

PP

 まず、事件の概要、もしくはその時系列について説明させていただきます。

PP

 原因食品の提供日、提供場所は7月26日、安倍川花火大会での会場の露店ということになりました。

 発症日になりますけれども、初発の発症患者、全体を調べた後での統計となりますが、次の日の7月27日の方が最初に発症を認めております。この方はO157が検出されております。

 患者ですけれども、静岡県内がほとんど。他県からの方も何人かいらっしゃいます。

 原因食品を提供した者の人数は、ちょっとわからないといいますか、幾つ売れたといった明確な数はわかりませんので、提供食数に関してはわかりませんでした。幸いなことに死亡者はおりませんでした。患者数としてうちが把握しているのは510名。うち入院患者が114名という形で確認しております。これは病院調査なので、正確に114人かはわかりません。

 原因食品ですが、冷やしキュウリと断定しております。それは後ほど説明させていただきます。

 病因物質としては、腸管出血性大腸菌O157VT1及び2産生)となります。

PP

 まず、事件の探知になります。

 8月1日金曜日、ですから、提供してから1週間ぐらい後になりますでしょうか、7月31日の夜間の救急で子供たちが搬送されて来ましたということです。その患者さんたちは、下痢、血便、嘔吐等の胃腸症状を出していて、うち4人が入院、簡易キットの結果、陽性であることが判明しました。

 それから、病院では一応さかのぼりの喫食調査もやっていただきまして、入院された4名に関しましては26日の花火大会で冷やしキュウリを食べているというところまで、8月1日の段階でうちのほうに情報提供がございました。

PP

 これから時系列に入ります。

 まず、8月1日、今言いましたように、11時ちょっと前ですけれども、救急病院から電話がございました。下痢、血便、嘔吐、胃腸症状を呈して入院している患者が4名、O157の迅速キットにて陽性。当該患者は、26年7月26日に開催された花火大会の露店で販売された冷やしキュウリを共通に喫食しているという情報を得ているという形のものが、まず、病院からの第一報でした。

 うちとしては、直ちに当該患者の聞き取り調査に行くと同時に、当初は考えられなかったのですけれども、もしこれが冷やしキュウリだとすると、集団発生等が当然予想されることになりますので、差し当たり、静岡市内において、少なくとも1つの消化器症状を呈している者、下痢、腹痛、血便などということで管内の医療機関、全ての病院というわけでもないのですけれども、大きな総合病院等に関しまして調査を開始いたしました。その結果、ほかの医療機関においても多数の症例が確認されておりまして、聞き取り調査の結果、いずれも安倍川の花火大会で冷やしキュウリを喫食していることがわかってきました。また、病院でO157が分離された菌株の提供を受けまして、この菌株を当市の研究所に搬入して、VTの産生の確認をお願いしてあります。

 次、8月2日になりますが、提供された菌株よりO157:H7であること、VT1、VT2産生菌との報告を受けております。患者検査も進み、おおむね30人程度で一旦切らせていただいて、統計調査をやってみようということで、まず、30人近辺の調査が終わったところで集計に入っております。26日以前に発症した症例はなく、27日以後に集中していること、アウトブレイクの可能性もあるということで、8月2日、情報提供から次の日になりますが、冷やしキュウリを原因とする食中毒として第1回目の報道提供をいたしました。午後になりまして、業者から第1回目の聞き取りを行っております。

 その後の調査で、8月3日には冷やしキュウリの提供者が特定されましたので、当該提供者、花火大会駐車場で加工してきた商品を2カ所の店舗で売ったということが判明いたしました。

PP

 8月4日になりますと、業者より使用器具の持ち込みをお願いして、ふき取り調査を実施しています。従事者の保菌検査の協力も同時にお願いしました。

 8月6日、静岡市健康機器管理対策本部が設置されました。

 8月11日、営業者から第3回目の聞き取り。このときにはもう弁護士が入っておりまして、かなり裏打ち合わせができたような感じでの聞き取りになってしまいましたが、3回目の事情聴取を行いました。ですから、第2回目にやった聞き取りの内容とは結構違った内容が含まれていることも事実でございます。

13日になります。従業員からの聞き取りも実施しました。これはあくまで個別という形で実施させていただきました。作業中は基本的には手を洗い、と言ってもペットボトルの水なのですが、手を洗い、アルコールスプレーを使用し、ビニール手袋をして作業をしたと。聞き取り内容にはそういう形での一貫性がございました。ちょっと微妙なところですけれども、一応、聞き取りでは、個別にやった割には、皆さん、その部分はそのように供述していただきました。

 作業は、冷房を効かせた車の中、ライトバンの中で全て行っていたという傍らで、実際、水受けのバケツがない状態。では、ペットボトルの水はどうなったのかというと、よくわからなくて、結局は窓を開けたままやったのではないかということも想定されるような供述内容ではございました。

 8月15日、調査結果に関しまして公表を行っております。

PP

 患者の調査状況になります。

PP

 これは第一報時点、おおむね30人ということで出した統計になります。症状的には、皆さん共通しておりまして、平均の喫食が冷やしキュウリのほかに何を食べたかということになりますけれども、平均して3.3品目ぐらいの食品を露店では食べていると。ただ、そのうち4名だけ、キュウリしか食べていないという方もいらっしゃいました。この方は患者になります。

 キュウリの販売店舗というのは、営業者が同じ2店舗。先ほども言いましたが、車で調理して、それを2カ所に分けるという販売形態をとっていたことになります。

 発症者は、冷やしキュウリの喫食は共通しているのですけれども、それ以外に何かの喫食があるという方が結構多く存在しました。有症者のみの調査しか進んでいない。発症していない方は保健所に相談にも来ないものですから、有症者のみの喫食調査が主になってしまったということで、キュウリを食べていなくて、ほかのものだけを食べたという形での調査の数が集まらないで、統計を処理するのには非常に困難な状況ではございました。

