ホーム> 政策について> 審議会・研究会等> 労働政策審議会(電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会)> 第5回労働政策審議会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録(2015年1月16日)




2015年1月27日 第5回労働政策審議会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会 議事録

政策統括官付労政担当参事官室

○日時

平成27年1月27日(火) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省 専用第12会議室
(中央合同庁舎5号館12階)


○出席者

【公益代表委員】

勝部会長、仁田委員、中窪委員

【労働者代表委員】

内田委員、新谷委員、蜷川委員

【使用者代表委員】

井上委員、川口委員、鈴木委員

○議事

○勝部会長 定刻になりましたので、ただいまから第5回「労働政策審議会 電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会」を開催いたします。

 委員の皆様におかれましては、大変御多忙の中、お集まりいただきまして、誠にありがとうございます。議事に入ります前に、事務局から定足数等について報告を頂きたいと思います。よろしくお願いいたします。

○労政担当参事官室室長補佐 本日は、河野委員が御欠席ですが、出席委員は9名となっております。委員全体の3分の2以上の出席で、定足数を満たしておりますことを御報告申し上げます。

○勝部会長 それでは、早速議事に入りたいと思います。資料1につきまして事務局から説明をお願いいたします。

○労政担当参事官 御説明いたします。前回の部会長からの御指示に基づきまして、これまでの御議論を踏まえ、事務局で報告書の案を作成いたしました。資料1のタイトルは「今後の電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律(電気事業関係)の在り方について」としております。報告書の案です。

1ページの上、前半について御説明いたします。4パラに分かれておりまして、初めの2パラはスト規制法の経緯と内容です。1パラ目「電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律」(以下、「スト規制法」)は、昭和27年の電産ストなどが、国民経済と国民の日常生活に与えた影響が甚大であったこと等に鑑み、翌昭和28年に制定された法律です。

 次のパラは、具体的には争議権と公益の調和を図り、公共の福祉を擁護するため、電気事業(一般電気事業及び卸電気事業)の労使の争議行為のうち、「電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接の障害を生じせしめる行為」を禁止すること等を内容としております。

 次の2パラは、この部会の経緯です。3パラ目、スト規制法については、「電気事業法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成26516日衆議院経済産業委員会、平成26610日参議院経済産業委員会)において、「電力システム改革に関する法体系の整備に併せ、所管省庁において有識者や関係者等からなる意見聴取の場を設けその意思を確認し、同法の今後の在り方について検討を行うものとする」とされました。

 最後のパラですが、これを受け、今般、労働政策審議会電気事業及び石炭鉱業における争議行為の方法の規制に関する法律の在り方に関する部会において、平成26911日以後、現地視察を2回、審議は、今は途中ですので、○回としておりますが、行い、下記の1.3.の観点から今後のスト規制法の在り方について検討した結果、4.の結論に達したため、報告すると書いております。ここにありますように、「記」以下では1.3.で観点を書き、4.で結論という形でまとめておりますので、「記」以下を御説明いたします。

 まず「記」の1.ですが、観点1「労働基本権の保障とスト規制法」です。スト規制法の検討に当たっては、憲法上保障される労働基本権やそれを具体化した労使関係法制との関係を整理し、検討することが必要であるとしております。

(1)ですが、まずは憲法と労働組合法との関係です。憲法第28条は、労使間の対等な交渉を促進するために、労働者に団結権・団体交渉権・団体行動権(争議権)を保障している。このうち争議権については、全ての争議行為に保障が及ぶわけではなく、主体・目的・態様(方法)等の観点から、正当と認められる場合にのみ、保障が及ぶものとされている。こうした争議権保障の趣旨から、労働組合法では、労働組合による「正当な」争議行為について刑事・民事免責を享受できることが、確認的に規定されている。労働組合法第1条第2項、第8条です。

 次のパラは、スト規制法について説明しております。スト規制法は、電気事業等において争議権の保障が及ばない「正当でない争議行為」の方法の一部を明文で禁止したものとされております。また、禁止される「正当でない争議行為」すなわち「電気の正常な供給を停止する行為その他電気の正常な供給に直接の障害を生じせしめる行為」については、従来から通知によって解釈(判断基準や対象となる行為の例示等)が示されているが、その内容によって現在、「正当な争議行為」の行使に影響を与えているのではないか、といった懸念が指摘されていると書いています。

