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2015年2月13日 第5回厚生科学審議会がん登録部会(議事録)

健康局がん対策・健康増進課

○日時

平成27年2月13日(金)14:30~16:30


○場所

厚生労働省 専用第22会議室(18階)


○議題

(1)全国がん登録におけるマニュアルについて
(2)同意代替措置に係る指針について
(3)その他

○議事

○事務局 それでは、定刻となりましたので、ただいまより第5回「がん登録部会」を開催いたします。

 委員の皆様方におかれましては、お忙しい中、お集まりいただきまして、まことにありがとうございます。

 初めに、本日の委員の出欠状況でございますが、本日は、天野委員、亀井委員、川本委員、坂元委員、永井委員、平田委員、本田委員より御欠席の連絡をいただいております。

 本日のがん登録部会の委員定数24名に対しまして、現在、出席委員が17名でございますので、議事運営に必要な定足数13名に達していることを御報告申し上げます。

 本日は、3名の参考人を招聘しております。

 国立がん研究センターがん対策情報センターの西本寛参考人です。

○西本参考人 西本でございます。よろしくお願いいたします。

○事務局 同じく、柴田亜希子参考人です。

○柴田参考人 柴田です。よろしくお願いします。

○事務局 同じく松田智大参考人です。

○松田参考人 松田です。よろしくお願いいたします。

○事務局 それでは、以後の進行は、辻部会長にお願いいたします。

○辻部会長 それでは、本日もどうぞよろしくお願いいたします。

 では最初に、事務局から資料の確認をお願いします。

○事務局 それでは、資料の確認をさせていただきます。

 まず座席表、議事次第、

 資料1 がん登録部会委員名簿

 資料2 がん登録部会における今後の議事

 資料3 全国がん登録における個人情報保護のための安全管理装置マニュアル(案)について

 資料4 情報の移送(病院等から都道府県がん登録室への届出)について

 資料5 全国がん登録における情報利用及び提供のためのマニュアル(案)について

 資料6 法施行前開始のがんに係る調査研究のための法附則第二条に基づく同意代替措置の指針について

 参考資料1~6はファイルにまとめてとじてございます。

 参考資料7は、地域がん登録の手引き改訂第5版2013年版の冊子をつけてございます。

 資料の不足、落丁等がございましたら、事務局までお申し出いただければと思います。

○辻部会長 よろしいでしょうか。

 では、資料に問題がなければ、議事に入りたいと思います。

 議題1「全国がん登録におけるマニュアルについて」に入りたいと思いますが、最初に事務局から今後の議事について御説明いただいた後、参考人の国立がん研究センターから資料の御説明をお願いします。

○事務局 資料2をごらんいただけますでしょうか。がん登録部会における今後の議事についてでございますが、今回はこの中で下線を引いているものにつきまして、資料を準備しております。

 まず1つ目、法附則第二条で規定される同意代替措置に係る指針でございます。こちらは審議会等の意見を聞かなければならないとされておりまして、この附則第二条の政令につきましては、既に第1回、第2回のがん登録部会で御議論いただいております。指針につきましては今回初めて御議論いただくことになります。

 2つ目、法第四十四条で規定される院内がん登録に係る指針でございます。こちらは第3回、第4回がん登録部会で御議論いただきました。

 3つ目、全国がん登録運用マニュアルについてでございますが、まず、アの全国がん登録届出マニュアルにつきましては、主に届出側を対象としたものです。こちらは第3回、第4回がん登録部会で御議論いただいております。

 イのデータ利用と提供に関するマニュアルにつきましては、研究者等のデータ利用者と国、国立がん研究センター、都道府県等のデータ提供側の両方を対象としたものですが、今回初めて御提示するものとなります。

 また、ウ、個人情報保護に関するマニュアルは、主に登録室での安全管理措置のマニュアルでございますけれども、前回お示ししたものより詳しい資料を御提示いたします。

また今回、前回の御指摘を踏まえまして、「ガイドライン」という言葉は「マニュアル」とさせていただいておりますことを申し添えます。

 以上でございます。

○辻部会長 どうぞ。

○松田参考人 資料3、資料4で全国がん登録に関する個人情報保護のマニュアルについて御説明いたします。まず、資料3からごらんください。

 資料3の最初の部分は前回の部会で既に御提出させていただいたもので、がん登録における安全管理措置の概念図となっています。ざっと見ていただければ前回のおさらいになるかと思うのですが、がん登録における個人情報保護のための安全管理措置としましては、当然のことなのですけれども、情報が外部に漏れないように管理すること。紛失ですとか窃視、情報の盗難といったものを防止することと考えております。

 さらに、個人情報保護のためには情報自身が消失することがないように管理すること、具体的にはバックアップを保管することですとか、保管したバックアップを同じ場所ではなくて、別の安全な場所に移しておくことと考えています。

 さらに、登録室内における個人情報の漏えいリスクとしましてこういったところに情報を保管した上で、きちんと鍵をかける等の措置をする必要があることを示したものがその下の2ページ目の図です。

 3ページ目では、がん登録は昨今ITシステムで管理するのが常識となっておりますけれども、データベースサーバー、それにつなぐPCの端末をきちんと管理する必要があることを図にしたものです。

 4番目はがん登録情報は外から来るものもありますし、外に情報を持ち出すことも場合によってあるということで、その際の個人情報の漏えいリスクをどう考えたらいいか図示しています。

 例えば5で書いてあることですけれども、職員自身が情報を持ち出すよりは記憶の中にあるものを外で話したりすることがないように、これはどちらかというと教育ですとか研修にかかわる部分ですけれども、これについて図示しております。

 5ページ目のスライドでは、先ほどの2点目になりますけれども、登録データの消失をきちんと防ぐことが安全管理措置の1つの大きな柱となっていることを図示しています。バックアップを取得するとともに、保管しているバックアップの保管場所が同じ登録室内でなくて、可能であれば遠隔地に置いておくことで自然災害や火災等の被害があったときに、バックアップのファイルが保管されることを図示しています。

 こうした概念をもとに、既に地域がん登録で実施している安全管理措置を第3次対がんの研究班できちんと精査いたしまして、いかに地域がん登録の情報を保護するかということについて、10年近く話をして、ハンドブックという形でまとめたものがありまして、そのハンドブックをもとに全国がん登録の体制で変化する部分を鑑みて、目次にあるような安全管理措置マニュアルの項目立てを考えております。ここに書かれている目次の項目立てにつきましては、前回提示したものと変更はございません。「ガイドライン」という文言を「マニュアル」に変えたところです。

 今回はそのページ以後のそれぞれの項目が具体的にどういったことを示しているかについて、簡単な文章をつけ加えてありますので、この説明をいたします。

 1ページ目を見ていただくと、「基本的な安全管理対策」ということで、1から4番まで章立てをしています。この1から4番までの章立ては安全管理対策を4つの側面で捉えているもので、こういった側面からきちんと安全管理措置の対策をして、個人情報を保護しようという考えで組み立てています。

 1番目の「組織的な安全管理対策」では、きちんと事業に取り組む人々の組織体制を整備して、また組織にかかわる人々が守るべき規定等の整備、具体的にはマニュアルに基づいて、各都道府県の登録室、国立がん研究センターの登録室で実務者が従うべき規定をそれぞれの関係にあわせて整備しなさいということを念頭に置いています。

 個人情報が保管されている場所ですとか、受け取ったもの等の一覧をきちんと整備すること。さらには安全管理措置の対策について評価し、問題があれば見直すという対策をつくっておくこと。事故もしくは移管が仮に生じた場合にどういうふうに対策をするかということを考えたのが組織的な安全管理対策と考えています。

 2番目の「物理的な安全管理対策」は、もう少し直接的なものでして、登録室の入退室の管理、盗難、窃視等の防止、機器に関しての物理的な保護を項目として考えております。

 3つ目の「技術的安全管理対策」ですが、サーバー、クライアントPCといったものを用いてがん登録事業を行いますので、そうしたサーバーに入ることができる職員の識別、認証、職員の位によってアクセスできる範囲を制限すること、さらには記録をきちんととっておくことで、誰がいつデータベースにアクセスしたかという管理ができる。それから、アンチウイルスソフトを入れておいて、外部からの不正なソフトウエアアプリケーションが入ることのないようにすることといったことを、技術的に安全管理措置を行うという位置づけで考えています。

 最後の4つ目は「人的な安全管理対策」としまして、先ほど申し上げた教育研修が重要だと考えておりまして、この4つの柱が基本的な個人情報保護のための安全管理対策と考えています。

 その次の「作業内容から見た安全管理対策」は、今挙げた4つの視点で書かれた項目を実際の登録室の作業の流れに従って書かれているもので、「入退室の管理」、情報の「取得」、情報の「入力」、「利用・加工」、「保管・匿名化・消去・廃棄」、「バックアップ」、「システム管理」、がん登録室から他のがん登録室への問い合わせや市町村への問い合わせ、都道府県においては病院等への問い合わせ、さらには外部から問い合わせが入ったときにどのように対応するべきかどうか、情報の移送といった点について、登録室の作業の流れに従って、先ほどの4点をまとめ直した。こういう形で個人情報保護のための安全管理措置マニュアルを構成しようと考えております。

