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2015年2月27日 第88回労働政策審議会職業能力開発分科会議事録

○日時

平成27年2月27日(金)13:00~15:00


○場所

厚生労働省専用第14会議室


○議題

(1)勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱について(諮問)
(2)職業能力開発促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱について(諮問)
(3)技能実習制度の見直しにについて
(4)その他

○議事

○小杉分科会長 定刻となりました。定足数に達しておりますので、ただいまから第88回労働政策審議会職業能力開発分科会を開催いたします。本日はお忙しい中、お集まりいただきましてありがとうございます。

 本日の出欠状況ですが、原委員、水町委員、三村委員、諏訪委員が御欠席です。なお、諏訪委員の代理として、日本商工会議所の福田産業政策第二部副部長に御出席いただいております。また、本日中山審議官は公務により途中退席とさせていただく予定となっております。

 それでは、議事に入ります。議事次第にありますとおり、本日の議題は「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱について」「職業能力開発促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱について」「技能実習制度の見直しについて」「その他」の4件です。まず議題1、勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱についてです。内容について、事務局から説明をお願いいたします。

 

○吉永総務課長 資料1-1にありますとおり、「勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱」について、本日付で塩崎厚生労働大臣より、労働政策審議会会長宛て、諮問がなされているところです。若者雇用対策の充実については、昨年9月以来能力開発分科会において御審議いただいたところです。同時に、職業安定分科会においても、御審議を頂いてきたところです。資料1-3にありますとおり、123日付けで若者の雇用対策の充実等について、両分科会から報告書を取りまとめていただき、労働政策審議会より建議を頂いたところです。

 職業安定と職業能力開発と両方にまたがるものがありますので、内容的には不可分一体のところがありますが、これについて法律案要綱の形で整理したものが資料1-1です。

 資料1-1を説明する前に、恐縮ですが資料1-2で全体像の概略を説明いたします。勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱ですが、内容としては1の勤労青少年福祉法の一部改正と、2の職業能力開発促進法の一部改正の2つです。勤労青少年福祉法については、若年部会の報告書でこれまでの機能を終えたのではないかということで、発展的に解消することも期待されておりますが、今回の若者の対策を講ずるに当たり、勤労青少年福祉法を改正をするということで、大きく全体の青少年の雇用の促進に関する事項を記載するという構成になっております。内容は記載のとおりですが、1(1)関係者の責務への規定を整理すること。(2)適職選択のために、職場情報について新卒者の募集を行う企業に対して、幅広い情報提供の努力義務をお願いすることと合わせ、応募者等から求めがあった場合については、募集・採用に関する状況、あるいは労働時間に関する状況、職業能力の開発・向上に関する状況の類型ごとに1つ以上の情報提供を行っていただくという中身が、マル1です。マル2は、労働基準関係法令違反のようなことを繰り返す事業主からの求人については、ハローワークで求人の申込みを受理しないというような、求人不受理についての規制を整備いたします。マル3は、青少年の雇用管理の状況、優良な中小企業について、厚生労働大臣が認定制度を行うということで、このような企業に対する職業紹介や様々な助成支援を行うものです。

(3)が、職業能力開発・向上及び自立の支援ということで、国が地方公共団体等と連携して、青少年に対してジョブ・カードの活用等の措置を講ずること。マル2については、ニート対策として、地域若者サポートステーションの整備等の記載です。

(4)その他ですが、冒頭申し上げましたとおり、勤労青少年福祉法について抜本改正をし、「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改めるということです。それから、職業安定法の改正になりますが、学校等が行う職業紹介が学校卒業生のみを対象としておりますので、中退者等についても職業紹介を行える形に記載をするものです。

2は、職業能力開発促進法の改正部分になります。(1)ジョブ・カードは、要綱上は職務経歴等記録書と記載しておりますが、これについて様式を法律上定め、根拠規定を設け、普及に努めること。(2)は、キャリアコンサルタントについて資質の向上を図る、質や量の確保を図るという観点から、登録制度を創設する。(3)は、対人サービス分野について、技能検定制度において、検定職種ごとに実践的な能力評価の方法を定めていく形です。全体として、職業安定分科会関係と職業能力開発分科会関係と不可分一体の部分がありますが、主として私ども職業能力開発局所管として考えておりますのは、1(3)の職業能力開発・向上及び自立に関する支援。2の職業能力開発の措置についてです。

 資料1-1に戻ります。この点を中心に全体像を説明いたします。別紙の1ページ目からです。まず題名について、勤労青少年福祉法の題名を、「青少年の雇用の促進等に関する法律」に改めるということです。二の目的については、法律の題名を全改正することに伴い、大きく改正するものです。青少年について、適職の選択並びに職業能力開発及び向上に関する措置等を総合的に講ずることにより、雇用の促進等を図ることを通じて、青少年がその有する能力を有効に発揮することができるようにし、福祉の向上、経済社会の発展に寄与することを目的としているものです。

 三は、関係者の責務等です。1は事業主、2は職業紹介事業者、3は国、あるいは地方自治体、4はそれぞれの連携になります。適職の選択や職業能力開発の向上について、それぞれが努めていくと記載がされております。3ページ目の四に、青少年雇用対策基本方針があります。厚生労働大臣が青少年の福祉の増進を図るために、適職の選択並びに職業能力の開発及び向上に関する措置等に関する基本方針を定める形で記載があります。五は、ハローワークにおける職業指導等について、職業経験がない新規学卒者や、中退者、あるいはフリーターに対し、適切な職業指導及び職業紹介を行う等必要な措置を講ずるという記載があります。六は、求人の不受理です。求人者が労働に関する法律の規定であり政令で定めるもの。具体的には、例えば労働基準法における時間や賃金に関する規定の辺りを中心にしたものになろうかと思います。こういった違反を繰り返した場合について、この辺りは厚生労働省令で定める形になりますが、職業安定法の中で原則全ての求人を受理するという原則がありますが、そのような企業に対しては、一定期間求人の申込みを受理しないという規定であります。

 七は、国と自治体の連携の規定があるものです。八は、青少年雇用情報の提供です。事業主等が青少年の募集や採用の方法や能力開発の向上、あるいは職場への定着の取組など、厚生労働省令で定める事項について、努力義務として情報提供するという一般的な義務をかけたものです。また、学校卒業見込者等からの要請がある場合については、青少年雇用情報の3つについて、要件に合うそれぞれ1つずつ提供するということです。

5ページ目の九ですが、基準に適合する事業主の認定等です。中小企業、常時雇用する労働者の数が300人以下のものからの申請に基づき、青少年の募集、採用の方法、能力開発の向上、職場への定着の促進に関する取組について、優良なものについて認定をする制度を設けるものです。6ページ目の十は、職業訓練等の措置です。国は、地方公共団体、その他の関係者と連携をして、青少年に対し職業訓練の推進、職業能力検定の活用の促進、キャリアコンサルタントによる相談の機会の付与、職務経歴等記録書の普及の促進、その他必要な措置を総合的、かつ効果的に講ずるように努めるという記載をしております。十一は、ニート対策についてです。職業生活における自立促進のための措置として、国は就業、修学、職業訓練の受講をいずれもしていない青少年。すなわち、エンプロイメント、あるいはエデュケーション、トレーニングをいずれもしていないと。正にニートを念頭に置いた記載ですが、こういった青少年であって職業生活を円滑に営む上で困難を有する方に対し、特性に応じた相談の機会の提供や、職業生活における自立を支援するための施設。念頭に置いておりますのは、地域若者サポートステーションですが、こういったものを整備、その他必要な措置を講ずる取組を定めるものです。

2は、自治体が国の措置と相まって、必要な措置を講ずるという規定を定めたものです。3は、ニート対策として、ハローワークが適職を紹介するために必要があるときについて、様々な助言指導等を行うものです。

8ページは、労働に関する法令に関する知識の付与です。国は厚生労働省に限らず国という形になっておりますが、学校と協力して、学生又は生徒に対して職業生活において必要な労働に関する法令に関する知識を付与するような取組を記載しているものです。十三は、青少年の福祉の増進を図るために、事業主等に対する援助を行う取組を記載するものです。十四は、この法律の施行に関して必要なものについての助言や報告の徴収、指導及び勧告という規定を定めるものです。十五は、ハローワークが必要な相談及び援助を行えるというもの。十六は、船員については職業紹介などは船員職業安定法等別体系がありますので、適用除外、あるいは公務員制度については任用制度が若干異なっておりますので、適用除外という記載になっております。その他、所要の罰則の規定です。具体的には、優良企業の認定についての規定や、委託募集の規定などについての罰則の規定があります。それから、2について、今般勤労青少年福祉法を全面改正するに当たり、勤労青少年の日等の規定を削除するものです。

 第二が、職業安定法の一部改正の規定です。学校が行う無料の職業紹介の対象者について、中退者を追加すること。また、公共職業安定所が学校その他の関係者と協力して職業選択についての学生又は生徒の関心と理解を深めるために講ずる措置として、キャリアコンサルタントによる相談機会を記載するものです。

