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2014年12月19日 第10回社会保障審議会福祉部会 議事録

社会・援護局総務課

○日時

平成26年12月19日(金)10:00~12:00


○場所

イイノホール&カンファレンスセンター「RoomA」
(東京都千代田区内幸町2-1-1 飯野ビルディング4階)


○出席者

田中滋 (部会長)
石橋真二 (委員)
鎌倉克英 (委員)
(代理:石黒敬史参考人)
小林光俊 (委員)
関川芳孝 (委員)
高橋英治 (委員)
武居敏 (委員)
橘文也 (委員)
対馬徳昭 (委員)
(代理:平川則男参考人)
福間勉 (委員)
藤井賢一郎 (委員)
藤野興一 (委員)
堀田聰子 (委員)
松原由美 (委員)
松山幸弘 (委員)
宮本みち子 (委員)
柳川純一 (委員)

○議題

業務運営・財務運営の在り方について

○議事

○田中部会長 おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより第10回福祉部会を開催いたします。

 委員の皆様におかれては、年末の御多忙の折、お集まりいただきまして、どうもありがとうございます。

 まず、委員の出欠状況について、事務局より説明をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 それでは、本日の委員の出席状況について御報告をいたします。

 本日は、猪熊委員、川井委員、黒岩委員、高橋福太郎委員、花井委員、三好委員から御欠席の連絡をいただいております。

 また、黒岩委員の代理として、神奈川県保健福祉局福祉部長の石黒敬史参考人。

 花井委員の代理として、日本労働組合総連合会総合政策局生活副支局長の平川則男参考人にお越しいただいております。

 以上です。

○田中部会長 ありがとうございました。

 議事に入る前に、ただいま御紹介のありました欠席の委員の代理として御出席いただいている参考人について、皆様の御承認をとる必要があります。

 本日、御欠席の黒岩委員、花井委員の代理として、石黒敬史参考人、平川則男参考人の御出席について異議はありませんでしょうか。

(異議なしと声あり)

○田中部会長 ありがとうございます。

 続いて、資料の確認を行います。

 事務局から説明をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 それでは、お手元の資料について確認をさせていただきます。

 本日は、配付資料といたしまして、資料適正かつ公正な支出管理を配付させていただいております。御確認をよろしくお願いいたします。

○田中部会長 では、早速議事に入りましょう。

 事務局より資料の中身の説明をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 それでは、資料を説明させていただきます。お手元の資料をお開きください。

 まず、検討に当たっての基本的な視点でございます。

 社会福祉法人は、公益性の高い社会福祉事業を主たる事業とする非営利法人であります。その非営利性・公益性に鑑み、役員報酬や取引等について、国民に対する説明責任を果たす必要がある。

 平成18年の公益法人制度改革におきましては、国民に対する情報開示を通じて、社会監視の対象とするとの観点から報酬等の支給基準や関連当事者との取引内容の開示等の仕組みが構築された。

 社会福祉法人については、税制優遇や公金の支出があることも踏まえ、公益財団法人と同等又はそれ以上に役員報酬や取引等における透明性を確保する必要がある。

ということを視点として掲げさせていただいております。

 続きまして、第1に役員報酬についてです。資料の4ページをごらんください。

 役員報酬についての社会福祉法人におけます現在の仕組みの現状でございます。

 社会福祉法人の役員報酬については、社会福祉法人定款準則(通知)において、

 ○1勤務実態に即して支給することとし、役員の地位にあることのみによっては支給しないこと

  ○2役員には費用を弁償できること

  ○3必要な事項は、理事会の議決を経て、理事長が別に定めること

とされております。

 また、社会福祉法人指導監査要綱(通知)におきまして、役員報酬規程等の整備を指導し、監査の対象としております。

 さらに、平成26年度より、個別の役員に係る報酬支給の有無を現況報告書の記載項目に加え、公表対象としております。

 次の5ページをごらんください。ただいま申し上げました社会福祉法人定款準則、社会福祉法人指導監査要綱について記載しております。

 また、下の表でございますが、ただいま申し上げました現況報告書におきまして、今年度より、黒枠で囲っておりますように、理事、監事につきまして、それぞれどのような形態で報酬が支給されているかを、ここは額ではございませんで、支給されているかどうかということで、丸をつけていただく形になると思いますが、ここで現況報告書により報告いただいておりまして、また、これをインターネットにより公表するということでお願いしております。

 これが現状でございます。

 次の6ページをごらんください。三菱総合研究所におけます研究の報告書をここに掲載させていただいております。社会福祉法人の理事と職員の兼務状況と役員報酬・職員給与の支給状況でございます。

 一番下の合計欄をごらんいただければと思いますが、理事につきまして、全体で4.86人でございますので、これは全ての理事について調査できているわけではないと考えられますが、一番多い形態といたしましては、一番右の役員報酬・職員給与ともに支給なしというものが2.37で多うございます。

 続きまして、職員給与のみ支給ありが1.30。役員報酬のみ支給ありが1.06でございます。基本的には役員報酬というものが余り支給されていないという現状が見てとれます。

 続きまして、7ページをごらんください。役員報酬についての課題でございます。

 第1に役員報酬について、理事会の議決を経て、理事長が定める現行の仕組みでは、理事が自らの報酬額を決定することとなるということです。

 当部会におきましても、経営管理組織のあり方の会議におきましてこの点を御議論いただいておりまして、評議員会で決議するべきではないかという議論になっております。後ほど御説明いたします。

 第2に役員報酬について、国民に対する説明責任を果たすことが求められるが、役員報酬の支給基準を定め、公表する仕組みが法令上設けられていないという点です。先ほど申し上げましたように、指導監査の中では役員報酬規程の整備を指導しておりますが、法令上それを設けるということが義務づけられておりません。

 第3に公益法人制度のように、役員報酬等の水準について公表する仕組みがないということです。これは後ほど申し上げます。

 下の参考でございますが、規制改革実施計画の閣議決定におきましては、社会福祉法人の役員に対する報酬や退職金などについて、その算定方法の方針や役員区分ごとの報酬等の総額(役員報酬以外の職員としての給与等も含む)の開示を義務付けるとされております。

 次の8ページをごらんください。公益財団あるいは一般財団におきます仕組みでございます。

 まず、一般財団法人・公益法人におきましては、理事及び監事の報酬は定款でその額を定めていないときは、評議員会の決議により決定することとされております。

 第2に、公益財団法人の公益認定基準におきまして、理事、監事及び評議員に対する報酬等(報酬、賞与等)について、民間事業者の役員報酬及び従業員の給与、当該法人の経理状況等を考慮して、不当に高額なものとならないような支給基準を定めることとしております。法律上そのようにしております。

 それを受けまして、これはその運用でございますが、公益財団法人におきます支給基準につきましては、○1理事等の勤務実態に応じた報酬等の区分。すなわち常勤役員、非常勤役員の報酬の別等を示すこと。○2その額の算定方法。役職、在職年数等により構成される基準等を示すこと。○3支給方法。報酬等の算定基礎額、支給時期、支給の手段等を示すこと。○4支給の形態。現金、現物の別等を示すこと。これらにつきまして定め、公表しなければならないとされております。

 第4に、公益財団法人におきましては、役員の報酬等の総額、個別の役員の報酬ではございませんで、総額を閲覧対象とすることとなっております。

 第5に、個別の役員の報酬、個別のそれぞれの役員が受けている報酬額につきましては、行政庁への報告事項とされております。

 9ページ以降は、ただいま申し上げました法律等の内容でございます。

11ページをごらんください。11ページは、公益法人に関する具体的に示された内容でございますが、役員に対する報酬といたしまして、答の1のところに線が引いてありますように、理事等の勤務形態に応じた報酬等の区分、金額の算定方法、支給の方法等が明らかになるよう定めるということが求められております。

 また、3にございますように、報酬等の額については、定款で定めていないときは、社員総会又は評職員会の決議により定めることとされております。

 次の12ページをごらんください。同じく公益財団法人等の報酬に関する運用の内容でございますが、○2その額の算定方法といたしまして、その額の算定方法とは、報酬等の算定の基礎となる額、役職、在職年数等により構成される基準等をいい、どのような過程をたどってその額が算定されるかが第三者にとって理解できるものとなっている必要があるとしております。すなわち算定式、あるいは具体的な数字によりまして、第三者にもわかるような形で定め、それを閲覧対象にすることを求めております。

 具体的な例といたしまして、これはある県の役員報酬規程作成例でございますが、13ページにございます。例えば右下の別表第1で、役職名につきまして月額幾らの報酬とか、あるいは賞与については月額の何カ月分とか、そのように決めるようなことを示して指導しております。

 続きまして、15ページをごらんください。参考6は、公益財団におきまして閲覧対象とする書類でございます。黒枠で囲っておりますように、理事、監事及び評議員の報酬等の額、これは総額でございますが、これを記入し、これを閲覧の対象とさせております。

 続きまして、16ページでございます。参考7の資料でございます。参考7は、公益財団法人、社団法人等が所轄庁、行政庁に対しまして報告する書類でございます。

 上段のように役員等の報酬、下段の使用人を兼務する理事の給料手当につきまして、それぞれ各個別の役員につきまして報酬の額を記入し、それを報告することを求めております。

 以上が公益財団等の仕組みでございます。

17ページは、社会福祉法人のあり方についての考え方をここに提案させていただいております。

 まず第1に、これは既にガバナンスの会で御議論いただいておりますが、公益財団法人と同様に、役員報酬等は、定款の定め又は評議員会の決議により決定することとしてはどうかという点です。現在は、理事または理事長によって定められておりますが、これは自分で自分の報酬を決めることになりますので、定款の定め又は評議員会の決議により決定することとしてはどうかという点でございます。

 第2に公益財団法人等と同様に、不当に高額なものとならないような理事、監事及び評議員に対する報酬等の支給基準を定め、公表することを法律上義務付けてはどうかという点でございます。

 第3に理事、監事及び評議員に対する報酬等の適正な水準を担保するため、役員等の区分ごとの報酬総額を公表するとともに、個別の役員等の報酬額について所轄庁への報告事項としてはどうかという点でございます。

 これにつきましては、社会福祉法人が役員の報酬以外に、職員として支給を受けておられる方が多いといった実態や、先ほど申し上げました規制改革実施計画の趣旨などを踏まえまして、役員報酬等には、職員給与又は職員賞与として支給される分を含むこととしてはどうかとして、ここに記載させていただいております。

 以上が役員報酬についてです。

 引き続きまして、第2の論点関係者への特別の利益供与の禁止等でございます。

 関係者への特別の利益供与の禁止等については、かなり広い意味での広範囲な概念でございますが、ただいまから取引等を中心に御説明いたします。

 まず、親族等特定の関係者への特別の利益供与の制限についての社会福祉法人制度におきます現状でございます。

 現状といたしましては、役員及びその近親者等関連当事者との取引については、社会福祉法人新会計基準において、財務諸表の注記事項として記載することとし、これを公表することとしております。