2ページです。観点1(2)は労働関係調整法との関係です。1パラは労働関係調整法の説明です。労働関係調整法は、労働組合法とあいまって、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し、又は解決することを目的とする法律であり、同法では、争議行為が行われた場合に、国民の日常生活等に大きな影響を与える公益事業(電気事業を含む)に対して、争議行為の予告義務や内閣総理大臣による緊急調整等の特別な規制が設けられております。

 次のパラは、スト規制法と労働関係調整法の関係ですが、スト規制法も労働関係調整法の緊急調整も、いずれも国民生活等への影響に鑑みて争議行為を制限する点で共通し、この点で、スト規制法は「屋上屋」との指摘もあるが、前者(スト規制法)は、正当でない争議行為の範囲を明らかにして、その防止を図ることを主眼とするものである一方、後者(労働関係調整法の緊急調整)は、正当な争議行為も含めて一定期間禁止し、その間にあらゆる手段を講じて労働争議を調整・解決することを狙いとする点で異なると書いています。

 次は観点2「電気の安定供給と特殊性」です。スト規制法の検討に当たっては、対象とする電気事業の置かれた以下の状況を踏まえることも必要であると書いてあります。(1)が電気の安定供給の重要性です。スト規制法の制定時と比較すると、今日では、国民経済及び国民の日常生活における電気の安定供給の重要性は、飛躍的に増大している。電気は、常時不可欠で代替不可能なエネルギー源であり、運輸事業や電気通信事業など他のインフラを支えるインフラでもある。停電等が消費者や需要者に与える損害は計り知れないものとなっているとしております。

 次のパラは、電気事業に携わる労使は、電気の安定供給への使命感を持って事業を推進している。また、電力会社は電気の安定供給に資するための設備投資を積極的に行ってきており、スト規制法制定当時と比較して電気供給の安定性は飛躍的に向上しているとあります。一方で、特に現在は、東日本大震災や原子力発電所事故を契機として、電力需給が逼迫している状況であり、多くの企業が電力供給の制約を事業活動の懸念材料としている。また、計画停電等を経験した直後である国民の立場からすると、争議行為による停電発生の可能性が増すことに対しては、強い不安の念が示されるものと思われるとしております。

 次は(2)電気事業の特殊性です。(1)のほか、電気事業が有する「特殊性」(スト規制法第1)として、主として以下の点が挙げられる。1ポツ目ですが、電気事業には、一定規模の需要家を除いて地域独占が認められており、他の事業者によって代替できないこと。特に送配電部門については、電力システム改革後も地域独占が認められている。2ポツ目ですが、電気は貯蓄が不可能であり、常に需給を一致させる必要があること。需給バランスを崩すと電力ネットワーク全体が維持できず、予測不能の大規模停電が発生する。

 もっとも、諸外国の労使関係法制には、公益事業に対して争議行為を規制する法制はあるものの、電気事業に限定して争議行為を規制する法制は見当たらない。また、スト規制法以外の国内法令においても、事業規制を除いて、電気事業に限定して規制を設けている事例は見当たらないとしています。

3ページは観点3の「電力システム改革の影響も想定した検討」です。これは更に(1)(3)の小論点に分かれますが、その前の10行ほどにおいて、電力システム改革について説明しております。1パラ目は、3段階に分けて進められている電力システム改革のうち第2弾に当たる「電気事業法等の一部を改正する法律」(平成26年成立)によって、発電事業、小売電気事業は全面的に自由化され、電気事業の類型が見直されることとなりました。送配電事業については、引き続き地域独占という位置付けです。

 これに併せ、スト規制法において、その対象となる「電気事業」についても、一般送配電事業、送電事業、事業主及び労働者が第2条の禁止行為を行うことによって、電気の安定供給の確保に支障が生じ、又は生ずるおそれがあるものとして、厚生労働大臣が指定する発電事業者が営む発電事業の3つに改正することとなりました。

 最後のパラです。また、第3弾のシステム改革として、送配電部門の中立性を確保するための法的分離の検討が進められております。こうした電力システム改革が与える影響も想定しつつ、以下の点について検討することが必要であるとしております。

(1)電気事業者間の競争環境です。今述べましたように、第2弾電力システム改革法の施行後は、厚生労働大臣が、電力システム改革の進展の状況に応じて、スト規制法の対象となる発電事業者を機動的に定める仕組みとなりますが、電力システム改革後も直ちに発電事業者間のシェアが大きく変わることは想定されず、実態が変わるまで時間がかかることも想定されます。しかし、その後、競争環境が大きく変わる可能性もあり、現状で見通しを立てることは困難です。引き続き、電力システム改革の進展の状況を注視することが必要であるとしております。

