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2015年2月19日 第5回 国際的なActive Aging(活動的な高齢化)における日本の貢献に関する検討会 議事録

○日時

平成27年2月19日(木) 10:00~12:00


○場所

厚生労働省17階専用第20会議室
東京都千代田区霞が関1丁目2番2号


○議題

(1)Active Agingに向けた日本の貢献に関する現状の整理
(2)Active Agingに関する国際協力の今後の進め方の検討
(3)その他

○議事

○事務局 ( 杉田専門官 )  おはようございます。定刻になりましたので、ただいまより「第 5 回国際的な Active Aging における日本の貢献に関する検討会」を開催いたします。本日はお忙しい中をお集まりいただき誠にありがとうございます。開会に当たり、厚生労働省国際課課長の井内雅明より御挨拶申し上げます。

○井内国際課課長 皆様、おはようございます。厚生労働省国際課課長の井内です。本日、お集まりいただきました先生方におかれましては、御多用にもかかわらず本検討会に御出席賜りまして誠にありがとうございます。

 昨年度、この検討会において、 ASEAN 諸国における高齢化への対応について、日本の経験・知見を活用した国際協力の在り方について御検討いただきました。また、更に年度末には、報告書の取りまとめに御尽力いただきましたことをこの場をお借りして改めて御礼申し上げます。ありがとうございました。

 今日のこの検討会は約 1 年ぶりで 5 回目の開催ということになります。本日は報告書に基づき、私どもで実施してまいりました ASEAN 地域の Active Aging に関する国際協力の進捗状況、あるいは成果を整理して共有させていただいた上で、今後の進め方についてどのように、また何がこれからできるのかといったようなことについて忌憚のない御意見をいただければと考えております。

 私事ですが、以前、認知症・虐待防止対策推進室長も担当させていただいたことがありました。数年前ではありましたが、あの当時、認知症を知り地域を作っていくような 10 か年という構想で進めておりました。当時は認知症のサポーターが 100 万人を達成しましたということで、いろいろイベントをしておりました。それが今や 500 万人を超えるような状況にもなっております。

 また、昨年来、世界的な動向も広がってきて認知症サミットというものが開かれたり、あるいはその後継のイベントが 4 か国で開催され、来月、 3 月中旬ですが、 WHO で認知症の大きな会議を開くということです。位置付けとしては先進国、 G7 G8 で進めてきたようなことをこれからは WHO 加盟国のそれ以外の国にもいろいろと共有していこうという動きでもあります。

 こういった動きというのはもうグローバルになってきていて、やはり私どもが認知症対策で進めてきたようなこと、あるいは Active Aging 、高齢化を一番最初に私どもは経験をして苦労もしているところもあります。そういったことをこれから ASEAN 諸国に対してどんどん普及させていく。私どもが進んでいるところ、先に経験したから、苦労しているから知っているところもありますので、そういったところをこれからも ASEAN 諸国と共有していきたいと考えております。

 これから超高齢化社会、高齢化社会になっていく国もそれぞれの段階、いろいろな状況があるかと思います。高齢化が進んでいく国も増えてまいりますので、学び合うことができるようなテーマでこういった事業を進めていきたいと考えております。本日は忌憚のない御意見をどうぞよろしくお願いいたします。

○杉田専門官  1 年ぶりの検討会になり、少しメンバーの入れ替えがありましたので紹介いたします。事務局ですが、国際課は井内国際課長、お隣が大鶴統括調整官、日下国際協力室長、オブザーバーは労健局総務課の矢田貝企画官です。構成員は国際協力機構人間開発部から戸田部長に参加いただいています。

 出席状況ですが、本日は江口構成員と堀田構成員が欠席となっています。

 次に、お手元の資料の確認をお願いします。一番上に議事次第があり、その下に座席表、資料 1 が開催要綱になっています。資料 2 28 ページまでの資料です。資料 3 は表裏で最後が 2 ページとなっています。それから大泉構成員からの資料でトヨタ財団からの広報誌「 JOINT 」、戸田構成員から黄緑色の英文の冊子 2 冊と A41 枚で世界地図が描かれた資料があります。参考資料として、昨年 3 月にまとめていただきました検討会報告書、黄色いほうが日本語と英語の物、青のほうが英語の冊子になっております。以上です。資料に不足がある方は事務局までお知らせください。

 それでは、以降の進行は座長にお願いいたします。

○尾身座長 おはようございます。今、井内課長がおっしゃったように今回は 1 年ぶりの検討会です。余り時間がありませんが、最初に Active Aging に向けた日本の貢献に関して今までどのようなことをやってきたか、現状も含めてお話をいただきます。それが終わったら今後どうするか、両方ともフリー・ディスカッションということで是非活発な議論をお願いいたします。まず事務局より、 1 番目の資料の説明をお願いいたします。

○日下国際協力室長 資料 2 を御覧ください。 1 ページ目の「 Active Aging に向けた日本の貢献」というスライドでございます。これは昨年 2 月におまとめいただいた報告書のリバイス版です。これまでに実施、あるいは実施中のものについては下線を引いております。更に、昨年 3 月以降に着手をしたものについては赤で追加をしております。

 例えば、タイにおいては財政政策研究所「高齢化の課題の下での財政政策セミナー」を昨年 7 月に実施しております。マレーシアについては JICA 個別研修高齢化に対する健康管理を 2015 年に実施予定です。インドネシアにおいては介護人材制度ワークショップを昨年 9 月に実施しております。ベトナムにおいては JICA 社会保障分野セミナーを昨年 4 月、ベトナム保健省タイ LTOP サイトの視察を昨年 6 月に実施しております。フィリピンにおいては災害時の高齢者支援、福祉的対応に関する協力を実施。シンガポールとブルネイに関しては介護サービス、福祉用具・機器、介護人材育成を含めた高齢化対策に関する政策対話を実施しております。詳細については後ほど、説明したいと思います。

 続いて協力の枠組みですが、 ASEAN 日本 Active Aging に関する検討会合や ASEAN+3 保健大臣会合、また ASEAN ・日本社会保障のハイレベル会合、 ASEAN+3 社会福祉大臣会合、 JICA 課題別研修等々を実施しております。

 ここまでお話したこれまでの活動を日本で実施したものと ASEAN 諸国で実施したものに分けてそれを時系列に並べたものが「 Active Aging に関する ASEAN 諸国との協力」になります。

 次に詳細に移りたいと思います。最初に、タイ財務省財政政策研究セミナーについて簡単に御説明いたします。昨年 7 22 日から 23 日にかけ、タイのバンコクで「高齢化の課題の下での保健政策」をテーマに、タイ財務省とタイ保健省が協力して企画・開催をした事業で、画期的なセミナーでした。このセミナーでは、タイ政府が高齢化について特に持続可能性に極めて関心が高いということがよく分かりました。

 次に、インドネシア介護人材制度ワークショップについて御説明したいと思います。これは昨年 9 5 日に、インドネシア保健省が介護人材育成制度構築に関するワークショップを開催したものです。このワークショップでは、インドネシア政府からの要請に基づき専門家を派遣しました。また、 JICA の調査団として厚生労働省から専門家を派遣し、日本の介護人材に係る政策及び、教育機関におけるカリキュラム開発の事例の情報共有、インドネシアにおける介護人材に係る調査の中間報告、意見交換等を実施いたしました。

 引き続き、 JICA ベトナム国社会保障分野 ( 高齢化、 UHC) セミナーについて御説明します。このセミナーは昨年 4 21 日にベトナムのハノイで実施したもので、 JICA とベトナム保健省の共催です。高齢化対策と医療保険分野の今後の日本、ベトナムの協力内容を明確にするということを目的に、タイ保健省からは Tuan 副大臣の御参画をいただきました。この会合では同分野におけるタイへの支援も実施した経験から、副大臣からは JICA を通じたベトナムへの支援の実施を期待するとのコメントをいただきました。

 こうした副大臣からの要望もあり、ベトナム保健省、タイの LTOP サイトの視察を JICA の協力を得て実施しました。

 これについては昨年 6 13 日にチェンライで視察を行ったものです。ベトナムからは保健省のフオン国際協力局長の御参画を得ております。

 次に、災害時の高齢者支援、福祉的対応に関する協力に関して御説明したいと思います。これは日本眼科医会等の支援をいただき、昨年 2 19 日から 28 日までの 10 日間行った事業です。

Active Aging 検討会の報告書においては、フィリピンについては高齢化の速度が ASEAN 諸国の中で最も遅く、高齢化対応は当面の優先課題ではないとされておりますが、日本と同様、自然災害の多い国であることから、災害時の高齢者支援や福祉的対応などについて日本の経験を共有する形での協力の可能性があるとまとめられています。

 こうした中で、 2013 11 月に発生したフィリピンのヨランダ台風の被害に対し、日本眼科医会がビジョンバンプロジェクトを実施いたしました。ビジョンバンは昨年、 10 日間で 1,992 名の診察を実施しておりますが、その中で一番多い疾患が屈折と調節異常、白内障、ドライアイということでした。その時の経験から、今後は白内障の早期治療の対応が必要ではないかということとなり、ビジョンバンでの活動後も眼科医会の主事でフィリピン保健省や眼科学会とも協力を図りながら継続した支援事業を計画していると聞いております。