10ページ目は、職業能力開発促進法の一部改正関係です。一は、基本理念に1条項を追加するもので、労働者が職業生活設計を行い、その職業生活設計に即して自発的な職業能力の開発及び向上に努めるという規定を入れているものです。二は、職務経歴等記録書の普及についてです。勤労青少年福祉法の改正、青少年の雇用促進法のほうにもジョブ・カードの規定がありましたが、国が労働者の職務の経歴、職業能力、その他労働者の職業能力の開発及び向上に関する事項を明らかにする職務経歴等記録書の様式を定めて、普及に努めるということです。その際に、青少年の職業生活設計に即した自発的な職業能力の開発及び向上が促進されるように配慮するという規定です。

 三は、キャリアコンサルタントについてです。三の2にありますとおり、キャリアコンサルタントの名称を用いてキャリアコンサルティングを行うことを業とするものです。「キャリアコンサルティング」とは、労働者の職業の選択、職業生活設計又は職業能力開発及び向上に関する相談に応じ、助言指導を行うものです。11ページは、3で試験制度を厚生労働大臣が行う形にし、それを登録法人に委託することができる規定があります。4については、キャリアコンサルタント試験に合格した方については、名簿に登録をして5年間の有効期間になりますが、登録の上でキャリアコンサルタントになると。5年ごとに更新を受けるということです。こういった登録の事務について、指定機関に委託ができるという形です。5は、キャリアコンサルタントが不名誉な行為をしてはいけないということと合わせ、守秘義務の規定を明確にしたものです。

12ページは、キャリアコンサルタントはキャリアコンサルタントに関する講習を受けなければならない。念頭に置いておりますのは、キャリアコンサルタントの有効期間は5年ですので、更新時の講習などをきちんと受けていただこうというものです。7は、キャリアコンサルタントの名称独占です。8は、事業主の方がこれはキャリアコンサルタントには限りませんが、キャリアコンサルティングの機会の確保、その他の援助を必要に応じて行っていただくという規定です。9は、公共職業能力開発施設の長は、必要に応じてキャリアコンサルタントによる相談の機会の確保、その他の援助を行う取組を記載するものです。四は、職業訓練の実施に関する計画策定における意見聴取です。現在、求職者支援法に基づく実施計画については、計画を定めるに当たり、関係行政機関の長との意見を聴くという規定がありますが、本体であります公共訓練の計画についてはこういった規定が入っていないことから、今後とも効果的な訓練体系を確立するに当たり、関係行政機関の長との意見聴取を法律上明記するものです。五は、職業能力検定、いわゆる業界検定です。対人サービス等の分野について、技能検定の実技試験を行うに当たり、検定職種ごとに例えば精緻なロールプレーイングなどについても実施できるような形で整備をするものです。2は、厚生労働大臣が職業能力検定の振興を図るために、事業主が行うような社内検定や、様々な検定について、望ましい基準を定めるという規定を設けるものです。六は、その他として、所要な罰則を記載しておりますが、これはキャリアコンサルタントが個人情報を漏らしたようなケースを念頭に置いているものです。また、その他所要の規定の整備とありますが、現在標準キャリコン以上で御活躍いただいている方について、法律上のキャリアコンサルタントとして経過的に移行していただく規定を設けるものです。施行期日については、職業能力開発関係で申しますと、地域若者サポートステーション関係と、キャリアコンサルタント関係については、来年の4月からとなります。それ以外のジョブ・カード等については、101日からを予定するものです。二は、検討の規定です。施行後5年を目途としての検討というものです。

 最後に、厚生労働省設置法の一部改正が盛り込まれております。これは、現在都道府県労働局の事務として、職業能力開発関係の行政事務が取り行われておりませんので、これを地域における都道府県、市町村などの様々な教育機関等との連携の強化を図り、効果的な職業能力開発の事務を実施する観点から、都道府県労働局の事務分掌の中に、職業能力開発に係る事務を追記するものです。要綱については以上です。何とぞ御審議いただければと思います。

 

○小杉分科会長 ただいまの説明について、御質問、御意見等はありますか。

 

○大野委員 今回、勤労青少年福祉法の改正ということで、これは昭和45年にできて時代的な変化があり、役割を終えたということだと思います。確かに昭和45年は、高度成長で若い人たちが地方からどんどん都会に集まってくるという時代だと思います。改めて、勤労青少年福祉法とは読んでみたのですが、結構すばらしい崇高な理念が書いてあると思います。例えば、基本的理念で、勤労青少年が充実した職業生活を営んで、有為な職業人として健やかに成長すると書いてあります。私どもは、この分科会でキャリアという言葉でいろいろな議論をしているのですが、キャリアの教科書などを見てみますと、元はアメリカで産業革命の後、シカゴのような大都会に地方から若者が集まっていくのですが、すぐに仕事が合わなくて辞めてしまって、街にたむろして、街が荒廃して、これではいけないということでボストンでキャリア研修とかキャリアコンサルティングを始めたのが起源だと読んだことがあります。そういうことからすると、私どもが議論しているキャリアというか、いい仕事と巡り会って生活が豊かになって、福祉が増進して、若者が人間としても健やかに成長できるという理念に、この勤労青少年福祉法はすごくマッチしていて、正にこれにはキャリア論が書いてある法律なのかなと思いました。

 今回、法律の題名も変わり、目的については青少年がその有する能力を有効に発揮して福祉の増進とは書いてありますが、今の法律にあるような理念としての若者の健やかな成育とか、充実した職業生活といったところの文言は一切消えてしまうのかどうか、そこをお伺いしたいと思うのですが。

 

○宮川職業能力開発局長 ただいまの点、私から説明いたします。勤労青少年福祉法の一部改正ですが、決して勤労青少年の福祉をなおざりにしたりという考え方ではありません。あくまでも、全ての青少年に関わる対策として、発展的に整備するという意味です。その観点から、今、委員の御指摘がありました、具体的には第一条の基本的理念の規定については、現在の「勤労青少年」という所を全て「青少年は」と直した上で、所要の整備をした上で、この考え方は残すつもりです。

 

○大野委員 分かりました。

 

○小杉分科会長 ほかにありますか。

 

○高橋()委員 2点確認をさせていただきたいと思います。

1 点目は、この法律案要綱全体に関わる話です。前回の分科会で、建議に盛り込まれた事項をどのように実行に移すのかということの説明があり、法律事項と整理した事項について、今回の資料1-1の要綱案に反映されていると思います。一方で、法律事項ではないと整理した、企業内の人材育成に関わる好事例の収集・周知や、雇用型訓練のさらなる推進、キャリアコンサルティングの好事例の周知などの事項については、具体的にいつからどのように実行しようと考えているのかについて伺いたいと思います。

2点目は、要綱案の10ページにある、職務経歴等記録書の普及についてです。この職務経歴等記録書、つまり新ジョブ・カードについては、昨年12月の分科会において、「キャリアパスポート(仮称)構想研究会」の最終取りまとめが報告されました。ただ、分科会としては、構想研究会の報告を受けただけで、実質的な議論を行ったわけではない。職務経歴等記録書にかかる施行予定日は101日とされていますが、法案成立後施行までの間に、改めて本分科会で実質的な論議を行う予定があるのか。この点を確認させていただきたいと思います。

 

○小杉分科会長 事務局、お願いいたします。

 

○吉永総務課長 2点お尋ねがありました。1点目ですが、今回法律に盛り込まなかった事項が幾つかあります。予算措置等でできるものが多いかと思いますが、こういったものについては可能な限り速やかに実施していくことだろうと思っております。例えば、雇用型訓練については、予算措置等との兼ね合いがありますので、具体的な制度設計を含めて、具体的には再来年度から施行できるような形で作業を進めていきたいと考えているところです。

2点目の新ジョブ・カードについては、キャリアパスポート構想研究会等で議論を進めているところです。今般、法律上様式を定めるというところがありますので、準備が出来次第、審議会にもお諮りしながら、よりよいものを作り上げていきたいと考えておりますので、御協力いただければと考えております。

 

○高倉委員 法律案要綱の一番最後にある「第四 施行期日等」に関して、2点確認させてください。

1 点目は、14ページの第四の「三 経過措置等」について、具体的にどのような項目について経過措置を設けることを今のところ考えているのか、お聞かせいただきたいと思います。

2点目は、「四 厚生労働省設置法の一部改正」の中に、「職業能力開発に係る都道府県労働局の事務分掌に関する規定を整備する」とあります。この記載は、分科会の報告どおりの記載であると思いますが、仮に事務分掌を整備したとしても、予算や人を適切に配分しなければ、何の意味もないと思います。厚労省としては、地方の能開行政の充実に向けて、具体的にどのような措置を講じようとしているのか。人員の配置や、実際に配置した人員が職務として何を行うかなどを、具体的に確認をさせていただきたいと思います。

 

○小杉分科会長 事務局、よろしいですか。

 

○吉永総務課長 経過措置の関係は、キャリアコンサルタントの名称独占に関係し、現に施行の際にキャリアコンサルタント又は紛らわしい名称を用いているものについて、6か月間は使用を認めるというような規定や、あるいは新しい登録を受ける方については、施行前についても申請を行うことができるというような規定を盛り込むものです。