(2)電気事業における労使関係です。電気事業における労使関係については、現状は労使ともに「安定・成熟している」という認識で一致しています。労使の間では、産業レベルや企業レベルなどの様々なレベルで建設的な労使協議がなされるとともに、団体交渉も真摯に行われており、電気安定供給への影響に配慮し、争議行為に関して必要なルールも取り決められております。また、近年では争議行為の実績はない状況です。

 一方、電力システム改革後については、労使ともに「電気の安定供給に対する使命感は変わらず、労使関係も安定するよう努力する」という認識ですが、電力システム改革による自由化後や法的分離後に、現在のような安定した労使関係が保たれるか不安があると懸念する意見もあり、電力システム改革が労使関係に与える影響は不透明です。

 いずれにしても、自由競争の下での健全な労使関係の中で、労使協議を通じてお互いの力で労使関係上の課題を解決していくことが基本であることには変わりないとしております。

(3)電気事業の業務の視点です。電気事業の業務は、水力発電所・変電所を中心に無人化・自動化が図られているが、事故対応や応急措置等の非日常業務を中心に、社員(手動)による対応がなお必要である。

 次のパラですが、争議行為時に非組合員によって業務を代替できるか否かについては、労働者代表委員は、非組合員である管理職の体制などから、非組合員による代替は十分可能ではないかという認識である一方、使用者代表委員は、機械化などで置き換えができない業務には、日頃の業務や訓練で培われた一定の技能などが必要であり、職場のマネジメントを主な業務とする管理職では容易には代替できないという認識であり、労使の間で見解が一致しないと書いています。

 また、電気事業の業務は、発電・送電・変電・配電と高度な連携が必要ですが、第3弾電力システム改革によって法的分離が実現した場合には、組織の「壁」ができるため、より複雑で高度化したオペレーションが要求され、現場労働者の知識・経験も一層求められる可能性があるところです。

 最後のまとめですが、こうしたことから、電力システム改革による業務内容の変化が見込まれる中、現時点で非組合員による代替が可能と判断するのは困難であると考えられるとしております。

 以上、123の観点で論点整理を御説明しましたが、それを踏まえた4.が「今後の方向性」です。今後のスト規制法の方向性を考えるに当たって、憲法上規定された労働基本権の保障の観点が重要であることは言うまでもないところです。しかしながら、電気の安定供給と特殊性、今後の電力システム改革の影響を踏まえると、以下の方向性が適当であるとして(1)(3)を書いております。

(1)現状では、マル1電力需要が逼迫し、供給への不安が残っていること、マル2電力システム改革の進展と影響が不透明であることから、引き続き注視することが必要である。このため、スト規制法について、現時点では存続することでやむを得ないとしております。(2)一方、スト規制法第2条において禁止される争議行為に関する解釈通知については、現在の電気事業の状況や、今後の電力システム改革等に伴い、業務内容の変化が見込まれることも踏まえて必要な見直しを行うべきであるとしております。(3)スト規制法の在り方については、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分に検証した上で、今後再検討するべきであるとしております。以上が資料1の御説明です。

1点、資料の御説明ではないのですが、前回の最後に御質問のあった点について、一言簡単に御説明いたします。スト規制法の対象労働者数について、前回、公労使の意見を整理したものが出まして、そこに書かれている労使の意見との関係について、部会長よりお尋ねがありました。前回の資料における、これまでの公労使の意見の資料で掲げましたとおり、使用者側の委員の御説明では、スト規制法の対象になるのは発電部門で全従業員の1割、送配電部門で全従業員の3割ということで、全体で全従業員の4割になり、約5万人となります。労働者委員からも、約11万人中56万人、約45割の労働者が対象となっているのではないかという御説明もありました。

 両者をもう一回事務局で確認しましたが、試算する上で若干の差は生じていますが、対象者の割合について、労使の見解もおおむね一致しておりまして、当事者がそのように試算されているということで、事務局としてもそのような内容で認識してよいのではないかと考えているということで、簡単に御報告させていただきました。以上です。

○勝部会長 ありがとうございました。それでは、ただいま御説明がありました資料1の報告書()につきまして、御質問、御意見等がありましたら、お願いしたいと思います。

○内田委員 前回会合で部会長から、これまでの論議を踏まえて報告書()を作成すべきとの指示があり、これを踏まえ本日事務局より報告書()をお示しいただいたものと理解しております。報告書()4ページの4.今後の方向性の(1)には、「このため、スト規制法について、現時点では存続することでやむを得ない」という1行でスト規制法の今後のあり方の結論が記されているわけですが、この表現については、労働側のこれまでの主張がどこまで反映されたかということを考えると、到底納得できるものではありません。