 引き続き介護サービス、福祉用具・機器、介護人材育成等を含めた高齢化対策に関する政策対話について御説明いたします。報告書では、高所得国では中所得者層以上の介護需要の増大が見込まれることから、日本で開発してきた介護サービスや福祉用具・機器、介護人材育成について情報を共有するとともに、その活用を働きかけることが考えられるとまとめられたところです。厚生労働省では平成 26 年度の老健増進事業で介護サービス事業者等の海外進出の促進に関する調査研究事業を行っております。この事業の中でシンガポールやマレーシアを対象にヒアリングすることをうたっており、この事業の中でシンガポールやマレーシアと政策対話を行ったところです。その結果、シンガポールについては高齢化対策に対する関心が高いということ、サービス等の利用へのコスト意識が高いこと、またその一方で使用料が高く、 Nursing Home にも確実な需要が認められることが判明いたしました。

 マレーシアについては経済発展レベルが比較的高く、市場としての可能性が高い、一方で、この事業を所管している省庁も複数にまたがり、省庁間での所掌が一部不明な点がある、今後、事業を展開する上では難しい点もあるということが判明しました。

 次に本年度の厚生労働省老人健康増進等事業に移ります。日本式介護・高齢者サービスの海外展開を考えるというタイトルで、シンポジウムを今月の 27 日に開催いたします。 TKP 神田ビジネスセンターで開催を予定しておりますので、今回御紹介させていただきたいと思います。

 引き続き、これまで開催をした国際会議等について御説明させていただきたいと思います。最初に ASEAN 日本アクティブ・エイジング地域会合の結果概要について御説明します。この会合は昨年 6 20 日、トヨタ財団と協同して厚生労働省が海外で Active Aging に関する会合を初めて開催したものです。インドネシアのジャカルタにおいて開催しました。テーマは Active Aging に向けた ASEAN 地域における挑戦ということで、保健・福祉セクターの協力に焦点を絞りました。

 このプログラムでは Active Aging に向けた保健分野からの協力ということで、本検討委員会の委員である曽根先生からもパネル・ディスカッションに参加いただきました。

 この ASEAN 日本アクティブ・エイジング地域会合においては、参加者による共同声明という形で提言をまとめさせていただきました。大きいパラグラフの 2 番目、 ASEAN 諸国と日本の間でという所ですが、定期的な地域会合を開催し、 Active Aging に関する医療・保健及び福祉セクターの協力に関するベスト・プラクティスを活用する、持続可能な協力ネットワーク手段を検討し、このようなネットワークの樹立に向けた日本の支援を期待するという文言を提言に入れました。

 次に、第 6 ASEAN+3 保健大臣会合の概要について御説明いたします。昨年 9 15 日から 21 日まで、ベトナムのハノイにおいて開催されました。当省からは永岡副大臣以下 8 名が参加いたしました。

 この会合においては共同声明が採択されております。先ほどの ASEAN 日本 Active Aging 地域会合で提言をした内容を、この大臣会合でも ASEAN+3 の各国が先ほど申し上げた日 ASEAN の地域会合をエンドースする形で持続可能な共同ネットワークを今後構築していきましょうという共同宣言が採択されております。

 次に、第 12 ASEAN ・日本社会保障のハイレベル会合の結果概要について御説明します。この会合は 10 21 日から 23 日の 3 日間、日本で開催しました。前回は Active Aging をテーマとしましたが、今回は一歩進めて「高齢化する社会に対応するしなやかなコミュニティーを育む」といったテーマで開催しました。この会合には、本検討会の構成員である鈴木先生、林先生が御参画いただいております。

 プログラムは 3 日にわたりましたが、 3 日間のうちの中日には施設訪問ということで、埼玉県の霞ヶ関南病院中央クリニックと真寿園を訪問いたしました。また、自治体視察ということで埼玉県川越市も訪問いたしました。

 最終日の 10 23 日には老健事業とのコラボレーションということで日本の介護サービス、人材育成、福祉用具・機器、高齢者の食 ( 食べやすい形状等 ) の紹介を行いました。

 この会合においても提言を採択しております。そのパラグラフの 11 12 では、 Active Aging を支援する様々な新技術の紹介や有効な活用事例を情報交換するために、学術研究機関や公的・民間セクター等の関係者を含めた、より緊密なパートナーシップを促進する、高齢化問題は ASEAN+3 における共通の課題であることを認識し、認め、政策対話・技術協力、人材育成などの協力を継続し、充実していくことを期待して交流を続けるとともに、継続的なネットワークを構築することを目指すとの参加者・参加各国の合意が得られました。

 次に、第 9 ASEAN+3 社会福祉高級事務レベル会合の結果概要について御報告いたします。この会合は昨年 11 27 日、ラオスのビエンチャンにて行われました。 2015 年以降の持続的な開発に資する社会福祉をテーマに、 ASEAN+3 の間で児童福祉、障害者福祉、高齢者福祉に関する共通課題や、技術協力等について意見交換を行いました。我が国からは高齢化に関するこれまでの様々な取組を報告し、 ASEAN の国からは継続的な日本の協力について要請がありました。

 次に、 JICA 課題別研修「アジア地域における高齢化への政策強化-高齢化社会の課題と対応-」について御説明したいと思います。この研修は本年度より開始した事業で、アジアにおける高齢者の人口増加に対応するための政策立案に関わる行政官の能力強化を目的に開催されました。タイ、スリランカ、インドネシア、フィリピン、カンボジア、ベトナムから合計 9 名の参画をいただいております。

 次に、 JICA 課題別研修「アジア地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のための社会保険制度強化」の結果概要について御説明したいと思います。この研修は本年度で 2 年目に当たり、全国民への医療保障 ( ユニバーサル・ヘルス・カバレッジ ) を提供するための制度の構築と運営に関わる行政官の能力を向上させることを目的に実施したもので、 10 10 日から 21 日の 2 週間にわたり実施したものです。この研修にはラオス、ミャンマー、スリランカ、バングラデシュ、カンボジア、インドネシア、フィリピン、タイから合計 11 名が参加しました。

 最後に、今後の Active Aging に関する ASEAN 諸国との協力ということで、今後の予定について御説明させていただきます。まず、今後予定されている会合について、まだ日程が確定していないものも含めて御説明させていただきます。まず ASEAN+3 の保健高級事務レベル会合がベトナムで開催されます。また、 ASEAN+3 社会福祉高級事務レベル会合がマレーシアで、第 13 ASEAN ・日本社会保障ハイレベル会合、第 2 ASEAN-Japan  Regional Conference on Active Aging がタイで、そして JICA の課題別研修として「アジア地域におけるユニバーサル・ヘルス・カバレッジ達成のための社会保険制度強化」と「アジア地域における高齢化への政策対応強化」が実施予定と聞いております。

 先ほど申し上げました第 2 回日・ ASEAN 地域会合、 Active Aging に関する地域会合については、 JAIF 基金を活用し、タイで 7 月に開催予定となっております。この地域会合の趣旨は、タイでの経験を活かした支援の提案ということで LTOP プロジェクトを紹介し、サイトビジットを行うことを企画しております。これ以外にも、最初に申し上げました ASEAN 地域における Active Aging に関する事業で、未実施であるラオス、カンボジア、ミャンマーについて実は今後事業が予定されております。タイでの経験を活かし、タイが実施する協力を日本が後方支援するという形で今後事業が展開されることが予定されています。

○尾身座長 どうもありがとうございました。随分活発に、この 1 年やっていただいたという感じがします。それで、今の事務局の報告と同時に、曽根先生、鈴木先生、林先生、大泉先生にコメントを頂ければと思いますが、まず曽根先生、何かありますか。

○曽根構成員 私はただいま御報告いただいた 11 ページの、 ASEAN の日本アクティブ・エイジング地域会合ということで、インドネシアのジャカルタでの会議に参加させていただきまして、主として疾病予防の観点、 NCD について、それを絡めて日本の状況や計画、そういうものを紹介いたしました。

 日本は NCD 対策でも、多分世界の先端を走っていると思うのですが、特に今の状況から言うと、高齢化が進むと NCD のうちでもがんが増えてくる。日本は人口調整すると、がんによる死亡は減ってきている。男も女も減っているのですが、年齢調整しないと今がんによる死亡者数が増えているのは、基本的には高齢化の影響が大きいということを説明いたしました。途上国においても、今は中程度の途上国では、恐らく NCD でも脳血管疾患や循環器疾患が主流なのかもしれませんが、将来的に高齢化が進んでくると、やはりがんが増えてくるだろうと。そうすると、やはりがんと一緒に生きる人生やがんを経験した国民が恐らく今の日本と同じように増えてくるので、そういう対策も考えておかないといけないという趣旨のことを申し上げました。その辺りについていろいろ質問がありました。