 それから、都道府県労働局の関係ですが、これについては今年の101日から全ての局に職員を1人、職業能力開発局担当として置く形にしているところです。まだ準備は整っておりませんので、どういう形で具体的な事務を行わせるかについては調整をしております。いずれにしても、最小限の体制にはなりますので、効果的な事務が実施できるような研修体制の確立などについても検討を進めていきたいと考えているところです。

 

○高倉委員 地方における能開行政の拠点を充実化させることは非常に大事なことだと思います。ただいまのご説明を伺う限りは、ハローワークとの連携も含めて質や量は本当に十分なのかというような印象を持たざるを得ません。今後は、例えば、全国544箇所のハローワークに能開行政に精通した人員を配置することや、求職者の就業に向けた支援、さらには企業における人材育成の支援施策、労働者個人のキャリア形成の支援など、より地域に密着した取り組みが必要ではないか。換言すれば、地域の実情と能開行政の双方に精通した人材を配置した上で、きめ細かな対応を行うことが必要ではないかと思います。厚労省としても、今後具体的に検討していく中では、そういった観点も踏まえた上で今後の取り組みを進めていただきたいと思います。

 

○吉永総務課長 御指摘のとおりだろうと思っております。その方向で進めたいと思っております。実際には、ハローワークでは公共職業訓練の受講指示や、訓練に関する事務も相当程度職業安定行政の事業の中で実施している部分があります。こういったものの中で積み重ねられてきたノウハウを吸い上げて、より効果的、合理的な職業能力行政の推進の体制を作っていくのかは非常に重要な課題だと思っておりますので、御指摘の点を念頭におきながら作業を進めていきたいと考えております。

 

○大隈委員 先ほどの高橋委員の質問に関連するのですが、10ページの職務経歴等記録書、ジョブ・カードの普及の件です。「国がジョブ・カードの普及に努めなければならない」と書かれておりますが、123日の分科会の報告書の中では、もう少し具体的に活用の好事例を示す、あるいは企業や業界団体への周知を促進することを指すということだと私は理解をしておりますが、それでいいのでしょうか。

 もう1点は、今後もジョブ・カードを活用するか否かは、あくまでも各企業の判断に任せてもらい、いろいろな数値目標が出るとか、そういうことを強いることがないのだろうということを確認したいと思います。

 

○吉永総務課長 ジョブ・カードについては、先ほどの職業能力開発促進法の改正部分と加え、青少年雇用促進法に関する法律の部分についても記載があるところです。具体的には、6ページの職業訓練等の措置の中で、7ページ目の最初の行になりますが、ジョブ・カードの普及促進、その他必要な措置を総合的かつ効果的に講じていくという形です。この中で、先ほど御指摘を頂きましたような好事例の収集、提供や、具体的にどういう形で進めていくのかという辺りについて、実施をしていくと。具体的な話は、法律上のものというよりは、その関係者の意見も聞きながら事業を進めていく形になりますし、またジョブ・カードセンターなどをお願いしている部分もありますので、そういった所と協力しながらやっていきたいと考えております。

 数値目標については、300万枚発給するというような規定も現行はありますが、いずれにしてもジョブ・カードは企業に義務付けて何かをやるということではなくて、正に御本人がそのジョブ・カードを持って、御本人のキャリア形成に資するような形で活用していただくように、今回様式を見直していきます。そういう方向の中で、もとより全ての人にとって必要なものでもありませんので、必要な方が必要に応じて使えるような形。ただ、使ったほうがよい方についてはこういうものを活用していただきたいということの周知を進めていきたいと考えているところです。

 

○河本委員 10ページのキャリアコンサルタントについてですが、ここで今回キャリアコンサルタントを規定しているのですが、今既にある資格として民間で勉強して取るキャリアコンサルティングと、キャリアコンサルティング技能士が国家資格としてありますが、その両方を指してこのキャリアコンサルタントと呼ぶのか、それともそこには違いがあるのかを質問させてください。

 

○吉永総務課長 現在、キャリアコンサルタントについては、標準キャリアコンサルタントという形で、原則140時間以上の講習を受けて試験に合格していただいた方がおります。民間の10団体でやっている試験です。念頭に置いておりますのは、このキャリアコンサルタント、標準キャリアコンサルタントを今10団体でやっているものをなるべく人を集めて合わせていくということで、新しい制度に移行する形です。先ほど、経過措置のところで若干説明いたしましたが、現行の標準キャリコンの方については、新キャリアコンサルタントという形で活躍していただくことを念頭に置いております。もう1つ、標準キャリアコンサルタントよりも上位概念として、技能士の1級、2級の方がいらっしゃいますが、これは将来的にどういう形で考えていくのかはありますが、標準キャリアコンサルタントよりも上位レベルのものとして、1級であれば正に指導レベルになりますし、2級であればかなり効果的にできるレベルですので、それは当面は併存しうるものではないかと考えております。いずれにしても、標準キャリアコンサルタント以上ということで、1級、2級の方も含めてキャリアコンサルタントとという新しい制度に移行するものと考えております。

 

○河本委員 ここで言っているキャリアコンサルタントという方々は、いろいろなことをしっかりと資格を更新していくことについては、技能士の方たちも含んでいるということでよろしいですね。

 

○宮川職業能力開発局長 技能士の方は、今、吉永課長が申し上げましたように、今の標準キャリコンよりも上の概念です。今回、キャリアコンサルタントの方は試験を受けていただかなくてはならないのですが、必要に応じてその試験を免除する形で、実際このキャリアコンサルタントという資格を取っていただく形になろうかと思っております。

 

○河本委員 なぜこういう質問をしたかと申しますと、今回このキャリアコンサルタントというのが高められたわけですが、やはり仕事として、役割として重要なことを担っていく中では、現状4万人ほどいらっしゃる資格の方たちが、どのようにその資格をいかして仕事をされているのかという現状把握や、厚労省で何かフォローをしていかないといけないことがあるのであれば、そこはしっかりしていかないと、この制度を作っても有名無実というか、育っていかないのではないかと。要は、若者や勤労意欲のある人たちをサポートする仕組みになっていかないのではないかということで、きちんと確認をさせていただきたいと思いました。

 

○吉永総務課長 今般、登録制度を導入いたしますので、今、資格を取った方がどのぐらい稼働しているのかは正直なかなか把握しにくいところがあります。登録制度を取るということで、正にどういう形でどういう現場で活躍していただけるのかも、いろいろな形で情報を得ることができるかと思いますので、御指摘の点を踏まえて対応していきたいと考えております。

 

○小杉分科会長 ほかにありますか。

 

○大久保委員 八の青少年雇用情報の提供の所で、2点確認をいたします。1つは、ここに書いてある「学校卒業見込者等募集」が、一体どこまでの範囲を指しているのかが分かりませんでした。これは、本当の卒業見込者と、3年以内は新卒扱いと言っている新卒募集に応募する人たちとか、学卒未就業者、そのほか一般的に第2新卒と呼ばれている若年の未経験者の採用などがありますが、これはどこで概念として切り取られているのでしょうか。いわゆる、新卒の募集については、そういう情報提供をすることが義務付けられていて、中途採用やそのほかの採用の場合については義務付けられていないと思いますので、その線引きがどこで行われているかを確認したいと思います。

 それから、このあと具体的にどういう情報を公開することが努力義務になるのかが、今後省令で定められると思います。別途お配りいただいた資料1-3の中には、具体的に例えば過去3年間の採用者数及び離職者数、あるいは能開に関係するところであれば、導入研修の有無や自己啓発補助制度の有無等が記されております。これは、具体的にはこういう努力義務が発生したときには、新卒応援ハローワーク等で取り扱う求人表にその記入欄が設定されて、各企業にそれを書き込むことが促されるという実際の運用になるイメージなのでしょうか。その辺りを確認をさせていただきたいと思います。

 

○五百旗頭派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官 職業安定局企画課の五百旗頭と申します。今の御質問の最初の点です。学校卒業見込者等の中には、学校卒業見込者プラス、既卒3年までは新卒扱いとしていただくよう御協力を求めておりますので、そこまで含まれるものです。

 それから、ハローワークにおいての取組についてですが、具体的な中身についてはこれからの検討ではありますが、やはり積極的な情報提供を促していく環境は用意していく必要があろうかと思っております。先ほど質問がありましたように、求人申込書の記入欄の中に、そういった欄を設けておくことも含めて検討していきたいと考えております。

 

○大久保委員 後半の2つ目の件ですが、例えばこの中で過去3年間の採用者数及び離職者数というのは、一部の企業にとっては非常にナーバスな情報公開を求められることになると思います。例えば、ハローワークに求人を出すときについては、そういう欄が設定されていなくても、これはルール化されると民間はその法律に基づいて記入欄を作るという行動を取ることになるのだと思います。民間だけあって、ハローワークではないみたいな状態になると、非常に齟齬を来たすところがありますので、その辺りは全体の求人をする機関が足並みを揃えて取り組めるような形を取り、混乱を招かないように配慮していただきたいと思っています。

 

○五百旗頭派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官 まず現状としては、学卒求人について既に過去3年間の採用者数、離職者数については、任意で御記入いただけるような欄を設けているところです。ただ、それ以外の項目も含めて、積極的な情報提供を頂けるような工夫をしていきたいと考えております。