 済みません。レモネードについては記載に誤りがございます。レモネードを飲んだけれども、非発症しているよという方がいなかったもので、0.5を足したのですが、ちょっと計算間違いでその数字は全部違っていまして、1を全部入れた形で直してあります。これは0.5で、例えば食べた人のレモネードを飲んだ6というところに0.5は足していないものですから、数字は全部変わってきます。ですから、一応、左から6が7、次が1、それから、飲まないで発症25、非発症11、カイ二乗が0.31、点推定値が3.0895%信頼区画0.3428.1というように訂正させていただきます。基本的にこの部分があろうがなかろうが、ある程度これでキュウリに絞れたということになります。

PP

 症例の定義になりますが、7月26日の花火大会に参加し、最初の段階では7月26日から8月16日の間に少なくとも1つの胃腸症状を呈したということで、これ以降に関しましては、こういう方を今回の患者という形でまず情報を集めてございます。

PP

 症状になりますが、表に示すとおりでございまして、典型的なO157の症状とほぼ一致するという状況にございました。

PP

 発症時期になります。グラフのように、30日と31日は1人しか違わないのですけれども、ほぼ7月30日もしくは31日をピークとするような一峰性を示しております。患者に関しまして女性が多いということはあるのですが、これは女性のほうがたくさん買ったのか、それとも女性がかかりやすかったのか、ここら辺に関しては全体像が見えませんので確定はできませんが、発症者としてうちが把握しているのは女性のほうが多かったということになります。

PP

 これが、最終的に510人出そろった段階でもう一度喫食状況調査を表として出したものになります。この表を見ていただいておわかりになるように、これはレモネードがちょっと消えていますけれども、もう完全に冷やしキュウリに限定されるというような結果になっております。

PP

 発症者は、2店舗で出ております。つくったところは1つのライトバンということなのですけれども、2店舗で販売していたのです。その店舗の片方に偏るということはございませんでした。それと、つけ合わせにマヨネーズとか、みそとか、塩をお客さんがつけるということだったのですけれども、そこのところにも大きな差は。どれをつけても発症者がいるということになりましたので、冷やしキュウリ自体が汚染されていたということの証明と考えております。

PP

 施設の状況調査になります。

PP

 これは花火大会の会場の地図になるのですけれども、臨時駐車場といっても、露店業者用の臨時駐車場の部分の一角を使って調理行為も行ったことになります。店舗との距離はおおむね500メートル程度離れたところに車をとめて調理をしたということになっております。

PP

 調査で最も問題だったのは、やはり情報の探知が販売からもう1週間たっていて、病院から通知が行ったのが1週間弱たっていた。それと、機材自体は自分のものなのか、それとも露店商から借りているのかもよくわからない。多分、所有物ではなくて借り物である可能性が高くて、原材料等の購入伝票等についてはもう捨ててしまってない。製造工程などというのは、もう現場復帰などは全然できないものですから、聞き取りによって頼るところ。それしかうちはできる状況になかったものですから、どこまでが事実かというのが非常に怪しいものがあるということで、現在でも、本当かなと。でも、弁護士のついた最終工程であり、事実という形で今回は記載させてもらってあります。

 キュウリなのですが、どこで販売したとは本人は言ってくれたのですけれども、その伝票は捨ててしまいましたと。それから、販売店側も、その日のその人に対する売り上げはないと。このお店というのは毎日何十箱も買うようなお店ではなくて、1週間のうち何十箱など売れることはないものですから、その近辺で、その方とは証明できなかったのですけれども、大量に売ったものはありますかというと、前日の日に結構売っていたものですから、90箱ぐらいを一括で買っていった人がいるというので、その辺の可能性が高いなということで、さかのぼりもやらせてもらいました。一応、卸売業者2社通っているのですけれども、産地A、産地Bの混同品が市内の販売店、そこから営業者のほうに渡ったと考えております。

PP

 これが作業工程図ですけれども、これに関しては、聞き取り自体は3回やっております。ところが、3回とも言っていることがかなり変わっているところもございまして、ここに載っていたのは、最後、弁護士が入って最終的にこのようにやりましたと。あと、従業員さんたちの聞き取りも含めまして、最終的に向こうが言っていることというような形でまとめられたものになります。

 あとでまた出てきますが、作業員の中の1人がO157の有症者でございました。この方に関しましては、販売にしか従事していない、製造には一切関与していないという聞き取り内容になっております。

PP

 これは本人と従業員とはちょっと違ってくるのですけれども、キュウリを洗うとか、手を洗うとかというのは車内でできっこないものですから、本人だけなのですが、車の冷房をがんがん効かせてずっと作業をしていたと言っていますが、現実的に従業員さんたちに水はどうしたのかと聞くと、ドアをあけたところで1人の人が水をじゃーっと流しながら、その下で手を洗っていたと言うので、多分そちらのほうが真実に近いのかなと考えております。ですから、一応、うちのほうとしては、作業は車のドアをあけた状態で行ったと。洗浄に関してはミネラルウォーターを使用したとのことであります。それから、串刺しまでは販売者が行い、つけ合わせはお客さんにやっていただいたというような内容になっております。

PP

 これが写真です。ただ、1週間前のものではないものですから、この現品というのは市場のところでこんな格好で物を売っているのだと。営業者さんは1箱に50本ぐらい入っているものを買ったのだということなものですから、こんな格好かと。両端を切って、ちょっと皮をむいて、串を刺しただけで売っているというものですから、こんな感じかなというイメージの写真と思ってください。

PP

 これが現場で使用されたと言われている道具です。ただ、この道具に関しましても、本人の自宅で確認できているわけでもなく、本人の自宅には倉庫もないという状況で、持ってきたときにはこれだと言っておりましたが、本当にこれを使ったかどうかというのはクエスチョンマークがつくところではございます。

PP

 本人いわく、ミネラルウォーターを使ったということですが、ミネラルウォーターは安売りの広告を見ながらしょっちゅう買ってきておいたので、銘柄などは全然覚えていないということでございました。