 こうした提案です。以上です。

 それでは、資料4について続いて御説明いたします。資料4をごらんください。

 今、御説明差し上げたマニュアルの中身にもかかわる部分でございまして、「情報の移送について」全国がん登録においてどうすべきかという委員の皆様方に御意見いただきたいと思って資料を作成いたしました。情報の移送について、現在地域がん登録でどのようになっているのかをまず御説明します。

 地域がん登録の情報の移送なのですが、病院等からの情報を取得する際に現在は紙の届出票、届出データを含むUSBメモリーやCDROM等の電子媒体を原則として郵送もしくは担当者が直接手渡しをするというやり方をとっております。この際に情報が紛失したり、どこかに遺棄されることがないように、あらかじめ都道府県登録室の住所と赤字で例えば「親展」「取扱注意」と印刷されたような専用封筒を利用することを推奨しております。

 こういった現状なのですけれども、さらに安全のセキュリティを高めるためには、個人情報を含む資料を郵送する際にはきちんとした追跡サービスつきの郵便物を利用するということが望ましいと考えている次第ですが、現在は地域がん登録の制度上、医療機関に対して情報を提出してくださいという依頼を根拠に事業が成り立っていること、もしくはその費用の負担の意味で追跡サービスがついた郵便物は一回につき500円したりそれ以上の値段になるという金銭的な面もありますので、一律に標準的にこの追跡サービスがついた郵便物を使うべきである、というふうには申し上げていないのが地域がん登録での現状です。

 2点目として、今申し上げた郵送もしくは担当者による手渡しが原則で行われているのですが、一部の都道府県においては、都道府県が整備している電子的なネットワークを使って医療機関から都道府県がん登録室への情報の届出を行っているところがあります。これについては先ほど申し上げたハンドブックですとか、研究班からどういったセキュリティを確保しなければいけないか、どういった条件を満たせばこういったものが使えるかという意見については表明をしていない状態です。

 こうした状況を踏まえまして、全国がん登録においては、理想的なセキュリティの状況である追跡サービスがついた郵便物を利用することを、郵送の場合には原則とするべきではないかという御提案を申し上げます。

また、昨今のインターネット等のネットワークの発展も考えまして、安全が確保された電子的な手段であれば、医療機関から都道府県のがん登録室に対しての届出を電子的に行うことを許容すべきではないかと考えています。

 その際に、どういった基準でその電子的ネットワークが安全であるか判断するのは難しいということが、幾つかの電子的な専門家に伺ったところでの私たちの解釈になっているのですが、この2点を満たせば安全であるという判断基準にしてはどうかという提案がこの1、2です。

 1つ目が国または都道府県が運営しているネットワークであること。2番目はがん登録に相当する何か個人情報を含む医療情報の移送手段として実績があることを満たしたネットワークであれば、医療機関から都道府県がん登録室への届出を電子的に行ってもよいとするのがよいのではないかというのが2つ目の御提案です。

 以上報告を終わります。

○辻部会長 ありがとうございました。

 ただいま御説明いただきました資料3、資料4につきまして、委員の皆様から御意見いただきたいと思いますが、その前に資料3の5ページで「安全管理措置マニュアルの目次」とありますが、この目次の3つ目が「マニュアル」でなくて「ガイドライン」となっていますので、御修正をお願いします。

○松田参考人 目次のほうは修正を忘れておりました。失礼いたしました。

○辻部会長 それでは、御意見をいただきたいと思います。

 山本委員どうぞ。

○山本委員 前回欠席して後出しジャンケンみたいで申しわけないのですけれども、この資料3の基本的な安全管理対策というドキュメントですけれども、もう少し基本的な安全管理に直したほうがいいと思うのです。普通、情報の安全管理は、まず、守るべき情報を明らかにしないといけないということで、これは抽象的な登録情報という意味ではなくて、例えば郵便物で来る場合、その郵便物はあるプロセスを経て、最終的にデータベースに入力されるわけですけれども、その過程が幾つかございます。そのそれぞれについて守るべき資産を明確にした上で、それ以外にも例えばログ情報は守るべき資産ですから、リストアップして、最初にリスク分析をしないといけないです。これが一体どういう状況で危険に陥るかというのをリストアップする。それぞれに対して対策を立てるわけですが、その対策がここに書かれている1から4までの対策になるわけですけれども、それぞれの対策をとってもさらにリスクが残ることがあります。これは人間がかかわることですから、100%間違わないことはあり得ないわけですから、残余リスクというのがあって、これがもしあらわれたときに、では、一体どう対策をとるのか。現実には例えばどう連絡をして、どういう行動を起こすのかという話ですけれども、これをまとめて、チェックアンドアクトで、うまくいっているかどうかを監査していかなかったら、おかしいところを修正するのが一般的に言う情報セキュリティの手段だと思うのです。

 したがって、これは資産の同定が1に入っていて、入れ子が少し逆になっているような気がしますし、多分実際にやるときにわかりにくいのだと思うのです。そこは少し体裁の問題もほとんどですけれども、書き直したほうが結局はわかりやすいのではないかなと思います。

○松田参考人 ありがとうございました。

 体裁等を含めて実際に使う立場に立って、わかりやすく、確実に保護できるようにということを努めて、書き直しをしたいと思います。

○辻部会長 松本委員、どうぞ。

○松本委員 ありがとうございます。

 私も前回欠席をいたしましたので、議事録を拝見して、それでお尋ねをさせていただきたいと思います。たしか前回の御発言の中に外部監査、外の目を入れることが重要だという御発言があったように思いますけれども、そのあたりはこの中ではどこに盛り込まれているのでしょうか。

○松田参考人 1、2、3、4の項目でいいますと安全管理対策の評価、見直しといったところに内部できちんと評価をすることがまず1点目ありまして、さらには外部評価を経て、外の目できちんと確認をしていただいて、問題があれば改善をするという工程を、ここでいいますと1の(4)に記述をする予定になっております。

○松本委員 済みません、情報が適切に役立っているということが大前提であることはありまして、特にこだわっているということではないのですけれども、外部の目がどういうふうに入っていくのかとか、そういった具体的なことはこれからまたこの場で検討ができると理解しておいてよろしいのでしょうか。

○事務局 その辺の安全管理については、どのような形で御提出できるかわかりませんけれども、またきちんと事務局のほうで確認をいたしまして、何らかの形でお示しできればと思います。

○辻部会長 どうぞ。

○澁谷委員 済みません、初歩的な質問で今の6ページの一番上の段落のところですが、例えばここには登録室の職員の責任と権限を明確に定めるとされていますが、登録室の管理責任者の役割の範囲とか責任というのは、どういうふうに決められるのでしょうか。責任者の部分も必要ではないかということと、先ほど外部監査のことが(4)に当たるということで、お答えがあったのですが、これを見ますと各都道府県が基準や手順書をこれに沿ってつくっていくことになるかと思うのですが、そのときに、例えば安全管理をするための委員会を設置するとか、具体的に都道府県のレベルでしなければいけないことについて、今のことだと(1)に当たるとか何か具体的なものが示されていくことになるのでしょうか。この目次と内容だけでは都道府県に示されたときに、ここから規定や手順書をつくるときに、なかなか難しい部分があるかと思うので、少しその辺を補った説明をしていただけますでしょうか。

○松田参考人 地域がん登録で既に使っておりますハンドブックでは、今おっしゃっていただいた内容がかなり詳細に書かれておりまして、管理責任者である人がどういった責任範囲を持って、どういったことを定めるべきかとか、登録室の職員は何をすべきか項目立てて書かれております。

 さらに、監査も含めてですけれども、都道府県のがん登録室でこれに従ってマニュアルをつくるときの項目がこの1、2、3、4、5はさらに上位の概念的なことでして、これに従った最低限すべき対策というのが、例えば(1)はそれぞれに5つずつあるような、全体にチェックリストになる形で組織的安全管理対策という1つの章が構成されておりますので、全体のマニュアルが完成して、刊行されるときには、都道府県もしくは国のがん登録室がこれを受け取って、作業手順を問題なくつくれるようなつくりにはなっていると考えております。

○澁谷委員 もう一ついいでしょうか。

 資料4で提案ということが書かれているのですが、実態で今地域がん登録では情報の手渡しというのがあるのですが、全国がん登録の提案では手渡しというのは無くて、これは例えば手渡しだと何かトラブルがあったときに個人の責任になってしまうということで、外してあると考えればいいのでしょうか。

○松田参考人 全国がん登録の体制になっても、場合によっては情報を個人が運ぶと公のサービスではなくて、そういった場面もあると考えております。その安全管理マニュアルでは、そうした場合には、例えば複数人で情報を移送することとか情報を入れたかばん、鍵つきのもので運ぶとか、公共のサービスを使わないで乗用車を使ったほうが、置き忘れ等の際に情報が漏えいすることが少ないですとか、細かい点に関しても定めておりまして、そういったケースがない前提ではないのですけれども、標準的なやり方を全体で定めたほうがいいのではないかという考えで、このように書いています。

○辻部会長 よろしいですか。

 黒田委員どうぞ。

○黒田委員 まず資料3についてなのですけれども、2点なのですが、1つ目は3ページにWindowsというキーワードが出てくる、多分ソフトウエアだったりシステムの立てつけによってマニュアルのつくりは大きく変わってくるのだと思うのですけれども、そのあたりのシステムの立てつけも含めてマニュアルの中に書かれるのか、そこはどんなふうに記載される御予定なのか教えていただきたいです。それによって、ここに書かれている以外でネットワーク上につながってあるのであれば、このリスクは変わってくるはずですから、そこをまず確認させてください。