 それから、先ほど頂きましたその他の求人機関を含めて連携を取りながらという御意見については、承った上で、今後工夫なりをしながら具体的な検討を進めていきたいと思います。

 

○小杉分科会長 よろしいですか。

 

○大久保委員 はい。

 

○小杉分科会長 ほかにありますか。

 

○新谷委員 諮問案件ですので、労働側として、総括的な意見を申し上げたいと思います。  

ただいま何点か質問や確認をさせていただきましたが、労働側としては、先月23日にとりまとめた建議で記された法律事項について、おおむね法律案要綱に反映されていることが確認できたと思います。今後は、建議で記された事項のうちの省令や指針で詳細を規定する事項もあります。事務局においては、省令案要綱についても、建議の内容を正確に反映していただくようお願いしたいと思います。

また、今後は法律案要綱に基づき、法律条文を作成する過程に移行するわけですが、法律案要綱の内容を正確に法律条文として記述することを要請しまして、労働側としてはこの法律案要綱について了承したいと思います。

 

 

○小杉分科会長 ほかにありますか。

 

○高橋()委員 1ページの二の目的の最初に出てきますが、今回、適職の選択という言葉が何箇所かこの法律案要綱に出てきます。他方で、職業の選択という言葉も併せて別の所には出てきます。この適職の選択という意味について、もう一度教えていただきたいと思います。「適性並びに技能及び知識の程度にふさわしい職業」が「適職」の定義のようですが、それについて、そもそも論の質問が2つあります。1つは「ふさわしい」というのはどういう価値判断の下でふさわしいとするのか。すなわち、それは求職者、労働者側にとって個人がふさわしいと判断をする職業なのか。それとも、採用する側、事業主側にとってもその方がふさわしいと判断するものなのかがよく分かりません。それが1点です。

 それから、「適性並びに技能及び知識の程度」というのは、現段階といいますか、求職段階のことを言うものなのか、ある程度将来的なものも加味する程度のことを言うかです。この質問の問題意識は、特に通常新卒採用の場合、現在の程度ではなく、将来この人はきっとこうなってくれるだろうという潜在可能性を見て、その期待の下に採用する部分もあると思います。この「適職」の選択とは一体何なのかが分かりにくいので、説明いただければと思います。

 

○五百旗頭派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官 まず、目的のところの適職が、誰にとってのふさわしい点なのかです。こちらについては、個人にとってふさわしいのか、企業にとってふさわしいのかどちらなのかですが、ここの部分は一義的には個人にとってふさわしいと思われる職業を適職と考えております。

○小杉分科会長 もう1点、見ている能力は今の能力なのか、潜在能力を含んでいるのかというお話だと思います。

 

○吉永総務課長 ここは、目的規定でどちらがという形で書いたものではありません。いずれにしても、この目的の規定は最後にありますとおり、青少年がその有する能力を有効に発揮をすることを中間目標とし、福祉の増進と経済社会の発展に寄与することが最終的な目標になっております。入職の段階の適職も重要ですし、その後の最終的な経済社会の発展に寄与するというタイミングでの能力発揮も極めて重要だろうと思っております。これ自体は、どういう形でと一義的に申し上げることはできませんが、いずれにしても青少年の能力発揮と経済社会の貢献という観点で、適切な職に就いていただくということを念頭に置きながら、この法律の施行を行っていくということだろうと考えております。

 

○宮川職業能力開発局長 私からも補足いたします。今、吉永課長から申し上げましたように、今回の法律は勤労青少年福祉法の一部改正の中で、従来からの基本的理念であった青少年に対して、将来の経済や社会を担うものであることを基本的理念とし、そういう方々であるということを鑑みた上で、青少年が充実した職業生活を営むとともに、有為な職業人として健やかに生育するように配慮されるものとするという規定を、残していく形を考えております。また併せて、青少年は将来の経済及び社会を担う者としての自覚を持ち、自ら進んで有為な職業人として生育するように努めなければならないという趣旨もあります。この目的規定の中では、厳密な意味で言えばそういう意味で当然両面あると思います。事業主の方にとってみても、ふさわしい方々を雇って、それから本人にとっても、本人が第一義的かもしれませんが、そういう意味で将来の経済及び社会を担うという形での人材をつくっていくという趣旨での目的規定という読み方ではなかろうかと思っております。

 

○五百旗頭派遣・有期労働対策部企画課雇用支援企画官 1点目について説明が残っておりました。職業の選択に関するという用語も使っているがという御指摘であったと思います。こちらについては、三の関係者の責務の事業主の所に出てくる用語です。個人にとっては、ふさわしい職業かどうかという価値判断がありますが、事業主にとってはあくまでそれがふさわしいかどうかは、個人の感覚の問題もありますので、ここでは事業主の責務ということで、職業の選択という文言を使っているところです。

 

○小杉分科会長 これ以上御質問、御意見はないということでよろしいでしょうか。当分科会として、勤労青少年福祉法等の一部を改正する法律案要綱については、おおむね妥当と認める旨を、私から労働政策審議会会長宛てに御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

                                   (異議なし)

 

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、事務局から報告文()の配布をお願いいたします。

 

                                 (報告文()配布)

 

○小杉分科会長 それでは、お手元に配布されました報告文()により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

 

                                   (異議なし)

 

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告いたします。ここで、宮川職業能力開発局長より御挨拶があります。

 

○宮川職業能力開発局長 皆様方には、1月の建議の取りまとめに引き続き、本日この法律案要綱の御審議を賜り、ただいま御答申いただきましたこと、誠にありがとうございます。今日の質問と意見の中で出ましたことを踏まえ、今後の準備作業、それからこの法律が成立した暁には、施行作業にいかしていきたいと思いますので、今後ともよろしく御指導のほどお願いいたします。

 改正法案については、国会の提出後ですが、改正法施行のための省令等の改正については、先ほど申しましたように、引き続きこの審議会にお諮りする形になるかと思います。その際には、よろしくお願いいたします。どうもありがとうございました。

○小杉分科会長 次の議題に移ります。議題2、職業能力開発促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱についてです。これは、本日付で厚生労働大臣から労働政策審議会会長宛てに諮問がなされたところであり、これを受けて本分科会において審議を行うというものです。内容について事務局から説明をお願いします。

 

○藤枝能力開発課長 資料2-1です。今会長からお話がありましたように職業能力開発促進法施行規則の一部を改正する省令案についてお諮りするものです。具体的には毎年、改正の御審議をいただいております職業訓練基準の見直しを図るものです。資料2-2は概要です。職業能力開発促進法の第19条で、公共職業能力開発施設における普通職業訓練、これは学卒訓練ですが、普通職業訓練は厚生労働省令で定める基準に従うとなっております。また、地方自治体が設置する都道府県立の職業訓練施設については、この省令で定める基準を参酌した基準を条例で定めるとなっております。

 したがいまして、都道府県レベルでは地域ニーズに応じた訓練基準の見直しは、もちろん都道府県独自でできるものですが、基本的には国の定める訓練基準が1つのよりどころになっております。私どもは、この訓練基準について全訓練系、訓練系と呼んでおりますが、全訓練分野、全科目について4年に1度見直しを行うというスケジュールを組んで毎年見直しの作業をしております。

 本年度については、園芸サービス系、印刷・製本系、食品加工系、化学系、塗装系、社会福祉系の6分野について専門の調査委員会を設けて見直しが必要かどうかを御議論いただいた上で、その検討結果を踏まえた見直しをさせていただこうというものです。主な改正内容です。園芸サービス系については、造園科の教科科目について専攻学科に「関係法規」、実技に「製図実習」を追加するという内容を考えております。

 印刷・製本系は、製版科、印刷科及び製本科の基礎科目、共通科目ですが、基礎科目の訓練時間の変更を予定しております。内容的には、製本関係は原稿の処理や加工についてデシタル化が非常に進んでおりまして、デジタルデータの作成や出力作業、こういう技能のための基礎実技の時間を拡充するというものです。また、製版科の訓練時間と教科科目についても同じようにデジタルデータのレイアウトや画像処理に係る技能の実技を充実させるということで、訓練時間を290時間から350時間に変更するという内容を考えております。

 食品加工系は、文言の整理です。化学系は、公害検査科の教科科目の変更です。専攻学科の中の「公害概論」について、公害及び環境全般を取り扱うという観点で「公害総論」に改めますとともに、現状ですと「汚染物質」、「音響及び振動」という科目になっております。これは、それぞれの公害特性に特化した内容に整理いたしまして、「水質・土壌概論」「大気概論」「騒音・振動概論」という形で、その特性に応じた科目に編成して整理し直すという改正を考えております。

 塗装系は、文言の整理です。社会福祉系は、介護サービス科の教科科目に「介護機器取扱実習」という項目があります。介護機器とやや限定的に捉えられがちですので、介議現場で使われる幅広い機具を取り扱う実習にするという観点から「福祉用具・介護用品取扱実習」に改めるという改正を予定しております。以上、簡単ですが御審議のほどよろしくお願い申し上げます。

 

○小杉分科会長 ただいまの説明について、御質問、御意見ございますか。よろしいですか。それでは、当分科会といたしまして、職業能力開発促進法施行規則の一部を改正する省令案要綱について、妥当と認める旨を私から労動政策審議会会長宛てに御報告申し上げたいと思いますが、よろしいでしょうか。