 それから、ここにあるのが一応アルコールスプレーと本人が言っているもので、実際、物を持ってきてよと言ったときに持ってきてもらったものでございます。商品名も伝票にはありませんし、全量捨ててしまったと言うものですから、これを使ったとそのときに確認したものになります。そのアルコールスプレー自体は、成分的にはアルコール成分60%、アルカリ電解質を10%含有の商品で、この商品に関しては、作業前に車内を全部それで噴霧しました、それから手洗いの後も手にそれを噴霧しました、調理器具に関してもこれを噴霧しましたと。ただ、洗剤がないものですから、洗って洗浄したということはないので、やった殺菌といっても、基本的にスプレーを噴いただけ。それと、商品自体にスプレーをかけたという供述は全くございませんので、商品に関してはアルコールは全く使われていないと考えられます。

 これがバンですけれども、このバンの後ろの荷台で作業をしたということです。氷も最初のときにはバッカンごと冷やしたと言っていたのですけれども、それでは氷は余りにも足りなくないかと言ったら、途中でやはり変わりまして、これに氷を入れてきたのだけれども、それは各店舗のほうへ持っていって、最終的に販売するときに冷やすために使ったもの、そのためのクーラーですという形になりました。

PP

 ふき取り等の検査状況になります。患者の検体数としては、199検体実施しております。O157VT産生)を確認したのは176検体、病原性大腸菌とVT産生と確認したのが17検体、陰性と確認されたのが6検体でした。

 それから、従事者及び患者はO157に罹患した患者の一部について血清型調査をしてあります。一応調査したのが88検体で、88名のうち86名からO157:H7が確認されております。2検体に関しましては型別が判別できないということで報告をもらっております。

 それから、陽性従事者を含む9検体につきましては、国立感染研のほうに遺伝子検査をお願いいたしました。IS-printingにおきましては9検体に関しては一致という答えになってきております。ただし、PFGEでは、患者、従業員5名は一致したのですけれども、ほかの3名につきましては、1バンドだけずれが入りますというような報告を受けています。従事者6名の検査結果のうち1名に関しましてはO157VT産生)、あと、型等も全て一致したのですが、本人は、不顕性感染ということで、販売の途中で折れたキュウリなども食っているということも言っておりますので、発症時期がわからない。しかも食べているということで、この人が原因なのかどうなのかは何とも言えないところになります。

 それから、持ち込まれた器具とふき取りは検査しておりますが、正直な話、本物を持ってきたかどうかもわからないし、しかも、1週間もたって持ってこいと言われたときには多分洗っているでしょうから、当然と言えば当然なのですけれども、菌は検出されておりません。

PP

 それから、原因食品としては、この2カ所。車でつくったものを販売していた2店舗ということで限定いたしました。病原物質は、O157VT産生菌)。患者数は510名。最終的に露店で販売された冷やしキュウリを喫食し、7月27日から8月7日までの間に食中毒を呈した人というのを最終的な定義とさせていただきました。

 行政処分に関してですけれども、現品は全然回収されませんでした。当然のことながら残っていない。それから、本人に関しましては、冷やしキュウリは二度と販売などしないと言っておりますので、基本的には継続的に営業されることはないだろう。行政処分は、現物があれば移動禁止とかいろいろな問題をかけられます。許可があれば営業禁止等もかけられるのですが、もしあったにしろ、なしにしろ、この何もない状況で本人も何もやらないと言っている状況での行政処分に関しては、現物もない以上、かけられないということで、うちとしては行政処分は行いませんでした。

PP

 今後の考察と今後の対策になります。

PP

 衛生管理上の問題点ですが、キュウリの保管は、夏場、そのままの環境下、もっと悪いことを言えば、車内にずっと放置されていた可能性が高い。しかも、伝票上から考えると、祭り当日に買ったのではなくて、祭りの前日に買ってきた可能性があるということで、1日半以上キュウリはそのままの状況で保管されていた可能性がある。それから、洗って下処理をした後にまた新しい容器を使うということもしていないので、どこで感染が起こってもおかしくない状況ではあったということ。それと、キュウリ自体は洗浄しているということが、殺菌工程もないことから十分ではなかった可能性は非常に高い。それから、従事者の器具の洗浄・殺菌、従事者自体も手洗いといっても石けんを使って洗うのではなくて、アルコールスプレーをかけただけ。ビニール手袋はしたとは言うものの、それもいろいろなところをさわるものですから、ビニール手袋の上が汚染される可能性も非常に高いので、この辺が明確にはないということ。こういうところで、衛生管理の考え方にはかなりの落ち度があるのではないか。それと、調理・つけ込みの期間中というのはあくまで車の中でやっていると。スライドドアも、供述とはちょっと違いますけれども、多分、あけっ放しの状態であって、屋外と同じような衛生状況で行われた。これは衛生上の問題点として挙げられます。

 被害を拡大した要因としましては、キュウリをつけ込む液の温度管理もしていない、キュウリ自体も温度管理をしていない、それで大量調理を一度にやってしまったということ。先ほど写真の中でバッカンがありましたけれども、基本的には、あれがいっぱいになるまでキュウリを詰め込んで、その上から水と浅漬けのもとを入れて冷やしたということなので、そこで菌が増えれば、一度に大量の曝露を起こす可能性は非常に高かったものと思われます。

PP

 今後の対策になります。

 まず、露店を出店する業者に対してですけれども、イベントの開催者に対しましては、提供食品を含む出店者リスト、それから提供食品の提供等をお願いする、静岡市としてはそういう指導をしていきましょうと。大きなお祭り、特にこういうものに関しましては、補助金だけということもありますけれども、市が関与する事例が多いので、関係課に関しましては、そういうものの事例をいただいて事前調査を徹底していくということにしております。