 それから、 JICA の研修ですが、 25 ページの JICA の課題別研修「アジア地域における高齢化の政策強化-高齢化社会の課題と対応-」について、これは書いていないのですが国立保健医療科学院でマネージメントして実施しております。これは今年度が初めてだったのですが、研修中、大変活発な議論が行われました。

 最後に評価会を行いまして、いろいろ御意見を参加者から頂きましたが、例えば高齢化の擬似体験を最初のほうでしたのですが、いろいろなセットを体に付けて、高齢化を擬似体験したのですが、そのシミュレーションがとてもよかったとか、あるいは「地域の人たちに高齢化問題を理解していただくにはとても有効ではないかと感じた」という御意見を頂きました。あるいは、「高齢者を介護する家族を対象としたケアの研修があると講義で聞いたのだけれど、そういうものも見学させていただけるとなおよかった」という御意見も頂きました。あとは、同じように、「実際に介護の現場で働いている方の御意見も是非聞きたかった」という御意見や、あるいは参加者についてですが、高齢者の分野は、予防医学、社会福祉、リハビリ、労働など、いろいろな分野の方が関わっているので、そういう方々を各国から複数呼んで、一緒に研修を受けたいという御意見も頂きました。

 それから、次の 26 ページのユニバーサル・ヘルス・カバレッジの研修も当院で実施いたしました。これは今年で 2 年目になりますが、日本の健康保険制度を詳しく各論的に説明するもので、各国の実務者の方に、いわゆるノウハウ的なものを提供しています。これも大変役に立ったという御意見をたくさん頂きました。総論的な話は終わって、各論的な話、細かいノウハウを聞きたいというニーズも、かなり最近は出てまいりました。そういう方たちには、大変よかったのではないかと感じます。

 高齢化もそうですし、ユニバーサル・ヘルス・カバレッジもそうですが、国々の中でも差があって、もう総論は分かったから各論を教えてくれという所と、総論がまだ十分理解できていないので、そこの所をしっかり身につけたいという、ニーズが分かれてきているのかなと感じました。以上です。

○尾身座長 曽根先生、どうもありがとうございます。それでは、鈴木先生からもお願いします。

○鈴木構成員 私は先ほど御紹介いただいたように、 17 ページの第 12 ASEAN ・日本社会保障ハイレベル会合に出席させていただきまして、日本の高齢化社会の現状と健康問題という視点から話題提供で、そこにタイトルが書いてありますが、 Health Promotion in Super-Aged Society Prevention of Geriatric Syndrome in the Community という、地域で高齢者の健康維持を図っていこうということでお話をしました。

 いくつかお話をさせていただいて、特にお聞きになられた ASEAN の方々から、その後もいろいろ質問を頂いたのですが、やはり日本は、かなり高齢社会としては先進的な国ですから、システムであれ、あるいはこういうヘルスプロモーションの仕組みであれ、同じように先進的な部分があります。 ASEAN の国々の中では、まだ工業化が中心であり、工業化ということは結局、都市に人々がこれから集まり始めるアーバナイゼーションというのでしょうか。そういったものがありますが、日本はそういう意味ではポスト・インダストリアライゼーションという、もう工業化はある程度ピークに達しています。そういう社会の中で、例えば高齢者単独の世帯が増えるとか、高齢者のみの世帯が増えていくわけですから、家族というものとの在り方とか、高齢期の健康維持における家族の力という要因は無視できないものがあります。最終的に日本は何を目指すかというと、 Aging in place という、住み慣れた所で家族と一緒に過ごしながら年をとっていくことの大切さを、地域づくりを目指しているのだというようなことをお話しますと、「我が国では Aging in place は当たり前のことで、何を今更そんなことを必死になってやらなければいけないのか」ということも言われました。しかし、そういう Aging in place が当たり前の国ほど、その力を保っておかなければいけない。その仕組みの良さを、もっときちんと認識して、育てていかなければいけないというのが、私は強く感じまして、日本のように単独世帯が大都会の中で増えていくのを、今からそれだけではないのだということを、 Aging in place の家族とか、極端な形でいくと在宅介護力になっていくわけですが、そういうものの大切さというのをちゃんと認識していくことが、そういう国々でも必要なのかなという印象を受けています。

 それから、もう 1 点は認知症に関わる問題で、日本では 65 歳以上の高齢者の 15 %で、 460 万人の認知症がいるし、その予備群が 400 万人いるのだという、最新の日本のセンサスデータをお話しますと、やはり皆さん一様に驚いていました。特に 75 歳以上での認知症の発症率というのは非常に高いわけで、これは世界共通です。

 そういう中で、今はまだアジアの ASEAN の国々というのは、高齢化しているとはいってもヤングオールドが増えているだけで、オールドオールドはほとんど増えていない国が圧倒的多数ですから、今後ヤングオールドが年をとっていって、オールドオールドになっていったときの健康対策というのは、ほとんど手がつけられていないだろうという気がします。

Active Aging の主役というのはヤングオールドですから、その人たちに対する施策や、あるいは社会での地域資源としてのコントリビューションを求めるために取る仕組みというのは大事ですが、一方で後期高齢の方々で、認知症の増加をどうするのかということがすごく問題です。

 先ほど井内課長様から、昨年 11 月に東京で開かれた G8 認知症サミットの話が出されまして、これは実は私ども国立長寿医療センターが厚生労働省さんと一緒に主催させていただいたもので、私はその中の半日のセッションで、今後の予防対策をどうするかという、「科学的根拠に基づく予防対策」というセッションを持たせていただいたのですが、 G8 という、具体的にはロシアがいない G7 でしたが、異口同音に、一番の予防対策はエデュケーション(教育)であると。アジアの国々で、これから高齢者人口が急増し、認知症の発症患者の推計者数というのが出ましたが、とにかく莫大な数の認知症高齢者をアジアが持つことになります。これを今から予防する最大の武器はエデュケーション。確かに認知症の発症のリスクを見ていますと、教育歴というのはものすごく大きいものがあります。日常の患者さんを見ていてもそうです。今後アジアの国々に対して、認知症というものを予防していこうとすると、それこそ先ほど少し出ていましたが、ミャンマー、ラオス、ベトナム、カンボジアですか。タイもそうだと思いますが、こういう所での教育。義務教育もそうですが、生涯教育とかヘルスリテラシーを高めるような教育が、今後ものすごく必要だろうと思われます。

 そういう意味では、日本はまだまだ先進的に突っ走っているだけの経験ではなくて、それで得られた私たちのノウハウというのを、そういった視点でも、助けると言ったら失礼ですが、協力できることになるのかなと思いました。以上が感じたというか、特に重点的に思っている項目です。

○尾身座長 重要な御指摘、ありがとうございます。それでは、林委員からもお願いします。

○林構成員 私は毎年度出させていただいているのですが、この第 12 ASEAN ・日本社会保障ハイレベル会合の 3 日目に、ここに書いてあるパネル・ディスカッション 4 のモデレーターとして参加させていただきました。それは高齢者の社会参加及び社会貢献ということで、近藤先生や城野先生が話されたのですが、特にこのとき、質疑応答もかなり活発に行われまして、高齢者の生活の活動レベルといったことについても質問がありましたし、特に大きく質問があったのは、日本のシルバーボランティア制度だとか、 JICA のシニアボランティアを受け入れている国から、あれは多分ミャンマーの方だったと思いますが、日本のシニアボランティアはどのような形でリクルートして、どういう形で日本にとても役立っているのかということで、日本のシルバーボランティアも、是非これもうちの国でやっていきたいのだけれど、国としてどういう取組をやっているのか、そういうことについて非常にたくさんの国から、しかも細かい実務的にどうやっているのかという質問がまいりまして、城野さんからは後ほど、日本のシルバーボランティア制度についての詳しい内容を、英文で参加者の方に送っていただくということに、事務局のほうでされたようです。

 それから、その前の会と違って、今回は福祉器具や高齢者用の柔らかい食事というものの実演会というのが、会場をすぐ出たコーヒーブレイクのときに行われていまして、それですごく皆さん興味深く見られていたのですが、特に柔らかくして、咀嚼能力が落ちたとか、歯の機能が落ちた方にも食べられる食事については、例えばブルネイなどは、既にすごくそういう高齢者も増えているし、購買力もあるし、すぐに買いたいのだけれど、これはハラール認定を受けているのかということで質問がありまして、 ASEAN は本当に大きなイスラム人口がありますので、そうした対応が今後必要になると思った次第です。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。それでは、大泉委員も何かコメントを頂けるということで。

○大泉構成員 昨年の ASEAN 日本社会保障ハイレベル会合には、オブザーバーで 1 時間だけ参加させていただきました。さて、この Active Aging の検討会に関わらせていただいたおかげで、去年いろんな会に参加させていただきました。そこで感じたことを御報告させていただきたいと思います。

 ハイレベル会合でも感じたことですが、 ASEAN の方たちの高齢化に対する関心が年々高まっていることです。また、各構成員がおっしゃったように、議論も各論に入ってきたということは、評価すべき成果であろうと思います。

 他方、日本における ASEAN の高齢化に対する認識も、随分高まったのだというのもうれしいですね。かつ、 Active Aging という言葉、これは魅力的な用語だとも改めて感じました。また、メディアも、中国や東南アジアの高齢化、そして介護ビジネスなど、かなり突っ込んだ話題を提供してくれるようになりました。