 ※にございますように、一般競争入札による取引等取引の性格からみて、取引条件が一般の取引と同様であることが明白な取引とか、あるいは役員に対する報酬等の支払いについては、注記除外事項としております。

 財務諸表の注記事項の範囲でございますが、関連当事者については、当該法人の役員及びその近親者及び法人役員及びその近親者が議決権の過半数を有している法人としております。

 また、関連当事者との取引額につきましては、年間1,000万円を超える取引としております。

 次のページをごらんください。課題でございます。

 まず第1に、公益社団・財団法人制度のように関係者に対する特別の利益供与を禁止する旨の規定が整備されていない。

 公益社団・財団法人につきましては、23ページに規定等ございますが、特別の利益供与を禁止する包括的な規定が用意されております。

20ページに戻らせていただきます。

 第2の論点です。公益財団法人制度において取引内容を情報開示しなければならない関連当事者に含まれているものの中で、社会福祉法人につきましては、評議員や支配法人・被支配法人・同一の支配法人を持つ法人、いわゆるグループ法人でございますが、それが社会福祉法人の会計基準の財務諸表の注記事項においては関連当事者の対象とされていないという点でございます。これは後ほど御説明いたします。すなわち範囲が少し狭いということです。

 第3に、財務諸表の注記における関連当事者との取引内容の開示について、その対象となる取引の範囲が公益社団・財団法人制度と比較して、取引金額の要件により限定されているという点です。現在、社会福祉法人は、1,000万円以上としておりますが、公益財団・社団等におきましては、これを100万円以上としております。

 参考にございますように、規制改革実施計画、閣議決定におきましては、社会福祉法人とその役員の親族や特別の利害関係を有する者との取引について、取引相手及び取引内容を開示する等、調達の公正性や妥当性を担保する仕組みを構築するとされております。

21ページをごらんください。これは公益法人におけます関係者への利益供与の禁止等に係る取り扱いについて整理したものです。

 まず第1に、関係者に対する特別の利益供与の禁止として、包括的な禁止規定が置かれております。

 これにつきましては、1つ目の○にございますように、公益社団法人・公益財団法人制度においては、

 ○1法人の役員、評議員、理事、監事、使用人等の法人の関係者

 ○2株式会社その他営利事業を営む者、特定の個人又は団体の利益を図る活動を行う者に対し、特別の利益を与えることを禁止している。

 この特別の利益の意味でございますが、公益認定等ガイドラインにより、

○1申請時に提出書類等から利益を与える個人又は団体の選定や利益の規模が、事業内容や実施方法等の具体的事情に即し、社会通念に照らして合理性を欠く不相当な利益の供与や優遇を判断

○2認定後は、確定的に利益が移転するに至らなくとも、その恐れがあると認められる場合には報告徴収を求めうる

とされております。

 具体的に明確な基準といいますのは、その事情に応じまして総合的に判断するというようなガイドラインが示されております。

 一方、<参考>といたしまして、下に少し小さな字で書いておりますが、これは公益財団・社団ではございませんで、一般社団・財団のうち非営利型法人(課税対象が収益事業のみ)の要件といたしまして、特別の利益を与えることがないというものがございます。

 これにつきまして、法人税法基本通達が示されております。

 例示として、以下のような経済的利益の供与又は金銭その他の資産の交付で、社会通念上不相当なものをいうとされております

 ここには(1)から(6)までございます。

 例えばその所有する土地、建物その他の資産を無償又は通常よりも低い賃貸料で貸し付けていること。無利息又は通常よりも低い利率で金銭を貸し付けること。あるいはその所有する資産を無償又は通常よりも低い対価で譲渡していること。逆に特定の個人又は団体から通常よりも高い賃借料により土地、建物その他の資産を賃借していること又は通常よりも高い利率により金銭を借り受けていること。また、所有する資産を通常よりも高い対価で譲り受けていること又は法人の事業の用に供すると認められない資産を取得していること。さらに特定の個人に対して過大な給与等を支給していることなど、かなり広い範囲で特別の利益供与を示しております。

 これと公益社団法人・財団法人の特別の利益供与の概念が一致するというわけではない、同一のものではないとされておりますが、基本的にはこれが参考になるものであろうということで、御紹介いたしました。

 続きまして、22ページをごらんください。

 ただいま公益法人におけます特別の利益供与の禁止に関する包括的な規定について御説明いたしましたが、第2に関連当事者との取引内容の情報開示についても規制しておりますので、これについて御説明いたします。

 関連当事者との取引について、財務諸表に注記事項として記載することとされております。これは公益法人会計基準で定められておりまして、ちなみに社会福祉法人の新会計基準も基本的にはこの公益法人会計基準を参考にし、この内容についてはほぼ同一の内容となっております。

 ただ、違いますのは、後ほど御説明いたしますが、関連当事者の範囲とかその取引金額などが違うという点です。

 公益法人におきます取引内容の情報開示の内容といたしましては、まず関連当事者の範囲は、公益法人を支配する法人及び支配される法人、公益法人と同一の支配法人をもつ法人、法人の役員又は評議員、それらの近親者とされております。

 注記事項は、ここにありますとおり、取引の内容、金額等でございます。

 注記除外事項につきましては、ここにありますとおり、一般競争入札や役員等に対する報酬等は注記除外事項でございます。

 先ほど申し上げましたように、記載対象となる取引金額は、役員又は評議員それらの近親者との取引については、100万円を超える取引とされております。

 この中で支配法人、被支配法人あるいは同一の支配法人を持つ法人という概念が出てまいりました。これにつきまして整理したのが25ページでございます。公益財団法人制度におきまして取引内容を開示すべき範囲としては、ここの図に示したものでございます。

 まず、公益財団法人の役員又は評議員、そして役員又は評議員及びそれらの近親者。これは三親等までの近親者でございます。それが関連当事者になります。

 そして、○1の支配法人。これは支配する法人で、今から御説明いたします。

 さらに、公益財団法人が支配する法人。いわゆる被支配法人。

 3番目に、同じ支配法人を持つ法人。いわゆるグループ法人でございます。

 それから、役員、近親者等が議決権の過半数を有している法人というものが、関連当事者として範囲に掲げられております。

 この中で、支配法人、被支配法人について簡単に御説明いたします。それは32ページ以下でございます。

 公益財団法人を支配する法人とは何かということです。当然公益財団法人は、株主総会のようなもの、いわゆる社員総会がございませんので、議決権は評議員会にございます。したがいまして、まず評議員会の構成がポイントになります。当該公益財団法人の評議員会のメンバーのうち、その半分以上をその法人の役職員等が占めている場合は支配法人に当たるとされております。

 また、半分には至らないけれども、40100以上50100までの場合は、そこにありますように緊密な関係がある者、下のほうに注記がございますが、そのような者と合わせて50100以上であるとか、あるいは理事の構成で50100以上の理事がその法人から送られてきているというような契約関係があるとか、あるいは資金調達のうち半分以上をその法人から融資を受けている等の条件のうちのどれか1つが当てはまれば支配法人であるとされています。

 また、評議員が40100未満の役職員しか送られてきていない場合は、もう少し要件が厳しくなりまして、緊密な関係がある者と合わせて50100以上であることが必須要件になりまして、それと理事の構成等のうちのどれか1つの要件が当てはまれば支配法人となります。

 逆に、公益財団法人が支配する場合は被支配法人の要件でございまして、これは基本的には支配法人の場合と同様でございます。

34ページですが、少し注意しなければならないのは、被支配法人、公益財団法人が支配する法人が株式会社などの場合です。この場合は、51100以上の議決権という概念がございません。というのは、社会福祉法人も同様でございますが、公益財団・社団におきましては、株式会社の株式を過半数以上保有することが認められておりませんので、そもそも議決権の過半数を保有するという概念はないということになります。

 以上が公益法人の制度の仕組みでございますが、最後の35ページをごらんください。

 このような公益社団・財団法人制度を踏まえまして、このような考え方で御検討いただいてはどうかということを整理しております。

 まず第1に、公益社団・財団法人制度と同様に、特別の利益供与を禁止する規定を法令上明記すべきではないかという点です。包括的な利益供与を禁止する規定を設けてはどうかという点でございます。

 第2に、いわゆる財務諸表の注記対象として取引内容を開示する仕組みでございますが、その注記対象となる関連当事者の範囲につきましては、公益財団法人制度を参考に、すなわち公益法人制度にそろえるということで、当該社会福祉法人を支配する法人、当該社会福祉法人によって支配される法人、または同一の支配法人を持つ法人、いわゆるグループの法人を入れてはどうかという点。

 それから、今回ガバナンスの会で御議論いただきましたが、評議員会を社会福祉法人においても議決機関として必置とするという方向で御議論いただいておりますので、評議員というものが非常に重要な役割を果たすことになります。したがいまして、社会福祉法人におきましても、評議員及びその近親者という者を関連当事者として位置づけてはどうかという点でございます。

 ※で書いてありますのは細かい内容でございますが、社会福祉法人の場合、法人外への資金拠出が制限されていまして、融資することができませんので、先ほど御説明した中で、融資割合によって支配するという概念がないということで、その点は設ける必要がないのではないかということと、先ほど申し上げましたが、営利企業の株式を過半数以上持つことはありませんので、その点については少し要件が異なるということを説明したものでございます。

 最後の○ですが、もう一つ、社会福祉法人会計基準におきまして、財務諸表の注記事項として関連当事者との取引内容の開示の対象となる取引の範囲でございますが、現在、公益法人会計基準では100万円以上の取引が対象となっております。これに対しまして、社会福祉法人は1,000万円となっていますので、範囲が狭くなっております。これを公益法人会計基準と同様に取引額が100万円を超える取引としてはどうかという点でございます。

 資料の説明は以上でございます。

○田中部会長 ありがとうございました。

 ただいま説明のありました適正かつ公正な支出管理について、御意見、御質問があれば、お願いいたします。武居委員、お願いします。

○武居委員 前段の役員報酬の開示についてでございます。支給基準の公表、報酬総額の公表、不当に高額にならないということについては、まさにそのとおりだと思います。

 ただ、1つ、17ページ、最後のところに書いてございます役員報酬等には、職員給与又は職員賞与として支給される分を含むこととしてはどうかということについてでございます。今までの議論の経過では、法人という制度がある以上、役員報酬の支払いは当然だろうと思われます。しかしながら、現行制度がどうかと申しますと、本部の経費というのが実質認められていない部分がございます。つまり、本部は各施設のお金が余った部分から一定の制限のもとに支出していいという形になっています。

 したがいまして、今まで社会福祉法人は、役員報酬というのが非常に出しにくいという制度になっておりました。施設長を兼務していないと、なかなか報酬が出しにくいという現状がございました。したがって、役員報酬が支給されていなくて施設長と兼務している例が多かったと思われます。