 それから、保健所の対策ですけれども、今言ったようなイベントの開催者と共同して営業者に対して講習会を実施していきます。それから、静岡県では露店の許可というのは一円になっています。ですから、静岡市で許可を取ってしまうと、県内どこでやってもいいよと。例えば浜松市でやっていただいてもオーケーですよという許可の体系になっております。ですから、露店の許可の必要性の判断というのは最終的には県に仰いでいるということになりますが、現在は、県の通知によって露店等においては浅漬けみたいな行為はやってはいけないから強く自粛しろと。法的にだめという部分はありませんが、一応自粛させるようにという通知が出ているというのが現状でございます。ただし、許可の必要性の有無、もしくは提供食品のやってもいいよ、やってはだめだという線引きは非常に難しいところがありまして、指導する立場としては、今回の食品は提供できない商品として法的に県のほうできちっとやっていただくことが、うちとしてはというか、現場としては非常にやりやすいというのが私個人の実感でございます。

 それから、リスクの高い食品の提供を相談された場合には、市で認めても市外でやってしまうものですから、あくまで県と協議した上で決定していくということになります。

 野菜の浅漬け等の製造については監視指導を強化ということで、今までも届け出のところは把握しておりますが、この業者に関しましては、要綱通知のとおり、衛生管理に努めるよう努力していくつもりでございます。

 現状としてはそんなことで説明を終わらせていただきたいと思います。

○山本部会長 ありがとうございました。

 この件に関しまして、御質問、御意見等ございましたらお受けしたいと思います。いかがでしょうか。

 砂川委員、どうぞ。

○砂川委員 大変な事例で大変な調査の御苦労があったと思います。

 2点ちょっと教えていただきたいのですが、まず1点目、対照群をとるのが非常に困難だったというようなことです。それは後の解析のところで対照群で挙がっている数が恐らく五十数人だと思われたので、そこに反映されているのだと思うのですが、この方々はどのような形でリクルートしたのかというのが1点。

 もう一点が、最後の衛生管理の問題点で、キュウリの洗浄が不十分であった可能性が高いというところがちょっとよくわからなかったのです。もともと持ち込まれてきたものがもう既に汚染されていたという認識であったのか、それとも、その場で、両方かもしれないのですけれども、結局そこでの汚染が大きな要因になったという考えなのか。結局、その洗浄が十分であったことで防げるというような御認識のものだったのか。そこが少しわからなかったので、教えていただければと思いました。

○鈴木参考人 まず、最初の質問になります。

 対照群の取り方ですが、かかっていない方は相談にも来ないものですから非常に苦労しました。対象になった方、相談した方に、誰かと一緒に行っていないか、一緒に行った方は食べているか食べていないかということで拾う形になります。ですから、うちのほうで調査をやったのは500人を超えるのですけれども、その方に電話をするときに、一人一人同行者を聞いて、その同行者に関してもちょっと調査に協力していただくという形で拾っていったというのが現実でございます。ですから、数としては非常に少ない状況になっております。

 それと衛生管理の面ですけれども、やはり原因の特定はできません。というのは、不顕性感染で、従事者本人は販売しかしていないと言うのですけれども、全体が汚染されているので、販売者が前日調理をやった可能性がないとは言い切れないわけです。それと、製造はやっていないとは言っていますけれども、やっていたかもしれないという事実は全然わからないわけです。そういう意味では、その方が原因で、施設的な部分に関しても、供述上はそうやってやっていると言うのですが、どこかで感染者の方が触っていたということは否定できない。

 それと、漬け込み時間の問題です。あくまで本人は当日と言っているのですけれども、どう考えても買ったのは前日なのですね。ということは、下手をすると、漬け込み自体を前の日からやった可能性も否定できない。とすれば、キュウリ自体に微量なものがあって、キュウリ自体も、本人いわく、ペットボトルで洗っただけということですから、ほとんど洗えていない状況に近いと思うのです。特にキュウリみたいなものは、いぼいぼみたいなところがあって、そういう中に入り込んでいるということも言われておりますので、そういう面では、洗浄不良で、長時間の放置によって増菌されたということも否定できない。

 ということで、衛生管理の問題というのは、その両方が疑われるということで、申しわけないのですけれども、絞り込みまでは行けませんでしたというのが事実でございます。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ほかに何か。

 五十君委員。

○五十君委員 今の前日調理か当日かというのは非常に重要なポイントなのですが、今のお話ですと、当日と言い張っているという状況と思います。この発症率から言うと、恐らくかなりの菌数に上がっていたと予想されるのですけれども、そのあたり、これ以上の確認は限界でしょうか。前日調理の可能性は全く否定しているという状況でしょうか。

○鈴木参考人 営業者自体の聞き取りでは全く否定しています。当日朝一番で車で市場の近くにある売り屋さんみたいなところで仕入れて、そのままの足で、30キロぐらい離れた焼津というところで氷を買って、それから現場に行ってやったと本人は言っています。

 うちのほうの実験結果というのを研究所にお願いしたのですけれども、大腸菌が増える要件というのは、あくまで浅漬けのもとは確かに栄養にはなりますよということ。ところが、原液を使うと塩分が多いもので増殖はしない。なおかつ、浅漬けをただ水で薄めただけだとだめ。キュウリが入ると、なぜか知らないけれども、6時間以上したところで急激な増殖が起こるというような研究結果が発表されております。

 それと、これはいろいろなところから、苦情ではなくて情報提供みたいな電話もあるのです。あそこの業者というのはほかのところで何かやっていたよとか、あんなところにキュウリなんて置いたことはないよとか、いろいろな情報が入ってきているので、言っていること自体がかなり曖昧な部分というのもある。そういう意味では、可能性的には前日調理というのもあります。向こうはそうは言っておりませんけれども、うちのほうとしては可能性としてはあるのではないかと。これはあくまでこちらの勝手な考え方ですけれども、そうでないと、本人、1,000本しか売っていないと言っているのですから、1,000本のうちの500人以上が罹患するという発症率はかなりの高濃度です。キュウリ本体とか、浅漬けを使っての発症例というのは、少なくとも静岡市内を調べた中では全然ないものですから、どこかに増殖の機会はあっただろう。とすれば、前日から何らかの調理が行われた可能性は否定できない。証明はできませんけれども、私たちの考えの中ではその可能性が高いと考えております。