 

                                  (異議なし)

 

○小杉分科会長 それでは、事務局から報告文()の配布をお願いします。

 

                                 (報告文()配布)

 

○小杉分科会長 お手元に配布されました報告文()により、労働政策審議会会長宛て報告することとしてよろしいでしょうか。

 

                                  (異議なし)

 

○小杉分科会長 ありがとうございます。それでは、そのように報告させていただきます。次に議題3番目に入ります。その他、技能実習制度の見直しについてです。内容について事務局から説明をお願いします。

 

○高橋育成支援課長 技能実習制度は、法務省所管の入管法に根拠のある制度です。外国のアジア地域を中心にした発展途上国等から外国人材を日本の企業の中に受け入れまして、OJTで日本の技能、技術、知識を一定期間、現行では最大3年までとなっておりますが学んでいただきまして、しかる後に帰国し母国で修得した技能等を活用して活躍していただく、そういう人づくりを通じた国際貢献のための施策です。

 この制度は平成5年に施行されて以来、幾多の改正も行われましたが、入管法、労働関係法令の違反が絶えませんので、今回、内外からも批判を受けているということに鑑みまして、政府として抜本的な見直しをしようということで、今現在、作業をしている状況です。

 お手元の資料3-13-2については、その見直しに向けて法務省と今回は厚生労働省も強くコミットいたしまして、有識者による合同の懇談会を設けて議論した結果をお示したものです。資料3-1の概要のご説明の前に、資料3-2として合同有識者懇談会の報告書をお付けしておりますので、まずそちらを御覧ください。表紙に130日とありますが、1枚おめくりいただきまして、委員の名簿がありますが、基本的に学識経験者の方々、労使の方々などに法務、厚労両省から推薦を得て参加していただきました。また更に1枚おめくりいただきまして、開催経過でありますが、1110日の日の第1回の会合から、第4回目の1月下旬まで集中的な御議論をいただいた成果としての報告書です。内容が大部にわたりますので、この報告書自体の要約ですが、資料3-222ページ、一番後ろに掲げられておりますので、そちらをご覧ください。

 報告書のポイントをご説明します。趣旨として、枠囲みの中に書いてありますように昨年の6月に技能実習制度を所管しております法務省の出入国管理政策懇談会・外国人受入制度検討分科会で、まず、その前の年の11月から昨年6月まで技能実習制度の見直しの方向性に関する議論がなされたところです。また、それと同じ6月に「日本再興戦略改定2014」ということで、政府としての対応方針も示されました。

 その対応方針ですが、制度の本来の趣旨を取り戻せるように、きちんとした制度の管理監督体制の強化を行うということと、さらに併せて産業界等からいろいろ要請が多かった実習期間の拡大や受入枠の拡大も行っていくべきという内容が盛り込まれました。それを受けまして、法務省、厚労省の合同有識者懇談会で報告書をまとめたものですが、下に項目ごとに見直しの内容を付けております。見直し項目のところを御覧いただきまして、左側に枠で囲んでおりますが、上の4つが制度の適正化に関わる項目。また、下の3つが制度の拡充に関わる項目ということです。

1つずつ説明を申し上げたいのですが、時間の都合で、これをさらに要約したものが、先ほど冒頭御覧いただいた資料3-1というものですので、そちらを御覧ください。資料3-1、技能実習制度の見直しの内容についてです。見直しの方向性としましては、管理監督体制の強化を前提に制度を拡充し、平成27年度中に新制度に移行するというものです。2つの柱があります。1番目ですが、管理監督体制の強化です。マル1は現在、技能実習制度は外国から人材を日本に受け入れてOJTを行って、母国に帰国して技能移転する制度ということですが、実際には政府間の取決めはありません。

 そういう中で、送出し国の中では、実習生を募集する機関として送出し機関があります。実際に条件を提示して実習生を集め、集まった人材を日本に送るという機関です。そこが本当はやってはいけない裏契約といいますか、実習生との間に、途中で帰ってきたり、あるいは逃げ出したら高額の保証金や違約金を徴収するとか、その他、不利益を被るような契約をしているという実態がありますので、そういうことが人権侵害や強制労働につながっているという内外からの批判もあることを受けまして、今後の見直しの方向性ですが、日本国と相手国政府との間で取決めを順次作成いたしまして、それにのっとって相手国政府に送出し機関の適正化を求めるものです。

 マル2です。監理団体、実習実施者、いわゆる受入企業ですが、今まで義務や責任が不明確であって、その結果いろいろな法令違反や人権侵害行為が多発したという実態に鑑みまして、今後は新しい行政上の管理の法的な制度も含めまして枠組みを整備するということです。1つには、監理団体、これは外国の送出し機関から送り込まれた外国人材の実習生に最初の原則2か月、講習を施しまして、それで個々の受入企業に職業紹介という手続を経まして配属先を決めて送り込むという役割を持っており、なおかつ、実習実施期間、受入企業に対して一定の頻度で指導監督等を行うという役割を担っています。むしろ、中には受入企業の役員の方が集まって監理団体を作っているという団体の形態もありますので、そうした場合にかなり管理監督体制が監理団体と実習実施機関の間であやふやであったという反省に鑑みまして、監理団体については許可制、受入企業については届出制ということで、許認可の枠組みでしっかりと指導監督していくものです。

 また、個々の実習生について、あらかじめ、いつどこで誰がどのような施設で、どのようなステップでどの程度の技能まで修得させるのかということを明らかにします技能実習計画を策定していただきまして、それをあらかじめ認定するということ。受けた認定に基づいて内容もそれに即した実習を行っていただくものです。

 マル3です。監理団体や実習実施者の指導等の実務を担う機関として、これまでは民間機関の公益財団法人に国が委託事業として巡回指導等をお願いしていたわけですが、なかなか法的権限がないとか、委託を受けた民間機関が監理団体から会員として、いろいろな会費を徴収していたこともありましたので、これまでの公益財団法人とは違って、新しく認可法人を設置いたしまして、実地でいろいろな指導等を行っていきたい。また、上のマル2に係る許可についても最終的には決裁権限は主務大臣に残るわけですが、それに係るいろいろな手続、指導等を担う機関として設置するものです。

 マル4です。実習生の保護についてです。先ほどのマル3の機構において実習生から母国語で通報、申告、相談を受け付けられる窓口を整備する。また、いろいろな人権侵害行為が指摘されておりますが、例えばパスポートを取り上げる、不当に実習生の私生活を制限するという行為について罰則の規定を設けるものです。また、不適切な行為で実習ができない状態になったり、受入企業が倒産するという事態に備えまして、そういう場合にも実習生が希望すれば実習先、受入企業を変更するのは、一義的には監理団体にその責任があるわけですが、それもままならない場合に国が最終のセーフティネットとして、実習先の変更に係る支援を行うこともやっていくものです。

 マル5です。所管省庁、主務省庁としては、この制度にこれまでの法務省に加えて厚生労働省も主務官庁に名前を連ねたいと考えております。そのほか実際に技能実習生を受け入れている業種、農業やものづくり、建設等いろいろありますが、そこの所管官庁、都道府県に対しても見直し後の制度が円滑に施行できますように所要の協力要請はできるように仕組むものです。更に地域レベルでも、都道府県や関係省庁の出先機関が適切に情報共有を図りながら監督、指導を行える体制を構築するものです。

 以上のような「管理監督体制の強化策」の下に「2.拡充策」がありますが、下段のマル1、マル2に優良な監理団体等とありますが、優良ということで法令違反がないことはもとより、技能実習計画に定められた技能実習をきちんと行って、その成果がきちんと出ているということ、すなわち、技能評価試験で一定の合格率を達成したということ、あるいは実習生の指導や相談体制がきちんと整っているという一定の要件を満たすという優良な監理団体、受入企業においてのみ実習期間を現在の最長3年から5年に延長することや一企業当たりの受入枠を倍増するものです。

 更に現在対象職種としては全国一律的に対応できるような職種のみに限られておりますが、例えば今後は地域の特産品の製造など、そうした地域の特性を踏まえた職種、あるいは、かなり大手の企業に限られるとは思いますが、社内での技能評価制度、社内検定等の仕組みが整っている企業については、そうした企業独自の職種についても認める、更に、これまで1職種1作業に限って実習を認めていたわけですが、昨今の多能工化ニーズに鑑みまして、同時に複数の職種の実習も認めるという方向で拡充を図っていきたいと考えております。

 そうした内容が有識者懇談会で示されたということで、それを受けまして現在作業をしているところです。作業の1つの成果として、次に、資料3-33-4で法律案を現在、準備しつつあるところです。資料3-3に新しい法律案の要綱を現時点版ということでお付けしておりますが、かなり大部にわたりますので資料3-4で法律案の概要をお示ししております。基本的には、先ほど資料3-1で説明を申し上げたとおりのことを法律事項について整理したものです。タイトルは外国人の技能実習の適正な実施及び技能実習生の保護に関する法律案です。タイトルのとおり技能実習を、その趣旨、目的に照らして適正に実施するということと、技能実習生の保護という2つの柱を実現するための法案です。