 2つ目なのですけれども、8ページのシステム管理のところに初めて「外部の保守要員や開発者」という言葉が出てまいりますけれども、一般的にこの手のものは運用をするとき、もしくは設計するとき全て自前でできることはほぼないので、外部との契約事項が発生することになると思うのですが、そのあたりに関する細かい注意事項についても、詳細はこれから書かれることで理解しておりますが、記載されるということでよろしいでしょうか。

○松田参考人 では、今御質問いただいた2点についてお答えいたします。

 1点目のシステムについてなのですが、これは統一した全国がん登録のシステムを国がんで開発しておりまして、これはたまたまWindowsとなっているのですが、実際にはWindowsでしかもOSでいうと8.1でなければつながらないというオンラインの仕組みになっておりまして、全国がん登録のシステムにおいて、かなり都道府県の登録室で気をつけないと、何かシステム上の先ほどの4本立てでいいますと技術的な部分について、都道府県がそれぞれ気をつけないと情報が漏えいしてしまうとか、ウイルスが混入してしまうことは最小限に食いとめているような仕組みになっております。

 そのシステムのログオンにつきましても、OSWindows、その後、新クライアントのシステムでセキュリティが確保されておりまして、今の地域がん登録であるような各地域で例えば使っているOSが違うとか端末が違うとか、それによる何かセキュリティの対策が違うという状況ではないことを御承知おきいただけたらと思います。

 2点目については、今つくっておりますマニュアルでは外部の業者ですとか作業員との何か契約ということで、個人情報保護に関してのきちんとした条項を盛り込むべきということは書いておりますが、とりたてて細かく例えば契約書の例が出ているとか、統一した様式で安全管理措置について契約をするところまでは詳細に書かれておりませんで、いただいた意見をもとにもう少し統一して外部業者と契約を結べるようなマニュアルに仕上げていきたいと考えております。

○辻部会長 よろしいですか。

○黒田委員 前半のお話、済みません、細かいシステムがどうなっているかお聞きしていたというより、それとセットでこれはつくられるものですよねという質問なのです。

○松田参考人 そのシステムを使うがゆえに、そのシステムに基づいてこういった点に各登録室では注意すべきというシステムに基づいたマニュアルになると思っております。

○黒田委員 わかりました。

 もう一点質問よろしいですか。資料4ですが、2の全国がん登録での提案の2つ目、データの転送のところで、「国又は都道府県が運営しているものであること」を1つの条件、2つ目が「実績があること」という条件がとられて、ネットワークを規定されているわけですけれども、そもそもネットワークなのかアプリケーションなのかによって考え方も違いますし、「国又は都道府県が運営している」というキーワードも気になります。一般的にたくさんの人たちがかかわってつくられているソフトウエアであったり、もしくは企業がつくってたくさんの人が使っているソフトウエアのほうが、国や都道府県が独自につくったものよりははるかに安全性が高いというのが一般論です、たくさんの手が入って、たくさんのチェックが入っているわけですから。そこでこの規定を入れることにどのぐらいの意味があるのか非常に疑問に感じるところがございまして、このあたりの条件をつけようとされた意図があれば教えていただきたいのです。

○松田参考人 まず、安全性の確保という意味では、例えばアプリケーションという形で絞った場合にどういった要件を満たしていたらいいのか、ネットワークでいえばVPNの要件を満たしていればいいのかという最初の想定ではいたのですが、今、国がんのシステムをつくっている例えば富士通といったITの専門家に聞いたところ、なかなか統一してこういった基準であれば使ってよいという技術的な基準を示すことは難しいことを回答としていただきました。

 そういったものであって、手放しにどういうネットワークでもいいとすべきなのか、何か基準を示すべきなのかということを考えた上で、どういった基準を示せば一般国民の視点も考えた上で、安心して情報が移送できるネットワークだということが言えるだろうという観点であります。

 もちろん、先生がおっしゃるような民間のネットワーク、民間のアプリケーションサービスを使うほうが客観的に見てより安全であるケースは多々あるとは思うのですけれども、そうした基準がこの全国がん登録において、果たしてどういうふうに受けとめられるかところで、より何か公的なものというほうが安全性は高いと考えられるのか。それ自体どちらの安全性が高いか低いか具体的に示せれば、もちろん科学的な何か数値に基づいてこちらを使うべきだということは言えると思うのですけれども、そうでない場合に、どういった基準を示せばいいかということで、考えついた案がこちらになっていて、公的なものでかつ実績があるところが最低限の基準になるのではないかという考えです。

○辻部会長 よろしいですか。

○松田参考人 何かお考えがあればぜひお知恵をかしていただけたらと思います。

○山本委員 この1というのはアンドという意味ですか。

○黒田委員 不可能ということと同じ意味だと思うのですけれども。

○山本委員 そういうことですか。

 今、割合としては多分50%ぐらいですけれども、診療報酬請求明細が電子的にネットワークで伝送されています。あの中には不正確なものも入っているかもしれませんけれども、診断名が入っていますし、それなりに機微な情報を制度として送っているわけです。あれは国や都道府県が設置したネットワークを通っていないと思いますけれども、それは実績ではなくてということですか。

○松田参考人 運営ですとかネットワーク自体、例えばNTTの回線を使っているかどうかというところで、厳密にどういった状況が国と都道府県が運営しているものという点につきましては、定義としてはなかなかここではっきりと書き込んでいるわけではないのですけれども、運営主体、管理主体は国または都道府県というぐらいの考えで書いています。

○山本委員 この2つを出すのは現実にはないと思います。ですから、ほかのだということになるのだと思うのですけれども、一方で、先ほど申し上げたようにレセプトのオンライン請求、オンライン伝送に関しては、保険局がつくったガイドライン、衛生局がつくったガイドラインがあって、それに従っていれば一応送ってもいいことになって、支払基金が受け取ることになっているのですけれども、それでは不十分だということですか。

○西本参考人 まず、先生御指摘のレセプトの情報と根本的に違うのは、氏名、住所、生年月日、性別、個人識別情報が全て入った情報になるということです。現実にそれに関して暗号化した形で出していただくという方策はとろうと思っておりますけれども、この版を考えた背景にございますのは、既に一部の都道府県において自身が運営しているネットワーク上のストレージサービスに出していただく形での運用をされている都道府県がある。

 現状、病院等から見ますと、そういう形での移送のほうが病院のセキュリティポリシー上も比較的安全であろうという対応をされる病院については、現実にそこのサービスを使いながら提供されている。そのやり方をある程度認めながら、都道府県によって幾つかのやり方がございますので、全国がん登録においてもそこの利便性ですとかセキュリティのバランスを考えながら、現状認められている部分については、許容できる形での基準をつくれないかということで、このように書いたということでございます。

○山本委員 レセプトの根本的な違いは全くわかりませんでしたけれども、根本的な違いがないと思っています。それでもう一つ、例えばここで言うレターパック、書留、特定記録郵便、ゆうパックはここにUSBスティックを入れて送るということであれば、このスティックの追跡はできるのです。でも、こういうときに起こる事故の大部分は入れた側は1,000件送りました、受け取った側は950件しかありません。この50件は一体どちらの責任ですかということが一般に最もよく起こる事故であります。これはどちらかの間違いなのですけれども、この責任分解点がわからないのです。これは真ん中の郵便局、JPが保障してくれるものでは、絶対に中を見てはいけないですから見られないです。そうすると、ある病院がJPに渡した瞬間、俺たちは1,000件だと、これで責任は果たした。受け取った側は950件しかなかった、50件どうしたのですかというと、これはもう解決のつかない問題になってくるわけです。

 それに比べると、きちんとしたネットワークで件数を確保して、ここに来るまではあなた方の責任、ここから先は私たちの責任という責任分解点が明確なほうがはるかに間違いは少ない。そういう欠点長所があるので、現状やっているからこれを認めるというのはちょっと消極的過ぎるのではないかという気はします。

○黒田委員 よろしいですか。

 山本先生がほとんど御指摘になっているのですけれども、最初おっしゃったように、技術的に完全な解はどんな方法をとってもないはずです。それはどんなITの技術者に聞いても、私もエンジニアの一人ですから、同じ答えしかできないと思います。きのう安全だった方法があした急に破られる世界ですから、その状況で国や都道府県がやっていることを条件にすることは多分ほとんど意味がない。

 それから、医療情報の移送実績があること自身にもほぼ意味がないと思うのです。それよりも何がしかの手順を定めて、定期的なアセスメントをしたほうがいい。安全であるか、安全でないか、定期的なアセスメントを何かしらの外部機関をそれは都道府県の負荷がふえることにもなるのですけれども、アセスメントを定期的にしながら定められた手順に基づいて物事をやるということだけを定義しておいて、あとは定期的なアセスメントに(安全性の判断は)預ける以外に手はないと思うのです。それを外的に国とか運営主体がということで定めることにほとんど技術的意味はなかろうと思いますし、ちゃんとアセスメントが繰り返されているのであれば、国民の御理解もきちんと得られるのではないかと考えます。