 この問題を解決すれば、役員報酬と施設長の給与というのは分離して考えられるということになると思いますので、職員としての給与、賞与の支給について公表するということは適切ではないと思います。

○田中部会長 高橋委員、お願いします。

○高橋(英)委員 日本保育協会の高橋でございます。

 武居委員の話とも関連するのですけれども、現在、報酬である介護保険のような形と、措置の措置費、保育園においては運営費ということで、ここについては使途制限がかかっていないものとかかっているものと混在しているわけでありますが、その場合の報酬の基準についての整理をしておく必要があるのではないかなということを思っております。

 以上でございます。

○田中部会長 橘委員、お願いします。

○橘委員 橘です。

 以前の会議で、日当は報酬か報酬でないかという質問に対して、それは報酬ですと言っておられましたけれども、私としては、少額の日当に関しては旅費支給という形でいいのではないかと思っておりまして、少額の日当であっても報酬として報告する必要性があるのか、それをお聞きしたいです。

 もう一点、21ページに利益供与の禁止に係る資料がありますが、その中の法人税法基本通達の(4)に通常よりも高い賃借料により土地、建物を借り受けた場合、これは禁止行為につながるということですが、通常の価格の判断については、その市町村の所轄庁の判断を仰ぐことになるのか。

 障害関係のグループホームでは、最近、他の方の所有する建物をお借りして運営しているケースが多くあります。地域住民の方からお借りするケースもありますけれども、法人の役員、評議員や理事の方がそのグループホームのために建てた建物をお借りして運営しているというケースもあるのです。それは役員との間で賃借料などお金の出し入れが関係してくるものとなるので、いけないということになるのか。その点についての判断は、あくまでも所轄庁の判断を仰ぐことになるのか、ということを教えていただきたいと思います。

 以上です。

○田中部会長 では、2点の質問にお答えください。

○岩井福祉基盤課長 第1点なのですが、いろいろな制度の帰結といいますか、制約があり、現状になっているというお話はよくわかりまして、その辺は今後この部会におきましても、報酬を報酬として支払われるようにすべきではないかという御議論がありまして、それはそういう方向だと思われます。

 ただ一方で、現状といたしましては、先ほど申し上げましたように、実質的には施設職員としての給与を受けているという形が多いということと、中には勤務実態にそぐわないような報酬、職員給与も含めたものを受けておられるというケースがあり、そこが問題になっているということがあります。

 先ほど7ページで御説明いたしましたが、7ページの規制改革実施計画、閣議決定でございますが、それはそういう現在の社会福祉法人の役員の報酬の実態を踏まえまして、社会福祉法人の役員に対する報酬や退職金などについて、その算定方法の方針や役員区分ごとの報酬等の総額とありますが、ここにわざわざ括弧書きで(役員報酬以外の職員としての給与等も含む)の開示を義務付けるとして、閣議決定されている状況でございます。

 閣議決定は閣議決定でございますが、この趣旨は、基本的には私が今、申し上げましたような現状を踏まえて、そこを国民に対して説明責任を果たす必要があるかということなので、事務局としては、役員報酬以外の職員としての給与も含めてこれを公表しなければ意味がないだろうということで、御提案させていただいている状況でございます。

 第2の橘委員がお話しいただきました、例えばグループホーム等、役員から借りて経営するというケースは結構あると聞いております。それについて、基本的にその取引がだめだということではなくて、公益法人の仕組みも、賃借料とかが不当に高額なものであってはならないと。不当に高額であれば、それは特別の利益を与えるというものでございますので、そこを規制しているものと理解しておりまして、その内容等は基本的に所轄庁等が判断することだと考えております。

○田中部会長 少額日当の点はいかがでしょうか。

○岩井福祉基盤課長 失礼しました。

12ページをごらんください。これは公益法人のものでございますが、○1のところに注2というのがございまして、非常勤の理事等に対する日当等が、交通費実費相当額を超える場合は、報酬等に該当する場合がありますとしております。逆に言うと、日当の中でも交通費とか実費額を含む場合は、それが入らないという考え方だと思われますので、これは今後整理することになるのかなと。

 実態的にはこういう交通費でなくて、例えば年間何十万円という形で日当的に支払われている方が多うございますので、そういうのは報酬になるのではないかと思いますが、交通費とかそういう少額なものは確かに省略するということも考えられまして、それは今後の整理かと考えています。

○田中部会長 橘委員、よろしゅうございますか。

○橘委員 はい。ありがとうございます。

○田中部会長 では、平川参考人。

○平川参考人 ありがとうございます。きょう提出されました資料は、おおむねこの方向でいいのではないかと考えているところであります。

 最初に、検討に当たっての基本的な視点のところに書いてありますとおり、なぜ役員報酬を情報公開していくのかということや、関連取引についてはなぜ透明性を高めていくのかというのは、ここに書いてありとおり、国民に対する説明責任を果たすということだと思います。その理由としては、税制優遇や公金の支出が多くあるということからも当然のことではないのかなと考えているところであります。透明性の確保が社会福祉法人の社会的な地位をさらに高めていくことにつながっていくと考えているところであります。

 役員報酬の公開につきましても、職員給与又は職員賞与として支給される分を含むということについても当然のことだと思います。これが公開されないと、逆に役員報酬が情報公開されて、ゼロと公開されるけれども、実態は職員給与として行っている、不適切な、不当に高額なものになっているという実態も考えられますので、それも含めてしっかりと公開されるということが重要かと思っています。

 特に介護であれば介護報酬、もしくは措置施設では措置費によって運営されているという実態があるわけであります。

 例えば性格は違いますが、地方自治体の公営企業であれば、公営企業年鑑の中で、これは職員の給与も含めて全て公開されているという実態がありますので、今回そこまでは公開するとはなっていませんが、このような事例もあるということも踏まえていくべきではないかと思っています。

 以上です。

○田中部会長 藤野委員、どうぞ。

○藤野委員 武居委員、橘委員が言われたことについては、僕も随分気になっていました。それと同時に、社会的養護の分野、措置の分野で言いますと、橘委員が言われましたが、本部にお金を持っていくというか、利益みたいなことは全然ありませんで、持っていくことはほとんどないですね。だから、法人の役職員等は全く無給でお願いをしているのが実態だと。どこもそうではないかなという感じがするのです。例えば日当さえも払っていなかったのですけれども、監事から日当ぐらいは払いなさいという監査の指摘を受けまして、払うみたいな状況があるわけですね。

 それと、一つ気になるのは、1,000万が100万ということですね。100万というのはいっぱい出てくる可能性がありますね。狭い地域ですと、業者とかその辺はつながりがあると言えばつながりがあるみたいなこともあるので、そうすると、相当の事務量が出てくると思います。そういう意味で、社会的養護では、例えば事務員は1人しか見ていないですね。そういう状況の中でこの事務作業をやるとすれば、かなりの事務作業になると思いますし、僕は別にこの趣旨そのもの、透明性とかその辺のあれは賛成ですけれども、ただ、その辺の手当を何らかの形でしていただかないと。例えば保育所なんかは事務もいない。園長とかその辺が兼務してやっているようなところもありますので、例えば配置基準の改定とかそういう中で見ていただくとか、何かの手当が必要ではないかなというふうに思います。

 これは意見です。

○田中部会長 福間委員、お願いいたします。

○福間委員 特別の利益供与に関するところですが、4つの法人格を比べますと、社会福祉法人が現在、三親等以内で1,000万。これを今度は公益法人に合わせると、三親等内で100万ということになるのですが、一方で、同じような形での社会医療法人は二親等で1,000万。学校法人の場合は二親等で100万と。公益法人だけで比べればそういうことになりますが、では、ほかの公益性の法人と比べると、それぞれ違うのですね。

 例えば社会医療法人とか、事業型のそういう公共法人と財団・社団の公益法人はちょっと性格が違うのではないか。

 今、藤野委員がおっしゃったように、三親等というと、おじさん、おいっ子、めいっ子、評議員の三親等となると、地域において、ちょっとした仕入れ先ではそういう該当はいっぱい出てきます。もちろん、特別なことでやる必要はないにしても、例えば100万円というと、月8万4,000円ですから、消耗品のお店なり取引であれば、本当に発生する形なのですね。

 そういうことも現実論として考えたときに、やや広がり過ぎているのではないかという気がします。公益法人を一つの目安にするのは大事ですが、社会福祉法人の実態として合うものと合わないものがあるということもあわせて判断をすべきではないかと思います。

 結論から申し上げますと、評議員会までは、もちろん今回の議決との関係もありますので、重要だと思いますから、それを含めた場合には三親等ではなくて二親等にするとか、社会医療法人が一つの参考になるのではないかなと思いますし、一方で、企業会計においても二親等1,000万というふうに言われておりますので、そのあたりも見比べてぜひ詰めていただきたいと思います。

○田中部会長 ここまでで何かお答えになりますか。

○岩井福祉基盤課長 ただいま各委員からいただきました御意見、事業型法人としての実態というのは非常に重要かと考えております。基本的には公益法人制度のグループでございますが、基本的には公益法人制度が改革されまして、それに合わせまして、順次他の特別の公益法人、例えば社会福祉法人とか学校法人、狭義の公益法人ではないでしょうが、医療法人なども今後改革されていくものと考えております。これは政府の基本的な方針であります。したがいまして、公益法人制度を基準にするということは必要ではないかということだろうと思います。

 また、世の中的に最近、新聞報道がございますのは、おじさんとか、そういうところの会社との関係とか、いろいろと議論されているので、福間委員がおっしゃるように、それが評議員にまでさらに広がるということになりますけれども、実質的にはそこまで説明責任を果たすことは必要ではない形で提案させていただいております。

 一方、実務についてはやり方があろうと思われますので、取引の際に例えばその関係者をリスト化するとか、そういう中で事前にチェックできる体制をとるとか、それを申告していただくという形で、実際の運用に当たっては事務負担を十分考慮してやっていく必要があるということは、事務局としても十分考えております。

 以上です。

○田中部会長 柳川委員、どうぞ。

○柳川委員 社会福祉法人の支出の透明性を確保する必要があるという論点がありますので、今回の役員報酬に関する提案は、基本的に賛成と考えております。

 先ほど役員報酬をとらずに無給で理事を務めているという話がありましたけれども、汗をかいたからには対価を得るものであるべきだと思います。同時に、役員報酬をきちんと出して公開していくことで、今後、社会福祉法人の役員報酬の相場観が見えてくると思われます。

 取引額については、福間委員のほうから他の法人は1,000万とありましたけれども、医療法人は高額の機器などを購入するというような事情がございます。昨今、社会福祉法人に対して厳しい目が注がれているという時勢がありますので、妥当性は別にして、100万円という目安を出して、経営の自立性の中で工夫をしていくということが望ましいのではないかと考えています。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 先ほど来事務局から御説明いただいておりますように、社会福祉法人という法人格を考えたときに、公益法人というものの水準にまずは追いつかなければいけないということは、法機関のバランス上、当然だと思いますし、なおかつ医療法人あるいは学校法人というのが社会福祉法人と同様、その後の見直しが行われていない。逆に言えば、社会福祉法人がある意味トップを切って改革しようとしているわけでございますから、社会福祉法人側とすれば、その後の法人の改革の規範となるような視点で考えていかなければいけないのだろうと思います。