 これは、先ほど冒頭に技能実習制度については現在、法務省の入管法に根拠があると申し上げましたが、その部分から特に法律、入管法の省令に基本的なことは書き込まれておりますが、そこから主なものを抜き出しているものです。まず、法律案の概要の所です。(2)(3)(4)の所にありますように、今後は技能実習計画や監理団体についての許認可制度を設ける。(5)人権侵害行為についての禁止規定、罰則を設ける。更に相談や情報提供を実習生に対して行う、転籍の連絡調整を行うという保護に関する規定を設ける。(7)外国人技能実習機構を認可法人として新設し、所要の事務をさせるものです。

 こうした法律案を今作っておりまして、法務省と厚生労働省の共管ということで、この通常国会に予算関連法案として提出する予定です。説明は以上です。よろしくお願いします。

 

○小杉分科会長 では、ただいまの説明について御質問、御意見はありますでしょうか。

 

○田口委員 資料3-1について幾つか御質問させていただきます。管理監督体制の強化策のポイントのマル1で、相手国の問題で、不適正な送出し機関の排除を目指すとありますが、今の段階で具体的にどういう措置によって、排除していくのか。これは2国間協定の問題ですので、なかなか難しい問題もあるかと思いますが、もし具体的な措置をお考えであればお話をいただきたい。

 先ほど担当官からお話もありましたが、マル2の許可制と届出制ですが、実際に実習実施者というか、会社の社長さんが監理団体の役員を兼ねているという作り方が相当多くありまして、ここは許可制の場合は兼ねてはいけないというようにするのか、どういうような形になっていくのか。

 また、労働基準法違反が非常に多くて、実習実施者というか、建設業の限られた状況で申し上げると、これまで人を雇用したことのない方が、技能実習生を雇用されるケースが多く、要するに人を使う、雇用するという概念というか、労働基準法とかそういうことについてよく御存じなくて、この制度に踏み込んでしまうという、そういう経過が非常に多いと思いますので、監理団体を強化するということは当然だと思いますが、実習実施者に対する何と言うか、指導の内容としてのそういう人を雇うに当たっての事業主の責務というか、その点についての研修や指導とか、そういうものをもっと強めていかないと、監理団体の強化だけではなかなか適正化に進めないのではないかということです。

 また、外国人技能実習機構を作られるわけですが、これまでのJITCOとの関係はどうなるのかと。JITCOが縮小されるのかということですね。JITCOというのは、では、今後何をやっていくのかということです。

 それと、拡充策のポイントで、対象職種に限られているということになっていて、林業等もこの報告書の文章の中で出ておりますが、職種の随時追加というようになっていますが、追加の要望を承認する条件というか、それはどのようなものなのかを教えていただきたい。それと、複数職種の同時実習の措置というのは、具体的に例えばどういうようなことが可能なのか。実際に1日実習しているわけですから、ある時は、この実習をやって、次の日は別の実習をやるという、そういうことなのでしょうか。その点についてお願いしたいと思います。

 

○小杉分科会長 5点ぐらいかと思いますが、事務局、お願いします。

 

○高橋育成支援課長 たくさん御質問を頂戴いたしましたので、答えられる範囲で、順次お答えしたいと思います。送出し国との関係で、今後、2国間での取決めを交わして、不適正な送出し機関を排除していくものですが、特に私どもが重視しているのが、説明の中でも申し上げましたけれども、実習生に対して、不当な保証金であるとか、あるいは違約金とか、あるいはその他実習生の自由を不当に縛るような契約をすることを排除したいと考えております。

 また、日本における技能実習制度について、正しい知識、あるいは制度をきちんと周知をして、条件に合った実習生を募集できるようにと考えております。したがって、2国間の取決めの中身ですが、詳細は今後、外務省も含めて関係省庁で詰めていきたいと考えておりますが、そのような人権上、当然、配慮されるべきような、不当な契約をしない、させない、そういう指導を相手国政府にしっかりと求めていく。更に、政府がその指導をした上で、適切な送出し機関を認定していただき、政府から認定を受けた送出し機関から入ってくる人材しか、今後、将来的には、日本国としては実習生として認めないという方向を打ち出しているものです。

2つ目は、実際に監理団体には、御指摘があったように、受入企業の役員の方、あるいは経営者の方が集まって監理団体を作っている場合もあると承知しております。そのようなところで、その監理団体が受入企業を指導するところが曖昧になってしまって、御指摘のような法令違反が生じる1つの原因になっているのではないかと考えております。そういう実態を踏まえて、今後は外部の目を入れるということで、例えば、監理団体の役員の方に受入企業等とは関係のない、外部の方に入ってもらう。あるいは外部の方による一定の監査を受けていただくという、そういったことで、監理団体が適正にその監理事業を行えるように図っていきたいと考えております。

3つ目の御質問ですが、実習実施機関、いわゆる受入企業が、日本人の従業員もあまり雇用したことのない人が外国人の実習生をいきなり受け入れるときに、法令の知識等がないがために、いろいろな違反等が生じるのではないかという御指摘ですが、そういうことにも配慮して、有識者懇談会でも御議論、御指摘を頂きました。今後は実習生を受け入れる企業において、労働関係法令、あるいは入管法令、それから新しくできる、この技能実習新法の内容について、十分な知識が得られるような講習を必ず受けていただくということにしたいと考えております。これはいきなり、最初からどの程度で講習ができるかというところもありますので、内容や、やり方も含めて段階的に実施できるように、これから準備、あるいは検討を進めていきたいと考えております。

4つ目の御質問ですが、新しくできる外国人技能実習機構と、いわゆるJITCO、公益財団法人の国際研修協力機構との関係ですが、これまでは監理団体、あるいは受入企業に対して、厚生労働省が予算措置、いわゆる委託事業として、法令違反がないように巡回指導、あるいは安全衛生にきちんと気を付けてください、実習生にこういうところを配慮してくださいというような指導、助言等を行っておりました。それから、今後、あまりこれまで実効が十分上がっていなかったという批判をいただいておりまして、今回の見直しをやるべきという背景の1つになっています。今後は、JITCOに対して行っていた巡回指導に係る委託事業については、来年度については当面続きますが、この新しい機構ができたとしたら、その事業を廃止して、監理団体、受入企業に対する現場における指導については、基本的にこの機構が担うものです。

 そうすると、JITCOはどうなるかというと、JITCOにおいては、厚生労働省の委託事業のみならず、自主事業として、監理団体を賛助会員として、そこから会費を徴収し、いろいろな自主事業、セミナーとか、テキストの作成あるいは販売もしているようです。また、この技能実習関係の役所に対する手続の代行等もされているようです。そうした賛助会員会費収入であるとか、手数料収入で、今後自主的に専門サービス提供機関として事業を行われるのかと考えております。

5つ目ですが、対象職種の拡大についてです。技能実習に係る対象職種の拡大については、これまでも3つほど要件があります。まず最初に、この作業の内容が単純作業ではないということ、それから、送出し国の実習のニーズに合致するものであること、3番目に適切な技能評価、技能の修得を目指した制度ですので、修得した技能を適切に把握できるような、技能評価試験の制度を有しているということです。これが地域の特性を鑑みたローカルな職種の追加であっても、あるいは企業独自の職種の追加であっても、この基本的な考え方は変わることはありません。そうした一定のこの要件を満たすかどうか審査した上で、追加していきたいと考えております。

 最後の御質問ですが、複数職種について、どういうものが可能かということですが、詳細はこれから詰めていきたいと思っております。基本的には全然関係のない職種ではなくて、例えば建設であれば、型枠や溶接とか、いろいろな関連する職種がありますが、これまでその中でどれか1つだけを選んでやってくださいということでしたが、関連のある1つ主な職種を選んでいただき、試験を受けていただくわけですけれども、それと関連する職種については、少し幅を持って、同時に実習ができるようにということを考えております。したがって、その場合に、同じ職種、あるいは近接した職種であったとしても、その実習生を雇っている事業主と全然違う所に、例えば派遣のように、その日その日で空いているような現場に行かせるとか、あるいは全く関係のない、これを母国に帰っても、どうやっても活かしようがないであろうというような職種構成での複数職種の同時実習は、認めない方向で考えているものです。

 

○小杉分科会長 よろしいですか。ほかにありますでしょうか。

 

○上原委員 東日本大震災のときに、中国へ外国人技能実習生が随分帰国したことをニュースでやっていましたが、大体の規模として、年間どれぐらいの人数を受け入れているかということの質問です。

 そのほかに、管理を厳しくして、拡充しようという方向ですけれども、ニュースでやっていたのは、どちらかと言うと、アジアの人材が取り合いになっているということでした。  

特に台湾とか、韓国、正確には覚えていませんが、国によっては、受け入れる国に来る交通費を出すということもやっている。この議論と別な話ですけれども、その辺の各国の事例などもよく調べる必要があるのではないでしょうか。資料3-212ページの下から3行目で、「安易な低賃金労働者の確保の手段とならないように」と書いてあります。一方で、国際競争の現場では、アジア同士の中で、例えばミャンマーとか、タイとかの陸続きのような所では、争奪戦がものすごいということをニュースでやっていました。その辺のことも踏まえながら、他国の事例もよく研究して、対応をすることが必要なのではないかと思います。それでないと、良い悪いは別にして、段々、日本に来なくなるというようなことが考えられると思います。