○山本部会長 ありがとうございます。

 まだまだあると思いますけれども、西渕先生。

○西渕委員 貴重な情報をどうもありがとうございました。まだ原因は特定されていないということでありますけれども、仮に食品のキュウリが汚染していて、しかもそれが浅漬けとして提供されたと仮定すると、類似の食品とかがかなりあるので要注意で、そして貴重な情報だと思うのです。

 それでちょっと教えていただきたいのですが、浅漬けの液のpHはどれぐらいかというのはおわかりですか。

○鈴木参考人 調べたのですけれども、4.幾つだったと思います。

○西渕委員 低いですね。というのは、かつてアメリカの西海岸でアップルサイダー、リンゴジュースは酸性食品だからいいだろうとみんな思っていたのが、菌は酸に強いので、これで大規模な食中毒が起こったという例がありますので、この食品を含めて、酸性食品に関しても野菜とか重要な問題になる可能性があると思います。

○鈴木参考人 私達も同じような考えを持っています。

○山本部会長 では、最後に。

○石川委員 北海道の浅漬けの問題でもそうだったのですけれども、亡くなった方は女性が圧倒的に多いのです。全部女性だったかな。そういうこともあります。今日の統計も男女差がすごいということで、このことについて研究されている方のコメントをお願いしたいのですが。

 今回はHUSが少なかったですね。それは何で少なかったのかということについてもちょっとコメントをいただければと思うのです。

○山本部会長 いかがですか。

○小澤委員 それはこの後で私が。

○石川委員 そうですか。

○山本部会長 それでは、その件に関しては後ほどとしたいと思います。

 臨時営業のような形であっても、食中毒発生リスクが高いという食品に関しては監視指導をちゃんと徹底していくというのが大事だと思うのです。最初の届け出とか、そういうところのシステムがちゃんと機能しないと、いいかげんな届け出をされていると、単に冷やしたキュウリを売るだけであれば特段問題なかったかもしれませんが、やはり調味液につけるという調理ということが少し入るとなると大問題ですので、その辺の把握の体制ですね。その辺をしっかりとしていっていただきたいということです。

 また、こういう大規模の事例については、国とかも関与しながら解決策を練っていく必要があるのかなということですので、ぜひ国のほうも積極的に関与していくような方策をちょっと考えていただいて。500人以上になりますと派遣できるということになっていたかと思うのです。初期の探知の段階では人数や全体像がわかっていないので、500人を超えるかどうかというのもなかなかわかりませんけれども、その辺も含めて、国と地方自治体との連携を大規模な部分については図っていっていただきたいと思います。

 この件についてはこれで終わりにしたいと思います。

 次に「腸管出血性大腸菌感染症・食中毒の早期探知・早期診断システムの構築」ということで、群馬県衛生環境研究所の小澤委員から御説明をお願いいたします。

 資料は4になります。

(小澤委員、説明者席へ移動)

○小澤委員 それでは、早速説明に入りたいと思います。

PP

 先ほどから腸管出血性大腸菌の食中毒が問題になっているのですけれども、まず、ユッケと白菜きり漬けと冷やしキュウリという3つの有名な食中毒がありまして、ユッケでは6人、白菜では8人、冷やしキュウリでは死者がなしという結果になっています。過去10年間の食中毒の死者ですけれども、食中毒総数が52名で、そのうち細菌が24なので半数近くです。その細菌による食中毒の死者のうち、半分以上の15名がEHECによるものであるということです。ちなみに、ウイルスによる食中毒の死者はありません。

PP

 これが腸管出血性大腸菌の感染症食中毒の統計をグラフにしたものです。これを見ますと、まず、茶色いバーが食中毒患者数です。御承知のように、生肉の提供に規制をかけるとかいったことで、食中毒の患者は2011年から12年、13年と減っているわけですけれども、昨年は500人の食中毒があったものですからぼんと増えているということです。

 それから、緑のほうが食中毒の死亡者数です。茶色いほうが感染症全体の死者の数です。右と左でスケールが違いますけれども。そこで注目していただきたいのが幾つかあるのですが、食中毒統計だけではEHEC感染症の様態は把握できないということです。それが1つ。それから、毎年ほぼ一定数のHUSの患者の発生があります。大体100人前後です。あとは、水色のバーになっておりますのは無症状保菌者で、毎年3分の1以上出ているということです。これがEHECの感染症・食中毒の様態であるということです。

PP

 もう一つ心配な点は、これは感染症の研究所のFETPの方がまとめてくださったのですが、保育園のような施設で、お子さんがEHECに感染をするという例数がだんだん増えてきている。要するに、これから女性が社会進出して、こういう機会はどんどん増えるわけですけれども、それにつれて、お子さんたちが1施設内で感染してしまうリスクがどんどん増えているということがこの統計上わかります。

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 それともう一つ、これはHUS症例になった性別とか年齢階級別の状況です。おっしゃるように、HUSになった患者の男女比は、やはり女性のほうが多いということ。それから、学童期より下の14歳以下のお子さんのHUSの発生率が非常に大きいということ。お年寄りでは70歳以上であるということです。ですから、同じEHECに感染しても、HUSになるのは小さいお子さんか、高齢者か、どちらかであるということがわかると思います。

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 これは富山衛研から提供いただいたユッケによる食中毒の様態ですけれども、4月19日に最初の患者が発症しています。実際にO111が分離されたのが4月26日ですから、ちょうど1週間たってから。そして、EHECであるということを確定して、業者に販売自粛をさせたのが4月29日ですから、発症から10日かかってようやく営業停止処分が正式に下されたのですが、その同じ日にこの患者Aは死亡しているということです。

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 それから、白菜きり漬けですけれども、初発患者が医療機関を受診したのが8月4日です。ところが、保健所が食中毒であると探知したのは3日後なのですけれども、実際にO157が原因と判明したのが13日になります。ということは、この間にもう既に6日たっていて、その前日と前々日には既にもう3人の患者さんが死亡しているということです。