 さらに言えば、本来は公益法人より厳しくあるべきなのが社会福祉法人であるはずである。特に法人税法の収益事業である医療保険業、社会福祉法人に関しては非課税等、税制の優遇をしてもらいたいという前提で我々は考えておりますから、これは公益法人以上のことをお願いするわけでございますから、当然より厳しくというのが法規上のバランスにならざるを得ないと思います。

 ただし、さはさりながら2点心配がございます。

 1点目は、公益法人のときもかなりの大改革でございまして、時間をかけて変えていったと。公益法人はきちんとしたデータに基づいているわけではないですけれども、小さな法人もありますが、小さな法人はほとんど活動していない法人が中心でございまして、政府系のかなりの大きな法人が中心でございますが、社会福祉法人では保育の1施設1法人に代表されるような非常に小さな法人であっても、かなり動いているということでございまして、まず公益法人に合わせていこうというのは、基本的にそのとおりだと思うのですけれども、そこに合わせることにも大変さがあるなと。

 さらに言えば、そこに合わせればいいという問題ではないということを考えますと、まず1点目は、これは10年に一度ぐらいの大改革ということで、社会福祉法を変えて以来10年以上たっているわけでございますが、今回で終わりにして、次は10年後、見直しをしましょうということではちょっと心もとないかなと思います。この法人改革に関しては、公益法人が一定期間時間をかけましたように、時間をかけつつ、見守りつつ、問題があることは変えていくといったようなトライ・アンド・エラーの方向性も必要でしょうし、社会福祉法人が終わりましたら、恐らく学校法人等々も変更していこうという中で、バランスをとり直すということもあるかと思いますので、この福祉部会なのか、どういう部会なのかわかりませんが、継続的に御検討いただけないかなというのが第1点目でございます。

 第2点目は、先ほど来各委員からお話がありますように、事業型の法人であるということと、そもそも社会福祉法人は、公益法人というものに基づきながらも、出立は、社会起業家、みずからの財産をなげうって事業を始められたような方々が福祉事業を継続的にやるためにつくられた法人格でございまして、政府がエージェントとしてつくっておられるような法人、あるいは株式上場を機に、非常に裕福な資産があるために寄附をして、その寄附の資産でもって社会に貢献していこうというタイプの法人とは出立がかなり違う。それから事業型であるということを踏まえますと、こういった法人が株式会社やNPO法人等々と競争していく中で、よりよい福祉の価値を地域や社会の中に還元していくか。つまり、縛るということが本当に適切なのだろうか。縛り方の観点があろうかと思います。

 という観点で、この2点目に関して各論を申し上げたいのですけれども、まず先ほど来出ている100万円の線でございますが、これは100万円に根拠があるということではなくて、社会福祉法人であるからにはもう一歩厳しくしようという事務局のお考えのあらわれではないかと思いますし、基本的には正しいと思うわけでございますが、現実に100万円になると本当に機能停止してしまいかねないという話がどれぐらいあるのか、ないのかわからない状況でございますので、時間的な問題はございますが、100万でなくても、バナナのたたき売りではないのですが、500万でもいいかもしれませんし、実態を調査していただいて、どの程度のライン、1,000万でやっているものより一歩社会福祉法人は厳しくあろうとするのであれば、幾らがいいのかというあたりの御検討をいただけないのかというのが、先ほど来の100万円の線でございます。

 それから、前半部分の報酬の件でございますが、今は上場企業が取締役の総額給与とか一定額以上を公表する時代でございますから、やはり一歩厳しくあらねばならないということで、行政チェックが入ってくるということは賛成でございます。

 多くの社会福祉法人では、先ほど来お話がありますように、ろくに報酬を出せていないという現実がありつつも、ごく一部には驚くような報酬が出ているケースもある。なぜそれが可能なのかよくわからないのですが、これをチェックするためには、やはり行政にやっていただく以外ないということでございますから、行政チェックは重要だろうということだと思うのですが、行政チェックが一律になって、例えば市の課長の給料以上は出してはならないとか、そういうチェックを聞いたことがございますので、そういったくだらない一律のチェックにならないように、行政のチェックの基準といいますか、考え方みたいなものを国として示す必要があるのではないかと思います。

 例えば1施設1法人であるところであれば、これは法人経営イコール施設経営でございますから、これに別途施設長でもない、役を持たない方、理事が必要とは思えませんし、それに対して、多数の事業をお持ちになっている、あるいは事業種別もさまざまである、さらに言えば全国展開しておられるというふうになりますと、これは経営者としての能力、資質あるいはかける時間も別でございますから、その考え方は違うのであろうと。だから、幾らということにならないと思いますけれども、それぞれ同じ理事長あるいは同じ理事といっても考え方が違うのだという考え方をまず国のほうからお示しいただいたほうがいいのではないかと思います。

 このポリシーについて言いますと、逆に今、株式会社等々で報酬の出し方のポリシーを示すということがございます。どういう考え方、どういう意図でこのような計算式なのかといったようなことでございます。あるいは全体の中で理事長にこれだけの報酬を出す考え方は何なのかと。この法人の側の自主的、積極的な報酬のポリシーと、国の側の報酬の考え方をもとに都道府県、市が考えていただくというのが事業法人らしいやり方になるのではないかと思います。

 さらに一歩厳しくということになるかもしれませんが、社会福祉法人のミッションを考えますと、今のところ評議員会に開示というところでとまっておりますが、私はかねてから主張しておりまして、制度化に取り入れられそうであります運営協議会に対しても開示してはいかがかと思っております。

 3番目でございますが、退職慰労金を報酬額の中に一応含む整理なのか、どうなのかが明確になっておりませんが、法人の売り買いといったようなことが新聞でも取り沙汰されたことがございますが、退職慰労金という手段を使って極めてブラックなことがやられているところがございますので、退職慰労金については、個人単位で、ある一定額以上のもの。普通の理事長で何年勤めれば幾らという世間相場というのがあるかと思いますけれども、これが法人の売り買い等々になりますと、億単位の退職慰労金等々を出していることがございますので、基準を決めて、退職慰労金に関しては個人別の開示があってもいいのではないかと思います。

 全般に細かいことを申し上げましたけれども、社会福祉法人らしさ、社会福祉法人が非営利法人、税制を優遇されている法人として地域のために貢献していける。当然公益法人としての厳しい水準はあるけれどもという点のポリシー、考え方に基づいて、今回だけの改革に終わらず、中長期的にお考えいただきたいなと思います。

 以上でございます。

○田中部会長 体系的な整理をありがとうございました。

 退職慰労金についてはいかがですか。

○岩井福祉基盤課長 公益法人におきましては、退職慰労金という概念ではないのですが、退職手当の額については、報酬総額を公表すると。閲覧対象にしています。また、規制改革実施計画においては、報酬だけではなく、退職金などについても報酬の総額の開示を義務づけるとなっておりますので、基本的にはそういう方向にしたいと思っております。

○藤井委員 私は、総額というよりは、一定額を設けて、個人名とともに出してもいいのではないか。これは現実にそういう事態がごく一部にあるということをもって申し上げております。

○岩井福祉基盤課長 退職慰労金の話もそうですし、先ほどからの取引の話もそうなのですが、基本的には社会福祉法人に対する、今、最も説明責任ができない分野であると。新聞報道等でもここが一番つかれてきていまして、基本的には国民としても知りたいところであるということで、きっちりとこれを公表していくというのは基本スタンスではないかと。

 先ほどから御意見がありましたように、法人の負担があるのは私どもも十分理解しておりますが、例えば年に一度、範囲を必ずリスト化して調べておかないといけませんが、それを集計する手間と説明責任を果たすということを比較衡量すれば、例えば先ほどの取引の額についても、これは公益法人の額をすることが否定されるべきなのかということは、ないのではないかということで、議論をさせていただいたということです。したがいまして、こういうところはきっちりしていくべきだろうと思われます。

 一方、個人の報酬額を出すことにつきましては、これは個人情報との関係がございます。それはまさに公表することによって得られる利益との比較ということも必要なので、これは御議論いただいてよろしいかとも思いますが、一般的には個人の報酬額等を公表する仕組みというのは極めて限定的であると。例えば政府系の独立行政法人であるとか、あるいは上場企業で株式が公開されているということで、一般国民に影響を及ぼすという意味で、1億円以上という高額な場合とか、限定されております。そういうことと比較すると、いかがなものかという検討が必要かと思います。

○田中部会長 柳川委員、石黒参考人の順でお願いいたします。

○柳川委員 確かに社会福祉法人が先駆けて改革していくのだというのはとても大事なことだと思います。 

 まず、藤井委員が御提案したとおり、調査を実施してどのぐらいが妥当か検討するというのは必要だと思うのですが、安くて質のいいものを探していくというのは、経営の自立性の中でとても大事なテーマだと思います。過去の関係があるからそのまま取引をしましょうというのは、お金の使い方としては妥当ではないかと思います。ほかの法人が1,000万円だからというような横並びで決定するのではなく、あえて実態を踏み込んで知って、決定した方が良いと考えます。

 公開性のところについては、都道府県レベルで公開して、皆さんがきちんと見られるような仕組みをつくることが望ましいと思います。各法人のホームページも大事ですけれども、都道府県だけでなく市もそうかもしれませんが、多くの人が見られるような場をぜひ設置していただければなと考えております。

 以上です。

○田中部会長 石黒参考人、どうぞ。

○石黒参考人 藤井教授からお話しいただいたので、行政の面からちょっとお話をさせていただきます。

 今回の議論というのは、この制度改革を実効あるものにするためには、前回、前々回議論されているように、例えば余裕財産の話にしても、行政関与の話にしても、誰がどのような基準、根拠で判断とか確認するのかというのを法令面でもしっかり明確化する必要がある。そうしないと骨抜きになって、批判がさらに厳しくなるのではないかという危惧を持っています。

 今回の役員報酬の話も、基本的には社会福祉法人の成り立ちを考えると、公益財団法人と同様の義務づけは当然ながら必要になってくるのかなと思っています。ただ、所管庁として指導するに当たって、その基準というのが非常に重要になってきて、例えば個別の役員報酬を報告させても、何をもって不当な、高額だということを判断するのかというのは、やはり一定の基準が必要だと思っています。それをもとに所管庁としてお話しすることは可能なのですが、社会通念上とかという話になると、主観的な判断ではできないのではないかなと思っています。