 労働側の意見はこれまでの部会でかなり主張いたしましたので、本日は2点に絞って、反論させていただきたいと思います。

 まず2ページの1.(2)労働関係調整法との関係についてですが、下から3行目に、スト規制法は「正当でない争議行為の範囲を明らかに」するものであって、労働関係調整法とは法目的が異なるという書き方がしてあるわけです。しかし、かねてから指摘しているように、仮に法目的が異なっていたとしても、実質的にストライキを防止する効果が労働関係調整法にもあるわけで、その見解が希薄ではないかと、私は思っております。

 加えて、「正当ではない争議行為の範囲」について、労働者自らがスイッチオフで供給停止をする行為や、さらには非組合員が代替業務を行っている時にピケッティングを行って業務を妨害するなどの行為を「正当ではない争議行為の範囲」と言われるのであれば、我々としても納得できる範疇です。しかし、単純に労務の不提供という行為を「正当ではない争議行為」と判断することについては、憲法上の疑義があると申し上げてきたわけです。

3ページに3.(3)電気事業の業務では、使用者側委員の見解を踏まえ、全ての代替業務を非組合員で対応するのは困難である、と記載してあるわけでありますが、そうであるならば、労使の関係により、どういった形であれば電力の供給支障につながらないのか、どうしたら労務不提供の対応策ができるのかといった視点で、労働関係調整法とスト規制法の関係を論ずるべきです。単純に立法の経過などが違うから、労働組合側の主張は当たらないという見解については、納得できるものではありません。

 それからもう1点は、2ページの2.電気の安定供給と特殊性の(1)電気の安定供給と重要性についてです。報告書()には「争議行為による停電発生の可能性が増すことに対しては、強い不安の念が示されるものと思われる」とあり、不安の念が示される停電の発生原因を争議行為に限定していますが、計画停電や工事停電、災害による停電などもあります。そもそも電気の供給支障は、お客様から見れば、極力避けてほしいというのは当然のことかと思います。そうであるから、我々は、昭和48年に設置されましたスト規制法の調査会の中でも、労働組合自らの争議行為による労務不提供によって、停電はさせないということも発言しているわけです。調査会から40年が経過した今もその考え方は踏襲したいと思っております。

本部会を通じても、停電に対するリスクや危機感についてかなり主張がなされましたが、こうした懸念に対して我々は、「電力の供給支障を生じさせないよう自主規制措置を設ける」と発言もしているわけです。そのような自主規制措置というものについてどういったものなのかということを議論すべきであるのに、そういったことは議論さえされていません。

 労働側としては、スト規制法を撤廃すべきであると思いますが、停電というリスクに労使がどのように対応していくのか、その辺をきちんと労使双方が案を示した上で議論し、委員の皆さん方に理解を得る必要性もあるのではないか、と思います。

 昭和52年にスト規制調査会が報告書をとりまとめていますが、その報告書には7点ほど論点があり、そのうちの1つに「電気の供給停止の影響の重大性及びこれに対する対応についての認識が、国民各層に定着し、この中で責任ある労使の態度及び労使関係が形成され、このことを踏まえた正しい世論が培われることが、法の存否を論ずる前提として極めて重要である」という記述があります。こうした報告書が40年前に出されているわけですから、どういった対応措置があるかをきちんと整理をして議論すべきである、ということを主張させていただきたいと思います。以上です。

○勝部会長 ありがとうございました。今の御意見に対して、何かありますか。

○川口委員 報告書()を御説明いただきままして、ありがとうございます。この度は短い時間でおまとめいただきましてありがとうございます。全体的な感想について申し上げます。

 まず1ページの1.「労働基本権の保障とスト規制法」の部分では、スト規制法と憲法、労働組合法、労働関係調整法との関係が、適切に整理されていると考えております。

2ページの2.「電気の安定供給と特殊性」については、電気の安定供給の重要性という私どもが主張した点が盛り込まれており、感謝しているところです。

3ページの3.「電力システム改革の影響も想定した検討」という部分の、(3)電気事業の業務については、私も実際にアレンジいただきました現場視察で、詳細を拝見いたしました。その中で、特に中央給電指令所の業務は、管理職だけでは代替できないのではないかということを痛感するとともに、この場でも御指摘がありましたとおり、電力の安定供給というのは、中央給電指令所だけが担っているのではなくて、その他の業務を含めて電力供給の中枢を担う部分は、当該業務を担う担当者、すなわち労働組合員の方々がいなければ、仕事が回らないのではないかと推察しているところです。電力の安定供給という観点では、やはり労使の協力が重要だと改めて感じている次第です。