 

○小杉分科会長 事務局にお願します。

 

○高橋育成支援課長 まず、現状の数に関わることですが、資料3-2の合同有識者懇談会報告書の20ページを御覧ください。最近、平成22年以降の毎年実習生の数で、これはストックベースで見たものです。15万人前後で推移しています。特に上の囲みの平成25年末の実習生の数が155,000人となっています。1年目、2年目、3年目の合計の数ですので、大体年間5万人から6万人ぐらい入って来ている計算になるかと思います。ここは平成25年までしか出ていませんが、統計を取っている法務省にお聞きしたところ、最近は平成25年よりは2割から3割伸びそうだということで、今後、増加傾向にあるということです。

 一方で、送出し国はどこかというと、その下にありますが、平成25年の時点では、中国が約7割ということで、圧倒的な割合を占めています。そのほかベトナム、フィリピン、インドネシア、タイ、御指摘があった国からもいらしています。その上位5か国で95%を占めていますが、最近、また法務省に直近の状況を聞きまして、中国は最近、国内で経済成長も著しいですし、為替の関係もありますので、少し割合が下がってきていると聞いております。その分、ベトナム、フィリピン、インドネシア、タイで比較増ということで聞いております。ファクトの関係はそういうことです。

 

○宮川職業能力開発局長 私からよろしいでしょうか。今、上原委員からお話があった外国人の雇用をどうするかという問題ですが、今回の技能実習制度というのは、あくまでも技能実習という形での国際協力ということで、いわゆる人材不足対策ではないという形で整理させていただいております。先ほど、高橋課長からも話がありましたが、そういう形での整理をして、3年、これからは5年までできますが、3年なり、5年たったところで帰っていただくという制度を維持していくという考え方です。

 一方で、労働力不足の問題がいろいろ言われている中で、外国人雇用問題をどうするかという議論ですけれども、これは昨年の成長戦略の中でも、中長期的な観点から、外国人雇用問題については、検討していくべき課題という形での位置付けは明確にされているところです。これは私ども、労働行政や産業政策のみならず、ほかに福祉、教育、治安、それから地域の様々な観点から御議論いただかなければならないということで、所管としては内閣府が所管する形になると思います。これは、政府全体として考えなければならない問題であろうと思っております。いずれにしても、現在の立場としては、いわゆる単純労働を入れないという政府の方針の下に、専門人材などを積極的に取り入れる。それから、技能実習など、あるいはEPAという形もありますが、様々な形で来ていただいた外国人の方との共生は進めていく。そのような形の中で、今後、いろいろな観点で御議論いただくことが必要な項目である。その際に、上原委員がおっしゃられるような諸外国における経験とか、実態とか、そういうものをよく調べた上で行うべきものだと考えております。以上です。

 

○小杉分科会長 ほかにありますでしょうか。

 

○新谷委員 今、能開局長から答弁いただきましたが、技能実習制度の見直しについては、申し上げたい点がたくさんあります。能開局長からは、政府の成長戦略との関係の答弁がありましたが、そもそも成長戦略の策定や改訂の論議を中心的に行う産業競争力会議には、労働側の代表が1人も入っていません。そうした中で、技能実習制度の拡充を含む外国人材の活用拡大の方向性が決められたのです。この背景には、人手不足を背景とする産業界のニーズがあるわけですが、法務省令で実習生の報酬は「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上」と定められているにもかかわらず、実習生の実際の平均月額賃金は、約125,000円の賃金と、最低賃金より1円か2円多いだけで働いている方々も多くいます。

また、今回の見直し論議は、法務省の出入国管理政策懇談会で基本的な見直しの方向性の論議をし、その論議を受けて厚労省・法務省合同有識者懇談会で詳細な論議が行われましたが、法務省の出入国管理政策懇談会での論議の際には、上原委員がご指摘された隣国の受入れ制度、具体的には韓国の雇用許可制等も調査しつつ論議を行いました。結果、現行の技能実習制度をベースに適正化をはかることにしたわけです。

申し上げたい点は幾つかありますが、一番申し上げたかったのは、今回の見直しは、「制度の適正化」と「制度の拡充」という2つの領域があるということです。

いわゆる「制度の適正化」は、管理監督体制を強化するものです。

 最近、ミャンマーから来た技能実習生が途中で逃亡して難民申請を行ったという事件もありましたが、そもそも技能実習制度は、パスポートのを取り上げや、労働基準監督署に監督指導を行った事業所の8割で労働関係法令違反が発覚したなど、不適切な事案が非常に多いことが現状です。先ほどもやり取りがありましたが、我が国の技能や技術を発展途上国に持ち帰っていただいて、母国の経済発展に資するという本来の制度趣旨を逸脱する事案があまりにも多い。今回の見直しでは、こうした状況を是正するため、単純労働分野の人手不足を外国人で補うための手段として活用ではなく、制度の本来の趣旨に制度運営がなされるよう「制度の適正化」の方策が最初に打ち込んであるものと理解をしています。

 もう1つの領域が、実習期間の延長や、受入れ枠の拡大、対象職種の拡大という「制度の拡充」で、これらが閣議決定で決められた部分であるのです。

私たちは合同有識者懇談会で、「制度の適正化」こそを最優先課題として捉え、見直しを行うべきと主張してきました。アメリカ国務省の人身取引報告書でも、毎年、G7の中で日本だけが奴隷労働をやっていると、名指しで技能実習制度が批判を受けています。「制度の適正化」をまず進め、その効果が確認されたことを受けてはじめて「制度の拡充」を検討の俎上に乗せることが筋であるとを強く申し上げてきました。合同有識者懇談会の議事は非公開ですから、具体的な論議は表に出ておりませんが、労働側の主張は、そういうことです。

今回、合同有識者懇談会の報告書を受けてとりまとめた法律案要綱を報告いただきましたが、残念ながら、法律案要綱では、「制度の適正化」の項目と「制度の拡充」の項目が同時施行となっています。労働側としては、「制度の適正化」の効果が分からない中で、「制度の拡充」を行うことは容認できないと考えているところです。

 こうした基本的な考え方を申し上げた上で、御質問したい点があります。この法律案要綱の能開分科会での扱いは、報告という扱いですが、確認したい点が2つあります。

 まず1点目。資料3-210ページにある「実習生の賃金等の処遇の適正化」についてです。技能実習制度が制度本旨を貫徹する運営がなされるためには、技能実習生がチープレーバーではないということが大事なわけで、そのためには、「実習生の賃金等の処遇の適正化」が最も重要です。この点は様々な論議がありましたが、結果的には、受入れ機関が実習生に対して、日本人に払っている賃金等と比較して実習生の賃金が同等以上であることの説明義務を負うという形でまとめたわけです。

 なぜこうしたかというと、実習生の報酬は「日本人が従事する場合の報酬と同等額以上」という要件が法務省令で定められているにもかかわらず、実際の実習生の賃金は125,000円程度と守られていないのです。この法務省令の実効性を担保するために実習実施機関に説明義務を課したのですが、法律案要綱のどこに記載されているのかを教えていただきたい。

 この点は本当に大事なポイントで、今度の見直しの「肝」に当たる部分であると思います。日本人と同じ技能を持ち、同じ職務に従事しているにもかかわらず同等の賃金が払われないという法務省令の違反事例が散見される中、この法務省令の実効性を担保する方策として設けたのが実習実施機関に課す説明義務です。この実習実施機関に課す説明義務について、法務省令の実効性の担保も含めて、どのような扱いになるかということをお聞かせいただきたい。

 続いて2点目。資料3-2の合同有識者懇談会の報告書の7ページにある「不適正な監理団体等に対する罰則や名称公表制度等の整備」についてです。これは、不適正な受入れを行っている監理団体や実習実施機関への対応として、新たに刑事罰や、名称公表制度を整備するというものです。具体的には8ページの上段に記載されていますが、不適正な事案があった際には、事案の重大性に応じて名称及び行政処分の事実を公表するというものです。。この点について、本日お示しいただいた法律案要綱のどこに入っているのか。法律案要綱の中の「等」という表現に包含されているということなのかもしれませんが、確認させていただきたいと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 ありがとうございました。宮川局長、お願いします。

 

○宮川職業能力開発局長 今回の要綱ですが、条文でいかなければいけない点と、それから条文の中でも、今回の合同懇談会で御議論いただいたことは全て入っているわけではございません。というのは、法律に基づく主務省令で、様々な基準や様々なものを作っていく。基本的に申しますと、報告の中で書かれたことについては、主務省令以下のものも含めて、今回できた法律を基にした、主務省令等で入れ込む予定です。今、お話があった公表の話や、公表自身は恐らく運用ベースの話になると思いますが、賃金の面などについては、主務省令等で対応するという考えでございます。

 

○新谷委員 分かりました。法律事項と省令事項に整理しているということですが、労働側としては、いずれの事項とする場合であっても、実効性のある運用となるように取り組んでいただきたいということを要望として申し上げたいと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 分かりました。ほかにありますでしょうか。