ただ、まだ見落とされている部分も少なくありません。我々の目は、都市の高齢化やあるいは富裕層、高所得層の高齢化に対する技術やビジネスへの関心は高まっていますが、他方、農村で起こっている高齢化ということについての認識は低く、このままでは対策が手遅れになるのではと危惧されます。ハイレベル会合でも、農村で増えている高齢者はどうするのだという議論はあまりなかったと思います。

少子高齢化は ASEAN も含めてアジア全体で起こっているのですが、もう 1 つ共通して起こっていることに都市への人口移動の加速があります。日本では、地方消滅が話題になっていますが、アジア全体で起こっている現象です。日本の場合は地方が消滅するということが話題になっていますが、中国ではたくさんの高齢者が農村に残されています。この事実が見落とされがちだということは残念です。

 さて、去年は韓国も行ってまいりました。そこで感じたのは、我々はもう少し韓国の勉強もしたほうがいいかなということ。というのは、 ASEAN の高齢化というのはこれから深刻化するのですが、韓国の高齢化はかなり深刻化してきている。韓国の場合、日本と違って財政の制約が非常に厳しい。反対に言えば、日本はある部分、豊かな形で高齢社会を迎えたわけですが、韓国は今から財政赤字を気にしながら高齢化に取り組まないといけない。ひょっとすると、先進国で一番高齢化への対処が厳しいのは韓国かもしれない。となれば、韓国と日本の経験や知恵を蓄積し、それを ASEAN にまた新しい形で伝えるという新しい経路も生まれるかもしれない、そのようなことを思いました。続きは、また後程お話させていただきます。ありがとうございました。

○尾身座長 ありがとうございます。その他はありますか。

○戸田構成員  JICA の戸田ですが、少し補足をさせていただきます。詳細な国際協力の内容について、資料で御紹介いただきまして、ありがとうございました。 1 つ重要な追加報告をさせていただきたいのですが、それは中国です。 2015 年度から中国に対する本格的な技術協力を、この領域でさせていただくことになったことを報告させていただきます。

 特徴が 3 つありまして、 1 つはこれは非常に画期的なのですが、 8 割のコストを中国側が負担するコストシェア方式でさせていただく。裏返しますと、そこまでしてもやはり中国は、日本の経験から学びたいという、強い熱意の現れであるということです。

2 点目は多層的なアプローチをとろうとしています。私どもは伝統的な国際協力、特に技術協力の中では、非常に焦点を絞って、例えば行政官のこのレベルとか、人材育成をする、教える人とか、結構焦点を絞ってやってきたのですが、今回は中国の本件に関する緊急度に関する自覚を踏まえて、行政官から実際の介護者のレベル、更には教育者のレベル、多層的なアプローチを日中共同でやろうとしている点が、 2 点目の特徴です。

3 点目の特徴は、日系企業との連携です。皆さん方が御承知のとおり、中国の高齢者人口は世界最大で 2 億人とも言われていまして、これは big business opportunity であるわけでして、そこに日本の介護産業等も含めて、優れたノウハウを持ち込みながら、協力をさせていただこうと考えている次第です。また、今後の協力の在り方については、もし後でお時間を頂戴できましたら、発言させていただきたいと思います。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。前半はあと 1 時間ちょっとで、恐らく後半のほうが大事だと思うので、私からは後半に発言をさせていただきたいので、 1 点だけ資料 2 の説明された報告書、非常に素晴らしい。私が 1 点、最も興味を持ったというか、次の後半のディスカッションにも大事だし、いろいろなレコメンデーションが出ていますよね。その中で最も私が興味を引いて、これからのアクションに非常に重要だと思われたのは、ほかにもいっぱいあるのですが、あえて 1 個選ぶと、 22 ページのパラグラフの 11 、先ほども紹介がありましたが、みんなで「学術研究機関や公的・民間セクター等の関係者を含めた、より緊密なパートナーシップを促進する」というのがあって、私はこれを読んで、 Active Aging というのがなければ、実はこの前、私自身も関与したのですが、日本の厚生省の方も来てくれたし、内閣も来てくれて、それから民間の人、学者も来てくれて、感染症の会議を沖縄でやったのです。全く同じことを、これは Active Aging ではなくて、感染症対策ということがあったので、非常にこれは重要だと思って、これ以上、その後何をすべきかというのは後半で、それだけ終えて、では、前半のディスカッションは特によろしいですか。どうもありがとうございました。

 それでは、残りの 1 時間ちょっと、後半は今後の進め方ということでいきたいと思います。これも事務局から、資料 3 ですか。よろしくお願いします。

○日下国際協力室長 それでは、資料 3 を御覧ください。「今後の Active Aging に向けた日本の貢献の方針」についてですが、「高齢化に関する国際協力の方向性等」をご覧下さい。これは昨年 3 月に構成員の先生方におまとめいただいた報告書に基づき、事務局で作成したものです。報告書中、本文の「今後の国際協力に向けた提言」という所から抜き出しております。「高齢化に関する国際社会の方向性」ということで、その背景として ASEAN 諸国では急速な高齢化が予想されており、対応が必要となる。こうした背景を元に Active Aging を推進し、「高齢になっても健康的な日常生活を送れる社会の実現を目指す」ことを目的とし、日本の経験・知見を活かして、効果的な国際協力を推進することで、対応したいと考えています。

 その中で取り組むべき課題としては、報告書中の「 ASEAN 諸国における高齢化に対する国際協力のニーズと協力の方向性」から抜き出し、事務局で再整理をさせていただきました。大きく 2 つに分けさせていただき、 1 つ目が「高齢化に対応する仕組みの構築」、 2 つ目が「サービスの充実とケアの質の向上」の大きな 2 つの枠組みで、整理をさせていただきました。

 「高齢化に対応する仕組みの構築」の中には、高齢化社会に関する中長期的な国家戦略の策定、社会保障制度の整備、特に UHC の実現や、年金制度、 NCD 対策の推進、さらに、認知症対策、高齢化に関する社会統計等の整備を入れました。「サービスの充実とケアの質の向上」に関しては、高齢者関連施設の整備と規制、在宅サービスの展開と地域支援の拡充、高齢者の社会参加促進、人材育成及びエンパワメント・介護人材の育成というものを入れました。

 これに対する対応の手法としては、報告書の中にある、「協力における日本のアプローチの在り方」という所から抜き出しさせていただきました。効果的な国際協力を推進するためとして、多層的アプローチ、 ASEAN の高齢化対策関連のネットワーク形成、日本側の伝達に必要とされる知見の再整理ということで、大きく3つに整理をさせていただきました。多層的アプローチの中には、国際会議等での政策対話、プロジェクト、研修、民間協力等々を通じたアプローチを今後続けていくということ、日本側の伝達に必要とされる知見の再整理ということでは、これまでの資料を蓄積すること、国際協力に関わる人材育成を行うこと、とまとめさせていただきました。

 これまでこの方向性に基づいて、様々な事業、プログラムを実施、あるいは会議に出席させていただいたのですが、今後こういった取組をより前に進めるためには、どういうことが考えられるのかを、この検討委員会で議論していただくのですが、それを考えるための叩き台として事務局で作成したのが下のポンチ絵になります。先ほど掲示させていただいた「取り組むべき課題」を左側に再掲し、それに対応する考えられる方策を、右側に記載させていただきました。必ずしも事務局のたたき台に沿った形で議論を進めていただく必要はございませんが、御説明いたします。 ASEAN 諸国間のネットワークの形成、政策対話、各国の社会保障制度の現状の共有、高齢化対策に活用可能な支援のマッピング、 JICA 技術協力プロジェクトの推進、立上げ、日本の知・経験の蓄積と整理・共有、プラットフォーム形成、関連する民間企業・団体の活動紹介、民間企業の海外進出の促進、以上を事務局として提示させていただきました。

○尾身座長 どうもありがとうございます。それでは、残り 1 時間ちょっとですね。今の事務局の叩き台ということで、特に資料 3 の下半分、その特に右半分を中心に、これが事務局に作っていただいた叩き台ですから、これに何か追加があったり、あるいはここはまずくて、こちらのほうがいいのではないかとか、あるいはここをもっと深掘りしたほうがいいとか、ここを強調したほうがいい、そんなことですね。これはフリー・ディスカッションですから、どうぞ。

○林構成員 皆さん意見があると思いますが、最初に言わせていただきたいと思います。今どのようなことをやっているかというのを、最後に言うつもりでいたのですが、それとの関係で、まず UNESCAP 、国連のアジア太平洋地域経済社会委員会になりますが、バンコクに本部のオフィスがありまして、そちらのほうも今、長期ケアについて、介護について、加盟国でどのようにやっていくかということの専門家会合を、この間の 12 月に行いまして、私はそれに参加してまいりました。今年に 1 つレポートをまとめるということで、これは ESCAP のメンバー国ですので、 ASEAN はもちろんですが、日中韓も入っているし、あとインド、スリランカ、そういった今後の高齢化大国も入っています。 ESCAP はそこの所をやっていきたいと意欲満々ですので、こうしたネットワークの中に絡んでいただいたらどうかと思います。