 以上も踏まえて、4.「今後の方向性」ですが、こちらに記載しているとおり、電力需給が逼迫をして供給への不安が残っているということは、私どもが指摘したとおりですし、電力システム改革の進展が、今後の労使関係に与える影響は不透明であるということも考えますと、現時点では存続することでやむを得ないという結論に賛成です。

 一方、解釈通知の見直しについては、前回も触れたところですが、厚生労働省におかれましては、関係労使の意見等を十分踏まえた上で適切に見直し、周知していただければと存じます。

 最後にスト規制法そのものの在り方については、電力システム改革の進展の状況とその影響を十分検証した上で、今後、再検討するべきであるということでよろしいかと思います。全体を通した報告書()については、修正を加えるところはありません。以上です。

○勝部会長 ありがとうございました。ほかに御意見はいかがですか。

○新谷委員 使用者側委員から総括的な見解が示されましたので、労働側としての総括的な意見を申し上げたいと思います。

過去4回にわたる部会での論議を踏まえ、本日最終報告書の原案となる報告書()が示されました。まず、労使の意見に大きな隔たりがある中、それぞれの主張を盛り込んだ報告書()をまとめていただいた事務局の努力に対して感謝申し上げたいと思います。ただし、「4.今後の方向性」の最後の結論に当たる部分について、先ほども内田委員が申し上げたとおり、(1)の最後の部分の「スト規制法について、現時点では存続することでやむを得ない」という記載については、労働側としては了解することができないと申し上げておきます。

 労働側からは、第1回部会から終始一貫して申し上げていますが、スト規制法の立法過程は、昭和27年に発生した電産ストを受け、その後の立法府での論議の中で、国民生活への影響等を踏まえて3年間の時限立法としてスト規制法が制定されました。しかし、その3年後に恒久法化され、昭和48年の検討会を経てもなお存置され、今日に至っています。ようやく今次の電力システム改革の中で見直し論議が行われたわけですが、労働側から再三申し上げているように、もともと労働関係調整法による公益事業規制があるにもかかわらず、憲法28条が定める生存権的基本権としての労働基本権を、スト規制法によって電気事業に関わる労使のみに屋上屋を重ねる形で制約することの意義について異論があります。

 これまでの4回の部会論議を通じて、使用者側から御発言があったのは、電気が止まったら大変だという、その1点ではなかったかと私は思います。停電リスクへの懸念は私も国民の1人として共感するところはありますが、本部会で議論すべきは憲法上の労働基本権の制約がどうあるべきかという点、更にはスト規制法と労調法の公益事業規制との関係はどうあるべきかという点であるべきです。しかし、今日に至るまで使用者側からは、私どもが提起した内容について、論理的、合理的な説明を頂いておらず、非常に残念と言わざるを得ません。

 部会でのこうした論議経過を踏まえると、事務局でまとめていただいた「スト規制法について、存続することはやむを得ない」という結論については、労働側として了解できない。この点を重ねて申し上げたいと思います。

 残された時間は限られておりますが、憲法第28条が定める労働基本権の重みをよくお考えいただければと思っておりますので、意見として申し上げておきたいと思います。以上です。

○勝部会長 ほかに御意見、御質問等はありますか。そうしますと、労働側としては、この文面の修正というような部分は、特に先ほどから言われている4.(1)の部分、あるいは2ページの労調法との関係という所もということでしょうか。この2点でしょうか。それについて、追加して具体的にこうすべきであるとか、そういった御意見があればお願いします。

○新谷委員 三者構成審議会たる労働政策審議会の報告書のとりまとめについては様々なパターンがあると思います。当然、一定の結論に達すれば、三者構成審議会の結論として報告書がまとめられることになるわけですが、論点毎に労使の見解が隔たったままであれば、従来の慣行に従えば、労側、使側それぞれが意見を報告書の中に付すということが通例です。よって、労働側としては、4.(1)の「スト規制法の存続はやむを得ない」という部分について、反対意見を付したいと思います。文案については、改めて検討して申し上げたいと思います。以上です。