○辻部会長 これにつきましても少しまた御検討いただくということで、委員会の外でも山本委員、黒田委員ともまたお願いいたします。どうぞ。

○磯部委員 細かいことなのですけれども、既にいろいろ指摘のあった点も含めてですが、例えば6ページの1、2、3、4というのは、結局、疫学指針であったりゲノム指針で書かれている個人情報保護の安全管理措置の細則に書いてあるものの柱書きを割とベースにしているということなのだろうと思います。そこだけ抜き書いてきて、しかも1の最初の1行目に「管理責任者は」という主語を入れているところが、やや混乱を来しているのではないかという感想を持ちました。

 情報について適切な管理のために必要な措置を講ずるべきだというのは25条の1項、2項、3項で大臣、がん研究センター、知事、市町村長と位置づけられているわけです。片方でガイドラインにおいては研究機関の長がこれらの安全管理措置をとる主体だと位置づけられ、具体的な措置としてこの4つが書いてあるということなのです。このマニュアルの受け手はどうしたらよいのかよくわからないという御指摘もありましたけれども、例えば規定を定めるとか職員の責任と権限を定めるということは長しかできないのではないかという気がするのです。現在も既に研究機関の長とか、医療機関施設の長はそういうことを定めているのではないか。そういうのと平仄を合わせる形で、もう少し書きぶりを変えられたほうがいいのではないかという感想を持ちました。

 これも取捨選択をややされているような気がしまして、中身ももう一度精査の余地があるかと思ったのは、例えば6ページの一番下、「秘密保持義務」と書かれていますけれども、これも公務員法のあるいは刑法の医療従事者の守秘義務という話もあれば、もともとのガイドライン、規約研究の倫理指針などでは雇用契約や委託契約をするときに非開示義務を定めた契約を定めることを具体的な例として書いているわけで、これも施設の長しかできないことなのではないかという気がするわけであります。

 ですので、名宛て人を誰にするのかというところからもう一度精査する必要があると、それが混乱の原因ではないかというコメントでした。

○松田参考人 ありがとうございます。

 きちんと確認した上で改変したいと思います。

○辻部会長 家原委員。

○家原委員 ありがとうございます。

 先ほどの情報の移送に関してなのですが、このマニュアルの8に、国がん登録室から都道府県への問い合わせという項がございました。この問い合わせに関しましても、資料4の情報の移送を御利用になられるのか、この情報の移送のところでは、病院から登録室への届出しか書いていないように思うのですが、その辺のところの確認を教えていただければと思います。

○松田参考人 問い合わせにつきましては、大きく言えば情報の移送なのかもしれないのですが、届けられた情報について疑義があった場合に、どのような手段で個人情報を含むことについての問い合わせをすべきか。例えば電話で直接相手が誰だかわからないときに個人情報を伝えることをしてはならない事柄について定めております。

○家原委員 この情報の移送の資料4を具体的に使うということは明記されずに、もう少し緩やかな方策をとられるということでしょうか。

○松田参考人 そうですね、例えばファックスを使わないとかそういった情報、問い合わせを電話ですとかそういったものでの問い合わせをする際に、注意すべき事項を定めるということを念頭に置いて書いております。

○家原委員 具体的に個人情報が入ってきて、住所の問い合わせであるとか個人名の問い合わせとかあると思いますので、情報の内容的には同じかなと思いますので、この資料4を確認されたほうがよいのではないかと思いましたので、御質問させていただきました。

○辻部会長 松本委員どうぞ。

○松本委員 済みません、今のでほぼ確認はできたかなと思うのですが、移送のことについて教えてください。

 資料4の情報の移送は、病院から都道府県がん登録室への流れですけれども、その逆流も恐らくあるのだろうということを現場の先生から伺っております。都道府県登録室から病院へ逆に情報を移送するときもこの資料4と同じということの理解でよろしいでしょうか。

○松田参考人 今申し上げた問い合わせはもう少し電話等を想定したものですが、都道府県から病院、国のがん登録室から都道府県のがん登録室へ情報を移送するときは資料4の規定と同じものになると思います。

○松本委員 ありがとうございます。

 もう一つ、済みません、よろしいでしょうか。

 ガイドラインであったものが前回の議論で表記はいかがかという御意見があったようで、マニュアルに変わっているわけですが、このことによって重みがどのように違うのか、このマニュアルそのものがどの程度の重みを持つのかということを患者の立場として気になるのですが、教えていただけますか。

○事務局 これは重みというより法律で遵守すべきものをガイドラインとしているため、言葉を整理させていただいておりまして、マニュアルとなったから軽いというわけではなくて、都道府県が統一した方法でやれるようにお示ししてなるべく守っていただくようにと思っております。

○辻部会長 よろしいですか。

 なるべく守っていただくというよりは、必ずしなければいけない。

○中西委員 資料3の9番の外部からの問い合わせのところですけれども、ここは1、2、3と分けてありますけれども、例えば大学、研究機関、学術団体等からの問い合わせはここにはないようですが、それはどういうふうな分類にしてあるのか、想定したのか教えていただければ。

○松田参考人 今おっしゃった学術団体等であれば(1)に含むべきではないかと思いますので、漏れということで記載は追加しておきます。

○辻部会長 ほか、よろしいでしょうか。

 それでは、次のもう一つマニュアルがございますので、それにつきまして資料5です。御説明をお願いいたします。

○松田参考人 資料5について、私、松田のほうから引き続いて御説明差し上げます。

 全国がん登録においては、情報利用及び情報の提供が法律の中でも定められておりまして、その方法について安全管理と同じように、マニュアルにおいてその実際の実務的なやり方ですとか統一した様式を定めるべきではないかという発想に基づいて、本マニュアルを構成しております。

 マニュアルについては目次を立ち上げ始めておりまして、中についても作成を進めている最中です。

 裏面をごらんいただいて、マニュアル、目次をごらんください。安全管理と同様に目的ですとか用語の定義がありまして、その後、大きく項目として書いているのが、まず事務処理の流れの概要です。事務処理の流れの概要については、この後、図をつけておりますので、そちらで御説明したいと思います。

 さらには、審議会の運用の体制等について定めるのがよいのではないか。

 実際に利用に関しての申請ですとか提供の方法について、17条、18条、19条及び21条の運用体制については、審議会が法律の文章の中で登場しますので、これをまとめたほうがよいのではないか。法20条につきましては、病院等に対して提供する際に審議会という言葉が法律の文章の中にありませんので、運用体制としては分けて考えたほうがいいのではないかという発想に基づいて、2章立てにしております。

 それから、手数料について国のほうでは政令等で定められるものがありますので、手数料の算出について21条の3項及び4項に係るデータ利用の申請があったときには、手数料を算出する手順や方法について定める。さらには条例をつくることができると法律では書かれておりますけれども、都道府県間情報の利用において手数料を徴収する場合には、こうした手順に従うべきだという流れについて、法21条8項及び9項の手数料の算出を定めております。

 その後は、実際に申出者として申請があった場合にどういった流れで例えば利用目的について確認するか、審議会でどういうふうに審査するとか、結果の通知をどうするかといったことを記した上で、匿名化についてもこのマニュアルの中で書いたほうがいいのではないかということで、匿名化を章のタイトルとして挙げています。

 その後は、利用が終わった後についての対応、利用中の必要に応じた監査といったものについて定めるとともに、情報の利用が終わった後に、実績の報告をさせるのがよいのではないかということで、報告についてを定めております。

 最後には、利用または提供の状況について、それぞれ都道府県がん情報は都道府県において何件、どういう目的で使われたか把握することになると思うのですけれども、どこかにまとめて全国がん登録情報及び都道府県がん情報の利用実績が管理されていたほうがいいのではないかと思いましたので、提供状況を報告するような何か仕組みを考えたほうがいいのではないかということで、その報告を章として挙げました。

 以上です。

 その裏の事務処理の流れの概要はこの次の図を見ていただいたほうがわかると思いますので、今省かせていただきます。

 次のスライドでまとめているのががん登録推進法でのデータ利用について、本件とは別の研修で使ったスライドの抜粋を掲載させていただいております。第17条が抜けてはいるのですが、第17条では厚生労働大臣による利用等が書かれておりまして、国、厚生労働大臣が全国がん登録情報を利用する際の定めがあります。そして、18条では都道府県知事による利用等ということがあって、みずから利用し、または、「(後略)」と書いてありますが、次に掲げる者に提供することができるというのが第18条です。

 第19条では、市町村等へ都道府県知事が都道府県がん情報を提供できるという定めがあります。

 次の20条では、病院等への提供ということで、都道府県知事が病院等から提供の請求を受けたときに提供を行わなければならないという定めがあります。

 次の21条では、その他の提供と書かれておりまして、念頭にあるのが研究者による研究利用ですけれども、21条は厚生労働大臣またはその後には都道府県知事が都道府県がん情報についての提供が書かれているのですが、申請があった場合には幾つかの条件に基づいてその提供を行うことができるという定めがありまして、17条、18条、19条、20条、21条が主に情報の利用と提供について定められている条文と考えております。