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 先ほど石川先生の御質問にもありましたように、この冷やしキュウリによる食中毒で、何と1,000人の方が食べたらしいのですが、500人以上が発症し、入院患者が114人、HUSの患者が5人出ているのですけれども、死者が出ていないということです。これが、軽症といいますか、余り重症化しないで済んだ原因がどこにあるのかということを私は一番興味を持って調べたのですが、1つは、初発患者が受診した7月31日の夜、この医療機関が翌日にかけて簡易キットでEHECであるということをある程度突きとめて保健所に通知をしているのです。保健所は翌日に食中毒であると断定して、その翌日には既に報道提供して、花火大会でキュウリを食べてEHEC食中毒が多発していますということを既にアナウンスしているということです。

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 つまり、これをまとめますと、ユッケの場合は、最初に発生してから保健所が探知するまでに7日かかって、EHECであると確定するまで8日かかって、初発患者が出てから死亡者発生までは10日かかっている。白菜きり漬けにおいては、保健所は3日後に探知したのだけれども、EHECであるということが確定するまでに9日かかっていて、もうそのときには2日前に既に死亡者が発生しているということです。冷やしキュウリの場合は、発生から保健所探知まで1日で済んでいて、EHEC確定まで2日ということで、非常に早く保健所が探知をした上で行政が介入しているということです。

 まず、札幌と静岡が両方ともO157なのです。その上、VT ということ。両方とも感染研の細菌第一部でこの株を保有しておりまして、問い合わせた結果、札幌と静岡のO157の菌株の毒力は同等であったという分析結果が出ています。

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 重症者が少なかった要因というのをいろいろ考えてみますと、キュウリの場合、花火大会に行く人は割合若年層が多いから、小さいお子さんとか年取った方は余り行かれないのではないかということで、大体7割が30歳以下だったと言われています。それから、ほぼ単一保健所管内で発生しているので、保健所としては、探知をしてからの情報収集が非常にスムーズにいく。

 もう一つ大きな要因は、医療機関の連携が非常によかったということです。最初に保健所に通知した医療機関の小児科のドクターが、小児科の医会のメーリングリストに入っていて、こういう患者が出たよということをすぐにメーリングリストに投稿してみんなに知らせているのです。それを見た内科の先生がまた静岡県下の内科医会のメーリングリストに、花火大会でキュウリを食べた方に食中毒が多発しているということを流しました。そのメーリングリストの中で、当然、意見の交換が行われて、EHECの食中毒に対する初期治療としてはどういうものが一番いいのかということが論議をされていたということなのです。

 先ほどから摂取菌量が多いのか少ないかという話があって、結構多いのではないかという話がありました。札幌の件と静岡の件で摂取菌量が大幅に違うとかということはないのかもしれません。菌の毒力が弱いのではないかと思ったのですが、これは感染研の分析によって否定をされているということです。

 この初期治療方針の周知ですけれども、臨床医とすると、血便などがない下痢の患者さんが来た場合は、すぐにEHECの食中毒感染症と疑いませんから、何も注意喚起がなければ、普通は初期治療として下痢どめをあげたり、抗菌剤をあげるということをやります。下痢どめをやるということは、EHECに対する初期治療としては完全に禁忌と言われています。それから、抗菌剤は、ホスミシンの内服だけが一応効果があるのではないかと言われていて、例えばキノホルム剤などを投与すれば、菌の毒力が10倍とか100倍に増強するという結果が出ていまして、抗菌剤の投与というのも、特にキノホルム剤は禁忌です。だけれども、このキノホルム剤と止痢剤というのは下痢の患者さんが来たときに臨床医が一番よくやる手だと思われますので、こういったことがほかのケースでの症状の悪化につながっている可能性はあるということです。そういうことが静岡市のところでは起こらなかった。それは医療機関での速やかな情報交換が行われた結果だろうと私は推測しております。

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EHEC患者が出ますと、外来治療で年間2,000人ぐらい出ますので1億円。それから、入院治療で500人で1億円。それから、HUSの急性腎不全で集中治療を行いますと、月に大体100万円かかりますので、年間100人のHUSの患者が出ますので1億円。その上に、HUSで回復しても慢性腎不全で人工透析をやらなければならない患者さんが一定数出ます。そうすると、年額500万円の医療費がずっとかかる。40年間治療すれば2億円になるということです。だから、かなりの医療費が必要になるということです。

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 そういったことを加味しますと、群馬県では、腸管出血性大腸菌感染症というのは特別なアプローチが必要であるということで、早期探知・早期診断システムをつくろうということで、診断確定前に疑いの段階で医療機関から情報提供してもらうということです。血便などの症状で感染症が疑われる場合、医療機関で初診時に情報を速やかに保健所に上げていただいて、便検体を2つとってもらって、1つは、コマーシャルラボに出して、1つは保健所に出してくださいということです。保健所のほうは、衛生研究所にその検体を速やかに届けていただきまして、おおむね2日でEHECであるかどうかということを判定して結果を出します。数日でMLVA法で遺伝子情報を解析して、菌の相同性とかそういったものも含めて保健所と医療機関に返すことができるということです。

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 群馬県では、衛生環境研究所と保健所医師会、それから医療機関の連携事業として、昨年の11月から前橋と高崎と渋川の保健所管内でモデル事業としてこれをやり始めていて、来年度から、できれば全県下で実施をしたいということ。検査費用については、試行期間中なので当面無料として行う。

 それから、医療機関の先生方には民間検査機関の細菌検査の代行ではないということをよく説明をして、ただ乗りをしていただいては困るということをよく言っています。つまり、集団食中毒の発端症例(インデックスケース)の疑いであるとか、重症例、来たときからいかにも重症であるという方の早期診断などにこれを使ってくださいということです。そういったことを考えています。