○勝部会長 使用者側はこの文面でよろしいという御意見が先ほどありましたので、そうしましたら、そのような形で進めていくということでよろしいでしょうか。ほかに何か御意見、御質問等はありますか。言い足りないことがありましたらお願いいたします。

○仁田委員 前回、突然の病で失礼してしまいました。言い足りなかったわけではないのですが、今、労側の意見もありましたので、一言申し上げます。スト規制法が合憲であるかどうかということについては、なお裁判所の判断は出てないということですので、私は法律的な判断をする立場にありませんが、いろいろありますが基本的な考え方としては、労働組合というのはストライキをするのだと考えるべきではないかと私は考えております。どんなストライキをしてもいいと考える労働組合か、そうではない、もう少し穏便な考えを持っている労働組合かということはありますが、ストライキはするものであると。正当な争議行為をすることは十分あり得ると考えて、それがいろいろな形で国民生活や国民経済に影響を及ぼすということもあり得ると。それを国民は受け止める覚悟がある。覚悟するということが、実際上の憲法が要請していることではないかと考えております。

 ただ、現実の労使関係では、様々な形で争議行為は長期的にというか、産業にとって破滅的な影響を及ぼさないように保安協定を結ぶということが行われています。例えば、鉄鋼産業であれば、高炉の火を止めると、施設に対する打撃が非常に大きいので、そこについては操業を継続する、そういう要員を配置するということを、労使で合意をして、長期的な産業の健全性を保つというのが通例です。

 保安要員というのは、設備を保持するのが基本的な目的となっております。それに比べると電気産業に課されているのは、ただ設備を壊さないというだけではなくて、停電を起こすなという課題ですので、より条件はシビアに設定されていると思いますが、これはもちろん議論の余地があることかなと思います。現状はやはり国民の覚悟として、長期の停電が起こるということを甘受して、ストライキをされても仕方がないかなというところまでは、なっていないのではないかと私は感じております。それが妥当であるかどうか、それをそのように法律にすることが妥当であるかは、なお議論の余地があるのではないかと思いますが、そういうのが現状ではないかと思います。

 緊急調整との関係について言うと、やはり我々は歴史的な経緯というものを考える必要があるわけでして、説明がありましたが、昭和27年の電産・炭労の大ストライキの後にこの法律が制定されたという、特殊な経緯を踏まえた法律です。そのときに起きた重要なことは、石炭の組合が、電気の組合ではないのですが、保安要員の引揚げということを言ったのです。つまり、保安要員を炭鉱で引き揚げるということは、炭鉱が水浸しになって2度と使えなくなるということです。それは違法なストライキと労調法でも定められているわけで、そういうことが非常に国民にショックを与えたということがあったのです。だから、そういう経緯があって、昔話で申し訳ありませんが、こういう法律ができているということです。

 ですから、私としては、なるべく法律でこと細かに労使の振る舞いを規制するというのは、労使関係の立場から言うと、好ましいことではありませんので、なるべく労使が自主的にその争議行為について規制をして、政府としてはそれを見守るというか、それを監視するというか、そういう形で問題が処理されていくのが望ましい在り方だろうと感じております。余計なことかもしれませんが、一言感想として述べさせていただきたいと思います。

○勝部会長 ありがとうございました。ほかに何か御意見、言い足りないことはありませんか。今、仁田委員が言われたように、4.「今後の方向性」の(3)は、直ちにこれを廃止するのではなくて、将来的にそういったものの余地が残されているということであるかと思います。

 先ほど労側委員から言われましたように、公労使の会議であるということで、意見に隔たりがあれば労使の意見を付すというのは慣例でもありますので、そういったものも含めて次回は、今回提出された報告書()について必要な修正を行っていただきまして、改めて提出していただくことにいたしまして、その上で最終的な取りまとめに向けた議論をしていくことにしたいと思いますが、よろしいですか。

 ありがとうございます。それでは、次回の日程について、事務局から説明をお願いいたします。

○労政担当参事官室室長補佐 次回の部会については、22日月曜日16時から、場所は厚生労働省専用23会議室となります。よろしくお願いいたします。

○勝部会長 それでは、第5回の部会ですが、本日はこれで終了させていただきます。

 議事録の署名ですが、本日は労働者代表の新谷委員、使用者委員の川口委員にお願いしたいと思います。本日はお忙しい中、大変ありがとうございました。


(了)
<照会先>

政策統括官付労政担当参事官室
法規第1係 内線(7742)
代表: 03-5253-1111

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