 それから、もう 1 つここの上のほうに人材の話が出てきましたが、先ほども鈴木構成員や大泉構成員から話がありましたように、地域、特に国内移動についてもかなり、特にタイの田舎は本当に人口ピラミッドがゆがみ、若者がいなくなってしまってという、大変な状態になっています。田舎から若者が出て行った時に田舎の人を誰が看るのか。 ASEAN 2015 年に人材の、一応労働力はまだなのですが、域内で国際的な人の移動が自由になるということで、現在トピックになっています。この間の 1 月に PMAC (マヒドン皇太子賞会議)に行ったときも、 ASEAN の中で人材交流についての研究のネットワークというセッションにも参加して、最初に医師の総合認定をどのようにやるか、なかなかハードルが高いようですが、それから看護師で、介護については介護士というものがしっかり決まっていないので、まだあまり目が行っていないようですが、その国際間での人材移動、総合認定をどのようにやっていくかということは、これは ASEAN 域内だけではなくて、 ASEAN+3 で、日本にとっても大切なテーマだと思いますので、その部分を今後の国際協力という中で、入れていただいたらどうかと思います。

 それから、それに関連して ESCAP の会議では、実は中国の衛生と計画生育委員会が資金支援をして、その会議が開かれたのですが、例えば中国では今まで家族計画をやってきて、その家族計画員という方がたくさんいらっしゃるのだけれど、最近中国はこれから人口をどうやって増やそうかということを考えなければいけないこともあって、そうした方々がまだ残っていらっしゃる。それとか、スリランカもファミリー・ヘルスワーカーという、いわゆる地域保健員の方がたくさん地域に残っていらっしゃって、そういった方をどのように今後、高齢化のほうに活かしていけるかということが、盛んな話題になっていました。タイではかなりこの分野は進んでいると思いますが、そうした既存のリソースを、人材方面でどのように使おうかということ。

 それから、介護ケアについて ESCAP で話していたせいもあるのですが、逆に介護ばかりに目が行ってしまって、その前の高齢化できるための NCD 対策、先ほど曽根委員からも話がありましたが、がん、高血圧、心疾患も含めて、認知症対策、これは非常に重要ですが、伝統的な NCD についても、合わせて目を配っていく必要があると思います。

 というのは、例えばインドみたいな国ですと、「では、介護をやろう」と言うと、急に介護のケアのほうに予算が取られて、がん対策はどうやってやるのかという所がおろそかになるという発言がありました。という点を、少し加えさせていただきたいと思いました。

○尾身座長 それでは、戸田委員。

○戸田構成員 絞ったのですが、どうしてもたくさんになってしまいました。 7 点だけ足早に申し訳ないです。なるべく早く申し上げます。私は基本的に国際協力の実務者ですので、今御提示いただいた所の、特に「対応の手法」及び「考えられる方策」に関連して、既に何度か申し上げたこともあるのですが 7 つ申し上げます。

1 つは、グローバルネットワーキングです。ここにもネットワークという言葉が出ておりますが、これからの国際協力は国ごとのプロジェクトを実施して終わりではなくて、それをしっかりとつなげていくということです。これは本件高齢者イシューに限らずです。その中での学び合いのプロセス、面的に展開することで日本のソフトパワーと国際貢献の極大化も図られるという点です。

2 点目は、フローに加えてストックのマネージメントです。これもこれまでの長い協力の反省に立っての話ですが、私どもはどうしてもフローに注目しがちで、今年度はどのぐらいの予算でどのようなプロジェクトをどこでやりました。 So what ?というところが結構あります。私どもは、これからは 60 年のこれまでの歴史、それから今後何 10 年か分かりませんが、それをきちんとストックとして認識して、マネージしていくことをきちんとしていきたいと思います。

 具体的に申し上げますと、例えば先ほど冒頭に御紹介があった課題別研修は、実際は研修が終わってからが本当の本番なのです。研修で立てたアクションプランがしっかり実施されることによって、極めて高い費用対効果が発揮できます。残念ながらジャイカの力不足で、厚労省さんの支援にもかかわらず十分なモニタリングができていない。この辺のところをしっかりストックとしてマネージしていきたいと考えております。

 以上、 2 点を試行錯誤している意味で追加的に言うと、世界地図をお配りしまして、表が非常に字数の少ない社会保障の今のマップです。この色の濃淡は世界の現勢(第一層)、記号は我々のこれまでのインプット、ストックです(第二層)。吹き出しの文字は今後どうするか(第三層)です。安倍首相の地球儀外交に敬意を表しまして、私どもは世界地図国際協力をこの分野に限らず全分野で展開しようとしております。例えば、裏側の母子保健は相当な蓄積があります。日本で使われている母子手帳の数の8倍が今、国際協力を通じて途上国に根付き使われています。

3 点目は、長期の視点の重要性です。 2030 年のターゲットの SDG には、 Universal health coverage の議論が、 17 のターゲット、 169 の指標の中に入るかどうかという微妙なところがありますが、重要なイシューになっていることは間違いありません。そういうことも念頭に置きつつ、あと大泉先生からお話があった韓国が今後どうなるか、中長期的な視野でさっきのストックマネージメントをしながら対応していきたいと考えております。

4 点目は、日本への裨益です。先ほど中国の協力の中で、日本企業の活躍が期待されますと申し上げましたが、それのみにとどまらず、日本の高齢者にどのような形で裨益するかというところまで考えないと、多分国税を使う国際協力としてはお認めいただけないと思っております。私も現場をいろいろ駆け回りますと、先ほどもお話がありましたが、日本のおじいちゃん、おばあちゃんよりもはるかに元気な方々が途上国にいらっしゃる。特におばあちゃんは元気なのです。むしろこの元気を日本に持って帰りたいというのが私の現場の感想です。そういう方々とのコラボを考えていかないと、単に日本が与えるものということでは今後の本件に関する国際協力は不十分であり、これからは、 WIN-WIN の協力をより一層意識したい。

5 点目は、私どもは脱タコツボと申しておりますが、トランスセクトラルです。先ほど鈴木先生から教育の重要性という御指摘がありましたが、全く御指摘のとおりです。老健局を中心にご指導いただき、これからもいろいろと進めていきたいと思いますが、同時に、広く局や省を越えてネットワークを強化していく必要があります。例えば育ジイ、私も育ジイの 1 人ですが、それからいろいろな省庁を越えた取組、厚労省さんはもちろん中心的なドライビングフォースになりつつも、やはり脱タコツボの協力を特に本件についてはさせていただきたい。ちなみに我が機構では脱タコツボのポスターを作りまして、今、機構内に貼っております。デルタコチャンというかわいい女の子がデロイカクンという素敵な男の子にエスコートされてタコツボから出ようとするというポスターを機構内に貼りまして、私どもの理事長の音頭の下に脱タコツボ運動を展開しております。

6 点目は、日本の経験に関してですが、これは 2 つあります。 1 つは、形式知化です。ここの緑の冊子、今日説明する時間はありませんが、 1 つは UHC に関して島崎謙治先生に、こちらは正に介護に関して堤修三先生におまとめいただいたものです。日本の経験や良さとか国際貢献への素材と言ったときに、きちんと形式化されないと国際的に評価されないということもありますので、それをしっかりと私どもは皆さん方の御指導を得まして、形式知化させていただきたい。これを種子あるいは素材として冒頭申し上げたグローバルな展開をしたいという点です。

 二つ目は、教訓の活用です。単に日本の優位性のみならず教訓からの学びも活かす必要があります。先ほど来、話がありましたように、社会保障を実質的に確保するための社会関係資本の少なからぬ部分が日本の発展の過程で崩壊したこと、予算の破綻、サービス、人材の不足などということについて、どのように先手を打って彼らが対応すべきか。もしかしたら解はそんなに簡単ではない、それぞれの国の事情に応じて分脈化されなければいけないのですが、そこを我々は彼らと一緒に真剣に考えなければいけないというのが、これまでの協力の反省から得た学びです。

7 点目は、成果の「見える化」です。納税者に対する義務として、これをやってどうなったのかというところの「見える化」が、本件については率直に申し上げて非常に難しいと思っております。例えば、成果といえるものの中には「制度を作りました、法律を作りました、人材を育成しました、日本のビジネス界に貢献しました」などがあって、これはこれで引き続きやっていきます。しかし、本来のバリュー、国際協力が生み出した価値、あるいはアウトカムとは、「高齢者が健康になりました、アクティブになりました、ハッピーになりました」というものです。

 これをどのようにして「見える化」するかというのは非常に難しい問題です。 1 つはアネクドータルお話としてにきちんと一つ一つのケースやストーリーを記録していくということがありますが、それだけでは、たくさんの税金を使わせていただくのは難しいと思っておりますので、その点を皆さん方の御指導を得ながら納得のいくものを作る。それは単に宣伝ではなくて、そういう事例を最大限に活用して、それらを拡大、再生産するためのものとして考えていきたいと思います。すみません、長くなりました。以上です。