 それぞれの情報の利用、提供の運用体制について図を案として考えてまいりましたので、説明いたします。

 まず、図1をごらんください。第17条に定められている厚生労働大臣による利用等ということです。ここで想定されるのは全国のがん登録の毎年の例えば罹患数、罹患率の報告、もしくは厚生労働省が行う何か調査、分析にデータを利用したい場合に、第17条では審議会の意見を聞くことがありますので、流れとしましては提供と書いてありますが、利用内容の検討をした上で、文書の形で申し出をして、窓口組織となるところがその文書を受け取って、文書審査を行います。その結果に基づいて文書審査で問題がなければ、厚生科学審議会に内容の審査の依頼をして、審査をした上で結果が通知され、問題がないと判断されれば全国がん登録センター、登録室に対してデータの作成指示をして、利用者である厚生労働大臣もしくはその委託を受けた者がデータを利用するという流れを考えおります。

 同様に18条の都道府県知事による利用も流れとしては一緒です。都道府県が設置する審議会等という国のレベルでいう厚生科学審議会に相当する審議会が同様の審査をしまして、問題がない通知があった段階で、窓口組織が都道府県のがん登録室に対して申請があったデータの作成を依頼、そのデータが提供される仕組みがいいのではないかと考えております。

 第19条については、市町村から依頼がありますので、都道府県としては外部組織からの依頼という形になりますので、外部組織から依頼があって同様に都道府県の審議会等に諮って、結果を受け取るわけですが、結果を受け取ったものに基づいてデータを市町村に提供する。これは外部の組織になりますので、データの利用をした後できちんと廃棄がされているかどうかということの確認を窓口組織ですべきではないかと考えておりまして、幾つかの手順を追加しております。

 図4は20条になるのですが、20条については法律の条文に特に病院から申請があったときに審議会の意見を聞くことが書かれておりませんので、申出文書の提出に基づいて、それが17条のただし書きに従うという基準がありますので、内容的に問題がなければ、すぐに都道府県がん登録室に依頼をして、データの作成をして、病院等にデータが提出される形を考えておりますが、情報としましては、都道府県がん情報であるということを考えますと、受領した後の保管期間は一般的な利用と変わらないのではないかと考えまして、例えば情報の廃棄、利用の実績ということは、報告の必要があるのではないかと考えております。

 5番は21条の1項~2項ということで、都道府県や市町村が厚生労働省に対して自県のデータ以外の全国がん登録情報の利用をする場合の手順が書いてあります。これはほかの先ほどの市町村の利用の場合の流れとしては変わりませんので、割愛いたします。

 図6と図7は手数料が絡む場合でして、手数料が絡む場合は一つ手順を追加して、事前に相談をした上で、その相談内容に基づいて対応ができるかどうか、集計の工数及び手数料の算出、見積もりのようなものを先に出して、それに利用を検討しているものが納得すれば、申出文書を提出して、あとは文書の審査、内容に関する審査を審議会が行うことを考えております。

 審議会のオーケーが出た後は結果通知をして、先ほど見積もりをした手数料が納入されたのを待って、データの作成依頼ががん登録センターに出る流れがよいのではないかと考えています。

 図7の21条8項から9項の都道府県がん情報の手数料を徴収すると都道府県が定めた場合も、同じような作業手順でよいのではないかと考えまして、この図を御提案差し上げます。

 データ利用については以上です。

○辻部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明に対しまして、委員の皆様から御質問、御意見お願いいたします。

 どうぞ。

○澁谷委員 済みません、利用者がデータを受け取ってから廃棄するまでの利用者の手元にあるデータの保持期間、保有期間はそれぞれ何か決めをつくるのでしょうか。

○松田参考人 政令か省令かはっきり申し上げられないのですが、正式に決まる事項で、マニュアルで定めるものではないと思います。

○澁谷委員 それはここで決めなくても、例えば1年の範囲あるいは延長してということになるのでしょうか。

○松田参考人 そうですね、その延長に関しても政省令のほうで最初の年限と延長申請して延長ができる規定がされると思いますので、それに従ってということで、政省令の内容についてまた繰り返し、マニュアルのほうに書く可能性がありますが、単独でマニュアルで決める事項ではないと。

○澁谷委員 そうするとそこの図で延長の手続という矢印が出てくることになるのですか。

○松田参考人 そうだと思います。

○澁谷委員 わかりました。

 それと最後の方にがん研究者というのが出てくるのですが、例えばがん研究者の個人でということは余り考えにくくて、どこかの病院とか研究機関とかから申し込みをすれば、無料という言い方はおかしいですけれども、公の研究であれば、そこの所属の病院とか機関からすれば、こういうことでなくてもいいような気もするのですけれども、がん研究者で個別に申し込みをするというのはどういう場合を想定しているのでしょうか。

○松田参考人 基本的には研究班ですとか研究所に所属している方が想定にはあるのですけれども、申請者というのは、研究班というものではなくて、研究者個人の申請になるのではないかと考えておりますが、今現在も多分さまざまなデータ利用について、個人がデータの利用の責任者という意味も込めまして、申請をする形になっていると思います。

○辻部会長 はい。

○中西委員 今のことに関連してなのですが、私も研究者の廃棄のところは慎重に、周到に対応しないと問題が出てくるという気がしています。

 まず第1点は、研究にもし使った場合新しい指針が臨床研究においては、その情報を終了5年もしくは発表3年のどちらか長いほうと定められておりますので、これとの整合性をどうするかということが一つ問題になるような気がいたします。

 匿名化情報を含め情報の種類にもよると思いますが、そこをぜひ整合性をとるような形でお願いしたいと思います。もう一つはデータの廃棄そのものについては、研究者サイドにデータが回ったときに廃棄の意味、具体的な内容がわからないことが多いと思うのです。したがって、ぜひ具体的にどういうことが廃棄とみなされるかをしっかりと定義づけることによって、問題がないようにしていただく必要があると思っております。

 先ほどコストの話がありましたが、私は、臨床研究はお金がかかるのが当たり前と思っておりますし、お金も出ないような研究はやるべきではないと思っております。しっかりした研究であればあるこそ、公的資金等を獲得して、柔軟にかつきちんとした運営をしていくべきではないかと思っておりますので、一言つけ加えさせていただきます。

○松田参考人 コメントありがとうございます。

 今いただいた意見を反映させるマニュアルにしたいと思っております。

○辻部会長 今の中西先生に追加ですけれども、例えばアメリカではナショナル・デス・インデックスという部署がありまして、これはアメリカで亡くなった方の死亡情報を全部データベース化する機関で、研究利用を行うためのものです。研究者がデータベースを利用するときは、そこに生存確認したい研究対象者の名簿を付けて申請をすると社会保障番号などでリンクできますから、ほぼ完璧なマッチングができるようになっています。したがって、コホート研究もほとんど100%の追跡率という状況になっているのですが、ナショウナル・デス・インデックスにデータ照合を申請する際の料金は結構高いのです。スタッフが5~6人いるのですが、その申請料だけでスタッフ全員の給料が確保できるそうです。ですから、財政的に厳しい日本でも、アメリカと同様の考えでもよいと思いますので、それも含めて御検討いただきたいと思います。

○松田参考人 わかりました。

○辻部会長 ほかにございませんか。

○松田参考人 手数料について、研究者は所属機関の長であるべきという御意見をいただきましたので、参考にさせていただきます。ありがとうございます。

○辻部会長 ほかにいかがですか。

 丸山先生。

○丸山委員 20条に基づく病院等への提供なのですが、この場合、自分のところが届け出た件についての追加情報を都道府県等から提供を受けるということなので、そういう情報がカルテに記載されて、それに取り込まれてしまうと、カルテの保存が続く限り廃棄というのはちょっとイメージができないのですけれども、そのあたりはいかがでしょうか。

○松田参考人 技術的に難しいという問題と、提供される情報が果たして法律の中で何になるか。都道府県側の情報という位置づけなのか、20条に関しては別紙のものという解釈をするのか、そのあたりは今後検討するべきということです。

○西本参考人 がん登録自身はデータを二次利用して提供していただいて得た情報。病院等で利用が必要になる情報の主なものは、恐らく死亡者情報票による死亡情報ががん登録の情報に付随してデータベースにはおさめられておりますので、そういうものについて、病院等から問い合わせがあった場合に情報提供をする、データ利用をしていただく。それに基づいて病院においては、医療の質の向上のためにデータ利用していただくのが法の趣旨として20条に書かれておりまして、その情報を例えばカルテという形で保持するのか、それともそれ以外の例えばがん登録情報で保持するのか。

 どういう利用をするのかというところまでを認めるかどうかについては、恐らくこの部会でも議論していただく必要があろうかと思います。例えば、これで得られた情報を各臨床の先生方が利用して、当然生存率等の治療成績を出していくと利用されることが恐らく考えられるわけですけれども、そういう場合に、その情報をさらに例えば第三者に、学会登録等に提供するかどうかに関しても、この部会においてこの範囲であればいいだろう、こういう使い方について問題があるだろうという見解を示していただけますと、病院等の利用もある程度見えてくるのではないかと考えます。

○薄井委員 よろしいですか。

○辻部会長 どうぞ。

○薄井委員 今の件でございますけれども、病院等の利用については、ほかのものについては審議会等々の評価が入っているのですが、これは全然入らないという解釈、どういう形を想定しているのか、私もよくわからなかったのですが。