 実例を申し上げますと、常勤役員に月額100万円とか、私が見た例では70万円とかというのがあって、それは実はほとんど勤務実態がないとか、要は、創業者の御子孫の方だったとかという話があって、それが常勤とも言えず、高額ではないのという御指導を申し上げても、出勤はほとんどしていなくても毎日電話でやりとりしているとか、高度な判断をいただいているとかと言われると、それ以上のことは言えなくなってしまうということもあるので、例えば常勤、非常勤役員の定義とか、金額というのはなかなか難しいですけれども、明確な判断基準をぜひとも示していただかないと、やりにくいなと思っています。

 本来、基盤課長さんから部長が出席するようにと御下命を受けていたのですが、いつも来られなくて、課長に出てもらっていたのですが、今回やっと出席できたので、これまでの議論についても申し上げたいところが多々あるのですが、一連の社会福祉法人批判に対して、今まで我々行政と協力して先駆的にいろいろ取り組んできたことが全然理解されていないなという思いを持っております。

 法人側にも努力を求めたいのは、平成12年以降は利用制度に移っている中で、説明責任というのは、利用者とか地域の住民にしていただくのが重要であって、措置時代のように行政に説明すればいいという話ではないのだなと。それも受け身でなくて積極的にやっていただかないと、いろんな誤解を受けるというふうに考えております。

 主観も含めて発言させていただきました。ありがとうございます。

○田中部会長 松原委員、どうぞ。

○松原委員 まず取引、100万円について公表するか否かということにつきましては、公的資金を主財源に事業をしていて、しかも非営利組織でという組織においては、公表していく方向がふさわしいと思います。手間であるということですけれども、例えば取引した日付と何を買ったのか、金額と取引先の名前を書くことで、不当に高く買ったとか、キャッシュバックがあったとか、そういったことに対する牽制になると思いますので、そういった取引の透明性を高める方向に向かったほうがいいと思います。

 給与と個人名を一緒に公開するというのは、個人情報の問題があるだろうなと思っています。ただ一方で、非営利だと言いながら、給与の形で、例えばそんなケースはないと思いますが、1億円もらっているとか、5,000万円以上もらっているとかというのもどうなのかと。問題があると思いますので、例えていえば、2,500万円以上だったらば、個人名と一緒に公開するということで牽制をかける。または上限を設定してしまう。オランダなどの場合だと、首相以下の給与でなければならないという規制をかけています。

 以上です。

○田中部会長 関川委員、お願いします。

○関川委員 まず、報酬についてですけれども、基本的には今回の改正は社会福祉法人の経営に関するガバナンスの強化が大きなテーマとなっておりまして、役員の業務が形骸しないように権限と責任を定めております。したがって、役員は、非常勤、無報酬、ボランティアとして関わるポストではないと考えるべきでしょうから、役員報酬を支払うことのできる会計規模であれば、業務内容相応の報酬の支払いが可能となるような仕組みづくりの検討がまずは必要ではないかと思います。

 それを踏まえた上で、今、問題となっておりますように、寄附した者及びその親族が、役員ないしび施設長になり、しかも不当に高額な報酬を受け取るということであれば、事実上利益の配分を得ているような事態でございますので、非営利性から見ても著しく問題であろうと思います。

 先ほど来問題となっておりますように、役員報酬の公表だけではなく、所轄庁へ報告した後、著しく高額な役員報酬が支払われている事例に対し、所轄庁がどのように対応すべきかまで踏み込んだ検討が必要ではないかと思います。可能であれば、不当に高額な役員報酬について、法人の規模に応じて、一定の金額を例示するなど、行政指導の上でも参考になるガイドラインを作成できればベストであろうと思います。

 たとえば、社会福祉施設を経営する経営協など業界団体が、事業規模に応じた役員報酬のガイドラインなどを示していただくことはできないでしょうか。そこで、業界の相場というものはこれぐらいであるということをお示しいただいた上で、それを著しく超える場合には、所轄庁による行政指導の対象とし、評議員会に対し役員報酬規程の見直しを求めるなどの対応が必要であると思います。

 ただし、厚生労働省が上限を設定するということについては、少しためらいを感じております。場合によっては、社会福祉法人の中で、厚生労働省が認めたのであるから、そこまでは受け取ることが可能なのではないかと考える方々が出てきそうだというところが反対の理由でございます。

 以上です。

○田中部会長 松山委員、お願いします。

○松山委員 まず、事務負担の問題ですけれども、現場の事情はよく理解できるのですが、関係者との取引開示を100万円以上とすると事務負担が重くなるので対応できないということをこの部会として言うと、逆に批判している人たちから、そんな事務もできないのだったら、何で公費を投入するのだということを言われかねない。特に財務データが不適切という批判が出ている中で、みずから事務負担能力がないということを言ってしまうのはまずいのでないか、少し説明ロジックを考える必要があるのではないかと思います。

 役員報酬については、事務局のほうで案を出していただいたように、本人が決める権限がない、第三者が決めますということが一番重要だと思います。金額については、その事業体の規模とか実際の資金の内容などを総合判断して決めればよい。文言としては世間相場というか、社会的に見て妥当というようなことで決めておいて、あとは実際どうなのかというのを所轄庁も見るし、それを決める第三者の人たちがコントロールするという仕組みがよいと思います。

 それから、私にとって社会福祉法人の実態がよくわからない点があります。社福経営者の方々から本部会計のほうに各事業部門からの黒字を移管することに制限があるという話をよく聞くのですけれども、私が1,200ぐらい財務諸表を見たときに、原則特養とか病院事業で出た黒字の大半を本部に移して、法人全体でそれを管理しているというところがありました。このような社会福祉法人の方が経営管理がしっかりしているという印象を受けました。

 介護報酬にしろ、措置制度の補助金にしろ、政府が大体コストの平均値を見て金額を決めて出しているわけですから、経営努力したところは、それをうまく効率的に使うことで黒字が何らかの形で出るわけです。各事業部門で黒字が出たら、それを本部に集めて、その法人の理念をもっと達成するためにどうやって使うかというのを考える。黒字を当該社会福祉法人の使命達成のために黒字を生み出した分野以外でも使うことは決して悪いことではないので、本部会計をもっと活用できる仕組みにしてあげる必要があるのではないかというのが私の意見です。

○田中部会長 柳川委員、どうぞ。

○柳川委員 事務負担の話に戻って恐縮なのですが、事務負担というのは、負担というふうに捉えると、仕事としては面白くない。事務というのはある意味、仕事の基盤でもあります。事務担当の方が新しい改善点を見つけるというような副次効果もあると思いますので、松山委員がおっしゃっている点もあるかと思うのですが、むしろ積極的に捉えて、事務負担という言い方でなく、事務から見えてくる新しい何かというものを見つけるのだという意識を経営管理側が持ってもらえると良いと考えた次第でございます。

 以上です。

○田中部会長 前向きな発言、ありがとうございます。

 対馬委員、お願いします。

○対馬委員 対馬でございます。

 役員報酬の件でありますが、評議員会で決定して、総額を公表するというのは大賛成でございます。

 しかし、今回の社福のあり方の見直しで理事長あるいは理事の責任は重くなるだろうと思います。いまだに市町村の中では理事長報酬を払ってはいけない、日当のみです、という指導をしているところがあります。これについては基本的に認めるということを明確にしてほしいと思っています。

 なおかつ先ほど松山先生からもお話がありましたが、法人の規模によって限度額を定めるべきだと考えます。例えば収入の何%とか、あるいは収支差額の何%とか、国が定めて、それをリミットにするべきではないかと考えます。

 もう一つ、今回ガバナンスについてもこの委員会で議論がされました。今までのように、1年に1回、5月の決算に対する監事としてのチェックではもうだめだと思っています。せめて四半期ごとに監事はチェックをしていくべきと考えます。監事は今まで以上に責任が重くなりますので、それに見合った報酬を払うべきではないかと考えます。それが1つです。

 それから、関連当事者の取引内容について、1,000万円を100万円という話がありますが、公表より、まずは理事長が勝手に納入業者とか業者を決められない仕組みに変えるべきだと考えます。具体的に何かというと、例えば、経理規程の中で随時契約を認めています。これを認めないで入札、あるいは見積もり合わせで行うという形に変えればいいと思います。

 それからもう一つ、委員会でも過去に言っていますが、権限規程について、学校法人でいろんな問題が起きないのは、権限規程がしっかりしているので、理事長が勝手に判断して業者を決める、物を買うということにはなっていません。できれば国がこの権限規程の準則について定めをして、理事長が判断できる権限を縮小させるべきだと考えます。そうすれば、理事長の私物化にはつながらないと考えます。公表も大事ですが、公表する前に予防して、私物化させないという仕組みを作るべきではないかと思います。

 以上です。

○田中部会長 これから責任をとらなくてはならない時代には報酬がないこともかえって問題であると。

○対馬委員 そうです。

○田中部会長 ここまでの一連の流れで何かつけ加えることは特にありませんか。

○岩井福祉基盤課長 いろいろありましたが、報酬につきましては、今、対馬委員からもございましたように、今回のガバナンスで理事、評議員もそうですし、監事も極めてその責任が重くなるということで、基本的には適正な報酬ということは積極的に捉えるべきだろうと考えられます。したがいまして、今回の制度改正で、当然所轄庁に対してもその趣旨をちゃんと伝達して指導していただくようにお願いしようと思っておりますし、まさにそのための手続をいろいろ今回定めるのだということかと思います。

 それから、ただいまお話がありました取引の中身についての適正な取引についてですが、現在でも基本的には契約額とか重要な財産の処分等については理事長ができないようなガバナンスというのは一応ございますし、あるいは基本的には国に準じて競争入札を原則とする仕組みがございます。これは別に社会福祉法人に限らず、あらゆる法人類型で不適正な運営の一つのパターンでございますので、こういうことがないがしろにされて、随時契約で適当にされるということはあってはならないということで、ここは前々回、行政の関与の仕方で、コンプライアンスを重点的に行うという議論もございました。そこについては所轄庁におけます監査等も重点的にしていただくとか、あるいは啓発活動、研修とかを各法人でも行っていただくとか、そういう取り組みをしていただく方向で議論したいと思っております。

 いずれにしても、制度改正は別に法律だけではございませんので、あらゆる手段をつくってこの点を適正にする取り組みをしたいと考えております。

 以上です。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 先ほど対馬委員のほうから報酬の上限をつくるべきではないかということでございますが、私もその方向性に賛成の気持ちはあるのですが、関川委員がおっしゃったとおり、上限というものの示し方をしたときに、どのような捉え方をするか。そこまではもらっていいのではないか、勤務実態がなくても取っていいのではないかという人がこの業界にいないことはないのではないか。いないことはないどころか、いそうだという気が大変いたしまして、やはり額を上限。

 それから、下限というお話は大変おもしろいなと思ったのですが、下限もそこまではもらっていいのではないかという変な話になりかねないので。ただし、考え方みたいなものは絶対必要であろうと。