○尾身座長 どうも 7 つのポイント、脱タコツボ、ありがとうございます。それでは、ほかの委員の方から何かございますか。

○大泉構成員 私から 2 点お話したと思います。

1 つは、大きな話です。私はエコノミストですので、医療や介護については不案内です。アクティブ・エイジングに関する意見は、お配りしましたトヨタ財団の「 JOINT 」の対談の中に書いてありますので御覧いただきたいと思います。 1 つは、この委員会でもすでに出たと思うのですが、 65 歳を高齢者と定義するのはいかがなものかということ。つまり、よく言われる「人口ボーナス」「人口オーナス」というのは、極めてエコノミスト的な考え方でありまして、もう一度、違った視点から新しい人口ボーナス論、人口オーナス論を再構築してはどうだろうと考えております。

 それはどういうことかと言いますと、人口ボーナス論というのは、人口を労働力となるかどうかして区分します。しかし、そうではなくて社会に貢献できるかどうかで区分してはどうかと思うのです。そうしますと、 65 歳ではなくて 70 歳、 75 歳でも社会に貢献できる。となりますと、実は日本の社会的な人口ボーナスはまだ続いているのだということになります。

 次に人口オーナス論については、既存の年金制度や医療保険から発生する資金面の負担を考えます。ここには、地域福祉のようなお金を経ない助け合いは感情に入ってきません。いろいろな取組があると思いますが、年金制度や医療制度から離れて考えることも必要です。このような視点で考えると、後ろ向きになるような考え方から解放されやしないかと思っています。それこそが、アクティブな高齢者を増やすことに直結すると思っております。これが 1 点です。

2 点目は、ネットワークを作っていろいろな人と経験や知恵、情報を共有することは必要なのですが、日本から与えるという一方通行ではなくて共有するという点は重要です。共有だけではなくて、日本の状況を ASEAN の人たちが見てもらって意見をうかがうというも面白い。ひょっとすると我々は気付いていない点を見つけることができるかもしれない。カルチャーショックの裏返しです。そのような ASEAN の人たちから教えてもらうというのもネットワークの方向としては必要であるであろう。

 それに加えて、ネットワークの媒介になるホームページなどの形態について、最近、個人的に思うことなのですが、もっと動画を用いたらいいのではないかと思っています。世界銀行もアジア開発銀行もいろいろな動画をアップしています。 You-Tube との連携もあります。介護の支援の在り方、実際のサービスなど技術的なものは効果があると思います。その参考になるのが、 NHK ワールドのホームページです。 18 か国語で同じように作成されています。このようなものを介護やいろいろな福祉の面で作られてはどうでしょう。 You-Tube と連携するだけでも、負担なくいろいろな人がアクセスできるプラットフォームが形成できるのではないかと思いました。

○尾身座長 どうも、その他ございますか。

○曽根構成員 私からは、今、私が関わっているところで、長野県は御存じのように健康寿命、平均寿命が日本でトップクラスです。医療費も少ない。地理的な条件がいいわけではないのにトップクラスということで、長野県庁が音頭を取って、なぜ長寿なのかということを、データ解析や聞き取り調査で、地域で保健医療活動をやってきたいろいろな方のお話、住民活動が大変活発な所なのでそういうものをまとめておりまして、昨年度、中間報告を出して現在は最終報告書をまとめております。途上国にとって、先ほども農山村部の話がありましたが、農山村部でどういう歩みで地域で活動を続けていて、 NCD の対策をやってきたのか、高齢者対策をしてきたのかということについて、本当にここ 50 60 年の歴史を見ることができると思います。もしそれを翻訳すると日本の地方での経験として、かなり途上国のお役に立つものができるのではないかと今、先生方のお話を伺っていて思いました。

○鈴木構成員 先ほど来、今後どうするかということですが、先ほど戸田構成員から 7 つのポイントがありました。それから、先ほどの大泉構成員から人口ボーナス、人口オーナスを今後どう見直していくかという問題がありました。いずれもすごく大事な問題であることは十分よく認識しております。例えば戸田構成員から出た最後の成果の見える化ということ。これは確かにそのとおりです。ただ、そのためにはアウトカムを設定したときに、アウトカムの指標を各国が理解できて、満足していただける標準化がされないといけません。これは、なかなか至難の業でして、例えば日本の場合は高齢者の健康度やアクティビティを測定する指標は科学的な根拠としてできています。

1 つは 1986 年に開発されて、御存知の方がいるかもしれませんが、老研式活動能力指標という大変に有名なものです。これは、国際的にも使われておりまして、例えば私の知る限り韓国、台湾は使っております。ただ、これは 1986 年という 30 年以上も前にできた指標です。日本語の指標で、もちろん英語版もあります。やはり日本の社会では、今日の世情に合わなくなってきております。ようやく、この 3 年掛けて新しい新活動能力指標という指標が、 JST から研究費用を 3 年間頂いてできました。これは新たに 16 項目で測定するものですが、これは相当ハイレベルな生活機能を測定いたします。

 例えば DVD を操作できるか、携帯で E メールを打っているかなど、ただ、 65 歳の前期高齢者の方々は、この 16 問のうちの平均が 10 点取りますので、かなりレベルが高いと思います。しかし、これは今の東南アジアの ASEAN の国々には少し難しいという気がします。ですから、標準化されたアウトカムの見える化は非常に大事です。しかも、それが数値で納得して見られるという方法は本当に必要です。おそらく、日本で使われ始めた新しい JST 版はまだとても無理で、 1 つ前の老研式活動能力指標であれば応用は可能かなと。ただ、いずれにしても、そういう共通の標準化された指標を提言していかないと、ここの今御指摘になったことの具体的な実現は少し難しいと思っております。

 それから、大泉構成員からの御指摘がありました高齢者の定義ですが、これはそのとおりです。実は今、日本医学会、日本老年医学会で、私は日本老年医学会の会員でもありますが、大きな 1 つのワーキングが出て、高齢者の定義の見直しに関わる検討委員会が出ております。それで、これについては今年の日本医学会の総会、 6 4 日に「高齢者の定義」というシンポジウムが開催されます。少なくとも確かに 65 歳を高齢者とする根拠は全くないのです。これは元々 120 130 年前に当時のプロイセンの宰相だったビスマルクが、 65 歳以上で生きている人は非常に少ないから余り金が掛からないだろう、ここに線引きしようと言って作ってしまって、それを 1970 年代に御存じのように WHO が踏襲したというだけの話で、全く科学的、確たる根拠はございません。

 しかも日本の場合は、長期縦断に関わるエイジングの研究のデータがものすごくたくさんあります。そういうところから見る限り今の 65 歳以上と 20 30 年前の 65 歳は御存知のように雲泥の差です。少なくとも生活機能から見た関わりだけで言うと、今の 65 歳以上というのは、実は 20 年前の多分 50 代半ば、 10 歳ぐらい若い集団になっています。ですから、 65 という数字だけで決めてしまうのは全く根拠がないということです。しかし、学者連中が集まって科学的根拠だけに基づいて提言しても、現実社会では余りにもインパクトが大きいわけです。つまり、年金の支給や定年退職などいろいろなことが制度上全部 65 で決まっています。

 ただ、少なくとも国民の皆さんの多くも 65 を高齢者だと思っていないです。いろいろな国が行っている例えば内閣府調査などをいろいろな所で見ると 65 を高齢者として見るのは妥当だという人は、おそらく 2 割ぐらいしかいなくて、 70 とか 75 というところまで上がってきているのも事実です。ですから、確かにもう 1 回私たちは高齢者の定義を世界に先端を切って変えてもいいかもしれない。ただ、そのためにはきちんとした科学的な根拠も必要になりますし、国民のコンセンサスも必要になります。おそらく国の厚生労働省さんやいろいろな所がてんやわんやになるということは重々分かってはいます。確かにそう考えていかないと、生産人口は 64 で切ってしまうという考え方は、やはり無理だろう。社会貢献をする年齢はもっと高いところまで社会の資源として見極めなければいけないというのは本当にそう思います。ただ、それを具体的にどこまで踏み込めるかどうかは難しいと思います。コメントです。

○尾身座長 委員の方には全員発言していただいて、私のほうからも、座長というよりは一委員として少し。先ほど、 11 番目のパラグラフのことを申し上げました。それで、これはこういう Aging のプロの方の前でもう全く釈迦に説法ですが、この Aging の問題は、実は、例えば医療とか介護などでもいろいろな影響するファクターがあります。財源がない、あるいは医療技術が毎年放っといてもどんどん新しい診断薬が開発される、国民の負担が、期待が高いとか、いろいろな複雑系になっているのですが、実は、医療の世界では余り言われないですが、医療のこれからの在り方を決定する様々な要因の中で、最も重要な要因は高齢化です。もちろんほかの要因も重要なのですが、このことがまず 1 点、あえて言えばこれが最大の要因。それで、今、この検討会はその問題を議論しているということが 1 点。