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 診断の流れですけれども、疑い患者が発生をします。従来の制度ですと、同定検査を医療機関が出したりして、コマーシャルラボからの返事を待っていたりすると、5日から7日ぐらいすぐたってしまう。保健所がその時点で探知をして、菌株を入手して調べても、その同定に2~3日かかってしまう。PFGE法、パルスフィールドをやって、菌の相動性とかそういったことを確かめればさらに1週間ぐらいかかってしまうという話です。合計すると、検査が全て出そろうのに2週間ぐらいかかるということです。

 今回の方法ですと、まず、疑い段階で保健所を通して衛生研究所に検体がすぐ来ますので、そのVT検査を行って、大腸菌であることとVT産生性があるか、この2つをすぐに確かめるということです。そうすれば、出血性大腸菌であるということがすぐにわかるわけで、血清型の同定は後回しにする。これは行政対応上は不要なので、それはもう後でいいということにしています。MLVA法をそれに引き続いて行うことで、例えば複数の菌株が出れば同じ菌由来であるということがある程度わかるようにするということです。

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 ここでMLVA法というのを簡単に説明しますと、従来のパルスフィールドというのは、この左に見られるように、バンドの位置とか太さのパターンによって相動性を確認するという検査です。これは検査の結果が出るまで大体3~4日かかります。MLVA法というのは、シーケンスを調べて、要するにゲノムの遺伝子配列を調べることによってタンデムリピートという特殊なところの反復数を数値化して、その17領域で出した結果を調べるということです。これは要するにデジタルデータとして扱えるということで、しかも、結果が出るまでに1日、2日で行えるということです。

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MLVA法はPFGE法に比べて、1検体当たりの検査費用も安くて済む。約半額であるということです。シーケンサーが必要ですけれども、これはほぼ全地研に普及していますので、特に新しく設置する必要はないし、コンベンショナルPCRはどこでも持っています。

 ただ、MLVA法を実施するためには、国立感染症研究所の細菌第一部での研修が必要なのと、パソコンと解析用のソフトのインストールが必要であるということで、これはちょっとした努力と研修でどこの地研でも導入が可能であると考えられます。

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 ということで、昨年の11月からこれを開始して、冬場ですが、2件ほどこういうのがありました。

 4歳の女児が腹痛で、午前中、すぐに管轄保健所からファクスの連絡票が来て、午後には保健所から検体が搬入される。翌日には大腸菌が検出されたのですけれども、VTPCRを実施して、その翌日には陰性であるということで、EHECではないということを2日後には病院と保健所に返しているということです。

 第2例目は、同じような症例ですけれども、午前中に検体が搬入されて、大腸菌のベロ毒素の産生性を見て、それがないということを確認して、EHEC陰性ですよということを2日後にもう既に保健所と医療機関に連絡をしたということです。

 こういうシステムを使えば、今年の夏のEHECが多発するような時期に果たしてスムーズに運用可能かどうかという問題はあるにしても、これはある意味で臨床的にも有用なシステムだと思います。

 まとめますと、要するに、捕捉されているEHEC食中毒というのは、EHEC感染症の全容の氷山の一角でしかないということです。例えば牛肉の規制ですとか、漬け物の規制とか、露店商の監視強化とか、そういうことをやっても、行政上の食中毒の減少にはつながりますが、EHEC感染症自体の被害拡大防止とか、被害の重篤化の予防とかにはつながらないです。後で幾ら情報が入っても、そのときは既に重症化する人は重症化しているわけですから。ということです。

 それから、EHECの無症状保菌者が実は3分の1以上いる。これは調べた限りで3分の1ですから、どれぐらいいるか実数は全く見当がつかない。ひょっとしたら、国民の半分ぐらいは持っているのかもしれない。それも実際に調査したデータというのはないのだと思うのです。ということは、いつでもどこでも感染の危険はあるということです。

 要するに、EHECを完全に予防するということは、どう考えても医学的に難しいというか、ほぼ不可能だろうと考えられるわけです。やるべき対策としては、EHECの感染症であるかとか、食中毒であるといった区別にこだわらずに、一番初期の段階で行政ができるだけ早く捕捉をして、そういうことができる仕組みを構築することが必要であるということです。つまり、食品衛生法と感染症法の両面作戦でこのEHEC対策を強化する必要があるということです。

 今回、感染症法で病原体サーベイランスが強化されるという方向性がありますけれども、このシステムはそういう方向性とも合致をするものであって、一番重要なことは、臨床的に非常に重大な結果を及ぼすようなEHECの感染症というのが、今後、悲惨な被害を出さないということを考えれば、この際、思い切った対策の構築が必要であると考えておりまして、群馬県で、今、モデル事業として始めたこの方法は、その解決というか、その方策の1つとして御提案できるのではないかと考えております。

 ことしの夏を過ぎて、この対策が功を奏するということがわかれば、全国的にもこういったシステムの構築に本腰を入れて取り組む必要があるのではないかと思っているところです。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ただいま小澤委員から大変有用なシステムのお話がありましたけれども、これに関しまして御質問、御意見等ありましたらお受けしたいと思います。

 どうぞ。

○石川委員 1つだけ。

 女性が多いということについて何かコメントはありますか。

○小澤委員 私はそれを余り突っ込んで調べていないものですから、それに関しては、私、全く存じません。

○石川委員 浅漬けのときは、浅漬けは女性の方が好きか、特に年取った女性の方が好きかという話があったのですけれども、キュウリが出てきたので、これはちょっとわからないですね。冷しキュウリは女性が好きかというと、それもちょっとわからないですものね。何だかよくわからないので、もしわかったら教えてください。

○小澤委員 はい。

○山本部会長 西渕先生。

○西渕委員 それに関してです。私、記憶がちょっと定かではないのですが、EHECによる脳症の場合に、やはりお年寄りの女性が多いということで、仮説として、毒素のレセプターへの結合能力、細胞の表面のレセプターの違いということを提案された方がおりますけれども。

○石川委員 そうしますと、要するに、発症する方が多いから女性が多いという統計になる。つまり、不顕性感染みたいなものはあって、男性は余り発症していないでいるということですか。