○松田参考人 法律の文章中に、私が申し上げたのは法律の柱書きの中に審議会等の意見を聞くという文言が入っていないということで、自分の医療機関から届け出た情報に都道府県側の情報が付加されて返ってくるものについては、利益を害するものでなければ、特にいい悪いという審議会の判断なしで返せると定めているのであろうという理解のもとに発言いたしました。

○薄井委員 そうしますと、この情報は丸山先生の御指摘にもありますけれども、自分のところの情報を一度そちらに通してとってくることになるわけですね。そうすると、先ほどの話ではないですけれども、廃棄するところに非常に違和感を持ってしまうものですから、そこの解釈が難しいかなと。

○松田参考人 難しいと思います。一応、20条には提供する情報は都道府県がん情報であると規定がきちんとされているので、都道府県がん情報の保有については先ほどはっきり申し上げられなかったのですが、政令のほうで保有期間が決められるということで、都道府県がん情報という位置づけである限りは、この政令が適用されるであろうという解釈です。なので、丸山先生の意見を何かグレーゾーンという形でなくてきちんと整理するのであれば、例えば政令の中に何か特別に20条に係る場合は違うとかもしくはそういった解釈を通知する対策が必要なのではないかと思います。

○薄井委員 第三者の審議会、大きなものでなくても何か評価するものを置いておかなくてもいいのかどうか、逆に。当然病院の中の委員会等々を通して請求ということになるのでしょうけれども、そういう文言でも入れておかないと病院が非常に自由にアクセスするのはいいことなのですけれども、自分たちの出した情報ですから。ただ、利用する人たちが出した人たちでない可能性もあるわけですから、その辺のところは解釈が難しいかなと思いましたので。

○辻部会長 黒田委員。

○黒田委員 済みません。法律の専門家でない者がこんなことを言うのもなんですが、20条の中には括弧書きがございます。厚生労働省令で定める云々に限るという、これの範囲の中が20条で請求される情報なはずで、そうすると、これは診療情報として一般的に記録すべき情報に当たるのではないか、特に死亡情報に関しては死亡された情報を持っていないと、カルテはいつまでも生存の状態で残ってしまうので、それもあり得ないですから。私は専門家でないのでこんなことを軽々に言うべきではないのかもしれませんけれども、括弧の中に書かれている情報を見る限りは、一般的に御本人もしくは御家族に問い合わせてカルテに書くことがあると思いますけれども、カルテに書かれた情報に限られているような印象を私としては受けたのですが、いかがでしょうか。

○柴田参考人 こちらの括弧書きについての想定を御説明させていただきますが、まず、20条をつくった想定は、現在の一部の地域がん登録で行われてきました届け出された情報を病院等に予後情報をつけて返すことを法的に認めるためにつくられた条文です。そのときの生存確認情報はどこから来るのかというと、これは届け出情報のときもあるし、それより多くは死亡者情報票で確認した情報になります。ですので、ここであえて厚生労働省令で定める生存確認調査情報と定義しているわけです。

 先ほどから自分たちが届け出た情報を返されるだけかという点につきましては、都道府県がん情報の中にはここの括弧書きにありますとおり、届け出いただいた情報に生存確認情報という全国がん登録で初めて集めた情報が付加されておりますので、それを必ずしも自分たちだけで既に持っている情報ではない情報が返されますので、少し制限が置かれているということになります。

○辻部会長 よろしいですか。

 ほかにどなたか。よろしいでしょうか。

 それでは、次の議題に移りたいと思います。2つ目の議題になりますけれども、同意代替措置に係る指針について、国立がん研究センターから御説明をお願いします。

○松田参考人 引き続き国立がん研究センター松田から御報告いたします。資料6をごらんください。

 資料6は「法附則第二条に基づく同意代替措置の指針について」ということで、タイトルから少しわかりづらいかと思うのですが、順を追って説明いたします。

 法律の今のデータビューアのところにかかわるのですけれども、第21条第3項第4号では、非匿名化の情報について書かれております。非匿名化情報を研究の利用調査に当たる者に対して提供する際の条件といたしまして、その対象者が生存している場合に当たっては、そのがんに係る調査研究を行う者が当該がんに罹患した者から当該がんに係る調査研究のために当該全国がん登録情報が提供されることについて同意を得ていることという決まりがつけられています。

 これはつまりは例えば想定されるのが、コホート研究においてアウトカムとしてがん罹患を利用する際に、コホート研究へ参加する参加者、被験者があらかじめコホート研究参加の際に、全国がん登録情報と照合してあなたががんに罹患した際に、そのがん罹患の情報を取得しますということを説明して、きちんと同意を得ている場合に限り、その名前がついた情報を活用する。つまりコホート研究の名簿と全国がん登録のデータベースをマッチングして、がんに罹患している、していない、もしくはがんで亡くなったか死因も含めてそういった情報を付加してデータを提供することができると書かれております。これは法律に定められていることなのですけれども、この法律自体は法が施行後にはこのとおり運用されていくと思うのですけれども、資料にあるとおり、我が国においては既に数万件、10万人を超えるような大規模なコホート研究が実施されておりまして、非常に多くの研究成果を出している有用な研究がたくさんあります。

こうした研究が、2016年に開始されることが想定されている全国がん登録のデータを利用することは、我が国の公衆衛生にとって非常に有用な結果を出すことが想定されます。

 ただし、法律に基づいてきちんと第21条3項、4項に想定されているような同意を改めて数万人、もしくは10万人を超えるような対象者に対して取り直すこと自体は多くの場合非常に困難で、場合によって不可能であることが研究者から既に発言されておりまして、こういった場合に、既存のコホート研究は全国がん登録も利用できないかということになると、やはり公衆衛生の向上を考えると利用させるべき何か方策を立てるべきではないかということが、法律をつくる段階から言われていたと伺っております。

 それを可能にしているのが附則の第2条第1項の経過措置でありまして、政令の基準に該当し、厚生労働大臣の指針に沿った措置を講じている既実施の主としてコホート研究については、本則に定める研究対象者の同意を得ずに、違う同意代替措置に従って同意と認めて、全国がん登録の非匿名化情報の提供を受けることができると定められています。

 裏を見ていただくと、今の第21条の3項、4項の定めが書いてあるのと同時に、附則2条1項の定めにも書いてあります。これが今、私が説明した内容の繰り返しになっています。

 3ページをごらんください。政令の基準に該当しというのが第一の基準になっていますが、これから出されるであろう政令案で検討されているポイントが、政令に該当する定義としまして、法施行前に開始されたがんに係る調査研究であること。つまりは法施行後であれば、法律の本文に書かれているような同意措置をとるべきであるということです。法施行前に開始されたがんに係る調査研究であって、法施行後に本人の同意を得ることが、その調査研究の円滑な遂行に支障を及ぼすと認められる場合というのがどういう場合であるかを考えた場合に、ポイントとしてはここに書かれていることを考慮すべきであることを提案している次第です。

 法の施行前に調査研究の対象になっていたもの、または、法施行前に承認された研究結果に従って対象者となっていたが、法施行までに集めきらず、法施行後に対象者となったもの。つまりはコホート研究の実施最中で、参加者が例えば1万人のうち5,000人集めたところで2016年1月1日を迎えてしまって、残り5,000人まだ同意を得ていない部分について、新しい法律に定められた同意の方法をとるのではなくて、既に5,000人に対して取得をした同じ方法で同意をとればいいという考えに基づいています。それは科学的な考え方に基づいて、最初の前半の5,000人とあとの5,000人、同意取得の方法が異なると登録に際してのバイアスがかかる可能性があることを懸念してのことです。

 さらに、「かつ」というところで次の基準が書いてありまして、既に集められた対象者の数が多い場合、これは例えば1万人、10万人という数が多い場合、政令の中にはある程度の数が記載されると思っております。または対象者の数は少ないが、実施はその募集した時点が法の施行から数えますと、例えば10年前、20年前ということで、さかのぼって対象者に対して再取得をすることは難しいといった場合の2点を、どちらかに該当する場合を想定しております。

 こうした基準に基づいて、実施されている研究であって、ここで指針、この場で御議論いただきたい内容が出てくるのですが、経過措置の対象となる要件があった上で、指針に従った措置が講じられていることということで、指針に従った措置というのが、法の施行後に想定されている同意措置とできれば近いほうがいいのですけれども、コホート研究、昔のものに関してはなかなか今の例えば倫理指針がない時代のものもありますので、そういった背景も考えて、かつ公衆衛生上の有益性を考慮した上で、以下の3点の措置がとられていれば、同意に代替する措置がとられていると考えて、政令で定められる条件にプラスしてこの代替措置を満たしていれば、全国がん登録の非匿名情報の提供が受けられると考えるのがよいのではないかという提案を差し上げます。

 今申し上げた3点というのが、コホート研究に参加する際に研究対象者となる人から、研究対象者みずからを追跡して、研究対象者に対して追加情報を取得することについて、書面で同意を得ていることを1点に挙げています。これが法施行後であればきちんと全国がん登録と照合して、がんの罹患について情報取得するところまで具体的に規定されるところであるのですが、その施行前の研究については追跡すること、追加情報を得るニュアンスの文言が書いてある同意取得が必要であるという点です。