 それからもう 1 点は、先ほど大泉委員もおっしゃられたし、戸田委員も多分おっしゃっていました、 7 つの。このタックスペアの話をされていましたね。

○戸田構成員 はい。

○尾身座長 結局、去年から始まったこの検討会は、一義的にはアジアの国に貢献するということだったと思いますが、同時に、我々の国にも裨益するという、双方向だったと思います。そのことは、向こうから学べるし、我々が支援することによって、我々の国のこれからの高齢化の在り方についてもまた示唆が得られる、こういう方向になっている。

 ということで、先ほど私は感染症のお話。この感染症の話も、 Aging の話も人々の健康、 health をどうするかという話で、アプローチは違うけれど一緒です。しかも、これだけ不安定な時代になってくる中でのこういう health を、ヒューマンセキュリティの感覚でどう位置付けるかという観点が重要です。感染症などでも先ほどのパラグラフ 11 。結局、これから本当に日本が、例えば感染症の分野で国際的にも貢献して、しかも国内の感染症を更に充実させるためには、もう専門家だけでも無理。感染症の分野であれば、民間のメーカーがいます。この人たちだけでは無理。もちろん国、感染症であれば厚生省、あるいは今、日本版の NIH みたいなのが内閣にできて、ああいうパブリックが先導をきって旗振りするのは当然ですが、それだけでは無理です。これはオールジャパンでやるしかないのです。そういうことで、感染症のほうでは国も民間も学者も、心ある人はみんな集まってオールジャパンでやらないといけない。そこにはいろいろな感染症のプロがいて、日本でも、大学にもいるし研究所にも、メーカーにもいっぱいいますから、新しい感染症の診断薬を作る。この人たちがコンソーシアムみたいなのを作ってやらないと、部分の最適は全体の最適を保障しないというのは、もう我々日本国民は骨の髄まで分かっている。

 先ほど戸田委員からグローバルネットワークということで、いろいろなアジアの国と、中国も含めてネットワーク、私は大賛成ですが、グローバルネットワークを作ると同時に、あるいは作る前と言ったほうがいい、日本の中のネットワークを作ることは極めて重要です。 JICA で議論されたという「脱タコツボ」大賛成です。しかも、もう少し中長期に考えないといけないですね。そういう意味では、私は、最終的には、政治家の方にいい法律を作っていただいたり、いいデシジョンを作っていただくためには、コンソーシアム、ここで言えば「プラットフォーム」と書いてありますが、言葉はどうでもいいです。民間の人、専門家の人、これはしかも、一般の高齢者の人も入れないといけない、外国の人も。そういうのを作らないと、先ほどインパクトという話、評価という話が出て、これはそう簡単ではない。先ほどプロジェクト方式というか、ちょっと JICA が向こうに行って、どこかの国に、ラオスだミャンマーだとやる、これは簡単、というか JICA はずっとやってきた、予算があればいくらでもできるわけです。それは一見やったことになるのだけれども、これは JICA の方が十分吟味されて、私も大賛成で、インパクトが思うようには期待できないです。向こうは、 JICA が来れば、それは「ありがとうございます」とやるのです、その期間。ですが、ほかにもコンピーティングな、いろいろありますから、ほとんどインパクトがないこともある。

 先ほどの認知症ではエデュケーションが大事だという話もあった。こういうことは、少し小さなグループが言ってもなかなか声は届きません。これはやはり、コンソーシアムみたいな官僚群も当然入る、専門家も入る、現場の人たちも入る、 JICA なども入る。こういう人たちがしっかりした議論と、エビデンスもあるものは整理して調査もして。そういうことで、例えば今の 65 歳、認知症の予防にはエデュケーションが重要だということを、これは一部の学者、独法の誰かが言っているなどということではなくて、心ある、このグループなら信用できるというコンソーシアム、プラットフォームがドーンと言えば、これは政治家の人たちもズシンときて、自分らの議論に更に国民からの議論がきて、これならこういう方向で行こうではないかということで、そういう意味で、国民と政治家の間のいい意味での対話ができるということがあるのす。

 事務局のペーパーでの民間企業の海外促進だとかひとつ大ヘディングでやるのでしたら、日本の知の蓄積と整理、プラットフォームということがあって、その中のサブセットとして入れれば良いと思います。

 それと同時に、もう 1 つの大きなヘディングは、そういうことと並行して、アジアの国なりなどとのネットワークをやるということです。

○林構成員 すみません、追加で皆さんがおっしゃったこともあるので、少し言いたいことが残っています。今、座長が言われた議員についてなのです。議員連盟について、人口分野の議員連盟というのは、本当に岸首相から作られた長い歴史があって、多分、人口関係の議連だと世界で一番古いのではないかとかいう話なのです。 70 年代、 80 年代は日本の家族計画をいかにアジアに伝えていくか、そういう活動が中心だったのですが、最近は高齢化について、これをどう発信していくかというのを重要なテーマで取り組んでいらして、日本の議連とアジアの議連、それからヨーロッパの議連、いろいろな所の議連と一緒にという形で活動をされていますので、多層的なプラットフォームというときには非常に大きなアクターになられると思います。

 それから、やはり多層なアクターの中で、研究者のネットワーク、これは今、すごい勢いでいろいろな所にネットワークがあるわけです。例えば、日中韓ですと、うちの研究所も昔から日中韓でいろいろ高齢化についてとか、研究ネットワークを築いていまして、去年も、うちと中国の社会科学院と共同でワークショップなどを行っています。それは、 JICA の中国事務所の方にも御参加いただきましたし、あとは、 ASEAN を含めた形で、 AAGH という Asia Alliance on Global Health という、 Global Health 関係です。去年 11 月に東大で開催されましたが、タイの研究者の方が東京でやりたいから開催してくれと依頼がきたということでした。今は日本もビザなしで来られるので、是非来て会議をしてお買物もしてきたりということもあったみたいです。 PMAC で同じネットワークで会議がありました。開催地はバンコクですので ASEAN 各国、それからインドも含めて研究者が集まってきていました。研究テーマは Global Health なのですが、特に高齢化、介護の研究内容とかも非常に多くなっています。研究者ですと、何年かたつと交代するということがなく、継続していろいろ中まで、制度まで見ていくという方が多いので、是非、こちらのほうともネットワークを作っていけば非常にいいのかと。特に、アジア各国の中での研究者の層がかなり厚くなってきていると思うので、それが重要だと思いました。

 それから、先ほど出た評価、何をもってメジャーするかということで、新老研式でサンプル調査を行ってということが非常に重要だと思います。それと同時に、今、センサス、日本で言うと国勢調査ですが、全人口を対象にして、それで、国連でも「センサス 10 年計画」で、全ての国が 10 年ごとにセンサスをするようにと国連統計部から各国に呼び掛けをしている中で、障害 (disability) についての質問項目を統合、ハーモナイズをして、同じように聞いて各国の比較ができるようにという取組を、ワシントングループという国の統計関係者のグループが調整を進めています。これは、もちろん、いわゆる身体障害者のメジャーもするのですが、やはり、高齢者になってガッと上がっていく指標ですので、また、日本ですと、今の健康寿命などに使われるところは国民生活基礎調査を使っていますが、だんだん施設に入ってきている高齢者の方が増えていますので、そこも含めた形で取れるという意味で、センサスでこのような各国で調整された障害の項目を入れれば、それを各国間で比較できる。しかも、そのマイクロデータ自体がイパムスというデータデポジットの登録をしたらそれも研究者として自由に使えるという環境が整っていますので、是非、そちらのほうのすでにあるデータの活用も図っていただければと思います。アジアの国もかなり入っていますし、もちろん全世界の国、今、全部で 100 か国ぐらい入っていたと思います。そうした既存のメジャメントのインフラも使っていって、効率的に図れる仕組みを作ったらどうかなと思います。

○尾身座長 どうもありがとうございます。その他ありますか。 1 つ、日中の話が JICA のほうから出て、今までは、この検討会では中国のことは余り、アジアということで議論がされていなかったですが、これも 1 つ情報の提供です。皆さん恐らく言葉をお聞きになったと思うのですが、日中医学協会というのがありました。これがずっと、実は日本財団という所から財政的な支援も受けたりして、中国の医療関係者はもう何万ですか、が日本に来られていろいろな日本の研究所や大学などに行って訓練を受けて、今やもう帰って、中国のあらゆる省の医学部だとかいろいろな所のリーダーになっています。

○鈴木構成員 すみません、笹川さんのですね。

○尾身座長 そうです。

○鈴木構成員 あれはすごく大きい。

○尾身座長 そうですね。それで、実は、その日中医学協会は、こういう日中の関係もあるし、中国は、先ほどお話があったように、だんだんと経済的にも自立しているので、そういう中でどうするかという、日中医学協会もこういう新しい環境の下で在り方を検討しているところなのです。そういう中で、民間の人も、先ほどは民間の企業をどう後押しするかというようなことがあって、そういうことで、日中医学協会でも 1 つのプラットフォームみたいなのが出て、日本と中国の医療、医学、それから介護などは先ほど出ていたと思うのですが、介護のリハビリの人のように要請をするというような動きをやっています。そこにはもう JICA の人は入っていますので。