○西渕委員 そういうことになりますね。ただ、これは仮説ですので。申しわけありません。

○山本部会長 データとしてはそういう傾向が見えているということなので、今後、砂川先生の班でもいろいろと検討していただければと思います。

○砂川委員 まだ定説とはなっていないと思うのですけれども、そういった方面での分子疫学的な解析は進んでいるだろうと思います。私も同様の話を聞いたことがあります。

 済みません。教えていただきたいのですが、小児科は割とやりやすいと思うのです。私、内科というか、成人の方が本当に鍵だと思っているのですが、そこらあたりの工夫について教えていただけないでしょうか。

○小澤委員 医師会とか医療機関にこの方法を提案して、やってくださいと言ったときには、いわゆる内科系の方も小児科系の方も非常に歓迎すると。やはり日常診療でEHECだったのを、例えば下痢どめとその抗菌剤を処方して悪化させてしまうかもしれないというような懸念というのは共通にある程度持っておられるのではないかと思うので、そういうEHECの症状が考えられない人の場合は、できるだけ早く結果を知りたいという思いはお持ちなのだと思いますので、小児科と内科の先生でこれに対する姿勢といったものが違うという感じは余り受けませんでした。

 ただ、私どもが出ていって、医師会なり医療機関の方にちゃんと説明をして、こういうことでぜひやってくださいと言わないと、臨床の方々はお忙しいので快く協力していただけないということはあります。

○山本部会長 まだあろうかと思いますけれども、時間が延びてきておりますので、この辺で終わりたいと思います。

 腸管出血性大腸菌は、静岡の事例を見ても、早期探知というのが必要だということですので、大変有用なモデル事業であると思います。引き続き研究していっていただければと思っております。

 この議題についてはこれで閉めたいと思います。

 そのほかについて事務局ございますか。

○仲庭HACCP企画推進室長補佐 本日、追加資料として配付させていただきました参考資料2について、時間も押しておりますので、簡単に説明させていただきたいと思います。

 この参考資料2は、本年1月9日に発出いたしました通知でありまして、題名にありますとおり「食品への異物の混入防止について」という内容でございます。

 背景といたしましては、昨年来、食品への異物混入の報道なりインターネット上での情報の拡散等が起こっていたところでありますけれども、1月の上旬になりまして、大手ハンバーガーチェーンにおきまして異物混入が多発したと。そのうちには、プラスチック片によるけがの発生、健康被害の発生が生じたということがございまして、それに対応して発出したものでございます。

 内容といたしましては、この本文の2行目にあります「食品等事業者が実施すべき管理運営基準に関する指針(ガイドライン)」の内容に沿って下のほうに記しております。基本的には、食品への異物混入の対策については、食品等事業者のほうで異物混入防止等の衛生管理が適切に行われる必要があると考えているところでありますけれども、特にこの「記」の1から4の中で、ガイドラインの中から関係するところを引用しまして、再度、各自治体の方々に留意していただくようにしておるところでございます。

 「記」の1といたしましては「食品等事業者における異物の混入防止のための取組が徹底されるよう、指導すること。特に次の事項に留意すること」ということで(1)から(4)まで挙げております。

 2といたしましては、事業者への衛生教育を適切に実施するよう指導すること。

 3といたしまして、食品等事業者において、異物の混入防止のための必要な措置を講ずるよう指導すること。

 4といたしまして、保健所の適切な指導が行われるように、あるいは原因究明が行われるように、事業者等がそういった苦情を受けた場合で健康被害につながるおそれが否定できないものを受けた場合には、保健所等へ速やかに報告するように指導を徹底することということで通知させていただいているところです。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございました。

 ただいまの事務局からの説明に関しまして、御質問、御意見をお願いしたいと思います。

○今村委員 異物混入のことについてコメントさせてもらいたいのです。

 異物混入が急に増えたとも思えませんし、新しくこれが起こっているともちょっと思えないところがあって、これはどちらかというと、社会の感受性そのものが変わったと考えるべきなのではないかと思うのです。ですから、異物混入対策そのものはこのとおり重要なことなのですけれども、食品事業者の皆さんも社会の感受性が変わっているということをよく理解してもらって、この対策を打ってもらう必要があると思います。

 以上です。

○山本部会長 ありがとうございます。

 どうぞ。

○雨宮委員 異物混入に関してです。今、おっしゃられたように、消費者としましては、異物混入で健康被害が一番心配ではありますが、従来もあったのではないかと想像はしております。そして、それによって販売を即停止とか自主回収するなどして、そこまですることもないのではないかという意見もございますので、今おっしゃられたようなことがすごく重要かと思います。

 またちょっと戻ってしまうのですが、さきの安倍川の食中毒で、行政処分がなしというのが消費者としては一番気にかかります。再発防止のためにも、このことに関しては行政処分はなしにしても、何かリスクを背負わないと、モラルに欠けている人がいろいろと苦しんでいる人の原因究明とかに協力しないで二転三転する証言をしているかと思います。行政としましても、全く処分なしだとまた違う形で同じようなことが起こるかもしれないので、何か違う形での処分を考えていただけたらいいなと思っています。

 話が戻ってしまって申しわけありません。お願いします。

○山本部会長 貴重な御意見、どうもありがとうございました。

 ああいう臨時営業しているような事業者というのは、営業許可もないような状況でやっているものですから、登録というのも難しいかと思います。とにかく把握をしていくような仕組みづくりといいますか、その辺も検討していただければと思いますので、今後の対策に生かしていただければと思います。

 また、異物は、確かに今までもあったと思われますが、今後、国民の関心はますます高まっていますので、その辺のところを食品事業者に徹底していく、周知していくことが1つは重要なことだと思っております。

 それでは、今日はほかに事務局からございますでしょうか。

○梶原食中毒被害情報管理室長補佐 特にございません。

○山本部会長 ありがとうございました。

 それでは、本日の食中毒部会はこれで終了したいと思います。

 長時間にわたる御議論ありがとうございました。


(了)

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