 2点目は、その全国がん登録情報の提供を受けることについて、適切な情報公開がされていること。本人に同意の再取得はしないかわりに、その研究対象者がそうした同意、代替措置に基づいて全国がん登録情報を取得することが、ある程度周知される措置がされていることが2点目の条件になっています。

 3点目は、その周知のところともかかわるのですけれども、周知された上で研究対象者がその同意代替措置に基づいて、全国がん登録からの非匿名化情報の提供をされることが仮に嫌だという場合には、その拒否ができる措置が講じられている、この3点をもって同意代替措置が講じられている判断をした上で、全国がん登録の非匿名化情報を提供するのがよいのではないか、という御提案を差し上げる次第です。

 下の※のところに書いてあるのですが、例えば周知は何か、もともと同意を取得することや連絡が難しいことも発想にありますので、はがきで全員に周知することではなくて、例えばWEBサイト等でこういった方針に切りかえますという内容が告知されていれば、同意代替措置をとって、全国がん登録から情報を取得することについての周知がされているとみなすのがよいのではないかと考えます。

 資料6の説明は以上です。

○辻部会長 ありがとうございました。

 これにつきまして御質問、御意見いかがでしょうか。

○松田参考人 済みません、最後のページの説明を忘れていました。

 裏面がまだありました。その他で、こうした法の経過措置または政令、指針が定められた暁には、例えば日本医学会、癌学会、癌治療学会、全国がん登録情報を用いて何か研究を進めることで有用な結果が出せるような研究組織が所属しているところについて周知するのがよいのではないか、ということもその他の追加情報として提案がありました。

 指針については、今3点条件を挙げましたけれども、この3点が確実にないとだめだという何か除外的にならないように留意をして、どちらかというと十分条件としての記述、3点あれば大丈夫、3点ない場合にも、研究内容の有用性や総合的な判断に基づいて審議会が提供の利用を可能にするような方針を定めるのがよいのではないかという発言が、これを検討したときのワーキンググループでありました。

あとは、もちろん法第21条第3項、4項に基づいて、2016年1月以降の施行で求められている同意の措置と、それ以前の同意代替措置の乖離があると、昔ほどすごくやりやすくて、あとはすごく費用の負担もかかって大変だという御批判もあるかと思うのですが、ある程度の乖離が生じてしまうのは、制度の改変には必ずつきまとうものであるので、できるだけ乖離がないほうがいいのに越したことはないけれども、その部分が最終的に残ってしまうのがしようがないのではないかという意見もありました。

 以上です。

○辻部会長 ありがとうございました。

 ただいまの御説明に対しまして、委員の皆様から御質問、御意見。

 祖父江委員どうぞ。

○祖父江委員 これは経過措置ということなので、既存のコホート研究の追跡が立ち行かなくなるような措置では困るわけです。今の指針のポイントの3点挙げられていますけれども、そのうちの1番目が厳しい条件で、書面の同意を得ていることが必ずしも既存のコホートではできていないと思います。

 今回の統合指針でも、介入を伴わない研究であり、人体から取得された資料を用いない研究であれば、書面で同意を得ていることは必ずしも要求されていないので、むやみに厳しい規定よりは現状の既存のコホートがきちんと追跡できるように、そこのレベルに合わせることは重要ではないかと思います。

○松田参考人 御意見ありがとうございます。

 この書面で、という部分につきましては、法施行後の同意のあり方について、さまざまな意見を伺った上で、法施行後も全国がん登録からがん罹患情報を得ることについて、書面で同意があったほうがいいだろうという意見が多かったことを背景に、法施行後についてそのように定めたというか、現在、案を考えていることに基づいて、書面でという部分、先ほどその他の部分でもお話しした内容でもあるのですが、余り前後で差がないほうがいいのではないかということで、今書いているのですけれども、今の祖父江先生の意見に基づいて検討したいと考えております。

○辻部会長 丸山委員どうぞ。

○丸山委員 今の祖父江先生の意見に反論、反対という趣旨ではないのですが、統合指針が適用される研究、あるいは統合指針が適用される研究で用いるデータというのは、このがん登録推進法の21条3項4号の規定がないものなのです。今回は、わざわざこういう生存している者については、同意が必要という規定があるデータが対象になっておりますので、そのあたりは統合指針がああいう定めだから、それとバランスを図るということだけでなくて、この21条の規定とのバランスも図る必要があるということは理解いただいたほうがというか、指摘しておきたいと思います。

○辻部会長 どうぞ。

○柴田参考人 済みません、補足的に先ほどの松田の発言に説明させていただきたいのですけれども、こちらの書面の同意のレベルについても、事前のワーキンググループではさんざん議論させていただきました。従前のコホート研究の中で、今の基準で求められているレベルの書面の同意は確かに厳しいだろうと。ただし、何らかの形で、例えば従前のコホート調査において調査票そのものにお名前を書いていただいている。ここに記載しているのは、それがあれば書面でその研究に同意して参加しているというものと認められるのではないかというレベルまで含めた書面の同意です。

 以上補足させていただきました。

○辻部会長 今、名前を自分で書いているというお話がありましたが、コホート調査のときに調査票の表紙にネームラベルを張ってお送りするケースが結構あるのです。そうしますと御自分の名前を書かないことになってしまいます。少し考えていただきたいのは、今から20年前、30年前に始まったコホート研究が、今、成熟していろいろがん予防に貢献する成果を出しているわけですけれども、その当時は、疫学指針も全くございませんでしたし、最初の1ページに趣旨を書いて、追跡されるだろうなということはわかるような、そして、生活習慣病との関係が何となくわかるようなことを書いて御協力いただけるなら、決して強制ではないですけれども、御協力いただけるなら書いて返送してくださいという中身がほとんどだと思うのです。

 ですから、通常このことについて我々が欧米の医学雑誌に論文を出すときは倫理的な側面といたしまして、この調査票の自発的な返送をもって同意とみなすという形で英文に書いておりますが、それで文句がついたことは一度もないわけです。ですから、そのレベルまでしていただかないと、日本の疫学研究は遅れをとってしまい、最終的にはがん医療とかにも支障を来すのではないかと思いますので、よろしくお願いします。

○柴田参考人 まさに今、辻先生がおっしゃったその当時の本人の意思が確認できる何かがあればというところがワーキンググループで検討したポイントでしたので、そのことがわかるような書きぶりを考えさせていただきたいと思います。

○辻部会長 ほかにはどなたかございますでしょうか。

 有賀先生、どうぞ。

○有賀委員 ありがとうございます。

 例えば患者さんが自分の情報が全国の研究組織のどこかで使用されているのではないかと、これらの情報公開をされているものを見て、できれば自分は拒否したいとおっしゃられたとします。そうした問い合わせに対して、実際この大規模なコホート研究の中で対処することは可能なのでしょうか。

○松田参考人 今御質問いただいた内容はコホート研究の主催者に対して、がん登録情報を取得しているという意味でしょうか、それともがん登録に登録されている患者が自分の情報がコホート研究に使われているかどうか。

○有賀委員 がん患者さんが、ここに書いてある2番、3番の公開されている情報を見て、もしかすると自分の情報がそこで使われているのではないかと思って、どちらかに問い合わせをされたと仮定した場合、あなたのデータはそこには含まれていませんとか、含まれておりますが、拒否されるならば消しましょうといったような対応をすることは可能なのでしょうか。

○松田参考人 がん登録のほう、でその情報を開示するとか消すことについては想定がされていないというのは法律で定められているとおりなのですけれども、コホート研究については、全国がん登録情報をくっつけられては嫌だということが例えばこのホームページ上で知った場合には、コホート主催者に対して自分が例えば20年前に回答したクエスチョンをやっているところに連絡ができるような形でそのことについて周知する必要があるというのがこの原案ですので、そこに連絡をして、コホート研究から私は離脱したいという連絡をして、その拒否については拒否をさせなければいけないのが今回の御提案です。

○有賀委員 そうすると、研究者がそのことをよく知っていなければいけないということですか。

○松田参考人 そうですね、そういった措置をした場合に、コホート研究の参加者から連絡があることは想定しておいて、周知をする必要があると思います。

○有賀委員 そうすると、その研究者によって対応することは可能ということですか。

○松田参考人 そうですね、名前同士でマッチングをしますので、どこの誰ということが確認できた場合にはその情報をコホート研究のデータベースから削除すること、それをコホート研究自体でそういった措置が講じられているものであると考えております。

○有賀委員 ありがとうございます。

○辻部会長 ほかにどなたか御意見ございますでしょうか。

 ちょっと一つ、私から皆さんにお聞きしたいのですが、資料3ページの今集めている最中のものというのがあります。既に集め終わったものはいいのですけれども、「2法施行前に承認された研究計画に従って対象者となっていたが、法の施行までに集めきらず、法施工後に対象となった者」。これは途中でスタイルを変えたらどうにもとり方は変わってしまいますので、バイアスが生じてくると思うのですが、これはすごく嫌な言い方をすると駆け込みがあり得ます。例えば今年中にまず一人でも集めてしまえば、残り10万人同意なしで集められるのかという、かなり極論のところまで押さえておかないと、制度上成り立たないと思うのですが、その辺はどういうふうに考えればいいのかと思うのです。