○戸田構成員 もちろんです。

○尾身座長 入っていますので、もしここで考えられる方策ということでプラットフォームみたいなのを作られるのでしたら、そういうところも 1 つ重要なプレヤーとして入ってくるのかなという気がします。

 さて、今日は、事務局のなかなかいい文章も出てきたお陰で、委員の方のコメントも私は非常に適切かつ鋭い、前向きなコメント以外はなかったと思います。では、そろそろ、事務局のほうで、今の委員からのコメントで何か感想やら、これは少しこんなことを言ってくれなければ、今から消してくれとかということもあれば、あるいは今後の方針についてまとめてやっていただければと思います。

○井内国際課長 熱心な御議論、また、貴重な御意見をいろいろ賜りまして、本当にありがとうございます。私ども、これまでにやってきたことについては、具体的にお示しをし、また、構成員の皆様方にもそれぞれ私どもが実施をしてきた内容についても御協力を頂いてきたこともありましたので、併せてそういうことも御説明もさせていただき、資料でもお示しをさせていただきました。

 今日は、今、尾身座長からもありましたように、皆様方から頂いた意見、本当にごもっともな御意見ばかりだったと思います。特にその中でも、私ども、今後これからやっていこうというこの最後の資料のページについて、より強調したほうがいいのではないかというような大きな御意見が、大きな意味合いの御意見が多かったように思います。特に申し上げると、我々、これまで長年やってきた、何年かやってきたこういう事業、それから、この事業の形でない以前からもやってきたような取組について、やはり大事なのは、やりっぱなしということではなくて、やったことをこれから先もしっかりとつなげていくと、今後にもつなげていくということで、そういうこれまでの知見の蓄積、経験の蓄積というのをしっかりとデータなりで我々としては押さえていく必要があるのではないかということが非常に重要だったかなと思います。

 それから、我々ももちろん意識をして取り組んでいるのですが、我々は国民の税金を使わせていただいてこういう協力をやってきているのですが、やはり日本に対しての裨益が、我々に対しての利益、メリットがなければよくないわけですので、こういう事業を通じて、 ASEAN へのいろいろな協力を通じて、日本への裨益があるような視点をしっかり認識をしながら進めていくべきだということも大きな御意見としてあったかと思います。

 それから、座長をはじめ、複数の方がおっしゃられていましたが、私どもの資料で言う、「考えられる方策」の下から 3 番目のプラットフォーム、あるいは言葉を替えると、コンソーシアムというもの、これが重要であって、日本の中でのコンソーシアムも重要ですし、また、アジアの国々と併せて、しかも、我々行政だけではなくて研究者の、また、国会議員、あるいはそういう専門家の方々だけでもない製薬会社、そういう関係者での多層的なコンソーシアムというものを構築していくべきではないかと、それが重要なのではないかというのは、おっしゃるとおりだと思います。ただ、正直なところ、そう簡単ではない部分もあって、私も周りを見ていろいろな予算の制約のある中、また、どれぐらいのことが今後できるのかというのは、いろいろ老健局とも相談もしながら進めていかなければいけないかと思いますが、非常に重要な御意見であって、これは、最初の 1 点目とも関わるのですが、やはり、我々がやってきたことを今後もきちんと効果的にそれを続けていくというためにも、そういうプラットフォーム、コンソーシアムというのは非常に重要だろうと思います。そう簡単に一朝一夕でできないかもしれませんが、そういう方向で私たちもこれからの事業を進めていければと思っています。それ以外も、もちろんいろいろと御意見もあったのですが、全てここで言及することはやめます。

 あと、もう 1 つは、セクトラルの関係だとか。これは、我々も関係省庁とも、関係部署ともやはり一緒に協力してやっていかなければいけないとか、あるいは、そもそも論として、こういう事業を、アジアの諸国に対してやってきた上で、日本国内でもそうなのでしょうが、そもそも、高齢者というものの捉え方というのは本当にこれでいいのかとかいうような、本当に大きな御議論も頂きましたし、あるいは、こういう我々のやっている事業の成果の指標だとかも大きな目でまた議論していかなければいけない。これは、我々正にそういう議論をしていくのであれば、専門家の先生方のお知恵をお借りしながらやっていかないと。本当に全国民的な議論になるようなポイントも幾つか御示唆を頂きましたが、そういうことについてもしっかり意識をしながら進めていければということで、特に大きな視点からの御意見を今回多く頂いたかと思っています。

 今日の御議論を踏まえて、我々、国際協力の進め方をこれから具現化、具体化していきたいと思っていますので、引き続き、構成員の皆様のお知恵、お力をお借りできればということで、引き続きの御協力をお願いしたいと思います。また、検討会ですが、今回、 1 年ぶりぐらいに第 5 回として開催させていただきましたが、今後もフォローアップをしていくために継続して開催したいと思っていますので、また、その都度どうぞよろしくお願いしたいと思います。今日頂いた御意見も受けまして、今後、我々の取組を考えていきますし、実際に動いていくわけですが、その進捗状況に合わせてまた次回の開催を考えたいと思いますので、その節には御連絡をさせていただければと考えています。私からは以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。その他ございますか、事務的なこととか。

○大鶴統括調整官 追加で申し上げます。この取組、これまでの活動で私たちとしてもいろいろ気にした点というのが、今日の委員の先生からも言われました。日本が高齢化先進国で様々な経験をしているのをどうアジアの方々に理解していただくかというのが、なかなか難しい。今日の日本を見ていると十分に分からないところがある。例えば、先ほどの、在宅で介護をするというのがうちは当たり前だよとか、介護サービスも含めて病院でやっているよとかいうのが、日本は一度在宅と施設の違いをきちんと考えて、何が介護技術であるのかという専門性を高めるようなことをこれまでの経過でやっている。あるいは、医療から介護を切り離して介護の保険制度を作って、そこを苦労して維持しつつ、今度は、もう一度医療との連携を考えるという経緯をたどって今日に至ったようなものをどう理解してもらうか。こういうことをきちんと説明していくような過程も必要ではないかなと思っていたところ、今日、先生方からもそういう意見がありました。

 次に、見せるというのを、何を見てもらうかと。説明するものと体験するものとあって、今日も体験実習がよかったということですが、高齢化を地域で迎えていないような方々が、日本に来てどう経験を深めてもらうか。これは社会保障ハイレベル会合でも地域に出かけて、高齢化社会の実態は何かというのも経験してもらうということとか、地域とコミュニケーションをもって施設運営しているのがどういうものであるか見てもらうことが非常に重要だということを私たちも考えて取り組んでいましたが、今日の先生方の御意見にもそうした重要性の指摘がありました。

 それから、日本から相手国に出すだけではなくて相手国から学ぶ視点が大事だというのも、今日、先生は言われました。これからいろいろな機会で相手から学ぶことをやっていければと思っています。

 また、先ほどからキーワードになった多層的なアプローチということですが、今回のハイレベル会合でも、福祉や医療で企業の参加を得るとか、自治体にアジアの方々を連れて行ったということをやっていますが、高齢化の課題に、これから企業がどう関わっていくかということを考えていかなければいけないと思っています。老健事業の中でも、イベントの開催を予定していますが、そうした取組を広げていきたい。多層的なコンソーシアムを作ってということですが、この会もそうですが、これは何か 1 つができれば全てできるということではなくて、それぞれのイベントでいろいろな方々に関わっていただきながらイベントを実行していますので、そういうレベル、レベルで、あるいは場面、場面で人をつなげていく作業をしていかなければいけないと思っています。 JICA でも、本部であれ、各個別の国であれ、あるいはプロジェクトであれ、そういう所でいろいろなメンバーが関わり合いながら作っていけば、それが蓄積となって、知識となって、振り返りながら進めるようなことになっていくのではないかと思います。構成員の先生には、いろいろな会に御参加いただいて、それを今日つなげていったという作業をしたのですが、これからも、それぞれの会で、先生方に参加して活躍していただくことになると思いますので、その節はまた御協力をよろしくお願いしたいと思います。以上です。

○尾身座長 どうもありがとうございます。では、そろそろ時間です。最後に、今、課長さんのほうと、それから統括調整官のほうからも、総論的には前向きな発言があり心強く思います。 PP のパートナーシップですね、パブリックとプライベート、これはもう、国のお金を全部使うなどということではなくて、恐らく、これは民間の人にとっても非常に関心のある、そういうコンソーシアムにもお金が必要であれば、民間の人たちも、「私は貢献したい」という人がいっぱいいる Active Aging に社会がなって、それが社会に貢献するという話ですね。ですから、そういう意味では、国際課長 1 人に負担をかけるなどということではなくて、やはり、一般の国民というか、企業やら一般の人も一緒にやるという、もしやるのであればそういう精神ですよね。そういうことで、我々も一般市民も頑張ると、役所も頑張ると、こういう感じではないかと思いますので、いろいろ難しいことはあると思いますが、多層的な、みんなでそういう共通の認識をもって、いろいろな場面があるでしょうから、同じようなことを共有してやっていくということが、今日の、あえてコンセンサスと言えばそういうことでよろしいでしょうかね。それでは、どうも皆さん、ありがとうございました。


(了)

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