 先ほど石黒代理人がおっしゃっておられたような専従とはどういうことであるか、どういうことでないと理事としての報酬は出ないかとか、あるいは理事としての報酬の金額というものが問われるので、問われるものは、多様なサービスをやっておられるとか、あるいは先駆的なことをやっておられるみたいなことを評価のポイントに入れてもいいと思うのです。それが措置事業であって、ずっと同じようなことをやっておられる。措置事業でなくても、例えば特別養護老人ホームでずっと同じようなことをやっておられる。こういうケースであれば、経営者としての報酬はどうなのだろうかみたいなこともないことはないと思うのです。

 どこまで踏み込むかは別としまして、経営者としての力や報酬というのは今後求められていくわけでございますが、一方で、経営者としての努力をされなくても生き残ることが可能な分野がこの領域ではなくはないということを視野に入れて、報酬とはどうあるべきかという検討がきちんとされた上で。これは国がやられるのか、あるいは各団体がやられたものを国として使われるのかわかりませんけれども、これを機に一度きちんとやっていただくということをした上で、これを各法人が受けて自分なりのポリシーを持って報酬規程をつくっていただくと。これを都道府県、市が国の指針あるいは各法人のポリシーに合わせて読み込んでいくと。

 幾らということは適切でないかもしれませんが、例えば報酬の基準として考える上で、その地域の一般的な事業の経営者の報酬額をある一定の参考にするとか、あるいは売上高の何%ぐらいを参考にするとか、そういった考え方みたいなものは示して、あとは都道府県、市の実態に合わせてやるといったような工夫が相当必要なのかなと思います。

 この部分をきちんとやっていただいて、先ほど柳川委員もおっしゃっておられましたが、きょうの話は後ろ向きに受けとめると全部縛りがふえるということなのでございますけれども、そうではなくて、社会福祉法人を批判されている方々、あるいは不審に思っておられる地域の方々に向けて、我々はきちんとこうやっているのだということを示していけるものだという観点で捉えていくものにできないかというところで、少し知恵を使う部分はあるのかなと。

 ですので、法律をということもまずありましょうし、その後、法律をもとに告知であるとか政省令をつくっていかれるプロセスの中で改めて議論していただきたいなという点でございます。

 以上です。

○田中部会長 課長、お願いします。

○岩井福祉基盤課長 ただいままでの各委員の御意見の中で、私の説明もちょっと不十分だったので、もう一度だけ御説明申し上げますが、公益法人の報酬の仕組みの趣旨をもう少し解釈いたしますと、8ページをごらんいただきたいのですが、まず自分で決めないということ、第三者が決めるという形、評議員会が決めるという形はまず第1点で、これは絶対だろうと思われます。

 あと、公益法人制度の内容を見ますと、2つ目の○にありますように、ただいま藤井委員がおっしゃいましたとおり、どのようにしているかというと、公益認定基準、法律で民間事業者の役員報酬及び従業員の供与、当該法人の経理状況等を考慮して、不当に高額なものにならないようにという形で、基本的には法律のレベルだと、これぐらいの抽象度になるかと思いますが、基本思想だし、具体的にもう少しブレークダウンしたものは運用・指導の中で行っていくという形で、大きな法人もあれば、小さな法人もありますし、さまざまな業務形態もございますので、それに応じて運用しているのではないかと考えられます。

 また、報酬の公表なのですが、下の2つの○でございますが、公益財団法人は、総額を基本的には閲覧、公表としていると。そして、個別の役員の報酬額は、行政庁への報告事項としております。

11ページをごらんいただきたいのですが、11ページの問答の最後の注でございます。この問答が、理事の報酬額は、理事長が理事会の承認を得て定めることとしていいのかということに対して、これは現在の社会福祉法人の取り扱いですが、これは明確にだめだと言っているのです。しかしながら、一番下の注に、報酬については、評議員会で総額を決めると。この趣旨は、理事によるお手盛りを防止するという趣旨であって、まず評議員会で総額を決めてくださいと。個別のものについては、報酬等の額を理事会で決めてもよいとしているわけです。

 理事会で決めてもよいとしているということと、先ほどの個別の役員の報酬額を行政庁に報告させているということの意味なのですが、個別の役員の報酬というのは、勤務実態とか、その方の責任とか責務を見ないと評価できないものでございますので、一般的に公表すればよいというものではない。基本的には行政庁で指導監査の中で見ていくとか、あるいは決めるときも実際の業務執行の決定を行います理事会で決めることも合理性があるという判断だと考えられます。

 そういうことを考えますと、報酬額の総額というものは、社会的に監視する必要があるだろうと。一方、個人の報酬額については、個人情報のことも勘案しながら、合目的的にどのような働き、勤務実態、責任に応じて妥当なものかを判断するという意味では、行政庁への報告とかいうことが妥当だというふうに考えているのではないかということであります。

 そういうことも踏まえて、社会福祉法人についても公表の仕方を考えていけばよろしいのではないかということで、参考に出したものです。

 以上です。

○田中部会長 平川参考人、どうぞ。

○平川参考人 ありがとうございます。

 役員報酬のところ、基準をどうするかという議論が一方であり、一方で、不当に高額なものになっているものに対しての指導監査が本当にできるのかどうなのかというのが大きな課題になっているかと思います。

 一つ考え方としてあるのは、これを行政の仕事として捉えるということであれば、措置施設の場合は、理事などの報酬については、お金の性格上、指導監査の対象になり得るのではないかなと思いますけれども、その辺はどうなのか、考え方をお聞きしたいと思います。

 あと、その他の介護施設等の介護報酬については使途制限が基本的にありませんので、適切な理事の報酬は幾らかというのはなかなか決定しづらい面があるのかなと思いますが、その辺は評議員会の中立性ということも含めて、評議員会の機能をしっかりと確立をして、そこで牽制機能を高めていくというのが第一歩ではないかなと思っているところであります。

 以上です。

○田中部会長 質問が含まれていたので、お答えいただけますか。

○岩井福祉基盤課長 ただいまの御質問の措置施設ですけれども、今、詳細を持ち合わせていませんので、また個別に御報告いたしますが、措置施設で積算というものがありますが、その中身の使徒について一定の制限がありまして、あと、勤務実態等で決めるということがあろうと思いますので、基本的には大きく違わないのではないかと考えております。そういう趣旨かと思いますので、とりあえずそういうふうにお答えさせていただきます。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 評議員会というものが、この報酬に関して牽制機関といいますか、自分たちで決めるのではない、評議員会で決めて、これが牽制機関であると。この位置づけが今回非常に大きいということがポイントでありますし、ぜひそうしていただきたいと思う一方で、今、公益法人改革が進みまして、これをどう見るかにもよるのですが、評議員会というのは、確かに最初の時点では、評議員をどう選ぶか、選任の委員会がございまして、かなり牽制ということに気を払われたように思うのですけれども、ただ、現実問題として、今後公益法人で評議員会だけで牽制が成り立っていくのか、完全に第三者的なチェックができているのかというと、必ずしもそうでないような評議員会、私自身が評議員をやっているところなどはそうでございますが、お手盛りではなくなっているにせよ、やはり仲間意識といいますか、お互い法人を守る意識というものの中で、頑張ってほしいなというような気持ちが生まれて、この法人が真に社会のためにという意識というものが、特に社会福祉法人のように狭い地域の中でサービスを提供しておられて、評議員を選ばれることを考えると、評議員会が牽制機関として働くことを重要視しつつも、これだけでチェックできるというような。公益法人でありますと、広域的にいろんな評議員の方を選任等々あり得ると思うのですが、社会福祉法人になりますと、地域的に限られた評議員ということにならざるを得ないことを考えると、話は戻るのですけれども、行政庁がどのようにチェックできるかという点は非常に重要だと思います。

 そのときに、先ほど黒岩委員がおっしゃっておられたように、現時点で行政庁としても困っている点があると。ここに的確に応えられるような報酬の支給基準であるとか、あるいは法人自身のポリシーみたいなものをその目線でつくることが重要なのではないかという意味の提案をさせていただきましたので、ぜひその点をお考えいただければと思います。

○田中部会長 鎌倉委員、どうぞ。

○鎌倉委員 失礼します。この会は、社会福祉法人を前向きに捉え議論する場と理解しております。17ページの2つ目の○の不当に高額なものとならないようという表現は、社会福祉法人をマイナスに捉えていると思いますので、その部分を、社会通念上、適正なとか、社会的に適正なというような表現をされたらいいのではないかと思います。

○田中部会長 福間委員、お願いします。

○福間委員 これまでの議論はございますけれども、何かの目安で1つのハードルを設けるというよりは、今までの中にありますように、ある意味では徹底した情報公表、公開ということがここにも盛り込まれておりますし、結果的には、社会福祉法人の事業の収支がわかる、そして役員の報酬の総額もわかると。では、これが事業の何%を占めているかもチェックできるわけですね。国民の目から見て全部チェックしていくことで、おかしいのではないかというのをまた議論していただくことが国民の審判だと思うのですね。

 それに耐え得る。説明責任というのはまさにそういうことだと思いますから、そういう批判なら批判をきちっと受けとめていくという中でディスクローズをしていくのが基本ではないかなと私は思います。

○田中部会長 松山委員、どうぞ。

○松山委員 今の御指摘の続きですけれども、総額もしくは個人単位の金額を公表したときに誰が一番反応するかというと、職員だと思うのです。その法人の事業規模、事業内容、業績等から見て、職員が自分の給与がこれぐらいで、役員の方はそれよりもこんなに大きな金額をもらっているということになると、多分組織が維持できなくなる。その牽制効果というのが非常に大きいと思います。

 それから、これは1年ぐらい前にある施設の施設長の方から言われたのですけれども、自分のところの経営者が職員の給与を上げようと思って計画していた。行かなければいいのに、所轄庁である市に行って給与アップ案を説明した。そうしたら、地方公務員の給与が引き下げられているのに、あなた方が上がるのはけしからぬと言われて、上げることができなかったというのです。少なくとも今回の議論が社会福祉法人の職員の給与の抑制にならないようにしないといけない。通念上、社福だから給与が低くてもいいというようなことが言われることがあるのですが、そういうことにならないようにしないといけない、と感じています。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 松山委員あるいは福間委員が言われたように、公表していくことによってチェックが働くというのもすごい大きなポイントだと思います。そのときに職員であるとか地域の方々が牽制をかけるといったときに、これは法定受託事務で行われることでもございますし、おかしいと思った人が訴える先の受け皿みたいなものもきちんと準備していただきたいなという気がいたします。

 と申しますのは、中にはいわれのないおかしいという気持ちもございますので、いや、それはそんなことないのですよという御説明もいただきたいと思います。ですから、各所轄庁である市とか都道府県にも窓口を置きつつ、国のほうにも。これは本当に法定受託事務でございますから、国が直接受ける義務と言っていいのかわからないですけれども、本来あり得べきことだと思いますので、そういう受け皿をつくっていただくということ。