○松田参考人 そうですね、もちろんそういう駆け込みがあるのではないか、それによって研究の倫理自体が脅かされる可能性もある話も出たのですけれども、例えば先ほどの指針に従った措置というところとの乖離の問題でもあるのですが、余りに簡単な形で同意代替措置を定めてしまうと、そういった駆け込みを誘発する危険性もありますし、またほかの条件について何か駆け込みを誘発することがあり得ないような仕組みにしていくべきだとは考えておりますが、やはりそうしたものを完全に排除することができないとは思います。

 ただ、例えば既に集められた対象の数が多い場合を含めて、既に集められた部分が1名であれば多いところには該当しないので、その1名についてもう一回取り直しなさいという考えになるのではないかと思いますので、いろいろな部分でそういった制御をかけることが可能なのではないかと思います。

○辻部会長 具体的には実際に審議会でケース・バイ・ケースというところにもなりますので、そこで少しじっくりもむという形でしょうか。

○松田参考人 多分完全にケース・バイ・ケースにしてしまうと、なかなか審議会で毎回審議するのは大変で、かつ都道府県がん情報と全国がん登録情報で審議会自体がばらばらになりますので、ある程度数が多いのが100なのか1万なのか10万なのかについて、ある程度方針は政令で打ち出すべきではないかと思っております。

○辻部会長 ほかにどなたか御意見ございますでしょうか。これにつきましてはよろしいでしょうか。

○中西委員 最後にその他の主な論点で一つお伺いしたいのですけれども、学会への周知は重要と思いますけれども、具体的にはどのような形の周知を想定しておられるのか。というのは、恐らく実際に学会内部での周知があるとすれば、登録研究をやっているコミッティもあれば総会、学術集会での周知もあると思いますし、早いうちに対応しておかないと学会のプログラムが固定すると対応が難しいこともあると思いますし、どなたがどういうミッションで学会への対応をやってくださるかが早くわかったほうがいいと思います。

○事務局 学会との連携といいますか、学会でどういう周知をするかにつきましては、まず一番考えておりますのは、関係団体のホームページとかでこういったことが始まりますことを御協力いただく、そこに載せていただくことを想定しております。また、先ほど先生からも御指摘いただきました学会、総会とかで何らかの形で周知していくことにつきましては、今一つ御相談申し上げているのですけれども、日本医学会総会でも関連する周知のポスターを掲示していただいたり、説明する機会をいただけるのであれば御説明していきたいと思っているのですが、政省令の部分がある程度固まらないとお知らせもできない部分がございますので、少しまだ検討しているところでございます。

○中西委員 了解いたしました。

 この中にほとんどやっていない学会もあれば、リストにはないけれども、すごく頑張っている学会もありますし、ぜひそこは精査された上で、しかるべきところに効率的にやっていただいたらと思いますのでよろしくお願いします。

○辻部会長 ありがとうございました。

 ほかにどなたか御意見ございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、議題の3つ目のその他でありますけれども、国民向けのPRについて以前国立がん研究センターから御報告いただきましたけれども、その後の進捗状況について御報告いただけますでしょうか。

○松田参考人 国民向けのPRについて進捗を御報告いたします。

 国民向けのPRといたしましては厚生労働省から国立がん研究センターが委託を受けて、主に3つの柱で活動して、3月末までに事業を終えたいと思っております。

 1つ目は、ウェブサイトの構築でして、国立がん研究センターのがん情報サービスに現在一般向けのページについては開設が済んでおります。情報については簡単な内容になっていますが、今後、適宜拡充をしていくとともに、都道府県向け、病院等医療機関向け、情報の利用をする利用者向けのページについても構築をした上で、政省令等決まった暁にはその内容、今あったデータ利用の説明について追加をしていく予定です。これにつきましても3月末までの開設を予定しております。

 2点目は、一般国民に向けての広告になりますが、2つありまして、ポスター及び電子媒体としてインフォグラフィックスのようなものを考えております。この内容としては、全国がん登録を難しく説明するよりは、がん自体に関して何かインパクトのある情報を掲載して、そこに一般国民に目をとめていただいて、内容をよく読んで下のほうにいくと、こういったことについて全国がん登録は貢献していますという形で、最終的に全国がん登録、ひいてはがん情報サービスのサイトに誘導するものを想定しています。

 このポスター、電子媒体については今現在3種類から4種類の作成を予定しております。例えばですけれども、予防について国民の多くは発がんリスクを誤解しているところがあるのですが、例えば発がんリスクの既往の割合で20%ぐらいが日本ではたばこであるということについて、がん家系といった誤解を解くようなポスターをつくって、こうした例えばリスク要因の科学的根拠を出すような研究にもがん登録は貢献していますという結びで、がん登録に情報を持っていく内容を考えています。

 これにつきましても、3月末までに作成をして、印刷したものは病院等に配布をするところまでを想定しています。

 もう一つは、動画なのですけれども、動画については昨今情報を発信する媒体としてよく使われるSNSです。例えばユーチューブですとかフェイスブック、また普通のウェブページもそうですけれども、こういったところに掲載して、同じようにがん情報を提供して、人目を引いて最終的にはがん登録との結びつきについて説明をした上で、がん登録について興味を持っていただく内容にする予定です。この内容については、がん患者さんが自分の闘病時代に支えてくれた方々に感謝する内容の動画を今撮影し終わったところで、編集に入っています。

 もう一つは、こうしたキャンペーンに使うロゴを作成する予定で、2種類ほど案を作成して、確定しようとしているところです。

 以上です。

○辻部会長 ただいま国立がん研究センターから国民向けPRについての御報告がありましたが、これにつきまして何か御意見とかございますでしょうか。

 どうぞ、家原委員から。

○家原委員 ありがとうございます。

 以前のがん登録部会でも発言させていただきましたが、がん教育という方向でぜひがん登録についてもお願いしたいと思います。中学生、高校生等次世代を担う世代ががんに罹患するはずといえば変な話ですが、子供たちへの教育がこういったがん登録を次世代につなげていくものになるかと思いますので、今がん教育が京都府をはじめ各地で盛んに行われておりますので、そういったところでぜひお願いしたいと思います。

○松田参考人 国立がん研究センターのほうでもがん教育はプロジェクトとして立ち上がっておりますので、そういったところにも情報を提供して、協力してやっていきたいと思います。

○辻部会長 小俣委員どうぞ。

○小俣委員 ありがとうございます。

 3月でPRの体制が整って、4月以降に患者さん、国民の方に一般に広がっていったときに、多分登録に関して困ったということがあったときに、拠点病院の相談支援センターなどが窓口になるかと思うのですが、例えば相談支援センターですと研修が段階的に組み込まれておりますけれども、その中にがん登録の内容は組み込まれることになるのでしょうか、そこを教えていただければと思います。

○松田参考人 現在、私のほうで相談員の研修の中できちんと全国がん登録の仕組みについて、プログラムが入るかどうか把握していないのですけれども、もちろんそういったところでの質問があることが想定されますので、相談員の研修を担当している情報提供研究部がありますので、そことはこのPRについては一心同体でやっておりますので、相談員についても提言をしたいと思います。

○小俣委員 よろしくお願いします。

○辻部会長 有賀委員どうぞ。

○有賀委員 PRの評価はどのようにされていく予定でしょうか。

○松田参考人 PRの評価につきましては、現在作業を委託しているところが例えば動画であれば、視聴回数ですとかポスター等であれば間接的な形になりますけれども、国民に対してのアンケートといったところで評価するとおっしゃっていますので、その評価をまって一定の成果があるのかどうかを判断したいと思っております。

○辻部会長 ほかにどなたかございますか。どうぞ。

○小俣委員 今のPRのことではないのですけれども、先ほどの同意というところがございましたけれども、前にもお話、御意見申し上げましたが、小児がんの場合に同意をというのは、もしかして事務局かもしれないのですが、成人に達しない場合に保護者がといったことなどが小児がんの場合には問題がありますし、そのほかにも幾つか考えることがありまして、小児がんについては前回天野委員からも質問があったと思いますけれども、どんな体制で今後進めていくのか、もしわかれば教えていただきたいと思います。

○事務局 今いただきました御意見ですけれども、小児の同意についてはどこまで理解できるか、幾つになったら告知できるのか、また、改めて成人になったときに告知するのか、いろいろな機微な問題がございまして、小児がん登録をやっておられる先生方とも連携を深めて進めていきたいと思っておりますので、ある程度そういった進捗等がありましたら、この場でも御報告をさせていただきたいと思います。

○小俣委員 よろしくお願いします。

○辻部会長 ほかにはございますか。よろしいですか。

 ほかにどなたかございますか。よろしいでしょうか。

 それでは、大分時間も迫ってきましたので、これくらいにしたいと思います。

 本日の議論はこれまでといたしたいと思います。事務局におきましては、これまでの議論を踏まえまして、マニュアル等の作成を進めていただきたいと思います。その際には、必要に応じまして委員の先生方ともまた御相談していただければと思います。また、国民向けのPRにつきましても関連学会等と連携して進めていただきたいと思います。

 では、事務局から連絡事項をお願いいたします。

○事務局 次回第6回がん登録部会の日時、場所につきましては決まり次第、また御連絡いたしますので、どうぞよろしくお願いいたします。

○辻部会長 それでは、以上をもちまして本日の部会を終了したいと思います。

 どうも皆さん、ありがとうございました。


(了)

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