 

○豊島委員 技能実習制度について、ただいまの新谷委員の発言とも関連いたしますが、2点確認させていただきます。

1 つ目は、法律案要綱を拝見すると、主務省令に定めるという文言が幾つも出てきます。主務省令には、労働に関する事項も含まれることから、その策定・改廃は、労政審の議を経ることが当然であると思います。そういう意味で、主務省令を定めるに当たって、どのような手続を踏むことを想定されているのか。私の理解でい良いのかということを確認したい。

2つ目は、先ほど新谷委員がおっしゃいましたが、技能実習制度が置かれている現状を踏まえれば、今、取組むべきは、制度の適正化であって、適正化が実施され、その効果が確認されていない段階で、制度の拡充を行うことは、現に慎むべきだと考えています。この考え方は、有識者懇談会の報告書でも共通認識になっています。具体的には、報告書1ページの中ほど、第2の制度の見直しに関する基本的な考え方の一番最初に、「まずは、現在指摘されている問題点を徹底的な改善を図り、併せて制度の活用を図ること」となっているのです。

そういう観点で、法律案要綱の「第八 施行期日等」を見ると、外国人技能実習機構の設立以外の事項の施行日は、「平成二十八年三月三十一日までの間において政令で定める日」とするとしてあります。私が申し上げたいのは、基本的には「制度の拡充」は後であって、その前に「制度の適正化」がありきということです。施行日を決めるに当たっても、平成28331日までの間に、まず決めるべきは、適正化である。その後に、制度拡充という順番とすべきと思います。そういう理解で良いのか。

以上2点、確認させていただきたいと思います。

 

 

○小杉分科会長 局長にお願いします。

 

○宮川職業能力開発局長 まず技能実習新法の考え方ですが、先ほど、新谷委員からもございましたが、これはもともと入国管理という面が当然ありまして、一方で、職業能力開発行政を含めた労働関係という点で、非常に関与すべきものがあろうかと。今回、主務省という形で、法務省及び厚生労働省という形でこの仕組みを作ろうと思っています。ただ、法案については、法務省から提出し、恐らく国会では法務委員会で御議論なされるのではないかと忖度しているところです。

 いずれにしても、まず最初の豊島委員からお話があった主務省令の作り方ですが、主務省令は完全に、これは共同省令になります。したがって、厚生労働省ではございません。ということですので、今までと同じような形で、適切な時期や状況などについては、このような場での御報告も含めた形でのやり方をさせていただければと考えております。

2番目の制度改正に当たっての考え方として、管理監督体制の強化を前提に制度を拡充という形で、これは閣議決定されております。2015年度中に新制度移行、これは政府の中での決めでございます。ただ、今回の合同有識者懇談会においても、先ほど、豊島委員から御指摘がありました文章にあったとおり、まずは現在指摘されている問題点の徹底的な改善を図り、併せて、制度の活用を図ることとする形で、同時進行という形のものも当然あり得るというように理解しております。今回正に、この制度改正を併せた優良な部分のものについては、同時という形のものの施行ということになろうかと考えられるところです。以上でございます。

 

○小杉分科会長 よろしいでしょうか。今、局長のお言葉にありましたとおり、法務省より提出されるというように聞いておりますが、事務局の今頂いた意見を踏まえて、御対応いただくようにお願いいたします。それでは、この議題についてはここまでといたします。

 最後に議題4です。その他として、専門実践教育訓練の指定講座の追加の決定部分について、事務局から説明をお願いします。

 

○竹内能力開発課()育成支援課主任職業能力開発指導官 それでは、資料4について説明いたします。専門実践教育訓練の指定講座(追加決定分)として、先月末130日付けで、報道発表した資料の抜粋を付けています。内容については、今般の指定によって、指定講座数が合計で1,591講座となりました。このうち4月開講の講座は1,568講座です。また、裏面の右側に都道府県別の表がありますが、これまで指定講座がなかった3県についても、今回の指定でなされて、数としては、全都道府県で講座が指定されました。とは言え、各県によっては、予定講座数とか、講座内容の開きがあります。4月以降に10月の指定分の指定申請の受付等もありますので、より一層指定講座の確保をすることができるように、引き続き周知や広報等を図ってまいりたいと思っております。以上でございます。

 

○小杉分科会長 ただいまの説明について御質問、御意見はありますでしょうか。

 

○板垣委員 専門実践教育訓練の指定講座の説明は理解をいたしましたが、御説明にあったように、依然として地域偏在が解消していません。この点については、労使が拠出する雇用保険の本体保険料を使っている意義を重く受け止めていただき、地域偏在の解消、そして、幅広い労働者が受講できるような戦略的な講座開拓をしていくことを、強く要請させていただきたいと思います。それが1点です。

2点目は、前回の分科会において、名称独占資格、そして、業務独占資格であって、養成施設のある課程。それから、専門学校の職業実践専門課程。そして、専門職、大学院、この3つとしている講座認定基準の改定時期の質問をさせていただいたところ、専門実践教育訓練はスタートしたばかりなので、今後の成果を見つつ、検討したいという答弁を頂きました。しかし、今回の資料1-3として配布している取りまとめの建議の8ページには、「ホワイトカラー層等、より多層な層において受講が可能となるよう、文部科学省とも連携をしつつ、質の高いプログラム開発等を行っていくことが必要」と結論付けられています。この結論付けは、単なる検討課題の整理ではないと認識をしています。この報告書の重みを受け止め、早急に基準の見直しに向けた検討が開始されるべきだと考えております。是非、改めて基準の見直しの時期、スケジュールも含めた明確な答弁を事務局の方に求めたいと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 事務局にお願いします。

 

○吉永総務課長 2点ございました。1点目の地域偏在については、今回、全ての都道府県で、一応、講座はありますが、ばらつきがあるのが実態です。これは原因として、地域によって、教育資源がそもそも偏在しているという中で、それを越えた形の指定はなかなか難しかったという状況ではないかと思っております。ただ、地域を越えて例えば通信教育であるとか、e-ラーニングなど様々な形態がありますので、そういったものの視点について、積極的に進めていくという方向で、地域偏在について解消を図っていくことが1つ重要ではないかと考えております。

2点目は、講座の見直しの関係ですが、基本的には雇用保険法の改正の中でやっていますので、3年後の見直しというのは大きな区切りではないかと思っております。基本的に雇用保険データをきちんと見た上で、実際にどういう講座がどのように役立っているのか、こういうデータを見ていくことが一時的な見直しではないかと思っております。

 先ほどの建議の記載について、ホワイトカラー職種についてということですが、プログラム開発は極めて重要だと思っています。それは新たな講座、あるいは指定基準ということではなくて、現行の指定基準の中で、具体的なプログラムをどう開発をしたのか。これについては、既に文部科学省とも協議を始めている状況です。いずれにしても、様々な形での教育訓練講座をどの形で拡充するかということは極めて重要ですので、今後、事務局で検討した上で、必要なタイミングでご議論いただければと考えております。もうしばらくお時間を頂戴できればと思います。

 

○新谷委員 専門実践教育訓練の指定基準は、2014年の雇用保険法改正の際に、雇用保険部会と能開分科会で随分論議をしました。これは、政府の「日本再興戦略」を決定した中で、社会人の学び直しに対して重点的に支援する取り組みを講ずる方向性が決定されたことに端を発し、財源も一般財源ではなく労使が拠出する雇用保険の保険料を使い、その額も年間で約890億円という巨額の予算とすることとなったわけです。労使とも、労使の保険料を財源とすることについてはずっと反対を表明し、一般財源を投入すべきと主張してきました。政府として取り組みたいのであれば、一般財源を使うことが筋ですが、諸々の事情があって、雇用保険の労使の保険料を使うことになったわけです。

 この専門実践教育訓練は2014101日にスタートしましたが、開講できたのは16講座と準備不足であったことは明らかで、先ほど申し上げたように、制度発足当初は、名称独占・業務独占資格であって養成施設がある講座、専門職大学院、専修学校の職業実践専門課程の3つの指定基準でスタートせざるを得なかった。制度スタート当初から準備不足を背景に指定講座が偏っていることはずっと指摘をしてきたのです。厚労省は雇用保険料を財源としていることの重みを強く受け止め、早く指定基準の検討、改定を進めるとともに、幅広い多様な労働者の受講が可能になるようなプログラム開発を行っていくべきである。

この点は何度も申し上げています。政府として、労使の反対を押し切って雇用保険の財源を活用し、しかも年間890億円という巨費を投じるというのであれば、基準の見直し作業は一にも二にも早くやるべきです。できないのであれば初めから言うべきではない、ということを申し上げておきたいと思います。以上です。

 

○小杉分科会長 よろしいでしょうか。ほかに御意見はありますか。それでは、この議題はここまでとさせていただきます。そのほかに委員の方々から何かありますでしょうか。特にないようでしたら、本日の議論は、以上とさせていただきます。また、次回の日程については、改めて事務局から御連絡させていただきます。

 本日の署名委員として、労働側は、板垣委員、使用者側は、大野委員にお願いいたします。それでは、本日は、これで終了させていただきます。どうも御協力ありがとうございました。


(了)

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