 今回は本当に前向きに捉える会なのでございますが、現に社会福祉法人に疑いを持たれてもしようがないような事例があることは間違いありませんで、これをいかに減らしていくか、起こさないようにするかということもこの委員会のポイントだと思っているのですが、その点で利益供与に関して言いますと、直接売り買いするということにとどまらず、さまざまな手法を用いて悪質な法人が悪質なことをされております。

 具体的な例を申し上げますと、職員給料から天引きして家族法人のものを買わせるとか、地域の何かの行事に参加させる、はっぴを買うのを全部家族法人から買わせるといったような事例もございます。これは何をもって法令上規定するかというのは大変難しいことでございまして、そもそも労働法規上、天引きで何か強制に買わせるということはあってはならないということなので、労働法規の問題になってしまう話でございまして、ややこしいことなのでございますが、ただ、これは実際に指導監査される都道府県や市のレベルで言えば、こんなことはやってはいかぬということは強くやり得ることだと思います。

 ですから、国の法規上縛れることと、それから都道府県、市レベルできちんと見ていく、言っていけることというのがちょっと違うのではないかなという気もいたしますし、そのあたりを整理することを含め、住民であるとか従業員であるといった方々の声も集めると。

 私が今、申し上げました事例も従業員から聞いたことでございまして、こんなことがあるのですよと言われて、へえ、そんなことがあるのですかと私自身もびっくりしたのですけれども、びっくりしたような案件が出てきたときに、そういった法人がそういったことができないように、適切な法人に変わっていただけるような牽制というものが、これは国の法令では縛りにくいものもたくさんありますので、都道府県、市がこれに協力していただけると。あるいは住民とか、協議会であるとか、評議員であるとか、そういったものが協力して、理事会も協力して、よりよい法人になっていけるような仕組みが全体としてでき上がればいいかなと思っております。

 どのあたりまでが国の法令でやれることで、そこでできない部分をどのように都道府県、市にお任せするのか、あるいは第三者、住民あるいは従業員といった方々がどんな役割を担えるのか、改革によってこう変わるのだという前向きに捉える絵、グランドデザイン的なものをお示しいただくなり、これはひょっとしたら経営協等々の各団体がおやりいただくことなのかもしれませんが、単に法令ができて規制やハードルが厳しくなるということではなくて、社会福祉法人が社会の中で信頼されていって、本来の趣旨である活動をやっていけるための改革なのであると。そのためには法令だけではだめで、法人自身の努力であるとか、住民の方であるとか、従業員の方の協力抜きにはできないのだという、理念であるとか夢のあるようなデザインがないと、この改革はつらいことになるのではないかなと思います。

 ちょっと感想めいたことで申しわけなかったのですけれども、よろしくお願いいたします。

○田中部会長 ありがとうございます。

 私も一言申し上げると、今、藤井委員が言われたように、私たちは何を議論しているのか。この間、驚いた質問がありまして、福祉部会では規制強化を話し合っているのですかと言われて、全く逆ですと私は回答しました。つまり、もし本当に規制が厳しければ、経営者は要らないのですね。管理者だけいれば世の中は動く。そうではなくて、法人ごとの自主的な経営のための議論をしている、前向きな話をしているとお答えしました。

 自主的に前向きに経営して世の中に信頼されるためには、ガバナンスが公正でなくてはなりません。それから説明責任を果たさなくてはいけません。説明責任は、住民に対してもそうですし、税・社会保険料を払っている方々に対しての説明責任もあります。そのガバナンスや説明責任を果たすことによって、自分たちがむしろ自主的な経営ができるように、世の中も合意してくれるための会だ、前向きなのだと説明しておきました。

 今、藤井委員が言われたグランドデザインとか、前向きだという表を国がつくる方向は何となく変なので、それぞれの関係団体の方々が、これからの社会福祉法人は自主性を持つ、しかし、きちんとしたディシプリンのもとにあると自らつくるべきでしょうね。

 部会長より一委員として、最近の議論についてのコメントでございます。

 関川委員、どうぞ。

○関川委員 部会長の前向きなご発言の後に、立場の異なるお話しさせていただくのは非常に心苦しいのですが、発言をお許しください。私も部会では、自主的な経営のために法人組織はどうあるべきか、法人のガバナンスの問題として議論してきたものと思います。しかし、あわせて、一部法人の不祥事が社会福祉法人制度の根幹を揺るがす事態になっているということは重く受けとめる必要があると考えております。

 特に今回の関係者への特別な利益供与の問題は、不適正な会計処理、役員による私的流用とともに、行政関与の在り方においても、非常に重要な検討課題であると考えております。情報の開示による牽制も重要ですが、不適切事例に対する指導監督についても検討しておくことが、健全で公正な法人経営の確立にとって大切であると思います。

 関係者への特別な利益の供与に該当するような事例、不当に高額の報酬を受け取る事例などは、社会福祉法人の非営利性からみて、許されざることです。こうした社会福祉法人に対する社会的信頼失墜行為については、厚生労働省のほうで幾つか例示していただいて、それについては措置命令を待たず、直ちに関係した役員の解任を勧告するとか、当該役員は、その後5年は社会福祉法人の役員に就任できないなど、そのような役員の退出のルールもあわせて検討する必要があるのではないでしょうか。こうしたことが、社会福祉法人による不祥事が繰り返されない、そして中長期的に見れば社会福祉法人の信頼が回復することになるのではないかというふうに考えております。

 ガバナンス、コンプライアンスから見て、不的確な経営者に対して毅然とした態度で退出を命ずることができないと、当該法人組織のみならず、社会福祉業界全体のモラルが低いように国民から見られてしまう。これを構造的に解決する議論が必要だと考えております。

 社会福祉法人に対する財政規律違反のなかでも、社会福祉法人に対する社会的信頼を失墜させるような財務規律違反に関しては、当該役員に対し経営責任をとってもらうような退出のルールづくりをぜひ検討していただきたいと思います。

 これとあわせて1つ教えていただきたいのですが、医療法人などでは、役員ないしその親族が、株式会社、メディカルサービス法人などを設立して、医療法人と取引している例がございますけれども、社会福祉法人でも特別な利益供与に該当しない限り、公表さえすれば、役員が関連する特定の会社と継続的な取引をすることは可能なのでしょうか。これについて、事務局より教えていただきたいと思います。

○田中部会長 回答をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 現行のお話についての御質問なのだと思いますが、現在の取引に関する規制は、きょう御説明した資料の範囲でございます。中でも御議論がありましたように、あらゆる法人に対して原則競争入札を課しておりますので、もちろん少額とか緊急随契ということはありますが、そういう範囲でやっていただくということがあります。そういう中で適正な取引ができるようにしているということです。

○田中部会長 平川参考人、お願いします。

○平川参考人 ありがとうございます。

 先ほど言い忘れたことが1点あります。先ほど評議員会の中立性であるとか役割が重要だということを申し上げました。それと同時に、牽制機能をどうやってさらに高めていくかということでありますけれども、不当に高額なものに対する方針の牽制機能であります。

 先ほどから言っています自治体による指導監査の関係で、どのような監査が可能なのかということから言うと、監査したときに、これは自治体の主観的な話になってしまいますが、不当に高額と思われる場合は、評議員会の議事録であるとか、なぜこのような金額であるか、説明責任を求めることができるとか、不当に高額なものに対しての監査基準をもうちょっと明確にしていかないと、なかなか対応がしづらいと思っています。

 先ほどから言っておりますように、理事の報酬に対する基準を決めるというのはなかなか難しいという率直な状況がありますが、一方では評議員会の牽制機能、一方では自治体における監査の牽制機能ということも重要でありますので、監査の基準というのをどこまで明確にできるかというのも課題であると思っています。

 また、松山委員、藤井委員から職員の内部牽制機能ということを言われました。それは労働組合としても頑張らないとだとも思っているところであります。

 以上です。

○田中部会長 武居委員、どうぞ。

○武居委員 少し論点が変わるかもしれませんが、先ほど田中部会長がおっしゃった、この部会は規制を厳しくしようとしているのではないかというお話があるということについては、この部会の中ではもちろんないわけですが、外から介護報酬に由来する内部留保というのは国庫に返納させるべきであるとか、内部留保が充当できる範囲を公費を原資とした事業に限定すべきというような意見が聞こえてくるわけでございます。

 もちろん我が国の中の社会保障、財政再建ということは必要だと思うのですが、私どもが今までここで論議していることというのは、社会福祉を国民のためにどう充実、発展させていくかということを考えることがここの仕事であり、そのためにどうするかという前向きの議論しているはずだろうと思います。したがって、そのことを十分確認していただく必要があるのではないかと思います。

 もちろん、ここでの議論の中で、社会福祉法人が今後社会福祉を充実、発展させるためにどうあるべきかという議論、今まで前向きな議論をたくさんしていただいていると思いますが、1つはガバナンスの確立の話、もう一つは社会福祉法人がやる事業の公益性ということをどう考えるのかということであったと思います。

 そういう議論の中から地域公益活動の話が出てきていると思いますが、外から聞こえてくるような話から考えますと、我々が考えようとしている地域公益活動に対して、十分な理解がされていないのではないかという感じがするところがたくさんございます。そのことをもう一度確認をしながら、我々が事業の公益性ということについて、今後どういうふうな考えをしていくのかということをまだまだ皆さんに議論していただく必要があるのではないか、と思います。

 そのことについて、1つ例を取り上げてお話をさせていただきたいと思うのですが、社会福祉法人が制度に決められている内容を行っているだけでは公益法人としての役割を十分に果たしていないのではないかという批判が今まであったと思います。

 したがって、制度の枠の中にとどまらず、外の新しいニーズにも対応した動きがこれからの社会福祉法人の新しい公益事業だと言えるのではないかという議論を今までしてきているだろうと思います。そして、そのことが地域公益活動という言葉であらわされている内容ではないかなと思うのです。

 今、ポピュラーになっている特別養護老人ホームというシステムも、それまで養護老人ホームというシステムで、経済的な理由による要援護高齢者を対象にした事業であったものを、身体的な問題を抱えた要援護高齢者のケアをどうするかというところで、特別養護老人ホームというシステムができたわけです。制度ができた経緯の中からすると、制度が先にできて事業を始めたわけではなくて、その前に先駆的な事業を社会福祉法人が取り組み、その取り組みが始められたのは昭和36年だと認識しておりますが、これをもとに昭和38年の老人福祉法の中に特別養護老人ホームというシステムができました。

 こういう経緯を見ても、社会福祉法人がニーズを十分考え、その問題にどう取り組もうとするかという先駆的な動きの結果、時代の先駆けがあり、そのことが実際に国民の福祉の充実につながってきたのだろうと思うのです。したがって、そういう視点で地域公益活動というのを見ていただきたい。こんなふうに思うわけであります。

 そうしたところについて、皆さんの御意見もお聞きしてみたいと思います。

 以上です。

○田中部会長 藤井委員、どうぞ。

○藤井委員 武居委員のおっしゃるとおりだと思います。

 ただ、1点申し上げておきたいのが、この中でやっていることが規制を強化しているのではないかと言われるのと同様に、お金を出せばいいのですかというようなことを聞くことがございます。つまり、社会福祉法人の側にも公益事業をやっていただくという意義が伝わっていない現状がございますので、そういったことは、これも先ほど部会長がおっしゃったように、国がやることではなくて、恐らく武居委員のおられる経営協等々で地域公益事業はどういった意義があることなのかということを言っていっていただきたいなということを思います。

 その中で、今、武居委員がイノベーションのことをおっしゃっていただきました。特養ができたいきさつのことをおっしゃっていただいたのですが、特養ができたときは、本当に一部の社会福祉法人が先駆的につくっていかれたというものを、国が法律にしていったということがございますが、当時法律をつくった方にお聞きしますと、業界内では大反対に遭ったという話がございます。過去の社福がやってこられたイノベーションを見ても、一部の方が非常に積極的に新しいニーズに応えていった。

 普通のサービス、ビジネスと違いますのは、新しいニーズに応えたからといって、それが収入につながらない。制度化されておりませんので。その分はやせ我慢をしてでもやっていこうという非常にすばらしい社会福祉法人があったことは間違いないのですが、そういったイノベーションというものが社福のミッションであるという理解がいまだにそう強くはないと思います。

 したがいまして、社会福祉法人こそがイノベーションをやっていくのだと。介護保険で言いますと、定期巡回・随時訪問型サービスは、社福が余り引っ張ってきておりません。過去の高齢者介護というのは、社福が引っ張ってきたものが多いのですが、どうも社福はイノベーションということからも少し後退しつつあるという危機感を持っておりますので、まさに1点、イノベーションということを社福がやっていかなければいけないのではないか。イノベーションは、見た目から見れば地域貢献事業の中に当然入ってみえるということ。イノベーションという話。

 もう一点は、日本型雇用というのが崩れる中で、日本型福祉というものが日本型雇用によってたっていたわけでございますから、これまで考えられなかったようないわゆる谷間のニーズというものが出てきている。これはすぐ制度化されたり、お金が出たりしない部分を社会福祉法人が応えていかないと、日本型福祉ももたない、日本型雇用をやめていこうとする企業の谷間を埋めることもできない、それを社会福祉法人が持っているのであるということも大きいと思うのです。

 この2点にとどまるかどうかわかりませんけれども、社会福祉法人は、措置費時代のように限られたことをやって、1円もお金を残さないほうがいいとおっしゃっている方々にも御理解いただけるように、地域貢献事業とは一体何であるかということは明確にしていかなければいけないですし、この場で議論もしたいとは思うのですけれども、国の制度を決める話とはちょっと違いますので、国の制度づくりは、もちろんその理念に向かってつくっていっていただいていると思いますので、どこでやるのかわからないですが、武居委員がおっしゃるとおり、しっかり言っていく、御理解いただくと。特に社会福祉法人の皆さん方に強く意識していただくということが必要かと思います。

 以上です。

○田中部会長 宮本先生、どうそ。

○宮本部会長代理 今の藤井委員の御発言に上乗せするような話でありますけれども、社福がやっているさまざまな事業というのは、やはり制度化された福祉サービス事業だという点で、時間がたつに従って、それは規制の制度であり、体制になっていくので、ある意味では批判を受けやすくなる。今、ここでの議論というのもその流れの中にあるという点もあるかと思います。

 そういう意味では、制度化された業界は、ある時期になったらイノベーションを起こすという心構えを常に持っていかないと、支持を失っていくということです。特に今の社会事情からすると、地域の新しいニーズというのが非常に多くなってきているので、それを誰が先駆的に取り上げて進めるのかといったときに、社福が先陣を切ってやるという努力とか自覚を持たないと、もっと新しい勢力がそれをやるという状況になっていくわけで、そうなればなるほど、社福は、何か問題が起こったときに、やはりそうかという形で支持をどんどん失っていくということがあるように思います。

 そういう意味では、この会議の趣旨というのは、規制を強化するということではなく、社福の持つ革新性というものを再度確認する中での作業だということを強調できるような位置づけが必要ではないかという感じがいたします。

○田中部会長 大変心強い発言をありがとうございました。

 後段のここまでの議論で何かつけ加えることはありますか。なければなしでも構いません。

 大体時間になってまいりましたが、もう少し。では、石黒参考人。

○石黒参考人 済みません、時間のないところで。

 今、地域公益活動みたいなお話が出てきたので、前の議論を見せていただいて、行政サイドから懸念に思っていることを申し上げます。

 例えば社福法人に限らず、サービスがないときからやっていたことが後から制度化されている。これは福祉の中の今までの流れですね。

 地域公益活動の定義が、前の議論を見ると、公的制度による給付の対象云々の話があって、結局、社福法人が今、やっている周辺事業というのはみんな関連しているのですね。市の単独事業であったり、県の単独事業であったり、地域のニーズに応じてここが必要だから補助しますという話で、一緒につくっているわけですよ。神奈川県で言えば、グループホームとか作業所というのは国に先駆けてやっていた。ただでやっていただくのは無理だから、少し補助しますという話ですね。

 ところが、それが全国化、スタンダード化されると水準が少し落ちてしまって、我々が補助できる根拠もなくなってしまうということがあって、今、自治体の現場で何が起こっているかというと、内部留保の話がこれだけ出てきているので、新しい事業を社福さんなり事業者さん、あるいは地域の方と考えて、財政当局と調整しても、内部留保があるではないか、それでやってもらえばいいではないか、こういう議論になってしまっている。これが非常に危惧される。

 要は、定義が定まっていない地域公益活動というのにやみくもに投資する、再投下するみたいな話だけではなくて、そこの定義をしっかりしていただければいいのでしょうけれども、本来業務をしっかりやってよという気持ちがすごくあります。

 例えば社福法人さんは、地域で皆さんが安心して生活できるためのバックアップ施設として非常に重要なのですよ。24時間365日動いているところが多いので、そういうことをやってほしいのですね。本来事業に取り組んでほしい。例えば余裕財産があれば、そこをしっかりやってくださいということを申し上げたい。それが我々の現場の意見です。

 例えば24時間、ショートだとか、家族も含めて、困難ケース、ほかのところで受けられないものを社福法人さんが受けてくださいよと。こういうのを積極的にやっていただくということが、社福法人が信頼を取り戻すきっかけになろうかと思っております。

 済みません、感想めいたことで。

○田中部会長 福間委員、どうぞ。

○福間委員 先ほどの終わりのほうで措置命令であるとか罰則の話が出ましたが、私はこれまでの議論をずっと受けとめている中で、大事なことは、今までは通知とかで書かれていて、なかなかわからなかったものが法律上に明記される。それはいいことだと思っています。

 同時に、そのことを違反すれば、これは当然所轄庁が全部関与していますから、今までもそうですけれども、監査指導に基づいて、不適切な場合は改善の指導がまずされ、それができていない場合は命令され、その命令の中で理事長の解任であったり、いろんなこともされますし、一番悪ければ解散という権限をお持ちなので、それ自体は全然動いていないわけですから、これまでの議論もそういうことを覚悟の上で、ここはどうなのかと。そういうことを申し上げているのでありまして、規制そのもの、今の状態の中での行政の関与、それはそれでいいというふうに思っております。

○田中部会長 藤野委員、手を挙げておられましたか。

○藤野委員 時間がないのであれですが、措置施設で社会的養護の、やればやるほど赤字が出るような仕事をずっとやってきている者にとりまして、きょうの議論は、何を言っていいのかというふうに思って聞いておりました。

 ただ、先ほどあったように、今、児童の分野、子供たちは本当に大変な状況にあります。そういう中で、社会福祉法人の先駆性、献身性、そういうものが非常に大事な時期だと僕は思っております。そういう意味で、きょうの議論、あるいはこの間、社会福祉法人のあり方について、透明性を確保し、国民にわかっていただくような形にしていただきたいと思います。

 そういう意味で、先ほどから感想めいた意見しか言いませんけれども、よろしくお願いします。

○田中部会長 小林委員、どうぞ。

○小林委員 私も感想的なことになってしまうのですが、役員報酬の問題に関しては、17ページで示されているように、例えば適正なものにきちっと改めていくというようなことはぜひやっていただきたいと思います。

 今までいろんな議論が行われておりますが、一番心配なのは、国民目線から見ても、あるいはこれから介護等を志す人たちから見ても、社会福祉法人の新しい魅力というものがどういうふうにつくられていくのかということを、先ほどのイノベーションの議論、あるいは新しい地域貢献の仕組みづくり、そういうものに対する取り組みの話もありましたが、そういうことを含めて、もっと積極的な魅力づくりというものをこの後の議論の中でもぜひしていただきたいなと思っているところでございます。

 どうもありがとうございました。

○田中部会長 松山委員、どうぞ。

○松山委員 財務データを見ると、社会福祉法人としてのミッションの取り組み方の熱意は、施設種類ごとに違いがあると同時に、同じ施設種類でも法人ごとに随分違う、ということが分かります。本当にぎりぎりまでお金を使い切って頑張っておられる法人がある一方で、ちょっと異常と思われるぐらいキャッシュがたまっている法人があります。したがって、キャッシュを貯めこんでいる法人から資金不足の法人に財源移管ができないものかと考えてしまいます。この部会でその仕組みを議論するというのは適切ではないと思うのですが、これは以前の検討会でも申し上げたと思うのですけれども、例えば児童福祉の施設にいた児童の方々が18歳になったら施設を出ていかないといけない。しかし、その子供たちが高等教育を受ける、大学に行きたいとか専門学校に行きたいというときに、何で学費を社会福祉法人全体で拠出することをしないのか。現状は、施設を卒業するときに発生する教育の格差の連鎖を放置してしまっています。

 きょうの新聞だったと思いますが、地方創生事業の一つとして、地方に戻る意思のある人たちに奨学金を出すという記事がありました。そのような政策が採用されるのであれば、その前に、児童福祉施設を卒業する人たちが高等教育を受けるための学費財源を社会福祉法人全体で拠出することを検討すべきではないか。社福の財務諸表を見れば、そこに財源があるのです。これは愚痴に近い意見ですが、よろしくお願いします。

○田中部会長 まだあるかもしれませんが、予定の時間になりました。よろしいですか。

 では、本日の議論はここまでとさせていただきます。

 次回の開催について、事務局から連絡をお願いします。

○岩井福祉基盤課長 次回の開催については、追って連絡させていただきます。よろしくお願いいたします。

○田中部会長 御議論ありがとうございました。これにて本日の議論を終了いたします。御多忙のところ、お集まりいただきまして、どうもありがとうございました。


(了)

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